2025年6月27日 第6回労働政策審議会労働条件分科会電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律の在り方に関する部会 議事録

労働基準局労働関係法課

日時

令和7年6月27日(金) 10:00~12:00

場所

厚生労働省共用第6会議室(中央合同庁舎5号館3階)
(東京都千代田区霞が関1丁目2番2号)

出席者

公益代表委員
中窪部会長、戎野委員、原委員、水島委員
労働者代表委員
石橋委員、河野委員、冨髙委員、松元委員
使用者代表委員
坂下委員、高垣委員、山口委員
オブザーバー
  • 筑紫電力基盤整備課長(経済産業省資源エネルギー庁)
事務局
岸本労働基準局長、尾田大臣官房審議官(労働条件政策、働き方改革担当)、五百籏頭労働関係法課長、八木労働関係法課長補佐

議題

  1. これまでの議論を踏まえた論点の整理③

議事

○労働関係法課長補佐 定刻となりましたので、ただいまより第6回「労働政策審議会労働条件分科会電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律の在り方に関する部会」を開催いたします。
 委員の皆様におかれましては、大変御多忙の中、お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
 本日は、委員の皆様の改選後、初めての部会となりますので、部会長が選出されるまでの間、私が議事進行役を務めさせていただきます。
 本日の部会につきましても、会場からの御参加とオンラインでの御参加の双方で実施をいたします。
 本日は、公益代表委員の藤村博之委員、使用者代表委員の井上智子委員が欠席、公益代表委員の水島郁子委員は、所用のため遅れて参加されると伺っております。
 また、今回もオブザーバーとして、経済産業省資源エネルギー庁電力・ガス事業部、筑紫正宏電力基盤整備課長に御出席いただいております。
 それでは、定足数等について御報告をいたします。
 本日の出席委員は10名となっており、労働政策審議会令第9条では、委員全体の3分の2以上の出席又は公労使各側委員の3分の1以上の出席が必要とされているところ、定足数は満たしておりますことを御報告申し上げます。
 最初に、本部会の「部会長・部会長代理の選出について」でございます。
 労働政策審議会令第7条第4項において「部会に部会長を置き、当該部会に属する公益を代表する委員のうちから、当該部会に属する委員が選挙する」とされているところ、本部会で本審の委員でいらっしゃるのは中窪委員のみでございますので、中窪委員に部会長をお願いいたしたいと思います。
 それでは、ここからは、中窪部会長に進行をお願いしたいと存じます。よろしくお願いいたします。
○中窪部会長 皆様、おはようございます。
 改めて部会長を拝命いたしました。引き続き、委員の皆様の御協力を得ながら本部会の議案について進行していきたいと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。
 部会長代理ですが、労働政策審議会令第7条第6項に「部会長に事故があるときは、当該部会に属する公益を代表する委員又は臨時委員のうちから部会長があらかじめ指名する者が、その職務を代理する」と規定されております。
 本日は御欠席でありますけれども、引き続き、藤村委員に部会長代理をお願いしておりますので、御了解をよろしくお願いいたします。
 カメラ撮りはここまでとさせていただきます。
 それでは、議題の「これまでの議論を踏まえた論点の整理③」について、事務局より、御説明をお願いいたします。
○労働関係法課長 それでは、お手元にございます資料1について、御説明を申し上げます。
 こちらの資料につきましては、これまで用いておりました論点整理を追記、また、一部修正するという形で御用意をしておりますので、変更点を中心に御説明申し上げます。
 まず、スト規制法の法的位置づけの2つ目の○です。
 スト規制法の法的効果とその役割について、前回の部会において事務局から御報告を申し上げた内容を基に記載をしております。
 スト規制法第2条の条文上は、争議行為が一律に禁止されている国家公務員法と同様に行為を規制する規定ぶりになっておりますが、国家公務員等は争議行為の正当性の有無にかかわらず、全ての争議行為が認められておらず、争議行為をした場合の懲戒規定があること。
 これに対して、スト規制法は、その対象を正当性が認められない争議行為に限っており、罰則等も規定されていないことから、正当性が認められない争議行為を確認的に規定した行為規範として示すことによって、保護法益である国民経済及び国民の日常生活に支障が生じないようにする役割を持った法律であると考えられるというものを追記した上で、論点1ですが、これまでの議論を踏まえまして、新たに矢印以下のものをお示ししております。
 スト規制法の法的効果は行為規範であり、それを示すことで保護法益を守るための予防的役割を担っていると解されるが、スト規制法の必要性については、論点2以降の状況、その他の措置による代替可能性、保護法益に係る視点、消費者・需要家からの視点を含めて検討すべきではないか。
 おめくりいただきまして、2ページにありますけれども、参考といたしまして、別添1に、第1回の本部会に提出させていただきました資料4を抜粋して再掲させていただいております。
 こちらの資料は、平成27年に出されておりますスト規制法の解釈に係る通達の概要でございます。
 別添2といたしまして、当該通達の本文をおつけしております。この別添2を御覧いただければと思いますけれども、こちらは、平成27年に発出されたものでございます。
 1として、その発出の趣旨が書かれておりますが、これは平成27年の部会報告書におきまして、スト規制法第2条において禁止される争議行為に関する解釈通知については、現在の電気事業の状況や今後の電力システム改革等に伴い、業務内容の変化が見込まれることも踏まえて、必要な見直しを行うべきとされたことを受けて発出されたものでありまして、昭和28年及び昭和52年の通知を一本化したものでございます。
 ざっと内容を概観いたしますと、2といたしまして「電気事業の定義」という項目がございます。
 こちらは、法律第2条の規定をなぞって示したものでございまして、次の3として「第2条の解釈」ということで、本法は、特定の業務における争議行為を一律に禁止しているのではなく、具体的な争議行為が第2条にいう行為に該当するか否かについて、専ら当該行為が発電、送電、給電、変電及び配電に直接に障害を生じさせる客観的具体的な可能性があるか否かにより決する旨が記載されておりまして、以下、本条に違反する行為、また、本条に違反しない行為といったものが規定されている構成の通達になっております。
 平成27年の部会でも、この通達の議論がございましたことから、今回参考として資料を添付しております。
 2ページ目にお戻りください。
 2の「電気及び電気の安定供給を取り巻く状況の変化等」につきましては、前回、資源エネルギー庁から電力システム改革の検証結果の御報告がございましたので、それを踏まえまして、ダイジェストした概要を書かせていただいております。
 1つ目のポツには経緯を書いておりまして、2つ目のポツには検証における現状の評価ということで、広域的な電力需給・送配電ネットワーク整備や700社を超える小売事業者の参入による料金メニューの多様化等について評価できるとされた一方で、課題といたしましては、3つ掲げておりまして、DX等により需要が増加する見込みの中で供給力の維持・確保、2つ目として、国際的なカーボンニュートラルへの対応の加速化、3つ目として、地政学的な環境の変化に伴う国際燃料価格の高騰をはじめとする様々なリスクへの対応が挙げられていること。
 その上で、安定供給確保を大前提とした電源の脱炭素化の推進、電源の効率的な活用に向けた系統整備・立地誘導と柔軟な需給運用の仕組構築、電源・系統への投資に対するファイナンス等への対応の方向性が示された旨を書いております。
 この検証を踏まえて、以下、議論をしているということで記載が続いておりますが、次の「電気の特殊性」の項目については、従前から2つ小見出しを入れておりまして、1つ目が「物理的性質における特殊性」、2つ目として「国民生活やエネルギー構成比における電気の重要性」というものを加えております。
 論点2としましては、矢印以下を改めておりまして「電気の特殊性については、物理的特殊性のみならず、国民生活やエネルギー構成比における位置づけを含め平成27年部会報告からの変化を評価しながら検討し、その上で、スト規制法の必要性を検討すべきではないか」としております。
 おめくりいただきまして、次のページの「電気の安定供給の重要性」についてです。
 こちらにつきましても、前回の資源エネルギー庁からの御報告も踏まえまして、少し追記をしております。
 2つ目のポツの最後の文章ですけれども「また、電源と需要の状況を踏まえた形での系統の効率的な整備も求められる」こと。
 そして、3つ目のポツとして最後の文章「こうした様々な不確実性を念頭に、電気の安定供給の確保を進める必要がある」。
 これを追記した上で、論点3としまして、矢印以下に改めております。
 「電気の安定供給確保に係る課題の困難度が高まる中、安定供給確保のためのリスクマネジメントの方策を、社会の安定や国民生活における安心といった観点も含めながら安定供給を阻害するリスクや法律が持つ社会へのメッセージ性も考慮して検討し、その上で、スト規制法の必要性を検討すべきではないか」としております。
 次ですけれども、これまでは複数の論点を分けておりましたが、議論のしやすさ等を念頭にまとめて記載をさせていただいております。
 その上で、電気事業における労使関係の3つ目のポツのところを追記しております。「引き続き良好な労使関係を維持しながら電気の安定供給に努めていくという点について、労使の認識は一致している」ということで、これまでの議論を踏まえて、この点を追記しております。
 また、おめくりいただきまして、電気事業者間の競争環境についてですけれども、2つ目のポツといたしまして、電力システム改革により発電事業の自由化がなされ、様々な事業者が参入したが、発電設備の大半については、旧一般電気事業者等が保有していること。また、再生可能エネルギーの導入に伴う火力発電の稼働率・収益性の低下により休廃止が進展するとともに、現在も発電事業者による電源の新設・リプレースに向けた設備投資は容易ではない状況であることを追記しております。
 また、事業者間の連携体制につきましても1つ目のポツとして、電力システム改革により、地域間連系線や、周波数変換設備の増強、需給ひっ迫の地域間融通などの取組が進展するなど、広域融通の仕組みの構築に一定の進捗があるとされていることを追記しております。
 その上で、論点4として矢印以下を改めております。
 「平成27年部会報告で取り上げられた電気事業の業務の自動化や代替性、労使関係、競争環境について、平成27年部会報告からの変化を評価した上で、スト規制法の必要性を検討すべきではないか」としております。
 なお、参考2としまして、これまでの部会でいただきました主な御意見をまとめておりますので、本日の御議論に際して、必要に応じて適宜御参照いただければと存じます。
 御説明は以上です。
○中窪部会長 ありがとうございました。
 前回までと比べて論点に文章を加えたり、あるいは後ろのほうについては、むしろ統合したりという変化がございます。
 それから、新しい資料として、この通達の本体を出していただきましたが、これらにつきまして、論点ごとに御議論いただきたいと思います。
 まず、論点1につきまして、御意見、御質問がございましたらお願いいたします。オンラインで御参加の委員につきましては、御発言の希望がある場合にはチャットで発言希望と書いてお知らせください。いかがでしょうか。
 では、冨髙委員、お願いします。
○冨髙委員 御説明ありがとうございました。
 基本的な主張は、これまでの部会での発言と同様になりますが、これまで本部会で5回の議論を重ねてきたものの、いまだに「なぜ労調法では不十分なのか」という根本的な疑問に対する十分な根拠が全く示されていないと労働側としては捉えています。
 明確な根拠がない以上、労働側としては、スト規制法の廃止以外の結論はないと考えています。
 この点、廃止をする以上は、廃止するに足りる立法事実が必要という意見もあり得るかもしれませんが、そもそもスト規制法が制限している労働基本権は、我々労働者にとっては非常に重要、かつ、最も根源的な権利です。
 そうした重要な権利を、スト規制法という屋上屋の規制によって不当に制限し続けるのであれば、それこそ合理的な根拠が必要であると考えています。
 また、論点の整理の中では、2つ目のポツで、スト規制法と労調法は目的が異なるという整理がされておりますけれども、この整理が果たして妥当なのかというと、我々はそのようには捉えていません。
 労調法には、36条に「工場事業場における安全保持の施設の正常な維持又は運行を停廃し、又はこれを妨げる行為は、争議行為としてでもこれをなすことはできない」と規定がございますけれども、スト規制法立法当時の議事録を読んでみると、労調法36条との関係についても国会で議論があったことが分かります。
 そこでの政府の答弁は、スト規制法は、労調法の36条などによって、社会通念上不当または妥当ならざるものとして禁止されている行為を明確化したものという内容であって、労調法とスト規制法で目的が違うという答弁は立法当時にされているわけではないのです。
 当時の立法過程からしても、この2つの法律というのは、国民生活への影響などに鑑みて、正当ではないストを制限する趣旨で同じであると考えています。
 なぜ、趣旨が同じであるにもかかわらず、別法として立法したのかと言えば、それは皆様も御承知のとおり、電産スト、炭労ストという先鋭的な行動が起こったから禁止行為を明確にしたということなのだと思っています。
 皆様も御承知のとおり、当時と現在とでは時代背景も大きく変わっており、また、良好な労使関係が築かれているということは、本部会の総意であると考えております。
 そういった中、良好な労使関係に基づく自主規制も図られていることが現状であると考えておりますので、労調法とダブルで規制を重ねるようなスト規制法というのは、既に役割を終えたものとして廃止すべきであると考えています。この点について改めて申し上げておきたいと思います。
 以上です。
○中窪部会長 ありがとうございました。
 では、松元委員、お願いします。
○松元委員 御説明ありがとうございました。
 これまでの議論経過を踏まえましても、スト規制法によって、旧一般電気事業者及び卸電気事業者で働く労働者に限定して屋上屋の規制を重ね、憲法が保障する労働基本権を制約する合理的根拠はないと私も考えております。
 また、スト規制法の対象となっている事業者の関係労使間の労働協約等においては、電気の供給に影響を及ぼす可能性がある労働者は争議行為の対象外としていること、また、それによらない場合でも電気の供給に障害を生じさせない措置を取ることを定めております。
 さらに、これまでも申し上げてきましたとおり、電力労働者は常日頃から電気を安定的に供給するために業務に当たっている中で、自らが電気を止めるという行為はできるものではないと考えています。もし、そのような行為があった場合は、職場、組合員に理解されない争議行為を行ったとして組織の崩壊を招くわけでありまして、そのことは過去の歴史に学んでおります。
 こうした代替可能性、保護法益を確保できる体制を長年にわたり構築してきている現状を踏まえましても、労調法上の公益事業規制に服することで十分対応が可能であり、スト規制法を廃止し、電力労働者の労働基本権を回復すべきと考えております。
 以上です。
○中窪部会長 ありがとうございました。
 石橋委員、お願いします。
○石橋委員 ありがとうございます。
 私は電力産業の出身ではございませんが、労働者の代表として、スト規制法によって電気事業と石炭鉱業で働く労働者の労働基本権が制約されている現状は理解し難いです。
 冨髙委員からもございましたが、労働基本権は労働者にとって最も大事な権利であり、そうであるからこそ等しく保障されるべきです。
 この点、電気事業は公益性が高く、特殊性があるという理屈があるのかもしれません。しかし、これも繰り返しになりますが、公益性という意味で言えば、電気事業は、他の公益事業とともに労働関係調整法の規制に服しています。
 また、特殊性という意味で申し上げますと、例えば、情報通信なども貯蓄はできず、ひとたび通信が停滞すれば、大きな影響がございます。
 昨年9月の本部会で報告がありましたが、諸外国に目を向けても、電気事業にのみ特別の規制を課している事例はございませんでした。この状況が全てを物語っているのではないでしょうか。電気の特殊性、公益性が諸外国と日本で違うということもないということからすれば、国際的に見ても、スト規制法によって、公益事業の中でも電気事業と石炭鉱業の労働者に限って規制を設ける我が国の規制方法が適切とは言えないのではないかと思います。
 以上です。
○中窪部会長 ありがとうございます。
 では、坂下委員、お願いします。
○坂下委員 発言をさせていただきます。
 これまでも、この論点1につきましては、考え方を述べさせていただいており、参考資料2に詳細に記載されています。
 今回改めて、私のほうから追加で申し上げることは特にございません。繰り返し発言することは控えたいと思います。
 以上です。
○中窪部会長 ありがとうございます。
 それでは、戎野委員、お願いします。
○戎野委員 御説明ありがとうございました。
 前回の部会でも確認されておりますけれども、スト規制法の法的効果は、行為規範であるということ、また、保護法益を守るための予防的役割を果たしているということを、改めて整理していただいたところかと思います。
 また、今までの労側・使側の見解においても、視察で現場を拝見させていただきましても、この法律ができたときの労使関係と、今日の姿というのは、本当に全く異なっていると言ってもいいほど違っております。まさしく現在は、労使関係は安定し、成熟しており、そのために労使が、これまで非常に尽力されてきたという背景も、いろいろなところで感じ取ったところでございます。
 そして、今後に向けても、高い使命感を持って安定供給に対応していくということで、労働協約という自主的な取組もなされており、視察でも働く姿を目の当たりにさせていただいて、本当に敬意を表したいなと思った次第です。
 ただ、先ほど申し上げたように、この法的効果というものがあります。そこで、この法律を解釈する解釈通達の意義のところ、まさしく先ほどのことが示されているわけですが、この労使関係の背景がかなり変わっているということがありますので、通達にありますような禁止とか違反とか、その当時の背景の中で出てきた表現というのは、今はふさわしくないのかなと感じるところです。
 したがいまして、これまでの部会の議論を踏まえて、解釈通達についても、修正を含めて、少し検討してみるのはどうなのかと感じたところであります。
 以上です。
○中窪部会長 ありがとうございました。
 そのほか、いかがでしょうか。
 よろしいですか。私は、先ほどの冨髙委員の御意見を聞いていて、ふと思ったのですが、労調法との関係といっても、前回の報告書では労調法の緊急調整と違うのだということが書いてあって、今回の資料もそれに基づいて書かれている気がするのですけれども、先ほど冨髙委員がおっしゃったのは、安全保持施設ですか、労調法36条との重なりをおっしゃっていた気がするので、もう少しここは追加して検討する必要があるのではないかと思いました。事務局のほうでお考えいただければと思います。
 以上も含めて、今、いろいろ出ました御意見について、事務局のほうから論点1の段階で、何か御発言等はありますか、
○労働関係法課長 論点1につきましては、これまで御意見をいただいていること、そして、本日改めて労側から御意見をいただいたことや、戎野委員、中窪部会長からの御指摘に加え、この後、本日の部会でいただく御意見等を踏まえながら、検討をさらに進めたいと考えております。
○中窪部会長 ありがとうございます。
 それでは、次の論点2につきまして、御意見、御質問等がありましたらお願いいたします。
 河野委員、お願いします。
○河野委員 論点2では「電気の特殊性については、物理的特殊性のみならず・・・平成27年部会報告からの変化を評価しながら検討し、その上で、スト規制法の必要性を検討すべきではないか」とありますが、今般の第7次エネルギー基本計画、さらにはシステム改革の検証では、これまでのグリーントランスフォーメーションの議論を踏襲し、S+3Eの基本原則のもと、エネルギー安定供給を第一義として整理され、エネルギーの安全保障の重要性も改めて明確化されました。
 引き続き、様々なエネルギー政策に関する課題に対して、労使が連携を図りつつ取り組んでいくことが必要であり、今後も電気の安定供給の重要性に対する労使の認識は極めて高く、国民生活や経済活動を進めていく上で、その考え方には、違いはないものと認識しています。
 また、今後の電力需要が増大すること、さらには近年の大規模自然災害が危惧される中で、電力関連産業で業務に従事する者は、その変化を十分に認識するとともに、電力の安定供給に向けて、昼夜を分かたず懸命な取組が行われているところであります。
 電力の安定供給は、それらに従事する人で成り立つものであるとともに、これまで培ってきた技術、技能の維持、継承を図っていくことが何よりも重要であります。
 そのためにも、過去の労使紛争又は皆無とも言えるようなリスクだけにとらわれることなく、これからの安定供給を担う者の発展を妨げることがないよう、適切に評価を行い、対応を図っていく必要性があるのではないかと考えております。
 以上です。
○中窪部会長 ありがとうございます。
 そのほか、石橋委員、お願いします。
○石橋委員 ありがとうございます。
 先ほど、私は電力産業の出身ではないと申しましたけれども、私が所属する基幹労連は、鉄鋼や造船、それから非鉄産業等、電力多消費産業で働く仲間が集う産業別組織です。
 また、1人の国民生活者としても、電力の大切さは理解しています。だからこそ、電力の安定供給を望んでいます。
 ただ、電力の安定供給はスト規制法で達成、解決できるものではなく、エネルギー政策として考えるべきです。
 参考資料2を見てみましたが、「スト規制法によって電気の供給が止まらない、そのことは、私たちの暮らしが保障されていることと同じ意味を持つ」といった意見もあるようでございましたが、電気を消費する産業に属する労働組合の立場としては、そうは全く思いません。仮に労使関係において、何らか安定供給に関する措置が必要ということであれば、それは労働関係調整法で十分であり、スト規制法を存続させる理由にはならないと考えています。
 以上です。
○中窪部会長 ありがとうございました。
 原委員、お願いします。
○原委員 いろいろ御説明をありがとうございました。
 論点2につきましては、電力システム改革は、確かに一旦見直しが行われ、検証が行われ、次のまたステップへと進んだわけですが、決して、これで終わったわけではなく、さらに改革は続くものと受け止めております。
 その中で生活者といたしましては、やはり、今後の安定供給に向けての不安というのは払拭できない。もし、このスト規制法が撤廃されてしまった場合の社会不安や生活者の不安というのは、完全に払拭できるのだろうかという点、少々疑問に思っております。
 もし撤廃するということを検討するのでしたら、この不安解消に向けての道筋というか、理由など、丁寧な検証が必要かと思っておりますが、いかがでしょうか。
 以上です。
○中窪部会長 ありがとうございます。
 では、坂下委員、お願いします。
○坂下委員 原委員からございました御発言の内容につきましては賛同いたします。
 使側として論点2についてコメントします。前回の論点から少し修正されておりますが、物理的特殊性のみならず、国民生活やエネルギー構成比における位置づけを含め平成27年部会報告からの変化を評価しながら検討し、スト規制法の必要性を検討すべきではないかとまとめていただいておりますが、次の3ページのところにも記載があるとおり、平成27年部会報告のときに比べますと、電気の安定供給の重要性というのは高まっているという認識であり、資源エネルギー庁様にも御説明もいただきましたが、今後、さらに電気の重要性は高まっていくという認識ですので、安定供給の必要性というのは、一層高まっていると認識しております。
 以上でございます。
○中窪部会長 ありがとうございます。
 それでは、山口委員、お願いします。
○山口委員 事務局からの御説明、また、皆様からの御意見、ありがとうございました。
 特に河野委員から、今後の安定供給においても労使でしっかりと協調して、責任を果たしていくというところ、ここについては、これまでの部会と全く同様でございますが、使用者側としても同じ思いを持って安定供給の責任を果たしてまいりたいと、このように思ってございます。
 そんな中で、原委員からもございました、システム改革がまだ続く、また、事業環境も今後大きく変わっていく部分もあろうかと思います。
 そういった中で、仕事のやり方、技術革新もございます。また、今後エネルギー需要が増大する可能性が高いという中で、仕事のやり方も厳しさを増す部分もございます。こういったところ、まだまだ予断を許さない部分がございますけれども、しっかりと責任を果たして参る、その大前提となるのが労使関係であると思っておりまして、この思いは変わるところではございません。
 以上でございます。
○中窪部会長 ありがとうございました。
 そのほか、いかがでしょうか。
 論点2について、特に事務局からも、よろしいですか。
 それでは、続きまして、論点3のほうに移りたいと思います。この点につきまして、御質問、御意見がございましたらお願いいたします。
 では、冨髙委員、お願いします。
○冨髙委員 ありがとうございます。
 先ほど原委員から、これからもシステム改革が続く中で、安定供給に関する不安が完全に払拭できないという御意見もありましたけれども、石橋委員が述べられていたとおり、電力の安定供給は、労働者の根源的な権利である労働基本権をスト規制法で制約することによって達成するものなのかと考えると、労働側はそのように思っておりません。これは今までも言ってきたとおり、安定供給というのは、あくまでもエネルギー政策の中で考えるべきものであって、スト規制法を残す積極的な理由には全くならないと考えております。
 また、社会へのメッセージ性という話もありました。スト規制法にメッセージ性があること自体は完全に否定するものではありませんし、一定は理解いたしますけれども、そうであるならば、厚生労働省としてスト規制法を廃止したとしても、安定供給に影響はないというメッセージを社会に対してしっかり発信していくことこそが必要であると思いますので、意見として申し上げておきたいと思います。
 以上です。
○中窪部会長 ありがとうございます。
 松元委員、お願いします。
○松元委員 ありがとうございます。
 冨髙委員と重なる部分はありますけれども、安定供給確保のためのリスクにつきましては、これまでも申し上げてきましたが、スト規制法を維持していくことで解決できる問題ではないと考えております。今後も進められるエネルギー政策等が実効性あるものとなることが、何よりも大きな鍵を握っていると考えております。
 また、国民への不安払拭に当たっては、国の責任のもとでメッセージを発信していくことが重要であると考えております。
 そのためには、電気の重要性及び安定供給の重要性を電力労使が十分認識した上で、引き続き安定供給確保に向け、労使が連携を密にして対応していくことが何よりも重要であり、今後も協力を惜しまないことを申し上げさせていただきます。
○中窪部会長 ありがとうございます。
 坂下委員、お願いします。
○坂下委員 すみません、先ほど安定供給の話を論点2のところでしてしまいました。改めて追加することはございません、申し訳ございません、失礼いたしました。
○中窪部会長 確かにつながっている話ではありますので、そこは気になさらず。では、資源エネルギー庁のほうからお願いいたします。
○資源エネルギー庁電力基盤整備課長 資源エネルギー庁でございます。
 安定供給のところ、特にエネルギー政策としてというところは、若干双方の委員の先生方から御指摘もございましたので、エネルギー政策における安定供給というものについての基本的なスタンスというか、認識をお伝えしておかないといけないなと思っていまして、S+3Eという大きな目標を掲げて、ずっと進めてきておりますし、エネルギー基本計画も第7次まで来ています。
 他方で、そこに向けてできるだけうまくバランスを取り、特に安定供給については万全を期すというところは、本当に、非常にそのとおりで、我々は、そのようにやってきているわけですけれども、他方で、これまでの歴史の中で、ありとあらゆることが起こり得る世界の中で、最大限努力をするということだということも、歴史の教訓として我々は胸に刻まないといけなかった立場であります。
 何が言いたいかというと、リスクがゼロになるということはないと。それは、もちろん需要の見込みを立て、そこに向かって必要な設備投資をし、その設備がちゃんと使えるようにスケジュールを立てて、マネジメントし、運用スケジュールを立てて、そこで働いておられるいろいろな方々のお気持ちをそろえてしっかりやっていくということですし、そういうことについて需要家の皆様方にも御協力をいただいて、場合によっては、その需要を下げていただくということもお願いした経緯もございます。
 ただ、どこまでいっても、リスクがゼロになることはないので、最大限下げるように電力事業者は当然のことでございますし、場合によっては需要家の皆様方にも御協力いただきながら、トータルとして必要な方に電気をお届けし続けられる状況をつくっていくというのが、エネルギー政策、電力政策の立場ということなのだと思います。
 やはり我々の反省も込めて、しっかりリスクがゼロにはならないけれども、そこに向かってありとあらゆる努力を積み重ねていくということを、旨としているということだけ、お伝えができればと思います。
 私からは以上です。
○中窪部会長 ありがとうございました。
 原委員、お願いします。
○原委員 ありがとうございます。
 この論点3は、先ほどの論点2ともつながる部分でございますけれども、絶対的な安定供給だけが安心な社会をつくるためのものとは考えておりませんで、むしろ安定供給に万が一のことがあったとしても、それに対応して、きちんとした国民生活を守るための何か対策があれば、さらに、そういったものが必要なのではないかと思っております。このスト規制法のリスク回避という部分のリスクが安定供給に対するリスクだけではなくて、社会的な不安、ここで申し上げるのはどうかと思うのですが、それこそ海外、外国から攻められたり、何か国内でよくないテロ行為のようなものが起こるなど、そういった不安定さにもつながるのではないかと少し懸念しております。それらを含めて、何か社会へのメッセージ性というのをよく考えたいと思っております。
 以上です。
○中窪部会長 ありがとうございます。
 冨髙委員、お願いします。
○冨髙委員 ありがとうございます。
 エネ庁から「どこまでいってもリスクがゼロになることはない」という御発言がありましたが、それはそのとおりだろうと思います。ただし、リスクがゼロになることはないということは、電力だけでなく全てのエネルギー政策、また、今、原委員がおっしゃったような様々なものについて言えることであると思います。そうであるならば、起きてもない不安に対して、労働者にとって極めて重要な労働基本権を制限するという形で対応するというのは、ナンセンスであると思います。この点は意見として申し上げておきます。
 以上です。
○中窪部会長 ありがとうございます。
 河野委員、お願いします。
○河野委員 先ほど論点2で意見を述べたときにもお話をさせていただいたのですが、安定供給に対するリスクは、各委員がおっしゃるとおり、様々なリスクがあると思っております。
 その中で、前回の本部会でもお話もあったように、例えば、ストによるリスクというものがどの程度の評価に値するものなのか、また、今、安定供給を図る中では国際情勢も含めていろいろなリスクがあります。その中でストをリスクとしてどのように評価していくのかという点を、今後この検討を進めていく中で意識しつつ議論していくことが重要ではないかと考えております。リスクがゼロではないというのは重々承知しているところでありますけれども、これまでの成果として、リスクの度合いを評価した上で本部会の中で一定の方向性を出していく必要性があると思っています。この点も、ぜひともよろしくお願いします。
○中窪部会長 ありがとうございます。
 ほかによろしいでしょうか。
 やはり話がどうしてもつながっている感じで、電気の特殊性、安定供給、それから、それを供給するいろいろな体制とか、労使関係ということになりますけれども、残りの全体を、この論点4としてまとめておりますので、そこについて御意見、御質問等ございましたら、お願いいたします。
 それでは、戎野委員、お願いいたします。
○戎野委員 これまでの御議論で、やはり安定供給をより確実にしていくこと、また人々の不安をできる限り軽減していくこと、そして、リスクをどう捉えていくのかということが非常に重要だということを、改めて、確認できたところではないかと思います。
 そうした中で、電気事業の業務の自動化とか、代替性、こういったものは、今、言った不安材料になるようなものを低減していく、あるいは安定供給をより確実に進めていく、この一翼を担っていくものではないかと考えました。
 そのため、この10年間の変化というのは、しっかりと見極めていく必要があると思います。とりわけ、私自身、大変心に残っているのは、広域連携が非常に進められ、また、今後も進展していくというお話であります。こういった変化についての論点は、今後とも注視して、検討していくべきではないかと、改めて思った次第です。
 以上です。
○中窪部会長 ありがとうございます。
 冨髙委員、お願いします。
○冨髙委員 論点4ではなく先ほどの論点1のところで、戎野委員から、安定的な労使関係や労働協約などの自主規制に関する取組の積み重ね等を踏まえたときに、今の解釈通達にある、禁止や違反という表現がふさわしくないため通達の修正を含めて検討してはどうかという御提言がありました。確かにそういった言葉がふさわしくないというのはあると思いますが、我々は、屋上屋であるスト規制法を廃止すべきと考えております。そういった意味で言えば、解釈通達の中身がどうということではなくて、やはりスト規制法そのものを廃止することが、本質的な解決策であると考えております。この点については、意見として申し上げておきます。
 以上です。
○中窪部会長 ありがとうございます。
 4だけに限らずに、もう最後になりましたので、改めて1から3も含めて御意見、御質問がありましたら、お願いしたいと思いますが、よろしいですか。
 では、いろいろな御意見をいただきましたので、改めて事務局のほうから、全体を通じて何か発言はありますか。
○労働関係法課長 ありがとうございます。
 これまで、累次で御議論をいただいてきております中で、繰り返し出てきている御指摘、論点がありました。
 また、今日新しく先ほど部会長からも事務局に御指示がありました労調法の整理、労働側から先ほど言及がありましたこれまでの成果や評価をどう捉えるのかといったこと、また、戎野委員からございました、これまでの10年の変化を見極めて、そこをしっかりと評価しながら検討すべきといったことを改めて事務局として受け止めさせていただきました。
 この議論をどのように今後進めていくかは、よく検討をしながら進めてまいります
○中窪部会長 ありがとうございました。
 今回は第6回目ということで、論点を改めて整理した上で深掘りの議論をいたしましたが、事務局には、今、いただきました御意見等踏まえて、次回の準備を進めていただきたいと思います。
 それでは、次回の日程について、事務局より御説明をお願いします。
○労働関係法課長補佐 事務局でございます。
 次回につきまして、日時・場所については調整の上、追って御連絡をさせていただきます。
 以上でございます。
○中窪部会長 ありがとうございます。
 第6回の部会は、これで終了といたします。
 お忙しい中、御参集いただき、どうもありがとうございました。