2025年7月30日 独立行政法人評価に関する有識者会議 労働WG(第59回) 議事録
日時
令和7年7月30日(水)14:50~16:20
場所
中央労働委員会 労働委員会会館 講堂
出席者
三宅主査、荒谷構成員、梅崎構成員、加藤構成員、久米構成員、酒井構成員、土井構成員、土橋構成員、安井構成員
議事
- 議事内容
- ○事務局
定刻までまだ時間がありますけれども、皆さん、おそろいですので、ただいまから、「第59回独立行政法人評価に関する有識者会議労働WG」を開催いたします。私は事務局の兼坂と申します。よろしくお願いいたします。
今日のWGの出席状況について御報告させていただきます。主査であられる三宅先生、荒谷先生、梅崎先生、加藤先生、久米先生、酒井先生、安井先生が会場での御参加となります。土橋先生と土井先生はオンラインでの御参加となります。西岡先生は欠席ということになります。なお、土井先生ですが、御都合により途中からの御参加となります。
続きまして、本会議の資料について御説明させていただきます。資料はお手元のタブレットに収納してありますので、そちらを御覧ください。オンライン参加の先生方におきましては、事前にお送りしていますので、そちらの資料を御準備ください。本会議の資料は、資料1及び資料2、参考資料1~6となります。資料の不足等がございましたらお申し付け願います。
ここで報道関係者の方に御連絡です。本会議の撮影に関しましては「頭撮り可」とさせていただいているところですが、撮影はここまでとさせていただきます。それでは、三宅先生、議事の進行をお願いいたします。
○三宅主査
主査を仰せ付かっております三宅です。よろしくお願いいたします。今回は、「労働政策研究・研修機構」につきまして、「令和6年度業務実績評価」に係る意見聴取を行うこととなっております。法人から、各評価項目における評定の根拠について重点的に御説明いたしますので、評価の内容を中心に皆様から御意見、御質問を頂きたいと思います。なお、本会議はおおむね1時間半を予定しておりますので、円滑な議事運営に関しても御協力いただけますよう、よろしくお願いいたします。
早速、議事に入りたいと思います。まず、「労働政策研究・研修機構」の「令和6年度業務実績評価」について御議論いただきたいと思います。初めに、法人から簡潔に御説明を頂きまして、説明が終わった後に質疑応答という流れで進めていきたいと存じます。それでは、御説明、よろしくお願いいたします。
○労働政策研究・研修機構総務部長
総務部長の渡辺と申します。よろしくお願いいたします。当機構としては資料2で4つの資料を準備していますけれども、本日は、2-1の令和6年度業務実績評価説明資料に基づき御説明をさせていただきます。この令和6年度は、当機構で言えば第5期中期目標期間の3年度目に当たる年でございます。
2ページを御覧ください。こちらは当機構の概要をまとめたものです。上の枠に人員の体制ということで、役員5人、職員100人の法人となっています。業務としては右側に組織図を書いていますけれども、当機構は大きく2つの事業を実施しているところです。1つは、労働政策に関わる総合的な調査研究を労働政策研究所で行うとともに、その下ですが、労働大学校で、ハローワーク、労働基準監督署といった第一線の労働行政の職員に対する研修を実施しているところです。
3ページを御覧ください。こちらは当機構の評価項目に関する資料をまとめたものです。業務関係の指標として1-1から1-4までの4つの項目、管理関係が2-1と3-1の2項目で、計6項目となっています。令和6年度につきまして、当機構としての自己評価は各評価項目について全ての数値目標で達成度は100%を超え、目標を達成をしているところです。そうした中、一番上の労働政策研究についてはA評価、そのほかの評価項目についてはB評価としています。以下、各評価項目について順次、御説明いたします。
4ページを御覧ください。4ページは評価項目1-1の労働政策研究です。指標としては4つの指標を書いていますが、こちらの説明に入る前に、6ページのスライドで、当機構の労働政策研究の種類、体系について御説明させていただきます。労働政策研究は、労働政策の立案及びその効果的かつ効率的な推進に寄与するためのもので、左上の部分、中長期的な労働政策の課題に関するものとして「プロジェクト研究」があります。Ⅰ~Ⅵまで振っていますが、その下に①~⑫までの12のサブテーマを設けまして、その枠組みの中で個々の研究を実施しているところです。これに加えまして、左下ですが、「課題研究」、これは年度ごとに厚労省から要請を受けて行うものです。あるいは、「緊急調査」、これは四半期ごとの要請を受けて実施しているところです。また、中央にありますとおり、こうした調査研究につきましては、リ・スキリングやAIなど、研究領域についても広がりを持ちながら行っているところです。その下の箱ですが、個人や企業に対するパネル調査など継続的な調査を行うとともに、若者、高年齢者、女性など、政策分野に対応して体系的に調査研究を進めているところです。
4ページにお戻りいただければと存じます。4つの指標の達成状況について御説明させていただきます。①です。こちらは各専門の研究の先生方によるリサーチ・アドバイザー部会の外部評価で、成果ごとにS評価が3点、A評価は2点といった形で評価いただき、その平均点を2.0以上にすることを目標としています。これに対する令和6年度の実績ですが、7つの研究報告書などにおいてS評価4件、A評価3件ということで、令和6年度の実績は2.57、目標値に対する達成度は128.5%となっています。
次に②です。先ほど6ページの体系の所で御説明したサブテーマの12本について、厚生労働省から政策貢献が期待できるか評価を確認したものです。12テーマについて全て期待できるとの評価を受け、達成度111.1%となっています。
③です。個別の研究成果について、法令の改正、事業の創設・見直しなどの労働政策の企画立案及び実施に繋がったかについて厚労省の担当課に評価いただき、28本全てで、活用した、活用予定ありといった形で繋がったとの評価を受け、達成度117.6%となっています。
④が有識者へのアンケート調査による当機構の有益度調査の結果です。これは毎年度実施しているもので、学識経験者、地方行政職員、労使の方々にアンケートした結果になります。実績は2.61という高い評価となり、達成度は118.6%となっています。
この労働政策研究ですが、質の高い評価が求められ、重要度「高」の評価項目としているところで、①の研究の質に関する外部有識者の評価で達成度120%を令和6年度は超えたということで、②③の実績値も100%を超える、④についても120%に近い水準であるということで、自己評価としてはAを付けているものです。
続きまして、この労働政策研究についての主な取組について御説明させていただきます。先ほど、6ページのスライドで当機構の研究の枠組みを御説明したところですが、それが具体的に、どのように労働政策の立案などで活用されたかについて説明させていただければと存じます。右側の政策ニーズへの対応・活用例を御覧いただければと思います。幅広い分野で貢献できたと考えています。具体的には、1つ目のポツで書いている労働力需給推計については、2040年度までの労働人口などの推計を行ったもので、この結果が中長期的な政策立案の基礎資料となっています。例えば「公的年金の財政検証」についても、当機構の成果が審議会等で活用されているところです。
その下の雇用調整助成金の効果検証です。こちらは事業主を通じた雇用維持への支援という枠組みの助成ですが、コロナ禍では長期化した特例措置を講じていて、それがどのような企業で活用されたのか、実際に雇用維持効果はあったのかなどについて、実証的な効果検証を行ったものです。こちらの成果は令和7年度にまとめていまして、審議会でも研究員が報告させていただいたものです。
その下、最低賃金です。正に今、政府で最低賃金の検討がなされているところですけれども、令和6年度についても、最低賃金の引上げに関する影響、企業の対応などについて審議会等で御活用いただけるよう調査を行ったものです。
その下、就職氷河期です。こちらは政府で集中的な支援ということでやってきていますけれども、「就職氷河期世代のキャリアと意識」に関する調査結果について、関係審議会で活用されるとともに、内閣官房のプラットフォームといった会議体でも当機構の研究員が報告を行い、議論に活用いただいているところです。
その下、時間外労働です。こちらは、昨年4月に働き方改革の一環として、時間外労働の上限規制が自動車運転の業務にも適用されたところですが、その際の企業の対応や発生した課題について調査を行っているものです。そのほか、解雇の金銭解決、勤務間インターバル、外国人労働者受入れに関する調査研究など、政策ニーズに応じた調査研究を行い、政策立案や検討の場面などで活用されているところです。
その次のスライドで、当機構で行っている関係機関、外部機関との連携の取組について御説明させていただきます。左上が厚生労働省との連携ですが、様々なレベルで連携していまして、例えば上に書いているハイレベル会合、その下の各局別の研究報告会といった形で、次官や局長、審議官クラスと当機構の理事長以下でトップレベルでの意見交換を行い、政策ニーズの把握に努めて調査研究に反映してきているところです。また、その下の厚生労働省の政策担当者との勉強会ですが、こちらは、EBPM推進への協力といったことも行い、厚労省と連携を深めながら厚労省職員の分析能力のアップの支援といった取組もしているところです。
その下は外部研究機関との共同研究の例を挙げています。例えば労働安全衛生研究所といった他の研究機関と過労死防止等に関する共同研究、また、働き方の多様化に関する新しい団体、「労働者協同組合」の関係者との意見交換等を行ってきているところです。
右側が労使団体等との意見交換の取組です。労使それぞれの団体について、調査研究に関する懇談会、各種シンクタンク等との意見交換を行ってきているところです。
次に、8ページのスライドを御覧ください。こちらは、労働政策研究の成果の活用、研究員の外部活動等について数字的にまとめているものです。審議会・検討会における研究成果の活用件数ですが、先ほど御説明した、例えば労働力需給の推計や氷河期世代の調査研究の成果といったものが審議会・研究会等で活用されていて、厚労省に限らず全体で合計218件という結果になっています。
中ほどの左側が国会審議への貢献ということで、例えば国会審議で当機構の調査結果が活用されたり、あるいは、国会では参考人質疑というものがありますけれども、そういった場で当機構の研究員が出席して成果についての御説明をしたりしています。また、右側が白書の関係です。厚労省で言えば『労働経済の分析』や『過労死等防止対策白書』、あるいは他省庁であれば経産省の『ものづくり白書』といった形で、白書の中で当機構の調査結果が引用されているところです。
下は研究論文についての発表例です。左側が学会の雑誌ですが、『Japanese Journal of Sociology』に掲載された論文の中で、一定期間、2022年1月~2023年12月の2年間で最も引用が多かった論文として、当機構研究員の論文が受賞しています。また、右側の投稿論文ですが、公益法人から優秀賞を受けるなどの実績が得られたところです。
9ページを御覧ください。こちらは海外研究機関・研究者とのネットワークの形成についての取組です。様々な機会を捉えて国際ネットワークの充実に取り組んでいるところです。
左側の上です。こちらは国際セミナーの開催ということで、例えば日韓ワークショップや、日中韓での北東アジア労働フォーラム、あるいはアジア太平洋地域9か国における国際比較労働政策セミナーといった形で、セミナー等の開催に取り組んでいます。右側が国際会議への参加ということで、例えばヨーロッパでもフランス、イタリアといった国で開催された会議に研究員が参加し、報告などを行ってきています。下にありますとおり、研究者の招へいや、その右側、多くの海外からの訪問受入れ等もしています。一番下は、当機構での英文での情報発信ということで、英文情報誌『Japan Labor Issues』の発行を行っているところです。
以上が、労働政策研究についての取組です。数値目的の達成に加えまして、今、御説明したような定性的要素も勘案し、自己評価Aとさせていただいています。この後、それ以外の評価項目について御説明しますけれども、冒頭で御説明したとおり、それ以外については全て自己評価Bとさせていただいています。順次、簡潔に御説明させていただきます。
10ページを御覧ください。評価項目1-2、労働事情・労働政策に関する情報の収集・整理です。達成状況で5つの指標を設けているところですけれども、①は国内、②は海外の情報収集の成果の提供件数です。③~⑤は、有識者アンケートによる、それぞれホームページで国内労働事情、海外労働情報、統計情報について有益度を回答いただくもので、達成度は右に記載のとおり、いずれも100%を超え目標を達成したということです。
次の12ページのスライドで、主な取組を御説明させていただきます。左上が国内労働事情の収集・整理の取組です。労使等の関係機関とのネットワークを活用して、政府の重要施策方針を意識し取材を実施してきているところです。例えばカスタマーハラスメント、これは、先の国会で成立した改正法により、事業主の雇用管理上の措置なども求められることとなったものですけれども、企業、労組の取組を情報収集してきました。その下で例示しているのは賃上げの取組です。今、政府全体として重要な課題とされている賃上げに関し、春闘の妥結の状況であるとか賃上げの効果などについて情報収集、情報提供を行ってきているところです。また、厚生労働省からの要請による調査を実施し、調査結果が各白書、審議会等の議論で基礎資料として引用されています。
右上が海外労働事情の収集・整理の取組です。海外の研究者、研究機関とのネットワーク等を活用して、海外の主要国、英、米、独、仏、中、韓といった国々であるとか、重要な国際機関であるEU、OECD、ILOといった機関を対象に、労働政策研究の基盤となる最新の情報を収集・整理し、ホームページを通じて広く一般に情報提供しています。また、厚生労働省からの要請によりまして、制度や施策の検討のための資料ということで、海外の情報についても審議会等で活用されたところです。
左下が統計データの収集・整理の取組です。労働関係統計の各種データを、主要な労働統計指標の取りまとめ、各種データの国際比較といった形で継続的に収集・整理し、提供してきています。また、この中期目標で取組の強化が求められているデータアーカイブの活用については、令和6年度、新たに22本の公開を行い、累計では192本公開しています。また、データ利用の可能対象者につきまして、令和6年度より大学学部生にまで拡大し、データ利用の促進を図ってきています。こうした中、利用実績については、データの利用承認件数、利用承認本数とも前年度より増加したところです。
続きまして、13ページ、評価項目1-3、労働政策研究等の成果及び政策提言の普及の取組です。指標①~④の4つを挙げていますけれども、①と②はメールマガジンの発行、それに対する有意義度の評価の結果、③が労働政策フォーラムの開催回数、これは年6回ということでやっています、④がそれに対する参加者の有意義度の評価結果ということで、達成度を御覧いただくと、いずれも100%を超える目標を達成し、評価をBとしています。
主な取組について、次の14ページのスライドで御説明させていただきます。左上がメールマガジンについてです。機構の調査研究の成果や最近の政策の動向、統計調査結果等の最新のニュースについて、前年度比で265人増ということで、4.8万人超の方に情報提供しているところです。
右上が労働政策フォーラムについてです。テーマを幾つか記載していますが、例えば「シニアとフリーランスの新たな働き方の選択肢」、「仕事と育児の両立支援」といった社会的に関心の高いテーマを取り上げ、政策議論の活性化に貢献しているところです。定量的な指標である参加者数も目標を上回るとともに、参加者からの有意義度でも高い評価を頂けたところです。
左の中ほどが、当機構で行っている公式SNS、X(旧ツイッター)での情報発信の取組です。昨年度から実施していて、多様な情報ということで新着情報や行事等について迅速性を重視して発信してきているところです。その下の『日本労働研究雑誌』、右側の東京労働大学講座についても高い評価を頂けたところです。
15ページを御覧ください。評価項目1-4の労働行政担当職員等に対する研修です。指標の達成状況ですが、①と②は、実施した研修コースについて、修了後半年から1年程度のタイミングで、研修生本人からは業務にいかせているか、研修生の上司からは役に立っているかについて、それぞれ事後評価を受けているもので、いずれも実績値にありますように高い評価を得られたところで、目標達成となっています。また、③と④は研究と研修の連携に関わる指標で、当機構研究員の最新の研究成果等を踏まえたオンライン公開講座の開発・改善などの取組は、いずれも目標を達成できたところです。
16ページは、それらの主な取組をまとめたものです。左側、労働大学校では、令和6年度においても厚生労働省との密接な連携の下、最新の制度改正等の動きも盛り込むなど、研修内容の更新・充実も図りながら、全ての研修、全90コースですけれども、研修日程を特段支障なく終了することができました。知識系の研修は事前に「オンライン」、また、班別討議や事例研究は「集合又はオンライン双方向」と、研修内容によりハイブリッド方式なども実践しながら、効果的な研修を行っています。
右側が、研究と研修の連携についての取組です。シナジー効果を生み出せるようにということで取り組んでいるもので、まず労働行政オンライン公開講座です。これは、当機構の研究員が研究成果を踏まえて作成した講義動画、また、厚生労働省等が作成した動画もありますけれども、労働大学校研修生や地方の労働行政職員であれば誰でも受講できるものとして配信しているもので、非常に多くの動画再生回数、約9,000回となっている実績が得られているところです。このほか、研究員の研修への参画は延べ119人と昨年度を若干上回るとともに、研修内容と関連するテーマについて研究員と研修生との自由な意見交換、フリートークと言っていますけれども、こういった取組も行ったところです。以上が業務系の評価項目となります。
次に、管理系の2つの項目について御説明します。17ページです。業務運営の効率化に関する事項で経費節減の状況です。前期、第4期の中期計画期間の最終年度、これは令和3年度になりますけれども、その令和3年度に比べて5年間で一般管理費で15%以上、業務経費で5%以上の縮減といった目標が立っているところです。これについてですが、一般管理費については、効率化対象となる経費につきまして、5年間で15%減のところ、令和6年度時点で8.7%減と、この時点で求められる節減が行われているところです。その下の業務経費ですが、現行の中期計画策定時には、雇用保険二事業の財政が、雇用調整助成金等のコロナ対策の実施により逼迫していることを受け、既に令和4年の時点で令和3年度と比べ予算ベースで約2割の減となっていて、目標を達成しているところです。
18ページを御覧ください。こちらは、内部統制、組織運営・人事管理等の業務運営の効率化に関する取組をまとめたものです。例えば右上の情報システムですけれども、耐用年数を踏まえて、基幹ネットワークシステムについてセキュリティ対策を強化しながら更新したところです。また、新たなグループウェアソフトを導入して、役職員間の情報共有の迅速化及び業務の効率化を図っているところです。
最後、19ページです。こちらは財務内容の改善に関する事項です。定性的な目標として行ってきているものですけれども、例えば運営費交付金の会計処理について、独立行政法人に求められる会計基準を採用するとともに、受益者負担による自己収入の確保に努めるなど、適切に取り組んでいるものです。
説明は以上になります。よろしくお願いいたします。
○三宅主査
御説明どうもありがとうございました。それでは、令和6年度の実績評価について、構成員の皆様より御質問や御意見をお願いしたいと存じます。いかがでしょうか。安井構成員、お願いいたします。
○安井構成員
丁寧な御説明を頂きまして、ありがとうございました。本当に貴重なデータ、それから政策に必要なリサーチを適時適切になさっていて、私も時々拝見しているのですが、すごく勉強になっています。
ここで3点ほど質問がございます。1つ目が、14ページの左上の所に、労働政策フォーラムで「シニアとフリーランスの新たな働き方の選択肢」というものがありますが、ここでフリーランスもJILPTさんでは取り上げていらっしゃっているのですが、雇用保険料の収入が財源となる中で事業をやってらっしゃると思いますが、フリーランスも射程に入ってるという理解でよろしいのでしょうか。個人的には是非フリーランスも入れていただきたいなと思っているのですが、その場合、リサーチの所で最低賃金の影響などを分析されていますが、その最低賃金が適用されないようなフリーランスの方々が、どういう時間当たりの報酬額なのか、きちんと生活できる状況なのかということも、わが国の経済社会を見る上では非常に重要なポイントなのかなと思いますので、そこもリサーチしていただけると有り難いなと思います。
2点目が、4ページ目の左上の中期目標の3ポツ目に国際研究交流(国際共同研究を含む)の実施に関してです。私が見逃しているのかもしれませんが、国際共同研究にはどういったものがあったのでしょうか、また、その中で国際共同研究を行うことの利点と、その御苦労があるのでしたら教えていただきたい。
最後は、17ページの業務運営の効率化についてです。②の業務経費が基準年の令和3年の6億8,200万円から令和6年には5億4,000万円に、約1億3,000万円程度減少していらっしゃいますが、これはどういった費目の減少の寄与が大きいのかということを教えていただきたいと思っています。問題意識としては、最近のこの業務経費の人件費等を見ますと、ほとんど横ばいで推移しているように見受けられますので、業務運営の効率化にもそろそろ限度があるのではないかなと感じているところです。ですので、この計画期間内では難しいかもしれませんが、次の計画期間においては、少なくとも人件費などについては、賃上げ、インフレの動きもありますので、きちんとしたリサーチができる人材を確保し続けるためにも、もうちょっと人件費の一定程度の引上げも加味した予算というものを設定する必要があるのではないかなと思っています。そのところ、お考えをお聞かせいただければと思います。以上です。
○三宅主査
それでは、どうしましょう。では、理事からお願いします。
○労働政策研究・研修機構理事(小野)
研究担当理事の小野です。御質問ありがとうございます。私から、まず1点目の労働政策フォーラムの件について、少しお話をさせていただきます。14ページの所に「シニアとフリーランスの新たな働き方の選択肢」というタイトルになっていますが、実はこの後にサブタイトルが付いていまして、ここでは記入されておりません。実は私もそのフォーラムに登壇していたのですが、サブタイトルが労働者協同組合で事業を興す!というもので、プラットフォームとしての労働者協同組合を語るというフォーラムでした。つまり、どういうことかと言いますと、フリーランスであったりシニアの働き方において、労働者協同組合が1つのプラットフォームになって、それを活用することによって新たな働き方の選択肢が生まれるのではないかというもので、労働者協同組合の皆さんであったり有識者の皆さんと一緒にフォーラムを開催したという内容になっています。ですので、フリーランスのいろいろな法政策について特段取り立ててそのフォーラムの中で話したというわけではありません。
法政策については濱口所長からお話させていただきます。
○労働政策研究・研修機構研究所長
研究所長の濱口です。いわゆるフリーランスについては、ここ数年来、そもそもその労働者性、労働者として扱うべきか、あるいは労働者でないとしても労働者的な保護を与えるべきではないかという議論が大変盛んになってきています。御案内のとおり、働き方改革の中でも、雇用類似の働き方ということで、問題提起がされました。それを受けて、これも厚生労働省からの要請を受けてなのですが、そもそも日本でフリーランスとして働いている方々がどれくらいいて、どんな働き方をしているか、また、諸外国でいわゆるフリーランスについてどのような労働法的な対応、法政策が取られているかということについて、この両面にわたって調査研究を行って、報告書にまとめて厚労省の研究会にも報告するということをしました。御案内のとおり、一応、その一連の政策が最終的にフリーランス新法という形にまとまりまして、今、その法律が施行されているという状況ですので、ちょっと落ち着いていると。今後、またそれを踏まえて、あるいは労災などのほうでもいろいろな動きがありますので、また厚労省からいろいろな要請があれば、それを受けて、その実態把握ということになるかと思いますが、現時点ではフリーランスについての調査を行っているという形にはなっていません。
○労働政策研究・研修機構研究所副所長
副所長をやっています天瀬です。御質問ありがとうございます。海外との共同研究という御質問だったかと思います。余り大きく書いていないので、ちょっと見づらかったと思いますが、6ページのプロジェクト研究の右側の箱の2番目、AIという所に、国内・諸外国における生成AI等の活用実態、労使の対応に関するヒアリング調査実施準備というものがあります。AIを職場がどのように導入しているかということを、OECDの中にFuture of workというチームがあるのですが、そこからオファーを受けるという形で、私どもで共同研究として実施しました。この業種が製造と金融の2分野で行っていまして、この結果については報告書に取りまとめているところです。
委員の御質問の中に、難しさという点があったかと思います。おっしゃるように、これはOECD加盟8か国の共同研究で、質問項目を全てそろえるという形で実施しましたが、やはり、この質問項目をそろえるということ自体が非常に難しかったと言いますか、一部、日本の実情に合わないようなところもありまして、このような調査を実施するところに至るまでのプロセスが、なかなか国際的な共同研究というのは難しいというような印象です。ありがとうございます。
○労働政策研究・研修機構理事(古舘)
理事の古舘です。3点目の予算の御指摘についての御説明をさせていただきます。御指摘いただいた業務経費は、令和4年度の予算編成をするときに、なかなか当時の国の財政事情が厳しい中で、2割カットということになっています。業務経費の中身については、私どもの研究事業や研修事業、様々なものが含まれています。ただ、一方で御指摘のあった人件費については、この効率化の対象経費から外れていまして、この比率で削れということにはなっておらず、そこは維持をさせていただいています。なかなか予算面は厳しさもありますが、国からも一定の御配慮も頂いています。次の中期に向けて、御指摘のあったとおり、物価などいろいろな要素がある中で、私どもでしっかり事業を進めていけるように、予算面も含めて国ともよく相談をしていきたいと思っています。
○安井構成員
どうもありがとうございました。1点だけ、フリーランスに関してなのですが、私はアニメ産業などを分析したりしているのですが、アニメ産業は7割がフリーランスとも言われており、特に若い人、20代の人たちの労働時間を勘案して試算した時給が最低賃金以下になっております。そこは業界団体の統計やアンケート調査でやっているものなので、どこまで正確かということの問題はあるのですが、もしそういった調査をJILPTさんでやっていただきまして、業界団体や関係者も、ある意味労働者性があるのにフリーランスにならざるを得ない人たちが、最低賃金以下で働いているということが明らかになれば、それへの対策をしなければならないとということになってくると思いますので、その辺りももしやっていただけたら有り難いなと思っています。
○労働政策研究・研修機構研究所長
アニメ産業で働くフリーランスの問題というのは、結構、大きな話題になっていまして、実は数年前に若手のある研究者の方がその問題について本を書かれました。ここには載っていないのですが、労働関係図書優秀賞という毎年優秀な労働関係の本を表彰するイベントがあり、その本を表彰させていただいたのですが、それだけではちょっともったいないということで、その方と、それからアニメ産業の関係の団体の方々、労働組合の方々をお呼びして、正に労働政策フォーラムという枠組みでさせていただいたことがあります。我々の自前の研究ではないのですが、既にそういう研究をされている方、あるいはその関係の団体の方々を呼んで、世間一般に対して、アニメ産業にはこういう問題があるということをアピールさせていただく、それは研究ではないのですが、普及活動という枠組みなのですが、そういうことはさせていただきました。いろいろと厚生労働省から、あれもこれもという形でやることが多い中で、なかなか厚労省が余り関心を持たない問題を大きな調査としては。空きがあればいいのですが、それはちょっと今後の状況次第かと思いますが、そういう問題意識は我々も持っていますし、フォーラムという形で対応はさせていただいたことはあります。
○安井構成員
ありがとうございます。特に時給面のところを見ていただけると有り難いなと思います。あと、コンテンツ産業を、アニメや実写映画も含めて、日本の基幹産業にするということが、去年の新たなクールジャパン戦略でも言われていますので、是非、その点に厚労省さんもちょっと関心を持っていただけるといいかなと思います。すみません、ありがとうございました。
○三宅主査
どうもありがとうございます。それでは、続きまして、久米構成員、お願いいたします。
○久米構成員
久米です。御説明ありがとうございました。非常によく分かりました。私からコメントと質問を幾つかしたいと思います。コメントに関しては、ふだんから私も非常にJILPTの成果物については勉強させていただいていまして、特に政策的にタイムリーで質の高い研究が出てくるというところで、すばらしいと思っています。特にそういう調査データを比較的早い段階でデータアーカイブで提供してくださるので、学生たちもその恩恵に大変あずかっており、この場を借りてお礼申し上げます。
あと、フォーラムについても、政策担当者と研究者と実務、大体そういう座組みになっていて、いろいろな人たちの関心を寄せる形になっていて、資料提供や動画の提供もすごくやってくださっていて、参加できなくても後で分かるなど、そういう非常に敷居の低い形で提供していただいていることもいいと思っています。
あと、今回、こういうふうに話を聞いて、研究員の方が研修生の方と意見交換をしているというのは初めて聞きました。これから、そういう研究の種というか、あるいは日本の労働問題の新しい問題のようなものを何か発見していただけるのではないかと思って、期待しています。以上がコメントです。
質問に関して、簡単に3つです。1つ目は自己評価に関してです。1つ目の研究なのですが、結果的には令和4年度から見るとA、B、Aになっていて、そのリサーチ・アドバイザー部会での評価が120を超えるか超えないかといったところで、むしろ何で去年は120を超えていないのだろうという気もしないでもないのですが、今年度、例えば特にこの研究の評価が高かった、あるいは研究が全体として底上げされたなど、この120を超えるといったところで何か取組があったのか、なかったのか。何かリサーチ・アドバイザーのさじ加減だけだと、この評価として本当はそうではないということがあるかもしれないので、そういった意味で、ここの令和6年度の秘訣というか、何かあれば教えていただきたいというのが1点目です。
2つ目は、研修の効果が本人あるいは上司から見て良かったというのは事後的にされているということで、それもいいかと思いました。一方、研修の評価といったときに、例えば参加することでネットワークを構築できた、あるいは実務面での問題をクリアできた、キャリア上で研修を経て次のステップに行けたなど、それぞれその効果の内容があるかと思います。そういった効果があった、なかったの内容について、どのような効果が特に見られているかというところを聞きたいというのが2点目です。
3点目は、教材開発という部分で、研修生向けの教材の開発をされていて、オンラインもすごく充実されているということがよく分かりました。一方、一般向けに関しては例えばデータアーカイブもそうですし、『データブック国際労働比較』、『ユースフル労働統計』など、私もそうですが、多分、一般の人はむちゃくちゃ使っていると思います。そういう一般の人たちに向けた教材開発について、統計も含めてですが、何か考え方というか、こういったものは一般の人たちにももっと開発して提供するなど。例えば新版のOHBYカードは私も持っていて、学生が使ったりするのですが、どういう発想で一般の人たち向けに教材というか、統計も含めてですが、開発して提供するといったときの何か考え方というのをお聞かせください。以上です。
○労働政策研究・研修機構理事(小野)
研究担当理事の小野です。御質問ありがとうございます。まず、1点目の件で、去年はBだったけれども、今年はなぜAなのかということについてです。我々は5年で研究を回しているわけなのですが、大体3年目、4年目にいろいろな研究が一段落、その調査が落ち着いて、アウトプットが出やすい年というのがあります。ですので、去年の段階でかなりまとまった数の質の良い研究がどっと出てきたという状況です。毎回、中期の中で3年目は、豊富な質の良い研究がラインナップされるという傾向はあります。
その中で、昨年Sを取ったのは4つあります。まず、非正規雇用の労働についての太い報告書が出ました。これは公的統計の二次分析でやられたもので、10年ぐらい前はかなり非正規雇用が大きな問題になっていたのですが、その後いろいろな法政策によって落ち着きを見せて、そこから研究自体も少なくなりました。この間10年間で非正規雇用労働がどう変化したかを公的統計から追うという、緻密な分析に基づいた報告書が1つ出ました。それが高く評価されてSというのが1つあります。
2つめが、これは労働法関係なのですが、コロナ禍における職場における健康保護に関する法と政策ということで、ドイツ法と日本の法律の比較をしたものです。これも新たな視点で取り組まれたもので、恐らく類を見ない研究になっています。これも高く評価されてSという形になっています。
3つめが、キャリアコンサルティングの有用度とニーズに関する研究というものです。これは、キャリアコンサルティングに関して長年ずっと携わっている研究員がいますが、その集大成的なもので、単著で書かれていまして、それも高く評価されてSとなっています。
最後に4つめですが、母子世帯の階層的分断の実相と趨勢ということで、JILPTは子育て世帯に対する調査を2011年からやっています。トピックとしては、シングルマザーというのが1つの大きな軸になっていますが、いわゆる貧困世帯の分析になります。これまで6回行っていまして、今回6回目ということで、この6つのデータをつなぎ合わせて、いろいろなこれまでの推移などを分析したものになっています。いろいろ著名な先生方も含めて取りまとめたということが高く評価されてSという形になっています。ちょっと長くなりましたが、1つめの御質問に対しては以上です。ありがとうございます。
○労働政策研究・研修機構労働大学校長
それでは、大学校長の石垣です。御質問いただきまして、ありがとうございます。御質問の2点目と3点目について、順番にお答えしていきたいと思います。
1つ目は、研修の効果について、具体的にもう少し実務面などを含めていろいろな効果があるのではないかというお話を頂きましたが、正に先生のおっしゃるとおりです。私どものアンケートの中で、数値的な評価が高かったところだけではなくて、自由記述欄のようなものを設けていまして、どういうところが研修を受けて良かったか、役に立ったかというところを、研修生全員から一人一人回答していただくようにしています。
その中であるのが、例えばオンラインの研修、期間視聴もリアルタイムのものも含めてなのですが、やはりオンラインだと地方の労働局にいたままでも会議室で研修をパッと受けられると。なかなか現場が忙しくて、業務で離れられなくても、ちょっとだけ場所を変えれば研修が受けられるということで、それで本省の職員の考え方や意見交換もできるということもありますし、最近は男女共働きの職員も多いものですから、子育て中でなかなか埼玉県の研修所まで来られないという人も、研修を比較的受けやすくなっているというようなことは、アンケートの中でも言われています。それから、集合研修と言いまして、研修所に泊まりがけでやる研修、こちらのほうは、先ほどの先生の御指摘のように、やはり集まって短い間ですが一緒に暮らしますので、ネットワークができるというようなお話、一緒に昼御飯を食べたり、休憩のときにしゃべったりということも含めて、ネットワークができる。それから、我々が集まって研修をするときというのは、各労働局で難しい事案を持ち寄っていただいて、実際にそれを各労働局ではどう解決しているのかというところを、ケーススタディで皆さんで情報を交換しながら、研修をしますので、ほかの局でこんなやり方をしていたのだということが、お互いに学べます。そういうところで非常に実務的に勉強になったという評価が多くなっています。
そういうものを各研修生に個別に書いていただけるのですが、こういう評価でお出しするときには、どうして数値化をしなければいけないものですから、なかなか数値として書く場面では難しいのですが、今、申し上げたような評価は研修生から頂いているところです。
次に、3点目に御質問いただいた、研修をしている中で教材開発をしていないかというお話です。これについては、私どもは、中期目標、中期計画で労働行政職員向けの研修をやるという組織なものですから、職員向けのいろいろなテキストのようなものは、毎年、制度の改正もありますので、見直しはしているのですが、一般向けにということで研修所で作っているものは、その目的の関係からもないという状況ではあります。データについては、先ほど来お話がありますように、本部の研究部門で一般の方向けに提供しているということがあるのですが、先生に今、御質問されてパッと思い付いたものが、私どもが研修と研究の連携ということでやっている中で、研究員の方が、研修生から聞いた体験した現場の状況をいろいろと体系的に整理しまして、失業している方がハローワークに相談に来たときに、どういうお悩みを抱えているのか、どう対処するのが専門的には望ましいのかということを専門書にして、最近、出版をしています。『失業の心理学』という本なのですが、例えばこんなものを出すという形で、研究した成果を還元しているというような例はあります。今後も、先生からそういった御質問を頂いたことも踏まえて、研修していることの成果をどういうふうにいろいろなところに還元していけるのかを考えながら取り組んでいきたいと思います。どうもありがとうございます。
○久米構成員
皆さん、御回答をありがとうございました。『失業の心理学』は、書名は知っていたのですが、そういう背景は知らなかったので、すごく勉強になりました。これからも期待しています。どうもありがとうございました。
○三宅主査
ありがとうございました。そのほかは、いかがでしょうか。荒谷構成員、お願いいたします。
○荒谷構成員
御説明ありがとうございました。私からは、1つは感想的なところと、もう1つは御質問があります。1つ目は、感想めいたところで大変恐縮なのですが、私は今年が初年度なので、過去からこういったお話があったのか存じ上げないのですけれども、4ページの労働政策研究の指標の達成状況などを拝見しますと、例えば2番目と3番目については、割合が100%ということで、非常に高い達成度になっています。割合はそうなのですが、達成度という数字に換算すると、絶対に120%には届かないといったものになっています。ただし、こちらについては重要度が高いのでKPIとしては設定しているということで、高い目標を置いていらっしゃるということなのかなと思いましたが、結果的には1番と4番を頑張らないと、上の評価にはならないということかと思います。こちらは、やられている業務の重要性を考えて高い設定をされているのかなと感想として感じたところです。
2つ目は質問です。先ほども業務運営の効率化というお話が出ましたが、いろいろな調査研究や研修等をやられている中で、物価が高くなっていて、削減の余地は難しいのではないかというコメントがありました。例えば、研修をオンラインで実施すれば効率化が進むとか、ペーパーレス化を推進して、紙を使わずに、印刷をせずにデータ化すればコストは削減できるといったところについては想像が付くのですが、先ほど海外の研究機関や研究者とネットワークを構築したなど、そういったお話もありました。そういったところは、財務的にどのようなインパクトを及ぼすことになるのか、業務の効率化といったところになじむのかどうかといった観点。あとは、今回、少しずつ乾いた雑巾を絞るかのような感じで削減をされていますが、特にどういった分野や部署などで効率化に取り組まれているのかといったところについて教えていただければと思います。よろしくお願いいたします。
○労働政策研究・研修機構研究所副所長
ありがとうございました。先に、海外のネットワークを利用した国際セミナー等の開催について、少し御説明させていただきたいと思います。コロナを機に、海外とのセミナーや会議をするに当たり、オンラインでやると、私どもだけではなくて、ほかの所でもそうだったと思うのですが、コロナが終結した後、基本的には、海外の方々とやるイベントについては、できるだけ対面に戻そうという動きがありました。
ただし、9ページなのですが、国際セミナーの開催という所で、一番上の日韓ワークショップがオンライン開催となっております。韓国のKLIという、日本と同じような労働関係の研究機関との定常的な交流をやっているのですが、毎年やっております。コロナ前は、両者のセミナーは対面でやっておりましたが、コロナを機にオンラインになって、その後、経費的なことが両者ともありますので、検討して、現在はオンラインでやって、両機関とも経費節減という効果を上げているかと思います。取りあえず、海外については以上です。
○労働政策研究・研修機構理事(古舘)
その他の経費削減の工夫なのですが、先ほどおっしゃっていただいたように、我々は当初、報告書を印刷していたのですけれども、そういったものも印刷を取りやめて、ネット上で見ていただく形で経費の削減を図っていたりします。あるいは、全般なのですが、例えば、調査を行うときに電話督促ではなく、郵送で督促をするとか、できるだけ経費の安い方法で事業運用をするなど、様々取り組んでおります。
経費削減と同時に、執行状況の調査も丁寧に行っております。いろいろ入札しますと、執行残が少しずつ出てきます。そういったものを集めると、また事業に使うことができます。私どもは、年に複数回、そうした進捗管理をして、令和6年度の執行率で言いますと99%以上執行できている形で、交付された予算はできる限り効果的に執行していきたいと考え、取り組んでいるところです。
○荒谷構成員
ありがとうございました。
○三宅主査
ありがとうございます。そのほか、いかがでしょうか。梅崎構成員、お願いいたします。
○梅崎構成員
説明ありがとうございました。労働政策研究に関して評価Aということで、私もその実績は高く評価しております。その上で、やや感想めいたことですが、中期的というよりも長期的な問題として、やはりこういう政策研究を支えているのは優秀な研究員の方だと思うのです。今の研究員の方は頑張っておられるといっても、例えば今後どうするのかと考えたときに、皆さん御承知のように今は大学院進学率も非常に落ちてきて、社会科学系でも落ちていると。先ほどの国際研究も盛んに発表されているということはすごく評価できることだと思うのですが、やはり日本のエリアで労働社会について様々なルール、知識、法政策の知識を持っていて、なおかつ研究能力がある方が研究員にならないと、現在は高いクオリティーのある研究ができたとしても、5年後に定年後引退された方をきちんと補充できるのかということになってくると、かなり戦略的にやっていかないと難しいところがあるのかと感じております。
ぶっちゃけた話をすると、大学と人材獲得で競り勝つとか、すごく仲良くされている研究所の方であったとしても、ほかの研究所に行かなくてうちに来てくださいというようなことが問題になってきて、獲得の後に育成があるのですが、今は獲得のところでかなり苦戦しているところがあると思います。もちろん、労働条件をどうするかというのはなかなか複雑なところがあると思うのですが、やはり労働環境や仕事のやりがいのようなものですよね。こういう労働調査をやってみたいということを大学院生クラスにもアピールしてもいいと思いますし、若しくは、場合によっては大学から研究所に移るというようなパターンで、よりそちらのほうが自分に合った研究ができるというか、理解ができれば、転職活動として大学をやめて研究所に入ることもあり得ると思うのです。そうすると、何か人材獲得に向けて、まだ戦略レベルでもいいですし、若しくは現在やっておられることがあったら聞かせていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
○労働政策研究・研修機構理事(小野)
研究担当理事の小野です。梅崎先生、御質問ありがとうございます。先生におっしゃっていただいていることはそのとおりで、人材獲得において非常に困難に直面しているという事実があります。というのは、おっしゃったように、日本の労働政策であったり労働問題について、一定程度知識を持った人を研究者として獲得したいという思いがあり募集をするのですが、今はなかなか大学院生自体が非常に少なくなってきていることもあり、我々が今のところ、特に去年欲しかった労働経済分野、計量分析をやっていらっしゃるような人たちにとって、うちでやる仕事が今一ピンとこないような状況があります。恐らく、グローバル的に労働経済学の研究者のフィールドで、国内の労働問題をやるよりも、海外のジャーナルに論文を書くことが業績につながっていくことになり、国内の労働問題に興味を持っていただける大学院生がかなり減っていることを、身につまされて感じているところです。
我々も昨年度は研究員の採用活動に関して、苦渋辛酸をなめまして、今後どのように人材を獲得するかは考えているところです。おっしゃっているように、大学で教員をやっているけれども、もう少し調査をやりたいとか、我々の利点としては、東京にある、転勤がなく安定して働けるところも1つの魅力ですので、そういうところもPRしながら、中堅ぐらいになった大学の先生などでうちに来てもらえるような方策を考えたらどうなのだろうというような形で、今、所内で今後の採用計画を考えているところです。是非、お知恵があれば、獲得に向けて何か教えていただければ本当に有り難いと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
○梅崎構成員
経済学がすごく少ないというお話でしたが、労働政策研究というものの総合性はなかなか評価しにくいところがあり、いろいろな手法やほかの領域との中間ぐらいなところでアウトプットをすることがなかなか評価されにくくなっている部分はあると思うのです。しかし、JILPTさん自身が雑誌を持っていたりとか、ある種の総合性を目指しておられるのであれば、そこを高く評価する、つまり総合的な研究が政策に役立つのだということのセルフプロデュースのようなことをやったり、そういうものに憧れる研究者は必ずいると思いますので、具体的なアドバイスはないのですが、展開はあるのではないかと思っております。ありがとうございました。
○三宅主査
ありがとうございます。これは研究機関もですが、大学も良い人材の確保は非常に苦心をしているところなので、それはむしろ一緒にいろいろと考えていくことができないと、限られたリソースの中で良い研究が生み出せないのではないかと思いますので、そこは是非戦略的にやっていければと思います。ほかに何か御質問等はいかがでしょうか。加藤構成員、お願いします。
○加藤構成員
本日は御丁寧に御説明いただき、本当にありがとうございました。いろいろお伺いする中で、私もこの調査を読んでみたいとか、こういう本を読んでみたいというようにすごく興味が広がり、本当に感謝しております。これまでも、私だけではなくゼミ生も含めて、調査結果を使わせていただいて大変お世話になっております。この場を借りて御礼を申し上げます。
質問は1点だけなのですが、評価に大きく関わるかどうかは分かりませんが、12ページの労働図書館についてです。データということで、来館者数と貸出冊数と複写件数が表示されていると思います。昔、私のゼミ生なども非常に利用させていただきましたが、最近は図書館で本を借りることが非常に少なくなってきております。皆さん、ネットのデータはすごくダウンロードして読んでいるのですが、最近そういう形で労働図書館の利用者が、経年変化ではないので分かりづらいのですが、月にすると2人ぐらいになりますね。これは年間のデータですか、月のデータですか。年間ですね。となると、割ってみると1日にすると2人とか2冊というような形になって、もしかして昔に比べると少し減っているのではないかと思っているのですが、その点についてどのような状況になっているかということと、今後どのように活用を考えていらっしゃるのかを教えていただければと思います。
○労働政策研究・研修機構研究調整部長
御質問ありがとうございます。調整部長の山地と申します。おっしゃるとおり、労働図書館は非常に環境も良くて、御近所の方が図書館として御利用くださったり、あとは専門の研究者の方、また企業の方や労働組合の方、学者の方などがお越しくださって、いろいろな専門的な昔の雑誌や労働組合の資料、あとは労働運動の資料なども特殊コレクションとして保存してあったりということで、そういったものを御覧いただいたり、学生さんでそのような昔の資料を御覧くださるような方も来てくださってはいます。御指摘のとおり、人数としては微減が続いている傾向にあります。昨年度について申し上げますと、システムのリプレイスなどもありましたので、そういったことで減ったという部分もあるかとは思います。今後の方針として、なかなか画期的なものは見いだしづらい状況ではあるのですが、図書館同士でリファレンスを相互に提供し合ったりということもしているところではあります。私どもの図書館の特色としては、先ほど申し上げたとおり、労働関係の様々な特殊なコレクションがありますので、そういったものをしっかり提供できるように整備、保存しつつ、アピールできるように頑張っていきたいと考えております。以上です。
○加藤構成員
どうもありがとうございました。私自身も図書館が大好きなので、何かそういう意味で大切な財産がたくさんあると思います。私自身は何か貢献できるわけではないのですが、応援したいと思っていますので、どうぞよろしくお願いいたします。
○三宅主査
どうもありがとうございました。オンラインで御参加の土井構成員、あるいは土橋構成員、何か御質問や御意見があればお願いしたいと存じますが、いかがでしょうか。
○土橋構成員
土橋ですが、いろいろ御説明ありがとうございました。非常に多くの有用な成果を上げておられることは、よく分かりました。評価についても、特に妥当であると考えます。以上です。
○三宅主査
どうもありがとうございます。土井構成員は何かありますか。
○土井構成員
土井です。よろしいでしょうか。
○三宅主査
はい、お願いいたします。
○土井構成員
聞こえておりますか。
○三宅主査
聞こえております。よろしくお願いします。
○土井構成員
ミュートを外しているのですが、音声が通っていないようです。
○三宅主査
土井先生、聞こえますか。スピーカーがオンになっていないのかな。先生の声は聞こえますよね。何かチャットで打てますか。それでは、時間のこともありますので、後ほどまた土井先生からコメントいただければということで、進みます。
それでは、一応、構成員の皆さんから御意見、御質問を頂きましたので、ここからは、法人の監事及び理事長から、年度・中期目標期間における目標の達成状況等を踏まえ、今後の法人の業務運営等についてコメントを頂ければと思います。最初に監事様からお願いして、続いて理事長よりお願いするという順番でいきます。
○土井構成員
すみません、聞こえていますか。特に追加でコメントなどはありません。事前に説明いただいて、評価の内容に関しても理解をしております。引き続き、よろしくお願いいたします。
○三宅主査
ありがとうございます。それでは、監事様よりお願いいたします。
○労働政策研究・研修機構監事
監事の寺尾でございます。本日は御質問、御意見等を頂き、ありがとうございます。当機構の令和6事業年度に係る監査報告は、お手元の資料2-4のとおり、6月18日付けにて理事長宛てに報告いたしました。当機構の監査結果を報告いたします。お手元の資料、監査報告のⅠに記載のとおり、監査計画に基づき、業務監査にあっては、役職員からその職務の執行状況について聴取するとともに、全ての理事長決裁書類の内容確認を行ったほか、経営会議等の重要な会議への出席などを通じて、当機構の意思決定過程や業務活動状況を監査いたしました。
また、会計監査にあっては、監査法人の監査結果を聴取し、会計に関する帳簿及び各種証憑書類を閲覧・点検し、資産の実地監査を行うとともに、会計責任者から聴取を行いました。それらの結果については、監査報告のⅡに記載のとおり、法人の業務は、法令等に従い適正に実施され、中期目標の着実な達成に向け、効果的かつ効率的に実施されているものと認めます。また、内部統制に関すること、役員の不正行為・法令違反の有無、財務諸表等の内容、事業報告書の内容についても、詳細は割愛いたしますが、いずれも適正に行われており、指摘すべき事項及び特段の意見はございません。
監査は、私と非常勤の𠮷田監事の2名で実施しておりますが、両監事間での意見の相違はございません。
監査の報告は以上でございますが、効果的かつ効率的な業務運営の遂行に当たり、日頃からの監査や役職員との意見交換を通じて気付いた点を少し述べさせていただきます。令和6事業年度も引き続き予算制約が残る中で、事業主管部門とサポート部門との連携が一層強化され、様々な取捨選択や創意工夫を通じた業務高度化が図られております。これらが事業業績結果にも寄与しており、高く評価されるべきものと考えております。事業基盤に係る懸案事項への対応については、マンパワー制約下においても、事務職員の採用強化に加えて、増額予算を極めて有効に活用しながら基幹ネットワークシステムの更新や新たなグループウェアの導入など、情報システムの整備が着実に進められております。また、老朽化が進む施設設備についても、整備対象の優先順位付けを明確化し、精力的かつ継続的な取組が図られております。
もっとも、事業パフォーマンスを中・長期的に向上させるためには、更なる事業基盤の強化は不可欠であると考えております。事務職員の高齢化や年齢階層の偏りといった人員構造課題を着実に解消することに加え、生産性向上や業務高度化に資する業務プロセス等の見直しに主眼を置いたDX視点からの情報システムの再構築、さらには施設設備の適時適切な整備など、中・長期ロードマップに基づく取組の強化をより一層推進していただくことを期待しております。以上でございます。
○労働政策研究・研修機構理事長
理事長の藤村でございます。今日は、構成員の皆様方、非常に暑い中、私どものために様々な御意見を頂きましてありがとうございました。今後の業務運営、研究にいかしていきたいと思います。
今回、お諮りをいたしましたのは令和6年度の事業実績で、これは第5期中期目標期間の3年目となります。なかなか予算的に厳しい中で、厚生労働省から様々な要請が来て、これを何とかこなしながらやってきたところです。理事長として、この機関をこれからどういうように運営をしていくかというところで、3点、大事だと思っております。
まず、第1点目が、実態をちゃんと把握するということです。これは、厚生労働省が法律を変える必要が生じた、あるいは新しい法律を作る必要があるというときに、ちゃんと実態を把握する、これがまず第1歩になるかと思います。日本は1億2,500万ぐらいの人口があり、非常に多様ですよね。多様な中から、何が今実際に行われていて、何が問題なのかというところを、アンケート調査あるいはヒアリング調査を通じてしっかり明らかにしていく、そのために、私どもの機関はあると思っております。
2番目が、国際的な情報発信が大事だと思っております。振り返ってみますと、1980年代というのが日本の時代でした。欧米、先進国が2度のオイルショックで非常に疲弊する中、日本だけが調子が良かった。日本の労働に対する関心も、国際的に非常に高まっていました。しかし、バブル崩壊があり、その後この30年ぐらい、日本経済は余り元気がないということもあり、日本の労働に対する国際的な関心も大分薄れてきております。
しかし、日本がやっていること、あるいはやってきたことというのは、ほかの国にも役に立つことがたくさんあると思うのです。海外の研究者と話をしておりますと、日本の労働について知りたければ、JILPTのホームページを見るのが一番いいと言っていただいております。情報発信の一環として、来年9月の初めに、労働関係の世界的な学会があります。そのアジア地域会議をJILPTが中心になって主催し、開催をしていきます。これによって、日本の研究者が海外の研究者と交流できる、あるいは国際的に自分の研究を発信できる場になっていくというように思っております。
3点目は、研究の体制整備です。先ほど梅崎構成員からもありましたが、正に、良い研究をしていくためには、良い研究員が常時いるということが必要です。では、どうやったらそういう人たちに来てもらえるかというと、やはり、うちに来ると面白い研究ができると。自由度はもちろん制約はあるのですが、というのは、厚生労働省との関係がありますから、厚生労働省からの要請を受けつつ、しかし、自分の研究もできる、その辺りをうまくバランスを取りながら、研究体制の整備をやっていくのが、これからの私どもの機関にとって大事だと思っております。
この第5期中期目標期間の4年目を迎えており、最終年度に向け、間もなく研究の取りまとめを行う時期になります。労働分野の政策研究機関として、人材の確保と専門性の強化に努めながら、継続的かつ学際的に、引き続き調査研究及び研修事業を進め、今後も着実に成果を積み重ねてまいりたいと思っております。皆様におかれましては、今後とも、御指導、御鞭撻のほど、よろしくお願いを申し上げます。本日はどうもありがとうございました。
○三宅主査
どうもありがとうございました。ただいまの御発言の内容について、御質問や御意見があれば、皆様からお願いしたいと存じます。いかがでしょうか。よろしいですか。
最後になりますので、私のほうからも少し、印象と応援演説といったことになると思うのですけれども。今、機構のほうでされているお仕事というのは、正に日本の労働行政の根幹をなす非常に重要な情報を発信していただいているものと認識をしています。非常に成果もきちんと着実に出ており、それに関しては、もう言うことはないと思っています。ただ、最後の理事長のお話にもありましたように、それから、先ほど梅崎構成員のほうからもありましたけれども、研究機関として研究を続けていくことの質を担保しつつ、しかしながらリソースがどんどん厳しい状況になっていくというところで、どうするかというと、日本全体での連携であるとか、あるいは国際連携であるとか、それを更に進めていくということが、やはり質の高い研究を続けていくためには不可欠だと思っています。
人材ももちろんそうなのですが、良い人材をということもそうですが、きちんと育てていくことも非常に重要だと思うので、まずは、ほかの機構ももちろんですが、ほかの研究機関や大学とうまく連携していくことを更に一層進めていくということ、人材交流あるいはクロスアポイントメントのようなものも含めてどんどん進めていって、正に研究でやっている労働環境の整備というものを、実際に機構のほうで実装していくようなことを考えないといけないのではないかと思います。やはり魅力ある職場にしていくためには何が必要か、そのためには何を変えていかなければいけないのか、それから、当然変えてはいけないものというものもあると思いますので、その辺りをしっかり、理事、役員の皆さんのリーダーシップでもって、きちんとグリップをしていただいた上で、日本の研究の中心軸として更に進んでいっていただきたいと思います。そのためには、魅力を発信するということも非常に重要だと思いますので、先ほどからお話に出ている国内外に対する情報発信も、より積極的に行っていただければなと大いに期待をしていますので、どうぞよろしくお願いいたします。ほかに皆さんのほうからはよろしいですか、何か、変にまとめてしまったようなので。
それでは、本日のワーキングの議事は終了とさせていただきます。最後に、事務局からお願いいたします。
○事務局
本日はどうもありがとうございました。今後の流れについて御連絡いたします。今回、御議論いただきました労働政策研究・研修機構の令和6年度業務実績評価につきましては、この後、本日における御意見や法人の監事及び理事長のコメントなどを踏まえた上、厚生労働大臣による評価を決定します。法人及び独立行政法人評価制度委員会に通知するとともに公表をいたします。決定したそれぞれの内容につきましては、後日、構成員の先生の皆様にもお送りいたしますので、よろしくお願いいたします。事務局からは以上です。
○三宅主査
どうもありがとうございました。本日は長時間にわたりまして熱心な御議論を頂き、また、円滑な議事運営にも御協力を頂きまして、誠にありがとうございました。本日のワーキングはこれで終了とさせていただきます。どうもありがとうございました。