2025年8月6日 中央社会保険医療協議会 費用対効果評価専門部会 第71回議事録

日時

令和7年8月6日(水)総会議題1終了後~

場所

全国都市会館大ホール 2階

出席者

構成員等
  • 城山英明委員
  • 小塩隆士委員
  • 鳥潟美夏子委員
  • 松本真人委員
  • 髙町晃司委員
  • 奥田好秀委員
  • 鈴木順三委員
  • 伊藤徳宇委員
  • 江澤和彦委員
  • 長島公之委員
  • 池端幸彦委員
  • 太田圭洋委員
  • 大杉和司委員
  • 森昌平委員
  • 藤原尚也専門委員
  • 越後園子専門委員
  • 守田恭彦専門委員
  • 前田桂専門委員
事務局
  • 間保険局長
  • 林医療課長
  • 梅木医療技術評価推進室長
  • 吉田保険医療企画調査室長
  • 和田歯科医療管理官
  • 清原薬剤管理官 他

議題

  • 業界からの意見陳述

議事

○城山部会長代理
 ただいまより第71回「中央社会保険医療協議会 費用対効果評価専門部会」を開催いたします。
 本日は、部会長が御欠席のため、部会長代理である私が司会を務めさせていただきます。よろしくお願いします。
 本日も対面を基本としつつ、オンラインも組み合わせての開催としております。また、会議の公開につきましては、ユーチューブによるライブ配信で行うこととしております。
 まず、本日の委員の出欠状況について御報告いたします。
 本日は、飯塚委員、笠木委員が御欠席です。
 なお、会議冒頭のカメラの頭撮りはここまでとさせていただきたいと思います。
(カメラ退室)
○城山部会長代理
 それでは、議事に入らせていただきたいと思います。
 今回は、関係業界からの意見聴取を行いたいと思います。
 関係団体として、日本製薬団体連合会、日本製薬工業協会、米国研究製薬工業協会、欧州製薬団体連合会、日本医療機器産業連合会、日本医療機器テクノロジー協会、米国医療機器・IVD工業会、欧州ビジネス協会医療機器・IVD委員会より意見を聴取させていただきたいと思います。
 それでは、早速になりますけれども、意見陳述に移りたいと思います。
 進め方ですけれども、まず、関係団体の皆様よりプレゼンテーションいただいて、その後に質疑を行いたいと思います。
 関係団体の皆様は、最初に自己紹介をしていただいた上で、プレゼンテーションをお願いしたいと思います。
 それではまず、医薬品に関連する4団体よりプレゼンテーションをお願いいたします。
 最初に、日本製薬団体連合会副会長の宮柱さんのほうからお願いいたします。
○宮柱日本製薬団体連合会副会長・日本製薬工業協会会長
 皆様、おはようございます。日本製薬工業協会の宮柱と申します。
 まず、私からは、製薬協、PhRMA、EFPIAの3団体を代表しまして、2026年度費用対効果評価制度改革に向けた共同意見を述べさせていただきます。
 私どもとしましては、ドラッグラグ・ロスの悪化と、日本と世界の研究開発投資ギャップの拡大を防ぐことが重要であると考えております。
 背景として、1つ目、費用対効果評価を価格設定、そして保険償還の可否判断に使用している他国では、革新的な医薬品への患者さんのアクセスの機会が大幅に低下している状況がございます。また、より限定的な活用を行っている日本でさえ、さらなる薬価引下げと予測可能性の低下がもたらされている状況にあると捉えております。
 2つ目、日本の費用対効果評価は、薬価制度を補完するものとして加算部分の評価と価格調整に使用されますが、実際には主として薬価を引き下げるツールとして運用されている実態にございます。
 そこで、3つ目、私どもとしては、「骨太方針2025」に明記されているとおり、費用対効果評価制度導入後6年以上が経過した現在、客観的な検証が不可欠であると考えております。重要なことは、現行制度の拡大ありきで議論を進めるのではなく、現行の運用をしっかりと見直して改善すべきところは改善するというところでございます。これがドラッグラグ・ロスの悪化、そして日本と世界の研究開発投資ギャップの拡大を防ぐことにつながると考えております。
 以上が3団体の合同意見となります。
 続きまして、4団体を代表しまして、費用対効果評価専門組織意見書に対する意見を述べさせていただきます。
 こちらに概要として意見書のうち重要な3点に対する意見を示します。
 まず、有用性系加算がなく、市場規模が大きい品目の取扱いについては、加算部分の調整という当初の目的及び趣旨を逸脱していると認識しており、容認できないと考えております。
 追加的有用性がなく、費用増加となった品目の取扱いについては、ICERと閾値の数値的乖離のみで価格調整の妥当性を判断するのではなく、医薬品の多様な価値要素の評価と制度全体のバランスを踏まえた検討が必要と考えております。
 レケンビに係る特例的な取扱いについては、当該取扱いは当該製品に限定すべきと考えております。
 以降のスライドには意見書の各項目に対する意見をお示ししております。本日は時間が限られておりますので、説明を割愛させていただきます。
 続きまして、費用対効果評価制度改革に関する製薬協の意見を述べさせていただきます。
 費用対効果評価制度については、本来であれば、米国のように企業が自由に薬価を決められる状況のほうがなじみがよいものと考えております。一方で、日本においては既に精緻な薬価制度が存在しており、新薬への患者さんのアクセスを確保する観点から、薬価制度を補完する形で費用対効果評価制度が導入され、基本的には価格調整の対象範囲を加算部分としたものと理解しております。この前提において製薬協の意見を説明いたします。
 まず、骨太方針における費用対効果評価制度に関する記載ですけれども、客観的な検証を踏まえつつ、さらなる活用に向け、適切な評価手法等の検討と併せ、薬価制度上の活用等の方策を検討することとされております。
 次に、こちらは製薬協意見の要約をお示ししております。我々としましては、骨太方針の内容を踏まえ、まずは現行制度の客観的な検証を実施いただき、その上で新たな制度の在り方を含む議論を開始いただきたいと考えております。大きく2つです。
 「現行制度の課題と検証」については、当制度が導入され、6年以上が経過している今こそ、客観的な検証なしに現行制度のさらなる活用や拡大はすべきではないということでございます。「新たな制度に向けて」に関しては、客観的な検証を踏まえた上で、新たな制度の在り方を含む中長期的な議論を開始すべきである。また、その議論の場にも製薬協として積極的に参画してまいりたいということでございます。
 ここからは「現行制度の課題と検証」について説明させていただきます。
 まず、当制度の本格導入時の基本方針と目的の振り返りでございます。本格導入時においては、国民の理解が得られることと制度が円滑に導入されることが考慮され、当制度導入の基本方針として、治療が必要な患者のアクセスを確保することから、保険償還の可否判断ではなく、一旦保険償還した上での価格調整に用いるということ、また、既存の薬価制度を補完することから、価格調整の対象範囲を価格全体ではなく有用性系加算及び営業利益部分とするということと等が基本方針とされていたと理解しております。当時の医務技監の御説明では、日本の費用対効果評価制度は単にコストを減らすことが目的ではないこと、また、イノベーションも評価することが述べられております。
 こうした背景も踏まえて製薬協の立場をお示しいたします。費用対効果評価制度における重要な3つの要件は「薬価制度との整合性が維持される」「革新性を阻害しない」「ドラッグラグ・ロスを拡大しない」でございます。製薬協としましては、これら要件を満たすため「費用対効果評価を保険償還の可否判断に使用しない」「費用対効果評価の価格調整範囲及び対象品目を拡大しない」とすることが重要であると考えており、これを基本的な立場としております。
 現行制度には主に2つの課題があると考えております。
 まず、費用対効果評価において「臨床実態が十分に考慮されない」ということです。分析対象集団や比較対照技術を含む分析枠組みは分析前協議等での議論を経て決定されますが、臨床実態との乖離が見られる場合があると捉えております。また、分析を実施する際も必要なデータが不足している場合があり、これが考慮された事例は限定的であります。そこで、臨床実態と乖離しない分析枠組みとすべきであること、また、必要なデータが不足している場合は臨床実態を反映したデータを分析で考慮すべきと考えております。
 次に、費用対効果評価において「分析結果の不確実性が十分に考慮されない」ということです。現行制度においては費用対効果の分析で得られた単一のICERの値によって調整後価格が決定されます。もちろん総合的評価を含むプロセスの中で最終的な評価結果や調整後価格が決定されることは承知しております。一方で、不確実性の高い分析結果に関して幅のある評価がなされているのか不明瞭な部分もあると捉えております。そこで、分析結果の不確実性を考慮した評価方法・意思決定とすべきと考えております。
 冒頭に触れましたとおり、骨太方針においては「客観的な検証を踏まえつつ」とされました。ここでは、製薬協の考える検証項目の案をお示ししております。制度導入後6年以上が経過している今こそ、特に市販後の臨床実態との整合性の観点、不確実性が高い分析結果の取扱いの観点から、十分な検証を行っていただき、製薬協も参画したいと考えております。
 ここからは「新たな制度に向けて」について御説明いたします。
 前述の客観的な検証を踏まえた上で、現行制度における課題を解決できる新たな制度の在り方を含む中長期的な議論を開始すべきであると考えます。
 新たな制度実現のためには、実臨床を反映した分析と、臨床的、社会的、経済的及び倫理的な観点からの総合的評価が不可欠であり、これらが医療政策上の合理的な意思決定につながるものと考えております。
 骨太方針にも記載のある適切な評価方法の一つの形を提案させていただきます。価値評価のプロセスとして、分析、総合的評価、意思決定のプロセスを示しております。分析においては実臨床を反映した分析、総合的評価のプロセスでは、臨床的、社会的、経済的及び倫理的な観点からの総合的評価が重要であり、これが医療政策上の合理的な意思決定につながります。製薬協の提案は、最初の分析について臨床実態と乖離しない分析枠組みとすること、臨床実態が反映されたデータを分析で考慮すること、次の総合的評価について定量的分析に反映されない価値要素も考慮することです。
 具体的な制度設計や評価方法等については十分な検証を経てからの検証となりますが、私どもの提案をたたき台として新たな制度の在り方を含む中長期的な議論を開始すべきであり、その議論の場に積極的に参画してまいります。
 最後のスライドですが、製薬協意見の要約を再掲しております。
 お時間を頂きまして、ありがとうございました。
 以上でございます。
○城山部会長代理
 それでは、続きまして、米国研究製薬工業協会在日執行委員会の傳様よりお願いいたします。
○傳米国研究製薬工業協会在日執行委員会委員
 おはようございます。PhRMAの傳と申します。本日は陳述の機会を頂き、ありがとうございます。
 早速ですが、次のページをお願いいたします。まず初めに、費用対効果評価制度は、ドラッグラグ・ロスの状況を悪化させないために、有用性系加算の価格調整を行う現在の活用範囲を維持すべきで、拡大すべきでないと考えています。
 別添1になりますが、費用対効果評価を保険償還の可否に使用している国、オーストラリア、カナダ、韓国、英国では新薬の上市の数は少ない傾向になっています。それらの国々では薬事承認を受けても保険償還されない医薬品が多く存在しております。そして、費用対効果評価の実施は新薬の薬事承認から保険償還までの日が長くなってしまい、さらなるドラッグラグ・ロス状況になると考えております。つまり、アクセスイシューが起きているということになります。
 また、別添2のとおり、これまで日本の費用対効果評価制度において価格の引下げは多く起きているものの、引上げにつながった事例はない。よって、日本は本制度を特許期間中における革新的医薬品の有用性系加算部分を対象とした薬価引下げ手段として利用していると受け止めております。その結果、市場の予見可能性を低下させる一つの要因になっていると懸念しております。
 日本政府は費用対効果評価制度の拡大を検討しておりますが、別添3のとおり、薬価制度の評価より付与されたインセンティブが費用対効果評価制度の拡大により削減されることで、新薬の価格が薬価本体や、もしくは類似薬の薬価を下回る可能性も予測され、既存の薬価制度との矛盾が生じることを危惧しております。
 さらに、今年5月に米国トランプ大統領は最恵国待遇薬価の導入を目指す旨の大統領令に署名いたしました。導入により日本が参照国になった場合、特許期間中も低下する日本の薬価が米国の薬価に影響するため、日本への新薬投入に慎重になるということも懸念されます。
 次は、資料3ページをお願いいたします。以上のリスクを分析した上で、2026年度費用対効果評価制度改革に対する要望をお示しいたします。
 1つ目です。制度改革には、特許期間中の価格引下げリスクに関してですが、特に特許期間中の薬価に対しては費用対効果評価制度の価格調整範囲や対象品目を拡大すべきではなく、さらには本制度を保険償還の可否判断には使用すべきでないと主張させていただきます。
 2つ目です。現行制度下における分析方法、運用法に関する課題を別添4から8に示しております。PhRMAとして複数の項目を特定しており、その改善が必要かと考えております。
 3つ目です。昨年度の骨太の方針において、費用対効果評価のさらなる活用の在り方について、医薬品の革新性の適切な評価も含め、検討する旨が記載されていましたが、実際には昨年度検討されていないと認識しています。本年度の骨太の方針においても「客観的な検証を踏まえ」といった具体的な検証の必要性について明記されております。ぜひ医薬品の革新性の適切な評価を含め、課題として挙げました分析・運用法に関して、過去の分析結果や専門組織の議事録に基づき、医療経済学者、対象品目の疾患を専門とする臨床医、患者、統計学者を含む第三者の専門家によって透明性を持って客観的な検証がされることを強く望みます。
 私どもの提案の背景と、さらなる内容の詳細は、別添の資料にまとめておりますので、そちらをぜひ御覧いただきたいと思います。ありがとうございました。
○城山部会長代理
 続いて、欧州製薬団体連合会の青野理事長、よろしくお願いします。
○青野欧州製薬団体連合会理事長
 皆様、おはようございます。欧州製薬団体連合会(EFPIA Japan)の理事長を務めます青野と申します。本日はこのような発言の機会を与えていただき、感謝申し上げます。ありがとうございます。
 私どもは、日本で活動いたします、主にヨーロッパに本拠を置く研究開発型の製薬企業25社から構成される団体でございます。本日は、費用対効果評価制度につきまして、分析対象品目を有する会員企業の声も踏まえまして、私どもの考えを述べさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
 先日の薬価専門部会における意見陳述におきましてもお話しさせていただきましたように、2024年度の薬価制度改革におきましては、新薬開発を行う我々にとりまして後押しとなる前向きな改革を行っていただいたと考えております。ありがとうございます。
 一方で、運用開始から6年を経過しましたこの費用対効果評価制度ですが、過去に指定を受けた品目を見ましても、分析プロセスや運用の面、また、評価結果の妥当性など、多くの課題があると認識しております。つきましては、私どももまた、費用対効果評価のさらなる活用に関する議論の前に、まずは客観的な検証を行うことが必須であると考えます。その上で、適切な評価手法の確立に向けた検討を頂きたく、お願いを申し上げます。
 こちらは、費用対効果評価の指定を受けた品目を有する該当企業からの意見を参考にしまして、分析面と運用面での課題を提示しております。
 現行制度におきまして、分析面、例えば比較対照治療の選定等において臨床コンセンサスとの乖離が生じている事例があること、また、運用面におきましても、企業分析の提出時に必要なデータをそろえられないことや、公的分析側との議論の場が必ずしも十分に与えられていない、そういったように様々な観点から問題意識を持っております。これら分析面や運用面での課題を解消すべく、いま一度、当該企業及び臨床専門家の先生方、各学会、また患者会等から聞き取りも含めまして、客観性を担保すべく多角的に分析結果の検証を行うべきと考えます。
 こちらは最後のスライドでございます。ここまで述べさせていただきました客観的な検証を最優先にした比較対照の選定や分析プロセスなど、評価の中立性・透明性の向上に加えまして、今後の費用対効果評価制度の見直しに向けて御検討をお願いしたい点を記載しております。それは、革新的な新薬を患者さんが待ち望んでおられることを踏まえ、それが私どもの使命でもございますけれども、今後も新薬のアクセス及びイノベーションの阻害につながらない仕組みとしていただきたいということでございます。具体的には、まず、保険償還可否判断にこれを用いるべきではないと考えます。そして、薬価制度を補完する制度という本来の趣旨からも、費用対効果評価結果による価格調整範囲の薬価本体への拡大は行うべきではないと考えます。また、2024年度のイノベーションの推進を後押しした薬価制度との整合性が必要で、新薬開発促進の施策に逆行しないようにぜひお願い申し上げます。
 以上です。ありがとうございました。
○城山部会長代理
 どうもありがとうございました。
 次に、医療機器に関係する団体より、まとめてプレゼンテーションをお願いしたいと思います。
 それでは、最初に日本医療機器産業連合会の宮田様よりお願いいたします。
○宮田日本医療機器産業連合会副会長
 おはようございます。日本医療機器産業連合会副会長の宮田でございます。本日は医療機器業界として意見を述べる機会を頂戴し、誠にありがとうございます。
 時間も限られておりますので、早速、資料「費-6」を御覧ください。本日は、日本医療機器産業連合会、日本医療機器テクノロジー協会、米国医療機器・IVD工業会、欧州ビジネス協会、4団体の意見として述べさせていただきます。
 2ページを御覧ください。我が国の費用対効果評価制度は2019年に制度化され、保険償還の可否を判断するものではなく、材料価格制度との整合性を踏まえ、価値評価の補足的な手段として位置づけられていると認識しております。
 本年度の骨太の方針では、費用対効果評価制度について「客観的な検証を踏まえつつ、更なる活用に向け、適切な評価手法、対象範囲や実施体制の検討と併せ、薬価制度上の活用や診療上の活用等の方策を検討する」と記載され、中医協でも議論がされるものと考えております。この中で対象範囲については、材料価格制度の在り方とも関連しており、制度間の整合性の検討が重要であり、慎重な議論が必要です。
 一方、医療機器の特性に応じた評価の在り方についても検討が必要であると考えております。これは、費用対効果評価専門組織からの医療機器の特性に応じた評価の在り方について検討を進めるという意見に賛同するところであり、今回、医療機器業界からも提言をさせていただきます。
 あわせて、7月16日の費用対効果評価専門部会にて提示された「費用対効果評価専門組織意見書」に対する医療機器業界の見解についても申し述べます。
 続きまして、AMDDの鴨川委員長より要望の詳細について御説明いたします。
○城山部会長代理
 お願いします。
○鴨川米国医療機器・IVD工業会保険委員会委員長
 ありがとうございます。米国医療機器・IVD工業会保険委員会委員長の鴨川でございます。
 3ページを御覧ください。先ほど宮田副会長からも御説明がありましたように、医療機器の特性に応じた評価が必要と考えております。私からは医療機器の特性と課題、それらに対する要望について御説明させていただきます。
 まず、医療機器の特性について、医療機器特有の臨床エビデンス事情が挙げられます。倫理的な理由で比較試験の実施が困難な場合があり、また、薬事承認では臨床試験を求められないことが多く、臨床試験が求められた場合でもランダム化比較試験、いわゆるRCTを実施することがとても少ない状況です。そして、保険ではRCT以外のデータで加算評価されることが多いということがあります。そのため、費用対効果評価制度においては、RCTがない場合には間接比較により追加的有用性の評価を行うことになります。しかしながら、RCT以外のデータで追加的有用性を示すことが困難であるのが現状であり、結果として費用最小化分析に陥る事例が続いていることから、医療機器の費用対効果評価は不利な状況でございます。
 以上のことから、RCTのような強力なエビデンスがない品目は費用対効果評価分析に不向きであり、費用対効果評価の対象外とすることを希望いたします。
 4ページを御覧ください。医療機器は臨床試験やRCTを求められないことについて過去の実績で御説明させていただきます。左側のグラフは、新規薬事承認品目のうち、臨床試験を求められる申請区分の品目があったのかを示しています。グラフの一番下にある「新医療機器」及び「改良医療機器(臨床あり)」が臨床試験を求められる区分であり、年間およそ30~60品目で新医薬品の約3分の1にとどまります。これに対して臨床試験を求められない区分は「改良医療機器(臨床なし)」と「後発医療機器」ですが、年間およそ300~500品目で「臨床あり」の品目の10倍近くを占めています。
 右側のグラフは、新区分で保険収載された特定保険医療材料のうち、エビデンスがRCTか、そうでなかったのかを示したものです。特定保険医療材料としてRCTの結果をもって評価されているものは全体の5分の1程度でした。そのため、保険においては、単群試験、レジストリ、非臨床試験、文献などのRCT以外のエビデンスで評価されることが多いことが分かります。
 5ページを御覧ください。ここでは、費用対効果評価の対象となった3品目の事例を示しています。Micra AVは、間接比較と前向き観察研究により追加的有用性があると判断されましたが、植え込み後12か月以降のQOL差分がエビデンスの不足により評価されず、追加的有用性が十分には認められなかった事例です。
 Expedium Verse Fenestrated Screw及びゴアCTAG胸部大動脈ステントグラフトについては、比較エビデンスが不十分であり、費用最小化分析が採用されています。
 医療機器では現行の費用対効果評価のガイドラインに基づく追加的有用性の評価は難しく、これまで選定された医療機器3品目は、いずれもRCTがなく、追加的有用性が十分に認められていないことを示しています。
 6ページを御覧ください。下の表は、特定保険医療材料の画期性及び有用性加算の要件を示したものです。要件は「イ 臨床上有用な新規の機序」「ロ 類似材料に比した高い有効性又は安全性」「ハ 対象疾病の治療方法の改善」の3つありますが、加算の要件のうち(ロ)のみ類似材料との比較が必要となっています。そして、資料には記載しておりませんが、改良加算(ハ)も有用性系加算として対象となっております、その評価ポイントのうち、客観性及び信頼性が特に確保されている比較対照試験に該当するもののみRCTなどの比較エビデンスがあると想定されます。
 7ページを御覧ください。以上のことから、有用性加算の「(ロ)高い有効性又は安全性」を有することが客観的に示されていることに該当するものは比較エビデンスがあると想定されるため、費用対効果評価の対象とすることが妥当です。一方で(イ)の新規の機序や(ハ)の治療方法の改善は、比較エビデンスがなくても該当することがあるため、(イ)と(ハ)のみのものは対象外とすることを希望いたします。また、改良加算(ハ)の評価ポイントのうち、客観性及び信頼性が特に確保されている比較対照試験に該当するものはRCTなどの比較エビデンスがあると想定されるため、この評価ポイントに該当するもののみ対象とすることを希望いたします。
 8ページを御覧ください。医療機器では、使用成績を踏まえた再評価を行う場合の特例、いわゆるチャレンジ申請が認められていますが、これらチャレンジ申請の品目も費用対効果評価の対象となっています。再評価品目が費用対効果評価の対象となることはイノベーションの評価の推進に逆行すると考えることから、費用対効果評価の対象から除外することを希望いたします。御承知のとおり、チャレンジ申請の品目は、一旦既存区分で収載されてから、その後、加算を要望するものです。既存区分の予測販売金額は加算の有無にかかわらず発生するため、スライドにお示ししているとおり、加算による医療費の増額は限定的です。
 9ページを御覧ください。医療機器の特性を踏まえた価格引上げ要件の緩和に関する要望です。これまでの評価事例で対象となる特定保険医療材料の効果が比較対照技術に対し増加または同等であり、かつ費用削減が認められても価格引上げとならなかった事例がありました。引上げの要件としては、四角の中に記載された2つのいずれにも該当することとなっています。1つ目は、対象品目の効果が比較対照技術に対し増加または同等であることがメタ解析及びシステマティックレビューを除く臨床研究により示されていること、2つ目は、対象品目の基本構造や作用原理が比較対照技術と著しく異なるなど、一般的な改良の範囲を超えた品目であることです。1つ目の要件については、医療機器にはRCTが少なく倫理的に実施できないものがあること、2つ目の要件については、医療機器は改善・改良により開発されていることが多いため、一般的な改良の範囲を超えたと解釈されることは非常に困難です。これらは費用対効果評価と直接関係のない要件と考えられることから、解釈の緩和を希望いたします。
 10ページを御覧ください。先ほどの費用削減となった場合の取扱いについて、要件の2つ目は、一般的な改良の範囲を超えた品目であることの該当性判断がプロセスの後半である専門組織(iii)総合的評価の段階で行われており、予見性が低くなっております。そのため、専門組織(i)分析の枠組み等決定の段階で行っていただくことを希望いたします。
 11ページを御覧ください。この後、12~17ページにかけて費用対効果評価専門組織意見書に対する医療機器業界の見解を記載させていただいております。時間の関係上、3点について業界の意見を述べさせていただきます。それ以外は資料を御確認ください。
 12ページを御覧ください。介護費用の取扱いにつきまして、製品や治療領域の特性に応じて介護費用を含めた解析を検討いただきたいと考えております。
 15ページを御覧ください。価格調整範囲の在り方につきまして、価格調整範囲を材料価格本体にまで広げることは算定時に認められたイノベーション評価を否定することにつながりかねず、企業の研究開発インセンティブを著しく損なうおそれがあると考えております。
 17ページを御覧ください。診療ガイドラインへの活用につきまして、費用対効果評価の結果を診療推奨に過度に反映させることは臨床的有効性や患者様の価値観を軽視するリスクにつながることが考えられますので、慎重に御検討いただきたいと考えております。
 私からの御説明は以上です。
 最後に、AMDD森川副会長よりコメントさせていただきます。
○森川米国医療機器・IVD工業会副会長
 米国医療機器・IVD工業会副会長の森川でございます。本日は医療機器業界としてこのような機会を頂けたことを改めて感謝申し上げます。
 費用対効果評価制度は、単なる価格引下げツールではなく、価値に見合った価格を明らかにする仕組みだと信じております。材料価格制度を補完する本制度の改変により日本市場にとってネガティブなメッセージを発することがないよう、慎重な御議論をお願いしたいと思います。
 日本においては、薬事承認と保険償還が行われた後に費用対効果評価が行われるわけですけれども、医療機器では薬事承認時にRCTを求められることが少ないということで、費用対効果評価分析の中で追加的有用性が十分に評価されていないと認識しております。医療機器が社会に提供する多様な価値を適切に評価に反映できるよう、医療機器の特性に応じた評価の在り方について検討いただければと考えております。
 陳述は以上でございます。本日は誠にありがとうございました。
○城山部会長代理
 どうもありがとうございました。
 一通り御説明を頂きましたので、これより質疑に移りたいと思います。どなたからでも、江澤委員、お願いします。
○江澤委員
 いろいろ御説明ありがとうございました。
 資料に沿って幾つか御質問させていただきます。
 まず、資料1の3ページ、右側のところですけれども、「価格調整における柔軟な配慮の在り方に加えて対象除外の条件についても十分議論いただきたい」ということですが、具体的に何かお考えがあるのかどうか教えていただければと思います。
 続きまして、同じく資料1の5ページの右の3つ目のポツです。比較対照技術を含む分析枠組みの設定によって追加的有用性の有無が大きく変動し得ることは十分理解しておりますけれども、総合的な観点から追加的有用性、すなわち有効性、安全性、QOL等と認識しておりますが、総合的な観点からの追加的有用性の有無の判断について御説明を頂ければと思います。
 続きまして、資料2の7ページに臨床実態との整合性がまず出ておりまして、市販後の臨床調査等いろいろありますけれども、安全性は市販後調査でかなり管理されていると思いますが、市販後の臨床実態でどういった形で有効性を担保していくのか、また、中ほどに「不確実性が高い」とありますけれども、不確実性が高いことについての何か対応をお考えがあれば教えていただきたいと思います。
 また、同じく資料の10ページに「定量的分析に反映されない価値要素も考慮する」とありますが、この価値要素とは何を指しているのか、教えていただければと思います。
 続きまして、資料3については後段の8ページ以降にICERに関する見直しの資料がいろいろ添付されております。海外ではICERの不足量とか不足割合とかいろいろ工夫されていると思いますけれども、我が国の今のICERによる費用対効果評価について何かお考えがあれば教えていただければと思います。
 最後に、資料5でございます。確かに医療機器はRCTが実施できないことは十分認識しておりますが、4ページにありますように、一定程度はRCTを行って保険収載されているものもありますし、大事なのは、患者さんに対する有効性、安全性の担保だと思いますけれども、RCTが難しいのであれば、どういったことで評価を担保していくのかということが何か追加的にコメントがあればお願いしたいと思います。
 以上でございます。
○城山部会長代理
 どうもありがとうございます。
 御質問ということなので、御回答をお願いしたいと思いますが、今、御説明いただいた資料番号は多分、元のバージョンの資料番号ですね。1個追加されているので、ずれているので、1つずつ足していただければいいと思います。
○江澤委員
 申し訳ございません。1つずつずれているのですね。
○城山部会長代理
 1、2、3、5と言われましたが、2、3、4、6ということで御回答いただければと思います。
 それでは、よろしくお願いします。まず、宮柱様からでしょうか。
○宮柱日本製薬団体連合会副会長・日本製薬工業協会会長
 まず1つ目の御質問が資料2ですね。我々の3団体の意見として「希少疾患用医薬品など患者数が少ない疾患等に対する品目の取扱いも含め、価格調整における柔軟な配慮の在り方に加えて対象除外の条件についても十分議論いただきたい」、これの具体例が何かあるかという御質問という理解でよろしいでしょうか。
○江澤委員
 対象除外の条件について何かお考えがあれば教えていただきたいと思います。
○宮柱日本製薬団体連合会副会長・日本製薬工業協会会長
 ありがとうございます。
 こちらは、今、何か具体的なというところはございません。フォローアップさせていただきたいと思います。
○江澤委員
 ありがとうございます。
○傳米国研究製薬工業協会在日執行委員会委員
 今の御質問なのですけれども、例えば希少疾患でありますと、SMA治療のゾルゲンスマがあるかと思います。その場合ですと、今はハードストップがかかっていて、やはり患者さんの数が少ないということで計算やHTAに堪え得るものではないと思うのです。そういうことを考えますと、例えばリアルワールドエビデンスを活用するとか、ほかのいろいろな手法があるのではないかというところを今後柔軟にお考えいただければいいのかなと思っております。
○城山部会長代理
 今の点、よろしいでしょうか。
○江澤委員
 了解いたしました。
○城山部会長代理
 では、続けて、2つ目の点、5ページ目の総合的な観点。
○宮柱日本製薬団体連合会副会長・日本製薬工業協会会長
 不確実性のところの御質問という理解で回答させていただきます。
○江澤委員
 すみません。資料「費-2」の5ページの総合的な観点からの追加的有用性の有無ということで、この辺り、何か具体的な案があるのかどうかを教えていただければという質問でございます。
○宮柱日本製薬団体連合会副会長・日本製薬工業協会会長
 こちらに関しては追加的な有用性の有無ということで挙げさせていただきました。現行制度では単一のICERの値によって評価、調整がされるというふうな状況にございますが、先ほど申し上げましたとおり、社会的・経済的価値、そこには反映されていない定性的な価値も含めて追加的有用性の有無というものを評価していくことが重要ではないかと考えております。そちらを総合的に、分析は分析ですけれども、いわゆる評価の段階で加味するというところを挙げさせていただいております。
○ケビン・ハニンジャー米国研究製薬工業協会ヴァイスプレジデント(国際担当)
 このようなアセスメント評価をするというのは、ディスカッションして審議する機会を与えることになるかと思います。つまり、今まで使ってきた分析以外のほかの側面でありまして、その製品によってもたらされる価値を十分に検討されなかった部分に関してもさらに検討する機会となると思います。
 そういうことは結局、患者様に対してどういうベネフィットがあるかというような、ICERだけでは把握できなかったいろいろな医療制度にもたらすメリットとか、そういったことを検討する機会になりますし、あるいはどういった不確実性があったのかというようなことも検討できますので、それによりまして、日本の患者様等に対してよりよい意思決定を究極的にするということに貢献できると思います。
○傳米国研究製薬工業協会在日執行委員会委員
 あと、米国製薬企業のものなのですが、資料「費-4」の11ページ、別添7、こちらが我々が考えているICERの基準に基づく意思決定ということで、今、ケビンが申しましたように、不確実性を伴うICER基準を用いて価格調整率を機械的に決定するのは残念ながら日本だけであるということになりますので、そういったところも含めて総合的に柔軟な判断をぜひしていただきたいというものでございます。
○城山部会長代理
 2点目についてはいかがですか。いいですか。
○江澤委員
 あと、質問させていただいたのが資料「費-3」の。
○城山部会長代理
 3つ目の点ですね。
○江澤委員
 資料「費-3」の7ページと10ページについてコメントがあればお願いしたいと思います。
○城山部会長代理
 宮柱さんのほうからお願いいたします。
○宮柱日本製薬団体連合会副会長・日本製薬工業協会会長
 申し訳ございません。検証項目(案)というスライドでよろしいですか。
○江澤委員
 では、質問を口頭で申し上げます。市販後の臨床実態にそぐわないというところだと思うのですけれども、市販後に安全性はともかく有効性をどのように担保できるか、何か手法があるのか、お考えがあるかということと、不確実性が高いことに対しての何か御対応とか要望があるのか、最後のページに「定量的分析に反映されない価値要素」という言葉があるのですけれども、この価値要素とは何を指しているのかということで御質問しました。
○宮柱日本製薬団体連合会副会長・日本製薬工業協会会長
 ありがとうございます。
 市販後臨床試験等のデータも活用できると思いますが、こちらはどういったデータを使っていくか、そして分析していくかというのは議論が必要な部分というふうに捉えております。
 現行制度に、先ほどから申し上げましたとおり、原則として単一のICERの値によって調整価格が決定されるという現状がありますので、このような定量的な分析で捉えられない価値要素を総合的に評価の議論の中で定性的に考慮できる仕組みというものを提案させていただいております。
 今、ICERの中でもQALYというもので見ておりますが、ここでは捉え切れない要素がございまして、例えば患者さんの利便性の改善や、疾患によってのアンメット・メディカル・ニーズの高さ、そして疾患治療に関わるステークホルダーの皆様の御意見も含めて、臨床実態の中でどういった医薬品の価値を総合的に評価すべきなのかというところを議論したいと考えております。
○傳米国研究製薬工業協会在日執行委員会委員
 あと、タイミングのところなのですけれども、安全性であったり有効性のところが、最初の承認を受けてから物が出た場合というのは基本的にデータのリミテーションがありますし、限られておりますので、それをどうやって判断すればよろしいのかというところも一つの大事なポイントだと思いますので、ある程度の分析に堪え得るデータの数、n数といいますか、そういったものもやはり考慮いただきながら考えていく必要があるのかと思います。ただ、考慮する前に、私どもが申し上げているのは、今までHTAでアセスメントいただいた製品をもう一回振り返って、ほかのアセスメントの要素を入れるとどうなるのだろうというところを含めて、前に進む前に一度止まって今までの計算のやり方が本当に正しかったのかというのを一回検証いただくということを切にお願いしたいと思っております。
○江澤委員
 引き続き、また具体的な提案があればよろしくお願いしたいと思います。
○城山部会長代理
 資料「費-4」のICERのところまではよろしいですね。
 あと、医療機器のRCTの話ですかね。いかがでしょうか。
○鴨川米国医療機器・IVD工業会保険委員会委員長
 御質問ありがとうございます。AMDDでございます。
 まず、RCTがあるものを対象として費用対効果評価することに対して私ども同意しております。逆にRCTがない場合について、先生の御質問は、それ以外のやり方で何かできないのかということでよろしかったでしょうか。
○江澤委員
 はい、RCTができないのであれば、その代わりに担保する評価手法は何かお考えがあるかということでございます。
○鴨川米国医療機器・IVD工業会保険委員会委員長
 ありがとうございます。
 まず、現在の費用対効果評価のガイドラインによりますと、例えば単群データしか存在しない場合は、マッチングで調整された間接比較ですとか、ネットワークメタアナリシスなどによって有効性を示すというようなことが書かれております。しかしながら、この手法につきましても、結構データがないと分析がなかなかできない、難しいというのが現状と理解しております。
○江澤委員
 ただ、何か評価を得るための方法論は必要かなと思っておりますけれども。
○鴨川米国医療機器・IVD工業会保険委員会委員長
 現時点で我々として御提案するものは今はないのですけれども、そのため、基本的にはRCTがあるものを対象としていただきたいと考えております。
○江澤委員
 そういうことですね。了解です。ありがとうございます。
○城山部会長代理
 ほかはいかがでしょうか。
 長島委員、お願いします。
○長島委員
 医薬品業界の団体に御確認させてください。日本の市場としての魅力についての基本的な認識です。今回の資料「費-4」、PhRMAが提出された資料の5ページ、別添1のグラフを見ますと、費用対効果評価を使用している国と使用していない国、例えば一番右側で新薬の承認から保険償還までの日数が、CEAを使用している国で631日、CEAを使用していない国でも267日ですが、日本は新薬承認されれば原則60日で保険償還されます。圧倒的に早いです。比べものになりません。また、真ん中のグラフを御覧ください。承認されたものの保険償還される割合ですが、日本はほぼ大部分が償還されます。圧倒的に優れています。つまり、日本の薬価というのが保険償還と直結しているという意味では世界においても圧倒的に魅力的なはずなのです。そのことを前提として薬価の制度について議論すべきと思いますが、この辺り、日本の市場としての魅力はどう評価されていますか。
○城山部会長代理
 これはPhRMAさんに対する御質問ということでよろしいですか。
○長島委員
 全ての団体からお聞きします。
○城山部会長代理
 そうしましたら、PhRMAさんから。
○傳米国研究製薬工業協会在日執行委員会委員
 ありがとうございます。
 長島委員がおっしゃられますように、日本は薬事承認から発売までが60日、90日ということで非常に短いです。これはUSもほぼ同様な日数であると理解しております。それ以外の国は御覧いただきますように延びているというのが現状であります。ただ、今回の議論のHTAの観点というものをこういったイニシャルステージのアセスメントに使うということになりますと、必ずこれが延びる。先ほど私の陳述でも申し上げましたように、導入されている国で実際起きていることは、承認がなかったり延びたりというアクセスの障害が起きている。これは間違いなく事実でございますので、そこのところがまず我々の主張でありました。
 長島委員の御質問にお答えしますと、ここに関しては非常にベネフィットといいますか、魅力的でございますので、これを壊さないでいただきたいというのがまず我々のお願いでございます。
○城山部会長代理
 ほかの団体の方々、いかがでしょうか。
○宮柱日本製薬団体連合会副会長・日本製薬工業協会会長
 JPMAから回答申し上げます。
 おっしゃられるとおり、日本の薬事制度や保険償還については、我々としましても本当に世界に誇れる、スピード感を持って患者さんへのアクセスをつくり上げることができていると評価しております。
 今回は、費用対効果評価制度に関する議論と認識しておりますが、薬価制度という観点も含めて鑑みますと、これまでも団体として申し上げているとおり、薬価がついた後に毎年のように価格が下がるとか薬価改定が起きる。市場としてどう見られているかというと、予見性が低い国であるというふうに感じられております。そういった観点からすると、では、新規の医薬品を企業として投資しながら持ってくるかどうかという議論においては、この予見性の低さというものが非常に障壁になっているというのも事実であるかと考えております。
 あと、もう一つは、日本が特に革新的な新薬というイノベーションに対してどのように評価しているかという点は、今、まさに重要なポイントであると我々は考えておりまして、先ほどPhRMAからも話があったとおり、米国での動きもございます。そういった中で日本という国がイノベーションをしっかり評価して、しっかりと患者さんのアクセスを確保できる国である、そういった形で見せることが重要であると考えております。
 以上です。
○青野欧州製薬団体連合会理事長
 EFPIAのほうからも追加で発言させていただきます。
 今、長島委員から御指摘いただきました点につきましては、間違いなく日本市場の魅力だと考えております。これにつきましては、世界に冠たる、すぐに患者さんに恩恵を与えることができるという意味で非常にメリットがあると思っております。一方で、先ほどお二人からもお話がありましたように、様々、課題を改善いただければなと思うところもあります。そうはいいながらも、非常に魅力でありますアクセスが担保されているというところを維持するためにも、繰り返しになりますけれども、あくまで今の精緻な薬価制度の補完的な位置づけである、そういう観点に立ってぜひ制度の議論をお願いしたいと考えております。
○城山部会長代理
 長島委員。
○長島委員
 御回答ありがとうございました。
 業界からの意見がしばしば批判、マイナス点の指摘、極めてそこだけになっているということで、例えばドラッグ・ラグ、ドラッグ・ロスが悪化するというような一種脅しのようにも聞こえることが非常に多いのですが、これだけ日本の市場が魅力的であるということを大前提に、相対的な評価をしていただかないと、やはり建設的な議論にならないと思いますので、よろしくお願いいたします。
○城山部会長代理
 どうもありがとうございます。
 続いて、森委員ですね。
○森委員
 ありがとうございます。各団体におかれましては、御説明いただき、ありがとうございました。
 製薬企業に4点お伺いしたく思います。また、最後の介護費用に関しては医療機器の業界からも御説明いただければと思っております。
 まず、1点目ですが、前回の制度の見直しで価格引上げの要件の一部が緩和されました。ただ、これまで費用対効果評価で価格引上げとなったものはありません。これは評価方法の問題なのか、項目なのか、枠組みなのか、それから、今、ありましたけれども、比較対照技術の選定なのか、それとも薬剤そのものなのか、この要因について業界としてどのように捉えているのかをお願いしたいと思います。
 続いて、2点目で具体的なことですけれども、比較対照技術に関してPhRMAから具体的な考え方が示されていましたが、これに関しての意見があればお伺いできればと思います。「費-2」の5ページ目にも記載がありますけれども、比較対照技術を含む分析枠組みの設定によって追加的有用性の有無が左右されることはそもそもの課題で、費用増加となった品目だけの問題ではないかと考えているところです。
 3点目が、臨床実態と乖離しないというお話やデータの数の問題というお話がありました。リアルワールドデータの活用に関してです。承認時のデータではなくてリアルワールドデータを使用した評価方法を検討していくべきと私も考えますけれども、製薬企業としての受け止めと、実現可能性があるのかどうかということをお伺いしたいと考えております。
 最後、4点目になりますが、介護費用の取扱いについて、費用対効果評価制度でどのような取扱いや位置づけとするのがよいのか、現時点でお考えがあればお伺いできればと思います。この質問は医療機器の業界からもお願いできればと思っています。
 以上です。
○城山部会長代理
 それでは、最初の3点は製薬団体のほうからということで、最初、宮柱さん、補足あればまたほかの方からもお願いします。
○宮柱日本製薬団体連合会副会長・日本製薬工業協会会長
 まず、1点目に関しまして、価格引上げとなった品目がないところについて製薬業界はどう考えるかというところでありますが、現制度を見ますと、価格引上げのために、費用対効果が、よい分析結果が得られるというのがもちろんでございますし、それに加えて、別途設定されている引上げ条件を満たす必要がございます。こちらの引上げ条件というのも、比較対照品目より効果が高いことが臨床試験等で示されている、その臨床試験もインパクトファクターの高い論文であったり、日本人を含むアジア人の対象集団における統計学的有意性とか、あと、比較対照品目と比べても全く異なる品目であること等の価格引上げ条件としては厳しい条件があるというのは確かではございます。そういった観点で現行制度では費用対効果がよいという結果自体がなかなか得られない状況があり、これが影響して価格引上げとなった品目は、残念ながら、ないというふうに捉えております。なので、我々としては、価格引上げ条件の整理に当たっては、仮に当該条件が緩和された場合に、評価が終了した品目の中で価格引上げに該当する品目がどの程度あったのか、こういったものも含めて十分に検証していただきたいと考えております。
○傳米国研究製薬工業協会在日執行委員会委員
 それに加えまして、具体的なところですと、今、価格引上げが起こる値というのはICERの200ということになります。実際、200万以下の値を算出というのは非常に困難な状況だと考えています。医薬品の革新性を評価する上でICER200万円というのがそもそも適切な値なのかというところももう一度立ち止まって検討すべきではないかと思っています。
 また、たとえICER200万以下の結果を出すことができても、価格引上げになるには2つの条件を満たす必要が、宮柱副会長がおっしゃられたとおりなのですけれども、そのうちの1つである比較対照薬と比べて全く異なる品目であること、または基本構造や作用原理が異なるなど一般的な改良の範囲を超えた品目であることを認めていただくという、ハードルがまだ非常に高い状況でございますので、こういったところも今後、具体的にどのような検討がなされるかということを我々期待させていただきたいと考えております。
○ケビン・ハニンジャー米国研究製薬工業協会ヴァイスプレジデント(国際担当)
 2つ目の質問に関して、資料「費-4」の9ページの別添5のところですけれども、比較対照技術の選定に関して書いてあります。現在、日本の臨床ガイドラインによりますと、比較対照技術は1つ選定するということでありまして、広く使われているものの中から1つに絞るということが書かれています。
 それには2つの課題がありまして、1つは、しばしばその際に選ばれる薬といったものは、広く臨床実態で使われている薬とは異なるものが選定されるということです。例えばマンジャロという薬の場合には、比較対照技術として選ばれたものの、当時の薬剤の市場シェアは1%未満でありました。そういったことで最終的にはその比較対照薬は販売中止となったわけであります。そうなりますと、本当に実臨床を反映したと言えない、実臨床からかけ離れた形のものが比較対照薬として検討されたということになっている、そういった問題がございます。
 また、第2の問題点でありますが、多くの場合には比較対照薬が複数あるということになりまして、それは違った患者の対照群を対象に治療しているとか、あるいは違った疾患を対象に治療しているからであります。ですから、1つだけ比較対照技術を選ぶということは臨床の現実からかけ離れていってしまうということにつながりかねません。
 そこで、私どもから提唱申し上げたいのは複数の比較対照技術を選定するということでありまして、そして最終的に1つに絞られたものは、最も新しい技術によって置換される可能性の高いものを比較対照技術として選ぶべきであるということです。そこで包括的に複数の比較対照技術といったものを検討する。そして、ICERにそれを反映させて評価を進めていく。そのアセスメントの結果では、臨床の実態を把握した形で、より包括的かつ正確な形で日本の患者様のためになる評価が実現できると思っています。
 第3点の質問でありますリアルワールドデータの使用に関してお答えしたいと思います。リアルワールドデータの使用は賛同しておりまして、しかしながら、その使用法に関してはプロセスあるいはスタンダードといったものが期待されます。特に承認時にリアルワールドデータといったものが非常に限られているということがあると思います。臨床試験の場合でもそうですが、特に希少疾患などの場合にそうしたデータが限られておりますので、その後でデータを収集していくということがメリットがあると思います。しかし、リアルワールドデータを選んで、それを活用していくためには、スタンダードと整合性のある、合致した形でのプロセスが必要だと思います。
○傳米国研究製薬工業協会在日執行委員会委員
 4つ目の質問でございましたが、介護費用の取扱いだったと記憶しております。介護費用ですけれども、介護費用だけでなく、例えばインフォーマルケアや労働損失、こういったものを考える必要も本当はあるのではないかと考えています。ですので、こういったものを含めて、今までアセスいただいた製品に関してもう一度振り返ってみて、こういうものを入れたらどうなのだろうということを客観的にもう一度検証いただき、それをもって次の議論に進むということをぜひ御検討いただきたいと考えております。
○城山部会長代理
 では、医療機器のほうからよろしくお願いします。
○鴨川米国医療機器・IVD工業会保険委員会委員長
 それでは、医療機器のほうから返答させていただきます。
 介護費用につきましては、現在、事例もまだ非常に少ないことから、さらなる御検討が必要かと考えております。我々医療機器のほうも介護費用を削減できるような医療機器、医療技術が様々ございますので、ぜひこちらについて前向きに御検討いただければと存じております。
○城山部会長代理
 森委員、どうぞ。
○森委員
 御説明ありがとうございました。
 2019年4月、費用対効果評価制度が開始されて6年がたち、45品目は終了しています。そうした中、様々な御意見があったと受け止めました。ある程度の事例も集まった中で費用対効果評価制度は次のステージに、入るのではないかと考えております。費用対効果評価制度の本質である医薬品の価値を客観的に評価し、費用と効果のバランスを適切に見極めるため、これまでの評価結果や客観的な検証などを踏まえつつ、比較対照技術の選定、リアルワールドデータの活用、介護費用の取扱いについて検討していくべきと考えます。
 以上です。
○城山部会長代理
 どうもありがとうございます。
 2号側委員からはよろしいでしょうか。
 それでは、1号側委員のほうから、松本委員、お願いします。
○松本委員
 各団体からの御説明どうもありがとうございました。
 まず、資料「費-1」の共同意見の先頭にあるのですけれども、「費用対効果評価を価格設定や保険償還の可否判断に使用している他の国では、革新的な医薬品への患者さんのアクセスする機会が大幅に低下している」と断定されておりますが、いかにも費用対効果評価がアクセスに関するものの主要因であるかのようにミスリードいたします。各国で当然、医療に関する保険の制度であるとか負担方法は違いますので、そういうことを踏まえた上でということでないと、これは主ではないということは御指摘させていただきたいと思います。
 それでは、次に行きたいと思います。基本的に発表内容につきましては、業界からの御意見として承りますけれども、我々健保連といたしましては、これまでの費用対効果評価の実績から、追加的な有用性と費用のバランスをどのように考えるかということにつきましては、一定の知見が蓄積されてきたものと認識しております。その意味では、まだ客観的な検証が足りないという業界の認識とはかなり乖離があるように感じております。また、再三引用されております骨太の方針にも「更なる活用に向け」という枕言葉がついておりますことを改めて御指摘したいと思います。
 それと、業界からの御説明の中では、薬価制度を補完する位置づけにあるのだから価格調整の範囲は加算部分にとどまるべきということでございますけれども、保険者としては、皆さん御承知のとおり、薬価というのはベーシックな部分にプラスの加算がされているという構造になっておりまして、そのベーシック部分も含めました薬価の妥当性を費用対効果という視点で評価するということは極めて重要だと考えております。究極的には保険償還の可否の判断に用いるということも考える余地があると思いますけれども、まずは、より広い範囲で価格調整することが保険償還の納得性につながるということは改めて指摘させていただきます。
 もう一点、我々は、納得性を高めるという観点で資料「費-2」の10ページ、診療ガイドラインへの活用を具体的に検討していただくことについて、業界の皆様方に御理解いただいたことは感謝申し上げたいと思います。これにつきましては、医療機器のほうも言及されておりますので、ぜひこれについては今後検討していきたいテーマだと思っております。
 次に、医療機器についてでございます。先ほどほかの委員からもありましたけれども、特有の事情としてもRCTを実施しにくいということは理解いたしますが、そのことをもって、資料「費-6」の3ページにあるように、直ちに費用対効果評価の対象外とするという主張はなかなか受け入れ難いと申さざるを得ません。RCTができないのであれば、ほかにどういった代替手段があるのか、次のページ以降に一部入っておりますけれども、これについてはぜひ前向きな形での提案を今後もお願いしたいということを最後に述べたいと思います。
 私からは以上でございます。
○城山部会長代理
 御意見という理解でよろしいでしょうか。ありがとうございます。
 ほか、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 そうしましたら、予定の時間も過ぎておりますので、関係団体からの意見陳述についてはここまでとさせていただきます。
 本日の議題は以上であります。
 次回の日程につきましては、追って事務局より連絡いたしますので、よろしくお願いします。
 それでは、本日の「費用対効果評価専門部会」はこれにて閉会といたします。どうもありがとうございました。