第40回 厚生労働省国立研究開発法人等審議会高度専門医療研究評価部会 議事録

日時

令和7年8月7日(木)13:00~17:00

場所

航空会館大ホール(702+703号室)

出席者

委員

議題

開会
2議事
    (1)国立研究開発法人国立成育医療研究センターの令和6事業年度業務実績評価について
   (2)国立研究開発法人国立がん研究センターの令和6事業年度業務実績評価について
   ※国立高度専門医療研究センター医療研究連携本部(JH)に係る内容を含む

   (3)その他

閉会

配布資料

国立研究開発法人国立成育医療研究センター
  ・資料1-1 令和6年度 業務実績評価書(案)
  ・資料1-2 令和6年度 業務実績概要説明資料
  ・資料1-3 令和6年度 財務諸表等
  ・資料1-4 令和6年度 監査報告書

国立研究開発法人国立がん研究センター
  ・資料2-1 令和6年度 業務実績評価書(案)
  ・資料2-2 令和6年度 業務実績概要説明資料
  ・資料2-3 令和6年度 財務諸表等
  ・資料2-4 令和6年度 監査報告書

参考資料
  ・参考資料1 高度専門医療研究評価部会委員名簿
  ・参考資料2 厚生労働省国立研究開発法人等審議会令

第40回 厚生労働省国立研究開発法人等審議会高度専門医療研究評価部会

○高屋企画調整官 定刻となりましたので、ただいまより第40回「国立研究開発法人等審議会 高度専門医療研究評価部会」を開催いたします。
 委員の皆様には、大変お忙しい中、お集まりいただき、誠にありがとうございます。
 議事進行役を務めさせていただきます、大臣官房厚生科学課国立高度専門医療研究センター支援室の高屋と申します。よろしくお願いいたします。
 本日は、神﨑委員、庄子委員、中野委員、成川委員、前村委員がオンラインでの御参加となっております。
 なお、神崎委員におかれては、途中参加となり、15時からの国立がん研究センターからの審議より出席と伺っております。
 国立研究開発法人等審議会運営規程に基づく御報告です。
 運営規程第5条に基づき、本日、意見聴取を行う国立研究開発法人の事務及び事業について利害関係を有する者は、当該法人に係る評価について議決権を有しないものとされています。
 法人との利害関係については、あらかじめ委員の皆様から御申告いただいておりますが、事務局におきまして確認いたしましたが、本日の意見聴取において該当する委員はいらっしゃらなかったということで、御報告をさせていただきます。
 なお、これにより、出席委員に関しましては、部会所属委員の半数を超えておりますので、会議が成立することを御報告いたします。
 また、危機管理・医務技術総括審議官の佐々木につきましては、本日、急遽オンラインでの出席となります。何とぞ御了承くださいますよう、お願いいたします。
 それでは、本日の会議の進め方について、御説明いたします。
 本日は、オンラインを併用したハイブリッド方式での開催となります。
 会場に出席の委員におかれましては、御発言の際は挙手をしていただき、部会長による指名を受けた後に御発言をお願いします。
 オンラインで出席の委員におかれましては、Zoomサービス内の手を挙げるボタンをクリックしていただき、部会長による指名を受けた後に御発言をお願いいたします。
 御発言時以外はマイクをミュートにしていただきますよう、お願いいたします。
 なお、御発言の際には、冒頭にお名前を述べていただき、資料を用いて御説明される際には、資料番号と該当ページを明言いただきますよう、お願いいたします。
 続きまして、本日の議事を御説明いたします。
 本日は、国立成育医療研究センター及び国立がん研究センターに関する令和6年度業務実績評価に係る意見聴取を行います。
 評価に係る意見聴取の流れにつきましては、評価項目ごとに法人から説明を行っていただいた後、委員の皆様から御意見、御質問をいただきたいと存じます。
 説明と質疑応答の時間は、事前に時間設定をしており、終了1分前と終了時に事務局からベルを鳴らしますので、目安としていただきますよう、お願いいたします。
 それでは、本日の会議資料の確認をさせていただきます。
 本日の主な会議資料は、議事次第。
 国立成育医療研究センター関係として、資料1-1から資料1-4。
 国立がん研究センター関係として、資料2-1から資料2-4。
 両法人共通として、参考資料1と参考資料2になります。
 法人からは、資料1-1及び資料2-2の概要説明資料を用いて説明を行いますので、オンラインで御参加いただいている委員の皆様におかれましては、事前に紙媒体でもお送りしています議事次第、資料1-2、資料1-4、資料2-2、資料2-4の御活用をお願いいたします。
 その他の資料につきましては、事前にお知らせしましたURLより閲覧していただくよう、お願いいたします。
 御会場の皆様につきましては、お手元にあるタブレットに本日の資料一式を格納しておりますので、そちらを御覧ください。
 資料の不備や閲覧方法等について御不明な点がございましたら、チャット機能等で事務局までお申しつけください。
 事務局からの説明は以上でございますが、ここまでで御質問等ございますでしょうか。
 それでは、以降の進行につきましては、土岐部会長にお願いさせていただきます。
 土岐部会長、よろしくお願いいたします。
○土岐部会長 それでは、皆様、よろしくお願いいたします。
 早速ではございますけれども、議事「(1)国立研究開発法人国立成育医療研究センターの令和6年度業務実績評価について」の審議を始めさせていただきます。
 それでは、まず初めに、理事長から一言御挨拶をよろしくお願いいたします。
○国立成育医療研究センター五十嵐理事長 ありがとうございます。
 本日は、成育医療研究センターの令和6年度の実績評価の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。
 今からちょうど60年前に我が国初の国立小児病院ができました。それを母体に2002年、ですから23年前ですけれども、成育医療研究センターという名前に変わり、また、場所も変わって、現在の地で活動をしております。
 目的は、小児・周産期医療の高度先進医療を推進することがミッションでございます。さらに子供と保護者のバイオサイコソーシャル・ウエルビーイングを目指す医療や研究をしたいと考えているところです。
 昨年、当センターに女性の健康ナショナルセンターという新しい役目が付与されました。米国では小児病院の隣には女性の病院がございます。今後、女性の健康に関する研究する施設としても力を入れたいと考えているところです。
 
 さて、昨年の我が国の子供たちの出生数が70万人を切ったことは、皆さん御存じだと思います。一方、医療的ケア児と呼ばれるお子さんたちは2万人になりましたし、人工呼吸器を装着されて生存しているお子さんも5,000人を超えているわけです。これは毎年増えております。
 少子化といえども、当センターのミッションは大きくなっていると考えております。小児がんや肝臓移植などの重症患者さんの入院数は増えておりますし、分娩数も年間2,200件を扱っております。
こどもに問題があっても適切に対応できること、お産に伴う合併症に対する対策も充実していること、24時間365日体制で無痛分娩をできる体制になっていることなどが、評価されていると考えます。
 また、研究面では、再生細胞医療の基礎研究、あるいは臨床応用、メチル化異常に基づく内分泌疾患、エコチル事業、シンクタンクセンターによる社会政策研究などにも力を入れているところであります。
 国からの運営交付金のうち、in house研究といたしまして約4億円を研究に使わせていただいています。また、外部からの競争的資金として、昨年は年間30億円を獲得いたしました。
 当センターは、昨年から文部科学省の事業でありますダイバーシティ研究環境実現イニシアティブという、簡単に言いますと、女性の研究者、特にリーダーになる女性を増やそうというプロジェクトを採択していただきまして、こちらにも頑張っているところであります。
 我が国には14の小児病院がございますが、昨年、残念ながらほかの13の小児病院と同じように、当センターも赤字経営となっています。本年度も赤字の改善に向けて努力をしたいと考えております。
 本日は、私どものこれまでの活動を御評価いただきまして、ぜひいろいろな御意見や御批判をいただきたいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。
○土岐部会長 どうもありがとうございました。
 それでは、まずは研究開発の成果の最大化に関する事項の評価項目でございます。資料1-1及び資料1-2に関わる業務実績について、議論をしたいと思います。
 初めに、法人から説明をいただき、その後、質疑応答という流れで進めていきたいと思います。
 時間も限られておりますので、ポイントを絞っての御説明をよろしくお願いいたします。
○国立成育医療研究センター梅澤研究所長 かしこまりました。
 項目1-1に関しましては、梅澤から発表させていただきます。
 項目1-1、担当領域の特性を踏まえた戦略的かつ重点的な研究開発の推進について、令和6年度の取組となります。
 本項目は、難易度、重要度ともに高く、高と位置づけられておりまして、令和3年度以降、主務大臣評価におきまして、連続してS評価を獲得してまいりました。
  今年度も引き続き、自己評価をSとさせていただいております。
 まず当センターが中長期目標に掲げる、医療に大きく貢献する研究成果20件以上の創出に関しましては、令和6年単年度で13件の成果を報告し、目標値比325%という高い達成率となっております。
 また、年間3件以上を目標とする新規病因遺伝子の解明では、令和6年度において4件を報告し、133.3%の達成率を示しました。
 一番下の列になります。原著論文を2,500件以上の目標に対しましては、6年間で累計1,979件、令和6年度単独では557件の論文発表があり、年間目標の420件に対して132.6%の進捗となりました。
 これらの成果は、センター内とともにセンター外との共同研究体制の強化と新規技術導入の成果であり、法人としての不断の努力によるものでございます。
 6ページをお願いできますでしょうか。要因といたしまして、いずれの指標においても理事長を中心とした法人の積極的な研究推進体制や研究者の連携強化が寄与しておりまして、特にゲノム、エピゲノム解析基盤の拡充と高度診断法の実装化が成果創出の根幹となしていると評価されます。
  Ⅲになります。評定の根拠となっております。それぞれの項目を三つ挙げてございますので、 各ページを一つ一つスライドで御説明いたします。
 7ページのカラーのページとなります。①成育に係る疾患の本体解明となっております。こちらはゲノム・エピゲノム解析センターを中心に先端的な遺伝学的解析とバイオインフォマティクス解析を進めてまいりました。
 令和6年の重要な研究成果の一つとして、NSD2バリアントに起因する胎児発育遅延において、特異的なDNAメチル化変化が存在することを世界に先駆けて確認いたしました。
 ページ下段の一番左の四角に書いてございます。胎児発育遅延症例のエピゲノム異常スクリーニングという形でゲノムワイドのDNAメチル化解析で異常が見られた方です。ゲノム上で見ましたところ、先ほど申し上げましたNSD2という遺伝子に変異があったということです。
 これらの結果を踏まえまして、真ん中の四角になります。病的意義不明のアミノ酸置換を再現したモデル動物で解析しましたところ、一番右に示す大きなマウスが生まれてきました。体の形がヒトと同じような形態になったことが分かりました。また、同時にiPS細胞を用いまして、病態の状態を再現することも行っております。
 これらの結果を踏まえまして、ゲノムワイドのDNAメチル化解析とモデル動物を用いた機能検証で、NSD2が特定のエピゲノムパターンを形成することを明らかにし、この病気の診断マーカーとなり得るといったことを確認いたしました。
  こういったアプローチがこの遺伝子に限らず、単一遺伝子疾患においても疾患特異的なエピゲノム変化を同定することが明らかとなりましたので、ほかの遺伝子におきましても、同じ状態のエピゲノム疾患を見つけることができるといったような、非常に一般的な成果として期待されるものとなっております。
 1ページおめくりいただけますでしょうか。青字の②高度先駆的及び標準的な予防、診断、治療法の開発の推進の御説明をさせていただきます。
  2019年度におきまして、衛生検査センター、登録衛生検査所が発足いたしました。
  2022年度では、先天性疾患遺伝学的検査部門を立ち上げ、様々な他機関との連携を進めております。
 その結果として、令和6年度におきましては、一番左のカラムに示すように、衛生検査センターにおける遺伝学的な検査、血液腫瘍部門においては、細胞性免疫検査を行っています。
 我が国のすべての子どもの白血病・リンパ腫全員の検査を国立成育医療研究センターで行うことができております。このように悉皆性を持った全ての患者さんのデータを入手することで、国の診断を担保していきたいと考えております。
 先天性疾患部門におきましても、ここに書いてございます多くの疾患を成育で診断することができました。
 その結果として、希少バリアントの検出とその病的な意義の解明、さらには新たな発症機序の病態の解明が進み、2024年度におきましては、赤字で示すように、ゲノム上の複数部位にDNAメチル化異常を生じるマルチローカスインプリンティング異常症、MLIDの病態を解明することができました。
 また、同時にこういったエピゲノム異常とともに、成長ホルモン抵抗性を招くIGFALS遺伝子にアミノ酸欠失として、新規疾患原因を同定しております。
  新規疾患原因を多く同定できたのは、大きく二つの要因があると思います。
  まずは技術が上がったということが1点目です。
  もう一点は、病院におきまして遺伝診療センターができたことです。遺伝診療センターが病院の中にできたことによって、我が国を一体化して診断ができる体制が整ったことが大きなことだと考えております。
  8ページです。③成育疾患の実態把握及び医学的根拠に基づく政策提言の実施に資する研究の推進です。
  一番左に示すように、低出生体重児の長期的健康リスクを10万人コホートデータで調べたところ、低出生体重児、体重が小さなお子さんは、その結果として、40歳から74歳では、心血管疾患、高血圧、糖尿病のリスクが男性も女性も両方リスクが上がるということを報告いたしました。スタンフォード大学と共同で研究し、データは全て日本のものです。
  真ん中は子どものメンタルヘルス改善につながるエビデンス算出です。コロナの時期のデータを我が国でまとめたものです。大人に声を聞かれたと感じたお子様は、すなわち幸せな気分になるといったようなQOLが高くなることを明らかにしました。
  この大人というのは、御家族、御両親様、また、学校の先生となります。それらの方々からコミュニケーションをとったことが、子どもの高いQOLにつながったということです。
  子どものレジリエンス、再現力、回復力といったようなものの日本語版の尺度を図る英語版を、日本の文化に即したものにきちっとそのような日本語版での成果として発出させていただきました。
  一番右のカラムですけれども、新生児スクリーニングの拡大対象疾患の選定です。SMAという病気とSCIDという病気が新たに加わりました。成育の但馬室長を中心として、厚生労働省の研究班として選定を決めた経緯がございます。
  父親支援マニュアルを作成することができました。対象となる都道府県の職員に対して、どうしたら父親が育児に参加できるかといったことです。
  お母様への支援に加えて、父親に関してもきちっと都道府県を中心にどのようにしたらうまくいくのかといったことをまとめさせていただきました。
 1-1の前半部分が終わりまして、次に、女性の健康総合センターの小宮ひろみセンター長より続きを報告させていただきます。
○国立成育医療研究センター小宮女性の健康総合センター長 どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、私から着座で失礼いたします。
 10ページの④について、御説明いたします。女性の健康総合センターは、2024年10月1日に開所いたしました。
 当センターは五つの柱を立てております。その中で研究開発部門でございますが、データセンター、女性の健康研究部門、オープンイノベーションセンターが重要な役割を果たしております。
 まず上半分の図を御覧ください。各部署で役割はございますが、一方、図にお示ししましたとおり、データセンター、オープンイノベーションセンター、シンクタンク、これは研究と情報発信でございますが、それぞれの機能が女性の健康を支える知と連携の結節点として、三機能一体による包括的アプローチもいたしております。この体制によりまして、女性の健康のイノベーションハブとして活動することを目指しております。
 次に下でございますが、女性の健康研究部門といたしまして、ライフコースと性差を踏まえた多角的な視点から女性の健康課題に取り組むため、左図にお示ししましたような研究室を立ち上げております。
 女性の健康推進研究室、女性のライフコース疫学研究室、ヘルスインフォマティクス研究室は、社会学系・政策系の研究室となります。
 女性免疫バイオメディカル研究室、女性ライフストレス制御研究室、女性内分泌研究室、女性生殖医学研究室、先端医用工学室が基礎研究と応用を担っております。
 右のカラムでございますが、その中で女性の健康推進研究室でございますけれども、MTIと協力いたしまして、女性の健康情報サービスのルナルナに蓄積された女子小中高生の健康関連ビッグデータを活用いたしまして、現在、初潮初来時期を予測するアルゴリズムの開発に向けた研究を実施しているところでございます。このように企業との連携による研究開発も進めているところです。
 以上でございます。
○土岐部会長 1-2の部分になります。お願いします。
○国立成育医療研究センター松山臨床研究センター長 続きまして、評価項目1-2につきまして、説明させていただきます。
 私、臨床研究センターの松山と申します。
 資料1-2、18ページとなります。18ページまでお送りいただければ幸いでございます。実用化を目指した研究・開発の推進及び基盤整備について、自己評価としましてはSとさせていただきました。
 まず中長期目標の内容につきましては、こちらに記載させていただきましたとおりでございます。
 重要度につきましても、実用化を目指した研究開発の推進基盤整備というのは、言うまでもなく国民が健康な生活及び長寿を享受することのできる社会を形成するためには、極めて重要であるということでございます。研究成果の実用化に貢献するのがNCの役目でございますので、重要度につきましては、高とさせていただいております。
 指標の達成状況につきまして、令和5年度までで0件であったファースト・イン・ヒューマン試験でございますが、こちらにつきましては、令和6年度に試験を2件実施することができまして、中長期目標の達成が可能な状況に近づいたことにつきまして、御報告をさせていただきたいと思います。
 評価の根拠といたしましては、3点ほど御説明をさせていただきたいと思います。
 資料の通し番号22ページ、①小児医薬品開発ネットワーク支援事業につきまして、お願いいたします。
 近年、ドラッグ・ラグ/ロスの状況を打開していかなければならないことは、喫緊の課題であるわけでございます。特にドラッグ・ロスが多いと言われております小児用の医薬品の開発の推進は、こちらの課題の解消に向けて、非常にキーとなるものになってございます。
 そこで、本事業は小児科学会が中心となりまして、製薬企業に開発の要望と治験の実施を支援することにより、未承認薬の開発を促進するものでございます。
 こちらは厚生労働省が小児科学会に委託した事業でございまして。小児科学会から当センターが支援事務局を受託いたしまして、業務の運営を実施しているものでございます。この事業がなければ、製薬企業、特に外国に資本を有する企業について、日本国内での小児医薬品開発を積極的に実施する環境が整備できなくなりますので、さらなるドラッグ・ラグ/ロスが進む状況になるものと考えられます。
 幸い当センターでは、小児治験の実施の経験が豊富な小児治験ネットワークが存在してございます。本ネットワークを利用することで、さらに承認までの道筋を加速することが可能であると考えております。
 現在までに事業開始から8年間が経過しております。令和4年度に3品目、令和5年度に4品目に続きまして、令和6年度はエソメプラゾール、ダブラフェニブの2品目が新たに承認を取得しております。これをもってドラッグ・ラグ、ドラッグ・ロスの解消につながっていくのではないかと考えてございます。
 資料の23ページを御覧ください。②国際共同ランダム化比較試験による小児及び若年成人再発急性骨髄性白血病に対する新規治療薬の開発とドラッグ・ラグ/ロス解消でございます。
 こちらにつきましては、御存じのとおりと存じますが、小児で2番目に多い白血病で、再発後の予後が極めて不良であるものでございます。
 ベネトクラクスというのは、再発を阻害する経口薬でございまして、化学療法と併用することで実施をしていく国際共同第Ⅲ相ランダム化比較試験がオランダのプリンセス・マキシマムセンターを中心に計画されたものでございます。
 海外の承認と同時に日本での承認取得を目指しているものでございまして、こちらにつきましては、日本においては医師主導治験として実施するものになってございます。
 当センターは、この試験における日本のナショナルコーディネーティングセンターを務めてございます。このような国際の同時開発というのは、今後のドラッグ・ラグ/ロスに対する方策として極めて重要ではないかと考えております。
 こちらにおきまして、欧州グループには7か国ございます。この欧州のグループとして国立成育医療研究センターを含むほか4機関で治験に参画をしております。
 成育医療研究センターとしましては、オランダの治験調整事務局と頻回に打合せをしまして、日本での治験の進捗を進めてまいりました。
 その結果としまして、2024年7月に治験計画届の提出が完了いたしまして、2025年2月に国内の1例目が登録された次第でございます。
 このようなケースにつきましては、今後の国際的な医師主導治験における極めて有用なユースケースと考えられますので、ドラッグ・ラグ/ロスの解消に対してよい影響を与えるものと存じます。
 ③医師主導治験によるαβT細胞&B細胞除去ハプロ移植法の開発でございます。
 こちらは造血幹細胞移植のためにHLAが合致するドナーがいない患者様を対象としたハプロ移植の医師主導治験でございます。御存じのとおり、ハプロ移植のような場合には、移植片対宿主病(GVHD)や生着不全のリスクが非常に高く、非常に大量の免疫抑制の療法を実施することで、感染症や薬剤の副作用の問題が起こり得る非常に大きな課題を有しております。
 こちらでは、治験機器によりましてドナーの造血幹細胞からαβT細胞、B細胞を除去しまして移植します。それに加えまして、移植後、リンパ増殖疾患のリスクが高くなるので、抗がん剤のリツキシマブを併用して実施をするものでして、欧米では小児を中心として広く実施されているものでございます。
 2024年度の研究では、2025年7月に治験計画届を提出することができまして、この試験がレディーの状態になったというものでございます。
 以上でございます。
○土岐部会長 ありがとうございました。
 ただいまの1-1、そして、1-2に対しまして、委員の先生から御質問、御意見等をお受けしたいと思います。中野委員、どうぞ。
○中野委員 川崎医科大学の中野でございます。今年度もすばらしい研究成果の御報告をありがとうございます。
 私からは評価項目1-1について、お尋ねさせてください。ゲノム・エピゲノムの御研究から、あるいは低出生体重児の将来的な循環器疾患等の予後、さらにはコロナのパンデミックを経てのメンタルヘルスと幅広く必要な研究項目を取り上げていただいていて、すばらしい研究成果だと思っています。
 その中で御質問を申し上げたいのは8ページでございます。8ページの左に衛生検査センターにおける遺伝学的検査で、血液腫瘍部門で細胞性免疫検査が1,860件、日本で発症する小児の白血病のほぼというか、全例をカバーしていただいた。これもすばらしい成果だと思います。
 そこでお尋ね申し上げたいのは、国内の白血病症例をこのように検査していただいた結果、例えば従来私たちが考えていたのと新しく分かったこと、細胞の表面マーカーとか、あるいは遺伝子異常とか、国内の例では小児の白血病は比較的多いですけれども、それでも例としては限られていますから、全例を網羅していただくことで新しく分かったこととか、分かりかけていることが何かあれば、お教えいただいてよろしいでしょうか。
○国立成育医療研究センター梅澤研究所長 お答えさせていただきます。中野委員、過分なお言葉をありがとうございます。
 私どもは、バイオサイコソーシャル・ウエルビーイングを目指して、研究を進めております。その中でバイオの部分におきまして、特に衛生検査センター、登録衛生検査所を発足させて、かなり順調にいっていることを御報告させていただきました。
 衛生検査センターには機能が三つございまして、血液腫瘍部門と先天性疾患部門、そして、感染症についても今後進めていこうと考えております。御質問は血液腫瘍部門においての細胞性免疫検査に関しましては、中野委員から御説明いただきましたように、表面マーカーを調べてきたものでございます。全国の病院の先生方から送られてきた検体の表面マーカーを調べて、そして、お返しする。その中で新たな知見があったかどうかについての御質問をありがとうございます。
 まずは、きちっと検査をするといったようなところに集中しておりまして、細胞性免疫で新たなマーカーというよりも、既存のマーカーを適切に御報告するような方針でございます。細胞性免疫に関する新たな知見はございません。
 体細胞遺伝子検査は、キメラ遺伝子に関する検査でございます。リンパ腫、白血病においては、多くの融合遺伝子がございます。令和6年度におきましても、検体を送っていただいた病院の先生方との共同研究といったような形で新規キメラ遺伝子の発見に関する報告をいくつかしてございます。
 こちらの細胞表面については既存マーカーに関する報告を進め、体細胞遺伝子検査に関しましては多くの新規の知見を得ているところでございます。
 以上でございます。
○中野委員 ありがとうございます。御発表の趣旨をよく理解できました。
 細胞表面マーカーを分かっているものをきちんと返すことは、やはり標準的な治療にもつながると思いますし、大切なことだと思いますので、引き続きどうぞよろしくお願い申し上げます。
○土岐部会長 続きまして、前村委員、どうぞ。
○前村委員 長崎大の前村でございます。
 成育医療研究センターが小児期・周産期のナショナルセンターとして病態解明や医師主導治験で中心的な役割を果たしていることはよく分かりました。
 私がお伺いしたいのは9ページでありまして、左下の低出生体重児の長期的健康リスクの解明という非常にインパクトのあるデータだと思いますけれども、心血管疾患、高血圧、糖尿病のリスクがあるということは、その上流にあるのは肥満だとか、メタボ、そういうものが増えるということなのでしょうか。そのメカニズムとしてどれぐらい分かっているのか、低出生体重児のときにエピゲノムの変化が起こって、それがずっと残っていることが分かっているのかということです。
 あと、今、小児期からメタボになる子が多いので、子供の頃から食育をよくしないといけないということが言われていると思うのですけれども、この場合、このデータを基に低出生体重児の場合はより注意して食育に臨む必要があるのでしょうか。そのあたりを教えてください。
○国立成育医療研究センター梅澤研究所長 前村委員、非常に貴重な御質問をありがとうございます。
 『Nutrients』誌に令和6年度、すなわち今回の評価対象となる年度におきまして、低出生体重児の長期的健康リスクの解明を行ったと同時に、別の論文でどのような要因でこのような低出生体重児が起きるかといったようなことを検討しております。
 その結果として分かっていることは、妊娠前の体重、また、妊娠中の妊婦さんの体重増加があまり十分ではない場合、低出生体重児になることが分かっております。すなわち妊娠前や妊娠中も過度なダイエットが見られており、栄養学的な観点から、今後、大事な検討が行われていくと私は感じております。
 10万人コホートデータで低出生体重児が40歳から74歳の心血管疾患、高血圧、糖尿病のリスクに関する研究では、男子は5万2000人、女子に関しましては6万1000人の合計10万人程度のコホートデータになっております。
 調べた項目はBMI、身長、たばこ歴、さらには教育歴を調べた上で、アウトカムといたしましては心血管病、高血圧、糖尿病、ハ高脂血症、さらには痛風といったアウトカムについて調べたものでございます。
 そのメカニズムとしてエピゲノム変化が非常に疑われており、研究所の河合智子を中心として、お子さんのリンパ球で調べました。実際には、現在、臍帯血で調べているところでございます。
 結果としまして、例えば明らかに0.1%以下のP値を示しているのは、心血管病、高血圧、糖尿病がございました。
 一方、全く有意な結果を示していなかったのは、高脂血症、痛風でした。今回、心血管疾患、高血圧、糖尿病のリスクがかなり上がることを報告させていただいたところでございます。
 この結果は、青いものが男性です。黄色いものが女性となっております。前村委員の御専門となりますが、男性も女性も同じ結果となったところでございます。
 貴重な御質問をありがとうございます。
○前村委員 ありがとうございました。
○土岐部会長 続きまして、成川委員、どうぞ。
○成川委員 北里大学の成川と申します。よろしくお願いいたします。御説明ありがとうございました。
 私の質問は、評価項目1-1を中心にしたところなのですけれども、御説明を伺っていて、ゲノム解析とか、遺伝子診断技術、数多くの成果を上げていただいており、とても評価ができる内容だと思っておりまして、評価の目標件数も上方修正をしていただいたりしているようで、大変頼もしく思いました。
 一般的な質問になってしまって申し訳ないのですけれども、こういう技術を将来の診断法の確立とか、ひいては新しい治療法にどういうふうにつなげていくのかということが重要だと思っていまして、成育医療研究センターさんとしての考え方というか、今後の戦略というか、そのあたりの補足をいただけるとありがたいと思って、質問させていただきました。よろしくお願いいたします。
○国立成育医療研究センター梅澤研究所長 成川委員、ありがとうございます。
 技術革新と同時に、病院の遺伝診療センター設立のおかげで目標値よりもかなり高くなってきたという理解でございます。遺伝病におきましては、新規遺伝子が解明されてきますと、新規の発見が少なくなることが想定されます。遺伝子診療センターを窓口として一本化したことにより、全国の医療施設とのやりとりが増えたことにより、新規遺伝子発見はやはりまだ非常に高いレベルとなっております。
 そのようなことから、新規病因遺伝子解明数も今までは年間1件としていたのですけれども、本年度から3件に上げさせていただきました。また、研究成果に関しましても、来年から年間4件から5件に変更していきます。高い目標値に上げていこうと考えております。
 重要なこととして、衛生検査センター、登録衛生検査所を設立していただいた趣旨というのは、遺伝子診断が保険診療または研究という非常に両極端で行われ、多くの疾患の遺伝子診断を行うことができない現実がございます。登録衛生検査所におきまして、医師法・医療法の下できちっとした検査をできること、成育ができることはなるべく成育でやっていこうではないかと考えております。
 エキスパートパネルも重要になってまいります。国立成育医療研究センターには遺伝専門医も日本で一番多いと思います。あと、研究所研究者にもそういう専門医が多くおりまして、エキスパートパネルをつくって行きたいと考えております。遺伝病は1万あるとされ、当然それぞれの専門家は非常に少ないので、そういったエキスパートを束ねることも成育でやってもらいたいという希望がございます。
 必要となる遺伝子検査は全て登録衛生検査所できちっとやる。毎年、当局からの査察も受けております。また、適切な報告の仕組みも設けておりますので、そのような形で進めさせていただければと思っております。
○国立成育医療研究センター笠原病院長 補足させていただきます。病院長の笠原でございます。
 先ほど来申し上げております遺伝診療センターでゲノムの診断が先行することによって、生化学的な検査、組織生検といった臓器の一部を取ってきて診断をしなければならない、そういった侵襲的な検査をお子さんにする機会が実際に減ってきております。こういった研究所と遺伝診療センターリンクで、病院でも患者さんに優しい医療ができるようになっているのではないかと愚考しておる次第であります。
以上でございます。
○土岐部会長 ありがとうございました。
 松前委員、どうぞ。
○松前委員 松前でございます。よろしくお願いいたします。大変貴重な研究成果について御説明いただきまして、感謝申し上げます。
 評価に当たりまして、1-2のところでSという評価でございますけれども、18ページを見ておりますが、三つ目の3件以上の目標値のうちの今年度は2件を達成されたという、非常に大きな成果だと認識しました。
 これが令和3年度からずっと続けられてきて、ここに来てこの2件というのは、やっとその成果が出たということなのか、長年、研究をされているのだと思うのですけれども、この成果が今年につながったという大きなポイントなどがあれば、教えていただきたいと思います。既に御説明されているのかもしれないのですけれども、理解が乏しくて、お願いいたします。
○国立成育医療研究センター松山臨床研究センター長 とんでもございません。御質問いただきまして、ありがとうございます。松山から回答させていただきます。
 こちらのファースト・イン・ヒューマンですが、令和3年、令和4年、令和5年と0%が続いておりましたけれども、この間、何もしていなかったわけではございませんで、特に②でお示しさせていただきました医師主導治験につきましては、なるべく早い段階でファースト・イン・ヒューマンに入りたいところで努力はしてきたものでございます。
 ただし、こちらが欧州との協調の中で進めないといけないことと、規制の違い等がございまして、頻回に協議を重ねておりましたが、ようやく2024年に日の目を見ましたということでございます。
 これが単年度の単発ですかということも、ひょっとしたら御心配なのかもしれないのですけれども、現在、ファースト・イン・ヒューマンにつきましても、これに引き続く形で令和7年度以降に準備を重ねているところでございます。
 やはりドラッグ・ラグ/ロスが社会問題化してから、ここに関する皆様の関心が高まってきて、企業の皆様もこういったところに関心を持っていただくような契機になった部分もございますので、こちらとしましても、このような流れが続いていけるように誠心誠意努力をしてまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○土岐部会長 私からは、女性の健康総合センターというのが昨年からできたので、大変期待しておりますが、出産を女性側に押しつけるのはよくなくて、しかし、女性側が心身ともに健康でなければ、産んで、最後まで育てるというモチベーションになっていかないと思うのですが、いわゆるここが単なる婦人科とか、単なるレディースクリニックとは違って、総合健康センターというお名前がついていますので、具体的にはそういう疾病を超えた具体的な事業に取り組んでおられることがあったら、ぜひ教えていただけますでしょうか。
○国立成育医療研究センター小宮女性の健康総合センター長 御質問を本当に誠にありがとうございます。
 まさしくこれまでの女性医療、すなわち産婦人科領域でされてまいりました女性特有の疾患、子宮、卵巣、生殖器に主に関わるような疾患のみならず、今、女性の健康ということで総合医療センターを立ち上げさせていただきました。
 女性の健康は理事長がおっしゃいますバイオソーシャルを目指しておりまして、また、それに基づくウエルビーイングが非常に重要であると考えて、女性の疾患を持たないだけでなくて、体調が悪いとか、月経関連、更年期関連ということで、いろいろな体調不良が女性には起こり得るわけですけれども、その辺も網羅して、現在、研究や開発、あとは臨床も進めているところでございます。
 今、開所して10か月でございますけれども、女性の健康ということを重点において、そこを進めてまいりたいと考えております。
○土岐部会長 よくある若い女性がダイエットをしまくるとか、そういうある意味不健康な傾向もございますので、ぜひそのあたりも解決していただけたらと思います。よろしくお願いします。
 ほかによろしいでしょうか。
 それでは、研究成果の最大化に関する事項については、以上とさせていただきます。
 続きまして、医療の提供、その他の業務の質の向上に関する事項の評価項目1-3から1-5について、議論をしたいと思います。
 先ほどと同様で、まずは法人から御説明をよろしくお願いいたします。
○国立成育医療研究センター笠原病院長 説明させていただきます。病院長の笠原でございます。
 医療の提供に関する事項、自己評価はSとさせていただきました。
 資料をめくっていただいて、29ページの図のところまで行っていただければと思います。こちらは成育医療研究センターで実施されております小児の臓器移植についてでございます。
 当センターでは、現在まで臓器不全を認めました小児症例に対しまして、心臓、肝臓、腎臓、小腸の移植を行ってきております。2025年3月末までに累計1,009例と国内最多の小児臓器移植を実施してまいりました。
 小児心臓移植でございますけれども、2020年2月に脳死移植施設に認定されまして、2021年8月に第1例目を実施し、現在までに4例、今年度も1例を実施しております。全例で補助人工心臓を装着して待機しておりましたが、今、皆さんは日常生活に復帰されております。
 オレンジの部分の肝臓の移植になりますけれども、2005年11月に第1例の生体肝移植を実施いたしまして、2010年8月には小児の脳死移植の認定施設となりまして、以降は年間に約60例から70例の肝臓の移植を行っております。これは年間の肝臓の移植で小児が100例ぐらいと言われていますので、60%から70%は当センターが行っていると、国際的にも非常に多い数になっております。現在までに生体肝移植は801例、脳死の移植が96例で実施していまして、累積の生存率は5年で93%と非常に良好な成績でございます。
 当センターでは、年間で10~15例の脳死移植を行っておりますが、多くの臓器不全の方が臓器移植を受けられるべく、現在、脳死分割肝移植の推進及びドナーの提供にも非常に積極的に携わってまいっております。
 先日、2022年4月に腹腔鏡のドナー切除が保険適用になりましたので、現在まで15例、本日もやっておりますが、外側区域の切除を実施しております。
 今後、より低侵襲手術であるロボット手術に移行していく予定でございます。
 次のスライドをお願いいたします。7月の頭に『NHKスペシャル』でも取り上げられたと思いますけれども、小児救急及びPICUの小児のICUの取組についてでございます。
 左上のグラフですけれども、救急外来患者数と救急車の受入れ台数を示しています。コロナのパンデミック以降、受診患者は減少しておりますが、受診様式の変化や少子化の影響などによるものと推測しております。一方、救急車の台数は2019年の3,000台から4,000台前後へと増加傾向にございます。
 下の写真は、小児の重症症例の搬送の様子でございます。近隣だけではなく、国内全域から当センターでの治療が必要なお子さんの転院がございます。東京都外から24%の搬送がございます。重篤な状態での長期搬送でも専門チームを起動いたしまして、安全な搬送を実践しております。
 R6は468例の転院搬送がございまして、このうち200例が小児の集中治療室、PICUに入室しております。救急外来からは合計362例がPICUに入室しております。
 児童虐待においても、小児の救急外来はセーフティーネットとして非常に重要な場でございまして、左上の右の図でお示ししますとおり、主に身体的虐待の対応が求められておりますが、近年は性的虐待や性暴力の被害児童の受入れ要請が格段に増えておりまして、警察、児相と連携して社会的課題にも取り組んでおります。
 右側をお願いいたします。無痛分娩の推移でございます。当施設における年間の分娩数は2,200件、先ほど理事長がおっしゃいましたけれども、それぐらいで推移しておりまして、分娩様式の内訳は以下のとおりでございます。自然経腟分娩が約250件、帝王切開が900件、そして、無痛による出産が約1,100件となっております。
 2020年頃より無痛分娩による出産が増加傾向にございまして、現在は経腟分娩の約9割が無痛分娩を希望されております。
 それでは、1-3-③は、女性の健康センターの小宮センター長に発表をお願いしたいと思います。
○国立成育医療研究センター小宮女性の健康総合センター長 小宮でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 女性の健康総合センターにおける医療の取組をこれから御説明いたします。
 まずプレコンセプションケアセンターです。診療につきましては、病院内の女性総合診療センターの枠組みの中で女性内科として行っております。プレコンチェックは、検診とカウンセリングを行っておりますけれども、プレコンチェックとともにプレコン相談も実施しております。
 事業におきましては、成育シンクタンク事業、また、自治体との連携、研究、教育、学術団体との連携、産業連携、情報発信を遂行しております。
 特記すべきことといたしましては、本年5月、プレコン推進5か年計画が国から発出されました。女性の健康総合センターとしましても、国、他の医療機関、研究機関などと協力しながら、プレコンセプションケアを進めてまいりたいと考えております。
 次に真ん中のカラムです。妊娠と薬情報センターです。妊娠中に医薬品を使用する場合、母体への影響だけでなく、胎児への影響について、十分に注意が必要です。
 一方で、医薬品の使用によるリスクを過剰に心配し、医師等が必要な薬物治療を控えてしまったり、患者本人が自己判断により服薬を中止したりすることで、母体の健康状態が悪化し、かえって胎児が悪影響を及ぼすおそれもございます。
 また、慢性疾患によりまして、医薬品を使用していることを理由に最初から妊娠を諦めてしまう患者さんもいらっしゃいます。
 本センターでは、妊娠中や授乳期の薬の影響に関する安全性情報を収集・評価し、必要な方へ適切に提供することを目的としております。妊娠を考える女性、妊婦に対しましてリスクが懸念される薬剤について、医師や薬剤師による対面カウンセリングを行いまして、同意を得た方から収集することで、相談者への将来のエビデンスを活用しているところでございます。
 現在の状態ですが、全国の相談体制につきまして、47都道府県62施設の拠点病院の設置ができております。
 厚生労働省の妊婦・授乳婦を対象とした薬の適正使用推進事業におきましては、いわゆる妊婦禁忌薬でありますが、治療上妊娠中に継続して使用することが必要な薬剤につきまして、国内外のガイドラインや疫学研究を精査し、添付文書の改訂を行っているところでございます。
 最近では、制吐薬でありますドンペリドンについて、禁忌解除に貢献いたしました。これらの薬剤による治療が必須である妊婦さんや予定外の妊娠に大きな不安を抱える妊婦さんにとりまして、安心して妊娠期間を過ごせる重要な事業でございます。
 3番目ということで右のカラムを御覧ください。産後ケア推進部について、御説明いたします。産後ケア推進部は、新建屋が建設後に産後ケアセンターとなります。現在は産後ケア推進部として活動、また、センター化の準備を進めているところでございます。
 現状ですが、院内の産後ケア、私たちはコアラサポートと呼んでおりますが、そこでは産後ケア事業多職種連携協議会の助言を得まして拡大を図り、利用件数を増やすことができております。
 また、本連絡協議会の中に調査検討委員会、安全管理委員会、教育研修委員会を設置いたしまして、動画を作成し、医療専門職に対しまして啓発、情報発信を行っているところでございます。
 最後に下の部分ですけれども、女性総合診療センターについて、御説明いたします。病院の中に女性内科/女性外科、婦人科、不妊診療科、女性精神科、女性歯科を設置いたしました。
 女性精神科は、本年5月から開始しております。また、女性外科は、現在調整中でございますが、保存的治療をいたしております婦人科は診療しております。お互いに連携した女性総合診療を目指すところでございます。
 2024年度の患者数は延べ4,415名でございます。これは女性内科、不妊診療科におきまして女性総合診療センターに移行いただいた患者さんを含んでいるものでございます。現在、国立成育医療研究センター内の既存の部門と連携を図り、診療をさせていただいているところです。
 女性の健康総合センターからの御説明は以上です。
○国立成育医療研究センター笠原病院長 続きまして、項目1-4、人材育成に関する事項、リーダーとして活躍できる人材の育成、こちらは自己評価をAとさせていただきました。
 次のスライドをお願いいたします。当センター職員で学会の評議員等の役職に就いている人数は、現在230名に上ります。理事長相当職に就任している職員は5名と、日本の医学及び医療の水準の向上に寄与しております。当センターから大学教授に就任する職員も多く、2015年度から10年連続で大学教授に就任しております。
 日本全国、そして、海外からも研修生を積極的に受け入れております。2024年度は国内から411名、海外から88名と多数の研修生を受け入れることで、国内外の人材育成にも貢献しております。
 臓器移植外科、整形外科、小児外科等では、海外に手術支援に行くときに若手医師の動向等も行っており、若手医師の教育に従事しております。
 若手医療従事者の研究能力の向上にも力を入れておりまして、小児科専攻医の論文発表数、特に英文の論文数は、左下の図に示しますとおり、年々増加しておりまして、2024年のレジデントフェロー等の論文数は、内科系の和文12、英文61をはじめ、病院全体で和文14、英文70となりました。
 当センターで小児科専攻研修を修了した医師は、右下にございますが、現在では日本全国の基幹病院で活躍しておりまして、各地に優れた小児医療の人材を輩出しております。
 次、お願いいたします。1-5、医療政策の推進等に関する事項、こちらも自己評価はAとさせていただきました。
 スライドの37ページをお願いいたします。まずは小児抗菌薬適正使用支援加算の効果検証について、御説明いたします。抗菌薬の安易な処方は、薬剤耐性菌の増加を招き、世界的な公衆衛生上の重大な課題となっております。
 厚生労働省は、2018年に小児抗菌薬適正使用支援加算を導入し、乳幼児の風邪で抗菌薬が不要と判断された際、処方しない理由を保護者に説明することで診療報酬を請求できる仕組みとしました。
 社会学研究部の研究では、導入後1年で抗菌薬使用が2割減少し、4年間の追跡でもその効果が持続し、入院、時間外受診の増加は認められませんでした。
 このような財政的インセンティブによる抗菌薬適正使用推進の政策は、国際的にも非常にまれで、他国のモデルになり得ると考えております。
 次に右側ですけれども、母子保健活動における児童虐待予防のためのリスクアセスメントシートの開発・検証について、御説明いたします。母子保健のリスクアセスメントシートは、妊娠期から乳幼児にかけて家庭のリスクや支援の必要性を把握するためのツールでございます。このシートを使うことで、母子保健と児童福祉が情報を共有しやすくなり、連携した支援につなげることができます。
 このシートは、こども家庭センターガイドラインやこども家庭庁が実施します各種研修にも取り入れられておりまして、全国の自治体での認知と活用が進んでおります。
 左下、アレルギー疾患への政策提言について、御説明いたします。アレルギー疾患は、現在、国民の約半数が罹患していると言われておりますが、近年、特に食物アレルギーの増加が著しく、社会的にも大きな課題となっております。
 当センターでは、アレルギー疾患対策基本法に基づく国のアレルギー疾患の中心拠点病院として、重症難治性の患者さんに対する高度な専門診療はもとより、全国の医療機関を対象といたしました診断支援、医師の研修支援、さらには患者さんや御家族への相談窓口の運営など、幅広い取組を行っております。
 当センターでは、成育疾患の予防や治療の発展に寄与することを目的に、開院当初より成育コホート研究を継続的に実施しており、令和7年度には健診を開始する予定としております。
 また、年間およそ2,900件の食物経口負荷試験を実施しております。特にAYA世代、思春期、若年成人における経口負荷試験の件数が増えておりまして、2014年では0.81%だったものが2023年度には4.2%まで増加しておりまして、この領域における保険適用を含めたさらなる制度整備が急務であることを報告させていただいております。
 右下になりますが、新型コロナウイルスの流行によりまして、子供たちの精神的な社会的な影響が懸念されております。当センターでは、政府統計などの信頼性の高いデータの分析に加え、独自に全国の児童を対象とした調査も実施し、肥満、痩せ、視力低下、メンタルヘルスといった指標について経年変化を分析することで、子供たちの実態把握に努めております。
 こうした研究成果は、学術的な貢献にとどまらず、令和6年度こども白書にも掲載されるなど、政策立案にも活用されています。また、これらの実態を踏まえ、子供の心の健康を支える社会づくりに向けて、オックスフォード大学と連携して国際的な提言を行いました。患者や市民が研究や政策立案に積極的に関与する英国との共同プロジェクトを通じまして、本取組は、近年、我が国でも注目されている子供アドボカシー推進の先駆的な事例の一つとなったと考えております。
 資料の38ページを御覧ください。本取組は、平成24年度より厚生労働省の補助事業としてスタートいたしました小児と薬情報収集ネットワーク整備事業に基づいております。成育医療研究センター内に小児医療情報収集システム事務局が設置されまして、全国の医療機関から成るネットワークを活用し、小児医療情報収集システムを構築いたしました。
 承認医薬品の有害事象や投与量、投与方法の診療情報を集め、医薬品の安全性や適正使用の評価体制を整備いたしました。
 小児医療情報収集システムを基に小児における医療品の使用実態や有害事象の発現状況を解析し、小児用医薬品の安全対策のさらなる向上と小児用医薬品の開発の推進につなげることを目的としております。
 R6年度末時点における協力医療機関は、病院11施設、クリニック32施設に上りまして、リアルタイムで電子カルテ情報を収集しております。データベースの規模は140万人、データ収集期間は9年間に及びます。R6年度には新たにDPC及びレセプト情報の収集機能を開発いたしまして、R7からデータ収集を開始する予定です。これによって収集情報の充実化を図りたいと思っております。
 平成29年からは厚労省の委託事業、小児を対象とした医薬品の使用環境改善事業も実施しております。専門家や規制当局から構成されます医薬品適正使用検討会において、未承認薬・適応外薬を中心とした評価対象医薬品を選定いたしまして、その対象医薬品のデータを本システムから抽出し、解析した結果に基づき、申請や添付文書の追記、ウェブサイトでの情報公開の可能性について、検討しております。
 今後はより安定的な運用体制を構築するために、システムの機能拡張やデータ品質の向上に向けた投資を行いながら、製薬企業等へのデータ提供の有償化を予定しております。
 発表は以上でございます。
○土岐部会長 ありがとうございました。
 ただいまの1-3から1-5、医療の提供とその他の業務の質の向上に関する事項につきまして、委員の先生方から御質問を受けたいと思います。御質問のある方は挙手をよろしくお願いいたします。根岸委員、どうぞ。
○根岸委員 根岸です。どうぞよろしくお願いいたします。御説明ありがとうございました。
 1-3、医療の提供に関する事項について、お尋ねします。まず自己評価のところは、主務大臣評価では令和5年度にSを獲得されて、令和6年度自己評価Sということで、この評価については、先ほどの御説明を伺って、質の高い医療を行っていただいておりますので、全く異論はございません。
 先ほどから女性の総合診療センターについてという御説明が出てきておりますけれども、31ページについて、お尋ねいたします。小宮先生から詳しく御発表があったところですが、まず一つは、総合診療のイメージとしては、女性の健康について総合的に医療が受けられるようなイメージを持つのですけれども、図でいきますと、五つの科をつくられていますが、これらを総合して、つまりライフコースごとと先ほど出てきましたけれども、もちろん横断的な医療の提供は必要だと思いますし、単科ごとの提供はもちろん大事だと思います。
 一番初めに理事長の先生からも御説明があったように、日本の性差医療というのはなかなか進んでいないということですから、分かるのですけれども、一女性の立場から申し上げますと、もう少し縦断的なもので、もちろん単科も女性に特化したものは重要なのですが、それを統合した総合的な診療については、もし何かお考えがあればということと、この科はこれから先に単科で増えていく可能性があるのかということです。
 もう一点は、産業との連携という言葉が出てきましたけれども、これは具体的にどういうようなイメージをすればよろしいのでしょうか。
 以上です。よろしくお願いいたします。
○国立成育医療研究センター小宮女性の健康総合センター長 御質問をありがとうございます。
 まず1番目の総合診療でございます。センターの目的ですが、先ほどおっしゃっていただきましたように、ライフコースと性差を意識して研究を進める、開発を進めるような組織でございます。
 その中で女性総合診療センターというのは、発表いたしましたように、診療部門をつかさどるところなのでございますけれども、そのためにまず今まで女性医療といいますのは、恐らくこの中で女性外科/婦人科、すなわち婦人科領域、あとは不妊診療科とか、産婦人科医療と言ったほうがいいのでしょうか、そういうものに関しては、明らかに女性医療が先導してきた、リードしてきたというところがあると思います。
 しかしながら、それでは不十分な部分が女性の健康にはあるのではないか、すなわち性差、ライフコースを意識した女性医療の提供ということで、例えば女性内科をなぜ入れたかといいますと、やはり性差を意識する。女性と男性がかかりやすい疾患はありまして、女性がかかりやすい疾患、あるいは女性と男性が異なるような病態を呈することがございますので、そのような性差のある疾患を診るためには、やはり女性内科が必要だということになると思います。
 また、女性精神科に関しましても、やはり性差が非常にございまして、鬱とか、抑鬱状態とか、不安障害みたいなものは女性に多いことが言われておりますし、しかも実は歯科の歯肉炎とか、歯周病とか、口腔乾燥症とか、そういうものを含めて非常に女性に多いと言われています。
 そこら辺が女性の健康ということをやはり今までにない、先ほど申し上げましたような器質的疾患だけではないものを含めることを考えますと、これらの科が必要なのではないかということで総合診療センターを立ち上げた次第です。
 科ということなのですけれども、やはり増えていく可能性はあると思います。これは私見ですけれども、実はこれに乳腺などは入っておりませんので、将来的にはその辺も検討していくべき科ではないかということがございまして、増えていく可能性はあるのではないかと思います。
 産業との連携でございますけれども、先ほど申し上げましたオープンイノベーションセンター、現在は準備室でございますが、OICがございますので、そこが中心になって、例えば女性内科でプレコンセプションとか、妊娠と薬の話もしましたけれども、企業との関わりが出てくるので、その中で産業が関わっていく。
 今、世間ではフェムテックも非常に言われていて、拡充しているところでもございますので、その辺も私たちの領域で医療に現実的な医療ということではなくて、テクノロジーで女性の健康を進めようというようなところで私たちは関わる予定です。
 実際には経団連とか、そのような組織と少し連携をしようといいますか、御指示を仰ごうということで相談しており、連携を取っている次第でございます。
 以上でございます。
○根岸委員 御丁寧な説明をありがとうございました。
○土岐部会長 中野委員、どうぞ。
○中野委員 川崎医科大学の中野でございます。御報告をありがとうございます。
 私からは37ページの左上の小児抗菌薬適正使用に関して御質問をさせてください。小児抗菌薬適正使用の推進は、以前から成育医療研究センターでずっと取り組んでいただいていて、確かに本当に成果も上がってきていると思います。ぜひ継続して取り組んでいただきたいということです。
 私からの今日の御質問は、適正使用の件は1-5の項目に入っているわけでございますが、1-4のところでコロナ後に外国からの研修の数が徐々に増えてきています。抗菌薬の適正使用に関して、我が国でもまだまだ取組の継続と啓発が必要なことはもちろん承知しているのですが、近隣のアジア諸国の多くの国は、決して適正使用が十分できていない国が多いように私は感じております。
 海外にも一緒に頑張っていこうとか、既に取組を行われているとか、あるいは今後に計画しておられることとか、研修員数が増えていることも含めてお聞かせいただければありがたいのですが、いかがでしょうか。
○国立成育医療研究センター笠原病院長 病院長の笠原でございます。中野先生、大変貴重な御意見をありがとうございます。
 手前どもは海外からの研修生が大変増えておりまして、特にアジア諸国からの研修生が多くございます。研修生とディスカッションしていく上で大変驚かれますのが大きな手術です。例えば肝臓の移植等の術後に抗生物質を24時間しか使わないとか、そういったことに大変驚かれて帰ってまいります。
 特にインドからのインバウンドの患者さんとか、あるいはインドネシアからのインバウンドの患者さん、中国からのインバウンドの患者さんでは、多剤耐性菌が非常によく見られますので、あちらの先生方とはその辺をディスカッションして、今後、手前どもの取組を海外にも広げていく、そのように考えております。
○国立成育医療研究センター梅澤研究所長 研究所からも1点御報告をさせていただきます。
 小児抗菌薬適正使用につきましては、DPCデータからの効果検証を研究所の大久保祐輔室長が検討を進めております。今年、この効果についての論文を発表してきたところでございますので、来年度にご評価いただければと存じ上げます。
 大久保はもともとハーバードとUCLAにいた者でございます。アジアについては、今はデータを持ち合わせておりません。今後、そういった観点から研究を進めるように伝えたいと思います。御指導をありがとうございます。
○中野委員 ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
○土岐部会長 続きまして、前村委員、どうぞ。
○前村委員 長崎大学の前村でございます。
 小児に対する先進的な救急医療が行われていることがよく分かりました。
 お伺いしたいのは、30ページの移植のところでございまして、移植の症例がどんどん伸びていることは非常に喜ばしいことだと思います。私が聞き逃したかもしれないのですけれども、2019年からES細胞を用いた肝細胞移植が行われていることを昨年までのこの会議でも御報告いただいていたと思うのですが、これに関してはその後も継続されているのでしょうか。今後の展望はいかがでしょうか。
○国立成育医療研究センター梅澤研究所長 ありがとうございます。成育からお答えしたいと思います。
 現在、治験が完遂したところでございます。製剤の治験の薬事承認に向けて準備を進めているところでございます。これは産業界との連携も含めて丁寧に進めているところでございます。
 具体的には対象コントロール、要するにナチュラルヒストリーを臨床研究センター及び臓器移植センターと一緒に作成し、今回の有効性・安全性評価に関するデータを作成しておるところでございます。
 治験に加え、臨床研究といった形で、その後、患者様がどのような状態であるかをフォローアップしているところでございます。
 以上でございます。
○前村委員 ありがとうございます。大変期待される医療だと思いますので、よろしくお願いします。
○土岐部会長 田極先生、どうぞ。
○田極委員 田極です。御説明を丁寧にしていただきまして、ありがとうございました。
 資料で申し上げると、35ページについて教えていただければと思います。医療の提供もそうなのですが、冒頭の研究についてもすばらしい成績を上げていらっしゃって、国民としても非常に心強い成果だと思っているところなのですが、一方で、35ページにございますように、ホームページのアクセス件数の達成度がちょっと下がっているところがございまして、非常にもったいないと思っています。
 この点なのですが、国民向け、医療機関向けとなっているのですが、内容的にはアクセス数なので、ちょっと分かりにくいところだと思うのですが、国民が多いのか、それとも医療機関が多いのかといったところですとか、あとはなぜちょっと下がってしまったのだろうかというところで、法人として分析されていることがあったら、教えていただければと思います。
○国立成育医療研究センター北澤理事 ありがとうございます。企画戦略局長でございます。
 後ほどの4-1にも関係するのですけれども、ホームページのアクセス件数の詳しい数字は手元にないのですが、国民のアクセス数は、ホームページもそうですし、いわゆるSNS関係でいいますと、Xも含めて相当な数になります。
 数として一般の国民の方が多いとは思いますが、それぞれのそのホームページの階層によっては、当然、専門家が見るところもありますので、そういったところは専門家の方にもかなり御覧いただいているのではないかと思っております。
 減った理由というのは、前の年がかなり多かったと思うのですけれども、お薬が飲みやすいような食品を開発したことがありまして、その部分で広報というか、前の年はアクセスがかなり多かったところがあったと思います。
 ホームページについては、これだけ減っておりますけれども、後ほどの説明にはなりますが、Xについてはフォロワー数もかなり増えておりますので、広報としては近年のホームページ以外の広報も含めてしっかりと取り組んでいきたいと思っております。
○国立成育医療研究センター梅澤研究所長 ホームページへのアクセスは非常に重要と考えております。令和3年度が112%、令和4年度が89%、令和5年度が81%となっております。私どもはSearch Engine Optimization、SEOを徹底的にやっております。
 数字が減少している理由の一つとして、今の生成AIが私どものホームページのデータを吸い上げて、ホームページに直接アクセスしなくても情報を得ることができる仕組みがこの世界にできてきていることがあるのかなと推測してございます。今後、この傾向はだんだん増えてくるのではないかと危惧しております。生成AIの影響は間違いなくあると思います。
 以上でございます。
○田極委員 非常に納得しました。これだけすばらしい成果、それから、医療の提供については、これからもアピールしていただけたらということで質問させていただきました。丁寧な回答をありがとうございました。
○土岐部会長 私から1点、紙にないことなのですけれども、最近、大学の学生の入試の面接をやっていますと、発達障害にものすごく興味を持っておりまして、実は精神・神経医療研究センターも発達障害研修をやっていますと言っているのですが、詳しくは御説明いただけなかったので、これはこども家庭庁、そして、成育の非常にメジャーな仕事だと考えております。
 特に最近は5歳児健診などに力を入れてやっておられるということなのですけれども、どのように発達障害に取り組んでおられるのか、概要で結構ですので、教えていただけますでしょうか。
○国立成育医療研究センター梅澤研究所長 ありがとうございます。
 5歳児健診で、できることがあるのではないか。どういうことかといいますと、理事長及び病院長を中心に、ASD・自閉症の患者さん、字が読めない患者さんに対してAIホスピタルのアプリの開発を進めております。
 特に2歳児に対しまして目線で早期診断をする具体的なアプリ作成を、AIホスピタル事業の中で進めております。
 また、文字が読みにくい方に関しても、それは診断ではなく、治療といった形でAI事業の中でいろいろな形でアプリを開発しております。これは産業界とも一緒に進める必要がございます。完成したアプリをどのように市場に、ニーズがある方に御提供できるかといった観点からもAIホスピタル事業の中で考えているところでございます。
 以上でございます。
○国立成育医療研究センター笠原病院長 追加になります。
 臨床ですけれども、5歳児健診がASD発見目的ではないとは思うのですけれども、今、月に1回、研究的に成育で出生した5歳児健診に該当するお子さん20名を集めまして、健診を行っているところでございます。こちらで18%ぐらいのお子さんに何らかの発達障害が見込まれるという研究成果が出ております。
 現在、こちらは小児科学会及び論文で発表する準備をしておりますが、一方で、成育医療研究センター単独でできることではございませんので、医師会、教育機関、地方自治体、行政との協力が非常に大切なのではないかと愚考している次第でございます。
 以上でございます。
○土岐部会長 ありがとうございます。
 精神科の先生に聞いたら、早く介入したらかなり治療ができると伺っていますので、ぜひ精神科とも連携していただけたらと思います。よろしくお願いいたします。
 ほかによろしいでしょうか。
 それでは、次の項目に移りたいと思います。続きまして、2-1から4-1、業務運営の効率化、財務内容の改善及びその他の業務運営に関する事項に移りたいと思います。
 先ほどと同様に、まずは法人から説明をよろしくお願いいたします。
○国立成育医療研究センター北澤理事 企画戦略局長でございます。
 私から39ページから50ページまで、評価項目2-1、3-1、4-1の3項目について、御説明をいたします。
 39ページでございます。評価項目2-1でございます。自己評価はAです。
 Ⅱの指標の達成状況は、表にございますとおり、紹介率、逆紹介率、看護師離職率等は目標を達成しております。
 一方、一般管理費の削減、一般管理費の経常収支率等については未達成でございました。
 40ページに要因分析を記載をさせていただいております。詳しくは次のページ以降で説明をさせていただきたいと思います。
 42ページを御覧いただきたいと思います。右のグラフのとおり、働き方改革、あるいは物価高騰、コロナ関係の補助金等の減少によりまして、収支の悪化要因はございましたけれども、業務運営の効率化によりまして、医業収益は3億円の増収、経常収支も赤字ではあるものの、昨年度より赤字幅は1億1500万円改善しております。
 (2)医業収益も改善に努めまして、過去最高の230億円強となったところでございます。
 (3)のとおりですが、光熱水費などの費用削減にも積極的に取り組んでまいったところでございます。
 43ページを御覧ください。医師の働き方改革につきまして、ビーコンによる医師の勤務実態の把握、医師の事務作業補助者の常勤化等を含めましてタスクシフト等の推進、病院長の積極的なコミットを行いまして、令和6年3月にB水準、C水準の指定通知を受理したところでございます。
 44ページ、そのほかの働き方改革に関することでございます。先ほど理事長からもお話がありましたが、令和6年8月に文科省関連のダイバーシティ研究環境実現イニシアティブの女性リーダー育成型の補助事業の対象に選定されたところでございます。
 この事業につきましては、令和11年までの予定でございまして、関連の部署にダイバーシティ実現推進室、ダイバーシティ研究室等を設置しまして、組織間の連携などによりまして、6年後に研究所の上級職、これは室長以上ですけれども、女性の割合を36%以上にすることを目指しまして、在宅勤務システムの整備、女性研究者への研究費助成、卓越研究員制度の選定などを行ったところでございます。
 そのほか、各種講演会の実施、職員満足度の調査の実施、あるいは情報発信を積極的に取り組んでいるところでございます。
 45ページを御覧ください。評価項目3-1、自己評価はAです。
 Ⅲの評定の根拠につきましては、外部の競争的研究資金といたしまして21億7000万円強、前年度より1億1000万円強の増加を獲得しております。受託研究の受注も推進いたしまして、研究活動の充実と発展に寄与しております。
 46ページを御覧ください。収益の改善でございます。(1)共同研究の審査件数につきまして、21件から30件と増加しております。
 (2)ですが、小児医療情報収集システムに集積いたしましたデータの試行的な提供を製薬企業2社へ行っております。
 寄附の受入れですが、企業・関係団体への活動を増やしまして、3件の遺贈、約1億2000万円の受入れを獲得したところでございます。ホームページ、SNS、院内掲示ポスターなど、情報提供を継続実施いたしまして、グラフに掲げるように、寄附金の受入れ実績は、昨年度の1.5億円から2.6億円と増加しております。
 なお、令和7年度になりますが、先ほど病院長からも少し話がありましたが、7月にNHKの番組で成育のPICUの様子が放映されました。かなり反響が大きくありまして、例えば放映後のⅩの投稿は560万回の表示を超えております。また、寄附につきましても100件以上、放映に関連したと思われるものを受け入れております。引き続き効果的なファンドレイジング、広報活動を進めていきたいと思っております。
 ②外部医療機関からの検体検査受託の推進といたしまして、これは先ほどお話があったとおり、衛生検査センターにおきまして131の外部医療機関と受託契約などを行いまして、4800万円強の検査収入を得たところでございます。
 ③医療機器等の投資につきましても、修理不能の更新機器を中心といたしまして選定を行うなど、適切に行ったところでございます。
 47ページを御覧ください。その他の項目についてでございます。自己評価はAでございます。
 中長期目標の内容、指標の達成状況は、お示ししているとおりでございます。
 評定の根拠については、48ページのとおりとなります。詳細は次のページ以降で説明をいたします。
 49ページを御覧ください。①でございます。ハラスメント対策・情報セキュリティー対策等の推進でございます。これはコンプライアンス室におきまして一般相談窓口としての相談、情報発信、研修企画等を実施いたしまして、実績は太字に示したとおりでございまして、研修につきましては、新入職者、幹部向け、全職員向け、eラーニングやコンプライアンスニュースなどを発出したところでございます。
 情報セキュリティー等につきましては、全職員対象の講習、不審メールへの対策、訓練などを実施したところでございます。
 ②広報推進ですけれども、プレスリリースのほか、女性の健康総合センター等を紹介する冊子を作成いたしました。
 ソーシャルメディアは、広報媒体として重要性を増しておりますけれども、Xのフォロワー数は、昨年度から比較しますと5,000人増の約1万9000人以上となっております。
 50ページを御覧ください。女性の健康総合センターにつきましては、先ほどからお話ししておりますとおり、令和6年10月1日に女性の健康に関する司令塔機能を担うものとして開始をしております。
 日本独自の視点から性差を意識した臨床研究を進め、エビデンスの更新に努めますとともに、国際的にその成果を発表し、諸外国との連携も目指していきたいと考えております。データセンターの構築をはじめ、五つの柱を掲げ活動していく方針でございます。
 なお、新建屋につきましては、2027年度の完成を目指して準備を進めているところでございます。
 説明は以上となります。
○土岐部会長 ありがとうございます。
 最後の財務状況はよろしいですか。
○国立成育医療研究センター北澤理事 51ページにつきましては、財務状況になります。
 52ページには、医業収益、経常収益等について掲載しておりますけれども、令和6年度の決算額については、計上収支差としては三角の1.4億円の赤字になっております。
 以上でございます。
○土岐部会長 ありがとうございました。
 ただいまの業務運営の効率化、財務内容の改善及びその他業務運営に関する事項でございますけれども、こちらに関しまして、委員の先生方から御意見いただけますでしょうか。
 まず私からですが、39ページなのですけれども、看護師さんの離職率が12.1と若干高めではあるのですが、その前が恐らく14.5のさらに上なので、かなり高かったのが一気に12までで下がっていますが、これは結構大きな数字だと思うのですけれども、具体的にされたことがあるのでしょうか。かなり大きく変わっているように感じました。
○国立成育医療研究センター北澤理事 ウェブで看護部長も参加しているので、看護部長から御説明していただいてもよろしいでしょうか。
○国立成育医療研究センター嶋田看護部長 御質問ありがとうございます。看護部長の嶋田でございます。
 離職率は今年下がりました。数点ありますが、いつも取り組んでいる病棟の働きやすい環境づくりと、そして、管理職の看護師長、副看護師長等から辞めたいとか、ついていけないということに早期に対応する点と、私自身も大きく感じましたのは、令和6年は診療報酬改定でトリプル改定でした。それで小児入院管理1にもともと看護補助者はついていなかった点と保育士1人100点という診療報酬だったのが、改定後、看護補助者を外出しにして、普通の一般と同じように看護補助加算の夜間をつくることができました。
 そのことによって夜間看護補助を配置し、看護師だけで夜間を過ごすことがなくなったということで、職員満足度調査からも職員からの看護補助者をつけてくださったことがうれしいということと、本当に体が楽になった見守り、また、おむつ交換、食事介助等をしているという点があります。それとともに保育士も複数制の加算がつきましたので、保育士の人材もいて、早出や遅出をつけて、食事介助とケアの介助等もタスクシフトになっているという点です。
 あと、看護補助を複数置いてくれることで、お掃除などの環境整備も大分してくれるようになったということで、御家族からもすごくいい意見が出た背景があるのであろうかと思っております。
 以上でございます。
○土岐部会長 了解です。よく分かりました。
 中野委員、どうぞ。
○中野委員 川崎医大の中野でございます。
 資料の49ページについて、ちょっと教えてください。女性の総合健康センターと女性総合診療センターの冊子をつくっていただくなどして、広報に努めていただいているようですが、その反響がどれぐらいあったかということと、反響は一般の住民の方からが多かったのか、あるいは医療機関や自治体からどんな反響があったか、お教えいただけますでしょうか。
○国立成育医療研究センター小宮女性の健康総合センター長 女性の健康総合センターの小宮でございます。御質問ありがとうございます。
 私たちがこの冊子をつくって配布しているわけなのですが、どこに配っているかといいますと、医療機関、あとは各自治体でありましたり、もう一つは企業にも配っております。現在進行中なので、反響と全体的に言えるかどうかということがございます。はっきりとクリアには申し上げることは厳しいかもしれないのですが、ただ一つ、私自身が感じていることは、企業からの反響が非常に大きいと思います。
 このようなセンターができたということで、データセンターとか、OICなどもございますので、今、そのような状態かと感じ考えております。また、セミナーなども開始しておりますので、それとともにこのようないろいろな冊子をお配りして、周知活動といいますか、女性の総合診療センターができたことを広報しているような段階でございます。
○中野委員 ありがとうございます。
○土岐部会長 ほかによろしいでしょうか。松前委員、どうぞ。
○松前委員 松前でございます。御説明ありがとうございます。
 2-1についてでございます。業務の運営の効率化でAの評価は結構大変だと思うのですけれども、Aに至った根拠というか、医業未収金だと思うのですが、ここが特徴だということをお教えいただければ、この評価がしやすいところがございます。
 もう一点でございますが、寄附が大きく増えていることは大変すばらしいと思います。遺贈などもございますけれども、全体として頂いたものに対してどういったことに使ったかとか、そういった成果の報告とか、そういうことは必要だと思っていて、これは全体として情報の提供をされていると思うのですけれども、遺贈の方に対してこういったことをしたとか、そういうものがあれば、お教えいただきたいと思います。
 以上です。
○国立成育医療研究センター北澤理事 御質問ありがとうございます。企画戦略局長でございます、
 2-1につきまして特記すべきこととしては、先ほども申し上げましたが、43ページにある医師の働き方改革を私どもはかなり先駆的に取り組んできたのではないかと思っておりまして、ビーコンを使った医師の勤務実績ということで、グラフにあるとおり、80時間超えの時間があるのも効果をかなり上げていると思いますので、このあたりにかなり早期に取り組んだところを強調したいと思います。
 44ページのダイバーシティの推進という観点では、文科省の事業に3回ほど申請いたしまして、3回目でようやく採択されたこともありまして、こういったダイバーシティの推進にもかなり力を入れているということで、自己評価としてはAとさせていただきました。
 寄附の成果の報告につきましては、ホームページの寄附のところにも職員の感謝の声を掲示したり、これは一般的な話で、500万円以上の寄附の場合は、紺綬褒章という形で申請することができますので、そういったことを手続して、認められれば、遺贈していただいた方に理事長や病院長から直接お渡しして、感謝の気持ちを伝えたり、あるいは高額な寄附を頂いた方には、寄附銘板という形で形に残すようなこともさせていただいて、できるだけ寄附を頂いた方とのリレーションについては行っていきたい。
 寄附をしていただいて、メールアドレスを登録していただいた方には、寄附に関するいろいろな情報についても、メールアドレス通じて提供しているということで、リレーションについては、今後ともしっかりやっていきたいと思っております。
○国立成育医療研究センター笠原病院長 補足させていただきます。
 実際に昨年度あったのですけれども、例えば使途が決まった御遺贈の場合には、実際に昨年度あったのですけれども、ダヴィンチというロボット手術にぜひ寄付を使ってほしいということで、遺贈のお金を頂きました。御遺族から何かしらお名前が皆さんに残るようにしていただきたいということで、手前どもでロボット手術器機をダヴィンチと呼ぶのではなくて、佐藤さんとか、そのようにみんなで呼ばせていただくということで、現在、うちのダヴィンチには御遺贈された方のお名前で呼ぶようにさせていただいておりまして、御遺族も大変喜んでおります。
 以上でございます。
○国立成育医療研究センター梅澤研究所長 
 令和6年度でベビーシッター補助や学童費用補助、在宅勤務システムの整備を事務方からしていただいて、在宅勤務規程も含めて、搾乳室、休憩室を整備していただいて、もともとは女性を対象とした支援、助成、制度といったようなことなのですけれども、現実的には男性も随分と助かっておりまして、こういった面は御評価いただけると思っております。
 以上でございます。
○土岐部会長 大変楽しいお話をどうもありがとうございました。
 それでは、皆様、よろしいでしょうか。
 最後に、法人理事長と法人監事のヒアリングを行いたいと思います。
 まずは法人監事より業務の監査結果等を取りまとめた監査報告について、御説明いただくとともに、現在の法人の運営業務の状況や今後の課題等につきまして、コメントを頂戴したいと思います。
○岡田監事 ありがとうございます。成育医療研究センター監事の岡田と申します。西田監事と2人で監事を務めさせていただいております。
 まず令和6年度の監事監査の結果につきましては、お手元の資料1-4のとおりです。当センターは適切に運営されており、また、財務諸表等につきましても適切な開示が行われていると報告させていただいております。
 令和6年度の成育医療研究センターの研究、臨床等の活動は、本日御説明をさせていただきましたように、顕著な成果を出しているものと評価しております。
 また、女性の健康総合センターが10月に設立され、女性の健康、疾患に特化した研究やエビデンスの収集、情報提供などが順調にスタートしたことも評価をしているところでございます。
 女性の健康総合センターが計画どおり、そして、社会や国民の期待に応えられるように構築されるよう、我々監事もしっかり注視してまいります。
 次に、当センターの課題について、二つほど申し上げたいと思います。
 当センターの経常収支は、先ほど報告がありましたように、令和5年度に続いて令和6年度も赤字となりました。光熱費など、物価高が継続していることや少子化の影響などが原因と考えられます。
 ただ、病院を中心に行っている収益改善の取組が着実に成果につながってきておりますので、今後もそれらに長期的視点で継続的に取り組むことで、また、材料費や委託費などの費用のさらなる改善にも取組を広げることで、経常収支の改善、そして、健全な財務基盤の確保につなげていただきたいと期待しております。
 2点目は、少子化への対応です。少子化の中でも選ばれる医療機関になって、センターに求められるミッションを果たしていくためには、センターがどうあるべきかを経営陣に長期的な視点で議論、対応していただけるよう、監事としても注視していきたいと考えております。
 監事からは以上でございます。ありがとうございました。
○土岐部会長 ありがとうございます。
 続きまして、法人の理事長より現在の法人の業務運営の状況や今後の課題等につきまして、コメントをよろしくお願いいたします。
○国立成育医療研究センター五十嵐理事長 本日は、長時間にわたりまして貴重な御意見をいただきまして、誠にありがとうございました。
 2点お話しさせていただきます。一つは、経営の問題です。わが国には14の小児病院がありますが、経営状況の比較的良い施設は大阪母子医療センターと私どもの施設です。出産費用が入ってくることがその理由の一つとされます。一方、出産を取り扱わない自治体設立の小児病院のほとんどは大赤字です。毎年、多額の赤字補填が行われています。
 もう一つの問題は、入院しているお子さんたちの重症度が極めて重くなっている状況です。あまりにも重症患者さんが多いため看護師の負担が大変大きく、それが離職に繋がっている可能性があると考えております。
 小児・周産期、女性のための高度先進医療を推進し、医療的な問題を解決することが私共のミッションと考えます。そのためには、社会の支援をさらにいただけるような組織になりたいと考えます。本日はどうもありがとうございました。
 
○土岐部会長 ただいまのお二人の御発言に対しまして、御質問等よろしいでしょうか。
 それでは、国立研究開発法人国立成育医療研究センターの令和6年度業務実績評価についての審議を終了いたします。長時間にわたり、どうもありがとうございました。
○高屋企画調整官 それでは、ここで10分ほど休憩を取りたいと思います。
 
(休憩)
 
○高屋企画調整官 それでは、土岐部会長、後半の審議をお願いいたします。
○土岐部会長 それでは、議事を再開させていただきます。
 続きまして、国立研究開発法人国立がん研究センターの令和6年度業務実績評価についての審議を始めたいと思います。
 初めに、理事長から一言御挨拶をよろしくお願いいたします。
○国立がん研究センター間野理事長 国立がん研究センター理事長の間野博行と申します。よろしくお願いします。今日、お時間を頂戴しまして、誠にありがとうございます。
 この4月から理事長を拝命いたしました。私ががんセンターに来ましたのは、9年前に研究所長として赴任しました。そのときに自分に課した課題は二つあって、一つは、がんセンターの研究所を世界有数のがん研究機関とすること、もう一つは、がんセンターには中央病院と東病院と二つありますので、その両病院と一緒になって活動をして、世界の中で魅力的な創薬拠点となって、海外の新しい抗がん剤の早期のものを少しでもたくさん日本のがん患者さんに届けることが自分の使命だと考えて、活動してまいりました。
 現在、当センターには六つの部門がありますけれども、そこが一体となって日本のがん医療やがん研究、がん予防を世界に届けるだけではなくて、世界の熾烈な競争の中で少しでも早期の薬を日本の患者さんに届けるために我々は全力を尽くしたいと思っております。今日はよろしくお願いいたします。
○土岐部会長 ありがとうございます。
 それでは、まずは研究・開発の成果の最大化に関する事項、項目の1-1から1-2に関わる業務実績について、議論したいと思います。
 まずは法人から御説明をいただき、その後に質疑応答という流れで進めていきます。
 また、医療研究連携推進本部JHの令和6年度の実績評価については、各NCの共通の事項となっておりますので、医療研究連携推進部分を除いた御説明をよろしくお願いいたします。
○国立がん研究センター間野理事長 それでは、しばらくの間、私が研究所長を兼任しますので、研究の説明を私からそのまま継続してさせていただきます。
 説明資料の3ページを御覧いただけますでしょうか。これが当センターの今の各部門の概略を表した図になります。当センターでは、中央病院と東病院というがん専門の医療施設を持ち、研究所があります。
 さらにより臨床に近い後期のTR研究、特に細胞療法とか、放射性医薬品、RI医薬品の開発に注力している先端医療開発センター、我々はEPOCと呼んでいるのですけれども、それを有しています。
 図の下側にあるがん対策研究所は、がんの予防・疫学研究、さらにはがん情報を日本中の患者さんに発信することを責務として運営をしております。
 左側にはがんゲノム情報管理センター、C-CATと呼ばれているところで、日本の保険医療で行っているがんゲノム医療のデータセンターとしてがんゲノム医療を支援しています。
 先ほど申しましたように、これらの部門が一体となって世界に挑んでいきたいと考えています。
 6ページを御覧ください。評価項目1-1、担当領域の特性を踏まえた戦略的かつ重点的な研究開発の推進であります。自己評価はSをつけさせていただきました。
 今日、時間の関係で項目を絞って説明しますことをお許しください。
 8ページを御覧ください。左側のがんの本態解明に関する研究で、①国際共同研究により世界最大規模の腎臓がんの全ゲノム解析を実施であります。腎臓がんは淡明細胞型腎臓がんと言うタイプがほとんど占めています。その多くはVHLという遺伝子に異常があることが知られているのですが、VHL以外の遺伝子異常は様々で発生メカニズムはよく分かっていませんでした。
 そこで、日本を含む11か国の大規模な国際コンソーシアムを構築し、約1,000例近い腎臓がんの全ゲノム解析を行いました。がんのゲノム変異というのは、例えばCがTになったり、GがAになったりするのですけれども、ゲノムの変異のパターンは特徴的で、100種類ぐらいあるのですが、変異原物質ごとに固有の変異パターンがあることが分かっています。
 そのパターンのことを変異シグニチャー、ミューテーションシグニチャーと言うのですけれども、どの変異パターンがどのがんに多いかということが調べられているのですが、今回、腎臓がんのデータで調べたところ、驚いたことに日本人にだけ認められる変異シグニチャーが日本人の腎臓がんの約7割に存在することが分かりました。
 つまり日本人固有の食生活とか、あるいは生活習慣、もしかしたら生まれつきの遺伝的なバリアントもあるのかもしれませんけれども、そういうことが日本人の約7割の腎臓がんの原因となっていることが分かってきたわけです。現在、その変異パターンを起こしている変異原物質は何なのかということを解析していると伺っております。この解析結果は科学誌の『Nature』で発表されました。
 9ページを御覧ください。左側の③テロメラーゼ逆転写酵素がこれまで知られていなかった機序でがん化を促進することを発見であります。ヒトの染色体は46本あるのですけれども、紐状の染色体の両端のことをテロメアと言います。
細胞は分裂するたびにテロメアがだんだん短くなっていくので、それを逆に伸ばして元に戻す酵素としてテロメラーゼが知られています。
 当センター研究所の増富博士らは、テロメラーゼが染色体の末端のテロメアを伸ばす活性以外にも新しくRNA配列依存性にRNAをつくる酵素活性があることを見つけました。しかもそのRNA依存性のRNA合成酵素活性、RNAポリメラーゼ活性ががんの生存に必須であるという新しい発見をしたわけです。言い換えると、テロメラーゼのRNA依存性RNAポリメラーゼ活性を阻害するようなものが新しいがんの薬剤になるという可能性が示唆されたわけです。この成果は『Nature Cell Biology』誌に発表されました。
 11ページ、左側で再発・難治性悪性脳腫瘍に対する日本初の新規放射性治療薬64Cu-ATSMの安全性・有効性を確認であります。先ほど申し上げましたように、当センターでは、日本における放射性医薬品、RI医薬品の開発に注力をしております。そこで、当センターと量子科学技術研究開発機構、QSTと呼ばれますが、そこと共同開発をして、新しく銅の元素の放射性同位元素をカップルさせたATSMという化合物の開発をしました。
 これは低酸素とか、低グルコース、ブドウ糖が低いところにトラップされる特性を持っていて、それに放射性同位元素をつけてやると、トラップされたところでβ線を発して、その周囲の細胞を殺すものです。
 これを量子科学技術研究開発機構と共同で開発をして、それを人間に初めて投与するファースト・イン・ヒューマンを我々がんセンターの病院で行いました。図上に書いてありますように、第Ⅰ相試験の結果で56%ぐらいの有効性を確認されましたので、現在、薬事承認申請に向けた大規模な第Ⅲ相臨床試験に移行しています。
 このようにして、日本では医薬品の開発が遅れていますけれども、何とか日本で医薬品開発を自分たちで行いたいと考えて、活動をしております。
 12ページを御覧ください。左側の4番、アンメット・メディカル・ニーズに応える新規薬剤開発に関する研究の①日本人でのゲノム解析から創製された新薬が難治がんである胆道がんの治療薬として承認であります。当センター研究所の柴田博士らは、日本人の胆道がんのゲノム解析をして、FGFR2という酵素の遺伝子が遺伝融合を起こして、胆道がんの原因となることを見つけました。
 そこで、エーザイ株式会社との共同でFGFR2の阻害薬の開発を行って、さらに当センターの両病院が中心となってFGFR2融合遺伝子陽性の胆道がんに対する治験を行い、その結果をもって承認申請を行い、昨年の9月に製造販売承認を取得したものであります。
 これなどは治療標的の発見から化合物の共同開発、治験、そして承認まで、一番最初から実用化までを一つのセンターで行えるということが当センターの強みではないかと考えています。
 同じページの右側を御覧ください。②国内初の造血器腫瘍遺伝子パネル検査ヘムサイトの製造販売承認であります。これまで日本ではがんゲノム医療が行われてきましたが、そこで使われるがん遺伝子パネル検査は、肺がんとか、大腸がんとか、一般のがんである固形腫瘍に対するパネル検査でした。しかし、白血病とか、悪性リンパ腫といった造血器悪性腫瘍に対するがん遺伝子パネル検査はなかったような状態でした。
 そこで、当センター研究所の片岡博士らを中心として、日本初の造血器腫瘍がん遺伝子パネル検査の開発に乗り出しました。オールジャパンの開発体制をしいて、さらに大塚製薬が臨床性能試験をやってくれることになって、実際の臨床性能試験を行い、ついに今年の3月に薬事承認、製造販売承認が取得されました。
 今年度になって広く日本で造血器腫瘍の患者さんがそのパネル検査を用いて診断を行うにいたりました。世界でも造血器腫瘍のがん遺伝子パネル検査は極めてまれですので、そのようなものが日本から発出されたことは意義が大きいと考えております。
 13ページを御覧ください。左側の③再生細胞医薬品国内開発エコモデルの構築であります。再生細胞医薬品では、例えば細胞療法とか、CAR-T療法などもそうですけれども、そういう再生細胞医薬品というのは、日本では薬の純度レベルで、GMPレベルで薬剤を開発してくれるところ自体が極めてほとんどない状況ですので、それを私たちは何とかしたいと考えています。
 柏キャンパスの東病院とEPOCを中心として再生細胞医薬品のスタートアップベンチャー企業、それから、薬品をGMPレベルでつくってくれるCDMOをそこに呼び込んできて、さらに海外のベンチャーコミュニティーと緊密な連携を取って、日本で開発したものを海外の治験、あるいは海外で開発したものを日本で治験できる体制をつくって、細胞療法に関してもドラッグ・ラグ/ドラッグ・ロスの克服に挑んでおります。
 時間の関係で、15ページを御覧ください。これは当センターにおける論文の発表総数と周りからたくさん引用されている高被引用論文の数を並べたものです。
 上側の表のところにありますけれども、論文の総数は、2024年で1,167報でした。2023年は少し減りましたけれども、2024年は再び増加に転じております。2024年の時点で国内第4位の発表論文数になっています。総発表論文数は研究員の数にある程度比例しますので、私たちとしてはむしろ質の高い研究成果を出すことに注力しています。
 その目安としては、高被引用論文数が世界でよく使われる目安で、これは他の論文からたくさん引用されている論文の中でも特に多く引用されている、上位1%の論文の数を比べたものです。
 右の図がそのグラフになりますけれども、赤字の折れ線グラフである当センターががんだけではなくて、全医療分野における高被引用論文数でこの6年、常に日本一を継続していますので、やはり質の高いがん研究が当センターから発せられていることがお分かりいただけると思います。
 次のページ以降は、JH、医療研究連携推進本部の業績とか、内容ですので、後にJH本部長の先生から御発表いただけると考えています。
 飛ばしていただいて、23ページを御覧ください。評価項目1-2、実用化を目指した研究開発の推進及び基盤整備です。こちらでも自己評価をSとさせていただきました。
 25ページを御覧いただけますでしょうか。こちらではがんゲノム医療の基盤整備、①がんゲノム情報管理センターC-CATの体制整備について、概略を述べております。日本は2019年から国民皆保険の下でがんゲノム医療がスタートしました。そこでパネル検査を受けた患者さんの臨床情報とゲノム情報を集約するデータセンターとして、C-CATが設立されました。
 C-CATでは、各患者さんの変異パターン、変異リストに合うような臨床試験をレポートとしてまとめて、各病院にお返ししています。また、集まってくるデータは、ある意味日本の宝物ですから、そのデータを公正な形で様々なアカデミアや企業の方が使えるようにして、日本及び世界のがん医療を前進させることに役立ててほしいと願っています。
 下に折れ線グラフがありますけれども、赤い折れ線グラフがC-CATに集まってきたデータの総数を表していますが、今年の3月31日現在で約10万例のデータが集まっていて、最新の7月末現在では11万例というデータが集まっています。
 これはアメリカのデータベースと並んで世界最大のデータベースなのですけれども、アメリカのデータベースには使っている薬の情報が入っていないので、実際に役に立つデータベースとしては、質・量ともにC-CATのデータが世界一だと考えられます。
 そのデータは既に様々な方に使われていて、ページの右側の上のほうにも書いてありますけれども、2025年3月の時点では計125の研究グループに使われています。特に19の製薬企業に使われていて、今は20社になっているのですけれども、それだけたくさんのがんの製薬をする製薬企業に使われて、薬剤の開発に役立っています。
 しかも、C-CATのデータを用いて薬事承認、薬の承認申請をして認められた抗がん剤が2種類出てきました。つまりC-CATのデータは、臨床判断に役立つレポートがつくられているだけではなくて、研究開発にも使われていて、しかも、薬事承認にまで使われるようになっていて、日本のがんゲノム医療は順調に拡大しているのではないかと考えております。
 ページ26で左を御覧ください。バイオバンク、データベース、コア・ファシリティーの充実で、患者情報を附帯したJ-PDXライブラリーの作成・利用体制の促進であります。
 患者さんの腫瘍を生きたまま取り出して、それを免疫不全ネズミの背中に植え、継代していくシステムのことをPatient Derived Xenograft、PDXマウスと言います。
 過去にがんの薬剤開発には、培養細胞、細胞株が使われていたのですけれども、そこで薬が効くか効かないかという情報は、実際の患者さんの臨床に使ったときの有効性の予測性能が5%にすぎないということが分かってきていまして、あまり当てにならない。ところが、PDXを使って薬効の評価をすると、臨床の患者さんとの一致率が5割とか、8割とか、すごく高い確率で予測可能です。
 そこで、私どもは様々な製薬会社と日本で薬の開発をして、日本で治験をしてもらうことを目指して、PDXを精力的に拡大してまいりました。そこに書かれていますように、昨年度末で約700株のPDXの樹立に成功しまして、これは世界のアカデミアで最大です。特に我々のPDXは全て両病院の患者さんの腫瘍からつくっていますので、患者さんの電子カルテの情報が附帯しているのです。このPDXはどういう薬を使って効いたとか、効かなかったとか、再発したとか、そういう細かい情報がついているPDXは世界でここしかありません。
 PDXライブラリーの数が400を超えたぐらいから、たくさんの製薬企業が声をかけてくれまして、現在、まだ世の中に出ていない彼らの化合物のスクリーニングをPDXを用いて行っています。それで効くがん種とか、効くバイオマーカーなどが見つかったら、日本で臨床試験をやってもらうように説得して、その活動を行っております。既に臨床試験が始まったものもありまして、一つ、エーザイ株式会社の薬剤が公開されているところです。
 ページ27を御覧ください。左側で産官学の連携・ネットワークの構築です。
 ①臨床導出を目指した放射性医薬品(RI医薬品)の国内開発であります。先ほど申しましたように、日本は放射性医薬品の開発が遅れているので、我々としてはがんに対するRI医薬品をぜひ自分たちで開発したいと考えています。
 その目的のために、EPOCが日本原子力研究開発機構(JAEA)と共同研究を広範囲に行うことによって、日本のRI医薬品の開発を精力的に進めております。前臨床試験を行うためにEPOCのRI実験をするための改修ですとか、さらには築地の研究所で、先ほど申しましたPDXマウスを使ってRI医薬品の有効性を検証することも目的として、今、研究所の改修も行っているところであります。こうして日本においてRI医薬品をつくるハブになるように、現在、努力しているところです。
 ページ28を御覧ください。左側です。③4者連携での新しいDCT実施体制によるがんに対する第Ⅰ相臨床試験の開始であります。これも大事なことだと我々は考えているのですけれども、臨床試験は早期のものであるほど、それが実際に行われる病院は限られていて、患者さんが住んでいるところによっては、アクセスが非常に難しいことがたくさんあります。それを克服するために、これからはDCT、Decentralized Clinical Trial、分散型臨床試験、あるいは遠隔臨床試験、そういうシステムをつくることが必要で、そのためには患者さんの臨床データを安全に共有するようなシステム開発が必須です。
 そこで、今回は中外製薬とIT企業、そして、私たちの病院が臨床試験のハブで、遠隔地の臨床試験の病院として、今回はそこにありますように大阪医科薬科大学病院に入っていただいて、第Ⅰ相のDCT、分散型臨床試験をスタートしました。今のところ、第Ⅰ相臨床試験が順調に推移していますので、こういうインフラをつくっていくことは、日本のこれからの臨床試験の在り方に非常に大きな意味を持つと考えています。
 そろそろ時間になりましたので、最後のページを御覧ください。30ページになります。左側で②アジア主導の開発へ向けたネットワーク構築と新薬開発であります。これから日本の人口が減っていくと、臨床試験を開発するのに日本だけで単独でやるのには限界が出てくる可能性があります。
 そこで、我々は、特に東南アジア、この図にありますように、タイとか、ベトナムとか、マレーシアなどは、今、人口が急速に伸びていますので、そこと連携をして大きな医療圏、バーチャルな医療圏をつくって、創薬開発もするし、ゲノム医療も行うという活動をやっています。
 今、ATLAS Projectと名づけているのですけれども、タイのバンコクにがんセンターの支社を設けて、現在、そこを中心にして、早期の臨床試験を行うバーチャルな大きな医療圏を作る活動を実施しています。10月にはタイのバンコクの支社の5周年記念のシンポジウムが開催される予定になっています。
 このような努力によって、右側のグラフにありますように、企業治験件数も国際共同治験件数も非常な勢いで伸びています。国際治験はほぼ2倍にこの6年でなっておりまして、現在の我々の活動がだんだん実を結んできているのではないかと考えております。
 以上です。どうもありがとうございました。
○土岐部会長 大変すばらしい研究成果を紹介していただきました。ありがとうございます。
 委員の先生方から御質問等はございますでしょうか。
 まずは私からですが、一番最初の全ゲノムの腎がんの遺伝子の話なのですけれども、最近、大腸がんでも大きな発表をされていますが、日本人だけみたいな遺伝子変異パターンがあるそうですが、こういったものは本当に日本人だけの環境要因があるのか、日本人だけの遺伝子多型があって、それがさらに二次的にこういう変異を起こしているのか、どちらなのか我々も分からないのですけれども、これは日本人だけの環境要因があると考えていいのでしょうか。
○国立がん研究センター間野理事長 本当のことは分からないのですけれども、個人的にはもし日本人の遺伝的バックグラウンドでこれが起きているとすると、ほかのがんでも同じ変異シグネチャーが見つかるのではないかと思います。でも、SBS12という変異シグネチャーは、腎臓がんにだけ、日本人にだけ見つかっているので、やはり日本の生活習慣のどこかに腎臓に対して変異原になるような物質があるのではないかと思っています。我々の生活習慣、もしくは食べ物かもしれませんし、そういう多くの人がアクセスするような食習慣の中にこの原因があるのではないかと個人的には考えています。
 ただ、今回、11か国の国際コンソーシアムで、アジア地域はうち以外に香港しかないのです。もしかしたら、韓国とか、台湾などにも同じようなシグネチャーがあるかもしれないので、どれが原因かというのは今の段階ではまだ分からないのですけれども、それは疫学的な解析とともに、SBS12という変異は何によって起きるのかという生化学的な研究も行っているところです。
○土岐部会長 研究の発展を大変期待しております。ありがとうございます。
 前村委員、どうぞ。
○前村委員 長崎大の前村でございます。
 世界に冠たるデータベース、ライブラリーを持っていて、あと、病態の解明でも先進的なことが進んでいるということに感銘を受けました。
 今の土岐先生の御質問とも同じだったのですけれども、それに関連して、この図を見ると、ルーマニアも非常に特異的なパターンを持っているように思うのですが、これも特徴的なことがあるのかというのが一つです。
 あと、C-CATは10万人のデータがそろっていて、非常に先進的だと思いますけれども、これは企業も使っていらっしゃるということですが、その場合、使用料を取って、それが外部資金の獲得などにもかなり役立っているということはあるのでしょうか。
○国立がん研究センター間野理事長 ありがとうございます。
 ルーマニアも特徴的な変異シグネチャーが出ています。ルーマニアの中では、細かく地域ごとに、どこの地域の患者さんなのかということの情報と合わせた解析がされていて、地域によって変異シグネチャーに偏りが多いということが分かっています。やはりそれぞれの国の固有の食事とか、生活習慣ががんの原因になっているのではないかと考えられます。
 それから、C-CATのデータを企業が利用する際の利用料ですが、おっしゃるとおり、800万を切るような値段を1年間で頂いています。この利用料は、がんではないのですけれども、例えばGenomics Englandというイギリスがやっている全ゲノムの解析の利用料とほぼ同じですので、世界的にもスタンダードな利用料ではないかと考えています。
 以上です。
○前村委員 ありがとうございます。
○土岐部会長 続きまして、神﨑委員、どうぞ。
○神﨑委員 杏林大学の神﨑と申します。
 毎年、がんセンターはすばらしい業績・実績を出されていて、今年もまた輪をかけてよく分かりました。
 私はがんが専門ではないので、素人的な質問になりますけれども、12ページのヘムサイトのところですが、これは実際に大塚製薬で製品として販売されているようなのですが、この使い方についてなのですけれども、真ん中辺に遺伝子異常による診断、治療法選択、予後予測が可能となると書いてあります。一番下にあるような、まさにがんを専門としているような施設であれば、独自に診断、治療法選択、予後予測ができるような気がするのですけれども、逆にこういったスペシャルなセンターではないところがこのパネルを利用した場合、どのような形で情報を返すのか。治療法選択とか、予後予測というのはかなり重大なインフォメーションになると思いますので、そのあたりのところを具体的に教えていただけるとありがたいです。
○国立がん研究センター間野理事長 ありがとうございます。
 先生が御指摘のように、単に治療法の選択ではなくて、診断や予後予測まで含むところが造血器腫瘍のがん遺伝子パネル検査の特徴だと思います。例えば11番染色体長腕の転座とか7番染色体が一本しかないとか、そういうことも白血病の予後の予測には大きな役割を持っています。
 C-CATとしては、調査結果を介して治療薬の選択のリストをつくっているのですけれども、同時にこの活動と連動して、例えば先ほどの染色体異常と予後予測ですとか、こういう変異があったら何を考えるべきかとか、日本血液学会が百科事典みたいなものを協力してつくってくれているのです。ですから、血液学会がつくったガイドラインに沿って、大塚製薬はレポートの一部をその情報を利用してつくっています。
 一方、C-CATの調査結果からの情報は、変異リストに応じた治療薬、保険収載薬とか、保険外の適応薬とか、日本での治験の情報とか、そういうものが入っているので、両方を使って実際には臨床に応用されていると考えていただければいいと思います。
○神﨑委員 御説明どうもありがとうございました。
○土岐部会長 ほかにございませんでしょうか。
 皆様、大分ちゅうちょされていますので、私からですが、高齢者のがんの化学療法の話が14ページにございまして、高齢の大腸がん患者さんに対する標準治療は3剤ではなくて2剤ということで、臨床側は多分皆そうなのだろうと感じておりましたけれども、実際にちゃんと臨床試験で示していただきまして、大変ありがたいと思っております。
 ただ、今後ずっと年齢のカットオフでやってしまってよいのか。もちろん年齢がいっていてもお元気な方がおられるので、臓器機能とか、総合的な評価、フレイルとか、そういう評価で区切ったほうがいいのか。年齢のほうが区切りやすいのですけれども、これはみんなで考えていかなければいけないことなのですが、そういった研究にぜひ取り組んでいただけると我々は非常に助かるので、何を指標に、どこかで治療を弱くしていかなければいけないというのは感じていますので、ぜひまたお願いいたします。
○国立がん研究センター間野理事長 おっしゃるとおり、高齢者に対する治療の最適化、エビデンスの創出というのは、特に日本においては必須なことだと考えています。私もいつの間にか66歳になって、若いと思っていたのですけれども、そんなことはなくなったので、土岐先生がおっしゃったように、単に年齢でいいのか、それともPS、あるいは各臓器の能力に応じた治療薬の最適化、そういうことは必ずやっていかないといけないので、厚労省からの研究開発費も含めて、そういうスタディーはこれからたくさんやっていきたいと考えています。
○土岐部会長 よろしくお願いいたします。
 先生方、ほかによろしいでしょうか。
 それでは、こちらについては、以上としたいと思います。
 続きまして、JHのほうに移らせていただきます。医療研究連携推進本部についての御説明をいただきまして、それをディスカッションしたいと思います。
 まずは御説明をよろしくお願いいたします。
○国立高度専門医療研究センター医療研究連携推進本部 植木本部長 国立高度専門医療研究センター医療研究連携推進本部長の植木から御説明させていただきます。
 16ページを御覧いただければと思います。そこにJHの現在の概要がございます。
 1.にございますように、現在、JHは各NCからのクロスアポイントメントの職員38名によって構成されておりまして、NCGM内に事業所を設置しております。
 38名は右下の図にございますように、データ基盤課、共同研究課、知財・法務課、広報課、人材育成課の五つの部署に配置されておりまして、また、JH内には本年度に実際の事業が開始されます全ゲノム解析等事業実施準備室も併設をされているところでございます。
 JHのミッションは、既に御存じかと思いますけれども、世界最高水準の研究開発・医療を目指したイノベーションを創出するための研究の支援を行うこと、また、それを基にした医療技術の開発・実装を促進することでございます。
 事業の進め方といたしましては、JHの事業計画に基づきまして、6NC理事長会議の下で事業を推進しているところでございます。
 1ページおめくりいただきまして、JHの事業計画には、ここにございます①~③の項目がございます。
 ①は新たなニーズに対応した研究開発機能を支援・強化ということで、その中の六つの例を挙げておりますけれども、1.は後ほど申し上げます横断的研究推進費課題の一つであります電子化医療情報を活用した疾患横断的コホート研究情報基盤でして、中高年の各種飲料の摂取と鬱の関係を見いだしまして、発表しております。
 また、これも同じく横断的研究推進費課題の一つですけれども、各NCが担当する疾患について、NDBを用いて解析を行っております。その中の一つといたしまして、我が国の糖尿病薬として最も使用されているDPP-4阻害薬であるシタグリプチンという薬がありますけれども、この製造過程でニトロサミンという、発がん作用の可能性があるものが混入していることが分かりまして、これが本当に安全であったかどうかということをNDBで検証いたしまして、がんの増加は全くないということを発表し、その後、製造過程が改善されまして、現在も販売を続けられているところでございます。
 各NCの電子カルテの情報を統合して、それを臨床研究に役立てるために、6NCの統合電子カルテデータベース、6NC-EHRsを構築しておりますが、現在、92万例が集積されておりまして、これを活用するためのパイロット研究もスタートしているところでございます。
 もともとは横断的研究推進費課題の一つとして出発いたしました、VISIUMによります空間的情報を加味した1細胞組織発現解析につきましては、6NCの要望に応じたサービスをする事業として展開をしておりまして、各研究の発展に寄与しているところでございます。
 研究支援人材の育成につきましては、特に各NCで不足している生物統計家につきまして、オン・ザ・ジョブ・トレーニングを行っております。既に2名の方が生物統計家として育っておりまして、現在もその育成を続けているところでございます。
 さらに6NC共通教育プラットフォームにつきましては、疾患領域横断的な人材育成のために、各NCに策定いただきました教育・研修コンテンツの配信をしております。
 ②の6NC連携で効果的な研究開発が期待される領域の取組を支援・強化でございますけれども、先ほども申し上げました横断的研究推進費課題ですが、1課題5000万円程度で6NCが共通して取り組む課題についてファンドしておりまして、その進捗を管理しているところでございます。令和6年度時点で14課題について進捗管理をしておりまして、今年度開始の課題につきましても、4題を採択いたしました。
 さらに45歳以下の若手の研究者につきましても、2年間のグラントを授与しておりまして、昨年度時点で26課題の進捗管理をしておりまして、令和7年度につきましては、12課題を新たに採択いたしました。
 全ゲノム解析等事業実施準備室につきましては、臨床・患者還元支援、解析・DC運営、利活用支援、IT・情報基盤・セキュリティー、ELSI、総務の6チームを編成いたしまして、本年度の事業開始に向けた検討をしているところでございます。
 ③でございますけれども、これらの研究の支援、そして、実際の実装に向けての知財・法務相談の窓口を設けておりまして、また、併せてNCの職員に対する知財に関する知識の普及を行っているところでございます。昨年度は特にMTAに関する理解を促進するために、映像資材を作成いたしまして、ICRweb上に提供しているところでございます。
 また、JHが支援する研究の促進、英語化の支援のため、Grammarlyというアプリケーションにつきまして、各NCの職員に対して配付をいたしました。
 また、6NCリトリートを2023年度から開始しておりまして、昨年度はNCGMで開催いたしまして、320人が参加をいたしました。発足から5年ということで、これまでの活動をJHの業績集にまとめて、各方面に配付をしたところでございます。
 1枚おめくりいただきまして、各項目につきまして、補足的資料が以下のページにございます。
 先ほど申し上げました①、6NC-EHRsでございますけれども、各NCで違った電子カルテベンダーを使っておりますが、SS-MIX2に病名、処方データ、検査データを統合して、これを臨床研究に使っていただくという基盤を整備しているところでございます。
 そして、これを多くのNC以外の方にも使っていただくために、現在、6NC-EHRsのショーケースを準備いたしまして、NC内で使用して問題がないことを確認いたしました。これは記述的なデータだけですけれども、どのような疾患が何名いるというデータにつきまして、今月中に見ていただけるようなものを公開する予定にしております。
 ②はICRwebのことでございますけれども、表にありますような各NCが担当する疾患、あるいは得意な分野に関してのコンテンツのほかに、一番下の行にございますように、6NC共通で知っておくべき動物実験の研修のコンテンツ等をアップしているところでございます。
 1枚おめくりいただきまして、③は先ほど申し上げましたNDBの研究について記載をしております。
 ④ですが、この写真は昨年の5月に行われました6NCリトリートの様子を写しております。320名が参加をいたしまして、上位のポスターセッションの発表者につきましては、このような表彰もしているところでございます。
 右下にございますのが業績集でございます。
 1枚おめくりいただきまして、⑤が知財・法務課の事業でございまして、各NCからの知財・法務相談に乗るとともに、先ほど御説明いたしました研究者が知識として知っておくべきことにつきまして、ICRweb上にコンテンツをアップしているところでございます。
 ⑥は全ゲノム解析等事業に向けた準備室の構成について書いております。
 次のページを御覧いただければと思います。これまでの各パラメーターをグラフ化したものでございますけれども、6NC-EHRsにつきましては、年度ごとに症例数が増えておりまして、昨年度時点で92万を超えておりまして、今年度は恐らく100万症例に達するものと思っております。
 JHのウェブページにつきましては、昨年度、6,000ページ・パー・ビュー・マンスを目指しておりましたけれども、それは達成しておりまして、昨年度トータルで10万4655ページビューになっております。
 6NC共通の教育用のコンテンツの総視聴者数は2万3192になっています。
 右下がJHの研究費の支援を受けました英語論文の各年度における総数ですけれども、昨年度は令和5年に比べてやや減っておりますが、緑色でお示ししましたトータルインパクトファクターにつきましては、さほど減っておりませんで、1論文当たりのインパクトファクターはむしろ上昇しているかと思います。
 最後のグラフですけれども、これはJHの支援を受けた事業が新規に獲得した競争的資金でございまして、令和5年度は飛躍的に伸びて30億6700万円でしたが、昨年度も非常に順調に資金を獲得していただきまして、26億2800万円の外部資金を獲得しているところでございます。
 以上でございます。
○土岐部会長 ありがとうございます。
 ただいま説明していただきましたJHにつきまして、御質問等はございますでしょうか。中野委員、どうぞ。
○中野委員 川崎医科大学の中野でございます。
 詳細な御説明をありがとうございます。
 1点、御質問させてください。NCGMがJIHSになったことによって、JHとしては今後大きな変化があるのかどうかということについて教えてください。
 例えば21ページの英文論文に関しましては、こちらにこれまでのNIID、国立感染症研究所の論文を含めることになると、増えることになるわけですが、そこは病院のものとNIIDのものと別にカウントするのかとか、現状では令和6年度でございますので、まだ一緒にはなっていないわけでございますけれども、そのあたりの今後のことを教えていただいてもよろしいでしょうか。
○国立高度専門医療研究センター医療研究連携推進本部 植木本部長 16ページの図でいきますと、国立高度専門医療研究センターからナショナルセンターという名前に変わっておりますけれど、NCGMがJIHSという形で事業は継続されております。ただ、今後、例えば事業所をどこに置くとか、内部の様々な組織につきましては、来年度に向けまして、現在、どのように進めるかを理事長の先生方を中心に協議をしていただいているところでございます。旧感染研の部分につきましても、JIHSとしてJHの中に入ることは了承されております。これまでも各NCの病院と研究所を合わせた全ての論文をこのグラフには入れさせていただいておりますので、来年度以降は旧感染研の研究部門の論文も含めて、ここに入れさせていただくことになろうと思っております。
○中野委員 ありがとうございます。よく理解できました。
○土岐部会長 続きまして、前村委員、どうぞ。
○前村委員 長崎大の前村でございます。
 20ページの全ゲノム解析事業のことについて、お伺いさせてください。全ゲノムの解析は、今までも各NCが自分の得意分野で行っていると思うのですけれども、これとJHの関係は、読んだものを一緒に解析しようというコンソーシアム的なものなのでしょうか。どういう位置づけになるのでしょうか。
○国立高度専門医療研究センター医療研究連携推進本部 植木本部長 これに関しましては、JHに置かれているのは全ゲノム解析事業の準備室でございまして、今後はこれがNCCの中で別事業としてスタートすると承知しております。
○前村委員 別事業として、全ゲノムの解析は今でも各NCで行われていると思いますけれども、どうなのでしょうか。
○国立がん研究センター間野理事長 NCCの理事長の間野です。
 ダイレクトには関わっていないのですけれども、私が承知している範囲内で申しあげますと、これまではAMEDに全ゲノム事業用の予算が下りて、AMEDに様々な方々が申請されて、ここ何年か全ゲノム解析が大規模にされてきたと思います。ですので、全ゲノム事業はNCとしての事業というよりは、NCを含めて、様々な日本の研究者たちが集まって、AMEDの下でがんとか、難病などに関して大規模に全ゲノム解析がされてきました。そのデータの利活用とか、今後の利用の方向については、それを束ねる新しい事業実施組織ができると考えられていて、そのための準備室が今NCCにつくられるところでございます。
 戻りますと、全ゲノムの解析自体はNCが持っているものというよりは、もちろんNCもそれにコントリビュートしているのですけれども、日本の研究者に対して難病とがんの全ゲノム解析を大規模に行おうということで予算がおりて、AMEDにおいてそれが実行されてきたと理解しています。
 以上です。
○前村委員 ありがとうございます。よく分かりました。
○土岐部会長 ありがとうございます。
 ほかによろしいでしょうか。
 それでは、医療研究連携推進本部、JHについては以上とさせていただきます。
 国立がん研究センターのほうに戻りたいと思います。
 続きまして、1-3から1-5、医療の提供とその他の業務の質の向上に関する事項につきまして、まずは法人から御説明いただき、その後、質疑応答をしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○国立がん研究センター瀬戸中央病院長 中央病院の瀬戸でございます。
 まず私から、1-3、医療の提供に関する事項を紹介させていただきまして、その後、土井病院長から東に関することは紹介していただきます。
 この項目ですけれども、自己評価はSとさせていただきました。
 31ページを御覧ください。指標の達成状況ですけれども、いろいろな目標がありますが、セカンドオピニオン、栄養サポート、緩和ケアチーム、外来化学療法実施数等、いずれも目標を達成していると考えております。
 また、下のほうにあります、手術件数、病床稼働率、平均在院日数、1日平均入院患者数も、中央・東ともにほぼ満足すべき数字であったと考えております。
 33ページを御覧ください。これは先ほど理事長から話がありましたけれども、国立がん研究センターでは、アイソトープ、いわゆる放射線医薬品を非常に重要視しておりまして、EPOC等がそれを担っていることになります。
 右のほうに行きまして、実際にそれをどうやって使っているかという話になりますけれども、世界初の固体リチウムターゲット、BNCT用中性子照射装置を開発して、2019年から皮膚悪性腫瘍、あるいは血管肉腫等を対象とした臨床試験を開始しております。血管肉腫に対しては10例終了いたしまして、来春、薬事申請の予定であるということと、こういった治療についてのガイドラインを、今、作成しています。がんセンター中央病院が中心となって作成しているということは、申し上げることができます。
 その下にアイソトープ治療とありますけれども、膵の神経内分泌腫瘍に対するルタテラは既に250例行っておりますし、褐色細胞種・パラガングリオーマに対するライアットという治療も既に30例ぐらい、中央病院では行っているということが紹介できます。
 34ページに行っていただきまして、左はctDNAの有無で大腸がんの予後が違うというものでございます。恐らく先ほど土岐先生が指摘された研究結果だと思いますけれども、今、JCOGではこれを踏まえて新たな臨床試験を検討しているということで、大腸がんの治療も新たな展開が生まれるものと考えております。
 右へ行きまして、患者申出療養でございます。これは未承認薬、あるいは適応外使用となる薬を患者さんの申出によって使いましょうということで、BELIEVE試験、あるいはPARTNER試験があって、それぞれ相当の患者さんに使っていただいています。
 特にPARTNER試験は、小児・AYA世代の患者さんでありまして、薬剤が少ないということもあって、これまでは実施機関が中央病院の1施設だったのですけれども、これを全国5施設に拡大して、東京だけではなくて、地方でもいわゆる小児・AYA世代の方々が治療を受けられるような体制を整えているということでございます。
 35ページになります。左はロボット手術です。そこに書いてありますように、中央病院ではロボット手術・開発センターを設立いたしまして、令和6年度においては、ロボット手術件数が前年度比1.4倍となる643件ということで非常に増えております。
 ロボットにもいろいろな機種があります。先月、最新の第5世代のロボット手術が日本に入りまして、いち早く中央病院にも入りまして、実は来週から実際の臨床運用を開始する予定でございます。
 右へ行きまして、IVRという放射線を使った低浸襲治療であります。写真で紹介しているのが肺転移に対するIVR治療でありまして、既に中央病院では100件以上、IVRで肺転移治療を行っておりまして、もちろんこれだけではなくて、いわゆるSRTと言われる放射線治療と併用することによって、肺転移になった患者さんに対しても低浸襲で根治を目指しているということを紹介できると思います。
 36ページになります。これは後で東病院の土井先生から紹介があると思います。
 右は希少がんです。これは人口10万人当たり発生が6人未満という、本当に希少ながんでありますが、ただ、がんの患者さんの総数を合わせると20%ぐらいになるということで、非常に重要ながんであります。
 がんセンター中央病院では、先日、希少がんに対して新たな分類を発表いたしまして、これはメディアでもかなり取り上げていただきました。そういったものですと、なかなか薬剤に到達しにくいということで、MASTER KEYプロジェクトといって、レジストリー、患者さんを登録するということと、その登録は既に5,000例近いのですけれども、あとは薬品会社の協力を得て、いろいろな治験を行っているということで、今まで適切な治療が少なかった希少がんの方々にも治療を届ける体制を整えているということになります。
 37ページになります。左側が、今、申し上げた希少がんの患者さんですが、なかなか情報が入りにくいとか、困っている患者さんが多いので、我々のところでは、オンラインを利用したオンライン希少がんMeet the Expertということで、いろいろな専門家の方の講演を聴講できるとか、右側はホットラインといって、どこに相談していいのかなかなか分からないので、電話相談なのですけれども、令和5年度は約3,000件近い相談を受けている状況でございます。
 その下は、先ほど申し上げたPARTNER試験になります。
 右側はがんとの共生を支援するということで、病院の中にがんサポートセンターを設けました。ワンフロアがほぼサポートセンターで、その中でいろいろな相談を受けているということで、就労支援であるとか、退院後支援であるとか、そういったことに取り組んでいるということで、全人的なサポートを行うことに努めております。
 38ページです。医療の質の向上ということで、土井先生とも相談いたしまして、東と中央は今までいろいろなデータを共有することがなかったのですけれども、今は医療の質、あるいは経営、診療の質等を含めてシェアすることによって、お互いにいいところを伸ばしていこうという体制を整えています。
 右側はより安全な医療体制の提供ということで、ラピッドレスポンスシステムを使って、急変の手前で発見して対応することができるようなシステムを整えているということで、少なくとも患者さんにより安全でかつ高度な先進的な医療を届ける体制に努めているということでございます。
 私からは以上です。
○国立がん研究センター土井東病院長 東病院の土井から、少し戻っていただきますけれども、補足もしくは追加の説明をさせていただきます。
 33ページにお戻りください。中央病院・東病院で協力しながらRLTの開発をしていますが、特に注目すべき部分は、海外では行われていたフェーズ0、通常、患者さんに投与する一番最初の試験をフェーズ1と言いますけれども、マイクロドーズの形で投与するものは日本でほとんど行われていません。中央病院と東病院で協力しながら、フェーズ0の体制を日本で初めて行いました。結果的に、今後、いわゆる海外のRLTのシーズが遅滞なく日本にも入ってくると考えられます。
 36ページを御覧ください。左側の上段ですが、通常、前立腺の手術、膀胱の手術をすると、いわゆる男性機能の喪失、もしくは排尿障害が起こってくることが分かっています。それに対して、脂肪幹細胞、患者さんの脂肪組織から取ってきた幹細胞を移植することによって、その機能が早期に改善したり、回復するということが分かっております。ただ、今まではGMP対応、いわゆる規制の中で十分にやってこられていない部分がありましたので、東病院では、今後、確実に医療として提供できるように、案確法並びに特定臨床研究で行っています。
 下段へ行って遺伝子治療です。遺伝子治療は、多くの場合、アカデミアの先生たちが中心でやっておりますが、ここにお示ししているように複数の治験を実施しております。このため、いわゆるカルタヘナと言われている、ウイルスを拡散してはならないという規制の中でやっておりますので、人畜共通の感染ウイルスも用いますので、厚生労働省だけではなく農林水産省や環境に関わる省庁との交渉をしながら、そのマニュアルをアカデミアの先生たちに共有させていただいています。
 37ページの右、がんとの共生については、先ほど瀬戸先生からも御説明がありましたけれども、特にがんの患者さんの場合、就労とがんの治療との両立が非常に難しくなっております。この点について、患者さん側が持たれている守秘性の高い診療情報へのアクセスを可能とし、就労場所、会社の嘱託医との間をつなぐようなウェブのシステムもつくらせていただいて、患者さん側が治療を受けるときに、会社を辞めずに、就労をしながら両立できるような体制をつくっております。
 1ページ進んでいただいて、私たちの施設はかなり古い立てつけになっていますので、患者さんがどうやって病院に入って、どういうふうに診察をして、終了して、効率よく安全に出ていくかということが問題になってきます。そのためにPatient Flow Managementというシステムをつくらせていただいて、患者さんの流れを把握して、患者さんが効率的に病院の中で診療ができる体制をつくらせていただきました。
 右側の下段を見ていただきたいのですが、従来から行っていました山形県の荘内病院との遠隔のナビゲーション指導システムでの支援をしながら、遠隔での教育のシステムを行っています。少し結果が出てまいりましたので、御報告させていただきますと、荘内病院では若手の外科医のお医者さんがなかなか居着いてくれない。皆さん都会に行ってしまっていたのですが、この遠隔で教育支援することによって、荘内病院に多数のレジデントの方に集まっていただき、いわゆる地方における医療の継続性を保つような形ができてきていますので、今後もこういった部分については、がんセンターで積極的に行っていきたいと思っています。
 以上です。
○土岐部会長 よろしいでしょうか。続けて、よろしくお願いします。
○国立がん研究センター中山理事長特任補佐 続けて、人材育成の話をさせていただきます。理事長特任補佐の中山から説明させていただきます。
 資料は39ページになります。
 今年度の自己評価はAをお願いしているところです。
 指標の達成状況についてですけれども、真ん中辺の列を見ていただきますと、令和6年度は全ての項目で100%以上達成することができました。また、120%以上の項目が多くなってございます。
 上から三つ目の行にありますeラーニングの受講者数は、令和5年度は75%だったのですが、令和6年度につきましては、国立病院機構等他機関への働きかけをしたり、あとは有料誌への掲載などにより増加したと考えております。
 41ページを御覧ください。左下になります。当センターで医師レジデント制度が制定され、当センターの場合、レジデントというのは後期研修を修了した方がほとんどなのですけれども、制定されてから50年以上経過しまして、内外から様々な御意見をいただいていることから、アンケートやヒアリングを実施して、レジデントの増員も含めて、改善に向けて随時検討しているところでございます。
 右上を御覧ください。こちらにつきましては、昨年度、委員コメントでいただいていたことを踏まえて載せております。若手にさらに力を入れてほしいという御意見、レジデントの増員、学位取得の増加、若手の論文の増加などについて、研修医や専攻医への働きかけをすべきだというコメントをいただきまして、載せました。連携大学院の推進など、若手の研究活動を支援していることも増加に寄与していると思っております。
 その下、トップジャーナルへの論文掲載は、御覧のとおりとなってございます。
 その下は、当センター職員が教授等に就任した年次推移になってございます。この中には、客員や連携大学院の教授は入ってございません。
 また、その下になりますけれども、過去に在籍した方も含めて、主要がん学会における当センターでの在籍者の割合、役員数を示しています。いずれも多くの人たちをリーダーとして輩出していると認識してございます。
 42ページを御覧ください。左下になります。こちらは令和5年度も出しましたが、患者さん・家族と職員との双方向の交流も進めておりまして、令和6年度は新たに真ん中と下の二つの取組、がん研究セミナーや希少がんグラント記念シンポジウムを開催しております。
 右上を御覧ください。全国の医療従事者を対象とした専門研修として、当センターでしか提供できない幾つかの研修を載せております。こちらはいずれも受講者数が増加したほか、その下にありますけれども、令和6年度は新たに幾つかの取組をしたところでございます。
 最後でございますけれども、その下にICRwebについて載せております。こちらも配信数・利用者数ともに着実に増加しているところでございます。
 以上でございます。
○国立がん研究センター松岡研究所長 続きまして、1-5の医療政策の推進等に関する事項につきまして、がん対策研究所長の松岡から御説明させていただきます。
 43ページを御覧ください。医療政策の推進については、国民の視点に立ちまして、科学的知見を踏まえ、国への政策提言を行うという目標の下に、がん対策に関するデータベース等の整備、医療の均てん化の推進、また、エビデンスに基づく予防・診断・治療についての国民や医療機関向けの情報提供、そして、がん診療連携拠点病院等への支援を軸として進めておるところでございます。
 こちらにつきまして、左上にございますように、本年度は自己評価をAとさせていただきました。
 なお、達成の状況といたしましては、非常に多岐にわたる活動項目がございますが、その中で二つを挙げております。
 Ⅱの病理診断コンサルテーションにつきましては、令和6年度の達成度が275%となりました。これは令和6年4月より日本病理学会と当センターのコンサルテーションシステムを統合し、共同運営したことによる増加と考えております。
 また、ホームページのアクセスにつきましては、前年に続き100%に至っていないという現状がございました。
 44ページを御覧いただければと思います。算定の根拠といたしまして、三つございます。
 医療の均てん化のため、都道府県が診療連携拠点病院を核といたしました取組の好事例の共有を継続して行っています。
 情報格差の是正に向けました情報発信として、書籍といたしまして、患者必携『手にとるガイド』の改訂に向けて準備を進めています。こちらは今年の年末を刊行予定としております。
 また、令和9年度のがん情報サービスのシステム全面更改に向けまして、プロジェクトを立ち上げ、また、生成AIによる二次利用等の新たな課題への検討を開始するなど、利用者拡大に向けての取組を推進したということを書かせていただきました。
 次をめくっていただければと思います。令和6年度における活動について、かいつまんで御説明させていただければと考えております。
 45ページ目の左でございます。国への政策提言といたしましては、①に記載のとおり、国の審議会や検討会に当センターの職員が委員や構成員として参画することによりまして、直接政策形成や施策の推進に関与するということで貢献させていただきました。
 また、国との緊密な連携の下でゲノム中核拠点病院との会議開催、また、調整の役割を当センターが担うなど、我が国のゲノム医療の実装への取組を推進しておるところでございます。
 下部をご覧ください。第4期がん対策推進基本計画策定において提示されましたロジックモデルにつきましては、指標の測定、あるいは見直しを継続的に行える体制を整備しており、先月の中間評価でコア指標について当センターから報告させていただいたところでございます。
 右側のページをご覧ください。医療の均てん化といたしましては、都道府県のがん診療連携拠点病院連絡協議会、それから、三つの部会運営、また、がん対策に関わる各種の研修、小児がんの患者体験調査等を実施したところでございます。
 また、先月、2021年症例を基にした成人がんの患者体験調査、並びに2021年死亡例を基にした遺族調査の結果を報告させていただいたところでございます。
 46ページです。こちらは情報発信並びに情報の収集等についての報告でございます。当センターで運営しておりますがん情報サービスのコンテンツ作成と更新、または先ほど申し上げた患者必携ガイドの改訂、ウェブサイトのアクセス改善に向けた改修を行っているところでございます。
 ②をご覧ください。全国がん登録の一環といたしまして、2021年のがん罹患者の報告、また、研究利用のための審査、審議会への支援や提供窓口組織としての支援も行い、拠点病院が実施する院内がん登録への登録の支援、また、院内がん登録全国集計データの提供も併せて実施いたしました。
 右側のページをご覧ください。我々はがん患者の政策立案参画の要だと考えている患者・市民パネルの運営を行い、パネル検討会の実施により現行の課題に対して患者・市民目線からの御意見をいただいているところでございます。
 また、ウェブ等だけではなく、図書館等を使いまして、がん情報に関する冊子の寄贈といった、ウェブのがん情報にアクセスすることができない人への情報普及の推進も引き続き行っているところでございます。
 簡単ではございますけれども、医療政策の推進に関しては以上となります。ありがとうございます。
○土岐部会長 どうもありがとうございました。
 医療の提供とその他業務の質の向上に関する事項、1-3から1-5でございます。委員の先生から御質問がございましたら、お受けしたいと思います。
 私から病院の指標について、31ページですが、手術件数とか、病床稼働率、1日平均入院患者数は、過去のR5、R4、R3と比べると、特にR3などはコロナの影響もあったと思うのですけれども、そういう時期よりも若干減っているように見えるのですが、これは病院機能として目いっぱいである、今の規模ではこれ以上は限界である、そのように考えたらよろしいのでしょうか。
○国立がん研究センター瀬戸中央病院長 中央病院の状況は、在院日数が少し短くなってきて、稼働率が少し下がってきているということなので、ある意味いいことでもありますし、あと、最近言われているのは、手術の合併症が減ってきているということです。これは私の推測ですけれども、ロボット手術の導入で合併症が減っている。それで術後の在院日数も短くなっているのではないかと思います。手術件数自体が減っているわけではないので、そういったことで在院日数が短くなって、稼働率も少し低下しているのではないかと推測しています。
○国立がん研究センター土井東病院長 東病院は、昨年度、3か月にわたってコロナによる病棟閉鎖が続いた部分があるので、その影響が一つあったとは思います。
 ただ、御覧になっていただいたら分かるのですけれども、病床稼働率の東病院の目標値は106%ですので、それに対して何%かということになっていますので、病床稼働率はほぼ100を超えているというのが現実だと思います。この辺は少し計算をしていただかないといけない部分がありますけれども、御配慮いただければありがたいと思います。
○土岐部会長 私は限界なのかと思って見ておりました。
 ちなみに、次のページの病床利用率と病床稼働率はまた違うものなのですか。次のページには病床利用率とあります。
○国立がん研究センター瀬戸中央病院長 いわゆる稼働率で、病床利用率というのは、午前0時に患者さんがいると利用されたということになります。稼働率は同日に入退院があるということになります。
○土岐部会長 普通の病院は稼働率のほうでやっていますね。
○国立がん研究センター瀬戸中央病院長 はい。
○土岐部会長 分かりました。
 神﨑委員、どうぞ。
○神﨑委員 杏林大学の神﨑でございます。
 私からの質問は、がんセンターは多分紹介患者が多いと思うのですけれども、紹介、逆紹介に関して、何かシステム的にやっていらっしゃるかということについて、お伺いしたいのですが、いかがでしょうか。
○国立がん研究センター瀬戸中央病院長 紹介率はかなり高くて、今、正確な数字は手元にはないのですけれども、初診の患者さんはほとんど紹介だと考えていただいていいと思います。
 逆紹介率も、今、いわゆる目標値は達成しているのですけれども、診療科によってばらつきがあります。それはいろいろな理由があるのですけれども、それは診療科ごとに細かく対応させていただいています。
○神﨑委員 恐らく逆紹介は結構苦労されるのではないかと思ったので、質問させていただきました。何かうまい工夫をしていらっしゃるのかと気になったものですから、質問させていただきました。
○国立がん研究センター瀬戸中央病院長 うまい工夫はありません。すみません。
○神﨑委員 分かりました。苦労されているということですね。
○国立がん研究センター土井東病院長 東病院は、地域性も少しありまして、実際に患者さんの70%は東葛地区です。最近よく出てくる柏、流山、そういった地区から来ております。70%の患者さんは地元の先生のところにお返しするということが原則でお受けする形にしていますので、逆紹介率も比較的保たれているような形になっています。これは地域の特性だと思われます。
○神﨑委員 ありがとうございました。
○土岐部会長 根岸先生、どうぞ。
○根岸委員 根岸です。よろしくお願いいたします。
 令和6年度も先進的な医療に取り組まれていらして、本当にすばらしいと思いました。
 私から37ページのがんとの共生を支援という項目についてお尋ねしたいのですけれども、この中でも就労支援というのは大変重要な課題だと思っておりまして、私も企業に所属しておりますので、両立支援に力を入れているところなのですが、その中で、数年前にいつ労働者が退職してしまうかという統計が出ていたと思いますけれども、がんと診断された直後、あるいは治療がスタートする前に辞めてしまう、あるいは解雇されてしまう割合が高いという調査結果があったと思うのですが、その後それが好転しているのかどうか。もし新しいデータがありましたら、教えていただきたいというのが一つです。
 もう一つなのですけれども、先ほど産業医との連携というお話があったと思いますが、例えば産業医の選任義務がない労働者が50人未満の企業、そういうところへの支援はどんなふうに考えていらっしゃるのか教えていただきたいと思います。
○国立がん研究センター瀬戸中央病院長 最初の質問の好転しているかどうかについては、申し訳ありませんが、手元に数字がありません。今後の宿題とさせていただきたいと思います。
 あと、就労者50人未満の企業に対しては、私も不勉強でよく分かりません。
○国立がん研究センター土井東病院長 今、当方が関わっていることとして、50人以下の部分に関しては、行政側とコンタクトを取る形で、仲介に入っていただくということを始めたところですけれども、実際の結果はまだ出ていません。今年の報告でその部分をさせていただくような方向で、今、考えております。
○根岸委員 ありがとうございます。
 実際には全企業の97%が中小企業です。その中には、労働者が少ないところがたくさん含まれているかと思いますので、ぜひそういったところの就労支援も今後検討を強化していただきたいと希望いたします。よろしくお願いいたします。
○国立がん研究センター瀬戸中央病院長 御指摘ありがとうございました。
○土岐部会長 前村委員、どうぞ。
○前村委員 長崎大の前村でございます。
 38ページですけれども、がんセンターは最先端の医療をやられているのですけれども、やはり地方との医療格差を是正するとか、特に若手の医師が地方に居着かないで都会に行ってしまうということを是正する取組というのは、非常にありがたいことなのですが、遠隔医療でそれを行うということを先ほど御説明になったのですが、一つ、ロボット手術を遠隔でというのは、現地の医者がロボット手術をするときに、遠隔でそれを指導するということなのか、ある程度遠隔で手術できるということなのでしょうか。
 あとは、内科的にはどのような遠隔の支援をされているのでしょうか。
○国立がん研究センター土井東病院長 ありがとうございます。
 本例に関していいますと、腹腔鏡の手術が主になります。腹腔鏡におけるナビゲーションを遠隔から指導を行う。例えば画面で右に回転したほうがよければ、右にという矢印が出るような画面をリアルタイムで両方が行うことになります。
 最初の段階では、東病院から現地に医者が行くことで、画面の見方、機械の使い方を共有します。そこが慣れてきた段階で遠隔で行うことをさせていただいて、遠隔指導のほうが適切な表現かもしれません。
 化学療法等に関しては、今までもウェブの形でD to DPの形で指導を行っていますので、それについては大きく変化はなく、今までどおりでやっているところではあります。
○前村委員 ありがとうございます。
○土岐部会長 ほかによろしいでしょうか。田極委員、どうぞ。
○田極委員 御説明ありがとうございました。田極です。
 39ページなのですが、いずれも指標がすばらしい状況なのですが、特に海外からの実地研修等の受入れ人数なのですが、非常に多いです。令和5年度から多くなっていると思うのですが、これは具体的にどの国からが多いとか、そういった統計は取っていらっしゃるのでしょうか。教えていただければと思います。
○国立がん研究センター中山理事長特任補佐 ありがとうございます。
 こちらの設定についてなのですけれども、ちょうどこれを設定したときは新型コロナが蔓延しているときで、それにしても令和3年度は非常に低かったわけなのですが、それがかなり落ち着いてきたこともあって、令和5年度からかなり増えてきました。
 令和5年度にかなり増えて、前村委員から昨年度が高過ぎるという御指摘もいただいておりまして、年度目標自体も令和5年度は80名で上げていたのですけれども、これを450名まで増やしたのですが、それでも3,185%というすごい数字になっています。
 当センターの場合は、アジアからの方々が中心に非常に多くなっておりまして、特にタイとか、中国や台湾、韓国の方も多くなっているという状況です。
○田極委員 分かりました。ありがとうございます。
 そこで、この目標の見直しの御予定はあるのでしょうか。人数の見直しをして、今、450名になっているのでしょうか。
○国立がん研究センター中山理事長特任補佐 年度目標は毎年度変えられるのですけれども、最終年度の500名がどうしても変えられなくて、これが令和8年度になっていますので、そこのバランスも見ながら、令和7年度はもう少し高い値で設定しようと思っております。
○田極委員 分かりました。ありがとうございます。
○土岐部会長 ほかによろしいでしょうか。
 それでは、次に移らせていただきます。項目2-1から4-1でございます。業務運営の効率化、財務内容の改善及びその他業務運営に関する事項でございます。
 まずは法人から御説明をよろしくお願いします。
○国立がん研究センター竹林理事長特任補佐 理事長特任補佐の竹林と申します。
 項目2-1から4-1までを通して説明させていただきます。
 資料の47ページ目を御覧いただければと思います。2-1、業務運営の効率化に関する事項ですが、自己評価をAとさせていただいております。
 指標の達成状況でございますが、下の表ですけれども、後発医薬品のシェアについては、85%という目標に対して実績は96.6%、目標を上回る達成状況となっております。
 未収金比率については、0.05%ということで達成度100%です。
 一般管理費の低減につきましては、令和4年度、令和5年度の達成率が低水準であったところ、令和6年度については95.8%とやや改善しております。
 経常収支率の安定につきましては、101.5%と黒字を達成しております。
 なお、令和5年度の数字が「106.8%」になっているのですが、これは間違いでございまして「101.7%」でございました。大変申し訳ございません。収支率が急に悪化しているのではないということでございます。
 48ページ目を御覧いただければと思います。業務運営の効率化に関して、自己評価はAとさせていただいている理由根拠をここに記載しておりますけれども、中長期計画を策定した令和2年度末時点では予想し得ない急激な物価高騰による経費の上昇でございますとか、コロナ後のがん治療を取り巻く環境変化などが病院経営を圧迫しておりまして、センターの経常収支を黒字に保つことが当初の想定を超えて極めて困難度が高くなっていると考えております。
 こうした中で、令和6年度においては、給与改定による適切な賃上げを行いつつ、経営努力を一層強化することにより、経常収支率100%以上を達成するなど、中長期計画における初期の目標を上回る成果を上げたものと考えているところでございます。
 49ページ目にお進みください。ページの左側、Ⅰ、効率的な業務運営体制等の下、財務ガバナンスの強化につきましては、二つ目の○ですけれども、理事長をトップとする投資委員会で個別の投資でありますとか、増員といった適否の判断を一つ一つ行うことで、しっかりとした財務ガバナンスを構築して、財政運営を行っているところでございます。
 その下、効率化による収支改善についてでございますが、主として赤い字にしているところでございます。平成27年度に黒字に転換して以降、10年連続で黒字を維持しておりまして、先ほど申し上げましたように、令和6年度は厳しい状況の中、経常収支率101.5%となっているところでございます。
 その下の材料費等の削減でございますが、医薬品について、中央病院・東病院との一括調達でございますとか、他病院との共同購入に加え、新規医薬品の他病院のベンチマーク調査による的確な価格交渉を実施するといった取組によりまして、対前年度削減率5.32%、削減額は約9億1000万円を達成しております。
 その右でございますが、未収金につきましても、様々な工夫によって低い水準を維持しております。
 一般管理費の削減については、令和2年度に対して本当は削減したいところなのですけれども、0.93%の増加にとどめておりまして、達成率は95.8%でございます。
 その下、電子化の推進につきましては、令和6年度は電子決裁システムの運用を軌道に乗せて、様々な帳票の電子化を進めたところでございます。
 50ページ目を御覧ください。3-1、財務内容の改善についてでございまして、こちらについても自己評価はAとさせていただいております。
 その根拠につきましては、下に掲げておりますけれども、高水準の外部資金の獲得、知財収入でありますとか、寄附の件数が過去最高といった成果を上げているところでございます。
 詳細は51ページ目を御覧いただければと思いますけれども、外部資金の獲得についてでございますが、外部資金の獲得額は年々増加傾向でございまして、令和6年度におきましても、過去最高水準の179億円余りを獲得しているところでございます、
 右側の知的財産を御覧いただきますと、戦略的な保有・展開などにより、知財収入は2.6億円と過去最高となっております。
 その下の産学連携につきましては、共同研究による受入れ研究費が約44億円ということで、こちらも高い水準を維持しておりまして、件数については、過去最高となっているところでございます。
 52ページ目を御覧ください。がんセンターの研究成果の実用化に向けて7社のベンチャーを認定しておりまして、そのうちの1社は株式上場を果たし、1社はM&Aまで進んでいるところでございます。
 その下でございます。寄附金につきましても、金額自体は令和5年ほどではございませんけれども、件数は過去最高になっておりまして、当センターの患者さんではない一般の方からの寄附も増えている状況になっております。
 ④医業収益状況でございますが、診療報酬の上位基準の獲得などを進めた結果、1人当たりの入院単価が増加している状況でございます。
 その下の長期借入金の状況につきましては、新たな長期借入れを0としまして、借入残高を減少させてきております。
 今後も財務内容の改善に向けた様々な取組を進めていきたいと考えております。
 53ページ目でございます。4-1、その他業務運営に関する重要事項でございまして、こちらの自己評価はBとしております。
 54ページ目で詳細を説明させていただきます。一つ目、法令遵守等内部統制の適切な構築についてでございますが、過去に職員が収賄で逮捕される事件が発生したことも踏まえまして、昨年3月に取りまとめましたコンプライアンス等の強化に関する改革方針に基づきまして、コンプライアンス室の増員でございますとか、コンプライアンス研修の実施、あるいはコンプライアンスリスクに関するアンケート調査を実施しまして、センター全体のコンプライアンスリスクの洗い出しを行うといった取組を行っております。
 その下のⅡ、人事の最適化でございますが、①医師の働き方改革につきましては、タスクシフト/タスクシェアの推進のため、医師事務作業補助者の活用、特定行為研修を修了した看護師による特定行為の実施、また、各診療科内での業務分担の見直し、効率化、あるいは新たな勤怠システムの導入の取組を進めたところでございます。
 その下の②障害者雇用につきましては、法定基準を上回る雇用を実施したところでございます。
 最後、右側でございます。その他の②積極的な広報の展開ですが、広報にも力を入れているところでございます。例えば公式ホームページへの令和6年度のアクセス数ですが、3200万ビューを超えておりますし、動画も活用する形で積極的な広報に努めている状況でございます。
 当センターが有するがんに関する最新の知見、研究成果、科学的根拠に基づく診断治療法を含め、当センターの取組をこのような広報によって広く周知することによりまして、我がセンターの社会と協働し、全ての国民に最適ながん医療・がん予防を提供するという理念の実現を目指して、今後とも取り組んでまいりたいと考えております。
 説明は以上でございます。
○土岐部会長 ありがとうございます。
 ただいまの御説明につきまして、委員の先生から御質問等はございますでしょうか。田極委員、どうぞ。
○田極委員 田極です。御説明ありがとうございました。
 47ページについて、教えていただければと思います。非常に興味深いところで、後発医薬品の数量シェアが96.6%なのですが、例えばこの中にはバイオ後続品みたいなものも入っているのかどうかを教えていただければと思っています。抗がん剤は新しい薬が多くて、バイオシミラーなどもないものが多いと思うのですが、そういったものが入っているのかどうかというところを教えていただければと思います。
○国立がん研究センター竹林理事長特任補佐 入っているか、入っていないかということで言えば、入っているということでございます。
○田極委員 ありがとうございます。
○土岐部会長 私からすばらしいというか、経常収支は15億円の黒字で、借入金も返済が順調ということで、去年から今年にかけて非常に物価高や人件費高があったのですけれども、どこで吸収できたのかというか、削減額に9億とは書いてあるのですが、ほかの病院から見ると、不思議に思えてしまうぐらい非常に順調にいっていますけれども、あえてないのかも分かりませんが、こういう努力というのはあるのでしょうか。
○国立がん研究センター竹林理事長特任補佐 純粋な医療機関の収支に関していいますと、実は結構シビアな状況になっておりまして、今回の経常収支率101.5%は、あくまでも研究部門を含めたセンター全体でございます。
 財務諸表を細かく見ていくと、セグメント別の収支があるのですけれども、セグメントには診療セグメントがあって、そのセグメントを見ても、令和5年度に比べて令和6年度の収支差は縮小しているのですが、一応黒字のように見えるのですけれども、実はレジデントの人件費は教育研修というセグメントになっています。
 そこを含めて考えると、普通の医療機関の収支ではかなり厳しいのですが、いろいろな研究などをしておりますので、その研究の外部資金の獲得でかなり大きな収支差が出ているものですから、全体としてはプラスなのですけれども、医療機関の経営としては非常に厳しい状況で、そこは多くの医療機関とそんなに大きく変わらないものだと思っております。
○土岐部会長 ありがとうございます。
 ほかによろしいでしょうか。
 それでは、質疑に関しましては、以上としたいと思います。
 続きまして、最後に法人理事長と法人監事からヒアリングを行いたいと思います。
 まずは法人監事より業務の監査結果を取りまとめた監査報告について御説明いただくとともに、監査等を踏まえた現在の法人の業務運営の状況や今後の課題、改善方針等について、コメントを頂戴したいと思います。よろしくお願いします。
○国立がん研究センター近藤監事 監事の近藤と申します。よろしくお願いいたします。
 資料といたしましては、監査報告が資料2-4についております。
 令和6年の監事の監査の結果といたしましては、センターは適切に運営されており、適正・適法の意見を表明させていただいております。
 センターのミッションに関しましては、今まで議論されたところではありますけれども、非常に良好な状況で運営されております。
 資料2-3の6ページに損益計算書がついておりますけれども、今年の最終損益は約12億円の黒字、昨年度は会計基準の変更がありましたが、129億円という巨額の黒字でありました。
 昨今の材料費、光熱水費等の物価上昇、あるいは人件費の増加がありまして、センターは厳しい経営環境下であります。ただ、今年も黒字を確保しているところであります。こういった観点からもがんセンターの御努力と成果について、監事としては非常に高く評価をさせていただいております。
 過去、不祥事がありましたけれども、コンプライアンス面、リスクコントロールの部分、あるいは内部統制に関しまして、センターは非常に積極的に取り組んでいらっしゃいます。我々監事としても意見をさせていただきながら、適切な運営をしていただいているところでございます。
 以上が報告でございます。
○土岐部会長 続きまして、法人理事長より日々のマネジメントを踏まえ、現在の法人の業務運営の状況や今後の課題、改善方針等について、コメントをお願いいたします。
○国立がん研究センター間野理事長 理事長の間野でございます。今日は本当にありがとうございました。
 冒頭に私どものミッションを述べさせていただきましたけれども、当センターもそれに向けて一致団結して頑張っているところであります。幸いにもNCCの世界的なプレゼンスも急速に上がってきていると思います。大きな製薬会社だけでなく、スタートアップに関しても我々のプレゼンスが出てきて、日本に薬を持ってこられるようなことにやっとなってきたと感じております。
 一方、経営に関しては厳しくて、先ほど土岐部会長がおっしゃったように、一般の病院の収支の赤字をうちは研究の収入で、研究費、共同研究費、知財、治験の収入等で補っているような状況でありまして、今年、さらに人事院勧告が出ますと、それがさらに厳しくなると思います。今年度は果たしてどうなるかというのは不安に思っておりますけれども、様々な経営努力をしながら、それを何とか乗り越えていきたいと思っております。
 経営規模も非常に大きくなりまして、ここ10年ぐらいで2倍になっています。ですから、経営を運用する上での事務への負担もかなり大きくなっていて、2倍になったからといって、事務員を2倍にできるわけではありませんから、そこはITを使ったような業務の簡素化ですとか、さらにはある意味可能な限りの運用のスリム化、効率化みたいなものを我々が率先して行って行かなければならないと思っています。
 最後に何年か前に不祥事がありましたので、我々としてもガバナンスはすごく大事に考えております。先ほど監事にもおっしゃっていただきましたけれども、ガバナンスの面、あるいはがんセンターのみんなが同じ方向を向いて目指すものを共有するとか、そういう指導も必要ですし、さらに言えば、例えばセンターの職員が何かをするときに、してはいけないこととか、していいことなどは、ウェブで申請するときにすぐに分かるように、分かりやすい運用方法をしていくことも大事ではないかと思っています。
 これからできるだけシンプルに、あるいは簡素化できることを簡素化しながら、それでも我々は国のセンターとして日本の患者さんに薬を届ける社会的な責務がありますので、そこはみんな同じ方向を向いて、これからも頑張っていきたいと思います。ありがとうございました。
○土岐部会長 ありがとうございました。
 ただいまのお二人の発言につきまして、御意見等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、以上で国立研究開発法人国立がん研究センターの令和6年度業務実績評価についての審議を終了いたします。どうもありがとうございました。
○国立がん研究センター間野理事長 ありがとうございました。
○土岐部会長 以上で本日の議事を終了しました。
 今後の流れについて、事務局から説明をお願いいたします。
○高屋企画調整官 事務局です。
 今後の流れについて、御連絡いたします。
 本日御議論いただきました国立成育医療研究センター及び国立がん研究センターの令和6年度業務実績評価につきましては、本部会における御意見や法人の監事及び理事長のコメント等を踏まえ、後日、厚生労働大臣による評価を行い、その評価結果について、法人に通知するとともに公表いたします。
 委員の皆様におかれましては、事前に電子媒体でお配りしている評定記入用紙に必要事項を御記入いただき、本日のJHに関する審議も踏まえ、8月14日木曜日までに事務局宛てメールにより御提出いただきますよう、お願いいたします。
 なお、評価結果につきましては、後日、委員の皆様にもお送りいたします。
 事務局からは以上となりますが、閉会に当たりまして、厚生科学課長の荒木より皆様に御挨拶を申し上げます。
○荒木課長 厚生科学課長の荒木でございます。
 委員の皆様方、ウェブで参加の委員の先生方も含めて、本日まで3回にわたり、本日は大変長い時間でございましたが、御議論いただきまして、ありがとうございます。
 特に毎年というか、継続して審議いただいている委員の皆様には、昨年度にしてきたことについて、各センターがしっかり対応されているところも含めて、一つ一つの御指摘は非常にすばらしいものだと思っていますし、それをしっかり受けて評価を受ける側も対応しているということでございましたので、昨年度につきましても評価をいただきましたが、いただいた御意見、あるいは御指摘を踏まえまして、厚労大臣による評価ということで検討させていただきたいと思います。法人とも認識を共有してまいりますので、引き続きよろしくお願いしたいと思います。長時間ありがとうございました。
○土岐部会長 それでは、本日は以上とさせていただきます。皆様、どうもありがとうございました。