第7回労災保険制度の在り方に関する研究会 議事録

1.日時

令和7年6月18日(水) 10時00分~10時59分

2.場所

AP虎ノ門ルームC+D(※一部オンライン)
(東京都港区西新橋1-6-15 NS虎ノ門ビル 11階)

3.出席委員

  • 京都大学大学院人間・環境学研究科教授 小畑 史子
  • 明治大学法学部教授  小西 康之
  • 同志社大学法学部教授 坂井 岳夫
  • 法政大学経済学部教授 酒井 正
  • 大阪大学大学院高等司法研究科准教授 地神 亮祐
  • 名古屋大学大学院法学研究科教授 中野 妙子
  • 亜細亜大学法学部教授 中益 陽子
  • 大阪大学大学院高等司法研究科教授 水島 郁子

4.議題

労災保険制度の在り方について(給付・適用・徴収等関係

5.議事

発言内容

○小畑座長 ただいまから、「第7回労災保険制度の在り方に関する研究会」を開催いたします。委員の皆様方におかれましては、御多忙のところお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
本日の研究会につきましては、笠木委員が御欠席、小西委員、地神委員、中野委員がオンラインで御参加です。カメラ撮りにつきましては、ここまでとさせていただきます。
それでは、本日の議題に入りたいと思います。本日は、今までの議論の論点整理として、委員より追加や補足の御意見、あるいは、これまでの委員の皆様の意見を踏まえての改めての御意見等を頂戴したいと思います。まずは、適用について、事務局より資料の説明をお願いいたします。
○労災管理課長補佐 企画班長の狩集でございます。御説明いたします。まず、資料の2ページです。適用の論点①強制適用の範囲についてです。黄色部分がこれまで頂いた御意見について個別に取りまとめたもので、上の水色部分については、事務局で一定の整理を行っているものです。水色部分に沿って説明申し上げます。
まず、強制適用の範囲についてです。労働者以外の就業者に労災保険を強制適用することに関しては、検討課題とし得るという御意見と、検討課題とするのに消極的な御意見の双方がありました。検討課題とし得る理由については、報酬を得て働く方に強制適用することは考えられますけれども、法制度の根幹に関わるものですので、フリーランスに関する社会的動向や労働者性に関する議論等を見据えながら長期的な検討課題とし、短期的には特別加入を拡大することが適当という御意見、また、フリーランスにとって事業主に相当するような、発注者のような方については保険料を一定程度負担させることも検討してはどうかといった御意見がありました。
一方、検討課題とするのに消極的な御意見の理由としては、現行、暫定任意適用事業が依然として存続している状況下で、労働者以外に対象者を広げることは不適当であるという御意見、また、働き方を自由に選択した方とそうでない方とでは状況が大きく異なるといった御意見がありました。
4ページの保険料負担についてです。労働者以外の就業者に労災保険の強制適用をする場合の保険料負担ですが、発注者やプラットフォーマーといった方たちは、災害のリスクを御自身で負わないで利益を得ているという観点から、一定の負担をさせることも検討し得るという御意見がありました。一方で、こうした費用負担については、当事者間の契約の自由に委ねるべきとか、報酬への転嫁のリスクがあるということで、適当でないという御意見もありました。
また、労働者以外の方が特別加入している場合には、特別加入に係る負担分を発注者が自主的に経費に上乗せするといったことは、これは建設業で行われている取組ですが、こうしたことは好事例であるという御意見や、特別加入の必要性が高い業種にあっては、加入へのインセンティブを課したり、注文者への保険料負担を求めたりすることもあり得るという御意見もありました。
6ページの家事使用人についてです。家事使用人については現在、労基法に関する適用の議論が別途行われているところですが、労基法が適用される場合には、災害補償責任及び労災保険法も適用することが妥当という御意見が複数ありました。一方で、私家庭に対する適用ということで、具体的な適用においては、事務負担の軽減等の課題を精査する必要があるとの御意見がありました。
7ページの暫定任意適用事業です。現行の暫定任意適用事業については、強制適用すべきであるという御意見がありました。一方で、全面適用とするには課題があるが、適用事業の把握の困難性あるいは事業主の事後負担などの課題を解決する余地があるのではないかといった御意見も頂いています。
8ページの特別加入団体についてです。特別加入団体に災害防止措置の実施を義務付けることについてです。1つ目の御意見として、特別加入団体に災害防止を義務付けるべきという御意見、あるいは、義務付けまでいかないまでも、災害防止の取組を期待し得るという御意見がありました。一方で、特別加入団体は事業主そのものではないということで、その取組には限界があると。あるいは、かえって特別加入の促進の妨げになるという御意見がありました。
9ページの法令上に特別加入団体の要件や手続を明確化することについてです。承認要件に法令上の根拠を与え、この要件を満たさなくなった場合に保険関係の消滅ができるようにすることに、法令上の裏付けがあることが必要であるという御意見がありました。一方で、特別加入団体の保険関係が消滅することは、加入者にとって大きな影響を及ぼしますので、保険関係の消滅に先立ち、改善要求等の段階的な手続があってもよいのではないかという御意見を頂いています。適用に関しては以上です。
○小畑座長 ありがとうございました。事務局より、適用に関する今までの議論についての御説明がありました。御意見については、1ページの目次に示されていますⅠ.適用の1.から4.の項目ごとにお伺いしたいと思います。まずは、1.労災保険の適用範囲についてです。各委員より追加や補足、その他の御意見を頂こうと思いますが、ここで、本日御欠席の笠木委員より御意見が来ておりますので、事務局より代読をお願いいたします。
○労災管理課長補佐 代読いたします。「労災保険法の適用範囲について、既に述べたことの繰り返しも含みますので恐縮ですが、他の委員の見解も伺いつつ考えましたことについて、改めて発言させていただきます。これまでの検討会での議論も踏まえて考えますと、特別加入がフリーランス一般に拡大され、この制度の一層の充実が図られようとしている今のタイミングで、強制加入の範囲そのものに修正を加えようとすることは適切でなく、短期的には、強制加入の対象を引き続き労基法上の労働者に限定しつつ、特別加入制度の周知や特別加入団体の役割の明確化、強化等を図っていくべきものと思われます。
他方で、個人事業主と労働者の境界にいるような就労者が、その働き方の実態に応じて受けるべき保障を受けられているのか、フリーランスの特別加入が適切・十分に機能しているのかなどについて、労働者性をめぐる議論の動向にも注意しつつ現行法の運用を注視するとともに、発注者やプラットフォーマーといった個人事業主の仕事から利益を得る第三者の労災保険との関係での役割についても、就業者の労災加入促進、保険料負担の軽減といった観点から考察を積み重ねる必要があると考えます。同時に、このようないわば将来に向けた検討の前提とも言える論点として、労働者として働く人については確実に労災保険への加入が行われるよう、暫定任意適用事業の速やかな見直しも必要と考えます。」代読は以上です。
○小畑座長 ありがとうございました。それでは、各委員より追加、補足、その他御意見をお伺いできればと思います。御発言の際には、会場の委員におかれましては挙手を、オンラインより御参加の委員におきましては、チャットのメッセージから「発言希望」と入力いただくか、挙手ボタンで御連絡いただきますようにお願いいたします。それでは、御意見はいかがでしょうか。水島委員、お願いいたします。
○水島委員 事務局におかれましては、意見の整理を頂き、ありがとうございました。論点①、論点②について、1つずつあります。論点①に関し、私は検討課題とするのに消極的な意見ですが、検討課題とすることを全否定するものではないことを申し上げます。現行制度では、原因が業務のみにあるとは言えない疾病も業務上となる可能性があり、通勤災害のように事業主側に原因がなく、災害予防が困難なものも対象となります。労働者と使用者との関係で、これらについても労災による補償、保護を及ぼすことはともかく、発注者側の義務として、受注者と発注者の関係に広げることは疑問です。このようなリスクは、受注者であるフリーランスが自ら備えることが適切で、現行の特別加入制度が妥当と考えます。
他方で、発注者が災害防止対策を講じることができる災害に関しては、災害補償の義務化を検討すべきとも考えられます。現行制度を前提とせず、制度の根幹を見直すのであれば、検討課題とする余地はあると考えますが、あくまで長期的な検討課題であると整理いたします。
次に、論点②について、補足させていただきます。特別加入に係る保険料相当額を発注事業者が自主的に経費に上乗せすることは望ましく、そのような慣行が社会に定着するために業界の自主努力が期待されます。それを促すために、ソフトローの活用が考え得るのではないかと思います。以上です。
○小畑座長 ありがとうございました。ほかはいかがでしょうか。坂井委員、お願いいたします。
○坂井委員 私からは、論点①に対応する点について、意見を述べさせていただきます。本研究会の議論を通して、労災保険の構造が労働災害による損害の填補という制度の趣旨・目的と密接に関連していることを改めて個別の論点との関係でも認識したところです。このような認識を前提とすると、強制適用の範囲を労働者以外の就労者にも拡大することについては問題があるのではないかという考えに至っております。やや長くなってしまい、また抽象度の高い意見になり恐縮なのですが、この点について意見を述べさせていただきたいと思います。
確かに、フリーランスを含む自営業者も、稼得活動への従事によって、私生活では直面しない追加的な傷病等のリスクにさらされているとは言えるのだろうと思います。しかし、このようなリスクに関して、どのような制度からどのような補償を行うべきかとなると、労働者と他の就労者とでは事情が異なるのではないかと考えております。すなわち、既にこの研究会でも指摘されてきたところですが、労働者は使用者の指揮監督の下で労務を提供する結果として、業務災害のリスクを自らコントロールする機会を制限されております。だからこそ、業務災害が発生した場合には、使用者による費用負担を前提として、損害の填補という制度目的に整合的な給付設計によって、各種の補償給付を受けることになります。
これに対して、フリーランスを含む自営業者は、他人の指揮監督の下での労務提供という実態を欠いております。この点で、労働者とは本質的に異なっております。個別使用者の災害補償に関する責任を基礎として損害の填補を行うという労災保険において、このような制度の基礎付けを共有できない者をも強制適用の対象とすることは、費用負担や給付設計といった事項に関して、労災保険の制度目的を前提として一貫した考え方の下で制度の在り方を議論することを難しくしてしまうのではないかという懸念を持っているところです。
この点をもう少し具体的に申しますと、労災保険では、例えば、保険料に関しては業務災害のリスクに応じた拠出が求められ、所得補償に関しては、業務災害の発生時における賃金額に基づく給付水準の設定がなされ、所得補償の中でも休業補償に関しては、支給期間に上限を設けずに給付が支給されています。
これに対して、同じく傷病、障害、死亡といった事由について保障を行う医療保険や年金保険といった他の社会保険では、例えば、保険料に関しては応能負担の要素が取り入れられ、所得補償のうち年金給付に関しては、国民年金では定額とし、厚生年金では、保険事故の発生時の賃金額ではなくて保険事故の発生時までの生涯所得を基本として障害年金や遺族年金の給付水準を設定し、所得補償の中でも休業補償に関しては支給期間に上限を設けております。
他の社会保険と比較した場合における労災保険に見られる上記の特徴は、個別使用者の災害補償責任を基礎としており、また損害の填補を目的としているのだという前提に立つ限りは、十分な説明が可能ということになろうかと思います。他方で、より一般的にフリーランス等の就労者も含めた上記の、いわゆる職業上のリスクに関する補償制度というように見た場合には労災保険の構造は自明の構造とは言い難く、取り分け上記の特徴の中でも給付設計に関わる事項に関しては、他の社会保険の制度設計に接近する可能性も出てくるのではないかと思います。
こういったことは、単に補償給付の水準が低下する可能性があるといった個別的な影響だけではなくて、補償を必要とする背景、事情が異なる就労者を同一の制度の適用対象とすることで、十分な論拠に支えられた政策論の展開に支障が生じかねない、そういった問題もあるのではないかと考えております。
以上のような理由から、私は強制適用の対象を労働者以外の者に拡張することに関しては極めて慎重な立場であります。私からは以上です。
○小畑座長 ありがとうございました。ほかはいかがでしょうか。よろしいですか。ありがとうございます。1つ目の項目である労災保険の適用範囲についての御意見は出そろったかと思われます。事務局におかれましては、御発言のありました委員の意見の整理をお願いできればと思います。
続いて、2.家事使用人への災害補償責任及び労災保険法等の適用について、追加や補足、その他御意見がございましたらお伺いできればと思います。いかがでしょうか。特にございませんか。それでは、3.暫定任意的用事業について、追加や補足、その他御意見がございましたらお伺いできればと思います。御意見はございますか。坂井委員、お願いいたします。
○坂井委員 こちらの点については、既に発言させてもらった内容の若干の補足と、以前、農業について発言させてもらいましたが、他の暫定任意適用事業も含めて、発言の補足をさせてもらいたいと思います。第4回の研究会で発言させていただいたとおり、農業分野における暫定任意適用事業の強制適用化については望ましいことであると認識しておりますが、農業の特性に鑑みると、他方では全面適用には実務上の障害もあり、具体的には事業者の把握や保険料の徴収といった課題があると考えております。
この課題については既に発言したとおり、農業協同組合の協力もあり得るのではないかと考えております。この点については、実際にそうした枠組みが活用可能なのか、活用可能であるとすれば、どれだけの実効性が期待できるのかということについて、今後、この問題を管轄する農林水産省とも協力して検討していくべきではないかと考えております。農林水産省の検討会においても、農業分野の労災保険の適用について議論されていると承知しておりますが、そこでの議論の対象は農業分野に限られており、同じくここで暫定任意適用事業として議論の対象となっている林業、水産業の状況については十分な検証がなされていないというように認識しております。
以上を前提に、私の考え方を改めてまとめさせていただくと、次のようになります。全面適用を目指すという方向性は望ましいと考えております。他方で、労災保険制度の内容にのっとって制度を適用し、保険料を徴収し、給付を支給するといった制度適用に関する実効性を担保できないとなると、保険関係の当事者である事業主、労働者からの制度の信頼を損うことにもなりかねません。したがって、農業、林業、水産業のいずれの分野についても、全面適用に向けては保険料の徴収等の運用面での課題や、零細な事業主の事務負担等も十分に踏まえながら検討が進められるべきだと考えております。私からは以上です。
○小畑座長 ありがとうございました。ほかはいかがでしょうか。水島委員、お願いいたします。
○水島委員 労働基準法並びに労災保険制度の問題として、家事使用人に関して私家庭に適用するのであれば暫定任意適用事業に適用しなければバランスがあまりに悪いと考えますし、私家庭よりも把握は困難でないと思います。
家事使用人についての見直しと併せて徹底した周知を図ることが考えられますし、少なくとも新規事業については強制適用を徹底することが可能であり、必要であるとの意見を申し上げます。以上です。
○小畑座長 ありがとうございました。ほかはいかがでしょうか。御意見はございますか。よろしいでしょうか。ありがとうございます。暫定任意適用事業についての御意見は出そろったかと思われます。事務局におかれましては、御意見のありました委員の意見の整理をお願いできればと思います。
最後に、4.特別加入団体について、追加、補足、その他御意見がございましたらお願いできればと思います。いかがでしょうか。中野委員、お願いいたします。
○中野委員 私は、特別加入団体に対して、災害防止努力として災害防止教育の実施報告を義務付けるべきという立場を取っておりますが、そのように特別加入団体に対して様々な役割ないし義務を負わせるのであれば相応の法的根拠があることが望ましいと思われますので、法令上に団体の承認のための要件を明示することには賛成いたします。また、承認要件を満たさなくなったときの取消しについて、現行法令上は法令違反があった場合の職権取消しの規定しかありませんが、現在の規定の在り方では、つまり承認要件が法令上明記されていない状態ですと、承認要件を満たさなくなったことが直ちに法令違反に当たるとは言えませんし、適正手続の保障や団体側に予測可能性を与えるという観点からも、承認取消しの要件についても、きちんと法律上の要件として整備することが適切だろうと考えます。以上です。
○小畑座長 ありがとうございました。ほかはいかがでしょうか。特にございませんか。ありがとうございます。ほかはよろしいでしょうか。
それでは、続いて給付についての議論をしてまいりたいと思います。事務局より資料の御説明をお願いいたします。
○労災管理課長補佐 御説明いたします。Ⅱ.給付について、11ページを御覧ください。遺族(補償)等年金に関して、論点①です。遺族(補償)等年金の趣旨・目的については、「被扶養利益の喪失の補填」と解する御意見のほか、「永久的全部労働不能による損失の補填」、「遺族の生活水準の急激な低下を緩和する」もの、あるいは「労働者が得るはずであった賃金の代替物」であると解する余地もあるとの御意見を頂いております。
12ページです。(1)生計維持要件については、労災保険における「被扶養利益の喪失の補填」の趣旨との関係で不合理ではないかという御意見、あるいは生計同一、実質的に生計同一の意味を含む労災保険独自のものとして運用されているといった御意見、また、遺族(補償)等年金の創設から半世紀以上たった中、現行の取扱いが妥当なのか検討が必要ではないかという御意見を頂いております。
(2)労働基準法の遺族補償との関係について、遺族(補償)等年金の支給対象者は労基法の遺族補償の対象者よりも、配偶者について限定されている点について見直すべきではないかという御意見を頂いております。また、労基法より労災保険法の補償のほうが下回るべきではなく、両法の整合性を確保するべきといった御意見も頂いております。
13ページです。夫と妻の支給要件の差についてです。夫と妻の支給要件の差異については、その正当性は既に失われており、要件が異なる状態を解消していくことが必要との方向性で、皆様方の御意見は一致しているところです。一方で、要件が異なる状態の具体的な解消方法については、夫と妻の支給要件について、いずれも年齢要件は不要とする御意見、妻の優遇を見直し、夫と同様に年齢要件を設けるのが適当とする御意見、また、遺族(補償)等年金の配偶者の年齢要件の見直しについては、その趣旨・目的を考慮する必要があるといった御意見を頂いております。
15ページです。給付の期間についてです。制度趣旨を永続的労働不能による損失の補填と捉えた場合や生活保障としての側面を有するといったことを踏まえると、長期給付が望ましいといった御意見、また、有期化については躊躇せざるを得ないといった御意見を頂いております。一方で、遺族(補償)等年金の趣旨について、御遺族が自身の就労によって自立するまでの生活を支えるものと捉えるのであれば、将来的には給付期間を有期化することが望ましいといった御意見も頂いております。
16ページ、特別加算についてです。妻への特別加算については、昭和45年の創設当時の考え方は現在では妥当しなくなっており、妻のみに加算を設ける合理的な理由はないといった御意見を頂いております。加算の在り方の具体的な見直しについては、「配偶者と未成熟子に対して補償を充実することはあり得る」、「障害者への加算の意義と合わせて考える必要がある」、又は「遺族(補償)等年金の相対的な給付水準や加算が必要となる者の範囲についての議論が必要」といった御意見を頂いております。
17ページ、遅発性疾病に係る保険給付の給付基礎日額の算定方法についてです。前回の研究会の資料の中の論点④若年時に有害業務に従事されて離職した後、働き盛りの50代頃に遅発性疾病を発症された場合、あるいは完全リタイアされて就業されていない頃に発症された場合の2つのケースを捉えて検討をしたものです。
(1)就業期間中に発症したケースについて、発症時の賃金を給付基礎日額の算定根拠とし、それが最終ばく露事業場の離職時賃金に満たない場合には最終ばく露事業場の離職時賃金を給付基礎日額の算定根拠とすることについて、社会保障的性格あるいは生活保障といった観点から、正に発症した際の賃金を原則とする取扱いが適切であるという御意見を頂いております。一方で、発症時の賃金が最終ばく露事業場の離職時の賃金に満たない場合の取扱いについては、労基法の災害補償責任に基づいて最終ばく露事業場の離職時賃金を最低限補償するといった御意見、また、労災保険が生活保障の趣旨から例外的に水準を拡大して最終ばく露事業場の離職時賃金を算定根拠とするといった御意見、労災保険においては、最終ばく露事業場の離職時の賃金を最低基準とする必要はないといった御意見も頂いているところです。
18ページです。(2)未就業中に発症したケース、すなわちリタイアされて仕事をされていないという状況下での発症ですが、未就業中に発症した場合には、最終ばく露事業場の離職時の賃金を基に給付基礎日額を算定することについては、許容し得るといった御意見もありました。その際、労災保険を想定していない場面とも考えられますので、今後の議論が必要といった御意見も頂いております。
19ページです。その他の御意見として、メリット制の適用方法、年齢別の賃金スライドの導入の可否、老齢厚生年金等との併給調整の点について言及いただいているところです。
20ページは、災害補償請求権・労災保険給付請求に係る消滅時効です。消滅時効期間の見直しについては、請求手続自体が疾病の増悪を招くような場合には一定の配慮が必要との御意見があった一方、消滅時効期間の見直しを前提とせずに適切な周知広報等の実施といった運用改善を図るべきといった御意見も頂いております。仮に、消滅時効期間を見直すのであれば、請求手続自体が疾病の増悪を招く場合に特例を設けるといった御意見のほか、労働基準法の改正経緯や動向を踏まえれば、特例を設けるというよりも、一律に時効期間を延長することが適当ではないかといった御意見も頂いております。また、他の社会保険制度と労災保険制度との相違については、請求手続や認定手続といった特殊性に着目し、労災保険制度特有の事情が見出せるという御意見があった一方で、労災保険について他の社会保険制度との差別化は困難であり、仮に消滅時効期間を見直すのであれば、制度横断的、一体的な検討が必要であるといった御意見も頂いております。
23ページからは、社会復帰促進等事業についてです。特別支給金の処分性については、現在、処分性が認められていないほうの特別支給金については、不服申立ての機会の必要性を踏まえて認めることが妥当といった御意見を頂いております。特別支給金の保険給付化については、実態として特別支給金が保険給付と一体化していることや補償の安定性を確保するなどの観点から、保険給付化することが本来の姿であるという御意見があった一方、特別支給金のうち、ボーナス特別支給金については、不確定要素に左右されるボーナスを算定基礎とすることから、保険給付として安定的に算定することが難しいのではないかといった御意見も頂いております。
24ページ、社会復帰促進等事業に係る不服申立てを労審法の対象とすることについてです。現在、社会復帰促進等事業に係る不服申立てについては、「行政不服審査法」において管轄されております。この点について、国民の分かりやすさ、あるいは手続の複雑さを解消するという観点から、労災保険給付本体とともに労審法の対象とすることが適当との御意見を頂いております。また、その他の御意見として、アフターケアに関しても御意見を頂いているところです。
また、特別支給金取扱いに関して、日本労働弁護団から5月28日付けで意見表明を頂いているところで、本日机上配布資料として御紹介させていただいております。事務局からは以上です。
○小畑座長 ありがとうございました。それでは、適用と同様に、給付についても、追加の御意見や補足の御意見などをお伺いできればと思います。まずは、「5.遺族(補償)等年金」についてです。御発言の際には会場の委員におかれましては挙手を、オンラインから御参加の委員におかれましてはチャットのメッセージから「発言希望」と御入力いただくか、挙手ボタンで御連絡いただきますようお願いいたします。御意見いかがでしょうか。中野委員、お願いいたします。
○中野委員 遺族(補償)等年金の在り方に関してですが、以前の研究会で、ほかの委員から離婚率の変化についての言及があったと記憶しております。簡単に厚生労働省の統計を調べたところ、人口1,000人当たりの離婚率は、遺族(補償)等が年金化された昭和40年には0.79であったのが、2020年(令和2年)には1.57と倍になっています。社会保障制度は内縁も保護の対象としますので、本来だと、内縁も含めた婚姻関係に占める離婚率を調べたかったのですけれども、取りあえずは人口当たりの離婚率を見ても、年金化された当時に比べれば離婚率は倍になっているということが分かりました。
そうすると、遺族(補償)等年金の趣旨・目的について、今日の資料でもその趣旨・目的をどう捉えるかということで意見が分かれているということになりましたが、その趣旨・目的が今日においても被扶養利益の喪失の補填にあると考えても、配偶者が生存している場合にはかなりの確率で離婚する可能性があるのに、配偶者が死亡した場合には婚姻関係が生涯続き、被扶養利益が一生続くという仮定をとることが、今日においても妥当なのかは検討課題になり得ると思われます。
もっとも、ここでもやはり民事損害賠償との関係は問題になり得て、損害賠償のほうで、損害賠償額の算定において死亡した者との婚姻関係が生涯続くことを前提としている以上、私が念頭に置いているのは有期給付化ということですが、労災保険制度においてのみ離婚率の高まりを考慮して遺族(補償)等年金の制度を縮減しても、損害賠償による補填の必要が大きくなるだけだということにはなります。
ただ、前回も述べさせていただいたように、労災保険が目的とするのは、あくまで公正な保護であって、全ての損害の補填ではないので、その公正な保護とは何なのかということを考えるに際しては、考慮要素の1つになるのではないかと思う次第です。以上です。
○小畑座長 ありがとうございました。ほかは、いかがでしょうか。水島委員、お願いいたします。
○水島委員 家族形態は変化して多様化しているということを申し上げたいと思います。法律婚を選択しないカップル、長期の単身赴任ないし別居婚、同性カップル、そして中野委員から数字をお示しいただきましたが、離婚率の大幅な上昇等を指摘できます。家計の点でも、かつては夫の給与口座を専業主婦の妻が管理する世帯一体型が典型だったと思いますが、共働き世帯では、世帯の家計と各人の家計を分けるなど、世帯内で一定の家計の独立があるケースが増えているようです。このような家族あるいは家計の変化を認識・分析した上で、中長期的に遺族(補償)等年金の在り方を検討する必要があると考えます。
夫と妻の支給要件の差については、私も立法論として解消すべきとの考えですが、この家族の変化によっても、現行制度の見直しが求められると考えておりますので、現在、有利なほうに合わせればよいということにはならないし、そうすべきではないと考えております。以上です。
○小畑座長 ありがとうございます。では、坂井委員、お願いいたします。
○坂井委員 私からは、遺族給付の話で、論点④の給付の期間について、これまで発言してきた受給資格などに関する意見との関係で、私の立場を述べさせていただきたいと思います。これまでの研究会で、例えば生計維持要件に関しては、運用の実態がかなり緩やかではないかという課題について、夫婦は一般に経済面で共同生活を営んでいることに鑑みれば、填補すべき損害は存在しており、現行の比較的緩やかな生計維持要件の認定も結論としては合理性があるのではないか、あるいは年齢要件に関しては、廃止が妥当であり、そうすると、他の遺族との間で現役世代において生計維持者を亡くした場合の取扱いに差異が出てくるけれども、これについても夫婦間の扶養義務に鑑みれば、そういった別の取扱いも理由があるのではないかといった意見を述べてまいりました。
これらを前提に給付の期間について考えてみると、やはり夫婦間では、配偶者を失ったときに、経済面での夫婦の共同生活を前提とすると、填補すべき損害というのは厳然として存在しているのだと思いますし、また、夫婦間の扶養義務を考慮すると、その損害について、期間を限らず、損害が生じている期間にわたり長期給付を行うということにも、合理性、妥当性があるのではないかと考えております。以上です。
○小畑座長 ありがとうございました。ほかは、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。遺族(補償)等年金についての御意見は出そろったと思います。事務局におかれましては、御発言がありました委員の意見の整理をお願いいたします。
続いて、「6.遅発性疾病に係る保険給付の給付基礎日額の算定方法」について、追加や補足、その他御意見がありましたらお伺いいたします。いかがでしょうか。特に御意見はありませんか。それでは、次の議論に入ります。
続いて、「7.災害補償請求権・労災保険給付請求権に係る消滅時効」について、追加や補足、その他御意見がありましたらお伺いたします。いかがでしょうか。こちらも特に御意見はありませんか。それでは、次の議題に入ります。
最後、「8.社会復帰促進等事業」について、追加や補足、その他御意見などがありましたらお伺いいたします。いかがでしょうか。地神委員、お願いいたします。
○地神委員 社会復帰促進等事業の(2)特別支援金の保険給付化について少しだけ補足をさせていただきます。この点については、特別支給金について法律上の根拠を具体的に置くことにより、法的安定性を図ること、それから、国民にとっての分かりやすさという点から保険給付化を考えてもよいと考えておりますが、具体的な技術的方法として、2つの方向性があり得るのかなという点を少し補足させていただきます。
1つは、今のような形で、休業補償給付とは分けた別個の給付を考える。名称についてはまだ分かりませんが、そのような在り方が1つ。もう1つは、休業補償給付を給付基礎日額の80%とするというような、2つの方向性が考えられるかと思います。
国民にとっての分かりやすさという点では、この80%という、現状も、そのように理解されている方も多いのではないかと思いますが、そのような方法が有意なようにも見えます。もっとも、労働基準法の災害補償との関係からして乖離が生じることは確かですが、実際に年金給付など、労災保険独自の給付内容というのが広く認められている現状においては、80%とする方法というのも十分に許容されるのではないかと考えます。
○小畑座長 ありがとうございました。ほかに、いかがでしょうか。特にありませんか、ありがとうございます。社会復帰促進等事業についても御意見が出そろったと思われます。事務局におかれましては、御発言のありました委員の意見の整理をお願いいたします。
続いて、徴収について議論してまいります。事務局から資料の御説明をお願いいたします。
○労災管理課長補佐 御説明します。26ページを御覧ください。論点①メリット制の効果についてです。メリット制には災害防止の効果があるといえるかについてですが、メリット制には一定の効果があるといった御意見が複数あったところです。一方で、メリット制の効果は認められるものの、業種によっては災害防止効果は発揮しづらいなどといった、一定の留保が必要であるという御意見も頂いております。
27ページ、(2)プラス40%が続く事業場への対応についてです。こちらについては、更なる分析をといった御意見も頂いているところです。(3)メリット制と労災隠しの関係についてですが、調査範囲が限られた中での結果であり、一定の留保を前提とするものの、メリット制度の意義を失うほどの悪影響があるものではないと言えるのではないかといった御意見を頂いています。
28ページ、メリット制の算定対象についてです。脳・心臓疾患や精神疾患に係る給付の扱いについてです。これらの疾病に係る給付をメリット制の算定対象から除外する理由はないといった御意見がありました。一方で、事業主が予防努力をしたとしても業務上と認定される疾病に係る給付については、公平性の観点や災害防止の観点から算定対象から除外してもよいのではないかといった御意見もありました。
29ページも、引き続きメリット制の算定対象についてです。高齢者や外国人に係る給付の扱いその他についてです。脆弱性のある労働者をメリット制の算定対象から除外することで、事業主の災害予防行動がとられなくなる懸念とか、こうした問題は雇用政策の中で取り扱うべきといった理由から、算定対象から除外するべきではないかといった御意見を頂いています。
一方で、脆弱性のある労働者を雇用した使用者に結果的に重い保険料負担をさせることは公平性を欠くと考えられることや、高齢者や障害者については政府が雇用促進をしていることとの整合性の観点から、算定対象から除外する、あるいは一定の工夫をするといった余地があるのではないかといった御意見も頂いています。また、外国人は外国籍であることをもって、特別な脆弱性というものは考えにくく、特別な扱いをするという理由はないといった御意見を頂いています。
また、災害復旧の事業に係るメリット制の取扱いですが、安全衛生対策は本来、事業主の責任であることとか、事業に伴って発生するコストを他の事業主に分散させるべきではないということで、特例を設けることに否定的な御意見があった一方、災害時のエッセンシャルワーカーの被災について、そのまま適用することの適否については論点にするべきではないかといった御意見を頂いているところです。
31ページ、徴収手続と使用者への情報提供についてです。論点①メリット適用事業主への労災保険率の算定基礎となった情報提供についてです。保険料を負担している事業主に対しては、手続保障の観点からも、保険料の前提となる事実を知らせることは重要であるといった御意見を頂いています。一方で、労働者にとって機微な一定の情報については、慎重に取扱うべきといった御意見も頂いています。
32ページは、支給決定あるいは不支給決定の事実を事業主に伝えることについてです。手続保障の観点とか、事業主に早期の災害防止を図っていただく観点から、保険料を負担する事業主に対して、保険料の前提となる支給・不支給の事実を知らせることは重要であるといった御意見を頂いています。一方で、情報提供を行うに際しては、将来のメリット制の不服申立てを視野に入れて、事業主から被災労働者等に接触が行われるなど、関係者にとって追加的な負担が生じるといった懸念については留意する必要があるといった御意見も頂いています。資料の御説明は以上でございます。
○小畑座長 ありがとうございます。それでは徴収等についても、追加の御意見や補足の御意見などをお伺いできればと思います。まずは、「9.メリット制」について、御意見をお伺いいたします。御発言の際には、会場の委員におかれましては挙手を、オンラインから御参加の委員におかれましてはチャットのメッセージから「発言希望」と御入力いただきますか、挙手ボタンで御連絡いただきますようお願いいたします。御意見いかがでしょうか。酒井委員、お願いいたします。
○酒井委員 メリット制について意見を述べさせていただきます。今回、労災抑止という観点から事実上初めて、このメリット制について検証が行われたのではないかと考えています。その結果として、一定の効果が認められたのではないかと思っています。
ということは、当然ですがメリット制をそのまま止めてしまうということがあれば、労災がある程度増えるということを意味していると思います。その労災抑止手段としてメリット制を見た場合に、その是非を巡っては、他の労災抑止の選択肢と勘案したうえで行われるのが妥当ではないかと考えています。
そこで重要になるのが、それでは他の労災抑止の手段とは何であるかということかと思います。労災抑止の手段というと、メリット制以外には、例えば災害防止教育ですとか、指導といったものを想起しがちですけれども、実はそれだけではなくて、例えば事業所が災害防止に資するような投資を行ったような場合に補助を与えるといったことも含まれるのかなと思いますし、そういった補助制度といったものも実際に行われていると認識しております。
今回の研究会では、メリット制についてすごく議論してきたところではありますけれども、ほかの労災抑止の手段というものが具体的に何なんだろうといったことに関しては、若干あいまいにされたまま議論が進んできた側面もあるのではないかと考えておりますので、今後長い目では、費用対効果の観点から他の労災抑止手段との比較からも議論が行われて然るべきと考えています。もっと踏み込んで言うと、他の労災抑止手段が実際には非常に効率が悪いというようなことがあれば、またメリット制の意義というものも見えてくるという部分もあろうかと思います。
それに少し関係するかと思いますが、初回の研究会では、メリット制の適用対象が中規模から大規模の事業所に限定されているということに言及があったかと思います。小規模事業所では、被災確率が著しく高いにもかかわらず、小規模事業所を対象から外しているということには、小規模事業所では少ない労災発生によって大きな影響が出てしまうといったことから技術的に難しい面があるのは分かるのですけれども、そうであるならば、小規模事業所に対する労災抑止のその他の手段というものが重要になってくるのではないかと。ここでも、やはり他の手段との比較といった観点から議論することも重要なのではないかと思った次第です。
ちょっと長くなるのですが、あと1点。労災隠しに関して、1点述べさせていただきます。労災隠しに関して、今回少しエビデンスめいたものが示されたわけですが、その際に、今後もこうしたことを注視すべきと私は申し上げたと思います。そのことに関しての補足です。
海外の研究などでは、労災隠しというべきかちょっと分からないですけれども、いわゆる労災の過少申告というものが、不景気のときによく見られるということを報告する研究もあります。そういうふうに考えますと、やはり労災隠しということに関しても一定期間を取った上で観察が必要ではないかと考えています。そういう意味も込めて、今後は定期的にというか、中長期的に観察していく必要があるのではないかということを申し上げたつもりです。以上です。
○小畑座長 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか、ありがとうございます。では、事務局で整理のほうをお願いいたします。
続いて、「10.徴収手続と使用者への情報提供」について、追加や補足、その他の御意見がございましたらお伺いできればと思います。ここで、本日御欠席の笠木委員から御意見を頂いておりますので、事務局より代読をお願いいたします。
○労災管理課長補佐 代読いたします。「以下のとおり、本日の研究会資料との関係で、1点、私自身の発言を補足させていただきます。資料31~32ページにおいては、労災保険給付の支給・不支給の情報を事業主に伝え、災害防止の努力を促すとともに、メリット制の適用との関係で使用者の手続保障を確保することが論点となっています。
私は、既に過去の会合で申し上げておりますとおり、こうした情報提供が行われることについては、メリット制の適用の有無を問わず、事業主に労災の発生について適時に情報が提供されることは一般論として望ましいことと考えますし、またメリット制の適用との関係では、最高裁判決の趣旨からしても、情報提供の必要性は大きいものと考えます。
他方、同じく過去の会合において、事業主に従来よりも充実した情報が伝達されることによって、将来の不服申立てを見据えた事業主の働きかけ等によって被災労働者、遺族、同僚労働者等に事実上の負担が生じる懸念があると申し上げました。
しかしながら、こうした事実上の負担は、事業主への手続保障の水準を引き下げるべきとする根拠とはならないと思われますので、この意見を本論点との関係で申し上げることは適切でなかったと考えます。過去の論点と関連付けつつ改めて考えますと、私見は、こうした関係者の事実上の負担も考慮すれば、業務起因性を巡り紛争が起きやすい一部の労災保険給付については、そもそもメリット制の適用そのものを限定的に考えるべきではないか。言い換えれば、メリット制が、今後、使用者に対して行われるべき手続保障を含むものとして運用されていくことになるのであれば、こうした関係者の事実上の負担が相対的に大きくなることも考慮した上で、メリット制の意義、影響を評価するべきではないかという趣旨であり、むしろ、今回の資料では、28~29ページまでの部分の議論に関わる内容ですので、この場を借りて発言の趣旨が不明確でありました点をお詫びしますとともに、補足・修正をさせていただきたく存じます。」代読は以上です。
○小畑座長 ありがとうございました。それでは、各委員からも追加や補足、その他の御意見をお伺いできればと思います。いかがでしょうか。中野委員、お願いいたします。
○中野委員 私も今の31~32ページの関係で、自分自身の以前の発言について、若干の補足をさせていただきます。32ページについて、以前の研究会ではメリット制の適用対象となる事業主が、将来の不服申立てに備えるための準備という観点からのみ意見を申し上げていたので、補足させていただきたく思います。
まず、整理としては、31ページで言われている情報提供は、メリット制の適用対象となる事業主に、保険料の上昇に結び付く支給決定についての情報提供をするという話で、32ページは、メリット制の適用対象とならない事業主も含め、また保険料の変動に結び付くか否かにかかわらず、全ての支給・不支給決定についての情報提供を、より早い段階でするという話であると理解しています。
その点を踏まえた上でも、事業主が自身の事業場で発生した事故が、労働災害に当たるのかどうかを知り、再発予防に取り組むことを可能とするために、支給・不支給決定の結果を全ての事業主に早い段階で知らせるということには意義があると考えます。
以前の研究会では、私も、個々の給付申請と結び付く形で、結果の通知が事業主にいくことにより、31ページで言われている情報提供以上に、32ページの情報提供には、労災給付の申請をする労働者や遺族が心理的プレッシャーを感じる恐れがあるのではないかという懸念を述べました。しかし、この点に関しては、現在でも給付申請の段階で労働者や遺族は事業主に事故の証明等の協力を得ておりますので、その結果の通知によって、現在以上に強いプレッシャーが生じることはないのではないかと考えます。
ですので、現行の運用以上の強い心理的負担を労働者や遺族に与えるものではないだろうということで、この情報提供には、そういった懸念を超える意義があり、労働災害の再発予防という点から意義があるものと考えます。以上です。
○小畑座長 ありがとうございました。ほかに、御意見いかがでしょうか。特にございませんか。御意見が出そろったと考えてよろしいでしょうか。ありがとうございます。では、事務局のほうで整理をお願いいたします。
最後に、全体を通して、今までのところで御発言できなかった部分などございましたら、御意見がありましたら、是非、御披露いただきたいと思います。いかがでしょうか。
特にございませんか。ありがとうございます。では全体に関しても、特に重ねての御意見はないということでよろしいでしょうか。ありがとうございました。では、全体についても事務局で整理をお願いできればと存じます。
次回については、本日も含め、これまでの議論を事務局のほうで再度整理をしていただいて、中間報告に向けて御議論いただきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。それでは、事務局のほうから、次回の日程について御説明をお願いいたします。
○労災管理課長補佐 次回の日程に関しては、調整の上、追ってお知らせします。以上です。
○小畑座長 どうもありがとうございました。これにて第7回労災保険制度の在り方に関する研究会を終了いたします。本日はお忙しい中お集まりいただき、誠にありがとうございました。