2025年7月31日 第105回社会保障審議会年金数理部会 議事録

年金局総務課首席年金数理官室

日時

令和7年7月31日 10時00分~12時00分

場所

全国都市会館 大ホール

出席者

委員
  • 翁部会長
  • 小野委員
  • 駒村委員
  • 佐藤委員
  • 庄子委員
  • 嵩委員
  • 寺井委員
  • 野呂委員
  • 枇杷委員

議題

  1. (1)令和6(2024)年財政検証のヒアリングについて
  2. (2)その他

議事

○楠田首席年金数理官 定刻より少しだけ早いのですけれども、皆様、お集まりになりましたので、ただいまより第105回「社会保障審議会年金数理部会」を開催させていただきます。
 審議に入ります前に資料の確認をさせていただきます。
 本日準備している資料は、議事次第、委員名簿、座席図のほか、資料1として厚生労働省提出資料がありまして、これには資料1の別冊1、別冊2が附属しています。それから、資料2として財務省提出資料、資料3として総務省提出資料、資料4として文部科学省提出資料、参考資料1として令和6年財政検証ピアレビューでの確認事項、参考資料2として広報資料(年金数理部会)でございます。
 次に、本日の委員の出席状況について御報告いたします。
 本日は、全委員御出席ですので会議は成立していますことを御報告申し上げます。
 また、前回の部会開催以降に事務局で異動がございましたので紹介いたします。
 年金局長の朝川でございますが、別件が入ったため遅れて出席の予定です。
 続きまして、大臣官房審議官の吉田でございます。
 総務課長の山下でございます。
 年金課長の和田でございます。
 資金運用課長の高島でございます。
 数理課長の鈴木でございます。
 今回、参考資料2として広報資料(年金数理部会)をつけておりますが、こちらにつきましては年金数理部会の活動に関する広報の必要性について委員の皆様から御指摘いただいたことを受けまして、令和5年度公的年金財政状況報告として年金数理部会が取りまとめた内容について一般の方の理解が進むよう、事務局において作成した資料となります。この資料は厚生労働省のホームページに掲載しておりますが、今後は同様の資料を毎年度作成していくとともに様々な場面で活用されるように進めてまいりたいと考えております。
 それでは、以後の進行につきましては翁部会長にお願いいたします。
 
○翁部会長 委員の皆様には、御多忙の折、お集まりいただきまして大変ありがとうございます。
 社会保障審議会年金数理部会では、公的年金制度の安定性の確保の観点から、財政検証時における検証(ピアレビュー)を行うこととされております。このため、本日は所管各省から令和6年財政検証についてヒアリングを実施いたします。
 それでは、議題1「令和6年財政検証のヒアリングについて」に入ります。
 ヒアリングに先立って、事務局から本日の資料とヒアリングの実施方法について説明をお願いいたします。
 
○楠田首席年金数理官 では、事務局から説明させていただきます。
 令和6年財政研修のピアレビューを実施するに当たり、年金数理部会で確認すべき事項については、部会作業班で議論いただき、参考資料1のとおり整理されました。
 確認事項は大きく分けて2つあり、1つ目は財政検証の枠組み、具体的方法、実施に際してのガバナンス、情報開示の状況、また、前回ピアレビューにおける提言への対応状況に関するものとなっており、2つ目は財政検証結果や公的年金制度の安定性に関するものとなっています。本日は、そのうち前者について確認するために、各省から資料を提出していただいており、これから説明いただくこととしています。なお、今回は令和6年財政検証から新しく実施された年金額分布推計についても確認することとしており、これらについても資料を提出いただいております。
 また、資料1のうち、財政検証の詳細結果のデータは分量が膨大となることから配付を省略し、事務局において整理した上で別途お示しいたします。
 次に、ヒアリングの実施方法についてですが、平成27年10月の被用者年金一元化以降は厚生年金の財政検証を厚生労働省と各共済所管省、実施機関が連携して作成しておりますので、厚生年金保険及び国民年金(基礎年金)における財政検証を一括して厚生労働省から説明いただいた後、各共済所管省から担当部分について説明をいただく形で準備しております。
 以上でございます。
 
○翁部会長 ありがとうございました。
 それでは、そのように進めてまいります。
 本日は、お忙しい中、厚生労働省年金局数理課の鈴木課長、免田数理調整管理官、財務省主計局給与共済課の武井共済計理官、国家公務員共済組合連合会年金企画部数理第一課の櫻本課長、総務省自治行政局公務員部福利課の工藤数理官、地方公務員共済組合連合会年金業務部の吉平数理課長、内海参事、文部科学省高等教育局私学部私学行政課私学共済室の三田共済調査官、日本私立学校振興共済事業団数理統計室の佐藤室長、大山参事に御出席いただいております。
 それでは、厚生労働省から説明をお願いいたします。
 
○鈴木数理課長 年金局の数理課長でございます。よろしくお願いいたします。
 令和6年の財政検証につきましては、昨年7月に公表させていただきまして、当部会でも昨年9月の部会で御報告をさせていただきました。今回、ピアレビューのために厚生年金及び国民年金についての財政検証について私のほうから御報告をさせていただきます。
 資料については先ほど御説明がありましたとおり、資料1の本体、また、別冊1、別冊2とございますけれども、主には資料1の本体で説明をさせていただきたいと思います。
 資料1を1枚めくっていただきますと目次がありまして、そこから3ページにわたって目次が続いておりまして、大きく8項目ございます。これらについて御報告をするところでございます。
 目次の2枚目、8番の後ろに別添資料というものがございまして、具体的な数字とか詳細な資料を添付しているところになっております。このうち基礎数であったり基礎率であったりの具体的な数字が別冊1で分厚いものになっておりまして、さらに最後の参考資料と書いてあるものが別冊2になっているというところで、基本は資料1の本体で、別冊2のほうも少し御覧になっていただきながら御説明をさせていただければと思います。
 では、目次の次の1ページ目、まず、財政検証の枠組みに関する資料でございます。数理部会からいただいた御質問がゴシック体になっておりまして、私どもの回答が明朝で書かれたものとなっております。
 まず、1-1の財政検証の枠組みに関する基本的事項でございます。こちらは従来どおりでございますけれども、最初の2つのパラグラフで平成16年改正におきまして、従来のような保険料の引き上げ計画をつくるという意味での、いわゆる財政再計算という形ではなくなったということで、他方で、保険料固定方式という形でも財政状況を検証していかなければならないということで、厚生年金保険法及び国民年金法において少なくとも5年に一度財政検証を行うということとされております。この財政検証で法律上行うことと定められているものを分解しますと、その下のマル1からマル5という形になってございます。
 その次の「すなわち」からですけれども、まとめまして、財政検証はおおむね100年間の財政均衡期間の収支見通しを作成する。それから、100年間の財政均衡を図るためには、マクロ経済スライドによる水準調整というのをどのぐらい行う必要があるかというのを推計しまして、財政検証を行った時点で、仮にその時点で調整を終了しても均衡が図られるという見通しになったときには、調整を終了するということが定められております。
 さらに財政検証、直近の人口、社会経済情勢を踏まえて、財政の見通しを作成するということで、平成16年改正に基づいた長期的な財政の均衡が図られているか。これは持続可能性の観点ということですけれども、あるいは一方で給付の十分性ということで、給付水準調整終了後の将来の給付水準の見通しが十分であるか、所得代替率を調べまして、年金財政の健全性を検証するというものであるということが書いておるところでございます。
 先ほどの所得代替率という意味でいきますと、給付の十分性ということで、財政検証において5年後までの間に、要は次期財政検証までの間に所得代替率が50%を下回る見込みとなった場合には、その時点で給付水準調整の終了について検討を行いまして、その結果に基づいて調整期間の終了、その他の措置を講ずる。併せて、その際には給付と負担の在り方についての検討を行って所要の措置を講ずるということを書いております。
 最後、マクロ経済スライド、実際にその終了時期をどのように決めるかという部分でございますけれども、今回の財政検証では令和102年度、西暦でいきますと2120年度までを推計という形にしております。有限均衡ということですので、2120年度初めの積立金が、その年度の支出の1年分となるようにマクロ経済スライドによる給付水準調整を行って、それ以上行う必要がないとなったところで、マクロ経済スライドを止めるという形で財政見通しを作成するという形でやっております。
 次の1-2の将来見通しを作成する際に前提とした公的年金制度の内容であります。こちらは財政検証実施時におけるいわゆる現行の年金制度を前提としているところでございますけれども、まだ実施されていなくても、その時点で決定されている将来の制度改正などは織り込んでおります。例えば令和6年10月施行の適用拡大、企業規模50人超まで拡大するであったりとか、令和8年10月施行の国年1号被保険者の育児期間中の保険料免除であったりとか、そういったものは既に決まっていることですので、その影響は織り込んでいるところでございます。
 さらにこちらは法令上の規定にはありませんけれども、従来から国会等での答弁がございまして、そちらを踏まえて、既裁定者の年金は賃金スライドではなくて物価スライドになるわけですけれども、ただ、こちらの新規裁定者の年金水準との乖離幅が2割になった場合には、新規裁定者の年金と同じ既裁定者も賃金上昇率で改定する。要は2割以上乖離しないというような形で従来から推計をしておりますので、今回もそのように推計をしているところでございます。
 2ページ目、ここからが財政検証における推計方法に関する資料となっておりますけれども、こちらの2-1から2-2については、別冊2のほうを御覧いただければと思います。こちらの参考資料のほうで御説明をさせていただければと思います。
 別冊2の3ページ、図の1-1で財政検証作業の全体図(概要)という図がございます。こちらが財政検証の一番大枠を説明した全体像になっております。一番上、被保険者データ(実績)、あと、左側にある将来推計人口、労働力率の見通し、受給者データ、被保険者や受給者の動向に関する基礎率、賃金上昇率、物価上昇率、こういったものが丸で囲まれていますけれども、こちらが使用するデータ、いわゆる基礎数であったり、基礎率であったりとかというものになるところでございます。
 そして、真ん中の矢印が推計の流れでして、二重線で四角く囲まれているところが推計作業という形になってございます。そこから下に出る矢印の先に丸く囲まれているものが推計結果という形になっております。最終的に一番下の二重線の丸で囲まれているものが最終的な結果である財政見通し、収支見通しという形になってございます。これはあくまで骨格ということです。
 まず、上のほうから御説明しますと、被保険者データの実績を基礎にします。その後、社会保障人口問題研究所が出している将来推計人口であったり、あとは労働政策研究・研修機構が出されている労働力需給の推計、これによる労働力率の見通しなどを用いまして制度別の被保険者数の将来推計を作成いたします。この作業は将来推計人口をベースにしてみれば、将来の人口というのはあくまでこれをベースにしているわけですので、将来推計人口で示されている将来の性・年齢別の人口がございますけれども、要はそれを今の年金の実績であったり、労働力の将来見通しなどを踏まえて、各制度、大まかに言えば1号、2号、3号というものですけれども、その将来の人口を1号、2号、3号というところに振り分けていくところの作業がこちらになります。
 それから、真ん中のほうになりますけれども、さらに受給者データの実績、基礎率、制度内容などを用いまして、各制度の総報酬の額であったり、あと、給付水準調整を行わない場合の年金額といったものを推計するということになっております。給付水準調整を行わない場合の年金額を計算しまして、その後、足下の積立金であったり、運用利回りの仮定、保険料率、要は収入と支出に関する部分、こういったもの、また、各年度の被保険者数の将来推計から得られる将来のスライド調整率、毎年毎年の調整率、こういったものを用いまして、最終的に下のほう、給付水準の調整を行った上での厚生年金や国民年金の財政見通し、収支見通しが作成される。大まかにこういった財政検証の流れという形になってございます。
 引き続いて同じ別冊2の5ページ、第2-1図、厚生年金の給付費推計(給付水準調整前)のスキームの概要ということでございます。こちらは厚生年金を例に挙げまして、厚生年金の給付費の推計について、具体的に特定の年次の推計をどのようにしているかというものを示しているところでございます。基本となるデータが被保険者データ、あと、受給待期者のデータ、あと、受給者のデータ、基本的に人数、基礎数というのは、この3つで構成されております。そのそれぞれを前年度末の状況から当年度末の状況へと動かしていくという作業になるということでございます。
 具体的に言いますと、前年度末の状況から当年度中の加入であったり、脱退であったりといった状況で、被保険者数、待期者数のデータを動かしまして、これで被保険者期間とか、総報酬とかも1年分更新をしていく。次の年に新しく受給者になる方々の場合には新規裁定の年金額を推計、そうすると受給者のデータが更新できるところになりまして、それで当年度末の状況を推計するという流れになっているところでございます。
 ここから先は細かい数式等で6~33ページ目まで厚生年金の具体的な計算式の例等を示しておりまして、その先も34~46ページというのが国民年金についての同様のスキームでの推計になっていることを示したものでございますけれども、こちらのほうは細かい説明を省略させていただきます。
 その次の47ページからが被保険者数の見通しの作成方法ということでございまして、こちらはヒアリングの内容になっております被保険者数の見通しの作成方法についての御説明ということでございます。
 もう少し飛んでいただきまして52ページ、先ほど被保険者数の推計については少し御説明しましたけれども、第3-5図を見ていただければと思います。こちらは公的年金被保険者数の将来推計の方法ということで、先ほど申し上げた人口推計の人口を各制度に振り分けるといったもののやり方というところの御説明になっております。
 大きくいきますと、一番上にまさに将来推計人口がございます。真ん中、前項の点線の括弧で囲ってあるところですけれども、まず、そちらで労働力率を適用します。そうすると、将来の労働力人口であったり、就業者数であったり、雇用者数であったりというのが推計できる。そうすると、そこから厚生年金の被保険者数が推計できる。さらに厚生年金被保険者数の関連として、3号被保険者数をそこから推計できる。そうすると、2号と3号が分かりますので、総人口から厚年の被保険者数とか、3号の被保険者数を差し引きまして、最終的に差し引きで1号被保険者数を推計するという流れになっております。
 また、図の下に(1)で※で書いてありますけれども、共済に関しまして厚生年金の第1号から第4号の被保険者、従来でいくと、厚生年金と各共済組合ということになりますけれども、それについては共済組合ごとにそれぞれの考え方で、各共済組合のほうでそれぞれに被保険者数の見通しを推計いただいておりまして、私どものほうでは厚生年金全体の人数を計算しておりますので、その全体から各共済組合の被保険者数を差し引くというような形で、いわゆる旧厚年といいますか、従来の厚年の被保険者数を推計しているところでございます。
 また、図の半分より上のほうに書いてありますけれども、労働力需給推計では、女性については将来の労働力率が有配偶と無配偶の別で示されております。将来推計人口自体には有配偶・無配偶別というのはないのですけれども、それとは別に出ている日本の世帯数の将来推計というものについては、そちらを見ると女性が有配偶・無配偶で分けて推計をされているということですので、そちらのほうも使って、労働力率のほうは、有配偶・無配偶別の推計を使った上で、将来の特に女性の雇用者数等を推計しているところになっております。
 少し戻っていただきまして48ページ、第3-1図が厚生年金被保険者数及び労働投入量の推計手順についてフローチャートで示したものでございます。先ほどの雇用者数であったり、厚生年金被保険者数であったり、そういったところの御説明でございます。今、御説明したとおり、女性は有配偶・無配偶別に推計をしております。そのほかにフルタイム雇用者と短時間雇用者という区分でも分けて推計をしております。推計した厚生年金被保険者数というのはまさに財政検証の被保険者数の見通しでもありますけれども、一方で、同時に労働者の総労働時間などというのは、経済前提を検討する際の投入データとしても使っているところになってございます。
 本体資料に戻っていただければと思います。本体資料2ページ、2-2-3の制度間、厚生年金実施機関間の資金の授受についての計算過程でございます。資金の授受は3つありまして、一つは基礎年金拠出金交付金、もう一つは厚生年金拠出金交付金、最後の一つが国共済と地共済の間の財政調整ということになってございます。そのうち厚生年金拠出金交付金と国共済・地共済の間の財政調整というのは、厚生年金全体の財政影響には、その中だけの話ですので影響するものではないのですけれども、実施機関別の見通しには影響してくるということになってございます。
 ただ、いずれにしましても、基本的にはそれぞれ法令で算定式が定まっておりますので、それに従って推計をしているところでございます。ただ、実際の拠出金のやり取りの場合には、例えば基礎年金拠出金であれば概算で払いまして、2年後に清算というようなプロセスがあるわけですけれども、従来から財政検証におきましては長期の推計ですので、そういった概算、清算というところを見込まずに、基本的には確定ベースの値で全て計算をしているというところで将来見通しをつくっているということですので、実際の調整のプロセスとは若干違う部分があるところでございます。
 3ページ目、2-2-4の推計方法の開発・変更のプロセスでございます。
 2-2-4-1のプロセスに関する規定事項及びその遵守状況ということですけれども、給付費推計であったり、収支見通しの作成のプログラム、こちらは数理課のほうで作成しているところですけれども、こちらを修正する際は、課内のほうで修正方法を確認しまして、体制は後で御説明しますけれども、担当者複数人で改修作業を行うことになっております。
 2-2-4-2の前回からの変更点ですけれども、基本的にはここに書いてありますような制度改正の内容を新たに反映しているところになってございます。
 2-2-4-3の推計方法に関して変更を行わなかった箇所の妥当性、全体としての整合性についての検証・点検状況でございます。基本的には財政研修のプログラム自体は、従来から根幹の部分は引き続き使っているものでございまして、必要な修正を加えながらやってきているところですので、ずっと使い続けている部分の信頼性はそれなりにはあるのではないかと考えております。ただ、そういう意味でこれまでの推計方法に特に疑義がなければ変更は加えずにそのまま使うという形ですけれども、いずれにしても、いろいろと変更はするということで、出力結果であったり、前回の結果と差の比較であったりとかを行うことによって、整合性が失われないというところの確認はきちんと行っているところでございます。
 続きまして、2-2-5のシミュレーションの結果数値を決算、または事業統計から把握した実績と円滑に接続させるために行ったキャリブレーションの方法ということです。基本的には、基礎数・基礎率とも直近までの実績を用いておりますので、一部抽出データがありますけれども、全数に近いものがかなりを占めていることもありますし、ただ一方で、当然接続などについては直近の実績データの接続を確認した上で行っているところでございます。
 続きまして、2-3の基礎数に関する資料でございます。
 まず、2-3-1の基礎数の種類であるとか、基礎数の基となる統計と基礎数の作成方法でございますけれども、本体資料の12ページまで飛んでいただければと思います。こちらが基礎数の基となる統計と基礎数の作成方法等というところでして、12ページ目が厚生年金についての基礎数、13ページ目が国民年金の基礎数という形になってございます。それぞれの表は同じような形をしているのですけれども、一番左の列に基礎数の種類、縦で見ますと、それぞれの表が3つずつありますけれども、一番上が被保険者のデータ、真ん中が受給待期者のデータ、一番下が受給者のデータということになっておりまして、これが基礎数ということで財政検証の出発データということになっております。
 被保険者や待期者のデータについては厚生年金の場合は報酬などのデータがございます。一方で、国民年金の場合は納付期間であったり、免除期間であったり、そういったもののデータを持つという形で設定をしております。
 左から2列目が基となる統計、3列目に作成方法を書いておりまして、12ページ目の厚生年金に関しましては、【旧厚年】と書いてあるところが一元化前の厚生年金に相当する部分で、いわゆる厚生年金の第1号被保険者ですけれども、こちらについては日本年金機構の保有するデータから、被保険者と待期者については50分の1抽出、受給者については全数という形で設定をしております。【共済】と書いてある部分が各共済組合分でありますけれども、こちらについては被保険者数、待期者数、受給者ともに各共済組合の全数データを基礎に作成ということでございます。
 13ページ目の国民年金ですけれども、こちらは前回財政検証から大きく変更した点がございまして、被保険者数と待期者については、従来は100分の1抽出のデータを使用していたのですけれども、こちらを今回から5分の1抽出データに変更しております。こちらは後ほど御説明する分布推計に用いるためのデータでして、こちらは従来の収支見通しの作成のほうでも利用できるということで利用しているということになってございます。受給者については従来どおり全数データを基礎に設定しております。
 今、共済について少し御説明しましたけれども、基本的には基礎率や基礎数については基本的な考え方を共有した上で、各実施機関で整理されたデータをまず厚生労働省に集めさせていただいて、厚生労働省のほうで基礎数・基礎率をつくりまして、それを各実施機関でも確認していただいているという形でやっております。具体的な基礎数の数字については別冊1の分厚いもので一部を抜粋して具体例をお示ししているところですが、御説明は省略をさせていただきます。
 本体の4ページまで戻っていただきまして、次は2-4の基礎率に関する資料でございます。
 まず、大きな基礎率の関係でいきますと、人口とか労働力とか経済の前提という形でございます。4ページの2-4-2-1に書いてあるとおり、こちらについては専門家の御議論などもいただきながら、複数の幅を持たせた上で推計を行っているところでございます。
 人口に関しては2-4-2-2にあるとおり、国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口を用いているところでございます。従来どおり出生とか死亡につきましては中位、低位、高位の3パターンの組み合わせがあるということですけれども、今回、入国超過数についても3パターンで試算を行っているところでございます。
 経済前提に関しては、その下の2-4-2-3にもありますとおり、前回の財政検証と同様、年金部会の下に年金財政における経済前提に関する専門委員会を設置しておりまして、そこにおいて検討し、幅の広い4ケースということで設定しております。
 その他の基礎率ですけれども、この資料の14~22ページまでが基礎率に関しての御説明という形になっております。14~18ページが厚生年金の基礎率、19~22ページが国民年金の基礎率という形になってございます。これらの基礎率についてはいろいろと御説明を書かせていただいていますけれども、基本は各制度の実績統計の直近3年、具体的には令和元年度から3年度の3年程度を基礎にしまして、それに例えばほかのデータである生命表であったり、国勢調査であったり、将来推計人口であったり、先ほど申し上げた世帯数の推計だったり、そういったものを合わせまして作成をしているところでございます。
 こういった基礎率については、なるべく今後のトレンドを踏まえて設定すべきといったようなお話もあることから、前回御指摘などもいただいたところですけれども、例えば厚生年金の生存脱退率を設定する際に、単純に足下の率を設定するということではなくて、今後就業率が上昇することを踏まえて、要は就業率が上昇すれば、厚生年金から抜けていく人も減るだろうということで脱退率も経年変化する、そういったことを今回から見込んだ形となっております。
 また、先ほど基礎数のほうでも申し上げましたけれども、被保険者に係る基礎データにつきましては、基礎率を計算する際、従来であれば、厚年であれば50分の1抽出であったり、国年であれば100分の1抽出であったりといったものだったのですけれども、こちらはより網羅的なデータをいただけたので、分布推計に用いている5分の1抽出のデータを用いることとしたといった変更点もございます。
 一番右、合理性・妥当性の検証ですけれども、前回財政検証時の基礎率と例えば比較をしてみたり、あと、私ども数理課の中での検討・確認、あと、ほかの統計との比較などを随時行っているところでございます。具体的な数字につきましては、基礎数と同じように別冊1のほうで基礎率のグラフ等も併せてお示しをしております。
 続きまして、本体資料の23~24ページですけれども、こちらが積立金の初期値についての御説明資料になってございます。厚生年金、国民年金ともに、こちらは年金数理部会のほうで毎年の決算の報告の財政検証と比較するときにも同じような修正をしておりますけれども、過去の国庫負担の繰り延べであったり、あと、厚生年金につきましては存続している厚生年金基金のいわゆる代行部分である厚年基金の最低責任準備金、この代行部分に相当する積立金の額を加えて足下の額を作成しているということでございます。
 また、足下の実績の積立金につきましては、以前御指摘等もあったことも踏まえまして、そのまま積立金を使うのではなくて、収益については過去5年分を平準化した形で使用しているということになってございます。
 資料1の5ページに戻っていただきまして、財政検証の詳細結果につきましては、先ほど事務局のほうからもありましたけれども、御説明は割愛させていただきますが、基本的には厚生労働省のホームページ等で公表させていただいているところでございます。
 6ページ目、推計結果の分析及び財政検証結果の表示の適切性でございます。4-1でございますけれども、財政検証でやること、また、公表しなさいといったようなことは法令上決まっておりますので、これに沿って収支見通しやマクロ経済スライドの終了の見込み、所得代替率などをお示ししております。それから、もう一つ、オプション試算なども従来からやっております。こちらについては法令上の規定はないのですけれども、どのようなオプション試算を行うか、あと、問題意識などは年金部会などで御議論いただいておりますので、そういうことも踏まえて実施しているということでございます。
 さらに今回は今までの制度改正議論、また、この年金数理部会でも御指摘いただいたことも踏まえまして、新たに個人単位で年金額を推計する年金分布推計を行いまして、ミクロベースでの年金額の分布の将来見通しをお示ししております。
 続きまして4-2、不確実性を表現するための取組、または工夫ということですけれども、経済前提専門委員会におきましても、財政検証自体はそもそも将来を正確に予測するものではなくて、現在のデータを一定のシナリオで将来に投影するものという御議論をいただいておりまして、経済の前提も4ケースを設定しているということでございます。こういった考え方も様々な機会で御説明をさせていただいております。
 経済によらずいろいろな不確実性はあるわけですけれども、経済のほかに出生率、死亡率、また、先ほど申し上げた入国超過数などの人口的要素についても、上がった場合、下がった場合ということを示しております。後ほど少し御説明しますが、どれがどれぐらいの確からしさでぶれるかというところまでは、なかなか難しいところがあるかなと考えているところでございます。
 4-3の結果の表示方法の変更点でございます。最も大きなところが先ほど申し上げた分布推計でして、従来は年金水準というのは基本的にモデル年金で示したわけなのですけれども、新たに個人単位で年金額の分布推計を行いまして、世代ごとに年金額の分布がどのようになるのか、そして、それが制度改正によってどう変わるのかというのを示しております。こちらの分布推計については後ほど御説明をさせていただきます。
 また、経済前提については、前回は番号でケース1~6ということで示していたのですけれども、それぞれのシナリオが経済的に具体的にどういう状況なのかというのを想定いただけるように、今回例えば高成長実現ケースであったり、過去30年投影ケースであったり、そういった日本語を使って具体的に表記をすることにしたということでございます。
 また、オプション試算については従来から行っておりますけれども、前回でも行った内容に加えて新たにマクロ経済スライドの1階と2階の調整期間の一致について、また、標準報酬月額の上限見直しを行った場合についての試算を新たに行ったところでございます。
 続きまして、4-4ですけれども、財政検証結果として公表された資料・報告書としてはこちらに記載させていただいているとおりでございます。
 4-5、財政検証結果の公表の手段ですけれども、プログラムであったり、先ほど御説明した基礎数・基礎率などの基礎データというのは、昨年の12月に厚生労働省のホームページに掲載をさせていただいております。
 今後につきましては、4-6、令和6年財政検証の情報公開に関する今後の予定に記載させていただいているとおりでありまして、これまでの財政再計算、財政検証でも作成しておりますが、俗に数理レポートと私どもは申し上げておりますけれども、詳細な推計結果レポートを刊行物として公表させていただくとともに、前々回の財政検証からホームページに漫画のほうを作成して、一般の方にも分かりやすい情報発信に努めているところです。こちらのほうも最新の財政検証に基づいて更新していくことを予定しております。
 続きまして、7ページ、5-1の年金分布推計に関する基本事項でございます。ここから今回新たに作成させていただきました分布推計についての御説明ですけれども、そもそも分布推計につきましては、まさに年金数理部会における御提言、また、前回改正における附帯決議、こういったものも踏まえて今回新たに行ったものでございます。
 具体的に何をやっているかといいますと、今まだ65歳に到達していない世代につきまして、それぞれの世代が65歳で老齢年金をもらい始める際に、その年金額の平均とか分布がどのようになるのか、そういったものを推計したものになっております。
 この分布推計を導入した趣旨でございます。御存じのとおり、従来のモデル年金でいきますと、夫が厚年40年、妻が3号40年という形を想定しているわけですけれども、実際には女性の就労がどんどん進んでいって厚年加入が伸びてきている。新しい世代になるほどその傾向がどんどん強くなっておりまして、厚年期間が長くなれば、当然年金額も上がるということで、そういった影響も踏まえて将来の世代の年金額を示さなければいけない。定性的には今までもそういったことを申し上げてきたわけですけれども、そういった影響を定量的に今回こういう形で示したということでございます。
 なお、こちらの分布推計におきましても、通常のオプション試算と同様、幾つかの制度改正を仮定した推計も行っておりまして、特に適用拡大は特徴的でありまして、従来の所得代替率、モデル年金の所得代替率の与える影響のみならず、そもそも適用拡大によって2号期間が長くなる人が増えて、それにより年金額が上がるという効果も含めたトータルとしての年金の充実の効果が見て取れるというのは、この分布推計を行ったならではの結果なのではないかと考えております。
 続きまして、5-2、推計方法に関する資料でございますけれども、こちらはまた別冊2の54ページに行っていただければと思います。4番の年金額の分布推計の作成方法ということになっております。こちらの説明、最初にマクロ試算とミクロ試算の連携とありますけれども、この分布推計というのは、いわゆるマイクロシミュレーションの手法で推計をしております。要は一人一人の動きをシミュレーションするような形です。
 ただ、将来における各制度の加入者数であったり、例えば国年に何人いるとか、厚年に何人いるとか、こういったものはマクロ試算で収支見通しを作成する際に、既に様々な要素を考慮して作成をしております。これと完全に独立して確率的にマイクロシミュレーションを使って分布推計をしてしまうと、最終的な例えば加入者数であったりとかの数字のつじつまが合わなくなってしまいますので、こういったことが起こらないように、今回の分布推計ではマクロ試算における制度ごとの加入者数の見込みと整合が取れるような形での推計となっております。
 具体的に、では、どうやって整合しているのかというところは、56ページの第4-2図の年金額の分布推計の推計手順を御覧いただければと思います。まず、各世代につきまして、出発データである基礎数として個人ベースのデータ、こちらには各個々人のデータの中にそれぞれ過去どの制度にどれぐらい加入していたかというのが入ったものですけれども、それを使います。
 そこから1年ずつデータを更新していくわけなのですけれども、左側の入力データとして、先ほど申し上げたマクロの推計結果というのが一番上にあります被保険者数の将来推計結果というもの、そちらを使って具体的に毎年どの制度からどの制度に何人動いていくのかというのを決めます。これが左に書いてある制度間遷移数というものでございます。具体的にいくと、1号から2号に何人移ります、1号から3号に何人移ります、1号のままの人が何人ですみたいなものを、各年の状況でマクロの推計と合うようにつくるわけです。人数の動きとはまた別で、報酬についてもどれぐらい上がるのか下がるのかといったものもございます。
 こういったいわゆる基礎率ですけれども、それをつくりまして、個々人ベースで1人の人が次の年にどの制度に行くのかとか、報酬が上がるのか下がるのかといったもの、最終的にはマイクロシミュレーションでランダムに振り分けていきます。そうすると、1年後にその集団がどのようになっているのかというのがシミュレーションされる。これをその集団が65歳になるまで繰り返していく。65歳になりますと、それぞれの個人データの上でその人が過去にどういう加入履歴であったかというのが全て推計されているわけですから、これを使って年金額を計算する。当然年金額を計算するときにはマクロ経済スライドの期間等も踏まえるわけですけれども、そういった形で年金額を計算する。個々人の年金額が推計できますから、それを集計しまして、分布であったり、平均であったり、そういったものがつくれるというようなことになってございます。
 今、簡単に御説明しましたけれども、57ページ以降はより詳しい数式なども用いた御説明になっておりますが、説明は割愛をさせていただきます。
 資料1の本体に戻っていただきまして、5-2-3の基礎数に関する資料、また、5-2-4の基礎率に関する資料でございます。
 今見ていただいている本体資料の25ページに飛んでいただければと思います。まず、分布推計に関する基礎数でございますけれども、先ほど申し上げたとおり、個々人の加入履歴などが含まれている5分の1抽出データを利用しております。こちらは新たに年金機構さんの御協力により、そういったデータをいただきまして、それを加工するということにより、基礎数として利用しているということになっております。
 具体的にどういった項目を基礎数として用いているかというのは、その次の26ページになっておりますけれども、各制度の加入月数であったり、また、今の報酬額であったり、過去からの累計の報酬額であったり、そういった年金額の計算に必要なものが含まれているところでございます。
 27~41ページにかけて、実際の基礎数を基に集計した統計表をお示ししておりますけれども、その次の42ページ以降が基礎率の御説明になります。先ほど申し上げましたが、基礎率として一番重要になるのは、どの制度からどの制度にどれぐらい移動するのかというものですけれども、これが表の一番上にある制度間遷移行列になります。
 こちらはどのようにつくっているかといいますと、まず、個人ベースの5分の1抽出データを用いて、このデータには、前の年度はどこにいて、今の年度はどこにいるというのが入っていますので、どの年度にいる人がどれぐらいの確率でといいますか、どれぐらいの割合で次の年にどの制度に行くのかというようないわゆる制度遷移確率の行列の計算をまずします。
 これはマイクロシミュレーションで自然にできるものなのですけれども、ただ、先ほど御説明したとおり、元データから使った足下の制度遷移確率をそのまま使ってマイクロシミュレーションすると、どんどんマクロの加入者推計とずれていってしまうので、その制度遷移確率を使って、さらにマクロの加入者推計の結果も使って、具体的に各年度、特定の制度から特定の制度へ何人移るのかということで、ここで確率のほうから人数に変換をするという形になります。これで特定の年度の例えば30歳の男性は1号から1号に留まる人が何人、1号から2号に行く人は何人といったようなものがつくれる。これを実際の毎年の推計に使っていくところでございます。
 もう一つ、基礎率で大きなものとして報酬の動きがございます。43ページの上から3段目のところに総報酬区分遷移確率というのがございます。総報酬は本当は円単位なのですけれども、推計上は総報酬を幾つかの区分にグループ分けをしております。
 1年たつとどの報酬グループに行くのか、要は幾つ上がるのか、そのままなのか、下がるのかといったような確率、こちらも実際の抽出データで得られる前年度報酬、当年度報酬といったデータから作成する。ここは個人個人の動きですので、報酬にはいわゆる定昇とベアとありますけれども、ここは賃金カーブによって上がる部分、定昇の部分だと思っていただければと思います。ベアはどうするのかということなのですけれども、そもそも全体で仮定されている賃金上昇率がありますというところはそうなのですが、報酬についてもマクロ推計で総報酬というのが制度ごとに推計をされておりますので、最後は全体の総報酬がミクロとマクロで合うように、各グループにおける総報酬額をまとめて補正するということをやっておりまして、補正はそこまで大きくないのですけれども、ただ、最終的には補正をしてベアも含めた個々人の賃金の動向というのをマクロと整合性が取れるようにシミュレーションをしているところでございます。
 7ページに戻っていただきまして5-3でございます。推計の詳細結果ですけれども、こちらも財政検証の結果公表と同時に同じ資料の中で示させていただいております。
 続きまして、5-4の推計結果の表示の適切性ですけれども、分布推計ももちろん経済前提の影響を受けるわけですけれども、今回は経済前提4つのうち真ん中の2つについてお示しをすることによって、一定の幅を持った形の示し方とさせていただいております。
 また、マクロ推計と同様、推計プログラム、基礎率に関してはホームページに公表させていただいておりますけれども、基礎数に関しては、まさに個々人のデータが1個ずつ入っておりますので、もちろん住所とか名前とか、本当の基礎年金番号とかは含まれていないわけなのですけれども、それでもかなり個々人の属性を詳細に表すデータとなっている都合上、基礎数そのものは公表していないところになってございます。
 続きまして8ページ、6番の財政検証の実施体制に関する資料でございます。現在、実施体制は実人員で12名となっております。数理課長が全体統括ということで、統括担当を別にしますと、基本的には厚生年金担当、国民年金及び基礎年金担当、そして、年金分布推計担当となっておりまして、共済のほうもありますけれども、こちらは制度内容の親和性の観点から厚生年金担当の者が一体的に業務を行っているということでございます。
 もちろん財政見通しをつくるときは基礎年金の仕組みを通じて各制度がつながっておりますので、作業においては常に厚年担当と国年担当というのはやり取りがございますし、また、共済については厚年担当者が各共済組合、所管省の方々とやり取りをするといったこと形で作業を進めさせていただいております。
 財政検証のプログラムやデータは基本的に数理課の中で作成をしておりまして、6-3の研修の実施状況でございますけれども、基本的には上の表にあるような担当単位でシミュレーションの方法の勉強・研修などを行っているところでございます。
 設計、構造、操作などに関する文書につきましては6-4で記載させていただいておりますけれども、いわゆる設計書に当たるものであれば、財政検証結果レポートというのがございます。こちらでかなり詳しくスキーム、計算式をまとめておりまして、また、実際にプログラムでいきましたら、先ほど申し上げたとおり、プログラム・データを含め、ホームページで公表させていただいております。担当者単位で勉強なども兼ねてきちんと引き継ぎを行っているところでございます。
 6-5の仮定・基礎率の設定根拠と検討過程に関する文書の作成状況でございます。ここでいう基礎率はかなり広いので、一体どこまで範囲に含めるかというのはありますけれども、広く考えれば、例えば人口、経済、労働力といったものがありますが、財政検証の前提として非常に重要な人口とか労働力については、それぞれ作成機関がございますので、その作成機関ごとにかなり詳細な報告書が作成されているということでございます。
 また、経済前提につきましては専門委員会の資料、議事、報告書、全て厚生労働省のホームページで公表されておりますので、検討のプロセスも含めて追っていただけるという形でございます。
 また、全体的な制度等も含めて、こういう前提で財政検証を行いますということは、あらかじめ2024年4月の年金部会のほうで報告を行った上で作業しているということでございます。それ以外の詳細等につきましては、財政検証結果レポートという形で以前からもまとめさせていただいておりましたし、今回もこれから公表する予定であるこの財政検証結果レポートでまとめるという形で対応する予定でございます。
 次のページの6-6、制度間、または厚生年金実施機関間の連携ですけれども、先ほどの将来推計の全体構造であったり、基礎数・基礎率の説明の際にも少しずつ触れてまいりましたけれども、基本は厚生労働省、各実施機関、実施機関担当省の数理担当者と連絡会議を行いまして、どのようにやりますかといった方針、スケジュールといったものを決めて行っていくということでございます。
 特に連携が必要な部分は基礎数と基礎率をどのようにつくるかというところでございますけれども、基本的に基礎のデータ自体は厚生労働省のほうに御提供いただいて、基本的な基礎率等は厚生労働省で作成させていただき、その結果を各実施機関の担当者に協議させていただいて、そのような形で連携をしているということでございます。ただ、被保険者数全体の見通しについては共済組合独特の特徴がございますので、それぞれで作成して厚生労働省に御提供いただいているという形になってございます。
 次のページの7番、前回レビューの今後の財政検証の提言の対応状況に関する資料でございますけれども、この資料の44~48ページに表の形でまとめさせていただいております。
 44ページの表の左側が提言でありまして、右側が対応という形になっております。まず(1)と(2)についてですけれども、基礎年金の水準の低下についてというところ、今回は前回に引き続きオプション試算を行うことにより、基礎年金水準への影響をお示ししているというところ、また、様々な世帯の年金額という意味では、これも前回に引き続き世帯類型によらない賃金水準別の給付水準をお示ししている。また、個々人の影響という意味では、まさに分布推計を今回から行っておりますけれども、ただ、一部対応できていないという部分であれば、分布推計は今被保険者である方が65歳になったときの年金額という形でやっておりますので、今、既に受給者の方であったり、65歳以上はどうなるかというところについては、まだ分布推計でも対応できていないところでございます。
 45ページの(3)の経済前提についてでございます。経済前提については、基本的には経済前提専門委員会で専門的な見地から御議論いただいたところが前提でありますが、その上で、実質賃金上昇率、また、TFP上昇率、そういったところでより低くなるケースも考えるべきではないかという御指摘がございましたけれども、実質賃金、TFPのどちらにつきましても、前回より若干ではありますが幅広い設定という形にしております。
 また、運用利回りについて、長期で実績運用利回りの平均を取ると、直近のポートフォリオと整合していないのではないかというような御意見もありました。ただ一方で、それを補正してしまうと逆に利回りの前提が高くなるところがございます。そういうところを鑑みて、保守的に設定という観点から、基本的には過去の運用利回りの実績の平均をそのまま使っているということになっております。
 こういった経済前提については毎回経済前提専門委員会で御議論いただいておりますけれども、今後も当然その中で御指摘をいただいたことも踏まえて、そのときそのときの経済状況なども踏まえて考えていく必要はあろうかと思います。
 46ページの(4)の足下の積立金、短期的な時価に変動がありますので、今回から足下の積立金は平準化したものを使う。その平準化の手法は、まさに年金数理部会におきまして財政状況報告を行っている際に利用している方法を用いるということでございます。
 (5)で繰り下げ受給については基本的には財政中立であるということ、また、実績としてそもそもあまり多くないということもあって、今回も引き続き見込んでおりません。
 また、賃金上昇による厚年被保険者数の増をどう見込むか、いわゆる壁のような話ですけれども、例えば制度改正がなくても最低賃金が上がって8.8万のラインを超えて厚年適用になる人がいるのではないかというところ、あるのですけれども、その辺りは前提を置くのはかなり難しいということですので、現行制度ベースにおきましては短時間労働者の厚年適用割合というのは基本的に一定ということでやっております。ただ、そういった短時間労働者が適用される影響というのは適用拡大のオプション試算でも見ることができますので、それである程度対応できるのではないかと考えております。
 (6)の確率的将来見通しですけれども、これは数理部会における前回のピアレビューでもなかなか難しい面があるという御指摘をいただいているところでございまして、現時点では難しい部分が大きいのかなと思うところです。また、経済前提につきましても現在幾つかのシナリオ別に試算をしております。当然実績が過去にどういう動きでどういうばらつきだったとかというところはお示ししていますけれども、将来的にどのシナリオが何%ぐらいの確率で実現するかといったところまでは、なかなか仮定を置きづらいのかなといったところでございます。
 47ページの(7)のマクロスライドの終了年度をどう決めるかというところでございます。今回の制度改正の議論においては、主に経済前提の真ん中2つをベースに議論をしていたわけですけれども、具体的に最終的に何を見て止めるかといったところについては、今後の検討課題かなと考えております。
 (8)の広報についてですけれども、ホームページに年金漫画を掲載しております。そういったものであったり、SNSも含めた各種広報資料を使いまして、いろいろと説明をしていく。また、年金額などをお示しする場合には、名目をそのまま見せるのではなくて、適宜割り戻しなどをして、現在の価値でどれぐらいかというのをきちんと分かっていただけるようにするなど、いろいろと工夫をさせていただいているところでございます。
 (9)の有限均衡方式についてですけれども、100年間で有限均衡というのは、まさに100年先においては非常に不確実性が高いということで、16年改正の際にそういった考えを導入したわけですけれども、5年ごとに、期間はもちろん5年ずれますけれども、それと同時に、その間の社会経済状況等の実績も踏まえた新たな人口経済の前提を基に検証を行っていくということですので、そういったスキームについて今後も考え方をきちんと説明していく必要があるかなと考えてございます。
 (10)の前回財政検証からの変動要因分析ですけれども、今回も前回検証と比較して前提がどのように変化しているかというのを定量的にお示しした上で、それぞれが年金財政、所得代替率が代表的な結果ですけれども、それにどのような影響があるかといったことをお示ししているところです。
 48ページの(11)の実施体制についてですけれども、今回、特に分布推計を行うに当たって専任で職員を配置いたしました。厚労省内でも数理デジタル職員の総数も限られておりますし、定員などももちろんありますけれども、その中で御指摘いただいたような研究も含めてやっていけるように何とか頑張って体制整備を行っているところでございます。
 (12)のその他、特に(c)ですけれども、前回御指摘いただいた脱退力について、厚年からの生存脱退力においては先ほど御説明したとおり、就業率の上昇に伴う低下を織り込むこととしたところでございます。
 最後、10ページにお戻りいただきまして、年金数理担当者の所見でございます。基本的には前回よりも労働参加が進展したこと、積立金の運用が好調であったことなどもあって、将来の給付水準は改善という形になっております。また、今回新たに分布推計を行ったことによりまして、女性・高齢者の労働参加の進展、こちらは年金財政を改善するだけではなくて、まさにその方の将来の年金水準を確保するために重要な役割を果たしているということが示されたのではないかと考えております。また、オプション試算においても、制度改正の議論においてそれぞれの選択肢を検討するに当たって重要な資料を提示できたのではないかと考えております。
 長くなりましたが、以上でございます。
 
○翁部会長 ありがとうございました。
 次に、財務省から国家公務員共済組合に関して説明をお願いいたします。
 
○武井共済計理官 財務省主計局給与共済課の武井と申します。本日は、財政検証に関する実務を担当した国家公務員共済組合連合会の担当者も同席しておりますが、資料につきましては財務省のほうから説明をいたします。
 お手元の資料2、財務省提出資料の1ページ、共済組合から報告を求める事項として、2の財政検証における推計方法のところから説明をします。
 2-2-2、被保険者数の見通しの作成方法です。現行の財政検証における国共済の作業としては、国家公務員共済組合の被保険者数の見通しを作成しております。その見通しについては前回と同様の考え方で推計しております。具体的には直近、令和4年度末の総人口に対する国共済の被保険者数の割合を算出しまして、これが将来にわたり続くものと仮定して推計をしております。
 そこに記載してある内容を時間の都合上逐一御説明はできませんが、考え方としては先ほどの厚生労働省の考え方と同様で、ある年度末の被保険者が翌年度中に脱退して減る一方で新たに被保険者数が入ってきて増える。その結果、翌年度末の被保険者数に一致させるというような操作を繰り返すことによって、将来の性別・年齢別の被保険者数の推計をしていくということをしております。
 続きまして、2-2-3、制度間の資金の授受についての計算過程でございます。これについても先ほど厚生労働省から同様の説明がございましたが、国共済と地共済の財政調整といったものにつきましては、基本的には法令で算定式が決まっておりますので、それに則った推計をしております。
 続きまして、2-2-4、推計方法の開発・変更のプロセスです。今回変更を行っていないのですけれども、被保険者数の見通しなどを作成するに当たりましては、前回同様に国家公務員共済組合連合会における規程に従いまして所要の手続を踏み、出力結果の整合性などを確認した上で、決裁権者の承認を受けて提出がなされているものと承知をしております。
 一番下の2-2-5、キャリブレーションの話ですが、私ども国共済では特段キャリブレーションを行う作業は発生しておりません。
 続いて、2ページ、6の財政検証の実施体制に関する資料となります。これはちょうど推計作業をやっていた頃の令和5年の11月末時点の体制を記載しております。国共済は、部長以下、次長がおりまして、その下に課が2つございます。数理第一課が数理計算を担当しております。企画課では厚生労働省へのデータ提供・統計などを担当しております。
 被用者年金一元化後の財政検証では、共済の役割というのは限定されたということもありまして、組織規模は別に拡大していないのですけれども、担当者が創意工夫することで現状の実施体制の下で確実に業務を実施してくれていると評価しております。
 6-4、推計方法に関する文書の整備状況です。これについては適正に管理されているものと承知をしております。
 6-6、推計作業における連携状況でございますが、これは先ほど厚生労働省から説明がありましたけれども、推計に先立ちましては、厚生労働省と各共済組合で事前に協議を行いまして役割分担を取り決めておきました。その後の推計作業期間中は、厚生労働省が作成した基礎率が提供される都度、その内容を確認しまして、必要に応じて協議をすることで連携を図ってまいりました。また、厚生年金拠出金の将来見通しの作成におきましては、国共済・地共済間の財政調整を加味する必要があるため、その部分に関しましては国共済から厚生労働省に旧職域の拠出金の見通しとしてデータ提供をいたしました。
 続きまして、3ページ、7でございますが前回の提言への対応状況です。こちらは別添となっておりまして、2枚後ろの5ページ目に記載がございます。簡素なのですが、11の財政検証の実施体制の整備ということです。財政検証に係る作業については、先ほどの組織体制のところでも御紹介申し上げたとおり、担当部署が現在の実施体制の中で確実に実施してくれているものと評価しております。下段の12のその他でございますが、実施機関の立場から厚生労働省と連携しつつ、数値の作成・確認などを行っております。
 3ページにお戻りください。8、年金数理担当者の所見というところでございます。
 8-1、推計方法の妥当性に関する懸念事項については特段ございません。
 8-5、資金の流動性に関する所見ですが、積立金の運用に当たりましては、運用のルールブックにも当たりますような管理運用の方針といったものがあって、それに従い、将来の給付金や拠出金といった費用について必要となる金額・時期を見込んで、資金の流動性というものを確保しております。元より国家公務員は法律に基づいて安定的・計画的に定員管理が行われております。そのために被保険者数や報酬などが急激に変動することによって突発的に積立金が減少するといった事態は想定しておりません。
 財務省からの説明は以上となります。
 
○翁部会長 ありがとうございました。
 続きまして、総務省から地方公務員共済組合に関して説明をお願いいたします。
 
○工藤数理官 総務省自治行政局公務員部福利課で数理官をしております工藤と申します。よろしくお願いいたします。
 本日、地方公務員共済組合連合会も同席してございますが、資料3の総務省の提出資料につきまして、私から説明をさせていただきます。
 資料3の1ページ、項目2番、財政検証における推計方法に関する資料についてでございます。
 2-2-2、厚生年金実施機関別、または制度別の被保険者数の見通しの作成方法でございますが、前回の令和元年財政検証と同様に推計をしてございます。具体的には記載のとおり、令和4年度末の被保険者数の総人口に対する割合が将来にわたり続くものとして、各年度末の将来推計人口に乗じて被保険者数を推定してございます。こちらは先ほどの国共済の御説明と同様の手法となってございます。なお、地方公務員の定年延長、令和5年度から開始してございますが、そちらの影響につきましては推計時点でまだ実績の数値が整っていないということで、今回は考慮してございません。
 続きまして、2-2-3、制度間、厚生年金実施機関間の資金の授受についての計算過程でございます。先ほど財務省さんから御説明があったとおりでございますが、同様に法令に基づき算定をしているところでございます。
 2-2-4、推計方法の開発・変更のプロセスについてでございます。
 2-2-4-1、推計方法の開発・変更のプロセスに関する規定事項及びその遵守状況につきましては、被保険者数の見直しの作成において、従前同様エクセルのワークシートを使用して作業をしてございます。また、適宜組織内の承認を経た上で作成・提出をしてございます。
 2-2-4-2、前回からの推計方法の変更点についてでございますが、こちらは厚生労働省と協議の上、厚労省で作成いたしました脱退率について、今回地方公務員の再任用制度の直近の動向を考慮したものを用いてございます。こちらを今回盛り込むこととした趣旨としましては、年金支給開始年齢と脱退との関係が明確に認められるということで、今回、地方公務員共済においては再任用の動向を盛り込んだところでございます。
 2-2-4-3、推計方法の妥当性や整合性についての検証・点検状況につきましては、作業に当たりまして今回計算式も確認して内容に矛盾がないかどうかの確認をしてございます。また、被保険者の見直しにつきましては、年度ごとに内訳と合計に矛盾がないかということを検証しているところでございます。
 3ページ、項目6、財政検証の実施体制に関する資料についてでございます。今回の財政検証に関する作業につきましては、地方公務員共済組合連合会、年金業務部数理課を中心に、こちらの表の右側でございますが、令和5年12月末時点において、部長以下、6名で必要な作業を確実に実施したところでございます。表の右の年数の欄は、地共済における年金業務関係の経験年数を記載しているところでございます。なお、被保険者数の推計を行うに当たりましては、必要な知識の共有のための研修も適宜行っているところでございます。
 また、前回の財政検証と比較をすると、人数的には1名減っているところでございますが、こちらは前回が初めての財政検証であるということで、様々な調整作業が発生したということと比較すると、今回は事務量が減ったということ。また、前回同様に今回も同じ所属で担当された職員が3名いましたので知見の蓄積等もあって、1名減でも確実に検証を実施できているところでございます。
 6-4、推計方法の設計、構造、操作に関する文書の整備状況につきましては、作成作業に用いましたエクセルファイルについてマニュアルを作成しているところでございます。
 6-6、推計作業における制度間、または厚生年金実施機関間の連携状況につきましては、厚労省で作成いたしました基礎率の作成に当たりまして、実施機関との調整の場として連絡会議を開催しているほか、作成された基礎率の確認などにつきましても連携をして対応してございます。
 4ページ、項目7、前回レビューにおける提言の対応状況についてでございます。実施機関において制度間で連携し、対応を行っているところでございます。
 具体的な内容につきましては6ページにお進みください。項目11番の財政検証の実施体制の整備につきましては、人材確保の観点から理系学部学生向けの年金数理関係業務の紹介を含む採用活動を行ったほか、人材育成の観点からは、担当職員の資質向上に向けた専門講座の受講活動などの取組を行ってございます。
 12、その他につきましては、実施機関において厚労省から示されたチェック内容に基づきデータの点検を行うとともに他の統計資料との整合性について点検を行ってございます。
 4ページにお戻りください。項目8番、年金数理担当者の所見につきまして、項目8-1の推計方法の妥当性に関する懸念事項は特にございません。
 8-5、積立金運用における資金の流動性に関する所見につきましては、将来の給付費や拠出金等の見込みを踏まえまして資金流動性を確保して運用してございます。
 また、地方公務員の定員管理につきましても各地方公共団体において適切に行われているということでございますので、被保険者や積立金が急に減少するということは想定してございません。
 地方公務員共済組合に関する説明は以上でございます。
 
○翁部会長 ありがとうございました。
 最後に、文部科学省から私立学校教職員共済制度に関して説明をお願いいたします。
 
○三田共済調査官 文部科学省私学共済室の三田でございます。私学事業団からは数理統計室長の佐藤と参事の大山が同席しております。説明は私からさせていただきます。
 資料4の1ページ目、2-2-2の被保険者数の見通しの作成方法について御説明いたします。
 まず(1)の令和5年度末の被保険者数ですけれども、令和5年10月末実績の学校種別・男女別の対前年度同月差を令和4年度末の被保険者数に加えることにより推計しております。
 次に(2)の令和6年度末の被保険者数ですけれども、こちらは令和5年10月末実績の学校種別・男女別の対前年同月差を令和5年度末被保険者数に加えて、さらに令和6年10月の短時間労働者の適用拡大を加算することにより推計しております。
 次に(3)の令和7年度から令和11年度までの各年度末の被保険者数ですけれども、学校種別ごとに推計しておりまして、全体の多くを占めます大学、高校、幼稚園の女性については、少子化の状況ですが、被保険者数が増加している実態を踏まえて、男女別に直近の増加率を5年間にわたり逓減させた率により推計しております。それから、短大、幼稚園の男性については減少傾向ですので、男女別に直近の減少率で推計しています。ほかの学校種は増減が読みにくいということで一定としております。
 次に(4)の令和12年度以降は各学校種別の被保険者数が学齢対象人口に比例して減少していくように推計しております。
 続きまして、2-2-4の推計方法の開発・変更のプロセスですけれども、前回の財政検証から推計方法についておおむね変更点はございません。変更を行わなかった箇所の妥当性や全体としての整合性の点検については、計算式をチェックした上で、合計や性別・年齢別の値に矛盾がないかどうかを確認しております。
 次に、2-2-5のキャリブレーションの方法ですけれども、2-2-2でも御説明しましたとおり、被保険者数が増加している学校種については、男女別に直近の増加率を7年度から5年間にわたり逓減された率で推計しております。
 続きまして、2ページ目、実施体制ですけれども、財政検証に関わる組織として6-1、6-2のとおり数理統計室を設置しております。令和5年度12月末時点では、部長職に当たる室長、課長補佐職に当たる主幹、それから、係長職に当たる数理担当の副主幹と係員の4名体制で行っておりました。前回の財政検証時は3名体制でしたので、それよりも増員しております。また、ここにはないのですけれども、その後、令和6年4月以降は、課長職にも当たる参事も含めて5名の体制として増員しております。
 続きまして、6-3の研修状況ですけれども、こちらは日本アクチュアリー会ですとか日本年金数理人会の年次大会、実務研修会等に定期的に出席して、職員の資質向上に努めております。
 続いて、6-4の推計方法の設計、構造、操作などに関する文書の整備状況ですがこちらは適正に保存しております。
 次に、推計作業における制度間、または厚生年金実施機関間の連携状況ですけれども、検証作業に向けた作業について、数理担当連絡会議においてそれぞれの役割を決めて連携しながら、実施機関ごとの作業を行っております。
 続いて、3ページ目の前回の提言への対応状況ですが、対応状況の回答は5ページ目に記載しております。
 5ページ目の1つ目の財政検証の実施体制の整備については、先ほども御説明させていただきましたとおり、前回の3名体制から令和5年12月末時点では4名体制として、現在では5名の体制に拡充しておりますので、業務に支障はないと考えております。
 2つ目のその他につきましては、第3節(2)については、データは全数統計を基にしておりまして、かつ複数担当者が制度上の範囲や資料間及び過去資料との整合性を確認していることから、ほぼ確保できていると考えております。
 第5節(4)につきましては、現在の被保険者数推計における学齢対象人口を基礎とした方式は、より少子化の影響を受けやすく、事業の相手でもある生徒・学生を対象にしていることは適切であると考えておりまして、方式の変更は考えておりません。
 3ページに戻っていただきまして、8の年金数理担当者の所見ですが、推計方法に関して特段の懸念事項はございません。
 8-5については、資金の流動性に関して、積立金の運用は管理運用の方針を定めて、給付等の支払いに必要な流動性を確保できております。財源についても被保険者数の増加が続いていることですとか、令和5年度末で支出の6倍以上の積立金を保有してございますので、急激な変動等が万が一あっても当面は支出が滞ることはないと考えております。
 説明は以上となります。
 
○翁部会長 どうもありがとうございました。
 それでは、これまでの説明に関しまして御質問がございましたらお願いいたします。
 小野委員、お願いします。
 
○小野委員 御説明内容は了解いたしました。どうもありがとうございます。
 私からは3点ほど、確認をさせていただきたいのですが、全て厚生労働省になります。
 今回、分布推計を実施した際に、各実施機関の履歴を統合したデータが提供されたということです。ただいまの説明によりまして、このうち国民年金には、これをマクロ試算にも使用されたという御説明があったと理解しました。これが正しいかどうかということと、もし、そうであれば、厚生年金部分も実施機関間の調整が整えば、直接マクロ試算に利用可能ということでいいでしょうかということです。
 その場合、従来個別の実施機関のデータでは、被保険者期間の統合ができてなかったので、受給資格判定が不十分だったと思います。その意味で、老齢・退年相当と、通老・通退相当の区分が難しいということだったと思いますが、これがもしできれば改善するということでよろしいでしょうかというのが第1点です。
 2点目は、今回財政検証の個票データが、マクロ試算のほうですけれども、旧厚生年金では50分の1抽出、それから、国民年金は100分の1抽出から変更されて5分の1抽出ということになったわけです。一方、分布推計では5分の1抽出とされています。これらの抽出方法については、単なる無作為抽出ではなくて、層化抽出等の工夫をされているのだろうと思いますが、こういったことも含めて母集団を一定程度忠実に反映するような標本を作成するための抽出基準等を検討されたと思いますけれども、その中身を教えていただきたいということです。
 3点目は、外国人の被保険者についてです。人口推計も同じなのですが、私には毎年の入国超過分の外国人が定住するような想定になっているようにも見えます。ただ、実際には在留期間に制限がある人とか、家族帯同がかなわない人等が混じっていて、外国人の中身は実はダイナミックに入れ替わっているのではないのかと想像しております。脱退一時金を受けて帰国する者等を考慮するとしても、財政にはごく少額のプラスだと思うので、こうした実態を財政検証に反映させるかどうかは議論の余地はあるとは思いますが、見解をお伺いしたいです。
 以上3点です。よろしくお願いします。
 
○翁部会長 ありがとうございます。
 2~3名の方から御質問をお受けした上で御回答をお願いしたいと思いますが、ほかにいかがでしょうか。
 駒村委員、お願いします。
 
○駒村委員 今回初めて拝見する資料もありますので、いろいろと細々とした部分もありますが、まず、厚労省提出の資料の中の1ページ、これは確認なのですけれども、年金財政の均衡が図られる見通しということです。年金財政は今回も厚生年金と国民年金の2つがあるので、これはそれぞれについてどのように理解をしていいのか、均衡というのはそれぞれについてということなのか、そこを確認したい部分がありました。
 それから、本体資料の47ページ、これは御指摘がありましたけれども(7)の部分で、これも今回の年金改革のときには問題になるというか、テーマになったかもしれませんが、マクロ経済スライドの終了を誰がいつ判断するのかというのは、どこで議論をするのか。その決め方、検討事項というのはどこで検討されるのかというのが気になったということです。
 次に、分布推計というのは扱いとしては財政検証の本体なのか、附属という扱いなのかということの確認、それから、この分析方法は、今後この方法を使っていくのか、それとも改善されることも考えられるのかという点があります。
 次に、別冊のほうに関わる話なのですが、これは今、小野委員からもお話がありましたけれども、抽出方法について少し説明が必要ではないか。あるいはどういう人が現に注視されているか、例えば免除とか、見直しとか、あるいはこれから加入しても10年に満たないような人が注視されるということもあると思うのですけれども、主要変数の基本統計量みたいなものはオープンにしておく必要があるのではないか。最小、最大、平均、中位、分散あたりはオープンにしておく必要があるのではないかと思いました。
 次に、59ページ、2020年から2021年の遷移数を使ったということで、これは粘着性があるということでしょうか。この遷移率については重みづけも行ったと、こういう話は一応分かるのですけれども、この期間というのが実はコロナの期間なのでもともとあまり動いていないような特殊な期間ではないのかという気もするので、こういった期間の変遷確率を使っていることの影響みたいなものは検証しなくてもいいのだろうかというのが厚労省の部分のコメントです。
 次に、各省庁の部分についてですけれども、これは各省庁の御判断というよりは全体の考え方で、地方公務員と国家公務員は全体に対する奉仕者ということがありますので、全国民に対する総人口比率ということで一定率を取っていくということは分かります。この結果、加入者全体に占める両共済の割合というのは、今後どうなっていくのかなというのを確認したいと思いました。
 以上です。
 
○翁部会長 ありがとうございます。
 それでは、今のお二人の御質問に関して御回答をお願いいたします。
 
○鈴木数理課長 数理課長でございます。お答え申し上げます。
 まず、小野委員の御質問から回答させていただきます。
 まず、1つ目の分布推計のデータに関してでございます。国年のほうはマクロ推計での分布推計のデータを使っているというところですけれども、こちらは分布推計の手法を使っているわけではなくて、単純にデータが5分の1抽出ということで、より数が多いデータになっておりますので、そちらのほうを国年のほうは使っているところになります。
 厚年は何で使っていないのかというと、分布推計のデータは、逆にマクロ推計で使っているデータを完全に包含しているわけではなくて、特に報酬の部分などで若干マクロ推計で使用しているデータで分布推計のほうのデータに含まれていないデータがあるというようなこともあって、国年のほうはマクロ推計で使っているというような形です。ただ、そこもデータがいろいろときちんとさらに入っていくようになって完全に包含できるようになれば、当然抽出率が高いほうがいいので、そちらのほうもマクロ推計のほうに使うということは当然考えられるのではないかと思います。
 また、質問の趣旨から若干逸脱するかもしれませんが、そもそもマクロの推計とミクロの推計という分布の推計をどのように整合させていくかというか、例えば先ほどおっしゃられた老齢相当であるか、通老相当であるとかというところは、基本的には個人の履歴に関係してくることなどで、分布推計的なマイクロシミュレーションのほうが適合しているといえば適合しているのです。今回はあくまで最初の人数のところはマクロとミクロで整合させましたけれども、今後どういったところを含めてマイクロシミュレーションの手法を使って、マクロ推計のほうにも使える部分はどういうのがあるかというのは、これは今後どんどん改善していく。改善できればどんどんマージしていって、一緒に使っていくというようなことはできるのではないかと思っております。
 また、抽出方法につきまして、こちらは駒村委員からも御質問がありましたけれども、基本的には例えば今回の分布推計に使っているデータについては、性・年齢・加入制度という形では層化をしているところでございます。ただ、基本的にはそこまでの層化になっていますので、例えば先ほど駒村委員おっしゃられた納付状況はどうなのかとか、加入期間はどうなのかとか、そういったところまで細かく層化しているわけではないので、抽出の段階ではそこまで考慮されていないところでございます。
 この話題になりましたので、先に駒村委員の御質問のこの部分だけお答えしますと、主要の変数の基本的な係数は示すべきではないかというところ、個票自体は出せないというのは先ほど申し上げたとおりなのですけれども、ある程度集計をした形でチェックができるように示していくというのは、今後必要ではないかと私のほうでも考えております。出し方はいろいろと検討しなければいけないところがありますので、そこは今後の検討事項かなと考えておりますので、そこは意見として非常に前向きに受け止めさせていただければと思います。
 小野委員の質問に戻りまして外国人に関してでございます。御指摘いただいたとおり、基本的には例えば脱退一時金で日本から外国に帰られるような方がいれば、財政的にはプラスということになります。ですので、基本的には財政検証においては支給資格期間10年とかというのは判定しないで、基本的には厚生年金であれば厚年期間があったらあった分だけ年金として出るというような形で推計をしております。
 ある意味で保守的という意味で、全て年金で出るという形で試算をしておりますので、基本的にはそういった形で試算をする。実際に脱退一時金になる方がどれぐらいいるのかというところまでは、将来推計人口でも出入りのところまではなかなか難しい。要は平均的に外国人の方が何年日本におられるのかとか、そういったところまでは社人研のほうでもなかなか出していないところなので、そこら辺は限界もあるということで保守的に見ているということで御理解をいただければと思います。
 駒村委員の御質問に移りまして、財政均衡というのは国年と厚年それぞれなのかというところでございます。16年改正法のスキームでいきますと、国年の財政が均衡するように基礎年金のマクロスライドをまず決めまして、その後、基礎年金の水準を基に、厚年の財政が均衡するように2階部分のマクロスライドを決めるということですので、現行の法令の立てつけでいきましたら、まさに国年財政と厚年財政がともに均衡するということが必要条件となっていると考えております。
 続きまして(7)のマクロスライド終了時期を誰がどのように判断するかというのは、私がこのように申し上げるとあれなのですけれども、非常に難しい問題だと思っております。実際に今回、法改正の議論の中でも厚年を止めるのかどうかというような議論がございました。今まで議論の中では例えば経済前提でいけば真ん中2つであったり、主に下から2番目の30年投影みたいなものを基準に考えられていた方が多かったとは思いますけれども、それもはっきりと決まったものではございませんので、そこはまさに5年後の財政検証に向けて非常に大きな問題として検討していく必要があろうかと思います。
 あと、分布推計の立ち位置ですけれども、こちらは基本的にはオプション試算などと同じような立ち位置なのかなと考えております。例えば法令上定められている所得代替率を求めるであったり、マクロスライドの期間を求めるであったり、そういったところの中には恐らく入らないのであろう。ただ、制度改正の議論の基になるという意味でいけば、オプション試算と立ち位置としては似ているものなのかなと考えております。
 あと、分布推計の基礎率をやるために2020年から2021年ということで、コロナ期間を使うことについてどうかというところです。確かにコロナ期間はいろいろと就労の動きにも一定程度の影響があって、経済に影響があったということです。ただ、ここでは基本的には最新のものということで使わせていただいておりますけれども、そこは将来、また別の年度を取っていくに当たって、その動きみたいなものを今後チェックしていく必要はあるのかなと考えております。
 以上でございます。
 
○翁部会長 小野委員、駒村委員、よろしいですか。
 
○駒村委員 共済を。
 
○武井共済計理官 財務省です。お答え申し上げます。今の駒村委員の御質問ですが、推計は先ほど具体的に総人口に対する国共済の被保険者の割合ということで、具体的には令和4年度、0.87%という数字を算出しております。これが将来にわたり続くものと仮定して推計しております。元をコメントすると随分経緯がありまして、平成21年にまだ財政再計算をそれぞれの共済でやっていた頃は、生産年齢人口に比例する形で国家公務員の数を推計するという方法でやっていたのですけれども、調べてきたのですが、まさに15年前の11月26日の数理部会で、それだと国家公務員の数が少なくなりすぎていて、これで行政の仕事ができますかというような指摘を受けた関係で、その後、改めて平成26年の財政再計算からは今のやり方でやっているという形になっておりますという状況でございます。
 以上です。
 
○駒村委員 質問の意図は、そういう流れの中で生産年齢人口に占める公務員の割合がやたら高くなっていたらどうなのかという趣旨なので、もし、そういう数字もチェックのためというか、参考のために出ていれば教えてもらいたいと思いました。そういうことです。
 
○武井共済計理官 今、行政需要はそんなに、生産年齢人口でなくても若者、お子さんだとかお年寄りだとか、そういったところに対する行政需要もあるだろうということで、総人口に対する比率ということで設定していると改めたところです。それは平成26年の財政再計算からそのようにやっております。
 
○翁部会長 ありがとうございます。
 それでは、庄子委員、お願いします。
 
○庄子委員 御説明ありがとうございました。私からは2つお伺いしたいと思います。
 まず、厚生労働省の本体資料の資料1の1ページの明朝体の3行目のところです。財政検証の頻度が書いてありまして、少なくとも5年に一度ということで制度ができていると思いますが、「少なくとも」と書いてあるということは、5年に一度より短い期間で財政検証をやることもあり得るということだと思いました。具体的にどういうものをトリガーとして5年に一度ではなく、もっと短期の期間で財政検証をやるのか、誰がどのようにして判断して実施するのか、ということが私には分からなかったので、そこは決まっていないのかもしれないのですが、その点を教えていただきたいと思いました。
 もう一つは、資料1の別冊2の3ページに財政検証作業の全体像という記載がございます。上のほうからこういうものを加味して最終的に財政検証の作業をやっていくということでございまして、その中で、将来推計人口や労働力の見通し、いわゆる外部で作成された数字には、先ほどお話のあったトレンドが一定程度反映されて作成されていると理解したのですが、それで正しいのでしょうか。
 一方で、基礎率のところは、先ほどの御説明だと過去3年平均などの数値を用いているというお話だったと思います。そう考えると、基礎率にはトレンドという考え方は組み込まれていないのかなと思いましたが、そういう理解で正しいのか。お教えいただきたいと思いました。
 以上でございます。
 
○翁部会長 ありがとうございます。
 嵩委員、お願いします。
 
○嵩委員 御説明どうもありがとうございました。私は財政検証ピアレビューに参加するが初めてなので、全体が十分理解できていないところもあるので、的外れになるかもしれませんが、2点、御質問させていただきます。いずれも厚生労働省からの資料についてです。
 1点目は別冊の2の3ページ、5ページに具体的にどういうスキームであるかということについての概要がありまして御説明いただきました。例えば5ページですと前年度末の推計結果を当年度の推計に反映させて、それを繰り返していくということになると思うのですけれども、そうしますと、素人目にはちょっとでもずれていくと、どんどんずれていくような気がしてしまいます。このスキームの中で、例えば長期的に見たときに、推計結果に大きなずれが生じていないかというような視点で何か検討されているのかとか、あるいは過去の財政検証においても推計とその後の実績があって、そのずれは多少あるかもしれないのですけれども、それを踏まえた修正というか、そういった視点を持っていらっしゃるのかということです。
 もう一つは本体のほうの資料の46ページの(5)のところで、先ほど繰り下げ受給については財政中立の考え方に基づいているので、検討するということは見込まれていないというお話でした。確かに繰り上げとか繰り下げについての減額率とか増額率というのは財政中立的になるように設定されているのと思うのですけれども、実態としてどうなのかというところがやや気になっております。繰り下げについての指摘が前回あって、直感的な印象としては、繰り下げする方というのは割と経済的にも、あるいは健康面でも余裕のあるというか恵まれている方となりますと、やや中立的な受給ではなくなるというか、受給期間が長くなるとか、例えばそういった傾向があるのかというところで気になっておりまして、そういったことについてのデータとか、そういったものを持ちであるのか、あるいは検証されているのかというところをお聞きしたいと思ったところです。
 以上です。
 
○翁部会長 そのほかにございますか。
 枇杷委員、お願いします。
 
○枇杷委員 御説明ありがとうございました。3つあります。
 財政検証する際のガバナンスに関する御質問が幾つかありまして、例えば資料1の3ページに推計方法の開発・変更のプロセスというのがありまして、厚労省さんの資料でいうと、プログラムを修正する際は改修を行っているという話があります。この辺について、分布推計が今回加わったことが書かれていないと思うのですけれども、それは書いたほうがいいのではないかなということが一つ。
 それと関連するのですけれども、8ページの6-4で推計方法の設計、構造、操作などに関する文書の整備状況と書いてありまして、ここに例えばプログラムの開発管理的なことの説明があると思うのですけれども、そこについて、現状、例えば更新する場合のプロセスはモデルガバナンスという観点でちゃんと書いたほうがいいのではないかとか、改ざんのリスクが最近よく言われているので、そういうことについて何か言及する必要がないのかということとか、その辺の実態を含めて御検討いただければと思います。
 私が監査法人の人間ということもあるので、特にその辺、外部の目から見たときに気になりましたので、ガバナンスという観点に関しては以上になります。
 それから、同じ資料の6ページの4-1で、財政検証結果の表示項目の不足がないことの検証結果ということで、真面目に不足がないというのをちゃんと疎明しようとすると、網羅性の確認というプロセスが多分必要になってくると思うのですけれども、書かれている内容としてはそのようには読めないというのですか、網羅的に確認したプロセスが読めない感じなので、そこはそのように考えていただきたいということと、実際、網羅的になっているということの確認はどのようにされているのか。我々も皆さんがされていることについて依拠していいかどうかということを最終的にはピアレビューの中で確認しなくてはいけないと思っておりますので、その点を御教示いただければと思います。
 最後の3点目はテクニカルな話ですけれども、地共済様の御説明の中で、定年延長の取扱いについて御説明がありまして、地共済さんの資料の1ページのマル6、考慮しないという御説明になっているところの具体的な内容をお聞きしたいと思いまして、考慮しないという意味は、そもそも今いらっしゃる方はみんな60歳定年という前提になっているということなのか、それとも65歳まではいる前提にするけれども、途中で辞めるかどうかの確率を見積もれないのでそうしているということなのかということをお聞きしたいと思います。
 併せて、国共済のほうも同じ定年の枠組みが入っていると思いますので、そこが両者で取扱いが整合しているのかどうかという点をお聞きしたいと思います。
 以上です。
 
○翁部会長 ありがとうございます。
 続いて、寺井委員、お願いします。
 
○寺井委員 私のほうからはガバナンスのことについて1点と、感想を1点申し上げたいと思います。
 ガバナンスについてなのですけれども、研修のことです。どんな方がどれぐらいの経歴を持って担当してらっしゃるかというのはよく分かるのですけれども、しっかりとスキルを身につけていっていることを読み手が実感することが大事だと思っておりまして、その点、研修の内容、研修の実施方法について、より具体的な記述があったほうがいいかなと思いました。
 厚生労働省さんの資料では、担当ごとにそれぞれでシミュレーション方法等の研修を実施していると書かれていまして、これはこれでよく分かるのですけれども、できればもう少し具体的な話があってもいいのかなと思いますし、財務省さんと文科省さんの資料では具体的なことが書かれていませんので、その点をこの機会にお聞きしたいということが一つです。
 あと、感想ですけれども、資料1の2-4-2-2の人口前提の考え方と検討プロセスというところです。メインのデータといいますか、統計が出ているのですけれども、特に考え方というところについて、もう少し分かりたいという思いがあります。例えば御説明の中に、中位推計、低位推計、高位推計を使ったとか、そういう話をいただいたのですけれども、この資料の中にあってもいいかと思います。あと、御説明の中で、例えば日本の世帯数の将来推計を使われたとか、日本への移入出人口のデータも使われたとか、そういうことがお話の中にあって、なるほどと思ったのです。非常に重要な情報だと思いますので、2-4-2-2のところで御説明いただくのはどうかと思いました。
 以上です。
 
○翁部会長 ありがとうございます。
 それでは、佐藤委員、お願いします。
 
○佐藤委員 御説明ありがとうございました。私もピアレビューが初めてなので、少し理解が足らないところもあるのですけれども、2点教えてください。
 資料1の最後の別添7-1の前回ピアレビューの今後の財政検証への提言の対応状況というところで、1つ目は46ページの(6)の上段の提言です。前回は、現在の技術ではフォワードルッキングの設定は難しいということだったのですけれども、この5年間、そして、次までの5年間を考えると、技術進捗というのは著しく進展する可能性が大きいと思うのです。対応状況について今回はマル4ということで対応しないとなっているのですけれども、今後も継続的に調査は対応していただけないのでしょうかというところが質問の1点目です。
 2点目も関連したことなのですけれども、48ページの(11)の体制のところです。厚労省におけるデジタル職の職員数の制約とあるのですけれども、これも今後の5年を考えると進捗が著しいところで、制約というのは非常に残念な表現だと思ったのですけれども、この状況について教えていただけますでしょうか。業務の効率化も大事だと思うのですけれども、こういったところにきちんとリソースを配置して、特に年金数理のところではデジタル技術の活用部分というのも大きいかと思いますので、そこについて教えていただけないでしょうか。
 以上です。
 
○翁部会長 ありがとうございました。
 それでは、今までの御質問につきまして御回答をお願いいたします。
 
○鈴木数理課長 漏れがありましたら御指摘いただければと思います。
 まず、庄子委員の御質問についてです。頻度についてですけれども、少なくとも5年に一度ということでございます。今までそれよりも早くやったこともないですし、あまりそういったことが議論になったこともないということですので、法令上は御指摘のとおり、少なくとも5年に一度ということですので、それより早くやることを妨げるものではないということです。ただ、今までそういった議論になったことはないということですので、そこの部分も具体的に、もし、仮に早くやる、法律で定められたものですので、基本的にはいろいろな御判断が必要になると思うのですけれども、具体的にどういった形で、どういった主体がどのように判断するかというのは、まだ具体的には想定がされていないということだと理解しております。
 また、前提のトレンドについてでございます。人口と労働について、こちらは若干いろいろとものによって違いまして、例えば人口であれば、基本的にはトレンドというよりはそのまま伸ばすという形のプロジェクション、投影というのに近い形の推計になってございます。
 ただ、一部、出生等に関してはコーホートごとに出生の動向が変わるといったことを織り込んでいますので、そういう意味ではそこはトレンドかなと思います。ただ、労働のほうはまさにトレンドを見ておりまして、将来の女性であったり高齢者の就労が進むというような、まさにトレンドを見込むということで、まさにトレンドをどれぐらい見込むかによってパターンを変えて推計をしているということでございます。それがかなり進む場合とそこそこ進む場合と全く進まない場合というところで、そこはトレンドを見ているということでございます。
 そのほかの基礎率に関しては御指摘のとおり、基本的には足下の状況をそのまま伸ばすという形になっておりますので、トレンドの考え方はございませんが、一部、御説明の中でもさせていただいたとおり、先ほどの労働に直接リンクするものに関しては、労働のほうで見込んでいるトレンドと同様に盛り込むというようなことはしております。基本的には足下の率をそのまま伸ばすという形にしております。
 続きまして、嵩委員の御質問ですけれども、年度で毎年転がしていくというか、推計していくと、どんどんずれていくのではというところはあります。長期的にずれが生じないということについては、説明させていただいたとき、私どもの推計の一番大元にあるのが、まず、年度ごとにどの制度に何人入っているかというのを計算します。
 それの一番大元になるのが将来推計人口になっていて、将来推計人口から例えば働いている人がこれぐらいいて、扶養されている女性がこれぐらいいてということで、そうすると、厚年が何人、3号が何人、それが枠のような形になっていて、その枠の中で動くような形になっているので、毎年毎年推計をしていっても、その枠を逸脱するように発散してしまうようなことは一応ないような仕組みにはなっています。そこは人口推計と非常に強くリンクした被保険者数の推計のところで、そういったところを担保しているという形で考えております。
 ただ、当然実績とのずれというのは出てきますけれども、そこはまさに毎年の決算状況等を踏まえて、この年金数理部会で実績等のずれとの要因であったりを分析していきながら改善をしていくという形でございます。
 繰り下げについてでございます。あまりいないというところが実態でございますので、データもなくて、先ほど御指摘があったように、例えば逆選択的な、要は健康的で収入がある人ほど繰り下げするのではないかというところ、その傾向もよく分からないというところであります。そこは支給開始年齢が上がり切って、データが繰り上げも繰り下げもそろってくれば、そういった傾向があるのかどうかというのも見えてくるのではないかと思います。
 枇杷委員の御質問でガバナンスについてでございます。記載については御指摘いただきましたので、そちらも踏まえて事務局等とも御相談をさせていただければと思います。寺井委員の御質問と重なるところもありますけれども、12人体制ということでやっております。ガバナンスという意味で、例えば金融機関の決算上のガバナンスというような、要はそこまで基準が決まっているわけでもなく、きっちりやっているわけではなくて、どちらかというと、言い方が適切かどうか分かりませんけれども、家内制手工業的な形で、担当者間でいろいろとやっているところです。
 ただ、実際のプログラムが正しいものになっているか、改ざんされていないか、そういった意味では全て公表しているというところで、だから、外部の人にチェックしてもらえるだろうというのは若干甘い考えなのかもしれませんけれども、せめて使ったものをそのまま公表することによって、ほかの方がそのプログラムを同じデータでやっても同じ結果が出るというところをもって、そういったところで正しさを一定程度確保しているというところで、そういう趣旨もあってプログラムを公表しているという形になってございます。
 また、結果の資料に不足がない、検証結果に不足がない、網羅的に確認していますかというところ、これは毎回財政検証を行うに当たっては、結果を年金部会に報告させていただいております。そこにおいて内容を御説明させていただいておりますので、もし、仮に不足があれば、年金部会のほうで御指摘をいただけるということですので、そこで一定程度法令に基づいて財政検証を行った結果ということでチェックをしていただいているというプロセスもあるのかなと考えております。
 寺井委員の御指摘で、ガバナンスについては、研修についておっしゃられていた部分があります。先ほどの回答と少し重なるのですけれども、係内の担当者内でマンツーマンでいろいろと教えているというような形式が基本的な形で、組織的に研修の仕組みはありませんけれども、現状ではそういうような形でやっているところでございます。
 人口についての考え方を資料にも書いたほうがよいのではないか、外国人等々についてもそうですけれども、そちらについては御意見を受け止めさせていただければと思います。
 佐藤委員の御質問で、確率的な推計についてということで、技術革新があればいろいろとできるようになるのではないかというところでございます。当然、技術革新によってできないものもできるようになる、将来的に全くやらないというわけでは多分ないのだと思います。今回、例えば分布推計も新しくやるようになりました。
 そういったところで、ただ、確率的というと、新たにどういうモデルを使うかというところをいろいろ研究していかなくてはいけない。当然、日々不断な研究は進めていかなければいけないと思っておりますので、そこら辺も直ちに次回できるかどうかというのはなかなか難しいですけれども、そこは非常に重要な御指摘だと思いますので、引き続き研究していければと思っております。
 また、人材について、これは財政検証の話から若干出るかもしれませんけれども、厚生労働省の中でも、数理であったり、デジタルであったりとかの人材というのは、年金に限らずいろいろなところで求められているところでございまして、そういった意味で、例えば採用も増やしたりとか、中途採用の方を募集したりとか、そういったところで全体の人材を増やしていくというような努力も今しているところでございます。
 以上でございます。
 
○翁部会長 ありがとうございます。
 それでは、共済のほうから御回答をお願いできますでしょうか。
 
○工藤数理官 地共済についてでございます。枇杷委員から、今回の財政検証で定年延長の影響を考慮していないという意味が60歳の定年という整理なのか、あるいは65という前提なのかということでしたが、今回は全て60歳定年で推計を行っているところでございます。ちなみに定年延長は完成まで2年に1歳ずつ上げていくということで、制度の完成が令和13年4月となってございます。したがって、今後どういう形、定年前に普通退職という扱いになってしまいますが辞められて、そこから60歳、年金受給までの間を様々な形で別の働き方という選択も考慮する必要もございますので、まずはしっかりと実態がどうなっていくのかということを踏まえる必要があると考えております。
 以上です。
 
○武井共済計理官 国共済も同様の取扱いをしております。そもそも令和6年財政検証といいますけれども、令和6年度の実績そのものが別に使えるわけではなく、令和4年度ぐらいまでのデータを基に推計でやっていくものだと考えております。その当時、令和4年度ではまだ定年が60歳の状況ですので、それより先がどうなるかというところは当然見込んでおりません。1月の決算ヒアリングの際にもそれは御質問があったのですが、定年延長をどのように見込んでいるのかと、まだその実績が何も出ていないので何とも申し上げられないということを1月の決算ヒアリングの場でも申し上げたのですけれども、これはもうちょっと前のことですので、当然そこは見越してはいないという状況でございます。
 
○翁部会長 ありがとうございます。
 私学共済のほうはよろしいですか。何か御回答はございますでしょうか。
 
○三田共済調査官 研修内容についてでしょうか。
 
○翁部会長 特に追加的にございませんようでしたら結構でございます。ありがとうございます。
 それでは、野呂委員はいかがですか。
 よろしいですか。分かりました。
 時間が延長してしまったので、本日のところは、これでヒアリングを終わらせていただきたいと思います。
 説明者の皆様、大変お忙しい中をありがとうございました。
 また、本日の説明者の方々へのお願いですが、今後、審議の過程でいろいろ御質問させていただきたいことが生じましたら事務局を通じまして照会いたしますので、ぜひ御協力をいただきますようお願いいたします。
 今後の取扱いですが、これまでヒアリングをした令和6年財政検証に基づいて年金数理部会として分析や検証を行い、その結果をまとめた報告書を作成していきたいと思います。分析や報告書の起草等の作業については作業班で行うことといたします。
 最後に、事務局から連絡があればお願いいたします。
 
○楠田首席年金数理官 次回の部会の開催日時等につきましては、改めて御連絡させていただきます。
 
○翁部会長 それでは、第105回年金数理部会はこれにて終了いたします。
 どうもありがとうございました。