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第201回社会保障審議会医療保険部会 議事録
日時
令和7年10月23日(木)13:00~15:01
場所
厚生労働省 2階講堂
議題
1.医療保険制度における出産に対する支援の強化について
2.医療保険制度改革について
3.令和8年度診療報酬改定の基本方針について
議事
- 議事内容
- ○姫野課長 それでは、定刻になりましたので、ただいまより第201回「医療保険部会」を開催いたします。
委員の皆様におかれましては、御多忙の折、御参加いただきありがとうございます。
本日は、専門委員の方が新たに任命されておりますが、後の関係議題の中で御紹介をさせていただきます。
また、前回の医療保険部会開催以降、事務局に人事異動がございましたので御紹介をいたします。
大臣官房審議官の熊木でございます。
本日の委員の出欠状況について申し上げます。
本日は、河野委員、實松委員、村上委員、横本委員より御欠席の御連絡をいただいております。
また、内堀委員より途中からの御出席、また、途中退席との御連絡をいただいておりますほか、菊地部会長代理、兼子委員より途中退席との御連絡をいただいてございます。
本日の会議は、傍聴希望者向けにYouTubeにおいてライブ配信を行っております。
なお、会議冒頭のカメラの頭撮りはここまでとさせていただきます。カメラの方は御退出をお願いいたします。
(報道関係者退室)
○姫野課長 それでは、以降の議事運営は田辺部会長にお願いいたします。
○田辺部会長 まず、欠席される委員の代わりに御出席なさる方についてお諮り申し上げます。村上委員の代理といたしまして平山春樹参考人、横本委員の代理といたしまして井上隆参考人、以上2名の出席につき御承認を賜ればと思いますが、いかがでございましょうか。
(異議なしの意思表示あり)
○田辺部会長 ありがとうございます。
それでは、早速議事のほうに入ってまいりたいと思います。
本日は「医療保険制度における出産に対する支援の強化について」「医療保険制度改革について」「令和8年度診療報酬改定の基本方針について」の3つを議題といたします。
まず「医療保険制度における出産に対する支援の強化について」を議題といたします。
医療保険制度における出産に対する支援の強化に関しましては、「妊娠・出産・産後における妊産婦等の支援策等に関する検討会」におきまして、令和6年6月から令和7年5月にかけまして計10回議論をしたところでございます。妊娠・出産・産後に関する支援等のさらなる強化の基本的な方向性や今後の検討に当たって留意すべき論点等が整理されているところでございます。それらの経過等の詳細は後ほど事務局のほうから説明いただきますけれども、医療保険制度に関わる具体的な制度改正等に関わる詳細な検討につきましては、本部会において議論を行っていきたいと思います。
そのため、本議題に関しまして、厚生労働大臣により専門委員が任命され、本日御出席いただいておりますので、私のほうから紹介させていただきます。
公益社団法人日本産婦人科医会会長、石渡勇委員。
公益社団法人日本産科婦人科学会常務理事、亀井良政委員。
NPO法人manma理事、新居日南恵委員。
公益社団法人日本助産師会理事、宮川祐三子委員。
以上4名の専門委員が任命されております。
今後、医療保険制度における出産に対する支援の強化に関しまして本部会で御議論いただく折には、今、御紹介申し上げた皆様方も御参加いただくことになりますので、御了解のほうをお願いいたします。
それでは、事務局より資料が提出されておりますので説明のほうお願いいたします。では、よろしくお願いいたします。
○佐藤課長 保険課長でございます。お手元の資料1を御覧ください。資料は大部にわたりますので、関係部分のみポイントを絞って御説明を申し上げたいと思います。
まず、1ページ目、こちらは出生数及び合計特殊出生率の推移ということでございまして、御案内のとおり、令和6年の出生率は1.15という形で、ここまで低下しているという状況でございます。出生数につきましては68.6万人という状況でございます。
2ページ目、どこで生まれたかということでございます。これは左から時系列で並べておりますが、薄い緑の棒グラフが病院で生まれたお子さんの数、赤の部分が診療所、それから、助産所、自宅と並べておりますけれども、直近で申し上げますと、医療機関での分娩が9割以上を占めているという状況でございます。
3ページ目、日本の周産期医療の諸外国との比較ということでございまして、これは関係者の皆様の御尽力もありまして、日本の周産期死亡率、それから、妊産婦の死亡率は諸外国と比較しても極めて低い水準で推移をしているというものでございます。
4ページ目、出生数と分娩取扱医療機関数の推移ということでございまして、出生数は減少しておりますけれども、併せて分娩を取り扱う医療機関も減少しているということでございます。オレンジの部分が診療所、赤が病院ということでございます。
5ページ目、こちらは助産所でございますが、助産所につきましても若干でこぼこはございますけれども、傾向として減少傾向にあるというものでございます。
6ページ目と7ページ目、都道府県ごとの分娩取扱いの医療機関数でございます。
6ページ目は平成20年と令和5年を比較してどうなっているかということでございます。地域差がございますけれども、多くの都道府県では分娩取扱施設は減少しているという資料でございます。
7ページ目に関しましては、出生1,000人当たりに置き直した場合の都道府県別の医療機関数でございます。
8ページ目、正常分娩と異常分娩ということでございまして、医療保険においては、異常分娩は分娩を含む入院期間中に分娩に関連した保険診療が行われたものという形で定義をしてございますけれども、令和6年度に関しましては約半数強が正常分娩、また、残りの半数弱が異常分娩、このような内訳になってございます。
9ページ目、これは出産育児一時金の概要でございます。御案内のとおり、出生児に原則50万円を支給するというものでございます。
10ページ目、出産育児一時金の支給額の推移ということでございまして、平成6年に一時金30万円で創設をされて、その後、段階的に引き上げられ、直近、右から2つ目の令和5年4月に原則50万円に引き上げるという形で今50万円となってございます。
11ページ目、正常分娩の平均出産費用の推移ということでございまして、公的病院、私病院、診療所、それぞれによって若干差はありますけれども、経年的には出産費用は増加しているという状況でございます。
12ページ目、13ページ目につきましては都道府県別の平均出産費用でございます。
12ページ目で説明を申し上げますと、都道府県別で一番高いのは東京都で64.8万円、最も低いのが熊本県で40.4万円という形になってございます。
13ページは同じ都道府県の中でもばらつきといいましょうか、差があるという資料でございます。太い青で棒線になっておりますけれども、ここに全体の半分の施設が入っていて、その上下、テールになっている部分がございますけれども、そこを含めて全体100%となります。青い丸の部分は統計学的に異常値という形で処理をしておりますけれども、全体として、同じ都道府県の中でも出産費用にはばらつきがあるというものでございます。
資料を飛ばしまして15ページ目、令和6年度の妊産婦の経済的負担の状況、正常分娩ということでございますけれども、まず左側、出産育児一時金の支給額と出産費用との差額、個室料等を含まない差額でございますけれども、全体の4割弱が一時金内で収まり、残り6割強が一時金を超えているという状況でございます。個室等を含めた妊婦合計負担額との差額は同じく15ページの右側になりまして、そちらを含めると一時金の範囲内に収まるのが大体17%という状況になってございます。
16ページ目、出産育児一時金の増額前後の妊産婦の経済的負担の変化ということでございまして、令和5年の4月に50万円に引き上げました。その瞬間においては妊婦さんの負担が軽減されているわけでございますけれども、その後の費用も増加しておりますので、妊婦さんの経済的負担についても増加をしているというものでございます。
17ページ目、こちらにつきましては分娩取扱施設におけるサービスの提供状況ということで、各医療機関でお祝い膳でありますとか、あるいは写真、足型、エステ、こういったサービスを提供している場合がございますけれども、そのサービスの提供の有無でありますとか、あるいは入院料等の料金に含まれる場合、それぞれの割合について整理をしてございます。例えばお祝い膳でありましたら提供されているケース、ありなし、それから、妊産婦が選択することができるケース、それぞれ御覧のとおりの割合になっておりまして、入院料等の他の料金に含まれる割合が約88%という状況でございました。
18ページ目、こちらは出産なびの状況でございます。こちらは産科の医療機関の御協力もございまして、左下にして掲載施設を書いてございますけれども。年間分娩取扱件数が21件以上の施設の約99.9%で掲載いただいているという状況でございます。
19ページ目、こども未来戦略でございます。出産育児一時金の令和5年の4月からの引き上げ、それから、見える化、こういうことを進めつつ、2026年度を目途に出産費用(正常分娩)の保険適用の導入を含め、出産に関する支援等のさらなる強化について検討を進めるとされております。
20ページ目、21ページ目、これを受けまして妊娠・出産・産後における妊産婦等の支援策に関する検討会で議論を進めてまいりました。この医療保険部会においても議論の経過を御報告してまいりましたけれども、この5月に議論の整理をまとめております。
21ページ目、議論の整理の概要ということで大きく3点ございます。
1点目としては、費用の見える化を前提とした標準的な出産費用の自己負担無償化と安全で質の高い周産期医療提供体制を確立していかなければいけない。
2点目、希望に応じた出産を行うことができる環境の整備。
3点目、妊娠期、それから、産前産後における支援、切れ目のない支援体制の整備。
こういう観点に関して様々御議論いただき、議論の整理をいただいたという状況でございます。
22ページ目以降、これは検討会の報告書の抜粋でございますけれども、例えば22ページ目で申し上げますと、妊産婦等からのお声、こういうお声がありましたというものを22ページ目、23ページ目に抽出をしてございます。
また、24ページ目には産科医療関係者の皆様からいただいたお声、報告書の中でこのような形で整理をされておりますので抽出をしております。
また、25~29ページ目までは、検討会において様々な論点について多岐にわたる御意見を頂戴いたしました。時間の関係もありますので個々の紹介は割愛いたしますけれども、誠に大変多岐にわたる御意見をいただいているという状況でございます。
30ページ目、こちらは2025年の骨太の方針でございます。先ほど御紹介したこども未来戦略とも重なる部分がございますけれども、経済的負担の軽減のために、2026年度を目途に標準的な出産費用の自己負担に向けた対応を進めるとされております。
最後に31ページ目、今後の議論の進め方ということでございますけれども、先ほど申し上げました検討会の議論の整理において、令和8年度を目途に産科医療機関の経営実態等にも十分配慮しながら標準的な出産費用の自己負担無償化に向けた具体的な制度設計を進めるとされていることを踏まえまして、医療保険制度における出産に対する給付体系の見直しについて、この医療保険部会において以下のとおり検討を進めることとしてはどうかという形で整理をしてございます。
また、今年の冬頃に給付体系の骨格に関して一定の整理をいただいた後、新しい給付体系がスタートするまでに具体的な当てはめ等々がございますので、その個別具体的な内容については、その骨格を固めた後にさらに議論を深める。こういう形で議論を深めていただきたいと考えております。
事務局からの説明は以上でございます。
○田辺部会長 御説明ありがとうございました。
それでは、御意見等がございましたら挙手にてお知らせいただければ幸いです。それから、オンラインで参加の皆様方におかれましては、挙手ボタンのほうでお知らせいただければ幸いでございます。では、よろしくお願いいたします。
石渡委員、よろしくお願いします。
○石渡委員 着座にて失礼いたします。日本産婦人科医会会長を拝命しております石渡でございます。出産に関する議題につきまして、専門委員としてこの議論に参加させていただいたことに感謝を申し上げます。
現在、我が国では世界に冠たる最高レベルの周産期医療が提供されているわけでありまして、それには一次、二次、三次施設の機能分担と密な連携によって安全で安心な医療が提供されているわけであります。自宅や里帰り先の近くで出産できる状況、あるいは急な陣痛発来のときにも迅速に対応できる体制、そして、妊婦が地域で安心して安全に出産できる環境を支えているのは、それぞれの地域の一次施設であります。一次施設が機能しなくなれば、お産をする場所のないいわゆるお産難民が今以上に生まれます。妊婦健診も産後ケアにも支障が出ます。国民にとっても妊婦さんにとってもよいことではありません。
しかしながら、少子化や昨今の物価高騰を背景に一次施設は極めて厳しい運営状況に置かれております。先ほど事務局から説明があった検討会で私からも申し上げましたけれども、日医総研が実施しました調査によれば、2022年度の経常利益の赤字施設は全体の41.9%でありました。さらに次年度の2023年度には42.4%と赤字施設が拡大してきているわけであります。それぞれの地域で一次施設に引き続き地域の安心・安全な周産期医療提供体制を担っていただけると思っております。今後の出産に対する制度を考えるに当たって、まず何よりも一時施設を守るという観点から検討を進めていただきたいと思っております。
以上、よろしくお願いいたします。
○田辺部会長 ありがとうございました。
それでは、亀井委員、よろしくお願いします。
○亀井委員 日本産科婦人科学会の医療制度担当の常務理事、埼玉医科大学の亀井でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
今回の議論におきまして大学病院など三次施設で勤務している者を会員として持つ立場として、アカデミアの立場として発言を申し上げたいと思います。ありがとうございます。
少子化対策の一環としまして、今回の妊産婦さんへの負担軽減、あるいは無償化、こういったことに関して我々はもちろん議論に異論はございません。周産期医療体制につきましては、今、石渡会長のほうからもお話がございましたように、ローリスクに関しましては一次施設にお願いをして、我々三次施設はハイリスクだけに注力できるという非常に世界でもまれな小規模分散型の医療体制を維持しながらも、世界に冠たる医療安全の体制を構築してまいりました。
そういった中で、昨今、医療界全般に経営の危機、皆さん方は御存じだと思いますけれども、その中でも産婦人科領域におきましては分娩を取り扱う一次施設の経営の困難などがだんだん増してまいりまして、分娩を次々と撤退する施設が増えてまいりまして、我々三次施設に今まで扱うことのなかったローリスクの妊産婦さんたちが押し寄せてくるようになってございます。そのために、働き方改革の問題もございまして、なかなか人員の整理もつかないような状況で、しかも、病床の確保も十分にできないような状態でどんどん妊産婦さんが来るという状態です。
こういった中で、地域の一次施設の維持をしていただきたいというのが我々の希望です。それらの施設で分娩を行っていたローリスクの妊産婦さんまで大学の病院、あるいは総合病院など、我々の施設で対応しなければならなくなるような体制にならないように、もちろん妊産婦さんの自己負担が無償化されること自体は非常によいことだと思いますけれども、制度設計に当たりましては地域の一次施設お守りいただきまして、拙速な集約化を招かないようにしていただきたい。特に丁寧な検討を進めていただきたいと思います。妊産婦さんたちがお産難民にならないような形での議論を進めていただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○田辺部会長 ありがとうございました。
引き続き、新居委員、よろしくお願いします。
○新居委員 よろしくお願いいたします。NPO法人manmaの新居と申します。専門委員としてこの議論に参加する機会をいただきましてありがとうございます。
NPOmanmaでは若い世代向けのライフデザインの支援を行っておりまして、私個人としても来月で2歳になる娘がおります。妊娠・出産の当事者の立場としてこども未来戦略会議、あとは先ほど御紹介いただいた支援策等に関する検討会にも参加をしてまいりました。妊娠・出産の当事者として制度的に安定した出産費用の無償化が検討されているということをとても期待をしております。
先ほども御紹介いただいたように、様々な当事者の皆さんにヒアリングやアンケートを行って資料がまとめられているという段階であると感じております。私自身も妊娠が分かった段階で真っ先に不安になった費用負担でいくと出産費用というところでありましたし、多くの人にとっても子育ての入り口で一番負担を感じやすいところであると思っています。出産育児一時金はこれまでも引き上げをされてきましたけれども、病院もそのタイミングで合わせて引き上げをするということで、当事者にとっては負担軽減にはつながりづらいということの諦めであったり、その実感のようなものは当事者にも届いていたと感じています。
今回、標準的な出産にかかる費用を無償化するということになれば、本当の意味で当事者にとって負担が減り、いつ産んでも不平等感がなく、高額な費用負担を心配せずに安心して産むことができるようになることを期待しています。
また、出産に関しては分娩以外の様々なオプションが乗っかった状態で金額が提示されているということで、この病院で産むと幾らになるのかということは金額としては分かっても、何のためにこの金額を払っているのか、どうして病院ごとにこんなに金額が違うのかということは当事者としても分からないまま病院を選び、支払いをするという状況です。ちゃんと出産費用の見える化が進むということで、妊婦が十分な情報に基づいて意思決定をしたりとか、支払いの先見性がある状態で出産をするということは安心感や納得感につながると感じています。
また、今回のスコープからは少し外れると思いますが、以前の検討会でも産前産後の一貫した支援体制の強化というところが議論されていまして、この点についても今後もさらに期待をしたいと思っています。出産費用ももちろんですが、金銭的負担感の強いということでヒアリングでも出ていた妊婦健診であったり、より強い体制の産後ケアの支援であったり、そういうことがより整備されることで、これから出産を迎える人たちが未来に不安を感じないでいられたりとか、出産までの体験をよりよいものであったと感じて、皆さんが子育てを始められるような体制整備につながっていくことを期待しております。
以上です。
○田辺部会長 ありがとうございました。
それでは、宮川委員、よろしくお願いいたします。
○宮川委員 日本助産師会理事の宮川祐三子と申します。本日は、日本助産師会として医療保険部会に専門委員として出席の機会をいただき、心より感謝を申し上げます。
今後の進め方について、令和7年冬頃までに出産に対する給付体系の骨格の在り方について整理することを目指しと挙げられています。出産は、医療的な安全の確保とともに、助産師による助産ケアを通じて妊産婦の不安を軽減し、安全に導くことが重要です。こうした助産ケアの効果は既に科学的根拠のあるものとして示されています。
今後の医療保険部会での御議論に当たり、検討部会報告にもありましたように、妊産婦の多様なニーズを尊重し、全ての出産の場が新たな枠組みの中に適切に位置づけられることを強く願っております。日本助産師会としては、妊産婦の希望に応じることのできる助産所の体制整備を引き続き行ってまいりたいと考えております。
以上です。
○田辺部会長 ありがとうございました。
それでは、前葉委員、よろしくお願いいたします。
○前葉委員 自治体の立場から、お産ができる施設をしっかりとキープしていくというのは市町村においては非常に大きな課題です。今、専門委員の先生方のお話を伺いながら、そのような方向性は共有させていただいているのかなと思いながら聞かせていただきました。いわゆる出産ができるクリニックなり病院なりというのが特に過疎地域等でなくなってきている。これは幾つかの原因があって、一つは人口減少でお産自体が少なくなっていて医療機関の経営が成り立っていかないということと、医療機関において事業承継がなされないで病院が閉鎖されていく、クリニックが閉鎖されていくというようなことなどがあって、非常に難しい課題に直面をしております。
その上で、これは市町村と都道府県とどっちがどういう役割でそこをサポートしていくかということについては、そもそも出産が医療でしょうと、だから、医療は都道府県のお仕事ですよねというようなところから市町村は入るのですが、都道府県側からすれば、いわゆるリスクの大きい出産ができる体制をキープすることが、都道府県において医療として非常に関心事項であるというような議論になって、かなりデリケートな議論になっているのは事実でございます。
しかしながら、とにかく市町村長としては地元でお産ができる医療機関が存在していること、場合によっては里帰り出産を受け入れることを我々としても強く求めているところでございますので、そういう観点が一つ、このことを考えていくに当たって重要なのだろうなと、頭の中に置きながら議論しなければいけないのだろうなと思っているところでございます。
その上で、いわゆる自己負担の無償化、ないしは何らかの軽減策というような話になると、これは子ども・子育て支援策なのか、出産費用の負担抑制なのかというようないろいろな議論をしていかなくてはいけないわけですけれども、事実上、保険でカバーしていく一時金というのを出す、そして、それを充実させていくということになれば、それは保険適用で自己負担分をどうするかという議論も一方でありながら、他方で、これは出産の費用をできる限りサポートしてカバーしていくという大きな政策議論になってくるのではないかと考えております。
ちょっと話がそれますけれども、幼児教育とか保育の無償化をやったとき、それから、今の学校給食の無償化の議論に際して、これはそれぞれ幼児教育の施策なのか、保育の施策なのか、それとも子育て支援策なのか、学校給食法の自己負担、保護者負担をどうしていくのかということを学校給食の世界で考えるのか、それとも子育てのサポートで考えるのかということで、議論が非常に複雑になる傾向にあります。
今回もこの議論は子育てなのか、医療の話なのかという議論をしていくと非常に哲学的な論争になっていって、場合によっては所管する官庁も厚生労働省なのか、こども家庭庁なのかというような議論にさえ広がっていくような話になっていくので、私としては地域の医療をどう守るかということ、産婦人科という科をどう守っていくかということ、それから、出産をいかにスムーズにやっていただくかという目的をしっかりと見極めた上で判断していくことが必要な事柄だと思っております。
今日のところは以上とさせていただきます。ありがとうございました。
○田辺部会長 ありがとうございました。
では、佐野委員、よろしくお願いします。
○佐野委員 私も検討会に参加させていただいた立場でございまして、まず、1点目の31ページにある今後の進め方については異論ございません。21ページにある検討会の議論の整理に沿って3点ほどコメントしたいと思います。
1点目は、周産期医療提供体制の確保についてでございます。これは検討会でも申し上げてまいりましたし、今日、産科医の先生方の話を聞いても、まさに産科医、分娩機関をどう維持していくかというのは極めて重要な課題であると思っておりますが、この問題は、いわば国としての体制の問題として捉えるべきだと考えておりますので、この出産に対する給付体系の見直しとは切り離して別途解決を図るべきだと考えております。
2点目は、標準的な出産費用ということでございます。ここについては21ページにも記載がございますけれども、検討会のヒアリングにおいても妊産婦の方から費用とサービスの関係が不明確という声が上がっておりました。そういう意味で、妊産婦の方が十分な情報に基づいて出産に関する自己決定、取捨選択ができる環境整備といった、この資料の記載に沿って出産にかかる費用・サービス等の見える化をより一層進めていく必要があると考えております。この見える化に基づいて、標準的な出産費用の範囲についても検討いただければと考えております。
3点目は、この中にも記載がございますけれども、無痛分娩についてでございます。これについても妊婦の方からのニーズが高いことはよく理解をしておりますけれども、無痛分娩についてはリスク、あるいはデメリットもありますので、まずは安全に無痛分娩を提供できる体制整備が必要であって、その上で保険給付の対象にするかどうかについては慎重に検討すべきだと考えております。
以上3点申し上げましたけれども、今後の検討に当たっては、見える化ということと標準化が最も重要なキーワードであると思っておりますので、ここを念頭に置いた上での検討をお願いしたいと思っております。
以上でございます。
○田辺部会長 ありがとうございました。
それでは、伊奈川委員、よろしくお願いいたします。
○伊奈川委員 私からは2点ございます。
1点は、今も説明がありましたように、標準的な費用といった場合の標準ということになりますと、地域差であるとか、あるいは施設間の格差をどうするかという問題があるということ、それとも関係してアメニティ部分といいましょうか、プラスアルファの部分をどうするのかといった論点がありますので、その辺りのデータも含めて見ながら検討していく必要があるのではないかということです。
もう1点は、そのことも関係しますけれども、出産育児一時金をどう考えるかという点であります。といいますのは、出産だけではなくて実は文言上は育児というのが入っておりますので、そういう点から言いますと、どこまでカバーすべきかという議論があるわけですし、そのことは今言いました標準的ということにも関係してくるわけですので、この出産育児一時金の射程範囲をどうしていくのかということ、特に今、少子化対策、先ほども紹介ありましたようなこども関係のいろいろな政府の方針とか取組もありますので、そういったことも見ながら考えていく必要があるのではないかと考えております。
私からは以上であります。
○田辺部会長 ありがとうございました。
それでは、内堀委員、よろしくお願いいたします。事務局のほうから報告がございましたように途中退席とお聞きしております。議題1以外の議題につきましても御発言したいとの御意向を伺っておりますので、併せて発言いただいて構いません。
○内堀委員 田辺部会長、ありがとうございます。議題の1、2、3について、まとめてコンパクトにお話をさせてください。
まず、議題1です。出産費用に関しましては、希望する誰もが安心して出産できる制度とすることが重要です。出産に伴う経済的負担の軽減を図ることはもとより、分娩を取り扱う医療機関の経営状況も踏まえ、具体的な制度設計に当たっては、地域の周産期医療提供体制が維持されるよう、現場の実情を十分踏まえた検討をお願いします。
次は議題2です。全世代型社会保障の構築に当たり、負担の在り方について見直しを検討する場合には、過度な負担や急激な変化が生じないよう、十分配慮を行うとともに、全世代において納得感を得られるよう、丁寧に検討を進めていただくようお願いします。
最後に議題3です。医療機関が直面している極めて厳しい状況については、一昨日行われた高市総理就任後初めての記者会見においても触れられています。「私たちの安心・安全に関わる大切なインフラが失われるかもしれない」という高市総理の御懸念は、地域医療の確保を担っている私たち地方の思いと共通するものであります。現在、地域医療は光熱水費や材料費等の高騰、人件費の上昇等により、病院・診療所を問わず医療機関の経営状況はこれまで以上に厳しくなっており、危機的な状況にあります。
こうした状況を踏まえ、社会経済情勢を適切に反映した診療報酬改定とともに、医療機関に対する緊急的な財政支援など、早期に取り組むようお願いします。また、改定後においても物価や賃金が上昇した場合に適時適切に対応できるよう、診療報酬をスライドさせる仕組みの導入についてもお願いします。加えて、医療分野全体として医療DXの推進が不可欠であることから十分な対応をお願いします。
私からは以上です。ありがとうございます。
○田辺部会長 ありがとうございました。
では、平山参考人、よろしくお願いします。
○平山参考人 連合の平山です。私からコメントさせていただきます。
妊産婦等の支援策等に関する議論の整理を踏まえて検討を進めていただくことに異論はありません。標準的な出産費用の自己負担無償化に向けては、医療の質の向上と標準化の観点から保険適用を含めて検討すべきと考えております。標準的な出産費用とはどのような内容かという点については、負担とのバランスをも考慮する必要がありますので、今後報告される出産費用に関するさらなるデータを踏まえて検討を進めていく必要があろうと思います。
また、議論の整理にあるとおり、希望に応じた出産を行うことのできる環境の整備は重要ですので、無痛分娩をはじめ、WHOが推奨するエビデンスに基づいた無痛緩和ケア、助産所における出産についても標準化と質の向上の観点から保険適用とする方向で検討いただきたいと考えています。
周産期医療提供体制の確保は重要な課題です。一方、保健医療財政には限りがありますので、税と保険の性格の違いを踏まえ、それぞれの目的に応じた施策を検討していくべきと考えております。
私からは以上です。
○田辺部会長 ありがとうございました。
では、北川委員、よろしくお願いします。
○北川委員 本件につきましては、検討会での議論の取りまとめをされて大変敬意を表したいと思っております。これまでの出産育児一時金による現金給付から標準的な出産費用を現物給付としていくことについては、考え方として必要な対応であると考えております。
一方で、標準的な出産費用とは何かという点については、今後さらに議論を深めていく必要がある非常に重要な観点だと考えております。保険診療の考え方や保険料を負担する方の納得性、こういったことも念頭に置き、議論を深めていくべきと考えております。
また、自己負担の無償化ということにつきましては、公費と保険料の負担の在り方についても加えてよく御議論いただければと考えているところです。
以上でございます。
○田辺部会長 ありがとうございました。
それでは、城守委員、よろしくお願いいたします。
○城守委員 本日は、出産の無償化に関しての議論ということでございますので、その背景、総論について少しコメントさせていただければと思います。
今、出産に係る検討会の資料を拝見しておりましたが、妊産婦さんの出産費用の軽減に重点を置いた御意見が非常に多い。というのは、当然この議論の目的がそのような形であろうと思うのですが、一方、先ほど石渡先生や亀井先生がおっしゃられたように、里帰り出産とか、無痛分娩の提供、妊産婦の方々のニーズがかなり多様化している現状がございます。ですので、そのニーズにしっかりと地域が寄り添える体制整備が必要であるということは皆さんも十分御理解いただいているであろうと思います。
ですので、この制度が今後議論されるに当たっては、その制度設計によって分娩を提供していた医療機関が運営できないというような制度設計になれば、これはその地域においてお産ができないということになりますので、その辺りは非常に慎重に議論していくことが必要になると思います。
特に地域で一次医療を担っておられる産科の医療機関、診療所が45%もあるというデータも本日の資料の中に出てございますので、そういう点を考えますと、それらが立ち行かなくなるような制度設計ということであれば、これは二次の医療機関、さらには大病院に一次医療機関が診ていた方々が駆け込むということで、恐らく病院がうまく機能しなくなるだろう。結果的には、地域の産科の医療提供体制の瓦解につながるということになろうと思いますので、その辺りは非常にしっかりとした議論が必要になろうかと思います。
この周産期施設の集約化・重点化ということは、今後人口の減少というものを踏まえますと検討すべき課題であろうと思いますが、その中でも、先ほどお話ししたようにこの議論が拙速に進みますと、産科の医療提供体制に大きな影響が出るということを考えますと、十分に時間をかけて、また、丁寧に議論を進めて、そして、その施策が実施されるべきであろうと考えてございます。
一次医療を担う産科医療機関が分娩から撤退することなく、全国どこの地域でも妊産婦さんが希望する分娩が提供できる体制が保てるよう、併せて妊産婦さんの経済的な負担もしっかりと軽減されるという見直しを丁寧に今後議論していくべきであろうと考えます。
私の意見としてはそうなのですが、産科のお産に関しては、もともと保険診療の対象ではないということや、正常分娩と異常分娩の区別もなかなか難しい部分もあろうと思います。そういう点も含めて議論は丁寧にしていくべきであろうと思っていますし、もともと産科の医療機関が成り立っているベースとしては、自由診療という形で、それに見合った形の人員配置であるとか、または施設の体制を整えられた医療機関がそれぞれあるということで、それに呼応した形のコスト構造に現在の各産科の医療機関がなっているということもあろうと思います。ですので、その辺りもしっかりと配慮しながら、これは見える化ということにもつながるかと思いますが、その点にも留意をしつつ議論をしていただければと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
私からは以上です。
○田辺部会長 ありがとうございました。
それでは、島委員、よろしくお願いいたします。
○島委員 これだけ少子化が進んでくる中、なぜ皆さんは結婚をしないのか、子供を産まないのかという大きな問題に対しては、別の切り口で国としてきちんと対応すべき問題だろうと思いますが、今回の議題になっておりますように、出産費用の無償化というか、正常分娩も診療報酬という形できちんと対応する、さらに無償化ができるのであれば、それに越したことはないと思います。
ただ、城守委員が今おっしゃったように、今まで自由診療としてやってきて、それぞれ値段を設定して運営をされてきた。地方においては確かに産科の医院とかがどんどん閉院しているような状況になっておりますので、その辺が標準的出産費用というような考え方でどういう値づけができるのか。今、実存する産科の医院とか病院とかがきちんと継続できるような、その辺をしっかりとここで話し合っていく必要があるのではなかろうかと思っております。本質的に出産費用の無償化というのは、子供を産む方たちに対しては非常にいいことだろうと思いますので、真摯に討議を進めていければと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
○田辺部会長 ありがとうございました。
それでは、任委員、よろしくお願いいたします。
○任委員 よろしくお願いします。今後、令和7年冬頃を目途に給付体系の骨格に関する取りまとめを行うとのことで、短期間に多くの要素を考慮しながら検討をしていく必要があると考えます。既に妊娠・出産・産後における妊産婦等の支援等に関する検討会におきまして様々な観点から議論が行われていると聞いていますので、これをよく踏まえたものになるようにしていただきたいと思います。
資料の21ページに示されました取りまとめ概要の3点は、いずれも非常に重要な視点であると感じます。
1点目につきましては、資料の15ページにも示されていますように、出産育児一時金の支給額が妊婦合計負担額を超過しており、また、資料の12~13ページに示されましたように、都道府県間の差、施設間の差も大きい状況です。妊産婦が居住する地域にかかわらず、経済的負担を軽減しながら妊娠・出産・産後の各期において必要な支援が確実に受けられる仕組みを整備していくべきと考えます。それと同時に、日本の周産期医療の安全性を維持していくことは何より重要であり、安全で質の高い周産期医療提供体制の確保と両立できるような設計としていく必要があると考えます。
2点目の希望に応じた出産を行うことができる環境の整備についても妊産婦の多様なニーズに応え、選択を制限することがないようにしていく必要があります。地域の周産期医療を支える診療所や助産所、高次医療に対応する周産期医療センターまで、様々な場で多様なサービスが提供されている現状ですので、現に提供されている周産期医療が確実に継続できるような給付体系としていく必要があると考えます。
以上でございます。
○田辺部会長 ありがとうございました。
ほかはいかがでございましょう。よろしゅうございますでしょうか。
それでは、ほかに御意見等がなければ、本議題についてはこれまでとさせていただきたいと存じます。本日の意見も踏まえまして議論をさらに深めていければと存じます。
専門委員の皆様におかれましては、御意見をありがとうございました。
次回以降、この議題を議論する際は御参加いただきたいと思います。日程は追って事務局のほうから御連絡いたします。次の議題のほうに移りますので、本日はここで御退席いただいて結構でございます。どうもありがとうございました。
(専門委員退室)
○田辺部会長 次に「医療保険制度改革について」を議題といたします。事務局から資料が提出されておりますので、説明のほうをお願いいたします。では、よろしくお願いいたします。
○日野課長 高齢者医療課長でございます。資料2を御覧いただければと思います。大部な資料でございますので、かいつまんで御説明をさせていただきます。
2ページ、これまでの議論の振り返りです。9月18日、26日の医療保険部会における議論でございます。
1つ目の○、給付と負担のバランス、世代間のバランスを見直していく必要があるといった御意見。
4つ目の○の後半、現役世代、被保険者の納得性を確保していくことが重要であり、後期高齢者医療制度など現行制度の抜本的見直し等を進めていくことが必要といった御意見。
下から3つ目の○、後期高齢者にとっては健康状態の悪化が深刻な問題となり得る、医療費負担も大きくなるため配慮が必要といった御意見。
下から2つ目の○、受診抑制につながらないように低所得者に十分配慮する必要があるのではないかといった御意見をいただいております。
3ページ、高額療養費の専門委員会における議論でございます。アンダーラインを引いておりますけれども、この中では高額療養費制度だけではなくて他の改革項目も含めて医療保険制度改革全体の中で全体感を持って議論をしていくことが必要といった御意見をいただいております。
5ページ以降は制度の概要資料を並べたものでございます。
5ページが医療保険制度体系の資料。
6ページは高齢者医療制度の財政ということです。真ん中に後期高齢者医療制度がございます。給付費が18.7兆円、患者負担が1.7兆円、給付費の約5割を公費、約1割を高齢者の保険料、約4割を現役世代からの保険料として後期高齢者支援金としていただいております。下のほうには前期高齢者の財政調整がございます。前期高齢者の給付費6.8兆円を対象にして財政調整を行っています。
その数字のやりくりが7ページでございます。制度別の財政の概要とありますけれども、被用者保険と国保から後期高齢者をいただいて、あと、前期の高齢者の部分として、被用者保険から市町村国保が前期の調整額をいただくという構造になっております。
8ページ、自己負担の割合でございます。6~69歳までは3割負担でございます。70~74歳は多くの方が2割、75歳以上の方は多くの方が1割負担という構造になっております。
9ページ、後期高齢者の2割負担を2022年10月に導入したところでございます。被保険者全体の2割程度の方に2割負担を御負担いただいております。
10ページ、窓口負担と高額療養費の自己限度額のところで、ブルーのところが2022年に導入されたところになります。
11~13ページまでは、これまでの制度改正の概要でございますので、また後ほど御覧いただければと思います。
次にデータ関係で15ページ以降を御説明いたします。
15ページは高齢者の受診率でございます。左側の上のグラフが65~89歳の入院の受診率でございます。全体的に低下傾向になります。一方、右側を見ていただきますと、こちらは入院外のところでございます。こちらは年齢によって下がったり横ばいであったりと、ばらつきがある感じになっております。
16ページは年齢階層別の1人当たり受診日数の推移でございます。特に入院外と入院を合わせた日数ですが、70歳以上で顕著に低下をしているのが見て取れると思います。
17ページは医療費の分布でございます。左上が15~69歳の医療費の分布ですが、年間の医療費が20万円以下のところに8割近くが固まっております。70~74歳がその右側のグラフで、左下が75~79歳、右下が80歳以上、年齢を経るにしたがって、だんだん右側に山が動きつつばらつきが出てくるといったところが見て取れるかと思います。
18ページ、こちらは15~69歳の1人当たり医療費を1としたときに、それぞれの年齢層がどれぐらいの倍率に当たるのかというものを2008年から2022年まで見たものでございます。全体的に高齢者になるほど1人当たりの医療費の水準は高いのですけれども、そのグラフが低下をしてきているということで、現役世代との医療費の差が少しずつ縮小しているところが見て取れると思っています。
19ページは外来受診の動向でございます。左側の上のほうの円グラフ、後期高齢者は年間で外来受診した患者の数が95%程度、右側に行っていただきますと、受診ありの受診月数が上のグラフですが39.8%、要するに約4割の方が毎月外来を受診されているという構造になっております。
20ページが年齢階級別に見たもので、これを見ていただくと、65歳以上から外来受診回数がかなり上がってくるのが見て取れると思っております。
21ページは医療保険と介護保険の比較でございます。簡単に申し上げると、医療保険は2000万人の被保険者のうち、医療保険サービスを使っている方が97.7%、1人当たり90万円ぐらい使っている。介護保険のほうは65歳以上の1号被保険者がおよそ3600万人いまして利用者は598万人、1人当たりの給付費が180万円ということで、より少ない方が多く使うのが介護保険で、医療保険は薄く広く使うというイメージという資料でございます。
22ページ、左側は年齢階級別の1人当たり医療費でございます。70歳ぐらいからかなり医療費が伸びてきまして、75歳以上になると90万円前後ということになります。一方で、右側を見ていただきますと、年齢階級別の1人当たり自己負担額でございます。69歳以下は左側の医療費の分布とパラレルに動いていますが、70歳以上になると自己負担額が低く抑えられております。恐らく自己負担割合とか高額療養費の影響とか、そういったものが影響しているのではないかと思っています。
24ページ以降は就労や収入関係のデータでございます。
24ページの左側、年齢別の収入でございます。50~54歳をピークに年を経るにしたがって低下をしていくという傾向でございます。右側は75歳以上の収入の分布でございます。平均値は175万円ですが中央値は137万円ということで若干ばらつきが見られるところでございます。
25ページは国保の1人当たりの所得額でございます。65~69歳が緑色、70~74歳がピンク色ということで、足下で少し上昇傾向が見られるところでございます。
26ページは後期高齢者の1人当たりの所得額でございます。こちらも国保と同じように最近上昇傾向です。
27ページは所得の種類別の推移を見たものでございます。最近上がってきているのは給与所得と利子配当所得ということになります。ただ、利子配当所得は金額自体が少ないので大きく影響を与えているのは給与所得ではないかと考えております。
28ページは年齢階級別の就業率でございます。赤色の65~69歳は2人に1人以上が働いている。△の緑の70~74歳は3人に1人以上が働いている、ピンクの75~79歳は5人に1人が働いているといった形で、今、足下で就業率が高まってきている状況でございます。
29ページは家計の金融資産、こちらは年齢階級別には出していませんけれども、全体の数字ということで金融資産が今かなり増えてきている。右側の分布を見ていただくと、証券の割合が高まってきているという状況でございます。
31ページ以降は保険者の納付金・支援金を中心に集めたデータでございます。
31ページは前期の納付金でございます。直近で少し減少傾向でございます。こちらは恐らく団塊の世代が抜けて32ページの後期高齢者のほうに移っておりますので、32ページが増えて31ページが少し減っているという構造になっております。
33~34ページは健保組合と協会けんぽの拠出負担割合でございます。健保組合は45%ぐらいが前期の納付金、後期の支援金に当たっている。協会けんぽはそれが33.8%程度となっております。
35ページは協会けんぽと健保組合の平均総報酬額の推移でございます。足下で賃上げの影響もあって上昇傾向が見て取れるかと思います。
36ページは保険料率の推移ということで説明は割愛いたします。
37ページは健保組合の保険料負担でございますけれども、5~12%ということで協会けんぽの10%を超える健保組合が334ということになっております。
38ページは国保の保険料の推移でございます。
39ページは社会保険料額の変化ということで、世帯主の年齢別に見た国民生活調査ベースの社会保険料額の推移でございます。平成16年に比べて令和6年を見ると、特に現役世代の保険料が高くなっている傾向が見て取れると思います。
41ページ以降、こちらはこれまでの指摘でございます。
41ページ、全世代型社会保障の改革工程におきまして、医療・介護の現役並み所得3割負担につきまして、2028年度までに実施について検討する取組と定められております。
42ページ、前回の医療保険部会の議論の整理におきましては、この現役並み所得につきまして、上から2つ目の○にポツが2つございます。窓口負担の見直し、2割負担を導入したのが令和4年の10月でございましたので、その施行状況を注視しなくてはいけないということと、現役並み所得者の医療給付には公費負担がないので、見直しに伴って現役世代の負担が増加することに留意する必要があるということから引き続き検討とされたところでございます。
43ページ、高齢者の現役並み所得でございます。この現役並み所得の所得水準でございますが、平成16年の協会けんぽの平均収入額を設定して、平均収入額から諸控除を控除して課税所得として計算した左側の145万円、この数字ともう一つ右側の収入要件、520万円、380万円、この2つで現役並み所得の基準を定めているところでございます。
そちらが44ページで、今の負担構造がこうなっているという資料でございますが、現役並み所得になりますと、右側の高額療養費におきまして外来特例が適用されずに普通の高額療養費のみになるという構造になっております。
議論の視点で46ページ、今、私のほうからるる説明をさせていただいたデータの関係であったり、これまでの議論の経緯が書かれております。
こういったところを踏まえまして47ページ、議論の視点ということで全体的なテーマを設定させていただきました。
高齢者の健康状態の変化、所得や経済環境の変化、医療サービスの利用特性等を踏まえつつ、年齢にかかわらず能力に応じて負担をするという全世代で支え合う仕組みの構築の観点、世代内での公平な負担の観点等から、高齢者医療における負担の在り方をどのように考えるのか。
2つ目、現役並み所得の判断基準につきましては、平成18年度以降見直しが行われておらず、改革工程において検討を行うとされていること、一方で、現役世代の収入とか、社会保険料負担が上昇傾向であるといったことを踏まえて、その在り方をどのように考えるのか、こういった議論の視点を提示させていただいております。
私の説明は以上になります。
○田辺部会長 御説明ありがとうございました。
それでは、御意見等がございましたら挙手にてお願いいたします。
では、佐野委員、よろしくお願いします。
○佐野委員 このテーマについてはこれまでも申し上げてきたのですが、全世代型社会保障の構築においては、人口構造の変化等を踏まえて、現役世代の負担軽減が最大のキーワードだと思っていますので、年齢にかかわらず能力に応じて負担する応能負担の推進が重要だと思っております。
47ページの議論の視点についてそれぞれコメントを申し上げたいと思います。
まず、1つ目の高齢者医療における負担の在り方についてでございますが、今回大変興味深い資料を御提示いただいたと思っております。具体的には資料の18ページに高齢者1人当たりの医療費水準が出ておりますけれども、これを見て70歳から80歳代前半にかけては、この14年間において5歳若返っている。要は2008年の水準が今の5歳上の人の水準に近づいていることが読み取れると思います。これはまさに健康寿命の延伸が医療費水準にも直結していることを表しているものだと思います。
次に22ページに年齢階級別の1人当たり医療費と自己負担額のグラフがございます。これを見て左右のグラフに差があるということで、いわば左側の医療費は年代に応じた伸びになっているのですけれども、右側の自己負担についてはグラフとしていびつな形になっているという印象を受けております。
今度は所得関係のほうで言いますと26ページ、後期高齢者の方も所得額は伸びていることが読み取れますし、また、28ページを見ますと就業率のほうも上がってきているということで、全体的に申し上げますと、健康寿命が延びているということ、それから、就業率の上昇が見て取れると思っております。もちろん今回の資料は全体的な傾向でございますので、低所得者の方への配慮を含めて細かく分析することは当然必要だと思いますけれども、少なくとも保険制度全体としては、高齢者の年齢区分ですとか、また、負担割合の見直しを含めた構造的な見直しを図る時期に来ているのだと考えております。
それから、47ページの2点目の現役並み所得の判断基準のところでございます。この現役並み所得の判断基準の見直しについては、負担の公平性を確保するために推し進めるべきだと思っております。とはいうものの、先ほども若干御説明がございましたけれども、現在の後期高齢者における現役並み所得者の給付には、いわゆる約50%相当分に公費が入っていないということで、これらが現役世代の負担になっております。現状のまま現役並み所得者を増やすと、現役世代の負担増につながるという大変いびつな構造になっております。
そういう意味では、こういった負担構造についても、事務局におかれましては、ぜひ資料としてお示しをいただきたいと思いますし、こういう形でもって現役世代に過重な負担がかかっているということも踏まえて幅広な検討をお願いしたいと思います。
私からは以上でございます。
○田辺部会長 ありがとうございました。
それでは、井上参考人、よろしくお願いいたします。
○井上参考人 今、佐野委員からもございましたけれども、資料の中にもありますとおり、高齢者の給付費の財源の多くは現役世代からの財政調整、あるいは支援により賄われているというのが制度の状況でございます。
一方で、33ページ以降にありますように、健保組合では負担が増加した結果、赤字となる健保組合も相当数出てきているという状況でございます。
また、39ページにありますように、現役世代の社会保険料の負担が著しく増えている状況にありますので、この問題を解決していくことは本当に喫緊の課題になってきています。
今般の新政権の連立の合意の中でも現役世代の保険料引き下げが明記されたところでございます。また、医療費の窓口負担に関する年齢によらない真に公平な負担の実現、あるいは高齢者の定義の見直しも盛り込まれたところでございます。
単に現役世代の負担を軽減すればいいということだけではなくて、現役世代の負担軽減というのは、これも新しい政権が言っていますが、強い経済をつくるということの非常に重要な要素だと我々は思っておりまして、この強い経済を回すこと自体が社会保障制度全体の持続可能性を高めていくと考えております。予防、あるいは健康づくり、医療提供体制の効率化に加え、低所得者の方とか高額療養の方への配慮はもちろんしていかなくてはならないですけれども高齢者の負担の在り方というのは早急に見直すべき時期に来ていると考えております。
以上でございます。
○田辺部会長 ありがとうございました。
それでは、兼子委員、よろしくお願いいたします。
○兼子委員 前から申し上げていますけれども、持続可能な制度、その問題は、私は今の枠組みの中でどこをどうするかという議論の前に、財源の在り方がこれでいいのかということを一度きちんと議論に上げていただきたいと思います。少しこの部会から外れるのではないかという印象を持たれるかもしれませんけれども、税の在り方も残念ながら所得の低い人たちに消費税というものが入ることによって、過重な負担が消費税の改正ごとに大きくなっている。そういうことであれば、高額所得者のところ、累進的なところが弱まっていけば、国の税収自体も大きな影響を受けるわけですので、当然、医療制度に対する国の役割、負担というものは制限されていくということが一つあるわけです。
もう一つ、医療保険のほうですけれども、よく見ていただくと、所得の低いほど収入に対する負担率は高くなっておりますし、医療保険、年金等も含めて上限が金額で抑えられているわけです。少なくとも例えば今の上限を大体1000万円と言っていますけれども、その負担金額の率で高額所得者にも求めていくならば、保険財政のところはかなり背景が変わってくるのだと思っております。
そんなことを含めまして、私としては何度か申し上げておりますけれども、この財源のところをどうするのか。そこがきちんと捉えられないと、何を持続していくのか、制度の持続なのか、それともこの制度が果たす役割を持続するのか、そういったところも曖昧になっていくと思っております。
財源のところで大きく議論が進んでいくならば、私は窓口負担の問題としても、ここは軽減を図っていく方向で医療へのアクセスをよくしていくということ、それから、先ほど申し上げた医療保険の負担を直していくということであれば、現役世代というお話が出ますけれども、現役世代の人たちの所属の中間層から下のところについては負担の軽減が図られていく。所得の大きい人たちについては所得に応じて応能負担をしていただく。こういう形を取っていけば、現役の特に所得の中間から下の人たちの負担を軽減していくことにつながっていくだろうと思っております。
これまでの私の意見の繰り返しになりますけれども、以上でございます。
あらかじめお願いしておりましたように、あとわずかの時間ですけれども、途中退席させていただきますので、その点はお許しをいただきたいと思います。以上でございます。
○田辺部会長 ありがとうございました。
では、藤井委員、よろしくお願いします。
○藤井委員 資料にも記載がございますが、これまでの部会では給付と負担のバランス、世代間のバランスを見直す必要性、全世代型で支え合う仕組みの構築が急務であること、現役世代の納得性を確保していく重要性について、複数の委員から御発言があったと認識しております。
また、今回の資料を拝見しますと、高齢者の健康寿命が延伸し、全体として以前よりも健康状態が改善してきているようです。その影響もあってか、働く高齢者も増加してきております。こうした社会の変化も踏まえますと、改革工程に示された能力に応じて全世代で支え合う仕組みの構築が、今こそ求められていると思います。経済成長と社会保障の好循環を目指していくためにも、現役世代の負担抑制・軽減や、給付と負担のバランスを見直しは不可欠であります。負担割合や支援金の在り方など、従来の基準や方法にとらわれることなく、全世代型社会保障の構築に向けた検討を進めていただきたいと思います。
なお、高齢者の健康向上には、保険者や企業の予防、健康づくりの効果も現れているのではないでしょうか。自ら健康づくりに励み、なるべく医療にかからないようにしている方々には何かしらのインセンティブがあってもよいのではないかと思います。本日も納税表彰式というのが執り行われており、財務大臣、国税長官もいらっしゃっていました。例えば健康増進に取り組まれている方々を表彰するような制度を全国的に展開するなど、個人のモチベーションを高め、国民の意識改革、行動変容を導くような仕組みづくりについても御検討をお願いしていきたいと思います。
以上です。
○田辺部会長 ありがとうございました。
それでは、伊奈川委員、よろしくお願いいたします。
○伊奈川委員 私から負担の公平に関して2点ばかり発言をしたいと思います。
1点は、今日の資料にもありましたように資産をどう考えるかという点でありまして、給与所得以外の資産、あるいは資産性の所得自体、なかなか税制の関係とか、あるいは捕捉の関係もあって難しいのかもしれませんけれども、国民健康保険で昔から資産割があるわけですし、また、いろいろな制度の中では一部資産も考慮しているケースもありますので、引き続き検討していくことが必要ではないかと考えております。
もう1点は所得のばらつきの問題であります。今日の資料もそうなのですけれども、どうしても平均で見ざるを得ない部分がありますけれども、高所得層もさることながら、日本の社会保障にとって非常に重要なのは、低所得の方たちのさらにその中のばらつきという問題ではないのかなと思います。これは厚生年金と比べても金額的には低い国民年金だけの方の中にもさらにばらつきがあるわけですし、そうなってまいりますと、高いほうだけを見るのではなく、低所得の方たちの負担も含めて、全体としてバランスが取れた負担を考えていく必要があるのかなと思っています。
これは高額療養費ということにも関係してまいりますし、あるいは保険料負担ということにも関係してくるかと思います。保険料という点で言えば、介護保険の場合は所得段階別の定額保険料、改正を重ねるにしたがって刻みが細かくなっているわけですので、そういった点では高額所得層だけでなく、低所得の方の負担問題ということについても、併せて議論していく必要があるのかなと思っております。
以上であります。
○田辺部会長 ありがとうございました。
では、平山参考人、よろしくお願いします。
○平山参考人 高齢者医療における負担の在り方については、年齢で区切らない制度への抜本改革とセットで議論する必要があると考えております。また、現役並み所得の判断基準の在り方については、介護保険においても利用者負担の在り方に関する議論が同時並行で行われているところですので、医療も介護も必要な高齢者に与える影響を勘案しながら丁寧かつ慎重に議論をする必要があると考えております。
私からは以上です。
○田辺部会長 ありがとうございました。
それでは、袖井委員、よろしくお願いいたします。
○袖井委員 皆様方から後期高齢者が袋叩きに遭っているようでせつないのですが、確かに高齢者には働いて収入のある人が増えているのですが、これは年金がどんどん下がってきていますから働かざるを得ないという実情があるのです。だから、収入が増えているから楽ちんになっているというわけではないので、その辺りも考慮する必要があると思うのです。
それから、年齢という枠を外してしまっていいのかということ。これも例えば高齢者は確かに収入がよくなってきてはいるのですけれども、高齢者はこれから先どんどん収入を増やすという可能性も少ない。それから、大病したり、けがをしたり、そういうリスクも非常に高いということを考えると、私は個人的に年齢という考慮を全く外すことは反対でございます。
現役並みということがよく分からないのですが、私などは現役並みというカテゴリーに入ったり出たりしているので、なぜかよく分からないのですが、これももうちょっときめ細かく見る必要があるのではないか。最近は賃金も上がってきていますので、その辺も考慮して、現役並みの定義を厳密にはっきりさせていただきたい。この現役並みというのは医療のほうだけではなくて介護なども絡んでいるので、厚労省として現役並みというのは何なのかということをしっかり基準を考えていただきたいと思います。
現役世代が苦しいという話は確かですけれども、これももうちょっときめ細かく見る必要があるのではないか。現役で一番苦しいのが中年期の方たちです。ちょうどお子さんが大学に行くぐらいの層が一番苦しいのです。だから、現役だって20代から60幾つまで一律ではないです。その辺ももうちょっときめ細かく見ていく必要がありますし、いわゆるその子育て中、特に教育費が物すごくかかる世代については配慮する必要があるということで、あまり大ざっぱに現役対高齢者というような対立構造で考えることは止めていただきたいと思います。
以上でございます。
○田辺部会長 ありがとうございました。
それでは、前葉委員、よろしくお願いいたします。
○前葉委員 全世代型社会保障の構築ということを考えたときに、我々は改めてニュートラルに、客観的に物事を決めていかないといけないと今日は考えております。支え合うということを言われると、恐らく高齢化が進む中で、支援金だとか調整額だとかというのを今後もどういう形で充実させていくかということになると思いますし、一方で、社会保障の負担を軽減するという大きな流れが政治的な課題としても出てきているということになると、これは働く世代の社会保障にかかるコストをどうやって減らしていくかという議論にもなってくるだろうと思います。
どうもプラスの方向とマイナス方向と両方が同時に議論されている今の状況から考えますと、現役世代と高齢者世代の負担のバランスを考えていくに当たって、客観的にニュートラルに判断をしていく、保険としてどうあるべきかということをしっかりと見極めていくということを進めなければいけない。その上で、最終的にどのような負担の方法を目指していくのかというのを明確にしていく必要があるのではないかと考えております。
以上でございます。
○田辺部会長 ありがとうございました。
それでは、中村委員、よろしくお願いいたします。
○中村委員 今までも発言しましたとおり、年齢ではなく負担能力による負担の在り方を考えていく必要があると私も思っております。つまり、労働所得だけではなくて金融所得を含めた所得とか資産とか、それから、被扶養者、特に子供数とか、もしくは介護・見守りが必要な被扶養者の数とか、そういったものを考えることが必要だと思っています。
医療保険が、特に日本の場合はリスクに対する備えというより、医療サービス受給への補助金という形になってしまっている面があると思うのですけれども、その点でも治療の費用対効果というものを考えなくてはいけないと思うのです。その効果というのは治療によってどれぐらい寿命が延伸されるか、それから、健康がどれぐらい改善して、それがどれぐらい持続するかということが重要になると思うのですけれども、そういう医療サービスを受けることのベネフィットが高齢者において現役世代よりも特別大きいわけではない。恐らくむしろ逆ではないかと考えられるわけですから、その点でも現役世代よりも高齢者に対して特段に医療機関の受診を促すような制度設計は問題があるのではないかと思います。
それから、高齢者の現役並み所得の判断基準については見直しが必要ではないかと思います。佐野委員が御指摘のように、例えば高齢者が実質的には若返っている、健康状態もよくなって就労も増えていることもあります。もう一つ気づいたところなのですけれども、現役世代と高齢者の違いとして、現役世代全員ではないですが、現役世代の多くでは子供の養育のために、教育費とか、非常にいろいろな費用がかかっているわけです。そうすると、例えば世帯の人数が違う場合に世帯所得の水準をどのように比べるかというときによく使われるのが等価可処分所得というもので、これは世帯全体の可処分所得を世帯員数の平方根を取ったもので割ったものです。
この分母の世帯員数が子供のいる現役世代のほうが高齢者より多いわけですから、世帯の可処分所得が同じでも等価可処分所得は小さくなります。。そのように考えますと、今の高齢者の現役並み所得の判断基準は非常に高い水準になっていて、そういう扶養しなければいけない子供の数、被扶養者数の現役世代と高齢者の違いを考えると、もう少し現役並み所得という水準を低くしてもいいのではないかと思いました。
以上です。
○田辺部会長 ありがとうございました。
それでは、城守委員、よろしくお願いいたします。
○城守委員 今、各委員からお話がありましたように、確かに若年者の人口が減少し続けている中にありまして、現役世代の負担が非常に多くなっているという状況を鑑みますと、47ページの論点にありますように、年齢にかかわらず負担能力に応じて負担するという視点というものは一定の理解をいたします。
しかし、高齢者の特性といいますか、その辺りを踏まえると、本日の資料では、確かに健康状態の改善を示すデータが出ておりますが、高齢になられますと、いずれ何らかの疾患が出てくることが一般的でございますので、その辺りも踏まえて丁寧な議論が要るかと思います。
28ページにございます高齢者の就業率の上昇とか、26ページの後期高齢者医療制度の被保険者1人当たりの所得額の推移の上昇、こういうデータがそういうものを示しているのであろうと思いますが、後期高齢者の1人当たりの所得額を見ましても、高齢者の所得は格差が非常に広いということは、24ページの高齢者の収入の状況を見ても、所得が高い人は数が少ないにしても非常に高い人もおられれば、一方で、低所得者層が非常に幅広く、そして、大部分を占めているという特徴があろうかと思います。
高齢者の収入の状況につきましては、平均値を見て判断するというのではなくて、平均値に比べ中央値がかなり低い状況を見ますと、所得の高い人に引っ張られている傾向はございます。さらにもっと詳しくデータを分析していただくといいますか、例えば住民税非課税世帯、先ほどお話もございましたが、そこの分析をもう少し精緻にしていただいたり、モデルの年金収入とか、介護保険での所得区分などの検討も必要ではないかと思います。
高齢者医療においての負担の在り方を検討するに当たりましては、今お話ししましたように、高齢の方の収入構造の特徴というものと、そして、先にも述べましたように、高齢になられますと、多くの疾患を抱えがちな傾向があるということがございますので、こういう身体的な特徴等も踏まえて、さらには現在、その検討が行われております高額療養費制度の見直し、これを併せてきめ細かな制度設計、そして、丁寧な議論、さらには分かりやすい周知ということが必要とされるのではないかと思います。
47ページの2つ目の論点の現役並み所得の基準に関してでございます。要するに保険料の基準は基本的には給与所得という形になっていると思いますけれども、27ページの所得の種類別の推移を見ますと、近年の興味深い高齢者の方々の所得の有りようを見て取れるかと思いますので、この辺りに関しましては、一定、今後基準を見直していくことに当たりまして大きな参考資料になるのではないかと思っています。
私のほうからは以上です。
○田辺部会長 ありがとうございました。
それでは、大杉委員、よろしくお願いいたします。
○大杉委員 様々なデータを御提供いただきありがとうございました。
これまでも議論してきましたように、負担能力に応じて支え合うという観点は理解し、そのとおりだと思います。現役世代の負担も大きくなっている状況も踏まえて、負担できる高齢者にもお願いするという点はある程度理解できますけれども、負担増に伴う受診控え等が起きることや、その後の健康被害を受けることを危惧いたしますので、できるだけ丁寧な議論をお願いいたしたいと思います。
私からは以上です。
○田辺部会長 ありがとうございました。
では、渡邊委員、よろしくお願いします。
○渡邊委員 全世代型の社会保障については、持続可能性を見据えて世代間も含めた給付と負担のバランスを考える必要があるかと思います。もちろん高齢者の健康状態の向上により就業率が上昇していたり、所得が上昇していたりするのであれば、社会環境としては大変望ましいことかと思います。その上で、負担能力の高さを判断する基準に関しては、丁寧な検討が必要かと思います。
ただ1点、検討の結果、変更を伴ってくることになった場合は、十分な周知期間であったり、丁寧な説明等による国民の理解であったり、その辺りに関しては丁寧な時間をかけて進めていただきたいと思いますので、よろしくお願いを申し上げます。
以上です。
○田辺部会長 ありがとうございました。
では、北川委員、よろしくお願いします。
○北川委員 この問題に関しましては、これまで皆さんが御発言されている議論のとおりなのですけれども、特に高齢者の皆さんの健康状態が改善してきているのではないか、あるいは就業率、所得も向上してきているというような点から鑑みますと、これまで議論されている現役世代と高齢者世代という大きく2区分にされているところが若干様変わりしてきているのかなと、いわば準現役というような世代ができつつある。少なくとも5年前との対比で数字を見てみる限りでも、そういった見方ができてくるのではないかなと考えております。
そうした観点に立ったときに、従前の部会でも申し上げましたが、22ページのグラフが今回の議論の中核になるのではないかと思っております。年代によって1人当たりの医療費は増えてくるという一方で、自己負担額がそれとパラレルにはなっていない。当然、所得負担能力という点を加味した制度設計ではあるとは思いますが、特に69歳から70歳で大きく下がっている部分に関しては、議論の余地が大いにあるのではないかと考える次第でございます。
論点の2つ目に関して、現役並み所得の判断基準や基準額、これはそれを進めていく上で大きな点になってくるかなと思っておりますけれども、高齢者の方の年齢別の受診行動、あるいは医療費の実態、所得状況、就業率の変化、また、所得の種類、中身、こういった点についてもきめ細かく分析をしていただいて議論を進めていくことが必要ではないかと考えております。
以上でございます。
○田辺部会長 ありがとうございました。
ほかはいかがでございましょう。よろしゅうございますでしょうか。
それでは、ほかに御意見等がなければ、本議題についてはこれまでとさせていただきたいと存じます。本日の意見も踏まえつつ議論をさらに深めていければと存じます。
次に「令和8年度診療報酬改定の基本方針について」を議題といたします。事務局のほうから資料が出ておりますので、説明のほうをお願いいたします。では、よろしくお願いいたします。
○山田課長 医療介護連携政策課長です。
資料3、診療報酬改定の基本方針についての1ページをお開きください。基本認識につきましては4点挙げさせていただいております。
1点目の基本認識は、日本経済が新たなステージに移行しつつある中での物価・賃金の上昇、人材確保、現役世代の負担の抑制努力の必要性です。1つ目の○でありますが、日本経済は持続的な物価高騰・賃金上昇の中にあり、一方で、医療分野は公定価格である。医療機関等の経営の安定や、現場で働く幅広い職種の賃上げに確実につながる的確な対応が必要である。
2つ目の○でありますが、いわゆる骨太の方針を踏まえ、医療機関等が厳しい状況に直面していることや、現役世代の保険料負担の抑制努力の必要性を踏まえつつ、地域の医療提供体制を維持する必要がある。
2点目の基本認識は2040年頃を見据えた医療提供体制の構築です。2040年頃に向けて人口構造や地域ごとの状況の変化に対応するため、限りある医療資源を最適化・効率化しながら、「治す医療」と「治し、支える医療」の役割分担を明確化する。また、労働環境の改善、業務負担軽減のさらなる推進が必要である。
2ページ目、3点目の基本認識です。医療DXイノベーションの推進など、医療技術の進歩や高度化を国民に還元する。また、創薬力・開発力を維持強化するとともに、医薬品などの生産供給体制の構築を行う。
4点目の基本認識です。社会保障制度の安定性・持続可能性の確保、国民皆保険を堅持して次世代に継承するためには、より効率的・効果的な医療政策を実現するとともに、国民の制度に対する納得感を高めることが不可欠です。
3ページをお開きください。4つの視点はそれぞれ重要でありますが、物価高騰・賃金上昇、医療従事者の人材確保が大きな課題となっていることに鑑みまして、視点1「物価や賃金、人手不足などの医療機関等を取り巻く環境の変化への対応」に重点を置くこととしてはどうかと考えております。
4ページ以降、基本的視点・具体的方向性になります。このページ以降、今回事務局ので書き下ろしております。
視点1、物価や賃金、人手不足など、環境の変化への対応です。
1つ目の○、人件費、委託費や医療材料費などといった物件費の事業費用が増加している。全産業において賃上げ率が高水準となっている中、医療分野はこれに届いていない。また、医療従事者が健康に働き続けることのできる環境を整備することは医療提供体制を維持していく上で重要である。
下段に具体的方向性を書いております。人件費、委託費や医療材料費等といった物件費の高騰を踏まえた対応、また、医療従事者の処遇改善、ICTなどの利活用の推進などを記載しております。
5ページ、視点の2つ目は、2040年頃を見据えた地域包括ケアシステムの推進です。2040年頃を見据えては医療機関の機能に着目した分化・連携、外来医療、在宅医療・介護との連携が重要である。
具体的方向性の欄でありますが、機能に応じた入院医療の評価、「治し、支える医療」の実現、かかりつけ医、かかりつけ歯科医、かかりつけ薬剤師機能の評価を記載しております。
6ページ、視点の3つ目は、安心・安全な医療です。具体的方向性としまして、救急医療、小児周産期、がん、精神医療、難病患者等に対する医療、そのほかに口腔疾患の重症化予防、地域の医薬品供給拠点としての薬局の評価などを記載しています。
7ページ、視点の4つ目は、効率化・適正化を通じた医療保険制度の安定性・持続可能性の向上です。制度の安定性・持続可能性を高める不断の取組が必要である。医療関係者が協働して効率化・適正化を図ることが求められる。
考えられる具体的方向性としまして、後発医薬品・バイオ後続品の使用促進、費用対効果評価制度の活用、実勢価格を踏まえた適正な評価などを記載しております。
最後に9ページをお開きください。今後の議論のスケジュールです。本日3回目の御議論をいただきます。本日の議論を踏まえまして11月下旬に骨子案を示させていただきます。骨子案は最終的な基本方針と同程度の文章量に書き下しましてお示ししたいと考えています。骨子案を基にもう一度御議論いただきまして、12月上旬に基本方針を定めていただきたいと考えております。
事務局からは以上でございます。
○田辺部会長 御説明ありがとうございました。
それでは、御意見等がございましたら挙手にてお願い申し上げます。
佐野委員、お願いします。
○佐野委員 何点か申し上げたいと思います。
まず、2ページの基本認識の◆の2つ目のところでございますけれども、持続可能性の中で、直近の決算においても相当数の健保組合が赤字で、保険料を引き上げているような事実がございますので、そういった中では、既に現役世代の保険料負担が限界水準に達しているということを基本認識の中で明記いただければと思っております。
次に、3ページの視点1~4でございます。前々から申し上げておりますけれども、今回も視点1が重点課題ということで提案されておりますが、視点2、3、4を含めて4つの視点はいずれも密接に関係する重要なテーマだと思いますので、どれか一つを重点課題にすべきではないと考えております。
それから、具体的方向性が4~7ページにわたって記載されていますけれども、この中で、医療機関の再編・統合による経営基盤の安定化も意識する必要があると思っております。また、医療提供体制の見直しを通じた医療の効率化も必要であるため、例えば急性期病院の集約化ということもしっかり記載すべきだと考えております。
以上でございます。
○田辺部会長 ありがとうございました。
それでは、井上参考人、よろしくお願いいたします。
○井上参考人 これまでの議論を整理いただきましてありがとうございます。
審議事項の2番目と重なるのですけれども、1ページ目の基本的認識のところで、現役世代の保険料負担の抑制努力の必要性を踏まえつつ措置を講じる必要がある明記をされておりますので、ぜひそれを意識しながら具体的な基本的視点にどのようにつながっていくのかというところを明らかにしていただきたいと思います。
4ページ目の1点目の視点でございますけれども、医療機関の厳しい状況、賃上げ、人材確保について、これまでのいろいろな議論を踏まえますと、医療機関ごとに経営状況が異なることもかなり明らかになってきておりますので、一律ではない対応をしていくべきだということを視点1の中に含めるべきではないかと考えております。
あと、基本的視点の4、効率化・適正化等々でございますけれども、今回、さらに外来や医療DXを含めていただいたこと、ありがとうございます。加えまして、例えば入院とかリハ、こういうことも効率化・適正化が必要だと思いますので、この辺りにつきましても検討いただければと思います。
以上でございます。
○田辺部会長 ありがとうございました。
それでは、城守委員、よろしくお願いいたします。
○城守委員 今回、ご提案いただきました視点の1~4に関しましては、いずれも大変重要な視点であろうと思いますので、これに沿っていくのだろうと思います。日医総研のほうでも行いました直近アンケート調査、前回も少し御案内いたしましたが、病院だけではなくて診療所も大変医療機関の経営状況が悪い。確かに100%赤字ということではないですが、病院は6割、7割、8割という形、そして、診療所も4割近くが赤字になっているというデータでございますので、医療の提供体制という点に関しましては、かなり重要なポイントになろうと思います。
そういう意味におきましては視点1、物価や賃金、人手不足などの医療機関、あと、取り巻く環境の変化への対応ということを重点課題として位置づけていただけたことはありがたいと感謝したいと思います。
私のほうからは以上です。
○田辺部会長 ありがとうございました。
それでは、大杉委員、よろしくお願いします。
○大杉委員 本日示されております基本的視点や具体的方向性については、おおむね賛同いたします。その上で、令和8年度診療報酬改定の基本方針について、3ページにありますように視点1を重点課題としていただいたことに賛成をいたします。
多方面からの報告もありますように、物価高騰や賃金上昇に伴う医療機関の経営は逼迫していることは明らかであり、喫緊の課題と考えておりますので、よろしくお願いいたします。
視点2では、2040年を見据えた医療機関の機能の分化・連携と地域における医療の確保、地域包括ケアシステムの推進の部分では中医協の歯科医療その1でも資料が出されておりますけれども、歯科医療提供においても、既に人口、医療資源が少ない地域が存在してきておりますので、何らかの対応ができるように御配慮をお願いいたします。
私からは以上です。
○田辺部会長 ありがとうございました。
では、渡邊委員、よろしくお願いします。
○渡邊委員 基本認識をお示しいただきましてありがとうございます。
その上で、薬局の現状を踏まえて、各視点においてコメントさせていただきたいと思います。
視点1の重要課題としていただいている部分に関しては、まさに急務だと感じています。薬局においても賃上げ対応には取り組んでいるのですけれども、他産業並みの賃上げは実現できていないというのが現状です。その中で人材の流出も食い止めなければならないという状況になっています。医療機関並びに薬局において、現状の物価高騰を上回る賃上げ実現に向けた公定価格の引き上げという部分に関しては、まさに記載どおりの急務でございますので、重ねてお願いを申し上げたいと思います。
視点2についてですけれども、外来・在宅、介護における多職種連携という部分に関しては大変重要な事項になります。それぞれの場合でかかりつけ機能を発揮した上で、連携の深化を図るべきという部分に関しては大変重要な進めるべき方向性だと思っています。また、これはタスクシェアも含めたチーム医療の推進ですので、病棟だけでなく地域医療においても重要な視点だと感じています。
3つ目、安心・安全で質の高い医療の推進においては医療DXやICT連携を活用する医療機関・薬局の体制の評価と記載されておりますけれども、薬局において先進的に取り組んできているDXの体制整備への評価も改めてお願いをしていきたいと思います。併せて情報活用による医療の質の向上という部分に関しての視点も踏まえての検討も必要かと思っています。
一方で、地域の医薬品供給拠点としての責務を果たすために、長引く医薬品の不安定な供給状態の中での対応をずっと要しているという状況にあります。これに関しては多大な労力を要しているところであり、本来であれば不要なはずの労力を費やして、ほかにしなければならない業務に費やせるべき時間を割いているという現状にあります。ぜひこの辺りの理解と支援という部分もしっかりお願いしておきたいと思います。また、併せて一刻も早い事態の収拾、安定供給を確保する方策という部分も必要かと思います。
最後に視点の4つ目、1つ目の項目に後発医薬品の使用促進が挙げられておりますけれども、視点3で今述べましたような不安定供給下では使用量自体を維持するだけで精一杯というような労力がかかっている状況にあります。そこに加えて医薬品等の納入において逆ざやの問題が大量に発生してきているという部分、そして、高額薬剤の在庫と廃棄が生じてきている部分があり、かなり大きな影響が出ているという状況があります。この辺りも併せて配慮と対応をお願いしたいと考えています。
それと、一部OTC類似薬と表記されている部分に関しましては、前回も申しましたように対象となってくる医療用医薬品に関する給付の在り方という部分を考えるのであれば、それは議論する余地があるのかなと思っています。
それと、下から3つ目に書かれております電子処方箋に関してですが、これに関しても薬局では80%を超えた状態で応需体制を整えてきている部分がございますので、その辺りの取組に関しての十分な評価をお願いしたいと思います。併せて現在80%ほどが既に調剤情報を電子処方箋管理サービスに登録をしているという状態になりますので、この辺りのデータの利活用という部分が、効率化・適正化という観点だけではなくて、医療の質の向上に資するものとしての観点での評価もお願いしておきたいと思います。
長くなりましたが、私からは以上です。
○田辺部会長 ありがとうございました。
それでは、島委員、よろしくお願いいたします。
○島委員 8年度改定に向けての基本的視点の方向性は非常に現在の課題を踏まえた内容になっていると思います。しかしながら、今、城守委員も言われたように、医療施設、特に病院とか診療所の経営が非常に悪化しているというのは、購入しなくてはならないいろいろな諸物価が高騰している、それから、水道光熱費も上がっている。診療報酬で保険診療をやっているところが一番大きな財源でございますが、その診療報酬の値が現在の経費等を含めた支出に対して対応できていないというのが一番大きな問題です。
したがって、今回の改定で、特に診療報酬の中身の基本診療料と呼ばれる初診料、再診料、それから、入院基本料がどれぐらい上がるかによって、経営が安定できるかどうかということにかかってくると思っております。このままどんどん病院・診療所が閉院・倒産していくということになれば、今後考えなくてはならない地域医療構想とかもあり得ないという話になってまいります。ですから、今回の診療報酬改定というのは、医療機関にとっては生きるの死ぬのというような非常に大きな話になっていますので、この視点に関するところはきちんと遂行していっていただけるような診療報酬に対応してもらわなければならないと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
以上です。
○田辺部会長 ありがとうございました。
藤井委員、よろしくお願いします。
○藤井委員 まず、前回の議論で申し上げました医薬品の安定供給・確保の重要性や、医薬品以外の分野における効率化・適正化について、今回の資料に盛り込んでいただき感謝を申し上げます。
その上で、重点課題とされている物価高騰等への対応についてですが、現場の厳しい状況を踏まえつつ、社会保障制度の持続可能性の確保についても併せて考えることが重要だと思います。今次改定が経営の厳しい医療機関の経営改善や、現場で働く方々の賃上げに確実に結びつくのか、その効果検証や透明性の確保が不可欠でございます。必要な部分が重点的に手当てされるよう、診療報酬上で一層のめり張りづけを行うことをお願いしたいと思います。
それから、昨今、OTC類似薬の問題がかなり話題になっておりますけれども、この根拠がいま一つ不明確なのではないか。あるいはスイッチOTC化を指すのか、それ以外も含むのかなど、いま一つ不明確なまま議論が進められております。スイッチOTCだけを指すのであれば、医療用医薬品と全く同じものですので、医師が管理できないままオーバードーズになってしまうという危険性もあります。また、それ以外のOTC、例えば1、2、3類とあるわけですけれども、2、3類などでは、それほどの相互作用、オーバードーズの問題は少ないわけですから、そのあたりを分けて考えておかないと大変な間違いを起こすのではないでしょうか。これは前回申し上げたとおり、消費者保護という観点からも慎重に議論すべきであり、薬歴管理もしっかりと行うべきだと考えております。
以上です。
○田辺部会長 ありがとうございました。
では、平山参考人、よろしくお願いします。
○平山参考人 医療従事者の賃上げや業務負担軽減を含む人材確保に向けた取組は不可欠と考えておりますので、資料3にありますように、視点1を重点課題とすることに異論はありません。
一方で、資料の4ページ目にあります「ICT、AI、IoT等の活用の推進や、これらを通じ診療報酬上求める基準の柔軟化等により医療従事者の業務の効率化、負担軽減等を行っていく必要がある」という部分についてですが、ICT等の活用により医療従事者の業務効率と負担軽減を行うことは重要でありまして、さらに推進する必要があります。それに当たっては国による費用面を含めた支援が必要ではないかと考えております。
一方で、診療報酬上求める基準の柔軟化という点について、具体的な内容は中医協での議論ではありますが、看護職員等の人員配置基準や各種加算における専従等の要件は医療の質の確保・向上を前提としたものであるべきでありますので、くれぐれも現場で働く労働者にしわ寄せが行くようなことがないよう、慎重な検討が必要と思われます。
私からは以上です。
○田辺部会長 ありがとうございました。
ほかはいかがでございましょう。よろしゅうございますでしょうか。
それでは、ほかに御意見等がなければ、本議題についてはこれまでとさせていただきます。本日いただいた意見も踏まえつつ、さらに議論を深めていければと存じます。
ほかに全般に関わるもので御意見は何かございますか。よろしゅうございますか。
では、本日はこれまでといたします。
次回の開催日につきましては、追って事務局のほうより御連絡を申し上げます。
本日は御多忙の折、御参加いただきましてありがとうございました。
それでは、これで散会いたします。



