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2025年7月22日 令和7年第2回目安に関する小委員会 議事録
日時
令和7年7月22日(火)15:00~18:34
場所
厚生労働省専用第22~24会議室
(東京都千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎5号館18階)
(東京都千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎5号館18階)
出席者
公益代表委員
藤村委員長、戎野委員、小西委員、首藤委員
労働者代表委員
伊藤委員、永井委員、仁平委員、水崎委員
使用者代表委員
大下委員、佐久間委員、土井委員、新田委員
事務局
岸本労働基準局長、田中大臣官房審議官、篠崎賃金課長、伊㔟主任中央賃金指導官、
大野調査官、山﨑賃金課長補佐、安藤賃金課長補佐、上条副主任中央賃金指導官
藤村委員長、戎野委員、小西委員、首藤委員
労働者代表委員
伊藤委員、永井委員、仁平委員、水崎委員
使用者代表委員
大下委員、佐久間委員、土井委員、新田委員
事務局
岸本労働基準局長、田中大臣官房審議官、篠崎賃金課長、伊㔟主任中央賃金指導官、
大野調査官、山﨑賃金課長補佐、安藤賃金課長補佐、上条副主任中央賃金指導官
議題
令和7年地域別最低賃金額改定の目安について
議事
<第1回全体会議>
○藤村委員長
では、ただいまから第2回目安に関する小委員会を開催いたします。暑い中、お集まりいただきましてありがとうございます。今年もいよいよ始まりましたね。
本日、小西委員は所用のため途中で退席をされます。
まず、お手元の資料について事務局から御説明をお願いいたします。
○安藤賃金課長補佐
ありがとうございます。本日も、お手元の資料のほかに、各種団体からの要望書を回覧しておりますので、適宜御参照いただければと思います。
次に配付資料は、資料No.1~No.5、参考資料No.1~No.4の合計9点あり、事務局からは、委員提出資料である参考資料No.4を除いた資料について、通しでご説明いたします。
まず、資料No.1をご覧ください。令和7年の賃金改定状況調査結果です。
1ページは調査の概要です。真ん中の3(2)にありますが、常用労働者数が30人未満の企業に属する民営事業所を調査しております。
3ページの第1表をご覧ください。こちらは今年の1月から6月までに賃金の引上げ、引下げを実施した、あるいは実施しなかったという区分で、事業所単位で割合を集計したものです。
左上の産業計・ランク計を見ていただくと、1月から6月までに賃金の引上げを実施した事業所の割合は49.2%となっておりまして、昨年より上昇しております。隣の列の賃金の引下げを実施した事業所の割合は0.8%となっており昨年と同水準です。
次に4ページの第2表をご覧ください。平均賃金改定率を事業所単位で集計したものです。左下の産業計・ランク計で見て頂くと、今年の1月から6月までに賃金引上げを実施した事業所の平均賃金改定率は産業計で4.7%と、昨年と同水準です。真ん中の賃金引下げを実施した事業所はマイナス9.6%です。一番右は、改定を実施した事業所と凍結した事業所をあわせて、今年1~6月の事業所ごとの平均賃金改定率を集計したものとなりますが、こちらはプラス2.2%となっています。
5ページの第3表は、賃金引上げを実施した事業所の賃金引上げ率の分布の特性値です。
産業計・ランク計をみていただくと、第1・四分位数が1.5%、中位数が3.0%、第3・四分位数が5.0%といずれも昨年と同水準です。
次に6ページの第4表ですが、賃金上昇率です。第4表の①は男女別の内訳を示しています。
第4表①の産業計・男女計をみると、ランク計の賃金上昇率は2.5%となっています。2.5%という上昇率は、最低賃金が時間額のみで表示されるようになった平成14年以降最大の水準であった昨年をさらに上回っているものです。ランク別では、産業・男女計でAが2.1%、Bが2.9%、Cが3.0%となっており、Cランクが最も高くなっています。
次に7ページは第4表②です。一般・パート別の賃金上昇率になります。左端の産業計・ランク計でみますと、中段の一般労働者は2.3%、下段のパートは2.9%となっています。
次に8ページは第4表③です。第4表③では継続労働者のみを集計対象にしていますので、昨年6月に在籍していたものの今年6月に在籍していない退職者と、昨年6月には在籍していなかったものの今年6月に在籍するようになった入職者、こちらは第4表③の集計対象には入っていないということになります。表の左上の方、産業計・ランク計の賃金上昇率は3.2%となっており、ランク別に見ますとAが2.9%、Bが3.4%、Cが3.6%となっております。
9ページには、賃金引上げの実施時期別の事業所数の割合を、10ページには、事由別の賃金改定未実施事業所の割合を、参考表としてお付けしています。11ページは、この調査における労働者構成比率と年間所定労働日数もおつけしております。
12ページには、第4表のランク別賃金上昇率の推移をつけております。真ん中点線で区切っておりますが、左が①②、右が③です。いずれも例年、概ね上昇の傾向にあることがわかりますが、①②の水色Aランクは、上昇率が縮小しています。
資料No.1の説明は以上です。
続いて資料No.2をご覧頂ければと思います。生活保護と最低賃金の比較についてです。
まず、1ページのグラフをご覧下さい。破線の△は生活保護水準で、生活扶助基準の人口加重平均に住宅扶助の実績値を加えたものです。実線の◇は令和5年度の最低賃金額で法定労働時間働いた場合の手取額を示しております。すべての都道府県において、最低賃金が生活保護水準を上回っております。
2ページは、1ページの最低賃金額のグラフを令和6年度のものに更新したものです。全体的に最低賃金の水準は1ページよりも上がっておりまして、こちらも同様に、すべての都道府県において、最低賃金が生活保護水準を上回っております。
3ページは、47都道府県について、最新の乖離額を示すとともに、その乖離額の変動について要因分析をしたものです。列Cの額は、2ページのグラフでお示しした乖離額を時間額に換算したもので、列Dの額が昨年度の目安小委で示した乖離額です。マイナスは最低賃金額が生活保護水準を上回ってることを示しています。そして、列Eが昨年度から今年度の乖離額の変動分ですが、マイナスの幅が大きくなっておりますので、最低賃金と生活保護水準の差が大きくなっていることを意味しています。
資料No.2の説明は以上です。
続いて、資料No.3をご覧ください。影響率と未満率に関する資料です。第1回の目安小委員会では、全国計の数値についてはご説明いたしましたが、今回はランク別、都道府県別の数値となっています。
1ページは、最低賃金に関する基礎調査によるものですので、原則30人未満の小規模事業所が対象となっています。表は過去10年間の推移であり、一番右の列が2024年度になります。こちらは、注4にあるとおり、各年における適用ランクでお示ししています。2024年度の未満率をランク別にみますと、Aが2.0%、Bが1.7%、Cが1.5%と、昨年度から大きな変化はございません。2024年度の影響率をランク別にみますと、Aが22.0%、Bが23.5%、Cが25.6%であり、特にCランクにおいて影響率が高まっています。
次に2ページをご覧下さい。1ページと同じく、注1のとおり、原則30人未満の小規模事業所を対象とした、都道府県別の影響率・未満率になります。まず、上の破線が、影響率ですが、最も高いのが右から2番目の青森県、次いで高いのが右から8番目の岩手県となっておりまして、最も低いのが真ん中左よりの山梨県となっています。次に、下の実線が未満率です。一番高いのが一番左の東京都、一番低いのが右から4番目の鹿児島県となっています。
次に3ページをご覧下さい。2ページと同様のグラフを賃金構造基本統計調査に基づいて示したものとなります。注1のとおり、5人以上の事業所が対象となります。上の破線の影響率では、右から2番目の青森県が最も高く、左から5番目の埼玉県が次いで高くなっており、真ん中左辺りの石川県及び一番左の東京都が最も低くなっています。下の実線の未満率では、右から2番目の青森県が最も高く、真ん中左辺りの香川県が最も低くなっています。
資料No.3の説明は以上です。
続いて資料No.4をご覧ください。
こちらは、令和6年の賃金構造基本統計調査を基にした各都道府県別の賃金分布になります。一般・短時間計、一般、短時間の順で、それぞれA~Cランクの順に都道府県を並べております。適宜、ご参照ください。
続いて資料No.5をご覧ください。最新の経済指標の動向です。こちらは、今年も、昨年までと同様に、内閣府月例経済報告の主要経済指標を提出させていただいております。主立った指標については、第1回の目安小委でご説明しておりますので、適宜ご参照ください。
続いて、参考資料No.1をご覧いただければと思います。こちらは、前回、委員の皆様からご要望のありました資料をまとめています。
2ページは、食料関係の消費者物価指数の対前年上昇率の推移を整理したものです。直近では「持家の帰属家賃を除く総合」を上回って推移している傾向にあります。
3~7ページは、令和7年4月25日の第3回米国の関税措置に関する総合対策本部の資料「米国の関税措置に関する各省庁の影響調査について」の抜粋です。
7ページに、米国関税措置を受けた緊急対応パッケージの概要を付けています。米国との協議の状況や、関税措置による輸出産業、関連する中小企業や地域経済、さらには国民生活への影響をよく注視し、躊躇なく追加的に必要な対応を行っていくとされています。
8~10ページは、諸外国の最低賃金制度、EU指令に関する資料です。
8ページは、諸外国の最低賃金制度の概要です。最低賃金法の適用除外や最低賃金の減額措置の状況は、各国で異なっていることがわかります。
9ページは、2022年10月成立の欧州連合(EU)の最低賃金に関する指令の概要です。赤字の通り、最低賃金額の基準について、法定最低賃金制度を有する加盟国は、最低賃金額の設定・改定手続きの確立とともに、適切な水準への設定・改定のための基準を設定しなければならないとされています。また、各国には適正さを評価するための目安となる額を設定することが求められ、指令は、使用可能な指標として、統計上の税引き前賃金の中央値の60%、平均値の50%、その他各国で使用している目安となる額などを挙げています。
10ページは、労働者の賃金の平均値・中央値に占める最低賃金の割合についての資料です。EU指令においては、最低賃金の設定に当たって、賃金総額の中央値の6割や平均値の5割を参照指標として加盟国に示されているところです。「賃金総額」の考え方は様々にありますが、日本において、労働者の賃金の平均値・中央値に占める最低賃金の割合は真ん中の表のとおりです。こちらは厚生労働省の賃金構造基本統計調査の調査票情報を労働基準局賃金課で独自集計したものです。具体的には、回答のあった各労働者の賃金総額を時給換算して、その中央値や平均値と令和6年度の最低賃金の全国加重平均値との比率を示したものです。賃金には、「所定内給与」、残業代などの「超過労働給与」、賞与などの「特別給与」などがありますが、上段の所定内給与額+特別給与額については、一般労働者の賃金と比較すると、平均値の41.5%、中央値の49.4%、短時間労働者も含めた常用労働者計については平均値の47.2%、中央値の59.2%となっています。超過労働給与は割増賃金が発生するため時給換算に当たって様々な考え方があり得ることから、ここでは除外したものを計算しています。中段については超過労働給与も含めて算出したものであり、一般労働者の賃金でみると平均値の40.9%、中央値の48.4%、常用労働者計でみると平均値の46.5%、中央値の57.9%となっています。参考ですが、所定内給与額のみについては、一般労働者の賃金でみると平均値の50.9%、中央値の59.1%、常用労働者計でみると平均値の55.7%、中央値の67.3%となっています。
11ページは法人企業統計による労働分配率に関する資料です。労働分配率は直近では低下していますが、資本金規模が少ない企業ほど、高い割合で推移しています。
12~16ページは、最低賃金近傍の雇用者の状況に関する資料です。
12ページは、2024年の最低賃金近傍雇用者の構成比です。ここで最低賃金近傍雇用者とは、2024年6月の1時間当たりの所定内給与額が、その時点で適用されている事業所の地域別最低賃金額の1.1倍未満である方のことを指しています。グラフをみると、4分の3程度が短時間労働者であることがわかります。
13ページは、2024年の就業形態、男女、年齢階級別影響率と労働者構成比のグラフです。横軸が労働者の構成比、縦軸がそれぞれの労働者区分の影響率となっており、この面積が大きいほど、影響率の対象となる労働者に占めるその労働者区分の労働者の割合が多いことになります。こちらでも、最低賃金近傍雇用者には短時間労働者が多いことがわかります。
14ページは、2024年の産業別影響率と労働者構成比のグラフです。横軸が労働者の人数構成比、縦軸が影響率となっています。一番左の宿泊業,飲食サービス業は影響率が最も高く、21.2%となっています。また、たとえば左から3番目の卸売業,小売業は、労働者の人数構成比も影響率も高いため、最低賃金引上げによって賃金を引上げなければならない労働者数が産業の中でも特に多くなっています。
15ページは、一般労働者の時間当たり所定内給与額と最低賃金額との差の分布について、2024年と2014年をグラフで比較したものです。最低賃金額との差が0円から300円程度である労働者の割合は増加傾向にある一方、それ以外の労働者については大きな差は見られませんでした。
16ページは、短時間労働者についての比較です。最低賃金との差が0に近い労働者の割合が増加し、差が100~200円程度ある労働者は割合が減少しています。それ以外の労働者については大きな差は見られませんでした。
参考資料No.1の説明は以上です。
続いて、参考資料No.2ですが、前回の目安小委でご説明しました「足下の経済状況等に関する補足資料」のうち、更新した部分のみ抜粋したものになります。
ページ番号は前回の資料と便宜上同じにしています。1枚おめくりいただきまして、6ページです。OECDの「フルタイム労働者の賃金の平均値・中央値に占める最低賃金の割合」について、2024年のものが公表されておりますので、更新しています。傾向は2023年と変わりません。
次に19ページから25ページですが、こちらは消費者物価指数に関連する資料で、7月18日に消費者物価指数の6月分が新たに公表されたため、更新したものです。
参考資料No.2の説明は以上です。
最後ですが、参考資料No.3をご覧下さい。前回ご説明しました主要統計資料の更新部分のみ抜粋したものになります。
1ページは、鉱工業生産指数の5月確報が公表されたことを踏まえ、数値を追加しています。
2ページ、15ページ、40ページは、消費者物価指数の6月分が公表されたことを踏まえ、数値を追加しています。
参考資料No.3の説明は以上になります。
○藤村委員長
ありがとうございました。今説明を頂きました資料について、御質問あるいは御意見、ほかに次回以降の提出を求める資料などがありましたらお願いします。いかがですか。それでは、配布資料に関する議論は以上といたします。
次に、前回の委員会において皆様にお願いをしましたとおり、目安についての基本的な考え方を、これから表明いただきたいと思います。労働者側、使用者側の順番にいきたいと思います。まず、労働者側委員からお願いします。
○仁平委員
労側を代表して、私のほうから見解を述べさせていただいて、引き続き、各委員から補強の意見を述べさせていただきます。
今年の春季生活闘争は、「みんなでつくろう!賃上げがあたりまえの社会」というのをスローガンに、物価も賃金も上がっていく、新たな社会的規範を確立すべく取り組んでまいりました。数多くの労使の真摯な議論の積上げによって、33年ぶりに5%台の高い賃上げと言われた昨年の、更にこれを上回る結果を実現したところです。この新たなステージに移った日本経済を安定した巡航軌道へ導くためには、労働組合のない職場で働く労働者に対しても、最低賃金の大幅な引上げを通じて、これを波及させる必要があると考えております。労働者の生活は、昨年以上に厳しさを増しております。取り分け、最低賃金近傍で働く仲間の暮らしは極めて厳しい。私たち中賃委員は、最低賃金引上げへの注目度は極めて高く、厳しい目線が我々の議論に向けられているということを肝に銘じて、今年の審議を行っていく必要があるのではないかと思っております。
前回、7月11日の諮問の際には、副大臣から、こんな発言がございました。高い水準となった賃上げの流れを、非正規雇用労働者や、我が国の労働者の7割が働いている中小企業にも波及させていくためには、最低賃金による底上げも必要ということ。また、政府として、中小企業・小規模事業者の賃上げを後押しするため、「中小企業・小規模事業者の賃金向上推進5か年計画」に定める官公需における対策を含めた価格転嫁・取引適正化の徹底、業種別の「省力化投資促進プラン」等の施策パッケージを実行していくという発言がございました。
また、最賃法の第1条では、賃金の最低額を保障することによって、労働条件の改善を図り、もって、労働者の生活の安定、労働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資するとともに、国民経済の健全な発展に寄与することを目的とすると書いてあります。
社会的な要請を踏まえつつ、客観的なデータに基づき審議を進めていく必要があると考えております。先行き不透明だからこそ、最賃近傍で働く者の生活を守り、景気を失速させないためにも、最賃を大幅に引き上げていく必要があると考えております。労側は、本年度も使用者委員、そして公益委員の先生方と議論を尽くし、結論を得るよう努力してまいりたいと思っております。なお、本日、参考資料4として、昨年に引き続き、ナウキャストのビッグデータなどに基づいた資料も提出させていただいております。説明は割愛させていただきます。
引き続き、各委員から補強、意見を述べさせていただきます。まず、水崎委員からお願いします。
○水崎委員
それでは、私からは最低賃金のあるべき水準という観点で意見を述べさせていただきます。
冒頭で仁平委員が述べたとおり、25年春季生活闘争、これは連合全体としても昨年を上回る高い水準の引上げ額が報告されております。より具体的なお話をさせていただきたいと思います。私の所属する産別の電機連合になりますが、各企業労使の真摯かつ積極的な労使交渉によって、定期昇給を除くベースアップの額は、加盟組合全体の単純平均で、1万3,000円を超える、昨年を上回る引上げ額となっております。時間換算で言うと、これは80円台半ばぐらいの非常に高い水準になります。また、300人未満、これは中堅・中小労組と言っていますが、こちらも単純平均で1万3,000円に迫るような大幅な水準引き上げになっていますし、昨年を上回る引上げを勝ち取った組合が多く見られました。これは、我々が取り組んでいる産別統一闘争の真価が発揮された結果と考えています。さらには、これまで賃金引上げが難しかった単組、加盟組合企業においても、有額回答を得る等々、昨今の賃上げの気運が、中堅・中小の組合あるいは企業にまで波及している状況がうかがえるのではないかと思っています。
初任給においては、人材獲得競争が激化している状況があるためだと思いますが、企業規模や業種にかかわらず、昨年を大幅に上回る引上げを行った組合、加盟組合企業が多く見られました。
これらの結果は、経営状況あるいは事業環境が決して良いとは言えない中においても、この春闘における労使交渉を通じて、人材の確保・定着、現場力の強化、あるいはモチベーションの向上など、今後の事業継続を見据えた人への投資を経営側が英断した結果であると考えております。
地域別最低賃金のあるべき水準については、生存権を確保した上で、労働の対価としてふさわしいナショナルミニマム水準へ引き上げる必要があります。今年は、1つの通過点として、全国都道府県で1,000円を超える、これを実現することは必須であると考えております。連合は、一昨年より、中期的には一般労働者の賃金中央値の6割を相対的貧困の物差しによる目標設定と、これを確立しておりまして、これを念頭に、今年も、そして来年以降も、継続的な水準引上げを実現する必要があると思っています。
以上のことから、冒頭から申し上げている賃上げの動向、現下の社会情勢とあるべき水準論、いずれの観点からも、本年の審議では、昨年以上の大幅な改定に向けた目安を提示すべきだと考えております。私からは以上です。
○永井委員
続きまして、私、永井から、主に労働者の暮らしの観点から意見を申し上げます。
まず、1つ目に、労働者の生活、主に生計費について述べます。現代の最低賃金は、連合リビングウェイジを全県で下回っており、そもそも絶対額として最低生計費を賄えていないと認識しております。
消費者物価指数、持ち家の帰属家賃を除く総合につきましては、昨年の改定以降、足下で4%強の高水準で推移しており、物価の上昇基調は続いていると考えます。中でも、「頻繁に購入」する品目の消費者物価指数は、直近では落ち着いてきてはいるものの、同指数には、この間高騰してきたお米が含まれておりません。これを含んでいるカレーライス物価指数を見ますと、2024年の平均は133.6、前年度比18.4%増となっており、1食当たりの金額は、足下の前年同月比で大幅に高い金額が継続している状況です。また、近年、エンゲル係数は上昇傾向にありますが、特に世帯収入の低い層において、より高い水準にあります。生活実感を捉える上では、これも重要な視点だと思われます。
生活実感としては、最低賃金近傍で働く労働者の生活は、昨年以上に苦しくなっていると考えます。連合総研の勤労者短観では、世帯年収の低い層ほど、1年前と比較した現在の暮らし向きが悪化していると評価されています。400万円世帯でその割合は5割を超え、これは昨年調査の結果を上回っております。また、いずれの年収階層でも、半数以上の世帯が何らかの支出を切り詰めているが、世帯年収の低い層ほど、その傾向が顕著です。加えて、連合が実施しておりますパート・派遣労働者に対するアンケートでは、本人の賃金収入が世帯収入の半数を占める主稼得者は49.3%と約半数を占め、これは集計開始以来最高となっております。
以上、申し上げたような視点からも、最低賃金近傍で働く者の生活実感をいかにデータから汲み取るのかという視点は、今年もとても重要だと考えております。
2つ目には、地域間の額差についてです。地域間額差の問題は依然として大きいと考えます。2002年度の時間額統一時に104円であった最高額と最低額の額差は、2018年に224円まで拡大し、昨年改定後は212円となっております。近年は改善傾向でありますが、是正はまだまだ不十分だと見ております。地域間額差による影響の大小は、地理的な事情にもよりますが、とりわけ、時間的、距離的に近接した都道府県間では、労働力を流出させ、地方の中小零細企業の事業継続、発展の厳しさに拍車をかける一因となっております。
昨年は全ランク50円の同額の目安を示しましたが、B・Cランクを中心に、目安を大幅に超える引上げが相次いだということです。地域の自主性がこれまで以上に発揮された結果である一方、地方審議における目安の意義そのものが問われかねない事態であるとも受け止めております。
以上、2つの点に触れましたが、目安の妥当性と納得性を高め、目安を軸とした、より建設的な議論を促す観点からも、生活実感からデータを汲み取り、地域間額差に配慮し、昨年の実績も念頭に置いた中賃としてのメッセージを示すべきと考えます。以上です。
○伊藤委員
最後に私からは、雇用情勢、労働市場における募集賃金の状況、企業の支払能力、こうした観点から意見を述べたいと思います。
前回提出された主要統計資料や、足下の経済状況等に関する補足資料からは、雇用情勢につきましては、完全失業率、有効求人倍率ともに、昨年の審議時以降、堅調に推移していることが見られます。また、同じように雇用人員判断DIについても、製造業、非製造業ともに、規模区分を問わず、不足超の状況です。パートタイム労働者の募集賃金の下限額では、本年5月時点では、全ての都道府県で最低賃金額を90円以上、高い所では200円近く上回っておりまして、労働市場の動向を加味すれば、最低賃金の大幅な引上げを図るべきだと考えております。
こうした逼迫した労働市場を反映して、人材獲得のため、多くの企業が昨年に引き続いて初任給の大幅な引上げを行っておりまして、連合の2025春季生活闘争の第7回回答集計では、対前年比、生産技能職で6.2%、事務技術職では5.5%の初任給の増加となっています。これは、人口流出や人手不足が顕著な地域、あるいは中小零細企業においては、人材確保・定着の観点からも、最低賃金を含む一層の賃上げが急務であることを意味しているのだと思っております。
確かに、主要統計資料にある企業の倒産件数については、2024年に1万6件、近年では増加傾向ですが、中長期的に見れば、まだまだ低い水準、決して高くない水準であるとともに、先ほど述べさせていただいたとおり、統計上の雇用情勢は堅調であります。また、労側としては、そもそも最低賃金の引上げと雇用維持は相反しないと考えておりまして、むしろ、最低賃金の引上げに伴いまして、労働力人口というのは増加傾向にありますので、そうした意味では、最低賃金の引上げが雇用情勢に与える影響というのは極めて限定的だと考えております。
続きまして、支払能力についてです。昨年10月の最低賃金改定以降、企業の経常利益については、実績ベースで見て非常に堅調に推移していると思っております。その上で、今回追加された資料の資本金規模別労働分配率では、労働分配率については、コロナ禍以降、全ての企業規模で低下傾向です。とりわけ、資本金規模1,000万円未満の企業におきましては、水準自体は8割前後と高い水準にあるのですが、近年、この最低賃金が上昇局面にある中においても、10ポイント以上低下しております。したがって最低賃金引上げとの相関というのは観察されないと判断しておりまして、支払能力との関連性は極めて限定的と判断しております。
また、本日は資料に出ていないので恐縮ですが、前回労側として発言したとおり、分配率との関係で、内部留保にも触れておきたいと思っております。法人企業統計によりますと、企業の利益余剰金、いわゆる内部留保のストック領域については、企業規模にかかわらず、過去最高水準に膨らんでおりまして、とりわけ資本金が1,000万円未満の企業につきましては、この10年で倍以上に膨らんでおります。したがいまして、利益が十分に賃上げに回っていないという実態にあるのではないかと、労側としては考えております。確かに内部留保の全てが賃上げ原資に回るわけではないのですが、最低賃金審議における1つの考慮要素である通常の事業の賃金支払能力、こちらとしては全く問題がないと判断しております。近年、この労働力分配率が低下している中で、企業の内部留保は年々積み上がっているのが実態です。最賃近傍で働く者の生活を守るとともに、景気を失速させない、こうしたことのためにも、最低賃金を大幅に引き上げていく必要があると考えております。
他方で、中小零細企業における賃上げの実現性を更に高めていくためには、より広範な支払能力の改善、底上げが重要だとも考えております。政府は、賃金向上推進5か年計画、この施策パッケージ案におきまして、省力化投資促進プランとして、省力化投資補助金や業務改善助成金などの強化を明記しております。企業の支払能力を勘案するに当たりましては、こうした支援策の状況も念頭に置いて議論すべきだと考えております。
また、価格交渉促進月間のフォローアップ調査の直近3か月の結果では、昨年9月と比較して、価格転嫁が進んでいるものの、企業の支払能力を高める環境整備はまだまだ道半ばなのだろうなと。そういう状況にあることから、引き続き強力に推し進めていく必要があると思っております。政府の各種施策等の利活用状況、あるいは効果の検証も踏まえて、一層の制度拡充と利活用の推進を最後に労側として求めていきたいと思います。以上です。
○藤村委員長
分かりました。どうもありがとうございます。引き続いて、使用者側委員から見解をお願いしたいと思います。
○佐久間委員
全国中小企業団体中央会の佐久間でございます。私から、使用者側としての見解を代表して述べさせていただき、その後、3名の各委員から補強の発言をさせていただきたいと思います。
最初に、中小企業の置かれている現状について御説明いたします。まず、日銀短観から、全産業の業況判断DIを時系列で見ますと、直近1年間では、指数は緩やかに上昇を続けているものの、7月1日公表の短観では、大企業ではプラス23、中小企業ではプラス10と、中小企業ほど回復していない業況であります。また、中小企業基盤整備機構が6月30日に公表した中小企業景況調査、これは私ども中小商工3団体が調査し、機構が公表している調査結果でありますが、本調査における業況判断DIは、全産業でマイナス16.3と3期ぶりに改善したものの、前年同期のマイナス15.7よりも0.6ポイント低下しております。特に小規模企業の業況は厳しく、中規模企業との差が昨年は5.3ポイントであったのに対し、直近では8.1ポイントに拡大し、より厳しい状況にあることがうかがえます。さらに、私ども全国中央会が毎月取りまとめております中小企業月次景況調査では、多くの指標で微々たる改善はあるものの、引き続きマイナスの値となっています。
以上、主要指標から中小企業の景況感について申し上げましたが、次に、最近では企業の倒産件数が増加しており、その状況についても申し上げたいと思います。東京商工リサーチが公表している全国企業倒産状況において、令和6年度の企業倒産件数は1万144件となっており、11年ぶりに1万件を超え、また、2025年上半期の全国企業倒産件数は4,990件と、前年同期比を上回っております。物価高や人件費高騰等の影響が大きく、経営状況が逼迫していることがうかがえます。
中小企業が賃上げを行うためには、原材料や労務費等のコスト増加分の十分な価格転嫁と生産性向上を図り、原資を確保していくことが必要です。中小企業庁が6月20日に公表した「価格交渉促進月間フォローアップ調査結果」において、全額転嫁できた割合をコスト別に見ますと、原材料費は32.3%、エネルギー費は25.6%、労務費は25.5%にとどまっております。前回の令和6年9月の調査結果と比較すると、転嫁率は向上しているものの、コスト上昇分全てを転嫁できている企業は、まだまだ少ないのが現状です。
価格転嫁に関しては、先ほど紹介しました中小企業月次景況調査結果において、「原材料費、労務費等のコスト上昇に価格転嫁が追い付かず、収益を確保することが困難な状況」、「人件費をはじめとしたコストの増加が大きく、価格転嫁が追い付かず、利益率は低下している」といった声が、いまだ数多く各地から報告されております。適正取引環境の一層の整備が必要であることから、下請法の改正や、6月13日に閣議決定されました、新しい資本主義実現会議が取りまとめた「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025年改訂版」、及び、経済財政諮問会議の答申である「経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針2025)」に記載されております「中小企業・小規模事業者の賃金向上推進5か年計画の実行」の施策パッケージにおける官公需対策について、行政自らが率先して適正な価格転嫁を更に推進していただくことが重要です。
以上を踏まえまして、今年度の目安審議における使用者側の見解について御説明いたします。これまで申し上げてきたとおり、規模、業種によっては堅調、好調な企業がある一方で、物価高や最低賃金を含む人件費の高騰等分を十分に価格転嫁できていない、厳しい経営環境にある中小企業が多いことを、まずは御認識いただきたいと存じます。今回の資料で、資本金別の労働分配率のデータを提出していただきましたが、ここ数年、低下傾向にあるものの、資本金額が低い中小企業ほど労働分配率は高く、資本金1,000万円から1億円未満の企業では76.9%、1,000万円以下の企業においては80.0%となっております。満足に価格転嫁ができない状況で、全ての企業にすべからく適用される最低賃金の過度な引上げは、アメリカの関税措置による影響が見通せず、先行き不透明感が高まっている中、経営をより一層圧迫しかねません。
私ども使用者側は、最低賃金法に定める決定の3要素である「生計費、賃金、通常の事業の賃金支払能力」を各種統計資料から的確に読み取るとともに、3要素のうち、「通常の事業の賃金支払能力」に重きを置き、3要素を総合的に表す「賃金改定状況調査」のとりわけ第4表の②③の賃金上昇率を重視して議論を重ねていく、この基本的な考え方に一切変わりはありません。その上で、3要素を示す指標、状況を見ていく中で、物価上昇の影響や最賃近傍で働く方々の可処分所得に対する物価水準等の影響を十分に考慮する必要があると考えています。
近年の最低賃金は、毎年度過去最高を更新し続けており、また地域別最低賃金の決定に当たっては、目安額を下限として、目安にどれだけ上乗せしていくかという議論が繰り広げられています。その際、3要素によらない、隣接する地域との競争や、最下位の回避等を意図した審議が散見され、「賃金の低廉な労働者に対するセーフティネット」という最低賃金本来の目的から乖離しているように感じます。
中央最低賃金審議会の目安小委員会報告が示す引上げ額は、あくまで目安であります。地域の実態に基づき、各地方最低賃金審議会で目安を参考に議論し、地域別最低賃金を決定していくことを確認するとともに、目安審議で用いた統計資料については、各地方最低賃金審議会においても活用できるよう、都道府県別データの存在の有無について確認しながら議論を進めていきたいと考えます。また、地域別最低賃金の「発効日」は、法律によって10月1日に定められているものではなく、事業者側の相当な準備期間の必要性、年収の壁による就業調整等の様々な影響を考慮して、各地方最低賃金審議会が実態に即して柔軟に決定していくことが望ましいと思います。
最後に、今年度の目安については、明確な根拠、データに基づいた納得感のある目安額の提示がこれまで以上に求められていると考えます。私ども使用者側委員としては、公益委員、労働者側委員の皆様と真摯に議論を重ね、公労使三者による審議の結果として適切な結論を見いだしていければと切に願っております。
以上、使用者側を代表して見解を申し上げましたが、各使用者側委員より、補完・補強的な意見を頂ければと存じます。以上です。
○土井委員 全国商工会連合会の土井でございます。私からは、中小企業・小規模事業者の状況、それから地域の状況について、佐久間委員からの御説明を補足させていただきたいと思います。
まず、御紹介のあった中小企業景況調査ですが、売上DIと採算DIの差は14ポイントあり、売上げはそれなりに採れていても、コスト増であったり賃上げの影響により、十分な利益が採れていないというのが中小企業の状況です。また、この調査では、企業の悩み事を聞いて、回答の多い順に順位を付けておりますが、1位はずっと材料価格・仕入単価の上昇です。その次に需要の停滞であったり人手不足が来るのですが、上位に人件費の増加という悩みが上がってきました。昨年6月の段階では、卸売業の上位5位以内に入っているだけでしたが、それ以降、特に昨年の最低賃金の引上げ以降、サービス業、製造業においても上位5位以内に入ってきており、賃上げや大幅な最低賃金の引上げにより、企業の人件費の負担感も徐々に高まってきているということです。
一方、我々中小企業・小規模事業者も、その中でも賃上げを何とかやっていこうというところで頑張っております。本会の調査では、本年度賃上げを実施予定、最低賃金の引上げに合わせて実施と回答した企業は、現段階でも7割を超えており、昨年よりも多いということです。ただし、売上げ2,000万円未満だと50%台、1億円強だと80%を超えるということで、やはり規模による差はあるということですし、賃上げ率も連合さん、経団連さん、日商さんで調査されている水準よりは、やや低い賃上げ率となっています。
今回調査した中で大きなポイントであると感じたのは、営業利益が増加していると回答した企業は、賃上げの実施割合も賃上げ率も高くなっており、賃上げを根付かせるためには、やはり企業がしっかり利益を上げて、賃上げの原資を確保できる環境づくりが重要だと思います。特に大事なのが価格転嫁です。先ほど佐久間委員から、国の調査で若干の進展があったものの、まだまだというご発言がありましたが、国の調査はBtoBの企業がメインですが、BtoCを含めて調査している我々の調査では、労務費をほとんど転嫁できていない企業が6割を超えるといった状況です。特に、私ども商工会の地域は、少子高齢化で人口が減少し、経済規模が縮小している地域が多いです。その中で、お客さんが増える見込みがないBtoCの事業を営まれている方からすると、価格転嫁をしていくと客数、来店頻度、購入単価に如実に影響が出るため、なかなか値上げしにくいといった声が多いのが事実で、価格転嫁がなかなか進んでいない状況です。
加えて、最低賃金の引上げの影響です。先ほどの事務局の御説明で、影響率が20%を超えている道府県が昨年の27から39に増えております。我々の調査でも、最低賃金の引上げにより経営上の影響があったという企業が、昨年より15ポイントぐらい増えて60%に近づいており、昨年の5%超の大幅な引上げの影響がかなり出ているということです。賃上げについても、今後5年間、毎年「必ず」あるいは「高確率で」できるといった企業は3割ぐらいであり、政府目標どおりの最低賃金の引上げがあった場合、「事業規模の縮小」や「休廃業」の検討をするといった事業者が、売上げ2,000万円以下では3分の1を超えるおり、賃上げや最低賃金の引上げによって経営への影響が非常に大きくなっています。
さらに、最低賃金の引上げに伴い、年収の壁を意識した就業調整による労働時間の減少も、労働人口が少ない我々の地域にとっては非常に大きな問題で、何とか生産性を上げて賃上げの原資を稼ぎたいところなのですが、就業調整が大きな足かせになっています。そういう場合は支援策を使ってうまくやればいいという声もあると思いますが、前回も申し上げたとおり、アンケートを取ると、支援策を活用できていないという回答が2番目に多く出ています。特に、最低賃金の決定から発効日までが短くて、私たちの会員は、従業員規模が小さくて、労務担当者が少ないといった環境の企業が多く、最低賃金引上げによる給与体系の見直しや改定作業などに追われ、その中で設備投資の計画までなかなか手が回らず、支援策が活用できていない所も多いと考えられますし、近年の引上げ幅が過去に比べて非常に大きいことを考えると、発効日だけが昔のままなのはおかしいという声もたくさん聞いております。
以上のことで、企業のコスト負担が重くなる中、特に人口減少が著しい商工会地域の事業環境は、非常に厳しくなっております。このような中、企業規模や地域による格差は拡大しており、このままでは最低賃金をはじめとするコスト増に耐えかねた地方の企業の廃業、倒産が増加する懸念も強いと思っております。そうなると、貴重な地域住民の生活や雇用の場が失われることになり、地方創生が叫ばれている中、逆に地方の衰退に拍車を掛けるおそれがあると思っています。潰れたら雇用移転すればいいではないかと言われる方もいらっしゃいますが、そう簡単に勤め先を変えるということも難しいとも思っております。
最後になりますが、言うまでもありませんが、地域の中小企業・小規模事業者は、地域住民の生活と雇用を支えるセーフティネットでもあります。この厳しい局面の中、従業員の方の処遇改善は非常に重要だと思っておりますが、企業の持続的な発展との両立を図る必要もあると思っております。このようなことを皆様にも御理解いただき、今年度の審議ではデータに基づく真摯な議論を実施して、適切な結論を導き出せるよう、皆様の御協力をお願いして、私からの補足にさせていただきます。ありがとうございます。
○大下委員
続きまして、私からも補足の意見を述べさせていただきたいと思います。
今年の骨太方針では、最低賃金に関する政府目標が前倒しされ、地方における最賃引上げへの後押しも明記されました。ここの内容に一定の配意が求められていることは十分理解いたしますが、既にほかの委員からも発言があり、毎年この機会に申し上げていることの繰り返しになりますけれども、最低賃金の審議においては、3要素のデータに基づく審議決定が大原則だと思っておりますし、この数年間、中賃で取り組んできた審議の在り方を今年もしっかりと貫いていくことが強く求められていると思っております。
私どもの調査でも、仮に政府目標どおり7.3%の引上げとなれば、地方・小規模企業の約2割が休業や廃業を考えざるを得ないと回答しています。過去2年、物価の高騰を踏まえて、生計費を特に重視した結果となってきていますが、地賃委員を務めます各地の商工会議所関係者からは、厳しい経営環境の中で懸命に努力している地方中小企業の支払能力もしっかりと見てほしいとの声が寄せられております。今年度の審議においては、これまで以上に3要素のデータを丁寧にかつバランス良く見て、そこから導き出される納得感のある結論とその根拠を明確に示して、そのことを通して、中央だけではなくて各地賃における地域の実態をしっかりと踏まえた審議、最終的な最低賃金額決定につなげていくことが非常に重要と考えております。公益委員、労側委員、事務局の皆様にも、是非この点の御協力をお願いしたいと思います。私からは以上です。
○新田委員
それでは、使用者側の最後に、経団連の新田から補足意見を申し上げたいと思います。既に多くの委員がいろいろ発言されていますので、重複する部分があろうかと思いますが、その点は御容赦いただきたいと思います。
私からは、大きく2点申し上げます。1点目は、労側からも御意見がありましたし、使側の各委員からも御発言がありましたように、やはり根拠、データに基づいた審議を徹底するという点についてです。目安小委員会の審議は、最低賃金法に定められております決定の3要素に関する根拠、データに基づいて行うことが不可欠と考えております。特に目安額については、各地方の最低賃金審議会が議論の際に非常に大事なものとして参考にするものですので、当然、その内容等については合理的で、かつ納得性の高い根拠、ロジックが非常に大事であり、今回の重要なキーワードだと思っています。これをしっかりと示すことが地方最低賃金審議会目安小委員会の役割であるということを、この場におられます公益委員の先生方、労側の先生方、我々使用者側の共通認識としてしっかり持ちながら、審議していきたいと考えております。したがって、決していたずらに審議を長引かせるつもりは全くありませんが、例えば、「10月1日発効にするために、いついつまでに目安小委員会報告をまとめなければいけない」ということにとらわれることなく、しっかりと審議を尽くすことを最優先に掲げながら議論していきたいと考えます。
2点目は、柔軟な発効日の設定の必要性についてです。地域別最低賃金の引上げは、以前は数円単位、十数円という時代が長く続いてまいりました。そうした中、近年の目安の金額、あるいは実際の地賃での決定額を見ると、数十円単位ということで非常に変わってきております。こうした現状に鑑みれば、企業が引上げ原資を確保することに当たっては、これまで以上に準備期間が必要になるということを、この場でも是非共有していただきたいと思っています。
加えて、地域別最低賃金は法律で定められていて、強制力のあるものですから、これをしっかりと周知して実効性を高めていくことも、我々は非常に意識しながら審議していく必要があります。すなわち、周知期間の十分な確保も必要な観点ではないかと考えております。
また、我々は「有期雇用等」という言い方をしていますが、パートあるいはアルバイト等で働く方々を中心に、就業調整が行われているというのは周知の事実です。こうした中、ほとんどの地域で10月上旬に発効されている結果として、残念ながら年収の壁問題の根本的な解決策がなかなか示されない中にあって、現場で何が起こっているかというと、就業調整を行うタイミングがどんどん早まってきています。以前は12月だったものが11月になり、場合によっては10月ぐらいに就業調整が行われることが増えてきていると承知しています。
地方を回ったときに多くの中小企業の方々から言われたのは、近年の最低賃金の大幅な引上げによって、もともと人手不足で非常に悩んでいたのだけれども、それがより一層深刻化していて、肝心の年末に人がいないという悲鳴にも近いような声が聞かれるようになってまいりました。したがって、発効日の設定に向けて柔軟な対応を、中央からメッセージとして発信していくべきではないかと考えています。
したがって、こうした点も例年以上に考慮しながら、最低賃金引上げに懸命に取り組んでおられる企業の経営者と、そこで働く多くの労働者の方々から共感が得られるような、しっかりとした目安審議を皆さんと目指していきたいと思っていますので、何とぞこの点を御理解、御協力いただければと思っています。私からは以上です。
○藤村委員長
ありがとうございました。ただいま、労使双方から基本的な考え方について御説明がありました。お互いに何か聞きたいことなどはございますか。よろしいですか。分かりました。
双方のお話を伺っておりますと、最低賃金の引上げが必要であるという点は合意できると。ただ、どれだけ上げられるかについては、それぞれに考え方があるということだと思います。私ども公益委員も、双方が納得いくような引上げの目安の金額を示したいと思っております。そのためには、しっかりと時間を使って議論を尽くすことが今年も必要だと思っております。
ただ、この場でこういう形でやり合っても、なかなか話は進まないと思いますので、これからは、公労、公使で個別にお話を伺いながら、この先どうするかを考えていきたいと思いますが、そういう進め方でよろしいでしょうか。分かりました。それでは、公労会議から始めたいと思いますので、事務局から連絡をお願いいたします。
○安藤賃金課長補佐
それでは、まず公労会議から行うとのことですので、使用者側委員の皆様は、控室へ御案内させていただきます。
(使用者側委員 退出)
○安藤賃金課長補佐
それでは、傍聴者の皆様、御退出ください。
(傍聴者 退出)
<第2回全体会議>
○藤村委員長
では、ただいまから第2回目の全体会議を開催いたします。首藤委員は、急遽対応しなければいけないことができたということで、先ほど退席されました。本日は、本年度の目安の取りまとめに向けて、労使双方から基本的な考え方をお出しいただきまして、それに基づいて議論をしていただきました。議論の中では、労働者側からは、更なる引上げの重要性が主張され、使用者側からは、本日、提出された資料も含めて、データに基づいた審議をしっかり行うことを求める意見がありました。労使双方、最低賃金を引き上げることの必要性については、認識は一致していますが、何を重視して引上げにつなげるかという点については、更なる議論が必要というように考えます。
そこで、次回の目安小委員会において、引き続き御議論いただき、目安の取りまとめに向けて努力をしていきたいと思いますが、そういう進め方でよろしいですか。分かりました。
それでは、次回の日程と会場について、事務局から連絡をお願いいたします。
○安藤賃金課長補佐
次回の日程と場所については、7月24日(木)の15時から、厚生労働省にて開催予定です。
○藤村委員長
それでは、本日の目安に関する小委員会はこれをもちまして終了といたします。
○藤村委員長
では、ただいまから第2回目安に関する小委員会を開催いたします。暑い中、お集まりいただきましてありがとうございます。今年もいよいよ始まりましたね。
本日、小西委員は所用のため途中で退席をされます。
まず、お手元の資料について事務局から御説明をお願いいたします。
○安藤賃金課長補佐
ありがとうございます。本日も、お手元の資料のほかに、各種団体からの要望書を回覧しておりますので、適宜御参照いただければと思います。
次に配付資料は、資料No.1~No.5、参考資料No.1~No.4の合計9点あり、事務局からは、委員提出資料である参考資料No.4を除いた資料について、通しでご説明いたします。
まず、資料No.1をご覧ください。令和7年の賃金改定状況調査結果です。
1ページは調査の概要です。真ん中の3(2)にありますが、常用労働者数が30人未満の企業に属する民営事業所を調査しております。
3ページの第1表をご覧ください。こちらは今年の1月から6月までに賃金の引上げ、引下げを実施した、あるいは実施しなかったという区分で、事業所単位で割合を集計したものです。
左上の産業計・ランク計を見ていただくと、1月から6月までに賃金の引上げを実施した事業所の割合は49.2%となっておりまして、昨年より上昇しております。隣の列の賃金の引下げを実施した事業所の割合は0.8%となっており昨年と同水準です。
次に4ページの第2表をご覧ください。平均賃金改定率を事業所単位で集計したものです。左下の産業計・ランク計で見て頂くと、今年の1月から6月までに賃金引上げを実施した事業所の平均賃金改定率は産業計で4.7%と、昨年と同水準です。真ん中の賃金引下げを実施した事業所はマイナス9.6%です。一番右は、改定を実施した事業所と凍結した事業所をあわせて、今年1~6月の事業所ごとの平均賃金改定率を集計したものとなりますが、こちらはプラス2.2%となっています。
5ページの第3表は、賃金引上げを実施した事業所の賃金引上げ率の分布の特性値です。
産業計・ランク計をみていただくと、第1・四分位数が1.5%、中位数が3.0%、第3・四分位数が5.0%といずれも昨年と同水準です。
次に6ページの第4表ですが、賃金上昇率です。第4表の①は男女別の内訳を示しています。
第4表①の産業計・男女計をみると、ランク計の賃金上昇率は2.5%となっています。2.5%という上昇率は、最低賃金が時間額のみで表示されるようになった平成14年以降最大の水準であった昨年をさらに上回っているものです。ランク別では、産業・男女計でAが2.1%、Bが2.9%、Cが3.0%となっており、Cランクが最も高くなっています。
次に7ページは第4表②です。一般・パート別の賃金上昇率になります。左端の産業計・ランク計でみますと、中段の一般労働者は2.3%、下段のパートは2.9%となっています。
次に8ページは第4表③です。第4表③では継続労働者のみを集計対象にしていますので、昨年6月に在籍していたものの今年6月に在籍していない退職者と、昨年6月には在籍していなかったものの今年6月に在籍するようになった入職者、こちらは第4表③の集計対象には入っていないということになります。表の左上の方、産業計・ランク計の賃金上昇率は3.2%となっており、ランク別に見ますとAが2.9%、Bが3.4%、Cが3.6%となっております。
9ページには、賃金引上げの実施時期別の事業所数の割合を、10ページには、事由別の賃金改定未実施事業所の割合を、参考表としてお付けしています。11ページは、この調査における労働者構成比率と年間所定労働日数もおつけしております。
12ページには、第4表のランク別賃金上昇率の推移をつけております。真ん中点線で区切っておりますが、左が①②、右が③です。いずれも例年、概ね上昇の傾向にあることがわかりますが、①②の水色Aランクは、上昇率が縮小しています。
資料No.1の説明は以上です。
続いて資料No.2をご覧頂ければと思います。生活保護と最低賃金の比較についてです。
まず、1ページのグラフをご覧下さい。破線の△は生活保護水準で、生活扶助基準の人口加重平均に住宅扶助の実績値を加えたものです。実線の◇は令和5年度の最低賃金額で法定労働時間働いた場合の手取額を示しております。すべての都道府県において、最低賃金が生活保護水準を上回っております。
2ページは、1ページの最低賃金額のグラフを令和6年度のものに更新したものです。全体的に最低賃金の水準は1ページよりも上がっておりまして、こちらも同様に、すべての都道府県において、最低賃金が生活保護水準を上回っております。
3ページは、47都道府県について、最新の乖離額を示すとともに、その乖離額の変動について要因分析をしたものです。列Cの額は、2ページのグラフでお示しした乖離額を時間額に換算したもので、列Dの額が昨年度の目安小委で示した乖離額です。マイナスは最低賃金額が生活保護水準を上回ってることを示しています。そして、列Eが昨年度から今年度の乖離額の変動分ですが、マイナスの幅が大きくなっておりますので、最低賃金と生活保護水準の差が大きくなっていることを意味しています。
資料No.2の説明は以上です。
続いて、資料No.3をご覧ください。影響率と未満率に関する資料です。第1回の目安小委員会では、全国計の数値についてはご説明いたしましたが、今回はランク別、都道府県別の数値となっています。
1ページは、最低賃金に関する基礎調査によるものですので、原則30人未満の小規模事業所が対象となっています。表は過去10年間の推移であり、一番右の列が2024年度になります。こちらは、注4にあるとおり、各年における適用ランクでお示ししています。2024年度の未満率をランク別にみますと、Aが2.0%、Bが1.7%、Cが1.5%と、昨年度から大きな変化はございません。2024年度の影響率をランク別にみますと、Aが22.0%、Bが23.5%、Cが25.6%であり、特にCランクにおいて影響率が高まっています。
次に2ページをご覧下さい。1ページと同じく、注1のとおり、原則30人未満の小規模事業所を対象とした、都道府県別の影響率・未満率になります。まず、上の破線が、影響率ですが、最も高いのが右から2番目の青森県、次いで高いのが右から8番目の岩手県となっておりまして、最も低いのが真ん中左よりの山梨県となっています。次に、下の実線が未満率です。一番高いのが一番左の東京都、一番低いのが右から4番目の鹿児島県となっています。
次に3ページをご覧下さい。2ページと同様のグラフを賃金構造基本統計調査に基づいて示したものとなります。注1のとおり、5人以上の事業所が対象となります。上の破線の影響率では、右から2番目の青森県が最も高く、左から5番目の埼玉県が次いで高くなっており、真ん中左辺りの石川県及び一番左の東京都が最も低くなっています。下の実線の未満率では、右から2番目の青森県が最も高く、真ん中左辺りの香川県が最も低くなっています。
資料No.3の説明は以上です。
続いて資料No.4をご覧ください。
こちらは、令和6年の賃金構造基本統計調査を基にした各都道府県別の賃金分布になります。一般・短時間計、一般、短時間の順で、それぞれA~Cランクの順に都道府県を並べております。適宜、ご参照ください。
続いて資料No.5をご覧ください。最新の経済指標の動向です。こちらは、今年も、昨年までと同様に、内閣府月例経済報告の主要経済指標を提出させていただいております。主立った指標については、第1回の目安小委でご説明しておりますので、適宜ご参照ください。
続いて、参考資料No.1をご覧いただければと思います。こちらは、前回、委員の皆様からご要望のありました資料をまとめています。
2ページは、食料関係の消費者物価指数の対前年上昇率の推移を整理したものです。直近では「持家の帰属家賃を除く総合」を上回って推移している傾向にあります。
3~7ページは、令和7年4月25日の第3回米国の関税措置に関する総合対策本部の資料「米国の関税措置に関する各省庁の影響調査について」の抜粋です。
7ページに、米国関税措置を受けた緊急対応パッケージの概要を付けています。米国との協議の状況や、関税措置による輸出産業、関連する中小企業や地域経済、さらには国民生活への影響をよく注視し、躊躇なく追加的に必要な対応を行っていくとされています。
8~10ページは、諸外国の最低賃金制度、EU指令に関する資料です。
8ページは、諸外国の最低賃金制度の概要です。最低賃金法の適用除外や最低賃金の減額措置の状況は、各国で異なっていることがわかります。
9ページは、2022年10月成立の欧州連合(EU)の最低賃金に関する指令の概要です。赤字の通り、最低賃金額の基準について、法定最低賃金制度を有する加盟国は、最低賃金額の設定・改定手続きの確立とともに、適切な水準への設定・改定のための基準を設定しなければならないとされています。また、各国には適正さを評価するための目安となる額を設定することが求められ、指令は、使用可能な指標として、統計上の税引き前賃金の中央値の60%、平均値の50%、その他各国で使用している目安となる額などを挙げています。
10ページは、労働者の賃金の平均値・中央値に占める最低賃金の割合についての資料です。EU指令においては、最低賃金の設定に当たって、賃金総額の中央値の6割や平均値の5割を参照指標として加盟国に示されているところです。「賃金総額」の考え方は様々にありますが、日本において、労働者の賃金の平均値・中央値に占める最低賃金の割合は真ん中の表のとおりです。こちらは厚生労働省の賃金構造基本統計調査の調査票情報を労働基準局賃金課で独自集計したものです。具体的には、回答のあった各労働者の賃金総額を時給換算して、その中央値や平均値と令和6年度の最低賃金の全国加重平均値との比率を示したものです。賃金には、「所定内給与」、残業代などの「超過労働給与」、賞与などの「特別給与」などがありますが、上段の所定内給与額+特別給与額については、一般労働者の賃金と比較すると、平均値の41.5%、中央値の49.4%、短時間労働者も含めた常用労働者計については平均値の47.2%、中央値の59.2%となっています。超過労働給与は割増賃金が発生するため時給換算に当たって様々な考え方があり得ることから、ここでは除外したものを計算しています。中段については超過労働給与も含めて算出したものであり、一般労働者の賃金でみると平均値の40.9%、中央値の48.4%、常用労働者計でみると平均値の46.5%、中央値の57.9%となっています。参考ですが、所定内給与額のみについては、一般労働者の賃金でみると平均値の50.9%、中央値の59.1%、常用労働者計でみると平均値の55.7%、中央値の67.3%となっています。
11ページは法人企業統計による労働分配率に関する資料です。労働分配率は直近では低下していますが、資本金規模が少ない企業ほど、高い割合で推移しています。
12~16ページは、最低賃金近傍の雇用者の状況に関する資料です。
12ページは、2024年の最低賃金近傍雇用者の構成比です。ここで最低賃金近傍雇用者とは、2024年6月の1時間当たりの所定内給与額が、その時点で適用されている事業所の地域別最低賃金額の1.1倍未満である方のことを指しています。グラフをみると、4分の3程度が短時間労働者であることがわかります。
13ページは、2024年の就業形態、男女、年齢階級別影響率と労働者構成比のグラフです。横軸が労働者の構成比、縦軸がそれぞれの労働者区分の影響率となっており、この面積が大きいほど、影響率の対象となる労働者に占めるその労働者区分の労働者の割合が多いことになります。こちらでも、最低賃金近傍雇用者には短時間労働者が多いことがわかります。
14ページは、2024年の産業別影響率と労働者構成比のグラフです。横軸が労働者の人数構成比、縦軸が影響率となっています。一番左の宿泊業,飲食サービス業は影響率が最も高く、21.2%となっています。また、たとえば左から3番目の卸売業,小売業は、労働者の人数構成比も影響率も高いため、最低賃金引上げによって賃金を引上げなければならない労働者数が産業の中でも特に多くなっています。
15ページは、一般労働者の時間当たり所定内給与額と最低賃金額との差の分布について、2024年と2014年をグラフで比較したものです。最低賃金額との差が0円から300円程度である労働者の割合は増加傾向にある一方、それ以外の労働者については大きな差は見られませんでした。
16ページは、短時間労働者についての比較です。最低賃金との差が0に近い労働者の割合が増加し、差が100~200円程度ある労働者は割合が減少しています。それ以外の労働者については大きな差は見られませんでした。
参考資料No.1の説明は以上です。
続いて、参考資料No.2ですが、前回の目安小委でご説明しました「足下の経済状況等に関する補足資料」のうち、更新した部分のみ抜粋したものになります。
ページ番号は前回の資料と便宜上同じにしています。1枚おめくりいただきまして、6ページです。OECDの「フルタイム労働者の賃金の平均値・中央値に占める最低賃金の割合」について、2024年のものが公表されておりますので、更新しています。傾向は2023年と変わりません。
次に19ページから25ページですが、こちらは消費者物価指数に関連する資料で、7月18日に消費者物価指数の6月分が新たに公表されたため、更新したものです。
参考資料No.2の説明は以上です。
最後ですが、参考資料No.3をご覧下さい。前回ご説明しました主要統計資料の更新部分のみ抜粋したものになります。
1ページは、鉱工業生産指数の5月確報が公表されたことを踏まえ、数値を追加しています。
2ページ、15ページ、40ページは、消費者物価指数の6月分が公表されたことを踏まえ、数値を追加しています。
参考資料No.3の説明は以上になります。
○藤村委員長
ありがとうございました。今説明を頂きました資料について、御質問あるいは御意見、ほかに次回以降の提出を求める資料などがありましたらお願いします。いかがですか。それでは、配布資料に関する議論は以上といたします。
次に、前回の委員会において皆様にお願いをしましたとおり、目安についての基本的な考え方を、これから表明いただきたいと思います。労働者側、使用者側の順番にいきたいと思います。まず、労働者側委員からお願いします。
○仁平委員
労側を代表して、私のほうから見解を述べさせていただいて、引き続き、各委員から補強の意見を述べさせていただきます。
今年の春季生活闘争は、「みんなでつくろう!賃上げがあたりまえの社会」というのをスローガンに、物価も賃金も上がっていく、新たな社会的規範を確立すべく取り組んでまいりました。数多くの労使の真摯な議論の積上げによって、33年ぶりに5%台の高い賃上げと言われた昨年の、更にこれを上回る結果を実現したところです。この新たなステージに移った日本経済を安定した巡航軌道へ導くためには、労働組合のない職場で働く労働者に対しても、最低賃金の大幅な引上げを通じて、これを波及させる必要があると考えております。労働者の生活は、昨年以上に厳しさを増しております。取り分け、最低賃金近傍で働く仲間の暮らしは極めて厳しい。私たち中賃委員は、最低賃金引上げへの注目度は極めて高く、厳しい目線が我々の議論に向けられているということを肝に銘じて、今年の審議を行っていく必要があるのではないかと思っております。
前回、7月11日の諮問の際には、副大臣から、こんな発言がございました。高い水準となった賃上げの流れを、非正規雇用労働者や、我が国の労働者の7割が働いている中小企業にも波及させていくためには、最低賃金による底上げも必要ということ。また、政府として、中小企業・小規模事業者の賃上げを後押しするため、「中小企業・小規模事業者の賃金向上推進5か年計画」に定める官公需における対策を含めた価格転嫁・取引適正化の徹底、業種別の「省力化投資促進プラン」等の施策パッケージを実行していくという発言がございました。
また、最賃法の第1条では、賃金の最低額を保障することによって、労働条件の改善を図り、もって、労働者の生活の安定、労働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資するとともに、国民経済の健全な発展に寄与することを目的とすると書いてあります。
社会的な要請を踏まえつつ、客観的なデータに基づき審議を進めていく必要があると考えております。先行き不透明だからこそ、最賃近傍で働く者の生活を守り、景気を失速させないためにも、最賃を大幅に引き上げていく必要があると考えております。労側は、本年度も使用者委員、そして公益委員の先生方と議論を尽くし、結論を得るよう努力してまいりたいと思っております。なお、本日、参考資料4として、昨年に引き続き、ナウキャストのビッグデータなどに基づいた資料も提出させていただいております。説明は割愛させていただきます。
引き続き、各委員から補強、意見を述べさせていただきます。まず、水崎委員からお願いします。
○水崎委員
それでは、私からは最低賃金のあるべき水準という観点で意見を述べさせていただきます。
冒頭で仁平委員が述べたとおり、25年春季生活闘争、これは連合全体としても昨年を上回る高い水準の引上げ額が報告されております。より具体的なお話をさせていただきたいと思います。私の所属する産別の電機連合になりますが、各企業労使の真摯かつ積極的な労使交渉によって、定期昇給を除くベースアップの額は、加盟組合全体の単純平均で、1万3,000円を超える、昨年を上回る引上げ額となっております。時間換算で言うと、これは80円台半ばぐらいの非常に高い水準になります。また、300人未満、これは中堅・中小労組と言っていますが、こちらも単純平均で1万3,000円に迫るような大幅な水準引き上げになっていますし、昨年を上回る引上げを勝ち取った組合が多く見られました。これは、我々が取り組んでいる産別統一闘争の真価が発揮された結果と考えています。さらには、これまで賃金引上げが難しかった単組、加盟組合企業においても、有額回答を得る等々、昨今の賃上げの気運が、中堅・中小の組合あるいは企業にまで波及している状況がうかがえるのではないかと思っています。
初任給においては、人材獲得競争が激化している状況があるためだと思いますが、企業規模や業種にかかわらず、昨年を大幅に上回る引上げを行った組合、加盟組合企業が多く見られました。
これらの結果は、経営状況あるいは事業環境が決して良いとは言えない中においても、この春闘における労使交渉を通じて、人材の確保・定着、現場力の強化、あるいはモチベーションの向上など、今後の事業継続を見据えた人への投資を経営側が英断した結果であると考えております。
地域別最低賃金のあるべき水準については、生存権を確保した上で、労働の対価としてふさわしいナショナルミニマム水準へ引き上げる必要があります。今年は、1つの通過点として、全国都道府県で1,000円を超える、これを実現することは必須であると考えております。連合は、一昨年より、中期的には一般労働者の賃金中央値の6割を相対的貧困の物差しによる目標設定と、これを確立しておりまして、これを念頭に、今年も、そして来年以降も、継続的な水準引上げを実現する必要があると思っています。
以上のことから、冒頭から申し上げている賃上げの動向、現下の社会情勢とあるべき水準論、いずれの観点からも、本年の審議では、昨年以上の大幅な改定に向けた目安を提示すべきだと考えております。私からは以上です。
○永井委員
続きまして、私、永井から、主に労働者の暮らしの観点から意見を申し上げます。
まず、1つ目に、労働者の生活、主に生計費について述べます。現代の最低賃金は、連合リビングウェイジを全県で下回っており、そもそも絶対額として最低生計費を賄えていないと認識しております。
消費者物価指数、持ち家の帰属家賃を除く総合につきましては、昨年の改定以降、足下で4%強の高水準で推移しており、物価の上昇基調は続いていると考えます。中でも、「頻繁に購入」する品目の消費者物価指数は、直近では落ち着いてきてはいるものの、同指数には、この間高騰してきたお米が含まれておりません。これを含んでいるカレーライス物価指数を見ますと、2024年の平均は133.6、前年度比18.4%増となっており、1食当たりの金額は、足下の前年同月比で大幅に高い金額が継続している状況です。また、近年、エンゲル係数は上昇傾向にありますが、特に世帯収入の低い層において、より高い水準にあります。生活実感を捉える上では、これも重要な視点だと思われます。
生活実感としては、最低賃金近傍で働く労働者の生活は、昨年以上に苦しくなっていると考えます。連合総研の勤労者短観では、世帯年収の低い層ほど、1年前と比較した現在の暮らし向きが悪化していると評価されています。400万円世帯でその割合は5割を超え、これは昨年調査の結果を上回っております。また、いずれの年収階層でも、半数以上の世帯が何らかの支出を切り詰めているが、世帯年収の低い層ほど、その傾向が顕著です。加えて、連合が実施しておりますパート・派遣労働者に対するアンケートでは、本人の賃金収入が世帯収入の半数を占める主稼得者は49.3%と約半数を占め、これは集計開始以来最高となっております。
以上、申し上げたような視点からも、最低賃金近傍で働く者の生活実感をいかにデータから汲み取るのかという視点は、今年もとても重要だと考えております。
2つ目には、地域間の額差についてです。地域間額差の問題は依然として大きいと考えます。2002年度の時間額統一時に104円であった最高額と最低額の額差は、2018年に224円まで拡大し、昨年改定後は212円となっております。近年は改善傾向でありますが、是正はまだまだ不十分だと見ております。地域間額差による影響の大小は、地理的な事情にもよりますが、とりわけ、時間的、距離的に近接した都道府県間では、労働力を流出させ、地方の中小零細企業の事業継続、発展の厳しさに拍車をかける一因となっております。
昨年は全ランク50円の同額の目安を示しましたが、B・Cランクを中心に、目安を大幅に超える引上げが相次いだということです。地域の自主性がこれまで以上に発揮された結果である一方、地方審議における目安の意義そのものが問われかねない事態であるとも受け止めております。
以上、2つの点に触れましたが、目安の妥当性と納得性を高め、目安を軸とした、より建設的な議論を促す観点からも、生活実感からデータを汲み取り、地域間額差に配慮し、昨年の実績も念頭に置いた中賃としてのメッセージを示すべきと考えます。以上です。
○伊藤委員
最後に私からは、雇用情勢、労働市場における募集賃金の状況、企業の支払能力、こうした観点から意見を述べたいと思います。
前回提出された主要統計資料や、足下の経済状況等に関する補足資料からは、雇用情勢につきましては、完全失業率、有効求人倍率ともに、昨年の審議時以降、堅調に推移していることが見られます。また、同じように雇用人員判断DIについても、製造業、非製造業ともに、規模区分を問わず、不足超の状況です。パートタイム労働者の募集賃金の下限額では、本年5月時点では、全ての都道府県で最低賃金額を90円以上、高い所では200円近く上回っておりまして、労働市場の動向を加味すれば、最低賃金の大幅な引上げを図るべきだと考えております。
こうした逼迫した労働市場を反映して、人材獲得のため、多くの企業が昨年に引き続いて初任給の大幅な引上げを行っておりまして、連合の2025春季生活闘争の第7回回答集計では、対前年比、生産技能職で6.2%、事務技術職では5.5%の初任給の増加となっています。これは、人口流出や人手不足が顕著な地域、あるいは中小零細企業においては、人材確保・定着の観点からも、最低賃金を含む一層の賃上げが急務であることを意味しているのだと思っております。
確かに、主要統計資料にある企業の倒産件数については、2024年に1万6件、近年では増加傾向ですが、中長期的に見れば、まだまだ低い水準、決して高くない水準であるとともに、先ほど述べさせていただいたとおり、統計上の雇用情勢は堅調であります。また、労側としては、そもそも最低賃金の引上げと雇用維持は相反しないと考えておりまして、むしろ、最低賃金の引上げに伴いまして、労働力人口というのは増加傾向にありますので、そうした意味では、最低賃金の引上げが雇用情勢に与える影響というのは極めて限定的だと考えております。
続きまして、支払能力についてです。昨年10月の最低賃金改定以降、企業の経常利益については、実績ベースで見て非常に堅調に推移していると思っております。その上で、今回追加された資料の資本金規模別労働分配率では、労働分配率については、コロナ禍以降、全ての企業規模で低下傾向です。とりわけ、資本金規模1,000万円未満の企業におきましては、水準自体は8割前後と高い水準にあるのですが、近年、この最低賃金が上昇局面にある中においても、10ポイント以上低下しております。したがって最低賃金引上げとの相関というのは観察されないと判断しておりまして、支払能力との関連性は極めて限定的と判断しております。
また、本日は資料に出ていないので恐縮ですが、前回労側として発言したとおり、分配率との関係で、内部留保にも触れておきたいと思っております。法人企業統計によりますと、企業の利益余剰金、いわゆる内部留保のストック領域については、企業規模にかかわらず、過去最高水準に膨らんでおりまして、とりわけ資本金が1,000万円未満の企業につきましては、この10年で倍以上に膨らんでおります。したがいまして、利益が十分に賃上げに回っていないという実態にあるのではないかと、労側としては考えております。確かに内部留保の全てが賃上げ原資に回るわけではないのですが、最低賃金審議における1つの考慮要素である通常の事業の賃金支払能力、こちらとしては全く問題がないと判断しております。近年、この労働力分配率が低下している中で、企業の内部留保は年々積み上がっているのが実態です。最賃近傍で働く者の生活を守るとともに、景気を失速させない、こうしたことのためにも、最低賃金を大幅に引き上げていく必要があると考えております。
他方で、中小零細企業における賃上げの実現性を更に高めていくためには、より広範な支払能力の改善、底上げが重要だとも考えております。政府は、賃金向上推進5か年計画、この施策パッケージ案におきまして、省力化投資促進プランとして、省力化投資補助金や業務改善助成金などの強化を明記しております。企業の支払能力を勘案するに当たりましては、こうした支援策の状況も念頭に置いて議論すべきだと考えております。
また、価格交渉促進月間のフォローアップ調査の直近3か月の結果では、昨年9月と比較して、価格転嫁が進んでいるものの、企業の支払能力を高める環境整備はまだまだ道半ばなのだろうなと。そういう状況にあることから、引き続き強力に推し進めていく必要があると思っております。政府の各種施策等の利活用状況、あるいは効果の検証も踏まえて、一層の制度拡充と利活用の推進を最後に労側として求めていきたいと思います。以上です。
○藤村委員長
分かりました。どうもありがとうございます。引き続いて、使用者側委員から見解をお願いしたいと思います。
○佐久間委員
全国中小企業団体中央会の佐久間でございます。私から、使用者側としての見解を代表して述べさせていただき、その後、3名の各委員から補強の発言をさせていただきたいと思います。
最初に、中小企業の置かれている現状について御説明いたします。まず、日銀短観から、全産業の業況判断DIを時系列で見ますと、直近1年間では、指数は緩やかに上昇を続けているものの、7月1日公表の短観では、大企業ではプラス23、中小企業ではプラス10と、中小企業ほど回復していない業況であります。また、中小企業基盤整備機構が6月30日に公表した中小企業景況調査、これは私ども中小商工3団体が調査し、機構が公表している調査結果でありますが、本調査における業況判断DIは、全産業でマイナス16.3と3期ぶりに改善したものの、前年同期のマイナス15.7よりも0.6ポイント低下しております。特に小規模企業の業況は厳しく、中規模企業との差が昨年は5.3ポイントであったのに対し、直近では8.1ポイントに拡大し、より厳しい状況にあることがうかがえます。さらに、私ども全国中央会が毎月取りまとめております中小企業月次景況調査では、多くの指標で微々たる改善はあるものの、引き続きマイナスの値となっています。
以上、主要指標から中小企業の景況感について申し上げましたが、次に、最近では企業の倒産件数が増加しており、その状況についても申し上げたいと思います。東京商工リサーチが公表している全国企業倒産状況において、令和6年度の企業倒産件数は1万144件となっており、11年ぶりに1万件を超え、また、2025年上半期の全国企業倒産件数は4,990件と、前年同期比を上回っております。物価高や人件費高騰等の影響が大きく、経営状況が逼迫していることがうかがえます。
中小企業が賃上げを行うためには、原材料や労務費等のコスト増加分の十分な価格転嫁と生産性向上を図り、原資を確保していくことが必要です。中小企業庁が6月20日に公表した「価格交渉促進月間フォローアップ調査結果」において、全額転嫁できた割合をコスト別に見ますと、原材料費は32.3%、エネルギー費は25.6%、労務費は25.5%にとどまっております。前回の令和6年9月の調査結果と比較すると、転嫁率は向上しているものの、コスト上昇分全てを転嫁できている企業は、まだまだ少ないのが現状です。
価格転嫁に関しては、先ほど紹介しました中小企業月次景況調査結果において、「原材料費、労務費等のコスト上昇に価格転嫁が追い付かず、収益を確保することが困難な状況」、「人件費をはじめとしたコストの増加が大きく、価格転嫁が追い付かず、利益率は低下している」といった声が、いまだ数多く各地から報告されております。適正取引環境の一層の整備が必要であることから、下請法の改正や、6月13日に閣議決定されました、新しい資本主義実現会議が取りまとめた「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025年改訂版」、及び、経済財政諮問会議の答申である「経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針2025)」に記載されております「中小企業・小規模事業者の賃金向上推進5か年計画の実行」の施策パッケージにおける官公需対策について、行政自らが率先して適正な価格転嫁を更に推進していただくことが重要です。
以上を踏まえまして、今年度の目安審議における使用者側の見解について御説明いたします。これまで申し上げてきたとおり、規模、業種によっては堅調、好調な企業がある一方で、物価高や最低賃金を含む人件費の高騰等分を十分に価格転嫁できていない、厳しい経営環境にある中小企業が多いことを、まずは御認識いただきたいと存じます。今回の資料で、資本金別の労働分配率のデータを提出していただきましたが、ここ数年、低下傾向にあるものの、資本金額が低い中小企業ほど労働分配率は高く、資本金1,000万円から1億円未満の企業では76.9%、1,000万円以下の企業においては80.0%となっております。満足に価格転嫁ができない状況で、全ての企業にすべからく適用される最低賃金の過度な引上げは、アメリカの関税措置による影響が見通せず、先行き不透明感が高まっている中、経営をより一層圧迫しかねません。
私ども使用者側は、最低賃金法に定める決定の3要素である「生計費、賃金、通常の事業の賃金支払能力」を各種統計資料から的確に読み取るとともに、3要素のうち、「通常の事業の賃金支払能力」に重きを置き、3要素を総合的に表す「賃金改定状況調査」のとりわけ第4表の②③の賃金上昇率を重視して議論を重ねていく、この基本的な考え方に一切変わりはありません。その上で、3要素を示す指標、状況を見ていく中で、物価上昇の影響や最賃近傍で働く方々の可処分所得に対する物価水準等の影響を十分に考慮する必要があると考えています。
近年の最低賃金は、毎年度過去最高を更新し続けており、また地域別最低賃金の決定に当たっては、目安額を下限として、目安にどれだけ上乗せしていくかという議論が繰り広げられています。その際、3要素によらない、隣接する地域との競争や、最下位の回避等を意図した審議が散見され、「賃金の低廉な労働者に対するセーフティネット」という最低賃金本来の目的から乖離しているように感じます。
中央最低賃金審議会の目安小委員会報告が示す引上げ額は、あくまで目安であります。地域の実態に基づき、各地方最低賃金審議会で目安を参考に議論し、地域別最低賃金を決定していくことを確認するとともに、目安審議で用いた統計資料については、各地方最低賃金審議会においても活用できるよう、都道府県別データの存在の有無について確認しながら議論を進めていきたいと考えます。また、地域別最低賃金の「発効日」は、法律によって10月1日に定められているものではなく、事業者側の相当な準備期間の必要性、年収の壁による就業調整等の様々な影響を考慮して、各地方最低賃金審議会が実態に即して柔軟に決定していくことが望ましいと思います。
最後に、今年度の目安については、明確な根拠、データに基づいた納得感のある目安額の提示がこれまで以上に求められていると考えます。私ども使用者側委員としては、公益委員、労働者側委員の皆様と真摯に議論を重ね、公労使三者による審議の結果として適切な結論を見いだしていければと切に願っております。
以上、使用者側を代表して見解を申し上げましたが、各使用者側委員より、補完・補強的な意見を頂ければと存じます。以上です。
○土井委員 全国商工会連合会の土井でございます。私からは、中小企業・小規模事業者の状況、それから地域の状況について、佐久間委員からの御説明を補足させていただきたいと思います。
まず、御紹介のあった中小企業景況調査ですが、売上DIと採算DIの差は14ポイントあり、売上げはそれなりに採れていても、コスト増であったり賃上げの影響により、十分な利益が採れていないというのが中小企業の状況です。また、この調査では、企業の悩み事を聞いて、回答の多い順に順位を付けておりますが、1位はずっと材料価格・仕入単価の上昇です。その次に需要の停滞であったり人手不足が来るのですが、上位に人件費の増加という悩みが上がってきました。昨年6月の段階では、卸売業の上位5位以内に入っているだけでしたが、それ以降、特に昨年の最低賃金の引上げ以降、サービス業、製造業においても上位5位以内に入ってきており、賃上げや大幅な最低賃金の引上げにより、企業の人件費の負担感も徐々に高まってきているということです。
一方、我々中小企業・小規模事業者も、その中でも賃上げを何とかやっていこうというところで頑張っております。本会の調査では、本年度賃上げを実施予定、最低賃金の引上げに合わせて実施と回答した企業は、現段階でも7割を超えており、昨年よりも多いということです。ただし、売上げ2,000万円未満だと50%台、1億円強だと80%を超えるということで、やはり規模による差はあるということですし、賃上げ率も連合さん、経団連さん、日商さんで調査されている水準よりは、やや低い賃上げ率となっています。
今回調査した中で大きなポイントであると感じたのは、営業利益が増加していると回答した企業は、賃上げの実施割合も賃上げ率も高くなっており、賃上げを根付かせるためには、やはり企業がしっかり利益を上げて、賃上げの原資を確保できる環境づくりが重要だと思います。特に大事なのが価格転嫁です。先ほど佐久間委員から、国の調査で若干の進展があったものの、まだまだというご発言がありましたが、国の調査はBtoBの企業がメインですが、BtoCを含めて調査している我々の調査では、労務費をほとんど転嫁できていない企業が6割を超えるといった状況です。特に、私ども商工会の地域は、少子高齢化で人口が減少し、経済規模が縮小している地域が多いです。その中で、お客さんが増える見込みがないBtoCの事業を営まれている方からすると、価格転嫁をしていくと客数、来店頻度、購入単価に如実に影響が出るため、なかなか値上げしにくいといった声が多いのが事実で、価格転嫁がなかなか進んでいない状況です。
加えて、最低賃金の引上げの影響です。先ほどの事務局の御説明で、影響率が20%を超えている道府県が昨年の27から39に増えております。我々の調査でも、最低賃金の引上げにより経営上の影響があったという企業が、昨年より15ポイントぐらい増えて60%に近づいており、昨年の5%超の大幅な引上げの影響がかなり出ているということです。賃上げについても、今後5年間、毎年「必ず」あるいは「高確率で」できるといった企業は3割ぐらいであり、政府目標どおりの最低賃金の引上げがあった場合、「事業規模の縮小」や「休廃業」の検討をするといった事業者が、売上げ2,000万円以下では3分の1を超えるおり、賃上げや最低賃金の引上げによって経営への影響が非常に大きくなっています。
さらに、最低賃金の引上げに伴い、年収の壁を意識した就業調整による労働時間の減少も、労働人口が少ない我々の地域にとっては非常に大きな問題で、何とか生産性を上げて賃上げの原資を稼ぎたいところなのですが、就業調整が大きな足かせになっています。そういう場合は支援策を使ってうまくやればいいという声もあると思いますが、前回も申し上げたとおり、アンケートを取ると、支援策を活用できていないという回答が2番目に多く出ています。特に、最低賃金の決定から発効日までが短くて、私たちの会員は、従業員規模が小さくて、労務担当者が少ないといった環境の企業が多く、最低賃金引上げによる給与体系の見直しや改定作業などに追われ、その中で設備投資の計画までなかなか手が回らず、支援策が活用できていない所も多いと考えられますし、近年の引上げ幅が過去に比べて非常に大きいことを考えると、発効日だけが昔のままなのはおかしいという声もたくさん聞いております。
以上のことで、企業のコスト負担が重くなる中、特に人口減少が著しい商工会地域の事業環境は、非常に厳しくなっております。このような中、企業規模や地域による格差は拡大しており、このままでは最低賃金をはじめとするコスト増に耐えかねた地方の企業の廃業、倒産が増加する懸念も強いと思っております。そうなると、貴重な地域住民の生活や雇用の場が失われることになり、地方創生が叫ばれている中、逆に地方の衰退に拍車を掛けるおそれがあると思っています。潰れたら雇用移転すればいいではないかと言われる方もいらっしゃいますが、そう簡単に勤め先を変えるということも難しいとも思っております。
最後になりますが、言うまでもありませんが、地域の中小企業・小規模事業者は、地域住民の生活と雇用を支えるセーフティネットでもあります。この厳しい局面の中、従業員の方の処遇改善は非常に重要だと思っておりますが、企業の持続的な発展との両立を図る必要もあると思っております。このようなことを皆様にも御理解いただき、今年度の審議ではデータに基づく真摯な議論を実施して、適切な結論を導き出せるよう、皆様の御協力をお願いして、私からの補足にさせていただきます。ありがとうございます。
○大下委員
続きまして、私からも補足の意見を述べさせていただきたいと思います。
今年の骨太方針では、最低賃金に関する政府目標が前倒しされ、地方における最賃引上げへの後押しも明記されました。ここの内容に一定の配意が求められていることは十分理解いたしますが、既にほかの委員からも発言があり、毎年この機会に申し上げていることの繰り返しになりますけれども、最低賃金の審議においては、3要素のデータに基づく審議決定が大原則だと思っておりますし、この数年間、中賃で取り組んできた審議の在り方を今年もしっかりと貫いていくことが強く求められていると思っております。
私どもの調査でも、仮に政府目標どおり7.3%の引上げとなれば、地方・小規模企業の約2割が休業や廃業を考えざるを得ないと回答しています。過去2年、物価の高騰を踏まえて、生計費を特に重視した結果となってきていますが、地賃委員を務めます各地の商工会議所関係者からは、厳しい経営環境の中で懸命に努力している地方中小企業の支払能力もしっかりと見てほしいとの声が寄せられております。今年度の審議においては、これまで以上に3要素のデータを丁寧にかつバランス良く見て、そこから導き出される納得感のある結論とその根拠を明確に示して、そのことを通して、中央だけではなくて各地賃における地域の実態をしっかりと踏まえた審議、最終的な最低賃金額決定につなげていくことが非常に重要と考えております。公益委員、労側委員、事務局の皆様にも、是非この点の御協力をお願いしたいと思います。私からは以上です。
○新田委員
それでは、使用者側の最後に、経団連の新田から補足意見を申し上げたいと思います。既に多くの委員がいろいろ発言されていますので、重複する部分があろうかと思いますが、その点は御容赦いただきたいと思います。
私からは、大きく2点申し上げます。1点目は、労側からも御意見がありましたし、使側の各委員からも御発言がありましたように、やはり根拠、データに基づいた審議を徹底するという点についてです。目安小委員会の審議は、最低賃金法に定められております決定の3要素に関する根拠、データに基づいて行うことが不可欠と考えております。特に目安額については、各地方の最低賃金審議会が議論の際に非常に大事なものとして参考にするものですので、当然、その内容等については合理的で、かつ納得性の高い根拠、ロジックが非常に大事であり、今回の重要なキーワードだと思っています。これをしっかりと示すことが地方最低賃金審議会目安小委員会の役割であるということを、この場におられます公益委員の先生方、労側の先生方、我々使用者側の共通認識としてしっかり持ちながら、審議していきたいと考えております。したがって、決していたずらに審議を長引かせるつもりは全くありませんが、例えば、「10月1日発効にするために、いついつまでに目安小委員会報告をまとめなければいけない」ということにとらわれることなく、しっかりと審議を尽くすことを最優先に掲げながら議論していきたいと考えます。
2点目は、柔軟な発効日の設定の必要性についてです。地域別最低賃金の引上げは、以前は数円単位、十数円という時代が長く続いてまいりました。そうした中、近年の目安の金額、あるいは実際の地賃での決定額を見ると、数十円単位ということで非常に変わってきております。こうした現状に鑑みれば、企業が引上げ原資を確保することに当たっては、これまで以上に準備期間が必要になるということを、この場でも是非共有していただきたいと思っています。
加えて、地域別最低賃金は法律で定められていて、強制力のあるものですから、これをしっかりと周知して実効性を高めていくことも、我々は非常に意識しながら審議していく必要があります。すなわち、周知期間の十分な確保も必要な観点ではないかと考えております。
また、我々は「有期雇用等」という言い方をしていますが、パートあるいはアルバイト等で働く方々を中心に、就業調整が行われているというのは周知の事実です。こうした中、ほとんどの地域で10月上旬に発効されている結果として、残念ながら年収の壁問題の根本的な解決策がなかなか示されない中にあって、現場で何が起こっているかというと、就業調整を行うタイミングがどんどん早まってきています。以前は12月だったものが11月になり、場合によっては10月ぐらいに就業調整が行われることが増えてきていると承知しています。
地方を回ったときに多くの中小企業の方々から言われたのは、近年の最低賃金の大幅な引上げによって、もともと人手不足で非常に悩んでいたのだけれども、それがより一層深刻化していて、肝心の年末に人がいないという悲鳴にも近いような声が聞かれるようになってまいりました。したがって、発効日の設定に向けて柔軟な対応を、中央からメッセージとして発信していくべきではないかと考えています。
したがって、こうした点も例年以上に考慮しながら、最低賃金引上げに懸命に取り組んでおられる企業の経営者と、そこで働く多くの労働者の方々から共感が得られるような、しっかりとした目安審議を皆さんと目指していきたいと思っていますので、何とぞこの点を御理解、御協力いただければと思っています。私からは以上です。
○藤村委員長
ありがとうございました。ただいま、労使双方から基本的な考え方について御説明がありました。お互いに何か聞きたいことなどはございますか。よろしいですか。分かりました。
双方のお話を伺っておりますと、最低賃金の引上げが必要であるという点は合意できると。ただ、どれだけ上げられるかについては、それぞれに考え方があるということだと思います。私ども公益委員も、双方が納得いくような引上げの目安の金額を示したいと思っております。そのためには、しっかりと時間を使って議論を尽くすことが今年も必要だと思っております。
ただ、この場でこういう形でやり合っても、なかなか話は進まないと思いますので、これからは、公労、公使で個別にお話を伺いながら、この先どうするかを考えていきたいと思いますが、そういう進め方でよろしいでしょうか。分かりました。それでは、公労会議から始めたいと思いますので、事務局から連絡をお願いいたします。
○安藤賃金課長補佐
それでは、まず公労会議から行うとのことですので、使用者側委員の皆様は、控室へ御案内させていただきます。
(使用者側委員 退出)
○安藤賃金課長補佐
それでは、傍聴者の皆様、御退出ください。
(傍聴者 退出)
<第2回全体会議>
○藤村委員長
では、ただいまから第2回目の全体会議を開催いたします。首藤委員は、急遽対応しなければいけないことができたということで、先ほど退席されました。本日は、本年度の目安の取りまとめに向けて、労使双方から基本的な考え方をお出しいただきまして、それに基づいて議論をしていただきました。議論の中では、労働者側からは、更なる引上げの重要性が主張され、使用者側からは、本日、提出された資料も含めて、データに基づいた審議をしっかり行うことを求める意見がありました。労使双方、最低賃金を引き上げることの必要性については、認識は一致していますが、何を重視して引上げにつなげるかという点については、更なる議論が必要というように考えます。
そこで、次回の目安小委員会において、引き続き御議論いただき、目安の取りまとめに向けて努力をしていきたいと思いますが、そういう進め方でよろしいですか。分かりました。
それでは、次回の日程と会場について、事務局から連絡をお願いいたします。
○安藤賃金課長補佐
次回の日程と場所については、7月24日(木)の15時から、厚生労働省にて開催予定です。
○藤村委員長
それでは、本日の目安に関する小委員会はこれをもちまして終了といたします。