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2025年8月4日 令和7年第7回目安に関する小委員会 議事録
日時
令和7年8月4日(月)10:00~19:28
場所
厚生労働省省議室
(東京都千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎5号館9階)
(東京都千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎5号館9階)
出席者
公益代表委員
藤村委員長、戎野委員、小西委員、首藤委員
労働者代表委員
伊藤委員、永井委員、仁平委員、水崎委員
使用者代表委員
大下委員、佐久間委員、土井委員、新田委員
事務局
岸本労働基準局長、田中大臣官房審議官、篠崎賃金課長、伊㔟主任中央賃金指導官、
大野調査官、山﨑賃金課長補佐、安藤賃金課長補佐、上条副主任中央賃金指導官
藤村委員長、戎野委員、小西委員、首藤委員
労働者代表委員
伊藤委員、永井委員、仁平委員、水崎委員
使用者代表委員
大下委員、佐久間委員、土井委員、新田委員
事務局
岸本労働基準局長、田中大臣官房審議官、篠崎賃金課長、伊㔟主任中央賃金指導官、
大野調査官、山﨑賃金課長補佐、安藤賃金課長補佐、上条副主任中央賃金指導官
議題
令和7年地域別最低賃金額改定の目安について
議事
<第1回全体会議>
○藤村委員長
ただいまから第7回目安に関する小委員会を開催いたします。本日は所用により大野室長は遅れての参加になります。
それではまず、お手元の資料について、事務局からご説明お願いいたします。
○安藤賃金課長補佐
本日も、お手元の資料のほかに、各種団体からの要望書を回覧しておりますので、適宜ご参照いただければと思います。
それでは、参考資料No.1をご覧ください。第1回の目安小委員会で御説明した「足下の経済状況等に関する補足資料」のうち、更新した部分のみ抜粋したものになります。こちらのページ番号は、これまでの資料と便宜上同じにしています。
職業安定業務統計及び雇用保険事業統計の6月分が公表されましたので、9ページ、10ページ、34から37ページ、40から43ページを更新しております。
次に、参考資料No.2をご覧ください。第1回の目安小委員会で御説明した「主要統計資料」のうち、更新した部分のみ抜粋したものになります。こちらのページ番号は、これまでの資料と便宜上同じにしています。
労働力調査及び職業安定業務統計の6月分が公表されましたので、1ページの完全失業者数、2ページの求人倍率において、2025年4月から6月の四半期の数値と、単月の6月の数値を追加しています。
また、3ページの有効求人倍率、4ページの完全失業率、37ページのパートタイム労働者の1求人票あたりの募集賃金平均額、38ページのパートタイム労働者の1求人票あたりの募集賃金下限額の6月の数値を追加しています。
資料の説明は以上です。
○藤村委員長
はい、ありがとうございます。ただいまのご説明につきまして、何かご質問、ご意見ございますでしょうか。
(質疑なし)
では、配付資料については以上といたします。
前回の小委員会においては、目安の取りまとめに向けて鋭意調整を進めましたが、論点が多岐にわたっていることもあり、それぞれの論点について納得感が高まるような丁寧な記載にしたいということで、例年以上に、議論が長引いております。また労使双方から公益委員が考える金額について提示して欲しいというお求めがありました。その後の検討の時間も考えまして、今回に持ち越したところでございます。本日については、まずは公益の考える金額について公益委員で検討の後、公労・公使で個別にお伝えし、さらに議論を深めていきたい、こういう形式で行いたいとと思いますが、よろしいでしょうか。
(異議なし)
それでは、労使双方の委員の皆様は控え室でお待ちください。事務局から連絡事項をお願いします。
○安藤賃金課長補佐
それでは、まず公益委員間での検討を行うとのことですので、労働者側委員、使用者側委員の皆様は控え室へご案内させていただきます。
(労働者側委員、使用者側委員 退出)
それでは、傍聴者の皆様はご退出ください。
(傍聴者 退出)
<第2回全体会議>
○藤村委員長
本日2回目の全体会議を開催いたします。
委員の皆様のお手元に、公益委員見解を配布しております。事務局から公益委員見解の読み上げをしていただきます。お願いします。
○上条副主任
それでは、公益委員見解案を朗読いたします。
令和7年度地域別最低賃金額改定の目安に関する公益委員見解。令和7年8月4日。
1 令和7年度地域別最低賃金額改定の引上げ額の目安は、次の表に掲げる金額とする。令和7年度地域別最低賃金額改定の引上げ額の目安。A、埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、大阪。63円。B、北海道、宮城、福島、茨城、栃木、群馬、新潟、富山、石川、福井、山梨、長野、岐阜、静岡、三重、滋賀、京都、兵庫、奈良、和歌山、島根、岡山、広島、山口、徳島、香川、愛媛、福岡。63円。C、青森、岩手、秋田、山形、鳥取、高知、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄。64円。
2(1)目安小委員会は、今年度の目安審議に当たって、令和5年全員協議会報告の1(2)で「最低賃金法第9条第2項の3要素のデータに基づき労使で丁寧に議論を積み重ねて目安を導くことが非常に重要であり、今後の目安審議においても徹底すべきである」と合意されたことを踏まえ、特に地方最低賃金審議会における自主性発揮が確保できるよう整備充実や取捨選択を行った資料を基にするとともに、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025年改訂版」及び「経済財政運営と改革の基本方針2025」に配意し、最低賃金法第9条第2項の3要素を考慮した審議を行ってきた。
ア 労働者の生計費。労働者の生計費については、関連する指標である消費者物価指数を見ると、「持家の帰属家賃を除く総合」(ウエイト8,420)は、昨年の改定後の地域別最低賃金額が発効した時期である令和6年10月から令和7年6月までの期間で見た場合は平均3.9%で、前年同期の令和5年10月から令和6年6月までの平均3.2%から引き続き高い水準となっている(ここでいうウエイトとは、基準年(令和2年)における家計の消費支出金額全体に対する割合(1万分比)を指す)。
また、最低賃金に近い賃金水準の労働者の購買力を維持する観点から、昨年度に着目した、年間15回以上の購入頻度である食パン、鶏卵などの生活必需品を含む支出項目である、年間購入頻度階級別指数で見た「頻繁に購入」する品目(ウエイト1,215)の指標については、令和6年10月から令和7年6月までの期間で見た場合は平均4.2%で、前年同期の令和5年10月から令和6年6月までの平均5.4%から低下したものの、引き続き高い水準となっている。
一方、「持家の帰属家賃を除く総合」の直近の消費者物価指数の上昇要因に関して、主な項目別に寄与度を見ると、生活必需品である食料及びエネルギーの合計の寄与が全体の約7割を占めており、昨年と比較して伸びが顕著になっている。また、エンゲル係数(消費支出に占める食料費の割合)については近年、上昇傾向にあり、令和6年は勤労者世帯で26.5%となっている。また、最低賃金に近い賃金水準の労働者の食費に関する支出の実態として、勤労者世帯のうち最も所得の低いグループである「世帯収入第一・十分位階級」では27.5%と更に高い水準となっている。こうした生活必需品における価格の上昇やエンゲル係数の上昇は、最低賃金に近い賃金水準で働く労働者の家計に直接的な影響を与え、実質的な購買力を押し下げる要因ともなっていると考えられるが、食料やエネルギーについては、「頻繁に購入」する品目だけに含まれるものではない。
このため、昨年度の審議で参考とした「頻繁に購入」する品目は、最低賃金に近い賃金水準の労働者の購買力を踏まえる観点から、依然として重視すべき指標であることに変わりはないものの、様々な生活必需品の急激な上昇が生じていることに鑑みれば、「頻繁に購入」する品目に加え、食料やエネルギーの多くの品目を含む「1か月に1回程度購入」や、この両者の中に含まれない穀物などを含めた食料全般を示す「食料」、食料・エネルギーに限らず生活の基礎となる品目を含む「基礎的支出項目」などの生活必需品との関連が深い消費者物価の指標をより広く確認し、最低賃金に近い賃金水準の労働者の購買力を取り巻く状況について総合的に評価を行っていく必要がある。
こうした中、まず、最低賃金に近い賃金水準の労働者の生活に密接に関連する「食料」(ウエイト2,626)について見ると、令和6年10月から令和7年6月までの期間は平均6.4%で、前年同期の令和5年10月から令和6年6月までの平均5.5%に続き、高い水準となっている。
次に、食料や家賃、光熱費、保健医療サービスなどの生活必需品については、これらを含む指標である「基礎的支出項目」(ウエイト5,121)については、令和6年10月から令和7年6月までの期間で見た場合は平均5.0%で、前年同期の令和5年10月から令和6年6月までの平均2.9%に比べ高い上昇率となっている。
そして、「頻繁に購入」する品目に次いで購入頻度が高く(年間9回以上15回未満)、食料、電気代、通信料などの生活必需品で構成される「1か月に1回程度購入」する品目(ウエイト1,136)については、令和6年10月から令和7年6月までの期間で見た場合は平均6.7%で、前年同期の令和5年10月から令和6年6月までの平均1.1%から大幅に高い水準で推移している。
消費者物価指数については、「持家の帰属家賃を除く総合」を基準に議論を行ってきた。こうした中、最低賃金の引上げにより時間当たり賃金が上昇した者がその増加分の賃金の多くを消費に回している調査結果が出ていることや、「頻繁に購入」する品目、「食料」、「基礎的支出項目」、「1か月に1回程度購入」する品目などの生活必需品を含む項目のウエイトが消費支出全体で相当程度の割合を占めていることを踏まえると、生活必需品を含む支出項目を中心とした消費者物価の上昇に伴い、最低賃金に近い賃金水準の労働者においては、生活が苦しくなっている者もいると考えられる。
こうした状況を踏まえれば、今年度においては、労働者の生計費について、最低賃金に近い賃金水準の労働者の購買力を維持する観点から、昨年10月以降の「持家の帰属家賃を除く総合」が示す水準を一定程度上回ることを考慮しつつ、生活必需品を含む支出項目に係る消費者物価の上昇も勘案する必要がある。
イ 賃金。賃金に関する指標を見ると、春季賃上げ妥結状況における賃金上昇率は、連合の第7回(最終)集計結果で、全体で5.25%(昨年5.10%)で、平成3年(5.66%)以来33年ぶりの5%超えであった昨年を上回っている。また中小でも4.65%(昨年4.45%)で2年連続で4%を上回っている。さらには、有期・短時間・契約等労働者の賃上げ額(時給)の加重平均の引上げ率の概算については5.81%(昨年5.74%、一昨年5.01%)となり、3年連続で5%台の高水準であり、いずれの数字も上昇傾向での推移が続いている。
経団連による春季労使交渉月例賃金引上げ結果(第1回集計)では、大手企業で 5.38%(昨年5.58%)でこちらも2年連続で5%を超え、また中小企業でも4.35%(昨年4.01%)で2年連続で4%を超えており、いずれも高水準で推移している。
また、日商による中小企業の賃金改定に関する調査の正社員の結果では全体で4.03%(昨年3.62%)、20人以下の企業で3.54%(昨年3.34%)、パート・アルバイトの結果では全体で4.21%(昨年3.43%)で、いずれも昨年から約0.2~0.8ポイントの大幅な上昇を見せている。また、パート・アルバイトの20人以下では3.30%(昨年3.88%)で、2年連続の3%超えとなっている。
厚生労働省による30人未満の企業の賃金改定状況調査結果については、第4表①②における賃金上昇率(ランク計)は2.5%であり、最低賃金が時間額のみで表示されるようになった平成14年以降最大値であった昨年の結果(2.3%)を上回っている。また、継続労働者に限定した第4表③における賃金上昇率(ランク計)は3.2%となっており、これも昨年の結果(2.8%)を上回った。この第4表は、目安審議における重要な参考資料であり、同表における賃金上昇率を十分に考慮する必要がある。
大企業を対象に含む結果である春季賃上げ妥結状況における賃金上昇率と、30人未満の小規模な企業のみを対象とする賃金改定状況調査結果を見ると、企業規模によって賃金上昇率の水準には開きが見られる一方、企業規模に関わらず昨年を上回る賃金引上げの状況が見られる。
また、EU指令においては、最低賃金の水準の適正さを評価するための参照指標を用いることとされ、例として、賃金の中央値の60%、平均値の50%などがあげられている。日本における賃金の中央値に対する最低賃金の割合について見ると、OECDによる2024年の数値は46.8%であり、フランスの62.5%、イギリスの61.1%等の先進国と比較すると我が国の最低賃金は低い水準となっている。ただし、賃金構造基本統計調査に基づき、2024年時点(2024年度最低賃金全国加重平均額1,055円)の所定内給与で試算した場合、一般労働者の賃金中央値の59.1%、平均値の50.9%となるが、OECDの国際比較と同様、ボーナスや残業代を含めて時給換算した場合は、中央値の48.4%、平均値の40.9%という結果になっている。一方、我が国と欧州では制度・雇用慣行の一部に異なる点があることに加え、一般労働者のボーナスや残業代も含めて時給換算するのかなど、どのような要素をもって比較するのが適当なのかという点について議論があり、EU指令の取扱いについては、今後の検討課題である。
ウ 通常の事業の賃金支払能力。通常の事業の賃金支払能力については、個々の企業の賃金支払能力を指すものではないと解され、これまでの目安審議においても、業況の厳しい産業や企業の状況のみを見て議論するのではなく、各種統計資料を基に議論を行ってきた。
関連する指標を見ると、法人企業統計における企業利益のうち、経常利益については、令和5年度は資本金1,000万円以上で11.3%、1,000万円未満で28.8%の増加となっている。また、売上高経常利益率については、資本金1,000万円以上では、四半期ごとで令和6年は6~10%程度で推移、令和7年の第1四半期は7.0%となっており、安定して改善の傾向にある。
また、従業員一人当たり付加価値額について、令和3年度は4.9%増加、令和4年度は2.2%増加、令和5年度は全体で4.7%増加と、足下で改善の傾向にある。さらに令和5年度について、資本金1,000万円未満の製造業で7.2%増加、非製造業で4.8%増加と、引き続き改善している。
この従業員一人当たり付加価値額に表れているように、一人当たりの労働生産性は額面ベースで高まる傾向にある一方で、付加価値額に占める人件費の割合である労働分配率は足下で低下の傾向にある。令和3年度で2.6ポイント低下、令和4年度で1.4ポイント低下、令和5年度で2.4ポイント低下し、令和5年度は65.1%となっている。また、企業規模が小さいほど労働分配率は高く、令和5年度は資本金1,000万円以上で62.8%、資本金1,000万円未満で80.0%となっているが、資本金1,000万円未満においても足下では令和4年度から4.6ポイント低下している状況にある。
日銀短観における売上高経常利益率の大企業と中小企業との開きについては、令和5年度では製造業で6.79ポイントの差、非製造業で4.61ポイントの差だったのに対し、令和6年度では製造業で7.00ポイントの差、非製造業で4.21ポイントの差となっており、引き続き二極分離の状態にあるものの、一部では縮小の傾向にある。
加えて、中小企業・小規模事業者が賃上げの原資を確保するためにも一層重要性が増している価格転嫁に関して、中小企業庁が公表した令和7年3月の価格交渉促進月間のフォローアップ調査(前回は令和6年9月調査)によると、価格交渉の状況については、「発注側企業から申し入れがあり、価格交渉が行われた」割合は、前回から約3ポイント増(28.3%→31.5%)、「価格交渉が行われた」割合も前回から約3ポイント増(86.4%→89.2%)、「価格交渉が行われなかった」割合は減少(13.6%→10.8%)している。発注企業からの申し入れは、さらに浸透しつつあるものの、引き続き、受注企業の意に反して交渉が行われなかった者が約1割ある。
労務費に係る価格交渉の状況について見ると、価格交渉が行われた企業(64.2%)のうち7割超において、労務費についても交渉を実施しており(70.4%→73.2%)、「労務費が上昇し、価格交渉を希望したが出来なかった」企業の割合は減少している(7.6%→6.4%)。
また、コスト全体の価格転嫁率については約3ポイント増加(49.7%→52.4%)、一部でも価格転嫁できた割合は約3ポイント増加(79.9%→83.1%)し、「転嫁できなかった」「マイナスとなった」割合が減少(前回20.1%→16.9%)するなど、価格転嫁の状況は改善してはいるが、1~3割しか価格転嫁できなかった企業の割合は25.0%、全く価格転嫁できなかった割合は15.8%と、引き続き、二極分離の状態にある。
労務費の転嫁率は、前回から約4%ポイント上昇(44.7%→48.6%)したものの、原材料費の転嫁率(54.5%)と比較して約6ポイント低い水準にある。
倒産件数については、新型コロナウイルス感染症流行下である令和2年から令和4年にかけて、資金繰り支援等の各種施策により、倒産件数は低水準で推移したものの、令和4年から3年連続で増加し、直近の令和6年では10,006件となっている。一方、令和7年1~6月の物価高(インフレ)倒産については、449件(前年同期484件、7.2%減)発生しており、過去最多を記録した昨年から減少している。
なお、賃金改定状況調査結果の第4表における賃金上昇率は、企業において賃金支払能力等も勘案して賃金決定がなされた結果であると解釈できるところ、春季賃上げ妥結状況の結果と大きな差が生じている要因は、それぞれの調査対象企業の規模等が異なるためであると考えられる。また、法人企業統計における従業員一人当たり付加価値額を見ると、一般に資本金規模が小さい企業ほど労働生産性は低いことからも、企業規模により、賃上げ原資の程度が異なることに留意する必要がある。
エ 各ランクの引上げ額の目安。最低賃金について、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025年改訂版」等において、「適切な価格転嫁と生産性向上支援により、影響を受ける中小企業・小規模事業者の賃上げを後押しし、2020年代に全国平均1,500円という高い目標の達成に向け、たゆまぬ努力を継続することとし、官民で、最大限の取組を5年間で集中的に実施する」こと、「また、EU指令においては、賃金の中央値の60%や平均値の50%が最低賃金設定に当たっての参照指標として加盟国に示されている。最低賃金の引上げについては、我が国と欧州では制度・雇用慣行の一部に異なる点があることにも留意しつつ、これらに比べて、我が国の最低賃金が低い水準となっていること及び上記の施策パッケージも踏まえ、法定3要素のデータに基づき、中央最低賃金審議会において議論いただく」こととされていることも踏まえ、公労使で真摯に検討を重ねてきた。
今年の政府方針として、成長型経済への移行に向け、中小企業と地域に重点を置き、数多くの具体策が示されているところ、今後それらが実行されることが重要であり、成長戦略の要とされた持続的な賃上げの環境整備に向けて、「中小企業・小規模事業者の賃金向上推進5か年計画」に掲げる施策の迅速な実施が期待される。
一方で、最低賃金の改定額の審議に当たっては、最低賃金法第9条第2項の3要素のデータに基づき、公労使同数の委員で構成される最低賃金審議会において、丁寧に議論を積み重ねて結論を導くことが、目安額に対する納得感を高める上でも非常に重要であることから、今回の審議でもこの点を再確認し、徹底するように検討を進めてきた。
また、最低賃金の審議に当たっては、全体の平均値の賃上げ率とともに、賃上げに取り組めない、あるいは労務費等のコスト増を十分に価格転嫁できていない企業が一定程度存在することを十分に考慮すべきという意見も踏まえて議論を行った。
この結果、ア~ウで触れたように、①労働者の生計費については、消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)は、昨年10月から今年6月までで平均3.9%となるなど、昨年に引き続き高い水準となっており、また、「頻繁に購入」する品目、「食料」、「基礎的支出項目」、「1か月に1回程度購入」する品目といった生活必需品を含む支出項目に係る消費者物価も昨年10月から今年6月までの9か月平均が、4.2%から6.7%の高い水準となっている。
また、②賃金については、春季賃上げ妥結状況における賃金引上げ結果に関して全体で5%台と33年ぶりの高い水準となった昨年を上回る結果となっており、有期・短時間・契約等労働者の賃上げ額(時給・加重平均)についても5%台後半の引上げで昨年を上回る水準となっている。さらに、賃金改定状況調査結果第4表①②における今年の賃金上昇率は2.5%で、昨年を上回り平成14年以降最大のものとなっているほか、第4表③における賃金上昇率も3.2%と、昨年を上回る水準の引上げとなっている。
③通常の事業の賃金支払能力については、売上高経常利益や従業員一人当たり付加価値額が高い水準で推移するなど、景気や企業の利益において改善の傾向にある。
なお、企業において賃金支払能力等も勘案した賃金決定の結果であると解釈される30人未満の企業の賃金改定状況調査結果の第4表における賃金上昇率が平成14年度以降で過去最大となっていることも、考慮すべきである。
しかし、売上高経常利益率や価格転嫁率が示すように、大企業と中小企業の差は改善の傾向にあるものの、依然として賃上げ原資を確保することが難しい企業も存在し、二極分離の状態にあると考えられる。
さらに、第4表と春季賃上げ妥結状況の差からも、小規模事業者は賃金支払能力が相対的に低い可能性がある。
そうした中で、最低賃金は、企業の経営状況にかかわらず、労働者を雇用する全ての企業に適用され、それを下回る場合には罰則の対象となることも考慮すれば、引上げ率の水準には一定の限界があると考えられる。
これらを総合的に勘案し、昨年度に引き続き、消費者物価の上昇が続いていることから労働者の生計費を重視することに加えて、中小企業を含めた賃上げの流れが続いていることに着目した。
最低賃金に近い賃金水準の労働者の購買力を維持する必要があることを考慮するとともに、賃上げの流れの維持・拡大を図り、非正規雇用労働者や中小企業・小規模事業者にも波及させることや、最低賃金法第1条に規定するとおり、最低賃金制度の目的は、賃金の低廉な労働者について賃金の最低額を保障し、その労働条件の改善を図り、もって、労働者の生活の安定等に資するとともに、国民経済の健全な発展に寄与するものであることにも留意すると、今年度の各ランクの引上げ額の目安(以下「目安額」という。)を検討するに当たっては全国加重平均6.0%(63円)を基準として検討することが適当であると考えられる。
各ランクの目安額については、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025年改訂版」等において、「地域別最低賃金の最高額に対する最低額の比率を引き上げる等、地域間格差の是正を図る」とされていることも踏まえ、地域間格差への配慮の観点から少なくとも地域別最低賃金の最高額に対する最低額の比率を引き続き上昇させていくことが必要である。
その上で、消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)の対前年上昇率はAランクで3.8%、Bランクで3.9%、Cランクで4.1%となっており、ランク間の差は昨年より縮小しているものの、A・BランクよりCランクの上昇率が高くなっていることを考慮する必要がある。また、賃金改定状況調査結果の第4表①②③における賃金上昇率は、Cランク、Bランク、Aランクの順に高くなっている。さらに、雇用情勢としてB・Cランクが相対的に良い状況にあること等のデータを考慮する必要がある。これらのことから、CランクをA・Bランクより相対的に高くすることが考えられる。
これらのことを考慮すれば、下位ランクの目安額が上位ランクの目安額を初めて上回ることが適当であり、具体的には、Aランク63円(5.6%)、Bランク63円(6.3%)、Cランク64円(6.7%)とすることが考えられる。この結果、仮に目安どおりに各都道府県で引上げが行われた場合は、最高額に対する最低額の比率は81.8%から82.8%となり、地域間格差は比率の面で縮小することとなる。また、地域間の金額の差についても改善することとなる。
オ 政府に対する要望。目安額の検討に当たっては、最低賃金法第9条第2項の3要素を総合的に勘案することを原則とし、今年度は、特に生活必需品を含む消費者物価の上昇が続いていることや、春季賃上げ妥結状況を始めとする賃金上昇率が昨年を上回る水準となっていることを重視するとともに、売上高経常利益率等の賃金支払能力に関する項目が改善傾向にあることなどから、目安額を決めた。
一方で、労務費を含む価格転嫁の状況は改善傾向にあるものの依然として二極分離の状態にあることや、倒産件数自体は足下で増加しているといった企業経営を取り巻く環境を踏まえれば、一部の中小企業・小規模事業者の賃金支払能力の点で厳しいものであると言わざるを得ない。また、都市部以外の地域においては小規模事業者がその地域の生活を維持していくためのセーフティネットとしての役割を果たしているところもあり、従業員の処遇改善と企業の持続的発展との両立を図る観点への配慮も必要である。
中小企業・小規模事業者が継続的に賃上げできる環境整備の必要性については労使共通の認識であり、政府の掲げる「賃上げと投資がけん引する成長型経済の実現」と「持続的・安定的な物価上昇の下で、物価上昇を年1%程度上回る賃金上昇を賃上げのノルム(社会通念)として我が国に定着」させるためにも、特に地方、中小企業・小規模事業者に配意しつつ、生産性向上を図るとともに、官公需における対応や、価格転嫁対策を徹底し、賃上げの原資の確保につなげる取組を継続的に実施するよう政府に対し強く要望する。
生産性向上の支援については、可能な限り多くの企業が各種の助成金等を受給し、賃上げを実現できるように、政府の掲げる生産性向上等への支援や経営支援の一層の強化を求める。特に、事業場内で最も低い時間給を一定以上引き上げ、生産性向上に取り組んだ場合に支給される業務改善助成金については、最低賃金引上げの影響を強く受ける中小企業・小規模事業者がしっかりと活用できるよう充実するとともに、具体的事例も活用した周知等の徹底を要望する。加えて、非正規雇用労働者の処遇改善等を支援するキャリアアップ助成金、働き方改革推進支援助成金、人材確保等支援助成金等について、「賃上げ」を支援する観点から、賃上げ加算等の充実を強く要望する。
また、中小企業・小規模事業者の賃上げの実現に向けて、官公需における対策等を含めた価格転嫁・取引適正化の徹底、中小企業・小規模事業者の生産性向上、事業承継・M&A等の中小企業・小規模事業者の経営基盤の強化に取り組むとともに、地域で活躍する人材の育成と処遇改善を進める「中小企業・小規模事業者の賃金向上推進5か年計画」の着実な実行を要望する。
その際、経営強化税制、事業承継に係る在り方の検討、産業競争力強化法による税制優遇など、予算や税制等のインセンティブ制度を通じ、中小企業・小規模事業者の賃上げに向けた強力な後押しがなされることを強く要望する。
同時に、省力化投資促進プランの対象業種のみならず、幅広く、きめ細かな成長投資の後押し、販路開拓・海外展開の促進、マッチングの強化等の支援策の充実と支援体制の整備を通じた中小企業・小規模事業者の生産性の向上を進めるとともに、地域における消費の活性化等を通じ地域経済の好循環を図ることを要望する。
また、中小企業・小規模事業者がこれらの施策を一層活用できるよう、周知等を徹底するとともに、運用の改善を図ることを要望する。
価格転嫁対策については、下請法改正法(中小受託取引適正化法)の成立を受け、その施行に向けて、公正取引委員会の体制の抜本強化とともに、中小企業庁・業所管省庁との連携体制を早期に構築し、各業所管省庁においても、同法に基づく検査や問題事例への対処を適切に実施できるよう、執行体制の抜本強化を要望する。
取り分け、価格転嫁率が平均よりも低い業種を中心に業所管省庁において徹底的に業種別の価格転嫁状況の改善を図るため、中小企業庁による下請Gメン、公正取引委員会による優越Gメンといった省庁横断的な執行体制の強化に加え、中小企業庁・公正取引委員会から具体的な執行・業務のノウハウの共有を行った上で、業種別のGメン等を通じた取引環境改善の枠組みを価格転嫁率が低く課題の多い業種を所管する業所管省庁全体へと広げる等、十分な規模での執行体制を構築することを要望する。また、パートナーシップ構築宣言について、取引適正化に関する自主行動計画を制定している各業界団体の役員企業に対して宣言を働き掛けるとともに、生産性向上関連の補助金における加点措置を拡充すること等により、宣言の更なる拡大を図ることを要望する。サプライチェーンの深い層まで労務費転嫁指針の遵守が徹底されているかを重点的に確認し、必要に応じ更なる改善策を検討するとともに、更なる周知徹底に取り組むことを要望する。
さらに、BtoC事業では相対的に価格転嫁率が低いといった課題があるため、消費者に対して転嫁に理解を求めていくよう要望する。
また、いわゆる「年収の壁」への対応として、「年収の壁・支援強化パッケージ」の活用を促進することを要望する。
カ 地方最低賃金審議会への期待等。目安は、地方最低賃金審議会が審議を進めるに当たって、全国的なバランスを配慮するという観点から参考にされるべきものであり、地方最低賃金審議会の審議決定を拘束するものではない。
こうした前提の下、目安小委員会の公益委員としては、目安を十分に参酌しながら、地方最低賃金審議会において、地域別最低賃金の審議に際し、都道府県別に示される地域の経済・雇用の実態等(消費者物価指数の上昇率、最低賃金の引上げによる影響率など)をデータに基づいて見極めつつ、自主性を発揮することを期待する。
その際、今年度の目安額は、最低賃金が消費者物価を一定程度上回る水準である必要があることや、賃金上昇率が増加傾向にあること、地域間格差の是正を引き続き図ること等を特に考慮して検討されたものであることにも配意いただきたいと考える。
なお、各地域の最低賃金額改定の審議に当たっては、最低賃金法第9条第2項の3要素のデータに基づき、公労使で丁寧に議論を積み重ねることが非常に重要であり、政府や自治体の各種支援策によって、企業の生産性向上とともに、労働者の賃金上昇が図られることが期待されるが、各種支援策の詳細な制度設計は今後行われるものもあることに留意が必要である。
地域別最低賃金の発効日については、未組織労働者にも春闘における賃上げ結果を速やかに波及させるという地域別最低賃金の改定の趣旨も踏まえ、10月1日等の早い段階で発効すべき、就業調整の影響への懸念はあるものの、それを理由に就業調整と関係ない最低賃金に近い賃金水準の労働者の賃上げを遅らせるべきではない、という考えもある。その一方、近年、地域別最低賃金の引上げ額が過去最高を更新し影響率が大幅に上昇していることに伴い、最低賃金の改定に必要となる賃金原資が増大していることへの対応や、最低賃金・賃金の引上げに対する政府の支援策利用時に求められる設備投資の計画の策定等に当たって、経営的・時間的な余裕のない中小企業・小規模事業者が増加しているとの意見がある。また、いわゆる「年収の壁」を意識して、年末を中心に一部の労働者が行っている就業調整のタイミングが年々早まり、人手不足がさらに深刻化して企業経営に影響が出ているといった声も挙がっている。このため、こうした状況に留意するとともに、法的強制力を伴う地域別最低賃金の実効性を確実に担保する観点から、最低賃金法第14条第2項において、発効日は各地方最低賃金議会の公労使の委員間で議論して決定できるとされていることを踏まえ、引上げ額とともに発効日についても十分に議論を行うよう要望する。また、中央最低賃金審議会が地方最低賃金審議会の審議の結果を重大な関心をもって見守ることを要望する。
なお、公益委員見解を取りまとめるに当たって参照した主なデータは別添のとおりである。
(2)生活保護水準と最低賃金との比較では、昨年度に引き続き乖離が生じていないことが確認された。
なお、来年度以降の目安審議においても、最低賃金法第9条第3項に基づき、引き続き、その時点における最新のデータに基づいて生活保護水準と最低賃金との比較を行い、乖離が生じていないか確認することが適当と考える。
(3)最低賃金引上げの影響については、近年大幅な引上げがなされているが、雇用情勢等の指標の状況を見ると大きな影響は確認できていないが、令和5年全員協議会報告の3(1)に基づき、引き続き、影響率や雇用者数等を注視しつつ、慎重に検討していくことが必要である。今年度は、これまでもみてきた指標に加え、影響率の詳細な分析や、雇用保険被保険者数、雇用保険適用事業所数、都市部と郡部の企業別の影響把握なども中央最低賃金審議会として行ったところであり、今後も丁寧に影響把握を行った上で、公労使で目安の検討を行うことが適当である。
また、資料に記載はありませんが、仮に目安どおりに各都道府県で引上げが行われた場合の全国加重平均は1,118円、全国加重平均の上昇額は63円となります。
以上です。
○藤村委員長 ありがとうございました。公益委員といたしましては、この公益委員見解を小委員会の報告として地方最低賃金審議会に示すように、中央最低賃金審議会に報告したいと考えておりますが、よろしいでしょうか。
(異議なし)
それでは、この公益委員見解を、小委員会の報告として地方最低賃金審議会に示すように、中央最低賃金審議会に報告したいと思います。
それでは、目安に関する小委員会報告を取りまとめたいと思いますので、配布をお願いします。事務局から読み上げをお願いします。
○上条副主任
小委報告の別添の参考資料は、先ほど配布したもので代えさせていただきます。
それでは朗読します。中央最低賃金審議会目安に関する小委員会報告。令和7年8月4日。
1 はじめに。令和7年度の地域別最低賃金額改定の目安については、累次にわたり会議を開催し、目安額の根拠等についてそれぞれ真摯な議論が展開されるなど、十分審議を尽くしたところである。
2 労働者側見解。労働者側委員は、今年の春季生活闘争は、33年ぶりに5%台の高い水準と言われた昨年をさらに上回る成果が報告されたが、新たなステージに移った日本経済を安定した巡航軌道へ導くためには、労働組合のない職場で働く労働者に対しても、最低賃金の大幅な引上げを通じ、これを波及させる必要があり、最低賃金法第1条にある法の目的を踏まえて、審議を進める必要があると主張した。
昨年を上回る賃金・初任給の引上げは、経営・事業環境や企業業績の状況が決して良いとは言えない中においても、労使交渉を通じて、人材の確保・定着など、今後の事業継続を見据えた「人への投資」を経営側が英断した結果であると述べた。
地域別最低賃金は、生存権を確保した上で労働の対価としてふさわしいナショナルミニマム水準へ引き上げる必要があり、今年は一つの通過点として、全都道府県で1,000円超の実現は必須であること、また、中期的には「一般労働者の賃金中央値の6割」という目標を念頭に来年以降も、継続的に水準を引き上げる必要があることから、本年は昨年以上の大幅な改定に向けた目安を提示すべきと主張した。
現在の最低賃金は絶対額として最低生計費を賄えていない上、昨年の改定以降の消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)は足元で4%強の高水準で推移しており、物価の上昇基調は続いている。「頻繁に購入」する品目の消費者物価指数にはこの間高騰してきた「コメ」が含まれていないため、最低賃金近傍で働く者の生活は昨年以上に苦しく、生活実感をいかにデータから汲み取るのかという観点は今年も重要であると述べた。
地域間額差は、地方の中小・零細企業の事業継続・発展の厳しさに拍車をかける一因となり、昨年は、B・Cランクを中心に、目安を大幅に超える引上げが相次いだが、地域の自主性がこれまで以上に発揮された結果である一方、地方審議における目安の意義が問われかねない事態である。目安の妥当性と納得性を高め、目安を軸としたより建設的な議論を促す観点からも、昨年の実績も念頭に置いた中賃としてのメッセージを示すべきと主張した。
「企業の倒産件数」は、中長期的にみれば低い水準で、統計上の雇用情勢は堅調である。最低賃金の引上げと雇用維持とは相反しておらず、最低賃金の引上げに伴い、むしろ労働力人口は増加傾向にあることからも、雇用情勢への影響は極めて限定的と主張した。
企業の経常利益は実績ベースでみて堅調に推移しており、中小企業の労働分配率の水準は高いものの近年では低下傾向にあり、総じて賃金支払能力は問題なく、その上で、中小・零細事業所における賃上げの実現性をさらに高めるためには、より広範な支払い能力の改善・底上げが重要であり、政府の各種支援策の利活用状況や効果の検証を踏まえた一層の制度拡充と利活用の推進を求めると主張した。
加えて、社会の賃上げの流れを速やかに波及させるという観点では、10月1日発効を中心に、より早期の発効も念頭に議論を進めるべきと主張した。
以上を踏まえ、本年度は「誰もが時給1,000 円」への到達と、生活できる賃金水準の実現に向けてこれまで以上に前進する目安が必要であり、あわせて、地域間額差の是正につながる目安を示すべきであると主張した。
労働者側委員としては、上記主張が十分に反映されずに取りまとめられた下記1の公益委員見解については、不満の意を表明した。
3 使用者側見解。使用者側委員は、最低賃金引上げの必要性は十分認識している中、その影響が大きい中小企業の賃上げには、原材料や労務費等のコスト増加分の十分な価格転嫁と生産性向上を図り、原資を確保することが必要であり、規模、業種によっては堅調・好調な企業がある一方、物価高や最低賃金を含む人件費の高騰等分を十分に価格転嫁できている企業はまだ少なく、なかでも、Cランク等の地方や小規模事業者の業況は特に厳しいと主張した。
また、満足に価格転嫁ができない状況で、全ての企業に適用される最低賃金の過度な引上げは、経営をより一層圧迫しかねないと主張した。
最低賃金法に定める決定の3要素である「生計費・賃金・通常の事業の賃金支払能力」を各種統計資料から的確に読み取るとともに、「通常の事業の賃金支払能力」に重きを置き、3要素を総合的に表す「賃金改定状況調査結果」の、とりわけ第4表の賃金上昇率を重視して議論を重ねていく、この基本的な考え方に一切変わりはないと述べた。
その上で、今年度は、明確な根拠・データに基づいた納得感ある目安額の提示がこれまで以上に求められ、これまで以上に3要素のデータを丁寧かつバランスよく見ることが重要と主張した。
具体的な目安額について、各地方最低賃金審議会の議論に資する、合理的かつ納得性の高い根拠・ロジックを示すことが中央最低賃金審議会の役割との共通認識のもと、審議を尽くすべきと強く主張した。
近年の最低賃金は毎年度、過去最高を更新し続け、地域別最低賃金の決定にあたっては、目安額を下限として、目安にどれだけ上乗せするかという議論が繰り広げられている地域があり、その際、3要素によらない隣接地域との競争や最下位の回避等を意図した審議が散見され、「賃金の低廉な労働者に対するセーフティーネット」という最低賃金本来の目的から乖離している可能性を指摘した。
目安小委員会報告が示す引上げ額はあくまで目安であり、地域の実態に基づき各地方最低賃金審議会で目安を参考に議論し、地域別最低賃金額を決定することを確認するとともに、目安審議で用いた統計資料を各地方最低賃金審議会でも活用できるよう、都道府県別データの存在の有無を確認しつつ議論したいと述べた。
地域別最低賃金の「発効日」は法律により10月1日に定められていない中、近年の大幅引上げによって、これまで以上に事業者側の相当な準備期間が必要であることに加えて、実効性確保の観点から、周知期間の十分な確保や「年収の壁」による就業調整による人手不足の一層の深刻化等の様々な影響も考慮すべきであることを踏まえ、各地方最低賃金審議会が実態に即して発効日を柔軟に決定することが望ましいと主張した。
使用者側委員としては、上記主張が十分に反映されずに取りまとめられた下記1の公益委員見解については、不満の意を表明した。
4 意見の不一致。本小委員会(以下「目安小委員会」という。)としては、これらの意見を踏まえ目安を取りまとめるべく努めたところであるが、労使の意見が一致せず、目安を定めるに至らなかった。
5 公益委員見解及びその取扱い。公益委員としては、今年度の目安審議については、令和5年全員協議会報告の1(2)で「最低賃金法第9条第2項の3要素のデータに基づき労使で丁寧に議論を積み重ねて目安を導くことが非常に重要であり、今後の目安審議においても徹底すべきである」と合意されたことを踏まえ、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025年改訂版」及び「経済財政運営と改革の基本方針2025」に配意しつつ、各種指標を総合的に勘案し、下記1のとおり公益委員の見解を取りまとめたものである。
目安小委員会としては、地方最低賃金審議会における円滑な審議に資するため、これを公益委員見解として地方最低賃金審議会に示すよう総会に報告することとした。
また、地方最低賃金審議会の自主性発揮及び審議の際の留意点に関し、下記のとおり示し、併せて総会に報告することとした。
さらに、中小企業・小規模事業者が継続的に賃上げできる環境整備の必要性については労使共通の認識であり、政府の掲げる「賃上げと投資がけん引する成長型経済の実現」と「持続的・安定的な物価上昇の下で、物価上昇を年1%程度上回る賃金上昇を賃上げのノルム(社会通念)として我が国に定着」させるためにも、特に地方、中小企業・小規模事業者に配意しつつ、生産性向上を図るとともに、官公需における対応や、価格転嫁対策を徹底し、賃上げの原資の確保につなげる取組を継続的に実施するよう政府に対し強く要望する。
生産性向上の支援については、可能な限り多くの企業が各種の助成金等を受給し、賃上げを実現できるように、政府の掲げる生産性向上等への支援や経営支援の一層の強化を求める。特に、事業場内で最も低い時間給を一定以上引き上げ、生産性向上に取り組んだ場合に支給される業務改善助成金については、最低賃金引上げの影響を強く受ける中小企業・小規模事業者がしっかりと活用できるよう充実するとともに、具体的事例も活用した周知等の徹底を要望する。加えて、非正規雇用労働者の処遇改善等を支援するキャリアアップ助成金、働き方改革推進支援助成金、人材確保等支援助成金等について、「賃上げ」を支援する観点から、賃上げ加算等の充実を強く要望する。
さらに、中小企業・小規模事業者の賃上げの実現に向けて、官公需における対策等を含めた価格転嫁・取引適正化の徹底、中小企業・小規模事業者の生産性向上、事業承継・M&A等の中小企業・小規模事業者の経営基盤の強化に取り組むとともに、地域で活躍する人材の育成と処遇改善を進める「中小企業・小規模事業者の賃金向上推進5か年計画」の着実な実行を要望する。
その際、経営強化税制、事業承継に係る在り方の検討、産業競争力強化法による税制優遇など、予算や税制等のインセンティブ制度を通じ、中小企業・小規模事業者の賃上げに向けた強力な後押しがなされることを強く要望する。
同時に、省力化投資促進プランの対象業種のみならず、幅広く、きめ細やかな成長投資の後押し、販路開拓・海外展開の促進、マッチングの強化等の支援策の充実と支援体制の整備を通じた中小企業・小規模事業者の生産性の向上を進めるとともに、地域における消費の活性化等を通じ地域経済の好循環を図ることを要望する。
また、中小企業・小規模事業者がこれらの施策を一層活用できるよう、周知等を徹底するとともに、運用の改善を図ることを要望する。
価格転嫁対策については、下請法改正法(中小受託取引適正化法)の成立を受け、その施行に向けて、公正取引委員会の体制の抜本強化とともに、中小企業庁・業所管省庁との連携体制を早期に構築し、各業所管省庁においても、同法に基づく検査や問題事例への対処を適切に実施できるよう、執行体制の抜本強化を要望する。
取り分け、価格転嫁率が平均よりも低い業種を中心に業所管省庁において徹底的に業種別の価格転嫁状況の改善を図るため、中小企業庁による下請Gメン、公正取引委員会による優越Gメンといった省庁横断的な執行体制の強化に加え、中小企業庁・公正取引委員会から具体的な執行・業務のノウハウの共有を行った上で、業種別のGメン等を通じた取引環境改善の枠組みを価格転嫁率が低く課題の多い業種を所管する業所管省庁全体へと広げる等、十分な規模での執行体制を構築することを要望する。また、パートナーシップ構築宣言について、取引適正化に関する自主行動計画を制定している各業界団体の役員企業に対して宣言を働き掛けるとともに、生産性向上関連の補助金における加点措置を拡充すること等により、宣言の更なる拡大を図ることを要望する。サプライチェーンの深い層まで労務費転嫁指針の遵守が徹底されているかを重点的に確認し、必要に応じ更なる改善策を検討するとともに、更なる周知徹底に取り組むことを要望する。
さらに、BtoC事業では相対的に価格転嫁率が低いといった課題があるため、消費者に対して転嫁に理解を求めていくよう要望する。
また、いわゆる「年収の壁」への対応として、「年収の壁・支援強化パッケージ」の活用を促進することを要望する。加えて、行政機関が民間企業に業務委託を行っている場合に、年度途中の最低賃金額改定によって当該業務委託先における最低賃金の履行確保に支障が生じることがないよう、発注時における特段の配慮を要望する。
記以下は省略いたします。
○藤村委員長
ありがとうございました。今の内容を小委員会報告としてとりまとめようと思いますが、よろしいでしょうか。
(異議なし)
それでは、審議会に私から報告することとしたいと思います。事務局から、中央最低賃金審議会の本審の日程の連絡をお願いします。
○安藤賃金課長補佐
央最低賃金審議会の本審はこのあと20時から、この部屋、厚生労働省省議室で行います。
○藤村委員長
20時からということですので、皆様よろしくお願いいたします。仁平委員から発言求められましたので、どうぞ。
○仁平委員
一言、労働側代表として、御礼を兼ねて申し上げてもよろしいでしょうか。社会的注目度が高まる中で、我々は大きなプレッシャーを感じながら、審議に臨んでまいりました。ただいま、まさに読み上げていただいた中で確認したところですが、公労使がそれぞれの立場から、まさにデータに基づく真摯な議論を尽くした結果だったと思っております。改めて、藤村会長はじめ公益委員の皆様、使用者側の委員の皆様、非常に努力して様々なデータ等を調整していただいた厚労省事務局の皆様方に厚く感謝申し上げたいと思います。どうもありがとうございました。
○藤村委員長
佐久間委員、どうぞ。
○佐久間委員
ありがとうございます。使用者側委員を代表して、一言私からも申し上げたいと思います。今年度は最低賃金引上げに対する社会的な期待感が非常に高まっている中、未だ価格転嫁が十分ではなく、賃上げ原資の確保に苦慮している中小企業にとって、厳しい経営環境の中での中央最低賃金審議会 目安に関する小委員会の開催となりました。「骨太の方針2025」等で示された「最低賃金を2020年代に全国平均1,500円」との政府方針への配意が諮問で求められ、そのあまりにも急激で高い目標額に戸惑いながらも、使用者側委員として「たゆまぬ努力」を図るべく、今年度の目安審議に入ったところであります。
我々使用者側委員としては、公労使三者構成の中央最低賃金審議会の場で、明確な根拠・データに基づいた納得感のある目安額を提示することを堅持しなくては、最低賃金決定のプロセス自体が形骸化してしまうとの強い認識のもと、努めてまいりました。そして、この認識は、今年度の審議において、公労使共通の思いとして常に意識されてきたように感じています。
今回の審議に当たりましては、消費者物価指数、賃上げの状況、売上高対経常利益率、労働生産性の動向など各種の指標と今まで以上に向き合い、傾向を分析し、時間をかけながら、真摯かつ丁寧な議論をしてきた結果として、公益委員から引上げの目安額とその根拠等の見解をご提示いただいたと認識しております。
しかしながら、今回の公益委員見解の内容も「意見が一致した」とまで申し上げるには、使用者側にとって大変負担の大きい内容でありますが、この内容を目安小委員会報告としてとりまとめることはやむを得ないと受け止めております。
今後は、中央での目安審議と並行して進められております、各地方最低賃金審議会においても、データに基づく納得感のある審議決定が行われるよう、厚生労働省から各都道府県の労働局を通じて徹底するよう呼びかけていただくとともに、参照すべき地域別の統計データの提示、提供、充実等の支援をしていただきたいと考えております。
最後に、目安のとりまとめに向けて、最大限のご尽力を賜りました藤村先生をはじめ公益の先生方に、まず感謝を申し上げたいと存じます。ありがとうございました。また、労働側委員におかれましては、とりまとめに向けて真摯な審議を続けていただきましたことに改めて敬意を表したいと思います。そして、何より、例年以上に多くなった各種資料のとりまとめや資料作成、会場の準備・設営など、審議会の運営におきまして、迅速かつ丁寧にご対応を賜りました厚生労働省 事務局の皆様に深く感謝を申し上げます。本当にありがとうございました。
以上でございます。
○藤村委員長
はい、どうもありがとうございました。公益委員といたしましても、事務局の支援を受けながら労使双方の意見を聞き、何とかここまでとりまとめることができました。ご協力に心より感謝申し上げたいと思います。
それでは、本日の小委員会はこれをもちまして終了といたします。長時間の審議、大変お疲れ様でございました。ありがとうございました。
○藤村委員長
ただいまから第7回目安に関する小委員会を開催いたします。本日は所用により大野室長は遅れての参加になります。
それではまず、お手元の資料について、事務局からご説明お願いいたします。
○安藤賃金課長補佐
本日も、お手元の資料のほかに、各種団体からの要望書を回覧しておりますので、適宜ご参照いただければと思います。
それでは、参考資料No.1をご覧ください。第1回の目安小委員会で御説明した「足下の経済状況等に関する補足資料」のうち、更新した部分のみ抜粋したものになります。こちらのページ番号は、これまでの資料と便宜上同じにしています。
職業安定業務統計及び雇用保険事業統計の6月分が公表されましたので、9ページ、10ページ、34から37ページ、40から43ページを更新しております。
次に、参考資料No.2をご覧ください。第1回の目安小委員会で御説明した「主要統計資料」のうち、更新した部分のみ抜粋したものになります。こちらのページ番号は、これまでの資料と便宜上同じにしています。
労働力調査及び職業安定業務統計の6月分が公表されましたので、1ページの完全失業者数、2ページの求人倍率において、2025年4月から6月の四半期の数値と、単月の6月の数値を追加しています。
また、3ページの有効求人倍率、4ページの完全失業率、37ページのパートタイム労働者の1求人票あたりの募集賃金平均額、38ページのパートタイム労働者の1求人票あたりの募集賃金下限額の6月の数値を追加しています。
資料の説明は以上です。
○藤村委員長
はい、ありがとうございます。ただいまのご説明につきまして、何かご質問、ご意見ございますでしょうか。
(質疑なし)
では、配付資料については以上といたします。
前回の小委員会においては、目安の取りまとめに向けて鋭意調整を進めましたが、論点が多岐にわたっていることもあり、それぞれの論点について納得感が高まるような丁寧な記載にしたいということで、例年以上に、議論が長引いております。また労使双方から公益委員が考える金額について提示して欲しいというお求めがありました。その後の検討の時間も考えまして、今回に持ち越したところでございます。本日については、まずは公益の考える金額について公益委員で検討の後、公労・公使で個別にお伝えし、さらに議論を深めていきたい、こういう形式で行いたいとと思いますが、よろしいでしょうか。
(異議なし)
それでは、労使双方の委員の皆様は控え室でお待ちください。事務局から連絡事項をお願いします。
○安藤賃金課長補佐
それでは、まず公益委員間での検討を行うとのことですので、労働者側委員、使用者側委員の皆様は控え室へご案内させていただきます。
(労働者側委員、使用者側委員 退出)
それでは、傍聴者の皆様はご退出ください。
(傍聴者 退出)
<第2回全体会議>
○藤村委員長
本日2回目の全体会議を開催いたします。
委員の皆様のお手元に、公益委員見解を配布しております。事務局から公益委員見解の読み上げをしていただきます。お願いします。
○上条副主任
それでは、公益委員見解案を朗読いたします。
令和7年度地域別最低賃金額改定の目安に関する公益委員見解。令和7年8月4日。
1 令和7年度地域別最低賃金額改定の引上げ額の目安は、次の表に掲げる金額とする。令和7年度地域別最低賃金額改定の引上げ額の目安。A、埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、大阪。63円。B、北海道、宮城、福島、茨城、栃木、群馬、新潟、富山、石川、福井、山梨、長野、岐阜、静岡、三重、滋賀、京都、兵庫、奈良、和歌山、島根、岡山、広島、山口、徳島、香川、愛媛、福岡。63円。C、青森、岩手、秋田、山形、鳥取、高知、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄。64円。
2(1)目安小委員会は、今年度の目安審議に当たって、令和5年全員協議会報告の1(2)で「最低賃金法第9条第2項の3要素のデータに基づき労使で丁寧に議論を積み重ねて目安を導くことが非常に重要であり、今後の目安審議においても徹底すべきである」と合意されたことを踏まえ、特に地方最低賃金審議会における自主性発揮が確保できるよう整備充実や取捨選択を行った資料を基にするとともに、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025年改訂版」及び「経済財政運営と改革の基本方針2025」に配意し、最低賃金法第9条第2項の3要素を考慮した審議を行ってきた。
ア 労働者の生計費。労働者の生計費については、関連する指標である消費者物価指数を見ると、「持家の帰属家賃を除く総合」(ウエイト8,420)は、昨年の改定後の地域別最低賃金額が発効した時期である令和6年10月から令和7年6月までの期間で見た場合は平均3.9%で、前年同期の令和5年10月から令和6年6月までの平均3.2%から引き続き高い水準となっている(ここでいうウエイトとは、基準年(令和2年)における家計の消費支出金額全体に対する割合(1万分比)を指す)。
また、最低賃金に近い賃金水準の労働者の購買力を維持する観点から、昨年度に着目した、年間15回以上の購入頻度である食パン、鶏卵などの生活必需品を含む支出項目である、年間購入頻度階級別指数で見た「頻繁に購入」する品目(ウエイト1,215)の指標については、令和6年10月から令和7年6月までの期間で見た場合は平均4.2%で、前年同期の令和5年10月から令和6年6月までの平均5.4%から低下したものの、引き続き高い水準となっている。
一方、「持家の帰属家賃を除く総合」の直近の消費者物価指数の上昇要因に関して、主な項目別に寄与度を見ると、生活必需品である食料及びエネルギーの合計の寄与が全体の約7割を占めており、昨年と比較して伸びが顕著になっている。また、エンゲル係数(消費支出に占める食料費の割合)については近年、上昇傾向にあり、令和6年は勤労者世帯で26.5%となっている。また、最低賃金に近い賃金水準の労働者の食費に関する支出の実態として、勤労者世帯のうち最も所得の低いグループである「世帯収入第一・十分位階級」では27.5%と更に高い水準となっている。こうした生活必需品における価格の上昇やエンゲル係数の上昇は、最低賃金に近い賃金水準で働く労働者の家計に直接的な影響を与え、実質的な購買力を押し下げる要因ともなっていると考えられるが、食料やエネルギーについては、「頻繁に購入」する品目だけに含まれるものではない。
このため、昨年度の審議で参考とした「頻繁に購入」する品目は、最低賃金に近い賃金水準の労働者の購買力を踏まえる観点から、依然として重視すべき指標であることに変わりはないものの、様々な生活必需品の急激な上昇が生じていることに鑑みれば、「頻繁に購入」する品目に加え、食料やエネルギーの多くの品目を含む「1か月に1回程度購入」や、この両者の中に含まれない穀物などを含めた食料全般を示す「食料」、食料・エネルギーに限らず生活の基礎となる品目を含む「基礎的支出項目」などの生活必需品との関連が深い消費者物価の指標をより広く確認し、最低賃金に近い賃金水準の労働者の購買力を取り巻く状況について総合的に評価を行っていく必要がある。
こうした中、まず、最低賃金に近い賃金水準の労働者の生活に密接に関連する「食料」(ウエイト2,626)について見ると、令和6年10月から令和7年6月までの期間は平均6.4%で、前年同期の令和5年10月から令和6年6月までの平均5.5%に続き、高い水準となっている。
次に、食料や家賃、光熱費、保健医療サービスなどの生活必需品については、これらを含む指標である「基礎的支出項目」(ウエイト5,121)については、令和6年10月から令和7年6月までの期間で見た場合は平均5.0%で、前年同期の令和5年10月から令和6年6月までの平均2.9%に比べ高い上昇率となっている。
そして、「頻繁に購入」する品目に次いで購入頻度が高く(年間9回以上15回未満)、食料、電気代、通信料などの生活必需品で構成される「1か月に1回程度購入」する品目(ウエイト1,136)については、令和6年10月から令和7年6月までの期間で見た場合は平均6.7%で、前年同期の令和5年10月から令和6年6月までの平均1.1%から大幅に高い水準で推移している。
消費者物価指数については、「持家の帰属家賃を除く総合」を基準に議論を行ってきた。こうした中、最低賃金の引上げにより時間当たり賃金が上昇した者がその増加分の賃金の多くを消費に回している調査結果が出ていることや、「頻繁に購入」する品目、「食料」、「基礎的支出項目」、「1か月に1回程度購入」する品目などの生活必需品を含む項目のウエイトが消費支出全体で相当程度の割合を占めていることを踏まえると、生活必需品を含む支出項目を中心とした消費者物価の上昇に伴い、最低賃金に近い賃金水準の労働者においては、生活が苦しくなっている者もいると考えられる。
こうした状況を踏まえれば、今年度においては、労働者の生計費について、最低賃金に近い賃金水準の労働者の購買力を維持する観点から、昨年10月以降の「持家の帰属家賃を除く総合」が示す水準を一定程度上回ることを考慮しつつ、生活必需品を含む支出項目に係る消費者物価の上昇も勘案する必要がある。
イ 賃金。賃金に関する指標を見ると、春季賃上げ妥結状況における賃金上昇率は、連合の第7回(最終)集計結果で、全体で5.25%(昨年5.10%)で、平成3年(5.66%)以来33年ぶりの5%超えであった昨年を上回っている。また中小でも4.65%(昨年4.45%)で2年連続で4%を上回っている。さらには、有期・短時間・契約等労働者の賃上げ額(時給)の加重平均の引上げ率の概算については5.81%(昨年5.74%、一昨年5.01%)となり、3年連続で5%台の高水準であり、いずれの数字も上昇傾向での推移が続いている。
経団連による春季労使交渉月例賃金引上げ結果(第1回集計)では、大手企業で 5.38%(昨年5.58%)でこちらも2年連続で5%を超え、また中小企業でも4.35%(昨年4.01%)で2年連続で4%を超えており、いずれも高水準で推移している。
また、日商による中小企業の賃金改定に関する調査の正社員の結果では全体で4.03%(昨年3.62%)、20人以下の企業で3.54%(昨年3.34%)、パート・アルバイトの結果では全体で4.21%(昨年3.43%)で、いずれも昨年から約0.2~0.8ポイントの大幅な上昇を見せている。また、パート・アルバイトの20人以下では3.30%(昨年3.88%)で、2年連続の3%超えとなっている。
厚生労働省による30人未満の企業の賃金改定状況調査結果については、第4表①②における賃金上昇率(ランク計)は2.5%であり、最低賃金が時間額のみで表示されるようになった平成14年以降最大値であった昨年の結果(2.3%)を上回っている。また、継続労働者に限定した第4表③における賃金上昇率(ランク計)は3.2%となっており、これも昨年の結果(2.8%)を上回った。この第4表は、目安審議における重要な参考資料であり、同表における賃金上昇率を十分に考慮する必要がある。
大企業を対象に含む結果である春季賃上げ妥結状況における賃金上昇率と、30人未満の小規模な企業のみを対象とする賃金改定状況調査結果を見ると、企業規模によって賃金上昇率の水準には開きが見られる一方、企業規模に関わらず昨年を上回る賃金引上げの状況が見られる。
また、EU指令においては、最低賃金の水準の適正さを評価するための参照指標を用いることとされ、例として、賃金の中央値の60%、平均値の50%などがあげられている。日本における賃金の中央値に対する最低賃金の割合について見ると、OECDによる2024年の数値は46.8%であり、フランスの62.5%、イギリスの61.1%等の先進国と比較すると我が国の最低賃金は低い水準となっている。ただし、賃金構造基本統計調査に基づき、2024年時点(2024年度最低賃金全国加重平均額1,055円)の所定内給与で試算した場合、一般労働者の賃金中央値の59.1%、平均値の50.9%となるが、OECDの国際比較と同様、ボーナスや残業代を含めて時給換算した場合は、中央値の48.4%、平均値の40.9%という結果になっている。一方、我が国と欧州では制度・雇用慣行の一部に異なる点があることに加え、一般労働者のボーナスや残業代も含めて時給換算するのかなど、どのような要素をもって比較するのが適当なのかという点について議論があり、EU指令の取扱いについては、今後の検討課題である。
ウ 通常の事業の賃金支払能力。通常の事業の賃金支払能力については、個々の企業の賃金支払能力を指すものではないと解され、これまでの目安審議においても、業況の厳しい産業や企業の状況のみを見て議論するのではなく、各種統計資料を基に議論を行ってきた。
関連する指標を見ると、法人企業統計における企業利益のうち、経常利益については、令和5年度は資本金1,000万円以上で11.3%、1,000万円未満で28.8%の増加となっている。また、売上高経常利益率については、資本金1,000万円以上では、四半期ごとで令和6年は6~10%程度で推移、令和7年の第1四半期は7.0%となっており、安定して改善の傾向にある。
また、従業員一人当たり付加価値額について、令和3年度は4.9%増加、令和4年度は2.2%増加、令和5年度は全体で4.7%増加と、足下で改善の傾向にある。さらに令和5年度について、資本金1,000万円未満の製造業で7.2%増加、非製造業で4.8%増加と、引き続き改善している。
この従業員一人当たり付加価値額に表れているように、一人当たりの労働生産性は額面ベースで高まる傾向にある一方で、付加価値額に占める人件費の割合である労働分配率は足下で低下の傾向にある。令和3年度で2.6ポイント低下、令和4年度で1.4ポイント低下、令和5年度で2.4ポイント低下し、令和5年度は65.1%となっている。また、企業規模が小さいほど労働分配率は高く、令和5年度は資本金1,000万円以上で62.8%、資本金1,000万円未満で80.0%となっているが、資本金1,000万円未満においても足下では令和4年度から4.6ポイント低下している状況にある。
日銀短観における売上高経常利益率の大企業と中小企業との開きについては、令和5年度では製造業で6.79ポイントの差、非製造業で4.61ポイントの差だったのに対し、令和6年度では製造業で7.00ポイントの差、非製造業で4.21ポイントの差となっており、引き続き二極分離の状態にあるものの、一部では縮小の傾向にある。
加えて、中小企業・小規模事業者が賃上げの原資を確保するためにも一層重要性が増している価格転嫁に関して、中小企業庁が公表した令和7年3月の価格交渉促進月間のフォローアップ調査(前回は令和6年9月調査)によると、価格交渉の状況については、「発注側企業から申し入れがあり、価格交渉が行われた」割合は、前回から約3ポイント増(28.3%→31.5%)、「価格交渉が行われた」割合も前回から約3ポイント増(86.4%→89.2%)、「価格交渉が行われなかった」割合は減少(13.6%→10.8%)している。発注企業からの申し入れは、さらに浸透しつつあるものの、引き続き、受注企業の意に反して交渉が行われなかった者が約1割ある。
労務費に係る価格交渉の状況について見ると、価格交渉が行われた企業(64.2%)のうち7割超において、労務費についても交渉を実施しており(70.4%→73.2%)、「労務費が上昇し、価格交渉を希望したが出来なかった」企業の割合は減少している(7.6%→6.4%)。
また、コスト全体の価格転嫁率については約3ポイント増加(49.7%→52.4%)、一部でも価格転嫁できた割合は約3ポイント増加(79.9%→83.1%)し、「転嫁できなかった」「マイナスとなった」割合が減少(前回20.1%→16.9%)するなど、価格転嫁の状況は改善してはいるが、1~3割しか価格転嫁できなかった企業の割合は25.0%、全く価格転嫁できなかった割合は15.8%と、引き続き、二極分離の状態にある。
労務費の転嫁率は、前回から約4%ポイント上昇(44.7%→48.6%)したものの、原材料費の転嫁率(54.5%)と比較して約6ポイント低い水準にある。
倒産件数については、新型コロナウイルス感染症流行下である令和2年から令和4年にかけて、資金繰り支援等の各種施策により、倒産件数は低水準で推移したものの、令和4年から3年連続で増加し、直近の令和6年では10,006件となっている。一方、令和7年1~6月の物価高(インフレ)倒産については、449件(前年同期484件、7.2%減)発生しており、過去最多を記録した昨年から減少している。
なお、賃金改定状況調査結果の第4表における賃金上昇率は、企業において賃金支払能力等も勘案して賃金決定がなされた結果であると解釈できるところ、春季賃上げ妥結状況の結果と大きな差が生じている要因は、それぞれの調査対象企業の規模等が異なるためであると考えられる。また、法人企業統計における従業員一人当たり付加価値額を見ると、一般に資本金規模が小さい企業ほど労働生産性は低いことからも、企業規模により、賃上げ原資の程度が異なることに留意する必要がある。
エ 各ランクの引上げ額の目安。最低賃金について、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025年改訂版」等において、「適切な価格転嫁と生産性向上支援により、影響を受ける中小企業・小規模事業者の賃上げを後押しし、2020年代に全国平均1,500円という高い目標の達成に向け、たゆまぬ努力を継続することとし、官民で、最大限の取組を5年間で集中的に実施する」こと、「また、EU指令においては、賃金の中央値の60%や平均値の50%が最低賃金設定に当たっての参照指標として加盟国に示されている。最低賃金の引上げについては、我が国と欧州では制度・雇用慣行の一部に異なる点があることにも留意しつつ、これらに比べて、我が国の最低賃金が低い水準となっていること及び上記の施策パッケージも踏まえ、法定3要素のデータに基づき、中央最低賃金審議会において議論いただく」こととされていることも踏まえ、公労使で真摯に検討を重ねてきた。
今年の政府方針として、成長型経済への移行に向け、中小企業と地域に重点を置き、数多くの具体策が示されているところ、今後それらが実行されることが重要であり、成長戦略の要とされた持続的な賃上げの環境整備に向けて、「中小企業・小規模事業者の賃金向上推進5か年計画」に掲げる施策の迅速な実施が期待される。
一方で、最低賃金の改定額の審議に当たっては、最低賃金法第9条第2項の3要素のデータに基づき、公労使同数の委員で構成される最低賃金審議会において、丁寧に議論を積み重ねて結論を導くことが、目安額に対する納得感を高める上でも非常に重要であることから、今回の審議でもこの点を再確認し、徹底するように検討を進めてきた。
また、最低賃金の審議に当たっては、全体の平均値の賃上げ率とともに、賃上げに取り組めない、あるいは労務費等のコスト増を十分に価格転嫁できていない企業が一定程度存在することを十分に考慮すべきという意見も踏まえて議論を行った。
この結果、ア~ウで触れたように、①労働者の生計費については、消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)は、昨年10月から今年6月までで平均3.9%となるなど、昨年に引き続き高い水準となっており、また、「頻繁に購入」する品目、「食料」、「基礎的支出項目」、「1か月に1回程度購入」する品目といった生活必需品を含む支出項目に係る消費者物価も昨年10月から今年6月までの9か月平均が、4.2%から6.7%の高い水準となっている。
また、②賃金については、春季賃上げ妥結状況における賃金引上げ結果に関して全体で5%台と33年ぶりの高い水準となった昨年を上回る結果となっており、有期・短時間・契約等労働者の賃上げ額(時給・加重平均)についても5%台後半の引上げで昨年を上回る水準となっている。さらに、賃金改定状況調査結果第4表①②における今年の賃金上昇率は2.5%で、昨年を上回り平成14年以降最大のものとなっているほか、第4表③における賃金上昇率も3.2%と、昨年を上回る水準の引上げとなっている。
③通常の事業の賃金支払能力については、売上高経常利益や従業員一人当たり付加価値額が高い水準で推移するなど、景気や企業の利益において改善の傾向にある。
なお、企業において賃金支払能力等も勘案した賃金決定の結果であると解釈される30人未満の企業の賃金改定状況調査結果の第4表における賃金上昇率が平成14年度以降で過去最大となっていることも、考慮すべきである。
しかし、売上高経常利益率や価格転嫁率が示すように、大企業と中小企業の差は改善の傾向にあるものの、依然として賃上げ原資を確保することが難しい企業も存在し、二極分離の状態にあると考えられる。
さらに、第4表と春季賃上げ妥結状況の差からも、小規模事業者は賃金支払能力が相対的に低い可能性がある。
そうした中で、最低賃金は、企業の経営状況にかかわらず、労働者を雇用する全ての企業に適用され、それを下回る場合には罰則の対象となることも考慮すれば、引上げ率の水準には一定の限界があると考えられる。
これらを総合的に勘案し、昨年度に引き続き、消費者物価の上昇が続いていることから労働者の生計費を重視することに加えて、中小企業を含めた賃上げの流れが続いていることに着目した。
最低賃金に近い賃金水準の労働者の購買力を維持する必要があることを考慮するとともに、賃上げの流れの維持・拡大を図り、非正規雇用労働者や中小企業・小規模事業者にも波及させることや、最低賃金法第1条に規定するとおり、最低賃金制度の目的は、賃金の低廉な労働者について賃金の最低額を保障し、その労働条件の改善を図り、もって、労働者の生活の安定等に資するとともに、国民経済の健全な発展に寄与するものであることにも留意すると、今年度の各ランクの引上げ額の目安(以下「目安額」という。)を検討するに当たっては全国加重平均6.0%(63円)を基準として検討することが適当であると考えられる。
各ランクの目安額については、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025年改訂版」等において、「地域別最低賃金の最高額に対する最低額の比率を引き上げる等、地域間格差の是正を図る」とされていることも踏まえ、地域間格差への配慮の観点から少なくとも地域別最低賃金の最高額に対する最低額の比率を引き続き上昇させていくことが必要である。
その上で、消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)の対前年上昇率はAランクで3.8%、Bランクで3.9%、Cランクで4.1%となっており、ランク間の差は昨年より縮小しているものの、A・BランクよりCランクの上昇率が高くなっていることを考慮する必要がある。また、賃金改定状況調査結果の第4表①②③における賃金上昇率は、Cランク、Bランク、Aランクの順に高くなっている。さらに、雇用情勢としてB・Cランクが相対的に良い状況にあること等のデータを考慮する必要がある。これらのことから、CランクをA・Bランクより相対的に高くすることが考えられる。
これらのことを考慮すれば、下位ランクの目安額が上位ランクの目安額を初めて上回ることが適当であり、具体的には、Aランク63円(5.6%)、Bランク63円(6.3%)、Cランク64円(6.7%)とすることが考えられる。この結果、仮に目安どおりに各都道府県で引上げが行われた場合は、最高額に対する最低額の比率は81.8%から82.8%となり、地域間格差は比率の面で縮小することとなる。また、地域間の金額の差についても改善することとなる。
オ 政府に対する要望。目安額の検討に当たっては、最低賃金法第9条第2項の3要素を総合的に勘案することを原則とし、今年度は、特に生活必需品を含む消費者物価の上昇が続いていることや、春季賃上げ妥結状況を始めとする賃金上昇率が昨年を上回る水準となっていることを重視するとともに、売上高経常利益率等の賃金支払能力に関する項目が改善傾向にあることなどから、目安額を決めた。
一方で、労務費を含む価格転嫁の状況は改善傾向にあるものの依然として二極分離の状態にあることや、倒産件数自体は足下で増加しているといった企業経営を取り巻く環境を踏まえれば、一部の中小企業・小規模事業者の賃金支払能力の点で厳しいものであると言わざるを得ない。また、都市部以外の地域においては小規模事業者がその地域の生活を維持していくためのセーフティネットとしての役割を果たしているところもあり、従業員の処遇改善と企業の持続的発展との両立を図る観点への配慮も必要である。
中小企業・小規模事業者が継続的に賃上げできる環境整備の必要性については労使共通の認識であり、政府の掲げる「賃上げと投資がけん引する成長型経済の実現」と「持続的・安定的な物価上昇の下で、物価上昇を年1%程度上回る賃金上昇を賃上げのノルム(社会通念)として我が国に定着」させるためにも、特に地方、中小企業・小規模事業者に配意しつつ、生産性向上を図るとともに、官公需における対応や、価格転嫁対策を徹底し、賃上げの原資の確保につなげる取組を継続的に実施するよう政府に対し強く要望する。
生産性向上の支援については、可能な限り多くの企業が各種の助成金等を受給し、賃上げを実現できるように、政府の掲げる生産性向上等への支援や経営支援の一層の強化を求める。特に、事業場内で最も低い時間給を一定以上引き上げ、生産性向上に取り組んだ場合に支給される業務改善助成金については、最低賃金引上げの影響を強く受ける中小企業・小規模事業者がしっかりと活用できるよう充実するとともに、具体的事例も活用した周知等の徹底を要望する。加えて、非正規雇用労働者の処遇改善等を支援するキャリアアップ助成金、働き方改革推進支援助成金、人材確保等支援助成金等について、「賃上げ」を支援する観点から、賃上げ加算等の充実を強く要望する。
また、中小企業・小規模事業者の賃上げの実現に向けて、官公需における対策等を含めた価格転嫁・取引適正化の徹底、中小企業・小規模事業者の生産性向上、事業承継・M&A等の中小企業・小規模事業者の経営基盤の強化に取り組むとともに、地域で活躍する人材の育成と処遇改善を進める「中小企業・小規模事業者の賃金向上推進5か年計画」の着実な実行を要望する。
その際、経営強化税制、事業承継に係る在り方の検討、産業競争力強化法による税制優遇など、予算や税制等のインセンティブ制度を通じ、中小企業・小規模事業者の賃上げに向けた強力な後押しがなされることを強く要望する。
同時に、省力化投資促進プランの対象業種のみならず、幅広く、きめ細かな成長投資の後押し、販路開拓・海外展開の促進、マッチングの強化等の支援策の充実と支援体制の整備を通じた中小企業・小規模事業者の生産性の向上を進めるとともに、地域における消費の活性化等を通じ地域経済の好循環を図ることを要望する。
また、中小企業・小規模事業者がこれらの施策を一層活用できるよう、周知等を徹底するとともに、運用の改善を図ることを要望する。
価格転嫁対策については、下請法改正法(中小受託取引適正化法)の成立を受け、その施行に向けて、公正取引委員会の体制の抜本強化とともに、中小企業庁・業所管省庁との連携体制を早期に構築し、各業所管省庁においても、同法に基づく検査や問題事例への対処を適切に実施できるよう、執行体制の抜本強化を要望する。
取り分け、価格転嫁率が平均よりも低い業種を中心に業所管省庁において徹底的に業種別の価格転嫁状況の改善を図るため、中小企業庁による下請Gメン、公正取引委員会による優越Gメンといった省庁横断的な執行体制の強化に加え、中小企業庁・公正取引委員会から具体的な執行・業務のノウハウの共有を行った上で、業種別のGメン等を通じた取引環境改善の枠組みを価格転嫁率が低く課題の多い業種を所管する業所管省庁全体へと広げる等、十分な規模での執行体制を構築することを要望する。また、パートナーシップ構築宣言について、取引適正化に関する自主行動計画を制定している各業界団体の役員企業に対して宣言を働き掛けるとともに、生産性向上関連の補助金における加点措置を拡充すること等により、宣言の更なる拡大を図ることを要望する。サプライチェーンの深い層まで労務費転嫁指針の遵守が徹底されているかを重点的に確認し、必要に応じ更なる改善策を検討するとともに、更なる周知徹底に取り組むことを要望する。
さらに、BtoC事業では相対的に価格転嫁率が低いといった課題があるため、消費者に対して転嫁に理解を求めていくよう要望する。
また、いわゆる「年収の壁」への対応として、「年収の壁・支援強化パッケージ」の活用を促進することを要望する。
カ 地方最低賃金審議会への期待等。目安は、地方最低賃金審議会が審議を進めるに当たって、全国的なバランスを配慮するという観点から参考にされるべきものであり、地方最低賃金審議会の審議決定を拘束するものではない。
こうした前提の下、目安小委員会の公益委員としては、目安を十分に参酌しながら、地方最低賃金審議会において、地域別最低賃金の審議に際し、都道府県別に示される地域の経済・雇用の実態等(消費者物価指数の上昇率、最低賃金の引上げによる影響率など)をデータに基づいて見極めつつ、自主性を発揮することを期待する。
その際、今年度の目安額は、最低賃金が消費者物価を一定程度上回る水準である必要があることや、賃金上昇率が増加傾向にあること、地域間格差の是正を引き続き図ること等を特に考慮して検討されたものであることにも配意いただきたいと考える。
なお、各地域の最低賃金額改定の審議に当たっては、最低賃金法第9条第2項の3要素のデータに基づき、公労使で丁寧に議論を積み重ねることが非常に重要であり、政府や自治体の各種支援策によって、企業の生産性向上とともに、労働者の賃金上昇が図られることが期待されるが、各種支援策の詳細な制度設計は今後行われるものもあることに留意が必要である。
地域別最低賃金の発効日については、未組織労働者にも春闘における賃上げ結果を速やかに波及させるという地域別最低賃金の改定の趣旨も踏まえ、10月1日等の早い段階で発効すべき、就業調整の影響への懸念はあるものの、それを理由に就業調整と関係ない最低賃金に近い賃金水準の労働者の賃上げを遅らせるべきではない、という考えもある。その一方、近年、地域別最低賃金の引上げ額が過去最高を更新し影響率が大幅に上昇していることに伴い、最低賃金の改定に必要となる賃金原資が増大していることへの対応や、最低賃金・賃金の引上げに対する政府の支援策利用時に求められる設備投資の計画の策定等に当たって、経営的・時間的な余裕のない中小企業・小規模事業者が増加しているとの意見がある。また、いわゆる「年収の壁」を意識して、年末を中心に一部の労働者が行っている就業調整のタイミングが年々早まり、人手不足がさらに深刻化して企業経営に影響が出ているといった声も挙がっている。このため、こうした状況に留意するとともに、法的強制力を伴う地域別最低賃金の実効性を確実に担保する観点から、最低賃金法第14条第2項において、発効日は各地方最低賃金議会の公労使の委員間で議論して決定できるとされていることを踏まえ、引上げ額とともに発効日についても十分に議論を行うよう要望する。また、中央最低賃金審議会が地方最低賃金審議会の審議の結果を重大な関心をもって見守ることを要望する。
なお、公益委員見解を取りまとめるに当たって参照した主なデータは別添のとおりである。
(2)生活保護水準と最低賃金との比較では、昨年度に引き続き乖離が生じていないことが確認された。
なお、来年度以降の目安審議においても、最低賃金法第9条第3項に基づき、引き続き、その時点における最新のデータに基づいて生活保護水準と最低賃金との比較を行い、乖離が生じていないか確認することが適当と考える。
(3)最低賃金引上げの影響については、近年大幅な引上げがなされているが、雇用情勢等の指標の状況を見ると大きな影響は確認できていないが、令和5年全員協議会報告の3(1)に基づき、引き続き、影響率や雇用者数等を注視しつつ、慎重に検討していくことが必要である。今年度は、これまでもみてきた指標に加え、影響率の詳細な分析や、雇用保険被保険者数、雇用保険適用事業所数、都市部と郡部の企業別の影響把握なども中央最低賃金審議会として行ったところであり、今後も丁寧に影響把握を行った上で、公労使で目安の検討を行うことが適当である。
また、資料に記載はありませんが、仮に目安どおりに各都道府県で引上げが行われた場合の全国加重平均は1,118円、全国加重平均の上昇額は63円となります。
以上です。
○藤村委員長 ありがとうございました。公益委員といたしましては、この公益委員見解を小委員会の報告として地方最低賃金審議会に示すように、中央最低賃金審議会に報告したいと考えておりますが、よろしいでしょうか。
(異議なし)
それでは、この公益委員見解を、小委員会の報告として地方最低賃金審議会に示すように、中央最低賃金審議会に報告したいと思います。
それでは、目安に関する小委員会報告を取りまとめたいと思いますので、配布をお願いします。事務局から読み上げをお願いします。
○上条副主任
小委報告の別添の参考資料は、先ほど配布したもので代えさせていただきます。
それでは朗読します。中央最低賃金審議会目安に関する小委員会報告。令和7年8月4日。
1 はじめに。令和7年度の地域別最低賃金額改定の目安については、累次にわたり会議を開催し、目安額の根拠等についてそれぞれ真摯な議論が展開されるなど、十分審議を尽くしたところである。
2 労働者側見解。労働者側委員は、今年の春季生活闘争は、33年ぶりに5%台の高い水準と言われた昨年をさらに上回る成果が報告されたが、新たなステージに移った日本経済を安定した巡航軌道へ導くためには、労働組合のない職場で働く労働者に対しても、最低賃金の大幅な引上げを通じ、これを波及させる必要があり、最低賃金法第1条にある法の目的を踏まえて、審議を進める必要があると主張した。
昨年を上回る賃金・初任給の引上げは、経営・事業環境や企業業績の状況が決して良いとは言えない中においても、労使交渉を通じて、人材の確保・定着など、今後の事業継続を見据えた「人への投資」を経営側が英断した結果であると述べた。
地域別最低賃金は、生存権を確保した上で労働の対価としてふさわしいナショナルミニマム水準へ引き上げる必要があり、今年は一つの通過点として、全都道府県で1,000円超の実現は必須であること、また、中期的には「一般労働者の賃金中央値の6割」という目標を念頭に来年以降も、継続的に水準を引き上げる必要があることから、本年は昨年以上の大幅な改定に向けた目安を提示すべきと主張した。
現在の最低賃金は絶対額として最低生計費を賄えていない上、昨年の改定以降の消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)は足元で4%強の高水準で推移しており、物価の上昇基調は続いている。「頻繁に購入」する品目の消費者物価指数にはこの間高騰してきた「コメ」が含まれていないため、最低賃金近傍で働く者の生活は昨年以上に苦しく、生活実感をいかにデータから汲み取るのかという観点は今年も重要であると述べた。
地域間額差は、地方の中小・零細企業の事業継続・発展の厳しさに拍車をかける一因となり、昨年は、B・Cランクを中心に、目安を大幅に超える引上げが相次いだが、地域の自主性がこれまで以上に発揮された結果である一方、地方審議における目安の意義が問われかねない事態である。目安の妥当性と納得性を高め、目安を軸としたより建設的な議論を促す観点からも、昨年の実績も念頭に置いた中賃としてのメッセージを示すべきと主張した。
「企業の倒産件数」は、中長期的にみれば低い水準で、統計上の雇用情勢は堅調である。最低賃金の引上げと雇用維持とは相反しておらず、最低賃金の引上げに伴い、むしろ労働力人口は増加傾向にあることからも、雇用情勢への影響は極めて限定的と主張した。
企業の経常利益は実績ベースでみて堅調に推移しており、中小企業の労働分配率の水準は高いものの近年では低下傾向にあり、総じて賃金支払能力は問題なく、その上で、中小・零細事業所における賃上げの実現性をさらに高めるためには、より広範な支払い能力の改善・底上げが重要であり、政府の各種支援策の利活用状況や効果の検証を踏まえた一層の制度拡充と利活用の推進を求めると主張した。
加えて、社会の賃上げの流れを速やかに波及させるという観点では、10月1日発効を中心に、より早期の発効も念頭に議論を進めるべきと主張した。
以上を踏まえ、本年度は「誰もが時給1,000 円」への到達と、生活できる賃金水準の実現に向けてこれまで以上に前進する目安が必要であり、あわせて、地域間額差の是正につながる目安を示すべきであると主張した。
労働者側委員としては、上記主張が十分に反映されずに取りまとめられた下記1の公益委員見解については、不満の意を表明した。
3 使用者側見解。使用者側委員は、最低賃金引上げの必要性は十分認識している中、その影響が大きい中小企業の賃上げには、原材料や労務費等のコスト増加分の十分な価格転嫁と生産性向上を図り、原資を確保することが必要であり、規模、業種によっては堅調・好調な企業がある一方、物価高や最低賃金を含む人件費の高騰等分を十分に価格転嫁できている企業はまだ少なく、なかでも、Cランク等の地方や小規模事業者の業況は特に厳しいと主張した。
また、満足に価格転嫁ができない状況で、全ての企業に適用される最低賃金の過度な引上げは、経営をより一層圧迫しかねないと主張した。
最低賃金法に定める決定の3要素である「生計費・賃金・通常の事業の賃金支払能力」を各種統計資料から的確に読み取るとともに、「通常の事業の賃金支払能力」に重きを置き、3要素を総合的に表す「賃金改定状況調査結果」の、とりわけ第4表の賃金上昇率を重視して議論を重ねていく、この基本的な考え方に一切変わりはないと述べた。
その上で、今年度は、明確な根拠・データに基づいた納得感ある目安額の提示がこれまで以上に求められ、これまで以上に3要素のデータを丁寧かつバランスよく見ることが重要と主張した。
具体的な目安額について、各地方最低賃金審議会の議論に資する、合理的かつ納得性の高い根拠・ロジックを示すことが中央最低賃金審議会の役割との共通認識のもと、審議を尽くすべきと強く主張した。
近年の最低賃金は毎年度、過去最高を更新し続け、地域別最低賃金の決定にあたっては、目安額を下限として、目安にどれだけ上乗せするかという議論が繰り広げられている地域があり、その際、3要素によらない隣接地域との競争や最下位の回避等を意図した審議が散見され、「賃金の低廉な労働者に対するセーフティーネット」という最低賃金本来の目的から乖離している可能性を指摘した。
目安小委員会報告が示す引上げ額はあくまで目安であり、地域の実態に基づき各地方最低賃金審議会で目安を参考に議論し、地域別最低賃金額を決定することを確認するとともに、目安審議で用いた統計資料を各地方最低賃金審議会でも活用できるよう、都道府県別データの存在の有無を確認しつつ議論したいと述べた。
地域別最低賃金の「発効日」は法律により10月1日に定められていない中、近年の大幅引上げによって、これまで以上に事業者側の相当な準備期間が必要であることに加えて、実効性確保の観点から、周知期間の十分な確保や「年収の壁」による就業調整による人手不足の一層の深刻化等の様々な影響も考慮すべきであることを踏まえ、各地方最低賃金審議会が実態に即して発効日を柔軟に決定することが望ましいと主張した。
使用者側委員としては、上記主張が十分に反映されずに取りまとめられた下記1の公益委員見解については、不満の意を表明した。
4 意見の不一致。本小委員会(以下「目安小委員会」という。)としては、これらの意見を踏まえ目安を取りまとめるべく努めたところであるが、労使の意見が一致せず、目安を定めるに至らなかった。
5 公益委員見解及びその取扱い。公益委員としては、今年度の目安審議については、令和5年全員協議会報告の1(2)で「最低賃金法第9条第2項の3要素のデータに基づき労使で丁寧に議論を積み重ねて目安を導くことが非常に重要であり、今後の目安審議においても徹底すべきである」と合意されたことを踏まえ、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025年改訂版」及び「経済財政運営と改革の基本方針2025」に配意しつつ、各種指標を総合的に勘案し、下記1のとおり公益委員の見解を取りまとめたものである。
目安小委員会としては、地方最低賃金審議会における円滑な審議に資するため、これを公益委員見解として地方最低賃金審議会に示すよう総会に報告することとした。
また、地方最低賃金審議会の自主性発揮及び審議の際の留意点に関し、下記のとおり示し、併せて総会に報告することとした。
さらに、中小企業・小規模事業者が継続的に賃上げできる環境整備の必要性については労使共通の認識であり、政府の掲げる「賃上げと投資がけん引する成長型経済の実現」と「持続的・安定的な物価上昇の下で、物価上昇を年1%程度上回る賃金上昇を賃上げのノルム(社会通念)として我が国に定着」させるためにも、特に地方、中小企業・小規模事業者に配意しつつ、生産性向上を図るとともに、官公需における対応や、価格転嫁対策を徹底し、賃上げの原資の確保につなげる取組を継続的に実施するよう政府に対し強く要望する。
生産性向上の支援については、可能な限り多くの企業が各種の助成金等を受給し、賃上げを実現できるように、政府の掲げる生産性向上等への支援や経営支援の一層の強化を求める。特に、事業場内で最も低い時間給を一定以上引き上げ、生産性向上に取り組んだ場合に支給される業務改善助成金については、最低賃金引上げの影響を強く受ける中小企業・小規模事業者がしっかりと活用できるよう充実するとともに、具体的事例も活用した周知等の徹底を要望する。加えて、非正規雇用労働者の処遇改善等を支援するキャリアアップ助成金、働き方改革推進支援助成金、人材確保等支援助成金等について、「賃上げ」を支援する観点から、賃上げ加算等の充実を強く要望する。
さらに、中小企業・小規模事業者の賃上げの実現に向けて、官公需における対策等を含めた価格転嫁・取引適正化の徹底、中小企業・小規模事業者の生産性向上、事業承継・M&A等の中小企業・小規模事業者の経営基盤の強化に取り組むとともに、地域で活躍する人材の育成と処遇改善を進める「中小企業・小規模事業者の賃金向上推進5か年計画」の着実な実行を要望する。
その際、経営強化税制、事業承継に係る在り方の検討、産業競争力強化法による税制優遇など、予算や税制等のインセンティブ制度を通じ、中小企業・小規模事業者の賃上げに向けた強力な後押しがなされることを強く要望する。
同時に、省力化投資促進プランの対象業種のみならず、幅広く、きめ細やかな成長投資の後押し、販路開拓・海外展開の促進、マッチングの強化等の支援策の充実と支援体制の整備を通じた中小企業・小規模事業者の生産性の向上を進めるとともに、地域における消費の活性化等を通じ地域経済の好循環を図ることを要望する。
また、中小企業・小規模事業者がこれらの施策を一層活用できるよう、周知等を徹底するとともに、運用の改善を図ることを要望する。
価格転嫁対策については、下請法改正法(中小受託取引適正化法)の成立を受け、その施行に向けて、公正取引委員会の体制の抜本強化とともに、中小企業庁・業所管省庁との連携体制を早期に構築し、各業所管省庁においても、同法に基づく検査や問題事例への対処を適切に実施できるよう、執行体制の抜本強化を要望する。
取り分け、価格転嫁率が平均よりも低い業種を中心に業所管省庁において徹底的に業種別の価格転嫁状況の改善を図るため、中小企業庁による下請Gメン、公正取引委員会による優越Gメンといった省庁横断的な執行体制の強化に加え、中小企業庁・公正取引委員会から具体的な執行・業務のノウハウの共有を行った上で、業種別のGメン等を通じた取引環境改善の枠組みを価格転嫁率が低く課題の多い業種を所管する業所管省庁全体へと広げる等、十分な規模での執行体制を構築することを要望する。また、パートナーシップ構築宣言について、取引適正化に関する自主行動計画を制定している各業界団体の役員企業に対して宣言を働き掛けるとともに、生産性向上関連の補助金における加点措置を拡充すること等により、宣言の更なる拡大を図ることを要望する。サプライチェーンの深い層まで労務費転嫁指針の遵守が徹底されているかを重点的に確認し、必要に応じ更なる改善策を検討するとともに、更なる周知徹底に取り組むことを要望する。
さらに、BtoC事業では相対的に価格転嫁率が低いといった課題があるため、消費者に対して転嫁に理解を求めていくよう要望する。
また、いわゆる「年収の壁」への対応として、「年収の壁・支援強化パッケージ」の活用を促進することを要望する。加えて、行政機関が民間企業に業務委託を行っている場合に、年度途中の最低賃金額改定によって当該業務委託先における最低賃金の履行確保に支障が生じることがないよう、発注時における特段の配慮を要望する。
記以下は省略いたします。
○藤村委員長
ありがとうございました。今の内容を小委員会報告としてとりまとめようと思いますが、よろしいでしょうか。
(異議なし)
それでは、審議会に私から報告することとしたいと思います。事務局から、中央最低賃金審議会の本審の日程の連絡をお願いします。
○安藤賃金課長補佐
央最低賃金審議会の本審はこのあと20時から、この部屋、厚生労働省省議室で行います。
○藤村委員長
20時からということですので、皆様よろしくお願いいたします。仁平委員から発言求められましたので、どうぞ。
○仁平委員
一言、労働側代表として、御礼を兼ねて申し上げてもよろしいでしょうか。社会的注目度が高まる中で、我々は大きなプレッシャーを感じながら、審議に臨んでまいりました。ただいま、まさに読み上げていただいた中で確認したところですが、公労使がそれぞれの立場から、まさにデータに基づく真摯な議論を尽くした結果だったと思っております。改めて、藤村会長はじめ公益委員の皆様、使用者側の委員の皆様、非常に努力して様々なデータ等を調整していただいた厚労省事務局の皆様方に厚く感謝申し上げたいと思います。どうもありがとうございました。
○藤村委員長
佐久間委員、どうぞ。
○佐久間委員
ありがとうございます。使用者側委員を代表して、一言私からも申し上げたいと思います。今年度は最低賃金引上げに対する社会的な期待感が非常に高まっている中、未だ価格転嫁が十分ではなく、賃上げ原資の確保に苦慮している中小企業にとって、厳しい経営環境の中での中央最低賃金審議会 目安に関する小委員会の開催となりました。「骨太の方針2025」等で示された「最低賃金を2020年代に全国平均1,500円」との政府方針への配意が諮問で求められ、そのあまりにも急激で高い目標額に戸惑いながらも、使用者側委員として「たゆまぬ努力」を図るべく、今年度の目安審議に入ったところであります。
我々使用者側委員としては、公労使三者構成の中央最低賃金審議会の場で、明確な根拠・データに基づいた納得感のある目安額を提示することを堅持しなくては、最低賃金決定のプロセス自体が形骸化してしまうとの強い認識のもと、努めてまいりました。そして、この認識は、今年度の審議において、公労使共通の思いとして常に意識されてきたように感じています。
今回の審議に当たりましては、消費者物価指数、賃上げの状況、売上高対経常利益率、労働生産性の動向など各種の指標と今まで以上に向き合い、傾向を分析し、時間をかけながら、真摯かつ丁寧な議論をしてきた結果として、公益委員から引上げの目安額とその根拠等の見解をご提示いただいたと認識しております。
しかしながら、今回の公益委員見解の内容も「意見が一致した」とまで申し上げるには、使用者側にとって大変負担の大きい内容でありますが、この内容を目安小委員会報告としてとりまとめることはやむを得ないと受け止めております。
今後は、中央での目安審議と並行して進められております、各地方最低賃金審議会においても、データに基づく納得感のある審議決定が行われるよう、厚生労働省から各都道府県の労働局を通じて徹底するよう呼びかけていただくとともに、参照すべき地域別の統計データの提示、提供、充実等の支援をしていただきたいと考えております。
最後に、目安のとりまとめに向けて、最大限のご尽力を賜りました藤村先生をはじめ公益の先生方に、まず感謝を申し上げたいと存じます。ありがとうございました。また、労働側委員におかれましては、とりまとめに向けて真摯な審議を続けていただきましたことに改めて敬意を表したいと思います。そして、何より、例年以上に多くなった各種資料のとりまとめや資料作成、会場の準備・設営など、審議会の運営におきまして、迅速かつ丁寧にご対応を賜りました厚生労働省 事務局の皆様に深く感謝を申し上げます。本当にありがとうございました。
以上でございます。
○藤村委員長
はい、どうもありがとうございました。公益委員といたしましても、事務局の支援を受けながら労使双方の意見を聞き、何とかここまでとりまとめることができました。ご協力に心より感謝申し上げたいと思います。
それでは、本日の小委員会はこれをもちまして終了といたします。長時間の審議、大変お疲れ様でございました。ありがとうございました。