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- 第39回 厚生労働省国立研究開発法人等審議会高度専門医療研究評価部会 議事録
第39回 厚生労働省国立研究開発法人等審議会高度専門医療研究評価部会 議事録
日時
令和7年8月5日(火)10:00~14:30
場所
航空会館B101号室
出席者
- 委員
-
- 土岐 祐一郎 部会長
- 中野 貴司 部会長代理
- 神﨑 恒一 委員
- 庄子 育子 委員
- 田極 春美 委員
- 成川 衛 委員
- 根岸 茂登美 委員
- 前村 浩二 委員
- 松前 江里子委員
議題
1開会
2議事
(1)国立研究開発法人国立長寿医療研究センターの令和6事業年度業務実績評価について
(2)国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センターの令和6事業年度業務実績評価について
(3)その他
3閉会
配布資料
国立研究開発法人国立長寿医療研究センター
・資料1-1 令和6年度 業務実績評価書(案)
・資料1-2 令和6年度 業務実績概要説明資料
・資料1-3 令和6年度 財務諸表等
・資料1-4 令和6年度 監査報告書
国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター
・資料2-1 令和6年度 業務実績評価書(案)
・資料2-2 令和6年度 業務実績概要説明資料
・資料2-3 令和6年度 財務諸表等
・資料2-4 令和6年度 監査報告書
参考資料
・参考資料1 高度専門医療研究評価部会委員名簿
・参考資料2 厚生労働省国立研究開発法人等審議会令
・資料1-1 令和6年度 業務実績評価書(案)
・資料1-2 令和6年度 業務実績概要説明資料
・資料1-3 令和6年度 財務諸表等
・資料1-4 令和6年度 監査報告書
国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター
・資料2-1 令和6年度 業務実績評価書(案)
・資料2-2 令和6年度 業務実績概要説明資料
・資料2-3 令和6年度 財務諸表等
・資料2-4 令和6年度 監査報告書
参考資料
・参考資料1 高度専門医療研究評価部会委員名簿
・参考資料2 厚生労働省国立研究開発法人等審議会令
第39回 厚生労働省国立研究開発法人等審議会高度専門医療研究評価部会
○高屋企画調整官 定刻となりましたので、ただいまより、第39回「厚生労働省国立研究開発法人等審議会高度専門医療研究評価部会」を開催いたします。
委員の皆様には、大変お忙しい中、お集まりいただき、誠にありがとうございます。
議事進行役を務めさせていただきます大臣官房厚生科学課国立高度専門医療研究センター支援室の高屋と申します。よろしくお願いいたします。
本日は、神崎委員、庄子委員、中野委員、前村委員がオンラインでの御参加となっております。中野委員におかれましては、途中からの御参加という予定となっております。
なお、危機管理・医務技術総括審議官の佐々木と厚生科学課長の荒木におきましては、他の用務のため、本日は欠席させていただきます。何とぞ御了承くださいますよう、お願いいたします。
国立研究開発法人等審議会運営規程に基づく御報告です。運営規程第5条に基づき、本日、意見聴取を行う国立研究開発法人の事務及び事業について、利害関係を有する者は、当該法人に係る評価について議決権を有しないものとされています。法人との利害関係については、あらかじめ委員の皆様から御申告いただいておりますが、事務局におきまして確認いたしましたところ、本日御出席の神崎委員におかれましては、本年度に主任研究者として国立長寿医療研究センターから研究費の配分を受けているということでございますので、本日の国立長寿医療研究センターの意見聴取において、御発言をいただくことは可能でございますが、評定案及び意見に関する評定記入用紙の提出はできないというところにございますので、何とぞ御承知おきくださいますよう、お願いいたします。なお、それ以外の法人の意見聴取につきましては、御発言いただくことも、評定案及び意見に関する評定記入用紙の提出についても可能となっておりますので、その点につきましても御承知おきくださいますよう、お願いいたします。
また、これにより、出席委員に関しましては、部会所属委員の過半数を超えておりますので、会議が成立することを御報告いたします。
それでは、本日の会議の進め方について説明いたします。本日は、オンラインを併用したハイブリッド方式での開催となります。会場に御出席の委員におかれましては、御発言の際は挙手をしていただき、部会長による指名を受けた後に御発言をお願いします。オンラインで出席の委員におかれましては、Zoomサービス内の「手を挙げる」ボタンをクリックしていただき、部会長による指名を受けた後に御発言をお願いいたします。御発言時以外はマイクをミュートにしていただきますよう、お願いいたします。
なお、御発言の際には、冒頭にお名前を述べていただき、資料を用いて御説明される際には、資料番号と該当ページを明言いただきますよう、お願いいたします。
続きまして、本日の議事を御説明いたします。本日は、国立長寿医療研究センター及び国立精神・神経医療研究センターに関する令和6年度業務実績評価に係る意見聴取を行います。評価に係る意見聴取の流れにつきましては、評価項目ごとに法人から説明をしていただいた後、委員の皆様から御意見、御質問をいただきたいと存じます。説明と質疑応答の時間は、事前に時間設定をしており、終了1分前と終了時に事務局がベルを鳴らしますので、目安としていただきますようお願いいたします。
それでは、本日の会議資料の確認をさせていただきます。本日の主な会議資料は、議事次第、国立長寿医療研究センター関係としまして資料1-1から1-4、国立精神・神経医療研究センター関係としまして資料2-1から2-4及び両法人共通として参考資料1と2になります。法人からは、資料1-2及び2-2の概要資料を用いて説明を行いますので、オンラインで御参加いただいている委員の皆様におかれては、事前に紙媒体でもお送りしています議事次第、資料1-2、1-4、2-2、2-4の御活用をお願いいたします。その他の資料につきましても、事前にお知らせしましたURLより閲覧していただくようお願いいたします。会場の皆様におきましては、お手元にあるタブレットに本日の資料一式を格納しておりますので、そちらを御覧いただきますようお願いいたします。資料の不備や閲覧方法等について御不明な点がございましたら、チャット機能等で事務局までお申しつけください。
事務局からの説明は以上でございますが、ここまでで何か御質問等ございますでしょうか。
それでは、以降の進行につきましては、土岐部会長にお願いさせていただければと思います。
土岐部会長、よろしくお願いいたします。
○土岐部会長 それでは、早速議事のほうに移りたいと思います。
まずは国立長寿医療研究センターの令和6年度業務実績評価について審議を開始したいと思います。
最初に、法人理事長から一言御挨拶をよろしくお願いいたします。
○国立長寿医療研究センター荒井理事長 おはようございます。
国立長寿医療研究センターで理事長を拝命しております荒井と申します。よろしくお願いいたします。
今回の令和6年度の業務実績概要説明に当たりまして、評価委員の先生方にはいつも非常に貴重な御意見をいただき、誠にありがとうございます。
昨今の非常に厳しい経営状況に鑑みて、我々も経営努力をしっかりとやってまいりましたけれども、この後御説明させていただきますけれども、収支状況としてはかなり厳しい状況であります。これは全国のほとんどの医療機関がそういう状況にはありますけれども、できるだけその状況を改善したいということで、今年度からではありますけれども、経営戦略会議を立ち上げて、センター一丸となって経営の改善に向けて努力をしているところでございます。
一方で、我々のミッションとしましては研究開発ということでありますので、高齢者医療に関して、または老化研究、老年学研究におきまして、特にアジアの地域からの我々のセンターに対する注目は年々増えているということをひしひしと実感をしており、我々もアジアの方々、特に若手の研究者、診療スタッフの教育に、私自ら様々な場を利用してコミットさせていただいておりますし、多くの方々を当センターに受け入れて研修をしていただいているという状況であります。
高齢化におきましては世界のトップを走っておりますので、その高齢化の研究開発を担う我々のセンターに対する注目は年々上がっておりますので、その期待に背かないような研究開発を引き続き行っていきたいと思いますけれども、厳しい経営状況の中、高齢者の診療の質を落とすことなく、また、働き方改革に沿った形で、スタッフの勤務時間についてもしっかりと配慮しながら、ほかの病院のお手本となる高齢者医療のモデルをしっかりと国に対してお示ししていきたいと考えておりますので、今日も貴重な御意見をいただくことを楽しみにしておりますので、今回の評価委員会、よろしくお願いいたします。
簡単ですけれども私からの御挨拶をさせていただきます。
○土岐部会長 どうもありがとうございました。
それでは、早速審議のほうに移りたいと思います。
まずは研究・開発の成果の最大化に関する事項の評価項目1-1及び1-2に関わる業務実績について議論したいと思います。初めに法人から御説明いただき、その後に質疑応答という流れで進めていきたいと思います。時間が限られておりますので、ポイントを絞っての御説明をよろしくお願いいたします。
○国立長寿医療研究センター櫻井研究所長 研究所長、櫻井でございます。よろしくお願いいたします。
スライドをお願いします。
評価項目1-1では、令和6年度に高齢者医療の推進に大きく貢献する成果が4件、論文数も355件でこれまで最高となり、自己評価をSとさせていただきました。特に顕著なものを紹介させていただきます。
スライドをお願いいたします。
第1に、認知症早期発見・早期介入実証プロジェクトを紹介いたします。早期アルツハイマー病に対する抗アミロイド抗体薬の実用化に伴い、認知症リスク者を早期に発見することの意義が高まっております。そこで本研究の目的は、認知症リスク者を早期に発見し、診断、診断後支援に導く標準的なフローを確立することでございます。
(1)を見てください。令和6年度は、全国40自治体におきまして、約1万4000人がスクリーニング検査を受検しました。しかし、認知機能の低下が疑われ受診推奨を受けた者のうち、精密検査のために受診した者は7.3%にとどまりました。保健師による個別指導や架電を行った場合には、受診率は約12%まで高まり、人を介する受診相談が重要であることが明らかになりました。
受診しなかった理由を調べたところ、「健康に自信がある」という回答が最も多く42%、認知症を自分事として受け止めていない現状が明らかになりました。
(2)を御覧ください。本研究では、対面型の認知機能検査に加えまして、パソコンやスマホを使った10種類のスクリーニング検査法を用いました。検査の標準化を行うため、MMSEを基準とした比較を行いますと、いずれもAUCで0.7~0.8程度で認知症をスクリーニングできることが示されました。
(3)を見てください。スクリーニング検査の信頼性を確認するため、認知症血液バイオマーカーとの関連を調べましたところ、認知機能が疑われた者では血液バイオマーカーが異常であることが多く、認知症リスク者を濃縮するツールとして有効であることが分かりました。
これらの成果をまとめ、認知症の早期発見・早期対応のための自治体向けの手引を完成いたしました。今後、認知症の早期発見から診断、診断後支援につながるモデルを確立していきます。
次をお願いします。
次に、認知症の進展に関わる遺伝子群の同定に関する研究を紹介いたします。
(1)当センターバイオバンクに登録された日本人のアルツハイマー病、軽度認知障害、認知機能正常者から構成される約1,200名を対象に網羅的な遺伝子発現解析を行いました。
その結果、認知機能正常からMCIへの移行にはリボソーム関連遺伝子が、MCIからADへの進行には免疫、細胞周期、タンパク質プロセシングに関連する遺伝子が主に変動していることが明らかになりました。
これらの成果は、アルツハイマー病の発症機序として、アミロイドタンパク質の上流、あるいは未知の病態進行に関連するメカニズムの解明につながる成果と考えています。
(2)を御覧ください。日本人レビー小体型認知症(DLB)の遺伝子変異を同定しました。45名のDLB及び認知機能正常者約1,700名の全ゲノムシークエンスデータの解析から、DLB発症に関連する遺伝子内のバリアントを調べたところ、CHD23遺伝子にある3つのミスセンス変異が特定されました。この変異は東アジア人に特有であり、聴覚障害とも関連することが示されました。東アジア人の認知症ゲノム研究では、我々のバイオバンクは世界最大であり、日本人特有の認知症リスクの同定では他の追随を許しません。今後、聴覚障害のスクリーニングから、DLBの早期発見や治療法の開発につながることが期待されます。
次をお願いいたします。
次に、大規模コホートを基盤としたデジタルヘルスの開発について紹介します。
(1)デジタルヘルスサービスの介護予防への効果を約4,000名の地域在住高齢者で検証しました。介入方法は、我々が開発したオンライン通いの場アプリを30か月間利用すること、スマホと連動したウォーキングポールを用いた運動週2回実施することです。
中間解析の結果、介護認定の新規発生は介入群と対照群で差は認められませんでしたが、アプリを全日程の60%以上利用した群におきまして、新規の要介護認定が有意に低下していました。定期的にスマホを使うことで介護予防につながることを示した所見で、その意義は大きいと考えています。
(2)高齢者の自動車運転支援のためのVRシステムの開発を行いました。高齢者の運転技能のスクリーニング検査を約700名で実施し、リスクのある高齢者に対するVRを用いた運転技能向上を目的としたトレーニングプログラムを開発いたしました。
(3)オーストラリアとの国際共同研究で、UK Biobankの1万人の手首装着型ウェアラブルデバイスから抽出されたデジタルバイオマーカーからフレイルを判定するモデルを開発しました。このモデルによって判定されたフレイルは、入院や死亡を予測することが可能であることが明らかになりました。R6年度は、日本固有のデジタルフレイルバイオマーカーを開発するため、多施設共同コホート、東浦研究コホートを立ち上げました。
次をお願いいたします。
認知症予防を目指した多因子介入研究(J-MINT)の社会実装について紹介します。
(1)J-MINTのサブ解析を行い、2つの重要な所見を得ました。多因子介入の得られやすい集団、レスポンダーと言いますが、その特徴を検討したところ、昨年度報告したAPO E4キャリアに加えまして、生活習慣病を持つ者であることが明らかになりました。介入により血圧や血糖値も改善し、多因子介入の社会実装はまず生活習慣病を持つ者から始めるべきと考えています。
また、多因子介入の費用対効果を解析したところ、通常ケアと比較して、医療費、介護費、インフォーマルケアを含むコストが1人当たり約45万円減少しており、一方、QOLは改善することが明らかになりました。
こういった解析結果を踏まえ、認知症予防のための多因子介入を社会実装するために、リアルワールドでの阻害因子、促進因子について検討いたしました。その結果、認知症予防のエビデンスのあるプログラムがないこと、プログラムを提供するインストラクターが不足していること、参加者の確保などが重要な課題であることが明らかになりました。
そこで、地域版J-MINTプログラムを開発し、インストラクターの育成、認証制度を構築しました。その実現可能性と効果を検証するパイロット研究を行ったところ、認知機能が改善することが確認できました。現在、全国で18の自治体で多因子介入の社会実装を行う準備を進めています。また、多因子介入を継続するためにはビジネスモデルが必要です。厚生労働省のSBIR制度の支援を受け、スタートアップを立ち上げ、社会実装の体制を整備しています。
次に、右側に示した、科学的介護情報システム(LIFE)を推進する研究を紹介します。
LIFEの活用促進は、我が国の介護保険の質を高める基盤となるものです。(1)LIFEデータを利用して、全国の老健施設に新規に入所した者約10万人を対象に、要介護度の悪化の要因を検討しました。
その結果、入所時点の要介護度が低いほど重症化が起こりやすいこと、ADLやBMIなどが悪化に関係することが分かりました。
(2)LIFEの利活用促進のため全国研修会及び研究会を実施し、約7,000名が参加されました。また、LIFE情報を活用した介護を実現するため、2場所の入所施設で介護者に教育を行い、業務負担などを含めて受入れの実施可能性を検討しました。
次をお願いいたします。
最後に、地域住民コホート(NILS-LSA)の進捗について述べます。
本コホートは、開始から28年が経過し、我が国でも有数の長期縦断コホートに成長しています。R6年度は第10次調査を実施しました。また、6NCで連携した研究・解析も進めています。NILS-LSAのデータサーバーを他のNCからもVPN接続できるリモートアクセス環境を整備し、セキュアな環境で24時間解析が可能となりました。
(3)NILS-LSAを用いた日米多施設・産官学連携研究を行いました。米国のARIC研究の血液検体から、認知症の発症と関連の深い25のタンパク質を特定し、予測モデルを開発しました。妥当性検証をNILS-LSAの試料を用いて実施し、認知症発症リスクを20年前から予測するモデルを開発することができました。これらの研究は、認知症施策推進基本計画、認知症研究などの推進、予防など、国際協力に大きく貢献するものでございます。
1-1はここまででございます。
次に、1-2に進ませていただきます。
評価項目1-2では、臨床研究実施件数は505件でこれまで最高、ファースト・イン・ヒューマン試験も2件目が始まりました。ガイドライン策定への貢献も多く、自己評価をSといたしました。
以下に顕著な実績を示します。
次をお願いします。
初めに、これまで3年かけて準備してまいりました認知症研究のための統合データベースを紹介します。
(1)近年、治療標的分子などの探索におきまして、データ駆動型の研究の重要性が高まっています。当センターは国内初の国際規格の認定を受けたバイオバンクを設置しており、良質な試料の解析から、精度の高いデータを得ることができます。R6年度は、認知症の症例の臨床情報約3,700例の高齢者総合機能評価、脳画像データ約8700例の頭部MRI、約6,500名のゲノム情報などをひもづけた認知症研究統合データベースを整備しました。このデータベースは、当センター内のみならず、外部の研究者も登録申請を行うことで利用が可能になっています。
(2)このデータベースを活用した研究として、アルツハイマー病のリスクであるAPOE4のノンキャリアにおきまして、特定のHLAの頻度が高いことが明らかになりました。この成果はnpj Aging 2024に掲載されています。
次をお願いします。
次に、ゲノム医療推進基盤について紹介いたします。
(1)認知症などのゲノム医療推進の基盤となるデータベースと解析拠点を整備しました。アジア最大級の認知症関連オミックスデータベースの整備、質の高い臨床情報が附随する認知症関連ゲノム情報、認知症のクリニカルシーケンスに対応しました。
(2)オミックス情報の累積データ数は、右の表に示したとおりです。認知症例を含む342例の全ゲノム解析を行い、累計4,354例となりました。網羅的SNP解析は3,284例を行い、累計約4万5000例と、当初の目標を大きく超えています。
この格納データを用いて東アジア人においては初のレビー小体型認知症のゲノムワイド関連解析を実施しました。10番染色体の新規遺伝子SEC61A2のコモンバリアントを同定しています。
次をお願いします。
次に、当センターが開発しました神経変性疾患に関連する新たな画像バイオマーカーのファースト・イン・ヒューマン試験を2件を紹介します。
(1)第1は、ミクログリアを標的としたPETリガンドNCGG401です。ミクログリアは脳内の免疫担当細胞で、認知症などの神経変性疾患に深く関連しますが、これまで生体内で特異的に可視化する手段がありませんでした。そこでNCGG401を開発し、健常者及びアルツハイマー病、側頭葉てんかん患者で検証を行いましたところ、ミクログリア濃度の上昇を明瞭に捉えることに成功しました。将来的には、ミクログリアを標的とした創薬の有効性評価への活用が期待できます。
(2)分子シャペロンHSP90を標的としたPETリガンドBIIB021を開発しました。HSP90は、レビー小体病や多系統萎縮症などのシヌクレオパチーにおけるタンパク凝集に中心的に関与しているタンパクです。HSP90の脳内分布を可視化することで、これまで困難であった病態の評価や治療薬の効果予測が可能になると期待されます。現在、健常者でファースト・イン・ヒューマン試験を実施しており、良好な初期結果が得られております。
これらの研究は、いまだ根本治療が困難な神経変性疾患に対し、疾患の早期診断や新たな治療評価への道を開くものであり、重要な実績と考えております。
次をお願いいたします。
次に、高齢者や認知症の人との共生社会づくりを目指す研究を紹介します。
(1)物忘れ外来を受診した人の臨床データとその後数年にわたる医療介護レセプトデータ及び意思決定などの個別調査を突合したデータ基盤、NCGG-STORIESを構築しました。このデータベースにより、認知症の生命予後のみならず、生活予後の解析が可能となりました。これまで認知症の病型別の自然経過や実態を明らかにする研究を3件報告しております。
(2)近年、介護保険の要支援から要介護1までの軽度要介護の認定を受けた人が急増しており、重症化予防は急務の課題となっています。そこで新規の軽度要介護認定者を長期間追跡し、健康長寿やウェルビーイングの向上に必要なサービス、支援方法を検証するデータ基盤を構築しました。寄り添い調査と申します。このデータベースは、要介護者、家族介護者、ケアマネジャーのデータを集めたユニークなもので、R6年度は1,347名のベースラインのデータを登録しました。
(3)認知症があっても社会参加を促進し、認知症スティグマの軽減とウェルビーイングの向上を目指す産官学民連携体制、NCGG-UniCoを構築しました。例えば写真のように、ショッピングモールなどで認知症の人にも優しい表示やトイレを作成して、その効果を検証しています。
次をお願いします。
健康長寿支援のためのロボットセンターでは、以下の開発を行いました。
ロボットセンターでは、介護ロボットや見守りセンサーなどに関連する計測装置の検証、社会実装に向けた研究開発を世界トップクラスのレベルで推進しています。
(2)基盤となるリビングラボ及びロボット実証空間を拡張し、多様なニーズに対応可能な実証環境を整備しています。
(3)ロボットの開発では、空気圧を供給することにより膝関節の運動をアシストするソフトアシストスーツを開発し、また、ライフログ計測技術の高度化を行いました。
(4)厚生労働省プラットフォーム事業として、ロボット開発コンセプトの提案、試作品の評価、ビジネス化への助言を18件、また、ロボットメーター、機械メーカー、建築、エンタメ業界との共同研究を9件行いました。
次をお願いします。
最後に、診断基準の作成・人材育成・国際活動について紹介します。
(1)Global Leadership Initiative of Sarcopeniaの中心メンバーとして、サルコペニアの診断基準策定の会議に参加し、サルコペニア・フレイルの予防・改善に関するデジタルヘルスのためのガイドラインを作成いたしました。
(2)2011年から毎年行ってきましたアジアの若手老年科医の育成を目的とした老年医学教育プログラムマスタークラスを東京で開催しました。アジア、オセアニアにおける高齢者医療の専門職を育成しています。
(3)国際活動の推進として、北欧3か国、イギリス、日本の枠組みで、認知症・介護予防のための国際共同研究Nordic-Japan FINGERを3年間行ってまいりました。認知症予防のための多因子加入を推進する世界的組織であるWorld-wide FINGERS Networkには既に71か国が参画しております。この枠組みの中で若手研究者の相互訪問を行い、共同研究を進めております。
これらの活動によりまして、認知症施策推進基本計画に大きく貢献してきた成果でございます。
以上でございます。御清聴ありがとうございました。
○土岐部会長 御説明ありがとうございました。
それでは、委員の皆様方から御質問等をお受けしたいと思います。神崎委員も、利益相反がおありということですけれども、意見に関しましては、ぜひ御専門ということですので、活発な御意見をお願いしたいと思います。いかがでしょうか。
前村委員、どうぞ。
○前村委員 長崎大学の前村でございます。
昨年に比べてまた研究が一段と進んでいるということがよく分かりました。
2つ質問させてください。
まず9ページの(3)の血液バイオマーカーのところで教えていただきたいのですけれども、認知症の診断に簡便な血液でのバイオマーカーが利用できるようになることは非常にすばらしいことだと思うのですが、現状での血液バイオマーカーの精度、いわゆる感度、特異度だとか、カットオフを設定したときのAUCなどがどれぐらいあるかということと、血液バイオマーカーが早期診断に役立つのか、認知症の鑑別診断に役立つのか、予後推定に役立つのかというのはいかがでしょうか。
○国立長寿医療研究センター櫻井研究所長 ありがとうございます。
まず、血液バイオマーカーの精度についてでございます。血液バイオマーカーにも、アミロイドのバイオマーカー、タウのバイオマーカー、その他のバイオマーカー等があり、それぞれの精度が明らかになりつつございます。
中でも最も研究が進んでおりますのが、アミロイドに対する血液バイオマーカーでございます。PETでのアミロイドの蓄積をゴールドスタンダードとして検証してまいりますと、血液バイオマーカーの精度はAUCで0.95に近づく精度でございます。タウに関しましても新しいバイオマーカーが出てきておりまして、今後さらに精度が上がっていくものと考えております。
こういった科学的な知見を踏まえまして、バイオマーカーがどこに使えるかということでございますけれども、先生がおっしゃいましたとおり、まず一番は早期診断にも活用できるものと思っております。ただ、血液バイオマーカーが上昇しているにもかかわらず認知症は進行しない例もございます。血液バイオマーカーが独り歩きしますと、不安をあおるだけという危険性もございますので、やはり認知機能の検査と同時に行っていくということ、そういった慎重さが求められていると考えております。
また、今回のプロジェクトで、実際に病院まで来ていただいた方の診断及び診断後支援を行いましたが、認知症病型の鑑別にも非常に有用でございます。PET検査は一般に非常に高価で、一件で20万円ほどいたします。一方、血液バイオマーカーは複数のマーカーを組み合わせて測定することで病態を理解することが容易となるため、診断やフォローアップでも有用な場合がございます。
以上のようなことでよろしゅうございますでしょうか。
○前村委員 ありがとうございます。
もう一つよろしいでしょうか。
11ページの3の(1)デジタルヘルスのところで、アプリを使った研究で、Intention to treatでは有意差がなかったのですけれども、60%以上使用した人では有意差が出たということの解釈なのですけれども、アプリ自体は有効そうだけれども、実際は使った人が結構少なかったということを反映しているのでしょうか。
○国立長寿医療研究センター櫻井研究所長 ありがとうございます。
おっしゃるとおりだと考えております。アプリを毎日使ってくださいとお願いしても、なかなか皆さんやってくださらないので、こういったアドヒアランスの問題は事前にも想定できていたことでございます。ですからこそ60%以上ということで、解析するとこういったデータが出たという理解でございます。
○前村委員 ありがとうございます。
○国立長寿医療研究センター荒井理事長 これに関しては、今、御指摘があったように、デジタルデバイドの問題がありますので、同時にデジタルデバイドを高齢者で減らすということを目的とした研究も併せて別研究として、グーグルからの寄附を頂いた形で行っておりますので、両輪が必要だと思っております。よりスマホになじんでいただくと同時に、スマホをいかに使っていただくか、またインターフェースも含めて、使いやすいアプリをいかに提供していくかということが大事だと思っておりますし、先ほどJ-DEPPという研究の成果をお話しさせていただきましたけれども、そこをうまく認知機能のスクリーニングに流していくということも可能だと思っています。
先ほどのバイオマーカーのお話は、所長からも回答がありましたように、スクリーニングとしてはどんどん使っていこうということは難しいと思っております。あくまでもPETの前の診断補助に使うというのが主な目的だと思っておりますけれども、もちろん自費で検査される分には問題ないかと思いますけれども、一般の保険診療ではそこまで拡充するのは難しいのではないかなと思っていますし、今後は、4つのバイオマーカーをお示ししていますけれども、そのコンビネーションの意義であったり、あるいは予後との関係についてもしっかりと研究成果を出していく必要があると思いますし、バイオマーカーが上がっている場合は、アミロイド沈着あるいはアルツハイマー病の鑑別診断が可能になってまいりますので、臨床診断がなかなか難しい場合は補助として使っていくことができると思っています。
○前村委員 ありがとうございました。
○土岐部会長 続きまして、神崎委員、どうぞ。
○神崎委員 杏林大学の神崎と申します。
先ほど御説明がなかったところなのですけれども、6ページの表と21、22ページの表の見方なのですけれども、確認したいのは、例えば6ページの表の上の部分、加齢に伴う云々というところで、中長期期間計の実績値と達成度がそれぞれ15と79%というような数で示されているのですけれども、恐らく私が解釈したのは、令和3、4、5、6、7、8の6年間を中長期期間と設定して、6年間で合計19件を目標としていて、それに対して15件達成できたので、その達成度が79%という解釈でよろしいのですよね。分かりました。
そうしますと、6年間で19件というのは、全てに当てはまるのですけれども、どういうふうに19件というのを設定したのかとか、その辺は何かあるのでしょうか。
○国立長寿医療研究センター荒井理事長 これまでの実績をベースとして、第2期の中長期計画での数値から上げているという理解だったと思っていますので、今、3期目に当たりますけれども、3期目に入ってタームごとに目標値を上げていく。その上げてきた目標に対して、今さらに120%程度の勢いで進んでいるということになるかと思っています。
○神崎委員 分かりました。単純な計算だと3掛ける6で18だけれども、もう一つぐらいということで19、そんなような理解かなと思ったのですけれども、ととにかく今、理事長がおっしゃったように、年々上げていくべきだと思いますので、目標は6年間で19件だけれども、今は79%だけれども、それが百幾つまで行くというところを目指しているという見方ですよね。
○国立長寿医療研究センター荒井理事長 そうです。
○神崎委員 分かりました。ありがとうございました。
○土岐部会長 続いて庄子委員、どうぞ。
○庄子委員 私は9ページのところです。聞き漏らしてしまったのかもしれないのですが、精密検査の受診率で、対象の方に対して精密検査の受診率が受診勧奨を受けた人のうち7.3%で、人を介すと12%に上がるということで、人を介することが重要だというお話があったのですが、この12%という数字をどういうふうに捉えていらっしゃるのか。このぐらいが妥当なのか、本当はもっと上げたいと思っていらっしゃるのかという評価をお聞きしたいのと、その下に、自治体、医師会との連携、家族や地域社会を巻き込んだ啓発活動が重要と書かれていますけれども、何か具体的にこんな取組をしていきたいと思っていらっしゃるとかがあれば、既にやられていることもありますが、また新たにこんなこともされたいという御計画とかがあれば教えてください。
○国立長寿医療研究センター櫻井研究所長 ありがとうございます。
精密検査の受診率が7.3%で、別のフィールドにおきましては、自治体の方あるいは看護師が電話したり個別に相談すると12%に5%上がるというデータが今回あったということでございます。もちろん目標は80%ぐらいになってほしいわけですが、まだまだ課題は多いと評価しております。ただ、電話をするとかいった個別の対応が全自治体でできるかと言われると、またそれも難しいことでもございます。ですから、今後は人を介する支援ということに加えまして、デジタルを使った支援ということをやっていかないといけないと思います。今年はそういった工夫を様々なフィールドでやっているところでございます。
一つの先行事例といたしまして、神戸市におきましては、認知症の早期発見・早期検査事業というものがございまして、検査をかかりつけ医の先生で行っておられます。そこで検査をして異常があった方を、検査に行きなさいよという御指導をなさっておりますが、そうしますと精査率が85%というデータがございます。ですから、医師会の先生あるいは自治体の方の御指導、御協力というものを一方で盛り上げていかないといけないと考えているところでございます。
以上です。
○国立長寿医療研究センター荒井理事長 啓発について、今、所長を中心にビデオを作成して、それを例えばコマーシャルで流すことによって、国民の意識を高めるということが必要だと思っておりますので、そういったこともこれからしっかりと取り組んでいって、国民の意識を高める。認知症というのは治らない病気ではなくて、早期に見つければ進行を遅らせることはできるということが分かってまいりましたので、できるだけそのリスクのある方については自ら行動変容を行っていただいて、認知症の予防に取り組んでいただくということが大事だと思いますし、それを支える枠組みを各自治体につくっていただくということに関して今、所長を中心に、SBIRという枠組みを活用させていただいて全国展開に持っていこうと思っております。入り口から出口までしっかりと体制を整えるということが我々のミッションだと思っていますし、それをいかに実装して国民の認知症の発症率を減らしていくかということが最終的なゴールになりますので、しっかりとその辺りは取り組んでいきたいと思っています。
何%ということについて、なかなか申し上げにくいわけでありますけれども、今回用いたスクリーニングテストはウェブベースでやることが多くて、御自分でやっていただくという仕組みのため、診断の精度については、まだまだ精度を上げていく必要がありますので、そういった精度的な問題も今後さらに検討しなければいけないと思っています。今回は非常にシリアスな検査を取り入れましたけれども、例えばゲームを行う中で自動的に認知機能のスクリーニングができるような、より高齢者にとって親しみやすいツールをしっかりと開発をしていくということを行っていくとともに、先ほども少し説明をさせていただきましたけれども、通いの場アプリというものがありますので、そういうアプリからうまく認知機能のスクリーニングに誘導し、そしてそれを行動変容につなげていただくような形を模索していきたいと思っております。
○庄子委員 ありがとうございます。
○土岐部会長 どうぞ。
○田極委員 田極です。
御説明ありがとうございました。
ちょっと教えていただきたいのが22ページのところなのですが、医師主導治験数と先進医療承認件数が令和3年度からずっと0件になっていて、23ページのほうの要因分析のところですと、中長期目標としては達成可能であることを見込んでいるとなっているのですが、具体的に達成可能であると見込んでいる根拠などがございましたら教えていただければと思います。
○国立長寿医療研究センター荒井理事長 御指摘いただきましてありがとうございます。
ここが当センターとして苦労しているところで、医師主導治験がなかなか実施できないという課題があるということはしっかりと認識しているつもりであります。あと2年で達成できるのかという御質問かと思いますけれども、我々としては各医師にしっかりと医師主導治験をするようにということは指導し、インフラもしっかりと整えているという状況ではありますけれども、分担では参加できるのだけれども、主任としてのリーダーシップがまだ十分でないという事情もございますので、これについては、病院長もしっかりとした指導をしていただいているかと思いますけれども、楽観的な数値は書かせていただいておりますが、我々としては最大限努力しますということしか申し上げることができないというのが実情でございます。
○田極委員 分かりました。ありがとうございます。
○土岐部会長 どうぞ。
○根岸委員 根岸です。よろしくお願いいたします。
御説明ありがとうございました。
令和6年度も大変重要な研究開発を推進され、成果を上げられたと思いました。
2点教えてください。
まず10ページ、DLBの遺伝子変異を同定されたという御説明があったと思いますけれども、ここのところで主観的聴覚障害との関連というのが書かれておりますが、主観的聴覚障害、具体的に言うと聴覚の低下なのか、それとも、レビー小体型認知症ですと中核症状の一つとして幻視というものがあるかと思いますけれども、幻聴というようなものなのか、主観的聴覚障害というのは何を指標にしているものなのか1点教えてください。
もう一つが29ページになりますけれども、サルコペニアの世界基準を策定されたということで、世界的な基準ができるというのは大変意義があると思うのですけれども、サルコペニアといいますと、筋力とか、筋肉量とか、その機能ということで恐らく枠はつくられていくのだろうと思うのですけれども、この基準というのは、例えば国とか地域による差のようなものは考慮されているものなのかどうか。そして、この基準というのはもう既に完成して、各国に向けて発信されているのかどうか。もしまだであるとしたら、どのくらいの時期をめどにこれからこれが世界に広まっていくのか教えてください。よろしくお願いします。
○国立長寿医療研究センター荒井理事長 まずサルコペニアのほうは簡単に私から説明させていただきます。
サルコペニアの世界基準につきましては、GLISというグループなのですけれども、もともとヨーロッパ、アメリカ、アジア、そしてオセアニアの4つの地域で診断基準が別々に出されていたのですけれども、それをまとめようということで、私がそのメンバーに入りまして、アジアを代表して入っています。
その議論として、世界中の100人以上200人弱の研究者と連携をしまして、デルファイ法を用いて診断基準を定めさせていただきました。その結果、今までは身体機能を含めた診断基準をアジアでは採用していたのですけれども、世界的なコンセンサスとしては骨格筋量と筋力で診断をしようという流れができたということで、これまで論文を3つ発表してまいりました。
今の御質問については、地域ごとの違いをどうアドレスするかということについては、現在、アジアのワーキンググループとして、私がチェアマンとしてかれこれ12年活動しておりますけれども、3回目の改定ということで、今、実はNature Agingに投稿し、査読者からのコメントに対応した修正版を投稿しておりますので、もうすぐ採択をしていただけるのではないかと思っていますので、恐らく9月か10月ぐらいには発表できると思っています。アジア人のためのカットオフ値と、診断基準はGLISを使いながら、アジア人のエビデンスに基づくカットオフ値を提案して、それを論文としてまとめて発表する予定となっています。
サルコペニアについては以上ですけれども、後半お願いします
○国立長寿医療研究センター櫻井研究所長 10ページのレビー小体型認知症に関しまして御説明いたします。
レビー小体型認知症では、記憶障害などの認知機能障害に先立ちまして、幻視、聴覚障害あるいは味覚障害といったような症状が初発であるということをしばしば経験しております。そこで私どもは、そういった患者さんも見逃さないように聴覚障害には「耳に御不自由ありませんか」、あるいは味覚障害には「食べ物の匂いはどうでしょうか」といったような質問を、全ての患者様で問診評価の中に入れています。
今回ご紹介しました主観的聴覚障害というのは、御本人様の訴えをみているということでございます。もちろん訴えられましたときには、耳鼻科で診察していただくという診療の流れを整備しております。
近視との関連はございません。
以上でございます。
○根岸委員 大変よく分かりました。ありがとうございます。
○国立長寿医療研究センター荒井理事長 先ほどのサルコペニアについては、これまで身体機能が診断項目に入っていましたけれども、それを今回からはアウトカムにするということが世界的なコンセンサスとなりますので、今後は薬物の開発についても世界的な統一基準を使った形で診断をし、アウトカムも、世界的な基準で決められたアウトカムに対して評価をすることによって薬剤の効果ができるような枠組みができたと思っておりますので、今後、サルコペニアに関する治療薬の開発が進んでいくと、進展しやすくなっている環境になったと考えています。
追加でした。
○根岸委員 ありがとうございました。
○土岐部会長 土岐です。
私からは介護のアプリの話を質問したかったのですが、11ページのアプリなのですけれども、30か月のオンライン通いの場のアプリがどういうものか少しイメージできなかったのです。
あと、このアプリを商品化するとなると、いわゆる医療機器ではないので、介護なので、どういうビジネスモデル、自治体に買っていただくとか、そういうコストベネフィットみたいなものがある程度計算できるのかとか、まずはその2点教えていただけますでしょうか。
○国立長寿医療研究センター荒井理事長 具体的には、細かくて見にくいのですけれども、アプリの使用に関して、8時にどういう状況かというようなメッセージが自動的に届くようになっていまして、高齢者が使っている場合にはそれを眺めていただいて、その中に散歩アプリであったり、食事中の栄養素のチェックも写真を撮ってすることができますし、内容をベースにしていますけれども、参加者の方とコミュニケーションすることもできる。あるいは脳トレという機能もついていますし、運動に関するいろいろなメニューも各地域の運動メニューを採用させていただいて、御自分に合ったものを使っていただくという仕組みになっています。朝必ず連絡があって、それを開けるといろいろな活動ができるような仕組みになっていて、そこに入っていただくことが一番のハードルなのですけれども、使い出すと結構毎日使っていただけるという形で、毎日の歩数とかも出てきますので、御自分の健康管理に使っていただけるというアプリになっています。
もともとこれは国からの補助金でつくりましたので、今のところこれを販売してということはなかなか難しいのではないかと考えておりまして、長寿研のホームページからフリーでダウンロードして活用していただけるような仕組みになっています。
ただ、どうやってビジネスモデルにするかということについては、各自治体の例えばショッピングモール、あるいは商工会議所などと連携をして、ポイント制にして、ポイントがたまれば商品券に替えていただくとか、そういったことを今後しっかりと各自治体と契約をしながら進めていくということができると思っておりますので、我々のところには全くお金は入らないのですけれども、各自治体でうまく活用していただくことによって、高齢者の自立支援であったりフレイル予防に活用していただけないかなと思っているところであります。
○土岐部会長 ありがとうございます。
ほかはよろしいでしょうか。
それでは、研究・開発の成果の最大化に関する事項につきましては以上とさせていただきます。
続きまして、医療の提供その他業務の質の向上に関する事項の評価項目1-3から1-5について議論したいと思います。先ほどと同様の流れで法人から御説明いただき、その後、質疑応答を行います。それでは、よろしくお願いいたします。
○国立長寿医療研究センター松浦病院長 この4月に長寿医療研究センターの病院長を拝命いたしました松浦俊博と申します。今後ともよろしくお願いいたします。
では、1-3、医療の提供に関する事項を説明いたします。
目標としましては、加齢に伴う疾患に関し、高度かつ専門的な医療及び標準化に資する医療の提供を患者の視点に立って行うとなっています。
我が国において、近い将来85歳以上の人口が約1000万人になることが予想されることから、当センターでは、健康寿命の延伸に向けて特に重要性が明らかな認知症とフレイルの課題に重点的に取り組んでいます。
下のIIのところにありますように、病院に関する指標において、過去3年間と比べて最もよい成績で、病院内センターのもの忘れセンターにおいて、遺伝型に基づいた抗アミロイドβ抗体投与を全国に先駆けて行い、有用性を認めたことを発信しました。
感覚器センターにおいてIPS由来隔膜シートを用いた移植治療など先進医療を行い拠点病院となったこと、高齢者医療の標準化を目的としたガイドラインを日本及び世界に発信したことなど目覚ましい業績を上げたために、自己評価をSとさせていただいております。
では、概略を述べさせていただきます。
まず病院運営に関する指標について説明いたします。
医業成績の指標としているのは、入院延べ患者数と病床利用率、平均在院日数、手術件数についてですが、全て過去3年間と比べて最もよい業績となりました。延べ患者数は初めて10万人を超え、病床利用率も84.8%と目標に極めて近い数字となっております。平均在院日数も短縮傾向、手術件数も3,000件以上と目標を大幅に超えております。
目標に達していない項目もありましたが、後で述べますけれども、医業収支は急激な物価高の影響で赤字ではあったものの、令和5年と比べて1億円程度改善しております。
次に、病院内センターを中心とした臨床研究を含めた診療に関して説明させていただきます。
32ページをお願いします。
まずもの忘れセンターでは、認知症推進基本計画を念頭に、診療、研究を遂行いたしました。初診患者数は、ここにありますように年々増加しておりまして、令和6年度は1,145人の認知症患者の診療を行いました。
また、令和5年度に治療を開始したレカネマブに引き続き、新たなアルツハイマー両疾患に関する抗アミロイドβ抗体薬であるドナネマブの治療を開始しております。
治療対象者に、全国に先駆けて希望に応じてAPOE遺伝型を開示し、副作用の発生率を踏まえた治療法の選択の判断材料として活用させていただいています。今までのところアミロイド関連画像異常(ARIA)の発現頻度に変化はありませんが、治療を有する症候性の異常はほとんどなく、有用性を認めています。このため、全ての医療機関でこの判断基準を利用できるように、保険収載に関して厚生労働省へマスメディアの会合において提言させていただいております。
また、(4)にありますように、あいちオレンジタウン構想による地域連携も推進させていただきます。政策医療である認知症診療・研究に大いに貢献したと考えております。
次のスライドをお願いします。
摂食嚥下に関する最新医療の提供についてです。
この課題については、摂食嚥下・排泄センターで行っております。(1)にありますように、摂食嚥下障害に関しては、320列のCTを用いた咀嚼機能、嚥下反射、喀出機能など、嚥下障害がどのような障害であるかの正確な評価を行い、それに基づく治療を提供しようと考えています。
また、右の表3にありますように、高齢者で非常に多い疾患である排尿障害や排便障害に関して、ラウンドを行って多職種で超音波などを使用した客観的な評価による治療法やケアの有用性を検証して、これらは論文発表をいたしております。
次のスライドお願いします。
訪問リハビリテーションと脳・身体賦活リハビリテーションの歩みと研究による貢献についてです。
当センターでは、訪問リハビリテーション並びに認知症の人への脳・身体賦活リハビリテーションを行っております。開始して約10年が経過いたしました。
左の図と右の(2)のところもありますように、脳活リハに関しましても過去最高の実績となっております。一層の充実を図るため、脳活リハを対象に、認知機能の維持だけでなく、身体機能や、右下にありますように、eスポーツを活用した自尊心向上を目的とした斬新的なプログラムの開発、実施を行っております。また、大府市だけではなく周辺の多くの自治体と連携し、介護予防事業に参画し、令和6年度は63件の一般介護予防事業に従事いたしました。
次のスライドをお願いします。
治験・臨床推進体制の整備についてです。
この課題は先端医療開発推進センターで行っていますが、センター内外の研究者に、臨床研究支援として生物学統計相談等の各種コンサルテーションを無料で行っております。ただ、先ほどもありましたように、新規の医師主導治験のところには少し苦戦をいたしております。
また、最近、研究不正、研究倫理というのが非常に問題となっておりますけれども、臨床研究認定者制度を活用してセミナーを32回開催し、研究不正の防止を徹底的に行っております。
次のスライドをお願いいたします。
地域包括ケアシステムに対応した医療モデルの充実に関してです。
地域医療への貢献も当センターの重要なミッションですので、地域連携推進部が中心に行っております。昨年度に地域包括ケアシステムに対応した医療モデルの充実を目的に、(2)にありますように、認知症の緩和ケア実践ガイドラインと認知症を有する人のためのエンドオブライフ・ケアの支援ガイドの策定について報告させていただいておりますけれども、令和6年度には「認知症支援ガイド 最期まで本人の意思を酌み取ったケアを実現するために」を発刊し、認知症の人の緩和ケアや意思決定支援の指針を作成し、啓発させていただいております。
また、右の(3)(4)にありますように、アドバンス・ケア・プランニング・ファシリテーターによる情報共有ツールの推進や、介護事業所における情報安全管理の手引きなども作成させていただいております。対策がやや遅れぎみの介護事業所における情報管理体制づくりにも貢献させていただいております。
次のスライドをお願いします。
フレイル・ロコモ・サルコペニア克服による身体的自立促進に向けた取組についてです。
これはロコモフレイルセンターで取り組んでおりますが、包括的診療・研究体制システムのロコモフレイル外来・レジストリの整備を行い、登録者は左の図にありますように1,710名に上っております。
また、(2)にありますように、CTや超音波を利用したサルコペニア・ロコモの革新的評価方法・システムを開発しております。
また、(3)にありますように、治療に関しても多くの企業との共同研究を行っておりまして、開発ベルト電極式骨格筋電気刺激法による新しい介入あるいはウォーキングポールによる研究開発も行っております。
次のスライドをお願いします。
高齢者感覚器包括医療と眼科再生医療の展開についてです。
この課題は感覚器センターにおいて行っております。
左の図にありますように、感覚器外来では、視覚、聴覚、味覚、嗅覚、平衡感覚など包括的感覚評価を行い、感覚器リハビリを行っております。
また、右の(3)にありますように、角膜移植、眼表面再建術、羊膜移植の実施と眼科移植医療の拠点化を目指した診療体制の拡充に着手し、再生医療製品やiPS由来の角膜上皮シート移植を用いた難治性眼表面疾患及び水疱性隔膜症に対する先進的医療を実施させていただいております。
次のスライドをお願いします。
高齢者の疼痛、運動器における慢性疼痛に関してです。
高齢者の慢性疼痛は、QOLやADLを低下させる大きな原因となっています。整形外科グループは、バイオバンク事業を基盤とする高齢者慢性疼痛患者の臨床データと血液試料のリンクを可能にするデータベースを構築しております。さらに、医工連携によって、(3)にありますように診断や機能強化に有用な特殊診断装置を開発し、特許登録をさせていただいております。これは固有感覚機能の低下を瞬時に評価し、治療に必要な振動刺激を付与することができる診断治療装置で、介入試験を特定臨床研究によって行い、有用性を認めました。
また、(4)にありますように、慢性疼痛の難治化における多変量解析の前向き研究として行い、早期体幹運動の推奨をさせていただいております。いずれも論文化させていただいております。
次のスライドをお願いします。
評価項目1-3の最後のスライドとなります。高齢者診療を推進する科学的アプローチに基づく知見の創出についてです。
高齢者医療については、身体的及び臓器的疾患のため、標準治療の確立が困難とされています。今回、日本老年医学会と共同で高齢者総合機能評価(CGA)に基づく診療・ケアガイドライン2024を作成しました。CGAは老年医学の基本であり、高齢者の包括的な評価及び診療を行う上で欠かせない重要な評価ツールで、高齢者医療の標準化への第一歩となるものと期待しています。これに関しては日本語版と同時に英語版も発出し、世界へ発信させていただきました。
また、(2)にありますように、フレイルのバイオマーカーの検索を行い、予測因子を抽出して、有効な予測式を構築させていただいております。
続いて1-4の人材育成に関する事項に移ります。
目標は、国内外の有為な人材の育成拠点となるよう、長寿医療及びその研究を推進できる人材の育成やモデル的な研修・報酬の実施及び普及に努めるとなっています。
認知症サポート医研修、認知症初期集中支援チームは目標設定を超えております。また、次に述べますように、内科専門医の基幹施設の認定、コグニサイズの指導者・実践者養成の研修、さらに海外研修生の受入れなど、人材育成に大いに寄与したと考えておりますので、自己評価をSとさせていただいております。
スライド43ページをお願いします。概略を説明させていただきます。
認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)に基づく認知症サポート医養成研修は、eラーニングシステムを利用したオンライン形式と中央研修の複合型で計5回研修を実施し、令和6年度の修了者数は、年度計画を上回る938人となっています。修了者は右の表にありますように1万5548人と、目標の1万6000人にあと僅かとなっております。
認知症の早期発見・対応の支援体制の構築を目標とした認知症初期集中支援チームの研修は、総合研修の回数を増やし、集合研修3回、オンライン研修2回の5回の研修を実施し、令和6年度の修了者数は1,056人となりました。
また、当研修会は各項目を複数の講師が担当できるようにさせていただいておりまして、講師の育成も図っております。
次のページをお願いします。
続きまして、高齢者医療及び認知症ケアに関する若手医師の養成のためのプログラムを作成しております。令和5年度には卒後教育研修評価機構(JCEP)の認定取得をさせていただいておりますけれども、令和6年度には、左下にありますように、内科専門医を育成するための基幹施設として、日本専門医機構に認定を受けております。
一方、一層高齢者医療に携わる若手内科医師の教育に力を入れようとしております。連携大学院における研究者育成及びモデル的な研修実施である介護予防従事者を対象とした当センターで開発した認知症予防プログラム「コグニサイズ」の指導者75名、実践者養成149名の研修も実施させていただいております。
また、コグニサイズの促進協力施設は令和6年度で53施設となりました。
最後のスライドです。
右の図にありますように、令和6年度は、専門的な実習、看護及びリハビリテーションの学生8,461名(リハビリテーション科5,234名、看護師2,170名)に対し実施いたしました。
さらに左の図にありますように、海外研修の受入れも年々増加し、22名受け入れました。受講者の多くはアジア諸国からの来日で、高齢者の第一線で活躍する医療専門職で、日本の実地研修により専門性を高め、帰国後は帰国研修の実施を課して自国の地域医療体制の構築に貢献できるものと考えています。国際ネットワークの構築や政策医療の基盤として極めて重要な意義を要するものと思われます。
以上です。ありがとうございました。
○国立長寿医療研究センター西川企画戦略局長 続きまして、1-5、医療政策の推進等に関する事項でございます。
私、西川と申します。よろしくお願いいたします。
自己評価につきましてはSとさせていただいております。
数値目標のところでございます。II.のところでございます。NCとして、国民向け・医療機関向け、地域の方々だけではなくて広く情報発信を積極的に行うということが大きなミッションだと考えております。
指標としては、ここにありますとおり、ホームページへのアクセス件数600万件以上ということでございましたが、R6年度は1,662万件ということで、大きく超えているということで、Sとさせていただいております。
要因分析のところでございますけれども、我々は2行目にありますとおり、ウェブアクセシビリティーの向上あるいはホームページ上のコンテンツの拡充といったところは日頃から非常に努力をしているところでございます。こういったところが増加につながったのかなと思っております。
次のページでございます。
これまでの御説明の中でも情報発信の内容につきましては御説明したところでございますけれども、幾つかトピックをここでも改めて御説明いたします。
(1)は調査・研究のところで御説明したところでございます。
(2)家族介護者支援の推進ということで、これにつきましては1行目、2行目にあります簡易実施可能な介護者状況を評価するような質問票を開発しております。
真ん中のところ、小さい字でございますけれども、10ぐらいの質問項目を5つぐらいで評価するという、なるべく簡単に評価できるような調査票を作ってございます。
3つ目のポツにありますとおり、介護保険の現場あるいは行政施策などにおきまして、要介護高齢者を介護する家族などの介護状況を簡単に把握できるということで、さらに進めていけるように期待されるところでございます。
次のページでございます。
情報発信ということでございますけれども、マル1番として新聞であったり、2番目、国際会議、これまで御説明したような、特にアジア各国との国際会議ということで、あるいは3番目、リハビリ・栄養・口腔管理、例えばということで国内初のガイドラインも作成しております。こういったものが診療報酬の新しい改定、創設にもつながっておりますし、我々もそれに実際に取り組んで、算定も行っているところでございます。
次の(4)でございますけれども、自治体との連携ということで、愛知県あるいは大府市等との連携を進めてございますし、(5)のとおりフォーラムということで、厚生労働省とも進めております。
(6)はドラマの監修ということで、面白い取組だったかなと。こういったことでMCI、軽度認知障害といった言葉の普及にも一定程度貢献したのかなと思っております。
以上でございます。
○土岐部会長 ありがとうございます。
ただいまの1-3から1-5までですけれども、御質問等よろしくお願いいたします。
成川委員、どうぞ。
○成川委員 成川と申します。御説明ありがとうございました。
2点質問させていただきます。
評価項目1-3の冒頭の御説明のスライド30ページのところで、病院運営に関する指標はいずれも好転してきているように拝見をしまして、特に入院患者数が今年度増えたということの要因としては、センターとしてはどんな分析をされているかを聞かせていただきたいのが1点目です。
2点目が、スライドでいきますと43ページです。いろいろな研修を積極的にされているということは確認できましたし、達成をしているということは非常に評価をしたいと思っております。
例えば認知症サポート医研修なんかも、その後の継続的な研修といいますか、情報のアップデートとかいったことについて何かお取組をされていたり、あるいは今後何か御予定があったらお聞かせをいただきたいと思います。
以上2点です。よろしくお願いいたします。
○国立長寿医療研究センター松浦病院長 まずお答えします。
最初の入院患者数に関しましては、令和3年度、特に令和4年度はかなり苦戦いたしました。そこで令和4年度から令和5年度にかけて部長会議を開催させていただいて、かなり積極的に病院経営に対して考えていただきまして、また、やはり救急患者を受けるということが重要でありますし、あと地域連携が非常に重要と考えております。ですので、地域の先生方を少しずつ回って、あと医師会の会長の先生とかも回って、いろいろと地域連携を密接にさせていただきました。これによって、地域の先生方あるいは地域の中核病院との信頼関係が非常に構築されたものと考えております。これによって少しずつ紹介患者が増えてきまして、達成率が97%と極めてよい数字になったものと考えています。
○国立長寿医療研究センター荒井理事長 認知症サポート医研修については、更新については各自治体の医師会に任されておりまして、我々のミッションからは外れてしまっています。本来は更新も含めてしっかりと研修の質を担保すべきだと個人的には思っていますけれども、そういう仕組みになってしまっています。なかなか更新についてはセンターとしてコミットすることは難しいという状況です。
○成川委員 ありがとうございました。
○土岐部会長 ほかはございませんでしょうか。
根岸委員、どうぞ。
○根岸委員 根岸です。よろしくお願いいたします。
1-3の医療の提供について2点お尋ねします。
まず33ページのところですけれども、食事介助技術の評価指標を開発されたということですけれども、まずは誰がこのスコアに答えるのか、それから誰を対象としているものなのか。例えば食事介助するというのも看護職、介護職あるいは在宅で言えば家族、様々かと思いますけれども、そこをまず教えてください。
それから、もう一点が36ページのところですけれども、アドバンス・ケア・プランニングの御説明があったと思いますけれども、これも今後、大変重要性が高まっていくものだと思いますが、連携の取組を進めたということですけれども、もう少し具体的に連携というのはアドバンス・ケア・プランニングに関してどういうことなのか。プランニングをするに当たって、1回だけの人生会議を開くということよりも、状況によって、あるいは医療ですとか処置が変わることによって本人の意向、意思が変わっていくと思うのです。そうすると、繰り返し話し合うということが非常に大事だと言われていると思うのですけれども、その後のフォローといったことも含めておやりになっているのか、そこを教えてください。よろしくお願いいたします。
○国立長寿医療研究センター松浦病院長 まず最初に、33ページの一番左の下のところのことをおっしゃっていらっしゃると思うのですけれども、患者様に関しては、自力摂取できない。特に認知症の患者さんとか、脳梗塞の患者さんとか、摂食嚥下が非常にできない人たちに関して、食事介助技術、看護師さん、うちの病院は療法士、特にSTがかなりおりまして、彼らがまずできない人たちの評価をさせていただいております。あと、医師も入りまして、そこにありますように嚥下内視鏡という検査もやりまして、STと共に評価をさせていただいて、介助スキルスコアというものを使って評価をさせていただいております。
○国立長寿医療研究センター荒井理事長 基本的には、看護師、それから介護士だけではなくて、家族も使っていただくものになっていると思いますので、最終的には御家族でこのスコアを使っていただいて、そのスコアを上げていくということに関してもしっかりとトレーニングの仕組みも我々としても準備していく必要があると思っているのですけれども、そういう理解でよろしいですか。
○国立長寿医療研究センター松浦病院長 そうです。
○根岸委員 今の御説明で分かりました。
胃瘻等の経管栄養の方たちが、もしかしたら食事介助の方法を向上させることによって口から食べるということに変えていくことが期待できるのかなと思いました。よろしくお願いいたします。
○国立長寿医療研究センター松浦病院長 ありがとうございます。
もう一つはACPですけれども、36ページのスライドになりますが、これは地域連携室が主にやっております。主には研修をやっていますけれども、当院に入院してきて、特に高齢者というような人たちでは、地域連携室に依頼が行きますと、そこで多職種で意思決定支援をやらせていただいています。特に在宅に帰ろうとされる方は必ずMSWが入って、意思決定支援、それと共に在宅医の先生あるいは在宅訪問の看護師さん、そういう方たちも来て意思決定支援をさせていただいております。
その後に、在宅の先生がお帰りになった後に、しょっちゅうやるということはなかなか難しいですけれども、先生からの意向を聞いております。その患者さんたちは、本当はよくないのかもしれませんけれども、度々再入院させていただいていますので、そのときには再度、意思決定支援をさせていただいております。
回答になっていますでしょうか。
○国立長寿医療研究センター荒井理事長 これは当センターだけではなくて、ファシリテーターを今、全国で育成しておりますので、各地域でファシリテーターが人生会議というものを電カル等を活用しながら、今、御質問にあったように、適切な時期を選んでACPをやるというトレーニングをしているということになりますので、具体的なツールについては私も十分に把握をしていないのですけれども、いろいろな地域でACPができるというようなファシリテーターを育成して、それが具体的に電カルにしっかりと記入をしていただいて、診療に携わる専門職がそこを理解して、共通認識として持つような仕組みという形を進めると御理解いただければと思います。
まだまだアップデートする必要があると思いますので、これについてはまた来年度以降もしっかりと御説明をさせていただきたいと思います。
○根岸委員 ありがとうございました。刻々と気持ちが揺らいだり変わったりしていくと思いますので、ぜひこの連携も継続したものにつくり上げていただけるとありがたいです。
ありがとうございました。
○土岐部会長 神崎委員、どうぞ。
○神崎委員 杏林大学の神崎です。
46ページの情報発信のところなのですけれども、ホームページのアクセス数が非常に多いというのは大変すばらしいと思うのですが、いわゆるSNSとしてほかにやっている活動があればお聞きしたいのと、NCGGの中には広報部とか何かメディア向けに何か発信するような部署が独立というか、そういうような場所があるのでしょうか。
○国立長寿医療研究センター西川企画戦略局長 私のほうから、まず前段のホームページだけではなくて、私どももX(旧ツイッター)ということで発信をいたしております。毎月なるべくタイムリーなものということで発信をいたしているところでございます。
それから、私どもも情報発信を広く国民向けに進めていくことが大きなミッションだと思っておりますので、46ページの要因分析のところにも書いてございます。日頃から情報発信室というような専任の部署も設けながら、あともちろん皆さん各スタッフの方々が発信するということがミッションだと認識いただいているものですから、御協力いただきながら進めているところでございます。
以上でございます。
○国立長寿医療研究センター荒井理事長 マンパワーの関係で、広報部というセクションを独立して持つことができないため、併任という形になっておりますけれども、マンパワー的な、あるいは予算的な余裕ができれば当然広報部とつくって、そこでしっかりと専従のスタッフを配置してやるべきだと思っておりますけれども、昨今の経営状況に鑑みて、現状では今、局長からお話があったとおりの状況で、専従ではなくて併任で進めさせていただいているということになります。
○神崎委員 もちろん結構だと思うので、NCの使命として、ここにあるように国とか国民とかに正しい情報を発信するというのは非常に大事なテーマだと思いますので、そこもぜひ力を入れていただければと思って発言させていただきました。
以上です。
○土岐部会長 よろしいでしょうか。
松前委員、お願いします
○松前委員 松前でございます。
大変すばらしい研究をいろいろ御説明いただきまして、ありがとうございます。
研究の推進体制の整備ということで、35ページにも関係することでございますが、研究者向けの教育、研修とかを提供されているということでございますが、外部資金を見ますと科研費が過去最高というか、大変すばらしいことだと思うのですけれども、金額的にも倍以上に増えているところでございます。
特に研究者が直接研究費に入出金というか、帳簿に記録とかいうことに関わる仕組みになっているのかということと、あとは研修の中でももしそういう関わりがあるのであれば、不正につながるとよくないと思いますので、そういった観点からの研修とかいうことも含まれているのかということをお伺いしたいと思います。
○国立長寿医療研究センター松浦病院長 まず、研修を含めまして、金銭的なことに関しても不正は絶対にしてはいけないものですので、そういうものもちゃんとさせていただいております。
それから、会計などは一応研究者の雇っている秘書さんが中心になってやっておるのですけれども、研究医療課というものがありますので、そこで必ずチェックをさせていただいて、金銭的な不正がないということも何重にもチェックさせていただいておりますので、ないものと考えております。
○国立長寿医療研究センター荒井理事長 研修については、いわゆる研究インテグリティに関する研修を必ず受講していただいています。それは研究者だけではなくて、今、病院長からお話があったように、研究補助員も含めて全てのスタッフが研修を受けておりますので、不正は絶対に起こさないというつもりでやっております。
同時に、別の研修としては、科研費をいかに取るかということについても研修を行っておりまして、それは研究者向けに、特に若手の科研費を取ったことがないといった方に対しても、そういう教育プログラムを年に1回ですけれども受講していただいて、より多くの方々が科研費を取っていただくような仕組みを今、つくらせていただいております。
当センターは、いわゆるSとかAという大きな研究費が非常に少ないという欠点がありますので、そこを何とか克服するように、研修をしながら、また、センター内外の研究者としっかりと連携を取るような形もエンカレッジしながら進めさせていただいております。
以上です。
○松前委員 ありがとうございます。研修についても大変充実されており、仕組みについてもしっかりとなされているということの御説明をいただきまして、大変安心いたしました。ありがとうございます。
○土岐部会長 ほかはよろしいでしょうか。
それでは、続きまして、業務運営の効率化、財務内容の改善及びその他の業務運営に関する事項の2-1から4-1につきまして議論したいと思います。それでは、まず御説明をよろしくお願いします。
○国立長寿医療研究センター西川企画戦略局長 では、2-1、業務運営の効率化でございます。
自己評価はBとしております。
定量的な指標、これは何といっても一番大きなところでトップバッターでございます。経常収支率を指標にして、収支相償100%を毎年目指そうということで進めておりますが、R6年度は94.4%ということでございます。過去を振り返りますと、R3年度のときは101.4ということで100を超えておったのですけれども、R4が95.7、R5が95.3、そしてR6は94.4ということで、残念ながら目標は達成できていないということで、今、頑張っているところでございます。
指標としては次のところ、ジェネリック、後発医薬品の数量シェアというところで、85%という目標を掲げておりますけれども、これについては89.7ということで、達成いたしているところでございます。一般管理費、未収金等についてはまた後ほど御説明したいと思います。
51ページを御覧いただきたいと思います。
経常収支ということでは、費用を削減し、そして収入を増やしていくということの収支差を生み出していくということになりますけれども、材料費の削減ということでマル1番に書いております。人件費はどうしても昨今の中で、もちろん効率化していくところはありますけれども、伸びていかざるを得ないところで、材料費が大きく伸びているところが頭を抱えているところでございます。
まず、ジェネリックにつきましては今申し上げたとおりでございますけれども、医療材料費ということで、共同購入であったり、あるいは償還価格がある材料の中でも、いわゆる逆ざやというようなものもあったりしますので、そういったものを中心に価格を何とか引き下げるような交渉をしたり、努力をしているところでございます。
それから、マル2番ということで、収入の確保ということで、先ほど院長から御説明のとおり、入院患者数を頑張って伸ばしている。あるいは、各部署の皆様方と認識を共有しながら、病院全体としての入院延べ患者あるいは外来の確保に努めているところでございます。それから、マイナンバーとか電子処方箋等々の国の各政策にも協力しているところでございます。
次の(2)で情報セキュリティ対策ということで、昨今のいろいろな国の大きな動きの流れも受けながら、いろいろな手順書であったり、セキュリティ研修を行ったり、あるいは監査法人の外部監査も受審しているところでございます。
次のページでございます。
まずこの絵の見方としては、医業収支、病院の収支のところと、医業外ということで、研究所等々の病院以外のところの収支と分けております。R6年度、前年度の比較で申し上げますと、収支差、経常収支のところにつきましては、マイナスではありますけれども、前年よりは改善しているところでございます。
収益のところはかなり伸びているところでございますけれども、費用も残念ながらそれなりに伸びているというところであります。
収益を伸ばしている大きな要因としては、右の箱のとおり、入院の収益と外来ということでございますし、ここに書いている患者数、それから患者1人当たりの平均単価、入院、外来ともに4つの全てのポツにつきましては前年を上回っているということで、これは我々現場の努力の表れかなと思っております。
一方、費用のところでございます。給与費ということで人件費の関係は増えているところでございますけれども、先ほど来御説明しておりますとおり材料費、医薬品費だったり診療材料費、衛生材料費といったものが相当伸びてきているということで、この辺りをターゲットに進めているところでございます。
それから、医業外のところを御覧いただきたいのですけれども、収支差というところのR6年度、4億4400万ということで、前年よりもさらに悪化して、▲になっているところでございます。主な理由としては、収益が科研費とか幾つか伸びているところもあるのですけれども、全体としては下がってしまったというところと、費用も少し下がっておりますけれども、トータルとしては収支差4億4400万ということで、これを合計した総収支差、経常収支とほぼ同じような概念でございます。歴史的に見ますと平成27年から書いてございますが、R3年度の頃、コロナの補助金とかいろいろな事情もありましてほぼプラマイゼロでございましたけれども、R4、R5、R6ということで、毎年残念ながら経常収支、総収支、▲ということで、この辺りが積み上がって、後ほど御説明する繰越欠損金ということで、ストックとして赤字が積み上がっている状態になっているということでございます。
次のページでございます。
次の項目ということで、3-1、財務内容の改善です。
目標としては繰越欠損金の削減ということで、先ほどの御説明のとおり、毎年の経常収支がこの二、三年赤字だということでございますので、R6のところを御覧いただきますと、23億9000万ほどの繰越欠損金になっている。前年から7億5700万、経常収支の赤字の分がそのまま積み上がっているということでございます。
要因分析ということでは、いろいろな努力もしておりますが、物価が上がっているということで、病棟が整備されたことに伴う委託費であったり、当然減価償却費も増えてきているといったところが原因だと考えております。
次のページでございます。
外部資金ということで、営業外のところで獲得を頑張っているところでございます。
55ページに行っていただきますと右横でございます。R6のところを御覧いただきますと、先ほどの御説明のとおり、科研費のところはかなり伸びているのですけれども、ほかの項目のところで伸びていないところがありますので、トータルとしては外部研究資金につきましては下がっているというところでございます。
次のページ、最後、4-1、その他業務運営ということで、Bでございます。
法令遵守の体制でありますとか、先ほど来御説明しているとおり研究不正の防止に関する取組、あるいは人事の最適化ということで人事交流であったり、クロスアポイントメントという新しい仕組みにつきましても次の57ページに御紹介しておりますけれども、こういったところとの人事交流も進めているというところでございます。
以上でございます。
○土岐部会長 ありがとうございます。
ただいまの御説明につきまして、委員の先生から御質問ございますでしょうか。
法人のほうも書かれていますけれども、外部資金が4億円以上減っているというのが全体の収支にかなり大きく影響しているのですが、外部資金の内訳の中でも、厚労科研とかはすごく政策的な高齢者に期待する部分が多いと思うので、非常に増えていってよいと思うのですけれども、AMEDがかなり大きく減っております。あと企業との共同研究もあまり進んでいないような気もするのですけれども、この辺りに関しまして法人のほうはどのようにお考えなのでしょうか。
○国立長寿医療研究センター荒井理事長 令和元年から令和5年度にかけまして、我々が行ったJ-MINTという認知症の予防に関する大規模な臨床研修であったり、後研究であったり、ゲノム研究についての大型のAMED研究を頂いたということで、この5年間についてはAMEDからのかなりの研究費の収入があったのでありますけれども、全てそれが令和6年度からなくなってしまったということで、このような形になっているということになりますので、今後もAMEDの大型研究費をいかに獲得するかということをしっかりと研究センター内で共有し、できるだけヒアリングまで行く場合は、あるいは事前の研究申請の段階でしっかりとレビューをすると。科研費についてもレビューをして、できるだけ採択を上げる。AMEDについても、しっかりと幹部がレビューをすることによって、採択率が高くなるように、また、ヒアリングするものについては、これまではしていなかったのですけれども、昨年度ぐらいからヒアリングの予行もするということで、私も入って、できるだけよいヒアリングのプレゼンをしていただくということで、採択率を上げようと思っております。
○土岐部会長 SBIRなども書いてあるのですけれども、企業との共同研究はいかがでしょう。
○国立長寿医療研究センター櫻井研究所長 企業等の研究費でございますけれども、令和3年、4年あたり、あるいは5年がピークでございまして、当時は長寿全体で1億円を超える額がございました。令和6年度はちょっと減っておりますけれども、全体をなべて考えますと7000万、8000万ぐらいのレベルで推移してございます。
○国立長寿医療研究センター荒井理事長 企業治験といいますか、薬剤の治験が減っているということが一つの要因かと思っております。どうしても認知症頼みというところがありますので、認知症以外の治験についても幅広く、例えば骨折とか、骨粗鬆症とか、ほかの領域においてもいろいろと外部の業者と連携をしながら、知見を増やすようなことをしたいと思っていますし、先ほどロボットセンターの御説明をさせていただきましたけれども、今回プレスリリースも予定をしておりますが、新しく実証スペースというものをオープンしましたので、そこのスペースを企業に活用していただく。それを共同研究費を頂くことによって活用していただいて、成果を上げていただくということを考えておりますので、今後は知見とロボットを中心とした共同研究で企業からの研究費をさらに増やしていこうと考えております。
○土岐部会長 どうも御説明ありがとうございます。
どうぞ。
○松前委員 松前でございます。
御説明ありがとうございます。
資料で分かりにくかったというか、説明を伺いたいのですけれども、52ページと53ページでそれぞれ分析とかをされておるのですけれども、医業外収支のところで減価償却費が減っているというのが大きな原因ですというのが書いてあります。53ページに、今度は繰越欠損金の要因分析ということで、そこには新設した病棟によって当然減価償却費は増加するというのを書いてございますが、この関係が理解できなかったので1点教えていただきたいということと、もう一つ、材料費が上がるというのは、人件費もそうですけれども、どこの病院とか医療機関でも抱えているところでございます。中でも在庫の管理というかロスについても、少し状況を教えていただければと思います。
以上でございます。
○国立長寿医療研究センター西川企画戦略局長 ありがとうございます。
減価償却費についての記述が、一件矛盾しているのではないかというような御指摘だろうと思いますけれども、まず、今御覧いただいている52ページの減価償却費の減というところが、医業外収支の項目でございまして、病院本体と違うところで、セグメントを分けて書いてございます。その部門については減価償却費が減っているわけですけれども、医業収支、上の病院本体のほうは近年、大規模な改修をやったものですから、別の項目、53ページの要因分析のところで、R4年度に新設した病棟整備に伴う減価償却費の増加ということでございますので、医業収支のほうのセグメントのところの減価償却費は増えているのだけれども、医療外のほうのセグメントも減価償却費は減っているということでございます。トータルとして、病棟整備の部分が非常に大きいので、がっちゃんこすれば伸びるのですけれども、そこら辺が一見分かりにくい感じになってございますけれども、今の御説明のとおりかと思います。
それから、診療材料費、医療材料費、あるいは医薬品も含めての材料費の在庫管理ということでございますけれども、特に高額なものが期限が切れたりしてしまうと、非常に在庫ロスということで負担も重くなってくるわけですけれども、その辺りは我々も目を配りながら、もう少ししたらこれは期限が切れますよみたいなことも、病院の中でも認識を共有しながら進めてございますけれども、日常的なところにつきましては、特に医療材料費につきましては専門の業者、SPDの業者の方に在庫管理をお願いしておりますけれども、その方々だけではなくて、特に高額なものにつきましては我々職員も認識を持ちながら、在庫ロスが生じないように目配りをしているところでございます。
○国立長寿医療研究センター松浦病院長 追加でよろしいでしょうか。
材料費に関しましては、高額に関しては基本的に用事発注とさせていただいているものがかなりございます。ですので、緊急で使うものは当然置いてありますけれども、そうでないものに関しては、予定手術とかに関しましては基本的には用事発注ということをさせていただいておりまして、ロスがないように心がけております。
付け加えさせていただきました。病院長でした。
○松前委員 ありがとうございます。
○土岐部会長 ほかはございませんでしょうか。
それでは、全体を通じまして、もう一度振り返って御質問等があればよろしくお願いします。
なければまとめに入りたいと思います。
最後に、法人理事長と法人監事からのヒアリングを行います。
まずは法人監事より、業務の監査結果等を取りまとめた監査報告について御説明をいただくとともに、監査等を踏まえた現在の法人の業務運営の状況や今後の課題、改善方針等につきましてコメントをお願いしたいと思います。
○国立長寿医療研究センター二村監事 監事の二村です。
令和6年度財務諸表等の26ページにございます監事の監査報告書、IIの監査の結果を御覧ください。
記載にありますとおり、法人の業務、内部統制システム、役員の業務の執行、監査法人の監査の方法及び結果、事業報告書におきまして、いずれも指摘すべき重要な事項はございませんでした。
また、経営改善に向けまして、橋本監事と共に陪席をさせていただいております理事会、運営会議等、そして新たに経営戦略会議を立ち上げられまして、細部にわたってセンター全体で経営改善の意識を高めるよう努力して見えると思っております。
以上でございます。
○土岐部会長 ありがとうございます。
それでは、続きまして、法人の理事長より、日々のマネジメントを踏まえ、現在の法人の業務運営の状況や今後の課題、改善方針等についてコメントをお願いしたいと思います。
○国立長寿医療研究センター荒井理事長 理事長の荒井でございます。
今日は本当にお時間を取っていただきまして、我々センターの運営につきまして御説明の時間をいただき、大変感謝しております。また、貴重なコメントをいただきまして、深くお礼を申し上げたいと思います。
今日お話しさせていただきましたように、研究開発につきましては非常に伸びていると思っています。一方で、運営費交付金につきましては年々減少しているということで、本来は研究所のスタッフもより充実しなければいけない状況であるというのは重々承知をしておりますけれども、そういった環境の中、研究員の数としては年々減っているという状況であります。
ただ、昨今のアメリカの研究環境に関する状況に鑑みて、今、我々に非常に大きなチャンスが来ていると考えております。すなわち、アメリカで日本人の研究者がたくさん働いていますけれども、そういった方々に日本に帰ってきていただいて、また活躍していただくいい機会ではないかなと考えております。
当センターとしては赤字ということで、経営状況は非常に厳しい中、どんどん優秀な研究者を雇用するということは、現状では難しいわけではありますけれども、日本全体として今がそういった時期ではないかと考えておりますので、ぜひとも評価委員の先生方にも、評価の中に優秀な海外の研究者に、いかに日本の研究機関、NCを中心とする研究機関に再び戻っていただいて、日本のために活躍していただくということについてのサポートをぜひともお願いしたいと考えております。
また、経営につきましては、先ほど監事からも御説明がありましたように、新しく経営戦略会議というものを立ち上げました。経営に関するセンター全体の意識を同じ方向にするということで始めました。もちろん今まで以上に厳しいことをお願いするわけでありますので、不満というものも噴出しているということは、これまでの2回にわたる経営戦略会議の中で、そういったものもしっかりと幹部としては受け止めつつ、皆さんに納得していただけるような経営を行っていくということをしっかりと幹部で相談しながら行っていきたいと思っていますし、研究開発につきましても、認知症・フレイルを中心に、老化研究については追い風だと考えておりますので、引き続きセンターのミッションをしっかりとコンプリートすべく、十分な成果を上げていきたいと考えておりますので、引き続き御支援のほどお願いしたいと思っています。
恐らく来年度からは、骨太の方針として、診療報酬についてもある程度の配慮はいただけるのではないかと考えておりますけれども、もちろんそれだけに頼るわけにはいきませんので、我々自身の経営努力を基本にしながら、診療報酬の改定もしっかりとその恩恵をこうむることができるように、いただけるように、体制を整えていきたいと考えております。
物価の高騰については、材料費、薬剤費に加えて人件費も昨今の需要に鑑みて上げざるを得ないと思います。もちろん、上げないという選択肢もあるのかもしれませんけれども、いい人に来ていただくためにはある程度給与を上げざるを得ないということは御理解いただけたらと思っておりますので、苦渋の選択として、もちろん国の基準には程遠いレベルしか上げることができていないので、それについては経営がしっかりと黒字化することができれば、国並みの昇給ということも考えたいと思っておりますけれども、そこまで行っていないというのが現状でありますので、それについても何とか黒字化、そして国並みの昇給といったことができるような経営体制を目指してまいりたいと思っております。
簡単ですけれども、私からのまとめとさせていただきたいと思います。よろしくお願いいします。
○土岐部会長 ありがとうございました。
ただいまの法人監事、そして法人理事長の御発言内容につきまして、御質問、御意見等ございますでしょうか。
よろしいでしょうか。
それでは、以上で国立研究開発法人国立長寿医療研究センターの令和6年度業務実績評価についての審議を終了したいと思います。
午前中の審議はここまでで、お昼休憩になります。
事務局より説明をよろしくお願いします。
○高屋企画調整官 事務局です。
この後、12時50分までお昼休憩になります。
国立長寿医療研究センターにおかれましては、休憩に入りましたら御退席をお願いいたします。
各委員におかれましては、休憩時間中はマイクをミュートにし、画面をオフにしていただきますようお願いします。
本日会場に出席の委員におかれましては、この後、事務局より昼食の準備をさせていただきます。
午後におきましては、12時50分より、国立精神・神経医療研究センターの審議を予定しています。各委員におかれましては、開始時間までに御着席いただき、画面をオンにしてお待ちいただくようお願いします。
事務局からは以上です。
○土岐部会長 それでは、皆様お疲れさまでした。
お昼休憩になります。よろしくお願いします。
(休憩)
○土岐部会長 それでは、時間となりましたので、「国立研究開発法人等審議会高度専門医療研究評価部会」第39回を再開いたします。
それでは、まずは今回は国立精神・神経医療研究センターの令和6年度業務実績評価について審議を開始したいと思います。
初めに、法人の理事長から一言御挨拶をよろしくお願いいたします。
○国立精神・神経医療研究センター中込理事長 本日は、当センターの業務実績評価のために貴重なお時間をいただき、誠にありがとうございます。
理事長の中込と申します。
それでは、これよりお手元の説明資料に沿って説明いたします。
次をお願いします。
2ページ目に私たちの自己評価を示しております。
それでは、次をお願いします。
これから私から、センターの概要について簡単に御説明します。
当センターの基本理念は、病院と2つの研究所、さらにその間をつなぐ4センターが一体となって、精神、神経、筋疾患及び発達障害の克服を目指した研究開発を行い、その成果を基に高度先駆的医療を提供するとともに、全国への普及を図るということです。
次をお願いします。
最大の特徴は、基礎から臨床までシームレスなフローを可能とする研究体制です。当センターで開発された筋ジストロフィーのビルトラルセン、あるいは多発性硬化症のOCHといった治療薬はその具体的な成果に当たります。そのほか昨年も御紹介しました筋ジストロフィーに対するエクソン44スキップ型(ブロギジルセン)のファースト・イン・ヒューマン医師主導治験で有望な成果が得られ、現在、第II相国際共同治験へと進んでおります。
次をお願いします。
令和6年度も研究基盤の強化を目指して、患者レジストリ、バイオバンクや臨床研究ネットワークの構築及びその利活用を進めてまいりました。後ほど御紹介があると思いますが、新たに全国数百か所の治療施設の協力と複数企業との官民パートナーシップにより、アルツハイマー病治療患者レジストリの構築を現在進めているところでございます。
簡単ではございますけれども、概要についての説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。
○土岐部会長 ありがとうございました。
それでは、まず研究・開発の成果の最大化に関する事項、評価項目1-1及び1-2に関わる業務実績について議論したいと思います。まず最初に法人のほうから御説明をよろしくお願いします。
○国立精神・神経医療研究センター岩坪理事 では、研究・開発に関しましては、研究担当理事の岩坪から御説明させていただきます。
6ページを御覧ください。
担当領域の特性を踏まえた戦略的・重点的な研究・開発の推進につきましては、Sと自己評価をさせていただいております。
この自己評価の理由としましては、難易度「高」の理由にも示しておりますとおり、当センターが筋ジストロフィーをはじめとする難治性疾患症例の集積に基づいて世界レベルの研究を進め、病態のメカニズムに基づく画期的な治療薬の開発を達成して、患者さんのもとに届けているということを挙げたいと存じます。そして令和6年度も、これまで唯一実用化されてきたエクソン53スキップ型治療薬(ビルトラルセン)に続きまして、エクソン44スキップ型治療薬(ブロギジルセン)の医師主導治験で有望な結果を取得し、第II相の国際共同治験を開始しましたこと。また、発達障害やてんかんに関連する研究実績としまして、最先端の顕微鏡技術を駆使することによって、脳の免疫細胞であるマイクログリアが生きた神経細胞から特定のシナプスを選択的に除去するメカニズムを解明したなど、医療推進に大きく貢献する画期的な研究成果を多数挙げていることが、自己評価を高く取らせていただいた理由でございます。
また、最近のNCNPにおける研究成果の堅調な伸びを反映して、6ページ下段に示しておりますように、医療推進に大きく貢献する研究成果の数も昨年度に続いて今年度も6件を数えまして、目標を40%程度超える達成度を上げていますことも評定の根拠としたところでございます。
7ページを御覧ください。
こちらのIIIに自己評定の根拠としました3つの顕著な研究の実例3件についてまとめております。
先ほど申しましたが、デュシェンヌ型筋ジストロフィーに関する新規治療薬の開発が1点、マイクログリア細胞による選択的シナプス除去機構の解明が第2点、それから、飲料、飲み物と鬱の関係の縦断臨床研究調査による解析、これらについてこの後御説明をさせていただきます。
8ページを御覧ください。
こちらにインパクトファクターが付与された学術雑誌収録論文数並びに引用数を示しております。
論文の総出版数を見ますと、令和6年度は321編と、コロナ直前とほぼ同レベルの数とはなっておりますが、6年度はNature Communications誌2編、Cell誌の姉妹誌3編など、高いインパクトの論文を複数出版できたことが特筆できます。
また、こちらは文書のほうの評価調書を10ページに記してございますけれども、外部研究資金に関しまして、獲得額が令和5年度より約3億円増大しまして、50億円に達するなど、これも研究活動の大きな伸びを反映していることと考えております。
9ページを御覧ください。
ここから顕著な研究成果の達成例を実際に御報告してまいります。
まず第1には、デュシェンヌ型筋ジストロフィーに対する治療薬、ブロギジルセンのファースト・イン・ヒューマン医師主導治験の成功であります。
本症は、小児期に発症する代表的な筋ジストロフィー症でして、ジストロフィンと呼ばれる病因遺伝子の変異によりまして、産物のジストロフィンタンパク質が正常に産生されず、筋細胞が障害されて、重度の運動麻痺から死に至る難病であります。
当センターでは、この変異のある遺伝子部分を核酸医薬を用いて蓋をして、言わば読み飛ばす原理のエクソンスキップ療法の実用化を進めておりまして、2020年にはエクソン53変異型ジストロフィーに対するエクソンスキップ薬、ビルトラルセンの薬事承認を達成いたしました。
しかし、ビルトラルセンの作用は、デュシェンヌ型の8%を占めるエクソン53の変異型において、また、ジストロフィンタンパク質を正常の5%程度の量にまで回復される効果に限られておりましたため、他の主要な変異例に対してもより効果的な治療薬が求められておりました。
今回、NCNPの小牧部長、青木部長らは、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの約6~7%を占めるエクソン44変異に対しまして、2か所の配列を同時に標的として効率を高める連結型核酸医薬、ブロギジルセンを開発しました。
そして、左下のグラフにもございますように、正常の20%を超える非常に高いジストロフィンタンパク質の回復を達成、医師主導のファースト・イン・ヒューマン臨床試験に成功するとともに、第II相国際共同治験の開始を達成いたしました。ピアレビューされた論文も、本年1月、Cell Reports Medicineに発表いたしております。
10ページを御覧ください。
こちらにブロギジルセンの開発に至るタイムラインをお示ししております。
ブロギジルセンは、エクソンスキップ効率の高いデュアルターゲティング設計の核酸医薬としては世界で初めて開発されたもので、医師主導治験も、ビルトラルセンが上市された一番左、令和2年前後から既に開始をしておりました。今回、この成功を受けまして、令和6年度には米国FDAからブレイクスルーセラピー指定を受け、日米で第II相試験の開始にこぎ着けることができたものです。
並行しまして、同様に頻度の高いジストロフィン、エクソン50あるいは51のスキップ薬の臨床研究開発準備も進んでおりまして、より多くのデュシェンヌ型筋ジストロフィー患者さんに治療薬を届けるべく、さらに努力を続けているところでございます。
11ページを御覧ください。
こちらでは脳の免疫細胞が神経伝達を行う継ぎ目構造であるシナプスを選択的に除去して、発達を進める仕組みの解明を御説明させていただきます。
脳が正常に発達しまして、適切に神経の回路が形成される過程では、脳の免疫細胞であるマイクログリアが不要に発生をした継ぎ目のシナプスを除去するということが重要であること、これは長らく想定されてまいりました。しかしながら、どのようにして特定のシナプスが認識をされて、除去されるのか、ほとんど不明でありました。
今回、NCNP神経研の小山部長、安藤室長らは、最新のイメージング技法である二光子顕微鏡を駆使したライブ観察、右の写真にあるようなイメージでございますけれども、これによりましてシナプス除去を観察する方法を確立し、この仕組みを解明いたしました。
簡単に申しますと、左のマル2にメカニズムというところがございますけれども、神経の活動が高まってまいりますと、アポトーシスなど細胞死の過程に重要な酵素であるカスパーゼ3というものがシナプスの手前の前末端というところで活性化をされて、それによって、免疫系において重要な補体経路というものの開始因子C1qの集積を招きます。これによって、マイクログリアによるシナプス前末端の除去が導かれるということを解明したものであります。
このメカニズムは、正常な脳が発達するときのみならず、てんかんですとか自閉スペクトラム症における神経回路の興奮抑制バランスの障害にもつながるということを、右下のマル3に示してございます。
このように、様々な脳疾患におけるシナプス障害の病態解明と治療に重要な基礎的知見として本成果は高く評価され、成果はNature Communications誌に発表されております。
次に12ページを御覧ください。
こちらでは精神保健研究所、成田室長らによる飲料と抑鬱の関連の解析について御説明をいたします。
食品や飲料と抑鬱の関係、これも早くから注目されておりまして、野菜や果物の摂取が抑鬱に予防的に作用し得るということは示されておりましたけれども、野菜ジュース、果物ジュースなどの飲料の形のもの、あるいは砂糖入りとブラックコーヒーがどのように異なる作用を示すかなど、詳細は不明でありました。
成田らはJHの共同研究としまして、ナショセンが協力して構築した地域住民コホート10万人を対象とするアンケート調査を行いまして、飲料の摂取と5年後の抑鬱のリスクの関連を縦断的に調査いたしました。
この結果、甘味飲料、炭酸飲料、野菜・果物ジュース、砂糖入りのコーヒーなどは抑鬱のリスクを上昇させるのに対して、ブラックコーヒーはそれを低下させるということを実証いたしました。
本研究では、物事の因果関係の推論が可能となるG-formulaという統計解析のフレームワークを用いることによりまして、単なる相関関係を超えた飲料と抑鬱状態の因果関係を強くしたという点でも、重要な知見をもたらしたものと考えております。
次の13ページから19ページまではJHの疾患を横断領域における連携推進の経過が示されております。別途御説明がございますのでここでは省略をさせていただきまして、20ページまで進ませていただきます。
評価項目1-2、実用化を目指した研究・開発の推進と基盤整備について、次に御説明をさせていただきます。こちらも令和6年度の自己評価はSといたしておりまして、21~23ページにその根拠を示しております。
特筆すべきこととしましては、過去の令和4年度にアレキサンダー病という小児の希少難病に対する世界同時ファースト・イン・ヒューマン試験を実施し得たのに引き続きまして、令和5年度にもデュシェンヌ型筋ジストロフィーのエクソン50のスキップアンチセンス等々のファースト・イン・ヒューマン試験を継続いたしているところでございます。
そして今回の令和6年度でございますけれども、小児の白質脳症、脳の奥にございます神経線維の部分の障害でございますけれども、その中で非常に重要なペリツェウス・メルツバッハー病というものに対して、アンチセンス核酸の髄腔内投与の治療のファースト・イン・ヒューマン試験を開始することができました。これはNCNPの神経・筋希少難病を対象とする臨床研究体制の充実を反映する成果であると考えております。
また、医師主導治験も新規にDMD、デュシェンヌ型に対する抗アレルギー薬、トラニラストの第II相試験を1件、また、その他昨年度よりの継続4件の計5件を実施することができております。
このように充実した臨床研究、また共同研究を目標数を超えて達成できたことに併せまして、後に述べますようにバイオバンク体制も格段に充実することができましたことから、21~24ページに記す指標の達成を根拠としまして、自己評価をSと取らせていただいた次第でございます。
24ページを改めて御覧ください。こちらに治験の実績を再度まとめております。
企業治験、臨床研究の新規実施数も過去最大レベルを保っておりまして、右の表にまとめておりますように、当センターにおきましては、難治性の精神・神経疾患のほぼ全ての種類のものを網羅する治験を実施し得ているということも特筆できると思います。
25ページから、バイオバンク、ブレインバンク事業についてまとめております。
当センターのバイオバンクは、右のグラフでございますが、伝統のあります筋肉については総数2万5800に達しまして、世界最大級を誇り、本邦の筋疾患の診断の80%以上を担っております。そこから得られた成果は、新規の疾患概念の確立や治療薬開発の基盤となって、一部は培養筋肉、あるいはiPS細胞としての保存も近年行っております。
左のグラフの中に緑で表示してございますけれども、これが脳脊髄液サンプルでございます。こちらは当NCNPに非常にユニークなリソースでございまして、神経疾患のみならず精神疾患でも積極的に集積を進めまして、総数は6,935検体、また、右下にございます脳バンク、剖検で得られた脳でございますが、サンプル総数も363、令和6年単年度での剖検脳数が34に達しております。
また、特に近年、脳外科手術で得られた貴重な組織検体も、てんかんや発達障害の分子レベルの研究にも活用されておりまして、世界的に注目をされております。
26ページを御覧ください。こちらに利活用の実績を示しております。
これらのバイオリソースですが、これまでに延べ327件の外部提供実績がありまして、令和6年度単年度でも38件、3,685検体を提供しております。
特記すべきこととして、昨年、本邦で初めてバイオバンクの国際規格ISO20387の認定を取得しまして、令和6年度もその認定継続が認められているということを挙げさせていただけると思います。これによって、バイオバンクの研究、また医療応用の品質の高さが国際的にも保障されていると申せると思います。
サンプルの提供の内訳としましても、企業に73件、海外にも9件と、精神・神経・筋疾患の研究を世界的に支えるバイオバンクとしての機能をフルに発揮していると申せると考えております。
27ページに、患者レジストリを活用した病態解明・治療法開発に向けた取組についてまとめております。
ここで例示しておりますのがRemudy(Registry of muscular dystrophy)、筋ジストロフィーのレジストリでございます。RemudyはNCNPの伝統的な筋疾患レジストリでございまして、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの治療薬開発を始め、創薬に貢献をしております。このRemudyを発端とする患者レジストリは、DMD、デュシェンヌ型に対する新規治療薬、ビルトラルセン、また今回のブロギジルセンなどの画期的新薬の実用化につながっておりまして、レジストリを軸とするARO活動、また患者様の御協力によるPatient and Public Involvementもさらに活性化につながっております。
28ページを御覧ください。
こちらにはNCNPにおけるナショナルセンターとしての役割を踏まえた戦略的な産学連携活動と、主要な精神・神経疾患に対する新たな治療法の社会実装を目的とする体制構築の取組について示しております。
その活動の一つとしまして、昨年度には、私自身が研究代表者を務めさせていただき、アルツハイマー病に対する新規の治療薬として上市をされました抗アミロイドβ抗体薬の臨床実用に関して、全国数百か所の治療施設の御協力によって、世界に類例のない大規模なアルツハイマー型治療患者レジストリの構築を開始したことを御報告させていただきます。
この体制は、まず製薬企業が薬機法に基づいて行う治療薬の特定使用成績調査と緊密に連携をしまして、この抗体薬の安全性リスク評価に必須なAPOEという遺伝子の検査などをAMED研究を基盤としてアカデミア側が実施しつつ、同時に、共同研究契約に基づいて、いわゆる官民パートナーシップによりアルツハイマー病治療患者レジストリを構築して、本邦における安全かつ有効な認知症の治療を実現しようといった意図を持つ大規模な研究でございます。
右の図にもございますように、既に治療薬を上市しましたエーザイ社、イーライリリー社、その他バイオマーカー企業とのパートナーシップ契約も成立しておりまして、今後も参加企業の拡充が見込まれております。このような研究をナショナルセンターにおける大規模な産学連携の一つのプロトタイプとして今後発展させることができればと考えております。
以上でございます。
○土岐部会長 ありがとうございます。
ただいまの御説明につきまして、委員の先生方から御質問はございますでしょうか。
前村委員、どうぞ。
○前村委員 長崎大の前村です。
8ページで、論文の数だけではなくて引用数まで示していただいて、非常に影響力のある論文が出ているということがよく分かりました。
質問したいのは、この次の9ページで、デュシェンヌ型筋ジストロフィー症のエクソン53スキップ型の治療薬に続いて、44も医師主導治験を経てフェーズIIに入っているということは非常にすばらしいと思うのですが、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの中で遺伝子変異が分かっているのがどれぐらいのパーセントあって、今回は53に続いて44の治療薬ですけれども、幾つぐらいの治療薬を作ると大体の患者さんに行き渡ると考えられるのでしょうか。
○国立精神・神経医療研究センター岩坪理事 ありがとうございます。
デュシェンヌ型は、ジストロフィン遺伝子の欠損あるいは点変異などが原因となるということはほぼ確立をされておりまして、患者さんで遺伝子を調べますと、ほぼジストロフィンの中の遺伝子変異の形は同定が可能ということでございます。
ただ、非常にメジャーな大部分を一つの変異が占めるということはございませんで、エクソン53がビルトラルセンで8%、エクソン44が6~7%、それから50、51というのも10%未満ずつということで、1個の変異が対応する数というのは低めであるということがあります。しかしながら、幾つかのメジャーな変異をカバーしていくということで、かなり多くの患者様に対応ができるのではないかと思います。
筋疾患御専門の戸田病院長、何か追加して情報はございますか。
○国立精神・神経医療研究センター戸田病院長 ないですが、大体欠失で3分の2ぐらいは見つかって、あとは点変異ですので、それはシークエンスすれば大体分かります。イントロンの変な変異とかそういうのはめったにない。出たらむしろ報告物になる。
○国立精神・神経医療研究センター岩坪理事 ということでございます。
○前村委員 ありがとうございます。期待しています。
○土岐部会長 それでは、中野委員、どうぞ。
○中野委員 川崎医科大学小児科の中野でございます。
一部、前村委員の御質問とも重複いたしますので、2つ質問させていただきたいのですが、1つ目は前村委員の御質問とも似ていますが、今回のブロギジルセン、エクソン44スキップ型の治療薬、ジストロフィンタンパクの発現量がビルトラルセンに比べて高いことが期待できるということで、臨床効果もそれに比例してより期待できるというような理解でよろしいのでしょうか。それとも、ほかの意義づけがあるのかどうかが1点。
2点目は、トラニラストの同じくデュシェンヌ型筋ジストロフィーへの臨床試験等を1-2の項目でおっしゃっていただいたと思うのですが、トラニラスト自体は、薬剤自体はそんなに新しい薬剤ではないとは思うのですけれども、運動機能の改善とか、どのような発想に基づいて、お話しいただける範囲で結構なのですが、対象患者さんとしてはデュシェンヌ型筋ジストロフィー全般の方が対象となるのか、お教えいただける範囲でお教えいただければありがたいです。
○国立精神・神経医療研究センター岩坪理事 ありがとうございます。
まず、第1にいただきました御質問でございますが、今回の薬剤で正常の20%までジストロフィンの発現が上がったということで、実際に筋力に対する臨床効果というのも、より目に見えて医師主導治験の中で改善が見られたと聞いております。ですので、ビルトラルセンのときは5%まで上がるということで、そのときは臨床効果には極めて微細な効果しかなかったということなのですが、今回は筋力改善も大いに期待できると見ているところでございます。
それから、トラニラストでございます。委員の御指摘のように、お薬としましては古いものでございますけれども、線維化の抑制効果があるということで、御案内のとおりデュシェンヌ型筋ジストロフィーの場合には、筋壊死、再生を繰り返して、筋の線維化が進むということが増悪、それからその他の治療法の有効性の低下に関連していると考えられておりますので、これを緩和しようという発想で始まったものと聞いております。
ただ、申し訳ございません。詳細な治験でのインクルージョンクライテリアは私、今日控えておりませんので、持ち帰りまして御報告させていただきます。
○中野委員 どうもありがとうございます。
○土岐部会長 ほかはいかがでしょうか。
成川委員、どうぞ。
○成川委員 北里大学の成川と申します。
御説明ありがとうございました。
活発にやっていらっしゃるということが確認できました。ありがとうございます。
2つ御質問させてください。
1つ目が、スライドの6枚目のところで、医療推進に大きく貢献する研究成果として6つ挙げていらっしゃって、3つについては詳細を御説明いただいたのですけれども、残りのものについて、ごく簡単でいいので概略を教えていただきたいというのが1つ目です。
2つ目が、個別でどこのページということではないのですけれども、恐らくセンターのほうで、疾患レジストリは様々なものを構築されていると思っていまして、Remudyについては御説明いただいて、話をよく聞くのですけれども、それ以外にどの程度力を入れているものがあるのかということと、それらについて将来、創薬とかの応用にどの程度期待をしていいのかなという辺りを、今の御感触を教えてください。
以上です。
○国立精神・神経医療研究センター岩坪理事 ありがとうございます。
今回、6つの中で3つを御説明しました。
4つ目として書面のほうで挙げておりましたのは、神経発生・発達と頭蓋の発達、小頭症、脳が発達を妨げられて頭蓋が大きくならないという病気がございますけれども、そのメカニズムに関して分子メカニズムを解明した、EMBO Journalという非常にレベルの高い雑誌にアクセプトされている業績を御紹介しております。残る2件は精神疾患に関する精神病理的あるいは病態的な解析に関する業績を挙げさせていただいていると思います。
張所長、精神疾患のほうについて何か。
○国立精神・神経医療研究センター張精神保健研究所長 精神については、PTSDの基礎的なメカニズムについての研究を継続して行っているということと、もう一つは、精神科診断についてですが、今、世界的に使われているのは症状に基づく操作的な診断基準で、バイオロジカルな診断マーカーがなかなかないというのが精神疾患の一番の問題ではあるのですけれども、それを私たちの研究所のほうでレジストリを活用して、数多くの患者さんを集めて、バイオロジカルなデータを蓄積しまして、一度これまでの既成の診断概念をちょっと横に置いて、バイオロジカルなマーカーから分かってくる異常に基づいて、グループ分けを進めている、そういう研究を進めています。
○国立精神・神経医療研究センター岩坪理事 それから、レジストリでございます。理事長が説明しました5ページの右下のところに、少し小さな図でございますけれども、幾つかの我々が運営している代表的なレジストリを略記してございます。Remudyは筋疾患のレジストリでございますけれども、デュシェンヌ型以外にも筋疾患レジストリを拡張して行っておりまして、昨年御紹介したかもしれませんが、rimmed vacuolesというオートファジックな異常蓄積物が出てくる、これはシアル酸で治療ができるというようなことにもつながっております。それから、そのほか理事長が自ら運営されております精神科のレジストリも非常に大規模に発展しておりますし、運動失調症のレジストリ、それから、私の発表で最後に御紹介しました新たな試みですが、私はアルツハイマーを専門にしておりますので、アルツハイマー病の治療薬使用患者のレジストリ、こういうふうに多彩なものを今、広げているところでございます。
○成川委員 よく理解できました。どうもありがとうございました。
○土岐部会長 それでは、神崎委員、どうぞ。
○神崎委員 杏林大学の神崎と申します。
詳細な御説明どうもありがとうございました。
25ページのバイオバンクのところで質問させていただきたいのですが、知識がないので教えていただきたいのですけれども、ブレインバンクは私もある程度有名なのでよく知っているつもりなのですが、筋バンクとか、先ほど御説明があった髄液バンクというのは、我が国、日本の中でどのくらいほかの施設でこういったバンクを持っているのか。逆に言えば、NCNPがどのくらいほかを先んじてというか、数多くこういったバンクを持っているのかというところを教えていただけるとありがたいのです。
○国立精神・神経医療研究センター岩坪理事 ありがとうございます。
まさに御指摘いただいた筋肉と髄液というのは、我々が質・量ともに非常にユニークで大規模に展開できているところかと思います。発表させていただいた中にもありますように、今、筋肉のバイオプシーというのは神経臨床の中で非常によく行われてはいるのですけれども、専門的に診断できる研究者が少なくなっておりまして、本邦でも8割以上、当センターのMGC並びに1部の西野部長の下で行われているものでございます。これも埜中部長、そして今の西野部長と、こちらにございますように数十年の歴史がございまして、2万8000を蓄積したと。ありとあらゆる日本で見る筋疾患、あるいは国際的にも委託をされてきたものを集積して、診断をし、また研究にもつながっているというリソースでございます。また、求めに応じて運用もしているところでございます。
それから、左にバイオバンクのいろいろなサンプルがございますけれども、血液についてはほかのナショセンでも大規模にお集めになって今、シェアリングをしてくださっているところもあるのですが、脳脊髄液はNCNPでの取組がほぼ唯一ではないかと思います。これは申しましたように、神経疾患でありますと、診断の必要上からも腰椎穿刺というのを行って、髄液採取を行う。そして、これをお願いしてバンキングをするということはよくあるのですけれども、精神疾患の患者様にも十分にこの必要性をお話しして、ドネーションをしていただいている。鬱病のサンプルなどでも非常に貴重な研究成果が上がっております。これが約7,000ございまして、今、リクエストも非常に増えて、対応しているところでございます。
○神崎委員 ありがとうございました。
○土岐部会長 これに関係して私、土岐からですけれども、提供が327件ということなのですけれども、企業とか特に商業利用という形になっているのかということと、実際にこういうバンク事業をやるとかなり費用もかかると思うのですけれども、いわゆる提供である程度賄えるようなものなのか、その辺りの現状をもし教えていただけましたら。
○国立精神・神経医療研究センター岩坪理事 ありがとうございます。
あくまで狭義の商業利用、例えばここで得たサンプルを加工して、そのまま販売するというようなことは行っていただかない立てつけにはなっておりますけれども、企業の方が企業の研究所で研究開発のために利用されて、そこから製品化をされるということを後押しする形で進めているというスタンスでございます。
それから、これは費用が非常にかかっておりまして、我々のところのメディカル・ゲノムセンターがこのバイオバンクの親組織なのですけれども、メディカル・ゲノムセンターに割り当てている運営費交付金をかなりつぎ込んでおります。このほかAMED研究でのバイオバンクのサポートの競争的資金に応募をして賄うなど、もう少し安定した広く太いサポートがあればさらに成果があるのではないかという議論をいつもしているところでございますけれども、今のところ何とかやりくりをして進めているという形です。
○土岐部会長 がんの領域でも、企業に提供すればかなりのペイする上での費用が出るのではないかと思いますけれども、とてもそういったものではないのですか。
○国立精神・神経医療研究センター岩坪理事 これはもともと様々な議論によりバランスを考えた料金表を作って、これを公開をして、そこに応募していただいておりますので、企業は少しは高くなっておりますけれども、プライベートであるので、うんと高くつけるということはナショセンの性格上やりにくいということで、なかなかペイするところにはちょっと達していないわけでございます。
○土岐部会長 ありがとうございました。
ほかに御質問ございますでしょうか。
よろしいでしょうか。
それでは、研究・開発の成果の最大化に関する事項については以上とさせていただきます。
続きまして、医療の提供、その他の業務の質の向上に関する事項の評価項目1-3から1-5について議論したいと思います。まずは法人のほうから御説明をよろしくお願いします。
○国立精神・神経医療研究センター戸田病院長 病院長の戸田が報告いたします。
評価項目1-3、医療の提供に関する事項です。
自己評価としてはAといたしました。
中長期目標の内容としては、センターで実施すべく、高度かつ専門的な医療の標準化に資する医療の提供ということでございまして、例えば薬物抵抗性の双極性障害の患者さんのために、先進医療制度を利用した反復経頭蓋磁気刺激装置(rTMS)を用いた治療の標準化を目指します。
また、心神喪失の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律の対象者に対し、研究部門と連携して、研究部門と連携し、退院後の地域生活への安全な移行と支援する質の高い医療の提供を行います。
次の中長期目標として、患者の視点に立った良質かつ安全な医療の提供としては、一番上、医師並びにメディカルスタッフの多職種連携、診療科横断によるチーム医療を推進して、継続して質の高い医療の提供を行っています。特にNCNPの中には、センター内センターとしてそれぞれの専門疾患センターがありますので、診療科横断的に多職種連携で医療の提供を行っています。
また、全職員を対象として医療安全や感染対策のための研修会を実施し、受講状況を確認しております。
下のほうに行っていただいて、手術件数、病床利用率、平均在院日数、入院患者等について、中長期計画に適切な数値目標を設定しております。
次のページをお願いします。30ページ、その指標の達成状況についてです。
rTMSを用いた治療については、年間4人を目標としていましたが、今年度は達成率は100%でした。
また、医療安全、院内感染のための研修会や、その下、医療安全管理委員会の開催、手術件数、病床利用率、平均在院日数、入院患者数等については、指標をおおむね達成していると考えまして、96%~111%の達成度でございました。
次のページをお願いします。
評定の根拠でございます。
新しいものとして、運動失調症データベース、J-CATを利用した原因遺伝子解析及び自己抗体検索です。これは我が国唯一の最大のデータベースで、登録2,807例に対して原因遺伝子のスクリーニングを行い、1,299例の病型を確定しました。
また、次の項目、脳神経小児科における超希少疾病への取組でございます。国内のハブとして患者集積を行っております。令和6年度時点において、例えばミオチュプラーミオパチー、小児交互性片麻痺等は全国の患者の約10%をフォローするなど、積極的に関与しています。
次の項目、てんかんに関する診療と研究ですが、総合てんかんセンターを中心に、全国てんかん拠点機関として、てんかんの診断、医療、研究、教育及び社会活動に関わる包括的な事業を実施しました。また、定位的ラジオ波温熱凝固治療など低侵襲な手術にも力を入れており、令和6年度では、低侵襲は約30%と増えました。
次のページをお願いします。
ここからは、それぞれについてもう少し詳しく報告しています。
まず希少神経難病症例の集積、専門的医療の提供として、当センターでは日本のハブとして活動しております。例えば左下の表にありますように、多発性硬化症であれば、当院患者が占める割合は4%、その他先ほども話題になりました筋ジストロフィーに関しては、デュシェンヌ型で7%、先天型で13%、一番下、近年、シアル酸の薬剤アセノビルが上市されたGNEミオパチーでは全国の26%を当院で対応しているということになります。
右側、当センター病院は、NEWSWEEK誌によって、アジア太平洋地区において神経医学医療領域のランキングで15位に選出されております。国内の機関に限ると5位であります。外部機関からも高い評価を受けております。
次をお願いします。
また別の高度かつ専門医療の例でございます。
精神科領域におけるニューロモデュレーションの実施でございます。
電気けいれん療法(ECT)の件数は、昨年度は971件、東京都としては8%ぐらいです。東京都からも研修の依頼を受けて、537名で実施しております。
左下、先ほどもお話しした反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)については、先進医療Bで治療抵抗性の鬱病に対して維持rTMSを行っており、また、さらには双極性鬱に対しても幅広く行うことによって、治療の持続効果についても検証中で、このようにニューロモデュレーションセンターを中心に専門的な医療を提供しています。そして、研修を通じて医療の均てん化を推進しております。
次のページをお願いします。
脳神経小児科における超希少疾病への取組ですが、NCNPは超希少小児神経疾患の診断・治療開発において国内外のハブとして活動しています。
超希少疾患への包括的アプローチ、全国から患者が集まっており、治療・国際共同治験にも積極的に関与し、グローバルな開発推進、ドラッグロス解消に貢献しています。
例えば右側の表で、先ほど出ましたアレキサンダー病やペリツェウス・メルツバッハー病では、核酸医薬治験に我が国で唯一参加しており、下のほう、デュシェンヌ型筋ジストロフィーでは、先ほどのお話にありましたようにエクソンスキッピング治療を開発しましたし、治験にも大きく貢献しております。
次のページをお願いします。
高度かつ専門医療の提供、進行期パーキンソン病に対して、レボドパ・カルビドパ持続経腸療法、中でもホスレボドパ・ホスカルビドパ持続皮下注(ヴィアレブ)というのは、治療の難しい進行期のパーキンソン病の治療法にポンプを用いてレボドパの持続皮下注射を行っております。特に持続皮下注については、右下、33例で、これは国内でも有数の実施件数を行っております。
次のページをお願いします。
高度かつ専門的な医療、標準化に関する提供としまして、未診断疾患イニシアチブ(IRUD)がございます。IRUDにおけるNCNPの役割として、下のほう、NCNPはIRUD体制の中核を担い、診断連携・解析連携・データシェアリング・リポジトリ・中央倫理審査の体制を確立した中央事務局の役割を行っております。
特に右側、2万6905人、9,446家系の患者さんが参加され、そのうち7,564家系の解析が終わって、3,656家系の診断が確定し、約50の新規疾患概念・原因遺伝子を確立することができました。
次のページをお願いします。
新規なものとして、運動失調症のレジストリJ-CATがあります。これはNCNPが唯一かつオールジャパンとして行っているもので、左下のほうで厚生労働科研運動失調班、AMED難病ゲノム國土班などと連携しております。
右側、現在3,432例が登録し、右下、2,807例の遺伝子解析で46%ぐらいの診断を決定しました。つかないものに関しては、左側、國土班の全ゲノム解析へと回しております。
次をお願いします。
38ページ、NCNPにおけるてんかんに関する診療と研究ですが、当院では先進的な治療として左側、定位的ラジオ波温熱凝固治療(RFTC)を行っております。従来の開頭手術では到達が困難な深部の疾患、海馬・島回・脳室壁などを選択的に破壊するものです。既に20例に実施、60%の発作消失率を得ています。
また、右側、脳深部刺激療法(DBS)では、両側の視床前核を刺激し、てんかん発作の緩和を図り、これに関しては2023年から保険適用となっています。
左のRFTCも今それを目指しております。
右下、このように低侵襲手術率が今、約30%と徐々に増えております。
次に39ページをお願いします。
専門的な医療、標準化、専門的なてんかん診療、当院はてんかん診療部を持ちまして、全ての診療科にてんかん専門医を配し、全ての年齢層を対象に包括的な専門診療を提供しています。その下、2024年は新入院が1,425件、長時間ビデオ脳波モニタリング検査を562名に行いました。
右側へ行っていただいて、先ほどお話しいただきましたように、厚労省のてんかん地域診療連携体制整備事業における全国てんかんセンター、全国てんかん支援拠点として、てんかんの包括的な新型治療に大きな役割を果たしております。各都道府県に1個てんかん支援拠点をつくろうという整備事業ですが、令和6年度で30拠点になりまして、約64%にてんかん支援拠点を置くことができました。また、てんかんを診療しているてんかん支援ネットワークを構築しまして、1,300施設を登録しております。てんかんの専門医も地域偏在が非常に大きいということで、遠隔診療、オンライン診療も進めております。
右下で、てんかんの研究基盤の整備として、てんかん患者データベース、てんかん外科データベース、てんかんバイオバンクなどを整備しまして、左にある様々な研究を進めております。
以上、病院からの報告とさせていただきます。
○土岐部会長 ありがとうございました。
ただいまの御説明に関しまして、委員の先生方から御質問をお受けしたいと思います。いかがでしょうか。
前村委員、どうぞ。
○前村委員 長崎大学の前村です。
35ページのパーキンソン病の治療薬のことについてお伺いしたいと思います。
2種類の持続注入薬があるのですけれども、その下の令和6年度の実績を見ますと、デュオドーパの新規導入がなしということなのですが、これを見ると、この治療法としては皮下注のほうに移行していると考えられるのでしょうか。
もう一つは、この治療は先進的な治療だと思いますけれども、NCNPを含めて少数のところで行われているのか、もう保険承認となって、日本中で使用することが可能なのでしょうか。
○国立精神・神経医療研究センター戸田病院長 まず、なぜデュオドーパが減ってきたかというと、レボドパを持続的に流すのが、いわゆるジスキネジアとかオフが少なくて非常にいいということで、Continuous simulationと言うのですが、レボドパは胃瘻をつくって小腸のところまで到達させてやるという、結構外科を使って、それなりに患者さんも心構えが必要なのです。
一方ヴィアレブですが、右側の皮下注は、皮下に刺すだけで、二、三日に1回交換するだけですので、両方ともポンプでやるのですけれども、今、全国的にはヴィアレブに移行しつつあります。
あとは、両方とも保険が通っておりまして、全国の多くのところで、ここだけというわけではないのですけれども、当院は恐らく日本でナンバーワン、ツーの実施例があると思っています。
○前村委員 ありがとうございます。
○土岐部会長 続きまして、中野委員、どうぞ。
○中野委員 川崎医科大学の中野でございます。
医療のいろいろな領域において、高度かつ専門的な医療あるいは国内の標準化ということで、非常に成果を上げておられると思います。敬意を表したいと思います。
私が今、御質問申し上げたいのは、一般的な疾患、非常にコモンな疾患、神経・精神領域におきましては、一般的な疾患でもなかなか治療の国内での標準化が難しい疾患も多いのではないかと自分としては推測しています。例えばてんかん、恐らく有病率で言うと100人に1人ぐらいはてんかんの有病率はあるのかと考えますけれども、昨今、国内でかなりいろいろな抗てんかん薬が次々と承認販売されて、いいことなのですけれども、一部の専門家のいない、先ほどもてんかん専門医は国内にそれほど人数がいらっしゃらなかったり、偏在というコメントも出ていましたが、治療をどう標準化するのかは割と混乱も見られていると思います。
そんな中、精神・神経センター様といたしましては、例えばウェブサイトとか、あるいは研修事業等で、医療の標準化というのにてんかんに関して何か行われている試みはございますでしょうか。
○国立精神・神経医療研究センター戸田病院長 まず最初に、一般的な神経疾患となると、まず思いつくのがアルツハイマー病とパーキンソン病と脳卒中だと思われます。精神科疾患としては統合失調症と鬱病かなという感じですが、アルツハイマー病に関しては、今日は出しませんでしたが、認知症疾患センターもつくって、つまり、一般は診ないというわけではなくて、どんどんアミロイド点滴などもやっていますし、パーキンソン病も皮下注をやっている人はごく僅かですので、通常のいわゆる抗パーキンソン病薬に対する治療を行っております。
てんかんについては、専門とする中川先生に答えてもらいます。
○国立精神・神経医療研究センター中川副院長 副院長の中川です。
てんかんセンター長をやっていました。
てんかんに関しては、日本のてんかん専門医は1,000名いないのです。患者さんは100万人いるのに専門医が1,000名もいなくて、特に少子高齢化で、成人のてんかんの患者さんが増えているにもかかわらず、半数以上が小児科のてんかん専門医ということで、成人を診るてんかん専門医を増やしたいということで、今、てんかんの専門医の育成とともに、我々はてんかん診療部をつくって、そこでは精神科と脳神経内科の先生、我々の施設で成人を診る専門医を育てていきたいと考えています。ただ、医師の数も少ないし、医師だけでてんかんを診るわけではないので、てんかん診療を支援するコーディネーター、医療系国家資格、福祉系の国家資格を持っているソーシャルワーカーさんや薬剤師や看護師さんなどの育成、てんかん診療支援コーディネーターの認定制度を始めました。
研修会も年に2回行っていまして、いろいろな職種の方が参加できる講習会をやっていまして、医師だけでなく、その他の職種の方もてんかんに関わっていただきたいという形でやっております。
また、均てん化についても、今、30都道府県で、厚労省の整備事業で各都道府県に施設ができたのですけれども、東北地方、北陸地方、四国地方や九州地方ではまだまだ専門医もいませんので、そういうところについてはてんかんのオンライン診療を進めることによって、少しでも患者さんに対しててんかんの適切な診断と治療ができるような均てん化をやっております。
私からは以上です。
○中野委員 ありがとうございます。
引き続き、どうぞよろしくお願い申し上げます。
○土岐部会長 続きまして、神崎委員、どうぞ。
○神崎委員 杏林大学の神崎でございます。
今のてんかんのところで、もうちょっと深入りするような質問で恐縮なのですけれども、てんかんの診断は、私ども脳神経内科を専門としない医療従事者からは難しいという印象がありまして、NCNPでは長時間脳波モニタリングとかをやっていらっしゃると思うのですけれども、例えば私の所属している杏林大学などでは、そういった長時間の脳波を調べるということは、普通の病院ではできないと思うのです。そういう意味で、今、遠隔診療というようなお話がありましたけれども、実際には脳波を撮らないと分からないのではないかというイメージを私は何となく持っているのですけれども、遠隔診療でもてんかんというのはそんなに診断ができるものなのでしょうか。
○国立精神・神経医療研究センター中川副院長 ありがとうございます。
今、てんかん発作を起こしたときに、もうアプリでそれを携帯で患者さんに撮っていただいて、実際の発作時の様子を見ることによって、たいていてんかんというのは発作の様子で、これがてんかん発作か、それともそうではないかというのも大体分かりますので、てんかんのアプリというものを開発しまして、各患者さんにはアプリをダウンロードしていただいて、発作が起こったときにそれを記録していただいて、それを医療者が共有することで、今、それを利用しながらもてんかんの遠隔医療をやっていますし、また、脳波についても、いろいろな医療機関が参加できるようなカンファレンスをやっています。なので、院内だけではなくて、いろいろな医療機関が参加できて、脳波を見ながらそれを診断するようなカンファレンスなども広くやっています。
特にアプリの開発もかなり力を入れていまして、アプリを使いながら遠隔医療するということです。脳波は大事なのですけれども、実際の発作を見るというのがより大事かなと考えています。
○神崎委員 理解いたしました。ありがとうございました。
○土岐部会長 私、土岐のほうから、専門外ではあるのですけれども、精神障害の方の地域包括ケアなのですが、昨今、病床削減の半分は精神科病床ということで、本当に外来生活ができるようになっていることはすばらしいなと思っております。このデータを見ましても、重症の方も、180日を超える人はいるけれども、もうほとんどの人は最終的に地域に戻れるということで、すばらしいと思っておりますけれども、専門外の者から見ると、そうなると外来診療とか救急とかがすごく大変ではないのかなとは思うのですけれども、どういうことが今後課題になっていくのか、参考までに教えていただけますでしょうか。
○国立精神・神経医療研究センター張精神保健研究所長 精神保健研究所の精神科医、張です。
1つは今、先生が言われましたように、退院した後の病診連携が非常に重要になってくることと、あとは訪問診療をもっと広く拡充していくことが2つ目です。あとはてんかんのほうでも出ましたが、ドクターだけが診るというものではなくて、広くナースや、PSWあるいは心理の方たちと多職種連携で訪問診療や外来診療を行っていくという体制をつくっていくことが、NCNPだけではなくて、日本全体的に、今、先生が言われました「にも包括」で推進されているところになります。
○土岐部会長 いわゆる救急医療的にも割と問題なく、救急に行くということは多くならないのでしょうか。
○国立精神・神経医療研究センター張精神保健研究所長 まだまだ不十分ではあるのですけれども、NCNPもそうですが、従来型の精神科の病院が夜間の救急はもちろん受けるのですけれども、精神科でもドクターが共同で在宅診療をするところが出てきていまして、そちらのほうで精神科的なプライマリーの救急を受けるという体制が始まりつつあります。
○土岐部会長 ありがとうございます。
○国立精神・神経医療研究センター戸田病院長 あと、病棟で1つ、精神科救急医療の病棟も持っています。
○土岐部会長 ありがとうございます。
ほかに委員の方から御質問はよろしいでしょうか。
それでは、次に移りたいと思います。
○高屋企画調整官 部会長、申し訳ございません。
事務局です。
1-4、1-5について、まだセンターのほうから御説明をいただいていないかと思いますので、こちらについてもよろしくお願いいたします。
○土岐部会長 すみません。よろしくお願いします。
○国立精神・神経医療研究センター張精神保健研究所長 では、1-4を私、精神保健研究所、張のほうから手短に御説明していきたいと思います。
1-4、人材育成に関することについてです。
40ページを御覧ください。
NCNPには、研究活動のほかにもう一つ重要なミッションがございます。それがこの人材育成とエビデンスに基づく適切な知識と技術の普及啓発ということになります。
中長期目標の内容は、40ページに示すとおり、私たちは自己評価をAといたしました。
その根拠の概要を41ページにまとめました。
1つは、リーダー育成の一つとしまして、全国的に需要の多い生物統計学講座を目標どおり10回開催し、延べ200人の育成に当たりました。また、研究所及び病院の部長あるいは室長のうち、令和6年度は5名が大学教授もしくは准教授として就任し、全国的に人材の輩出にも実績を残しております。
研修や講習の実施ですけれども、精神保健研究所では、全国の自治体職員や医療従事者等に対して、認知行動療法の手法を用いた薬物依存症に対する集団療法研修、通称SMARPPと言いますけれども、そういうものや、発達障害に関する研修をはじめ年間27本の研修を開催し、延べ3,000人以上が参加され、受講者の満足度も非常に高いという結果を得ております。
また、認知行動療法CBTセンターでは、厚生労働省から研修事業に係る補助を受け、基礎から実践的な内容まで幅広い研修を実施し、延べ800人以上の参加を得て、専門人材の育成に寄与しております。
42ページには、病院を含め、NCNP全体の研修の実施状況をまとめております。
研修の中には、診療報酬における施設基準を満たすために受講が必要となる研修など、医療の均てん化に資する研修も多く含まれております。
43ページ、44ページには、先ほど御説明いたしました精神保健研究所の研修実施状況と結果をお示ししております。これは御覧いただくことでお願いいたします。
45ページにはCBTセンターの研修実施状況をまとめています。
認知行動療法に関する基本的な内容の研修から、実地現場で実施されるCBTのスーパービジョン研修まで幅広く行われており、受講者の高い満足度と、CBT実施に対する高い動機づけという結果を得ています。
以上、1-4になります。
続きまして、1-5、医療政策の推進に関する事項について御説明いたします。46ページを御覧ください。
この項目の中長期目標は、精神疾患や神経疾患に関して適宜適切な政策提言を行うこと、医療の均てん化に寄与すること、国民並びに医療関係者に正しい情報を提供すること、公衆衛生上の重大な危害に対して迅速かつ適切に対応することであり、この項目に対する私たちの自己評価はAといたしました。
その根拠ですけれども、まず46ページに記しましたように、公式ホームページのアクセス件数が2000万件近くありまして、370%の達成度を得ています。これは「こころの情報サイト」の人気が非常に高いということが寄与していると考えております。
47ページには主な3つの根拠を示しております。
まず薬物依存に関する取組ですけれども、基礎研究のみならず一次予防、二次予防、三次予防につながる調査研究や予防の実践活動を幅広く展開しておりまして、そこから得られたエビデンスを基に、政策提言にもつながる活動を継続して行っています。
48ページにその概要をまとめております。
政策提言に係る活動としましては、令和6年度は右上の赤枠で囲んだ内容になります。また、基礎研究の活動としましては、中央下段に記しましたように、NCNPの研究成果を基に、令和6年度は新たに8種が麻薬に、1種が向精神薬に指定されております。
次に、47ページに1回お戻りいただきまして、中段の精神保健医療福祉の質の向上に資する提案・提言の実施を御覧ください。ここでは精神神経疾患に関する医療政策上の課題解決に向けての政策提言や診療報酬など、社会実装につながる調査研究や活動が該当しますが、令和6年度につきましては49ページと50ページを御覧いただきたいと思います。
まず49ページです。
現在、国の施策として、先ほども話題に出ました精神障害にも対応した地域包括ケアシステムが推進されるところでありますが、NCNPの研究によって、精神科入院の早期から多職種の包括的な支援マネジメントの実施が長期入院を防ぐこと。それは重度の患者さんであっても、地域生活に移行していく率が高くなることが示されまして、令和6年度の診療報酬改定で精神科入退院支援加算と精神科地域包括ケア病棟入院料が新設されるに至っています。
令和6年度のNCNPの活動としましては、当該診療報酬の算定状況をモニタリングし、次期改定に向けての提言を準備しているところであります。
次に、50ページですけれども、これも地域での精神障害患者さんのケアに係る重要な施策ですが、精神保健福祉相談員という資格があります。以前はその資格を取得するまでに240時間の講習を受けねばならないということで、働きながらその資格を目指すことは極めて困難だったのですが、NCNPの研究チームによってその講習内容が見直されまして、22時間に集約されました。そして、それが国に採用されまして、令和4年12月の精神保健福祉法の改正時に取り入れられたという経緯がございます。
令和6年度においては、その新たな基準での精神保健福祉相談員養成のための教材制作など、基盤整備に尽力してまいりました。
最後に御紹介するのは、国民の健康づくり施策に関する貢献です。47ページの3つ目の項目になりますけれども、1つは、令和6年度開始の第三次健康日本21における健康づくりのための睡眠ガイド2023の普及・啓発のためのガイド作成に研究代表機関として携わっております。ここは51ページを御参照いただければと思います。
51ページ右側に示しましたが、睡眠健康のさらなる増進のために、ウェアラブルデバイスを用いた客観的評価の開発や、それを用いた睡眠健康デジタルプラットフォームの開発に取り組んでいるところであります。
最後に、47ページにお戻りいただいて、一番下に記しましたが、先ほども出ましたが、NCNPではてんかん全国支援センター、あともう一つ全国支援センターとしては、摂食障害の全国支援センターの指定を受けておりまして、これらの疾患に係る医療の均てん化にも貢献しているところであります。
以上になります。
○土岐部会長 誠に失礼しました。
それでは、改めて1-3から1-5につきまして、委員の先生から御質問がございましたらお受けしたいと思います。
よろしいですか。
それでは、質問がないようでございますので、続きまして、業務運営の効率化、財務内容の改善及びその他業務運営に関する事項の2-1から4-1について御説明をお願いしたいと思います。
○国立精神・神経医療研究センター石川企画戦略局長 企画戦略局長の石川です。よろしくお願いいたします。
スライド52からお願いいたします。
業務運営の効率化に関する事項について、自己評価はBとしております。
中長期目標の内容は、記載のとおり6項目ございます。定量的な指標が設定されている4項目の達成状況について御説明いたします。
まずはセンター運営の基本となります経常収支率でございます。こちらは通常であれば100%を目標とするところでございますけれども、令和5年度、センターはマイナス3億円の赤字ということがございまして、令和6年度につきましても、人件費、委託費、そういったものの高騰が見込まれておりましたので、年度計画上の目標を経常収支率98.3%以上としておりましたところ、実績値といたしましては98.1%、達成度は99%でございました。決算の状況は後ほど御説明をいたします。
2つ目、後発医薬品のシェア率については、令和6年度は95.7%、達成度は106%でございます。
続きまして、スライド53をお願いします。
医業未収金につきましては、令和6年度実績値は0.021%、達成度は152%でございます。達成度が120%を超えておりますので、下に要因分析を記載しております。こちらはキャッシュレス決済、特にクレジットカードの利用が増えているほか、文書、電話等による督促を行いまして、目標は達成できております。しかしながら、依然、中長期計画の目標には至っておりませんので、引き続き取組を進めてまいりたいと考えております。
上に戻りまして、一般管理費でございます。こちらは他のナショナルセンターも同じ状況だと思いますけれども、令和4年度以降は上昇が続いております。令和6年度は令和5年度に比べて約900万円、13%増となりまして、令和2年度と比べると1200万円の増となっております。
続きまして、スライド54をお願いいたします。
決算の状況でございます。先ほども申し上げましたが、令和6年度はマイナス4億円となっております。経常収益は208億円、経常費用は212億円でございます。
ただ、昨年度比で見ますと、医業収益は2.2億円、研究収益も2.3億円増えてはおります。しかしながら、高額医薬品や原料価格の高騰による影響等で医薬品費が1.8億円の増、委託費が1.8億円の増、また、基本給を改定いたしましたことによりまして人件費が2.1億円の増となるなど、最終的に決算は赤字となっております。
当センターの患者さんは、神経難病の方とかを中心に診ておりますので、医薬品等も高額なものでありましたり、あとは従来からあるお薬でも、血液製剤ですとか、あまり価格を交渉して引き下げるといったことが難しいお薬をたくさん使用しているというような状況もございまして、収入も増えますけれども、かかっている医薬品自体もかなり高額で負担になっているということでございます。
続きまして、スライド55をお願いいたします。
指標以外の取組状況でございます。
給与制度の適正化につきましては、先ほど申し上げました。基本給は2.3%の改定を実施しました。一方で、経営状況等を勘案しまして、賞与は据置きとしております。
勤務環境の改善といたしましては、可能な部署におきましては在宅勤務を推進しているほか、休暇取得を促進し、常勤職員の平均取得日数は0.4日増えまして12日となっております。
収入の確保につきましては、医業未収金への取組のほか、令和6年度改定で新設された加算等を取得するなど、算定項目の見直しを行っているところでございます。
続きまして、スライド56をお願いします。
財務内容の改善に関する事項について、自己評価はBとしております。中長期目標の内容は記載のとおりでございまして、外部資金の獲得を進めるほか、繰越欠損金の解消となっております。繰越欠損金の解消につきましては、決算が赤字となっておりますのでプラスになりまして、現在の残額が、年度末時点での繰越欠損金が23億7800万円となっております。
続きまして、スライド57をお願いいたします。
こちらは外部資金の獲得状況、主に研究費、競争的資金といったところになります。内訳はここに記載をしておりませんけれども、業務評価書のほう、137ページに厚労科研ですとかAMEDといったものの内訳を記載させていただいております。研究のところでの御説明もいたしましたけれども、外部資金につきましては年々着実に増加をしておりまして、今回、外部資金は49.5億円を獲得しております。特にAMEDからの競争的資金というのは年々増えている状況でございます。
続きまして、スライド58をお願いいたします。
その他業務運営に関する事項につきまして、自己評価はBとしております。
中長期目標の内容は以下4項目でございまして、定量的指標は設定されておりません。
最後のスライド59をお願いいたします。
法令遵守、内部統制につきましては、研究費の適正使用のために研修を実施しておりまして、昨年からは講習だけでなく確認テストを実施することといたしました。
また、研究不正の防止につきましては、令和5年に発生した不正事案を踏まえまして、研究活動規範委員会というものを定期的に開催することとし、再発防止、規程の改正、それから、今回の研究不正事案が不適切な論文の投稿があったということでしたので、論文投稿時のチェックリストを新たに作成するといったことに取り組みまして、また、各部門において部長以下での管理体制を強化することとしております。
その他インテグリティ・セキュリティ対策は、政府の取組に合わせましてセンターにも相談窓口、担当部門を設置しております。
情報セキュリティ対策につきましては、こちらも昨年インシデントが発生しましたので、そういったものを速やかに周知、再発防止策、注意喚起、そういった取組を実施しております。
業務運営に関する説明は以上となります。
○土岐部会長 ありがとうございます。
ただいまの2-1から4-1ですけれども、委員の先生から御質問等ございますでしょうか。
それでは、私、土岐のほうから、今期も赤字が4億円強ということなのですが、ちょっと分かりにくいのが医療の部分でございまして、医業収支が分かりにくくなっているのですが、実際、病院の部分で黒字、赤字がどういうふうに動いているか、あとは研究の部分でどう動いているか、もし分けて分かれば何となく理解しやすいのですが、病院のほうの医業収支のほうはどういうふうに推移しているのでしょうか。
○国立精神・神経医療研究センター石川企画戦略局長 医業収支で言いますと、実は各ナショナルセンターのセグメント別の表も事業報告書にございますけれども、そちらで見るとぎりぎり100といいますか、99.6とかそれぐらいの医業収支率にはなっています。ただ、教育研修部門というところにレジデント等の経費は乗っていまして、そういうものが含まれていなかったりしますので、純粋に病院だけの施設とは異なって、それだけを見ているとあたかも病院の収支がいいように見えてしまうのですけれども、実際はちょっと違うということになります。
病院の先生方も、ナショナルセンターですので、研究に従事している部分はエフォートを勘案して人件費も割っておりますので、ナショセンの特徴として、病院単体で純粋に見るということがなかなか難しい状況であります。ただ、病院の経営が今はもう大変厳しい状況ですので、院長を中心として、各診療部門等が集まってといいますか、ウェブ開催ではありますけれども、そういうところでそれぞれ毎月データ等を見ながらできるところに取り組んでいる状態です。
○土岐部会長 大変よく分かりました。研究も重要な仕事なので、なかなか切り分けにくいというのは分かるのですが、気になるのは、前年度の動きにおいて減少傾向であるのであれば、次も期待できるような気がするのですが、いかがでしょうか。
○国立精神・神経医療研究センター石川企画戦略局長 54ページの表にもあるのですが、病棟は今、1つコロナ後に閉めている関係がありまして、入院患者数はコロナ前の平成30年頃と比べますと減っております。ただ、外来も入院も単価としては上がっておりまして、特に外来収益は今回もかなり増えておりました。ただ、先ほども言いましたように、医薬品が高いものがあったりしますので、それで収支差といいますか、利益としてどれぐらいあるかというと、なかなかそこは厳しい状態にあります。
ただ、センター全体としましては、人件費も医業の人件費と医業外の人件費で見ますと、医業はベースアップ評価料ですとか少し診療報酬の手当があったのですけれども、研究部門に係るスタッフ、職員の給与を改定した場合は、全てそれは自己財源となってしまいますので、ただ、きちんと給与もアップしないと職員のモチベーションも保てませんので、そこはやりくりをしながら対応しているという状況でございます。
○土岐部会長 了解いたしました。
根岸委員、どうぞ。
○根岸委員 根岸です。よろしくお願いいたします。
御説明ありがとうございました。
大変厳しい状況の中での運営だと思います。業務運営のところで55ページに、勤務環境の改善について書かれている箇所があります。例えばテレワークの導入ですとか、それから年休取得日数が若干増えているというようなことがありますけれども、働き方改革が今進められていて、特に昨年の4月から医師の時間外労働の上限規制が適用されたと思いますけれども、そこに対する取組はどんなことをされて、そしてその結果をどういうふうに評価されるのか。もしかしたら3つ目の病院職員満足度調査でも何か評価できるようなものが出てきているのかなとも推測するのですけれども、その辺りのことを教えてください。
○国立精神・神経医療研究センター中川副院長 ありがとうございます。
確かに働き方改革でかなり就業時間数は減っていますけれども、そこはチーム医療という形で、今まで1人の主治医が診ていた。そこをチーム医療で分けていくということで対応等しております。なかなか厳しい状況ですけれども、患者数も、外来、入院数は減ったのですが、経営改善ということで、人件費の見直しということで、我々の病院を定年退職された後、結構長く非常勤で勤務されていた方がおられたので、そこを一旦見直して、非常勤の先生に一旦御遠慮いただいてということで、昨年度は外来の患者数もちょっと減ったのですけれども、その後みんなで先ほど言ったチーム医療あるいは常勤の医師がしっかりと協力しながらやるということで、今年度はかなりいいスタートになっているのですけれども、昨年度の業績からすると少し上がっています。ただ、チーム医療で対応しているという形になっています。
○国立精神・神経医療研究センター石川企画戦略局長 ありがとうございます。
昨年度御報告した中には、医師からのタスク・シフトですとか、そういったことも進めておりまして、また、院内でも、医師、看護師の負担軽減、処遇改善に資する計画ということで、病院内のほうでも計画を立てていただいて、それに沿って取組を進めていくといった状況でございます。実際、超過勤務につきましても、若干波はあるのですけれども、全体としては減ってきているという状況でございます。
職員満足度調査ですが、例えばモチベーションとかキャリアアップ、また職場環境についての項目と聞いておりますが、すごく満足しているかというとなかなか厳しい面はあるのですけれども、自慢できる点とかを自由記載で書いていただいているのですが、そこは最先端の研究や医療ができるといったところとか、患者ファーストを徹底している、専門性が高いとか、あと自己研さんができるといったような御意見と、マイナス面といいますか、要望も幾つか、人手不足だとか、あとは年休取得が増えているとは言っても、もっと休みを取れるようにしてほしいとか、ハラスメント対策といった御要望もいただいておりまして、それに対しては理事長名でそれぞれ回答といいますか、取組をお返しして、院内、センターの掲示板に出して、皆さんに見ていただけるようにといったことをしております。
○根岸委員 ありがとうございます。
前半でも御説明がありましたけれども、たくさんの研修事業等をされていまして、時間が制約される中で、しかも人手不足の中で、やることはやらなければいけないという、ある意味板挟みというか、そういう面があるのかなと思って、ぜひ職員の方のモチベーションが下がらないようにしていただきたいと思います。ありがとうございました。
○土岐部会長 どうぞ。
○松前委員 松前です。
御説明ありがとうございました。
いろいろな研究をされていて、また、経営については大変難しい状況であるということを認識したところでございます。
外部資金についてでございますが、外部資金というのは一応競争的資金が一番多いということでしょうか。研究の受託とか、幾つか種類があるということと、あと59ページのその他業務運営に関する事項の中で様々、内部統制の適切な構築ということでございますけれども、少し不正なんかが発生をされているということでございまして、それについては様々な検討をされて、今、内部統制をさらに構築されているということだと思いますけれども、その点はどういったところに特に注力をされているかとか、そういったところを教えていただければと思います。
○国立精神・神経医療研究センター石川企画戦略局長 先に外部資金の細かい内容ということですけれども、外部資金の内訳ですか。
○松前委員 内訳というか、内容でも、構成が変わったりとか金額は増えているので徐々に増えているとは思いますけれども。
○国立精神・神経医療研究センター石川企画戦略局長 一番大きいもの、40億ぐらいはAMEDといって日本医療研究開発機構から来る研究費で、割と大型のものも含まれています。数億円単位のものも。それから、特に精神保健研究所、先ほどの政策提言といった関係で、厚労省からの研究費というものが3億円弱ぐらいございます。あとは文部科学省の基礎的な研究費が同じく3億円ぐらい。あとは企業からの共同研究ですとか、治験も入りますので、病院で実施しているといった臨床研究関係です。
寄附は、そのときそのときで若干波がございまして、多ければ数千万頂くこともありますし、もっと少ないときもあります。
研究不正、研究への取組は、岩坪理事、何かございますか。
○国立精神・神経医療研究センター岩坪理事 先ほどもございましたように、研究のオーサーシップの取り方などで、基本的なところのルールを逸脱したというような事案がございましたので、インテグリティに関する規定の制定ですとか、それから教育、基本事項の周知ということをしっかり行うということを励行しております。
○国立精神・神経医療研究センター石川企画戦略局長 あとは各所属長ですとか部門長の方から、所長から部長、部長から室長へコミュニケーションをしっかり取っていただくということを改めて定期的な所内の会議等においてもお願いをしております。
○土岐部会長 ほかに全体を通じまして御質問等ございますでしょうか。
それでは、最後に法人理事長と監事からのヒアリングを行いたいと思います。
まずは法人監事より、業務の監査結果等を取りまとめた監査報告について御説明いただくとともに、監査等を踏まえた現在の法人の業務運営の状況や今後の課題、改善方針等についてコメントを頂戴したいと思います。
○国立精神・神経医療研究センター大貫監事 監事の大貫でございます。よろしくお願いいたします。
まず、令和6年度の監事監査の結果について御報告させていただきます。資料2-4監査報告書に記載のとおり、当センターの業務は、法令等に従い適正に実施され、また、財務諸表等の開示書類についても適切に開示されているものと認めております。また、意見形成に当たりまして、特に重要な指摘事項はございませんでした。
当センターの臨床研究の実績ですが、研究と臨床を一体的に推進して、基礎研究から臨床研究、治験、臨床試験までの一貫した研究開発、人材育成、政策提言等を含め、成果を国民の皆様に届けるということが強みであると認識しておりますが、本日の説明にもありましたとおり、これらの研究と医療の両立は着実に成果を上げているのではないかと私どもは見ております。
一方で、課題はやはり財務面にあると思っていまして、第3期中長期期間の今回は4年目に当たりますけれども、前年度に引き続き損失計上となった結果、計画1年目、2年目で解消した繰越欠損金を3年目、4年目でほぼ相殺させたような結果になりまして、第3期中長期期間の一番最初に戻ったというような結果になっております。
これは、先ほど再三説明がありましたとおり、高額医薬品等の増加や委託費等の物価上昇に直面しており、当センターを取り巻く外部環境は第3期中長期目標期間を通じて非常に厳しい状況でございました。そのような中で、いかにして経営改善活動を推進していくか、繰越欠損金が当初に戻った中での中長期計画の5年目で、どういったトレンドをつくっていくのかが重要ではないかと認識しております。
今後も、研究の独立性・専門性を尊重しつつ、社会的信頼の確保に資する健全な財務運営がなされ、国民からの信頼を確保するために、透明性と説明責任を重視した運営が継続されるかについては引き続き注視してまいりたいと考えております。
以上でございます。
○土岐部会長 ありがとうございます。
続きまして、法人の理事長より、日々のマネジメントを踏まえ、現在の法人の業務運営の状況や今後の課題、改善方針等についてコメントをよろしくお願いいたします。
○国立精神・神経医療研究センター中込理事長 ありがとうございました。
様々な面から貴重な示唆をいただきまして、本日はありがとうございました。
ただいま話題に上がりましたように、当センター、当法人は大変経営的な側面で苦しんでいるところでございます。繰り返し出てまいりましたけれども、どこの病院でもそうかもしれませんが、医薬品、医療の材料費、それから先ほど病院のほうはベースアップ評価料といったものもございましたけれども、全体的に人件費のアップということで、なかなか診療報酬のほうに付替えができないということもありまして、それでも職員は非常に一丸となって、医業収入のアップに向けて努力をしておりますし、また、事務方も含めて職員一同、コストを見直して、徹底的にコストの適正化を図るために、共同調達方法等々を探っているところでございます。
こういった中で、御指摘いただきましたように、我々がやるべきミッションは変わりませんので、多くの研修や、我々は日本のこの領域の様々なアカデミアの基盤をきっちりつくって、皆さんに使っていただくような、あるいは皆さんのハブとなるような活動は欠かせないと思っていますので、ここのところも忘れず注力しているところでございます。
とりわけ、基盤部分の整備というのは大変重要なものだと思っています。レジストリについても御質問いただいてありがとうございます。ただ、時間の関係で全部は説明できませんでしたが、こうしたデータベースといったものを我々だけが使うのではなくて、企業も含めて様々な大学の先生方にも使っていただくように、多施設共同で進めているといったところが実情でございます。
最後になりますけれども、このセンターを支えているのは何といっても職員の皆様でございます。その職員の皆様の満足度というのは大変重要な点でありまして、私も目を通しております。正直言って悲鳴のような声が聞こえてくることもあります。その一つのポイントは、やはり業務の効率化だと考えています。現在、電子カルテが更新ということで、今、新たな電子カルテの構築に向かって、みんなで委員会をつくって努力しているところですけれども、そんな中でもこれまで二重、三重に入力しなければならなかったような無駄をどうやって省くか、部門間の連携をいかに整備してやるか、そういったところを注意深くベンダーと話を進めていっているところでございます。
そこの点についても現場から多くの声を聞いておりまして、少しでも業務の負担が減って、そして、このセンターでの仕事にモチベーションを持っていただけるよう、そんなふうに思っているところでございます。
本日は本当にありがとうございました。
○土岐部会長 ありがとうございました。
ただいまの法人監事、法人理事長の御発言につきまして、御意見、御質問等ございますでしょうか。
よろしいでしょうか。
それでは、以上で国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センターの令和6年度業務実績評価についての審議を終了いたします。
以上で本日の議事を終了いたしました。
ここで一旦事務局から、今後の流れについて御説明をよろしくお願いいたします。
○高屋企画調整官 事務局です。
今後の流れについて御連絡いたします。
本日御議論いただきました国立長寿医療研究センター及び国立精神・神経医療研究センターの令和6年度業務実績評価につきましては、本部会における御意見や法人の監事及び理事長のコメント等を踏まえまして、後日、厚生労働大臣による評価を行い、その評価結果について、法人に通知するとともに公表いたします。
委員の皆様におかれましては、事前に電子媒体でお配りしている評定記入用紙に必要事項を御記入いただき、8月14日木曜日までに事務局宛てメールにより御提出いただきますよう、お願いいたします。
なお、評価結果につきましては、後日、委員の皆様にもお送りいたします。
次回ですが、8月7日木曜日13時より、こちらの航空会館大ホールで国立成育医療研究センター及びJHを含む国立がん研究センターの評価に関する審議を予定しております。
事務局からは以上です。
○土岐部会長 それでは、本日は以上とさせていただきます。
長時間にわたりどうもありがとうございました。
委員の皆様には、大変お忙しい中、お集まりいただき、誠にありがとうございます。
議事進行役を務めさせていただきます大臣官房厚生科学課国立高度専門医療研究センター支援室の高屋と申します。よろしくお願いいたします。
本日は、神崎委員、庄子委員、中野委員、前村委員がオンラインでの御参加となっております。中野委員におかれましては、途中からの御参加という予定となっております。
なお、危機管理・医務技術総括審議官の佐々木と厚生科学課長の荒木におきましては、他の用務のため、本日は欠席させていただきます。何とぞ御了承くださいますよう、お願いいたします。
国立研究開発法人等審議会運営規程に基づく御報告です。運営規程第5条に基づき、本日、意見聴取を行う国立研究開発法人の事務及び事業について、利害関係を有する者は、当該法人に係る評価について議決権を有しないものとされています。法人との利害関係については、あらかじめ委員の皆様から御申告いただいておりますが、事務局におきまして確認いたしましたところ、本日御出席の神崎委員におかれましては、本年度に主任研究者として国立長寿医療研究センターから研究費の配分を受けているということでございますので、本日の国立長寿医療研究センターの意見聴取において、御発言をいただくことは可能でございますが、評定案及び意見に関する評定記入用紙の提出はできないというところにございますので、何とぞ御承知おきくださいますよう、お願いいたします。なお、それ以外の法人の意見聴取につきましては、御発言いただくことも、評定案及び意見に関する評定記入用紙の提出についても可能となっておりますので、その点につきましても御承知おきくださいますよう、お願いいたします。
また、これにより、出席委員に関しましては、部会所属委員の過半数を超えておりますので、会議が成立することを御報告いたします。
それでは、本日の会議の進め方について説明いたします。本日は、オンラインを併用したハイブリッド方式での開催となります。会場に御出席の委員におかれましては、御発言の際は挙手をしていただき、部会長による指名を受けた後に御発言をお願いします。オンラインで出席の委員におかれましては、Zoomサービス内の「手を挙げる」ボタンをクリックしていただき、部会長による指名を受けた後に御発言をお願いいたします。御発言時以外はマイクをミュートにしていただきますよう、お願いいたします。
なお、御発言の際には、冒頭にお名前を述べていただき、資料を用いて御説明される際には、資料番号と該当ページを明言いただきますよう、お願いいたします。
続きまして、本日の議事を御説明いたします。本日は、国立長寿医療研究センター及び国立精神・神経医療研究センターに関する令和6年度業務実績評価に係る意見聴取を行います。評価に係る意見聴取の流れにつきましては、評価項目ごとに法人から説明をしていただいた後、委員の皆様から御意見、御質問をいただきたいと存じます。説明と質疑応答の時間は、事前に時間設定をしており、終了1分前と終了時に事務局がベルを鳴らしますので、目安としていただきますようお願いいたします。
それでは、本日の会議資料の確認をさせていただきます。本日の主な会議資料は、議事次第、国立長寿医療研究センター関係としまして資料1-1から1-4、国立精神・神経医療研究センター関係としまして資料2-1から2-4及び両法人共通として参考資料1と2になります。法人からは、資料1-2及び2-2の概要資料を用いて説明を行いますので、オンラインで御参加いただいている委員の皆様におかれては、事前に紙媒体でもお送りしています議事次第、資料1-2、1-4、2-2、2-4の御活用をお願いいたします。その他の資料につきましても、事前にお知らせしましたURLより閲覧していただくようお願いいたします。会場の皆様におきましては、お手元にあるタブレットに本日の資料一式を格納しておりますので、そちらを御覧いただきますようお願いいたします。資料の不備や閲覧方法等について御不明な点がございましたら、チャット機能等で事務局までお申しつけください。
事務局からの説明は以上でございますが、ここまでで何か御質問等ございますでしょうか。
それでは、以降の進行につきましては、土岐部会長にお願いさせていただければと思います。
土岐部会長、よろしくお願いいたします。
○土岐部会長 それでは、早速議事のほうに移りたいと思います。
まずは国立長寿医療研究センターの令和6年度業務実績評価について審議を開始したいと思います。
最初に、法人理事長から一言御挨拶をよろしくお願いいたします。
○国立長寿医療研究センター荒井理事長 おはようございます。
国立長寿医療研究センターで理事長を拝命しております荒井と申します。よろしくお願いいたします。
今回の令和6年度の業務実績概要説明に当たりまして、評価委員の先生方にはいつも非常に貴重な御意見をいただき、誠にありがとうございます。
昨今の非常に厳しい経営状況に鑑みて、我々も経営努力をしっかりとやってまいりましたけれども、この後御説明させていただきますけれども、収支状況としてはかなり厳しい状況であります。これは全国のほとんどの医療機関がそういう状況にはありますけれども、できるだけその状況を改善したいということで、今年度からではありますけれども、経営戦略会議を立ち上げて、センター一丸となって経営の改善に向けて努力をしているところでございます。
一方で、我々のミッションとしましては研究開発ということでありますので、高齢者医療に関して、または老化研究、老年学研究におきまして、特にアジアの地域からの我々のセンターに対する注目は年々増えているということをひしひしと実感をしており、我々もアジアの方々、特に若手の研究者、診療スタッフの教育に、私自ら様々な場を利用してコミットさせていただいておりますし、多くの方々を当センターに受け入れて研修をしていただいているという状況であります。
高齢化におきましては世界のトップを走っておりますので、その高齢化の研究開発を担う我々のセンターに対する注目は年々上がっておりますので、その期待に背かないような研究開発を引き続き行っていきたいと思いますけれども、厳しい経営状況の中、高齢者の診療の質を落とすことなく、また、働き方改革に沿った形で、スタッフの勤務時間についてもしっかりと配慮しながら、ほかの病院のお手本となる高齢者医療のモデルをしっかりと国に対してお示ししていきたいと考えておりますので、今日も貴重な御意見をいただくことを楽しみにしておりますので、今回の評価委員会、よろしくお願いいたします。
簡単ですけれども私からの御挨拶をさせていただきます。
○土岐部会長 どうもありがとうございました。
それでは、早速審議のほうに移りたいと思います。
まずは研究・開発の成果の最大化に関する事項の評価項目1-1及び1-2に関わる業務実績について議論したいと思います。初めに法人から御説明いただき、その後に質疑応答という流れで進めていきたいと思います。時間が限られておりますので、ポイントを絞っての御説明をよろしくお願いいたします。
○国立長寿医療研究センター櫻井研究所長 研究所長、櫻井でございます。よろしくお願いいたします。
スライドをお願いします。
評価項目1-1では、令和6年度に高齢者医療の推進に大きく貢献する成果が4件、論文数も355件でこれまで最高となり、自己評価をSとさせていただきました。特に顕著なものを紹介させていただきます。
スライドをお願いいたします。
第1に、認知症早期発見・早期介入実証プロジェクトを紹介いたします。早期アルツハイマー病に対する抗アミロイド抗体薬の実用化に伴い、認知症リスク者を早期に発見することの意義が高まっております。そこで本研究の目的は、認知症リスク者を早期に発見し、診断、診断後支援に導く標準的なフローを確立することでございます。
(1)を見てください。令和6年度は、全国40自治体におきまして、約1万4000人がスクリーニング検査を受検しました。しかし、認知機能の低下が疑われ受診推奨を受けた者のうち、精密検査のために受診した者は7.3%にとどまりました。保健師による個別指導や架電を行った場合には、受診率は約12%まで高まり、人を介する受診相談が重要であることが明らかになりました。
受診しなかった理由を調べたところ、「健康に自信がある」という回答が最も多く42%、認知症を自分事として受け止めていない現状が明らかになりました。
(2)を御覧ください。本研究では、対面型の認知機能検査に加えまして、パソコンやスマホを使った10種類のスクリーニング検査法を用いました。検査の標準化を行うため、MMSEを基準とした比較を行いますと、いずれもAUCで0.7~0.8程度で認知症をスクリーニングできることが示されました。
(3)を見てください。スクリーニング検査の信頼性を確認するため、認知症血液バイオマーカーとの関連を調べましたところ、認知機能が疑われた者では血液バイオマーカーが異常であることが多く、認知症リスク者を濃縮するツールとして有効であることが分かりました。
これらの成果をまとめ、認知症の早期発見・早期対応のための自治体向けの手引を完成いたしました。今後、認知症の早期発見から診断、診断後支援につながるモデルを確立していきます。
次をお願いします。
次に、認知症の進展に関わる遺伝子群の同定に関する研究を紹介いたします。
(1)当センターバイオバンクに登録された日本人のアルツハイマー病、軽度認知障害、認知機能正常者から構成される約1,200名を対象に網羅的な遺伝子発現解析を行いました。
その結果、認知機能正常からMCIへの移行にはリボソーム関連遺伝子が、MCIからADへの進行には免疫、細胞周期、タンパク質プロセシングに関連する遺伝子が主に変動していることが明らかになりました。
これらの成果は、アルツハイマー病の発症機序として、アミロイドタンパク質の上流、あるいは未知の病態進行に関連するメカニズムの解明につながる成果と考えています。
(2)を御覧ください。日本人レビー小体型認知症(DLB)の遺伝子変異を同定しました。45名のDLB及び認知機能正常者約1,700名の全ゲノムシークエンスデータの解析から、DLB発症に関連する遺伝子内のバリアントを調べたところ、CHD23遺伝子にある3つのミスセンス変異が特定されました。この変異は東アジア人に特有であり、聴覚障害とも関連することが示されました。東アジア人の認知症ゲノム研究では、我々のバイオバンクは世界最大であり、日本人特有の認知症リスクの同定では他の追随を許しません。今後、聴覚障害のスクリーニングから、DLBの早期発見や治療法の開発につながることが期待されます。
次をお願いいたします。
次に、大規模コホートを基盤としたデジタルヘルスの開発について紹介します。
(1)デジタルヘルスサービスの介護予防への効果を約4,000名の地域在住高齢者で検証しました。介入方法は、我々が開発したオンライン通いの場アプリを30か月間利用すること、スマホと連動したウォーキングポールを用いた運動週2回実施することです。
中間解析の結果、介護認定の新規発生は介入群と対照群で差は認められませんでしたが、アプリを全日程の60%以上利用した群におきまして、新規の要介護認定が有意に低下していました。定期的にスマホを使うことで介護予防につながることを示した所見で、その意義は大きいと考えています。
(2)高齢者の自動車運転支援のためのVRシステムの開発を行いました。高齢者の運転技能のスクリーニング検査を約700名で実施し、リスクのある高齢者に対するVRを用いた運転技能向上を目的としたトレーニングプログラムを開発いたしました。
(3)オーストラリアとの国際共同研究で、UK Biobankの1万人の手首装着型ウェアラブルデバイスから抽出されたデジタルバイオマーカーからフレイルを判定するモデルを開発しました。このモデルによって判定されたフレイルは、入院や死亡を予測することが可能であることが明らかになりました。R6年度は、日本固有のデジタルフレイルバイオマーカーを開発するため、多施設共同コホート、東浦研究コホートを立ち上げました。
次をお願いいたします。
認知症予防を目指した多因子介入研究(J-MINT)の社会実装について紹介します。
(1)J-MINTのサブ解析を行い、2つの重要な所見を得ました。多因子介入の得られやすい集団、レスポンダーと言いますが、その特徴を検討したところ、昨年度報告したAPO E4キャリアに加えまして、生活習慣病を持つ者であることが明らかになりました。介入により血圧や血糖値も改善し、多因子介入の社会実装はまず生活習慣病を持つ者から始めるべきと考えています。
また、多因子介入の費用対効果を解析したところ、通常ケアと比較して、医療費、介護費、インフォーマルケアを含むコストが1人当たり約45万円減少しており、一方、QOLは改善することが明らかになりました。
こういった解析結果を踏まえ、認知症予防のための多因子介入を社会実装するために、リアルワールドでの阻害因子、促進因子について検討いたしました。その結果、認知症予防のエビデンスのあるプログラムがないこと、プログラムを提供するインストラクターが不足していること、参加者の確保などが重要な課題であることが明らかになりました。
そこで、地域版J-MINTプログラムを開発し、インストラクターの育成、認証制度を構築しました。その実現可能性と効果を検証するパイロット研究を行ったところ、認知機能が改善することが確認できました。現在、全国で18の自治体で多因子介入の社会実装を行う準備を進めています。また、多因子介入を継続するためにはビジネスモデルが必要です。厚生労働省のSBIR制度の支援を受け、スタートアップを立ち上げ、社会実装の体制を整備しています。
次に、右側に示した、科学的介護情報システム(LIFE)を推進する研究を紹介します。
LIFEの活用促進は、我が国の介護保険の質を高める基盤となるものです。(1)LIFEデータを利用して、全国の老健施設に新規に入所した者約10万人を対象に、要介護度の悪化の要因を検討しました。
その結果、入所時点の要介護度が低いほど重症化が起こりやすいこと、ADLやBMIなどが悪化に関係することが分かりました。
(2)LIFEの利活用促進のため全国研修会及び研究会を実施し、約7,000名が参加されました。また、LIFE情報を活用した介護を実現するため、2場所の入所施設で介護者に教育を行い、業務負担などを含めて受入れの実施可能性を検討しました。
次をお願いいたします。
最後に、地域住民コホート(NILS-LSA)の進捗について述べます。
本コホートは、開始から28年が経過し、我が国でも有数の長期縦断コホートに成長しています。R6年度は第10次調査を実施しました。また、6NCで連携した研究・解析も進めています。NILS-LSAのデータサーバーを他のNCからもVPN接続できるリモートアクセス環境を整備し、セキュアな環境で24時間解析が可能となりました。
(3)NILS-LSAを用いた日米多施設・産官学連携研究を行いました。米国のARIC研究の血液検体から、認知症の発症と関連の深い25のタンパク質を特定し、予測モデルを開発しました。妥当性検証をNILS-LSAの試料を用いて実施し、認知症発症リスクを20年前から予測するモデルを開発することができました。これらの研究は、認知症施策推進基本計画、認知症研究などの推進、予防など、国際協力に大きく貢献するものでございます。
1-1はここまででございます。
次に、1-2に進ませていただきます。
評価項目1-2では、臨床研究実施件数は505件でこれまで最高、ファースト・イン・ヒューマン試験も2件目が始まりました。ガイドライン策定への貢献も多く、自己評価をSといたしました。
以下に顕著な実績を示します。
次をお願いします。
初めに、これまで3年かけて準備してまいりました認知症研究のための統合データベースを紹介します。
(1)近年、治療標的分子などの探索におきまして、データ駆動型の研究の重要性が高まっています。当センターは国内初の国際規格の認定を受けたバイオバンクを設置しており、良質な試料の解析から、精度の高いデータを得ることができます。R6年度は、認知症の症例の臨床情報約3,700例の高齢者総合機能評価、脳画像データ約8700例の頭部MRI、約6,500名のゲノム情報などをひもづけた認知症研究統合データベースを整備しました。このデータベースは、当センター内のみならず、外部の研究者も登録申請を行うことで利用が可能になっています。
(2)このデータベースを活用した研究として、アルツハイマー病のリスクであるAPOE4のノンキャリアにおきまして、特定のHLAの頻度が高いことが明らかになりました。この成果はnpj Aging 2024に掲載されています。
次をお願いします。
次に、ゲノム医療推進基盤について紹介いたします。
(1)認知症などのゲノム医療推進の基盤となるデータベースと解析拠点を整備しました。アジア最大級の認知症関連オミックスデータベースの整備、質の高い臨床情報が附随する認知症関連ゲノム情報、認知症のクリニカルシーケンスに対応しました。
(2)オミックス情報の累積データ数は、右の表に示したとおりです。認知症例を含む342例の全ゲノム解析を行い、累計4,354例となりました。網羅的SNP解析は3,284例を行い、累計約4万5000例と、当初の目標を大きく超えています。
この格納データを用いて東アジア人においては初のレビー小体型認知症のゲノムワイド関連解析を実施しました。10番染色体の新規遺伝子SEC61A2のコモンバリアントを同定しています。
次をお願いします。
次に、当センターが開発しました神経変性疾患に関連する新たな画像バイオマーカーのファースト・イン・ヒューマン試験を2件を紹介します。
(1)第1は、ミクログリアを標的としたPETリガンドNCGG401です。ミクログリアは脳内の免疫担当細胞で、認知症などの神経変性疾患に深く関連しますが、これまで生体内で特異的に可視化する手段がありませんでした。そこでNCGG401を開発し、健常者及びアルツハイマー病、側頭葉てんかん患者で検証を行いましたところ、ミクログリア濃度の上昇を明瞭に捉えることに成功しました。将来的には、ミクログリアを標的とした創薬の有効性評価への活用が期待できます。
(2)分子シャペロンHSP90を標的としたPETリガンドBIIB021を開発しました。HSP90は、レビー小体病や多系統萎縮症などのシヌクレオパチーにおけるタンパク凝集に中心的に関与しているタンパクです。HSP90の脳内分布を可視化することで、これまで困難であった病態の評価や治療薬の効果予測が可能になると期待されます。現在、健常者でファースト・イン・ヒューマン試験を実施しており、良好な初期結果が得られております。
これらの研究は、いまだ根本治療が困難な神経変性疾患に対し、疾患の早期診断や新たな治療評価への道を開くものであり、重要な実績と考えております。
次をお願いいたします。
次に、高齢者や認知症の人との共生社会づくりを目指す研究を紹介します。
(1)物忘れ外来を受診した人の臨床データとその後数年にわたる医療介護レセプトデータ及び意思決定などの個別調査を突合したデータ基盤、NCGG-STORIESを構築しました。このデータベースにより、認知症の生命予後のみならず、生活予後の解析が可能となりました。これまで認知症の病型別の自然経過や実態を明らかにする研究を3件報告しております。
(2)近年、介護保険の要支援から要介護1までの軽度要介護の認定を受けた人が急増しており、重症化予防は急務の課題となっています。そこで新規の軽度要介護認定者を長期間追跡し、健康長寿やウェルビーイングの向上に必要なサービス、支援方法を検証するデータ基盤を構築しました。寄り添い調査と申します。このデータベースは、要介護者、家族介護者、ケアマネジャーのデータを集めたユニークなもので、R6年度は1,347名のベースラインのデータを登録しました。
(3)認知症があっても社会参加を促進し、認知症スティグマの軽減とウェルビーイングの向上を目指す産官学民連携体制、NCGG-UniCoを構築しました。例えば写真のように、ショッピングモールなどで認知症の人にも優しい表示やトイレを作成して、その効果を検証しています。
次をお願いします。
健康長寿支援のためのロボットセンターでは、以下の開発を行いました。
ロボットセンターでは、介護ロボットや見守りセンサーなどに関連する計測装置の検証、社会実装に向けた研究開発を世界トップクラスのレベルで推進しています。
(2)基盤となるリビングラボ及びロボット実証空間を拡張し、多様なニーズに対応可能な実証環境を整備しています。
(3)ロボットの開発では、空気圧を供給することにより膝関節の運動をアシストするソフトアシストスーツを開発し、また、ライフログ計測技術の高度化を行いました。
(4)厚生労働省プラットフォーム事業として、ロボット開発コンセプトの提案、試作品の評価、ビジネス化への助言を18件、また、ロボットメーター、機械メーカー、建築、エンタメ業界との共同研究を9件行いました。
次をお願いします。
最後に、診断基準の作成・人材育成・国際活動について紹介します。
(1)Global Leadership Initiative of Sarcopeniaの中心メンバーとして、サルコペニアの診断基準策定の会議に参加し、サルコペニア・フレイルの予防・改善に関するデジタルヘルスのためのガイドラインを作成いたしました。
(2)2011年から毎年行ってきましたアジアの若手老年科医の育成を目的とした老年医学教育プログラムマスタークラスを東京で開催しました。アジア、オセアニアにおける高齢者医療の専門職を育成しています。
(3)国際活動の推進として、北欧3か国、イギリス、日本の枠組みで、認知症・介護予防のための国際共同研究Nordic-Japan FINGERを3年間行ってまいりました。認知症予防のための多因子加入を推進する世界的組織であるWorld-wide FINGERS Networkには既に71か国が参画しております。この枠組みの中で若手研究者の相互訪問を行い、共同研究を進めております。
これらの活動によりまして、認知症施策推進基本計画に大きく貢献してきた成果でございます。
以上でございます。御清聴ありがとうございました。
○土岐部会長 御説明ありがとうございました。
それでは、委員の皆様方から御質問等をお受けしたいと思います。神崎委員も、利益相反がおありということですけれども、意見に関しましては、ぜひ御専門ということですので、活発な御意見をお願いしたいと思います。いかがでしょうか。
前村委員、どうぞ。
○前村委員 長崎大学の前村でございます。
昨年に比べてまた研究が一段と進んでいるということがよく分かりました。
2つ質問させてください。
まず9ページの(3)の血液バイオマーカーのところで教えていただきたいのですけれども、認知症の診断に簡便な血液でのバイオマーカーが利用できるようになることは非常にすばらしいことだと思うのですが、現状での血液バイオマーカーの精度、いわゆる感度、特異度だとか、カットオフを設定したときのAUCなどがどれぐらいあるかということと、血液バイオマーカーが早期診断に役立つのか、認知症の鑑別診断に役立つのか、予後推定に役立つのかというのはいかがでしょうか。
○国立長寿医療研究センター櫻井研究所長 ありがとうございます。
まず、血液バイオマーカーの精度についてでございます。血液バイオマーカーにも、アミロイドのバイオマーカー、タウのバイオマーカー、その他のバイオマーカー等があり、それぞれの精度が明らかになりつつございます。
中でも最も研究が進んでおりますのが、アミロイドに対する血液バイオマーカーでございます。PETでのアミロイドの蓄積をゴールドスタンダードとして検証してまいりますと、血液バイオマーカーの精度はAUCで0.95に近づく精度でございます。タウに関しましても新しいバイオマーカーが出てきておりまして、今後さらに精度が上がっていくものと考えております。
こういった科学的な知見を踏まえまして、バイオマーカーがどこに使えるかということでございますけれども、先生がおっしゃいましたとおり、まず一番は早期診断にも活用できるものと思っております。ただ、血液バイオマーカーが上昇しているにもかかわらず認知症は進行しない例もございます。血液バイオマーカーが独り歩きしますと、不安をあおるだけという危険性もございますので、やはり認知機能の検査と同時に行っていくということ、そういった慎重さが求められていると考えております。
また、今回のプロジェクトで、実際に病院まで来ていただいた方の診断及び診断後支援を行いましたが、認知症病型の鑑別にも非常に有用でございます。PET検査は一般に非常に高価で、一件で20万円ほどいたします。一方、血液バイオマーカーは複数のマーカーを組み合わせて測定することで病態を理解することが容易となるため、診断やフォローアップでも有用な場合がございます。
以上のようなことでよろしゅうございますでしょうか。
○前村委員 ありがとうございます。
もう一つよろしいでしょうか。
11ページの3の(1)デジタルヘルスのところで、アプリを使った研究で、Intention to treatでは有意差がなかったのですけれども、60%以上使用した人では有意差が出たということの解釈なのですけれども、アプリ自体は有効そうだけれども、実際は使った人が結構少なかったということを反映しているのでしょうか。
○国立長寿医療研究センター櫻井研究所長 ありがとうございます。
おっしゃるとおりだと考えております。アプリを毎日使ってくださいとお願いしても、なかなか皆さんやってくださらないので、こういったアドヒアランスの問題は事前にも想定できていたことでございます。ですからこそ60%以上ということで、解析するとこういったデータが出たという理解でございます。
○前村委員 ありがとうございます。
○国立長寿医療研究センター荒井理事長 これに関しては、今、御指摘があったように、デジタルデバイドの問題がありますので、同時にデジタルデバイドを高齢者で減らすということを目的とした研究も併せて別研究として、グーグルからの寄附を頂いた形で行っておりますので、両輪が必要だと思っております。よりスマホになじんでいただくと同時に、スマホをいかに使っていただくか、またインターフェースも含めて、使いやすいアプリをいかに提供していくかということが大事だと思っておりますし、先ほどJ-DEPPという研究の成果をお話しさせていただきましたけれども、そこをうまく認知機能のスクリーニングに流していくということも可能だと思っています。
先ほどのバイオマーカーのお話は、所長からも回答がありましたように、スクリーニングとしてはどんどん使っていこうということは難しいと思っております。あくまでもPETの前の診断補助に使うというのが主な目的だと思っておりますけれども、もちろん自費で検査される分には問題ないかと思いますけれども、一般の保険診療ではそこまで拡充するのは難しいのではないかなと思っていますし、今後は、4つのバイオマーカーをお示ししていますけれども、そのコンビネーションの意義であったり、あるいは予後との関係についてもしっかりと研究成果を出していく必要があると思いますし、バイオマーカーが上がっている場合は、アミロイド沈着あるいはアルツハイマー病の鑑別診断が可能になってまいりますので、臨床診断がなかなか難しい場合は補助として使っていくことができると思っています。
○前村委員 ありがとうございました。
○土岐部会長 続きまして、神崎委員、どうぞ。
○神崎委員 杏林大学の神崎と申します。
先ほど御説明がなかったところなのですけれども、6ページの表と21、22ページの表の見方なのですけれども、確認したいのは、例えば6ページの表の上の部分、加齢に伴う云々というところで、中長期期間計の実績値と達成度がそれぞれ15と79%というような数で示されているのですけれども、恐らく私が解釈したのは、令和3、4、5、6、7、8の6年間を中長期期間と設定して、6年間で合計19件を目標としていて、それに対して15件達成できたので、その達成度が79%という解釈でよろしいのですよね。分かりました。
そうしますと、6年間で19件というのは、全てに当てはまるのですけれども、どういうふうに19件というのを設定したのかとか、その辺は何かあるのでしょうか。
○国立長寿医療研究センター荒井理事長 これまでの実績をベースとして、第2期の中長期計画での数値から上げているという理解だったと思っていますので、今、3期目に当たりますけれども、3期目に入ってタームごとに目標値を上げていく。その上げてきた目標に対して、今さらに120%程度の勢いで進んでいるということになるかと思っています。
○神崎委員 分かりました。単純な計算だと3掛ける6で18だけれども、もう一つぐらいということで19、そんなような理解かなと思ったのですけれども、ととにかく今、理事長がおっしゃったように、年々上げていくべきだと思いますので、目標は6年間で19件だけれども、今は79%だけれども、それが百幾つまで行くというところを目指しているという見方ですよね。
○国立長寿医療研究センター荒井理事長 そうです。
○神崎委員 分かりました。ありがとうございました。
○土岐部会長 続いて庄子委員、どうぞ。
○庄子委員 私は9ページのところです。聞き漏らしてしまったのかもしれないのですが、精密検査の受診率で、対象の方に対して精密検査の受診率が受診勧奨を受けた人のうち7.3%で、人を介すと12%に上がるということで、人を介することが重要だというお話があったのですが、この12%という数字をどういうふうに捉えていらっしゃるのか。このぐらいが妥当なのか、本当はもっと上げたいと思っていらっしゃるのかという評価をお聞きしたいのと、その下に、自治体、医師会との連携、家族や地域社会を巻き込んだ啓発活動が重要と書かれていますけれども、何か具体的にこんな取組をしていきたいと思っていらっしゃるとかがあれば、既にやられていることもありますが、また新たにこんなこともされたいという御計画とかがあれば教えてください。
○国立長寿医療研究センター櫻井研究所長 ありがとうございます。
精密検査の受診率が7.3%で、別のフィールドにおきましては、自治体の方あるいは看護師が電話したり個別に相談すると12%に5%上がるというデータが今回あったということでございます。もちろん目標は80%ぐらいになってほしいわけですが、まだまだ課題は多いと評価しております。ただ、電話をするとかいった個別の対応が全自治体でできるかと言われると、またそれも難しいことでもございます。ですから、今後は人を介する支援ということに加えまして、デジタルを使った支援ということをやっていかないといけないと思います。今年はそういった工夫を様々なフィールドでやっているところでございます。
一つの先行事例といたしまして、神戸市におきましては、認知症の早期発見・早期検査事業というものがございまして、検査をかかりつけ医の先生で行っておられます。そこで検査をして異常があった方を、検査に行きなさいよという御指導をなさっておりますが、そうしますと精査率が85%というデータがございます。ですから、医師会の先生あるいは自治体の方の御指導、御協力というものを一方で盛り上げていかないといけないと考えているところでございます。
以上です。
○国立長寿医療研究センター荒井理事長 啓発について、今、所長を中心にビデオを作成して、それを例えばコマーシャルで流すことによって、国民の意識を高めるということが必要だと思っておりますので、そういったこともこれからしっかりと取り組んでいって、国民の意識を高める。認知症というのは治らない病気ではなくて、早期に見つければ進行を遅らせることはできるということが分かってまいりましたので、できるだけそのリスクのある方については自ら行動変容を行っていただいて、認知症の予防に取り組んでいただくということが大事だと思いますし、それを支える枠組みを各自治体につくっていただくということに関して今、所長を中心に、SBIRという枠組みを活用させていただいて全国展開に持っていこうと思っております。入り口から出口までしっかりと体制を整えるということが我々のミッションだと思っていますし、それをいかに実装して国民の認知症の発症率を減らしていくかということが最終的なゴールになりますので、しっかりとその辺りは取り組んでいきたいと思っています。
何%ということについて、なかなか申し上げにくいわけでありますけれども、今回用いたスクリーニングテストはウェブベースでやることが多くて、御自分でやっていただくという仕組みのため、診断の精度については、まだまだ精度を上げていく必要がありますので、そういった精度的な問題も今後さらに検討しなければいけないと思っています。今回は非常にシリアスな検査を取り入れましたけれども、例えばゲームを行う中で自動的に認知機能のスクリーニングができるような、より高齢者にとって親しみやすいツールをしっかりと開発をしていくということを行っていくとともに、先ほども少し説明をさせていただきましたけれども、通いの場アプリというものがありますので、そういうアプリからうまく認知機能のスクリーニングに誘導し、そしてそれを行動変容につなげていただくような形を模索していきたいと思っております。
○庄子委員 ありがとうございます。
○土岐部会長 どうぞ。
○田極委員 田極です。
御説明ありがとうございました。
ちょっと教えていただきたいのが22ページのところなのですが、医師主導治験数と先進医療承認件数が令和3年度からずっと0件になっていて、23ページのほうの要因分析のところですと、中長期目標としては達成可能であることを見込んでいるとなっているのですが、具体的に達成可能であると見込んでいる根拠などがございましたら教えていただければと思います。
○国立長寿医療研究センター荒井理事長 御指摘いただきましてありがとうございます。
ここが当センターとして苦労しているところで、医師主導治験がなかなか実施できないという課題があるということはしっかりと認識しているつもりであります。あと2年で達成できるのかという御質問かと思いますけれども、我々としては各医師にしっかりと医師主導治験をするようにということは指導し、インフラもしっかりと整えているという状況ではありますけれども、分担では参加できるのだけれども、主任としてのリーダーシップがまだ十分でないという事情もございますので、これについては、病院長もしっかりとした指導をしていただいているかと思いますけれども、楽観的な数値は書かせていただいておりますが、我々としては最大限努力しますということしか申し上げることができないというのが実情でございます。
○田極委員 分かりました。ありがとうございます。
○土岐部会長 どうぞ。
○根岸委員 根岸です。よろしくお願いいたします。
御説明ありがとうございました。
令和6年度も大変重要な研究開発を推進され、成果を上げられたと思いました。
2点教えてください。
まず10ページ、DLBの遺伝子変異を同定されたという御説明があったと思いますけれども、ここのところで主観的聴覚障害との関連というのが書かれておりますが、主観的聴覚障害、具体的に言うと聴覚の低下なのか、それとも、レビー小体型認知症ですと中核症状の一つとして幻視というものがあるかと思いますけれども、幻聴というようなものなのか、主観的聴覚障害というのは何を指標にしているものなのか1点教えてください。
もう一つが29ページになりますけれども、サルコペニアの世界基準を策定されたということで、世界的な基準ができるというのは大変意義があると思うのですけれども、サルコペニアといいますと、筋力とか、筋肉量とか、その機能ということで恐らく枠はつくられていくのだろうと思うのですけれども、この基準というのは、例えば国とか地域による差のようなものは考慮されているものなのかどうか。そして、この基準というのはもう既に完成して、各国に向けて発信されているのかどうか。もしまだであるとしたら、どのくらいの時期をめどにこれからこれが世界に広まっていくのか教えてください。よろしくお願いします。
○国立長寿医療研究センター荒井理事長 まずサルコペニアのほうは簡単に私から説明させていただきます。
サルコペニアの世界基準につきましては、GLISというグループなのですけれども、もともとヨーロッパ、アメリカ、アジア、そしてオセアニアの4つの地域で診断基準が別々に出されていたのですけれども、それをまとめようということで、私がそのメンバーに入りまして、アジアを代表して入っています。
その議論として、世界中の100人以上200人弱の研究者と連携をしまして、デルファイ法を用いて診断基準を定めさせていただきました。その結果、今までは身体機能を含めた診断基準をアジアでは採用していたのですけれども、世界的なコンセンサスとしては骨格筋量と筋力で診断をしようという流れができたということで、これまで論文を3つ発表してまいりました。
今の御質問については、地域ごとの違いをどうアドレスするかということについては、現在、アジアのワーキンググループとして、私がチェアマンとしてかれこれ12年活動しておりますけれども、3回目の改定ということで、今、実はNature Agingに投稿し、査読者からのコメントに対応した修正版を投稿しておりますので、もうすぐ採択をしていただけるのではないかと思っていますので、恐らく9月か10月ぐらいには発表できると思っています。アジア人のためのカットオフ値と、診断基準はGLISを使いながら、アジア人のエビデンスに基づくカットオフ値を提案して、それを論文としてまとめて発表する予定となっています。
サルコペニアについては以上ですけれども、後半お願いします
○国立長寿医療研究センター櫻井研究所長 10ページのレビー小体型認知症に関しまして御説明いたします。
レビー小体型認知症では、記憶障害などの認知機能障害に先立ちまして、幻視、聴覚障害あるいは味覚障害といったような症状が初発であるということをしばしば経験しております。そこで私どもは、そういった患者さんも見逃さないように聴覚障害には「耳に御不自由ありませんか」、あるいは味覚障害には「食べ物の匂いはどうでしょうか」といったような質問を、全ての患者様で問診評価の中に入れています。
今回ご紹介しました主観的聴覚障害というのは、御本人様の訴えをみているということでございます。もちろん訴えられましたときには、耳鼻科で診察していただくという診療の流れを整備しております。
近視との関連はございません。
以上でございます。
○根岸委員 大変よく分かりました。ありがとうございます。
○国立長寿医療研究センター荒井理事長 先ほどのサルコペニアについては、これまで身体機能が診断項目に入っていましたけれども、それを今回からはアウトカムにするということが世界的なコンセンサスとなりますので、今後は薬物の開発についても世界的な統一基準を使った形で診断をし、アウトカムも、世界的な基準で決められたアウトカムに対して評価をすることによって薬剤の効果ができるような枠組みができたと思っておりますので、今後、サルコペニアに関する治療薬の開発が進んでいくと、進展しやすくなっている環境になったと考えています。
追加でした。
○根岸委員 ありがとうございました。
○土岐部会長 土岐です。
私からは介護のアプリの話を質問したかったのですが、11ページのアプリなのですけれども、30か月のオンライン通いの場のアプリがどういうものか少しイメージできなかったのです。
あと、このアプリを商品化するとなると、いわゆる医療機器ではないので、介護なので、どういうビジネスモデル、自治体に買っていただくとか、そういうコストベネフィットみたいなものがある程度計算できるのかとか、まずはその2点教えていただけますでしょうか。
○国立長寿医療研究センター荒井理事長 具体的には、細かくて見にくいのですけれども、アプリの使用に関して、8時にどういう状況かというようなメッセージが自動的に届くようになっていまして、高齢者が使っている場合にはそれを眺めていただいて、その中に散歩アプリであったり、食事中の栄養素のチェックも写真を撮ってすることができますし、内容をベースにしていますけれども、参加者の方とコミュニケーションすることもできる。あるいは脳トレという機能もついていますし、運動に関するいろいろなメニューも各地域の運動メニューを採用させていただいて、御自分に合ったものを使っていただくという仕組みになっています。朝必ず連絡があって、それを開けるといろいろな活動ができるような仕組みになっていて、そこに入っていただくことが一番のハードルなのですけれども、使い出すと結構毎日使っていただけるという形で、毎日の歩数とかも出てきますので、御自分の健康管理に使っていただけるというアプリになっています。
もともとこれは国からの補助金でつくりましたので、今のところこれを販売してということはなかなか難しいのではないかと考えておりまして、長寿研のホームページからフリーでダウンロードして活用していただけるような仕組みになっています。
ただ、どうやってビジネスモデルにするかということについては、各自治体の例えばショッピングモール、あるいは商工会議所などと連携をして、ポイント制にして、ポイントがたまれば商品券に替えていただくとか、そういったことを今後しっかりと各自治体と契約をしながら進めていくということができると思っておりますので、我々のところには全くお金は入らないのですけれども、各自治体でうまく活用していただくことによって、高齢者の自立支援であったりフレイル予防に活用していただけないかなと思っているところであります。
○土岐部会長 ありがとうございます。
ほかはよろしいでしょうか。
それでは、研究・開発の成果の最大化に関する事項につきましては以上とさせていただきます。
続きまして、医療の提供その他業務の質の向上に関する事項の評価項目1-3から1-5について議論したいと思います。先ほどと同様の流れで法人から御説明いただき、その後、質疑応答を行います。それでは、よろしくお願いいたします。
○国立長寿医療研究センター松浦病院長 この4月に長寿医療研究センターの病院長を拝命いたしました松浦俊博と申します。今後ともよろしくお願いいたします。
では、1-3、医療の提供に関する事項を説明いたします。
目標としましては、加齢に伴う疾患に関し、高度かつ専門的な医療及び標準化に資する医療の提供を患者の視点に立って行うとなっています。
我が国において、近い将来85歳以上の人口が約1000万人になることが予想されることから、当センターでは、健康寿命の延伸に向けて特に重要性が明らかな認知症とフレイルの課題に重点的に取り組んでいます。
下のIIのところにありますように、病院に関する指標において、過去3年間と比べて最もよい成績で、病院内センターのもの忘れセンターにおいて、遺伝型に基づいた抗アミロイドβ抗体投与を全国に先駆けて行い、有用性を認めたことを発信しました。
感覚器センターにおいてIPS由来隔膜シートを用いた移植治療など先進医療を行い拠点病院となったこと、高齢者医療の標準化を目的としたガイドラインを日本及び世界に発信したことなど目覚ましい業績を上げたために、自己評価をSとさせていただいております。
では、概略を述べさせていただきます。
まず病院運営に関する指標について説明いたします。
医業成績の指標としているのは、入院延べ患者数と病床利用率、平均在院日数、手術件数についてですが、全て過去3年間と比べて最もよい業績となりました。延べ患者数は初めて10万人を超え、病床利用率も84.8%と目標に極めて近い数字となっております。平均在院日数も短縮傾向、手術件数も3,000件以上と目標を大幅に超えております。
目標に達していない項目もありましたが、後で述べますけれども、医業収支は急激な物価高の影響で赤字ではあったものの、令和5年と比べて1億円程度改善しております。
次に、病院内センターを中心とした臨床研究を含めた診療に関して説明させていただきます。
32ページをお願いします。
まずもの忘れセンターでは、認知症推進基本計画を念頭に、診療、研究を遂行いたしました。初診患者数は、ここにありますように年々増加しておりまして、令和6年度は1,145人の認知症患者の診療を行いました。
また、令和5年度に治療を開始したレカネマブに引き続き、新たなアルツハイマー両疾患に関する抗アミロイドβ抗体薬であるドナネマブの治療を開始しております。
治療対象者に、全国に先駆けて希望に応じてAPOE遺伝型を開示し、副作用の発生率を踏まえた治療法の選択の判断材料として活用させていただいています。今までのところアミロイド関連画像異常(ARIA)の発現頻度に変化はありませんが、治療を有する症候性の異常はほとんどなく、有用性を認めています。このため、全ての医療機関でこの判断基準を利用できるように、保険収載に関して厚生労働省へマスメディアの会合において提言させていただいております。
また、(4)にありますように、あいちオレンジタウン構想による地域連携も推進させていただきます。政策医療である認知症診療・研究に大いに貢献したと考えております。
次のスライドをお願いします。
摂食嚥下に関する最新医療の提供についてです。
この課題については、摂食嚥下・排泄センターで行っております。(1)にありますように、摂食嚥下障害に関しては、320列のCTを用いた咀嚼機能、嚥下反射、喀出機能など、嚥下障害がどのような障害であるかの正確な評価を行い、それに基づく治療を提供しようと考えています。
また、右の表3にありますように、高齢者で非常に多い疾患である排尿障害や排便障害に関して、ラウンドを行って多職種で超音波などを使用した客観的な評価による治療法やケアの有用性を検証して、これらは論文発表をいたしております。
次のスライドお願いします。
訪問リハビリテーションと脳・身体賦活リハビリテーションの歩みと研究による貢献についてです。
当センターでは、訪問リハビリテーション並びに認知症の人への脳・身体賦活リハビリテーションを行っております。開始して約10年が経過いたしました。
左の図と右の(2)のところもありますように、脳活リハに関しましても過去最高の実績となっております。一層の充実を図るため、脳活リハを対象に、認知機能の維持だけでなく、身体機能や、右下にありますように、eスポーツを活用した自尊心向上を目的とした斬新的なプログラムの開発、実施を行っております。また、大府市だけではなく周辺の多くの自治体と連携し、介護予防事業に参画し、令和6年度は63件の一般介護予防事業に従事いたしました。
次のスライドをお願いします。
治験・臨床推進体制の整備についてです。
この課題は先端医療開発推進センターで行っていますが、センター内外の研究者に、臨床研究支援として生物学統計相談等の各種コンサルテーションを無料で行っております。ただ、先ほどもありましたように、新規の医師主導治験のところには少し苦戦をいたしております。
また、最近、研究不正、研究倫理というのが非常に問題となっておりますけれども、臨床研究認定者制度を活用してセミナーを32回開催し、研究不正の防止を徹底的に行っております。
次のスライドをお願いいたします。
地域包括ケアシステムに対応した医療モデルの充実に関してです。
地域医療への貢献も当センターの重要なミッションですので、地域連携推進部が中心に行っております。昨年度に地域包括ケアシステムに対応した医療モデルの充実を目的に、(2)にありますように、認知症の緩和ケア実践ガイドラインと認知症を有する人のためのエンドオブライフ・ケアの支援ガイドの策定について報告させていただいておりますけれども、令和6年度には「認知症支援ガイド 最期まで本人の意思を酌み取ったケアを実現するために」を発刊し、認知症の人の緩和ケアや意思決定支援の指針を作成し、啓発させていただいております。
また、右の(3)(4)にありますように、アドバンス・ケア・プランニング・ファシリテーターによる情報共有ツールの推進や、介護事業所における情報安全管理の手引きなども作成させていただいております。対策がやや遅れぎみの介護事業所における情報管理体制づくりにも貢献させていただいております。
次のスライドをお願いします。
フレイル・ロコモ・サルコペニア克服による身体的自立促進に向けた取組についてです。
これはロコモフレイルセンターで取り組んでおりますが、包括的診療・研究体制システムのロコモフレイル外来・レジストリの整備を行い、登録者は左の図にありますように1,710名に上っております。
また、(2)にありますように、CTや超音波を利用したサルコペニア・ロコモの革新的評価方法・システムを開発しております。
また、(3)にありますように、治療に関しても多くの企業との共同研究を行っておりまして、開発ベルト電極式骨格筋電気刺激法による新しい介入あるいはウォーキングポールによる研究開発も行っております。
次のスライドをお願いします。
高齢者感覚器包括医療と眼科再生医療の展開についてです。
この課題は感覚器センターにおいて行っております。
左の図にありますように、感覚器外来では、視覚、聴覚、味覚、嗅覚、平衡感覚など包括的感覚評価を行い、感覚器リハビリを行っております。
また、右の(3)にありますように、角膜移植、眼表面再建術、羊膜移植の実施と眼科移植医療の拠点化を目指した診療体制の拡充に着手し、再生医療製品やiPS由来の角膜上皮シート移植を用いた難治性眼表面疾患及び水疱性隔膜症に対する先進的医療を実施させていただいております。
次のスライドをお願いします。
高齢者の疼痛、運動器における慢性疼痛に関してです。
高齢者の慢性疼痛は、QOLやADLを低下させる大きな原因となっています。整形外科グループは、バイオバンク事業を基盤とする高齢者慢性疼痛患者の臨床データと血液試料のリンクを可能にするデータベースを構築しております。さらに、医工連携によって、(3)にありますように診断や機能強化に有用な特殊診断装置を開発し、特許登録をさせていただいております。これは固有感覚機能の低下を瞬時に評価し、治療に必要な振動刺激を付与することができる診断治療装置で、介入試験を特定臨床研究によって行い、有用性を認めました。
また、(4)にありますように、慢性疼痛の難治化における多変量解析の前向き研究として行い、早期体幹運動の推奨をさせていただいております。いずれも論文化させていただいております。
次のスライドをお願いします。
評価項目1-3の最後のスライドとなります。高齢者診療を推進する科学的アプローチに基づく知見の創出についてです。
高齢者医療については、身体的及び臓器的疾患のため、標準治療の確立が困難とされています。今回、日本老年医学会と共同で高齢者総合機能評価(CGA)に基づく診療・ケアガイドライン2024を作成しました。CGAは老年医学の基本であり、高齢者の包括的な評価及び診療を行う上で欠かせない重要な評価ツールで、高齢者医療の標準化への第一歩となるものと期待しています。これに関しては日本語版と同時に英語版も発出し、世界へ発信させていただきました。
また、(2)にありますように、フレイルのバイオマーカーの検索を行い、予測因子を抽出して、有効な予測式を構築させていただいております。
続いて1-4の人材育成に関する事項に移ります。
目標は、国内外の有為な人材の育成拠点となるよう、長寿医療及びその研究を推進できる人材の育成やモデル的な研修・報酬の実施及び普及に努めるとなっています。
認知症サポート医研修、認知症初期集中支援チームは目標設定を超えております。また、次に述べますように、内科専門医の基幹施設の認定、コグニサイズの指導者・実践者養成の研修、さらに海外研修生の受入れなど、人材育成に大いに寄与したと考えておりますので、自己評価をSとさせていただいております。
スライド43ページをお願いします。概略を説明させていただきます。
認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)に基づく認知症サポート医養成研修は、eラーニングシステムを利用したオンライン形式と中央研修の複合型で計5回研修を実施し、令和6年度の修了者数は、年度計画を上回る938人となっています。修了者は右の表にありますように1万5548人と、目標の1万6000人にあと僅かとなっております。
認知症の早期発見・対応の支援体制の構築を目標とした認知症初期集中支援チームの研修は、総合研修の回数を増やし、集合研修3回、オンライン研修2回の5回の研修を実施し、令和6年度の修了者数は1,056人となりました。
また、当研修会は各項目を複数の講師が担当できるようにさせていただいておりまして、講師の育成も図っております。
次のページをお願いします。
続きまして、高齢者医療及び認知症ケアに関する若手医師の養成のためのプログラムを作成しております。令和5年度には卒後教育研修評価機構(JCEP)の認定取得をさせていただいておりますけれども、令和6年度には、左下にありますように、内科専門医を育成するための基幹施設として、日本専門医機構に認定を受けております。
一方、一層高齢者医療に携わる若手内科医師の教育に力を入れようとしております。連携大学院における研究者育成及びモデル的な研修実施である介護予防従事者を対象とした当センターで開発した認知症予防プログラム「コグニサイズ」の指導者75名、実践者養成149名の研修も実施させていただいております。
また、コグニサイズの促進協力施設は令和6年度で53施設となりました。
最後のスライドです。
右の図にありますように、令和6年度は、専門的な実習、看護及びリハビリテーションの学生8,461名(リハビリテーション科5,234名、看護師2,170名)に対し実施いたしました。
さらに左の図にありますように、海外研修の受入れも年々増加し、22名受け入れました。受講者の多くはアジア諸国からの来日で、高齢者の第一線で活躍する医療専門職で、日本の実地研修により専門性を高め、帰国後は帰国研修の実施を課して自国の地域医療体制の構築に貢献できるものと考えています。国際ネットワークの構築や政策医療の基盤として極めて重要な意義を要するものと思われます。
以上です。ありがとうございました。
○国立長寿医療研究センター西川企画戦略局長 続きまして、1-5、医療政策の推進等に関する事項でございます。
私、西川と申します。よろしくお願いいたします。
自己評価につきましてはSとさせていただいております。
数値目標のところでございます。II.のところでございます。NCとして、国民向け・医療機関向け、地域の方々だけではなくて広く情報発信を積極的に行うということが大きなミッションだと考えております。
指標としては、ここにありますとおり、ホームページへのアクセス件数600万件以上ということでございましたが、R6年度は1,662万件ということで、大きく超えているということで、Sとさせていただいております。
要因分析のところでございますけれども、我々は2行目にありますとおり、ウェブアクセシビリティーの向上あるいはホームページ上のコンテンツの拡充といったところは日頃から非常に努力をしているところでございます。こういったところが増加につながったのかなと思っております。
次のページでございます。
これまでの御説明の中でも情報発信の内容につきましては御説明したところでございますけれども、幾つかトピックをここでも改めて御説明いたします。
(1)は調査・研究のところで御説明したところでございます。
(2)家族介護者支援の推進ということで、これにつきましては1行目、2行目にあります簡易実施可能な介護者状況を評価するような質問票を開発しております。
真ん中のところ、小さい字でございますけれども、10ぐらいの質問項目を5つぐらいで評価するという、なるべく簡単に評価できるような調査票を作ってございます。
3つ目のポツにありますとおり、介護保険の現場あるいは行政施策などにおきまして、要介護高齢者を介護する家族などの介護状況を簡単に把握できるということで、さらに進めていけるように期待されるところでございます。
次のページでございます。
情報発信ということでございますけれども、マル1番として新聞であったり、2番目、国際会議、これまで御説明したような、特にアジア各国との国際会議ということで、あるいは3番目、リハビリ・栄養・口腔管理、例えばということで国内初のガイドラインも作成しております。こういったものが診療報酬の新しい改定、創設にもつながっておりますし、我々もそれに実際に取り組んで、算定も行っているところでございます。
次の(4)でございますけれども、自治体との連携ということで、愛知県あるいは大府市等との連携を進めてございますし、(5)のとおりフォーラムということで、厚生労働省とも進めております。
(6)はドラマの監修ということで、面白い取組だったかなと。こういったことでMCI、軽度認知障害といった言葉の普及にも一定程度貢献したのかなと思っております。
以上でございます。
○土岐部会長 ありがとうございます。
ただいまの1-3から1-5までですけれども、御質問等よろしくお願いいたします。
成川委員、どうぞ。
○成川委員 成川と申します。御説明ありがとうございました。
2点質問させていただきます。
評価項目1-3の冒頭の御説明のスライド30ページのところで、病院運営に関する指標はいずれも好転してきているように拝見をしまして、特に入院患者数が今年度増えたということの要因としては、センターとしてはどんな分析をされているかを聞かせていただきたいのが1点目です。
2点目が、スライドでいきますと43ページです。いろいろな研修を積極的にされているということは確認できましたし、達成をしているということは非常に評価をしたいと思っております。
例えば認知症サポート医研修なんかも、その後の継続的な研修といいますか、情報のアップデートとかいったことについて何かお取組をされていたり、あるいは今後何か御予定があったらお聞かせをいただきたいと思います。
以上2点です。よろしくお願いいたします。
○国立長寿医療研究センター松浦病院長 まずお答えします。
最初の入院患者数に関しましては、令和3年度、特に令和4年度はかなり苦戦いたしました。そこで令和4年度から令和5年度にかけて部長会議を開催させていただいて、かなり積極的に病院経営に対して考えていただきまして、また、やはり救急患者を受けるということが重要でありますし、あと地域連携が非常に重要と考えております。ですので、地域の先生方を少しずつ回って、あと医師会の会長の先生とかも回って、いろいろと地域連携を密接にさせていただきました。これによって、地域の先生方あるいは地域の中核病院との信頼関係が非常に構築されたものと考えております。これによって少しずつ紹介患者が増えてきまして、達成率が97%と極めてよい数字になったものと考えています。
○国立長寿医療研究センター荒井理事長 認知症サポート医研修については、更新については各自治体の医師会に任されておりまして、我々のミッションからは外れてしまっています。本来は更新も含めてしっかりと研修の質を担保すべきだと個人的には思っていますけれども、そういう仕組みになってしまっています。なかなか更新についてはセンターとしてコミットすることは難しいという状況です。
○成川委員 ありがとうございました。
○土岐部会長 ほかはございませんでしょうか。
根岸委員、どうぞ。
○根岸委員 根岸です。よろしくお願いいたします。
1-3の医療の提供について2点お尋ねします。
まず33ページのところですけれども、食事介助技術の評価指標を開発されたということですけれども、まずは誰がこのスコアに答えるのか、それから誰を対象としているものなのか。例えば食事介助するというのも看護職、介護職あるいは在宅で言えば家族、様々かと思いますけれども、そこをまず教えてください。
それから、もう一点が36ページのところですけれども、アドバンス・ケア・プランニングの御説明があったと思いますけれども、これも今後、大変重要性が高まっていくものだと思いますが、連携の取組を進めたということですけれども、もう少し具体的に連携というのはアドバンス・ケア・プランニングに関してどういうことなのか。プランニングをするに当たって、1回だけの人生会議を開くということよりも、状況によって、あるいは医療ですとか処置が変わることによって本人の意向、意思が変わっていくと思うのです。そうすると、繰り返し話し合うということが非常に大事だと言われていると思うのですけれども、その後のフォローといったことも含めておやりになっているのか、そこを教えてください。よろしくお願いいたします。
○国立長寿医療研究センター松浦病院長 まず最初に、33ページの一番左の下のところのことをおっしゃっていらっしゃると思うのですけれども、患者様に関しては、自力摂取できない。特に認知症の患者さんとか、脳梗塞の患者さんとか、摂食嚥下が非常にできない人たちに関して、食事介助技術、看護師さん、うちの病院は療法士、特にSTがかなりおりまして、彼らがまずできない人たちの評価をさせていただいております。あと、医師も入りまして、そこにありますように嚥下内視鏡という検査もやりまして、STと共に評価をさせていただいて、介助スキルスコアというものを使って評価をさせていただいております。
○国立長寿医療研究センター荒井理事長 基本的には、看護師、それから介護士だけではなくて、家族も使っていただくものになっていると思いますので、最終的には御家族でこのスコアを使っていただいて、そのスコアを上げていくということに関してもしっかりとトレーニングの仕組みも我々としても準備していく必要があると思っているのですけれども、そういう理解でよろしいですか。
○国立長寿医療研究センター松浦病院長 そうです。
○根岸委員 今の御説明で分かりました。
胃瘻等の経管栄養の方たちが、もしかしたら食事介助の方法を向上させることによって口から食べるということに変えていくことが期待できるのかなと思いました。よろしくお願いいたします。
○国立長寿医療研究センター松浦病院長 ありがとうございます。
もう一つはACPですけれども、36ページのスライドになりますが、これは地域連携室が主にやっております。主には研修をやっていますけれども、当院に入院してきて、特に高齢者というような人たちでは、地域連携室に依頼が行きますと、そこで多職種で意思決定支援をやらせていただいています。特に在宅に帰ろうとされる方は必ずMSWが入って、意思決定支援、それと共に在宅医の先生あるいは在宅訪問の看護師さん、そういう方たちも来て意思決定支援をさせていただいております。
その後に、在宅の先生がお帰りになった後に、しょっちゅうやるということはなかなか難しいですけれども、先生からの意向を聞いております。その患者さんたちは、本当はよくないのかもしれませんけれども、度々再入院させていただいていますので、そのときには再度、意思決定支援をさせていただいております。
回答になっていますでしょうか。
○国立長寿医療研究センター荒井理事長 これは当センターだけではなくて、ファシリテーターを今、全国で育成しておりますので、各地域でファシリテーターが人生会議というものを電カル等を活用しながら、今、御質問にあったように、適切な時期を選んでACPをやるというトレーニングをしているということになりますので、具体的なツールについては私も十分に把握をしていないのですけれども、いろいろな地域でACPができるというようなファシリテーターを育成して、それが具体的に電カルにしっかりと記入をしていただいて、診療に携わる専門職がそこを理解して、共通認識として持つような仕組みという形を進めると御理解いただければと思います。
まだまだアップデートする必要があると思いますので、これについてはまた来年度以降もしっかりと御説明をさせていただきたいと思います。
○根岸委員 ありがとうございました。刻々と気持ちが揺らいだり変わったりしていくと思いますので、ぜひこの連携も継続したものにつくり上げていただけるとありがたいです。
ありがとうございました。
○土岐部会長 神崎委員、どうぞ。
○神崎委員 杏林大学の神崎です。
46ページの情報発信のところなのですけれども、ホームページのアクセス数が非常に多いというのは大変すばらしいと思うのですが、いわゆるSNSとしてほかにやっている活動があればお聞きしたいのと、NCGGの中には広報部とか何かメディア向けに何か発信するような部署が独立というか、そういうような場所があるのでしょうか。
○国立長寿医療研究センター西川企画戦略局長 私のほうから、まず前段のホームページだけではなくて、私どももX(旧ツイッター)ということで発信をいたしております。毎月なるべくタイムリーなものということで発信をいたしているところでございます。
それから、私どもも情報発信を広く国民向けに進めていくことが大きなミッションだと思っておりますので、46ページの要因分析のところにも書いてございます。日頃から情報発信室というような専任の部署も設けながら、あともちろん皆さん各スタッフの方々が発信するということがミッションだと認識いただいているものですから、御協力いただきながら進めているところでございます。
以上でございます。
○国立長寿医療研究センター荒井理事長 マンパワーの関係で、広報部というセクションを独立して持つことができないため、併任という形になっておりますけれども、マンパワー的な、あるいは予算的な余裕ができれば当然広報部とつくって、そこでしっかりと専従のスタッフを配置してやるべきだと思っておりますけれども、昨今の経営状況に鑑みて、現状では今、局長からお話があったとおりの状況で、専従ではなくて併任で進めさせていただいているということになります。
○神崎委員 もちろん結構だと思うので、NCの使命として、ここにあるように国とか国民とかに正しい情報を発信するというのは非常に大事なテーマだと思いますので、そこもぜひ力を入れていただければと思って発言させていただきました。
以上です。
○土岐部会長 よろしいでしょうか。
松前委員、お願いします
○松前委員 松前でございます。
大変すばらしい研究をいろいろ御説明いただきまして、ありがとうございます。
研究の推進体制の整備ということで、35ページにも関係することでございますが、研究者向けの教育、研修とかを提供されているということでございますが、外部資金を見ますと科研費が過去最高というか、大変すばらしいことだと思うのですけれども、金額的にも倍以上に増えているところでございます。
特に研究者が直接研究費に入出金というか、帳簿に記録とかいうことに関わる仕組みになっているのかということと、あとは研修の中でももしそういう関わりがあるのであれば、不正につながるとよくないと思いますので、そういった観点からの研修とかいうことも含まれているのかということをお伺いしたいと思います。
○国立長寿医療研究センター松浦病院長 まず、研修を含めまして、金銭的なことに関しても不正は絶対にしてはいけないものですので、そういうものもちゃんとさせていただいております。
それから、会計などは一応研究者の雇っている秘書さんが中心になってやっておるのですけれども、研究医療課というものがありますので、そこで必ずチェックをさせていただいて、金銭的な不正がないということも何重にもチェックさせていただいておりますので、ないものと考えております。
○国立長寿医療研究センター荒井理事長 研修については、いわゆる研究インテグリティに関する研修を必ず受講していただいています。それは研究者だけではなくて、今、病院長からお話があったように、研究補助員も含めて全てのスタッフが研修を受けておりますので、不正は絶対に起こさないというつもりでやっております。
同時に、別の研修としては、科研費をいかに取るかということについても研修を行っておりまして、それは研究者向けに、特に若手の科研費を取ったことがないといった方に対しても、そういう教育プログラムを年に1回ですけれども受講していただいて、より多くの方々が科研費を取っていただくような仕組みを今、つくらせていただいております。
当センターは、いわゆるSとかAという大きな研究費が非常に少ないという欠点がありますので、そこを何とか克服するように、研修をしながら、また、センター内外の研究者としっかりと連携を取るような形もエンカレッジしながら進めさせていただいております。
以上です。
○松前委員 ありがとうございます。研修についても大変充実されており、仕組みについてもしっかりとなされているということの御説明をいただきまして、大変安心いたしました。ありがとうございます。
○土岐部会長 ほかはよろしいでしょうか。
それでは、続きまして、業務運営の効率化、財務内容の改善及びその他の業務運営に関する事項の2-1から4-1につきまして議論したいと思います。それでは、まず御説明をよろしくお願いします。
○国立長寿医療研究センター西川企画戦略局長 では、2-1、業務運営の効率化でございます。
自己評価はBとしております。
定量的な指標、これは何といっても一番大きなところでトップバッターでございます。経常収支率を指標にして、収支相償100%を毎年目指そうということで進めておりますが、R6年度は94.4%ということでございます。過去を振り返りますと、R3年度のときは101.4ということで100を超えておったのですけれども、R4が95.7、R5が95.3、そしてR6は94.4ということで、残念ながら目標は達成できていないということで、今、頑張っているところでございます。
指標としては次のところ、ジェネリック、後発医薬品の数量シェアというところで、85%という目標を掲げておりますけれども、これについては89.7ということで、達成いたしているところでございます。一般管理費、未収金等についてはまた後ほど御説明したいと思います。
51ページを御覧いただきたいと思います。
経常収支ということでは、費用を削減し、そして収入を増やしていくということの収支差を生み出していくということになりますけれども、材料費の削減ということでマル1番に書いております。人件費はどうしても昨今の中で、もちろん効率化していくところはありますけれども、伸びていかざるを得ないところで、材料費が大きく伸びているところが頭を抱えているところでございます。
まず、ジェネリックにつきましては今申し上げたとおりでございますけれども、医療材料費ということで、共同購入であったり、あるいは償還価格がある材料の中でも、いわゆる逆ざやというようなものもあったりしますので、そういったものを中心に価格を何とか引き下げるような交渉をしたり、努力をしているところでございます。
それから、マル2番ということで、収入の確保ということで、先ほど院長から御説明のとおり、入院患者数を頑張って伸ばしている。あるいは、各部署の皆様方と認識を共有しながら、病院全体としての入院延べ患者あるいは外来の確保に努めているところでございます。それから、マイナンバーとか電子処方箋等々の国の各政策にも協力しているところでございます。
次の(2)で情報セキュリティ対策ということで、昨今のいろいろな国の大きな動きの流れも受けながら、いろいろな手順書であったり、セキュリティ研修を行ったり、あるいは監査法人の外部監査も受審しているところでございます。
次のページでございます。
まずこの絵の見方としては、医業収支、病院の収支のところと、医業外ということで、研究所等々の病院以外のところの収支と分けております。R6年度、前年度の比較で申し上げますと、収支差、経常収支のところにつきましては、マイナスではありますけれども、前年よりは改善しているところでございます。
収益のところはかなり伸びているところでございますけれども、費用も残念ながらそれなりに伸びているというところであります。
収益を伸ばしている大きな要因としては、右の箱のとおり、入院の収益と外来ということでございますし、ここに書いている患者数、それから患者1人当たりの平均単価、入院、外来ともに4つの全てのポツにつきましては前年を上回っているということで、これは我々現場の努力の表れかなと思っております。
一方、費用のところでございます。給与費ということで人件費の関係は増えているところでございますけれども、先ほど来御説明しておりますとおり材料費、医薬品費だったり診療材料費、衛生材料費といったものが相当伸びてきているということで、この辺りをターゲットに進めているところでございます。
それから、医業外のところを御覧いただきたいのですけれども、収支差というところのR6年度、4億4400万ということで、前年よりもさらに悪化して、▲になっているところでございます。主な理由としては、収益が科研費とか幾つか伸びているところもあるのですけれども、全体としては下がってしまったというところと、費用も少し下がっておりますけれども、トータルとしては収支差4億4400万ということで、これを合計した総収支差、経常収支とほぼ同じような概念でございます。歴史的に見ますと平成27年から書いてございますが、R3年度の頃、コロナの補助金とかいろいろな事情もありましてほぼプラマイゼロでございましたけれども、R4、R5、R6ということで、毎年残念ながら経常収支、総収支、▲ということで、この辺りが積み上がって、後ほど御説明する繰越欠損金ということで、ストックとして赤字が積み上がっている状態になっているということでございます。
次のページでございます。
次の項目ということで、3-1、財務内容の改善です。
目標としては繰越欠損金の削減ということで、先ほどの御説明のとおり、毎年の経常収支がこの二、三年赤字だということでございますので、R6のところを御覧いただきますと、23億9000万ほどの繰越欠損金になっている。前年から7億5700万、経常収支の赤字の分がそのまま積み上がっているということでございます。
要因分析ということでは、いろいろな努力もしておりますが、物価が上がっているということで、病棟が整備されたことに伴う委託費であったり、当然減価償却費も増えてきているといったところが原因だと考えております。
次のページでございます。
外部資金ということで、営業外のところで獲得を頑張っているところでございます。
55ページに行っていただきますと右横でございます。R6のところを御覧いただきますと、先ほどの御説明のとおり、科研費のところはかなり伸びているのですけれども、ほかの項目のところで伸びていないところがありますので、トータルとしては外部研究資金につきましては下がっているというところでございます。
次のページ、最後、4-1、その他業務運営ということで、Bでございます。
法令遵守の体制でありますとか、先ほど来御説明しているとおり研究不正の防止に関する取組、あるいは人事の最適化ということで人事交流であったり、クロスアポイントメントという新しい仕組みにつきましても次の57ページに御紹介しておりますけれども、こういったところとの人事交流も進めているというところでございます。
以上でございます。
○土岐部会長 ありがとうございます。
ただいまの御説明につきまして、委員の先生から御質問ございますでしょうか。
法人のほうも書かれていますけれども、外部資金が4億円以上減っているというのが全体の収支にかなり大きく影響しているのですが、外部資金の内訳の中でも、厚労科研とかはすごく政策的な高齢者に期待する部分が多いと思うので、非常に増えていってよいと思うのですけれども、AMEDがかなり大きく減っております。あと企業との共同研究もあまり進んでいないような気もするのですけれども、この辺りに関しまして法人のほうはどのようにお考えなのでしょうか。
○国立長寿医療研究センター荒井理事長 令和元年から令和5年度にかけまして、我々が行ったJ-MINTという認知症の予防に関する大規模な臨床研修であったり、後研究であったり、ゲノム研究についての大型のAMED研究を頂いたということで、この5年間についてはAMEDからのかなりの研究費の収入があったのでありますけれども、全てそれが令和6年度からなくなってしまったということで、このような形になっているということになりますので、今後もAMEDの大型研究費をいかに獲得するかということをしっかりと研究センター内で共有し、できるだけヒアリングまで行く場合は、あるいは事前の研究申請の段階でしっかりとレビューをすると。科研費についてもレビューをして、できるだけ採択を上げる。AMEDについても、しっかりと幹部がレビューをすることによって、採択率が高くなるように、また、ヒアリングするものについては、これまではしていなかったのですけれども、昨年度ぐらいからヒアリングの予行もするということで、私も入って、できるだけよいヒアリングのプレゼンをしていただくということで、採択率を上げようと思っております。
○土岐部会長 SBIRなども書いてあるのですけれども、企業との共同研究はいかがでしょう。
○国立長寿医療研究センター櫻井研究所長 企業等の研究費でございますけれども、令和3年、4年あたり、あるいは5年がピークでございまして、当時は長寿全体で1億円を超える額がございました。令和6年度はちょっと減っておりますけれども、全体をなべて考えますと7000万、8000万ぐらいのレベルで推移してございます。
○国立長寿医療研究センター荒井理事長 企業治験といいますか、薬剤の治験が減っているということが一つの要因かと思っております。どうしても認知症頼みというところがありますので、認知症以外の治験についても幅広く、例えば骨折とか、骨粗鬆症とか、ほかの領域においてもいろいろと外部の業者と連携をしながら、知見を増やすようなことをしたいと思っていますし、先ほどロボットセンターの御説明をさせていただきましたけれども、今回プレスリリースも予定をしておりますが、新しく実証スペースというものをオープンしましたので、そこのスペースを企業に活用していただく。それを共同研究費を頂くことによって活用していただいて、成果を上げていただくということを考えておりますので、今後は知見とロボットを中心とした共同研究で企業からの研究費をさらに増やしていこうと考えております。
○土岐部会長 どうも御説明ありがとうございます。
どうぞ。
○松前委員 松前でございます。
御説明ありがとうございます。
資料で分かりにくかったというか、説明を伺いたいのですけれども、52ページと53ページでそれぞれ分析とかをされておるのですけれども、医業外収支のところで減価償却費が減っているというのが大きな原因ですというのが書いてあります。53ページに、今度は繰越欠損金の要因分析ということで、そこには新設した病棟によって当然減価償却費は増加するというのを書いてございますが、この関係が理解できなかったので1点教えていただきたいということと、もう一つ、材料費が上がるというのは、人件費もそうですけれども、どこの病院とか医療機関でも抱えているところでございます。中でも在庫の管理というかロスについても、少し状況を教えていただければと思います。
以上でございます。
○国立長寿医療研究センター西川企画戦略局長 ありがとうございます。
減価償却費についての記述が、一件矛盾しているのではないかというような御指摘だろうと思いますけれども、まず、今御覧いただいている52ページの減価償却費の減というところが、医業外収支の項目でございまして、病院本体と違うところで、セグメントを分けて書いてございます。その部門については減価償却費が減っているわけですけれども、医業収支、上の病院本体のほうは近年、大規模な改修をやったものですから、別の項目、53ページの要因分析のところで、R4年度に新設した病棟整備に伴う減価償却費の増加ということでございますので、医業収支のほうのセグメントのところの減価償却費は増えているのだけれども、医療外のほうのセグメントも減価償却費は減っているということでございます。トータルとして、病棟整備の部分が非常に大きいので、がっちゃんこすれば伸びるのですけれども、そこら辺が一見分かりにくい感じになってございますけれども、今の御説明のとおりかと思います。
それから、診療材料費、医療材料費、あるいは医薬品も含めての材料費の在庫管理ということでございますけれども、特に高額なものが期限が切れたりしてしまうと、非常に在庫ロスということで負担も重くなってくるわけですけれども、その辺りは我々も目を配りながら、もう少ししたらこれは期限が切れますよみたいなことも、病院の中でも認識を共有しながら進めてございますけれども、日常的なところにつきましては、特に医療材料費につきましては専門の業者、SPDの業者の方に在庫管理をお願いしておりますけれども、その方々だけではなくて、特に高額なものにつきましては我々職員も認識を持ちながら、在庫ロスが生じないように目配りをしているところでございます。
○国立長寿医療研究センター松浦病院長 追加でよろしいでしょうか。
材料費に関しましては、高額に関しては基本的に用事発注とさせていただいているものがかなりございます。ですので、緊急で使うものは当然置いてありますけれども、そうでないものに関しては、予定手術とかに関しましては基本的には用事発注ということをさせていただいておりまして、ロスがないように心がけております。
付け加えさせていただきました。病院長でした。
○松前委員 ありがとうございます。
○土岐部会長 ほかはございませんでしょうか。
それでは、全体を通じまして、もう一度振り返って御質問等があればよろしくお願いします。
なければまとめに入りたいと思います。
最後に、法人理事長と法人監事からのヒアリングを行います。
まずは法人監事より、業務の監査結果等を取りまとめた監査報告について御説明をいただくとともに、監査等を踏まえた現在の法人の業務運営の状況や今後の課題、改善方針等につきましてコメントをお願いしたいと思います。
○国立長寿医療研究センター二村監事 監事の二村です。
令和6年度財務諸表等の26ページにございます監事の監査報告書、IIの監査の結果を御覧ください。
記載にありますとおり、法人の業務、内部統制システム、役員の業務の執行、監査法人の監査の方法及び結果、事業報告書におきまして、いずれも指摘すべき重要な事項はございませんでした。
また、経営改善に向けまして、橋本監事と共に陪席をさせていただいております理事会、運営会議等、そして新たに経営戦略会議を立ち上げられまして、細部にわたってセンター全体で経営改善の意識を高めるよう努力して見えると思っております。
以上でございます。
○土岐部会長 ありがとうございます。
それでは、続きまして、法人の理事長より、日々のマネジメントを踏まえ、現在の法人の業務運営の状況や今後の課題、改善方針等についてコメントをお願いしたいと思います。
○国立長寿医療研究センター荒井理事長 理事長の荒井でございます。
今日は本当にお時間を取っていただきまして、我々センターの運営につきまして御説明の時間をいただき、大変感謝しております。また、貴重なコメントをいただきまして、深くお礼を申し上げたいと思います。
今日お話しさせていただきましたように、研究開発につきましては非常に伸びていると思っています。一方で、運営費交付金につきましては年々減少しているということで、本来は研究所のスタッフもより充実しなければいけない状況であるというのは重々承知をしておりますけれども、そういった環境の中、研究員の数としては年々減っているという状況であります。
ただ、昨今のアメリカの研究環境に関する状況に鑑みて、今、我々に非常に大きなチャンスが来ていると考えております。すなわち、アメリカで日本人の研究者がたくさん働いていますけれども、そういった方々に日本に帰ってきていただいて、また活躍していただくいい機会ではないかなと考えております。
当センターとしては赤字ということで、経営状況は非常に厳しい中、どんどん優秀な研究者を雇用するということは、現状では難しいわけではありますけれども、日本全体として今がそういった時期ではないかと考えておりますので、ぜひとも評価委員の先生方にも、評価の中に優秀な海外の研究者に、いかに日本の研究機関、NCを中心とする研究機関に再び戻っていただいて、日本のために活躍していただくということについてのサポートをぜひともお願いしたいと考えております。
また、経営につきましては、先ほど監事からも御説明がありましたように、新しく経営戦略会議というものを立ち上げました。経営に関するセンター全体の意識を同じ方向にするということで始めました。もちろん今まで以上に厳しいことをお願いするわけでありますので、不満というものも噴出しているということは、これまでの2回にわたる経営戦略会議の中で、そういったものもしっかりと幹部としては受け止めつつ、皆さんに納得していただけるような経営を行っていくということをしっかりと幹部で相談しながら行っていきたいと思っていますし、研究開発につきましても、認知症・フレイルを中心に、老化研究については追い風だと考えておりますので、引き続きセンターのミッションをしっかりとコンプリートすべく、十分な成果を上げていきたいと考えておりますので、引き続き御支援のほどお願いしたいと思っています。
恐らく来年度からは、骨太の方針として、診療報酬についてもある程度の配慮はいただけるのではないかと考えておりますけれども、もちろんそれだけに頼るわけにはいきませんので、我々自身の経営努力を基本にしながら、診療報酬の改定もしっかりとその恩恵をこうむることができるように、いただけるように、体制を整えていきたいと考えております。
物価の高騰については、材料費、薬剤費に加えて人件費も昨今の需要に鑑みて上げざるを得ないと思います。もちろん、上げないという選択肢もあるのかもしれませんけれども、いい人に来ていただくためにはある程度給与を上げざるを得ないということは御理解いただけたらと思っておりますので、苦渋の選択として、もちろん国の基準には程遠いレベルしか上げることができていないので、それについては経営がしっかりと黒字化することができれば、国並みの昇給ということも考えたいと思っておりますけれども、そこまで行っていないというのが現状でありますので、それについても何とか黒字化、そして国並みの昇給といったことができるような経営体制を目指してまいりたいと思っております。
簡単ですけれども、私からのまとめとさせていただきたいと思います。よろしくお願いいします。
○土岐部会長 ありがとうございました。
ただいまの法人監事、そして法人理事長の御発言内容につきまして、御質問、御意見等ございますでしょうか。
よろしいでしょうか。
それでは、以上で国立研究開発法人国立長寿医療研究センターの令和6年度業務実績評価についての審議を終了したいと思います。
午前中の審議はここまでで、お昼休憩になります。
事務局より説明をよろしくお願いします。
○高屋企画調整官 事務局です。
この後、12時50分までお昼休憩になります。
国立長寿医療研究センターにおかれましては、休憩に入りましたら御退席をお願いいたします。
各委員におかれましては、休憩時間中はマイクをミュートにし、画面をオフにしていただきますようお願いします。
本日会場に出席の委員におかれましては、この後、事務局より昼食の準備をさせていただきます。
午後におきましては、12時50分より、国立精神・神経医療研究センターの審議を予定しています。各委員におかれましては、開始時間までに御着席いただき、画面をオンにしてお待ちいただくようお願いします。
事務局からは以上です。
○土岐部会長 それでは、皆様お疲れさまでした。
お昼休憩になります。よろしくお願いします。
(休憩)
○土岐部会長 それでは、時間となりましたので、「国立研究開発法人等審議会高度専門医療研究評価部会」第39回を再開いたします。
それでは、まずは今回は国立精神・神経医療研究センターの令和6年度業務実績評価について審議を開始したいと思います。
初めに、法人の理事長から一言御挨拶をよろしくお願いいたします。
○国立精神・神経医療研究センター中込理事長 本日は、当センターの業務実績評価のために貴重なお時間をいただき、誠にありがとうございます。
理事長の中込と申します。
それでは、これよりお手元の説明資料に沿って説明いたします。
次をお願いします。
2ページ目に私たちの自己評価を示しております。
それでは、次をお願いします。
これから私から、センターの概要について簡単に御説明します。
当センターの基本理念は、病院と2つの研究所、さらにその間をつなぐ4センターが一体となって、精神、神経、筋疾患及び発達障害の克服を目指した研究開発を行い、その成果を基に高度先駆的医療を提供するとともに、全国への普及を図るということです。
次をお願いします。
最大の特徴は、基礎から臨床までシームレスなフローを可能とする研究体制です。当センターで開発された筋ジストロフィーのビルトラルセン、あるいは多発性硬化症のOCHといった治療薬はその具体的な成果に当たります。そのほか昨年も御紹介しました筋ジストロフィーに対するエクソン44スキップ型(ブロギジルセン)のファースト・イン・ヒューマン医師主導治験で有望な成果が得られ、現在、第II相国際共同治験へと進んでおります。
次をお願いします。
令和6年度も研究基盤の強化を目指して、患者レジストリ、バイオバンクや臨床研究ネットワークの構築及びその利活用を進めてまいりました。後ほど御紹介があると思いますが、新たに全国数百か所の治療施設の協力と複数企業との官民パートナーシップにより、アルツハイマー病治療患者レジストリの構築を現在進めているところでございます。
簡単ではございますけれども、概要についての説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。
○土岐部会長 ありがとうございました。
それでは、まず研究・開発の成果の最大化に関する事項、評価項目1-1及び1-2に関わる業務実績について議論したいと思います。まず最初に法人のほうから御説明をよろしくお願いします。
○国立精神・神経医療研究センター岩坪理事 では、研究・開発に関しましては、研究担当理事の岩坪から御説明させていただきます。
6ページを御覧ください。
担当領域の特性を踏まえた戦略的・重点的な研究・開発の推進につきましては、Sと自己評価をさせていただいております。
この自己評価の理由としましては、難易度「高」の理由にも示しておりますとおり、当センターが筋ジストロフィーをはじめとする難治性疾患症例の集積に基づいて世界レベルの研究を進め、病態のメカニズムに基づく画期的な治療薬の開発を達成して、患者さんのもとに届けているということを挙げたいと存じます。そして令和6年度も、これまで唯一実用化されてきたエクソン53スキップ型治療薬(ビルトラルセン)に続きまして、エクソン44スキップ型治療薬(ブロギジルセン)の医師主導治験で有望な結果を取得し、第II相の国際共同治験を開始しましたこと。また、発達障害やてんかんに関連する研究実績としまして、最先端の顕微鏡技術を駆使することによって、脳の免疫細胞であるマイクログリアが生きた神経細胞から特定のシナプスを選択的に除去するメカニズムを解明したなど、医療推進に大きく貢献する画期的な研究成果を多数挙げていることが、自己評価を高く取らせていただいた理由でございます。
また、最近のNCNPにおける研究成果の堅調な伸びを反映して、6ページ下段に示しておりますように、医療推進に大きく貢献する研究成果の数も昨年度に続いて今年度も6件を数えまして、目標を40%程度超える達成度を上げていますことも評定の根拠としたところでございます。
7ページを御覧ください。
こちらのIIIに自己評定の根拠としました3つの顕著な研究の実例3件についてまとめております。
先ほど申しましたが、デュシェンヌ型筋ジストロフィーに関する新規治療薬の開発が1点、マイクログリア細胞による選択的シナプス除去機構の解明が第2点、それから、飲料、飲み物と鬱の関係の縦断臨床研究調査による解析、これらについてこの後御説明をさせていただきます。
8ページを御覧ください。
こちらにインパクトファクターが付与された学術雑誌収録論文数並びに引用数を示しております。
論文の総出版数を見ますと、令和6年度は321編と、コロナ直前とほぼ同レベルの数とはなっておりますが、6年度はNature Communications誌2編、Cell誌の姉妹誌3編など、高いインパクトの論文を複数出版できたことが特筆できます。
また、こちらは文書のほうの評価調書を10ページに記してございますけれども、外部研究資金に関しまして、獲得額が令和5年度より約3億円増大しまして、50億円に達するなど、これも研究活動の大きな伸びを反映していることと考えております。
9ページを御覧ください。
ここから顕著な研究成果の達成例を実際に御報告してまいります。
まず第1には、デュシェンヌ型筋ジストロフィーに対する治療薬、ブロギジルセンのファースト・イン・ヒューマン医師主導治験の成功であります。
本症は、小児期に発症する代表的な筋ジストロフィー症でして、ジストロフィンと呼ばれる病因遺伝子の変異によりまして、産物のジストロフィンタンパク質が正常に産生されず、筋細胞が障害されて、重度の運動麻痺から死に至る難病であります。
当センターでは、この変異のある遺伝子部分を核酸医薬を用いて蓋をして、言わば読み飛ばす原理のエクソンスキップ療法の実用化を進めておりまして、2020年にはエクソン53変異型ジストロフィーに対するエクソンスキップ薬、ビルトラルセンの薬事承認を達成いたしました。
しかし、ビルトラルセンの作用は、デュシェンヌ型の8%を占めるエクソン53の変異型において、また、ジストロフィンタンパク質を正常の5%程度の量にまで回復される効果に限られておりましたため、他の主要な変異例に対してもより効果的な治療薬が求められておりました。
今回、NCNPの小牧部長、青木部長らは、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの約6~7%を占めるエクソン44変異に対しまして、2か所の配列を同時に標的として効率を高める連結型核酸医薬、ブロギジルセンを開発しました。
そして、左下のグラフにもございますように、正常の20%を超える非常に高いジストロフィンタンパク質の回復を達成、医師主導のファースト・イン・ヒューマン臨床試験に成功するとともに、第II相国際共同治験の開始を達成いたしました。ピアレビューされた論文も、本年1月、Cell Reports Medicineに発表いたしております。
10ページを御覧ください。
こちらにブロギジルセンの開発に至るタイムラインをお示ししております。
ブロギジルセンは、エクソンスキップ効率の高いデュアルターゲティング設計の核酸医薬としては世界で初めて開発されたもので、医師主導治験も、ビルトラルセンが上市された一番左、令和2年前後から既に開始をしておりました。今回、この成功を受けまして、令和6年度には米国FDAからブレイクスルーセラピー指定を受け、日米で第II相試験の開始にこぎ着けることができたものです。
並行しまして、同様に頻度の高いジストロフィン、エクソン50あるいは51のスキップ薬の臨床研究開発準備も進んでおりまして、より多くのデュシェンヌ型筋ジストロフィー患者さんに治療薬を届けるべく、さらに努力を続けているところでございます。
11ページを御覧ください。
こちらでは脳の免疫細胞が神経伝達を行う継ぎ目構造であるシナプスを選択的に除去して、発達を進める仕組みの解明を御説明させていただきます。
脳が正常に発達しまして、適切に神経の回路が形成される過程では、脳の免疫細胞であるマイクログリアが不要に発生をした継ぎ目のシナプスを除去するということが重要であること、これは長らく想定されてまいりました。しかしながら、どのようにして特定のシナプスが認識をされて、除去されるのか、ほとんど不明でありました。
今回、NCNP神経研の小山部長、安藤室長らは、最新のイメージング技法である二光子顕微鏡を駆使したライブ観察、右の写真にあるようなイメージでございますけれども、これによりましてシナプス除去を観察する方法を確立し、この仕組みを解明いたしました。
簡単に申しますと、左のマル2にメカニズムというところがございますけれども、神経の活動が高まってまいりますと、アポトーシスなど細胞死の過程に重要な酵素であるカスパーゼ3というものがシナプスの手前の前末端というところで活性化をされて、それによって、免疫系において重要な補体経路というものの開始因子C1qの集積を招きます。これによって、マイクログリアによるシナプス前末端の除去が導かれるということを解明したものであります。
このメカニズムは、正常な脳が発達するときのみならず、てんかんですとか自閉スペクトラム症における神経回路の興奮抑制バランスの障害にもつながるということを、右下のマル3に示してございます。
このように、様々な脳疾患におけるシナプス障害の病態解明と治療に重要な基礎的知見として本成果は高く評価され、成果はNature Communications誌に発表されております。
次に12ページを御覧ください。
こちらでは精神保健研究所、成田室長らによる飲料と抑鬱の関連の解析について御説明をいたします。
食品や飲料と抑鬱の関係、これも早くから注目されておりまして、野菜や果物の摂取が抑鬱に予防的に作用し得るということは示されておりましたけれども、野菜ジュース、果物ジュースなどの飲料の形のもの、あるいは砂糖入りとブラックコーヒーがどのように異なる作用を示すかなど、詳細は不明でありました。
成田らはJHの共同研究としまして、ナショセンが協力して構築した地域住民コホート10万人を対象とするアンケート調査を行いまして、飲料の摂取と5年後の抑鬱のリスクの関連を縦断的に調査いたしました。
この結果、甘味飲料、炭酸飲料、野菜・果物ジュース、砂糖入りのコーヒーなどは抑鬱のリスクを上昇させるのに対して、ブラックコーヒーはそれを低下させるということを実証いたしました。
本研究では、物事の因果関係の推論が可能となるG-formulaという統計解析のフレームワークを用いることによりまして、単なる相関関係を超えた飲料と抑鬱状態の因果関係を強くしたという点でも、重要な知見をもたらしたものと考えております。
次の13ページから19ページまではJHの疾患を横断領域における連携推進の経過が示されております。別途御説明がございますのでここでは省略をさせていただきまして、20ページまで進ませていただきます。
評価項目1-2、実用化を目指した研究・開発の推進と基盤整備について、次に御説明をさせていただきます。こちらも令和6年度の自己評価はSといたしておりまして、21~23ページにその根拠を示しております。
特筆すべきこととしましては、過去の令和4年度にアレキサンダー病という小児の希少難病に対する世界同時ファースト・イン・ヒューマン試験を実施し得たのに引き続きまして、令和5年度にもデュシェンヌ型筋ジストロフィーのエクソン50のスキップアンチセンス等々のファースト・イン・ヒューマン試験を継続いたしているところでございます。
そして今回の令和6年度でございますけれども、小児の白質脳症、脳の奥にございます神経線維の部分の障害でございますけれども、その中で非常に重要なペリツェウス・メルツバッハー病というものに対して、アンチセンス核酸の髄腔内投与の治療のファースト・イン・ヒューマン試験を開始することができました。これはNCNPの神経・筋希少難病を対象とする臨床研究体制の充実を反映する成果であると考えております。
また、医師主導治験も新規にDMD、デュシェンヌ型に対する抗アレルギー薬、トラニラストの第II相試験を1件、また、その他昨年度よりの継続4件の計5件を実施することができております。
このように充実した臨床研究、また共同研究を目標数を超えて達成できたことに併せまして、後に述べますようにバイオバンク体制も格段に充実することができましたことから、21~24ページに記す指標の達成を根拠としまして、自己評価をSと取らせていただいた次第でございます。
24ページを改めて御覧ください。こちらに治験の実績を再度まとめております。
企業治験、臨床研究の新規実施数も過去最大レベルを保っておりまして、右の表にまとめておりますように、当センターにおきましては、難治性の精神・神経疾患のほぼ全ての種類のものを網羅する治験を実施し得ているということも特筆できると思います。
25ページから、バイオバンク、ブレインバンク事業についてまとめております。
当センターのバイオバンクは、右のグラフでございますが、伝統のあります筋肉については総数2万5800に達しまして、世界最大級を誇り、本邦の筋疾患の診断の80%以上を担っております。そこから得られた成果は、新規の疾患概念の確立や治療薬開発の基盤となって、一部は培養筋肉、あるいはiPS細胞としての保存も近年行っております。
左のグラフの中に緑で表示してございますけれども、これが脳脊髄液サンプルでございます。こちらは当NCNPに非常にユニークなリソースでございまして、神経疾患のみならず精神疾患でも積極的に集積を進めまして、総数は6,935検体、また、右下にございます脳バンク、剖検で得られた脳でございますが、サンプル総数も363、令和6年単年度での剖検脳数が34に達しております。
また、特に近年、脳外科手術で得られた貴重な組織検体も、てんかんや発達障害の分子レベルの研究にも活用されておりまして、世界的に注目をされております。
26ページを御覧ください。こちらに利活用の実績を示しております。
これらのバイオリソースですが、これまでに延べ327件の外部提供実績がありまして、令和6年度単年度でも38件、3,685検体を提供しております。
特記すべきこととして、昨年、本邦で初めてバイオバンクの国際規格ISO20387の認定を取得しまして、令和6年度もその認定継続が認められているということを挙げさせていただけると思います。これによって、バイオバンクの研究、また医療応用の品質の高さが国際的にも保障されていると申せると思います。
サンプルの提供の内訳としましても、企業に73件、海外にも9件と、精神・神経・筋疾患の研究を世界的に支えるバイオバンクとしての機能をフルに発揮していると申せると考えております。
27ページに、患者レジストリを活用した病態解明・治療法開発に向けた取組についてまとめております。
ここで例示しておりますのがRemudy(Registry of muscular dystrophy)、筋ジストロフィーのレジストリでございます。RemudyはNCNPの伝統的な筋疾患レジストリでございまして、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの治療薬開発を始め、創薬に貢献をしております。このRemudyを発端とする患者レジストリは、DMD、デュシェンヌ型に対する新規治療薬、ビルトラルセン、また今回のブロギジルセンなどの画期的新薬の実用化につながっておりまして、レジストリを軸とするARO活動、また患者様の御協力によるPatient and Public Involvementもさらに活性化につながっております。
28ページを御覧ください。
こちらにはNCNPにおけるナショナルセンターとしての役割を踏まえた戦略的な産学連携活動と、主要な精神・神経疾患に対する新たな治療法の社会実装を目的とする体制構築の取組について示しております。
その活動の一つとしまして、昨年度には、私自身が研究代表者を務めさせていただき、アルツハイマー病に対する新規の治療薬として上市をされました抗アミロイドβ抗体薬の臨床実用に関して、全国数百か所の治療施設の御協力によって、世界に類例のない大規模なアルツハイマー型治療患者レジストリの構築を開始したことを御報告させていただきます。
この体制は、まず製薬企業が薬機法に基づいて行う治療薬の特定使用成績調査と緊密に連携をしまして、この抗体薬の安全性リスク評価に必須なAPOEという遺伝子の検査などをAMED研究を基盤としてアカデミア側が実施しつつ、同時に、共同研究契約に基づいて、いわゆる官民パートナーシップによりアルツハイマー病治療患者レジストリを構築して、本邦における安全かつ有効な認知症の治療を実現しようといった意図を持つ大規模な研究でございます。
右の図にもございますように、既に治療薬を上市しましたエーザイ社、イーライリリー社、その他バイオマーカー企業とのパートナーシップ契約も成立しておりまして、今後も参加企業の拡充が見込まれております。このような研究をナショナルセンターにおける大規模な産学連携の一つのプロトタイプとして今後発展させることができればと考えております。
以上でございます。
○土岐部会長 ありがとうございます。
ただいまの御説明につきまして、委員の先生方から御質問はございますでしょうか。
前村委員、どうぞ。
○前村委員 長崎大の前村です。
8ページで、論文の数だけではなくて引用数まで示していただいて、非常に影響力のある論文が出ているということがよく分かりました。
質問したいのは、この次の9ページで、デュシェンヌ型筋ジストロフィー症のエクソン53スキップ型の治療薬に続いて、44も医師主導治験を経てフェーズIIに入っているということは非常にすばらしいと思うのですが、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの中で遺伝子変異が分かっているのがどれぐらいのパーセントあって、今回は53に続いて44の治療薬ですけれども、幾つぐらいの治療薬を作ると大体の患者さんに行き渡ると考えられるのでしょうか。
○国立精神・神経医療研究センター岩坪理事 ありがとうございます。
デュシェンヌ型は、ジストロフィン遺伝子の欠損あるいは点変異などが原因となるということはほぼ確立をされておりまして、患者さんで遺伝子を調べますと、ほぼジストロフィンの中の遺伝子変異の形は同定が可能ということでございます。
ただ、非常にメジャーな大部分を一つの変異が占めるということはございませんで、エクソン53がビルトラルセンで8%、エクソン44が6~7%、それから50、51というのも10%未満ずつということで、1個の変異が対応する数というのは低めであるということがあります。しかしながら、幾つかのメジャーな変異をカバーしていくということで、かなり多くの患者様に対応ができるのではないかと思います。
筋疾患御専門の戸田病院長、何か追加して情報はございますか。
○国立精神・神経医療研究センター戸田病院長 ないですが、大体欠失で3分の2ぐらいは見つかって、あとは点変異ですので、それはシークエンスすれば大体分かります。イントロンの変な変異とかそういうのはめったにない。出たらむしろ報告物になる。
○国立精神・神経医療研究センター岩坪理事 ということでございます。
○前村委員 ありがとうございます。期待しています。
○土岐部会長 それでは、中野委員、どうぞ。
○中野委員 川崎医科大学小児科の中野でございます。
一部、前村委員の御質問とも重複いたしますので、2つ質問させていただきたいのですが、1つ目は前村委員の御質問とも似ていますが、今回のブロギジルセン、エクソン44スキップ型の治療薬、ジストロフィンタンパクの発現量がビルトラルセンに比べて高いことが期待できるということで、臨床効果もそれに比例してより期待できるというような理解でよろしいのでしょうか。それとも、ほかの意義づけがあるのかどうかが1点。
2点目は、トラニラストの同じくデュシェンヌ型筋ジストロフィーへの臨床試験等を1-2の項目でおっしゃっていただいたと思うのですが、トラニラスト自体は、薬剤自体はそんなに新しい薬剤ではないとは思うのですけれども、運動機能の改善とか、どのような発想に基づいて、お話しいただける範囲で結構なのですが、対象患者さんとしてはデュシェンヌ型筋ジストロフィー全般の方が対象となるのか、お教えいただける範囲でお教えいただければありがたいです。
○国立精神・神経医療研究センター岩坪理事 ありがとうございます。
まず、第1にいただきました御質問でございますが、今回の薬剤で正常の20%までジストロフィンの発現が上がったということで、実際に筋力に対する臨床効果というのも、より目に見えて医師主導治験の中で改善が見られたと聞いております。ですので、ビルトラルセンのときは5%まで上がるということで、そのときは臨床効果には極めて微細な効果しかなかったということなのですが、今回は筋力改善も大いに期待できると見ているところでございます。
それから、トラニラストでございます。委員の御指摘のように、お薬としましては古いものでございますけれども、線維化の抑制効果があるということで、御案内のとおりデュシェンヌ型筋ジストロフィーの場合には、筋壊死、再生を繰り返して、筋の線維化が進むということが増悪、それからその他の治療法の有効性の低下に関連していると考えられておりますので、これを緩和しようという発想で始まったものと聞いております。
ただ、申し訳ございません。詳細な治験でのインクルージョンクライテリアは私、今日控えておりませんので、持ち帰りまして御報告させていただきます。
○中野委員 どうもありがとうございます。
○土岐部会長 ほかはいかがでしょうか。
成川委員、どうぞ。
○成川委員 北里大学の成川と申します。
御説明ありがとうございました。
活発にやっていらっしゃるということが確認できました。ありがとうございます。
2つ御質問させてください。
1つ目が、スライドの6枚目のところで、医療推進に大きく貢献する研究成果として6つ挙げていらっしゃって、3つについては詳細を御説明いただいたのですけれども、残りのものについて、ごく簡単でいいので概略を教えていただきたいというのが1つ目です。
2つ目が、個別でどこのページということではないのですけれども、恐らくセンターのほうで、疾患レジストリは様々なものを構築されていると思っていまして、Remudyについては御説明いただいて、話をよく聞くのですけれども、それ以外にどの程度力を入れているものがあるのかということと、それらについて将来、創薬とかの応用にどの程度期待をしていいのかなという辺りを、今の御感触を教えてください。
以上です。
○国立精神・神経医療研究センター岩坪理事 ありがとうございます。
今回、6つの中で3つを御説明しました。
4つ目として書面のほうで挙げておりましたのは、神経発生・発達と頭蓋の発達、小頭症、脳が発達を妨げられて頭蓋が大きくならないという病気がございますけれども、そのメカニズムに関して分子メカニズムを解明した、EMBO Journalという非常にレベルの高い雑誌にアクセプトされている業績を御紹介しております。残る2件は精神疾患に関する精神病理的あるいは病態的な解析に関する業績を挙げさせていただいていると思います。
張所長、精神疾患のほうについて何か。
○国立精神・神経医療研究センター張精神保健研究所長 精神については、PTSDの基礎的なメカニズムについての研究を継続して行っているということと、もう一つは、精神科診断についてですが、今、世界的に使われているのは症状に基づく操作的な診断基準で、バイオロジカルな診断マーカーがなかなかないというのが精神疾患の一番の問題ではあるのですけれども、それを私たちの研究所のほうでレジストリを活用して、数多くの患者さんを集めて、バイオロジカルなデータを蓄積しまして、一度これまでの既成の診断概念をちょっと横に置いて、バイオロジカルなマーカーから分かってくる異常に基づいて、グループ分けを進めている、そういう研究を進めています。
○国立精神・神経医療研究センター岩坪理事 それから、レジストリでございます。理事長が説明しました5ページの右下のところに、少し小さな図でございますけれども、幾つかの我々が運営している代表的なレジストリを略記してございます。Remudyは筋疾患のレジストリでございますけれども、デュシェンヌ型以外にも筋疾患レジストリを拡張して行っておりまして、昨年御紹介したかもしれませんが、rimmed vacuolesというオートファジックな異常蓄積物が出てくる、これはシアル酸で治療ができるというようなことにもつながっております。それから、そのほか理事長が自ら運営されております精神科のレジストリも非常に大規模に発展しておりますし、運動失調症のレジストリ、それから、私の発表で最後に御紹介しました新たな試みですが、私はアルツハイマーを専門にしておりますので、アルツハイマー病の治療薬使用患者のレジストリ、こういうふうに多彩なものを今、広げているところでございます。
○成川委員 よく理解できました。どうもありがとうございました。
○土岐部会長 それでは、神崎委員、どうぞ。
○神崎委員 杏林大学の神崎と申します。
詳細な御説明どうもありがとうございました。
25ページのバイオバンクのところで質問させていただきたいのですが、知識がないので教えていただきたいのですけれども、ブレインバンクは私もある程度有名なのでよく知っているつもりなのですが、筋バンクとか、先ほど御説明があった髄液バンクというのは、我が国、日本の中でどのくらいほかの施設でこういったバンクを持っているのか。逆に言えば、NCNPがどのくらいほかを先んじてというか、数多くこういったバンクを持っているのかというところを教えていただけるとありがたいのです。
○国立精神・神経医療研究センター岩坪理事 ありがとうございます。
まさに御指摘いただいた筋肉と髄液というのは、我々が質・量ともに非常にユニークで大規模に展開できているところかと思います。発表させていただいた中にもありますように、今、筋肉のバイオプシーというのは神経臨床の中で非常によく行われてはいるのですけれども、専門的に診断できる研究者が少なくなっておりまして、本邦でも8割以上、当センターのMGC並びに1部の西野部長の下で行われているものでございます。これも埜中部長、そして今の西野部長と、こちらにございますように数十年の歴史がございまして、2万8000を蓄積したと。ありとあらゆる日本で見る筋疾患、あるいは国際的にも委託をされてきたものを集積して、診断をし、また研究にもつながっているというリソースでございます。また、求めに応じて運用もしているところでございます。
それから、左にバイオバンクのいろいろなサンプルがございますけれども、血液についてはほかのナショセンでも大規模にお集めになって今、シェアリングをしてくださっているところもあるのですが、脳脊髄液はNCNPでの取組がほぼ唯一ではないかと思います。これは申しましたように、神経疾患でありますと、診断の必要上からも腰椎穿刺というのを行って、髄液採取を行う。そして、これをお願いしてバンキングをするということはよくあるのですけれども、精神疾患の患者様にも十分にこの必要性をお話しして、ドネーションをしていただいている。鬱病のサンプルなどでも非常に貴重な研究成果が上がっております。これが約7,000ございまして、今、リクエストも非常に増えて、対応しているところでございます。
○神崎委員 ありがとうございました。
○土岐部会長 これに関係して私、土岐からですけれども、提供が327件ということなのですけれども、企業とか特に商業利用という形になっているのかということと、実際にこういうバンク事業をやるとかなり費用もかかると思うのですけれども、いわゆる提供である程度賄えるようなものなのか、その辺りの現状をもし教えていただけましたら。
○国立精神・神経医療研究センター岩坪理事 ありがとうございます。
あくまで狭義の商業利用、例えばここで得たサンプルを加工して、そのまま販売するというようなことは行っていただかない立てつけにはなっておりますけれども、企業の方が企業の研究所で研究開発のために利用されて、そこから製品化をされるということを後押しする形で進めているというスタンスでございます。
それから、これは費用が非常にかかっておりまして、我々のところのメディカル・ゲノムセンターがこのバイオバンクの親組織なのですけれども、メディカル・ゲノムセンターに割り当てている運営費交付金をかなりつぎ込んでおります。このほかAMED研究でのバイオバンクのサポートの競争的資金に応募をして賄うなど、もう少し安定した広く太いサポートがあればさらに成果があるのではないかという議論をいつもしているところでございますけれども、今のところ何とかやりくりをして進めているという形です。
○土岐部会長 がんの領域でも、企業に提供すればかなりのペイする上での費用が出るのではないかと思いますけれども、とてもそういったものではないのですか。
○国立精神・神経医療研究センター岩坪理事 これはもともと様々な議論によりバランスを考えた料金表を作って、これを公開をして、そこに応募していただいておりますので、企業は少しは高くなっておりますけれども、プライベートであるので、うんと高くつけるということはナショセンの性格上やりにくいということで、なかなかペイするところにはちょっと達していないわけでございます。
○土岐部会長 ありがとうございました。
ほかに御質問ございますでしょうか。
よろしいでしょうか。
それでは、研究・開発の成果の最大化に関する事項については以上とさせていただきます。
続きまして、医療の提供、その他の業務の質の向上に関する事項の評価項目1-3から1-5について議論したいと思います。まずは法人のほうから御説明をよろしくお願いします。
○国立精神・神経医療研究センター戸田病院長 病院長の戸田が報告いたします。
評価項目1-3、医療の提供に関する事項です。
自己評価としてはAといたしました。
中長期目標の内容としては、センターで実施すべく、高度かつ専門的な医療の標準化に資する医療の提供ということでございまして、例えば薬物抵抗性の双極性障害の患者さんのために、先進医療制度を利用した反復経頭蓋磁気刺激装置(rTMS)を用いた治療の標準化を目指します。
また、心神喪失の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律の対象者に対し、研究部門と連携して、研究部門と連携し、退院後の地域生活への安全な移行と支援する質の高い医療の提供を行います。
次の中長期目標として、患者の視点に立った良質かつ安全な医療の提供としては、一番上、医師並びにメディカルスタッフの多職種連携、診療科横断によるチーム医療を推進して、継続して質の高い医療の提供を行っています。特にNCNPの中には、センター内センターとしてそれぞれの専門疾患センターがありますので、診療科横断的に多職種連携で医療の提供を行っています。
また、全職員を対象として医療安全や感染対策のための研修会を実施し、受講状況を確認しております。
下のほうに行っていただいて、手術件数、病床利用率、平均在院日数、入院患者等について、中長期計画に適切な数値目標を設定しております。
次のページをお願いします。30ページ、その指標の達成状況についてです。
rTMSを用いた治療については、年間4人を目標としていましたが、今年度は達成率は100%でした。
また、医療安全、院内感染のための研修会や、その下、医療安全管理委員会の開催、手術件数、病床利用率、平均在院日数、入院患者数等については、指標をおおむね達成していると考えまして、96%~111%の達成度でございました。
次のページをお願いします。
評定の根拠でございます。
新しいものとして、運動失調症データベース、J-CATを利用した原因遺伝子解析及び自己抗体検索です。これは我が国唯一の最大のデータベースで、登録2,807例に対して原因遺伝子のスクリーニングを行い、1,299例の病型を確定しました。
また、次の項目、脳神経小児科における超希少疾病への取組でございます。国内のハブとして患者集積を行っております。令和6年度時点において、例えばミオチュプラーミオパチー、小児交互性片麻痺等は全国の患者の約10%をフォローするなど、積極的に関与しています。
次の項目、てんかんに関する診療と研究ですが、総合てんかんセンターを中心に、全国てんかん拠点機関として、てんかんの診断、医療、研究、教育及び社会活動に関わる包括的な事業を実施しました。また、定位的ラジオ波温熱凝固治療など低侵襲な手術にも力を入れており、令和6年度では、低侵襲は約30%と増えました。
次のページをお願いします。
ここからは、それぞれについてもう少し詳しく報告しています。
まず希少神経難病症例の集積、専門的医療の提供として、当センターでは日本のハブとして活動しております。例えば左下の表にありますように、多発性硬化症であれば、当院患者が占める割合は4%、その他先ほども話題になりました筋ジストロフィーに関しては、デュシェンヌ型で7%、先天型で13%、一番下、近年、シアル酸の薬剤アセノビルが上市されたGNEミオパチーでは全国の26%を当院で対応しているということになります。
右側、当センター病院は、NEWSWEEK誌によって、アジア太平洋地区において神経医学医療領域のランキングで15位に選出されております。国内の機関に限ると5位であります。外部機関からも高い評価を受けております。
次をお願いします。
また別の高度かつ専門医療の例でございます。
精神科領域におけるニューロモデュレーションの実施でございます。
電気けいれん療法(ECT)の件数は、昨年度は971件、東京都としては8%ぐらいです。東京都からも研修の依頼を受けて、537名で実施しております。
左下、先ほどもお話しした反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)については、先進医療Bで治療抵抗性の鬱病に対して維持rTMSを行っており、また、さらには双極性鬱に対しても幅広く行うことによって、治療の持続効果についても検証中で、このようにニューロモデュレーションセンターを中心に専門的な医療を提供しています。そして、研修を通じて医療の均てん化を推進しております。
次のページをお願いします。
脳神経小児科における超希少疾病への取組ですが、NCNPは超希少小児神経疾患の診断・治療開発において国内外のハブとして活動しています。
超希少疾患への包括的アプローチ、全国から患者が集まっており、治療・国際共同治験にも積極的に関与し、グローバルな開発推進、ドラッグロス解消に貢献しています。
例えば右側の表で、先ほど出ましたアレキサンダー病やペリツェウス・メルツバッハー病では、核酸医薬治験に我が国で唯一参加しており、下のほう、デュシェンヌ型筋ジストロフィーでは、先ほどのお話にありましたようにエクソンスキッピング治療を開発しましたし、治験にも大きく貢献しております。
次のページをお願いします。
高度かつ専門医療の提供、進行期パーキンソン病に対して、レボドパ・カルビドパ持続経腸療法、中でもホスレボドパ・ホスカルビドパ持続皮下注(ヴィアレブ)というのは、治療の難しい進行期のパーキンソン病の治療法にポンプを用いてレボドパの持続皮下注射を行っております。特に持続皮下注については、右下、33例で、これは国内でも有数の実施件数を行っております。
次のページをお願いします。
高度かつ専門的な医療、標準化に関する提供としまして、未診断疾患イニシアチブ(IRUD)がございます。IRUDにおけるNCNPの役割として、下のほう、NCNPはIRUD体制の中核を担い、診断連携・解析連携・データシェアリング・リポジトリ・中央倫理審査の体制を確立した中央事務局の役割を行っております。
特に右側、2万6905人、9,446家系の患者さんが参加され、そのうち7,564家系の解析が終わって、3,656家系の診断が確定し、約50の新規疾患概念・原因遺伝子を確立することができました。
次のページをお願いします。
新規なものとして、運動失調症のレジストリJ-CATがあります。これはNCNPが唯一かつオールジャパンとして行っているもので、左下のほうで厚生労働科研運動失調班、AMED難病ゲノム國土班などと連携しております。
右側、現在3,432例が登録し、右下、2,807例の遺伝子解析で46%ぐらいの診断を決定しました。つかないものに関しては、左側、國土班の全ゲノム解析へと回しております。
次をお願いします。
38ページ、NCNPにおけるてんかんに関する診療と研究ですが、当院では先進的な治療として左側、定位的ラジオ波温熱凝固治療(RFTC)を行っております。従来の開頭手術では到達が困難な深部の疾患、海馬・島回・脳室壁などを選択的に破壊するものです。既に20例に実施、60%の発作消失率を得ています。
また、右側、脳深部刺激療法(DBS)では、両側の視床前核を刺激し、てんかん発作の緩和を図り、これに関しては2023年から保険適用となっています。
左のRFTCも今それを目指しております。
右下、このように低侵襲手術率が今、約30%と徐々に増えております。
次に39ページをお願いします。
専門的な医療、標準化、専門的なてんかん診療、当院はてんかん診療部を持ちまして、全ての診療科にてんかん専門医を配し、全ての年齢層を対象に包括的な専門診療を提供しています。その下、2024年は新入院が1,425件、長時間ビデオ脳波モニタリング検査を562名に行いました。
右側へ行っていただいて、先ほどお話しいただきましたように、厚労省のてんかん地域診療連携体制整備事業における全国てんかんセンター、全国てんかん支援拠点として、てんかんの包括的な新型治療に大きな役割を果たしております。各都道府県に1個てんかん支援拠点をつくろうという整備事業ですが、令和6年度で30拠点になりまして、約64%にてんかん支援拠点を置くことができました。また、てんかんを診療しているてんかん支援ネットワークを構築しまして、1,300施設を登録しております。てんかんの専門医も地域偏在が非常に大きいということで、遠隔診療、オンライン診療も進めております。
右下で、てんかんの研究基盤の整備として、てんかん患者データベース、てんかん外科データベース、てんかんバイオバンクなどを整備しまして、左にある様々な研究を進めております。
以上、病院からの報告とさせていただきます。
○土岐部会長 ありがとうございました。
ただいまの御説明に関しまして、委員の先生方から御質問をお受けしたいと思います。いかがでしょうか。
前村委員、どうぞ。
○前村委員 長崎大学の前村です。
35ページのパーキンソン病の治療薬のことについてお伺いしたいと思います。
2種類の持続注入薬があるのですけれども、その下の令和6年度の実績を見ますと、デュオドーパの新規導入がなしということなのですが、これを見ると、この治療法としては皮下注のほうに移行していると考えられるのでしょうか。
もう一つは、この治療は先進的な治療だと思いますけれども、NCNPを含めて少数のところで行われているのか、もう保険承認となって、日本中で使用することが可能なのでしょうか。
○国立精神・神経医療研究センター戸田病院長 まず、なぜデュオドーパが減ってきたかというと、レボドパを持続的に流すのが、いわゆるジスキネジアとかオフが少なくて非常にいいということで、Continuous simulationと言うのですが、レボドパは胃瘻をつくって小腸のところまで到達させてやるという、結構外科を使って、それなりに患者さんも心構えが必要なのです。
一方ヴィアレブですが、右側の皮下注は、皮下に刺すだけで、二、三日に1回交換するだけですので、両方ともポンプでやるのですけれども、今、全国的にはヴィアレブに移行しつつあります。
あとは、両方とも保険が通っておりまして、全国の多くのところで、ここだけというわけではないのですけれども、当院は恐らく日本でナンバーワン、ツーの実施例があると思っています。
○前村委員 ありがとうございます。
○土岐部会長 続きまして、中野委員、どうぞ。
○中野委員 川崎医科大学の中野でございます。
医療のいろいろな領域において、高度かつ専門的な医療あるいは国内の標準化ということで、非常に成果を上げておられると思います。敬意を表したいと思います。
私が今、御質問申し上げたいのは、一般的な疾患、非常にコモンな疾患、神経・精神領域におきましては、一般的な疾患でもなかなか治療の国内での標準化が難しい疾患も多いのではないかと自分としては推測しています。例えばてんかん、恐らく有病率で言うと100人に1人ぐらいはてんかんの有病率はあるのかと考えますけれども、昨今、国内でかなりいろいろな抗てんかん薬が次々と承認販売されて、いいことなのですけれども、一部の専門家のいない、先ほどもてんかん専門医は国内にそれほど人数がいらっしゃらなかったり、偏在というコメントも出ていましたが、治療をどう標準化するのかは割と混乱も見られていると思います。
そんな中、精神・神経センター様といたしましては、例えばウェブサイトとか、あるいは研修事業等で、医療の標準化というのにてんかんに関して何か行われている試みはございますでしょうか。
○国立精神・神経医療研究センター戸田病院長 まず最初に、一般的な神経疾患となると、まず思いつくのがアルツハイマー病とパーキンソン病と脳卒中だと思われます。精神科疾患としては統合失調症と鬱病かなという感じですが、アルツハイマー病に関しては、今日は出しませんでしたが、認知症疾患センターもつくって、つまり、一般は診ないというわけではなくて、どんどんアミロイド点滴などもやっていますし、パーキンソン病も皮下注をやっている人はごく僅かですので、通常のいわゆる抗パーキンソン病薬に対する治療を行っております。
てんかんについては、専門とする中川先生に答えてもらいます。
○国立精神・神経医療研究センター中川副院長 副院長の中川です。
てんかんセンター長をやっていました。
てんかんに関しては、日本のてんかん専門医は1,000名いないのです。患者さんは100万人いるのに専門医が1,000名もいなくて、特に少子高齢化で、成人のてんかんの患者さんが増えているにもかかわらず、半数以上が小児科のてんかん専門医ということで、成人を診るてんかん専門医を増やしたいということで、今、てんかんの専門医の育成とともに、我々はてんかん診療部をつくって、そこでは精神科と脳神経内科の先生、我々の施設で成人を診る専門医を育てていきたいと考えています。ただ、医師の数も少ないし、医師だけでてんかんを診るわけではないので、てんかん診療を支援するコーディネーター、医療系国家資格、福祉系の国家資格を持っているソーシャルワーカーさんや薬剤師や看護師さんなどの育成、てんかん診療支援コーディネーターの認定制度を始めました。
研修会も年に2回行っていまして、いろいろな職種の方が参加できる講習会をやっていまして、医師だけでなく、その他の職種の方もてんかんに関わっていただきたいという形でやっております。
また、均てん化についても、今、30都道府県で、厚労省の整備事業で各都道府県に施設ができたのですけれども、東北地方、北陸地方、四国地方や九州地方ではまだまだ専門医もいませんので、そういうところについてはてんかんのオンライン診療を進めることによって、少しでも患者さんに対しててんかんの適切な診断と治療ができるような均てん化をやっております。
私からは以上です。
○中野委員 ありがとうございます。
引き続き、どうぞよろしくお願い申し上げます。
○土岐部会長 続きまして、神崎委員、どうぞ。
○神崎委員 杏林大学の神崎でございます。
今のてんかんのところで、もうちょっと深入りするような質問で恐縮なのですけれども、てんかんの診断は、私ども脳神経内科を専門としない医療従事者からは難しいという印象がありまして、NCNPでは長時間脳波モニタリングとかをやっていらっしゃると思うのですけれども、例えば私の所属している杏林大学などでは、そういった長時間の脳波を調べるということは、普通の病院ではできないと思うのです。そういう意味で、今、遠隔診療というようなお話がありましたけれども、実際には脳波を撮らないと分からないのではないかというイメージを私は何となく持っているのですけれども、遠隔診療でもてんかんというのはそんなに診断ができるものなのでしょうか。
○国立精神・神経医療研究センター中川副院長 ありがとうございます。
今、てんかん発作を起こしたときに、もうアプリでそれを携帯で患者さんに撮っていただいて、実際の発作時の様子を見ることによって、たいていてんかんというのは発作の様子で、これがてんかん発作か、それともそうではないかというのも大体分かりますので、てんかんのアプリというものを開発しまして、各患者さんにはアプリをダウンロードしていただいて、発作が起こったときにそれを記録していただいて、それを医療者が共有することで、今、それを利用しながらもてんかんの遠隔医療をやっていますし、また、脳波についても、いろいろな医療機関が参加できるようなカンファレンスをやっています。なので、院内だけではなくて、いろいろな医療機関が参加できて、脳波を見ながらそれを診断するようなカンファレンスなども広くやっています。
特にアプリの開発もかなり力を入れていまして、アプリを使いながら遠隔医療するということです。脳波は大事なのですけれども、実際の発作を見るというのがより大事かなと考えています。
○神崎委員 理解いたしました。ありがとうございました。
○土岐部会長 私、土岐のほうから、専門外ではあるのですけれども、精神障害の方の地域包括ケアなのですが、昨今、病床削減の半分は精神科病床ということで、本当に外来生活ができるようになっていることはすばらしいなと思っております。このデータを見ましても、重症の方も、180日を超える人はいるけれども、もうほとんどの人は最終的に地域に戻れるということで、すばらしいと思っておりますけれども、専門外の者から見ると、そうなると外来診療とか救急とかがすごく大変ではないのかなとは思うのですけれども、どういうことが今後課題になっていくのか、参考までに教えていただけますでしょうか。
○国立精神・神経医療研究センター張精神保健研究所長 精神保健研究所の精神科医、張です。
1つは今、先生が言われましたように、退院した後の病診連携が非常に重要になってくることと、あとは訪問診療をもっと広く拡充していくことが2つ目です。あとはてんかんのほうでも出ましたが、ドクターだけが診るというものではなくて、広くナースや、PSWあるいは心理の方たちと多職種連携で訪問診療や外来診療を行っていくという体制をつくっていくことが、NCNPだけではなくて、日本全体的に、今、先生が言われました「にも包括」で推進されているところになります。
○土岐部会長 いわゆる救急医療的にも割と問題なく、救急に行くということは多くならないのでしょうか。
○国立精神・神経医療研究センター張精神保健研究所長 まだまだ不十分ではあるのですけれども、NCNPもそうですが、従来型の精神科の病院が夜間の救急はもちろん受けるのですけれども、精神科でもドクターが共同で在宅診療をするところが出てきていまして、そちらのほうで精神科的なプライマリーの救急を受けるという体制が始まりつつあります。
○土岐部会長 ありがとうございます。
○国立精神・神経医療研究センター戸田病院長 あと、病棟で1つ、精神科救急医療の病棟も持っています。
○土岐部会長 ありがとうございます。
ほかに委員の方から御質問はよろしいでしょうか。
それでは、次に移りたいと思います。
○高屋企画調整官 部会長、申し訳ございません。
事務局です。
1-4、1-5について、まだセンターのほうから御説明をいただいていないかと思いますので、こちらについてもよろしくお願いいたします。
○土岐部会長 すみません。よろしくお願いします。
○国立精神・神経医療研究センター張精神保健研究所長 では、1-4を私、精神保健研究所、張のほうから手短に御説明していきたいと思います。
1-4、人材育成に関することについてです。
40ページを御覧ください。
NCNPには、研究活動のほかにもう一つ重要なミッションがございます。それがこの人材育成とエビデンスに基づく適切な知識と技術の普及啓発ということになります。
中長期目標の内容は、40ページに示すとおり、私たちは自己評価をAといたしました。
その根拠の概要を41ページにまとめました。
1つは、リーダー育成の一つとしまして、全国的に需要の多い生物統計学講座を目標どおり10回開催し、延べ200人の育成に当たりました。また、研究所及び病院の部長あるいは室長のうち、令和6年度は5名が大学教授もしくは准教授として就任し、全国的に人材の輩出にも実績を残しております。
研修や講習の実施ですけれども、精神保健研究所では、全国の自治体職員や医療従事者等に対して、認知行動療法の手法を用いた薬物依存症に対する集団療法研修、通称SMARPPと言いますけれども、そういうものや、発達障害に関する研修をはじめ年間27本の研修を開催し、延べ3,000人以上が参加され、受講者の満足度も非常に高いという結果を得ております。
また、認知行動療法CBTセンターでは、厚生労働省から研修事業に係る補助を受け、基礎から実践的な内容まで幅広い研修を実施し、延べ800人以上の参加を得て、専門人材の育成に寄与しております。
42ページには、病院を含め、NCNP全体の研修の実施状況をまとめております。
研修の中には、診療報酬における施設基準を満たすために受講が必要となる研修など、医療の均てん化に資する研修も多く含まれております。
43ページ、44ページには、先ほど御説明いたしました精神保健研究所の研修実施状況と結果をお示ししております。これは御覧いただくことでお願いいたします。
45ページにはCBTセンターの研修実施状況をまとめています。
認知行動療法に関する基本的な内容の研修から、実地現場で実施されるCBTのスーパービジョン研修まで幅広く行われており、受講者の高い満足度と、CBT実施に対する高い動機づけという結果を得ています。
以上、1-4になります。
続きまして、1-5、医療政策の推進に関する事項について御説明いたします。46ページを御覧ください。
この項目の中長期目標は、精神疾患や神経疾患に関して適宜適切な政策提言を行うこと、医療の均てん化に寄与すること、国民並びに医療関係者に正しい情報を提供すること、公衆衛生上の重大な危害に対して迅速かつ適切に対応することであり、この項目に対する私たちの自己評価はAといたしました。
その根拠ですけれども、まず46ページに記しましたように、公式ホームページのアクセス件数が2000万件近くありまして、370%の達成度を得ています。これは「こころの情報サイト」の人気が非常に高いということが寄与していると考えております。
47ページには主な3つの根拠を示しております。
まず薬物依存に関する取組ですけれども、基礎研究のみならず一次予防、二次予防、三次予防につながる調査研究や予防の実践活動を幅広く展開しておりまして、そこから得られたエビデンスを基に、政策提言にもつながる活動を継続して行っています。
48ページにその概要をまとめております。
政策提言に係る活動としましては、令和6年度は右上の赤枠で囲んだ内容になります。また、基礎研究の活動としましては、中央下段に記しましたように、NCNPの研究成果を基に、令和6年度は新たに8種が麻薬に、1種が向精神薬に指定されております。
次に、47ページに1回お戻りいただきまして、中段の精神保健医療福祉の質の向上に資する提案・提言の実施を御覧ください。ここでは精神神経疾患に関する医療政策上の課題解決に向けての政策提言や診療報酬など、社会実装につながる調査研究や活動が該当しますが、令和6年度につきましては49ページと50ページを御覧いただきたいと思います。
まず49ページです。
現在、国の施策として、先ほども話題に出ました精神障害にも対応した地域包括ケアシステムが推進されるところでありますが、NCNPの研究によって、精神科入院の早期から多職種の包括的な支援マネジメントの実施が長期入院を防ぐこと。それは重度の患者さんであっても、地域生活に移行していく率が高くなることが示されまして、令和6年度の診療報酬改定で精神科入退院支援加算と精神科地域包括ケア病棟入院料が新設されるに至っています。
令和6年度のNCNPの活動としましては、当該診療報酬の算定状況をモニタリングし、次期改定に向けての提言を準備しているところであります。
次に、50ページですけれども、これも地域での精神障害患者さんのケアに係る重要な施策ですが、精神保健福祉相談員という資格があります。以前はその資格を取得するまでに240時間の講習を受けねばならないということで、働きながらその資格を目指すことは極めて困難だったのですが、NCNPの研究チームによってその講習内容が見直されまして、22時間に集約されました。そして、それが国に採用されまして、令和4年12月の精神保健福祉法の改正時に取り入れられたという経緯がございます。
令和6年度においては、その新たな基準での精神保健福祉相談員養成のための教材制作など、基盤整備に尽力してまいりました。
最後に御紹介するのは、国民の健康づくり施策に関する貢献です。47ページの3つ目の項目になりますけれども、1つは、令和6年度開始の第三次健康日本21における健康づくりのための睡眠ガイド2023の普及・啓発のためのガイド作成に研究代表機関として携わっております。ここは51ページを御参照いただければと思います。
51ページ右側に示しましたが、睡眠健康のさらなる増進のために、ウェアラブルデバイスを用いた客観的評価の開発や、それを用いた睡眠健康デジタルプラットフォームの開発に取り組んでいるところであります。
最後に、47ページにお戻りいただいて、一番下に記しましたが、先ほども出ましたが、NCNPではてんかん全国支援センター、あともう一つ全国支援センターとしては、摂食障害の全国支援センターの指定を受けておりまして、これらの疾患に係る医療の均てん化にも貢献しているところであります。
以上になります。
○土岐部会長 誠に失礼しました。
それでは、改めて1-3から1-5につきまして、委員の先生から御質問がございましたらお受けしたいと思います。
よろしいですか。
それでは、質問がないようでございますので、続きまして、業務運営の効率化、財務内容の改善及びその他業務運営に関する事項の2-1から4-1について御説明をお願いしたいと思います。
○国立精神・神経医療研究センター石川企画戦略局長 企画戦略局長の石川です。よろしくお願いいたします。
スライド52からお願いいたします。
業務運営の効率化に関する事項について、自己評価はBとしております。
中長期目標の内容は、記載のとおり6項目ございます。定量的な指標が設定されている4項目の達成状況について御説明いたします。
まずはセンター運営の基本となります経常収支率でございます。こちらは通常であれば100%を目標とするところでございますけれども、令和5年度、センターはマイナス3億円の赤字ということがございまして、令和6年度につきましても、人件費、委託費、そういったものの高騰が見込まれておりましたので、年度計画上の目標を経常収支率98.3%以上としておりましたところ、実績値といたしましては98.1%、達成度は99%でございました。決算の状況は後ほど御説明をいたします。
2つ目、後発医薬品のシェア率については、令和6年度は95.7%、達成度は106%でございます。
続きまして、スライド53をお願いします。
医業未収金につきましては、令和6年度実績値は0.021%、達成度は152%でございます。達成度が120%を超えておりますので、下に要因分析を記載しております。こちらはキャッシュレス決済、特にクレジットカードの利用が増えているほか、文書、電話等による督促を行いまして、目標は達成できております。しかしながら、依然、中長期計画の目標には至っておりませんので、引き続き取組を進めてまいりたいと考えております。
上に戻りまして、一般管理費でございます。こちらは他のナショナルセンターも同じ状況だと思いますけれども、令和4年度以降は上昇が続いております。令和6年度は令和5年度に比べて約900万円、13%増となりまして、令和2年度と比べると1200万円の増となっております。
続きまして、スライド54をお願いいたします。
決算の状況でございます。先ほども申し上げましたが、令和6年度はマイナス4億円となっております。経常収益は208億円、経常費用は212億円でございます。
ただ、昨年度比で見ますと、医業収益は2.2億円、研究収益も2.3億円増えてはおります。しかしながら、高額医薬品や原料価格の高騰による影響等で医薬品費が1.8億円の増、委託費が1.8億円の増、また、基本給を改定いたしましたことによりまして人件費が2.1億円の増となるなど、最終的に決算は赤字となっております。
当センターの患者さんは、神経難病の方とかを中心に診ておりますので、医薬品等も高額なものでありましたり、あとは従来からあるお薬でも、血液製剤ですとか、あまり価格を交渉して引き下げるといったことが難しいお薬をたくさん使用しているというような状況もございまして、収入も増えますけれども、かかっている医薬品自体もかなり高額で負担になっているということでございます。
続きまして、スライド55をお願いいたします。
指標以外の取組状況でございます。
給与制度の適正化につきましては、先ほど申し上げました。基本給は2.3%の改定を実施しました。一方で、経営状況等を勘案しまして、賞与は据置きとしております。
勤務環境の改善といたしましては、可能な部署におきましては在宅勤務を推進しているほか、休暇取得を促進し、常勤職員の平均取得日数は0.4日増えまして12日となっております。
収入の確保につきましては、医業未収金への取組のほか、令和6年度改定で新設された加算等を取得するなど、算定項目の見直しを行っているところでございます。
続きまして、スライド56をお願いします。
財務内容の改善に関する事項について、自己評価はBとしております。中長期目標の内容は記載のとおりでございまして、外部資金の獲得を進めるほか、繰越欠損金の解消となっております。繰越欠損金の解消につきましては、決算が赤字となっておりますのでプラスになりまして、現在の残額が、年度末時点での繰越欠損金が23億7800万円となっております。
続きまして、スライド57をお願いいたします。
こちらは外部資金の獲得状況、主に研究費、競争的資金といったところになります。内訳はここに記載をしておりませんけれども、業務評価書のほう、137ページに厚労科研ですとかAMEDといったものの内訳を記載させていただいております。研究のところでの御説明もいたしましたけれども、外部資金につきましては年々着実に増加をしておりまして、今回、外部資金は49.5億円を獲得しております。特にAMEDからの競争的資金というのは年々増えている状況でございます。
続きまして、スライド58をお願いいたします。
その他業務運営に関する事項につきまして、自己評価はBとしております。
中長期目標の内容は以下4項目でございまして、定量的指標は設定されておりません。
最後のスライド59をお願いいたします。
法令遵守、内部統制につきましては、研究費の適正使用のために研修を実施しておりまして、昨年からは講習だけでなく確認テストを実施することといたしました。
また、研究不正の防止につきましては、令和5年に発生した不正事案を踏まえまして、研究活動規範委員会というものを定期的に開催することとし、再発防止、規程の改正、それから、今回の研究不正事案が不適切な論文の投稿があったということでしたので、論文投稿時のチェックリストを新たに作成するといったことに取り組みまして、また、各部門において部長以下での管理体制を強化することとしております。
その他インテグリティ・セキュリティ対策は、政府の取組に合わせましてセンターにも相談窓口、担当部門を設置しております。
情報セキュリティ対策につきましては、こちらも昨年インシデントが発生しましたので、そういったものを速やかに周知、再発防止策、注意喚起、そういった取組を実施しております。
業務運営に関する説明は以上となります。
○土岐部会長 ありがとうございます。
ただいまの2-1から4-1ですけれども、委員の先生から御質問等ございますでしょうか。
それでは、私、土岐のほうから、今期も赤字が4億円強ということなのですが、ちょっと分かりにくいのが医療の部分でございまして、医業収支が分かりにくくなっているのですが、実際、病院の部分で黒字、赤字がどういうふうに動いているか、あとは研究の部分でどう動いているか、もし分けて分かれば何となく理解しやすいのですが、病院のほうの医業収支のほうはどういうふうに推移しているのでしょうか。
○国立精神・神経医療研究センター石川企画戦略局長 医業収支で言いますと、実は各ナショナルセンターのセグメント別の表も事業報告書にございますけれども、そちらで見るとぎりぎり100といいますか、99.6とかそれぐらいの医業収支率にはなっています。ただ、教育研修部門というところにレジデント等の経費は乗っていまして、そういうものが含まれていなかったりしますので、純粋に病院だけの施設とは異なって、それだけを見ているとあたかも病院の収支がいいように見えてしまうのですけれども、実際はちょっと違うということになります。
病院の先生方も、ナショナルセンターですので、研究に従事している部分はエフォートを勘案して人件費も割っておりますので、ナショセンの特徴として、病院単体で純粋に見るということがなかなか難しい状況であります。ただ、病院の経営が今はもう大変厳しい状況ですので、院長を中心として、各診療部門等が集まってといいますか、ウェブ開催ではありますけれども、そういうところでそれぞれ毎月データ等を見ながらできるところに取り組んでいる状態です。
○土岐部会長 大変よく分かりました。研究も重要な仕事なので、なかなか切り分けにくいというのは分かるのですが、気になるのは、前年度の動きにおいて減少傾向であるのであれば、次も期待できるような気がするのですが、いかがでしょうか。
○国立精神・神経医療研究センター石川企画戦略局長 54ページの表にもあるのですが、病棟は今、1つコロナ後に閉めている関係がありまして、入院患者数はコロナ前の平成30年頃と比べますと減っております。ただ、外来も入院も単価としては上がっておりまして、特に外来収益は今回もかなり増えておりました。ただ、先ほども言いましたように、医薬品が高いものがあったりしますので、それで収支差といいますか、利益としてどれぐらいあるかというと、なかなかそこは厳しい状態にあります。
ただ、センター全体としましては、人件費も医業の人件費と医業外の人件費で見ますと、医業はベースアップ評価料ですとか少し診療報酬の手当があったのですけれども、研究部門に係るスタッフ、職員の給与を改定した場合は、全てそれは自己財源となってしまいますので、ただ、きちんと給与もアップしないと職員のモチベーションも保てませんので、そこはやりくりをしながら対応しているという状況でございます。
○土岐部会長 了解いたしました。
根岸委員、どうぞ。
○根岸委員 根岸です。よろしくお願いいたします。
御説明ありがとうございました。
大変厳しい状況の中での運営だと思います。業務運営のところで55ページに、勤務環境の改善について書かれている箇所があります。例えばテレワークの導入ですとか、それから年休取得日数が若干増えているというようなことがありますけれども、働き方改革が今進められていて、特に昨年の4月から医師の時間外労働の上限規制が適用されたと思いますけれども、そこに対する取組はどんなことをされて、そしてその結果をどういうふうに評価されるのか。もしかしたら3つ目の病院職員満足度調査でも何か評価できるようなものが出てきているのかなとも推測するのですけれども、その辺りのことを教えてください。
○国立精神・神経医療研究センター中川副院長 ありがとうございます。
確かに働き方改革でかなり就業時間数は減っていますけれども、そこはチーム医療という形で、今まで1人の主治医が診ていた。そこをチーム医療で分けていくということで対応等しております。なかなか厳しい状況ですけれども、患者数も、外来、入院数は減ったのですが、経営改善ということで、人件費の見直しということで、我々の病院を定年退職された後、結構長く非常勤で勤務されていた方がおられたので、そこを一旦見直して、非常勤の先生に一旦御遠慮いただいてということで、昨年度は外来の患者数もちょっと減ったのですけれども、その後みんなで先ほど言ったチーム医療あるいは常勤の医師がしっかりと協力しながらやるということで、今年度はかなりいいスタートになっているのですけれども、昨年度の業績からすると少し上がっています。ただ、チーム医療で対応しているという形になっています。
○国立精神・神経医療研究センター石川企画戦略局長 ありがとうございます。
昨年度御報告した中には、医師からのタスク・シフトですとか、そういったことも進めておりまして、また、院内でも、医師、看護師の負担軽減、処遇改善に資する計画ということで、病院内のほうでも計画を立てていただいて、それに沿って取組を進めていくといった状況でございます。実際、超過勤務につきましても、若干波はあるのですけれども、全体としては減ってきているという状況でございます。
職員満足度調査ですが、例えばモチベーションとかキャリアアップ、また職場環境についての項目と聞いておりますが、すごく満足しているかというとなかなか厳しい面はあるのですけれども、自慢できる点とかを自由記載で書いていただいているのですが、そこは最先端の研究や医療ができるといったところとか、患者ファーストを徹底している、専門性が高いとか、あと自己研さんができるといったような御意見と、マイナス面といいますか、要望も幾つか、人手不足だとか、あとは年休取得が増えているとは言っても、もっと休みを取れるようにしてほしいとか、ハラスメント対策といった御要望もいただいておりまして、それに対しては理事長名でそれぞれ回答といいますか、取組をお返しして、院内、センターの掲示板に出して、皆さんに見ていただけるようにといったことをしております。
○根岸委員 ありがとうございます。
前半でも御説明がありましたけれども、たくさんの研修事業等をされていまして、時間が制約される中で、しかも人手不足の中で、やることはやらなければいけないという、ある意味板挟みというか、そういう面があるのかなと思って、ぜひ職員の方のモチベーションが下がらないようにしていただきたいと思います。ありがとうございました。
○土岐部会長 どうぞ。
○松前委員 松前です。
御説明ありがとうございました。
いろいろな研究をされていて、また、経営については大変難しい状況であるということを認識したところでございます。
外部資金についてでございますが、外部資金というのは一応競争的資金が一番多いということでしょうか。研究の受託とか、幾つか種類があるということと、あと59ページのその他業務運営に関する事項の中で様々、内部統制の適切な構築ということでございますけれども、少し不正なんかが発生をされているということでございまして、それについては様々な検討をされて、今、内部統制をさらに構築されているということだと思いますけれども、その点はどういったところに特に注力をされているかとか、そういったところを教えていただければと思います。
○国立精神・神経医療研究センター石川企画戦略局長 先に外部資金の細かい内容ということですけれども、外部資金の内訳ですか。
○松前委員 内訳というか、内容でも、構成が変わったりとか金額は増えているので徐々に増えているとは思いますけれども。
○国立精神・神経医療研究センター石川企画戦略局長 一番大きいもの、40億ぐらいはAMEDといって日本医療研究開発機構から来る研究費で、割と大型のものも含まれています。数億円単位のものも。それから、特に精神保健研究所、先ほどの政策提言といった関係で、厚労省からの研究費というものが3億円弱ぐらいございます。あとは文部科学省の基礎的な研究費が同じく3億円ぐらい。あとは企業からの共同研究ですとか、治験も入りますので、病院で実施しているといった臨床研究関係です。
寄附は、そのときそのときで若干波がございまして、多ければ数千万頂くこともありますし、もっと少ないときもあります。
研究不正、研究への取組は、岩坪理事、何かございますか。
○国立精神・神経医療研究センター岩坪理事 先ほどもございましたように、研究のオーサーシップの取り方などで、基本的なところのルールを逸脱したというような事案がございましたので、インテグリティに関する規定の制定ですとか、それから教育、基本事項の周知ということをしっかり行うということを励行しております。
○国立精神・神経医療研究センター石川企画戦略局長 あとは各所属長ですとか部門長の方から、所長から部長、部長から室長へコミュニケーションをしっかり取っていただくということを改めて定期的な所内の会議等においてもお願いをしております。
○土岐部会長 ほかに全体を通じまして御質問等ございますでしょうか。
それでは、最後に法人理事長と監事からのヒアリングを行いたいと思います。
まずは法人監事より、業務の監査結果等を取りまとめた監査報告について御説明いただくとともに、監査等を踏まえた現在の法人の業務運営の状況や今後の課題、改善方針等についてコメントを頂戴したいと思います。
○国立精神・神経医療研究センター大貫監事 監事の大貫でございます。よろしくお願いいたします。
まず、令和6年度の監事監査の結果について御報告させていただきます。資料2-4監査報告書に記載のとおり、当センターの業務は、法令等に従い適正に実施され、また、財務諸表等の開示書類についても適切に開示されているものと認めております。また、意見形成に当たりまして、特に重要な指摘事項はございませんでした。
当センターの臨床研究の実績ですが、研究と臨床を一体的に推進して、基礎研究から臨床研究、治験、臨床試験までの一貫した研究開発、人材育成、政策提言等を含め、成果を国民の皆様に届けるということが強みであると認識しておりますが、本日の説明にもありましたとおり、これらの研究と医療の両立は着実に成果を上げているのではないかと私どもは見ております。
一方で、課題はやはり財務面にあると思っていまして、第3期中長期期間の今回は4年目に当たりますけれども、前年度に引き続き損失計上となった結果、計画1年目、2年目で解消した繰越欠損金を3年目、4年目でほぼ相殺させたような結果になりまして、第3期中長期期間の一番最初に戻ったというような結果になっております。
これは、先ほど再三説明がありましたとおり、高額医薬品等の増加や委託費等の物価上昇に直面しており、当センターを取り巻く外部環境は第3期中長期目標期間を通じて非常に厳しい状況でございました。そのような中で、いかにして経営改善活動を推進していくか、繰越欠損金が当初に戻った中での中長期計画の5年目で、どういったトレンドをつくっていくのかが重要ではないかと認識しております。
今後も、研究の独立性・専門性を尊重しつつ、社会的信頼の確保に資する健全な財務運営がなされ、国民からの信頼を確保するために、透明性と説明責任を重視した運営が継続されるかについては引き続き注視してまいりたいと考えております。
以上でございます。
○土岐部会長 ありがとうございます。
続きまして、法人の理事長より、日々のマネジメントを踏まえ、現在の法人の業務運営の状況や今後の課題、改善方針等についてコメントをよろしくお願いいたします。
○国立精神・神経医療研究センター中込理事長 ありがとうございました。
様々な面から貴重な示唆をいただきまして、本日はありがとうございました。
ただいま話題に上がりましたように、当センター、当法人は大変経営的な側面で苦しんでいるところでございます。繰り返し出てまいりましたけれども、どこの病院でもそうかもしれませんが、医薬品、医療の材料費、それから先ほど病院のほうはベースアップ評価料といったものもございましたけれども、全体的に人件費のアップということで、なかなか診療報酬のほうに付替えができないということもありまして、それでも職員は非常に一丸となって、医業収入のアップに向けて努力をしておりますし、また、事務方も含めて職員一同、コストを見直して、徹底的にコストの適正化を図るために、共同調達方法等々を探っているところでございます。
こういった中で、御指摘いただきましたように、我々がやるべきミッションは変わりませんので、多くの研修や、我々は日本のこの領域の様々なアカデミアの基盤をきっちりつくって、皆さんに使っていただくような、あるいは皆さんのハブとなるような活動は欠かせないと思っていますので、ここのところも忘れず注力しているところでございます。
とりわけ、基盤部分の整備というのは大変重要なものだと思っています。レジストリについても御質問いただいてありがとうございます。ただ、時間の関係で全部は説明できませんでしたが、こうしたデータベースといったものを我々だけが使うのではなくて、企業も含めて様々な大学の先生方にも使っていただくように、多施設共同で進めているといったところが実情でございます。
最後になりますけれども、このセンターを支えているのは何といっても職員の皆様でございます。その職員の皆様の満足度というのは大変重要な点でありまして、私も目を通しております。正直言って悲鳴のような声が聞こえてくることもあります。その一つのポイントは、やはり業務の効率化だと考えています。現在、電子カルテが更新ということで、今、新たな電子カルテの構築に向かって、みんなで委員会をつくって努力しているところですけれども、そんな中でもこれまで二重、三重に入力しなければならなかったような無駄をどうやって省くか、部門間の連携をいかに整備してやるか、そういったところを注意深くベンダーと話を進めていっているところでございます。
そこの点についても現場から多くの声を聞いておりまして、少しでも業務の負担が減って、そして、このセンターでの仕事にモチベーションを持っていただけるよう、そんなふうに思っているところでございます。
本日は本当にありがとうございました。
○土岐部会長 ありがとうございました。
ただいまの法人監事、法人理事長の御発言につきまして、御意見、御質問等ございますでしょうか。
よろしいでしょうか。
それでは、以上で国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センターの令和6年度業務実績評価についての審議を終了いたします。
以上で本日の議事を終了いたしました。
ここで一旦事務局から、今後の流れについて御説明をよろしくお願いいたします。
○高屋企画調整官 事務局です。
今後の流れについて御連絡いたします。
本日御議論いただきました国立長寿医療研究センター及び国立精神・神経医療研究センターの令和6年度業務実績評価につきましては、本部会における御意見や法人の監事及び理事長のコメント等を踏まえまして、後日、厚生労働大臣による評価を行い、その評価結果について、法人に通知するとともに公表いたします。
委員の皆様におかれましては、事前に電子媒体でお配りしている評定記入用紙に必要事項を御記入いただき、8月14日木曜日までに事務局宛てメールにより御提出いただきますよう、お願いいたします。
なお、評価結果につきましては、後日、委員の皆様にもお送りいたします。
次回ですが、8月7日木曜日13時より、こちらの航空会館大ホールで国立成育医療研究センター及びJHを含む国立がん研究センターの評価に関する審議を予定しております。
事務局からは以上です。
○土岐部会長 それでは、本日は以上とさせていただきます。
長時間にわたりどうもありがとうございました。