第3回「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」 議事録

日時

令和7年8月28日(木)15:00~16:30

場所

東京都千代田区霞が関1丁目2番2号 中央合同庁舎第5号館
厚生労働省 17階 専用第21会議室

議題

1.保険者及び医療関係者・学識経験者からのヒアリング

議事

議事内容
 
○佐藤保険課長 それでは、定刻より若干早うございますけれども、委員の皆様方はおそろいでございますので、ただいまから第3回「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」を開催いたします。
 委員の皆様におかれましては、御多忙の折、御参加をいただきまして誠にありがとうございます。
 本日の会議は、傍聴希望者向けにYouTubeにおいてライブ配信を行っております。アーカイブ配信はいたしませんので、あらかじめ御了承くださいますよう、よろしくお願い申し上げます。
 まず、前回の委員会の開催以降、事務局に人事異動がございましたので、私のほうから御紹介を申し上げたいと思います。
 大臣官房審議官の巽でございます。
 大臣官房審議官の谷田貝でございます。
 大臣官房審議官の江浪でございます。
 高齢者医療課長の日野でございます。
 調査課長の江郷でございます。
 それから、本日、公務により欠席をしておりますけれども、保険局長の間が着任をしておりますので、この場をお借りして御紹介を申し上げたいと思います。
 続けて、本日の委員の出欠状況について申し上げます。
 本日は、島委員より御欠席の御連絡をいただいており、大黒委員にはオンラインで御出席をいただいております。
 また、原委員の代理といたしまして、井原参考人にオンラインで御出席をいただいております。
 参考人の御出席につきまして、委員会の御承認をいただければと思いますが、よろしゅうございますでしょうか。
(「異議なし」と声あり)
○佐藤保険課長 ありがとうございます。
 続きまして、本日は、保険者及び医療関係者、学識経験者の方から、高額療養費制度の在り方について御意見を伺うため、日本航空健康保険組合理事長の岡様、計機健康保険組合常務理事の日原様、東京大学大学院医学系研究科教授の康永様、国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院呼吸器内科長の後藤様にお越しいただいております。
 また、本日も、健康・生活衛生局がん・疾病対策課及び難病対策課もオンラインで参加しておりますことを併せて御報告申し上げます。
 会議冒頭のカメラの頭撮りにつきましては、ここまでとさせていただきたいと存じます。カメラの方は御退室のほどよろしくお願いいたします。
(カメラ退室)
○佐藤保険課長 それでは、以後の議事運営につきまして、田辺委員長にお願いしたいと思います。
○田辺委員長 それでは早速、議事のほうに入ってまいりたいと思います。
 本日は、「保険者及び医療関係者・学識経験者からのヒアリング」を議事といたします。
 最初に、保険者及び医療関係者・学識経験者の皆様方から、それぞれ10分程度の時間で順に御発言をいただいた後、質疑応答、意見交換を行ってまいりたいと思います。
 それでは、まず、資料1につきまして、日本航空健康保険組合の岡様から御発言をお願いしたいと思います。
 では、よろしくお願いいたします。
○岡参考人 それでは、本日はよろしくお願いいたします。
 次のページをお願いいたします。
 最初に、自己紹介をさせていただきます。日本航空健康保険組合は、日本航空グループに属する企業で構成された健康保険組合です。以後、「JAL健保」と呼びます。
 理事長は私、岡敏樹です。1985年に日本航空に入社し、1年前の7月に現職に着任いたしました。JAL健保の概要は、スライドに書いておりますが、読み上げは省略いたします。
 次をお願いいたします。
 健康保険組合の役割を御説明します。以後は、「健保組合」と省略してお話しします。
 健保組合には2つの役割があります。1つ目は、加入者への保険給付です。社員は誰もが自分または家族が病気になるリスクを抱えています。そのリスクに備えて、普段から社員全員が保険料を出し合っておいて、誰かがけがや病気になったら、そこから支払うという制度です。
 もう一つが、加入者の健康保持・健康増進です。これは、法律では「保健事業」と呼ばれます。先ほどの保険給付は病気になったときのサポートですが、保健事業は病気にならないような健康づくりのサポートです。本日はこちらを中心に御説明します。
 なぜ健保組合が保健事業を行うのか、大きく2つの理由があります。1つ目は、企業と一体となって、社員の生活をより幸福で豊かにしていくという目的、最近では「ウェルビーイング」と呼ばれる目的です。もう一つは、加入者の健康を高めることで、健保組合に発生する医療費を抑制するという目的でございます。
 具体的に何をやっているか、幾つかお話しします。健康診断の実施、インフルエンザ等の予防接種、病気につながりそうな人に医療機関の受診を勧奨、禁煙支援・ダイエット支援、体力・健康づくりの奨励といった事業を行っています。これらの一部は企業でも行っていますが、健保組合も企業と連携しつつ主体となって行っているのです。健保組合は、御家族の健康増進も行っておりますし、また、メニューも企業よりも幅広いものを提供しております。
 次をお願いします。
 保健事業は健保組合以外も行っていますが、健保組合は以下の理由により保健事業の実行に優位な立場にあります。まず、もともと健保組合は母体企業と社員によって組織されております。また、健保組合は、保健事業を職域という緊密な集団の中で実施することができます。また、企業が行う事業主健康診断・健康増進活動との相乗効果を得ることもできます。さらに、各社の社員や仕事の特徴に合わせた取組が可能であるということです。これらにより企業と連携して保健事業を実行できる、これが健保組合の優位性です。最近では、これを企業と健保組合の「コラボヘルス」と呼びます。
 例えば、JALでは「JAL Wellness」と称するコラボヘルス活動を行っています。JALとJAL健保が一体となり、社長をトップに各職場に650名のリーダーを置いて、トップダウンとボトムアップの双方から健康増進活動を行っております。
 次をお願いします。
 こうした健保組合の保健事業の中には、健保組合の枠を超えて広がり、国の保健事業をリードしているものもあります。例を幾つか御紹介します。
 1つ目は、データに基づいた健康増進事業です。現在、国には、国民の健康データを広く収集して重点項目に集中的に取り組むことで、国民全体の健康を高めようというデータヘルス計画があります。しかし、これは、その前に幾つかの健保組合が行っていた取組に国が着目して導入したものです。
 2つ目は、ジェネリック医薬品の活用です。これも、最初は健保組合が保険料削減の手段として着目して啓発活動を開始し、それが日本全体に広がったものです。
 3つ目は、婦人科健診です。女性の多い健保組合が積極的な意識づけを開始し、それが日本全体に広がっていきました。乳がんの早期発見・治療を促すピンクリボンキャンペーンも、企業と健保組合から始まったものです。
 最後に、今後広がるかもしれない事例を御紹介します。私どもJAL健保は若い女性が多いのですが、分析する中で、最近の若年女性の痩せが健康に大きなマイナスを与えていることが明らかになり、痩せ防止を社員に呼びかける取組を開始しました。国レベルではこれまで肥満の防止に重点が置かれてきましたが、今後は同時に痩せ防止の取組が広がっていくかもしれません。
 このように、健保組合の保健事業は、日本の健康寿命の延伸・医療費の抑制に貢献をしているのです。
 次をお願いします。
 以上を申し上げてきましたが、このような健保組合が現在困難な問題を抱えているということについて御説明します。
 次をお願いします。
 その困難な問題とは、高齢化・医療費高騰を背景とした健保財政の悪化でございます。現在では、8割近くの健保組合が赤字で、解散する健保組合もあります。今後、財政悪化から保険料率の上昇が続けば、解散が相次ぐ事態となり、国民皆保険制度を支える基盤が弱体化することにつながります。
 その財政悪化の原因は、端的には医療費の増大、中でも高齢者を支えるために拠出している高齢者拠出金の上昇です。
 健保組合の共通の声は、高齢者拠出金の負担を減らしてほしいというものです。その理由は大きく2つあります。1つ目は、財政負担を減らしたいということです。グラフのとおり、現在では多くの健保組合にとって、支出の半分が保険給付、半分が高齢者拠出金という状態に近づいています。もう一つの理由が、社員にとっての納得感です。社員にしてみれば、自分たちの万一に備えるための健康保険料であったはずなのに、実際には自分たちに使われるのは半分だけで、残り半分は国全体の高齢者の医療費の給付に使われているわけです。この仕組みが社員には分かりにくく、それが社会保険料が高いという不満につながっていると感じています。さらに長期的に見れば、健康保険制度に対する不安・不信にもつながることを懸念しています。
 このような高齢化・医療費高騰にどう対応するか、改めて根本から議論して、変革していただきたいと思います。しかし、それには時間をかけた国民的議論が必要であるということも認識をしております。
 次をお願いします。
 最後に、制度改革への要望・意見を申し上げます。
 高額療養費制度は、我々健保組合の加入者、すなわち現役世代にとっても重要なセーフティーネットとして高いニーズ、期待を有しています。できれば、上限額引上げなどの見直しはしたくないという思いは我々健保組合も同じです。
 しかし、医療費が増大し、現役世代の保険料負担が限界にある中で、医療保険制度を維持していくためには、高額療養費制度を含めた幅広い項目について負担と給付の全体の見直しを行っていくことは避けられないと考えます。
 制度を維持していくために、どのように見直すことが長期にわたり継続して治療を受けている方々の負担への影響を最小限に抑え、かつ、国民全体の納得感も得られるか、当委員会での議論を期待します。
 同時に、当委員会の検討項目ではないかもしれませんが、長期的な視点で健保組合を維持していくために、現役世代の保険料負担の抑制・軽減を図るための制度改革に早急に取り組み、また、現役世代に納得してもらうための説明に力を入れていただきたいと思います。
 我々健康保険組合としては、見直しの状況を踏まえながら、また、社会の変化等にも対応しながら、これまで以上に加入者への支援、健康の保持・増進に取り組んでいきたい。また、我が国の健康保険制度に対する加入者の理解がより深まるよう努力したい。それが我々健康保険組合の責務であると認識をしております。
 私からの御説明は以上でございます。御清聴ありがとうございました。
○田辺委員長 岡様、ありがとうございました。
 続きまして、資料2について、計機健康保険組合の日原様から御発言をお願いいたします。
 では、よろしくお願いいたします。
○日原参考人 資料は全体で4つの構成となっております。
 1番目は、計機健康保険組合の御紹介です。
 「計機」という名前のとおり、計測機器業界の健康保険組合で、昭和42年に設立されました。工業会が中心となりまして、その4分の3は中小企業で構成されておりますが、上場企業をはじめ462社、被保険者で申し上げますと3万5000人、被扶養者2万5000人、合計6万1000人の方々で構成されております。
 保険料率につきましては、設立時、昭和42年は70‰、いわゆる7%から、9.7%、今97‰に推移をしております。これは、時代背景の変遷があり、一部負担金については被保険者0割から1割、2割、3割と変化がある変遷の中での保険料率の変更となっております。
 次のページは、その特徴です。
 特徴につきましては、JAL健保さんは単一型という形で大きな企業を中心として運営をされておりますが、総合型の健保は中小企業を中心として同じ業種の集まりで、その集団的メリットを生かし、同じような業界であることから、その取組がしやすいという形で、日本では被用者保険を職域に分けて職域保険という形で支えているのが総合健保組合の特徴でもあります。
 次のページをお願いいたします。
 健保組合の役割です。
 健康保険組合は、その根幹は後でも出てきますが、保険給付と保健事業の2点となります。
 次のページをお願いします。
 保険給付につきましては、健康保険制度ですから、労災ではない業務上災害以外のものについての医療保険制度の基本根幹であること。国民生活の安定と福祉の向上が大前提の目的。この中には、日本の医療保険制度の根幹となりますから、高齢化の進展や疾病構造の変化、社会情勢その他の変化等に応じて、ほかの医療保険制度やほかの制度とも密接に関連しながらその在り方に関して検討を加えて、医療保険の適切な運営を図っていくということであります。
 次のページをお願いします。
 健康保険組合の存在意義としては、医療給付、現金給付、その他の給付。給付内容については後ほど資料を御覧いただきたいと思います。
 次のページをお願いします。
 法定給付費です。いわゆる医療費の推移ですが、これは決算数値ですので実際のリアルな数字です。こちらについては、平成29年度は81億7500万円ですけれども、令和6年、この間の決算では104億4600万円、この間に予算規模で34億円プラスとなっております。そのうちの医療費の占める割合は22億円ということで、もちろんですけれども、医療費の伸びが大きい。
 次のページをお願いします。
 では、これを高額療養費にスポットを当てた場合、29年度からこうなのですけれども、令和5年度で下がります。当たり前ですけれども、これは保険の世界なので、高額療養費が該当する方というのは、とても困難な、命に関わる疾患もあれば、難病等で長期に医療が必要な方々、そういうことが出るか、出ないか。ですから、多くの方々に出るわけではないですけれども、出た場合には非常にセーフティーが必要となるというので、高額療養費の推移は経済的に右肩上がりということではなく、その保険事故に応じて起こるリスクのあるものであるという御案内になります。
 次のページをお願いします。
 保健事業の細かい点は、JAL健保さんが示されるように、加入者の健康の保持・増進のために必要な事業を行う。この事業が支え手の健康の保持・増進をすることによって、医療費の適正化に資するということで、保健事業というのは保険給付を支えるためにもとても必要な事業であります。
 次のページをお願いいたします。
 当組合の保健事業は、疾病予防事業と、保健指導宣伝という言い方をされていますが、先ほどの保健事業の中でいわゆる健康教育とかそれに当たるもの。それから、体育奨励事業というのは、健康保険ができたときは、福利厚生要素が高いので、特に中小企業の集まりの場合は、そのスケールメリットを生かして保養所の運営など。こちらの赤字にありますように、組合の直営保養所は平成15年には閉鎖をいたしました。
 これは特殊な特待制度があるところとか、ウィークデーでの稼働率が高いところにはすごく有効なのですけれども、レジャーの多様化、休日の多様化があったところで、保養所を健保組合が持つという時代ではなくなったので閉鎖をした。
 疾病予防事業につきましては、中小が多いので、組合の診療所を持ち、自ら職員が検診車に乗り巡回検診を行っておりましたが、これも高齢化の進展に伴って40歳以上の方々が増えると、施設型健診、いわゆる人間ドックに移行したり、その時々の年齢集団の変化によって変わるものですから、コロナ禍、組合診療所も閉鎖し、巡回検診車も処分となりました。
 次のページをお願いします。
 そのような中、保健事業はどんなことを行ったかというと、令和2年に新型コロナがはやったときに、令和3年に新型コロナワクチンの職域接種事業を行いました。左側が接種事業を行う前の令和2年の職員に対する訓示、健保組合がどうあるべきかという訓示を仕事納めにお話をし、右側にそれを実施した後の加入事業所からの感謝のお便りをいただいたところを載せております。
 これにつきましては、加入事業所はやはり中小で、あのときは1,000人以上の規模の団体が職域接種をすることができたわけですけれども、中小ではそれができない。そうすると、総合健保組合が加入者のスケールメリットを生かして、健保組合で1,000人以上集めてコロナワクチン接種を行ったところです。
 次のページをお願いします。
 実際にどうであったかというと、合計4回の接種をしまして、2万8730名の方に受けていただきました。3,000以上の企業・団体につきましては、加入事業所だけではなく、加入事業所の取引先とか、清掃の方々も含めた運営する方々、近隣住民、それから、地方で受けることができない加入事業所も新幹線に乗って受けに来てくれた方々もいました。地域接種の場合は地域が特定されることから、職域接種のメリットを生かし、地域接種の負担軽減と接種の加速化を図るために独自で運営したものです。
 次のページをお願いします。
 そのときの写真ですけれども、これも業者に委託することなく、健保組合の職員で、ふだん使っている会議室にディープフリーザーを設置してワクチン管理を行ったところです。
 次のページを見てください。
 現在、どういうことを行っているかというと、ロコモ測定会。その前はフレイル測定会を実施していたのですけれども、やはり健康長寿を目指すということで、健康な方々について健康管理の重要性。疾患を見つけるスクリーニングを進めることも並行しながら、疾患になっていない方々の疾病予防に力を入れていく。これが今の保健事業の中心となっております。
 次をお願いします。
 実際にどういうことをやっているかということで、資料を後で御覧いただきたいのですけれども、立ち上がりの測定とか、ツーステップで柔軟度を見たり、筋力を測定したり、体組成を測ったり、こういうことで加入者の意識づけを行っております。
 次のページをお願いします。
 3つ目に、健保の財政状況です。経常収支は、健保は予算主義ですから、料率でお金を集めることによってその運用をしております。リーマンショックがここには入っておりませんが、同じ料率を組んでも、経済的な背景によって収入が減ったり、逆に加入者の賃金が上がれば、同じ料率を組んでいても上がるということです。
 この推移ですけれども、うちが大体200数十億規模の予算で、令和6年度は2900万円ぐらいの経常黒字ですが、これはほとんどプラスマイナスゼロに近いというところです。平成29年には1億7900万円、1‰が8000万、9000万ぐらいのところに2‰ぐらいのそういう現象があって、保険料率の引上げを2‰行ったというところです。
 そこで、8年間変えておりませんけれども、これについても財政運営を切り崩しながら料率を守るというところが今の課題となっております。
 次のページをお願いします。
 実際の支出の内訳です。先ほどJAL健保さんからもありましたけれども、まず、自らの加入者の保険給付費で半分、高齢者への拠出金で40%、それから、実際の保健事業が行われているのが組合の職員の経費等も含めて7.3~6.51%という割合が健保組合の実態となっております。
 次をお願いします。
 こういった中で、今回の医療保険者としての立場からということで、まず医療保険制度の中での特徴を申し上げたいと思います。
 まず、医療保険制度は強制加入ということで、その被用者、いわゆるサラリーマンの方々は自分で保険を選択することはできず、負担については所得による応能負担。民間の保険のようにリスクに応じた負担ではなく、それぞれの標準報酬に基づいた負担をしております。
 その所属集団については選べることができず、逆選択が不可です。逆に言うと、加入するときは加入者の意思によって、この健保組合に入りたいのか、それとも協会けんぽであるのか、そういう形になっております。
 3番目としまして、保険給付の定型化というのは、当然公的な保険ですので、社会的政策要求と平均的標準的な給付を行う。
 4番目は、医療保険者は、公的運営ということで、健康保険組合も厚生労働省に認可を受けた公的な法人格である。
 5番目が今回のところですけれども、一部負担金があること。これは、被保険者間、受給をされる者と非受給者の公平性の観点から、いわゆる受益者負担、一部負担金制度が設けられている。
 6番目は、今の特徴としては所得移転的な性格、特に高齢者医療へのウエートが大きく、現役世代、いわゆる働いている方々からの保険料で賄う、高齢者への所得移転的な性格が多くなっているというのが現在の特徴です。
 次のページをお願いします。
 健康保険制度は、我が国の医療保険制度の根幹である。基本理念からもありますとおり、国民生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的としておるところです。
 被用者保険、職域健康保険の中で、とりわけ総合保険組合は中小企業を中心として業種ごとに被保険者が自主自立で運営しているところであります。
 我々の健保組合はどちらかというと財政が豊かなほうです。例えば運送業とかそういった健康保険組合は、働き方改革によって労働者の方々の就労時間が変わることで時間外労働も減って、大幅に保険料収入が減ったりします。業種ごとの経済背景の違いがあることから、財政にはばらつきがあります。
 そうは言っても、各保険者は、加入者の生活の安定と福祉の向上を目指してそれぞれの医療保険の効率化を図り、医療の質の向上と、給付内容と費用負担の適正化に努めている。これは何を申し上げますかというと、いろいろな保健事業やそういったものについてそれぞれの範囲の中で自助努力をしているというところです。
 次のページをお願いします。
 そのためには、保険給付はもちろんのこと、保健事業の実施というのは各保険者の保険者機能の発揮について最重要な事項であります。
 現状の過度な支援金を含め、各制度の先送りは保健事業を圧迫し、医療保険制度の持続可能性を損なうものと考えます。
 保険給付を行うに当たっては、その負担と給付の在り方は、財源に限界があることから、各保険者の収支だけではなく、公費を含めた検討が必要であると考えます。
 また、全ての財源に限りがあることから、医療保険全体の給付の見直しも視野に入れて検討していただきたいと思っております。
 次のページをお願いします。
 高額療養費制度については、当然ながら医療保険制度の根幹でもありますけれども、命に関わる疾患とか高額な医療で支出を伴う患者さん。そもそも、医療保険制度というのは経済的な破綻を予防するためにセーフティーネットとして重要な役割があります。
 一方で、医療の高度化、高額薬剤の保険適用は、医療保険財政を圧迫しています。近未来の人口構造変化、2040年代等も踏まえて、さらなる医療の高度化が懸念されています。これは、高度な医療を否定しているものではなくて、高額化していく医療費についてどういうふうにその財政の在り方を考えるかということをいま一度御検討いただきたい。
 高齢者の支援の増大、子ども・子育て支援金の拠出等、被用者、とりわけ現役世代の保険料負担は限界に来ております。
 次のページをお願いします。
 骨太方針2025で示されているように、能力に応じて全世代で支え合う全世代型社会保障の構築に向けて、現役世代に負担が偏りがちな構造の見直しによる応能負担の徹底、給付と負担の見直しを図る等、高額療養費だけでなく、現役世代の負担軽減、保険料の負担の上昇の抑制を図るため、持続可能な医療保険制度にするために制度改革は喫緊の課題であると考えます。
 医療費を支える財源は、現状、自己負担額、保険料、公費の3つしかありません。自己負担は、高額療養費制度だけではなく、健康保険制度の中での自己負担の在り方とか、それから、保険料、公費、この3つの中で御検討いただいて、それぞれの医療保険制度を維持していくために、給付を受ける側と負担する側のバランスをどう取るかに重点を置いて丁寧に御検討いただきたいと考えます。
 私からは以上です。
○田辺委員長 日原様、ありがとうございました。
 続きまして、資料3について、東京大学大学院医学系研究科、康永様から御発言をお願いいたします。
 では、よろしくお願いします。
○康永参考人 よろしくお願いいたします。東京大学の康永秀生と申します。
 私からは、アカデミアの立場から参考となる資料を提示させていただきます。「医療費適正化に関する近年の実証研究の概要」です。
 次のスライドをお願いいたします。
 こちらにも書きましたように、医療サービスというのは量と質、あとは医療サービスへのアクセスの公平性ということがとても重要であります。一方、国民医療費は増加し続けていて、制度の持続可能性に懸念が生じるというのは周知の事実でございます。
 これまで様々な医療費適正化政策がなされてきました。よいものも、そうでないものもありました。それについて、これまで医療経済学の領域でいろいろな研究がなされてきております。
 次のスライドをお願いします。
 ざっくり分けますと、これまでの主な医療費適正化政策は、公的医療制度における自己負担を導入したり、その自己負担率を上げたり下げたりするといったこと。もう一つは、点数制度あるいは薬価制度において価格を調整するという2つですね。上は、需要者側に対するアプローチで、価格抑制というのは供給者サイドへのアプローチになります。
 もう一つは、検討の途上にある医療費政策ということで、医療サービスの給付範囲の見直しというのも一つ大きなポイントになってきます。
 次のスライドをお願いいたします。
 最初に、自己負担割合の変化が医療サービス需要に及ぼす影響です。影響を見るときに、需要が減ったか、増えたかだけではなくて、その結果、患者の健康にどういう影響を与えたかどうかという視点もとても重要なのです。
 次のスライドをお願いします。
 こちらはアメリカの話ですけれども、「RAND Health Insurance Experiment」という非常に有名な1970年代にやられた医療保険に関する大規模なランダム化比較試験であります。6,000人のグループを0%、25%、50%、95%まで、4種類の異なる自己負担割合のプランにランダムに割り当てるという社会的な実験であります。日本でこういうことはできないと思うのですけれども、そのほかに受診状況とか健康状態も記録をしました。
 次のスライドをお願いします。
 結果をざっくり言うと、自己負担割合が高いグループほど外来受診率は低いという傾向を認めたのですけれども、全体としては健康状態にあまり有意な関連はなかったのですが、低所得者に限ると、自己負担が非常に高いグループでは受診率がかなり低下してしまう。いくつかの健康指標も悪化していたという結果が出ています。
 これはアメリカの話で、アメリカの場合は無保険者がたくさんいますので、民主党の政権下において、無保険者をなくそうという政策にダイレクトにつながっていったという経緯がございます。
 次のスライドをお願いします。
 日本に関してどうかというと、日本の研究もかなりあります。23年に文献レビューが出ております。非常に膨大なレビューなのですけれども、それを2行で要約すると、他のサービスに比べれば、医療サービスの需要の価格弾力性は総じて低い。価格弾力性というのは、価格が上がったら需要が下がるとか、そういった関係です。例えば、米の値段が上がったら米を買わない人が出てくる。でも、医療サービスの場合はそんなに価格弾力性が大きくないです。特に入院医療とか重症の患者さんの場合は、価格が少々上がっても需要は変動しません。一方で、外来とか、風邪とか、そういった軽症の医療の場価は価格弾力性が比較的大きいと言われております。
 自己負担率の変化が健康に与える影響も総じて大きくないと書かれていますけれども、これは全体を見た場合です。個々に見れば、影響を受けるケースももちろんあります。
 次のスライドをお願いいたします。
 これは、2014年、少し前の研究ですけれども、日本の高齢者を対象とした研究例です。2014年当時は70歳で自己負担割合が1割になるのです。70歳未満は当然3割ですから、70歳になった時点で3割からいきなり1割に下がるということがあったわけですね。そうしたら、70歳の前後で、医療の利用状況とかそれに伴う健康状況がどう変わったかということを分析した研究であります。
 次のスライド9です。
 結果を簡単にまとめますと、70歳になると急にクリニックに行き始める。10%増加するのです。これは外来だけではなくて、入院も10%増えているということです。当然といえば当然ですが、短期的な死亡率の変化は認められなかったという結果が出ております。
 考察です。低額利用できる医療を過剰消費する。これは、経済学的な用語で「事後的にモラルハザード」といいます。これが影響しているのだろう。相対的に医療の必要度が高くない層がいて、それにおける医療の過剰消費が生じているのではないかという考察であります。
 次のスライドをお願いいたします。
 子ども医療費の話です。ゼロ価格効果ということがあって、ただだと本当に需要が増えるのです。でも、100円でも200円でもいいから自己負担を課すと需要が減ってしまいます。それをゼロ価格効果といいます。
 これは、各自治体が子ども医療費助成制度というのをやっておりますけれども、それのデータを用いて、実際にゼロ価格効果がどれぐらいあるかということを検証した研究です。
 次のスライドをお願いします。
 自己負担が0円の場合と、たった200円だけれども自己負担を課した場合とを比較して、少額の自己負担を課された場合に健康状態のよくない子供では、月1回以上受診する割合は低下しなかったということです。比較的健康にもかかわらず頻繁に医療機関を訪れる子供の割合は、自己負担を200円課したら下がることが認められます。
 次の12番目のスライドは重要なので、「注意点」を赤くしております。
 これまで行われてきた研究は、自己負担割合の増加というのが世代全体に影響しております。例えば、高齢者だったら高齢者で、軽症から重症まで全部含んだ高齢者全体に影響している。子供の場合は子供全体に影響しているわけですね。全体に対する自己負担割合の増加ですから、圧倒的に軽症者による事後的モラルハザードがあって、それに対する抑制効果があるわけですね。
 ところが、高額療養費制度の限度額の引上げというのはちょっと注意しなければいけなくて、これは世代全体ではなく、あくまで対象者が既に高額療養を受けている人になりますので、軽症ではなくて一定以上の医療ニーズがある方で、なおかつ、高齢者だけではなくて、若年で特定の疾患、例えばがんとかアレルギー疾患、アトピーとか喘息といった長期の慢性的な疾患の患者さんが含まれている。なおかつ、治療薬の一部は高額なのですけれども、効果に関する文献的にエビデンスがあるケースが多いわけです。
 次のスライド13に行ってください。
 このスライドは、文献的な裏づけが足りない部分もあるので、「私見」と書かせていただきました。
 世代全体の自己負担割合の引上げは、一定程度の医療費適正化に寄与してきましたけれども、患者の健康状態の影響は限定的であるということが示されている。
 一方で、高額療養費の自己負担引上げというのは、特定の患者層において、受診抑制とか治療中断等による健康状態への悪影響を否定できないのではないかと考えます。なので、全体一律引上げというのはちょっと難しいところかと思います。
 もう一つは、高額療養費制度の趣旨は、本来は重い病気にかかっている人の家計を破綻させないというところでありますので、低所得層への家計への負担は無視できないと考えますので、やはり影響を受けやすい集団を特定して、それらに対する特段の配慮が必要であると考えられます。
 あとは、ほかの手段です。費用効果分析による価格調整等によっても対処すべき。
 次のスライドに行っていただいて、ここから先はさっと流してお話をいたします。
 価格抑制に際しては、当然費用効果分析がなされます。費用対効果に劣るcost-ineffectiveなものについては、利用を抑制するか、価格を下げるべきであります。既にそういった枠組みは費用対効果評価制度という形でつくられておりますけれども、これは市場規模が大きくて著しく単価が高い医薬品・医療機器ということで、すごく限定されております。これを、新薬だけではなくて、既に市販されている薬についても対象を広げるべきだと考えます。
 15番目のスライドです。
 給付範囲の見直しに関しては、日本ではOTC類似薬の保険給付の見直しというのが長年話題になっているのですけれども、世界的な論点の中心はむしろlow-value careというものです。low-value careというのは、既に公的医療保険に収載されているのだけれども、後々の研究でアウトカムの改善効果はほとんどないことが分かっているものです。これはもう費用対効果分析の対象にもなれない。そもそも効果がないのだから、1円も払う価値がないわけです。
 アメリカの分析では、そういったもので20~30%医療費が削減できると。これは少し粗い解析であるのですけれども、例えば推奨グレードDの5つの医療をやめた場合は26億ドル節約できるという試算もあります。
 17枚目のスライドです。
 日本の研究例もあります。日本のレセプトデータを用いて、ここに「低価値医療の例」として挙げられているのは、もうほとんど効果がないと分かっている治療です。風邪に対して抗生剤を処方してもしようがありませんし、早産の抑制のためにリトドリンを投与してもしようがありません。むしろ危険です。敗血症に対してエンドトキシンの吸着をするというのは全くエビデンスがありません。でも、依然としてやられているということです。こういったものの実施を抑えていくというのが、今後の医療費抑制政策の一つのオプションになり得るのではないかということです。
 最後、まとめでございます。18枚目のスライドです。
 世代全体の自己負担割合を引き上げるのと、高額療養費で既に医療サービスが高密度で必要な人に対する自己負担を引き上げるというのは、全然意味が違うということです。
 患者の家計とか健康面への悪影響を否定できないですから、一律の適用は難しいのではないかと考えております。
 一律の負担増ではなくて、費用対効果分析や、低価値医療を見つけ出してそれをやめるといった対策も、今後検討の課題の一つに上がってくるのではないかと考えます。
 御清聴ありがとうございます。
○田辺委員長 康永様、ありがとうございました。
 続きまして、資料4について、国立研究開発法人国立がん研究センターの後藤様から御発言をお願いいたします。
 では、よろしくお願いいたします。
○後藤参考人 よろしくお願いいたします。国立がん研究センター中央病院の後藤と申します。
 私は、呼吸器内科・腫瘍内科医であります。がんといいますと、手術、放射線、薬物療法とありますが、私の専門である内科、薬物療法を中心に本日の話をさせていただきたいと思います。
 次のスライドをお願いいたします。
 皆さんも御存じかと思いますけれども、現在の日本では1980年以来、がんが死因の第1位になっております。費用対効果のときには、透析医療、治療しないと1週間、2週間で命に関わるような病気を対象として研究などがされるかと思いますが、現在では、がんはやはり死に至る病気であることが多いですし、多くの患者さん、国民ががんという病気を恐れるのは、やはりこの病気が死と密接に関係があることになるかと思います。
 次のスライドをお願いいたします。
 左側は日本のデータですけれども、がんによって亡くなってしまっている患者さんの数はごらんのように徐々に増えております。しかしながら、これを年齢で調整いたしますと、実はがんで亡くなっている患者さんは減っています。それは、ここまでに議論いただいたように、健康増進の影響も大きく、禁煙活動、健診、これらの影響も非常に大きいわけですが、私の専門領域で申し上げますと、内科的な治療の発展も非常に著しいものがあります。
 こちらは、現在、肺がんとして承認されている薬を棒グラフで表しています。それぞれ1960年代から2020年代までですが、2000年ぐらいまでは10年間で5から10剤ぐらい、数年に1薬剤ぐらいの低ペースでしたが、2010年ぐらいからは非常に高ペースで多くの薬剤が承認されるようになってきていて、この治療薬による効果も多少なりがんの予後改善に寄与しているのではないかと私たちも考えております。
 次のページをお願いいたします。
 しかるに、この薬剤の費用が現在がんの領域でも世界的に大きな問題になっております。私が医師になった頃は、疾患数、患者数の多い生活習慣病が医薬品のコストを多く占めると言われておりましたが、2014年来、薬効別では悪性腫瘍のコストが1位になりました。そのときは1年間7400億円でありましたが、現在は1兆円を超える。非常に速いスピードで増えております。
 右側は、がんでよく使われるというよりは高額な薬剤の一覧を記載しておりますが、多くの薬が売上げナンバーワンという形になっております。2024年も1位、2位、6位、7位は全てがんの治療薬になりますので、がん医療が医薬品のコストには大きな影響を与えていることが分かるかと思います。
 ここからは、高額療養費に関してですので、より現場に即したお話をさせていただきたいと思います。
 こちらは、肺がんの治療薬。がん医療においては、ほかの領域にもありますが、ガイドラインという手引書みたいなものを学会としてつくっておりまして、多くの医師にこの治療をすることを推奨するような医療を幾つかの分類に従って記載しております。
 例えば、左側を見ていただきますと、同種同効薬も幾つか載っているのですが、これは1日当たりの費用です。1日当たりの費用が真ん中を5万円、一番高いと10万円近くに及びます。平均すると、ガイドライン載っている薬は、現在は3万円前後の薬を推奨していることが多くなります。すなわち1か月の費用は90万円程度が多いということになります。しかしながら、中には10万円近いものもあったり、もっと安いものもあります。
 皆さん御存じのとおり、費用が2倍になったからといって2倍の効果はありませんので、例えば、薬価の高い薬を使うことによって予後が3か月延びた、それでも2万円から10万円に伸びることも普通にあるような世界であります。
 問題は、非常に高価な薬剤を我々は高額療養費のおかげで使うことができています。私がここを「高額療養費」で見えなくしているのは、我々は現場で高額療養費のことを存じ上げない病気になったばかりの患者さんに、費用は幾らぐらいですか、高い薬ですかとよく聞かれます。治療によって値段は違うかと。しかし、僕らの答えは現時点では極めて簡単で、「高額療養費のおかげで何をやっても同じです」と言うことができます。これは非常にいいことなのですけれども、多くの問題をはらんでおりますので、それは次のページ以降でお話しさせていただきます。
 次をお願いします。
 現在の高額療養費制度の問題点を2枚のスライドにわたって、2つの立場からコメントさせていただきます。
 1つ目が、私、医師が考える患者の立場です。1つ目は、暦月単位。医療費の算定や請求は全て暦月単位であります。しかし、これはほとんどの人に知られていないですが、例えば、7月から8月にまたがって入院して、7月に手術をして、残りの時間を病院で過ごした場合と、8月に入ってから入院して手術をした場合では、上は2か月分の請求になりますが、下は1か月分になります。我々は当然こんなことを考えずに手術の日程など決めていますが、実は患者さんにとっては支払いがこれだけで倍になります。
 また、前回、患者会の方からもお話がありましたけれども、内服薬の場合には処方日数が大きく関わります。多くの薬剤では最大限3か月の処方が可能なのですけれども、病態によってと前回患者さんのほうからお話がありましたが、我々は病態を予測できるようなことはなかなかできません。ですので、費用対効果を患者の立場から考えれば、圧倒的に3か月が得ですが、なかなか3か月にできません。しかも、地域によって1か月しか処方できない。できない場合には、査定されると全て病院負担になりますので、病院は、何の根拠か分かりませんけれども、この人には1か月、2か月というふうに処方したり、地域によって違うということが起きております。
 そして、制度が極めて複雑です。我々医者も説明できませんが、例えば、医療機関合算、世帯単位、ないしは高額療養費制度は区分というのがありますが、よく幾らですかと聞かれたときに、私たちも区分はどちらに当たりますかと質問しても、この区分を答えられる人はほとんどいないのですね。さらに、マイナンバーカードになって、区分も調べることも難しくなっているというのが現状です。
 次をお願いします。
 続いて、医師の立場です。医学的には、高額療養費制度は月をまたいだら費用が違うとか、2か月分、3か月分の処方で費用が違うという妥当性が全くありません。さらに、患者さんがほとんどの場合は理解していない、理解するのは難しいということを盾にコストを意識しない治療をしてしまいます。こちらに書いてあるような処方日数、地域格差、検査のタイミング、これらは我々が医療をする上で、一体どの治療がどれぐらいかかっているかを計算しなくていいようなことが高額療養費制度で起きてしまっています。
 これは、さらには同種同効果で副作用もほとんど同じような場合でも、コストに見合う差があるかということを患者さんとほとんど話さずに治療薬を決定しておりますし、企業の働きかけ、ないしは、やはり新しいもののほうがいいと誰でも思うと思いますので、それらに伴って一般的には費用対効果が伴わない治療が行われていることになります。
 最後に、高額療養費制度は不公平というのが一つ言えるかと思います。医療費は誰がどれぐらい負担しなければいけないというのが非常に難しくて、一例としてうちの病院のデータを持ってきました。有料個室は、現時点では4万円以上のお部屋が多いのですけれども、この場合も平均年齢は御覧のように非常に高い方が利用されていることになります。特に内科で入院が長い場合には、若い方で個室に入院されている方はほとんどいないというのが現状です。ですので、応能原則に従っているかというと、高額療養費制度は全くブラックボックスになっているかなと思います。
 もう残り時間が短いと思いますけれども、簡単にどういう問題が起きているかということを少しだけお話しさせていただきたいと思います。
 医療費は安ければそれにこしたことはないというのが現場でありますが、既に現在多くのひずみが現場にも起きかけています。これは御存じのとおり持続可能性のスライドですので、次に移っていただければと思います。
 一般的に皆保険制度を考える上では、これはWHOの資料ですけれども、大きく3つのことを考えるべきと言われています。先ほどもお話がありましたが、誰のどのような治療を対象とするか、誰に治療をするか、さらにその治療の公的負担をどれぐらいにするか、この3つの柱があり、この図にあります青色の部分の体積がいわゆる全体の費用ということになります。
 日本の特筆すべきことは、次のスライドで見ていただければと思いますが、薬に限って言えば、効果効能が認められたら薬は承認され、承認された薬は全て償還されます。これは世界では類を見ない制度であります。イギリス、フランス、韓国、その他ほとんどの国は、薬として使えるかどうか、これも非常に厳しい審査ですが、使える上に、それが薬を保険として償還するかということも別段階で決まっております。このように一体となっているのは原則日本だけであります。米国の場合は特殊な事情がありますので、ほかとは比較できません。
 具体的にどういうことが起きているかということを次のスライドでお示します。
 多くの国では、誰の治療をするか、どのような治療を保険適用とするかというときに、例えばフランス、イギリスなどは国民全員が日本と同じような皆保険制度で使えますけれども、治療を極めて制限しています。公的負担で0%で多くの薬が使えるのですけれども、多くの薬が使えない、高い薬は使えないということが起きております。
 次のスライドはアメリカです。アメリカはほとんどの薬を科学的に使えるか使えないかを決めておりますので、ほとんどの薬は使えますが、公的負担はかなり制限されておりますし、患者自身の費用負担によって、どのような治療ができるかが異なるような形になっています。
 その次は最後、日本になります。日本では、ほとんどの治療をアメリカと近い程度の治療ができるようになっていますし、皆保険制度でほとんどの人の治療ができるようになっている。かつ、公的な負担も今のところは少ない。見ていただくと、この3つの中で日本がどうしても青色のボックスが原理的に一番多くなっているという現状となっています。
 次のスライドは、一例として肺がんで現在使える薬です。アメリカはこれが標準ですので、当然全ての薬が使えます。日本もほとんどの薬が使えます。フランスは、医療費は無料になりますけれども、使える薬は御覧のように極めて限定されております。ですので、患者負担が0%の国では、ほとんどの場合は使用制限をしているということになります。
 次のスライドを見ていただくと、日本はそのために何をしているかというと、多くの場合、薬価を下げるということをして試みているのは、先ほど少し急いでしまいましたけれども、現在は医療費抑制の一番の施策かと思います。
 この結果、現在日本のマーケットの魅力が低下していることによって、日本で薬を開発しない、薬が届かないという問題が起きております。このように、新しい薬は使いたい、でも薬を安くしてみんなに届けたいというのは、世界的な開発の中ではもう持続できないのではないかと考えております。
 最後のスライドになりますが、現時点では患者にとっても、医師にとっても、有効な治療をほとんど提供できるすばらしい制度でありますけれども、世界に類を見ない制度でありまして、これは持続可能性という観点から問題点がありますので、高額療養費制度というものをどのように維持しながら、新しい薬も含めて、よりよい治療を患者に提供するかということが今後の課題かと思います。
 以上となります。ありがとうございました。
○田辺委員長 後藤様、ありがとうございました。
 ここまでの御報告に関しまして、御意見、御質問を頂戴したいと思います。どなたからでも結構でございますけれども、御質問、御意見等がある方は挙手にてお知らせいただければと思います。
 では、佐野委員、よろしくお願いします。
○佐野委員 ありがとうございます。
 まずは、保険者からのヒアリングとして、2つの健康保険組合の説明の場を設けていただいたことについて感謝を申し上げたいと思います。その上で若干補足でコメントをさせていただきます。また、康永先生と後藤先生にも御説明いただきましたので、コメントと質問をさせていただければと思っております。
 まず、健保組合については、今説明もありましたけれども、ほとんどの健保組合が恒常的に赤字の基調にございます。直近は、賃上げ効果とか医療費の伸びの鈍化もあって、若干落ち着いたように見えますが、今も御説明がありましたように、高齢者医療費に対する拠出金が全体支出の4割以上を占めていますし、一部の健保組合においては既に50%を超えているところもございます。
 今ありましたように、いわゆる保健事業を中心に健保組合はいろいろな役割を果たしておりますけれども、いずれにしても健保組合は支出が伸びた場合に、これを賄う方法は保険料率の引上げということしかございません。ほかの収入があるわけでございませんので。そういう面で、保険料率を引き上げますと、当たり前ですけれども、その分加入者の負担が増えることになります。すなわち、せっかく賃上げをやってもその効果が相殺されてしまい、保険料率の引上げも限界に来ているというのが現状でございます。
 今後も、さらなる医療費の高額化、また、高齢者医療への支援の増大、さらには来年度から予定されています子ども・子育ての支援金の徴収等々を考えますと、現役世代の保険料負担の上昇は懸念される状況でございます。
 この専門委員会のテーマは、もちろん高額療養費制度ということでございますけれども、人口構造の変化という大きな流れの中で、給付と負担のバランスをどう取るのか、その中で現役世代の負担軽減をどう図っていくのかということは、高額療養費制度に限らず、医療保険制度全体の中で解決策を見いだす必要があると考えております。
 無論、この医療保険制度全体の見直しについては、政府においても改革工程表等で全体の方向性を示されておりますし、その内容の全てについて着実に実施していただきたいというのはこれまでも健保連として申し上げてきたところでございます。この専門委員会のテーマであるところの高額療養費制度の在り方についても、全体見直しと併せて検討してくことが重要であると考えております。
 先ほど御説明にもありましたが、高額療養費制度は医療保険制度全体の中でもまさにセーフティーネット機能として極めて重要、これは今更言うまでもございませんが、給付を受ける患者と保険料を負担する加入者、国民の双方の納得感を得る必要があると思いますので、幅広い視点での検討をお願いしたいと思っております。
 それから、康永先生と後藤先生からは、医療費適正化という観点から御説明をいただいたと考えております。給付における費用対効果の分析や、コスト意識が必要だという部分については、まさに我々としても今後の議論において極めて重要なポイントであると考えております。
 無論、これらは財源の話にもつながるところでございますし、負担のほうは公費、保険料、自己負担の3つしかないということでございますので、そのバランスを取って、未来に向けて制度の持続可能性をどう確保していくのかということについては、国民の理解も得ながらやっていかなければいけないと思っています。
 そういった中で、康永先生と後藤先生に質問させていただきたいと思うのですけれども、御説明いただいた部分とかぶるかもしれないのですが、高額療養費制度に限らず、医療保険制度全体における医療費の適正化ということについてのお考え、もしくはお話しし切れなかった部分があれば、ぜひお聞かせいただければと思います。よろしくお願いいたします。
○康永参考人 御質問どうもありがとうございます。
 高額療養費制度から少し離れて広く見た場合に、患者の自己負担を増やすというアプローチはこれまでずっとやられてきたわけですね。0割から1割、2割、3割というふうに上げてきたわけです。それはすごく効果があったのです。最近は、高齢者についても1割負担から2割負担に増やすということをやってきた。それも文献的な裏づけがあって、ちゃんとこれは効果があることが分かっていて、非常に整合性の取れた施策だと思うのです。ただ、もうこれ以上上げようがないぐらいまで上がっているのです。3割から4割、5割というのはなかなか無理なのです。
 高額療養費に関しては、今日申し述べたように一律に上げるというのは難しいのではないかというのが私の意見です。やはり、自己負担も含めてほかのアプローチももっと考えるべきである。
 1つは、患者さんにその負担を押しつけるのではなくて、価格を下げるという方向性が一つ。もう一つは、エビデンスのないlow-value careを今後減らしていくという方向性。世界的にはそっちの方向が非常に着目されていると考えております。
○後藤参考人 ありがとうございます。
 医師の立場から、世界の多くの同じ領域の医師と話すと、世界に完璧な医療システムというのはどこにもないということがまず大切かなと思います。全ての薬剤をほとんど負担なしで使うことは当然できません。さらに、薬というのはグローバルな視点で開発が進んでいて、そこにはものすごい資本も動いておりますので、すばらしい薬を安く届けるという夢物語もあり得ません。そのような状況で、我々はどういうポリシーを持って患者さんたちに医療を提供するかということになるかと僕は思っています。
 世界の主流は、多くの場合は、国民に平等に提供するのであれば使用を制限するというのが現実で、現在の日本の医療制度を海外の人に話すと、ほとんどの場合、クレージーだと言われます。どうやってそんなのが成立しているのだと言われます。僕はいつも、成立していませんと答えています。
 この状況になったときに、一方で、薬を使えなくするとか費用を高めるというのは、痛みはどうやっても出てしまって、この状況になってから戻すというのはすごく難しいことだと思っています。
 今まで戻さなければいけないということをいろいろなところで言っても、全然賛同を得られなかったのですけれども、僕らのところに今起きている問題点は、このシステムを維持することが新しい薬を患者に届けるということもできなくなっているということをまず理解していただいて、日本がいい薬を患者に届けるためにはどこかでみんなで痛み分けしないと、現実的にそういう未来は待っていないということをまず理解していただくことが重要かなと思っています。
○佐野委員 ありがとうございました。
○田辺委員長 それでは、天野委員、よろしくお願いします。
○天野委員 御説明ありがとうございました。
 私から、それぞれ参考人の方々に3点質問ございます。
 1点目が、組合のお二方に質問させていただきたいと思います。お二方とも強調された点が、例えば8割の健保が赤字であって、主な原因は高齢者拠出金の増加であるとか、高齢者の支援金の増大が限界に来ているという御指摘がありました。
 この委員会は高額療養費を議論する委員会ですので、高額療養費での議論ということを考えた場合、御承知のとおり高額療養費制度は70歳を境に制度が違っているわけでございますが、お二人にお伺いしたいのが、今後、高額療養費について議論する際に、お二人とも高齢者のことをおっしゃっていましたが、70歳以上の制度について何らかの対応が必要だとお考えなのかということについてお二人の意見を聞かせていただければと思います。例えば、外来特例とかもあるかと思いますが、そういった部分についてもしお考えあればお聞かせいただきたいというのが1点目の質問になります。
 2点目が、康永参考人に御質問を申し上げます。康永参考人からは、特定の患者層において健康状態の悪影響を否定できないため、一律の引上げは正当化されにくいということを私見としておっしゃられていて、特に低所得者層の家計への負担が無視できないということをおっしゃられていましたが、今後、仮に高額療養費制度を見直す場合、低所得者層についてはどういった対応が考えられるかということについて、もしお考えあればお聞かせいただきたいというのが2点目です。
 最後、後藤参考人にお尋ねしたいのが、後藤参考人から、実際にがん治療に関わる医療者の立場から、高額療養費制度の具体的な問題点について幾つか御指摘いただきまして、例えば、1つは暦の月単位で算定されていることによって様々な問題が生じているとか、医療者のコスト意識の欠いた対応というのがあり得るのではないかという御指摘がありました。
 例えば、高額療養費制度で今後検討が必要となる場合、現在、暦の月単位でしているものを、海外等では年額上限としているような国もありますが、そういった制度に変えるということは考えられるか。今後、高額療養費制度は具体的にこの点を変えるべきではないかということがあれば教えていただきたいと思いました。
 以上でございます。
○田辺委員長 それでは、御回答をよろしくお願いいたします。
○岡参考人 では、保険者の私からでございます。
 天野委員の御指摘は、高額療養費制度の中で高齢者の方の制度が確かに違うので、そこを見直すということについて、例えば外来特例等の見直しについてどういったお考えですかといった御質問だと思います。
 こちらにつきましては、特定のここを見直すべきだとか見直したほうがいいという具体的な考えは現在私は持ち合わせておりません。申し上げましたとおり、今おっしゃった高齢者も含めた高額療養費、さらにそれ以外のものも含めた幅広い項目の中で総合的に御議論いただいて決めることでございまして、今、私のほうで何かこれといったものは持ち合わせていないということをお答えさせていただきます。
○日原参考人 私のほうからも、特定するものはございませんが、負担と給付のバランスということを考えたときに、高齢者の方々についての保険料と支援金と税のバランス、それから、現役世代との差、もちろん経済的なものをサポートするのが健康保険の重要な課題ですから、お仕事がなくなったり、低所得者こそ守るべき存在だと思いますので、その中で今の負担割合の在り方も総合的に、何か原案を持っているわけではございませんけれども、そこについても視界に入れて御検討いただければと思います。
○康永参考人 御質問ありがとうございます。
 私への質問は、低所得者に対する制度の在り方ということだと思うのですけれども、まず、高額療養費制度の趣旨そのものが家計を破綻させないというところにあると思います。
 具体的にここまで下げればいいというのは、いろいろと試算というか、調べてみないと分からないことだと思うのですけれども、私、前回だったか前々回だったかの天野委員の資料を拝見させていただきまして、これは全体像というよりは、まさにそれぞれの患者さんの声が書かれてあって、私はそれよく読んで、実際にこれは生の現場で起こっていることなのですね。
 私は常に思うのは、全体像を見て、国全体でどうという俯瞰的な視点と、実際に現場で起こっていることを鳥の目ではなくて虫の目で見ることも重要だと考えていて、実際にそういう人がいらっしゃるということは非常に重いことで、そういった方々にも配慮した、低所得者なり、非常にお金がかかって困っている人たちに対してどうアプローチするかという視点も踏まえた上での低所得者対策ということになると思うのですね。
 現状、既に低所得者に対する対処はある程度されていると思うのですけれども、それでも自己負担が引上げになった場合に家計の破綻は起こり得るレベルになるかもしれないので、そこを回避するという形で制度設計が必要ではないかと思います。
 具体的な答えではなくて申し訳ございません。
○後藤委員 ありがとうございます。
 私からは、3つに分けて回答させていただきたいと思います。1つ目の暦ないしは、私は一つの例として地域格差を挙げましたけれども、日本はルールは本当は1つなので、運用の違いだと思いますが、今までは例えば暦は月単位の請求だった、どうしても運用上の限界があって今の制度になっていると思いますが、これに関してはデジタル化によってかなり改善することもありますし、月が不平等であれば年にするというのももちろん一つの方法ですし、そこはよりデータを細かく見ていくか、むしろ大きく捉えて1年の単位で見ていくかという運用ですので、この辺は割と大きな問題はなく恐らく変えることができるところではないかと思います。
 一方で、医師や患者が費用対効果を考えて薬を使うかどうかというのは、既にここではないところでも議論されていると思いますけれども、薬の費用対効果という、より大きな問題になります。
 さらに、今日の議論にはなかったと思いますけれども、例えば年齢・収入によって高額療養費制度の費用負担が変わるという応能負担、これらは全く現場とは違う問題になりますので、私がコメントすることではないかもしれませんけれども、最初の運用と比べると、より大きな制度設計にもなってくるので、難しい問題ではないかなと考えます。
○田辺委員長 よろしゅうございますか。
 それでは、井原参考人、よろしくお願いいたします。
○井原参考人 国民健康保険中央会でございます。
 本日は、貴重なお話をお聞かせいただき、感謝を申し上げます。そのお話の中にもあり、また私どもの考えとしてこれまでも述べてきたところでありますけれども、改めて述べさせていただきますと、高額療養費制度の見直しに当たりましては、セーフティーネットとしての役割の維持、医療保険制度の持続可能性の堅持という2つの観点のバランスをどのように確保するかという点が重要であると考えております。
 とりわけ国保におきましては、難病、がんなどの慢性疾患を有する方、低所得者の方など、この制度を必要とする方の割合が多いことから、これらの方々の声を丁寧に聞きつつ検討を進めていただく必要があると考えます。
 また、これは国に対する重ねてのお願いでございますけれども、市町村などの現場で混乱が生じないよう、それから、国民全体の納得感というお話もありましたけれども、制度の意義、仕組みにつきまして、被保険者に対する周知・広報を行うなど、丁寧かつ十分な対応をお願いいたします。
 以上でございます。よろしくお願いいたします。
○田辺委員長 ありがとうございました。
 それでは、大黒委員、よろしくお願いいたします。
○大黒委員 日本難病・疾病団体協議会の大黒です。
 本日は、4名の方々、貴重な御意見をありがとうございます。こちらからも、感想のような形になると思いますけれども、意見を述べさせていただきます。
 高額療養費制度というのは、現役世代を含めた全世代にとって重要なセーフティーネットであることを皆さんの今日のお話でも確認できたかと思います。確認できた上で、高額療養費制度だけではなくて、負担と給付の医療保険制度全体の見直しが必要ということは了解できることだと思います。もう一度言うと、高額療養費制度だけではなくて、全体の制度の見直しが要るのであろうと思いました。
 現役世代の負担が大きいという話が出てきました。これは私も最初のときに言いましたけれども、現役世代の負担の軽減が大事なことも私たち患者も分かっているという状況で、なぜなら難病患者も多くの保険料を負担しているという状況にあります。限界と言われている高額な保険料などの負担に上乗せして、患者には医療費がのしかかっているという状況になっているということで、そのことも考慮して負担と給付のバランスを考えていただきたいと思っています。今日はとてもバランスという言葉が出てきたと思いますけれども、やはりバランスが大事なのかなと思いました。
 どのように見直すかということで、長期療養している方々の負担への影響を最小限に抑えるという言葉がありましたけれども、これもとても大事なことだと思いますし、かつ、国民全体の納得感も得られる。納得ということも多く出てきたと思います。ただ、患者も国民ですので、患者も国民の中にいる一人として私たちも納得感が必要ではないかなと思いますので、そこら辺の議論もお願いしたいと思います。
 また、受益者負担という言葉も出てきました。高額な医薬品が唯一の選択肢になるという患者も確かにおりまして、その治療の可否が生死に関わるという状況もあります。その方々にとって受益者負担という、いわゆる医療の受益というのは選べるものではなくて、病気になった人が必要に迫られて利用するという状況もあります。ですから、過度な負担は、国民が等しく受けるべき社会的権利としての公的保険制度の公平性を損なう可能性があると私たちは思っています。
 ですから、もちろん全てを患者の自己負担で解決するものではないということは皆さん御承知のことだと思いますけれども、やはりバランスというのをみんなで考えていくこと。しかも、高額療養費だけではなくて、保険制度全体を見て考えていこうということだと感じましたので、感想ですけれども、意見を述べさせていただきました。ありがとうございます。
○田辺委員長 ありがとうございます。
 袖井委員、よろしくお願いします。
○袖井委員 ありがとうございます。
 1つは質問で1つは意見です。康永参考人にお伺いしたいのですが、low-value careというのはすごく納得がいく考え方で、非常にいいなと思ったのですが、具体的にどのように運用されているのか。例えば、どういう機関がどのぐらいの頻度、例えばどのぐらいの期間でやっているのか、どういう形でやっているのかということをお聞きしたいということと、それから、既存のこういうメソッドを使っている人たちは既得権がありますよね。例えば、製薬会社ですと、こういう薬品は効果がないのだけれども、売れているからやめることに対しての抵抗があると思いますので、例えば、外国の場合、抵抗勢力みたいなものをどうやって押さえつけているのかとか、具体的にどういうふうに運用されているのかということをお聞きしたいと思います。
 もう一つは私の意見ですが、先ほど後藤参考人から、日本の制度は非常に寛大であるとおっしゃって、確かにそうだと思うのですが、日本の場合、かなり低い所得階層からも保険料を取ったり、低い階層が医療費を自己負担しているのですね。それで、家計に占める医療費の負担を見ると、所得の低い層に非常に重くなっていて、高い層に軽いのですよね。ですから、全体的に見れば寛大かもしれませんが、日本の場合、所得の低い層からも保険料とか自己負担を求めていることに対して私はかねてよりおかしいと思って、高額療養費の限度額を上げるということも一つの考え方かもしれませんけれども、下をもうちょっと引き上げないと、本当に低所得層がやっていかれないという感じがします。
 例えば、非常に低いぎりぎりの年収しかないところからも、しっかり年金や医療の社会保険料を取っているというのが日本社会ではないかということで、この辺も考えていかなければいけないと考えております。
 以上でございます。
○田辺委員長 ありがとうございました。
 御質問がございましたので、よろしくお願いします。
○康永参考人 御質問ありがとうございます。
 low-value careに関しては、もともとは保険収載されていて、保険収載される以上は、保険収載された当初は弱いなりにもエビデンスがあったというところで保険収載されていて、その後、もっと厳密な臨床研究なり、いろいろなデータ分析によって、さほど効果がない、あるいは全く効果がないというのが分かってきたということですね。
 分かりやすい例を挙げると、風邪に対する抗生物質で、昔は肺炎予防という目的で、風邪をこじらせたら肺炎にかかるから、予防的に抗菌薬を投与したらいいという意味合いなのですよ。でも、それは肺炎の予防効果がないというのは、大規模な疫学研究で明らかになっているのですよね。
 それで、どうしてそういう治療がやめられないかというと、特段、既得権益者がいるというわけではないのです。例えば、抗生剤を投与したら医療機関は利益があるからとか、意外とそうでもなくて、例えば、お医者さんが抗菌薬を処方したら処方箋料が出るだけです。薬代は薬局のほうの収入になる。
 そういう細かいことはともかくとして、既得権益者がいるというよりは、長年やられてきた治療がある意味慣習のような形になっていて、患者さん自身もそれを受け入れているという面があって、むしろ患者さんのほうが抗菌薬を処方してくれと言ったりするのです。そういったところがあって、それでエビデンスがないから抗菌薬は出しませんと言っても、別のクリニックに行けばまた処方してもらえるというような状況があって、減らすにも一筋縄ではいかないような状況がlow-value careの難しいところではあります。
○田辺委員長 袖井委員、よろしゅうございますか。
 では、村上委員、よろしくお願いします。
○村上委員 ありがとうございます。
 4名の参考人の皆様、御説明ありがとうございました。
 皆様の立場はそれぞれ異なりますが、共通して、私たちが直面している課題に対しては、高額療養費制度だけではなくて医療保険制度全体で考えていかなければならないということを示唆いただいたと私も認識しております。
 岡参考人からは、高齢化や医療費の高騰にどう対応するのか、根本的議論が必要という御指摘があり、そのことに対しては賛同いたします。
 日原参考人からは、高額療養費制度は最も重要なセーフティーネットである一方、医療の高度化などによりさらなる医療費の高額化への懸念があるという御指摘にも賛同いたしているところです。
 現在の医療保険制度や高額療養費制度については、年齢による区分も見直すことが必要と考えておりまして、今後、納得性、公平性の確保に向けた根本的な議論が必要と考えております。
 その上で、康永先生、後藤先生に、時間もない中ですけれども、それぞれ御質問させてください。康永先生からは、先ほど袖井委員とのやり取りもありましたが、低価値医療について、どのような場で何をもって低価値なのだということをオーソライズし定着させていけるのかということの仕組みとかアイデアがあれば教えていただければと思います。
 また、患者側についても御指摘がありましたが、それはどういうふうにすれば行動変容につながっていくのか、何か示唆があれば教えていただければと思います。
 後藤先生からは様々御示唆がありましたけれども、当事者意識がない限り費用対効果とか合理化は不可能という御指摘がございました。この点、患者側がコストを意識するには、どのようにしたら可能なのかということについて、もし御示唆があれば教えていただければと思います。よろしくお願いいたします。
○田辺委員長 お願いいたします
○康永参考人 最後に非常に難しい御質問をいただいたと思うのですが、まず、low-value careかどうかのジャッジについては、いろいろな臨床研究とか疫学研究が既にやられていて論文になっていますので、それを世界中のをレビューして、これのエビデンスレベルを判定するわけです。推奨のグレードをつけて、グレードが非常に低い、つまり、ほとんど治療効果が認められなくて、やっても意味がない、場合によっては害があるというグレーディングをした上でlow-value careというふうにジャッジするのですね。
 それをいかに政策の上に乗せていって、制度上、どういうふうなシステムをつくってくるかというのは、もうアカデミアのレベルを超えてヘルスポリシーのレベルになってきますので、いろいろなステークホルダーとの話合いの中で決定していくものだと考えております。
○後藤参考人 ありがとうございます。
 当事者意識は非常に難しい問題で、今より改善するという意味では、例えば実際に自分が一体幾らの費用を払っていて、それが一体幾ら保険から出ているかというのをきちんと明細として出すだけでも本当は違うかもしれませんし、医療者で言えば、我々は処方にしろ、検査にしろ、オーダーをしても、それが幾らか全く分からないのです。なので、費用がついていないレジ打ちをして、最後に会計でキャップより払わなくていいという制度なので、取りあえず全部オーダーだけしておけばいいかなとなるのは当たり前の話なので、それは大きな問題だと思っています。
 ただ、高額療養費制度の問題点は、別に価値は関係なく、キャップを超えたら全てそこまでの金額はチャラになってしまいますので、それを超えた費用の価値を誰も考えなくなってしまっているということだと思うので、今の何かしらキャップ制度である限りはこの問題点を当事者意識に落とし込むことは無理だと僕は思っています。
 ですので、ほかの国々では有効な治療はゼロ円、ただし、それプラスアルファは自分で払うかどうかを考えてくださいと。そうすると、完全に当事者の問題になりますし、多くの医師と話すと、保険で賄えない治療は1つの薬が幾らかを、下手をしたら10円の単位まで言えると僕らに言っているのですね。それぐらい現場では、医者だけでなく患者も当事者意識を持つ。もし持つ必要があるとしたらば、そこは本当に負担とのつながり以外にはなかなかないかなと思います。
○田辺委員長 では、城守委員、よろしくお願いします。
○城守委員 ありがとうございます。
 本日、4人の参考人の方々から様々な御意見をいただきまして、ありがとうございました。
 時間もありませんし、感想を少し述べさせていただきたいと思います。
 その前に、まず保険者の方からの高齢者の医療に対しての拠出金等の負担増が保険財政を圧迫して、保険料の増加につながるということはもう十分に理解を皆していると思います。
 さらに、参考人の方々からお話があった、特定の疾患を持っている患者層、低所得者層に対して特段の配慮が必要であるということは当然のことであると思いますし、我々としても賛同しています。
 その中で、各参考人から、そして委員の方々から、社会保障の全体という大きな議論が少しございましたが、この議論はもっと幅広く多くの関係者により開催される別の会議体で行われることが必要になるのだろうなと思いますが、今後、高額療養費制度の見直しの検討をするに当たって、やはりそこは避けて通れないということで、若干コメントをさせていただきたいと思います。
 我が国の医療保険制度について、先ほど参考人の方が諸外国の例を出しておられましたけれども、医療制度の成り立ち、国民の医療に対しての考え方であったり、医療提供体制の成り立ち方、それに伴ってできてくる保険制度というものが各国それぞれ全く違うわけです。ですから、その制度にあった形で、それぞれの基準なり、ルールができているわけです。
 我が国の場合は、基本的には必要かつ適切な医療というものは保険診療で賄うという国民皆保険の理念になっておりまして、その理念の下に国民がみんなでお金を出し合って、病気になった人を支えるという考えの下に成り立ってきたということであろうと思います。
 現在、医療保険財政は、先ほどからお話が出ておりますように、税金による公助、そして、一番多い保険料による共助、そして、負担の公平性という意味においての自己負担(自助)。この3つからしかないわけです。そういうわけですから、例えば、今回の高額療養費制度の見直しの一つの目的でもございます保険料の軽減という話は、当然、所得を増やす、手取りを増やすという意味においては意味があることでありますけれども、そうしますと医療費全体の財源そのものは減るわけです。減った場合に、それを例えば消費税なり税で補填する、増やす、ないしは自己負担を増やすということがなければ、その財源は減るわけです。
 これはどういうことかといいますと、保険診療で給付をする範囲が狭まる。いわゆる保険でみられる範囲が少なくなる。医療の提供する量と質が減るということであります。これは、ここにおられる方々皆さんは当たり前の話だと思っておられると思うのですけれども、まず国民の方はこういうこともあまり意識をしておられないのです。
 痛みを伴うというお話がよくありますが、痛みを伴う改革というのは目に見えないところでは今までも行われてきたと思いますけれども、今回の高額療養費制度のように明らかに疾患を持っている人に対して大きなダメージを与えるような形になって、初めて国民の方は今回意識をされたと思うのです。
 そうしますと、今後、審議会等で一定程度この制度を議論していくというところにもやはり限界が出る。どういうことかといいますと、最終的にはこれは政治が決める問題になってくると思いますので、少なくとも国民の方々には、先ほどお話ししたようなことを国のほうでしっかりと理解をしていただくように説明をしていただいて、そういう説明をしていただきながら、我々としては自己負担の側面からだけで高額療養費制度の議論をするのではなくて、共助、公助、自助の3つのバランスを、先ほど何人の方もおっしゃっておられますけれども、このバランスを取った形で今後議論していかなければならないのだなと改めて感じました。
 本日は誠にありがとうございます。
○田辺委員長 ありがとうございました。
 では、菊池委員、よろしくお願いします。
○菊池委員 ありがとうございます。
 4人の参考人の皆様から非常に多くのことを学ばせていただきまして、どうもありがとうございました。
 なかでも、同じ研究者として、康永先生、後藤先生のお話は非常に触発されるものが多くございました。今まで御発言があった皆様と共通している面が多いのですが、大黒委員をはじめ多くの皆様がおっしゃっていたように、これは高額療養費制度の在り方に関する委員会ではあるけれども、高額療養費の在り方に終わらせてはいけない、より広い視野で考えていかなければいけないということを改めて感じました。とりわけ、給付範囲の見直しという議論を本格化すべきであると感じた次第です。
 幾つか今日も御示唆をいただきましたが、例えば、薬事承認と保険適用の関係というものをどう考えていくのかというのも、いま一度立ちどまって考えていく必要があるのではないかと思います。あるいは、既に保険適用されている部分についても費用対効果分析をしっかり行っていく必要性を改めて感じた次第です。
 また、給付範囲の見直しを考える際には、当然診療報酬の在り方にも議論がつながってくると思います。康永先生から、低価値医療、あるいは価格調整という御示唆をいただきました。
 これは一つあえて申し上げますけれども、例えば、後期高齢者医療制度導入時には独自の診療報酬体系であったわけですね。ただ、導入時にいろいろ批判等もあり、また、しっかりと周知できなかったこともあり、結局廃止して、今はもう健保、国保と同じ診療報酬体系になっているということがあります。しかし、本当にこのままでいいのかというのは、私は前に高額療養費制度の特例についても言及させていただきましたけれども、やはり聖域なく、給付範囲の在り方という点で、この委員会を機に、今日もかなり深い議論ができましたけれども、今回の会議の立ち上げがなかったらなかなかここまで踏み込めなかったかもしれないわけですよね。高額療養費の在り方は今後も議論していくことになりますけれども、これは事務局へのお願いになり、この委員会の射程を超えてしまいますけれども、せっかくですのでこの機会に議論の射程を広げて議論する場を持っていただきたい。
 今日午前中、医療保険部会がありましたが、医療保険部会は目の前の論点をその都度さばいていくというか、議論するのに手いっぱいという感覚もございますので、そうであるとすると、これはすぐに何か結論を出せるような問題ではない、大きな話ですので、1、2年かけて中期的な課題として、また別途議論の場を設けてしっかり議論していくといったこともお考えいただければいいのではないかなと感じた次第です。
 以上です。
○田辺委員長 ありがとうございました。
 ほかはいかがでございましょう。
 では、山内委員。
○山内委員 本日は、参考人の皆様、御説明を誠にありがとうございました。
 保険者の皆様からは、健康保持・増進、医療費の適正化の運営の効率化に果敢に取り組まれているということをいただきました一方で、財政面で苦慮されている厳しい状況という、改めて制度的な課題も理解できました。
 東京商工会議所は、健康経営アドバイザー制度を運営しており、各組合の御協力の下に職域での健康促進や自助を促進しております。我々はセルフメディケーション、自助は大事だと思っており、医療保険の負担軽減を目指して対応しているところです。
 我々は、中小企業経営を支援しております。賃上げによって事業主の社会保険料負担も増えますが、治療を継続しながら従業員に働いていただけるため、従業員のためになるものとして理解をいただいております。しかしながら、本日御指摘がありましたように、現役世代や事業主の負担も限界に近づいてきているというのも実感として感じております。
 本日、人口構造の変化から今後の医療費の増額が見込まれる中で、大きなリスクを皆で支え合うという保険本来の観点から、高額療養費制度の重要性を改めて認識いたしました。医療保険の制度を持続可能な制度としていくためにも、自己負担・保険料・公費のバランス、負担と給付のバランス、保険範囲の見直しについて、事業者の方々も関心を示しておりますので、先ほど言いましたように、広く国民に状況を示しながら検討を進めていただきたいと思っております。
○田辺委員長 ありがとうございました。
 ほかはいかがでございましょう。
 では、北川委員、お願いします。
○北川委員 本日はありがとうございました。大変示唆に富む御説明を頂戴したと思っております。
 委員として感想になりますけれども、康永参考人、後藤参考人が御指摘されたようなコスト意識という視座に伴いましてやはり見える化、こういったコストに関わる部分についての視点を持って今後の制度設計ぜひお願いできればと思いました。
 以上でございます。
○田辺委員長 ありがとうございます。
 ほかはいかがでございましょうか。
 時間が超過しているのですけれども、司会者特権で後藤さんに2点ほどお伺いしたいと思います。
 実は、中医協をやっていたときに、私の代のときにオプジーボを通しました。オプジーボを通したときに、通すのと裏腹に薬の使用のガイドラインをつくりました。そのときの私の感想は、これは随分使いづらくしているなと思ったわけです。少なくともオプジーボはファーストラインでは無理ですし、ほかの化学治療などが終わった後に使ってよろしいということになるので、それが現場ではそういう感覚になっているのでしょうかというのが1つ。
 2番目は、そのときも数字を見て、奏功率が3割以下です。7割以上は効かない。これを医療現場に持っていくと、いつ治療をやめるのか問題が出てくるのだろうと思いますけれども、そこの対応はいかがなものなのでしょうか。恐らく患者さんはもっと続けてくれと言うに決まっていますので、高額で効かないものを使い続けるところのジレンマはどういうふうに受け止めて対応しようとしていらっしゃるのか。この2点だけ教えていただけますか。
○後藤参考人 まず前半に関しましては、今まで我々はどの治療が保険適用になるかが添付文書という取扱説明書みたいなもの、製薬会社と国で一緒につくったものになると思いますが、それに書いてあることは使えるだろうと認識していました。
 ところが、この記載は比較的曖昧なのです。これをより厳密に守ろうとしたのが今御指摘いただいたガイドラインではないかと思いますし、実際にそれが保険の給付に関係して作成されたと伺っております。
 これに関しては現在も多くの薬で次々とつくられているわけですけれども、1つ目は、制限をしてもまだまだ使えるというのがあります。患者さんはもちろんたくさんいますし、最初にオプジーボが出たときは、患者さんの少ない悪性黒色腫、その次からは肺がんに広がりましたけれども、やはりいい治療薬ですので、今はそもそも対象となる患者がそのときと比べて何倍にも増えております。
 もう一つは、より有効な治療はより多くの場面で使えるようにどんどん適応、いわゆる有効性の効果を示すことができるようになっています。ただ、これは差は小さくなります。例えば、治療をすることによって半年延びるものも、次の開発のときには3か月しか延びないかもしれません。でも、3か月でも患者さんにとっては大きいので、我々は全員に使うようになります。
 ですので、あらゆる方法を使って新しい薬が現場に届くというシステムが出来上がっているので、1度制限をかけても、その制限は徐々に緩んでくることになりますし、実際はそのガイドラインもまだまだ医療現場にとってみれば曖昧な記載がたくさんありますので、解釈によって使用が大きく異なります。
 それから、患者の立場から、副作用の強い薬はお金と関係なく早くやめたいですが、副作用の少ない薬はもう全く効いていなくても何かやっていたい、何もしないことは不安だということで使われているケースもあります。
 諸外国では、効果があるかどうか、わざわざ機関に提出して検査をして、効かなくなった後は償還されないという厳しいルールをつくっている国もあるのですけれども、日本はそういうのはありません。
 もっと言うと、患者の目線で言えば、治療していなかったら物すごく不安な毎日を過ごすけれども、これをのむことによって毎日少しでも心が安定しますと言われたときに、我々医療者はそれを出さないという選択をしにくいというのが、いい意味でも悪い意味でもあります。
 ですので、費用対効果のみならず、今のままだと現場での薬の使用は患者と医師に委ねられていますので、現場で目の前の患者さんにちょっとでもいいということはやらざるを得なくなっていますので、費用のことはともかくとして、多くのものを提供していくことにどうしてもつながっていくというのは否めないところはあるかなと考えています。
○田辺委員長 ありがとうございました。時間を引き延ばして、誠に申し訳ございませんでした。
 よろしゅうございますね。
 貴重な御意見を賜りましてありがとうございました。
 それでは、本日の議事は終了したいと存じます。
 次回の日程等につきまして、事務局のほうから連絡をお願いいたします。
○佐藤保険課長 次回の日程につきまして、また改めて御連絡を申し上げたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
○田辺委員長 それでは散会いたします。