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- 第197回社会保障審議会医療保険部会 議事録
第197回社会保障審議会医療保険部会 議事録
日時
令和7年9月18日(木)9:58~12:04
場所
全国都市会館 大ホール
議題
1.医療保険制度改革について
2.令和8年度予算概算要求(保険局関係)について(報告)
3.令和6年度医療費の動向について(報告)
議事
- 議事内容
- ○姫野課長 それでは、定刻前ではございますけれども、皆様、お集まりのようでございますので、ただいまより、第197回「医療保険部会」を開催いたします。
委員の皆様におかれましては、御多忙の折、御参加いただきありがとうございます。
まず、本日の委員の出欠状況について申し上げます。
本日は、内堀委員、河野委員、原委員、村上委員、横本委員より御欠席の御連絡をいただいております。
また、伊奈川委員より途中退席なさるとの御連絡もいただいてございます。
本日の会議は、傍聴希望者向けにYouTubeにおいてライブ配信を行っております。
なお、会議冒頭のカメラの頭撮りはここまでとさせていただきます。カメラの方は御退出をお願いいたします。
(報道関係者退室)
○姫野課長 それでは、以降の議事運営は田辺部会長にお願いいたします。
○田辺部会長 まずは欠席される委員の代わりに御出席なさる方についてお諮り申し上げます。
内堀委員の代理といたしまして佐藤みゆき参考人、原委員の代理といたしまして池田俊明参考人、村上委員の代理として小林司参考人、横本委員の代理といたしまして井上隆参考人、以上4名の出席につき御承認を賜れればと思いますがいかがでございましょうか。
(異議なしの意思表示あり)
○田辺部会長 ありがとうございます。
それでは、早速議事のほうに入ってまいります。
本日は、医療保険制度改革について、2番目といたしまして、令和8年度予算概算要求(保険局関係)について、こちらは報告事項でございます。3番目といたしまして、令和6年度医療費の動向について、こちらも報告事項でございます。以上の3つを議題といたします。
では、まず「医療保険制度改革について」を議題といたします。
事務局から資料の説明のほうをお願いいたします。
○姫野課長 保険局総務課長でございます。まず、資料1-1、それから、資料1-2を通して御説明させていただきたいと思います。
資料1-1、まず、骨太2025におきまして、こちらは参考資料1で配付しておりますので後ほど御確認いただければと思いますけれども、こういった政府の大きな方針の中で現役世代が急速に減少し、高齢者数がピークを迎える2040年頃を見据えた中長期的な時間軸も視野に入れて、全世代型社会保障の構築が不可欠であるということが記載されてございます。こういった記載も踏まえつつ、中長期的にあるべき姿をイメージしまして、そこから逆算した必要な政策、理念、全体像を示していくことが国民の理解・納得感を得るためにも重要ではないかと考えております。
このため、当医療保険部会におきましても、現時点における我が国の医療保険制度、人口と医療費の変化、物価等の経済情勢の変化などについての認識を共有し、あるべき将来像と、それを実現するために取るべき対応について意見交換を行い、論点整理をした上で個別課題の議論を行っていくという形で進めていければどうかと考えてございます。
そういった前提で医療保険部会におきまして、次のページにありますような大まかなスケジュール感でございますけれども、まず9月、現状についての共通認識を共有いたしまして、その上で論点を整理し、上記の内容を踏まえて個別具体的な課題について年末に向けて議論を進めていくといった流れで進めさせていただければどうかと考えてございます。
こういったスケジュールを前提といたしまして、資料の1-2を御覧いただければと思いますが、本日論点整理の議論をしていただくに当たりまして参考となるような基礎資料をまとめさせていただきました。
まず、目次のページでございますけれども、全体の構成といたしまして、日本の医療や健康の状況、到達点を御紹介させていただいた上で、我が国の医療保険制度の概要、特徴などについても御説明し、そして、医療保険制度が直面する環境の変化についても御紹介し、そして、近年の医療保険制度改革についても振り返った上で御議論いただければと考えております。
最初のセクションですけれども、我が国の医療や健康の状況ということであります。
3ページ、主要国の65歳以上の人口の割合、高齢化率を比較したものでございます。1990年には日本については12.1%と諸外国とほぼ同等でございますが、急速にその割合は増えて2040年には約35%、世界的に最も高齢化が進んだ国になると見込まれてございます。
4ページ、75歳以上人口の割合も同様に比較しておりますけれども、1990年の4.8%から2040年には19.7%と、これも同様に先進国で最も高い割合となってございます。
次のページで平均寿命の国際比較をしてございます。日本につきましては戦後から年々平均寿命が延びてきておりまして、現在では世界的に見ても最も長寿の国の一つといえるかと思います。
6ページ、健康寿命についても同様に比較をしてございます。先進7か国の中でも最も長い健康寿命ということになってございます。
7ページ、健康寿命の推移を示したものになりますけれども、男女ともに着実に長くなってきている傾向が分かるかと思います。
8ページ、生活の中で健康というものがどのような位置づけを持っているかということを示す参考として意識調査を引用してございます。上のグラフについては13項目で生活満足度を判断する上で重視した項目を聞いておりますが、健康状態が最も高いという状況でございます。下は年齢別に見たグラフになりますけれども、灰色のグラフ、65歳以上で見ますと、健康状態が最も高いということでありますが、例えば39歳以下といった若い世代におきましても家計と資産、仕事と生活に次いで3番目に高いという、健康についてはかなり重要な、ウエートを占めるファクターとなってございます。
続いて保健医療の利用状況でございますが、10ページにライフサイクルで見た医療保健サービスのイメージを示してございます。一番上の段が療養の給付、いわゆる医療サービスの利用ですけれども、これは全年齢に幅広く利用いただいているかと思います。また、特定健診、生活習慣病の予防のための健診などについては40歳以上75歳未満というところがターゲットになっておりますし、出産育児一時金、出産手当金といったものについては出産のタイミングで給付が行われる。また、傷病手当金については病気のため休職した場合の所得保障として現役世代にも給付されている形になってございます。
11ページは参考ですけれども、保育サービスですとか、年金なども含めた社会保障給付が、ライフサイクルでどのような給付タイミングになっているかということを示したものでございます。
続いて12ページ、今、医療サービスについて全年齢で提供されていると申し上げましたが、年齢に応じて受診回数などは差が生じているということを示したものでございます。0~4歳が比較的高くなっておりますが、20歳代に向けてだんだん減少しております。その後は加齢とともに増加し、60~64歳の年齢層で0~4歳とほぼ同水準の受診頻度になっておりますが、さらに高齢になりますと、受診回数が増えていくという傾向にあります。
一方、13ページは受診率の推移を示したものになりますが、若い世代は比較的横ばいの傾向でありますが、高齢層について見ますと低下傾向にあることが分かるかと思います。
続いて14ページ、これはがん患者さんのデータについて抽出したものになりますけれども、がんにつきましては比較的若い時期から罹患する確率も高いということであります。また、近年は通院しながら仕事を継続するという方も増えておりまして、2022年の調査では約50万人が治療と仕事を両立されている。こういったところにも医療保険制度が下支えするという形で提供されているということでございます。
15ページはがん患者の5年生存率ですけれども、医療の進歩を示す資料ということで、示してございます。
続いて16ページが健診制度の概略でございます。医療保険制度につきましては真ん中辺りに赤く囲っております特定健診というものが40歳以上75歳未満の方々に提供することが保険者に義務づけられておりますが、そのほかにも医療保険者が様々努力義務の中で健診などを提供されているということであります。
続いて17ページ、医療保険者における予防・健康づくりの取組の概念図でありますが、医療サービスを提供する、保険給付を行う「治療」と並ぶ一つの大きな柱として「予防」というものを各保険者で位置づけていただいているかと思います。データヘルスの推進ですとか、あるいは3番目にありますように、事業主との連携を中心としたコラボヘルスなど、様々な工夫を凝らしてサービスを提供いただいているという状況であります。
18ページ、先ほど少し御紹介いたしました生活習慣病予防のための特定健診・特定保健指導の概略でございます。40歳以上75歳未満の被保険者・被扶養者に提供されておりますが、2008年から義務化されております。
19ページ、この実施率の推移を見てございますが、2008年の制度化から年々特定健診・特定保健指導ともに実施率が増加・上昇している傾向でございます。
続いて20ページは妊産婦死亡率・乳幼児死亡率の推移でございます。戦後直後、日本はかなり死亡率が高い状況でございますけれども、近年では先進国の中でも最も低い国ということで保健・衛生水準の向上が図られているということであります。
21ページ、医療保険制度の観点から、こういった出産の局面での経済的支援を行う給付を御紹介してございます。出産育児一時金につきまして、健康保険法などに基づく保険給付として現在は原則50万円を支給することになってございます。
続いて22ページは医療分野についての様々な指標を国際比較したものでございます。一番上の1人当たり医療費につきましては先進国の中でも最も低い数字になっておりますし、GDPに占める総医療費の割合につきましても高くないという状況でございます。そのほか、人口当たりの病床数は多めでございますが、他方で人口当たりの医師数は少ないということでありますので、結果的に病床当たりの医師数、それから、看護師数などは比較的少ない状況で運営されている状況であります。また、平均在院日数については年々短くなってきておりますけれども、依然として諸外国の中では比較的長いほう、また、受診回数についても多い傾向にございます。
23ページ、今御紹介した医療費のGDPに占める比率を高齢化率とクロスでプロットしたグラフになります。これで見ますと、横軸が高齢化率になりますので、日本は高齢化率という意味では先進諸国と比べて飛び抜けて高い状況でありますけれども、縦軸の医療費のGDP比で見ますと、同程度の医療費水準にとどまっている状況が見て取れるかと思います。
24ページにつきましては、主要国の医療保障制度の概略を示したものでございますので御参考にしていただければと思います。
続いて25ページ以降、日本の医療保険制度の概略、そして、意義などについて御説明したいと思います。
26ページ、我が国の医療保険制度の特徴といたしまして、社会保険方式を用いて国民皆保険を達成しているということであります。こういった制度を通じまして世界最高レベルの平均寿命、保健医療水準を実現できているということかと思っております。他方、この医療費については、保険料、そして、国・地方の公費、そして、自己負担、この3種類で賄うという構造になっているということであります。
下の段で社会保険制度の特徴を説明しておりますけれども、税財源で賄われるような給付と対比いたしますと、保険料の対価としての給付でありますので、サービスの受け手にとっての権利性が強く認められる。また、制度全体では給付水準と保険料負担が連動いたしますので、負担についての納得感が比較的得られやすい。また、個々への給付が所得の多寡にかかわらず均等にニーズに基づいて行われますので、そういった普遍性が確保されているといったメリットがあると整理をしてございます。
27ページ、我が国の医療保険制度の体系をお示ししたものになります。下のほうに各保険制度が記載されておりますけれども、自営業者、年金生活者、また、非正規雇用者などについては、各地域の国民健康保険に加入をし、その他、被用者については、協会けんぽ、健保組合、共済組合などに加入するという大きな2つのグループに分かれてございます。
他方で、この図の中で国民健康保険の枠が65歳以降で斜めに伸びておりますけれども、被用者についても退職とともに国民健康保険に加入するということで、結果的に高齢者ほど国民健康保険に加入する傾向が生じますので、こういった医療費の負担の調整を行うために、前期高齢者の財政調整という形で被用者保険から国民健康保険への支援を行ってございます。
また、75歳以上についても同様に国保・健保にそれぞれ加入することになりますと、国保への加入が偏りますので、75歳以上については独立した制度として切り離してございます。その上で、75歳以上の後期高齢者医療制度については、若い世代の健康保険、国民健康保険などから全体として支援をするという形を取ってございます。
28ページ、各医療保険制度の特徴を整理したものでございます。平均年齢で見ますと、退職した方が加入されることになりますので、左側の市町村国保、また、一番右側の後期高齢者医療制度の平均年齢が高く、真ん中3つの被用者保険グループが低いという形になります。そのほか、1人当たり医療費で見ましても加齢とともに医療費が増えますので、両端の市町村国保と後期高齢者が高く、真ん中の被用者グループが低めになるという傾向になってございます。こういった傾向も踏まえまして、公費負担については市町村国保と後期高齢者に重点的に投入する形になっているところであります。
29ページ、実際に患者さんが医療を受ける際のフローを示したものでございます。患者さんが医療機関を受診する場合、一旦立て替えて払うのではなく、医療保険者から審査支払機関を通して保険給付に必要な費用を医療機関に支払いますので、患者さんは窓口では一部負担のみの支払いということで医療サービスを受けられる、そういった仕組みが構築されてございます。
また、30ページ、医療機関に支払われる診療報酬につきましては、全国の全ての保険医療機関・保険薬局に一律に適用される全国一律の価格表になってございますので、こういった面での分かりやすさということも確保されてございます。また、医療サービスを公定価格で決めておりますので、医療サービスの質や量、また、保険医療機関の経営、医療提供体制などにも目配りしながら運用されているという状況でございます。
31ページ、医療費の一部負担の割合について示したものでございます。年齢ですとか所得に応じて、1割負担、2割負担、3割負担と差を設けて所得や年齢に応じた配慮を行っているところであります。
さらに32ページが高額療養費制度の概要でございます。家計に対する医療費の自己負担が過重なものとならないよう、医療機関の窓口において自己負担を支払っていただいた後、月ごとの限度額を超える部分については保険者から償還されるという制度でございます。
こういった窓口負担の配慮する仕組みが整っておりますが、33ページ、1人当たりの医療費を年齢別に示したものでございます。加齢とともに1人当たりの医療費が高くなってくるということでありますので、例えば20歳前半と80歳代を比べますと、約10倍の差が生じているということであります。
次のページを見ていただきますと、先ほど申し上げましたような窓口負担、あるいは高額療養費制度などによる窓口負担の軽減を行っている結果、こうした年齢ごとの医療費の差にかかわらず、実際の支払額については差がかなり縮小しているところであります。一部、65歳代から70歳について少しでこぼこになっているところもありますけれども、基本的には傾きが緩やかになっているというのが現状でございます。
今、1人当たりの平均の医療費を申し上げましたが、35ページにつきましては1レセプト当たり、一月の請求額当たりの金額の多寡の割合を整理したものでございます。より高額な医療費がどれぐらいの割合で発生しているのかというものを見たものでありますけれども、一番下、75歳以上の高齢者が加入する後期高齢者医療では、例えば200万以上のレセプト、右側の茶色い部分になりますけれども、2%程度となっておりますが、一方で、現役世代の健康保険での発生割合は4%程度ということで、比較的若い世代においても高額なレセプト、医療費が発生していることが分かるかと思います。
続いて36ページ以降、こういった医療保険制度に最先端の医療をどのように取り込んできているのかということを示したものであります。粒子線治療など、幾つか新しい技術を例示しておりますけれども、先進医療ということで公的保険と併用して利用する時期も挟みながら、順次公的保険に適用してきているところであります。
また、37ページにつきましては高額な薬剤についても順次公的保険に収載してきているというところを示したものでございます。
一方で、38ページ、高額薬剤については保険財政の影響も非常に大きいということもありますので、年間の販売額が予想よりも大きく拡大した場合には、一定の条件の下、薬価を引き下げて保険財政でのバランスを取るという取組を進めているということの御紹介であります。
続いて39ページ以降は保険制度ごとの収支状況を示したものでございます。まず、協会けんぽの財政構造ですが、協会けんぽには医療給付等の16.4%の国費が投じられておりますので、基本は保険料で賄われておりますけれども、約1割強の国庫補助が収入の中に占めてございます。一方で、支出を見ますと、医療給付のほかに高齢者医療への拠出金というものも30%強含まれているということであります。
続いて40ページ、健康保険組合の財政構造ですけれども、健康保険組合については基本的にはほぼ全て保険料収入で賄っている。一方で、支出については自らの保険給付に約52.7%、他方で高齢者医療などへの拠出金が40%を占めるという状況であります。
続いて41ページ、国民健康保険の財政状況でありますが、右側のピンク色の部分が被用者保険からの財政調整で交付されている前期高齢者交付金でございます。これを除いた部分の約半分が、国、または都道府県からの公費が投入されており、左側の黄色くなっているところが国民健康保険の被保険者の保険料で賄われている部分になります。他方で、所得の低い方も加入されておりますので、左下のほうに緑、あるいは水色が追加されておりますけれども、保険料軽減するための公費などが追加で投入されているという財政構造になっております。
続いて42ページ、後期高齢者医療制度の財政の概要ですけれども、これも先ほどの国民健康保険と同様に約半分が国、または都道府県・市町村の公費負担であります。残りの半分のうち、全体の40%分が若い世代からの支援金で、残り約1割部分が後期高齢者の保険料ということになります。こちらも保険料軽減をするために追加で公費が投入されているという構造になっております。
43ページ、今の財政構造、全ての制度を並べた構造図になりますが、一番右側の後期高齢者医療で見ますと、給付費16.5兆円のうち約半分を公費で賄い、残りの部分を若い世代からの支援金と自らの保険料で賄っている形です。この後期支援金につきましては左側の4つの各制度からの支援金が充てられているということであります。また、その隣、市町村国保については前期調整額ということで、共済組合、組合健保、協会けんぽからの財政支援を得ているという構造になっております。
続いて環境変化についてまとめて幾つか御紹介したいと思います。
まず、44ページ、人口構造の変化による医療サービスを提供する担い手の減少の部分でございます。本来的には医療部会での議論が含まれているテーマかと思いますけれども、医療保険制度としても関連が深い部分でございますので御紹介したいと思います。
45ページはマクロで見た就業者数の減少の傾向でございます。2018年で6665万人という就業者数でありますが、2040年にかけて減少していくことが見込まれております。他方で、医療・福祉サービスについては高齢化が引き続き進みますので、その影響もあり、必要なサービス量は増加することが見込まれております。そうしますと、医療・福祉に従事する従事者、このグラフの下の濃い青の部分ですけれども、こちらは引き続き増加傾向が見込まれるということで、就業者全体に占める医療・福祉分野の従業者の割合が、このままの推計でいくと伸びていくということであります。こういった状況の中で、医療・福祉職種の人材確保が大きな課題になってくることが見込まれてございます。
続いて46ページ、左側はマクロの人口構成の変化ですけれども、右側に大都市型、地方都市型、過疎地域型と3つの地域ごとの区分をつけておりますが、マクロの変化と別に地域の特性で見ますと、過疎地型では既に生産年齢人口も大きく減り、高齢者人口も減るという局面に差しかかっておりますし、地方都市型では生産年齢人口も減り、一方で、高齢者人口はまだ横ばいということが見込まれております。他方、大都市型では高齢者人口は引き続き増加し、生産年齢人口も減少するという構造がありますので、地域差にも留意することが必要になってくるということでございます。
続いて医療需要の変化、こちらも医療部会で議論されている資料を御紹介しておりますけれども、48ページが入院患者数でございます。入院患者数については全国をマクロで見ますと、2040年に向けて引き続き増加傾向ではありますが、一方で、地域別に見ますと、右側の日本地図で見まして、ピンク色、あるいはオレンジ色の部分については既にピークに達している、あるいは達しつつあるということで今後は減少することが見込まれてございます。
続いて49ページ、外来患者数は全国的に見ても既にピークを迎えているだろうという時期でございます。右側の日本地図で見ましても、2040年以降もピークが先にあるところは東京などの超大都市部に限られているところでございます。
続いて50ページ、在宅患者の変化でありますが、在宅患者数については2040年以降も引き続き増加が見込まれてございます。
51ページは訪問看護の必要量の推計でありますけれども、利用者数の多少の地域差はありますけれども、多くの二次医療圏において2040年以降も増え続けることが見込まれているということであります。
52ページから物価や賃金の変化について御紹介してございます。
53ページが消費者物価指数です。戦後直後からかなり長いトレンドを見てございますけれども、90年代以降、横ばい傾向がずっと続いておりますが、2022年以降、かなり急激な上昇傾向を見せてございます。
54ページが、賃金の長期トレンドですけれども、こちらも2000年以降低下傾向、あるいは横ばいでございましたが、22年以降上昇傾向にあるという状況です。
55ページが医療・介護関係職種の給与の推移であります。赤い点線が全産業平均、その下の水色の折れ線が医療関係職種、これは医師ですとか看護師など除いた医療関係職種ですけれども、こういったものを比較しますと、依然として全産業平均よりも低いことが分かるかと思います。
56ページ以降、医療費の動向でございます。
57ページは国民医療費の推移、そして、そのGDP比に占める比率ということであります。下に対前年の伸び率も記載しておりますけれども、コロナの時期に大きく乱高下しておりますが、その時期を除きますと2~3%ぐらいの伸びを続けているということであります。
58ページが国民医療費の伸びの要因を分解したものでございます。医療費の伸びの中を分解しまして、例えば令和5年度で見ますと、2.9%の全体の伸びの中、人口の影響という意味では人口減少が始まっておりますのでマイナス0.5%とマイナス要因になっております。高齢化の影響についても引き続きこちらはプラスの要因でありますし、診療報酬改定などにつきましては、薬価の改定などもありましたのでマイナスの要因となっております。その他、受療行動の変化ですとか、医療の高度化など、いろいろな要素が含まれているかと思いますけれども、その他の要因で3.3%の増という形になっています。
59ページ、薬剤費についても着目したものでございます。国民医療費の増加とともに薬剤費についても増加傾向でありますので、結果的に国民医療費に占める薬剤費の比率、上の折れ線で示した部分ですけれども、こちらは21%程度でほぼ横ばいで推移しているということであります。
60ページ以降は医療保険者の保険料、あるいは所得の変化を示したものです。
61ページ、健康保険組合・協会けんぽの保険料率の推移を示しておりますが、組合健保は青い点線になっております。平成19年度以降、毎年上昇していた時期もございますが、近年はほぼ横ばい、若干増加という形になっておりまして、現在は平均保険料率9.3%となっています。赤い点線が協会けんぽですけれども、平成24年に10%に引き上げ、その後は10%で横ばいということになってございます。
62ページ、協会けんぽ・健康保険組合の平均の報酬額を示したものであります。先ほどのページと赤と青が逆転していて分かりづらいかもしれませんが、赤が健康保険組合、青が協会けんぽでございます。健康保険組合のほうが平均の報酬は比較的高いところでありますが、両者とも近年は増加傾向ということでございます。
63ページが国民健康保険料の負担の推移でございます。国民健康保険料については所得割の保険料のほかに均等割などいろいろ複雑な仕組みになっておりますので、一概に比較しにくいところでありますが、ピンクの折れ線で示しておりますのが保険料の調定額、保険料の総額の所得に占める割合ということであります。これも横ばいか近年若干低下傾向にありますが、注釈にありますように、所得の増加による低下というものも要因としてありますけれども、保険料の軽減制度もありますので、保険料軽減に該当する方が増えるということもこの調定額の減少といった要因になり得るということでございます。
64ページは国民健康保険の被保険者1人当たりの所得の変化を示しております。平成22年度に大きく低下しておりますが、その後は横ばいで令和2年から4年にかけて上昇してきているということであります。これは全年齢層で同じような傾向となってございます。
65ページは後期高齢者の1人当たり保険料と現役1人当たりの支援金の推移であります。こちらも年々1人当たり保険料は伸びてきておりますが、現役世代の1人当たり支援金の伸びのほうが令和5年度までは伸び率が大きかったところでありますが、制度改正によりこの伸び率が調整されているということでございます。
66ページが後期高齢者の1人当たり所得の変化ですが、こちらも先ほどの国保と同様のトレンドでございます。平成22年に一旦低下しておりますが、その後横ばい、令和2年以降に上昇しているということであります。
67ページは高齢者医療への拠出金の負担の割合が健保組合でどうなっているかということでありますが、黒い折れ線が拠出金の負担割合の推移であります。現在は45%程度ということでございます。
68ページが協会けんぽの同様のグラフになっております。協会けんぽの場合は33%程度ということであります。
69ページは家計における金融資産のウエートを示したものであります。2008年、後期高齢者医療制度が創設された時点から2025年の直近まで比較してございますけれども、家計の金融資産全体としては約1500兆円から約2195兆円と大きく伸びております。特にその中でも青い部分ですが、株式等の証券が占める割合が15%から20%に増えていることが分かるかと思います。
続いて医療保険制度の過去の改革、どんなものを行ってきたのかという御紹介です。
71ページは医療保険制度以外のものも含めた社会保障全体の取組ですので、割愛させていただきます。
72ページが過去の医療保険制度改革の経過であります。平成20年度に高齢者医療制度を大きく見直し、現在の形になってございます。この後で御紹介いたしますけれども、この際に医療費の適正化計画ですとか、先ほど御紹介しました特定健診の義務化、こういったものも併せて行ってございます。
平成22年度には平成20年度に創設した高齢者医療制度の支援金の拠出の方法につきまして、人数割、頭割ではなく、一部所得を勘案して配分する総報酬割を導入してございます。その後、この総報酬割を順次拡大しております。これで医療保険者間の公平を図るような改正をしたところでございます。
平成26年度には高額療養費制度につきまして、現役世代の所得区分の細分化を行うということ、それから、70~74歳の高齢の患者さんについて窓口負担を1割から2割に引き上げるという改正をしてございます。
29年度には70歳以上の高額療養費についても同様に見直しを行いました。
令和4年度には75歳以上の一定以上の所得のある方について新たに2割負担の区分を設けるという改正を行っております。
令和6年度には出産育児一時金の費用の一部に後期高齢者からの支援を導入する。また、被用者保険から国民健康保険への財政支援の仕組みである前期財政調整についても、一部所得を勘案する調整方法を導入してございます。また、後期高齢者の1人当たり保険料と現役世代の支援金の伸び率を調整するような見直しも行っております。また、診療報酬改定の中でございますけれども、長期収載品についての後発品との差額の4分の1を別途負担する仕組みを導入してございます。
73ページ、もう少し過去までさかのぼりまして患者一部負担の推移を示したものであります。昭和48年、高齢者の窓口負担がゼロになるという時期がございましたけれども、その後、医療保険財政の持続可能性を高めるということで、高齢者の窓口負担について定額負担、あるいは1割負担ということを順次制度改正してきたという経過でございます。
74ページ、先ほども少し触れました2008年度から導入いたしました医療費適正化計画の御紹介であります。具体的な取組としては下の表に書いておりますけれども、特定健診・保健指導の実施を行っていくということですとか、あるいは後発医薬品・バイオ後続品の使用促進、また、医薬品の適正使用ということで風邪に対する抗菌薬の使用、こういったものの適正化なども取り組んでいるということであります。
75ページ以降、今申し上げました医療費適正化計画の実際の進捗状況であります。後発医薬品の使用割合については年々高まってきているということであります。
76ページの長期収載品の保険給付の見直しによりまして、そういったものを一層促進してきてございます。
77ページにつきましてもバイオ後続品の使用促進の状況を御紹介したものとなります。
今、御説明いたしましたような内容を文章で整理したものを78~79ページにおつけしてございます。時間もありませんので、ここは割愛させていただきたいと思います。
最後の80ページ、本日の議論の参考にということで、議論の視点を記載しております。
まず、日本の医療・医療保険制度の現状についてどう考えるのか。
2点目、医療保険制度が直面する環境変化についてどのように考えるのか。
また、上記の現状や課題を踏まえて日本の医療保険制度のあるべき姿についてどう考えるか、また、そのあるべき姿を実現のために、どのような観点から必要な制度改正を検討すべきか。
こういった点について御議論いただければありがたいと思ってございます。
説明は以上でございます。
○田辺部会長 御説明ありがとうございました。
それでは、御意見等がございましたら挙手にてお願いいたします。オンラインで御参加の委員におかれましては挙手ボタンでお知らせいただければ幸いです。
では、伊奈川委員、よろしくお願いします。
○伊奈川委員 途中退席するので、冒頭に発言させていただきます。
本日の議論は現状認識とその課題、そして、将来をどうするかの展望といったことだと理解しております。そういった点で3点、私から発言させていただきたいと思います。
1点目は持続可能性であります。医療の在り方については、今日の資料でもライフサイクルという視点が強調されていたように思います。これを制度論として理解しますと、医療保険を短期保険として捉えるだけではなくて、長期保険とは言わないまでも中長期的に捉える必要性を示唆しているのではないかと思います。
かつての政府管掌健康保険においては中期財政運営といったような仕組みが議論されたことがありますけれども、そのときには景気変動の関係で余剰金をどうするかといったようなことだったと思います。今の時代はむしろ人口構造の変化といったような要因を含めてどう考えていくかというところが重要かと思っております。
給付面でいきますと、特定健診、特定保健指導、診療報酬における予防とか、あるいは地域の重視、財政面でいきますと、子ども・子育て支援金、後期高齢者の支援金とか、医療費適正化計画のように、捉え方によっては既に中長期的な視点が入ってきているわけであります。しかし、年金のような保険料固定方式とか、マクロ経済スライド、言ってみれば入るを量りて出ずるを制す、そういうことが医療保険の場合はなかなかできませんので、今後とも医療の高度化に対応していくということからすれば、年金以上に実は中長期的な視点が必要なのではないかと考えております。
2点目は医療提供体制の関係であります。診療報酬はサービスに対する対価でありますので、医療のマンパワーとか、あるいは地域偏在のようなアンバランスの問題を是正する手段としては、どこかに限界があるのだろうと思います。医療保険財源、特に給付と負担の牽連性が求められる保険料を医療提供体制の関係でどこまで投入できるのか、これは今後検討を要するわけであります。
また、雇用保険とか介護保険の場合ですと、保険料拠出によって財源の使途とか投入先が変わってくる場合がありますけれども、医療保険においても既に出産育児支援金のように一定の対象者に賦課されるといったような仕組みもあります。
そういった点で保険料拠出者の受益性を維持しつつ、誰が何をどこまで負担するのか、そういうことを検討する必要があるのではないかと思っております。
3点目は保険者の機能であります。人口減少社会、今日の資料では2040年ということでありましたけれども、私の記憶では、たしか人口推計ではその先の2055~56年にかけて1億人割れといったようなことも考えられるわけでありますので、そういった変化というものを保険者の運営、その機能にも影響を与えるという点において、この点についても検討を要するのではないかと思います。
以上であります。
○田辺部会長 ありがとうございました。
では、佐野委員、よろしくお願いします。
○佐野委員 大変丁寧な御説明をありがとうございました。その上で、今回大きなテーマをいただいたと感じておりますけれども、何点か申し上げます。
まず、今後の議論の進め方について、資料の1-1に出ていますように、中長期的にあるべき姿から逆算をした必要な政策、理念及び全体像を示していく。また、将来のあるべき姿に向けて議論するということについては賛成でございます。その中で、議論に当たっては幾つか前提が必要だと思っております。
一つは、今、伊奈川委員からもありました人口構造の変化でございます。少子高齢化によって人口ピラミッドの形が変わってしまったということ、いわば人口ピラミッドがひっくり返ってしまったことは大変大きな要因だと思っております。また、当然ながら高齢化に伴って医療費の増大、これがここから先、不可避であるということが前提条件になると思います。
そういう中で、制度の持続可能性を高めるためには、将来を担う世代が希望を持てるような制度を目指していくことが不可欠ではないかと考えております。そのうえで、この制度改革を考える中での視点について3点申し上げたいと思います。
1点目は負担構造の見直しでございます。先ほどの人口構造の変化も踏まえれば、支える側と支えられる側の考え方を変えていく必要があると思います。当然ながら給付と負担のバランスや、世代間のバランスも見直していく必要があると思います。また、この制度の負担構造の見直しに当たっては、そもそも財源が、自己負担、保険料、公費の3つしかないので、財源面での裏付けも含めてどのようにバランスを取るのか、国民の納得感を得るような検討が求められると考えます。
2点目は保険給付の適正化・重点化でございます。高齢化、また、高額薬剤等の医療の高度化に伴って医療費が増大していくことが見込まれる中においては、当然ながら費用対効果や経済性を考慮した医薬品の使用促進、OTC医薬品に代替可能な医薬品の保険適用の除外、また、低価値医療の利用の抑制等々、保険給付範囲の見直しについては当然手をつけるべきだろうと思います。その際には、優先づけをどうしていくかということも重要なファクターになるのだろうと思っております。
3点目は国民の意識醸成でございます。国民、国、医療保険者、医療提供者、事業主等々、全てのステークホルダーが危機感を共有して、この皆保険制度の存続に向けて取り組んでいく必要がありますけれども、先ほど申し上げたように、将来を担う世代が希望を持てる制度を目指すためには、特に現役世代が自分の健康を守るための取組、ヘルスリテラシーを高めて、予防、またセルフメディケーション、適切な受診等々に努めていくことが大事だと思っています。この点においては、我々健保組合もまさに事業所と連携して積極的に取り組んで、支えていくことが重要な役割だと考えております。
いずれにしても全世代型社会保障の構築に向けては、制度のあるべき姿を明確にして、そこに向けた検討課題を整理・提示いただき、丁寧な議論をお願いしたいと考えております。
以上でございます。
○田辺部会長 ありがとうございました。
それでは、中村委員、よろしくお願いいたします。
○中村委員 まず、1つ目なのですけれども、これは高額療養費の議論の際に申し上げたことの繰り返しで申し訳ないのですが、保険の在り方として、軽症でかつ少額の治療で患者による過剰な医療利用が生じやすい場合は自己負担の割合を多くして、患者による過剰な利用が生じにくいとよく言われている重症の患者さんが高額な医療を利用した場合では、自己負担を多くしないでいいのだという経済学的な考え方を考慮する必要があるのではないかと思います。それから、保険の役割としても、小さなリスクよりも大きなリスクへの保障が重要であるということではないかと思います。その大原則を確認して、国民の皆様にも御理解いただくことが必要ではないかと思います。
それから、これは自分でも今まで気づいてなかったところだと思うのですけれども、特に高額な医療費がかかった場合の負担能力は所得ではなくて資産なのだと思うのです。保険料は所得に応じた負担でいいと思うのですけれども、高額な医療費の負担能力というのは結局資産の問題なので、理想を言えば、資産を捕捉して負担の在り方を考えなければいけないと思いました。
もし、資産の情報が十分にないのであれば、例えば過去の納税記録で、高齢者だったら現役時代の所得、現役世代も今の高額療養費制度だと年度の最初の3か月の給与で決まってしまったりするわけですけれども、そうではなくて、もっと長期間の過去の所得を考えなければいけないのではないか。あと、被扶養者の数とか、そういうことも考えなくてはいけないのではないかと思いました。
3つ目ですけれども、日本人の平均寿命が長くて健康寿命も長いというのは、本当に厚労省の皆様、医療関係者の皆様、自治体の皆様の努力の賜物で本当に誇らしいことですが、逆に言うと、日本人の健康意識とか健康状態が国際的にも高いとなると、これからさらに努力して劇的な改善があるかというと、あればいいのですけれども、必ずしもそうではないかもしれません。
予防医療を一生懸命頑張れば問題が解決するというのは少々楽観的すぎないかという気もいたします。なので、これはエビデンスの精査が必要だと思います。必ずしも予防医療で医療費が削減されるというエビデンスばかりではないように思いますので。もちろん健康増進への努力は続けて、今まで培ってきた日本人の高い健康状態であるとか、そういう在り方を維持していくことはすごく重要なのですけれども、それで医療費の問題、社会保障費の問題がすべて片づくということはないのだという発信も、もしかしたら、必要なのではないかと思いました。
以上です。
○田辺部会長 ありがとうございました。
それでは、井上参考人、よろしくお願いいたします。
○井上参考人 資料1-1に中長期的にあるべき姿から逆算した必要な政策、理念、全体像を示すことが国民の理解・納得感を得るためにも重要とあります。まさにそのとおりだと思います。議論を進める上で何より重要なのは国民の皆様に理解をしていただく、中長期的な視点を持って持続可能性を理解していただくということだと思います。その点、今、審議会での議論と国民意識の間に若干差が出てきてしまっているのではないかなという懸念を持ちます。
その点から言いますと、国民に御理解をいただくという観点からは、給付と負担とか、あるいは必要な人材の検証を中長期的な視点で、医療のみならず社会保険制度全体の数値について、2018年に一度実施した推計を改めて実施し、全体の姿を国民の皆様に理解をしていただいて、その上で何が必要なのかというところから、もう一度丁寧に始める必要があるのではないかと考えております。
当面必要な施策というのは令和4年の全世代型社会保障構築会議の報告書でありますとか、改革工程で示されておりますので、そこで合意を得られるものは優先的に進めていくということだとは思いますけれども、先ほど申し上げたように、それと同時に全体感を国民の皆様にまず理解をしていただくことが非常に重要だと思います。
もう一つ、その観点からいきますと、私どもの立場からすると、現役世代の負担の軽減は国民に理解を得る上でも重要だと思いますし、能力に応じた全世代の支えということが非常に重要になってくると思います。
以上でございます。
○田辺部会長 ありがとうございました。
それでは、小林参考人、よろしくお願いいたします。
○小林参考人 まず、基礎資料を用いて丁寧に説明いただき感謝を申し上げます。非常に参考になるデータだと再認識した次第です。
例えば22ページ目には日本の医療提供体制の状況が示されています。26ページ目では社会保険制度の特徴を改めて解説いただきまして、そこには社会保険制度のメリットの一つとして、「負担への納得」と書かれています。「制度全体では負担についての納得が得られやすいこと」とあり、そこは「制度全体では」というところに留意する必要があると思いました。
保険者間、制度別の財政の概要についても、43ページを見ると、後期高齢者への支援金ですとか、前期財政調整の流れがこのようになっているということが非常に分かりやすく出ていると思いました。
また、61ページ目、協会けんぽと健保組合の平均総報酬額の推移が出ていまして、この構造的な差というものについても再認識した次第です。
そして、65ページ目以降に現役1人当たりの後期高齢者支援金の推移、拠出金負担の推移など、それぞれ制度別に書かれていまして、こういった点は改めてデータとしてきちんと押さえておく必要があると思った次第です。
その上で、人口構造が急速に変化している中で、これまでの高齢者中心の社会保障から全世代支援型社会保障へ再構築することは急務だと考えます。その際、医療保険制度においては、高齢化や医療の高度化などによって今後も医療費の増加が見込まれますので、現役世代はもちろんのこと、被保険者の納得性を確保していくことが非常に重要ですし、それとともに保険者機能の積極的な発揮に向けて、年齢で区切っている現行制度の在り方を見直すなど、高齢者医療制度の抜本改革を進めるべきだと考えます。その上で、年齢に関わりなく負担能力に応じた負担の徹底に向けて議論すべきだと考えます。
同時に、経済力によって医療アクセスに差が生じないように配慮しつつ、効率的な医療提供体制の構築によって医療費の増加を抑制していくことが重要と考えます。
また、医療費の適正化、それから、予防・健康づくりに向けては、国民や患者に対して上手な医療のかかり方をはじめ、医薬品の適正な使用、それから、予防・健康づくりに資する情報を積極的に発信していただき、意識啓発していくことも重要と考えます。
最後に、OTC類似薬などの保険給付の在り方の見直しについては、以前にも委員から発言しておりますが、必要な受診の確保や患者負担などへの配慮に加えて、薬の過剰摂取や飲み合わせのリスクなども考慮して慎重な検討が必要と考えておりますことを申し述べておきます。
以上です。
○田辺部会長 ありがとうございました。
それでは、佐藤参考人、よろしくお願いいたします。
○佐藤参考人 全世代型社会保障の構築に当たっては、国民の安心や生活の安定を支えるセーフティーネットという役割を決して損なうことのないよう十分留意した上で、増加する社会保障給付の重点化や効率化を含め、持続可能性を高めるための制度見直しに引き続き取り組むことが不可欠であるということが、全国知事会としての基本的な考え方でございます。全国知事会では、先月、2040年を見据えた医療・介護提供体制の構築に向けた提言について、社会保障常任委員長であります内堀福島県知事から厚生労働省に要請させていただいております。
こうした経過等を踏まえ、都道府県の立場から意見を申し上げます。保険医療機関等は公定価格である診療報酬によって運営されており、物価や人件費の上昇の影響を価格転嫁できず、深刻な経営難に陥っている状況にあります。これは地域医療提供体制を維持・確保する上で重大な課題となっており、社会経済情勢に応じ、診療報酬の臨時的な改定や国による補助制度の創設・拡充など、早急な対策が必要です。また、物価や賃金の上昇に応じて適時適切に報酬をスライドさせる仕組みの導入も必要と考えます。
一方で、医療保険制度における給付と負担の見直しについて検討を行う場合は、必要な医療への受診抑制につながることがないよう、特に低所得者に十分配慮した制度の在り方を検討する必要があります。
医療保険制度の改革に向けた議論においては、国民や事業者の過度な負担や急激な変化が生じないよう、十分な配慮を行うとともに、社会全体で納得感を得られるよう、丁寧に検討を進めていただきますようお願いいたします。
私からは以上です。
○田辺部会長 ありがとうございました。
袖井委員、よろしくお願いいたします。
○袖井委員 大変丁寧な御説明で、日本の医療保険制度が世界に冠たるすばらしいものであることを再度認識させられました。気がついたことを何点か申し上げたいと思います。
一つは、日本の医療保険制度は崖っぷちだと思うのです。ですから、もうちょっと危機意識を持って改革に取り組まないといけない。何人かの委員の方から中長期的というお話が出ましたけれども、それでいいのか。短期的というか、待ったなしの課題というのを忘れてはいけないと思っております。
今回の御説明の冒頭に2040年と出ていたのですが、こういう数字を見ると、がっくりしてしまいます。たしか厚労省は2025年までに地域包括ケアシステムを確立すると言っていたのだけれども、いつか言わなくなってしまった。2025年はもう終わりに近づいているわけです。それから、以前2015年という話もあった。だんだん到達点を先延ばしして、2040年はもちろん高齢者数がピークということですけれども、気が抜けてしまうのではないかそういう到達点を先へ先へ伸ばすという姿勢は考え直したほうがいいのではないか。今、物すごく大変になっていることを皆で認識しなくてはいけないと思います。
2番目は国民の理解と納得ということですが、今日も幾つか資料をいただいて、世代間の不公平というのを感じております。大分以前、私はスウェーデンの若い人に、こんなに高い税金を取られて文句はないのか、高齢者にばかり行っているようで不満はないのかと聞いたら、ライフステージのあらゆる段階においていろいろ恩恵を受けているから文句はない、そういうことを学校教育の中で、高校ぐらいまでの段階で教えられているということを聞きました。社会保障だけでなくて、教育費への助成とか、そういうものを全部加味して、全世代的にどれだけ恩恵を受けているのか、どれだけ給付を受けているのか、そういう図を示していただけるといいと思います。
若い世代には、社会保障がどういうシステムになっているのか、世代間の助け合いであるとか、世代内の助け合いであるとか、そういうことについて教育制度の中で教えていく必要があるのではないか。そうでないと、若い世代のやる気がなくなってしまって、私も学生などに聞くと、どうせ私たちは何ももらえないのでしょう、年金をもらえないのでしょうというような発言もありますので、その辺、まさにトータルな世代間、社会保障だけではなくてほかも加味して考えていかなくてはいけないと思います。
3番目に、制度が物すごく分かりにくいのですが、もうちょっと分かりやすい制度にできないのか。国民の理解と納得といっても今の制度は非常に複雑でよく分からないのです。こうなってしまったのはもちろん日本的なきめ細やかさだとは思うのですが、こういうのは非常に分かりにくい。例えば私も時々医者にかかるのですが、診療内容を見ると何とか加算というのがいっぱいついている。非常に複雑怪奇で分かりにくい。多分どんどん複雑になってきているのでしょう。医療事務の方は大変だと思うし、そのためにソフトを入れ替えたりする必要があると思います。これは素人考えなのですが、もうちょっとすっきり分かりやすい制度にできないのかということです。
最後にマンパワーの問題です。医療の分野における外国人労働者の導入を厚労省としては考えていらっしゃるのかどうかということをお聞きしたい。介護の領域では待ったなしです。現実に病院などでも時々私は外国人の働いていらっしゃる方を見かけることもあるのですが、それはどういう形で入っているのかよく分からない。多分研修かもしれないのですが、将来的にどう考えるのか。欧米先進国は医療の分野、特に看護では発展途上国の方を非常にたくさん入れています。日本はどうなのか、このまま日本人だけでやっていかれるのか、その辺りも考えたほうがいいのではないかと思います。
以上でございます。
○田辺部会長 ありがとうございました。
外国人の問題は軽々しく答えられないところはあろうかと思いますが、何かコメントはございますでしょうか。
○姫野課長 御指摘ありがとうございます。
外国人の看護師について、担当ではないのであまり正確なところはお答えできないかもしれませんけれども、EPAなどの連携協定などを通じていろいろな受け入れなどもしているところであります。当然いろいろなマンパワー確保という観点だけではないと思いますけれども、外国人労働者というのも重要な視点だと捉えてございます。
○田辺部会長 よろしゅうございますか。
では、藤井委員、よろしくお願いします。
○藤井委員 先ほど袖井委員のお話で、医療保険制度改革は目前の問題であるということについては私も全く同感でございます。特に若手の経営者などと接していると、現実とのギャップを大変感じます。保険があるから大丈夫だろうと何となく皆さんは思いたいのです。ところが、現実はこうだとお示しすると、そういえば最近病院に行くと物すごく混んでいるなとか、あるいは軽い疾病で受診すると、後発医薬品の共有が不足しているため、以前より物すごくお金がかかっていたりするなど、少しずつ分かっているのかなと思います。これはもう隠すことはできませんから、今の延長線上に将来はないということをしっかり分かっていただくべきではないかと思います。その上で、幾つか申し上げたいと思います。
まず、資料1-1の議論の進め方について、特に違和感はございません。我が国の医療保険制度は、国民生活、経済活動を支える重要な社会インフラでありまして、皆が支え合うことで成り立っています。今後も制度を維持していくためには、支え手である国民の理解・納得感を得ることが必要であり、客観的なデータに基づき、あるべき姿を共有することが議論の出発点になると思います。
そういう意味で、数点意見を述べさせていただきたいと思います。
まず、国民負担抑制の必要性についてであります。私は10年以上にわたって本部会の委員を拝命し、議論に参画してまいりました。この間、低成長の中で医療保険料や公費の支出は増大し続け、多くの中小企業で働く現役世代にとって大きな負担となってきました。改革に向けた議論は進んだ点もあれば、あるいは依然として進んでいない点もございますが、昨今の情勢に目を向けますと、経済成長と賃上げという、これまでと異なる動きが進みつつあると認識をしております。
近年の賃上げは保険料収入の増加につながっております。持続的な社会保障制度の構築には持続的な経済成長が不可欠であります。同時に、賃上げと経済成長は医療費の増加要因ともなり得ます。医療費の増加が国民負担の拡大につながり、経済成長や賃上げを阻害する事態は避けなければなりません。経済成長と賃上げの好循環が見られる今こそ、経済成長と社会保障の好循環を目指していく必要があります。給付と負担のバランスを直視し、効率的な提供体制の構築や給付範囲の見直し、応能負担の強化など、改革工程に基づく制度改革を先送りせず着実に進めていただきたいと思います。
次は医療の質の維持と国民の意識改革についてであります。将来に向けて質の高い医療を維持しつつ、医療費を適正化していくためには国民の理解と協力が欠かせません。大きなリスクに対応する保険制度の機能を維持するために、小さなリスクには自助で対応し、制度に負担をかけないようにする国民の意識改革と行動変容が必要であります。そのため、ヘルスリテラシーの向上、セルフメディケーションの普及等に加え、適切な受診行動を促すような制度上の取組を推進していただきたいと思います。
先ほど中村委員から、予防というのは効果があるかという御指摘がありました。確かに既に疾病があると、高齢者の皆さんは重症化を避けなくてはいけないという点がございますが、問題は先ほど申し上げました若年層なのです。企業に入って成人病健診が始まるまで意外と意識が薄くて結構不摂生をする方が多いです。健診が始まると、既にある程度病状が進んでいることがかなり散見されますので、もうちょっと若いうちから、あるいは大学生のときから自分の体のことをもう1回見直して、将来の自分の姿を予想しつつ予防することが大変重要なのではないかと考えております。
また、医療提供体制について、見直しは不可欠であり、諸外国と比較して著しく多い病床数、それとの関連が指摘される地域間の医療費の差、さらには低価値・無価値医療への対応など、データに基づいて見直しを進め、適正化を図っていただきたいと思います。
さらに、医療法人の経営情報の見える化も必要でございます。骨太の方針に示された医療従事者の処遇改善は喫緊の課題であり、職種別の給与総額の公開を含め、透明性向上の取組を加速させていただきたいと思います。
加えて、これらの改革を進めるためにはDX化の推進・加速が必要不可欠であります。マイナンバーを軸としたDX化は、医療情報、病診薬情報の連携による効率化はもとより、資産・所得の把握や不正対策にも重要な役割を果たすと考えられます。一定の配慮が必要になるかと思いますが、国がリーダーシップを発揮し、強力に進めていただくことを期待いたします。
資格確認書について話を聞いてみますと、資格確認書あるからマイナ保険証は不要だということでマイナンバーを返してしまう方もいらっしゃり、私は大変残念に思っております。資格確認書は時代に逆行することだと思いますので、マイナンバーを軸にしたDX化をぜひ強力に進めていただきたいと思います。
以上でございます。
○田辺部会長 ありがとうございました。
では、横尾委員、よろしくお願いします。
○横尾委員 幾つか意見を申し上げます。
いろいろな資料、概要を見て、日本の医療とか、こういった保険関係、健康関係のことを網羅的にお話しいただきました。一般の方で、聞かれている方は大変勉強になられたと思います。ありがとうございました。
ただ、後段のほうで見ると、若い世代の負担感の中に後期高齢者医療制度への支援金の問題というのがあり、これは避けて通れない項目として受け取られた方も多いと思います。実際、現状はそのような負担になっています。その後期高齢者の1年間の医療費を見てみますと、1人当たり平均100万円ぐらいの医療費という数値も出ていたところです。でも、これは我々が生きていれば、いずれそこは通っていく道ですので、ぜひお互いに老若男女で知恵を出して、新たな医療の在り方、よりよい方法を考えるべきだと改めて感じました。
医療の確保と医療アクセスは、人生にとって非常に重要な項目の一つだと思います。これは全国津々浦々、同じニーズがあると思います。特に医療のアクセスが厳しいところほど、その願望は強いと思っています。そういったこともありますので、市町村ではどんなことしているかというと、各々いろいろなことをやっています。ひとつは健康をどうやって維持するかということに取り組んでいます。特定健診の勧め、あるいはフレイル対策、さらに100歳になってもなお元気でいることのできる体操をやるとか、いろいろなこともしているわけです。こういったことを現場でやっているということを改めて皆さんにもお伝えしておきたいと思います。
では、生きていく上で何を自らに備えるべきかということを考えていくと、藤井委員もおっしゃったのですが、一つはヘルスリテラシーをもっともっと高めないと、制度として、仕組みとして対策をやっても、実際にそのことを意識して実行する人がいないと効果がほとんど出ないのではないかという危機感も持っています。健康維持をすることの意味をもっともっと社会的にもアナウンスとして広げていく必要があると思います。例えば健診を行うこともその一つでしょうし、フレイル対策に参加することもそうだと思います。できることからそういったことをすべきと思います。
公共の役割について考えていくと、憲法25条に書いてあるいわゆる生存権の部分、健康で文化的な生活とかいうのがありますけれども、その第2項には公の団体がすべきこととして公衆衛生も含めちゃんとやるということ、福祉もやるということも書かれているところです。しかし、昭和100年の今日でありますので、そろそろ新たな考え方も入れたらいいのではないかと感じています。一つは、これほどデジタルイノベーションも進んで、マイナンバーカードも入ってきて、健康チェック、投薬チェック、過去の記録、全部分かるようになってきましたので、これを生かすべきだと思っています。
例えば健康の問題で言いますと、大きな議論は国会ではなかなかしないでしょうが、個人的に思うのは、国民は健康を維持すること、自分の健康をよく意識することを努力義務的に発信していかないと、藤井議員もおっしゃいましたけれども、高卒・大卒で会社に入って社会人になってというときに、食事と栄養の知識がなければ暴飲暴食をやってしまうでしょうし、健康に影響があることを知らなければ本当にほったらかしでしょう。自覚症状があるまで待っているわけですが、それでも手遅れの場合は結構多いわけです。そういったことをきちんとお伝えする、意識改革をすることが物すごく大事だと思います。
こういったことを取り組むことによって短期的な対応、あるいは中長期的な計画としてやっていくべきこともどんどん効果が出てくると思いますので、ヘルスリテラシーの向上による自己の健康維持とか、健康回復ということをぜひ政府の方針の中に入れてほしいと個人的にも思っています。
特に医療アクセスについては地方のニーズは大変高いです。地域によっては医師不足が現実としてありますし、医師の確保をどうするかいうことは本当に大きなテーマになっています。これが不十分ですと定住も進まないし、会社を事業者が運営されていても従業員のケアでも大変になっていくと思います。そういった意味で、以前にも申し上げましたけれども、意識改革の一つの方法として厚生労働大臣と文部科学大臣が並んで記者会見していただいて、若い世代から医療や健康に関する知識を正しく持つことと、それを持ちながらできる努力をしていくことの大切さをぜひ発信をしてほしいと、かねて強く思っているところです。
例えば多久の場合は子供のときの小学5~6年生と中学2~3年生に当たる年齢の時期に、大人の成人病健診に当たる血液によるチェックもしています。そうすると、家族の健康に関する意識が高まると同時に、子供肥満とか子供成人病的な状況も分かりますので、体質改善ができるのです。このゲートがなければ、そのままの生活習慣をやっていくと大変大きな疾患につながっていくだろうと思います。こういった取り組みはささやかな取り組みかもしれませんが、いろいろな創意工夫を各自治体がしています。それらベストプラクティスを抽出いただいて、情報の共有ということもぜひ必要だろうと思います。
また、参考資料でいただきましたが、骨太方針の議論の中で、医療費の対応についてはなかなか財政が厳しい背景もありますので、高齢化の伸び率、あるいは上昇に合わせて対応していくような考え方の議論もあったと聞いたことがあるのです。それだと一見正しいのですが、随分状況は変わってきているし、かつてなかった高額新薬もありますし、治療についても新たな対応、例えば膵臓がんについてはほとんど発見が不可能でしたけれども、今は胃のほうにカメラを入れて胃のほうから撮影をして発見して対応するとか、いろいろな技術が出てきていますので、そういったことも加味する必要があると思っています。
また、今年の病院関係の会計決算を見ていくと、恐らく公立を含め全てのところで赤字になるところが多いという一部報道があったようです。そういったことになりますと、一般の方も非常に不安を持たれるわけです。そういったことも含めて、どうあるべきかということ、一人一人の意識改革と言いましたけれども、制度論としてもしっかり戦略を持ってやっていかないといけないということを改めて感じているところです。今後は、そういったことにも配慮するような診療報酬の在り方論とか、あるべき論ということを意見交換で充実していくことが必要だと感じています。
以上です。
○田辺部会長 ありがとうございました。
では、渡邊委員、お願いします。
○渡邊委員 細かい資料での説明、大変分かりやすかったです。ありがとうございました。
議論の進め方の中に、中長期ビジョンを逆算して取るべき対応というのは今から何ができるのかということを考えるべきなのだと書かれていると思っています。その中で、国民皆保険制度と医療提供体制の持続可能性の確保が一番大切な部分であると思っています。これについては、資料の中にも2040年に就業者数が大きく減少する中で、医療・福祉の職種の人材は現在よりも多く必要となると書かれているのですが、残念ながら現在の物価高騰、賃金上昇の対応状況が他産業並みに実施できていない部分にあっては、事務職を含めて逆に医療に従事する方が流出してしまっているような状況が生じている現状もあります。
このような中で、限られた医療資源の体制が崩れてしまってから再構築するのはかなり困難なことになりますので、現段階から手当てをしていく必要があるのではないかと思います。そのような中で担う医療というのは確実に進化します。医薬品も進化します。これに関しては係る医療費の財源をしっかりと確保していく必要があります。安定してその体制を維持できるような制度改革をお願いしておきたいと思います。
以上です。
○田辺部会長 ありがとうございました。
では、城守委員、よろしくお願いします。
○城守委員 まず、事務局におかれましては丁寧な御説明をありがとうございました。これまでの先人の努力の積み重ねで大変きめ細やかな保険制度になっていることを、改めて理解させていただいたところでございます。
本日は、医療保険制度の改革という議論のキックオフということですので、総論的なコメントになろうと思いますが、何点かコメントさせていただきたいと思います。
この医療保険制度、大変すばらしいものであると思いますけれども、将来的な持続可能性を考えることになりますと、議論の切り口としては、基本的には負担と給付という切り口からの議論になるのだろうと考えております。御案内のとおり、我が国の医療保険制度というのは国民皆保険ということです。この国民皆保険の内容は、いわゆる普通の保険という意味において、個人が病気になられたときのリスクに備えるという形の役割は当然あるわけですが、それと同時に、国民のほかの方が病気になられたときに、それを我々一人一人、みんなが支え合うという、いわゆる相互扶助という機能も併せてあるという、これが日本の医療保険制度の特徴であろうと思います。
ですので、若い世代の方は病気にあまりなられませんので、そうしますと、払い損ではないかという不満を持たれるのは当然であろうと思いますが、若い方もいずれ年齢を重ねられると、この保険制度によって自分の健康等を守っていただけるということも御理解いただきたいと思います。
この給付と負担という議論をこれから始めるに当たりまして、本日の議論の進め方を見ても、そこに記載がございますが、今お話ししたように、我が国の医療保険制度の基本的な考え方、理念、そして、制度自体は大変きめ細やかな分、複雑でございますので、大まかな分かりやすい説明ということは、申し訳ないですけれども、国から国民の方に改めて十分にしていただきたい。
それとともに、この制度というのはお分かりのように、所得の多寡に関係なく、できるだけ同じような医療が受けられる社会がいいという考えに基づいて成り立っているわけですから、アメリカのようにお金のある人はいい医療、お金のない人はそれなりの医療という制度ではないということ、この考え方を今後も続けるといいますか、この考え方を基本にするということを再認識していただく必要があると思います。それを国民の皆さんに共通認識として持っていただきたい。そういうことを国にもしっかりと確認していただきたいと思います。
先ほどからお話が出ていますように、財源は公助・自助・共助という形で成り立って、これからそのバランスが非常に重要になりますし、議論もそうなると思います。その中において財源には限りがあるわけですから、どこかで給付の議論もしていく必要があると思います。本日の資料の58ページにもありましたように、医療費の増加の要因というのは主に人口の増減、そして、高齢化と医療の高度化ということになると思うのです。ですけれども、人口は減少していっている、そして、高齢化も見て取れるように、基本的には徐々にその影響が少なくなってくる、将来的には高齢者の人口も徐々に減ってくることになります。そうなると、大きな影響を及ぼすのは医療の高度化です。これに対しての対応策をどのようにするのかということが大きなポイントになるのだろうと思います。
いずれにしても保険料の負担、そして、自己負担には限界があろうと思いますし、ここにこれ以上公費を投入できないということになれば、制度を維持するためには保険の給付を縮小する、保険で診られる範囲を少なくしていくということになりますから、その辺りを国民の方がどこまで許容できるのか、どこまで納得できるのかということを都度しっかりと説明をしていただきながら議論を進めていく必要があると思います。
これは委員の方々から何点か御発言があったと思いますけれども、負担と給付の考え方を議論するに当たって、国民の方の医療に関してのいわゆるヘルスリテラシーというものが我が国はまだまだ低いと言われております。ですので、その向上は必要になろうと思います。そのために、例えば先ほどからお話しておられたように予防、運動であるとか、禁煙、そして、健診等、これはいわゆるセルフケアという形になってくるわけですが、セルフメディケーションということをおっしゃる方もおられます。
このセルフメディケーションというのは自己判断で疾患を一定程度想定して、対症療法を自分で最初にするということを意味しておりまして、これは疾患の発見が非常に遅れたり、また、症状の進行が進んでしまったりということがありますので、我々としては安易にセルフメディケーションを推進することには反対をしているということでございます。
ヘルスリテラシーを向上するという意味においては、袖井委員もおっしゃっておられたように、子供のときから教育において、ヘルスリテラシー、そして、社会保障に対しての考え方、こういう考え方で我が国は行っているのだけれども、君たちはどう思うという、そういうディスカッション形式の教育というものが今後は欠かせないであろうと思います。その結果として、その考え方に基づいた医療保険制度に私はなるべきであろうと思います。我々は必要かつ適切な医療というものは保険診療で賄うという、基本的な国民皆保険の理念は守っていくべきであろうと考えております。
私からは以上です。
○田辺部会長 ありがとうございました。
それでは、兼子委員、よろしくお願いいたします。
○兼子委員 最初に、応能負担ということを皆さん大体共通しておっしゃられるわけです。この応能負担をまずどこで見るのか、私自身は前回申し上げましたように、まず、税のところで消費税が入ることによって応能負担が崩れていると思います。細かな数字は分かりませんが、消費税と所得税の総額は同じぐらいになってきていると言われているわけですけれども、これでは所得の低い人、資産の低い人にとって大変重荷になっているのが今の税の姿だと思います。
それを前提にして申し上げますと、保険料の問題についても逆進的なものになっていますので、戦後税制が確率した時の考え方、課税は最低限、要するに生活費に食い込んでまで負担を負うことのないような形にしていかないと、うまくいかないのだろうと思います。保険料について言えば、高額所得者の方、あるいは高額の資産を持っておられる方々の負担割合というのは限りなく低いわけですけれども、こういった点でも応能負担というものが現実に確保されていない。まず、そこをどう改善していくのかということでいかないと、窓口負担のところの応能負担ということがしばしば取り沙汰されますがこれは本質的な応能負担から外れた極めて限られた形かと思います。
そこが変わらないと、何人かの方からお話がございましたが、結局所得の低いところでは食費を削っていく、あるいは医療も我慢する、あるいは社会的な人間関係を縮小する、そういう中で情報からも遠ざかっていく、あるいはそういう社会的つながりによってストレスが解消されるようなこともなく、人間関係が狭まっていけば、ストレスの点でも健康被害というものが私は大きくなっていくのだろうと思います。それが1点です。
それから、医療の基本は私から申し上げるまでもなく、早期発見・早期治療ということだと思いますが、前の先生からお話がございましたけれども、私たちは例えば熱が出る、あるいは喉が痛いとか、様々な初期症状についてどれだけ個人が分かっているのか、あまりここは過信してはいけないのだと思います。
早期発見・早期治療で早く専門家の方に診てもらう、あるいは、その前提として様々な保健対策、医療について教育を受ける機会が確保されるといったこと、それから、個人もそういう努力をする中で健康というものは守られていくのだろうと思いますので、そこのところの信頼関係が崩れると、医療の在り方というのはどうなのか、重症の方たちに重点を置くという形でいきますと、医療の在り方として早期発見・早期治療が崩れていく、そのことによって個人の誤った判断はむしろ重症化、非常に多額の医療費を要することに私はつながっていくのだろうと思いますので、あまり個人の判断、自助、セルフメディケーションということを過信するような方向に行くことは望ましくないだろうと思います。
以上でございます。
○田辺部会長 ありがとうございました。
それでは、島委員、よろしくお願いいたします。
○島委員 今回示された資料1-1の考え方、スケジュールに関しては納得できると思っております。資料1-2のところにいろいろ示されておりますが、丁寧な説明で非常に分かりやすく聞いておりました。幾つか問題があることを委員の皆様がいろいろ御指摘をされていますが、戦後80年、先人たちの努力によってこれだけの医療制度がきちんと確立されたおかげで、このように平均寿命や健康寿命も延伸してきたという制度になっていることは非常に誇れると思っております。
資料1-2の29ページの保険診療の流れを見てみますと、非常にきちんとした確立された形で、これは今後もこういう形で続けていくべきだろうと思っておりますが、最大の問題は、先ほど委員のどなたかがおっしゃったように、医療施設、特に病院の経営が今非常に悪くなっておりまして、日本病院会と全日本病院協会、医療法人協会、精神病院協会の4団体で病院の経営調査をやったのですが、医業利益に関して医業収支に関しては7割ぐらいが赤字、経常収支を見てみますと6割以上が赤字ということになっておりまして、こういう状況が続けば、当然病院、診療所も含めて倒産という形になると思います。
そういう状況になってしまうと、新たな地域医療構想という形で議論が進んでおりますが、そういったものも形成できなくなるような状況になっております。まず、そのことをきちんと認識して話を進めていただきたいと思っております。
確かに収支が悪化している要因としては、高齢者が増加していることとか、医療の高度化に伴っていろいろな高額の薬剤を使ったり、高額な診療材料を使わざるを得ないというようなこととか、諸物価も当然高騰しておりますので、そういったことが病院・診療所の支出を物すごく増やしてしまっているような現状があります。ですから、喫緊の課題として医療施設の経営の安定化といったことがないと、我々が良質な医療を国民の方たちに提供するといった本来の使命を果たせなくなるような状況に今なっております。今、大きく転換点を迎えているのだろうと思います。今後、この医療保険部会でどうあるべきかという議論を進めていくわけですが、このことをしっかりと委員の皆様方も認識していただきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
以上でございます。
○田辺部会長 ありがとうございました。
それでは、任委員、よろしくお願いいたします。
○任委員 医療保険制度改革に向けた議論の進め方、スケジュール等について異論はございません。
我が国においては国民皆保険を軸として、誰もが安心して暮らせるよう、医療が必要になった際に低額な負担で質の高い医療が受けられる、非常に優れた医療保険制度を構築してきました。引き続きこの制度を持続していくことが必要です。そのためには、国民の健康意識の向上、予防・健康づくりの推進が極めて重要であり、特定健診、特定保健指導、生活習慣病の重症化予防等の取組をより一層進めていくことが重要です。
また、将来にわたり、安定的に医療を提供するには、医療の担い手となる人材の確保が不可欠であり、看護職をはじめとする医療従事者が専門性を発揮し、医療の質を担保できる体制を構築していくことが急務です。国民の皆様とともに、制度を持続させるために必要な制度改正について検討していくことが重要だと考えます。
以上でございます。
○田辺部会長 ありがとうございました。
では、前葉委員、よろしくお願いします。
○前葉委員 各委員のお話を伺いながら、そのとおりだなと、それぞれしっかり議論しないといけないと思っておるのですが、加えて一言この段階で申し上げておきたいと思うのは政治的な情勢もあるわけです。昨年、高額療養費について、言葉は難しいですが、我々審議会にある意味で差し戻されたようなこともあったということも踏まえて、情勢は変わっていないということだろうと思うのです。
例えばということで地方議会のことを申し上げますと、私ども市長は首長ですから、当然選挙で選ばれる政治家でもあるので、同じように選挙で選ばれる市議会の皆さんの理解を得ることを目的としてというか、そういうことで、例えば判断をする時期を考えたり、場合によっては政策の見せ方などもいろいろと工夫したり、配慮したりするのですが、それはなぜかというと、市議会議員の後ろに市民がいるからです。市民の理解を得るにはどのように議会の理解を得ればいいかということで考えてやるのですが、厚労省と国会の関係も同じだろうと思うのです。
加えて、地方議会では必ずしも同じような状況ではないと思うのですが、国会の場合は政党の思惑があります。現状は少数与党ということで事態が非常に複雑なのです。ですから、恐らく間局長をはじめ、保険局の皆さんも大変御苦労なさっていると思うのですが、我々審議会としては当然のことなのですが、特定の論点がこの後突如浮上して、それに対して議論がばたばたとなされて、ある意味で拙速になったりすることは何としても避けなければいけない。そういうことをしっかり自覚しながら、しっかりと我々はど真ん中の議論をして医療保険制度のあるべき姿、今の在り方をしっかりと審議会として答えを出していくということを一委員として自覚しなければいけないと思いながら、ちょっと違う観点でありますが、この段階で一言発言させていただきました。よろしくお願いいたします。
○田辺部会長 ありがとうございました。
では、大杉委員、よろしくお願いします。
○大杉委員 事務局におかれましては、丁寧な御説明をありがとうございます。医療保険制度改革に向けた議論の進め方については異論ございません。本日は、議論のキックオフということで、総論的な部分を歯科の立場で発言させていただきます。
本日示されていますように、国民皆保険制度を堅持していく上で、医療財政は非常に重要な視点であると認識しておりますが、地域における医療提供体制を維持していくことも同時に重要と考えております。人口が減少する中で歯科業界も高齢化が進んでおり、地域の歯科医療を支える人材の確保は喫緊の課題と考えています。医療DXの推進も非常に重要と考えておりますけれども、地域偏在等の是正の一助となるであろう高齢の医療職の方々ができるだけ医療を継続していただけるような施策も重要と考えておりますので、よろしくお願いいたします。
また、医療保険制度における給付と負担のバランスの議論については、国民の方々が理解いただけるように、できるだけ丁寧な議論をお願いしたいと思います。
以上でございます。
○田辺部会長 ありがとうございました。
では、北川委員、よろしくお願いします。
○北川委員 今般、医療保険制度改革に向けた議論の進め方ということで取り上げていただきましたことは大変時宜を得たテーマであると考えております。今後の部会において議論が深まっていくことを私どもも努力してまいりたいと思っております。
先ほどの説明も非常に多岐にわたり、深く説明していただきました。説明を通して我々の国民皆保険制度というのが、国際的に見ても非常に誇るべきすばらしい制度だと感じております。この永続性ということを我々としてテーマに掲げていくべきだという思いを改めて強くいたしました。
その中で、先般の高額療養費の検討が進められていること、医療保険とは異なるわけですけれども、子ども・子育て支援金が導入されること、こういったことを踏まえて今後の構造改革というテーマで考えるならば、先ほど来いろいろ御指摘もありますけれども、医療費適正化という大きな流れについての議論も並行して進める必要がありますが、今般においては負担と給付に関する切り口についての議論は避けて通れないのかなという認識を持っております。その意味で、我々が考えていく必要のある点は幾つもあると思います。
他方で、今後の進め方の中、参考資料の7ページにございました平均寿命・健康寿命の延びが国際的に見ても非常にすばらしいものでありますけれども、この中で、健康寿命の延びが平均寿命の延びより大きい、この表の中には入っておりませんけれども、計算すれば出てくる数字なのですが、ここの価値観、付加価値ということをもう少し我々としても掲げていってもいいのかなと、これは保険者としての立場ではありますけれども、非常に認識を新たにしたものであります。
また、今後の改革の議論に当たって、同じ資料の33~34ページに人口構成における費用の分析がございました。これは非常に示唆に富む資料だと認識しております。こういった基点を中心にしながら議論を深めていただければと思っております。
また、先ほど来話がありますヘルスリテラシーについて私どもも共感しております。協会けんぽとしても今非常に力を入れて取り組んでいるのが子供向けの健康教育でございます。小学校・中学校辺りできちんとしたヘルスリテラシーをつけること、これが回り回って国の全体の社会保障制度の向上に資するものだと強く認識しております。
併せまして、予防という考え方について、これも16ページにありますとおり、健診体系を強化していく、また、様々な機関の連携を強化していくということも大変重要なテーマだと思っております。私どもとしましても来年度からは人間ドックの費用補助というのを開始させていただきます。再来年度からはこれまで手薄だった被扶養者に対しての健診も大幅に拡充する予定でいます。併せて若手、25歳、30歳、35歳、40歳といった節目での健診への誘導というものも取り組んでまいりたいと思っております。
この健診制度がさらに拡充していくことが、回り回って健康寿命の延伸、平均寿命の延伸に直結していくのではないかという思いを持って取組を進めているところでございます。
同じようなコンテクストでもう一言申し上げると、16ページにありますとおり、健診一つを取ってみても非常に様々な機関が関与しているところがありまして、我々としてはそういった機関、セクター間での連携も強化してまいりたいというテーマを掲げております。この中でも特に最近は産業保健総合支援センターとの間で連携をしてメンタルヘルスの拡充もやらせていただいております。
より一層、こうした観点からの取組も進めてまいりたいと思っておりますけれども、先ほど申しましたような大きな構造改革ということも避けて通れないと思っておりますので、さらに議論を深めていただければと考えております。ありがとうございました。
○田辺部会長 ありがとうございました。
ほかはいかがでございましょう。一通り御発言は賜りましたけれども、よろしゅうございますか。それでは、ほかに御意見等がなければ、本議題についてはこれまでとさせていただきたいと思います。
事務局提案のとおり、次回以降も総論についての議論、さらには引き続いて各論も出てくると思いますので議論を続けてまいりたいと思います。
次に「令和8年度予算概算要求(保険局関係)について」ということで、こちらは報告事項でございますけれども、これを議題としたいと存じます。
事務局のほうから資料の説明をお願いいたします。
○姫野課長 総務課長でございます。資料2について簡潔に御説明させていただきます。
まず、資料1ページ目、この8月末に厚生労働省として概算要求した内容ですが、医療費の国庫負担につきましては、国保、後期高齢者、協会けんぽなどへの補助、負担ですけれども、直近のトレンドを基に自然増を伸ばした形で要求してございます。今後、いろいろな制度的な見直しなどの議論もあるかと思いますけれども、下の点線囲みにありますように物価高対策を含む重要政策については、予算編成過程において検討するということになっておりますので、年末までの調整ということになります。また、報酬改定などについても予算編成過程において検討することになっておりますので、夏の段階では機械的に置き換えた数字ということで要求をしてございます。そのほか、国民健康保険財政支援、被用者保険財政支援についても、昨年度と同等の支援をするという要求をしてございます。
2ページ以降、個別の予算メニューになりますけれども、①②にありますようにマイナ保険証の利用環境の整備に向けた取組ですとか、診療報酬改定DXについての取組についても年末までに調整していく事項ということで登録をしてございます。そのほか、NDBデータの利活用促進ですとか、国保総合システムの改修、また、次のページ以降にも予防・健康づくりのメニューが並んでおりますけれども、いずれも昨年度と同等、あるいはそれを上回るような支援をするという方向性で要求をしてございます。
最後、5ページに東京電力福島第一原発事故により帰還困難となった地域での特別措置に対する補助、これも同等の支援ができるように盛り込んでいるところでございます。
説明は以上でございます。
○田辺部会長 ありがとうございました。
本件は報告事項ではございますけれども、何か御意見等がございましたら、よろしくお願いします。
では、佐野委員、よろしくお願いします。
○佐野委員 時間がない中で恐縮でございます。まず、被用者保険に対する財政支援についても要望いただきまして感謝を申し上げます。そのほか、資料に記載はございませんが、健保組合に対して医療DXを活用した保健事業の取組等に対する財政支援事業について、事項要求も含めて御要望いただいています。これについては健保組合の業務効率化につながるという観点で健保組合からの期待が大きい部分でございますので、ぜひとも予算面の確保をお願いできればと思っております。
以上でございます。
○田辺部会長 ありがとうございました。
では、渡邊委員、よろしくお願いします。
○渡邊委員 報告ですが、1点だけお願いをしておきたいと思います。DXのところの一番上のマイナ保険証の利用環境の部分に関しては、年末に向けた事項要求ということですけれども、これは前回も出ていたように、来年度、顔認証付カードリーダーの保守期限を迎えることになっています。これに関して現状、どこの医療機関・薬局であってもマイナ保険証が利用できている環境を維持するために、次期型への入れ替えという部分に関しては全額の補助を考えていただきたいと思います。オンライン資格確認の基盤が整備されて、その整備された環境にいち早く取り組んできたところから保守を迎えてしまいますので、そういう施設に負担がかからないように、ぜひ早い段階からのしっかりとした対応をお願いしておきたいと思います。よろしくお願いします。
○田辺部会長 ありがとうございました。
では、大杉委員、よろしくお願いします。
○大杉委員 私からも1点お願いをしたいと思います。医療分野におけるDXの推進におけるマイナ保険証の利用環境のさらなる整備に向けた取組において、明日からスマートフォンにおける対応もスタートします。国民の方々にとって便利になることはよいことであるとは思っておりますけれども、今後迎える顔認証付カードリーダーの機器の入れ替えや電子処方せんと電子カルテの同時導入に向けた取組などについて、早期のアナウンスと適切な時期に確実な補助等ができるようにお願いを申し上げたいと思います。よろしくお願いします。
○田辺部会長 ありがとうございました。
ほかはよろしゅうございますでしょうか。では、ほかに御意見がなければ、本議題についてはこれまでとしたいと存じます。
次に「令和6年度医療費の動向について」も報告事項でございますけれども、これを議題といたします。事務局のほうから資料の説明をお願いいたします。
○江郷課長 保険局調査課長でございます。資料3の令和6年度医療費の動向、概算医療費の集計結果を御覧いただければと思います。本日は時間もございませんので、簡潔にポイントだけ御説明させていただきたいと思っております。
まず、概算医療費というのはどういうものかと言いますと、レセプトに基づいて医療保険や公費負担医療を集計したものでございます。よく言われている国民医療費の98%位に相当しておりまして、速報的な位置付けになっております。
令和6年度の概算医療費は48.0兆円でございますが、対前年度比でプラス1.5%となっております。下のほうの表を見ていただきますと時系列で伸び率が並んでおりますが、令和2年度に新型コロナが流行しまして、受診抑制等によって医療費が一時的に減少したのですが、それ以降、新型コロナの爆発的な感染状況であるとか、コロナ特例などで医療費が伸びたのですが、令和5年に新型コロナが5類移行になりまして、コロナ特例を段階的に廃止した影響などで、5年度、6年度で伸び率がどんどん落ち着いてきておりまして、令和6年度は落ち着いているような形になっております。
そういった乱高下を踏まえまして、令和元年から6年度の5年間の伸び率の平均で見ますとプラス1.9%位になっております。医療費は平時だとプラス2%位伸びると言っておりますが、平均で見るとプラス1.9%ということで大体巡航速度的な医療費の伸びに戻ったと見ております。
2ページを見ていただきますと、先ほどの資料と被りますが、それぞれ伸びの要因を分解したものになっております。下の表が人口要因等を分解したものでございますが、令和6年度でいきますと、人口減少要因がマイナス0.4%、高齢化の要因がプラス0.6%となっておりますが、高齢化の要因は近年減少する傾向にございまして、昨年度よりもさらに小さくなっているような状況でございます。
一番下のその他の伸びのところで、よく高度化の伸びと言っているところですが、令和6年度についてはプラス1.6%となっておりまして、こちらも時系列で見ますと令和2年度や3年度に乱高下しておりますが、大体令和元年度と同じ位の水準の伸びになっているようなところでございます。
3ページ、より細かく概算医療費の動きを見たものでございます。医療費の伸びは、受診延日数の伸びと1日当たり医療費、単価の伸びに分解して見ることができますが、青色のところが医療費の伸び、オレンジのところが受診延日数の伸び、灰色のところが1日当たり医療費単価の伸びのように、分解して見ることができます。
右側のほうが年齢区分別に見たものでございますが、75歳以上や、75歳未満の未就学を除くところでいきますと、医療費はプラス1%弱増えているのですが、令和6年度固有の状況といたしましては、未就学者のところがマイナス3.5%と大きく減っております。要因で見ますと、受診延日数がマイナス3.0%と大きく減っている影響でございますが、これは令和5年度に子供さんの呼吸系疾患等が流行した影響がありましたが、それが落ち着いてきたという要因で減っているところでございます。
4ページ、外来医療費について主たる診療科別に診療所の伸びを見たものでございます。令和6年度固有の状況でいきますと、小児科のところを見ていただきますとマイナス18.1%と大きく下がっております。先ほどの未就学者と被りますが、受診延日数もマイナス4.9%と大きく下がっているのですが、1日当たり医療費もマイナス13.9%と大きく下がっております。1日当たり医療費の減少に関していきますと、令和5年度の5類移行後にコロナ特例が段階的に廃止された影響が大きく出ていると見ております。
ただ、下のほうの表で令和元年から6年度までの平均の伸び率をつけておりますが、それで見ますと、小児科はプラス3.2%と他の診療科より大きく伸びております。ということでございますので、令和6年度に大きく下がっているのですが、それは5年度までに大きかった水準が元に戻っていったと見ていただければと思います。
資料を飛ばしまして、13ページ以降が概算医療費の中でも電子レセプトだけ、NDBを集計した医科医療費(電算処理分)の動向になっております。こちら側は紙レセプトが含まれておりませんので、概算医療費よりさらに範囲が狭いものになっておりますが、より詳細な分析ができるものとして公表しているものでございます。
資料を飛ばしまして、16ページを見ていただきますと、主な疾病別・傷病別に伸び率を分解したものになっております。右のグラフを見ていただきますと、縦棒が各年度の伸び率になっておりまして、どういった疾病が伸び率に寄与したかという内訳を見たものになっております。こちらでいきますと、例えば入院のものでございますが、青色のところ、特殊目的用コード、いわゆる新型コロナの医療費でございますが、こちらで見ますと、令和6年度のところでマイナス0.4%位押し下げ効果になって、それ以外の疾病はプラスになっております。近年でいきますと、3年度、4年度は新型コロナが流行したので、特殊目的用コードがプラスだったところが、5年度、6年度でマイナスに寄与している状況を見て取ることができるかと思います。
17ページ、入院外について同じように見たものでございます。灰色のところが特殊目的用コード、同じく新型コロナの影響でございますが、入院よりさらに大きく寄与しておりまして、動きは同じなのですが、令和5年度、6年度とマイナスに寄与しているような形で、特に外来については新型コロナの医療費の減少が大きくマイナスに寄与しているのを見て取ることができるかと思います。
22ページ、歯科医療費(電算処理分)の動向について、これは診療内容別に伸びの寄与を分解したものになっておりますが、例えば令和6年度、歯科に関していきますと、青色の処置のところがプラス1.7%と大きな寄与を示しておりますが、この辺は診療報酬改定の影響等が出ているものと思っております。
26ページ、こちらは調剤医療費(電算処理分)の動向に関したものでございますが、薬剤料の伸びの薬効分類別の寄与を分解したものでございます。令和5年度、薬剤料が大きく伸びておりますが、令和5年度のところを見ますと、プラス3%位青色の化学療法剤が大きく伸びていたところなのですが、令和6年度は逆にマイナス1.5%という形で寄与しております。これは何かと言いますと、化学療法剤はインフルエンザの治療薬であるとか、新型コロナの治療薬になっておりまして、5年度に大きく流行していたインフルエンザや新型コロナの患者数が減少したことによって、令和6年度はマイナスに寄与したというのが、こういうところで見て取ることができます。
最後に27ページ、調剤に限った場合の後発医薬品の使用割合を各月でプロットしたものになっております。令和6年度固有の状況といたしましては、毎月大体徐々に上がっていくのですが、10月のところで不連続に大きく上昇しているのを見て取ることができるかと思います。これは何が起こっているかといいますと、ちょうど令和6年10月に長期収載品の選定療養が始まりましたので、その関係で後発医薬品の使用割合が一気に進んだのが見て取ることができるかと思います。
28ページ、それを年齢別に分けたものでございます。緑色が年度の前半、赤色が年度の後半、選定療養が始まる前後で比較したものでございます。年齢階級別でいきますと、特に大きく変化をしているのが5~20歳ぐらいの子供さんのところですが、年度の前半だとへこんでいたところが、年度の後半になるとほかの年齢水準と同じぐらいになるというような形で大きく伸びています。各年齢で全部伸びているのですが、特に子供さんのところで大きく伸びているところが特徴になっているかと思います。
以上、簡単でございますが、令和6年度医療費の動向についての御説明を終わらせていただきます。
○田辺部会長 御説明ありがとうございました。
本件も報告事項ではございますけれども、何か御意見等がございましたら挙手にてお知らせいただければと思います。よろしゅうございますか。
では、御意見がなければ、本日はこれまでとしたいと存じます。
次回の開催日につきましては、追って事務局のほうより連絡いたします。
本日は、御多忙の折、御参加いただきましてありがとうございました。
それでは、これで閉会いたします。



