2025年6月6日 第199回労働政策審議会労働条件分科会 議事録

労働基準局労働条件政策課

日時

令和7年6月6日(金) 14:00~16:00

場所

AP新橋 Dルーム
(東京都港区新橋1-12-9 新橋プレイス 4階)

出席者

公益代表委員
川田委員、神吉委員、黒田委員、首藤委員、原委員、水島委員、山川委員
労働者代表委員
亀田委員、櫻田委員、椎木委員、冨髙委員、水野委員
使用者代表委員
佐久間委員、佐藤委員、鈴木委員、田中委員、鳥澤委員、兵藤委員、松永委員
事務局
岸本労働基準局長、尾田審議官(労働条件政策、働き方改革担当)、田中審議官(労災、賃金担当)、佐々木総務課長、澁谷労働条件政策課長、田上労働条件確保改善対策室長、大野賃金課賃金支払制度業務室長、下田労働条件企画専門官

議題

(1)資金移動業者の口座への資金支払制度について
(2)労働基準関係法制について

○山川分科会長 それでは、定刻になりましたので、ただいまから第199回「労働政策審議会労働条件分科会」を開催いたします。
 本日の分科会は、会場での御参加とオンラインでの御参加の双方で開催させていただいております。
 本日の委員の御出欠ですが、労働者代表の藤川大輔委員、古川大委員、松田惣佑委員、使用者代表の鬼村洋平委員、公益代表の安藤至大委員が御欠席と承っております。
 カメラ撮りがありましたら、ここまでとさせていただきます。
 それでは、本日の議事に入ってまいります。
 では、議題(1)の「資金移動業者の口座への賃金支払制度について」につきまして、準備ができましたら、事務局から資料№1「資金移動業者の口座への賃金支払制度について」について説明をお願いいたします。
 よろしいでしょうか。
○賃金課賃金支払制度業務室長 賃金課の大野でございます。
 それでは、私のほうから資料№1の資金移動業者の口座への賃金支払制度について御説明させていただきます。
 資料1ページ目を御覧いただければと思います。
 1ページ目、資金移動業者の口座への賃金支払制度の概要でございます。労働基準法においては、賃金が確実に労働者に支払われるように、通貨払いの原則など5つの原則が定められておりますが、令和5年4月1日施行の労働基準法施行規則に基づきまして、賃金の確実な支払いを担保するための要件を満たすものとして、厚生労働大臣が指定する資金移動業者については、資金移動業者の口座への賃金支払いが認められることとなっております。
 その指定要件については、下のほうに7つ記載がございますけれども、例えば①の口座残高上限額を100万円以下に設定するですとか、②破産等により資金移動業者の債務の履行が困難となったときに、労働者に対して負担する債務を速やかに労働者に保証する仕組みを有していることなどの要件が設けられているところでございます。
 2ページ目をおめくりいただければと思います。
 この制度の概念図を整理したものになります。まず、金融庁の資金決済法等に基づきまして、利用者の保護ですとか資金移動業者の適切かつ確実な遂行の観点から、全ての資金移動業者に必要な規制がなされております。その上で、2階部分として、労働基準法施行規則に基づいて、賃金の確実な支払いを担保するための要件を満たす一部の資金移動業者に限定して賃金支払いができることとされているというような関係になってございます。
 資料3枚目をおめくりいただければと思います。
 3枚目は指定の状況をまとめたものでございます。令和5年4月の制度施行以降、指定の審査を経て、現在まで計4社が指定されております。口座の受入上限額並びに保証機関はそれぞれの資金移動業者ごとに設定しているということでございます。
 それから、資料の下のほう、制度利用状況でございますけれども、令和7年3月末時点で本制度の利用状況を確認したものでございます。労働者の口座件数につきましては1万7210件、それから、労働者一口座当たりの残高の平均は4,168円、令和7年3月に決済・送金等に利用された取扱金額は計約1.3億円となってございます。
 続きまして、資料4ページ目になります。
 本制度に係る近時の政府決定等になっております。
 上のほう、令和5年6月16日に閣議決定されました規制改革実施計画につきましては、規制改革の内容として、制度施行から2年経過後を目処に、制度利用状況を基に、必要十分な要件の在り方を含めた課題の有無の検証を開始すると記載されてございます。今年の4月で制度施行から2年となってございます。
 真ん中から令和6年6月21日閣議決定の規制改革実施計画ですけれども、こちらにつきましては、資金移動業者向けのQ&Aの作成、それから、申請に係る標準処理期間の設定、制度利用状況の把握の開始、制度利用意向等を指標としたモニタリングの実施などが記載されておりまして、厚生労働省において順次対応しているところでございます。
 続きまして、資料5ページ目を御覧いただければと思います。
 資料5ページ目は、内閣府が令和7年5月28日に公表いたしました規制改革推進に関する答申でございます。小文字で記載されているa、bにつきましては厚生労働省において措置済みの事項となっておりますが、cについて、厚生労働省は金融庁と連携をして、労働者の賃金の安全性・確実性を担保しつつ、賃金のデジタル払いの社会実装を実効的に促進する観点から、以下の各事項の見直しの要否を含め検討し、結論を得次第、速やかに必要な措置を行うとされておりまして、3つの事項が記載されてございます。
 ①が資金移動業者の破綻時の資産保全要件ということで、金融庁において検討されております資金移動業者の破綻時における利用者資金の返還方法の多様化が実現した場合に、資産保全要件の廃止または大幅な緩和を行うこと。その際、破綻時に6営業日以内に労働者に弁済するとの要件についても併せて見直しを行うこととされております。具体的な内容は後ほど他の資料でも説明をさせていただきます。
 それから、②が指定代替口座の必置要件ということで、資金移動業者の破綻時などに労働者に資産を返還する際に必要となります指定代替口座というものがありますが、それについて預貯金口座等に限定するとの要件を見直すということ。
 それから、③はその他の要件として、現行指定要件とされております個人情報の取扱いに係る第三者機関による認証を求めないこと、また、口座から現金での払い出し方法において1円単位での払い出し要件というような要件がございますが、それを廃止して、例えば紙幣単位での払い出しを認めることといったことにつきまして、見直しの要否を含め検討することとされているところでございます。
 資料6ページ目からは参考資料ということで、主な指定要件を並べたものになります。
 7ページ目について補足の説明をさせていただければと思います。7ページ目を御覧いただければと思います。
 7ページ目は資金移動業者が破綻した場合の保証の仕組みについてということで、現行の資金決済法においては、全ての資金移動業者に対して、利用者から受け入れた資金全額の供託等を求めまして、破綻時には供託手続を通じて国が各利用者に対して還付手続を実施するということとされておりますが、利用者への資金の還付には最低170日という期間を要する制度となっております。
 一方、厚労省の賃金支払制度におきましては、十分な額が早期に支払われるようにする観点から、供託等の手続に加えまして、資金移動業者の破綻時に、保証機関から労働者に対して6営業日以内に労働者の口座残高全額を支払う仕組みを有することを求めているところでございます。
 こうした中、金融庁におきましても、資金決済法の本体部分について見直しの議論が行われまして、新たに銀行等の保証機関ですとか信託会社等による直接返還を可能とする見直し内容を含めた資金決済法改正法案が閣議決定されております。本法につきましては、ちょうど本日の午前中に参議院で可決成立したと聞いております。この改正資金決済法の下位法令等の具体の内容につきましては、今後、法の施行に向けて金融庁において検討されていくというような予定になってございます。
 8ページ目から11ページ目までは時間の関係で割愛させていただきまして、12ページ目以降、参考資料②のニーズ調査について御説明をさせていただきます。
 13ページには調査の目的を書いてございます。本調査は、使用者、労働者が賃金のデジタル払いを導入するに当たっての課題、それから、潜在的な制度利用意向等を含めた賃金のデジタル払いに関するニーズを把握することを目的としておりまして、厚労省の委託事業として行った調査でございます。労働者調査は約1万人、企業調査は2,287社に調査をしてございます。
 14ページ目から労働者調査の結果をまとめたものになります。一部抜粋して御報告をさせていただきます。
 まず14ページ目、右側のグラフですけれども、給与等の受取方法ということで、勤務先における給与の受取方法については、銀行口座への支払いが92.1%、中ほど、資金移動業者の口座への支払いについては0.6%となってございます。
 15ページ目を御覧いただければと思います。
 賃金のデジタル払いの印象ということで、賃金のデジタル払いが制度化されたことについての印象の質問ですが、「良いと思う」が14.6%、「どちらかと言えば良いと思う」が36.3%となっております。
 右側、賃金のデジタル払いのメリットについて感じることといたしましては、「現金をおろして持ち歩かなくて済む」といった回答が一番多いというような状況でございます。
 それから、16ページ目を御覧いただければと思います。
 賃金のデジタル払いの懸念点として感じることを教えてくださいという質問でございますけれども、最も多い回答が左から2番目の「安全性に不安がある」というもので43.8%でございました。
 右側、賃金のデジタル払いの安全性で不安な点について、具体的な不安点を聞いている質問になりますけれども、左から「口座の不正利用」、「資金移動業者の破綻」、「個人情報の漏洩」といった回答が全体の過半数を超えているという状況でございます。
 17ページ目を御覧いただければと思います。
 上側の表が賃金のデジタル払いの利用意向ですけれども、「今後利用したい」と回答した割合が全体の17.4%、「利用したくない」と回答した割合が33.8%となってございます。
 18ページ目を御覧いただければと思います。
 ここからは企業調査の主な結果をまとめたものになっておりまして、上の表、給与等の支払い方法につきましては、労働者調査とほぼ同様の結果が得られているところでございます。
 下側、従業員からの賃金のデジタル払いの導入の要望があるかという質問ですが、要望、検討依頼があった、あるいは承知していると回答した例が全体の約2%程度となっているところでございます。
 資料19ページ目ですけれども、賃金のデジタル払いの必要性を感じるかという企業への質問については、「必要性を感じる」と回答した割合が2.2%、「必要性を感じない」と回答した割合が71.6%となっております。
 下側のグラフ、賃金のデジタル払いの導入・検討状況ですけれども、従業員からの要望があれば導入を検討したいと考えているという割合が18.3%、導入を検討していないと回答した割合が67.9%となってございます。
 最後に資料20ページ目になります。賃金のデジタル払いの導入についてですけれども、左側が導入あるいは導入を検討している場合のその理由を教えてくださいという質問ですが、「従業員からの要望があるから」が40.2%、「福利厚生の一環としての観点から」という回答が36%となっております。
 右側が賃金のデジタル払いの導入を検討していない、または導入予定がない理由についての質問ですけれども、相対的に多かった回答が左側2つにあります。「現在の方法で十分と考えており、新しい方法を追加する必要を感じないから」、「従業員からの要望がないから」といった回答になっているところでございます。
 資料21ページ目以降は、現行の資金移動業の規制、1階部分の概要になっておりますので、時間の関係で説明を割愛させていただきます。
 私からの説明は以上になります。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 ただいまの事務局の説明につきまして、御質問、御意見があればお願いいたします。
 オンラインで御参加の皆様におかれましては、御発言の希望がある場合にはチャット機能でお知らせいただければと思います。
 御質問、御意見等はございますでしょうか。
 冨髙委員、お願いします。
○冨髙委員 ありがとうございます。
 先ほど御説明いただきましたが、「規制改革推進に関する答申」で賃金のデジタル払いの見直しの要否も含めた検討ということで記載されておりますけれども、答申の中で掲げられている資金保全要件、また、指定代替口座の必要要件というのは、いずれも労働者の生活の糧である賃金が安全かつ確実に支払われるために必要不可欠だということで、本分科会の中で議論して、労基則で上乗せ規制として課したものだと考えております。
 3ページでも説明がありましたけれども、資金移動業者が初めて指定されたのが昨年の8月、現時点で4社ということで、スタートを切ったばかりの状況であると思っています。
 また、ニーズについても今回調査していただきましたが、18ページ、19ページも含めて、労使双方のニーズもあまりないというのが正直な印象でございます。一方で、16ページの制度に対する懸念の部分については、割合としても比較的高くなっているということを踏まえると、やはり当面は施行状況を把握しつつ、賃金のデジタル払いをはじめとした金融リテラシーを高めていくような教育などについて対応いただくことが重要ではないかと思いますので、意見として申し上げておきたいと思います。
 以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 それでは、鈴木委員、お願いします。
○鈴木委員 御指名ありがとうございます。
 事務局から賃金のデジタル払いに関するニーズ調査の結果を御報告いただきました。
 労働者調査の結果によりますと、15ページで賃金のデジタル払いが制度化されたことを「良いと思う」、あるいは「どちらかといえば良いと思う」とする回答が半数を超えております。また、17ページでは賃金のデジタル払いを「今後利用したい」とする回答も約2割見られます。こうした労働者の声を踏まえますと、私としては賃金の受取方法の選択肢を広げたことは良かったと受け止めているところです。
 その上で、規制改革推進会議の答申についてコメントいたします。ただいま冨髙委員から御指摘がありましたとおり、資金移動業者に対する厚生労働大臣の初の指定、これが昨年8月に行われたばかりです。賃金のデジタル払いが実質的に開始されてから、1年も経過しない中で、指定要件の見直しを議論するというのは、正直、時期尚早ではないかと思うところもございます。
 答申は、資金移動業者の破綻時の資産保全要件と、指定代替口座の必置要件の見直しに言及しています。御案内のとおり、これらは当分科会での2年に及ぶ真摯な議論を経て、労働者保護の観点から設けられた「2階部分」の中核的要件ですから、今後の検討ではそのことを十分に踏まえた議論が必要だと考えます。
 私からは以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。
 ほかに御質問、御意見等はございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 それぞれ御意見ありがとうございました。今後は、いただいた御意見、また、金融庁所管の資金決済法及び下位法令等の具体的な見直し状況なども踏まえながら、事務局で課題を整理していただいて、本日開始ということにはなりましたけれども、引き続きこの分科会において議論をしていきたいと考えております。
 また、賃金のデジタル払いの制度利用状況等について、事務局におかれましては引き続き定期的な確認も進めていただくようお願いいたします。
 よろしいでしょうか。
 それでは、続きまして、次の議題に移りたいと思います。議題の(2)「労働基準関係法制について」でございます。
 では、事務局から資料№2「労働時間法制の具体的課題について②」の御説明をお願いいたします。
○労働条件政策課長 事務局でございます。
 資料№2について御説明を申し上げます前に、ほかの資料の御案内だけさしあげたいと思います。
 まず、資料№3につきましては、労働条件分科会におけるこれまでの議論につきまして、主立った項目ごとに整理をしたものについて、5月13日までのこれまでの公労使の皆様の御意見を反映させたものとなっております。
 また、参考資料№1につきましては、前回までと全く同じものでございますが、3月にお示ししました労働時間制度等に関する実態調査結果につきまして、本日の資料№2にも関わります勤務間インターバルですとか年次有給休暇、つながらない権利等につきましても、使用者、労働者双方に聞いておりますので、併せて御参照いただければと思います。
 では、メインの資料となります資料№2「労働時間法制の具体的課題について②」につきまして御説明を申し上げます。
 表紙に載せておりますように、今回の資料としては休日・連続勤務規制、勤務間インターバル、つながらない権利、年次有給休暇に関します資料を御用意したものとなっております。
 まず最初の塊、休日・連続勤務規制について資料の御説明を申し上げます。
 めくっていただきまして、2ページが法定休日についてでございます。現行の労働基準法第35条第1項ですが、週休1日制の原則ということで、毎週少なくとも1回の休日を与えなければならないということを定めております。この「週」の解釈につきましては、行政解釈として、就業規則等で別段の定めがない場合には、日曜から土曜までの暦週で1週と解されるという整理をしております。
 労働基準法第35条第2項では、変形週休制といたしまして、週休1日制の原則は、4週間を通じ4日以上の休日を与える使用者については適用しないということで、4週間の中のどこかで4日の休日が確保されていれば適法であるということで、これまで運用されてきているものでございます。
 3ページから5ページまでは、週休制の実態につきまして厚生労働省の就労条件総合調査の結果を御紹介するものでございます。
 4ページの表で御覧いただきたいと思いますが、完全週休2日制を導入している企業の割合は令和6年調査で56.7%でございます。企業規模別に見ますと、1,000人以上が72.3%に対しまして、30~99人では53.6%と一定規模間の格差が見られるところでございます。これと、完全週休2日ではないものの、何らかの週休2日制をとっているところまで合わせますと9割でございますが、一方で週休1日制ですとか週休1日半制といった形をとっているところも現時点で7.5%あるという状況でございます。
 5ページはこれを適用労働者割合で見たものとなっております。
 6ページを御覧ください。
 連続勤務規制の考えの議論の参考といたしまして、連続勤務の心理的負荷について、「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会」の資料を御紹介するものでございます。平成23年に精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会で当時の労災認定基準策定の検討を行った際には、日本産業精神保健学会が平成22年に行った「ストレス評価に関する調査研究」において、ストレス強度が中程度であるとされたことから、2週間以上にわたって連続勤務を行ったことを心理的負荷の強度「中」の出来事として認定基準に追加したものでございます。
 この点につきまして、令和2年度に改めてストレス評価に関する調査を行ったものが左下の図1でございます。2週間以上にわたって連続勤務を行ったストレス強度につきましては、当該ストレスイベントに該当した方に0~10までの11段階で聞きましたところ、平均して5.63ということで、その1個下に載せておりますが、1か月に120時間以上の時間外労働を行った方に関するストレスと同程度ぐらいのストレス強度ということが示されているところでございます。
 また、参考までに右側の図2でございますが、令和5年度の労災の精神障害支給決定件数883件のうち、2週間以上にわたって連続勤務を行い、かつほかの要素と合わせまして評価が強度「強」と判断された件数が33件ございました。参考までに、1か月に80時間以上の時間外労働を行って、その他要素と併せまして「強」と判断された件数は35件ということで、件数としては同じぐらいの件数がある状況でございます。
 7ページは、諸外国の休憩・休息・休日・休暇制度につきまして、その概要をまとめた資料となっております。
 8ページは、休日の特定につきましての現行の法令と解釈を整理したものでございます。労働基準法においては、現在、使用者が休日を特定すべきということは規定されておりません。行政解釈・通達におきまして、具体的に一定の日を休日と定める方法を規定するよう指導することとされているところでございます。
 これに関連しまして、9ページでございますが、休日につきましては、あらかじめ振り替えるということにより、当該休日が労働日となり、休日に労働させることとはならないということを行政解釈としてかねて示してきているところでございます。
 10ページは休日の特定に関します裁判例の状況でございます。いずれも割増賃金等について争われた事案でございますが、法定休日の特定を肯定した事案、否定した事案、それぞれ地裁・高裁レベルで見られる状況でございます。
 11ページになります。休日に関します労働基準関係法制研究会報告書の概要でございます。
 まず(2)-1、定期的な休日の確保といたしましては、現行の法定休日の4週4休の特例を2週2休とするなど、連続勤務の最大日数をなるべく減らしていく措置の検討に取り組むべきであると考えられるということ。また、精神障害の労災認定基準も踏まえると、2週間以上の連続勤務を防ぐという観点から、「13日を超える連続勤務をさせてはならない」旨の規定を設けるべきであると考えられることなどが提言されております。「ただし」といたしまして、災害復旧等の真にやむを得ない事情がある場合の例外措置や、顧客や従業員の安全上やむを得ず必要な場合等に代替措置を設けて例外とする等の対応を労使の合意で可能とする措置についても検討すべきということについても言及があるところでございます。
 法定休日の特定につきましては(2)-2ですが、労働者の健康を確保するための休息であるとともに、労働者の私的生活を尊重し、そのリズムを保つためのものであるということ、法定休日に関する法律関係が当事者間でも明確に認識されるべきであることから、法定休日を特定するべきことを法律上に規定することに取り組むべきというような御提言をいただいたところでございます。
 12ページ目以降、勤務間インターバルに関する資料を用意しております。
 13ページでございますが、勤務間インターバル制度の概要となります。働き方改革関連法に基づきまして労働時間等設定改善法が改正され、平成31年4月から勤務間インターバル制度の導入が事業主の努力義務となっているところでございます。
 真ん中に矢印の図をお示ししておりますけれども、勤務間インターバル制度とは、ある日の終業時刻から次の日の始業時刻までの間に一定時間以上、この図でいいますと11時間以上の休息期間を確保する仕組みでございます。夜9時に残業が終われば、休息時間11時間というのは翌朝8時始業でも確保されるわけですが、残業が夜11時まで延びた場合に休息時間を11時間まで確保しようとすると、始業を繰り下げていただくとか、あるいは8時から10時までは実際には働いていなくても働いたものとみなすといった形で、休息を実質的に確保するというものをインターバルと呼んでいるものでございます。
 これまでのところは、厚生労働省といたしましては、下に絵をお示ししていますように、業種別の導入マニュアルや周知リーフレット、シンポジウムの開催等によりまして周知啓発を図ってきているところでございます。
 14ページ目、勤務間インターバル制度の導入状況等でございます。
 左側の帯グラフでございますが、令和6年の調査で導入している企業が5.7%、導入を予定または検討している企業が15.6%ということで、合わせて2割程度となっております。
 右側の折れ線グラフは規模別の導入している企業割合を見たものでございますが、いずれの規模でも徐々に導入が進んでおりますが、1,000人以上の規模に比べますと、それ以下の規模のところでは普及度合いに一段の差が見られるという状況でございます。
 15ページを御覧ください。
 導入予定はなく、検討もしていない企業につきまして、その理由を問うたものでございます。赤枠で囲んでいるところとなりますが、「超過勤務の機会が少なく、当該制度を導入する必要性を感じないため」という回答が全体の57.6%と一番多くなっておりました。そのほか、「当該制度を知らなかったため」ですとか「人員不足や仕事量が多いことから、当該制度を導入すると業務に支障が生じるため」とする回答も一定割合見られるところでございます。
 16ページ目からは、勤務間インターバルを実際に導入している企業及びその労働者により詳しく実態を聞いてみようということで、昨年度、厚生労働省雇用環境・均等局で実施した調査結果の概略を御報告するものとなります。
 企業調査は厚生労働省の就労条件総合調査で勤務間インターバルを導入していると回答した企業を対象としております。労働者調査は、その調査対象企業における正社員かつ勤務間インターバル制度が適用されている労働者を抽出していただいた調査でございます。
 有効回答率は企業調査で37.8%、労働者調査で24.4%でございます。このような状況の調査であることをお含みおきいただきつつ、以下の数字を御確認いただければと思います。
 17ページ目が、まず企業調査で設定している勤務間インターバルの時間数を見たものとなります。一番多いのは11時間以上12時間未満が35.8%、2番目に多かったのが9時間以上10時間未満の24.8%、3番目が10時間以上11時間未満の17.6%ということで、11時間以上というような議論も研究会のときにもありましたけれども、実際の企業の導入状況としては様々な時間数で導入されているところでございます。
 この点、18ページ目で企業規模別に見たものでございますが、1,000人以上規模で見ましても、11時間以上12時間未満が34.5%、10時間以上11時間未満が34.7%というように、必ずしも大規模であるから長いインターバルが設定されているということではなく、規模にかかわらず、様々それぞれの御事情に応じた時間数が設定されているものと見受けられるところでございます。
 19ページ目は勤務間インターバル制度が適用される労働者の割合を見たものでございます。100%、その会社の全従業員に適用しているという企業が、産業計で見ますと71.1%でございました。一方で80%以上100%未満、2割ぐらいの方は適用を除外しているという企業も15.7%見られたところでございます。
 この点につきまして企業規模別に見たのが20ページとなります。こちらも1,000人以上規模で見ますと100%適用が58.4%にとどまっておりまして、大きな企業も含めて全員に必ずしも適用できている状況ではないというのが現時点の状況かと思います。
 21ページ目は、今度は勤務間インターバル制度を適用していない労働者の範囲について聞いたものでございます。適用していない職階があるというところが38.0%、適用していない雇用区分があるが27.5%、間を飛ばしまして勤務形態・勤務時間により適用していないが30.1%と、様々な事情で一部の労働者を適用していないという実情が見られるところでございます。
 22ページは、勤務間インターバル時間を確保した場合の労働時間や割増賃金の取扱いについて聞いたものでございます。
 まず、括弧のついていない数字のところを先に御説明申し上げますが、労働時間の取扱いとして一番多かったのは、翌日の始業時刻と終業時刻を変更し、インターバル時間を確保するための時間数分だけ後ろ倒しするというものでございます。前日の残業が遅くなった場合には、翌日の出社時間が遅くなる代わりに翌日の退社時間も遅くなるというスライドさせるようなやり方を取られている企業が39.4%であります。
 また、翌日の始業時刻と終業時刻は変更せず、始業時刻から実際の勤務開始までの時間数分を働いたものとみなすということで、翌日遅く来ても定時に来たことにするというような運用をされている企業が19.2%でございます。
 また、インターバル時間が確保されるよう、一定時刻以降の残業を禁止し、翌日の始業時刻以前の勤務は認めないということで、10時間なり11時間なりのインターバルを確保して翌朝定時に来てもらうために、例えば夜10時以降なら10時以降の残業を絶対させないという形で運用されているところが10.8%でございます。
 なお、労働時間の取扱いを考慮しなくてもインターバルを確保できているという企業は22.0%ございました。
 その次に、間に挟まっている括弧書きの数字のところでございますが、翌日の始業時刻をスライドさせる企業につきまして、割増賃金をどうしているかにつきましては、法定労働時間内の労働時間であるため、割増賃金を支払っていないというところが82.5%である一方で、法定労働時間内の労働時間であるが、通常の終業時刻以降については時間で切って割増賃金を支払っているというところも15.2%あったという結果でございます。
 23ページはこれを規模別に見たものとなります。
 24ページ、勤務間インターバル時間を確保できなかった場合の代替措置についてでございます。
 まず、一番右側の列になりますが、2024年9月、調査月におきましてインターバルを確保できなかった従業員はいないという回答が82.0%と多数を占めております。残りの18.0%、確保できなかった従業員がいた企業につきましてどういう措置を講じていたかということにつきまして、特に講じていないが39.8%、上司との面談機会を設定し、仕事の配分を見直しているが27.4%、ここの選択肢にないその他の措置を講じているが25.3%という結果となっております。
 25ページ目は、企業のほうにインターバル制度を導入した効果を聞いたものでございます。一番多かったのは従業員の健康の維持・増進が図られたが51.7%、次いで従業員のワーク・ライフ・バランスが向上したが36.0%となっておりました。
 27ページを御覧ください。
 ここからは労働者側に聞いた調査結果となります。
 労働者側に適用されている勤務間インターバル時間数を聞いたものとなりますが、一番多かったのは11時間以上12時間未満で19.5%、10~11時間未満が15.8%、9時間以上10時間未満が14.6%ということで、企業調査と同様に一定の時間数が定められて、それなりにばらけているという状況でございます。
 28ページはこれを職種別に見たものでございます。
 29ページは、適切だと思う勤務間インターバル時間数を労働者に聞いたものでございます。適切といいますか希望というところで、先ほどの27ページ目よりはやや長めの数字のところが多くなっております。
 31ページを御覧ください。こちらは、直近1か月において勤務間インターバル時間を確保できなかった回数とその確保できなかった理由を労働者に聞いたものとなります。
 最初に括弧書きの数字を左側の列で御覧いただきたいと思います。下のほうになりますが、直近1か月で勤務間インターバルを確保できなかったことはない、確保できなかった回数が0回という回答が79.7%と全体の8割でございます。また、覚えていないが15.6%でございまして、残りの約5%程度の方、何回確保できなかったか覚えていた方々に回数別に状況を聞いたのが上の4行となります。15回以上確保できなかった、事実上インターバルがほとんど確保できていないという方について見ますと、右から2列目と3列目、繁忙期のためとか、限られた時間・期間の中で遂行しなければならない業務が多いためという理由が挙げられているところでございますが、1回から5回のようにたまに確保できないという方については様々な理由が挙げられていている。社内での緊急事態や突発トラブル対応ですとか、クレームや急な仕様変更への対応など顧客や取引先への対応という回答も多くなっておりました。
 32ページは、これにつきまして適用される勤務間インターバル時間数ごとの状況を見たものとなります。
 33ページは、勤務間インターバル制度が適用された結果、感じる効果として労働者に聞いたものとなります。今まで以上によくなったということで多い選択肢としては、睡眠時間を今まで以上に確保できたですとか、自分の自由に使える時間が今まで以上に増えた、心身の健康が改善したというあたりの回答が相対的に多くなっております。
 35ページを御覧ください。
 勤務間インターバル時間を確保するに当たって、業務上困難に感じることを聞いたものとなります。困難に感じることはないという回答が72.1%と多くございましたが、困難を感じた方の中で多い理由としては、人員不足から制度を利用すると業務遂行に困難を感じる、仕事量が多いことから制度を利用すると業務遂行に困難を感じるという回答が10%を超えていたところでございます。
 36ページはこれを職種別に見たものとなります。
 37ページは、勤務間インターバルの時間数と健康状態に関する自己認識を問うたものでございます。時間数の長さは様々ありますけれども、相対的に見ますと、よい、まあよいという回答を合わせますと大体5割程度に対しまして、あまりよくない、よくないを合わせた回答が10~15%程度ということで、インターバルが入っている労働者から見ると健康状態はよいという回答をする方が相対的に多いのかなという結果となっております。
 以上、概略を御説明申し上げました。
 39ページは、諸外国におけますインターバル制度につきまして、休息時間の長さや義務付けの有無、適用除外の職種等につきまして、表に整理したものとなります。
 より詳しい各国制度につきましては40ページから43ページまでに入れておりますので、ドイツ、フランス、イギリスの状況を併せて御参照いただければと思います。
 44ページは勤務間インターバル制度に関する現行の規定ということで、労働時間等設定改善法、労働時間等設定改善指針の条文を示しております。
 なお、労働基準法に基づきます高度プロフェッショナル制度につきましては、選択的措置として勤務間インターバルが1つ定められておりますので、その条文の第41条の2を張りつけております。
 45ページは御参考でございますが、医師と自動車運転業務につきましては、それぞれ医療法とその施行規則、また、自動車運転者の改善基準告示で勤務間インターバルのルールがございますので、その内容をこちらで整理しております。
 46ページは、労働基準関係法制研究会報告書におけます勤務間インターバルに関する御提言の抜粋となります。抜本的な導入促進と義務化を視野に入れつつ、法規制の強化について検討する必要があると考えるとした上で、具体的にどのような制度を求めるかについては、例えば勤務間インターバルは11時間を確保することを原則としつつ、制度の適用除外とする職種等の設定や実際に11時間のインターバルが確保できなかった場合の代替措置等について、より柔軟な対応を法令や労使で合意して決めるという考え方ですとか、より短い時間としつつ、柔軟な対応はより絞ったものとする考え方、規制の適用について経過措置を設けて、全面的な施行までに一定の期間を設ける考え方など、段階的に実効性を高めていく形が望ましいという御提言をいただいております。
 下のパラグラフになりますが、義務化の度合いについても様々な法律で様々な度合いの定め方が考えられるのではないかということで、こうした御議論につきまして審議会でも改めていただければと思っております。
 47ページからはつながらない権利に関します資料の御紹介となります。
 48ページは、各国における関係する制度の有無ですとか議論の状況につきまして概要をまとめたものとなっております。フランスにおいては労働法典改正で法制化がなされているということもございます。
 49ページでございます。こちらは令和5年の労働時間制度等に関するアンケート調査で勤務時間外や休日の社内連絡に関するルールの有無等につきまして企業に聞いたものとなります。
 勤務時間外や休日の社内連絡に関するルールにつきまして、特段ルール等は整備しておらず、現場に任せているという回答が全体の4割弱でございましたが、定めているところにつきましては、上から2行目のように勤務時間外や休日には災害時等の緊急連絡を除いて連絡しないですとか、翌営業日に対応が必要など、急を要する業務に関する連絡のみ認めているというようなルールを定めているところがそれぞれ3割弱程度あったという状況でございました。
 50ページは労働者側に勤務時間外の連絡の状況について聞いたものとなります。
 社内連絡への対応でございますが、勤務時間外や休日に連絡はなかったという回答が56.1%と最も多くなっておりますが、出社してまたは取引先等に出向いて対応したが8.9%、出社せず通信機器等で対応したが23.4%といったことで、対応されている方も結構な割合でおられる現状でございます。
 勤務時間外の社内連絡についてどのように考えるかという意識を問うた問いにつきましては、積極的に対応したいが0.4%、できれば対応したくないが、やむを得ないが8.2%、対応したくないが38.0%となっておりましたが、その他回答としては、案件の重要度によるとか、対応する・しないの裁量があるため対応しなくてよいといった様々な回答が見られたところでございます。
 51ページはこの点につきましてクロスを取ってみたものとなります。出社してまたは取引先等に出向いて対応した方につきましては、やむを得ないという回答も多い一方で積極的に対応したいという方もおられ、業務の状況を踏まえた御対応をお考えになっている方も一定割合おられるという状況かと思います。
 52ページにつきましては、テレワークガイドラインにおきましてこうした勤務時間外の連絡に関する記述が現行も一定ございますので、その抜粋をしております。メール送付の抑制ですとかシステムへのアクセス制限、手続を時間外・休日・所定外深夜労働について設けること等について、次のような手法が考えられるとして御紹介をしております。
 53ページはつながらない権利に関します労働基準関係法制研究会報告書の抜粋となります。欧州諸国等の状況を御紹介した上で、勤務時間外にどのような連絡までが許容でき、どのようなものは拒否することができることとするのか、総合的な社内ルールを労使で検討していくことが必要となる。このような話合いを促進していくための積極的な方策を検討することが必要と考えられるという御提言をいただいております。
 54ページ目からは年次有給休暇についてでございます。
 まず、55ページは現行の法制の要点をまとめたものとなります。趣旨としては労働者の心身の疲労を回復させ、労働力の維持培養を図るため、また、ゆとりある生活の実現にも資するという位置づけから、毎年一定日数の有給休暇を与える制度ということで御説明をしてきております。
 要件・効果は御紹介を省略いたしますが、付与に関するルールとしては、③でございますが、平成30年働き方改革関連法の改正に伴いまして、年次有給休暇が年10日以上付与される労働者に対して、そのうち5日について使用者が時季を指定して取得させなければならないという規定が設けられたところでございます。
 56ページは、年次有給休暇中の賃金につきまして3通りの方法が現在定められているということにつきまして、資料として入れているものとなります。
 57ページ、年次有給休暇の取得率等の推移でございます。平成20年代後半以降上昇しておりまして、令和5年は65.3%となっております。
 58ページは時間単位年次有給休暇制度の導入率の推移でございます。こちらは平成20年の法改正で入れられたものでございますが、導入率は直近数年は25%程度、令和6年は24.8%となっております。
 59ページと60ページは、これらにつきまして業種別・企業規模別の状況を見たものとなります。
 まず2023年の取得率、調査計は65.3%でございますが、宿泊業、飲食サービス業で51.0%、教育、学習支援業で56.9%など、一部の業種で平均より低いところが見られる状況でございます。
 企業規模別に見ますと、かつてに比べますと規模間格差は縮小してきておりますが、やや規模が小さいところでは取得率が低い状況があるところでございます。
 60ページは時間単位年次有給休暇制度の導入率でございますが、こちらも業種別に見た場合には運輸業、郵便業で10.5%、宿泊業、飲食サービス業で8.9%など、産業別に見て導入割合が低いところが見られる状況がございます。
 こちらは企業規模別に見ますと、1,000人以上が37.3%に対しまして30~99人が21.7%となっていますなど、規模間で導入割合に差が見られる状況がございます。
 61ページを御覧ください。
 規制改革推進に関する答申において、時間単位の年次有給休暇制度の見直しについても記述が入っております。実施事項のところでございますが、年次有給休暇制度の在り方について、時間単位年休制度の活用実態も踏まえ、時間単位年休の上限を、例えば年次有給休暇の付与日数の50%程度に緩和することなどの見直しの要否も含め、労働政策審議会において検討し、結論を得るということで、時間単位年休制度につきましては、見直しの要否も含めて、この審議会で御検討をお願いしたいという提言が規制改革会議からはあったところでございます。
 62ページは労働基準関係法制研究会報告書の年休に関する記述の抜粋となります。
 (5)-1、使用者の時季指定義務の日数や時間単位の年次有給休暇の日数につきましては、まず時季指定義務の日数については、現在の5日間から直ちに変更すべき必要性があるとは思われない。時間単位年次有給休暇の日数につきましても、現在の5日間から直ちに変更すべき必要性があるとは思われない。一方で、労働者の様々な事情のために柔軟に利用可能であるという側面があることにも留意が必要であるという御提言をいただいている状況でございます。
 (5)-3でございますが、1年間の付与期間の途中に育児休業から復帰した労働者や、退職する労働者に関する残りの期間における労働日と時季指定義務の関係については、残り労働日が著しく少なくなっている労働者に対してまで、他の労働者と同じ日数の時季指定義務を課すことは不合理な制約になる場合があることからも、取扱いを検討することが必要という御提言も併せていただいているところでございます。
 63ページ目が続きになりますが、年次有給休暇取得時の賃金の算定方法は3通りあると先ほど御説明申し上げましたが、月給制で働いている場合には、通常、(2)所定時間労働した場合に支払われる通常の賃金のやり方が取られることが多いわけでございますが、日給制・時給制の場合に(1)や(3)の方法が取られると、計算式上賃金が大きく減額され得るということなども踏まえて、原則として(2)の手法を取るようにしていくべきではないかと考えられるというような御提言をいただいているところでございます。
 こちらから用意しました資料の説明は以上でございます。
 これに限らず、休日・連続勤務規制、勤務間インターバル、つながらない権利、年次有給休暇等につきまして幅広く御意見を賜れればと思っております。よろしくお願いいたします。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 それでは、労働時間法制の具体的課題に係る本日の各テーマについて御議論をいただきたいと思います。
 多岐にわたるテーマがございますが、進行上、議論いただくテーマを4つに分けてはいかがかと思います。資料№2の表紙に既に資料を4つのポイントに分けて整理していただいておりますけれども、この資料№2の表紙に沿って、1つ目は休日・連続勤務規制、2つ目が勤務間インターバル、3つ目がつながらない権利、4つ目が年次有給休暇という4つにとりあえず分けて御議論いただければと思います。
 それでは、まず1つ目の休日・連続勤務規制につきまして御質問、御意見がありましたらお願いいたします。
 鈴木委員、どうぞ。
○鈴木委員 鈴木でございます。御指名ありがとうございます。
 私はこの休日・連続勤務規制に関連しまして、2点ほどコメントいたします。
 まず1点目として、法定休日の特定についてです。法定休日の特定に関するルールを明確化するということで、労務管理がしやすくなり、これはひいては法律の履行遵守のしやすさにもつながるので、労使双方のメリットがあると考えております。このルールの明確化という観点で、法定休日の特定については賛成いたします。
 なお、いつまでに法定休日を特定するかという議論がもしかしたら出てくるかもしれないのですけれども、工場のシフト勤務といった場合には、例えば前月の25日までに確定するとか、あるいはもう少し後にならないと決められないようなケースなど、業種・業態によっても異なるので、この論点が出てきた場合には、実態を踏まえて検討いただきたいと思います。
 次に、本日の資料には直接記載がないのですが、議題に関連する事項といたしまして、休憩の一斉付与義務について意見を述べさせていただきたいと思います。テレワークも普及して、時間と場所にとらわれない働き方が増えております。そうした中で、休憩の一斉付与義務の在り方については見直す時期に来ているのではないかと思っています。
 いわゆるホワイトカラーについては労務管理の個別化が進んでおり、労働者自ら自律的に働くことを希望する方も増えています。もちろんこの一斉付与義務については、労使協定を結べば実務上影響がないのではないかという御指摘もあろうかと思いますし、もとより休憩の一斉付与義務規制については法律の実効性を保つ目的があるということは理解しています。ただ、とりわけ始終業時刻を自ら選べるフレックスタイム制適用労働者ですとか、裁量労働制適用者等に対してまで使用者に休憩の一斉付与を罰則つきで義務づける必要が本当にあるのか、この点は大いに疑問を感じるところでございます。
 また、一斉休憩原則は休憩がしっかり取れるように法律の実効性を高めるという目的があるという点に関しては、例えば労使協定で一斉休憩の例外を設けている職場の休憩義務の履行状況というものがその他の職場、つまり、例外を設けていない職場に比べて有意に履行状況が異なるかどうかというのは気になるところです。一度休憩の一斉付与義務の効果について検証する必要があるのではないかとも思います。事務局におかれましては、そうしたデータがあればお示しいただければと思っております。
 私からは以上でございます。
○山川分科会長 ありがとうございました。説明に表れなかった点についても問題提起をいただいたところでございます。
 ほかに御質問、御意見はございますでしょうか。
 冨髙委員、お願いします。
○冨髙委員 ありがとうございます。
 私も法定休日の特定、連続勤務の部分について意見を申し上げたいと思います。
 法定休日は、現行の法令では、どの日が法定休日かというところを特定するところまでは求められておりませんので、場合によっては使用者が休日労働に対する割増賃金の支払いを逃れるために、法定休日を直前に変更するなど、恣意的な運用がなされているという声も聞いているところではございます。
 以前の分科会でも労働側委員から発言しておりますけれども、労働者の健康確保という視点からも、1週間単位でのリズムをきちんと整えていくということは重要だと考えております。労働者が休日の予定を前もって決定することができるということは、ワーク・ライフ・バランスの観点からも非常に重要だと考えております。労基研報告でも言及されておりますけれども、あらかじめ法定休日を特定すべきことを法律上で規定するという方向で具体的に検討を進めていただきたいと考えております。
 それから、連続勤務規制についてですが、参考資料№1の84ページに、休日出勤について法定もしくは所定休日に出勤した回数、これは3か月の合計ではありますけれども、10回以上との回答も全体で2.1%ということで、4回以上というのは約1割という結果が出ているところでございます。他方で、休日の振替や代休も認められていることを考えると、事業所調査の結果を含めて、休日労働の回数が低めの結果となっていることも可能性としてはあり得ると考えております。
 また、同じく参考資料№1の89ページの1か月当たりの平均残業時間とのクロスを見てみても、当然と言えば当然ですが、休日出勤の回数が多ければ多いほど平均残業時間が長時間の割合が多くなっているというところを見ると、これも労基研報告にありましたけれども、現行の4週4休では制度上、最大で48日の連続勤務も可能ですので、そうしたところは早急に見直していただきたいと考えています。
 先ほど鈴木委員から法定休日の特定について、シフト制など働き方によって柔軟に捉える必要があるという趣旨の御発言があったかと思います。確かに働き方によっては直前の指定となるようなケースもあり得るとは思いますが、先ほども申し上げたように、労働者の予見可能性をしっかり高めていく必要があると思います。そういった意味では、シフトを組んだ段階で休日を明確にしていくべきだと考えておりますし、その上で、前日や当日の直前の変更といった恣意的な運用がなされないようなルールを設ける必要があると思っております。
 それから、休憩の一斉付与についても発言がありましたけれども、一斉付与の原則を緩和、あるいは撤廃してしまったりすると、休憩の実態把握と監督が困難になるのではないかと思います。また、労働者からしてみると、職場において周りへの気兼ねといったところで、休憩が取りにくくなってしまうことになるのではないかと思いますので、緩和などは行うべきではないと考えているところでございます。
 以上でございます。
○山川分科会長 ありがとうございます。
 ほかに御質問、御意見等はございますでしょうか。
 松永委員、お願いいたします。
○松永委員 松永でございます。ありがとうございます。
 私のほうからは、13日を超える連続勤務の規制ということについて発言をさせていただきたいと思っています。
 いただいた参考資料の86ページに連続勤務の実態というのがあって、13日を超える連続勤務というのは全体的には2%弱ということで、それほど多くはないのですが、やはり連続勤務の規制というのは労働者の健康を確保する観点で重要だと改めて感じます。2週間以上の連続勤務が精神障害の労災認定基準になっているということからも、きちんと見ていかないといけないかなと考えています。
 一方で、たしか以前の労働条件分科会の中で使用者側の委員の方からも発言があったと思うのですけれども、災害復旧の場合ですとかシステムトラブル等の大きな突発事象みたいなものがあったときに、自分のところの会社もそうですし、取引先の事業運営とかを含めた国民生活への影響みたいなものも大きな影響を及ぼすケースというのもありますので、やむを得ず連続勤務をせざるを得ないケースがあるという前提でも一定の配慮が必要なのかなという気もします。単に人手不足だからということで例外を認めてしまいますと、冒頭に申し上げたような健康確保という趣旨からは遠ざかっていきますので、そういう面は配慮しつつ、画一的な規制というのはするべきではないのかなと考えています。代替措置を置くことで健康確保に配慮しながら、労使の合意によって一定の例外を設けていくということはぜひお願いしたいなと思っています。
 あと、例えば数分程度、ほんの短い作業、業務の勤務実態があって休日労働とみなされる場合もあると思うのですけれども、そこでの休日労働の規制と連続勤務の規制というのが同じなのかどうなのかというのも議論があるかなと思っています。連続勤務の規制の例外の範囲ですとか罰則を設置するかどうかというような規制の在り方も踏まえて、慎重な対応が必要なのかなと考えております。
 私のほうからは以上でございます。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 ほかにございますでしょうか。
 水野委員、どうぞ。
○水野委員 御指名ありがとうございます。
 連続勤務規制につきまして、それぞれ労側、使側から御意見がありましたので、私からも申し上げたいと思ってございます。
 現在の労基法の枠組みの中では、毎週1日の休日付与を原則としつつも4週4休制が認められているということでありまして、さらには、36協定を結んで休日の割増賃金を支払いさえすれば、上限規制の範囲内であれば、幾らでも休日労働は可能だという建て付けであることは課題であり、だからこそ、しっかりと36協定締結時も含めた絶対的な連続勤務日数制限の規制を設けるべきだと思ってございます。先ほど使側委員からもありましたとおり、労基研報告にありますような精神障害の労災認定における心理的負荷の判断要素である2週間以上の連続勤務との整合も勘案しながら、連続勤務に罰則つきで規制をかけていくことが必要ではないかと思います。
 その上で、資料№2の6ページ、図2の中でも、直近の5年の精神障害の支給件数決定では、単年度ではばらつきがございますけれども、全体的な傾向として2週間以上の連続勤務のほうが80時間以上の時間外労働よりも件数が多くなってございます。また、資料№2の5ページを見ましても、週休2日制を採用している企業が9割に達しておりまして、完全週休2日制の適用労働者も65.2%ということで、週休2日制が相当程度普及していることを踏まえれば、連続勤務の制限につきましては週に1日は休むことを意識させる方向で施策を検討することが必要だと思ってございます。
 また、使側委員から人手不足の状況も踏まえる必要があるとの発言もございましたけれども、そもそも人手不足を長時間労働で補うということ自体が事業の持続可能な方法ではないと思っておりますから、そのような働き方を解消することこそが人手不足解消につながる手段ではないかと思ってございます。
 以上でございます。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 ほかはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 先ほど鈴木委員から休憩についてもしかしたら御質問の趣旨もあったかもしれませんが、休憩付与の効果の検証というようなお話がございましたが、もし何かデータ等がありましたら、今後でも結構かと思いますが、事務局、何かございますか。
○労働条件政策課長 今、手元にはございませんけれども、本日の御指摘を踏まえて、何か出せるものがないか検討させていただきます。
○山川分科会長 ありがとうございます。
 ほかはよろしいでしょうか。今、1番目の休日・連続勤務規制の区分けで御質問、御意見をいただいております。
 では、ございませんでしたら、2つ目、勤務間インターバルについて御質問、御意見がありましたらお願いいたします。
 櫻田委員、お願いします。
○櫻田委員 ありがとうございます。
 勤務間インターバルについて発言いたします。先ほど冨髙委員も休日・連続勤務制限のところで「生活リズムを整える」ことの重要性に触れておりましたけれども、その観点からも勤務間インターバルということが重要であると考えております。「人の生活」は一日単位でありますので、プライベートの時間の確保とともに、睡眠時間を含めてしっかりと休息を取るということが心身の健康を維持する上でも極めて重要であり、勤務間インターバルを義務化して、しっかりと休息時間を保障していくということが重要ではないかと思っております。日本は世界と比較しても睡眠時間が短いということが統計でも明らかですので、そうした観点からも重要ではないかと思うところです。
 今回、資料№2の16ページ以降では勤務間インターバル制度に関する実態調査の結果が示されておりますけれども、これは既に制度を導入している企業と、そこで働く労働者を対象とした調査であるということに留意が必要であるとは思いますが、義務化を含めた検討に当たっては参考になる調査だと思っております。
 17ページを見ますと、インターバル時間数を11時間以上と設定している企業が44.9%と半数近くを占めておるということになりますので、別の調査ではありますが、参考資料№1のほうでも108ページに前日の終業から翌日の始業までの時間が平均11時間以上である労働者の割合が77.4%であるということが示されております。
 さらに、また資料№2に戻って恐縮ですけれども、31ページのインターバルを確保できなかった回数ということでも、確保できなかったことはないというのが79.7%と圧倒的多数であるということですので、11時間のインターバルはさほど無理な時間設定ではないのではないかと思うところです。
 インターバルが12時間を下回るとストレス反応が高くなるという研究結果が厚労省のマニュアルでも明記されているところですし、過労死等の根絶を図っていくという観点からも、インターバルの確保というのは不可欠ではないかと考えます。
 また、資料№2の39ページで諸外国におけるインターバル制度でも原則が11時間であるということも踏まえれば、必要十分な睡眠や生活時間の確保のためにも11時間を基本にして検討していくべきではないかと考えているところでございます。
 私からは以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 オンライン御参加の田中委員から御発言の希望がございます。田中委員、お願いします。
○田中委員 御指名ありがとうございます。田中です。
 勤務間インターバルについての発言をさせていただきます。
 勤務間インターバルは、過重労働防止の有効なツールの一つということは認識しております。一方で、導入していない企業が2024年時点で約94%であり、導入している企業でも努力義務としている企業も少なくないと思われます。また、社内での緊急事態や突発トラブルへの対応、顧客や取引先への対応、自然災害の発生など、インターバルが確保できないケースもあるというデータもありました。ですので、画一的な規制には反対いたします。
 現在、既にインターバルを導入している企業では様々な制度運用がなされています。インターバルの時間数について、調査では11時間から12時間が多かったですが、例えば9時間から10時間であったり、10時間から11時間も相当数多く見られます。また、勤務間インターバルの助成金の要件が9時間以上となっていることもありますので、原則11時間とするというようなルール化には反対いたします。
 また、インターバル時間を確保できなかった場合の対応についてのデータもありました。24ページです。上司との面談機会、仕事の配分見直し、産業医との面談、定時に退社する日の確保、代休の取得、そのほか、その他の措置を講じているという回答が25.3%あります。私が承知しているその他の措置としては、例えばインターバル時間を割り込むことが可能な回数を設定するであったり、上司が理由を確認した上、健康状態の確認と注意喚起を行うなどがあります。こういった既に導入している企業の多様な方法を認める方向での検討をお願いしたいと考えています。
 次に、資料20ページに導入企業であっても適用除外している労働者がいるという企業が相当数あるという実態が示されています。1,000人以上では4割以上の企業が適用除外を設けている点は押さえる必要があると思っておりますし、21ページでは適用除外の範囲として職階、雇用区分、勤務形態など様々なタイプがあるということが示されています。それ以外にも、例えば時差のある海外とのオンライン会議がある場合などを除外している例があると承知しております。企業の実態に応じて、適用除外が一定程度幅広く認められるようにすることをお願いしたいと思います。
 次に、インターバルの方式についてです。方式については、終業から翌日の始業までの方式、高度プロフェッショナル制度で活用されているような始業から24時間以内に一定の休息を置く方式が考えられますが、企業の労使がどちらかの方式を選択できるようにするということが必要ではないかと考えます。
 また、改善基準告示との関係についてです。自動車運送事業所においては、ドライバーとそれ以外の職種の業務が連動しているというケースが想定されます。インターバル時間と改善基準告示における休息期間との整合性も考慮して検討すべきと考えています。
 最後、重要なこととして、1つ目に勤務間インターバル規制は少なからず事業の運営に影響がありますので、現在導入していない企業も含め、企業実態に十分配慮した仕組みを検討していただきたいと考えています。
 2つ目に、既に労使合意の下で導入されている制度が今後の新たな法令などによって厳格化・画一化されることのないよう、労使自治を尊重するという形で議論を進めていただきたいと考えています。
 私からは以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 ほかはいかがでしょうか。
 鳥澤委員、どうぞ。
○鳥澤委員 ありがとうございます。
 意見を申し上げます。
 まず、勤務間インターバル制度につきましては、資料の15ページにありますように、超過勤務の機会が少なく、制度を導入する必要を感じないためという回答が57.6%となっていることを考えますと、先ほど田中委員がおっしゃいましたように、私も一律の義務化は負担が大きいのではないかと思っております。むしろ一定の時間外があり、導入が有効と思われる企業に対し、インセンティブ付与や導入によって得られる効果の周知など、導入の働きかけを行うことが必要だと考えます。まずは、過労死等の防止のための対策に関する大綱によって定められた目標である、令和10年度までに導入企業15%という目標へ向けた取組のほうが大事ではないかと思います。多くの中小企業は総労働時間の削減や健康確保の取組を推進している最中でございますので、勤務間インターバル制度のさらなる周知を含めた企業の生産性向上、健康確保への取組に対する強力な支援をお願いしたいと思います。
 私からは以上でございます。
○山川分科会長 ありがとうございます。
 ほかはいかがでしょうか。
 どうぞ。お願いします。
○亀田委員 ありがとうございます。
 私からも勤務間インターバルについて1点発言をさせていただきます。
 まず、大前提として、勤務間インターバルについては過労死等防止に向けて非常に有効な対策でございますので、現行の努力義務ではなく、義務化に向けた具体的な検討を進めていくべきだと考えております。
 実態調査においても、資料№2の25ページで、企業が捉える効果としましては、「健康の維持増進」51.7%、それから、「ワーク・ライフ・バランスの向上」36.0%が高く、33ページの労働者側でも特にないということが最多であることについての留意が必要でございますけれども、「睡眠の確保」17.0%、「心身の健康の改善」15.9%と高い割合を占めていることから、労働者の健康、生活時間の確保に向けた一定の効果があると言えるのではないかと思っております。
 また、具体的なインターバルの確保方法としましては、22ページにありますように、翌日の勤務時間を後ろ倒しすることも選択肢に挙げられていますけれども、この方法は翌日の勤務時間を先延ばしするということだけでございますので、本来のインターバルの趣旨からはやや外れたものではないかと考えております。
 加えて、先ほどもご発言がありましたが、画一的な規制に対する懸念や、災害、トラブル時などにおける柔軟な対応といった例外措置や代替措置を求める意見もあるところではございます。しかしながら、やむを得ない場合を前提にして規制内容を検討するということで結果的に実効性がない制度となってしまっては本末転倒になりますので、まずはインターバルを義務化していく方向を明確にした上で、具体的な内容を詰めていくという段階で、どうしても限定的に例外とせざるを得ない場合についての対応をしっかり検討していくべきではないかと考えております。
 以上でございます。
○山川分科会長 亀田委員、ありがとうございました。
 ほかはいかがでしょうか。
 佐久間委員、お願いします。
○佐久間委員 ありがとうございます。
 前々回のこの分科会でも私も意見を申し上げさせていただきましたが、この集計結果について、まず資料№2の14ページを見ると、これはインターバル制度の全体の導入率ですが、中小企業を人数規模だけでどこまで見るかというのもあるのですけれども、緑の100人~299人、それから、30人~99人を見ると7.0%、4.8%ということで、今のところ低い状況になっています。
 そして、参考資料№1のほうでも、39ページでは人数規模別ということで、今回、厚生労働省の調査では1人から9人規模、また、就業規則が必要である10人以上とか、こちらの数字も出ておりまして、この規模でインターバル制度を導入しているという企業の傾向が出ていると思います。
 経営側とするとインターバルは勤務時間により不規則に出ることもありますし、予想することが難しい場合もあると思うのですけれども、私も過労死等防止対策推進協議会の委員をやらせていただいている関係もありまして、インターバル制度の導入率目標(労働者数30人以上企業のうち、制度を導入している企業割合15%)、これは難しい目標だと申し上げたのですけれども、やはり導入促進を図っていかなくてはいけないと思っております。
 ですから、このインターバルというのは、仕事から離れるということが健康確保のためにも、企業の側の数字などを見ても、ワーク・ライフの関係とか、従業員の健康管理という点からも確保したほうがいいという意見が示されています。しかしながら、画一的な制限は難しいという点もあるので、もしこれでインターバル制度の制度化、法制化を設けるような方向でいくのであれば、受注型の企業、それから、下請企業で突発的に仕事が入ってくるとか、そういう状況というのも十分に考えていただきたいと考えます。
 また、インターバル制度の導入促進を図っていくためには、インターバルは11時間とかというのが理想的なのかもしれませんけれども、9時間から11時間の間で労使による協議を行い、その合意により決めていく。就業規則に明記をしていくことで、初めから罰則を設けるということではなく、猶予期間、経過措置を設けていただき、実際に導入に向けて取り組むこがと必要なのだろうと思います。
 どうしても中小企業は、一般的には時間外労働の時間数が少なく、まだインターバル制度の導入は必要ないというか、時間外労働自体が実際には少ない企業が多いと思うのです。「うちは関係ない」と。そのような企業であっても、就業規則に明記し、導入させるということが私は必要なのではないかと考えています。そして、導入率を高めて、徐々に業界自体に広げるということが必要なのではないかなと思います。適用の可能性があるところ、そして、まだまだうちは関係ないなというところにもだんだん広げていく工夫というのが必要なので、まず周知、そして、徹底をしていきながら、導入を段階的に進めていただくということでいくのがよろしいのではないかなと思います。
 以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 オンラインで神吉委員からの御発言希望があります。お願いします。
○神吉委員 ありがとうございます。
 私は健康確保の観点からは一日単位でのインターバルが重要な意味を持つと考えており、義務化に向けて進めていければと考えております。
 その際に、資料№2の22ページ、先ほど亀田委員からも言及があったかと思いますが、勤務間インターバル時間を確保した場合の労働時間の取扱いについて、現時点で最も多くの割合の企業が導入しているのが翌日の始業時刻と終業時刻を変更して後ろ倒しするという方法である点には注意が必要だと思いました。この方法だと、実際には労働からの解放の程度に変化はなく、むしろ労働者のワーク・ライフ・バランスが害されてしまって、結局は突発的に生じた残業などのしわ寄せは労働者に行くことになります。そうするとインターバル規制の趣旨は減殺されてしまいます。
 また、そのような制度では、労働者側もインターバル規制はむしろ生活にしわ寄せが来るリスクになるということで、規制自体を受け入れ難くなってしまうのではないでしょうか。とすると、この義務化を考えていく中では、まるごと後ろ倒しが唯一の帰結ではなく、ほかに挙がっているように、みなしの活用や残業禁止など、ほかの望ましい方法があることを同時に運用レベルで周知していかないと、画一的な規制に対する拒否感などもあるところへの義務化は難しくなると考えます。
 以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。
 ほかはいかがでしょうか。
 鈴木委員、どうぞ。
○鈴木委員 鈴木でございます。御指名ありがとうございます。
 私はインターバル時間について少しコメントをさせていただければと思っています。
 先ほど櫻田委員からインターバル時間について11時間を基本とすべきということの御指摘があったかと思います。
 このインターバル時間と健康状態との関係についてですが、資料№2の37ページを見ますと、「健康状態がよい」、「まあよい」の合計は8時間以上9時間未満、9時間以上10時間未満、10時間以上11時間未満、11時間以上12時間未満でいずれも50%程度であり、あまり変わりがないという印象を受けます。
 また、38ページですけれども、心身の健康が改善したと労働者が感じる効果としても、でこぼこはありますが、例えば「11時間以上12時間未満」が19.1%に対しまして、「8時間以上9時間未満」が22.7%となっており、本当に11時間以上でないと効果がないのか、きつい規制をかける必要があるのかはよく検討する必要があると考えています。先ほど田中委員からも指摘がありましたように、原則11時間というような厳格なルール化ということについては反対の立場を申し上げさせていただきたいと思っております。
 それから、今後の進め方といった観点で補足をさせていただきたいと思いますが、積極的に既に取り組んでこられた企業の中でも制度の中身というのがかなりばらばらな印象があります。先進的に取り組んでいる企業のなかでもあるべき制度・水準についてのコンセンサスはないという特殊性があるように思っております。
 脱線しますけれども、一般論として、努力義務を義務化する検討が行われることがあります。その際、努力義務の内容や義務化の要件、水準というのは明確になっていることが前提で議論がされるわけですけれども、勤務間インターバル制度については、先ほど神吉先生がおっしゃった翌日の勤務の扱いをどうするかですとか、インターバル時間をどうするか、適用除外をどうするか、代替措置をどうするか、これらを総合的にパッケージで考えないといけないと思っております。まさにそういうパッケージでとらえたうえで、我が社ではどういう仕組みがいいのか、我が社なりのベストはどれかということをよく考えて、まとまったものが、各社の制度になっていると思います。そのため、設計主義的なというような言い方をすると大変失礼に当たるかもしれないですし、労働側の皆さんはもしかしたら今こそそういうコンセンサスをつくっていくべきだという御意見なのかもしれないのですけれども、一つのあるべき論を考えるのではなく、今積み重ねられてきた各社の制度実態、運用を最大限尊重する議論をしていただくことを強くお願いしたいと思います。
 私からは以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。
 ほかはいかがでしょうか。
 川田委員、どうぞ。
○川田委員 ありがとうございます。
 意見という形になるかと思いますが、2点述べたいと思います。
 1点目は、勤務間インターバルにも関わりますが、今日の論点全体を通じてというか、むしろ全体を見るような視点も必要なのではないかということで、具体的には今日挙げられている論点は労働からの解放という観点からある程度まとまりがあるものとして、全体として労働からの解放をどのような形で実現していくのかということを考えるという視点も重要なのではないかということです。
 労働基準関係法制研究会においても労働からの解放という観点からの章立ての整理がされているところですが、労働時間、働く時間に着目した制度を考えるということと並んで、労働からの解放という視点については、労働時間制度の基本的な趣旨である健康の確保とか自由時間の確保、それに加えて、近年は例えば育児とか介護とかあるいは本人の病気など、働くことに制約がある方についても可能な形で労働に参加していただくことの制度的な支えとしての労働時間制度の意義というのも重要になってきていると思いますが、そういうのを考えていく上で、労働からの解放の在り方という視点が重要なものになっていると思っています。
 加えて、この労働からの解放という視点も幾つかのものがあるのではないか。例えば一日の中での労働からの解放とか、一定の期間、例えば2週間とか1か月という期間でなかなか労働から解放されない状態が続くことに歯止めをかける。あるいは先ほど挙げた育児とか介護との関係でいうと、解放される時間の長さだけではなくて、特定の時間帯に確実に労働から解放されるというような時間帯の視点、あと、突発的な状況が起きたときの対応とか、幾つか視点があり、それらを全体として見て、まず労働からの解放についての現状とか働き手のニーズが社会の中でどういうところにあり、それに対して法制度上、法体系の中のどこでどういう形で対応していくのかということを具体的な実情を踏まえた審議をしていくのがよいのかなと。やや抽象的ですが、それが1点目です。
 2点目は勤務間インターバルに関することで、これまで議論されてきたように、基本的に促進を図るという方向で在り方を検討するということは適切だと考えていますが、一方で、これまでの議論の中でも出てきたように、例えば今回の資料ですと22ページの内容について。他の委員からも言及されていますが、インターバルの扱いの仕方も幾つかのものがあるということ。それから、今日のお話の中でうちは関係ないというような認識の企業もまだまだそれなりにあるのではないかというお話がありましたし、あと、今回の資料で私として気になっているのが、27ページ以下の労働者調査のいろいろな項目で「わからない」という回答が断トツというのが結構あるということで、法制度的な対応がされているところはありますが、インターバルの概念とか意義というのはまだまだ社会に必ずしも十分に浸透し切ってはいないのかなとも感じています。
 ここで審議した結果を制度として社会に反映させていくということもそうですが、ここでの審議においてもインターバルというものにある程度いろいろなものがあり得るということを前提に、例えばやり方としては実際に制度を利用している幾つかの企業の事例を示すなどは考えられるかなと思いますが、ある程度多様なものがあり得るという前提で勤務間インターバルというのはこういうものだということを確認しながら進めていくことが重要なのかなと思っています。
 以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。
 ほかにございますでしょうか。
 冨髙委員、お願いします。
○冨髙委員 ありがとうございます。
 先ほどから勤務間インターバルを導入していない割合が94%であり、画一的な義務が難しい、反対であるというような意見もございましたが、導入していない理由の多くはそもそも超過勤務がないという理由が多いということもございました。そうしたことを考えると、導入割合が低いからといって義務化が難しいということではないと思いますので、ぜひ前向きな議論をしていくべきではないかと思います。
 先ほど鈴木委員から、労使がそれぞれの状況を踏まえて努力義務の中で取り組まれているが、一定のコンセンサスが取れていない中でなかなか導入率が低いというようなお話もございました。そういう意味では、本分科会でコンセンサスを取っていくことが必要ではないかと思いますので、ぜひ議論させていただきたいと思っているところでございます。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。
 では、よろしければ、3つ目で切り分けましたつながらない権利につきまして御質問、御意見がありましたらお願いいたします。
 松永委員、お願いします。
○松永委員 ありがとうございます。
 私のほうからこのつながらない権利について一言コメントさせていただきたいと思っています。
 連続勤務とも同じだと思うのですけれども、やはり終業時ですとか休日に自分の職場、上司とか顧客からメールや電話があるというのは、労働者にとってみればなかなかストレスのある話だと思っていますので、これを何とかするというのは一つ課題としてはあるのかなと思っています。
 ただ、これもいろいろなところで指摘がありますけれども、天災事変とかシステムダウンとか、昨今のサイバー攻撃みたいな突発事象というのも想定されますので、勤務時間以外でも緊急の連絡が取れる体制というのは各社さんそれぞれあるのだろうなと思っていますし、場合によっては休日ですとか終業後にも対応が必要だというケースもあるということだと思うのです。
 連絡を取り合うということが社内でとか、あと、お客さんを含めて社外とか、いろいろなケースがあると思っています。その中で対応の必要性の有無ですとか、連絡をするほう、受けるほうの対応方法も様々あるのかなと思っています。これはなかなか難しい面があると思うのですけれども、特に社内の連絡ということで言うと、それぞれ仕事のスタイルですとか個人ごとのお考えというのもいろいろあって、この問題というのは労働条件というよりも働き方そのものというような感じがするのです。ですので、まずはメールの送付の抑制ですとかシステムへのアクセス制限等、先ほども澁谷課長からありましたテレワークガイドラインの周知というのをまずは行っていきながら、勤務時間外での連絡を抑制するような社会全体での意識改革をやっていくというのが重要なのかなと感じております。
 私のほうからは以上でございます。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 ほかに御質問、御意見等はございますでしょうか。
 水野委員、どうぞ。
○水野委員 御指名ありがとうございます。
 つながらない権利につきまして、以前の分科会でも発言させていただきましたけれども、改めて勤務時間外の連絡についてのルールを法定化することを検討する必要があるということで申し上げたいと思っています。
 労基研での御議論の過程では、労働契約法や労働時間等設定改善法も挙げられてございましたし、フランスを参考に労使の協議義務を課す方法についても言及があったということで認識しています。この点は、その結果として、労基研の報告書、資料№2の13ページになりますが、労使の話合いを促進するためのガイドラインの策定ということにとどまっています。当面の対応として、ガイドラインによって職場実態に合わせてつながらない権利についての労使でのルール化を図る取組を促進するということも考えられるかもしれません。しかしながら、今ほども社内外での対応があるということでございましたし、企業内だけではなくて顧客や取引先との関係性を含めて考えれば、つながらない権利の実現には企業労使の垣根を越えた相互理解の下に取組を進めなければ実効が上がらないのではないかと考えてございますので、全体的な法制化により労使のルール化の営み促進を進めていくと同時に、様々な商慣行の是正であったり、お互いの働き方を認め合うことにつなげていく必要があるのではないかと思ってございます。
 今ほど、それぞれ働き方の考え方も違うというようなこともございましたし、様々な天災やシステム障害などがある中で、連絡体制が必要というような御発言もございました。つながらない権利という言葉だけを聞いてしまうと、どうしても全く労働から遮断する印象になるかもしれませんけれども、これは勤務時間外の連絡手段をどうするかということを労使で決め合うことだと思ってございます。この点、今回アンケートも取っていただいたと思いますけれども、49ページでも具体的にどのようにルールを定めているかということも調査結果が出てございますし、53ページの労基研の中でも勤務時間外にどのような連絡までが許容できるのか、拒否できるのかということをしっかりと労使で協議をしてくださいということが書かれていると思います。
 先ほど川田委員からもあったとおり、つながらない権利もまさに労基研報告のカテゴリーでは労働からの解放という分野だと思っていますので、連絡手段が高度化・多様化する中で、いつ何どき連絡あるか分からない状態では労働者は本当に安心して労働からの解放されたということになりませんから、そういった中で恣意的な運用にならないような労使での論議が一定必要ではないかと思ってございます。
 もう1点、今のつながらない権利には直接関係しませんが、52ページにテレワークガイドラインについて記載があります。前々回、発言できなかったところもありまして、テレワークについての職場実態を1つ意見として申し上げたいと思っています。
 コロナ禍を通じてフルリモートの職場が増えたということもございまして、そういった中で、フルリモートであることを条件に就職したという労働者も一定存在しています。昨今、アフターコロナということで、出社回帰として、再度出社を求める企業も増えてきたということです。そうした場合、事業場から離れた地域に住んでいたり、コロナ禍に住み替えたというようなケースもございます。そのような中で、出社回帰によって労使間のトラブルが生じている実態があると認識してございます。勤務場所というのは最たる労働条件の一つだと思ってございますので、労働条件の明示や不利益変更に係る真意に基づく同意が適切になされているかなどの課題も含めて、一定の対策を講じる必要があると思ってございます。
 以上でございます。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。
 鈴木委員、どうぞ。
○鈴木委員 鈴木でございます。御指名ありがとうございます。
 私からはつながない権利に関して意見を述べさせていただきたいと思います。
 先ほど松永委員からも御指摘がありましたけれども、所定外あるいは終業時間後の連絡ということが働く方にとってストレスになり得るという課題は認識しているつもりでございます。
 その上で聞いていただきたいと思うのですけれども、所定時間外のメールの発信の扱いをどうするかというのは、労働条件というよりは働き方、仕事の進め方、あるいは指揮命令の権限にも関わることだと私自身は考えているところでございます。
 以前、196回だったと思うのですけれども、水野委員から、春季労使交渉で一部企業でつながらない権利について話合いがされて、ルール化される動きも出てきているというお話がございました。
 これに関連して、参考資料№1の60ページに勤務時間外の業務に関する連絡ルールのデータがございます。これを見たときの私の感想を少し申し述べたいと思います。過半数労働組合のみがある事業場では、一般的には労働条件であれば労働協約を結んで、その内容を就業規則に盛り込むというケースが多いように私自身は思っているところですけれども、勤務時間外の業務に関する連絡のルールを労働協約で定めている事業所、過半数組合のみがあるところが0.7%。これに対して就業規則で定めている事業場が18.6%となっています。これはマルチアンサーですけれども、大きな差があるという点が気になったところです。いろいろな読み方はあると思うのですが、私は会社としてルールを定めることと、労使の話合いを前提としてルールを定めることは分けて考えるべきであり、つながらない権利について、会社としてルールを定めるよう政策的に推奨していくことはあっても、労使の話合いを前提としてルールを定めるべきという議論に直結させるかは慎重に検討する必要があろうかと思っています。
 繰り返しですけれども、つながらない権利が、仕事の進め方あるいは指揮命令権限に関連する話であると理解する企業側の受け止めが少なくないといたしますと、積極的に労使間のルールを政策的に進めるということについては慎重に考えたほうがいいのではないかと思っております。もちろん個別企業労使でつながらない権利に関して議論するということを否定するものでは決してございませんけれども、政策的にどこまで踏み込むかというのは別の議論ではないかという趣旨で申し上げさせていただきたいと思います。
 私からは以上でございます。
○山川分科会長 ありがとうございます。
 オンライン参加の原委員から発言の御希望がございます。
○原委員 原です。どうもありがとうございます。
 私自身はつながらない権利については、これが重要な論点、テーマであるということを広く社会に周知啓発していく必要があると考えております。理由は2点ありまして、1点目は今の御発言にも関わりますけれども、ある会社でつながらない権利を大事にしたいと思っても、これは企業内部のことであればルール化などができるかもしれませんが、社外からの連絡がたくさん来るとなかなかそれは実現できませんので、一企業でどうこうできる問題ではない部分があります。そこで、社会全体でつながらない権利は大事だよねといったことを広めていく必要があるというのが1点。
 もう1点は、ちょうど一昨日法制化されましたが、カスタマーハラスメントとの関係です。休日や時間外の他社からの連絡があまり過度になるようであれば、それはいわゆるBtoBカスハラにつながるおそれもあるわけです。そういったカスタマーハラスメントにつながり得るような時間外、深夜、休日等の連絡を減らしていくという観点からも、つながらない権利に関心を持つことは十分な意味があると思われます。
 ただ、いきなり法制化ですとか強制的にということではもちろんなくて、こういったつながらない権利というものが労働者のワーク・ライフ・バランスの実現等、様々な面でプラスになるということを広く公的な形で周知啓発していくために、例えばガイドラインですとか様々な工夫をしながら、積極的に周知をしていくということが望ましいと考えております。
 私からは以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 ほかにはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 では、続きまして最後になります。4つ目ですが、年次有給休暇につきまして御質問、御意見がありましたらお願いいたします。
 椎木委員、お願いします。
○椎木委員 御指名ありがとうございます。
 年次有給休暇の部分でございます。規制改革推進会議の答申を資料№2の61ページに示していただいてございます。こちらの答申の中に時間単位年休の上限の緩和の検討ということが掲げられております。この点について発言したいと思います。
 そもそも我が国においては、年次有給休暇は働く者が一日単位でしっかり休暇を確保することで心身の疲労回復を得られるという観点で制度化されてきたものですが、これが日本人は働き過ぎであるという状況の中、国際的にも働く者の心身の疲労回復が必要だという求めなどの背景に、一日単位の取得だったものを分割することを認める。さらには、半日、時間単位というところで細切れでの取得を認めるに至ったという経過になっていると思います。
 時間単位年休のさらなる日数の拡大については、調査の中でも労働者にも一定のニーズがあることは事実ではございますが、これを拡大していくということについては年次有給休暇自体の意義を没却させることにつながりかねないと考えますので、慎重な検討が必要だと考えます。
 さらに、その上で、ワーク・ライフ・バランスはもとより、仕事と治療の両立などの観点からも、労働者が休みを取りやすくする環境整備については、年次有給休暇というところに限らない形で整備していくことが重要だと考えております。子の看護休暇等の休暇の有給化、あるいは病気となったときに使える積立年休の仕組みの活用など、選択肢を整備していくといった観点での取り組みも必要ではないかと考えます。
 最後に事務局にお願いでございます。今までお話しした内容と違う論点にはなりますが、日本の年次有給休暇は付与に当たっての出勤率8割の要件がありますが、諸外国、ヨーロッパではどういうふうな仕組みになっているか、もし資料等があれば教えていただきたいと考えてございます。
 まず私からは以上でございます。ありがとうございます。
○山川分科会長 ありがとうございます。
 御要望がありまして、諸外国の年休の要件、これはデータは恐らくあるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○労働条件政策課長 資料を整理して、また次回以降の分科会でお示しできればと思います。
○山川分科会長 ありがとうございます。
 ほかに御質問、御意見等は。
 兵藤委員、お願いします。
○兵藤委員 御指名ありがとうございます。
 私からは、時間単位年休と年次有給休暇取得時の算定方法の統一について発言させていただきたいと思います。
 まず時間単位年休についてですが、年休は心身の疲労回復を目的として法定されていることは非常に重要であり、年休の原則は一日ないし半日単位という点はこれからも堅持していくべきものだという考えを持っております。
 一方で、参考資料でお示しいただきまして、先ほども御発言がございましたけれども、労働者個人調査の結果、94ページ、95ページあたりですが、その内容によりますと、時間単位年休の上限日数を6日以上に増やすべきとの回答が25.2%、また、その理由としては、「今より年休を取得できる機会が増えるから」48.1%、「育児・介護等を行うために有用だから」29.3%という回答が多く、時間単位年休の日数を拡大するニーズがやはりあろうかと思います。
 一日単位が望ましいと考える企業労使では時間単位年休を選択しないことになりますが、時間単位年休のメリットを評価する企業労使があれば、そうした判断を尊重してはどうかと考えております。心身の疲労回復のためにまとまったであるとか一日単位の休暇を取得する機会を引き続き確保するということを前提とすれば、政府の規制改革推進に関する答申で提案されているとおり、年休の付与日数の50%程度まで時間単位年休を認める方向で議論を進められるのがよいのではないかと私は考えております。
 次に、年次有給休暇取得時の賃金算定方法を統一することにつきましては、算定方法の違いにより、労働者の有利、不利が生じることは望ましくないという点から異論はございません。
 私からは以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 続いて、同じくオンラインで御発言希望の佐藤委員、お願いします。
○佐藤委員 ありがとうございます。
 私からは、期中の復帰者や退職者の年休の時季指定義務について意見を申し上げたいと思っております。年5日の付与義務というのは過重労働防止のために設けられたということですので、期中の年休の管理年度の途中に、例えば育児休業であったり、私傷病休職等から復帰された方については、復帰時点では業務上の心身の疲労というのはないと理解することができますので、この方々に年5日という同じ日数を義務として適用するというよりは、復帰後の勤務可能日数に応じて按分をして付与するという方が法の趣旨からしても適当ではないかと考えるということでございます。
 同様に、期中に退職する場合ですけれども、極端な例を申し上げますと、例えば4月1日に年休が付与された方が4月末で退職する場合を考えてみますと、御本人が年休取得を希望した場合には、本人の権利ですので、年休を取ってもらうことは当然な一方で、御本人が年休の取得を希望しない場合にまでこの1か月の間に5日の年休を付与するという必要性については大いに疑問があるということでございますので、5日の付与義務という現在の仕組みが実態にも合っていないのではないかと思います。したがいまして、期中の退職の場合につきましても按分して付与するということを検討いただくとよろしいのではないかと考えます。
 私からは以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 ほかに御質問、御意見等はございますか。
 櫻田委員、どうぞ。
○櫻田委員 ありがとうございます。
 年次有給休暇取得についてということで、私からは3点意見を申し上げさせていただきたいと思います。
 まず1点目ですけれども、年休の取得率というのは上昇傾向が続いているということで、これは大変好ましいことだと思っておりますが、さらなる取得促進に向けて取組を進める必要があると思っております。この点については、計画年休の活用なども含め対策を進めていく必要があると思っています。労働者自身が年休を計画的に取得することができるようにするという観点からしますと、企業が労働者に対して年休の残日数についてあと幾ら残っているのかなど、しっかりと可視化ができるようなことを促す取組も検討すべきではないかと考えるところです。
 2点目ですけれども、年休取得時の賃金の算定方法についてですが、労基研報告の中で、資料の56ページに記載もありますけれども、①だったり③だったりという平均賃金や標準報酬月額の30分の1に相当する額というような記載がありまして、この手法を取らざるを得ない状況としてどのようなものがあるのか考慮しつつということが労基研報告の中で言われているわけでありますけれども、ここは労働者にとっても望ましいという場合があるのかどうかというところだと思います。この②の通常の賃金というようなところだけでは不都合な場合があるのかということは事務局にお伺いしたいところであります。
 その上で、賃金額を低く見積もるということのために平均賃金や標準報酬月額が使われるということで、使用者の恣意的な運用が可能になるということもあるかと思いますので、そうした運用を確実に防止するためには、②にあります所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金を原則とするということを法令等で明確化すべきではないかと思います。
 3点目になりますが、今、佐藤委員からもありましたけれども、育児休業からの復帰者や退職する労働者に関する有給の時季指定義務の取扱いについてですけれども、ここも労基研報告の中で取扱いを検討することが必要とされているところであります。付与時期と復帰日や退職日との関係で調整が必要なケースというのはもちろん想定されると思いますが、その一方で、年休の趣旨ということを踏まえるのであれば、対象となる労働日が少ないということを理由に時季指定義務の日数を安易に減らす対応はすべきではないと思っておりますので、意見として申し上げておきたいと思っております。
 私からは以上でございます。
○山川分科会長 ありがとうございます。
 ただいまの御意見の中で1点、年次有給休暇手当といいますか、その間の賃金の支払い方法の選択肢についてどういう理由があるのかということであったでしょうか。御質問がありましたので、事務局からいかがでしょうか。
○労働条件政策課長 御質問につきまして、まずどういう理由があるかというところにつきましては、むしろ個別企業労使の実情は様々お伺いしたいと思っておりますが、計算上のシミュレーションとして申し上げますと、平均賃金はあらゆる賃金を算定いたしますので、いわゆる時間外労働等が長く発生する方について言えば、当然数字が上がってくることがございます。
 また、労働日数が多い方については、日給で25日とか働いていれば、平均賃金は掛ける25になりますので当然上がってまいりますので、単純に所定労働時間週休2日の場合ですと通常②が高くなることが多いかと思いますが、今ほど申し上げましたように時間外労働等が多い方などについては①のほうが高くなるケースもあり得るというのは計算上は出てまいります。
○山川分科会長 櫻田委員、何かございますか。
○櫻田委員 そういった点も踏まえて、最終的に労働者にとってやはり望ましいというような方法が示されるのがよろしいのだと思っておりますので、その点を質問させていただいたところであります。
○山川分科会長 ありがとうございます。
 ほかはいかがでしょうか。
 では、まず鈴木委員、どうぞ。
○鈴木委員 ありがとうございます。鈴木でございます。
 佐藤晴子委員から御指摘のありました育休明け等の年休の時季指定5日義務の按分比例化について補足させていただきたいと思います。年休の付与義務と年休の時季指定義務は、趣旨・目的の点でごっちゃになりやすく誤解が生じやすい問題です。決して年次有給休暇の権利を剥奪するということを言っているわけではないことは御理解をいただきたいと思います。年5日の付与義務のほうは2018年の改正のときに、年休を5日も取れていない方というのはかなり長時間労働をしているという理由で導入されました。つまり、日本の法制上、年休は労働者の皆様の権利ではあるのですけれども、それをそのまま放置して年休の取得を労働者に完全に任せてしまうと過重労働になってしまうので、パターナリスティックにここは法が介入すべきだという趣旨で制度化されました。そのことは建議にも明確に記載がなされ、また労働基準関係法制研究会の報告書でもその指摘がされています。
 このことを踏まえますと、佐藤晴子委員と同じ発言になるのですけれども、長期間傷病休職などをしていた方が、休職せずに勤務していた方と同じくらい、業務上の心身の負荷がかかっているのかは大いに疑問があり、こうした方に年5日の付与義務をそのまま運用することは見直すべきと考えます。年休の権利はこれまで通り保障しながら、過重労働防止のために罰則つきで5日の付与義務を課すという制度をそのまま適用するのが適当かという問題を投げかけさせていただくものであり、私としては、按分比例とすることがよいと考える次第です。
 以上でございます。
○山川分科会長 ありがとうございます。
 では、鳥澤委員、お願いします。
○鳥澤委員 ありがとうございます。鳥澤です。
 年次有給休暇につきましては、資料の57ページにありますように、着実に取得率が高まっているということを踏まえますと、さらなる取得推進に取り組むことが重要ではございますが、現段階では改めて見直しの必要性までは感じておりません。
 ただ、参考資料97ページにありますように、4.5%の労働者が取得義務となる5日すら取れていないという現状を踏まえますと、まずはこの年休の5日取得義務の周知徹底が必要ではないかと考えます。
 加えて、この有給取得だけではなく、労働者の働き方の多様化への対応を鑑み、年次有休の消化のみならず、企業独自で設定する特別休暇や育児介護休暇などを有効に活用できるような環境整備が必要です。業務プロセスの見直しや外部リソースの活用などへの支援など、家庭と仕事の両立支援に引き続き取り組むことが私は重要であると考えます。
 私からは以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 ほかにございますでしょうか。
 佐久間委員、どうぞ。
○佐久間委員 ありがとうございます。お時間が迫っている中で申し訳ございません。手短にまいります。
 まず時季指定義務の日数ですけれども、基本的に現行制度の徹底と安定的な運用というのを優先して、これ以上の法的義務化というのは当面は不要ではないかなと思います。現状の5日間取得義務というのは、中小企業にとっても現実的なラインだろうなと考えます。これは労使の方でも話し合って、お互いしやすい雰囲気というのを話し合っていくのが必要です。なお、これは勤務間インターバルの関係もそうなのですが、逆に年次有給休暇やインターバル制度により、管理監督者に著しい仕事のしわ寄せがないように進めていかなければならないと考えます。
 それから、兵藤委員からお話がありました時間休の関係です。これは私も賛成です。現行5日となっていますが、おっしゃるとおり一日単位というのが私も基本だと思いますけれども、病院に行きたいとか、いろいろ細かい取得理由があると思いますので、ぜひ時間単位の有給休暇の運用を拡大していただき、取得しやすい雰囲気づくりと取得促進に向けて取り組んでいただくのがよろしいと思います。
 以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、もう時間となっております。
 本日の議題の各テーマにつきまして、委員それぞれのお立場から非常に貴重な御意見を伺ったところでございます。
 事務局では、本日の議論も踏まえて検討を進めて、また、御要望がありました点も含めて次回以降の資料の準備をお願いいたします。
 では、特段ございませんようでしたら、本日の議事はここまでとさせていただきたいと思います。
 最後に、次回の日程等について事務局から説明をお願いします。
○労働条件企画専門官 次回の日程等につきましては、調整の上、追ってお知らせさせていただきます。
○山川分科会長 それでは、以上をもちまして、第199回「労働条件分科会」を終了いたします。本日はお忙しい中、大変ありがとうございました。