2008年7月15日 薬事・食品衛生審議会 化学物質安全対策部会 議事録

日時

平成20年7月15日(火)14:00~

場所

厚生労働省専用第21会議室

出席者

出席委員(13名)五十音順

 (注)◎部会長 ○部会長代理

欠席委員(4名)
行政機関出席者
  •  黒川達夫(大臣官房審議官)
  •  山本順二(化学物質安全対策室長) 他

議事

○化学物質安全対策室長 定刻より若干早いですが、ただ今から平成20年度第1回薬事・食品衛生審議会化学物質安全対策部会を開催します。委員の皆様方にはお暑いところをお集まりいただきまして、ありがとうございます。会議の開会に当たりまして、黒川大臣官房審議官から一言ごあいさつを申し上げます。
○審議官 大臣官房審議官、医薬品を担当しております黒川でございます。化学物質安全対策部会の委員の皆様には、日ごろからお忙しい中、化学物質の安全対策に御指導、お力添えをいただきまして、本当にありがとうございます。また、本年度第1回の化学物質安全対策部会に御出席をいただきまして、厚く御礼を申し上げます。
 昨年1月の改選後、今日は初めての部会になります。本日の部会では、「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」、いわゆる化管法の対象物質の見直しについて御審議をお願い申し上げます。
 対象物質の候補として今回提出されている物質につきましては、関係する経済産業省、環境省、それから厚生労働省の3省合同の調査会で、その一つ一つについて、専門家の先生方に十分御審議をいただいたところでございます。引き続くパブリックコメントの手続を経まして、本日、報告書として取りまとめられているものでございます。委員の各先生の忌憚のない御意見や御議論を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。簡単ですが、あいさつとさせていただきます。
○化学物質安全対策室専門官 委員が改選されてから初めての部会ですので、本日御出席の委員を、五十音順で御紹介申し上げます。主婦連合会環境部長の有田委員、消費生活アナリストの板倉委員、京都大学大学院工学研究科都市環境工学専攻環境衛生学講座教授の内山委員、独立行政法人産業技術総合研究所安全科学研究部門招聘研究員の江馬委員、フラオグルッペ(株)代表取締役社長の沖委員、神山法律事務所長の神山委員、東北大学大学院医学系研究科環境保健医学教授の佐藤委員、国立医薬品食品衛生研究所療品部長の土屋委員、独立行政法人医薬品医療機器総合機構品質管理部基準課技術系嘱託職員の徳永委員、臨床医薬研究協会代表取締役社長の新村委員、国立医薬品食品衛生研究所長の西島委員、広島大学名誉教授の安田委員、東京薬科大学名誉教授の渡部委員です。
 本日御欠席されている委員ですが、江東区保健所長の井口委員、京都大学大学院経済学研究科教授の植田委員、財団法人佐々木研究所理事長の黒川委員、独立行政法人産業技術総合研究所安全科学研究部門長の中西委員です。なお、薬事分科会におきまして、当部会の部会長として西島委員が既に選任されております。本日の部会は、17名の委員のうち、半数以上の13名の御出席をいただいていますので、開催に必要な定足数の9名を満たしており、成立していることを御報告いたします。
 続いて資料の御確認をさせていただきます。資料1は「薬事・食品衛生審議会化学物質安全対策部会委員名簿」、資料2は今回の「諮問書」、資料3は「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律の概要」、資料4は「化管法見直し合同会合中間とりまとめ<概要、抜粋>」、資料5は「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律に基づく第一種指定化学物質及び第二種指定化学物質の指定の見直しについて」、資料6は「見直し後の化管法対象物質数の概況」、資料7は「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律に基づく審査状況」、委員限りの資料としておりまして、会議後に回収させていただきます。
 参考資料として、参考資料1「薬事・食品衛生審議会薬事分科会化学物質安全対策部会PRTR対象物質調査会、化学物質審議会管理部会、中央環境審議会環境保健部会PRTR対象物質等専門委員会委員名簿」、参考資料2「現行化管法対象物質の有害性・暴露情報」、参考資料3「追加候補物質の有害性・暴露情報」、参考資料4「一連の物質群や元素及びその化合物として取り扱う候補」、参考資料5「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律に基づく第一種指定化学物質及び第二種指定化学物質の指定について(答申)」、これは平成12年2月の、化管法が成立した当時の資料になっています。資料の不足等がございましたら事務局にお知らせください。
 それでは、以降の議事進行を西島部会長にお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
○西島部会長 部会長を仰せ付かっております西島です。よろしくお願いいたします。
 まず、本日の部会の公開について申し上げます。本日の部会は、公開することによって、委員の自由な発言が制限され公正かつ中立な審議に著しい支障を及ぼす、又は、個人の秘密、企業の知的財産等が開示され特定の者に不当な利益又は不利益をもたらす、そのようなことには該当しないと考えられますので、本部会は公開といたします。
 また、議事録については、後日、皆様に確認していただいた後に公開されますので、あらかじめ御承知おきをお願いいたします。
 議事に入る前に、本日の部会は、改選後初めての開催になりますので、部会長代理を選出したいと思います。私としては、この部会において以前にも部会長代理をしていただいた板倉委員に引き続き部会長代理をお願いしたいと考えていますが、いかがでしょうか。ありがとうございます。それでは、板倉委員に引き続き部会長代理をお願いしたいと思います。
 これより、議事に入ります。まず、本日の審議事項の「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律の対象物質の見直しについて」ですが、本部会の下に設けられているPRTR対象物質調査会で、昨年の9月から今年の6月にかけて、4回にわたり集中的に審議されたと伺っています。本日はその調査会の座長の江馬委員にも出席いただいていますので、最初に江馬委員から簡単に御報告いただいた後、事務局より具体的な説明をお願いしたいと思います。
 それでは、江馬委員、よろしくお願いいたします。
○江馬委員 3省合同で開催された化管法対象物質見直し合同会合の結果について、簡単に御報告いたします。化管法対象物質の見直しに当たっては、現行の指定化学物質の選定基準を踏まえて、7年前の化管法施行以降に蓄積された有害性等についての知見や製造・輸入量、一般環境中での検出状況などを基に、指定物質の候補リストを作成いたしました。
 指定物質の選定基準については、化学物質管理をめぐる国際的な状況を踏まえつつ、化学品の分類及び表示に関する世界表示システム、いわゆるGHSとの整合性を念頭に置き、現行の選定基準を見直しています。また、特定第一種指定化学物質については、GHSとの整合性を踏まえ、新たなエンドポイントとして、ヒト生殖細胞に対する変異原性やヒトに対する生殖毒性を追加しています。
 これらを踏まえて、3省合同会合の中で、一つ一つの物質について、専門家が科学的なデータを確認し、場合によっては元のデータまでさかのぼって、候補となる物質について検討した結果、第一種指定化学物質の候補物質として463物質、第二種指定化学物質として100物質を提案させていただいています。現行の対象物質以外の物質として、218物質を対象物質として新たに取り入れるよう提案しています。以上です。
○化学物質安全対策室専門官 引き続いて資料2~6に基づいて具体的な選定作業について御説明いたします。
 資料2は、厚生労働大臣からの諮問書です。
 資料3に移っていただいて、特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律、いわゆる化管法の概要について、簡単に御説明いたします。化管法ですが、特定化学物質の環境への排出量を国に届け出るPRTR制度と、化学物質の性状や取扱いに関する情報を事業者がそのユーザーに伝えるMSDS制度との二つの制度によって、事業者による化学物質の自主的な管理を促進して、環境の保全上の支障を未然に防止することを趣旨としています。
 最初にPRTR制度について御説明いたします。これは、一定の要件を満たす事業者に対して、対象物質について、事業所から環境に排出される量と、廃棄物等のような事業所外への移動量を国に報告することを義務付ける制度でございまして、毎年届けられたデータを国が集計して公表しております。
 PRTR制度は、第一種指定化学物質が対象となっています。第一種指定化学物質のうち、発がん性があるものとして12物質が指定されておりまして、これを特定第一種指定化学物質と呼んでいます。
 1枚おめくりいただいて、対象事業者としては、第一種指定化学物質を含有する製品を製造、使用、その他取り扱っている事業者を対象としていて、その対象業種は政令で指定している23業種、こちらが対象事業者となっています。
 これについて、1枚めくっていただいたところに「参考1」とありますが、これが直近のデータ、「平成18年度PRTRデータの概要」となっています。平成18年度1年間に届出対象事業者が把握して、全国で4万980の事業所から届出がされています。排出量を集計したところ、24万5,000トン。前年度が25万9,000トンですので、若干排出量が減っています。移動量としては、22万5,000トン。排出量と移動量の合計では47万1,000トンとなっていまして、前年度の48万8,000トンより減少しています。
 この詳細については説明を省略しますが、7枚おめくりいただいたところに「参考2」ということで、PRTR制度で届けられた物質の経年変化の概要を示しています。参考2の1ページに届出状況、2ページに届出排出量・移動量がありまして、大気、公共用水域、土譲、埋立といった分類に分けた排出量・移動量の経年変化を示しています。(3)は物質ごとの届出の経年変化になっていて、どの物質もおおむね減少傾向にあるように思われます。
 資料3の2ページに戻っていただいて、MSDS制度について説明いたします。MSDS制度とは対象化学物質又は対象化学物質を含有する製品を他の事業者に譲渡又は提供する際には、その化学物質の性状と取扱いに関する情報を事前に提供することを義務付ける制度です。
 MSDS制度はPRTR制度よりも対象物質が広く、第一種指定化学物質354物質と、第二種指定化学物質と呼ばれている81物質、合計435物質が対象となっています。
 このPRTR制度とMSDS制度の二つを柱として、事業者の自主的な管理を促進するものが、化管法となっています。
 資料4に移ります。1ページ目が「化管法見直し合同会合中間とりまとめ<概要>」で、左上の四角のところに書いていますが、化管法施行後7年、平成19年3月がその7年後となりますが、これを経過した段階で見直しを行うことが、化管法が成立した際のお約束になっておりまして、それを踏まえて対象物質の見直しを行っているところです。
 裏に移っていただいて、先ほど江馬委員から御説明がありましたが、こちらがPRTR制度の対象物質の見直しの方向性となっていまして、現行の対象物質の選定基準は保ちつつ、施行後の製造量、輸入量、そういったもののデータの変更、あるいは毒性情報のデータなどをアップデートして、選定の見直しを行っています。それに加えて、世界表示システム(GHS)との整合化を目指すということで、特定第一種指定化学物質について、現行の選定基準からエンドポイントを二つほど追加しています。
 こういった大きな方向性の下で、3省合同の調査会の中で専門家の先生に見ていただきまして、一つ一つの物質について検討いただいた結果が、資料5として、報告書にまとめられています。
資料5を御覧ください。1ページの四角で囲んでいるところが、現在の対象物質の考え方になっています。
 2ページの四角で囲んでいるところが、先ほど御説明しました今回の見直しの考え方です。今回の化管法対象物質の見直しの考え方ですが、有害性の判断基準として、現行の選定基準の考え方を踏襲することになっていて、1.発がん性~9.オゾン層破壊物質、この九つの選定基準については、現行の選定基準を維持しています。
 3ページに移ります。特定第一種指定化学物質について、前回の答申では、有害性ランクで発がん性のクラス1と呼ばれる物質を、特に重篤な障害をもたらす物質として特定第一種指定化学物質に指定しています。今回はGHSとの整合性を目指す観点から、GHS制度では発がん性に加えて生殖細胞変異原性及び生殖毒性についても見ているので、こちらも対象物質の見直しに追加して、現在の発がん性という切り口から、生殖細胞変異原性と生殖発生毒性を追加して選定の基準としています。
 有害性の情報源については、最新の科学的知見を踏まえた情報源に更新しまして、さらに前回用いられた情報源に加えて、GHSの危険有害性分類事業において用いられた情報源を追加して用いています。具体的には5~8ページまで続いている資料の真ん中の部分です。左側の列が前回答申の情報源で、真ん中がGHS危険有害性分類事業の情報源、こちらのPriority-1とPriority-2という情報を、新たに選定する際の情報源として用いています。
 具体的な選定基準の詳細については、資料の最後の方になりますが、参考資料として、「PRTR及びMSDS対象化学物質の選定基準の詳細」ということでお示ししています。こちらの資料の中で下線が引いてある部分がございまして、例えば発がん性分類の表がありますが、クラス1の行のEPAのところで、「CaH」と「K」の部分に下線が引いてありますが、こちらが前回の選定基準から追加されている、変更があった部分です。
 これらの選定基準を用いて選定した結果が先ほどの一覧表になっていまして、詳しくは資料6を用いて御説明いたします。一番左の四角の部分が現行の第一種、第二種で、合わせて435物質あります。真ん中の四角の部分が、今、候補物質として挙げられている563物質です。第一種指定化学物質として463物質、第二種指定化学物質として100物質、特定第一種指定化学物質の候補として15物質が挙げられています。
 一番右の丸の部分が今回新たに追加される物質で、国内外の法令又は制度の対象になっている物質や環境中の調査の対象物質となっているものなどの約3,000のうちから、有害性や暴露情報が化管法の現行の物質選定基準に合致するものとして選定されたものが218物質あります。右から左の矢印ですが、第一種指定化学物質として168物質、第二種指定化学物質の候補として50物質あります。
 見直し案の下の細長い丸の部分が、現在の対象物質から除外される候補となっている85物質です。こちらは※3に書いていますが、最新の有害性情報が物質選定基準に合致しないもの、あるいはPRTRの届出・推計実績がないものや環境中での検出がないもの、そういったリスクの懸念等が小さいものを除外する候補として挙げています。
 ただ、こちらの物質についても、今後何もしないということではなく、資料5の4ページの「今後の課題」に除外物質に対しての記載があるとおり、こういった物質については、引き続き製造・輸入状況の把握や一般環境中での存在の監視に努めていきたいと考えておりまして、さらに、事業者による自主的な取組として今後ともMSDSの提供の継続をお願いすることになっています。
 関連する資料として、先ほど3省合同の調査会で御検討いただいたと申し上げましたが、参考資料1に、その調査会の委員を記載しています。参考資料2は、現行の化管法対象物質の個別の表です。有害性情報、暴露情報を一つ一つの物質についてまとめています。
 参考資料3は、これまで対象物質でなかったもの、追加の候補に挙げられている物質の有害性・暴露情報になっています。
 参考資料4は、類似の構造・毒性を有することから物質の群として取り扱うことが適当だと考えられる物質のリストです。元素自体に毒性があって、その化合物も元素と同様の毒性があると評価されている物質については、原則として、当該元素とその化合物全体を「群」と分けていて、元素とその化合物が異なる毒性を示す場合には、両者を区別して扱っています。こちらが、「群」として取り扱っているもののリストになっています。
 参考資料5は、現在の対象物質を作った際の答申書となっています。
 事務局としては、資料5に挙げられている報告書について、了承いただければ、このまま答申としたいと考えています。説明は以上です。
○西島部会長 ありがとうございました。今回の審議は化管法の対象物質の見直しについてとなりますが、これについて、資料2にあったように、厚生労働大臣より薬事・食品衛生審議会に諮問がなされたわけです。しかし、実際には、PRTRの対象物質についての調査会が開かれていて、それについては既にパブコメを経て取りまとめられています。
 江馬委員と事務局より詳細な御説明をいただきましたが、この見直し案について御質問、御意見がありましたら、お願いいたします。PRTR対象物質調査会として検討されたわけですが、化管法は第一種と第二種が含まれていて、議論されたのはPRTR法にかかわるものだけということですが、そこはどのようにされて、両者をこのようにされたのでしょうか。
○化学物質安全対策室長 先生の御質問は、第一種と第二種の対象物質をどのように分けているかということですか。
○西島部会長 PRTR法は第一種だけと。
○化学物質安全対策室長 第一種と第二種と、両方あります。資料5に候補リストが付いていますが、第一種のリストが10ページ以降にあります。それから、21ページ以降には第二種の指定化学物質の候補リストがあります。
○西島部会長 分かりました。
○神山委員 参考資料3の追加候補物質の有害性・暴露情報の一覧表がよく分からないのです。今回の追加物質の候補は218物質だと思うのですが、この一覧表はもっと番号があるようなのです。どのような関係になるのかを教えていただきたいのですが。
○化学物質安全対策室長 先生の御質問は、ふってある番号が271などと書いてあるので、218より多いではないかということですか。
○神山委員 途中が抜けているのですね。トータルすると218になるのですね。今分かりました。資料5の方は番号が同じ数になっているのですが、CAS番号と番号というのは違うのでしょうけれども、こちらには通し番号がないので、最後になると数がかなり大きいなと思ったのです。
○化学物質安全対策室長 参考資料に付いているのは、第2回合同会合での物質の番号となっていまして、そこで抜けたりしているものがあるものですから、少し抜けているものがあります。全部合わせると218になります。報告書の方は、最後はそろえていますので、数字が全部合っているということです。
○徳永委員 資料3の参考1に「集計結果の概要」があります。その(1)に「総届出排出量・移動量」の表がありまして、「事業所内での埋立処分」が1万8,000トンありますが、ものとしても、埋立処分してもいいものは決まっているのですか。例えば化学物質を埋立処分するとか、そのような感じですか。ものが決まっていて埋立処分するということですか。
○化学物質安全対策室長 具体的にどの物質を埋立処分したのかは書いていないのですが、事業所が届け出たものをまとめているものですので、基本的には違法なものを届け出ていることはないと思いますから、埋立処分できるものについてやっているということだと思います。具体的にどういうものかは、後ほど調べてお知らせすることはできると思います。
○神山委員 今の点の続きですが、資料3の参考2の5ページの表8が、今、徳永先生のおっしゃった事業所内の埋立処分の上位10物質なのですが、鉛、マンガン、砒素などが埋め立てられていることになるわけですよね。これは自分の事業所の中に埋め立てることが違法ではないということですか。
○化学物質安全対策室長 法定の届出事項ですので違法ではないと思いますが、我々の方で直接集計をしてまとめているものとは違うものですから、法的な解釈がどうなっているかまで責任を持ってお答えできませんので、後ほど調べて御報告します。
○土屋委員 今回の特定指定化学物質の関係ですが、ニッケルの場合に、ニッケルの固体を外してニッケル化合物のみを指定されるというのは、PRTRで固形物を除くとなっていることから、一律に除かれたということでしょうか。化合物のみを登録して、ニッケル金属は除いたと。
 私は材料をやっていますので、金属の場合は溶出量というのは、必ずしもその含有量とは相関はしませんが、ニッケル100%で動物実験をやりますと、非常に溶出が早くて、がん等が発生するのです。そういう金属の性質に応じて、例えば酸化被膜ができるものとできないものでは、かなり溶解性、溶出性が変わってくるのですが、そういったものは全く除外されているということですか。ニッケルチタンという形状記憶合金は55%くらいニッケルが入っているのですが、その場合のニッケルの溶出量と100%ニッケルの場合は全然けたが違います。毒性上も全く異なってきます。
○神山委員 今のお話は、物質の中からニッケルが抜けてしまうということなのですか。
○土屋委員 よく分からないのですが、実際はニッケル100%のものは抜かしてあります。
○神山委員 特定から抜けているということですか。
○土屋委員 固体だから除くというセンスは、材料屋からすると、必ずしも固体だから溶出しないことにはならないのです。ものによって違います。
○西島部会長 今までもニッケル化合物だけですよね。江馬先生、何か情報はございますか。
○江馬委員 土屋先生のおっしゃったことは、ニッケル金属が抜けている理由は何かということですか。
○化学物質安全対策室長 参考資料2を見ていただくと、現行の対象物質で今回見直しを全部やっているのですが、1個1個の物質についてどういう見直しをしたかが載っていて、12ページを見ていただくと、1-231がニッケルで、1-232がニッケル化合物となっています。右側を見ていただくと「見直し後の第一種、第二種の区分」というのがありますが、ニッケルについては従来どおり第一種。ニッケル化合物についても従来どおり第一種であり、特定第一種もあるということです。
○土屋委員 ニッケル化合物とニッケルでは、ニッケル化合物では人で既に発がん性が知られている化合物がありまして、ニッケル金属では動物で十分に知られているというレベルで、そこの境目で決められたのかと。
○化学物質安全対策室長 具体的に毒性データをどういうデータに基づいて評価したかというのは、表に「発がん性」とか「生殖毒性」などがありますが、色が入っているものが新しく入ってきたものです。例えばニッケル化合物について言うと、生殖毒性が2というクラスの資料が新しく出てきたとか、吸入慢性が1、感作性が1など、そういう新しい資料が出てきており、従来どおり特定第一種となっております。ニッケルについては、ランク付けが変わるような新しい資料がなかったこともあって、第一種のままです。そのような扱いにしたということです。
○土屋委員 この色づけは新たに出てきたということですか。
○化学物質安全対策室長 そうです。
○土屋委員 今回新たに発生毒性も評価の対象にされたことは、素晴らしいことです。
私は個々のデータを存じ上げないので、例えば生殖毒性の場合には、胎児の致死から生殖機能から奇形から、様々な病態があるわけですが、今回選ばれた化合物というのは、すべてをマーカーとして選ばれて、その中で毒性の強いものが選定されたということでしょうか。
○江馬委員 データがあればそうです。データがそろっていればエンドポイントはすべて拾っているということです。
○土屋委員 例えば、以前に研究したことがあるのですけれども、除草剤などもこの対象に入っているのでしょうか。除草剤の中には、親の毒性はほとんどなくて、そういうものはかえって危険で、注意を払わなければいけない、それはラットの話ですが、胎児が全部死んで、全く子供が産まれないというものが、選択毒性でそういうものが選ばれやすいのかどうか分からないのですが、そういったものは今回入っているのか、あるいはそうでないのか、そこを少しお話いただけますか。
○江馬委員 除草剤も入っていると思います。毒性のデータについては、この資料に載っていた引用文献といいますか、採用した資料に載っているデータは評価していますので、そこへ出てくるエンドポイントはすべて評価していることになります。
○有田委員 質問ではないのですが、PRTRの届出情報も数値的に整理されてきた中で、今回のGHSとの関連であるとか、全体的にいい方向に整理されたと思っています。
農薬の関係も今回たくさん物質として入っているので、大変評価できるというか、嬉しいなと思って報告書を見ています。
○西島部会長 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。
○神山委員 GHSとMSDSのことで、末端の消費者にまで届くようにしてほしいというのは、この議論には入らないものなのでしょうか。
○西島部会長 事務局、いかがですか。
○化学物質安全対策室長 化管法は、冒頭に御説明申し上げたように、事業所から排出量等について報告書を出してもらう、あるいはMSDS制度を義務付けることによって、化学物質の管理をきちんとやってもらうようにするための法律ですが、いずれにしても、最終消費者に対して情報提供することを目的としているものではありません。MSDSの内容、あるいはGHSによるラベルを消費者にも伝えるというと、それを第一義の目的にしているものではないのですが、結果的に消費者にまで情報が伝わるようになれば、消費者にとっても便利だと思います。このような制度を普及させることによって、消費者にも必要な情報が提供できるというような、波及的な効果はあるだろうと思います。
 ただ、消費者に対する情報提供は、化管法以外の法律でやっていくことになるかと思いますので、そこをどこまで化学物質に関して充実させていくのかは、別な議論になるかと思います。
○有田委員 今の回答について、MSDSは最終消費者には必要ないということではなくて、読み解くようなNGOなどに情報としてあってもいいと思うのですが、それはそれとして、GHSはもともと国連勧告で言えば最終消費財にも付けるということであったと思うのです。それが馴染むか馴染まないかというのは議論の中身であるかもしれないのですが、それを届けなくていいということとは違うのではないかと思います。今の段階では多分、事業者のところの情報でとどまっていて、例えばあるメーカーは家庭用品についても付けるべく努力をしている、あくまでも法律的な強制力はないので自主的に取組をされているということも伺っていますが、それを付けなくていいということではないと思います。
○化学物質安全対策室長 化管法の目的はそうではないということで、GHSの仕組みで収集した情報を消費者に伝えるというシステムは当然今後やっていく必要がある、ただ、今はそこまでまだいっていないということです。
○神山委員 もちろん化管法の第一義的な目的はそうではないということは分かっているのですが、この見直しの答申をするときに、GHSが消費者にまで届くようにしてほしいという意見をここに加えることはできないのかという意味で言っているのです。
○化学物質安全対策室長 今回の報告書は化管法の対象の物質の見直しが目的の報告書なものですから、そこまでは難しいのだろうと思います。ただ、今回の報告書においても、「今後の課題」のところに「GHSとの一層の整合化を目指す」ということも書かれていますので、そうしたことも含めて今後の課題として取り組んでいく。それが最終的に消費者に対する情報提供という面でも促進されるようなことがあれば、化管法の直接の目的ではありませんが、そういうことも念頭に入れながらGHSとの整合性をさらに図っていくということにはなるだろうと考えています。実際にGHSに基づいた消費者に対する情報提供をするのであれば、化管法とは別なところでやることになると思いますが、その一つの環境として、化管法の見直しに関してもGHSの仕組みとさらに整合化を図っていくということになるのだろうと考えています。
○西島部会長 神山委員、そういうことでよろしいでしょうか。初歩的なことですが、今回、特定の方にホルムアルデヒドとか鉛化合物とか非常にポピュラーなものが新たに加わったわけですが、これは、この間にそういったデータが出てきたということになるわけですね。
○江馬委員 はい。
○徳永委員 鉛化合物とホルムアルデヒドはどうして入ったのかと思ったので、その辺をもう少し詳しく言っていただけませんか。
○内山委員 ホルムアルデヒドは、その後IARCが、人に対する副鼻腔がんでクラス1に入れましたので、この第一種に入ったと思います。鉛化合物の方は、今回、生殖毒性がGHSに合わせて新たに指定第一種に入れるという判定条件になりましたので、鉛化合物は生殖毒性ということで入ってきたと思います。
○西島部会長 ありがとうございます。ほかに御意見、御質問はございますか。
○神山委員 資料がたくさんあって、よく分からないのですが、除外候補85物質の一覧表のようなものは、この資料の中にあるのでしょうか。
○化学物質安全対策室長 参考資料2が、現行のもので今回どういう扱いになったかということを全部まとめたものです。85物質というのは、現在は化管法の対象になっているけれども、そこから外れたというものです。資料を見ていただくと、「一種→除外」と書かれているものがあります。これが、今までは対象だったけれども、今回見直しをして除外にしたものです。これを数えていくと85あります。それぞれについてどういう理由で除外をしたのかということが類型的に書かれています。さらに言うと、除外した理由を三つの類型にまとめたものが資料6です。除外候補の物質が85あるわけですが、※3にある三つのうちのいずれかに該当するかどうかを1個1個の物質について検討した上で、それに該当するものを除外したということです。
○西島部会長 参考資料2の5ページ、1-043、エチレングリコールは一種から除外ということですね。
○化学物質安全対策室長 はい。
○西島部会長 エチレングリコールは特に問題がないということですか。
○化学物質安全対策室長 これについては、新しく見直しをした上で有害性のクラスが該当しないとなりましたので、除外をしたということです。
○西島部会長 ほかに御質問、御意見はございますか。資料がたくさんありますが、本日の要点は資料5です。これが見直しについての報告の案ということです。これについて、いろいろ御質問、御意見が出ましたが、全体として、この報告書をそのまま答申として差し支えないように私には判断されました。それでよろしいでしょうか。それでは、資料5の内容について答申するということにさせていただきたいと思います。ありがとうございました。
続きまして、本日の議事の二番目、報告事項に移りたいと思います。「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律に基づく審査状況について」、事務局から御報告をお願いします。
○化学物質安全対策室専門官 それでは、資料7に基づいて御説明させていただきます。
 最初のページに、前回、平成18年7月の化学物質安全対策部会以降に開催された、化学物質安全対策部会化学物質調査会において審議された物質数の一覧を掲載しています。
 審議物質としまして、新規化学物質が847、既存化学物質が179、こちらの物質を調査会で審議していただいています。そのうち、第一種監視化学物質として指定された物質が10、第二種監視化学物質とされた物質が、新規化学物質で42、既存化学物質で16となっています。次のページから、それぞれの物質についての審査シートをお付けしています。個別の物質のシートについては説明を省略させていただきます。説明は以上です。
○西島部会長 ありがとうございました。今の資料の2枚目は何ですか。
○化学物質安全対策室専門官 2枚目は、第一種監視化学物質とされた物質です。3物質記載していまして、その裏側に7物質ありますので、合わせて10物質です。その後の資料が、まずは新規化学物質42物質の審査シートになります。手書きで、最初の新規化学物質審査シートのところに(1)から打っています。
○西島部会長 それが42まで続くわけですね。
○化学物質安全対策室専門官 その後で、今度は既存化学物質の審査シートを付けています。
○西島部会長 既存は何ページからになりますか。
○化学物質安全対策室専門官 新規が236ページで終了しまして、その後、既存化学物質の審査シートがまた1ページから開始しています。
○西島部会長 報告事項ということですが、御質問、御意見がありましたら、お願いいたします。
○土屋委員 これらの情報はできるだけ公開した方が、皆さんが共有できていいと思うのですが、そこはなかなか難しいのでしょうか。
○化学物質安全対策室専門官 既存化学物質についてはインターネット上で公開しているのですが、新規化学物質については、特許の関係もありまして、第二種と指定されればすぐに公開はされるのですが、そうでなければ、すぐには公開されないことになっています。
○土屋委員 しばらくして公開するということですか。
○化学物質安全対策室専門官 5年を経過して公開することになっています。
○西島部会長 第一種にされたものについては、こういうシートはないのですか。
○化学物質安全対策室長 今回の資料には付けていません。いずれの物質も第一種監視化学物質については公示をしていますので、公示しているところで情報公開をしているということです。
○内山委員 この10物質すべてで、環境省のモニタリングデータはなしと書いてありますが、これは、データを測定していないのですか。それとも、検出されていないのですか。モニタリングされていないのでしたら、環境省の方に測ってくれるようにというようなリストは行っているのでしょうか。
○化学物質安全対策室長 データなしというのは、測っていないということなのか、測っても出てこなかったのか、そこまでは分からないのですが、いずれにしても、今度新たに監視化学物質になっていますので、今後はそういうものの候補なり対象なりにはなり得るだろうと思います。化審法というのは、我々だけではなく環境省と経済産業省の3省でやりましたので、当然この情報は環境省も持っているということです。
○神山委員 第一種の10物質は全部、既存物質なのですか。
○化学物質安全対策室長 第一種監視化学物質は既存物質しか指定していません。
○西島部会長 ほかに御質問等はございますか。
○徳永委員 既存物質の場合のデータの蓄積はどうしているのですか。どこかで作っているのですか。
○江馬委員 既存物質点検でやっている毒性試験と文献調査で出てくる情報が、この情報になります。
○化学物質安全対策室長 3省のデータベースの方でも公開をしています。
○有田委員 ジャパンチャレンジとの関連は。
○化学物質安全対策室長 これは国が点検したものになります。ジャパンチャレンジで出てきたデータは、御存じのように、これから評価をすることになっていますので、まだこの中には入っていません。
○神山委員 化審法の指定物質と化管法の指定物質が違っていると思うのですが、今回第一種になった10物質は化管法の指定物質には入っているのでしょうか。
○渡部委員 これら10物質は、化審法で第一種監視化学物質に指定されたばかりで、まだ化管法の特定第一種化学物質に指定されていません。化審法で第一種に指定されれば、化管法の規制物質の次回見直しを待たないで化管法の特定第一種に自動的に組み入れられることが望ましいと思います。両法律は最も厳しい規制の対象とすべき化学物質を"第一種"としているために、化審法で第一種となったものがなぜ化管法で第一種にならないのだとする疑問はもっともだと思われます。実に紛らわしい用語です。しかし、どのような目的で両法律が制定されたのかを知れば、誤解はなくなります。化審法はPCBのような高生物濃縮性あるいは高蓄積性の新規化学物質の環境への出現を二度と許さないためのものです。化審法で第一種に指定されれば、自動的に事実上の製法・輸入と使用の禁止となります。化審法の第一種監視化学物質は魚体への濃縮度試験によって判定され、濃縮係数が極めて高い、ある値を超えると、自動的に第一種となります。濃縮係数は最近国際的に「きわめて高い」から「高い」へとハードルが下がりましたので第一種監視化学物質の指定品目がここ数年急に増えました。化審法第一種は生物濃縮係数の大きさだけで決まります。その時点ではその化学物質の有害性はよくわかっておらず、問題にされません。他方、化管法は、既存の化学物質の有害性が問題となります。毒性、生態系への影響、またはオゾン層破壊性などが特定第一種とするか否かを決める要素となります。毒性のうち、例えば発がん性は最も重大視されます。高生物濃縮性でなければ、化審法においては発がん物質やオゾン層破壊性のフロンも第一種には指定されません。
○西島部会長 今回の10種類のうち、かなりの部分がフルオロ化合物ですね。こういったものは非常に難分解、蓄積性有りということですか。
○江馬委員 それは多分、オゾン破壊のものもあって、特定フロンなども入っていると思います。
○西島部会長 結局、今回の10種のものは、PRTRの特定第一種には入っていないですね。
○渡部委員 先程申し上げたように、化審法にはオゾン層破壊性や毒性がどれ程協力でもそれらを最も厳しい規制の対象とするという概念はありません。高生物濃縮性化学物質の出現を防止することが化審法の目的です。有害性が高い化学物質の規制は化管法の役割です。
○江馬委員 西島先生が言われたのはPRTRのことだと思ったので。
○化学物質安全対策室長 資料6にありますように、見直しをして、今まで対象ではなかったけれども、対象にする候補になった物質が3,000くらいあるのですが、その3,000くらいの候補になったものは、この吹出しのところにありますように、化審法で特定化学物質や監視化学物質になったものを含めて候補の物質に入っています。ただ、見直しをしてデータを集めるということは大分前から始めていまして、今回、化審法で監視化学物質に指定したものは平成18年以降のものですので、まだデータがないものですから、今回の対象にはなっていないと思います。こういうものについて今後データが集まってくれば、必要に応じて化管法の見直しを行って、対象物質に指定するということもあり得ると思いますが、今回のものの中には、データがないものですから、入っていません。
○西島部会長 そのほかに御質問、御意見はありますか。ただ今のは報告事項ということでしたので、特に質問がなければ、これについては終了したいと思います。ありがとうございました。
○神山委員 資料7は委員限りで、ここに置いていくということでしたが、一部公表されているものもあるというお話でしたので、公表されているものまで置いていかなくていいのではないかという気がするのです。全部一つにとじてあるのですが、公表済みのものと委員限りのものを分けてとじてくださればよかったと思います。
○化学物質安全対策室長 これは置いていっていただいて、公表可能な資料については後日、資料7からピックアップしてお送りするようにしてもいいかと思います。ただ、後ろの審査シートのほとんどのものは新規のものが含まれていますので、これはまだお渡しできません。それ以外のものについてはお渡しできるものがあると思いますので、それは取捨選択した上でお送りするようにしたいと思います。
○西島部会長 そのようにお願いします。そのほかにはよろしいでしょうか。それでは、本日の議題の三番目、その他に移ります。事務局の方から何かありますか。
○化学物質安全対策室専門官 特にありません。
○西島部会長 それでは、その他はなしということですので、以上で本日の部会を終了したいと思います。御議論をありがとうございました。
( 了 )
 
備考
 本部会は、公開で開催された。

照会先

医薬局

化学物質安全対策室 田中、下位(内線2424)