第5回社会保障審議会生活保護基準部会最高裁判決への対応に関する専門委員会 議事録

日時

令和7年10月2日(木) 15:00~17:00

場所

東京都千代田区霞が関1丁目2番2号 中央合同庁舎第5号館
厚生労働省 3階 共用第6会議室

出席者(五十音順)

・岩村 正彦  東京大学名誉教授
・太田 匡彦  東京大学大学院法学政治学研究科教授
・興津 征雄  神戸大学大学院法学研究科教授
・新保 美香  明治学院大学社会学部教授
・嵩 さやか  東北大学大学院法学研究科教授
・永田 祐   同志社大学社会学部教授
・別所 俊一郎 早稲田大学政治経済学術院教授
・村田 啓子  立正大学大学院経済学研究科教授
・若林 緑   東北大学大学院経済学研究科教授

議題

平成25年生活扶助基準改定に関する最高裁判決を踏まえた検討について 

議事録

(議事録)
○岩村委員長 皆様、こんにちは。定刻でございますので、ただいまより第5回「社会保障審議会生活保護基準部会 最高裁判決への対応に関する専門委員会」を始めさせていただきます。
 委員の皆様におかれましては、お忙しい中を御参集いただきまして、誠にありがとうございます。
 事務局から、今日の委員の出欠状況と資料の確認をお願いしたいと思います。また、オンラインで出席されている委員の方々もいらっしゃいますので、改めてになりますけれども、会議での発言方法などにつきまして説明をいただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○千田社会・援護局保護課長補佐 事務局でございます。
 本日も、対面及びオンラインを組み合わせての実施とさせていただきます。また、動画配信システムでのライブ配信により一般公開する形としてございます。アーカイブ配信はいたしませんので、あらかじめ御了承ください。
 まず、前回の専門委員会の開催以降、事務局に人事異動がございましたので、御紹介をさせていただきます。
 伊澤大臣官房審議官でございます。
 続きまして、本日の委員の出席状況について申し上げます。
 本日は、オンライン参加も含めまして、全ての委員に御出席をいただいております。
 以上でございます。
 会議冒頭のカメラ撮りはここまでにさせていただきたいと思いますので、大変恐縮でございますが、カメラの皆様は御退席のほどよろしくお願い申し上げます。
(カメラ退室)
○千田社会・援護局保護課長補佐 では、事務局よりお手元の資料と会議の運営方法の確認をさせていただきます。
 本日の資料でございますけれども、議事に関しまして、2種類資料を用意してございます。まず資料1「平成25年改定当時における生活扶助基準について」、資料2「これまで議論された論点と今後の論点(案)」の2種類を用意してございます。
 会場にお越しのお二方の委員におかれましては、机上に用意させていただいておりますので、もし過不足等ございましたら、事務局にお申しつけいただきますようにお願いします。また、オンライン御出席の委員の皆様におかれましては、電子媒体でお送りしておりますので、そちらの資料を御覧いただければと思います。また、同様の資料を厚生労働省のホームページにも掲載してございますので、万一過不足等ございましたら、恐縮ですけれども、ホームページからダウンロードいただくなどの御対応をお願いしたいと思います。
 改めまして、発言方法についての御案内になります。前回からの繰り返しで申し上げますが、オンラインで御参加の委員の皆様には、画面の下にマイクのアイコンがございますので、会議の進行中は、基本的にミュートにしていただくようにお願いいたします。その上で、御発言をされる際には、Zoomツールバーの「リアクション」から「手を挙げる」をクリックいただきまして、岩村委員長の御指名を受けてからマイクのミュートを解除して御発言をお願いいたします。御発言が終わりました後は、Zoomツールバーの「リアクション」から「手を下ろす」をクリックしていただきまして、併せて、再度マイクをミュートにしていただきますようにお願い申し上げます。
 事務局からは以上でございます。
○岩村委員長 ありがとうございました。
 それでは、議事に移らせていただきたいと思います。お手元の議事次第を御覧ください。
 引き続き、「平成25年生活扶助基準改定に関する最高裁判決を踏まえた検討について」が今日の議事ということになります。
 前回から、経済指標やデータなどに関する議論を始めたところでございますけれども、前回委員の皆様から御意見をいただいたことを踏まえて、事務局のほうで資料を準備していただいております。それを踏まえて議論を今日も進めていければと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
 では、まず、事務局から資料1について説明をいただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○榎社会・援護局保護課生活保護統括数理調整官 社会・援護局保護課の榎でございます。
 それでは、資料1「平成25年改定当時における生活扶助基準について」御説明させていただきます。
 1ページを御覧ください。前回、第4回専門委員会における委員からの主な御意見の概要を記載してございます。4つ目の○でございますが、「家計調査を見ると、平成21年に第1・十分位の消費の伸びが大きく下がっている。特異なデータだけを見たことにならないか。」といった御意見がございました。
 また、下から3つ目の○になりますけれども、「令和4年検証では、第3・五分位の消費と第1・十分位の消費との比率を確認している。今回も同様に確認するべきではないか。」といった御意見もございました。
 それから、下から2つ目の○でございます。「平成21年はリーマンショック直後で消費が落ち込んでいた年であり、平成21年全国消費実態調査による水準の検証結果をそのまま生活扶助基準に当てはめるのは危険。家計調査などを使って何らかの補正、調整が必要ではないか。」といった御意見もあったところでございます。
 主な御意見の概要については、次ページ、2ページにも続いてまいりますが、今回につきましては、前回に引き続き、生活扶助基準の水準について、さらに御議論を深めていただきたいと考えてございます。
 前回の委員会後に、個別に事務局宛てに御連絡いただいたものも含めまして、今回、各委員からのお求めがあったデータなどを中心に用意してございます。
 まず、3ページ以降では、平成25年改定当時の経済情勢に関する追加データをおまとめしてございます。
 4ページ目を御覧ください。生活扶助相当支出の推移をお示ししたものでございます。前回の資料から、第1・五分位、そして第3・五分位、これらのデータを追加してございます。
 グラフを御覧いただきますと、第1・五分位、第3・五分位も含めまして、平成20年のリーマンショック以降、平成23年までは消費水準が低下している状況が確認できるかと思います。
 5ページ目でございます。こちらは消費支出について、同様のデータをお示ししたものでございます。
 6ページを御覧ください。2人以上の勤労者世帯の第1・十分位に焦点を当てまして、生活扶助相当支出の前年比について、どの品目が増減に大きく寄与しているのか、そういった分解をしてみた資料でございます。表の中の前年比の推移のところを御覧いただきますと、平成21年でマイナス5.8%、平成24年でプラス7.6%、このようにやや大きめの数字となってございます。それらを品目別に、どの品目が寄与していたかというところを横に見ていただきますと、青と赤の四角で囲んでございますとおり、いずれの年も「その他の消費支出」の部分が最も大きく寄与してございます。
 この「その他の消費支出」の内訳につきましては、次の7ページ目にお示ししてございますので、適宜御参照いただければと思います。
 8ページから10ページにかけましても、同様の分析をお示ししてございます。消費支出について見たり、あるいは第1・五分位、第3・五分位で見たりと、同様の分析をお示ししてございます。これらについても参考データとして適宜御参照いただければと思います。
 11ページを御覧いただければと思います。これまでに御覧いただきました各種経済指標の評価について論点を整理させていただいております。1点目としましては、平成24年検証当時に参照可能であった平成23年までの各種経済指標を踏まえ、平成19年検証以降の期間として、平成20年以降の消費動向、平均の動向や低所得世帯の動向などを想定してございますが、これらをどのように評価すべきか、こちらについて御議論をお願いしたく思います。
 また、2点目としまして、前回の専門委員会において、平成21年全国消費実態調査に基づく夫婦子1人世帯(第1・十分位)の生活扶助相当支出額、こちらの集計結果をお示ししたところでございました。その支出額の結果について、先ほど御覧いただいた各種の経済指標も踏まえて、どのように評価すべきか御議論をいただけると幸いでございます。
 12ページ以降では、一般低所得世帯の消費水準と生活扶助基準の乖離の評価に関する資料をおまとめしてございます。
 13ページを御覧ください。前回の専門委員会資料の再掲でございます。夫婦子1人世帯の第1・十分位の生活扶助相当支出額、こちらは平成25年基準改定前の生活扶助基準額を12.0%下回る結果になってございました。この結果の評価に関して、引き続き御議論を深めていただきたく、関連するデータを幾つか用意してございます。
 14ページを御覧ください。こちらは令和4年検証の報告書の抜粋でございまして、前回の専門委員会でもお示しをした資料でございます。令和4年検証を振り返りますと、夫婦子1人世帯の第1・十分位の消費と基準額の水準比較に加えまして、参照した第1・十分位の集団が平成29年検証時から大きく変化していないかと、この点を確認する観点から、幾つかの指標について確認を行ってございました。
 1つ目としましては、資料の中のa)と書いてある部分でございますが、中位所得層に対する消費水準の比率でございます。中位所得層と低所得層の格差が拡大していないか、こちらを確認する観点から参照していたものでございまして、前回の専門委員会におきましても、今回、最高裁判決を受けた検討の際にも確認すべきと、このような御意見をいただいていたところでございました。このほかにも、令和4年検証では、エンゲル係数と同様の側面を持つ固定的経費割合、それから相対的な貧困の度合いを確認する年間可処分所得の中央値に対する比率、このような指標についても確認をしてございました。
 15ページから17ページまでは、御参考までに令和4年検証で確認した各種指標の結果、それから固定的経費の設定方法などをお示ししてございます。適宜御参照いただければと思います。
 18ページを御覧いただければと思います。令和4年検証の際に確認しました夫婦子1人世帯の第1・十分位に係る各種指標につきまして、平成21年全国消費実態調査の調査票情報を用いて、同様に集計した結果をお示ししてございます。指標の評価が可能となるように、平成16年の全国消費実態調査についても同様に集計をしまして、2時点間の増減についても併せてお示しをしてございます。
 表の部分を御覧いただきますと、主な指標についてはクリーム色にしてございます。1つ目が消費支出の中位所得層対比でございます。第3・五分位の消費支出に対する第1・十分位の比率を示したものでございます。平成21年では69.0%となってございまして、平成16年の73.5%から4.5%ポイント低下をする形となってございます。この指標については、数字の低下は格差拡大を表すということでございますので、平成21年は状況としてあまり良くない動きを示すと、このような結果になってございます。
 このほか、固定的経費割合についても平成16年より1.6%増加してございまして、あまり良くない方向の動きとなってございます。
 その一方で、年間可処分所得の中央値対比については、平成16年とほぼ同様の結果でございました。
 19ページを御覧ください。上段の表では、夫婦子1人世帯の第1・十分位の生活扶助相当支出額について、平成16年調査との比較結果をお示ししてございます。平成21年の集計結果については、前回の専門委員会資料でもお示しした結果と同じものになってございますが、平成16年と比較をいたしますと8.8%減少していたと、このような形になってございます。
 また、18ページでは、消費支出の中位所得層対比を御紹介いたしました。この19ページでは、生活扶助相当支出についても中位所得層対比の数字をお示ししてございます。消費支出で見た場合と同様に、4%を超えるマイナスが出ている動きになってございます。
 20ページを御覧ください。先ほど19ページで御覧いただきました生活扶助相当支出の中位所得層対比について、平成16年から平成21年にかけて4.2%ポイント低下してございましたが、この格差拡大に対する費目別の寄与度を示した資料でございます。上の表の右端の列に費目別の寄与度をお示ししてございます。御覧いただきますと、全体のマイナス4.2%ポイントに対しまして、「その他の消費支出」の寄与が最も大きく、マイナス1.5%ポイントを占めるような結果になってございました。
 この「その他の消費支出」の内訳については、次の21ページに細かくお示ししてございます。適宜御参照いただければと思います。
 22ページを御覧いただければと思います。2人以上勤労者世帯における第1・十分位の生活扶助相当支出の中位所得層対比について、家計調査に基づいて、経年の推移を見たものでございます。上側の表が第3・五分位と対比をしたものになってございますが、赤の四角で囲んでございますとおり、平成21年で62.9%と前年から大きく低下する動きになってございました。その一方で、22年以降、翌年以降は水準が回復するような動きも見られていたところでございます。
 23ページを御覧ください。前回の専門委員会においてお示しした資料の関連になりますが、委員からの御指摘を踏まえまして、消費支出格差の計算要素として、平均世帯人員と消費支出を追加させていただいてございます。資料の中の青色で網かけをした部分が追加した部分でございます。
 24ページを御覧いただければと思います。これまでに御覧いただきました各種のデータを踏まえて、一般低所得世帯の消費水準と生活扶助基準の乖離の評価に関する論点を整理してございます。まず1つ目の○につきましては、前半部分の論点とも関連いたしますが、平成21年の全国消費実態調査に基づく夫婦子1人世帯(第1・十分位)の生活扶助相当支出額に対する基本的な認識としまして、リーマンショックの影響などにより消費水準が大きく低下し、その結果、第1・十分位と第3・五分位の消費水準の格差が拡大した可能性が考えられるのではないかということを記載してございます。
 仮にこのような見方で、特段齟齬がないということでございましたら、生活扶助基準の引下げが受給世帯に及ぼす影響については慎重に考える必要があるということを踏まえまして、生活扶助基準の水準の評価に当たって、リーマンショックの影響といった特殊要因を考慮することも考えられ得るのではないかと考えているわけでございますが、この点についてどのように考えるか、委員皆様の御意見を頂戴したく考えてございます。
 ここで、仮に特殊要因を考慮するとした場合については、その考慮方法についても議論が必要になるものと考えてございます。点線で囲んでいる部分は、事務局において考えつく範囲で考慮方法の例を幾つかお示ししてございます。まず、評価時点を考慮する方法としまして、平時に近い消費水準を基準とするといった観点から、家計調査の変動率に基づき、リーマンショックの影響で大きく落ち込む前後の水準に補正すると、このような方法が考えられ得るのではないかと思ってございます。
 また、他の所得階層の消費動向を反映する方法も考えられるかと思います。格差の拡大を抑制する観点から、過去に全世帯ベースの消費動向を示す民間最終消費支出に基づいて基準額を改定した経緯などを踏まえ、夫婦子1人世帯の消費水準の平成16年からの変動が全年収階級の変動率と同程度に抑制されるように水準を補正する方法。それから、同様の観点から、中位所得層対比の比率が維持されるように補正する方法、これらの方法なども考えられ得るのではないかと思います。
 こちらに示してございますのは、あくまで例示ということでございます。特殊要因の考慮が必要とお考えの場合には、その方法につきましても御意見を頂戴できますと幸いでございます。
 このほか、一番下の○でございますが、生活保護世帯への影響緩和を図る上では、物価が消費の一要素であるという点を踏まえて、生活扶助相当支出額の変動を考慮することに代えて、生活扶助相当CPIの変動を反映する方法も考えられ得るところかと思います。このような方法についても、併せて御意見いただけるとありがたく存じます。
 次ページ以降では、それぞれの補正方法について、補足的な情報を整理してございます。
 25ページを御覧ください。家計調査の変動率を用いて、リーマンショックの影響で大きく落ち込んだ消費水準を補正する方法について補足情報をお示ししてございます。上段の表につきましては、全国消費実態調査の調査時点である平成21年を始点としまして、その前後の年の水準との変動率を見たものでございます。例えば第1・十分位、一番最初の行を御覧いただきますと、1行目の右端にございますとおり、平成25年の消費水準は、平成21年の水準に比べましてプラス3.89%高いといったことをお示ししてございます。このようなデータに基づきまして、平成21年の全国消費実態調査の生活扶助相当支出額の水準をリーマンショック前後の水準に補正する、こういった方法が考えられ得るのではないかと考えてございます。
 26ページを御覧ください。他の所得階層の消費動向を反映する方法について、補足情報をまとめてございます。表にございますとおり、平成21年調査の夫婦子1人世帯の第1・十分位の生活扶助相当支出額は、全年収階級に比べますと、平成16年調査時点からの減少幅が大きくなってございました。こういった結果を踏まえまして、第1・十分位について、平成16年からの消費水準の減少が全年収階級のマイナス3.99%と同程度に抑制されるように、平成21年の水準を補正するという方法も考えられ得るのではないかと思います。
 また、同様に格差の拡大を抑制するという観点からは、生活扶助相当支出額の中位所得層対比の比率が維持されるように、21年の水準を補正するという方法も考えられ得るように思います。
 これは表の一番下の行にございますとおり、平成21年時点においても、第3・五分位との比率が、平成16年と同じ68.8%程度になるように水準を補正するといった想定をしたものでございます。
 27ページを御覧ください。物価変動率を用いて影響緩和を図る方法についてでございます。前回の専門委員会資料で御覧いただきましたとおり、これまでの景気後退局面においては、消費と物価はおおむね同様の動きを示しつつ、とりわけ消費が物価以上に下落したケースが多く見られてございました。こうした点を踏まえて、生活保護世帯への影響緩和を図る上では、消費の変動を考慮することに代えて、物価の変動分のみを反映すると、このような形にとどめることで、生活扶助基準額を調整する方法も考えられ得るのではないかと思います。
 ただし、※にございますとおり、仮に生活扶助相当CPIを用いる場合には、訴訟において争点になった各種論点について整理が必要になろうかと考えてございます。
 28ページから30ページまでは、生活扶助相当CPIの個別論点に関する資料をお示ししてございます。
 28ページは、委員のお求めを踏まえて用意したものになりますけれども、生活扶助相当CPIを構成する品目のうち、テレビの影響をまとめたものでございます。生活扶助相当CPIの算出に当たって、基準年とした平成22年は、テレビに関して販売量の増加と価格の下落が重なったということで、生活扶助相当CPIの指数全体を押し下げる効果が生じてございます。このため、仮に生活扶助相当CPIを用いた改定を検討する場合には、テレビのウエイトウエイトの取扱いが論点になろうかと考えてございます。
 続いて、29ページにつきましても、委員のお求めを踏まえた資料でございます。ウエイトウエイトの設定方法に関する考え方などをまとめてございます。消費の変動の代わりに物価の変動を反映するという場合において、その物価の変動率の算出に当たっては、一般世帯のウエイトウエイトを用いるのか、一般低所得世帯のウエイトウエイトを用いるのか、こういった点が論点になろうかと思います。
 30ページについては、前回の専門委員会資料を再掲したものでございます。生活扶助相当CPIの主な論点をまとめた資料でございまして、参考としてお示しをしてございます。
 31ページを御覧ください。改めまして、一般低所得世帯の消費水準と生活扶助基準の乖離の評価に関する論点をまとめてございます。繰り返しになりますが、リーマンショックの影響等により消費水準が大きく低下し、格差が拡大した可能性が考えられる中で、一般低所得世帯の消費水準と生活扶助基準の乖離の評価に当たって、まずはリーマンショックの影響といった特殊要因を考慮する必要があるのか否かについて、御意見を頂戴したく考えてございます。
 また、仮に特殊要因を考慮するとした場合には、具体的な選択肢としてどのような方法が考えられるか、また、その選択肢の中でどの方法がより適切と考えられるか、これらの点についても御議論をいただけますと幸いでございます。
 最後になりますが、33ページを御覧いただければと思います。水準調整に係る手順について補足をした資料でございます。前回の専門委員会では、仮に平成25年改定で反映したゆがみ調整の部分を変えずに、水準調整のみやり直すとした場合に、令和5年改定と同様の方法が取り得るのかといった御質問がございました。図の上側の部分は、平成25年改定の手順をお示ししてございます。ゆがみ調整を反映した上で水準調整を反映する手順となってございます。
 これに対して、令和5年改定の手順をお示ししたのが下側の図でございます。こちらでは、水準調整が先に来る形となってございまして、夫婦子1人世帯については、この水準調整の段階で基準額の水準が固まることとなります。その上で、平成25年改定のゆがみ調整を反映するという流れになるわけでございますけれども、ゆがみ調整では、様々な世帯属性間の相対的な較差を指数化した較差指数というものを設定してございます。例えば夫婦子1人世帯の水準に対する母子世帯の相対的な水準についても、この較差指数から把握が可能となります。このため、水準調整で固まった夫婦子1人世帯の水準を基軸としまして、この較差指数を組み合わせることによって、母子世帯など他の世帯類型の水準についても固めることができる、これが令和5年改定の手順でございます。今回、この手順も取り得るということをお示しするとともに、どちらの手順で処理しても、得られる結果は同じになるという点についても補足をしておきたいと思います。
 資料1につきまして、事務局からの説明は以上でございます。御審議のほど、何卒よろしくお願いいたします。
○岩村委員長 ありがとうございました。
 ただいま御説明いただいたとおり、今日の資料1は、3ページ目から始まります最初の項目であります「平成25年生活扶助基準改定当時の経済情勢に関する追加データについて」という部分と、それから、ページをめくっていっていただいて、12ページから始まります2番目の項目であるところの「一般低所得世帯の消費水準と生活扶助基準の乖離の評価について」というパーツに分かれております。
 そして、それぞれ資料の11ページ目、それから31ページ目におきまして、事務局のほうで御議論いただきたい論点を整理いただいているところでございます。これらの論点につきまして、委員の皆様から専門的な知見を踏まえて御意見をいただきたいと思います。
 議論の整理ということもあるので、まず、11ページ目の論点について御意見をいただければと思いますので、どなたからでも結構ですが、よろしくお願いいたします。
 では、別所委員、どうぞ。
○別所委員 11枚目の論点についてですが、基準を定めるに当たって、全国消費実態調査というのがサンプルサイズも大きくて、基準に使うには最もというか、基準の基準にするものであることを踏まえると適切で、その上でですが、21年の全国消費実態調査の第1・十分位というのは、家計調査などを見ても平時というか、前後数年間の支出額を見るには低すぎるすと見るべきかなと思います。もちろん抽出調査なので、全員を調べたときに比べて、たまたま低い人が出ている可能性もないわけではないですし、毎年調べている家計調査は、より標本規模が小さいので、たまたま支出が少ない人とか、たまたま多い人が出てくる可能性は高いのですけれども、ただ、特に6ページだと「その他の消費支出」が落ちているというような書き方をされていますが、ほかの項目についてもそれなりに下がっているので、前後数年という時間の幅で見るときに、平成21年全国消費実態調査の結果だけを見ると、さすがにこれは低すぎるすと見るべきではないかなと思います。
 以上です。
○岩村委員長 ありがとうございます。
 ほかにはいかがでしょうか。村田先生、どうぞ。
○村田委員 別所先生がおっしゃったことに賛成なのですが、2009年の数字を見ますと、どの数字も、先ほどの説明もありましたように、4ページで全体でも、第1・十分位でも落ち込んでいるということで、これはリーマンショックがかなり大きく影響していると思いますので、このときの減少がかなり下振れしていたということは考慮すべきと思っております。
 より細かい話として、「その他の消費支出」を除くと、第1・十分位の落ち込み方と第3・五分位の落ち込み方は似ているのですが、第1・五分位は少し違ったりということもありますので、その辺りはもう少し見ていくことがまだ残っているかなとは思っておりますが、平成21年が落ち込んでいることに関しては同意いたします。
○岩村委員長 ありがとうございます。
 若林先生、どうぞ。
○若林委員 お願いします。若林です。
 今まで先生方がおっしゃってくださったことと少し重なる部分もありますが、まず、さまざまなデータをご提示いただき、ここから次の結果に進まれるのだと思いますが、やはりリーマンショックの影響で下振れしている点は否めないと感じております。
一方で、後ほど私たちの意見として令和4年検証との比較について触れる際には、このリーマンショック期とコロナ期との比較という視点が出てくると思います。もちろん単純な比較は難しいとは思いますが、実際にデータを見ると、リーマンショック時のほうが下落幅が大きく見られることは確かだと感じております。
したがって、この論点に関して申し上げますと、消費動向の評価としては、やはり低所得世帯の動向が低く、特に下振れが顕著であるという点は重要だと思います。
また、全国消費実態調査についてですが、5年に1回実施される大規模かつ信頼性の高い調査である一方で、今回、第1・十分位を見るとかなり下がっていることが確認できます。家計調査との比較も行われていますが、家計調査はサンプル数が限られていますので、あくまで補足的な位置づけとし、基本的には全国消費実態調査を中心に評価していくのが適切ではないかと考えております。
 
 以上です。
○岩村委員長 ありがとうございます。
 経済学のことは疎いので、素人的な質問で申し訳ないのですが、11ページには、もう一つ下にも○があって、平成21年、2009年の全国消費実態調査に基づく夫婦子1人世帯(第1・十分位)の生活扶助相当支出額について、どのように評価すべきかという論点もございますが、今、若林先生がおっしゃったのは、これは全消によるものですけれども、そこの下振れをどう見るかという点については、家計調査との関連も考える必要があるという御趣旨でよろしいですか。
○若林委員 そういう趣旨です。結局、1つのものだけで見ることは難しいと思いますので、家計調査のほうも一緒に見ていくのが重要ではないかと。特に家計調査のほうは、かなり細かい頻度で聞くようなパネル調査ですので、そういう点では補足することができるのではないかなと思います。
○岩村委員長 そうすると、示唆としては、平成21年、2009年については、全消も家計調査もどんと落ち込んではいるのだけれども、しかし、頻度の高い家計調査のほうを見ると、やはり平成21年、2009年の落ち込みというのは、ちょっと特殊的要因によるという方向に考えることになるのでしょうか。結論誘導的で申し訳ないのですが、素人だとすぐそういうふうに考えてしまうのですが、そう簡単な話じゃないということなのかもしれない。ちょっとそこを、別に若林
先生だけを狙い撃ちにしてということではないので、ほかの先生方も含めて、御意見なりを教えていただけると大変ありがたいなと思います。
 村田先生、どうぞよろしくお願いします。
○村田委員 ありがとうございます。今の御質問のお答えになるか、例えば今日の資料の6ページを見て私が思いましたのは、これは2人以上の勤労者世帯ですが、前回から出ていますマイナス5.8ですね。家計調査でサンプルは450と限られるのですが、この数字がどのぐらい妥当性があるかという場合に、内訳を見ますと、「食料」は下がっていますが、この頃は物価も下がっておりましたので、「食料」が下がることにも違和感はないです。もちろん本当はもっと詳細に分析することがより精緻ではあるのですが、それは非常に時間がかかります。原油価格が前年に高騰し、この年はリーマンショックで下落していますので、「光熱・水道」も下がっている。
 それ以外の費目を見ても、多少のばらつきはありますが、何か特別に大きなノイズ的なものが見られるかというと、そういうことはない。「その他の消費支出」は、平時から変動の大きい費目で、そこが大きめに下に出ているが、それ以外の費目については、理解できるような数字になっている。2009年はかなり下振れし、リーマンショックの影響が大きく消費が冷えたのだろうということが想像できて、それが低所得層ではより大きくなっていることがある程度理解できるということです。
○岩村委員長 ありがとうございます。
 そのほかに何か今のところで経済の先生から追加して御発言があれば。
 それでは、太田先生、お願いします。
○太田委員 すみません。経済の専門家ではもちろんないのですが、この後の補正の仕方の御議論を聞く際にも前提となりますので、議事録に残すためだけの質問で申し訳ないのですが、全国消費実態調査と家計調査、それぞれの強みを一度整理しておいていただけませんでしょうか。私としては、家計調査というのは継続的にやっているので経年変化を見やすい、全国消費実態調査は非常に大規模で、その一回一回の調査の信頼性は高いのだけれども、5年に1回だから、いわば特異な年にやってしまうと、外れデータと言っては悪いのですけれども、ちょっと信頼性に欠ける部分が出るので、両方考慮するということかなと思ってはいるのですけれども、その部分をこの委員会としてどういう知見をベースに議論したかということで、どなたか議事録に残す形でまとめておいていただけるととても助かるというお願いの質問でございます。
○岩村委員長 ありがとうございます。
 それでは、村田先生、お願いします。
○村田委員 太田先生の御理解でほぼよろしいかと思うのですけれども、1点気になりましたのは、全国消費実態調査は5年に1度なので、そういうときにやってしまうと信頼性に欠けるとおっしゃられたのですが、これはむしろ、リーマンショックの厳しさを正しく示していたというふうに理解していただけるとよろしいかと思います。
○岩村委員長 ありがとうございます。
 太田先生、よろしいでしょうか。
○太田委員 はい。ありがとうございました。
○岩村委員長 ありがとうございます。私もよく分かりました。
 それでは、11ページのところは一通り議論した気がいたしますので、次に、31ページのほうに移りたいと思います。こちらについても、どうぞ、どなたからでも結構ですので、よろしくお願いいたします。こちらはより具体的にどうするのかという話になるので、この委員会の今後の進行との関係でも重要な点でもありますので、ぜひ御発言いただけると大変ありがたいと思います。よろしくお願いいたします。
 ぱっと見では、1番目の○は、今までの議論からすると、考慮する必要があるということになるのかと思いますが、特に経済の先生方、それでよろしいでいいでしょうか。
 若林先生、お願いします。
○若林委員 繰り返しになりますが、ただいま岩村先生がおっしゃった点は、私も考慮が必要だと考えております。これまで私たちが全体分布や上位所得層も含めて確認してきたところ、資料にある第1・十分位と第3・五分位だけでなく、全体を見渡しても第1・十分位の落ち込みが際立っていることは一貫して明らかです。したがって、この点は前提として適切に織り込むべきだと思います。
次に、2つ目の○についてです。どの方法が最適かという一点を競うよりも、今後も継続的に運用できる前提っで考えるのがよいと考えます。先ほど物価の例(私からお願いしたテレビの例)で示されたように、特定品目の変動が結果を大きく左右することがあり、その補正の在り方は重要な論点です。他方で、データ分析の立場からすれば、手法によって結果が上振れ・下振れするのは常に起こり得ます。だからこそ、各手法の一長一短を改めて整理し、そのうえで長く使える、すなわち、安定性・説明可能性・更新のしやすさを備えた方法を採用していくのが適切だと考えております。
 
 以上です。
○岩村委員長 ありがとうございます。
 では、別所先生、どうぞ。
○別所委員 若林先生のおっしゃったこと、1つのやり方を使って、それだけを根拠にするのはあまりよろしくないという点については同意します。そのときにどういう方法を使うかという話なのですが、令和4年検証というのが既に行われていて、令和4年検証では、コロナ禍の影響をどう取り込むか、考慮するかということで幾つか検討が行われています。令和4年検証では、その結果として、あまり考えなくてもいいよねという結論にはなっているのですが、その結論の部分まで従う必要は全くないのですが、令和4年検証で見たような指標を見ておくのがよいのではないかなと思います。
 というのも、前回、どなたの発言だったか忘れましたが、ここで何か新しい方法を導入すると、それが今後の検証の基準になる可能性があるといえばあるわけで、そうしたときに、検証方法までを考えるということが、この委員会のタスクではないのではないかと思いますので、そうすると、今のところのベストプラクティスとしての令和4年検証に沿った形で見直すのがいいのではないかと思います。
 以上です。
○岩村委員長 ありがとうございます。
 この委員会のミッションとの関係でいうと、今後使うという可能性もあるのかもしれないのですが、今後どういうやり方を取っていくかというのは、親の部会のほうのミッションであるというふうに私のほうでは理解しております。ただ、ここでの議論が親委員会の議論に何らかの示唆を与えるということは当然あるにしても、この委員会のミッションとしては、そういうことも考慮した上で考えるということでもいいのですが、今後も使いますということをここで決めてしまうという話ではないというふうに理解しております。
 なかなか難しいのだと思いますが、平成21年、2009年のときの下振れを特殊要因だと考えて、それをどう補正するかというのが、まさに31ページの2つ目の○のところの論点として、事務局のほうで幾つか示していただいているのですけれども、現時点で先生方、評価時点を考慮する方法とか、他の所得階層の消費動向を反映する方法とかについて、何かコメントなどいただければと思います。難しいのかもしれませんが、こっちよりはこっちのほうがいいよねと、あるいは2つを見た上で考えるのもいいのではないかとか、いろいろなものがあるし、これではなくて別のアイデアもあるでしょうというのでも、もちろん御示唆いただけるとありがたいのですが、その辺りは現時点での先生方の感触を少しお聞かせいただけると大変ありがたいなと思うのですけれども、いかがでございましょうか。
 別所先生、お願いします。
○別所委員 事務局のほうから24枚目に2つやり方が提案されていて、それに則って則試算が行われているのですが、差し当たってというか、個人的な感触としては、この2つがまずはあり得るのかなと思います。
 念のために、今回の25、26、27枚目ぐらいだと、生活扶助相当支出額の全体としてどう動くかということだけ見ているわけですけれども、ある程度その支出項目ごとにどう動いたかというのも併せて見て、標本の持つ誤差を考慮したらいいのではないかなと思います。特定の支出項目の影響をすごく受けているというのは避けたほうがいいのかなと思います。
○岩村委員長 ありがとうございます。
 家計調査ですと、先ほどの事務局の行っていただいた分析では、「その他の消費支出」というのが結構ウエイトウエイトが利いているということになっているので、例えばの話ですが、それを少し除いて考えてみるとかということになるのでしょうか、別所先生。
○別所委員 そういう意図です。
○岩村委員長 ありがとうございます。
 村田先生、お願いします。
○村田委員 ありがとうございます。
 24ページにまとめてくださっているのですが、私もこれは両方あり得ると思いますので、今の段階でどちらでやるということを考えるよりも、例えば25ページについてですと、今、別所先生がもう少し内訳も見たいとおっしゃられたのですが、私も、そういうことをしていただけるのでしたら、これはまだ2人以上の勤労者世帯ということで、公表で得られるデータということかと思うのですが、基準世帯になる夫婦2人子供1人世帯でも確認をしていただけると、どういう指標が適切かがより判断しやすくなるのではないかと思います。
○岩村委員長 ありがとうございます。
 太田先生、どうぞ。
○太田委員 ありがとうございます。
 ちょっと素人として経済の先生にお伺いしておきたいことがございます。今、評価時点を考慮する方法と、他の所得階層の消費動向を反映する方法の両方を、何となくお話を聞いていると、まだどっちかに決め打ちするのではなくて、両方で見てみるという感じなのですが、これは最終的にはどっちかにしないといけないタイプの方法なのですか。それとも両方併用することが最終的な補正においても可能な方法なのでしょうか。リーマンショックのときだけどんと下がっているのを、5年を見て補正するんだというのは、それはそれで1つ合理的に思えますし、同時に、水準均衡方式の基本的な発想が、一般低所得世帯との均衡を図ってそれを維持するということであったとすると、資料の下にある他の所得階層の消費動向を反映する方法も、それはそれで素直な発想に思えるのですが、組み合わせるというのは余りにも恣意的だから、最後はデータを見て、なおより適切だと思える方法を基本に据えることになるのか。それとも、組み合わせて両方併用する可能性、つまり、併用するという限りにおいては、第3の選択肢もあるということになるのか、そこら辺はどのように考えるべきなのかというのは、あらかじめお伺いしておきたいことです。
 裁量行使をやるときに、どうしても結果の妥当性というと露骨ですが、結果を見て考えないといけないという側面と、行き当たりばったりでは困るので、首尾一貫した考え方でやることが、それはそれなりの信頼性を保つということもあって、どういうふうに考えたらいいのか。2つから選べばよいのか、その2つの選択肢以外に、組み合わせるという3つ目の選択肢があるけれども、それも前提にしてどれを選んだのかというのは、ちょっと意識しておく必要があるのかなと思って、お伺いしたいということです。
 それから、大きな2点目として、今の話を聞いている限りは。
○千田社会・援護局保護課長補佐 太田先生、途中から音声が聞こえなくなってしまっています。2点目のところから御発言が聞こえなくなってしまっておりますが。
○岩村委員長 ちょっと1回止めましょう。休憩ということにして、太田先生との間で別の方法での連絡とかをお願いします。
○千田社会・援護局保護課長補佐 一旦中断させていただきます。
 
(休憩)
 
○岩村委員長 それでは、太田先生が復帰されましたので。
○千田社会・援護局保護課長補佐 太田先生、事務局でございますけれども、2点目の御質問のところから音声が聞こえなくなっておりましたので、申し訳ありませんけれども、2点目からもう一度。
○太田委員 こちらこそ、大変申し訳ありません。24ページの一番最後の○のところでよろしいですか。
 先ほどまでの経済の先生のお話を聞いていると、端的に言うと、生活扶助相当CPIを使うというこの方法はあまり追求しなくていいだろうという感触でよろしいでしょうか。実際に私も下級審の判決を見ていて、やはり難しいだろうなと。いろいろと伴って出てくるウエイトウエイトの問題とかを考えると難しいし、消費のデータがもう手に入っていることを考えると、やる必要はないのかなと思うのですけれども、その点はいかがでしょうか。以上になります。
○岩村委員長 ありがとうございます。
 今、特に経済系の先生方への御質問だったと思うのですが、どの先生からでも結構ですけれども、もし可能な範囲で御説明いただければ。
 若林先生、お願いいたします。
○若林委員 恐らくこの点については、後ほど村田先生からも補足があるかと思いますが、まず2つ目の論点のほうが説明しやすいので、そちらから申し上げます。
2つ目に関しては、ご指摘のとおり少し難しい点を含んでいます。物価の動向を検討していくことはもちろん重要ですが、特殊要因を考慮する場合の方法としては、ここに示されている2つの案をまず考えるのが現実的だと思います。
その上で、私個人の意見としては、第3の方法を採用するのではなく、第1か第2の方法を用いるのが適切ではないかと考えています。
ここで少しお伺いしたいのですが、私のようにデータを扱う立場からすると、実際に分析を進める中で、ある場面では評価時点を考慮する方法が妥当であったり、別の場面では世帯間の相対的な位置を重視する方法が適していたりと、状況に応じて使い分けることはよくあります。
しかし、今回のように生活保護を対象に継続的に検討していく場合には、やはり前回との整合性を重視する必要があると感じています。
したがって、単発の研究論文のように「今回の結果ではこの手法を使う」といった形であれば理解できますが、今後も継続的に同じ枠組みで検証を行うことを前提とするのであれば、ある程度は事前に「どの手法を基本とするのか」を明確にしておくほうが望ましいのではないかと考えています。
 
 以上です。
○岩村委員長 ありがとうございます。
 それでは、村田先生、お願いいたします。
○村田委員 まず、2点目について、今、若林先生からもお話がありましたが、今回、27ページで、何か大きなショックがあった場合、消費がより大きく落ち込むことを考慮して物価で判断するというのは、私は考え方としてはあり得るのではと思うのですが、ただ、今回の場合は、いろいろな、基準改定とか、大きなショックとか、非常に複雑な要因がありますので、そこについて解き明かしていくことはかなり難しいのではないかと思います。なので、消費のデータで全消と家計調査を活用して見ていくことが適切ではないかと考えています。
 1点目ですが、別所先生、若林先生は違う考え方もあるかもしれないし、私も今とりあえず思っている意見ですが、全消では落ち込んでいるということが分かったわけです。ただ、落ち込みの程度をどう判断するかというとき、先ほども見たように、例えば18ページに、前回の平成16年だと中位所得層対比が73.5%だったのに対し、69%と下がっているわけです。先ほど説明があったように、格差は拡大しているわけですね。でも、じゃあ単純にこれを4.5で補正すればいいかというと、そういうことよりは、やはりリーマンショックはかなり大きな出来事でしたし、家計調査もありますので、前後の動向なども参考にして判断していくと、より適切な評価ができるのではと考えております。
○岩村委員長 ありがとうございます。
 若林先生にちょっとお尋ねなのですが、先ほど御発言いただいたときに、特殊要因を考慮する場合に考えられる考慮方法の例ということで、評価時点を考慮する方法と、他の所得階層の消費動向を反映する方法が大きく2つあるのですが、それについて一長一短あるというふうにおっしゃられた気がするのですが、可能であれば、どういう一長一短があるのかを御説明いただけるとありがたいのですけれども、いかがでしょうか。
○若林委員 
2つ目の点についてですが、こちらは私のほうでも非常に気になるところです。
特に、ほかの所得階層の消費動向を反映する方法については、先ほどのリーマンショックの際の議論にもありましたように、所得階層によって動きにかなり大きな差が見られる状況です。そのため、「どの所得階層を基準として調整を行うのか」という点が重要になると思います。
資料には、「全年収階級の変動率が同程度に抑制されるように水準を補正する」と記されていますが、実際にそのような補正を行う場合、それが適切な方向に働くのか、あるいは逆に歪みを生む可能性がないのかという点について、私はやや懸念を持っています。
もっとも、では具体的にどうすべきかという点については、まだ自分の中で整理しきれておりません。ただし、少なくとも所得階層間で大きな差がある場合に、全年収階級を一律に調整の基準とすることが本当に妥当かどうかについては、慎重に考える必要があるのではないかと考えております。
○岩村委員長 ありがとうございます。
○若林委員 もう一点、家計調査について申し上げます。
先ほども触れましたが、家計調査については、今日ご提示いただいたデータからも明らかなように、世帯数の規模に課題があると感じております。例えば第1・十分位に関して8ページのデータを見てみますと、対象世帯が約500程度と比較的少ないため、どうしても異常値などの影響を受けやすいのではないかという点が気になります。
もっとも、そうした限界がある一方で、全国消費実態調査と家計調査はいずれも日本における消費関連データとして最も信頼性の高い調査だと考えています。その意味で、この2つのデータを併用して検討を進めていくという方向性は、やはり妥当であり的確な判断ではないかと思っております。
 
 以上です。
○岩村委員長 ありがとうございます。
 ほかにはいかがでしょうか。福祉分野の先生からでももちろん結構なのですが。
 ちょっとお考えいただいて、別所先生にお伺いしたいのですけれども、突然振って申し訳ないのですが、先ほど令和4年の検証方法を基本に考えるのがいいのではないかという御発言があったのですけれども、これは家計調査で全消データの後の動きを見ていくやり方がいいのではないかという御趣旨でしょうか。
○別所委員 そうです。具体的に令和4年のコロナ後検証で何をやったか、すぐ思い出せないのですが、たしか家計調査をいっぱい使っていたと思うのでということです。
 13ページの前回も出た表で、改定をするときに黄色と緑を比べるのですね。緑のほうがどんと大きくなったら、それに併せて黄色も上げていくというような方針で改定というか検証をするということだと思うのですけれども、今の緑のところを計算した結果、特異的に低いと。なので、これと一番左の黄色を比べるのは適切ではないよねと。では、緑のほうをもうちょっと適切な水準まで調整するにはどうしたらいいかという話をしていて、そのやり方は大きく2つあって、どっちがという話をしていると思うのですが、そうはいっても、さっき若林先生もおっしゃったように、もともと10分の1の人たちを対象にした調査ですから、サンプルサイズがあまり大きくないというのもあるので、データの取り方によって上振れしたり、下振れしたりするかもしれない。でも、結局データがないから、上振れしているのか、下振れしているのかは分からないわけです。となると、村田さんがおっしゃったみたいに、幾つかのやり方でというか、両方とも見て、ここら辺かなというのを決めるのがよろしいのではないかなということです。
○岩村委員長 ありがとうございます。
 ほかの分野で、永田先生あるいは新保先生、突然名前を挙げてすみませんが、もし何かコメントなどがあればですが。
 では、永田先生、お願いします。
○永田委員ありがとうございます。今日の議論はついていくのが精いっぱいで、本当に感想というかコメントになってしまいますが、平成21年の全消を使い直して、生活扶助相当額を整理していくという方向性で今やっていただいていると思いますが、別所先生からも御指摘があったように、令和4年の報告でも、同様の方法で水準均衡方式の検証が続けられていますので、そういった意味ではこれまでと連続性のある方法で当時の水準の高さを検証していくという方向性は、私は非常に理解できる点だなと思っています。
 一方で、当時、私の理解では、今皆さんが議論していたのは、格差が拡大していた、リーマンショックで下振れしていた、こういった特殊な状況があるので、その見方であるとか、それを考慮した補正方法を考えていかなければならないということで、先生方から御議論いただいた点、また、今日出された資料についても、内容については理解できたかなと思っています。やはりこれまでと同様に、消費ということが水準改定を見ていく際に重要なデータであるということも確認できたのではないかなと思っています。できれば今後、実際にこの厳しい状況下の実態を反映して、どのような補正を行うことができるのか、また、その結果、どういう結果が出てくるのか、そういったことについても見ていく必要があるのだろうと思っています。
 ただ、前回も申し上げたのですけれども、その意義を確認した上で、これが生活保護基準部会であれば、こういった検証方法、全体の検証であるとか、また補正方法の検証であるとか、そういったことが今後の改定のための教訓として重要だということが言えると思うのですけれども、最高裁判決の対応を検討しているこの検討会議で、平成25年の基準部会の報告書とは異なる判断を事後的にすることになるということになりますから、それができ得ることなのか、あるいは、法的な課題だけではなくて、基準部会で決めたこととは違う決定をすることになるわけですので、行政の一貫性とか、合意プロセスのようなことからして妥当性があるのかなど、法的課題以外の問題についても今後検討する必要があるのではないかなと感じました。
 以上です。
○岩村委員長 ありがとうございます。
 最後に御指摘いただいた点については、今後、法的な議論等をするところで検討させていただければと私自身も考えているところですので、またそのときによろしくお願いいたします。
 もう一つ資料もあるのですが、事務局のほうで何か今日の議論との関係で、もし先生方に聞いておきたい点等があればですが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 法学の先生方、何かございますでしょうか。
 では、太田先生、どうぞ。
○太田委員 1点だけすみません。経済の先生方から、両方併用して、両方の結果を見たいということであったと思います。それから、別所先生のお話の中では、経年変化を見るに当たっても、各消費品目の動きを見たいということであったと思います。そうすると、やはり今回出していただいた資料と方針だけで、えいとやるよりは、さらにその結果を見て、方法を考えるというプロセスがどうしても必要になると思うのですが、現在の議論状況で、どのぐらいの期間が必要だと経済の先生方は直感的にお考えになるのでしょうか。先ほど永田先生がおっしゃったことにも関わりますが、いわば判決の後始末をつけないといけない。要するに一から考えているわけではないので、我々はかなりの時間のプレッシャーの中にいるわけで、来年のこの時期になってようやくいい結果が出ましたで本当にいいのかというところを、私個人はかなり疑問に思うのですね。
 かといって、時間がないので乱暴にやろうというと、これまた大変なことになるということもありまして、経済の先生からお考えになって、信頼できるデータの解析と補正方法が得られるのに、今の状況だとどれぐらいの時間を要するとお考えになりますでしょうか。もしよろしければ、ちょっと感触をお聞かせいただければ幸いです。難しければ、それをもって感触といたしますけれども、よろしければお願いいたします。
○岩村委員長 なかなか経済の先生もお答えしにくいのかなと思いますが、若林先生、ありがとうございます。よろしくお願いします。
○若林委員 この点は、どちらを先に進めるかという順序の問題になると思います。先ほど、議論自体は後の段階になるとのお話がありましたが、私の感触としては、やろうと思えば時間をかけてさまざまな分析を行うことは可能だと思います。
ただ一方で、現実的には「どの程度の時間で」「どの範囲の材料を使って」何ができるのかを整理することが重要であり、今ある条件の中で実施可能なことを明確にするのが現段階での課題ではないかと感じております。
また、これはあくまで最終的には基準部会で判断されることだと思いますが、今回の検討の出発点には、裁判の結果を踏まえて「なぜ敗訴したのか」「今後どのように対応していくべきか」という問題意識があると理解しております。
そう考えると、限られた期間の中で、現時点で入手可能なデータを用いて何がどこまでできるかを具体的に整理していくことが、今回の会議の目的にかなうのではないかと思っております。
○岩村委員長 ありがとうございます。
 私的には、その点はもう事務局に汗をかいていただくしかないのかなと思いますので、経済の先生方と密に連絡を取りつつ、データの収集と分析を、なるべく可能な限り迅速にやっていただくようにお願いをいたします。
 よろしければ、資料1についての議論はこの辺りにさせていただきたいと思います。
 続けて、もう一つ、事務局のほうで資料を用意していただいておりますので、資料2についての説明をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○千田社会・援護局保護課長補佐 事務局、社会・援護局保護課の千田でございます。
 私のほうから資料2「これまで議論された論点と今後の論点(案)」について御説明をさせていただきます。
 資料も投影させていただいておりますけれども、まず1ページを御覧ください。1ページにつきましては、第4回までの専門委員会において先生方から御議論いただいた論点について、事務局として整理を行った資料となってございます。大きく3つの柱で整理をさせていただいております。
 まず1つ目でございますが、今回の最高裁判決の趣旨の受け止めと、それから、判決の法的効果及び法的効果を踏まえた対応の在り方についてでございます。○が4つございまして、1つ目の○と2つ目の○でございますけれども、判決の既判力、形成力、拘束力、反復禁止効といったような法的効果が、今回の最高裁判決によって、どのような範囲に、どのように及んで、それらの効果を踏まえて、当時の基準改定にどのように対応すべきかといった点。それから、3つ目及び4つ目の○でございますけれども、こうした判決の法的効果と、生活保護法8条2項との関係性、あるいはそもそも生活保護基準の遡及的な改定が許容されるのかといった点について御議論をいただきました。
 次に2つ目でございますけれども、平成25年の生活扶助基準改定に関して、判決を踏まえて専門的知見に基づき確認すべき論点でございます。まず、最初の2つにございますけれども、物価と最低限度の消費水準との関係性や、従来の水準均衡方式による改定との連続性や整合性等。それから、一般国民と一般低所得世帯の概念の変遷といったような生活扶助基準改定における基本的な前提に加えまして、○の3つ目にございますけれども、仮に当時の基準の水準を再検討するとした場合における必要な資料やデータといった点について御議論をいただいてまいりました。
 最後の3つ目でございますけれども、その他の論点及び御意見として、今後、仮に追加給付を行うとした場合において、既に死亡している原告、あるいは保護を途中から脱却した方、それから外国人の取扱いも論点とすべきではないかといった御意見であるとか、福祉事務所における実現可能なオペレーション(支給事務)を今のうちから考えておく必要があるのではないかといった御意見もございました。
 なお、これらの論点ごとの実際の御議論の内容につきましては、3ページ以降に参考資料としてつけてございますので、御参照いただきますようにお願いいたします。
 続いて、2ページ目を御覧ください。2ページ目は今後の論点(案)ということでございます。2ページ目に記載しております内容につきましては、これまでの本専門委員会での議論も踏まえまして、次回、第6回目以降の専門委員会で議論すべきと考えられる論点について、事務局としての案を示したものでございますが、ここに記載のある内容も含めまして、今後、本専門委員会で議論をすべき論点についてどのように考えるか、今日の時点で御意見がございましたら、御発言いただきますようにお願いをいたします。
 以下、事務局案につきまして簡単に説明いたします。
 まず、柱の1つ目でございますが、判決の趣旨・内容及びこれまでの議論を踏まえた今後の対応の在り方でございます。(1)、(2)と分けておりまして、まず(1)でございますけれども、判決の趣旨・内容に加えまして、本日の御議論も含めて、これまでいただいた御議論を踏まえまして、当時の生活扶助基準改定について、再度、改めてゆがみ調整及び高さ調整を実施することについてどのように考えるか、そうしたことについて、資料記載のマル1からマル4までの要素を考慮いただきながら、改めて御議論いただく必要があると考えております。
 この考慮要素4点について簡単に申し上げますと、まずマル1につきましては、ポツポツが3つございますけれども、1つ目のポツポツのゆがみ調整及び2分の1処理を行う場合と、ポツポツの2つ目及び3つ目でございますけれども、高さ調整について、消費の実態に基づいて水準調整を行う場合と、あるいは物価変動率に基づいて水準調整を行う場合、それぞれにおいて、判決の法的効果でありますとか、これまで御議論がありましたような紛争の一回的解決との関係性をどのように整理していくのか。また、そうした方法によって再改定をする場合の法的根拠を、生活保護法のどの規定に求めるかという点でございます。
 加えまして、マル2として、仮に平成25年当時の生活扶助基準を再度改定するとした場合に、当該改定を遡及的に適用することについてどう考えるかという点。
 それから、マル3及びマル4といたしまして、遡及的に基準を適用する場合も含めまして、仮に平成25年当時の基準を今再改定するといった場合に、マル3でございますけれども、その時々の最低生活を保障するという生活保護法の理念、あるいはそうした理念に立脚する実際の実務、それからマル4でございますけれども、参考人ヒアリングでも議論がありましたが、憲法や法の一般原則との関係性をどのように整理するかといった点が具体的な考慮要素になるものと考えてございます。
 今申し上げました(1)のような検討を踏まえまして、(2)でございますけれども、仮にゆがみ調整及び高さ調整を再度実施する場合に、再改定の在り方、具体的にはゆがみ調整の2分の1処理の取扱いですとか、あるいは高さ調整を行う場合には、その指標や水準の在り方につきまして、本日、前半の議論までの経済指標の議論も踏まえまして、改めて次回以降御議論をいただきたいと考えております。
 続いて、2の柱でございますが、仮に平成25年生活扶助基準改定を再度実施する場合の各種論点でございます。今申し上げました1に掲げる論点の議論を前提といたしまして、検討が必要ではないかと思われる論点をマル1からマル4で列挙させていただいております。
 マル1につきましては、基準の中に含まれる各種加算の取扱いをどうするかということで、例えば障害者加算といったように、平成25年以降のデフレ調整が適用されているような加算が中にはございますけれども、仮にその高さ調整を再度実施する場合に、その内容をこうした加算等のどの範囲まで、どの期間適用すべきかといったような点。
 それから、マル2でございますけれども、再検討後の基準を適用する範囲。例えばこれまで御意見のありましたような死者であったり、あるいは既に保護を脱却している方に加えて、改定後に被保護者となった方や、現在国内にいない方の取扱いなどをどうするかという点。
 マル3としましては、平成25年当時の基準改定によって保護対象外となった方の取扱いや、あるいは生活扶助基準の見直しに伴い影響が生ずる他制度の取扱いをどうするか。
 最後にマル4でございますが、判決により処分が取り消された原告の権利と消滅時効との関係について、その法的根拠や起算点などをどのように整理するか。こうした点について議論が必要になるものと考えてございます。
 こうした論点につきまして、次回以降、事務局のほうで整理を行った資料を用意させていただいた上で、個々の内容につきましては、次回以降御議論をいただきたいと考えておりますけれども、本日の時点で、ここに掲げられているようなこと以外に、もしほかにも議論が必要ではないかと考える論点、その他御意見がございましたら、本日御発言を頂戴したいというふうにお願いいたします。
 以上で、資料2につきまして、事務局からの説明を終わります。よろしくお願いいたします。
○岩村委員長 ありがとうございました。
 それでは、ただいま事務局から説明がありました資料2、特に2ページについてということになると思いますけれども、これにつきまして御意見、御質問がありましたら、委員の皆様から御発言いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 新保委員、どうぞ。
○新保委員 ありがとうございます。1ページの3の2つ目の○、一番最後のところですが、実現可能なオペレーション(支給事務)については、2ページに示されている今回の論点案には含まれておりません。しかしながら、自治体、福祉事務所、そして当事者、関係者の皆様が、このことも含めて本専門委員会の議論を見守っておられることを承知しております。この件につきましては、自治体からのヒアリングや協議の場などをつくっていただいた上で、早急に検討を進めていただきますようお願いいたします。
 以上です。
○岩村委員長 ありがとうございます。
 この点については、この委員会そのもので議論する内容ではないと思っていまして、他方で、実際にもし本当に追加支給するといったときには、おっしゃるとおりかなり重要な問題なので、事務局のほうでもその場合を想定して既に御検討いただいていると思いますから、可能な範囲で少し御説明いただければと思います。
○竹内社会・援護局保護課長 保護課長でございます。
 今、新保委員から、自治体のほうの職員の方々もこの専門委員会の議論の行方を非常に注視されていて、どうなっていくのだろうかと非常に心配、また御懸念をされているということは、私どもも実はもう既に自治体の団体さんのほうからも様々な御要望なりをいただいている状況でございますので、十分に認識をしているつもりでございます。もちろんこの専門委員会の議論を踏まえながらということではございますけれども、自治体のほうとは今後も密にコミュニケーションを取りながら、実際に何か追加の事務作業が発生するということであれば、どういう事務フローでやっていったらいいのかといったような点については、よくよく自治体のほうと協議、調整をさせていただきながら、進めさせていただきたいと思っております。
 この場で支給事務の詳細について議論していただくというのは、ちょっとなじまないかと思いますので、また別の場をセッティングして、そうした対応をしていきたいと思っております。
○岩村委員長 よろしいでしょうか。ありがとうございます。
 そのほかいかがでしょうか。では、太田先生、どうぞ。
○太田委員 今までの議論を聞いていて、多分大丈夫だろうとは思っているのですが、1点、論点が出てくるかもしれないということで、この場で議事録に残すためだけに言っておきます。資料1の前回も出てきた13ページの表を見て、単純に計算すると、実はゆがみ調整、デフレ調整をした額よりもさらに下であるというデータが出てきて、今までの話を聞いていると、多分このデータをそのまま信用するわけにはいかないということになってきているので、安心はしているのですが、このときの扶助基準額、実際に改定した扶助基準額よりもさらに下の額にするというのは、不利益変更の禁止、なかんずく行政不服審査法が定める不利益変更禁止の趣旨に触れるだろうという気がするので、その点で法理論的に下げられる下限は決まるという側面があるのではないか、そこは場合によっては論点として出てくるのではないかということを指摘しておきたいと思います。
 以上です。
○岩村委員長 御指摘ありがとうございます。
 そのほかはいかがでしょうか。特段ございませんでしょうか。
 それでは、資料2についても、この辺りで終了とさせていただきたいと思います。
 本日こちらで用意した議題は以上になります。先生方、本当にお忙しい中をありがとうございました。今日は、とりわけ経済学の先生方から非常に貴重な御意見あるいは御示唆を頂戴いたしまして、ありがとうございました。
 事務局におかれましては、今日の議論で、高さ調整を行うとした場合にどういう方法があるか、具体的には全消の結果に対してそれをどう補正するかということについての考え方を示していただいて、先生方により必要なデータ、あるいは分析等についても御示唆、御指摘をいただいたところでございます。それをまた事務局のほうで精査いただいて、資料の収集と分析を進めて実際に試算していただいて、それを基に次回以降、また議論を深められればと思っております。
 他方で、先ほど議論の中でもありましたように、のんびりやっているわけにはいかないというところもありますので、事務局は大変御苦労さまではございますけれども、ぜひよろしくお願いをいたしたいと思います。
 それでは、以上で今日は終了ということにさせていただきたいと思います。
 次回の開催につきまして、事務局から説明いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○千田社会・援護局保護課長補佐 事務局でございます。
 本日いただいた御指摘を踏まえて、資料を準備させていただきつつ、次回の日程については、また改めて後日、事務局のほうから委員の先生方に御連絡をさしあげたいと思います。よろしくお願いいたします。
○岩村委員長 ありがとうございます。
 それでは、本日の審議はここまでということにさせていただきたいと思います。
 委員の先生方、本日はお忙しい中をお集まりいただきまして、かつまた貴重な御意見、御示唆を頂戴しまして、大変ありがとうございました。
 それでは、散会といたします。ありがとうございました。