第1回 企業年金の加入者のための運用等の見える化等に関する懇談会 議事録

日時

令和7年10月7日(火)14:00~16:00
 

場所

オンライン会議

出席者

議題

1.企業年金の加入者のための運用等の見える化の具体化に向けての検討
2.企業型DCの適切な商品選択のための取組・推進     等

議事

議事内容

○海老企業年金・個人年金課長 それでは、定刻になりましたので、ただいまより第1回「企業年金の加入者のための運用等の見える化等に関する懇談会」を開催いたします。
 御多忙の折、お集まりいただき、ありがとうございます。
 本日は、懇談会の第1回に当たりますので、朝川年金局長から御挨拶申し上げます。
○朝川年金局長 年金局長の朝川です。
 「企業年金の加入者のための運用等の見える化等に関する懇談会」の開催に当たり、一言御挨拶申し上げます。
 構成員の皆様方におかれましては、それぞれ大変お忙しい中、当懇談会の構成員をお引き受けいただき、誠にありがとうございます。改めて御礼申し上げます。
 さて、令和7年5月16日には年金法の改正案をさきの通常国会に提出いたしまして、衆議院で修正の上、6月13日に成立いたしました。この法律は、働き方や男女の差等に中立的で、ライフスタイルや家族構成の多様化を踏まえた年金制度を構築するとともに、所得再分配機能の強化や私的年金制度の拡充等により高齢期における生活の安定を図るためのものです。年金制度改正のうち、私的年金制度につきましては、iDeCoに加入できる年齢の上限の引上げ、企業型DCの拠出限度額の拡充、企業年金の運用の見える化などを行うこととしております。
 企業年金の運用の見える化におきましては、企業年金の情報を一般に公開することで他社との比較や分析ができるような環境を整え、企業年金を行う主体やその加入者などが加入者等の最善の利益のために運営を改善できるようにすることが有益と考えられます。
 厚生労働省が企業年金や実施事業主等から報告されます報告書の記載事項のうち一定の事項を公開する上では、開示方法や開示項目などの検討すべき課題があり、制度導入に向けて実務的な観点から議論を積み重ねていく必要がございます。
 加えて、令和7年6月に閣議決定されました「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025改訂版」においては、企業年金の運用の見える化等については資産運用立国の取組の深化の一つとして含められておりますほか、企業型DCについて足元の物価が上昇する市場環境下において元本確保型商品では実質的な購買力を確保できない可能性があることについて、事業主は加入者に対して、より丁寧に説明する必要があるなど、事業主による加入者等に対する投資教育の重要性も述べられているところです。このように私的年金をめぐっては相互に関連する課題があり、一つ一つ丁寧に議論していく必要があるわけですが、企業年金の運用の見える化をはじめとした議論をお願いしたいと考えております。
 当懇談会の構成員をお引き受けいただいた皆様方におかれましては、それぞれがお持ちの豊富な知識、経験を存分に発揮していただき、忌憚のない御意見を賜りますよう何とぞよろしくお願いいたします。
 以上をもちまして、開会に当たっての私からの挨拶とさせていただきます。何とぞよろしくお願いいたします。
○海老企業年金・個人年金課長 続きまして、構成員の皆様の御紹介をさせていただきます。五十音順に御紹介させていただきたいと思います。
 大江加代 NPO法人確定拠出年金教育協会理事兼主任研究員
 川上知紀 トヨタ自動車企業年金基金常務理事
 鮫島正大 企業年金連合会理事長
 藤澤陽介 早稲田大学大学院会計研究科客員教授
 本間智克 NEC企業年金基金常務理事
 森戸英幸 慶應義塾大学大学院法務研究科教授
 渡邊絹子 筑波大学ビジネスサイエンス系准教授
でいらっしゃいます。
 今回は、大江構成員、川上構成員、鮫島構成員、藤澤構成員、本間構成員、渡邊構成員の皆様はオンラインにて御参加いただいております。
 事務局からの出席者につきましては、お手元の座席図を御覧いただければと思いますので、紹介に代えさせていただきます。
 続きまして、資料を御確認いただきたいと思います。本日は、資料1から3、参考資料1と2、鮫島構成員提出資料を用意しておりますので、御確認ください。
 また、本日はオンライン会議としておりますので、御意見や御質問等ある場合には挙手または挙手ボタンにてお知らせください。
 次に、座長の選任について御報告申し上げます。
 座長の選任につきましては、本懇談会開催要綱において「懇談会の座長は、構成員の互選により選出する」こととしております。
 事前に本懇談会の構成員に互選いただきまして、森戸構成員に座長をお願いすることとなりましたので、御報告させていただきます。よろしければ座長より一言御挨拶をお願いいたします。
○森戸座長 座長にお選びいただきました森戸でございます。
 構成員の皆様の御協力を頂きながら円滑な議事運営に努めてまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、議事に入りたいと思います。
 本日は「企業年金の加入者のための運用等の見える化の具体化について」「企業型DCの適切な商品選択のための取組・推進について等」を議題といたしたいと思います。
 初めに「企業年金の加入者のための運用等の見える化の具体化について」、事務局より説明をお願いいたします。
○海老企業年金・個人年金課長 資料1を私のほうから御説明できればと思います。資料は事前にお送りしているものと同じものを画面上にも表示させていただいておりますが、資料1「企業年金の加入者のための運用等の見える化」についてでございます。
 1ページ、おめくりいただいて、企業年金の運用等の見える化(情報開示)に係る制度見直しについてでございます。企業年金・個人年金部会でもこの点、御議論いただいてきたところでございますが、現在の制度では、企業年金の情報は加入者など本人には通知されている、あるいは厚生労働省には報告義務があるというところですが、一般には公開されていないという状況です。このため、企業年金の情報を一般公開することで他社との比較や分析ができるような環境を整えるという、年金制度改革法案の中で法律上の手当てをしているところでございます。
 「見直しの内容」と書いてありますが、企業年金の運用の見える化(情報開示)として、厚生労働省が当該報告書の記載事項のうち一定の事項を公開することとするという形になっておりまして、法律上は厚生労働省が集約して公開するという、法令上の手当てをしているところでございます。
 真ん中の図にありますとおり、企業年金等が業務報告書を出していただき、厚生労働省のほうでそういった報告を受けた上で情報を一定開示していくといった形を想定しております。
 下の枠にございますのが、もともと企業年金・個人年金部会でもこの点、大枠を議論していただいていたところでございます。業務報告書等を出していただいて厚生労働省で集約する、そういったことが書いてありますが、次ページ以降、この大枠のところをさらに基本的な方針あるいは項目について本日御議論いただきたいと考えております。
 次のページでございます。企業年金の運用等の見える化の具体化に向けての検討方針でございます。まず、見える化の目的としては、加入者・受給者等や企業年金の担当者が自社の企業年金の理解を深めるとともに、他社との比較を通じ、よりよい企業年金の運営につなげていくことと書いております。
 また、具体化の方法についてでございます。開示項目は、DBに関しては毎年提出される事業報告書・決算に関する報告書の報告項目に、DCについては毎年RKを通じて提出される事業主の業務報告書の報告項目に基づくものとし、分かりやすさの観点等も考慮して設定する。また、開示の方法としては、最新の事業年度の報告内容が確認できるように集約してインターネットサイト上に公表する。また、その際、加入者の理解を促進する観点から、分かりやすさにも配慮して、検索できるように、あるいは他社との比較が可能となるように留意するということで書いております。
 具体化に当たっての留意点でございます。1つ目は、加入者が自社の企業年金の基本的な情報のほか、制度の概況やその詳細が確認できるといったこと、また、DBについては各制度の制度設計、給付実態、財政状況、資産運用状況等が確認できるものであるということ、また、DCについては各制度の運営管理機関、運用商品等が確認できるといったことを書いております。
 2つ目は、名称のほか、設立・実施形態、加入者の規模、資産規模、様々な条件で個別の企業年金を検索できるような形というところ、DBについては給付設計、予定利率といった条件、DCについては規約・事業所単位、運用の方法の選定・提示を行う運営管理機関等によっても検索できること、また、運用商品を検索して選定・提示した運営管理機関のユニバース公表サイトにも遷移できる、このようなことが必要なのではないか。
 3つ目は、企業年金の情報を見るに当たっては、留意点、分かりやすい用語解説があるということ。
 4つ目は、自社の企業年金が他の企業年金と比較してどういった状況にあるのかがグラフ等により把握が可能であること。
 5つ目は、自社以外の企業年金との比較分析が可能となるように、企業年金全体のほか、様々な階層別のデータ等を示すことによって統計情報を分かりやすく公表するといったこと、こういったところを基本的な検討方針ということで整理しております。
 この基本的な検討方針を踏まえて具体的な項目について整理しております。
 次のページがDB制度の開示内容(案)ということでまとめています。DBの開示項目(案)に関しましては、1、2、3、4、5と書いておりますが、基本情報、制度設計、給付実績、財政状況、資産運用状況、こういったものについて小項目に挙げられている項目に関して開示されるというところです。基本情報であれば、基金名・事業所名、加入者数、実施事業所数といったもの、制度設計に関しては、年金支給期間、一時金選択の可否、給付設計、予定利率、掛金相当額といったもの、給付実績は、給付の件数、給付の総額、財政状況に関しては、積立状況、掛金拠出状況、成熟度といったもの、資産運用状況に関しては、運用の基本方針、期待収益率、リスクといったもの、資産構成割合、自家運用の有無、運用実績、実施体制、こういったものを開示項目として整理してはどうかということで今回お示ししております。
 開示の対象となるDBの案についてです。企業年金・個人年金部会において企業年金の見える化の議論をした際に、対象となるDBに関して、一定程度、特に小さいところに対する配慮も要るのではないかといった御議論があったところです。その点も踏まえて、今回、開示対象のDBについて整理しております。
 まず、基金名・事業所名、制度の基本情報は、規模によらず全DB開示対象とするということ、これは検索結果として表示されるということです。
 制度設計や給付実績、財政状況、資産運用状況といった概況やその詳細については、加入者数100名以上、資産額10億円以上のDBを対象として、この要件に満たないDBの各種数字に関しては、一律非開示情報、アスタリスクのような表示にするということです。
 加えて、規模要件以上であっても項目別に見たときに個人情報保護の観点から非開示とすべき場合は、そういった項目に関してはその数値を非開示とするということ、具体的には対象者が10人未満のような場合に非開示とするということです。
 規模要件や開示基準の判定に関しては、事業年度ごとに報告内容に基づいて行うということで整理しております。
 続きまして、DCの項目に関してです。次のページを御覧ください。DC制度の開示項目に関しては、大項目が1、2、3、4、5と書いてありますが、制度の情報、運用の方法・運用の指図にかかる情報、指定運用方法の状況、加入者の資格喪失者(離転職者)の情報、その他と書いてあります。
 制度の情報に関しては、規約名、各種の基礎的な情報、加入者数、加入者の平均年齢、運用指図者数、掛金総額、加入者掛金がある場合にはその状況、こういったものを想定しております。
 2つ目の運用の方法・運用の指図にかかる情報ですが、運用の方法ごとに、商品名、元本確保型か否かの分類、種類、資産額、加入者数、運用指図者数等、基本的な情報を見ることができるというもの、また、そういった制度に関する運用実績が分かるというところを項目として整理しております。
 3つ目、指定運用方法の状況に関しては、指定運用方法を提示しているかどうか、提示している場合にはその商品名や種類、実際に適用されている方の人数、適用資産額、年度、こういった基本的な情報を整理しております。
 4つ目、加入者資格喪失者に関しては、いわゆる自動移換されていくような方というところですが、実際に自動移換された方の割合を想定しております。
 その他は、検索に必要な事業所の所在地などの情報も併せて取得してはどうかというところです。
 開示対象DCに関してです。事業所名・規約名は規模によらず全件開示とするというところ、個人情報保護の観点から非開示とする項目を定めるというところはDBと同じですが、対象者が10人未満の場合ということで整理しております。
 ここまでは開示の項目です。
 次は、新規に報告を求める事項に関する定義の案ということで、今まで取ってきていない設立・実施形態、特に総合型かどうかというお話は、企業年金・個人年金部会でも、そこは何らかの形で把握できるようにするべきではないかといった議論もあったところも踏まえまして、こういった項目を求めるということを考えています。あと、専門性の確保・向上に関する取組に関しても、新たに報告する事項ということで整理しております。
 続きまして、次のページは「統計情報の充実」と書いております。現在、厚生労働省ホームページにおいて、DC、DB、それぞれ統計情報を公表しているところです。今回、企業年金の運用等の見える化に関するシステム導入後は、その機能として、自社以外の企業年金との比較が可能となるような情報を提供することを想定しております。こういった情報をデータベースとして整理する中で、統計情報も充実させていくことを考えているということでございます。
 DCに関しては、現在、運営管理機関連絡協議会の統計情報というものがありますけれども、厚生労働省としても、業務報告書等を基にした統計情報の公表を進めていくことを想定しております。
 DBに関しては、現在の統計情報に加えて、現行、全体の制度数や実施事業所数、基礎的な情報を中心に公表しているところですが、さらに統計の情報の充実を進めていきたいと、現在、統計情報の充実も進めているところなので、システム導入以前でも可能な限り統計情報の充実は進めていきたいと考えています。
 次に、スケジュールですが、今後の予定をまとめています。令和7年度内、今年度中は、新しいシステムの設計・開発のための要件整理、調達の手続、来年度にかけてシステムの設計・開発、テスト等の実施、同時期に並行してに企業側や受託機関、あるいは運営管理機関等でシステム対応の準備期間が必要ですので、そういったことをやっていく。こうしたの準備を含めて、令和9年度中に新しいシステムを稼働し、オンラインでの業務報告書の提出をスタートしていく、こういったことを考えているところです。
 赤枠のところに注で補足を書いていますが、現状、DBに関してはまだ紙で報告いただいているのが主流になっているところでございますので、今後、電子的に提出を求めていくことを想定しております。それに当たって、新しい報告書の様式や様々提出方法の見直しなど、準備期間が必要となりますので、本日の御議論も踏まえつつ、報告書の新しい様式などの準備を進めていきたいということです。
 最後に、企業年金・個人年金部会の議論の整理の抜粋をつけています。
 説明としては以上です。
○森戸座長 ありがとうございます。
 それでは、ただいま説明のありました資料につきまして、構成員の皆様から御質問、御意見等があれば頂きたいと思います。
 では、資料も提出していただいていますが、鮫島構成員からお願いいたします。
○鮫島構成員 ありがとうございます。
 企業年金の資産運用の見える化ということですけれども、これにつきましては、これまでも私の方から企・個部会で意見を申し上げてきましたが、この懇談会の開催に当たりまして、改めて企業年金の現場の声を取りまとめて文書を提出しましたので、私どもの提出資料を御覧いただければと思います。
 まず、見える化の目的についてですが、企業年金を実施する事業主や加入者等が他社の運用状況との比較を通じて、よりよい運用を目指すことであると認識しております。したがって、私どもとしては、こうした目的に資する運用関連情報は開示する一方、目的と直接関係がなく企業年金の運営に支障を生じかねない事項については開示すべきではないというのが基本的な考え方です。
 実際のところ、企業年金の現場では、個別名称が分かる形での運用の見える化について今なお不安が非常に強いのが実情で、制度設計や運用方針が異なる中での単純な横並び比較は誤解を招きかねないといった声があるほか、不特定多数が閲覧する結果、企業年金の運営面で支障が生じるのではないか、例えば一部を切り取った不適切な分析記事や、不適切な営業活動に伴う負担や不利益が発生するのではないかといった懸念の声も数多く聞かれます。こうしたことを踏まえまして、私からは3点お願いしたいと思います。
 まず第1に、情報開示の目的、すなわち加入者のための見える化であるという趣旨を法令上明確にするとともに、ウェブサイトにも明記していただきたい。また、目的外利用の防止につきましても、法令に規定を設ける、ウェブサイト上に説明を掲載するといった方策をお願いしたいと思います。企業年金としては、目的外利用による弊害の防止に向けてそうした動きを牽制する工夫をお願いしたいと考えます。
 第2に、開示情報への加入者等の適切な理解を促すため、ウェブサイトでは項目ごとに十分な説明や注釈を加えるとともに、事業主や加入者等がよりよい運用を目指す上での適切な使い方、第三者が使う場合の留意点などについて解説することが必要と考えます。利用上の手引きやガイドラインのようなものです。
 最後に、今回の情報開示に当たっては、報告書電子データのオンライン提出に加えて、新しい報告事項の追加や報告書フォーマットの変更が予定されているようですが、少人数で、また乏しい事務費の中でシステム経費をやりくりしている企業年金は数多くありますので、企業年金の負担が最小限となるように実情を踏まえた慎重な検討をお願いいたします。また、システム対応等の準備期間につきましても、無理のないスケジュールを前広にお示しいただくなど、十分に御配慮いただくようお願いいたします。
 私からは以上です。
○森戸座長 ありがとうございます。
 現場の声をまとめていただいたということです。非常に重要な御指摘もあったと思いますので、もちろん、これから見える化を進めていく上で、サイトのつくり方等々も含めて、運営面も含めてですけれども、その声に十分配慮して進めていただければと思います。
 御意見になかったというか、ここになかった、直接は書いていない具体的な提案も、今、頂いていたかと思いますので、それもまた後で御意見があれば、ほかの構成員の方も頂きたいと思いますが、事務局から何か今の御意見について、何かコメントありますか。
○海老企業年金・個人年金課長 御意見頂きまして、ありがとうございます。
 今、鮫島構成員から頂いていたお話というのは、企業年金・個人年金部会での議論の際にもいろいろな形で懸念する声ということで頂いていたと私どもとしても受け止めております。他方、企業年金の見える化の趣旨というのは非常に重要だというところで、この点、御理解を求めるというところは繰り返し御説明を差し上げてきたところです。ただ、実際に情報が一般に開示されるようなったとき、誤解なきように手だてをちゃんと打つべきということは非常に重要な点だと考えておりますので、我々としても誤解がなきような形で活用いただけるように考えていきたいと考えます。
 以上です。
○森戸座長 ありがとうございます。
 私も一言だけ。鮫島構成員の御指摘、非常に貴重な御意見が多かったと思いますが、意見を頂いたほうに書いてあります、誤解を招くことがないような見える化をすべきだ、これもこのとおりで、ただ、その後、DB、DCのところの人事・報酬戦略や労働条件が推測される情報は、開示というか、見える化するのは慎重に考えたほうがいいのではないかという御意見かと思います。趣旨は分かるのですけれども、もちろん目的も明確化しろということですが、先ほど課長からの資料の説明にもあったように、他社との比較を通じて、よりよい企業年金の運営につなげていくという目的ですので、企業年金もやはり人事・報酬戦略とか労働条件の一部ですので、労働条件に関わる、関わらない、報酬戦略に関わる、関わらないという線引きは少し難しいかなという気もしております。そこをどうやって折り合いをつけるかということだと思いますが、目的を踏まえて、この御意見を十分参考にこれから議論していければと思います。ありがとうございました。
 それでは、ほかの構成員から御意見があればと思いますが、ほかに御意見ある方、いらっしゃいますか。
 川上構成員、お願いいたします。
○川上構成員 川上でございます。
 今ちょうど開示情報に関するお話が出ましたので、私のほうからDB制度の開示項目(案)に関する意見ということで述べさせていただいて、次に、見える化全体に関する実務を担っている者の意見ということでも追加してお話をさせていただきたいと思います。
 まず、私としては、新規でDBの項目に上がっている、掛金相当額、給付総額、掛金拠出状況(標準掛金、特別掛金等)については開示すべきではないと考えております。DBは、通常、企業の退職金の一部でございます。掛金相当額や標準掛金は退職金のDB部分の水準に応じて算定されますし、給付総額と給付件数からは1件当たりの老齢一時金や老齢年金が算定されます。これらの拠出給付水準からは企業ごとのDBの水準と差が推測されるため、開示すべきではないという考えでございます。
 企業は、通常、従業員の報酬水準は社外秘として取り扱っておりまして、一般に非公開としています。DBも、賃金、賞与、各種手当、福利厚生補助とともに、多様な企業ごとに個々の事情に応じて積み上げられてきた報酬の一部でございます。従業員の処遇、すなわち賃金、賞与、各種手当、退職金、福利厚生制度だけではなくて、勤務制度、休暇制度、働き方や職場環境など、それらトータルのパッケージで企業の経営計画と業績、生産性向上の状況に応じて労使が短期・中長期で課題を話し合って、労使合意の下で改善を積み重ねて今の水準があると思っております。そうした水準と差を推測させる項目は一般公開したくない、仮に公開されたとしても、処遇全体の中でDBのみの水準の他社比較は適切でない、あるいは有効でないと考える企業は多いのではないかと思われます。
 また、掛金や給付額は退職金の水準を推測させるだけではなくて、企業年金の多様な設計によって多様な数値になります。掛金は、職種や人員構成が異なる企業ごとの基礎率、あるいは特に設定する予定利率によって異なりますし、給付額は、退職金に占めるDBの比率、一時金や年金の選択率、10年、15年、20年といった保証期間、有期・終身といったことから、企業が長年積み上げてきた多様な制度によって異なりますので、一般の加入者や受給者が違いを理解することは困難だと思いますし、単純な数値比較は誤解を招くので、不適切だと考えております。
 さらに、御承知のとおり、DB法にのっとった規約に基づいて運営する我々基金や企業は、加入者等の受給者保護のために、積立て、受託者責任、情報開示、これらの義務を確実に果たして規約に定められた確定給付額を確実に給付し続けること、これを使命として日々凡事徹底するとともに、給付事務等の業務運営の改善に取り組んでおりまして、そうした実務を担う者としてもこれら給付水準の他社比較が業務運営の改善につながるとは思えません。
 また、もう一点、今回の見える化に当たって、個別の事情に応じた対応としてDB制度やDB法に基づいた規約、運用ガイドラインでやっておりますので、成り立ちとか運営状況も多様であるということから、基金や企業によって任意に補足説明等を入力できるような留意事項というか、コメント欄を大項目ごとに設けてはどうかと考えます。
 開示項目に関してもう一点ですが、先ほど、新規、設立・実施形態を総合型、それ以外でくくるというお話がございましたが、統計情報につきましても、いわゆる設立形態は総合型とそれ以外の、いわゆる単独連合型は一くくりにした統計情報ということにしてはどうかと考えております。
 以上が開示項目に関する意見でございますが、その他見える化全体に関する意見として、先ほどもあったかもしれませんけれども、いろんな目的がございますといったところで、これらの開示項目の他社比較をどのように分析して活用すれば加入者等に必要で有益な情報となるのか、あるいは基金や企業がどのように制度運営の改善につなげられるのか、今回の政策における課題認識と目的を踏まえて、目的外利用の防止を図ることに加えて、適切に利用されるためにどういうふうに使えるのか、開示情報の利用の仕方を具体的に示すとか例示するということがもしできればよいと考えます。
 もう一つは、施行後の評価と改善についてですが、サイトがどういうふうに活用されて課題に対してどう効果があったのか、また目的外利用のあり・なしの確認とか、様々な方々からの問合せ等によって基金や企業の運営負荷が増加していないか、そういったことを含めて、基金や企業への実態調査を踏まえた結果の把握・評価、その共有と対策をしていくといった改善のサイクルを回していくことが大切と考えております。
 最後になりますけれども、施行に当たっての周知も必要かと考えております。今、企業年金連合会ほか、業界団体に属する1200程度の基金あるいは企業がございますけれども、この制度の対象になっているのは一万一千数百でございます。約9割近くはそういった活動をしていなくて、我々こういった活動をしている者としては一定程度の認識はしているのですが、それ以外のところについてはどの程度認識が浸透されているかといったことに大変疑問を持っておりますので、施行に当たっては特に運営改善を担う企業への周知も御考慮いただく必要がある、このように考えております。
 私からは以上でございます。よろしくお願いいたします。
○森戸座長 ありがとうございました。
 こちらもやはり現場の声を踏まえた貴重な御意見であったかと思います。
 ついでにということではないのですが、今、実施形態の話、総合型とそれ以外の話が出まして、統計情報では単独と連合一緒にというお話もあったかと思います。まず、一点私からの事務局への確認ですけれども、おっしゃった資料1の5ページの「設立・実施形態は、『総合型』『総合型以外』で分類する」ということになると、いわゆる連合型も総合型以外に入るのか。
○海老企業年金・個人年金課長 資料1の5ページに「新規報告項目の定義等」ということで整理しております。設立・実施形態は総合型、総合型以外ということで書いてありますが、総合型の定義のところで「複数の厚生年金適用事業所の事業主によって共同して設立・実施されており、人的関係、資本関係が緊密でない事業所の事業主により設立・実施されるもの」ということになりますので、私の認識ですと、先ほど川上構成員からお話があった連合型と言われるものに関しては、この総合型には入らないような、資本関係や人的関係が密接なものというくくりになるのかと思います。
○森戸座長 ありがとうございます。そう言われればそのとおりですね。
 私、ついでに聞きたかったのは、3ページの開示対象DB(案)の「加入者100名以上又は資産額10億円以上」という、もちろんこれ自体また議論するのですが、この加入者というのは、制度ごと、例えば総合型だったらどうなるのですか。総合型全体で、全体は総合型だから100名超えるのでしょうけれども。
○海老企業年金・個人年金課長 制度ごとという整理です。総合型の基金の場合には制度が基金として一つになるので、その制度としての加入者数・資産額で判断することになります。
○森戸座長 連合型みたいな、連合型は総合型以外なのだけれども、資本関係があるけれども、グループでやっているようなやつは、それもこっちへ入るのですね。事業主ごとに出るというのは今回の案だとないのですかね。
○海老企業年金・個人年金課長 まず、DBに関しては基金型か規約型かによって表示というか、もともとの制度の捉え方が異なっておりまして、基金型の場合には基金という会社とは別の法人格がありますので、そこが制度の一つの単位となっております。規約型の場合には複数の事業所が集まった形で制度を構成しておりまして、幾つか事業所がたくさんあるというような形で、会社としても別形態のものでありますし、そういったところが集まっているところという形になります。
○森戸座長 事業主ごとの大きさではなくて、あくまで制度の加入者という、ここでの100というのはそういうことですね。
○大江構成員 大江です。
 今のところの確認ですが、海老課長のお話は規約型のお話と思ったのですが、規約型は単独なので、事業所として、まさしくA社ならA社のままの数字がダイレクトに出るというふうに私は理解しているのですが、合っていますか。
○森戸座長 ややこしいのですが、同じ企業でも複数事業所の場合もあるのですよね。
○海老企業年金・個人年金課長 そうです。
○大江構成員 規約型でも複数事業所の場合があるということですね。
○海老企業年金・個人年金課長 制度上は、厚生年金適用事業所としての単位で我々は事業所という言い方をしていまして、規約型の場合に複数の適用事業所で構成されているようなケースというのもあると認識しています。
○森戸座長 これをやり出すとこの話になってしまうので、このぐらいにしますが、要は、こういう辺りも、どういう数字が出ているのかというのをきちんとこちらも理解しなければいけないけれども、見たほうが理解できるのか、まさに変な比較とか誤った利用をされるのではないかという話にもつながるので、分かりやすく、しかし、ちゃんと間違いのないのをどうやって開示するかという大問題だと思います。これは鮫島構成員、川上構成員が御指摘いただいたこととつながっていると思います。
 川上構成員のお話に戻りますが、貴重な御指摘を頂きました。鮫島構成員もおっしゃったように、いわゆる目的外利用とおっしゃったこと、これも確かに変なふうに使われたら困るというのはよく分かるのですが、開示されたものをどういう目的で使うかというのに規制というか、枠をはめるというのはなかなか難しいかなと、聞いていて思いました。ただ、そこもお二人から御意見を頂いていますので、そうした点も留意していく必要があるかと思います。
 
 では、本間構成員が挙手されていますので、御意見をお願いいたします。
○本間構成員 NEC企業年金基金の本間です。今日はよろしくお願いします。
 先ほど鮫島さんが提示した資料をもう一回出してもらうとありがたいです。後半の確定拠出年金の部分ですが、大事なポイントが2つあります。
 1つは「開示項目として追加すべき項目」です。今回の見える化の目的、冒頭で話を頂きましたが、企業や加入者の適切な商品選択や制度改善につながるためのものとなっております。つまり、企業や加入者がよりうまく運用できたり資産を増やしたりするように行動変容を促すために必要な項目を開示すべきというふうに理解しています。それであれば追加していただきたい項目としては、ここに上げた5点がございます。投資教育の実施状況、運営管理機関評価の実施の状況、加入者ウェブサイトへのアクセスの年間件数、スイッチング・配分変更の年間件数、運用商品の信託報酬・運用利回り・ベンチマーク、こういった点は、他社比較という意味で自分たちがどんな立ち位置にあるか分かる、それによって刺激を受ける項目だと思いますので、ぜひ考えてもらえたらと思います。
 ポイントは、次の「開示すべきではない項目」でして、川上さんのお話と重なるのですが、実はDC年金のほうはここが切実です。というのは、DB年金の場合は、あくまでも基金型もしくは規約の中の、ある意味、事業所単位ではないのです。ですから、ある程度薄まった形で、あと、大企業の場合は一本の形、ある意味、開示された、要は「四季報」だとかに載っている労働条件に類似したものみたいな形で出てくるかもしれません。そういった形なのですが、DCの場合は、事業主単位となると何が問題かというと、例えば総合型DC年金を構成する中小企業の労働条件まで開示されることにつながるかと思います。こちらは、それぞれの経営者からすると寝耳に水の話だと思いますので、ここは慎重に、10人という制限ではとてもじゃないが厳しいのではないかと思います。せめてここはもう少しバッファーを持った形、先ほどDBのほうで出ましたとおり、加入者数100名以上だとか、せめてそれぐらいまでは引き上げてもらわないと厳しいのかなと感じております。
 最後の運用商品の表示方法に関しましては、前々からもいろんな方々が指摘している話なのですが、全てのDC年金の運用商品を一覧で表示できれば、いろいろ比較検討ができます。ですので、自分たちの運用商品が適切なものかを判断するためには、比較できるようなデータベースがあるとうれしいということですので、よろしくお願いします。
 私のほうから以上です。
○森戸座長 ありがとうございます。
 鮫島構成員の提出資料の項目を見ていただくと分かりやすいと思いますが、今の御意見ですとDCのほうですね。追加すべき項目もあるけれども、他方で、より開示すべきでないほうは非常に切実な問題が起き得るのでということで、慎重な御意見を頂きました。ありがとうございます。
 こちらは、開示すべき項目、追加でという御意見でしたけれども、これはもちろんこれから検討していくのですけれども、今の案ですと、これは一応入っていないのかなと思いますが、そこを線引きされた理屈というか、理由は何かあるのですか。
○海老企業年金・個人年金課長 ありがとうございます。
 まず、DCの、今、書いてある「開示項目として追加すべき項目」ですけれども、こちらは各企業、事業所ごとの運営の状況に関わるような項目ということかと思います。現状を申し上げますと、DCに関しては、業務効率化の観点から、過去、業務報告書の簡素化を行っておりまして、その際に基本的な事業に関する項目に関してはRK経由で報告するということに制度上なっております。また、継続投資教育などの運営の状況に関しては、やっているか、やっていないかだけではなくて、どういう形でやっているかという点も含めて、もう少し詳しい情報を事業主から報告してもらうような形で報告書を求めています。これは地方厚生局に対して5年に一回報告を頂くような形で現状報告を求めているところでございます。
 今回、システムの中で見える化を進めていくというところに関しては、RK経由の業務報告書を基にまずはやっていくということで一旦整理させていただいているということがここの項目に上がっていない一つの理由です。他方、今、頂いたような継続投資教育の状況、特に事業所ごとの様々な状況について、より詳しく把握していくべきだという御意見に関しては、そういった観点は非常に重要だと思っております。今回、システムをつくる際に、事業所ごとに報告いただいているものに関しても、今回のシステムの中で報告いただくことが可能となるように開発していこうかと考えております。その際に、RK経由で報告している業務の報告の内容と別の形で報告いただいている継続投資教育などの報告に関して、報告としては両方、別ルートだけれども、出していただくという形になります。ただ、それを同時にうまくひもづけて開示できるかというのは技術的なところがありますので、我々として持っている情報をどのような形で活用していけるのかというのは検討していきたいと考えております。
○森戸座長 ありがとうございます。
 いろいろ技術的な問題もあるようではありますが、ただ、今、現場の3人の構成員の方から、見える化の項目について割と慎重な御意見の中で、ここは開示していいというのだから、ぜひここは積極的に、何かいい形でできないか、これから検討していければと思います。ありがとうございました。
 それでは、ほかの御意見ある方、では、大江構成員、お願いいたします。
○大江構成員 御説明どうもありがとうございます。
 私のほうからは、今、まさしく海老課長がなぜできないか御説明いただいた部分について、ぜひ前向きに御検討を進めていただきたいと思っているところです。というのは、私は特にDCの分野を見ているわけなのですけれども、加入者の利益につながる運営改善を促すということからいいますと、この数字を見た事業主が教育を行うとか適切な商品を提示するというアクションにつながる開示でなければ、目的にかなわないのではないかと思っております。挙げていただいている項目で横比較することによって、できていない点は世の中にさらされるかと思うのですが、それをどう改善するかという参考になる情報が十分ではないと感じております。タイミングとか順序とかあるのだと思いますが、できれば、こちらの項目と、今回ほかの資料で初めて一部御報告を頂いております、地方厚生局がヒアリングされている、例えば継続教育の方法と実態が関連しているのかといったようなところが分かると、教育をどういう方法で改善すればよいのかということにつながると思います。
 あと、商品については、今回の範疇ではないのかもしれませんが、運営管理機関さんのユニバースについて、それこそ100人、300人の加入者規模の事業主様でも比較検討できるような形のサイトにするということは、今回の見える化の取組に間に合わせる形で手当てをお願いできないかと思います。でないと、行動がとれず目的にあった活用が難しいかなと心配しております。今回の項目は、もちろん現場、事業主の負担も考えて、RKを通じて提出させる業務報告書の項目にとどめられているということは配慮を感じますし非常に理解できます。けれども、もう一工夫できないか。というのも、この開示は、政府の新しい資本主義のグランドデザインにおいて早期に実現すべき施策とされているとともに、必要に応じてデジタル庁とも連携してとまで書かれておりまして、これまでにない形で効果的なことができるのではないかというような期待も込めて意見を申し上げました。
 あと、項目については、特にDCにおいては、DCの開示の中で運用の利回り、これはプラン全体の状況かと思いますが、ぜひ趣旨や意図を明記して、なるべくいい形でというか、正しい形で使われるようお願いしたいと思います。かつてDBにおける利回りが世の中で随分大騒ぎになったこともありました。利回りというのは、メディアとかがランキングで好き勝手に使うリスクがとても高い項目で、心配しております。
 あとは、本間構成員もおっしゃっておりましたけれども、DCは事業主ごとというところがありまして、今後、制度普及を進めていくという観点からすると、特に中小さんのここの部分での理解が不可欠かと思います。公的年金の適用拡大もすごく慎重にされたりしている中、そういうところの配慮を政府としても大切にされていると思いますので、この面でも説明、理解というところは手順を十分に踏んでいただいたほうがよいかと思います。
 項目についてもう一つ、御説明を聞きながら、今回の見える化とは外れるかもしれませんが、DCの掛金総額について気づくことがございました。部会のほうでよく話題になっております給与内枠選択制で出された本人掛金と事業主が出した掛金の区分は今まで一切なされてきておりませんでしたが、分けた方がいいのではないでしょうか。内訳の開示は、今後、部会で限度額を上げていく際に必要になるように思います。DCの限度額を上げることが社会保険の支えあいの仕組みを壊していくような形になるのは本旨ではないわけですから、マッチングの加入者掛金同様に給与内枠で出している掛金額の動向把握は今後制度の議論をしていく上で必要になろうかと思います。
 最後に、この開示によって、特にDCにおいては、これまで事業主とか加入者が負担していたコストが軽減される方向に向かうのかなと思っております。一方で、既にDCの運営管理機関は、金融庁の報告でもありましたように、赤字のビジネスになってきているという事態がありまして、制度の持続性という面でやや懸念も出てきているかと思っております。そういう意味では、監督官庁として費用の在り方やその基本的な方向性、政府のグランドデザインでも指摘されているレコードキーパーのシステム合理化によるコスト低減、この辺りも併せてお取組をぜひ進めていただけたらと思います。
 長くなりまして、すみません。
○森戸座長 ありがとうございます。
 関連する点にもいろいろ触れていただいて、非常に貴重な御意見であったと思います。特にDCの開示項目については、おっしゃるように、この項目が出ることで一番効果的というか、みんながそれを参考にして、よりよい制度にしていけるものは何なのだろうと、そういう観点で考えてみるというのは大事かと私も思いました。
 事務局、何か補足がありますでしょうか。
○海老企業年金・個人年金課長 ありがとうございます。
 今、大江構成員から頂いた点、あと、先ほどお答えしそびれていたのですけれども、本間構成員から頂いた点と川上構成員からも頂いた点をまとめてお答えができればと思います。
 まず、大江構成員、本間構成員から頂いていた、ユニバースを、ある程度この見える化のサイトの中で運営商品の実態を見えるようにしていくべきではないかといったようなところ、利便性という観点でそういうほうがいいのではないかという御意見だと受け止めております。
 他方、先ほどRK、運管の負担とも併せてというところもお話しいただいていましたが、現状を申し上げますと、そういったような個別の運用の状況、各運営実績等々の細かな商品ごとの情報というのは、RKの持っている情報ということではございませんので、それを個別に出していただいて、そこを集約していくというのは、かなり実務的に負担がかかってくるところでございます。ですので、そこを今回の見える化の項目の中で全て一覧化するというのはかなり実務的なハードルがあると考えております。ただ、できるだけ見やすくしていって、かつリンクを張っていくような形で考えているのですけれども、先ほど大江構成員からもリンクに行った先が分かりにくいというようなお話も頂いていたと認識しておりますので、そういったところの改善がどうできるのか、我々も現場サイドの運営管理機関ともいろいろとお話をしていければと思っているところでございます。
 それから、選択制のお話に関しても、どう捉えるのかというのが非常に難しいものでございまして、どういうふうに給与との関係で制度を設計しているのかなど、DC側から見てもそこはなかなか分からないところもあるので、今回の業務報告あるいは業務報告をベースにした見える化の項目の中ではそういった色づけが難しいということです。他方、企業年金・個人年金部会でもこの問題をどう考えるのかといったことは様々御議論いただいていたと思いますので、その点に関しては引き続き議論させていただければと思っております。
 あと、お答えそびれていました、先ほどの川上構成員、本間構成員からも、各種労働条件に係るものに関してどこまで開示するのかについて御意見を頂いていたと思います。この点は、企業年金・個人年金部会においても、どこまで開示するべきなのかというところ、特にどこまでが必要な情報なのかといったところをよく考えるべきではないかといった御意見を頂いていたと認識しております。ただ、今回、特にこれまでの議論の中で、一つの項目だけで比較するようなものではなくて、制度の基本的な情報と併せて他社と比較していけるのが大事であるといったような議論があったと我々としては認識しております。ですので、その中で、制度として基本的に必要な情報といったことを考えると、DBに関して本日提示させていただいているような項目、給付の実績や掛金の部分、入りと運用と出ていく部分、この辺りは基本的な情報というふうに捉えられるのではないかと考えているところでございます。また、DCに関しても基本的に必要な情報というところで考えたときに、掛金の情報やそういったものに関しては一定程度必要な情報だと考えて今回整理しているところです。
 以上です。
○森戸座長 ありがとうございます。
 それでは、ほかにいかがでしょうか。
 では、藤澤構成員が挙手されていたようです。では、お願いします。
○藤澤構成員 ありがとうございます。
 またDBのほうに話が戻りますが、スライドでいうと2ページで、先ほど御意見がございましたが、目的のところです。よりよい企業年金の運営につなげることが大事というのはそのとおりと思っています。例えば同じアセットオーナーの保険会社ですと、1柱、2柱、3柱という形で、3柱が情報開示、市場規律を求めるような規制になっています。1柱が自己資本比率、経済価値ベースのソルベンシーという考え方になっていて、2柱がリスク管理の高度化を促すといった構成になっています。3柱が情報開示拡充という形になっていまして、DBの場合はこの3柱だけが強化されていくという形になってきていますので、ほかのアセットオーナー、保険会社や銀行とは違う形の規制が導入されようとしていると感じています。市場からのフィードバック、周りからのフィードバックループを通じてよりよい企業年金の運営につなげるということが大事だと考えていますので、そのためには専門性の確保や向上の取組などが併せて必要になってくると考えます。逆に、そこがないと、よりよい企業年金の運営につながらない点も懸念されますので、そういったことを含めて、今後、モニタリングいただきたいと思っています。
 2つ目が、先ほど御議論あった100名以上または10億円以上というDBの開示の要件ですが、4月の企業年金・個人年金部会で米国の情報開示の事例の御説明が事務局からございました。そのときにはコメントしなかったのですが、資料をもう一回見返すと、資産の構成割合について、米国の場合、加入者1000人以上の場合のみ開示するという形になっています。米国と日本だと、カルチャーとか、いろんな違いもあると思います。大きな違いとしては、米国は、PBGCという支払い保証制度があるという中で、情報開示が拡充されて市場規律が求められるというところも個別のDBの情報を開示するというところにつながっているのではないかと感じています。一方、日本のDB制度は支払い保証制度がない中で、米国で1000人以上というルールになっているところを100人以上というところまで、より裾野を広げる必要があるのか、といった点はもう一回検討してもいいのではないかと考えています。
 あと、「または」なのか、「かつ」なのかも今回改めて考えてみたのですが、例えば閉鎖型のDBは一定の資産規模があって加入者がゼロのケースもあり得ると思っています。そういう閉鎖型のDB制度の場合は追加の掛金拠出が困難だったりするような事情もあって、債券持ち切り運用など、比較的安全な運用をしていて、予定利率も低い財政運営をされているのではないかと思っています。そこを単純に利回りだけ比較すると、一定の規模はあるのに利率が低いとか、そういうリスクを助長するような報道がされたりすると本末転倒になってしまうと思っていますので、ここは「または」で本当にいいのか、「かつ」条件にしたほうがいいのか、もう一回検討が必要になると考えています。
 コメントは以上です。
○森戸座長 ありがとうございます。
 2点目のアメリカはPBGCがあるから開示情報がその関係で重要かもしれないけれども、日本はないのだからというのは確かに非常に重要な御指摘かなと思いました。
 3点目の閉鎖型みたいなものも同じように開示するのか、これはまた後で事務局に聞きたいと思いますけれども、確かに状況が違うのに数字だけ出て比較されてみたいになると、それはもしかしたら適切ではないのかもしれません。もちろん補足説明なんかも必要なのかもしれません。
 最初におっしゃったことを、私、よく分かっていなかったのですけれども、3つの柱でという、保険会社は3つでやっているのに、企業年金は3つ目だけ突出するみたいな感じでいいのかという御指摘だったかと伺っていたのですけれども、これはアセットオーナーとしての性格が違うからいいのだということなのか、それとも企業年金の1番目、2番目ももっとしっかりやれという、そちらも考えろと、そういう御趣旨だったですか。全然違うことを言っていたら御指摘いただければと思いますが、藤澤構成員、すみません。
○藤澤構成員 どちらかといえば、体制強化のところで情報開示が進んでいくと、いろんな形で周りからフィードバックが入ってくると思いますが、それで資産運用体制を整えるとか、リスク管理体制を強化するとか、そういう内部の健全なリスク管理体制や財政運営の取組に生かすというところが一番大事だと思っています。企業年金の中でもいろんな規模の制度がある中で、そういったことができる体制なのかどうかといったところが気になっています。
 一方、保険会社だと、1柱、2柱でリスク管理部門や監査部門がある、はっきりしたガバナンスになっている中で、1柱、2柱、3柱という総体でリスク管理の高度化を促していくことが示されている一方、企業年金の場合は、1柱、2柱がない中で3柱だけが強化されるという動きになっています。そこはちょっといびつというか、変わった規制になると思っています。1柱、2柱をDB制度に入れてほしいという趣旨ではございません。情報開示を強化していく中で財政運営の健全性に資するような形に持っていく必要があるという趣旨の発言です。
○森戸座長 ありがとうございます。
 もともとアセットオーナーだから見える化だという、資産運用立国の一部だというので出てきた話ですけれども、やはりいろんな違いとか、ほかの規制との比較も、今、おっしゃったように考えなければいけないのだろうと思います。ありがとうございました。
 事務局から補足がありますか。
○海老企業年金・個人年金課長 ありがとうございます。
 人数のところの補足を少しさせていただくと、資料の3ページに「100名以上又は資産額10億円以上」と書いておりますが、御質問として、閉鎖型の扱いがどうなるのかというお話だったかと思います。加入者がいない形で、要は100人未満であっても、資産額が10億円以上であれば、いわゆる閉鎖型と言われるところに関しても、今、書いているものであれば、そこは含まれるという形になります。資産額が一定以上あるものに関しては、制度設計、給付実績、財政状況、もろもろの基本的な情報は併せて比較対象として開示されるべきということで整理しているところです。
 また、100名以上、資産額10億円以上のところの線引きに関しては、どこで線引きをするのかというのは、企業年金・個人年金部会でも、いろいろと御議論いただいていたという認識でもありますけれども、一定程度の規模なり資産があるというものを我が国のDBにおいて当てはめると、100人以上あるいは資産額10億円以上というのは、大多数のところが今回、開示の対象となってくるような一定のラインになってくるというところでございます。
 以上です。
○森戸座長 ありがとうございます。
 では、渡邊構成員、お願いします。
○渡邊構成員 御説明ありがとうございました。
 私のほうからは1つ質問、1つはコメントさせていただきたいと思います。
 質問については、事務局資料1の5ページにあります「専門性の確保・向上の取組」に関する新たな定義の項目の案なのですが。最初の黒ポツにあります「専門資格を有している者の有無」について、ここで言っている専門資格というのは、こちら側からこういった専門資格だといった形で提案される予定になっているのか、そうではなくて基金などが判断するという形で想定されているのか、その点、確認させていただきたいと思いました。まず、この点からお答えいただいてもよろしいでしょうか。
○森戸座長 では、お願いします。
○海老企業年金・個人年金課長 ありがとうございます。
 基本的には、基金側でこういった業務に関連する資格を有している方であるというふうに判断いただくような形で考えています。
○森戸座長 では、この資格を持っている人がいたら開示しろとこっちで言うのではなくて。
○海老企業年金・個人年金課長 個別に列挙するところまでは考えておりません。
○森戸座長 また変なことを言いますが、基金が、この資格の人、専門的ですと出してきたら。
○海老企業年金・個人年金課長 なので、「有」の場合には具体的な資格の名前を書いていただく。当然、資産の運用状況に関して一定の専門性があるような資格は様々ございますので、各基金の中でそこは御判断いただくような形で考えています。
○森戸座長 分かりました。渡邊構成員、よろしいですか、その点は。
○渡邊構成員 はい、今、想定されていることについては理解いたしました。そうであれば、個人的な意見として、加入者の目線からしますと、やはり国なりがこういった資格を持っている人は専門性が高いのだといったことを示していただいたほうがより安心感につながるのではないかといったところで、基金ごとに判断するといったような手法ではないほうが望ましいのではないかと感じた次第です。
 もう一つ、全体としてのコメントなのですが、見える化に際しまして、厚生労働省が把握できる項目に加えまして、加入者目線に立って必要と思われる事項が新たに加えられております。それらの項目についてはいろいろご意見があろうかと思いますが、企業側の負担にも配慮しつつ、全体として適切に対応していただいているのではないかと思いました。これまで各構成員からは、個別の事項に関してこれは開示するのは望ましくないといった慎重な御意見を幾つも頂いていたかと思います。特に労働条件に関するものについて、そのような御意見が多かったと思いますが、先ほど事務局からの回答にもありましたように、給付に関する面、拠出に関する面、運用に関する面、特に拠出・給付といったようなところは加入者の目線に立てばもっとも知りたい情報ではないかと感じた次第です。ですので、労働条件だから慎重に、企業側からすればそうかもしれませんが、あまりにも慎重にし過ぎて開示しないというようなことにはつながらないようにしていただければと感じた次第です。
 以上です。
○森戸座長 ありがとうございます。
 一通り御意見を頂きました。私も一応構成員なので一言申し上げると、大したことではありませんが、項目についていろいろ慎重な御意見も頂きました。渡邊構成員のように、基本的にはこういう項目でよろしいのではないかという御意見もありました。ここは、今、この項目にしますとか、しませんとか決める段階ではありませんが、ちょっと違うことを言うようですけれども、いずれにしても、項目はもちろん慎重に議論して皆さんの御意見を十分に踏まえて決めなければいけませんが、やはり見せ方のところも非常に問題になるのだろうと思いました。項目が決まって、それの出し方とか、どういう人がどういうふうに利用することを想定してサイトなりをつくるのかというのも、結構これも大変な作業というのが予想されて、そこもやはりちゃんと項目を決めればそれでいいというわけでもないだろうと思ったのが一つでございます。
 もう一つは、繰り返しになりますが、今回、加入者のための見える化ということになっておりますので、加入者にとって何が利益かということを考えようと、それはもちろん企業側の報酬戦略なりも大事なのだけれども、とはいえ、加入者にとって何が一番メリットになり、より改善が図れるものかという視点は忘れてはならないのだろうと思います。ただ他方で、加入者のためというのは、短期的に今いる人がちょっといいことがあるというだけではなくて、やはり長期的にというのですか、将来の潜在的な加入者といいますか、そういうことも含めて制度の持続可能性みたいなものも考えなければいけないので、これも大江構成員が既におっしゃいましたけれども、こんなことまで開示しなければいけないのだったらDCなりDBなりやるのは嫌だとか、新しくやるのはちょっとなみたいなマイナスになると、それは結果的に将来の加入者にとってデメリットになり得ると思いますので、そういうことがないように、しかし、開示するものはするという、うまくバランスを取らなければいけないのだろうと思いました。いずれにしても、加入者のためというのをどう考えるかというところはなお議論があると思いますが、そこはこれからまた詰めていければと思います。
 まだ御意見もあるかもしれませんが、もう一つ資料もありますので、事務局、資料1のほうは取りあえずよろしいですか。
 では、時間もありますので、続きまして「企業型DCの適切な商品選択のための取組・推進について等」、事務局より説明をお願いいたしたいと思います。
○海老企業年金・個人年金課長 資料2と資料3に関して御説明できればと思います。
 まず、資料2「適切な商品選択に向けた取組」についてでございます。
 企業型DCにおける適切な商品選択の取組についてということで書いております。1つ目ですが、企業型DCは、加入者ごとに拠出された掛金を加入者自身が運用し、運用結果に基づいて給付額が決定されるものです。このため、長期的な観点から加入者の老後資産の形成を行うためには、運営管理機関、企業、加入者の各段階において適切な運用方法が選定されることが重要、特に、足元の物価が上昇する局面において、将来の実質的な購買力を確保できない可能性といったものを十分考慮した上で、加入者が商品の選択を行うことができるように取り組んでいくことが重要ということです。
 これまでも加入者が適切に商品を選定するという観点で、継続投資教育の努力義務化、提供商品の抑制、除外規定の整備、指定運用方法の規定の整備とか、様々制度改善を行ってきたということでございます。
 後ほど資料を御説明いたしますが、加入者の選択の状況といたしましては、投資信託の割合が年々増加しておりまして、20代から40代は7割を超えてきているような状況でございます。また、元本確保型のみで運用している方に関しては全体の2割と年々減少しています。
 企業型DCを実施する事業主は、適切な事業運営を行うために商品の選定、評価、見直し、投資教育等実施ということで、こういったことを適切に継続して取り組んでいく必要があります。
 現状を申し上げると、企業型DCを実施する事業主の取組としては、投資教育の実施割合が7~8割、商品モニタリングの実施、見直しの実施割合が3~4割、運営管理機関の評価の実施割合が4~5割、これは取ったアンケートによってデータは違うので少しばらつきはありますが、こういったような実施状況ですので、こういった取組は今後も進めていくことが重要と考えております。
 2ページの運営管理機関は、事業主から委託を受けて運用商品の選定・提示を行い、加入者は提示されたラインアップから運用商品を選択するということで、非常に重要な役割を果たしているところでございます。選定している運用商品のラインアップについて、適切にモニタリングをし、適時の見直しを提案していくというのが大事で、先ほどお話にもありましたとおり、運営管理機関のユニバースの一覧というのはホームページに公開するとされていますが、この情報提供の在り方についても事業主のニーズも踏まえながら対応していくことが重要でございます。
 適切な商品選択の取組の推進に向けて、事業主の取組を推進するためということでございますが、厚労省のホームページで継続投資教育のページを今、つくっているのですけれども、こういったところで様々情報を発信していく、情報発信の拡充を図っていくことや、事業主が取り組むべき事項を整理したガイドブックなどを作成し、厚生労働省のホームページ、運営管理機関等を通じて周知する、こういったようなことを進めていってはどうかということでございます。
 ガイドブックに関しては、本日の参考資料1で事業主がこういうことをやらなければいけないというようなものをコンパクトにまとめたガイドブックとして作成しております。これまでの取組の中で、事業主が意識して取りかかりさえすれば、ガイドブックや様々な取組を推進するためのものも整理されてきて、様々な情報が提供されているのですが、現実にはそこまでなかなか意識が向かないといったような御意見を頂いておりましたので、まずは意識を向けていただくためのツールとして今回作成しております。こういったものも活用しながら、事業の推進、周知を図っていきたいということです。
 また、運営管理機関に関しても、事業主と連携した商品選定や商品の入れ替え、また、投資教育の実施等を促すといったことを通じて適切な商品選択に向けた取組を推進していく。
 また、資料1で御議論いただきました企業年金の運用等の見える化を通じて他社との比較や分析ができるような環境を整えていく、このこと自体もこういった取組の推進につながるものだと考えているところでございます。こうした取組について、本日、この後、データ的なところも御紹介させていただきますので、それらも踏まえつつ御意見を頂ければと思っております。
 次からは、資料の御紹介です。3ページが、新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画で指摘されていることです。適切な商品選択ができるように事業主が促していくべきだということを書いております。
 企業型DCの資産構成割合の推移について、制度設計開始以来ですが、2023年度の数字を見ますと7割弱ぐらい、67.3%が企業型DCにおける投信等の割合でございます。
 また、年代別に見ますと、20~40代で7割以上ということです。これは、2年前の企業年金・個人年金部会で出した資料と見比べると10ポイント程度上がっているような状態が見てとれます。
 企業型DC加入者における運用商品の選択状況ですが、元本確保型のみで運用している人の割合はこの5年間で10ポイントぐらい下がっているという状況です。
 次は、DCの運用方法の加入者への情報提供ということで、先ほどお話に出ておりましたが、運営管理機関がホームページで公表しなければいけないということですけれども、運用方法の公表例が運管によって異なっているところです。ここに関して金融庁のほうで「資産運用サービスの高度化に向けたプログレスレポート」を今回実施しておりまして、その中で、PDFを開かないで見られる項目はどういうところなのか、アンケートを取って調査しているところですけれども、運管のホームページ上では、信託報酬に関しては多くの運営管理機関で個別にファイルを開かなくても閲覧できるようになっているけれども、ほかの項目に関してはその比率が低い。PDFなどを開かなければ見られない状況になっているのが現状でございます。
 継続投資教育の実施状況に関しては、ここ数年ずっと8割前後で推移しているようなデータになっております。具体的な内容に関しても、継続投資教育の手法といたしましては、多くの事業主が社内報やメール、イントラ等への掲載、継続投資教育の内容としてはDC制度の基本的な仕組み、資産運用の基礎知識というところですが、様々な老後の生活設計、残高の確認方法、ウェブサイトのシミュレーション等のツールの活用方法、こういったものが次に高くなっております。
 次に、継続投資教育の実施により効果があったという回答が7割ぐらいあります。その効果の検証方法としては、アンケート、ウェブサイト・アプリへのアクセス状況とかを見ているといったデータです。
 次のページは、継続投資教育を実施していない理由です。一番高いのは、例年そうですけれども、業務との時間調整が難しいということです。
 指定運用方法の設定の状況では、最新のデータですが、指定運用方法の設定の割合が49.3%、半分弱になっています。運用しているところで商品構成を見ると、77.9%が元本確保型の商品、非元本確保型は2割ぐらいです。指定運用方法を設定している事業所の加入者のうち、指定運用方法を適用されている方が15%ぐらい。このようなデータになっております。
 次から適切な商品選択に向けた投資教育に関する事例を整理しております。先ほど、ガイドブックをまとめる前に様々いろんないいものをこれまでも作っていただいているということを申し上げましたけれども、企業年金連合会で企業型確定拠出年金の投資教育ハンドブックなどを作っていただいている中で、様々な事例なども御紹介いただいておりますので、こちらも今回、資料として整理させていただいています。実施形態としては、セミナー開催など情報へのアクセスをどう訴求するのかみたいな形で考慮した事例、あるいは関心が薄い人にどういうふうにアクセスしていくのか、この辺りを工夫されているような事例があったというところです。
 また、関心が薄い者への対応や、指定運用方法を採用している場合だとか、あと、効果の検証方法、この辺り、事例にまとまっているものがあるというところです。
 金融庁のプログレスレポートの中でも、投資教育、これは運営管理機関が実施して効果があったと考えられる事例を整理されているところでございます。セミナーだったり、動画だったり、様々働きかけを行って、その後、結果を回収しているところです。こちらもご確認いただければと思います。
 それから、運営管理機関の評価についてです。
 今の運用商品のモニタリングの状況を見ますと、運用商品のラインアップの見直しをしているのが3.5割ぐらいというところです。
 運用商品の提供に関する状況は、21本ぐらいで大きな変動はないというところです。
 次のページが運営管理機関の具体的な評価項目で、こちらは御参考です。
 次のページから数ページ、先ほど大江構成員のお話にもありましたけれども、現在の実務では企業型確定拠出年金実施事業所に運営状況報告書を求めていまして、この中で継続投資教育の実施状況を聞いております。この報告書の提出を始めたのが令和4年からこれまでデータがまとまっていなかったのですが、今回3年度分ですけれども、集計して整理しております。対象となる事業所数が全体では5万ちょっとございますけれども、そのうちの1万8000なので、半分弱ぐらいが対象として回答を頂いているようなものになっています。
 結果を見ますと、継続投資教育の実施状況ということで「実施したことがある」「計画中」というのが約7割、実施手法としては、社内報やメール、動画視聴、集合研修などになっています。
 継続投資教育の内容は、DC制度の基本的な仕組みなどを行っているところです。実施が困難な理由としては、先ほどの別のアンケートでも見たとおり「業務との時間調整が難しい」を挙げているのが6割ぐらいといったデータになっております。
 それから、運営管理機関の定期的な評価を実施しているかどうかを聞いたものでは「評価を行っている」が4割です。
 運用商品のモニタリング結果を確認しているか、定期的な運用商品のラインアップの確認をしているかを聞いたところ、モニタリング結果の確認は75%、運用商品のラインアップの定期的な確認は65%ということです。モニタリング等を実施していない理由を聞いたところ、「実施する趣旨・方法が不明である」と御指摘いただいていますので、この辺り、先ほどのガイドブックなども使いながら、まだまだ普及していかなければいけないと考えているところです。
 一応、運営状況報告を頂いたところに対しては、我々のほうで対象の事業主に投資教育を促すような形で働きかけをしてはいるのですけれども、引き続き、そういったことも考えていく必要があるのかなというところです。
 最後、企業年金連合会の取組をこちらにまとめています。
 資料2については以上です。
 次に、資料3「DBにおけるインフレ抵抗力の確保」です。
 「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025」で、DBについて給付の在り方等は労使で検討されるべきものであるが、加入者の退職後の生活におけるインフレ抵抗力が確保されるよう、DBの運用の在り方を含め、事例を整理・公表することとされております。
 DBにおけるインフレ抵抗力の確保に係る対応として考えられる事例として、我々のほうで幾つかパターンを考えて整理しています。DB制度の枠組みにおいてインフレ抵抗力の確保に係る対応として4つ挙げています。
 1つ目は、DB制度は、労使間の合意に基づいて給付の水準を決定するので、インフレ等の経済動向を踏まえて、労使間の合意の下で経済情勢に応じた給付水準を決定(改定)する。都度労使で話し合って変えていただく。給付の改善の仕方も様々ございまして、給付額や給付額の基礎となる基準給与、支給乗率を変えたり、ポイント単価のところを見直すといったところです。
 2つ目は、DB制度の給付設計として、標準報酬等の実際に支払った賃金を基礎とする平均給与比例や最終給与比例方式等を採用すること、この場合には実際に支払った賃金に連動して給付額が変動することになります。
 3つ目は、キャッシュバランスプランで物価指数や国債金利等の経済指標を用いて再評価を行う仕組みを採用すること、この場合は物価や金利等に連動して給付額が変動することになります。
 4つ目は、リスク分担型企業年金や運用実績を用いて再評価を行うキャッシュバランスプランを採用すること、この場合には運用実績に連動して給付額が変動することになります。
 DB制度が各企業の退職給付制度の一部、内枠として取り扱われている場合、DB制度の給付の増額が必ずしも各企業の退職給付制度全体の増額にならない場合があることや、DBにおいては給付額の変動に伴って基本的に掛金額が変動する点には留意が必要と考えております。
 いずれにしても、今後、上記の例に限らず、給付の改善事例として受託機関とも連携・協力してDBにおける事例の収集・整理を行っていきたいと考えております。
 説明としては以上です。
○森戸座長 ありがとうございます。
 それでは、ただいま御説明がありました資料について、構成員の皆様から御質問、御意見等がもしあれば頂きたいと思いますが、いかがでしょうか。
 これは、今回の懇談会の「企業年金の加入者のための運用等の見える化等に関する」の「等」の部分なのですかね。一応、見える化そのものとはちょっと違うかもしれないですけれども、併せてということだと思いますが、どなたかいかがでしょうか。何か御意見がある方はいらっしゃいますでしょうか。
 鮫島構成員、お願いいたします。
○鮫島構成員 ありがとうございます。
 質問させていただきたいのですけれども、最後に御説明がありましたDBにおけるインフレ抵抗力の確保ということです。資料の中にも記述がありますけれども、私どもとしては、この問題は基本的に労使で協議をして決めていく、そういう問題であると認識していますが、事務局といいますか、年金局さんの方でこの問題について、例えば通達あるいは監査といったことを通じて企業年金に対応を求めることをお考えなのかどうか、この点について伺いたいと思います。
○海老企業年金・個人年金課長 御質問ありがとうございます。
 今、お話しいただいたとおり、DB制度は労使間の合意に基づいて給付内容の決定・変更を行っていく仕組みでございますし、我々としてもそういう認識でございます。ですので、DB制度における給付改善自体、一律に強制的に何かを求めていくといったようなことを考えているわけではございません。DB制度においてインフレ抵抗力に資する対応方法ということで考えますと、本日の資料にあるような様々な方法が考えられる中で、足元の経済状況を踏まえて、労使間で給付の在り方について話し合うための参考としていただけるような形で事例を整理して周知していくといった対応をしたいと考えております。
 以上です。
○森戸座長 よろしいでしょうか。
○鮫島構成員 ありがとうございました。
○森戸座長 ほかにいかがでしょうか。
 藤澤構成員、お願いします。
○藤澤構成員 ありがとうございます。
 同じDBのインフレ抵抗力のところの話で、単純な質問なのですが、キャッシュバランスプランで、金利に連動するタイプの制度はたくさんあると思いますが、物価に連動する制度があるのかないのかを御質問させてください。もしあるのであれば、どういうモチベーションで導入されているのか、どういう財政運営されているのか、ほかの会社にも参考になるかもしれないので、この場で共有いただけるといいと思っております。
 以上です。
○森戸座長 ありがとうございます。
 お答えはできますか。では、前原室長から。
○前原企業年金・個人年金課基金数理室長 基金数理室長の前原です。
 キャッシュバランスプランの御質問ですけれども、物価に連動するものがあるかということで、事例としてはあるかと思いますが、ただ、それがどういったモチベーションでやられているかというのは、まだ事例の収集、整理をしているわけではございませんので、今、何かお答えできることはないですけれども、そういったことも含めて、事例収集ということでこれから確認ができればと思います。
 以上でございます。
○森戸座長 よろしいでしょうか。ありがとうございます。
 では、大江構成員、お願いします。
○大江構成員 私はDCのほうで御質問と要望を申し上げたいと思います。
 まずは、地方厚生局で行われている運営状況の実態報告、これは非代表も含めました実態として非常に貴重な情報であり、結果としては厳しい結果がいろんな意味で出ておりますけれども、これがまさしく実態であり、ここから改善していく礎になるものとして非常に貴重な情報を開示いただきまして、ありがとうございました。
 ここの御説明のときに海老課長から、地方厚生局からは一応指導はしているというコメントがさらっとありまして、そこについて、どうされているのかを聞くというよりは、もし何かこういうことをやっているというのをお答えいただけるようであればお答えいただきたいです。というのも、現場ですと、継続教育を実施できていない理由もそうなのですけれども、結局、業務時間調整が難しいということは、経営の方がそこにおいてプライオリティーを高く持っていないということなのだと思うのです。そういう意味で、担当者としては実施したほうがいいと思っても、そこがなかなかできない。また、運営管理機関評価のところも、実施したほうがいいと思っているのだけれども、できないという部分において、担当者からサラリーマン的に上の方に言う限界みたいな実態を思うと、お役所からの適切な、いい感じの圧というのは意味があるのではないかと思うところがあります。今回、ガイドブックも作っていただきましたし、こういうものを使って、いい形での、強過ぎない、いいぐらいの御指導を頂けるとよいかなと思いました。
 もう一つは、今回、単体での集計を頂いているのですけれども、もしかするとクロスで集計すると、何らか関係性があって、運管の評価ができていないところは、例えば商品見直しが進んでいないとか、教育だとこうだとか、自動移換についてはこうだとか、クロスをすることによって非常に意味のあるデータにもなるのではないかと思いましたので、いろいろお忙しいと思いますが、もし可能であればクロスも御検討いただけたら幸いです。
 以上です。
○森戸座長 では、後で事務局から補足があれば伺いますが、挙手されているので、先に本間構成員、よろしいですか。
○本間構成員 本間です。
 実は今の大江さんのコメントとかぶるところがあるのですけれども、今回、ガイドブックを作成いただき、この内容自体、非常に簡潔にまとまって、いい内容と思っています。ただ、問題は、これを周知するといっても、周知するだけではなくて、当然このガイドブックに基づいて各事業主に行動してもらいたいというところがあると思うのです。それをどんなふうに確認することを考えていますかというのを聞きたくて、ちゃんとやっているよねということを確認しないと、このガイドブックを出す意味がないと思いますので、そこのところも併せて教えてもらえたらと思います。
○森戸座長 ありがとうございます。
 では、お二人の意見、両方に関わると思いますけれども、課長から補足があれば。
○海老企業年金・個人年金課長 大江構成員、本間構成員、ありがとうございます。
 まず、先ほどさらっと触れさせていただいていた、業務報告書の際に我々としても促していますということに関しては、先ほど御説明したとおり、通常であれば事業主は年間の業務報告もRK経由というところもあって、厚生局との接点は規約の変更だとか運営状況を報告していただく機会ということになります。我々としてもせっかくの機会なのでというところで、報告を出していただいた事業主に対しては、出していただいたことと、それで足りないところをよく確認して、ちゃんとこういった取組をやってくださいということを促すために一応メールなどをお送りして、資料だとか、こういうところに載っていますよといったような情報提供をしています。ただ、どうしてもマンパワーにも限りがあって、どういう形でやっていくと効果的なのか、先ほど本間構成員からも御質問いただいたところにも関わることかと思いますが、いろいろツールを作った後で、より効果的に働きかけていって、その効果をどう測定していくのかというのは、私どもとしてもそこはまだ悩んでいるところでして、お知恵を頂きながら、こういった取組が前に進むように考えていきたいと思います。
 以上です。
○森戸座長 ありがとうございます。
 資料2によれば「継続投資教育を実施したことがある」が8割なので、これは勝手な、急に不規則発言ではないですけれども、大体、努力義務というのは、みんなが7割、8割やるようになったら義務にしていくことが多いから、それも考えたら、もういいのではないか、少し強めの義務にしてもと個人的には思いました。これは私の勝手な感想ですけれども、やはり業務との時間調整が難しいとか、そういうところのもう一押しは、そういうことかなと思って聞いておりました。ありがとうございます。
 資料2、3について、ほかに何かありますでしょうか。御発言がある方はいらっしゃいますでしょうか。よろしいですか。挙手はないようです。
 では、ほかに御発言もないようですので、本日の議事としては以上で終了したいと思います。
 次回の開催について事務局より連絡があればお願いいたします。
○海老企業年金・個人年金課長 ありがとうございます。
 まず、本日、懇談会で頂いた御意見を踏まえて、項目に関して厚生労働省のほうでさらに検討を深めて整理を進めていきたいと思っております。
 また、資料の途中にございましたけれども、業務報告書の報告様式の見直しに関しては、受託機関などのシステムの改修なども進めていただく必要がございますので、こちらに関しては、秋も深まりつつありますが、それぐらいまでには方向性を固めていくような形で検討を進めていきたいと思っております。
 また、開示項目の詳細に関しては、来年度からシステム開発に着手できるように本年度中をめどに固めていきたいと考えております。
 次回の第2回の懇談会の議題や日程につきましては、追って連絡させていただきますが、年明け頃ということを想定しております。事務局から各構成員の御都合をお伺いして調整させていただきたいと思います。よろしくお願いします。
○森戸座長 ありがとうございました。
 それでは、本日の議事は終了いたします。皆様、大変御多忙の折、お集まりいただきまして、ありがとうございました。