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第2回「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」 議事録
日時
令和7年6月30日(月)16:00~17:30
場所
東京都千代田区霞が関1丁目2番2号 中央合同庁舎第5号館
厚生労働省 17階 専用第21会議室
厚生労働省 17階 専用第21会議室
議題
1.患者団体からのヒアリング
議事
- 議事内容
○佐藤保険課長 それでは、定刻より若干早うございますけれども、時間になりましたので、ただいまから、第2回の「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」を開催いたします。
委員の皆様方におかれましては、御多忙の折、御参加をいただきましてありがとうございます。
本日の会議は、傍聴希望者向けにYouTubeにおいてライブ配信を行っております。アーカイブ配信はいたしません。あらかじめ御了承くださいますよう、よろしくお願い申し上げます。
まず、本日の委員の出欠状況について申し上げます。
本日は、井上委員より御欠席との連絡をいただいております。
また、菊池委員でございますけれども、所用により途中から御出席なさる御予定と御連絡を頂戴しております。
また、島委員からはオンラインで御出席をなさると御連絡をいただいております。
また、本日は、患者の皆様をはじめ、当事者を支援されている方々から高額療養費制度の在り方について御意見をお伺いするため、慢性骨髄性白血病患者・家族の会いずみの会副代表の河田様、認定NPO法人日本アレルギー友の会理事長の武川様、NPO法人血液情報広場・つばさ理事長の橋本様、認定NPO法人ささえあい医療人権センターCOML理事長の山口様、この4名の方々にお越しいただいております。
また、本日も健康・生活衛生局がん・疾病対策課及び難病対策課もオンラインにて参加をしておりますことを併せて御報告申し上げたいと存じます。
会議冒頭のカメラの頭撮りはここまでとさせていただきたいと存じます。恐縮でございますけれども、カメラの皆様は御退室のほどお願い申し上げます。
(カメラ退室)
○佐藤保険課長 それでは、以降の議事運営につきましては、田辺委員長にお願いしたいと存じます。
○田辺部会長 それでは、早速でございますけれども、議事のほうに入ってまいりたいと存じます。
本日は「患者団体等からのヒアリング」を議事といたします。
患者団体等の皆様方からそれぞれ10分程度の時間で順に御発言いただいた後、質疑応答、意見交換を行いたいと思います。
それでは、まず資料1につきまして、慢性骨髄性白血病患者・家族の会いずみの会の河田様から御発言をお願いいたします。
では、よろしくお願いいたします。
○河田参考人 よろしくお願いいたします。
このような場に慢性骨髄性白血病の患者を一つの事例としてお取り上げいただき、誠にありがとうございます。
本日、慢性骨髄性白血病患者・家族の会いずみの会の副代表として報告をさせていただきます。
私も22歳で罹患いたしまして、10年にわたる治療、高額療養費を使った治療というのを行っておりまして、現在もがん自体はモニタリングを行っているというような形です。
では、資料の1ページ目を御覧ください。
当会は、現在、小児やその親御さんも含めまして、全国に936人の会員がおりまして、医療セミナーや交流会の開催のほか、患者調査等の実施、こうしたことの学会での報告等も行っております。
これから御説明するように、慢性骨髄性白血病は、以降はCMLと略させていただきますが、言うならば高額療養費制度とともに生きている病です。それゆえ、今回の高額療養費制度の引上げに際しては、全がん連様やJPA様とともに患者の声というのをこれまで届けてまいりました。
いずみの会としては、発足以来、こうした高額療養費制度について取り組んできたわけですが、そうした点については橋本参考人からも御説明いただけるかと思います。
2ページ目に移らせていただきます。
本日の私からの報告というのは、高額療養費制度を長期にわたり利用する患者が現状どうなっているのかについて皆さんに知っていただくことを主目的としております。
私たちの意見というのは、この1月に出しました以下の見解に収れんするものです。私たちCML患者にとって、医療費の自己負担の問題というのは、2001年に画期的な分子標的薬が承認されて以降、常に向き合ってきた課題です。CMLは、現在では適切な治療を受け、治療を長期かつ継続的に行うことで、多くの患者が健康な人と同程度の余命を送れるようになっています。しかし、薬剤費は非常に高額であり、治療を続けないと命に関わることから、高額療養費制度が生きることに直結しております。
現行のこの制度においても、所得や家族構成によっては日常生活が大きく制限されており、生活が実際に限界にあるという患者・家族もいます。自己負担上限額の負担増により、標準治療の範囲で受けることのできる最適な治療を諦めざるを得ない患者が増えていくことを強く懸念しております。当初の多数回該当の引上げ案においては、年齢や所得区分にかかわらず、医療費を払えるか払えないかで治療を受けられる人とそうでない人に分かれてしまいかねないと考えております。
次の資料となります。
以上の主張について、CMLの治療の現状から確認します。
CMLは、現在、罹患者数は年間10万人当たり2名未満の希少ながんで、かつては不治の病と言われていました。しかし、分子標的薬の登場以降、生存率が劇的に改善し、現在は治療を継続できれば健康な人と同じ余命を送ることができます。しかし、治療は生涯にわたる服薬が前提となっています。
右下の図で御覧いただけますように、直近の患者調査においては、いずれの年代においても8年以上、人によっては長い人では承認時、2001年から既に25年近く治療を続けている、高額療養費を支払い続けている人がおります。また、40歳未満のところでも8年以上とあるように、例えば10代、20代でなった人がこれまでずっと20年近く治療を続けたり、また、これからも残りの人生で支払いを続けることを前提に生活をしております。
次の資料を御覧ください。
この分子標的薬の治療は非常に高額です。現在、日本では6種類の薬が標準治療でファーストラインから使うことができますが、最新の薬では40mgで1万618円、標準治療で一日80mgの場合、毎日薬価だけで2万円以上かかっております。
なお、初期の薬に関してはジェネリックが承認されており、高額療養費に達しない治療も可能ですが、これは誰しもが選べるものではありません。薬ごとの効果や副作用は個人差が大きく、副作用や長期毒性、薬剤耐性、より高い治療効果やQOLの改善、つまりは副作用等で働けない、家庭生活が営めないような状況であれば、薬を変える必要はあるわけです。薬剤を変更しながら治療を続ける必要もあります。患者調査でも半数以上が薬を変えており、重要なことは、我慢すればどの薬でも生きられるとか生活できるということではないということです。選択肢が存在すること自体が日本における高い治療率を維持してきた要因です。今後議論されるであろう費用対効果分析についても、単に生存率を基準として行える問題とは考えることができないことを示すものだと思います。
次のスライドをお願いいたします。
高額な薬価に対して、私たちは高額療養費制度を利用してきました。また、多数回該当を活用した場合も、それが生涯にわたり続くことを考慮し、3か月処方を受けられるところまで症状をまず安定させ、それ以降は3か月ごと、年4回の多数回該当の自己上限額負担額を支払うことで年額というのを抑えることを治療目標にしております。
これが引き上げられる問題については、前回、天野委員から説明のあったとおりです。
加えまして、私たちのほうで申し上げたいのは次のスライドです。
現行の問題点です。しばしば誤解を受けますが、高額療養費制度の自己負担額がない月にも、副作用に対するケアを含め、医療費の支払いは生じております。また、多数回該当の自己負担額がある月にも2万1000円以下の窓口支払額が累積して支払いが生じるため、理想的な治療スケジュールでも年間の医療費というのは自己負担額の4倍よりも大きいです。また、治療が安定しない場合、年12回支払っている患者さんもいらっしゃいます。
さらに、保険者や加入の状態が変わった場合に、多数回該当が継続されないという問題もあり、こうした現状があるということをまず議論の前提として共有していただければと思います。
次のスライドになります。
また、前回、天野委員から指摘のあった自己負担額上限額の引上げ当初案は、多数回該当にぎりぎり届かない事例を増加させるリスクというのがあります。世帯所得の上昇や、特に薬価改定や一部の我々の薬剤で行われている服薬量の減量ですね。こうしたものによってぎりぎり届かない事例というのが世帯によっては生じてしまうことを懸念しております。
次のスライドをお願いいたします。
次に、再度議論の前提を見て、現状の課題をお伝えします。
こちらのグラフは2023年に実施した患者調査の結果です。この調査では、治療を続けていく上で困っていることは医療費などの金銭的な負担が56%で最も多く、特に40歳以下の若い世代では5割を超えており、75歳以上とは様相が異なっております。
また、現在、高額療養費制度を補完する形で、一部民間医療保険の活用といったお話が出ておりますが、生涯にわたりがん治療が続くため、我々は新規の民間保険の加入が困難です。
長期療養においては二次がんやほかの疾患、けが等のリスクは変わらずあります。このため、特に若年層に多い未加入状態でのCML罹患というのは、経済的なハイリスクの状態を生涯続けることとなってしまいます。
次のスライドです。
現行の高額療養費制度における2つの重大な問題点について指摘させていただきます。
一つは、経済的問題による治療中断が生じていることです。経済的な理由で服薬中止を考えたことがある方は、調査において15%、実際に休薬した人の中に医師に相談していない人が9%おります。CML治療に携わる医療者からは、急に診察に来なくなる患者がいるとか、20歳まで治験をやっていましたが、終了後、服薬が必要な状態で通院をしなくなり、3年後に来られたときには急性転化をしており、3日後に亡くなられたというようなお話も聞いております。これらは経済的な理由によりお亡くなりになられたということが強く疑われる事例です。
私たちの疾患においては、治療が継続できなければ命が終わってしまいます。自己負担額引上げによる治療中断、静かな自殺と呼ばれていますが、これが増えることを非常に強く懸念しています。
もう一点重大な問題として、医療費負担額に地域差があることを指摘します。ここ5年ほど、当会には安定した患者であっても3か月処方が受けられていない、医師が処方してくれないという相談が多く寄せられています。私たちが把握する範囲で、処方日数の上限に都道府県単位の地域差あるいは医療機関ごとの差があるようです。2か月というところが多く、中には1か月の処方日数を上限とする地域もあり、これでは同じ治療を受けているにもかかわらず、患者の間で年間負担額が2倍から3倍開きがあるという現状です。もちろん、では全員1か月にすればよいということにはならないというのはあえて言うまでもないかもしれません。
最後のスライドです。
改めて、今回の引上げに対して当会の意見を述べさせていただきます。ここに掲載しているのは、私たちの元に寄せられた20代女性からの声です。高額療養費の引上げ以前に、今の区分ですら支払いをすることがやっとで、日中正社員として働きながらも、夜中1時から4時までバイトに行くような生活をしています。治療費のために寝る間も惜しんで働いており、がん患者がここまで頑張らなければいけない現実を本当に変えたいなと切に願っておりますと今回の活動の中で声が届いております。全がん連のアンケートには、ほかにも多くのCML患者の声、また、高額療養費制度を長期にわたり利用する患者や家族の声があります。こうした声をぜひ聞いてください。
また、決定プロセスにおいての不信感というのも大きくなっております。高額療養費(多数回該当)の長期間、あるいは一生の負担を前提にライフプランを行わざるを得ない私たちにとって、今回のように十分な議論が行われずに引上げが行われるというのは、この先の人生でいつ治療を受けられなくなるかということを考えざるを得ない、生活が破綻してしまうというリスクにおびえるということになります。
最後、3点述べます。
高額療養費制度の見直しというのは、長期療養者のLife、つまり、命であるとか、生活であるとか、人生ということに直結する課題であるということは御認識いただきたいと思います。
次に、セーフティーネットとしての高額療養費制度の役割というのが言われておりますが、この重要性を我々は非常に理解しており、その維持を強く望んでおります。しかし、現行制度でも長期療養者にとって必ずしもこの役割が果たされているのかというのは議論が必要でしょう。
3つ目に、所得と年齢のみを考慮した自己負担能力に応じたきめ細かい制度設計というのは、現状においても長期間の負担というのが十分に考えられていない制度ではないでしょうか。
私からは以上となります。
○田辺委員長 御報告ありがとうございました。
続きまして、資料2につきまして、認定NPO法人日本アレルギー友の会理事長の武川様のから御発言をお願いいたします。
では、よろしくお願いいたします。
○武川参考人 武川でございます。
本日はお招きいただきまして、ありがとうございます。
皆さま。今までがんとか難病といった御病気の方がいろいろと御発言をされて、非常に私たちに力強さを与えていただいています。私からはアレルギー疾患について述べます。誰でもアレルギーという言葉を使うように、アレルギー疾患は普通の病気と思われがちなのです。アレルギー疾患が一体どのようなものであるかということについて皆様に御理解をいただいて、いわゆる中等症、重症においてどのような形で患者が今生活しているのか、どう感じているのか、何を望んでいるのかというようなことについてお話しできればなと思っております。
通例、アレルギー疾患というのは、子どもが罹患するものという認識がありますが、後ほどまた申し上げますけれども、生まれたときから死ぬまでの間、ずっと続くということで、この間、治療というものが欠かせないわけです。しかし、よくなったり悪くなったりするので、人から見たら、ぜんそくの場合でしたら、さぼっているのではないかと言われたり、アトピーであれば、汚いとか、気持ち悪いとか非常に蔑視的に言われたりする。それは学童・学生時代から始まりいろいろなことがあります。
そういった中で、私どもといたしましては、1964年、第1回東京オリンピックがございました。御存じのように高度成長時代、そのときの負の面としては環境破壊があり、大気中の汚染というものが特にひどかったと私自身も覚えております。新宿駅から見た太陽もまさに黄色く見えたようなことがございまして、そんなさなかに1969年、同愛記念病院に私どもの会が誕生したというような経緯でございます。その際には、当時、東大病院にいた三沢先生が同愛記念病院院長として来られ初めてアレルギー内科を開設したということでございます。全国から苦しむ患者が集まって、病院内非常にごった返しておりました。
では、改めて申し上げます。私たちのミッションは「アレルギーがあっても笑顔。そして、自分らしい生き方を可能とし、輝かしい未来を実現させる」ということで、ややもすると、アレルギー患者というのはやはり塞ぎがちに、メンタル面も非常に弱いということで、なかなか自分の意見が言えない。自分のことを思うように話せないということが多いものですから、そういった中から、同病相哀れむというようなところも含めまして、皆で力を合わせて生きていこうということが出発点であります。
1969年2月に同愛記念病院のアレルギー病棟に入院するぜんそく患者が発足し、今年で創立56周年を迎えております。
友の会の運営につきましては、ぜんそくやアトピー性皮膚炎、食物アレルギーなどのアレルギー疾患の患者や家族のボランティアで運営しておりまして、会員数は全国で1,300名を数えております。
友の会の役割といたしましては、患者の現状や様々な治療に関する情報を発信していくことで、患者と医療と社会をしっかりつないでいくということでございます。
日本アレルギー友の会、私たちの活動というのは、そこに書いてございますが、こういった活動を、講演会に至りましても年2回の講演会を今年春で98回、来年の春で100回となってまいります。そんなような形の活動をしておりまして、細かいことはこちらに出ているとおりでございます。
次に進めさせていただきます。4ページになります。
アレルギー疾患患者の現状といたしまして、先ほど来、お話が出ておりますように、経済格差と健康格差という問題について私たちは非常に関心を持っております。現実、そういった経済格差と健康格差というものは連動しておるということがWHOのオタワ憲章の中でも生活習慣というものの中でも言われております。アレルギー疾患対策基本法というものが2014年に超党派の国会で成立して、2015年に施行され、2016年にアレルギー疾患対策推進協議会で検討されまして、2017年に47都道府県等へ厚生労働大臣より発出されています。アレルギー疾患というのはいわゆるアトピー性皮膚炎、ぜんそく、アレルギー性鼻炎、花粉症、アレルギー性結膜炎、食物アレルギーというもので、こういった疾患でやはりいろいろな症状が出てくるということでございますが、大変な経済的な格差によってその治療というものはなかなかうまく進められないという現実があります。
そういった中で、そういった病を持ちながら、自分たちの生計というものをどのように立てていくのかという問題があります。それがいわゆるアレルギー疾患、そういったものの患者の疾病負荷という問題につながってまいります。この問題につきましては世界的にも注目されておりまして、昨年、シンガポールにおいても、私も出てまいりましたけれども、こういった中でヘルスリテラシーと患者と医師の共同意思決定というものが非常に重要であると言われておりますし、こういったことを考えたときに、医療基本法のようなものが必要だということです。患者の声を公共政策の柱に再編成するという考え方を持って総合的に今日みたいな会議を行わないと、要するに、ある部分だけをつまんで、それだけを議論してもなかなか前に進まないと考えておりますし、そういったことを望んでいるということでございます。
次に移ります。
5ページでございますが、アレルギー疾患の現状といたしまして、我が国の全人口の約3人に1人が何らかのアレルギー疾患を平成17年当時は持っておりましたが、現在は国民の2人に1人が何らかのアレルギー疾患というものを持っていて、国民病であると言われております。それで総合的な疾患対策の推進が大事だということでございます。
次に進みます。
次のページでございますが、アレルギーマーチということで、アレルギー疾患がほかの疾患と違うところは、アレルギー疾患というものには遺伝的素因や環境因子が関与しております。あとは外部的な状況にもございますけれども、そこに環境因子が加わりながら、まずは小さいときからいわゆるアトピー性皮膚炎というものになって、食物アレルギーになっていく。また、気管支ぜんそく、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎というように次から次へと病気が出てくるということで、アレルギーマーチというようなことを言っておりますけれども、こういったことがずっと続き、それぞれの病気が重なって起こってくるというようなことがあります。成人型アレルギーにも移行していきます。小児の場合ですと一括して相談もできるのですけれども、大人になりますと診療料・臓器別の診断の中で患者としてはどこに行っていいか分からないというような非常に悩ましい問題が出てくるという問題がありまして、今、トータルアラジストというような医師がアレルギー学会でも求められて、そういった形でも進めていただいております。
特に今回はアトピー性皮膚炎の患者、AD患者でございますが、これについて述べさせていただこうと考えております。
アトピー性皮膚炎の患者というのは、グラフで見ていただくように、この30年で2倍に増加しております。左のグラフでございます。
あと、右のほうでは、アトピーというとやはり子供の病気だと思われがちですが、決してそんなことはなくて、私たちの副理事長もそうなのですけれども、60代になっても70代になっても続いていますし、新たに発症するということもございます。アトピー性皮膚炎の有病率は小児~18歳で10%以上、成人では若年~壮年で5%ものはアトピー性皮膚への患者がいらっしゃるということでございまして、決して子供だけの病気ではなく、現役世代にも影響が大きいということもここで申し上げております。
次に、アトピー性皮膚炎患者の悩みというものについて触れさせていただきます。
身体面でつらいこと、当会のアンケートより申し上げますと、永遠に続くかと思う皮膚の深いところからのかゆみ、不眠につながります。
痛み、炎症があるだけで痛い。かき過ぎて痛い。
皮膚が腫れる。顔や体の炎症は赤く腫れ上がる。
皮膚が赤黒くなる。炎症を繰り返すことに赤黒くなる。
浸出液。かき傷から浸出液が出る。
傷だらけになる。かき傷から出血して衣服や寝具に近づく。
皮膚がむける。粉のような乾燥した皮膚がぼろぼろとむけてきて、人が見たら気持ちが悪いだろうと思う。いじめに遭う。避けられる。
人に見られると恥ずかしい。髪や衣服で隠したい。
こんな皮膚を持つ自分に自己肯定感を持てない。劣等感のみ。
次に、アトピー性皮膚炎患者の悩み、アトピー性皮膚炎でつらいこと。
精神面でつらいこと、当会のアンケートより、他人の視線、赤黒く傷だらけの皮膚を見られると汚いと思われるのでは。
自分に自信が持てない。アトピーがあるのに何もできない。
毎日のスキンケアの継続。毎日の2回、症状を見ながら全身に薬を塗るのは大変。
将来への不安。このままこのつらい症状が一生続くのかと不安になる。
悪化と軽快を繰り返す不安。どんな治療をしてもよくなる可能性が低い。
周囲の理解が得られない。症状があることのつらさを分かってもらえない。
生活環境を整えて悪化。常に悪化要因に注意していても悪化する。
医師や家族から掻くなと言われるストレス。本人が一番分かっているし、つらいのだということでございます。
掻いてしまう自分を責める。掻くと皮膚がぼろぼろになって痛くなることは分かっていても、掻かざるを得ないような強いかゆみがあるということでございます。
次に、アトピー皮膚炎患者の悩み、私のアトピー性皮膚炎履歴ということで一例をお話しさせていただきますと、生後3か月で乳児湿疹と診断。以来、現在まで重症のアトピー性皮膚炎が続く。皮疹は頭皮から足の裏まで全身。全身かき傷で真っ赤になり、顔や頭皮から浸出液が出て、体を動かすだけで痛みが出る状態。死にたいと思う日々。就職後も仕事の忙しさで悪化、標準治療を続けたが重症のままステロイド外用薬を全身に使いながら社会生活を維持。現在は生物学的製剤や外用薬を使い、日常生活に支障のない状態にセルフコントロールしているということで、こういったアレルギー疾患の場合には、アトピーもぜんそくもそうなのですけれども、先生の治療だけでなくて自分の自己コントロール、自己管理というものが非常に重要になってまいります。保険医療をベースに自己管理できる生活環境というものが非常に重要であります。また勤労意欲についても、要するに勤労意欲があるのだけれども、どうしても症状・病気のために勤めに出かけられない、学校に行けないということが多く出てまいります。病気の治療というものができさえすれば、就業・学校生活に取り組める、前向きに人生が生きられる、自己を肯定して生きられるということでございます。
また、アトピー性皮膚炎には治療ガイドラインというものがございまして、アトピー性皮膚炎はこういった先ほど出ておりますような抗体医薬、生物製剤というものが出現して、非常に画期的によくなる方々が増えております。これでもまだ治らない方もいらっしゃいます。まだアレルギー疾患は根治療法が見つかっておりませんものですから、あくまでこういった生物製剤においても対症療法であります。そういった中で、今、日本皮膚科学会、日本アレルギー学会からもアトピー性皮膚炎の治療ガイドラインというものが出されております。そういった中で、中等症、重症におきましては、スライドにも出ておりますように、こういった生物製剤、各種外用薬、抗体医薬、経口薬と様々のお薬が出ています。それぞれ作用機序、作用点が違いまして、患者によっていろいろな組み合わせで効果的な使い方ができる。選択肢が多く患者にとっては朗報です。患者が的確かつ最適な治療を受けるために、こういった治療が積極的に受けられるということが望ましいわけでございます。
最後に、国にお願いしたい事項といたしまして、高額療養費制度と就労・社会復帰の問題について述べさせていただきます。
症状の重い患者にとって、近年登場した生物学的製剤などの新薬は効果が高く、副作用も比較的少ないことから、生活の質が大きく改善し、社会活動への参画や安定した就労につながっているとの実感を得られている。しかし、薬代が高額で、家計の負担が大変大きく、いつまでこの治療を続けられるのか、多大な不安と共存しながら治療を続けている。
また、高額な治療と聞いて開始できない人も多くいる。重症な症状があるがために非正規雇用の仕事にしかつけない、精神疾患を併発してひきこもりになっている。従来外用薬での治療しかないために多大な疾病負荷を抱え、悲惨な人生となった重症患者が、高額だからという理由で、やっと開発されて効果が実証されている新薬の恩恵が受けられないというのは大変残念である。
先ほどお話がございましたように、ある日突然先生から生物製剤を切られてしまう。理由もなく、使えないよと。そういった例が相談事例としても上がっております。なぜかというと、これはまた地域差もございます。地域偏差、地域の格差をなくすということで、アレルギー疾患の医療の均てん化というものが求められているにもかかわらず、現実的にはそういった問題が起こっておるところでございます。
あと、高額療養の多数回該当について事例が多くあるということは、それだけ何年も治療継続する必要がある患者がいるということを示していることに他なりません。休薬することで改善していた症状が重症化することがあるので、最低限でも現行制度で存続してほしいという希望でございます。
次に、そういった問題に対して、高額療養制度の見直し及びOTC類似薬の保険除外に関する要望書を本年6月11日に福岡厚労大臣に手交してまいりました。その際に、一緒に出した団体、共同団体としては7団体、一般社団法人アレルギー及び呼吸器疾患患者の声を届ける会、認定NPO法人日本アレルギー友の会、NPO法人環境汚染等から呼吸器病患者を守る会、NPO法人アレルギーを考える母の会、NPOアレルギー児を支える全国ネット「アラジーポット」、NPO法人ピアサポートF.A.cafe、NPO法人アレルギーの正しい理解をサポートするみんなの会というように、小児から大人の患者団体まで含めて、みんなこういった同じ思いを持っております。
そういった中で、ぜひそんな思いを解決してほしいと思いまして、要望事項を3点まとめております。
1、高額療養費制度の自己負担限度額引上げは、家計への影響を考慮し、現在の治療継続が可能となるよう見直すこと。すなわち、家計ごとに、20代、30代、40代という働き盛りの方々が可処分所得の中でどのような治療をしながら生活しているのか。その中で、医療費自己負担額が本当に負担できるのか。負担できなければ、やはり就労も困難になったりするわけです。そういったことを見ながらこういった制度というものを考えていただきたいという意味合いでございます。
最後に、制度改正に当たっては患者の声を適切に反映することということで、今日みたいにお呼びいただいていることがこの問題の解決の一歩だと考えております。
要望の根拠といたしましては、国民皆保険制度は、経済的理由で医療を受けられない人を減らすための仕組みであり、制度改正はその理念に反する可能性があるということで、これに関しては憲法25条の生存権、憲法13条の幸福権の実現というものにも当たるわけでございまして、そういったものを考慮した上で、国民皆保険制度が昭和36年に出て以来、12年後にこの制度に対してやはり制度矛盾というのですか。皆保険制度だけではなかなか解決できないということで高額療養費制度というものが導入されたと私は認識しておりますけれども、そういったことの元の理念に戻りまして、今回の検討も進めていただきたいと考えております。
あと、難治・重症のアレルギー患者は、高額な治療を長期にわたり必要とし、医療費の増加は治療継続を困難にし、生活や就業に深刻な影響を及ぼします。OTC類似薬の保険適用除外は、特に子供のアレルギー治療において現役世代・子育て世代の家計に大きな負担を強いることになり、子供の健全な成長や家庭生活に悪影響を及ぼします。
制度改正が患者の声を反映せずに進められていることは、患者軽視であるということでございまして、最後にアレルギー疾患患者の家計構造ということで次のページに入れておりますけれども、ここでは、40代アレルギーの一例、この患者はアトピー性皮膚炎の患者で、こういった高額療養費をやっと使えるようになって、それで就労ができるようになったという方でございます。それによって収入も増えたということでございますが、同じような年代でこの方の医療費というものを見たときに、高額療養費を受けていても全国平均の2.8倍の医療費を負担せざるを得ないという状況にあります。これも高額療養費を受けての上です。しかし、この方は高額療養費というものがあってよかった、受けられてよかったということで感謝して、今、一生懸命働いて、かなり一生懸命やって、なかなか遊ぶ時間もないようでございますけれども、そんな形でぜひ皆さんに伝えてほしいと言っております。
本当の最後に、アトピー性皮膚炎やぜんそくは疾患を持つことだけでも日常生活、社会生活に患者の負担が大きい疾患です。さらに経済的負担が増えることは、患者をさらに追い詰めてしまいます。何とぞよろしくお願いします。
ちなみに、私は、コロナ禍のときに口腔がんになりまして、それでやっとこの3月に5年たちました。リンパ節郭清も行って今生きている状況でございますけれども、私の一番の願いは、アレルギー疾患患者が自分らしく生きられる社会にしていきたいと考えております。ぜひともそういったことを考慮の上で、この専門委員会で御検討願えればと思います。
以上であります。
○田辺委員長 ありがとうございました。
続きまして、資料3について、NPO法人血液情報広場・つばさの橋本様から御発言をお願いいたします。
では、よろしくお願いします。
○橋本参考人
たくさんの方々から既に高額療養費制度の改定の提案が出されていますので、私からは私が実際に医療費補助をした経験をお話して、参考にしてほしいなと思います。
スライドの上に並んでいるのが血液がんです。細かく分ければもう少しありますが、このくらいの病気があって、これらの疾患の多くが10年も20年も薬や新規治療法で継続闘病ができています。医療と創薬と当事者の頑張りで本当によい時代を迎えていると感謝しております。
ただ、例えばこの多発性骨髄腫で見ていただきますと、次から次へと治療薬を開発する必要があります。そうやって一つの遺伝子変異を抑えることができると、次に再燃のとして別の遺伝子変異が上がってくる。それをまた新しい薬で抑えるというふうにして、10年も20年も治療を継続できています。長期に及ぶ血液がんの治療はそのようにして向上しています。
私はNPO法人つばさの理事長、日本骨髄バンクの理事でもありますが、今日はつばさ支援基金代表の立場でお話ししたいと思います。
自己紹介をします。1986年に長男が慢性骨髄性白血病に罹患しました。そのときに骨髄バンクのようなものがあればと担当の先生が言ってくださって、それは何だろうと思いましたけれども、それがあれば息子が治せるのであれば、つくらねばと決意し設立運動を開始していった次第です。その頃既に小児がんが無料で闘病できました。そのことを皆さん念頭に置いて私の話を聞いてください。
すぐに仲間が集まってくれて、最初に厚労省を訪問したのは88年5月でした。
骨髄バンク設立請願署名を、77万筆集めて国に提出しました。
。
やがて骨髄バンクはできるわけですが、骨髄バンクの次に欲しかったのは何だろうと思いました。それは、血液がんとは何か、どうやったら治せるのか、骨髄移植以外にも治療法はあるのか等の正確な知識だと思い至りました。そして私は当事者の皆さんが必要な情報を専門家に提供してもらって発信する、という活動を始めていきます。
たくさんのお医者さんたちが協力してくれました。専門家の方々の思いはこういうことだったのだなということが今にして本当にありがたく思います。
これがセミナーの一つ、悪性リンパ腫についてのチラシです。サバイバーの一人として、後で私の話に出てくる我那覇さんという方がここで経験を語ってくれています。
同じように、セミナー多発性骨髄腫のチラシです。血液がんのあらゆる疾患について、実臨床の先生方が最新の情報を出そうと参加してくださって、私たちはセミナーを続けている次第です。
医・創薬の協力で血液がんの治療成績が徐々に上がって来た2001年に分子標的薬が登場します。これが血液がんの医療を大きく変えていきます。同時に、ほかのがんにもこの恩恵は広がっていくわけですけれども、この分子標的薬を開発した医師はノーベル賞をもらっています。ただ、高いです。1錠1,000円で、それを4錠忘れないで毎日飲んでくださいねと医師から説明されます。そうしますと1年間幾らでしょうか。でも移植でしか治せなかった患者が、これを服用し続ければ天寿を全うできるようになったのです。この薬を持って過去の救えなかった患者さんに会いに行きたいと言ってくださった医師がいます。私もそういう時代が来たことを心から喜びました。今も想いは同じ、本当に良い薬です。
そして、2007年頃、高額な薬代が払えずに治療を断念したという報道が流れるようになってきました。
私は電話相談を一方でしておりまして、計4万件ほどの相談を受けました。その相談の多くは、この疾患はどうやったら治るのですかという治療関連でしたが、ほかに、どこかにお金を貸してくれるところありませんかという切実な声が次第にちらちらと混じっていきます。
私が就いた相談窓口を時系列で列記します。1997年から厚労科研費のバックアップで相談を開始しました。この最初の頃は分子標的薬などが出ていないです。ドナーがいて移植の機会がある患者さんとそうではない患者さんで明暗が分かれた時代でした。骨髄移植の成績がまだ50%程度だったと思います。全く別々に2人の患者さんから、全く別の方向から、CMLは移植をしなければならない上に、お金をかけて治療しても治る確率が半分だとしたら、家族のために働くだけ働いて死にますというお話がありました。残念ながら、お二人ともそのとおりに過ごされて亡くなりました。
そして、2007年頃に乳がん経験者のお母様がCMLの診断を受けた娘さんを扼殺した事件の報道がありました。お母様ご自身の治療費が大変だったのでしょうね。それで、無理心中しようとしたのでしょうけれども、何ともせつないと思いました。
それからもバックアップが代わりながら電話相談を続けていきます。そして、3番目のJCRSUがこの後私の行うことになる支援基金の重要な協力者になります。その前に、先ほどの医療費で困窮しているといういろいろな声が聞こえてきた頃の2009年に患者会を運営している人たちに声をかけて、高額療養費制度の見直しを要望しようということで大臣に要望書を提出しました。その行動が熱心に報道されたということも念頭に置いてください。
これが当時報道された新聞の記事の幾つかのうちの2つほどです。
以上のようなことを私があちらへこちらへと情報発信していったところに少し大口の御寄附者が登場して、それならあなたがその困っている人を支援してくださいと言われました。大変戸惑いましたが、協力者をたくさんお願いして、つばさ支援基金を始めることになります。
ポスターの左の下のほうをご覧ください。ご寄付による資金ですから幾らでもお金があるわけではないので、高額療養費制度から月々4万4400円をいただいてもなおつらいだろうという所得の人たちを助成する、申し訳ないが、対象を制限させていただきました。その対象の年収は大変低い金額でした。私たちは2009年に高額療養費制度の多数回該当4万4400円の対象となる年収幅が大き過ぎる、と問題に感じてここを見直してほしいと要望を出してありました。その前提で、年収が医療費保護ではないが本当に下のほうで生活がぎりぎりの方に援助をしましょう、このときの寄付による資金でもそれならできるということでこのようなものを始めたというわけです。
エピソードを一つお話します。自分も援助が欲しいという人がコールセンターに電話をしてきて、受付の人がちょっとあなたの年収は高いようですと言ったところ、ええっ、自分でも高いとしたら対象年収は幾らだ、となって受付の人が、家族の総収入が200万に満たない、と言ったところ、その人が逆切れして、そんな年収で暮らせている家族がおるんか、と受付の人を怒鳴ったとのことです。おるんです。家の畑で野菜が取れて、親戚からお米が売るほどではないけれどもらえて、家族仲よく健康に暮らせ幸せに暮らせる人が今でもいます。家族の誰かにがん等の重篤な病気が発生しなければ、ですが。
一方で、今はがんになると、短命だった時代と違って治せるようになってきました。これは僥倖です。ただ、長く続く治療のその薬代が払えないとしたら、単に良い時代になったとばかりは言えない、ということで、支援基金を立ち上げた次第です。
図に示すような仕組みをつくりました。左にあるJCRSU疫学コールセンター、ここで私は電話相談をしておりまして、ではということで生物統計学の先生が諮問委員会をつくり、この仕組みで日本中のCML患者さんを対象者に2010年から支援を開始しました。
CMLの診断書、治療期間が一年を超えているという証明を送ってもらいました。ただ、診断書は高いので、それだけはこちらからお支払いしました。
たくさん新聞報道もされて、つばさ支援金の存在が徐々に徐々に日本中に知られて問い合わせも増えていくことになります。
日本中からコールセンターに電話がありましたが、特に問い合わせ数が多い地方が赤の地域です。
多くの報道にも協力していただきました。
スライドのように詳細な統計が出ています。
震災を挟んで続けておりますので、震災の前と後という統計も取りました。それでこうして少しずつ支援が増えていったという図です。
寄付による資金も尽きて2015年3月をもって終了せざるを得ませんでした。残念でしたが、終わりのお知らせに、3年半毎月振り込まれる2万円に経済的にも心理的にも救われましたというお手紙をいただきました。また、いただいた給付金の一部でパソコンの資格を取りました。これからは治療しながら働いて暮らしますというお電話もありました。
私たちは、2015年3月をもって最初の支援基金は終わりましたけれども、本体だけは何とか少しずつあった御寄附で維持してきまして、今年の3月から血液がんの中で骨髄増殖性腫瘍という疾患に支援を開始することができています。その御寄附者の方が「家族と共に生きる尊さ」を支援したいとのことで、ありがたく受け止めてまた開始しております。
そして、血液がんの一種に悪性リンパ腫があります。近年は素晴らしいことに悪性リンパ腫も長期医療となっております。本当にたくさんの治療薬が開発されてきた疾患の一つです。多発性骨髄腫もそう、私の前に河田参考人が意見を出されたCMLもそう、そして、悪性リンパ腫も、です。
最後に、ご自身の治療経験を記事にまとめられた東京新聞の我那覇圭さんをご紹介します。新記事は3回連続で、その2回目がこの医療費のことでした。さすが新聞記者さんで、非常に分かりやすく書いてくださいました。罹患時は42歳です。先ほど私が、子供の医療費はただで助かったという話をしましたけれども、つまり、子供が成長期にある親はまだ年収もそれほど高くなっていないということになります。我那覇さんも42歳、、若い子供のいる子育て中の親御さんのお一人です。住宅ローンがあり、小中学生の子供が3人。ソーシャルワーカーに高額療養費制度の詳細を教わりました、とのことです。そして、悲願だった海外赴任は諦めざるを得ないか、ともかく、我那覇さんも、仕事に早く復帰して、稼げるうちに稼ぎたいと頑張ったと書いておられます。そして、頑張って職場復帰されました。
なにより社会にとって大切なことは、いま我那覇さんが記者さんとして御活躍中だということだと私は思います。悪性リンパ腫に罹患した患者さんが治ったこと、これこそが高額な治療を提供できた社会が受け取ったメリットだと思います。先ほどのアトピーの方々も頑張って働きながら、社会にいろいろな情報を発信しています。こうして多くの方が治って社会復帰をしている。社会で暮らして、そして、闘病も続けながらですが、社会にたくさんのメリットを返しています。その代表格と私が思う我那覇さんの記事を紹介させていただきました。
以上、私はこの度ように経験則をお示ししました。さらにこれからの改定につばさ支援基金あるいはNPO法人つばさの資料の提出が何か必要でしたら、御指示ください。これから高額療養費制度がよりよく改定されますよう期待しております。
以上です。
○田辺委員長 ありがとうございました。
続きまして、資料4について、認定NPO法人ささえあい医療人権センターCOMLの山口様から御発言をお願いいたします。
では、よろしくお願いします。
○山口参考人 ありがとうございます。ささえあい医療人権センターCOMLという認定NPO法人で理事長を務めております、山口でございます。
私たちは1990年から活動してまいりまして、特定の疾患を対象にしている患者会ではなく、患者支援団体という位置づけです。発足当時は患者には情報が閉ざされていた時代ですので、ほとんどの患者がお任せという姿勢に甘んじていました。そういう中で患者も自立して主体的に医療参加しようということで、賢い患者になりましょうと呼びかけて活動してまいりました。
私は1992年の2月からスタッフとして働いておりまして、創始者が2011年に亡くなりまして、その後理事長を継いでおります。
次のスライドをお願いします。
私自身の個人としての背景を少し紹介したいと思いますが、このCOMLと出合うきっかけになりましたのが、ちょうどCOMLがスタートしたのと同じ年の同じ月に、あと2か月で25歳というときに卵巣がんを発症した。これが私の医療と出会う大きなきっかけでした。
いろいろございまして、3年生存する可能性は2割ということで、当時呼ばれた両親は主治医から「もう覚悟を決めてください。20代半ばでこの先長く生きない人に本当のことを言うと、必ず精神的にぼろぼろになる。なので、私は何があっても本当のことを言いません。」と言われたそうです。そういう時代に患者経験をいたしました。
まだ当時は外来化学療法もなかった時代ですので、1年半の期間に中で入退院を繰り返しながら300日以上入院をして、手術と化学療法を受けてまいりました。
入院が長くなりますと、やはり治療費以外にも何かとお金がかかります。私は医療費は全部自分で払っておりましたので、休薬期間の退院中は、次回の入院に向けて治療費を稼がないといけないということで、幾つかのアルバイトをかけ持ちしながら次の入院に向けて準備をしていたというような経験をしております。
そして、92年2月にスタッフになっておりますが、COMLの日常の活動の柱が電話相談ということで、これまで一本平均40分かけての相談を7万1000件を超えて受けてまいりました。私自身はそのうちの2万5000件ほどの相談に対応してきています。中には高額な医療費に悩む御相談も多数経験しています。
そして、1990年から2025年の間に、実は最初の卵巣がんを含めまして、今までに3種類のがんを経験しております。ですので、こんなことは自慢できることではないのですが、全身麻酔による手術の経験が5回ほどございまして、1年半にわたって300日以上ということ以外に入院も6回経験しております。その都度高額療養費制度の恩恵を受けてきたということで、高額療養費制度のありがたさということは重々身にしみて感じているところです。
次お願いします。
この高額療養費制度を歴史的に見てまいりますと、制度が導入されたのはまず家族からだったと思いますけれども、1973年(昭和48年)に高額療養費制度が導入されておりますので、現在52年経過しているということです。
2007年に、限度額適用認定証を提出すれば入院費の現物給付化ということで、上限額しか請求されないということになるまでは、一旦、例えば3割負担であれば3割分の医療費をお支払いして、3か月後ぐらいに還付されるというような時代を長く送ってきました。そうすると、一度まず定率分を払いますので、それが3割分だとしたら、10割はどれぐらいの医療費かというようなことはもちろん容易に想像がつくわけですので、自分がどれだけの医療費を使っているかということを患者も自覚できていたわけです。ところが、2007年に現物給付化したことによって、上限額までしか請求されなくなったということで、相談をお聞きしていても、御自分が使っている医療費が全額どれぐらいかということの実感が持てなくて、自覚をすることが少なくなってきたのではないかなと思わせられることが多々ございました。
やがてその5年後、2012年には外来の医療費も現物給付化ということと、高齢者の外来特例ということもその前から始まっているわけです。
2021年、オンライン資格確認制度が導入されたことによって、マイナンバーカードか被保険者番号で限度額適用認定書を提出しなくてもどの区分かを医療機関が把握できるということで、ますますこの上限額までしか請求されていないという現状を理解している方が減ってくるのではないかと懸念しております。
次のスライドをお願いします。
先ほどから申し上げているように、電話相談もお聞きしておりますし、個別にもいろいろと相談を受けることもございます。その中で、今まで御発表があったように、この高額療養費の上限額が引き上げられると、治療の継続が非常に困難になる、あるいはほかの生活費を回さなくてはいけない、そういったことをおっしゃっている方の声ももちろんお聞きしています。
でも、中には、例えばある薬局の方から連絡がございまして、患者さんの中には自分が一体どれだけ高額な医薬品を使っているかという自覚がなくて、患者さんの言動からおかしいと思って調べたところ、服用せずに捨てていたという方が御自分の薬局を利用している方だけでも複数あった。そういうことを経験して以来、「あなたは医療費をこれぐらい使っているのですよ」と医療費の総額を伝えるようになったのだという声も聞こえてまいります。
第1回目のときに、天野委員が限度額、多数回該当にちょっと届かない方が少し必要ない検査もやってくださいと言うようなことが実際に起きているとおっしゃっていましたが、やはりそういったこと、何とか自分の負担額を安くしたいという思いでいろいろな取り計らいをする方もいるのだと思いますけれども、特に高額療養費制度の使用目的で留学している外国人の存在があるということも聞いております。
それから、医療者から聞く話によりますと、患者さんの負担が上限額にとどまるということで、いとも簡単に高額な薬剤を使用する医師がいると。こういったことも一方で考えていかないといけない問題ではないかなと思っているところです。
次のスライドをお願いいたします。
この高額療養費制度は10年前に一度見直しがございました。そのとき、私は社会保障審議会医療部会の委員を務めておりまして、引上げが行われたときに、非常にこの高額療養費制度、これからどんどん高齢者が増えてきて、そして、高額なレセプトが増えてくると、維持できない制度になっては、やはり患者としては非常にマイナスだなというようなことを感じておりました。そこで、医療部会の中で国民も巻き込んでこの制度を維持するにはどうすればいいかということを話し合っていかないといけないのではないでしょうかという発言をしたことを覚えております。でも、そのときには何となく言ってくれるなというムードが漂ってしまいまして、深い議論にはなりませんでした。
先ほど来申し上げているように、50年以上、私たち日本人にとっては当たり前の制度になってきましたので、患者になればなくてはならない制度だとは思っています。でも一方、諸外国に目を向けてみますと、こんな恵まれた制度を擁しているところはほとんどないのではないか。医療費が国費というところはございますけれども、そういったところは日本のように簡単に医療を受けられないというリスクもあるわけです。ですので、実はこれは恵まれている制度なのだということをいま一度自覚する必要があるのではないかと私は思っています。
高齢化や高額薬剤の増加で、1回目の資料にも出てきたと思いますが、高額レセプトの件数がうなぎ登りになっている。この高額薬剤ですけれども、どの状態の方に使っているのか、果たしてそれが本当に患者にとって幸せなことになっているのか。かなり病状が進んだところで、例えば標準治療の対象にならなくなり、がん遺伝子パネルの対象になって、それで保険で検査を受けたところ、マッチする薬が出てきた。それで受けたところ、物すごく大変な副作用が出て、一気に病状が進んでしまったというような例も私はお聞きしております。だとすれば、これだけ高額になってきている医薬品の効果検証ということも併せてしていく必要があるのではないかと思っています。
どんどん金額が増えてくる中で私が懸念していますのは、いつまでこの財源が持つのかということです。確かに今、この高額療養費の上限額を引き上げることによって困る方がいらっしゃるということは重々承知していますけれども、例えば少子化もそうですけれども、この国は何十年も前から分かっていても、目の前に来ないと対策を立てないという傾向があると感じています。そうすると、今、引き上げを先延ばしにして、本当に財源が持たなくなってから突然はしごを外されたときに、もっともっと多くの方が路頭に迷う。そういった事態だけは避けなくてはいけないのではないかなと思っています。
確かに保険料を上げて全体で負担してはどうかという意見もおありの方がいらっしゃると伺っていますけれども、国民全体で負担するだけの同意が得られるのかどうか。今の現役世代も負担が重くなってきている中で、ますます少子化が進んできている。負担する方たちが減ってきているわけです。莫大な防衛費の中から予算を移行できるのならまだしも、やはり引上げは避けられない状況ではないかなと思っています。
ですので、先ほど来お話を伺っていて、若いときから長期にわたって高額な治療が必要な方については何らか対応をしていかないといけないと思いますけれども、全体で見ると、多数回該当の患者はやはり一部だと思うのです。だとすれば、そうでない方ということでは、やはり引上げをして、負担額を増やすというようなことは避けられないのではないかと思っています。
高額療養費制度というのは、私は日本人にとってなくてはならないセーフティーネットだと思っています。ですので、これを維持・継続するためには、医療を個人の視点だけではなく社会を視野に入れて考えていくということが不可欠ではないかということで、今回問題提起をさせていただきました。
以上です。
○田辺委員長 ありがとうございました。
ここまで4人の方から御意見をいただきました。これまでの発言に関しまして、御意見、御質問をお願いしたいと存じますが、同じ患者団体ということで、もしよろしければ最初に全国がん患者団体連合会の天野委員、それから、日本難病・疾病団体協議会の大黒委員の方から御発言をいただければと考えております。
最初に天野委員から御発言をお願いできればと思いますが、よろしくお願いいたします。
○天野委員 4名の参考人の方から私自身も大変学びの多い御発言をいただいたことを改めて感謝申し上げます。
私からは、今、4名の方のお話を伺わせていただいた上で、2点質問をさせていただきたいと思っております。
まず、河田参考人に質問したいと思います。河田参考人の御発言の中で一生の負担を前提としているという非常に重い言葉があったかと思います。実際に私も25年前に血液がんで治療を受けたときには、今、河田参考人が御説明されたような分子標的薬は全くなくて、CMLの患者さんは骨髄移植を待っているような状態で、実際に私と同世代の同じ病室のCMLの患者さんがその薬にたどり着くことなく亡くなられていかれた。この当時のお話は橋本参考人もされていましたけれども、そういった時代があったということを重く受け止めています。
一方で、CMLでは分子標的薬を飲み続けなければいけないという面もありますが、現在、臨床試験という形にはなるかと思うのですけれども、休薬や減薬ということが可能になっている場合があるかと思います。そういった休薬や減薬というのは可能になっているような患者さんというのは、どの程度いらっしゃるのかということについて、これは河田参考人の主観的な感覚でももちろん大丈夫ですが、質問させていただきたいと思います。よろしくお願いします。
○田辺委員長 では、お願いいたします。
○河田参考人 ありがとうございます。
今、天野委員から御指摘いただいたように、慢性骨髄性白血病においては一部の方で薬をやめることをトライするというところまで治療成果が出ている方は確かに出ております。最新のガイドラインにおいても、それは強い推奨ではないものの、目的の一つに入ってきました。
ただ、その正確な数字に関しましては述べることができないのですが、深い寛解と言われるものですが、その深い寛解に至る方というのはあまり多くはありません。さらに、そこから実際に薬を中断してみて再発する方がおよそ5割ということで、本当にまだ限られた人数しか薬をやめることはできない段階にあります。
また、この薬をやめるまでの深い寛解に至るというのが特に日本において先行している理由としては、先ほど申し上げたように新薬が次々と投入され、より効果の強い薬が長期にわたって使える環境下にあったことが現状につながっております。したがいまして、例えば費用対効果などの考え方によって新薬が新たに承認されなくなるであるとか、限られた経済的に優れた薬だけを使うようになるというのであれば、かえって薬をやめるであるとか、あるいは減らしていくというチャレンジに至らないことが起こり得るということを懸念している次第です。
○田辺委員長 ありがとうございました。
○天野委員 ありがとうございました。
もう一点発言というか質問させていただきたいのですが、山口参考人のお話がありまして、私自身も十分存じ上げないお話も含めて学びをいただいたところでございます。
10年前の高額療養費の見直し、特に外来の現物給付化、私も患者団体の一つの団体として要望活動に関わっていました。このときのそもそもの経緯を申し上げますと、厚生労働省のがん対策推進協議会で金子明美さんという北海道の患者会の方が患者委員をされていました。当時まだ外来治療での現物給付がない時代に、ちょうど外来でのがん治療が増え始めた頃で、金子さん自身も再発を繰り返されて、長期にわたって、いわゆるエンドレスケモという言い方もしますけれども、抗がん剤治療をされていました。金子さん自身が厚生労働省のがん対策推進協議会で、がん患者はがんとの闘いだけではなくお金との闘いを強いられていると訴えられて、現物給付化も含めて患者の負担軽減を求める要望活動をされた後に逝去されました。その頃は金子さん御自身も事例をおっしゃっていましたけれども、生活保護を受けるために世帯を分けるであるとか、あるいは治療をやめるであるとか、そういったことが多発し始めた時期でして、それに対してがんをはじめとする複数の患者団体が何とかこの状況を打開してほしいと要望したことで現物給付化をしていただきました。厚生労働省の方々をはじめ、多くの方の御尽力のおかげで今まさに現物給付での治療が受けられているということだと思います。
一方で、山口参考人の御指摘のように、今、治療を受けている患者さんはそういった経緯も十分知らないですので、自分がどれだけの高額な治療を受けているのかというのは必ずしも御存じでないという患者さんもいるとは思います。しかし、前回の会議で私も指摘させていただいたのですが、今回引上げをするかしないかという議論をこれからしなければいけないと思うのですけれども、WHO、世界保健機関が定義するいわゆる破滅的医療支出という言葉があって、現状でも既に破滅的医療支出に相当する過重な負担になっているのではないかという所得層の方がいらっしゃる可能性が指摘されているところです。こういった既に過重な負担を強いられている可能性がある方々がいる一方で、山口参考人の御指摘のように、長期の将来のことを考えた場合、引上げをしなければいけないというこのバランスは非常に難しいと思うのですけれども、この辺り、もし山口参考人にお考えがあればぜひお聞かせいただきたいと思いました。
○山口参考人 ありがとうございます。
破滅的医療支出が生活費の40%というのは、天野さんから以前伺ったときに、多数回該当以外の方というお話をされていたと思うのです。その月でいうと40%になるかもしれないけれども、年単位で見たらどうなのかというのが私は分からないなと思っていたのですが、それも含めてですけれども、先ほど少し触れましたように、やはり長期にわたって高額な医療費が継続する方、そういう方については何らかの手だてをしていく必要はあると思っています。ただ、やはり多くの方は1回、2回ということですので、分けることがどれぐらいできるのか分かりませんけれども、一律にと考えることは難しいのではないか。そうすると、1回、2回、3回か分かりませんけれども、その方で費用負担、少し上限額を上げていく。でも、長期にわたってずっと多数回該当が続くとか、そういう方については何らか対策を講じる。そういったことは必要ではないかなとは思います。
○天野委員 お考えをありがとうございました。
○田辺委員長 ありがとうございました。
では、大黒委員、御発言いただけますでしょうか。
○大黒委員 日本難病・疾病団体協議会の大黒です。
御発言ありがとうございました。
今後の議論に際して大事だと思った意見とか感想とかを述べさせていただきたいと思います。
改めて、現状の把握が大事だなと思いました。今でも治療の中断は生じているという実例を挙げていただいていて、まずは大きく立ちどまって、現状の高額療養費制度下の患者の現状を見つめるべきではないかと思います。
また、治療の年数が非常に長い病気があるということも御紹介いただきました。難病患者も当然長い治療の年月が必要という病気もあるのですけれども、今、Lifeという言葉が使われましたが、命、生活、人生に直結するということで、健康の面でも単に生活できればいいのかというと、そうではないと思っています。やはり命であるとか人生そのものを考えるべきであると感じました。
また、今後様々なモデルを用いて考えていくこともあると思うのですけれども、我慢すればどの薬でも生きられるとか生活できるというものではないということも御紹介いただいています。モデルで単純化し過ぎると個別性が失われてしまうという懸念があります。これも難病もいつもそうでして、個別性というのは非常に大事な観点ですので、単純化し過ぎないように、そこは考慮すべきだと感じました。
また、今回、分子標的薬というものが多く出てきています。これはがんの分野だけではなくて、効果についても多くの難病も非常に目の当たりにしています。なかなか言葉だけでは分かりにくいと思いますけれども、このようなお薬が出てきたときに患者や家族がいかに希望が見えたか、仲間がどのような形でよくなってきたかというのを見たときに非常に希望が見えたかという状況、その逆で、その薬が経済的に使いにくいと感じたときに、患者本人、また、その家族がいかに落胆したか。そういうことを少し想像していただければ、今後の議論に生かせるのではないかと思っています。
本日はそれぞれの立場で御発言いただき、ありがとうございました。
○田辺委員長 ありがとうございました。
それでは、その他の委員の方々につきましても、御意見、御質問等がございましたら挙手にてお知らせいただければと。
では、佐野委員、よろしくお願いします。
○佐野委員 ありがとうございます。健康保険組合連合会の佐野でございます。
若干コメントと、4名の参考人の方々に質問をさせていただければと思います。
まず、今日の皆様のお話を伺いまして、コンスタントに長い期間で高額な医療が必要な場合が御説明の中心になっていましたが、やはり患者の皆さんにとって経済的負担にとどまらず、精神的な負担も極めて重たいということを改めて認識しました。
我々保険者としては、主に経済的負担のほうしか対応できない部分ですが、様々な疾病の形態があることも踏まえて、多数回該当の仕組み等、制度面での課題も御指摘いただきましたので、患者の皆様の声に寄り添った対応を考えていく必要があると改めて感じております。
一方で、保険者の立場を若干御説明いたしますと、保険者の使命としては、当然ながら医療機関並びに薬局にかかった患者の皆さんの医療費に対する給付を正確に行うことが求められております。健保組合、また、協会けんぽ等の被用者保険で申し上げるならば、対象となる加入者は約7700万人、レセプトの件数は年間10億件に上ります。このレセプトは御存じのとおり月単位で発行されておりますので、実際の受診回数はもっと多い数になります。
当然、このデータには単発的に高額な治療を受けられた方もいらっしゃれば、本日お話を伺ったような慢性的な疾病を抱えて治療を受けておられる方もいらっしゃいます。また、複数の疾病やけがで治療を受けている方も当然おられます。
今回テーマになっております高額療養費制度の基準をどのように設定するのか、また、どう見直すのかについても、今申し上げたように多種多様な疾病形態がある中で、患者の皆様から一定の納得感を得ることは当然重要ですし、保険者の立場で言いますと、公平性を保つということも重要な要素だと考えております。
また、現在、我々保険者が持っているデータは、あくまでも今加入している保険者のレセプトデータがベースになっておりますので、現状のままでは一定の限界があるということも御理解いただきたいと思っております。
その中で皆様に御意見を伺いたいと思いまして、質問が2点ございます。
1点目は、先ほどの御説明の繰り返しになるかもしれませんが、保険者、また、制度に対して期待される役割は何でしょうか。
それから、2点目は、今申し上げましたように、データ面を含めて保険者の対応に一定の限界があるということについてどのようにお考えかを伺いたいと思います。
以上、よろしくお願い申し上げます。
○田辺委員長 では、お答えいただければと思いますけれども、どうぞ。
○河田参考人 私からまず答えさせていただきます。
先ほど佐野委員から御指摘いただいたように、保険者の公平性というのが非常に重要であるということは我々も考えております。
今回報告した中で、地域によって処方日数に食い違いがあるということに関しまして、各医療機関の医師等に我々が聞いている、あるいは患者さんからの申出がある限り、やはりレセプト機関がこれを認めてくれないのだというような訴えが我々のほうには届いております。やはり公平性という立場から各レセプト機関が本当に同一の対応ができているのかということに関しましては、一度御検討いただけますと幸いです。そうした意味で、各レセプト機関が、3か月処方に関しましては特に厚労省のほうからとがめられるようなことはない、むしろこうしたときには必要であると通知が出ていたかと思いますが、データ上どういった機関、どういった地域においてこれができていないのかということは少し検討していただけますと幸いです。
○田辺委員長 ありがとうございました。
では、どうぞ。
○武川参考人 私のほうからお話しさせていただいてもよろしいですか。
保険者の方のお話、どうもありがとうございます。
ただ、その前に、いわゆる高額療養費制度そのものがなぜできたのかということについて、私の知っている範疇では、今の情勢と違って、いわゆる急性腹症なり、ある日突発的に急病になって、その分お金が足らないから高額療養費というものができたと聞いておりますけれども、今の社会情勢と全く違うわけですよね。そういった中において、そういった面における対応というのはどういうふうにされてきたのか、されてこなかったのか。そういったことについて保険者としてどういうふうに考えるのか。また、保険者もいろいろな各種保険に分かれておられるわけですよね。そういったところの非効率性というものに関してはどうお考えになっているのか。保険者そのものが、これからいわゆる個別化医療とかいろいろ考えられる中で、どんどん医療に金がかかってくるということは見えているわけですよね。そういったときに、今のシステムで小手先だけで問題が解決するとお考えなのかどうか。そういった問題です。
要するに、こういった高額療養費問題というのは、単に高額療養費の問題ではなく、医療全体の問題だと捉える必要があるのではないのでしょうか。そこが私は非常に大事ではないかなと。というのは、おっしゃるように医療費の問題は非常に重要ですけれども、高くて払えない。今、現実に払うことができなくて自分の生活実態がどんどん悪化してしまう。しかも、物価は上がってくる。1円でも安いスーパーに買いにいく。しかも、そのスーパーも統合やらいろいろで潰れているところも出ているわけです。そんな社会情勢の中で、特に20代、30代、40代といった働き盛りの低所得者層に対して、医療費が1,000円でも2,000円でも上がるということがどれだけ家計に響いてくるのか。そうしたことが、例えば先ほどのアトピー性皮膚炎の患者さんの場合などもそうなのですけれども、自分の病気がよくなった。そういったことによって結婚ができた。結婚できて、子供が生まれた。勤労意欲が起きたという中で、増大する医療費を押さえるために上げるのだという議論ではなくて、もっとプラスで投資的な考え方をしていくべきではないかと私は思っているのです。それが今における人を大事にする社会といったものにつながるのではないでしょうか。
○田辺委員長 ありがとうございます。
取りあえず残りのお二方の参考人から何かコメントがございましたらお願いします。
○橋本参考人 あまり上手に答えられそうもないので、山口さんに譲ります。
○山口参考人 山口でございます。
さっき河田参考人がおっしゃったレセプトの通過が違うというのは私のところにもよく届いておりまして、これは保険者よりもやはり審査支払機関の差が都道府県で非常にあると聞いていますので、そこをまず考えていただくということを政府にはお願いしたいと思います。
保険者の方には、医療費の通知は来るのですけれども、全体が見えるような工夫をぜひしていただきたいと思います。やはり自覚しないことには患者の意識も変わらないと思いますので、ぜひそこはお願いしたいと思っているところです。
○田辺委員長 ありがとうございました。
佐野委員、今後続けて議論の中でいろいろ出てくると思いますが、何か。
○佐野委員 おっしゃるとおり、やはり社会情勢の変化というのは大変大きなファクターだと思っていますし、医療の高度化、高額薬剤の登場はメリットも大変大きい一方で、それが保険全体の仕組みに与える影響も大きくなっているのも事実だと思いますので、こういった観点を含めて、この専門委員会においては、患者の皆さんのためにもなり、また、保険料を実際に負担する加入者にとっても双方いい形になるような方向が何か見いだせればなと思っています。何かイメージを持っているわけではございませんが、今申し上げたような方向に持っていければなというのは、皆様と同じ思いです。ありがとうございました。
○田辺委員長 ほかはいかがでございましょうか。
では、城守委員、よろしくお願いします。
○城守委員 ありがとうございます。日本医師会から参りました城守と申します。よろしくお願いします。
本日は、4名の参考人の方々に大変貴重なお話を伺いまして、ありがとうございます。
昨年の秋、高額療養費制度の見直しというものが突然出てきたわけですが、その理由というのは、年収が平均で1割程度上がっている。そして、保険料を下げなければいけない。さらには、制度の持続可能性という観点等で事務局のほうから説明を受けたということでございます。
結果、自己負担の引上げと所得区分の細分化という大きな方向性に関しては医療保険部会の中で議論したわけですけれども、実際にどれぐらい上げるのかとか、多数回該当に対してどのような設計をするのかという詳細な議論は医療保険部会では行われていないのです。それは国のほうで決められて政府で決定されたという経緯がございます。
本日、皆さま方のお話をお聞きしていますと、現行の高額療養費制度の下においても、医療費の高額化、特に薬剤の高額化が主な原因でしょうけれども、結果的には自己負担として耐えられなくなり治療を中断せざるを得ないというお話を伺って、改めてこの制度の重要性とともに、この制度を再度組み立て直すことの難しさというものを重々感じさせられたところでございます。
我々医療従事者としては、命に関わる病気は当然のこと、命に関わらない病気であっても、先ほどアレルギー友の会の方がおっしゃられたように、症状が重篤であったり、中等症であったり、軽症であっても、医療機関に来られるということは、患者さんにとってはそれなりに大きな苦痛を感じられて受診をされておられるものということであると思いますから、我々としてもそれはしっかりとした保険適用の下に治療が行われるべきというスタンスではおります。
ただし、近年の高額薬剤の出現というものによって、治療の効果は非常に上がっている部分も多いのですけれども、残念ながら、今の薬事審議会においては、有効性というものが少しでも出れば保険適用に即なるという側面もございます。
ですので、先ほど山口参考人もおっしゃいましたけれども、膨らんでくる医療費財源を一体どうするのかということに関しては、これはこの委員会のお話でもないですし、違う部署での議論になりますけれども、例えば、お薬の有効性の考え方とか、そういうものの見直しといいますか検討も必要であろうと思いますし、そして、国民の方の医療に対してのリテラシーというものも向上していっていただく必要があろうかと思いながらお聞きしておりました。いずれにしても、国民皆保険ですから、国民皆さんで病気になられた方を支えるという基本的な考え方をもう一度しっかりと国の方に持っていただいて、そのためには個々の政策をどうすればいいのかなということをしっかりと検討しなければ、本当に時間もあまりないかと思いますので、その辺りも含めて今後の議論に臨みたいと思います。
本日は、本当に皆さま方の実際のお話をお聞きできて、大変よかったと思います。ありがとうございます。
○田辺委員長 ありがとうございました。
ほかはいかがでございましょうか。
では、村上委員、よろしくお願いします。
○村上委員 ありがとうございます。被保険者の立場から参画しております、連合の村上と申します。
4人の参考人の皆様、本日はありがとうございます。高額療養費が様々なケースで活用されている本当に重要な制度であるということが改めて共有できたのではないかと思います。また、こうしてステークホルダーの皆さんが関与するということ、その上で合意形成していくということの重要性も改めて認識したところです。
山口参考人が最後におっしゃったような給付と負担の関係についても、大変つらい部分もあるかと思いますけれども、よい議論をしていければいいと考えております。
1点、事務局の皆さんにリクエストです。以前から家計への影響について分かるように、具体的な仮のモデルを設定したイメージを出していただきたいと申し上げてきたところでございます。その際には、本日ヒアリングでありましたように、がんや難病だけではなく、アレルギー疾患などについても、そのケースの中に入れて資料などを出していただければと考えております。
以上です。
○田辺委員長 ありがとうございました。
では、菊池委員、よろしくお願いします。
○菊池委員 本日は遅参してしまいまして大変申し訳ございません。厚労省の別の会議で遅れてしまいました。
河田参考人の御意見のところはあまりお聞きできなかったのですが、私自身、CMLの患者さんへの支援に少しだけ関わらせていただいたことがありますので、その状況は多少なりとも存じ上げているつもりですが、後からまた議事録で拝見させていただきます。
この問題というのは、もちろん医療保険制度の在り方そのものをどう考えていくかという大変大きな問題でもあるので、中長期的にもそうした観点から考える必要があるのですが、この高額療養費そのものを考えるに当たって、今日、橋本参考人、山口参考人からヒントをいただいたような気が私自身はいたしまして、それはやはり歴史的な経緯を改めて考えてみる、たどってみるというところでございます。
10年前ですかね。前回の改正論議のとき、私の記憶によると、患者に追加でワンコイン負担をお願いして、それを財源にして高額療養費の患者さんの負担を低減させていくという案まで出たのですが、患者負担を減らすのに一方で患者負担を引き上げるのはいかがなものものかといった議論もあって、結局実現できなかったという経緯があると私は記憶している、のですが、そこで考えたのは、10年前に患者さんの経済状況等を踏まえてさらなる引下げが必要かもしれないという議論が出てきて、一定程度やろうとしたのだけれども、結局やらなかった、やれなかった。そこにまだ答えが出ていない。結局、そのまま手つかずで残されてしまったという捉え方ができるかなと私は改めて思いまして、そうすると、まずは10年前の状況で負担がまだ重いという議論があるよね。そこの対応をどうしようかと。そこにまず答えを見つけていくという作業が一つあって、その上で、その後、今日もいろいろ議論が出ました次々と高額薬剤が出てきているという、そうした状況に医療保険財政はどう対応していくのか、持続可能性をどう図っていくのかと。これは今日的な、10年前にあまりそういう議論はなかったと思うので、やはりその問題にどう対応していくか。そう考えていくと、段階を分けて捉えていくことで問題を少し整理できるかなと思って、特にお二方の御発言を伺いながら自分なりに整理ができたなと思ったところであります。
自分の意見ということで述べさせていただきます。以上です。
○田辺委員長 では、袖井委員、よろしくお願いします。
○袖井委員 私は高齢社会をよくする女性の会という高齢者の団体の代表として参加させていただいているのですが、山口参考人のお話が非常に印象的で、やはり私どもは受益者意識が物すごく高くなってしまっている私どもの仲間の中でも、何だか知らないけれどもお金が戻ってきたわという感じなのです。本当にこの日本の医療制度は世界的に見てもすばらしい制度ですが、私たちはこれに甘えてしまっているのではないか。そして、積極的にその意義とか意味を理解しようとしていないのではないかという危惧の念を抱きます。
私自身もこの医療保険部会に入ってからいろいろ教えられたのですが、高額療養費の問題にしても本当に世界に冠たるすばらしい制度なのですが、やはり慣れ切ってしまって、そのありがたさが分からなくなっている。もらえるものはもらわなくては損だみたいな感じですね。これは医療に限らず、今、日本人一般にそうです。まず第一歩として、私たちがどれだけ医療費を使っているのか、それから、どれだけ恩恵を受けているのかということを利用者はまず自覚しなくてはいけないということをつくづく考えさせられました。
今日の何人かの参考人の方のお話を聞いて、高額療養費のおかげで命をつないでいるという実態に本当に感銘を受けました。考えますと、今一番大変なのは、そういう病を抱えながら働いていらっしゃる方、子育てをしていらっしゃる方だと思うのです。こういう方たちが高額な医療あるいは高額な薬剤を使うことによって働ける。働いて税金も払っていただける。それから、社会保険料も払っていただける。そういうことを考えると、武川参考人がおっしゃったように、ポジティブシンキングではないですけれども、やはり社会全体の問題としてこれを捉える必要があるということをつくづく考えさせられました。
今日はどうもありがとうございました。
○田辺委員長 ありがとうございました。
ほかはいかがでございましょう。よろしゅうございますでしょうか。
では、北川委員、よろしくお願いします。
○北川委員 ありがとうございます。全国健康保険協会の北川でございます。
本日は貴重な御意見を伺わせていただいて、大変ありがとうございました。
私も菊池先生、袖井先生のコメントと同様に、山口参考人の御意見は大変示唆に富んでいるなと思っております。やはり考える中で、これまでの時間軸をどういうふうに見直していくのかというのは、議論を整理する上で非常に重要な視点だなと思ったことと、もう一点は世界軸、横に目を広げたところで、これはぜひ事務局にもお願いなのですが、議論を進める中で、一度国際規格的なところを整理していただくという観点も必要なのではないかなと感じた次第でございます。
今日は大変ありがとうございました。
○田辺委員長 ありがとうございました。
ほかはいかがでございましょう。よろしゅうございますでしょうか。
それでは、時間も参りましたので、本日の議事はこれまでとさせていただきたいと存じます。
次回の日程等につきまして、事務局のほうから連絡をお願いいたします。
○佐藤保険課長 次回につきましてもまたヒアリングを予定しておりますけれども、具体的な日程等につきましてはまた改めて御連絡を申し上げたいと思います。
以上でございます。
○田辺委員長 それでは、本日は御多忙の折、御参加いただきまして、また、参考人の皆様方におかれましては、貴重な御意見を賜りましてありがとうございました。
それでは、これにて散会いたします。