2025年9月4日 第106回社会保障審議会年金数理部会 議事録

年金局総務課首席年金数理官室

日時

令和7年9月4日 14時00分~16時30分

場所

TKP新橋カンファレンスセンター ホール14G

出席者

委員
  • 翁部会長
  • 小野委員
  • 駒村委員
  • 佐藤委員
  • 庄子委員
  • 嵩委員
  • 寺井委員
  • 野呂委員
  • 枇杷委員
基調講演者
  • 林玲子

議題

「少子化及び外国人労働者の動向と年金財政」

議事

○楠田首席年金数理官 定刻になりましたので、ただいまから第106回「社会保障審議会年金数理部会」を開催させていただきます。
 審議に入ります前に、資料の確認をさせていただきます。
 資料は、議事次第、委員名簿、座席図のほか、基調講演資料「少子化及び外国人労働者の動向と年金財政」でございます。
 次に、本日の委員の出欠状況について御報告いたします。本日は、全委員が御出席されております。
 なお、嵩委員におかれましてはオンラインでの御参加でございます。
 また、基調講演中、ZoomウェビナーのQ&A機能により視聴者からの御質問を受け付けます。受け付けた御質問は時間の都合上、一部となりますが、第2部の意見交換の中で御紹介し、講師に回答いただく予定です。
 それでは、以後の進行については翁部会長にお願いいたします。
 
○翁部会長 委員の皆様には御多忙の折、お集まりいただきましてありがとうございます。
 本日の議題は「少子化及び外国人労働者の動向と年金財政」でございます。
 本日の年金数理部会は前回同様、動画配信によるオンラインセミナー形式で開催しております。これまでも、年金数理部会ではセミナー形式で部会を開催することにより、公的年金財政をめぐって数理的な視点を中核としながら幅広く正確な情報を発信し、多くの方々、とりわけ公的年金財政に関心のある方々に理解を深めていただいてまいりました。
 本年度は、公的年金財政を見通す上で重要な前提となる少子化及び外国人労働者の動向をテーマとし、外部講師として国立社会保障・人口問題研究所の林玲子所長をお招きしてお話を伺うことにいたしました。
 その後、後半では、林様を交えまして、委員全員での意見交換を行うこととしております。林様への御質問は、意見交換の中でお願いいたします。
 それでは、事務局より、今回のテーマの選定趣旨と講師の紹介をお願いいたします。
 
○楠田首席年金数理官 年金数理部会では、財政状況報告の取りまとめの中で、公的年金財政に大きな影響を与える出生率の動向を今後も注視していく必要があり、また、日本における外国人割合の拡大が日本人の出生率の低下を補うと想定されている中で、外国人の状況についてもしっかり見ていくべきとの御意見を多数いただきました。
 そこで、日本における少子化の動向や、外国人、特に外国人労働者の動向について、様々な角度からこれまでの状況について御紹介いただくとともに、それらが公的年金財政に与える影響等についての御見解を講師に紹介いただきたいと考え、今回のテーマとさせていただきました。
 次に、林玲子様の略歴を御紹介いたします。
 林様は、東京大学保健学士・修士、東京大学工学士、パリ大学修士、政策研究大学院大学博士を取得されており、セネガル保健省大臣官房技術顧問などを経て、その後、国立社会保障・人口問題研究所国際関係部長、副所長を歴任され、2024年より現職の所長でいらっしゃいます。
 また、林様は、健康と長寿、人口政策等に関わる研究をされており、厚生労働省社会保障審議会統計分科会疾病・障害及び死因分類部会の委員、生活機能分類専門委員会委員などを務められております。
 以上でございます
 
○翁部会長 それでは、林様から基調講演をいただきたいと思います。今日は、お忙しいところありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 
○林氏 御紹介ありがとうございました。国立社会保障・人口問題研究所の所長をしております林と申します。今日は、こちらに呼んでいただいてありがとうございました。
 お題といたしまして、「少子化及び外国人労働者の動向と年金財政」ということでいただいておりますが、私のほうは特に人口学が専門ということですので、年金制度に関してちょっととんちんかんなことを言ってしまうかもしれませんけれども、その辺りは適宜修正していただくなどしていただければと思っております。
 また、かなり多岐にわたる御質問をいただいておりましたので、ここに示しますように社人研の中の研究者、それから元社人研にいて今は外部に出ている研究者の皆さんにも協力をいただいて、この報告資料をつくらせていただきました。
 まず出生についてなのですが、近年、例えば希望出生率というものができて、昔このようなものが出たら必ず反対が出ていたのに何も出なかった。そのくらい、今は人口減少というものが進んできていたということでもあるのですが、逆に昔、何が起こったかということを知らずに、若い人は子供を産んだほうがいいとか、そういう意見が普通に出ていることにやや危惧の念を持っております。
(スライド2)そういうことで、ちょっとこのスライドは時間がかかりますが、一応日本の出生率がどのように推移してきたかということをまず御説明したいと思います。
 日本の出生率は、ここでは合計特殊出生率と人口動態統計で言っているものですけれども、これは生まれた数や人口の総数で割った総出生率とは違いまして、母の年齢が必要になりますので、日本の場合は1925年から数値が残っております。
 それで、最初の1925年、ちょうど100年前になるわけですけれども、その時点でこの合計特殊出生率は5.1程度と、非常に高い水準でした。
 それから、その次の時点でもう既に下がり始めています。つまり、その時点も出生数は増えているのですが、出生率、特にこの合計特殊出生率というところで、その頃はあまりそういう測り方をしなかったのですが、既に出生低下は起こっているのではないか、例えば、欧米、ヨーロッパ、特にフランスでは出生率が減っているので、戦争で負けた、そりわうに状況を何とかしなければいけないという議論があることを日本もきちんと理解しておりまして、それで合計特殊出生率を計算できる統計を取り始めてから既に出生率は減り始めていたということがあります。
 ただ、全く今と比べてもレベルは非常に高い水準であったということです。
 それから、ここに急にわっと下がっているところがあるのですが、普通はこういう統計はゼロがつく年とか、5がつく年とか、そういう切りがいいところで測るのですが、ここはちょうど1938年、1939年のところだけ毎年、母の年齢別出生数という統計表が人口動態統計に出てきております。これを過去の資料を見ますと、どうもすごく出生数が減ったようなので、これはきちんと見なければいけない、と認識され、この合計特殊出生率というものを計算できるように統計表が出されていました。
 ここで大きく減っているのはなぜかというと、日中戦争がありまして、全て若い男性を中国に送った。そのとき、私の2人の祖父は2人とも中国に行っておりました。そういうことがあると、その間に妊娠がなくなるので子供が減るということで、ここで大きく減る。
 この事態をそのとき既に、ちょうど我々の研究所の前身の人口問題研究所は1939年にできるのですが、その研究者たちがやはりこれを見て、そういう戦争による影響というのはあるのだということが分かってきまして、それで1941年に人口政策確立要綱というものが閣議決定されます。それで、このときにはもうよく知られているように、一家は5人子供を持ちましょう。それから、女性は仕事を辞めて早く結婚しましょうということが明確にこの政策の中に書かれております。
 ただし、1941年にそれを出してから、それが実際にどのくらいの予算を設けられて実施されたのかということは記録にもあまり残っておりませんし、実際に本当にそれを実施したのかどうかもよく分からないところではあるのですが、しかし、人々はこの産めよ殖やせよというものが人口政策である、国がそういう全体的なことを言ったということは、ずっと覚えておりまして、それで戦後に大きく出生率は下がるわけですが、どんどん下がっていってもこの1.57ショックが起こるまで何もしなかった。この1.57ショックが起こる1990年まで、出生率を上げるということはいわばタブー視されていたという状態でございました。
 それは、例えば1974年に児童手当の議論が行われるわけですけれども、その議事録などを見てみますと、この児童手当は人口政策ではないということをきちんとその当時の委員の皆様方が言っているのです。ですので、やはりこの1941年の人口政策確立要綱というものが、こういった政策をすることがいかにその後の政策対応を遅らせるかということ、そのことについてここでお話ししたくてこのお話をいたしました。
 ですので、お金をあげれば子供を産むのではないかとか、子供の数だけに目を投じて議論するということは非常に避けなければいけないことだと思いますし、この後エンゼルプランが94年から出てきますが、そのときに非常に気をつけて政策を立ててきたという歴史があることをここで言っておきたいと思います。
 そこに至るまでの間ですが、優生保護法ができ、中絶が経済的理由でもできるようになった、それから、家族計画の推進があったということで、合計特殊出生率は大きく1950年代に下がりました。
 それから、1966年のひのえうまのときに合計特殊出生率は大きく下がりました。それで、来年ひのえうまということになっていますが、この話も長くなるのでここで指摘しておくにとどめます。
 それから、1つ、1974年に日本人口会議というものを、世界人口会議がブカレストで行われたものにちょっと先立って行ったのですが、既にその当時、合計特殊出生率は2.1であったにもかかわらず、この時点でまだまだ子供は減らしましょう、子供は2人までにしましょうといった決議が採択されております。ですので、そのときのこの方針もきちんと見ていなかったのかもしれないという反省もあるわけでございます。
 そういうことで、このように出生率は動いてきて、政策対応はこのような形で、近々で言いますと2023年にこども基本法ができ、こども大綱ができて、ただ単に出生率ではなくてこどもの生活を考えた新しい政策になったということは重要なことだと思っております。
(スライド3)今、言った話を一つにまとめましたものがこちらの表になります。これは、出生に関わる施策の推移ということで、赤く書いたものは現代の文脈では不適切な施策ということで、1940年は先ほどの人口政策確立要綱ですが、それとは違い、1990年代からは子供をつくる環境を整えるようにしようという政策が国レベルで進んでおります。
 そのほか、この出生に関わる施策は出産手当、これは世界どこでもILOができるとともにこの出産手当、出産休暇というものは整備されていて、今は本当にアジアでもアフリカでも必ずあるというものになっております。
 それから、中絶についても出生率低下が今は進む国、例えば韓国、中国で中絶を禁止しようじゃないかということを言い出す人もいるのですが、日本の場合はそういう流れにはなっていない。
 それから、家族計画はもちろんやっておりますし、児童手当は先ほど申し上げましたように1970年代からあります。
 育児休業は90年代からで、保育支援は育児、保育に欠ける親のためにという社会福祉の一環で行われていたという状況がかなり長く続いたと思いますが、そうではなくてワーク・ライフ・バランスの中で捉えていくというふうに最近はシフトしていることと思います。
 それから配偶者控除、それから年金問題では第3号被保険者とか、いろいろ配偶者に対する控除というものがあり、この点は青で書いているのですが、赤とみなす人もいるとは思いますが、これは非常に独特な日本的な制度かなと、それがまだ今はいろいろ議論されながら残っている。
 雇用支援、ワーク・ライフ・バランスは非常に今、行われていると思います。
 あとは、日本をはじめアジア諸国で重要なのは結婚支援ということになると思います。なぜならば、非常に婚外子の割合が少ない。そういったことから、結婚をしないから子供を持たないということで、未婚者がどんどん増えているという中で、いかに結婚を支援していくかということですね。
 この点、質問をいただいていたにもかかわらず、あまりスライドにまとめておりませんで、その点は結婚を重視していないというわけではなく、当然のように結婚しないので出生率は下がるということで、そこは詳しく入れなかった点をおわび申し上げます。
 それから、日本においても祖父母の支援というものをどういうふうにサポートしていくかというのも近年、施策として実施されているところであります。
 それから、不妊治療支援で、2022年度から保険の適用が始まりましたけれども、これも非常に重要な点だと私は考えておりますので、後ほどお話しいたします。
(スライド4)出生コホート別の出生率ということで御質問いただきましたので、ここで資料として挙げさせていただいております。
 左のほうは、上の線が、横軸に示した生まれた年別に49歳女性になるまでにどのぐらい最終的に子供を産んだか、年齢別の出生率を足し合わせたものとなっており、全部を足し合わせますと、ちょうど底を突くところが1972年生まれくらいで、その後、推定値がちょっと入りますので、これを35歳までにしてくれないかと駒村委員からリクエストをいただきましたので、35歳までですと実測値でこの緑の値として表すことできますが、35歳までの年齢別出生率を合計したときの推移はこのようになり、一番下がっているのは1975年生まれで、その後はちょっと上がってきておりますが、またここで推計値が入るのですが、またここで下がってきている。それで、こういう状況になっております。
 ですので、合計特殊出生率は期間でその時点別にみるとスライド2のようになるわけですが、各年代、コホート別に見ると若干違った様相がある。
 右側のグラフは、それぞれの全部のコホートを重ねますと見にくいですので、1935年生まれ、65年生まれ、90年生まれ、そして一番下がった1975年生まれというものを年齢別の出生率ということでここにお示ししています。
 1935年生まれの女性はこのように25歳くらいで0.2ですから、その年では2割の方が出産をするというスケジュールで子供が生まれていたところ、1990年生まれでは、この中が白いところは推計値も入っているのですが、この一番高くなるところが30歳となり、そしてこの一番高いところの水準が半分以下に落ちているということになります。
 ただし、この30代のところは1990年生まれの人のほうが大きく上がっている。出産の年齢が上がったということになります。
 この一番高いところが大きく下がっており、この大きな若いときの差を満たすことはできないということが挙げられると思います。
 1975年生まれのコホートと比べたときに、1990年生まれのところはやはり20代は下がっているけれども、30代は上がっている。ただし、若い20代の下がり方と比べて30代の上がり方、1990年生まれの人の上がり方は少ない。そういったことから、産みたいけれども、なかなか産めていないのかもしれないということが見て取れると思います。
 そこで、その次には入れませんでしたが、30代の出生ということで、昔は30歳を越えると母子手帳にマル高のスタンプをぼんと押されて、高齢出産ですので気をつけましょうということになっていたわけですけれども、今はもう女性の平均初婚年齢が30歳に近くなり、そして結婚して、それから子供が欲しいわと思ったときは既に30歳を越えているという状態になりました。
 そうすると、妊孕力について10年くらい前にちょっと大きな議論がありましたが、生殖補助医療できちんとデータを取っているのを今日は入れずに失礼しましたけれども、実際に欲しい不妊治療をしている人がどのくらい妊娠できているかというのを見ますと、明らかに30歳を越えてからどんどん下がっております。
(スライド5)そういうことで、女性が教育を受けて仕事を始めて、そろそろ結婚かと思って、そして子供が欲しいと思ってもなかなか妊娠できないという状態になる中で、この不妊治療、生殖補助医療というものが非常に重要になってくる。そして、そういうことで、それを公的保険にも入れるということで2022年から医療保険の適用が始まりましたけれども、出生数全体に対するこの不妊治療生殖補助医療(ART)を使って生まれた子供の割合ということで、ここでお示ししたものがこのグラフであります。
 このデータは、日本産科婦人科学会がいわばボランティアのような形で集めて公表していただいている数字を使っておりますが、2022年4月より不妊治療の保険適用がはじまったこともあり、全出産数の10%、10人に1人はこのARTを使って生まれてきている。
 これは同様に韓国でも10年前は本当にわずかだったのですが、去年、一緒の合同のセミナーをいたしましたけれども、あっという間に10%になりました。
 それから、今、世界全体の3分の1は中国における生殖補助医療でカウントされているというか、世界のARTの3分の1は中国で行われているくらい中国で多く行われているのですけれども、中国も今は3%くらいと言っていましたが、急速にこれから増えると思われます。
 ちなみに、中国の合計特殊出生率は1.0、韓国の合計特殊出生率はちょっと上がってといって0.75になったということで、日本よりも激しい少子化でございます。ですので、産みたい人が産めるようになるという、この生殖補助医療というのは今後も重要な役割を果たすだろうと思っております。
 それから、出生に関する政策は効かないじゃないかということでよくお叱りを受けるのですけれども、なかなかすぐに変わるものではない。お金をあげてすぐにということはないですが、いろいろな手当を出すことでやはり政策として後押ししてくれているんだというメッセージを出すことにもなりますし、マザーフットペナルティーと申しますか、子供を持つとペナルティー、罰ばかり受けるということがないような形に社会としてつくっていかなければいけないということで、きちんとした児童手当なり、家族手当なり、学校の教育の補助なり、保育園の補助、支援などは非常に重要だと思いますので、それは続けていくとして、どういったところにその効果が出ていないのではなくて、出ているところもある。
 まず、2005年に日本の合計特殊出生率は底を打って、それから少しずつ2015年までは上がってきていました。それは1994年からエンゼルプランを始めたのが時間差をもって効いたのかもしれないなということをその当時は言っておりました。2015年からまた下がってはいるのですけれども。
(スライド6)それから、近年、もう一つの点としまして、うちの研究所で出生動向基本調査というものをしておりまして、今年のちょうど7月を基準に第17回の調査をしているところですけれども、その1つ前の調査で出た結果の一つがこのグラフになります。
 何かと申しますと、妻の学歴別の子供数ということで、この青い線が高学歴の女性で、緑が短大・高専卒、濃い青い線が高校卒ということになりますが、これまで一様に高学歴の女性の子供数は低かったのですが、それが前回の2021年の調査でぐっと上がりまして、他の学歴の女性たちと近づいてまいりました。これはやはり高学歴の女性が働いて、その後、子供を持ちやすい環境及び人々の意識が変わってきたのではないかと思います。
 それから、この右に書きましたのは、これまで結婚したら子供は2人というものが、だんだん子供は1人に移ってきている。それから、結婚の意識などについても今はもう結婚したくないという人が近年、特に増えている状況があることは事実でございます。
(スライド7)それから、女性の働き方によって子供数がどう違うのかということをお示ししたのがこのスライド、7番になります。これを見ますと、これは国勢調査を使い、「妻が30歳台核家族の従業上の地位の夫婦組み合わせ別子ども数」というので、国勢調査ですのでサンプルではなく全ての数が入ったものでありますけれども、これを見ますと、子供数が多くなると女性、妻の正規雇用者が少なくなるということ。それから、3児いるというところはパート、アルバイト、その他の雇用者というところが一番多くなっている。つまり、ここで無職というのが必ずしも全てが主婦なわけではありませんけれども、主婦と比べてパート、アルバイトという就業状況の女性のほうが3人子供を持っている人が多いということになります。
 それから、数としては少ないのですけれども、役員や自営業主、家族従業者、家庭内職者などは、多子になればなるほど割合が大きくなるという傾向もございます。ですので、これを見ますと、必ずしも主婦というよりはフレキシブルな働き方が子供を持ちやすくなるということは言えるのではないだろうかとここでは結論づけております。
(スライド8)それから「年収の変化と子ども数」、これはうちの出生動向基本調査から特別集計をして出したものになります。これを見ますと、800万から1000万の年収、それ以上の年収の人の割合が増えてきているということですので、やはり多くの収入を持っていないとなかなか子育てをするのは難しいという状況がここに出ていると思います。
(スライド9)それから、「東京圏の一極集中と出生率の低下」についてはという御質問もいただきました。ただし、東京の合計出生率は非常に低いということで、東京アリ地獄というものがあるのかということが多く議論されているわけではありますけれども、東京自体に人が増えているので、この左のところは東京圏における出生数も人口数もどんどん増えてきているということですので、東京は人が多いので、その分、東京圏で生まれる子供も増えてきてしまっているという状態がもう既に長い間、続いていると言えます。
 それから、右のほうは人口移動調査という、うちの研究所で行っている調査の結果を用いて、生まれたところと現在住んでいるところで、それがどう変わった人の子供数が一番多いかということで、2006年から2023年までということでここにお示ししています。
 その調査の回数を追っての順位はあまり変わらないのですが、やはり非東京圏で生まれ、非東京圏にいる方が一番子供数が多い。それで、全国平均よりも少ないけれども、その中で一番多いのは、東京圏で生まれ、非東京圏に移った方で、直近の2023年の調査では東京圏から東京圏にずっと動かないのか、東京圏の中で動いているのかという方がその次に多く、非東京圏にいて東京圏に来たという人が一番低くなっている。
 ただし、東京圏に来る人は大学のために来て、そのために先ほどの学歴が高い人が子供を産みにくいということを反映しているということもあります。ですので、これを見て一概に東京に来たから子供数が減るというよりは、東京都に来る人がもともと自分の持っておきたいライフコースを実現したらこういうことになってしまった。子供数が少なかったということになったとも言えるのかなと思います。
(スライド10)それで、先ほど日本も2005年から2015年にかけて出生率は微増し、それから下がったと言いましたが、この2015年から落ちているという傾向、これはフランスでも米国でも、それからフィンランド、フランスやフィンランドは非常に子育て施策が充実していて子供数が多い、出生率が高いと言われていたところですけれども、そういったところでもどんどん落ちてきている状況があります。
 それから、コロナにおいて、コロナのときの出生率はどの国も大きく動いているのですが、ちょっと出方が違う国などがあります。上がって、また反発して下がるフィンランドのような国だとか、日本は今どんどん下がっている状態ですけれども、そういった変化が生じています。
 これは何のせいなのかということを証明するのは難しいのですが、1つはオンライン、SNS、そういったところで、例えばFacebookのアカウントが2015年くらいまでどんどん上がって、そこからずっと当たり前の情報ツールになったということで、オンライン、ソーシャルメディア、そういったもので人間関係が変わってしまったということが一つの大きな理由としてあるのではないか。
 でも、これはちょっと証明が難しいのですが、特にコロナのときは人と会う機会が減りますので、そうしたことでまた結婚や出生ということに影響を及ぼす可能性もあるというふうには考えられると思います。
 このスライドに出さなかったのですが、出生動向基本調査は前回の調査のときに、どのようにして相手と出会いましたかという質問をすると、直近の年ですと15%がネットで知り合ったという人が非常に多くなっていて、ほかの民間の調査ですと、3割くらいネットで知り合ったという結果も出ておりますので、これは今の人間の人と人との付き合い方がこれから変わってきているのかもしれません。
 ただ、このオンラインでマッチングアプリというのも意外と顔ではなくてお互いの趣味でマッチングをしていてうまくいったとか、そういう話もいろいろありますので、これは一概に否定するわけにはいかないなと思ってはおります。
(スライド11)それから、外国人の出生率の影響がどのくらいあるのかということで、ここはまずドイツとフランスということで、この2つの国はオンラインでそれぞれドイツ人と外国人、それからフランスの場合は移民と非移民ということで、いろいろなデータが出ておりますので、それをお示ししております。
 ドイツの場合は、ドイツ人自体も結構ここは上がっているのですけれども、それと比べて外国人の出生率は非常に高い。特にここ2015年から大きく上がっていますけれども、これは2015年、シリアの内戦の影響で大きくシリア難民など、イスラームの国の人が増えまして、その影響があります。
 それから、フランスについては過去に遡った調査ということでそういう調査を研究レベルでしているのですけれども、それを見ますと、やはり移民のほうが非常にといいますか、完結出生児数、50歳になった人は何人産んだかというのを調べているのですが、その数は移民のほうが高く、非移民、フランス人のほうが低くなっておりますが、この1950年生まれの移民と比べて現在の移民の人は減ってきている。
 それから、その移民の出生国に応じて非常に違いがある。アルジェリア、モロッコ、チュニジアはもともとフランスの海外領土だったところですので多いのですが、その他アフリカといったところ、トルコ、中東は非常に完結出生児数が多くなっていて、その影響で全体的な移民の出生児数、出生率も高くなっているというのが欧州の状況です。
(スライド12)こういう事情がよく知られているので、日本も外国人を入れたら出生率が上がるのではないかということがあるわけですが、日本の場合はここにお示ししたように、外国人女性のほうが年齢別出生率は低くなっております。
 それで、この外国人女性も人口動態統計に別表という形で出ておりますし、この出生の定義についても、うちの人口推計ではきちんと分子、分母をそろえたものを使ったり、その辺りは計算して全部外国人女性も捉えるようにはしていることをここで付け加えたいと思います。
 この外国人女性が非常に日本人女性よりも出生率が低いということは、そもそも家族滞在ということで来ているのではなく、働きに来ているという外国人が多いこと。それから、そもそも日本に送り出しているというか、出身国は中国の人が今は一番多い状況ですけれども、それまで一番多かった韓国、朝鮮籍の人も含めて自国でも非常に出生率は低い。日本よりも出生率が低いということが影響していると思います。ですので、外国人を入れたからといって出生率が上がるというわけでは全くないし、逆にいく方向もあるということになると思います。
(スライド13)それから、結婚についてなのですけれども、先ほど婚外子割合が非常に日本の場合は低いというところで、左は各国の合計特殊出生率で、ちょっと線がいっぱいあって見にくいのですけれども、欧米と日本がどこで離れていったかというのを見ますと、日本は赤で、70年代はそこそこみんな同じくらいのレベルだったのですが、その後、オレンジはフランス、アメリカは紫ということで、80年代くらいからフランス、アメリカはそんなに下がっていかなかったのに、日本はどんどん下がっていった。
 それで、これを婚外子の割合ということで見ますと、この差が非常に大きく出ておりまして、フランスは現在婚外子の割合は65%ですので、フランス人なりヨーロッパ人に婚外子割合と言うと皆さんきょとんとされるんです。それが当たり前なので。ドイツやアメリカは30%くらいまでいってちょっと頭打ちがあるのですけれども、一方、日本の場合、韓国はこの後ろに隠れているのですが、日本、韓国は婚外子割合が非常に低く、最近ちょっと上昇しているけれども、まだ2%水準だということがあります。
 これはどういうことが影響しているのか、いろいろ社会規範もありますが、法律的にまず違うのが、1975年に婚外子の法的地位に関する欧州条約ということで、アメリカも同様に1970年代に婚外子に対する差別を解消いたしました。
 ところが、日本の場合は嫡出子と非嫡出子の相続が、非嫡出子は2013年まで半分でございました。それで、2013年にようやく同等になった。ですので、75年から13年までの40年間のラグがそこにある。
 それから、2013年にこういうふうに決まったにもかかわらず、現在出生届にはまだ嫡出子、非嫡出子というチェックボックスが残っております。これはなぜ残っているのかよく分からないのですけれども、届けのときにそういうものが残っているということで、やはりまだまだその子供に差別が生じているという状況が残っている。
 そういった状況が婚外子を少なくし、そしてここからは私見ですけれども、そうした結婚に対する非常に固定化した考え方が出生を少なくしているということで、この結婚という制度、そもそも明治の旧民法から始まった日本文化としては非常に新しい制度でありますし、そうしたことをこれから考えていかなければいけないというのは重々言っているところでございます。
 それから、明治からと言いましたけれども、婚外子割合とか、できちゃった婚、今はだんだん増えてきましたが、つまり妊娠先行婚割合、これを都道府県別に見ますと、合計特殊出生率とかなり強い正の相関もありますし、地域別にかなりここは違いがある。これは歴史人口学などの知見からも分かっているのですが、伝統的に足入れ婚や妻問い婚などがある。だから、先に結婚して子供がいなかったらすぐに離婚するとか、先に同居をして子供ができたらきちんと籍というか、結婚をするとか、そうした緩やかな結婚の形が明治より前の日本の婚姻関係でしたので、そういったものも長い視点で考えなければいけないなと思ってこのスライドを入れております。
(スライド16)多分、1時間という話でしたので、コロナについても死亡のところでちょっと1点、コロナで2020年は日本の場合、マスクもみんなするし、非常に気をつけて死亡数が減った。高齢者は増えているのに死亡数が減った。つまり、死亡率も非常に下がったという中で、その後、規範が緩んだ2022年にオミクロンで感染者数がすごく増えたので、その分、死亡者数がどっと増えた。それがこの図なのですけれども、その動向は日本だけではなくてアジアで同様の傾向があります。
 それで、そのまま2022年からかなり高い死亡水準が続いていたのですけれども、これはなぜなんだろう。コロナも実は今でもたくさんの数で亡くなられていますし、老衰も非常に増えているということで、それがコロナ前の水準に戻らないから、これは困ったなと思っていたのですが、先月くらいに2019年の水準と年齢を調整してという形でコロナ前の水準にようやく戻ったかなという状況になっておりますので、またこれから高齢者介護医療ということを進めていって、同様に世界随一の寿命を目指す方向にいくことは続けていくのだろうなと思っております。年金財政においてはまたそれ用の対応が必要になると思いますけれども、1枚、このような形で死亡のことはお話しさせていただきました。
(スライド17)それで、国際人口移動について、外国人についてということも今日の大きな議題の一つですので、ここに概略といいますか、それをお示ししました。外国人統計については戦前から明治から統計はありますが、ここは戦後についてということで、総数が青い色で、それから永住者数、これは特別永住者を合わせたものですが、そしてそれ以外の非永住者数ということで出しております。観光客などは入っておらず、3か月以上という今で言うと住民登録に入る外国人の数ということで出しています。
 これを見ますと、長らく戦後は数が少ない。日本は非常に外国人に門戸を閉ざした国であると言って、みんながうんうんと言っていた時代だったのですが、それが1989年に出入国管理及び難民認定法の改正、そして技能実習制度が開始され、このときはバブルで労働力が足りない。それで、多くの外国人が入ってきたということで、ここの大きな増加がこの改正でまずありました。
 それで、これからどんどん増えていったのですが、ここでまずリーマンショックが起きて外国人は減ります。ここで減ったのは世界の受け入れ国、欧米の国はどこもそうだったのですが、それらの国は2010年くらいからまた元に戻るのですけれども、日本の場合は2011年に東日本大震災が起こりましたので、それで放射能を恐れて外国人がさらに外に出て行ったということで、この減少傾向が2012年まで続きます。
 実は、この2012年に外国人住民の住民登録が開始された。これは実は私は非常に大きな日本の政策転換だと思っているのですけれども、そういった外国人住民を住民としてきちんと住民サービスもできる形にするということで変わりました。
 それで、その後、もう地震の恐怖は去って、また大きく外国人が増え、そして2018年には在留資格の特定技能の創設ができたり、外国人材の受け入れ・共生のための総合的対応策というものができ、外国人共生のためのロードマップというのも国の施策としてつくるようになりました。
 特にアベノミクスが始まった2013年、14年くらいから毎年の骨太を見ますと、毎年、毎年、外国人に対する施策のスコープが非常に増えてくるんですね。最初は留学生だけということだったのが、最終的には特定技能までいくということになったところでコロナが起こり、また下がり、そしてまた非常に大きく上がってきている。
 このような状況でありますが、ここで永住者数を見ますと、上がったり下がったりしているのは非永住者数のところで、永住者数はもう滑らかに少しずつ上がってきている。これが日本の外国住民の数の戦後の推移です。
(スライド17)それで、今お話ししました2018年から策定を始めた外国人との共生社会の実現に向けたロードマップというものをここに示させていただきましたけれども、日本語教育、まず日本で住んでいただくには日本語を話していただけるということが一つ前提にあると思います。これにはいろいろな議論もあると思いますが、特にやさしい日本語を使えるようにしようとか、そういった施策も非常に多くあります。
 それから、「外国人に対する情報発信・外国人向けの相談体制等の強化」「ライフステージ・ライフサイクルに応じた支援」ということで、妊娠から出産から子育てから学校に行くことから就職から、医療を受けたり介護まで、そういったことの全てにどのように共生社会をつくっていけるかということで、この中で委員として有識者をさせていただいているのですが、統計をきちんと取ることが重要であるということで、いろいろな政府統計に国籍を入れてほしい。国籍なり在留資格を入れて、日本人とそうでない人とを分けてきちんと分析、比較ができるようにしてほしいといったところで、年金関係は非常に進んで、多くの統計に国籍を入れていただいておりますので、今後も年金については統計分析を我々のほうでもやっていきたいと思っているところです。
 あとは「共生社会の基盤整備に向けた取組」ということで、こちらは入ってきてきちんと共生することも重要だし、ほかの住民の人たちに不安が生じないようにきちんと公正な制度で出入国管理をするということもこちらの項目の中に入っております。ですので、日本としてはかなり政策的にも今は50年前と比べていろいろな政策で受け入れを図っているという状況だと言っていいと思います。
(スライド19)それから、外国人に対する統計について、外国人雇用者の統計だとか、旅行者3000万人とか、それから今、私がお見せした統計とか、いろいろございまして、時々混乱を招くことがあるので、一応ここにこういう統計があるということでまとめてみました。
 ストックとして今どれだけ人がいるかということですと、出入国在留管理庁がつくっている在留外国人統計、それからもう一つ、住民基本台帳の統計である総務省自治行政局がつくられているこの統計も外国人が年齢階級別にも出ているという統計になります。これとこれは、そんなに差がないというところです。
 国勢調査も、国籍を入れている調査になります。
 それから、そのような国籍を入れた調査としましては人口動態統計や、在留外国人に関する基礎調査や、うちの人口移動調査でも、それから今年行っている出生動向基本調査も国籍の質問項目を入れております。あとは外国人労働者として多くの統計がつくられており、そういったものもここに挙げさせていただいております。
 それから、国境を越えた人がどれだけいるのかということで、フローの統計は出入国管理統計を出入国在留管理庁が毎月月報や年報で出しているというものがあります。
 ですので、これらを突き合わせて外国人の動向をきちんと見ていくということが、これまでもこれからも必要になってくると思います。
(スライド20)それから、「在留資格別外国人数」ということで、これは外国人労働者ではこうだけれども、在留外国人住民全部を見たらこうであるということをお示ししています。直近の2024年ということで比較すると、当然ですが、在留外国人では外国人労働者と比べて、永住者とその上の定住状況にある人の数が非常に多くなっている。
 しかし、外国人労働者である方も、永住者、その配偶者、定住者の方々もかなりいるということになりますし、留学をされている方もこれだけいる。
 そして、右側はその推移をこういう形で示しています。
 技人国と書きましたが、技術、人文知識、国際業務というものが近年増えていて、これが本当に高度な知識を持った人なのかという問いかけが最近なされているところではあります。
 それから、技能実習と書いていますが、これもちょっとコロナのときに減りましたけれども、同じくらいいます。今は育成就労という名前に変わったと思います。
 それから、ここに特定技能ということも出てきています。
 あとは、永住者もこのような形である。これは在留外国人の統計でございますが、このような形になっています。
(スライド21)それから、国籍別に見ますと、1989年に法律を改正する前は日本にいる外国人はほとんどが韓国・朝鮮籍の方々でした。それがその後、まず中国・台湾籍の方が増え、今でも一番多いのが中国・台湾籍の人々で、次に多いのが韓国・朝鮮籍の方です。ただ、韓国・朝鮮籍の方はこれだと増えて見えますけれども、もう高齢化が進んできたのでということで微減の状況もございます。
 それで、次に多いのが何とベトナムになっている。これが近年の特徴だと思います。フィリピン、ブラジルは前から多かったのですが、今はベトナム、ネパールが急に多くなってきている。そして、「その他」も多くなってきている状況です。
(スライド22)「国籍により異なる人口構造」と書きましたけれども、これは在留外国人統計に年齢各歳別に出ていますので、それを人口ピラミッドの形で、左に男性、右に女性、そして80歳以上は全部一まとめということですと、日本の場合は80歳以上は多いですのでここにがっと出ますが、外国籍合計にしてもこういう形で80歳以上も多いのですが、やはり25歳のところで非常に大きくなる。そして、男性のほうが多いという形になっています。これは2024年のものです。
 韓国・朝鮮籍の方は、日本同様の形です。ここでちょっと減っているのがひのえうまなのですけれども、韓国・朝鮮籍の方はその頃、日本に住んでいたので、韓国や北朝鮮本国にはひのえうまで子供がどうのという迷信は何もないにもかかわらず、日本にお住まいになっている方はここにひのえうまの凹みが見られるということがあります。
 それで、日本にいる中国の方の人口ピラミッドはこのような形で、やはり若い方が多いのと、ちょっと女性のほうが多く、中年女性が多くなっているというのが特色です。
 そして、フィリピンの場合も女性が波を打って、これは日本に来るときの在留資格としてエンターテイナーがなくなったりとか、そういうことがありますが、その後、例えば日本人の配偶者になってということでそのまま仕事を続けられて、かなり高齢でそのまま残っている。女性のほうは、特にそういう状況が見られるというのがこの人口構造で分かります。
(スライド23)さらに同じものなのですが、これは在留資格別に現在の外国人について性・年齢別に見たものが、これもe-Statから出る統計でつくったものですけれども、技人国が男性、若い人に多く、留学生はもっと若いところで男女に多く、永住者はこのような形になっている。
(スライド24)それから、国籍について死亡水準がちょっと違うのですけれども、時間もありませんのでかいつまんで言いますと、外国人と日本人の死亡水準はそんなに変わらない。これは年齢構成を調整しているのですけれども、若干外国人のほうが多いくらいで、韓国・朝鮮籍の方がちょっと多いのは、日本にいる韓国・朝鮮籍の人は自殺が非常に多い。
 ただ、自殺が多いのは日本にいる日本人、日本にいる韓国・朝鮮籍の方、韓国人という順に自殺率が高くなっていきます。ですので、これは日本にいるから自殺が増えるというよりは、そういういろいろな文化的なものもあるかということも思われます。
 それから、その他の国籍の死亡水準が非常に高くなっていて、この分析をしたときは人口動態統計でこれらの国籍以外はその他というところにまとまっていますので、これを各国別に分けられないんです。ですので、もう少し細かく国籍を取ってほしいということのリクエストを出し、今はベトナムやネパールの国籍もチェックボックスにありますのでそれぞれ分けて分析することが可能ですが、その他の国籍というものについてきちんと、例えば労災管理できているかとか、そういうことが重要であるということがこの図で分かると思います。
(スライド25)それから、「外国人労働者の賃金」についての質問がございました。
 日本の一般労働者、男女計33万円と比較して外国人の労働者はここで見ますと、合計して外国人労働者計で24万円ということで低く、専門的・技術的分野は29万円、身分に基づくものは30万円ということで、在留資格によって変わりますが、やはり日本人と比較して低いというのは否めないということだと思います。
(スライド26)では、この賃金差はどうするのかということですが、諸外国、例えば米国においても賃金格差はあるということで、日本だけがそうであるというわけではないという知見が得られております。それで、ここには「OEDC移民政策レビュー」、これは日本に関するOECDの日本の移民政策のレビューを先日公表され、それを日本語でうちの研究所の是川が日本語訳にして取りまとめたものにまとめられております。
 それで、特に技人国の賃金率は平均的な日本人男性労働者よりも35%低い。この差の大部分は、日本の労働市場での経験年数と勤続年数が少ないことによる。これらの違いを考慮すると、賃金格差は10%程度ということになる云々ということで、そんなに外国人だからということで賃金差が生じているわけでもないけれども、基本は低くなっているということです。
(スライド27)それから、「外国人の滞在期間」ということで、これは出入国統計を使って算定したものになっておりますが、滞在期間別在留率ということで、このような1年後、2年後ということで、2年から3年の間に滞在期間のギャップが大きく出てきている。これは、やはり制度的に2年たってまたビザが切れてということがあるからだと思われます。
(スライド28)それから、「外国人労働者と年金制度」ということで、年金の加入要件は日本人と同様でございます。
 それから、脱退一時金制度についてなのですが、これは支給額上限を5年とするということで、こういう制度もありますので掛け捨てになっているという状況ではないです。
 それから、右のほうですけれども、現時点では受給要件を満たす前に帰国する人が多いと考えられ、年金制度に対しては中立ないしは年金制度を支える貢献度のほうが大きいと考えられると書いてはありますが、これは払った年金のうち自分が、労働者が払ったものはこの脱退一時金で戻ってくるけれども、企業が払ったものはそのまま外国人には戻らないで年金基金に残るという意味で、この年金制度を支えるというふうに書いております。
 それから、今後滞在期間の長期化に伴い、年金受給資格を得る者も増えていくと考えられますが、その場合、日本人と大きく異なる点は特にない。
 それから、外国人労働者の生産性(賃金水準)は入国当初において若干の格差が見られるものの、国際的に見てその程度は小さく、また日本語や技能の習得に伴い、中長期的には縮小すると考えられます。
 こうした特徴は労働分野を中心とした我が国の外国人材受け入れ政策の特徴を踏まえたものであり、欧米諸国と比較してもむしろ良好な状態と言えるというふうに我々は考えております。
(スライド29)それから、これは最後の1つ前ですけれども、現在「国境を超える年金受給」というのが各国で増えておりまして、フランスにおいては、これはフランスの年金をもらっている人ということですが、2020年に年金受給者のうち7.6%が国外に居住していると、これはレポートに書いてあったのですが、研究者からちょっと聞きましたところ、直近で年金をもらい始めた人に限ると半分は国外に居住している。これは、フランス人が自分で居をアフリカのモロッコに構えていたとか、それからヨーロッパ圏内で動いているというのも当然入りますので、必ずしもアフリカ人がフランスで年金受給資格を得て、それで戻っていってというのが全てというわけではありませんが、非常に今はそういった形で国境を越えて年金受給というものが広がっているという話を各地で聞いております。
 それから、日本については、本当に直近に総務省のほうからウェブに出していただいているものを見つけたのですが、海外の年金制度から年金を受給している日本人の数ということで、アメリカの年金制度でアメリカから年金をもらっているという人がもう既に日本に10万7000人もいるということです。
 それ以外の国は1万人を超えているところはそんなにないのですが、今後社会保障協定などを通じ、そして日本人も外国人も国境を越える労働が増えてくると、このようないろいろな各国の年金制度をもらうという人が増えてくるし、そうしたことで例えば日本に来る外国人も日本にいるときの年金期間の合算がされるとか、そのときの年金が後にもらえるようになるというのは一つの大きな魅力と捉えているという話は以前、外国の方や行政司法書士の方などから聞いたことがございます。
 そういうことで、最後なのですが、うちの研究所関連のほうでこの将来人口推計について外国人が公的年金財政にどのような影響があるかということで、継続的にシミュレーションをして報告書や論文などにまとめて出しております。
 ここは2015年版のものなのですが、今これを新しい前提に基づいてまた見直しをしているということで、前回この会でこのようなオンラインセミナーをした、今、慶應大学の石井太先生が今は作業中ということですので、もしまた何かあったら適宜御質問いただければと思います。
 そういうことで、ちょっと時間を超過したかもしれませんが、以上で私の御報告を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。
 
○翁部会長 林様、大変示唆的な基調講演をどうもありがとうございました。
 それでは、この後、少し休憩を取りまして、その後に意見交換をして議論を深めてまいりたいと思います。
 
○楠田首席年金数理官 これより10分間の休憩といたします。再開は、15時15分を予定しております。
 
(休憩)
 
○翁部会長 それでは、部会を再開いたします。
 本日はオンラインセミナー形式で開催しておりますので、ここで改めて委員の紹介をいたします。
 それでは、事務局のほうからよろしくお願いいたします。
 
○楠田首席年金数理官 それでは、委員を御紹介申し上げます。
 株式会社日本総合研究所シニアフェローの翁百合部会長でいらっしゃいます。
 元ニッセイ基礎研究所代表取締役会長の野呂順一部会長代理でいらっしゃいます。
 年金数理人の小野正昭委員でいらっしゃいます。
 慶應義塾大学経済学部教授の駒村康平委員でいらっしゃいます。
 学校法人国際基督教大学評議員の佐藤久恵委員でいらっしゃいます。
 公益社団法人日本アクチュアリー会元理事長の庄子浩委員でいらっしゃいます。
 本日はオンラインで参加されていますが、東北大学大学院法学研究科教授の嵩さやか委員でいらっしゃいます。
 慶應義塾大学経済学部教授の寺井公子委員でいらっしゃいます。
 公益社団法人日本年金数理人会前副理事長の枇杷高志委員でいらっしゃいます。
 
○翁部会長 それでは、ここからは前半の基調講演を受けまして意見交換を行ってまいります。
 講師の林様にも加わっていただいております。
 テーマは、大きく最初に1として「少子化の動向等について」、2として「外国人労働者の動向及び年金制度について」、この2つの論点に分けて議論を進めてまいりたいと思いますが、よろしゅうございますでしょうか。
 
(委員首肯)
 
○翁部会長 では、そのように進めてまいります。
 それでは、まず初めにテーマ1の「少子化の動向等について」、御議論いただきたいと存じます。御発言のある方、挙手などお願いできればと思っております。よろしくお願いいたします。
 それでは、佐藤委員、お願いいたします。
 
○佐藤委員 非常に示唆に富むお話、ありがとうございました。大変勉強になりました。
 私からは質問とコメントのようなものなのですけれども、近年、日本では家族関係の社会支出が大幅に増加しているにもかかわらず、いまだにTFRが反転しない。これは先ほどの御説明の中でも、時間がかかるのでメッセージとして受け取ってほしいということだったのですけれども、それに尽きるのかということと、そうであれば支出の効果というものを周知する振り返りみたいなものを頻繁にやって国民に周知することが大切なのかなと思うということで、後半はコメントでございますが、前半についてまだ何か理由がございましたらお聞かせいただけますでしょうか。
 
○翁部会長 お二人ずつぐらいまとめて御回答いただければと思います。
 それでは、ほかにいかがでしょうか。
 では、庄子委員、お願いいたします。
 
○庄子委員 林先生、本日はどうも興味深いお話をありがとうございました。
 講演資料の4ページをお願いします。
 コホート別出生率の特に右側のグラフについて関心を持ちました。
 1935年の生年の方のグラフはかなり昔なので、これは比較にならないと思うのですが、1965年、1990年のグラフについて、今、人生100年時代というふうに言われていますので、人それぞれの人生設計の考え方も大きく変化してきていると考えますと、子供を産んで育てるタイミングのピークが、高齢側にずれるというのは、当然のことではないかと思うのです。
 そうしますと、このグラフの下側の総面積、赤のグラフ、緑のグラフそれぞれの下側の総面積、合計すると1人の方が産む人数ということになると思いますが、そこが維持できれば、合計特殊出生率の水準が維持されていくと思うのですけれども、生物学的に年齢が上がるに従って妊娠、出産の課題が多くなり、ARTをやってもち上げても、若い頃ほどまではいかないとのお話しいただきました。
 加えて、ちょっと私見ですけれども、今、日本人の女性の方々は痩せ型で、それが生物学的に考えたときには子供を産むということに対してネガティブに働いているのではないかとか、そういうこともあるのではないかと思っています。人生100年時代でピークがずれていくことは仕方ないとして、この総面積が変わらないようにすることが何か考えられないのか、またグラフは推計値も入っているということなので、最近の動向でお分かりになっていること等があれば、そこも含めてお話をいただければと思いました。
 以上でございます。
 
○翁部会長 それでは、お願いいたします。
 
○林氏 御質問、コメント、どうもありがとうございました。
 まず佐藤委員からの家族関係支出が増えているのにということで、ふだん私はよく使うスライドに、家族支出は増えているけれども、全体の社会保障支出、社会支出から見るとわずかであるということをよく使っております。ですから、それだけを見ると増えているけれども、例えば高齢、年金ですね。それから健康保険、介護保険というところの個々の支出に比べるとまだまだ小さいということは言えると思います。これがもう少し増えていくということもあり得るのかなと思っています。
 それから、それを時間はかかるけれどもどのように評価していくかということで、結局それは何らかの指標を見て、それがどうなったかというのを見るということだと思うのですが、例えば家族関係支出で育児休暇についてということですと、最近特に注目されているのが、男性の育休取得が今まで3%が3.5%に上がったとか言っていたものが、2021年から急に30%くらいにどんと増えた。そういうところは評価されてもいいのでしょうし、でもそれはやはりコロナによって働き方改革がぐっと進んだ、テレワークやフレックスといったものが非常に広がってきたということが非常に大きいとは思うのですけれども、そういった指標で、特に子供関係の施策にはもう指標をつくってそれでモニターしていくといったものはできているので、それはきちんと今までどおりに数値でモニターして評価していくということは続けていくべきだと思いますし、一遍つくった指標を次に新しく大綱をつくってまたKPIを入れてということで、きちんと本当に毎年、毎年どのくらいきちんとモニターできているのかというところは見ていかなければいけない、ただ、そういう意味である程度、結果というか、数値に出ているところは出てきているかと思います。
 
○佐藤委員 ありがとうございました。全体感の中で理解するということも大切だと分かりました。
 
○林氏 それから、痩せ型の女性が多いのでということですけれども、痩せ型で言うと一頃、日本人は低体重出生児の割合が非常に高くてということが言われていて、あれは小さく産んで大きく育てようというか、あまり妊娠時に肥満にならないほうがいいという指導があったことが影響しているのではないかということで、今は妊娠時にそんなにダイエット、食べる量を減らしましょうということはやらなくなったというふうには聞いていますが、その前に痩せ型が多いからそれで妊孕率が下がるかというと、そういうわけでもないというか、先ほどのARTの30歳からどんどん妊孕率が下がっていくというのはどこの国でも見られている話ですので、逆にあまり肥満の人が多いほうがちょっと問題が多いのかなと思います。総面積を同じようにするにはということで、例えば希望する、子供が欲しいけれども産めなくて、それから不妊治療をしているかどうかというのを勘案して、それでやはり30代くらいで皆さんそういう不妊治療をしているし、ニーズがあるというところを見ると、もしARTの成功率が上がるように技術的になっていけば、例えば今、年齢別の出生率のカーブがやはり一峰性でこうなっているのではなくて、30代のところは上がって、しばらくフラットになってくれれば、それがもし38歳くらいまで続くと、計算上ではTFRで合計特殊出生率は2くらいに近くなるのですね。
 ですので、今後この不妊治療の技術をどのように進めていくかということは非常に重要な意味を持っていると思いますし、あとはそれこそ人工子宮の実際の研究も進んでいるという話がありますので、そうした技術というところはやはり無視できないところがあるにしても、倫理的な問題が常にあるのでそこも考えながらということです。
 ただ、例えばこの話を不妊治療の専門の先生とすると、1980年代は犯罪人扱いでしたとおっしゃるんです。その頃は体外受精なんてとんでもないという国際的な学会の動向は、今はもう全く変わってきたということで、そういう方向性は人類社会としてあるのかなと思っております。
 それから、若いところで、今でもやはり高校生で妊娠したら退学をするとか、全部中絶するとか、そういうことになっていますけれども、やはり本人がそれで産みたいと思うときに支援の手を差し伸べられるというような若い妊娠に対しての支援ということもきちんと考えなければいけないなとも思っています。
 
○庄子委員 ありがとうございました。
 初婚年齢が高齢化してきていて、30歳くらいになって初めて結婚するという方が増えているというのは、まさに人生設計が変わっているということで、今お話のあったように、その後の出生数というのが一定フラットになっていけるような構造になっていくと、面積が増えるということになるのかなと理解しました。技術の進展、医学の進歩を期待したいと思います。ありがとうございます。
 
○翁部会長 それでは、次に御質問をお願いいたします。
 
○野呂部会長代理 主に8ページの収入のところについて、感想と質問をさせていただきたいと思います。今回の資料では世帯所得でしたが、特に男性の所得と、出生というよりも結婚の関係について、以前、私が所属しました研究所で調べたところでが、男性の所得と結婚力といいますか、生涯未婚率の関係というのは非常に高い相関関係があり、とりわけ年収300万円以下だと生涯未婚率が非常に高く、当然子どもさんもできないということでした。
今の8ページの特に右のグラフを拝見しますと、子供2人以上は世帯年収1000万以上の人が多いように思います。
 それはパワーカップルといいますか、御夫婦とも高所得というカップルというか、世帯もあるかと思いますけれども、やはり夫すなわち男性の所得が高いのではないかと思います。
 さらに、これは既に結婚されている方のデータですが、未婚男性のこれから結婚力といいますか、結婚の見通しを考えると、やはり男性の所得は、結婚、そして出産というところへの影響が大きいのではないか。とりわけ、就職氷河期の人などは非正規のままで所得も低く、なかなか結婚もできない。そうした低所得の男性が、出生率の下がっていく一つの要因ではないかと思っているのですが、その辺りの所得と結婚力、あるいは出生力についてどう見たらいいか、教えていただけたらと思います。
 
○翁部会長 また何人もいらっしゃると思うので、恐縮でございます。
 嵩委員、お願いいたします。
 
○嵩委員 ありがとうございました。
 本日は大変示唆に富む興味深い御報告、どうもありがとうございます。オンラインから失礼いたします。
 私も8ページの資料につきまして興味があります。近年、経済的な不安によってなかなか子供を持ちづらいということで、経済的な支援、児童手当の拡充とか、そういった政策が取られている中で、これがすぐ翌年に効果が出るというわけではないのかもしれないのですけれども、そういった経済的支援がどの程度少子化対策に効果があるのかというところに興味があります。
 それで、こちらの8ページの資料の中で、今、野呂委員からも御意見、御質問があったことと重なるところではあるのですけれども、例えば2015年から2021年の変化で600万円以下の世帯について子供がゼロ人、子供がいらっしゃらない人が減っているということでしょうか。
 他方で、1000万円以上の人はむしろゼロ人の子供がいない人の割合が増えているというように読めるのですけれども、これはイメージとしては逆転しているような感じもします。この辺りで例えば600万円以下の方について子供がゼロのパーセンテージが減っていると思いますけれども、何か要因があるのか、逆に1000万円の人についてゼロ人というのが増えてしまっているというのはどういう要因があり得るのか。何か政策的なものが影響しているのか、あるいはほかの要因があるのか、こちらのデータについてどう読んだらいいのかということを教えていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 
○翁部会長 あともう一方、どなたか御質問ございませんでしょうか。
 では、寺井委員、お願いします。
 
○寺井委員 どうも興味深いお話をありがとうございました。
 私のほうからは、女性の就労と出生についてお伺いしたいと思います。
 よく知られていますように、女性の就労は本当に進んでいて、以前ですと結婚や出産を機に仕事を一旦辞めてしまうという人も多かったのだけれども、20代、30代で働き続ける人も増えていて、かつ政府の政策として非正規から正規への転換を推進するというようなこともされていると思っているのです。そうすると、女性が働き続けるということが既に進行している中にあって、このことが出生にどういうふうな影響を与えるのかなということが少し気になっているところです。
 それで、先ほど8ページでしたか、世帯の所得が増えると、そのほうが子供の数にプラスに働くというような資料もあったけれども、その前のページですと、正規雇用であると子供の数が少ないという資料もあったと思うのです。それで、今後政府が非正規から正規へというふうな導きというか、政策を行ったときに、ひょっとしてそれは出生率にマイナスに働くのではないか。
 特に私がよく聞くのは、働くと所得は増えるんだけれども、子育てにかけられる時間が減るのではないか。そうしたら、それを先読みして、責任が持てないということで子供を産むのを踏みとどまる女性がいるのではないか。女性の就労が進むことが出生率にマイナスになるのではないかという話もちょっと聞いたりするのですけれども、その辺りはどういうふうに考えていらっしゃるのかということをお伺いしたいと思います。
 
○翁部会長 では、今の3人の委員の御質問に林先生、よろしくお願いいたします。
 
○林氏 どうも御質問ありがとうございました。
 まず野呂委員からの、やはり男性の所得が効くという話で、それはもちろんそうだと思うのですが、それがなぜそうかというと、今回お見せしなかったのですけれども、出生動向基本調査で結婚相手の条件として重視する、考慮するということで、男性の経済力を挙げる女性が非常に多い。つまり、男性は女性に経済力はほとんど求めないんだけれども、女性は男性に非常に求める、考慮するという女性が9割以上で、女性は求めている。だから、逆に言うとそういう状況を女性がつくっているのではないか。やはり稼ぎ主は夫でというところに夢、幻想を持っているという状況がまだまだ続いていることで、所得が高くないと子供が持てない、持たない、持ちたくないということにつながっているのかなと。
 そうだとすると、女性は男性の経済力のために結婚してはいけないというわけにはいきませんけれども、その辺りの発想の転換が何かあれば、男性の所得ということではなくてということになるかなとは思いますが、共働きをして、それで合計のというところで上がっていけば子育てがしやすくなるという状況も当然出てくるのかもしれません。
 ただ、昔は貧乏人の子だくさんと言っていたのですよね。それで、それがどこの時点でお金がないと子供ができないというところにきたのか、その転換点というのをもう一つ考えてみる必要があるなと思っているところです。
 それから、嵩先生から、このスライド8を見ると逆の動向が見られるということで御指摘いただいて、8ページの右の600万以下の収入のところで2015年から2021年にかけて収入が低い階層のところでゼロ人が減った。それから、1000万円以上のところでゼロ人が増えた。収入が高いと子供を産むという傾向とは逆行しているのはなぜかという、その理由なのですが、このグラフからは今のところこの理由ですということをはっきりお答えすることができませんので、申し訳ないですけれども、さらにこのゼロ人のところの属性が何かとか、そういうものをもう少し詳しく調べて、また機会があったら御報告できればいいなと思っております。今、お答えできなくてすみません。
 それから、もう一ついただいた、女性の就労を正規化するとますます少子化になるのではないかということで、昔から女性が高学歴になると結婚もしないし、子供もつくらないとか、女性が働くと子供が減るとか、そういうことはずっと言われてきて、だからこそ70年代、80年代に早く結婚しろとか、仕事をするなとか、そういう文化がずっとあった中で、やはりそうではなくてある程度女性の教育水準や就業が進むと出生率が下がるけれども、あるところで底を突いて逆に反転するんだということがJ字カーブと言われて、ドイツ人やオーストラリア人などが言い出したそういう変曲点がある。
 だから、あるところで、より女性が正規に働けて、しかも社会は働きやすい環境が整っていて、性別に平等になっているほうが子供を産みやすいという社会で、日本は今ちょうどそこの転換点くらいなのではないかと我々は思っているのが、先ほどの高学歴の女性の子供数が、くっと上がったというところがそこかなと。
 ですから、それは我々というか、希望的観測にすぎませんけれども、そういう転換点が諸外国ではあるので、それをもうちょっと見守っていく必要があるかなと思っております。
 
○翁部会長 ありがとうございます。
 全体の時間制約もありますので、御質問、コメントはできるだけ簡潔にお願いいたします。
 それでは、御質問のある方、よろしくお願いいたします。
 枇杷委員、お願いいたします。
 
○枇杷委員 ありがとうございます。貴重なお話を今日はありがとうございました。
 この部会は年金のことを扱っているということがありますので、子供を持つか、持たないかということと、年金制度のありようといいますか、存在ということの関係をちょっとお聞きしたいと思っております。
 先ほど所得が増えるという話があって、それはプラスに働いているということなのですけれども、年金制度があると、例えば今やはり年金の掛け金を払うために収入を減らす、使わなければいけなくて、それが困る、負担になっているとか、あるいは将来年金がちょっと当てにならないので貯蓄をしなければいけないから子供はというようなプライオリティーになっている可能性もあると思うのですけれども、もしその辺について御知見ですとか調査みたいなものがあればお聞きしたいと思います。
 
○翁部会長 ありがとうございます。
 ほかはいかがですか。
 駒村先生、お願いいたします。
 
○駒村委員 2点ほどありまして、1つは御質問ということになります。
 資料4で35歳時点での完結というか、その時点での出生率が75年生まれのところをボトムにして、これが一回、回復してまた下がる。この回復で私は期待していたのですけれども、また結果的には下がってしまっている。この回復と、また下がるところはどういうふうに評価しているのか。政策効果が出て息切れになってしまったのか。あるいは、先ほどもお話にあった結婚に対する価値観が変わってしまった。要するに、結婚できないから、結婚するつもりはないみたいな人が増えてきたというような構造的変化があったのかどうかという辺りをちょっとお聞きしたいと思います。35歳時点ですから、まだ2025年生まれのところまでしか取れていませんので、そこから先は推計だと思いますけれども、その辺が知りたい。
 それから、先ほど庄子委員からあったのですけれども、社人研の調査の守備範囲ですね。どうしても社会経済的なインパクトが多いのかなと思っているのですけれども、先ほど庄子委員からありましたように、特に東アジアの出生率は下がってきているのですが、一方でほぼ同じ時期に90年代から2000年代にかけてBMI、18.5未満の女性が、それまでは10%台だったのが日本などは20%近くまで上がってきていて、やはり若い女性の痩せ願望、痩せ傾向が妊娠に影響を与えているのではないかということについて、社人研、人口研のほうでそういう女性の健康問題と出生率の関係、あるいはこれは先進国全般で出生率は下がっているのですけれども、先進国でもあまりの気候変動は出生率に影響を与えているという研究は出始めているのですが、そういう経済社会とはちょっと違う要素みたいなものは社人研でも調査研究されているのか、その辺を教えてもらいたいと思いました。
 以上です。
 
○翁部会長 ほかにいかがですか。
 小野委員、お願いします。
 
○小野委員 ありがとうございます。
 人口部会の委員だったものですから、どうしても次期将来推計人口に関心があって質問させていただきたいと思います。
 令和5年の推計が公表されて2年が経過しました。今回の推計ではコロナを外的ショックと位置づけましたが、人々の行動様式を変えてしまいましたコロナは死亡率、出生率、ともに想定よりも長期間にわたって影響しているのではないかと見えます。こうした点に限らず、次期推計に向かって現時点で得られている知見、あるいはその展望というものがありましたらお伺いしたいということでございます。
 以上です。
 
○翁部会長 ありがとうございます。
 それでは、林先生、御回答をお願いいたします。
 
○林氏 御質問ありがとうございました。
 まず枇杷委員からの子供を持たずに貯金するかどうかですけれども、逆に昔は子供に老後を見てもらおうということで子供のニーズがあったが、今は年金制度が整備されてきたのでそういうニーズがなくなったというロジックというか、人々の思考回路はあるだろうとは思いますが、年金のために貯金をするので子供を持たないという、そこまで考えて貯金をする若い人がいるのか、あまりそういう話を聞いたことがないかもしれませんが、その旨、意識調査などももうちょっと見てみたらいいのかなと思いますけれども、どちらかと言うと前者のほうで、子供に対してそんなに期待しなくて、自分の老後は自分で見るという意識が高くなったので、特に子供の必要性が減ってきたというのは若干あるかなと思ってはおります。
 次に、駒村委員から、第4スライドの、下がって、上がって、また下がっているという、これが何かというところですけれども、これは多分最初にお見せした合計特殊出生率が2005年で底を打って、それから上がって、また下がっていったというところと対応しているのかなとも思うのですが、なぜそうかというといろいろな解釈があるとは思いますが、2000年になって不景気になったので、それで産み控えていたけれども、2005年くらいから取り戻そうとして、でもそれはコホートとは関係ないですが、この違いが何かというのはどうでしょうか。
 結婚の意識だとか、そういうことをおっしゃられましたけれども、意識的に20歳以下の出生率、それから中絶率が90年代にわっと上がって、それで2000年以降にわっと下がっていくのですが、その意識のほうが95年に北京女性会議があり、ジェンダーメインストリームになり、それからいろいろな性教育もわっとそのときにきちんとなされるようになったけれども、2000年代以降にジェンダーバックラッシュが日本だけではなくて世界中で起こっていて、そういう日本の中の保守派と進歩派、そういうものの揺らぎが人々の行動に影響を与えているということもないかなというのをちょっと思っていたりしております。
 ただ、それはきちんと検証しているわけではありませんし、今回駒村先生に言っていただいて、実績値として35歳までのコホートの合計出生率が出ましたし、きちんとこういうふうに底を打って、波を打っていますので、これはおっしゃるとおり、もうちょっとうちの研究所でも研究したいなと思っているところでございます。御指摘ありがとうございます。
 それから、痩せが増えたので出生率が下がるかというと、痩せが増えるから子供が欲しくないと思うかどうか。妊婦になって太るから嫌だわと思って妊娠しないということがもしあればそうかもしれませんけれども、痩せでもやはり子供が欲しいのに妊娠できないという不妊が増えたのかというエビデンスがあるかというと、それはあまり私のほうでは存じ上げていないということがありますので、昔の何人も産んでという時代ですとそういった個別の事象が影響するかもしれませんが、今は本当に1人、2人欲しいというと、痩せでも太っていても本当に欲しいのであれば皆さん努力しますので、痩せが増えたことが直接出生率低下につながるということは、私はあまり想定しておりませんでした。
 それから、気候変動などで温度が変わったのでそれで少子化になるかとか、あとは気候変動を研究されている方で温度がここ100年で1度上がったので、それで寿命が20歳延びたという報告をしている若い研究者がいて、私はびっくり仰天したのですけれども、気候変動の影響、特に温度の影響がどのくらい出るかというのは、もしあるとしても夏が暑くなってというよりは、冬の温度が温かくなった影響のほうがずっと大きいと思います。
 それは死亡率にとっても、冬に高く、夏に低いという月別の死亡率のサイクルがありまして、冬は軒並み死亡率が高くなりますので、それが地球温暖化で死亡率が減るという方向は当然考えられると思いますし、当然熱中症が出てきてということで、熱中症の数は数えなければいけないにしても、それは冬の温度が上がることに対する影響と比べたら非常に小さいと私自身は思っております。
 ただ、冬の温度が1度上がったからどのくらい死亡率が下がるかということ自体は、まだ検証はできていないということと、あとは死亡率はそれだけ影響するけれども、出生に対してどれだけ影響するかなというのはさらにあまり確信が持てないというところではございます。
 あとは、気候変動ともう一つ、何とかとおっしゃいましたよね。
 
○駒村委員 気候変動までです。やはり先進国でも死亡率は寒い国の気候の上昇は寿命を延ばすけれども、温かい国の気候上昇はやはり寿命が縮まるという研究が出てきていて、それはそうだろうなと。
 出生率のほうは、やはり先進国でも夏場の気候変動で出生率を抑えているのではないかという研究も医療系とか気候系の研究で出始めていて、日本の月別の出生率などに影響が出始めているのかなという点は社人研がそろそろ守備範囲に入ってくるのかなということで、これだけ暑いと。
 
○林氏 ありがとうございます。
 言い忘れましたけれども、既に社人研では気候変動と人口に対する影響ということで人員もおりまして、プロジェクトもありまして、また新たに定員を採りたいと思っているところではございます。
 ただ、先ほども言いましたように、1度の温度の上昇がこの日本の100年の平均寿命20年の上昇に影響しているということを平気で言うのが気候変動論者ですので、それは一応きちんと見ていかなければいけないなというのが私のスタンスでございます。
 それから、小野委員からの質問で、次期推計にコロナの影響をどう捉えるかというところで、出生につきましてはまだまだ戻らないというか、すごい勢いで少子化が進んでいて、さらに来年ひのえうまということで、今後何を基準にして出生率の推移を想定していくかというのは、まだ今は次回に向けて検討中ということで、出生のほうは非常に難しい状況だと思いますし、死亡のほうは直近の概数の5月辺りで2019年の標準化死亡で見た場合、戻りました。
 ただ、今、社人研のほうでは月別の死亡変動を年齢調整もして死因別に見ていくということをしておりますので、そういった手法を使って今後の推移を細かく見ていくということは考えたいと思いますけれども、ただ、コロナ直接というよりも、コロナを通じて高齢者医療に対する医療者の考え方がとても変わった。寝たきりのままずっと引きずっておくということは本当にしなくなりましたということは医療関係者はおっしゃっていて、そういうことが老衰死の増加ということにつながっているのかもしれません。
 そうやって見ると、死亡に至るまでの間の健康水準とか要介護度の推移を見ながら、死亡水準の今後の設定をしていくというのもあるかもしれませんが、その場合でもあるところで今、増えている死亡水準がまた収束して元のような上昇基調に戻るということは想定されるかなと思っています。
 
○翁部会長 ありがとうございました。
 それでは、次に外国人のパートのほうで御質問をいただきたいと思います。終了時間は16時半の予定でございまして、視聴者の方からの御質問もちょっと御紹介したいと思いますので、誠に恐縮ですが、御質問はできるだけ端的によろしくお願いいたします。
 それでは、御質問のある方、よろしくお願いいたします。
 佐藤委員。
 
○佐藤委員 どうもありがとうございます。
 後半のところで資料11ページから12ページに関係するところなのですけれども、自国民と外国人の出生率を比較しましたときに、フランスやドイツでは外国人のほうが高いのに対して、日本では外国人のほうが低い要因についてお伺いしたいです。
 先ほど、送り出しの国の違いについての御説明もありましたけれども、それ以外の理由というのはあるのでしょうか。
 
○翁部会長 ほかにいかがでございますか。
 寺井委員、お願いします。
 
○寺井委員 私のほうからは、年金財政への短期的な効果と長期的な効果をお伺いしたいと思います。
 先ほど御説明の中で、長期的には、今納めている人も給付をもらうようになるから、そうすると長期的に見ると外国人労働者を受け入れることの年金財政のプラスというのはそんなに大きくないというような御趣旨だったかと思うのですが、本当にそうなのか。長期的に見て、外国人労働者が増えることが年金財政にどういう影響を与えるのか。もしほかの御視点もあれば、併せて教えていただきたいということです。
 以上です。
 
○翁部会長 もう一方、いかがでしょうか。
 嵩委員、お願いいたします。
 
○嵩委員 ありがとうございました。
 私からは、佐藤委員と同じですけれども、12ページの外国人女性の低い出生率というところとの関係でもあるのですが、幾つか要因があると思うのですけれども、例えば外国人だと日本で医療をするのに言葉の問題とか、そういうものもあって、なかなか医療とか出産とか、そういったものにためらわれる人もいるのかなという気もします。これからの外国人の方の受け入れは人口問題であるというふうに最後に書いていらっしゃいますけれども、今回ここは年金の議論の場ですけれども、そういった外国人の方の受け入れとして、医療に関するサポートとか、そういったものが必要ではないかとか、そういう御意見があればお聞きしたいと思います。よろしくお願いいたします。
 
○翁部会長 ありがとうございます。
 それでは、林先生、お願いいたします。
 
○林氏 御質問、ありがとうございました。
 外国人の出生が低いという理由ですけれども、送り出し国のことはあるとしても、例えば技能実習生であればもう妊娠したら帰国させられてしまう。ですから、技能実習生のベトナム人のリンさんが自分で出産してそのまま放置して子供は死んで逮捕されたというような話も起こったので、出産したからといって契約打ち止めにするということはしないようにという通知も厚労省で出しているところですけれども、やはり日本で働いている人は労働するということで来ているので、そこに対する産みやすい状況というものがそろっていないことが多いのかなと思います。
 特に配偶者として来てというのであればまた違いますけれども、労働者として来てという割合が多ければ、特にその辺りが日本の場合はまだ3%外国人ですが、ヨーロッパでは20%くらい外国人がいる中で、外国人が家族を持って住んでいるという国と、日本のように労働をしに来ているというところの違いがこの出生力の違いというものに出ているかと思います。
 それで、嵩先生のほうの質問から、その点について医療サポートが少ないからではないかということを御指摘されているわけですけれども、日本人で外国人に対する医療が少ないのかということについて、先ほども言いましたように2012年に外国人住民も登録されていますので、国民皆保険でどなたでも国民健康保険に入れるという状態で、そこに保険料の未払いが外国人は多いみたいな話でまた炎上してしまったりはするのですが、一応制度的にはどなたも入れるようになっています。
 あとは、今では医療通訳をどういうふうに入れていくかとか、そうした行政の資料に各国語で書いたり、分かりやすい日本語で書いたりとか、いろいろな工夫はしているので、外国人が医療を受けられないのでというのが全く分からなくてとか、あとは例えばベトナム人だったか、外国の方が自国で避妊用のインプラントを入れてきて、これをそろそろ外したいんだけれどもと言ったら、日本にはそういうインプラントの避妊具がないから取れないと言って困ってしまったということがあるみたいに、リプロダクティブヘルス分野の医療が日本のほうがちょっと窮屈だということはあるので、先ほどの外国人女性の低い出生率につながっていないとも限りませんけれども、基本的に日本にいる外国人は労働ビザで来て、出産をするということを前提に来ていない人が多いからということで説明できるのかなと思っています。
 それで、嵩先生からは、これからどういうことをしたらいいでしょうかということで御質問があったと思いますけれども、それはまさにどなたもいらっしゃる方はアクセスできるように、特に日本語なり、外国語のサポートなり、医療通訳なり、そうしたところは、既にいろいろな形で医療通訳の養成とかもやっています。
 あとは、先ほど年金のほうは国籍別の統計がいろいろ出てきていると言いましたけれども、医療についてはまだ国籍別の医療保険の加入率がどのくらいかとか、なかなかデータが出にくい状態がありますので、そこのところをきちんと出すようにしてくると、どこが問題なのかとか、どの国籍とか、どの在留資格の方が困っているかとか、そういうことが分かってくると思いますので、例えばNDBだとか、そのレセプトの中に国籍を入れるだとか、いろいろなことでもっと把握するための環境を整えていくことがまずとても重要ではないかと思います。
 先ほど、外国人の死亡率についてどのくらい死因別に外国人の死亡が違うかということはちょっとお話ししたと思うのですけれども、その死亡に行く前の医療の国籍別のデータがあまりにも少な過ぎるという状況が今はあると思います。
 次に年金の長期の影響ですが、申し訳ございません。先ほど、一時金についてはいろいろ言いましたが、そういうシミュレーションをしていますというスライドを最後にお示ししまして、この説明があまりにも短かったのでよくなかったなと思ったのですが、それは当然、若い人たちが入ってきて公的年金が非常に楽になるということは必ずあると思います。
 その点と、あとは長期化したらどうかとか、そういった御質問もいただいていたのですけれども、この設定をどうするのかとか、その細部についてはまた別の機会にもう一度石井先生に来てもらうとか、私も今ここでこのケースはこうだと具体的には言えないところですけれども、当面、若い人がたくさん入ってきますし、年金の保険料も増えますので、当然それは年金財政についてプラスになる。
 そういった方が長くそのままいらっしゃったときに、年金を受け取る立場にはなるので、そうしたときにまた同じことにはなるというのはこれまで言われているとおりです。
 あとは、戻っていった後に国外でどのくらい受けられるかとか、そういうことにも影響してくるとは思いますけれども。
 
○寺井委員 ありがとうございます。こちらの資料もありますので、もう一回勉強したいと思います。
 
○林氏 すみません。もう少しお話しするべきでした。
 
○寺井委員 いえいえ、ありがとうございます。
 
○佐藤委員 ありがとうございました。
 1点だけ、働くことを目的とすると、結局その方がどれくらい滞在するかにもよるのですけれども、長期にいらっしゃるということを想定するのであればそういう方をサポートする仕組み、出産に向けての日本人と同じくらいのサポートをする仕組みをつくっていくというのも課題になるのかなとはちょっと感じました。ありがとうございます。
 
○林氏 そうですね。
 
○佐藤委員 すぐ帰ってしまうのだったら、ちょっとあれなのですけれども。
 
○林氏 今のところ、出産関係で特に日本人でないとアクセスしにくい出産サービスというのも今ちょっと思い浮かばないのですけれども。
 
○佐藤委員 サービスというよりも、会社を辞めなければいけないという制度ですね。そちらについてのコメントです。
 
○翁部会長 ありがとうございます。
 次はいかがでしょうか。
 では、野呂委員、お願いいたします。
 
○野呂部会長代理 これから外国人労働者が増えていくという前提で、例えば10%くらいまでは笛そうだという見通しだったと思いますが、そのときの外国人労働者の働き方のイメージがちょっとつかめなくて、この資料の28ページには、やがて日本人と外国人労働者の賃金格差も縮むとあるのですけれども、やはり職種の違いなどもあるので、賃金格差はどこまで縮むのか。また、例えばコンビニで働かれる外国人は大きいと思うのですが、コンビニばかりでそれほど労働力の受容力もありませんし、また賃金格差の問題もトータルとしては縮まないと思います。年金財政においては、外国人労働者が増えることと平均賃金の伸び方についてはニュートラルで考えているわけなのですけれども、2040年になり、非常に増えた外国人労働者がどういう職種でどういう働き方をしているかということにイメージを教えていただければと思います。
 
○翁部会長 後ほどお答えいただくことでよろしいですか。
 ほかに御質問ございますでしょうか。
 小野委員、お願いいたします。
 
○小野委員 ありがとうございます。
 国際人口移動に関する現在の推計方法というのは入国超過を基にしているので、超過分の外国人が永住するような印象というのを私は持ってしまうのです。
 しかしながら、在留期間とか家族帯同というのが制限される方々がいらっしゃって、スライドの23ページのような外国人の種別といいますか、種類別の構造などを見ると、特に就労期の外国人の入れ替わりが激しいようにも思えてしまうということなのです。
 それで、例えばですけれども、将来推計で外国人の在留期間というのを考慮するというようなことは可能性として考えられないかということをお伺いしたいということでございます。
 
○林氏 在留期間の考慮というのは。
 
○小野委員 例えば、在留期間が経過してしまって、それ以上延長できる方もいらっしゃると思うのですけれども、そこでもって出国してしまう方もいらっしゃるのではないかと思って、結果的にそれが現在の将来推計人口のほうに考慮されていればそれでいいのですが、そういった辺りで何か違いがあるのかどうかも含めてお伺いしたいということです。
 
○林氏 推計にどのように考慮しているかということですね。
 
○小野委員 はい。
 
○翁部会長 あとは、どなたかいらっしゃいますか。
 枇杷委員、お願いします。
 
○枇杷委員 ありがとうございます。
 お二人の質問ともちょっとかぶるのですけれども、特に外国人の出入国の形、あるいは出身の国などもいろいろ変わっていく中で、将来の人口推計に見積りの方法の改善の余地というものがもし何かアイデアとして既におありでしたらお聞きしたいと思います。先ほど、気候変動の話は既に取組があるというふうに理解したのですけれども、同じように何か取組があればということでお願いします。
 
○翁部会長 それでは、林先生、お願いいたします。
 
○林氏 ありがとうございました。
 10%が外国人になったときにどういうイメージかということですけれども、例えばコンビニの話をされましたが、コンビニは留学生として入ってきて、それでアルバイトをするという方もかなり多くいらっしゃって、今の10%になったときに、例えば今の年齢別、それから在留資格別のイメージがすごく変わるかどうかということかと思うのですが、そうしたときに永住者ということになる人が増えてきて、それから新しい方も増えてきて、その点はあまりクリアなお答えを今できる状況に私のほうではありませんけれども、先ほどの小野先生のお話にもありましたが、うちの研究所のほうで外国人の動向で今後の送り出し国の人口動向を考えた上での将来推計というものをしていますので、またそちらのほうの知見を反映してお答えできればいいかなとは思います。ちょっと歯切れの悪いお答えで申し訳ございません。
 それから、在留期間を入れて、今は結局転入超過、前回の人口推計は転入超過は年間16万人でということでフィックスしてやっていますので、入ってくるのがどのくらいで、出てくるのがどれくらいで、滞在期間がどうだというのは、もうそこはざくっと転入超過ということで入れていますので、その辺りは今の10%のときのイメージに関わりますけれども、では滞在期間が増えて、そうすると在留資格も変わってきてというところを見据えた形で考えなければいけないとする、ということですかね。
 ただ、10%というと今のヨーロッパ各国ということにもなるかもしれませんけれども、やはり何が変わってくるかというと、外国人の子供さんも増えていくということも当然考えられると思いますし、それから留学生でそのまま日本語をしゃべって、そのまま日本で就職をしていってという方も非常に増えてくるだろうと思いますし、学ぶ系の特定技能や技能実習ですが、技能実習は批判されて育成就労にはなりましたけれども、しかし、このような形で、域内で還流移動するというか、そうした形の労働移動というのもある意味でアジア特有といいますか、今後もそういった形でいろいろな国で技能をつけてまた自国に戻っていくとか、そういったモデルは今後も続くだろうと思いますので、10%のときに何かというと、子供の家庭滞在とか、そういったところがもうちょっと膨らんでいって、それから永住者ももうちょっと膨らんで、あとは実習、研修系のもの、それから留学というところも膨らんでいくということで、全般的に膨らむというふうに私自身は想定しているという感じにはなります。
 ですから、推計でどれだけ在留期間の延長を見込んでとか、どこまでシミュレーションをしながら推計に出せるかというところは今後の課題だと思いますし、それが枇杷委員の質問にもなると思いますけれども、そういうことでどちらかというと送り出し国の人口構成が変わってくるというのがとても変わるのではないかということで、今のところは今までの主要な送り出し国であった中国が高齢化してきて外に出る量が減ってきたし、プッシュの要因が減ってきたりとか、そうすることでどんどん今までは東アジア、東南アジアだったのがネパール、バングラディシュ、インドという南アジアのほうにシフトして、そのうち今度はアフリカということで、今はマダガスカルから人を連れてくるのはどうするか。
 この間、TICADで紛糾しましたけれども、そうした送り出し国と、あとは国際的な国際人口移動の増加というのも考えた上で、これからの日本の国際人口移動が入って来る人がどうなるかという推計はうちの研究所でも、特にJICAと一緒にですが、やっていたりしていますので、今日のこの御質問を踏まえて、その点はさらに強化していかなければいけないなと思った次第でございます。
 
○翁部会長 どうもありがとうございました。
 それでは、視聴されている方から幾つか質問をいただいておりますので、事務局から御紹介いただいた上で林先生に御回答いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 
○楠田首席年金数理官 それでは、視聴者からいただいた質問について一部となりますが、3点御紹介させていただきたいと思います。
 1点目です。
 在留外国人統計で、法務省統計と総務省の住民登録統計とでは40万人以上の差があります。住民登録に漏れている在留外国人は不法在留者等と思われますが、大きな問題ではないでしょうか。御見解を伺いたいということでございます。
 2点目でございます。
 死亡水準は2025年5月に2019年水準に戻ったとのことですが、2023年の死亡数は前年より10万人以上増えたと記憶しております。老衰も増えていますが、コロナ並びにコロナ関連死が増えたことが主因と認識してよろしいでしょうか。また、老衰が増えた原因として高齢化が主因かもしれませんが、それ以外の要因としては何が考えられるでしょうか。
 3点目でございます。
 日本の人口ピラミッドの形状がほぼ固まる時期、年齢別の人口構成比が一定になる時期は何年頃になるか、見通しはありますでしょうか。また、人口ピラミッドの予想は確度が高いものでしょうか。過去予想が当たってきたのかについてお伺いしたい。
 これにつきましては、賦課方式や修正積立方式の年金制度において、人口ピラミッドの形状の変化がマクロ経済スライドの終了時期やその見直しに影響するのではないかと考えて伺いましたとのことです。
 お願いいたします。
 
○林氏 御質問ありがとございました。
 まず統計によって40万人違うことがという話ですけれども、出入国管理統計の在留外国人統計と、それから住民基本台帳による外国人の数が違うということでしたが、それではその40万人が全て不法滞在なのかというとそうではなく、出国したときに住民票から抜かしておかなければいけないところを抜かしていないとか、そうした手続上の違いが影響しているかと思いますし、不法滞在については先ほど話しませんでしたけれども、1980年代はかなり大きい水準で何十万人という推移でありましたが、最近は非常にそれが減って、8万人とか、そのくらいの水準になっていると思いますので、専らその統計による違いは住民登録のところを抜くかどうかという作業の違いで表れていると私のほうでは理解しております。
 それから、2019年と比べてというか、死亡数がまだ増えているということで、先ほどいろいろ私が死亡水準がと申しましたのは、もちろん年齢構造を調整してということでして、刻々と高齢者が増えていますので、その分、高齢者の死亡率は高いので、死亡の自然増といいますか、普通に何もなくても死亡は増えていくということを鑑みても、やはり2022年、近年までちょっと死亡超過があったけれども、それが収まったというのは、そういう人口高齢化の影響を除いた上でようやく収まったということを先ほど申し上げさせていただきました。
 ですので、御質問は実際にまだ増えているのではないか。コロナの影響はあるかということで、もちろんコロナの死亡自体、2020年は4,000人で、すごいとみんなびっくりしていたのですが、今はコロナが全体の8位の死因に出るくらい多く亡くなってはいます。
 ただ、その分、肺炎が減ったとか、ちょっと相殺される部分はありますけれども、その影響は当然考えなければいけないのですが、それでも今年の5月に2019年の水準よりも減ったというのは、コロナが増えているけれども、ほかの死亡は減ったということが言えると思います。
 2番目の質問に、私はそれで答えていますか。
 
○楠田首席年金数理官 あとは、老衰が増えた死因として高齢化以外に何か要因があるかというところです。
 
○林氏 老衰死が増えたという理由ですね。それは、先ほどちょっと言いました最後の終末期の医療で、昔は本当に施設に長らくそのままお話もできないけれどもといった方がいたけれども、やはりあるところで過度な医療はせずに死の質、クオリティー・オブ・デスを考えて、あまり最後に長引かせないというようなことになってきた。それは特に介護施設でいろいろリソースが逼迫しているということも影響しているのかもしれませんけれども、そうした終末期のみとりの影響もあるのかなと、それが死亡増ということにつながっているということはあるかと思います。
 それから、人口ピラミッドが一定化するのはいつかということですけれども、既にピラミッド型のこういう形から鈴型になってというのはあり、さらにこの下の子供のところで、わっと細くなっている。
 多分、そこがフラットにずどんと下まで同じレベルでいくのはいつかという御質問だとは思うのですけれども、人口ピラミッドというか、数ですので、数が同じに、このピラミッドで見た場合、親の世代が減るとその分、子供が減るので、そうすると斜めですぼんでいるものがすぐにすとんと直線で下りていくということになるのは、今のところまだ合計特殊出生率の水準で反転していない状況で、真っすぐに下りていくような見通しはまだついていないという状況かと思っています。
 ですから、人口ピラミッドの形もそうですけれども、やはり合計特殊出生率という母の年齢別の出生率で見ていくというので、まだそれが人口置き換え水準に至っていないので、持続的な形にはまだなっていないということでお答えになっているかどうかですけれども。
 
○楠田首席年金数理官 ありがとうございます。
 
○翁部会長 どうもありがとうございました。
 残り時間はあと5分ということで、もし今日のディスカッションや、今日の林先生のプレゼンテーションで何か御感想とかお気づきの点がありましたら1分以内くらいでコメントをいただければと思います。
 それでは、駒村委員、1分以内でよろしくお願いいたします。
 
○駒村委員 本当に今日はどうもありがとうございました。
 やはり出生数が予測以上に減っているということで、次回の人口推計は大変重要になってくるのかなと思います。
 それから、外国人のほうがそこを補っているというところで、なかなか出生率の低下にブレーキがかからない中で外国人が支えているということの意味を広く国民の中でも共有していただかないといけない。
 今、外国人に対する排斥的な話が出ていますけれども、決して出生率を回復する政策を諦めて外国人を一生懸命受け入れるという代替関係を目指しているわけではなくて、そういう形に今はせざるを得ないので、回復まで回復政策は引き続き、ただ、いろいろな要因もあるのではないかと思っていますので、引き続き先ほどの環境の影響も含めて社人研はパワーアップして研究を深めていただきたいと思いました。
 以上です。
 
○翁部会長 それで、野呂委員、お願いいたします。
 
○野呂部会長代理 ありがとうございました。
 非常に鳥瞰的に勉強できまして、やはり少子化対策というのは難しいなというのが実感です。もちろん少子化対策はやらなくちゃいけない。やらないとどんどん出生率も下がっていくとは思うのですけれども、ただ、世界中で少子化が進んでいる中で、やはり限界があるのかなと思います。年金財政においては少子化の影響が非常に大きいのですけれども、将来を見通すときに出生率が大きく上がるということに頼るのではなくて、やはり将来の出生率は一定程度、厳し目に見ながら将来の財政均衡を見る必要があるかなと実感いたしました。
 それで、年金財政というのは、未来の社会の投影みたいなものですので、年金財政だけではなく、日本全体の人口問題、労働力問題を考えるときも、出生率が大きく改善するという前提で見ていくことは、ちょっと危ないのかなと思います。
 そうなりますと、就労年齢を引き上げたりとか、労働者の生産性を上げたりとか、あるいはITなどによって社会全体の効率性を上げるというところに力を入れていかないといけない。出生率の改善だけに期待するのはリスクが高いかなというのが、今日いろいろ勉強させていただいた点でございます。どうもありがとうございました。
 
○翁部会長 では、お願いします。
 
○林氏 すごくいろいろな御意見、コメントをいただきまして、我々の研究所も今からさらに研究内容を拡充していきたいと思ったところですけれども、出生減は今、野呂委員がおっしゃられたように世界どこでも起こっておりまして、世界人口もこれまでは国連人口推計ですと2100年まで世界の人口は爆発するというふうな推計だったのが、2022年版の推計から、もう世界人口自体も頭を突く。一応、2080年代に105億人くらいで頭を突いて、それから後は下がり出す。
 それで、国連は2年に1回くらい推計をリバイスして出しているのですが、その頭を突く年代がどんどん最近に近くなってきていて、さらにほかの研究者は、もっと早く世界人口は頭を突きますということを言っている方がたくさんいるので、これからも世界人口自体の頭を突くのもどんどん近くなってくるだろうと、私的には思っております。
 世界的にもそういう状況なので、少子化はどこかで環境の整備はしなければいけないにしても、これが今の人類のフェーズだということは理解しながら日本の政策を考えていく必要はとてもあるし、そういった意味で人口減少が進んでいるので、もちろん生産年齢人口はどんどん下がっているんだけれども、2010年までは労働力調査から労働力を見るとやはりちょっと下がっているねというのが、2010年以降は上がっているんです。
 それで、人口減少なので、みんなが必死になって高齢者の雇用と女性の雇用と外国人の雇用を本当に真剣に考えるようになったということで、労働力自体は上がってきていますので、今、野呂委員がおっしゃられたように、そこの部分を今、年齢だけで決まらない、人口総数だけで決まらない、働きたい人は働けるような施策をどうやってつくって、今、年金も年金保険を払っている人を拡充するという施策だとか、全て日本がやっている政策は、私はアジアやアフリカに行って、日本ではこういうことをやっていると、常に勉強させてもらいながらいろいろなところで言っています。
 ですから、あまり悲観的にならない形で効率的な施策というのはいろいろなことがあると思いますので、そういったことを進めていくのが大切だなと思いますし、今日はこういう機会を与えていただいて本当にどうもありがとうございました。
 
○翁部会長 本当にどうも今日はありがとうございました。
 豊富なデータ、歴史、それからグローバルな視点、本当に貴重なディスカッションもできたと思っております。
 年金もそれだけ広い視野に立って議論していかなければいけないということがよく分かりましたし、最後に政策的なインプリケーションもいただきましたので、そういうことも含めて検討してまいりたいと思っております。
 年金数理部会は今後、令和6年の財政検証のピアレビューを行ってまいります。その際には、本日の議論も参考に検討を行っていければと思っております。本日御視聴いただきました皆様方におかれましても、今後の年金数理部会の議論にもぜひ関心を持っていただければと思っております。
 それでは、これをもちまして本日の部会は終了いたします。長時間にわたり、どうもありがとうございました。
 林先生、どうもありがとうございました。
 
○林氏 どうもありがとうございました。