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第71回中央最低賃金審議会 議事録
日時
令和7年8月4日(月)20:06~20:47
場所
厚生労働省省議室
(東京都千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎5号館9階)
(東京都千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎5号館9階)
出席者
公益代表委員
藤村会長、戎野委員、権丈委員、小西委員、首藤委員、松浦委員
労働者代表委員
池田委員、伊藤委員、永井委員、仁平委員、平野委員、水崎委員
使用者代表委員
大下委員、佐久間委員、志賀委員、土井委員、新田委員、堀内委員
事務局
岸本労働基準局長、田中大臣官房審議官、篠崎賃金課長、伊㔟主任中央賃金指導官、
大野調査官、山﨑賃金課長補佐、安藤賃金課長補佐、上条副主任中央賃金指導官
藤村会長、戎野委員、権丈委員、小西委員、首藤委員、松浦委員
労働者代表委員
池田委員、伊藤委員、永井委員、仁平委員、平野委員、水崎委員
使用者代表委員
大下委員、佐久間委員、志賀委員、土井委員、新田委員、堀内委員
事務局
岸本労働基準局長、田中大臣官房審議官、篠崎賃金課長、伊㔟主任中央賃金指導官、
大野調査官、山﨑賃金課長補佐、安藤賃金課長補佐、上条副主任中央賃金指導官
議題
(1)中央最低賃金審議会目安に関する小委員会報告について
(2)令和7年度地域別最低賃金額改定の目安について(答申)
(3)その他
(2)令和7年度地域別最低賃金額改定の目安について(答申)
(3)その他
議事
○藤村会長
ただ今から、第71回「中央最低賃金審議会」を開催いたします。
本日の議題は、「中央最低賃金審議会目安に関する小委員会報告」、「令和7年度地域別最低賃金額改定の目安」と「その他」についてでございます。
まず、議題1「中央最低賃金審議会目安に関する小委員会報告について」です。本年度の地域別最低賃金額改定の目安については、目安に関する小委員会において熱心な御審議を重ねていただき、本日8月4日の第7回小委員会において、報告が取りまとめられましたので、委員長の私から報告したいと思います。
今年度の目安審議については、去る7月11日にこの本審において諮問が行われるとともに、目安に関する小委員会に付託されました。
その後、小委員会においては、7月11日、7月22日、7月24日、7月29日、7月31日、8月1日、8月4日までの7回にわたって会議を開催いたしました。
今年度も、労使双方の皆様から「目安額の根拠・理由についても納得できるものとしてほしい」との御意見を頂き、熱心な御議論を頂きました。
目安については、労使の意見の一致を得ることができませんでしたが、公益委員の見解を小委員会報告として地方最低賃金審議会に示すように本審議会に報告することを、先ほどの小委員会において了承いただき、お手元のとおり、報告をとりまとめた次第でございます。
毎年、丁寧にこの報告を書くということで、今年は全16ページになっております。これを全部読み上げるというのは、先ほど小委員会に御出席いただいた方とメンバーは一致をしておりますので、私から掻い摘まんでポイントを御説明することによって、小委員会の報告を審議会本審にしたということにしたいと思います。
今年も労使双方それぞれ様々な思いでこの審議会に臨んでくださいました。使用者側としては、非常に厳しい経営に直面している中小企業あるいは小規模事業者といった方々の状況に配慮して、十分に議論してほしいという御要望がありました。他方、労働者側としては、最低賃金近傍で働く人たちの生活を考えたときに、消費者物価が、様々な取り方がありますが、高騰している中で、しっかりとした引上げが必要だという御意見を持って会議に臨まれました。また、政府からは、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025年改訂版」及び「経済財政運営と改革の基本方針2025」といった政府の方針に配意して審議をしてほしいということで、今年の目安の審議が始まりました。
結果としては、Aランク63円、Bランク63円、Cランク64円という目安を示すこととなりました。この目安を示すにあたって、まず注目をしたのは「労働者の生計費」になります。消費者物価には色々な取り方がございます。全体を平均した形での「持家の帰属家賃を除く総合」を従来使ってまいりましたが、それだけ見ていたのでは十分ではないではないかということで、そのほかの費目についても見ていこうということで、議論をいたしました。昨年は「頻繁に購入」する品目に特に注目をしたわけですが、今年ももちろんそのデータは見ながら、そのほかに、食品の値上げ額が非常に大きいということで、食品についても見る必要があると。あるいは「1ヶ月に1回程度購入」する品目は月に1回支払うような電気代や通信費といったものが入っております。特に食料品に限らずエネルギーについてもこのところ物価上昇が非常に大きいということで、その伸びにも注目をしようと。それから、「基礎的支出項目」というものもあります。いわゆる生活必需品が網羅をされているものについても見ていく必要があると。そういう4つの指標を見ながら、どれか一つで決めるのではなく、総合的に勘案をして、考えていこうということで、労使双方の意見を伺いながら、議論を進めてきたところでございます。特に食料品については、エンゲル係数というものも見まして、特に所得が一番低い層、第一・十分位階級においては、このところエンゲル係数が上昇傾向にあるといったところも考慮した次第でございます。
それから3要素の2番目であります「賃金」については、このところ賃上げが例年続いておりまして、今年も昨年を上回るような賃金引上げが行われた、これは連合の調査あるいは経団連の調査、日本商工会議所の調査といったところでも示されております。また、賃金改定状況調査結果を見ましても、昨年以上の引き上げが行われている、もちろん水準においては、連合、経団連、日商の調査よりも低いわけですが、トレンドで見たときに、去年以上に引き上げられている、ここもちゃんと見ていく必要があるということで、水準とともにトレンドというところに注目いたしました。また、政府から配意をしてほしいということで、EU指令との関係で、最低賃金は諸外国に比べると低いと言われている、これは為替の関係が多分にあるわけですが、我が国においても中央値の60%あるいは平均値の50%という数値も見ながら議論していくということをしてまいりました。この計算するときに分母に何を使うかというのが、いくつかの取り方があり、それによって結果が違ってきます。いわゆる所定内の給与という場合と、所定内+ボーナスという場合、あるいは残業代も含めて見る場合、それぞれの取り方によって分母の大きさが変わります。その結果、分子に時間当たり賃金を持ってきたときに、中央値の何パーセント、平均値の何パーセントというのが変わってくると。こういった点については、目安全員協議会という仕組みがありますから、そちらで議論していく必要があるだろうという締めにいたしました。
3要素の3番目、「通常の事業の賃金支払能力」は、様々な指標を組み合わせながら考えていく必要があります。使用者側がかねてから主張しておられます賃金改定状況調査第4表を基本としつつ、売上高経常利益率や付加価値額といった指標も見ながら、引き上げていくだけの根拠とできるようなものがあるのではないか、明確な根拠というふうには中々ならないのですが、そういった議論をいたしました。もちろん、資本金の大きさによって、この支払能力には非常に大きな差がある。特に私どもが注目いたします中小・小規模事業者、資本金で言うと1,000 万円未満においては、支払能力が低いけれども、これも昨年よりは上昇しているのではないか、こういったデータも確認しております。ただ、いわゆる価格上昇、原材料価格、労務費といったものの価格上昇が十分に転嫁できているかどうかについては、不十分であるという認識は、公益委員としてもまだまだ価格転嫁の部分は改善の余地があると考えているところです。ただ、だからといって上げられないということにはならないであろうということで、3番目の「通常の事業の賃金支払能力」を位置づけた次第です。
その上で、各ランクの引上げ額をどうするかということで、今年は初めて、CランクをA、Bよりも1円だけ高くするという目安を示すことといたしました。これは、例えば、賃金の引き上げの状況あるいは物価の上昇率を見ると、AよりもB、BよりもCの方が物価が高くなっている、あるいは賃金の引上げ、すなわち第4表もCの方が高いといった状況を見ていくと、やはりここで金額の差を小さくしていくことは、政府の目標であり、私たちの目標でもあると思っておりますが、それを実施する良い機会ではないかと考えました。いわゆる額差の是正というところで、私どもも非常に重要であるということで、63、63、64という目安の引上げを考えて、示したわけでございます。もちろん、同じ金額の引上げであったとしても、Aランクの場合はもともとベースが高いですから、パーセンテージで見ると5.6%、Bランクは6.3%、Cランクは6.7%というように、パーセンテージはAよりB、BよりCの方が高くなるという状況があります。その分、Cランクの県の小規模の企業の方々には相当な御負担になるということは分かりつつ、今年はこういった目安を示そうなった次第でございます。
政府に対しては、例年、しっかりとした支援をしてくれと、様々な支援策が用意されていて、その支援策が十分に使われるように配慮してほしい、例えば、時間的な部分も中小・小規模企業の方からは出てきております。この短い期間で申請書を書いて出すということが中々大変だというあたりは、十分に配慮してほしいといったことは私たちの小委員会報告にも書いております。それから、地方最低賃金審議会への期待というところで、今年は、これまでで最も高い目安を示すということで、これは特に使用者側の委員の皆様からの御意見があったわけですが、発効日については、地方最低賃金審議会で十分に議論してほしい、もちろん春季の賃上げの後追いという側面があるわけで、労働側委員としてはできるだけ早く発効させるべきだという御意見があるということは承りつつ、使用者側意見の発効日については少し配慮が必要ではないかということは公益委員として十分に理解を示したというところでございます。
以上のような内容で小委員会報告をまとめましたので、お手元にあるものをお読みいただきまして、これからの地方の最低賃金の審議に生かしていただきたいと思います。
議題1の報告としてはここまでといたします。
○篠崎賃金課長
委員長、1点事務方よりよろしいでしょうか。今会長から説明いただいた小委員会報告案でございます。誤字が事務局のミスでございましたので、次の議題の前に御報告させていただきたいと思います。
○藤村会長
お願いします。
○篠崎賃金課長
小委報告の2ページの下から8行目、「これまで以上に求められ」の後の「これまでに以上に」が重複しておりますので、後段は誤記ですので、削除でございます。それから、10ページの下から3段落目の3行目、「(前回20.1%→16.9%)」とありますが、ほかの部分では「前回」と入れておりませんので、ここの「前回」は削除でございます。それから、16ページの上から3行目に「地方最低賃金議会」とありますが、「地方最低賃金審議会」の誤記でございます。こちらはHPに掲載する際は、反映する形にしたいと思っております。申し訳ございませんでした。以上です。
○藤村会長
何回も見たのですが、こういったことは発生しますね。はい、では、議題1は以上といたしまして、次、議題2「令和7年度地域別最低賃金額改定の目安について(答申)」についてです。小委員会報告をもとに、答申を取りまとめたいと思います。なお、この報告にもありますとおり、小委員会としては、政府が中小企業・小規模事業者等の生産性向上のための支援や価格転化対策に引き続き取り組むことなどの要望をさせていただいていますので、今年の答申においても、この趣旨を盛り込みたいと考えております。よろしいでしょうか。
(異議なし)
それでは、答申案を事務局から配布して読み上げていただきたいと思います。
○上条副主任
それでは、朗読いたします。令和7年8月4日。厚生労働大臣福岡資麿殿。中央最低賃金審議会会長藤村博之。
令和7年度地域別最低賃金額改定の目安について(答申)。令和7年7月11日に諮問のあった令和7年度地域別最低賃金額改定の目安について、下記のとおり答申する。
記。1 令和7年度地域別最低賃金額改定の目安については、その金額に関し意見の一致をみるに至らなかった。
2 地方最低賃金審議会における審議に資するため、上記目安に関する公益委員見解(別紙1)及び中央最低賃金審議会目安に関する小委員会報告(別紙2)を地方最低賃金審議会に提示するものとする。
3 地方最低賃金審議会の審議の結果を重大な関心をもって見守ることとし、同審議会において、別紙1の2に示されている公益委員の見解を十分参酌され、自主性を発揮されることを強く期待するものである。
4 中小企業・小規模事業者が継続的に賃上げできる環境整備の必要性については労使共通の認識であり、政府の掲げる「賃上げと投資がけん引する成長型経済の実現」と「持続的・安定的な物価上昇の下で、物価上昇を年1%程度上回る賃金上昇を賃上げのノルム(社会通念)として我が国に定着」させるためにも、特に地方、中小企業・小規模事業者に配意しつつ、生産性向上を図るとともに、官公需における対応や、価格転嫁対策を徹底し、賃上げの原資の確保につなげる取組を継続的に実施するよう政府に対し強く要望する。
5 生産性向上の支援については、可能な限り多くの企業が各種の助成金等を受給し、賃上げを実現できるように、政府の掲げる生産性向上等への支援や経営支援の一層の強化を求める。特に、事業場内で最も低い時間給を一定以上引き上げ、生産性向上に取り組んだ場合に支給される業務改善助成金については、最低賃金引上げの影響を強く受ける中小企業・小規模事業者がしっかりと活用できるよう充実するとともに、具体的事例も活用した周知等の徹底を要望する。加えて、非正規雇用労働者の処遇改善等を支援するキャリアアップ助成金、働き方改革推進支援助成金、人材確保等支援助成金等について、「賃上げ」を支援する観点から、賃上げ加算等の充実を強く要望する。
6 また、中小企業・小規模事業者の賃上げの実現に向けて、官公需における対策等を含めた価格転嫁・取引適正化の徹底、中小企業・小規模事業者の生産性向上、事業承継・M&A等の中小企業・小規模事業者の経営基盤の強化に取り組むとともに、地域で活躍する人材の育成と処遇改善を進める「中小企業・小規模事業者の賃金向上推進5か年計画」の着実な実行を要望する。
7 その際、経営強化税制、事業承継に係る在り方の検討、産業競争力強化法による税制優遇など、予算や税制等のインセンティブ制度を通じ、中小企業・小規模事業者の賃上げに向けた強力な後押しがなされることを強く要望する。
8 同時に、省力化投資促進プランの対象業種のみならず、幅広く、きめ細かな成長投資の後押し、販路開拓・海外展開の促進、マッチングの強化等の支援策の充実と支援体制の整備を通じた中小企業・小規模事業者の生産性の向上を進めるとともに、地域における消費の活性化等を通じ地域経済の好循環を図ることを要望する。
9 また、中小企業・小規模事業者がこれらの施策を一層活用できるよう、周知等を徹底するとともに、運用の改善を図ることを要望する。
10 価格転嫁対策については、下請法改正法(中小受託取引適正化法)の成立を受け、その施行に向けて、公正取引委員会の体制の抜本強化とともに、中小企業庁・業所管省庁との連携体制を早期に構築し、各業所管省庁においても、同法に基づく検査や問題事例への対処を適切に実施できるよう、執行体制の抜本強化を要望する。
11 取り分け、価格転嫁率が平均よりも低い業種を中心に業所管省庁において徹底的に業種別の価格転嫁状況の改善を図るため、中小企業庁による下請Gメン、公正取引委員会による優越Gメンといった省庁横断的な執行体制の強化に加え、中小企業庁・公正取引委員会から具体的な執行・業務のノウハウの共有を行った上で、業種別のGメン等を通じた取引環境改善の枠組みを価格転嫁率が低く課題の多い業種を所管する業所管省庁全体へと広げる等、十分な規模での執行体制を構築することを要望する。また、パートナーシップ構築宣言について、取引適正化に関する自主行動計画を制定している各業界団体の役員企業に対して宣言を働き掛けるとともに、生産性向上関連の補助金における加点措置を拡充すること等により、宣言の更なる拡大を図ることを要望する。サプライチェーンの深い層まで労務費転嫁指針の遵守が徹底されているかを重点的に確認し、必要に応じ更なる改善策を検討するとともに、更なる周知徹底に取り組むことを要望する。
12 さらに、BtoC事業では相対的に価格転嫁率が低いといった課題があるため、消費者に対して転嫁に理解を求めていくよう要望する。
13 また、いわゆる「年収の壁」への対応として、「年収の壁・支援強化パッケージ」の活用を促進することを要望する。加えて、行政機関が民間企業に業務委託を行っている場合に、年度途中の最低賃金額改定によって当該業務委託先における最低賃金の履行確保に支障が生じることがないよう、発注時における特段の配慮を要望する。
別紙1、2については省略させていただきます。以上です。
○藤村会長
はい、ありがとうございました。ただ今の答申案について御意見などございますでしょうか。
(異議なし)
ありがとうございます。ではこの案のとおり答申を取りまとめたいと思います。岸本労働基準局長にお渡ししたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
(答申文手交)
○藤村会長
では、岸本労働基準局長から一言、御挨拶を頂きたいと思います。
○岸本労働基準局長
労働基準局長の岸本でございます。答申を頂きまして、一言、御礼の御挨拶を申し上げます。
本年度の目安につきまして、答申を取りまとめていただき、誠にありがとうございました。
本年度の調査審議におきましては、最低賃金法に規定された3要素を丁寧に考慮していただき、どの指標を活用するか、また、なぜその指標を活用するか等も丁寧にみていただきました。関係者の納得感が高まるように多岐にわたる論点について真摯に御議論を尽くしてくださいました。小委員会の回数も近年にない7回という審議を行っていただき、目安を示していただいたところです。
今後、頂いた答申を都道府県労働局に伝達いたしまして、各地方最低賃金審議会における地域別最低賃金額の改定審議が円滑に進められるようにしてまいりたいと考えております。
皆様方の御尽力に改めて心より感謝申し上げまして、お礼の御挨拶とさせていただきます。長時間にわたる御審議、誠にありがとうございました。
○藤村会長
岸本局長、どうもありがとうございました。議題2は以上にしたいと思います。
続きまして、議題3「その他」についてです。資料について、事務局から説明をお願いします。
○篠崎賃金課長
事務局から、資料No.1について、御説明いたします。目安答申後の地方最低賃金審議会における審議の流れということでございます。
資料No.1の1ページを御覧ください。1ページは、令和6年度を例とした、目安答申後の地方最低賃金審議会における審議の流れの全体像でございます。ここにありますように中央最低賃金審議会において先ほど答申いただいた地域別最低賃金額改定の目安は、地方に示され、地方最低賃金審議会での地域別最低賃金に関する審議が行われます。昨年の例の日程が載せてあります。地方最低賃金審議会では、地域別最低賃金に関する審議のほか、特定最低賃金に関する審議を行っております。昨年度は8月から12月頃にかけて審議が行われ、翌年の2月までに発効しております。
続きまして、2ページは、地方最低賃金審議会における議論の結果、決定された地域別最低賃金額の一覧となっております。
3ページ以降は、労使のイニシアティブにより設定される、特定最低賃金の概要や制度の紹介等の資料です。
資料飛びまして、9ページ、10ページにつきましては、特定最低賃金の決定等の必要性の有無に関する調査審議の運営について、これまで中央最低賃金審議会における議論の結果、労使で合意されてきた事項の紹介でございます。実際の必要性の有無に関する調査審議に当たっては、これらの事項を参考に、関係労使が参加することにより、より実質的な審議が行われることが期待されております。
11ページは、特定最低賃金の審議における労使イニシアティブの促進に向けた参考事例についてでございます。特定最低賃金は労使のイニシアティブにより決定等がされるものです。そのため、これらの事例を参考に、労使イニシアティブが促進されることは、特定最低賃金がその制度趣旨に沿って運用されることに資すると考えられます。
説明は以上です。
○藤村会長
ありがとうございました。何か御質問ございますでしょうか。どうぞ、新田委員。
○新田委員
質問ではなく、意見ですけれどもよろしいでしょうか。御説明ありがとうございました。今の御説明のうち、特定最低賃金に関して、使用者側としての意見を申し上げたいと思います。
御承知のとおり、特定最低賃金は、地域別最低賃金を上回る水準が必要と認められた場合に、関係労使の申出によって特定産業の基幹的労働者に対して任意に設定されるものであります。あまねく全国各地域で決定され、原則すべての労働者に適用される地域別最低賃金とは法的位置づけがまったく異なるものと承知しております。加えまして、制度の分かりにくさや煩雑さ、さらには人材確保や賃金制度の柔軟性に対する制約となり得るなど、使用者側にとっては多くの懸念材料を含むものと理解しております。
特定最低賃金の決定あるいは改定又は廃止は、関係労使の申出に基づき、各地方最低賃金審議会の調査審議を経て行われると承知しております。2024年度に設定されている特定最低賃金224件のうち、地域別最低賃金額を下回っているものが90件に上っております。こうした産業においては地域別最低賃金額が適用されている現状にございます。このように、実質的に機能していない特定最低賃金につきましては、関係労使に意見聴取したうえで各地方最低賃金審議会において速やかに廃止を検討すべきと考えます。
一方で、健全な競争条件の確保やその産業の魅力の向上、あるいは人材の確保・定着を促す手段として、特定最低賃金制度を積極的に活用したいという意向があることも承知しております。各地域におきまして、成長が期待される産業分野について、賃金水準や企業の賃金支払能力の実態を反映した特定最低賃金額を定めることによって、産業集積地の魅力向上を図りつつ、地域別最低賃金額については急激な引上げを抑制する等、現下の地域経済や雇用の実情を踏まえて、特定最低賃金制度を活用していくことも一案と考えております。
いずれにしても、各地域の関係労使のイニシアティブによって設定される特定最低賃金のあり方につきましては、関係労使双方にとって納得感のある結論が得られるように、当事者間で検討を重ねていただきたいと考えているところでございます。
私からは以上です。
○藤村会長
ありがとうございました。労働者側からはいかがですか。仁平委員、どうぞ。
○仁平委員
ありがとうございます。ここにいる皆様には釈迦に説法だと思っておりますが、特賃は、労使交渉を補完・代替する役割を持っており、労働条件の向上または事業の公正競争をより高いレベルで確保し、産業ごとの企業横断的な最低賃金水準を決定する仕組みであり、そのことを通じ、当該産業の魅力を高め、産業の持続的発展を促すものであります。
労働組合のない企業で働く労働者の賃金の底上げによる産業内賃金格差の是正や、入口賃金の優位性の確保による人材の確保・定着、公正競争の確保による産業の健全な発展など、とりわけ日本は今労働力人口の減少に直面する中で、産業間の人材獲得競争の激化が進んでいますが、こうしたことに鑑みれば、特賃の意義や必要性はますます高まっているのではないかと考えております。こうした意義・目的は、地方労働局や地方審議会委員において改めて共有していく必要があるのではないかと考えております。
資料の御説明いただきましたが、そこにも記載してございますとおり、特賃は関係労使のイニシアティブによる建設的な議論に基づき決定するべきものでございますし、資料の11ページには参考の事例もまとめていただいているところでございます。また、国会等でも様々な議論が行われているところかと思います。全会一致を原則とする慣行が杓子定規に運用され、データに基づくことなく一方的に必要性なしの結論が主張されるケースもあると聞き及んでおります。
こうした状況は、2002年の全協報告にある「労使当事者間の意志疎通」「実質的な審議」という考え方に反してるのではないかと思っております。地賃の審議においても、先程来、データに基づく審議というものを重視してまいりましたので、特賃においても同様にしっかりデータに基づき審議すべきではないかと思います。今年の4月末には、厚生労働省本省から各県の労働局に対し、特に新任の審議委員の方に対する特賃の審議に際した留意事項の資料が展開されたと承知しております。新任の委員のみならず、特賃の審議に際してはこの内容の周知徹底と尊重を是非進めていただきたいと思っております。
また、数年にわたって地賃を大きく下回る場合等の廃止を検討すべきという意見に関して、労使が一致して「必要性なし」と判断し、この間。金額改定が見送られてきたわけではないのではないかというのが労側の認識でございます。まず、データに基づく必要性審議と適切な金額改定を行うことが先決ではないかと思います。
また、現行制度の基本形がつくられた1986年から現在に至るまで、くくり直しなどを除けば、特賃の実質的な新設はゼロでなのではないかと思っております。40年前とは経済も社会情勢も大きく変化しているところであります。地賃と特賃それぞれの意義と役割について改めて再認識し、運用ルールの見直しも考えていく必要があるのではないかと考えております。
以上でございます。
○藤村会長
はい、ありがとうございました。ほかに何かございますでしょうか。よろしいでしょうか。
それではこれをもちまして、第71回「中央最低賃金審議会」を終了いたします。本日はお疲れ様でした。ありがとうございました。
ただ今から、第71回「中央最低賃金審議会」を開催いたします。
本日の議題は、「中央最低賃金審議会目安に関する小委員会報告」、「令和7年度地域別最低賃金額改定の目安」と「その他」についてでございます。
まず、議題1「中央最低賃金審議会目安に関する小委員会報告について」です。本年度の地域別最低賃金額改定の目安については、目安に関する小委員会において熱心な御審議を重ねていただき、本日8月4日の第7回小委員会において、報告が取りまとめられましたので、委員長の私から報告したいと思います。
今年度の目安審議については、去る7月11日にこの本審において諮問が行われるとともに、目安に関する小委員会に付託されました。
その後、小委員会においては、7月11日、7月22日、7月24日、7月29日、7月31日、8月1日、8月4日までの7回にわたって会議を開催いたしました。
今年度も、労使双方の皆様から「目安額の根拠・理由についても納得できるものとしてほしい」との御意見を頂き、熱心な御議論を頂きました。
目安については、労使の意見の一致を得ることができませんでしたが、公益委員の見解を小委員会報告として地方最低賃金審議会に示すように本審議会に報告することを、先ほどの小委員会において了承いただき、お手元のとおり、報告をとりまとめた次第でございます。
毎年、丁寧にこの報告を書くということで、今年は全16ページになっております。これを全部読み上げるというのは、先ほど小委員会に御出席いただいた方とメンバーは一致をしておりますので、私から掻い摘まんでポイントを御説明することによって、小委員会の報告を審議会本審にしたということにしたいと思います。
今年も労使双方それぞれ様々な思いでこの審議会に臨んでくださいました。使用者側としては、非常に厳しい経営に直面している中小企業あるいは小規模事業者といった方々の状況に配慮して、十分に議論してほしいという御要望がありました。他方、労働者側としては、最低賃金近傍で働く人たちの生活を考えたときに、消費者物価が、様々な取り方がありますが、高騰している中で、しっかりとした引上げが必要だという御意見を持って会議に臨まれました。また、政府からは、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025年改訂版」及び「経済財政運営と改革の基本方針2025」といった政府の方針に配意して審議をしてほしいということで、今年の目安の審議が始まりました。
結果としては、Aランク63円、Bランク63円、Cランク64円という目安を示すこととなりました。この目安を示すにあたって、まず注目をしたのは「労働者の生計費」になります。消費者物価には色々な取り方がございます。全体を平均した形での「持家の帰属家賃を除く総合」を従来使ってまいりましたが、それだけ見ていたのでは十分ではないではないかということで、そのほかの費目についても見ていこうということで、議論をいたしました。昨年は「頻繁に購入」する品目に特に注目をしたわけですが、今年ももちろんそのデータは見ながら、そのほかに、食品の値上げ額が非常に大きいということで、食品についても見る必要があると。あるいは「1ヶ月に1回程度購入」する品目は月に1回支払うような電気代や通信費といったものが入っております。特に食料品に限らずエネルギーについてもこのところ物価上昇が非常に大きいということで、その伸びにも注目をしようと。それから、「基礎的支出項目」というものもあります。いわゆる生活必需品が網羅をされているものについても見ていく必要があると。そういう4つの指標を見ながら、どれか一つで決めるのではなく、総合的に勘案をして、考えていこうということで、労使双方の意見を伺いながら、議論を進めてきたところでございます。特に食料品については、エンゲル係数というものも見まして、特に所得が一番低い層、第一・十分位階級においては、このところエンゲル係数が上昇傾向にあるといったところも考慮した次第でございます。
それから3要素の2番目であります「賃金」については、このところ賃上げが例年続いておりまして、今年も昨年を上回るような賃金引上げが行われた、これは連合の調査あるいは経団連の調査、日本商工会議所の調査といったところでも示されております。また、賃金改定状況調査結果を見ましても、昨年以上の引き上げが行われている、もちろん水準においては、連合、経団連、日商の調査よりも低いわけですが、トレンドで見たときに、去年以上に引き上げられている、ここもちゃんと見ていく必要があるということで、水準とともにトレンドというところに注目いたしました。また、政府から配意をしてほしいということで、EU指令との関係で、最低賃金は諸外国に比べると低いと言われている、これは為替の関係が多分にあるわけですが、我が国においても中央値の60%あるいは平均値の50%という数値も見ながら議論していくということをしてまいりました。この計算するときに分母に何を使うかというのが、いくつかの取り方があり、それによって結果が違ってきます。いわゆる所定内の給与という場合と、所定内+ボーナスという場合、あるいは残業代も含めて見る場合、それぞれの取り方によって分母の大きさが変わります。その結果、分子に時間当たり賃金を持ってきたときに、中央値の何パーセント、平均値の何パーセントというのが変わってくると。こういった点については、目安全員協議会という仕組みがありますから、そちらで議論していく必要があるだろうという締めにいたしました。
3要素の3番目、「通常の事業の賃金支払能力」は、様々な指標を組み合わせながら考えていく必要があります。使用者側がかねてから主張しておられます賃金改定状況調査第4表を基本としつつ、売上高経常利益率や付加価値額といった指標も見ながら、引き上げていくだけの根拠とできるようなものがあるのではないか、明確な根拠というふうには中々ならないのですが、そういった議論をいたしました。もちろん、資本金の大きさによって、この支払能力には非常に大きな差がある。特に私どもが注目いたします中小・小規模事業者、資本金で言うと1,000 万円未満においては、支払能力が低いけれども、これも昨年よりは上昇しているのではないか、こういったデータも確認しております。ただ、いわゆる価格上昇、原材料価格、労務費といったものの価格上昇が十分に転嫁できているかどうかについては、不十分であるという認識は、公益委員としてもまだまだ価格転嫁の部分は改善の余地があると考えているところです。ただ、だからといって上げられないということにはならないであろうということで、3番目の「通常の事業の賃金支払能力」を位置づけた次第です。
その上で、各ランクの引上げ額をどうするかということで、今年は初めて、CランクをA、Bよりも1円だけ高くするという目安を示すことといたしました。これは、例えば、賃金の引き上げの状況あるいは物価の上昇率を見ると、AよりもB、BよりもCの方が物価が高くなっている、あるいは賃金の引上げ、すなわち第4表もCの方が高いといった状況を見ていくと、やはりここで金額の差を小さくしていくことは、政府の目標であり、私たちの目標でもあると思っておりますが、それを実施する良い機会ではないかと考えました。いわゆる額差の是正というところで、私どもも非常に重要であるということで、63、63、64という目安の引上げを考えて、示したわけでございます。もちろん、同じ金額の引上げであったとしても、Aランクの場合はもともとベースが高いですから、パーセンテージで見ると5.6%、Bランクは6.3%、Cランクは6.7%というように、パーセンテージはAよりB、BよりCの方が高くなるという状況があります。その分、Cランクの県の小規模の企業の方々には相当な御負担になるということは分かりつつ、今年はこういった目安を示そうなった次第でございます。
政府に対しては、例年、しっかりとした支援をしてくれと、様々な支援策が用意されていて、その支援策が十分に使われるように配慮してほしい、例えば、時間的な部分も中小・小規模企業の方からは出てきております。この短い期間で申請書を書いて出すということが中々大変だというあたりは、十分に配慮してほしいといったことは私たちの小委員会報告にも書いております。それから、地方最低賃金審議会への期待というところで、今年は、これまでで最も高い目安を示すということで、これは特に使用者側の委員の皆様からの御意見があったわけですが、発効日については、地方最低賃金審議会で十分に議論してほしい、もちろん春季の賃上げの後追いという側面があるわけで、労働側委員としてはできるだけ早く発効させるべきだという御意見があるということは承りつつ、使用者側意見の発効日については少し配慮が必要ではないかということは公益委員として十分に理解を示したというところでございます。
以上のような内容で小委員会報告をまとめましたので、お手元にあるものをお読みいただきまして、これからの地方の最低賃金の審議に生かしていただきたいと思います。
議題1の報告としてはここまでといたします。
○篠崎賃金課長
委員長、1点事務方よりよろしいでしょうか。今会長から説明いただいた小委員会報告案でございます。誤字が事務局のミスでございましたので、次の議題の前に御報告させていただきたいと思います。
○藤村会長
お願いします。
○篠崎賃金課長
小委報告の2ページの下から8行目、「これまで以上に求められ」の後の「これまでに以上に」が重複しておりますので、後段は誤記ですので、削除でございます。それから、10ページの下から3段落目の3行目、「(前回20.1%→16.9%)」とありますが、ほかの部分では「前回」と入れておりませんので、ここの「前回」は削除でございます。それから、16ページの上から3行目に「地方最低賃金議会」とありますが、「地方最低賃金審議会」の誤記でございます。こちらはHPに掲載する際は、反映する形にしたいと思っております。申し訳ございませんでした。以上です。
○藤村会長
何回も見たのですが、こういったことは発生しますね。はい、では、議題1は以上といたしまして、次、議題2「令和7年度地域別最低賃金額改定の目安について(答申)」についてです。小委員会報告をもとに、答申を取りまとめたいと思います。なお、この報告にもありますとおり、小委員会としては、政府が中小企業・小規模事業者等の生産性向上のための支援や価格転化対策に引き続き取り組むことなどの要望をさせていただいていますので、今年の答申においても、この趣旨を盛り込みたいと考えております。よろしいでしょうか。
(異議なし)
それでは、答申案を事務局から配布して読み上げていただきたいと思います。
○上条副主任
それでは、朗読いたします。令和7年8月4日。厚生労働大臣福岡資麿殿。中央最低賃金審議会会長藤村博之。
令和7年度地域別最低賃金額改定の目安について(答申)。令和7年7月11日に諮問のあった令和7年度地域別最低賃金額改定の目安について、下記のとおり答申する。
記。1 令和7年度地域別最低賃金額改定の目安については、その金額に関し意見の一致をみるに至らなかった。
2 地方最低賃金審議会における審議に資するため、上記目安に関する公益委員見解(別紙1)及び中央最低賃金審議会目安に関する小委員会報告(別紙2)を地方最低賃金審議会に提示するものとする。
3 地方最低賃金審議会の審議の結果を重大な関心をもって見守ることとし、同審議会において、別紙1の2に示されている公益委員の見解を十分参酌され、自主性を発揮されることを強く期待するものである。
4 中小企業・小規模事業者が継続的に賃上げできる環境整備の必要性については労使共通の認識であり、政府の掲げる「賃上げと投資がけん引する成長型経済の実現」と「持続的・安定的な物価上昇の下で、物価上昇を年1%程度上回る賃金上昇を賃上げのノルム(社会通念)として我が国に定着」させるためにも、特に地方、中小企業・小規模事業者に配意しつつ、生産性向上を図るとともに、官公需における対応や、価格転嫁対策を徹底し、賃上げの原資の確保につなげる取組を継続的に実施するよう政府に対し強く要望する。
5 生産性向上の支援については、可能な限り多くの企業が各種の助成金等を受給し、賃上げを実現できるように、政府の掲げる生産性向上等への支援や経営支援の一層の強化を求める。特に、事業場内で最も低い時間給を一定以上引き上げ、生産性向上に取り組んだ場合に支給される業務改善助成金については、最低賃金引上げの影響を強く受ける中小企業・小規模事業者がしっかりと活用できるよう充実するとともに、具体的事例も活用した周知等の徹底を要望する。加えて、非正規雇用労働者の処遇改善等を支援するキャリアアップ助成金、働き方改革推進支援助成金、人材確保等支援助成金等について、「賃上げ」を支援する観点から、賃上げ加算等の充実を強く要望する。
6 また、中小企業・小規模事業者の賃上げの実現に向けて、官公需における対策等を含めた価格転嫁・取引適正化の徹底、中小企業・小規模事業者の生産性向上、事業承継・M&A等の中小企業・小規模事業者の経営基盤の強化に取り組むとともに、地域で活躍する人材の育成と処遇改善を進める「中小企業・小規模事業者の賃金向上推進5か年計画」の着実な実行を要望する。
7 その際、経営強化税制、事業承継に係る在り方の検討、産業競争力強化法による税制優遇など、予算や税制等のインセンティブ制度を通じ、中小企業・小規模事業者の賃上げに向けた強力な後押しがなされることを強く要望する。
8 同時に、省力化投資促進プランの対象業種のみならず、幅広く、きめ細かな成長投資の後押し、販路開拓・海外展開の促進、マッチングの強化等の支援策の充実と支援体制の整備を通じた中小企業・小規模事業者の生産性の向上を進めるとともに、地域における消費の活性化等を通じ地域経済の好循環を図ることを要望する。
9 また、中小企業・小規模事業者がこれらの施策を一層活用できるよう、周知等を徹底するとともに、運用の改善を図ることを要望する。
10 価格転嫁対策については、下請法改正法(中小受託取引適正化法)の成立を受け、その施行に向けて、公正取引委員会の体制の抜本強化とともに、中小企業庁・業所管省庁との連携体制を早期に構築し、各業所管省庁においても、同法に基づく検査や問題事例への対処を適切に実施できるよう、執行体制の抜本強化を要望する。
11 取り分け、価格転嫁率が平均よりも低い業種を中心に業所管省庁において徹底的に業種別の価格転嫁状況の改善を図るため、中小企業庁による下請Gメン、公正取引委員会による優越Gメンといった省庁横断的な執行体制の強化に加え、中小企業庁・公正取引委員会から具体的な執行・業務のノウハウの共有を行った上で、業種別のGメン等を通じた取引環境改善の枠組みを価格転嫁率が低く課題の多い業種を所管する業所管省庁全体へと広げる等、十分な規模での執行体制を構築することを要望する。また、パートナーシップ構築宣言について、取引適正化に関する自主行動計画を制定している各業界団体の役員企業に対して宣言を働き掛けるとともに、生産性向上関連の補助金における加点措置を拡充すること等により、宣言の更なる拡大を図ることを要望する。サプライチェーンの深い層まで労務費転嫁指針の遵守が徹底されているかを重点的に確認し、必要に応じ更なる改善策を検討するとともに、更なる周知徹底に取り組むことを要望する。
12 さらに、BtoC事業では相対的に価格転嫁率が低いといった課題があるため、消費者に対して転嫁に理解を求めていくよう要望する。
13 また、いわゆる「年収の壁」への対応として、「年収の壁・支援強化パッケージ」の活用を促進することを要望する。加えて、行政機関が民間企業に業務委託を行っている場合に、年度途中の最低賃金額改定によって当該業務委託先における最低賃金の履行確保に支障が生じることがないよう、発注時における特段の配慮を要望する。
別紙1、2については省略させていただきます。以上です。
○藤村会長
はい、ありがとうございました。ただ今の答申案について御意見などございますでしょうか。
(異議なし)
ありがとうございます。ではこの案のとおり答申を取りまとめたいと思います。岸本労働基準局長にお渡ししたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
(答申文手交)
○藤村会長
では、岸本労働基準局長から一言、御挨拶を頂きたいと思います。
○岸本労働基準局長
労働基準局長の岸本でございます。答申を頂きまして、一言、御礼の御挨拶を申し上げます。
本年度の目安につきまして、答申を取りまとめていただき、誠にありがとうございました。
本年度の調査審議におきましては、最低賃金法に規定された3要素を丁寧に考慮していただき、どの指標を活用するか、また、なぜその指標を活用するか等も丁寧にみていただきました。関係者の納得感が高まるように多岐にわたる論点について真摯に御議論を尽くしてくださいました。小委員会の回数も近年にない7回という審議を行っていただき、目安を示していただいたところです。
今後、頂いた答申を都道府県労働局に伝達いたしまして、各地方最低賃金審議会における地域別最低賃金額の改定審議が円滑に進められるようにしてまいりたいと考えております。
皆様方の御尽力に改めて心より感謝申し上げまして、お礼の御挨拶とさせていただきます。長時間にわたる御審議、誠にありがとうございました。
○藤村会長
岸本局長、どうもありがとうございました。議題2は以上にしたいと思います。
続きまして、議題3「その他」についてです。資料について、事務局から説明をお願いします。
○篠崎賃金課長
事務局から、資料No.1について、御説明いたします。目安答申後の地方最低賃金審議会における審議の流れということでございます。
資料No.1の1ページを御覧ください。1ページは、令和6年度を例とした、目安答申後の地方最低賃金審議会における審議の流れの全体像でございます。ここにありますように中央最低賃金審議会において先ほど答申いただいた地域別最低賃金額改定の目安は、地方に示され、地方最低賃金審議会での地域別最低賃金に関する審議が行われます。昨年の例の日程が載せてあります。地方最低賃金審議会では、地域別最低賃金に関する審議のほか、特定最低賃金に関する審議を行っております。昨年度は8月から12月頃にかけて審議が行われ、翌年の2月までに発効しております。
続きまして、2ページは、地方最低賃金審議会における議論の結果、決定された地域別最低賃金額の一覧となっております。
3ページ以降は、労使のイニシアティブにより設定される、特定最低賃金の概要や制度の紹介等の資料です。
資料飛びまして、9ページ、10ページにつきましては、特定最低賃金の決定等の必要性の有無に関する調査審議の運営について、これまで中央最低賃金審議会における議論の結果、労使で合意されてきた事項の紹介でございます。実際の必要性の有無に関する調査審議に当たっては、これらの事項を参考に、関係労使が参加することにより、より実質的な審議が行われることが期待されております。
11ページは、特定最低賃金の審議における労使イニシアティブの促進に向けた参考事例についてでございます。特定最低賃金は労使のイニシアティブにより決定等がされるものです。そのため、これらの事例を参考に、労使イニシアティブが促進されることは、特定最低賃金がその制度趣旨に沿って運用されることに資すると考えられます。
説明は以上です。
○藤村会長
ありがとうございました。何か御質問ございますでしょうか。どうぞ、新田委員。
○新田委員
質問ではなく、意見ですけれどもよろしいでしょうか。御説明ありがとうございました。今の御説明のうち、特定最低賃金に関して、使用者側としての意見を申し上げたいと思います。
御承知のとおり、特定最低賃金は、地域別最低賃金を上回る水準が必要と認められた場合に、関係労使の申出によって特定産業の基幹的労働者に対して任意に設定されるものであります。あまねく全国各地域で決定され、原則すべての労働者に適用される地域別最低賃金とは法的位置づけがまったく異なるものと承知しております。加えまして、制度の分かりにくさや煩雑さ、さらには人材確保や賃金制度の柔軟性に対する制約となり得るなど、使用者側にとっては多くの懸念材料を含むものと理解しております。
特定最低賃金の決定あるいは改定又は廃止は、関係労使の申出に基づき、各地方最低賃金審議会の調査審議を経て行われると承知しております。2024年度に設定されている特定最低賃金224件のうち、地域別最低賃金額を下回っているものが90件に上っております。こうした産業においては地域別最低賃金額が適用されている現状にございます。このように、実質的に機能していない特定最低賃金につきましては、関係労使に意見聴取したうえで各地方最低賃金審議会において速やかに廃止を検討すべきと考えます。
一方で、健全な競争条件の確保やその産業の魅力の向上、あるいは人材の確保・定着を促す手段として、特定最低賃金制度を積極的に活用したいという意向があることも承知しております。各地域におきまして、成長が期待される産業分野について、賃金水準や企業の賃金支払能力の実態を反映した特定最低賃金額を定めることによって、産業集積地の魅力向上を図りつつ、地域別最低賃金額については急激な引上げを抑制する等、現下の地域経済や雇用の実情を踏まえて、特定最低賃金制度を活用していくことも一案と考えております。
いずれにしても、各地域の関係労使のイニシアティブによって設定される特定最低賃金のあり方につきましては、関係労使双方にとって納得感のある結論が得られるように、当事者間で検討を重ねていただきたいと考えているところでございます。
私からは以上です。
○藤村会長
ありがとうございました。労働者側からはいかがですか。仁平委員、どうぞ。
○仁平委員
ありがとうございます。ここにいる皆様には釈迦に説法だと思っておりますが、特賃は、労使交渉を補完・代替する役割を持っており、労働条件の向上または事業の公正競争をより高いレベルで確保し、産業ごとの企業横断的な最低賃金水準を決定する仕組みであり、そのことを通じ、当該産業の魅力を高め、産業の持続的発展を促すものであります。
労働組合のない企業で働く労働者の賃金の底上げによる産業内賃金格差の是正や、入口賃金の優位性の確保による人材の確保・定着、公正競争の確保による産業の健全な発展など、とりわけ日本は今労働力人口の減少に直面する中で、産業間の人材獲得競争の激化が進んでいますが、こうしたことに鑑みれば、特賃の意義や必要性はますます高まっているのではないかと考えております。こうした意義・目的は、地方労働局や地方審議会委員において改めて共有していく必要があるのではないかと考えております。
資料の御説明いただきましたが、そこにも記載してございますとおり、特賃は関係労使のイニシアティブによる建設的な議論に基づき決定するべきものでございますし、資料の11ページには参考の事例もまとめていただいているところでございます。また、国会等でも様々な議論が行われているところかと思います。全会一致を原則とする慣行が杓子定規に運用され、データに基づくことなく一方的に必要性なしの結論が主張されるケースもあると聞き及んでおります。
こうした状況は、2002年の全協報告にある「労使当事者間の意志疎通」「実質的な審議」という考え方に反してるのではないかと思っております。地賃の審議においても、先程来、データに基づく審議というものを重視してまいりましたので、特賃においても同様にしっかりデータに基づき審議すべきではないかと思います。今年の4月末には、厚生労働省本省から各県の労働局に対し、特に新任の審議委員の方に対する特賃の審議に際した留意事項の資料が展開されたと承知しております。新任の委員のみならず、特賃の審議に際してはこの内容の周知徹底と尊重を是非進めていただきたいと思っております。
また、数年にわたって地賃を大きく下回る場合等の廃止を検討すべきという意見に関して、労使が一致して「必要性なし」と判断し、この間。金額改定が見送られてきたわけではないのではないかというのが労側の認識でございます。まず、データに基づく必要性審議と適切な金額改定を行うことが先決ではないかと思います。
また、現行制度の基本形がつくられた1986年から現在に至るまで、くくり直しなどを除けば、特賃の実質的な新設はゼロでなのではないかと思っております。40年前とは経済も社会情勢も大きく変化しているところであります。地賃と特賃それぞれの意義と役割について改めて再認識し、運用ルールの見直しも考えていく必要があるのではないかと考えております。
以上でございます。
○藤村会長
はい、ありがとうございました。ほかに何かございますでしょうか。よろしいでしょうか。
それではこれをもちまして、第71回「中央最低賃金審議会」を終了いたします。本日はお疲れ様でした。ありがとうございました。