2025年11月6日 第8回労働政策審議会労働条件分科会電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律の在り方に関する部会 議事録

労働基準局労働関係法課

日時

令和7年11月6日(木) 11:15~12:15

場所

厚生労働省専用第21会議室(中央合同庁舎5号館17階)
(東京都千代田区霞が関1丁目2番2号)

出席者

公益代表委員
中窪部会長、戎野委員、原委員、水島委員
労働者代表委員
片山委員、冨髙委員、渡邊委員
使用者代表委員
井上委員、牛尾委員、坂下委員、藤中委員
オブザーバー
添田電力基盤整備課長(経済産業省資源エネルギー庁)
事務局
岸本労働基準局長、尾田大臣官房審議官(労働条件政策、働き方改革担当)、先﨑労働関係法課長、内村労働関係法課長補佐

議題

(1)電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律の在り方について

議事

○中窪部会長 それでは、定刻となりましたので、ただいまより第8回「労働政策審議会労働条件分科会電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律の在り方に関する部会」を開催いたします。
 委員の皆様におかれましては、大変御多忙の中、お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
 本日の部会につきましても、会場からの御参加とオンラインでの御参加の双方で実施いたします。
 本日は、公益代表委員の藤村委員、労働者代表委員の石橋委員が御欠席と伺っております。
 それから、今回もオブザーバーとしまして、経済産業省資源エネルギー庁電力・ガス事業部の電力基盤整備課長、添田隆秀様に御出席をいただいております。
 それでは、事務局より、定足数等について御報告をいただきます。よろしくお願いします。
○労働関係法課長補佐 本日の出席委員は11名となっており、労働政策審議会令第9条では、委員全体の3分の2以上の出席または公労使各側委員の3分の1以上の出席が必要とされているところ、定足数は満たしておりますことを御報告申し上げます。
 事務局からは以上でございます。
○中窪部会長 ありがとうございます。
 それでは、議題1の「電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律の在り方について」につきまして、事務局より御説明をお願いいたします。
○労働関係法課長 それでは、資料1を御覧ください。
 前回、委員の皆様からいただきました御意見に基づきまして資料に追記をしておりますので、追記箇所について御説明をさせていただきます。
 まず資料4ページでございます。
 2の「(6)電気事業者間の競争環境・連携体制」のところでございますが、(6)の末尾に「なお、労働者代表委員からは、上記の点は、電力システムの中で取り組むべきものであり、労使関係当事者の取組により解決するものではなく、スト規制法の在り方に関する議論の中で重きが置かれるべきではないとの意見があった」と追記をさせていただいております。
 次に「3 今後の方向性」のところでございます。
 5ページの中の下線を引いている箇所でございますが、「一方で、これまでの電力供給が良好な労使関係に支えられてきたことに鑑みれば、上記のような電気事業の状況の進展のみならず、今後の電気事業を取り巻く環境変化の下においても、労使関係が良好であることについて継続的に国民や需要家の理解を得ていくことや、スト規制法の代替措置のあり方に関してより議論が深まることが、同法の在り方を検討する上での重要な要素となる。この点、国民や需要家の納得性を確保するためのスト規制法の代替措置に関しては、電気の安定供給について労使関係は安定・成熟しており、良好な労使関係のもとでの自主的な取組により十分に担保可能であるといった意見や、電気事業に関して労働関係調整法の枠組みの下に何らかの事前規制を設けるといった意見に関しても議論がなされたが、他の公益事業との均衡など検討すべき課題は多く、現時点では意見が一致するには至らなかった」と追記しております。
 同じく5ページの一番下の行からでございますが、「なお、今般は意見の一致に至らなかったが、次世代の電力システムに係る取組による電気事業の業務の代替性や事業者間の競争環境・連携体制の検証とあわせて、国民や需要家の必要な納得を得られるようにするため、上記のような、今後の電気事業を取り巻く環境変化の下においても、労使関係が良好であることについて継続的に国民や需要家の理解を得ていくことや、将来的に労働関係調整法の枠組みの下での事前規制など国民の安心と電力の安定供給を確保するための代替措置に関する議論を十分に深めることができれば、スト規制法の在り方について、さらに一歩踏み込み、公労使委員の共通した認識の下、廃止に向けた議論も可能になることも考えられる。また、このような議論を可能にするためにも、今後の電気事業を取り巻く環境変化も注視しながら、電力の安定供給のための労使の取組状況等について確認・共有等を行う場を設け、労使の知見を継続的に蓄積していくことで、将来的な検討につなげていくことが望まれる」と追記をしております。
 資料の説明につきましては以上でございます。
○中窪部会長 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの資料1につきまして、御意見、御質問がございましたらお願いいたします。オンライン参加の委員におかれましては、御発言の希望がある場合にはチャットで「発言希望」と書いてお知らせください。いかがでしょうか。
 片山委員、お願いします。
○片山委員 片山でございます。
 報告書案についての受け止めを述べさせていただきたいと思います。
 前回の部会の議論を踏まえまして報告書を修正いただきましたが、スト規制法の廃止は現時点では難しいとし、検討が先延ばしになった点につきましては、電気事業に働く労働者を組織する立場としては納得し難いということは、改めて申し述べさせていただきたいと思います。
 報告書案の「3 今後の方向性」の中で、良好な労使関係の評価や廃止に向けての議論の場についても触れられておりますが、私たち電気事業の労働者は、電力の安定供給への期待が一層高まっていることは十分に受け止めております。電力の労使関係は、これまでも繰り返し述べてきたとおり、紛争が発生をした場合であっても、労働委員会のあっせんなど平和的解決手段を最優先とする平和義務を労働協約に定めております。また、仮にストを実施する場合においても、発送電部門などの特定従業員は参加させないという意味の協約を結ぶ労使もございます。
 その上で、今日までの電力の安定供給は、労使の関係性や行為規制によって保たれているわけではなく、電気事業に携わる労働者一人一人の使命感の下で成り立っております。日々の安定供給はもとより、自然災害等による広域停電において、一分一秒でも早く電力を復旧させたいとの思いは全ての組合員の共通の思いであり、電力の安定供給が使命の我々にとって、電力の遮断などの手段は絶対に考えられません。
 国民の理解醸成に向けた努力は引き続き重ねることは言うまでもございませんが、改めて、スト規制法により、労働関係調整法の公益事業規制と同等もしくは追加的な規制を設ける合理性は存在しないとの考えに変わりはなく、今次部会でスト規制法廃止の結論が得られなかったことは遺憾であることをお伝えさせていただきたいと思います。
 以上でございます。
○中窪部会長 ありがとうございました。
 冨髙委員、お願いします。
○冨髙委員 ありがとうございます。
 前回部会からの追加も含めて御報告いただきましたが、その受け止めとしては、今、片山委員から電力労働者を組織する労働者として意見を述べられたところでございますけれども、私も全く同感であるということを申し上げたいと思います。
 今回、改めて報告書案を見ると、5ページ中段に記載していただいているとおり、スト規制法は電力労働者の争議行為全般を禁止したものではなく、あくまで正当性が認められない争議行為を確認的に示した行為規範であるということを明確にする方向性をお示しいただきました。また、報告書案の末尾では、前回の部会での議論を踏まえて追記いただいたということですが、電気事業の環境変化だけではなく、成熟・安定した労使関係などについて国民や需要家の理解を得ていくことができれば、今後さらに一歩踏み込んで、廃止に向けて議論も可能になるということを公労使共通の認識として追記いただいたと捉えております。こうした点を本部会の総意として合意できるということについては、今回の議論の成果ということで受け止めているところではございます。
 ただ、これまでも繰り返し申し上げてきたところですが、憲法に定める労働基本権は全ての労働者に等しく保障されるべきということは言うまでもありませんし、その重要性に鑑みれば、労働側がこれまで繰り返し述べてきた通りスト規制法を廃止すべきという考えは変わるものではありません。また、電気事業には、他の公益事業と共に労調法の公益事業規制が課せられています。この点については、使用者側委員からは、「労調法は事後規制であって、事前規制としてのスト規制法が必要」という意見も示されてきたところですが、2つの法律はいずれも国民生活への影響などに鑑みて、ストを制限する効果を有している点は共通しており、屋上屋を重ねる形で規制を設ける合理性はないということを改めて申し上げておきたいと思っております。
 したがいまして、今回、スト規制法廃止という結論に合意が至らなかったことについては、我々として極めて遺憾に思うところでございます。そのため、労働側としては、「3 今後の方向性」の中の「スト規制法を廃止できると判断するに足る変化があったと結論づけることは難しい」、「現時点では意見が一致するには至らなかった」という点について反対意見を付したいと思います。
 以上です。
○中窪部会長 ありがとうございました。反対意見をここに追記したいということですね。分かりました。
 そのほかいかがでしょうか。よろしいですか。
 それでは、ただいま冨髙委員から、労働者代表委員の意見は反対ということを追記したいという御発言がありましたが、それを労働者側の意見としてここに追記するということでよろしいでしょうか。
 坂下委員。
○坂下委員 追記する文面を拝見した上で判断したいと思います。
○中窪部会長 それでは、その追記部分について事務局で準備をしていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
○労働関係法課長 承知いたしました。対応させていただきます。
○中窪部会長 それでは、事務局の準備が終わるまで、しばし休憩といたします。
 
(休  憩)
 
○中窪部会長 それでは、部会を再開したいと思います。
 事務局より、今、追加しました点の御説明をお願いいたします。
○労働関係法課長 ただいま配付をさせていただきました資料2について、御説明をさせていただきます。
 5ページの下線を引いておる箇所でございますが、「なお、労働者代表委員からは、憲法上の労働基本権はすべての労働者に等しく保障されるべきであるとともに、労働関係調整法の公益事業規制および関係労使における健全な労使関係を土台とする自主規制が既に整備されている中、追加的に規制を設ける合理性は存在しないため、スト規制法は廃止すべきとの意見があった」と追記をさせていただいております。
 資料の説明は以上でございます。
○中窪部会長 ありがとうございました。
 それでは、この点につきまして、御質問、御意見等ございましたらお願いいたします。
 坂下委員、お願いします。
○坂下委員 使側を代表して発言をさせていただきたいと思います。
 今、事務局より追記された赤字下線部分ですが、先ほど労側の委員から発言があった内容をコンパクトにまとめていただいているものと認識しました。
 使側としては、これまでも基本的な考え方を述べてまいりましたが、6ページの上から4行目、なお以降に、私どもがずっと主張していたことをしっかり明記いただいております。したがって、今回、労側の御意見を追記で記載されることについては、了承できると考えております。
 また、全体を通じて、8回にわたる長い議論をしっかりと反映した内容になっていると理解しております。
 部会長におかれましては、これまでの議論を取りまとめいただき、誠にありがとうございます。使側としては、この内容について特段の異論はございません。
 以上です。
○中窪部会長 ありがとうございました。
 労側もよろしいでしょうか。
 渡邊委員、お願いします。
○渡邊委員 渡邊です。よろしくお願いします。
 労働側の意見を追記いただきましたが、改めて、労働関係調整法の公益事業規制がある以上、同等の効果しかないスト規制法の存在意義は既に消失しているという認識の考えに変わりはないということは、もう一度言わせていただきたいと思います。
 その上で、報告書の5ページの一番下から2行目以降に「次世代の電力システムに向けた制度改正による取組の進展の状況とその影響を十分に検証した上で…スト規制法の廃止も含め、引き続き検討すべき」と記載されております。私たちとしては、次期見直しでスト規制法廃止に向けた議論を進めるべきと考えておりますが、報告書の「引き続き検討」ということでは、今後一体いつ議論ができるのかということについて懸念をしているところです。この点、事務局としては、次期見直しのタイミングについてどのように考えているか、お聞かせいただきたいと思います。
 以上です。
○中窪部会長 事務局のほうからお願いします。
○労働関係法課長 ありがとうございます。
 お示しいただいた箇所でございますが、資料の5ページ、一番下の行から記載をしているところでございますが、事務局としても現在、資源エネルギー庁で検討されている次世代の電力システムに向けた制度改正による取組の進展の状況とその影響を検証した上で、スト規制法の在り方については、この部会で検討がされるものと考えているところでございます。
 次世代の電力システムに係る内容等は、現在、資源エネルギー庁において検討されているものでございますので、その検証時期についても具体的にお示しできないところでございますけれども、今後、資源エネルギー庁とも連携して、対応を検討していきたいと考えているところでございます。
 事務局といたしましては、今般、報告書の中で御提示いただいております電力の安定供給のための労使の取組状況等について確認・共有等を行う場の円滑な運営等に努めてまいりたいと考えているところでございます。
○中窪部会長 渡邊委員、どうぞ。
○渡邊委員 ありがとうございます。
 今後、再びスト規制法廃止の具体的な論議をする場面に向け、労使の取組状況を確認する新たな場においては、労使の知見が大いに蓄積され、廃止に向けた理解がさらに深まる状況となることを期待したいと思います。
 以上です。
○中窪部会長 ありがとうございました。
 そのほかいかがでしょうか。
 冨髙委員、お願いします。
○冨髙委員 今、労働者代表委員の意見を付していただきましたけれども、改めて、労働側としては、報告書案の内容と結論に納得しているわけではないということは申し上げておきたいと思います。一方で、報告書案の「3 今後の方向性」の冒頭にございますように、今日における電力の安定供給というのは、良好な労使関係と労使の高い使命感によって支えられていることを、部会の共通認識としてお示しいただいた点は極めて重要だと考えております。労働側としては、これを確実に進めていく、その理解を広げていくということを強く求めていきたいと考えているところでございます。
 また、次期見直しのタイミングについても触れていただきましたけれども、廃止に向けた議論を見据えて、電力の安定供給のための労使の取組状況等について確認・共有を行う場の設置についてもお示しいただいたところです。こうした場も活用しながら、廃止に向けた労使の知見の蓄積、また国民、需要家の納得性の醸成に努めていただき、次の議論のタイミングでは先送りにせずに、本部会においてスト規制法廃止に向けた確実な議論、検討を行うようにしていただきたいと考えます。
 労働側としましては、スト規制法を廃止すべきとの考えに変わりはありませんが、この間議論をしてきた公労使の三者構成の会議で結論を出すことの重要性も踏まえまして、今回の報告書の取りまとめは受け入れることとしたいと思います。
 以上です。
○中窪部会長 ありがとうございます。
 坂下委員、お願いします。
○坂下委員 今、労側のほうから御発言がありましたが、先ほど申し上げたとおり、とりまとめの中身自体については特段の異論はないですが、今後のことについて、「廃止に向けた」という、廃止ありきの議論になるということは認識しておりません。6ページの最後にもあるように、国民や需要家の必要な理解を十分得ていくことが何よりも重要だと考えており、使側としては、何らかの事前規制が必要であるということは変わらず重要なファクターであると思っておりますので、その点だけは共有させていただければと思います。
 以上です。
○中窪部会長 ありがとうございます。
 そのほかいかがでしょうか。よろしいですか。
 それでは、それぞれにまだ残っている部分はありますけれども、今回の本部会の検討結果としましては、この報告書案のとおりで御了承いただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
(異議なしの意思表示あり)
○中窪部会長 ありがとうございます。
 事務局から何か補足説明等ございますか。
○労働関係法課長 ありがとうございます。
 報告書本文のタイトルの「(案)」を取ることと、日付を本日付で入れること、また、記の上の文章の審議回数のところで、8回ということで数字を入れさせていただきまして、報告書とさせていただきたいと思います。
 以上でございます。
○中窪部会長 ありがとうございました。
 おかげさまで何とか報告書がまとまったということで、ここまで8回にわたりまして、公労使委員の皆様におかれましては非常に熱心かつ精力的に御議論いただきましたこと、また、こういう形で報告書を取りまとめることにつきまして御協力いただきましたことに深く感謝を申し上げたいと思います。どうもありがとうございました。
 それでは、ここで岸本労働基準局長より御挨拶をいただきたいと思います。
○労働基準局長 労働基準局長の岸本でございます。
 委員の皆様におかれましては、令和6年4月より議論を開始していただいて以来、本日までの間、3回の視察も挟みつつ、8回にわたって大変熱心に御議論をいただきましたこと、改めて感謝を申し上げます。
 公労使それぞれのお立場で、スト規制法の在り方について真摯に御検討いただきました結果、このような内容の報告書を取りまとめていただいたものと考えております。
 報告書の御指摘にもありましたが、今後は、電力の安定供給のための労使の取組状況等について確認・共有等を行う場を設け、労使の知見を継続的に蓄積していくことで、将来的な検討につなげていくことや、解釈通知の見直しについてしっかりと対応してまいりたいと考えております。
 これまでの委員の皆様方の御協力に厚く御礼を申し上げまして、挨拶とさせていただきます。改めまして、ありがとうございました。
○中窪部会長 ありがとうございました。
 それでは、事務局におかれましては、本報告に基づいて必要な対応をしていただくようにお願いいたします。
 それでは、本日の審議はこれで終了といたします。
 お忙しい中、大変ありがとうございました。
 これにて散会とさせていただきます。