2025年9月26日 第4回労働政策審議会労働条件分科会「組織再編に伴う労働関係の調整に関する部会」 議事録

労働基準局労働関係法課

日時

令和7年9月26日(金) 13:00~14:30

場所

厚生労働省専用第21会議室(中央合同庁舎5号館17階)
(東京都千代田区霞が関1丁目2番2号)

出席者

公益代表委員
山川部会長、池田委員、石﨑委員、髙橋委員、成田委員
労働者代表委員
木村委員、小林委員、冨髙委員、浜田委員
使用者代表委員
佐久間委員、鈴木委員、鳥澤委員、松永委員
オブザーバー
水谷事業性融資推進室長(金融庁監督局総務課)
事務局
岸本労働基準局長、尾田大臣官房審議官(労働条件政策、働き方改革担当)、先﨑労働関係法課長、瀧田労働関係法課課長補佐

議題

  1. (1)労使関係団体からのヒアリング(非公開)
  2. (2) フリーディスカッション

議事

議事内容

○山川部会長 それでは、第4回「労働政策審議会労働条件分科会組織再編に伴う労働関係の調整に関する部会」について、ここからは公開の議事になります。
 議題2の「フリーディスカッション」です。
 カメラの頭撮りがありましたら、ここまでとさせていただきます。
これから、これまでの部会における主な御意見を事務局から御説明いただいた後、委員の皆様によるフリーディスカッションに移りたいと思います。
 それでは、事務局から御説明をお願いいたします。
○労働関係法課課長補佐 それでは、資料1を御覧ください。
 資料1につきましては、第1回から第3回までの組織再編部会における委員の皆様の主な御意見につきまして、項目ごとに整理した上で、その内容を記載したものとなっております。
 フリーディスカッションの時間を確保する観点から、内容の御紹介につきましては省略させていただきますが、項目につきましては第1「事業譲渡時における労働者保護に関するもの」と、第2「企業組織の再編時における労働者保護全般に関するもの」とに分けた上で、第1については、さらに第1の1として、事業性融資推進法における附帯決議前段である事業譲渡等指針につき、新たな企業価値担保権の創設を踏まえた必要な見直し等に関する事項と、第1の2として、企業価値担保権が利用される場面に限られない、事業譲渡一般に関する事項に分けて記載しております。
 事務局からは、以上でございます。
○山川部会長 ありがとうございます。
 それでは、フリーディスカッションに入りたいと思います。資料1に整理していただきましたこれまでの主な御意見も参考にしていただき、またJILPTの実態調査、弁護士からのヒアリング、それから先ほどの労使関係団体からのヒアリングの内容等も含めまして、フリーディスカッションをしていただければと思います。今、御説明がありましたが、事業譲渡等指針につきまして、新たな企業価値担保制度の創設を踏まえた見直し等に関する事項も含めまして、本日は幅広く御意見をいただければと思います。
 御意見のある方は挙手をいただければと思います。オンラインの方については、先ほどと同様にお願いいたします。
 何か御意見等ございますか。
 鈴木委員、どうぞ。
○鈴木委員 御指名ありがとうございます。
 私からは、まず資料第1に記載される意見に関して、第1(事業譲渡時における労働者保護)を中心に5点ほどコメントをさせていただきます。
 まず、企業価値担保権の創設を踏まえた事業譲渡等指針の見直しについて、労働者側委員からは、譲受会社が責任を負う必要性についての御意見がございました。労使コミュニケーションの態様や成熟度は企業によっても様々であり、譲受会社と譲渡会社の関係も資本関係や、日頃の取引の有無によっても大きく異なります。また、ヒアリングでも説明会の実施や個別面談によって適切に労使コミュニケーションが取られ、譲受会社と労働組合の間で直接的なコミュニケーションなく円滑に事業譲渡に至った事例もあったと記憶しております。
 大前提として、企業価値担保権の設定自体は労働契約や労働条件に変更が生じるものではなく、企業価値担保権の実行においては、事業を解体せずに雇用を維持しつつ継承することが原則とされております。労使コミュニケーションはもちろん重要だというのは重々認識をしておりますが、そうした労働者保護に十分配慮をされた法的枠組みにおいて、情報提供、協議の在り方等の労使コミュニケーションそのものについてまで法律が関与することは慎重に考えるべきと思っております。
 企業価値担保権の活用を控えることにつながることがないようにするという観点から、個別事情に合わせて柔軟に労使コミュニケーションの方法を選択できるようにするということが適当と考えております。
 次に、事業譲渡時の労働者保護全般について申し上げます。本人の同意に関しましては、山梨県民信用組合事件で判示されているように、形式的な同意ではなく、労働者本人の自由な意思に基づく個別の同意があることが認められる場合に、その効果が肯定されると理解をしており、例えば解雇を示唆する発言や、不利益変更の必要性を十分説明しなかった場合、同意は無効になり得ると理解をしております。
 また、勝英自動車学校事件では、事業譲渡に伴う転籍にあたり、労働条件の不利益変更に異議のある者のみを解雇するということは無効であるという判示もされている等、司法上、労働者の同意というのは厳格に判断されているという印象を持っております。
 もちろん労働者側委員の方々が御指摘されるように、実態として事前に同意を拒否することが難しい、あるいは事後の同意の取消しは難しいという課題はあるかもしれませんが、一義的には同意の取消し等の権利が労働者にあることや、どこに権利救済を求められるのかということを労働者や経営者にしっかり周知していくことで対応すべき問題ではないかと考えております。
 3点目ですが、裁判所及び監督委員の関与といったお話も労働者側委員からいただきました。事業譲渡におきましては、資金繰りの面で一刻を争うケースも想定されます。裁判所や監督委員の関与によって迅速性が損なわれ、かえって労働者の保護に欠けることが懸念されます。
 弁護士からのヒアリングでも意見がありましたとおり、事業譲渡は基本的には私的自治の範囲の話であって、迅速かつ円滑な事業譲渡を可能にするためにも、裁判所の関与は不要と考えています。
 それから、事業譲渡時に労働契約を自動承継すべきという御意見もいただきました。これについては、明確に反対の立場であることを強調させていただきます。財務状況の悪化等を背景に、事業の存続や再生を目的として事業譲渡を選択する事例が多数ありますが、全ての労働契約の承継を原則としてしまいますと、スポンサー企業のなり手が現れにくくなってしまい、雇用機会を狭め、かえって労働者保護に欠ける可能性があると考えております。
 スポンサー企業は事業を譲受するに当たって、合理性の観点から過剰な人員を抱えることを避けることも考えられると思いますし、譲り受ける人員については買収する事業の関係の中で選別することを条件とする場合もあろうかと思います。仮にこのような条件を承諾したとしても、事業の存続によって、結果としてより多くの社員の雇用が維持できる可能性について目を向けるべきではないかと思っているところです。
 それから、これは第2のテーマでございますが、資料1の5ページの最後のポツに、労働契約承継法に基づく労働者への通知や異議申立に係る書面の電子化について、私から第1回の部会でも指摘させていただいた内容を記載いただいております。
 当該通知の電子化は、紛失リスクの減少や、円滑な手続に資するものと考えており、見直しが必要と考えております。
 この点につきましては現在、労働条件分科会におきまして労働基準関係法制について議論がされているところであり、労使コミュニケーションや労働条件に関わることでもありますので、労働条件分科会等、他の適切な場での議論も検討すべきものと考えております。一方で、このテーマは重要な課題であると思っておりますので、この場でも改めて問題提起をさせていただく次第です。
 私からは、以上でございます。
○山川部会長 ありがとうございました。
 1点だけ、3番目におっしゃられた裁判所の関与というのは、これは企業価値担保制度に関してということでよろしいでしょうか。
○鈴木委員 資料第1で、労働者側委員の意見とされている部分への反論でございます。企業価値担保制度以外の事業譲渡全般についてとされている御発言であると記憶しております。
○山川部会長 失礼しました。そうすると、労側に伺ったほうがいいのかもしれませんが、監督委員というお話もあったかと思いますが、これは管財人という趣旨でしょうか。そこは、前提が企業価値担保制度だったらということですが。
○鈴木委員 資料1の3ページの1つ目のポツのところの御意見を受けて、コメントをさせていただいた次第です。
○山川部会長 失礼しました。民事再生法の話で出てくるということですね。分かりました。これも、労側からの御発言を受けて御意見をいただきました。
 それでは、ほかにいかがでしょうか。
 では、事務局からお願いします。
○労働関係法課長 ありがとうございます。
 先ほど、最後に労働契約承継法に基づく労働者への通知や異議申立に係る書面の電子化について御指摘をいただきましたが、御指摘の点も踏まえまして、労働条件分科会での検討も含めてどのような場で議論を行うことが適当かについても引き続き検討したいと考えております。
 以上でございます。
○山川部会長 鈴木委員、よろしいでしょうか。
○鈴木委員 ありがとうございました。
○山川部会長 それでは、鳥澤委員からお願いします。
○鳥澤委員 ありがとうございます。
 資料の取りまとめ及び御説明をありがとうございます。私からは、2点ほど意見を申し上げます。
 まず事業性融資の制度趣旨から鑑みれば、企業価値担保権については既存の担保を有するような大企業ではなく、スタートアップ企業等の利用が想定されると考えます。これらの企業は人材確保のため、同業種、他の同規模の企業と比べても著しく賃金水準が高位なケースが見受けられます。その場合、労働条件を維持した労働契約を継続することを優先すれば、そうした企業に対しては融資そのものが難しくなることが想定されます。また、仮に融資されたとしても、返済不能時に譲受会社が見つからないという可能性が生じ、結果的に労働者の雇用維持が困難となる可能性がございます。他の制度との整合性も鑑み、企業価値担保権のみ過大な条件を設定すべきではないと考えております。
 もう一点は、M&Aや事業譲渡の形は多種多様であり、それに至る経緯や背景まで考慮すれば、同じものはないと言っても差し支えございません。特にM&Aにおいては事業譲渡先を複数並行して検討する場合もあり、その性質上、情報漏えいなどの観点から、労働者に提供できる情報には限りがございます。情報漏えいによってスポンサー等が離れ、結果として企業が倒産するというケースも想定されることも考えれば、労使による特定のタイミングでの事前協議の義務化等、法令での一律規制はなじまないと想定されます。
 労使での協議が重要であることは重々承知の上ではございますが、中小企業における労使のコミュニケーションの在り方が多様であることを鑑み、法規制ではなく事業譲渡指針の拡充等に努め、ケース・バイ・ケースでの対応をすべきではないかと考えます。
 私からは以上でございます。
○山川部会長 ありがとうございました。
 では、松永委員、お願いします。
○松永委員 ありがとうございます。
 2点コメントさせていただきます。
 1点目は、事業譲渡時における労働者保護ということなのですが、その中で企業価値担保権の実行手続についてということですが、この実行手続に関する法規定では未払い賃金債権の優先弁済や、雇用を維持したままの一体換価の原則ということで、現状で労働者保護というのはかなり多く盛り込まれているのではないかと考えています。
 そうした中で、価値担保権の実行がされる場合というのは、既に融資の返済計画が滞る等、資金繰りに窮している状況というのは想定されます。そのような中で、今後の事業譲渡等指針の見直しなのですが、仮に過度な労働者保護に関するルールを設けることになれば、適切なタイミングでの事業譲渡というのがなかなか難しいのではないか。先ほども少しありましたが、スポンサーのなり手を探すのがなかなか難しいということになって、かえって労働者保護に欠ける結果になる場合もあるのではないかと思っております。
 そして、状況は個別にそれぞれあると思いますが、例えば労働組合がない場合や、規模の極めて小さい企業の事案、様々なケースがあると思うのですが、例えば事業譲渡に伴う知見やノウハウのようなものをきちんとパンフレットやQAのようなもので展開することや、好事例の周知のようなもの、それによって労働者や労働組合に対して情報提供を行うということも一つの案ではないかと思っています。
 あとは、今後、価値担保権が利用されていく中で、条件に応じて好事例の蓄積というのはおそらく進んでいくのではないかと思いますので、それらをまず横展開していくということも重要ではないかと考えています。
 これが1点目でございまして、2点目が組織再編時の労働者保護全般に関してということでございます。資料の中にこれまでの意見ということで、労働側のほうから組織再編時における労働者保護の観点からは実質的な労使協議は不可欠であり、事業譲渡時に労働組合等への事前の情報提供や協議がどれほど行われているかについて実態把握して、というようなコメントがあったと思います。
 実態把握というのは使用者側も恐らく必要だなとは皆さん考えていると思うのですが、情報開示によってインサイダー取引の発生の懸念がある場合もあるでしょうし、事業譲渡の相手方との機密保持契約を結んでいる場合もあると思っていますので、そういった事情も踏まえながら慎重な検討をしていく必要があるのではないかと考えております。
 私からは、以上です。
○山川部会長 ありがとうございます。
 ほかに御意見等ございますか。
 冨髙委員、どうぞ。
○冨髙委員 ありがとうございます。
 まず、この部会の議論の進め方について申し上げると、今年の秋頃を目途に事業譲渡等指針の見直し等の議論を行うとされていたことも踏まえて、これまでの部会における御説明をいただいた部分につきましては、附帯決議の前段と後段とで分けて記載されているということでございます。しかし、我々がこれまで申し上げてきたとおり、事業譲渡等指針の一部の修正では不十分と考えており、法案審議の際には事業譲渡全般の課題についても議論がされ、附帯決議が付されたという経緯を踏まえる必要があると思います。また、ヒアリングでも明らかになっておりますが、やはり事業譲渡時に解雇や不利益変更等は生じており、そういった問題の解消は喫緊の課題だと考えておりますので、法制化を含めて検討を行うべきということを改めて申し上げておきたいと考えております。
 そして、先ほど委員からも御発言がありましたが、企業価値担保権に特有の仕組みということで、実行時の労働債権等の優先弁済やカーブアウトが設けられたということでございますが、労働者がそうした権利を有しているということを踏まえて管財人の方はぜひ情報提供していただきたい。そのことを明確に示していく必要があると考えているところです。
 それから、我々は特に課題が多い事業譲渡を強調して発言をしておりますが、単純に事業譲渡のみに労働者保護ルールを課すということではなくて、組織再編の手法にかかわらず、雇用の移転を伴うような組織再編の場合には、雇用の承継や協議のルールを課すべきということで発言をさせていただいておりますので、その点は申し上げておきたいと思います。
 加えて、事前の情報提供のところですが、先ほどもヒアリングの中で意見がございましたが、実務的には守秘義務契約を締結した上で相当程度の事前の情報提供等もなされている事例もよく聞くところではございますし、そのことでスムーズな譲渡が進められた事例もございますので、提供する情報の範囲には一定の配慮も必要だとは思いますが、事前の情報提供そのものは少なくとも会社の責務として明確に定めていただくことが必要ではないかと思っております。
 組織再編全般に関する論点で、資料1の5ページのところに使側から、労働組合に限らず、労働者組織がある場合には一段と高い協議の在り方を検討してはどうかという意見も記載されておりました。労働条件分科会でも話をしているところでございますが、我々の加盟組合からは、いわゆる社友会や、社員会等の親睦団体による不適切な運用というような声も聞いておりますので、労働組合という集団的労使関係の労働三権が保障された担い手ではない、そのような担保がない労働者組織を対象として、何か別の枠組みというのは検討する必要はないと思っておりますので、その点については意見として申し上げておきたいと思います。
 そして、先ほど3ページのところのお話で監督委員のところですが、これは民事再生法の枠組み等も参照してはどうかという趣旨で申し上げているところでございますので、その点をお伝えしておきたいと思います。
 以上です。
○山川部会長 ありがとうございます。
 ほかにございますか。
 佐久間委員、どうぞ。
○佐久間委員 ありがとうございます。
 事業譲渡を企業価値担保ということで推進していくわけですが、鳥澤委員も御発言されたように、中小企業にとってはスタートアップなり、それから資産と申し上げますか、企業全体の価値があるということであればプラスになり、また事業譲渡しようとしても買い取ってくれる、譲渡しにくい場合もあり、不採算部分によって企業価値が思ったほどにはあがらずに事業譲渡をする場合もあります。この2つの種類があると思うのですが、先ほどの事例をお伺いして、労働者に対して事業譲渡する場合の「将来の展望」を説明してほしいというのは、議題1のヒアリングで言われていました。そうした方針、考えを労働者側に伝えるということは必要ではないかと私は思います。
 また、先ほどの御説明の中でも使用者が横柄になって説明する等の経緯があった事例もご教示いただきました。労使のコミュニケーションというのが十分ではないと、うまくいかないのだなということを強く感じたところです。
 これからの指針の改訂にあたっては、項目の議論とか、事務局のほうからもご提示があり盛り込んでいくということになりますが、項目ごとの説明、記載をどの部分まで明示していけばよいのか、あとは労働者への説明と労働者からの同意が必要になる。労働者側からも、詳細にそこまで当然求めていくということとなると思うのです。その辺の項目、内容、説明問題や、あとは中小企業の規模的な問題、つまり従業員の人数が少ない小規模企業も何か一つノウハウがあるということで事業譲渡をすることも出てくるかもしれません。そうした規模の労働者への説明や手続については、簡素化を図っていただくことや、モデル的な説明文を用意していただくことも必要なのではないかと考えます。そこまで行う必要があるのかと意見も出てくるかもしれませんが、特に小規模事業者に対しては、チェックリストやモデル的な例文などを用意していただくと、企業としても取り組みやすくなるのかと考えます。
 あとは、これからの問題になりますが、中小企業に対する支援の在り方なのですが、今でもよろず支援拠点等いろいろあるのですが、中小企業診断士の活用や、最終的には弁護士等に依頼することになります。そうした面でも支援策を用意していただき、活用できるスキームというのを提示していただければ良いのではないかと考えます。
 以上です。
○山川部会長 ありがとうございました。
 ほかにいかがですか。
 木村委員、どうぞ。
○木村委員 御指名ありがとうございます。
 これまでもお話をさせていただいた事業譲渡の事案は、殊さらよくない事例をあえて取り上げているのではないかと思われるかもしれませんが、実は現場では相当程度よく見られる事例であります。労使関係においては、会社からの意向がどうしても強いことは事実だと認めざるを得ないと思っていますし、我々は労働側の代表という立場ですけれども、83.9%は労働組合がない企業であることを踏まえますと、産別労組の事例はむしろ全体からすると良い方だと思っていただいたほうがよいのではないかとすら思っています。
 10のうち9が上手にいっているから良いという問題ではなくて、労働者の立場としては、10のうち1でも駄目なところがあっては駄目だと考えています。だからこそ法整備が必要であり、やはり事業譲渡だけではなくて組織再編全般に対して労働者保護ルールを整備していくことが不可欠です。労使ともに組織再編を経験する方は全体からすれば多くはないかもしれませんが、複数回に渡って経験される方もおられるわけですから、法的なルールを知らないために紛争が生じることがないようにしなければなりません。
 そして、いくら法令遵守が進められているといっても、指針や通達レベルであっては法違反ではないから差し支えないと思われる懸念があることは申し上げておきたいと思います。重要なことは組織再編の前後を問わず、労働者が安心して働き続けられるよう必要なルールを整備していくことではないかと考えております。
 経営側の皆様からも、労働者保護の在り方について御意見をいただいていますが、私は労働側の立場ですから、行き過ぎた労働者保護とは思っておりません。たとえ、これだけの保護をしても、実際問題として多くの労働者に事前の説明がなされずに事業譲渡がなされた事案が少なくないということも併せて申し上げたいところです。
 これまでのヒアリングの事例でも、雇用や労働条件の承継に向けた労働組合との事前の情報提供、協議等を丁寧に進めることでスムーズな事業譲渡が行われたことも、これは労使を含めて共有させていただいたと思っております。労働組合等、あるいは労働者との協議をはじめ、納得性を高める取組に関しては正直申し上げて双方の立場から異論はないものと思います。
 ただ、手続に時間がかかる、煩雑になるというところはどのようにすればいいのかという部分は今後の論点になっていくかもしれませんが、労働者一人一人の雇用維持に取り組むことは、労働者の雇用などを保護することはもちろん、事業の発展にもつながっていくのではないかと考えております。
 今後の部会においても、特に事業譲渡を中心に組織再編時の法的ルールの具体的な内容の検討を含めた積極的な議論が可能になるように準備も進めていただきたいというところです。
 以上です。
○山川部会長 ありがとうございます。
 ほかにいかがですか。
 浜田委員、どうぞ。
○浜田委員 私からは大きく3点なのですが、まず事業譲渡全般について申し上げますと、先ほど使用者委員からは画一的なルールを課すと、事業譲渡自体が不調に終わってしまうのではないか、労働者にとっても不利益が及ぶという御意見が資料の中にもありますが、平時を含めた労使コミュニケーションや、労働者保護の重要性を否定する意見ではないと受け止めております。むしろ共通の労働者保護ルールを課すことは、中長期的にも円滑な事業譲渡の実現につながるものと考えております。
 2点目には、今回のヒアリングでも好事例の御紹介があった一方で、先ほど木村委員からもありましたように、法的なルールがないと労使協議等は組織再編時の足かせのように思われ、必ずしも行う必要がないものと捉える向きすら見られるように受け止めました。
 しかし、そうした捉え方は決してすべきではなくて、共通の法的ルールを定めることは労使の望ましい取組を法制面で後押しすることにつながり、結果として円滑な組織再編が進むことになるものと考えます。
 加えて、3点目になりますが、企業価値担保権について申し上げますと、担保目的である総財産に労働契約が含まれていることを踏まえて、参考資料3の金融庁のガイドラインの10ページに記載されているように、担保権の設定時における労働者とのコミュニケーションの重要性に言及されています。この点は本制度特有のものであると思いますので、労働組合等に必要な情報提供等がされるよう、取組を促す必要があるのではないかと考えております。
 以上です。
○山川部会長 ありがとうございます。
 ほかにいかがですか。
 小林委員、どうぞ。
○小林委員 使用者性と労働契約の承継に関して意見を申し上げたいと思います。
 第1に、企業価値担保権に係る労組法上の使用者性の課題について、これまでも労働側から指摘してきておりますが、企業価値担保権の実行時における管財人の使用者性に加えて、金融庁の事業性融資推進法ガイドラインにも記載のとおり、担保権者や特定被担保債権者が使用者性を有する可能性があることについて、厚生労働省としても考え方を明確にしておく必要があるではないかと思っております。
 2つ目は、通常の事業譲渡を含めた労働契約の承継について、資料1の3ページに記載されておりますが、使用者側から、法令ですべからく契約の自動承継を義務づけることは雇用機会を狭めることが懸念される等の意見がございました。
 しかし、現状では承継ルールが全く存在せず、労働者はほとんどなすすべなく会社間の合意内容に従わざるを得ない実態については、先ほどの議題1の事例を見ても明らかであると思います。
 労働側としては、必ずしも労働契約の全てを自動的に承継されることを求めているわけではなく、事業譲渡の対象となる事業に従事する労働者の雇用は原則として承継されるルールを定めた上で、それがどうしても困難な場合は労働組合等とともに個々の労働者との協議等を行って、労働者が譲渡を基に残留するといったことを選択するようにすべきだと考えております。
 以上です。
○山川部会長 ありがとうございます。
 ほかにございますか。
 鈴木委員どうぞ。
○鈴木委員 先ほど、事業譲渡に関して、指針ではそのルールが十分に守られないのではないかという御意見があったと思います。例えば個別の事案において、解雇や労働条件の不利益変更にあたり、不十分な説明しか受けていなかったり、特に基本的な労働条件について説明を受けていない場合は、同意していたとしても、真の同意ではないと司法判断されると思います。
 労働者が真に同意していたかどうかはかなり個別具体的な事案ごとに判断も異なるという点に留意が必要ですが、ただ今、申し上げたような課題に関しては既に法律と判例によって手当てがされているというのが私の捉え方です。法律、裁判例の周知が十分でないという点は大きな課題でありますが、これらが周知されていないので事業譲渡に特化した形で法律化するという考えに対しては、私は慎重であるべきと考えます。
 以上です。
○山川部会長 ありがとうございます。
 何かほかにございますか。よろしいですか。
 それでは、本日、第4回目になりますが、様々な御意見をいただきまして、活発な御議論をいただきました。大変ありがとうございました。
 今後の進め方につきましては、事業融資推進法が令和8年5月25日施行ということで、事業譲渡等指針につきまして、新たな制度の創設を踏まえた必要な見直し等に関する議論を行っていきたいと思います。
また、附帯決議の後段では全般的な話もするということになっていたと思いますので、段階的にはそのようなことになるかと思います。
 次回につきまして、事務局から何かございますか。
○労働関係法課課長補佐 次回の部会の日時、場所については調整中ですので、追って御連絡いたします。
○山川部会長 それでは、第4回の部会はこれで終了いたします。皆様、お忙しい中、お集まりいただきまして大変ありがとうございました。