技能実習評価試験の整備に関する専門家会議(第89回)議事要旨

人材開発統括官付海外人材育成担当参事官室

日時:令和7年5月19日(木) 10:00~11:30
場所:Web会議
出席者:市田委員、漆原委員、大迫委員、後藤委員、佐々木委員、當間委員、堀委員、花山委員
厚生労働省人材開発統括官付海外人材育成担当参事官室、出入国在留管理庁在留管理支援部在留管理課、外務省領事局外国人課、外国人技能実習機構
 
管路更生職種(管路更生工事作業)関係:一般社団法人日本管路更生工法品質確保協会、国土交通省下水道事業課、国土交通省国際市場課
 
陶磁器工業製品製造職種(タイル製造作業)関係:一般社団法人日本陶業連盟、全国タイル工業組合、経済産業省 生活製品課
 
議題
(1)管路更生職種(管路更生工事作業)の職種追加について(職種の概要等の確認)
(2)陶磁器工業製品製造職種におけるタイル製造作業追加について(作業の概要等の確認)
 
【概要】
○管路更生職種(管路更生工事作業)の職種追加について(職種の概要等の確認)
○管路更生職種(管路更生工事作業)を移行対象職種として技能実習評価試験及び審査基準を整備することに関して、一般社団法人日本管路更生工法品質確保協会から以下の説明がなされた。
・ベトナム国のホーチミン市での下水道更新需要について、喫緊で更新・改築の必要性の高い管きょ延長は約51kmであるが、下水道管の標準耐用年数が50年であるため、ホーチミン市における潜在的な下水道更新需要は全2000kmとなっている。
・JICAの無償資金による国際協力について、開削工法以外の下水道更新の選択肢として管路更生工法を外国に提示することにより最適工法を選定いただくことを目的としており、上記の老朽管全て無償資金協力事業で更生していくことは想定されていない。また、ODA等も含めて、現地で日系企業が、管路更生工法による改築・更新を一部行っているものの、今後はODAのみでは上記の老朽管の更新は不可能である。現地企業では、管路更生工法に必要な技術者・技能者が求められており、技術者や技能者の育成が不可欠であると考えている。
・アスベストや硫化水素など危険有害業務に対する安全衛生教育について、石綿障害予防規則を始めとする労働安全衛生法関係法令に基づき、安全衛生教育を行うとともに施工時の安全衛生対策の確認を行う、本内容については試験内容にも含める予定である。また、管路更生工事中の崩落事故のリスクについては、施工前に事前調査を行っており、安全と判断した場合にのみ工事を行っている。
・3年間の技能実習により、帰国した技能実習生が母国で管路更生工事に従事できるよう、管路更生工事の各工法に共通した作業を実習内容とするのではなく、実習内容を「製管工法ら旋巻タイプ」の工法に限定し、当該工法特有の作業の技能、知識も含めて技能実習生に修得させることとした。
 
主として以下のような質疑が行われた。
・硫化水素に関する労働災害防止対策について、管に入る前だけでなく管内作業中においても硫化水素の濃度の計測をするような機材を技能実習生にも装着させ、計測させるのか、また、例えばマスクなどの保護具をきちんと持たせて管内に入って対応をすることも実習内容に含まれるのか、と委員から質問があった。
それに対して、現在日本人技能者が行っているように、携帯ガス検知器を用いた測定を行ない、防護マスクを装着するといった実習内容を想定しており、試験にも出題する予定と回答があった。
 
・下水道管等の崩落リスクに対応した事前調査についても、技能実習生にも修得をさせるという理解で良いかという質問があった。
それに対して、崩落リスクに対応した事前調査は、管路更生工事とは異なる作業であるため、実習内容には含めないと回答があった。
 
・管路更生工事のうち「製管工法ら旋巻タイプ」に特化した技能実習内容とすると説明があったが、前回まで説明のあった管路更生工事の各工法で共通した作業で修得できる技能に加えて、「製管工法ら旋巻タイプ」特有の技能も修得ができるという理解で良いか、という質問があった。
それに対して、管路更生工事全般的に必要な安全衛生対策や技能というのは全部修得させた上で、「製管工法ら旋巻タイプ」特有の技能も追加で修得をさせることにしたと回答があった。
それに対して、その追加によって、必須業務や安全衛生対策についてどのように変化したか、全体の実習内容をどのように調整したか次回説明するよう委員から要望があった。
 
・ベトナム・ホーチミン市についての説明が中心であったが、同様に送出国の実習ニーズがあるモンゴル国においても同様のことが言えるのか。と委員から質問があった。
それに対して、モンゴルにおいても同様の状況であると回答があった。
 
○検討の結果、管路更生職種(管路更生工事作業)の追加については、厚生労働省、出入国在留管理庁において、省令の改正案に係るパブリックコメントを実施し、審査基準案や技能実習評価試験案等について引き続き議論が行われることとなった。
 
 
○陶磁器工業製品製造職種におけるタイル製造作業追加について(作業の概要等の確認)
○陶磁器工業製品製造職種(タイル製造作業)を移行対象職種として技能実習評価試験及び審査基準を整備することに関して、全国タイル工業組合から主に以下の説明がなされた。
 
・日本のタイル製造の現場とベトナムで実施されている化学物質のリスクアセスメントの方法については、現在ベトナムの化学品法の改正が予定されているが、その改正内容については未定と聞いている。ベトナムの一部工場に確認したところ、厚生労働省作成の特定のツールを用いたリスクアセスメントは現在行っていなかったものの、SDS等の情報も入手できるため、厚生労働省作成のツールも活用可能ではないかと考えている。日本のあるタイル製造現場においては、厚生労働省が定めるステップに沿ってリスクアセスメントを行っている。
 
・技能実習以外の国際技能移転を行う方法に関して、前回委員から紹介されたJICAの草の根技術協力支援型については支援額に上限があり、海外のタイル工場の生産設備が古いため日本の設備持っていかざるを得ない事情を踏まえると設定された上限額では難しい。また、JICAの草の根パートナー型については、申し込み条件が業界団体の実情と合致しないことから難しい。
 
主として以下のような質疑が行われた。
・化学物質のリスクアセスメントについては、労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令にもとづき、最新の内容に対応した実習内容や試験を行っていただきたい、と委員から意見があった。また、技能実習生の受入れ先の企業はリスクアセスメントについて、クリエイトシンプルを使っているという理解で良いのか。その上で、クリエイトシンプルを使って、技能実習生に対しどのように化学物質のリスクアセスメントを教えるのかが重要であり、SDSの更新状況やリスクアセスメント対象物質の追加等の情報や知識を現場の労働者に伝えていくことが重要であると意見があった。また、ベトナムでの化学品法改正の結果、リスクアセスメントの方法について、開発途上国の中小企業を念頭としてILOなどが開発したコントロールバンディングを活用することになったとしても、その手法に関する知識を労働者に伝えるという理解でいいのかと質問があった。
それに対して、それぞれ、最新の情報に対応した実習内容にしていく、リスクアセスメント手法について統一した内容で実習を行なうよう準備していく、ベトナムのリスクアセスメント手法について情報収集を行い、技能実習で身に着けたリスクアセスメント手法の内容が送出国で生かされるように進めていきたいと回答があった。
それに対して、化学物質対策は常にアップデートされるため、それに合わせて試験内容を変えるということが重要だと委員から意見があった。
 
○検討の結果、陶磁器工業製品製造職種(タイル製造作業)の追加については、厚生労働省、出入国在留管理庁において、省令の改正案に係るパブリックコメントを実施し、審査基準案や技能実習評価試験案等について引き続き議論が行われることとなった。
 
(以上)