- ホーム >
- 政策について >
- 審議会・研究会等 >
- 厚生科学審議会(予防接種・ワクチン分科会 予防接種基本方針部会 ワクチン評価に関する小委員会) >
- 第30回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会ワクチン評価に関する小委員会 議事録
第30回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会ワクチン評価に関する小委員会 議事録
健康・生活衛生局 感染症対策部予防接種課
日時
令和7年7月4日(金) 13:00~15:00
場所
WEB会議にて開催
(新橋ビジネスフォーラム8階)
(新橋ビジネスフォーラム8階)
議題
- (1)高齢者に対する15価及び20価結合型肺炎球菌ワクチンについて
- (2)HPVワクチンについて
- (3)MRワクチン(ミールビックⅡ)の定期接種における使用について(報告)
- (4)その他
議事
- 議事内容
- ○山口予防接種課課長補佐 それでは、定刻になりましたので、第30回「厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会ワクチン評価に関する小委員会」を開催いたします。本日は御多忙のところ御出席いただき、誠にありがとうございます。
本日の議事は、公開・頭撮り可でございます。また、これまで同様、議事の様子はYouTubeで配信いたしますので、あらかじめ御了承ください。
なお、事務局で用意しているYouTube撮影用以外のカメラ撮りは議事に入るまでとさせていただきますので、関係者の方々におかれましては御理解と御協力をお願いいたします。
また、傍聴の方におかれましては「傍聴に関しての留意事項」の遵守をお願いいたします。
なお、会議冒頭の頭撮りを除き、写真撮影、ビデオ撮影、録音をすることはできませんので御留意ください。
次に、本日の出欠状況について御報告いたします。
本日は、菅沼委員より御欠席の御連絡をいただいております。
現在、委員8名のうち7名に出席いただいておりますので、厚生科学審議会令第7条の規定により、本日の会議は成立したことを御報告いたします。
また、本日は参考人として、大石参考人、岡田参考人、木下参考人に御出席いただいております。
本委員会の資料は、あらかじめ送付させていただきました電子ファイル及びお手元の配付資料で閲覧する方式で実施いたします。番号01の議事次第及び委員名簿から、番号11の利益相反関係資料までを用意しております。資料の不足等、御不明な点等がありましたら事務局までお申し出ください。
申し訳ありませんが、冒頭の頭撮りにつきましてはここまでとさせていただきますので、御協力をお願いいたします。
(頭撮り終了)
○山口予防接種課課長補佐 それでは、ここからの進行は鈴木委員長にお願いいたします。
○鈴木委員長 こんにちは、鈴木です。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
それでは、事務局から審議参加に関する遵守事項等について御報告をお願いいたします。
○山口予防接種課課長補佐 事務局でございます。
審議参加の取扱いについて御報告いたします。
本日御出席いただきました委員・参考人から、予防接種・ワクチン分科会審議参加規程に基づき、薬事承認等の申請資料への関与、ワクチンの製造販売業者からの寄附金等の受取状況について申告をいただきました。各委員及び参考人からの申告内容については、番号11、利益相反関係資料を御覧いただければと思います。
なお、本日は議事内容に関して、「退室」や「審議又は議決に参加しない」に該当する方はおりませんので御報告申し上げます。
また、毎回のお願いで恐縮でございますが、各委員及び参考人におかれましては、講演料等の受け取りについて通帳や源泉徴収票などの書類も確認いただくことにより、正しい内容を申告いただきますようよろしくお願いいたします。
事務局からは以上でございます。
○鈴木会長 どうもありがとうございました。
それでは、本日の議事に入らせていただきます。
本日の議題は、3つ挙がっております。「高齢者に対する15価及び20価結合型肺炎球菌ワクチンについて」「HPVワクチンについて」「MRワクチン(ミールビックII)の定期接種における使用について(報告)」、こちらは御報告となっております。
それでは、議題1「高齢者に対する15価及び20価結合型肺炎球菌ワクチンについて」でございます。前回、令和6年9月の本委員会における議論を踏まえまして、国立感染症研究所、この4月から国立健康危機管理研究機構となりましたが、ファクトシートの作成を依頼することとされまして、ファクトシートが作成されました。
また、研究班において費用対効果分析が実施されています。今回は、作成されましたファクトシート、それから研究班の費用対効果分析の結果等に基づいて議論を進めさせていただきたいと思います。
それからまた、今回4月から設置されました国立健康危機管理研究機構において、中期目標として「公衆衛生研究の推進及び基盤構築」として「感染症のリスク評価と分析に資する研究を実施し、政策提言や対策の現場で活用可能な公衆衛生学、疫学、経済学等に係る研究成果を創出する」ことが定められ、その具体的な取組として「予防接種施策の検討に資するための費用対効果等に関する情報収集・研究」が定められております。
今回、この取組の一環として、国立健康危機管理研究機構において、オランダ国立公衆衛生環境研究所との共同研究として、日本における多価肺炎球菌結合型ワクチンの費用対効果分析を行ったことから、結果を参考資料として提示するということになっております。こちらは、後ほど木下参考人から御発表いただくことになっております。
それでは、まずファクトシートの内容について、JIHS、国立感染症研究所の森野委員から御説明をよろしくお願いいたします。
○森野委員 ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
本ファクトシートは肺炎球菌感染症と、現在国内において精神で使用可能な肺炎球菌ワクチンに関して、2024年10月時点の知見を基本にまとめたものとなります。事務局資料にも主要な内容をおまとめいただいており、概要の御紹介とさせていただければと思います。
まず「疾患の特性」として、肺炎球菌は乳幼児の鼻咽頭で高頻度に保菌されており、成人の保菌も5%未満から10%とされております。
疾病負荷の要因に、市中肺炎の主要な原因菌であること並びに髄膜炎や菌血症を伴う肺炎など、侵襲性肺炎球菌感染症、IPDがあります。100以上の血清型の存在、または薬剤耐性肺炎球菌は肺炎球菌感染対策における課題となっております。
本邦の成人への定期接種は2014年10月からPPSV23を用いて導入され、約10年あまりが経過いたしました。現在、15価、20価PCVが添付文書上、高齢者をはじめ、肺炎球菌による疾患のハイリスク者への接種も可能となっております。
なお、国内では成人に先行して2010年11月に小児に対するPCV7の公費接種が開始、2013年度に定期接種導入、2013年11月から13価PCV、現在15価、20価PCVが用いられております。
小児PCVの導入に伴い、国内でも小児、成人、ともに肺炎球菌感染症患者さんから分離される肺炎球菌の血清型置換が観察されております。事務局資料に御提示いただいているIPDのほか、肺炎球菌性肺炎についても複数の御報告があり、ワクチン含有血清型をカバーする形でより多くの、より多価のワクチンが開発されている状況にございます。詳細は本文15、16ページを御覧いただければと思います。
ページとしては少し戻りまして、11ページ、14ページの疾病負荷の大きさといたしまして、感染症発生動向調査、5類全数届出疾患として届けられたIPD症例の方、2024年、人口10万対届出数は18~64歳、0.8に対して、65歳以上が4.3と高くなっています。さらに、2014年から2024年の報告の届出時死亡割合は65歳以上で7~11%に上り、その重篤度が示唆されます。
また、国内で市中肺炎の17.8%が肺炎球菌性肺炎と、主要な原因菌であることが示されており、また、高齢の方ほど罹患率が高く、入院率も高いことが示されております。
続いて、ワクチンにつきまして、15価及び20価のPCVの有効性に関する検討は、今回の情報収集時点で免疫原性評価が主体で、65歳以上を対象とした有効性が示されております。13価PCVとの免疫橋渡し試験で非劣性を示すことで間接的に推計する形が取られております。
15価、20価PCVは、ともに13価PCVとの比較において共通血清型に対し、非劣性基準を満たし、加えて15価PCVは血清型3並びに追加血清型22F、33Fで優位性が示されております。
また、20価PCVは13価PCV・PPSV23連続接種に比較して13価PCVからの追加血清型のうち、血清型8で若干の非劣性基準を満たさないという状況がございましたが、免疫原性という意味では全血清型で確認されております。
50歳以上における15価PCV・PPSV23連続接種は13価PCVとPPSV23連続接種と共通血清型で同等との結果になっています。
安全性については接種後の局所反応、または筋肉痛をはじめとした全身反応は一定数認められるものの、重篤な副反応の懸念は報告されておらず、1点、米国のVAERS、市販後調査データのデータマイニング解析で、20価PCV接種後のギラン・バレー症候群の増加の可能性が示唆されたものの、詳細解析でリスクはACIPの評価で最小限と評価されたという経緯がございます。
PCVとPPSV23との連続接種、他のワクチンとの同時接種、またはハイリスク者の方における接種においても特段の有害事象の増加は指摘されていません。
24ページから医療経済学的評価の文献レビュー、成人の方を対象とした23価肺炎球菌ワクチン、15価、20価PCVを比較し、質調整生存年QALYを効果指標とする国内外の18件の文献がまとめられています。
総じて20価PCVは他のワクチン戦略と比較して費用対効果は良好、15価PCV単独とPPSV23との比較は国内の先生方の御報告1件で行われており、良好という結果でした。
ただし、各種パラメーターの不確実性や仮定の与える影響、データの不足等の制約は課題として言及されているという状況にございます。
最後に、31ページからG7ほか諸外国の状況として国の予防接種スケジュールで成人に対する肺炎球菌ワクチンが導入されている国々では対象年齢はおおむね60~65歳以上、ただし米国では2024年10月に65歳以上から50歳以上へ引き下げられています。フランスやニュージーランドは高齢者に対しては未導入で、小児とハイリスク者への接種が行われています。使用するワクチンは13価、または15価のPCVとPPSV23価の連続接種、もしくは20価PCV単独接種で、PPSV23単独接種など、各国様々となっております。
非常に駆け足で恐縮ですが、全体として以上になります。よろしくお願いいたします。
○鈴木委員長 森野委員、御説明ありがとうございました。
また、ファクトシートを作成いただいたメンバーの方々、本当に大変な作業だったと思います。どうもお疲れさまでした。ありがとうございました。
続きまして、費用対効果分析の結果につきまして、池田委員から御説明をよろしくお願いいたします。
○池田委員 池田でございます。
それでは、我々研究班で実施をいたしました「新型成人肺炎球菌ワクチンの費用対効果評価」の結果につきまして、資料1-2に基づいて説明をさせていただきます。
まず2ページ目でございます。
こちらは「モデルの概形」となっておりまして、今回マルコフモデルというものを使用しております。分析の視点は、保健医療費支払者の立場ということで費用を組み込んでおります。効果指標としてはQALY、質成長生存年を用いております。
また、左下にございますように、侵襲性肺炎球菌感染症、IPD、菌血症を伴わない肺炎をNBPと、この後、呼ばせていただきます。
主な仮定といたしましては5つ示してございますように、感染症で死亡しなかった場合は「感染症なし」に戻るとしております。
また、後遺症は今回は考慮せず、死亡と罹患中のQOLの低下を考慮しております。
肺炎による死亡以外の自然死亡も組み込んでおります。
ワクチン効果はIPD及びNBPの罹患減少に作用するということで、罹患後の重症化抑制というのは今回考慮してございません。
接種戦略ごとの費用とアウトカム、QALYを年率2%で割引をし、50万回のマイクロシミュレーションを実施して算出をしております。
3ページ目でございます。
これから御紹介する分析がこちらに示したようなものになりますので、順次御紹介をしていきたいと思います。
4ページ目となります。
「モデルにおいて使用した罹患率」でございますが、こちらは日本の新型コロナウイルス感染症流行前におけるサーベイランスデータや疫学データなどを用いて、このスライドに示したとおりで置いております。
5ページ目でございます。
モデルにおいて使用した血清型の分布、IPDにつきましては厚生労働科学研究明田班のデータを使用させていただいております。
6ページ目でございます。
NBPの血清型分布につきましては、Maedaらの研究結果を使用しております。
7ページ目でございます。
「モデルにおいて使用したワクチン有効性のパラメータ」につきましては、基本的にはCAPiTA試験というPCV13を対象とした臨床試験の結果を用いてパラメーターの値、ワクチンの有効性に関するパラメーターの値は設定をしております。ファクトシート144の文献を基本としておりますが、シナリオ分析といたしましてこの下に書いてございますように、同じCAPiTA試験を少し年齢の区切りが大くくりにはなりますが、65歳から74歳、そして75歳以上ということで有効性を示している研究もございますので、こちらについてもシナリオ分析としてこの有効性のパラメーターを用いております。
8ページ目です。
その他モデルにおいて使用したパラメーターの一覧を示してございます。
それでは、分析結果でございますが、9ページ目、結果マル1、これが基本分析となっております。
ワクチンを接種しないという戦略に対しまして、現行のPPSV23の接種、あるいはPCV15の接種、PCV20の接種、さらにはPCV15と PPSV23の連続接種というそれぞれの方針はワクチン接種なしに比べまして右から2番目のICR、ICERと書いてある増分費用対効果、この辺りが500万円よりも小さい値でありますと、費用対効果は一般的に良好というふうにみなされるわけですが、せめて500よりも小さい数字となっていることが御確認いただけると思います。
また、現行のPPSV23の接種に対しての費用対効果を計算したものが一番右の列となっております。こちらも500より小さい数字、そしてPCV20のところはDominantと書いてありまして、これは最終的に費用が削減になる。QALYは増加するという最も費用対効果がよいという結果が示されております。
こちらの数字につきまして、次の10ページ目に縦軸に費用、横軸にQALYという形で5つの戦略についてプロットしております。
接種なしが一番左下でございますが、接種なしに比べてPCV20を使った場合は、費用は縦軸のほうで少しかかるわけですが、QALY、横軸のほうが結構伸びますので、割り算をした値が先ほどお示しした116万円/QALYということで、費用対効果がよい。かけたお金に対して非常に便益が得られているという結果となっております。
ただ、このPCV20と比べまして現行のPPSV23、PCV15、あるいは連続接種というのは全て左上のほうに点が打たれております。これはどういうことかというと、PCV20に比べてお金がかかるけれども、QALYはそんなに増えないということなので、この位置関係を見ていただきますとPCV20というのが基本分析におきましては最も費用対効果の点で優れた選択肢だということがお分かりいただけるかと思います。
次に、11枚目でございます。
こちらは、先ほど御紹介したCAPiTA試験のワクチン効果に関しての別論文を用いたシナリオ分析となっております。
右から2番目の列ですね。増分費用対効果、ICERが書いてございます。これはワクチン接種なしに比べた4つの方針に関しての費用対効果の数字となっております。全て500よりも小さい値となっていて、どれも費用対効果はよいという結果になっております。一番右の列につきましては、現行のPPSV23の接種に比べた費用対効果の値で、これも全て500よりも下回っており、全て費用対効果はよいという数字でございますが、このシナリオ分析に関しての費用と効果の関係を平面で書いたものが12ページでございます。
12ページを御覧いただきますと、一番左下の接種なしに比べましてPCV20の接種というのは1QALY当たり213万円ということで、費用はある程度増えるけれども、それにも増して便益のほうが優っているというような費用対効果のよい選択肢となっております。
また、PPSV23、現行のもの、そしてPCV15というのはPCV20のICERよりも大きい。つまり、費用対効果が悪い。そして、QALYとしてはそんなに伸びないということで、これは費用対効果の点からあまり魅力的ではないということになります。
さらにPCV15とPPSV23の連続接種につきましては、PCV20を基準としてICERを計算しますと1,465.3万円ということで、これは500万円を超えておりまして、PCV20の接種に比べて連続接種は費用対効果が悪いというふうに考えられる選択肢ということになります。
次に13枚目ですが、今まで御覧いただいたように、基本分析では費用対効果の点ではPCV20というのが最も優れておりました。それで、このPCV20を65歳に接種するということではなく、70歳、75歳、80歳に接種した場合、どうかということでの分析を行っております。
ICER、一番右の列を御覧いただきますと、65歳、70歳では費用対効果はよいのですが、75歳、80歳となりますとワクチンの効果が落ちてくるということがございますので、費用対効果は劣る、悪いという結果になっております。
次に14ページ、結果のマル4でございます。
これは、接種年齢に係る追加分析を別のワクチン効果のデータに基づいて行ったシナリオ分析となっております。65歳、70歳の費用対効果の値に比べますと、75歳、80歳のものは費用対効果の数字としては大きくなっており、65歳、70歳のほうが費用対効果がよいということがお分かりになるかと思います。
次に15ページ、結果のマル5となります。
こちらは、既にPPSV23を65歳で接種された接種済みの方に対して、70歳で、75歳で、あるいは80歳で、さらにPCV20を接種するという方法につきましての増分費用対効果、ICERを計算したものになります。
右の緑のところにございますように、70歳に対して接種をする。65歳で既にPPSV23を接種済みの方に、70歳になってからPCV20を接種するということについては費用対効果としては良好となっておりますが、75歳、80歳に対して接種するというのは、費用対効果の数字としては悪いという結果になっております。
16ページで結果のマル6、こちらもまたワクチン効果を別のデータを使って分析をしたものになりますが、やはり65歳で接種済みの方には、70歳で打つのは費用対効果は良好だが、それを超えますと費用対効果が悪いという結果となっております。
17ページは、今まで分析に使いましたパラメーターはそれぞれ不確実性というものがございますので、このパラメーターに関して一定の幅で値を変動させて結果への影響を見たものでございます。
一番上にございますように、NBPに対するPCVのワクチン効果について、これが落ちる。このワクチン効果が悪いとなりますと、費用対効果の値も悪化するということが示されておりますが、ほかのものにつきましては一定の範囲でパラメーターの値を変えても、結果として費用対効果が悪くなるというようなことはないということが確認されております。
18ページ、参考分析でございます。
「PCV20の血清型毎の有効性」、これはかなり控え目なワクチンに対して不利な設定でシナリオ分析を行っておりますが、それでもPCV20の接種に関しては費用対効果がよいという結果が示されております。
19ページ、(参考分析2)ですが、「PCV20小児接種によるセロタイプ変動効果」でございます。
こちらは、PCV13から20に小児の定期接種が変わったとした場合に、追加の7セロタイプの分布が50%減少すると仮定をして再計算をしております。このような再計算を行っても、PCV20の接種というのは現行の接種に比べてDominant、費用が下がり、効果は勝るという結果が示されております。
それで、20ページの参考分析の結果ですが、これは先ほどの基本分析と同様の結果でございますので説明は省略いたします。
その後、21ページ以降に関しましては、それぞれの接種戦略でどれだけ医療費が変化するかというようなことでございますが、PCV20が最も医療費としては節約できるということがお分かりになると思います。
また、参考分析の3、4につきましては、各ワクチン戦略を実施した場合の経済的インパクト、様々なリターンや死亡がどれだけ減るかという数字を示しておりますが、PCV20を接種した場合というのが最もこれらのアウトカムがよくなる。これらのイベントが減るということが御確認いただけると思います。
以上でございますが、25ページにございますように、今回の分析には様々な限界、留意点がございます。
1つは、NBPに対する入院や重症化予防効果が今回考慮されておりません。仮にこれを考慮した場合には、PCVの費用対効果はますますよくなると考えられます。
2つ目ですが、PCV15、20の評価は免疫原性ブリッジングに基づいておりますので、結果には一定の不確実性が存在しております。
3つ目でございますが、小児へのPCV20定期接種による間接効果です。今回は仮に追加の7セロタイプの分布が50%減少と仮定して分析をいたしましたが、これについてもかなり不確実性の大きいデータであるということが留意点かと思います。
以上でございます。
○鈴木委員長 池田委員、御説明どうもありがとうございました。
いろいろ御質問はあろうかと思いますが、また後ほど時間を設定させていただきます。
それでは次の御発表、木下参考人から資料の説明をよろしくお願いいたします。
○木下参考人 よろしくお願いいたします。
御紹介にあずかりました感染研の木下と申します。私からはオランダ、RIVMとの共同研究として行っている、日本における多価肺炎球菌結合型ワクチンの費用対効果評価について御報告いたします。
本研究では小児定期接種から得られる間接効果や血清型置換を考慮し、マルチコホート・マルコフモデルを用いて成人向けワクチン接種戦略の費用対効果を推定いたしました。
2ページ目をお願いします。
成人向けに評価したワクチン接種シナリオは、全部で5通りです。また、昨年からPCV20が小児において定期接種として導入されており、これによる追加の間接効果を考慮しています。ワクチンによるVEや免疫減衰率は、主要文献に基づいて設定しています。
また、発生率は国内サーベイランス及び関連研究、または血清型分布は小児がAMEDの菅班、成人が厚労科研の明田班の強化型サーベイランスから取得いたしました。
3ページ目をお願いします。
間接効果は小児ワクチン導入1年後から80%に設定し、3年後から血清型置換を開始、8年かけて安定するようにモデリングしました。
また、こちらの図は小児からのワクチン効果のみを抽出した場合の各血清型・年齢群別のIPV発生率の推移です。
右の図では、PCV20導入後に緑と水色のワクチン対象血清型が年齢横断的に減少し、紺色の非対象血清型が置換される様子を示しています。また、資料には含めていませんが、不確実性も検討しております。
4ページ目です。
左の図は、小児にPCV13、成人は未接種を想定した場合の各戦略での15年間の予防効果の比較です。縦軸に示しているのは、15年のシミュレーション期間において各ワクチン導入によって防がれたIPD、NIPP、死亡の合計数です。また、右の図は15年間のシミュレーションの全体像を時系列で示しており、縦軸は各年の症例数です。
これらの結果から、小児PCV20導入による間接効果を含めると、成人への直接接種以上に集団全体の疾病負荷の軽減が得られることが分かりました。また、その分、成人に対するPPSV23接種の追加効果は相対的に小さくなることが分かりました。
5ページ目です。
費用対効果の結果をまとめたプロットを御覧ください。
上の図は、縦軸が追加cost、横軸が追加QALYで、右下に近いほど優位であると解釈できます。本研究では、PCV15、PCV20が費用対効果の閾値以下に入り、特にPCV20が最も右下に位置しました。
また、小児PCV20導入後は成人に対する小児からの間接効果の増加に伴い、下の図で示しているとおり、成人接種のICERが上昇する傾向が見られました。
以上により、成人へのワクチン戦略としては現時点ではPCV20がバランスに優れており、政策判断に当たっては間接効果や血清型置換を含めた中長期的モニタリングが重要と考えられました。
私からは以上です。ありがとうございます。
○鈴木委員長 木下参考人、御説明ありがとうございました。
続きまして、事務局から資料の説明をお願いいたします。
○吉原ワクチン情報分析専門官 事務局でございます。
それでは、資料1-3、事務局資料に沿って御説明させていただきます。
4ページ目をおめくりください。
こちらは「高齢者に対する肺炎球菌ワクチンのこれまでの経緯」でございます。
ページの下部、令和6年9月、第27回ワクチン評価小委において知見の一定の集積を確認し、疾病負荷、PCV15及び20の有効性・安全性、費用対効果評価についてファクトシートを踏まえ、再度議論を行うこととされました。
5ページ目、「現状の高齢者に対する肺炎球菌ワクチン定期接種の目的・対象者等」でございます。
高齢者肺炎球菌ワクチンの定期接種は個人の発病・重症化予防を目的に、65歳の方等を対象にB類疾病として実施しております。
これまで本小委員会では接種の目的を踏まえて、IPDの予防効果を重視してワクチンの評価を行ってきた経緯がございます。
6ページ目は、前回の小委員会での議論を記載しております。
7ページ以降、ファクトシートにおける知見等を記載しております。
8ページ目は、ファクトシートにおける肺炎球菌感染症についての概要、感染経路、治療法をサマライズしたものです。
また、9ページ目は厚生労働科学研究の研究班、明田先生班のデータでございます。
こちらはファクトシートと比べますと、直近のデータを1年分入れているものでございます。15歳以上における侵襲性肺炎球菌感染症の疾病負荷でございますけれども、まず2020年、2022年のIPD罹患率は2017年~2019年と比較して大きく減少し、新型コロナに対する感染対策の影響と考えられました。
2023年以降、IPD罹患率は上昇傾向にあります。2024年においても、PPSV23、PCV20、15、13の各ワクチンでカバーされる血清型は持続的に検出されており、また、65歳以上に限定してみても15歳以上全体と同様のトレンドでございます。
10ページ目、詳細なデータでございますので割愛いたします。
11ページ目でございます。
同じ研究班のデータでございますけれども、15歳以上における侵襲性肺炎球菌感染症の血清型の割合の状況でございます。
15歳以上におけるIPD症例から検出された肺炎球菌の血清型において、PPSV23及びPCV20でカバーされる血清型の割合がPCV13、15と比較して高いということでございます。
PPSV23でカバーされる血清型の割合の推移を見ますと、PPSV23でカバーされる血清型のうちPCV13に含まれる血清型の割合が大幅に低下している一方で、PCV13でカバーされない血清型の割合の低下は比較的小さいということでございます。
以降、ファクトシート及びファクトシートに収載されている論文の知見を事務局でまとめております。こちらは、先ほど既に御説明があったことからかいつまんでお伝え申し上げます。
12ページ目が、IPDの疾病負荷に関する疫学的な知見です。
また、13ページ目は肺炎球菌性肺炎に関する疫学的な知見です。
こちらも、ファクトシートに収載されている知見及びその論文の図表でございます。
14ページは、「成人に使用可能な肺炎球菌ワクチン」も記載しております。
肺炎球菌ワクチンには、莢膜多糖体ワクチン、PPSVと、結合型ワクチン、PCVがございます。
肺炎球菌ワクチンは莢膜ポリサッカライドワクチンと結合型ワクチンの2つに大別されるのですけれども、2025年4月現在、PPSV23、PCV15、PCV20が販売されております。
また、下には成人に対して販売されている各ワクチンの添付文書の記載を整理しておりまして、効能または効果及び用法用量を記載しております。
15ページ目でございます。
「結合型ワクチンの間接効果」については、先ほども御説明がありましたとおり、国内外の研究で小児の定期接種へのPCV導入による高齢者に対する間接効果が示唆されております。
また、成人のPCV接種がほかの成人に及ぼす間接効果を示した報告はないということでございます。
16ページ目、「ワクチンの有効性についての知見」、こちらは「PCV15及びPCV20の免疫原性」の知見でございます。
先ほども御説明がありましたとおり、PCV15は臨床試験においてPCV13との共通血清型に対してPCV13と比較し非劣性、うち1血清型は優位性を示し、非共通血清型に対してはPCV13と比較して優位性を示したということでございます。
PCV20は、臨床試験においてPCV13との共通血清型に対してPCV13と比較し、非劣性を示し、非共通血清型に対してはPPSV23と比較して6血清型に対して非劣性、1血清型に対して非劣性に達しなかったが、接種前のベースラインと比較して高く上昇したということでございます。
17ページは、「ワクチンの有効性についての知見」のうち、PCVとPPSV23連続接種の面積原性でございます。
PCV15接種後にPPSV23を接種する連続接種の免疫原性については、PC13接種後にPPSV23を接種する連続接種と比較して免疫原性が同等と報告されております。
また、PCV13接種後にPPSV23を接種する連続接種の免疫原性についての報告では、PPSV23の接種を行わないことと比較して免疫原性が改善するとの報告もある一方で、一部の血清型では改善しなかったとの報告もあるということでございました。
18ページ、ファクトシート及びそこに収載されている論文の抜粋でございますけれども、ワクチンの有効性についてIPD及び肺炎球菌性肺炎に対する臨床的アウトカムに対する効果でございます。
PCV15及び20の臨床的なアウトカムに対する効果を確認できていないものの、PCV13の知見として臨床試験及びシステマティックレビューにおいて、ワクチン血清型によるIPD及び肺炎の発症に対する予防効果が報告されており、またPCV13の臨床試験の追加解析において、効果は少なくとも5年間維持され、より高齢になるほど効果が低下したということでございます。
また、PCV15-PPSV23の連続接種の臨床的なアウトカムに対する効果は確認できず、PCV13とPPSV23の連続接種の知見として、限られた症例数の観察研究が存在するということでございます。
19ページ目以降は、安全性の知見でございます。
19ページはPCV15の安全性に関する知見でございますけれども、PCV15の安全性について臨床試験でPCV13と比較して接種部位の疼痛等の頻度がやや高かったという報告がありますが、観察された全身性有害事象のほとんどが非重篤なものであったということでございます。
20ページはPCV20の安全性についての知見でございますが、PCV20の安全性については臨床試験でPCV13と比較して有害事象の頻度には変化はないとの報告がございます。
また、先ほど森野委員からも御説明がありましたが、米国における市販後の安全性評価においてギラン・バレー症候群についての安全性シグナルが特定されましたが、詳細な解析の結果、PCV20によるリスクは最低限と評価されたということでございます。
次に、21ページ目は「ワクチンの安全性について知見」で、「PCV-PPSV23連続接種」でございます。
こちらは海外の臨床試験において、PCV15とPPSV23の連続接種の有害事象の発現割合はPCV13とPPSV23連続接種と比較して差がなかったとの報告があります。
また、22ページ以降は先ほど池田委員から御発表いただきました費用対効果分析の主要な結果を抜粋しております。
こちらは、同じ内容となっておりますので割愛いたします。
25ページ目は「諸外国の導入状況」、先ほど森野委員よりファクトシートでまとめられたもののサマライズとなっております。
26ページ目は「ワクチンの供給について」です。
企業からは前回の小委員会、令和6年9月の小委員会におきましてPCV15及びPCV20について仮に定期接種に導入された場合に供給する意向が示されたところでございます。
27ページ目は参考でございますが、「ワクチンの開発状況」といたしまして、現在21価の肺炎球菌結合型ワクチンが成人を適応に薬事申請されているということでございます。
29ページ目が、高齢者に対するPCV15とPCV20の使用に関する論点でございます。
まず論点1として、「定期接種に用いるワクチン・接種対象者について」、高齢者に対するIPD・肺炎球菌性肺炎の疾病負荷、ワクチンの有効性・安全に係る知見及び費用対効果評価の結果を踏まえて、定期接種に関して以下の技術的論点についてどのように考えるかということでございます。
1番目、用いるワクチンについて、PCV15及びPCV20の評価の結果を踏まえて用いるワクチンについては、従来のPPSV23から変更することについてどう考えるか、また変更する場合どのワクチンを使用することとするかということでございます。
また、対象年齢についてはワクチンの有効性や費用対効果等を考慮し、現状の65歳等の対象者を変更する必要があるかということでございます。
論点2、「高齢者に対する肺炎球菌ワクチンの評価について」でございますが、論点1における評価を踏まえまして、技術的観点からは、肺炎球菌ワクチンの定期接種の目的は、引き続き「個人の発病又はその重症化を防止し、併せてこれによりそのまん延の予防に資すること」としてもよいかどうかということでございます。
論点3の今後の対応方針につきましては、本委員会における論点1及び2の検討結果を踏まえつつ、具体的な運用を含め、さらに予防接種基本方針部会において検討することとしてはどうか。
また、論点4として、(PCV21の検討について)は、新たな結合型ワクチンであるPCV21の開発状況を踏まえ、仮に同剤が薬事承認された場合には本小委員会で検討を開始してはどうかということでございます。
事務局からは、以上です。
○鈴木委員長 御説明、どうもありがとうございました。
それでは、ここまで御説明いただきました森野委員、池田委員、木下参考人からの御報告、それから事務局から提出してもらいました資料につきまして御質問、確認事項がありましたらお願いします。
委員、参考人の間での議論というのはまた後ほどさせていただきますので、まずは資料に関する事実確認に関してございましたらよろしくお願いします。
池田先生、お願いします。
○池田委員 池田でございます。
木下先生にちょっとお伺いをしたいのですが、先ほど御発表いただいた中で、我々の分析とはパラメーターの設定やモデルが一部異なっておりますけれども、結果的にPCV20が費用対効果の点では最もよいということについては同様の結果だったと理解をいたしましたが、シナリオ分析として65歳以上のキャッチアップ接種という分析もされているということですが、このキャッチアップというのは例えば65歳で既にPPSV23を打った方に対してのキャッチアップという意味なのか、結果はどうだったのかということをまず1点お伺いしたいです。
もう一点ですが、確率的感度分析で不確実性の検討をされていますが、もしその結果も分かりましたら簡単に御紹介いただければと思います。
以上です。
○木下参考人 池田先生、御質問ありがとうございます。
1つ目のキャッチアップに関しては、資料の3ページ目にありますとおり、65歳に対象のワクチンを打って、それと同時に70、75、80、85、90、95歳というのを5年間の経過措置として打つようなキャッチアップ接種でございます。
そちらの結果としましては、我々のほうも池田先生と同様に、年齢が高齢になるにつれてVEが下がるようにモデリングしていますので、高齢コホートではVEが低下することにより1人当たりの獲得QALYが減少することによって、例えばPCV20のICERというのは360万円から450万円/QALYに悪化するというような形になります。
2つ目の質問に関しては確率的感度分析の結果ですが、PCV20を小児に導入を既にしているので、導入している状況下においてPCV20を成人に打った場合は84.9%の費用対効果成立確率というふうになります。逆に、PPSV23の場合は0.2%と非常に悪いような形になります。
以上です。
○池田委員 ありがとうございました。
いずれにしろ、PCV20を65歳で打つというのが最もよさそうだという結果だったというふうに理解いたしました。ありがとうございました。
○木下参考人 ありがとうございます。
○鈴木委員長 ありがとうございます。
ほかはいいでしょうか。
大藤先生、お願いします。
○大藤委員 御説明ありがとうございます。
池田先生にちょっと教えていただきたいのですけれども、たくさんの解析をしていただいて、いろいろなシナリオで設定いただいたのですごく分かりやすかったのですが、17枚目の「感度分析」で今いろいろな場合のベストケース、ワーストケースについて解析いただいているのですけれども、確認なのですが、一番上のPCVのワクチン効果を77.8から33.1まで減らした場合にどうなるかということを御確認いただいているのですが、こちらは肺炎に対するワクチン効果が下がった場合に関しては、IPDに対するワクチン効果も同じように下がるという前提で計算をしてくださっているのか。
あとは、その場合に脚注のところにNBPに対するワクチン効果が39.1以下になるとICERが500万QALYを上回ると書いているのですけれども、その場合にIPDに対するワクチン効果がどれくらいになったら500万を上回るという形になるのかについて、何か情報があれば教えてください。
○池田委員 御質問ありがとうございます。
ここで分析しておりますのは一つ一つのパラメーターが結果に与える影響を見ておりますので、一番上のワーストケースで費用対効果が悪化しているシナリオにつきましてはNBPに対するワクチン効果のみを動かした場合となっております。
IPDに関しての感度分析についてはこちらに示しておりませんが、結果が逆転し、費用対効果が悪くなるというような結果は示されておりません。
以上です。
○大藤委員 ありがとうございました。
○鈴木委員長 大石先生。
○大石参考人 費用対効果のところで、池田先生、木下先生の解析によるPCVとPPSV23の連続接種の評価なのですけれども、基本的には免疫原性、免疫応答に基づいて解析結果が得られていると思います。連続接種においてPCVとPPSV23の接種間隔によって免疫応答ブースター効果というのは変わってくるのですが、接種間隔の違いについても評価されておるのでしょうか。この連続接種の費用対効果がよくないという結果は大事な所見だとは思うのですけれども、教えていただければありがたいです。
○池田委員 では、まず池田のほうからよろしいでしょうか。
今回、接種間隔を動かすということについては分析をしておりませんが、もしデータがございましたら御教示いただければ、それに関しても検討してみたいと思います。
ただ、諸外国の先行研究などを見ますと、やはり効果は上がるけれども、値段のことを考えると費用対効果の点で課題があるというような一貫した結果になっていたかとは思います。
○大石参考人 了解しました。
○木下参考人 私のほうからは特に追加することはないのですけれども、我々のほうでは単にPCV20の1年後にPPSV23を打つというようなシナリオで設定しておりまして、そのほかのデータ等がありましたら、私たちのほうも追加で調べてみることは可能です。よろしくお願いします。
○大石参考人 ありがとうございました。またよろしくお願いします。
○鈴木委員長 では、また質問等はあろうと思いますので、議論の中で出てきたらお願いいたします。
それでは、議題として進めさせていただきたいと思います。議題としては、まず高齢者に対するPCV15及びPCV20についてということになります。御承知のように、ワクチン評価小委員会は国際的には予防接種技術的助言グループ、いわゆるNITAGのワーキンググループに相当するものでございます。ぜひ専門家研究者として闊達な議論をお願いしたいと思います。特に委員、参考人にかかわらず自由に御意見を述べていただきたいと思っております。
それでは、事務局が挙げていただいた論点1のマル1定期接種に用いるワクチンについてです。高齢者に対する肺炎球菌感染症の予防を目的として現行のPPSV23を継続する、あるいはPCV15、20、あるいはPCV15プラスPPSV23に変更するかといったことが問われているものだということです。
本小委員会では、これまでも疾病負荷、有効性、安全性、費用対効果、それからプログラムの実現可能性等、こういった評価項目に沿ってワクチンを評価してきたわけですけれども、これは基本的にWHOのSAGEですとか、あるいは米国のACIPが採用しているエビデンス・トゥー・リコメンデーション・フレームワークに相当するものに従ってやってきたということになります。
そこで、これまでの小委員会の議論と大きく変わるわけではありませんけれども、国際的な評価の枠組みを意識しながらぜひ議論をし、評価をしていきたいと思っております。
私として考えている評価項目として、8つ挙げておきたいと思います。
1つ目、公衆衛生上の重要性、マル2望ましい効果の大きさ、マル3望ましくない影響の大きさ、マル4エビデンスの確実性、マル5対象者の価値観と重要性、マル6費用対効果、マル7実施可能性、そしてマル8は公平性ということになります。それぞれ何を意味するかについては、またそれぞれについて議論をさせてください。
まずは、公衆衛生上の重要性ということになります。これはつまり、これまでいわゆる疾病負荷という観点から議論をしてきたということになります。現在の我が国における高齢者の肺炎球菌感染症の疾病負荷、あるいは医療負荷というものが公衆衛生上、重要な課題なのかどうかという観点から、当たり前ではないかというふうな気もしますけれども、ぜひ先生方からこういった観点から評価するといったような御意見をいただければと思いますが、いかがでしょうか。
大藤先生、お願いします。
○大藤委員 公衆衛生上の重要性については、やはり高齢者の死因の第5位であったりしますし、その中で肺炎球菌ワクチンというのが主な原因菌になっておりますので、それを予防する意義というのは十分高いと考えております。
○鈴木委員長 ありがとうございます。
ほかはいかがでしょうか。
原先生、お願いします。
○原委員 私も公衆衛生上の重要性としては非常に高齢者の肺炎というのは大きな課題だと思いますし、やはりコロナが終わってからまた増えてきているというのは問題かなと思います。それで、これまでPPSV23のほうを入れて接種が進んではいたのですけれども、やはり十分に抑え切れていないというところもありますので、ここで新しいワクチンも出てきたということで対策を強化していく必要があるのではないかと思います。
以上です。
○鈴木委員長 ありがとうございます。
氏家先生。
○氏家委員 ありがとうございます。
まず、論点1に関してです。PCV20が最も費用対効果が高いということで、ポリサッカライドワクチンに対して有効性が非常に高いというところを考えても、このPCV20をベースに定期接種を切り替えていくというのはよい方向性ではないかなと思います。
大石先生から御指摘があったような連続接種に関しては、安定供給とか、そういった観点で問題があるような場合とかであれば、米国などは併用して使っているというところがあるかと思いますけれども、分かりやすさとか、接種間隔とか、接種回数が増えるという観点からすると、セカンドチョイスということになり得るのかなと思います。
もう一つ、論点1の年齢のところでちょっと悩ましいなと思ったところがございまして、追加分析で今回スライドを増やしていただいたと思うのですけれども、私も事前に指摘をさせていただいて、もともとのオランダのCAPiTA試験というのをIPD並びにNBPに対する有効性の設定というのが、65歳を対象としたモデリングを使っているので、実データでの95%の信頼区間ぎりぎり一番上みたいな形で非常に高い値になっているので、これが本来は実データでいうと75%と45%みたいな形で、もう少し低いデータで報告がされていると思います。それで、別シナリオでやっていただいた分析によると、65歳よりも70歳のほうが、ICERが低くなっているというところがちょっと気になったというふうに思います。
追加で接種する場合に、75歳以上だと有効性が落ちるという観点と、当然残りの寿命自体が短くなるので、ICERとしてはあまり費用対効果が出ないというところは理解できるのですけれども、例えばこれまでどおり65歳のみの接種にした場合は、費用対効果は最もよいかもしれない70歳のところまでの年齢というのが抜けてしまうという問題が起こり得るのかなと思いました。
ですので、ここから先はもしかしたら基本方針部会の話かもしれませんけれども、70歳までの年齢というのをどうするのかというのは一つの課題として議論すべき問題かと思っています。それが論点1に関してのところです。
あとは、このまましゃべってしまっても大丈夫ですか。また別の論点のところで話したほうがいいですか。
○鈴木委員長 そうですね。一旦そこで区切らせてください。
もしかすると、池田先生、今の氏家先生の御意見に関してのコメントでしょうか。
○池田委員 はい。よろしいでしょうか。
○鈴木委員長 お願いします。
○池田委員 氏家先生、御指摘ありがとうございます。
これは、多分14ページの結果マル4の別シナリオで行った分析のことについての御見解かと思います。実は先生御存じのように、このCAPiTA試験のモデリングを使わなかったほうのデータというのは、75歳未満と75歳以上というふうに年齢を大きく区切った形でのワクチン効果が示されております。すなわち、65歳と70歳は全く同じワクチン効果の値になっているわけですね。一つのサブグループになっていますので。そうなりますと、どうしても罹患率が高い70歳のほうが費用対効果は計算上よくなるのですが、ただ、これはワクチン効果が65歳と70歳で全く同じという、いわゆる一つのサブグループのワクチン効果の値を使ったらこうなったということなのです。その点、本来は罹患率は増えるけれどもワクチン効果は下がるはずなので、そこが反映されていないという点に留意する必要があると思っております。
したがいまして、結果マル4についてはそのようなこともちょっと課題となりますので、注記のほうも、14ページの下のほうの一言目がそうなのですけれども、ワクチン効果は全く同じ値を入れているというところで、この数字というのは少し注意して見る必要があるかと思います。
以上です。
○鈴木委員長 ありがとうございます。
ぜひ自由闊達な意見をと申し上げましたので、どんどん議論をするのはよろしいのですが、一応司会としてまず疾病負荷、この肺炎球菌感染症を高齢者に対して予防することが大事なのかということだけ確認させてください。特にそういった観点からすると、侵襲性肺炎球菌感染症に加えて、いわゆる肺炎球菌性肺炎の疾病負荷というのが多分ボリュームとしては大きいのだろうと理解をします。それが高齢になれば高齢になるほどインシデンスが高くなるという傾向が我が国だけではなく見られている中で、これを防止することは公衆衛生上、重要であるかという問いですが、おおむねそれは合意いただくということでよろしいですか。
ただ、一点、ちょっと注意しなければいけないのが、さっき少し出てきましたが、小児に対するPCV20が始まっている中で、今後その間接効果で成人におけるPCV20カバーの血清型によるIPDなり肺炎が減っていく、あるいは置き換わっていくということがあるので、それを念頭に置いたとしても、やはり成人に対して、あるいは高齢者に対してPCVプログラムをしていくことが大事であると。
すみません。私が誘導的にしゃべっていますが、それに関しては特に異論はないでしょうか。
異論があれば、また適宜言っていただければと思います。
では、次の評価項目として、さっきから費用対効果のほうが先に出てきましたが、もちろんそれは大事ですけれども、まずPCV20、あるいはPCV15プラスPPSV23のワクチンの有効性、あるいはその効果の大きさについてです。これは先ほど来、幾つか、何度か出てきましたけれども、現在PCV15と20に関しては臨床的アウトカムを用いた有効性についてはプラセボあるいはPPSVと比較した試験はないという状況で、基本的にこれらのワクチンについては、特に臨床的有効性についてはPCV13とプラセボを比較したCAPiTAトライアルをベースとして、プラス免疫橋渡し研究の結果を用いて外挿的に評価されているというのが現状なわけです。
それで、これは一般的に昨今の多価のPCVであったり、あるいはHPVなどはこういった形で評価をされるのが国際的な流れになっているわけですけれども、ただ、臨床的アウトカムを用いていないではないかと言われればそうなのであって、これをどのように評価していくのか。こういった観点で、もし先生方から御意見があればいかがでしょうか。
原先生、お願いします。
○原委員 実際、このようなやり方というのは、高齢者で既に接種も行われていて、臨時的にRCTを行ったりすることが難しいような場合では、こういうやり方は妥当ではないかと思います。
実際に非劣性でもあり、十分に免疫応答も得られているという点は評価できると思うのですけれども、それからどれくらい持続するかというところに関しては現時点では断定的というか、PCV13の知見を当てはめて考えていると思いますので、今後実際に導入しながら、そこをきちんと評価しながら見ていく必要があるのかなと思いました。
以上です。
○鈴木委員長 原先生、ありがとうございます。
そのほか、いかがでしょうか。特に今ちょっと挙げていただいた、効果の大きさだけではなくて持続期間についてですよね。
大石先生、お願いします。
○大石参考人 大変重要なポイントでございまして、PCV15、20がPCV13と同等の侵襲性感染症、あるいは肺炎の予防ということは期待できると思うのですけれども、持続については私が知る限り、PCV13のCAPiTAスタディーの中で4年程度は効果があるんだということだと思うのです。おおむね5年ということでしょうか。
しかし、今までメーカーのほうからの免疫原性、持続的にオプソニン活性がどの程度継続して維持されているのだというデータが提示されていないのです。PCV20は定期接種ワクチンとして適当だとは思うのですけれども、さてこれを定期接種に導入した場合に、この免疫効果、ワクチン効果が低下してくる中で、再接種ということも考える必要があると思います。PPSV23については再接種、再々接種のデータまであるのに対し、再接種の安全性すらもまだよくPCV20では確認できていない状況です。再接種のデータは定期接種導入後でしか得られないと思いますけれども、データを取ることが必要になってくると思います。
以上です。
○鈴木委員長 分かりました。ありがとうございます。重要なポイントですね。将来的な再接種に関しても考えておく必要があるということですね。
そのほか、ワクチンの有効性に関して、氏家先生、お願いします。
○氏家委員 ありがとうございます。
先ほど原先生からも御指摘があったように、正攻法での有効性の評価というのは当然難しいわけですが、導入後の疫学変化というのは見られるわけですので、侵襲性の感染症というものが血清型ごとにどれくらい軽減していくのかということ自体はしっかりと評価していくということで、ある程度年数はかかりますけれども、レビューが可能だろうと思います。
あとは、有効性の観点でも、現時点で再接種が必要というようなデータがない背景としては、やはりブレークスルーのような侵襲性感染症というものがどのくらい起こり得るのかというところが重要な観点なのかなと思います。国内において、PPSVですとやはり接種後も侵襲性感染症のブレークスルーというものの報告が一定程度あるというのが現状だと思いますけれども、その血清型の評価において含まれているワクチンの血清型に対するブレークスルーの感染症がもし増えるというような疫学変化があるのであれば、そういった接種歴に基づいた評価というものが検討される必要があるのかなとは思います。
私からは以上です。
○鈴木委員長 ありがとうございます。
有効性という観点ですが、事務局から手が挙がっていますでしょうか。
○吉原ワクチン情報分析専門官 事務局でございます。
先生方、御議論ありがとうございます。時間の都合もございまして、可能でありましたら論点1のマル1及びマル2についておまとめに向けて議論を進めていただけると幸いでございます。
○鈴木委員長 ありがとうございます。
ということで、ファクトシート、それから事務局資料等にもございますけれども、基本的にPCV13のCAPiTAトライアルの結果からの免疫ブリッジングトライアルを用いた外挿ということであるが、PCV15、それから20に関して、特にIPDに関しては一定程度高い効果、それから肺炎球菌性肺炎に関しても血清型がカバーされているものについては中等度の効果はある。それから、期待できるということについてはおおむね異論はないのかなという気はいたします。
それでは、安全性という観点で幾つかこちらもファクトシートや資料で出ていましたが、安全性という観点からどのように評価をされますでしょうか。懸念事項等がございましたら御意見をいただければと思います。
氏家先生。
○氏家委員 安全性についてはPCV20というわけではないのですが、連続接種を採用する場合においては接種間隔による局所反応の問題というものがあるだろうと思います。一般の人口で接種間隔をどう置くかというところが免疫不全者とはまたちょっと戦略が異なるところだと思いますけれども、15価を打ってから23価のPPSVを打つ場合は学会の推奨の接種間隔においても、接種間隔を延ばしてきたというような経緯があると思いますので、連続接種を採用する場合は安全性に関する接種間隔の規定というものを考慮すべきだろうと思います。
○鈴木委員長 ありがとうございます。
そのほか、いかがですか。
おおむねこれまで出てきたエビデンスの中では、有害事象は基本的にワクチンの接種と関連する部分に関しては軽微である。重篤な副反応の報告はないといった整理かと考えますが、特にその点について異論はございませんでしょうか。
ありがとうございます。
それでは、すみませんが、先ほど議論が展開しつつありましたが、いわゆる費用対効果ですね。医療経済学的な評価という観点から意見交換をしたいと思います。既に御意見をいただいているところではありますが、おおむねPCV20プログラムについては費用対効果がよいのではないかといった御意見はいただきましたけれども、そのほかのプログラムにおいても、例えばPCV15単独でも単独自体の費用効果は悪くないという傾向であったり、あるいは対象年齢群を65、あるいは70といったところでもおおむね数字がいいところは出ていますが、そうしたことも含めてどのように評価するでしょうか。先生方から御意見をよろしくお願いいたします。
原先生、お願いいたします。
○原委員 小児へのPCV20の導入による影響についても木下参考人のほうから加味した検討をしていただいて、それでもPCV20を高齢者に導入することの費用対効果が非常にいいということが分かったと思うのですけれども、そこの仮定についてもやはりどれぐらいの間接効果が起こってくるのかというのは観察しながら検討する必要があるのかなとは思うのですが、今の仮説で行った費用対効果分析を見る限りでは、十分効果があるのではないか、費用対効果に優れているのではないかと思いました。
以上です。
○鈴木委員長 ありがとうございます。
出てきた数値の評価、総合的に評価するんだと思いますけれども、65歳以上のプログラムがいいのか、あるいは70とか、それからPCV20単独なのか、15単独なのかといった観点から何か。
大石先生、お願いします。
○大石参考人 費用対効果が70歳でも十分優れているという結果は大事な所見だと思うのですけれども、現在PPSV23による定期接種は65歳だけの対象、あとは基礎疾患がある人は60から64歳ということになっています。今後は定期接種がこのPCV20に切り替わったときに、対象年齢を65、70とか、両方にするとか、そういうことが可能になるということなのですか、それとも70のほうにシフトするみたいなことなのでしょうか。その辺はよく分かっていないので教えていただきたいのですけれども。
○鈴木委員長 飽くまでも小委員会ですので、技術的な観点から強くこの年齢層に接種すべきだという根拠があるのであれば、そのように意見をすることはできるでしょうし、一方で、現実的には当然ながら行政事務の実態を踏まえての判断になるんだと思います。そこのところは、例えば基本方針部会ですとか、そういったところでの議論を踏まえてということになろうかと私は思います。
事務局のほうはいかがでしょうか。
○吉原ワクチン情報分析専門官 事務局でございます。
大石先生がおっしゃいましたことに関しましてですけれども、この小委員会というのは今、委員長もおっしゃったとおり科学的な評価の場でございますので、まさに我々として先生方にお聞きしておりますのは費用対効果も含め、科学的な評価を踏まえて、年齢に関して言いますと、65歳であるという現在の対象者に対して実施することが引き続き費用対効果がいいのかどうか。また、科学的な観点から言って、もしどの年齢層でもどうであるみたいな評価があるのであれば、それについてもどうかということでございます。おっしゃるとおり、制度としてどうかといった話については基本方針部会の議題と思います。
また、少し議事進行上の補足でございますが、次の議題もございますので、もし可能でありましたら先生方の議論が出た段階で次に進んでいただきますと幸いです。
○鈴木委員長 もちろん時間は分かるのですけれども、適当にスキップして政策を決めていいのかという問題はあると思いますので、我々研究者としては責任を持って議論はまとめていきたいと思っております。
それでは、費用対効果という観点から、何か追加で御意見ございますでしょうか。
原先生、お願いします。
○原委員 とても素朴な質問というか、不勉強な質問で申し訳ないのですけれども、これは保健医療費支払者の立場での分析ということで、個人の負担額のこととかはここでは考えなくてよいということでいいのでしょうか。せっかく定期接種になってB類といってもなかなか接種率が上がらなかったらあまりよくないかなとも思いまして、そういう意味では個人の負担額はすごく地域で異なっているという現状が今はありますので、この分析というのはそういうところまで含めて考えるものなのかという漠然とした質問で申し訳ないのですけれども、教えていただければと思います。
○鈴木委員長 これは、池田先生、よろしいですか。
○池田委員 池田でございます。御質問ありがとうございます。
そちらは、2ページのところでもっと詳細に書いておくべきかと思いました。分析の視点は今回保健医療費支払者の立場となっておりまして、これは実は国や自治体が払う費用だけではなく、接種を受ける方が支払う費用も全て含めての費用となっております。これを誰がどう払うかということについては、またさらなる検討議論が必要かとは思います。
大体、諸外国でもいわゆるペイヤーの立場、支払者となっておりますが、それはいわゆる自己負担、あるいは自費で払うような方の費用も含めておりまして、例えばアメリカなどでは誰が何割払うなどというものが入っているプログラムでも違ったりするので、それを一々個別に分けて分析はできませんから、誰がお金を支払うにしろ、その払ったお金全部についての分析という形で、よく支払者の立場、ペイヤーの立場という言葉を用いられておりまして、今回そのつもりで書きましたが、ちょっと説明不足で失礼いたしました。
○原委員 ありがとうございました。
○鈴木委員長 氏家先生、お願いします。
○氏家委員 すみません。簡単に費用対効果の観点で、議題の4に少し関わるところですけれども、現在、PCV21の承認が見込まれているところですが、このワクチンが小児の血清型を含まない形での新しい高齢者に特化したタイプのワクチンで、高齢者でのカバー率を上げるという戦略の下に開発されたワクチンですので、現在のモデルでの費用対効果ですと、カバー率のところでは評価ができるのですけれども、小児に20価を打った場合に血清型が減るだろうという観点での評価が必要になってくるのかなと思います。現時点で、PCV21が承認されてからまた議論を進めるという方針について特段の異論はないのですが、費用対効果の分析の方法については少し工夫が必要かなと思いましたのでコメントさせていただきます。
○鈴木委員長 ありがとうございます。重要なポイントかと思いました。
それでは、事務局から時間のほうもということもありましたので、議題の整理で、論点1のマル2ですね。対象年齢についてですが、既に幾つも御意見をいただいておりますがけれども、改めて確認です。
既にここまで評価の中で意見が出ていますが、改めて厚労省からは現行の高齢者肺炎球菌プログラムを踏襲して65歳以上の高齢者、それから60から65歳未満の基礎疾患にするか。そうすることに技術的な課題はないのかという確認を受けていると理解をしておりますが、対象者を現行のPPSVの対象者のままでいくのか、あるいは強くこのように変えたほうがよいというような御意見はございますでしょうか。
氏家先生、お願いします。
○氏家委員 ありがとうございます。
現行の65歳というのが、継続性という観点で非常にシンプルかつ運用しやすいということは理解できます。
一方で、70歳までの費用対効果が優れているという評価に関しても検討はすべきだろうとは思いますので、そこは小委員会という場でなくてもいいと思います。基本方針部会を含めて、65歳以外の接種はどういう形でやるのが最も望ましいのかということは議論を進めていただくことが望ましいのかなと思いました。
また、直接は関係がないのですが、60歳から65歳のハイリスク者について、ここは全然聞かれていないので余計なことかもしれないのですけれども、インフルエンザと同等の規定になっています。心肺機能、心臓、腎臓、そして肺の臓器ですね。これの機能に低下がある方が60歳から定期接種の対象になるのですが、肺炎球菌感染症ですので疾病の特性が異なります。例えば脾臓を摘出している方であるとか、移植を受けた方とか、そういった方に非常に感染や重症化のリスクが上がる疾病特性がありますので、このままインフルエンザと同じ規定のままで良いのかということも合わせて考えていただくと、より疾病特性に合わせたハイリスク者の規定というものを議論してもいいのではないかと考える次第です。
そういう意味では、PPSV23とPCV20がほぼ同じカバー率になっていますので、問題点としては、有効性はPCV20のほうが良いですから、PPSV23の残る存在意義が脾臓摘出患者に保険適用があるというところなんですね。もちろん健康局でこれを議論するところではないというのは理解しているのですけれども、そういったハイリスク者に対する脾摘患者における保険適用というのが今はPPSVしかない状況ですので、PCV20に関してもそういった検討というのを進めていただくと、予防接種施策として少し定期接種から外れますけれども、より医学的に適した感染症対策が社会的に浸透しやすいのではないかと思いますので、追加で発言させていただきます。
○鈴木委員長 ありがとうございます。
大藤先生、お願いします。
○大藤委員 ありがとうございます。
年齢については、有効性とか、費用対効果とか、あとは運用上の面から考えても現行の65歳等でよろしいかと思っているところなのですけれども、一方で、今までワクチン施策でワクチンを接種してきたPPSV23をもう既に接種された方について、5年以上経過すると効果が落ちてくるというような報告もございますので、そういう方たちに対しても改めてPCV20を追加で接種するという枠組みとかも考えることは大事ではないかなと思っております。
以上です。
○鈴木委員長 ありがとうございます。
森野先生、お願いします。
○森野委員 ありがとうございます。
私も対象年齢に関しまして、現状の65歳等ということに関しては継続面からして妥当ではないかと考えております。
1つ、その対象年齢を積極的に上げる方向の情報があるかと考えますと、先ほど池田先生から御説明くださった結果マル4の別シナリオには罹患率が影響しており、特に65歳と70歳で、70歳を特に推すものともはっきりとしたデータ予想というわけではないとしますと、結果マル3が一つの参考になるのであろうと思うところです。
あとは、やはり疾病という点で、少しファクトシートで引用されております文献で、肺炎球菌性肺炎、市中肺炎の罹患率というものが65歳以上から上がり始めているというところ、そして入院率もそこから高いということを今後遅らせることでの機会の喪失というところも少し考慮されるのではないかと思ったところです。
反対に年齢を下げる方向というのは考え得るかというのは、米国の状況で50歳以上というふうに年齢を下げられたところがあるかと思います。その点に関しては、今回の検討では65歳以上と18歳から64歳という年齢区分での疫学情報の分析ではありましたけれども、ひとつそこをドリルダウンして検討してみることは意義があるかもしれないと感じたところではあります。
参考までに、以前、13価肺炎球菌ワクチンのファクトシート、2015年発行のものがありまして5歳階級別のIPDの罹患率が掲載されておりますが、そこでは60歳から64歳群もIPDとしては65歳から69歳群に比較的近い数字ではございましたので、そうしたところに関しては少し検討も今後含めていく、評価をしてみるというところは図ってもいいのかなと思ったところです。
以上になります。
○鈴木委員長 ありがとうございます。
岡田先生、お願いします。
○岡田参考人 年齢のところなのですけれども、私も大藤先生が言われたところが少し気になっています。ここでは年齢のことは言えないということでしたが、疾病負荷の年齢を考えると、70歳以上、80歳以上で疾病負荷が上がるのに、今後65歳だけとしてしまうと、何となく私も含めてですけれども、高齢者が取り残されているような気がしますから、何らかの方策を基本方針部会で考えていただけるとありがたいと思いました。
以上です。
○鈴木委員長 ありがとうございます。
事務局は、時間のことでしょうか。
○前田予防接種課長 予防接種課長でございます。
先生方もお話のとおり、今日は小委員会でございますので、このエビデンスを下に基本方針部会、さらにはワクチン分科会というところでまた議論させていただきたいと思っておりますし、加えて公費を使うという観点もございまして、これは必要な財政的な確保というところもありますので、そういうところを踏まえて最終的な接種範囲等々は本日の先生の御意見をベースに優先順位をつけて議論させていただこうと思っております。
また、重ねてお願いでございますが、3時から御予定のあるとおっしゃっている先生もいらっしゃいますので、これは先生方の御意見を伺う貴重な機会でございますし、次の議題2も非常に重要かと思っておりますので、ぜひ3時までに貴重な御意見をいただく場として活用させていただければと思っておりますのでよろしくお願いいたします。
私からは以上でございます。
○鈴木委員長 分かりました。ありがとうございます。
すみません。時間のマネジメントがよろしくないです。
それでは、論点1のマル2の年齢については先生方から御意見をいただきましてありがとうございます。
論点2のほうに移りたいと思いますが、論点2に関しては事務局側からは「肺炎球菌ワクチンの定期接種の目的は、引き続き、「個人の発病又はその重症化を防止し、併せてこれによりまん延の予防に資すること」としてよいか。」という問いです。
ちょっと分かりにくいですけれども、現行の定期接種の目的と同様とすることに技術的観点から課題はないのかという問いだと理解をしておりますが、これについて先生方から御意見はいかがでしょうか。
この文言自体は予防接種法からきている言葉ではありますけれども、実態としていわゆるA類、B類の位置づけに重なるところではあろうと理解をしているところです。最終的にA類、B類をどう位置づけるかというのは、まさに基本方針部会やワクチン分科会での最終的な総合的判断になるのだろうと思いますが、ただ、それに先んじて専門家、研究者の視点からいわゆる感染伝播の抑制を目的とする措置が主体なのか、重症化の抑制をすることを主目的とするのか、これについて研究者の観点から、専門家の観点から何か御意見があればということだろうと思いますが、いかがでしょうか。
特に現行から変える強い理由はないというような感じですか。いいですか。
繰り返しですが、だからといってA類か、B類かというのはまた別の議論だと思いますので、そこはまた基本方針部会等での議論ということでいいですかね。
そういうことで、では論点3、4はおおむね既にカバーされたのかと思っておりますので、我々の小委員会としてのまとめ、簡単なものになると思いますが、基本方針部会に報告するということになっております。また、その文章自体は改めてメール等で確認させてもらうとして、私としては整理させてほしいと思います。
論点1に関して、成人における肺炎球菌感染症の予防を目的とする定期接種として、現行のPPSV23を替えてPCV20を単独接種に切り替える。それを選択することが望ましい、あるいはそれが推奨されるということでよろしいですか。小委員会としての意見のまとめですが、確認ですが、PCV15をそこにオプションとして加える、あるいはPCV15プラス23を加える。
大石先生。
○大石参考人 私の意見としては、PCV20に置き換えるということでよろしいのかと思います。
ただ、さっきの再接種のこともあり、PPSV23がもう使えなくなるということではちょっと困るのかもしれません。その辺は、定期接種の切替えということではそれでよろしいかと思っています。
以上です。
○鈴木委員長 重要なポイントをありがとうございます。
まさに定期としてはPCV20だけれども、任意として23も打てるような選択肢があってもいいのではないかといったような御意見なのかと理解しました。定期としては23からPCV20に切り替えるという方向でおおむね首肯いただいているかと思います。
では、対象者を現行の65歳プラス60から65歳の基礎疾患を有する者とする方向について、今ここで完全に決める必要はないと思いますが、その方向性についてはいかがでしょうか。そのほかの選択肢について、先生方から御意見はありますでしょうか。
森野先生、お願いします。
○森野委員 先ほどの岡田先生のコメントについて私の中で考えまして、1つ、確かに帯状疱疹のワクチン等の違いとしては、肺炎球菌ワクチンの有効性の期間というものが少しまだ不透明であるというところで、接種年齢と、その罹患率が年齢に応じて上がっていく傾向があるというところの兼ね合いをどう落とし込んでいくかというのは非常に大切な課題だと思ったところです。少しコメントを添えさせていただけたらと思いました。ありがとうございます。
○鈴木委員長 重要な点のリマインド、ありがとうございました。
ということであれば、65歳以上とすることに基本的にはおおむね異論はないんだけれども、ただ、65歳だけに打つことによってそれ以上の、例えば70歳以上の方々に接種の機会がないということについては一定の配慮が必要ではないかといった意見もあったというような感じでいかがでしょうか。文言はまた整理しますけれども、ではその意見については追加的にコメントを報告書には記載するという方向でいきたいと思います。
それから、論点2に関しまして確認ですが、接種の目的は現行のPPSVプログラムと同様の目的を維持するということについて、ここまでおおむね異論はなかったと思いますが、これもよろしいでしょうか。
(委員首肯)
○鈴木委員長 おおむね御首肯いただいたかと思います。それでは、今ちょっと口頭でまとめましたが、文言としては事務局のほうでもまずドラフトしていただきまして、最終的には我々委員の間で確認をした上で基本方針部会に報告するということにさせてください。
それから、PCV21についてですが、これを引き続き小委員会で検討するということについては、多分誰も異論はないのではないかと思いますが。
(委員首肯)
○鈴木委員長 御首肯ありがとうございます。では、そのようにさせていただきたいと思います。
すみません。時間が押しました。それでは、次の議題2に進みます。HPVワクチンにつきまして、事務局から御説明をお願いします。
○山口予防接種課課長補佐 先生方、活発な御議論をいただきましてありがとうございます。こちらも大事な議題でございますので、ぜひよろしくお願いいたします。
事務局より、資料2「HPVワクチンの男性への接種について」を御説明いたします。資料2を御覧ください。
おめくりいただきまして、2ページ目を御覧ください。
今回の議題は「HPVワクチンの男性への接種について」であり、「これまでの経緯、薬事承認状況について」をお示しした上で、「HPVワクチンの男性接種に係る検討課題について」、議論を進めてまいりたいと思います。
続きまして、5ページ目を御覧ください。
5ページ目では、「HPVワクチンの男性接種に係る直近の状況」についておまとめしております。令和6年3月、本委員会におきまして4価HPVワクチンを3回接種するという前提で、これを定期接種化する場合の有効性、安全性は一定程度確認されたものの、費用対効果については課題があるとの御意見を頂戴したところでございます。
その後、令和6年11月、9歳以上15歳未満の男性に対する2回接種、15歳以上の男性に対する3回接種の「用法及び用量」の追加、男性及び女性に対する肛門がん及びその前駆病変と男性に対する尖圭コンジローマの予防の適応追加に関する申請がなされたところでございます。
続きまして、6ページ目を御覧ください。
「HPVワクチンの男性接種に係る薬事承認状況」として、2価、4価、9価のワクチンについて、それぞれ「効能又は効果」、「用法及び用量」、薬事承認の状況等をお示しし、先ほど御紹介した薬事申請中である9価のワクチンの状況を赤字でお示ししておりますので、適宜御参照いただければと思います。
続きまして、7ページ目以降の「HPVワクチンの男性接種に係る検討課題について」、御説明してまいります。
8ページ目におきましては、「HPVワクチンの男性接種に係る検討課題について」、整理してございまして、四角囲みの中に表として有効性、安全性、費用対効果のそれぞれについて定期接種化の評価及び検討に係るこれまでの対応をお示ししております。
有効性につきましては、これまで薬事承認上の用法及び用量における効能又は効果の範囲で主に御議論をいただいてまいりました。
また、一方、HPVワクチンの男性接種により予防する対象疾病については承認外の効能又は効能の取扱いに、HPVワクチンの男性に対する接種回数については承認外の用法及び用量の取扱い等に課題があるという御意見を頂戴してまいりました。
また、安全性についてはHPVワクチンの男性接種における安全性について、審査報告書のほかにファクトシートや副反応疑い報告における分析結果を踏まえ、検討し、費用対効果についてはHPVワクチンの男性接種に係る費用対効果分析を実施する際の分析の立場として、公的医療の費用のみを対象とした費用対効果について検討を進めてきたという経緯がございます。
続きまして、9ページ目でございます。
その上で、9ページ目におきましてリード文にありますとおり、HPVワクチンの男性接種の定期接種化について引き続き議論を進めるに当たって、これまでの検討課題等に加え、予防接種に関する基本的な計画を踏まえた本日の論点をお示ししております。
「論点」といたしましては、検討課題に沿って議論を進めていくに当たり、本委員会ではまずHPVワクチンの男性接種に係る対象疾病及び接種回数について議論を進めることとしてはどうかとしております。
続きまして、10ページ目でございます。
こちらでは「HPVワクチンの男性接種の定期接種化に係る検討課題の薬事承認の状況等について」、おまとめしております。
先ほどの9ページ目のまとめで記載いたしました「HPVワクチンの男性接種により予防する対象疾病」及び接種回数について表でおまとめしております。
上段の表におきましては、マル1として薬事承認が得られている、男性接種による接種者本人に対する予防効果がある疾病として尖圭コンジローマ及び肛門がん及びその前駆病変があり、マル2薬事承認が得られていない、男性接種による接種者本人に対する予防効果が期待されている疾病として中咽頭部周辺のがん等があり、さらにマル3として薬事承認が得られていない、男性接種による女性に対する予防効果が期待されている疾病として、子宮頸がん等があることをお示ししております。
下段の表におきましては、4価HPVワクチンの男性に対する接種回数として、薬事承認が得られている回数についてお示ししております。
11ページ目以降では、HPVワクチンの男性接種に係る検討課題として、「HPVワクチン男性接種に係る接種回数」についてお示ししております。
12ページ目におきましては、「HPVワクチン男性接種に係る接種回数別の有効性のエビデンスについて」として、薬事審査において用いられたエビデンスとして、4価HPVワクチンの3回接種による肛門がん及び尖圭コンジローマを含む外部生殖器病変に対する有効性を認める報告を御紹介しております。
続いて、13ページ目におきましては「HPVワクチンの男性接種に係る接種回数別の有効性のエビデンスについて」として、もう一つ文献の御紹介をさせていただいております。
事務局が調べます限り、現時点ではHPVワクチンの男性接種について、薬事承認外の接種回数を支持する直接的なエビデンスはございませんでしたが、男性接種に係るエビデンスではないものの、インドの10歳から18歳の女性を対象とした4価HPVワクチンの初回接種後の中和抗体価を比較した研究において、1回接種群の中和抗体価は未接種群に比較して有意に高いが、2回接種群、3回接種群と比較すると有意に低いとした報告がございましたので、御紹介しております。
続きまして、14ページ目でございます。
HPVワクチンの接種回数等に関するWHOのポジションペーパーをおまとめしております。
リード文にございますとおり、HPVワクチンに関するWHOポジションペーパーにおいては、男性接種に限定したものではないものの、接種回数に係る現時点のエビデンスは、薬事承認が得られている9歳以上の主な接種対象者に対する2回接種を支持する、とされています。
なお、1回接種については、有効性の減弱の可能性よりも、公衆衛生の観点として接種率向上や費用負担の低下などのメリットが上回る可能性が示唆されるものの、現時点ではエビデンスがない、とされており、記載の詳細については下の破線囲みに下線つきでお示ししておりますので、適宜御参照いただければと思います
15ページ目は、HPVワクチンの男性接種に係る接種回数についての小括スライドでございます。
中段の枠囲みの中に、12から14ページ目で御紹介いたしました科学的知見を記載しました上で、その下に矢印でおまとめしております。現時点では、男性接種に係る接種回数について薬事承認の「用法及び用量」における3回接種に係る有効性のエビデンスはあるものの、薬事承認の用法及び用量外の1回または2回接種を支持する直接的なエビデンスはないとして、「論点」でございますが、HPVワクチンの男性接種の回数については本委員会においても薬事承認が得られている範囲を対象とすることについてどのように考えるかとしております。
続きまして、16ページ目以降ではHPVワクチンの男性接種に係る検討課題として、「HPVワクチンの男性接種により予防する対象疾病」についてお示ししております。
17及び18ページ目におきましては、前回の本委員会の資料と同様の内容として、肛門がん及び尖圭コンジローマそれぞれの疾病負荷及び男性接種による男性に対する有効性のエビデンスについて、ファクトシートにおまとめいただきました内容をお示ししておりますので御参照いただけますと幸いでございます。
19ページ目におきましては、こちらも前回の本委員会の資料と同様の内容として中咽頭部周辺のがん及び陰茎がん、それぞれの疾病負荷及び男性接種による男性に対する有効性のエビデンスについてファクトシートにまとめていただきました内容をお示ししております。
一例として御紹介申し上げますと、最下段の枠囲みを御覧いただきますと、HPVワクチンの男性接種による<中咽頭がん>に対する有効性の2ポツ目として、ファクトシートにおいて、HPVワクチンの男性接種による中咽頭がん及び前がん病変に対する予防効果についてはいずれも直接的な報告はなく、エビデンスは限られていると記載いただいている旨等をお示ししております。
続いて、20ページ目におきましては、子宮頸がんの疾病負荷及びHPVワクチンの男性接種による女性への波及効果に関連するエビデンスについて、こちらもファクトシートにまとめられている内容をお示ししております。
下の枠囲みに「HPVワクチンの男性接種による女性への波及効果について」、おまとめしておりまして、1ポツ目でございますけれども、HPVワクチンの男性接種による女性への波及効果に関連するとして、ファクトシートに記載のあるエビデンスはHPVワクチンを男女に対して導入したことにより、女性の尖圭コンジローマの診断割合が低下したとの報告に留まる、とまとめております。
2ポツ目でございますけれども、HPVワクチンの男性接種による女性の子宮頸がん及び前がん病変に対する予防効果については、ファクトシートにおいていずれも直接的なエビデンスはないと記載されている旨、おまとめしております。
21ページ目には、20ページ目のまとめ、1ポツでお示ししたエビデンスについて参考資料としておつけしておりますので御参照いただければと思います。
その上で、22ページ目に小括スライドを置いております。
先ほどの小括スライドと構成は同様でございまして、17から21ページ目にお示しした科学的知見を中段の枠囲みに記載した上で、その下に矢印でおまとめしております。現時点では、薬事承認が得られている接種者本人の肛門がん及び尖圭コンジローマの予防効果に関するエビデンスはあるものの、薬事承認が得られていない中咽頭がん、陰茎がんの予防効果に関するエビデンスは限られており、また、男性接種による女性の子宮頸がん等の予防効果に関するエビデンスも間接的なエビデンスに留まる、として、「論点」でございますけれども、HPVワクチンの男性接種に係る薬事承認事項及び現時点の学術論文に基づく科学的知見等を踏まえると、HPVワクチンの男性接種の定期接種化の検討にあたり、HPVワクチンの男性接種により予防する対象疾病については、本委員会においても薬事承認が得られている範囲を対象とすることについてどう考えるか、としております。
続きまして、23ページ目におきましては安全性についてもお示ししております。
24ページにHPVワクチンの男性接種に関する知見として、薬事食品衛生審議会における4価HPVワクチンの男性への接種に係る臨床試験データと、ファクトシートにおける安全性に関する情報を整理しております。
その上で、25ページ目に小括を置いております。
下の矢印のまとめを御覧ください。
1ポツ目、現時点では、薬事での評価及びファクトシートでの安全性に関する知見を踏まえると、HPVワクチンの男性接種の安全性については一定エビデンスが蓄積されていると整理される。
2ポツ目、なお、薬事承認外の効能を仮に期待する場合であっても、男性接種に係る安全性については、薬事承認の範囲で一定程度エビデンスが蓄積されていることから、その懸念はないと整理が可能である、としております。
3ポツ目、任意接種において報告されている副反応の報告状況も含め、安全性については別途副反応検討部会で御議論いただくこととしたいと、このように考えております。
その上で、26ページ目が総括スライドでございます。
上段に「現時点の薬事承認事項及び学術論文にもとづく科学的知見」を男性接種に係る接種回数、対象疾病、安全性についてそれぞれまとめました上で、下の議論の進め方についてでございます。
1つ目の○、本委員会においてHPVワクチンの男性接種の定期接種化の検討を進めるにあたり、接種回数、予防する対象疾病及び安全性については、引き続き最新のエビデンスを広く収集・評価に努めつつ、現時点では薬事承認が得られている範囲を対象とすることについてどう考えるか。
2つ目の○として、HPVワクチンの男性接種に係る費用対効果等については、事務局より最新のエビデンスを提示しつつ、引き続き御議論いただくこととしたい。
このようにまとめさせていただいております。
以下は、参考資料でございます。
28ページ目におきましては、HPVワクチンに係る男性接種の導入状況別の年齢調整子宮頚がん発症率として、下に米国からスペインまでの各国におけるHPVワクチン接種推奨の導入年度を、青三角として男性を、ピンク色三角として女性をお示ししており、右側に男女の接種率及び2020年時点における子宮頸がん発症率を整理しております。こうした疫学的な情報についても重要であると考えておりまして、事務局としましても、こうした情報の整理に引き続き努めてまいりたいと考えおります。
29から34ページ目におきましては、諸外国の公衆衛生当局及び薬事当局における導入状況、検討状況等をお示ししておりますので、適宜御参照いただければと思います。
また、35ページ目でございますけれども、主として今後の委員会、小委員会や、多くは基本方針部会等における所掌ではございますものの、参考としてHPVワクチンの男性接種の定期接種化に向けて必要な議論、論点について整理しております。
例えばではございますけれども、疾病類型として薬事承認の範囲外ではあるが、男性への接種による女性の子宮頸がん等の予防効果も踏まえると、接種者と受益者が必ずしも一致しないため、HPVワクチンの男性接種を予防接種法上のA類に位置づけることをどのように考えるかといったことも議論が必要と考えております。
また、小委員会で次回以降、御議論いただこうと考えておりますけれども、費用対効果の論点として、費用対効果分析を実施する際の分析の立場についてどのように考えるか。費用対効果分析を実施する際のモデルや対象年齢等についてどのように設定するべきか。こういった論点もあるかと考えております。
いずれにいたしましても、これらの論点につきましてはワクチン小委員会における技術的な議論を行っていただいた上で、今後、基本方針部会等で御議論いただくこととしたいと考えております。
事務局からの資料2の説明は以上でございます。
○鈴木委員長 ありがとうございました。
それでは、ただいまの資料の御説明につきまして、委員、参考人から御質問、確認事項などございましたらよろしくお願いいたします。
特に資料そのものへの確認事項がないようでしたら、それでは小委員会としての委員、参考人の間でのディスカッションということにさせてください。
26ページの下のところで、本委員会において男性接種の定期接種化の検討を進めるに当たって、引き続き最新のエビデンスを広く収集・評価に努めつつ、現時点では薬事承認が得られている範囲を対象とすることについてどのように考えるかということを問われております。そうした観点から御意見をいただきたいと思います。
氏家先生。
○氏家委員 ありがとうございます。
かなり事務局の資料のエビデンスの定義が非常に厳密な規定になっているというような印象を受けた次第です。
事実関係として、男性への接種プログラムを開始している国が世界では47か国あります。それで、HPVの1回接種を導入している国は現時点で公表データだと75か国あります。こういった状況を踏まえると、必ずしも諸外国が全てのエビデンスが確立して初めて接種適応を広げる対応をしているわけではないということが感覚として理解できるかと思います。
例えば、女性への子宮頸がんワクチンに関しても、子宮頸がんを確実に予防できるというふうにエビデンスが出てきたのは公費での接種を開始する後ですし、サロゲートマーカーとして異形成の予防という観点ではエビデンスが当然確立していたわけですけれども、明らかに子宮頸がんの発症者の数を減らすというふうにエビデンスとして出てきたのはそれほど昔の話ではない。これは、実際に感染からがん化するまでに数十年を要するというところが大きな問題点としてあるだろうと思います。
さらには、子宮頸がんのようにスクリーニングなどの検査指標が確立していて、サロゲートマーカーとなるような評価方法が確立しているものについては事前に大体の科学的な根拠というところを評価しやすいわけですけれども、中咽頭がんのようななかなかスクリーニング方法が確立していない、そして事前に前がん病変のような形で評価することが難しいような疾患に関しては、がん化するまでに時間がかかることも含めて考えると、実際のエビデンスが確立するには非常に長い年月がかかるという問題点があるということは指摘しておきたいと思います。
ですので、どこまで確実性を求めるかというところなので、公衆衛生的な観点から、有効性の蓋然性が高いというようなものについては、早く導入することによってその利益を早く得ることができるという観点も大事だろうとは思います。
一方で、そこの指標をどうするかというのはかなり国の方針によっても異なるところですし、日本がそういった安全性に対して非常センシティブな特性を持っているということも理解できますので、そこは考え方次第だと思います。
ですので、評価する際に必ずしも確実なエビデンスだけを持って評価するのではなくて、それに準じたサロゲートマーカーや諸外国の検討状況なども鑑みて柔軟な評価をしていただくというのが、国民の健康を守るという観点で重要な視点なのかなと思いますので、その点については指摘させていただきたいと思います。
私からは以上です。
○鈴木委員長 氏家先生、ありがとうございます。
大石先生、お願いします。
○大石参考人 よくまとめられた事務局の資料に基づけば、肛門がん、尖圭コンジローマは予防効果のエビデンスがあるわけですね。それで、特に肛門がんは年間1,200、死亡は500と、かなりディジーズバーデンが大きいということもあります。陰茎がんとか中咽頭がんのエビデンスは少ないということもありますけれども、ぜひ男性のHPVワクチンの定期接種化ということは前向きに考えるべきだと思います。
接種回数については、薬事承認が得られている範囲を対象としてはどうかということですけれども、それしか薬事承認に準ずるしかないと思います。
私からは以上でございます。
○鈴木委員長 原先生、お願いします。
○原委員 私も基本的に同じくジェンダーイクオリティーの観点などですとか、あとは世界の状況から見て、男性への接種の開始というのは必要かとは思うのですけれども、やはりHPVの女子への接種のときに多様な症状を訴えてということがありまして、全国で調査をさせていただいた際に、やはりこの年代の男子で接種をしていない人にも一定数そういう症状が出たということの調査をしましたけれども、そういうこともあるので、やはり接種の目的とか、そういうところはしっかりと国民の方が分かるように、理解できるような形で導入をしていかないと、また何か起こったら怖いなと思っております。
コメントです。
○鈴木委員長 ありがとうございます。
ほかの先生方はいかがでしょうか。
では、私からコメントですけれども、先ほど氏家先生がエビデンスという言葉が何を指しているのかといった趣旨の御意見をされましたが、まさに前半のPCVにおいても実際にPCV15、20はサロゲートマーカー、免疫ブリッジングトライアルの結果で定期接種に関する議論をしているということなどもあって、昨今たくさんのワクチンが開発されてきている中で、どのようにワクチンを評価していくのかという中で、エビデンスという言葉が指している意味というのも非常に幅広くなってきているというふうに理解をしています。
そういうことで、国際的に既に男性接種を含めて広く導入されてきている中で、何を根拠に導入していくのか。あるいは、既存のエビデンスをどのようにアセスメントしていくのかということが問われているのではないかと考えていますが、先生方、御意見いかがでしょうか。
特にその論点としては直接的に薬事承認の範囲内で議論するのか、それ以外のことも含めて情報収集、評価していくべきなのかといった観点での意見が問われていると理解しておりますが、いかがでしょうか。
氏家先生、お願いします。
○氏家委員 評価方法については、評価項目という観点において選べるという観点では、必ずしも薬事承認を限定した形だけではなくても、主要評価項目ではなくても、参考の評価としてセカンドリーアウトカムとして現存のエビデンスである程度蓋然性が確立した所見については情報をまとめて、参考として評価ができるような体制というものが望ましいだろうと思います。
先ほど原先生からも御指摘があったように、各国で必ずしもデータとエビデンスのみをもって定期接種化を決めているわけではないというふうに理解しています。ドイツなどでは男性への定期接種を決めた際に、費用対効果はその時点で必ずしも優れているという評価ではありませんでしたが、ジェンダーエクイティーという観点で評価、導入を進めたというようなこともありますし、先ほど申し上げたような必ずしも薬事承認されるだけのエビデンスが確立していないものについても、今後分かってくるというものがありますし、その辺は基本方針部会等は必ずしもデータのみを評価するところではないということもありますので、広く評価自体はできるような形式を取るということが評価の方法としては望ましいのかなと思います。
以上です。
○鈴木委員長 ありがとうございます。
ほかはいかがでしょうか。
小委員会としては、前回が昨年の3月だったでしょうか。1年4か月ぶりということで、久々の議論ということになっております。
事務局、お願いします。
○山口予防接種課課長補佐 事務局でございます。
貴重な御意見をありがとうございます。先ほど原先生からもコメントを頂戴しましたけれども、本委員会は先生方に技術的な観点で御議論をいただいており、仮にワクチンによって健康被害が出た方がいた場合であっても、本委員会でワクチンの効果について御議論いただいたということをもって進めていく必要があるのだと、このように考えております。
そうした観点でいいますと、今、現時点で確たるエビデンスは何であるのか、現在期待されているエビデンスは何であるのか、こうした観点で改めて整理させていただきたいと考え、今回の資料をおつくりしたものでございます。
そうした観点でいいますと、氏家先生から御提案いただき、今回総括の26ページ目の1つ目の○の議論の進め方についてとしてまとめておりますとおり、事務局といたしましてもこれからも引き続き最新のエビデンス、これは必ずしも薬事承認されたもの、申請されたものに限らずエビデンスを広く集めた上で評価していくことは重要だと思っております。そうした一方で、どこまでが確たるエビデンスなのかということについても、引き続き慎重に我々としても先生方に御議論いただきたいと、このように考えている次第でございます。
○鈴木委員長 事務局、ありがとうございます。
ほかに先生方、いかがでしょうか。
ちょっと時間が押しているからというわけではありませんけれども、それでは今、事務局のほうでまとめてはいただきましたが、今後引き続き議論をしていく必要があるということで、委員の間でもこれについては特に異論はないのかなと思います。それに際して、薬事承認が得られている範囲に限らず幅広くエビデンスを集めていくということ、またそのエビデンスの幅、質というものも幅広くなってきていますので、どこまで分かっていて、どこからは期待されるものであるのかということを整理していくということ、それは我々研究者に求められているところだと理解をしています。
それから、ジェンダーニュートラルというような言葉も出てきましたが、ではそれをもってどのようにアセスメントをしていくのか。これについても、これはコンセンサスを形成していくことも重要なのだろうと思いますので、どこまで小委員会でどこまで基本方針部会かということもあろうと思いますが、それも含めて引き続きしっかり議論をしていくという方向で委員の先生方、よろしいでしょうか。
(委員首肯)
○鈴木委員長 御首肯いただき、ありがとうございます。
それで、これは私からのお願いですが、小委員会は昨年から1年4か月たちましたので、ぜひ次の場をもうちょっと早く設定していただきたい。特に具体的にいつというふうには申し上げませんが、できるだけ早く次の議題の場を設定していただきたいと思います。
では、ちょっと時間が押しておりますので、議題3のほうにいかせてください。それでは、事務局から議題3をよろしくお願いします。
○松下予防接種課課長補佐 議題3は、御報告でございます。簡潔に御報告させていただければと思います。
来年以降、新しい麻しん風しん混合ワクチン、ミールビックIIというものを定期の予防接種で用いることとなりましたので、このタイミングで先生方に御報告するものでございます。
2ページ目は、製造販売元である阪大微研さんからいただいている提供資料でございます。
こちらは既存のミールビックという改良品でございますので、製品名はミールビックIIとなりまして、一般名もミールビックと変更はございません。
変更点は表の中段、「製品コンセプト」にございますように、供給不足のリスクを抱えているウズラ卵に頼らない製法に変更したワクチンということで、「有効成分・特徴」及び「貯法・有効期限」が変更となっております。
「適応年齢」「用法・用量」は変更ございません。
また、臨床試験の際に「有効性」「安全性」について確認されており、これも既存のミールビックと同様の有効性、または安全性のプロファイルも大きな違いが認められていないとされているところでございます。
「供給」については、来年の2月下旬から阪大微研より販売会社に出荷され、販売会社はミールビックの在庫を消尽し次第、順次ミールビックIIが出荷される予定となっております。
そういうことで3ページ目、今後の予定ということで「概要」と「今後の予定」を書いてございます。
「概要」は先ほども申し上げましたとおりでございますので説明は割愛させていただきますが、5つ目のポツにありますように、一般名が「ミールビック」と同様「乾燥弱毒生麻しん風しん混交ワクチン」でございますので、省令の改正なく定期接種に使用できるとしております。
そういう意味で、「今後の予定」としては定期接種で使用する麻しん風しんワクチンは現在、既に使用しているワクチンに加えまして「ミールビックII」も使用できることとしております。
4ページ目以降は企業の提供資料で、参考までに添付させていただいております。
まとめとしては、既存品のミールビックの改良品ではございますが、製法の変更がある新規の承認ワクチンでございますので、来年以降、定期接種で使用するに当たって御報告させていただきました。
また、先立って行われました基本方針部会でも御報告させていただいております。
事務局からの説明は以上です。ありがとうございます。
○鈴木委員長 御説明ありがとうございます。
ただいまの件につきまして、委員、参考人の方々から御質問ございますでしょうか。報告事項ということでよろしいですか。
特になければ、ありがとうございました。
それでは、本日の議事は以上となります。そのほかに、委員、事務局から何かございますでしょうか。
○前田予防接種課長 事務局でございます。すみませんが、一言申し上げさせていただいて恐縮でございます。時間が押しているのにすみません。
特に議題2に関してなのですけれども、これは我々が今までお願いする際に薬事をベースに議論してきたことでございます。
一方で、HPVに関してはやはり薬事の外側で効果が期待されているという話があって、大きく2つだと思っています。特に御本人のメリットみたいな話の際に、薬事の範囲、そしてそれを超えるものについてどう考えるか。それを超えた際に、これは当然そこを議論する際には、同じように安全性に関しても薬事で議論されていない範囲もありますので、そういったものをどう取り込んでいくかというところは並行して議論していかなければいけないというところがありますし、打っていただく方にどういったメリットがあり、どういうリスクを許容していただくかというところは非常に大事なポイントだと思っておりますので、それが視点の1つだと思っております。
加えて、公衆衛生上の評価、価値はなかなか薬事の世界では出てこないと思っておりますので、そういったところはどの程度のエビデンスが出れば公衆衛生上の価値として認めるかというところ、これも並行して非常に大事な部分でありますから、そういったところを引き続き先生方から最新のこういうデータが出ているということであれば随時採用させていただきたいと思いますし、委員長御指摘のとおり、次に費用対効果をやらせていただきますし、それはできる限り早めに案を先生方にお示しをして十分時間をかけて議論いただけるような体制にしたいと思っておりますし、エビデンスのほうも逐次、よさそうな話というものが出てまいりましたら御相談をいたしますし、また、我々にも御教示いただければ大変ありがたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いします。
すみません。時間のない中、コメントをして恐縮ですが、以上でございます。
○鈴木委員長 ありがとうございます。
私のタイムマネジメントが悪いという側面はありますが、一方で前半のPCVの話は本来もうちょっと時間を取ってディスカッションすべき話だと思いますので、次のHPVに限らずですが、もうちょっと時間に余裕を持って会議が進行できるように、ぜひ事務局としても設定、御協力をよろしくお願いします。
では、時間が押して申し訳ありませんでした。よろしければ、事務局のほうにお返しいたします。
○山口予防接種課課長補佐 先生方、本日も活発な御意見、御議論いただきましてありがとうございました。次回の開催につきましては、追って御連絡させていただきます。
事務局からは以上でございます。
○鈴木委員長 それでは、本日の会議は以上となります。活発な御意見、ありがとうございました。またよろしくお願いします。