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2023年6月23日 費用対効果評価専門組織 第3回議事録
日時
令和5年6月23日 13:00~
場所
オンライン開催
出席者
田倉 智之委員長、齋藤 信也委員長代理、池田 俊也委員、木﨑 孝委員、新谷 歩委員、新保 卓郎委員、野口 晴子委員、花井 十伍委員、飛田 英祐委員、米盛 勧委員、船崎 俊一専門委員、樅山 幸彦専門委員、福田 敬専門委員
国立保健医療科学院 保健医療経済評価研究センター 白岩上席主任研究官
<事務局>
中田医療技術評価推進室長 他
国立保健医療科学院 保健医療経済評価研究センター 白岩上席主任研究官
<事務局>
中田医療技術評価推進室長 他
議題
オンデキサ静注用に係る企業分析報告及び公的分析レビュー結果について
議事
○費用対効果評価専門組織委員長
続きまして、オンデキサ静注用に係る企業分析報告及び公的分析レビュー結果について御議論をいただきます。対象品目について企業分析が提出されておりますので、企業からの意見聴取を行った上で企業分析の内容について先生方に御議論いただきたいと思います。
まずは事務局から説明をお願いいたします。
(事務局より説明)
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございました。
それでは、議論に先立ちまして、まず本製品に係る企業分析に対する企業意見の聴取を行いますので、事務局は企業を入室させてください。
(意見陳述者入室)
○事務局
企業の御入室が確認できましたので、よろしくお願いいたします。
○費用対効果評価専門組織委員長
私は費用対効果評価専門組織委員長です。
早速ですが、10分以内でオンデキサ静注用に係る企業分析についての企業意見の御説明をお願いいたします。続いて質疑応答をさせていただきます。
では、始めてください。
○意見陳述者
それでは、早速説明に入らせていただきます。
2ページを御覧ください。
前回の専門組織で決定された分析枠組みになります。
分析対象集団はFXa阻害剤投与中に生命を脅かす出血または止血困難な出血が認められた患者で、用法・用量をA法とB法に、出血部位を頭蓋内と消化管で分けて、4つのサブグループに分けて分析することとされました。
比較対照技術は、基本分析では標準的対症療法で保険適用外を除く輸血や輸液等とされています。また、その他分析として、不整脈薬物治療ガイドラインに記載のある保険適用外の薬剤を含む標準的対症療法を比較対照技術として実施することとされました。
3ページを御覧ください。
諸外国のHTA評価結果になります。詳細は資料を御確認ください。
4ページを御覧ください。
ここから我々の分析について説明します。
まず、追加的有用性の評価のためにシステマティックレビューを実施しました。クリニカルクエスチョンは表の上段のとおりです。比較対照の標準的対症療法については、保険適用外の有無は問わず検索を行いました。SRの結果ですが、頭蓋内出血及び消化管出血を対象に、標準的対症療法のアウトカムを報告している文献は全て保険適用外のPCC投与患者を対象としており、保険適用外を除く輸血や輸液等のみで治療された患者データは存在しませんでした。その上で、オンデキサと標準的対症療法を直接比較した試験は存在せず、間接比較を報告している文献が3報ありました。
この結果から、追加的有用性の評価方法を検討しました。まず、お伝えしたとおり、保険適用外を除く輸血や輸液等だけを使用したアウトカムデータは存在しなかったため、標準的対症療法としてPCCのデータを用いる以外には比較評価ができない状況となりました。PCCは明確なエビデンスはないものの、海外で幅広く使用され、本邦の診療ガイドラインでも使用を考慮することとされていることから、一定程度の有用性が期待できるため、オンデキサをPCCと比較することは、PCCを含まない標準的対症療法と比較することに比べ、オンデキサの追加的有用性を小さく見積もることになり、オンデキサにとって保守的な評価となると考えられます。よって、分析枠組みで定められた基本分析とその他分析ともに、標準的対症療法の有用性についてはPCCのデータを用いて評価することとしました。
SRの結果から、オンデキサとPCCを直接比較した試験は存在しなかったため、単群試験や観察研究の間接比較を行うことを検討しました。そして、間接比較を行っている3つの研究のうち、研究デザインの観点で最も適切と考えられるCohen 2022のデータを用いて追加的有用性の評価を行いました。また、アウトカムは重症出血における真の臨床アウトカムであり、客観的かつ定量的な評価が可能で、NICEでも使用されている30日死亡率を用いました。
5ページを御覧ください。
SRで特定された3つの間接比較の論文の概要を示しています。その中から、我々は一番左のCohen 2022の研究を選択しました。
主な理由は3つあります。
1つ目は、標準的対症療法群にエビデンスレベルが高い前向きの観察研究であるORANGE研究のデータを使用していること。
2つ目は、オンデキサ群について除外症例が少なく、ANNEXA-4のほとんどの症例を用いている点で、オンデキサの治療実態を最も反映していると考えられること。
そして、3つ目は、我々の分析対象集団と一致する頭蓋内出血、消化管出血において30日死亡率が得られていることです。
これらの理由などから総合的に判断し、Cohen 2022の研究を用いて間接比較を行うことで、現時点で得られる情報の中で最も適切に追加的有用性の評価ができると判断しました。
6ページを御覧ください。
実施した間接比較のデザインです。Cohen 2022では、オンデキサのデータとして主要な臨床試験であるANNEXA-4試験の352例のデータが使用されています。こちらは2018年5月データカットオフのデータで、日本人は含まれていません。一方で、国内の承認審査において評価対象となった日本人集団を含む2020年6月データカットの477例のデータを用いるほうが、日本における現実の臨床成績を反映しているものを優先的に使用するとする費用対効果評価ガイドラインに沿っていると考えられたため、今回の間接比較では477名のデータを使用することとしました。
また、患者背景の調整ですが、Cohen 2022では標準的対症療法の効果を評価したORANGE研究及びANNEXA-4法試験、それぞれの患者個票データを利用した傾向スコアマッチングが行われていますが、我々はORANGE研究の個票データを有していないため、傾向スコアマッチング後の標準的対症療法群のデータに対してオンデキサ477例のデータをマッチング調整した間接比較を実施しました。なお、マッチングに用いる変数は、Cohen 2022で報告された変数の中から30日死亡率と統計的に有意に関係する変数を選択しました。この選択された変数を用いることの妥当性は臨床専門家によって確認されています。
7ページを御覧ください。
間接比較の結果と追加的有用性の評価です。
調整後のオンデキサ群の患者分布と標準的対症療法群の患者分布との間に統計的な有意差は認められず、MAICにより患者背景は適切に調整されました。
標準的対症療法に対するオンデキサの30日死亡率のオッズ比は、頭蓋内出血で○○、消化管出血で○○であり、統計学的有意かつ臨床的意義のある30日死亡率の低下が示されました。
3名の臨床専門医によって、SRで得られた30日死亡率と本結果が比較検証され、本結果が臨床的に妥当な値であることが確認されました。
また、オンデキサの審査報告書において、投与方法A法とB法で有効性及び安全性に臨床的に問題となるような違いは認められなかったとされていることから、A法とB法それぞれの集団における標準的対症療法に対するオンデキサの追加的有用性は同等と判断しました。
これらの結果から、いずれの分析対象集団においても、オンデキサは標準的対症療法に対して追加的有用性を有することが示されました。
8ページを御覧ください。
追加的有用性が示されましたので、費用効果分析を実施しました。こちらには分析のモデルを示しています。
本分析では、急性期と慢性期に分けてモデルを設定しました。急性期には30日死亡率に基づき生存もしくは死亡する判断樹モデルを、急性期で生存した患者については、慢性期の長期的な費用と効果を推計するためにマルコフモデルを使用しました。なお、頭蓋内出血で慢性期に移行した患者には、機能障害を考慮するために退院時のmRS(modified Rankin Scale)による健康状態を割り当てた分析を行いました。
9ページを御覧ください。
こちらには基本分析による費用効果分析の結果を示しています。基本分析の比較対照技術は保険適用外を除く標準的対症療法ですので、費用には追加有用性で比較したPCCの薬剤費は含めていません。
結果ですが、4つのいずれの分析対象集団においても、ICERは500万円/QALYを下回りました。また、確率的感度分析において、ICERが500万円/QALYを下回る確率は○○%から○○%であり、オンデキサが標準的対症療法に対して費用対効果に優れる結果の頑健性は高いと考えられます。
最後に10ページを御覧ください。
こちらはその他分析の結果です。こちらには、不整脈薬物治療ガイドラインに記載されている保険適用外のPCC、ケイセントラの費用を含めていますが、この費用は急性期に比較対照群だけでなくオンデキサ群にも等しくかかることになるため、いずれの分析対象集団においても基本分析と同一のICER及び感度分析結果となりました。
したがいまして、今回の分析では、基本分析及びその他分析いずれも、全ての分析対象集団においてICERは500万円/QALYを下回りました。
こちらからの説明は以上となります。
○費用対効果評価専門組織委員長
では、委員の方々から御質問はございますでしょうか。いかがでしょうか。
よろしいでしょうか。
それでは、これで質疑応答を終了いたします。
続きまして、科学院からオンデキサ静注用に係る企業分析についての公的分析のレビュー結果の御説明をお願いいたします。続いて質疑応答もさせていただきます。
お願いします。
○保健医療科学院
ありがとうございます。国立保健医療科学院です。
費-4-4の資料を御参照ください。
アンデキサネット アルファ(オンデキサ)に関する公的分析のレビュー結果についてお示ししています。
1ページ目ですけれども、先ほど御説明いただきました製造販売業者による分析について、我々が課題だと思っているところを2点挙げさせていただきました。
2ページ目になりますけれども、1点目が30日死亡率の設定根拠についてと書かせていただいております。製造販売業者は、30日死亡率を追加的有用性の評価項目及び費用対効果分析のパラメーターに用いて分析されています。ただし、30日死亡率をどのように群間差を推定するかということでありますけれども、製造販売業者のほうはアンカーのないMAIC(Matching Adjusted Indirect Comparison)の手法を用いて比較されていました。ただし、製造販売業者から提出いただいたデータ以外にも様々な臨床データが存在することから、製造販売業者が30日死亡率の設定に基づいているデータあるいはこの手法について、様々な研究の利用可能性も含めて改めて再検討させていただきたいと考えているところです。
2点目ですけれども、modified Rankin Scaleの分布についてということでありまして、製造販売業者のほうでは、頭蓋内出血後に生存した患者分布においてmodified Rankin Scaleの分布を考慮した推計を行っているところです。
その成績についてなのですけれども、3ページ目にお示ししておりますとおり、アンデキサネット アルファ群でmodified Rankin Scaleがより軽症のものが多い。介入群のほうが軽症のものが多いという設定になっているところであります。しかし、このmodified Rankin Scaleの分布において、アンデキサネット アルファ群で軽症患者がより多く分布するということの根拠は提示されておらず、この点について差をつけて分析するということについて、もう一度公的分析のほうでも妥当性を検討させていただければなと考えているところです。
以上から、公的分析としては再分析させていただければなと考えているところです。
以上になります。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございました。
今の御説明に関して、委員の方から御質問はございますでしょうか。いかがでしょうか。
念のために私から1点だけ。modified Rankin Scaleの御指摘、2番目だったかと思いますけれども、こちらは頭蓋内のお話でありますが、消化管のほうについても同じような論点というのはあるのでしょうか。
○保健医療科学院
消化管のほうについてはそのような論点は存在しないと認識しているところです。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
その他いかがでしょうか。よろしいですか。
それでは、これで質疑応答を終了させていただきます。企業の方は御退室ください。お疲れさまでした。
○意見陳述者
ありがとうございました。
(意見陳述者退室)
○事務局
企業の退室が確認できました。よろしくお願いいたします。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございました。
それでは、当該品目について御議論をお願いしたいと思います。
御専門の先生がいらっしゃっておりますので、○○先生と○○先生からまずコメントをいただければと思いますが、○○先生、いかがでしょうか。
○○○委員
ありがとうございます。
企業、そして、科学院からの御説明はおのおの納得できるところと少し分かりにくいところがあって、悩ましいなと思っています。
科学院のほうがおっしゃるように、modified Rankin Scaleが軽症であるということについて、もう少し丁寧な検証が必要なのかなと思っています。
それと、コメントも書かせていただいたのですが、やはり現実的に、確かに企業が言うように、現場で治療する側からすると、補助的な輸液、輸血しかできないという治療ですと出血がどんどん進んでしまうということもあるので、現場医師としては何かしらの介入をしたいと思うのが当然でありますので、それを完全に考慮しないということについては、費用対効果のこういう検証の立場としては妥当な考え方だということは承知した上で、現場の感覚として見ると、少しそれが入らないということ自体を想定するのが難しいので、この辺をどういうふうに考えていくかどうかということは御議論いただいて決めていただければなと感じています。
以上です。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございました。
○○先生、いかがでしょうか。
○○○委員
企業のコメントもおおよそ妥当かなと思ってはいるわけで、ただ、科学院のほうからはCohenら以外の研究報告の可能性もありますということであれば、それをお聞きするというのが妥当かなと思っております。その辺、どうして検索の結果で差が出たのかは分からないのですけれども、ただ、そういうふうに科学院がおっしゃるのであれば、ぜひそういった結果を見てみたいなと思うのと、確かに○○先生の言うように、何としても助けたいという点では保険適用外というものを使うというのも手ではあり得るのですけれども、ただ、やはり費用対効果のこういった組織である以上は、それは入れないで出すしか、ここで入れたものを解析して結果を示すというのはよくないのではないかなと思うので、まずはそれを入れないできちんと評価をするというのが第一ではないかなと私自身は思っております。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございました。
レビューとかソースデータに係るコメントが今ございましたが、科学院さんのほうで追加で何かございますか。
○保健医療科学院
ありがとうございます。
まさに適用外使用の問題については非常に難しい問題でありまして、○○先生、○○先生がおっしゃるとおり、臨床の現場の感覚とは少しずれてしまうところがあるかなと思うのですけれども、その辺りを含めてまた次回データ等を出させていただきますので、その際に御議論いただければなと感じているところであります。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
その他の先生方、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
いただいているコメントを伺いますと、今御指摘のあった現場の状況も踏まえつつ、丁寧に分析をするのが望ましいのとその他のデータへの配慮も必要であるということですので、その辺についても一応考慮していただくことになります。
それでは、議決に入らせていただきたいと思います。
議決に入る前に、○○委員と○○委員におかれましては、議決の間、一時御退席をお願いいたします。
(○○委員、○○委員退室)
○事務局
お二人の退席を確認いたしました。
○費用対効果評価専門組織委員長
では、○○委員、○○委員を除く先生方の御意見をまとめますと、企業の分析につきまして、決定された分析枠組みに沿って分析がなされているということでよろしいでしょうか。
(首肯する委員あり)
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
次に、企業の分析データ等の科学的妥当性は、妥当でないと考えられる部分があるということでよろしいでしょうか。
(首肯する委員あり)
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
最後になりますけれども、公的分析によるレビュー実施により、再分析を実施するという結果の妥当性はおおむね妥当ということでよろしいでしょうか。
(首肯する委員あり)
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございました。
それでは、公的分析において、再分析を実施していただくことといたします。ありがとうございます。
続きまして、オンデキサ静注用に係る企業分析報告及び公的分析レビュー結果について御議論をいただきます。対象品目について企業分析が提出されておりますので、企業からの意見聴取を行った上で企業分析の内容について先生方に御議論いただきたいと思います。
まずは事務局から説明をお願いいたします。
(事務局より説明)
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございました。
それでは、議論に先立ちまして、まず本製品に係る企業分析に対する企業意見の聴取を行いますので、事務局は企業を入室させてください。
(意見陳述者入室)
○事務局
企業の御入室が確認できましたので、よろしくお願いいたします。
○費用対効果評価専門組織委員長
私は費用対効果評価専門組織委員長です。
早速ですが、10分以内でオンデキサ静注用に係る企業分析についての企業意見の御説明をお願いいたします。続いて質疑応答をさせていただきます。
では、始めてください。
○意見陳述者
それでは、早速説明に入らせていただきます。
2ページを御覧ください。
前回の専門組織で決定された分析枠組みになります。
分析対象集団はFXa阻害剤投与中に生命を脅かす出血または止血困難な出血が認められた患者で、用法・用量をA法とB法に、出血部位を頭蓋内と消化管で分けて、4つのサブグループに分けて分析することとされました。
比較対照技術は、基本分析では標準的対症療法で保険適用外を除く輸血や輸液等とされています。また、その他分析として、不整脈薬物治療ガイドラインに記載のある保険適用外の薬剤を含む標準的対症療法を比較対照技術として実施することとされました。
3ページを御覧ください。
諸外国のHTA評価結果になります。詳細は資料を御確認ください。
4ページを御覧ください。
ここから我々の分析について説明します。
まず、追加的有用性の評価のためにシステマティックレビューを実施しました。クリニカルクエスチョンは表の上段のとおりです。比較対照の標準的対症療法については、保険適用外の有無は問わず検索を行いました。SRの結果ですが、頭蓋内出血及び消化管出血を対象に、標準的対症療法のアウトカムを報告している文献は全て保険適用外のPCC投与患者を対象としており、保険適用外を除く輸血や輸液等のみで治療された患者データは存在しませんでした。その上で、オンデキサと標準的対症療法を直接比較した試験は存在せず、間接比較を報告している文献が3報ありました。
この結果から、追加的有用性の評価方法を検討しました。まず、お伝えしたとおり、保険適用外を除く輸血や輸液等だけを使用したアウトカムデータは存在しなかったため、標準的対症療法としてPCCのデータを用いる以外には比較評価ができない状況となりました。PCCは明確なエビデンスはないものの、海外で幅広く使用され、本邦の診療ガイドラインでも使用を考慮することとされていることから、一定程度の有用性が期待できるため、オンデキサをPCCと比較することは、PCCを含まない標準的対症療法と比較することに比べ、オンデキサの追加的有用性を小さく見積もることになり、オンデキサにとって保守的な評価となると考えられます。よって、分析枠組みで定められた基本分析とその他分析ともに、標準的対症療法の有用性についてはPCCのデータを用いて評価することとしました。
SRの結果から、オンデキサとPCCを直接比較した試験は存在しなかったため、単群試験や観察研究の間接比較を行うことを検討しました。そして、間接比較を行っている3つの研究のうち、研究デザインの観点で最も適切と考えられるCohen 2022のデータを用いて追加的有用性の評価を行いました。また、アウトカムは重症出血における真の臨床アウトカムであり、客観的かつ定量的な評価が可能で、NICEでも使用されている30日死亡率を用いました。
5ページを御覧ください。
SRで特定された3つの間接比較の論文の概要を示しています。その中から、我々は一番左のCohen 2022の研究を選択しました。
主な理由は3つあります。
1つ目は、標準的対症療法群にエビデンスレベルが高い前向きの観察研究であるORANGE研究のデータを使用していること。
2つ目は、オンデキサ群について除外症例が少なく、ANNEXA-4のほとんどの症例を用いている点で、オンデキサの治療実態を最も反映していると考えられること。
そして、3つ目は、我々の分析対象集団と一致する頭蓋内出血、消化管出血において30日死亡率が得られていることです。
これらの理由などから総合的に判断し、Cohen 2022の研究を用いて間接比較を行うことで、現時点で得られる情報の中で最も適切に追加的有用性の評価ができると判断しました。
6ページを御覧ください。
実施した間接比較のデザインです。Cohen 2022では、オンデキサのデータとして主要な臨床試験であるANNEXA-4試験の352例のデータが使用されています。こちらは2018年5月データカットオフのデータで、日本人は含まれていません。一方で、国内の承認審査において評価対象となった日本人集団を含む2020年6月データカットの477例のデータを用いるほうが、日本における現実の臨床成績を反映しているものを優先的に使用するとする費用対効果評価ガイドラインに沿っていると考えられたため、今回の間接比較では477名のデータを使用することとしました。
また、患者背景の調整ですが、Cohen 2022では標準的対症療法の効果を評価したORANGE研究及びANNEXA-4法試験、それぞれの患者個票データを利用した傾向スコアマッチングが行われていますが、我々はORANGE研究の個票データを有していないため、傾向スコアマッチング後の標準的対症療法群のデータに対してオンデキサ477例のデータをマッチング調整した間接比較を実施しました。なお、マッチングに用いる変数は、Cohen 2022で報告された変数の中から30日死亡率と統計的に有意に関係する変数を選択しました。この選択された変数を用いることの妥当性は臨床専門家によって確認されています。
7ページを御覧ください。
間接比較の結果と追加的有用性の評価です。
調整後のオンデキサ群の患者分布と標準的対症療法群の患者分布との間に統計的な有意差は認められず、MAICにより患者背景は適切に調整されました。
標準的対症療法に対するオンデキサの30日死亡率のオッズ比は、頭蓋内出血で○○、消化管出血で○○であり、統計学的有意かつ臨床的意義のある30日死亡率の低下が示されました。
3名の臨床専門医によって、SRで得られた30日死亡率と本結果が比較検証され、本結果が臨床的に妥当な値であることが確認されました。
また、オンデキサの審査報告書において、投与方法A法とB法で有効性及び安全性に臨床的に問題となるような違いは認められなかったとされていることから、A法とB法それぞれの集団における標準的対症療法に対するオンデキサの追加的有用性は同等と判断しました。
これらの結果から、いずれの分析対象集団においても、オンデキサは標準的対症療法に対して追加的有用性を有することが示されました。
8ページを御覧ください。
追加的有用性が示されましたので、費用効果分析を実施しました。こちらには分析のモデルを示しています。
本分析では、急性期と慢性期に分けてモデルを設定しました。急性期には30日死亡率に基づき生存もしくは死亡する判断樹モデルを、急性期で生存した患者については、慢性期の長期的な費用と効果を推計するためにマルコフモデルを使用しました。なお、頭蓋内出血で慢性期に移行した患者には、機能障害を考慮するために退院時のmRS(modified Rankin Scale)による健康状態を割り当てた分析を行いました。
9ページを御覧ください。
こちらには基本分析による費用効果分析の結果を示しています。基本分析の比較対照技術は保険適用外を除く標準的対症療法ですので、費用には追加有用性で比較したPCCの薬剤費は含めていません。
結果ですが、4つのいずれの分析対象集団においても、ICERは500万円/QALYを下回りました。また、確率的感度分析において、ICERが500万円/QALYを下回る確率は○○%から○○%であり、オンデキサが標準的対症療法に対して費用対効果に優れる結果の頑健性は高いと考えられます。
最後に10ページを御覧ください。
こちらはその他分析の結果です。こちらには、不整脈薬物治療ガイドラインに記載されている保険適用外のPCC、ケイセントラの費用を含めていますが、この費用は急性期に比較対照群だけでなくオンデキサ群にも等しくかかることになるため、いずれの分析対象集団においても基本分析と同一のICER及び感度分析結果となりました。
したがいまして、今回の分析では、基本分析及びその他分析いずれも、全ての分析対象集団においてICERは500万円/QALYを下回りました。
こちらからの説明は以上となります。
○費用対効果評価専門組織委員長
では、委員の方々から御質問はございますでしょうか。いかがでしょうか。
よろしいでしょうか。
それでは、これで質疑応答を終了いたします。
続きまして、科学院からオンデキサ静注用に係る企業分析についての公的分析のレビュー結果の御説明をお願いいたします。続いて質疑応答もさせていただきます。
お願いします。
○保健医療科学院
ありがとうございます。国立保健医療科学院です。
費-4-4の資料を御参照ください。
アンデキサネット アルファ(オンデキサ)に関する公的分析のレビュー結果についてお示ししています。
1ページ目ですけれども、先ほど御説明いただきました製造販売業者による分析について、我々が課題だと思っているところを2点挙げさせていただきました。
2ページ目になりますけれども、1点目が30日死亡率の設定根拠についてと書かせていただいております。製造販売業者は、30日死亡率を追加的有用性の評価項目及び費用対効果分析のパラメーターに用いて分析されています。ただし、30日死亡率をどのように群間差を推定するかということでありますけれども、製造販売業者のほうはアンカーのないMAIC(Matching Adjusted Indirect Comparison)の手法を用いて比較されていました。ただし、製造販売業者から提出いただいたデータ以外にも様々な臨床データが存在することから、製造販売業者が30日死亡率の設定に基づいているデータあるいはこの手法について、様々な研究の利用可能性も含めて改めて再検討させていただきたいと考えているところです。
2点目ですけれども、modified Rankin Scaleの分布についてということでありまして、製造販売業者のほうでは、頭蓋内出血後に生存した患者分布においてmodified Rankin Scaleの分布を考慮した推計を行っているところです。
その成績についてなのですけれども、3ページ目にお示ししておりますとおり、アンデキサネット アルファ群でmodified Rankin Scaleがより軽症のものが多い。介入群のほうが軽症のものが多いという設定になっているところであります。しかし、このmodified Rankin Scaleの分布において、アンデキサネット アルファ群で軽症患者がより多く分布するということの根拠は提示されておらず、この点について差をつけて分析するということについて、もう一度公的分析のほうでも妥当性を検討させていただければなと考えているところです。
以上から、公的分析としては再分析させていただければなと考えているところです。
以上になります。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございました。
今の御説明に関して、委員の方から御質問はございますでしょうか。いかがでしょうか。
念のために私から1点だけ。modified Rankin Scaleの御指摘、2番目だったかと思いますけれども、こちらは頭蓋内のお話でありますが、消化管のほうについても同じような論点というのはあるのでしょうか。
○保健医療科学院
消化管のほうについてはそのような論点は存在しないと認識しているところです。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
その他いかがでしょうか。よろしいですか。
それでは、これで質疑応答を終了させていただきます。企業の方は御退室ください。お疲れさまでした。
○意見陳述者
ありがとうございました。
(意見陳述者退室)
○事務局
企業の退室が確認できました。よろしくお願いいたします。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございました。
それでは、当該品目について御議論をお願いしたいと思います。
御専門の先生がいらっしゃっておりますので、○○先生と○○先生からまずコメントをいただければと思いますが、○○先生、いかがでしょうか。
○○○委員
ありがとうございます。
企業、そして、科学院からの御説明はおのおの納得できるところと少し分かりにくいところがあって、悩ましいなと思っています。
科学院のほうがおっしゃるように、modified Rankin Scaleが軽症であるということについて、もう少し丁寧な検証が必要なのかなと思っています。
それと、コメントも書かせていただいたのですが、やはり現実的に、確かに企業が言うように、現場で治療する側からすると、補助的な輸液、輸血しかできないという治療ですと出血がどんどん進んでしまうということもあるので、現場医師としては何かしらの介入をしたいと思うのが当然でありますので、それを完全に考慮しないということについては、費用対効果のこういう検証の立場としては妥当な考え方だということは承知した上で、現場の感覚として見ると、少しそれが入らないということ自体を想定するのが難しいので、この辺をどういうふうに考えていくかどうかということは御議論いただいて決めていただければなと感じています。
以上です。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございました。
○○先生、いかがでしょうか。
○○○委員
企業のコメントもおおよそ妥当かなと思ってはいるわけで、ただ、科学院のほうからはCohenら以外の研究報告の可能性もありますということであれば、それをお聞きするというのが妥当かなと思っております。その辺、どうして検索の結果で差が出たのかは分からないのですけれども、ただ、そういうふうに科学院がおっしゃるのであれば、ぜひそういった結果を見てみたいなと思うのと、確かに○○先生の言うように、何としても助けたいという点では保険適用外というものを使うというのも手ではあり得るのですけれども、ただ、やはり費用対効果のこういった組織である以上は、それは入れないで出すしか、ここで入れたものを解析して結果を示すというのはよくないのではないかなと思うので、まずはそれを入れないできちんと評価をするというのが第一ではないかなと私自身は思っております。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございました。
レビューとかソースデータに係るコメントが今ございましたが、科学院さんのほうで追加で何かございますか。
○保健医療科学院
ありがとうございます。
まさに適用外使用の問題については非常に難しい問題でありまして、○○先生、○○先生がおっしゃるとおり、臨床の現場の感覚とは少しずれてしまうところがあるかなと思うのですけれども、その辺りを含めてまた次回データ等を出させていただきますので、その際に御議論いただければなと感じているところであります。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
その他の先生方、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
いただいているコメントを伺いますと、今御指摘のあった現場の状況も踏まえつつ、丁寧に分析をするのが望ましいのとその他のデータへの配慮も必要であるということですので、その辺についても一応考慮していただくことになります。
それでは、議決に入らせていただきたいと思います。
議決に入る前に、○○委員と○○委員におかれましては、議決の間、一時御退席をお願いいたします。
(○○委員、○○委員退室)
○事務局
お二人の退席を確認いたしました。
○費用対効果評価専門組織委員長
では、○○委員、○○委員を除く先生方の御意見をまとめますと、企業の分析につきまして、決定された分析枠組みに沿って分析がなされているということでよろしいでしょうか。
(首肯する委員あり)
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
次に、企業の分析データ等の科学的妥当性は、妥当でないと考えられる部分があるということでよろしいでしょうか。
(首肯する委員あり)
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
最後になりますけれども、公的分析によるレビュー実施により、再分析を実施するという結果の妥当性はおおむね妥当ということでよろしいでしょうか。
(首肯する委員あり)
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございました。
それでは、公的分析において、再分析を実施していただくことといたします。ありがとうございます。