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第8回労災保険制度の在り方に関する研究会 議事録
1.日時
令和7年7月29日(火) 16時00分~16時32分
2.場所
厚生労働省共用第6会議室(※一部オンライン)
(東京都千代田区霞ヶ関1-2-2 中央合同庁舎第5号館 3階)
(東京都千代田区霞ヶ関1-2-2 中央合同庁舎第5号館 3階)
3.出席委員
- 京都大学大学院人間・環境学研究科教授 小畑 史子
- 同志社大学法学部教授 坂井 岳夫
- 大阪大学大学院高等司法研究科准教授 地神 亮祐
- 名古屋大学大学院法学研究科教授 中野 妙子
- 亜細亜大学法学部教授 中益 陽子
- 大阪大学大学院高等司法研究科教授 水島 郁子
4.議題
労災保険制度の在り方について(中間報告書案)
5.議事
- 発言内容
○小畑座長 ただいまから、「第8回労災保険制度の在り方に関する研究会」を開催いたします。委員の皆様方におかれましては、大変お忙しい中お集まりいただきまして誠にありがとうございます。本日の研究会につきましては、笠木委員と小西委員、法政大学の酒井委員が御欠席、同志社大学の坂井委員、中野委員、中益委員がオンラインで御参加です。また、事務局に人事異動があると聞いておりますので、御紹介をよろしくお願いいたします。
○労災管理課長 それでは、事務局から7月8日付けの人事異動を御紹介します。まず、私、労災管理課長に着任しました宮下です。着座にて失礼します。よろしくお願いします。また、企画担当の労災管理課課長補佐の森川です。
○労災管理課課長補佐 森川です。よろしくお願いいたします。
○労災管理課長 同じく、企画担当、課長補佐の山野です。
○労災管理課課長補佐 山野です。よろしくお願いいたします。
○労災管理課長 以上です。
○小畑座長 カメラ撮りにつきましては、ここまでとさせていただきます。
それでは、本日の議事に入りたいと思います。前回の研究会では、今までの議論の論点整理として、委員から追加や補足の御意見を頂きました。この際に、前回の議論を含めて、これまでの議論を事務局に再度整理していただき、今回、「労災保険制度の在り方に関する研究会中間報告書」の案という形で、事務局に取りまとめていただきましたので、本日はこれを基に議論したいと思います。まずは、報告書案につきまして、事務局から御説明をお願いいたします。
○労災管理課課長補佐 それでは、私のほうから、中間報告書案の内容について、御説明させていただきます。
全体の構成としては、大きく3つに分けております。適用関係、給付関係、徴収等関係となっております。まず、適用関係から始めさせていただきます。それぞれ現状に関する説明の部分は割愛させていただきます。
まず、5ページ以降になります。労働基準法が適用される労働者以外の就業者で、強制適用すべき者はいるかという点について御議論いただきました。この点、将来的に検討課題としうるとの御意見や、慎重に検討すべきとの御意見に分かれたところです。また、保険料は誰が負担すべきかという点についても、様々な御意見を頂きました。結論としては、8ページ、労災保険法の強制適用の範囲については、専門的な見地から、引き続き議論を行う必要があるというまとめにしております。
次に、家事使用人への災害補償責任及び労災保険法等の適用についてです。12ページです。上の部分ですが、結論としては、労働条件分科会での議論も踏まえて、仮に労働基準法が家事使用人に適用される場合には、使用者である私家庭の私人は災害補償責任も負うことが適当であり、労災保険法を強制適用することが適当。また、運用上の課題を検討することが必要というまとめにしております。
続いて、暫定任意適用事業の関係です。14ページです。結論部分ですが、労働実態を把握する手段も多様化しているとか、重大事故が散見され、保護の必要性が高まっていることを踏まえれば、農林水産省とも連携の上、順次、強制適用に向けた検討を進めることが適当。その際、農林水産事業者の理解に加え、これまで適用上の課題とされてきた事業者の把握や、保険料の徴収上の課題がどの程度解決されつつあるのかの具体的な検証が必要であり、零細な事業主の事務負担の軽減等も十分に配慮する必要があるというまとめにしております。また、林業及び水産業についても、農業と同様、課題の解決策を検証した上で、検討を進める必要があるとしております。
次に、特別加入団体の在り方について御議論頂きました。16ページです。特別加入団体が、災害防止の取組を担うことができるのかとか、それを義務付けるべきかという点については、複数の御意見が見られたところです。この点につきましては、具体的な内容について、労使を含めて更に議論を深める必要があるというまとめにしております。
続いて、17ページです。特別加入団体の承認等の要件について、現状、法令上には明記がされていないというところですが、下の部分に移りまして、承認や取消しの要件については、特別加入団体の性質を明らかにする上でも、法令上に明記しておくことが適当と考える。また、承認の取消し等に先立って、改善を要求する等、段階的な手続を設けることが必要というまとめにしております。また、仮に特別加入団体に災害防止措置に関わる役割や要件を求める場合は、そちらについても法令的根拠を設けることが必要であるとしております。
続けて、給付関係の論点に移ります。19ページです。まず、遺族(補償)等年金の趣旨・目的について御議論いただきました。こちらについては、「被扶養利益の喪失の填補」という概念が今日でも妥当するという御意見があった一方で、「被扶養利益の喪失の填補」は妥当しない、あるいはそれ以外の趣旨を見いだせるとの見解もあり、御意見は分かれたところです。結論は、21ページにあります。こちらについては、引き続き専門的見地から議論を行う必要があるというまとめにしております。
続けて、生計維持要件についてです。22ページです。労災保険における「被扶養利益の喪失の填補」との趣旨の関係で不合理ではないとの御意見や、生計同一の意味を含む独自のものとして運用されているとの御意見、また、現行の取扱いが妥当なのか、検討が必要ではないかとの御意見も頂いたところです。結論は、23ページにあります。生計維持要件については、喫緊の見直しをすることは要しないものの、遺族(補償)等年金の制度趣旨の検討と併せて、引き続き専門的見地から議論を行う必要があるというまとめにしております。
続きまして、遺族(補償)等年金と労働基準法の遺族補償との関係についてです。24ページです。こちらで、労働基準法の遺族補償では、配遇者は生計維持要件を問われず第一順位者になることと比較して、労災保険法の遺族(補償)等年金の支給対象者は、労働基準法の遺族補償の対象者よりも限定されており、見直しをすべきではないかという御意見があったほか、労働基準法より労災保険法の補償のほうが下回るべきではなく、両法の整合性を確保すべきとの御意見もございました。結論は、25ページにあります。遺族(補償)等年金の制度趣旨を検証していく中で、労働基準法の遺族補償との関係についても併せて検討することが望ましく、引き続き専門的見地から議論を行う必要があるというまとめにしております。
続けて、夫と妻との支給要件の差異の関係です。26ページです。遺族補償年金の創設当時から半世紀以上が経過し、男女の就労状況や家族の在り方が変化していることも踏まえ、解消すべきとの点で御意見は一致したところです。結論は、27ページにあります。夫と妻の要件の差については、解消することが適当。その具体的な解消方法については、夫に課せられた支給要件を撤廃することが適当であるとの意見が大宗を占めたというまとめにしております。また、28ページですが、将来的には遺族(補償)等年金の制度全体の在り方について、専門的見地から、引き続き議論を行う必要があるとしております。
次に、給付の期間の関係です。29ページです。こちらについては、現行の長期給付を維持することが現時点では適当。ただし、中長期的には、有期給付化についても考慮要素の1つになりうるというような御意見があったことにも留意が必要というまとめにしております。
続けて、特別加算の関係です。31ページです。こちらは昭和45年の創設時の考え方、すなわち高齢の状態にある寡婦は、就労の機会の確保が困難であるとか、生活の安定に資するためのものというような考え方は、現代では妥当しないという点で御意見は一致したところですが、夫と妻の差の解消の具体的な方法については御意見が分かれたところです。この点については、将来の受給者に広い影響を与える事項でもありますので、労使を含めて更に議論を深める必要があるというまとめにしております。
続けて、遅発性疾病に係る保険給付の給付基礎日額の関係です。こちらは、2つのケースを基に御議論を頂きました。まず、ケース1です。有害業務に従事した最終の事業場を退職した後、別の事業場で有害業務以外の業務に就業中に発症した場合について、現状では、ばく露時賃金を基礎に給付基礎日額が算定されますが、この点の結論につきましては、35ページを御覧ください。労災保険の社会保障的性格や生活保障の観点から、発症時賃金を原則とし、発症時賃金がばく露時賃金より低くなる場合は、例外的にばく露時賃金を用いることが適当であるとの御意見が大宗を占めたところです。なお、有害業務が行われた最終事業場に対するメリット制の適用においては、被災労働者のばく露時賃金を基礎とした給付のみを加味することが適当というまとめにしております。
続けて、ケース2です。有害業務に従事した事業場を退職した後、就業していない期間に発症した場合ということになります。この場合は、発症時に賃金がないということになりますので、結論としては、36ページを御覧ください。こちらで、当面は現状を維持することが適当。すなわち、ばく露時賃金をベースにするということです。一方で、このケースにおける給付の在り方について、再度検証することが望ましいというまとめにしております。
続きまして、消滅時効期間の見直しの要否の関係です。39ページです。請求手続自体が疾病の増悪を生じ得る場合には、一定の配慮が必要であるとする御意見があった一方で、被害者の早期の権利実現を目指すべきであり、相談援助や周知等の運用改善で対応すべきとの御意見もあったところです。また、仮に消滅時効期間を見直す場合の方策について、一定の特例を設けるべきであるとの御意見と、一律に期間を延長すべきとする意見とに分かれました。また、労災保険に特有の事情を見いだし得るかという点についても、御意見が分かれたところです。結論は、42ページにあります。これらの点について、研究会としての統一的な結論には至りませんでしたが、被災労働者の保護の観点から、これらの意見も踏まえて、労使を含めて更に議論を深める必要があるというまとめにしております。
続けて、社復事業の処分性の関係です。43ページです。こちらは、社復事業として実施される労働者やその家族に対する給付については、従来は処分性が認められなかった特別支給金も含めて、処分性を認め、審査請求や取消訴訟の対象とすることが適当としております。
次に、特別支給金の保険給付化の関係です。45ページです。保険給付と一体として支給されているという特別支給金の実態等を踏まえれば、保険給付として位置付けることも考えられる一方で、課題も多いということで、結論としては、専門的見地から引き続き議論を行う必要があるというまとめにしております。
続けて、給付的な社復事業に係る不服申立てについてです。こちらは、現状は行政不服審査法の対象となっております。47ページです。結論としては、国民の分かりやすさや利便性の観点から、保険給付と同様に、労働保険審査官及び労働保険審査会法の対象とすることが適当というまとめにしております。
続けて、3つ目の柱の徴収等関係に移ります。まず、メリット制の効果について御議論頂きました。51ページです。いろいろデータを参照頂いた上で御議論を頂いた結論として、一定の災害防止効果があり、事業主の負担の公平性の観点からも、メリット制には一定の意義が認められること等から、メリット制を存続させ適切に運用することが適当と考える。また、継続的に効果等を検証し、より効果的な制度となるよう、必要な見直しを行うことが望まれるというまとめにしております。
続けて、メリット収支率の算定対象は妥当かどうかという点も御議論いただきました。脳・心臓疾患及び精神障害、高齢者・外国人労働者、災害復旧の事業について、算定対象からこれらの給付を除外することの要否等について、様々御意見を頂いたところです。結論は、55ページにあります。この論点については、研究会として意見の一致に至らなかったということかと思いますので、こちらについては、引き続き専門的見地から議論を行うことが必要というまとめにしております。
続けて、56ページです。労災保険給付の支給・不支給の決定の事実については、事業主が早期に災害防止に取り組む上で必要な情報であること等を踏まえて、事業主に対して情報提供されることが適当と考える。その際、被災労働者の個人情報の取扱いに留意しつつ、検討する必要があるというまとめにしております。
また、労災保険率の算定の基礎となった労災保険給付に関する情報については、保険料の認定処分の取消訴訟等における事業主の手続保障の観点から、事業主が自ら負担する保険料がなぜ増減したのかが分かる情報を知り得る仕組みが設けられることが適当と考える。その際、保険給付に関する情報には、被災労働者に係る機微な情報を含み得ることに留意しつつ、検討する必要があるというまとめにしております。
最後のページですが、今後の議論の進め方や、中長期に検証・検討を行うべき論点の位置付け等について記載しているところです。また、参考資料については、これまでの資料を抜粋したものですので、個々の説明は割愛させていただきます。説明は以上です。
○小畑座長 ありがとうございました。それでは、事務局から御説明のありました中間報告書案につきまして、御意見を伺いたいと思います。御発言の際には、会場の委員におかれましては挙手を、オンラインから御参加の委員におかれましては、チャットのメッセージから「発言希望」と入力いただくか、挙手ボタンで御連絡いただきますようにお願いいたします。御意見はいかがでしょうか。中野委員、御発言をお願いします。
○中野委員 私の意見は、全て丁寧に報告書案にまとめていただいているので、内容については、特段付け加えることはありません。現行制度を前提とした議論の場ではなかなか申し上げられないような、労災保険制度の根幹の見直しに関わるようなことも度々申し上げさせていただいたので、事務局には意見の取りまとめに御苦労おかけしたことと思います。もちろん、制度の根源的な見直しは、労災保険制度の中だけでの議論では収まらず、労働基準法との関係はもちろん、民事損害賠償や、ほかの社会保険制度との関係にも関わり、取り組むとしたら、長期的、かつ、困難な道のりになるのだろうということは承知しています。とはいえ、難しいからと言って議論を放棄するのではなく、この中間報告書案では今後の検討に委ねられた論点や課題について、今後とも継続的に議論を重ねていただきたいと思います。以上です。
○小畑座長 ありがとうございました。ほかはいかがですか。水島委員、お願いします。
○水島委員 この研究会では、小畑座長の御配慮の下、研究会で充実した議論ができ、また、事務局の御尽力により、短期間で中間報告書案をまとめることができたことに感謝申し上げます。私自身、大変勉強になる機会でありまして、この研究会に参加させていただいたことに御礼申し上げます。
研究会でも、また、中間報告書案でも、適用関係、給付関係、徴収等関係の3つの柱で議論いたしました。これにより、議論が容易となり、また、複雑な労災保険制度を分かりやすく論点を整理した形で、中間報告書案を提示できたと思っております。このように3つの柱で議論し、整理したことを評価する一方で、この研究会を通して、給付は労災保険法、徴収等関係は徴収法と別の法律で規定され、また、前者は専ら被災労働者、後者は専ら事業主に関わることによる縦割的運用を認識いたしました。
被災労働者の保護が重要であることは言うまでもありませんが、労災保険制度の中で、被災労働者の保護についての施策や議論が活発であるのに対して、費用負担者である事業主はあまり取り上げられていないように思います。従来、研究者の議論も少なかったことは反省点ですが、この研究会では労災保険給付が及ぼす徴収手続の課題についても議論し、意見を示すことができたことは良かったと考えております。今後、運用は縦割的にならざるを得ないとしても、労災保険制度の中で、給付の分野においても、事業主の関与という観点を適切に入れた議論や施策が望まれます。
また、今回本当に充実した議論ができたのですが、労災保険制度の在り方に関する議論はこれで終わりではなく、議論をしたいテーマはまだまだ残っていると思います。2点だけ申し上げたいと思います。
まず1つは、特別加入制度についてです。現行法は、事業主に当たる者が必要との認識の下、特別加入団体を事業主に擬制していると理解しております。研究会では、現行制度を前提に特別加入団体について議論を行いました。ただ、近時、特別加入の範囲が拡大し、フリーランス事業が追加された動向等を踏まえますと、特別加入団体を介在しない個人加入制度も新たな仕組みとして考えられるのではないかと思います。これは将来に向けて議論したいテーマです。
2点目は、遺族補償年金等についてです。夫と妻との支給要件の差異を解消する方法を議論し、結論を出すには、時間が足りなかったと思います。報告書では、一定の議論があった「給付の期間について」のみを1つの項目として立てましたが、それ以外にも、給付を受給権者の年齢や扶養家族に応じて調整する方法や、年金受給を一定の年齢まで停止する、こういった方法も考えられると思います。この点は専門的な見地からの検討が引き続き必要と考えます。以上です。
○小畑座長 ありがとうございました。ほかはいかがですか。地神委員、お願いします。
○地神委員 ありがとうございます。本文につきましては、特段、付け加えることはございません。今後の議論に向けて、1点だけコメントさせていただきます。
議論の中では、遅発性の疾病、時効に関する議論において、比較的発症までに時間の掛かる疾病などについて議論が行われました。その議論を改めて振り返りますと、業務上の負傷と疾病、今、これは同じように並列で扱われているわけですが、かなり性質が異なるものであるということを改めて感じました。将来的には、制度の面から、別々に議論をする余地もあるのではないかと感じました。比較法的には、業務上のいわゆる事故性の負傷と、職業病と呼ばれるものについては、はっきりと条文からして分けているという例も見られるところです。このような制度の在り方、あるいは比較法的な議論などについては、検討の余地があるのではないかと感じております。以上です。
○小畑座長 ありがとうございます。ほかはいかがですか。坂井委員、お願いします。
○坂井委員 私も、今回取りまとめていただいた報告書の内容に関しては、全く異論のないところです。分量という意味では大量の意見、着眼点という意味では多様な意見を、要領良く、何よりも丁寧にまとめていただいた事務局の皆さんに感謝申し上げます。
最後に、感想めいたことですが、一言、私もせっかくの機会ですので申し上げさせていただきます。今回の議論を通して、例えば、消滅時効や、遺族補償年金の給付期間などに関しては、他の社会保障制度との関係が問題になったり、あるいは、適用対象の議論では、フリーランスとして就労する人たちの業務災害への対応が問題になってきました。これらは、働き方の多様化が進展する中での職業上の傷病に関する補償の在り方という側面を持っているのだと思いますが、このような労災保険制度の枠を超えた職業上の傷病に関する議論というのは、更に深められていく必要があるのだろうと改めて今回の議論を通して感じた次第です。
そうは言っても、今、正に働き方は大きく変わっているところで、制度の根本に関わる議論というのは、大きな変化が落ち着いた段階でというのが、恐らくしかるべきタイミングだろうと思いますので、そういった議論がどのタイミングで実際になされるべきなのかということについては、非常に難しい問題だと感じてもいるところです。ありがとうございました。
○小畑座長 ありがとうございました。それでは、中益委員、お願いします。
○中益委員 事務局におかれましては、多様な議論を要領良く報告書案におまとめいただき、誠にありがとうございます。
私は、今回の報告書案に御説明いただきました点以上に付け加えるべき点はありません。なお、本研究会では、いくつか見解がまとまらなかった論点もありました。これらの点については、労災保険法の本旨をどのように考えるかが反映されているものがあったように思います。この点、私は研究会において、無過失損害賠償の一種として始まった労災保険法の給付は損害の穴埋めであって、損害賠償の補完というのが基本だとの立場で意見を述べてまいりました。
ただし、この考え方を貫いて、弊害が生じるときには、例外があり得るということは承知しております。また、一般的にも労災保険法には、例えば、社会保障としての性質もあると言われるところです。さらに、このようにもともと補完的な、あるいは例外的な根拠として使われていた理由付けが幅広く活用されるようになることで、法の本旨に変化をもたらしたり、あるいは焦点の置き方が変わることもあるかと思います。しかし、こうした理由付けが、損害賠償の補完との理由づけよりも制約的に機能することで、結果的に、労働者にとって不利になる恐れがないかは気になるところです。例えば、今回の研究会で議論された論点で言えば、遺族補償年金の趣旨を被扶養利益と見ることは、そういったものだったかとも思います。そのようなことからしますと、将来的な法改正におきましては、できる限り場当たり的な対処を避け、その影響を幅広く勘案したものになりますことを期待しております。以上です。
○小畑座長 ありがとうございました。重ねて、皆様から何かありませんか。それでは、いただきました御意見の内容につきましては、承知をいたしました。以降の表現修正や字句修正は、事務局及び座長に御一任を頂ければと存じますが、そのような形でもよろしいでしょうか。
(異議なし)
○小畑座長 ありがとうございます。それでは、この報告書につきましては、このようなことでまとめさせていただきます。それでは、本日、中間報告書の取りまとめということになりますので、私からもここで一言御礼申し上げたいと思います。
この度、無事、中間報告書を取りまとめることができまして、御関係の皆様に心より深く御礼申し上げます。
委員の先生方には、アカデミックな立場から、非常に充実した議論を展開していただいておりました。事務局の皆様におかれましては、たくさんの資料をおそろえいただきまして、また、取りまとめには本当に御苦労をおかけいたしましたが、要領良くまとめていただけましたこと、心より御礼申し上げます。
それにしても、社会の変化と法そのものの変化を受けて、労災保険制度につきまして、実に多くの課題が生じているということを痛感しております。これらの課題のうち、今回の研究会で意見が一致、又はおおむね一致した項目としては、遺族(補償)等年金における夫と妻との支給要件の差の解消、保険料認定処分取消訴訟等との関連での事業主に対する情報提供、特別加入団体の承認や取消しの要件の法令への明記、労働基準法が家事使用人に適用されることとなった場合の労災保険法の適用、遅発性疾病の給付の基礎日額計算における発症時無職の場合の取扱い、社復事業として実施される労働者やその家族に対する給付についての審査請求等、そして、メリット制の効果等の点がございました。
これらに加え、審議会でも議論を深めることが特に期待されるものとしては、災害防止に関する特別加入団体の役割、遺族補償年金の特別加算についての夫と妻の差の解消の具体的な方策、労災保険給付請求権に係る消滅時効等がございました。
また、委員の皆様から御指摘がございましたように、専門的見地から、中長期的に議論していく必要があることが明らかになったものも、大変重要なものが含まれておりましたし、また、複数ございました。今回は中間報告という位置付けであり、今後も検討を続ける必要があると存じておりますが、中間報告書完成の節目を迎えることができましたことにつきまして、御関係の皆様に重ねて御礼申し上げ、御挨拶とさせていただきます。本当にありがとうございました。
それでは、ここで最後に労災担当の田中審議官から一言頂戴できればと存じます。よろしくお願いいたします。
○大臣官房審議官 審議官の田中でございます。昨年12月より、小畑座長をはじめ、委員の皆様方におかれましては、合計8回にわたり活発な御議論をいただき誠にありがとうございました。労災保険制度につきまして、適用から給付、徴収等に至るまで、幅広く有識者の皆様方に御議論をいただくということは、当省としては非常に久しぶりのことでしたが、先ほど座長からもお話がありましたように、短期間で多くの論点について整理をしていただきました。今回おまとめいただいた中間報告を踏まえて、さらに、労働政策審議会におきまして、労災保険制度に係る諸課題について議論を深めていただいた上で、我々行政としても必要な見直しを行ってまいりたいと思っています。
なお、今回は中間報告ということです。残された難しい課題もあります。そのような課題も含め、御議論を再開していただくということもあり得るかと思いますが、その節はまた御相談をさせていただければと思います。最後に重ねてになりますが、7か月間、本当にお世話になりました。どうもありがとうございました。
○小畑座長 どうもありがとうございました。それでは、第8回労災保険制度の在り方に関する研究会を終了いたします。半年にわたり御協力をいただきましたことを改めて御礼申し上げます。本当にどうもありがとうございました。