2024年8月1日 薬事審議会 医薬品第一部会 議事録

日時

令和6年8月1日(木)16:00~

場所

厚生労働省専用第22~24会議室

出席者

出席委員(18名)五十音順
(注)◎部会長 ○部会長代理

他、参考人1名出席
 
 
欠席委員(3名)五十音順

 
行政機関出席者
  •  城克文(医薬局長)
  •  佐藤大作(大臣官房審議官)
  •  中井清人(医薬局医薬品審査管理課長)
  •  鈴木洋史(独立行政法人医薬品医療機器総合機構 審査センター長) 他

議事

○医薬品審査管理課長 それでは、定刻になりましたので、「薬事審議会医薬品第一部会」を開催させていただきます。本日はお忙しい中、御参集いただきましてどうもありがとうございます。本会議はペーパーレスの開催といたしますので、資料はお手元のタブレットを操作して御覧いただくことになります。操作等で御不明点がありましたら、事務局がサポートいたしますのでよろしくお願いいたします。
 本日の会議における委員の御出席についてです。佐藤陽治委員、前田委員、松野委員から御欠席との御連絡を頂いております。また、川上委員、田﨑委員がまだ会議に参加されておりませんが、後ほど参加されると思っております。現在のところ、当部会委員数21名のうち16名の委員がこの会議に出席されておりますので、定足数に達していることを御報告いたします。
 続きまして、事務局に人事異動がありましたので御報告いたします。厚生労働省大臣官房審議官の佐藤大作です。医薬品医療機器総合機構執行役員の新薬審査等部門担当の安川孝志です。医薬品医療機器総合機構審査マネジメント部長の荒木康弘です。医薬品医療機器総合機構新薬審査第五部長の井口豊崇です。よろしくお願いいたします。以上です。なお、本日は審議事項議題1に関して、東京大学大学院医学系研究科神経病理学分野教授、国立精神・神経医療研究センター神経研究所理事・研究所長の岩坪威先生に御参加いただいております。
 続きまして、薬事審議会規程第11条の適合状況については、全ての委員の皆様より、適合している旨を御申告いただいておりますので御報告いたします。先生方におかれましては、会議開催の都度、御協力を賜り誠にありがとうございます。
 これより議事に入りますので、カメラ撮りはここまでといたします。御協力をよろしくお願いいたします。
 それでは、森部会長、以後の進行をお願いいたします。
○森部会長 それでは、本日の審議に入ります。まず、事務局から資料の確認と審議事項に関する競合品目・競合企業リスト、委員からの申出状況につきまして報告をお願いいたします。
○事務局 それでは、資料の確認をさせていただきます。本日は、あらかじめお送りさせていただいた資料のうち、資料1~14を用いますので、お手元に御用意ください。本日の審議事項に関する競合品目・競合企業リストは、資料14に記載のとおりです。これらに関する委員からの申出状況等を踏まえた、薬事審議会審議参加規程第5条及び第11条に基づく各委員の審議参加に係る取扱いは次のとおりです。
 議題1「ケサンラ」:退室委員:なし、議決に参加しない委員:阿古委員、根岸委員です。
 議題2「セプトカイン」:退室委員:なし、議決に参加しない委員:阿古委員です。
 議題3「希少疾病用医薬品の指定の可否」:退室委員:なし、議決に参加しない委員:阿古委員、佐藤直樹委員、高橋委員、中西委員、  根岸委員です。
 議題4「再審査期間延長の可否(トリンテリックス)」:退室委員、議決に参加しない委員:ともになしです。
 議題5「再審査期間延長の可否(ブイタマー)」:退室委員:佐藤直樹委員、議決に参加しない委員:阿古委員です。以上です。
○森部会長 今の御説明について、特段の御意見、御質問はありますでしょうか。よろしければ、皆様に御確認いただいたものといたします。
 本日は審議事項5議題、報告事項4議題、そのほかの事項1議題となっております。それでは審議事項の議題に移らせていただきます。審議事項議題1と、その他事項議題1は関連する議題ですので、まとめて御議論いただくことにさせていただきます。
 まず、審議事項議題1について、機構から概要説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 議題1、資料No.1、医薬品ケサンラ点滴静注液350mgについて、機構より説明させていただきます。資料No.1の審査報告書を御覧ください。審査報告書の一番下、全106ページの通し番号で5ページ、「1.起原又は発見の経緯及び外国における使用状況に関する資料」等の項を御覧ください。アルツハイマー病(以下、「AD」)では、臨床症状発現の10~20年前にアミロイドβ(以下、「Aβ」)で構成されるアミロイド斑の神経細胞外蓄積等が始まることが示されています。ADによる軽度認知障害(以下、「MCI due to AD」)の段階では、AD病理を有し、かつ、軽度の認知機能障害が生じているものの、日常生活に大きな支障を及ぼすまでには至っていませんが、数年で日常生活に著しい影響を及ぼす状態へ移行します。したがって、MCI due to ADを含む早期の段階で疾患の進行を抑制することが重要と考えられています。以降は、「MCI due to ADとADによる軽度な認知症」をまとめて「早期AD」と称します。
 本剤は、ドナネマブ(遺伝子組換え)を有効成分とし、不溶性のアミロイドプラークのみに存在すると考えられるN3pGAβに選択的に結合し、ミクログリアによる食作用を介して除去することにより、早期AD患者における臨床症状の悪化を抑制する薬剤として開発され、今般、国際共同試験成績等を基に本剤の製造販売承認申請がなされました。なお、本剤は、2024年7月現在、米国で承認されています。
 本品目の審査の概略について、臨床試験成績を中心に説明いたします。今般の申請では、主な臨床試験成績として、国際共同第III相試験であるAACI試験の結果が提出されました。AACI試験は、脳内タウ蓄積が軽度から高度の早期AD患者を対象として実施されました。試験デザインについては、通し番号35ページ、図1を御覧ください。無作為化後76週間が二重盲検投与期間とされ、治験薬投与24、52、又は76週時にアミロイドPET検査により、Aβ陰性化が確認された場合は二重盲検下でプラセボへ切り替えることとされました。
 有効性について、通し番号38ページ、表33を御覧ください。AACI試験では、治験薬投与後、76週までのiADRSの変化量が主要評価項目とされました。iADRSは、早期AD患者の臨床症状の変化を捉えるため、申請者が開発した31項目から構成される認知機能及び日常生活機能の複合評価尺度です。主要な解析対象とされた全体集団及び脳内タウ蓄積が軽度又は中等度の集団のいずれにおいても、本剤群でプラセボ群に対する優越性が示されました。通し番号39ページ、表34に示すCDR-SBを含む副次評価項目の結果等も考慮し、早期ADの進行抑制に対する本剤の有効性が示されたと判断しました。ApoEε4保因状況別の成績を含む患者の背景要因別の解析結果については、通し番号54ページ、表47を御覧ください。この結果から、ApoEε4保因状況を含め、検討された患者背景によらず、本剤の有効性が期待できると判断しました。日本人集団の成績については、通し番号41ページの表38及び42ページの表39を御覧ください。これらの結果から、全体集団で認められた有効性は日本人患者においても同様に期待できると判断しました。
 安全性については、アミロイド関連画像異常(以下、「ARIA」)のリスク管理及び中枢神経系の出血事象の発現リスクを中心に検討しました。通し番号61ページの表53、及び62ページの表54に示しますように、本剤の臨床試験において、本剤群では浮腫/滲出液貯留を伴うARIA及び出血又はヘモジデリン沈着を伴うARIAがそれぞれ約20%及び30%認められました。また、通し番号64ページの表56~66ページの表58に示しますように、ARIAはApoEε4キャリアの患者で発現割合及び画像上の重症度が高い傾向が認められましたが、ARIAの発現時期はApoEε4の保因状況によらず同様であり、ApoEε4の保因状況によらず厳格なMRI検査によるモニタリングを実施することで、ARIAのリスクに対する管理は可能と判断しました。
 これらのことから、本剤の投与施設、医師、投与開始に先立つ同意取得等に関する規定は、既存の抗Aβ抗体と同様とし、本剤投与中のMRIモニタリングの頻度やARIA発現時の対応については、AACI試験の規定を基本とした注意喚起を行うことが適切と判断しました。
 ApoEε4の保因状況別のARIAの発現状況、及びAACI試験において本剤投与後に重篤なARIAを発現し死亡に至った症例等の詳細については、医療従事者向け資材を用いて情報提供する予定です。
 次に、用法・用量については、本剤の投与を完了することの可否を中心に検討しました。AACI試験では、先ほど御説明したように、76週間の投与期間において複数回PET検査によりアミロイドプラークの除去状況が確認され、Aβ陰性化が確認された場合、プラセボ投与に切り替えることとされました。本剤は、不溶性のアミロイドプラークのみに存在すると考えられるN3pGAβに選択的に結合する抗体薬であり、アミロイドプラーク除去後に本剤の投与を継続することに意義は薬理的にも臨床的にも不明であること。また、通し番号90ページ、図6の左及び中央に示すように、PET検査によりAβ陰性化が確認され、本剤の投与を中止した後も認知機能の進行抑制は持続することが示唆されていることから、本剤を一定期間投与後、PET検査によりAβ陰性化が確認された場合に、投与を完了することが可能と判断しました。
 したがって、本剤の投与期間は、現時点では18か月を超えて本剤の投与を継続した有効性は明らかではないことも考慮し、原則18か月間で完了とし、それより早期に投与を完了する場合には、投与開始後12か月を目安にAβ陰性化を確認することが適切と判断しました。早期の投与完了について、AACI試験では定量的な閾値に基づきAβ陰性化を確認しましたが、本邦において利用可能なアミロイドPET検査の感度及び特異度、定量評価と視覚読影による定性評価の結果の一致率等を踏まえると、医療現場ではアミロイドPET検査画像の視覚読影によりAβ陰性化が確認可能と判断しました。視覚読影による判定方法については、最適使用推進ガイドラインや医療従事者向け資材等を用いて情報提供をする予定です。
 最後に、製造販売後の調査計画について御説明いたします。通し番号101~102ページ、1.5項を御覧ください。本剤の一定の安全性が確認できるまでは、本剤が投与された全症例を対象とした使用成績調査を実施することを承認条件とし、ARIAの発現リスク要因の探索や、ApoEε4の保因状況とARIAの発現リスクとの関係の評価等を行う予定です。
 なお、添付文書案について、事前に委員よりARIA-Hの定義が不明瞭である旨の御意見を頂いておりました。7項等におけるARIA-Hには、微小出血及び脳表ヘモジデリン沈着症を含みます。
一方、17項には、臨床試験において治験担当医師から報告された事象名を記載していることから、アミロイド関連画像異常、微小出血及びヘモジデリン沈着と脳表ヘモジデリン沈着症は、発現した事象として実質的な違いはないものの、別々に発現割合が集計されています。
 注意すべき事象については、可能な限り既存の抗Aβ抗体と同様の用語を用いて注意喚起することが適切と判断し、添付文書における記載について、ただいま画面で共有させていただいているように、ARIA-Hの定義を可能な限り既存の抗Aβ抗体と統一する記載として、また、17項の事象名については、担当医師からの報告された事象名であることが明確になるように記載を整備することが適切と判断いたしました。
 以上のような検討を行った結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、当部会において御審議いただくことが適当であると判断いたしました。本剤は新有効成分含有医薬品であることから再審査期間は8年、生物由来製品に該当し、原体及び製剤はいずれも劇薬に該当すると判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○森部会長 御説明、どうもありがとうございました。続きまして、その他事項議題1について、事務局から概要説明をお願いいたします。
○事務局 その他事項議題1、ドナネマブ点滴静注液の最適使用推進ガイドライン案について、事務局より説明いたします。資料番号11を御覧ください。以降の説明において、ページ番号は各ページ最下部の青色の通し番号で御説明します。まず、3ページに記載のとおり、本ガイドラインは一般社団法人日本神経学会、一般社団法人日本神経治療学会、公益社団法人日本精神神経学会、一般社団法人日本認知症学会、一般社団法人日本老年医学会、公益社団法人日本老年精神医学会及び一般社団法人日本脳卒中学会から御推薦をいただいた専門家からの御意見を踏まえ作成を行っております。
 本剤の対象となる効能又は効果は、「アルツハイマー病による軽度認知障害及び軽度の認知症の進行抑制」であり、昨年、承認したレカネマブと同様になります。一方、ドナネマブの用法・用量は、4週間に1回、30分以上かけて点滴静注であり、レカネマブの2週間に1回、約1時間かけて点滴静注より投与頻度は少なくなっています。5ページに本剤の特徴及び作用機序、6ページからは臨床成績の概要を記載しています。内容は先ほどの機構からの説明と重複するので割愛します。
 14ページ以降に本剤の投与対象となる患者及び投与施設の要件を記載しています。適切な患者選択や投与判断、重篤な副作用発現の際の迅速な安全対策等を確保した上で、最適な薬物療法を提供できるよう要件を設定しています。14ページの「(1)投与対象となる患者」の要件ですが、投与開始前、1か月以内の期間を目安に、MMSEスコア及びCDR全般スコアについて確認されていることを要件としています。なお、マル1からマル3までは既に承認されているレカネマブと同様としていますが、マル4の(a)認知機能評価について、「MMSEスコア20点以上、28点以下」の患者を対象とし、「22点以上」としているレカネマブとは異なります。レカネマブ、ドナネマブともに臨床試験の組み入れ基準を根拠としています。マル5についてですが、レカネマブと同様に、アミロイドPET又はCSF検査でアミロイドβ病理を示唆する所見の確認を求めています。タウPETについては、臨床現場への普及やその取扱いの現状を踏まえ、当面の間は一律不要としました。
 15ページ以降に「(2)投与施設」の要件を記載し、「初回投与に際して必要な体制」として、認知症疾患の診断及び治療に精通する常勤医の複数名の配置や、適切な検査ができる体制として、1.5テスラ以上のMRIを保有し、ARIAの鑑別を含むMRI読影が適切に行える常勤医が配置されていること、さらに、MMSEスコア及びCDR全般スコアについての評価が可能な者が配置されていること、本剤の製造販売後調査を確実に実施できる施設であることを求めています。なお、PET検査又はCSF検査の実施については、同一施設内での実施に限らず、当該医療機関と連携が取れる施設で実施可能としています。なお、初回投与後6か月までは、同施設で本剤を投与することを求めています。
 17ページには初回投与後6か月以降の施設要件を記載しています。初回投与後6か月以降は、6か月に1回、CDR全般スコアやMMSEスコア等の評価、MRI検査を初回投与を行った施設で実施する必要がありますが、それ以外の投与は初回投与時の患者情報等の共有も含め、初回投与施設と連携が取られていることを条件に、認知症疾患の診断及び治療に精通する医師が配置されている施設でも可能としています。また、本剤の製造販売後調査を確実に実施できる施設であることを求めています。
 18ページには、「投与期間中の有効性及び安全性の評価、投与終了及び投与継続・中止の判断」について記載しています。先ほど申し上げたとおり、6か月に1回臨床症状の評価を行い、臨床症状の経過から本剤の有効性が期待できないと考えられる場合は、本剤の投与を中止することを求めています。また、MRI検査によりARIA発現の有無を確認し、ARIAが認められた場合には投与中止、又は投与継続の可否を判断することとしています。なお、ドナネマブではARIAの発現リスクが投与初期に高く、レカネマブと比較して本剤ではより丁寧なモニタリングが必要として、MRI検査頻度を「本剤の2回目の投与前、3回目の投与前、増量前及び7回目の投与前、以降6か月に1回」とし、レカネマブと比較して「2回目の投与前」の検査が多くなっています。
 19ページです。本剤の投与開始後12か月を目安に、アミロイドPET検査を実施し、アミロイドβプラークの除去を評価して、除去が確認できたら投与終了とし、除去が確認できなかった場合は、18か月後まで投与継続可能とすることとしています。なお、アミロイドプラークの除去の評価では、CSF検査は使用できません。18か月を超えて投与継続する場合は、再度アミロイドPET検査を行った上で、有効性及び安全性の評価に係る対応を行い個別に判断することとしています。また、中等度以降のアルツハイマー病による認知症と診断された場合、中等度以降に進行した患者に投与を継続したときの有効性が確立していないことから、本剤の投与を中止し、再評価を行うこととしています。
 最後に、「投与中止後の再開」について記載しています。患者の都合で投与中止した場合、初回投与時の患者要件に準じて、再度認知症スコアを確認の上、本剤の投与対象となる患者要件に該当することを確認することとしています。なお、本剤投与中止後の再開は、原則、初回投与から18か月までとしますが、初回投与から18か月を超えて再開する場合は、再度、Aβ病理を示唆する所見及び認知症スコアを確認の上、本剤の投与対象となる患者要件に該当することを確認することとしています。また、ARIAにより投与を終了した場合で投与を再開する際は、添付文書の注意喚起に従い投与再開の可否及びタイミング等を判断することとし、投与再開する場合は再度認知症スコアを確認の上、本剤の投与対象となる患者要件に該当することを確認することとしています。
 本ガイドラインは、本日の御意見も踏まえつつ、引き続き検討を行い、最終的に中央社会保険医療協議会の了承を得た上で、本剤の薬価収載日までに通知する予定です。以上、本剤の最適使用推進ガイドラインについての説明になります。
○森部会長 御説明、どうもありがとうございました。では、ここで、参考人としてお見えになられています岩坪先生から御発言を賜りたく存じます。お願いいたします。
○岩坪参考人 東京大学、国立精神・神経医療研究センターに属します岩坪でございます。私、これまでアルツハイマー病研究に従事し、学会におきましても治療薬に関する議論に加わってまいりましたことから、昨年、レカネマブに関する部会審議に当たっても参考人として意見の具申をお許しいただきました。今回、ドナネマブの審議に当たり、昨年来のレカネマブ等治療薬の実用に即した経過、並びに本薬ドナネマブの特徴に鑑みまして、主に三つのポイントについて意見を述べさせていただければと思います。
 第1点は、有害事象ARIAとApoE遺伝子型の関係、第2には、治験に用いられたタウPET検査の実臨床での意義、そして第3点はアミロイドが正常レベルに低下した後の12か月時点における早期中止の妥当性です。この3点について申し述べますのに先立ちまして、今回、御提示を頂きましたドナネマブの治験結果は、私どもアカデミアから拝見しましても臨床的な有用性を示唆するものと考えられると、まず申し上げたく思います。
 主要評価項目として、iADRSという2種類の認知機能検査と日常生活機能検査を複合した指標が用いられていますけれども、これは副次評価項目のCDR Sum-of-Boxesとよくコリレートしているようでございまして、このCDR Sum-of-Boxesの評価では、ドナネマブの投与終了時に28.9%の悪化抑制が得られています。これは昨年、御審議いただいたレカネマブに見られた27.1%の増悪抑制とほぼ同等と言ってよいと思います。
 これらの薬剤が発揮する真の臨床的意義でございますけれども、これは今後、実臨床下での使用成績が蓄積されるとともに、より明らかになるものと考えていますが、もし、ある一定期間、数年間、年余にわたって患者さんに、より良好な生活機能レベルを保った生活をしていただくことが可能になるならば、その効果には大きな臨床的な意味が出るのではないかと考えております。
 次に、申し述べました3点の第1、ARIAとApoE遺伝子型の関係について述べさせていただきます。先ほどの機構の御説明にございました浮腫を主体としたARIA-E、それから微小出血などを主体とするARIA-Hは、いずれもアミロイド除去型の抗体薬には不可避の有害事象でございますが、ARIA-Eについて見るとドナネマブ実薬例全体で24.0%と、レカネマブの12.6%より発現頻度が高くなっています。ApoEのε4のアレル数別で見ますと、非保有者で16%、1アレル保有者で23%、2アレル保有者で41%と、いずれもレカネマブより高値であり、ApoEε4アレル依存性に上昇しています。ARIA-Hについての数字は略させていただきますが、いずれもドナネマブでレカネマブより高くなっています。このように、ApoE遺伝子型がARIAの発症に関連しまして、特にε4ホモ接合体、4/4を持っている方でリスクが高いというのはドナネマブでも一貫して同様の傾向でございます。
 しかしながら、昨年、レカネマブの審査に際しても御議論いただいて問題になりましたように、本邦では未だApoE遺伝子型測定の保険収載は未了でございます。今、準備が鋭意始まっていると聞いていますが、今後、複数年を要するのではないかと予測されるところです。
 こういった状況下で、ARIAに対する安全性確保策として三つの手立てを取っていただいたわけです。第1は、先ほど御説明がありました最適使用推進ガイドラインの厳格な運用、第2には、製造販売後調査を全例調査として実施する。この二つが既にレカネマブに関しましては開始されています。これに加えて、私どもアカデミアによるアルツハイマー病疾患修飾薬治療患者さんのレジストリ研究というものが発足し、ApoE遺伝子型検査を担当するということで準備を進めているところで、この秋には全国の御施設から検体を受けて検査が可能となると見込んでいます。
 先行するレカネマブですけれども、上市後7か月程度経過しまして、既に数千例への投与が開始されていると聞いています。ですけれども、ARIA-Eの出現率は数パーセントレベルです。これは治験での世界の平均値12.6%よりかなり低いようです。まだsevere ARIAに属するケースも数例にとどまっている。また、生命に関わるような重篤例は見られていないということで、安全性の確保は順調に進んでいるように感じています。今後、ドナネマブも全例調査とレジストリ研究に加わるという見込みで、御説明がありました投与初期のMRIは1回多く設定いただいている措置も、安全性確保に有意義ではないかと考えます。今後、私ども学会による研修の実施も含めて、産官学の連携による安全性確保は順調に進めていけるのではないかと見込んでいます。
 第2に、タウPETの意義と実臨床における必要性について申し述べたく思います。アミロイドPET Scan、これは、これら抗体薬の標的である脳内のアミロイド蓄積を描出するものであるのに対しまして、タウPETはアミロイドが作用して変性する神経細胞の中に蓄積して、神経細胞脱落や、それによる症状進行に、より直接的な関連を示すタウタンパク質の蓄積を画像化するものです。すなわち、タウPETで蓄積が多く見られる例ほど神経変性が進んでいますので、薬効の減弱も想定され得るわけですけれども、一方こういったタウが明瞭に蓄積している症例では、臨床的な進行スピードもある程度速いために、18か月等の限られた治験期間中に増悪の抑制を実証できる可能性も高まるわけです。
 一方、タウ蓄積がPETでほとんど見られない例、これは、より早期の段階を表すものと考えられますけれども、これらでは治験期間中に十分な変化率の改善を示せない可能性が既存のデータから強く予測されたために、ドナネマブの治験ではタウPET陰性あるいは極めて低値の例を除外するというデザインが取られたわけです。一方で、現在のこの脳PET Scanに関する学術的状況あるいは国内的な状況を見ますと、タウPET検査はその標準化や普及が、アミロイドPET検査に比べて遥かに進んでいない状況にございます。また、アルツハイマー病の医療においては、アミロイドPETを優先すべき事情があるわけです。このために現時点においては、先ほど厚労省からもお話がございましたように、実臨床においてタウ検査をドナネマブについて必須とすることは必要がなく、現実的ではないと考えます。また、PET Scanでタウ陰性である症例につきましても、その患者さんがアミロイド陽性の場合、もし仮に病理組織学的に見ることができましたらば、PETでは検出されない程度のタウ蓄積は既に生じ始めているということが通例です。
 そして、審査報告書の85ページにお示しいただいています図5はドナネマブの治験でタウの蓄積が非常に少ない例と、軽度、中等度等にあった例の進行を比較いただいたものですが、タウ蓄積の少ない例において、治療による増悪抑制の効率がより高いということ、症例数が少ないので統計学的有意性には達していませんが、その傾向を示唆するデータが示されています。
 これらの結果を基に科学的な観点から考察をいたしますと、この治験におきましてスクリーニング時に1、2割程度のタウ陰性例が除外されているわけですが、これらの例についても、早期アルツハイマー病スペクトラムの中でドナネマブの適用に含めることは妥当ではないかと推論するところです。この議論は、先の米国FDAのAdvisory committeeにおける議論にも一致しておりました。また、今後、市販後のレジストリ研究の中で、一部症例について可能な場合にはタウPETを実施していき、リスクベネフィットのバランスに関するデータを追加集積していくことも必要であり、有意義ではないかと考えられます。
 最後に、アミロイド正常化後の12か月時点における早期中止の妥当性について申し述べたく思います。ドナネマブはレカネマブなど既存の抗アミロイドβ抗体薬に比べますと、アミロイド除去能力が非常に高いです。資料にもございますように、18か月間の治験の12か月時点でPET検査を行いますと、アミロイドが正常レベルに低下する、即ち陰性化する例が66%に上っています。これらの例では治療の標的となるアミロイドが既に正常レベルにまで低下、消失していると考えられることから、陰性化の時点で抗体薬の投与を中止するプロトコルが設定されたわけです。先ほども言及がありました審査報告書90ページ、図6の中列に示されていますように、12か月でアミロイドが陰性化し、実薬投与が中止された群でも、18か月時点までの臨床的な増悪抑制効果は保たれていることが明白でした。このことから、アミロイド陰性化後の投薬の中止は妥当な措置であるものと考えています。
 アミロイドPETの判定について申します。先ほども言及がありましたように、治験においてはセンチロイド値、定量的な評価が用いられたものの、医学的には視覚読影の方法が厳密かつ詳細に定められており、こちらがスタンダードになっています。また、視覚読影と定量評価の結果の間には良い相関も示されています。このため、アミロイド陰性化を視覚読影の結果に基づいて臨床使用において判定することは可能であり、かつ、妥当ではないかと考えるところです。このPETの判定は学会等による研修を受けている主治医が、最適使用推進ガイドラインを遵守して、そこに記載いただいた基本になる灰白質と白質の集積の比較に基づいて行います。これとともに、実際にPETの読影は、日本核医学会と製造販売業者が策定した詳細な資料に基づく、読影研修を受けたPET画像専門医が担うことを考慮しますと、実臨床下において、この12か月時点でのPETによる陰性化判定は的確に行われることが十分期待できると考えています。
 以上のごとく、ドナネマブは、早期アルツハイマー病に対する抗アミロイドβ抗体薬として十分なリスク・ベネフィット・バランスを満たしている薬剤と考えまして、既存薬に加えて本薬が上市されることにより、患者さんの治療機会と予後の向上に資するのではないかと期待しています。以上でございます。
○森部会長 岩坪先生から御説明を賜りました。それでは、委員の先生方から御質問等ございましたら、お願いいたします。大森委員、お願いします。
○大森委員 機構の御説明と岩坪先生の御説明で、この薬の意義ですね、非常に理解が進みました。特にアミロイド除去後にプラセボに変えても効果が続くという点は、非常に期待が持てるところだなと思いました。
 ただ、私、レカネマブのときも申し上げたことですが、FDAの添付文書はApoEε4のホモ接合体について、このドナネマブについてもblack box warningで大きく警告しているわけです。この点で、日本の添付文書では赤枠の警告に入れていない点が非常に気掛かりです。というのは、非常に有益な薬だけに、しかしながら、ARIAという副作用がある薬だけに、有効性が非常に期待できる症例こそ、なるべく使ってもらいたい。リスクが高いと分かっている患者さんには、そのことを伝えつつ判断してもらわないといけないと思う次第です。
 現在のところ、ApoE遺伝子型の検査方法が保険収載されていない問題はあるようでございますが、FDAの添付文書を見ると、これまた、FDAがapproveしている検査は実はないということも一方でありながら、black box warningを掛けているわけです。ここはどうなのでしょうか。このまま使っていくと、日本ではARIAで副作用が生じる割合が増えてしまう。使用例の10数パーセントはhomozygousということですので、そこは非常に懸念するところです。この点につきまして機構のお考えはいかがなものなのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御意見を頂きありがとうございます。御指摘のとおり、米国と本邦の添付文書で注意喚起が異なっているところです。以前のレケンビでの御説明と同じになってしまうかもしれませんが、ARIAの管理自体につきましては、ホモ接合体の患者さんでも同じように行うことで管理は可能と考えているため、添付文書での注意喚起に関しては今の記載で足りていると判断しています。
 ただ、患者さんが意思決定する、治療を選択する上で、APOE4遺伝子型の情報が重要ではないかという御指摘につきましては、そのとおりと考えています。既にレケンビの方で選択肢を考慮するときに、検査したいと患者さんが希望すれば検査できる体制を構築しています。本剤についても同じように、検査をしたいという場合には受け入れる体制でやっていくことを考えています。
○大森委員 もし検査できる体制ができているなら、なおのこと警告に入れるのが適切ではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘、ありがとうございます。ただいま説明申し上げた検査ができる体制に関しましては、薬事承認や保険収載とはちょっと別の枠組みで行っている状況でして、box warningとして推奨できる検査として現時点で承認が取れているものがないという時点で、記載するのが困難という事情がございます。
 もう一点、実臨床において使用できない、使用が制限されている、あるいは警告がないことで安全性上、大きな問題が生じるのではないかという御懸念に関しまして、少なくとも現在、レカネマブの市販後の情報を精査していますが、市販直後調査等も終了した時点で、特に死亡や重篤なARIAといった大きな問題、注意喚起を強化するような報告は出ていないことを確認しております。以上です。
○大森委員 いずれその検査が保険収載されれば、あるいは岩坪先生がおっしゃっていたレジストリがうまく機能するようになれば、そのときは収載する、ワーニングに入れるというようなお考えはあるのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 そういったことも含めて検討はしたいと考えております。
 使用可能になった場合には、本剤とレカネマブを含めて添付文書全体の構成を再度確認して、必要な注意を必要な項に配置していく予定でおります。
○大森委員 是非、安全性を確保しながら広まっていくといいなと思っているものですから、少ししつこく質問させていただきました。
○森部会長 よろしいですか。それでは、赤羽委員、御発言ください。
○赤羽委員 御説明ありがとうございました。特定使用成績調査では、今、議論になりましたApoEε4に関しては保因状況をモニターするということで、基本は全例調査をするということでよろしいですか。
○医薬品医療機器総合機構 可能な限り情報は取得するように考えております。
○赤羽委員 これはどれぐらいの期間、行うのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 報告書で言いますと102ページの表82に記載しています。登録の期間としては今のところ1.5年を考えているのですが、これは注釈の方で書いているとおりでございまして、集積状況とか登録状況を踏まえて見直しする可能性もございます。
○赤羽委員 ありがとうございます。そうしますと、レカネマブの場合は比較的早く使用後の成績調査は、予定どおりに終了したということですか。
○医薬品医療機器総合機構 先ほど申し上げたのは市販直後調査でございまして、使用成績調査の方はまだ継続中でございます。
○赤羽委員 継続中ということ、分かりました。ありがとうございます。
○森部会長 柴田委員、お願いします。
○柴田委員 タウPETの要否について質問させてください。結論については、今、御説明いただいた内容は適切に御検討いただいていると思いますし、サブグループ解析などの傾向から見ても御判断に異論はございません。念のために確認したいという質問です。タウPETの検査に基づいて、今回、組み入れられなかった患者さんにおいては、ARIAなどのリスクは同様に出てくるわけですね。一方で、審査報告書の84/106などに申請者の見解が書いてありますが、「76週間の評価期間において本薬の有効性を評価する上で、評価期間中に疾患の進行が想定される患者を対象とするために設定した」と書いてあります。逆に言いますと、今回、対象になっていないところは進行が緩徐であるために有効性が明確に示せないということになると思います。添付文書では18か月までと書いてありますので、今回、タウPETで「なし」になる患者さんはメリットが小さい一方で、副作用のリスクは他の効果が期待できる集団と同じぐらいあるということですと、リスク・ベネフィット・バランスがちょっと悪い、積極的に投与が推奨できるような集団ではないというふうに言うこともできると思いますが、これについて機構の方、どのようにお考えなのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問、ありがとうございます。おっしゃったとおり、今回、適応には含めるけれども臨床試験に含められていない、タウが陰性であったり極めて低い患者さんというのは、有効性が少し緩やかである可能性がある一方で、リスクは同じように存在するだろうと、そこは私たちもそのように考えております。
 ただ、先ほど岩坪先生から御説明いただいた中にもございましたけれども、Aβが陽性となる患者さんであれば、恐らくタウは蓄積していることが多いだろうと。データとして早期AD、臨床的に早期ADと判断された患者さんであれば、8割、9割ぐらいはタウ蓄積をしているという情報がございます。また、Aβに遅れてタウの方が蓄積するというような説になっていますけれども、その患者さんたちも、この後、恐らくタウの蓄積量が増えていく状況かなと思っていますので、決してリスク・ベネフィット・バランスが臨床的に許容できないような、劣るような状況ではないと判断しています。
○柴田委員 ありがとうございます。納得いたしました。補足として、今のお話や、あるいはもともと検証的な臨床試験からは除外されている理由に関しては、インタビューフォーム等にはしっかり書いておくべきではないかと思います。今回の添付文書の方には選択基準が説明してありますが、そのような選択基準が設定された経緯について、あるいは、今、御説明いただいたような内容について説明があると、使われる方、あるいは患者さんたちにとっても納得のいくところになるのではないかと思いました。
○岩坪参考人 岩坪でございます。追加発言で御説明してよろしいでしょうか。
○森部会長 お願いします。
○岩坪参考人 今、委員から御指摘がありました点、これ、私の説明が少し端折っていたかもしれませんけれども、タウがない、より早期と考えられる方につきまして、18か月の治験期間中の変化率あるいは変化量が少ないわけです。自然経過における変化量は少ない。それ故に治療効果の変化量も少ないのですが、変化率を測定したのが先ほどの85ページの図5です。より長期的に見ますと、進行は緩やかな傾向を保って、要はネガティブなケースの方が、恐らく長期的効果は強いのではないかと推測されるということがございます。ですから、あくまで治験期間中の変化は微小である。でも、その率は少し高まる傾向が見えているということで、今後、ここはまだしっかりしたデータがございませんので、製造販売後の調査や研究の中で、それを実証していかなければなりませんけれども、ベネフィットも長期的にはより高いのではないかと、研究者は予測している。そんな状況もあることを申し添えさせていただきます。
○柴田委員 今、85/106のグラフについて御説明いただきまして理解が深まりました。ありがとうございました。製販後の調査に関する確認ですけれども、こちら、軽度の方においてはプラセボ群でもグラフが上の方に行くような状況になるということは、実際に投与された患者さんのレジストリのデータなどを見たときに、重度の方と軽度の方、あるいは「なし」の方を単純にサブグループ解析して、その位置関係、上下がどうであるということだけからは本剤の治療効果は分からないので、比較対照をどのように取るのかを解析計画の中に含めておいていただく必要があるかと思います。今、岩坪先生から御説明いただきましたように、重要な長期的データが出てくるということであれば、是非、そういうことの確認もできるような形の解析計画と結果の報告がされるような形で、指摘をしていただければと思います。
○医薬品医療機器総合機構 貴重な御助言、ありがとうございます。
○岩坪参考人 岩坪でございます。85ページの図について委員から的確な御指摘がございました。うんと軽い方で実薬が投与された場合、スコアが安定化する。あるいは一時的には上振れするような傾向がある。これも実は最近、学会の方では先行するレカネマブのサブ解析でも示されているところで、非常に興味深い所見として注目されています。これが何を意味するのか、まだ明確にはなっていませんけれども、一つには、効果が出てまいりまして、この検査に対するラーニングエフェクト、学習効果が少し発揮できるようになって、初回よりも良いスコアになる場合があるのかという議論もあるところでございます。
○森部会長 ありがとうございました。堀委員、どうぞ。
○堀委員 ありがとうございます。私からは患者をサポートする家族や介護者の立場から機構に質問させていただきます。事前に資料を拝見しまして、1件、死亡例があったということは、私ども患者をサポートする人間にとってみると非常に心配、懸念点です。先ほど機構から今回はレカネマブに比べて厳格なモニタリングや、投与に対してのいろいろとやらなければならない事項が、かなり厳しくなったということを聞いて少し安堵いたしました。その際に、医療従事者向けの資材を今後お作りになると機構がおっしゃったのですが、今回の死亡例については、治験において患者をサポートする家族や周りの医療従事者が何故異変を途中で気付いて、それをMRI検査の前に医師につなげることができなかったのか。私は非常にそこの部分が気になるところでした。
 ですから、今、レカネマブもそうですが、患者治療カードを患者の皆さんが所持するということで、私も勉強不足で治療カードの内容をよく理解していないのですけれども、例えば患者をサポートする家族や介護者の方たちが、何かおかしいと思ったときに、ここの添付文書の所では重大な副作用ということでいろいろなものが書いてありますので、何か気付いたときに副作用かどうかチェックができるような、または主治医の先生につなげられるような資材を作る予定はあるのか、お聞かせいただければ有り難いです。
○医薬品医療機器総合機構 御質問いただき、ありがとうございます。まず患者様にお渡しするカードと資材がございまして、その中でARIAが関係するかもしれないような症状として、症候性のARIAだった場合にこういった症状が出ますよという具体的な事象名などを書いて、そういったものが出たときには速やかに連絡してくださいという注意喚起はさせていただいています。
 また、治験での死亡例に関してですが、今回の実際の添付文書で注意喚起しているMRI頻度は、試験の途中で見直されてこの頻度になっているという経緯もございまして、残念ながら亡くなった症例の方はMRIの頻度を増やすより前の、もう少し少ない頻度で実施している期間に亡くなった方でした。治験中だったので患者カードのようなものがなかったため、別の医療機関にかかったときに、治験に参加中だということがうまく伝わらなくて、ARIAの最初の診断までに時間が掛かってしまい、適切な対応であったりMRI検査が遅れてしまった症例が認められましたので、今回、予定していますような注意喚起をさせていただくことで、そこはカバーできていると考えているところです。
○堀委員 詳細に御説明いただき、ありがとうございます。私たち家族や介護者に関しましては、毎日、当該薬を服用するであろう患者のその方が、特に今回は早期ですので、実際に認知という症状が明確には出ていない症状の中で、ちょっとした、例えば副作用のここの中で記載されている頭痛があったりとか、そういうものというのは日々の生活の中で起こることだと思います。そのためそれが実際に今回のこの薬によっての副作用なのか、それとも他の病気の症状なのか非常に判断しにくいところではないかと思います。そうなったときに、どのレベルで主治医に伝えたらいいかは非常に迷うところだと思うので、例えば訪問診療とかをなさっている方であれば1週間に1回先生が症状を確認なさると思いますけれども、そうではないような患者さんをサポートする方にとってみると非常に判断が難しいので、何かそういう、もっと分かりやすいというか何かチェックできるものがあったらいいなと提言させていただきました。
○医薬品医療機器総合機構 ありがとうございます。患者様にお渡しする資材の方にもそういった情報は書いていますし、医療従事者向け資材において、患者さんにこういったことを説明してくださいということも書いてあり、その中にこういった症状が現れたときには連絡するように、医師からも患者さんに伝えてくださいといったことも含まれていますので、あらかじめそういったことをお伝えしておくことで、患者様が相談するハードルが少し下がるかと思っております。
○堀委員 ありがとうございます。もう1点教えていただきたいのが、患者治療カードの中にはどのようなことが書いてあるのか、もしお分かりでしたら教えてください。
○医薬品医療機器総合機構 共有はできますが、ちょっと小さいですかね。
○堀委員 もしよろしければ口頭で、どのようなものなのか教えていただけたら大変有り難いです。
○医薬品医療機器総合機構 この治療を受けている方へとして、常にこのカードを携帯することで、他の医療機関を受診するときにはこのカードを見せてください、ワルファリンやアスピリンなど血栓ができるのを防ぐ薬や、、アルテプラーゼなどを一緒に使用するときには特に注意が必要ですといった内容が記載されています。
○堀委員 ありがとうございます。そういたしますと、要するに診察を受けるときに、これを出すことで、医師へのこういう注意喚起があるということですね。分かりました。ありがとうございました。
○森部会長 次は、大森委員から御質問を頂いております。
○大森委員 添付文書に関してもう一つ質問があるのと、最適使用ガイドラインについても一つ質問させてください。添付文書の後半、最後の方ですが、17、臨床成績という所です。これは少し分かりにくい紹介ではないかと思ったのです。というのは、タウの学術的意義については、本日のいろいろな御説明から大分私も理解したのですが、この臨床成績はそれを中心に書いてあるのです。図1)もそうですし、表1)もそこを中心に書いているのですが、これが添付文書の臨床成績の説明としてどうなのかなと思います。フォローするのは難しいし、承認されたのはこのタウとの関連ではなくて、やはり全体としての効果でしょうから、ここにもし図や表を出すとしたら、審査報告書で言えば、通し番号39ページの表34です。ベースラインが出ていて、投与後が出ていて変化量が出ていてというのが、やはり一番分かりやすいのではないでしょうか。ここでタウの蓄積別の、しかも変化量だけを出しているというのが、添付文書は誰に向けての文書なのかということがありますが、先端専門家に向けてではないから、もう少し分かりやすくできないかなと思います。
 添付文書に関して、もう一つは、添付文書、臨床成績の5行目、選択基準はマル1MMSEスコアが20~28なのです。そうしますと、臨床成績にせっかくMMSEがありますから、それを出しておくと一番見る人には分かりやすいと思うのです。ということで、MMSEの結果を含めたデータ、具体的に言えば、審査報告書の表34を入れて説明するのがいいかなと思ったのですが、いかがでしょうか、というのが一つです。
 それと少し似た観点ですが、最適使用ガイドラインにも臨床成績が出ているのですが、これが審査報告書の表34からMMSEのデータだけを抜いてしまった形になっておりまして、せっかく一番皆さんの参考になるわけで、是非、入れていただきたいと思います。最適使用ガイドラインの方も患者選択基準にはMMSEを入れておりますので、データとして最適使用ガイドラインの表2に、もう一つ、MMSEの結果を加えるのが一番分かりやすくなると思います。複雑なことを申しましたが、伝わっているでしょうか。
○森部会長 今の大森委員の御指摘は、事前の御質問にも含まれていましたので、御回答いただいてよろしいですか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問いただきありがとうございます。まず、添付文書について機構からお答えいたします。
 まず、今回の解析ですが、臨床試験の主要な解析で、全体集団と脳内タウ蓄積が軽度又は中等度の集団、それぞれの解析が両方とも主要な解析となっています。添付文書の臨床試験成績の項には、主要な解析の結果を書くのが通常のルールとなっていることから、添付文書案の17項に記載させていただいているように、タウ蓄積が軽度から高度、つまり、全体集団の結果と、その下に軽度から中等度の集団の結果を記載しています。
 また、先ほど審査報告書に記載している副次評価項目のMMSEの結果も記載してはどうかという御意見を頂きましたが、先ほどお示しいただいた審査報告書表34の結果かと思いますが、この結果を御覧になっていただければと思います。
 主要な結果と、臨床的な有効性を評価する上で、有用な結果につきましては副次であっても一部添付文書に記載はしているのですが、そういった観点で今回MMSEの結果については、添付文書に記載して情報提供する意義は薄いと考えております。
○大森委員 少なくとも表1にベースライン値を入れたらどうかという気がしますが。変化量だけだと、パッと見てイメージがつかみにくいので、ベースラインも入れる。ベースラインとむしろ76週後の値にするとかいかがでしょうか。何かこれを見てもこのままでは普通の関係者には分からないのではないかという気がします。工夫の余地がありませんかね。
○医薬品医療機器総合機構 ありがとうございます。分かりました。このスペースの都合と両方で、もう少し分かりやすい記載にできないかというところは、もう少し検討させていただいて、可能であればベースラインの値なども書き込めないか検討させていただければと思います。
○大森委員 4ページには随分空白がありますので、何とか配置を変えるとできるのではないかと思います。最適使用ガイドラインについてはいかがですか。そうしますと、MMSEは差がないから出せないということですか。
○事務局 厚生労働省より回答させていただきます。先生から御指摘いただきました所に関しては、審査報告書の表34のMMSEスコアと認識しました。こちらに関しては、審査報告書としても公表されるものです。事実としては公表することは可能と認識しておりますので、最適ガイドラインに関しては、御指摘を踏まえて対応させていただきたいと考えております。
○大森委員 それが一般臨床の人に一番分かりやすいデータでもあるので、是非、お願いいたします。以上です。
○森部会長 ありがとうございました。機構の方に確認があるのですが、審査報告書の38ページの下から3行目からの所ですが、副次評価項目とされている項目が幾つか列記されていますが、ここにMMSEも書いてあるということですが、これはMMSEも副次評価項目の一つということでよろしいですか。
○医薬品医療機器総合機構 評価項目の一つという点では、そのとおりです。
○森部会長 分かりました。今、大森委員から御指摘がありましたように、今回のケサンラの臨床成績の17の項ですが、試験のデザインの御記載の後に、主要評価項目である項目について、タウの蓄積度などを配慮したデータを開示されておりますが、実臨床で、特に本剤を開始する際に、タウ蓄積を特に問わず開始するといったことや、あとは実臨床上タウPETの実施等が、必ずしも軽度認知症の方に浸透しているというわけではないという現状を鑑みますと、臨床的な立場で医師、医療職の方や患者さんがこの添付文書を見る際に、やはり本治験で得られている臨床情報を十分反映していない可能性があるかと思います。それで、より臨床的に意義が深い副次評価項目も含めた表34の内容については、通常は添付文書の記載というのは主要評価項目を中心におまとめになると伺っておりますが、これまでも重要な臨床情報を追記すべきであるということが、この部会の御判断で得られている場合には、副次評価項目やそれに関連するデータについても、追記をお願いしたこともございますので、今回、委員の先生方の御意見を伺った上で、この表34に関するデータを追記するかどうか検討してもよろしいでしょうか。それでは、本件につきまして委員の先生方から御意見はございますか。
○宮川委員 宮川です。部会長が今お話したことは、私も後ほど言おうかなと思ったのですが、やはり、添付文書というのは患者とのファーストタッチで見ることが多いものですので、なるべく分かりやすい記載等があって然るべきです。それは実臨床の中で混乱してはいけないためのものですから、できる限りそのような配慮が重要ですので、もし可能であれば対応していただくのがよろしいかと思います。
 また、先ほど堀委員からもありましたが、患者さんに対する資材も含めて、より分かりやすく実臨床に落とし込んで、稀に他の医療機関にかかってしまった場合でも間違いが起こらないように、この添付文書も少し精緻化して書かれた方が、実臨床の中においては非常に重要な課題の一つだろうと思いますので、これからもこういうような類似薬があった場合には、しっかりとお書きいただいた方がよろしいのではないかと思っております。以上です。
○森部会長 ありがとうございました。この件について、もし石川委員から御発言がありましたらよろしいですか。
○石川委員 おっしゃるとおりで、分かりやすく書いていただくのがいいというのは、事前のお話でもさせていただいたとおりで同感です。以上です。
○森部会長 ありがとうございました。柴田委員、どうぞ。
○柴田委員 先生方のお話を踏まえての細かい話ですが、添付文書については、先ほど大森先生がおっしゃったように、図1)や表1)が少し分かりにくいという御指摘はごもっともかなと思うところがあります。
 一方、機構の方がおっしゃったように、プライマリーの主たる解析結果は載せるのが原則だと思います。そもそも、例えば図1)では、上の方がタウ蓄積が軽度からうんぬんの全体集団と書いてあるのですが、こう書くから分かりにくいのであって、単純に全体集団と書いてしまえばいいのではないですか。そうすれば、今回、投与対象になっておられる患者さん全体ではこうで、下の方は、蓄積は軽度から中等度の部分集団などと書いていただくと、多分、タウ蓄積に関して、実際に現場で使えなかったとしても、軽度の方でも効いているというエビデンスを示しているのだなと解釈はしやすくなるかと思います。審査報告書にはそう書いてあるので、それと同じように書いていただいて問題はないかと思います。
 表1)に関しては、先ほど御指摘がありましたように、ベースラインからの変化量というのは相対値ですので、どのぐらいの状態の患者さんがこのぐらい下がったということを示す上で、やはり、ベースラインの値はあった方がいいのではないかと思いました。以上です。
○森部会長 そのほか御意見はございますか。私から機構の方、若しくは岩坪先生にお伺いしたいことがあります。ApoEε4の頻度、ホモ、ヘテロ、キャリアでない方の頻度というのは、一般人口の方と、今回のような早期アルツハイマー病の治験に参加されている方や、これから使われる方々での頻度の違いというのはいかがですか。
○岩坪参考人 岩坪から申し上げます。早期アルツハイマー病の方の病理を示し、あるいは臨床的にもアルツハイマー病の特徴を示す方では、ApoEε4アレルの頻度は格段に高くなります。恐らく、グローバル治験全体の中では、ApoEが3、4など、少なくとも1アレル持っていらっしゃる方のパーセンテージは、ホモの方も含めますと70%ぐらいになるのではないかと思います。御案内のとおり、我々アジア人はApoEε4のアレル保有率は少し低くなっております。アレル頻度が10%、西洋人は13%ぐらいではないでしょうか。ですので、我々の一般人口の中で、ホモで持つ方というのは、理論的には100人に1人、高齢者で、まだ軽症なアルツハイマー、あるいは発症していない方ですと100数十人に1人ぐらいにあると思います。しかし、資料にもあるように、早期アルツハイマーで、既にアミロイドが発生して病理はアルツハイマーであるという方の中では、homozygous等の率も上がってきて、これは10数パーセントぐらいでしょうか、数字が間違っておりましたら御訂正ください。
○森部会長 機構の方、何パーセントでしたか。
○医薬品医療機器総合機構 報告書の通し番号で言いますと、全体集団の方が38ページになっております。全体集団では、キャリア自体は7割ぐらいで、その中でホモとなると16%ぐらいです。41ページの表37の方に、日本人集団の実際の数値は載っております。今回の治験だとプラセボ群、本薬群で少し差はありますが、6割~7割ぐらいで、それほど全体集団と変わらない患者さんがキャリアとなっております。ホモの発現率も全体集団と大きく変わるような値ではありませんでした。
○森部会長 ありがとうございました。先ほど大森委員から御指摘がありました点ですが、ApoEε4のホモの方に関して、ARIAの頻度が多くなっているということは先ほど岩坪参考人の方からも具体的なパーセンテージをお示しいただきましたが、ApoEε4のホモの頻度が全くの一般人の方ではアレル頻度が10%として約1%になるわけですが、今回のこの治療薬をお使いになることを検討される方々では10数パーセントになっているということなのです。この点を治療をお受けになる方が御理解されているかどうかということが大変重要になってくるのです。また、世の中一般では、ApoEε4はアルツハイマーのリスクだということはネットのニュースにも載っていますが、その頻度は大体1%ぐらいだと書いてあるのです。ですから、一般の方がApoEε4に対して持っているイメージは、ホモの人は100人に1人ぐらいだというイメージです。
 ところが、今回この薬を使う方々の対象というのは、10%を超えるぐらい高い頻度で、このApoEε4のホモの方が含まれているので、ブラックボックスで警告しているFDAの添付文書を鑑みても、日本においても、現在ApoEε4の検査を義務化してはいないのですが、ApoEε4の方がやはり10数パーセント含まれているかもしれないという前提で、治療やいろいろな支援体制を組まなければいけないという課題はあるのです。もちろん、検査が保険診療で可能になったときには患者さんも医療者も、検査の結果を見た上で、リスクベネフィットを勘案して治療できるわけですし、今回、我々がここで与えられている添付文書や資料をどうまとめるかという課題について、どの情報を添付文書や現場に提供する資料として必須に加えていかなければいけないかを、もう一度考えてみる必要があります。
 その場合に、先ほど私は表34のデータを加えるということを提案したのですが、実は、もう一つ御提案したいのは、ApoEのε4の保因状況ごとの主要評価項目、つまり、iADRSのデータとCDR-SBが実際どのような有効性が示されているかということについてのベネフィットに関する情報もε4の遺伝子型ごとにお示ししていくことが、恐らく重要だと思います。
 そういった目で報告書を改めて御覧いただきますと、恐らく、表47が該当すると思います。表47に書かれている今回の臨床試験のApoEε4の遺伝子型ごとにおける主要評価項目の2項目のデータを御説明いただけないでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 おっしゃっていただいた54ページの表47の結果については、ApoEε4の保因状況によらず、iADRS、CDR-SB、いずれも全体集団と同様の結果であったという評価になっております。
○森部会長 実際の群間差のデータも御確認した上で、そのように臨床現場で考えてよろしいのでしょうか。私が見る限りでは、ApoEε4のホモ接合者の方々では、iADRSの群間差は1.01でよろしいですか。
○医薬品医療機器総合機構 はい、そのとおりです。
○森部会長 そして、ヘテロでは2.87で、ノンキャリアでは4.57でよろしいですか。
○医薬品医療機器総合機構 はい。
○森部会長 そして、もう一方のCDR-SBのデータについても、群間差はホモの方で-0.41で、ヘテロの方では-0.73、ノンキャリアの方では-0.76となっておりますが、これはどういったトレンドを示しているのですか。これは、全くトレンドは何もないと機構ではお考えなのか、それとも、統計的には有意でなくても、臨床的な情報として有効性に関する重要な情報を含んでいるという御判断はありますか。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘ありがとうございます。機構よりお答えいたします。ApoEε4のキャリア、ノンキャリア、あるいは具体的なホモ、ヘテロ別の有効性の解釈に関して、御指摘いただいたように、iADRSに関して言えば、その変化量につきまして、ホモ接合体で若干ほかの集団に比べて低いという傾向が出ている一方で、CDR-SBに着目しますと、そこまで大きな差が付いていないということと、先ほど来、御指摘あったように、率で見ますと、もともとホモ、ベースラインの値などにもばらつきがあるので、特にキャリア、ノンキャリア含めて率で見たとき、必ずしも同じ位置関係になっていないということと、例えば、iADRSにつきましては、一番上のAD症状改善薬につきましても、群間差で言えば、併用と非併用で1~4ぐらいやはり幅が出てしまう。部分集団によってどうしてもばらつきも出てきてしまうので、このデータの総合的な評価としては、この結果だけを見て何か一定の傾向がある、ホモの患者さんでは効きにくいというところまでは示唆されていないという解釈を行っております。
○森部会長 もしよろしければ、岩坪参考人から、ε4の遺伝子型に関して、本剤の有効性に関する御意見、御助言を頂いてよろしいですか。
○岩坪参考人 今、部会長がおっしゃったように、少なくともApoEのε4ホモ接合体の方でより効くという傾向は見て取れないのではないかと感じております。
 ApoEのε4がなぜアルツハイマーを起こしやすくするのか、詳細は不明なところもありますが、大きく見ますと、アミロイドの蓄積を増強する、早く蓄積させるという点にあると学界では見ております。
 ですので、このようにアミロイドを除去する薬には、理論的にはターゲットとしてApoEε4の効果によるアミロイド増強というところがうまくマッチすると考えています。昨年御審議いただいたレカネマブの場合には、ε4ホモ接合体のプラセボ群にCDRで大きなばらつきが生じていたことで判断が難しかったのですが、今回のドナネマブではそこまで大きな差はない。しかしながら、少なくともε4がありアミロイドはたまりやすいと思われる方がより効いているという傾向はここからは言えない、という感触を持っております。
 私は今アメリカの学会に来ているのですが、先行するレカネマブなどでも、ε4ホモの方をどう扱うかについては、様々な御経験、御議論が生じています。より注意深くコンサバティブに、ホモの方では投与を控えるお立場もあれば、逆に、ε4のホモの方というのは遺伝性も高く、アミロイドの量も増えていくことがはっきりしていますので、患者さんの希望が強く、その他の条件を勘案して使用可能である場合には、積極的に考慮してもいいのではないかという意見もあるところです。ε4のホモの方は、先ほどもありましたように、アルツハイマーの中では10%程度おられるわけですが、統計学的な有意性を持って有効性の大小を判断するには、もっと多くのデータが必要ですので、やはり、市販後の臨床研究、レジストリ研究等で、特に今回安全性も考えて全例調査を行われ、我々アカデミアとも結果を共有いただきますので、そこの点はしっかり見ていきたいと思っております。以上です。
○森部会長 ありがとうございます。今後のアカデミアの御活動によりまして、ε4の遺伝子型ごとの有効性に関する更なる情報が集積することを願っておりますが、現時点で、私どもが臨床試験から得られているデータについて、やはり患者さん、医療者が広く知る機会を担保し、患者さんによっては既に遺伝子型が分かっている場合には、御自分の遺伝子型に合わせて、ARIAの頻度や有効性に関する情報を集中して見ることもできますし、遺伝子型が分かっていない方の場合には、御自分の遺伝子型に関する期待値と言ますか、どのアリルがどのぐらいの頻度かということの情報があれば、自分はどの場合はこのくらいの有効性があって、このくらいだと副作用が起こり得るといったように、遺伝子型は分かっていなくても、自分がどの遺伝子だった場合に、どういうリスクベネフィットかということを判断する材料になると思うのです。それは医療現場にきちんと提供することが今回大変重要だったと思うのです。
 したがいまして、表47にいろいろな解析をしていただいて、これは恐らく全ての情報はインタビューフォームや資材等で御提示いただくということで良いと思いますが、ε4の遺伝子型ごとの有効性に関する二つの項目については、是非、添付文書に重要な情報として記載いただくことを御検討いただけないかと考えております。
○宮川委員 森部会長が、非常に示唆に富んだお話をされたのだろうと思います。ε4の件ですが、これは臨床現場で、後々いろいろなことが分かってくるのでしょうが、現時点で分かっていることだけでも、ある程度お示しいただけると非常に有り難い。それが、今後の私たち臨床家が使い込んでいったときにどうなるのかというのは、後ほどの話となるのですが、非常に重要な情報の一つになるかと思っています。岩坪先生には後ほど聞こうかと思ったのですが、いわゆるレカネマブとドナネマブの使い分けみたいなことが将来必ず出てくるはずなのです。そのときに、こういうような情報が先にしっかりとあるということが、後々に非常に有効で、決してこれを見ていなかったのではなかったということにつながります。これはずっと機構も一生懸命頑張っていらっしゃるので、これを否定するのではなくて、やっていらっしゃることをしっかりと提示することが、この審査体制の中でも重要なことですし、後に、それが明らかになったときの試金石になりますので、是非、そういう形で記載ないし注意喚起をしていただきたいと思っております。以上です。
○森部会長 石川委員、御意見がございましたらお願いします。
○石川委員 すみません、質問を取り下げます。大丈夫でした。どうも申し訳ありません。
○森部会長 石川委員、事前に御質問いただいたことにつきましては、特に追加の御意見はございませんか。
○石川委員 私は事前にコメントをさせていただいたのは、先ほどの議論がありました添付文書におけるARIA-Hの記載に関してでした。それに関しては、最初の御発言の機構からの御説明の中に既に取り入れていただきましたので、私としてはそれでよろしいかと思いまして、特に発言しないでおりました。
 一言コメントさせていただくと、大森先生がおっしゃったように、ちょっと分かりにくい添付文書かなと。実臨床の、非常にエキスパートの方はいいとしても、神経系統の臨床家の中のいろいろな方がおられる中では、ちょっと分かりにくいかなと思いまして、添付文書の作成の仕方というのはこういう臨床試験の成績のことを映さないといけないから限界もあるのだというのは理解できるのですが、ちょっと分かりにくい所があるので、もう少し分かりやすくされる方がいいということと、既存薬と余りどっちがどっちかというのが分かりにくくならないように御配慮いただけるといいのではないかというコメントをさせていただいた次第です。以上です。
○森部会長 ありがとうございました。先ほど堀委員からも御指摘がございましたが、治療カードや患者カードをお持ちいただいて、このお薬を使っているということが広く医療者にすぐ分かるようにということで、注意喚起も御準備いただくことが分かりました。それで、実際に今回の臨床試験で、ドナネマブの実薬群で死亡例があると。ARIA-E、それからARIA-H、また死亡と書かれている1例の方は、ARIAと脳出血を合併して亡くなられているという実態があります。やはり患者さんの異常を医療者が早期にキャッチして、的確に診断、治療していくことが不可欠ですし、先ほど機構の方からも、それに向けた準備を進めていらっしゃるということを伺っておりますが、実際に医療現場でARIAの治療をどのようにするのかといったガイドラインについては、現在どの程度整備されていらっしゃるのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 ガイドラインというか、実際に本剤の投与の中で、ARIAが起きたときにどのようにしていくかというところについてお話させていただければと思います。今回の情報提供資材の方にも、フローチャート等を用いて、こういった症状が出た場合には本剤の投与をやめてくださいとか、MRIの検査をやって完全な回復であったり、画像上の消失が認められるまでは投与しないでくださいとか、治療をする場合にはこういった治療をしてくださいといったことは、かなり分かりやすく系統立てて書かせていただいております。それを御覧になっていただければ分かるかなというところです。その辺りの記載は、主に臨床試験での規定をベースにしたものとなっております。現在、確立したARIAに対する治療というところは、抗Aβ抗体で生じたARIAに対する治療法というので確立したガイドラインでの記載といったものは、現在のところではないと考えており、基本的には治験ベースでその辺の記載はさせていただいております。
○森部会長 この比較的重篤なARIAが生じた場合の医療体制について、岩坪参考人から少し御意見を頂くことは可能でしょうか。
○岩坪参考人 御指摘の点はきわめて重要です。ARIAの画像又は臨床での重症度に対応して、例えば、重症例ですとステロイドをどの程度使っていくかとか、脳浮腫の改善薬を使うとか、そういうところを含めての大まかな方向性については、今、機構から御説明のあったとおりです。現在のOUGには、むしろ、まずは入口での診断、適応とフォローアップ検査に関することをまとめていただいておりますが、今、学会の方でもARIA治療ガイドラインとまではいかないのですけれども、私ども6学会プラス脳卒中学会、OUGの編纂に関わった学会の中では、今後ARIAに関して実際の臨床例、また治験での対応というのを含めて、どういう臨床のプラクティスなどでの対応を取るか、特にARIAの治療に関して我々も問題意識を持っておりますので、分かりやすい形で早期に発信していければと思っております。
○森部会長 御説明どうもありがとうございました。宮川委員、どうぞ。
○宮川委員 岩坪先生に是非お願いしたいのは、日本と米国、欧州と比べますと、脳外科医の数というのは、日本の場合ははるかに多くて、人口10万人当たり米国、EUであれば1.5とか1.4人という形ですが、日本の場合には先生も御存じのように、約5.8という非常に多くの脳外科医が専門の医療機関ないし基幹病院、そして市中病院にもいらっしゃいます。また、日本の場合にはMRIの保有台数が、米国であれば10万人当たり3.8台とか、ドイツも3.5台ぐらいですけれども、日本の場合には10万人当たり5.7台という保有率があるということが分かっています。そのような重要な情報等はどこで参照できるのか、様々な臨床試験等で新たな情報が明らかになったときに、情報のアップデートどこを参照するのが一番いいのかということが、専門医ないしMRIを持っている医療機関や従事者にはっきり分かるような仕組みを是非作っていただくというのが今後、今回のような薬を適正に使用することに対しては非常に重要なことになるかなと思います。
 岩坪先生を中心にそういう働きかけ、それから、ホームページなり情報提供なり、そういうものをしっかりと作っていただくことが専門家集団として重要なことかなと思いますので、岩坪先生がどのようにお考えなのかなということで、ちょっとお聞かせいただければと思います。
○岩坪参考人 ありがとうございます。極めて重要な御指摘を頂きました。私どもも先ほど申しましたように、一番専門家が多いのは、学会区分で言いますと日本認知症学会なのですが、この中でも既に脳外科御出身の先生が10%に達しようとしております。脳神経外科学会の方でも、今まで認知症というのは少し隅にあったようですが、研修の基準などにも入れることを積極的に考えていただいております。その中で、こういう新しい治療についても情報を整理して、特に脳外科の中で認知症をされる先生方にも提供いただくということが、お陰さまで急速に進んできているところです。
 また、今日も御議論いただいたように、重要な情報というのは治験の段階と、つづいて実臨床の中で出てまいります。我々認知症関連6学会は、非常に連携よくしっかり仕事をしようとしておりますし、厚生労働省、機構、それから、何より企業の方、産官学で連携して、重要な情報を分かりやすくアップデートしながらより広く提供していく、これを肝に銘じて進めてまいることをお誓いしたいと思います。ありがとうございます。
○森部会長 ありがとうございました。機構の方、お願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 申し訳ございません。機構から1点です。先ほど少し御指摘いただきました添付文書に反映する内容について、再度、御指摘内容を確認させていただきたいと思います。まず、17項の結果の記載の仕方について、頂いた御意見を踏まえて、再度見やすい形式にできるよう、またベースライン値を載せるといった対応をさせていただきたいと思います。
 次に御指摘いただいたApoEの保有別の成績の記載については、類薬であるレカネマブのときも同様に、この重要な御指摘を頂いて審議いただきました。その際の結果としては、現時点でApoEε4の因子が及ぼす影響というのが、有効性についてはまだ不確かであって、一方、安全性については確実に影響を与える要因であるという内容を踏まえて、レカネマブの添付文書、本剤も同様ですが、今回、対象となる患者さんの中での保有率は15%ないし16%程度はあるということは8項に明記させていただき、かつApoEε4のノンキャリア、キャリア遺伝子型別のARIAの発現状況も明記させていただくとして、一方で有効性へのインパクトがまだ不明である有効性のApoEε4の解析結果については、添付文書への反映まではせず、資材等で情報提供させていただくというのがレカネマブでの最終的な整理だったかと認識しております。その上で今回、本剤に関して有効性のApoEε4の有無別の解析結果も添付文書に記載すべきかどうかというところについて、再度確認させていただければと思います。
○森部会長 確認どうもありがとうございました。ApoEε4のホモの方では、今回ARIA-Hの頻度は何パーセントでしたか。50%ではなかったでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 そうです。
○森部会長 それで、ヘテロでは32%でノンキャリアは18%です。リスクはかなり違うのです。従いまして、ベネフィットがどのぐらいあるかということは、統計的に差があるかどうかではなくて、示しておくことが重要だと申し上げているところなのです。ですので、添付文書ないしは最適使用推進ガイドラインの中、若しくは両方に含めておくべき情報として、先ほどから表34の情報と表47の情報の一部をお含めいただきたいとお願い申し上げているところです。
○赤羽委員 赤羽ですが、よろしいでしょうか。私も森部会長の御提案には強く賛同いたします。まだ現時点でそこは、はっきりはしていないかもしれないのですが、医療者の方々、それから患者さんもそういったことに意識が向くというか、まだリスクベネフィットの回答は出ていないけれども、現時点で提供できる情報は提供するということは、今後、将来的にApoEの遺伝子検査が保険収載されたりとか、そういったことに向けても試金石というか、大事なことではないかなと思います。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘ありがとうございました。承知いたしました。
○森部会長 添付文書の記載整備のことで、もう一つお願いがあります。米国のFDAの添付文書では、1cmを超える脳出血の頻度ということで0.5%、プラセボ群は0.2%というように具体的に記載があります。今回、石川委員の御意見への回答の一部として、7.5の項目の記載整備の方向性をあらかじめ伺っていたところではありますが、脳出血、特に1cmを超える脳出血に関する添付文書の記載、若しくは医療現場への提供については、機構ではどのようにお考えでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 事前にお示しした中で、全ての項については触れられていなかったのですが、添付文書で言いますと11項の方に副作用の発現率を書かせていただいています。今はまだイメージ段階ではありますが、11.1.2項の中にARIAと脳出血の具体的な数値等も書き込めるのではないかと考えております。
○森部会長 特に、1cmを超える脳出血については、その後の予後、転帰に関することも大変重要ですので、是非、米国の添付文書と同様に、具体的に御記載いただきたいと考えているところです。
 もう1点は、臨床成績の所で、重篤なARIAに伴って死亡された方に関する記載というのはありましたか。
○医薬品医療機器総合機構 死亡が認められていることは、11.1.2項に書いております。4行目ぐらいからですかね、「また、重篤なARIAがあらわれることがあり、臨床試験において死亡に至った例が認められている」と書いております。
○森部会長 こちらの記載は私も確認しているのですが、こちらの亡くなられた患者さんの情報について、今回、添付文書の引用文献にされているJAMAの論文の中では、より詳細に記載がされていることを鑑みますと、11.1.2の項目にJAMAの論文の引用をなさる方法が一つあります。もう一つは、臨床成績の所にARIA-E、若しくはARIA-H、また、ARIAとは特定されていなくてもARIAを合併されて亡くなった方がいらしたということについては、やはり記載すべきではないかと考えています。これは、委員の先生方の御意見も伺った上で、部会での決定としたいと思っておりますが、いかがでしょうか。堀委員、お願いいたします。
○堀委員 部会長、ありがとうございます。是非、添付文書の中に入れていただけたらと思います。と言いますのは、ただ11.1.2の所で死亡に至った例が認められているという一言の記載のままだった場合、患者又は患者を取り巻く介護する者や家族は、どのようなことがあったのだろうかというように非常に不安に陥る一つの要素だと思います。あくまでも、そのことに対して、先ほど機構の方もおっしゃっていましたが、対策が練られているということであるのならば、かえってオープンにしていただいて、そのことを明示していただく方が患者にとっては非常に安心する要素ではないかと思います。以上です。
○森部会長 堀委員、ありがとうございました。機構の方、確か医療現場に提供する資材で詳細な情報を含めて準備されているということを伺っていますが、実際はどのような状況か何か供覧するものはございますか。
○医薬品医療機器総合機構 ございます。
○森部会長 お願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 機構の会議室の方から映せますか。各患者さんの患者背景であったり、どういった転帰であったかという経過などを、症例ごとにかなり詳細に書いている情報です。
○森部会長 これを今後、医療現場にされる予定でいらっしゃるということですね。
○医薬品医療機器総合機構 そうです。
○森部会長 確認できました。資材案を見ますと、補遺の試験で亡くなられた方も含まれているという状況ですか。確か右の方はそうですね。
○医薬品医療機器総合機構 そうです。
○森部会長 詳細な情報提供の準備を頂き、ありがとうございました。
○石川委員 森部会長、一言コメントさせていただいていいでしょうか。
○森部会長 石川委員、お願いいたします。
○石川委員 添付文書の文献の1番の記載が、17番、臨床成績のマル4です。スクリーニング期の脳MRI検査の引用箇所が文献1)だと思うのですが、ちょっと明確、それでよろしいですか。機構に質問したいのですが。もしそうだとすると文献と一致していないようなので、引用の仕方が間違っているか、何かちょっと食い違いがあるようですので、御確認いただければと思います。
○森部会長 初出は8.2.4でしょうか。
○石川委員 聞こえましたか。
○森部会長 石川委員、聞こえております。これは、初出は。
○石川委員 もう一度申しますと、17の臨床成績のマル4という所がありますね。スクリーニング期の脳MRI検査でという、添付文書の。
○森部会長 ここの部分の1)、5)のことでしょうか。
○石川委員 17の臨床成績の17.1.1の国際共同第III相試験(AACI試験)がありますね。その下にマル1マル2マル3マル4となっていて、マル4が「スクリーニング期の脳MRI検査で、以下に示すような所見が認められていない」と書かれていると思うのですが、その下に・で4か所、例えばARIA-Eとか、5か所以上の脳微小出血とか書いていますね。
○森部会長 書いています。
○石川委員 どうでしょうか。
○森部会長 書かれています。
○石川委員 この根拠になっているのが、1番目の参考文献とその次の添付文書の次のページにあります23.主要文献のJAMAの論文、2023年の論文というようになるのだと思うのです、この添付文書の記載では。そうすると、その文章そのまま、その文献を当たると、例えば、先ほどの5か所以上の脳微小出血は4か所になっていて、添付文書では2か所以上の脳表ヘモジデリン沈着となっているのが、私の読みでは、文献上では1か所になっているように思うのです。ですので、何か齟齬があるのではないかという趣旨なのですが、ここはもう一度御確認いただきたいなというのが趣旨です。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘いただき、ありがとうございます。再度確認いたします。
○森部会長 厚生労働省の方、すみませんが、最適使用推進ガイドラインの臨床成績についても、添付文書で追記される部分についての追記をお願いしても可能でしょうか。
○事務局 臨床成績の項については、本日頂いた御指摘を踏まえて、機構と相談の上対応させていただきたいと思っております。
○森部会長 ありがとうございました。そのほか、委員の先生方から御質問や御意見はございますか。岩坪先生、先ほどのレジストリ研究のことを冒頭にお伺いしたところですが、レジストリ研究の開始タイミングはいつ頃御予定されていらっしゃるのでしょうか。
○岩坪参考人 4月に正式にAMEDの方で御承認いただいて、それから最速で準備をしているところです。今、一番急ぐべきApoEのジェノタイピングの実施体制というのを急速に固めているところですので、この秋の間には部分的に開始することができると思っております。ただ、先行しますレケンビの場合には、既に400施設を超える施設で実施されているということで、相当な努力が必要かと思っております。ですので、今日、御審議いただいておりますドナネナブが進んでまいりましたら、その上市時点では同時にカバーできるということを考えて進めているところです。
○森部会長 その場合には、実際に投与を考慮されている患者様に、あらかじめ遺伝子型の検索がされる可能性があるということでしょうか。
○岩坪参考人 もちろんです。これは後付けでは意味が薄れてしまいますので。ただ、レケンビの場合にはすでに数千例で投与が始まっていますが、その方々には、御希望がある場合には後付けで調べてゆきますけれども、基本はアミロイド陽性の方で治療薬の適応になることが絞り込まれた方に、遅滞なくジェノタイピング結果をお返しして、最後に投与の判断を頂くことを可能にできるようにと考えております。
○森部会長 ありがとうございました。機構から何か御発言はございますか。
○医薬品医療機器総合機構 先ほど石川委員より御指摘がありました添付文書での記載と、論文でのそこに記載の違いがあるのではないかといった御指摘なのですが、JAMAの論文を確認させていただきましたけれども、JAMAの論文では、例えば脳微小出血はmore than 4と書かれていて、脳表ヘモジデリン沈着に関してはmore than one areaという記載になっていると思います。この点については、添付文書ではそれも踏まえて4より多いというのではなくて5個以上と。例えば、脳表ヘモジデリン沈着に関しては、1より多いではなくて2個以上という記載になっているかと理解しております。いかがでしょうか。
○森部会長 石川委員、いかがでしょうか。
○石川委員 ありがとうございます。Exclusionとそこのところの数の違いということなのですね。除外と。ちょっとそこをもう一度よく読んでみます。ありがとうございました。
○森部会長 そのほか御意見はございますか。1点、機構の方に御確認なのですが、Aβ抗体薬の開発の際に、アミロイドPETのキャパシティを事前に検討されていたかと。つまり、全国的にどのぐらいのアベイラビリティがあるかということを検討されていると思うのですが、今回レカネマブではなくてドナネマブですと、事前は髄液かアミロイドPETで、1年後を目安にアミロイドPETを実施するということになっていますが、お一人最大2回実施する可能性がありますけれども、PETのキャパシティというのは現状どのようにお考えでいらっしゃるのでしょうか。
○事務局 厚生労働省より回答させていただきます。現在、PET-CTの整備状況ですが、国内約400施設に約500台配置されております。医療圏別に見ますと、PET-CTの有無に関しては差は当然あります。一方で、投与開始検査に関しては、脳脊髄液(CSF)検査も可能となっておりますので、現時点で検査能力に関しては、キャパシティ上は問題はないと見込んでおります。
○森部会長 確認できました。ありがとうございました。そのほか、委員の先生方から追加の御質問、御意見はございますか。特段、追加の御意見はございませんか。それでは、議決に入らせていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。なお、阿古委員、根岸委員におかれましては、利益相反に関する申出事項に基づき、議決への参加を御遠慮いただくこととなっております。
 まず、議題1について承認を可としてよろしいでしょうか。御異議がないようですので、承認を可とし、薬事審議会に報告とさせていただきます。また、その他事項議題1、すなわち最適使用推進ガイドラインについて御確認いただいたものとさせていただきます。
 それでは、本議題はこれで終了させていただきます。岩坪参考人、長時間の御議論、誠にありがとうございました。心より御礼申し上げます。御退室いただきたいと思います。
○岩坪参考人 ありがとうございました。退室させていただきます。
──岩坪参考人 退室──
○森部会長 続きまして、議題2に移らせていただきます。議題2について、機構から概要説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 議題2、資料No.2、医薬品セプトカイン配合注カートリッジの製造販売承認の可否等について、機構より御説明いたします。
 資料No.2の審査報告書を御覧ください。審査報告書通し番号4/34ページ、「1.起原又は発見の経緯及び外国における使用状況に関する資料等」の項を御覧ください。
 本剤は、アルチカイン塩酸塩及びアドレナリン酒石酸水素塩を有効成分とする歯科用局所麻酔薬です。アルチカイン塩酸塩は、アミド型局所麻酔薬であり、電位依存性ナトリウムチャネルを阻害することで神経興奮の伝導を抑制し痛覚を遮断します。また、アドレナリン酒石酸水素塩は、αアドレナリン受容体を介して粘膜血管を収縮させ、アルチカイン塩酸塩の血管内への吸収を低減することで、麻酔作用を増強させるとともに、麻酔持続時間を延長させることを目的として配合されております。
 海外において、アルチカイン塩酸塩は局所麻酔薬として1974年に西ドイツで承認され、本剤は1988年にフランスで承認されて以降、2024年3月時点で欧米等を含む93の国又は地域で承認されており、標準的な歯科用局所麻酔薬の一つに位置付けられております。
 本邦においては、2016年10月から本剤の臨床試験が開始され、国内臨床試験成績に基づき本剤の製造販売承認申請が行われたところです。
 本品目の審査に関して、専門委員として資料No.13に記載の7名の委員を指名いたしました。
 本剤の審査の概略について、臨床試験成績を中心に御説明いたします。
 まず有効性について、通し番号19ページ、「7.1.3 国内第III相試験」の項を御覧ください。下顎埋伏智歯の抜歯を受ける患者を対象に、アドレナリン酒石酸水素塩を含有するリドカイン塩酸塩製剤を対照とした無作為化単盲検並行群間比較試験が国内で実施されました。当該試験の主要評価項目の結果は、次のページ、通し番号20ページの表17の下、「主要評価項目とされた」から始まる段落を御覧ください。主要評価項目とされた治験薬投与後の施術中のVAS(患者評価)に関する群間差の95%信頼区間の上限は非劣性マージンである1.0を下回ったことから、リドカイン製剤群に対する本剤群の非劣性が検証されました。以上から、本剤の有効性は示されたと判断いたしました。
 続いて安全性について、通し番号24ページ、「7.R.3 安全性について」の項を御覧ください。国内外の臨床試験成績、海外市販後の安全性情報などに基づくと、本剤の添付文書において、類薬であるアドレナリン酒石酸水素塩を含有するリドカイン塩酸塩製剤の注意喚起等を参考に注意喚起を行うことで、本剤の安全性は許容可能と判断いたしました。
 以上の審査を踏まえ、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、当部会にて御審議いただくことが適当であると判断いたしました。
 本剤は、新有効成分含有医薬品及び新医療用配合剤であることから再審査期間は8年とすることが適当であり、また、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当せず、原体のうちアルチカイン塩酸塩は劇薬に該当し、製剤も劇薬に該当すると判断いたしました。薬事審議会では報告を予定しております。
 説明は以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○森部会長 御説明、どうもありがとうございました。それでは委員の方から御質問、御意見がございましたらお願いいたします。いかがでしょうか。今回の専門協議から御助言いただいた点について、少しおまとめいただいてよろしいでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。総合機構から回答いたします。専門協議では大きな御異論等は頂かず、審査報告(1)でまとめたものについて、先生方から御同意を頂けたものと考えております。
○森部会長 ありがとうございました。それではその他、御意見、御質問いかがでしょうか。特にないようでしたら議決に入ってよろしいでしょうか。なお、阿古委員におかれましては、利益相反に関するお申出に基づきまして、議決への参加は御遠慮いただくことになっております。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。
 特に御異議はないようですので、承認を可とし、薬事審議会に報告とさせていただきます。
 続きまして、議題3に移らせていただきます。議題3について、事務局から概要説明をお願いいたします。
○事務局 希少疾病用医薬品の指定について、御説明させていただきます。資料ですが、3-1にまとめた表を付けておりますが、順に3-2から御覧いただければと思います。まず1品目め、資料3-2、「Seladelpar」です。予定される効能・効果は、「原発性胆汁性胆管炎」で、指定難病に指定されております。本邦で本疾患に係る効能・効果で承認された薬剤は、ウルソデオキシコール酸のみであり、新たな治療薬の開発が望まれております。本剤については現在、国内第III相試験を実施中です。
 続いての品目は資料3-3、「センダキマブ」です。こちらの予定される効能・効果は、「好酸球性食道炎」で、こちらも指定難病に指定されております。本疾患については、長期経過例では食道の線維性狭窄を発症する場合もあり、慢性的な食道機能不全に至る重篤な疾患であり、本邦で現在承認されている医薬品はございません。現在、国際共同第III相試験を実施中です。
 続きまして資料3-4、同じく「センダキマブ」ですが、予定される効能・効果が「好酸球性胃腸炎」です。こちらも指定難病に指定されております。本疾患についても、重症例では、消化管閉塞、腸破裂、腹膜炎を発症する場合もあり、慢性的な胃腸機能不全に至る重篤な疾患であるということです。現在、本邦において承認されている医薬品はございません。こちらも現在、国内第III相試験を実施中です。
 続きまして資料3-5、「イプタコパン」です。予定される効能・効果は、「C3腎症」で、指定難病に指定されております。本疾患は診断されてから約50%の患者が10年以内に末期腎不全に至ることが報告されており、重篤な疾患です。現在、本邦で承認されている薬剤はございません。
 本剤については、国際共同第III相試験において、主要評価項目について、プラセボとの比較で有効性が確認されており、今後、製造販売承認申請が計画されております。
 続いて資料3-6、「サトラリズマブ」ですが、予定される効能・効果は、「甲状腺眼症」で、患者数は、推定といたしましては3万6,482名から4万8,458名と推定されております。甲状腺眼症は、眼痛、眼瞼浮腫、眼瞼後退、複視等の多様な症状を呈し、中等症から重症の場合は、永続的な視力障害や顔貌の変化を引き起こす場合もある疾患です。現在、承認された医薬品はございません。国際共同第III相試験、海外第III相試験を実施中です。
 資料3-7、「ブトリシランナトリウム」です。予定される効能・効果は、トランスサイレチン型心アミロイドーシス(野生型及び変異型)で、指定難病に指定されています。
 本疾患について、現在、適応を有する薬剤として、タファミジスメグルミン及びタファミジスが承認されておりますが、本剤については、mRNAを標的としたsiRNAであり、異なる新規の作用機序を有しているものです。現在、国際共同第III相試験を実施中です。
 最後に資料3-8、「Eplontersen」です。予定される効能・効果は、ブトリシランナトリウムと同様に「トランスサイレチン型心アミロイドーシス」で、指定難病に指定されております。先ほどと同様の疾患ですが、本剤については、mRNAを標的としたアンチセンスオリゴヌクレオチドであり、先ほどと同様に既存薬とは異なる作用機序を有したものです。現在、国際共同第III相試験を実施中です。
 以上より、これらの品目については希少疾病用医薬品の指定要件を満たすと考えております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○森部会長 御説明、どうもありがとうございました。先生方から御質問、御意見がございましたらお願いいたします。それでは、議決に入らせていただきます。なお、阿古委員、佐藤直樹委員、高橋委員、中西委員、根岸委員におかれましては、利益相反に関するお申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことになっております。
 本議題について、指定を可としてよろしいでしょうか。特に御異議がないようですので、指定を可とし、薬事審議会に報告とさせていただきます。
 議題4に移らせていただきます。では、議題4について事務局から概要説明をお願いいたします。
○事務局 議題4、再審査期間延長、トリンテリックスについて御説明いたします。対象となる医薬品は、トリンテリックス錠10mg、同錠20mgで、効能・効果は現在、うつ病、うつ状態で承認されているものです。本剤について、小児に関する治験届の提出が予定されており、申請者から再審査期間の延長の希望があったものであり、再審査期間を2年間延長することが適切と考えております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○森部会長 ありがとうございました。では、委員の方から御質問はございますでしょうか。特段ございませんでしょうか。では、議決に入らせていただきます。
 本議題について、延長を可としてよろしいでしょうか。御異議はないようですので、延長を可とし、薬事審議会に報告とさせていただきます。
 続きまして議題5に移ります。佐藤直樹委員におかれましては、利益相反のお申出に基づきまして、議題5の審議の間、会議から御退出することとなっております。佐藤直樹委員におかれましては御退出をお願いいたします。
──佐藤直樹委員 退室──
○森部会長 それでは、議題5について、事務局から概要説明をお願いいたします。
○事務局 議題5、再審査期間延長の可否について、ブイタマークリームについてです。本剤は、アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬で現在承認を受けております。本剤についても小児に関する治験計画の届出が既にされているもので、申請者から再審査期間を2年間延長する希望があり、2年間の延長が適切と判断しております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○森部会長 ありがとうございました。では、先生方から御質問、御意見はございますでしょうか。特段ございませんでしょうか。それでは、議決に入らせていただきます。なお、阿古委員におかれましては、利益相反に関するお申出に基づき、議決への参加を御遠慮いただくことになっております。
 議題5につきまして、延長を可としてよろしいでしょうか。御異議はないようですので、延長を可とし薬事審議会に報告とさせていただきます。では、ロビーで御待機されています佐藤直樹委員をお呼びいただきたいと思います。
──佐藤直樹委員 入室──
○森部会長 それでは、進行させていただきます。報告事項に移らせていただきます。報告事項議題1から4について、事務局から説明をお願いいたします。
○事務局 報告事項です。まず、資料6を御覧ください。報告事項議題1、資料7の関係です。1品目めは、「キドパレン輸液」です。申請者は、「株式会社大塚製薬工場」です。申請の概要は記載のとおりですが、こちらの記載のものを効能・効果とする類似処方医療用配合剤です。2品目めは、議題2、資料8の「アジルバ錠」です。申請者は、「武田薬品工業株式会社」です。申請の概要としては、高血圧症に係る小児の用法・用量に関する変更に関することです。以上の品目については、機構における審査の結果、承認して差し支えないという判断をしております。
 続きまして、報告事項3、資料9の関係です。希少疾病用医薬品の指定の取消しについてです。対象品目は「fampridine」です。本剤は、「多発性硬化症の歩行改善」を予定効能・効果として希少疾病用医薬品に指定されておりましたが、国内第III相試験において主要評価項目を達成できず、ライセンス提携契約が終了となっていることから開発を中止することの報告がなされましたので、希少疾病用医薬品の指定を取り消すこととしたものです。
 続きまして、再審査結果についてです。次のページを御覧ください。今回、御報告する品目は上から順に「タケキャブ錠」、「キャブピリン配合錠」、「マーデュオックス軟膏」、次のページですが、「メトアナ配合錠」、「ゼンタコートカプセル」、「リアルダ錠」です。いずれの品目についても、製造販売後調査等の結果に基づき再審査の申請が行われて、機構における審査の結果、いずれの品目もカテゴリー1、すなわち効能・効果、用法・用量の変更の必要がないものとして判断しております。以上です。
○森部会長 御説明、どうもありがとうございました。委員の先生方から御質問等ございましたらお願いいたします。私から1点だけ、キドパレンにつきましては、専門協議で投与速度に関する御助言があったということですが、少し御紹介いただけますか。
○事務局 機構の担当の方、いらっしゃいますでしょうか。
○森部会長 それでは私から。投与速度を当初は緩徐にするようにという御助言があったということですので、委員の先生方に御確認させていただきたいと思います。よろしいでしょうか。それでは、報告事項については、御確認を頂いたものとさせていただきます。本日の議題は以上です。事務局から、何か報告はございますでしょうか。
○事務局 次回の部会は、令和6年8月26日月曜日、午後6時から開催させていただく予定です。よろしくお願いいたします。
○森部会長 それでは、本日は大変長時間な議論になりましたが、先生方の御意見、どうもありがとうございました。また、機構の方の御助言にも心より御礼を申し上げます。どうもありがとうございました。
( 了 )
備考
本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。

照会先

医薬局

医薬品審査管理課 課長補佐 松倉(内線2746)