2025年10月21日 第7回労働政策審議会労働条件分科会電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律の在り方に関する部会 議事録

労働基準局労働関係法課

日時

令和7年10月21日(火) 12:30~13:30

場所

厚生労働省共用第6会議室(中央合同庁舎5号館3階)
(東京都千代田区霞が関1丁目2番2号)

出席者

公益代表委員
中窪部会長、戎野委員、原委員、藤村委員、水島委員
労働者代表委員
片山委員、冨髙委員、渡邊委員
使用者代表委員
井上委員、牛尾委員、坂下委員、藤中委員
オブザーバー
大西電力基盤整備課長補佐(経済産業省資源エネルギー庁)
事務局
岸本労働基準局長、尾田大臣官房審議官(労働条件政策、働き方改革担当)、先﨑労働関係法課長、内村労働関係法課長補佐

議題

(1)第6回部会でのご指摘について
(2)電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律の在り方について

議事

○中窪部会長 それでは、時間となりましたので、ただいまより第7回「労働政策審議会労働条件分科会電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律の在り方に関する部会」を開催いたします。
 委員の皆様におかれましては、大変御多忙の中、お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
 本日は、労働者代表委員の石橋学委員が御欠席と伺っております。
 それから、今回もオブザーバーとしまして、経済産業省資源エネルギー庁電力・ガス事業部電力基盤整備課課長補佐の大西謙佑様に御出席をいただいております。
 議事に入ります前に、本部会委員の交代及び事務局の異動について、事務局から御説明をお願いいたします。
○労働関係法課長補佐 事務局でございます。
 本部会委員の交代につきまして御報告いたします。
 お手元の参考資料1として労働条件分科会委員名簿を配付しております。労働者代表の河野一生委員が御退任され、10月8日付で御就任いただきました、全国電力関連産業労働組合総連合会長代理、片山修委員。
○片山委員 電力総連の片山です。どうぞよろしくお願いいたします。
○労働関係法課長補佐 労働者代表の松元洋平委員が御退任され、10月8日付で御就任いただきました、全国電力関連産業労働組合総連合労働政策局長、渡邊慎之介委員。
○渡邊委員 電力総連の渡邊です。どうぞよろしくお願いいたします。
○労働関係法課長補佐 使用者代表の高垣恵孝委員が御退任され、7月1日付で御就任いただきました、一般社団法人送配電網協議会ネットワーク企画部長、牛尾剛委員。
○牛尾委員 送配電網協議会の牛尾でございます。よろしくお願いいたします。
○労働関係法課長補佐 使用者代表の山口哲生委員が御退任され、10月8日付で御就任いただきました、電気事業連合会総務部部長(労務担当)、藤中宏道委員。
○藤中委員 電事連の藤中と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
○労働関係法課長補佐 また、7月8日付で事務局にも異動がございましたので、御紹介させていただきます。
 労働関係法課長の先﨑でございます。
○労働関係法課長 先﨑です。よろしくお願いいたします。
○労働関係法課長補佐 それでは、カメラ撮りはここまでとさせていただきます。
 事務局からは以上でございます。
○中窪部会長 ありがとうございました。
 定足数等について、事務局より御報告をいただきたいと思います。
○労働関係法課長補佐 本日の出席委員は12名となっており、労働政策審議会令第9条では、委員全体の3分の2以上の出席または公労使各側委員の3分の1以上の出席が必要とされているところ、定足数は満たしておりますことを御報告いたします。
 事務局からは以上でございます。
○中窪部会長 ありがとうございます。
 それでは、議題1の「第6回部会でのご指摘について」につきまして、事務局より御説明をお願いいたします。
○労働関係法課長 それでは、資料1につきまして御説明させていただきます。
 前回の部会で、スト規制法と労働関係調整法第36条との関係について御指摘をいただき、事務局にて整理したものになります。関係する条文につきましては、スライドの2枚目の下のほうにつけさせていただいております。左側にスト規制法、右側に労働関係調整法として、法律の目的、内容、罰則について整理をしております。
 まず、スト規制法の目的についてでございますが、電気事業及び石炭鉱業の特殊性並びに国民経済及び国民の日常生活に対する重要性に鑑み、公共の福祉を擁護するため、争議行為の方法に関して必要な措置を定めるとされております。
 表の一番左側ですけれども、電気事業に関する規定の内容として、正当でない争議行為の範囲について、電気の正常な供給を停止する行為その他電気の正常な供給に直接に障害を生ぜしめる行為を規定しているものであり、これには物的施設の保護を含むものであります。
 次に、労働関係調整法について、一番右には緊急調整のことも記載をしておりますが、第36条のところを御覧いただければと思います。規定の内容については、同様に正当でない争議行為の範囲を規定するものでありますが、その範囲として、全ての事業場における人命・身体に関わる安全保持施設の正常な維持または運行を停廃し、またはこれを妨げる行為を規定しております。「安全保持の施設」とは、正常に維持、運行しなければ、工場事業場施設ないしそこでの業務の遂行から生ずべき人命、身体に対する危害または危険を、通常、予防し得ないと客観的に認められる施設とされています。例えば、工場におきましては、機械に装置する危険予防のための被覆・柵等の装置、有毒ガスの排出設備、爆発防止施設、危険箇所の表示等が該当するものでございます。
 まとめますと、矢印のところでございますけれども、スト規制法も労働関係調整法第36条も正当でない争議行為の範囲を明らかにするという趣旨は同じでありますが、スト規制法は国民経済及び国民の日常生活に対する重要性を目的に掲げ「正当でない争議行為」の範囲を上記のとおり定め、全体として電気の正常な供給障害を生じさせるか否かという観点から「正当でない争議行為」の範囲を画するものであるところでございますが、労働関係調整法第36条については事業場における業務の遂行から生じる人命、身体に関する危害または危険を顕在化させるか否かという観点から「正当でない争議行為」の範囲を画するものであるとされているものでございます。
 資料の説明は以上です。
○中窪部会長 ありがとうございました。
 前回議論になったことについて、こういう形で整理していただいたものですけれども、この資料1につきまして、何か御質問、御意見はございますでしょうか。
 冨髙委員、お願いします。
○冨髙委員 労働関係調整法第36条も含めた整理をいただき、ありがとうございました。ただ、労働者側としてはこの間も申し上げてきたとおり、労調法の規制がある中で屋上屋を重ねる形でスト規制法を設ける合理性はないと考えており、今御説明をお伺いしても、スト規制法を廃止すべきであるという考えに変わりはないということは、改めて申し上げておきたいと思います。
 以上です。
○中窪部会長 ありがとうございます。
 そのほかいかがでしょうか。よろしいですか。ありがとうございました。
 それでは、資料1については以上といたしまして、次に、議題2「電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律の在り方について」です。これについては前回で3回目の論点の整理を行いまして、これまで部会として計6回にわたり議論を行ってきたところであります。様々な御見解があるところでありますけれども、議論が一定程度煮詰まっているとも考えられましたので、部会での御意見を基に、事務局にこの素案をまとめていただきました。それについて事務局より御説明をお願いいたします。
○労働関係法課長 それでは、資料2について御説明させていただきます。これまでいただいた御意見を基に、部会における御議論のため、事務局にて素案として整理をさせていただいたものになります。
 最初に、スト規制法の制定経緯、本部会の開催経緯、部会での議論の経過について記載しております。最初のパラグラフは、スト規制法については、昭和27年の電産スト等の影響が甚大であったこと等に鑑み、翌28年に制定された法律であることを記載しています。
 次のパラグラフにつきましては、部会の開催経緯としまして、平成27年の電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律の在り方に関する部会において、スト規制法は、現時点では存続することでやむを得ないとしつつも、スト規制法の在り方については、電力システム改革の進展の状況とその影響を十分に検証した上で、今後、再検討するべきであるとされました。
 また、平成27年の電気事業法改正法附帯決議においては、自由な競争の促進を第一義とする電力システム改革の趣旨と整合性を図るとともに、憲法で規定される労働基本権の保障を踏まえ、改正法の施行後の検証時期に併せ、部会の再検討の指摘に基づき、その廃止も含めた検討を行い、結論を得るものとすることとされたところであります。
 最後のパラグラフですが、これを受け、この部会において、令和6年4月5日以後、現地視察3回を含め、御議論をいただいてきたものであります。
 まず、「1 スト規制法の法的位置づけ」であります。
 最初のパラグラフですが、スト規制法の概要としましては、電気事業の特殊性並びに国民経済及び国民の日常生活に対する重要性に鑑み、公共の福祉を擁護するため、争議行為の方法に関して必要な措置を定めるものとされております。
 次に、スト規制法の法的効果とその役割についてでございますが、平成27年部会報告において、スト規制法は、憲法第28条における争議権の保障が及ばない「正当ではない争議行為」の方法の一部を明文で禁止したものであるとされておりますが、これまでこの部会で御議論いただいたとおり、スト規制法は、国家公務員法及び地方公務員法と同様の規定ぶりになっていますが、①にありますが、国家公務員及び地方公務員は、全ての争議行為が認められておらず、懲戒規定があること。②でございますが、一方、スト規制法はその対象を正当性が認められない争議行為に限っており、罰則等も規定されていないことから、スト規制法は、正当性が認められない争議行為を確認的に規定したもので、電気事業における争議行為の一部を禁止したものではなく、行為規範を示す役割を持った法律であるという旨を記載しております。
 また、スト規制法と労働関係調整法における緊急調整との関係については、スト規制法は正当でない争議行為の範囲を明らかにしてその防止を図ることを主眼とするものである一方、労働関係調整法に基づく緊急調整は、正当な争議行為も含めて一定期間禁止し、その間にあらゆる手段を講じて労働争議を調整・解決することを狙いとする点で目的が異なるものであること。また、「ただし」としまして、労働者代表委員の意見として、スト規制法は「屋上屋」との指摘が引き続きなされていることを記載しています。また、諸外国では電力供給を維持するための何らかのシステムを設けていますが、電気事業に限定して争議行為を規制する法制は見当たらず、その点についても平成27年部会報告からの変化はないと記載をしております。
 次に、「2 電気及び電気の安定供給を取り巻く状況の変化等」についてでございますけれども、この部会で御議論をいただいた内容についてまとめております。
 (1)電力システム改革検証によって把握された課題については、資源エネルギー庁において、「電力システム改革の検証結果と今後の方向性~安定供給と脱炭素を両立する持続可能な電力システムの構築に向けて~」が令和7年3月に取りまとめられたところでございます。
 検証における現状の評価としては、広域的な電力需給・送配電ネットワーク整備や、小売事業者の参入による料金メニューの多様化等について評価できるとされた一方で、課題として、DX等による需要の増加ですとか、国際的なカーボンニュートラルへの対応の加速化、また地政学的な環境の変化に伴う国際燃料価格の高騰など、様々なリスクへの対応が挙げられています。
 (2)電気の特殊性については、電気は貯蓄不可能で、常に需給バランスを一致させる必要があり、需給バランスを崩すと予測不能な大規模停電が発生することについて記載をしております。
 (3)電気の重要性につきましては、国民生活やエネルギー構成比における重要性としまして、電気は引き続き常時不可欠で代替不可能なエネルギー源であること。また、データセンターや半導体工場の新増設、生成AIの利活用拡大等に伴い、電力需要が増加する見込みであること等について記載をしています。
 ②安定供給の重要性として、これらも踏まえまして、国民経済及び国民の日常生活における電気の安定供給の重要性は増大していること。また、再生可能エネルギーの拡大、自然災害の頻発、ロシアによるウクライナ侵略や中東情勢の緊迫化など、地政学的な経済安全保障のリスクなど、様々な不確実性を念頭に、電力システムの中で電気の安定供給の確保が進められることが期待される旨を記載しております。
 (4)電気事業における労使関係でございます。電力労使は対等の立場に立ち、産業レベルや企業レベル等の様々なレベルで建設的な労使協議がなされるとともに、団体交渉も真摯に行われている。電気の安定供給への影響に配慮し、労働協約や保安協定等において、争議行為に関して必要なルールも取り決められている。こうしたことから、近年では争議行為の実績はなく、引き続き労使関係は安定・成熟しており、労使双方の高い使命感により電気の安定供給に貢献している。電気の安定供給の困難度が高まっている中でも、引き続き良好な労使関係を維持しながら電気の安定供給に努めていくという点について、労使の認識は一致しており、労使関係は安定・成熟し続けることが期待される旨を記載しております。
 (5)電気事業の業務については、平成27年部会報告時に比べ自動化・省力化により省人化が進んでいるところでございますが、人による判断・対応が必要な対応等が増加している状況も認められること。他方で、労働協約等において、争議行為時の必要なルールを取り決めることによって、労使が協力して争議行為時の業務体制確保に自主的に取り組んでいることを記載しておりますが、現時点で、事業者内で業務の自動化や非組合員による業務の代替が可能と判断するのは困難であると考えられるところ、安定供給を支える電気事業の業務の代替性が高まることや、労使の協力による一層の事業の安定性確保が進むことが期待されている旨を記載しています。
 (6)電気事業者間の競争環境・連携体制については、電力システム改革により発電事業の自由化がなされ、様々な事業者が新規参入したところでありますが、発電設備の大半は旧一般電気事業者等が保有していること、送配電事業は引き続き地域独占となっていることを踏まえると、電気事業者間の競争環境に大きな変化はないと記載しています。
 また、事業者間の連携体制については、広域融通の仕組みの構築に一定の進捗があったところですが、他方で、現時点でエリア間の十分な融通量にはなっていないこと等について記載をしております。
 これらを踏まえまして、「3 今後の方向性」についてまとめさせていただいております。
 最初のパラグラフでございますけれども、スト規制法の在り方を検討するに当たって、電気事業の労使関係については、先ほど御説明した2(4)に記載のとおり、長年にわたる関係労使の尽力によって、安定・成熟しており、労使の高い使命感により電気の安定供給に貢献していることは、非常に重要な論点である。近年、争議行為は実施されておらず、半世紀を見ても最後に実施されたのは40年以上前であり、また、その内容についても電力の正常な供給に障害を生じさせるものではなかったところである。良好な労使関係の下での自主的な取組により、現在の電力の安定供給が支えられていることは、本部会における公労使委員の共通した認識であると記載しています。
 次に、労働者代表委員からの御意見に関してでございますが、その意味で、停電ストのような正当性を欠く争議行為を行うことは全く想定しておらず、本部会における業務の自動化や代替性等の議論は、「正当性を欠く争議行為が発生した場合にどのような影響があるか」という点に着目した議論であり、現在の安定・成熟した労使関係に鑑みれば議論の意味がないとの指摘は理解できるとしています。
 次のパラグラフですけれども、「一方で」として、スト規制法を廃止する場合には、保護法益である国民生活や国民経済に対する重要性に鑑み、国民や需要家の納得性への配慮が必要となる。インフラ中のインフラである電気の安定供給に係る様々なリスクがある中で、リスク・マネジメントの観点から、安定供給を支える電気事業の業務の自動化や代替性等の状況を評価し、スト規制法の在り方を検討したと記載をしております。
 続いてのパラグラフ、「この結果」というところですけれども、電気事業に関する現状としては、業務の自動化・省人化が進んでいるところ、他方で、人が行っている発電設備の出力調整業務については、調整負荷が重くなっていること。発電事業については発電設備の大半を旧一般電気事業者等が保有し、送配電事業についても引き続き独占であること。地域間融通は一定の進捗があったが、様々なリスクに対応できるだけのエリア間の融通量にはなっていないことから、業務の自動化や代替性等については引き続き電力システム改革等による影響を注視する必要があり、スト規制法を廃止できると判断するに足る変化があったと結論づけることは難しいと記載をしております。
 以上の検討状況でありますが、スト規制法が労働基本権として保障される正当な争議行為に影響を与える懸念は払拭する必要があるとして、具体的には、スト規制法第2条に係る争議行為に関する解釈通知について、スト規制法の法的位置づけは、電気事業における争議行為の一部を禁止したものではなく、正当性を欠く争議行為を確認的に規定した行為規範であることを明確化する。また、正当性を欠く争議行為を起こす懸念を示す表現等を見直す。行為規範を示すことで電力供給の安定を労使の良識によって守ることでの国の関与を示し、関係労使の協力の下で電気の安定供給に万全を期すものであることを明確化することにより、スト規制法の位置づけを規制的なものから、電気事業の現状に整合的な形に見直しを行うべきであるというふうに記載をしております。
 最後のパラグラフになりますけれども、今後のスト規制法の在り方については、安定・成熟した労使関係に加えて、現在、検討されている次世代の電力システムに向けた制度改正による取組の進展の状況とその影響を十分に検証した上で、国民生活及び国民経済の視点からの納得性も念頭に、安定供給を支える電気事業の業務の代替性等の確保によるリスク・マネジメントの進展の状況を総合的に勘案して、スト規制法の廃止も含め、その在り方を引き続き検討すべきであると記載をしております。
 資料の説明は以上でございます。
○中窪部会長 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの御説明につきまして、御意見、御質問等がございましたら、お願いいたします。
 冨髙委員、お願いします。
○冨髙委員 ありがとうございます。
 まず、労使の意見に隔たりがある中で、素案をまとめていただいた事務局のご努力に感謝を申し上げたいと思います。ただ、本日御提示いただきました素案を見るに、現時点では労働側の意見が受け入れられておらず、「スト規制法を廃止できると判断するに足る変化があったと結論づけることは難しい」とされております。この点は非常に遺憾でございますし、労働側としては容易に納得できるものではないと考えているところです。
 御承知のとおり、そもそもスト規制法というのは、この部会の中でも説明がございましたけれども、昭和27年に起こった電産ストが国民生活に大きな影響を与えたということを踏まえ、翌年に3年の時限立法で制定され、その後、恒久化されたというものです。
 今回の素案では、1ページ目の下段から2ページ目の上段にあるように、スト規制法は争議行為の一部を禁止したものではなくて行為規範であるという整理をするとしておりますけれども、それでは根本解決にはならないと考えております。労働側としましては、この間も申し上げてきましたが、70年以上、本来労働者に等しく保障されるべき憲法上の労働基本権が、電気事業と石炭鉱業の労働者については実質的に制限をされている状態が続いていると受け止めています。
 スト規制法が廃止されてこなかった理由につきましては、電力の安定供給の重要性や電気事業の公益性といったものが強調されてきました。しかし、素案の4ページ以降の「今後の方向性」の1段落目にも記載されているとおり、今や電気事業の労使関係は安定・成熟して、労使双方の高い使命感によって安定供給が果たされています。これは、この間のヒアリングであったり、部会での議論の中でも確認され、本部会の共通認識になっていると考えているところです。
 また、争議行為と安定供給という点で見ましても、電力労使は労働協約などの自主規制ルールを整備しておりますし、また、他の公益事業とともに労働関係調整法の公益事業規制が適用されています。
 スト規制法と労調法の公益事業規制は目的が異なるという意見もありますが、労働側としては、目的が異なるとは考えていません。国民生活への影響などに鑑みて、ストを制限する効果を有している点では、両法律とも共通していると考えております。また、同じように安定供給やサービス提供が求められる他の公益事業は、後者の労調法の公益事業規制が適用されているのみです。
 こうした二重三重の枠組みがあるにもかかわらず、電気事業にのみ追加的に規制を設ける合理的理由は、これまでも申し上げてきたとおり存在しないと考えております。また、諸外国の例を見ても、公益事業の中で電気事業のみに特別な規制を設けている事例も見当たりません。こうしたことからすれば、屋上屋のスト規制法は廃止すべきであるということを改めて申し上げておきたいと思います。
 以上でございます。
○中窪部会長 ありがとうございました。
 片山委員、お願いします。
○片山委員 片山でございます。意見を申し述べたいと思います。
 まず初めに、労働側からはこれまでも再三スト規制法を廃止すべきと申し上げてまいりましたが、今回の素案の中では、現時点では廃止は難しいと示されております。検討が先延ばしになった点につきまして、電気事業に働く労働者を組織する立場としまして、到底納得できるものではございません。電力自由化を迎えた中で、一部の事業者のみに課せられているスト規制法の廃止は、電力労働組合を預かる身としては一丁目一番地の取組と考えていることも、改めて申し上げさせていただきたいと思います。
 私ども電気事業で働く労働者は、電力システム改革により分社化がされ、さらに送配電事業が分離された環境下におきましても、自然災害や各種課題に対応しながら、安定供給のために公平で公正な競争精神の下、日々努力を重ねています。様々な対応により設備拡充が図られているものの、全てのリスクに対応するための十分な設備形成や連携体制になっていないことは評価のとおりでございますけれども、これまでもスト規制法の有無や環境の変化に左右されず、今日まで電力の安定供給は保たれているということは、電力関連産業で働く一人として誇りに思っているところです。
 その上で、「2 電気及び電気の安定供給を取り巻く状況の変化等」の中にある「(6)電気事業者間の競争環境・連携体制」につきましては、この間も申し上げさせていただいているとおり、労使関係当事者の取組によって解決できるものではなく、電力システム改革をはじめとする電気事業全般の検証や議論の中で取り組むべき項目です。したがって、この項目は、スト規制法の在り方に関する議論の場で論じられるものではないと考えております。
 加えて、現時点ではもちろん、将来的にも競争環境や連携体制の課題が完全にクリアされなければ、スト規制法は廃止しないとの条件を設定するような結論は、絶対にするべきではないと考えております。
 過去の部会で指摘されている需要家の不安解消の方策であるとか、スト規制法を廃止した際の影響などを議論し、結論を得ることが必要であると考えております。
 以上でございます。
○中窪部会長 ありがとうございました。
 坂下委員、お願いします。
○坂下委員 ありがとうございます。経団連の坂下でございます。
 まず初めに、大変厳しい議論がこれまで続いておりましたが、このたび素案を準備くださった事務局に感謝を申し上げます。
 お示しいただいた内容については、これまでの議論を十分に反映した内容であると認識しております。また、結論の部分についても、これまでの公益委員も含めた議論の中身を踏まえ、妥当な内容ではないかと考えております。
 使側としましても労働基本権の重要性は十分に認識をしております。その上で、インフラの中のインフラという言葉もこれまで使わせていただきましたが、電力はわが国において非常に重要であるということです。これは国民の皆様、また需要家の皆様、全て同じ思いだと認識をしております。
 この間、労使関係は非常に良好であるということは、労側の皆様もおっしゃっているとおりでありますし、我々も同じ認識です。労使のこれまでの御尽力、努力に対して心より敬意を表したいと思います。これまでも私のほうから何度か指摘をさせていただきましたが、諸外国を見たときに、電力に限ってというわけではありませんが、多くの国が、公益事業に対する何らかの規制を設けており、その中でも、事前規制を設けている国があることは、第3回の部会でも確認をしております。そういったものは各国どの国も何らか手を講じていることを確認しました。
 労調法とスト規制法の関係ということも大きな論点になっており、これは前回の10年前の部会でも議論になっておりますが、今回、事務局から整理いただいたものについては、私どもとしては適切な評価であると受け止めております。
 したがいまして、今回お示しいただいた内容につきましては、妥当なものであるというのが第一義的な私どもの受け止めということで御発言をさせていただきたいと思います。
 以上です。
○中窪部会長 ありがとうございました。
 藤中委員、お願いします。
○藤中委員 資料2の4ページにございます「3 今後の方向性」といった中で、良好な労使関係の下での自主的な取組により、現在の電力の安定供給が支えられていることは、本部会において公労使委員の共通した認識である点を記載いただいておりますが、これは我々としましても、認識は同じでございます。
 使用者側としましては、労使が密なコミュニケーションを重ねていくことで、引き続き良好な労使関係を維持し、電気の安定供給に努めてまいりたいと考えております。
 私からは以上です。
○中窪部会長 ありがとうございました。
 渡邊委員、お願いします。
○渡邊委員 ありがとうございます。
 資料の5ページ目に解釈通知の関係が記載をされております。ここではスト規制法第2条に係る争議行為に関する解釈通知について、規制的表現を行為規範的表現に見直すべきとの評価が示されております。このことは、スト規制法の位置づけについて誤解を招かないようにするという効果はあるかもしれませんが、表現だけ見直しても、私たちが当初から訴えてきた根本的、根源的な問題解決につながりません。そもそも、なぜ電気事業に働く労働者のみに行為規範が必要なのかということも疑問に感じているところです。
 電気、電力の位置づけは、医療設備などをはじめ、産業や生活の発展により重要性が格段に増しておりまして、加えて、インフラ中のインフラ、人の命を預かるライフラインであることも、電気事業に働く労働者一人一人が誰よりも認識をしています。さらに争議行為も相当な期間行われていない中、現場の組合員からは、なぜ電気事業の労働者は労働基本権が認められないのかという率直な意見が挙げられているところです。
 従前から申し上げているとおり、労働関係調整法の公益事業規制がある以上、同等の効果しかないスト規制法の存在意義は既に消失していると認識をしておりまして、改めて、スト規制法は廃止すべきとの意見をお伝えさせていただきたいと思います。
 以上です。
○中窪部会長 ありがとうございました。
 牛尾委員、お願いします。
○牛尾委員 先ほど電気事業連合会のほうからもありましたとおり、今回の資料で労使の高い使命感で電気の安定供給に貢献しているという点を記載いただいておりますが、これは全くもって我々も同感でございますし、同じ認識を持ってございます。
 労使関係について、やはり引き続き良好な関係を築きながら、双方、今も持っている高い使命感で電力の安定供給に貢献してまいりたいというふうに考えてございます。
 私からは以上です。
○中窪部会長 ありがとうございます。
 冨髙委員、お願いします。
○冨髙委員 ありがとうございます。
 先ほど片山委員からもご発言がありましたが、電気事業者間の競争環境や連携体制は電力システム改革の中で解決すべきことであって、労使の取組によってコントロールできるものではないということを改めて感じています。それにもかかわらず、4ページの下段から5ページにかけての3つのポツにあるように、旧一般電気事業者が発電設備を多く保有している点や地域間融通の状況などを捉えて、スト規制法の廃止は難しいとされております。しかし、労働側としては、これらの要素はスト規制法の廃止を考える上で重視すべきではないと考えておりますし、ましてやその達成を絶対条件にするべきではないと考えているところです。
 今、使用者側委員の皆様からも、成熟した労使関係、また労使の高い使命感によって安定供給が支えられている旨の御発言がございました。その点は本当に公労使委員で共通するものだと考えております。そうであるからこそ、スト規制法の在り方を考える上では、安定した労使関係などによって安定供給が果たされている点や、自主規制が整備されている点にこそ重きを置くべきであると考えているところです。
 素案の中では、これまでの御意見の中にもございましたけれども、国民や需要家の不安払拭という点も指摘されていますが、労働基本権の重要性を踏まえれば、不安という漠然とした理由でスト規制法を残すべきではないと考えております。繰り返しになりますけれども、安定・成熟した労使関係、また自主規制ルールの整備、さらには労調法の公益事業に服しているということを踏まえれば、スト規制法を廃止しても、現在の安定供給の状況を担保することは十分に可能であり、問題ないと考えております。そのことを国民や需要家の方に丁寧に説明して、理解を得ることこそが重要なのであると思いますので、改めて申し上げておきます。
 以上です。
○中窪部会長 ありがとうございました。
 坂下委員、お願いします。
○坂下委員 今、労側からもお話がありましたが、労使双方のこれまでの安定した労使関係をベースにした高い使命感を持って、電気の安定供給に取り組んでいただいている、貢献いただいているということは、本当に高く評価をしております。このことについて使側として異論は全くございません。
 ただ、これまでも申し上げておりますが、何らかの事前の規制、あるいは仕組みがないと、特に製造業を中心とした科学技術立国をわが国は標榜しておりますし、今後のエネルギー計画を見ましても、電気の重要性というのは非常に高く、今後はより高まっていくことが確認できております。そうした中で、労調法だと、どうしてもストライキが起きてからの調整にならざるを得ず、どのような形になるかは安易には申し上げられませんが、電気の安定供給が損なわれる状況が起こり得る可能性があると認識しております。そのため、何らかの事前の取組が必要なのではないかと考えております。仮にスト規制法を廃止するという場合には、こうした事前の規制の在り方についても検討していくことが必要なのではないかと考えております。
 以上です。
○中窪部会長 ありがとうございます。
 では、井上委員、お願いします。
○井上委員 ありがとうございます。
 今、使側の委員も縷々申し上げたとおり、電力事業に関わる皆様の大変な御尽力によって電気の安定供給がなされていると、それを私ども需要家はありがたく、おかげさまで無事に事業を営むということができていると認識しております。ただ、そうはいっても、電気の需要は今後より大きくなりますし、電気があるからこそ成立するということがいろいろな設備一つ取ってもあるわけですね。そのようなことを考えますと、インフラ中のインフラということから考えますと、人の命にも関わる大変重いものですし、様々な御尽力によって電力の供給の融通ということは図られてきているわけですけれども、電気だけでなく、ほかのリスクも本当にたくさんある中で事業を営んでいくということに鑑みますと、電気に関しては盤石な供給体制であってほしいというのが正直なところでございます。
 したがいまして、こちらの素案の中でも、スト規制法を廃止できると判断するに足る変化があったと結論づけるのは難しいというのは、まさに私は感じておるところでございますので、これを素案の中に入れていただいたことは大変ありがたいと考えております。
 以上でございます。
○中窪部会長 ありがとうございました。
 藤村委員、お願いします。
○藤村委員 この間の議論として、労働側は、労働関係調整法という法律があって、それでちゃんと正当でない争議行為は禁止されているのだと。それに対して使用者側は、やはり事後的ではなくて事前に何らかの規制をするようなものが必要であろうと。今回議論になっているスト規制法というのは、まさにそのところになると。仮にスト規制法を廃止するという場合に、法律として事前に何らかの規制を労働関係調整法の中ですることができるのかどうか、その辺りの法律論といいますか、ここは事務局にお答えいただければいいかなと思うのですが、いかがでしょうか。
○中窪部会長 では、事務局のほうからお願いします。
○労働関係法課長 ありがとうございます。
 スト規制法が廃止されるとなった場合における代替措置というものを、労働関係調整法の枠組みの下で検討することができるかといった御趣旨だと思いますけれども、検討に当たっては、労働関係調整法において規定されているほかの公益事業との関係、影響、均衡などについても考える必要があるかと思いますので、丁寧な検討が必要だと考えております。
○中窪部会長 よろしいですか。
○藤村委員 はい。
○中窪部会長 慎重な検討が必要になるだろうというお答えでありましたが、そのほかいかがでしょうか。
 戎野委員、お願いします。
○戎野委員 今回、スト規制法を廃止できるという判断に足る変化があったと結論づけることは難しいという最終的な結論になるであろうということは、確かに私自身もそうであろうと思います。ただ、今後のスト規制法の在り方を検討するに当たっては、これまでの電力供給が、これまでの議論の中でもありましたように、労使ともに高い使命感を持ち、良好な労使関係を形成し、成熟させてきたこと、これらに支えられてきたことに鑑みれば、電気事業の状況の進展のみではなくて、今後の電気事業を取り巻く環境が変化する中においても労使関係が良好であることについて、継続的に国民や需要家に理解を得ていくということ、また、スト規制法の代替措置の在り方に関してもより議論が深まっていくこと、これらが重要ではないかと思っております。
 以上です。
○中窪部会長 ありがとうございます。
 冨髙委員、お願いします。
○冨髙委員 ありがとうございます。
 今、ご発言があった、議論を深めていくことが重要という点はそうだと思います。しかし、前回の見直し論議から何年もあったわけで、その中でできたのではないかと思いますし、電力システム改革が行われる中でスト規制法の廃止に向けて進めていくことができるのではないかというような思いもありましたが、今後きちんとそういったことを議論して、前進していくことができるのかということは懸念しているところであり、その点は申し上げておきたいと思います。
 以上です。
○中窪部会長 ありがとうございます。
 戎野委員、お願いします。
○戎野委員 今、労側からも今後についての懸念がありましたけれども、継続的に国民や需要家の理解を図り、周知していくということ、これはやはり今後、スト規制法の在り方を検討する上で重要だと思います。そのための取組の一つの事例ではありますけれども、将来的な検討のために、電力労使の皆様が安定供給のために今ここの場でたくさん御意見や御議論があったことではありますが、非常に使命感を持って取り組んでいらっしゃり、良好な関係を築いていらっしゃるということを労使の会合などで確認、共有等を行って、それを蓄積していく、そして国民の皆様にもっと知ってもらう、理解してもらう、そういった取組が必要になってくるのではないかと思っています。
 以上です。
○中窪部会長 ありがとうございます。
 これまでもできたはずだというのが労側の御意見かと思いますけれども、改めて今の段階で、将来に向けてそういう形で進めることの必要性が指摘されたのではないかと思います。
 そのほかいかがでしょうか。
 藤村委員。
○藤村委員 スト規制法があるから、この間、安定供給が守られてきたというものではないと思うのです。これは労側も主張しておられるように、安定した労使関係をこの間、築いてきたと。電力の重要性というのは、労働側は分かっているし、もちろん使用者側も分かっているし、そこをしっかり守るためにいろいろな努力をしてきたと。この間の努力をどういうふうに評価してくれるんだというような思いも多分あるのだろうと思います。
 ですから、事実上、意味をなさなくなっているスト規制法という法律は要らないというのは、労側の主張としてはよく分かります。ただし、この法律を廃止しますとなったときに、国会での議論になって、そこをどうくぐり抜けていくかというのを、恐らく事務方としては考えなければいけない。スト規制法を今回廃止するに当たって、こういう形で電力の安定供給について、先ほどの私の発言で言うと、労働関係調整法の中での枠組みでそれは守られていくという立てつけになっていくと、受け入れやすいのかなと思うのです。ですから、ここは、労側が即時廃止というのをおっしゃるのはよく分かるのだけれども、法律をなくしていくときのプロセスとしては、何かもう一段階必要だということを私は思っております。
 以上です。
○中窪部会長 ありがとうございます。
 そのほかいかがでしょうか。よろしいですか。
 それでは、今回、素案につきまして様々な御意見をいただきまして、これを基に改めて事務局のほうに必要な修正を行っていただきまして、次回、再度議論するということにしたいと思います。よろしいですか。
○労働関係法課長 事務局でございます。
 承りました。次回に向けて準備をさせていただきます。
○中窪部会長 ということですが、ほかは特によろしいですか。
 それでは、次回の日程につきまして、事務局より御説明をお願いいたします。
○労働関係法課長補佐 次回につきましては、日時・場所について調整の上、追って御連絡させていただきます。
○中窪部会長 それでは、第7回の部会は、これで終了といたします。
 お忙しい中を御参集いただき、どうもありがとうございました。