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2025年9月4日 第202回労働政策審議会労働条件分科会 議事録
労働基準局労働条件政策課
日時
令和7年9月4日(木) 10:00~12:00
場所
厚生労働省専用第22~24会議室
(東京都千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎5号館18階)
(東京都千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎5号館18階)
出席者
- 公益代表委員
- 安藤委員、川田委員、神吉委員、黒田委員、首藤委員、原委員、山川委員
- 労働者代表委員
- 亀田委員、櫻田委員、椎木委員、冨髙委員、春川委員、古川委員、松田委員
- 使用者代表委員
- 鬼村委員、佐久間委員、鈴木委員、田中委員、鳥澤委員、兵藤委員、松永委員
- 事務局
- 岸本労働基準局長、尾田審議官(労働条件政策、働き方改革担当)、松下総務課長、川口労働条件政策課長、田邉労働条件確保改善対策室長、中島労働条件政策課長補佐、来嶋企画調整専門官、下田労働条件企画専門官
議題
労働基準関係法制について
議事
○山川分科会長 おはようございます。
それでは、定刻になりましたので、ただいまから、第202回「労働政策審議会労働条件分科会」を開催いたします。
本日の分科会は会場からの御参加とオンライン御参加の双方で開催とさせていただいております。
では、議事に入ります前に、分科会委員の交代がございましたので、事務局から御紹介をお願いいたします。
○労働条件企画専門官 事務局でございます。本分科会委員の交代につきまして御報告いたします。
お手元の参考資料№1として、労働条件分科会委員名簿を配付しております。労働者代表の水野和人委員が御退任され、情報産業労働組合連合会書記長、春川徹委員に御就任いただいております。
事務局からは以上でございます。
○山川分科会長 どうぞよろしくお願いいたします。
本日の委員の御出欠ですが、労働者代表の藤川大輔委員、使用者代表の佐藤晴子委員、公益代表の水島郁子委員が御欠席と伺っております。
では、カメラ撮りがございましたら、ここまでとさせていただきます。
本日の議事に入ります。議題(1)は、「労働基準関係法制について」でございます。この議題につきましては、資料として資料№1「各側委員からの主な意見の整理(案)」、資料№「労働時間法制の具体的課題について④」の2つの資料を準備していただいております。こちらの資料№1は論点ごとに整理された御意見につきまして前回の分科会での御議論を追記いただいたものでありまして、本日も引き続き御議論いただければと思います。その際、資料№2につきまして、前回の分科会で裁量労働制に関するデータを追加するようにという委員からのお求めがありましたので、資料も追加いただいております。こちらも御参照いただければと思います。
それでは、まず資料№1、№2について事務局から御説明をお願いいたします。
○労働条件確保改善対策室長 事務局でございます。資料1の御説明でございます。
資料1につきましては、前回8月19日の分科会で御議論いただきました各側委員からの主な意見の整理(案)について、前回の御議論を踏まえまして追記をしたものでございます。具体的には、今回追記した箇所につきましては下線を引いてございます。
具体的に変更しました箇所をざっと申し上げますと、3ページ目、4ページ目の労使コミュニケーションの在り方、7ページ目、8ページ目の時間外・休日労働の上限規制、10ページ目のテレワーク等の柔軟な働き方、それから、少し飛びますけれども、19ページ目の年次有給休暇(その他)、20ページ、21ページ目の割増賃金規制、21ページ目の副業・兼業、22ページ目、23ページ目の裁量労働制、24ページ目の賃金請求権等の消滅時効、最後に、25ページ目のその他ということになります。
なお、この資料につきましては前回の分科会と同様でございまして、論点ごとに、各側委員の御意見がどのような形で近しかったり、対立したりしているのかという点を事務局にて、できるだけ簡潔に分かりやすくなるよう整理したものという位置づけでございます。
続きまして、資料2の御説明でございます。資料2につきましては、先ほど分科会長より御説明いただきましたけれども、前回8月19日の分科会でも同じタイトルの資料を提出させていただきましたが、当日、委員から御要望のありました裁量労働制についての追加資料を16ページ目以降にお付けしてございます。その上で、16ページ目から御説明をさせていただきます。
16ページ目から19ページ目まで、労働者の裁量の程度についての同じ構成のスライドが続きます。具体的には資料の一番下のところに凡例を示してございますけれども、大まかに申し上げますと、ピンク色の系統のものは上司が決めている、緑色の系統のものは自分が決めていると回答した結果となってございます。その上で、16ページでございますけれども、こちらは、具体的な仕事の内容・量についての裁量の程度についてのグラフということでございます。上の専門型につきましては、適用労働者のグラフを御覧いただきますと、緑色の「上司に相談の上、自分が決めている」、または「上司に相談せず、自分が決めている」の合計が63.6%となってございます。また、ピンク色の「自分に相談なく、上司(又は社内の決まり)が決めている」、または「自分に相談の上、上司が決めている」の合計が27.5%となってございます。
続きまして、下の企画型におきましては、同じく適用労働者のグラフでございますけれども、緑色の「上司に相談の上、自分が決めている」、または「上司に相談せず、自分が決めている」の合計が60.4%となってございます。また、ピンク色の「自分に相談なく、上司(又は社内の決まり)が決めている」、または「自分に相談の上、上司が決めている」の合計が32.1%となってございます。
17ページ目をお開きいただければと思います。こちらは、進捗報告の頻度についての裁量の程度についてのグラフとなってございます。こちらも、適用労働者のグラフを御覧いただければと思いますけれども、上の専門型につきましては、緑色の「上司に相談の上、自分が決めている」、または「上司に相談せず、自分が決めている」の合計が70.3%となってございます。また、ピンク色の「自分に相談なく、上司(又は社内の決まり)が決めている」、または「自分に相談の上、上司が決めている」の合計が20.4%となってございます。
下の企画型におきましては、同じく適用労働者のグラフでございますが、緑色の「上司に相談の上、自分が決めている」、または「上司に相談せず、自分が決めている」の合計が77.6%となってございます。また、ピンク色の「自分に相談なく、上司(又は社内の決まり)が決めている」、または「自分に相談の上、上司が決めている」の合計が16.1%となってございます。
18ページ目を御覧いただければと思います。こちらは、業務の遂行方法、時間配分などについての裁量の程度についてでございます。こちらも、適用労働者のグラフを御覧いただきますと、上の専門型につきましては、緑色の「上司に相談の上、自分が決めている」、または「上司に相談せず、自分が決めている」の合計が88.7%となってございます。また、ピンク色の「自分に相談なく、上司(又は社内の決まり)が決めている」、または「自分に相談の上、上司が決めている」の合計が5.7%となってございます。
下の企画型におきましては、同じく適用労働者のグラフでございますが、緑色の「上司に相談の上、自分が決めている」、または「上司に相談せず、自分が決めている」の合計が90.6%となってございます。また、ピンク色の「自分に相談なく、上司(又は社内の決まり)が決めている」、または「自分に相談の上、上司が決めている」の合計が5.0%となってございます。
続きまして、19ページ目を御覧いただければと思います。こちらは、出退勤時間についての裁量の程度についてでございます。こちらも、適用労働者のグラフを御覧いただきますと、上の専門型につきましては、緑色の「上司に相談の上、自分が決めている」、または「上司に相談せず、自分が決めている」の合計が85.9%となってございます。また、ピンク色の「自分に相談なく、上司(又は社内の決まり)が決めている」、または「自分に相談の上、上司が決めている」の合計が7.6%となってございます。
下の企画型におきましては、同じく適用労働者のグラフでございますが、緑色の「上司に相談せず、自分が決めている」、または「上司に相談の上、自分が決めている」の合計が89.1%となってございます。また、ピンク色の「自分に相談なく、上司(又は社内の決まり)が決めている」、または「自分に相談の上、上司が決めている」の合計が6.0%となってございます。
続きまして、20ページ目を御覧ください。こちらは、事業場の労働時間の状況の把握方法についてのグラフでございます。それぞれ適用事業場のグラフを御覧いただきますと、上の専門型では、紺色の「タイムカード・ICカード」とする事業場が最も多く、次いでピンク色の「自己申告」が多くなってございます。
下の企画型におきましても、適用事業場のグラフを御覧いただきますと、こちらは、紅色の「PCのログイン・ログアウト」が最も多く、次いで、紺色の「タイムカード・ICカード」が多くなってございます。
続きまして、21ページ目を御覧ください。こちらは、労働者の昨年、具体的には平成30年の年収についてのグラフでございます。適用労働者のグラフを御覧いただきますと、上の専門型では、薄紫色の「700万円以上800万円未満」が最も多く、次いで、隣の黄色の「600万円以上700万円未満」が多くなってございます。
下の企画型の適用労働者のグラフを御覧いただきますと、薄紫色の「700万円以上800万円未満」が最も多く、次いで、2つございますが、濃いピンク色の「800万円以上900万円未満」と赤色の「1000万円以上1250万円未満」が多くなってございます。
続きまして、22ページ目を御覧ください。こちらは、みなし労働時間についてのグラフでございます。左のグラフが一日のみなし労働時間の認知状況についてでございますが、総数のところを御覧いただきますと、59.4%がみなし労働時間を分かる、38.1%が分からないと回答してございます。
次に、右のグラフが一日の平均実労働時間数と平均みなし労働時間数についてでございます。上の青色の表が適用事業場調査、下の緑色の表が適用労働者調査でございます。
まず、上の適用事業場調査について、外れ値を除いた欄の「計」の箇所を御覧いただきますと、平均実労働時間数は8時間46分、平均みなし労働時間数は8時間14分となってございます。下の適用労働者調査におきましても、同様に、外れ値を除いた欄の「計」の箇所を御覧いただきますと、平均実労働時間が9時間3分、平均みなし労働時間数が8時間14分となってございます。
続きまして、23ページ目を御覧いただければと思います。ここから2ページにわたって年収階級別の裁量労働制適用の満足度についてのグラフが続きます。まず、23ページ目でございますけれども、こちらは専門型についてということで、年収が高いほど裁量労働制の適用について「満足している」、または「やや満足している」と答える割合が高い傾向になってございます。
続きまして、24ページ目は企画型に関する調査結果ということでございます。こちらも同様でございまして、年収が高いほど裁量労働制の適用について「満足している」、または「やや満足している」と答えた割合が高い傾向となってございます。
続きまして、25ページ目を御覧いただければと思います。こちらは、労働者の業務従事年数・現在の勤め先での業務従事年数についてということでございます。左のグラフが以前の勤め先での業務従事年数を含む業務従事年数でありまして、右のグラフが現在の勤め先での業務従事年数となってございます。それぞれ適用労働者のグラフを御覧いただきますと、上の専門型、下の企画型のいずれにおきましても、ピンク色の「5年以上10年未満」、次いで薄緑色の「10年以上15年未満」の区分が多くなっているという結果となってございます。
最後に、26ページ目を御覧ください。こちらは、労使委員会の実効性が労働時間に与える影響についてのグラフとなってございます。上のグラフでは、労使委員会が十分に機能していると思うかという質問に対しまして、凡例は右側に示しておりますけれども、緑色の「そう思う」、それから、薄緑色の「どちらかと言えばそう思う」と回答した企画型の適用労働者がそれぞれ24.1%、28.2%となってございます。
その上で、下のグラフでございますけれども、これらの回答を労使委員会の実効性があるとまとめまして、また、それ以外の回答を労使委員会の実効性がないとまとめた上で、企画型の適用労働者について、労使委員会の実効性が左の一週間当たりの労働時間が60時間以上、または右の50時間以上となる確率に与える影響があるかどうかについて回帰分析を行ったものとなってございます。分析としましては、労使委員会の実効性がある場合には一週間当たりの労働時間が60時間以上となる確率が半分以上低くなり、また、50時間以上となる確率も低くなっているという結果となってございます。
資料の御説明は以上でございます。
○山川分科会長 ありがとうございました。
それでは、各側委員におかれましては、ただいまの資料№1、これは前回の資料に前回の御議論を踏まえて追記いただいたものです。また、資料の内容の追加もございました資料№2につきましていただいた説明を踏まえて、資料№1の各側の御意見につきまして改めて趣旨を補足したいとか、修正したい、あるいはこういう意見も追加してほしいということがございましたら、御意見をお願いいたします。オンライン参加の皆様におかれましては、御希望があります場合には、これまでどおりチャット機能でお知らせいただきたいと思います。
御意見、あるいは御質問はございますでしょうか。
鈴木委員、お願いします。
○鈴木委員 鈴木でございます。御指名ありがとうございます。
これまでの分科会におきます使用者側委員からの発言内容から、ぜひとも資料1に追加いただきたい点が2点、また、強調したい補足コメントが1点ございます。
まず、4ページ以降の労使コミュニケーションの在り方の欄に、第198回で代替調整はあくまでも法定要件の下で認められるものであり、その全体をもって最低基準であると捉えるべきという発言をさせていただきましたので、その内容を追記いただきたいと思っいます。
次に、17ページ、年次有給休暇(時季指定義務)についてです。使用者側意見の2点目について、第199回で発言いたしました、年休時季指定義務の趣旨は年休の趣旨と異なり過重労働の防止が目的であることから、育児休業明けの方等にそのまま適用することは適当ではないという内容、つまり案分比例を主張する理由を追記いただければと思います。
最後に、勤務間インターバル制度、連続休日について申し上げたいと思います。業種・業態や突発事故によりまして、やむを得ず一時的に連続勤務となるような実態が現場にはございます。また、勤務間インターバル制度を既に導入している企業では、労使の話合いによりインターバル時間や例外事由、例外職種、代替措置、さらに例えば深夜時間帯やインターバル時間に抵触する回数が同じ月に何回以上当てはまるということをもって、このインターバル制度を適用するといった運用をされているところもございます。そのような適用条件など、自社の実態に適した制度を設け、運用がされておりますので、例えば原則を11時間とするといった画一的な規制には反対することを強調させていただきたいと思います。
企業団体からは様々な懸念の声が私ども経団連事務局に寄せられております。例えば放送業界からは、報道はいつどこで何が起こるか分からない中、深夜に報道すべき事件が発生することもあります。また、オリンピックや世界陸上など、世界的なイベントは数週間から1か月程度にわたって開催がされ、加えて、配付される取材パスの枚数にも制限があり、特定のスタッフが集中的に業務遂行せざるを得ないケースがあると聞いております。こうしたケースに限らず、これまでも申し上げてまいりましたが、システムダウン、リコール、深夜の国際会議など、対応に迫られる業務は数多くあると承知をしております。業種の例外、事業の例外を認めていただくことも含め、柔軟性を保つことができるのか、本当に現場の実態を十分踏まえたものになるか、これから慎重に検討する必要があると思っています。
私からは以上でございます。
○山川分科会長 ありがとうございました。
それでは、佐久間委員、どうぞ。
○佐久間委員 ありがとうございます。私からも3点ほど述べさせていただきたいと思います。
まず、資料№1の労働基準法における労働者についてのところですけれども、これは今、労働基準法における労働者に関する研究会というのも開催されて、判例等々からの分析と検討が進められているところですが、やはり「労働者性」を明確にしていくことが必要だと思います。その判断基準について、現在もチェックリスト等はあるのですが、それをブラッシュアップして、このようになればこれは労働者性が強く、労働者とみなしたほうがよいのではないか、ということを明確にしていくということと、相談窓口について労働者性の判断に迷って問合せにきた方たちが、実際にまた相談したことで、解決されずにさらに判断に迷ってしまうのでは、なかなか結論が出ず、最後は裁判だということになってしまいますので、その判断基準と相談窓口等の体制をさらに充実させていく点をお願いしたいと考えます。
それから、二点目は副業・兼業の関係でございます。現在、副業・兼業を行う労働者の労働時間管理というのは、こちらの意見書にもあるのですけれども、本業における労働時間と副業・兼業における労働時間とを通算するということになっています。本業で8時間労働を終え、副業・兼業先で1時間働いた場合には、その1時間分を時間外労働としてみなされ、副業・兼業先はその割増賃金を支払うということになります。また、副業・兼業が自営業やフリーランスの場合には労働時間の通算の対象外であり、本業の事業者も副業・兼業事業者も労働時間管理が煩雑になるということは、現状やむを得ない状況になっていると思います。中小企業、そして小規模事業者はその複雑な労働時間管理に対応しなければならないということから、必ずしも雇用の促進や副業・兼業の促進ということにはなかなかつながらないのではないかと思います。ついては労働基準法の労働時間の通算規定を改正し、労使の合意がある場合には、副業・兼業労働者の労働時間管理は企業ごととしていただきたいと考えます。
それと同様の趣旨なのですけれども、三点目として、今、働き方改革の5年後の見直し等々も踏まえまして、こういう労働基準法の改正というか見直しということを検討しているわけですが、労働者にとっては、より働きたいと考える労働者の柔軟な雇用というのを促進し、中小企業の人手不足の解消を図るということもやれるのではないかなと思っています。所定外の労働時間に制限がある中で収入増加や自己実現を図りたいという意思から、より働きたいと考える労働者も存在しています。この、”より働きたい”という意味には、自分のペースで働きたいとか、それから仕事を自分なりの完成度を高めたい、ということで、もちろんこれは職種によって異なると思うのですけれども、そういう方たちもいらっしゃると思います。中小企業・小規模事業者にもこういう働きたいという労働者がいる中で、柔軟で多様な働き方というのを促進する上でも制度改正、これがすぐ裁量労働の適用拡大につながるかどうか分かりませんけれども、それも一つの見方としてあるのではないでしょうか。制度改正、そして支援策の創設によってより働きやすい環境等をつくっていただきたいと考えます。
以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
オンラインで兵藤委員から御発言の希望があります。兵藤委員、お願いします。
○兵藤委員 ありがとうございます。兵藤でございます。
私からは、資料1に追加していただきたい点といたしまして、年次有給休暇に関連して発言させていただきたいと思います。
資料3の52ページにあります有給の関連で、以前に労側委員から有給での病気休暇などの新設などにより休暇の選択肢を増やしていく必要性があるという内容の御発言があったかと思っております。まず、従業員の健康に配慮し、法定基準を超えて病気休暇制度を導入している企業もございます。厚生労働省の調査では約2割の企業が病気休暇制度を整備しております。ただし、労働基準法第1条にあるとおり、労働条件の最低基準を罰則付で定める法律であり、全ての企業に一律の義務を課すことを考える場合には、法律の性質を踏まえた慎重な検討が必要です。
私傷病による休暇は従業員個人の健康状態に起因するものであり、その対応の在り方というものは育児や介護との両立支援以上に多様でありますので、各社の判断に委ねることがふさわしいのではないかと考えております。全ての企業に一律に罰則付で義務づけることは、最低基準法である労働基準法の趣旨からも適切ではないのではないかと考えております。
もちろん私傷病に限らず、広くワーク・ライフ・バランスの取組は重要です。法制面では育児・介護休業法や仕事との病気両立支援の企業努力義務を設けた労働施策総合推進法など、整備が進んでおります。今後、官民が連携して取り組んでいくことが重要であり、そのためにも企業の自主的な取組を後押しする政策の充実を図るべきと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
私からは以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。
続けて、オンラインで御発言希望の田中委員、お願いいたします。
○田中委員 御指名ありがとうございます。田中です。
私から資料1に追加いただきたいということで、資料3の32ページにもございます、テレワークの柔軟な働き方に関連する事業場外みなし労働時間制の活用について発言をいたします。
以前、労側委員の方から事業場外みなし労働時間制の会社不利益の見直しや運用実態について是正を求める御発言がありました。平成26年の阪急トラベルサポート事件の最高裁判例では、労働者が携帯電話を持ち歩いていたとしても、業務の大半を単独で移動したり対応しているということで、使用者の具体的指示に逐一従っていたわけではなかったということを考慮して算定困難と判断をしております。携帯電話を所持していることだけで労働時間の算定について判断されるのではなく、業務の性質や内容、その遂行の態様など、様々な要件を考慮して判事をしているというところです。
また、令和6年の共同組合グローブ事件の最高裁判決においても、同様の判断枠組みを取っております。
テレワークガイドラインでは、2つの要件を満たす場合に算定困難性が認められるとしています。1つ目が、情報通信機器が使用者の指示により常時通信可能な状態に置くこととされていないこと、2つ目が、随時使用者の具体的指示に基づいて業務を行っていないことです。また、1つ目の要件について、労働者がパソコンなどから自らの意思で離れることができ、応答のタイミングを労働者が判断できるような場合も含まれるとされています。したがいまして、事業場外のみなし労働時間制の適正運用を図ることは当然でありますが、最高裁判決の判断枠組みを超えて厳格な解釈を示すということには反対をいたします。
私からは以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
続きまして、オンラインで鳥澤委員が御発言希望です。お願いします。
○鳥澤委員 鳥澤です。ご指名ありがとうございます。
資料の取りまとめ及び御説明をありがとうございます。私からは3点ほど意見を述べさせていただきたいと思います。
まず1点目ですが、勤務間インターバルについてです。現時点でも導入率が低位であり、調査でも超過勤務の機会が少なく制度を導入する必要性を感じないためと回答した企業が57.6%と、実態としては必要性を感じない企業が多い状況です。時間外上限規制により長時間労働が厳しく管理されていることを踏まえれば、現時点での一律での義務化は時期尚早であると考えます。まずは特に必要となる業態でのインセンティブを高める施策などを改めて検討した上で、過労死等の防止のための対策に関する大綱によって定められた目標である令和10年度までに導入企業15%という目標の達成に全力を尽くすべきではないかと考えます。この点、中間案にその旨の記載をお願いできればと思います。
次に2点目ですが、時間外上限規制について意見を申し上げます。時間外上限規制につきましては、より影響が大きいとして適用が猶予されていた建設・運輸等の業種においても2024年4月の適用から1年半が経過し、中小企業を中心に対応に苦慮する声も多く聞かれることから、個別事情等を踏まえた柔軟な規制の在り方の検討が必要ではないかと考えます。使用条件や納期・工期等の遵守、人手不足によるという交代・代替の要因の不在といった業界特性の影響で、年間の時間外上限規制は遵守できても、月間上限などへの対応が困難であるという声も聞かれます。これらの実態に合わせ、消費者への周知や商慣習の見直しなど、国全体での働きかけなどが必要である点、併せて申し上げたいと思います。
そして3点目、副業・兼業について意見を申し上げます。地方における厳しい人手不足への対応や日本の生産性向上のためには、都市部の労働者が地方の中小企業においてスキルアップや自己実現のため自発的に副業・兼業に取り組むことが必要だと考えます。
一方で、中小企業での副業・兼業人材の活用については、割増賃金算定における労働時間の通算が難しいことが課題となっております。そもそもこうした労働者の自発的意思に基づく副業・兼業については割増賃金の趣旨となじまず、通算の対象外とする方向での検討が必要ではないかと考えます。
あわせて、本業・副業の取扱いについては、契約時期のみならず、労働者個人の事情を踏まえた検討が必要な点、改めて申し上げたいと思います。
私からは以上でございます。
○山川分科会長 ありがとうございました。
ほかに御意見、御質問等はございますでしょうか。
冨髙委員、どうぞ。
○冨髙委員 ありがとうございます。
まず、意見の整理のほうにはもう既に記載していただいているのですけれども、労働基準関係法制全体に関わる意見を改めて申し上げたいと思っております。これまで様々議論を行ってきておりますが、過労死等ゼロを不退転の決意で実現するといった2017年の労使合意に基づく働き方改革の進捗と課題を検証した上で、そのさらなる推進を図るための対応を検討するということが今回の見直しの最も重要なテーマだと考えております。そこが出発点であるということを改めて強調しておきたいと思います。
現状では、様々なデータを見てもお分かりのとおり、過労死、過労自死などがなくなっておらず、精神障害に至っては増加傾向が長年続いているという状況です。今回実施された労働時間制度等に関する実態調査などの結果からも、働き方改革はまだまだ道半ばであることを改めて実感をしているところです。
ただ、この間使用者側からは、過労死ラインである上限規制の緩和を求めるような意見であったり、また、働きたい人はより働いていただくことが労働者のためにも良いといった意見もありました。そういった意見を聞くと、2017年の労使合意は何だったのだと思いますし、さらに、裁量労働制をはじめとした調整・代替の仕組み、旧適用猶予業種についても緩和を求める意見もありましたけれども、なぜ見直し直後から緩和が必要との意見が出てくるのか理解し難いところでございます。
労働側として繰り返し申し上げておりますけれども、長時間労働の是正と豊かな生活時間の確保を実現することが最優先事項であって、そのためには働き方改革をさらに前進させて長時間労働を確実に縮減していく方策をしっかりとここで議論していかなければいけないと考えております。また、多様な働き方、柔軟な働き方については、使側からも言及がありましたが、それは現在の労基法を遵守した上で労使協議等を通じ、今のルールの範囲内で実現可能だと思っております。実際、現場の労使で様々に話合いを行い、工夫しながら多様な働き方が可能となるよう対応を図っているとも聞いております。労使の力の非対称性を考えれば、一部にニーズがあるということをもって強行法規である労基法の趣旨を損なわせるような調整・代替のさらなる緩和は、労働組合の有無にかかわらず行うべきではないと考えております。
さらに、先ほど鈴木委員からインターバルを11時間以上とする画一的な原則は設けるべきではなく、柔軟な対応を認めるべきとの意見がありました。確かに現場で守れないルールであれば意味がないですけれども、柔軟化という名の下に制度が骨抜きになっては意味がないと考えているところでございます。人の生活のリズムはどのような業種であろうと同じであって、原則11時間以上とした上で、あくまで例外として代替措置とするべきだと思っておりますし、その場合も例外は極めて限定的にするべきです。
また先ほど少し触れましたけれども、佐久間委員から働きたいニーズを踏まえて柔軟で多様な働き方を促進すべきとのお話がございましたが、私どもからすれば「長時間働かせたい」というようにしか聞こえないと思っております。仮にそうしたニーズがゼロでなかったとしても、そうした働き方を認めてしまえば結局ほかの労働者も競争にさらされ、結果的に柔軟に働かざるを得なくなることが非常に懸念されます。やはり労基法が持つ公共的な意義は堅持すべきだと考えておりますので、意見として申し上げておきたいと思います。
以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。
ほかにいかがでしょうか。
それでは、古川委員、お願いします。
○古川委員 御指名ありがとうございます。
私からは裁量労働制に関して、資料1の23ページに追記をいただきたい点につきまして2つ申し上げたいと思います。
第一に、前回も冨髙委員から指摘がありましたが、2022年に本分科会の審議報告で取りまとめられたとおり、裁量労働制については適正運用の徹底を進めるべきでありまして、今次の本分科会におきましては、連続勤務規制や勤務間インターバルなど、労働者の健康確保、豊かな生活時間の実現につながる前向きな議論に注力すべきであると考えております。その点を意見として追記をお願いしたいと思います。
その上で、今回追加されています資料2についても意見を申し上げたいと思います。20ページを見ますと、労働時間の把握方法が「自己申告である」と回答した労働者の割合が、専門型で約35%、企画型で約22%となっており、みなし労働時間制の下に労働時間管理が適正に行われていないのではないかという疑念がございます。
また、22ページにおきましては、約4割の適用労働者が自らのみなし労働時間数を認知していないこと、また、13ページにおきましては、適用労働者のほうが長時間労働者の割合が高くなっていることも明らかであります。
こうしたことから、裁量労働制の適用によって労働時間が増加することも懸念をされます。だからこそ、前回の見直しにおきまして、みなし労働時間の適切な設定が必要であることの明確化、そして労使委員会等を通じた適正運用の確保といった対応がなされたと考えております。
そうした中、資料1の24ページにも記載がありますとおり、前回、使側より過半数労働組合との合意の下で対象業務を決定できる仕組みにつきまして言及がございましたが、今ほど申し上げました懸念もありますことから、強行法規であります労基法のルールについては労使合意によるさらなる緩和を認めるべきではなく、そうした緩和を行うことは労基法の強行法規性を放棄することにもつながりかねないということにつきましても明記をお願いしたいと思います。
私からは以上であります。
○山川分科会長 ありがとうございました。
オンラインで鬼村委員から発言の御希望がございます。お願いします。
○鬼村委員 御指名ありがとうございます。
今は資料2についてコメントしてもよいでしょうか。
○山川分科会長 大丈夫です。お願いします。
○鬼村委員 よろしいですか。ありがとうございます。
では、資料2ついて、裁量労働制についてコメントをさせていただきたいと思います。22年12月の分科会の定義にもございましたけれども、裁量の有無というのは時間配分の決定が労働者に委ねられているかどうかということが重要であって、そのためそれが法律要件にもなっていると思います。これを踏まえまして18ページを見てみますと、業務の遂行方法や時間配分等にはおよそ90%の労働者の方が自分に裁量があると回答していますので、おおむね適切な運用がなされていると考えてよいのかなと思っています。
他方で、その前の16、17のところで具体的な仕事の内容や量というものについては裁量があるという回答が少ないのではないかという御指摘もおありかと思います。確かに都度都度の細かい業務指示が上司からなされてしまうと裁量性が失われるということもあり得るとは思いますけれども、もとよりそもそも業務というのは大小にかかわらず組織の目標達成のために、大きくは上司や組織からアサインされるというのが基本ではないかと思います。当然、業務量がコントロールできなくなるような仕事をアサインしてしまえば、結果的に時間配分の裁量が失われますので、そうした場合は法律要件を満たさないと思いますが、先ほど申し上げたとおり、業務の遂行方法、時間配分等についてはおよそ90%の方に裁量があるという結果ですので、過度に具体的な仕事の内容や量について、この調査結果を問題視するということは適当ではないのではないかなと考えております。もとより仕事の内容や量、進捗報告の頻度というのは法律要件にもなっていないということにいま一度留意が必要かなと思います。
それから、出退勤時間を上司が決めている割合が一定程度あったり、あるいは過度に業務の従事年数が短くなっていたりという結果も見られますので、法令の徹底、運用の徹底ということは引き続き必要になってくると思いますけれども、冒頭申し上げたとおり、総じて適正な運用がされているということを踏まえますと、法令の運用の徹底の必要性と、それから制度の見直しの必要性というものは分けて議論するということが適当ではないかなと思います。
最後に、前回の分科会でも発言させていただきましたけれども、裁量労働制を活用していくことで労働者がより一層会社や組織の方針、思いなどを理解して、あるいは意識して、自分なりにそしゃくして、それを踏まえて前向きに仕事に取り組むとか、その結果、仕事の質が上がって生産性が引き上がっていくといった動きは社内でも感じておりますし、そうしたことは今後も期待できると考えております。自分で仕事に対していろいろ工夫して付加価値を高めたいと考えている労働者がより活躍できるように働き方の選択肢はつくっていかないといけないかなと思います。こうした取組が、ひいては日本の競争力向上にもつながっていくと思いますので、資料にもございますが、適用労働者の約8割の方が満足していると言っていることも含めて、裁量労働制が労働者の方の働きがいや働きやすさの向上に資するものであるということを踏まえて、ぜひ拡大の方向に向けて議論をしていければなと思います。
私からは以上です。
○山川分科会長 それでは、椎木委員、お願いします。
○椎木委員 御指名ありがとうございます。椎木でございます。
今、鬼村委員から裁量労働制について御発言がありました。率直に申し上げますと、今日お示しいただいております18ページ目以降の過去のデータをもって、裁量労働制が2024年に施行された内容を適正に運用されていると判断することはできないと考えます。
裁量の有無にかかわる18ページの部分で、「上司に相談の上、自分が決めている」との選択肢をどう捉えるかという点は非常に難しいとしましても、これをもって対象労働者が裁量を持っており、制度が適正に運用されていると判断するのはかなり難しいと考えます。
そもそも資料2の25ページで、適用労働者における業務従事年数という表もございます。幾つかのカテゴリーがありますが、どのカテゴリーにおいても3年未満が1割~2割程度を占めている。実態としてこのような方々が自己の裁量で様々な判断ができるのか疑問ですし、当時でもこうした割合であったことを踏まえれば適正な運用が行われているというのは困難ではないかと思うところでございます。
その上で、そもそも2022年の分科会での報告では「裁量が失われた場合には労働時間のみなし効果は生じないものであることに留意することを示すことが適当」という取りまとめも行ってございます。この点も含めて適正な運用を24年に改正省令等が施行したばかりでございますので、しっかり適正な運用の取り組みを進めていくべきであると考えております。同じ実態調査の結果にもとづいて改めての検討を行うことは不要であると考えます。よろしくお願いしたいと思います。
以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。
オンラインで松永委員から御発言希望がございます。お願いします。
○松永委員 ありがとうございます。
私も新たに今日御説明いただいた資料2の裁量労働について少しコメントさせていただきたいなと思っています。今日新たにお示しいただいた資料2の20ページで、労働時間の把握方法ということですけれども、組合がある事業場ではタイムカードやICカード、あとパソコンのログイン・ログアウト、そのほか客観的な方法によって合計労働時間を把握しているという割合が高いということが分かるかなと考えています。
21ページ、22ページの結果は年収との関連ということで、かなり年収の幅が広いので、ひょっとしたらここは少し精査が必要かもしれないのですけれども、いずれにしましても過半数労働組合のある企業であれば労使対等性というのは十分確保されていると考えていますので、労使委員会の実効性というのも高いのかなと考えています。
ですので、労使委員会での話合いの中で裁量労働制を適用するのにふさわしい対象業務の範囲や適切な健康確保措置、適正な報酬という問題をきちんと議論していって決めていくということが肝かなと思っています。
付け加えて言いますと、26ページにもあったと思うのですけれども、労使委員会に実効性があれば長時間労働が短くなっていくという相関というのも見てとれるのかなと思っています。
幾つか申し上げたのですけれども、労働組合、とりわけ労使対等性というのが高い過半数労働組合ということであれば、適切な制度導入、運用というのがきちんと担保できるということだと思っています。確かに昨年改正された制度の適正運用が優先ということは十分承知の上なのですけれども、今回、過半数労働組合の合意による対象業務拡大ということについては新たに検討を進めていくということも御提案させていただきたいなと思っています。
先ほど鬼村委員からもありましたけれども、日本の労働生産性をいかに高めていくかということ、あとは長期間労働や過労死の撲滅ということも両方見据えながら、真摯に議論をしていく必要があるのではないかなと考えています。
私からは以上でございます。
○山川分科会長 ありがとうございました。
では、オンラインで御参加の鈴木委員、お願いします。
○鈴木委員 御指名いただきましてありがとうございます。私も鬼村委員、松永委員に続きまして裁量労働制について一言申し上げたいと思います。
最近、経営者の皆さんから日本の国力低下を憂える発言を聞く機会が多くなっており、私としても日本の先行きに強い危機感を持っております。我が国は御案内のとおり資源を持たない島国でありまして、2023年時点で約27兆円に上るエネルギーを輸入に頼っております。
ちなみに、輸出割合の高い輸送用機器カテゴリーの輸出額は2023年で約24兆円にとどまり、輸入額の27兆円を下回っています。エネルギーもちろん、そのほか食料を輸入などで様々賄って国力や経済成長力をこれから維持・高めていく必要性が他の国よりも高いのではないかと私自身強く感じているところでございます。
また、国立社会保障・人口問題研究所の令和5年推計では、生産年齢人口は2040年に2020年比で約20%も減少するという予想もされています。国際競争力を高めて貿易・投資立国を実現していく必要性は高く、そのためには企業の取組もさることながら、国の政策も含めて総動員で対応を進めていくことが必要ではないかと思っています。その際、付加価値を生み出す源泉は、働く方一人一人です。働き手一人一人の力、能力発揮を促すということが国全体の大きな課題だと考えます。
一方で、コンサルティング会社のGallup社が毎年行っている調査によりますと、日本の職場でエンゲージしている従業員の割合は7%で、全世界の21%と比べるとかなり低い状況です。エンゲージメントを高める施策も各社で取り組んでいますし、多岐にわたるものです。そのなかでも特に、先ほどお話がありましたように適用労働者の約8割が制度適用に満足をしている裁量労働制を適切な形で広げていくということは労働者のエンゲージメントと企業競争力の双方にプラスの効果が期待できると私自身は強く思っているところであります。
労働側からは裁量労働制の適用事例のなかでは実質裁量が失われている事案があるということの御指摘が前回もございました。前回改正では、法定要件の時間配分・業務遂行の方法の裁量性は高く、制度見直しまでは不要ということで建議が取りまとめられたと私自身は受け止めております。つまり、前回の改正では、企画業務型裁量労働制の労使委員会の手続の見直しや、専門業務型にも本人同意要件を課して同意撤回の義務化はされましが、裁量性が失われていること自体がとりわけ問題視をされたわけではなく、かつ、それに特化した制度見直しはなかったと理解をしております。
資料2の18ページにありますとおり、時間配分や業務遂行方法に裁量があると約9割の労働者が回答しておりますので、裁量労働制の拡充に向けた議論をしっかりと進めてもらいたいと切に願っているところでございます。
経団連会員企業からは、裁量労働制の対象業務拡大を求める様々な声をいただいております。例えば、プロジェクト型の業務を行うケースが増えております。そうした中で、プロジェクトの最終調整段階でどうしてもプロジェクトリーダーの指示を仰がないといけないような場面があったり、あるいは対象業務ではない管理などを一時的に行ったりするケースがあると聞いております。現行の企画業務型裁量労働制に関する通達では、対象労働者は対象業務に常態として従事しているということが原則と解釈されております。過半数労働組合との合意を要件にプロジェクト型業務に従事する労働者にも裁量労働制の選択肢を広げることを認めていただきたいと思っています。
また、シェアードサービス会社からはグループ会社の事業に関する企画、立案、調査及び分析を行う業務にも裁量労働制を適用したいという声も聞かれます。御案内のとおり、現在の解釈では事業の運営に関する要件は自社の業務に限定されています。しかしながら、事業の運営の対象というのが自社であっても他社であっても業務自体の内容は変わらないのではないかと思います。
御紹介したものはあくまで一例でございますが、こうした例を含め、裁量性を持った業務については過半数労働組合との合意を要件に対象業務の範囲を広げていただく検討をぜひお願いしたいと思っております。
私からは以上でございます。
○山川分科会長 ありがとうございます。
ほかにございますでしょうか。
春川委員、お願いします。
○春川委員 ありがとうございます。
私からも裁量性について発言をさせていただきます。資料1の23ページになりますけれども、非対象業務との兼務をしている場合は裁量労働制の適用をすべきではないということを労側の意見として追記をお願いしたいと考えています。
前回、この資料23ページに使側からの意見も記載がございますけれども、例えば主たる業務が対象業務であって、それに裁量が認められない非対象業務が加わった場合、会社側の都合によって、その非対象業務の業務量・労働時間を増加させることが可能であろうと思っています。そういう意味では、結果として労働者がみなし労働時間制の下では過大な長時間の過重労働が生じかねないということを考えています。
そしてその上で、非対象業務の割合は今申し上げましたとおり会社側の都合で変動し得ると考えられますので、対象業務そのものの労働時間や業務の量といった調整が実質的には困難となって裁量が失われる状況が生じてしまうことも想像に難しくないと考えています。
したがいまして、対象業務であっても裁量がないということになってしまえば、そもそも制度の趣旨に反すると思いますので、そういった懸念を踏まえ、労側の意見として加えていただきたいということを発言させていただきます。
以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
それでは、松田委員、どうぞ。
○松田委員 前回、使側から労働時間以外をベースとした処遇が可能となるよう裁量労働制を拡大すべきという旨の発言がありましたが、その点を同様に資料1の23ページに記載をされる場合には、労側の意見として追加いただきたいというところがありますので申し上げさせていただきます。
いわゆる成果をベースとする処遇制度は現行法の下でも導入は可能でございますし、実際に多くの企業で導入されているという認識でございます。そもそも裁量労働制は労働時間以外の成果に応じた処遇を可能とするための制度ではなく、適用対象労働者の裁量に委ねた上であらかじめ定めた労働時間数を働いたものとみなす制度であると認識してございます。
2022年における議論でも裁量が確保されていないケースが実態調査等で明らかになったことを踏まえまして、適用要件である実質的な裁量が失われた場合にはみなしの効果は生じず、通常どおり割増賃金の支払いが必要になることが先般の改正で明確にされたところであります。
つきましては、前回も労働側から申し上げたとおり、現行制度における適正運用を徹底すべきであり、対象業務のさらなる拡充は必要ないということは申し上げておきたいと思ってございます。よろしくお願いします。
○山川分科会長 ありがとうございました。
オンラインで公益の黒田委員から御発言希望がございます。お願いします。
○黒田委員 ありがとうございます。公益委員の黒田です。
今、議論されている裁量労働制に関してですが、今回の資料にも掲載されている裁量労働制の調査について制度設計の段階から携わり、そのデータ分析も行った者から少し内容について補足をさせてください。
本調査のデータは、学術研究としても利用させていただき、厳密なデータ分析をさらに行いました。結果は既に国際査読雑誌にも掲載されております。この場で、簡単ですがその内容を共有させていただきたいと思います。
どういった内容が見えてきたかと申し上げますと、労働時間や睡眠時間の長さ、それから満足度や主観的健康等は、裁量労働制の適用の有無よりも、裁量の度合いがどれだけ担保されているかで異なってくるということが見えてきました。例えばですけれども、裁量労働制適用者と非適用者を比較した場合、裁量度が極めて低いグループでは適用者のほうが、労働時間が長くなる傾向にありました。一方で、裁量度が高いグループでは適当者と非適用者の労働時間は統計的に見て有意に異ならないという結果になりました。
さらに、満足度について申し上げますと、適用者と非適用者を比較した場合、裁量度が高いグループでは満足度も高くなるという傾向にあります。つまり、裁量労働制の適用の有無だけでなく、それ以上に裁量の度合いが現場レベルできちんと担保されているかということが何より重要であるということが見えてきております。
私自身も裁量労働制で働いており、ここでの発言はこの制度自体を否定するものではないのですけれども、制度の適用有無のみに目を向けるのではなく、裁量がいかに担保されるかが何より重要であり、本件の議論に当たってはこの点をきちんと議論すべきということを念のために補足させていただきたいと思います。
以上です。
○山川分科会長 深い研究に基づく御意見、大変ありがとうございます。
ほかにございますでしょうか。
首藤委員、どうぞ。
○首藤委員 黒田委員のご発言と重なる部分もあるのですけれども、資料2の18ページの中で、先ほど労働時間の配分を自分で適切に決めているので適正な運用をされているのではないかという御発言があったと思います。これが適正かどうかは議論の余地がありますが、私が感じていることは、適用労働者と非適用労働者を比べたときにほとんど差がない点をどうみたらいいのかということです。例えば16ページの具体的な仕事の内容や量についても、濃い緑色が完全に自分で裁量を持っている、薄い緑色が上司に相談しながらも裁量を持っている層になるわけですけれども、ここも適用労働者が裁量を持っている割合が高いことは示されていますが、非適用労働者もかなりの程度裁量を持って働いていることが示されていますし、次の17ページの進捗の報告についても適用労働者と非適用労働者に大きな差があるわけではありません。
先ほど来、日本の国際競争力を高めるために、資料1の23ページの使用者側の委員のところですけれども、付加価値の創出の観点から、前回の御発言ですとたしか自律的な働き方を保障するために裁量労働制の拡大が必要なのだというご意見があったと思います。私が疑問に思うのは、裁量労働制が適用されないと自律的な働き方ができないのかどうかという点で、裁量労働制の適用とは要は労働時間管理の話ですが、自律性があるかどうかというのはむしろ仕事の与え方であったり、評価の仕方であったりが大切なのではないでしょうか。今回示されているこの調査結果を見る限りは、裁量労働制が適用されていなくてもかなりの程度自分で出退勤を決めながら自律的に働いている労働者が存在している可能性を示していると思います。
学術的にも日本の労働者の自律性が低いことは指摘されています。でも、その自律性の低さは、裁量労働制か適用されていないためだという議論を私はほとんど見たことがなく、むしろ企業内の働かせ方、仕事の与え方等に課題があると論じられています。自律性を高め、エンゲージメントを高めたり競争力を高めていくということはすごく重要なのですけれども、それは裁量労働制の適用とは別に取り組んでいただきたい課題なのではないかとも思っております。
○山川分科会長 ありがとうございます。
ほかにいかがでしょうか。
それでは、亀田委員、どうぞ。
○亀田委員 ありがとうございます。
この間、使側から繰り返し裁量労働制に適用された労働者の満足度、健康状態が良好であるとの発言がなされてきました。今回追加された資料について、これまでも御発言がありましたとおり重ねて意見を述べさせていただきます。
資料2の23~24ページの調査結果を見ますと、確かに適用労働者全体の満足度は高いものの、年収別のデータを比較しますと、年収が低くなるにつれて満足度が低下する傾向にありまして、裁量労働という働き方そのものに対する満足度であるかどうかはおおいに疑問があると感じております。また、健康状態につきましても、あくまで主観的な健康観であって客観的ではないということには留意が必要であると考えております。
もう一点はその他の部分ですけれども、暦日付与についての例外についてでございます。資料1の25ページに記載がございますが、前回、使側より、鉄道のメンテナンス工事に関して暦日ではなく継続33時間以上の休息期間を認めるべき旨の意見がありました。自動車運転業務については長時間労働を防止することで労働者の健康確保と社会的な安全確保の観点も含め拘束時間の上限、それから休息期間などについて縛りをかけるために改善基準告示が設けられておりまして、御発言いただきました休日についても改善基準告示にのっとった運用と理解しております。
しかしながら、分科会でも何度も資料にお示しいただきましたが、御存じのとおり、いまだに運輸業では長時間労働、脳・心疾患の労災支給件数についても全業種の中で最も多い業種ということで、さらなる強化を図るため、昨年、改善基準告示の改正もされている状況でございます。
また、各企業、各労使において労働時間の短縮、それから公休数の増加など、働く環境改善の取組強化に臨んでいるところではありますけれども、昨年、厚労省が4,328事業所を対象に実施した監査結果では、いまだ5割を超える事業所で何らかの改正基準告示違反があったと報告をされている状況です。人材を確保し、物流・人流を止めないため、我々産別としても今後、さらなる改善基準告示の見直しや長時間労働を抑制するための上限規制の一般則への早期移行が必要だと強く考えておるところでございます。
したがいまして、前回、冨髙委員からも申し上げましたとおり、安易に緩和すべきではなく、例外の拡大につきましては実情も踏まえた上で慎重に考えるべきであることを申し上げておきます。
以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
櫻田委員、どうぞ。
○櫻田委員 ありがとうございます。
私からは労使コミュニケーションの在り方について意見を申し上げたいと思います。資料1の3ページにも記載されていますけれども、過半数代表者につきましては、その機能強化を行うということではなくて、選出手続の厳格化をはじめとした運用の適正化を進めるべきということを労働側として改めて申し上げたいと思います。
また、同じ資料1の5ページに、使用者による便宜供与が許容される範囲を明確化すべきとの意見に加えて労組法との関係にも言及がなされているところです。過半数代表者に対して例えば労基研報告でも言及されています「労働時間の中で活動することへの一定の保障」などの便宜供与を可能とする場合には、過半数代表として過半数労働組合が同等の役割を担っている場合、それから少数労働組合の役員等が担っている場合においても同等の支援や配慮を受けられるようにしてもよいのではないかと考えております。
当然のことながら、その際には労組法の不当労働行為との関係も踏まえ、集団的労使関係の中核的担い手であります労働組合の自主性や主体的な活動等に影響を及ぼすことがないようにということは十分に留意すべきだと思いますし、今後、具体的な検討を進めていく必要があると考えております。
私からは以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。
ほかに何かございますでしょうか。
冨髙委員、どうぞ。
○冨髙委員 ありがとうございます。
先ほど裁量労働制の関係につきまして、黒田委員と首藤委員の発言には賛同できる部分が多いと思いましたので、改めて発言をさせていただきたいと思います。私も資料を見ていて裁量の有無の部分に関して適用・非適用であまり差がないと受け止めたところでございます。労働時間制度として裁量労働制が適用されているかいないかということではなくて、裁量があるかないかが重要との点は全く同意するところです。また、「上司に相談の上、自分が決めている」という回答はかなりばらつきがあることを考えると、裁量労働制を適用することが望ましいということにはならないと思っておりまして、それはむしろマネジメントの問題ではないかと考えております。
先ほど何人かの委員から裁量労働制を活用することで会社の思いも労働者により理解・共有できる、企業への貢献意識ややる気の向上につながるという意見もございましたけれども、それは裁量労働制でなくても全ての働き方でそういう実感を労働者に持っていただくことが重要であって、企業の責任だと思っておりますので、まさにマネジメントの問題として進めていただくことが必要だと思っております。ましてや裁量労働制の適用が日本の競争力向上につながるというのは飛躍し過ぎなのではないかと考えましたので、その点も申し上げておきたいと思います。
以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
では、鈴木委員、どうぞ。
○鈴木委員 御指名ありがとうございます。
裁量労働制についていろいろと御指摘がありましたので、思うところを少しコメントさせていただきたいと思います。黒田先生、首藤先生から御指摘のございました自律性があるかどうかということが重要だという点についてです。評価の仕方や制度論とは別に、どのように働く環境を整えるかという課題はまさにおっしゃるとおりだと思っております。
皆が皆裁量を持ってすぐに働けるということでもありませんので、実態として企業では、時間と場所にとらわれず主体的に働ける環境を整えるため、労働時間制度だけでなく評価面も含めて工夫をして取り組まれています。テレワークやフレックスタイム、場合によっては副業・兼業といった自立性を促すような環境整備は各社でされています。特に企画業務型裁量労働制にふさわしい業務に携わる方々は、大卒後3年ないし5年の経験が求められるという趣旨の規定が指針で定められており、そうした期間も含め経験を積みながら自律性を育むことが想定されていると思います。例えばフレックスタイム制をまずは導入して、裁量を持って働けるようになった方に企画業務型の適用をするという実態もあると思っています。
制度のあるなしは関係ないのではないかという趣旨のお話もあったわけですけれども、再三使用者側からも申し上げておりますとおり、組織全体の目標、本部の目標を意識しつつ上司と方向性の確認をしながら業務遂行の方法や時間配分を自ら考えて仕事をすることと、処遇について時間でなく成果で見ることが可能な仕組みがセットで実現することに、会社としては裁量労働制の効果を期待する面もあります。また、会社によりましては、裁量労働制が適用されている労働者の方にとって、適用されていることが一つのステータスとなり、働きがい、働きやすさにつながっているという声も聞いています。
裁量労働制には、法令上、健康確保や裁量労働制にふさわしい処遇とするために労使委員会の手続や健康確保のための措置など、代替・調整のための様々な要件が課されています。誤解を恐れずに申し上げますと、そうした様々な法令上の手続を行ってもなお、「やはり裁量労働制を適用することがよい」、「これが自律性を発揮してもらう上で大変重要だ」ということで、裁量労働制を適用している企業があるということは注目すべきところだと思います。
ありがとうございます。
○山川分科会長 ありがとうございます。
ほかにございますでしょうか。
神吉委員、どうぞ。
○神吉委員 ありがとうございます。
私からの質問は、今回追加になった資料2の23ページと24ページの裁量労働制適用の満足度です。かなり年収と満足度が比例しているように見えて、そうすると、これは裁量労働制適用のそれ自体の労働時間法制の満足度なのか、ちょっと分からないなと思いました。
裁量労働制の適用労働者に、適用されていることの満足度を聞いているということですが、それは現状の働き方に不満がないかを聞いているだけで、たくさん年収があるので満足している、だから裁量労働制を適用されていることにも不満がないということを意味しているだけということもあり得ると思います。例えば裁量労働制の非適用労働者に現在の働き方の満足度を年収別で聞いたときに同じような結果になったりしないでしょうか。そういうデータで適用対象者と非適用者の比較をするようなことはできますでしょうか。
○山川分科会長 事務局、いかがでしょうか。
○労働条件確保改善対策室長 事務局でございます。
御指摘のご趣旨につきましては理解するところでございますけれども、今回お示ししている資料は、当時の分科会で、裁量労働制実態調査の成果をお示ししたものからということでございます。御理解いただければと思います。
○神吉委員 そういう比較はできない、データはないということですね。非適用労働者の満足度というのは分からない。
○労働条件確保改善対策室長 当時お示しした資料から持ってきたものということでして、おっしゃるとおりでございます。
○山川分科会長 ほかはいかがでしょうか。
ついでに神吉委員のお話との関連で、先ほど従事年数のお話で鈴木委員から、また、鬼村委員からもお話があったと思いますが、今の指針だとおおむね5年でしたか、企画業務型裁量労働の年数について一定の水準が定められておりますけれども、それと例えば裁量度や満足度のクロスというのはできるのでしょうか。つまり、どの項目かにもよりますが、非常に従事年数が長い方だと裁量度が上がったり、あるいは満足度が高まったりという、例えば5年で区切るみたいなクロスというのはできるのでしょうか。
○労働条件確保改善対策室長 事務局でございます。
即答が難しく、検討してみないと分からないというのが実態でございます。
○山川分科会長 ありがとうございます。
非常に細かいお話ですけれども、触発されて個人的な意見というか感想として申し上げました。
ほかはよろしいでしょうか。
首藤委員、どうぞ。
○首藤委員 すみません、もう一点、先ほど申し上げればよかったのですけれども、時間外労働の制限のところなのですけれども、先ほどから人手不足であるので労働時間を延ばすことで人手不足の解消につなげられればという御発言が複数あったと思っております。資料1の7ページのところです。私は自動車運転者を研究していますが、この業界の人手不足は長時間労働に起因している面があると考えています。ですので、短期的には確かに目の前の業務を回すために今いる人たちの労働時間を延ばすことによって解消することが有効に思えるかもしれませんが、中長期的には逆に人手不足を深刻化する可能性があります。人手不足業種の多くのところは高齢化が相当に進んでいますが、若年層は労働時間を職選びの一つの基準にしている部分がありますので、若い人が入ってこないことによってさらなる人手不足を招く懸念があります。人手不足の解消のために労働時間を緩和することが本当に有効であるのかどうかは慎重な議論が必要だと思っております。
○山川分科会長 ありがとうございました。
ほかはよろしいでしょうか。
先ほど指針で5年と言いましたが、少なくとも3年から5年が指針の正確な内容でした。失礼しました。
黒田委員、お願いします。
○黒田委員 すみません、手短に済ませます。
裁量労働の件ですが、先ほどの説明が少し早口だったのでもう一度、要点をお話させてください。まず、今回の研究で見えてきたことですが、裁量がないのに裁量労働制で働いている人は、やはり労働時間が長くなる傾向にありました。こういった事実を、労働者側の皆さんが主に見ていらっしゃるのだと私は解釈しております。
一方で、裁量労働制で働いている人の中で、実際に裁量を持っている方は、必ずしも労働時間が長いわけではなく、満足度も高く、睡眠もしっかり取れているという結果が見えてきています。こうした点を、おそらく使用者側の皆さんは主に着目していらっしゃるのだと思うのです。
ですので、労働者側の皆さんが見ていらっしゃる側面も、使用者側の皆さんが見ていらっしゃる側面もどちらもファクトであり、間違っていないけれども見ているところが異なるということが分析結果からも見えてきています。では、どうすればよいかということですが、今後、裁量労働制の対象拡大や要件の見直しの可能性について議論する際には、制度導入の有無だけに焦点を当てるのではなく、裁量をしっかり担保できるかが何よりの前提条件であるということに留意して検討を行っていくべき、ということをここで重ねて申し上げたいと思います。
先ほどの発言が少し言葉足らずだったと思いましたので、もう一度機会をいただきました。ありがとうございます。
○山川分科会長 明確化していただきまして大変ありがとうございました。
よろしいでしょうか。
それでは、本日いただいた御意見を踏まえまして、追記等の御要望もありましたので、必要に応じて追記等を行った上で、次回以降の分科会においてはそれを参照しながら議論を進めていただきたいと思ってございます。
それでは、次の議題に移らせていただきます。議題2の「その他」です。
では、事務局から資料№4の説明をお願いします。
○労働条件確保改善対策室長 事務局でございます。資料4「働き方改革の『総点検』について」の御説明でございます。
資料の1ページ目を御覧ください。本年6月の第200回分科会でも御報告申し上げましたけれども、本年6月13日に経済財政運営の改革の基本方針2025、それから下のほうでございますけれども、新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025年改訂版が閣議決定されたところでございます。
今回御説明申し上げます働き方改革の総点検については、これらの2つの閣議決定では同様の内容が記載されておりまして、より記載が詳しい下のほう、新資本主義の実行計画のほうを御覧いただければと思います。真ん中よりも下の箇所でございますけれども、内容としましては、働き方改革関連法施行後5年の総点検を行い、働き方の実態とニーズを踏まえた労働基準法制の見直しについて労働政策審議会で検討すると書かれてございます。
その上で、2ページ目を御覧いただければと思います。こうしたことを踏まえまして、本年9月を目途に、(1)のアンケート調査、それから、(2)のヒアリング調査の2つの調査を実施すること、また、結果につきましては、11月を目途に公表するということを考えてございます。
その上で、(1)(2)の内容の御説明でございます。まず、上の(1)のアンケート調査でございます。こちらは定量的調査ということになりますけれども、目的としましては、労働者の労働時間に関するニーズを把握することを目的として実施することを考えております。また、対象者でございますけれども、モニター調査会社に登録している労働者を対象に実施することを考えております。
調査内容でございますけれども、上のほうに戻りますが、労働時間を減らしたい、現状のままでいい、増やしたいといった労働者の割合、それから、今どれぐらい働いているのか、それから、希望する労働時間数などといった事項を考えてございます。
次に、(2)のヒアリング調査を御覧ください。こちらは、定性的調査ということになろうかと思いますけれども、調査の目的としましては、上限規制への対応状況、それから課題認識などについて、生の声を把握することを目的として実施することを考えてございます。
対象者でございますけれども、こちらは、企業及び労働者に対して、労働局により実施することを考えてございます。
調査内容でございますけれども、企業ヒアリングにおきましては、例えば、上限規制への対応状況、上限規制の施行による課題認識、その他労働時間制度に関する要望などといったものを考えてございます。
また、労働者ヒアリングについてでございますけれども、時間外労働の実態、上限規制についての認識、収入や働き方に対する希望、労働時間規制に関する課題認識などといったものを考えてございます。
これらの調査の結果につきましては、労働条件分科会にも御報告し、御審議いただきたいと考えてございます。
御説明としては以上でございます。
○山川分科会長 ありがとうございました。
それでは、ただいまの事務局からの説明を踏まえまして御質問、御意見がございましたら、お願いいたします。いかがでしょうか。
冨髙委員、どうぞ。
○冨髙委員 質問ですけれども、本分科会での検討に当たって昨年9月~10月にかけて厚労省で相当入念に検討いただいた大規模かつ詳細な労働時間制度等に関する実態調査が実施されて、その結果が3月に公表され、御報告をいただいたところでございます。そういった中でさらなるアンケート調査やヒアリング調査を実施する目的、必要性をいま一度御説明いただきたいと思います。
○山川分科会長 では、事務局からお願いします。
○労働条件政策課長 御質問ありがとうございます。
御指摘のとおり、まさに本分科会におきまして労働時間等実態調査をかなり詳細な設計の下に行ってまいりました。今回、さらにその上で閣議決定されましたように総点検を行うということになっております。部分的にはかなり重複するところもございますが、改めてこれまでの働き方改革、また、休み方改革も含めたそういったものの効果でありますとか、上限規制についての影響といったところについて、一部の企業及び労働者へのヒアリング調査など、これはやや定性的なものも含めて改めて総点検を行うというものでございます。
○山川分科会長 冨髙委員、何かございますか。
○冨髙委員 ありがとうございます。
規模等もよく分からない部分もあるのですけれども、先ほど事務局から御説明があったように、項目も結構重複しているところがあって、追加で実施する意味合いがあまり感じられないと思っているところでございます。しかも、前回の調査はかなり入念に時間をかけて実施いただいたと思うのですけれども、今回の調査は9月に実施して11月目途で公表ということなので、その内容や正確性といった部分についても疑問があると思っております。
ヒアリング調査も企業と労働者に実施するということですけれども、どういったところがセレクトされるかというところも分からない中で、我々としては恣意的に調査結果が活用されるのではないかという点を懸念しているところで、バランスも含めて極めて慎重に取り扱っていただく必要があると思っておりますので、意見として申し上げたいと思います。
以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。
ほかに何かございますか。
鬼村委員、どうぞ。
○鬼村委員 御指名ありがとうございます。
私から1つ意見でございます。先ほど来御議論がございましたけれども、過重労働をなくしていく、あるいはウェルビーイング、エンゲージメントを高めていくという方向性での働き方改革というのは引き続き重要であろうと思っております。
ただ一方で、労働時間の削減だけではなくて社員の働きがいや働きやすさを感じられるような職場環境の整備を進めてアウトプットを大きくしていくということも企業としては取り組まなくてはいけない点だろうと思います。
そうしたときに、特に我々のような自動車産業をはじめとした輸出産業においては、生産性向上などの付加価値の向上分を超えた労働時間の削減などは、国際競争力の低下につながったり、輸出産業においては特に日本全体の国力の低下をも招きかねないのではないかなという懸念がございます。
こうした意味においては、骨太方針等の閣議決定を受けて総点検を行い、働き方の実態及びニーズを踏まえた労働時間法制の見直しについて検討を行う、それに基づいて現在の労働時間数や希望する労働時間数、その理由などについて今回アンケートやヒアリングの調査を行う、そして必要な政策や取組に生かしていく、こうした方向性は非常に時節を捉えたものであろうと受け止めております。
中でも今回、特に企業・労働者へのヒアリング、言わば定性的な意見やデータに基づいて労働時間の長短だけにとどまらずに働き方、先ほど来御議論のあったマネジメントの在り方などもそうだと思いますけれども、こうしたものを多角的に分析していくということは重要なことではないのかなと思います。
先ほど黒田先生からコメントがあったのと同じことかなと思いますけれども、弊社でも例えば標準化された定型的な仕事というのを労働時間を増やしてでもやりたいというニーズは当然あまりございませんけれども、一方で、自分の問題意識に基づいて何かチャレンジしたいとか、あるいは自分の成長やスキルアップのためにこういうことをやりたい、ああいうことをやりたいというのは、多少労働時間が増えてでもやっていきたいという声は一定数ございます。
このように働き方を変えていくことは、労働者の仕事に対してのエンゲージメントを高めるだけではなくて組織や企業の価値を高めますし、ひいては、やや飛躍するかもしれませんが、国際競争力の向上には必ずつながっていくものではないかなと思いますので、こういう関係性が何か明らかになるようなデータなりが得られると非常に良いなと期待をしております。
私からは以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。
ほかにございますでしょうか。
先ほど冨髙委員から御指摘のあった点ですが、この調査の結果の取扱い、特にこの分科会での議論との関係については御説明があったかと思いますが、もう一度御説明いただけますか。
○労働条件政策課長 この調査でございますが、9月から開始をさせていただいて、それが取りまとまり次第、11月をめどにまとめたいと思っておりますが、一定時間がかかるものでございます。取りまとめ次第、本分科会に御報告をし、それについても御議論いただければと思っております。
○山川分科会長 ありがとうございます。
報告をいただいて、改めてこの分科会で議論するということを想定されているということですね。
○労働条件政策課長 はい。
○山川分科会長 ほかに何かございますでしょうか。
ありがとうございました。それでは、ほかに御質問、御意見がございませんでしたら、議題2の働き方改革の総点検につきましては、いただいた御意見も参考としつつ調査を実施していただいて、ただいま確認しましたように結果等については本分科会にも報告をいただいて議論の機会があるようにお願いいたしたいと思います。
さて、本日の議題につきましては、それぞれのお立場から委員の皆様から非常に貴重な御意見をいただきました。特段ございませんでしたら、本日の議事はここまでとさせていただきたいと思います。
では、次回の日程等について事務局から説明をお願いします。
○労働条件企画専門官 事務局でございます。
次回の日程等につきましては、調整の上、追ってお知らせさせていただきます。
○山川分科会長 それでは、これをもちまして、第202回「労働条件分科会」を終了いたします。
本日はお忙しい中、皆様、大変ありがとうございました。