2025年6月16日 第200回労働政策審議会労働条件分科会 議事録

労働基準局労働条件政策課

日時

令和7年6月16日(月) 13:30~16:00

場所

AP虎ノ門 Aルーム
(東京都港区西新橋1-6-15 NS虎ノ門ビル 11階)

出席者

公益代表委員
川田委員、神吉委員、首藤委員、水島委員、山川委員
労働者代表委員
亀田委員、櫻田委員、椎木委員、冨髙委員、藤川委員、松田委員、水野委員
使用者代表委員
鬼村委員、佐久間委員、鈴木委員、田中委員、鳥澤委員、兵藤委員、松永委員
事務局
岸本労働基準局長、尾田審議官(労働条件政策、働き方改革担当)、田中審議官(労災、賃金担当)、佐々木総務課長、澁谷労働条件政策課長、松永労災管理課長、田上労働条件確保改善対策室長、大野賃金課賃金支払制度業務室長、中島労働条件政策課長補佐、八木労働関係法課長補佐、下田労働条件企画専門官

議題

(1)労働政策審議会労働条件分科会運営規程の改正について
(2)「経済財政運営と改革の基本方針2025」等について(報告事項)
(3)労働基準関係法制について

○労働条件政策課長 定刻となっておりますが、分科会長がまだ到着しておりません。また、分科会長代理の水島先生におかれましても遅れて御参加の予定となっております。
 本来、分科会長と分科会長代理のいずれもいない場合には労働条件分科会の開催はできません。しかしながら、皆様おおむねお集まりでもございますので、資料の説明を先にさせていただきまして、分科会長の到着を待たせていただければと存じます。
 本日の議題は幾つかございますけれども、1点目の「労働政策審議会労働条件分科会運営規程の改正について」につきましては、採決を伴いますので後ほどに繰り下げてさせていただきまして、まず、議題2「『経済財政運営と改革の基本方針2025』等について」は報告事項でございますので、こちらの資料の説明を先にさせていただければと思います。
 それでは、議題2「『経済財政運営と改革の基本方針2025』等について」につきまして、事務局から資料の御説明を申し上げます。
○総務課長 労働基準局総務課でございます。
 まず、資料2につきまして御説明させていただきたいと思います。「経済財政運営と改革の基本方針2025」、これらをはじめとして閣議決定が先週の金曜日になされております。このうち労働条件分科会に関連するものについて御説明させていただければと思います。
 「経済財政運営と改革の基本方針2025」から説明させていただきます。資料の2ページになりますが、諮問会議の概要、議員の名簿などになっております。
 資料の3ページからが本文になります。3ページ目は最低賃金や賃金の関係について記載がなされております。最低賃金について、2020年代に全国平均1,500円という高い目標の達成に向け、たゆまぬ努力を継続することとし、官民で、最大限の取組を5年間で集中的に実施するといったことをはじめとして最低賃金の関係などが記載されております。
 資料の4ページは三位一体の労働市場改革などについて書かれております。「ジョブ型人事指針」、多様で柔軟な働き方、それから、この多様で柔軟な働き方の推進のところに働き方改革関連法施行後5年の総点検を行い、働き方の実態及びニーズを踏まえた労働基準法制の見直しについて検討を行うと、労働条件分科会で今御議論いただいているところに関係する記述があります。
 次のページからが「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025年改訂版」になります。最初は構成員の名簿になっております。
 7ページからが本文になっております。いくつか関係することが記載されております。簡単にかいつまんで御説明しますと、7ページの上が労働基準監督署で監督指導等を行っておりますけれども、この機会をとらえて労務費転嫁指針の活用や公正取引委員会等の窓口の活用も含め、働き掛けを実施することが書かれております。
 下になりますが事業承継・M&A等の関係でございます。労働者の雇用の維持、働く環境の重要性に鑑み、事業承継・M&A時において、労働者の保護に関する法令等にのっとった対応を徹底するということが記載されております。
 資料の8ページは最低賃金の関係になります。先ほどの骨太の方針と重なる部分も多いですので割愛させていただきます。
 資料の9ページが人への投資・多様な人材の活躍推進の柱になります。上の段の真ん中辺になりますが、三位一体の労働市場改革の関係、それから、働き方改革の総点検や副業・兼業の一層の推進を行うということが記載されております。
 9ページの下が「ジョブ型人事指針」について記載されております。
 10ページは副業・兼業の推進でございます。副業・兼業に関する様々な課題を検討の上、労働者の健康確保を前提としつつ、副業・兼業における割増賃金の支払に係る労働時間の通算管理の在り方について、労働政策審議会において検討し、結論を得るということが記載されております。
 10ページ目の下は同一労働・同一賃金の関係で、労働基準監督署において点検要請書の対面交付などを行っておりますが、同一労働・同一賃金制の施行強化の観点から、労働基準監督署の一層の活用策を検討するということが記載されております。
 11ページ目、一番上は再度の記載になりますが、働き方改革関連法施行後5年を踏まえた状況の把握と総点検というところで、誰もが健康で、意欲と能力を発揮して働きやすい労働環境の下で生産性の高い多様で柔軟な働き方を推進するとともに、働き方改革関連法施行後5年の総点検を行い、働き方の実態とニーズを踏まえた労働基準法制の見直しについて労働政策審議会で検討するとの記載がございます。下の②で建設業関係の記載がございます。また、③は物流業の記載になります。
 次からが規制改革実施計画になります。
 13ページは委員の名簿になるので、のちほど御参照いただければと思います。
 14ページ、スタートアップの柔軟な働き方の推進ということで、様々な調査を行った上でございますが、その結果を踏まえ、裁量労働制の適正な活用等、スタートアップにおける柔軟な働き方に資する検討を開始するとされております。
 それから、bのところでございますが、役職者等の管理監督者への該当性の判断の考え方の更なる明確化について検討し、結論を得次第、必要な措置を講ずるとされております。
 15ページが副業・兼業の部分でございますが、aの部分、先ほど新資本のところでも記載があった割増賃金の支払に係る文言がこちらでも記載されております。
 bのところでございます。健康確保の在り方について諸外国の状況も参考にしつつ、安全配慮義務、労働者から使用者への情報提供の方法等も念頭に、労働政策審議会において検討し、結論を得次第、ガイドラインの見直しなど、所要の措置を講ずることとされております。
 17ページですが、時間単位の年次有給休暇制度の見直しでございます。年次有給休暇の本来の趣旨である心身の疲労回復等のために、まとまった日数の休暇を取得する機会を引き続き確保することを前提としつつ、年次有給休暇制度の在り方について時間単位年休制度の活用実態も踏まえ、時間単位年休の上限を、例えば年次有給休暇の付与日数の50%程度に緩和することなどの見直しの要否も含め、労働政策審議会において検討し、結論を得るとされております。
 18ページ、賃金のデジタル払い、前回の分科会でも御議論いただいているところと関係するものでございますが、aのところは、これまでに申請中の資金移動業者に対して年度内に速やかに指定を行うことができるよう、適切な助言等を行うとされております。
 bの部分でございますが、今後の指定審査を迅速に行う観点から、指定代替口座の有効性を事業者が確認する頻度について、事業者のシステムやサービス内容も踏まえつつ、半年から1年程度の合理的な期間ごとであれば指定要件を満たすこと等を明確化する、それから、標準処理期間に含まれない相談による時間も含めて合理的に事業者が手続に要する時間を予見できるよう、指定プロセス全体を明確化するとされております。
 19ページ、cですが、以下の各事項、①の資金移動業者の破綻時の資産保全要件、②指定代替口座の必置要件、③その他の要件になりますが、こちらの見直しの要否も含めて検討し、結論を得次第、速やかに必要な措置を行うとされたところでございます。
 以上、先週の金曜日、13日に閣議決定などされたものについての御報告でございます。
○労働条件政策課長 分科会長が到着されましたので、ここから改めて分科会を始めさせていただければと思います。では、山川分科会長、よろしくお願いいたします。
○山川分科会長 到着が遅れまして大変申し訳ありませんでした。
 ただいま資料№2の説明が行われたと思いますけれども、この点について御質問・御意見があればお願いしたいと思います。いかがでしょうか。
 松田委員、お願いします。
○松田委員 では、私から経済財政運営と改革の基本方針2025等について発言させていただきます。
 骨太の方針や新しい資本主義のグランドデザインなどにおいて、多様で柔軟な働き方や多様な人材の活用促進といった観点から提言がなされていますが、多様な人材が活躍できるようにするための一丁目一番地は、働く者が心身ともに健康で、なおかつ豊かに暮らし、働くことができるようにすることであると考えております。その実現に向けましては、働き方改革の職場への定着に向けた一層の取組に加えまして、まさに本分科会で議論している労働時間規制を労働者保護の観点から見直すことによって、法制面においても労使の取組をさらに後押ししていくことが重要であると考えております。
 また、資料2の14ページの規制改革実施計画では、「スタートアップの柔軟な働き方」の検討も提起されていますが、スタートアップにおける管理監督者の該当性判断や専門業務型裁量労働制などの運用の明確化につきましては、昨年9月に解釈通知が発出されたばかりであることから、まずは、その徹底を図るべきです。また、形式的に新会社を設立するなどの制度濫用も懸念されますので、さらなる検討などは必要ないと考えております。そもそもスタートアップに限定して裁量労働制や管理監督者を含めた何らかの柔軟な働き方を認めるべきではないということを意見として申し上げておきたいと考えております。よろしくお願いいたします。
 私からは以上です。
○山川分科会長 御意見ありがとうございます。
 では、鈴木委員、お願いします。
○鈴木委員 私からも閣議決定事項について幾つか発言をさせていただきたいと思います。
 労側委員からご指摘があった、健康で働けることが重要ではないかという点は、まさにおっしゃるとおりであります。一方で、意欲と能力を発揮して働きやすい環境づくりという視点も併せて検討していくべきと思っております。
 その上で、資料2の11ページで紹介されています新資本実行計画では、建設業と物流業の働き方改革に向けた取組強化がうたわれており、例えば建設業では「週休2日等休日を考慮した工期設定の徹底などを促す」とされています。
 長時間労働の是正に向けては商慣行の見直しが極めて重要なテーマだと思っておりますので、経団連といたしましても関係する各企業に適切な工期設定への協力を呼びかけるとともに、トラック運送に関しては発荷主の計画的な納品による納品回数の削減、あるいはパレット化による荷積み・荷下ろしの時間短縮、適正な対価を伴わないような着時間指定及び倉庫荷役といった附帯業務の見直しなどについて引き続き呼びかけてまいりたいと思っております。
 なお、骨太方針では、業種別の省力化投資促進プラン、それに基づくきめ細やかな支援策の充実、それから、支援体制の整備を通じた中小企業・小規模事業者の生産性向上がうたわれています。長時間労働の是正、働き方改革を進めていく上で、こうした規制的手法ではない取組も極めて重要ではないかということを改めて強調させていただきます。
 また、規制改革実行計画では、スタートアップの柔軟な働き方の推進が取り上げられています。スタートアップで働く方の就労実態をしっかりと調査した上で、管理監督者性の一層の明確化、裁量労働制の適正な活用を含めた必要な検討が進むことを私としては期待しております。
 私からは以上でございます。
○山川分科会長 ありがとうございます。
 ほかに御質問・御意見等はございますでしょうか。
 櫻田委員、お願いします。
○櫻田委員 私からは2点ほど、新しい資本主義のグランドデザインについて発言させていただければと思います。
 資料の7ページの下の3ポツのところ、事業承継・M&Aにおける現行法令等にのっとった対応の徹底は、着実に進めていただきたいと思っています。その上で、M&A等の推進を図るだけではなくて、そうした組織再編時における労働者保護ルールの法整備を「両輪」として対応することが欠かせないと思っております。それは雇用等の維持だけではなく、組織再編そのものをめぐる労使紛争の未然防止の観点からも重要であり、また、労働者の積極的な協力が得られることで、再編後のスムーズな事業運営や事業価値の向上にもつながると考えます。
 現在、組織再編部会でも議論がなされているところだと思いますが、事業譲渡をはじめとして、組織再編時の労働者保護ルールの法制化に向けた検討が必要であるということは、改めて申し上げておきたいと思っています。
 もう1点は副業・兼業についてです。このグランドデザインの中で、本日の議題にもありますけれども、副業・兼業について言及がございます。後ほどの議題に関する資料の中でも非正規雇用の掛け持ちによって生活費を得ることを目的に副業を行っている方が非常に多いことが明らかになっているわけです。そうした方々が労働時間を通算して法定労働時間を超えて働いても割増賃金が支払われず、さらなる生活費の稼得のために別の仕事を増やすということを「多様な人材の活用」の名の下に労働政策として推進すべきなのかということは、極めて疑問に思うところです。
 現在、副業・兼業を行っている方たちの実態をしっかり見据えて、議論をしていくべきだと思っております。
 私からは以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 ほかにはいかがでしょうか。
 それでは、亀田委員、お願いします。
○亀田委員 資料2の11ページの新しい資本主義のグランドデザインでは、かつて時間外労働等の上限規制の適用猶予業種でありました建設業・物流業の働き方改革が掲げられております。先ほど鈴木委員からも建設・物流への対応強化ということで御発言がありました。建設業におきましては、昨年4月より一般則に移行しまして一定の取組は進んでいるものの、いまだに建設現場の約4割で月45時間超の残業があるとの報道もなされています。第三次・担い手3法に基づく標準労務費の確保や適切な価格転嫁、労働者の処遇改善や休日確保、適切な工期設定などと併せて取り組むことが重要であると考えます。
 また、物流業についてですが、国交省の2024年度調査によりますと、トラックドライバーの1運行当たりの平均拘束時間は2020年度よりも約40分減少したものの、荷待ち時間と荷役時間の合計は横ばいとなっています。
 私ども運輸労連において、昨年6月に「ドライバーの安全と労働環境等に関するアンケート」と題して調査を行い、4,510の回答をいただきました。この中で、平均的な待機時間についての設問では、約5割が1時間以上の荷待ち時間があると回答しております。また、待機する場所についても荷主の構内で待機できると答えたのが約4割に対して、近くの路上、コンビニの駐車場を使用させていただいているというような回答が3割を超える状況となっております。さらにこの状況は車両総重量が大きくなればなるほど荷待ち時間も長く、待機場所も確保しづらいというような傾向がございます。現場の実態としましても、まだまだ改善できていない状況が見受けられております。
 今国会において改正貨物自動車運送事業法が成立しております。この改正における適正原価の設定や真荷主の範囲の適正化など、商慣行の是正や取引適正化の取組と併せて、働き方改革をより一層推進していくことが重要でありまして、自動車運転者の一般則への早期移行の道筋をつけることも含め、長時間労働を是正する方向での見直しが必要であると考えております。
 以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 鈴木委員、お願いします。
○鈴木委員 櫻田委員から組織再編についてお話がございましたので、使用者側の立場から一言申し上げたいと思います。
 事業再編の労働者保護ルールについて法制化の御提案があったと理解しておりますが、例えば事業譲渡の場合、スポンサー会社が現れないために倒産というケースも少なからずあるという認識でおりますので、労働者保護と円滑な組織再編のバランスをどう取るかとは極めて重要な論点だと思っています。
 もちろん円滑な労使のコミュニケーションを図って紛争の未然防止をすることは大変重要なことだと理解をしていますが、法制化については極めて慎重な議論が必要だと考えていますので以上一言申し上げたいと思います。
○山川分科会長 ありがとうございます。
 ほかはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 種々御意見ありがとうございました。
 それでは、議題2の御説明を先にしておりましたが、1がまだということでしたので、議題1「労働政策審議会労働条件分科会運営規程の改正について」の議事に戻りたいと思います。
 こちらについて事務局から資料№1についての説明をお願いいたします。
○労災管理課長 それでは御説明をします。労災管理課長の松永と申します。
 労働条件分科会運営規程の改正でありますけれども、今般の改正は、労働条件分科会の下に置かれております労災保険部会の所掌事務を見直すというものでございます。
その下、2の改正の概要のところでありますけれども、労働政策審議会令の第7条第1項では、分科会は、その定めるところにより部会を置くことができるとされておりまして、この労災保険部会は、この労働条件分科会運営規程に基づきまして労働条件分科会の下に置かれているものでございます。
 この労災保険部会は、この労働条件分科会の所掌事務のうち、一つは労災保険事業に関する事項を調査審議すること、2つ目には労災保険法令、徴収法令の制定改廃について意見を述べることを所掌しております。
 一方で、労働基準法の第8章というのがありまして、こちらで災害補償のことが定められております。これと労災保険法というのはその趣旨・目的が類似しておりまして、制度的にも密接な関係にあって両者を一体として検討することが適切と考えられるわけですけれども、現状では労働基準法第8章の災害補償に関する事項というのは、条件分科会の所掌となっているところでございます。したがって、これらをまとめて労災保険部会で議論ができるように部会の所掌事務を整理したいというものでございます。
 2ページが具体的な改正案になりまして、赤字の部分が改正部分になります。第5条のところでありますけれども、分科会に労働基準法の規定による災害補償及び労働者災害補償保険に関する専門の事項を審議させるため、労災保険部会を、以下省略しますけれども、置くという形で改正をしたいというものでございます。
 今般の改正の背景については、参考資料1の2枚目を御覧いただければと思います。5年前に労働基準法を改正した際の国会での附帯決議を掲載しておりますけれども、労働基準法の災害補償請求権の消滅時効期間については、労働者の災害補償という観点から十分であるのか、施行後5年を経過した際に、労働者災害補償保険法における消滅時効期間と併せて検討を行うこととされております。同じようなものが参議院の厚労委でも決議されているところであります。この検討について労災保険部会でお願いしたいと考えているところでございます。
 改正案の説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 ただいまの御説明につきまして、御質問・御意見等はございますでしょうか。
 冨髙委員、お願いします。
○冨髙委員 基本的な方向性には異論はありませんけれども、労災保険部会において本部会での議論に関わるような内容がある場合には、議論状況などを適宜報告いただければと思います。
 以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。
 部会での議論の状況の御紹介・御報告ということですが、その点、事務局はよろしいでしょうか。
○労災管理課長 承知しました。
○山川分科会長 ありがとうございます。
 ほかに御質問・御意見等はございますか。よろしいでしょうか。
 こちらにつきましては資料の運営規程にもありますように、改廃は分科会の議決に基づいて行うとされております。そこで、ただいま説明がありました労働条件分科会の運営規程につきまして、こちらの改正案のとおり改正するということでよろしいでしょうか。御異議はございませんでしょうか。
(委員首肯)
○山川分科会長 ありがとうございます。
 それでは、改正案のとおり改正ということといたしたいと思います。
 続いて、議題3「労働基準関係法制について」でありますが、資料№3、「労働時間法制の具体的課題について③」、資料№4、「集団的労使コミュニケーションの在り方について」の2つの資料がございます。
 まず、事務局から資料№3について説明をお願いいたします。
○労働条件確保改善対策室長 事務局でございます。資料№3について御説明をいたします。「労働時間法制の具体的課題について③」ということで、前回に引き続きまして労働時間法制の中身について、今回は括弧の中にありますように副業・兼業が主題となっております。
 まず1つ目、副業・兼業に関して、2~4ページ目でございますが、現在の副業・兼業に関しまして、労働時間の通算に関してどのような規定があるのかをまとめた資料となっております。
 2ページ冒頭の部分でございますが、労働基準法では、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算をするという規定がございます。これに関しての通達が2つございますけれども、この事業場を異にする場合というのは、事業主を異にする場合も含むということで、その場合には通算した形で割増賃金を支払わなければならないということが示されております。
 3ページ目、こちらは令和2年に出した通達でございますけれども、労働時間の上限規制と関係をいたしまして、上限規制に関する単月100時間ですとか、複数月平均80時間ですとかといったような計算におきましても通算されるということが示されております。
 4ページ目、こちらはその続きでございますが、その場合の労働時間に関して、自分の事業場に関しては自ら把握すべきものでございますが、他の事業場に関するものに関しては労働者からの申告等により把握した他の使用者の事業場における労働時間と通算することによって行うということが盛り込まれているものでございます。
 5ページ目、副業・兼業に関するこれまでの主な取組ということで、主として「働き方改革実行計画」策定後の動きでございます。平成29年に「働き方改革実行計画」が出されまして、平成30年1月に「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を策定した。その後、令和2年には「成長戦略実行計画」に基づきまして労働時間管理や健康確保等のルールの明確化、令和4年には企業に対する副業・兼業への対応状況についての情報公開の推奨、令和5年には11社の企業に関してヒアリングを実施しまして、事例集として公表するといったような取組を続けてきたというものでございます。
 6~7ページ目、副業・兼業の促進に関するガイドラインの中で労働時間管理に関する企業の対応、労働者の対応について記載のある部分について抜粋したものでございます。
 6ページ目は企業の対応ということで、労働時間管理につきましては、労働時間の通算が必要となる場合の原則的な考え方と、そして、より簡便な労働時間の管理方法として管理モデルについて記載をさせていただいております。
 7ページ目、その際の健康管理につきまして、健康診断、面接指導、ストレスチェック等というものに関する事項が書かれております。
 下部分でございますが、労働者の対応といたしまして、労働者自身も副業・兼業による過労によって健康を害したり、業務に支障を来したりすることがないように、自ら業務量や進捗状況、健康状態といったものを管理する必要があるということで、自己管理の必要性についても盛り込んでいるという内容となっております。
 8ページ目、副業・兼業の場合の労働時間通算と割増賃金の支払いに関して、原則的な方法と管理モデルということで、どのような形でやるのかというものを示したものとなっております。こちらの資料に関しましてはこれまでも提出させていただいている既存のものでございますので、詳しい説明は割愛させていただきます。
 9ページ目、割増賃金規制の趣旨ということで、時間外労働に限らず割増賃金規制の趣旨・目的等をまとめたものでございます。
時間外・休日労働の割増賃金の目的は、一つは通常の勤務時間とは違う特別な労働に対する補償、もう一つが使用者に対して経済的負担を課すことによって、これらの労働を抑制するということにあるということで、これまで様々な改正が行われてまいりました。時間外・休日労働、いずれも最初は25%で定められたものでございますが、平成5年の改正におきまして休日労働は3割5分に引き上げられました。また、平成20年の改正で1か月60時間超の時間外労働については5割、中小企業に関しては特例措置がありましたが、令和5年4月1日にその特例も廃止されて全て5割になったというような経緯をまとめさせていただいております。
 以上が副業・兼業に関する制度的な基本資料でございます。
 10ページから統計的なものに入ります。こちらは「副業者の就労に関する調査」で、2024年7月にJILPTが発表したものでございます。まず、副業者の属性ということで、左上の図表を御覧ください。本調査は合計188,980名の方に回答いただいたアンケートでございます。その中で仕事を2つ以上、すなわち副業をしているとお答えになった方が6.0%いらっしゃったということでございます。この後は基本的にこの6.0%の方に状況をお聞きするとともに、本業のみの方に関しては先着順で2,182名の方の回答を集計して、本業のみの人と副業している方でどのように違いがあるかというものを比較したというような研究になっております。
 右側のグラフ、まず、従業員規模でございます。こちらは本業がどれぐらいの従業員規模の会社の方が副業をしているのかというものが見えるようになっております。副業をやっている方と本業のみの方を比較いたしますと、29人以下のところで、副業をやっている方の従業員の割合が高くなっているということで、比較すると、小規模な事業場で本業をやっている方に副業をやっている方が多いというような結果となっております。
 その下、雇用形態でございますが、こちらも正社員の方は少なく出ており、パート・アルバイトですとか、派遣社員、それから、自営業主が副業をやっている方には多いという結果となっております。
 11ページ、業種でございます。上の業種で御覧いただきますと、副業している方に関しては製造業の割合が低くなっているというのが特徴的に出ております。一方で、卸売業・小売業ですとか、学術研究、専門・技術サービス業ですとか、宿泊業・飲食サービス業、生活関連サービス業、娯楽業といったサービス系の本業の方が副業をしている割合が高くなっているという結果となっております。下の段は職種でございます。こちらを見ますと、副業している方は、管理的職業や専門的・技術的職業の方が多いというのが一つ、それから、事務の方が少なく、販売やサービス職業といった方が多いというような結果が出ております。また、生産工程といった方も少ないというような結果となっております。
 12ページ、副業をやっている方の最終学歴と性別でございます。最終学歴ごとに副業をやっている方がどれぐらいの割合いるかというものがこの図表でございます。左側が合計でございますが、大学院卒の方の中で副業者の割合が他の区分より高くなっているという結果となっております。右側、性別で見ますと、男性よりも女性のほうが副業をやっている方の割合が高いという結果となっておりますが、男性にせよ女性にせよ、大学院卒の方の割合がやや高くなっているという傾向は同じでございます。
 13ページ、本業での働き方を聞いたものでございます。副業をやっている方と本業のみの方で本業の労働日数ですとか、労働時間、月収がどうなっているかというものでございます。まず、左上でございますが、本業のみの方と副業の方を比較いたしますと、20日以上というようなフルの日で働いている方の割合が、副業をやっている方のほうが20日以上25日未満のところで少なくなっております。15日以上20日未満、それから、10日以上15日未満といったところに関しては、副業をやっている方のほうの割合が高く出るという結果となっております。
 右上の図は1週間当たりの実労働時間を聞いたものでございます。傾向といたしましては、本業のみの方と副業の方を比べまして、副業をやっている方のほうが本業の時間は40時間未満の割合が高くなっているという結果となっております。これに併せまして、残業の状況でございますが左下でございます。本業のみの方、副業のみの方、若干副業のみの方のほうが残業していない率は高いですが、大体5割ちょっとということで同程度になっています。副業の方でも本業での残業をしていると答えた方は本業のみの方より少ないものの、同程度という結果となっております。
 右側、本業の月収でございます。副業をやっている方と本業のみの方でどれぐらい違いが出るかということでございますが、副業をやっている方が本業のみの方よりも高く割合が出るというのが2つに分かれております。左側の20万円未満の層、そして、右側の50万以上の層で副業の方の割合が本業のみの方の割合よりも高くなっているということでございまして、所得が低い方と高い方の二こぶに分かれている結果となっております。
 14ページ、副業をされている方の副業している理由を聞いたものでございます。一番多いのは収入を増やしたいから、次いで、1つの仕事だけでは収入が少なく、生活自体ができないからというものでございますが、次いで、自分が活躍できる場を広げたいからとか、時間のゆとりがあるから、様々な分野の人とつながりができるからというような前向きなお答えもあったというものでございます。
 これを年収別に分けてみると傾向がはっきり出るというのが右側でございまして、収入系の回答に関しましては、収入の低い層の方で副業している方のほうで割合が高く出て、活躍の場を広げたいですとか、人とつながりを持ちたいというようなお答えに関しては、収入の高い層での副業をやっている方に割合が多く出るような結果となっております。
 15ページ、副業する方の副業での働き方でございます。本業と副業で雇用形態がどうなるかというものでございます。一番上には本業も副業も非正社員であるという方、次いで、本業は正社員で働いておられて副業では非正社員で働いておられる方、3番目が本業も副業も非雇用、自営でやっておられる、いわゆるフリーランス掛け持ち型の方、次いで、本業正社員プラスフリーランスという方と続いております。
 16ページ、副業をやっていらっしゃる方の本業と副業の業種を見たものでございます。本業の業種がどうであれ、斜めにピンクで塗った部分でございますが、本業と副業を同じ業種でやられている方が、違う業種でやる方に比べると割合が高く出ている。特に教育・学習支援業ですとか、医療・福祉の方ですと、副業をやっている方の過半数が同じ業種で副業している結果となっております。一番上の段の合計で見て、副業全体でどの業種が多いかというもので見ますと、卸売業・小売業ですとか、宿泊業・飲食サービス業、医療・福祉といったようなところが10%を超えている結果となっております。
 17ページは職種で見たものでございます。職種で分けた場合でも同様でございまして、本業の職種と副業の職種が同じ職種という方が多いような状況になっております。特に専門的・技術的職業では過半数となっております。合計のところを御覧いただきますと、副業の職種としては専門的・技術的職業とお答えになった方が割合としては高く出ている。次いで、サービス職業ですとか、運搬・清掃・梱包等といった職種が高くなっております。
 18ページ、労働時間でございます。副業を全て合わせた1週間当たりの実労働時間が上側でございます。副業のみの時間でございます。ボリュームゾーンといたしましては、副業のみでは20時間未満というところが多くなっておりまして、ここを3つ合わせまして4分の3ぐらいというような結果となっております。平均値としては14.3時間となっております。
 下でございますが、本業と副業を合わせて1週間でどれぐらい働いていますかと聞いたものでございます。ボリュームゾーンとしては40時間から60時間未満でございますが、合わせて結構長く働いておられる方もそれなりの割合でいらっしゃるという結果となっております。平均値としては47.7時間となっております。
 19ページ、収入でございます。副業を合計した1か月当たりの収入はどれぐらいかというものでございます。上側の図でございますが、ボリュームゾーンは5万円以上10万円未満でございますけれども、平均値といたしましては9万円です。ただ、本業が正社員で副業していらっしゃる方、本業が非雇用で副業していらっしゃる方は10万円を超えておりますが、本業が非正社員である方に関しては副業の収入に関してもやや低く、平均6万円という形となっております。
 下が本業と副業の月収の合計値でございます。ボリュームゾーンは20万円以上30万円未満と、10万円以上20万円未満といったようなところが多くなっております。平均しますと35.6万円となっております。
 20ページ、副業している方の本業の月収と世帯年収で、副業している方と本業のみの方をグラフにしたものでございます。先ほども出てまいりましたが、本業のみの方の分布と副業をやっている方の分布を見ますと、所得の低い層と所得の高い層の2つに分かれて副業の方が多くなっているような結果となっております。これは下側の世帯年収で見ても同様の傾向となっております。
 21ページ、副業しているという旨を本業の勤め先に通知をしていますかというものでございます。左上、本業の勤め先に対して自分が副業していることを知らせているかというものでございます。本業の勤め先で副業が禁止であれば当然知らせていないという方が多数となってございますが、本業の勤め先で副業を禁止されていない場合でも知らせている方は半数を少し割るというような結果となっております。
 副業を知らせない理由が下側でございます。一番多いのは個人的なことで言いたくないからというものでございます。次いで、伝えるのが面倒だから、伝えることで、自身が不利益を被らないか心配だから、副業の内容が、本業の勤め先の就業規則に反すると思うからといったようなものが続いております。
 右側の図表でございますが、本業の勤め先に副業を知られることについて自分はどう思うかと聞いたものでございます。こちらも本業で禁止されているかいないかということで大分分かれておりますけれども、禁止されていない場合では、知られても問題ないという方が7割、禁止されている場合では、できれば知られたくないという方が7割というような結果となっております。
 22ページ、本業の勤め先に副業していますということを知らせている方に関して聞いたもので、そのときに本業先に副業での労働時間を報告していますかというものでございます。下のグラフにありますように、本業元から報告を求められているかいないかということと、実際に報告しているかいないかというもので聞いたものでございます。こちらは本業の就業形態でも異なっておりまして、本業が正社員である場合は報告を求められているし、実際に報告しているという方が25%程度、報告を求められていないし、報告していないという方が6割ぐらいという結果となっておりますが、本業が非正社員でありますと、報告を求められていないし、報告していない方が73.6%と多くなる結果となっております。
 実際に報告している方がどのような形で報告しているかというのは右側でございます。過半数の方が厚労省のガイドラインが示す管理モデルにあるような、あらかじめ副業で何時間働いていますというのを届け出ておいて、実際の労働時間に変更があった場合に修正報告しているという方が多い。次いで、1か月分をまとめて報告している方が多いという結果となっております。
 23ページは健康確保のための措置の実施状況ということで、副業している方が本業の勤め先との間で健康について話し合いをしているか、そして、健康確保の措置が何らか講じられているかというものでございます。自身の健康について使用者と話し合ったことも、措置が講じられたこともないという方が一番多くて48.8%でございますが、特に正社員の方を中心に、使用者と話し合いをしつつ措置を講じられたという方も2割程度いるという結果となっております。
 24ページ、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」等がどの程度認知されているかというものでございます。上側でございますが、ガイドラインを知っているとお答えになった方は4分の1強ということで、知らないという方が7割以上という形になっております。下側でございますが、では、労働時間を通算することに関して知っていますかというものに関しましては、通算されることを知っている方が全体の5割弱ぐらいとなっております。ただ、通算の方法まで知っている方となると15%ぐらいとなっております。
 25ページ、これまでもお出ししている令和5年に行いましたアンケート調査の結果で、副業・兼業に関して企業が認めているかいないか、認めている場合の健康管理ですとか、認めていない場合の理由についてまとめたものです。こちらの説明は省略いたします。
 26ページ、副業・兼業に関する労使の意識ということで、調査年は少しずれておりますが、企業の副業の容認率ですとか、あるいは働き方に関して本業での副業禁止状況がどうなっているか、本業に通知しているかというものを聞いたものでございます。こちらについても説明を省略させていただきます。
 27ページ、こちらは令和4年の就業構造基本調査で見たマスの副業状況でございます。左上にありますとおり、副業者の比率に関しましては平成29年から令和4年に関して少し上がっているという状況でございます。特に非正規の職員・従業員の方のほうが多いという形になっております。所得階層で見ますと、64.5%が299万円以下というところでございますが、1000万以上の方もそれなりの数がいる。これをもう少し詳しく分けたものが右側でございまして、先ほどのJILPTの調査と同様に、所得で見ますと副業している方は二こぶの山になっているというような結果となっております。
 28ページ、労働基準関係法制研究会の該当部分の概要でございます。
 資料3については以上でございます。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの説明を踏まえまして、労働時間法制の具体的課題のうち、副業・兼業について御議論をいただければと思います。御質問・御意見がありましたらお願いいたします。
 冨髙委員、どうぞ。
○冨髙委員 説明ありがとうございました。
 先ほど櫻田委員から別の議題の際に発言がありましたが、政府は、副業・兼業を推奨しているわけでございますが、労働側としましては長時間労働につながる恐れがあること、また、細切れ労働であったり、曖昧な雇用にもつながるというようなことも踏まえれば、副業を行うかどうかというのは個別労使が慎重に検討するべきものだと考えております。まず、政府としては本業だけでも生活できるように国を挙げて進めていくことが重要であると思っております。
 本日、様々データを示していただきましたが、27ページを見ますと、就業構造基本調査の内容が示されておりまして、この中で非正規雇用で働く方のうち、7.3%が副業を行っておりますが、一方、正規雇用の方は2.6%という状況でございます。本業の所得階層を見ても年収300万円未満が全体の3分の2を占めています。
 また、15ページにJILPTの調査結果もございますけれども、本業と副業がともにパート・有期の方が32.9%と最多でございます。
 収入面では、20ページに記載がございますが、月収20万円未満が合わせて44.4%と全体の約半数を占めている。また、本日の資料にはないですが、調査報告書本体の92~93ページを確認してみますと、2017年と2024年の比較をしておりますけれども、2024年のほうが年収300万円未満の比率が高まっている状況でございます。
 さらに、14ページの副業の理由を見てみますと、年収が低い方ほど「1つの仕事だけでは収入が少なくて、生活自体ができない」との回答割合が圧倒的に多くなっている状況でございまして、こうしたデータを踏まえると、副業者の実像は低賃金であることから、どうしてもダブルワークや、トリプルワークを行わざるを得ない非正規雇用で働く方が大きなウエイトを占めているということだと考えております。
 日々の生活費を賄うために副業・兼業を行わざるを得ず、結果として長時間労働になっている、あるいは強いられているような労働者も少なくありません。こういう実態も踏まえると、まず、副業・兼業ガイドラインの認知度が低いという状況で、ガイドラインの周知を強化していくのは言うまでもありませんが、副業・兼業時の労働時間通算、また、割増賃金規制の遵守・徹底を行っていくべきだろうと考えております。割増賃金支払いに関わる労働時間を引き続き通算すべきだと考えております。
 以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。
 鳥澤委員、どうぞ。
○鳥澤委員 鳥澤です。資料の取りまとめ及び御説明をありがとうございます。意見を申し上げます。
 副業・兼業時の割増賃金の支払いに係る労働時間の通算管理につきましては、副業・兼業が労働者の自発的な選択・判断によって行われるというものから、本来の割増賃金の趣旨となじまないものと考えております。中小企業においては副業・兼業時の労働時間通算が難しいために利用が進まないという声も多く、利用促進のためにも割増賃金については通算管理の適用外とする方向での検討が必要ではないかと思います。
 他方で、先ほど冨髙委員も言われましたように、労働者の健康確保、過重労働防止の観点は必要不可欠だと思います。実態を引き続き注視し、対策の必要性についても改めて検討すべきと考えます。
 加えて、本業・副業の関係性については改めて検討が必要ではないかと思っております。現状では先契約が本業となっておりますが、その切り分けが適切でない場合も想定されます。例えば学生時代にアルバイトをしており、就職後もそのままアルバイトを継続する場合には、そのアルバイトが現状だと本業となってしまう可能性がございます。何をもって本業とするかについては、引き続き議論をすべきではないかと思います。
 私からは以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 田中委員、お願いします。
○田中委員 田中です。私からも割増賃金の扱いなどについて発言させていただきます。
 今、鳥澤委員から発言があった趣旨に私もおおむね賛同いたします。会社の残業命令による時間外労働ではなく、労働者本人が選択して就労することから考えると、労働時間を通算することは違和感を覚えております。割増賃金の規制の趣旨にもなじまないと考えます。
 また、これは例えばですが、本業企業においてフルタイムで働く方が副業した場合、現行では副業先の所定労働時間の就労の1分目からが割増賃金の対象になります。これでは同じ仕事をしている労働者との間で処遇差が生まれて不公平感につながるとも考えます。
 また、副業先企業の立場に立ちますと、割増賃金を支払わなければならない副業者より副業していない人を優先して採用することになろうかと思います。副業・兼業が業務委託などの非雇用型に偏った形で進みかねないということも心配されると考えます。
 また、先ほどこれも鳥澤委員からありましたが、そもそも本業か副業かの定義です。労働契約の成立の前後で決まるという現行の在り方が、働き方が多様化する中でなじまないのではないかということも考えております。労働者本人の認識とも異なるケースが出てくるのではないか。それがまたトラブルにもつながりかねないと考えておりますので、実効性の観点も含めた検討が必要だと考えております。
 私からは以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。
 それでは、松永委員、お願いします。
○松永委員 松永でございます。私のほうから深夜割増賃金の規制についてコメントさせていただきたいと思います。労働基準関係法制研究会の中で、裁量的な働き方をしている方が労働者の自分の選択において深夜労働している場合は、深夜割増賃金の支払いを容認してもよいのではないかという御意見があったと承知しています。今、在宅勤務もかなり普及している面もありまして、夜間を含めて就業時間帯を主体的に決めたいという労働者の方のニーズもかなりあると思っています。例えば育児もそうですし、介護もそうです。いろいろな要因があると思うのですけれども、そういうニーズに応えていけるような制度の対応もあってもいいのではないかと思っています。
 もちろん健康確保というのは前提なのですけれど、例えば就労時間帯について裁量のあるフレックスタイム制の対象の方ですとか、裁量労働適用の方については、本人の自発的な同意を確認しつつ、適切な健康確保の措置も取られているのを前提に、いろいろな条件を設けた上で深夜割増賃金の対象となる時間帯を見直すとか、そもそも割増賃金を適用しないというようなことも考えられるのではないかと思っています。
 深夜労働時間帯の勤務については、健康確保の措置が当然必要だと思っていますけれども、幾つかの選択肢を設けることで、働いている方たちの主体的な就労の形態を支援していくという観点も含めて、議論を進めていくことが必要ではないかと考えております。
 私のほうからは以上でございます。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 松永委員、今の話は副業・兼業でない場合も含めての御意見ということで理解してよろしいですか。
○松永委員 そうです。副業・兼業の中での割増賃金の話が出ましたので、広く取って深夜労働の規制についての話とさせていただきます。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 それでは、佐久間委員、どうぞ。
○佐久間委員 副業・兼業についてですが、一つの企業で働いて、労働時間以外のところは休息、休憩など休むことに充てることが必要だと思うのですけれども、調査結果の14ページを見ますと、副業する理由というのは収入を増やしたいからとか、自己実現とか、いろいろな理由、立場が伺えると思います。
 2020年6月からの労働条件分科会において、副業・兼業について議論をした際に、当初、私の意識としては、副業・兼業というのは、自分の意思として一方を「主たる事業」、他方を「副業・兼業」として見ていくのであろうと思っていたのですが、当分科会では先に雇用関係のある方を「主たる事業」、あとに雇用関係を結んだ方を「副業・兼業」と位置づけられること。それから、現行ガイドラインで想定されている副業・兼業というのは雇用労働者の範囲に限定されていて、自営業者、フリーランスは対象外とされているところがあると思います。この2点をこれから制度設計において再確認というか、明確にしていただきたいと考えています。
 現行制度では、主たる事業者と副業先の労働関係を通算して1日8時間を超えた労働に対して時間外労働の割増賃金が発生する仕組みになっていますが、例えば主たる事業者Aで所定の8時間労働を終えた後、副業先Bで働くと、B社は最初の1時間から時間外手当を支払う義務が生じます。こうした制度では副業先にとって負担が大きく、それならば採用を控えようとかいう判断にもなりかねません。結果的に労働者本人が主たる事業者にも副業先にも報告せず、個人事業やフリーランスみたいな形を取って自主的に副業を行う事例も見られ、制度の形骸化を招いているのではないでしょうか。
 また、働き方改革を踏まえ、もっと働いて収入を得たいと望む労働者も一定数存在していますが、現行制度では時間に縛られ、働きたくても働けない状況が生まれつつあり、労使とも柔軟な対応が難しいと考えていると思います。さらに、労働時間通算に伴う健康確保義務が複数の使用者に分散されることにより、過重労働や健康悪化の責任の所在が曖昧になります。たとえ副業が労働者の希望であっても、後に健康悪化等が生じた際に、主たる事業者に責任を求められるような状況であれば、事業者として非常に悩ましいところだと思います。
 中小企業の支援機関、私の立場としても、労働時間の通算や割増賃金の発生タイミングを個別企業ごとに具体的事例に落とし込んで周知することは非常に難しく、制度的・実務的な対応にも限界が出てきます。したがって、現行の通算方式については見直し、企業単位での労働時間管理を前提とした新たな運用ルールを検討していただきたいと強く要望させていただきたいと思います。
 以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 藤川委員、お願いします。
○藤川委員 副業・兼業につきましては、資料3の13ページに本業での働き方が記載されております。本業のみの方と副業者を比較いたしますと、1か月当たりの実労働日数については、25日以上の割合が副業されている方が14.6%となっております。また、18ページで副業と本業の労働時間の総計がございますが、特に正社員で見ますと、週当たり80時間以上が1割、60時間以上では3割にも上っているということが分かります。このように本業に副業・兼業の仕事が合わさることによって、相当程度の長時間労働が生じている実態も明らかになっているところでございます。
 先ほど使側委員からも御発言がありましたけれども、割増賃金の通算を行わないこととした場合には、さらなる長時間労働を誘発することにもなりかねないと考えております。現在、政府が副業・兼業を多様な人材の活躍・推進の大きな柱として掲げていることにも大変な違和感を覚えているところでございます。働き方改革で推し進めてきた長時間労働の是正と、それによる過労死等ゼロの取組に逆行するものであり、繰り返しになりますけれども、副業・兼業等の割増賃金の通算は現行ルールを維持するべきであると考えております。
 また、通常の勤務時間とは違う特別な労働に対する労働者への補償や、経済的な負担を課すことによる時間外労働等の抑制という割増賃金の趣旨から見ましても、それも健康確保につながるものでありまして、むしろ割増賃金通算の仕組みを周知して、正しい運用を広げるための取組を強化することが必要ではないかと考えております。
 確かに労働時間外は労働者の自由な時間でございますが、副業・兼業を企業として容認している以上、使用者には労契法5条の安全配慮義務が課せられるとともに、安全衛生法上の健康確保措置の実施が求められており、長時間労働を含めた健康情報の収集等を行うとされているところでございます。労働者の安全と健康を確保するという使用者の責務を、複数就労を理由に放棄すべきではないと考えているところでございます。
 私のほうからは以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 それでは、鈴木委員、どうぞ。
○鈴木委員 ただいま藤川委員から副業・兼業は長時間労働につながっているという指摘がございましたので、一言申し上げたいと思います。
 副業者の健康確保は大変重要な課題だと認識しております。ただ、例えば資料No.3の13ページ左下の表でございますが、本業での残業の状況を見ますと、副業者の場合、本業での残業をほとんどしていない方は6割弱とかなり高くなっております。また、右上の本業での1週間当たりの実労働時間については、副業者の場合、50時間未満の合計が83.8%に達します。先ほど、18ページの本業と副業の労働時間の合計について言及いただいたところでございますが、ただ今私がご紹介したデータを見ると、副業者の多くは自らの選択で副業を行い副業先で就労して初めて合計週40時間を超える就労となっているのではないかと推察いたします。この点を踏まえますと、副業・兼業について法がどこまで介入すべきかという点は慎重に検討すべきですし、私としては現在の割増賃金算定規制の見直しを行っていくべきと考えています。
 休日規制は通算規制がなく各企業の義務の履行が求められている一方で、労働時間がなぜ別扱いになったかの経緯はよく承知をしていませんけれども、今後、働き手の主体性をどう育んでいくかを考えていかないといけない中で、主体的なキャリア形成に資する副業・兼業を阻害するような仕組みは見直しが必要と考えております。
 その上で、副業・兼業者の健康確保措置としては、時間外労働の上限規制を残すことが十分な担保になると考えております。それから、資料3の23ページにございますように、健康確保措置を講じている企業も一定数ある中で、まず、ガイドライン等に記載の健康確保措置の実施を一層促進することなどを優先すべきではないかと考えています。
 ご趣旨を正確に理解してなかったら申し訳ないのですが、先ほど藤川委員から副業・兼業容認が安全配慮義務を課しているというような趣旨で御発言があったのではないかと思います。私としては、安全配慮義務は個別具体的な事案に照らして検討するべき問題であると考えており、副業・兼業容認自体が直ちに企業の安全配慮義務が問われるというゼロイチの画一的な議論をすることは妥当ではないのではないかと考えます。
 以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。
 では、水野委員、お願いします。
○水野委員 私からも副業・兼業時の労働時間通算について意見を申し上げたいと思います。資料3の24ページの下の表ですけれども、労働時間の通算についての認知状況が記載されております。「知らない」というのが約6割、そして、「通算方法まで知らない」も合わせると8割を超えているということでございます。そもそもガイドラインを含め、現行ルールが十分に周知されていないことは問題だと思ってございます。
 そうした中で、参考資料2の64ページには、「通算して割増賃金を支払っている」という回答が12.7%ということで、しっかりと適正に運用がなされている事例も一定ございます。現に通算がそれほどなされていないことを理由にルールを緩和するのではなく、現行ルールの一層の周知とともに適正運用を広げるような取組を進めるべきではないかと思ってございます。
 また、通算の必要性などが十分に認知されていないということもございまして、資料3の7ページの副業・兼業ガイドラインの中では、使用者に健康確保措置の実施を求めているというところでございますけれども、こちらも23ページでその実施状況を見ますと、「健康について使用者と話し合ったことも措置は講じられたこともない」という回答が48.8%と約半数となっているという実態でございます。適切な労働時間管理を基盤として、使用者が労働者の健康障害の防止を図るために必要な措置を講じるということと、さらに異なる事業場であっても労働時間を通算して割増賃金を支払うという現行解釈は堅持すべきであると思ってございます。
 先ほど来、使側委員の皆様から労働者本人が自発的に選択して副業するので割増賃金規制はなじまないとの御意見がいくつかございましたが、副業・兼業の導入を進めるがゆえに、労働者の自発性の尊重を盾に取って割増賃金の未払いというような企業のリスクのみをなくしていくことは、働き方改革の趣旨にそぐわないのではないかと思ってございます。
 以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 神吉委員、お願いします。
○神吉委員 私からは、確かな情報ではないですが、スポットワークの副業事案に関する地裁判決で、自己の雇用する労働者が他社で就労しているときに、他社就労について知らなければ割増賃金の支払義務を負わないと判示した判決が出たという報道に接しました。
 判決文にアクセスできていなくて詳細は分かりませんが、割増賃金について異事業通算の現行運用を維持するとしても、副業・兼業について自己申告制度を取らざるを得ず、今日見せていただいた調査結果でも多くの労働者が申告していない状況、また、この研究会で指摘されたように、労働者側に申告しないインセンティブがある以上、正確な自己申告が望みにくい。さらに使用者側も知ってしまうと払わなければならない、逆に知らなければ払う必要がないということになると、現行の法制度の運用を維持しても、割増賃金を確実に支払われる保障は非常に薄いということになります。
 このことは、労働者の健康確保という重要な目的のために割増賃金支払義務を課すという、間接的な金銭的負担を使用者に負わせる方法が適しているのかという問題提起をしているのではないかと考えています。
 私からは以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 その判決は私も報道で知っただけでして、これまでも裁判例の資料等で御紹介していただいたりしていますので、もし、可能でしたら今後御紹介していただければと思います。
 椎木委員、お願いします。
○椎木委員 まず、ここ数年、働き方改革の中で労働者の健康確保のために長時間労働を抑制していこうという流れがあったと思います。その中で、副業・兼業は自発的な選択で働いているのだから、その部分は緩和しても問題ないといった意見には疑問を感じております。
 また、割増賃金自体も課題があるのではないかと考えています。副業・兼業の通算の際も含めてではありますが、割増賃金の時間外労働抑制の効果が十分ではないのではないかという声が広く聞かれてございますし、国際的に見て我が国の割増率は低い水準にあります。新たに労働者を雇い入れるよりも、割増賃金を支払って今の従業員に働いてもらったほうが安く済むという現実があるからではないでしょうか。
 恒常的な時間外労働を抑制していくためには、この割増率を少なくとも新規採用のコストを上回る水準にしていかなくてはならないと考えてございます。すなわち均衡割増賃金率という数字がありますが、これ以上に時間外労働の割増率を上げていかなくてはいけないと考えてございます。かつて厚生労働省でもこの数値を示していただいていたこともあると思いますが、今般、改めて均衡割増賃金率をお示しいただきたいと思います。よろしくお願いします。
 私からは以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。
 事務局、今の点はいかがでしょうか。均衡割増賃金率の資料等を用意できるかどうか。
○労働条件政策課長 ただいま御指摘いただきました均衡割増賃金率につきましては様々な仮定に基づく計算ですので、過去と同じようにやったらどうなるかなど、何が出せるかということについて検討させていただきたいと思います。
○山川分科会長 では、御検討をよろしくお願いします。
 冨髙委員、お願いします。
○冨髙委員 先ほどから使用者側より自発的に副業しているのだから長時間労働抑制という割増賃金規制の趣旨になじまない、あるいは、実際あまり払われていないから見直すべきといった意見もありました。そうしたニーズを踏まえて割増賃金の通算を不要とすることは、労基法の強行法規性や、割増賃金規制の趣旨を否定することになるのではないかと思っております。先ほど椎木委員から発言がありましたけれども、その点について違和感を覚えております。繰り返しになりますけれども、議論の出発点としては、副業・兼業をしている人の実像をしっかりと踏まえた上で議論をするべきだと考えているところです。
 もう一つ、先ほど松永委員から深夜割増の緩和に関する御発言がございましたので、その点についても少し意見を申し上げたいと思います。深夜業務は睡眠時間の減少とか、生活リズムの乱れなどで労働者の心身等に与える影響が非常に大きいと考えております。そうであるからこそ割増率も異なっていると思いますけれども、深夜業を含む業務に常時従事する場合は、安衛則で特定業務従事者の健康診断が義務づけられていることもございます。労働者の健康確保の観点で考えると、使用者の責務として深夜に及ぶ労働の縮減に取り組むべきだと考えておりまして、先ほど選択肢というような話もありましたけれども、健康を害するような選択肢は必要ないと考えております。深夜割増の適用除外をすることを認めるべきではないと考えておりますので、意見として申し上げておきたいと思います。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 鈴木委員、どうぞ。
○鈴木委員 先ほど椎木委員から割増率についての御発言がございましたので、その点についてコメントさせていただきたいと思います。
 御案内のとおり、我が国は法律により割増賃金率を定めているという特徴があり、さらに働き方改革関連法で上限規制、月の時間外労働60時間を超えた時間について5割増という割増率も導入され、過重労働防止を意識した様々な手当てがされてきていると思います。
 割増賃金規制にどの程度効果があるのか、とりわけ60時間以上の時間外労働に対する5割以上の割増率賃金規制の効果がどの程度あるのか検証はあってよいと思っています。
先ほど労働者側委員からあったご意見は、根本的に割増率の見直しをすべきという御主張なのかもしれないのですが、現在は、成長と分配の好循環に向けて賃金引き上げのモメンタムを何とか継続していこうと労使で取組を進めている状況ですので、割増率を根本的に引き上げると事業に対して相当大きい影響があると思っております。
 割増賃金規制以外にも過重労働防止に向けた取組について今回様々な議論が行われているところでございますので、そうした総合的な検討の中で、割増賃金規制については慎重な判断をすべきだと思っています。
 私からは以上でございます。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 川田委員、どうぞ。
○川田委員 これまでかなり具体的な話がされている中で抽象的な話になってしまうかもしれませんが、この問題について考えているところを述べた上で、具体的に確認をさせていただきたい点もあるので順番に話していきたいと思います。
 一つは、これまでも議論されていますが、私もこの兼業・副業に関しては実態がかなり多様であるということを踏まえた検討は重要であると思っています。そこに付け加えて、際限はあると思いますが、副業が例えばフリーランスと雇用類似のもので雇用ではないようなケースというのも考慮する。実態の中で、可能な限り見ていくのが望ましいだろうと思っています。この辺りはそういう方の働き方という観点からも重要ですし、そこが本業・副業両方雇用である場合の法制度の在り方に与える影響もかなり大きいと思うからです。
 もう一つ、ここでは労働時間に関する議題の一つとして副業・兼業が挙がっていますが、そういう範囲で考える際にも労働契約における副業・兼業についての法的な考え方と合わせた副業・兼業についての法的な考え方という枠組みの中で問題を整理して検討していくという視点は重要だと考えています。
 具体的にはそもそものところで副業・兼業がどういう範囲で許されるのかということのほか、例えば労働契約に基づく関係の中で、労働者は例えば兼業先とか、兼業の時間について、使用者にどういう形で、あるいはどこまで知らせる必要があるのか。あるいは副業・兼業が想定されているような働き方の中で、通常の時間を超えたようないわゆる残業を行うことについて、例えば残業命令等についてどのように考えるのか。
 また、これまでの議論の中で出てきた例えば副業・兼業の場合の安全配慮義務の在り方というのは、今挙げたようなことなども視野に入れながら考えていく問題になるのではないか。そういった労働契約上の法的な関係がどうなるかと併せて労働基準法上の副業・兼業の場合の労働時間についての在り方を考える視点も重要なのではないかと思います。
 最後に、そういう中でいろいろ副業・兼業があり得る中の一つのあり得るパターンかなと思うのが、典型的には本業において、例えば在宅勤務とか、フレックスタイム、裁量労働制など、ある程度柔軟性がある働き方の時間を副業と調整できるような働き方をするケースがあるのかなと思います。それとの関係で、現在の労基法38条1項の要件上の通算規定というのは複数の事業主で働く場合で、少なくとも一方で適用されている労働時間がフレックスタイム制とか、裁量労働制、あるいは事業場外労働のみなし時間制等である場合に、どのようになるのかということについて、何か行政的な見解というか、考え方の整理というのはあるのかどうかということを最後に伺いたいと思います。
 以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 直感的に非常に難しい御質問が提起されましたが、事務局からいかがでしょうか。
○労働条件政策課長 ただいまの川田委員の御質問でございますが、厚生労働省として副業・兼業における労働時間の通算についての考え方として示しておりますのは、基本的には本日の資料の8ページに上げているものでございます。片方がフレックスであるとか、あるいは変形労働時間制等を採用している場合には、このように計算することが適当であるというようなことに踏み込んだ解釈は現状示していない状況です。
○山川分科会長 ということで難しいということですが、川田委員、何かありますか。
○川田委員 ついつい学術的な議論のような話を審議会の場でしてしまっていると思うようなところがございまして、必要な範囲での検討がされればいいのかなと思っております。
○山川分科会長 ありがとうございます。
 事務局で何かございますか。
○労働条件確保改善対策室長 今ほどのフレックスの話ですが、一応Q&Aのような形で出しているものはあったようでございます。詳細は省略させていただきます。
○山川分科会長 では、また何かございましたら御紹介をお願いします。
 ほかはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、次の議題がございます。集団的労使コミュニケーションの在り方についてということで資料№4になります。事務局から資料の説明をお願いします。
○労働条件確保改善対策室長 資料№4でございます。こちらは前々回に提出させていただきました集団的コミュニケーションの在り方に関する資料につきまして、大きく3か所、労使の皆様方から御指摘をいただいたところを直したものとなっております。本日は修正点のみ説明させていただければと思います。
 まず、4ページ、労働組合の役割をどのように周知しているかということで、労働法教育の中でこういったようなものを使っていますというもの、例えば漫画ですとか、そういった教材、その中で、憲法も含めました組合の立ち位置についてどのように周知をしているのか。これが分かるものとして追加をさせていただいております。
 その次が22ページ、厚生労働省の行政モニター、過半数代表者について体験談等々を聞いたものでございます。この中で使用者との協議・意見交換が十分に行えていたか、行えていなかったのかということと、実際に過半数代表としてどのような活動をしたのか、こちらについてクロスの数字が取れないかという御指摘いただきましたので、これを取ったものでございます。そちらの数字が出ておりますけれども、十分な協議・検討を行ったという方が、いずれの活動についても活発に行っていたという結果となっております。
 それから、32~34ページにかけて、諸外国における労働組合関連の法令の比較表でございます。こちらに関しましては韓国の事例を追加させていただきました。
 資料の追加修正は以上でございます。よろしくお願いいたします。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 集団的労使コミュニケーションの在り方につきましては5月23日の第198回の分科会でも御議論いただきました。その際の論点は、大きく言えば3つ、第1が労働組合による労使コミュニケーション、第2が過半数代表者の適正選出と基盤の強化、第3が労使協定・労使委員会等の複数事業場での一括手続という3つのテーマに分けられるということでしたが、その中で過半数代表者の適正選出と基盤の強化の途中まで御議論をいただいたかと思います。したがいまして、本日は過半数代表者の適正選出と基盤強化の続きからということになりますが、一応3つに論点は分けられるかと思います。
 一つは、適正選出と基盤強化の点ですけれども、不利益取扱いの禁止、それから、意見集約等の役割の明確化、さらに紛争解決の仕組み、過半数組合、労使委員会、労働時間等設定改善委員会の労働者側委員に対する情報提供とか、便宜供与といったことであります。
 2つ目が、過半数代表者に選ばれた場合の話ですけれども、相談支援とか、複数代表制の問題、さらに任期制の問題、こちらが過半数代表者の適正選出の基盤強化に関わる論点になります。
 3つ目が、労使協定等の複数事業場での一括手続です。
 とりあえずは3つに分かれるかなと思っております。
 まず、1つ目でございますけれども、過半数代表者への不利益取扱いの禁止、それから、意見集約等の役割の明確化、紛争解決の仕組み、ないしその支援、情報提供とか、便宜供与というような点についての御意見・御質問をお願いいたします。
 鈴木委員、お願いします。
○鈴木委員 私から全労働者の意見集約等について申し上げたいと思います。例えば36協定を締結する場面におきまして、労働者の意見を集め、それを参考に過半数代表者が36協定を締結することは望ましいと思っております。ただ、労働基準関係法制研究会報告書が公正代表義務という表現をし、義務という点を強調していることについては賛成いたしかねます。理由を3点申し上げたいと思います。
 第1に、前々回だったと思いますが、事務局からの説明をいただきました調査結果では、従業員が自ら従業員の意見を集めたとするのは2割程度に過ぎないというデータが示されました。現在でも過半数代表者のなり手がないという声をよく聞くところでございますが、仮に自ら意見集約をするということがルール化された場合、過半数労働者の方が負担に感じて、さらになり手が現れなくなることを強く懸念しています。
 第2に、労働基準法は事業主に義務を課す法律でございますので、労働者に義務を課すことが法体系上適切かどうかという問題もあるのではないかと考えております。
 第3に、これが一番大きいと思っておりますが、仮に過半数代表者ないし過半数労働組合が全労働者の代表として意見集約することを義務となれば、意見集約が行われない形で労使協定が結ばれるとそれは無効になる事態が生じかねません。会社側が何も意見集約に関与できないままに労使協定が無効になると、会社側としては当然納得がいきませんので、その点について強い懸念を持っております。したがいまして、義務化は避け、労使コミュニケーションの成熟度が各社・各職場で多様であることを前提に、社員の意見集約は多様で柔軟な方法を認め、かつガイドラインのようなソフトな措置から検討することが望ましいと考えているところでございます。
 次に、便宜供与についてです。便宜供与を可能にすること、その範囲を明らかにするということで十分ではないかと思っていますが、各事業場で便宜供与を与えるかどうか、さらにはその内容を明確にしておかないと、後々紛争の元にもなりかねないと思っております。
 また、便宜供与の話とは違うのですが、労使コミュニケーションの成熟度が高い職場では、任意に過半数代表者を複数選出することもあり得るかもしれません。その場合、複数選出された方がどういう役割をそれぞれ担うのかについて明確にしておかないと、これもまた紛争が生じかねないと考えているところでございます。紛争予防の観点からは、過半数代表者と集団的な契約を結んでいくことが有効ではないかと考えておりますので、そうした契約ができるということを明確化するなど、何らかの制度的な担保が必要ではないかと考えているところでございます。
 私からは以上でございます。
○山川分科会長 ありがとうございます。
 冨髙委員、どうぞ。
○冨髙委員 最初に、今回4ページに労働組合の役割についての資料を入れていただきましてありがとうございました。とはいえ、労働組合に対する行政による支援が非常に乏しい実態が明らかになったと思っているところでございます。研究会報告を含めて集団的労使コミュニケーションの中核的担い手が労働組合であるというところは恐らく一致した意見だと思います。そうであるならば、単に労働三権は憲法で保障されているということにとどまらず、それらの権利をどのように行使していくかという点も含めてしっかりと周知啓発をする必要があるのではないかと思っております。
 例えば労働組合の結成とか、組織運営、団体交渉、不当労働行為の禁止なども含めた実践的な内容もしっかりと啓発いただくことが重要であると思っております。当然のことながら、こうした点は、まさに我々労働組合自身がしっかりと周知していく、取組を強化していくことだと思っております。他方で、現に経営者とか、使用者の立場にある方を含めた周知啓発というのは、行政でなければ十分にリーチできないところもあると考えておりますので、文部科学省等とも連携が必要かと思いますけれども、学校教育段階からしっかりワークルールや、労働組合の役割や重要性、また、労働組合と過半数代表者の役割の違いも含めて、教育や啓発にぜひ取り組んでいただきたいと考えているところでございます。
 それから、便宜供与に少し触れておきたいと思います。先ほど申し上げたように、集団的労使コミュニケーションの中核的役割を担うのは労働組合ということで、労組法に基づいて民主的な組織運営を行うことが制度上も担保されているということと、争議権なども認められているところです。今回は、過半数代表者の権限の強化ではなくて、あくまでも不適切な運用の是正を進めていくための議論であることは、この場で共有しておきたいと思っております。
 その上で、過半数代表者にどのような配慮や便宜供与を認めるかというところでございますが、過半数労働組合や労働組合役員が過半数代表者になる場合も多分にございますので、労働組合法の支配介入規定との関係も含めて多角的に検討する必要があると思っております。
 資料4の37~39ページにおいて、不当労働行為に関する規定・通達はお示しいただいておりますけれども、次回以降の分科会において、使用者の配慮と不当労働行為との関係に関する裁判例とか、学説、さらに諸外国での取扱いというところも含めて資料を提供いただきたいと思いますので、意見として申し上げておきたいと思います。
 以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。
 企業内の労働者代表の活動について、諸外国の立法例はあるかと思いますが、冨髙委員がおっしゃられたのは、過半数代表者への、あるいは過半数代表への配慮と不当労働行為の関係についての裁判例とか、そういうことだったでしょうか。
○冨髙委員 そうです。
○山川分科会長 広めに見ていただいて、比較も含めて、何かあれば御紹介いただければと思います。
 鳥澤委員、お願いします。
○鳥澤委員 前提として、中小企業といいましても規模、性格、風土が本当に多様でございます。それに伴って労使コミュニケーションも多様な形が存在してございます。意見集約、便宜供与等においては、労働基準法によって画一的な在り方を定義すると、これまで企業風土等に合わせて多様な労使コミュニケーションが形成されていたものが阻害されるのではないかという懸念がございます。
 法での規定はあくまでも不利益取扱いの禁止等の最低限にとどめ、それ以外はガイドライン等による周知啓発のほうが私は中小企業になじむのではないかと思っております。労働者の働くニーズはかつてないほど多様化が進んでございます。多様で柔軟な働き方が設定できるような環境整備が必要であり、労働組合の組織率が低い中小企業においては、過半数代表者の機能強化による労使コミュニケーション活性化は不可欠でございます。引き続き推進の在り方について検討が必要だと思っております。
 私からは以上でございます。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 続きまして、田中委員、お願いします。
○田中委員 田中です。追加資料として、22ページで協議・意見交換の状況と過半数代表者の活動状況のクロス集計をお示しいただきました。ありがとうございます。
 十分な協議・意見交換等を行ったとの回答では、従業員の意見を集めたとする回答が多くなっています。十分な協議・意見交換には従業員の意見を集めるということが大切ということを示すものだなと受け止めました。
 ただ、先ほどから出ております労使のコミュニケーションというのは、事業場によってその成熟度だったり、在り方はまちまちです。そういった中ですので、従業員の意見を集めれば十分な協議・意見交換が進むとまでは言い切れないのかなというような受け止めをしました。まず、感想が1点です。
 続けてもう1点、過半数代表者の活動に関する相談・紛争解決の仕組みについて発言します。労使双方が相談できる体制を整えることは重要なので賛成したいと思います。
 一方で、例えば36協定について過半数代表者が、協定時間を短くするならば合意するといった紛争が起こったとき、それに対応することを考えてみますと、職場によって労使コミュニケーションの在り方はまちまちですが、こういった利益紛争について、例えばあっせんなどの紛争解決の仕組みが機能するかであったり、また、労働委員会が適当なのかといったような点は、今後議論をしていく必要があるのではないかと考えております。
 私からは以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 椎木委員、どうぞ。
○椎木委員 過半数代表者について意見を申し上げますが、過半数代表者に対する不利益取扱いの禁止は法律で明確に示すべきだと考えます。現行の労基則の表現は「不利益な取扱いをしないようにしなければならない」であり、禁止しているのかどうか非常に読み取りづらい表現になっておりますので、曖昧な表現は避けて分かりやすくすべきだと思います。また、過半数代表者だけではなくて、その代表者になろうとした者も含める形での規制が必要だと考えます。
 加えてもう1点ございます。先ほど鈴木委員が義務化には反対と明確におっしゃいましたが、過半数代表者の義務を明確化する、ルール化する場合には、使用者による配慮を明確化する必要があると思います。また、便宜供与の部分についても、使用者側の便宜供与が可能な範囲について、行政として明確に示していくことが重要だと思ってございます。
 私からは以上でございます。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 藤川委員、どうぞ。
○藤川委員 まず、集団的コミュニケーションについてもいろいろ御意見が出ています。第198回の分科会だと思いますが、労働組合以外は集団的な契約を結んではいけないのかといった御発言もありました。今回お示ししていただいています資料4の32ページ以降に記載がありますが、デュアルチャネルであるフランスやドイツなどでは産業別組合が主流であり、国によって権限に強弱があっても労組以外の従業員代表機関は企業や事業所レベルの補完的な機能を果たしているということには留意する必要があると考えております。ただ、いずれの国におきましても憲法や法律で団結権等を保障し、そうした権利を有する労働組合が中核であることには変わりがないと思っておりますので、労側の立場から申し上げておきたいと思います。
 また、最初に冨髙委員からも発言がありましたけれども、労働組合の組織率の向上や活性化に向けては、労働組合を通じた労使コミュニケーションに関する好事例を行政でも集約して、労働組合の役割やその効果に関する研究成果とともに広く労使に周知していく取組が重要ではないかと考えております。例えばアメリカでは連邦財務省が2023年に組合賃金プレミアムなど、労働組合が中間層形成に果たす役割や効果を検証して報告書を公表していることなども参考になると考えております。また、日本でも賃上げにつきましては2024年度の労働経済白書などで組合効果が示されておりますので、ぜひこうした点の周知もお願いしたいと考えているところでございます。
 以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。
 亀田委員、どうぞ。
○亀田委員 先ほども御意見が出ましたけれども、過半数代表者の相談支援について発言をさせていただきます。過半数代表者の役割、職務などについての研修、器材提供などの充実を進めていくことに加えて、労働委員会などの行政機関や労働組合を中心とした相談窓口の整備も進めることが重要であると考えております。
 なお、労基研報告によりますと、相談支援の対象として外部専門家という記述もあります。この点につきましては社労士が念頭に置かれているのかもしれませんが、一部の社労士による不当労働行為が問題となっていることからしますと、慎重に考えるべきであると思いますし、あくまで相談支援の主体は行政であるべきだと考えております。
 加えて申し上げれば、過半数代表者の支援の観点からすると、選出手続や活動を行っていく中で何らかの紛争が生じた場合において、労働者が救済を求めることができる仕組みについても検討が必要ではないかと考えております。
 私からは以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 とりあえず選出、基盤強化等についての御議論をいただいております。
 先ほど田中委員、それから今、亀田委員からも御発言のありました紛争解決の支援ですが、これは分科会長というよりは中央労働委員会の公益委員としての立場からの情報提供です。中央労働委員会では、この問題について公益委員懇談会の下に検討会を設置しまして、この過半数代表者についての紛争についても労働委員会が一定の役割を果たし得るという中間報告を出しております。その場合、個別紛争あっせん、それから、集団紛争の場合は労組法2条の労働組合だけではなくて、いわゆる争議団と呼ばれる集団性を持ったものでも争議のあっせんの申請ができるといったような、これまでの解釈でも出ていたことですが、そういうことを報告書として明らかにして、関係各機関と連携をすべきではないかという提言を行っております。現行法令の枠内における提言でございます。個別的な情報提供でございました。
 ほかにございますでしょうか。
 鈴木委員、どうぞ。
○鈴木委員 鈴木でございます。ただいまの分科会長の情報は、私は不勉強で知らなかったものですから、中労委の中間報告は次回の関連するテーマでの議論をするときに共有をしていただけると大変ありがたいので御検討をお願いいたします。
○山川分科会長 中労委ないしこちらの事務局とも御相談の上、可能な限りでお願いしたいと思います。ありがとうございます。
 先ほどこれも労使双方から出ましたけれども、研究会報告では法令等による対応ということでしたが、そこを法律でやるか、ガイドラインでやるか、いかなる手法を使うかについては研究会ではかなり幅広に考えていたと記憶をしております。事項によって使い分けるということであるかと思います。
 それでは、既に御議論いただいていますが、過半数代表者への相談支援のほか、複数代表者制ですとか、任期制といった仕組みについて、御意見・御質問がありましたらお願いいたします。
 松田委員、お願いします。
○松田委員 労基研報告にもありますように、現行制度上、任期制や複数制は否定されていないことから、そうした選択肢を取り入れることを明示すること自体は否定いたしません。ただ、その場合であっても選出や協定締結手続、代表者が異動・退職した場合の取扱い、さらには任期など運用上明確にしておくべき論点も少なくないと考えております。過半数代表制の基盤強化の内容との関係も含めた検討が必要であると考えております。
 そもそも労働者側としましては、例えば36協定や就業規則の意見聴取といった過半数代表者の選出が必要となる事案が発生する都度、当該事案に関して事業場の全労働者を代表にするにふさわしい者が立候補し、使用者が結ぼうとしている協定に対して賛成なのか反対なのかも含めて所信表明を行い、直接無記名選挙を行うという厳格な手続にのっとって選出されるならば、常設化や複数化しておくべき理由は乏しいものと考えてございます。
 以前も労働側から申し上げたとおり、厳格かつ適正な選出手続を整備することによって過半数代表者が適切に活動するための環境整備の在り方を最優先で議論すべきと考えております。よろしくお願いいたします。
 私からは以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。
 櫻田委員、どうぞ。
○櫻田委員 会長、申し訳ありません。先ほどの論点で申し上げればよかったと思ったのですけれども、1点よろしいでしょうか。
○山川分科会長 どうぞ。
○櫻田委員 これまで使側の委員の方からも多様な労使コミュニケーションの形というような御発言があったと思うのですけれども、その点について申し上げたいと思います。
 資料5には記載がされているのですけれども、これまでに出た意見ということで、5ページに労使コミュニケーションの在り方、2つ目のポツに記載があります。以前、分科会の中で、使側委員の方から「恒常的かつ実質的に労使コミュニケーションを行っている実態があれば、制度として認めていくことなども検討すべき」というような御意見があったと思います。もちろん個別労使の取組の中で様々な労使コミュニケーションの工夫がなされていること自体を否定するものではないのですけれども、しかしながら、連合に加盟する労働組合においても社員会のような組織が賃金交渉などの団体交渉の一環とも受け取れるような活動を行っている事案があるというような声も聞こえてきている実態がございます。
 労使コミュニケーションの中核である労働組合の組織化や、その活動を確実に保障するためにも、社員親睦会などの社内機関を労使交渉の一方の担い手として労働条件設定機能などの労働組合の役割や機能の一部を代替させるというようなことや、その団体との協議に何らかの法的な効果などを生じさせることなど、法制度の中に位置づけていくことは行うべきではないと強く思っております。
 加えて、そうした不適切な運用を防止するためにも、労働組合だけが担い得る役割や機能についての正しい理解が進むように、広く労使に周知啓発を図っていくべきであると考えております。先ほどの箇所で発言が漏れましたので申し上げたいと思います。
 以上でございます。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 佐久間委員、どうぞ。
○佐久間委員 まず、過半数代表者の人数の関係ですけれども、アンケート調査の調査結果のほうでも複数代表を選出している回答もありました。実際に過半数労働者代表は、1名が主なのでしょうけれども、制度運用上、補助者とか、それから、アドバイザー的な存在として、複数人を選出していくということは合理的なのかなと思っています。
 労働組合があるところはいいのですけれども、ないところが過半数、中小企業は大部分なのですけれども、その場合、代表者のほかに補助者とか、アドバイザー的な者が本当にそこで選出されるかどうか、ただでさえ代表になりたくない等の理由により、定めていくのが難しい状況もあるのではないかと思います。ただ、候補としては補助者として選出していくのもよいのではないかと思います。そうすると、補助者の任命とか、運用的なものを柔軟に対応していって、事業場の実態に合った対応が可能となるのではないかと思います。
 過半数代表のほうは「意見を言う」ということなので、労働組合の「交渉」とはまた違った意味合いがあるのかなと思いますけれども、そこで交渉の相手として何人かを定めてくるとなると、そういう取組の方法もあるのかもしれません。基本的には最終的な協定の締結となる意思表明というのは1名に集約すべきであり、その責任の所在というのは明確にしておくことが必要なのではないかと思います。
 それから、任期の関係ですけれども、基本的には任期を定めるということは必要だと思います。長期的に同一人物が代表を務めると、形式的な選出というか、実際に形骸化の恐れがあるため、現状、大体は任期を定めているのではないかと思いますが、1年程度の任期を定めて労使協定の締結のたびに見直すことも必要なのではないかと考えます。
 以上でございます。
○山川分科会長 ありがとうございます。
 ほかはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、もう一つ、大きく分けた最後の3つ目が残っております。労使協定等の複数事業場での一括手続の問題でございます。この点について御質問・御意見がございましたらお願いいたします。
 冨髙委員、お願いします。
○冨髙委員 資料4の51ページでございますけれども、労基研報告ですと、「事業場単位の合意を前提にしつつ、手続をある程度まとめて行うことは今でも許容されており、その点を明らかにすることが考えられる」というような書きぶりで、その上で具体的なイメージが記載されています。
 このイメージ図を見ると、労使協定の締結、就業規則の意見聴取自体を一本化するということではなくて、それらは事業場単位で個別に締結をするということだと思うのですけれども、使用者側が本社の担当者などになるということを表しているのだろうと理解しているところでございます。この点、事業場ごとの労働組合役員などと、恐らくあまり接点がないと思われますし、また、事業場の実態もどれだけ十分に理解できているか分からないような本社の担当者が過半数代表と実のある協議が本当にできるのかどうかというところは甚だ疑問であると考えますし、望ましくないと考えます。
 また、過半数代表が拒否する場合には、原則どおり、事業場単位で労使協議を行うとされているのですけれども、従来から申し上げているように、労使の間に交渉力の差があるということを踏まえれば、実際に拒否するのは困難ではないかと考えるところでございます。
 また、使用者側が本社の担当者などになるということと、手続を一括で行うということは本来別問題であると思いますけれども、行政として複数事業場での一括手続ができるといったことを安易に発信したとすると、実務的にはどうしても易きに流れていくというのは想像に難くないと思います。事業場単位でその現場の実情に即した課題を労使で丁寧に協議をしている職場というのは今でも結構あるわけでございまして、そういう取組を後退させるようなことは行うべきではないと考えているところでございます。本来の制度趣旨を踏まえて、職場ごとに労働者側も使用者側もその実情を踏まえた対応ができるように、事業場単位での原則を徹底するべきだと考えているところでございます。
 以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。
 水野委員、どうぞ。
○水野委員 私からは事業場単位の大規模化に対する意見を申し上げたいと思いますけれども、その前に、以前の分科会で山川分科会長から「労働組合がどのように職場の意見を集約しているのか」という御質問があったと思ってございますので、少し状況を報告させていただきたいと思います。
 基本的にはそれぞれの現場で、労組の工夫によって意見集約を行っているのが実態でございますけれども、私どもの加盟組合では昨今働き方が様々に変化をしている中で、オンラインでの対話会をしたり、あるいはアンケート、チャット、さらにはアプリなども使いながら意見集約などにも取り組んでおります。
 ただ一方で、そういった取組はどうしても一方通行のやり取りになりがちなところも多いです。労働組合側からとすると、しっかりとフェイス・トゥ・フェイスでの意見交換の方が、最もお互いの思いが伝わるのではないかと考え、そのことには今もこだわって、職場での対面の対話会に力を入れております。当然事業場によっては輪番の勤務があったり、始終業の時間帯も部課ごとに異なることもありますので、そういった対話会も単に1日だけではなくて、1日に複数回、お昼休みに開催をしたり、あるいは終業時間後もそれぞれ分刻みで実施するなど、本当に丁寧な対応を心がけさせていただいております。そういった工夫の中で職場の様々な意見を聞き取っているところでございます。
 仮に大きな労働条件の変更を伴うような施策があった場合、私の経験でも夕方から夜の9時、10時まで、組合員の声に耳を傾けて意見を聞いてきたこともございますので、そういった中で、労働組合としての考え方をまとめて会社に対処させていただいているということを申し伝えておきたいと思います。
 その上で、今回の事業場単位の大規模化に対する課題でございますけれども、以前の分科会でも労側から発言したとおり、現在、事業場単位の大規模化や集約化が一部で進んでいるということでございまして、一つの事業場の労働者数が場合によっては数千人になるような実態もあると認識をしてございます。こうした場合、多様な労働者からの現場の声が届きにくくなりますから、現場の課題を十分に労使で共有できなくなることを危惧してございまして、そういった意味で集団的労使関係の形骸化を招きかねない事業場単位の大規模化がなされないようにすべきであると考えてございます。
 事業場の単位につきまして、現行の通達では、「一定の場所において相関連する組織の下に業として継続的に行われる作業の一体」とされておりますけれども、この定義自体が必ずしも明確ではないことによって、今ほど申し上げたような大規模化などの運用を招いているのではないかと思ってございますので、この点を改めて明確化することによって、適正な運用がなされるように対策を講じるべきだと考えてございます。
 なお、事業場の単位は経営権の範疇だという御意見もあるかもしれませんが、その前提として、経営権は法令遵守を図った上で適正な範囲で行使が認められているということも踏まえる必要があると思ってございます。
 また、労基研報告の中では、集団的労使コミュニケーションの4類型が記載されていますけれども、特に今回はその論点として、過半数代表との労使協定により、個別の実情に合わせて、法所定要件の下で法定基準を調整・代替し、モニタリングや苦情処理などの機能を持つということが示されております。
 改めてこのことを見ていけば、個別の実情に合わせた調整・代替と、この現場のモニタリングということがセットで労使コミュニケーションとして機能していると思ってございます。企業単位での手続を積極的に進めていくと、労使協議の形骸化を加速させることにもなりかねないと思ってございますので、事業場単位での協議や手続を行うという考え方につきましては、今後も維持すべきだと考えてございます。
 以上です。
○山川分科会長 組合による意見集約の実態を御紹介いただきまして、ありがとうございました。
 鬼村委員、お願いします。
○鬼村委員 私のほうからも複数事業場での一括手続について一言申し上げたいと思います。まず、36協定などについては、事業場ごとに業務内容とか、あるいは職種などが異なって、内容も変わってくるということもあると思うのですが、一般的には就業規則などについては企業全体で、事業場によらず統一的に設定したり、あるいは変えていく、運用していくということが多いのではないかなと思います。
 そういたしますと、使用者側が就業規則の意見聴取などのこうした手続を一括化することができるという選択肢を明確化していくことは、手続と実態を合わせていく上でも非常に納得感のある仕組みになるのではないかなと思います。
 また、こうした点は労働者側のほうでもメリットは十分あると思っておりまして、例えば就業規則だとか、こういう専門的な知識を有している者が必ず各事業場にいるかどうかというのは、これも会社の規模によりけりだと思いますが、多くの場合、本社での担当者というのが詳しいケースが多いと思いますので、制度の見直しを進めていく本社の担当者が事業場にしっかり出向いて説明をして、出されたいろいろな質問に対して答えていくことで、労働者側の理解度をさらに高めていくということもあるのではないかなと思います。
 ただ、事業場の過半数代表者がお一人だった場合には、一方的になるのではないかという御意見もあろうかと思います。しかしながら、例えば複数の事業場の過半数代表者をオンラインなどで1か所に集めて、その場で説明をして、その場で質問したりと、インタラクティブなやり取りをしていくことで、会社に対してもいろいろ発言しやすい雰囲気をつくっていくということで、一方的な説明というものから脱して、場合によっては過半数代表者の方の横の連携とか、情報交換とか、今後の動きなどにもつながることも期待できるのではないかと思います。
 こうしたことから、研究会報告書でも記載のあったように、個別の事業場単位で労使協議というのはそもそも行うことができること、それから、当事者の希望に応じて各事業場の使用者側の担当者が同席できることを周知した上で、使用者側の担当が事業場を横断的にまとめて対応できるということも明確化していくのは非常に重要ではないかと思います。
 それから、労働側の手続に関しましても、例えば過半数労働組合がある企業においては、労働組合のいわゆる本部が各事業場の組合の支部を構成していることが多いと思うのですが、その支部の組合の委員の意見を集約しながら全体をまとめて、本社の労務の担当者と労働組合の本部が就業規則を含めていろいろな制度の見直しに向けた交渉や協議を進めるということも、大企業中心にはよくあることではないかと思いますので、そうした実態があるのであれば、企業内で統一した労働条件の設定については、労働者側の手続についても企業単位、あるいは複数事業場単位の締結を可能とする選択肢を設けることが適当ではないかと思います。
 先ほども冨髙委員よりあったかと思いますが、日常的な協議でやり取りしていないと、なかなか率直な意見交換は難しいのではないかという御懸念もあると思います。そういう懸念の当たる職場においては、ここは事業場ごとの手続を選択できるようにするという、選択肢として持っておくということで、これは足りるのではないかと考えております。
 私からは以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 冨髙委員、どうぞ。
○冨髙委員 鬼村委員のほうから、一括で協議等を行えば、横の連携も期待できるのではないかというご意見がありました。これは以前も申し上げたと思いますけれども、初めて会った方たちと横の連携が急に生まれるかことは考えにくいと思いますし、使用者側、本社の方が出てきて説明をしたときに、本当に多くの意見が出されるのかは非常に疑問です。そうした点は大変懸念されるところではないかと思います。
 率直な意見を出すのが難しくとも、選択肢にすればいいのではないかという意見について、企業側から提示された場合でも、個別の事業場でやることを選択できる過半数代表がどれだけいるかというと、私は非常に難しいのではないかと思いますので、その点を含めて十分慎重に考えるべきだと思っております。労使の関係性が職場ごとに異なっている中で、使用者側の皆さんが言うような適切な選択ができるかというところは、極めて慎重に考える必要があると思っているところでございます。
 また、本社の担当の方が協定内容案に詳しいことから、質疑をしながら理解を深めていくことが有効といった発言もありましたけれども、労働者の労働条件を検討していく場でございますので、単なる学習会よりも一段も二段も高い協議や取組をしなければいけないと思います。
 そのときに、本社の方たちは法的な部分は詳しいと思いますが、現場の実態をしっかりと理解していないケースが多いと思われますし、現場には必ずマネジャー的な立場の方がいるわけですから、それぞれの事業場単位でしっかりと議論を進めていくことが重要です。現場に近い単位で意見集約を行って協議をすることが望ましいということを厚労省はしっかりと推奨していくべきだと考えております。
 以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。
 鈴木委員、お願いします。
○鈴木委員 一括手続について発言いたします。各事業所の方の意見をしっかりと集約をした上で、例えば就業規則の見直し等について意見を取りまとめて意見が出されることは重要だと思っています。ただ、職場の実態というのは様々であり例えば有期・パートの方が多い事業場と、正規の方が多い事業場などがある場合、特に同一労働同一賃金に関する就業規則について意見を集約することを考えると、当然労働条件が違うことも多い中で複数事業場全体として意見を集約した方がより労使の中のコミュニケーションを深めて、よりよい意見が出ることも考えられるのではないかと思っています。
 全てが全て、本社一括の届出がいいと申し上げるつもりは決してないのですけれども、実際に行われている手続に合わせるとか、将来を見据えた在り方として、選択肢を増やすことは、ぜひ御検討いただきたいと思っております。冨髙委員から、労働者が使用者側になかなかノーと言えないというご意見がありましたが、そうすると、組合がないところの働き方は法律で全て決めないといけないというようなことにもなりかねないようなお話だと思います。常態的に自主的な労使交渉や話し合いをして、労使コミュニケーションをしっかりと果たされているところもあることを踏まえた議論をぜひお願いしたいと思っています。
 私からは以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。
 冨髙委員、どうぞ。
○冨髙委員 労働組合がある職場では組合員かどうかにかかわらず、例えば有期雇用で働く方が多い職場でも、組合として意見集約をしながら、しっかりと交渉を積み上げております。
 いろいろなコミュニケーションの在り方があるのは我々も否定しませんし、先ほど恐らく櫻田委員からも申し上げましたけれども、過半数代表は労働条件の解除の部分だけを役割として担うわけでございまして、一方で、組合というのは労働条件設定機能を有しております。
 そうした役割の違いがある中で、ややもするとそういった機能を持っていない社内組織が団体交渉の一環とも受け取れるような活動をすること自体、今起きているというようなことを考えると、労使コミュニケーション自体は様々な選択肢があっていいと思うのですけれども、その役割をどこまで持たせるのかというところは慎重に考える必要があると思っております。
 冒頭で申し上げたように、過半数代表者の運用の適正化を進めることは重要ですけれども、過度な役割を与えるということではないと考えておりますので、そうした視点で議論をする必要があると思っております。
 以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。
 鈴木委員、どうぞ。
○鈴木委員 被せるようで大変申し訳ないのですけれども、組合がないところをどうするかというのが一つ論点としてあると思っております。例えば組合のないところは労働条件を決めてはいけないということではなくて、あるべき姿として、働き手の意見を聞いて、就業規則の創設・変更場面でも協議を行い、意見があれば反映するということが追求されてしかるべきと思います。団体交渉はあくまでも労組法上で保護される労働組合にしかできないものであるので、今私が申しあげたことは団体交渉とは呼べないことは重々理解をしております。
 そのことを前提とした上で、組合がない事業場においても何らか労働条件について話し合いをすることが望ましいのではないのか、また、個別労働者と会社とは契約を個別契約で結べるのに対し、現行法上、集団的に話し合った結果としての労働条件について集団的な労働契約として全く結べないのはおかしくないかという問題提起をさせていただいている点は強調させていただきたいと思います。
 以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。
 議論として、一括手続を超えたところに関わっているような気がいたしまして、最初の論点の労使コミュニケーションの在り方の問題に関わるような議論ということも含まれているのかなと感じている次第でございます。
 ほかに御質問・御意見はございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 本日の議題につきましては、各テーマに関しまして、委員それぞれのお立場から非常に貴重な御意見をいただきました。御意見をいただいた点は非常に重要なものだと思いますので、事務局では本日の議論も踏まえまして検討を進めて、次回以降の資料の準備をお願いいたしたいと思います。
 委員の皆様方、ほかにこの際ということで何かございますでしょうか。
 ございませんでしたら、本日の議事はここまでとさせていただきたいと思います。
 では、次回の日程等について事務局からお願いいたします。
○労働条件企画専門官 次回の日程等につきましては、調整の上、追ってお知らせさせていただきます。
○労働条件政策課長 1点補足でございますが、本日、冒頭の頭撮りのお時間をお取りできていなかったかと思いますので、記者の方等で頭撮りを御希望で、撮れていなくて今撮りたい方がおられましたら、この時間にお願いできればと思います。いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
○山川分科会長 ありがとうございます。
 私が遅れたせいで、改めて傍聴の皆様にも申し訳ございませんでした。
 それでは、本日はこれで終了いたします。大変ありがとうございました。