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2023年6月23日 費用対効果評価専門組織 第3回議事録
日時
令和5年6月23日 13:00~
場所
オンライン開催
出席者
田倉 智之委員長、齋藤 信也委員長代理、池田 俊也委員、木﨑 孝委員、新谷 歩委員、新保 卓郎委員、野口 晴子委員、花井 十伍委員、飛田 英祐委員、米盛 勧委員、菊地 俊暁専門委員、山野 嘉久専門委員、福田 敬専門委員
国立保健医療科学院 保健医療経済評価研究センター 白岩上席主任研究官
<事務局>
木下医療技術評価推進室長 他
国立保健医療科学院 保健医療経済評価研究センター 白岩上席主任研究官
<事務局>
木下医療技術評価推進室長 他
議題
○ ジスバルカプセルに係る企業分析報告及び公的分析レビュー結果について
議事
○費用対効果評価専門組織委員長
では、続きまして、次の品目に入らせていただきます。ジスバルカプセルに係る企業分析報告及び公的分析レビュー結果について御議論いただきます。
対象品目について企業分析が提出されておりますので、企業からの意見聴取を行った上で、企業分析の内容について先生方に御議論いただきたいと思います。
まずは事務局から説明をお願いいたします。
(事務局より説明)
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございました。
それでは、議論に先立ちまして、まず本製品に係る企業分析に対する企業意見の聴取を行いますので、事務局は企業を入室させてください。
(意見陳述者入室)
○費用対効果評価専門組織委員長
私は費用対効果評価専門組織委員長です。
早速ですが、10分以内でジスバルカプセルに係る企業分析についての企業意見の御説明をお願いいたします。続いて質疑応答をさせていただきます。
では、始めてください。
○意見陳述者
本日はよろしくお願いいたします。
私のほうから、ジスバルカプセル40mgの費用対効果評価企業分析報告書の概要について御紹介させていただきます。
まず、スライド2ページ目をお願いいたします。
こちらはアジェンダでございます。冒頭、本剤の性質、昨年、分析前協議専門組織で合意いたしました分析枠組みを簡単に御紹介させていただいた後、分析結果のサマリー、分析結果を踏まえた価格調整係数の御紹介として、追加的有用性の評価の項以降を中心に本日御紹介させていただきます。
スライド3ページをお願いいたします。
こちらは、ジスバル40mgの性質として基本情報をお示しいたします。
ジスバルカプセルは、2022年5月、補正加算5%、市場規模予測62億円で薬価収載され、中医協にて費用対効果「H2」の指定を受けました。本剤は、本邦初の遅発性ジスキネジア治療薬として薬事承認、薬価収載されたものでございます。
スライド4ページをお願いいたします。
こちらのスライドが承認内容、効能・効果、用法・用量についてお示したものでございます。
効能・効果は遅発性ジスキネジア、用法・用量はお示しのとおりでございます。
一方、本剤には用法及び用量に関する注意という記載がありまして、1日1回40mgを1週間以上投与し、忍容性が確認され、効果不十分な場合にのみ増量を検討すること。また、本剤の投与量は必要最小限となるよう、患者ごとに慎重に観察しながら調節することとなっているものでございます。
スライド5ページをお願いいたします。
こちらは費用対効果分析における分析枠組みについてのスライドでございます。
分析対象とする集団、比較対照技術については、昨年の分析前協議並びに昨年8月の専門組織にて合意した内容を示しております。また、分析の立場と費用の範囲、効果指標につきましては、中医協の分析ガイドラインに準拠した分析をしております。
スライド6ページをお願いいたします。
ここからは追加的有用性の評価についての御紹介のスライドとなります。
費用対効果を検討するに当たっては、評価対象技術の比較対照技術に対する追加的な有用性がデータによって示されているか、示されていないかをまず評価する必要があるため、本剤の費用対効果分析の枠組みで決定した比較対照技術、経過観察に対するRCTのシステマティックレビューをお示しの基準で実施いたしました。TD症状を有する患者のうち、お示しの疾患対象患者集団に対するバルベナジンの追加的有用性に関するクリニカルクエスチョンを表にお示ししております。評価対象アウトカムは、バルベナジンの国内の臨床試験における主要評価でありますAIMS、異常不随意運動尺度の合計スコア及び副次的評価でありますTDの全般的な臨床改善としてCGI-TDスコアを用いたTD症状改善という形にしております。
なお、文献検索期間は、ルールにのっとり、専門組織(i)以降の一時点、2022年9月8日までという形にしております。
使用したデータベースや検索式等の詳細は報告書にて御参照いただきたいのですが、いわゆるPRISMA声明の推奨に準じた実行、記録、報告をしております。
最終的に調査結果は7件(3試験)で確認、全てを後に示します定性的な評価、質的統合に組み入れ、全て文献からデータ抽出を行っているものでございます。
スライド7ページをお願いいたします。
こちらは前項の追加的有用性の評価に続き、メタアナリシス、解析の概要についてお示したものでございます。
分析対象技術の比較対照技術に対する追加的有用性を評価するため、前項、システマティックレビューにより収集されたエビデンスを用いて当該メタアナリシスを実施しております。分析条件を表に示しております。
結果は、特に重要な部分を後ろのAppendixに抜粋してスライドを作成しております。詳細は報告書を御参照いただきたいと思いますが、AIMS変化量、AIMSレスポンダの割合及びCGI-TD、いずれのアウトカムにおきましても、バルベナジンはプラセボより統計学的有意に治療効果が高いことが示され、我々としては追加的有用性ありと判断して分析を進めているものになります。
続きまして、スライド8ページ、9ページを御覧ください。
こちらは本剤の分析モデルの概要について御紹介したスライドになります。
本剤の費用対効果分析を行う上で、分析モデルを構築するに当たり、TDに関する費用対効果分析の公表論文及び各国の医療技術評価機関の分析事例を調査、確認いたしました。我々としては、TD症状の改善に加え、TDにより抗精神病薬の治療中断のリスクの上昇、原疾患の再燃リスクの上昇が考慮されているGanzらの分析モデルがTDの影響を多面的に評価したものであると考え、これらを参考に分析モデルを構築いたしました。すなわち、バルベナジンによるTD治療の奏効率及びTD治療の改善に伴う抗精神病薬の中断、原疾患の再燃、死亡のリスク減少をモデル内で設定を考慮するために、マイクロシミュレーションにより分析を実施いたしました。
また、本分析内で設定した本剤によるTD奏効、非奏効については、本剤の投与によりTDに対する奏効が見られなかった群、いわゆる非奏効群については、初回サイクルのうち、臨床試験の二重盲検期の評価時点であります6週時点までバルベナジンによる治療が行われ、その後は治療は中止、生涯にわたり非奏効、いわゆるTDありの状態が継続するという設定にしております。
一方、初回サイクルのうち、奏効群のほうにつきましては、本剤における治療が継続した上で奏効(TDなし)の状態が継続するといったモデル設定にしております。
スライド9ページを御覧ください。
こちらは前項で概略を御紹介したモデルの構造でございます。モデルエントリー時に患者背景を決定、前項で御紹介のとおり、初回サイクルでTD治療の奏効(TDなし)、非奏効(TDあり)が決定されるモデル構造となっております。また、抗精神病薬の服用、APの有無とTDの有無など、また、抗精神病薬の服用がある状態では、各サイクルの抗精神病薬の中断をも考慮し、抗精神病薬の中断、非中断による原疾患、基礎疾患の再燃を考慮しつつ、また、各サイクルにおいて死亡も考慮するモデルという形になっております。
スライド10ページをお願いいたします。
こちらのスライドは、本剤の分析モデルに使用したパラメータのうち、主なものを示したものとなっております。分析に使用した基本パラメータは、例えば分析開始年齢58.8歳、男性の割合49.8%、抗精神病薬の併用の割合75.9%など、また、下段にあります遅発性ジスキネジアの奏効率としては、こちらは先ほど御紹介のメタアナリシスのAIMSレスポンダ割合、変量効果モデルの結果を使用した値を使っております。
スライド11ページをお願いいたします。
こちらも前項に続き主なパラメータを示しております。こちらは原疾患の死亡率ハザードについての一覧でございます。
次に、スライド12ページをお願いいたします。
こちらも前項に続き、主なパラメータとしてお示ししております。原疾患状態のQOL値、再燃における減少QOL値の各数値でお示ししております。
スライド13ページ、こちらは最後のスライドになります。
こちらは本剤の費用対効果分析の結果と、結果に関する価格調整係数についてお示したものになります。
本剤の結果は、前述のとおり、マイクロシミュレーションによるものでありますが、ICERは662万9,649円/QALYとなりました。
また、シナリオ分析としてバルベナジンによる副作用を考慮した分析も実施いたしました。本剤の臨床試験では、実薬群において重篤な副作用というものは見られておりませんでしたが、副作用のうち、国内の臨床試験において本剤群で発現割合がプラセボ部分より一定程度高かった副作用のうち、論文調査でQOL値報告があったもの、すなわち引用できる数値があったもののみ考慮し、報告書に記載しております。結果は、分析可能な副作用として最も発現頻度の高い傾眠のみ考慮可能となり、その副作用を含んだ結果は基本分析の結果と大きな差は認められませんでした。
したがいまして、本結果におけます有用性加算部分の価格調整係数(β)については、0.7という結果を導きました。
以上が企業からの報告となります。ありがとうございました。
○費用対効果評価専門組織委員長
では、委員の方々から御質問はございますでしょうか。いかがでしょうか。
では、私のほうから少し初歩的な質問になりますが、先ほどのモデルの中で生涯分析ということになっていると伺いましたが、死亡の定義について、これはいわゆる嚥下障害とか呼吸など原疾患に伴う死亡だけなのか、いわゆる全死亡というものも扱っていらっしゃるのかどうかというところについて、論文等を見れば多分分かるかもしれませんが、御説明いただいてもよろしいでしょうか。
○意見陳述者
私から回答させていただきます。
モデル内の死亡に関しましては、一般人の死亡率に対しての原疾患による死亡リスクのハザードとTDによる死亡リスクのハザードを掛け合わせて計算するような方式になっております。
○費用対効果評価専門組織委員長
ということは、現疾患に伴う純粋な死亡を見ているという理解でよろしいわけですよね。
○意見陳述者
そういうことになります。
○費用対効果評価専門組織委員長
分かりました。ありがとうございます。
その他の先生方、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、これで質疑応答を終了いたします。
続きまして、科学院からジスバルカプセルに係る企業分析についての公的分析のレビュー結果の御説明をお願いいたします。続いて質疑応答をさせていただきます。
○保健医療科学院
国立保健医療科学院です。
資料のほうは費用対の費-2-4を御参照ください。
バルベナジンに関する公的分析のレビュー結果についての御報告になります。
1ページ目ですけれども、製造販売業者による分析の課題として、以下の3点について挙げさせていただきました。
2ページ目ですけれども、1点目は遅発性ジスキネジアによる死亡率ということでありまして、製造販売業者はChongらの観察研究の結果を基にTDによる死亡ハザード比を1.9と設定していますが、時代背景あるいは使用している薬剤等、現在の診療実態と乖離がある可能性などもありまして、利用できるデータソースというのがそもそも限られている状況でありますけれども、この点についてもう少し詳細に検討させていただければと考えているところです。
2点目がバルベナジンの治療奏効率ということでありまして、製造販売業者のほうはJ-KINECT試験におけるプラセボ群の奏効率に2つの臨床試験のメタアナリシスより推定したレスポンダ割合のリスク比を掛け合わせることによって治療奏効率を計算しているところですけれども、ただ、このやり方をすると、単純な各試験におけるバルベナジンの治療奏効率よりも上回ってしまうというような状況になっておりますので、この点について妥当なのかどうかというのを検討させていただきたいというのが2点目になります。
それから、3点目ですけれども、こちらはQOL値の減少について、製造販売業者の分析におかれましては、米国で行われた前向きな観察研究であるRE-KINECT試験の結果に基づいてQOL値の減少幅というのを設定されています。しかし、国内で実施されたランダム化比較試験のうち、J-KINECT試験でもEQ-5D-5Lによって効用値が測定されているところです。残念ながら、その結果、なかなか臨床的な解釈が困難なものであるという御説明をいただいているのですけれども、J-KINECT試験で得られたQOL値の利用可能性も含めて、この点、再分析を検討させていただければなと考えているところです。
以上から、このジスキネジアという疾患の特性上、非常にデータが乏しく、再分析がどこまでできるかということについてはなかなか難しい側面もあるのですけれども、今後再分析で少し精査させていただきたいなと考えているところです。
以上になります。
○費用対効果評価専門組織委員長
では、今の御説明に対して、委員の方々から御質問はございますでしょうか。
では、○○委員、お願いします。
○○○委員
EQ-5Dで取ったものがあるけれども、解釈が難しいという書き方なのですが、差し支えない範囲でどういうところが現時点で難しいのでしょうか。教えていただけたらと思うのですけれども。
○保健医療科学院
ありがとうございます。
事実関係が違っていたら企業の方にも御指摘いただきたいのですけれども、治療群によってほとんど差が出ていなかったり、あるいは結果が逆転していたりするような臨床的な解釈が少し難しいような状況になっていて、それをそのまま使うということもまたなかなか難しいのかなと思っているのですが、解析手法等によってはもしかしたら何か芽が出てくるのかもしれないなと思って、公的分析の論点として残させていただいたという次第であります。
○○○委員
ありがとうございます。検討ください。
○費用対効果評価専門組織委員長
その他の先生方、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、これで質疑応答を終了いたします。企業の方は御退室ください。お疲れさまでした。
○意見陳述者
ありがとうございました。失礼いたします。
(意見陳述者退室)
○事務局
企業の退室が確認できました。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございました。
それでは、当該品目について御議論をお願いしたいと思います。先生方から御意見はいかがでしょうか。
遅発性ジスキネジアの死亡率の設定が一つの論点として挙げられていると思いますが、専門委員の○○先生、○○先生からもしコメントがあったらいただければと思いますが、いかがでしょうか。
お願いいたします。
○○○委員
一応今回の議論は妥当な議論かなと思いましたので、御指摘いただいた部分を検討していただくという形で進めていくのがいいのかなと思っております。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
○○先生、いかがでしょうか。
○○○委員
ありがとうございます。
私も今の〇〇先生と全く同じ意見なのですけれども、特に1.9というハザード比がやはり少し高過ぎるのではないかという懸念も持っていまして、患者群が相当偏っていないかというところが気になっています。そうすると、ベネフィットもすごく大きくなってしまうのではないかと思っていますので、その点についてきちんと検討したほうがいいのではないかと思っています。ただ、データが少ないのも事実ですので、どこかから持ってこられるものがあるのかどうかというところになると思います。
○費用対効果評価専門組織委員長
御意見ありがとうございました。
その他の委員の先生方、いかがでしょうか。
○○○委員
追加で質問してもよろしいでしょうか。
メタ解析から推定した治療奏効率の件なのですけれども、これは2つの臨床試験よりも若干高くなっておりとなっているのですが、そこまで大きく変わっていないのかなと感じたのですが、そこはいかがでしょうか。
○保健医療科学院
ありがとうございます。
先生に御指摘いただいているようにそれほど大きく変わらなくて、分析に与える影響というのは軽微なものだと認識していますが、一応論点として挙げさせていただいたというところであります。
○○委員
分かりました。ありがとうございます。
○費用対効果評価専門組織委員長
その他、いかがでしょうか。
先生方の事前の意見を踏まえますと、再分析でまとめていくような御意見かなと思っておりますが、よろしければ議決に入らせていただきます。
先生方の御意見をまとめますと、企業の分析につきまして、決定された分析枠に沿って分析がなされているということでよろしいでしょうか。
(首肯する委員あり)
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
続いて、企業の分析データなどの科学的妥当性は、妥当ではないと考えられる部分があるということでよろしいでしょうか。
(首肯する委員あり)
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
最後に、公的分析によるレビュー実施により再分析を実施するという結果の妥当性は、おおむねよろしいということでよいでしょうか。
(首肯する委員あり)
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
それでは、公的分析において再分析を実施していただくことといたします。ありがとうございました。
では、続きまして、次の品目に入らせていただきます。ジスバルカプセルに係る企業分析報告及び公的分析レビュー結果について御議論いただきます。
対象品目について企業分析が提出されておりますので、企業からの意見聴取を行った上で、企業分析の内容について先生方に御議論いただきたいと思います。
まずは事務局から説明をお願いいたします。
(事務局より説明)
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございました。
それでは、議論に先立ちまして、まず本製品に係る企業分析に対する企業意見の聴取を行いますので、事務局は企業を入室させてください。
(意見陳述者入室)
○費用対効果評価専門組織委員長
私は費用対効果評価専門組織委員長です。
早速ですが、10分以内でジスバルカプセルに係る企業分析についての企業意見の御説明をお願いいたします。続いて質疑応答をさせていただきます。
では、始めてください。
○意見陳述者
本日はよろしくお願いいたします。
私のほうから、ジスバルカプセル40mgの費用対効果評価企業分析報告書の概要について御紹介させていただきます。
まず、スライド2ページ目をお願いいたします。
こちらはアジェンダでございます。冒頭、本剤の性質、昨年、分析前協議専門組織で合意いたしました分析枠組みを簡単に御紹介させていただいた後、分析結果のサマリー、分析結果を踏まえた価格調整係数の御紹介として、追加的有用性の評価の項以降を中心に本日御紹介させていただきます。
スライド3ページをお願いいたします。
こちらは、ジスバル40mgの性質として基本情報をお示しいたします。
ジスバルカプセルは、2022年5月、補正加算5%、市場規模予測62億円で薬価収載され、中医協にて費用対効果「H2」の指定を受けました。本剤は、本邦初の遅発性ジスキネジア治療薬として薬事承認、薬価収載されたものでございます。
スライド4ページをお願いいたします。
こちらのスライドが承認内容、効能・効果、用法・用量についてお示したものでございます。
効能・効果は遅発性ジスキネジア、用法・用量はお示しのとおりでございます。
一方、本剤には用法及び用量に関する注意という記載がありまして、1日1回40mgを1週間以上投与し、忍容性が確認され、効果不十分な場合にのみ増量を検討すること。また、本剤の投与量は必要最小限となるよう、患者ごとに慎重に観察しながら調節することとなっているものでございます。
スライド5ページをお願いいたします。
こちらは費用対効果分析における分析枠組みについてのスライドでございます。
分析対象とする集団、比較対照技術については、昨年の分析前協議並びに昨年8月の専門組織にて合意した内容を示しております。また、分析の立場と費用の範囲、効果指標につきましては、中医協の分析ガイドラインに準拠した分析をしております。
スライド6ページをお願いいたします。
ここからは追加的有用性の評価についての御紹介のスライドとなります。
費用対効果を検討するに当たっては、評価対象技術の比較対照技術に対する追加的な有用性がデータによって示されているか、示されていないかをまず評価する必要があるため、本剤の費用対効果分析の枠組みで決定した比較対照技術、経過観察に対するRCTのシステマティックレビューをお示しの基準で実施いたしました。TD症状を有する患者のうち、お示しの疾患対象患者集団に対するバルベナジンの追加的有用性に関するクリニカルクエスチョンを表にお示ししております。評価対象アウトカムは、バルベナジンの国内の臨床試験における主要評価でありますAIMS、異常不随意運動尺度の合計スコア及び副次的評価でありますTDの全般的な臨床改善としてCGI-TDスコアを用いたTD症状改善という形にしております。
なお、文献検索期間は、ルールにのっとり、専門組織(i)以降の一時点、2022年9月8日までという形にしております。
使用したデータベースや検索式等の詳細は報告書にて御参照いただきたいのですが、いわゆるPRISMA声明の推奨に準じた実行、記録、報告をしております。
最終的に調査結果は7件(3試験)で確認、全てを後に示します定性的な評価、質的統合に組み入れ、全て文献からデータ抽出を行っているものでございます。
スライド7ページをお願いいたします。
こちらは前項の追加的有用性の評価に続き、メタアナリシス、解析の概要についてお示したものでございます。
分析対象技術の比較対照技術に対する追加的有用性を評価するため、前項、システマティックレビューにより収集されたエビデンスを用いて当該メタアナリシスを実施しております。分析条件を表に示しております。
結果は、特に重要な部分を後ろのAppendixに抜粋してスライドを作成しております。詳細は報告書を御参照いただきたいと思いますが、AIMS変化量、AIMSレスポンダの割合及びCGI-TD、いずれのアウトカムにおきましても、バルベナジンはプラセボより統計学的有意に治療効果が高いことが示され、我々としては追加的有用性ありと判断して分析を進めているものになります。
続きまして、スライド8ページ、9ページを御覧ください。
こちらは本剤の分析モデルの概要について御紹介したスライドになります。
本剤の費用対効果分析を行う上で、分析モデルを構築するに当たり、TDに関する費用対効果分析の公表論文及び各国の医療技術評価機関の分析事例を調査、確認いたしました。我々としては、TD症状の改善に加え、TDにより抗精神病薬の治療中断のリスクの上昇、原疾患の再燃リスクの上昇が考慮されているGanzらの分析モデルがTDの影響を多面的に評価したものであると考え、これらを参考に分析モデルを構築いたしました。すなわち、バルベナジンによるTD治療の奏効率及びTD治療の改善に伴う抗精神病薬の中断、原疾患の再燃、死亡のリスク減少をモデル内で設定を考慮するために、マイクロシミュレーションにより分析を実施いたしました。
また、本分析内で設定した本剤によるTD奏効、非奏効については、本剤の投与によりTDに対する奏効が見られなかった群、いわゆる非奏効群については、初回サイクルのうち、臨床試験の二重盲検期の評価時点であります6週時点までバルベナジンによる治療が行われ、その後は治療は中止、生涯にわたり非奏効、いわゆるTDありの状態が継続するという設定にしております。
一方、初回サイクルのうち、奏効群のほうにつきましては、本剤における治療が継続した上で奏効(TDなし)の状態が継続するといったモデル設定にしております。
スライド9ページを御覧ください。
こちらは前項で概略を御紹介したモデルの構造でございます。モデルエントリー時に患者背景を決定、前項で御紹介のとおり、初回サイクルでTD治療の奏効(TDなし)、非奏効(TDあり)が決定されるモデル構造となっております。また、抗精神病薬の服用、APの有無とTDの有無など、また、抗精神病薬の服用がある状態では、各サイクルの抗精神病薬の中断をも考慮し、抗精神病薬の中断、非中断による原疾患、基礎疾患の再燃を考慮しつつ、また、各サイクルにおいて死亡も考慮するモデルという形になっております。
スライド10ページをお願いいたします。
こちらのスライドは、本剤の分析モデルに使用したパラメータのうち、主なものを示したものとなっております。分析に使用した基本パラメータは、例えば分析開始年齢58.8歳、男性の割合49.8%、抗精神病薬の併用の割合75.9%など、また、下段にあります遅発性ジスキネジアの奏効率としては、こちらは先ほど御紹介のメタアナリシスのAIMSレスポンダ割合、変量効果モデルの結果を使用した値を使っております。
スライド11ページをお願いいたします。
こちらも前項に続き主なパラメータを示しております。こちらは原疾患の死亡率ハザードについての一覧でございます。
次に、スライド12ページをお願いいたします。
こちらも前項に続き、主なパラメータとしてお示ししております。原疾患状態のQOL値、再燃における減少QOL値の各数値でお示ししております。
スライド13ページ、こちらは最後のスライドになります。
こちらは本剤の費用対効果分析の結果と、結果に関する価格調整係数についてお示したものになります。
本剤の結果は、前述のとおり、マイクロシミュレーションによるものでありますが、ICERは662万9,649円/QALYとなりました。
また、シナリオ分析としてバルベナジンによる副作用を考慮した分析も実施いたしました。本剤の臨床試験では、実薬群において重篤な副作用というものは見られておりませんでしたが、副作用のうち、国内の臨床試験において本剤群で発現割合がプラセボ部分より一定程度高かった副作用のうち、論文調査でQOL値報告があったもの、すなわち引用できる数値があったもののみ考慮し、報告書に記載しております。結果は、分析可能な副作用として最も発現頻度の高い傾眠のみ考慮可能となり、その副作用を含んだ結果は基本分析の結果と大きな差は認められませんでした。
したがいまして、本結果におけます有用性加算部分の価格調整係数(β)については、0.7という結果を導きました。
以上が企業からの報告となります。ありがとうございました。
○費用対効果評価専門組織委員長
では、委員の方々から御質問はございますでしょうか。いかがでしょうか。
では、私のほうから少し初歩的な質問になりますが、先ほどのモデルの中で生涯分析ということになっていると伺いましたが、死亡の定義について、これはいわゆる嚥下障害とか呼吸など原疾患に伴う死亡だけなのか、いわゆる全死亡というものも扱っていらっしゃるのかどうかというところについて、論文等を見れば多分分かるかもしれませんが、御説明いただいてもよろしいでしょうか。
○意見陳述者
私から回答させていただきます。
モデル内の死亡に関しましては、一般人の死亡率に対しての原疾患による死亡リスクのハザードとTDによる死亡リスクのハザードを掛け合わせて計算するような方式になっております。
○費用対効果評価専門組織委員長
ということは、現疾患に伴う純粋な死亡を見ているという理解でよろしいわけですよね。
○意見陳述者
そういうことになります。
○費用対効果評価専門組織委員長
分かりました。ありがとうございます。
その他の先生方、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、これで質疑応答を終了いたします。
続きまして、科学院からジスバルカプセルに係る企業分析についての公的分析のレビュー結果の御説明をお願いいたします。続いて質疑応答をさせていただきます。
○保健医療科学院
国立保健医療科学院です。
資料のほうは費用対の費-2-4を御参照ください。
バルベナジンに関する公的分析のレビュー結果についての御報告になります。
1ページ目ですけれども、製造販売業者による分析の課題として、以下の3点について挙げさせていただきました。
2ページ目ですけれども、1点目は遅発性ジスキネジアによる死亡率ということでありまして、製造販売業者はChongらの観察研究の結果を基にTDによる死亡ハザード比を1.9と設定していますが、時代背景あるいは使用している薬剤等、現在の診療実態と乖離がある可能性などもありまして、利用できるデータソースというのがそもそも限られている状況でありますけれども、この点についてもう少し詳細に検討させていただければと考えているところです。
2点目がバルベナジンの治療奏効率ということでありまして、製造販売業者のほうはJ-KINECT試験におけるプラセボ群の奏効率に2つの臨床試験のメタアナリシスより推定したレスポンダ割合のリスク比を掛け合わせることによって治療奏効率を計算しているところですけれども、ただ、このやり方をすると、単純な各試験におけるバルベナジンの治療奏効率よりも上回ってしまうというような状況になっておりますので、この点について妥当なのかどうかというのを検討させていただきたいというのが2点目になります。
それから、3点目ですけれども、こちらはQOL値の減少について、製造販売業者の分析におかれましては、米国で行われた前向きな観察研究であるRE-KINECT試験の結果に基づいてQOL値の減少幅というのを設定されています。しかし、国内で実施されたランダム化比較試験のうち、J-KINECT試験でもEQ-5D-5Lによって効用値が測定されているところです。残念ながら、その結果、なかなか臨床的な解釈が困難なものであるという御説明をいただいているのですけれども、J-KINECT試験で得られたQOL値の利用可能性も含めて、この点、再分析を検討させていただければなと考えているところです。
以上から、このジスキネジアという疾患の特性上、非常にデータが乏しく、再分析がどこまでできるかということについてはなかなか難しい側面もあるのですけれども、今後再分析で少し精査させていただきたいなと考えているところです。
以上になります。
○費用対効果評価専門組織委員長
では、今の御説明に対して、委員の方々から御質問はございますでしょうか。
では、○○委員、お願いします。
○○○委員
EQ-5Dで取ったものがあるけれども、解釈が難しいという書き方なのですが、差し支えない範囲でどういうところが現時点で難しいのでしょうか。教えていただけたらと思うのですけれども。
○保健医療科学院
ありがとうございます。
事実関係が違っていたら企業の方にも御指摘いただきたいのですけれども、治療群によってほとんど差が出ていなかったり、あるいは結果が逆転していたりするような臨床的な解釈が少し難しいような状況になっていて、それをそのまま使うということもまたなかなか難しいのかなと思っているのですが、解析手法等によってはもしかしたら何か芽が出てくるのかもしれないなと思って、公的分析の論点として残させていただいたという次第であります。
○○○委員
ありがとうございます。検討ください。
○費用対効果評価専門組織委員長
その他の先生方、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、これで質疑応答を終了いたします。企業の方は御退室ください。お疲れさまでした。
○意見陳述者
ありがとうございました。失礼いたします。
(意見陳述者退室)
○事務局
企業の退室が確認できました。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございました。
それでは、当該品目について御議論をお願いしたいと思います。先生方から御意見はいかがでしょうか。
遅発性ジスキネジアの死亡率の設定が一つの論点として挙げられていると思いますが、専門委員の○○先生、○○先生からもしコメントがあったらいただければと思いますが、いかがでしょうか。
お願いいたします。
○○○委員
一応今回の議論は妥当な議論かなと思いましたので、御指摘いただいた部分を検討していただくという形で進めていくのがいいのかなと思っております。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
○○先生、いかがでしょうか。
○○○委員
ありがとうございます。
私も今の〇〇先生と全く同じ意見なのですけれども、特に1.9というハザード比がやはり少し高過ぎるのではないかという懸念も持っていまして、患者群が相当偏っていないかというところが気になっています。そうすると、ベネフィットもすごく大きくなってしまうのではないかと思っていますので、その点についてきちんと検討したほうがいいのではないかと思っています。ただ、データが少ないのも事実ですので、どこかから持ってこられるものがあるのかどうかというところになると思います。
○費用対効果評価専門組織委員長
御意見ありがとうございました。
その他の委員の先生方、いかがでしょうか。
○○○委員
追加で質問してもよろしいでしょうか。
メタ解析から推定した治療奏効率の件なのですけれども、これは2つの臨床試験よりも若干高くなっておりとなっているのですが、そこまで大きく変わっていないのかなと感じたのですが、そこはいかがでしょうか。
○保健医療科学院
ありがとうございます。
先生に御指摘いただいているようにそれほど大きく変わらなくて、分析に与える影響というのは軽微なものだと認識していますが、一応論点として挙げさせていただいたというところであります。
○○委員
分かりました。ありがとうございます。
○費用対効果評価専門組織委員長
その他、いかがでしょうか。
先生方の事前の意見を踏まえますと、再分析でまとめていくような御意見かなと思っておりますが、よろしければ議決に入らせていただきます。
先生方の御意見をまとめますと、企業の分析につきまして、決定された分析枠に沿って分析がなされているということでよろしいでしょうか。
(首肯する委員あり)
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
続いて、企業の分析データなどの科学的妥当性は、妥当ではないと考えられる部分があるということでよろしいでしょうか。
(首肯する委員あり)
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
最後に、公的分析によるレビュー実施により再分析を実施するという結果の妥当性は、おおむねよろしいということでよいでしょうか。
(首肯する委員あり)
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
それでは、公的分析において再分析を実施していただくことといたします。ありがとうございました。

