薬事審議会血液事業部会令和7年度第2回運営委員会議事録
日時
令和7年9月19日(金)17:00~19:00
場所
Web併用形式
AP虎ノ門 会議室B
AP虎ノ門 会議室B
出席者
- 出席委員(7名):五十音順、敬称略 ◎委員長
-
- 大隈 和
- 後藤 智己
- ◎田野﨑 隆二
- 松下 正
- 松本 剛史
- 水上 拓郎
- 三谷 絹子
- 日本赤十字社:敬称略
-
- 谷 慶彦
- 藤田 秀行
- 早坂 勤
- 後藤 直子
- 鶴間 和幸
- 事務局:
-
- 岩崎 容子(血液対策課長)
- 金子 健太郎(血液対策課長補佐)
- 源 周治(血液対策課長補佐)
- 山本 光寿(需給専門官)
議題
- 1. 感染症定期報告について
- 2. 血液製剤に関する感染症報告事例等について
- 3. 日本赤十字社の令和6年度血液事業報告について
- 4. 細菌スクリーニング済み血小板製剤の供給について
- 5. 各調査会の概要について
- 6. その他(一部非公開)
配布資料
資料ページをご参照ください。
議事
- 議事内容
-
○源血液対策課長補佐 定刻よりも10分程度早いですが、関係者の皆様おそろいですので会議を始めさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。ただいまより、「血液事業部会令和7年度第2回運営委員会」を開催いたします。本日はお忙しい中御参集いただき、誠にありがとうございます。この度は、御参加いただく方の利便性等の観点から、Web併用での審議とさせていただきます。なお、本日の会議は議題6の一部非公開を除き、公開で行います。入退室の御案内などは、事務局からの説明をさせていただきます。また、カメラ撮りは議事に入るまでとさせていただきます。マスコミ関係者の方々におかれましては、御理解と御協力をお願いいたします。
はじめに、新たに着任された委員を御紹介いたします。薬事審議会血液事業部会運営委員会規程第3条第1項に基づき、三谷部会長より、武田飛呂城委員の御後任として、後藤智己委員を御指名いただきました。後藤委員、一言よろしくお願いいたします。
○後藤委員 後藤です。武田の後任として、今回、患者の代表の枠で入らせていただきました。まだ勉強しながらになると思いますが、是非、より良い血液事業に向けて皆様よろしくお願いいたします。
○源血液対策課長補佐 ありがとうございます。よろしくお願いいたします。次に、会議における委員の出席についてですが、委員7名全員に御出席いただいていることを報告いたします。また、本日は、日本赤十字社血液事業本部より、谷血液事業経営会議委員、藤田副本部長兼経営企画部長、早坂経営企画部次長、後藤技術部次長、鶴間経営企画部供給管理課長にお越しいただいておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
続きまして、全ての委員の皆様より、薬事審議会規程第11条への適合状況を御申告いただいており、本日の議題について影響ないことを確認しておりますので、御報告させていただきます。
委員の皆様には、会議開催の都度、書面を御提出いただいており、御負担をお掛けしておりますが、引き続き御理解、御協力を賜りますよう、どうぞよろしくお願い申し上げます。
議事に入る前に、会場にお越しいただいている委員の皆様におかれましては、本日の資料の確認をお願いします。タブレット上に1の議事次第から、13の資料6までのPDFファイルが表示されているか御確認をお願いいたします。ファイルが表示されていない場合や、不足がある場合には、お近くの職員にお声掛けください。本日は、Web併用での審議のため、対面での進行と一部異なる部分がございますので、審議の進行方法について御説明させていただきます。
審議中に御意見、御質問がございましたら、挙手等によりお示しいただきますようお願いいたします。座長から順に発言者を御指名いただきます。指名された方はマイクがミュートになっていないことを御確認の上、議事録作成のため、まずはお名前を御発言ください。ノイズを減らすため、御発言が終わりましたらマイクをミュートにしていただきますようお願いいたします。間もなく議事に入りますので、カメラ撮影はここまででお願いします。それでは、以降の進行を田野﨑委員長にお願いします。
○田野﨑委員長 皆さん、こんにちは。これまでの御説明に何か御意見や御質問があればお願いします。まず、冒頭、議題6「その他」のうちの公開部分について、日本赤十字社から御報告があります。日本赤十字社からお願いいたします。
○日本赤十字社血液事業本部藤田副本部長兼経営企画部長 日本赤十字社の藤田です。私のほうから、日本赤十字社血液事業における事態の経緯と、今後の対応について御説明を申し上げます。
この度、日本赤十字社の血液事業におきまして、続けて発生している事態について、国民の皆様に深くお詫びを申し上げます。本日はお時間を頂戴いたしまして、概要及び再発防止策について御報告をいたします。
血液事業は善意の献血によって成り立っており、国内唯一の採血事業者及び輸血用血液製剤の製造販売事業者として、今般の事態に対する原因究明及び再発防止策の徹底、厚生労働省をはじめとする関係者への報告、公表の在り方などを見直してまいります。それでは、それぞれの事態の概要・原因と再発防止策について御説明いたします。
最初に、血漿製剤の保管温度逸脱の件です。概要については、令和7年5月11日、東京都赤十字社血液センター辰巳供給出張所におきまして、冷凍庫の電力供給が遮断されたため、一時的に保管温度の逸脱がございました。そのため、保管しておりました輸血用血液製剤の新鮮凍結血漿1万3,748本につきましては、輸血用血液製剤として使用できないと判断をいたしまして、血漿分画製剤用の血漿として転用する予定としております。本件につきましては、6月10日に厚生労働省に報告いたしまして、7月23日に日本赤十字社本社ホームページで公開をしております。
原因につきましては、令和6年、昨年の5月15日の設備更新時に設備工事事業者が、冷凍庫内の温度をコントロールする制御盤内に規格外の端子台を取り付けたことによりまして、当該端子台基盤が焼損したということでした。その結果、一部制御配線が断線して電力が遮断されたため、冷凍庫の冷凍機能が停止したということでした。
この件につきまして、講じた対策としては、血液センターに設置されている血液を保管する設備及び機器に必要電圧に耐えられない規格の端子台が取り付けられていないか、緊急点検を実施しました。また、血液を保管する設備及び機器の設置状況について、電気設備設計図等々と照合する点検を実施し異常がないことを確認しております。
また、各血液センターに設置されている温度管理を要する保管機器等の全てについて、異常時における連絡体制及び夜間休日対応がマニュアルに明記されていることを確認するとともに、事故点検用のチェックリストに温度管理を要する保管機器等の異常時における連絡体制及び夜間休日対応の確認項目を追加しました。保管機器等の新設、更新等における引き渡し時の確認業務につきましては契約書、仕様書・設計書その他関係書類等に基づいて血液センターの職員が立会検査を行うことと指示をいたしました。
2つ目の事態です。献血血液の搬送遅延です。概要につきましては、令和7年8月16日、JR大森駅にて実施された移動採血車による献血において、会場から関東甲信越ブロックセンター(以下「辰巳製造所」)への献血血液の搬送時に不備があり、長時間にわたり39名様分の血液が適切に管理されない状態となりました。
○源血液対策課長補佐 現在、17時から資料6の公開資料をホームページ上にアップしておりますので、マスコミの皆様、そのほかの皆様におかれましては、そちらから御参照をお願いします。藤田様、続きからよろしくお願いします。
○日本赤十字社血液事業本部藤田副本部長兼経営企画部長 それでは、2番の献血血液の搬送遅延です。令和7年8月16日、JR大森駅にて実施された移動献血車による献血において、会場から関東甲信越ブロック血液センター(以下「辰巳製造所」)への献血血液の搬送時に不備がありまして、長時間にわたり39名様分の血液が適切に管理されない状態となりました。
通常、当該献血会場におきましては、血液引き渡し後、1時間から遅くとも2時間程度で辰巳製造所へ搬送されますが、今回、搬送事業者の搬送作業におきまして不測の事態が生じ、かつ、その事態に対しまして、血液センターの対応にも不備がございまして、最大7時間程度の遅延が発生しました。
当該血液は品質が保証できないと判断したため、輸血を受ける患者様の安全性を最優先に考え、全てを使用しないことといたしました。本件につきましては、8月18日に厚生労働省へ報告し、8月28日に東京都赤十字血液センターのホームページで公表いたしました。
原因につきましては、搬送事業者の社員が献血会場から献血血液及び検査用検体を回収し、駐車場に駐車した搬送車両に戻ろうとしたところ、駐車場所を失念しており、探し出すのに長時間を要しました。また、携帯電話は当該搬送車両内に置いたままだったため、搬送が遅延することにつきまして、血液センターに連絡することができなかったということです。加えて、搬送の遅延に対して、搬送事業者から報告がなかった場合の血液センターから搬送事業者への連絡する手順が規定されておりませんでした。
これらに講じた対策です。献血血液及び検査用検体の搬送体制や不測の事態発生時の連絡体制を含め、各血液センターにおいて現行の手順を確認し、関係職員へ周知徹底いたしました。
3つ目です。血小板振とう器の振とう停止です。概要につきましては、令和7年9月1日、兵庫県赤十字血液センター豊岡出張所におきまして、振とう保管が必要な血小板製剤が約15時間半にわたり、振とうされずに保管されておりました。血小板製剤の保管条件を逸脱したため、対象となる5本、献血者5名様分ですが、血小板製剤としては使用できないと判断して、血漿分画製剤用の血漿として転用する予定としております。本件につきましては、9月4日に厚生労働省へ報告し、9月9日に兵庫県赤十字血液センターのホームページで公表しております。
原因につきましては、血液製剤の保管機器の月次点検におきまして、保管機器内にある振とう装置に手が接触するのを避けるため、本来電源を切るべきではない振とう装置の電源を切り、点検後に電源を入れることを失念し、15時間半にわたり振とう装置が作動していませんでした。
本件に対する講じた対策につきましては、各血液センターにおいて標準作業手順書等に基づき、保管管理及び点検の手順を確認し、併せて、関係する職員に周知徹底をいたしました。
次は4点目です。使用済の針の付いた採血バッグの誤使用です。令和7年9月2日、北海道赤十字血液センター管内の移動献血会場におきまして、直前の献血者様の採血を開始したところ、血液の流出が確認できなかったため、採血を中止いたしました。その後、その際使用した採血針が付いた採血バッグを誤ってそのまま次の献血者様に使用し穿刺をしてしまいました。献血者様の健康への影響を直ちに確認するため、事故直後、使用済み採血針の付いた採血バッグの針を穿刺した献血者様の同意を得て、血液検査を実施いたしました。今回の検査では異常は認められませんでした。引き続き、健康被害の有無を把握するため、今後、6か月間の定期的な検査と経過観察を実施します。本件につきましては、9月3日に厚生労働省へ報告し、9月5日に北海道赤十字血液センターホームページで公表いたしました。
原因につきましては、使用した採血針が付いた採血バッグは、本来であれば採血を中止した時点ですぐに廃棄すべきでしたが、廃棄したものと思い込み、そのまま次の献血者様に使用してしまいました。
講じた対策につきましては、各血液センターにおいて使用済み採血針(採血バッグ)の取扱いに係る手順について関係職員に周知徹底をいたしました。
5点目です。赤血球製剤搬送時の保管温度逸脱です。概要につきましては、令和7年9月5日、九州ブロックセンター(製造所)におきまして、福岡県赤十字血液センター、供給施設ですが、こちらに血液製剤を搬送するために輸送容器に収納した際に、規定数量の保冷材を同梱せずに搬送いたしました。適切な保管温度で搬送されていないと判断し、容器に収納されていた赤血球製剤2単位で33本、献血者33名様分は輸血用血液製剤としては使用しないこととしました。本件につきましては、9月8日に厚生労働省へ報告し、本日、九州ブロック血液センターのホームページで公表します。
原因につきましては、規定された数量の保冷材が収納されていることの最終確認を怠ってしまいました。講じた対策につきましては、各血液センターにおいて、血液製剤を取り扱う全職員への教育を徹底するとともに、血液製剤の梱包に関する手順を再徹底しました。
続きまして、今般の事態を受けた血液事業全般の点検と再発防止策の徹底です。まず1つ目が、職員の意識改革です。今回発生した事態を職員一人一人が自分事として捉え、血液事業が献血者の皆様の善意により成り立っていること、国内唯一の採血事業者及び輸血用血液製剤の製造販売事業者であることの自覚を持って、日々の業務に従事するよう改めて血液事業に従事する全職員に対して、あらゆる機会を捉えて徹底をいたします。
続きまして、再発防止策の策定・徹底です。今回、発生した一連の事態に対して、再発防止策を策定し、各血液センターに徹底してまいります。続けて、再発防止策の実施を含め、業務手順書どおりに業務が遂行されているか、各血液センターの一斉点検を実施し、手順遵守を徹底してまいります。併せて、手順書、各基準書等の整備を進めるとともに、それらの遵守の徹底を図ってまいります。今般の事態に係る委託事業者から再発防止策を提出させ、再発防止を徹底させます。併せて、献血血液を取り扱う心得・取扱い等の教育を徹底してまいります。委託事業者の選定基準、契約内容及び委託事業者への教育訓練などの状況を全国統一的に点検し、手順書、各種基準等の整備を進めるとともに、それらの遵守の徹底を図ってまいります。これらの再発防止策につきまして、実施状況を適時適切に点検し、その結果を踏まえて、必要に応じて改善・強化を図ってまいります。
続きまして、ガバナンスの強化です。血液事業に関する事故や不適切な事態が生じた場合の報告、公表、対応措置の実施等に対する手順等の点検及び整備を進め、迅速な意思決定及び対応が図られるよう体制を確立します。血液事業の安全管理体制を確固たるものとするため、その統括を目的とした血液事業本部の組織強化を行い、血液事業の遂行に係る事故や不適切な事態の未然防止、再発防止及び血液事業安全の意識醸成の徹底をしてまいります。内容は以上です。なお、本日17時30分より厚労省記者会におきまして、この一連の事態に係る説明会を予定しておりますことを申し添えます。以上です。
○田野﨑委員長 どうもありがとうございました。委員の先生方から何か御質問、コメントなどがあればお願いいたします。いかがでしょうか。松本委員、お願いいたします。
○松本委員 松本でございます。こちら、1つ目がFFPの保管温度逸脱、2つ目が献血会場からの搬送遅延、3つ目が血小板振とう機の振とう停止、4つ目が採血バッグの使用済の針を使ってしまったという誤使用、5つ目が赤血球の保管温度の逸脱ということなのですが、半年もたたないうちに5件ということで多いなとは思うのですけれども、これまでこういうことはこの血液事業部会の運営委員会でも余り報告が上がってきたことを記憶していないのですけれども、同じようなことがそれぞれこれまでどの程度起こってきたのでしょうか。また、それについて全国の血液センターにきちんと情報共有をして、再発防止策をこれまできちんと取ってこられたのかということをお尋ねしたいと思います。
○日本赤十字社血液事業本部藤田副本部長兼経営企画部長 ありがとうございます。まず1件目の血漿製剤の保管の逸脱につきましては、原因といたしましては規格外の端子、具体的に言いますと本来200ボルトの部品が100ボルトのものが付いていたということだったのですが、これにつきましては、正直これまで経験はありませんでした。初めての経験でした。
2件目の搬送の遅延ですが、今回、搬送事業者の方が駐車場を長時間にわたってなかなか見付けられずにということでしたが、こちらにつきましてもこれまでほとんど経験はありませんでした。血液の搬送につきましては天候や道路事情等で遅れるというのは年に数回起こるのですが、血液が使用できないような状況になるほど遅延するということは基本的にはなかったと思っております。
ただ、この1件目と2件目につきましては、原因としては委託業者ですが、やはり我々日本赤十字社といたしましても監督責任というのは痛感をしているところですし、原因はそこにあったとしても、我々のほうでも不備等がありましたので、そこは改善をしてまいりたいと思っております。
血小板の振とう機の停止ですが、こちらにつきましては、これまで何件あったかという事例件数については捉えておりません。申し訳ございません。4件目の使用針の付いた採血バッグの誤使用につきましては、全ての件数を捉えているわけではありませんが、平成27年に同様の事例が血液センターで起こっておりました。5番目の赤血球製剤の搬送時の保管温度の逸脱につきましては、容器の中に規定の数の保冷剤を収納しなかったという事例ですが、これにつきましては過去にも数例起こっております。申し訳ございません、数字までは捉えておりませんが、数例起こっていると認識をしております。
これまで血液センターから本部への報告、血液事業本部から厚労省への報告の基準が余り明確ではなかったというのは事実です。ですので、実際に報告をされていない。我々が捉えていない、また厚労省に報告していないという事案が過去には散見されたのだという認識でおりますので、今後はその辺の基準をしっかりと作らせていただいて、しっかりと公表、報告をしてまいりたいと考えております。以上です。
○田野﨑委員長 ありがとうございます。医療機関も含めて、こういう事例というのはやはり共有する、ヒヤリハットから、事故が起こる前から情報を共有して、こういう事例があったということを皆で受け止めて、それで今後のことに活かしていくということを、やはり医療機関と同様に日本赤十字社内でもやっていただきたいというのは希望いたします。よろしくお願いいたします。
○日本赤十字社血液事業本部藤田副本部長兼経営企画部長 ありがとうございました。インシデントを管理するシステムは持っておりますが、それを活用できる仕組みというのが正直薄かったと考えております。それで、まず9月に組織の強化といたしまして、血液事業本部に血液事業の安全を推進するチームを立ち上げましたので、今後はそちらのほうで、先生から御指示いただきました内容を詰めていければと思っております。ありがとうございました。
○田野﨑委員長 どうもありがとうございました。水上委員、お願いいたします。
○水上委員 ありがとうございます。ほとんど松本委員からの質問と同じなのですが、やはり、ヒヤリハットも含めて、逸脱報告というのをできるだけ多く集めて、品質管理、品質保証部門が精査しながら、適切に処理されているかということがきちんと上がってきて、それが1年に1回なりのマネジメントレビュー等である程度組織的にきちんと管理される、そういったことが適切にされているということが非常に重要かと思いますので、これからのチームの中で組み入れていただければと思います。よろしくお願いいたします。
○田野﨑委員長 よろしくお願いします。松下委員、お願いします。
○松下委員 松下です。ありがとうございます。2点、質問があります。最初に、搬送を委託されている方が駐車場所を忘れてしまったという話なのですが、受け取ってから何時間以内に届けるというルールは特になかったのですか。
○日本赤十字社血液事業本部藤田副本部長兼経営企画部長 特に何時間以内というルールはありませんでした。ただ、通常の搬送の中で、もし30分以上業者の方が搬送時間が遅れるという場合は業者の方から連絡を頂けることになっておりましたが、今回、事業者の方が携帯電話を車の中に置き忘れたということで連絡がありませんでした。ただ、我々としても、もし連絡が来なかった場合の、長時間搬送が遅れた場合の手順等もありませんでしたので、そちらにつきましては、今回、改めて作らせていただきました。
○松下委員 分かりました。もう1つは全体的なことなのですが、先ほども先生方がおっしゃられていますけれども、医療機関だとインシデントレポートシステムというのが大体あって、今、聞いていますと日本赤十字社にもそういうのがあるということだったのですが。患者さんに影響があるないにかかわらず、ヒヤリハット的なことも含めてレポーティングしてもらうという、職員にそういう報告文化をしっかり分かってもらうということを、どこの医療機関も医療事故の防止のためにずっとやっています。
どうしても報告というのは、直属の上司に報告するとかいうのはともかくとして、人事上の報復があったり、そういうことで報告文化がなかなか育たないような組織になってしまっているところもあるので、ある程度、報告者の匿名性を保つとか、レポートは安全管理部門や品質管理部門に直接上がるような形にして、インシデントの影響度や緊急時の高いものから対策を考えていくというサイクルを回していかないと、大きな組織なのでなかなか業務も改善しないし、効率化もしないということになるのかなと思います。でも、全国的な組織なので、恐らく各地域、各都市のセンターで、伝統的にやってきたような作業手順とかも多分あると思うので、それに関して、うちはこういうふうにしていますということだけではなく、問題点をよく洗い出して、できれば同じような手順にしていかないと、なかなか組織が健全化しないということもあると思うので、そういった観点で今後また改善に努めていただければいいかなと思います。以上、コメントでございました。
○日本赤十字社血液事業本部藤田副本部長兼経営企画部長 松下先生、どうもありがとうございました。貴重な御意見を頂きましたので、参考にさせていただき改善に努めたいと思っております。ありがとうございます。
○田野﨑委員長 どうもありがとうございます。大隈委員、お願いいたします。
○大隈委員 関西医科大学の大隈です。よろしくお願いします。1つ目は皆さんが質問されていることと似た質問ですので省略させていただきます。2つ目は血小板振とう機の停止についてですが、これはどれぐらいの時間の後に気付かれていたのか。1回切ったとしても、それを再度ちゃんと振とうしているかどうかをチェックするような仕組みというのは、もう既に対策が出ているかとは思いますが、そういったものは現在あるのかどうかということを教えてください。
○日本赤十字社血液事業本部藤田副本部長兼経営企画部長 振とう機につきましては、夕方に月1回の月次点検を行いました。そのときに、本来であればスイッチは切らないという手順だったのですが、担当した者がスイッチを切ってしまったと。その後入れ忘れたまま、次の朝の二次点検まで気付かなかったということでした。ですので、時間としましては大体15時間ぐらい振とうされない状況が続いたということです。日常点検のチェックに振とう機が動いているかを確認するというチェックが当時ありませんでしたので、今回の事例を受けまして、そこもチェックするような仕組みを取り入れております。
○大隈委員 それを入れれば、問題が解決しそうということでよろしいでしょうか。
○日本赤十字社血液事業本部藤田副本部長兼経営企画部長 それをするだけで全てがとは思っておりませんけれども、まずはできることからということで、そのリストを変えさせていただきました。それともう1つは、今回、夕方5時30分頃に点検をしたのですが、月例点検につきましては、職員が多くいる日中帯に営業所管理者が立会いの下で点検をするというふうに手順を変更させていただいております。
○大隈委員 分かりました。ありがとうございました。
○田野﨑委員長 どうもありがとうございます。三谷委員、お願いします。
○三谷委員 ありがとうございます。今回、5件の御報告をしていただいたわけですが、先ほど藤田副本部長がおっしゃったように、最初の2件に関しましては委託事業者の関与が非常に大きいと思います。ただ、余りにも稚拙なミスで非常に驚いています。業者のほうからも再発防止策を提出させ、今後再発防止を徹底させるということでお書きいただいているのですが、具体的にどのような再発防止策を出してきたのか、是非、教えていただきたいと思います。それから、今回の事態を受けまして、やはり委託事業者を選定する基準とかプロセスについて少し教えていただけましたら有り難いです。お願いします。
○日本赤十字社血液事業本部藤田副本部長兼経営企画部長 1点目の保冷庫の部品の間違いということですが、こちらにつきましては、今、委託業者のほうから再発防止策を頂いておりますが、その確認は今、実施をしているところです。具体的に申しますと、まず1つは、間違った部品が現場に届かないように内部で品質管理を徹底するということを行っていただいています。今回は夜間帯に保守業者の方が来られたのですが、保守業者の方が来られたときに適切に対応できるマニュアルを整備して基盤の中に入れていただくという改善をしていただいております。
それから、連絡体制は、これまでは一旦コールセンターに血液センターから連絡して、そこからという流れだったのですが、今度は、直接保守業者の方に連絡するような体制に変更になっております。まだ全てが全て確認できておりませんが、今後も引き続き改善をさせていただければと思っております。
それから、搬送の遅延につきましては、今回、携帯電話を車の中に置かれたということで、今後は、業務中はネックストラップに携帯を掛けるような手順に変更していただくとか、名札の裏に緊急連絡先を入れていただくとか、そういうことを現在行っております。まだ確定ではありませんが、車両にGPSのようなものを積んで状況が分かるようなものも導入したいという御意見も頂いております。以上です。
○三谷委員 ありがとうございます。実際に現場に端子を付けに来られた方とか、あるいは搬送に携わっている方が少し業務に対するレベルが足りなかったのかなという気がしますので、委託業者さんにまずそこから御検討いただけると有り難いと思います。また、その業者さんを選定しているのはやはり日本赤十字社なので、見直しをお願いいたします。
○日本赤十字社血液事業本部藤田副本部長兼経営企画部長 ありがとうございました。その件につきましても、委託業者のほうにも教育訓練は実施しておりますが、まだその全国統一的なものがありません。ですので、その中に、血液が本当に大切なものなのだということも教育内容にしっかりと全国統一的に含めてまいりたいと考えております。
○田野﨑委員長 どうもありがとうございました。後藤委員、どうぞ。
○後藤委員 私からは、今回、5件報告を頂いたところなのですが、1件目だけ事象の発生から厚生労働省への報告まで少し間があったということで前回の事業部会でも指摘させていただいたのですが、その後のケースについては数日以内に御報告いただいているということで、そういった改善がされたのかと理解しているところです。
今後についても、どうしても人間がやることである以上は起こり得ることだと思いますので、こういった報告や公表を明確に基準化されてやられるというお話だったので、その辺りをしっかりやっていただいて、またその基準であるとか、報告することについて明確に公表していただき、それを受けた厚労省のほうでも、これを毎回全ケースを運営委員会に掛けるという話でもないかと思いますが、どういったところが必要なのかということを、また報告を受けて、委員とも相談しながらどのような取扱いをしていくかというところを御検討いただければと思います。よろしくお願いいたします。
○日本赤十字社血液事業本部藤田副本部長兼経営企画部長 承知いたしました。
○田野﨑委員長 どうもありがとうございました。医療機関の中では、全くこういうインシデント・アクシデント報告はごく常識的なことであって、なるべく多くのインシデント・アクシデントを上げましょうということで、相当な数が上がってきて、その中でどういう対策を取ったらいいかというのを日々検討をしています。今回、2例目から4例目に関しては、ほとんど明らかなヒューマンエラーかなというものでもありますし、ふだんよく起こるものではあるということで、今後9月から対策チームを立ち上げてあるということを伺っておりますので、これを定期的に上げていただいて、厚労省のこの委員会の中でもレビューさせていただいたりしながら、それで進めていくのがいいのかなと思いました。今後とも進捗の報告など御報告いただければと思います。
そうしましたら、議題6「その他」のうちの非公開部分については本会議の最後の議題として取り扱いますので、続いて議題1、感染症定期報告について事務局からお願いいたします。
○源血液対策課長補佐 資料1-1、感染症定期報告を御覧ください。感染症定期報告で、研究報告概要一覧となります。今回は令和7年3月から令和7年5月の受理分となります。今回は10本の論文になります。
1ページです。1ページは、ウイルスに関する論文4本になります。1番はTransfusionより、ヒトパルボウイルスB19の流行のリバウンドと、血液製剤及び血漿分画製剤の安全性への影響についてです。欧州においてCOVID-19のパンデミック以降、B19ウイルス感染の顕著な増加が報告される中、中央諸国と米国の採漿施設における血漿提供者のB19ウイルスの陽性率を調べ、血液製剤に対する安全性への影響についての報告となっております。
続いて、2番目です。Emerging Microbes&Infectionsより、韓国における新たなヒトコロナウイルスによる感染報告です。このウイルスはアルファコロナウイルスファミリーに属しており、肺炎症状のある生後103日の乳児から検出されました。これまでにヒトでの感染に関する報告はありません。げっ歯類から分離されたウイルスに類似するもので、今後も追加情報を注視する必要があります。
3番目の論文です。Emerging Infectious Diseasesより、アメリカにおけるオロプーシェウイルスの再出現と、米国及びその領土における感染拡大のリスクについてです。本稿ではオロプーシェウイルスに関する情報、その拡大に影響する因子、米国における伝播リスク及び公衆衛生対応策の現状に関する報告となります。
4番目の論文です。ProMED-mailからです。ブラジルにおいて、オロプーシェウイルスの初めての垂直感染例が確認されました。妊娠中のオロプーシェウイルス感染により、死産に至った症例の報告です。調査結果では妊娠中のオロプーシェウイルス感染のリスク、又は本ウイルスが流行している地域、新たに出現した地域に居住している又は訪問し、発熱やその他の疑わしい症状を呈する妊婦においての本感染を考慮する必要があると強調しています。
2ページです。こちらもウイルスに関する論文4本で、5番目の論文です。The Journal of Infectious Diseasesより、イスラエルにおけるポックスウイルス、IsrRAPXVによる初めてのヒト感染に関する報告となります。考察では、今回の所見からIsrRAPXVが病気の哺乳コウモリからヒトに伝播し、哺乳コウモリの翼の病変に直接手を触れるか、咬まれることによって起こる可能性が高いことを示唆しています。ポックスウイルスは種の壁を超えることができ、ヒトに脅威を与えます。今回報告された症例とその同僚は自己限定的な軽度の感染症であり、ヒトからヒトへの感染の証拠は認められませんでした。この論文では調査結果やコウモリの人獣共通感染症のリスクを考慮し、コウモリとヒトとの交流に関する公式な安全ガイドラインを公衆衛生当局が発行することを強く推奨しているというものになります。
6番目の論文、ProMED-mailからは、中国において、オルソナイロウイルス属Wetland virusの初めてのヒト感染例報告です。本ウイルスは、中国でダニに刺された男性から発見されました。Wetland virusはナイロウイルス科のオルソナイロウイルス属に属し、クリミア・コンゴ出血熱ウイルスを含むダニ介在性のハザラオルソナイロウイルス遺伝子群に最も近縁であると、著者らは指摘しています。研究者らは、ダニが動物にWetland virusを伝播し、その後、卵巣を通じて子孫における伝染の可能性があると述べています。
7番目の論文もProMED-mailで、中国における新規のオルソナイロウイルス、Xue-Cheng virusによる初めてのヒト感染に関する報告です。調査データでは発熱性疾患の原因として、ダニ介在性のオルソナイロウイルスの新たな種の存在を示唆しています。
8番目の論文で、Medical Virologyより、中国の急性呼吸器疾患患者の呼吸器から発見された新しいウイルス、Restvirusについての研究報告となります。Restvirusのゲノムは、ほかのStatovirusと比較して、異なる進化系的な特徴を持ち、呼吸器疾患の原因となる可能性があるとされています。今後も追加情報を注視する必要があるとされています。
3ページで、これ以降はウイルス以外となります。9番目の論文ではTransfusionより、米国の献血者における梅毒陽性及び偽陽性の傾向についてです。背景として、米国の献血者は梅毒検査を受けています。ここでは最近及び過去の梅毒感染が陽性であった献血と、梅毒偽陽性と分類された献血について説明されています。11年間のアメリカ赤十字の全ての献血について集計され、梅毒反応陽性と検査された献血者の人口統計、特徴と長期的傾向が評価されています。結果として約5,300万件の提供が含まれ、梅毒感染合計1万365件、偽陽性は4万8,719件でした。結論では、献血者の梅毒感染は、米国の人口動向と並行して増加傾向でした。
最後、10件目の論文です。Emerging Infectious Diseasesより、フランスの74歳の女性がPasteurellaceae科に属する新しい細菌、Emayella augustoritaに感染した報告です。今後、こちらも追加情報を注視する必要があります。研究報告概要一覧については以上となります。本文、資料№1-2に載っておりますので、詳しくはそちらを御覧ください。
4ページからが感染症の定期報告の個別症例報告概要、外国症例の一覧となります。こちらも令和7年の3月から5月の受理分で、今回9例報告されていますが、1~5例目まで同じ方で、6~9例目までが別々の方ということになります。これについては、個別の症例について説明は割愛いたします。資料№1-1、1-2についての説明は以上です。
○田野﨑委員長 御説明ありがとうございました。ただいまの説明について、水上委員から追加で御発言をお願いできればと思います。
○水上委員 本日は、大きく分けて2つの内容についてコメントしたいと思います。1つは、SFTSを含めた、このダニ媒介性のウイルスについてと、もう1つは、近年増加しております梅毒についてです。
まず、この文献6のWetland virusですけれども、以前、中国の内モンゴル自治区でダニ刺咬歴のある発熱患者から発見された、ナイロウイルス科オルソナイロウイルス属に属するダニ媒介性の新たなウイルスです。中国東北部で、ダニ刺咬歴のある発熱者682名でPCR検査を行ったところ、2.9%、約20名がWetland virus陽性ということでした。また、5種類のダニ、特に一番多かったのがフタトゲチマダニで6.4%ということで、それ以外にもヒツジ、ウマ、ブタ、ヒガシモグラネズミなど、多くの哺乳類からも検出されております。
この分離されたウイルスは、ヒトの臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)において細胞変性効果を示し、ほかの様々なヒト由来の細胞、それからサル由来細胞、マウス由来細胞、イヌ由来細胞、様々な哺乳動物由来細胞に対して感染性を示すとともに、マウスの感染実験においては致死性を示しておりました。これらの結果から、このWetland virusは、ヒトに対して病原性を確実に有し、ヒト、ダニ及び様々な動物の間で循環しているということを示唆しております。
また、このWetland virusはクリミア・コンゴ出血熱ウイルスを含むダニ媒介のハザラオルソナイロウイルス遺伝子族に最も近縁で、このクリミア・コンゴ出血熱と多数の臨床的・検査的な特徴を共通しております。この血小板減少症を伴う重症熱性症候群や、斑状熱などのほかのダニの媒介性疾患との鑑別診断も必要となってくることが考えられます。媒介するイスカチマダニはヨーロッパやアジアの広大な地域に生息することが知られておりますので、このWetland virusについては、今後も情報収集を行っていく必要があるかと思います。
文献7のXue-Cheng virus(XCV)ですけれども、同様にダニ媒介性ウイルスに関する文献で、中国東北部においてダニ刺咬歴のある発熱患者からのスクリーニングによって同定されたという論文になっております。こちらは血漿サンプルのメタトランスクリプトームシーケンス解析というものを行って、de novoアセンブリー法で、このナイロウイルス科オルソナイロウイルスに属するということが分かりました。しかし既知のウイルスと比べますと、特にこのRNA依存性RNAポリメラーゼのアミノ酸配列の相同性は75.6%未満ということで、新種に分類されております。
その後、792名の血漿サンプルを用いて、このXCVの調査が行われた結果、実際に26例の方がXCV感染をしているということが分かりました。イスカチマダニ、ヤマトチマダニからもこのXCVが検出されておりまして、このXCVがヒトへの病原性を有する新たなダニ媒介性ウイルスであるということが示されております。本ウイルスにつきましても、Wetland virus同様に継続した情報収集が必要と考えられますが、現時点では新たな安全対策上の措置を講ずる必要はないというように考えております。
追加情報としての資料はございませんが、SFTSにつきまして近況を御報告したいと思います。御存じのとおり、SFTSウイルスは、この文献6、7と同様に、2011年に中国の研究者によって発見されたウイルスです。その後、2013年に国内でも発生し、海外渡航歴のないSFTS症例が初めて報告されて、2013年3月には、SFTSが感染症法の4類感染症と全数把握対象疾患に定められております。現時点、2025年7月31日までの報告で1,185例、男女比は1対1で、届出の年齢長値が75歳ということで、特に50歳以上の方での感染例というのが増えております。致死率ですけれども、以前、少し高いという報告もあったのですけれども、最近の報告がまとまってきますと10.6%ということで、中国からの報告とも大体類似する結果となってきております。
御存じのとおり、ニュース等でも出てきているとおり、感染者が非常に増加傾向にあるということと、一番大きいのは、やはりこの感染地域が拡大しているということとなります。昨年度までは西日本が中心でしたけれども、本年度になりまして、岐阜県、神奈川県、栃木県、茨城県、秋田県、そして北海道からも届出が出ておりまして、今まで西日本に限定していたというように考えられていたのですけれども、東日本にも感染地域が拡大している可能性が示唆されておりまして、今までより一段と、また流行地が変化しているということがうかがえます。
このウイルス自体はエンベロープを有することからも、製造工程で行われる熱処理やS/D処理、エタノール処理によって容易に不活化されますので、血漿分画製剤では特に問題はないかと思います。また、この感染者の年齢分布等を考慮すると、現在の問診等で一定程度、対応できるのではないかというようには考えられますが、今後も発生動向を注視していく必要があるというように考えております。
最後、文献9の梅毒トレポネーマについてお話したいと思います。この文献9では、American Red Crossの過去11年の献血データをまとめて、この梅毒陽性及び梅毒偽陽性FPと分類された方の献血の傾向についての調査結果の報告となっております。米国では、まずこのスクリーニングの第1段階といたしまして、梅毒凝集反応検査というものが行われております。この検査はトレポネーマ抗原、TPHA検査法又はトレポネーマ赤血球凝集試験とも呼ばれまして、梅毒トレポネーマ抗原を検体、いわゆる赤血球に添加して、凝集の有無で患者血清中に抗体があるかというものを判定する方法になります。
米国では、2013年から2022年まではPK7300という自動マイクロプレートシステムを使って、このPKTP凝集反応が実施されております。その後、2022年からPK7400というマイクロプレートシステムに置き換えられ、以降はTPHAによる検査が実施されております。
その後、ステップ2として、ステップ1で陽性だった検体につきましては、EIA法によるCAPTIA梅毒-G EIA検査というものが実施されております。この確認試験で陰性となった場合は、梅毒偽陽性というように判定され、以降の検査は実施されません。また最終的にステップ3として、ステップ2の確認検査で陽性又は疑わしい結果となった検体のRPR(rapid plasma reagin test)の検査が行われ、献血者が感染したかどうかというのが判断されます。
このRPRは、皆さん御存じのとおり、梅毒感染時に生体で生成される脂質抗体、カルジオリピンの有無を調べる検査となっております。脂質抗体は、感染後約2週間後に上昇し、RPRの結果が陰性の場合は、過去に感染した可能性が高いか、感染のごく初期又は非常に後期ということを示しているかと思います。
本文献では、5,300万件の献血者を対象に調査を実施し、この梅毒陽性者が総献血者の0.02%、約1万例ですね。このFPの陽性者が0.09%、4万8,000件ということで、この梅毒陽性群では、特に特徴としては男性が多く、25~54歳の黒人、ヒスパニック系、初回献血者、南部出身者及びHBV、HCV、HIVのNAT陽性者の割合が非常に高かったということが示されております。FPの陽性者におきましても、HCV、HIVのNAT反応性と有意な差が確認されております。
今回の論文で非常に興味深いのが、このFP陽性となった献血者が、その後の献血において7.7%、再度FP陽性となり、0.03%が新規感染、0.2%が既往の感染と分類され、この梅毒陽性率は、合計で0.3%となっております。これらの陽性率というのは、先ほどの全献血者での陽性率に比べて、梅毒陽性率で15倍、既往感染率に限って見れば20倍高くなっております。この結果から、著者らはFP陽性者は献血延期の対象とはならないが、繰り返しFP陽性となった場合には、最終的に献血延期の対象となる可能性があるというように考察しております。
先ほどお話あったとおり、米国では新規感染は着実に増加しており、11年間でほぼ倍増しております。また興味深いことに、季節的なFPの増加というのが2013年、それから2017年~2022年の秋に周期的に観察されております。著者らは、これがワクチン接種の時期と一致して季節性があり、観察されたFPの急上昇と時間的に一致することを考慮すると、恐らくインフルエンザの接種が関与している可能性があるというように述べております。
1990年代の調査では、インフルエンザワクチン接種が、献血スクリーニング検査、この抗体検査におけるFP陽性と関連するということが示されており、ワクチン接種によって産生されたIgMが、検査キットのプラスチックに非特異的に結合して、ヒトIgMとして検出されることが確認されております。
そのほか、最近ですと、COVID-19のmRNAワクチンにつきましても、ワクチンを接種された38人中7名、約18%で、接種後にRPRが陽転化し、これらは全て偽陽性であったという報告があります。COVID-19ワクチンも影響している可能性が考えられます。こういった季節的な増加は、2022年以降、減少しておりますが、これはPK7400がTPH試験に変更されたことによるものではないかというように考察されております。
米国では、過去60年間、輸血による梅毒の感染というのは報告されておりませんが、今後も採血機関はこの売血献血者の陽性率とFPの陽性率の変化について、警戒を怠らないことが重要だと警告をしておりました。特にFP陽性率の変化は、検査法を変更した際に、重要な指標となる可能性が考えられますので、今後も日本におきましても、梅毒の発生動向とともに、こういった検査方法、検査制度に関する情報については、情報を収集して注視していく必要があると考えております。コメントは以上となります。
○田野﨑委員長 どうもありがとうございます。大変詳細な御説明で、ありがとうございます。委員の皆さん、よろしいでしょうか。そうしましたら、今後とも事務局におかれましては、感染症定期報告をよろしくお願いいたします。
次、議題2、血液製剤に関する感染症報告事例等に移りたいと思います。資料の御説明、事務局よりお願いします。
○源血液対策課長補佐 議題2、血液製剤に関する感染症報告事例です。資料2-1を御覧ください。血液製剤に関する医療機関の感染症報告事例等についてです。
まず、3月~5月の感染症報告事例のまとめ及び一覧の1ページ目、3月~5月にあった感染症報告が(1)~(4)、HBVが1件、HCVが1件、HIVは0件、その他が3件でした。その3件のうち、細菌等が2件、HEV感染が1件でした。
2番目はHBV、HCV等についての個別のものになります。2、HBV感染について、1件のうち、献血者の保管検体の個別NAT陽性は0件、劇症化又は輸血後に死亡したとの報告を受けた事例は0件でした。HCVに関して、1件のうち、献血者の保管検体の個別NAT陽性は0件、劇症化又は輸血後の死亡は0件でした。HIVは0件なので割愛いたします。
そのほかの3件ですが、B型肝炎及びC型肝炎以外の肝炎ウイルスは1件、こちらはHEVでした。細菌等の感染報告2件については、当該輸血用血液の使用済みバッグを用いた無菌試験の陽性は0件、このうち、輸血後に死亡したとの報告を受けた事例は0件でした。次のページからは症例の各論が載っていますが、こちらの説明は割愛いたします。
続いて、資料2-2の御説明をいたします。供血者からの遡及調査の進捗状況等についてです。1ページ目、供血者から始まる遡及調査の実施状況です。一番右が今年4月~6月の速報値です。それぞれの数値の御説明はしませんが、この期間でこれだけの数の調査がありました。そのうち、医薬品副作用感染症報告を行ったものとしてHBVが1件ありました。この1件については、その下の2番の表と3番の表がありますが、3番の表に含まれています。こちらは、個別NAT結果が陰性の輸血用血液製剤の投与により受血者の陽転が確認されたものです。こちらは院内で使用されていました。
2ページ目、医薬品医療機器等法第68条の11に基づく回収報告状況です。個別の製剤についての説明は割愛しますが、全部で26本ありました。事務局からの説明は以上です。
○田野﨑委員長 どうもありがとうございました。委員の皆さんから、何か御質問、コメントがあればお願いしたいと思います。HBVの感染が受血者に遡及で1件あるようですが。こちらに関して、その後、もし重篤になっているのかといったような情報を持っていれば、日本赤十字社のほうからコメントをお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
○日本赤十字社血液事業本部後藤技術部次長 日本赤十字社の後藤です。遡及調査で判明した事例については、フォローしていく中で受血者の方の陽転が認められるということで、治療も早くスタートできることになりますので、重篤化した事例というのはありません。
○田野﨑委員長 どうもありがとうございました。ほか、よろしいでしょうか。事務局においては、今後とも感染症症例や遡及調査の結果の報告をお願いしたいと思います。
次に、議題3、日本赤十字社の令和6年度血液事業報告についてに移ります。日本赤十字社から御説明をお願いいたします。
○日本赤十字社血液事業本部藤田副本部長兼経営企画部長 日本赤十字社の藤田です。私のほうから、令和6年度血液事業の取組について御報告申し上げます。
次のスライドをお願いいたします。はじめに、令和6年度事業概況です。令和6年度も血液製剤の安定供給に努め、血漿分画製剤用原料血漿も計画どおり供給をいたしました。
次のページから供給量と採血実績の詳細について御説明いたします。はじめに、輸血用血液製剤の供給実績です。令和6年度は、グラフの一番右側でお示ししていますが、合計で1,737万単位を供給いたしました。令和5年度と比較すると、赤血球、血漿はやや増加していますが、血小板が減少しております。これについては20単位、15単位という高単位血小板製剤の保険査定の影響と考えております。
次のページです。こちらは、分画製剤用原料血漿の供給と確保実績です。令和6年度は令和5年度と同様に、国内の製薬メーカーさんに120万Lを供給いたしました。免疫グロブリン製剤の需要の増加に伴い、原料血漿確保量も増加するため、日赤では、メーカーへの供給量に4.3万Lを上積みして124.3万Lを確保いたしました。
次のページです。こちらは採血実績です。令和6年度はグラフの一番右側でお示ししておりますが、先ほど御説明した輸血用血液製剤と原料血漿を確保するため、合計で498.7万人の方に献血に御協力いただきました。
次のページです。こちらは献血量と献血者数の推移のグラフです。最上段の赤色の折れ線グラフは献血量、緑色は献血者数の推移を示しており、ここ数年、大きな変化はありません。下の棒グラフは献血量の内訳を示しており、ここ数年は、ブルーの原料血漿献血量がピンクの輸血用血液製剤用の供給量を上回る状況が続いております。令和6年度の供給実績と採血実績については以上です。
次のページです。ここからは令和6年度の主な成果について御説明いたします。はじめに、若年層を中心とした各年齢層への献血推進です。令和6年度は、年間献血推進方策を中心に、主に、スライドでお示ししている3つの事項に取り組みました。
次のページからは、各取組と詳細について御説明をいたします。はじめに、年間献血推進方策です。令和6年度は、若年層をはじめとした全ての年代を対象に、献血に賛同いただけるような方策を実施してまいりました。
次のページです。こちらが実施内容です。令和6年度から「THINK!献血」をキャッチコピーとし、「献血しよう」から「まずは考えてみよう」と、ハードルを下げた呼び掛けで、献血のことを少しでも考え、自分事化につなげていくことをコンセプトとし、献血が減少する時期に重点的に施策を展開いたしました。
次のページです。こちらは、初めての試みとなった新幹線の車内における広報です。東京~博多間の新幹線の車内にポスターを掲出したり、電光掲示板において献血を呼び掛ける広報を実施いたしました。
次のページです。8月21日の献血の日の施策です。献血の日の由来をマンガでデザインしたうちわを作成し、8月21日前後に甲子園駅付近で合計1万枚を配布いたしました。
次のページです。こちらは、毎年実施をしている「はたちの献血」キャンペーンです。令和6年度は、若年層に波及性の高いアニメーションを初めて使用し、自分も人の役に立つことができるという気持ちを描くことで、20代前後の若者からの共感を得られるような広報展開を実施し、SNS等では多くの反響を頂きました。
次のページです。2つ目として、若年層への献血啓発のために献血セミナーで活用する動画の作成です。実際の献血者の方数名に御出演いただき、質問に回答していただくインタビュー部分と、初めての献血に密着する形で献血の流れを説明する構成となっております。
次のページです。3つ目は、大勢川崎病支援プロジェクトです。こちらは読売巨人軍の大勢選手が生後7か月で川崎病を患った経験から、川崎病患者の支援のための活動をしたいと申出を頂き、プロジェクトを実施することとなりました。本プロジェクトにおいては、川崎病について認知いただき、川崎病の患者の方を支援するとともに、献血の必要性も呼び掛けております。
次のページです。続いての取組は、医療機関との連携です。医療機関の満足度及び血液事業に対するニーズを調査・分析することを目的に、3年に1回実施している医療機関意識調査と医療機関との相互理解を目的とした情報媒体の発行に取り組みました。
次のページからは内容について説明いたします。1つ目の医療機関意識調査の概要です。今回の調査は、医療機関637施設を対象に実施し、612施設から回答がありました。また、初めて輸血責任医師に対してもアンケートを実施いたしました。
次のページです。こちらは参考として調査項目と設問内容の一覧です。血液製剤の発注の際、医療機関に使用いただいているWeb発注システムについてシステムの改修を行ったこともあり、満足と回答していただいた割合が前回の調査時より大きく増加しました。赤血球製剤の有効期間延長についても、廃棄量が減少したり、院内の在庫調整がしやすくなったなどの声も頂きました。
このような取組の結果、日赤が実施している血液事業についての総合的な評価も前回の調査時から向上しました。今回の調査で医療機関から頂いた御意見については、令和7年度の血液事業本部の重点項目として改善に取り組んでおります。
次のページです。こちらは、医療機関との相互理解を目的として発行した情報媒体です。令和6年度は2回発行しており、今後も定期的に発行し、医療機関とのコミュニケーションに努めてまいります。
次のスライドです。3つ目の主な取組としては、輸血後副作用の減少を図る安全な輸血用血液の供給です。令和6年度も細菌スクリーニング血小板製剤の導入に向けた準備を進め、令和7年7月30日から供給を開始いたしました。
次のページです。ここからは、令和6年度血液事業特別会計歳入歳出決算の状況です。まず、上段は収益的収入支出の決算額ですが、収益的収入の合計は1,656億円であり、昨年度に比べ8億円の収入減でした。次に、収益的支出合計は1,525億円であり、昨年度に比べ49億円の支出減でした。
これらの結果、令和6年度の収支差引額については131億円となり、昨年度に比べ40億円の黒字幅が増加しております。ただし、こちらの主な要因は、次のスライドでお示しするように、退職給付にかかる決算整理が主なものであり、キャッシュの増加を伴わない黒字要因でした。
次に、下段が資本的収入支出の決算額ですが、令和6年度は214億円という結果でした。それぞれの内訳はスライドにお示ししたとおりです。
続いて、令和5年度事業収支との比較です。事業収益全体としては、前年度と比較すると4億8,000万円の減収でした。次に、事業費用全体としては50億円の減少です。それぞれの主な要因としては、スライドにお示しした、先ほどお話したとおり最も影響が大きかったのは、右の黄色の枠で記載している退職給付にかかる決算整理による人件費の減少でした。昨年度も退職給付にかかる決算整理で42億円ほど人件費が減少しましたが、今年度はそれを更に上回って93億円ほど人件費が減少しました。ただし、これらは会計上の処理で、キャッシュの増加に伴うものではありません。
次のページです。最後に収支状況の推移です。広域事業運営体制に移行した平成24年度から平成27年度までの間、ブロック血液センターの整備、血液事業情報システム導入等の投資のため、一時的に赤字決算が続いておりました。その後は、事業効率の改善や当該投資に係る減価償却費の減少、施設整備の凍結等の結果、令和6年度に至るまで黒字決算を維持しております。現在、令和8年度稼働開始予定の基幹システムへの更新や、新たな成分採血装置の導入、PAS血小板製剤の導入等への投資を行っていますが、今後も計画的な投資を持続できるよう、安定的な収支を継続し、事業を進めてまいります。説明は以上です。
○田野﨑委員長 どうもありがとうございました。日本赤十字社からの事業報告でしたが、委員の皆さんから御質問や御意見、よろしいでしょうか。ありがとうございます。
議事次第ではこの後、続けて細菌スクリーニングのお話なのですが、少し事務局の都合がございまして、資料5-1の令和7年度第1回献血推進調査会の概要についてを先にさせていただきます。よろしくお願いします。
○金子血液対策課長補佐 順番が前後して恐縮ですが、資料5-1の調査会の報告をさせていただきます。令和7年度第1回献血推進調査会の概要についてです。開催日時については、7月11日に開催いたしました。出席者については、12名の委員中11名の委員の皆様に御出席を頂き、日本赤十字社からは2名の方の御参加を頂きました。
次に、議事の概要です。議題1は令和6年度の実績報告です。まず、資料1-1で日本赤十字社から供給・献血実績等の御報告、続いて、資料1-2で事務局から令和6年度の献血推進の施策について報告を行い、それらを踏まえ、資料1-3で令和8年度の献血推進計画の策定に当たっての方向性を説明いたしました。
委員からの主な御意見を紹介いたします。夏に献血の全国大会を開催しておりますが、そこで20代や30代の献血者を増やすことを目的としたような内容を盛り込んではどうかといった御意見や、啓発活動の効果を評価する際には、どの年齢層に響いたのかを分析することで、より効率的な啓発を行えるのではないかといった御意見を頂きました。
続いて、資料2で令和6年度下半期のモニタリング結果として、献血に関わる各種データの推移について説明をいたしました。
最後に、全体を通しての御意見として、10代の高校生の献血が増えたが、20代、30代で低下傾向なので、こうした世代の献血者を増やすような新しいアイディアを出していただきたいという御意見や、学生献血推進実行委員会の活動がマンネリ化しているので、日本赤十字社と組んで、例えば、若年層に人気のあるインフルエンサーとのコラボなど、献血者を増やす取組を考える必要があるといった御意見を頂いております。報告は以上です。
○田野﨑委員長 どうもありがとうございました。何か御質問、コメントなどがあればお願いしたいと思いますが、よろしいでしょうか。若年者のところはなかなか実績に反映されないところがありますが、引き続きよろしくお願いいたします。
そうしましたら、先ほど順番を変えた議題4、細菌スクリーニング済み血小板製剤の供給についてに移ります。日本赤十字社から資料の御説明をお願いします。
○日本赤十字社血液事業本部後藤技術部次長 資料4を御覧ください。日本赤十字社の後藤と鶴間から、7月30日に供給を開始した細菌スクリーニング血小板について、導入後に判明してきた課題や供給の状況を御報告いたします。2ページを御覧ください。本日、御報告する内容をお示ししました。まずスクリーニングの陽性率、そして課題と対策を4つに分けて御説明いたします。最後に、細菌スクリーニングは陰性でしたが、明らかな凝集により供給停止とした事例について御報告をいたします。
3ページをお願いします。最初に、細菌スクリーニングの陽性率についてです。4ページを御覧ください。7月26日から8月22日までに採血した血小板4万6,946本について、細菌スクリーニングの結果をお示ししました。このうち6時間培養後の判定で陽性となったものはなかったため、陽性率は0%となっております。24時間培養後に陽性となったものが13検体あり、この陽性率が0.028%でした。これらはInitial Positive、Initial Reactiveとなります。陽性となった13本の血小板について、バッグから改めてサンプリングし、追加検査として24時間培養を実施したところ、4本が陰性、9本が陽性となり、真の陽性率は0.019%となりました。追加検査陽性のものについては同定検査を行い、右に示したとおりListeria monocytogenesが2例、Staphylococcus epidermidisが4例、Streptococcus gallolyticus、Staphylococcus lugdunensis、Staphylococcus aureusがそれぞれ1例同定されております。
5ページをお願いします。続いて、血小板製剤の細菌スクリーニングを開始して見えてきた課題と、その対策等について御報告いたします。6ページを御覧ください。課題は大きく分けて3つです。血小板単位数の不足、凝集判定による減損率の地域差、そして供給関連についてです。
7ページを御覧ください。血小板単位数の不足についてです。発生している現象としては、1つの血小板献血血液から10単位の血小板製剤を2本製造する際に、片方のバッグの血小板数が10単位に満たず、5単位製剤となる割合が地域差はあるものの、細菌スクリーニング導入前の約3%から、導入後は10%前後上昇しているというものです。対応策としては、血小板の採取装置と血小板測定機器などの設定の調整であったり、スクリーニング用検体のサンプリング量の調整等を行っております。単位不足の割合は、導入当初に比べると減少傾向にありますが、引き続き注視して対応していきます。
8ページを御覧ください。続いて、凝集判定による減損率の地域差についてです。6月の運営委員会でもお伝えしたとおり、細菌スクリーニング導入後は凝集判定基準を設け、判定を開始しました。その結果、凝集による減損率に地域差を認めております。全国平均では約3%ですが、地域により0.2%から7.4%と差が大きくなっているという状況です。対応策は採血時の凝集防止策としての抗凝固剤の添加量の調整であったり、採血後の血小板バッグの保管条件の調整などを実施しております。減損率の地域差が少なくなるよう対応を進めていきます。9ページからは供給関連で、鶴間から御報告いたします。
○日本赤十字社血液事業本部鶴間経営企画部供給管理課長 それでは、洗浄血小板製剤の納品遅延について、日本赤十字社の鶴間より御報告させていただきます。まず、発生している現象です。細菌スクリーニング導入直後は、単位数の不足や凝集判定による減損によって洗浄血小板が予定どおり製造できず、医療機関への納品に遅れが生じた地域がありました。納品遅延に対する対応策については、原料血液の減損を考慮した採血量を確保すること、当初の想定よりも多くの在庫を保持することで対応を行っているところです。納品遅延はBS導入直後に多く発生しておりましたが、現在は改善傾向にあります。引き続き単位数の不足、凝集判定による減損推移を見ながら、適正な在庫量を探っていく予定です。
次のページをお願いします。続いて細菌スクリーニング導入後の供給実績です。7月30日からの日別の規格別の実績について、グラフで示しております。左側が令和7年度実績、真ん中が令和6年度実績、右側が差引きという形になっております。先ほど単位割れによる5単位製剤の製造が増加しているという報告をさせていただきました。製造数のほうが増加していることに伴い、供給本数も増加しております。
11ページを御覧ください。令和6年度については1.7%の5単位の納品の供給割合でしたが、本年度は3.7%という状況になっております。導入してから8月10日辺りまでは、5単位製剤は100本から200本程度の供給数がありましたが、8月中旬以降になってきますと、供給本数も減少傾向にあります。5単位製剤については、引き続き減少させるように対応していく予定です。
○日本赤十字社血液事業本部後藤技術部次長 それでは12ページを御覧ください。細菌スクリーニングは陰性となりましたが、明らかな凝集により供給停止とした事例について御報告いたします。この事例では、黄色ブドウ球菌が検出されました。13ページを御覧ください。事例の概要です。まず、A血液センターにて血小板献血を受け入れました。採血3日目に製造所において細菌スクリーニングを開始し、その後、2本の血小板製剤を製造しました。培養の6時間判定は陰性でした。採血4日目に出荷判定「適」、外観異常なしということで、製造所からB血液センターへ当該血小板製剤1本を配送しました。その後、培養24時間となり、判定は陰性でした。B血液センターで受領時に外観異常は認められませんでした。
採血5日目に、C血液センターへ当該血小板製剤1本を配送しました。製造所を出るときに、外観異常はありませんでした。しかしC血液センターでの受領時、親指大の凝固物が認められました。C血液センターは製造所へ連絡し、供給差止処理を行いました。そして製造所からもう1本の血小板の配送先であるB血液センターへ、同時製造品の在庫の有無について確認し、まだ供給前でしたので、当該製剤の供給差止処理を行いました。
採血6日目には、B及びC血液センターから当該血小板製剤が製造所に返送され、製造所での受領時には大きな凝集を認めました。これらの血小板製剤は無菌試験を担当する製造所にすぐに移され、ここで当該血小板2バッグよりサンプリングし、無菌試験を実施しました。2製剤とも好気・嫌気ボトルいずれも陽性となり、中央血液研究所の感染症解析部において、この陽性ボトル4本を用いた同定試験を実施し、Staphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌)が同定されました。現在、第三者機関における当該バッグ検体を用いた細菌培養同定試験を実施中です。
14ページを御覧ください。左の写真1が、採血5日目にC血液センターの供給部門で受け取ったときの凝集の写真です。この写真の下に親指の陰が映っています。かなり大きな凝集だということが分かります。右は翌日、採血の6日目に製造所に返送された血小板2バッグに認められた凝集物の写真です。どちらも2、3cmほどの大きな凝集でした。この事例を受けて血液事業本部では、血液センター宛てに外観異常の徹底について、文書で周知いたしました。また、医療機関宛てにも黄色ブドウ球菌等による大きな凝集物の確認についても、注意喚起を開始したところです。
15ページを御覧ください。こちらが注意喚起の情報媒体、輸血情報です。細菌スクリーニングの導入に当たり、けし粒ほどの小さな凝集物がある製剤と、凝集物がない製剤の細菌感染リスクというのは、同等に極めて低くなり、血小板の品質には差が認められないことから輸血に使用できると、6月の運営委員会でもお話しましたので、手の平を返すような情報提供をするのかと受け取られるかもしれません。これまで大きな凝集物がある血小板製剤は、医療機関に供給されないこと、また、医療機関で受け取った後に大きな凝集が現れる可能性があることも、併せて医療機関にお伝えしてきましたが、なかなかうまく伝わらないところもあり、では、どうしたらよいのかという質問もしばしば頂いておりました。
この事例のように培養が陰性でも、後から大きな凝集が現れることがあり、改めて培養検査を行うと菌が検出される事例があるというリスクが分かった以上、医療機関にはすぐにお伝えする必要があると判断し、輸血情報の作成、情報提供を実施する次第です。御理解いただけますと幸いです。私からは以上です。
○田野﨑委員長 どうもありがとうございました。委員の皆さんから御質問、コメントをお願いできますか。三谷委員、お願いします。
○三谷委員 御報告、ありがとうございました。今回、BSの導入によって血小板の単位数の不足や凝集判定による減損が起こっているとお伺いしましたが、HLAマッチの血小板製剤について、該当する例はおありでしたか。
○日本赤十字社血液事業本部後藤技術部次長 今、正確な数字は手元になく、報告があった記憶はないのですが、数はそれなりにありますので、もしかしたら少しの遅延などはあったかもしれません。
○三谷委員 ほかに代替品がない製剤だと思いますので、注視していただければと思います。
あと最後の、検査が陰性だったにもかかわらず、後で凝集ができてしまったという例ですが、検査の判定のタイミングが24時間というのは妥当なのでしょうか?これ以上先に判定するというのも、多分、現実的ではないと思うのですが、いかがですか。
○日本赤十字社血液事業本部後藤技術部次長 24時間よりも先に判定することで、必ず防げるものではないと考えております。この培養条件が適切かどうかについては、今後も引き続き検討していきたいと思っています。諸外国の事例では(最終有効期限である)8日目まで培養して陰性なのに、(供給)後から凝集が出てくるという事例も散見されますので、仕方がない部分と検査の調整で防げる部分があるかと思います。引き続き検討を進めていきます。
○田野﨑委員長 水上委員、お願いします。
○水上委員 お伺いしたいのですけれども、細菌スクリーニング試験を導入してから、今回、幾つかの菌種が同定されております。当初想定されていたものがきっちり検出されているのか、それとも今まで想定していなかったものも含めて、今回こういうものがあったという、トレンド変化に関する情報はありますでしょうか。現段階では、件数はないと思うのですけれども、もし現時点での傾向などが分かったら教えていただければと思います。
○日本赤十字社血液事業本部後藤技術部次長 もともとこの細菌スクリーニングは、少なくとも病原性の高い細菌は検出できるようにしようということで、この条件で始めたのですが、それ以外の一般的な皮膚常在菌などに関しては、どういうものが検出されるか、やってみて初めて分かってきたところです。諸外国の文献やデータなどを見ていますと、やはり国ごとによく検出される細菌の傾向というのがありますので、日本ではどのような細菌が出るかというのは、今後、日本のデータを集めていくということになるかと思います。今のところは黄色ブドウ球菌が1件、検出されている病原菌としては重要なものかと思っております。
○田野﨑委員長 ほかにはよろしいでしょうか。松下委員、どうぞ。
○松下委員 松下です。後藤先生、以前佐竹先生などから、ブドウ球菌などの場合は血小板を遠心すると、凝集物にパックされてしまうことがあると聞いたことがあるのです。これはやはり黄色ブ菌独特の現象なのですか。
○日本赤十字社血液事業本部後藤技術部次長 細菌が遠心すると血小板と一緒に落ちるということに関しては、黄色ブドウ球菌だけではないと考えております。
○松下委員 自然凝集が起こったときに、凝集塊の中に細菌がパックされてしまって、血は陽性にならないとお考えになっていると思うのですが、こういうことが起こるメカニズムは分かっているのですか。
○日本赤十字社血液事業本部後藤技術部次長 バイオフィルムのようなものを作って、その中に細菌が全部集まってきてしまうと、サンプリングしたときに採れないことがあるというのは、以前の運営委員会などでもお話しているところかと思いますが、それ以外の凝集や細菌スクリーニングで、どういう条件だと陽性になるかというところについては、毎日実施していく中で今後検討していきたいと考えております。
○松下委員 ひとまず分かりました。
○田野﨑委員長 そうしますと、凝集塊ができた場合もやはり注意が必要で、スワーリングや何かも同じように気を付けてということでよろしいでしょうか。このスクリーニングが出たことによって、今まで入っていたものが除かれたということが実際にあるわけで、大きな進歩ではないかと思います。引き続き細かな解析やフォローをお願いしたいと思います。
それでは、先ほど途中になった資料5-2、令和7年度第1回適正使用調査会の概要について、事務局からお願いします。
○源血液対策課長補佐 よろしくお願いいたします。令和7年度第1回適正使用調査会の概要について御報告をいたします。資料1-1と資料1-2については、血液製剤使用実態調査について記載されております。本調査においては、血液製剤の適正使用の推進に必要な方策を検討するため、医療機関の血液製剤の管理体制や使用状況など、医療機関における血液製剤の使用実態を把握することを目的として、日本輸血・細胞治療学会に委託して実施しております。今年度は1-1を田中参考人、1-2を名倉参考人より、それぞれ御発言を頂いております。
1-1の2ページを見ていただきますと、「アルブミン製剤と免疫グロブリン製剤の使用状況について」です。26ページの結語を見ていただきますと、アルブミン製剤では国際公平性等の倫理的側面や製品のトレーサビリティが確保されていることを鑑みて、今後も国内自給を推進すべきである。免疫グロブリン製剤の使用量が低下している施設の分析においては、低・無ガンマブログリン血症や重症筋無力症などで使用量が抑制できる可能性が示された。本製剤の適正使用については、更に検討を進めたい。とまとめていただいております。
41ページに1-2「輸血管理料および適正使用加算の取得に関する詳細解析」の結語となっております。本制度は、血液製剤の適正使用を推進する上で確かな成果を上げており、加算取得施設ではその管理体制が堅実に構築されていることが確認された。一部で見られるガイドラインとの乖離についても、時代の医療ニーズに応じた見直しの検討が求められる。とまとめられています。以上、これらの調査研究、解析等を行い、これからも課題を注視していきます。
続いて、資料2-1から2-4です。42ページでは、血液製剤の使用適正化方策調査研究事業について記載されております。各都道府県における課題と、それに対する取組についての調査研究をすることを目的として、合同輸血療法委員会を主体として実施しております。その好事例を全国で共有することで、効果的な血液製剤の適正使用の方策を推進するものとして行っております。令和6年度は43ページにある8つの自治体を選定して、秋田県、新潟県、愛媛県の3つから御発表いただいております。
秋田県からは災害時及び緊急時の輸血医療連携及びTACOに関する輸血監査と症例共有に基づく啓発活動について、新潟県からは医療機関における血液製剤の廃棄要因となる過剰発注に対する改善活動と更なる適正使用推進活動について、愛媛県からは医療機関・赤十字血液センター・県医師会の三者連携による院内輸血体制の整備と地域輸血医療連携の構築についてそれぞれ御発表いただきました。これらの好事例等についても、引き続き全国展開を検討していきます。以上です。お願いいたします。
○田野﨑委員長 どうもありがとうございました。委員の皆さんから御質問やコメントがあれば、よろしくお願いしたいと思います。松下委員、お願いします。
○松下委員 松下です。この会でも何回かコメントしているのですが、資料5-2の40ページの考察の5ポツ目です。施設によっては、大量出血を伴う輸血がかなり行われている病院では、私の病院も含めて、適正使用加算の申請ができないということが、実態として分かっております。どうしても大量出血、大量輸血を理由にFFPをたくさん使う所は、現実的にガイドラインだと、1対1の単位にして使ってくださいということになっていて、そのとおりになっているのです。しかし、我々がガイドラインに従って大量出血、大量輸血のケアを行っていると、加算が申請できないという、ちょっとねじれた現象になっております。学会の中でもかなり問題意識を持って取り組んで、みんなで頭を悩ませているところです。以上、コメントでした。
○田野﨑委員長 どうもありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。では私から、アルブミンと免疫グロブリンの適正使用というところを。アルブミンの適正使用については、学会を通じて今、いろいろやってきているわけですが、免疫ブロブリンの適正使用に関しては、輸血部で本当に適正使用のところまで管理できているかというと、なかなか難しく、医療機関の現場では不足の状況が続いているのではないかというところがあります。特に免疫グロブリンはアルブミンと違って、それぞれ適応が限られているために全体の量が規定されて、十分あるように見えても保険適用があるものが十分充足しているかというと、そういうものでもないように感じております。その点についても今後、少し細かく掘り下げていただいて、各医療機関の状況を把握していただければと思っております。
○源血液対策課長補佐 研究を通して今年度も同じ事業を行っており、そのテーマについても考えを重ねているところです。引き続き調査を行いながら、課題の解決に向けて努めていきたいと思います。
○田野﨑委員長 どうもありがとうございました。ほかにはよろしいでしょうか。本日、公開で行う議題はここまでになります。そのほかに何かあればと思いますが、よろしいでしょうか。それでは、これより非公開の議題に移りますので、事務局からお願いいたします。
○源血液対策課長補佐 田野﨑委員長、ありがとうございました。議題6のうち非公開の部分については、企業秘密情報に関わる報告を行うため、非公開とさせていただきます。非公開議題は、18時45分より行いたいと思います。よろしくお願いいたします。大変恐縮ではございますが、日本赤十字社の方と傍聴の皆様には、御退席のほどよろしくお願いいたします。
○事務局 事務局です。Web参加の方々におかれましては、大隈先生、松下先生、委員の方々を除き、御退室をお願いいたします。恐れ入ります。
(議題6は一部非公開で行われた。)



