2025年10月28日 薬事審議会 指定薬物部会 議事録

日時

令和7年10月28日(火)10:00~

出席者

出席委員(10名)五十音順 

 (注)◎部会長 ○部会長代理 
 

欠席委員(1名)五十音順

行政機関出席者​
  •  宮本直樹 (医薬局長)
  •  佐藤大作 (大臣官房審議官)
  •  小園英俊 (監視指導・麻薬対策課長) 他

議事

○監視指導・麻薬対策課長 定刻となりましたので、ただいまから「令和7年度第4回薬事審議会指定薬物部会」を開催させていただきます。委員の先生方には、大変御多用のところ御出席を頂き誠にありがとうございます。本日はWeb併用開催でございますが、池田部会長、田中委員、舩田委員には会場にお越しいただいております。現在のところ、当部会の委員数11名のうち、松本委員より御欠席の連絡を頂いております。また、青山委員は遅れての出席とお伺いしており、9名の御出席を頂いておりますので、定足数に達しておりますことを御報告いたします。また、本日は参考人として□□□□の□□先生をお招きしております。□□先生、よろしくお願いいたします。
 続いて、部会を開始する前に、本部会の公開・非公開の取扱いについて御説明いたします。審議会総会における議論の結果、会議を公開することにより、委員の自由な発言が制限され、公正かつ中立な審議に著しい支障を及ぼすおそれがあると判断されたことから、非公開とされています。また、会議の議事録の公開については、発言者氏名を公にすることで、発言者等に対して外部からの圧力や干渉、危害が及ぶおそれが生じることから、発言者氏名を除いた議事録を公開することとされておりますので、あらかじめ御了承いただきたいと存じます。
 それでは、以後の議事進行は池田部会長にお願いいたします。よろしくお願いいたします。
○池田部会長 それでは、本日の部会資料の確認及び注意点について、事務局よりお願いいたします。
○事務局 本日の部会資料については事前に各委員宛てに送付しております。また、会場出席の委員はタブレットで御確認をお願いします。資料については資料No.1~3、文献については文献1~24、参考資料No.1~3となっております。部会資料についての説明は以上です。また、審議物質の説明中は画面上に資料を共有しますので、併せて御覧ください。
○池田部会長 ありがとうございました。本日の議題は、指定薬物の指定についてです。それでは審議に入ります。審議物質について、事務局より御説明をお願いいたします。
○事務局 資料を御覧ください。資料No.1は、本日、審議いただく4物質の名称、構造式、通称名等を記載しております。資料No.2は御審議いただく4物質のほか、構造が類似する指定薬物や麻薬などについて一覧表としてまとめております。資料No.3は審議物質の動物実験の結果等について取りまとめたものです。
 それでは、ニタゼン系化合物である審議物質マル1について説明いたします。
まず、資料No.2の1ページ、2-1を御覧ください。資料No.2-1にはニタゼン系である審議物質マル1、通称名5-Methyl etodesnitazene及びこれに構造が類似する麻薬、指定薬物について、行動観察結果、オピオイド受容体活性、マイクロダイアリシス試験のデータ等をまとめております。
 審議物質マル1である5-Methyl etodesnitazeneは、マイクロダイアリシス試験でモノアミンを有意に増加させており、オピオイド受容体の影響も過去に指定した指定薬物と同程度有することを確認しております。
 続いて、資料3の1ページを御覧ください。5-Methyl etodesnitazeneは、麻薬であるEtazeneと構造が類似する化合物です。
 続いて、2ページの(1)行動及び中枢・自律神経症状の観察を御覧ください。
マウスに5-Methyl etodesnitazene 0.2、1、10mg/kgを腹腔内投与し、投与後30、60、120分の行動及び中枢・自律神経症状を観察し、用量ごとに観察された症状を記載しております。また、3、4ページの表1~3に5-Methyl etodesnitazeneに対する行動及び中枢・自律神経症状観察における評価値を載せており、数値は各群マウス5匹のスコアの平均値です。また、観察された特徴的な症状を示した写真を5ページに載せております。
 ここで、写真と併せて実際の動画を御確認ください。動画は三つあります。こちらは10mg/kg投与群の投与後15分経過したマウスです。このように、旋回歩行及び挙尾反応が確認されました。次の動画に移ります。こちらは10mg/kg投与群の投与後30分経過したマウスですが、旋回歩行を繰り返し、また、歩行速度が低下している様子が確認されました。最後の動画に移ります。これは10mg/kg投与群の投与後15分経過したマウスです。壁に寄りかかり静止する様子や挙尾反応が確認されております。動画は以上です。
 続いて、6ページの(2)を御覧ください。自発運動における運動量について、マウスに5-Methyl etodesnitazene1mg/kgを腹腔内投与し、投与後3時間までの10分ごとの自発運動量を測定しております。総運動量、大きい運動量、総移動距離は、測定期間を通して投与によると思われる影響は見られませんでした。
 立ち上がり回数は、投与開始から40分まで投与群で減少する傾向は見られるものの、対照群と比べ有意な差は見られませんでした。6ページの(3)病理組織学的解析は、影響を疑う所見は確認されませんでした。
 続いて、7ページの(4)マイクロダイアリシス試験によるモノアミンの経時変化を御覧ください。5-Methyl etodesnitazene約4mg/kgを腹腔内投与したマウス5匹、対照群マウス6匹を用いてモノアミンの増加率の有意差をウェルチのt検定で求めたところ、セロトニン、ドパミン、ノルアドレナリンのいずれも有意に増加することが確認されました。
 8ページの(5)を御覧ください。5-Methyl etodesnitazeneのヒトオピオイド受容体に対するアゴニスト活性を明らかにするため、EC50を算出したところ、μ受容体のEC50は4.59×10-10M、κ受容体のEC50は3.54×10-Mでした。
 以上の結果から、5-Methyl etodesnitazeneは動物による行動観察、モノアミン類の経時的変化及びオピオイド受容体に対するアゴニスト活性の結果において有意な影響が認められていることから、中枢神経系への作用を科学的に類推でき、その強さは既に医薬品医療機器等法に基づき指定されている指定薬物と比較して同等であると考えられることから、本化合物を医薬品医療機器等法第2条第15項に規定する指定薬物に指定することが相当であると考えております。
 続いて、(6)海外での流通事例です。アメリカ、スウェーデン、スロバキア、ポーランド、モーリシャス、ラトビア、ドイツ、フランス、フィンランド、エストニア、カナダ、オーストリア、オーストラリアで確認されております。また、海外での規制状況については、スウェーデン、アメリカで規制されていることが確認されております。審議物質マル1は以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○池田部会長 ありがとうございました。それでは、委員の先生方から御意見を頂きたいと思います。まず、最初に流通実態について、□□委員、お願いいたします。
○□□委員 本化合物について、□□□□での検出事例はございませんでした。
以上です。
○池田部会長 ありがとうございました。それでは、改めて委員の先生方に御意見を頂きたいと思います。オピオイド受容体にかなり選択性の高い、強い化合物かと思いますが。特に御意見がないようでしたら審議をまとめたいと思います。ただいま御審議いただいた物質は、医薬品医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第2条第15項に規定する指定薬物として指定することが適当であると決議してよろしいでしょうか。Webで御参加の方は「挙手」ボタンをお願いいたします。会場の先生方もお願いいたします。全員に御賛同を頂けたようですので、決議いたしたいと思います。
 それでは、引き続き事務局から御説明をお願いいたします。
○事務局 続いて、トリプタミン系化合物である審議物質マル2、資料No.2-2、資料No.3-2について説明いたします。まずは、2ページの資料No.2-2を御覧ください。資料No.2-2はトリプタミン系である審議物質マル2、通称名4-PrO-DMT及びこれらに構造が類似する指定薬物について行動観察結果、モノアミントランスポーター阻害活性等のデータをまとめております。4-PrO-DMTは、マイクロダイアリシス試験でモノアミンを有意に増加させたこと、また、首振り反応試験において投与による影響が確認されており、過去に指定した指定薬物と同程度の活性を有することを確認しております。資料No.2-2は以上です。
 続いて、資料No.3について説明いたします。9ページを御覧ください。審議物質4-PrO-DMTですが、指定薬物である4-AcO-DMTと構造が類似する化合物です。
 続いて、10ページの(1)行動及び中枢・自律神経症状の観察を御覧ください。
マウスに4-PrO-DMTを1.1、11、27.5mg/kg腹腔内投与し、投与後30、60、120分の行動及び中枢・自律神経症状を観察し、用量ごとに観察された症状を記載しております。また、11ページと12ページの表1~3に、4-PrO-DMTに関する行動及び中枢・自律神経症状観察における評価値を載せております。数値は、各群マウス5匹のスコアの平均値です。13ページには観察された特徴的な症状を示した写真を載せております。
 ここで写真と併せて実際の動画とともに御覧ください。動画は二つあります。こちらは11mg/kg投与群の投与後15分を経過したマウスです。腹ばい姿勢で自発運動が低下し、しゃっくり様の動きとスニッフィングを繰り返す様子が確認されました。次の動画に移ります。こちらは27.5mg/kg投与群の投与後30分を経過したマウスです。腹ばい姿勢で、しゃっくり様の動きとスニッフィングを繰り返すことが確認されました。動画は以上です。
 続いて、14ページの(2)自発運動における運動量の測定結果を御覧ください。
自発運動における運動量については、マウスに4-PrO-DMT、11mg/kgを腹腔内投与し、投与後3時間までの10分ごとの自発運動量を測定しております。総運動量、大きい運動量、立ち上がり回数、総移動距離は、投与開始10~30分で有意に減少しました。
 続いて、15ページ(3)マイクロダイアリシス試験によるモノアミンの経時変化を御覧ください。4-PrO-DMT、約21mg/kg腹腔内投与群を5匹、対照群を6匹用いて、マウス線条体内神経シナプス間隙のモノアミンの増加率の有意差をウェルチのt検定で求めたところ、セロトニン、ドパミン、ノルアドレナリンで有意に増加することが確認されました。
 16ページの(4)では、首振り反応試験における首振り回数の経時変化と、累積首振り回数の結果を示しております。首振り回数の経時変化は、1mg/kg投与群において5~10分の間に首振り回数が増加し、以降は減少傾向が認められました。3mg/kg投与群においては0~10分までの間に首振り回数が増加し、以降は減少傾向が認められました。9mg/kg投与群においては0~5分の間に首振り回数が増加し、10分以降はほとんど首振り反応は認められませんでした。
また、累積首振り反応数は全ての投与群で、全ての集計時間において対照群に比べて有意に累積首振り回数が増加しました。
 続いて、18ページの(6)ヒトセロトニン受容体に対するアゴニスト活性、EC50を算出した結果を御覧ください。4-PrO-DMTは、ヒトセロトニン2A受容体で3.73×10-M、2C受容体で1.83×10-Mでした。以上の結果から4-PrO-DMTは動物による行動観察、首振り反応試験、ヒトセロトニン受容体親和性の結果において有意な影響が認められており、中枢・自律神経系への作用を科学的に類推でき、その強さは既に医薬品医療機器等法に基づき指定されている指定薬物と比較して同等であると考えられることから、本化合物を医薬品医療機器等法第2条第15項に規定する指定薬物に指定することが相当であると考えております。
 続いて、(7)海外での流通状況についてです。アメリカ、スイス、スウェーデンで流通が確認されております。また、海外での規制状況についてはスウェーデン、ロシア、ベラルーシで規制されていることを確認しております。審議物質マル2は以上です。御審議のほど、よろしくお願いします。
○池田部会長 ありがとうございました。それでは、委員の先生方に御意見を頂きたいと思います。最初に流通実態について、□□委員からお願いいたします。
○□□委員 本化合物について、□□□□での検出事例があります。2025年3月に1件、製品形態としては白い粉末状となっております。以上です。
○池田部会長 ありがとうございました。それでは審議を続けたいと思います。
御意見はいかがでしょうか。
○事務局 すみません。青山委員が合流されておりますので、現在、人数が10名そろっているところです。
○青山委員 遅くなってすみませんでした。よろしくお願いします。
○池田部会長 いかがでしょうか。セロトニン受容体にかなりはっきりした作用がありますので、指定することが適当のように思います。特に御意見がないようでしたら、審議をまとめたいと思います。ただいま御審議いただいた物質は、医薬品医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第2条第15項に規定する指定薬物として指定することが適当であると決議してよろしいでしょうか。挙手をよろしくお願いいたします。ありがとうございました。それでは決議させていただきました。
 引き続き事務局より御説明をお願いいたします。
○事務局 続いて、フェンタニル系化合物である審議物質マル3について説明させていただきます。3ページの資料No.2-3を御覧ください。資料No.2-3には、フェンタニル系である審議物質マル3、通称名ortho-Methylfentanyl及びこれに構造が類似する麻薬、指定薬物について、オピオイド受容体活性、中枢神経系への作用、マイクロダイアリシス試験のデータ等をまとめております。審議物質マル3であるortho-Methylfentanylは、マイクロダイアリシス試験でモノアミンを有意に増加させており、オピオイド受容体の影響も過去に指定した指定薬物と同程度有することを確認しております。資料No.2-3は以上です。
 続いて、資料No.3について説明いたします。資料No.3の20ページを御覧ください。ortho-Methylfentanylは、麻薬であるフェンタニルと構造が類似する化合物です。
 続いて、21ページの(1)行動及び中枢・自律神経症状の観察を御覧ください。
マウスにortho-Methylfentanyl 0.2、1、10mg/kgを腹腔内投与し、投与後30、60、120分の行動及び中枢・自律神経症状を観察し、用量ごとに観察された症状を記載しております。また、22ページと23ページの表1~3に、ortho-Methylfentanylに対する行動及び中枢・自律神経症状観察における評価値を載せており、数値は各群マウス5匹のスコアの平均値です。また、観察された特徴的な症状を示した写真を、24ページに載せております。
 ここで写真と併せて、実際の動画も御確認ください。動画は二つあります。これは10mg/kg投与群の投与後30分を経過したマウスです。旋回歩行を繰り返し、時折静止する様子や挙尾反応が確認されました。続いて、10mg/kg投与群の投与後15分を経過したマウスです。側臥位で静止する様子が確認されました。動画は以上です。
 続いて、25ページの(2)を御覧ください。自発運動における運動量についてです。マウスにortho-Methylfentanylを1mg/kg腹腔内投与し、投与後3時間までの10分ごとの自発運動量を測定しております。総運動量、大きい運動量、総移動距離は、測定開始20分及び90分で有意に増加しました。また、立ち上がり回数は測定開始10~30分で有意に減少しております。
 続いて、25ページの(3)マイクロダイアリシス試験によるモノアミンの経時変化を御覧ください。ortho-Methylfentanyl約8mg/kgを腹腔内投与したマウス5匹、対照群マウス6匹を用いて、モノアミンの増加率の有意差をウェルチのt検定で求めたところ、セロトニン、ドパミン、ノルアドレナリンのいずれも有意に増加することが確認されました。
 続いて、27ページの(4)を御覧ください。ortho-Methylfentanylのヒトオピオイド受容体に対するアゴニスト活性を明らかにするため、EC50を算出したところ、μ受容体のEC50は3.44×10-M、κ受容体のEC50は2.31×10-Mでした。以上の結果からortho-Methylfentanylは動物による行動観察、モノアミン類の経時的変化及びヒトオピオイド受容体に対するアゴニスト活性の結果において有意な影響が認められていることから、中枢神経系の作用を科学的に類推でき、その強さは既に医薬品医療機器等法に基づき指定されている指定薬物と比較して同等であると考えられることから、本化合物を医薬品医療機器等法第2条第15項に規定する指定薬物に指定することが適当であると考えております。
 続いて、(5)海外での流通事例についてです。カナダとエルサルバドルで確認されております。
 また、(6)海外での規制状況については、アメリカで規制されている可能性があります。イギリスにおいては薬物濫用法のスケジュール2において規定しており、規制対象となっている可能性があります。審議物質マル3は以上です。御審議のほど、よろしくお願いします。
○池田部会長 ありがとうございました。それでは、委員の先生方に御意見を頂きたいと思います。最初に流通実態について、□□委員からお願いいたします。
○□□委員 本化合物について、□□での検出事例はありませんでした。
以上です。
○池田部会長 ありがとうございました。それでは、改めて委員の先生方から御意見を頂きたいと思います。いかがでしょうか。こちらもオピオイドμ受容体に、かなり強い作用を持つ化合物かと思います。指定するのが適当と思われますが、御意見は特にないでしょうか。それでは審議をまとめたいと思います。ただいま御審議いただいた物質は、医薬品医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第2条第15項に規定する指定薬物として指定することが適当であると決議してよろしいでしょうか。挙手をよろしくお願いいたします。ありがとうございました。それでは決議をさせていただきました。
 引き続き事務局より御説明をお願いいたします。
○事務局 続いて、審議物質マル4について説明いたします。資料No.2の4ページ、2-4を御覧ください。審議物質マル4であるCBNは、動物による行動観察、カンナビノイド受容体への影響が過去に指定した指定薬物と同程度を有することを確認しています。資料No.2-4は以上です。
 資料No.3について説明いたします。CBNは、麻薬であるΔ9-THCと構造が類似した化合物です。30ページの(1)CB受容体作用について御覧ください。ヒトCB受容体発現細胞株であるCHO-CB細胞を用いて、CBN、Δ9-THC及びCP-55,940のCB受容体への作用を評価いたしました。図1のAに示すとおり、CBNは2×10-Mで細胞内カルシウム濃度を有意に増加させ、CBNのCB受容体活性作用は、CB受容体拮抗薬AM251の前処置により完全に抑制されました。図1のBに示していますが、各物質のEC50を算出したところ、CBNは算出不可、Δ9-THCは3.508×10-M、CP-55,940は1.305×10-Mとなりました。
 以上より、CBNは麻薬であるΔ9-THCよりも弱いものの、CB受容体への活性作用を有することが確認されました。
 続いて、(2)細胞実験に関する文献調査について御覧ください。文献調査より、ラット脳シナプトソームを用いたCB受容体結合試験では、CBNのCB受容体に対する親和性であるKi値は392.2±53.5nM、Δ9-THCのKi値は66.5±5.8nMでした。また、CHO-K1細胞にヒトCB受容体を発現させて評価した結果では、CBNのKi値は140nM、Δ9-THCのKi値は35nMでした。これらのCBNのCB受容体に対するKi値は、これまで包括指定された合成カンナビノイドの中でKi値が10nMを超える成分であるJWH-072やJWH-120等よりも強いことが確認されました。
 次に、31ページの(3)行動及び中枢・自律神経症状観察について御覧ください。
ICR系雄性マウスに、薬物投与群には各濃度のCBN、Δ9-THC、CP-55,940を腹腔内投与し、対照群には溶媒である10%DMSO+1%Tween80含有生理食塩液を腹腔内投与いたしました。図2のAに示すとおり、CBN5、10mg/kg投与後120分時点、CBN20mg/kg投与後90分以降、CBN50mg/kg投与後60分以降にカタレプシー様無動状態の有意な発現が確認されました。また、図2のBに示すとおり、CBN20、50mg/kg投与後10分時点で直腸体温の下降が観察されました。
 陽性対照であるΔ9-THC及びCP55,940では、カタレプシー様無動状態及び直腸体温の下降のいずれも、CBNよりも有意な発現が確認されました。
 また、CB受容体拮抗薬AM251を前処置したマウスでは、CBN20、50mg/kgの腹腔内投与で認められたカタレプシー様無動状態及び直腸体温の下降は有意に抑制されました。
 以上より、5~50mg/kgのCBNの腹腔内投与によって、CBNがCB受容体への活性作用を介して、カタレプシー様無動状態及び体温下降作用が発現したことが示唆されました。なお、文献調査では、Δ9-THCによるカタレプシー様無動状態の発現には側坐核、体温下降作用の発現には視床下部が関与していることが報告されています。
 次に、33ページの(4)動物実験に関する文献調査を御覧ください。過去の先行研究では、薬物弁別試験において、Δ9-THCに般化したラットにCBNで類似作用を発現させるには、Δ9-THCの7倍程度の用量が必要でした。
 また、CBN及びその代謝物11-hydroxy-CBNが、ラットの睡眠導入に有意な影響を及ぼすことが報告されています。ラットに10、30、100mg/kgのCBNを腹腔内投与したところ、総睡眠時間を有意に増加させ、10mg/kgのCBNによるノンレム睡眠を増加させる効果は、一般的な睡眠導入薬である10mg/kgのゾルピデムと同等でした。CBNの代謝物である11-hydroxy-CBNは、ラットの脳内で検出され、Δ9-THCとほぼ同等のCB受容体活性作用を有しており、3mg/kgの11-hydroxy-CBNで睡眠促進作用、10mg/kgの11-hydroxy-CBNで逆にレム睡眠を有意に抑制する作用を示しました。これらの結果は、CBNとCBNの代謝物11-hydroxy-CBNが神経薬理作用に関与する可能性を示唆しています。
 以上の結果から、CBNは睡眠促進作用を有するが、動物実験では二相性の作用が認められ、作用する用量域が狭く、厳密なコントロールが必要であると考えられます。また、CBNは摂取量が増加することで、Δ9-THCと類似の感覚効果が発現することから、高用量での乱用による依存形成の可能性は否定できないと考えられます。
 続いて、33ページの(5)ヒトにおける精神毒性、依存性に係る文献調査を御覧ください。文献調査では、ヒトにおいてCBNに関する乱用、依存、過剰摂取、死亡事例等の健康被害等を報告する論文は確認されず、成人男性がCBN50mgを含有する経口カプセルを摂取した際に、精神作用は認められていません。成人男性を対象として、CBN、Δ9-THC及びCBNとΔ9-THCの合剤を摂取した臨床研究が実施され、Δ9-THC単独では陶酔感、目まいや眠気など精神症状を報告したが、50mgのCBN単独では、被験者の主観的なスコアはプラセボと変化はなかったものです。
 一方、Δ9-THCとCBNを組み合わせた場合、Δ9-THC単独よりも精神作用が強まる可能性が認められました。睡眠障害におけるCBNの効果及び認容性の確認を目的として、30mgと300mgのCBNを用いた臨床研究が計画されていることが報告されています。
 別のヒト研究例は、18~55歳で自己評価による睡眠の質が「非常に悪い」又は「悪い」と回答した参加者がCBN20mgを経口摂取した場合、自己評価では睡眠の質に変化はなかったが、夜間覚醒回数が有意に減少し、翌日の疲労感に影響がなかったという報告もあります。
 続いて、34ページの健康被害の情報についてです。国内において、CBNを含有すると標榜する製品を摂取し、健康被害が生じたと推測される事例が4件発生しており、表のように取りまとめています。また、摂取者が摂取した同一の製品を調査したところ、CBNが検出されています。
 以上の結果から、CBNは、細胞実験でCB受容体に対する活性作用、動物実験でカタレプシー様無動状態及び体温低下作用を有することが明らかになり、有意な影響が認められています。また、文献調査から、CBNのCB受容体に対する親和性が確認でき、その親和性は既に包括指定されている合成カンナビノイド化合物よりも強いことが判明したことから、CBNは指定薬物と同等又はそれ以上の精神毒性を有する蓋然性が高いと言えます。また、CBN及びその代謝物である11-hydroxy-CBNがラットの睡眠導入に有意な影響を及ぼすことも報告されています。
 以上の結果から、CBNについて、中枢神経系への作用を科学的に類推でき、その強さは、既に医薬品医療機器等法に基づき指定されている指定薬物と比較して同等又はそれ以上であると考えられることから、本化合物を医薬品医療機器等法第2条第15項に規定する指定薬物に指定することが相当であると考えられます。
 続いて、(6)国内での流通状況についてですが、CBNは、クッキーやグミなどのお菓子や電子たばこ等の様々な形態で販売が確認されており、レビュー等で使用感が述べられています。
 また、(7)海外での規制状況についてですが、英国ではクラスBの規制対象として規定されていることから、規制されている可能性があります。また、カナダでは、スケジュール1の規制薬物として分類されていることから、規制対象となっている可能性があります。審議物質マル4は以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○池田部会長 ありがとうございました。委員の先生方から御意見を頂きたいと思います。なお、本審議物質は、先ほど御説明がありましたように広く流通しておりますので、流通実態の御説明は省略させていただきます。本審議物質に関してはいかがでしょうか。vitroでもvivoでもはっきりした作用が認められていますし、従来、指定している薬物と同等以上の作用があるかとは思いますが、特に御意見はないでしょうか。□□委員、お願いいたします。
○□□委員 34ページのCBNの製品を使用したと考えられる健康被害の情報について、四つ挙げていただいているのですが、事故などの捜査の過程で実際に検出されてきているという理解でよろしいでしょうか。
○事務局 お答え申し上げます。こちらは国内において4例の健康被害が生じたと推察される事例が報告されており、これらの摂取者が摂取した同一の製品を調査し、CBNの成分が検出されています。
○□□委員 ありがとうございます。
○池田部会長 そのほか、いかがでしょうか。広く流通しているので、規制することの影響はあるかとは思いますが、従来、指定している物質と同等あるいはそれ以上という状況かと思いますので、御提案のとおり指定する方向で審議をまとめてよろしいでしょうか。それでは、審議をまとめたいと思います。ただいま御審議いただきました物質は、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第2条第15項に規定する指定薬物として指定することが適当であると決議してよろしいでしょうか。挙手をよろしくお願いいたします。ありがとうございました。全員に挙手いただきましたので、決議させていただきました。
 それでは、今後のスケジュールについて、事務局よりお願いいたします。
○事務局 今後のスケジュール等について御説明いたします。本件の結果については、次回開催の薬事審議会で報告させていただく予定です。本日の結果を受け、審議物質マル1~マル3については、指定薬物を指定するための省令改正の手続を進める予定です。審議物質マル4のCBNについては、一部の難治てんかん等の患者が使用している実態があることから、パブリックコメントを実施した上で使用に必要な手続を周知し、指定薬物を指定するための省令改正の手続を進める予定です。また、CBNについては、学術研究・試験検査の用途、第1種大麻草採取栽培者又は第2種大麻草採取栽培者による大麻草の加工の用途を医療等の用途に定めることを予定しています。いずれにしても、可能な限り適正使用に支障を来さないように対応いたします。以上です。
○池田部会長 ありがとうございました。以上で、本日の議題は終了いたしました。事務局より、次回の予定について御連絡をお願いいたします。
○事務局 次回の部会の日程については、正式に決まり次第、改めて御連絡いたします。以上です。
○池田部会長 以上をもちまして、令和7年度第4回指定薬物部会を閉会いたします。ありがとうございました。
( 了 )
備考
本部会は、公開することにより、委員の自由な発言が制限され公正かつ中立な審議に著しい支障をおよぼすおそれがあるため、非公開で開催された。

照会先

医薬局

監視指導・麻薬対策課 課長補佐 飯島 (2779)