第8回今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会(議事録)

日時

令和7年10月3日(金)10:00~

場所

オンライン・対面による開催(中央合同庁舎第5号館 共用第8会議室(19階)東京都千代田区霞が関1-2-2)

議事

○山川座長 おはようございます。それでは、定刻となりましたので、ただいまから「第8回今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会」を開催いたします。構成員の皆様方、お忙しいところ御参集いただきまして、大変ありがとうございます。本日は、新田構成員が御欠席となり、代理で一般社団法人日本経済団体連合会労働政策本部統括主幹の阿部博司様に代理で御出席を頂いております。よろしくお願いいたします。
 また、本日は後に御議論いただく内容を踏まえ、臨時の参集者といたしまして、一般社団法人日本難病・疾病団体協議会代表理事の大黒宏司様にも御出席を頂いております。どうぞ、よろしくお願いいたします。
 また、事務局の職業安定局に異動がありましたので御紹介いたします。村山職業安定局長。

○村山職業安定局長 村山でございます。よろしくお願いいたします。

○山川座長 河村障害者雇用対策課長。

○河村障害者雇用対策課長 よろしくお願いいたします。

○山川座長 両名がそれぞれ着任されております。よろしくお願いいたします。村山職業安定局長は、公務のため途中御退席の予定です。
 本日の研究会は、Zoomによるオンラインでの開催と会場からの参加の両方になっております。会場には冨髙構成員、倉知構成員、田中伸明構成員にお越しいただいております。
 では、開催に当たりまして事務局から説明があります。

○原田障害者雇用対策課長補佐 事務局でございます。本日もZoomを使ったオンライン参加を頂いておりますので、簡単ではありますが、オンラインについて操作のポイントを御説明いたします。本日、研究会の進行中は、皆様のマイクをオフとさせていただきますが、御発言される際には、画面上の「手を挙げる」ボタンをクリックし、事務局や座長から発言の許可があった後に、マイクをオンにして必ずお名前を名乗ってから御発言を頂きますようお願いいたします。Zoomの操作方法につきましては、事前にお送りしましたマニュアルを御参照ください。会議進行中、トラブルがございましたら、事前にメールでお送りしております電話番号まで御連絡いただきますようお願いいたします。なお、通信遮断等が生じた場合には、一時休憩とさせていただくこともございますので、御了承くださいますようお願いいたします。オンライン会議に係る説明については以上でございます。

○山川座長 それでは、カメラ取材の頭撮りは、ここまでとさせていただきます。議事に入ります。今回も、第5回から第7回までの議論に引き続き、ヒアリング項目ごとの議論を続けていきたいと思います。今回は「手帳を所持していない難病患者の位置づけ」という事項につきまして議論を行いたいと思います。議論に当たりまして、初めに事務局から資料1について説明がございます。その後、構成員の皆様から御意見をいただきたいと考えております。では、説明をお願いします。

○河村障害者雇用対策課長 障害者雇用対策課長の河村でございます。私のほうから資料1に基づき御説明をさせていただきます。構成員の皆様、事前に目通しいただいているかと思いますので、ポイントをごく簡単に御紹介申し上げます。
 まず、資料の2ページと3ページです。この論点をめぐるこれまでの議論の振り返りです。まず、2ページの最初に平成24年、25年当時の議論がございます。この当時の議論の結論として、平成25年の議論の、2ページの一番下ですが、2番として障害者雇用率制度における障害者の範囲等です。この時点では、雇用義務制度の趣旨・目的を踏まえると、手帳のない、発達の方も挙がっておりますが、難病の方、その他の方々について、現時点で雇用義務対象とすることは困難だということが触れられた上で、マル1は企業におけるいろいろな取組の進展ですけれども、マル2対象範囲が手帳がないと明確でないというところと、手帳によらないとなかなか公正・一律性が担保されない。対象範囲の明確性と公正・一律性の観点で難しいということで、引き続き研究を行っていこうということで、今から10年以上前ですけれども、先に送られた経緯があります。
 その上で、3ページが平成30年当時の議論です。このときも、雇用率制度の対象となる身体障害者の範囲について、手帳ではなく就労能力の判定によってはどうかという御意見が出された上で、就労能力の判定の仕組みをやっている諸外国の仕組み等も精査をしていくということで、先に課題として送られてきている経緯があります。さらに、その下の令和3年、4年、これは前回の法改正のときの議論です。前回の議論の結果が3ページの一番下の箱ですが、まず雇用義務制度は、雇用の場を確保することが極めて困難な方に対して、社会連帯の理念の下で全ての事業主に雇用義務を課すものである。そのために、先ほども出てきましたけれども、マル1事業主として一定の環境が整っていることに加えて、マル2の対象範囲の明確性と公正・一律性が必要。それに照らしたときに次の○ですが、難病の方について疲れやすさ、倦怠感等の一定の共通点がある一方で、非常に個別性、個人差が大きい。その下の○ですが、こういった現状において個人の状況を踏まえることなく一律に困難性があると認めることが難しいということで、一番下の○ですが、手帳のない方に係る就労困難性の判断の在り方に関わる調査・研究を進めて、その結果も参考に、引き続き検討が必要であるということで、もう一回送られて現在に至っている状況にあります。
 続きまして4ページ、5ページは、この研究会の中での皆様方からの御意見の振り返りです。詳細は割愛させていただきますけれども、双方向からの御意見が出されてきていると考えております。
 続きまして6ページ以降は、難病の方をめぐる、関係する各種制度における位置づけ、施策について御紹介申し上げます。6ページは、これまでのいろいろな制度の変遷ですけれども、1つキーポイントとなっているのが、平成23年当時の障害者基本法の改正です。障害者の定義ですが、身体、知的、精神といった従来の定義に、「その他の心身の機能の障害がある者」という形で、定義規定が当時改正をされております。その条文が正に7ページですが、これが我が国における障害者、あるいは障害の概念の基礎的な定義になっております。障害者として身体、知的、精神の障害で、その他の心身の機能の障害、これらを総称して障害として位置づけております。それがある者であって、継続的に日常生活、社会生活に相当な制限を受ける状態であるということになっております。これをそのまま援用する形で、8ページが私どもの障害者雇用促進法の定義ですけれども、上段の第2条を御覧になっていただきますと、ここが法律全体としての定義です。ここが基本法とパラレルの規定になっており、障害者として身体障害、知的障害、精神障害、その他の心身の機能の障害があるために、長期にわたり職業生活に相当の制限を受ける、あるいは職業生活を営むこと自体が著しく困難な方として規定をしております。一方で第37条が雇用義務の、雇用率の対象範囲に関わる条文ですけれども、この第2項で、障害者という概念とは異なる「対象障害者」という概念を置き、それについても身体障害、知的障害、精神障害に限る形で記載をしている。精神障害の下のみに手帳の交付を受けている者に限るという括弧書きが付いておりますが、運用上身体障害の方についても、身体障害者手帳をお持ちの方に限る運用をしてきております。
 それが9ページですけれども、今申し上げた点を図で示しているものです。一番下の雇用義務の対象、青い枠の範囲内、手帳をお持ちの方々が雇用率制度の対象となってきて、その右側の、例えば手帳のない精神の方、発達の方、難病の方については、法全体の定義には入ってきているので、ハローワークにおける支援や助成金の対象者として支援を行っておりますけれども、雇用率には入ってこないという構造になっております。
 続きまして10ページは、先ほど御覧になっていただいたような基本法の定義に合わせて、私どもの雇用促進法を改正したときの対外的な説明ですけれども、一番下の部分を特に御覧になっていただければと思いますが、もともと障害者雇用促進法においても、難病に起因する障害はもともと含まれてきたが、これを条文上明確化する観点で、その他の心身の機能の障害と明記している。障害概念にはもともと入ってきている。その上で、この時点、同時に対象範囲の明確性と公正・一律性を理由に、雇用率の対象として送ってきたという判断がされているわけです。
 続きまして11ページ以降は難病法における難病の取扱い、福祉の障害者総合支援法の取扱いについて御説明したいと思います。
 順序が入れ替わってしまうのですが、13ページをお開きください。13ページ左側が難病法上の指定難病の要件になっており、要件を福祉のほうの総合支援法がどうしているかというのが、こちらの図です。番号でいきますと、マル1の発病機構が明らかでない、マル3の患者数が人口0.1%に達しない。この2つは難病法特有の要件になって、総合支援法上要件としていない上で、共通的な要件はマル2の治療方法が確立していない、現代医学において治すことが難しい病気であるということと、マル4の長期の療養を必要とする、マル5の一定の診断基準が定まっている、この3点が総合支援法において範囲を画する考え方になってきております。
 これがあった上で、12ページに戻りますと障害者総合支援法、福祉のほうの制度の仕組みです。一番最初の法律の第4条第1項は障害者の定義が置かれており、障害者基本法とパラレルな形で身体、知的、精神の後、並びに、治療方法が確立していない疾病、その他の特殊な疾病であって、政令で定めるもので、政令の規定とそこから引用を受けた告示の規定とを合わせて376の疾病が、総合支援法の対象の疾病として定まっております。さらに、第4条第1項の条文の続きにいきますと、政令で定められている最終的に376疾病による障害の程度が、大臣が定める程度として、その方を障害者として支援対象としているわけですが、大臣が定める程度としては一番下の告示ですが、難病による障害によって継続的に日常生活、社会生活に相当な制限を受ける程度となっております。運用上は、まず身体障害者手帳をお持ちでない難病の方であっても、376疾病の方々に関しては、障害程度区分の個別認定のプロセスの中で、生活に相当な制限を受ける状態にいらっしゃるかどうかを、個別に確認をして給付を行っているという仕組みになっております。
 続きまして14ページは、障害者総合支援法における対象の難病の範囲についてです。類似の見直しが定期的に行われており、現在の376の範囲になったのが今年の4月1日からという状況です。
 続きまして、15ページが身体障害者手帳制度の交付対象です。難病をお持ちの方で、難病が原因として身体に障害が起こったときに、手帳を取得しようとしたときにできる状況であるかということを確認する観点で、2番の交付対象を御覧になっていただきたいと思います。赤枠が身体障害者福祉法の別表で掲げている身体障害者手帳の交付対象範囲です。マル1からマル3が視覚、聴覚・平衡機能、音声、言語、そしゃく機能、この辺り、人体でいきますと頭部のところの脳機能以外の障害が規定をされており、マル4は肢体不自由で手足がきて、マル5からマル9がいわゆる内部障害で、この辺りは特に難病の方々と関わりが深い臓器が並んでおり、実際、臓器器官で規定をされているのは、ここに書かれている心臓、腎臓、呼吸器、ぼうこう、直腸、小腸と、マル9の肝臓が規定されております。例えば臓器器官でいきますと膵臓や甲状腺など、人体の一部の機能がここの範囲にも入っていないので、主要の臓器が規定されておりますけれども、全てが網羅されている状況にない構造になっております。
 その上でマル8に関しては、臓器器官ではなく免疫機能の障害が位置づけられておりますが、これに関してはHIVウイルスによるものが規定されているという状況です。
 そうした上で、身体障害者手帳の交付対象になっている臓器と、その障害と原因疾病との関係を次の16ページで見ますと、例えば、真ん中辺りの、ぼうこう、直腸機能障害に、下線が引かれているクローン病と潰瘍性大腸炎があります。この表において、下線が引かれているものは、376の対象難病です。難病に起因する形で、例えば、ぼうこう、直腸の機能の障害が起こる場合があって、その場合は身体障害者手帳が得られる形になりますけれども、先ほど御覧になっていただいたとおり、全ての臓器器官でないことと、あとはやはりいろいろな機能障害の中で、次の17ページを御覧ください。まず、難病はいろいろな疾病群に分かれるわけですけれども、左側の例えば血液系の疾病とか、免疫系の疾病、内分泌系の疾病、代謝系の疾病等々がありますが、このような例えば免疫系のうち、交付対象範囲に入っているのはHIVによる免疫系の障害になっているという構造があります。
 その上で、17ページの所は難病疾病群に分けた上で、その疾病群の方々の身体症状として特徴が出ているか、それが日常生活等の制限にどうつながっているかというのが、右覧の疾病の特徴覧に書かれています。例えば、血液系では貧血により運動機能の低下が起こって生活の中での活動度を抑制しなければならないとか、免疫系であれば、皮膚粘膜に症状が現れるとか、その下の代謝系では痛みとして現れる等々の様々な症状が現れた上で、それが生活制限につながっている状況です。
 次の、18ページの所は同趣旨ですけれども、疾病群から更に具体的な疾病名にかみ砕いていったものです。例えば一番上の、全身性エリテマトーデスは、症状として倦怠感、あと疲れやすさ等々があります。右側の、支援が必要な状態像としては横になって休息する時間が必要になったり、長時間立ち続けることが難しかったり等々の影響が表れるという内容です。
 19ページは、手帳をお持ちでない難病の方であっても障害福祉サービスを御利用になられている方々がおられて、右側の、一部は就労系の支援を使われている方もいらっしゃるという現状です。
 20ページ以降で少しデータの御紹介をさせていただきます。20ページからは、いわゆるしづらさ調査です。しづらさ調査の調査方法がここの1番2番で御覧になっていただきましたとおり、在宅の障害児・者を対象として、手帳をお持ちの方と、手帳は持ってないけれども例えば発達障害、高次脳機能障害、難病と診断されたことのある方、そうした手帳をお持ちの方か診断のある方を対象にした上で、調査方法2番のように、調査員が世帯を訪問して、調査対象者が御自宅にいらっしゃるか、手帳をお持ちの方はいますか、難病と診断されたことのある方はいらっしゃいますかといった調査をしていくという方式で、それを実際に玄関口でやっていくことになりますので、やや手帳をお持ちの方に多少サンプルが寄りやすいかもしれませんけれども、その調査結果で21ページの所ですが、左側の難病と診断された方のうち、特に就労年齢層の18~64歳の手帳をお持ちの方が6割で、非所持が4割、持っている手帳の種別が下の所、8割強が身体障害者手帳で、1割台ですけれども知的の手帳や精神の手帳をお持ちの方もいらっしゃる状況になっています。
 次の22ページは、上半分が手帳をお持ちの障害の方々と、下が手帳がない、かつ難病の診断がある方の就業率です。あくまでその集団の平均的な像を見ているものですが、参考です。
 23ページ以降が、正に宿題として送られてきた時に調査研究をしっかりするということになっており、それを踏まえて行ったJEEDの難病の方の就労困難性に関する調査研究です。この調査は難病患者御本人に対するアンケート調査で、調査の方法は保健所や難病相談センター等々、医療周りの支援機関を通じて調査表を御本人に知らせて、インターネットで回答していただくという方法を取っていますので、幅広く難病患者を拾っている状況にあるかと思います。あとこちらの調査では事業主調査も併せて実施しております。
 その上で、24ページの手帳の取得状況ですが、こうした全体を取ったこちらの調査では、手帳所持の方が2割ぐらい、未申請の方が75%で、数が少ないですが申請して不認定だった方が1.6%いらっしゃる状況です。この1.6%の方を含めて、分布を疾患群別に見たものが25ページです。右側の手帳所持の方と不認定の方と未申請の方でそれぞれ分布が異なっていますけれども、手帳を申請して不認定だった方が大体1~4%ぐらいいらっしゃる状況です。26ページはその3つの手帳所持者、あと申請したけれども不認定だった方、未申請の方、この3群に分けたときの就労状況ですので、御参考です。
 その上で、27~29ページがこの調査における大変中心的な意義の部分ですけれども、この調査の中で、まず「就労困難性」として、一般的な就労困難性と就職活動場面における困難性と、3番の職場適応と働いてからの就職困難性の3つを確認しています。1番の所は比較的精神面の影響を捉えていますので、特に2番と3番について詳細に見てまいりたいと思います。28ページの就職活動場面の就労困難性ですが、色の濃い所が不安、困り事があって全く未解決であると。薄く着色されている所が、やや未解決であるという、困り事がおありになった上で、解決に至ってない方で、この3つの群では、真ん中の手帳を申請したけれども不認定だったという方々が、左側の手帳所持者と同等以上に非常に困難な状況が未解決の状況です。これと同じものが29ページで、職場適応・就業継続場面ですので、働いてからの困難性を見ていますが、こちらについても手帳を申請して不認定だった方々がこの不安、困難があった上で、解決に至ってないというウエイトが手帳所持の方と同等以上に高くなっている傾向があります。
 続いて、30、31ページはこうした難病の方々の疲れやすさや体調の変動、不安定性、それから少しの無理で体調が崩れてしまうこと。あと免疫機能の低下等々がいろいろと社会生活への支障や就労困難性の経験の増加、解決困難性に影響しているというデータです。
 32ページはこうした方々に対する職場の配慮がどのぐらいなされているかについて、こちらも真ん中の、手帳を申請して不認定だった方々においてなかなか配慮が得られていない状況のデータが出ております。
 33ページは逆に、どういう職場配慮があると就労困難性の軽減につながっていくかということで、健康管理がしやすい仕事内容、あるいは勤務時間・休日とか、職場の理解、柔軟な休憩等が挙がっているところです。
 34、35ページは御参考ですので、割愛をさせていただきます。
 36ページは、手帳の取得状況別にどのような就労支援が望まれているかという内容で、働きやすい職場環境とか、あと手帳を申請して不認定だった方については、手帳によらない雇用義務化を期待されている声が非常に多いという結果になっております。
 37ページ以降の事業主調査結果ですが、37、38ページはその事業主について、難病の雇用経験がある所とない所の2つの群に分けて見ています。37ページは雇用経験のない事業所ほど、例えば難病の方も合理的配慮義務の対象だというような基礎的な部分について認識がなかなか及んでいないということと、38ページは同じように、難病の方に対する配慮のハードルが、雇用経験のない事業所のほうがハードルを高く感じやすく、雇用経験のあるほうが、逆に、ハードルが下がっている結果が出ております。
 39ページは事業主の方の支援の活用状況ですが、ちょっと割愛をさせていただきます。
 40ページが、法定雇用率の対象となる障害者の範囲の変遷ですが、皆様、御承知のとおり、制度の創設当初の昭和51年は身体のみで始まり、その後に知的障害者の方を実雇用率に追加するステージがあって、更にその後、10年ぐらいたった後に全国で法定雇用を出すときの算定基礎、計算式の中にも入れていくと、精神障害者についても同じような実雇用率に追加をし、その後に算定基礎に入れていくという時代を経ています。
 続きまして、41~44ページまではそれぞれの時の国会答弁や審議会の意見書のまとめですので、割愛をさせていただきます。
 45、46ページが今回の議論の論点です。45ページは今までの資料の総まとめの内容です。まず、全体の論点としても、雇用率制度の対象でない手帳のない難病の方の在り方をどうしていくか。上半分は、障害者雇用促進法における経緯で、先ほども申し上げましたとおり、特にこの下のほうのパラグラフですけれども、やはり対象範囲の明確性と公正・一律性が必要だという考えで検討してきて、手帳のない方であると一律に就労困難性があると認めることが難しいので、調査研究をした上で検討となっておりました。これに対して、下半分の福祉の仕組みですけれども、まず、総合支援法上は、身体障害者手帳がない方であっても376の疾病の対象の方を位置づけた上で、身体障害者手帳の交付対象範囲は先ほど御覧になっていただいたとおり、あくまで法の別表に掲げる範囲内が交付対象です。福祉の仕組みとしては、身体障害者手帳の対象とならなくても376の対象疾病であることをもって、具体的にその方の制限内容を障害区分認定のプロセスで把握をすると。ですので、手帳の有無がサービスの給付範囲かどうかを画する形になっていないという状況があります。
 その上で次の46ページです。まず、手帳のない難病の方と就労困難性の理解として、一番上が、様々な研究結果を見ても難病の方全てを「平均」したときに、皆さんが就労困難性が高いとはなかなか言えないのではないか。一方で、次の○ですが、少数ではありますけれども手帳を申請して不認定だった方が、手帳をお持ちの方と同等以上にいろいろな職業場面における困難性を持っていらっしゃる方が多い傾向があると。その方の機能障害の内容が、身体障害者福祉法の別表に該当しない等で不認定となったからと言って、それが職業生活における制限が小さいとは言えない結果なのではないかと。これに関して、私どもの雇用率制度はこの対象範囲の明確性と、公正・一律性を大事に検討してきたわけですので、この点において公正性としてどうなのかという状況があるかと考えております。
 その下で、こうした状況から手帳のない難病の方について、御本人の申請で医師の意見書等も勘案をしながら、個別の就労困難性、職業生活へどのような制限が生じているのかを判定をして、一定水準にある場合はまずは実雇用率において一定の算定を可能とすると。その上で、施行状況をよく見て雇用義務としての在り方を引き続き検討していくことが考えられるのではないかとしております。個別の就労困難性の判定基準ですけれども、今回のJEEDの調査結果でも一定の就労困難性が示されていますので、これを参考としつつも、更に調査研究を行い、かつそうした難病の医療等の専門家も交えて、しっかりとした検討を経て、対象範囲の公正・一律性が確保できるよう検討していく必要があるのではないかと。同時に、施行体制がこれから新しい事務をくみ上げていく形になりますので、まずは現に困難に直面されている方を優先的に判断をするというような、優先度に関しても併せてこの円滑・着実な施行体制の検討になるようにしていく必要があるのではないかとしております。
 また、最後の○の実雇用率における算定として、ほかの障害種別の方々への影響が生じないようにするという観点が同時に大変重要ですので、例えば、その施行日以降の採用者の方を算入可能にする。あるいは事業主単位で上限を考える等、こうしたほかの障害種別への影響が生じないようにするための方策を同時に考える必要があるのではないかと。論点としては以上でございます。

○山川座長 ありがとうございました。それでは、意見交換に移りたいと思います。冒頭、事務局からありましたように、発言の際には挙手をして、こちらで指名させていただいた後でお名前をおっしゃってから、御発言をされるようお願いいたします。本日は、一般社団法人日本難病・疾病団体協議会代表理事の大黒様に、臨時参集者としてお越しいただいております。まず大黒様から何かありましたらお伺いできればと思います。何かありますか。

○大黒臨時参集者 日本難病・疾病団体協議会(JPA)代表理事の大黒です。よろしくお願いします。この度は、本研究会において障害者雇用率制度等の在り方に関し、手帳を所持していない難病患者の位置づけについて御議論いただき、心より感謝申し上げます。また、難病患者の立場から意見を述べる機会を賜りましたことにも、重ねてお礼申し上げます。本日は事務局御提示の説明資料に示された論点を中心に、意見を述べさせていただきます。よろしくお願いします。
 さて、私自身もJEEDの難病患者の就労困難性に関する調査研究委員会の委員として参加し、学ばせていただく中で、次の点を実感いたしました。第1に、疾患ごとの進行性や体調の変動といった特性の違い、更に同じ疾患であっても個別性が高いことから、現状の障害の尺度で就労困難性を評価することが非常に難しいということです。第2に、軽症・重症にかかわらず、外見上は健常者と区別が付かない場合が多く、痛みや倦怠感といった評価の難しい症状が就労困難性に大きく影響しているということです。
 今回の事務局の説明資料の論点を拝見しますと、そのような評価がしにくい難病患者の中で、身体障害者福祉法の別表に該当しない等により不認定となった場合であっても、必ずしも職業生活における制限が小さいとは言えない結果になっていることが分かったことは、大きな一歩と言えると思います。また、手帳が得られていない難病患者については、本人からの申請に基づき、医師の意見書等も勘案しながら個別の就労困難性を判定すると記されており、個別性の高い難病患者への配慮が感じられ、大変有り難く思いました。
 さらに、個別の就労困難性の判定基準の検討は、更なる調査研究や専門家の知見を交えた検討等を経て、対象範囲の公正・一律性が確保できるような内容としていくことが必要ではないかとの記載もありました。是非、公正な判定が行われるようお願い申し上げます。今後の更なる調査研究が行われる際には、私たちも可能な限り協力してまいりたいと考えております。加えて、現に困難に直面している者を優先的に判断する等の円滑・着実な施行体制の検討が、併せて必要ではないかとも記されております。是非、こうした施行体制の検討についても進めていただければ、有り難いと思っています。
 JEEDの調査研究によれば、障害者手帳を持たない難病患者に対する職場での理解は不十分であり、半数以上が就労困難性を抱えているにもかかわらず、社会的な理解・配慮・支援が得られていないとされています。これに対し、障害者手帳を持たない難病患者を雇用率制度の対象に含めることで、企業としても支援を進めやすくなり、多様な人材とともに働く中で、難病のある方の就労支援に関するノウハウを蓄積し、その個性を生かして働いてもらえるようになることが重要であると指摘されています。確かに健康状態の変動や労務管理の負担、職場環境整備の必要性など、難病患者を雇用するに当たって事業主が懸念されるリスクは様々あると思います。しかし、これらは必ずしも実態に即したものとは限らず、多くは情報不足や誤解に基づいているともされています。だからこそ難病患者を雇用率制度に含めることで、企業が就労支援のノウハウを積み重ね、難病患者に対する社会的な理解・配慮・支援が一層進むことを期待しております。
 最後に、ほかの障害種別の方々への影響が生じないようにという配慮は、極めて重要な観点であると考えています。その上でほかの障害への影響度も十分に考慮しつつ、手帳を所持していない難病患者を、障害者雇用率制度の中に適切に位置づけていただければ幸いです。どうぞ引き続き御議論を賜りますようお願い申し上げます。ありがとうございました。

○山川座長 ありがとうございました。それでは、各構成員の皆様から御意見等がありましたらお願いいたします。倉知構成員、どうぞ。

○倉知構成員 九州産業大学の倉知です。意見を述べさせていただきます。事務局で提案していただいた、手帳には該当しないけれども、就労困難性のある難病のある方を雇用率制度の対象にしていくということは、私は非常に大事だと思っていて賛成いたします。また、個別性が非常に高いので、難病という疾患によって一律対象にするというのは合わないと思います。特に易疲労性や痛み、変調といった困難性のある方をしっかりと拾い上げていくことが大事かと思います。JEEDの研究でも、障害者手帳不認定だった者が1.6%います。それがそのままとは思いませんが、私としては恐らく難病患者のうちのこれぐらいの方々が、数字的にはほぼ近いのではないかと思っています。ですので、個別に判断するということは賛成です。
 それから手帳の判定と同様に、医師の意見書だけではなく、更に障害者であることを判定する機関を設けることが非常に大事で、それも是非進めていただきたいと思います。ただ、このときに機能の判定に絞っていくということが、私は大事ではないかと考えております。また、そのときに他の障害のある方への影響というお話が出ました。実は、精神障害のある方を雇用率に算定するときに、こういう心配や懸念がされたのですが、実際にそういう影響はなかったと思っています。そこはそんなに考えなくても大丈夫ではないかと思っています。
 それから、施行日以降の採用に限定するのはどうかという提案ですけれども、現に採用している企業又は現に働いている、難病のある対象者になりそうな方々の不安定な雇用状況を考えると、私はやはり公平性を欠くのではないかと思います。ですから、プライバシーに配慮した障害者の把握確認ガイドラインを活用しながら、そこで働いている方を対象にしないというのは避けたほうがいいのではないかと考えています。
 最後に、支援には人的支援と制度的な支援があります。今回は制度的支援に該当するものを対象にすることで、就労困難性が減少することに大きく貢献するのではないかと思いました。また、障害名に当たっては、私は「難病」という言葉を使うのはどうかと。病名を使うのではなく、例えば「特例障害者」というような、手帳の対象にならない障害のある方という形の名称を使ってはどうかということを提案いたします。私からは以上です。

○山川座長 ありがとうございました。オンラインでお二方からお手が挙がっております。まずは山口構成員、どうぞ。

○山口構成員 こんにちは。愛知県中小企業団体中央会の山口です。説明、ありがとうございました。事務局の資料のとおり、難病患者の方は病気の進行度合や薬の服用の有無、個人ごとに症状や体調の不安定が異なり、就労困難性を一律に判定することが非常に難しいと感じます。したがって、現時点では一定の基準を設けて、企業への義務を伴う雇用率制度の対象にすることは難しいと考えております。昨年公表されたJEEDの調査研究結果なども踏まえながら、今回のように当事者や雇用する企業の声を集めて、更に調査研究を進めていただき、一定の基準や判断材料が確保できれば、具体的な検討を行うことが適当と考えます。
 また、雇用率と切り離した企業の採用現場においては、障害のある方や就労困難性を抱える方は、御本人や家族との面談により症状や就業上のリスク、働き方の希望を把握した上で、業務内容の配慮や雇用環境の整備が可能な場合には、手帳のあるなしにかかわらず雇用することもあると思います。難病患者の具体的な状況を把握し、積極的に雇用する企業については、例えば官公庁の発注等での評価など、インセンティブの仕組みを増やしていただけると企業の実質的な取組促進となり、雇用の機会も広がるのではないでしょうか。事例や調査研究によって実情を捉えた上で、実質的な取組と法制度上の整備の両面で、バランスを取りながら進める必要があると思います。私からは以上です。

○山川座長 ありがとうございました。続いて清田構成員、お願いします。

○清田構成員 日本商工会議所の清田です。ただいまの御発言と重複する点が非常に多いですが、御説明いただいたとおり、障害者雇用促進法においては、その他の心身の機能に障害があり、長期にわたって職業生活に制限を受けている方も障害の対象となることは私も承知しております。
 他方、論点にも記載いただいておりますように、今回のJEEDの調査研究結果では、難病患者の全てを平均すれば、必ずしも就労困難性は高くないものの、手帳不認定の方にも、困難性を有している方がいらっしゃるということから、やはり個別性が高いということを、改めて示していただいたと認識しております。
 判定基準の検討が進んでいない現時点では、現行の枠組みを維持するべきと考えております。今後は、身体、知的、精神の障害を抱える方の就労困難性と照らし合わせながら、同等以上の困難性が認められることを客観的に把握することが可能なのか、引き続き検討いただきたいと思います。
 他方で手帳不認定の方の就労に当たっては、不安や困り事に対するサポートの充実が改めて必要という点も示されており、そういった方々への引き続きの支援が重要であると考えます。私からは以上です。

○山川座長 ありがとうございました。続いて田中克俊構成員、お願いします。

○田中(克)構成員 田中です。よろしくお願いします。
 先ほどから「客観的な個別認定」や「個別評価」という点で、就労困難性の判断が難しいというご指摘がありました。私としては、色々考えなければならないところは有るものの、法の趣旨からも、たとえ手帳不認定の場合でも、就労困難性を抱える難病の患者さんは雇用率制度の対象にして積極的な就労支援を行うべきだと考えています。
 これまでの制度は手帳取得者を前提として進められてきたため、対象範囲を広げる際には慎重さが求められることは理解しています。しかし、企業にも納得してもらえるような客観的で公正な指標を設けることは不可能ではないと思います。
 本人がいう就労困難性だけでは客観性を担保しにくい面がありますが、難病には疾患活動性や予後を判定する臨床的・国際的な基準が多く存在します。たとえば、消化器系疾患では活動性スコア、膠原病では疾患活動性インデックスがあり、神経難病にも国際的な臨床分類による重症度評価が存在します。これらを客観的な基準として取り入れ、そのうえで就労困難性を評価すれば、妥当性と客観性をより確保できるのではないかと考えます。
 私自身、神経難病を中心とした身体難病の方々の支援を行っていますが手帳を取得している方が多い一方で、手帳を持たずとも明らかに困難を抱えている方も少なくありません。
 また、難病の方で就労を躊躇している理由の多くは通勤の困難さや感染への不安によるものです。しかし、在宅勤務の広がりによって、難病患者が働ける可能性は急速に拡大しています。
 こうした変化を踏まえ、これまで手帳を前提としていた制度の枠を少し広げ、専門家の意見を参考にしながら、臨床基準という客観的な指標と併せて就労困難性を評価することで妥当性のある基準つくりや対象者の選定方法を見いだせるのではないかと考えています。以上です。

○山川座長 ありがとうございました。それでは新田構成員の代理の阿部様、お願いいたします。申し訳ございません。こちらの問題かもしれませんが、ミュートになっていますか。音声がこちらに届いてないので、こちらのほうでトライしてみますので、その間、大谷構成員からお願いします。

○大谷構成員 お世話になります。育成会の大谷です。今まで皆さんの言われているとおり、難病についてはかなり難しい部分があると理解しております。ただ、その中でも困難性を抱えながら頑張っておられる方もありますので、もう少し調査が必要ではないかと思います。併せて私たち知的の関係で、発達障害の関係がどの程度検討されていくかということも、我々としてはしっかりと見ていきたいと思います。それについても併せて議論の対象にしていただければと思います。以上です。

○山川座長 ありがとうございます。それでは、取りあえず眞保構成員、お願いいたします。

○新銀構成員 新銀のことでしょうか。

○山川座長 ごめんなさい。新銀構成員、お願いします。失礼しました。

○新銀構成員 いえいえ。みんなねっとの新銀です。御説明ありがとうございます。当事者の立場で発言いたします。
 結論として、生活上、著しい困難が仮にあったとしても、総合福祉法によるところの合理的配慮に基づいて雇用を希望する376疾病の対象の方には、やはり雇用義務の対象として枠を広げていただきたい、そういった方向で考えていただきたいと思っております。
 今更ですけれども、働くということがどの方にとっても経済活動だけではなく、社会の一員として大切な帰属意識であったり、生きがいにつながっております。そのことを考えていく上でも、やはり働く場の提供というのが大変必要だと思っております。現在、福祉サービスの就労系の中には難病の方が実際に入って来ているわけですけれども、その延長線上というか、雇用を考えていくのは自然な流れだというように考えております。
 ほかの障害者への影響ですけれども、実際に働きたいと考える自主的な行動を優先することが大事だと考えております。難病患者の雇用の機会を広げることは、大変大切なことだと思っております。以上です。

○山川座長 ありがとうございました。それでは阿部様、いかがですか。よろしくお願いします。

○阿部代理構成員 経団連の阿部です。こちらの声は聞こえておりますでしょうか。

○山川座長 今、大丈夫です。どうぞ、お願いします。

○阿部代理構成員 新田構成員の代理として発言いたします。山口構成員や清田構成員から話がありましたが、今回の論点につきまして、具体的な判定基準や判定主体が分からない中では、判断できないのではないかというのが我々の受け止めでございます。以上です。

○山川座長 ありがとうございました。失礼しました。ほかにいかがですか。では、冨髙構成員、お願いします。

○冨髙構成員 冨髙でございます。説明の中では、平均すれば必ずしも就労困難性は高くないということでしたけれども、障害者雇用促進法において難病に起因する障害も含まれることが明確化されており、差別禁止や合理的配慮の対象とされていること、また、助成金などの支援施策が複数あることを踏まえれば、就労困難性があること自体は、共通理解が得られているものだと考えているところです。その上で、JEEDの調査研究において、手帳を申請したが、不認定の方については就労困難性を抱える方の割合が高い。また、就労支援や難病患者の雇用義務化のニーズが高いという状況が報告されたところでして、そういった内容を踏まえると、手帳が得られていない難病患者の方について、本人の申請によって個別の就労困難性を判定し、雇用率の算定を可能とする方向性については同意できると考えているところです。
 ただ、現時点では手帳制度によらずに個別に就労困難性を判断するような仕組みがほかにはないということを考えますと、一定の認定基準の公平性や一律性が担保されるように、更なる調査研究や専門家の知見を踏まえた制度設計に関する検討というのは重要だろうと考えております。併せて、難病患者が無理なく能力を発揮できるような効果的な就労支援、配慮の在り方についても検討していただくことが重要だと考えているところです。
 検討に当たりましては、症状、体調に波がある可能性や、将来に症状が進行する可能性なども踏まえて認定基準や方向を検討する必要があると考えております。以上です。

○山川座長 ありがとうございました。では、田中克俊構成員、お願いします。

○田中(克)構成員 田中です。 
 先ほど委員の先生方から、現時点では客観的な基準が存在し得るのかどうかについて、いろいろとご心配の声が上がっておりました。確かにそれはもっともなご意見だと思います。
 ただ、難病については、しっかりとした臨床基準が設けられており、非常に難しい病気である分だけ、診断基準やその後のフォローアップも極めて重要になるため、他の疾患に比べても診断や評価、病態などに関する基準はきちんと整備されているのが実情です。
 このように申し上げると語弊があるかもしれませんが、多くを主観的なものに頼らざるを得ない精神障害における1~3級の認定基準よりも、こうした臨床基準も参考にしながら就労困難性を評価した方が客観性は高まると思われます。もちろん臨床基準だけで決められるものではありませんが、専門家の知見を集め、こうした臨床基準を参考しながら就労困難性を評価する方法をとれば、皆さんが想像される以上に公平で客観的な基準を作ることは十分可能だと思います。以上です。

○山川座長 ありがとうございました。では、会場の田中伸明構成員、お願いします。

○田中(伸)構成員 日本視覚障害者団体連合の田中でございます。事務局の御説明ありがとうございました。これまでも多く意見を出されているところと重なりますが、やはり難病の方、特に、手帳の申請をして不認定となった方が抱える就労における困難性を解消する対応というのは必要になってくると考えております。
 その上で、今回の御提案に際しましては、個別の就業における困難性というものを客観的に判断する基準というのがポイントになってくるかと思います。現在の雇用率というのは手帳の有無を判断基準にしていますけれども、障害者手帳というのは医学的な判断がメインであります。雇用促進法においては、就労における困難性というのをしっかり判定して、対応するというところが重要になってこようかと思います。
 これは様々な専門家の御意見、それから、海外の知見、また、現場で支援に当たっている障害者職業センターとの協力など、いろいろ考えられるかと思いますが、就業の困難性というところに着目した基準も是非検討をお願いしたいと思います。
 それから、現在、総合支援法においては、376疾病が対象疾病となっています。難病においても、まずは総合支援法で対象とされている376疾病の方について今回提案されている雇用促進法上の対応を検討してはどうかと思います。
 これは令和6年の総合支援法の対象疾病検討会で現在の376疾病に拡大されたという報告を拝見しておりますが、今後も引き続き検討会は継続していくでしょうし、この対象疾病も様々拡大していくかと思います。適切な検討のもとで拡大していくものと思いますので、この対象疾病の方についての雇用促進法上の対応というのを検討するのも一案かと思います。
 もう一点は、事業者のほうのアンケートを見ますと、やはり難病の方の雇用経験のある企業のほうが、かなり理解が高いという結果が出ております。この雇用経験のある企業の経験を雇用経験のない企業の方々へ共有していくような仕組みも必要かと思いますし、やはり難病の方全体として、手帳の有無にかかわらず就職できていない方もおられますので、事業者の方への理解を促進する、啓発する必要性も感じています。
 以上のようなことを考えてみますと、やはり雇用率というものも非常に大きな雇用促進の制度ですけれども、併せて就業に困難を抱える、働きづらさを抱えている方々に対して、大きな就労支援を行うという柱も、もう1つ雇用率とは別に考えていく必要も出てきているのではないかと考えている次第です。これは今後の検討課題ということで御意見をさせていただきます。以上です。

○山川座長 ありがとうございました。では、オンラインの渡邊構成員、お願いします。

○渡邊構成員 筑波大学の渡邊です。事務局の御説明ありがとうございました。御説明でも明らかにされていたことですが、障害者手帳を所持していない難病患者の方々に対しても、障害特性に応じて適切な支援が受けられるようにすることの重要性は、平成24、25年頃には既に共有されていたものであるかと思います。ただ、残念ながら現状は、その点についての対応が不十分であると言わざるを得ないかと思います。
 これらの方々も障害者雇用促進法でいうところの障害を有していて、法の目的とする職業の安定を図るということが求められていることからすれば、雇用率制度の対象に含めることは必要なことであると考えます。
 その上で、対象とすることの課題とされてきた対象範囲の明確化に向けて、具体的な一歩を踏み出すことが求められている段階に今はきているかと思います。これまでの議論でも示されていますように、法が対象とする障害については、就労困難性という観点から対象を明確化する必要があろうかと思います。
 そこでは、就労困難性の判定基準をどのように定めるかが重要かと思いますが、この点について、具体的なスケジュールというものを示して作成作業に入るといったことが必要かと思います。これまでの調査研究の蓄積に加えまして、諸外国の仕組みからも多くの示唆が得られるかと思います。そういった観点から、なお、不十分な、調査研究が足りていない点については、適宜、調査研究を補いながら判定基準の作成というところに取り組む必要があろうかと思います。
 また、御説明にもありましたように、判定基準作成後の次の段階として、実務的な観点からの課題も整理しておいて、併せて、その対応というものの検討が必要になっているかと思います。私からは以上です。

○山川座長 ありがとうございます。続きまして、勇上構成員、どうぞ。

○勇上構成員 神戸大学の勇上と申します。私の意見は、今、渡邊先生がおっしゃったものとほぼ同じです。
 障害者雇用促進法の第37条の対象者については、障害者手帳の保持というものが条件になっていますが、これは本来的には、障害による職業生活上の制限をお持ちの方という趣旨であると思います。そこで、両者が厳密に一致していれば、全く問題ないわけですけれども、今回論点にも挙げられている、あるいはJEEDの調査でも明らかになった手帳の認定を受けていらっしゃらない、申請したものの認定されなかった難病患者の方々は、両者のはざまにあるということが浮かび上がってきているのだと思います。また、そういった方々は、ほかにもいらっしゃるかもしれません。
 そうなりますと、現に困難に直面されている方々をどのように制度的に包摂していくかということが課題になるわけですけれども、一つの対応は、37条における雇用義務の対象を、障害による職業生活の制限の程度に基づいて判断するというように、考え方自体を変えていくことだと思います。ですが、これはかなり大きな変化を伴います。
 そうすると、現実的な対応としては、そういった思想に基づきつつも、手帳の保持という条件は維持しつつ、就労困難性の判定基準というものに基づいた新たな対象者を加えるという方向性になるものと思います。
 その意味では、現在は既に、就労困難性の判定基準の確立という技術面の議論に進むべき段階にあるのではないかと思います。就労困難性の判定については、先ほど田中先生から可能性があるというようなお話もありましたし、今後は、諸外国の事例なども参考にしつつ、客観性と公平性を担保した判定基準を確立していくことが望ましいのではないかと思います。以上です。

○山川座長 ありがとうございます。それでは、岡本構成員お願いいたします。

○岡本構成員 ありがとうございます。先ほど事務局から、いろいろ説明していただきありがとうございます。私は、日本身体障害者団体連合会から参加させてもらっておりますが、やはり就労に対して困難な人ということでの難病の方たちは、手帳を持っている方ということになっていると思います。そうすると、今の手帳の取得する方法としては、先ほど15ページにある身体障害者に入るかなと思いますが、その中で1~9までというか、順番に障害があるのですが、これも身体障害者福祉法ができて、手帳ができたときには、この1~9までが全員ではなかったのです。特に、私どもが言っています内部障害というか、難病の方ですと、外から分からないという障害がある方なのですが、その方たちは、身体障害者福祉法ができたときには手帳対象ではないですよね。また、肝臓の機能障害の方なんていうのは、まだ最近です。やはり、これも今までも順番にしかこなかったものですから、今、手帳を持っている人が、それはほかの方から見ても分かりやすい方法だと思うのですが、手帳の種類、障害の種類を見直す必要があるかなと。それをしない限りは、今のままのあれでやろうとすると、少し無理があるのかなと思います。
 かといって、難病の方たちも376疾病の方たちも、やはり就労に対して困難です。そういう人たちをやはり就労してもらうには、こちらも見直す必要があると思います。そうしたことによって、今のところは手帳をということで医者の診断を参考にはされるのでしょうけども、それをもって雇用することにはなっていないものですから、やはりそれは、まずいのかなと思っておりますので、そういうことも併せて見直して、もっと広げていく、枠を広げる感じでやっていって、難病の方たちも安心して就労ができる環境づくりをしていく必要があるかなと思っております。以上です。

○山川座長 ありがとうございます。ほかに、田中克俊委員、何かありますか。

○田中(克)構成員 難病の方の枠を拡げていく方向に賛成です。一方で、難病に関する治療は近年かなり進歩し、特に症状が軽快する時期もあるなど、JEED調査でも示されているように、難病があっても必ずしも持続的な就労困難性が認められず手帳取得が認定されないケースが存在するのは事実です。ただ注意しなければならないのは、JEEDの調査にもあるように、難病の方の中で最も多いのはそもそも手帳の申請さえしていない方々だということです。
 これは、通勤の困難さや感染への不安などから、「申請しても難しいだろう」と諦めてしまっているケースが多いためと思われます。しかし、もし在宅勤務が可能であるという条件が整えば、申請者は今後かなり増える可能性があると思われます。
 ただし、就労困難性の判断だけで対象を決めるとなると、主治医の診断書の内容にばらつきも生じやすく、客観性を保つのは容易ではありません。手帳を取得していない方も対象に加えるという初めての試みですから、先ほど申し上げたように、二段階でといいますか、まず臨床基準を参照する。例えば、通常臨床的に症状の持続期間なども含めた就労困難性を生じさせる可能性があると考えられる大まかな基準を疾患群ごとに設定し、その基準以上の方の中で、ある程度以上の就労困難性が持続的に認められるか否かを総合的に判断するといった形も考えられると思います。こうした2段階基準は、従来の手帳取得基準に比べてやや厳しくなる可能性はありますが、新しい取り組みですので少し慎重に進めるべきと考えます。
 手帳取得の有無にとらわれず、枠組みを拡げるということは、簡単なことではないと思いますが、必要なことですので知恵を出し合って進めていければと考えております。以上です。

○山川座長 ありがとうございました。ほかに、それでは、眞保構成員お願いいたします。

○眞保構成員 法政大学の眞保でございます。障害者雇用施策について、これまでの議論や各事務局、各法律における定義について事務局からおまとめいただき、また令和4年のしづらさ調査、あるいはJEEDの2024年の調査のポイントを丁寧に御共有いただき、ありがとうございます。令和元年改正法の附帯決議に、障害者雇用率制度の対象者の範囲について、障害者基本法と障害者雇用促進法の障害者の定義を踏まえて、障害者手帳所持者以外を含めることも検討することとされておりますし、また令和4年改正法の附帯決議には、項目11や25において、難病の方々に対する施策について要請がされています。平成24年から10年以上にわたり議論されてきた論点ですので、一定の方向を示す時期に来ているのかなと考えます。
 就労困難性を判定する機関をどうするのか。判定の公正を期すための一定の基準づくりや、医師の意見書に記載を求める内容について一定のフォーマットを作成する必要性や、判定の更新についてどうするのかなど、今後の課題は少なくないと考えますが、実雇用率の算定について、これまで指摘されている具体的な課題への対応を進める必要があると考えています。
 資料36ページ、JEED2024の難病患者の望む就労支援について。これは、手帳を保持している方、手帳を申請して不認定の方、手帳未申請の方、共通して求められているのは、難病就労支援は治療と両立をして活躍できる仕事を確保することと、治療と両立した働きやすい職場の理解と配慮とされています。JEED2024の調査報告書の29ページで引用されているのですが、難病がある人の職業上の困りごとの典型的な悪循環の模式図が引用されています。治療と就労の両立の葛藤。例えば、職場の迷惑になっている、命を削って働いているようだという例示がされていますが、こういった健康管理の困難性、あるいは職場の人間関係のストレスからの体調悪化、そして退職に至るという状況が示されているわけですが、こういったことに関しては実雇用率に算定することでは直接解決できない問題だと思います。難病は、治療と仕事の両立支援として位置づけられていて、既に厚生労働省の事業場における治療と仕事両立ガイドラインが作成されています。また、資料の35ページJEED24の就労支援サービスの活用状況、障害者職業センターや生活支援センターの利用率が低く、余り利用されていないことや、必要とされる専門支援が届いていないことから、難病のある方々が、障害者雇用促進法の支援の対象であること、そして、治療と仕事の両立支援について一層の周知を行い、共に働く労働者に広く理解を求めていくことも重要だと考えています。以上です。

○山川座長 ありがとうございました。そのほか、既に御発言された方で、言い残し等、補足、追加等がありましたらお願いいたします。非常に、様々な観点から有益な御意見を頂きました。まとめようとする趣旨ではありませんが、この難病に関しては、疾病ごとの個別性に加えて、人ごとの個別性もあるという御指摘がありました。
 また、この個別に就労困難性を判断する場合の明確性等についても、非常に様々な御意見を頂きました。さらに、新たな枠組を導入する場合でも、支援、周知啓発、あるいは更なる調査研究を続けることが必要だという御意見も頂きました。
 本日の論点は、雇用率制度との関係で手帳を所持していない難病の方々の位置づけでしたが、配慮のお話も出ており、言うまでもありませんが、合理的配慮の義務に関しては、手帳の所持は必要ないということですので、障害者雇用促進法上の障害に該当すれば合理的配慮はする必要があるということが、当然の前提になっております。本日は、非常に有益な御意見を頂きましたので、特に就労困難性の判断基準、あるいは判断の仕組みや体制の点につきまして、よりイメージがつかめる資料をお出しできるかどう、この点がはっきりしないと、なかなか議論がしづらいという御意見もあったものですから、更に具体性を持ったイメージが出せるかどうか事務局で検討していただきたいと思います。また、他の障害類型との関わり、影響等のお話もあり、手帳を申請したけれども得られなかったという一定のデータを今回出していただいておりますが、なかなか難しいものがあるかもしれません。対象となる方の見込みの粗い試算みたいなものもお出しいただけると議論がしやすくなるのではないかと思います。以上、事務局にお願いしてよろしいでしょうか。

○河村障害者雇用対策課長 準備いたします。ありがとうございます。

○山川座長 それでは、皆様方から特にありませんでしたら、次回の日程について事務局から説明をお願いします。

○原田障害者雇用対策課長補佐 事務局です。次回第9回の開催は、皆様に確保いただいている日程の中で調整し、追って御連絡いたします。以上です。

○山川座長 それでは、これをもちまして本日の研究会は終了いたします。お忙しい中、皆様大変ありがとうございました。