2025年7月30日 独立行政法人評価に関する有識者会議 労働WG(第58回) 議事録
日時
令和7年7月30日(水)13:00~14:30
場所
中央労働委員会 労働委員会会館 講堂
出席者
三宅主査、荒谷構成員、梅崎構成員、加藤構成員、久米構成員、酒井構成員、土橋構成員、安井構成員
議事
- 議事内容
- ○事務局
定刻になりましたので、ただいまから「第58回独立行政法人評価に関する有識者会議労働WG」を開催します。事務局の政策立案・評価担当参事官室の兼坂と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
構成員の先生の皆様におかれましては、お忙しい中、お集まりいただき、感謝申し上げます。今回の会議は、対面参加とオンライン参加を組み合わせたハイブリッド形式とさせていただいています。
この度、構成員の先生方の改選がありましたので、新たに選任された先生方を御紹介させていただきます。荒谷先生です。
○荒谷構成員
よろしくお願いいたします。
○事務局
加藤先生です。
○加藤構成員
加藤です。どうぞよろしくお願いいたします。
○事務局
久米先生です。
○久米構成員
久米です。よろしくお願いします。
○事務局
また、事務局でも人事異動があり、諏訪参事官が新たに着任しました。
○政策立案・評価担当参事官室参事官
参事官の諏訪です、よろしくお願いいたします。
○事務局
今日のWGの出席状況について、御報告させていただきます。三宅主査、荒谷先生、梅崎先生、加藤先生、久米先生、酒井先生、安井先生が会場での御参加、土橋先生がオンラインでの御参加となります。土井先生、西岡先生は欠席となります。
続きまして、本会議の資料について説明させていただきます。本会議の資料に関しては、会場ではお手元のタブレットに収納していますので、そちらを御覧ください。オンライン参加の土橋先生には、事前にお送りしている会議資料を御準備ください。本会議の資料は、資料1及び資料2、参考資料が1~6となります。資料の不足などがありましたら、お申し付け願います。
それでは、三宅先生、 議事の進行をお願いいたします。
○三宅主査
主査を仰せつかっています三宅です。どうぞよろしくお願いいたします。それでは、ここからは私のほうで進めさせていただきます。今回は「勤労者退職金共済機構」について、「令和6年度業務実績評価」に係る意見聴取を行うこととなっています。
まずは法人から各評価項目における評定の根拠について重点的に説明いたしますので、評価の内容を中心に皆様から御意見、御質問を頂きたいと思います。また、本会議はおおむね1時間半を予定していますので、円滑な議事運営に御協力いただきますようよろしくお願いいたします。
それでは、早速、議事に入りたいと思います。まず、「勤労者退職金共済機構」の「令和6年度業務実績評価」について、御議論いただきたいと思います。はじめに法人から簡潔に御説明を頂きまして、説明が終わった後に質疑応答という流れで進めていきたいと思います。それでは、御説明をお願いいたします。
○勤労者退職金共済機構総務部長
総務部長の曽我と申します。よろしくお願いいたします。説明をさせていただきます。着席をして御説明させていただきます。
資料2-1を御覧いただきたいと思います。表紙の次のページを御覧いただきますと、1ページ目、当機構の概要があります。4.業務概要を御紹介させていただきます。(1)、(2) 2つに分かれています。その中で区分が更になされています。(1)からです。中小企業退職金共済制度の中で2つの○に分かれています。上の○が、一般の中小企業退職金共済制度で、業種の区別がなく、中小企業の従業員を対象として、従業員が退職したときに退職金をお支払いするという制度です。
次の○が特定業種退職金共済制度で、現在、特定業種として厚生労働大臣が指定している業種が建設業、清酒製造業、林業の3業種あります。期間労働者の方々を主に対象として、そういった方々に対して業界を引退したときに退職金をお支払いする制度を運営しています。
(2)勤労者財産形成促進制度は主な業務として、勤労者財産形成持家融資制度、住宅の取得などのために融資を行っています。
2ページです。業務実績評価項目一覧です。右から2番目の列が「自己評価」の列となっています。令和6年度の自己評価については、全て標準のBということで評価をさせていただいています。これから各項目について、御報告をさせていただきます。
3ページです。評価項目№1-1、退職金共済事業の資産の運用についてです。こちらは自己評価をBとさせていただいています。Ⅰの(1)から御紹介させていただきます。制度の特徴及び運用の目的で、(1)ですが、1行目の後半辺りから記載がありますが、長期的な観点から安全かつ効率的に資産運用を行うということ、また、その下ですが、退職金を将来にわたり確実に給付することを目的として行うこと、こういったことを運用の目的にしています。
(2)として、資産運用の目標で、1行目ですが、中期的に退職金共済事業の運営に必要な利回りを最低限のリスクで確保すること、こういった目標を掲げています。
(3)として、運用の目標達成に向けた取組で、基本ポートフォリオの期待リターンと運用実績との差異の原因を分析して、その原因を踏まえて、基本ポートフォリオやマネジャー・ストラクチャーの見直しなど、必要な検討を行い実施することを目標に掲げています。
(4)スチュワードシップ責任に係る取組、スチュワードシップ責任を果たすための活動を一層推進することを中期目標の内容として掲げています。
4ページです。Ⅱ.指標の達成状況についてです。左から2番目のボックスで「指標」ですが、資産運用委員会が作成する評価報告書において、運用実績を踏まえて年間を通じて3ページの(3)(4)で、先ほどのページに戻りますと、(3)運用の目標達成に向けた取組と、(4)スチュワードシップ責任に係る取組の対応が適切にされたとの評価を受けることを指標に掲げています。実績値としては、資産運用管理委員会の報告書において、今、御紹介した(3)(4)の対応が適切に実施されたとの評価を受けたということで、達成でBを付けさせていただいています。
4ページのⅢ.評定の根拠ですが、令和6年度は、基本ポートフォリオ策定の重要な前提条件である金融経済情勢が変化したと判断し、令和6年7月に基本ポートフォリオを改定しています。また、マネジャー・ストラクチャーの見直しにも着手しています。さらに「令和5年度責任投資活動報告書」や「アセットオーナー・プリンシプルに関する受入れ及び取組方針の表明について」を公表しています。参考は割愛させていただきます。
8ページです。評価項目№1-2で、退職金共済事業、一般の中小企業退職金共済事業についてです。こちらについては、(3)中退共システム再構築を御紹介させていただきます。中退共システム再構築で、2026(令和8)年度に新システムの運用開始を目指し、設計・開発の着実な進捗管理、想定外の事態への適切な対応を取ることを、目標に掲げてやっています。また、システム再構築と並行して、2025(令和7)年末までに、手続のオンライン化を実現に向けても取組を行っています。
9ページです。Ⅱ.指標の達成状況です。(1)加入促進対策の効果的実施の部分、一番上のボックスです。新規に加入する被共済者の数、令和6年度の目標は34万5,000人としていまして、実績値が35万4,000人ほど、達成度が102.8%となっています。その2つ下ですが、説明会の回数24回以上、参加者数300人以上という指標については、実績が説明会は24回、参加者数は798人で、達成度が100%、266%となっています。
10ページです。その266%という説明会の参加者数の要因分析を掲げています。②として、機構が積極的に関係機関に対してオンライン説明会の案内チラシデータの提供及びチラシの配布などを依頼したことで、オンライン説明会参加者が大幅に増加したと分析を行っています。
9ページに戻っていただきたいと思います。(4)確実な退職金の支給に向けた取組で、指標の所ですが、退職から3年経過後の未請求者の比率を、人数比で毎年度2%以下とすること、その下の退職金額の割合では0.5%以下とすることで、指標としています。実績値はそれぞれ2.03%と0.59%、達成度は98.5%、84.7%です。
10ページです。Ⅲ.評定の根拠という所に、今申し上げたパーセンテージについての当機構の考えを記しています。2%以下という目標に関しては未達ではありますが、直近の5年間の中で最も多い人数の方にお支払いをすることができ、その理由のボックスの所の請求者数を見ていただくと、令和2年では1,728人で、その後推移をしていって、令和6年に1,784人にお支払いをすることができたところです。
また、金額について、0.59%で目標には届かなかったのですが、先ほどの人数の下に退職金支払額とありますが、令和2年では10億3,000万円で、その後、推移しまして、令和6年は10億4,700万円で、かなり高水準の額のお支払いができ、評定の根拠とさせていただいています。
12ページです。評価項目の№1-3、建設業退職金共済事業についてです。こちらは自己評価Bとさせていただいています。(2)サービスの向上の所を御紹介させていただきます。電子申請方式について、建設キャリアアップシステム(CCUS)とのデータ連携や、メニューの充実・改善を行い、一層の利用促進を図ること。また、その2つ目の黒ポツですが、退職金ポイントの額、1円1ポイントという退職金のポイントの制度をやっていますが、退職金ポイントの額を掛金収入額の30%以上とすることを目標に掲げています。
13ページです。Ⅲ.指標の達成状況です。(1)加入促進対策の効果的実施については、指標として、令和6年度目標として、新規加入者について9万7,000人以上という目標を掲げています。実績値が9万7,515人、達成度が100.5%となっています。
次が、(2)サービスの向上の部分です。2つに分かれた下のほうのボックスです。掛金の原資となる退職金ポイントの額を掛金収入額の30%以上とするという中期目標で、令和6年度目標については9%以上となっていまして、その右の実績値では6.4%、達成度は75.8%となっています。
14ページです。要因分析をしています。その目標未達成ではあるのですが、その主な要因として【1】ですが、共済契約者が現行の証紙を貼付する方式に慣れていて、電子ポイント方式への移行が進んでいない。【2】として、発注者や共済契約者などにおける電子ポイント方式の認知度がそもそも低い。あとは、また書きの所で、中小零細企業ではパソコンやインターネットが必ずしも十分に活用されていない実態があることも影響していると考えられると要因分析をしています。
15ページです。Ⅲ.評定の根拠、サービスの向上の所に当機構の取組を書いています。第2パラグラフですが、令和5年度にモデル地区ということで宮城県、群馬県、沖縄県を選定しまして、次の取組を実施しています。電子化セミナーを開催しまして、電子ポイント方式の概要説明や操作説明を実施しています。また、金融機関におきまして、証紙を購入していただいた共済契約者の方にリーフレットを配布して、電子化を勧奨しています。また、自治体や地方整備局などの発注機関に対して、電子ポイント方式の普及に向けた協力を要請しています。こういった取組を鋭意進めているところです。
17ページです。評価項目№1-4の清酒製造業退職金共済事業についてです。こちらの自己評価はBで、着実にやっているという自己評価をしています。18ページでは、Ⅱ.指標の達成状況があります。達成度については、ざっと見ますと上から全て100%を上回っています。(1)加入促進対策の効果的実施については、新規加入者についてですが、令和6年度目標60人に対して実績が78人で、達成度130%となっています。19ページです。新規加入者が増えた要因を記載しています。大口の新規加入者があり、加入目標を大きく上回っています。
20ページです。評価項目№1-5、林業退職金共済事業です。こちらについては、Ⅰの(1)で、こちらの事業は累積欠損金を抱えていまして、そちらの処理について目標に掲げています。21ページです。指標の達成状況があります。(1)の所の令和6年度の実績値を御覧いただくと、累積欠損金は1億4,500万円となり、解消計画に定める目安額6億5,400万円を上回ったとなっています。こちらは23ページを御覧いただくと、グラフや表があります。下の表を御覧いただくと一番上の行が累積欠損金(利益剰余金)となっています。令和2年度から-1億8,700万円で、赤字が続いています。令和5年度に1億1,600万円のプラスになっていますが、令和6年度にまた-1億4,500万円となっています。その下を御覧いただくと、累損解消計画の値ですが、目標では-6億5,400万円を目標に掲げていまして、それを上回る解消が進んでいるということです。
25ページです。こちらは評価項目の№1-6、財産形成促進事業についてです。こちらは自己評価Bを付けています。26ページです。指標の達成状況です。1.融資業務の実施については、貸付決定までの審査期間について、平均5業務日以下とするということを掲げており、実績が4.41日で達成度100%としています。2.利用促進対策の効果的実施については、令和6年度の目標が370件以上の新規の貸付ですが、実績が264件、71.4%の達成度となっています。その下に要因分析を記載しています。③の後ですが、利用促進に取り組んだのですが、以下の要因によって達成率は100%に達しなかったということで、まず1ポツとして、住宅価格が高騰していて、そもそも住宅の着工件数が減少し続けているということ。あと、住宅ローン市場においては、変動金利型商品のシェアが最も高い状態が継続していて、当機構の5年間固定の金利の商品のシェアが落ち続けていることを掲げています。
27ページです。評価項目№1-7、雇用促進融資事業です。こちらは別の法人で雇用促進融資をやっていまして、それを引き継ぐ形で債権管理や回収をやっています。資金の貸付は平成14年度以降やっていないのですが、そういう債権管理について、粛々と対応しているところです。
28ページです。評価項目№2-1、業務運営の効率化に関する事項ということで、こちらも自己評価Bを付けています。例えば2の業務運営の効率化に伴う経費の削減や、3の給与水準の適正化などについて、また、4の業務の電子化に関する取組などについて、着実にやっているという認識で、Bの評価を付けています。
少し飛びますが、33ページです。評価項目№3-1、財務内容の改善に関する事項です。こちらのⅡ.指標の達成状況ですが、こちらは先ほど御紹介した林業の退職金共済の累積欠損金の解消状況について、再掲する形になっています。こちらは目標を上回ったということで、自己評価Bと付けています。
34ページです。評価項目№4-1、その他業務運営に関する重要事項です。こちらも着実に実施しているという認識で、自己評価はBを付けています。1.ガバナンスの徹底で、(1)内部統制の徹底や(2)情報セキュリティ対策の推進、(3)事業及び制度の改善・見直しに向けた取組、こういった事項について、着実に行っているという認識です。
37ページです。最後の評価項目です。№5-1、予算、収支計画及び資金計画・短期借入金の限度額・重要な財産を譲渡し、又は担保に供しようとするときは、その計画・剰余金の使途・積立金の処分に関する事項の項目についてです。こちらも自己評価Bで、第6の短期借入金の限度額については、①~⑥まで掲げられていますが、⑤財形融資事業において、短期借入金の実績がありますが、限度額の範囲内で行っています。また、第7の重要な財産を譲渡し、又は担保に供しようとするときは、その計画ということで挙げられていますが、該当なしです。第8の剰余金の使途についても、剰余金が発生したら、将来のリスクに備えるというようなことで処理をすることにしています。
ざっとではありますが、以上で当法人からの御説明とさせていただきます。ありがとうございました。
○三宅主査
御説明、どうもありがとうございました。それでは、ここからいろいろと議論をさせていただきたいと思います。令和6年度の実績評価についてということですが、一応、自己評価としては全てBということで評価をされています。それでは、構成員の皆さんから御意見、御質問をどうぞよろしくお願いします。安井構成員、よろしくお願いします。
○安井構成員
御説明いただきましてありがとうございました。3点ほど質問させていただければと思います。6ページですが、収益率の実績が-2.36%で、期待リターンに対する超過収益率が-3.46%と、結構大きいマイナスに見受けられます。ここで書いてくださっているように、金融経済情勢が大きく変化したことが影響したとは思うのですが、他方で、同じように長期資金を運用している年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)では、2024年度の収益率は0.71%とプラスです。大きな差が付いていますが、その差は何が原因によるものなのか、分析していらっしゃったら教えていただきたいと思っております。
次に、7ページ目の真ん中の右側にトップ面談があります。ESGの課題への対応を大手金融機関及びグループのトップと対話されているということですが、トップからはどのようなお考えを聞かれることが多いのか教えていただければと思います。取り分け、米国で反ESGの動きなど起きていますが、貴機構におきましては、今後もESGを推進していくのかどうかについて教えていただきたいと思っております。
最後に、23ページで責任準備金の動きが大きく変動しておりますので、この変動の背景を教えていただければと思います。以上3点です。お願いします。
○三宅主査
これは、どなたから。それでは、理事からお願いします。
○勤労者退職金共済機構理事(松田)
御質問ありがとうございます。まず、6ページです。令和6年度の収益実績で、収益の実績額が-2.36%、あるいは、期待との差で-3.46%となっておりますが、まず、私どものポートフォリオを見てみますと、半分強が国内債の自家運用、それから半分弱が信託、消費での委託運用となっておりまして、その半分弱の信託資産のうちの約7割が国内債という格好になっております。中退共の場合を取りますと、約5.5兆円のアセットクラスに対して、2つの合算した国内債の割合が約85%程度、残りがその他の店頭資産であります外国債、国内株、外国株という格好になっております。この資産構成は、先ほどGPIFさんの話が出てきましたが、いわゆるGPIFファミリーと言われる所ですと、伝統4資産で25%で均等というのが基本の構成でして、そことは大分、プロファイルが違います。なぜそういうプロファイルにしているかと言うと、結局、私どもの制度設計として、賦課型ではなく積立型の制度設計の中で、もし損失をした場合でも、掛金あるいは自分たちの収入以外に補填を受けられる仕組みがないというところから、リスクとリターンプロファイルに対する我々の指向というのは、どうしてもローリスク、ローリターンの保守的なアセット、ポートフォリオを作るという指向がございます。ということで、組んでいるポートフォリオの違いがあるわけです。
昨年に関して申し上げますと、この4つのアセットクラスの中で、特に内外の債券の価格が下落しました。4つのアセットクラスで言うと、辛うじて外国株が比較的しっかりとしたプラスのパフォーマンスだったというところです。ただ、これについても、為替をヘッジしていたかヘッジしていなかったかで大分パフォーマンスが変わってきています。特に第4四半期、1~3月で、それまでの円安だった状況、160円を超えるドル円の状況がかなり修正されて、1~3月でも大分パフォーマンスがそこで分かれました。という中で、先ほど申し上げましたとおり、私どものリスクアペタイトがさほど大きくない中で組んでいる債券中心のポートフォリオであるがゆえに、他機関と、昨年度に関しては差が出た年度であったかと考えています。
この辺りは、運用実績及び昨年実際に実行しました基本ポートフォリオの見直しとも大きく関わってくる話かと思いますので、せっかく頂いた機会ですので、その辺りも詳しめにお話させていただきたいと思います。この点について、まず、基本ポートフォリオの見直しの内容及びその背景がどういうものであったか。それから、その後の市場の展開でどういう影響があって、最後に今後の見通しがどうなるかという、以上の3点からお話いたします。
まず1点目の基本ポートフォリオの見直しについては、昨年の7月に改定して、国内の債券の比率を、今申し上げたように引き上げたのですが、これは、前提とする経済市場動向が変化する中で、実際、昨年の7月を遡ること1年以上のリードタイムをもって、資産運用委員会の中で慎重に検討してきました。日銀が令和6年3月にマイナス金利を解除、修正いたしまして、長期金利が上昇するという変化を踏まえて遅滞なく実施したわけです。金利のない世界から金利のある世界に変わる中で、国内債券の比率を更に上げるという取組をしたということです。見直しに当たっては、国内長期金利が1%に上昇するという内閣府の見通しを、我々のシナリオにも採用しました。そうしますと、その金利の水準の上方修正期間に当たる時間帯、昨年度が正にそうなのですが、その時間帯には、ポートフォリオの時価評価の悪化による損を被る、ただし、一旦上昇して落ち着いた後は、今度は利回りの上昇による効果で、むしろ収益力が高まるということを認識した上で、そのような見直しをしたということです。
実際に、2点目の、その後の市場の展開と影響ということですが、基本的には金利上昇が起こりました。想定していた以上に起こりましたということで、昨年度の損の幅は大きくなっていますが、一方で、3点目の今後の見通しということですと、むしろ収益力の改善も高めに期待できるのではないかという状況になっていると考えております。以上が1点目の御質問に関してです。
2点目、トップ面談です。主に、まず相手は、例えばメガバンクのファイナンシャルグループのトップですとか、大手信託銀行のトップですとか、あるいは、大手生命保険会社のトップとかですが、大体4つぐらいのテーマを話すことが多かったかと思います。1つは、これは本邦を取り巻くCO2の問題、気候変動に対して、各々のファイナンシャルグループとしてどのような取組をしているのか。これは毎年同じテーマで話しております。特に本邦経済においては、欧とも米とも違うトランジション・ファイナンスという問題ですか、現在はグリーンかと言われるとブラウンなのだけれども、これをグリーンに持っていかなければいけないという構造改革、構造変更のために、数十兆円単位の資金、資本が必要であり、これを日本の金融機関が総出になってサポートしていく方向に向かっているのが大きな認識です。その辺りについて、各グループでどのような進展があるかということは、これは定点チェックとして、理事長の梅森から各ファイナンシャルグループのトップに語り掛けていただいております。
そのほかとしては、私どもの組織の、特に重視したいこの組織ならではの課題、専門用語ではマテリアリティなどという言い方をしたりしますが、それに関する部分で2点ほど。1つは、中小企業の雇用環境に対する改善への働き掛けというのを、各金融機関の取引先を通じた語らいの中で、昨今言われるワーキングキャプタル、労働資本の観点からどのような取組をしておられるか、是非、そのような観点で中小企業との経営に関わっていってほしいという申し入れをする、こういう部分です。
それから、3つ目は、これはなかなか裾野が広がらないのですが、林業との関わりを持っているものですから、森林資源の活用に対してどのようなビジョンや取組などをしておられるかという会話もよくします。なかなかスパッとする回答は返ってこないのですが、中には、テストケース的にはなるのですが、どこどこ地方のどこどこの森林に対して植林事業をサポートするような行動をやってみたなどという回答が返ってくることもございます。
それから最後4点目は、これはもう金融機関同士で、金融機関ですから、我々に関係するところとして、アセットオーナー・プリンシプル、資産運用立国が政府主導の下で叫ばれる中で、グループとしてどのような形での資産運用業の方向性を立てているかということについても、定点観測で確認している状況です。
以上、2点について私からお答えいたします。
○勤労者退職金共済機構理事(松本)
林退共の担当理事の松本です。3点目の御質問、23ページの林退共の責任準備金についてのお尋ねです。まず、令和2年度から令和4年度まで、責任準備金が増えていき、そこから後は下がっているという構造になっている点についての御質問かと存じます。まず林退共は、構成グループや、また就業人口の問題もあって、就業者数が減り続けていることもあって、これ単独で持続することが厳しい状況が、労使、また行政で共有されているわけですが、令和一桁年度ですと、運用環境も実に厳しい状況でした。市場も金利が低いという中で、予定運用利回り0.5%であったところを、令和3年10月1日から0.1%に引き下げておりますので、それとの関係で、責任準備金がそれ以降減るという構造になっております。当然のことながら、毎年の支払い、また新規の加入によって再計算が行われます。
○安井構成員
理解できました。ありがとうございました。1点目については、今後、金利が上がっていく局面において、より利回りの高い国債をどんどん買っていくので、収益率は改善していくというパスを描いているということで理解しました。その上で、ポートフォリオの違いが、積立型と賦課型で、積立型のほうがリスクが取れないという点だけちょっと分からなかったので、教えていただけませんでしょうか。
○勤労者退職金共済機構理事(松田)
もう1つ、積立型か賦課型かということと、あとは、大きな損失をした場合にその補填のシステムがあるかどうか、大体ここがセットになってくるかと思うのです。積立型の場合ですと、一人一人の、あるいは1件1件の契約単位に対して紐付きで管理が行われていると、理屈としてはそうなります。賦課型というのは、支給される人に対して、加入している人が、どの時点で切ってもお金が流れているという格好になるので、この辺りの違いが、取れるリスクの違いに、時間軸の長さも伴って関わってくる部分が一つにはございます。例えばということで、私どもが運用資産の約半分の委託運用のところを、GPIF並みに25%ずつ取っていたとすると。中退共の場合、累積剰余金が5千億円ちょっとで今年度をスタートし、4月年度初めの約10日間ぐらいで株が世界的に暴落したのですが、あのときに、我々が、もしそのようなポートフォリオを取っていたら、累積剰余金の約半分ぐらいが吹っ飛んでいたと思うのです。その後戻ったのですけれども。ということもあって、そのリスクを取れる体力の違いがやはり出てきている部分はあるかと思っています。
○勤労者退職金共済機構理事長
トップ面談につき、若干、補足させていただきます。今、松田が説明したとおりなのですけれども、あえて印象めいたことを2つ申し上げます。
1つは、安井先生がおっしゃるとおりアメリカを中心としてESGに対する取組が少し滞っている、あるいは後退しているように見えますけれども、本邦の大手金融グループにおいては、トランジション・ファイナンスの重要性についての認識が相当共有されています。そして、こうした認識がグローバルに広がっていくように、いろいろな努力をされていることが確認でき、非常に心強く思ったというのが1点目です。
もう1つは、松田も申し上げておりましたけれども、日本は3分の2が森林ですので、CO2を削減するためには、出すのを削るだけではなくて、吸収も工夫をしていく必要が大いにあります。金融機関が、森林関連のビジネスを利益率が高い産業として新たに始めるのはなかなか難しいのですけれども、それでも、「当金融グループでは、かくかくしかじかの取り組みに対して試行的に資金を出しました」という話が、年々増えております。これも非常に心強い動きだと思っております。
○安井構成員
どうもありがとうございました。大変、勉強になりました。
○三宅主査
ありがとうございます。そのほか、いかがですか。それでは、久米構成員、お願いいたします。
○久米構成員
久米です。御説明、いろいろありがとうございました。非常によく分かりました。感想と質問なのですけれども、評価については妥当な評価をされているなと思っています。特に、№1-2の共済事業については、新規の被共済者数を増やすという目標に向かって着実な法人の努力という所を理由に挙げられていて、そのとおりだなと思っております。そういった意味では、地道な努力が実っているのだなということを資料を通して知りました。
ここから質問なのですけれども、1つ目は退職制度に関してですが、最近の流れとして、統計的な事実を置いておいたとして、どんどん勤続年数が短くなり、人の入れ替わりが早くなっていく中で、退職金制度の魅力や意義を伝えていく必要が高まっていると思っています。一方、機構の場合は退職金制度がある中小企業に関してはアプローチできるけれども、その制度がそもそもないといった所にはサービスを提供できないという意味では、退職金制度がないと言われる所にいかにアプローチしていくか、あるいは、そういう所の啓発を進めていくかということが、今後、大事になってくると思うのですけれども、そういう意味で、1つ目の質問としては、退職金制度がない事業主に対してどのような取組をされているかというところです。
2つ目は、非常に素人の初歩的な質問で恐縮なのですけれども、未請求が発生するということで、これは保険に入っていてもよく発生することだと思うのですけれども、この本件の退職に関する未請求はどういった事案で起きることが多いのかということを知りたいのが2つ目です。
3つ目は、もう簡単な質問なのですが、財産形成の促進に関しては、昨今の住宅価格の高騰で、今後もそれが続くと見込まれている中で、この財産形成促進の事業が順調に伸びていく環境にはなかなかないのかなと思っています。そういった意味では、この環境の中で、どういったことがこの事業の中でできそうかという所をお聞かせください。以上、3点、よろしくお願いします。
○勤労者退職金共済機構理事(松本)
ありがとうございます。担当理事の松本です。まず、1点目の中退共に加入していただくための取組として、そもそも退職金制度を設けることの意義、効果をお伝えして、それを前向きに検討していただくというステージです。それから、退職金制度を設ける場合に、自社制度なのか、それとも年金制度に振るのか、また、この中退共を活用いただくのかという点の選択において、私どもの魅力を誤解なく、デメリットになりそうなことも含めて○と×をしっかりとお伝えして、その上で御判断いただくのがいずれも重要だと考えております。
御質問は、主として1点目についての御質問だと存じます。これは、いわば蓄積された経験知なのですけれども、労働者数が小さい企業においては、退職金制度を導入するという動機が発生しにくい。結果において、企業規模が大きくなればなるほど退職金制度を設けている企業の率が高まります。中堅企業以上になりますと、退職金制度がある所が8、9割という水準になりますので、そういった所はもう市場が固定しています。
一方で、小さい所は、退職金制度以前に、人材の確保や賃金の引上げといったところで対応することが多くて、また、人事労務担当の職員を置く余裕も基本ないということもあるので、ある程度企業規模が大きくなってきて、人材の定着も大事だという認識になり、かつ、社長以外にそういった担当者がいるという環境になって導入率が高まるというのが経験知です。
ということで、私どもとしては、本当の零細規模ですと、今はそれどころではないと言って、お話を聞いていただけないことがほとんどであるということであり、ある程度の規模がある所で、また、人材確保競争が厳しい所、人材確保の競争があるときに、時給、日給、月給を上げるのか、また、それに加えて福利厚生をはじめとした退職金といったところもアピールするという考えになるかという所をターゲットにするのがいいのではないかと考えております。近年では、普及率が低くて、かつ、人材確保競争が厳しい業界を主たるターゲットとして、そういった業界の事業主団体、地域団体、具体的には事業協同組合であったり、又は商工会議所、商工会といった団体を通じて普及啓発活動に力を入れ始めているところというのが1点目です。
2点目の未請求についてですが、KPIとの関係では件数で2.0%、金額で0.5%という数値を課せられていますが、ここについてアンケート調査の形式を今年の5月から変更して、そこで請求されていない方はどういった方なのかと、より細かく取れるようにしましたところ、まだ分母が小さいのですが、通算制度というのを私ども持っていまして、所属している企業が変わっても、3年以内であれば通算できるという制度があります。離職してすぐに就業する企業が中退共のお客さんでなくても、そこをまた離職してその次の就業場所が中退共のお客さん、つまり2回転職をしてもそれが3年以内であれば通算できるということもあって、退職金を受け取る権利を有している方でも、3年間はこのまま請求しないでおこうという動機が発生するような制度設計になっているということもあって、この3年を経過した後で着実に払いましょうという意味でのKPIになっているわけですが、そうは言っても4月に辞められた方と3月に辞められた方では1年近くのタイムラグがあるので、そういう意味で2%程度の未請求、また、未通算を合わせたものが発生するのですが、これはその後、順次お支払いは済ませていっていまして、中退共として制度が発足以来の累積で、お支払いした額と、それから未請求のお預かりしている額の率は、0.4%です。つまり、ほとんどお支払いできていますという状況です。
2点目の御質問について、すみません、長くなってしまったのでもう一度申し上げると、請求しようと思っていましたという方か、又は通算できるかもしれないと思って保留にしていましたという方が大きな塊です。あとは、少額だからもういいやという方も実は回答としては挙がってきています。
3点目です。住宅融資の件ですが、環境については、冒頭の御説明でも申し上げたとおり、また、御質問でも指摘されましたとおり、工事費用、取得費用が高くなっているということもあって、着工件数なり取得件数が減っている、全体のパイが小さくなっていく中で、民間企業も含めて住宅ローンの競争の中で我々も提供しているわけです。資料の26ページに箇条書きで要因をお示ししているわけですが、全体のパイが小さくなっている中で、私どもが提供している商品は、これは実は私どもはいじれないのですが、5年固定の商品を提供しています。変動金利と固定金利の争い、また、固定金利の中でも5年もの、10年ものの争いということがあるのですが、少なくともこれまでは変動金利を選ばれるお客さんが圧倒的に多く、その比率はゆるゆるとまた拡大し続けていたわけです。今後、動向は違ってくるとも思いますが。かつ、最後の3行にもお示ししたとおり、商品性についてはいわば固定されていて、また、貸出金利の決定方法、調達資金の調達方法とその利率も固定されていて、実は逆ざやが発生しています。令和6年度で新規貸し出しの約3割が逆ざやになっていて、これが今年度になるとその率がもっと高くなります。これは1年後に御報告申し上げます。
そういうこともあって、少なくともこの商品性では全く持続可能性がないと言いますか、持続可能性を損なっているという状況でもあり、正に御指摘のとおり、このまま続けてはいけないので、何らかの見直しが必要という認識から、26ページで記載申し上げましたとおり、この制度の在り方について必要な情報を厚生労働省にも提供し、その在り方を検討いただくというのが、業務をお預かりしている我々としてのできることという認識です。
○久米構成員
大変、詳しい御説明ありがとうございました。承知しました。ありがとうございます。
○三宅主査
ありがとうございました。ほかは、いかがですか。それでは、酒井構成員、お願いいたします。
○酒井構成員
細かい所で恐縮ですが、今、久米先生から出た質問の2点目に関して、更に深掘りするような質問になるのですけれども。
今のお話ですと、制度上ある程度は三請求者が発生しやすい傾向があるけれど、最終的に支払えていないわけではないというような認識だったかと思うのですが。そうすると、ちょっとこういった質問の仕方が適切かどうか分からないのですが、2%でも結構限界という感じなのでしょうか。要は、2%を切ることが一応目標になっていますが、2%を切るのがもう限界ということであれば、その2%を切るために幾らでもコストをかけていいわけではない。むしろそこにコストをかけるのであれば、目標自体を変えることが中長期的には必要なのではないかということなので、その辺、2%を切るのは限界だということであれば、それが達成できなかったらE評価というのは、ちょっと気の毒な感触を持っているので、その辺の見解を教えていただけると有り難いのですが。
○勤労者退職金共済機構理事(松本)
ありがとうございます。厚生労働省のほうをチラッとうかがいつつでございますが。まず、令和5年度は2.0%を下回ることができて、言わばKPIの歴史において史上初めて達成することができました。令和6年度、今回は2.03%ということで、0.03%到達しなかったということであるのですが、KPIの水準として2.0%が無理なのかと問われれば、前の中期計画の設定値よりは、言わば合理的な水準に近いのではないかと思っています。しかし、これは楽々達成できる水準でもないということも併せて申し上げたいわけです。
どのようにこれを達成すればいいかというのは、時間がたてば、言わばおのずと支払われていくところを、あえて3年後で2.0%という二重に縛られたKPIなのですが、これは退職金という性格上、10年後に払えていればいいとは必ずしも思っていなくて、正に退職金なので、本来は速やかにお届けするところまでがミッションということもあり、余り時間を掛けてはいけないという思想と、それから、請求してくれれば払えばいいというようなことではいけませんよ、これも払ってこそなんぼの制度ということから、KPIの思想には異存ありません。
あとは、値がどうかということです。これも酒井構成員から御指摘があったとおり、コストをかければ2.0を下回ることは、言わば安定的にできると思っています。というのは、令和5年度の下半期~令和6年度にかけて、それまでやっていなかった追加的手法によって達成でき、又はギリギリの所まで寄せてきているという実績です。というのは、追加施策を試行した結果、比較的うまくいったということなのですが、それは間違いなくコストが掛かります。ということもあって、ジャブジャブに追加施策を打ったのではなくて、言わば対象であるとか、数を小出しにして試した結果、1勝1敗ということであるので、今年度、それも踏まえてどれぐらい投入するのか、ほぼ最終に近い試行をしております。
お伝えしたいことは、無理な水準ではない、ですけれども間違いなくコストは掛かる。ですけれども、この2.0%というのは、コストは掛かりますが、この程度はコストを掛けてお届けしなければいけない目標値としては、世間の目から見ても、また、お客さんの目から見ても、これよりも高い値のKPIだと、何のためのKPIかという御指摘も受けかねない水準に近付いているかなということもあって、私どもとしては、ひたすら頑張ってまいりたいという考えでございます。
○酒井構成員
分かりました。規範的な側面を考えると、2.0%というのは決して不当な水準ではないということかなと思えるのですが、やはり中長期的に見て、ずっと達成できないというのでしたら、そこにコストを更に掛けるような意味はないのではないか、そういう考え方もあるかなということは、こういう場なので申し上げておきたいと思います。ありがとうございました。
○三宅主査
どうもありがとうございました。そのほか、何か御意見や御質問はありませんか。よろしいですか。オンラインのほうから何かあれば、挙手なり、意思表示をお願いいたします。
○土橋構成員
オンラインのほうから、土橋です。
○三宅主査
お願いいたします。
○土橋構成員
基本的には、説明やその後の質疑の所で内容は大体把握できましたし、評価としても特に問題ないのではないかと思います。ちょっとお聞きしてみたいのは、評価と直接関係はない所ですが、多分、今般いろいろと、業種であったり、業態であったり、いろいろ目まぐるしく変わっているようには思うのですが、現状では3つを特定業種として運用をしていらっしゃいますが、この辺りで、ちょっと将来的に何か修正が必要かとか、何かそんな、印象で結構なのですが、そういうところがあれば、ちょっとお聞きしたいと思います。いかがでしょうか。
○三宅主査
これは、松本理事でよろしいですか。お願いします。
○勤労者退職金共済機構理事(松本)
松本から御説明申し上げます。特退共と呼んでいますが、業種指定のこの制度は、期間雇用者を対象として運営することが必要、適当であると思われるものについて設定されています。言い換えれば、期間雇用でない方は、中退共と呼んでいますが、一般の業種横断の退職金制度に入っていただければと思いますが、それでは拾えないような期間雇用者がいて、その業種で就業するけれども、事業主が頻繁に変わるといった方が集積している業界を対象として、紙の手帳に紙の証紙を貼るという制度で運営しているわけです。企業にとっても、労働者にとっても、言わば安定した雇用関係ではないので、転々とする労働者を集めて事業をする場面もある業界に向いている制度として設定されています。
そういった業界、業種が新たに生まれ、かつ、そこでの就業人口が一定の規模あれば、これをこの特退共に追加することの可能性を検討するのが適当でありましょうと。今、限定的に申し上げたのは、まず、そういった業界があるかということと、業界があっても、それなりのボリュームがないと、この特退共制度として安定的に運営できないということでもあるわけです。そういった働き方の方が集積している業界でないと、その業界専用の制度として運用できない。
若干、蛇足的に申し上げれば、ほかの中退やほかの特退から財政支援を受けてやるといった制度にはなっていなくて、いずれも区分経理をして共済制度を運営しているので、一定のボリュームが必要です。ということからすると、期間雇用者のみだけでそれだけのボリュームがある業界というのがあれば検討対象でありますが、それは正に、あれば検討対象ですというお答えになろうかと存じます。
付言しますと、全体的に就業人口が減っている中で、業界同士で人材の取り合い競争になっていく中で、例えば、無期雇用と有期雇用、また、賃金額、退職金の有無といったところも、労働者を引き付ける要素である中で、その期間雇用で転々と人を雇い、リリースするという業がそれなりの規模でどれぐらい持続できていくだろうかという点も、検討対象かなと思います。
○土橋構成員
枠組みとしては分かりました。ありがとうございました。
○三宅主査
どうもありがとうございました。ほかに、何か御質問や御意見は、よろしいでしょうか。それでは、御質問は以上ですので、先に進めたいと思います。
続いて、法人の監事及び理事長から、年度・中期目標期間における目標の達成状況等を踏まえて、今後の法人の業務運営等についてのコメントを頂ければと存じます。最初に法人の監事から、続いて法人の理事長より、お願いしたいと存じます。よろしくお願いします。
○勤労者退職金共済機構監事(清水)
監事の清水です。着席にて失礼いたします。隣におります熊谷監事とともに、監査業務を行っております。当機構の令和6事業年度監査報告は、6月19日付けで理事長宛に報告いたしました。お手元の資料2-4の「令和6事業年度監査報告」に記載のとおりです。
監査実施計画に基づき行いました業務監査については、役員及び職員から職務の執行状況について聴取するとともに、関係書類の閲覧、理事会、その他重要な会議への出席などを通じて、機構の意思決定過程や業務活動状況を監査いたしました。
会計監査については、会計に関する計算書類を閲覧するとともに、会計部門から聴取を行い、また、当機構の会計監査人より監査結果の報告を受けました。内部統制に関することでは、役員の不正行為、法令違反、事業報告書及び財務諸表等の内容について、いずれも適正に行われており、指摘すべき重大な事項は認められませんでした。これらの監査結果として、当機構の業務は法令等に従い適正に実施され、第5期中期計画に基づき策定された令和6事業年度計画の着実な達成に向け、効果的、かつ効率的に実施されていると評価しております。
監査報告としては以上ですが、少し意見を述べさせていただきます。当機構の使命は、中小企業で働く従業員のための退職金共済制度の運営と、勤労者の計画的な財産形成の促進業務を行うこととされております。昨今、中小企業経営者の高齢化による事業承継問題、少子高齢化による労働力不足の深刻化など、中小企業を取り巻く環境は著しく変化しており、当機構の運営にも多大に影響していると認識しております。こうした変化をいち早く捉え、様々な工夫を凝らした加入促進対策が図られており、例えば一般の中小企業退職金共済事業においては、企業へのアンケート調査結果の分析及び各種加入率を踏まえて、特定のターゲットに重点を置いた加入促進や、未加入企業向けのオンライン説明会を積極的に実施し、また関係団体との連携を強化されております。
建設業退職金共済事業においては、外国人労働者受入企業に対し、加入勧奨文書やパンフレットを送付するなど、新たな訴求対象に向けての加入促進を実施されております。中期計画の重点項目はもちろんのこと、その他の項目や課題についても真摯に取り組まれていることを評価しております。本日、委員の皆様より頂きました様々な御指摘、御助言を念頭に置きつつ、引き続き法令を遵守し、効率的、効果的な業務運営が行われることを期待しております。
簡単ではありますが、私からの報告は以上です。
○勤労者退職金共済機構理事長
改めまして、理事長の梅森です。本日は熱心に御審議いただき、ありがとうございました。頂きました御指摘、御意見は、今後の業務運営にいかしてまいりたいと考えております。
さて、今回の評価の対象となっております令和6事業年度を振り返ってみますと、資産運用と中退共システムの再構築という重要課題が新たな局面に入った年と言えようかと思います。資産運用については、先ほど御説明申し上げたとおりですが、金融環境が変化し、そうした中で、運用の目標達成に向けた取組、これは基本ポートフォリオの見直しやマネジャー・ストラクチャーの見直し等ですが、こうした対応を行いました。また、スチュワードシップ活動についても、積極的に実施したつもりでございます。資産運用委員会から、こうした対応は適切であった旨の評価を頂きました。資産運用結果は、残念ながら市場環境の悪化を受けてマイナスとなりましたが、ベンチマーク対比ではわずかではありますが超過収益を出すこともできました。
もう1つの重要課題であります、中退共システムの再構築ですが、約半世紀ぶりの全面更改ということで、非常に難易度の高い開発となっておりますが、何とか予定どおり進めてきております。
次に、現在進行中の令和7事業年度について申し述べます。重要課題は、引き続き資産運用と中退共システムの再構築です。資産運用については、市場の先行きが不透明な中で、運用の質を高めるべく、外国債券に続き国内株式のマネジャー・ストラクチャーの見直しを行っております。また、スチュワードシップ活動も引き続きしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。
中退共システムの再構築については、令和8年度の新システムの稼働、運用開始を前に、テスト工程が最終局面に入っております。テストの結果、予想外の困難が出てくることも完全には否定できないところですが、万一そうした事態になっても、慌てることなく、可能な限り柔軟に対応していきたいと考えております。
さらに、長期的な視点からは、先行き我が国の少子高齢化や労働力の減少が否応なく進んでいくということを常に念頭に置いて、業務の見直しや工夫を行っていく必要があると考えております。当機構の判断において実施できる見直しは、適宜行ってまいります。また、制度のあり方に係る論点については、引き続き厚生労働省における検討の参考にしていただくために、しっかりと情報提供をさせていただく方針です。
簡単ですが、私からの意見は以上です。
○三宅主査
どうもありがとうございました。それでは、ただいまの御発言、コメントに対して何か御意見、御質問があればお願いしたいと存じますが、いかがでしょうか。安井構成員、お願いいたします。
○安井構成員
理事長がお話になったベンチマーク対比では超過リターンが出ているというのは、どこでそれを見ることができるのでしょうか。
○勤労者退職金共済機構理事長
資料の6ページを御覧ください。左下の図表1に、超過収益率の要因分析表があります。令和6年度の上から7番目に、超過収益要因(B)-(C)-(D)というものがあります。これが、ベンチマークに対して実績がどうであったかということを示しており、わずかながらプラスというのは、この0.03%について述べたものです。
○安井構成員
どうもありがとうございます。この委託運用の複合ベンチマークというのが、そもそもベンチマーク自体が大幅にマイナスだったからということで、このベンチマークというのは、主に国債の比率とか、マーケットでそのまま運用していたらどれだけになるかというので設定しているということでしょうか。
○勤労者退職金共済機構理事長
御理解のとおりです。内外の株式、それから内外の債券の代表的な指標をベンチマークとして採用しており、それの複合に対して実績がどうであったかということで、ほんのわずかですが0.03%ほど上回ったということを先ほど述べさせていただきました。
○安井構成員
ということは、委託運用先がアクティブに運用することによって、0.03%だけベンチマークよりもプラスのリターンを上げられたという意味ですね。
○勤労者退職金共済機構理事長
御理解のとおりです。
○安井構成員
どうもありがとうございます。
○三宅主査
ありがとうございます。そのほか、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。オンラインの土橋先生も何かあれば御発言をお願いいたします。
○土橋構成員
土橋です。特に結構です。
○三宅主査
それでは、以上をもちまして本日のWGの議事を終了いたします。最後に理事長からお話がありましたように、社会情勢が非常に流動的でもありますし、なかなか先行きの見通しも楽観できない状況は皆さん御存じのとおりだと思いますので、その中でも、最後にお話にありましたように、引き続き資産運用の件と業務の見直しについて、理事長のリーダーシップでしっかりと進めていただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、最後に事務局からお願いいたします。
○事務局
今後の流れについて御連絡差し上げます。今回御議論いただきました勤労者退職金共済機構の「令和6年度業務実績評価」については、この後、今回のワーキンググループにおける皆様の御議論や、監事、理事長のコメントなどを踏まえた上、厚生労働大臣による評価を決定し、法人及び独立行政法人評価制度委員会に通知させていただくとともに、公表いたします。決定したそれぞれの内容については、後日委員の皆様方にもお送りいたしますので、よろしくお願いいたします。事務局からは以上です。
○三宅主査
本日は熱心な御議論を頂き、誠にありがとうございました。また、円滑な議事の運営にも御協力いただき、ありがとうございました。これをもちまして、本WGを終了といたします。どうもありがとうございました。