第1回高年齢労働者の労働災害防止対策に関する検討会議事録

労働基準局安全衛生部安全課

日時

令和7年9月8日(月)10:00~

場所

厚生労働省第24会議室

出席者

参集者(敬称略・五十音順)
飯島 勝矢
石﨑 由希子(オンライン出席)
榎原 毅 (座長)
甲斐 裕子
坂下 多身
島田 行恭
松尾 知明
松岡 かおり
松田 文子
松葉 斉
山脇 義光

事務局
安井 省侍郎(安全衛生部長)
土井 智史   (安全課長)
奥野 正和 (主任中央産業安全専門官)
吉岡 健一 (副主任中央産業安全専門官)
中地 建太 (中央産業安全専門官)
長山 隆志 (労働衛生課 主任中央産業安全専門官)

議題

(1)高年齢者の労働災害防止のための指針の策定について
(2)その他

議事

 ○副主任中央産業安全専門官 定刻となりましたので、ただいまより「第1回高年齢労働者の労働災害防止対策に関する検討会」を開会いたします。私は厚生労働省労働基準局安全衛生部安全課の吉岡と申します。座長選出までの間、議事進行を務めさせていただきます。それでは、本検討会の開催に当たりまして、安井安全衛生部長から御挨拶を申し上げます。
○安全衛生部長 皆さん、こんにちは。お暑い中お集まりいただきまして、ありがとうございます。厚生労働省安全衛生部長の安井でございます。高年齢労働者労災防止対策に関する検討会の開催に当たりまして、一言御挨拶申し上げます。
 御案内のとおり、高年齢労働者の就業人口が占める割合というのは約2割でございますけれども、災害に占める割合は約3割となってございます。また、その休業した場合の休業日数、こちらも年齢を追うに従って高くなっていくという傾向があります。こういった傾向はもともとある作業のリスクに、高年齢労働者の身体機能の低下といった特性によるリスクが付加されて起きているのではないかと考えているところでございます。
 こういった認識を踏まえまして、本年の5月に改正されました労働安全衛生法におきましては、高年齢労働者の特性に配慮した作業環境の改善、作業の管理その他の必要な措置を事業者の努力義務として、具体的に実施すべき内容については、厚生労働大臣が指針で示すというような形にさせていただいたところでございます。
 本検討会は、この指針につきまして御検討いただくという検討会でございます。御案内のとおり、既にエイジフレンドリーガイドラインという通達によるガイドラインがありますので、こちらを下敷きにして、どのような形で指針にしていくのかというところにつきまして、御議論いただきたいというところでございます。是非、自由闊達な御議論を頂きまして、より良い指針となりますように御協力いただければと思います。よろしくお願いいたします。
○副主任中央産業安全専門官 ありがとうございました。続きまして、本検討会に御参集いただきました皆様の御紹介をさせていただきます。お手元資料1の構成員一覧により、50音順にて御紹介させていただきます。東京大学高齢社会総合研究機構機構長・未来ビジョン研究センター教授の飯島様です。
○飯島構成員 よろしくお願いいたします。
○副主任中央産業安全専門官 横浜国立大学大学院国際社会科学研究院教授の石﨑様です。本日はオンラインでの御出席となります。
 続きまして、産業医科大学産業生態科学研究所人間工学研究室教授、榎原様です。
○榎原構成員 よろしくお願いします。
○副主任中央産業安全専門官 明治安田厚生事業団体力医学研究所副所長の甲斐様です。
○甲斐構成員 よろしくお願いします。
○副主任中央産業安全専門官 日本経済団体連合会労働法制本部統括主幹の坂下様です。
○坂下構成員 よろしくお願いします。
○副主任中央産業安全専門官 労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所研究推進・国際センター長、島田様です。
○島田構成員 島田です。よろしくお願いいたします。
○副主任中央産業安全専門官 労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所人間工学研究グループ上席研究員、松尾様です。
○松尾構成員 松尾です。よろしくお願いいたします。
○副主任中央産業安全専門官 日本医師会常任理事、松岡様です。
○松岡構成員 松岡です。よろしくお願いいたします。
○副主任中央産業安全専門官 大原記念労働科学研究所特別研究員の松田様です。
○松田(文)構成員 松田です。よろしくお願いいたします。
○副主任中央産業安全専門官 松葉労働衛生コンサルタント事務所代表の松葉様です。
○松葉構成員 松葉です。どうぞよろしくお願いいたします。
○副主任中央産業安全専門官 日本労働組合総連合会総合政策推進局労働法制局局長の山脇様です。
○山脇構成員 連合の山脇です。御指導よろしくお願いいたします。
○副主任中央産業安全専門官 なお、福岡国際医療福祉大学看護学部看護学科教授、松田様は本日、御欠席となっております。
 続きまして、事務局の紹介をさせていただきます。先ほど御挨拶させていただきました安全衛生部長の安井です。
○安全衛生部長 よろしくお願いいたします。
○副主任中央産業安全専門官 安全課長の土井です。
○安全課長 よろしくお願いいたします。
○副主任中央産業安全専門官 主任中央産業安全専門官の奥野です。
○主任中央産業安全専門官 よろしくお願いいたします。
○副主任中央産業安全専門官 中央産業安全専門官の中地です。
○中央産業安全専門官 よろしくお願いいたします。
○副主任中央産業安全専門官 衛生課の主任中央労働衛生専門官の長山です。
○主任中央労働衛生専門官 よろしくお願いします。
○副主任中央産業安全専門官 最後に私、安全課の吉岡と申します。それでは、本検討会には座長を置くこととしております。事務局といたしましては、榎原先生にお願いをしたいと考えておりますが、皆様、いかがでしょうか。
                                   (異議なし)
○副主任中央産業安全専門官 ありがとうございます。それでは、以降の議事進行を榎原座長にお願いをいたします。
○榎原座長 ただいま御指名いただきました産業医科大学の榎原です。僭越ではございますが、座長を務めさせていただきます。冒頭にも安井部長よりお話はございましたけれども、この検討会は高齢労働者の労働災害防止対策を推進するために、指針の検討を行う重要な検討会となっております。この委員の皆様におかれましては、よろしく御指導、御助言等、賜れればと思います。
 それでは、議事に入りたいと思いますので、円滑な進行に御協力くださいますよう、お願いいたします。また、傍聴の皆様におかれましては、カメラ等をここまでとさせていただきます。御協力をお願いいたします。それでは、事務局からオンラインによるZoomの操作方法、配布資料等について、説明をお願いいたします。
○副主任中央産業安全専門官 それでは、事務局より御説明いたします。重ねて傍聴の皆様におかれましては、カメラ撮影はここまでとしていただきますよう、お願いします。
 それでは、オンラインの説明の方法です。本日はマイクのハウリングの防止のために、御発言されないときには、マイクオフにて設定をお願いします。また、オンライン参加の先生におかれましては、御発言される場合、御発言がある旨をチャットに書き込み、座長から指名されましたら、マイクをオンに設定の上、御発言をお願いいたします。そのほか進行中、通信トラブルなど不具合がありましたら、チャットへの書き込み、又は事務局へのメールにて御連絡をお願いいたします。
 続いて事務局から、本日の資料について確認をいたします。お手元のタブレットを構成員の方については御確認をお願いいたします。まず、検討会の議事次第が格納されていると思います。そのほかに資料1として「開催要綱」、資料2-1「高年齢者の労働災害防止のための指針の策定について」、資料2-2「高年齢労働者の安全と健康のためのガイドライン(エイジフレンドリーガイドライン)」、資料2-3「事業場における労働者の健康保持増進のための指針(THP指針)」ということで、こちらの資料が格納されているかと思います。不足などありましたら、事務局まで御連絡をお願いいたします。
○榎原座長 ありがとうございます。それでは、検討会の開催の趣旨につきまして、事務局から説明をお願いいたします。
○副主任中央産業安全専門官 事務局から御説明いたします。資料の1を御覧ください。先ほど部長の御挨拶の中でも触れましたが、高齢化の進展に伴い、労働者全体に占める60歳以上の割合が約2割を占めるまでになっている中で、労働災害による休業4日以上の死傷者数に占める60歳以上の割合は、約3割に達しています。高年齢労働者は、若年世代と比べて労働災害の発生率が高く、災害が起きた際の休業期間も長い傾向にありますが、これは作業による労働災害リスクに、加齢による身体機能の低下等の高年齢労働者の特性に起因するリスクが付加されているものによると考えられます。
 このような高年齢労働者の労働災害防止対策を推進するため、令和7年に改正された労働安全衛生法により、高年齢労働者の特性に配慮した作業環境の改善、作業の管理、その他必要な措置を講ずることが事業者による努力義務とされ、事業者が講ずるべき措置に関し、厚生労働大臣が措置の適切かつ有効な実施を図るために、必要な指針を公表することとされております。高年齢労働者の労働災害の分析及びその提言のための必要な方策など、今後の高年齢労働者の労働災害防止対策の在り方について、この検討会では御検討いただきたいということです。
 構成員名簿については3ページにありますが、先ほど御紹介したとおりとなっております。資料1について以上です。
○榎原座長 ありがとうございます。この検討会では、高年齢労働者の労働災害防止対策について、今年の12月末までに検討を重ねて、報告書として取りまとめるということでございます。ただいまの説明について御意見、御質問等ございましたら発言をお願いいたします。御発言のある方は、会場の委員につきましては挙手を、また、オンライン参加の委員は御発言がある旨、チャットに書き込みをお願いいたします。いかがでしょうか。特に趣旨はよろしいですかね。ありがとうございます。
 それでは、議題に移りたいと思います。議題の1、高年齢労働者の労働災害防止のための指針の策定についてです。資料が多数ございますので、資料2-1の5の「高年齢労働者の労働災害防止対策の現状」まで、一区切りでお願いいたします。
○副主任中央産業安全専門官 事務局から御説明をさせていただきます。お手元の資料2-1を御覧いただきたいと思います。2ページに大きく6つの項目があります。1つ目、「労働安全衛生法の改正について」から5つ目の「高年齢労働者の労働災害防止対策の現状」まで、御説明をさせていただきます。
 3ページからが労働安全衛生法の改正についてです。続いて4ページ、労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律(令和7年法律第33号)の概要です。今般の労働安全衛生法等の改正の中で、大きく5点の改正が行われております。このうち5つ目、高齢者の労働災害防止の推進につきまして、今回の改正となっています。高年齢労働者の労働災害防止に必要な措置の実施を事業者の努力義務とし、国が当該措置に関する指針を公表することとするとされております。施行日は令和8年4月1日となっております。
 続いて5ページ、これが改正の条文になります。今回の改正によりまして、条文が1つ新設されております。高年齢者の労働災害防止のための措置の第62条の2としまして、事業者は、高年齢者の労働災害の防止を図るため、高年齢者の特性に配慮した作業環境の改善、作業の管理、その他の必要な措置を講ずるように努めなければならない。第2項として、厚生労働大臣は、前項の事業者が講ずべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るため、必要な指針を公表するものとする。第3項としまして、厚生労働大臣は、前項の指針に従い、事業者又はその団体に対し、必要な指導、援助等を行うことができる。こちらが新設された条文となっております。
 また、衆参の厚生労働委員会の中で、附帯決議を頂いております。内容としては共通としたものとなりますが、高年齢労働者の労働災害防止を図ることに鑑み、新たに公表される指針の周知に努めるとともに、高年齢労働者の特性や作業内容に応じた研修や講師の育成等を含めた事業者の取組を支援することなどが、附帯決議の中で決まっております。
 続いて6ページからが2番、「高年齢労働者をめぐる現状」です。高齢社会対策大綱につきまして7ページ、昨年の9月13日の閣議決定です。高齢社会対策大綱においては、年齢にかかわらず、それぞれの意欲や能力に応じて経済社会における様々な活動に参画する多様な機会を確保し、その能力を十分に発揮できる環境を創っていく重要性が、ますます高まっていることが指摘されているところです。
 次に、8ページを御覧ください。60歳以上の雇用者の割合及び労働災害の現状です。人口動態の変化や、高齢者の健康状態の向上を背景としまして、雇用者全体に占める60歳以上の高年齢者の割合は19.1%となっております。また、労働災害における死傷者数、休業4日以上の者に占める60歳以上の高年齢者の割合は30.0%となっています。
 続いて9ページです。性別・年齢階層別の労働災害の発生率について、お示しをしております。休業4日以上の死傷災害の年千人率、1,000人当たりの災害発生数、こちらを性別、年齢別に見ますと、男女ともに50~54歳で全年齢の平均値を上回り、年齢が高くなることに応じ、死傷年千人率が上昇していく傾向にあることが分かります。
 続いて10ページです。性別・年齢層別の労働災害発生率、令和6年休業4日以上の死傷災害の度数率です。休業4日以上の死傷災害の度数率、100万労働時間当たりの災害発生率は、男性で55~59歳、女性で50~54歳で全年齢平均の度数率を上回り、加齢に応じ上昇していく傾向があります。千人率との傾向の違いは、60歳以上の労働者の労働時間が、60歳未満と比較して相対的に少ないことによるものと考えております。
 続いて11ページになります。性別・年齢層別労働時間数当たりの休業見込み日数です。千延べ実労働時間当たりの休業見込み日数(休業4日以上)の者は、男女ともに60歳以上で全年齢平均を上回り、60歳以上で加齢に応じ、千人率、度数率と比較して、顕著に上昇していく傾向があります。度数率との傾向の違いは、60歳以上の労働者の休業見込み日数が60歳未満と比較して相対的に長いことによるものです。
 続いて12ページ、参考としまして、年齢層別の労働災害による休業見込み期間について整理をしたものです。こちらを御覧いただきますと、一番下の3か月以上の黒い所であったり、その上の2か月以上の所がありますが、休業見込み期間は年齢が上がるに従って長期間となっていることが分かります。
 続いて13ページを御覧ください。業種別・性別・年齢層別の死傷年千人率です。主な第三次産業、製造業、建設業、陸上貨物運送事業といった9の業種について整理をしております。第三次産業におきましては、業種によって労働災害発生率の高さは異なりますが、加齢に応じた発生率の上昇は、業種にかかわらず、おおむね同様の傾向を示しています。製造業、建設業、陸上貨物運送事業におきましては、業種によって災害発生率の高さは異なりますが、第三次産業のような加齢に応じて災害発生率が上昇するとまでは言えないと考えています。
 14ページを御覧ください。年齢層別・男女別の労働災害発生率、こちらは度数率の傾向です。墜落・転落、転倒による骨折などでは、特に60歳以上で加齢に応じ、労働災害発生率(度数率)が著しく上昇します。動作の反動・無理な動作とはさまれ・巻き込まれは、加齢に応じ労働災害発生率が上昇する傾向があります。
 続いて15ページを御覧ください。墜落・転落につきまして、業種別・性別・年齢層別の死傷年千人率を示したものです。第三次産業、製造業、陸上貨物運送事業について見ますと、業種によって墜落・転落災害の発生率の高さは異なりますが、加齢に応じた発生率の上昇については、おおむね同様の傾向を示しております。建設業につきましては、若年齢層における墜落・転落災害の発生率が、高年齢層と同程度に高い状況にあります。
 続いて16ページになります。転倒災害について、業種別・性別・年齢層別の死傷年千人率を示しております。第三次産業、製造業について見ますと、業種によって転倒災害の発生率の高さは異なりますが、加齢に応じた災害発生率の上昇については、おおむね同様の傾向を示しております。建設業、陸上貨物運送事業については、若年齢層における転倒災害の発生率が相対的に高い状況にあります。
 続いて17ページです。ここから3「労働災害の経年変化と労働人口構成の高齢化の影響」です。18ページを御覧ください。労働災害発生率(度数率)の年齢調整についてです。年齢調整ということで御説明しますと、労働災害の発生率は、年齢階層が高くなるほど高くなるといった傾向があります。近年、休業4日以上の死傷災害は増加傾向にありますが、労働者全体に占める高年齢労働者の割合も増加していることから、労働力人口の高齢化による影響を除去した上で、各種労働災害防止施策の効果を確認するために、労働災害の発生率について、平成27年の労働者数を基に年齢調整を行い、その推移を確認したいということです。計算方法については、こちらに書かれているとおりです。
 続いて19ページを御覧ください。死亡災害の発生率(度数率)を年齢調整した値の推移です。死亡災害発生率は減少傾向にありますが、年齢調整値は未調整値と比較して更に低いため、労働者人口構成の高齢化により、度数率が上振れしているということが分かります。
 続いて20ページを御覧ください。死傷災害(休業4日以上)の発生率、こちらも度数率の年齢調整値の推移です。死傷災害発生率は増加傾向にあります。年齢調整値も増加傾向にあることから、死傷災害発生率の増加には、労働者人口構成の高齢化以外の影響もあることが示唆されます。年齢調整値の推移には、男女の違いが大きくなっております。男性では横ばいか若干の増加にとどまりますが、女性ではほぼ一貫して上昇しているところが見て取れると思います。
 続いて21ページを御覧ください。死傷災害の発生率(度数率)の年齢別の推移ということで、死傷災害発生率(度数率)は、65歳以下は横ばいになっておりますが、特に女性の65歳以上において、死傷災害発生率が増加傾向にあります。
 続いて22ページを御覧ください。産業別、年齢別の労働者の割合の推移です。高年齢労働者は全ての業種において、人数、割合ともに経年で増加をしています。従来、若年労働者が行っていた一定の身体機能を有することを前提とする業務に、高年齢労働者が就く場合が増加している可能性があります。
 続いて23ページから、4「身体機能と労働災害の関連」です。年齢別の身体機能の状況ということで、年齢別の身体機能の測定結果、こちらに4点お示しをしておりますが、加齢とともに評価値の低い者の割合が増加し、60歳以上になりますと、それが顕著となります。ただし、これらは平均であって、個人によりばらつきが大きいということに留意する必要があります。
 続いて25ページです。加齢による身体機能の低下による労働災害リスクの増加です。労働災害のケースについて、3つほど挙げています。高年齢者の災害発生率の増加には、個人によりばらつきがありますが、業務に起因する労働災害リスクに、加齢とともに進む筋力やバランス能力などの身体機能や体の頑健さの低下による労働災害リスクが付加されていることが大きいと考えられます。
 続いて26ページ、5番「高年齢労働者の労働災害防止対策の現状」です。高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン(エイジフレンドリーガイドライン)に基づく取組が進んでいないことが分かります。こちらは令和5年労働安全衛生調査の結果ですが、取り分け身体機能の低下などによる労働災害発生リスクに関するリスクアセスメントの実施や、身体機能の低下を補う設備・装置の導入の状況をはじめとして、全体的に低調となっております。取組が進んでいない理由について、「自社の60歳以上の高年齢労働者は健康である」と回答した事業場が多くなっております。割合として48.1%です。身体機能の低下による労働災害のリスクへの理解が進んでおらず、その結果、そのような労働災害の防止のための取組が行われないことで、労働災害の増加に歯止めが掛からない状況につながっていると考えられます。
 続きまして28ページです。参考としてエイジフレンドリー補助金について御紹介させていただきます。エイジフレンドリー補助金は、中小企業事業者に対して、高年齢労働者のための職場環境の改善などに要した費用の一部を補助する制度です。対象となる労働者や補助金額については、こちらを御覧ください。
 続いて29ページを御覧いただきたいのですが、令和7年度、今年度のエイジフレンドリー補助金について御紹介いたします。予算額としては7.6億円となっておりまして、令和7年度は中小企業事業者が専門家を活用して、効果的な対策を講じられるようにする観点から、エイジフレンドリー補助金を拡充し、総合対策コースという補助率5分の4のコースを新設しています。下に4つのコースがありますが、そのうちの一番左側が新設されました総合対策コースの御説明となっております。
 続いて30ページを御覧ください。エイジフレンドリー補助金の補助を受けました事業場に対するアンケート調査の結果です。業種別補助対象の措置別、取組事業場の60歳以上の労働者の増減ということで、アンケートに御回答いただきました事業者の中で、最も多かった業種は製造業です。最も多かった墜落・転落、又は転倒に関する補助金の対象となる措置は、階段などへの手すりの設置でした。補助金を活用して、墜落・転落、又は転倒の労働災害防止対策の措置を講じた事業場のうち、申請以降39.9%が60歳以上の労働者が増加をし、27.2%の事業場で減少したということになっています。
 続いて31ページを御覧ください。アンケート結果の2番です。申請時前後の60歳以上の平均労働災害率の比較です。補助の申請年以前3年間と、申請年の翌年以降の60歳以上の平均労働災害発生率を比較しますと、8.4%の事業場で発生率が減少しています。補助対象となる措置内容別で比較しますと、休業4日以上では、床や通路の段差の解消工事を実施した場合、発生率の減少した事業場の割合、10.7%が最も高い。休業4日未満では、トラックの荷台の昇降設備の導入を実施した場合、発生率が減少した事業場の割合、20.0%が最も高くなっておりました。
 次、32ページを御覧ください。申請前後でのヒヤリハット事案の増減です。エイジフレンドリー補助金を活用した後、86.8%の事業場が、ヒヤリハット事案が減ったと回答し、94.7%の事業場が安全衛生担当者の労働災害防止に対する意識が向上し、87.7%の事業場で労働者の意識が向上したと回答を受けております。補助対象の措置別では多少のばらつきが見られるところとなっております。ここまで、御説明となります。以上です。
○榎原座長  ありがとうございました。資料は32まで、スライドがたくさんありますが、ただいまの説明につきまして御質問等がありましたら発言をお願いいたします。御発言のある方は、会場の委員につきましては挙手を、オンラインの委員につきましてはチャットに書き込みをお願いします。では、先に飯島委員、お願いいたします。
○飯島構成員 飯島と申します。ありがとうございました。膨大なデータを集計して示していただき、全体像が見えてきたのですけれども、それを踏まえた上で知っておきたい点があります。もし、お答えがあれば教えていただきたい。ないしはこれからの課題になるかと。まず1つが、年齢によって身体能力が落ちてくるフレイルという考え方、あとロコモも含めて、ある意味当たり前なので、その対策を講じていくのですが、時代の経年変化の中で、この対策が声高らかに言われている中で、企業様や中小の事業者様の幹部の方々の対応策がどのように変化してきているのか。逆に言えば、どのぐらいちゃんとした、理にかなった対応策に一歩踏み出しているのか。そういうジレンマがあるからこそ、また今回、こういう動きなのかもしれませんけれども。そこがちゃんと見えてこないと厳しいかなというのが、まず1つです。
 もう1つは、私もフレイルの分野、サルコペニア、筋肉の衰えの分野の研究者でもあるので、新しいエビデンスを出すということの一つの責任もあるかと思うのですが、エイジフレンドリーガイドラインの中で盛り込まれている評価がどのぐらい徹底されているのかという課題もあります。もう一方で、もう少し一歩手前で考えると、あの評価内容がどのぐらい今後のリスクを予測できる、匂いを嗅ぎ分けられるものなのかどうかということ。これは研究者たちも、転倒という視点では調査研究をやっていたりしますが、労働災害という視点ではなかなかやっていなかったりするので、私も含めて距離感があったなと。そこら辺を何かもう一工夫することによって、もう一回りヒヤリハットを減らすことができる、ないしは、一番怖い出来事、墜落・転落で死亡に至ってしまうようなものに関して、特に御高齢の方にカチッとはめられるようなものは何なのか。これはお答えを求めるというよりは、これからの課題かなと思ってコメントさせていただきました。以上2点、コメントさせていただきます。以上です。
○榎原座長 貴重な御質問、ありがとうございます。ただいまの2点について、事務局から御回答はありますでしょうか。まず第1には、対応策のほうがどのように変化してきているのかということについて、何か調べられているものがもしあればということですが。
○副主任中央産業安全専門官 では、お答えいたします。まず、対応策につきまして、先ほど資料の27ページで、具体的にどのような取組をされているのか御紹介させていただいております。こちらは令和5年の労働安全衛生調査の結果について御紹介しておりますが、この時点の数字となっており、現時点ではこのような形となっております。身体機能の低下によるリスクアセスメントを実施されている事業場や、特性を配慮した作業管理をしていますという所が多くあります。また、体力に応じた対応をしているという所も45.9%となっております。この推移については、引き続きこの労働安全衛生調査の中でお尋ねをして明らかにしていくことを考えております。
○榎原座長 ありがとうございます。あと、2点目に御質問を頂きましたが、エイジフレンドリーガイドラインの中での評価項目について、転倒などとしての評価はされていると思いますが、労働災害自体のアウトカムとして、きちんとエビデンスなどは何か把握されているのでしょうかということだと思いますが。
○副主任中央産業安全専門官 2点目につきまして、まだ具体的なエビデンスというものは明確にはないかなと考えております。皆様の御知見などを頂きながら、こちらについては引き続きやっていく課題かと思っております。
○榎原座長 ありがとうございます。非常に重要な御指摘を頂きました。ほかの委員の先生はいかがでしょうか。松岡委員、お願いします。
○松岡構成員 日本医師会の松岡です。まずは膨大な資料、どうもありがとうございました。大きな部分で、今回の高年齢労働者の労働災害防止ということなのですが、この高年齢の定義は、どこからどこまでを範ちゅうにするのか。先ほど、データ上、平均値よりも労働災害の発生率が高いのは60歳前の54、55歳と挙がっていたかと思います。実際、今回のエイジフレンドリー補助金では60歳以上の高年齢者を対象としているコースと、あと、それ以外の年齢要件なしという労災保険加入者全員が対象となるコースがあります。こういった実年齢と体力差については、かなり個人によって幅があることもありますので見通しとか、国が思っている、こういった所を重点としたい等があれば教えていただきたいと思います。
○榎原座長 ありがとうございます。ただいまの質問について、いかがでしょうか。
○安全課長 御質問ありがとうございます。高齢者の定義ですが、法令上は特段、何歳という定義はありません。御指摘のとおり、現行、エイジフレンドリー補助金におきましては60歳以上というのを一つの目安にしております。今回の指針の射程ですが、これも具体的に何歳以上とかの年齢で区切るべきものかどうか、人によって状況にかなりばらつきがありますので、一律に何歳というのを示すことが必ずしも適当ではないのではないかと我々は考えております。御議論があれば、その辺を踏まえて検討させていただきたいと思っております。
○松岡構成員 どうもありがとうございます。一応、補助金などはやはり区切らなければいけないので、60歳以上という定義を付けられたと思います。恐らく、年齢要件なしというコースの2つあることについては、それ以外の含まれなかった方たちや、その手前の方たちに対しての措置という形で作られているのかなと思ったのですが、そのような考え方でよろしいでしょうか。
○榎原座長 御質問ありがとうございます。エイジフレンドリーのアプローチの1つとして、高年齢者の方だけを対象にというよりは、各世代からエイジマネジメントの発想でアプローチをすることが重要なことかと思いますので、そういう面では、年齢要件はないというところかなと思います。ちなみに、学術的によく扱う「エイジングワーカー」というのは、45歳以上を一つの目安にはしています。45歳を過ぎると急激にいろいろな身体機能が低下してくるので、学術的に扱うことが多いようです。大事な御指摘、ありがとうございました。
○榎原座長 そのほか、いかがでしょうか。松葉委員、お願いいたします。
○松葉構成員 労働衛生コンサルタントの松葉です。質問ではなくて、先ほど飯島先生から、ガイドラインが出て、その経営側の動きなどはどうだろうかという話がありました。先ほど吉岡様からの御説明で、この実際のアンケートの様子はお答えいただいたのですが、現場指導をしている感触として、やはり結構動いてきているかなという実感があります。というのは、ここ2年ぐらいですが、地域の工業団地であるとか、商工会などから、高年齢労働者の労働災害防止対策についてという、そのままのタイトルで講演の依頼を頂くことが出てきました。
 それと、大手企業などですと、ISO45001の審査に伺ったときに、以前はいわゆる挟まれ・巻き込まれ等の機械災害、設備災害に対してのリスクアセスメントが中心でしたが、転倒、腰痛、いわゆる行動災害に向けてのリスクアセスメントに目を向けている企業が増えてきたなという実感があります。あと、介護施設、社会福祉施設ですと、人手不足が将来的に想定されている中では、誰一人けがさせてはいけないということで、特に年齢が高い人に話を聞きながら、「どんなことが困る、どうしたらいい。」ということを聞きながら対策を打つという取組みが見られており、ガイドラインで求められているようなこと、ガイドラインを踏まえてやっているかどうかは別にして、実際にそういった動きが現場として出てきているかなという印象を持っております。以上です。
○榎原座長 貴重な現場感、肌感の情報等も共有いただきましてありがとうございます。そのほか、島田委員、お願いします。
○島田構成員 9業種に分けて調査をされているのですが、例えば、建設業では若い人の災害の方が多くなっていますが、おそらく、それぞれの業種で就業する時期、年齢が異なっていると思います。製造業などは最初に入ったらずっと何年も、同じ事業場で働き続けることが多いですが、建設業だと、入ったばかりの若い人は作業に不慣れでけがをする割合が多いなど。一方で、先ほどおっしゃられていたのですが、社会福祉などは、最近、ニーズが増えており、年齢を重ねてからその世界に飛び込んでいくということも多く、そのような点で違いがあると思います。そのため経験年数についてもある程度は考慮し、それに対する教育や訓練の仕方も異なってくると考えます。
 それと、先ほどのエイジフレンドリーガイドラインに基づく対策ということで調査されているのですが、まず、「エイジフレンドリーガイドラインを知っている」というのが23.1%で、すごく少ないです。それに対して、高年齢労働者の労働災害防止対策に取り組んでない理由として、「必要性を感じていない」場合が、すごく少ないですが、これは事業所の中で労災が起こってないがために対策の必要性に気付いていない場合もあると思います。特に、「自社の60歳以上は健康である」というのも、災害が起こってないから気にしないということもあるので、そういうところに対策の必要性を訴えるためには、やはり高年齢の方の労働災害はこんな所でたくさん起こっているという事例を、どんどん示していかないといけないのかなと感じました。
 もう1つ、14次防の検証作業が行われていますが、そこでは、実際に労働災害が起こった事業場や労働者の方に質問をしており、危険性の有無を知っていたかどうか、それに対して対策を取り組んでいたかどうかなどの調査を行っています。そのような点も含めて、実際の現場では具体的にどのような点が問題になっているのかということを示し、その上で,エイジフレンドリーガイドラインを紹介していけば、もう少し広まっていくと考えます。
○榎原座長 貴重な御意見、ありがとうございます。御指摘いただいたように、年齢調整はされていますが、業種によって経験年数のパターン等も異なるので、そういったところも考慮する必要があるという御指摘。あと、そもそもエイジフレンドリーガイドラインを知っている人が少ないという実態もありますので、どうしても中小零細では母数が少ないので、当然、発生率の観点で言うと自分の職場でそういう問題が起こる確率は低いので、やはり問題がないと思われている事業所も少なからずいらっしゃるのではないのかなというのは推察に難くないかなと思います。そういったところにアプローチするのは、おっしゃるとおりすごく大事なポイントかなと思いました。そのほか、松田委員、お願いします。
○松田(文)構成員 同じく27ページのエイジフレンドリーガイドラインを知っている比率の23%というのも非常に気になるところです。今回の指針そのものがこのエイジフレンドリーガイドラインをもとにするというお話を伺っていますが、現状、これだけ知られてないという中で、どこに啓発をうまくしていくのかということ。もちろん各企業さんもそうだと思うのですが、いわゆる指導に当たられるような立場の方であるとか、産業医さんであるとか、様々な関わりを持ってくださる方、企業さんは直接はなかなか知る機会は少ないのかなと思いまして、どこからか経由で聞くということが多いと思うのですが、その窓口をどういう想定で、どういうふうにこれから広めていくのかというような、啓発戦略も一つ必要かなと思いました。
 また、エイジフレンドリーガイドラインは正直、結構長いので、全容を全ての所が把握してくださいというのは、私個人的な感覚としても少し難しいのかなと思っています。今、私が関わらせていただいている厚生労働科研のほうでも、そこのエッセンス版を作ろうという試みもあります。どういう見せ方をするか、フルで見せるというよりは、もう少しダイジェストであるとか、エッセンスであるとか、言い方は何でもいいと思いますが、絞り込みや強弱をつけ、そういったものの中で啓発を進めていくという工夫も必要かなと思っている次第です。以上です。
○榎原座長 貴重な御提言、ありがとうございます。おっしゃるように、様々なステークホルダーにどうやって知っていただくかという、その辺りの戦略も2回目以降のこの検討会の場で御議論できればと思います。また、普及するに当たって、やはりボリューミーなものをそのまま出してもみんな抵抗を感じてしまうということもありますので、おっしゃるとおり、何かショート版とか、多分、どういうふうに普及啓発をするのかというところで、そういう見せ方が大事なポイントになるのかなと思います。その辺りも次回以降、議論の1つの論点にできるといいかなと思います。そんな形でよろしいですか。そのほか、いかがですか。松尾委員、お願いします。
○松尾構成員 私は、厚労省所管の研究機関で、このテーマを最近プロジェクトとして始めています。私たちもいろいろ調べている中なのですが、特に少し気になっていて、もし厚労省の方、あるいはほかの先生方も御存じだったら教えていただきたいと思ったのが、例えば20ページ、女性の休業4日以上の死傷災害が何か顕著に上がってきていて、男性よりも非常に特徴が明らかであるというところです。私は専門が体力なので、体力的に見ると、女性のほうが体力が低いから、60歳以上になって新しい仕事を始めて、特に経験年数が少ない人のほうが災害に遭っているという現状もあるようですので、そういった方が体力がないから災害に遭っているのか。ただ、体力的な立場から言うのもあれですが、体力だけではないはずですので、その辺の、特に男性より女性が顕著である背景が、資料として分析結果など、何か分かっているところがあれば教えていただきたいと思いました。
○榎原座長 この辺りにつきまして、事務局のほうで何か把握されていますでしょうか。
○副主任中央産業安全専門官 この20ページでお答えしたいと思います。男性と女性と、いろいろな可能性があると思っております。今ここでお示ししているのは休業4日以上の災害ですので、例えば、同じ、転ぶとか、けがをするというときに、それが休業に至るか至らないかというところが、男性と女性とでもしかしたら違う可能性はあるかと考えております。また、女性特有の話としまして、年齢が高くなって骨粗しょう症で骨密度が低下してくると、例えば骨折をしてしまえば休業期間は当然長くなるかと思います。男性のほうでそういったことがもしなければ、そこに男性と女性で差異が生じるということになろうかと思っております。
○榎原座長 ありがとうございました。
○安全衛生部長 25ページでもお話しているように、ケース①~③とありますが、例えば、商品の陳列作業を70歳の女性がやっているというのは、多分、一昔前ではなかったと思います。陳列作業というのはかなり重たいものを扱いますので、従来は若くて健康な男性がやっていたような仕事を高齢女性がやらなければいけなくなっているというような、仕事の内容の変化というのも大きいのではないかと考えております。作業そのもののリスクが高い仕事に関わるようになった上に、身体機能の低下というリスクが付加されているといったことを考えているところです。
○榎原座長 ありがとうございます。そのほか、よろしいでしょうか。
○石﨑構成員 発言のチャットをお送りさせていただいたのですが、よろしいでしょうか。
○榎原座長 よろしくお願いします。
○石﨑構成員 オンラインで失礼いたします。先ほどの御発言とも多少重なる部分もあるのですが、事務局に念のため確認させていただきたい点がございまして発言希望させていただきました。本検討会では、基本的にこの指針の内容について検討していくと理解しておりますけれども、先ほども御発言があったように、この指針の周知でありますとか、あるいは、今後、指針の中に何を盛り込み、何を盛り込まないかという議論になっていくかと思うのですが、指針以外の通達で触れる内容であったり、あるいはパンフレットで展開していく内容であったりというのも出てくるかと思います。そこの辺りについてもこの検討会の検討事項という理解でよろしいのか、それとも、安全衛生分科会のほうで議論される予定なのかといった辺りについて、念のため確認をさせていただければと思います。
○榎原座長 ありがとうございます。事務局から御回答お願いします。
○安全課長 御質問ありがとうございます。この検討会におきましては、基本的には指針の内容について御議論いただくことにしておりますが、先ほど座長からお話しがあったとおり、啓発活動についても、次回以降、御議論いただくことになりました。通達やパンフレットの扱いにつきまして、後ほど御説明しますが、この現行のガイドラインから指針に格上げする際に、全てが指針として中に盛り込むことがなかなか難しい部分もあると思うので、それらにつきましては、通達等に記載をしていくという方針で現在進めようとしています。通達、パンフレットにつきましても、御議論の中で、こうしたことを含めたほうがいいのではないかということがあれば御意見として承りたいと思っております。
○石﨑構成員 ありがとうございました。
○榎原座長 ありがとうございます。今、少し御紹介いただきましたが、ここの辺りをどういう方針でこの指針を整理していくのかというところにも関わってきますので、次の議題に移らせていただければと思います。
 それでは、事務局より、続けて指針の策定の方針(案)及び個別の論点について御説明をお願いいたします。
○副主任中央産業安全専門官 それでは、事務局より御説明をいたします。資料2-1の33ページを御覧ください。6として、「高年齢労働者の労働災害防止対策の論点」を示しています。
 次に34ページ、現行のエイジフレンドリーガイドラインの御紹介です。高年齢労働者の労働災害防止について、事業者、それから労働者の取組が求められる事項を取りまとめたガイドラインを策定し、事業者に取組を促してきました。ガイドラインの項目として、ここに書かれているとおりでして、第1が趣旨、第2が事業者に求められる事項、その中で更に5つに分かれまして、安全衛生管理体制の確立等、職場環境の改善、高年齢労働者の健康や体力の状況の把握、高年齢労働者の健康や体力の状況に応じた対応、安全衛生教育となっています。それから第3が労働者に求められる事項、第4が国・関係団体等による支援の活用となっています。
 こちらについて、35ページを御覧ください。指針の策定の方針(案)になります。先ほど御紹介した法的根拠のない現行のガイドラインについて、法律に基づく指針に格上げをし、現行のガイドラインを廃止する。それから、指針は現行のガイドラインの項目や内容を基本とし、別紙や別添、通達の引用部分、他の指針の内容を記載した部分などは通達などで示す。特にTHP指針等の他の指針で示されている事項については、その引用に留める。対策の例や考慮事項等を示した部分は、必要に応じて趣旨の明確化等を行うというこの3点について、方針としていかがでしょうかということです。
 そのイメージについては、その下に書かれており、右側、現行のガイドラインがありますが、本文としてある第1の趣旨から第4までについて、大きく左側、指針のほうに移行する。その上で、別紙、別添やその指針に盛り込まれない部分については、指針の解説をする通達の中で示すというイメージです。
 このイメージをもう少し御紹介したいと思いまして、今度、資料2-2になります。現行のガイドラインについて、少し分かりやすく、色を付けているものになっています。1枚目、第2の所から黄色の網掛け部分があります。この黄色の網掛け部分は、別紙や別添、通達の引用部分等を示しているもので、通達等で示していくことを提案したい箇所です。注2として「青線部分は」とありますが、対策の例や考慮事項を示しており、必要に応じて趣旨の明確化等を行う部分となります。2ページです。その中ほどにポツが4つありますが、ここに青い線を引いています。このような形で、黄色の網掛けや青い線を設けています。
 次に5ページです。ここで紫色の網掛け部分があります。取組例として、ここからポツが6ページにわたってありますが、この紫色の網掛けについては、「事業場における労働者の健康保持増進のための指針」や「労働者の心の健康の保持増進のための指針」という、ほかの指針に書かれている内容がある部分であり、今回の指針には重ねて盛り込まないということを提案している部分となります。また色が続きまして、8、9ページについても同じく紫色の網掛け部分があります。
 続いて、新しい色が付いている部分、11ページです。オレンジ色の網掛けが出てきている部分がありますが、こちらについては予算事業等の名称であり、通達に記載させていただく箇所です。13ページ以降は、このエイジフレンドリーガイドラインの中での別紙や別添ということで示している表、チェックリストが続きます。
 続いて、資料2-3をご覧ください。「事業場における労働者の健康保持増神のための指針」を資料としています。こちらも黄色の網掛け部分を設けています。これは高年齢労働者に関係する箇所について、黄色網掛けとしています。具体的な箇所は2~3ページにわたる部分、それから5ページの中ほどにある部分、そして6ページの上のほうにある所という、この3か所について、黄色の網掛けを設けていますので、御確認ください。
 資料が前後して申し訳ございません。資料2-1に戻りまして36ページです。こちらが今回、御議論いただきたい点で、大きく2点あります。現行のガイドラインを法律に基づく指針に格上げするに当たり、以下の事項について、新たに追加・修正すべき点はないかということです。下に書かれている所はエイジフレンドリーガイドライン、現行のガイドラインの項目をそれぞれ列挙していますが、安全衛生管理体制の確立などの中で、経営トップによる方針の表明及び体制の整備、危険源の特定等のリスクアセスメントの実施、それから職場環境改善の次の事項ということで、身体機能の低下を補う設備・装置、高年齢労働者の特性に配慮した作業管理、続いて高年齢労働者の体力の把握方法、高年齢労働者の体力に応じた対応、安全衛生教育、労働者と協力して取り組むべき事項、国・関係団体による支援となります。
 また、大きな2つ目として、下記事項に関する新たなエビデンスの有無についてということで、高年齢労働者の労働災害の分析、身体機能の低下と労働災害の増加の関連ということについても御議論をお願いしたいと考えております。事務局から以上です。
○榎原座長 ありがとうございました。ただいまの説明について、御質問等がありましたら発言をお願いいたします。いかがでしょうか。松田委員、お願いいたします。
○松田(文)構成員 松田です。36ページに高年齢者の体力の把握方法や体力に応じた対応というような文言があるかと思います。上は身体機能というという言葉を使われているかと思います。この体力の中でどこまでの部分を含むのかが気になるところなのですが、例えば感覚機能の問題や認知機能の問題など、いわゆる一般的に体力と言われるような意味合いよりも、もっと広いところが高年齢労働者の労働災害防止に非常に関わってくるかと思います。この辺りというのはどこの範囲まで、握力や筋力のようないわゆる体力と言っていいのでしょうか。そういうものなのか、もう少し幅広い意味で用いているのか、そうであれば、ちょっと誤解を生むような気がするので、もう少し文言は変えたほうがいいのではないかなと思いますが、いかがでしょうか。
○榎原座長 ありがとうございます。この辺りの体力の考え方は、何か事務局で整理されているものはありますか。
○副主任中央産業安全専門官 お答えします。現行のガイドラインの中で、健康・体力の状況ということで書かせていただいているところ、その中の体力というイメージで今回書かせていただいています。そういった中で、基本的には高齢者の方の握力であったり、筋力であったりというような体力を想定をしているところですが、いろいろ高齢者の方の身体機能、体の状況の変化について、何らか労働災害の発生に直結するというようなエビデンスが示されるところがあれば、そういったものを測定する方法などがあれば、排除するということはないと思っています。
○榎原座長 飯島委員、お願いいたします。
○飯島構成員 飯島です。今の視点ですが、体力というのは従来、筋力をベースとして握力から代表的にいろいろやってきたという流れですが、確かに「認知機能、感覚器(特に目と耳)、注意力」など、そういう視点に広がっていくのではないかと思います。ただし、あとは現場がどれぐらいそれらを受け入れられるのか、就労前や節目のチェックを確実にできるのか、等が課題になるかなと思います。それこそ、悪い現象として、あるチェック事項に関しては、結果的にマイナス要素であった際に、新しい就職のチャンスを断り切る結果につながってしまうのか等、デリケートな部分が残ります。やはり現場においても、どのように学術的にも意味のある形で多角的な視点で事前チェックをするのか、現場の受入れ体制、すなわち現場がどう対応できるのか、等々、重要な点が多数存在しており、この微妙なバランスを取りながら考えていく必要があると思います。そういう意味では、先ほどの資料2-2の後半に好事例コンクールなども実施してという文言がありましたが、現場はなるべく最小限(ミニマム)でのチェック項目を設定して対応策を実行したら、このぐらい怪我などのインシデントが減少しました、という実感の湧く好事例が求められると思います。そのためにも、これらの情報を見やすく提示してあげるというのも1つのアプローチ方法かなと思います。以上です。
○榎原座長 ありがとうございます。この辺りも、とても大事な議論の1つかなと思います。やはり、対策を効果的に進める上では今、飯島構成員にもおっしゃっていただきましたが、もちろん学術的に理想とするスコープと言うか範囲はあります。一方、現場でどこまでできるのか。現場では、例えば5分の質問票をちょっと答えてくださいということですら、結構、拒否をされたり、そういうこともありますので、実現可能性のある、バランスの取れた対応策のようなことは重要な観点かと思います。ここも重要な議論の1つになるかなと思いますので、第2回以降でも、またこういったところも議論できればいいかなと思っています。では、安井部長からどうぞ。
○安全衛生部長 先ほど頂いた点にちょっと関連する事項として、御紹介したいのは資料2-2です。事業場の健康確保増進のための指針があります。例えば2ページに労働者の高齢化を見据えた取組ということで、この中で加齢に伴う筋力や認知機能等の低下は転倒等の労働災害のリスクにつながるなど、そういう記載があります。あと、5ページですが、すみません、資料2-3です。筋力や認知機能の低下に伴う転倒等の労働災害を防止するために、体力の状況を客観的に把握するという記載があることと、この健康状況の把握の中にこういったものが位置付けられている感じになっています。ここは指針のデマケという意味においては、こういうところは健康状態の把握の中で、今までやってきているところです。どちらの指針を見るのかということも含めて、御議論いただければと思います。
○榎原座長 補足をありがとうございます。オンラインの石﨑委員、御発言をお願いいたします。
○石﨑構成員 ありがとうございます。1点質問と、1点意見がありまして、手を挙げさせていただきました。まず、質問としては2-2の資料において、青字のこの括弧の部分があるかと思います。ここが今後、議論の中心になっていくのかなと理解しているところなのですが、そこで必要に応じて趣旨の明確化を図っていく予定であるということで示されているかと思います。その際にイメージされている趣旨の明確化というのは、言葉をいろいろ足していくというようなイメージなのか、それとも先ほどもちょっと議論がありましたが、シンプル化を図っていくことも含めて、想定されているのかを教えていただけたら有り難いです。こちらを拝見していますと、かなり個別の業種に応じた対応なども含まれているように思っています。それを指針化していくときに、指針の中にそういったものを残していくのか、それとも、そうした業種別対応は、先ほどの話とも関わりますが、マニュアルなどで分けていくのかなど、それも今後議論次第かもしれませんが、もし事務局で既にこういう方向がいいのではないかというところがあれば、教えていただきたいというのが1点です。
 2点目は、確たる意見というよりは、今後、議論できたらということでの問題提起的な発言にはなりますが、こちらの現行ガイドラインを拝見していますと、いろいろなこの対応の中で全ての労働者にとってもプラスになるような対応と、それ以外のプラスα、特にやはり高齢者の特性を鑑みての必要な対応のような部分が、双方含まれるのかなと理解しています。この辺りをどう並べて、どう見せていくといいのかといったところが、今後、課題になるのかなと思います。例えば、職場環境の対応で暑熱作業への対応では、涼しい場所の確保が必要という話があって、これは必ずしも高齢者に限られない話ではあるのですが、特に高齢者はそれが必要ということを、もしかするとそのガイドラインの中で示せるといいのかなということを現時点では感じたところです。私からは以上です。
○榎原座長 御質問と御意見ありがとうございます。前半の御質問の部分、現段階で少し、もしイメージがありましたら事務局からお願いいたします。
○安全課長 御質問ありがとうございます。前半部分の青く括弧書きされていた部分なのですが、趣旨の明確化ということでお示しをしています。趣旨の明確化については、できるだけ分かりやすくしたいということが1点と、あとはシンプルにするのかどうかという話もあったかと思いますが、指針として示す際に過度に冗長な表現、あるいは指針としてふさわしくないような書きぶりのところは、通達等でしっかり説明していくような形にしたいと思っています。例えば青字の所では、3ページ目の中ほどにフレイルとは何か、ロコモティブシンドロームとは何かという定義が書かれていて、こういったものは指針に示すには余り適切ではないのかなと考えています。そうした説明のようなものは当然、通達などで、あるいはマニュアル等で詳しく示していくというような形ができないかなと思っています。また、ここについては、更にたくさん何か盛り込んでいくのかというと、そこも指針としてお示しするにはどうなのかというところもあるので、基本的には分かりやすくシンプルにできればいいかなとは考えています。
○榎原座長 ありがとうございます。今日は第1回目の検討会ですので、当然、まだ2回目以降の検討会が続きます。今日の段階では、まずは法律に基づく指針に格上げをするということに伴って、資料2-1のスライドの35番でお示しいただきましたが、まずは指針の部分と別添、通達で引用する部分など、そういう形に分けて示すという方向、全体的にはそういう方向で第2回目以降、議論していければということで、今日の段階としては、指針に格上げするに当たって、2つにセパレートをするという部分です。そこについて、まずは御意見を頂ければというのが1点目です。
 その上で、スライドの36にもありましたが、労災防止の対策の論点として新たに追加、修正すべき点で、今、いろいろと各構成員から御意見、御質問等を頂いたところも含まれてくるかなと思っています。その辺りは、具体的には2回目以降に議論を重ねていければと思います。今、石﨑構成員からも御意見いただきましたが、例えば現行のものでは、おっしゃるように高齢者に特化した部分と、別に高齢者に限らず一般労働者全般にプラスになるような情報と、両方が含まれています。チェックリストなども非常によく作られています。例えば高齢労働の対策をするときに、現場でよく言われる話としては、高齢労働対策をというとそれ以外の労働者は全く関心を持たなくなってしまうので、現場で高齢労働だけにフォーカスを当てて、安全衛生活動を行うのはなかなかやりにくいところもあるので、そういう面ではきちんと全労働者に若いうちからこういうことに取り組んでいただくということも視野に入れたような方策になっているというのは非常にリーズナブルな、エイジフレンドリーガイドラインというものは作られているなと思っている次第です。そういった趣旨も恐らくあると思うので、今後の議論の中でどのように普及、実装を現場に進める上では、どういう工夫をすればいいかというところも、是非、2回目以降で議論できればと思います。石﨑委員、御質問、御意見どうもありがとうございます。では、続きまして、会場から甲斐委員、先にお願いいたします。
○甲斐構成員 ありがとうございます。私は運動疫学を専門にしている研究者なのですが、今、正に榎原先生がおっしゃたように、このようなガイドラインでは健康づくりの部分が入っていることで、割と全年齢を対象にしているというイメージになっています。今後、指針になるときにここが別になって抜かれてしまうと、逆に高齢者にフォーカスが当たったような見栄えになってしまう。ですので、今、議論しているように年齢は実は若い層まで対象にしているということを、指針にしっかり書き込んでいただければなと思っています。というのも、現状のガイドラインでも、例えば6ページ目の体力の状況の把握の所を読むと、主に高年齢労働者を対象とした体力チェックを継続的に行うことが望ましいという書きぶりになっています。このまま残ってしまいますと、例えば60歳以上だけ体力測定すればいいと現場は捉えてしまうと思います。
 そうすると、エイジズムと言いますか、高齢者差別であったり、本来であれば体力に応じた配慮をすべきためにやっている体力チェックが、あなたはこの仕事はできませんというほうに使われてしまうというのは、指針の根本に照らしても非常によろしくないと思っています。ですので、例えばこの体力チェックも広い世代でやってほしいということを、きちんと明記をしていただければなと思います。先ほど先生がおっしゃいましたが、若い層、体力も種類によっては30代から低下するものもありますので、ここにあるとおり、心身の衰えのチェックというものの気付きを促すという面もありますので、そういう意味では若いときから体力チェックをやって、体力づくりに取り組めるような指針になればと思っています。以上です。
○榎原座長 非常に重要な御指摘ありがとうございます。全くおっしゃるとおりだと、私も思います。もちろん、これは高齢労働者の指針づくりなのですが、これも先生は運動疫学の御専門なので先生のほうが詳しいですが、やはりエイジマネジメント視点、若い世代からきちんとアプローチするということが高齢労働では大事です。やはり普及・実装する上でも、高齢者にだけとなってしまうと、これは逆に高齢者差別のほうにもいってしまうので、非常に重要な御示唆を今、頂いたと思います。その辺り、指針で切り分けるときに誤解を与えないような形にするのは、重要な論点、課題の部分かなと思います。ありがとうございます。松葉委員、お願いいたします。
○松葉構成員 今の甲斐先生のお話は、私も正に同感です。併せて、ちょっとお伝えしたいと思ったのは、私は現場を指導する中で若い人の巻き込み方と言いますか、実は将来推計のグラフを見ながら、実は20年後、30年後はあなた方の問題になるのですと。今のうちから年齢の高い方のお話を聞いて、情報を聞いて、そして自分たちが将来困らないような環境づくり、あるいは自分たちの体力、健康づくりをしましょうというアプローチ、そのようなことを考えています。結構、それを踏まえて実際に動き出してくれる事業所などもあったりして、そういったものがちょっと色合いとして盛り込めたら、有り難いかなと思います。
○榎原座長 現場感の情報も補足いただきました。ありがとうございます。松尾委員、お願いいたします。
○松尾構成員 今の議論を聞いていて、確かにそのとおりだなと思っていたのですが、私たちはこの高齢者の体力や災害予防に焦点を当てた研究をするときに、そこはすごく悩めるところで、体力がないからあなたはもうこの仕事はできないというような形には絶対してはいけないので、今、先生方がおっしゃったところは正にそうだなと思って聞いていました。
 一方で、このエイジフレンドリーガイドラインの目的を考えると、高齢者に限ったほうがいいという意味ではなくて、例えば先ほどの体力測定もTHPで示す部分と、このエイジフレンドリーガイドラインで示す部分というのは、ひょっとしたら違ってしかるべきなのかなと思ったのは、ロコモ予防やフレイル予防など、若い頃からやらなくてはいけない面をTHPにしっかりとまとめていく一方で、高齢者のほうに関して、今のガイドラインは、体力測定の項目などを見ても、どちらかというと転倒に特化しているような印象を受けるのです。その内容の議論はまた別として、今、高齢者の問題となっている主に転倒、体力不足に特化したものにしていく必要性も一方ではあって、そうしないと結果的にまろやかになって、焦点が分からないというようにもなっていくのではないかなと、ちょうど私たちが今、研究する上でもそこが悩みのところなので、感じた部分があるので発言させていただきました。
○榎原座長 ありがとうございました。確かに悩ましいところではあります。これはやはり、1つはサイエンスコミュニケーションの側面も大事で、きちんと情報をここの検討会で議論をして、それを意識して正しく情報発信していく。どういう方針で指針を作っていくのかというところ、中身については議論をしっかりと重ねていければと思います。もちろん両面があるかなと思います。そのほかいかがでしょうか。松岡委員、お願いいたします。
○松岡構成員 今のTHPの話もちょっと気になっていたところですが、今回、THPの内容は高年齢労働者の指針からは外すということだったと思うのですが、それ以外にエイジアクションチェックリスト等に出てくるメンタルヘルス対策、そして今般、50人未満にもストレスチェックの法改正があって義務化された状況です。そのような内容も、どのように指針に入れるのか、入れる必要があるのかという位置付けの問題が1点ある。
 また、同様に労働施策総合推進法で努力義務になった治療と仕事の両立支援についても、全労働者が対象となっています。慢性期の疾患についての対応策について治療と仕事を一緒に対応するということがあります。特に高齢者においては、恐らくその治療を受けていらっしゃる方が非常に多いということがあって、その治療薬によっては転倒のリスクになり、今回の体力等などは労災に関与する部分が出てくると思いますので、そのような治療と仕事の両立支援についての取扱いはどのようにしていくかということも、法律等の整合性と有効なところを含めて示していただけたらなと思いました。
○榎原座長 ありがとうございます。ただいまのTHP、メンタルヘルスの部分やチェックリストの重複する所をどうするのかということですが、基本的に重複する所は今回は割愛するという方針なのですが、そこを全部抜いてしまうと逆にすごく偏ってしまうので、その通達として分けたときに、どこまでどういうふうに整理するのかということは確かに検討する必要があるのかなと、今伺っていて思いました。この辺りも継続、2回目以降で議論するということにさせていただければと思います、重要な論点をありがとうございます。安井部長、お願いいたします。
○安全衛生部長 御指摘のとおり、心の健康づくり指針というものがありますし、新しく作ろうとしている両立支援の指針もあります。特に両立支援の対象者は高齢者のほうが多いというのは、有病率が高いので現実だと思います。ただ、そういったものを1つの指針に全部盛り込んでしまうと、極めてボリューミーで何のことか分からなくなります。そこはそれぞれの指針を引用すると言いますか、両立については両立支援指針を、心の健康については心の健康づくり指針を見てくださいというような形で、ある程度分けていかないといけないところはあります。その辺はちょっと御理解いただければと思います。
○榎原座長 ありがとうございます。坂下委員、お願いいたします。
○坂下構成員 経団連の坂下です。座長からもお話がありました35ページの指針の策定の方針ですが、現行のガイドラインを指針と通達それぞれに必要な内容に分けて記載していくという方針について賛同します。意見は特にありません。
 また、これまでも御議論がありましたが、高齢者に特化しない部分の取扱いをどうするかについても、座長も、安井部長もおっしゃられたとおり、通達など、いろいろな所に書き分けて分かるようにしていただくという形が、焦点が曖昧にならずに使う側にとっても参考になりやすいのではないかと思った次第です。
 次のページの各論点については、この後、まだ議論が続くようであればそのときに申し上げたいと思います。以上です。
○榎原座長 ありがとうございます。そうしましたら、活発にいろいろ御意見を頂きまして、大きく今、2つ議論したい論点があります。そのうちの前半の部分ですが、指針自体を法律に基づく指針という形に格上げするのではなくて分割していく。そこについて御異論はありませんか。石﨑委員もオンラインで特に御異論はありませんか。
○石﨑構成員 はい、そこは異論ありません。
○榎原座長 そうしましたら、まず前半部分の法律に基づく指針に格上げするというところで、指針と通達と大きく分けるということについては、その方針で今後進めるということで、御了承いただいたということにしたいと思います。
 後半のスライドの36ページ目で出ている論点、この辺りが多分、指針を分けて、それぞれ指針の部分、通達の部分に何を載せるのか、あとは補足する、今お示しいただいている所も、いろいろと載せたほうがいいのかどうかという議論も当然あると思いますので、この36枚目のスライドなどを中心に2回目以降、いろいろ議論をしていくことにはなると思います。今日の段階で、例えばこういう情報はこういう所にデータがありますなど、何か情報提供を頂けるようなものをもし御存じでしたら、少し頭出しいただければと思いますが、いかがでしょうか。甲斐委員、お願いいたします。
○甲斐構成員 下のエビデンスの有無の頭出しという感じだと思いますが、日本の労災というのにバチッと当たるエビデンスは、どうしても少なくなってしまうので、海外にまで目を向けますと、就業時間中に起こった何らかのアクシデントであったり、就業中に起こった医療的措置を伴うけがをアウトカムにしたもので、それに身体機能の低下が影響しているというエビデンスは少しあるようですから、どこかでまた御紹介できたらと思います。あと、国内ですと昨年、1年間の身体的なフレイルがあると1年後には仕事中に転倒しやすいというエビデンスは出ているようです。
○榎原座長 情報提供、ありがとうございます。松尾委員、お願いします。
○松尾構成員 情報提供という観点で、ちょうど私たちも、何度も申し上げるように、このテーマについて研究もそうですが、研究者間で議論も始める中で、一番多い転倒が私たち研究者の間で非常に議論が活発になっています。というのは、これまで転倒予防の研究は、先生方も御存じの方が多いと思いますけれども、20~30年やられてきていまして、ある程度確立している部分があると思います。多分、前回の体力測定の候補になったのも、そういったところから出ているだろうなと思いながら見ています。
 ただ、今年の老年医学会や産業衛生学会などでこの転倒予防が議論されているのかというと、実は老年医学会の中でもシンポジウムが1件あったぐらいでした。産業衛生学会の中でもそれほど議論されていないところがあったりします。
 転倒予防の研究は長年やってきたのですが、私たちが課題だなと思っているのは、これまでの研究の焦点が、対象者と言ったほうが分かりやすいかもしれませんけれども、高齢者の中でも高齢と言いますか、どっちかというと寝たきり予防をするための研究と言いますか、地域住民を対象にした研究が非常に多く、私は筑波大学の田中喜代次先生のゼミの出身ですが、そこでも転倒予防をずっとやっているのです。そこの研究でも地域住民というか、後期高齢者という言い方をしたほうが分かりやすいのかもしれませんが、そういった方々を対象にして、例えば過去の転倒経験が転倒予防には一番必要ですよといった情報はあります。しかし、今、問題になっているのは、ひょっとしたらそれよりも若い世代です。前期高齢者という言い方がいいのかどうか分かりませんが、60歳以上、70歳前後の方々の転倒が問題になっているようです。そこについて過去の転倒の研究が非常に参考になるというか、もちろん参考にしていくべきではあるのですが、そこら辺の年代層の研究は余りないので、これまでの転倒研究と区別して考える必要もあるのではないかというのが私たちの共通の見方です。
 もちろん、これまでの研究がすごく参考になる部分というか、転倒予防は世界中でやられていて世界の転倒予防ガイドラインというのがあるぐらいですので、そういったものは参考になるのですが、日本が先に高齢化が進んでいる中で国際的に見ても、この働いている高齢者の転倒はどうなのかというところは、実はエビデンスがあるようでないのが現状のようです。もちろん、今の調べ方だけでいいのかという観点で私たちも見てはいますが、今、ちょうど私たちの研究グループの中で議論をしているところですので、皆さんと共有させていただきたいと思って発言しました。以上です。
○榎原座長 ありがとうございます。そのほか今日の段階で少し頭出しできそうなこととか、今後の議論の中に含めてほしいことなどがございましたら御意見を頂ければと思います。先に山脇委員、お願いします。
○山脇構成員 連合の山脇です。先生方から、それぞれ前向きに御発言いただきまして、今回の指針の見直しが、より良いものになるのではないかと強く期待するところです。また、ゼロ災に向けて今回の指針が役割を果たしていくことを、改めて理念の部分に書き込んでもらいたいと思っています。
 私が今般の見直しに際してのポイントと受け止めているのは、例えば資料2-1の22ページでは、この間の環境変化として、一定の身体機能を有することを前提としていた業務に高齢者が就いていることや、高齢者間においても年齢を追うごとに個々人の体力差が大きくなっているとされています。人手不足が大きくクローズアップされている中で、こうした課題に対して指針の記載ぶりをどのように強化できるのかといった点に着目し、今後の議論に参加していきたいと思っています。
 また、先ほど、甲斐先生からありましたとおり、本来、高齢者の体力が低下したことに伴った配慮することが重要であり、当該労働者が排除されないことも含めて、指針の中に明確に書き込んでいただきたいと思っています。
 安全衛生分科会においても、高齢労働者個々人ごとに体力の低下度合を把握していくことが大変重要だと労働側として強く主張してきておりましたが、先生方の知見を踏まえつつ検討いただきたいと思っています。最近は、高齢者の労災が増加傾向にあることからすると、現行の指針からプラスアルファされるようにしていただくことを希望します。
○榎原座長 御意見、ありがとうございます。当然、高齢者と一括りで言っても、おっしゃるように体力差、個人差が大きいですし、単純に年齢みたいなものだけでは区切れないところもございますので、適切に支援する環境調整や環境配慮みたいなところをどういうふうにしていくのか。そこはきちんと議論する必要があるという御主張はごもっともだと思います。飯島委員、お願いします。
○飯島構成員 ありがとうございます。まず、今、松尾委員がお話されたように、転倒の視点でのコホート研究などは多数存在するとはいえ、特に当初、対象としていた住民コホート研究より、ちょっと手前の世代のところがウイークポイントだったかなというのは同様に感じております。それと同時に、先ほど、エビデンスとしてこれから何か使えるものがあればというところで、当然、海外も引用できるところは引用したいと思います。
 もう1つ、先ほど好事例という視点でコメントを述べましたが、いわゆるちょっとしたヒヤリハットやインシデント、ちょっとしたミスで骨折する方がちょこちょこいらっしゃるようですので、現場において「このように事前や定期的に身体機能のチェックを実行し、社内の対応をこのように変更(アレンジ)したら、結果的にこのような好結果につながりました、というように、現場に引用してもらえそうな好事例の明示が求められます。その好事例として出せそうな現場事例の積み重ね収集があるのかどうか、重要だと思います。
 先ほどの資料2-1では、意識が薄いとかガイドライン自体の存在を知らないなど、まだ課題が残っていることがよく分かりました。その上で、先ほど松葉委員がおっしゃったように、「でも現場はちょっと変わってきている」ということが確かならば、勉強会を増やすだけではなく、現場においてこのようにマイナーチェンジしたら若干であっても好結果につながっているみたいだ、という情報が積み上げられて情報収集されているかどうかです。もしそれがなければ、それも集めるようにしていかないと、全国の大小の数多くの現場に役立つ一番身近な根拠にならないと思います。以上です。
○榎原座長 ありがとうございます。とても大事な観点で、ちょっと工夫したら実は骨折に至らなくてその手前で済みましたとか、そういう未然対応、良好事例として現場で行われている事例がたくさん実はあると思うので、そういった情報をお持ちの方がいらっしゃれば、是非、2回目以降のときに御提供いただければと思います。そういう着想でこれまで体系的な研究がされてきているかというと、多分、されてきていないと思うので、そういった活動を促進していく呼び水として、例えばエイジフレンドリーガイドラインの募集でそういう事例をやってもらうのもあるかもしれません。今日の議論とは直接関係ありませんが、非常に大事な観点かと思います。甲斐先生の後に坂下委員です。先に甲斐先生。
○甲斐構成員 先ほどからエビデンスが余りないというお話で、別にこれは研究者の言い訳ではないですが、どうしても労働災害を事業場単位で見ると頻度が少ないので、疫学研究としては非常に捉えにくいということがあります。それでなかなか研究が進んでいないということだと思います。もう1つは、労働災害のデータと労働者の身体機能や体力のデータが紐付いているコホート集団が国内にはないと思います。
 ただ、企業単位で見ると、大きな企業は体力測定もやっている、労災データも持っている企業はいらっしゃるのです。そういう企業に厚労省から少しお声掛けいただいてデータを出していただく。はっきり言って我々研究者から言っても、企業の秘密でもあるので出していただけないデータが現場でたくさん眠っているのも事実なのです。社会で眠っています。そういうものを掘り起こす声掛けがあってもいいのではないかと考えました。以上です。
○榎原座長 非常に未来志向な御提案、ありがとうございます。坂下委員、お願いします。
○坂下構成員 ありがとうございます。私は国際労働の問題も担当していまして、どこの国も高齢化が早く進んでいるという大きな課題に直面しており、周りの国から、日本は高齢者雇用をどのように進めているのかとよく聞かれます。この検討会の目的は、ガイドラインを指針にして努力義務にするので、企業にとっては今までと全く違うステージになるということで、努力義務をしっかり果たしていくために必要な指針、通達を出していただくことは非常に重要なことだと思っていますし、努力義務になったこと自体が非常に重たいものだと考えています。
 併せて、様々なエビデンスを出していただきたいと座長からもお話がありましたが、いろいろな先生方の専門的知識を踏まえた取組や御提案を、是非、お聞きしたいと思っています。そういったものは諸外国にとっても非常に参考になるものだと思っていますし、そういった知見は是非、集めていく必要があると思っています。松葉先生におかれましては、企業の現場でいろいろと御支援いただいているので、実際にどんなことが行われていて、ベストプラクティスの形になっているかというのも、是非、勉強させていただきたいと思っています。
 最初の議題のときにお話したほうがよかったのかもしれないのですが、この問題は中身をどうするかも重要ですが、そもそも認知されていないところが非常に大きくて、せっかく指針にして良い通達を作っても、企業に届いていないとなると期待する効果も得られないことになりますので、周知をどうするかは本当に大きな課題だと思っています。資料の中にもありましたけれども、エイジフレンドリーガイドラインを知っているという回答は23.1%にすぎず、自分の会社の高年労働者はみんな健康であるという回答も非常に多いのが今の実態だと思っています。
 企業の安全衛生関係の担当者と話をしていますと、安全第一を実現するためには、自分の会社でも起きてしまう可能性があることをしっかりと認識することと、同時に労働者にも、いつか自分に起きるかもしれないということをしっかり認識してもらう。すなわち、双方が自分ごと化することが大事だとよく耳にします。正に意識改革が非常に重要だと思っています。繰り返しになりますけれども、しっかりと周知も含めて検討していきたいと思います。衆参両院の附帯決議にもそのことはしっかり書いてありますので、経団連もいろいろな場で、エイジフレンドリーガイドラインに基づく取組事例を、ベストプラクティスとして会員企業に周知したりしています。いろいろな形で協力したいと思いますが、是非、皆様とも手を携えて一緒にやっていきたいと思っています。
 この点で個人的に私が心配しているのが、努力義務が来年の4月1日からということです。先ほど冒頭で座長から、スケジュール感として12月ぐらいに取りまとめというお話がありましたが、4か月しか周知広報する期間がないというのも大きな課題かなと思っています。ガイドラインになり様々なものを入れていきたいという思いもあるかもしれないですが、今あるエイジフレンドリーガイドラインをしっかり指針化して、分かりやすく企業に伝わるような体制を作り、それを早く周知していくことが重要だと思っていますので、そのような観点で建設的な議論に参加していきたいと思っています。以上です。
○榎原座長 非常に建設的な御意見をありがとうございます。分かりやすく早く周知することは非常に大事で、ここら辺は経団連の御支援は非常に大きなところだと思っていますので、是非、よろしくお願いします。
○松葉構成員 時間もあろうかと思いますので手短に申し上げます。先ほど飯島先生あるいは坂下先生からもお話がありましたが、グッドプラクティス、好事例といった点について先生方は御承知だと思いますけれども、いわゆるSAFEコンソーシアムのアワードなどで、かなりいい情報が公開されていると思います。ただし、公開されている情報が結構ショートなので、これは本当にできているのかみたいに思ったりする部分があって、実はそういう関心のある所にアプローチをかけて、実際にヒアリングをしたり現場に行かせてもらったりして動いています。その中で先ほどもちらっと言った、なるほど、現行のガイドラインを御存じではないけれども、現行のガイドラインに沿ったような展開で現場をうまく動かしている企業が幾つかあるのが実態です。なので、そういった具体的な展開も念頭に、少し情報を出させていただきながら、再度、構築できたら本当に普及できるのではないかと期待しています。以上です。
○榎原座長 ありがとうございます。松田委員、お願いします。
○松田(文)構成員 タイミングが悪くて申し訳ないのですが、先ほど松尾委員や飯島委員がおっしゃったとおり、いわゆる職域でのデータがないということが研究者の現状認識かと思います。先ほど甲斐委員もおっしゃったように企業の中にはめちゃくちゃ眠っていて、そうしたことを積極的に取られている企業が何社もあることも承知しています。ただ、やり方が結構まちまちという点もあるかと思います。だから、データの共有化も課題かなと思っています。今回、そういった意味では、やり方なども指針の中に入ってくるようであれば、そこから取れたものを、今からでも遅くないと思うので蓄積していく。そうすると日本全体としての資産になりますし、一番高齢化が進んでいる国だというお話が先ほどありましたが、諸外国に対してもかなりインパクトのある成果になるのではないかと思っています。
 今、私どもも厚生労働科研費を頂きながら、そうしたデータの取得であるとか、どういう方法がいいかに関して研究を進めている最中ですが、1つだけ申し上げると転倒歴の結果ですね、1回、2回転んだということとバランス感覚のようなものは、そこまで相関していないというのが出ていて悩ましいのです。なので、過去のそういった歴そのものというよりも、これからのリスクや予防にどうやって紐付けるかも課題となっているところです。そうした研究というのは、いろいろな研究者の知見が合わさってようやくできてくることだと思いますので、そういう意味でもこの場でいろいろな議論ができればと思っています。
 もう1つ、皆さんもおっしゃっていた出口戦略をどう捉えるかはとても大事で、一歩間違うと、この体力の何とか数値が足りないから、あなた駄目ねとなりがちです。それを企業の中でよく考えてくださいという形の指針が多いと思いますが、企業としてもどうするのかというところでとどまってしまうのが現実だと思います。好事例もそうですし、この場合はこういうトレーニングをするとか、こういう配置だったらできるのではないかなど、そうしたものを排除しない方針は、具体的な策も含めて明確に示していくことが重要ではないかと思います。以上です。
○榎原座長 ありがとうございます。ほかの委員、いかがでしょうか。島田委員、お願いします。
○島田構成員 好事例は集めにくいということですが、今回、指針になり、努力義務が課せられるということですね。それに対する国の支援ということで最後に書かれていますが、例えば、相談窓口のようなものを設置できないかなと考えます。別の案件になりますが、化学物質の管理については相談窓口があり、何かあれば無料でそこに相談できますよということが浸透しており、年間ではかなりの相談件数があると聞いています。コンサルタントの方やいろいろな業界団体の方に相談すると、予算が必要になるということもあります。もっと気軽に相談できる窓口があって、その中で例えばエイジフレンドリーガイドラインを利用することで、このような好事例が出てきていますというのをどんどん集めていく。そのようなエビデンスをこれから作っていく取り組みができるとよいと思います。
○榎原座長 大事な観点、ありがとうございます。確かに、もともとのエイジフレンドリーガイドライン自体、高齢者の労働災害対策について、関連する関係団体等の支援も活用して行っていくことが明記されていますので、どういった形でそういう支援の枠組みを考えるのかというのは、おっしゃるとおり大事なポイントかなと思います。
 第1回目ということで、皆さんから活発な御意見等をたくさん頂戴しまして、ありがとうございます。もちろん、今日の段階で何か決めるわけではないのですが、まずは指針と通達を分けるというのは御同意いただけたということで、今日、皆さんからいろいろ頭出しいただいた重要な論点を事務局のほうで整理させていただき、2回目以降でどういうふうに議論していくのか準備等をさせていただければと思っています。安井部長、一言、お願いします。
○安全衛生部長 エビデンスの所で、今回、お示ししている資料2-1の31ページ、32ページですが、好事例ということで幾つか議論がありました。エイジフレンドリー補助金を実際に受けた事業場でどれぐらい災害が減ったかということで、例えば床や通路の段差の解消工事をしたら、休業4日以上については10.7%減少し、一方、7.1%増えているのです。階段のつまずきは9.6%、3.8%となっています。休業4日未満を見ていただきますと、こちらはトラック荷台等の昇降設備の導入をすると20%減少していて、増えている事業場はないのです。これを見ると、休業4日以上といった大きな災害を起こすようなハイリスクの事業場で、単に通路や床の段差の解消工事をしても、高所作業で落ちるといった重篤な災害が必ずしも減るわけではないということです。一方、休業4日未満のような小さい災害しか起きない所であれば、かなり劇的に効果があることが言えるのではないかというのは、前回、安全衛生分科会でも説明させていただきました。
 次の32ページ、こちらはヒヤリハットになっていますので、定量的には聞いていないですが、ヒヤリハットは94.7%の事業場で減って、増えたという事業場はゼロです。このように、災害の内容というか、エイジフレンドリーガイドラインだけで防止できるものではないというのもあり、そういう職場については、もともとあるリスクを含めて御議論いただく必要があると考えています。以上です。
○榎原座長 大事な観点の補足も頂きまして、ありがとうございます。そういったことで次回以降、議論を深めていければと思いますので、先生方もお忙しい中、申し訳ございませんけれども、御支援、御指導のほどよろしくお願いいたします。本日の議論はここまでとして、次回以降、論点を整理したものを事務局から提示いただいて、引き続き議論していきたいと思います。事務局から次回の日程等についての御説明をお願いします。
○副主任中央産業安全専門官 次回、第2回の検討会につきましては、9月29日(月)、15時開始を予定しております。場所につきましては後日、改めて御連絡させていただきます。以上です。
○榎原座長 それでは、以上をもちまして、「第1回高年齢労働者の労働災害防止対策に関する検討会」を終了いたします。本日は長時間にわたり、ありがとうございました。