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2023年8月25日 費用対効果評価専門組織 第5回議事録
日時
令和5年8月25日 13:00~
場所
オンライン開催
出席者
田倉 智之委員長、齋藤 信也委員長代理、池田 俊也委員、木﨑 孝委員、新谷 歩委員、新保 卓郎委員、中山 健夫委員、野口 晴子委員、花井 十伍委員、飛田 英祐委員、米盛 勧委員、福田 敬専門委員
国立保健医療科学院 保健医療経済評価研究センター 白岩上席主任研究官
<事務局>
木下医療技術評価推進室長 他
国立保健医療科学院 保健医療経済評価研究センター 白岩上席主任研究官
<事務局>
木下医療技術評価推進室長 他
議題
○ ウィフガード点滴静注400mgに係る企業分析の内容及び公的分析による再分析結果の審査、並びに費用対効果評価案の策定について
議事
○費用対効果評価専門組織委員長
では、最後の品目に入らせていただきます。続きまして、ウィフガートについて、公的分析による再分析結果が提出されておりますので、公的分析からの意見聴取を行った上で、企業分析の内容及び公的分析による再分析結果の審査、並びに費用対効果評価案の策定について先生方に御議論をいただきたいと思います。
では、ウィフガートについて、まずは事務局から説明をお願いいたします。
(事務局より説明)
続きまして、科学院から御説明をよろしくお願いいたします。
○国立保健医療科学院
国立保健医療科学院です。
資料のほう、費-4-2の資料になります。エフガルチギモドに関する公的分析の結果概要について御説明申し上げます。本件、企業の側と分析結果が乖離しておりますので、少し丁寧に御説明させていただきたいと思っております。
1ページ目ですけれども、先ほど事務局から説明がありましたが、専門組織1で合意した分析枠組みを再掲しています。対象となるのは、ステロイド剤又はステロイド以外の免疫抑制剤が十分に奏効していないという早期のラインの患者で、比較対照技術は、プレドニゾロンを含む経口剤と設定されています。
2ページ目ですけれども、本ページには、重症筋無力症の治療プロセスをお示ししております。
まずは、今回、比較対照技術となっているような経口薬で治療した後に、治療効果が見られないようであれば、EFT(早期速効性治療)と呼ばれる免疫グロブリン静注療法、以後IVIgと呼びますけれども、あるいは血漿交換(PLEX)などが実施されるところです。ただし、EFTを実施しても経口薬治療は一般的には継続されることのようであります。それでも治療が無効であれば、IVIgやPLEXを繰り返すFT反復療法がなされ、最後にアセチルコリン受容体抗体陽性患者においては、エクリズマブが使用されることもあるようであります。
3ページ目ですけれども、さて、専門組織1において、このような分析枠組みが設定された背景についてですけれども、基本的には企業の薬事申請時の説明をそのまま分析枠組みとして用いたものになっていると認識しています。
資料、飛んでしまうのですが、資料の末、最終ページから2ページ目に参考資料として載せてありますけれども、こちらに審査報告書上における臨床的位置づけの議論について掲載しております。
製造販売業者は、本剤の臨床的位置づけとしては、主にgMG症状の増悪の一時的な治療を目的として使用が考慮されるIVIg及び血液浄化療法よりも前に用いられる薬剤である。あるいは、本剤は、gMG症状を有する患者に対して早期から投与される薬剤であり、投与対象としては免疫抑制剤における前治療で十分に奏効しない患者に限定する必要はないということを主張しておりまして、それを受けて、機構側も、本剤は、副腎皮質ステロイド又は非ステロイド性免疫抑制剤を使用している患者に対して投与することが適切であるとしています。費用対効果の分析枠組みも、これと全く同一の考え方をしているものであると考えています。
3ページ、お戻りいただいて、2ポツ目ですけれども、しかし、上市直後の使用法としては、待機患者さんの影響あるいはドクターの保守的な選好などから、後ラインでの使用が多いかもしれないということは、分析枠組み設定時から既に承知していたものになります。
しかし、唯一のエビデンスが存在するのが経口薬との比較であること、またIVIg/PLEXは患者の負担の大きな治療であることから、長期的な動向は不明であるとされ、このような分析枠組みが決定されたものと認識しています。
これについては、また資料が飛んで申し訳ないのですけれども、本資料の最終ページに記載しておきましたが、機構側の専門委員意見とも一致するものでありまして、そこでは、本剤とIVIgの使い分けについて、現時点では、特に日本人患者における本剤の有効性及び安全性の情報が極めて限られている。一方で、IVIgは長年の使用経験があり、幅広い患者で有効性が示されており、安全性についても特段大きな懸念はない。そのため、本剤の承認後しばらくは、IVIgよりも優先して本剤が使用されることは考えにくく、使い慣れているIVIgが優先的に使用されることが想定される。
ただし、IVIgは5日間の点滴静注を行い、投与初日は緩徐に投与を開始し、副作用等の異常所見の発現を確認しながら徐々に投与速度を上げる必要がある一方、本剤は1週間間隔で4回、1時間かけて点滴投与がなされるため、IVIgよりも1回の投与が短時間で投与できる利点があることから、製造販売後における本剤の安全性及び有効性の情報が蓄積していけば、IVIgより先に本剤が投与される可能性はあるとされているものであります。
3ページ目、お戻りいただいて、よって、承認申請時における企業側の説明と合わせまして、このような分析対象集団となったものになります。このような使用実態については、分析枠組み設定時と比較して、その枠組みを変更するような大きな状況の相違があったものとは想定していません。
加えて、例えばIVIg/PLEX等を受けて症状がコントロールできているような患者さんなどは、日常的には経口薬で管理されているわけでありまして、比較対照技術はやはり経口薬になると思われ、本分析集団に含まれるものと認識しています。
一方で、企業が希望していたようなFT反復療法やエクリズマブ投与患者については、P3試験の対象患者ですらないと思われ、上市前の投与経験があるかすら判然とせず、このような集団に対して費用対効果の評価を実施することは困難であると認識しています。
いずれにしましても、企業から、薬事申請時の説明と異なる説明を費用対効果評価専門組織で行っていることの十分な正当化はありませんでした。
次に、5ページ目、諸外国の医療技術評価機関におけるエフガルチギモドの評価結果について御説明します。エフガルチギモドの評価結果については、フランスのHASで追加的有用性の程度、ASMRがⅣ、つまり低いほうから2番目の軽度改善と評価されている以外は、いずれも現在評価中という結果になっています。
ただし、米国あるいは欧州では、本品目の適応は、アセチルコリン受容体抗体陽性患者のみでありまして、陰性患者には適応はありません。そのため、多くの国々では、陽性患者のみが評価対象となっているところです。
次に、追加的有用性の評価についてですけれども、7ページ目、御覧ください。追加的有用性については、以下のように、陽性集団については、追加的有用性ありと評価しましたが、陰性集団については、現時点では「ありとは判断できない」としています。しかし、陰性集団については、評価における不確実性が大きいため、先生方、組織の皆さんの意思決定の御参考として、費用最小化分析だけでなく費用効果分析も併せて実施しているところになります。
8ページ目、陽性集団についてですけれども、陽性集団については、以下のように本品目のピボタル試験において有効性が確認されていますので、追加的有用性はありだと判断しているところです。
9ページ目、こちら陰性集団についてですけれども、陰性集団については、ピボタル試験における患者数が少ないため、明確な結論は導けないと考えていますが、オッズ比などの点推定値、あるいは本品目の薬効メカニズムを考えれば、陽性集団より治療効果が劣っている可能性については否定できないと考えるところです。
また、下記、4点挙げさせていただいていますが、ADPT試験における主要評価項目はアセチルコリン受容体抗体陽性集団におけるものであり、陰性集団はそもそも評価対象に含まれていないということ。
それから、陰性集団のサンプル数は限られており、得られた結果が不確実性の大きなものであること。
また、当該試験に基づいて、アメリカあるいは欧州においては、そもそも陰性集団に対して薬事承認が得られていないこと。
製造販売業者が陰性集団に対する追加的有用性評価に対する見解を提出していないこと。
これらを考え併せまして、現時点ではエフガルチギモドが陰性集団に対して追加的有用性を有すると判断することは困難であると考えているところです。
続いて、11ページ目、費用対効果の結果についてですけれども、製造販売業者が提出した分析によれば、陽性集団はドミナント、すなわち効果が大きく、期待費用も安い。陰性集団は、ICERが約1億円/QALYとされているところであります。
12ページ目ですけれども、公的分析における再分析についてですが、本分析における増分費用効果比(ICER)のキードライバーというのは、先ほど御説明したエクリズマブ(ソリリス)の治療を実施する割合になります。すなわち、エクリズマブ(ソリリス)は非常に高額な治療法で、年間で薬価だけでも6000万円以上かかってくるような治療になりますので、これを受ける患者数が多いと想定すればするほど費用対効果は改善する。つまり、エフガルチギモドに有利な結果が得られることになるところです。
ただし、そのような状況の中で、製造販売業者は、比較対照技術群では、前回でも約○%が2年以内に高額なエクリズマブ治療法を受けるという設定になっています。経口治療で一定のコントロールがなされていた状態の患者が、2年間で○割もエクリズマブ治療を受けるというのは、過剰推計であり、明らかにこの費用対効果は過大に推計されていると考えられるところです。
13ページ目ですけれども、そこで公的分析においては、専門委員の先生方の臨床的見解、あるいはNDBにおける解析結果をもって、IVIg/PLEX療法から2年以内にエクリズマブの治療を受ける患者割合を設定しました。
ただし、NDBにおいては、アセチルコリン受容体抗体の陰・陽とか奏効・非奏効の情報というのは十分に得られないということですから、条件を幅広く取って感度分析等で分析の頑健性を検討しているところになります。
14ページ目、15ページ目には、製造販売業者と公的分析において用いた経済モデルをお示ししています。前回の専門組織2でも御説明しましたが、企業によって提出された分析結果は、システマティックレビューが出されていないとか、分析枠組みに従った追加的有用性の評価が出されていないとか、生産性損失が基本分析に含まれているなど、ガイドラインの基本的事項が遵守されていない、問題の多い分析だったということは既にお伝えしたとおりであります。
それに加えて、企業側が用いた分析モデルも非常に課題が多いものと公的分析では認識しています。例えば治療が奏効しない場合、すなわち症状が明確に改善しない限り、次サイクル、すなわち、翌日にはいきなり治療を終了して次治療に切り替えるとか、事前に御質問いただいていたようですが、経口薬治療中の患者にもかかわらず、モデルが非奏効の状態からスタートする、あるいはBSCの状態で全くの無治療である。こういった点については、まさに御指摘のとおりであると認識しているところであります。
しかし、公的分析では、基本的に企業側とのコミュニケーションを円滑にするため、その見解を可能な限り受け入れるという立場から、学術的には分析モデルを一旦破棄することが適切なのかもしれませんが、それを全体としては受け入れて、おかしな部分が仮に残っていたとしても、分析に大きな影響を与えるもの、あるいは明らかにガイドライン上あるいは科学的に不合理なものに限定して再分析を実施したという、この経緯については、御理解いただければ助かるところであります。ですので、企業側の分析モデルのおかしなところについては、多くそのまま残ってしまっており、公的分析のモデルといっても、最小限リバイスしたものということになっていますので、それは学術的な立場から見れば、御指摘のような再分析の限界であると認識しているところであります。
16ページ目ですけれども、その他の点につきましては、例えばエフガルチギモドの年間平均投与サイクル数が○回であると企業側の分析では仮定されていますが、計算上、あるいはモデルの設定上の誤りから、実際に計算としては、エフガルチギモドは○サイクル分費用換算されていない、計上されていないという問題があったり、あるいは17ページ目ですけれども、薬剤費以外の費用、例えば外来等のドクターフィーが含まれていないとか、18ページ目、生産性損失が基本分析にも含まれてしまっているなど、正直申し上げると、論点のある議論というよりも、単純な誤りであるようなものについて公的分析で修正しております。
20ページ目ですけれども、結果として再分析では、陽性集団のICERは約1.1億円/QALY、陰性集団は費用最小化分析の結果として費用が増加。
仮に費用効果分析を実施した場合は、次ページにありますように、約1.6億円/QALYという結果になっています。
シナリオ分析の結果ですけれども、いろいろ御議論があるだろうなということは認識しているわけでありますけれども、エクリズマブの使用割合をたとえ20%超であると仮定しても、結果は約9300万円/QALYと、大きくは変わらないところです。
22ページ目、患者数の割合と結果のまとめについてです。全体の分析結果としては、この22ページにお示しした表のようになっており、患者数割合としては、陽性が85%、陰性が15%という企業側の見解を受け入れているところになります。
23ページ目以降については、御指示いただいたシナリオ分析の結果となります。いずれにしましても、治療ラインにおいて、本品目のピボタル試験の結果とは全く異なる集団ですので、比較分析は不可能であると考えているところです。
こちらからは以上になります。
(事務局より説明)
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございました。
それでは、まず、本品目に係る公的分析の再分析結果に対する企業意見の聴取を行いますので、事務局は企業を入室させてください。
(意見陳述者入室)
○費用対効果評価専門組織委員長
私は費用対効果評価専門組織委員長です。
早速ですが、10分以内で、ウィフガートの総合的評価について御説明をお願いいたします。続いて、質疑応答をさせていただきます。では、始めてください。
○意見陳述者
私、○○と申します。私から御説明させていただきます。本日のお手元の資料の表紙にありますとおり、ウィフガートの公的分析結果報告書への意見を陳述させていただきます。
2ページにアジェンダがございます。
3ページ目に、こちらの意見の概要をまとめさせていただいております。6点ございまして、1点目は、分析枠組みにおける比較対照の妥当性について意見がございます。2点目から6点目につきましては、現在の分析枠組みの上でのモデル上の懸念について5点ございまして、うち2点目につきましては、資料中で意見を述べさせていただきまして、3から6については、最後に概要を抜粋させていただいております。
まず、次のページ、4ページ目のウィフガートの比較対照について意見を述べさせていただきます。
まず、昨年の分析枠組みの決定プロセスのときに、ウィフガートは4次治療として使われると主張してまいりまして、臨床の専門家である○○先生からも同様の意見を述べていただきました。ただ、昨年決定された枠組みでは、ウィフガートの使われ方が長期的に変化して、経口治療薬の後に使われる可能性があると御指摘いただきまして、比較対照は経口治療薬となりました。
実際、その1年間のウィフガートの使われ方のグラフをこのページに示しております。この1年間にウィフガートの投与前にどのような治療が実施されたかというものを示しておりまして、一番上の赤い太字で示しておりますのがIVIGとPLEXの合計になります。IVIGとPLEXは、それぞれオレンジと黄色で示していますけれども、その合計を赤で示しておりまして、こちらが最新のデータでも約○%になっております。一番下のほうに太い青で示しておりますのが経口治療薬になっておりまして、こちらは最新でも○%に満たない状況になっております。
こちらを見ますと、発売後1年経過してもなお、この比較対照である経口治療薬というものが、ウィフガートの前に実施される治療として○%に満たない割合となっておりまして、非常にレアな経口治療薬だけを比較対照とする現在の枠組みは妥当でないということを改めて述べさせていただきたいと思います。
次のページに最新のガイドラインのアルゴリズムを、昨年の専門組織でもお示ししたのですけれども、改めてお示ししております。
1次治療から4次治療、それぞれ奏効しない場合に、1次、2次、3次、4次と進むことになっておりまして、一番上が経口治療となっております。ウィフガートは分子標的治療薬ですので、一番下にエクリズマブとウィフガートと記載させていただいております。実際の機序から考えまして、エクリズマブとウィフガートについては、今後検討があるところかと思いますけれども、まず、ここのページでは、ウィフガートの比較対照が経口治療薬ということが妥当であるかということについて懸念があるという点で、改めて示させていただきました。
この点について、改めて○○先生に御意見いただきたいと思います。○○先生、お願いいたします。
○意見陳述者
○○です。
先ほどのウィフガートの使用例にどういう治療をしていたかということからも明らかなように、ウィフガートの比較対照として経口治療薬というのは、実臨床には全く合っていないということをさらに主張したいと思います。基本的には、経口治療薬を使っていても、なかなか日常生活がうまくいかないということで、血漿交換とかIVIGをする。それら、短期入院したり、外来で1日中かかるような治療を、ウィフガートにすると普通の外来で1~2時間ぐらいで終わるというメリットで患者さんは選んでいると思います。ですので、従来主張していますように、ウィフガートの比較対照として経口治療薬というのはおかしいのではないかと思っております。
以上です。
○意見陳述者
○○先生、ありがとうございました。
次のページを御覧ください。次は、公的分析班の分析モデルについての意見になります。上に示しておりますのが製造販売業者が構築したモデルになっておりまして、下が公的分析班による修正になっております。大きく違いますのは、2次治療であるIVIG/PLEXからエクリズマブに行く割合、それからIVIG/PLEXからBSCに行く割合が公的分析班のほうで新規に追加させていただいております。
まず、下の図にあります、真ん中の2.6%という数字とBSCに行く過程について懸念を述べさせていただきます。
次のページを御覧ください。この2.6%という数字の基になっておりますのは、公的分析班でNDBを分析した結果、重症筋無力症の患者さんのうちエクリズマブを治療で使用した患者さん5.6%ということになっておりました。重症筋無力症の患者さんが分母になっております。この重症筋無力症の患者さんを選定するプロセスについて製造販売業者のほうで確認しましたところ、公的分析班の分母の計算におきましては、こちらのオレンジのところにあります条件を加えておりませんので、重症筋無力症の診断がありつつも、1次治療の経口治療、本来であれば実施されるべき経口治療がない患者さんが33.5%残った状態ではないかと考えております。これによって、分母が過大になっているのではないかと懸念しております。
次のページを御覧ください。さらに、その5.6%という数字が、なぜモデルの中で2.6%になったかということを懸念として述べさせていただきます。実際、重症筋無力症の患者さんのうちエクリズマブを使用した患者さんが5.6%であれば、その5.6%が使用されるのが妥当であろうと考えられるのですけれども、実際には計算の中で2.6%に変更されております。
さらに、もう一つ、IVIG/PLEXからBSCに移行する患者さんの割合についても懸念がございます。公的分析班のモデルでは、IVIG/PLEXを使用した後、多くの患者さんがベスト・サポーティブ・ケアに移行するという計算になっております。ベスト・サポーティブ・ケアというものは、ほかの治療を諦めたような、経口治療だけを行うような患者さんになっておりまして、実際はこのBSCに行く患者さんというのはわずかではないかと考えております。
こちらは○○先生にも御相談しましたけれども、IVIG/PLEXを使用するような重度の患者さんは、経口治療だけでコントロールすることは難しい患者さんであると御指摘いただきましたので、そのことからも、BSCに移行する患者さんがこのように多い割合であるということは妥当ではないのではないかと考えております。
次に、③から⑥の意見についての簡単に抜粋させていただいております。
③としましては、ウィフガートの1月当たりの費用の計算の妥当性になります。
公的分析班の計算としましては、1サイクル当たりのウィフガートの治療、掛ける年間のサイクル数が、年間のウィフガートの治療費として発生する必要があるけれども、製造販売業者のほうは、それより低い費用しか発生していないと指摘しております。
それを修正しているのですけれども、この低い費用になっているのは、ウィフガートを中止していなくなった患者さんがいるために低くなっているものですので、公的分析班の計算の中で、それを使用していない患者さんの分も治療している患者さんに負わせるような計算になっております。
また、陰性群の扱いについても違う意見を持っております。
また、それ以外で奏効・非奏効の扱いにつきましても、我々としては違う意見を持っておりまして、太字で示しております。
また、薬剤費以外の医療費の考慮につきましても、御指摘の点については、我々としては意見を持っております。
最後に、製造販売業者の意見のまとめになっております。
最初に、サマリとして少し述べさせていただいたとおり、最も重要な問題は、現在の分析枠組みの比較対照が実態と合っていないところが問題ではないかと考えております。ウィフガートは、3次治療の左のグラフでも再掲してお示しさせていただいておりますとおり、3次治療のIVIG/PLEXの後に使われておりますので、妥当な比較対照は4次治療あるいは3次治療と考えております。
ほかの②から⑥の意見の大部分につきましては、適切な分析枠組みが再設定されればモデル自体が変わりますので、問題にならない部分があるのではないかと考えております。
以上で資料の御説明になります。
○費用対効果評価専門組織委員長
よろしいでしょうか。
それでは、委員の方から御質問はございますでしょうか。
○○委員、お願いします。
○○○委員
御説明ありがとうございました。
4ページ目、一番最後にも掲げていらっしゃるのですけれども、前治療のグラフです。これは割合を示しているようですけれども、その場合全部足したら100を大きく超えるように見えますが、どういうふうに理解したらいいのでしょうか。
○意見陳述者
分かりやすくするように、IVIGとPLEXを合計したものを、さらにグラフの上に同時に載せてしまいましたので、このグラフ上ではIVIGとPLEXの割合がダブルカウントになりますので、それは引いて考えていただきたいと思います。
○○○委員
一番上の赤いのは再掲みたいなもので、橙色から下が割合なわけですね。
○意見陳述者
はい。
○○○委員
ありがとうございました。
○費用対効果評価専門組織委員長
その他の先生、いかがでしょうか。
○○委員、お願いします。
○○○委員
説明ありがとうございます。
今、4ページ目のグラフのお話だったので、この聞き取り調査について追加してお聞かせください。現在、承認条件として、全例を対象とした使用成績調査をされていますが、全例調査の中でも、この聞き取り調査で収集されたもの同じ質問事項は聞かれているのでしょうか。つまり、聞き取り調査は全例調査の一環として情報を得たのか、全例調査とは別に調査をされたのか、いずれでしょうか。
○意見陳述者
○○から回答させていただきます。
そちらのほうは、PMSではなく、別の聞き取り調査から得られた結果となっています。もちろん市販後調査を進めておりますが、まだデータが固定しておりませんので、そちらのほうからのデータは使えないという状況でしたので、あくまでも処方してくださった先生に営業担当者が前の治療は何でしたかという形で聞いて、それでグラフに落とし込んでいるものとなります。
○○○委員
分かりました。承認されて日も浅い状況だということは十分理解していますが、PMDAには安全性定期報告を提出されると思いますが、まだデータは固定されていないから、定期報告もされていないという理解でよろしかったですか。
○意見陳述者
安定報に関しては、まだしていないはずです。確認しなければいけないですけれども、まだ固定されていないし、調査票もそれほど集まっていないと聞いております。
○○○委員
分かりました。では、あくまで今回提出されているものは、市販後の全例調査のデータではなく、別途に実施された調査の結果だという理解でよろしかったですね。
○意見陳述者
おっしゃるとおりです。
○○○委員
ありがとうございます。
○意見陳述者
補足させていただきます。私が先日伺ったところですと、今、アルジェニクス社のほうで把握しているウィフガートを処方されている患者さんが○症例、そのうちの患者さんですので、7割8割は網羅しているのではないかと伺っております。
○費用対効果評価専門組織委員長
その他、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、これで質疑応答を終了いたします。企業の方は御退室ください。お疲れさまでした。
○意見陳述者
ありがとうございました。
(意見陳述者退室)
○費用対効果評価専門組織委員長
それでは、御議論に先立ちまして、企業から公的分析について御意見がございましたので、科学院から、まずは何か御意見ございますでしょうか。
○国立保健医療科学院
国立保健医療科学院です。
企業側の資料に従って、少しコメントさせていただきたいと思うのですけれども、まず、4ページ目、このウィフガートの比較対照技術が適切かどうかということについて、先ほど御説明したとおりですけれども、仮にこの製造販売業者の主張が正しいとしても、このIVIG/PLEXというのが、いわゆる早期速効性治療と反復治療、両方含まれているものだと認識していますので、このデータをもって自動的に経口薬を比較対照とすることは適切ではないというわけではないのではないかという印象を持ったところです。
それから、5ページ目ですけれども、こちらは臨床の先生のほうからもコメントがありましたが、ガイドライン上の治療アルゴリズムについてですけれども、製造販売業者の主張では、最新の診療ガイドラインの治療アルゴリズムにおける分子標的治療薬に、エフガルチギモドが含まれているかのように記載されているわけでありますが、そのような事実は全くなくて、同社のウェブページ上、アルジェニクス社のウェブページ上にも、ウィフガートは分子標的薬に含まれていないということが明記されています。
実際に重症筋無力症治療ガイドライン2022の改定を踏まえ治療戦略というページが存在するのですが、ここにおいて、本アルゴリズムに記載した分子標的治療薬とは、エクリズマブとリツキシマブ(本邦では保険適用外を指している)、2022年5月より日本で使用可能となったエフガルチギモドは、本ガイドラインには記載されていないと明記されておりまして、この表現というのは少しいかがなものかといいますか、かなり誤解を招くような表現なのではないかなと我々としては認識しているところです。
それから、7ページ目、NDBの取扱いについてですけれども、いわゆるレセプト病名、適応外使用の問題については、完全には企業側がおっしゃるように否定し切れないと我々も認識しています。ただし、製造販売業者が一体どのような分析を実施したのかなど、詳細には御説明いただけなかったので、例えばDPCデータを使っていれば、外来の薬局とリンクが外れているので、分母が非常に少なくなったり、いろいろな可能性があると考えています。ですから、そのような過大推計の可能性も含めて、33.5%という数字の妥当性については、現時点では我々としてはちょっと評価できないと考えているところです。
ただし、レセプトを使った先行研究が実施されていて、そこではレセプト病名の可能性がある併存疾患を除外したという研究を行っていて、病名から除外したということですね。その場合、同様の条件においてNDBを分析すると、エクリズマブの使用割合は2年で6.8%という結果になっていて、2割ぐらい上乗せされる可能性はあるのかなと思っております。
ただし、いずれにしましても、その程度の推計誤差では結果に影響を受けないということは明らかでありまして、仮に33.5%の過大推計があったとした場合について、ソリリスの使用割合は8.4%となりますので、ICERというのは約1億8000万円/QALYということで、結果は大きくは変わらないということになるかなと思っております。
それから、8ページ目ですけれども、3次治療を開始する割合については、完全に誤解されているのではないかなと思っておりまして、公的分析としては、新規にIVIG/PLEXを導入した患者が、マルコフモデルにおける健康状態の定義なわけですけれども、この患者を分母に取って使用割合というものを計算していて、5.6%という数値を出しております。この2.6%という数値については、単年度の使用割合ということでありますので、その5.6%と少し乖離があるということになっていますが、間違いではないと思っているところです。
また、先ほど組織側の臨床の先生からも御指摘いただきましたけれども、BSCの治療においてIVIG/PLEXを継続するのではないかという御指摘があったかなと思うのですが、そもそもこのような設定をしてきたのは企業側の設定でありまして、今さらそういうことを言われても少し困ってしまうというところと、仮にBSC症例全例にIVIG/PLEXを投与しても、ICERの値は1億400万円/QALY、約1億円/QALYということで、結果については大きな影響がないものと認識しているところです。
あとは瑣末なところですけれども、少しコメントとして述べられていた9ページ目のウィフガートの1月当たりの費用についてですけれども、使用していない患者を含めて考えるのはおかしいのではないかという指摘がありましたが、ウィフガートが年間○サイクルというのは、全ての患者、つまり使用していない患者も含めて平均○サイクルなので、使用していない患者を含めないとおかしなことになるというのは、明らかかなと考えているところです。
我々としては以上になります。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございました。
1点、私から科学院さんに事前に確認させていただきたいのですけれども、いわゆる企業側と大きく変わっている点は理解できているのですが、その背景としては、関わるコストが随分大きく変わっているようです。そういった意味では、効果というよりはコスト、それも例えばエクリズマブのような割合の議論と理解してよろしいでしょうか。
○国立保健医療科学院
ありがとうございます。
全くそのとおりだと認識しておりまして、年間6000万円以上かかる治療を○割以上の患者が継続して治療するという設定になっていますので、かなり過大な推計をしているのではないかなと認識しているところです。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
それでは、当該品目について御議論をお願いいたします。なお、御議論に当たっては、企業分析結果と公的分析の再分析結果のどちらがより科学的により確からしいかを相対的に評価することを踏まえて御議論を進めていただきますようお願い申し上げます。先生方、いかがでしょうか。
科学院さんのほうでかなり整理していただいているところでありますが、大きな論点としては、従来の分析枠組みを踏まえた比較対照技術の考え方というところです。これは薬事承認との絡みがあるというお話かと思います。
もう一つ、先ほどお話しさせいただいた、モデルの構造と遷移確率をどのように精査しているかというところで、先ほど来、エクリズマブの使用率、総医療費とか医薬品費のところが大きく論点になっているというようなお話なのかなと思っております。加えて、企業さんから今回、使用実態について、MRの方のサーベイであるかもしれませんが、新たな知見が報告されておりますので、その点も考慮した議論していただければと考えております。いかがでしょうか。
事前の先生方の御意見とか、随分議論した経緯を踏まえて整理させていただけると、先生方の御意見としては、恐らく公的分析の再分析結果がより確からしいと御判断されているのかなと思います。一方で、幾つか不確実性についての御指摘もいただいているところでありますが、それについて、この場で何か追加で御質問、御意見があればいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。よろしいですか。
○○先生には幾つかコメントいただいているところでありますが、よろしいですか。
○○○委員
先ほど御説明いただきました公的分析の御説明で、おおむね了解いたしました。
1つだけ、企業の言っていた5番のところで、モデルのスタートは非奏効者であるべきではないかということで、分析の対象は非奏効者なので、モデルのスタートは非奏効者なのかなという、何となく直感的な印象なのですけれども、その点についてはいかがでしょうか。
○費用対効果評価専門組織委員長
科学院さん、いかがでしょうか。
○国立保健医療科学院
要は、あまりコントロールできていない患者さんが対象になられているのに、非奏効の状態からもう一回開始するのはおかしいのではないかという御指摘でしょうか。
○○○委員
分析対象が非奏効なので、モデルのスタートは非奏効にならなくていいのかという疑問です。非奏効以外の奏効が混じっていたりするというのはどうなのかなと、ちょっと思ったのです。
○国立保健医療科学院
そうですね。1次治療でベースで入っているのに、1次治療として奏効が出たり、非奏効が出たりするのはおかしいというような観点かなと思っているのですけれども、正直なところ、我々もそこはおかしいという認識はあるのですけれども、企業側の分析がそのようになっていたもので、そこまで手が回らなかったというか、そこはあまり分析に大きな影響がないところでしたので、そのままの設定で行ってしまったというところで、科学的に妥当かと言われれば、先生おっしゃるようになかなか難しいところがあるのだと思うのですけれども、我々としては、なるべく結果が変わらないところは、企業側のモデルをいじらないようにしようというスタンスで分析させていただいたところで、少しそういう問題が生じてしまったのかなと反省しているところです。
○○○委員
了解しました。
○費用対効果評価専門組織委員長
その他の先生方、いかがでしょうか。
○○委員にちょっとお伺いしたいのですけれども、PMSの御経験もあると思いますが、使用実態というものは今後、オフィシャルなデータとして開示されてくる可能性はあるということでしょうか。
○○○委員
オフィシャルなデータとして開示されるかという点については、各製薬企業の方針に依存するかと思われますが、製造販売後調査の最終報告などは企業から公開されていたりもしますので、多分手に入るような情報になるのではないかと考えます。
○費用対効果評価専門組織委員長
分かりました。
今後、使用実態で新しい情報が上がってきたら、改めて分析する意味もあるということを、先ほど、臨床の専門の先生方からもコメントいただいているところであります。この辺りについては、新しい知見が出た場合の再評価についても、ある程度視野に入れながら議論していただいてもいいのかなと思っておりますが、事務局さんのほうは、その点に関していかがでしょうか。
(事務局より説明)
通知にもございますように、対象品目の指定手続のところに記載がございますけれども、新たな知見が得られたときには再評価という枠組みがございますので、そちらでまた検討いただければと思います。
以上です。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
そうすると、現状のデータで最大限、合理的な議論をさせていただいているなかで、先生方の御意見を事前にいただいたと思うのですが、その他、御意見いかがでしょうか。よろしいですか。
それでは、議決に入らせていただきます。先生方の御意見を参考に、ウィフガートに関する費用対効果評価案については、公的分析案を採用するという形で、ウィフガートに係る総合評価について、公的分析による案を費用対効果評価案として決定するということでよろしいでしょうか。
(首肯する委員あり)
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
それでは、専門組織で決定された総合的評価を費用対効果評価案として中央社会保険医療協議会に報告いたします。なお、企業に対する内示及び中央社会保険医療協議会に提出する資料に関しては、委員長に一任していただくということでよろしいでしょうか。
(首肯する委員あり)
○費用対効果評価専門組織委員長
こちらもありがとうございます。
本日の議題は以上となります。
では、最後の品目に入らせていただきます。続きまして、ウィフガートについて、公的分析による再分析結果が提出されておりますので、公的分析からの意見聴取を行った上で、企業分析の内容及び公的分析による再分析結果の審査、並びに費用対効果評価案の策定について先生方に御議論をいただきたいと思います。
では、ウィフガートについて、まずは事務局から説明をお願いいたします。
(事務局より説明)
続きまして、科学院から御説明をよろしくお願いいたします。
○国立保健医療科学院
国立保健医療科学院です。
資料のほう、費-4-2の資料になります。エフガルチギモドに関する公的分析の結果概要について御説明申し上げます。本件、企業の側と分析結果が乖離しておりますので、少し丁寧に御説明させていただきたいと思っております。
1ページ目ですけれども、先ほど事務局から説明がありましたが、専門組織1で合意した分析枠組みを再掲しています。対象となるのは、ステロイド剤又はステロイド以外の免疫抑制剤が十分に奏効していないという早期のラインの患者で、比較対照技術は、プレドニゾロンを含む経口剤と設定されています。
2ページ目ですけれども、本ページには、重症筋無力症の治療プロセスをお示ししております。
まずは、今回、比較対照技術となっているような経口薬で治療した後に、治療効果が見られないようであれば、EFT(早期速効性治療)と呼ばれる免疫グロブリン静注療法、以後IVIgと呼びますけれども、あるいは血漿交換(PLEX)などが実施されるところです。ただし、EFTを実施しても経口薬治療は一般的には継続されることのようであります。それでも治療が無効であれば、IVIgやPLEXを繰り返すFT反復療法がなされ、最後にアセチルコリン受容体抗体陽性患者においては、エクリズマブが使用されることもあるようであります。
3ページ目ですけれども、さて、専門組織1において、このような分析枠組みが設定された背景についてですけれども、基本的には企業の薬事申請時の説明をそのまま分析枠組みとして用いたものになっていると認識しています。
資料、飛んでしまうのですが、資料の末、最終ページから2ページ目に参考資料として載せてありますけれども、こちらに審査報告書上における臨床的位置づけの議論について掲載しております。
製造販売業者は、本剤の臨床的位置づけとしては、主にgMG症状の増悪の一時的な治療を目的として使用が考慮されるIVIg及び血液浄化療法よりも前に用いられる薬剤である。あるいは、本剤は、gMG症状を有する患者に対して早期から投与される薬剤であり、投与対象としては免疫抑制剤における前治療で十分に奏効しない患者に限定する必要はないということを主張しておりまして、それを受けて、機構側も、本剤は、副腎皮質ステロイド又は非ステロイド性免疫抑制剤を使用している患者に対して投与することが適切であるとしています。費用対効果の分析枠組みも、これと全く同一の考え方をしているものであると考えています。
3ページ、お戻りいただいて、2ポツ目ですけれども、しかし、上市直後の使用法としては、待機患者さんの影響あるいはドクターの保守的な選好などから、後ラインでの使用が多いかもしれないということは、分析枠組み設定時から既に承知していたものになります。
しかし、唯一のエビデンスが存在するのが経口薬との比較であること、またIVIg/PLEXは患者の負担の大きな治療であることから、長期的な動向は不明であるとされ、このような分析枠組みが決定されたものと認識しています。
これについては、また資料が飛んで申し訳ないのですけれども、本資料の最終ページに記載しておきましたが、機構側の専門委員意見とも一致するものでありまして、そこでは、本剤とIVIgの使い分けについて、現時点では、特に日本人患者における本剤の有効性及び安全性の情報が極めて限られている。一方で、IVIgは長年の使用経験があり、幅広い患者で有効性が示されており、安全性についても特段大きな懸念はない。そのため、本剤の承認後しばらくは、IVIgよりも優先して本剤が使用されることは考えにくく、使い慣れているIVIgが優先的に使用されることが想定される。
ただし、IVIgは5日間の点滴静注を行い、投与初日は緩徐に投与を開始し、副作用等の異常所見の発現を確認しながら徐々に投与速度を上げる必要がある一方、本剤は1週間間隔で4回、1時間かけて点滴投与がなされるため、IVIgよりも1回の投与が短時間で投与できる利点があることから、製造販売後における本剤の安全性及び有効性の情報が蓄積していけば、IVIgより先に本剤が投与される可能性はあるとされているものであります。
3ページ目、お戻りいただいて、よって、承認申請時における企業側の説明と合わせまして、このような分析対象集団となったものになります。このような使用実態については、分析枠組み設定時と比較して、その枠組みを変更するような大きな状況の相違があったものとは想定していません。
加えて、例えばIVIg/PLEX等を受けて症状がコントロールできているような患者さんなどは、日常的には経口薬で管理されているわけでありまして、比較対照技術はやはり経口薬になると思われ、本分析集団に含まれるものと認識しています。
一方で、企業が希望していたようなFT反復療法やエクリズマブ投与患者については、P3試験の対象患者ですらないと思われ、上市前の投与経験があるかすら判然とせず、このような集団に対して費用対効果の評価を実施することは困難であると認識しています。
いずれにしましても、企業から、薬事申請時の説明と異なる説明を費用対効果評価専門組織で行っていることの十分な正当化はありませんでした。
次に、5ページ目、諸外国の医療技術評価機関におけるエフガルチギモドの評価結果について御説明します。エフガルチギモドの評価結果については、フランスのHASで追加的有用性の程度、ASMRがⅣ、つまり低いほうから2番目の軽度改善と評価されている以外は、いずれも現在評価中という結果になっています。
ただし、米国あるいは欧州では、本品目の適応は、アセチルコリン受容体抗体陽性患者のみでありまして、陰性患者には適応はありません。そのため、多くの国々では、陽性患者のみが評価対象となっているところです。
次に、追加的有用性の評価についてですけれども、7ページ目、御覧ください。追加的有用性については、以下のように、陽性集団については、追加的有用性ありと評価しましたが、陰性集団については、現時点では「ありとは判断できない」としています。しかし、陰性集団については、評価における不確実性が大きいため、先生方、組織の皆さんの意思決定の御参考として、費用最小化分析だけでなく費用効果分析も併せて実施しているところになります。
8ページ目、陽性集団についてですけれども、陽性集団については、以下のように本品目のピボタル試験において有効性が確認されていますので、追加的有用性はありだと判断しているところです。
9ページ目、こちら陰性集団についてですけれども、陰性集団については、ピボタル試験における患者数が少ないため、明確な結論は導けないと考えていますが、オッズ比などの点推定値、あるいは本品目の薬効メカニズムを考えれば、陽性集団より治療効果が劣っている可能性については否定できないと考えるところです。
また、下記、4点挙げさせていただいていますが、ADPT試験における主要評価項目はアセチルコリン受容体抗体陽性集団におけるものであり、陰性集団はそもそも評価対象に含まれていないということ。
それから、陰性集団のサンプル数は限られており、得られた結果が不確実性の大きなものであること。
また、当該試験に基づいて、アメリカあるいは欧州においては、そもそも陰性集団に対して薬事承認が得られていないこと。
製造販売業者が陰性集団に対する追加的有用性評価に対する見解を提出していないこと。
これらを考え併せまして、現時点ではエフガルチギモドが陰性集団に対して追加的有用性を有すると判断することは困難であると考えているところです。
続いて、11ページ目、費用対効果の結果についてですけれども、製造販売業者が提出した分析によれば、陽性集団はドミナント、すなわち効果が大きく、期待費用も安い。陰性集団は、ICERが約1億円/QALYとされているところであります。
12ページ目ですけれども、公的分析における再分析についてですが、本分析における増分費用効果比(ICER)のキードライバーというのは、先ほど御説明したエクリズマブ(ソリリス)の治療を実施する割合になります。すなわち、エクリズマブ(ソリリス)は非常に高額な治療法で、年間で薬価だけでも6000万円以上かかってくるような治療になりますので、これを受ける患者数が多いと想定すればするほど費用対効果は改善する。つまり、エフガルチギモドに有利な結果が得られることになるところです。
ただし、そのような状況の中で、製造販売業者は、比較対照技術群では、前回でも約○%が2年以内に高額なエクリズマブ治療法を受けるという設定になっています。経口治療で一定のコントロールがなされていた状態の患者が、2年間で○割もエクリズマブ治療を受けるというのは、過剰推計であり、明らかにこの費用対効果は過大に推計されていると考えられるところです。
13ページ目ですけれども、そこで公的分析においては、専門委員の先生方の臨床的見解、あるいはNDBにおける解析結果をもって、IVIg/PLEX療法から2年以内にエクリズマブの治療を受ける患者割合を設定しました。
ただし、NDBにおいては、アセチルコリン受容体抗体の陰・陽とか奏効・非奏効の情報というのは十分に得られないということですから、条件を幅広く取って感度分析等で分析の頑健性を検討しているところになります。
14ページ目、15ページ目には、製造販売業者と公的分析において用いた経済モデルをお示ししています。前回の専門組織2でも御説明しましたが、企業によって提出された分析結果は、システマティックレビューが出されていないとか、分析枠組みに従った追加的有用性の評価が出されていないとか、生産性損失が基本分析に含まれているなど、ガイドラインの基本的事項が遵守されていない、問題の多い分析だったということは既にお伝えしたとおりであります。
それに加えて、企業側が用いた分析モデルも非常に課題が多いものと公的分析では認識しています。例えば治療が奏効しない場合、すなわち症状が明確に改善しない限り、次サイクル、すなわち、翌日にはいきなり治療を終了して次治療に切り替えるとか、事前に御質問いただいていたようですが、経口薬治療中の患者にもかかわらず、モデルが非奏効の状態からスタートする、あるいはBSCの状態で全くの無治療である。こういった点については、まさに御指摘のとおりであると認識しているところであります。
しかし、公的分析では、基本的に企業側とのコミュニケーションを円滑にするため、その見解を可能な限り受け入れるという立場から、学術的には分析モデルを一旦破棄することが適切なのかもしれませんが、それを全体としては受け入れて、おかしな部分が仮に残っていたとしても、分析に大きな影響を与えるもの、あるいは明らかにガイドライン上あるいは科学的に不合理なものに限定して再分析を実施したという、この経緯については、御理解いただければ助かるところであります。ですので、企業側の分析モデルのおかしなところについては、多くそのまま残ってしまっており、公的分析のモデルといっても、最小限リバイスしたものということになっていますので、それは学術的な立場から見れば、御指摘のような再分析の限界であると認識しているところであります。
16ページ目ですけれども、その他の点につきましては、例えばエフガルチギモドの年間平均投与サイクル数が○回であると企業側の分析では仮定されていますが、計算上、あるいはモデルの設定上の誤りから、実際に計算としては、エフガルチギモドは○サイクル分費用換算されていない、計上されていないという問題があったり、あるいは17ページ目ですけれども、薬剤費以外の費用、例えば外来等のドクターフィーが含まれていないとか、18ページ目、生産性損失が基本分析にも含まれてしまっているなど、正直申し上げると、論点のある議論というよりも、単純な誤りであるようなものについて公的分析で修正しております。
20ページ目ですけれども、結果として再分析では、陽性集団のICERは約1.1億円/QALY、陰性集団は費用最小化分析の結果として費用が増加。
仮に費用効果分析を実施した場合は、次ページにありますように、約1.6億円/QALYという結果になっています。
シナリオ分析の結果ですけれども、いろいろ御議論があるだろうなということは認識しているわけでありますけれども、エクリズマブの使用割合をたとえ20%超であると仮定しても、結果は約9300万円/QALYと、大きくは変わらないところです。
22ページ目、患者数の割合と結果のまとめについてです。全体の分析結果としては、この22ページにお示しした表のようになっており、患者数割合としては、陽性が85%、陰性が15%という企業側の見解を受け入れているところになります。
23ページ目以降については、御指示いただいたシナリオ分析の結果となります。いずれにしましても、治療ラインにおいて、本品目のピボタル試験の結果とは全く異なる集団ですので、比較分析は不可能であると考えているところです。
こちらからは以上になります。
(事務局より説明)
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございました。
それでは、まず、本品目に係る公的分析の再分析結果に対する企業意見の聴取を行いますので、事務局は企業を入室させてください。
(意見陳述者入室)
○費用対効果評価専門組織委員長
私は費用対効果評価専門組織委員長です。
早速ですが、10分以内で、ウィフガートの総合的評価について御説明をお願いいたします。続いて、質疑応答をさせていただきます。では、始めてください。
○意見陳述者
私、○○と申します。私から御説明させていただきます。本日のお手元の資料の表紙にありますとおり、ウィフガートの公的分析結果報告書への意見を陳述させていただきます。
2ページにアジェンダがございます。
3ページ目に、こちらの意見の概要をまとめさせていただいております。6点ございまして、1点目は、分析枠組みにおける比較対照の妥当性について意見がございます。2点目から6点目につきましては、現在の分析枠組みの上でのモデル上の懸念について5点ございまして、うち2点目につきましては、資料中で意見を述べさせていただきまして、3から6については、最後に概要を抜粋させていただいております。
まず、次のページ、4ページ目のウィフガートの比較対照について意見を述べさせていただきます。
まず、昨年の分析枠組みの決定プロセスのときに、ウィフガートは4次治療として使われると主張してまいりまして、臨床の専門家である○○先生からも同様の意見を述べていただきました。ただ、昨年決定された枠組みでは、ウィフガートの使われ方が長期的に変化して、経口治療薬の後に使われる可能性があると御指摘いただきまして、比較対照は経口治療薬となりました。
実際、その1年間のウィフガートの使われ方のグラフをこのページに示しております。この1年間にウィフガートの投与前にどのような治療が実施されたかというものを示しておりまして、一番上の赤い太字で示しておりますのがIVIGとPLEXの合計になります。IVIGとPLEXは、それぞれオレンジと黄色で示していますけれども、その合計を赤で示しておりまして、こちらが最新のデータでも約○%になっております。一番下のほうに太い青で示しておりますのが経口治療薬になっておりまして、こちらは最新でも○%に満たない状況になっております。
こちらを見ますと、発売後1年経過してもなお、この比較対照である経口治療薬というものが、ウィフガートの前に実施される治療として○%に満たない割合となっておりまして、非常にレアな経口治療薬だけを比較対照とする現在の枠組みは妥当でないということを改めて述べさせていただきたいと思います。
次のページに最新のガイドラインのアルゴリズムを、昨年の専門組織でもお示ししたのですけれども、改めてお示ししております。
1次治療から4次治療、それぞれ奏効しない場合に、1次、2次、3次、4次と進むことになっておりまして、一番上が経口治療となっております。ウィフガートは分子標的治療薬ですので、一番下にエクリズマブとウィフガートと記載させていただいております。実際の機序から考えまして、エクリズマブとウィフガートについては、今後検討があるところかと思いますけれども、まず、ここのページでは、ウィフガートの比較対照が経口治療薬ということが妥当であるかということについて懸念があるという点で、改めて示させていただきました。
この点について、改めて○○先生に御意見いただきたいと思います。○○先生、お願いいたします。
○意見陳述者
○○です。
先ほどのウィフガートの使用例にどういう治療をしていたかということからも明らかなように、ウィフガートの比較対照として経口治療薬というのは、実臨床には全く合っていないということをさらに主張したいと思います。基本的には、経口治療薬を使っていても、なかなか日常生活がうまくいかないということで、血漿交換とかIVIGをする。それら、短期入院したり、外来で1日中かかるような治療を、ウィフガートにすると普通の外来で1~2時間ぐらいで終わるというメリットで患者さんは選んでいると思います。ですので、従来主張していますように、ウィフガートの比較対照として経口治療薬というのはおかしいのではないかと思っております。
以上です。
○意見陳述者
○○先生、ありがとうございました。
次のページを御覧ください。次は、公的分析班の分析モデルについての意見になります。上に示しておりますのが製造販売業者が構築したモデルになっておりまして、下が公的分析班による修正になっております。大きく違いますのは、2次治療であるIVIG/PLEXからエクリズマブに行く割合、それからIVIG/PLEXからBSCに行く割合が公的分析班のほうで新規に追加させていただいております。
まず、下の図にあります、真ん中の2.6%という数字とBSCに行く過程について懸念を述べさせていただきます。
次のページを御覧ください。この2.6%という数字の基になっておりますのは、公的分析班でNDBを分析した結果、重症筋無力症の患者さんのうちエクリズマブを治療で使用した患者さん5.6%ということになっておりました。重症筋無力症の患者さんが分母になっております。この重症筋無力症の患者さんを選定するプロセスについて製造販売業者のほうで確認しましたところ、公的分析班の分母の計算におきましては、こちらのオレンジのところにあります条件を加えておりませんので、重症筋無力症の診断がありつつも、1次治療の経口治療、本来であれば実施されるべき経口治療がない患者さんが33.5%残った状態ではないかと考えております。これによって、分母が過大になっているのではないかと懸念しております。
次のページを御覧ください。さらに、その5.6%という数字が、なぜモデルの中で2.6%になったかということを懸念として述べさせていただきます。実際、重症筋無力症の患者さんのうちエクリズマブを使用した患者さんが5.6%であれば、その5.6%が使用されるのが妥当であろうと考えられるのですけれども、実際には計算の中で2.6%に変更されております。
さらに、もう一つ、IVIG/PLEXからBSCに移行する患者さんの割合についても懸念がございます。公的分析班のモデルでは、IVIG/PLEXを使用した後、多くの患者さんがベスト・サポーティブ・ケアに移行するという計算になっております。ベスト・サポーティブ・ケアというものは、ほかの治療を諦めたような、経口治療だけを行うような患者さんになっておりまして、実際はこのBSCに行く患者さんというのはわずかではないかと考えております。
こちらは○○先生にも御相談しましたけれども、IVIG/PLEXを使用するような重度の患者さんは、経口治療だけでコントロールすることは難しい患者さんであると御指摘いただきましたので、そのことからも、BSCに移行する患者さんがこのように多い割合であるということは妥当ではないのではないかと考えております。
次に、③から⑥の意見についての簡単に抜粋させていただいております。
③としましては、ウィフガートの1月当たりの費用の計算の妥当性になります。
公的分析班の計算としましては、1サイクル当たりのウィフガートの治療、掛ける年間のサイクル数が、年間のウィフガートの治療費として発生する必要があるけれども、製造販売業者のほうは、それより低い費用しか発生していないと指摘しております。
それを修正しているのですけれども、この低い費用になっているのは、ウィフガートを中止していなくなった患者さんがいるために低くなっているものですので、公的分析班の計算の中で、それを使用していない患者さんの分も治療している患者さんに負わせるような計算になっております。
また、陰性群の扱いについても違う意見を持っております。
また、それ以外で奏効・非奏効の扱いにつきましても、我々としては違う意見を持っておりまして、太字で示しております。
また、薬剤費以外の医療費の考慮につきましても、御指摘の点については、我々としては意見を持っております。
最後に、製造販売業者の意見のまとめになっております。
最初に、サマリとして少し述べさせていただいたとおり、最も重要な問題は、現在の分析枠組みの比較対照が実態と合っていないところが問題ではないかと考えております。ウィフガートは、3次治療の左のグラフでも再掲してお示しさせていただいておりますとおり、3次治療のIVIG/PLEXの後に使われておりますので、妥当な比較対照は4次治療あるいは3次治療と考えております。
ほかの②から⑥の意見の大部分につきましては、適切な分析枠組みが再設定されればモデル自体が変わりますので、問題にならない部分があるのではないかと考えております。
以上で資料の御説明になります。
○費用対効果評価専門組織委員長
よろしいでしょうか。
それでは、委員の方から御質問はございますでしょうか。
○○委員、お願いします。
○○○委員
御説明ありがとうございました。
4ページ目、一番最後にも掲げていらっしゃるのですけれども、前治療のグラフです。これは割合を示しているようですけれども、その場合全部足したら100を大きく超えるように見えますが、どういうふうに理解したらいいのでしょうか。
○意見陳述者
分かりやすくするように、IVIGとPLEXを合計したものを、さらにグラフの上に同時に載せてしまいましたので、このグラフ上ではIVIGとPLEXの割合がダブルカウントになりますので、それは引いて考えていただきたいと思います。
○○○委員
一番上の赤いのは再掲みたいなもので、橙色から下が割合なわけですね。
○意見陳述者
はい。
○○○委員
ありがとうございました。
○費用対効果評価専門組織委員長
その他の先生、いかがでしょうか。
○○委員、お願いします。
○○○委員
説明ありがとうございます。
今、4ページ目のグラフのお話だったので、この聞き取り調査について追加してお聞かせください。現在、承認条件として、全例を対象とした使用成績調査をされていますが、全例調査の中でも、この聞き取り調査で収集されたもの同じ質問事項は聞かれているのでしょうか。つまり、聞き取り調査は全例調査の一環として情報を得たのか、全例調査とは別に調査をされたのか、いずれでしょうか。
○意見陳述者
○○から回答させていただきます。
そちらのほうは、PMSではなく、別の聞き取り調査から得られた結果となっています。もちろん市販後調査を進めておりますが、まだデータが固定しておりませんので、そちらのほうからのデータは使えないという状況でしたので、あくまでも処方してくださった先生に営業担当者が前の治療は何でしたかという形で聞いて、それでグラフに落とし込んでいるものとなります。
○○○委員
分かりました。承認されて日も浅い状況だということは十分理解していますが、PMDAには安全性定期報告を提出されると思いますが、まだデータは固定されていないから、定期報告もされていないという理解でよろしかったですか。
○意見陳述者
安定報に関しては、まだしていないはずです。確認しなければいけないですけれども、まだ固定されていないし、調査票もそれほど集まっていないと聞いております。
○○○委員
分かりました。では、あくまで今回提出されているものは、市販後の全例調査のデータではなく、別途に実施された調査の結果だという理解でよろしかったですね。
○意見陳述者
おっしゃるとおりです。
○○○委員
ありがとうございます。
○意見陳述者
補足させていただきます。私が先日伺ったところですと、今、アルジェニクス社のほうで把握しているウィフガートを処方されている患者さんが○症例、そのうちの患者さんですので、7割8割は網羅しているのではないかと伺っております。
○費用対効果評価専門組織委員長
その他、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、これで質疑応答を終了いたします。企業の方は御退室ください。お疲れさまでした。
○意見陳述者
ありがとうございました。
(意見陳述者退室)
○費用対効果評価専門組織委員長
それでは、御議論に先立ちまして、企業から公的分析について御意見がございましたので、科学院から、まずは何か御意見ございますでしょうか。
○国立保健医療科学院
国立保健医療科学院です。
企業側の資料に従って、少しコメントさせていただきたいと思うのですけれども、まず、4ページ目、このウィフガートの比較対照技術が適切かどうかということについて、先ほど御説明したとおりですけれども、仮にこの製造販売業者の主張が正しいとしても、このIVIG/PLEXというのが、いわゆる早期速効性治療と反復治療、両方含まれているものだと認識していますので、このデータをもって自動的に経口薬を比較対照とすることは適切ではないというわけではないのではないかという印象を持ったところです。
それから、5ページ目ですけれども、こちらは臨床の先生のほうからもコメントがありましたが、ガイドライン上の治療アルゴリズムについてですけれども、製造販売業者の主張では、最新の診療ガイドラインの治療アルゴリズムにおける分子標的治療薬に、エフガルチギモドが含まれているかのように記載されているわけでありますが、そのような事実は全くなくて、同社のウェブページ上、アルジェニクス社のウェブページ上にも、ウィフガートは分子標的薬に含まれていないということが明記されています。
実際に重症筋無力症治療ガイドライン2022の改定を踏まえ治療戦略というページが存在するのですが、ここにおいて、本アルゴリズムに記載した分子標的治療薬とは、エクリズマブとリツキシマブ(本邦では保険適用外を指している)、2022年5月より日本で使用可能となったエフガルチギモドは、本ガイドラインには記載されていないと明記されておりまして、この表現というのは少しいかがなものかといいますか、かなり誤解を招くような表現なのではないかなと我々としては認識しているところです。
それから、7ページ目、NDBの取扱いについてですけれども、いわゆるレセプト病名、適応外使用の問題については、完全には企業側がおっしゃるように否定し切れないと我々も認識しています。ただし、製造販売業者が一体どのような分析を実施したのかなど、詳細には御説明いただけなかったので、例えばDPCデータを使っていれば、外来の薬局とリンクが外れているので、分母が非常に少なくなったり、いろいろな可能性があると考えています。ですから、そのような過大推計の可能性も含めて、33.5%という数字の妥当性については、現時点では我々としてはちょっと評価できないと考えているところです。
ただし、レセプトを使った先行研究が実施されていて、そこではレセプト病名の可能性がある併存疾患を除外したという研究を行っていて、病名から除外したということですね。その場合、同様の条件においてNDBを分析すると、エクリズマブの使用割合は2年で6.8%という結果になっていて、2割ぐらい上乗せされる可能性はあるのかなと思っております。
ただし、いずれにしましても、その程度の推計誤差では結果に影響を受けないということは明らかでありまして、仮に33.5%の過大推計があったとした場合について、ソリリスの使用割合は8.4%となりますので、ICERというのは約1億8000万円/QALYということで、結果は大きくは変わらないということになるかなと思っております。
それから、8ページ目ですけれども、3次治療を開始する割合については、完全に誤解されているのではないかなと思っておりまして、公的分析としては、新規にIVIG/PLEXを導入した患者が、マルコフモデルにおける健康状態の定義なわけですけれども、この患者を分母に取って使用割合というものを計算していて、5.6%という数値を出しております。この2.6%という数値については、単年度の使用割合ということでありますので、その5.6%と少し乖離があるということになっていますが、間違いではないと思っているところです。
また、先ほど組織側の臨床の先生からも御指摘いただきましたけれども、BSCの治療においてIVIG/PLEXを継続するのではないかという御指摘があったかなと思うのですが、そもそもこのような設定をしてきたのは企業側の設定でありまして、今さらそういうことを言われても少し困ってしまうというところと、仮にBSC症例全例にIVIG/PLEXを投与しても、ICERの値は1億400万円/QALY、約1億円/QALYということで、結果については大きな影響がないものと認識しているところです。
あとは瑣末なところですけれども、少しコメントとして述べられていた9ページ目のウィフガートの1月当たりの費用についてですけれども、使用していない患者を含めて考えるのはおかしいのではないかという指摘がありましたが、ウィフガートが年間○サイクルというのは、全ての患者、つまり使用していない患者も含めて平均○サイクルなので、使用していない患者を含めないとおかしなことになるというのは、明らかかなと考えているところです。
我々としては以上になります。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございました。
1点、私から科学院さんに事前に確認させていただきたいのですけれども、いわゆる企業側と大きく変わっている点は理解できているのですが、その背景としては、関わるコストが随分大きく変わっているようです。そういった意味では、効果というよりはコスト、それも例えばエクリズマブのような割合の議論と理解してよろしいでしょうか。
○国立保健医療科学院
ありがとうございます。
全くそのとおりだと認識しておりまして、年間6000万円以上かかる治療を○割以上の患者が継続して治療するという設定になっていますので、かなり過大な推計をしているのではないかなと認識しているところです。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
それでは、当該品目について御議論をお願いいたします。なお、御議論に当たっては、企業分析結果と公的分析の再分析結果のどちらがより科学的により確からしいかを相対的に評価することを踏まえて御議論を進めていただきますようお願い申し上げます。先生方、いかがでしょうか。
科学院さんのほうでかなり整理していただいているところでありますが、大きな論点としては、従来の分析枠組みを踏まえた比較対照技術の考え方というところです。これは薬事承認との絡みがあるというお話かと思います。
もう一つ、先ほどお話しさせいただいた、モデルの構造と遷移確率をどのように精査しているかというところで、先ほど来、エクリズマブの使用率、総医療費とか医薬品費のところが大きく論点になっているというようなお話なのかなと思っております。加えて、企業さんから今回、使用実態について、MRの方のサーベイであるかもしれませんが、新たな知見が報告されておりますので、その点も考慮した議論していただければと考えております。いかがでしょうか。
事前の先生方の御意見とか、随分議論した経緯を踏まえて整理させていただけると、先生方の御意見としては、恐らく公的分析の再分析結果がより確からしいと御判断されているのかなと思います。一方で、幾つか不確実性についての御指摘もいただいているところでありますが、それについて、この場で何か追加で御質問、御意見があればいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。よろしいですか。
○○先生には幾つかコメントいただいているところでありますが、よろしいですか。
○○○委員
先ほど御説明いただきました公的分析の御説明で、おおむね了解いたしました。
1つだけ、企業の言っていた5番のところで、モデルのスタートは非奏効者であるべきではないかということで、分析の対象は非奏効者なので、モデルのスタートは非奏効者なのかなという、何となく直感的な印象なのですけれども、その点についてはいかがでしょうか。
○費用対効果評価専門組織委員長
科学院さん、いかがでしょうか。
○国立保健医療科学院
要は、あまりコントロールできていない患者さんが対象になられているのに、非奏効の状態からもう一回開始するのはおかしいのではないかという御指摘でしょうか。
○○○委員
分析対象が非奏効なので、モデルのスタートは非奏効にならなくていいのかという疑問です。非奏効以外の奏効が混じっていたりするというのはどうなのかなと、ちょっと思ったのです。
○国立保健医療科学院
そうですね。1次治療でベースで入っているのに、1次治療として奏効が出たり、非奏効が出たりするのはおかしいというような観点かなと思っているのですけれども、正直なところ、我々もそこはおかしいという認識はあるのですけれども、企業側の分析がそのようになっていたもので、そこまで手が回らなかったというか、そこはあまり分析に大きな影響がないところでしたので、そのままの設定で行ってしまったというところで、科学的に妥当かと言われれば、先生おっしゃるようになかなか難しいところがあるのだと思うのですけれども、我々としては、なるべく結果が変わらないところは、企業側のモデルをいじらないようにしようというスタンスで分析させていただいたところで、少しそういう問題が生じてしまったのかなと反省しているところです。
○○○委員
了解しました。
○費用対効果評価専門組織委員長
その他の先生方、いかがでしょうか。
○○委員にちょっとお伺いしたいのですけれども、PMSの御経験もあると思いますが、使用実態というものは今後、オフィシャルなデータとして開示されてくる可能性はあるということでしょうか。
○○○委員
オフィシャルなデータとして開示されるかという点については、各製薬企業の方針に依存するかと思われますが、製造販売後調査の最終報告などは企業から公開されていたりもしますので、多分手に入るような情報になるのではないかと考えます。
○費用対効果評価専門組織委員長
分かりました。
今後、使用実態で新しい情報が上がってきたら、改めて分析する意味もあるということを、先ほど、臨床の専門の先生方からもコメントいただいているところであります。この辺りについては、新しい知見が出た場合の再評価についても、ある程度視野に入れながら議論していただいてもいいのかなと思っておりますが、事務局さんのほうは、その点に関していかがでしょうか。
(事務局より説明)
通知にもございますように、対象品目の指定手続のところに記載がございますけれども、新たな知見が得られたときには再評価という枠組みがございますので、そちらでまた検討いただければと思います。
以上です。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
そうすると、現状のデータで最大限、合理的な議論をさせていただいているなかで、先生方の御意見を事前にいただいたと思うのですが、その他、御意見いかがでしょうか。よろしいですか。
それでは、議決に入らせていただきます。先生方の御意見を参考に、ウィフガートに関する費用対効果評価案については、公的分析案を採用するという形で、ウィフガートに係る総合評価について、公的分析による案を費用対効果評価案として決定するということでよろしいでしょうか。
(首肯する委員あり)
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
それでは、専門組織で決定された総合的評価を費用対効果評価案として中央社会保険医療協議会に報告いたします。なお、企業に対する内示及び中央社会保険医療協議会に提出する資料に関しては、委員長に一任していただくということでよろしいでしょうか。
(首肯する委員あり)
○費用対効果評価専門組織委員長
こちらもありがとうございます。
本日の議題は以上となります。