第1回治療と仕事の両立支援指針作成検討会議事録

労働基準局安全衛生部労働衛生課

日時

令和7年8月22日(金)15:00~

場所

PwCコンサルティング合同会社 会議室(東京都千代田区大手町1-1-3)

議題

(1)治療と仕事の両立支援指針の作成
(2)その他関連する事項について

議事

議事内容
戸高:本日は、お忙しい中、ご参集いただきまして、誠にありがとうございます。定刻になりましたので、ただ今より、治療と仕事の両立支援指針作成検討会を開催いたします。座長選出まで議事進行を担当いたします、事務局の戸高と申します。初めに、安全衛生部長よりごあいさつ申し上げます。
安井:本日は、お忙しい中、ご参集いただきまして、誠にありがとうございます。また、日頃からさまざまな安全衛生行政関係の推進にご理解、ご協力いただきまして、ありがとうございます。
 さて、治療と仕事の両立支援につきましては、ご案内のとおり、平成28年に定められましたガイドラインによって、事業主の自主的な取り組みという形で推進をしてきたわけでございますけれども、本年6月に公布されました改正労働施策総合推進法でございますけれども、こちらで、事業者に対して、治療と仕事の両立支援のための必要な措置を講ずることを努力義務とするとともに、その措置の適切・有効な実施を図るための指針を厚生労働大臣が定めるということが規定されたところでございます。
 新たな指針につきましては、従来あるガイドラインを基礎として、これを指針に格上げするということで考えているところでございますけれども、専門的なご知見から指針の内容にご助言を賜りたく、治療と仕事の両立支援にさまざまなご専門やお立場の方々に、ご参集お願いしたというところでございます。
 本日は、何とぞ、それぞれの観点から忌憚のないご意見をいただきまして、より良い指針となりますようにご協力いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
戸高:報道関係者にお願いいたします。カメラ撮りはここまでとしてください。それでは、本日の出席者をご紹介いたします。構成員の方を資料1の名簿の順にご紹介いたします。お名前をお呼びしましたら、簡単にごあいさつを賜ればと思います。江口尚様。
江口:産業医科大学の江口でございます。よろしくお願いいたします。
戸高:金子善博様。
金子:労働者健康安全機構の金子と申します。よろしくお願いします。
戸高:近藤明美様。
近藤:社会保険労務士の近藤と申します。よろしくお願いいたします。
戸高:砂原和仁様。
砂原:経団連、労災保険ワーキンググループ座長の砂原でございます。よろしくお願いいたします。
戸高:辻本由香様。
辻本:奈良で患者会をしております辻本由香と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
戸高:東敏昭様。
東:産業医大の元学長で、現在は、西日本産業衛生会の東と申します。よろしくお願いいたします。
戸高:増田将史様。
増田:独立開業で産業医をしております増田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
戸高:松岡かおり様。
松岡:日本医師会常任理事の松岡と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
戸高:山脇義光様。
山脇:連合の山脇でございます。ご指導よろしくお願いいたします。
戸高:次に、事務局を紹介します。安井安全衛生部長。
安井:よろしくお願いします。
戸高:佐々木労働衛生課長。
佐々木:よろしくお願いします。
戸高:富賀見メンタルヘルス対策・治療と仕事の両立支援推進室長。
富賀見:いつもお世話になっています。よろしくお願いします。
戸高:お手元の資料を確認させていただきます。机の上に乗っております資料は、まず初めに議事次第、その下に資料1、検討会開催要項、次に資料2、治療と仕事の両立支援指針の検討、資料3、指針案とガイドラインの対照表でございます。資料の不足等はございませんでしょうか。ではまず、検討会開催要項について説明いたします。
富賀見:富賀見でございます。では、開催要綱、手元の資料1について簡単にご紹介させていただきます。治療と仕事の両立支援指針作成検討会の開催要綱です。
 1、目的といたしましては、職場における治療と仕事の両立支援、先ほど部長からもございましたけれども、平成28年2月にガイドラインを公表し、事業主の自主的な取り組みを推進してきたところです。令和7年6月公布されました労働施策総合推進法の改正法、施行は令和8年4月1日となってございますが、これによって、事業主に対して治療と仕事の両立支援のための必要な措置を講ずる努力義務を課すとともに、当該措置の適切・有効な実施を図るため必要な指針「治療と仕事の両立支援指針」、これを定めることとされたところです。
 これを受けまして、今般、有識者からなる検討会を開催し、治療と仕事の両立支援指針の内容について検討を行うこととしております。
 2の検討内容ですが、治療と仕事の両立支援指針の作成、その他関連する事項について、ということになってございます。
 検討会の構成でございますが、本検討会は、厚生労働省労働基準局安全衛生部長が、別紙の構成員の参集を求めて開催することといたします。本検討会には座長を置き、議事を整理することといたします。
 4の検討会の運営ですが、本検討会の会議資料および議事録につきましては、原則として公開するものとする、というようなことで、概略の説明は以上になります。
戸高:次に、座長の選出を行います。開催要項にもございますとおり、座長を置くこととされておりますので、構成員の互選により選出させていただきたいと思います。構成員の方から推薦はございますでしょうか。
江口:東構成員が適当と考えますが、いかがでしょうか。
(他の構成員の賛同)
戸高:ありがとうございます。それでは今後の議事進行につきまして、東座長にお願いいたします。
東:ご指名いただきました東でございます。では、早速ですが、これより議事に入ります。最初に議題の1、治療と仕事の両立支援指針の作成について、事務局からご説明をお願いいたします。
富賀見:富賀見でございます。では、お手元の資料2、治療と仕事の両立支援指針の検討という横書きの資料をご覧いただきたいと思います。1枚おめくりいただきまして、労働施策総合推進法につきまして、本通常国会で無事成立いたしまして公布されましたので、そのご報告となります。
 3ページ目です。改正法の概要になります。多様な労働者が活躍できる就業環境の整備を目的に、全体としてはこのハラスメント対策、女性活躍の推進との一括法として、この概要の3に赤で囲ってございます、治療と仕事の両立支援に関する労働施策総合推進法の改正が行われました。施行期日はこの一番下にございますように、この3の両立支援の関係は、令和8年4月1日ということになってございます。
 次、4ページ目ご覧ください。改正内容の詳細になります。詳細といたしましては、今後も一層増加が見込まれる職場の両立支援のニーズに対応するため、これまでもガイドラインにより促進してまいりましたが、いよいよ本格的に事業主による取り組みを促進していこうというものになります。見直し内容といたしましては、事業主に対し、職場における治療と就業の両立を促進するため必要な措置を講ずる努力義務を課すとともに、当該措置の適切・有効な実施を図るための指針の根拠規定を整備するというふうなことになっております。
 その下の矢印にございますように、現在はガイドラインにより事業主に求めている具体的な取り組みがございますので、これを参考に指針を策定するという位置付けになってございます。
 次、5ページ目ご覧ください。労働施策総合推進法の条文の抜粋になってございます。まず、第4条でございますが、治療と仕事の両立支援は、就業継続を主たる目的といたしまして、この労働施策総合推進法に位置付けられてございます。平成30年に公布された働き方改革関連法により盛り込まれているものでございまして、ただし、この4条はあくまで国の施策としてでございまして、事業主に義務を課すものではございませんでした。
 そして、赤で囲ってございますところが、今回の改正で新設された条文になってございます。第8章といたしまして、両立支援に関する独立した新たな章が設けられました。条文については第28条の3となります。第1項は、事業主に対し、両立支援のための必要な措置を講ずる努力義務を課す条文、第2項は、今般、厚生労働大臣が新たに策定し公表する両立支援指針の根拠規定となってございます。
 第3項は、この指針は労働安全衛生法に規定する指針、いわゆる労働者の健康保持増進の措置や対策を示す指針になりますが、これとの調和規定となってございます。治療と仕事の両立支援のための取り組みが、こうした労働者の健康保持増進の取り組みと矛盾しないものとすることや、両者の取り組みを一体的に実施することも考えられるといった趣旨になってございます。
 第4項ですが、厚生労働大臣は今般策定する指針に基づきまして、事業主に対して必要な指導等を行うことができるようになるということでございます。この法の別途の条文になるのですが、厚生労働大臣の権限は都道府県労働局長に委任することができることとなってございまして、これは監督署長でなく労働局長になるのですが、別途、省令改正によって、この厚生労働大臣の権限の委任を行う予定になってございます。
 最後、6ページ目です。これは、衆議院と参議院の厚生労働委員会でそれぞれ附帯決議をいただいておりますその内容でございます。附帯決議の内容は、この両立支援の関係は衆参同じになってございますけれども、一般に附帯決議は委員会で実際に行われた審議内容などを踏まえまして、改正法の円滑な施行に向けて、こういった内容も検討すべきといった、いわば宿題になってございます。
 参議院のほうでご覧いただくと、14番をご覧いただきますと、治療と仕事の両立支援を推進するために、この新たに公表する指針につきましては、「その周知に努めるとともに」の後に、まず一点目として、「守秘義務に留意した上で、産業医と主治医の間における効果的な情報交換の在り方」、および、もう一点目として、「病気休職中の労働者からの相談窓口を明確にする等の職場復帰に向けた支援の在り方を検討すること」とされてございまして、これからの指針の作成において意識していくべき点となってございます。
 続きまして、8ページ以降が指針の策定についてということになります。8ページ目、まず指針の策定の背景ですが、これは、本日これまでの説明をまとめたようなものになりますので、繰り返しになりますがちょっとお聞きいただきますと、まず、現行のガイドラインですけれども、これは法的根拠がない中で、事業主における取り組み、これは両立支援のための環境整備であるとか、個別の労働者の支援の進め方というふうに、具体的に事業場における取り組みをまとめまして、事業主に公表し、事業主にその取り組みを促してきたということです。
 今般、この改正労働施策総合推進法によりまして、事業主に対して両立支援の取り組みについて努力義務を課すとともに、その適切な実施を図るための指針の根拠規定が整備されたということで、その施行期日は令和8年4月1日となってございますので、それまでにこの指針を整備していくということになります。
 指針の検討に当たっての、附帯決議を踏まえた留意事項といたしまして、先ほど申し上げました2点、1つは産業医と主治医の間における効果的な情報交換の在り方、もう一点が、病気休職中の労働者からの相談窓口を明確にする等の職場復帰に向けた支援の在り方というのがございました。
 次、9ページ目をご覧いただきますと、それらを踏まえての指針の策定に向けた考え方ということになります。1つ目の丸にございますように、まずステータスといたしましては、この法的根拠のない現行のガイドライン、それを法律に基づく指針、大臣告示に格上げをするということです。これに基づきますと、指針策定に当たっての作業方針といたしましては、現行のガイドラインを参考に、本文部分を基本的に引用する。下の図を見ていただきますと、右側が現行のガイドラインの構成になってございますけれども、本文の部分につきましては、冒頭に現状といいますか参考データ的な部分がございますけれども、そういったものを除いて基本的に引用する格好になります。
 また、この現行のガイドラインは、様式例、支援制度・支援機関、主要な疾病別の留意事項といった、適宜見直し、更新を行っていくような内容が「参考資料」という位置付けとなってございます。なので、これら参考資料の部分につきましては、指針の中に委任規定を設けつつ、労働基準局長通達、この指針を世の中に出していく際、施行通達のようなものがまたございますが、そういった労働基準局長通達においてこの参考資料の部分は示していくということにしていきたいと考えてございます。
 それらを踏まえまして、次、10ページ目をご覧いただきたいと思いますが、指針の本文部分の骨子案となってございます。先ほども申し上げました、基本的にガイドラインを引用するということでございまして、あとは、特に附帯決議の2点に留意し、しっかり反映していくという構成になってございます。大きな方針としてはこういう方針で作成していきたいと考えております。
 本日の資料、12ページ以降は、関係する各種データです。これまでこの検討に当たって、労働政策審議会などで出してきたようなデータになりますので、適宜、この議論においてもご参照いただければと思います。
 1点だけ、28ページにこれまでお示ししていなかったものとして触れておきますと、両立支援の診療報酬の算定件数のデータになります。2018年に両立支援に関する診療報酬が新しく設けられ、それ以降の年々の算定件数のデータになります。以降、2020年、2022年と診療報酬の改定がございましたが、こういった改定ごとに算定件数も広がりを見せ、緩やかですけれど増加しながら推移してきているといったデータになります。新しい資料はこれぐらいですので、他の資料と併せてまたご参照いただければと思います。資料2の説明は以上になります。
 続けて資料3をご覧いただきたいと思います。よろしいでしょうか。
 指針案とガイドラインの対照表ということで、作業に当たってこれを基に見ていただきながら、ご議論のほう進めていきたいと思います。なお、この対照表の見方といたしまして、まず、左側に下線がひかれている部分、現行のガイドラインにないものの新たな追記した部分、右側の現行ガイドラインのところでグレーの網掛けになってございますところは、引用をしないことを考えている部分ということです。
 また、ところどころ右側に括弧書きが出てまいります。例えば3ページ目などに、現行のガイドラインの右側に括弧書きが出てくるものがございますけれども、これは左側と右側を対照して見ていただく時に、対応するガイドラインの箇所には記載がないのですが、後段の箇所に登場する記載などで、その場所を移して書いているような部分につきまして、再掲という形で持ってきている部分になります。そういったこの対照表のルールに沿って見ていただければと思います。
 あとは、初めに申し上げますと、全体にわたって各所にこまごまと、今回新たに指針として法令になりますので、これまでガイドラインでおおらかに使っていた表現を、法令用語への修正などを行っておりまして、下線を引いてあるところがございますけれども、基本的に内容は変更ございません。これから説明するのは主な変更があった部分等に絞ってご説明したいと思います。
 1ページ目でございます。冒頭に下線が引かれた部分がございますが、今回の指針は厚生労働大臣の告示になりますので、告示の場合の定型の前文が付いているということになります。その下から本題に入っていくのですが、まず1が、この治療と仕事の両立支援の趣旨を書いた部分になってございます。右側のガイドラインでは、最初のほうに参考データ的な部分がございました。グレーの網掛けになってございますけれども、その辺、随時更新が必要になるような内容というのは、今回の指針、大臣告示のほうには用いず、この1の趣旨のところは、普遍的な両立支援の趣旨を大所高所から記載するといったような内容、構成にしてございます。
 2ページ目にわたってこの1が続くのですが、2ページ目は、この労働者の健康確保や就業継続というような両立支援の意義とともに、人材の確保・定着や生産性の向上などの事業主にとっての意義、さらには、社会全体にとっての意義といったところを、若干手厚く記載してございます。
 そのまま1は3ページにわたって続いてございますが、3ページ目でいいますと2つ目のパラグラフのところですけれども、「本指針は主に」のところです。全体でまた出てまいりますけれども、この「産業医等」というのは、産業医または産業医の選任義務のない労働者数50人未満の事業場で努力義務となってございます健康管理を行わせる医師をひっくるめて「産業医等」というふうに、ここで初めて出てまいりますので定義している部分になります。
 その下の3パラ目ですけれども、本指針が対象とする疾病を定義してございます。国際疾病分類、ICD分類といわれるものに掲げられている疾病であって、「医師、主治医の診断により、増悪の防止等のため反復・継続して治療が必要と判断され、かつ、就業の継続に配慮が必要なものとする」としてございます。ガイドラインと表現ぶりは変わっておりますが、これまでの運用と全く変わるものではございません。
 1の最後に、先ほど資料2のほうでご説明させていただきました、現行のガイドラインの参考資料の部分は、指針中に委任規定を設けて、労働基準局長通達によって示していくこととするとご説明しましたが、その委任規定の部分になってございます。
 その下からは、2の「基本的考え方」に入っていきます。4ページにこの2が続くのですが、この2の最後の部分、「従って」のところ、下線がございます。ここも先ほど資料2のほうでご説明しました、新条文の第3項に、労働安全衛生法に規定する指針、労働者の健康保持増進の措置や対策を示す指針でございますが、それとの調和規定というのがございましたが、その部分を指針の中で受ける記載になってございます。
 次、5ページ目から3として、両立支援を行うに当たっての横断的な留意事項のパートに入ってまいります。記載内容は右側の現行のガイドラインと基本的に変更はないのですが、このページで見ていただくと、1点だけ、「(4)措置等の検討と実施」というところが追加になってございます。この観点は、附帯決議にはなってございませんでしたが今回の法案審議においても、労働者に不利益が生じないような対応というようなことで指摘をいただいていた点になります。
 ここで、「治療と仕事の両立支援を申し出た労働者への対応の検討に当たり」ということでございますけれども、基本的にはこの検討に当たっては、労働者および使用者は、労働契約の下での双方の立場を理解しながら合理的に融通を付けていくという作業になると思うのですが、その過程で判断が一方的になってしまわないようにということで、この「就業継続の希望や配慮の要望を聴取し、十分な話し合い等を通じて本人の了解を得られるよう努めること」という内容をはじめとしまして、これらの記載は現在のガイドラインにも、右側括弧書きになってございますから、後段で元々記載がございます内容になりますけれども、この横断的な留意事項の3のところに、新たに特記することとするものになってございます。
 この(4)のところの6ページ目にわたって続きまして、3つ目の・のところですけれども、下線が引いてございます。この「疾病および治療に対する誤解や偏見等」、いわゆるスティグマといったようなものが両立支援の申し出を躊躇させたり、職場での無理解につながるといったことがございますので、そういったことが生じないように必要な配慮を行う旨の記載、こういった記載も追加してございます。
 その他は、この横断的留意事項のところは見ていただくと分かりますが、その他は現行のガイドラインからの変更なく、そのまま引用しているところです。
 次、8ページまでちょっと飛んでいただいて、8ページからが、次のパートである4の両立支援を行うための環境整備のところに入ってまいります。
 ここも一見いただくと、記載内容は基本的に右側のガイドラインの記載と変更はないのですが、9ページも全く変更なく進みまして10ページ目ですね。10ページ目に(5)として下線がございまして、事業場内外の連携というところが追加になってございます。ここは右側見ていただくと、記載内容自体は現行のガイドラインにも、元々後段に記載のある内容にはなるのですが、それに加えて「都道府県労働局」というところ下線ございますが、ここも先ほどご説明させていただきましたが、今回の法改正によって指導・援助等を行うことができることとなった都道府県労働局ですね。これから厚生労働大臣からの権限委任の手続きをしますけれども、都道府県労働局、ここが事業場にとっての相談等の連携先となってまいりますので、そういった内容のほうを踏まえて追記してある部分になります。
 次の11ページからが、次のパート5の個別の両立支援の進め方に入ってございます。ここも記載内容は基本的にガイドラインとは変わりはないのですが、12ページ目をご覧いただきますと、(1)のところです。(1)はどういった内容のところかといいますと、主治医に勤務情報を提供して、主治医から意見書の提供を受けるという主治医との情報交換の部分になりますけれども、まず、この(1)の見出し部分に括弧書きで、「必要に応じて厚生労働省労働基準局長が定める様式例を活用」ということで、労働基準局長通達に委任して今後はお示しすることとなるガイドラインの様式例、主治医との情報交換に用いる勤務情報提供書、主治医意見書、または両立支援カードといった様式例の活用につなげるべく、この括弧書きのところを設けてございます。
 次に、この(1)の本文部分になりますけれども、下段のほうですが、主治医との情報交換における産業医等の役割について記載した部分が出てまいりますが、ここで1つ目の附帯決議の反映がございます。附帯決議の1点目は、守秘義務に留意した上で、産業医と主治医の間における効果的な情報交換の在り方というふうにあったと思いますが、その部分になります。
 このガイドラインには元々、この産業医の関与につきましては、右側の元々の文章を見ていただきますと、主治医に勤務情報を提供する際の作成支援ですとか、13ページにまたがっていきますけれども、主治医から提供された情報が両立支援の観点から十分でない場合に産業医が直接情報収集をすることなど、十分に記載がなされていたところではございますけれども、附帯決議も踏まえまして、これらに加えて今回、この12ページの一番下のこの下線部分、また書きのところですけれども、「主治医の意見を求める際には、機微な健康情報を取り扱うこととなることから、産業医等がいる場合には産業医等を通じて情報のやりとりを行うことが望ましい」と、この文章はガイドラインの補足資料である「企業・医療機関連携マニュアル」、ご存じの方もいらっしゃると思いますがピンクのガイドラインとセットで水色のマニュアルですね。
 あちらに元々ある記載内容になりますが、それを指針のほうに引き上げて追記するといった格好になってございます。こういったことで、附帯決議も踏まえ記載内容を、元々充実してございましたが、さらに充実していくということとしてございます。これが1点目。
 次、15ページまで飛んでいただきまして、15ページの一番下に、(5)のイとして、「休業期間中のフォローアップ」という部分がございます。もう一つの附帯決議の内容を思い返していただきますと、「病気休職中の労働者からの相談窓口を明確にするなどの職場復帰に向けた支援の在り方」というのがございましたが、それに対応する休業期間中のフォローアップといった内容を、右側の現行のガイドラインにも、元々十分に記載はされていたものになりますけれども、右側のグレーの網掛けのところを見ていただくと、現行では「相談できる場を設けたり」といったふわっとした表現になってございましたので、今回の附帯決議を踏まえますと、左側の「相談や情報提供ができる窓口を設置し、明確化する」といったように、この部分、よりはっきりとした打ち出しに見直しを行っているというふうな部分になります。これが附帯決議の2つ目の反映になります。
 それ以外は、基本的に現行のガイドラインを引用しているということで、構成してございます。
 駆け足になりましたけれども、指針案とガイドラインの対照表についてご説明は以上になります。
東:大部な全般を要約して、ご説明いただきました。ただ今のご説明につきまして、多岐にわたっておりますけれども、ご意見、ご質問があればお願いします。まず、ご質問のほうは何かありますか。特に委員の先生方、よろしいですか。
増田:はい。
東:ご質問ということで。
増田:ご説明ありがとうございました。資料の2の10ページ目、指針骨子案の「5 両立支援の進め方」の項目で、記載内容に「以下追記」とありまして、2つ目の黒丸に「職場復帰に向けた支援の在り方」とあるのですが、これは職場復帰支援で合っているのでしょうか。両立支援ではないのかなと思ったのですけれども。
富賀見:ここは、附帯決議の内容が「病気休職中の労働者からの相談窓口を明確にするなどの職場復帰に向けた支援の在り方」となっておりまして、それを引用しているもので、このように「職場復帰に向けた支援の在り方」とさせていただいていますけれども、先ほどご説明させていただきました両立支援における、病気休業期間中のフォローアップというところで、職場復帰に向けてその間の相談窓口であったり、活用可能な社内制度の情報提供といった部分での受けを想定して、ここは附帯決議どおり「職場復帰に向けた支援の在り方」と書かせていただいているというところです。
増田:ありがとうございます。細かい点なのですが、私は職場復帰と書かれていますと、職場復帰支援の手引きというのがあると思うのですが、あちらのほうをどうしてもイメージしてしまいまして、両立支援、それも含めた内容をここに盛り込むということになりますでしょうか。
富賀見:はい。
増田:承知いたしました。ありがとうございます。
東:江口先生が中心となってまとめられたメンタルヘルスのマニュアルのほうも、職場復帰の内容が大きく書かれた形になっていますね。
江口:はい。
東:職場復帰支援と両立支援には、この境界がないというふうになるかもしれません。連続性の高いものだと思います。他に、ご質問はありますでしょうか。それでは、ご意見をいただきたいと思います。
松岡:じゃあ、よろしいですか。
東:はい、どうぞ。松岡さん、お願いします。
松岡:この中身的なことでよろしいということですよね。
東:はい。
松岡:日本医師会の松岡と申します。まず今回、附帯決議に入りました産業医と主治医の効果的な情報交換の在り方ということで、今回、強く指針の中に含めるお話になっていると思います。指針の新旧対照表の12ページのところで具体的にどのように記載を修正したかご説明いただいたところでございますが、ここをより慎重に検討をお願いしたいです。
 皆さまご存じのように、産業医は健康診断情報等の結果はございますが、疾病等の状況については、本人の申告によってでしか詳しいことが把握できない。一方、主治医につきましては、通常は労働者ではなく患者として診ている状況でございますので、疾病や障害について評価して治療計画は立てていますが、産業保健、労働衛生に関する情報は、患者様本人に聞かなければ把握するのが困難な状況がございます。
 そういった中で、お互いの情報交換を円滑に実施するためということで両立支援カードや様式例等を参考情報として作られている状況でありますが、紙面だけでは把握しづらいこともたくさんあると思いますので具体的な情報をもう少しやりとりできることや2人の医師がいると、どちらの意見をどのように聞くのか判断を迷うという問題もあると思います。
 また個人情報の取り扱い、そして、両立支援の責任の所在、例えば主治医が言ったことに従うのか、産業医が言ったからどうなるとか、2人の先生の意見がある中でどのように事業者が判断していくのか。その企業に産業医がいればいいですけれども、今回の議論の対象者は全労働者ということになっていると思いますので、主治医の意見をどのように反映していくのかも課題となると思います。
 そして、繰り返しになりますが主治医は通常は産業保健のスキルを学んだ方ではない方が多いので労働衛生や労働環境のことは、把握しづらい。どれが最適かは難しい判断だと思いますので、ここの辺りは少し丁寧に、どういうふうな形にするのか、具体的な様式も含めて、主治医の責任の在り方も含めて、考えていただきたいなと思っています。
東:どなたか、これに関してご意見をいただけますか。はい、それでは、佐々木課長お願いします。
佐々木:はい、ありがとうございます。労働衛生課長佐々木でございます。松岡構成員からいただきましたご指摘ですね。既に例えばメンタルヘルスについては、主治医向け支援マニュアルという形で昨年度末作成していまして、まさに産業医を中心とした企業側と主治医との連携のありようについてお示ししているというのはございます。その他の疾病についても、これまで、企業・医療機関連携マニュアルの中でお示ししている部分がございますが、こういったものをブラッシュアップしながら、まずは迷いなく対応いただけるような形、何かしら運用の中でお示しできたらと思っております。
 また、併せまして、だいぶ気になさっていらっしゃった部分としまして、主治医の責任範囲はどこまでという問題があると思います。今回の治療と仕事、就業の両立支援につきましては、一義的には事業主側に努力義務を課すという形の中で、主治医がどうしてもどこまでその意見を言える、どこまでその責任を持てるかといったところは、おのずから限界があると思いますので、そういったものを分かるような形のもの、例えば、現行、両立支援カードなどでお示ししてございますけれど、そこにも少し注意書きを加えたとか、まだ具体的なイメージはございませんが、何かしらの記載をして、円滑な連携に資するような工夫をしたいと思っています。
東:追加の意見ですか。はい、松岡先生。
松岡:ご検討ありがとうございます。マニュアルを作っていただいて本当にありがたいと思うのですけれども、それをいかに周知して、いかに実際に使っていただけるかどうかという点はとても問題だと思いますの。患者さんから治療と両立支援に関する相談を突然された場合、多分、外来で聞いても混乱する方は多いというふうに思いますので、その辺りをよろしくお願いをいたします。
 すいません。あともう一点いいですか。
東:はい。
松岡:両立支援の様式とかカードが一部、診断書という形でも使える形になっており、医療機関の診断書が出てしまうと、やはりその事業所にとって効力や責任の重大さが上がる状況だと思いますので、その辺りも併せてお考えいただければと思います。
東:はい、それでは佐々木課長、お願いします。
佐々木:はい、ありがとうございます。ただ今のご指摘を踏まえまして、併せて様式の在り方についても検討したいと思います。
東:最終決定者は事業主ですね。主治医の責任については、主治医には権限はありませんし、また産業医が決めることでもないかもしれません。ただ、産業医に優位性があるかどうかについては、最近、判例になってしまったと思います。最高裁判決の中で、主治医の意見よりも産業医が薦めた、復職できないとしたことについては、不当なものとして、基本的に棄却されたことがあります。この辺は安衛法の仕組みですが、基本的には事業主がさまざまな要件を聞き入れた上で、また、企業の発展とか生産性の向上とか考えた上で最終判断を下すもので、ここの責任の帰属が主治医あるいは産業医にそのまま直結するものではないとの認識で間違いないでしょうか。
 ただ、実際にどうやるかについては、先ほど佐々木課長のお話にあったように、これからこの法の中とか形ではなくて、マニュアルとか他の付帯のものを整理していく段階で形になるものと思います。内容はおそらく相当多様なものになると思いますが。少しコメントさせていただきました。
松岡:ありがとうございます。
東:他に委員の先生方のご意見をいただければと思いますが、どうぞ。江口委員。
江口:ありがとうございます。今の松岡構成員のこととも僕も同じ意識を持っていまして、この文言の中で主治医側に、あくまでもこれは今までの議論としてさまざまな研究の中ではメンタルヘルスの部分でこういったマニュアルを作る時にも、特に産業保健職がいない事業場に勤務する労働者への対応については、ある程度主治医の先生にどうしても産業医的な役割をフォローいただかざるを得ないとか、産業医が相手側にいない場合にはそういったところも、何か運用上のところっていうのが結構いろいろ出てくるのかなと思うのですが。
 この指針については、これを出した後に、ある種何かもう少し細かい点とか、運用的なものはまた何か文書化されたものというのは出るものなのですか。あくまでもこれは、この指針を事業者が見て、あとは事業者の判断で進めていくという感じなのでしょうか。
東:室長、お願いします。
富賀見:現行のガイドラインに関しても、いろいろなこれをサポートするマニュアルであるとか、年々整備しているものがございます。そういった形で、また指針に関しても、今回ガイドラインは指針に格上げしますが、法令では表現しにくい実態の話といったものも少し柔軟な形での示し方もございますし、今回この場で議論があった内容も、そういったマニュアルであるとか様式であるとか、いろいろなものを駆使しながら反映していきたいと思います。また、大事な点については、ここの指針を世の中に出す時に通達でまたお示しすることになりますが、そういった中にもこの指針の読み方とか解説とか、ポイントみたいなのものを添えてというような対応もできます。指針の運用については、いろいろなものを駆使しながら将来的に整備していけたらと思います。
江口:ありがとうございます。さきほど松岡先生のほうからもありましたとおりで、われわれのコミュニケーションを取らせていただく主治医の先生方からのご心配というところは結構あるかと思っていますので、その点がクリアになるように、われわれ産業保健サイドからすると、主治医の先生方とうまくコミュニケーションを取って、ご本人のためにと思う時に、主治医の先生方が不安に思われてかなり引き気味に対応されてしまうと、ご本人の不利益にもなってくるというところがあります。
 そのためにも背景として、主治医の先生方が例えば先方に産業医がいない場合、安心して対応ができるような、そういったところはここの部分ですね。なんか附帯決議の3行なのですけれど結構重要なところかなと思っておりまして、改めて追加といいますか、コメントをさせていただいたところでございました。
 そして、今の議論を踏まえてなのですが、この前段のところですが、改めて拝見しますと、ここは労働者は産業保健総合支援センターとかに相談をして支援を、労働者が、また、労働者は主治医からうんぬんというところは支援を受けるということなのですが、ここには、ここのニュアンスは、事業者も産業保健総合支援センターに相談をしてというところは、どこかにあるのでしたっけ。
 今のお話でいくと、例えば、やはり事業者側に産業医がいない場合、そうした場合に例えば産業保健総合支援センターに産業保健相談員として産業医もいて、あと、地さんぽの登録産業医にその役割があったかは、ちょっと今、定かではないのですが、そういう産業医というのがいわゆる社会的資源としているところが何カ所かあるので、そういうところに事業者が相談できるっていったようなことなども盛り込めると少しいいのかな。盛り込めるというか、そういったところもどこかにニュアンスとしてあればいいのかなというふうに思ったところがありました。いかがですか。
富賀見:今ご指摘いただいた点は、10ページの、共通した留意事項のところに、今回新しく追加した「(5)事業場内外の連携」のパートございまして、これ、事業主……
江口:そういうことですね。
富賀見:ええ。事業主がこういったいろいろな外部資源と連携したり、相談に乗ってもらったりできるというようなことで……
江口:ということですね。
富賀見:はい。お示ししています。
江口:分かりました。ありがとうございます。あと、すいません、最後、これちょっと行政用語でよく存じ上げないところで、都道府県労働局長が「指導、援助等」の、この指導というのは、一体どういうニュアンスになるのですか。例えば両立支援がやられていない事業者がいたら、もっとしろよというそういう指導なのか、その辺の指導の意味はどのくらいの重さだったりするのかなと思うのですね。
富賀見:監督署での指導だと、そういう今おっしゃったようなイメージかもしれませんが、今回、労働局の健康主務課での取扱いになりますので、周知、啓発、相談対応といった……
江口:そういうニュアンスですか。
富賀見:といった対応が基本になると思います。
江口:承知しました。ありがとうございます。
東:余分な事ですが、産業保健総合支援センターは、元々事業主さんも含めた企業からの相談をあまねく受け付けるので、この事だけに特化することはなく、こうした相談を受ける機能を持っていたと思います。地さんぽとは、違った役割と思います。江口委員から今あった後段のほうのお話で、経団連から何かありませんか。
砂原:ご説明ありがとうございました。いろいろな議論を聞かせていただきながらイメージを膨らませておりますけれども、事業主としてどのような形で主治医と連携を取っていくのかということについては、よく考えないといけないなと思いながらお話を聞いておりました。特に産業医のいない事業所における連携の取り方が非常に難しい。松岡委員からのお話も含めて感じたところでございまして、そこをどのようにつくっていくかが一つ課題かなと思いながら聞いておりました。
 両立支援自体が元々、本人の申し出がスタートですので、主治医にも事業主側にも話をしていただき、連携をどうつくるのがその事業所においては一番いいのかみんなで一緒に考える、知恵を絞る形にうまくもっていけるといいのかなと思いながら、話をお聞きしていたという感じでよろしいでしょうか。
東:現状で働いている方のほうから何かご相談がある、または今後のプロセスについてどうしたらいいかということについて、その流れが繋がる窓口機能も考えられます。会社が対応することではなかなか難しいような場合に関して、連合さんのほうから何かご希望はございますか。
山脇:はい。ありがとうございます。今回の指針策定の基本的な考え方から述べさせていただきたいと思います。資料8ページにあるとおり、今回は法改正があったため、現行のガイドラインを法定上の指針に格上げするということですので、労働者保護の観点から、少なくとも現行のガイドラインよりも内容が後退することがないように、現行のガイドラインの内容を適切に反映することが重要だと思っています。この部分に関しては一定反映がなされているかと受け止めています。
 それに加えて、附帯決議は立法府の意思として示されたものでありますので、しっかり指針に反映していくことが重要と思っていますが、今回示されたものはミニマムの反映だと私は受け止めています。
例えば、病気休職中の労働者からの相談窓口明確化です。
 これは確かに附帯決議に記載があるのですが、職場復帰に向けた支援の在り方に関してはこれ以上の深掘りはされていないと思います。
そこで、事務局に対する質問となりますが、少し検討していただいた上で、このガイドラインに追加的に反映するつもりなのか、あるいは、現時点では、今回書いてあるものでいっぱいだということなのか。私自身は留意事項に書かれていることが今回全て反映されているとは受け止めていないので、その辺のニュアンスを教えていただきたいと思います。
 2点目ですが、先ほど一定、反映されていると受け止めていると申し上げましたが、資料の6ページの進め方で、着色掛けていただいているところについて、現行ガイドラインでは「できるだけ」という表現になっていて、新たな指針では「可能な限り」になっています。私の理解では、できる範囲でやるという「できるだけ」よりも、「可能な限り」やっていただくことがより広いように思いますので、この表現でいいのではないかと思っていますが、そういう趣旨で受け止めていいかについてもお聞きしたいと思います。
東:はい。いかがでしょうか。
富賀見:1点目の附帯決議の対応のところですが、ミニマムと言われると、確かに追加はミニマムかなと思いましたが、元々われわれとしてはここの部分、現行のガイドラインにおいて十分に、全体のバランスとしてもここの部分はしっかりと書かれているという認識ですので、この指針への反映は、今回附帯決議の趣旨を踏まえてより明確に、力強く書き加えたというところでいいのかなと考えております。
 さらには、より具体的な職場復帰支援の在り方というのをいろいろ調査して、実態も確認して、また、いろいろな示し方もあるのかもしれませんので、そういったものはまた別トラックでも議論もして、柔軟な形でいろいろお示ししていけたらいいのかなと、山脇構成員のお話を聞いて、そういったイメージで考えております。
指針は、なので、この形で十分なのかなと思っておりますが、また、それは構成員の方にもご意見を、ご感想も聞きたいと思っております。
 もう一つ、先ほどの「可能な限り」のところですが、ガイドラインでは「できるだけ」という表現を使っておりましたが、指針は大臣告示、法令になりますので、これも法令上の表記への修正ということで、意味は変わらないということで「できるだけ」は「可能な限り」に置き換わっているということです。基本的に法令上は全く意味とか水準の変わらない置き換えでございます。
東:どうぞ。
山脇:ありがとうございます。附帯決議の内容は今答えを出せというよりは、今後の効果的な情報交換とか職場復帰に向けた支援の在り方を検討しろというものなので、今回の指針にすべて反映してもらいたいとまでは申し上げませんが、先ほどの室長の回答を受けるのであれば、引き続き少なくとも安全衛生分科会などの場で、議論すべき内容だろうと思いますので、一度そのように受け止め、今後の検討につなげていただきたいと思います。
 ただ、前段の産業医と主治医の間の効果的な情報交換の在り方に関しては、まさに先ほど松岡委員、江口委員からあったとおり、やはりこの産業医の方と主治医の方が連携をしていただかないと、労働者にとって、より良い結果につながりませんので、その趣旨が十分生かされるような形で、文章上の表現を見直していただきたいと思います。
 あと、6ページの「できるだけ」と「可能な限り」は扱いが同じということでしたけれど、少なくとも「だけ」と「限り」では、やはり可能な限りのほうが私は広い意味だと受け止めているということは申し上げておきたいと思います。以上です。
東:それでは、砂原委員どうぞ。
砂原:この中で議論をするつもりは全くないのですけれども、今回の趣旨はガイドラインを指針に格上げするということですので、流れとしては基本同じレベルのものが出来上がるという認識をわれわれは持っています。その上で、両立支援が必要な従業員が安心してスムーズに治療と仕事を両立できる、そのような日常となるものに仕上げていくことが一番大切なので、そのような観点で議論を進めていけるといいかなと感じましたので、一言申し上げます。以上です。
東:ありがとうございます。増田委員、どうぞ。
増田:増田でございます。今回の指針策定に際して、ご議論、ご確認いただけたらと思っている点を申し上げさせていただければと思います。1点目は既存の法令との整合性についてになります。現在、広くガイドラインで推奨されている治療と仕事の両立支援、これを労働契約という切り口で見てみますと、その中身としましては、労働契約という民事上の契約に沿って労働者が果たすべき労務提供を、私傷病という労働者側の事情により部分的に免除するものということになろうかと思います。この点につきまして、既存の他の労働法に抵触する点があるのではないかと感じております。
 労働契約法の第3条第5項に、「労働者および使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならない」という条文があります。労働者からの申し出による両立支援、即ち労務提供の免除は、この条文に抵触しないようにすべきという点、明確化が必要と思っています。
 もう少しかみ砕いて申し上げますと、同じ労働契約法第3条第1項におきまして、「労働契約は、労働者および使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、または変更すべきものとする」とあります。このように「労使対等の合意」という前提で労働契約が成立しているはずなのですが、今回の両立支援の努力義務化は、その労使の合意という前提を若干強制的に崩すという側面もあろうかと思いますので、その辺りも整合性が取れる内容にする必要があると考えております。
 このように申し上げますと、同じ労働契約法第5条に、「使用者は労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」という条文があるじゃないかという反論が聞こえてきそうですが、その第5条で示されているのはあくまでも配慮になります。既存の労働契約はそのまま継続という前提の下、一時的に配慮をして、それと同時並行で病気の治療等を行って、もとの労働契約に沿った労務提供可能な体調に戻っていただくというのを想定しているかと思います。
 一方、労働契約法の第3条第3項には、「労働契約は、労働者および使用者が仕事と生活の調和にも配慮しつつ締結し、または変更すべきものとする」とあります。ここにあります仕事と生活の調和にも配慮というのが、両立支援の趣旨にも合致していると考えますが、この第3条第3項に定めのあるこの「仕事と生活の調和への配慮」、即ち両立支援につきましては、この第5条と違って労働契約の新規締結もしくは変更を想定しています。
 しかしながらこれまでの両立支援のガイドラインでは、労働契約に基づく労務提供の部分的な免除、すなわち、変更レベルに相当する場合であっても、その変更の必要性や具体的な手続きについてまでは触れられておりません。その点が、両立支援がなかなか普及しない理由の一つになっているのではないかと、産業保健の現場にいる者として常日頃感じておりますし、過去の両立支援の実態調査の結果などにも表れているところだと思います。
 会社としましては、まずは既存の休職制度を利用してしっかり療養してもらって、また元の仕事に戻っていただきたいと思うのが一般的なはずです。これは先ほど申し上げた労働契約法第3条第1項の趣旨にも合致した対応と言えます。労使が対等の立場で合意した労働契約である以上、労働契約の中断は認めるとしても、変更を会社側から促すところはなかなか踏み込めないということです。これは、両立支援が労働者からの申し出が前提になっていることからも明らかだと思います。
 あと、実務上の課題としましては、人件費、給与が懸案事項になっているように感じます。例えば本来100の仕事をしていただく想定で給料を支払っているところ、半分、50の仕事で勘弁してくださいという話ですと、ノーワーク・ノーペイの原則に基づいて、それでは給料半分になりますよと、そういった対応ができればいいのかもしれませんが、相手は病気なわけですのでそのような話はしづらいですし、また、これまでのガイドラインにも記載されていなくてよりどころがないというのが、両立支援の普及を阻害している面もあるように感じます。
 私傷病を患っている人は、元の労務提供ができなくても賃金据え置きにできれば理想的だと思いますが、そうなりますと、通常どおり働いている他の労働者の負担や不平不満は無視できませんし、同一労働同一賃金という観点からも齟齬が生じることになります。
 従いまして、両立支援の導入により、元々の労働契約に沿った労務提供ができない場合の対応について、私はこの労働契約法の諸規定と矛盾していると思いますので、具体的な変更手続き等について指針で示すことができればいいのではないかと感じております。両立支援の実施に際しましては、まずは、労働契約法第5条の就業配慮の範囲内で対応するのを原則とし、それで対応困難な場合については、第3条第3項で出てくる労働契約の変更で対応する、その変更に際しては第3条第5項にありますように、濫用にならないように留意する、といった具合です。
 就業配慮で対応困難な場合の具体例としましては、例えば、出社日数が常に8割を下回るとか、労働契約で想定される労務提供レベルを大幅に下回る場合、労働契約変更の際の濫用に該当する場合の具体例としましては、会社が主治医や産業医の見解を一切考慮しない、労働者が会社による主治医、産業医への意見聴取を拒否した場合、といった内容がすぐ思い付くのですが、そのような具体例について指針で考え方が示すことができればいいのではないかと思っております。
 そのように、ガイドラインでこれまで示されていなかった労働契約の変更をも含む具体的な手続きを示して、事業者が躊躇する点をクリアすることで、両立支援の普及に寄与するのではないかと考えておりますので、今回の検討会で俎上に上げていただければよいと考えました。
 他にもあるのですが、ちょっと長くなりましたので。
東:それでは、ここで一端切りましょう。
増田:はい。意見させていただきました。
東:いかがですか。富賀見さんからご回答されますか。佐々木さん、回答されますか。
富賀見:ありがとうございます。いろいろな、こういうふうに書けばどうかといった案文も含めて、ご指摘を頂戴しました。
まず、この労働契約法との関係のことを書くかどうかということについて、これ、事前に検討会のご説明をさせていただいた際の会話でもそういった趣旨のご指摘をいただきましたので、内部で検討したのですが、労働契約法のことをこの指針に書くのはちょっと難しくて、労働契約法はあくまで民事法規ですので、何が労働契約法違反で、何が違反にならないかは、個別具体的な事情を考慮して司法によって判断されるものですから、この公法に基づく指針の中で、労働契約法に違反にならない例、なる例、先ほど「濫用」とありましたけれど、濫用に当たる、当たらないといったことを、この指針で示すことは労働契約法の趣旨に照らして困難であると考えております。まず、事情はご理解いただければと思います。
 その上で、やはり今ご指摘いただいたような点は、現場ですごくみんな迷う点でして、私も民間に出ていた経験がございますけれど、人事部でもやはりいちいち困る点であったのは事実なので、何かしらそういった使用者が躊躇する点というか、よく分からない、どうしたらいいのか分からない点については、今いろいろご意見いただきましたがまだ消化し切れてない部分もございますし、また追加でご意見もいただきながら少し整理して、また何かしらの形で示していければいいかなというふうに考えています。
 で、労働契約法と競合しているかどうかですが、やはり今おっしゃったような復職支援にしても両立支援にしても、休職を要する方の場合は、会社の休職制度を利用してしっかり療養してもらって、また元の現職に復帰していただくってことが原則になることは変わりません。まさに昨年、ご参加いただいてまとめましたメンタルヘルスのマニュアルのほうでも、そういった点はしっかりと書いていただきました。あれは主治医向けでしたけれども、またああいう形で企業向けにも示していければ、現場も困らないようなふうに持っていけるのかなというふうに思います。いずれにしても、この両立支援は、そういった使用者と労働者が、もちろん労働契約の下で対等であり、双方の労働契約の下での立場を理解して、合理的に融通を付けていくというプロセスになりますので、そういった過程の中で、判断が一方的にならないように、今回まさに新しい指針で、5ページの「(4)措置等の検討と実施」ということで新たに設けさせていただいた留意事項のところですね。
 「就業継続の希望や配慮の要望を聴取して、十分な話し合い等を通じて本人の了解を得られるよう努めること」という、やはりこういったプロセスが重要なのだというふうに思います。今回ご指摘いただいたような点も、この指針の中で、基本的にこういったプロセスを経て、うまく現場で両者が理解し合った、納得した合理的な融通の付け方になっていけばいいのかなと思っておりますので、この記載もそういう点で見ていただけると、一歩前進したところではないかというふうに思っております。
東:佐々木課長のほうからありますか。
佐々木:いえ。
東:合理的な配慮の範囲というのは、最終的には調和を持って判断するしかないと考えます。両立支援に関る配慮は、努力義務の範囲で規定されているものなのですが、他の要請事項、認識と矛盾した部分はいろいろある中で、どの方向に持っていきたいかというのが指針だと思います。その中で例示性というか個別性として、この各事情に合わせた、それぞれの企業事情や環境に合わせた形で、誰もが納得するような最も合理性の高い決断を形成するものと思います。規定、規則の合間で、あまりしゃくし定規に進めていくと、かえって誰も救われないことになってしまうのではないかという気もします。
 私、現行の法令間で、必ずしも矛盾する部分というのはないと思いますが、もしかすると、検討はいただくことになるかと思います。ご専門の立場からどうぞ。
佐々木:いや、専門ではないのですいません。室長が申し上げたことでほぼ尽きていると思ってはいます。結論は、最後に指針の5ページ、資料3の5ページの「(4)措置等の検討と実施」に書いてあるとおり、労使の間でしっかり十分話し合いをしていただくということに尽きるのだろうと思っています。その段においては、増田構成員のほうから労契法を引き合いに出していただきましたけど、労契法の読み方ですね。まさに法律の専門家ではないので、ちょっと違っていたら申し訳ないのですけれど、われわれの捉え方としては、労契法というのはあくまで契約に当たっての基本的な理念だとか、それから、共通する原則を明らかにしている。特に5条については判例法理を明文化したものであると。いずれもその使用者に特定の措置というのを義務付けたものではないし、その段においては、その両立支援の取り組みを脅かすものでもないだろうと思っています。
 いみじくも構成員からお話がございました第3条の第3項の調和の話をすれば、まさに整合するような話だと思っていますので、しっかり労使での話し合いをしていただくということが肝要だと思っていますし、また、個別の契約もそうですし、もっと上の就業規則の段階においても、そこは労使を通じて給料の在り方も含めて、あくまで一般論でございますけれども、しっかりご議論いただけたらと思います。
 もちろん必要に応じて、労使での話し合いを通じてでございますけれども、契約を見直していただくことが重要なありようだろうと思っています。以上です。
東:近藤委員、何かございますか。他にいかがですか。
近藤:ありがとうございます。普段、企業側、特に中小企業さんや患者さんのご相談を受けることが多いのですが、やはり、会社がどこまで対応できるのかというところがなかなか難しくて、その中で、今もご議論になっていますけれども、労働契約の変更に当たる部分がでてきますので、最終的にはどう折り合って合意をしていくかというところがポイントになるのかなと思っています。
 その中で1点、3ページ目の基本的考え方のところですね。先ほど、山脇構成員が、「できるだけ」と「可能な限り」という表現についておっしゃっていました。元々のガイドラインでは、就業禁止の部分で4ページ目の頭に「できるだけ配置転換、作業時間の短縮その他」という記載があるのですが、これは、恐らく昭和47年の局長通達「安全衛生規則の施行について」から引用された文言だと思います。
 今回、それが「可能な限り」に文言が変えられており、法的には別にあまり差がないとおっしゃっていたのですが、ここは「可能な限り」という表現の方が合理的配慮に近い考え方ではないかと私は受け止めています。その分、特に中小企業さんではでは、どこまでやるのかという課題が出てくるのかなと感じています。
 ですので、文言自体に反対ということではなく、私はこのほうが指針としては望ましいと考えています。ただ、同じ表現の文言が6ページ上から2行目で、ここも「可能な限り」になっております。さらに、14ページですね。ここは、事業者が就業継続の可否を判断する項目の部分ですけれども、14ページの上のところだけ「できるだけ」のままになっていまして、2行目ですね。この点は気になりました。
東:これはミスですか。
近藤:「可能な限り」にしていただきたいなというところでございます。すみません。
東:これは気が付かず、修正されなかったところでよろしいでしょうか。
近藤:そうですね。細かい表現のところなのですが、そういった意味で、やはり中小企業さんにどうやって今後取り組んでいただくかというのが、今回の法改正で努力義務とされた部分の中ですごく重要なポイントだと思っております。また、元々安全衛生法に基づく基本的な考え方として、ガイドラインからほぼ同じように移されているのですが、今回労働施策総合推進法に規定されたことは、私は非常に大きな意味があると考えておりまして、例えば、就業継続ですとか雇用継続という観点が、「趣旨」のほうには入っているのですが、「基本的な考え方」のほうには盛り込まれていないと思うのですが、この辺りどのようにお考えかというところをお伺いできればと思っております。
東:ここでも改めてそれを記入しておく必要があるということですか。
近藤:そうですね。いかがでしょうか。あくまでも、「基本的な考え方」のところに、健康確保措置という部分しか書かれていないのが、気になっておりまして、現状の両立支援を踏まえるとプラスアルファというか、があるとよいのではと思った次第です。
東:この法ができる前提、両立支援そのもの自体が就業継続ということを大前提になっていて、国家的にもそれが好ましいとうたっているので、個別のところでは入れなかったようですけれど。
近藤:そうですね。
東:これについてもご検討いただくとして、先ほどの「可能な限り」と修正すべき文章がありましたが、表現の可能な限りは妥当ではないかとのお話もありました。その文言には、時短であるとか、いろいろな措置を、可能な限り採用すべきという意味でと考えますが、可能な限りと言っておいて、就業禁止について特例の措置である場合が列挙されてもいます。これは先ほどの増田委員の話では、矛盾するのではないかということですね。ただ、必ず就業継続としなさいということではない、特例については、記載したということで、いずれも強制ではないと考えます。いかがでしょうか、就労継続について。
富賀見:今ご指摘いただきました、就業継続の観点が、「1 趣旨」のところには当然書いてあるけれど、「2 基本的考え方」のところにも同様に書けないかというご指摘ですけれど、確かに、タイトルだけ見ると「趣旨」と「基本的考え方」がどう区別されているのか、このタイトルの付け方がもしかして混乱させているかもしれません。この2のところは、基本的考え方というより、取組自体の前提とする発想というふうな内容が書かれている気がしますので、タイトルをどういうふうに反映したらいいのか、ちょっと今すぐ思い付きませんけれど、どうでしょうか。
佐々木:すいません、労働衛生課長でございます。室長が申し上げましたように、基本的に就業継続の考え方も当然ながら今回、治療と就業の、あるいは仕事の両立支援ということでございますので、その理念ということで、「1 趣旨」のところで記載させていただいているところでございます。
 確かに、「2 基本的考え方」に入っていないのではないかとありますけれども、また重複して、あとボリューミーに書いていくのはどうかなと思っていますね。1と2と合わせて捉まえていただきたいと思いますし、場合によってはタイトルの在り方も含めて、反映可能かというのは少し引き取らせていただいて、事務局で検討したいと思っています。
東:すいません、先ほどどたばたしていました。先ほどの記載の場所については、4ページの上ほうにある「やむを得ない場合に限り禁止する趣旨であり」ということについてです。この記載が入ることによって、先ほどの矛盾点についての解決策にはなっていたと思っております。
 それでは、辻本構成員から何かありませんか。
辻本:はい。
東:お願いします。
辻本:ありがとうございます。少し話が変わるかもしれないのですけれども、附帯決議の中で、小規模事業者で働く労働者を支援する観点からというところがございます。確かに、日本企業は中小企業が多いので、支援していただくことはとても大切だと思っているのですけれども、仕事を続けられない方の中には非正規雇用の方がかなり多くいらっしゃいます。先ほどの増田構成員のお話を伺っておりまして、休んで戻るという話があったと思うのですが、その戻る場所がない方々もたくさんいらっしゃる中で、この両立支援では、その方々についてはどのように考えているのかが少し見えてこなかったので、お話をお伺いできればと思います。
富賀見:はい。まず、この指針では、非正規のこととかを特出しして解説していることはないのですが、3ページ「雇用形態にかかわらず全ての労働者を対象とする」ということで定義しております。ご指摘のように、確かに非正規の方のケースの事情とかもございますので、そういった取組事例とか、それに関連して取り組み方とか、またいろいろと事例を集めて、実情も踏まえて、いろいろなところでお示ししていけたらいいかなと思っています。
辻本:ありがとうございます。
東:それでは、金子構成員お願いします。
金子:金子です。先ほど増田構成員のほうから両立支援は、元の職場に戻るのが前提になっているという話もありましたが、私は、労災病院というか医療の現場だったり相談支援機関である産業保健総合支援センターにおいて両立支援のいろいろなお仕事に関わらせていただいている立場で両立支援の現状というのを感じているところです。今回、趣旨のところではだんだん高齢化してきたりということで、古典的な話ですと医療モデルから社会モデルとか生活モデルに変わってきたというのをうたっている中で、仕事に100%戻るっていうのが前提だよというような、若干微妙なところを感じます。
 で、一番ご相談したかったというか伺いたかったところが、17ページの「特殊な場合の対応」というのが書いてあるのですけれども、(2)障害の残る方、大きい障害でなくても両立支援のメインとなるような、がん治療の抗がん剤の後のちょっとした体調不良が続くであるとか、脳卒中の両立支援で、100%ではないけれどちょっと万全には戻らないとかいうようなのは、そんなに特殊ではないのではないか。また、(3)再発についても、難病の両立支援などのことを考えますと、決して特殊な場合ではないのだろうと思います。この特殊というのはどのくらいのイメージ感で捉えられているのか、あるいは、そういったところを世の中に受け入れていただくためには、特殊でなくてもう少し別の言い方もあるのかなというのを、今日の議論を伺いながら感じていたところです。
 言葉1つのものなのかもしれないのですが、特殊なのか、特殊ではないけれども配慮すべきことなのかというのが、ちょっと正直僕の中では案とか対案はないのですが気になりましたので、コメントさせていただきました。以上です。
東:いかがですか。
松岡:じゃあ、追加発言でいいですか。
東:では、松岡委員。
松岡:日本医師会の松岡です。金子構成員のおっしゃったこと、私も実はちょっと感じていたところでございまして、初めの元々の文言に、「何らかの疾病により通院しながら」といって、疾病という1つだけのくくりになっていること自体が、この中の意味はどこまでを含めるのかと思いました。疾病兼障害は、そこの段階から普遍的に入るべきなのではないかと、ちょっと感じている次第です。
 軽い障害の方もたくさんいらっしゃって、既に軽い障害は特殊とは言えず普遍的にありえるので、障害がありながらも雇用されている方は特殊な場合とは違う部分で対応されているということであればそれでいいかとは思うのですけれども、今回の特殊な場合に軽い障害が含まれるかとは少し気にしております。
東:これは富賀見さんどうですか。元々あったのが疾病、つまり、治療を必要とする、障害は別に治療を必要としない場合もありますね。
松岡:そうですね。両方ともあると思います。
東:ええ。また、特殊な別の法規でもって保護されるということに。
松岡:そうです。
東:この議論の初めのほうでもあったと思うのですけれども、この場合は治療を要する、そうしたものを疾患ということで考えていて、障害者そのもの自体は別の枠組みもある。マニュアル作成委員会でした、合理的配慮についての議論にあったと思うのですが、障害や疾病があっても、私は特別な措置、対応を受けたくない人たちもいらっしゃいます。例えば障害者手帳を持っているから、企業としては障害者枠となる人を雇用していることによってメリットを受けますが、いや、私はそうではなくて普通の社員と同等に扱われて働きたい。自分には技術もあるので、簡単に障害という捉え方は迷惑であるという反発もある、というような議論がありました。
松岡:議論があった。
東:初めのほうでやったと思います。
佐々木:ちょっとではよろしいですか。
東:はい。
佐々木:労働衛生課長です。ご指摘ありがとうございます。このたびの治療と仕事の両立支援の対象とするものの概念は、疾病、負傷等の治療が必要になって、増悪することを防止してということでございまして、このトーンの中に、法令の文言で「その他」という言葉を書いているかもしれませんけれども、先ほどおっしゃられたような抗がん剤での副作用に対する治療だとか、あるいは、負傷を負って、その後、障害になって、そのための治療というものは概念としては含まれるものとなっております。
 ただ、最初からその障害をお持ちの場合の方の対応というのは、障害者の雇用の対策というのが別途ありまして、その中で先ほどより出ている合理的な配慮とかいろいろございまして、重複する部分がございます。一旦事務局で改めていただいたものを整理させていただきたいと思いますけれども、いずれにしましても最後の項目の例えばタイトリングだとか、その辺りも併せて検討させていただきたいと、ご指摘を踏まえて検討したいと思っています。
東:どうぞ。それでは、最後に1つお願いします。
砂原:今の点、1点だけ少し気になったので、一言申し上げさせていただきます。同一労働同一賃金という考え方もございますから、この人にはこれだけの給料で、これだけの仕事をしてもらうという前提での雇用契約があるということだと思います。その前提を大きく逸脱するという形での対応は、事業者としてなかなか難しい部分だろうと感じております。
 治っていく途中で労働者と相談するというのであればそうだと思うのですが、障害に応じて配慮するという形になると少し違う部分もあるので、その辺りも踏まえて、指針をうまくまとめていければと感じましたので、一言申し上げます。以上です。
東:ありがとうございました。だいぶ時間が迫ってまいりましたが、たくさんの議論をありがとうございました。それでは、この点を踏まえまして、事務局には、次回に向けてのご検討をいただくことにしまして、議題の2、その他の関連する事項についてのご意見、ご質問をいただければと思います。
江口:その他というと先生、何か。
東:関連する事項、どんなご意見でもいただければと思います。
江口:先ほど……。
東:前の議題についてで、ですか?
江口:いや、近藤さんが手を挙げられていたので。
東:前の議論に関連してでしょうか?
近藤:再発のところの。
東:どうぞ。
近藤:特殊な場合としての再発についてなのですけれども、がん患者さんですとか、あと難病の方については、さきほどお話がありましたけれど、再発した後、治療しながら長期にわたって働きながら両立をしていきたい、いかざるを得ないという方々が多くいらっしゃって、そのような方のご相談のほうが今は、多い状況です。
 その中で、指針の中ではさらっとというか、再発については現状のガイドラインでも書き込まれていないと感じています。そこについて今後、今日全部決定するということではないと思うので、再発での相談が多いこともあり、どこまで指針に盛り込んでいくかの検討が必要だと思っています。あらかじめ再発することを念頭におくということではないとは思うので、文言等をしっかり見直していただく必要はあるのかなと思っております。
東:どうですか。ここでひとつご回答されますか。じゃあ、構成員のほうからそういうご希望があったということですね。これについて再発についてのことですね。それから、江口構成員のほうから手が挙がっておりますが。
江口:ちょっと少しここまでの議論で気になっていた点がありまして、1つはやはりこの配慮をすることで、そもそもその方の能力が落ちていて、そのまま働き続けるという話もあると思うのですが、今までの多分、そもそもガイドラインができた時というのは配慮があればちゃんと働けるのに、不本意に退職をしてしまったりとか、辞めさせられたりとか、事業者側からちょっと本人の能力、本来環境がある程度整えばできるものができないので、不本意に辞めてしまうとかといったような背景があるという、そういったものも含めてのそういった背景があって、このガイドラインといいますか両立支援という話が出てきた部分があるかと思いますので、その点はずっと就業能力が下がるからそのままというような話を前提にしていくことは、少し僕は違和感があるところはございましたので、その点は申し上げていければと思ったところがあります。
 あと、現場においては、やはり今、金子構成員が所属されている労働者健康安全機構が管掌されている産業保健総合支援センターとかで個別訪問支援などの事業により両立支援に関するサポートというものをしている中で、なかなか事業者さんが同意をしてくれないというところで支援が進まないという実態もあるように思っております。そういった中で、こういった指針を見て、事業者が少し、それは私の思いもあるところなのでどこまで反映できるかは分からないですけれども、少しそういった時に同意をする。同意をすることそのものは、それほど、そこで全てを譲るわけではないと思うので、何かそういったところに一歩事業者側が踏み込めるような指針になるといいのかな。
 というのは、要は平成28年にこのガイドラインができてから10年たっていて、そのガイドラインの内容をそのまま指針に準用するというのは、この10年間で紆余曲折あれ、それなりに両立支援が進んできたところもあるかと思いますので、そういったところもちょっと。そのまま10年前のガイドライン、定期的に改定はされていますが、そのまま持ってくるよりも、何かその点も思いが込められるといいのかなというふうに思ったところがございましたので、少しコメントをさせていただければと思っておりました。以上です。
東:ありがとうございます。では、増田委員どうぞ。
増田:はい。増田です。産業医として20年ほど活動してきまして、これまで残念ながら病気が原因で退職した事例を複数例経験しました。先ほど江口構成員からご指摘のように、適切な配慮があればなんとかなったというものもありましたし、残念ながらそのような配慮があっても厳しかったであろうという事例もございました。
 「特殊な場合の対応」という項目が必要なのかみたいなお話もありましたけれども、やはり退職まで追い詰められているような人たちの就労継続を考えるのであれば、先ほど労働契約法に絡めて申し上げさせていただきましたが、前提となる労働契約を少し変更することができれば、また雇用継続は見込めるという事例も出てくるかと思いますので、今回の指針に書き込むのは難しいということで拝承しましたが、その辺りの考え方を少し示すことができればという観点もあろうかと思いますので、ご検討いただけたらと思います。
 あと、すみません。
東:はい、どうぞ。
増田:あと2点あったのですけれども。
東:手短に。
増田:長くありませんので、ご容赦いただければと思います。1点目、両立支援が今回、努力義務とはいえ、より高いレベルで求められることになりますので、実施すべき内容の明確化、何をどこまで実施すれば、両立支援を実施している、努力義務を果たしているということになるのかというのを、明確化していただければいいのではないかと思います。
 現場にいる者としてすぐに思い付くのが、恐らく今後、労働基準監督署が両立支援の取り組みをどのくらいやっているのかというのを指摘してくるのではないかと思っていまして、そうなってきますと、事業者や産業保健職としましては、どの程度までの対応が求められるのかというのが関心事になると思っています。それが1点目です。
 あともう1点が、資料3の17枚目の「特殊な場合の対応」に、「安衛法68条に基づく就業禁止措置を取る必要がある」というくだりがあるのですが、その病者の就業禁止につきましては、安衛則61条で対象疾病が列挙されていますので、全ての疾病に対して68条の就業禁止の措置を取るという立て付けにはなっていないはずです。この記載だとオールマイティー、全ての疾病が対象というふうに読み取れてしまいますので、ここの扱いを確認させていただければと思っておりました。以上です。
東:それは、富賀見さんお願いします。
富賀見:ありがとうございます。事業場のほうが懸念する点かなと思ったので、ご指摘ありがとうございます。1点目の監督署というのはありましたけど、これは今日もご説明させていただきましたけれど、この両立支援は、指導を監督署でやるということにはならないので、労働局での周知、啓発、相談対応といったところでやってまいりますので、安衛法の義務規定のように監督署が履行を判断できるような水準を設定するのがこの指針の目的ではなくて、あくまで努力義務規定なので、この指針を参考にどこまでやるかは、事業場において実情に応じて判断してもらうということです。明確にどこまでやればOKのような線引きは、両立支援の趣旨にもなじまないですし、形骸化、モラルハザードにつながってしまうおそれがありますので、あえてそういったことをお示しすることもないかと思っております。
 あと、もう一つはちょっと難しいご質問をいただいたのですが、病者の就業禁止のところのお話なのですけれど、条文上、疾病は例示されていますが、列挙されている疾病に限定されるものではなく、微妙なところはありますけれども、「等」としてこれに類する疾病も含まれ得るものであり、ケース・バイ・ケースでやはり判断していくという、条文自体もそのような解釈になろうかとはわれわれも考えています。
 その上で、該当箇所、17ページのところですけれども、「あらかじめ産業医その他専門の医師の意見を聞いた上で」、労働のために病勢が著しく増悪する恐れがある場合は、就業禁止の措置を取るというふうな趣旨でございます。変更しているのは、その条文どおりの書き方に、ガイドラインでは不正確な書き方になっておりましたので、その点を修正したものでございます。
東:はい。
増田:ありがとうございました。2つ目の質問につきましては、平成12年に省令改正がなされた時に、解釈通達が平成12年3月30日基発207号で、かなり具体的に示していたので、個別にかなり限定して適用されるものだというふうに理解しておりましたので、今のお話ですとそうではないということで、では過去の通達の内容は何だったのかなと思うぐらい違う内容でしたので、そこの考え方等については確認をさせていただければと思います。よろしくお願いいたします。
東:はい。佐々木課長、お願いします。
佐々木:佐々木でございます。病者の就業禁止の条文のところの疾病が限定列挙されているかどうかという観点については、今、室長からお答え申し上げたとおりなのですけれど、そもそもの病者の就業禁止の趣旨というのは、心臓、腎臓、肺等の疾病で労働のため病勢が著しく増悪する恐れのある、それが明らかであるために、労働することは不適当であると認められた方の就業禁止を出せるものなのですね。
 要するに、直ちにその就業を止めないと倒れてしまう、亡くなってしまう、あるいは、周りの方を巻き込んで事故につながる可能性がある、そういったことを想定しておりますので、そこまで行かないところには、その治療と仕事の両立支援というのを今回提示させていただいており、その対象疾病というのは限定されていないところでございます。
 あと、すいません。ちょっと併せて幾つかご指摘ございましたけれど、まず、先ほど近藤委員から、「再発」については指針の18ページに記載させていただいております。ですから、もう少しいろいろな留意点が必要だということであれば、室長が冒頭申し上げましたように、今後の作成物の中でもお示しすることができるのではないかなというふうに思っております。
 それから、江口構成員からお話ございました、確かに10年たっているというところでございますけど、基本的に今回のわれわれの問題意識というのは、ガイドラインで取り組みを促してきましたけど、やはり残念ながら、要は診断があって治療を開始する前、あるいは治療中で辞めてしまっているという現状がある中で、何か手を差し伸べられないかということで、今回、法案の成立までこぎつけたということでございますので、前提はやはりあまり変わっていない、しっかりその取り組みを法的根拠を持って促していくということに尽きるかなと思っています。
 ただ、その中で、事業者が一歩踏み込むといった話ございましたけれど、やはり一方で、それが一方的な判断につながらないということで、繰り返しになりますけれども、措置と検討と実施の中で、しっかり労使が話し合いするということを書き下させていただいて、これまでのガイドラインの書きぶりも使いながら、改めて整理させていただいたところでございますので、そこはぶれずに進めていけたらなと思っております。
増田:しつこくてすみません。もう一点だけ。その説明でいきますと、平成12年の省令改正で、病者の就業禁止の対象疾患から精神疾患が削除されていますが、今後、精神疾患を理由とした病者の就業禁止はOKということになりますでしょうか。
佐々木:ちょっとまだ、その通知の趣旨とか確認させていただきたいと思いますので、即答は避けたいと思いますけれども、恐らくご指摘のようなことが想起はされるかなというふうには思っておりますが、もちろん確認はさせてください。
東:最後は、どんな疾患の場合も事例性を持って、そのものの専門職がせっかく育成されてきていますので、また、そうした啓発行為も進んで皆さん理解も進んでいる中で、納得する形での判断で決まっていくものだと思いますけれどね。これ、ぎりぎりやっていくと、今回は産業保健に関する通達の両立支援についての取り組みというのでやっていますが、着手していますけれど、さまざまなケースでやって、そういう意味では、全てその列挙式とか規定式というのではなくて、まさにローベンスレポートから始まる、自主的をもって行う産業保健のPDCAサイクルが回るようになってくることに落ち着くとは思うのですけどね。せっかくの専門職の技能を生かしていただければと思っています。
 それでは、一応時間が来てまいりましたが、今日だいぶいろいろなご意見をいただきました。そこで、これをまた反映させていただいて、次の会議でまたご議論いただければと思います。それでは、事務局のほうからご連絡事項等ございますか。
戸高:はい。連絡事項は2点ございます。次回日程でございますが、9月26日の開催を予定しております。構成員の皆さまには、改めてご連絡させていただきます。また、本日の議事録については、先生方に内容をご確認いただいた上で、厚生労働省のホームページに掲載いたしますので、追ってご連絡させていただきます。よろしくお願いします。
東:ありがとうございました。それでは本日の検討会、以上で終了させていただきます。本当に皆さん、活発なご議論ありがとうございました。次回もぜひ、皆さんのご出席をよろしくお願いいたします。お疲れさまでした。