第4回社会保障審議会生活保護基準部会最高裁判決への対応に関する専門委員会 議事録

日時

令和7年9月22日(月) 18:00~20:00

場所

東京都千代田区霞が関1丁目2番2号 中央合同庁舎第5号館
厚生労働省 19階 共用第8会議室

出席者(五十音順)

・岩村 正彦  東京大学名誉教授
・太田 匡彦  東京大学大学院法学政治学研究科教授
・興津 征雄  神戸大学大学院法学研究科教授
・新保 美香  明治学院大学社会学部教授
・嵩 さやか  東北大学大学院法学研究科教授
・永田 祐   同志社大学社会学部教授
・別所 俊一郎 早稲田大学政治経済学術院教授
・村田 啓子  立正大学大学院経済学研究科教授
・若林 緑   東北大学大学院経済学研究科教授

議題

平成25年生活扶助基準改定に関する最高裁判決を踏まえた検討について 

議事録

(議事録)
○岩村委員長 皆様、こんにちは。定刻となりましたので、ただいまから、第4回「社会保障審議会生活保護基準部会 最高裁判決への対応に関する専門委員会」を始めさせていただきます。
 委員の皆様方におかれましては、大変お忙しい中を御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
 まず事務局から、今日の委員の出欠状況と資料の確認をお願いしたいと思います。また、オンラインで出席されている委員の方もいらっしゃいますので、会議の発言方法等について、改めてではありますけれども御説明いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○千田社会・援護局保護課長補佐 事務局でございます。
 本日も、対面及びオンラインを組み合わせての実施とさせていただきます。また、動画配信システムでのライブ配信により、一般公開する形としております。アーカイブ配信はいたしませんので、あらかじめ御了承いただきますようにお願いいたします。
 まず最初に、本日の委員の出席状況について申し上げます。本日、オンラインも含めまして、全ての委員に御出席をいただいております。
 以上でございます。
 会議冒頭のカメラ撮りはここまでとさせていただきたいと思います。恐縮ではございますが、カメラの皆様は御退席をお願いいたします。
(カメラ退室)
○千田社会・援護局保護課長補佐 それでは、事務局よりお手元の資料と会議の運営方法の確認をさせていただきます。
 本日の資料でございますけれども、議事に関しまして、資料「平成25年改定当時における生活扶助基準について」を御用意しております。また、併せまして参考資料が4種類ございます。参考資料1「平成25年版労働経済の分析 主要労働統計表」、参考資料2「平成19年11月30日生活扶助基準に関する検討会報告書」、参考資料3「令和4年12月9日社会保障審議会生活保護基準部会報告書」、そして最後、参考資料4「伊藤参考人追加提出資料」の4種類を御用意させていただいております。
 会場にお越しの委員におかれましては、机上に用意をしてございます。もし過不足等ございましたら、事務局にお申しつけいただきますようお願いいたします。また、オンライン出席の委員におかれましては、電子媒体でお送りしております資料を御覧いただければと思います。同様の資料を厚生労働省のホームページにも掲載をしてございますので、資料の過不足等ございましたら、恐縮ですがホームページからダウンロードいただくなどの御対応をお願いしたいと思います。
 最後に、発言方法についてでございますが、オンラインで御参加の委員の皆様におかれましては、画面の下にマイクのアイコンが出ていると思いますので、会議の進行中におきましては、基本的に皆様のマイクをミュートにしていただきますようにお願いいたします。その上で、御発言をされる場合には、Zoomツールバーの「リアクション」から「手を挙げる」をクリックいただきまして、岩村委員長の御指名を受けてから、マイクのミュートを解除して御発言いただくようにお願いいたします。御発言が終わりました後は、Zoomツールバーの「リアクション」から「手を下ろす」をクリックいただきまして、併せて再度マイクをミュートにしていただきますようにお願いいたします。
 冒頭、事務局からは以上でございます。
○岩村委員長 ありがとうございました。
 先ほど事務局から御紹介がありましたけれども、参考資料4「伊藤参考人追加提出資料」につきましては、本日、直接議論をするというものではございませんが、第2回の委員会での原告関係者ヒアリングにおける議論の延長として補足説明をされるというものでございますので、参考資料としてお配りをしております。
 それでは、議事に入りたいと存じます。第2回及び第3回におきまして、まずは最高裁判決の趣旨や法的効果など法学の視点から議論を進めてまいりました。法的効果に関する重要な論点につきましては、専門の委員から一定程度御意見をいただいたということでございまして、一旦、法学的な議論は置いておいて、今回から、経済指標、データなどを参照しながら、平成25年改定当時の生活扶助基準の水準につきまして議論を深めてまいりたいと考えているところでございます。
 お手元の議事次第を御覧いただきまして、「平成25年生活扶助基準改定に関する最高裁判決を踏まえた検討について」が今日予定している議事ということになります。そこで、事務局のほうから資料も用意していただいているので、まず説明をいただきたいと思います。
 よろしくお願いいたします。
○榎社会・援護局保護課生活保護統括数理調整官 社会・援護局保護課の榎でございます。
 それでは、資料「平成25年改定当時における生活扶助基準について」、御説明いたします。
 1ページを御覧ください。
 第3回専門委員会における委員からの主な意見の概要を記載してございます。
 第3回は、最高裁判決の法的効果に関する論点を中心に御議論いただきました。その中で、6つ目の○にございますけれども、第1・十分位の消費実態との比較に関するデータを今後用意してほしいといった意見もあったところでございます。
 そして、最後の委員長のまとめの発言の中においても、次回以降は、平成25年から実施した生活扶助基準改定について、遡及的に改定するかどうかは一旦置くとして、経済指標といった統計データなども参照しながら議論を進めていくといった旨の御発言をいただいていたところでございます。
 これを踏まえまして、今回は、平成25年生活扶助基準改定当時の生活扶助基準の水準の再検討に関しまして、データを基に御議論いただくべく、関連する資料を御用意している次第でございます。
 おめくりいただきまして、2ページを御覧ください。
 生活扶助基準の水準を再検討するとした場合に、最高裁判決の判示内容を踏まえる必要があることから、デフレ調整に関するものを抜粋してお示しをしてございます。このスライドにつきましては、第1回の専門委員会の資料でお示ししたものとおおむね同様でございますので、説明の方は割愛をさせていただきます。
 次の3ページも同様でございます。
 4ページを御覧いただければと思います。
 生活扶助基準の水準の再検討に必要な材料・資料の案をお示ししてございます。
 真ん中の四角囲みの中に、必要な資料として考えられる例をマル1からマル4までお示ししてございます。マル1は平成25年基準改定当時の経済情勢に関する資料、マル2は平成21年全国消費実態調査の調査票情報により、一般低所得世帯の消費水準と生活扶助基準を比較した資料でございます。そしてマル3は訴訟における行政庁の主張に関する資料、マル4はその他参考資料でございます。
 次ページ以降で具体的なデータや資料を紹介していきたいと思いますが、事務局として考えられる例を議論の材料として用意させていただいたものでございます。これら以外に必要な資料などございましたら、委員会の中で御指摘をいただければ幸いでございます。
 なお、これまでの専門委員会では、データをお示しする際に一定の仕分けをすべきといった御意見を頂戴してございました。その点を踏まえまして、本資料では、ページの下段にございますけれども、3つの分類に分けてデータを明示する形としてございます。分類Iについては、平成25年基準改定において参照した指標のうち、改定に当たっての説明に用いたものでございます。分類Ⅱは、訴訟におけるデフレ調整に関する行政庁の主張、データでございます。そして分類Ⅲは、I、Ⅱ以外で現時点で活用し得る資料、データ、このように分類をさせていただいております。
 5ページ以降は、再検討に必要な材料・資料のうち、平成25年基準改定当時の経済情勢に関する資料をおまとめしてございます。
 6ページから8ページでは、平成16年から平成25年にかけての消費・物価・賃金の10年間の推移を対前年比でお示ししてございます。
 まず6ページを御覧いただければと思います。
 こちらは消費支出の推移をお示ししたものでございます。
 下段のグラフを御覧いただきますと、リーマンショックの影響もあり、平成20年以降で大きな落ち込みが生じていることが確認できるかと思います。
 続きまして、7ページを御覧ください。こちらは消費者物価指数の推移を示してございます。
 また、8ページでは賃金の推移を示してございます。
 いずれも消費と同様に、リーマンショック以降、減少している状況が、物価、それから賃金においても確認できるかと思います。
 それから、この後になりますけれども、全国消費実態調査の調査票情報を用いた水準比較の資料を紹介してまいります。その結果の評価に当たって、今御覧いただいた当時の経済情勢の影響をどのように考慮すべきか、あるいは、またこのほかに何か参照すべき指標がないかなど、委員の皆様から御意見を頂戴できれば幸いに思います。
 9ページ以降は、平成21年全国消費実態調査の調査票情報により、一般低所得世帯の消費水準と生活扶助基準を比較した資料でございます。
 10ページを御覧ください。
 水準比較の考え方、それから比較方法を整理してお示ししてございます。
 まず1つ目の○でございますが、これまでの定期検証では、一般国民の消費実態との均衡上の妥当な水準を維持する水準均衡方式の考え方を踏まえまして、一般低所得世帯の消費実態との均衡が適切に図られているかといった観点から検証を行うことを基本としてまいりました。
 具体的には、令和4年検証の場合では、令和元年全国家計構造調査の調査票情報を用いまして、まず夫婦子1人世帯のうち年収階級第1・十分位に該当する世帯データを抽出いたします。その上で、抽出した各世帯の消費支出のうち生活扶助相当支出額の平均値、それから、抽出した各世帯が仮に生活保護を受給したと仮定した場合の生活扶助基準額の平均値、これらをそれぞれ算出いたしまして、両者を比較することによって、生活扶助基準の水準の評価・検証を行ってございます。
 この集計方法に関しまして、次ページで補足資料を用意してございます。一旦、11ページを御覧いただければと思います。
 上段の表になりますが、調査票情報から抽出した世帯データのイメージをお示ししております。左端の列が世帯のIDとなってございまして、1世帯1レコードのデータ構成になってございます。各世帯のデータには、調査票情報を基に各世帯の級地や年齢などの世帯属性を示す情報、それから、各世帯が調査期間中に実際に支出した消費支出の品目単位の金額で構成をされております。
 抽出した世帯の世帯属性の情報を基に、平成24年検証時点の基準額表を対応させることによりまして、各世帯が仮に生活保護を受給したと仮定した場合の生活扶助基準額を算出することができます。
 また、消費支出の情報のうち、生活扶助に相当する品目のみに限定した支出額を集計することによりまして、生活扶助相当支出額を算出することができます。
 このような集計を世帯単位で行った上で、全体の平均を取ったもの同士を比較することで水準の検証を行っております。
 関連しまして、下段の表を御覧いただければと思います。夫婦子1人世帯の抽出方法を細かくお示ししたものになります。親の年齢や子の年齢、世帯員の就労状況などに関して抽出条件を設定してございますが、これらの抽出条件は、これまでの定期検証において、基準部会での議論を経て見直しがされてきてございます。
 平成19年検証と平成29年検証以降とでは一部条件が変更されてございます。主には家計構造の均質化という観点から、サンプル数を確保しつつ、家計構造が異なると考えられる世帯属性の世帯を除外するという考え方に基づく変更でございまして、抽出条件の適正化を図ってきたという経緯がございます。
 10ページにお戻りいただければと思います。
 3つ目の○を御覧ください。今回は平成25年改定当時における生活扶助基準の水準の再検討を行うということでございますので、使用するデータについては、改定当時に参照することができた直近のデータである平成21年の全国消費実態調査の調査票情報を用いてまいります。そのデータを用いて、今回はひとまず令和4年検証と同様の集計方法により水準比較を行うこととしております。
 ここで令和4年と同様の集計方法としている点に関しましては、先ほど11ページで御覧いただいたとおり、データの抽出方法は基準部会における議論を経て適正化を図ってきたという経緯がございますので、今回は最新の知見に基づいて比較を行うのが合理的ではないかと、このように考えたものでございます。
 細かな点で2点ほど補足をさせていただきます。
 ※2になりますが、調査票情報に関する補足でございます。平成21年全国消費実態調査の調査票情報は、平成24年検証当時においても、総務省の承認を得て厚生労働省にて利用可能な状況となってございました。ただ、必要な作業が完了次第、消去していたものでございます。今回は、最高裁判決を踏まえた対応の検討に使用する目的で、改めて総務省からデータを受領しているものでございます。
 それから、※3を御覧いただければと思います。水準比較の結果に関する補足でございます。水準比較に関しましては、第1回の専門委員会資料において、訴訟時にマイナス12.6%の乖離を確認していたといった旨を説明してございましたが、この数字は、生活扶助基準額が平成19年検証時点のものであるなど、訴訟当時に厚生労働省に残されていたデータの範囲で比較した、言わば概算の数字でございました。今回は、より精緻な水準比較を行うこととしてございますので、必ずしもマイナス12.6%とは数字が一致しない点に御留意をいただければと思います。
 また、今回は参考としまして、25年改定で採用したゆがみ調整やデフレ調整を反映した生活扶助基準額と、第1・十分位の消費水準との比較が可能となりますよう、生活扶助基準額について複数パターンお示しをしてございます。
 12ページを御覧ください。
 図の部分が今回の水準比較の結果をお示ししたものでございます。
 左側の黄色の四角でございますが、こちらは夫婦子1人世帯の第1・十分位における生活扶助基準額でございまして、平成25年の改定前時点の基準額表に基づいて算出したものでございます。すなわち、25年改定によるゆがみ調整、それからデフレ調整、これらを反映する前の時点の基準額ということでございます。
 これに対して、一番右端、緑の四角が生活扶助相当支出額の集計結果でございまして、左端、黄色の四角との間には12%の乖離が見られている結果になってございます。
 それから、御参考としまして、左から2番目、青の四角でございますが、ゆがみ調整のみを反映した基準額も示してございます。こちらは25年改定当時の2分の1に抑制したゆがみ調整を反映したものでございます。
 ページ下段の留意点に記載してございますが、この比較の対象として抽出された夫婦子1人世帯に対しては、当時のゆがみ調整により、結果としてマイナス3.5%の影響が生じていたということでございます。25年改定前の基準額に2分の1のゆがみ調整のみを反映した基準額、これが今御覧いただいた青の14万4433円でございますが、こちらと第1・十分位の生活扶助相当支出額、一番右端の緑の13万1673円でございますが、この両者の対比ではマイナス8.8%の乖離が見られてございます。
 また、右から2番目のピンクの四角は、ゆがみ調整に加えて、マイナス4.78%一律に引き下げるデフレ調整を反映した基準額を示したものでございます。25年改定後の基準額表に基づく額でございまして、25年改定を反映した後の生活扶助基準額と生活扶助相当支出額との間にはなおマイナス4.7%の乖離がある結果になってございます。
 今回、機械的に計算した結果を御覧いただいたところでございますけれども、この結果を踏まえまして、水準比較の方法が果たして妥当であるか否か、それから、消費水準と基準額との間の乖離をどのように評価すべきか、さらには評価のために追加で必要なデータが何かほかにあるかどうか、このような観点から委員の皆様に御意見を頂戴できますと幸いでございます。
 続いて13ページを御覧ください。
 御参考としまして、平成24年検証当時に基準部会において水準の検証が行われなかった経緯をまとめてございます。
 当初は、水準の検証と基準体系の検証を一体的に行う想定であり、まずはゆがみの検証を行った上で、ゆがみ調整を反映した上でもなお残る乖離(残差)について、夫婦子1人世帯のみならず、若年単身世帯や母子世帯など様々な世帯構成別に確認する方針でございました。
 しかしながら、特定の世帯構成等を分析するには、世帯類型によってはサンプルが極めて少数となるといった統計上の限界があるということなどを踏まえまして、十分な分析には至らず、結果として水準の検証が行われなかったといった経緯がございます。
 一方で、平成29年、それから令和4年の定期検証におきましては、水準の検証は、様々な世帯構成を対象とするということではなく、一定のサンプル数を確保できる世帯類型として、モデル世帯である夫婦子1人世帯の第1・十分位に該当する世帯に焦点を絞って検証することとしております。
 基準体系の検証において、全世帯のうち第1・十分位に該当するデータを用いて較差較差指数を算出した上で、モデル世帯を基準とした水準調整の結果と基準体系の検証結果による較差較差指数とを組み合わせることによりまして、あらゆる世帯構成に適用できる生活扶助基準が設定される仕組みになっているということでございます。
 14ページ以降でございます。
 訴訟における行政庁の主張内容に関する資料をおまとめしてございます。反復禁止効との関係も重要な論点ということでございますので、その関係からお示しするものでございます。
 15ページを御覧いただければと思います。
 改定当時の社会経済情勢について、リーマンショックの影響を中心にデータの説明をしてございました。
 なお、詳細なデータにつきましては参考資料1として添付してございますので、必要に応じて御参照いただければと思います。
 16ページを御覧ください。
 物価変動を考慮することとした主な経緯を示してございます。
 リーマンショックに端を発する世界金融危機によって、生活扶助扶助基準の水準(絶対的な高さ)と一般国民の生活水準との間の均衡が崩れていたといった点を説明した上で、生活扶助相当支出額が生活扶助基準額を約12.6%下回るなど、生活扶助基準の引下げが必要であることが明らかであったといった状況でございました。
 そういう中で、改定の減額幅が必要以上に大きくなることがないようにするため、消費の構成要素の一つである物価を指標としてデフレ調整を行うこととした旨を説明してございます。
 17ページを御覧ください。
 デフレ調整で用いた生活扶助相当CPIに関する主な個別論点をまとめております。
 基準年に関すること、それからウエイトイに関することなど、訴訟の中で争点となってございましたので、御参考までにお示しをしてございます。
 18ページ以降は参考資料でございます。
 まずは基準部会における生活扶助基準の検証内容に関する資料でございます。
 20ページを御覧いただければと思います。
 平成19年検証では、基準額がやや高めであったものの、原油価格高騰の影響などを踏まえて据え置くという判断をしておりました。この点に関して、第3回の専門委員会では、当時の経済情勢やその反映方法を検討会で議論されていたかについて御質問がございました。
 資料の右上に事務局追記ということで追記させていただいてございますが、改めまして確認したところ、検討会においてそのような議論をした事実はございませんでした。なお、平成19年検証の報告書を参考資料2として添付してございますので、必要に応じて御参照いただければと思います。
 21ページを御覧ください。
 令和4年検証に関する資料でございます。
 夫婦子1人世帯をモデル世帯とする点、それから、第1・十分位を対象とすることが基本的な考え方として整理されてございます。
 次ページ以降も令和4年検証に関する資料が続きますけれども、ポイントを絞って御説明をさせていただきたいと思います。
 1つ飛びまして、23ページを御覧いただければと思います。
 令和4年検証では、第1・十分位における水準比較を基本としつつ、集団の状況変化を確認する観点から、中位所得層に対する消費水準の比率などの指標についても確認を行っておりました。第3回の専門委員会において、一般国民の消費水準と比較した事例に関して御質問等をいただいていたことを踏まえまして、今回御紹介をさせていただきました。
 なお、令和4年検証の報告書につきましては、参考資料3として添付してございます。必要に応じて御参照いただければと思います。
 少し飛びまして、27ページを御覧いただければと思います。
 令和4年検証では、調査時点以降の新型コロナウイルスによる影響の評価についても論点になってございましたので、参考までにお示しをしてございます。
 また、飛びまして30ページを御覧いただければと思います。
 調査時点以降の社会経済情勢の変化の反映方法につきましては、直近の生活保護基準部会においても検討課題となってございますので、その旨を併せて御紹介させていただきます。
 32ページを御覧いただければと思います。
 一般国民と被保護世帯の消費支出格差に関する資料でございます。
 先ほど、令和4年検証で確認した資料を紹介いたしましたが、平成24年検証においても、今御覧いただいている資料を用いまして、一般国民と被保護世帯の1人当たり消費支出格差の推移を確認してございます。
 ここで御覧いただいている1人当たりの消費支出は、平均消費支出を平均世帯人員で除して算出したものでございまして、一般国民と被保護世帯の世帯人員や世帯構成を合わせていないという点がございますので、厳密な比較はできないものでございます。
 また、令和4年検証時点において参考として参照した、先ほど御紹介したものになりますが、中位所得層と第1・十分位の消費支出の比率を見た指標、こちらとは定義が異なるということでもございますので、これらの点に御留意をいただければと思います。
 33ページ以降でございます。
 こちらは物価と最低限度の消費水準との関係に関する資料でございます。今後の議論の参考となるよう、最高裁の判決を踏まえて用意をしたものでございます。
 34ページを御覧ください。
 物価と消費の長期的な推移をグラフにしてございます。
 赤色の線が消費の推移でございまして、青色の線が物価の推移を示してございます。網かけをしてシャドーをつけている部分でございますが、景気後退期の期間に焦点を当てますと、物価と消費の動きが比較的似通った動きを示してございます。とりわけ消費のほうがより大きく減少しているケースが多く見られるというのが特徴的ではないかと考えてございます。
 35ページを御覧いただければと思います。
 物価と消費の関係を定性的に説明した資料でございます。
 物価は消費の構成要素の一つということでございますけれども、総務省の説明によりますと、下段の下線部にございますとおり、消費の増加率が物価上昇率を上回る場合、その差は生活水準の向上と見ることができる、このように紹介されてございます。
 これを逆に考えますと、消費減少率が物価下落率を下回る場合、その差は生活水準の低下であると見ることができるのではないかと考えてございます。
 36ページを御覧いただければと思います。
 実質家計消費支出の増減の要因を分析した資料でございます。
 これによりますと、2008年のリーマンショックの影響として、実質家計消費支出が減少してございますけれども、その要因としましては、物価下落以上に可処分所得が減少していたことですとか、消費者マインドが低下していたといったことが寄与していた点がこの資料から示されてございます。
 以上を踏まえますと、これまでの景気後退局面においては、消費と物価はおおむね同様の動きを示しつつ、とりわけ消費が物価以上に下落したケースが多いと。そして、その場合の差は生活水準の低下によるものであって、特にリーマンショックのような、大きく実質家計消費支出が減少していたときには、実質可処分所得や消費者マインドの低下が大きく寄与していたと、このように解釈することができるかと思います。
 すなわち、特にリーマンショックのような大きな経済ショックが発生した局面においては、可処分所得の減少や消費者マインドの低下により、物価下落以上に消費が抑制されていたといった状況が、データ上も明確に確認できるのではないかと思います。
 今御紹介した点は、あくまで一般論としての見方でございます。物価と最低限度の消費水準との関係については、このような点も参考になるのではないかと考えて紹介した次第でございます。この点につきまして、委員の皆様の御知見を賜れれば幸いでございます。
 続いて37ページを御覧ください。
 御参考の資料でございますが、これまでの審議会等の報告書における物価に関する記載をまとめてございます。
 下段には、平成15年の生活保護制度の在り方に関する専門委員会中間とりまとめの抜粋を掲載してございます。
 その中で、3つ目の○になりますが、国民にとって分かりやすい指標の例示として、消費者物価指数が挙げられてございます。
 また、4つ目の○では、急激な経済変動があった場合には、機械的に改定率を設定するのではなく、最低生活水準確保の見地から別途対応することが必要であるといった旨の記載もあるところでございます。
 続いて38ページ以降です。
 こちらは、ゆがみ調整に関する資料になります。
 39ページを御覧いただければと思います。
 ゆがみ調整に関する最高裁の判示内容をまとめたものでございます。
 ゆがみ調整については、上から2つ目の○でございますが、児童のいる世帯への影響に配慮する観点から、その反映に当たり減額率を限定することには合理性がある。また、ゆがみ調整が生活保護受給世帯間の公平を図るため、生活扶助基準における展開のための指数を適正化することを目的とするものであることに照らせば、減額率に合わせて増額率を限定することにも一定の合理性があると、このようにされてございます。
 その上で、最後の○の部分になりますが、2分の1処理を含め、厚生労働大臣の判断に統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性に欠けるところがあるということはできない、このように判示されているところでございます。
 40ページを御覧いただければと思います。
 平成24年検証におけるゆがみ調整の検証結果の概要をお示ししたものでございます。
 こちらは第1回の専門委員会の資料でもお示ししたものと同じものでございますので、説明は割愛させていただきたいと思います。
 資料について、事務局からの説明は以上となります。御審議のほど、何卒よろしくお願いいたします。
○岩村委員長 ありがとうございました。
 事務局から、ただいま平成25年改定当時の生活扶助基準の水準を再検討するために必要と考えられる資料やデータについて、議論の素材とするという目的で例示をしていただいたところであります。
 そこで、それぞれの資料やデータも参考にしていただいて、水準の検討に当たってどのような指標やデータを参照するべきか、どのような手法で検討を行うべきかといった点について、先生方から専門的な知見を踏まえた御意見を頂戴したいと思います。どなたからでも結構ですので、よろしくお願いいたします。
 それでは、別所先生、どうぞ。
○別所委員 どのような資料が必要かという点ですが、データソースとしては、今挙げていただいたCPIと家計調査と全国消費実態調査がよいのではないかと思います。令和4年検証でも使われているものと同様の資料を使うのがよいのではないかと思っています。
 その上で、法律系の先生方に質問があるのですが、今日の資料の6枚目を出していただいていいですか。この資料で、白いセルにあるのは分類Ⅱなので、訴訟において既に提示された資料ということなのですが、統計自体が公開されているということを考えると、ブルーになっているところも訴訟のときには使うことができたと見るのがいいのではないかなと思われるのですが、そうすると、既に提示された資料を使って計算したものは有効ではないという話は前回出たと思うので、この表に出ている数字は、もし見直すとして、根拠として使うことができないものなのかということをお伺いしたいです。
 このまま使うことができないということなのか、これとほかを組み合わせて使うのであったら使うことができるという話なのかが分かれば教えていただきたいなと思います。分析をした後で、この根拠は根拠にならないと言われるとちょっと困るのでお伺いしたいです。よろしくお願いします。
○岩村委員長 ありがとうございます。
 まず事務局のほうで今の御質問に対してどうお考えかをお答えいただければと思います。
○榎社会・援護局保護課生活保護統括数理調整官 今、別所委員から御指摘いただきましたとおり、6ページの青の部分の資料につきましては、訴訟当時に我々のほうから特段お示しをしていたものではございませんけれども、ただ、一方で、公表値そのものであったり、あるいは生活扶助相当支出の部分については公表値を基に計算できるものでございますので、そういう意味では訴訟時点、訴訟当時にも、つくろうと思えばつくれたという種類のものになろうかと思います。
 その上で、御質問の御趣旨としましては、これが今回再検討するに当たって、言わば反復禁止効などとの関係で利用可能なデータと言えるのかどうかといった点かと思います。この点につきましては、今の時点で事務局としても何か明確なお答えを持っているわけではございませんで、御指摘いただいたとおり、法学的な観点も含めて今後整理していくべき点ではなかろうかと思います。
 ただ一方で、今回については、データはデータとして御覧いただいて、そういった法学的な観点は一旦置いた上で、データを基に議論をできないかということで考えてございます。
○岩村委員長 ありがとうございます。
 別所先生、どうでしょうか。
○別所委員 分かりました。
○岩村委員長 ありがとうございます。
 もちろん別所先生も含めてですが、ほかにいかがでしょうか。
 太田先生、どうぞ。
○太田委員 どうもありがとうございます。
 別所先生の質問に対する私の意見と、それから、素人として、経済系あるいは社会福祉系の先生に私からお伺いしたいことがあります。
 まず1点目、別所先生からの質問に対しては、私は、引っかかる可能性はあると思っています。つまり、後の訴訟で問題になったときに、最初の訴訟で追加できた理由ではないかと言って、もちろん原告側から攻撃されるし、裁判所が原告の議論を採用して違法とする可能性は、可能性としてはあると思います。
 ただ、前提として、使うに値するデータであることが必要です。つまり、最高裁に違法であると言われた部分を乗り越えられるデータであり、データの解釈であるということが、まずデータ内在的に成り立つかどうかが問題で、そこをパスしないと使えないわけです。そこは訴訟に使えるか以前の問題としてあるのだということでお考えいただいたほうがいいかなと思います。
 その上で、事務局にお願いするか、経済の先生に少し御意見をお伺いしたい1点目なのですが、問題にされていた今日の資料の6ページ、先ほど別所先生が出してくれと言われた資料でございます。消費支出を見ているものです。平成21年、よりによってたしかそこが全国消費実態調査をやった年だと思うのですが、その年だけほかのものに比べて第1・十分位ががんと下がってしまっているのです。その調査のデータというのはどの程度信用に値するのか。つまり、生活扶助相当支出額を調べる際に、この消費支出のデータというのはどの程度信頼に値するのかというのが私からお伺いしいことです。ならして考えないといけないのですが、このときだけ平成21年のデータを使うことになってしまうので、その信頼性をお伺いしたい。
 それから、2点目として、事務局へのお願いですが、令和4年検証ですと第3・五分位との比較というのは一応やって、70%ぐらいあるから問題ないということで、今度、第1・十分位との比較をしているのですが、今回、平成25年生活扶助基準改定当時を今から検証するとしたときに、そのデータが出ていないので、それはやっていただけないか。そうでないと、消費支出の平均は下がっていないのに第1・十分位だけどんと下がってしまっている、このときの生活水準の低下を示唆するデータをそのまま使っていいのかというのは、2003年改定の報告書との関係でも問題になるだろうと思うので、お願いしたいと思います。
 それから、3点目として、経済、社会福祉の先生にこの際お伺いしておきたいのは、平成24年検証のときにはゆがみ調整と一体的にやると言いながら、結局高さの検証をやらなかったわけです。13ページにおいて、統計上の限界があるといったことからやらなかったとあります。だから、その当時の専門家は、ゆがみ調整に加えて消費を見ながら生活扶助基準の高さの検証・調整をやることは、いろいろな理由からどうも断念したと解釈できるわけですが、断念する当たって、この当時の委員会が言った理由づけというのは、今から見て説得的なのかどうかということです。
 つまり、説得的であるならば、今の我々がデフレ調整に当たる部分を何らかの形で今度消費を見ながらやるとすれば、当時の判断を上書きすることになります。これは訴訟とは関係なく、行政裁量の基本をなす専門的な判断として、前はおかしいが、今の知見ならばやれると、前はおかしかった、平成24年当時の検証は、専門家としておかしかったのだということを言いながらやることになるので、これは反復禁止の考え方とは別に、ちゃんとそこの論証ができるかということが問題になります。
 前がおかしければやりやすいのですが、前が正しいのであったら、今の我々がやろうとしていることは、その限界を超えられないのではないかという問題が出てくるので、この部分について、13ページでまとめられた説明を読んで、そうだよねと思うか、ちょっとそれは日和見過ぎ、つまり、言葉が悪いひどい言い方をすれば、火中の栗を拾うのが嫌で逃げるための論理であって、本来ならばもっと向き合わないといけなかった、向き合う手段もあったのだと考えることのできるものなのか、そこら辺、どういうふうにお感じになるのか、この際教えていただければ幸いでございます。
○岩村委員長 ありがとうございます。
 経済系の先生方への御質問だったと思いますが、どなたか可能な限りでお答えをいただけるとありがたいです。
 若林先生、よろしくお願いします。
○若林委員 経済の若林です。
 
2つ目の点については、もう少し時間をいただきたいと思います。まず1つ目の家計調査について、その信頼性の程度について、私の分かる範囲で説明させていただきます。
 家計調査は、私たち経済分野で消費データを扱う際に、一定期間にわたって消費を詳細に把握できるという点で、最も頼りにしているデータの一つです。
 また、ご指摘のあった全国消費実態調査についても触れたいと思います。こちらは5年ごとの調査であり、継続的に消費動向を追うことは難しい面があります。一方で、家計調査は連続した期間の消費の動きを確認でき、さらに個別の消費項目ごとの変化も把握できます。そのため、国の統計の中では特に信頼性の高いデータであると理解しております。
 
○岩村委員長 ありがとうございます。
 後ほどでも結構ですので、もう一つの質問についてもお願いしたいと思いますが、ほかの経済学の先生。
 太田先生、どうぞ。
○太田委員 私の質問がうまくポイントを突いていなかったようですが、統計データそのものの詳しさとか信頼性を疑問に思っているわけではなくて、平成21年の結果を見ると、消費支出の平均の下がり方と第1・十分位の下がり方が随分違うのです。そのときに、第1・十分位の消費支出を見て、生活扶助基準相当支出額をこのときのこのデータを基礎に解釈するというのはいいのでしょうか。どちらかというと非常に特異なときのデータだけ使って見てしまったことになりはしないのでしょうかという、そこら辺はどう考えればいいでしょうか。
○若林委員
 この点については、正直に申し上げると、実際に確認してみないと分かりません。そのため、これをそのまますぐに活用するのは時期尚早だと考えます。実際にそうである可能性もあれば、そうでない可能性もあります。私たちの立場から言えば、個票を確認しなければ判断できません。例えば、異常値が影響しているかもしれませんし、特定の消費項目が反映されている可能性もあります。特にリーマンショック後の時期であるため、慎重な判断が必要です。私自身も、この青い部分を見て、正直ここまで下がっているのかと感じております。
○太田委員 ありがとうございました。
○岩村委員長 もしよろしければ、ほかの経済学の先生、いかがでしょうか。
 では、別所先生、どうぞ。
○別所委員 大体若林さんがおっしゃったことでいいと思うのですが、令和4年の検証では、直前にコロナがあったので、データを見る際にコロナの影響の話をしています。全国消費実態調査のほうは5年に一度だし、統計の精度が高いのは確かなのですが、リーマンショック直後だという事情があるので、そこを補正するために家計調査なりなんなりを使うというのが必要かと思います。
 つまり、緑の線が落ちていること自体は、僕としてはあるかなという気はしていますが、だからといって、これをそのまま生活扶助の基準に持っていくというのは危険だろうというような方向で考えるのがいいのではないかと思っています。
○岩村委員長 ありがとうございます。
 太田先生の第2の質問もあるのですが、ほかの点でも結構ですので、いかがでしょうか。
 村田先生、どうぞ。
○村田委員 若林先生と別所先生の意見とほぼ同じといえば同じなのですが、若林先生が説明してくださいましたが、統計はその中身を見ないと分からない部分もございますので、例えば第1・十分位となると、全体の平均と比べサンプル数は少なくなるわけです。全世帯で8,000世帯程度だったかと思うのですが、その10分の1になるわけです。例えば、平成20年はむしろ少し強めに出ています。そうすると、たまたま平成20年に何か大きな買物をした人が入っていたりしますと、平成21年がその前年比ということで多少低めに出るというのは、経済指標には起こり得ます。そういう意味では、それを確認するとなりますとかなりの作業が必要になるので、確認できないわけではないのですけれども、そういう手続が必要になるということです。
○岩村委員長 ありがとうございます。
 では、別所先生、どうぞ。
○別所委員 太田先生の2番目の質問について、今の感想というか第一印象だけ申しますと、世帯のパターンがすごくいろいろあるのを、それぞれに比べてゆがみの検証をしたいと思ったけれども、世帯数が少なかったのでできなかったと言われると、世帯の種類というか構成がすごく何パターンもあるということを考えると、ない話ではないなと思います。でも、少ないってどれくらいというのは、ちょっと幅があるところはあるので広めに取った。それだったら平均を出しても意味がないので出さなかったという話になっていると言われると、そうかもしれないと思います。
 さっきおっしゃったように、今回の我々の再検証で、平成24年検証のやり方がおかしかったと言えるほどおかしかったか。だから、今回、我々の検証をこの後の令和9年とかで使えるようにするほどおかしかったかというと、多分そうではないのではないかなと思っています。
 以上です。
○岩村委員長 ありがとうございます。
 太田先生の第2の質問のほかに、例えば物価と最低限度の消費水準との関係というのはどうなのかというのも、令和4年とかの検証との比較では、論点としてあり得るところで、とりわけ最高裁判決の関係ではそこのところがポイントではあるのですが、何かその辺についてコメントをいただけるとありがたいなと思いますし、よりその点を詰めるためにはこういうデータが欲しいとかということもあれば、それも含めてですけれども、いかがでございましょうか。
 村田先生、どうぞ。
○村田委員 ありがとうございます。
 基本的には全国消費実態調査、今だと全国家計構造調査が、サンプルサイズもあり、いろいろな構造の世帯についても分析できるということで、全消を使って分析することが理想と思うのですが、ただ、5年に1回しかデータがない。日々の暮らしは毎日進みますので、例えば物価が上昇したり、あるいは低下したときに、それを踏まえて検討する。その場合に、消費額ももちろん参考になるのですけれども、参考指標の一つとして物価を参照する。その場合には家計に一番近い消費者物価指数を参照するということにつきましては、妥当な考え方ではないかと考えておりますし、この考え方については、前回の資料や、今日の37ページの平成15年の報告書にも、「国民にとって分かりやすいものとすることが必要なので、消費者物価指数の伸びも改定の指標の一つとして用いることなども考えられる」、とあります。当時は物価が下がったりもしていましたので、消費者物価指数を指標の一つとする。ただ、「なお、急激な経済変動があった場合には、それも別途対応する必要がある」ということで、ここの部分は私も読んでいて賛同したというか、こういう考え方でCPIを一つの参考指標にすることは、妥当性のある判断ではないかと思います。
○岩村委員長 ありがとうございます。
○村田委員 1つ補足しますと、それでまた5年後に統計が出れば、またそれを踏まえて見直していくということですね。
○岩村委員長 ありがとうございます。
 それから、今日もう一つこの資料の中でポイントになっているのは、資料の12ページの分析でありまして、これは今回、総務省からデータを取り寄せて、事務局のほうで、そのデータを基に分析をした結果がまとめられているところなのですが、この内容というか分析の手法、それからその結果については、特に経済学の先生方はどのように捉えられるかというところについてもコメントをいただけると大変ありがたいのですけれども、いかがでございましょう。
 別所先生、どうぞお願いします。
○別所委員 まず、今出ている数値自体は、個票を使って計算してこうなったのならば、そうだろうなというところです。
 そうなのですが、先ほどの家計調査の6枚目のスライドで見たように、平成21年は消費が落ち込んだ年ですので、12枚目のスライドに戻っていただくと、右側の13万1673円というのが、不景気の影響で一時的にかなり落ちたものを統計として拾ったというふうに見るのがよいのではないかなと思います。
 なので、この数字はこの数字として別に間違っているというわけではもちろんないのですが、これだけを使って決めるのはさすがに危険で、先ほどの家計調査あるいは物価とかを使って修正というか調整というかをする必要があると思います。その調整がどれくらいだったら妥当かというのは、ほかのデータを見てからかなというところです。ほかの先生方はどうでしょうか。
○岩村委員長 ありがとうございます。
 素人ながら、今日出てきたデータを先ほど見ていたのですが、34ページのグラフをつらつらと見ていたのですが、これも経済学の先生に教えていただきたいのですが、このグラフで見ると、2011年のところが物価と消費がかなり乖離していて、2010年は近かった、むしろ消費のほうが高かったのに、2011年はどんと落ち込んで、その後、2012年にまた上がる、物価より上に行くという動きをしていて、これがちょうどまさに改定の検証をやる前年のデータということになっていて、しかも2011年は、事務局に作っていただいたグラフだと景気後退期ということにはなっていないので、この辺をどういうふうに経済学の先生方は御覧になるのかなとちょっと思っていたのですが、急な質問で申し訳ないのですが、いかがでございましょうか。
 若林先生、よろしくお願いします。
34ページの図についてですが、2011年には東日本大震災の影響があるのではないかと考えております。
 その上で、先ほどの12ページに関する別所先生のご指摘とも重なりますが、私たちの立場からすると、この表を一つだけ示すのではなく、例えば異なる指標を用いた場合にどうなるかといった値を出したり、複数の図を描いて比較したりすることが必要だと考えます。
 また、事前にお伝えしていませんでしたが、現状では黄緑との差しか示されていません。しかし、黄色と青、あるいは青と赤の差なども図示し、それらと緑との関係を併せて示したほうが、より分かりやすいのではないかと思います。
 結局、一つの結果だけを提示すると、6ページに示されているような大きく落ち込んだ部分を過度に反映してしまう可能性があります。そのため、別の方法で算出した場合にどのような結果になるのか、複数の図を示すことが必要ではないかと考えております。
 
○岩村委員長 ありがとうございます。
 後ほどで結構なのですが、事務局のほうに、どういうものがほかの指標として考えられるかというようなことについて経済学の先生方から御教授をいただけますと非常にありがたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 先ほど太田先生のほうから、第3・五分位との比較をできればやってほしいという御要望があったのですが、事務局、いかがでしょうか。
○榎社会・援護局保護課生活保護統括数理調整官 回答が漏れており、大変失礼いたしました。
 御指摘の点については、速やかにデータをお示しできるように準備をさせていただきたいと思います。また次回以降でということでお願いできればと思います。
○岩村委員長 ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
 その他、経済系の先生方、何かさらに作業を進める上で御注意いただく点とかがあればぜひお願いしたいのですけれども、いかがでしょうか。
 若林委員、どうぞ。
○若林委員 。
1点お願いがございます。直接本日の議論には含まれていませんが、要望として申し上げます。32ページの資料分類Ⅱに「一般世帯と被保護世帯の1人当たり消費支出格差の推移」が示されています。これはもともと存在していた資料だと思いますが、恐らく元の世帯消費額ではなく、1人当たりに換算した数値を掲載しているという理解でよろしいでしょうか。
 
○岩村委員長 事務局、いかがでしょうか。
○榎社会・援護局保護課生活保護統括数理調整官 御理解のとおりでございます。平均消費支出を平均人員で割ることで、1人当たりの消費支出を計算したものでございます。
○若林委員 
恐らくですが、その前段階の情報として、平均消費支出と平均世帯人員を併せて示したほうが望ましいのではないかと考えております。そうすることで、格差を検討する際に、1人当たり消費支出だけでなく、より多面的に理解できると思います。
 と申しますのも、1人当たり消費支出を算出する場合、平均消費支出を平均世帯人員で単純に割ることが必ずしも適切とは限らず、規模の経済を考慮して平方根で割るなどの方法もあります。したがって、このやり方自体が誤りというわけではありませんが、加工後の数値のみを提示するよりも、元となる数値が併記されていたほうが、議論をより円滑に進められるのではないかと考えております。
 
○岩村委員長 ありがとうございます。
 事務局のほうでまたそれも御検討いただけるものなのかどうか、まずそもそもあるのか、いかがでしょうか。
○榎社会・援護局保護課生活保護統括数理調整官 ありがとうございます。
 検討させていただきたいと思います。時系列データでかなり古いものも含まれてございますので、どこまでバックデータとして残っているかというところにも依存してくる可能性もあるかと思います。その点を踏まえて検討させていただきたいと思います。
○岩村委員長 よろしくお願いいたします。
 ほかにはいかがでございましょう。
 永田先生、どうぞ。
○永田委員 ありがとうございます。永田です。
 質問ではなくて、今後の検討に向けての見解、本日の確認として受け取っていただければと思います。
 まず、平成25年の基準部会の報告書では、平成21年の全国消費実態調査を踏まえて、ゆがみの調整を行うとされた。これが一定の裁量の中で行われて、それは適法とされています。
 また、そこに書かれていない高さの調整を物価で行ったことが違法とされたわけですけれども、今回、先生方が御指摘のとおり、一定の制約があったにせよ、実際にこれまでとの連続性のある方法で、つまり全国消費実態調査に基づいて一般低所得世帯の消費水準と比較してどうだったのかということが数値として示されて、その高さの点で調整が必要であったということが一定程度確認できたという意味では、重要であったと思います。
 ただし、そもそもの最高裁の判決では、高さの水準の調整をすること自体、不合理ではないと認めているわけですし、高さの調整をしなければならないとした判断そのものは否定されていないと私は認識しています。
 その上で、現在、処分が取り消された状態になっているとすると、当時の基準の高さを検証することを実際にやっていくということ、また、それを精緻にやっていくということは非常に重要だと思う一方で、それを遡及的に改定することとの間には、生活保護法第8条2項の要請があるにしても、整理すべき法的な課題があるというのは前回からの御議論かなと思っています。
 委員長もこの点については、今日は議論せずにということでしたので、それは承知しているのですけれども、基準の高さの調整の妥当性を確認すること、あるいはさらにそれを精緻に確認していくことは重要であるということを認識した上で、先ほど別所先生がおっしゃっていましたけれども、当時の基準部会のデータの制約でされなかったこと、あるいはそれに諮られなかった諮られことを現在の時点で行って、新たな改定の根拠とできるのか、この点については今後議論していく必要があるのではないかなと感じましたので、今後の検討への見解として申し上げておきたいと思います。
 以上です。
○岩村委員長 ありがとうございます。
 その点は、また法律の議論に戻ったところでいずれにせよしなければいけない議論だと私自身も認識しておりますので、また後日議論させていただければと思います。
 では、池上課長、どうぞ。
○池上社会・援護局総務課長 御議論いただきましてありがとうございます。
 前半のほうで太田委員から御質問があった2点目に関係しますけれども、資料13ページについて、経済系の先生方に確認的な質問をさせていただけたらと思います。
 最後の○につきまして、太田委員から御質問がありまして、別所委員から一定のお答えがあったかと思っているのです平成21年のこのデータについて、平成29年検証あるいは令和4年検証と同じ方法を取ると、高さの差についても一定の確認ができると理解してよろしかったでしょうか。この点について念のため確認させていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
○岩村委員長 別所先生でも、ほかの先生方でも結構ですが、いかがでございましょうか。
 別所先生、お願いいたします。
○別所委員 おっしゃるとおりだと思います。一定の標本規模を確保できる世帯について、高さを出すということですので、平成29年検証、令和4年検証と同様の方法を平成25年についても行うということでいいのではないかなと思っています。
○岩村委員長 ありがとうございます。
 太田先生、どうぞ。
○太田委員 ありがとうございます。
 私も、その部分について念のためにお伺いしたいのですが、13ページの最後の○の手法を取るときに、この年は、2分の1処理を含めて、ゆがみ調整もやっているわけですよね。この部分の影響を排除した形で、デフレ調整に当たる部分のやり直し部分の数値というのは特定的に出せますか。出せないのであったら、ゆがみ調整込みでさあどうするかみたいなことになってしまうので、その部分はいかがですか。そこは訴訟において少し論点にされていたこととも関わりますので、念のためお伺いしておければ幸いです。
○岩村委員長 事務局、いかがでしょう。
○榎社会・援護局保護課生活保護統括数理調整官 資料12ページの図を改めて御覧いただければと思います。恐らく今、太田委員が御指摘の点については、当時のゆがみ調整とデフレ調整を切り離して見ることができるかといった御趣旨の御質問ではないかと理解いたしましたけれども、12ページでお示ししているのは、青の箱についてはゆがみ調整のみを反映したもので、そこからさらに4.78引き下げるというデフレ調整を反映したものが赤の箱ということで、すなわち、それぞれの影響を切り分けて数字としてお示しすることは物理的には可能ということでございます。御趣旨に沿った回答になっているか自信はございませんけれども、一旦回答させていただきます。
○岩村委員長 どうぞ。
○太田委員 12ページのほうは分かるのです。ゆがみ調整をやった後で、物価という消費と違うものを使っているから、それはできるだろうと思います。適切かどうかは別にして、できるだろうというのは分かるのです。
 私が聞きたいのは、13ページの最後の○に書かれている検証方法を取るときのことです。別所先生は先ほど、これはこれで成り立つ方法だろうとおっしゃったのですが、この方法を取ったときに、そこで出てくる結果において、ゆがみ調整を既にやってしまったという部分を除外した何かの政策的含意を引き出すことができるのかということが私の質問です。ですから、事務局でも別所先生でもいいのですが、いかがでしょうかというのが疑問です。
○岩村委員長 まず事務局、いかがでしょうか。
○榎社会・援護局保護課生活保護統括数理調整官 ありがとうございます。
 少しテクニカルな話にもなってきてしまうかもしれませんけれども、まず令和4年がどういう形で調整をしているかということを簡単に御説明させていただきます。ここにも書いてございますけれども、まずは全世帯の第1・十分位に該当するデータを用いて、較差の指数というものを算出いたします。これが言わばゆがみ調整に相当する効果を持つ部分でございます。
 その上で、最終的に、この段階ではまだ指数という具体的な金額の水準を持ち合わせていないものでございますので、そこに金額、言わば単位をつけてあげるという意味で、この指数に何らかの単価を掛け合わせて金額にする必要がございます。
 その単価を設定するに当たって、ここが水準調整に絡んでくる部分なのですけれども、夫婦子1人世帯を基軸にしまして、消費支出の金額に合わせると。それによってこの指数の単価が決められるという流れになってございます。それが令和4年のやり方でございます。
 一方で、平成25年改定の状況としましては、まずゆがみ調整については、令和4年とおおむね同様に、較差指数については既に算出できていると。その上で、全体を4.78%引き下げるというデフレ調整をやったというのが当時の改定になりますけれども、これの代わりに、令和4年と同じように、この較差指数の単価を夫婦子1人世帯を基軸に設定をしてあげるという操作も十分にできる、物理的・技術的にも可能な方法になるのではないかと考えてございます。
○岩村委員長 ありがとうございます。
 もし経済系の先生方から、今の事務局の回答について何かコメントがあれば。
 では、別所先生、お願いいたします。
○別所委員 私個人としては、今の事務局の御説明のとおりかなと思っております。
○岩村委員長 ありがとうございます。
 太田先生、いかがでしょうか。
○太田委員 そういうことであれば、それで結構です。そこを争うというわけではなくて、専門家から見てできるということの確認が取れれば、安心してやれるということでございます。
 ついでですが、令和4年の改定は、ゆがみ調整のようなものはしていないのですよね。したのですか。素人で申し訳ないです。
○岩村委員長 事務局のほうですぐ分かれば。お願いします。
○榎社会・援護局保護課生活保護統括数理調整官 今回の資料でいきますと26ページを御覧いただくと、令和4年検証での言わばゆがみ調整の結果を図としてお示しをしてございます。年齢別の格差を見たり、あるいは級地別の格差を見たり、さらには人員別の格差を見たり、こういう検証作業を行っておりまして、これがまさに平成24年検証でもやりましたゆがみ調整とほぼ同じような作業になるわけですけれども、こういう作業を令和4年検証でも行っておりまして、この結果を踏まえて、実際の令和5年の改定にはゆがみ調整の結果としても反映されていると、このような形になってございます。
○太田委員 ありがとうございました。
○岩村委員長 ありがとうございます。
 そのほかいかがでしょうか。特段なければ、今日はこの辺りでと思います。
 今日、主として経済系の先生方から、いろいろ専門的な立場から御意見やコメントをいただいたりしましたし、また、今後の必要な作業についても御示唆をいただいたように思います。
 特に今後、データや統計的な資料の分析とか、その結果をどう考えていくのかとか、そういった点について、なお今日も幾つか御指摘をいただいておりますが、こういうデータがあればいいのではないか、あるいは複数の指標を見ないと、ということであれば、どういう指標、データなりをほかに見たらいいのかとか、そういう点について事務局のほうに、個別でも結構ですので御教授をいただければと思います。今日のこの研究会でも、経済系の先生方からいろいろ重要な御示唆をいただいたように思っておりますので、お忙しいところ恐縮ですけれども、ぜひ御意見あるいは御示唆というものを事務局のほうに寄せていただければと思います。
 そうしますと、大体今日の議論はこの辺りかなと思います。次回に向けて、経済学の先生方、恐縮ですけれども、今申し上げたようなことで御意見あるいは御示唆等を事務局のほうに寄せていただいた上で、またそれを事務局のほうで受け止めて、必要な検討・分析を行っていただければと思います。それを基にまた次回以降の議論ということにさせていただきたいと考えております。
 事務局、またいろいろ大変だとは思いますけれども、分析作業、それから資料等の準備ということで、次回以降に向けての作業をお願いしたいと思います。
 本日はこの辺りで終了ということにさせていただきたいと思います。
 次回について、事務局から説明いただければと思います。よろしくお願いいたします。
○千田社会・援護局保護課長補佐 事務局でございます。
 次回に向けまして、今日御指摘いただいた点をいろいろと準備をさせていただきつつ、日程につきましてはまた後日、皆様のほうに我々から連絡をさせていただきますので、よろしくお願いしたいと思います。
 引き続き、よろしくお願いします。
○岩村委員長 ありがとうございました。
 それでは、本日の審議はこれで終了とさせていただきたいと思います。
 お忙しい中、先生方には、お集まりいただきまして、ありがとうございます。また、貴重な御意見も頂戴しました。ありがとうございます。
 では、散会といたします。ありがとうございました。