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第2回床上無線運転式天井クレーンの運転に係る資格の在り方に関する検討会議事録
労働基準局安全衛生部安全課
日時
令和7年7月7日(月)14:00~16:00
場所
厚生労働省3階共用第6会議室(オンライン併用開催)
議題
- (1)令和6年度厚生労働科学研究の概要について
- (2)床上無線運転式天井クレーンの運転に係る資格の在り方について
- (3)その他
議事
議事内容
○副主任中央産業安全専門官 それでは、定刻となりましたので、ただいまから「第2回床上無線運転式天井クレーンの運転に係る資格の在り方に関する検討会」を開催いたします。初めに、報道関係の皆様、傍聴の皆様、この会議の撮影は冒頭のみといたしておりますので、もしございましたら、冒頭のみということで御対応をお願いいたします。それ以降の撮影は御遠慮いただきますようお願いいたします。
初めに、前回御欠席の構成員の御紹介をさせていただきます。オンラインで御参加されている、前回御欠席の森様から御挨拶を頂戴できればと思いますが、音声は聞こえておられますか。音声が聞こえないようですので、また後ほど御挨拶を頂戴できればと思います。
また、本日は堀尾構成員が所用により御欠席、それから、オンラインでの御参加は、森様、青木様、脇坂様の予定となっております。森様、音声は聞こえていらっしゃいますか。
○森構成員 森です。聞こえますでしょうか。
○副主任中央産業安全専門官 恐れ入ります。では、前回御欠席ということでしたので、この場で御挨拶を頂戴してよろしいでしょうか。よろしくお願いいたします。
○森構成員 初めまして。神内電機製作所の森と申します。弊社はホイストを専門に手掛けるメーカーでして、主にホイスト式天井クレーン、工場などで使用される設備などを手掛けております。私は技術部に所属しておりまして、主に機械設計業務に携わっております。今日は少しでもお役に立てればと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
○副主任中央産業安全専門官 ありがとうございました。それでは、この後の議事の進行につきましては澁谷座長にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○澁谷座長 横浜国立大学の澁谷でございます。それでは、早速議事に入りたいと思います。本日の2つの議題ですが、非常に関連した内容ですので、まず最初の議題1については山際構成員より、また、議題2については事務局から順に御説明を頂きます。その後、併せて質疑応答を行いたいと思います。まず、議題1、令和6年度厚生労働科学研究の概要について、山際構成員から御説明をお願いいたします。
○山際構成員 それでは、令和6年度厚生労働科学研究の概要についてということで、資料2にございますように、タイトルは「無線操作が可能な天井クレーンの日本国内における設置状況の調査と安全性の分析」ということで、御報告させていただきたいと思います。
資料を1枚めくってください。研究担当者は、独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所の機械システム安全研究グループ部長の私、山際と、濱島、岡部の3名で実施いたしました。実施項目といたしましては、そちらの右側ですが、1)天井クレーンの事業場における使用の実態調査ということで、アンケート調査を行い、もう1つは、実際に現場に赴いて、いろいろとヒアリングをさせていただくという実態調査を行いました。もう1つ、2)無線操作式天井クレーンの固有のリスク及び安全性の分析ということで、死傷病報告に基づいた労働災害調査、無線操作・規格の調査によるリスクの検証と、この大きな都合4点の調査を行いました。スケジュールといたしましては、実際に9月ぐらいからスタートいたしまして、3月までの半年間でこの調査を取りまとめるというような活動で行っております。
次、めくってください。この研究の目的といたしましては、無線を使用した天井クレーン固有のリスク及び安全性の分析を行いましょうということです。先ほどの繰り返しになりますが、無線運転式天井クレーンの使用の実態や、労働災害・通信障害などの固有のリスクを把握して、クレーンの運転に求められる安全性・技能を分析しましょうということになります。項目1、項目2は、先ほどの繰り返しになりますので、簡単に御説明いたします。実際に天井クレーンの使用の実態調査ということと、もう1つは、無線クレーンを使用した天井クレーン固有のリスク及び安全性の分析、この2点を行っております。
それでは、もう1枚めくっていただきまして、実際に調査の内容についての説明をさせていただきます。まず、項目1:国内における天井クレーンの種別及び使用の実態調査ということになります。天井クレーンを使用している事業場に対して、保有している天井クレーンの種類や操作方法などについて通信調査、通信調査というのはアンケートを配布して、それを御回答いただきまして、回収するという調査になりますが、そちらを実施いたしました。
まず、調査の対象の選定になります。厚生労働省安全課から提供されました、事業場の所轄労働基準監督署が実施した落成検査に合格した、つり上げ荷重5t以上の天井クレーンのリストがございます。そちらから事業場ごとに保有台数を取りまとめまして、以下のように分類いたしました。保有台数が10台未満の事業場、次に、10台以上100台未満、2桁を保有している事業場、そして、3桁以上を持っている事業場という、この3つの分野に分類いたしました。1~10台未満、1桁を保有している事業場からは1,806か所、次の2桁所有している事業場からは207か所を、アンケートの送付先としてランダムに選定いたしました。また、100台以上を保有している事業場につきましては、非常に大きな企業であるということから、私や研究員の者で知り合いの者がいた場合は、連絡を取れる範囲で、約30か所になりますが、連絡を取り、合計2,043か所に回答を依頼することができました。
このアンケート用紙を封書で2,000通準備し、また、電子メールにて43か所に依頼を掛けて、合計1,257通の回答を得て、回収率は61.5%といった状況です。回収の方法としては、アンケート用紙のFAXによる返答、若しくは、インターネットに入力のフォームを用意いたしまして、そちらに回答いただくということで収集を行いました。
資料をめくっていただきまして、それでは、その実態調査の結果について御説明いたします。まず、回答を集めたところ、幾つか回答自体が余り整合性が取れていないといったものがありましたので、少しスクリーニングを行いました。
まず、有効となる調査票というのを選出する必要がありまして、まず、条件1としましては、回答がなされているもの全て、特にスクリーニングせずに回答がなされたものが1,198通。
その次に、有効となる調査票の条件2として、5t以上のクレーンの台数。上のアンケートシートの②の所に、つり上げ荷重が5t以上の天井クレーンの台数を記入してくださいと、その次に、③から⑩までは、その内訳を書いてくださいということで、ここの③から⑩の合計が、本来は②と一致すべきところを期待していたのですが、そうでないという所も少しございましたので、それは省いて、整合性が取れていない所は省いた条件というのを設けてございます。それを条件2といたしまして、それが合計825通になります。
それともう1つ、有効となる条件3というのは、その中で無線を持っているもの。②が③から⑩までの合計と一致していて、かつ、④⑥⑧⑫に何らかの数字が記載されているもの、確実に無線を持っていると分かっているものを選出したものというのが条件3になり、これは257通になります。
この後、特にコメントがない限りは、条件2、要は整合性が取れているアンケートシートによるものの集計を示しているということで、御承知おきください。
1枚めくっていただきまして、まずは、どういうクレーンの種別を持っているかという調査結果になります。回答があった事業場に設置されたクレーンの台数を集計したところ、運転席式が15.7%、床上無線運転式クレーンが17.7%、床上運転式が40.3%、床上操作式が26.3%でした。これを事業場の保有台数別に分類したところ、保有台数が増えると運転席式又は床上無線運転式が採用される傾向にあったということが分かりました。
円グラフが4つありまして、上側が事業場全体で集計した結果になります。左上の青い部分が無線運転式のものになります。17.7%が無線運転式と。この割合を事業場の規模ごとに分類したものが下の3つになりまして、一番左側が1桁の保有台数の事業場の結果、真ん中が2桁の保有台数の事業場の結果、右側が3桁の結果ということになります。大きな規模の事業場になるほど、右側の薄紫色の値が増えておりますので、運転席式が採用され、かつ無線運転式、青の部分も面積が広くなっているということから、この2点が採用されている傾向にあるといったことが分かります。
この中で、無線機能の有無だけを集計したものが、次の7ページ目の結果になります。無線があるなしだけで分類してみると、31.4%のクレーンで無線機能を有していました。これもまた保有台数別に分類したところ、保有台数が大きい事業場ほど無線機能を有するものが多いという結果になりました。1桁の事業場の規模では20.9%、2桁の事業場の規模では33.9%、3桁の事業場の規模では45.3%ということになりまして、基本的には、事業場の規模が大きくなるほど、無線のクレーンを使っている傾向は大きいということが分かります。今日の議論の中で、恐らく結構大事な数字になってくるのは、とにかく事業場全体の約3割の天井クレーンが無線の機能を持っていると、こういったことになりました。
資料をめくっていただきまして、もう1つ、リモコンの型式がございます。無線の天井クレーンは、大きく分けてレバー操作式かスイッチ操作式の2種類になるかと思いますが、基本的にはスイッチの操作式のものが87.5%の事業場で使われていて、レバー操作式というのが12.1%ということで、国内の多くの事業場の無線クレーンというのは、スイッチ操作のタイプのものが使用されているということが分かりました。これは、条件3で、とにかく絶対無線を持っているという事業場のアンケートのみで集計した結果になっております。
次にいきまして、今度はクレーンの資格です。どのような資格を皆さんは保有されていますかということの調査になりますが、回答があった事業場全体で、作業者が保有している資格の人数を集計しました。これは、仮に複数持っている場合は、最も上位のものを御記入いただいております。例えば、技能講習を持っていて、かつ、クレーン運転士も持っているといった場合には、クレーン運転士側をカウントするというように集計しております。この場合、クレーン運転士が35.6%、床上限定技能講習修了者は28.5%であった半面、床上運転式限定クレーン運転士は4.9%で、特に特別教育を省いて考えてみると、7.1%にとどまると、床上運転式限定クレーン運転士の免許というのは、取る人が非常に少ないという傾向があることが分かりました。これは全部の回答を活用しております。
資料をめくってください。次は、作業しているときに、どの程度一人作業をしていますか、若しくは、荷から離れた作業をしていますかということを聞いてみたところ、回答があった事業場におけるクレーンの作業実態について、全体の44.7%が、ほぼ一人作業をしていますと。47.1%が、二人以上の作業で、運転者が荷の5m以内にいるという作業形態でした。複数人の作業で、運転者が荷から5m以上離れていると、非常に大きな距離を取っているという事業場は、8.2%にとどまりました。なお、一般的に、一人作業の場合、玉掛け作業が必ず必要になりますので、荷から広く距離を取るというケースはなかなか想定しづらいのかなと思います。
資料をめくってください。次に、実際にクレーンの作業を行っているときに、どのようなリスクを感じていますかということを問いました。そうしたところ、作業者が床上無線運転式クレーン作業上で感じるリスクは、一番下が床上無線運転式のグラフになりますが、床上操作式のクレーンや床上運転式よりも高く、運転席式よりは少し低いという結果になりました。こういうリスクをどのようなところで感じていますかということで、自由記述で御記入いただいて、用語としていろいろな記述があるのですけれども、それを用語に分割して登場回数を調査してみたところ、「接触」という言葉を使われている回答が121件、「落下」を使っているものが86件、「荷崩れ」は77件、「操作」「作業」というように続いております。では、この言葉が無線運転に非常に固有な単語であるかというと、ペンダントで有線の操作をしていても、接触、落下、荷崩れ等々のリスクというのは非常に感じるところだと考えられますので、この言葉が特に無線運転に固有なリスクというわけではなく、一般的なクレーン作業で運転者及び玉掛け者が感じるようなリスクの用語が並んでいるという傾向でございました。
また1枚めくってください。次に、無線でないと困難な作業というのが実際ありますかというところを集計してみたところ、よくある、時々あるという回答が57.7%という割合を示しました。これらのコメントをまた集計してみますと、自由記述でコメントを求めておりますが、例えば、そもそも、つり荷が高温であり、退避距離を確保しなければならない、そういった場合に、ペンダントであると距離を取ることがペンダントの長さに拘束されてしまうので、距離を確保することが難しいというようなコメントがあります。若しくは、有線であると退避距離を十分に確保できない、これは同じですね、有線だとケーブルが邪魔になってしまい、作業に支障を来す等、そういったコメントがございます。ほかのコメントとしましては、機械設備や積み込み時に有線だと引っ掛かりが生じて効率が落ちてしまう、狭い場所でのクレーン作業時に、有線式ペンダントは取り回しを考慮しなければいけなくて、運搬以外に注意する事項が増えてしまい、これによって作業性が悪くなるなど、床上無線式でないと非効率になる作業についての言及が多かったかなという感じになっています。コメントの例につきましては、そちらの資料の右側に詳しいものを記述しております。このように、無線式でないとなかなか作業が難しいというコメントは、それなりの数があったかなという結果になっております。
さらに、労働災害の発生状況についても調査を行いました。回答があった事業場におけるクレーンを用いた作業での労働災害状況を集計したところ、無線機能を有するクレーンの保有の有無によって、発生割合に大きな差がないということが分かりました。特に下側の表のほうを見ていただきたいと思うのですけれども、令和元年から令和5年にかけて、条件2と条件3、すなわち、クレーン数の整合性があるアンケートシートと、確実に無線を持っているアンケートの集計の結果で、そこまで大きな差はないということで、発生状況に有意な差は見られなかったと考えております。
また、天井クレーンを有する事業場、製造する事業場や無線リモコンを製造する事業場にヒアリングし、現行のクレーン運転士免許制度が現実と乖離している、無線リモコンメーカーの安全設計により、他局からの混信・誤操作のリスクというのが極めて低いというような言及もございました。こちらは、現地のヒアリングによる調査の結果になっております。
項目1はこれで終わりになります。項目1の取りまとめとしましては、そちらに記入されておりますとおり、つり上げ荷重5t以上の天井クレーンにおける無線操作方式の導入実態を把握することを目的としまして、全国2,043事業場を対象にアンケート調査を実施いたしました。その結果、1,257件の回答を得ることができました。
調査の結果、全国における5t以上の天井クレーンの保有台数のうち、31.4%が無線操作に対応しているということが分かりました。したがって、床上無線運転式の天井クレーンは、事業場で一般的に使用されていると、非常に珍しいものではないということが確認されました。また、無線装置の操作方法としては、87.5%がスイッチ式でありました。ほとんどがスイッチを使っているということになります。
作業実態に関しては、「一人作業」又は「玉掛け者との近接作業(5m以内)」というのが回答の90%以上を占めておりまして、操作者がつり荷の近傍にいることが常態であると。これにより、無線操作であっても、従来型のペンダントを用いた床上作業に近い形で運用がなされているということが示唆されました。
リスク認知に関する設問では、「接触」「荷崩れ」「落下」等が最も大きなリスクとして挙げられましたが、これらは操作方法に依存するものではなく、天井クレーンに共通する一般的な作業リスクであります。実際、無線操作の有無によって、労働災害の発生件数に顕著な差は見られませんでした。したがって、安全性の観点から無線操作方式がペンダント式と比べて非常に危険性を高めているという判断はなされませんでした。
また、質問項目「床上無線運転式でないと困難な作業」という質問への回答では、安全性の向上や作業効率の改善、狭隘空間での柔軟な運用、長尺物の対応、視認性の向上などというものが挙げられまして、床上無線運転式でないと困難な作業や非効率な作業について言及されておりました。したがって、無線方式の利点が現場から高く評価されているということも確認できたかなと考えております。
このほか、現地のヒアリング調査によって、「現行のクレーン運転士免許制度が現状と乖離している」という御意見や、「無線リモコンメーカーの安全設計により、他局からの混信・誤操作リスクは極めて低い状態」であるということが確認されました。
続きまして、項目2について御報告いたします。資料をめくってください。無線を使用した天井クレーン固有のリスク及び安全性の分析ということで、労働災害事例の分析を行っております。平成18年から令和3年にかけて発生した労働災害に関するデータベース、合計約15万件ございますが、こちらから「天井」「リモコン」又は「無線」をキーワードとしたクレーンの災害事例を抽出しまして、それらの傾向について検討しました。データベースは、職場のあんぜんサイトと呼ばれる厚生労働省が運用しておりますサイトにおいて公開されている死傷災害データベースを活用しております。
このキーワードを含む事例の数は39件ございました。その原因の中で、例えば混線や通信途絶など、そういう無線に固有であると推定される事象を含む労働災害というのは基本的に確認されず、そちらの原因としては、リモコン操作の誤り、クレーン運転上の誤り、不注意、玉掛け作業の不備、クレーン作業でないなど、そういった原因が挙げられました。こちらはいずれも有線のペンダントでも生じる可能性がある災害であるということが、調査の結果、分かりました。したがって、過去の事例の分析の取りまとめをしたところ、特に無線に固有な労働災害というものの確認は、なされませんでした。
また1枚めくってください。これがほぼ最後になりますが、無線を使用した天井クレーン固有のリスク及び安全性の分析ということで、関連規格についても少し調査をしております。日本クレーン協会規格、JCASの1002-2004年版の「無線操作式クレーンの安全に関する指針」では、受信装置のトラブルに対して「停止」するという制御信号を求めておりまして、ヒアリング調査の結果、一般的な無線リモコンではこちらを満たしておりました。無線機からの信号がなければ、とにかく受信装置側で停止するという制御信号が出ているということは、十分満たしているようです。一方で、メンテナンスが十分でない場合の接触不良等が発生する、例えば非常に粉塵が多い工場での利用など、そのような場合には、接触不良が発生するリスクというのがありまして、定期的な点検等が求められるかなと考えております。
そちらにいろいろ書いてございますが、無線リモコンの通信エラーや異常があった場合には、天井クレーンが誤作動しないような自動停止等の対処が必要であると。構造規格等には、こうした性能に関する規定はございませんが、そのJCAS 1002には、赤字で書いておりますが、受信装置は自動的にクレーンを停止する制御信号を出さなければいけないと。その条件としては、停止スイッチの指令信号を受信したとき、装置内で障害を検知したとき、若しくは所定時間内に検知されなかったとき。こういった場合には停止の制御信号が出るというような条件になっております。
こういう条件を満たした無線リモコンであれば、無線リモコンの通信エラーや異常があった場合でも、労働災害が発生するリスクというのは非常に低減できるかなと考えられます。また、無線リモコンメーカーへのヒアリング調査を行ったところ、一般的な無線リモコンでは自動的に信号を遮断する等の措置が既に講じられておりますということでした。
また、無線リモコンの非常停止ボタンの押下や、電池の残量が不足するなどして、通信途絶が発生した場合、天井クレーンが停止することとなりますが、その場合に生じる荷振れによる荷崩れ等のリスクがございます。また、無線リモコンのメンテナンスが十分でない場合、ボタンの接触不良等が発生するリスクもございます。こうした災害リスクは、運転席式や床上操作式においても、一定程度想定されますが、床上無線運転式を使用する場合も同様に留意する必要があり、無線リモコンへの定期的な点検等が求められるかなと考えられます。
さらに、ペンダントが設けられていて、無線リモコンも設けられているという、複数の装置から運転できる天井クレーンというのが当然ございます。そういう天井クレーンは、アンケートの調査の中で、実は全体の31.4%ございました。ペンダントで運転しているときに、ほかの運転者が、そのことに気付かず、無線リモコンを使い始めるといったことは十分想定されるわけで、これに関してもJCASの1002で以下のように述べられています。そこの赤字の所になりますが、ほかのいかなる装置からも運転ができないようなインターロックを設けましょうと記載がされております。こういうことが設けられておりますので、これによって、複数の運転装置が1つの天井クレーンに設けられたとしても、例えば正逆動作によって急停止して荷が崩れるなどの災害のリスクというのは、このインターロックによって大きく低減できているかなと考えられます。
まとめといたしまして、最後のページになります。項目1といたしましては、天井クレーンを使用する事業場に対して、通信調査を行いました。その結果、天井クレーンのうちの3割が無線化されております。そのうち87.5%がスイッチ操作の無線機を使用しています。床上運転式の免許取得者というのは、クレーンに係る資格保有者のうちの4.9%と、非常に少なくて限定的でございました。また、床上無線式でないと困難又は非効率となる作業がありますよというのが、現場からの声として非常に多くあります。そして、つり荷の近傍で行う作業というのは一般的に行われているということです。
また、もう1つ、現地ヒアリングとか、災害リスクや対策等について分析を行った結果、長尺鋼材を扱う際に、例えば有線ケーブルが障害になるので、安全性確保という観点からも無線化が有効ですよという声や、免許取得時に運転するクレーンと、免許取得後に運転するクレーンが異なり、免許取得が実際の運転スキル取得につながらない、つながっていないのではないかという意見などがございました。これが項目1の取りまとめになります。
続いて、項目2の取りまとめになります。天井クレーンによる労働災害事例を分析しまして、床上無線運転式に固有の事例やその災害原因の分析を行いました。約15万件のデータの中から、天井クレーンかつ無線又はリモコンをキーワードとしている事例を検索しました。その内容を精査いたしましたが、無線機固有の原因の事例というのはございませんでした。普通の一般的な床上天井クレーンで発生するものと同様の災害が一定数発生しておりました。
また、床上無線運転式における固有のリスクを、無線装置の通信規格や機器の実態等を通じて把握して、安全性の分析を行ったところ、具体的にはメーカーにヒアリングを行いましたが、受信について障害が発生していれば、天井クレーンというのは原則として停止するという安全側の制御、若しくはインターロックが掛かっていますよということを確認することができました。一方で、定期的なメンテナンスというのが重要になっているというコメントがございました。以上になります。御報告、終わります。
○澁谷座長 山際様、どうもありがとうございました。続いて、議題2、床上無線運転式天井クレーンの運転に係る資格の在り方について、事務局から御説明をお願いいたします。
○外国安全衛生機関検査官 御説明いたします。改めまして、厚生労働省安全課の鈴木と申します。配布されている資料を御覧いただいている方については、資料3を順次御説明させていただきます。まずは、先ほど山際先生からも御説明を頂きましたが、今回の検討会の趣旨と現状の制度上の背景の振り返りをさせていただきます。
2ページ目は、我々が床上無線運転式天井クレーンと呼んでいるものについて、どういったものですかというのを説明したものです。無線により運転されるクレーンは、一般的に、荷と同じ高さで、運転者の方が操作装置を持ってクレーンを操作することができる、荷から離れて作業ができる、運転者の方が玉掛けも行えるといった幾つかの利点があり、いろいろな業種で御使用いただいております。こういったものは、ほかの運転方式から改修することも可能で、床上無線運転式はクレーンから離れて運転することができる、これは利点でもあるのですが、荷から離れることで、荷との位置関係を視認することが難しくなるというデメリットもあることを御紹介したものです。先ほど研究の御報告からもありましたが、無線操作装置は、例として、レバーで操作するタイプとスイッチで操作するタイプが代表的なものとしてあります。
3ページ目は、そもそも天井クレーンを動かす際、現行の制度上はどうなっているかを解説したものです。労働安全衛生法上、つり上げ荷重5t以上のクレーンの運転業務に就く際には、「運転免許」、「技能講習の修了」のどちらかを条件として付しております。このうち、①運転席式を含む基本的なクレーンの運転に関しては、クレーン・デリック運転士免許の取得を条件としております。また、②床上操作式クレーン、床上で運転し、運転者が荷とともに移動するようなクレーンに関しては、クレーン・デリック運転士免許のほかに、床上操作式クレーンの運転技能講習の修了、この2つのいずれかを条件としています。その他のものとして、③運転できるクレーンの種類を床上運転式クレーンに限定したもの、「床上運転式クレーン限定免許」を別途与えることができるという規定もあります。そういったことで、現行、天井クレーンに関する運転の資格にはこの3つがあります。
ちなみに、その下に付していますが、令和5年度の資格取得者数で申し上げると、技能講習に関しては6万人~7万人ぐらいのオーダーの方、クレーン・デリック運転士免許に関しては1万人程度の方、床上運転式クレーンの限定免許については、令和5年度ベースで35人の方が取得されている状況です。
4、5ページを並べながら見てください。こういった資格の区分をしている背景として、基本的には、操作する際の運転位置、走行の速度、荷に対する水平方向や垂直方向の視認の難しさ、こういった要素を捉えて、運転の資格を設定しているものです。具体的に申し上げると、運転席式のクレーンに関しては、荷よりも高い位置にある運転席から運転をします。ほかの床上操作式などと比べて、荷と操作者、運転者の位置関係を維持する必要がありません。つまり、クレーンに運転者が歩いたりして追従する必要がないので、法令上、速度の制限がないものになっています。運転席式のクレーンに関しては、高速の運転が可能といった状況です。こういった背景から、床上操作式や、床上運転式のクレーンなどに比べ、走行のスピード面や操作の位置の関係から、難易度が高いものと言えると思われます。
また、5ページの表の一番下のものですが、床上操作式のクレーンに関しては、走行・横行いずれも荷とともに移動する。つまり、ペンダントの物理的な制約の下に、運転者の方が荷と一緒に移動する必要があります。反面、表の真ん中の床上運転式クレーンに関しては、走行に関しては運転者の方が一緒に移動するけれども、横行に関しては荷と追随する必要はない、追随できない構造になっているという状況です。そういった状況を整理すると、5ページ目の表のように、一番難しいものは免許、中ぐらいのものは限定免許、最も難易度が低いと思われる床上操作式に関しては技能講習と、こういった3段階の資格を整理している状況です。
こういったものが現行の制度としてありますが、床上無線運転式クレーンといったものについては、製造業を中心に広く使用されている状況です。ただ、現行の運転免許制度から申し上げると、この床上無線運転式クレーンを使用する場合、一番難しい免許であるクレーン・デリック運転士免許が必要となっております。ただ、クレーン・デリック運転士免許が通常必要とされる運転席式のクレーンよりも、荷と同じ高さ、床上で運転する点など、運転しやすい面があることから、安全性の確保を前提として、免許の在り方、運転資格の在り方の検討が必要であろうということで、今回の検討会に皆様に御参集いただいております。
ちなみに、6ページの下の※にもありますが、床上無線運転式クレーンに関しては、垂直方向の荷の高さの視認性は、ほかの床上運転式クレーン及び床上操作式クレーンと同様と考えられており、少なくとも運転席式のものよりは難易度が低いと想定されます。また、操作の方法は様々ありますが、仮に高速操作に向かないようなスイッチ操作の場合、低速で運転をすることから、運転操作の難易度についても、床上運転式及び床上操作式と同じような難易度であると想定されます。一方、床上無線運転式に関しては、無線で操作できる関係で、水平方向の運転の制約がありませんので、床上運転式などに比べ、水平方向に離れて運転できるという状況です。
そういった状況を整理したものが7ページ目の図です。ここまでは前回の検討会でもお示ししたものかと思います。その上で、第1回の検討会では、事務局から論点として3つ提示させていただき、こういった内容を御議論いただく際に、背景情報を研究などでお調べいただいて、その上で具体的な内容について御議論いただきたいと、前回の検討会で御意見を頂いたところです。
主な論点として、論点1は、資格自体をどういうように位置付けますかというもの、論点2と論点3はまとめてお伝えいたしますが、新たな資格を設けた場合に、学科試験、実技試験、教習も含めますが、この学科、実技の試験についてどのように実施したほうがいいですかといったもの、この3つの論点を提示させていただいております。
こういった振り返りを踏まえ、今回、資料2で御説明いただいた厚生労働科学研究という形で、労働安全衛生総合研究所の山際先生に、無線で操作するクレーンの実態についてお調べを頂いております。調査していただいた内容を事務局のほうでまとめている資料がこちらです。例えば、無線のコントローラーを有するものは全体の3割ぐらいあり、そのうちのスイッチ操作方式というのは87.5%で大多数を占めている。あとは、操作者の方が5m以上離れて操作を行う事業場は、実は8.2%とかなり少なく、荷の近傍で操作される方が一般的である。これら、先ほど御説明いただいた内容をまとめたものが9、10ページの資料です。
こういった研究の内容を踏まえ、11ページの論点1です。今回、新しい制度をどのように位置付けますかという点について、第1回の御議論と研究で御報告いただいた内容を踏まえて、事務局からの提案内容をまとめたものが次にあります。まずは、第1回検討会の際にはこういった御意見を頂いております。新しい資格を作る際には、当然、労働災害が増加することがあってはならないので、実態調査を踏まえて、エビデンスに基づく検討が必要という、ごもっともな御意見を頂いております。また、運転席式は実技試験以外で使用しないということを御指摘いただいているもの、当然、既存の資格と整合すべきというお話、床上操作式、床上運転式については、構造規格の中で速度制限が設けられているので、無線を使わせる場合は、速度制限の取扱いについても議論が必要という御意見を頂いております。下から2つ目ですが、運転制御方式の差や運転者以外が被災するリスクも分析の際には検討が必要というお話。最後に、無線を使用したときには、電波が止まってしまったり混線してしまったりということで、クレーンが停止するリスクがあると、こういった事例があれば、詳しく分析をしてくださいという御意見を頂いております。
この辺りの御意見を踏まえ、労働安全衛生総合研究所で御検討を頂いた内容の関係する部分を抜粋しております。使用実態については先ほど申し上げたとおりです。作業者が感じる労働災害発生リスクについては、床上無線運転式クレーンの作業上のリスクは、床上操作式や床上運転式の他のクレーンよりは高く、運転席式、一番難しいものよりは低いという結果になっている状況です。また、無線タイプのクレーンでないと難しい作業が幾つかあるという御指摘も併せて頂いています。無線コントローラーを使用している際に通信が途絶してしまったなど、無線特有のリスクは、今回お調べいただいた中で、労働災害の中では確認ができていないところです。一方、ほかの床上から運転するタイプの天井クレーンと同様の労働災害は一定数発生している状況でした。
この辺りの御意見を踏まえ、事務局から今後の検討について前提条件を整理しながら御説明いたします。まず、13ページ目、床上無線運転式のクレーンの免許制度を設定する場合、どういう技能・知識が必要かを整理する必要があるので、改めて、こういったものを書いております。
必要な技能としては、荷をつり上げて、定められた軌道に沿って横行、走行、斜行、物を乗り越えたり、障害物をすり抜けたりする、決まったルートで荷をつり下ろすという作業をしていただく必要があります。また、場合によっては、玉掛け操作者や合図者と連携し、物をつり上げたり、つり下ろしたりする作業をしていただく必要があります。このうち、床上無線運転式に限定すると、無線コントローラーで荷から水平方向に離れた位置でこういったことを行う点が、無線タイプ特有のものとなっていると思われます。
また、下の部分ですが、クレーンの運転に関する知識としては、クレーンに関する知識、原動機及び電気といった知識、基本的な力学の知見、最後に関係法令といったように、この辺りに必要な知識としては、ほかのクレーンと変わらないと、我々も分析している状況です。
改めて、こういった知識・技能をほかの資格制度と比較したものがこちらです。床上から操作する点で、垂直方向の荷の視認性は床上運転式や床上操作式と同様と考えられます。先にも触れましたが、走行の速度に関しては、無線を使用している以上、様々なものが原理的にあり得ると思われるのですが、現状、87.5%が高速走行に向かないスイッチのタイプを採用しております。そういったことを鑑みると、仮に運転する際の速度制限を掛けた場合、走行操作の難易度は、ほかの床上タイプのクレーンと同様のものになろうと思われます。
最後に、水平方向の運転位置、視認性についてです。こちらは、荷から離れた場合に、当然、水平方向の荷の視認が難しくなってくるという点で、床上運転式よりも難しいと言えます。また、原理的には電波が届く範囲まで遠く離れることができると思われるのですが、お調べいただいた実態では、5m以上離れて操作をするというのが全体の8.2%にとどまっていることもあり、作業実態を勘案し、運転位置に一定の制約を加えた場合、運転席式のクレーンよりも難易度が低くなり、床上運転式のクレーンよりも少し高くなるといった難易度の設定が可能と思っております。
こういった状況を踏まえると、新たな資格の位置付けとしては、運転できるクレーンを、荷から一定の距離の範囲内で運転するもの、低速で運転するものという形で、資料上は「床上運転式クレーン等」と記載していますが、床上運転式クレーンや床上無線運転式クレーンを含めて限定したものとするのが適当ではないかと事務局では考えております。下の※にありますが、今回、一定の距離の範囲内については、事務局のほうからは提案をしておりません。皆様の御意見や事務局のほうの追加調査をもって、一定の数字を提示したいと思っておりますが、現時点でお伝えできる範囲としては、荷から5m以上離れて操作をする事業場は1割未満という状況でした。そうすると、こういった一定の制限を加えると、ほとんどの作業が新たな資格制度でカバーされるということで、需要があるような事業場に対しては、こういった制限を加えても必要な需要は満たすことができるのではないかと考えております。
では、提示した論点のうち、論点2・3の学科試験、実技試験の在り方について併せて御紹介させていただきます。まず、第1回の御議論では、学科の面では、クレーンの種類が変わっても求められる知識は同じようになるのではないですかといったお話、無線のリモコンの誤操作といったリスクを踏まえると、機器の基本的な情報は知識として問う必要があるのではないですかといった御提案を頂いています。また、実技試験、教習に関しては、運転席式を実技試験以外で使わない人がいっぱいいるというお話、床上無線運転式は、つり荷とクレーンの位置関係がもちろん一定ではないので、立ち位置が自由に選べることを踏まえた実技試験にする必要があるというお話、レバー式は難易度が高いのだけれども、スイッチ式のほうが一般的に使われているといった作業実態や、必要なスキルというのを踏まえた実技試験にする必要がありますというお話を頂いております。最後に、速度制限が必要だという話は、もう一度記載をしている状況です。
また、研究報告を踏まえると、先ほど御説明していないものとしては、3ポツ目、使用される無線コントローラーの状況があります。お調べいただいたとおり、無線のコントローラーは、スイッチタイプ、床上運転式のペンダントスイッチと同じような仕様のものがほとんどでした。また、通信エラーの対策が一定なされていて、ほとんどの無線コントローラーについては、自動で止まるなどの機能が具備されていることが確認できています。
こういった現状を踏まえつつ、もう一点、開催前に、指定試験機関と言われる、クレーンの運転免許試験をしていただいている機関に、我々事務局のほうでヒアリングをいたしました。その結果を記載しているものが資料の17ページです。現状、運転席式と床上運転式を試験として実施していただいておりますが、これに床上無線運転式が加わった場合、例えば操作方法などの差はどうですかとお聞きしたものです。
まず、運転席式のコースは、そもそも高所から確認することを意図して設計しているので、床上で運転するタイプのものについては、床上運転式のコースが床上から操作することを意図していて適しているといった御意見を頂いております。また、床上無線運転式については、操作の場所が自由に選べるというのが原理的にあるので、自由に操作できると難易度は簡単になるため、操作する場所を限定したり、障害物を増やすなど、実際の操作、想定した難易度に合わせるというか、コースをモディファイする必要があるという御意見を頂いています。また、床上無線運転式は、運転位置の制限を設けないと、いろいろな角度で荷を視認できるので、荷物とほかの物が当たるような角度で見ることができるようになると、難易度が著しく下がります。一方、運転できる位置に一定の制限を加えると、見る角度が限定されるので、当然、難易度は上がっていくといった御意見を頂いています。
下側のポツは、使用している無線コントローラーの状況について、実際にお使いいただいた上でヒアリングをしたものです。スイッチ式、レバー式それぞれ必要な技量が別物だという御意見を頂いています。また、試験の公平性の観点から、ユーザーの方というか受験者の方が、スイッチ式がいいです、レバー式がいいですというように選択ができるというのは難しいため、いずれかの操作方法に統一して試験を実施したほうが公平ではないかといった御意見を最後に頂いています。
この辺りのヒアリングの結果を踏まえ、事務局からの提案が以下の資料です。まずは、現行の免許制度はこういった科目でできていますというものです。クレーン運転士と床上限定運転士の免許の学科試験については同じものを使っております。また、実技試験、教習については、当然、運転席式のもの若しくは床上運転式のもので、使っている機体が違います。教習に関しては、クレーンの基本運転の部分の時間が多少違うといった違いがあります。これは、クレーン運転に必要な能力として我々が分析したものを、カリキュラム振りをしている状況です。
その上で、床上無線運転式も含めたクレーンの運転に必要な技能というのを改めて分析した表がこちらです。見ていただくと、基本的に、運転前にする確認、運転合図の認識みたいなものは、どのクレーンでも一緒です。違う点としては、安全な運転動作を実施するに当たって、荷物からどのぐらい離れて、また、どういったスピードで運転をしていただくかによって、難易度というか、必要な能力が変わってきますということです。この中で、床上運転式と床上無線運転式の2つに関しては、横行方向から離れるかどうかという点のみの違いとなっている状況です。
こういった点を踏まえ、新たな免許を設ける場合、特に床上運転式とどういった差があるか、確認すべき能力にどういった差がありますかというのをまとめたものがこちらです。まず、学科については、いずれのクレーンであっても必要な知識は共通していると思われる。ただ、無線のコントローラーに関しては、現状、必ずこの知識を確認するということになっていない状況があります。また、実技試験、教習で確認すべき能力については、クレーン運転士で確認している実技試験の内容と、無線のクレーンで求められる能力というのは、垂直方向で荷を視認する必要がない、走行の速度が違うなど、幾つかの乖離した点がありますという内容です。ちょっと飛ばして、一番下のポツです。床上操作式の技能講習を考えると、運転する方が荷から離れることができるという点で、無線のクレーンと一定の差がある、水平方向の視認性に差があるということが、分析の上で分かっています。
真ん中の3、4ポツ目です。床上運転式の限定免許と比較をすると、運転位置がやや遠いという点以外は、必要な技能・知識の差がほとんどないという状況が分かっています。また、今回の調査結果でも、限定免許の資格を保有する方は5%未満、また、新規で資格を取得される方も、一般的なクレーン運転士の免許に比べて数百分の1という状況でした。
こういったことを踏まえると、まず、床上運転式クレーンの免許を創設するべきではないか、これは前回の資料でも記載しているものを繰り返しています。床上運転式クレーンの限定免許を改組する、改良を加えることで、床上無線運転式クレーンを用いて、従前の床上運転式クレーン限定免許の位置よりも遠い所で試験をするというようにすると、床上運転式クレーンに必要な能力も、床上無線運転式クレーンに必要な能力も、どちらも確認することができるのではないですかというのを、資料の一番下のほうで赤字で書いております。なお、資料の上のほうには、無線を用いた試験でテストをすると、床上運転式の能力も同時に測ることができますよという分析を記載しております。
次のページです。具体的に、新しい免許をどのように実施したほうがいいかということに対する事務局の提案です。まず、学科試験については、必要な知識は同様と思われますので、今までの限定免許と同じように確認をすることが良いのではないかと考えています。一方、無線のコントローラーについては、使用していただく都合上、必ず確認をしていただくというのが適当ではないかと考えています。
また、実技試験については、今回、分析を頂いたとおり、スイッチ式が一般的であることを踏まえ、スイッチ式の無線コントローラーを使った床上無線運転式クレーンを使って、今までの床上運転式クレーン限定免許の技能講習の実技試験の内容から、運転位置を少し離して実施することで、新しい無線のクレーンや今までの床上運転式クレーンどちらを使用する技能も測れることから、こういった形で試験を実施することが適当ではないかと考えられております。
説明が長くなっておりますが、次の24、25ページでは、新しい資格で、こういうクレーンを運転できるようにしたほうがいいというのをまとめております。25ページの図を見ていただくのが一番スムーズかと思います。まずは一番上、運転席式のクレーンについては、繰り返し申し上げているとおり、もともと速度制限がありません。一般的には、速度を多段階で変えられるようなレバー操作式が採用されていることが多いと聞いております。また、運転位置から垂直方向にも水平方向にも離れますので、荷の視認性がかなり難しくなってくるという状況です。
表の一番下の欄、床上運転式・床上操作式については、どちらも速度制限があるものです。ペンダントスイッチで速度を1段階若しくは2段階に変えられるもの、そういった変更しか持っていないものが一般的とお聞きしておりますので、低速で運転をするし、そもそも操作方法が低速にしか対応していないものです。有線のスイッチがあるので、運転位置が限定される、ということは、どうしても荷の視認性はその周りに限定されるので、遠くから離れて運転するよりも、難易度が一定下がってくると分析しています。
今回、床上無線運転式を導入する際に、新しい免許で使用できる対象に3つの条件を付すことを考えております。条件1として、まずは走行の制限、スピードに制限を加えるという点。2点目として、スイッチ式、レバー式いずれもありますが、ほとんどの方が使用しておられるスイッチ式、かつ、速度制限がある場合によく使われるものとして、スイッチ操作式の無線コントローラーに限定すること。最後に、今後の検討も踏まえ、操作する位置に一定の制限を設け、免許を設けるのが適当と考えております。
表の下の赤枠ですが、例えば、無線を使って速いスピードで運転したい、荷から離れて運転をしたいといった方に関しては、従前のとおり、今までと同じようなクレーン運転士の免許、マルチな免許を取得していただくといった整理がよろしいのではないかと事務局では考えております。
26、27ページは、前回もお渡しした従前の試験の整理です。最後に、今回、出ていない論点として2つあります。その点について改めて整理させていただきます。29ページを御覧ください。今回、事務局の提案として、現状ある床上運転式クレーン限定免許を無線のクレーンも運転できるように改組をすることを御提案いたしました。そうすると、今までに床上運転式の限定免許を取っていた方はどういうような取扱いになるのかという点です。当然、従前の限定免許を取得した方については、引き続き同じ床上運転式クレーンについては運転ができる一方、無線に関しては、その技能を確認していないので、古い限定免許を持っている方は、床上無線運転式については含まれない、これは運転できないといった経過措置が適当ではないかと考えております。
真ん中から下側です。現状、無線コントローラーについては、ほとんどのものが自動停止機能を備えていることが確認できております。ただ、これが法令上、例えば構造規格などで担保がされていないこと、定期的に検査をされておらず、不具合が突然起きてしまうという事例があることが指摘されています。例えばクレーンの定期自主検査指針などの内容に、現状、無線コントローラーに関する記述はない状況です。ですので、床上無線運転式に用いられる無線のコントローラーについては、通信エラー時などに自動停止するなどの必要な安全機能を義務付けることと、検査をする際の方法として、例えばクレーンの定期自主検査指針などに明記をして、確実に検査をしていただく形に持っていくのが適切ではないかと考えております。事務局の説明は以上です。
○澁谷座長 どうもありがとうございました。令和6年度厚生労働科学研究の概要と、第1回の検討会の議論や研究結果を踏まえた運転資格の在り方について御説明いただきました。また、各論点に対する方向性についても御提示を頂きました。こちらの2つの議題について順に議論をしていきたいと思います。まず、議題1の令和6年度厚生労働科学研究の研究報告結果について、御質問、御意見のある方は挙手、オンラインの方はチャットへの書込みをお願いいたします。大江構成員、お願いいたします。
○大江構成員 山際先生、今回、このような大規模な調査をしていただいて、ありがとうございました。我々メーカーではとても実施することができないような内容でして、感覚として感じていたものを統計的な数字で把握することができました。非常に感謝しております。
その中で、無線の条件1の場合だと思いますけれども、採用率が31%というのがございました。実際、我々もクレーンを造っているメーカーでして、大体感覚と一致しているのですが、これは現時点での数字でありまして、今、日本国内には労働人口の減少といった課題がございます。そうした中で、ユーザー様のほうで既設の運転式のクレーンを無線操作に変えていくというトレンドが広くあります。そうすると、現時点では30%ですけれども、今後、時間を追って見ていくと、これが50%、60%という具合に、運転式が無線操作式に置き換わっていくのではないかということを感じております。これは意見としてお伝えしたいなと思いましたので、申し上げさせていただきました。以上です。
○澁谷座長 貴重な御意見ありがとうございます。そのほか、何かコメント、御意見等はございますか。よろしいですか。こちらの研究成果の報告について特に御質問がないようでしたら、在り方についての論点のほうに移っていきたいと思いますが、オンラインの皆様を含めまして、御意見はよろしいでしょうか。
それでは、こちらについては御意見が特に出ておりませんので、次の議題2、床上無線運転式天井クレーンの運転に係る資格の在り方についての議論のほうに移りたいと思います。まず、論点が3つ示されていました。その論点の中のまず1番目の論点、新たな資格をどのように位置付けるかということで、今回、先ほどの議題1の研究成果も参考にしつつ、事務局から御提示いただいています。事務局としての御意見は、14枚目のスライドの所にございますが、赤枠で囲まれているとおり、「運転できるクレーンを、荷から一定の距離の範囲内で運転する低速の床上運転式クレーン等に限定した免許とすることが適当ではないか」というような御提案を頂いております。こちらの論点1について、構成員の皆様から御意見、コメントがございましたら、よろしくお願いいたします。井村構成員、お願いいたします。
○井村構成員 ちょっとお伺いしたいと思ったのが、先ほどの研究成果とも関わるのですけれども、速度制限があるクレーンが無線式でも大多数というお話でしたけれども、そうすると、高速で動かせる無線式というものが1割ぐらいあるということになるわけですよね。それは運転席式と同じぐらいの速度が出せるというような理解でよろしいのですか。
○外国安全衛生機関検査官 御質問ありがとうございます。運転席式と無線かつ高速が出せるもので、速度の違いがどの程度あるかは不明なところがありますけれども、いずれもレバー操作式といいますか、多段階でスピードを変えられるものが採用されることを確認しております。ですので、速いスピードになることができる、速いスピードに適している運転形式であろうというように、事務局としては分析をしています。
○井村構成員 そうすると、免許そのものに関しては、レバー式かペンダント式かで分けたほうが分かりやすいということになりませんか。
○外国安全衛生機関検査官 ありがとうございます。御指摘のとおりかと思います。なので、操作をスイッチの操作に限定したもので試験をする、かつ、使用するものを限定することを考えております。我々も余り想定はしていないのですが、ボタンを押すとすごいスピードで走る、構造的にそのように持っていくことができるものは一応ありますので、ほかの床上のクレーンと同じように、スピード制限を掛けつつ、ボタン式のもの、スイッチ式のものに限定することで、皆さんが使っておられる、かつ、能力を一定の範囲内に制限することができるのではないかというように分析しています。
○井村構成員 ありがとうございます。
○澁谷座長 井村構成員、どうもありがとうございました。山脇構成員、お願いいたします。
○山脇構成員 連合の山脇でございます。まずもって、山際先生をはじめ機構の皆様には、詳細な調査を実施していただいたことに対し、私の立場からも改めて御礼申し上げたいと思います。
改めて、私ども労働者の立場から、本検討会でこうした視点を持って検討してもらいたいということを申し述べたいと思います。1つ目は、今回の検討は免許制度の在り方ですので、機械の構造・規格とは切り分けて議論するものと承知しております。一方で、新しい免許を設けるとなれば、それらが当然に遵守されるための仕組みや、免許の更新の在り方、あるいは法令遵守のための行政の監督指導も含めて、労働者保護の観点から総合的に検討していくことが必要と思います。 次に、後ほど提案に出てきますが、今回、現在の限定免許と統合して新たな免許制度を設けるとのことですが、現行制度の有線式の免許の取得を既にされている方、あるいは今後当該免許の取得を予定されている方にとって不利益にならないような仕組みにしていくことも重要と考えます。
その上で、14ページの内容ですが、労働者の立場から、運転者はもとより周辺で作業する方々も含めて、就業者全体の安全を確保するということを踏まえると、ここで重要なことは、ペンディングになっている「一定の距離」をどう設定するのかについて、慎重な検討が必要と思っています。
以上の点について、厚労省、山際先生に1点ずつ、質問させてもらいたいと思います。
まず厚労省への質問ですが、適当な距離について別途調査を実施するということですが、当然エビデンスに基づいて議論しなければいけないと思っておりますので、調査の実施時期と具体的な方法等についてお伺いしたいと思います。併せて、床上有線運転式クレーンの場合には特に距離に関する制限は設けられていないと認識していますが、それで正しいかどうかをお伺いしたいと思います。
また、山際先生には、研究調査を行った立場から、「一定の距離」に対して、どの程度の距離が適切と考えているのか、あるいは、設定するに当たっての留意点等があればお伺いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○外国安全衛生機関検査官 事務局から、まず御質問いただいた2点について御回答いたします。
正に山脇先生がおっしゃったとおり、今回、新しい免許を設定をした場合に、どの程度の距離を設定するのかが一番重要かと考えております。その際、調べ方といたしましては、従前の免許を使われている方々が実際どのように作業されていますかという状況確認をすることとか、実際に使用している方々のお声、数をたくさん稼ぐというのは時間的に難しいところもありますけれども、そういった声を拾い上げて、では実際どのぐらいで使われていますかという状況を調査することが重要と思っています。また、国内で無線機を実際に販売をされている所に、実態としてどのような情報をユーザーに提供していて、どのような使われ方が一般的かということを情報収集することも重要であろうと思っております。ですので、ユーザー、メーカーそれぞれの視点で情報を収集する、ヒアリングなどで情報を収集するということを今考えております。
2点目、有線の距離制限についてです。床上運転式の場合、原理的には横行の方向には制限がない、ガーダーの長さには制限がございません。ただ、天井クレーンの物理的な制約としまして、かなり長いガーダーを整えるには、それだけ構造的にガーダーなどを支える構築物に大きな負担が掛かるというように思われております。実態としてどれぐらいの長さまであるかというのは、我々も把握が難しいと思っておりますけれども、少なくとも現行の限定免許で、どのぐらいのガーダーの長さのものが使われているかという点については、距離の把握と併せて実態を把握していく必要があろうと思っております。
○山際構成員 それでは、2番目の御質問について山際から少し回答させていただきたいと思います。
先ほど、鈴木様から発言がありました、実際のガーダーはどれぐらいのものが使われていますかというのは、頂いたデータを基に調べてみると、15mから20mぐらいのものが非常に多く使われているなというのが既にデータとしてございますので、それよりも大きくなるようなことというのは、逆に言うとちょっと想定はしにくいのかなと思います。最終的な数字としては、先ほどの鈴木様からの話にありましたとおり、ヒアリング等々を通じて決めていくことになりますが、国内にある工場などの事業場の範囲又は設置されているガーダーの長さなどを把握する限りでは、その辺よりも小さいところというのが現実的な数字だし、実際に私たちも見て、それよりも遠い所での作業でやり放題にやっていいよというのはなかなか言いづらいと思いますので、現実的にはそれよりも小さい数字が落としどころなのかなと現状では考えております。以上です。
○山脇構成員 ありがとうございます。追加調査の実施に当たりましては、今の山際先生のコメントも踏まえながら、実施してもらいたいと思います。その際、経営者の方は当たり前ですけれども、労働者にも是非ヒアリングを実施してもらいたいと思います。今回の資料の中でも、例えば「5m以上離れて作業を行う事業場は少ない」との記載がありますが、その具体的な事例はどういうものなのか。あるいは、現行の限定免許を取得している方々が不利益を被ることはないのかという観点も含め、問題ないかどうかをしっかりとヒアリングしていただきたいと思います。
○澁谷座長 ありがとうございました。大江委員、お願いします。
○大江構成員 今、「一定の距離の範囲内で」という部分に対しまして、いろいろ御意見があったのですが、私が備えておかないといけないなと思うのは、事務局に考えを確認したいのですが、一定の距離というのは横走行方向で、縦の空間距離というのは考えていますか。
○外国安全衛生機関検査官 御質問ありがとうございます。現状、事務局の想定としましては、いわゆる水平投射距離、荷をつり上げる瞬間の運転者の方との差を考えております。当然、揚程が高いものというのはクレーンの中にはたくさんあると思っておりますので、距離の制限をする際には、そういった区切りが必要ではないかと思っております。ただ、揚程が高いものについては、当然、垂直方向の視認、荷の高さをどう見分けるかというスキルが必要になってくる、高ければ高いほど必要になってくると思いますので、例えば高い所に荷を上げておくみたいな作業に関しては、運転席式のもので、上下の方向も併せてスキルを確認することが必要ではないかと考えているところです。
○大江構成員 運用になったときに、解釈によってそこが混乱してしまうといけないなと思いましたので、周知をお願いしたいと思います。
○外国安全衛生機関検査官 ありがとうございます。その辺りは、誤解のないようにうまく制度運営を図っていきたいと思っております。
○澁谷座長 ありがとうございました。そのほか、論点1に関してでございますが、鎌田構成員、お願いいたします。
○鎌田構成員 基幹労連の鎌田です。労働者の立場から、私も高さが気になっています。視認性なり作業性だけに着目をするのではなく、退避距離をどれだけ確保できるかという視点も1つあると思いますので、高さにも留意いただきたいと思います。
もう一点は速度に関してです。速度制限を掛けていないということは理解しているのですが、一定の速度をどう担保するか、低速を守る、守らないということは、人によって変わってくるのだろうと思います。そのため、一定の距離も含めて、この点をどう担保するのかについて、厚労省による監督指導の強化・徹底も含めて検討いただきたいと思います。以上です。
○澁谷座長 ありがとうございます。今のことで補足があれば事務局からお願いします。
○外国安全衛生機関検査官 ありがとうございます。2点御発言いただいたと認識しております。まず、退避距離については、お考えとして非常に重要と思っております。当然、荷を高くつり上げればつり上げるほど落下のリスクが上がってきますので、つり荷からは遠く離れたほうが安全であるという話があろうかと思います。ですので、作業位置の制限と併せて、その点も整理が必要かなと思っております。
2点目の速度制限を実際に現地でどのように確認しますかという点も、制度運用に当たっては、非常に重要な、クリティカルなポイントかと思っております。実際に使用される無線のコントローラーのスピードがどうなのかというのを、ユーザーサイドで分かるようなスキームを整えるですとか、いろいろなことが考えられるのですが、いずれにしろ、現地で使用される方に混乱がないように、仮に我々や労働基準監督署の者が監督や指導にお邪魔する場合に、そういった内容が分かるような、指導する者も混乱がないような形に一定整理して情報発信していくことを考えております。
○澁谷座長 ありがとうございました。それでは、中村構成員、お願いいたします。
○中村構成員 では、私のほうからですが、先ほど距離の問題ということで5m以内という結果が出ているわけですが、そうすると、実際に試験をやるときは、5m以内で行うということだと思います。そして、実際にその5m以内を取るに当たっては、各現場の状況などに応じてという話なのですが、私が不安なのは、5m以内ということは、段々近づいていく方向に距離が設定されるということですよね。そうすると、最低ラインはどれぐらいなのかということを設けないと、ちょっとまずいのではないかと思ったのですが、その辺りをどうお考えですか。
○澁谷座長 では、事務局からお願いします。
○外国安全衛生機関検査官 ありがとうございます。荷まで最低どの程度離れるかというのは、まず、法令上の義務で申し上げると、荷をつり上げた際の荷の下に当然入ってはいけない、これは義務事項です。また、例えばクレーン協会様などの業界団体の中では、つり荷から垂線を下ろした際の45度、その中に人が入らないことが重要であるとお伝えいただいております。いずれにしろ、荷の落下の際のリスクの範囲から離れて運転をすることが重要ですので、法令上の義務やお知らせ事項として、それぞれどこまでを求めているかというのは切り分けが必要かと思っておりますが、当然、近ければ視認がしやすいけれども、近いとリスクが上がるという構造は天秤になっていますので、少なくとも新しい免許の施行のタイミングで、改めて確認指導というか、コメントが必要な範囲については、行政から改めて一緒にお知らせをするということかと思っています。
この範囲以上は入らないでというのを設定するのは、やはり会社や状況に応じてなかなか難しいところですが、今まで業界団体でコメントいただいている内容などを踏まえながら、これとこれは守ったほうがいいよ、法令上はここは罰則が付いていると切り分けて、周知をして徹底していただくことが重要かと思っています。
○中村構成員 ありがとうございました。
○澁谷座長 ありがとうございます。そのほか、構成員の皆様から御意見はありますか。オンラインの方から御意見があるようでしたら、チャットか何かでコメントを頂きたいと思いますが、よろしいですか。脇坂構成員、お願いいたします。
○脇坂構成員 質問をよろしいですか。今までの議論を伺って、荷から一定の距離の範囲内という、このページですが、床上操作式の無線クレーンを対象にするということなのですが、先ほどあった、つり荷から45度の範囲内には入らないで、なおかつ、15~20m以内で運転するための免許という認識をしたのですが、仮に20m以上離れて運転した場合は、これは違反になるのですか。そういうイメージでしょうか。
○澁谷座長 御質問については、距離を決めて、それ以上離れた場合に違反になるかならないかという話ですが、これからの作り方次第なのですが、事務局からもコメントがありましたらよろしくお願いいたします。
○外国安全衛生機関検査官 脇坂構成員、御質問ありがとうございます。今回、距離の制限を一定加えて、その範囲内での運転に限定した免許を交付することを考えております。法制度的な内容をお話すると、これは、いわゆる就業制限業務と言われる、労働安全衛生法の61条に規定がされている業務です。この限定された免許を持っている方が限定の範囲外の業務に従事をした場合は、この61条の違反が問われる可能性がある、こういう条文上の構成になっています。ですので、どのぐらいの距離の範囲を設定するかは、その限定免許をお持ちの上で作業をする方が、どのぐらいの範囲内で活動するかということとリンクする内容と考えております。
○安全課長 ちょっと補足です。今回の限定免許というのは、限定されてない免許が存在することが前提になっていますので、そういう離れて作業せざるを得ないときには、限定の付いてない免許を取ってくださいということになります。ですから、あくまで揚程もある程度高くなく、言ってみれば町工場とか、そういう所の人たちが、ある意味簡易に、比較的、相対的に簡単に免許が取れることを前提にしておりますので、非常に揚程が高い、50mも上げるとか、あるいはガーダーが30mもあるとか、そういうクレーンについては、従来どおりの免許を取ってくださいということです。一応ターゲットを絞って免許を簡単にするという考え方で、それ以外は限定なしの免許でやってくださいという発想ですので、御理解いただければと思います。
○脇坂構成員 ありがとうございました。では、これから議論して設定ということだと思いますが、揚程なども大体これくらいの値というのが議論の結果決まれば、そういう制限をされる可能性があるという認識をしました。ありがとうございます。
○外国安全衛生機関検査官 ありがとうございます。今回の整理の結果、使用するクレーンの揚程に限定が加わるわけではありませんが、例えば15mとか、非常に高いクレーンの場合ですと、結果的にその範囲内で作業するのが難しいですとなったら、マルチな、現行にある制限のない免許を取っていただくという整理は、もちろんあり得ると思います。いずれにしろ、10m、15mとか一定の距離で取って作業が完結するようなクレーンに限定した免許にするので、その範囲に入らないクレーンを運転する場合は、今までどおりの取扱いでしていただくという切り分けを考えております。
○澁谷座長 ありがとうございました。よろしいでしょうか。そのほか、御意見はありますか。井村構成員、お願いします。
○井村構成員 確認したいのが、床上運転式限定免許から床上運転式等限定免許になるということで、試験は無線のほうでやるという話ですが、やはり、離れて操作するということと近くで操作するということでは、その危険性が異なるというお話もあったかと思います。離れて操作するところで免許を取って、ただ、実際には有線式しかない所で働くとなったときに、無線式の免許で有線のほうでも安全が担保されるのかどうかというのがちょっと気になりました。要は、無線の枠の中に有線のほうも包摂できるのかどうかというのが気になっています。そこの点はいかがなのでしょうか。
○澁谷座長 事務局、お願いします。
○外国安全衛生機関検査官 御質問ありがとうございます。この辺りは、今、投影もしているのですが、21ページの資料で一定の分析を加えています。ここでは、実技試験について、現行のものと、今後、こういうふうにやったほうがいいだろうと提案しているもの、この2種類を比較しています。
床上運転式に関して申し上げますと、クレーンのガーダー、ホイストに載っている部材と同じように、運転をする際にはそれに追従をする状況です。なので、縦方向しか見えないという状況にあります。床上無線運転式の場合は、無線が届く限り周りのどこにいてもいいという意味で、すごく利点があるし、離れても運転ができてしまうリスクがあると、それが二律背反になっているところです。
今回は、23ページにお示ししていますが、床上運転式をテストする際のコースを使って、運転位置を限定することで、少なくとも床上運転式と同じように操作をされるエリアと、それよりも遠く離れて確認をしなければいけないエリアで分けることを考えております。そういう意味では、床上運転式と同じような運転形態も、それよりも遠く離れた無線独特の運転形態も、スキルとしてはチェックしていただくことができると思っています。
おっしゃるように、近づいた際のリスクというのは別にありますので、そういったことは、つり荷の下に入らないとか、十分に確認できた状態で、いわゆる地切り、旋回、荷のつり下ろしを行うといった、ある意味、知識面でカバーするところがすごく大きいと思っています。そこは、合わせ技で必要なスキルは担保したいと考えます。
○井村構成員 ありがとうございました。もう一点、お伺いしたいことがございます。その他の論点の所で、現在の床上運転式クレーン限定運転士免許を保有している者は、新免許を取得せずとも、引き続き床上運転式クレーンが運転できるということでやるという話ですが、限定免許を持っている人が、研修か何かをやることで無線式も使えるようにするというような方向性はないのですか。
○外国安全衛生機関検査官 ありがとうございます。いわゆる限定解除という手続が、現状、法令もありまして、床上運転式限定免許を持っているけれどもマルチな運転免許が欲しいとなった場合は、実技試験だけ取り直すということが法令上規定されています。同じようなスキームで、過去に床上運転式を持っているのだけれども新しい限定免許が欲しいといった場合に、それ用のステップアップ資格、適用除外的なもの、限定解除的なものを設けるというのは、現状の構想の中に入っております。どのように法令上書くかというのはあるのですが、そういった無線の限定が欲しいという方に不利益がないようなシステム作りをしたいと思っています。
○井村構成員 それは、クレーン運転士免許とはまた別で、限定のクレーン等が取れるということですよね。
○外国安全衛生機関検査官 そうです。例として適切か分かりませんが、現状、自動車の運転免許の場合、普通、準中型、中型とありますが、準中型を持っている方が中型にランクアップするみたいな、そういうステップを踏んでいただくことを想定しています。
○井村構成員 ありがとうございました。
○澁谷座長 ありがとうございました。先ほどチャット欄に何かありましたが、それは大丈夫ですか。
○事務局 途中退席ということで御連絡を頂いております。
○澁谷座長 では大丈夫ですね。それでは、こちらの論点1については、いろいろ意見が出てまいりましたので、それらを踏まえて検討を進めさせていただきたいと思います。
続いて、論点2・3、今度は具体的な学科試験、実技試験、教習の内容についてです。先ほど、一部、こちらについてもコメントが出ておりましたが、この学科試験、実技試験、教習の内容について、新しく設置する制度のレベル感や内容を踏まえて、構成員の皆様から御意見がありましたらコメントを頂きたいと思います。いかがでしょうか。多くは、この22枚目のスライドに、学科試験の内容、実技試験、教習について、表でまとめていただいております。学科試験はこれまでとほぼ同じで、無線に関する知識を必ず出題するという条件を追加しています。運転については、無線を前提とした教習を行うという形になっていますが、こちらについて、特にコメント、御意見はありますか。大江構成員、お願いいたします。
○大江構成員 山際先生の調査でも、意識調査の中の御意見として、既存の運転士の免許の在り方は実際とかけ離れていると、そういった指摘がありました。今回、事務局のほうで案として提示していただいている内容というのは、実態を踏まえてスイッチ式の操作機を使うという部分と、操作できるエリアを区切って遠方を操作するということは、実態に即していると思いますので、この内容は適当だと思います。以上です。
○澁谷座長 ありがとうございます。そのほかの構成員の皆様から、何か御意見、コメント等はありますか。鎌田構成員、お願いします。
○鎌田構成員 私も、この新限定免許と床上運転式クレーン限定免許の関係について、無線クレーンに対応した免許の創設ということ自体には違和感はないのですが、先ほども意見させていただきました、一定の距離なり速度がきちんと担保されるかどうかが重要になると思っています。改めて、その点が担保できるという確証をもって、この免許を作っていっていただきたいと思います。
併せて、冒頭、山脇構成員からもありましたように、今、免許を保有されている方と、これから取得しようとする方、特にこれから取得しようとする方については、今の床上運転式クレーンの限定免許より1つ難易度がアップする方向となり、事業所に床上運転式のクレーンしかないのに、これまで以上に難易度の高い免許を取得しなければならないケースも出てくるのだろうと思います。そういった点も考慮して検討いただきたいと思います。以上です。
○澁谷座長 ありがとうございます。事務局からコメントをお願いいたします。
○外国安全衛生機関検査官 改めてコメントを頂きありがとうございます。距離の担保の重要性については、先ほどおっしゃっていただいたとおりかと思いますし、既存の限定免許を持っている方に不利益がないようにという点も重要かと思っています。距離のリサーチをする際に、この床上運転式の限定免許を実際に運用されている所のお声を聞きながら、そういった方に必要以上に不都合がないような制度運用を図っていきたいと思っております。ありがとうございます。
○澁谷座長 課長、お願いします。
○安全課長 補足なのですが、現状の限定免許を取られている方というのは年間35人しかいなくて、実際は限定を持っていないでクレーンを運転されていることが多いという実態も恐らくあると思いますので、先ほど鈴木が申しましたように、限定免許を使っている事業場の御意見は聞きたいと思いますが、それほど大きな問題には多分ならないとは考えております。
○澁谷座長 ありがとうございます。そのほか、構成員の皆様から、この論点2・3について、何か御質問、コメントはありますか。山脇構成員、お願いいたします。
○山脇構成員 22ページについて要望を申し上げたいと思います。こちらでは、現在の床上運転式クレーンと基本的に同様の教習時間とすることが提案されていると思っております。仮に、事務局提案のように、現在の限定免許を改組する形で新たな免許を創設するとした場合には、床上運転式のクレーンと、コントローラーに関する知識を含めた無線クレーン、この2種類の技能習得が必要な人も出てくることになります。この点を踏まえると、単純に現行制度の時間数を踏襲するということでいいのかどうか。新しい免許のほうが修得しなければならない技能範囲が広いけれども、教習時間数は一緒ということになっていますので、本当にこれで足りるのか、私はそれほど専門知識を持っておりませんが、有識者の方々に意見を聞いていただき、エビデンスとしてお示ししていただきたいと思います。以上です。
○安全課長 こちらは前のほうにも出てきておりますが、実際に試験をする方の御意見を聞いています。今回は、コントローラーはスイッチ式で同じなのです。床上運転式でも新しい無線式でも同じで、要は有線か無線かの違いしかなくて、操作方法が全く同じなのです。先ほど言ったように、操作位置だけ変える形になりますので、これでレバー式をするとなると違うと思うのですが、今回はスイッチ式に限定しますので、時間を延ばす必要はないのではないかという御意見を頂いております。
○澁谷座長 よろしいでしょうか。一応、先ほどの補足説明は、26枚目のスライドにも補足の資料として追加されております。そのほか、構成員の皆様から御質問等はありますか。鎌田構成員、お願いいたします。
○鎌田構成員 先ほどの意見と重複する部分もあるのですが、先ほど、床上運転式クレーンの限定免許の取得者が35人と非常に限定的だという説明を頂いたのですが、調査結果の説明では、事業場に設置されたクレーンの台数について、床上運転式クレーンは40%と言われていました。そうすると、単純に免許を取得して、今、作業をされている方が高齢化していっているだけで、その人たちが作業ができなくなれば、これから免許を取らなければいけない人が出てくる可能性は、拭えないのではないかと思っています。今後、影響が大きくなる可能性があるということも想定しながら検討いただきたいと思います。よろしくお願いします。
○安全課長 分かりました。いずれにせよ、ある特定の事業場で使われているクレーンで、実際に免許を受けている会社も限られていると伺っていますので、そこからお話を伺いたいと思います。
○澁谷座長 ありがとうございます。そのほか、構成員の皆様から御質問、御意見はありますか。よろしいでしょうか。山脇構成員、お願いいたします。
○山脇構成員 23ページもこのパートでよろしかったでしょうか。
○澁谷座長 はい、この場でお願いいたします。
○山脇構成員 先ほどの山際先生の研究成果のほうでも、有線であるが故のリスクという話もありましたので、やはり、今、鎌田構成員がお話されたように、床上運転式のみの事業場も現状あって、それらは設備の更新でもない限りは変わらないことを踏まえると、それらを使っている事業場の利用状況をしっかり確認し、本当に1つの資格でいいのかどうか、その方々の御理解が得られることを前提に統合するということにしていただきたいと思います。以上です。
○澁谷座長 ありがとうございます。非常に免許の数としては少ないのですが、不利益を被る事業所については、しっかり状況を把握した上で最終的な決定を行うということかと思いますので、こちらについては、事務局のほうでしっかり御検討いただくということにしたいと思います。そのほか、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。特に御異論がないようでしたら、この学科試験、実技試験、教習の内容についても、おおむね方向性についてはお認めいただいたという形で、引き続き検討していくことになるかと思います。また、各学科試験等の内容等については、今後また御議論をお願いすることになるかと思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。
あとは、その他の論点です。こちらについては、ある程度、これまで構成員の皆様から御意見が出てきているところで、もう既に議論をしているところであるかと思います。まず、1番目の項目の部分については、構成員の皆様から既に御指摘いただいているところかと思います。既存の「床上運転式クレーン限定運転士免許」の保有者が、新たな免許を取得しないと床上運転式を運転できなくなるのは不合理であるということで、こちらは経過措置を設けるということと、今日出てきた御意見としては、これがなくなることによって不利益を被る事業者についても、しっかり状況を確認した上で御納得いただくということを検討するということになっております。
また、下の2点目の所については、まだ余り議論がされてないかと思いますが、無線コントローラーについての通信エラー時の自動停止等の機能の義務付け、定期検査に対する方法についての御提案です。これまで、無線機というのは、クレーン構造規格等に含めても、余り明記をされずに規定されてこなかったという経緯があるかと思いますが、今後、これが増えていくであろうという想定の下で、事務局からの論点として提案されているものです。こちらについて、構成員の皆様からコメント、御意見はありますか。山脇構成員、お願いいたします。
○山脇構成員 赤枠の中に記載を頂いているとおり、通信エラー時の自動停止機能の具備や、定期検査を義務付けるということは、大変重要だと思います。その上で、後段の「クレーン定期自主検査指針に明記」という点に関して、法令ではなく指針への明記でどうかという提案の理由について、厚労省に伺いたいと思います。
○澁谷座長 では、事務局から御説明をお願いいたします。
○外国安全衛生機関検査官 御質問ありがとうございます。まず、天井クレーンの検査の体系については、毎月若しくは毎年、一定の期間に定期自主検査をしていただくことが、クレーン等安全規則の中に明記をされております。具体的に申し上げると、年次を規定しているクレーン則34条では、荷重検査をしてくださいという内容を含めて規定されています。月次を規定している35条では、この項目、この項目を検査してくださいと明記されています。その中に、現状、コントローラーというのはお示しがあり、法令上、義務の対象には既に入っていると解されるべきと思います。ただ、その具体的な検査の方法を指針等で明記をしてきていないので、事業場における具体的な履行がうまく図られていないことが我々としては想定されています。ですので、改めて指針にその方法を明記をした上で必ずやっていただくということで、不具合のある無線機というのが使われなくなっていくのではないかと考えています。
○山脇構成員 ありがとうございます。承知をしました。確認となりますが、安衛法45条の罰則付きの定期自主検査の規定の取扱いということなので、これに違反すれば罰則が適用されるという理解でよろしかったでしょうか。
○外国安全衛生機関検査官 御指摘のとおりでございます。
○山脇構成員 分かりました。最後に、併せて発言させてもらいたいと思います。先ほど課長からも説明があったとおり、そもそも限定のない免許というのが存在しますので、今回の限定免許を設けるに当たっては、是非、安全サイドに立って設けていただきたいと思います。当然、今回の制度を設けたことで、今までよりも事故が増えるようなことがあってはならないと思いますので、その点は改めてお願いしたいと思います。以上です。
○澁谷座長 ありがとうございます。そのほか、構成員の皆様から御意見等はありますか。よろしいでしょうか。それでは、その他の論点についても御意見を頂いたという形で、引き続き検討を進めていくということにしたいと思います。
それでは、非常に熱心な御議論を頂き、どうもありがとうございます。全体を通して、今回の検討内容について何かコメント、御意見がある方はいらっしゃいますか。よろしいですか。オンラインの皆様もよろしいでしょうか。
それでは、全ての論点について御意見を頂いたと思いますので、本日の議論としてはここまでといたします。次回は、本日の議論の中で更に検討すべき項目が挙がってきておりますし、今後、検討しなければならない項目も既にありますので、その辺りの論点を整理しつつ、それ以外の論点もまとめて報告書案を事務局から御提示いただいて、取りまとめの内容に向けて議論していきたいと思います。それでは、一旦、事務局にお戻しいたしますので、事務局から連絡事項をお願いいたします。
○副主任中央産業安全専門官 では、事務局から連絡事項です。次回の日程については、改めて調整の上、各構成員の皆様方に御連絡をさせていただきます。
以上をもちまして、第2回の検討会については、これで終了とさせていただきます。本日はお忙しい中、ありがとうございました。
○副主任中央産業安全専門官 それでは、定刻となりましたので、ただいまから「第2回床上無線運転式天井クレーンの運転に係る資格の在り方に関する検討会」を開催いたします。初めに、報道関係の皆様、傍聴の皆様、この会議の撮影は冒頭のみといたしておりますので、もしございましたら、冒頭のみということで御対応をお願いいたします。それ以降の撮影は御遠慮いただきますようお願いいたします。
初めに、前回御欠席の構成員の御紹介をさせていただきます。オンラインで御参加されている、前回御欠席の森様から御挨拶を頂戴できればと思いますが、音声は聞こえておられますか。音声が聞こえないようですので、また後ほど御挨拶を頂戴できればと思います。
また、本日は堀尾構成員が所用により御欠席、それから、オンラインでの御参加は、森様、青木様、脇坂様の予定となっております。森様、音声は聞こえていらっしゃいますか。
○森構成員 森です。聞こえますでしょうか。
○副主任中央産業安全専門官 恐れ入ります。では、前回御欠席ということでしたので、この場で御挨拶を頂戴してよろしいでしょうか。よろしくお願いいたします。
○森構成員 初めまして。神内電機製作所の森と申します。弊社はホイストを専門に手掛けるメーカーでして、主にホイスト式天井クレーン、工場などで使用される設備などを手掛けております。私は技術部に所属しておりまして、主に機械設計業務に携わっております。今日は少しでもお役に立てればと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
○副主任中央産業安全専門官 ありがとうございました。それでは、この後の議事の進行につきましては澁谷座長にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○澁谷座長 横浜国立大学の澁谷でございます。それでは、早速議事に入りたいと思います。本日の2つの議題ですが、非常に関連した内容ですので、まず最初の議題1については山際構成員より、また、議題2については事務局から順に御説明を頂きます。その後、併せて質疑応答を行いたいと思います。まず、議題1、令和6年度厚生労働科学研究の概要について、山際構成員から御説明をお願いいたします。
○山際構成員 それでは、令和6年度厚生労働科学研究の概要についてということで、資料2にございますように、タイトルは「無線操作が可能な天井クレーンの日本国内における設置状況の調査と安全性の分析」ということで、御報告させていただきたいと思います。
資料を1枚めくってください。研究担当者は、独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所の機械システム安全研究グループ部長の私、山際と、濱島、岡部の3名で実施いたしました。実施項目といたしましては、そちらの右側ですが、1)天井クレーンの事業場における使用の実態調査ということで、アンケート調査を行い、もう1つは、実際に現場に赴いて、いろいろとヒアリングをさせていただくという実態調査を行いました。もう1つ、2)無線操作式天井クレーンの固有のリスク及び安全性の分析ということで、死傷病報告に基づいた労働災害調査、無線操作・規格の調査によるリスクの検証と、この大きな都合4点の調査を行いました。スケジュールといたしましては、実際に9月ぐらいからスタートいたしまして、3月までの半年間でこの調査を取りまとめるというような活動で行っております。
次、めくってください。この研究の目的といたしましては、無線を使用した天井クレーン固有のリスク及び安全性の分析を行いましょうということです。先ほどの繰り返しになりますが、無線運転式天井クレーンの使用の実態や、労働災害・通信障害などの固有のリスクを把握して、クレーンの運転に求められる安全性・技能を分析しましょうということになります。項目1、項目2は、先ほどの繰り返しになりますので、簡単に御説明いたします。実際に天井クレーンの使用の実態調査ということと、もう1つは、無線クレーンを使用した天井クレーン固有のリスク及び安全性の分析、この2点を行っております。
それでは、もう1枚めくっていただきまして、実際に調査の内容についての説明をさせていただきます。まず、項目1:国内における天井クレーンの種別及び使用の実態調査ということになります。天井クレーンを使用している事業場に対して、保有している天井クレーンの種類や操作方法などについて通信調査、通信調査というのはアンケートを配布して、それを御回答いただきまして、回収するという調査になりますが、そちらを実施いたしました。
まず、調査の対象の選定になります。厚生労働省安全課から提供されました、事業場の所轄労働基準監督署が実施した落成検査に合格した、つり上げ荷重5t以上の天井クレーンのリストがございます。そちらから事業場ごとに保有台数を取りまとめまして、以下のように分類いたしました。保有台数が10台未満の事業場、次に、10台以上100台未満、2桁を保有している事業場、そして、3桁以上を持っている事業場という、この3つの分野に分類いたしました。1~10台未満、1桁を保有している事業場からは1,806か所、次の2桁所有している事業場からは207か所を、アンケートの送付先としてランダムに選定いたしました。また、100台以上を保有している事業場につきましては、非常に大きな企業であるということから、私や研究員の者で知り合いの者がいた場合は、連絡を取れる範囲で、約30か所になりますが、連絡を取り、合計2,043か所に回答を依頼することができました。
このアンケート用紙を封書で2,000通準備し、また、電子メールにて43か所に依頼を掛けて、合計1,257通の回答を得て、回収率は61.5%といった状況です。回収の方法としては、アンケート用紙のFAXによる返答、若しくは、インターネットに入力のフォームを用意いたしまして、そちらに回答いただくということで収集を行いました。
資料をめくっていただきまして、それでは、その実態調査の結果について御説明いたします。まず、回答を集めたところ、幾つか回答自体が余り整合性が取れていないといったものがありましたので、少しスクリーニングを行いました。
まず、有効となる調査票というのを選出する必要がありまして、まず、条件1としましては、回答がなされているもの全て、特にスクリーニングせずに回答がなされたものが1,198通。
その次に、有効となる調査票の条件2として、5t以上のクレーンの台数。上のアンケートシートの②の所に、つり上げ荷重が5t以上の天井クレーンの台数を記入してくださいと、その次に、③から⑩までは、その内訳を書いてくださいということで、ここの③から⑩の合計が、本来は②と一致すべきところを期待していたのですが、そうでないという所も少しございましたので、それは省いて、整合性が取れていない所は省いた条件というのを設けてございます。それを条件2といたしまして、それが合計825通になります。
それともう1つ、有効となる条件3というのは、その中で無線を持っているもの。②が③から⑩までの合計と一致していて、かつ、④⑥⑧⑫に何らかの数字が記載されているもの、確実に無線を持っていると分かっているものを選出したものというのが条件3になり、これは257通になります。
この後、特にコメントがない限りは、条件2、要は整合性が取れているアンケートシートによるものの集計を示しているということで、御承知おきください。
1枚めくっていただきまして、まずは、どういうクレーンの種別を持っているかという調査結果になります。回答があった事業場に設置されたクレーンの台数を集計したところ、運転席式が15.7%、床上無線運転式クレーンが17.7%、床上運転式が40.3%、床上操作式が26.3%でした。これを事業場の保有台数別に分類したところ、保有台数が増えると運転席式又は床上無線運転式が採用される傾向にあったということが分かりました。
円グラフが4つありまして、上側が事業場全体で集計した結果になります。左上の青い部分が無線運転式のものになります。17.7%が無線運転式と。この割合を事業場の規模ごとに分類したものが下の3つになりまして、一番左側が1桁の保有台数の事業場の結果、真ん中が2桁の保有台数の事業場の結果、右側が3桁の結果ということになります。大きな規模の事業場になるほど、右側の薄紫色の値が増えておりますので、運転席式が採用され、かつ無線運転式、青の部分も面積が広くなっているということから、この2点が採用されている傾向にあるといったことが分かります。
この中で、無線機能の有無だけを集計したものが、次の7ページ目の結果になります。無線があるなしだけで分類してみると、31.4%のクレーンで無線機能を有していました。これもまた保有台数別に分類したところ、保有台数が大きい事業場ほど無線機能を有するものが多いという結果になりました。1桁の事業場の規模では20.9%、2桁の事業場の規模では33.9%、3桁の事業場の規模では45.3%ということになりまして、基本的には、事業場の規模が大きくなるほど、無線のクレーンを使っている傾向は大きいということが分かります。今日の議論の中で、恐らく結構大事な数字になってくるのは、とにかく事業場全体の約3割の天井クレーンが無線の機能を持っていると、こういったことになりました。
資料をめくっていただきまして、もう1つ、リモコンの型式がございます。無線の天井クレーンは、大きく分けてレバー操作式かスイッチ操作式の2種類になるかと思いますが、基本的にはスイッチの操作式のものが87.5%の事業場で使われていて、レバー操作式というのが12.1%ということで、国内の多くの事業場の無線クレーンというのは、スイッチ操作のタイプのものが使用されているということが分かりました。これは、条件3で、とにかく絶対無線を持っているという事業場のアンケートのみで集計した結果になっております。
次にいきまして、今度はクレーンの資格です。どのような資格を皆さんは保有されていますかということの調査になりますが、回答があった事業場全体で、作業者が保有している資格の人数を集計しました。これは、仮に複数持っている場合は、最も上位のものを御記入いただいております。例えば、技能講習を持っていて、かつ、クレーン運転士も持っているといった場合には、クレーン運転士側をカウントするというように集計しております。この場合、クレーン運転士が35.6%、床上限定技能講習修了者は28.5%であった半面、床上運転式限定クレーン運転士は4.9%で、特に特別教育を省いて考えてみると、7.1%にとどまると、床上運転式限定クレーン運転士の免許というのは、取る人が非常に少ないという傾向があることが分かりました。これは全部の回答を活用しております。
資料をめくってください。次は、作業しているときに、どの程度一人作業をしていますか、若しくは、荷から離れた作業をしていますかということを聞いてみたところ、回答があった事業場におけるクレーンの作業実態について、全体の44.7%が、ほぼ一人作業をしていますと。47.1%が、二人以上の作業で、運転者が荷の5m以内にいるという作業形態でした。複数人の作業で、運転者が荷から5m以上離れていると、非常に大きな距離を取っているという事業場は、8.2%にとどまりました。なお、一般的に、一人作業の場合、玉掛け作業が必ず必要になりますので、荷から広く距離を取るというケースはなかなか想定しづらいのかなと思います。
資料をめくってください。次に、実際にクレーンの作業を行っているときに、どのようなリスクを感じていますかということを問いました。そうしたところ、作業者が床上無線運転式クレーン作業上で感じるリスクは、一番下が床上無線運転式のグラフになりますが、床上操作式のクレーンや床上運転式よりも高く、運転席式よりは少し低いという結果になりました。こういうリスクをどのようなところで感じていますかということで、自由記述で御記入いただいて、用語としていろいろな記述があるのですけれども、それを用語に分割して登場回数を調査してみたところ、「接触」という言葉を使われている回答が121件、「落下」を使っているものが86件、「荷崩れ」は77件、「操作」「作業」というように続いております。では、この言葉が無線運転に非常に固有な単語であるかというと、ペンダントで有線の操作をしていても、接触、落下、荷崩れ等々のリスクというのは非常に感じるところだと考えられますので、この言葉が特に無線運転に固有なリスクというわけではなく、一般的なクレーン作業で運転者及び玉掛け者が感じるようなリスクの用語が並んでいるという傾向でございました。
また1枚めくってください。次に、無線でないと困難な作業というのが実際ありますかというところを集計してみたところ、よくある、時々あるという回答が57.7%という割合を示しました。これらのコメントをまた集計してみますと、自由記述でコメントを求めておりますが、例えば、そもそも、つり荷が高温であり、退避距離を確保しなければならない、そういった場合に、ペンダントであると距離を取ることがペンダントの長さに拘束されてしまうので、距離を確保することが難しいというようなコメントがあります。若しくは、有線であると退避距離を十分に確保できない、これは同じですね、有線だとケーブルが邪魔になってしまい、作業に支障を来す等、そういったコメントがございます。ほかのコメントとしましては、機械設備や積み込み時に有線だと引っ掛かりが生じて効率が落ちてしまう、狭い場所でのクレーン作業時に、有線式ペンダントは取り回しを考慮しなければいけなくて、運搬以外に注意する事項が増えてしまい、これによって作業性が悪くなるなど、床上無線式でないと非効率になる作業についての言及が多かったかなという感じになっています。コメントの例につきましては、そちらの資料の右側に詳しいものを記述しております。このように、無線式でないとなかなか作業が難しいというコメントは、それなりの数があったかなという結果になっております。
さらに、労働災害の発生状況についても調査を行いました。回答があった事業場におけるクレーンを用いた作業での労働災害状況を集計したところ、無線機能を有するクレーンの保有の有無によって、発生割合に大きな差がないということが分かりました。特に下側の表のほうを見ていただきたいと思うのですけれども、令和元年から令和5年にかけて、条件2と条件3、すなわち、クレーン数の整合性があるアンケートシートと、確実に無線を持っているアンケートの集計の結果で、そこまで大きな差はないということで、発生状況に有意な差は見られなかったと考えております。
また、天井クレーンを有する事業場、製造する事業場や無線リモコンを製造する事業場にヒアリングし、現行のクレーン運転士免許制度が現実と乖離している、無線リモコンメーカーの安全設計により、他局からの混信・誤操作のリスクというのが極めて低いというような言及もございました。こちらは、現地のヒアリングによる調査の結果になっております。
項目1はこれで終わりになります。項目1の取りまとめとしましては、そちらに記入されておりますとおり、つり上げ荷重5t以上の天井クレーンにおける無線操作方式の導入実態を把握することを目的としまして、全国2,043事業場を対象にアンケート調査を実施いたしました。その結果、1,257件の回答を得ることができました。
調査の結果、全国における5t以上の天井クレーンの保有台数のうち、31.4%が無線操作に対応しているということが分かりました。したがって、床上無線運転式の天井クレーンは、事業場で一般的に使用されていると、非常に珍しいものではないということが確認されました。また、無線装置の操作方法としては、87.5%がスイッチ式でありました。ほとんどがスイッチを使っているということになります。
作業実態に関しては、「一人作業」又は「玉掛け者との近接作業(5m以内)」というのが回答の90%以上を占めておりまして、操作者がつり荷の近傍にいることが常態であると。これにより、無線操作であっても、従来型のペンダントを用いた床上作業に近い形で運用がなされているということが示唆されました。
リスク認知に関する設問では、「接触」「荷崩れ」「落下」等が最も大きなリスクとして挙げられましたが、これらは操作方法に依存するものではなく、天井クレーンに共通する一般的な作業リスクであります。実際、無線操作の有無によって、労働災害の発生件数に顕著な差は見られませんでした。したがって、安全性の観点から無線操作方式がペンダント式と比べて非常に危険性を高めているという判断はなされませんでした。
また、質問項目「床上無線運転式でないと困難な作業」という質問への回答では、安全性の向上や作業効率の改善、狭隘空間での柔軟な運用、長尺物の対応、視認性の向上などというものが挙げられまして、床上無線運転式でないと困難な作業や非効率な作業について言及されておりました。したがって、無線方式の利点が現場から高く評価されているということも確認できたかなと考えております。
このほか、現地のヒアリング調査によって、「現行のクレーン運転士免許制度が現状と乖離している」という御意見や、「無線リモコンメーカーの安全設計により、他局からの混信・誤操作リスクは極めて低い状態」であるということが確認されました。
続きまして、項目2について御報告いたします。資料をめくってください。無線を使用した天井クレーン固有のリスク及び安全性の分析ということで、労働災害事例の分析を行っております。平成18年から令和3年にかけて発生した労働災害に関するデータベース、合計約15万件ございますが、こちらから「天井」「リモコン」又は「無線」をキーワードとしたクレーンの災害事例を抽出しまして、それらの傾向について検討しました。データベースは、職場のあんぜんサイトと呼ばれる厚生労働省が運用しておりますサイトにおいて公開されている死傷災害データベースを活用しております。
このキーワードを含む事例の数は39件ございました。その原因の中で、例えば混線や通信途絶など、そういう無線に固有であると推定される事象を含む労働災害というのは基本的に確認されず、そちらの原因としては、リモコン操作の誤り、クレーン運転上の誤り、不注意、玉掛け作業の不備、クレーン作業でないなど、そういった原因が挙げられました。こちらはいずれも有線のペンダントでも生じる可能性がある災害であるということが、調査の結果、分かりました。したがって、過去の事例の分析の取りまとめをしたところ、特に無線に固有な労働災害というものの確認は、なされませんでした。
また1枚めくってください。これがほぼ最後になりますが、無線を使用した天井クレーン固有のリスク及び安全性の分析ということで、関連規格についても少し調査をしております。日本クレーン協会規格、JCASの1002-2004年版の「無線操作式クレーンの安全に関する指針」では、受信装置のトラブルに対して「停止」するという制御信号を求めておりまして、ヒアリング調査の結果、一般的な無線リモコンではこちらを満たしておりました。無線機からの信号がなければ、とにかく受信装置側で停止するという制御信号が出ているということは、十分満たしているようです。一方で、メンテナンスが十分でない場合の接触不良等が発生する、例えば非常に粉塵が多い工場での利用など、そのような場合には、接触不良が発生するリスクというのがありまして、定期的な点検等が求められるかなと考えております。
そちらにいろいろ書いてございますが、無線リモコンの通信エラーや異常があった場合には、天井クレーンが誤作動しないような自動停止等の対処が必要であると。構造規格等には、こうした性能に関する規定はございませんが、そのJCAS 1002には、赤字で書いておりますが、受信装置は自動的にクレーンを停止する制御信号を出さなければいけないと。その条件としては、停止スイッチの指令信号を受信したとき、装置内で障害を検知したとき、若しくは所定時間内に検知されなかったとき。こういった場合には停止の制御信号が出るというような条件になっております。
こういう条件を満たした無線リモコンであれば、無線リモコンの通信エラーや異常があった場合でも、労働災害が発生するリスクというのは非常に低減できるかなと考えられます。また、無線リモコンメーカーへのヒアリング調査を行ったところ、一般的な無線リモコンでは自動的に信号を遮断する等の措置が既に講じられておりますということでした。
また、無線リモコンの非常停止ボタンの押下や、電池の残量が不足するなどして、通信途絶が発生した場合、天井クレーンが停止することとなりますが、その場合に生じる荷振れによる荷崩れ等のリスクがございます。また、無線リモコンのメンテナンスが十分でない場合、ボタンの接触不良等が発生するリスクもございます。こうした災害リスクは、運転席式や床上操作式においても、一定程度想定されますが、床上無線運転式を使用する場合も同様に留意する必要があり、無線リモコンへの定期的な点検等が求められるかなと考えられます。
さらに、ペンダントが設けられていて、無線リモコンも設けられているという、複数の装置から運転できる天井クレーンというのが当然ございます。そういう天井クレーンは、アンケートの調査の中で、実は全体の31.4%ございました。ペンダントで運転しているときに、ほかの運転者が、そのことに気付かず、無線リモコンを使い始めるといったことは十分想定されるわけで、これに関してもJCASの1002で以下のように述べられています。そこの赤字の所になりますが、ほかのいかなる装置からも運転ができないようなインターロックを設けましょうと記載がされております。こういうことが設けられておりますので、これによって、複数の運転装置が1つの天井クレーンに設けられたとしても、例えば正逆動作によって急停止して荷が崩れるなどの災害のリスクというのは、このインターロックによって大きく低減できているかなと考えられます。
まとめといたしまして、最後のページになります。項目1といたしましては、天井クレーンを使用する事業場に対して、通信調査を行いました。その結果、天井クレーンのうちの3割が無線化されております。そのうち87.5%がスイッチ操作の無線機を使用しています。床上運転式の免許取得者というのは、クレーンに係る資格保有者のうちの4.9%と、非常に少なくて限定的でございました。また、床上無線式でないと困難又は非効率となる作業がありますよというのが、現場からの声として非常に多くあります。そして、つり荷の近傍で行う作業というのは一般的に行われているということです。
また、もう1つ、現地ヒアリングとか、災害リスクや対策等について分析を行った結果、長尺鋼材を扱う際に、例えば有線ケーブルが障害になるので、安全性確保という観点からも無線化が有効ですよという声や、免許取得時に運転するクレーンと、免許取得後に運転するクレーンが異なり、免許取得が実際の運転スキル取得につながらない、つながっていないのではないかという意見などがございました。これが項目1の取りまとめになります。
続いて、項目2の取りまとめになります。天井クレーンによる労働災害事例を分析しまして、床上無線運転式に固有の事例やその災害原因の分析を行いました。約15万件のデータの中から、天井クレーンかつ無線又はリモコンをキーワードとしている事例を検索しました。その内容を精査いたしましたが、無線機固有の原因の事例というのはございませんでした。普通の一般的な床上天井クレーンで発生するものと同様の災害が一定数発生しておりました。
また、床上無線運転式における固有のリスクを、無線装置の通信規格や機器の実態等を通じて把握して、安全性の分析を行ったところ、具体的にはメーカーにヒアリングを行いましたが、受信について障害が発生していれば、天井クレーンというのは原則として停止するという安全側の制御、若しくはインターロックが掛かっていますよということを確認することができました。一方で、定期的なメンテナンスというのが重要になっているというコメントがございました。以上になります。御報告、終わります。
○澁谷座長 山際様、どうもありがとうございました。続いて、議題2、床上無線運転式天井クレーンの運転に係る資格の在り方について、事務局から御説明をお願いいたします。
○外国安全衛生機関検査官 御説明いたします。改めまして、厚生労働省安全課の鈴木と申します。配布されている資料を御覧いただいている方については、資料3を順次御説明させていただきます。まずは、先ほど山際先生からも御説明を頂きましたが、今回の検討会の趣旨と現状の制度上の背景の振り返りをさせていただきます。
2ページ目は、我々が床上無線運転式天井クレーンと呼んでいるものについて、どういったものですかというのを説明したものです。無線により運転されるクレーンは、一般的に、荷と同じ高さで、運転者の方が操作装置を持ってクレーンを操作することができる、荷から離れて作業ができる、運転者の方が玉掛けも行えるといった幾つかの利点があり、いろいろな業種で御使用いただいております。こういったものは、ほかの運転方式から改修することも可能で、床上無線運転式はクレーンから離れて運転することができる、これは利点でもあるのですが、荷から離れることで、荷との位置関係を視認することが難しくなるというデメリットもあることを御紹介したものです。先ほど研究の御報告からもありましたが、無線操作装置は、例として、レバーで操作するタイプとスイッチで操作するタイプが代表的なものとしてあります。
3ページ目は、そもそも天井クレーンを動かす際、現行の制度上はどうなっているかを解説したものです。労働安全衛生法上、つり上げ荷重5t以上のクレーンの運転業務に就く際には、「運転免許」、「技能講習の修了」のどちらかを条件として付しております。このうち、①運転席式を含む基本的なクレーンの運転に関しては、クレーン・デリック運転士免許の取得を条件としております。また、②床上操作式クレーン、床上で運転し、運転者が荷とともに移動するようなクレーンに関しては、クレーン・デリック運転士免許のほかに、床上操作式クレーンの運転技能講習の修了、この2つのいずれかを条件としています。その他のものとして、③運転できるクレーンの種類を床上運転式クレーンに限定したもの、「床上運転式クレーン限定免許」を別途与えることができるという規定もあります。そういったことで、現行、天井クレーンに関する運転の資格にはこの3つがあります。
ちなみに、その下に付していますが、令和5年度の資格取得者数で申し上げると、技能講習に関しては6万人~7万人ぐらいのオーダーの方、クレーン・デリック運転士免許に関しては1万人程度の方、床上運転式クレーンの限定免許については、令和5年度ベースで35人の方が取得されている状況です。
4、5ページを並べながら見てください。こういった資格の区分をしている背景として、基本的には、操作する際の運転位置、走行の速度、荷に対する水平方向や垂直方向の視認の難しさ、こういった要素を捉えて、運転の資格を設定しているものです。具体的に申し上げると、運転席式のクレーンに関しては、荷よりも高い位置にある運転席から運転をします。ほかの床上操作式などと比べて、荷と操作者、運転者の位置関係を維持する必要がありません。つまり、クレーンに運転者が歩いたりして追従する必要がないので、法令上、速度の制限がないものになっています。運転席式のクレーンに関しては、高速の運転が可能といった状況です。こういった背景から、床上操作式や、床上運転式のクレーンなどに比べ、走行のスピード面や操作の位置の関係から、難易度が高いものと言えると思われます。
また、5ページの表の一番下のものですが、床上操作式のクレーンに関しては、走行・横行いずれも荷とともに移動する。つまり、ペンダントの物理的な制約の下に、運転者の方が荷と一緒に移動する必要があります。反面、表の真ん中の床上運転式クレーンに関しては、走行に関しては運転者の方が一緒に移動するけれども、横行に関しては荷と追随する必要はない、追随できない構造になっているという状況です。そういった状況を整理すると、5ページ目の表のように、一番難しいものは免許、中ぐらいのものは限定免許、最も難易度が低いと思われる床上操作式に関しては技能講習と、こういった3段階の資格を整理している状況です。
こういったものが現行の制度としてありますが、床上無線運転式クレーンといったものについては、製造業を中心に広く使用されている状況です。ただ、現行の運転免許制度から申し上げると、この床上無線運転式クレーンを使用する場合、一番難しい免許であるクレーン・デリック運転士免許が必要となっております。ただ、クレーン・デリック運転士免許が通常必要とされる運転席式のクレーンよりも、荷と同じ高さ、床上で運転する点など、運転しやすい面があることから、安全性の確保を前提として、免許の在り方、運転資格の在り方の検討が必要であろうということで、今回の検討会に皆様に御参集いただいております。
ちなみに、6ページの下の※にもありますが、床上無線運転式クレーンに関しては、垂直方向の荷の高さの視認性は、ほかの床上運転式クレーン及び床上操作式クレーンと同様と考えられており、少なくとも運転席式のものよりは難易度が低いと想定されます。また、操作の方法は様々ありますが、仮に高速操作に向かないようなスイッチ操作の場合、低速で運転をすることから、運転操作の難易度についても、床上運転式及び床上操作式と同じような難易度であると想定されます。一方、床上無線運転式に関しては、無線で操作できる関係で、水平方向の運転の制約がありませんので、床上運転式などに比べ、水平方向に離れて運転できるという状況です。
そういった状況を整理したものが7ページ目の図です。ここまでは前回の検討会でもお示ししたものかと思います。その上で、第1回の検討会では、事務局から論点として3つ提示させていただき、こういった内容を御議論いただく際に、背景情報を研究などでお調べいただいて、その上で具体的な内容について御議論いただきたいと、前回の検討会で御意見を頂いたところです。
主な論点として、論点1は、資格自体をどういうように位置付けますかというもの、論点2と論点3はまとめてお伝えいたしますが、新たな資格を設けた場合に、学科試験、実技試験、教習も含めますが、この学科、実技の試験についてどのように実施したほうがいいですかといったもの、この3つの論点を提示させていただいております。
こういった振り返りを踏まえ、今回、資料2で御説明いただいた厚生労働科学研究という形で、労働安全衛生総合研究所の山際先生に、無線で操作するクレーンの実態についてお調べを頂いております。調査していただいた内容を事務局のほうでまとめている資料がこちらです。例えば、無線のコントローラーを有するものは全体の3割ぐらいあり、そのうちのスイッチ操作方式というのは87.5%で大多数を占めている。あとは、操作者の方が5m以上離れて操作を行う事業場は、実は8.2%とかなり少なく、荷の近傍で操作される方が一般的である。これら、先ほど御説明いただいた内容をまとめたものが9、10ページの資料です。
こういった研究の内容を踏まえ、11ページの論点1です。今回、新しい制度をどのように位置付けますかという点について、第1回の御議論と研究で御報告いただいた内容を踏まえて、事務局からの提案内容をまとめたものが次にあります。まずは、第1回検討会の際にはこういった御意見を頂いております。新しい資格を作る際には、当然、労働災害が増加することがあってはならないので、実態調査を踏まえて、エビデンスに基づく検討が必要という、ごもっともな御意見を頂いております。また、運転席式は実技試験以外で使用しないということを御指摘いただいているもの、当然、既存の資格と整合すべきというお話、床上操作式、床上運転式については、構造規格の中で速度制限が設けられているので、無線を使わせる場合は、速度制限の取扱いについても議論が必要という御意見を頂いております。下から2つ目ですが、運転制御方式の差や運転者以外が被災するリスクも分析の際には検討が必要というお話。最後に、無線を使用したときには、電波が止まってしまったり混線してしまったりということで、クレーンが停止するリスクがあると、こういった事例があれば、詳しく分析をしてくださいという御意見を頂いております。
この辺りの御意見を踏まえ、労働安全衛生総合研究所で御検討を頂いた内容の関係する部分を抜粋しております。使用実態については先ほど申し上げたとおりです。作業者が感じる労働災害発生リスクについては、床上無線運転式クレーンの作業上のリスクは、床上操作式や床上運転式の他のクレーンよりは高く、運転席式、一番難しいものよりは低いという結果になっている状況です。また、無線タイプのクレーンでないと難しい作業が幾つかあるという御指摘も併せて頂いています。無線コントローラーを使用している際に通信が途絶してしまったなど、無線特有のリスクは、今回お調べいただいた中で、労働災害の中では確認ができていないところです。一方、ほかの床上から運転するタイプの天井クレーンと同様の労働災害は一定数発生している状況でした。
この辺りの御意見を踏まえ、事務局から今後の検討について前提条件を整理しながら御説明いたします。まず、13ページ目、床上無線運転式のクレーンの免許制度を設定する場合、どういう技能・知識が必要かを整理する必要があるので、改めて、こういったものを書いております。
必要な技能としては、荷をつり上げて、定められた軌道に沿って横行、走行、斜行、物を乗り越えたり、障害物をすり抜けたりする、決まったルートで荷をつり下ろすという作業をしていただく必要があります。また、場合によっては、玉掛け操作者や合図者と連携し、物をつり上げたり、つり下ろしたりする作業をしていただく必要があります。このうち、床上無線運転式に限定すると、無線コントローラーで荷から水平方向に離れた位置でこういったことを行う点が、無線タイプ特有のものとなっていると思われます。
また、下の部分ですが、クレーンの運転に関する知識としては、クレーンに関する知識、原動機及び電気といった知識、基本的な力学の知見、最後に関係法令といったように、この辺りに必要な知識としては、ほかのクレーンと変わらないと、我々も分析している状況です。
改めて、こういった知識・技能をほかの資格制度と比較したものがこちらです。床上から操作する点で、垂直方向の荷の視認性は床上運転式や床上操作式と同様と考えられます。先にも触れましたが、走行の速度に関しては、無線を使用している以上、様々なものが原理的にあり得ると思われるのですが、現状、87.5%が高速走行に向かないスイッチのタイプを採用しております。そういったことを鑑みると、仮に運転する際の速度制限を掛けた場合、走行操作の難易度は、ほかの床上タイプのクレーンと同様のものになろうと思われます。
最後に、水平方向の運転位置、視認性についてです。こちらは、荷から離れた場合に、当然、水平方向の荷の視認が難しくなってくるという点で、床上運転式よりも難しいと言えます。また、原理的には電波が届く範囲まで遠く離れることができると思われるのですが、お調べいただいた実態では、5m以上離れて操作をするというのが全体の8.2%にとどまっていることもあり、作業実態を勘案し、運転位置に一定の制約を加えた場合、運転席式のクレーンよりも難易度が低くなり、床上運転式のクレーンよりも少し高くなるといった難易度の設定が可能と思っております。
こういった状況を踏まえると、新たな資格の位置付けとしては、運転できるクレーンを、荷から一定の距離の範囲内で運転するもの、低速で運転するものという形で、資料上は「床上運転式クレーン等」と記載していますが、床上運転式クレーンや床上無線運転式クレーンを含めて限定したものとするのが適当ではないかと事務局では考えております。下の※にありますが、今回、一定の距離の範囲内については、事務局のほうからは提案をしておりません。皆様の御意見や事務局のほうの追加調査をもって、一定の数字を提示したいと思っておりますが、現時点でお伝えできる範囲としては、荷から5m以上離れて操作をする事業場は1割未満という状況でした。そうすると、こういった一定の制限を加えると、ほとんどの作業が新たな資格制度でカバーされるということで、需要があるような事業場に対しては、こういった制限を加えても必要な需要は満たすことができるのではないかと考えております。
では、提示した論点のうち、論点2・3の学科試験、実技試験の在り方について併せて御紹介させていただきます。まず、第1回の御議論では、学科の面では、クレーンの種類が変わっても求められる知識は同じようになるのではないですかといったお話、無線のリモコンの誤操作といったリスクを踏まえると、機器の基本的な情報は知識として問う必要があるのではないですかといった御提案を頂いています。また、実技試験、教習に関しては、運転席式を実技試験以外で使わない人がいっぱいいるというお話、床上無線運転式は、つり荷とクレーンの位置関係がもちろん一定ではないので、立ち位置が自由に選べることを踏まえた実技試験にする必要があるというお話、レバー式は難易度が高いのだけれども、スイッチ式のほうが一般的に使われているといった作業実態や、必要なスキルというのを踏まえた実技試験にする必要がありますというお話を頂いております。最後に、速度制限が必要だという話は、もう一度記載をしている状況です。
また、研究報告を踏まえると、先ほど御説明していないものとしては、3ポツ目、使用される無線コントローラーの状況があります。お調べいただいたとおり、無線のコントローラーは、スイッチタイプ、床上運転式のペンダントスイッチと同じような仕様のものがほとんどでした。また、通信エラーの対策が一定なされていて、ほとんどの無線コントローラーについては、自動で止まるなどの機能が具備されていることが確認できています。
こういった現状を踏まえつつ、もう一点、開催前に、指定試験機関と言われる、クレーンの運転免許試験をしていただいている機関に、我々事務局のほうでヒアリングをいたしました。その結果を記載しているものが資料の17ページです。現状、運転席式と床上運転式を試験として実施していただいておりますが、これに床上無線運転式が加わった場合、例えば操作方法などの差はどうですかとお聞きしたものです。
まず、運転席式のコースは、そもそも高所から確認することを意図して設計しているので、床上で運転するタイプのものについては、床上運転式のコースが床上から操作することを意図していて適しているといった御意見を頂いております。また、床上無線運転式については、操作の場所が自由に選べるというのが原理的にあるので、自由に操作できると難易度は簡単になるため、操作する場所を限定したり、障害物を増やすなど、実際の操作、想定した難易度に合わせるというか、コースをモディファイする必要があるという御意見を頂いています。また、床上無線運転式は、運転位置の制限を設けないと、いろいろな角度で荷を視認できるので、荷物とほかの物が当たるような角度で見ることができるようになると、難易度が著しく下がります。一方、運転できる位置に一定の制限を加えると、見る角度が限定されるので、当然、難易度は上がっていくといった御意見を頂いています。
下側のポツは、使用している無線コントローラーの状況について、実際にお使いいただいた上でヒアリングをしたものです。スイッチ式、レバー式それぞれ必要な技量が別物だという御意見を頂いています。また、試験の公平性の観点から、ユーザーの方というか受験者の方が、スイッチ式がいいです、レバー式がいいですというように選択ができるというのは難しいため、いずれかの操作方法に統一して試験を実施したほうが公平ではないかといった御意見を最後に頂いています。
この辺りのヒアリングの結果を踏まえ、事務局からの提案が以下の資料です。まずは、現行の免許制度はこういった科目でできていますというものです。クレーン運転士と床上限定運転士の免許の学科試験については同じものを使っております。また、実技試験、教習については、当然、運転席式のもの若しくは床上運転式のもので、使っている機体が違います。教習に関しては、クレーンの基本運転の部分の時間が多少違うといった違いがあります。これは、クレーン運転に必要な能力として我々が分析したものを、カリキュラム振りをしている状況です。
その上で、床上無線運転式も含めたクレーンの運転に必要な技能というのを改めて分析した表がこちらです。見ていただくと、基本的に、運転前にする確認、運転合図の認識みたいなものは、どのクレーンでも一緒です。違う点としては、安全な運転動作を実施するに当たって、荷物からどのぐらい離れて、また、どういったスピードで運転をしていただくかによって、難易度というか、必要な能力が変わってきますということです。この中で、床上運転式と床上無線運転式の2つに関しては、横行方向から離れるかどうかという点のみの違いとなっている状況です。
こういった点を踏まえ、新たな免許を設ける場合、特に床上運転式とどういった差があるか、確認すべき能力にどういった差がありますかというのをまとめたものがこちらです。まず、学科については、いずれのクレーンであっても必要な知識は共通していると思われる。ただ、無線のコントローラーに関しては、現状、必ずこの知識を確認するということになっていない状況があります。また、実技試験、教習で確認すべき能力については、クレーン運転士で確認している実技試験の内容と、無線のクレーンで求められる能力というのは、垂直方向で荷を視認する必要がない、走行の速度が違うなど、幾つかの乖離した点がありますという内容です。ちょっと飛ばして、一番下のポツです。床上操作式の技能講習を考えると、運転する方が荷から離れることができるという点で、無線のクレーンと一定の差がある、水平方向の視認性に差があるということが、分析の上で分かっています。
真ん中の3、4ポツ目です。床上運転式の限定免許と比較をすると、運転位置がやや遠いという点以外は、必要な技能・知識の差がほとんどないという状況が分かっています。また、今回の調査結果でも、限定免許の資格を保有する方は5%未満、また、新規で資格を取得される方も、一般的なクレーン運転士の免許に比べて数百分の1という状況でした。
こういったことを踏まえると、まず、床上運転式クレーンの免許を創設するべきではないか、これは前回の資料でも記載しているものを繰り返しています。床上運転式クレーンの限定免許を改組する、改良を加えることで、床上無線運転式クレーンを用いて、従前の床上運転式クレーン限定免許の位置よりも遠い所で試験をするというようにすると、床上運転式クレーンに必要な能力も、床上無線運転式クレーンに必要な能力も、どちらも確認することができるのではないですかというのを、資料の一番下のほうで赤字で書いております。なお、資料の上のほうには、無線を用いた試験でテストをすると、床上運転式の能力も同時に測ることができますよという分析を記載しております。
次のページです。具体的に、新しい免許をどのように実施したほうがいいかということに対する事務局の提案です。まず、学科試験については、必要な知識は同様と思われますので、今までの限定免許と同じように確認をすることが良いのではないかと考えています。一方、無線のコントローラーについては、使用していただく都合上、必ず確認をしていただくというのが適当ではないかと考えています。
また、実技試験については、今回、分析を頂いたとおり、スイッチ式が一般的であることを踏まえ、スイッチ式の無線コントローラーを使った床上無線運転式クレーンを使って、今までの床上運転式クレーン限定免許の技能講習の実技試験の内容から、運転位置を少し離して実施することで、新しい無線のクレーンや今までの床上運転式クレーンどちらを使用する技能も測れることから、こういった形で試験を実施することが適当ではないかと考えられております。
説明が長くなっておりますが、次の24、25ページでは、新しい資格で、こういうクレーンを運転できるようにしたほうがいいというのをまとめております。25ページの図を見ていただくのが一番スムーズかと思います。まずは一番上、運転席式のクレーンについては、繰り返し申し上げているとおり、もともと速度制限がありません。一般的には、速度を多段階で変えられるようなレバー操作式が採用されていることが多いと聞いております。また、運転位置から垂直方向にも水平方向にも離れますので、荷の視認性がかなり難しくなってくるという状況です。
表の一番下の欄、床上運転式・床上操作式については、どちらも速度制限があるものです。ペンダントスイッチで速度を1段階若しくは2段階に変えられるもの、そういった変更しか持っていないものが一般的とお聞きしておりますので、低速で運転をするし、そもそも操作方法が低速にしか対応していないものです。有線のスイッチがあるので、運転位置が限定される、ということは、どうしても荷の視認性はその周りに限定されるので、遠くから離れて運転するよりも、難易度が一定下がってくると分析しています。
今回、床上無線運転式を導入する際に、新しい免許で使用できる対象に3つの条件を付すことを考えております。条件1として、まずは走行の制限、スピードに制限を加えるという点。2点目として、スイッチ式、レバー式いずれもありますが、ほとんどの方が使用しておられるスイッチ式、かつ、速度制限がある場合によく使われるものとして、スイッチ操作式の無線コントローラーに限定すること。最後に、今後の検討も踏まえ、操作する位置に一定の制限を設け、免許を設けるのが適当と考えております。
表の下の赤枠ですが、例えば、無線を使って速いスピードで運転したい、荷から離れて運転をしたいといった方に関しては、従前のとおり、今までと同じようなクレーン運転士の免許、マルチな免許を取得していただくといった整理がよろしいのではないかと事務局では考えております。
26、27ページは、前回もお渡しした従前の試験の整理です。最後に、今回、出ていない論点として2つあります。その点について改めて整理させていただきます。29ページを御覧ください。今回、事務局の提案として、現状ある床上運転式クレーン限定免許を無線のクレーンも運転できるように改組をすることを御提案いたしました。そうすると、今までに床上運転式の限定免許を取っていた方はどういうような取扱いになるのかという点です。当然、従前の限定免許を取得した方については、引き続き同じ床上運転式クレーンについては運転ができる一方、無線に関しては、その技能を確認していないので、古い限定免許を持っている方は、床上無線運転式については含まれない、これは運転できないといった経過措置が適当ではないかと考えております。
真ん中から下側です。現状、無線コントローラーについては、ほとんどのものが自動停止機能を備えていることが確認できております。ただ、これが法令上、例えば構造規格などで担保がされていないこと、定期的に検査をされておらず、不具合が突然起きてしまうという事例があることが指摘されています。例えばクレーンの定期自主検査指針などの内容に、現状、無線コントローラーに関する記述はない状況です。ですので、床上無線運転式に用いられる無線のコントローラーについては、通信エラー時などに自動停止するなどの必要な安全機能を義務付けることと、検査をする際の方法として、例えばクレーンの定期自主検査指針などに明記をして、確実に検査をしていただく形に持っていくのが適切ではないかと考えております。事務局の説明は以上です。
○澁谷座長 どうもありがとうございました。令和6年度厚生労働科学研究の概要と、第1回の検討会の議論や研究結果を踏まえた運転資格の在り方について御説明いただきました。また、各論点に対する方向性についても御提示を頂きました。こちらの2つの議題について順に議論をしていきたいと思います。まず、議題1の令和6年度厚生労働科学研究の研究報告結果について、御質問、御意見のある方は挙手、オンラインの方はチャットへの書込みをお願いいたします。大江構成員、お願いいたします。
○大江構成員 山際先生、今回、このような大規模な調査をしていただいて、ありがとうございました。我々メーカーではとても実施することができないような内容でして、感覚として感じていたものを統計的な数字で把握することができました。非常に感謝しております。
その中で、無線の条件1の場合だと思いますけれども、採用率が31%というのがございました。実際、我々もクレーンを造っているメーカーでして、大体感覚と一致しているのですが、これは現時点での数字でありまして、今、日本国内には労働人口の減少といった課題がございます。そうした中で、ユーザー様のほうで既設の運転式のクレーンを無線操作に変えていくというトレンドが広くあります。そうすると、現時点では30%ですけれども、今後、時間を追って見ていくと、これが50%、60%という具合に、運転式が無線操作式に置き換わっていくのではないかということを感じております。これは意見としてお伝えしたいなと思いましたので、申し上げさせていただきました。以上です。
○澁谷座長 貴重な御意見ありがとうございます。そのほか、何かコメント、御意見等はございますか。よろしいですか。こちらの研究成果の報告について特に御質問がないようでしたら、在り方についての論点のほうに移っていきたいと思いますが、オンラインの皆様を含めまして、御意見はよろしいでしょうか。
それでは、こちらについては御意見が特に出ておりませんので、次の議題2、床上無線運転式天井クレーンの運転に係る資格の在り方についての議論のほうに移りたいと思います。まず、論点が3つ示されていました。その論点の中のまず1番目の論点、新たな資格をどのように位置付けるかということで、今回、先ほどの議題1の研究成果も参考にしつつ、事務局から御提示いただいています。事務局としての御意見は、14枚目のスライドの所にございますが、赤枠で囲まれているとおり、「運転できるクレーンを、荷から一定の距離の範囲内で運転する低速の床上運転式クレーン等に限定した免許とすることが適当ではないか」というような御提案を頂いております。こちらの論点1について、構成員の皆様から御意見、コメントがございましたら、よろしくお願いいたします。井村構成員、お願いいたします。
○井村構成員 ちょっとお伺いしたいと思ったのが、先ほどの研究成果とも関わるのですけれども、速度制限があるクレーンが無線式でも大多数というお話でしたけれども、そうすると、高速で動かせる無線式というものが1割ぐらいあるということになるわけですよね。それは運転席式と同じぐらいの速度が出せるというような理解でよろしいのですか。
○外国安全衛生機関検査官 御質問ありがとうございます。運転席式と無線かつ高速が出せるもので、速度の違いがどの程度あるかは不明なところがありますけれども、いずれもレバー操作式といいますか、多段階でスピードを変えられるものが採用されることを確認しております。ですので、速いスピードになることができる、速いスピードに適している運転形式であろうというように、事務局としては分析をしています。
○井村構成員 そうすると、免許そのものに関しては、レバー式かペンダント式かで分けたほうが分かりやすいということになりませんか。
○外国安全衛生機関検査官 ありがとうございます。御指摘のとおりかと思います。なので、操作をスイッチの操作に限定したもので試験をする、かつ、使用するものを限定することを考えております。我々も余り想定はしていないのですが、ボタンを押すとすごいスピードで走る、構造的にそのように持っていくことができるものは一応ありますので、ほかの床上のクレーンと同じように、スピード制限を掛けつつ、ボタン式のもの、スイッチ式のものに限定することで、皆さんが使っておられる、かつ、能力を一定の範囲内に制限することができるのではないかというように分析しています。
○井村構成員 ありがとうございます。
○澁谷座長 井村構成員、どうもありがとうございました。山脇構成員、お願いいたします。
○山脇構成員 連合の山脇でございます。まずもって、山際先生をはじめ機構の皆様には、詳細な調査を実施していただいたことに対し、私の立場からも改めて御礼申し上げたいと思います。
改めて、私ども労働者の立場から、本検討会でこうした視点を持って検討してもらいたいということを申し述べたいと思います。1つ目は、今回の検討は免許制度の在り方ですので、機械の構造・規格とは切り分けて議論するものと承知しております。一方で、新しい免許を設けるとなれば、それらが当然に遵守されるための仕組みや、免許の更新の在り方、あるいは法令遵守のための行政の監督指導も含めて、労働者保護の観点から総合的に検討していくことが必要と思います。 次に、後ほど提案に出てきますが、今回、現在の限定免許と統合して新たな免許制度を設けるとのことですが、現行制度の有線式の免許の取得を既にされている方、あるいは今後当該免許の取得を予定されている方にとって不利益にならないような仕組みにしていくことも重要と考えます。
その上で、14ページの内容ですが、労働者の立場から、運転者はもとより周辺で作業する方々も含めて、就業者全体の安全を確保するということを踏まえると、ここで重要なことは、ペンディングになっている「一定の距離」をどう設定するのかについて、慎重な検討が必要と思っています。
以上の点について、厚労省、山際先生に1点ずつ、質問させてもらいたいと思います。
まず厚労省への質問ですが、適当な距離について別途調査を実施するということですが、当然エビデンスに基づいて議論しなければいけないと思っておりますので、調査の実施時期と具体的な方法等についてお伺いしたいと思います。併せて、床上有線運転式クレーンの場合には特に距離に関する制限は設けられていないと認識していますが、それで正しいかどうかをお伺いしたいと思います。
また、山際先生には、研究調査を行った立場から、「一定の距離」に対して、どの程度の距離が適切と考えているのか、あるいは、設定するに当たっての留意点等があればお伺いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○外国安全衛生機関検査官 事務局から、まず御質問いただいた2点について御回答いたします。
正に山脇先生がおっしゃったとおり、今回、新しい免許を設定をした場合に、どの程度の距離を設定するのかが一番重要かと考えております。その際、調べ方といたしましては、従前の免許を使われている方々が実際どのように作業されていますかという状況確認をすることとか、実際に使用している方々のお声、数をたくさん稼ぐというのは時間的に難しいところもありますけれども、そういった声を拾い上げて、では実際どのぐらいで使われていますかという状況を調査することが重要と思っています。また、国内で無線機を実際に販売をされている所に、実態としてどのような情報をユーザーに提供していて、どのような使われ方が一般的かということを情報収集することも重要であろうと思っております。ですので、ユーザー、メーカーそれぞれの視点で情報を収集する、ヒアリングなどで情報を収集するということを今考えております。
2点目、有線の距離制限についてです。床上運転式の場合、原理的には横行の方向には制限がない、ガーダーの長さには制限がございません。ただ、天井クレーンの物理的な制約としまして、かなり長いガーダーを整えるには、それだけ構造的にガーダーなどを支える構築物に大きな負担が掛かるというように思われております。実態としてどれぐらいの長さまであるかというのは、我々も把握が難しいと思っておりますけれども、少なくとも現行の限定免許で、どのぐらいのガーダーの長さのものが使われているかという点については、距離の把握と併せて実態を把握していく必要があろうと思っております。
○山際構成員 それでは、2番目の御質問について山際から少し回答させていただきたいと思います。
先ほど、鈴木様から発言がありました、実際のガーダーはどれぐらいのものが使われていますかというのは、頂いたデータを基に調べてみると、15mから20mぐらいのものが非常に多く使われているなというのが既にデータとしてございますので、それよりも大きくなるようなことというのは、逆に言うとちょっと想定はしにくいのかなと思います。最終的な数字としては、先ほどの鈴木様からの話にありましたとおり、ヒアリング等々を通じて決めていくことになりますが、国内にある工場などの事業場の範囲又は設置されているガーダーの長さなどを把握する限りでは、その辺よりも小さいところというのが現実的な数字だし、実際に私たちも見て、それよりも遠い所での作業でやり放題にやっていいよというのはなかなか言いづらいと思いますので、現実的にはそれよりも小さい数字が落としどころなのかなと現状では考えております。以上です。
○山脇構成員 ありがとうございます。追加調査の実施に当たりましては、今の山際先生のコメントも踏まえながら、実施してもらいたいと思います。その際、経営者の方は当たり前ですけれども、労働者にも是非ヒアリングを実施してもらいたいと思います。今回の資料の中でも、例えば「5m以上離れて作業を行う事業場は少ない」との記載がありますが、その具体的な事例はどういうものなのか。あるいは、現行の限定免許を取得している方々が不利益を被ることはないのかという観点も含め、問題ないかどうかをしっかりとヒアリングしていただきたいと思います。
○澁谷座長 ありがとうございました。大江委員、お願いします。
○大江構成員 今、「一定の距離の範囲内で」という部分に対しまして、いろいろ御意見があったのですが、私が備えておかないといけないなと思うのは、事務局に考えを確認したいのですが、一定の距離というのは横走行方向で、縦の空間距離というのは考えていますか。
○外国安全衛生機関検査官 御質問ありがとうございます。現状、事務局の想定としましては、いわゆる水平投射距離、荷をつり上げる瞬間の運転者の方との差を考えております。当然、揚程が高いものというのはクレーンの中にはたくさんあると思っておりますので、距離の制限をする際には、そういった区切りが必要ではないかと思っております。ただ、揚程が高いものについては、当然、垂直方向の視認、荷の高さをどう見分けるかというスキルが必要になってくる、高ければ高いほど必要になってくると思いますので、例えば高い所に荷を上げておくみたいな作業に関しては、運転席式のもので、上下の方向も併せてスキルを確認することが必要ではないかと考えているところです。
○大江構成員 運用になったときに、解釈によってそこが混乱してしまうといけないなと思いましたので、周知をお願いしたいと思います。
○外国安全衛生機関検査官 ありがとうございます。その辺りは、誤解のないようにうまく制度運営を図っていきたいと思っております。
○澁谷座長 ありがとうございました。そのほか、論点1に関してでございますが、鎌田構成員、お願いいたします。
○鎌田構成員 基幹労連の鎌田です。労働者の立場から、私も高さが気になっています。視認性なり作業性だけに着目をするのではなく、退避距離をどれだけ確保できるかという視点も1つあると思いますので、高さにも留意いただきたいと思います。
もう一点は速度に関してです。速度制限を掛けていないということは理解しているのですが、一定の速度をどう担保するか、低速を守る、守らないということは、人によって変わってくるのだろうと思います。そのため、一定の距離も含めて、この点をどう担保するのかについて、厚労省による監督指導の強化・徹底も含めて検討いただきたいと思います。以上です。
○澁谷座長 ありがとうございます。今のことで補足があれば事務局からお願いします。
○外国安全衛生機関検査官 ありがとうございます。2点御発言いただいたと認識しております。まず、退避距離については、お考えとして非常に重要と思っております。当然、荷を高くつり上げればつり上げるほど落下のリスクが上がってきますので、つり荷からは遠く離れたほうが安全であるという話があろうかと思います。ですので、作業位置の制限と併せて、その点も整理が必要かなと思っております。
2点目の速度制限を実際に現地でどのように確認しますかという点も、制度運用に当たっては、非常に重要な、クリティカルなポイントかと思っております。実際に使用される無線のコントローラーのスピードがどうなのかというのを、ユーザーサイドで分かるようなスキームを整えるですとか、いろいろなことが考えられるのですが、いずれにしろ、現地で使用される方に混乱がないように、仮に我々や労働基準監督署の者が監督や指導にお邪魔する場合に、そういった内容が分かるような、指導する者も混乱がないような形に一定整理して情報発信していくことを考えております。
○澁谷座長 ありがとうございました。それでは、中村構成員、お願いいたします。
○中村構成員 では、私のほうからですが、先ほど距離の問題ということで5m以内という結果が出ているわけですが、そうすると、実際に試験をやるときは、5m以内で行うということだと思います。そして、実際にその5m以内を取るに当たっては、各現場の状況などに応じてという話なのですが、私が不安なのは、5m以内ということは、段々近づいていく方向に距離が設定されるということですよね。そうすると、最低ラインはどれぐらいなのかということを設けないと、ちょっとまずいのではないかと思ったのですが、その辺りをどうお考えですか。
○澁谷座長 では、事務局からお願いします。
○外国安全衛生機関検査官 ありがとうございます。荷まで最低どの程度離れるかというのは、まず、法令上の義務で申し上げると、荷をつり上げた際の荷の下に当然入ってはいけない、これは義務事項です。また、例えばクレーン協会様などの業界団体の中では、つり荷から垂線を下ろした際の45度、その中に人が入らないことが重要であるとお伝えいただいております。いずれにしろ、荷の落下の際のリスクの範囲から離れて運転をすることが重要ですので、法令上の義務やお知らせ事項として、それぞれどこまでを求めているかというのは切り分けが必要かと思っておりますが、当然、近ければ視認がしやすいけれども、近いとリスクが上がるという構造は天秤になっていますので、少なくとも新しい免許の施行のタイミングで、改めて確認指導というか、コメントが必要な範囲については、行政から改めて一緒にお知らせをするということかと思っています。
この範囲以上は入らないでというのを設定するのは、やはり会社や状況に応じてなかなか難しいところですが、今まで業界団体でコメントいただいている内容などを踏まえながら、これとこれは守ったほうがいいよ、法令上はここは罰則が付いていると切り分けて、周知をして徹底していただくことが重要かと思っています。
○中村構成員 ありがとうございました。
○澁谷座長 ありがとうございます。そのほか、構成員の皆様から御意見はありますか。オンラインの方から御意見があるようでしたら、チャットか何かでコメントを頂きたいと思いますが、よろしいですか。脇坂構成員、お願いいたします。
○脇坂構成員 質問をよろしいですか。今までの議論を伺って、荷から一定の距離の範囲内という、このページですが、床上操作式の無線クレーンを対象にするということなのですが、先ほどあった、つり荷から45度の範囲内には入らないで、なおかつ、15~20m以内で運転するための免許という認識をしたのですが、仮に20m以上離れて運転した場合は、これは違反になるのですか。そういうイメージでしょうか。
○澁谷座長 御質問については、距離を決めて、それ以上離れた場合に違反になるかならないかという話ですが、これからの作り方次第なのですが、事務局からもコメントがありましたらよろしくお願いいたします。
○外国安全衛生機関検査官 脇坂構成員、御質問ありがとうございます。今回、距離の制限を一定加えて、その範囲内での運転に限定した免許を交付することを考えております。法制度的な内容をお話すると、これは、いわゆる就業制限業務と言われる、労働安全衛生法の61条に規定がされている業務です。この限定された免許を持っている方が限定の範囲外の業務に従事をした場合は、この61条の違反が問われる可能性がある、こういう条文上の構成になっています。ですので、どのぐらいの距離の範囲を設定するかは、その限定免許をお持ちの上で作業をする方が、どのぐらいの範囲内で活動するかということとリンクする内容と考えております。
○安全課長 ちょっと補足です。今回の限定免許というのは、限定されてない免許が存在することが前提になっていますので、そういう離れて作業せざるを得ないときには、限定の付いてない免許を取ってくださいということになります。ですから、あくまで揚程もある程度高くなく、言ってみれば町工場とか、そういう所の人たちが、ある意味簡易に、比較的、相対的に簡単に免許が取れることを前提にしておりますので、非常に揚程が高い、50mも上げるとか、あるいはガーダーが30mもあるとか、そういうクレーンについては、従来どおりの免許を取ってくださいということです。一応ターゲットを絞って免許を簡単にするという考え方で、それ以外は限定なしの免許でやってくださいという発想ですので、御理解いただければと思います。
○脇坂構成員 ありがとうございました。では、これから議論して設定ということだと思いますが、揚程なども大体これくらいの値というのが議論の結果決まれば、そういう制限をされる可能性があるという認識をしました。ありがとうございます。
○外国安全衛生機関検査官 ありがとうございます。今回の整理の結果、使用するクレーンの揚程に限定が加わるわけではありませんが、例えば15mとか、非常に高いクレーンの場合ですと、結果的にその範囲内で作業するのが難しいですとなったら、マルチな、現行にある制限のない免許を取っていただくという整理は、もちろんあり得ると思います。いずれにしろ、10m、15mとか一定の距離で取って作業が完結するようなクレーンに限定した免許にするので、その範囲に入らないクレーンを運転する場合は、今までどおりの取扱いでしていただくという切り分けを考えております。
○澁谷座長 ありがとうございました。よろしいでしょうか。そのほか、御意見はありますか。井村構成員、お願いします。
○井村構成員 確認したいのが、床上運転式限定免許から床上運転式等限定免許になるということで、試験は無線のほうでやるという話ですが、やはり、離れて操作するということと近くで操作するということでは、その危険性が異なるというお話もあったかと思います。離れて操作するところで免許を取って、ただ、実際には有線式しかない所で働くとなったときに、無線式の免許で有線のほうでも安全が担保されるのかどうかというのがちょっと気になりました。要は、無線の枠の中に有線のほうも包摂できるのかどうかというのが気になっています。そこの点はいかがなのでしょうか。
○澁谷座長 事務局、お願いします。
○外国安全衛生機関検査官 御質問ありがとうございます。この辺りは、今、投影もしているのですが、21ページの資料で一定の分析を加えています。ここでは、実技試験について、現行のものと、今後、こういうふうにやったほうがいいだろうと提案しているもの、この2種類を比較しています。
床上運転式に関して申し上げますと、クレーンのガーダー、ホイストに載っている部材と同じように、運転をする際にはそれに追従をする状況です。なので、縦方向しか見えないという状況にあります。床上無線運転式の場合は、無線が届く限り周りのどこにいてもいいという意味で、すごく利点があるし、離れても運転ができてしまうリスクがあると、それが二律背反になっているところです。
今回は、23ページにお示ししていますが、床上運転式をテストする際のコースを使って、運転位置を限定することで、少なくとも床上運転式と同じように操作をされるエリアと、それよりも遠く離れて確認をしなければいけないエリアで分けることを考えております。そういう意味では、床上運転式と同じような運転形態も、それよりも遠く離れた無線独特の運転形態も、スキルとしてはチェックしていただくことができると思っています。
おっしゃるように、近づいた際のリスクというのは別にありますので、そういったことは、つり荷の下に入らないとか、十分に確認できた状態で、いわゆる地切り、旋回、荷のつり下ろしを行うといった、ある意味、知識面でカバーするところがすごく大きいと思っています。そこは、合わせ技で必要なスキルは担保したいと考えます。
○井村構成員 ありがとうございました。もう一点、お伺いしたいことがございます。その他の論点の所で、現在の床上運転式クレーン限定運転士免許を保有している者は、新免許を取得せずとも、引き続き床上運転式クレーンが運転できるということでやるという話ですが、限定免許を持っている人が、研修か何かをやることで無線式も使えるようにするというような方向性はないのですか。
○外国安全衛生機関検査官 ありがとうございます。いわゆる限定解除という手続が、現状、法令もありまして、床上運転式限定免許を持っているけれどもマルチな運転免許が欲しいとなった場合は、実技試験だけ取り直すということが法令上規定されています。同じようなスキームで、過去に床上運転式を持っているのだけれども新しい限定免許が欲しいといった場合に、それ用のステップアップ資格、適用除外的なもの、限定解除的なものを設けるというのは、現状の構想の中に入っております。どのように法令上書くかというのはあるのですが、そういった無線の限定が欲しいという方に不利益がないようなシステム作りをしたいと思っています。
○井村構成員 それは、クレーン運転士免許とはまた別で、限定のクレーン等が取れるということですよね。
○外国安全衛生機関検査官 そうです。例として適切か分かりませんが、現状、自動車の運転免許の場合、普通、準中型、中型とありますが、準中型を持っている方が中型にランクアップするみたいな、そういうステップを踏んでいただくことを想定しています。
○井村構成員 ありがとうございました。
○澁谷座長 ありがとうございました。先ほどチャット欄に何かありましたが、それは大丈夫ですか。
○事務局 途中退席ということで御連絡を頂いております。
○澁谷座長 では大丈夫ですね。それでは、こちらの論点1については、いろいろ意見が出てまいりましたので、それらを踏まえて検討を進めさせていただきたいと思います。
続いて、論点2・3、今度は具体的な学科試験、実技試験、教習の内容についてです。先ほど、一部、こちらについてもコメントが出ておりましたが、この学科試験、実技試験、教習の内容について、新しく設置する制度のレベル感や内容を踏まえて、構成員の皆様から御意見がありましたらコメントを頂きたいと思います。いかがでしょうか。多くは、この22枚目のスライドに、学科試験の内容、実技試験、教習について、表でまとめていただいております。学科試験はこれまでとほぼ同じで、無線に関する知識を必ず出題するという条件を追加しています。運転については、無線を前提とした教習を行うという形になっていますが、こちらについて、特にコメント、御意見はありますか。大江構成員、お願いいたします。
○大江構成員 山際先生の調査でも、意識調査の中の御意見として、既存の運転士の免許の在り方は実際とかけ離れていると、そういった指摘がありました。今回、事務局のほうで案として提示していただいている内容というのは、実態を踏まえてスイッチ式の操作機を使うという部分と、操作できるエリアを区切って遠方を操作するということは、実態に即していると思いますので、この内容は適当だと思います。以上です。
○澁谷座長 ありがとうございます。そのほかの構成員の皆様から、何か御意見、コメント等はありますか。鎌田構成員、お願いします。
○鎌田構成員 私も、この新限定免許と床上運転式クレーン限定免許の関係について、無線クレーンに対応した免許の創設ということ自体には違和感はないのですが、先ほども意見させていただきました、一定の距離なり速度がきちんと担保されるかどうかが重要になると思っています。改めて、その点が担保できるという確証をもって、この免許を作っていっていただきたいと思います。
併せて、冒頭、山脇構成員からもありましたように、今、免許を保有されている方と、これから取得しようとする方、特にこれから取得しようとする方については、今の床上運転式クレーンの限定免許より1つ難易度がアップする方向となり、事業所に床上運転式のクレーンしかないのに、これまで以上に難易度の高い免許を取得しなければならないケースも出てくるのだろうと思います。そういった点も考慮して検討いただきたいと思います。以上です。
○澁谷座長 ありがとうございます。事務局からコメントをお願いいたします。
○外国安全衛生機関検査官 改めてコメントを頂きありがとうございます。距離の担保の重要性については、先ほどおっしゃっていただいたとおりかと思いますし、既存の限定免許を持っている方に不利益がないようにという点も重要かと思っています。距離のリサーチをする際に、この床上運転式の限定免許を実際に運用されている所のお声を聞きながら、そういった方に必要以上に不都合がないような制度運用を図っていきたいと思っております。ありがとうございます。
○澁谷座長 課長、お願いします。
○安全課長 補足なのですが、現状の限定免許を取られている方というのは年間35人しかいなくて、実際は限定を持っていないでクレーンを運転されていることが多いという実態も恐らくあると思いますので、先ほど鈴木が申しましたように、限定免許を使っている事業場の御意見は聞きたいと思いますが、それほど大きな問題には多分ならないとは考えております。
○澁谷座長 ありがとうございます。そのほか、構成員の皆様から、この論点2・3について、何か御質問、コメントはありますか。山脇構成員、お願いいたします。
○山脇構成員 22ページについて要望を申し上げたいと思います。こちらでは、現在の床上運転式クレーンと基本的に同様の教習時間とすることが提案されていると思っております。仮に、事務局提案のように、現在の限定免許を改組する形で新たな免許を創設するとした場合には、床上運転式のクレーンと、コントローラーに関する知識を含めた無線クレーン、この2種類の技能習得が必要な人も出てくることになります。この点を踏まえると、単純に現行制度の時間数を踏襲するということでいいのかどうか。新しい免許のほうが修得しなければならない技能範囲が広いけれども、教習時間数は一緒ということになっていますので、本当にこれで足りるのか、私はそれほど専門知識を持っておりませんが、有識者の方々に意見を聞いていただき、エビデンスとしてお示ししていただきたいと思います。以上です。
○安全課長 こちらは前のほうにも出てきておりますが、実際に試験をする方の御意見を聞いています。今回は、コントローラーはスイッチ式で同じなのです。床上運転式でも新しい無線式でも同じで、要は有線か無線かの違いしかなくて、操作方法が全く同じなのです。先ほど言ったように、操作位置だけ変える形になりますので、これでレバー式をするとなると違うと思うのですが、今回はスイッチ式に限定しますので、時間を延ばす必要はないのではないかという御意見を頂いております。
○澁谷座長 よろしいでしょうか。一応、先ほどの補足説明は、26枚目のスライドにも補足の資料として追加されております。そのほか、構成員の皆様から御質問等はありますか。鎌田構成員、お願いいたします。
○鎌田構成員 先ほどの意見と重複する部分もあるのですが、先ほど、床上運転式クレーンの限定免許の取得者が35人と非常に限定的だという説明を頂いたのですが、調査結果の説明では、事業場に設置されたクレーンの台数について、床上運転式クレーンは40%と言われていました。そうすると、単純に免許を取得して、今、作業をされている方が高齢化していっているだけで、その人たちが作業ができなくなれば、これから免許を取らなければいけない人が出てくる可能性は、拭えないのではないかと思っています。今後、影響が大きくなる可能性があるということも想定しながら検討いただきたいと思います。よろしくお願いします。
○安全課長 分かりました。いずれにせよ、ある特定の事業場で使われているクレーンで、実際に免許を受けている会社も限られていると伺っていますので、そこからお話を伺いたいと思います。
○澁谷座長 ありがとうございます。そのほか、構成員の皆様から御質問、御意見はありますか。よろしいでしょうか。山脇構成員、お願いいたします。
○山脇構成員 23ページもこのパートでよろしかったでしょうか。
○澁谷座長 はい、この場でお願いいたします。
○山脇構成員 先ほどの山際先生の研究成果のほうでも、有線であるが故のリスクという話もありましたので、やはり、今、鎌田構成員がお話されたように、床上運転式のみの事業場も現状あって、それらは設備の更新でもない限りは変わらないことを踏まえると、それらを使っている事業場の利用状況をしっかり確認し、本当に1つの資格でいいのかどうか、その方々の御理解が得られることを前提に統合するということにしていただきたいと思います。以上です。
○澁谷座長 ありがとうございます。非常に免許の数としては少ないのですが、不利益を被る事業所については、しっかり状況を把握した上で最終的な決定を行うということかと思いますので、こちらについては、事務局のほうでしっかり御検討いただくということにしたいと思います。そのほか、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。特に御異論がないようでしたら、この学科試験、実技試験、教習の内容についても、おおむね方向性についてはお認めいただいたという形で、引き続き検討していくことになるかと思います。また、各学科試験等の内容等については、今後また御議論をお願いすることになるかと思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。
あとは、その他の論点です。こちらについては、ある程度、これまで構成員の皆様から御意見が出てきているところで、もう既に議論をしているところであるかと思います。まず、1番目の項目の部分については、構成員の皆様から既に御指摘いただいているところかと思います。既存の「床上運転式クレーン限定運転士免許」の保有者が、新たな免許を取得しないと床上運転式を運転できなくなるのは不合理であるということで、こちらは経過措置を設けるということと、今日出てきた御意見としては、これがなくなることによって不利益を被る事業者についても、しっかり状況を確認した上で御納得いただくということを検討するということになっております。
また、下の2点目の所については、まだ余り議論がされてないかと思いますが、無線コントローラーについての通信エラー時の自動停止等の機能の義務付け、定期検査に対する方法についての御提案です。これまで、無線機というのは、クレーン構造規格等に含めても、余り明記をされずに規定されてこなかったという経緯があるかと思いますが、今後、これが増えていくであろうという想定の下で、事務局からの論点として提案されているものです。こちらについて、構成員の皆様からコメント、御意見はありますか。山脇構成員、お願いいたします。
○山脇構成員 赤枠の中に記載を頂いているとおり、通信エラー時の自動停止機能の具備や、定期検査を義務付けるということは、大変重要だと思います。その上で、後段の「クレーン定期自主検査指針に明記」という点に関して、法令ではなく指針への明記でどうかという提案の理由について、厚労省に伺いたいと思います。
○澁谷座長 では、事務局から御説明をお願いいたします。
○外国安全衛生機関検査官 御質問ありがとうございます。まず、天井クレーンの検査の体系については、毎月若しくは毎年、一定の期間に定期自主検査をしていただくことが、クレーン等安全規則の中に明記をされております。具体的に申し上げると、年次を規定しているクレーン則34条では、荷重検査をしてくださいという内容を含めて規定されています。月次を規定している35条では、この項目、この項目を検査してくださいと明記されています。その中に、現状、コントローラーというのはお示しがあり、法令上、義務の対象には既に入っていると解されるべきと思います。ただ、その具体的な検査の方法を指針等で明記をしてきていないので、事業場における具体的な履行がうまく図られていないことが我々としては想定されています。ですので、改めて指針にその方法を明記をした上で必ずやっていただくということで、不具合のある無線機というのが使われなくなっていくのではないかと考えています。
○山脇構成員 ありがとうございます。承知をしました。確認となりますが、安衛法45条の罰則付きの定期自主検査の規定の取扱いということなので、これに違反すれば罰則が適用されるという理解でよろしかったでしょうか。
○外国安全衛生機関検査官 御指摘のとおりでございます。
○山脇構成員 分かりました。最後に、併せて発言させてもらいたいと思います。先ほど課長からも説明があったとおり、そもそも限定のない免許というのが存在しますので、今回の限定免許を設けるに当たっては、是非、安全サイドに立って設けていただきたいと思います。当然、今回の制度を設けたことで、今までよりも事故が増えるようなことがあってはならないと思いますので、その点は改めてお願いしたいと思います。以上です。
○澁谷座長 ありがとうございます。そのほか、構成員の皆様から御意見等はありますか。よろしいでしょうか。それでは、その他の論点についても御意見を頂いたという形で、引き続き検討を進めていくということにしたいと思います。
それでは、非常に熱心な御議論を頂き、どうもありがとうございます。全体を通して、今回の検討内容について何かコメント、御意見がある方はいらっしゃいますか。よろしいですか。オンラインの皆様もよろしいでしょうか。
それでは、全ての論点について御意見を頂いたと思いますので、本日の議論としてはここまでといたします。次回は、本日の議論の中で更に検討すべき項目が挙がってきておりますし、今後、検討しなければならない項目も既にありますので、その辺りの論点を整理しつつ、それ以外の論点もまとめて報告書案を事務局から御提示いただいて、取りまとめの内容に向けて議論していきたいと思います。それでは、一旦、事務局にお戻しいたしますので、事務局から連絡事項をお願いいたします。
○副主任中央産業安全専門官 では、事務局から連絡事項です。次回の日程については、改めて調整の上、各構成員の皆様方に御連絡をさせていただきます。
以上をもちまして、第2回の検討会については、これで終了とさせていただきます。本日はお忙しい中、ありがとうございました。