第7回精神保健医療福祉の今後の施策推進に関する検討会 議事録

日時

令和7年6月9日(月)14:00~17:00

場所

航空会館ビジネスフォーラム
(東京都港区新橋 1-18-1)

出席者

構成員(五十音順)
参考人(五十音順)

議題

  1. (1)精神障害にも対応した地域包括ケアシステムにおける医療提供体制について
  2. (2)その他

議事

内容
○田辺座長 それでは、定刻となりましたので、ただいまより第7回「精神保健医療福祉の今後の施策推進に関する検討会」を開催いたします。
 皆様方におかれましては、御多忙の折、御参集いただきまして、誠にありがとうございます。
 初めに、本日の出欠状況と資料の確認につきまして、事務局のほうよりお願いしたいと思います。では、よろしくお願いいたします。
○新平課長補佐 事務局です。
 本日の会議は、会場とオンライン会議システムを併用しての実施となります。御出席の構成員の方のうち、会場には17名お越しいただいて、オンラインでの御出席は5名です。少し遅れられる方がいらっしゃると伺っております。
 それから、家保構成員、小嶋構成員、水野構成員が御都合により欠席されると伺っております。
 また、本日は、議題(1)に関連して、国立病院機構九州医療センターの田中参考人に御出席をお願いしております。交通事情により、少し遅れての参加と伺っております。
 次に、本日の資料といたしまして、議事次第と資料1~4、参考資料1と2を格納したタブレットをお配りしております。資料の不足等がございましたら、事務局のほうまで御連絡ください。
 傍聴の方におかれましては、資料を厚生労働省のホームページに掲載しておりますので、そちらを御覧ください。
 次に、オンラインで御参加の構成員の方ですけれども、カメラは常に映る状態にしておいてください。また、御発言の都度、マイクをオンにしていただき、発言後はオフにする操作をお願いいたします。途中で不都合が生じましたら、事務局まで御連絡いただければと思います。
 それでは、冒頭の頭撮り撮影に関しましてはこちらで終了とさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
(頭撮り終了)
○新平課長補佐 引き続き、資料の補足をさせていただきます。
 資料1につきましては、前回検討会における主な御意見をまとめております。また、参考資料1としまして、本日の議題に関係するものをお配りさせていただいております。
 以上となります。
○田辺座長 ありがとうございました。
 それでは、具体的な議題のほうに入ってまいりたいと存じます。
 議題(1)の「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムにおける医療提供体制について」です。
 当議題に関して、地域における「にも包括」の観点で、医療提供側の関係者より本日はヒアリングを行ってまいりたいと思います。
 本日は、岡部構成員、それから、辻本構成員、田中参考人の順で、15分以内を目安に御発表いただき、発表者ごとにヒアリングに関する御質問の時間を設けて、最後に構成員の皆様方からの自由討議の時間を設けたいと思います。若干、順番は資料の順番とは異なっておりますけれども、その点、よろしくお願いいたします。
 では、岡部構成員、報告のほうをよろしくお願いいたします。
○岡部構成員 社会福祉法人ソラティオの岡部と申します。15分のお時間をいただきまして「相談支援から見た『医療』『保健』との連携について」というタイトルで進めさせていただきます。
 なお、当法人は、東京都荒川区で相談支援を中心に事業を展開している法人でございます。
 今回、私がこの場をいただいた背景としましては、第5回の検討会におきまして「にも包括」において、障害者総合支援法の障害福祉サービスの方の相談支援事業所や基幹相談支援センターなど生活を支える部分が、保健や医療とどう連携していくかを確認するため、ケアマネジメントに関わる人や事業所の関係者が「にも包括」にどう関わっているのか知りたいという御意見を踏まえまして、私のほうから本日「にも包括」のポンチ絵に沿って、基幹・委託・計画などがどのような関わりがあるのかということを御説明したいと思っております。また、地域生活を支える相談支援体制の全体像及びその対象範囲についても御説明させていただければと思います。3つ目に、生活を支える「医療」「保健」「福祉」の連携について、特に情報連携のことに絞って御説明させていただければというふうに思います。
 この資料は配付なしなのですが、皆さんがよく見ている「にも包括」のポンチ絵になりますけれども、ここに当法人で行っております基幹・委託・計画や自立生活援助、地域定着や障害児相談、また、ピアサポートも含めて表示させてもらっています。協議会につきましても、荒川区と東京都の協議会に参加させていただいております。相談支援で切り取ってみますと、この「にも包括」のポンチ絵で、このように位置づいて事業をさせてもらっているということになります。
 さらに、どういうことを今、相談支援の中で考えているかということですが、厚労省のポンチ絵に近い形ですけれども、資料を見ていただいたとおり、真ん中に御本人さんがいらっしゃって、それを支える相談支援事業者とサービス提供事業者が日常的な支援チームを展開しているということで、そのチームを支える、相談支援事業者を支える立場として基幹相談支援センターが位置づけられている。そこで活躍するのが主任相談支援専門員という位置づけになります。
 また、親亡き後や地域移行の推進のために地域生活支援拠点を設けて、そこに拠点コーディネーターを配置し、緊急時の対応や地域移行の推進を図るというような役割がありますが、こういったような各市町村の相談支援体制を整えていくのは市町村の責務であるという位置づけから、自立支援協議会がその体制を構築したり支えたりしているといったような絵が今の相談支援体制の全体像というふうに理解しております。
 それで、我が法人で基幹センター、委託相談、計画相談。それがどのように人員を配置しているかということですが、一番上が基幹相談で、先ほどもお伝えしましたように、地域の相談支援体制の強化を図る役割と、協議会を通じて地域づくりをするといったところに、主任やピアスタッフを含めて、6人の職員を配置しているということと。
 第1層、一番下のところは障害福祉サービスを使っている方たちの支援で、主に計画相談支援や地域移行、自立生活援助、障害児の相談支援。ここに7名のスタッフ、ピアスタッフも含めて配置しているということでございます。
 真ん中が本日、主たるテーマになってくるかなというふうに思いますけれども、第2層として委託の相談支援事業です。これは全て別々の場所でやっておりますけれども、第2層につきましては、障害福祉サービスを利用していない御本人及び御家族の支援を対象としておりまして、そこにピアスタッフを含む4人のスタッフを配置しております。第2層につきましては、サービスを利用していない御本人・御家族を対象としていますので、課題解決型の支援と、ピアスタッフによる伴走的な支援を両輪で展開しているというところが特徴であります。
 こちらの資料は埼玉の広沢さんという精神保健福祉センターの職員さんの資料をお借りして、一部改変してありますが、今までの検討会でも出てきたかもしれませんが、広沢さんの図を左右逆にしています。福祉による支援の対象者は精神障害者で、精神医療の対象者は精神疾患を有する者も含み、かつメンタル不調を有する方も含むというような整理をしていますけれども、ここから皆さんのお手元に用意がしにくかったので、画面を見ていただければと思います。
 まず、福祉の精神障害者につきましては第1層、計画相談等で支えるという整理をしています。障害福祉の要素が強い、計画相談支援事業、地域相談支援事業、障害相談支援事業、自立生活援助等が該当していきます。続きまして、第2層、委託の相談支援事業につきましては、先ほども御説明させていただきましたけれども、障害福祉サービスを利用していない御本人及び御家族を対象としているというところで、相談支援専門員による課題解決型の支援とピアスタッフによる伴走型の支援で、障害福祉と保健の要素が入ってきているかなというふうに思います。そして、第3層で支える基幹相談支援センター事業としましては、地域の相談支援体制の強化の取組と地域づくり。この2本が大きなテーマになってきておりまして、障害福祉(地域生活支援拠点等を含む)となりますが、保健及びここには重層的支援の要素が入ってくるかというふうに思っております。
 さらに、黄色い部分。皆さんのお手元の資料にはないのですけれども、まだ治療にもつながっていないような方たち、また、福祉にもつながっていないような方たちを潜在的要支援者というふうに私どもは整理しておりまして、ここに、先ほども御説明しましたように、地域生活支援拠点のコーディネーターがしっかりと関わっているという体制をつくりたいと思いながら事業をしているところであります。
 さて、前回の検討会で私も発言させていただいたのですけれども、ケアマネジメントが必要な方は医療と生活の両方の支援が必要であるということは御承知のとおりかと思うのですけれども、そういった中で、連携がうまくいかなかったりする状況があるのも皆さん御承知のことかと思います。
 また、生活支援をする事業所と自治体との連携も必要ですけれども、土日や夜間は自治体さんとの情報連携はなかなか難しいところもあって、夜間を除いて朝6時から業務開始までですとか、業務終了後から22時ぐらいまでの間を埋めるような仕組みを後々考えていかなければいけないのではないかという課題意識を持っています。
 今回お話ししたいのは、ただ、連携は重要であるということがずっと言われてきていますけれども、連携において、情報連携する際に、情報の質や価値、情報の鮮度や精度が高い情報交換をしていくことが非常に大事だというふうに思っております。
 皆さんにお話しするまでもないですけれども、連携のためには関係者同士の顔の見える関係性が連携の基盤であり出発点だというふうに考えておりますけれども、さらに、その前提には御本人の意思を中心とした「医療」「保健」「福祉」の連携が必要だろうというふうに思います。そういったことを基盤にしながら、質の高い情報の連携が重要であると思っておりまして、この中で、互いに「福祉」から「医療」、「医療」から「福祉」、また「保健」というようなところで共有・交換する情報の質や価値、鮮度、精度が重要であるというふうに思います。
 質の高い情報の連携ができると、支援の連携もスムーズにいくと思いますし、さらには良好な関係性を基盤として、各機関の強みや特色を支援に生かしていく資源の連携というふうにつながり、御本人の自立や希望する暮らしを支えていくことができるようになるというふうに思っております。
 ただ、この質の高い情報や価値の高い情報、鮮度のよい情報、精度の高い情報については一定程度の整理が必要だというふうに思っておりまして、あくまで御本人の意思を中心とした情報の連携になるわけですけれども、今回、御本人や御家族にとって質の高い情報は何かとか、今回は精神医療提供体制についてですので、精神科医療機関等の関係者の方にとって質の高い情報は何かというふうに整理をさせてもらったときに、質の高い情報とは、精神科医療機関等の関係者の皆さんにおいては、御本人さんの「本音」とか「取り巻く環境」に関するような情報、生きた情報が質の高い情報というふうに言えるのではないかというふうに思っております。
 また、価値の高い情報におきましては、診療場面以外の生活情報、生活歴等を含んだ情報が価値が高いのではないかというふうに思っております。精度や鮮度につきましては、皆さん、イメージできると思いますけれども、最新の情報であったり、また、データに基づく客観的な正確性のある情報が精度が高い情報かというふうに思います。
 御本人・御家族さんにとっては、具体的で分かりやすい情報が質の高いというふうに言えると思いますし、価値の高い情報は、ニーズに沿った情報であるとか、当事者が経験した、ピアサポーターが持っているような情報は価値が高いというふうに言えるのではないでしょうか。その基盤に、御本人や御家族とは信頼関係がなければこういった情報を共有したり連携したりすることは難しいと思いますし、関係機関同士も顔の見える関係性が必要だということは言うまでもないことかというふうに思います。
 まとめになりますが、御本人の意思を中心とした「医療」「保健」「福祉」の関係者間の連携は当然でありますが、良質な精神科医療提供体制を推進するためには、改めて情報の連携を意識していく必要があると考えます。
 御本人等との信頼関係及び関係機関同士の顔の見える関係性が基盤にあってこそ、情報の連携が機能するというふうに考えます。
 情報の連携がスムーズに実施されると、関係機関同士の支援の連携が進み、さらに、資源の連携がうまくいくと、関係機関が持つ資源、人的資源・物的資源を連携させていくことが可能となると思いますが、連携ができる教育及び人材の育成が大変重要ではないかというふうに思っております。
 私のほうで用意させていただいたパワーポイントは以上でございますが、1点、補足資料を資料3-2で用意させてもらっていますけれども、見方だけ説明させていただいて終わりたいというふうに思います。
 上半分につきましては、今までお話しさせていただいた整理になりますが、下半分につきましては、赤字が「にも包括」を構成する7つの要素をそれぞれ事業別に当てはめるとどこに位置づけられるかということで記載させていただきました。
 半分から下の上部分は、一般相談支援事業、特定相談支援事業、障害児相談支援事業、自立生活援助事業などに関して「にも包括」の7つの構成要素がそれぞれ、精神医療の提供体制ですとか当事者・ピアサポーターというふうに赤字で記載させていただいております。
 真ん中が、基幹相談支援事業における「にも包括」の7つの構成要素を5の要素があるかと思って入れさせていただいております。なお、これはあくまで荒川区の基幹相談支援事業において埋めてありますので、各地域によってはこの構成要素の位置づけが多少変わることは御了承いただければと思います。
 一番下のところは、市町村障害者相談支援事業、つまり、委託の相談支援事業に関する事業において、7つの構成要素のうち4つの構成要素が該当するのではないかということで整理させていただいております。
 以上、私のほうからの御説明を終了させていただきます。御清聴ありがとうございました。
○田辺座長 岡部構成員、御報告ありがとうございました。
 ただいまのヒアリングに関しまして、御質問等がございましたら、お願いできればと存じます。どなたからでも結構でございます。
 では、岩上構成員、よろしくお願いします。
○岩上構成員 全国地域で暮らそうネットワークの岩上です。
 岡部さん、ありがとうございます。多分、この検討会で障害者支援に近いのは森構成員と私ぐらいではないかと思いまして、今のお話を聞くと、相談支援体制はしっかり構築できていて、そのためには、最後のお話があったような情報連携、関係性を築いた上での情報連携が必要だというお話だと思うのですけれども、岡部さんの事業所は全国的にも特筆していて、多分、今、お話しになったことができている相談支援体制を持っている事業所、あるいは自治体というものはかなり少ないという現状だと思うのです。まず、そこは確認しておかないと、今の話を聞くと、では、そういうことが全国的にできているのだとすると、自分の地域だけうまくいっていないのかという誤解を与えてしまうと思うので、まず、そこは確認したい。
 その上で、今、お話がありまして、今日、障害福祉課の室長補佐たちも来ていただいているので、補佐にもお聞きしたいと思うのですが、制度としては自立生活援助をつくり、障害福祉サービス等でピアサポートを評価し、なおかつ地域相談もかなり幅広く使えるようにして、今、岡部さんがお示しになったような形がよりできるように国としては整えていると思うのです。それから、基幹相談支援センターや地域生活支援拠点等と協議会で地域づくりをするということも法制度上も位置づけているということで、骨格は既にできている。ただ、先ほど申し上げましたように、岡部さんの御発表の相談体制はまだまだ特筆すべきところで、まだそこについてこられていないわけではないですか。その認識を確認したいのと、それについて、今後、どんな手だてが必要かというものをお聞きしたい。それは室長補佐もいらっしゃっているので、国として進めていることについても御説明いただければと思います。
 以上です。
○田辺座長 では、よろしくお願いします。
○岡部構成員 ありがとうございます。
 確かに、私のモデルは都市型のモデルだというふうに理解しています。一定程度、人口がいないと、この形態は成り立たない。第6回のときも参考人の方からお話がありましたけれども、人口6万人ぐらいだと難しいというのが正直なところです。20万~30万人の人口規模や政令市ぐらいでないとなかなか難しいだろうと思います。ただ、その中でやり方はいろいろあると思いまして、相談支援体制を地域の中にしっかりやれる事業所・法人さんが1か所あって、そこが中心的に引っ張っていくというやり方もあると思います。
 ただ、もう一つ、地域生活支援拠点の面的整備のように様々な事業所があって、様々な事業所が、A事業所は計画相談と障害児をやるとか、B事業所は自立生活援助と地域移行に力を入れているとか、また、C事業所は指定一般に力を入れているとか、そういった地域の力に合わせて、力を結集して、面的に相談支援体制を整えていくというふうなことを人口が少ないところはやっていかないと、国が目指しているような相談支援体制の整備にはつながらないというふうに思っています。ただ、それは既に障害福祉課さんは令和3年の報酬改定でそれを見越して、相談支援事業所が協同できる報酬改定といいますか、仕組みをつくってくださっているので、そこできちんと「にも包括」も考える相談支援の拠点型なのか、相談支援の面的整備型なのか、我がエリアはどちらに進んだほうが、住民のためであれ、精神障害をお持ちのためであれということを考えていくような仕掛けが大変重要ではないかというふうに思っております。
 以上です。
○田辺座長 ありがとうございました。
 では、事務局から補足がありましたら、よろしくお願いします。
○杉渕室長補佐 事務局の障害福祉課でございます。私は、相談支援の担当をしています室長補佐の杉渕と申します。
 国で取り組んでいるところの紹介といたしましては、今回、参考資料1で少しつけさせていただきましたので、後ほどご覧いただければと思いますが、簡単に御説明いたします。令和4年度の総合支援法改正におきまして、基幹相談支援センター、地域生活支援拠点等が、市町村の努力義務として令和6年度の4月から施行されているところです。
 昨年度から、これらの設置や機能強化というものを促進しているところでございまして、ただ一方、いずれにおきましても、設置状況はまだ6割程度でございます。そういったところの設置と、または設置しても機能していないのではないかみたいなところの課題もございまして、そういったところをどうすれば実効性を持って地域の相談支援体制を改めて、市町村が主体的に考えるか。また、都道府県がどうやってバックアップしているかにつきまして、昨年度の施行にあわせて、都道府県に対してブロック会議を行いながら、具体的に設置のアドバイス、また、一緒に考える、または機能強化について何ができるか、具体的な状況をお示ししながら一緒に考えるような取組をこの3年間、令和6年度、令和7年度、令和8年度、また、それは今の障害福祉計画、自治体が定める計画ともリンクしておりまして、その目標を達成すべく、相談支援体制を再構築するような取組を進めているところでございます。
 また、岡部構成員、岩上構成員に教えていただいたような具体的事例を盛り込みながら、都道府県と市町村が実際にしっかり考えていけるように推進していきたいと考えております。加えて、そのための土壌として、令和3年度とか令和6年度の報酬改定においても、しっかりそういった自立した体制が整えられるような状況にもあるところでございますので、また皆さんの御助言をいただきながら進めていくのと、今回改めて、精神保健分野ともより連携して進めていくことが大事かと思っていますので、より一層進めていきたいと思っています。
 以上でございます。
○田辺座長 ありがとうございました。
 それでは、長谷川構成員、お手が挙がっておりますので、お願いいたします。
○長谷川構成員 ありがとうございます。
 具体的なところをお伺いしたいのですけれども、すばらしい体制だと思います。重層的にやっていらして、いいなと思ったのですが、第2層のサービスを利用していない方たちに対し、ピアスタッフが入って支援していると思うのですけれども、例えば具体的なサービスにつながったのかとか、あと、ピアスタッフの支援体制のノウハウとか、そういうところを広めていただくことができるのかというのが質問です。すみません。
○田辺座長 では、お願いいたします。
○岡部構成員 1点確認なのですが、今、音声が途切れたところがあって、ピアスタッフの。
○長谷川構成員 後半ですか。
 ノウハウとか、ピアスタッフの支援体制というものもやはり皆さん知りたいところだと思うので、その辺も広めていただけるといいかなと思いました。
○岡部構成員 ありがとうございます。
 すみません。スライドをもう一度、第2層のところを出していただけるとありがたいのです。
 パワーポイントのほうですか。それをもうちょっと戻っていただきまして、そこです。ありがとうございます。
 すみませんでした。この第2層のところは大変重要だと思いまして、計画相談はやることははっきりしている、基幹相談もやることははっきりしている。この第2層のところなのですが、今、実際にうちの委託の事業がやっていることを大きく分けると3点ございます。
 一つは、未治療の方の相談をピアスタッフなり相談支援専門員が受け付けて、必要に応じて医療機関におつなぎをさせていただく。ここは相談を受けて、あなたはすぐ病院に行ったほうがいいですなどということではなく、ピアスタッフがかなり丁寧に御本人の気持ちに寄り添いながら、長い事例ですと恐らく1年とか2年かけてつながるといったような事例もありますので、あまり数多くさばくというよりは、丁寧にその方の状況に合わせた相談支援を相談支援専門員とピアスタッフが、時には一緒に、時には片方だけでやっていくというスタイルを取っています。
 あと、2つ目には、既に通院している方や障害福祉サービスを使っている方も一部いらっしゃいますが、当事者の話を聞きたいということで、保健所や役所の窓口から御紹介される方が多くいらっしゃいます。
 3つ目に、この委託の事業では精神科病院さんの巡回訪問をさせていただいて、委託の事業の説明とか、ピアスタッフがいる説明や、何か委託の相談支援事業が力になれることがないかというような巡回をさせていただいたり、また、病院と地域の支援者とピアスタッフを一緒につながる場としてピアスタッフ協働事例検討会というようなものを年4回ほど催して、東京各地のピアスタッフ、または病院の関係者の方、地域の関係者の方、保健師の方で、一回50~60名ぐらい集まることが多いのですが、そこでピアスタッフと関係者で一緒になって事例検討をやる取組をしたり、また、3つ目の話はそういった地域づくりの部分ですので、ピアスタッフが保健所が実施する家族相談会に足を運ばせてもらって、そこでドクターや保健師、御家族さん、ピアスタッフと一緒に家族相談会を実施しながら、委託相談で提供できる取組をさせていただいているといったような状況でございます。
 このような説明でよろしいでしょうか。
○長谷川構成員 ありがとうございます。
○田辺座長 それでは、吉川構成員、お手が挙がっていますので、よろしくお願いします。
○吉川構成員 岡部構成員、御説明ありがとうございました。私のほうから情報の連携について、少し岡部構成員の御意見とかお考えを教えていただきたいと思いました。
 ケアマネジメントで医療と生活支援が両方必要な人の中には、地域では訪問看護を利用されている方もいらっしゃるのではないかと思いました。それで、価値の高い情報というところで診療場面以外の生活情報というものが示されていましたが、そこは訪問看護が情報を持っていることも考えられると思いました。中には訪問看護を活用していても相談支援につながっていない人とか、いろいろな状況の方がいらっしゃるのかなというふうに思います。
 そこで訪問看護、特にステーションと相談支援との連携がどのように行われているのか。もちろん、これは日頃の関係づくりという面も含めて、その辺りについて、何かお考えがあれば教えていただきたい。
 あと、どのような場合、どのようなケースで訪問看護ステーションなど、訪問看護と情報共有が進めば御本人・支援者にとって効果的な、そういった効果が期待できるのかという、その辺りについて御意見いただければうれしく思います。
○田辺座長 よろしくお願いします。
○岡部構成員 ありがとうございます。
 訪問看護さんとの連携は非常に大事だと思っていまして、私らも随分助けられています。福祉で全部できない部分はかなり多くありますし、訪問看護さんの訪問頻度は、福祉の相談支援専門員が訪問するよりは密でありますから、かなりきめ細かい情報を早くお持ちになる。特に今の訪問看護を東京でやっていますと、皆さん、情報連携が非常に早くて、LINEを使ったりとか、メールを使ったりとか、ショートメールを使ったり、職員さんのやり方にもよりますが、中にはMCSとかも使いながら訪問診療所ともやりますけれども、かなりきめ細かくいただけているので助かっているというのが実情です。これは私がやっているエリアでの取組でということであります。
 特に、緊急時に関する情報とか、訪問看護さんが訪問していて違和感を覚えるような情報を早めに共有できると、支援者同士がお互いに支え合えるといいますか、夜間・緊急時等もありますので、そういったときに、今回は訪問看護さんでお願いできませんかとか、こちらで夜間の地域定着支援は今回動きますとか。それは内容によって、医療寄りのものが強ければ訪問看護さんにお願いすることが多いですし、生活面で、例えば電球を替えてほしいとか、それを替えないと不穏になってしまう人がいるとか、そういう方については生活面が強いので私どもが登場したりとかというような役割分担をやっているという実情であります。
 あと、もう一つが忘れてしまって、すみません。先生、大丈夫でしょうか。
○吉川構成員 今、お答えいただきました。緊急訪問とかが必要なときが特にそういった情報共有が大切だということですね。
○岡部構成員 はい。
○吉川構成員 それで、そこまで本当にすごく連携されている岡部構成員の事業所のところだと思いました。ただ、そういう関係性になるまでにはいろいろな工夫とか努力とかは必要だったかと思うのですが、どんなふうな関係づくりをされてきたのでしょうか。
○岡部構成員 とにかくお互いに顔を合わせて、スタッフ同士の関係ができるまで情報の連携はスムーズにいかないので、できるだけ声をかけながらというところでもありますが、全ての訪問看護事業者さんとうまくいっているかというと、そうでもなく、まだまだ半分ぐらいかなという、こちらの努力が足りない部分もあります。
 また、最後になりますけれども、先ほどの杉渕補佐の話にもありましたように、令和6年の改正から情報連携の規定が報酬上認められたので、今まで訪問看護ステーションは医療機関や相談支援事業所に情報提供すると算定ができるという仕組みがあるかと思いますが、令和6年から相談支援事業所から医療機関や、相談支援事業所から訪問看護、またはサービス以外のサービス提供者に情報を提供すると算定ができるという仕組みができたので、そこをしっかり活用していくということが関係作りに何よりも私は大事だというふうに思っております。
 以上です。
○吉川構成員 分かりました。どうもありがとうございました。
○田辺座長 ほかはいかがでございましょう。
 では、小阪構成員、よろしくお願いします。
○小阪構成員 日本メンタルヘルスピアサポート専門員研修機構の小阪と申します。岡部構成員、分かりやすい説明ありがとうございました。数が多くて申し訳ないのですけれども、私から4点ほど、意見と3つ質問があります。
 まず一点は、相談支援体制については、岩上構成員がおっしゃったように、岡部構成員のモデルが当たり前と捉えるのは難しいとは思っていますが、一方で当事者の立場からすると、岡部構成員が構成しているような相談支援が実は平均レベルであってほしいなと思っていまして、これはそういうふうに設計していただきたいと普通に思っています。そうでなければ困るのですよ。それがまず一点です。これは岡部構成員もきっと同意いただけるのではないかなと思っているのです。
 これから3つが質問です。まず1つ目の質問が、スライドのほうでしたけれども、まとめのほうで、御本人の意思を中心とした情報連携というふうに言葉を紡いでいただいたかなと思っています。あえて御本人ではなく、御本人の意思としたことに何か狙いがあるのであれば、そこを教えていただきたいなと思いました。
 それから、2点目が、岡部構成員の第2層の委託支援事業所においては、法人の努力だけではなくて、区市町村のほうの理解も非常にあったのではないかなと思っています。要は、区市町村がピアサポート従事者を委託相談支援事業所に人員配置として認める設計にあったのではないかなというふうに思うのですけれども、その辺り、第2層にピアサポート従事者を広めていく上で、例えば障害者相談支援事業においてピアサポート従事者を配置するのが有効だというふうに国のほうで指し示していただくような方向性を模索するのはどうかというのが質問の2点目です。
 それから、最後の質問です。これは岡部構成員に聞くべきことではないのかもしれないですけれども、お伺いしたいのが、良質かつ適切な精神障害者に対する医療を提供するための指針の実は基本的な考え方において、基本的な考え方の3番目に医療の指針ですが、精神障害者同士の支え合い等を行うピアサポートを促進するとともにという記述があるのです。医療においてピアサポートを促進することが僕は全然できていないのではないかと思うのですけれども、この辺、大変立場上難しいかもしれないですけれども、岡部構成員のほうから、この指針を受けた医療提供者の在り方のピアサポートの促進について御意見を伺えればと思います。
 よろしくお願いします。
○田辺座長 どうぞ。
○岡部構成員 ありがとうございます。
 多分、2つ目と3つ目は関連しそうなので、まとめての回答になってしまうかもしれないですけれども、ピアスタッフを委託の相談支援事業に配置するのは大変努力が必要でした。市町村の障害者相談支援事業においては基本的に相談支援専門員の配置等が想定されていますけれども、私はピアスタッフの配置が必ず必要だというふうに信念を持ってやってきましたけれども、配置できるようになるまで、いわゆる仕様書を変えていただくまでに1年少しかかっています。その間、ピアスタッフを配置することの有効性等を区役所のほうにお伝えし認めていただいたという背景がありますけれども、一番はピアスタッフが一緒に働くという、この労働環境が大変重要だというふうに思っておりまして、職員が障害をお持ちの方を大変理解するといいますか、本質的に理解するといいますか、同じ立場の労働者として働くことによって、同僚という立ち位置の中で障害者に対する考え方が相談支援専門員や精神保健福祉士の価値観が変わると支援の質が変わるので、これは大変重要だというふうに思っているところであります。
 そういうことで、3つ目に、今までの検討会でも私は委託相談支援事業にピアスタッフの配置はあったほうがいいのではないでしょうかというお話をさせてもらいましたけれども、同様の考えで、医療分野にも、私が言うのは大変おこがましいですけれども、職員の障害をお持ちの方を見る目線といいますか、視点といいますか、そういったものを変えるには常勤雇用で一緒に働く。ここは、私は非常勤とかはあまり考えていないです。最初から常勤雇用で、同じ立場の労働者として働くことが一番、理解促進と共同していける足がかりになるのではないかというふうに思ってやっていますので、医療機関のほうも大変いろいろ難しい問題はあるかもしれませんが、そういった体制を整えることで、職員自身の質の向上、支援の質の向上、ケアの質の向上につながるのではないかというふうに考えています。
 最後に、1番目の、御本人を中心としたと普通は書きがちだと思うのですが、御本人の意思とさせていただいたのは、あくまで御本人の了解を得るという意味合いもありますけれども、御本人の意思を把握するのがとても相談支援では難しくて、それは相談支援だけでできるものではないというふうに思っているので、そこをピアスタッフの方の力も借りたり、医療機関の方の力も借りたりしながら、御本人の意思はここではないかというふうな推測をしながら、そこをしっかりと押さえながら連携していくということが、この「にも包括」で関わる関係者の方の基盤にある必要がある。皆さん、おありになると思うのですが、そこを大事にしたくて御本人の意思というふうに表現させていただきました。
 以上です。
○田辺座長 よろしゅうございますか。
 ほかはいかがでございましょう。
 では、神庭構成員、よろしくお願いします。
○神庭構成員 ありがとうございました。
 「にも包括」の議論のときに、キーワードとしてワンストップという言葉が使われました。総合案内窓口事務みたいなところがあって、困り事を持っている方が、生活の問題であれ、医療の問題であれ、どこに相談に行ったらいいのかということが分からないと、いろいろな重層的な体制ができていても、当事者の方に動いていただいたのですけれども、適切な対応を受けられないことにもなるので、総合案内、ワンストップで、そこに相談すればあなたの問題はここで解決できるのではないかという情報が得られる。そういう体制をつくったらどうだと、そういう議論で盛り上がったように記憶しているのですけれども、例えば診察室にいて、PSWの方がいて、当事者の方から相談を受ければ、PSの方の力を借りて、そういった案内ができるのですけれども、必ずしもPSWがいる医療施設だけではないし、それから、受診していない方の相談事はその対応の限りではないわけです。
 実際、どうなのでしょう。ワンストップの必要性というものはどの程度あるのでしょうか。
○田辺座長 どうぞ。
○岡部構成員 正直、ワンストップだと絵に描いた餅になってしまうかなというふうに私は思っていて、そういうことを目指していく必要はあるかと思うのですが、現実的にはなかなか難しいということだというふうに私自身は思っています。でも、しかしながら、住民の責任を持つのは地方自治体だというふうに思っているので、役所の窓口にアクセスすれば、まず何とかなるというところには行くといいのではないかというふうには思っています。
 そういった中で、ただ、役所の方も異動もありますし、完璧ではないので、今、現場でやっていて一番課題だというふうに思うのは、基幹相談支援センターや計画相談。ここまでは役割が分かっているのでいいのですけれども「にも包括」にまつわる入り口相談は割と役所や委託の相談支援や、また、似たような委託の相談はほかに地域包括支援センターだとか発達支援センターだとか、市町村が委託している事業は結構、10メニューぐらいあると思うのですけれども、そこの人たち同士がお互いにどんな、名前ぐらいは分かるのですよ。何々センターがどこそこにあるのは分かるのですけれども、そこの第2層目の人たちが、顔の見える関係性とか、お互いの役割の認識を深めるような取組をしていくと、たらい回しにならずに、できるだけ短い距離で必要な相談先にアクセスできるのではないかというふうに思っています。
 つまり、そういった市町村が委託している相談系の事業の人たちの顔合わせと情報連携とお互いの役割の確認をしていくということが今は大事なのではないかというふうに私は認識しています。
 以上です。
○田辺座長 ほかはいかがでございましょう。
 では、岡田構成員、よろしくお願いします。
○岡田構成員 詳しい御説明をありがとうございました。先ほどの小阪構成員からの発言にもありましたけれども、今のような御説明の中身が本当にスタンダードであってほしいなというのは本当に全く同じ気持ちであります。
 私、この「にも包括」のお話を最初に聞いたときからずっと高齢者の支援の形と照らし合わせながら考えていったときに、ケアマネジャーの存在というものはやはり一番印象にあって、私の母もケアマネジャーの世話になって、いろいろ支援を受けながら、今は亡くなりましたけれども、どうしても「にも包括」の場合は、誰がケアマネジャー的な役割を担うのかというものが見えてこなくて、そこがぼんやりしているので、今のようなお話を伺っても、直接、私たちの生活に結びつかないようなもどかしさがあるのですけれども、断定はできないとは思うのですけれども、今の状況の「にも包括」の中でケアマネジャー、そして、どのような機関の、どういう方が担うべきというふうに、もしお考えがあれば教えていただきたいなと思いました。
 よろしくお願いします。
○田辺座長 どうぞ。
○岡部構成員 まずは、サービスを使っている方は相談支援専門員が介護保健の介護支援専門員と同列であるというのがあるかと思います。ただ、サービスを使っていない方につきましては、医療機関にかかっている人でケアマネジメントが必要な方については、報酬上、今、名前を度忘れしてしまいましたけれども(療養生活継続支援加算)、そういった病院の中での医療マネジメントを中心とした形でやっていく必要があるかというふうに思います。
 ただ、それでも相談支援専門員にアクセスできない、医療機関のケアマネジメントにもアクセスできないという方が一定数いらっしゃると思うので、そこは責任主体としては地方自治体だと思うので、地方自治体の保健師さんとか、または委託の相談支援事業所がマネジメントをしていく、人材を配置している関係から、そういったところでマネジメントを担って、サービスを使うようになったら相談支援専門員に引き継いだりというような流れが必要かというふうに思います。
 ただ、現在、相談支援専門員は大変不足しておりまして、希望する人に相談支援専門員が全てついていないというようなセルフプランを仕方なくやっているという方もいらっしゃるので、相談支援専門員がやるべきではあるのですけれども、地域によっては届いていない方もいらっしゃるので、そこは地域ごとの課題として、相談支援専門員の増員配置や、また、働き方の調整などをしていくべきではないかというふうに思っております。
 以上です。
○田辺座長 どうぞ。
○岡田構成員 ありがとうございます。
 今、伺っても、利用する立場からすると大変分かりにくいのだなというのが改めて分かったのですけれども、この辺りはぜひ国の制度として分かりやすいケアマネジメントをしてくださる方の存在を、利用する側から見て分かりやすく整理していただけるとありがたいと思います。よろしくお願いいたします。
○田辺座長 ありがとうございました。
 ほかはいかがでございましょう。
 では、藤井構成員、よろしくお願いします。その後、お願いします。
○藤井構成員 国立精神・神経医療研究センターの藤井です。岡部構成員、ありがとうございました。
 医療機関側からの連携という観点からお伺いしたいのですけれども、福祉と医療の連携でずっと重要というものが言われているかと思うのですけれども、実際に岡部構成員がふだんの実践の中で医療機関と連携することが非常に多いかと思うのですが、そのときに、医療機関との連携に当たってのハードルがどこにあるのか。要は、連携しにくい医療機関はどういう医療機関で、連携しやすい医療機関というものはどういうところなのか。この連携をより進めていくためには、医療機関側にどのような体制があるとよいのかという、そのお考えがあれば教えていただければと思います。
○岡部構成員 ありがとうございます。
 私も10年ほど精神科病院のソーシャルワーカーをやっておりましたけれども、今、地域から病院さんと連携させていただくに当たって、障害となるのはツールの面が多くて、病院のソーシャルワーカーさんと連携すること自体があまり違和感はないし、病棟の看護師さんとかも非常にコミュニケーションを取りやすいので問題ないのですが、ツール的にやはりメールが使えないという医療機関さんが多かったり、電話も17時15分ぐらいで止まってしまうとか、夜警さんとかはいるのですけれども、そこからつながりにくかったりとかということがあります。
 私らの仕事は、私も現場を半分ぐらい持っているのですけれども、ほぼ日中は出っ放しで、出た先でメールを確認しながら、必要に応じて電話をかけるとか、でも、電話をかけても相手がいないとかということになると、また次の仕事をしていてというのがあるので、隙間時間でメールで情報交換できるのは非常にありがたくて、そのときに、患者さんの名前は出せないので、○山×男さんとか、ヒント的に出して、この方の件で連絡したいのですみたいなことをしますけれども、そのメールが使えないとなると、あとは電話しかないので、結局、あそこの相談支援事業所はいつも電話がつながらないみたいな御迷惑をかけたりしているのが実情ですので、その辺の手段の辺りが変わると非常にやりやすくなるというふうに思っています。
 もう一点は、病院の中にお邪魔して、一緒に事例検討をフラットな関係性の中で御本人支援のためにできるように迎え入れていただけるような医療機関はたくさん、多くなっているとは思うのですが、もっと増えていただくと、医療の方もアクセスしやすくなったり、こちらも顔が分かってアクセスしやすくなったりというところを目指していければというふうに思っております。
 以上です。
○田辺座長 ありがとうございました。
 では、辻本構成員、よろしくお願いします。
○辻本構成員 詳しい説明ありがとうございました。
 情報の大事さというものはよく分かるのですが、個人情報の取扱いで、御本人さんが支援を拒否して介入できず、でも地域の人々が困ってしまっている状況があります、その辺はどういうふうに考えていけばいいか、教えていただきたいと思います。
○岡部構成員 こちらが教えてほしいぐらいですけれども、基本的には御本人さんに了解を得て情報交換をしますけれども、ただ、命にまつわること、緊急性が高いこと。これについては、こちらの判断で、法人の中で、私は責任者なので、病院のほうに情報提供してくださいというふうに職員さんに指示を出す場合もあります。そういったような、命や緊急度合いによって判断しているといったような状況です。その場合には了解を取らないこともあります。
○田辺座長 よろしいですか。
○辻本構成員 はい。
○田辺座長 恐らく緊急のときはそうなのだろうなと思いますけれども、このグレーゾーンといったようなものが、ある意味ではみんなが知りたいことかなと思ったのです。
○辻本構成員 その辺をどういうふうにネットワークをつくって対応していくのかなというふうに思うのです。
○岡部構成員 ごめんなさい。聞き漏らしたのですが、その辺というのは。
○田辺座長 いや、緊急のときはそうだと思うのです。本人の秘密というもので、それ以外で本人がどうもぐずって、やってほしいような、やってほしくないようなというような感じで、ただ、こっちの判断から見ると、これはつなげないとどうしようもないようなときです。
○岡部構成員 でも、そこは本人に了解を得ない限りはやはりやりにくいので、タイミングを待つということにしています。
○田辺座長 どうぞ。
○山口構成員 保健所長会から来ております山口です。どうもありがとうございます。
 今の個人情報保護の件ですが、措置の関係でも問題になっているのですけれども、児童の場合には平成28年に厚生労働省雇用均等・児童家庭局から児童虐待の防止等に係る児童等に関する資料又は情報の提供についてという通知がでていて、緊急時には個人情報をもらいやすいのですが、精神のほうでもそういうものを出してもらえないかというものを保健所長会のほうからも何年かにわたってお願いしているのですが、厚労省のほうとしてはやはり難しいのでしょうか。
○田辺座長 恐らく厚労省ではないところが難しくしているのかもしれませんけれども、いかがでございましょう。
○新平課長補佐 御質問ありがとうございます。
 今、個人情報保護法の関係についてすぐお答えできる状態ではないと思っていますので、また御意見を伺いながら進めさせていただければと思います。
○山口構成員 ご検討お願いします。
○田辺座長 ありがとうございます。
 ほかはいかがでございましょう。
 では、田村構成員、よろしくお願いします。
○田村構成員 岡部さん、ありがとうございました。私も岡部さんの事業所にはいろいろお世話になったので、そのときのことも思い出しながらお聞きしていました。
 さて、医療との連携の話は、この検討会の中心的な課題で、もちろん、皆さんやっていらっしゃると思うのですが、精神保健福祉士や、精神科病院で勤務したことがない相談支援専門員さんたちもいらっしゃって、精神医療とのハードルを感じられることもあるのではないでしょうか。ご発表では時間帯とか情報のやり取りの面でのハードルについて話されましたけれども、それ以外にも、例えば専門的な知識が足りないとか、なかなか精神医療のことは分からないから、そこまではやれないという職員の方たちに対しても、最後のスライドにあるように、連携ができるための教育や人材育成を職場内でもやられていたり、また、事例検討会ということで、地域の方ともやっていらっしゃるのだと思います。
 そこでお伺いしたいのは、職場ではこれをどのようにやられているのかということと、あと、事例検討会の仕組みづくりとして、ある病院でやるときには地域関係者と、当該病院の関係者の人しかいないのか、それとも複数の医療機関合同でやれるのかという点はいかがでしょうか。もし合同でしたら、どういう体制かを教えていただけますか。それが進むと、恐らく顔の見える関係がつくれることと同時に、お互いに何をやっているのかということが分かってきて、安心して連携できるようになっていくだろうと思うので、お聞きしたいと思います。
○岡部構成員 ありがとうございます。
 最後のほうから行きますと、医療機関に入らせてもらって、そこでやる事例検討は今、仕掛けているところで、今年度内にうまくできるのではないかぐらいの段階なのです。個別支援で行って病院さんと事例検討するというものはこれまでありましたけれども、後々は1か所の病院さんが了解してくれて、病院さんの中の調整は必要だと思いますが、ほかの病院さんからもどうぞと言ってくれるような体制を目指している。今は地域のほうに出てきてもらって、そこは複数の病院さんが出てくるので、まず、こういうやり方をやっているのだという安心感を得ていただいて、また、個人情報についてもこういうふうに大事にされているのだというようなことを理解いただかないとなかなか入れないと思うので、その基盤をここ3~4年かけてつくっているというような実情であります。
 もう一点、精神科病院の勤務の経験がない相談員さんたちは、非常に病院さんとの連携で迷われるといいますか、一歩、足が前に出ないといいますか、そういうところがありますので、精神科病院さんの中でどういうふうに職員さんが動いているかというイメージがつかないので、うまく連携が図れないというところがあるかと思っているので、そこは精神科病院勤務経験があるとか精神科病院経験の豊富な相談員がそのスタッフの現状を聞いて、こういうタイミングでこんなような伝え方をすると病院に御迷惑がかからないとか、そこの医療機関には○○相談員さんがいて、メールでつながるので、まず、先輩のほうからつないで下話をしようかとか、そういったようなOJTといいますか、補助といいますか、そういうことをしながら、経験が少ない相談員さんに慣れてもらうというようなことをしたり、2人で病院さんを訪問させてもらったりというような体制を組みながらなじんでいってもらうといったようなことが現状であります。
 以上で全部回答になっていますでしょうか。
○田村構成員 ありがとうございました。
○田辺座長 ほかはいかがでございましょう。あと2つ聞かないといけないのですが。
 どうぞ。
○花村構成員 すみません。日本公認心理師協会の花村でございます。大変分かりやすいお話をどうもありがとうございました。
 今のお話の中で、医療につなげるハードルというものが相談員の中でももしかしたらあるかもというお話が出ていました。公認心理師でもそういうことがあるかもしれません。例えばスクールカウンセラーで、医療で働いたことがない公認心理師や、学校の先生方が医療につなげることをすごく躊躇してしまい、子どもも、支援する側も苦しいままでいることがある。それをお互いに「つらいときはすぐに医療にかかってきていいのだから」という普段からの連携ができていればと思うのです。地域で医療と福祉にとどまらず、いろいろなところでお互い繋がっていく必要性を感じ、それを可能にするつながりを作っていかなければ、と思って聞かせていただきました。いろいろなところで同じような課題が潜んでいるなと今後もいろいろ勉強させていただければと思います。どうもありがとうございました。
○田辺座長 特によろしいですか。
○岡部構成員 では、一言だけ、すみません。
 僕も医療機関にいましたけれども、先生方とつながるのが非常に下手くそだった経験がありますけれども、ある日、うまくいくようになった経験を紹介しますと、これは厚労省さんともそうですし、県庁職員さんともそうでしたが、20代の頃、すごく緊張するのですよ。先生の前へ行くと、同じ病院の先生でもがたがたしてしまうような感じになって、でも、ある日、同じ人間だものと思ったら急に連携しやすくなって、こっち側の心持ちが大事なのではないかなというふうに思って、そういう気持ちが地域に広がると、対等な関係性の中で御本人支援を考えていくのではないか。
 余計な話でした。すみません。以上です。
○田辺座長 非常にすてきなヒントをありがとうございました。
 では、次に進んでよろしゅうございますでしょうか。
 それでは、田中参考人、次は辻本さんに回そうかと思っていたのですが、大丈夫ですか。
○田中参考人 どちらでも大丈夫です。
○田辺座長 では、辻本構成員、よろしくお願いいたします。
○辻本構成員 どうも。田中参考人の前ですみません。
 スライドはやってもらえるのでしたか。お願いできますか。
 今回、こんなに議論が白熱すると思わなかったので、私もこれだけ質問が出たらどうしようかと心配しながら…このような機会をいただけて本当にありがとうございます。
 では、スライドを見てもらって、今日、私は滋賀県立精神保健福祉センターと全国精神保健福祉センター長会の立場で話すのですが、精神医療センター:精神科の県立病院の立場と、総合病院でもリエゾンで勤務しているという立場―臨床精神科医の立場というものと、あとは県庁行政の中でも仕事しているというところでの立場、トータルで話していければと思います。
 では、スライドをお願いします。
 そういうところで「はじめに」というのはそのことを言いたかっただけで、次に、精神保健福祉センターと長会の話を進めていこうと思います。
 スライドをお願いします。
 皆さんも御存じだと思うのですが、精神保健福祉センターは、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第6条に規定されています。精神保健及び精神障害者の福祉に関する総合的技術センターとして、地域精神保健福祉活動推進の中核を担うという形になってます。「無料で精神保健医療福祉サービスを行う公的機関」―これは分かりやすく書いてあるわけで、医療のように診療契約や診療報酬によらないというところで、いわゆる税金で活動している保健所に近いような立場にあります。
 スライドをお願いします。
 いろいろな事業をしておりまして、企画立案とか技術支援とか人材育成、もろもろあるのですが(10)のところは手帳とか自立支援医療とか、いわゆる公的な書類を扱うような業務もしております。右に書いてあるように、精神保健福祉センターの職員構成は、医師、保健師、様々、その他の精神保健福祉センター業務を実施するのに必要な職員等は多職種で構成することと書いてはあります。ここはセンターの特徴になると思うのですが、機関自体が「にも包括」のプレーヤーで構成されているところで、それぞれの職能を生かしてやっていけば自然と「にも包括」の実践ができるだろうと考えています。
 次のスライドをお願いします。
 これはセンター長会のホームページです、いろいろな資料が載せてあるので、見てもらえればと思います。
 次のスライドをお願いできますでしょうか。
 これは精神保健福祉センター状況調査の結果です。実際、保険診療―お金を取って診療しているところも結構あります。これはデイケア機能を持っているセンターの活動に関連していると推察されます。デイケアの制度が始まってから、ずっと今まで保険診療としてもやっているところがあるので、そういうところは診療報酬をもらっているというのと、あと、各センターが理念に基づいて診療していると思われます。事情があって公的な機関でないと診療しづらい方とか、そういうケースに限って対応しているなど、オープンされていないところも結構あると思います。
 次に、その下の依存症相談拠点。これは後でお話ししますが、そういう事業も担っています。災害支援についてはDPAT統括をやっていたり、支援チームを持っているところもあるので、この辺も医療と連携しながら活動しています。精神科救急の話はまた後ほどいたします。
 スライドをお願いします。
 続きの状況調査の結果になります。他の機関の併設も、例えば滋賀では知的障害者更生相談所を直営しております。児相と組んでいるところもあったり、自治体ごとに様々です。そういった状況の中で、依存症相談拠点は全センターが持っていますし、ひきこもり地域支援センターや地域自殺対策推進センターも結構持っている。これは厚生労働省精神・障害保健課が関係しつつも、様々な国のほかの省庁に関わっている事業にしても、拠点とかセンターとか、そういう位置づけで活動している、そういう機関になります。
 次のスライドをお願いします。
 全国精神保健福祉センター長会では、今回関係する地域包括ケア委員会とか、その他、自殺対策、依存症対策、様々な委員会を作っています。現状の精神保健福祉の課題に関して対応できるように、いろいろな委員会をつくって、情報交換しながらとか、国に物を言っていくような、そういう活動をしています。
 次のスライドをお願いします。
 次に、今回関係する「にも包括」とか市区町村支援について、お話ししていこうと思います。
 次のスライドをお願いします。
 精神保健福祉法の改正で、「都道府県及び市町村が実施する精神保健に関する相談支援について、精神障害者のほか精神保健に課題を抱える者も対象にできるようにする」と明記されました。ここに出ておられる方、皆さん御存じだと思うのですが、国は精神障害者以外の人々にも広くいろいろサポートしていく方針を打ち出しました。先ほどの岡部構成員もそういうところを非常に工夫されているというふうに感じました。
 次のスライドを出してもらえますか。
 この上の3つのイメージ図も、ここに出ておられる方はみんな見ていらっしゃると思うのですが、厚労省には申し訳ないのですが、ごちゃごちゃしているところもあるので、その右下にセンター長会の中でまとめている図なのですが、これからお話しいただく田中参考人がお話しされるであろう精神医療のところと、今、岡部さんがお話しされた福祉をつなぐようなところ、「保健」「医療」「福祉」をつなぐ行政、これが一応、今のところは市町村とか保健所とかのトータルの支援になってくるのですが、そうした重層的支援の中に精神保健福祉センターがあります。行政機関として、マネジャーとしても活動しますし、プレーヤーとしても活動していくのが精神保健福祉センターだと思っております。精神医療と福祉は、基本的にはやはり民間機関の役割が大きくなります、現場ではそういった機関が支援の最前線になるので、さまざまな合間を行政としてしっかりサポートしていく、そういう存在として精神保健福祉センターがあると考えています。
 スライドをお願いします。
 これは市町村の精神保健相談に関する相談の対応状況で、これは下に書いてある調査研究、藤井先生が中心にしてまとめられたところから取ってきたのですが、その中で、右のほうを見てもらうと、半数の市町村が精神保健に関する相談に困難を抱えているということがわかります。
 次のスライドをお願いします。
 市町村は、受診拒否、大声とか、家族内暴力とか、ひきこもり、要するに、受診拒否とか、近隣への迷惑行為、ひきこもり、虐待、発達障害などの課題で対応に苦慮しているということが見て取れます。
 次のスライドへ行ってもらえますか。
 これは先ほど岡部構成員が出されたものと左右が逆になっていると思うのですが、もともとは埼玉県立精神保健福祉センターのほうからいただいていたものです。精神保健医療福祉の支援体制で、これも先ほど十分にお話しいただけたのですが、治療や支援につながりにくい人たち、Unmet mental health needsも含まれてくるわけです。さっき議題に出かけた、精神保健にも課題を抱える者で、潜在的要支援者が多数おられることになるのです。
 こういう方々にどういうアプローチをして、どういう機関が関わるかなのですが、先ほどのように、個人情報を超えて、本人さんの同意の上であればいいのですが、そうでない方がこの中にいっぱいおられる、むしろ、そういった人々のほうが多いと思うわけです。こういった人々が、精神医療に直結できる機会は今のところ、やはり措置入院とか医療観察法入院とかになってきます。強制的な介入より、より早期に、より多く、これらの人々に支援していくような仕組みが必要だと考えています。そのためには、医療と保健福祉の役割分担、仕組みと、あと、保障といいますか、そういうものをしていくことが大事になると思います。
 これは精神保健福祉センターの業務の優先度とその理由で、センター長会の中でいろいろ調べている資料の一つになります。依存症対策とかひきこもり対策、自殺対策が優先事業として取り上げられています、多くのセンター長は精神科医や臨床に近い人々になるので、こういう課題を何とかしていかないと考えていることがわかります。依存症、ひきこもり、自殺など、新しい地域保健福祉の課題の優先度が高いと思われます。
 次のスライドをお願いできますでしょうか。
 先ほど出てきた、対応困難を解決するために望まれる体制について、これも市区町村の精神保健福祉に関する調査で出てきているもので、およそ4割の市区町村が精神医療によるバックアップを期待していることがわかります。医療介入のありかたや本人が相談を希望していないときどうするのかー市区町村は、それぞれの立場にある人々のハザマで困っている実情が見てとれます。
 次のスライドを見せていただけますか。
 そのような市区町村が置かれている状況の中、精神医療の充実の内容として、精神科医による訪問、児童思春期精神科医療や精神科救急の充実に加えて、多様なニーズがいろいろ出ているというデータになります。
 次のスライドを見せていただけますか。
 精神保健福祉センターからの出された資料です。「精神保健福祉センターが精神障害にも対応した地域包括ケアシステム構築に貢献できること」で、多いのは研修・研究会になっていますが、処遇困難への技術支援(アウトリーチ等)を通じて包括的支援体制の構築―自分らがプレーヤーをやりながらマネジャーもしていくような活動が大事とされています。困難事例への技術支援における主な対象として、治療導入・継続困難事例へのアウトリーチ、依存症、ひきこもり、自殺ハイリスク者とか、いずれにしても医療受診が難しくて、精神保健医療課題を抱えた人たちへの支援が優先課題だというふうにセンターでも考えています。
 次のスライドをお願いします。
 具体的に、精神保健福祉センターではいろいろな事業をやっており、その中で今回のテーマに合った実践例を幾つかお話しさせていただきます。
 次のスライドをお願いします。
 これはアウトリーチ支援の一つのモデルー東京都のアウトリーチ支援事業です。精神保健福祉センターにおいて、保健所等からの支援依頼により、医師、看護師、福祉職等の専門チームが、保健所等と連携して訪問型支援を行い、精神障害者の地域生活の安定を目指すとともに、地域関係機関の人材育成を推進するためのアウトリーチ事業です。対象者は、精神障害者またはその疑いがあって、未治療・医療中断等のために地域社会での生活に困難を来しており、通常の受診勧奨や福祉サービス等の利用の勧めに応じない方になっており、全員とは言いませんが、モデル事業として実施されています。
 次のスライドを見せていただけますか。
 もう一つのアウトリーチ支援で、これは滋賀県大津市で実施されており、認知症の初期介入チームの精神科版をイメージした事業です。支援対象者は医療機関や地域の関係機関から相談があった、精神障害が疑われる未治療者あるいは治療中断者、精神科病院への頻回入院者等であって、ここのポイントは医療に結びつけようとするのではなくて、目的は「支援対象者の日常生活の困りごとに積極的に関わる」寄り添い支援を目指しているところです。だから、医療モデルではなく、お金に困っていたらお金をどうするのがいいのかー生活困窮者支援に結びつけたりします。家族が困っている、例えば対象者と同居しているおばあちゃんやおじいちゃんの介護を通じて、一課題ずつ支援に入っていくとか、とにかく医療受診よりも日常生活困難を何とかしていくうちに関係を取って、必要に応じて医療にもかかってもらうスタンスです。必要に応じてチームに精神科医も入ってもらって、場合によっては訪問し、「受診したらどうか」というような促しをしていくような事業を大津市さんとセンターが組んでやっています。
 次のスライドを見せていただけますでしょうか。
 病院から地域へのリソース移行ということで、これは以前、一時期、厚労省が盛んに出しておられたスライドなのですが、欧米のように、精神科病院の役割と地域支援を再分配するような方針が必要ではないかと思います。指定医というものも、精神保健指定医だけではなくて、福祉の感覚を持ちながら地域で診ていくような精神科医―精神保健福祉指定医を育てる必要があると思います。
 次のスライドをお願いします。
 これは依存症対策で、その真ん中辺りに書いてある相談体制、依存症の相談拠点の中に(精神保健福祉センター等)と書かれています。
 スライドをお願いします。
 右の図を見てもらうと、COVID-19以降、薬物相談は減少傾向で、ギャンブルの増加が著しいです。カジノの問題がマスコミで注目され、様々なオンライン投票が始まっているので、そのための相談が非常に増えている。本人さんが相談の場に登場せず家族等が登場する場合が多く、支援者や当事者周囲に困っている人が多くいるので、SAT-GというSMARPPを参考にした、ギャンブル障害に特化した認知行動療法プログラムというものがあります。センター長会を挙げて、全国でこのSAT-G研修をして、家族もそうですし、支援者、生活保護担当者、相談支援事業所スタッフ等に対し、このようなツールを使って支援を広く広げていくというような事業もしています。
 スライドをお願いします。
 これも滋賀県の取組になります。ギャンブル依存症に対して、前々回の検討会でも話題に出たオンライン相談―医療受診前に地域の中でオンラインを活用した専門医相談を実施しています。治療拠点機関である精神医療センターの依存症外来担当医と精神保健福祉センターの依存症対策事業担当、あとは保健所と連携して、保健師、精神保健福祉士、心理士等が、保健所に来所した当事者・家族、あるいは家族だけでも、精神科医がオンライン画面を通して相談を受け、「うちの病院に来ないか」というような語り掛けで治療導入を始めるわけです。当事者本人を、いきなり精神科に連れていくというのはハードルが高いし、言葉が悪いですけれども、当事者は「いきなり入院させられたらどうしようか」みたいなことを想像することもあるので、保健所で話を聞いて、この先生が診てくださるのだったら大丈夫だろうという安心感を持って医療につながっていく、そういう事業を滋賀県では実施しています。
 スライドをお願いします。
 ひきこもり支援になります。ひきこもり支援は、右のほうの括弧内に「ひきこもり支援において医療機関との連携を進めて行く上で、それぞれの専門性に則した役割分担を考えることが有意義です」と書かれている通りです。医療の役割は、ひきこもりを背景に精神疾患があって、治療をしないといかぬという状況にあったら専門的な医者の見立てが必要になります。あるいは発達障害とか、統合失調症、うつ病等々で診断がついたほうが本人さんに有益だとなるのであれば医療に結びつけばいいと思います。そういう状況がはっきりしない時期には、本人や家族に寄り添って、全然出られない人でも信頼関係を持って、少しずつでも人間関係をつくっていくーこのような関わりは医療従事者より保健福祉の人々のほうが得意だと思います。そういうところを相談機関の役割として、いろいろ同意に基づいた支援を時間をかけて実践していことが、ひきこもりに対して大事になってくるのではないかなと思います。
 スライドをお願いします。
 先ほど神庭構成員がおっしゃったように、ひきこもりに関してもワンストップ窓口があるのが望ましいのですが、ワンストップといって、一か所で何でもすべて対応するのはなかなか難しいのです。いろいろな要件、例えば、今、問題になっている8050問題です。80歳代の高齢者と50歳代のひきこもりが同居しているというときは、高齢者支援もしながらひきこもり対応もしなければいかぬというようなところがあり、やはり地域のネットワークをつくって、情報交換しながら高齢者である家族への介入から始める、県とか保健所とか精神保健福祉センター:ひきこもり支援センター(ここも精神保健福祉センターが多く担っている)、そういうところがバックアップとして入っていくということが必要になります。
 次のスライドをお願いできますか。
 自殺対策になります。この中の第4「自殺総合対策における当面の重点施策」に「6.適切な精神保健医療福祉サービスを受けられるようにする」と書かれています。
 スライドをお願いします。
 地域自殺対策推進センターで、これも精神保健福祉センターが直営でしている自治体が多いわけで、管内におけるエリアマネジャーとして、各自治体の地域自殺対策計画の策定・進捗状況の管理、検証等を行っています。また、自殺は、健康問題、経済・生活問題、人間関係の問題のほか、地域・職場の在り方等々、複雑に絡み合っておこってきます。ある意味「にも包括」と同じ発想でやっていかなければいかぬというところは精神保健福祉センターが得意にしているところであるので、自殺対策に「にも包括」を活用していこうと考えています。
 次のスライドをお願いします。
 自殺対策の一つとして自殺未遂者対策というものもあります。これも滋賀県事業で申し訳ないのですが、左の図を見てもらいたいです。まず、自殺未遂者が救急告示病院に搬送されますー大量服薬やリストカットをされ、救急告示病院で初期対応を受けるのですが、その後ですぐに退院してしまったら、支援がなかなか続かないことになります。さっき問題になっていた個人情報の話になるのですが、御本人もしくは家族から同意をいただけると、その情報は、病院から市町村なり保健所に流れます。大量服薬やリストカットでは、その日中に退院してしまう場合もあるので、同意をもらった方に関しては、その情報を行政等の関係機関のネットワークー前回の検討会でプレゼンされた上ノ山参考人のクリニックも入っておられるーが連携協力して支援していく仕組みを持っています。
 右の図は、救急病院が書く書類になります。精神科の専門性をもっていない救急告示病院スタッフでも分かる言葉で記入し、保健所や市町のネットワーク窓口にファクスするわけです。次の日にファックスを見た支援機関は、すぐに当事者とか家族に連絡してサポートを始めるーそういった事業を実践しています。
 次のスライドを見せてもらえますか。
 時間が延びてきたので巻いていきますが、精神科救急に関してです。精神科救急の「にも包括」の在り方の検討会に、私は委員として入っておりました。このときに重要とされていたのが、支援者どうしの平素の関係性をちゃんと作っておくことでした。日頃から「にも包括」を地域でちゃんと作っておけば、精神科救急でも対応できるということが議論されました。
 次のスライドを見せていただけますか。
 これも滋賀県の話で恐縮なのですが、滋賀県は精神科救急医療システムを持っています。、夜間・休日、警察が関与する措置入院通報とか、消防が関与するような事案があれば、精神保健福祉センターが直営する救急情報センターが、一元化して対応する相談窓口になっています。措置入院対応を中心に、地域内の当番病院・かかりつけ病院が最前線の受け皿となり、最終的なバックアップは精神医療センターが引き受け、24時間365日、措置通報対応レベルの患者さんを受けるような仕組みをつくっています。平日昼間の措置対応は保健所中心に実働しています。
 次のスライドをお願いします。
 これは後々、田中先生が次のところで話されると思うので、措置対応されるような精神科の患者さんもいろいろ工夫しながらやっているというところです。
 次のスライドをお願いします。
 あと、最後になってきます。
 次のスライドをお願いします。
 精神保健福祉センターの業務について、いろいろお伝えしてきました。が、実は精神保健福祉センターは人員体制において非常に苦しい状況にあります。特に地方都市は非常にスタッフ数が少ない。常勤の精神科以外の所長が勤めるセンターも30%あります。常勤専属の精神科医不在のセンターも幾つもあいます、私も兼任です。大変困るのは、精神科医が全く不在の精神保健福祉センターもあります。精神障害者手帳や自立支援医療などの法定業務、精神医療審査会事務局など、行政的な業務をこなすことで手いっぱいという自治体もあって、今回私がお話しした事業を、全てのセンターが実践できているわけではありません。精神保健福祉センター運営要領に抱えている業務を自治体の実情に応じて工夫しながら実践しているので、自治体によってそこそこ違いはあります。さらに精神科医勤務者が精神保健福祉センターで減っているという困り感を知っていただきたい、切実です。このままでは、皆様が期待する精神保健福祉センターの役割を果たせなくなります。
 まとめになります。次のスライドをお願いします。
 精神保健に関する課題を抱える者は、支援ニーズを満たしておらず(Unmet mental health needs)、精神医療を含む医療提供体系からこぼれ落ちて潜在化しています。メンタルヘルスの精神保健福祉ニーズが満たされない人々の課題は複雑困難化し、裾野が広く多分野にわたる多様な支援が必要になります。
 精神保健福祉センターは自治体の精神保健福祉の専門機関として、精神科医を含む多職種を擁しています。臨床的視点と公衆衛生的視点の双方の役割・機能を持ち「にも包括」等を活用して精神医療提供体制の整備に貢献しています。
 精神保健福祉センターによる医療体制提供として、①重層的な多機関協働ネットワークを持つ市区町村・保健所等の活用。これは技術的とか人的支援的にバックアップ、 ②医療アクセスの紹介や診療導入を含めた精神科医療機関との協力・連携、 ③精神保健に関する課題を抱える者(治療契約困難者、依存症、ひきこもり、自殺ハイリスク者、精神科救急受援者等)への直接支援や様々な専門プログラムの実施などがあります。
 精神保健福祉センターの在り方は自治体ごとに様々です。人員体制も不十分で、期待される責務が今後ますます増大すると思われる中、地域の特性に応じての多様性と均てん化が求められています。求められる機能と役割を果たすために、必要な人員と予算が求められます。
 発表は以上です。どうもありがとうございました。
○田辺座長 辻本構成員、御報告ありがとうございました。
 では、ただいまのヒアリングに関しまして、御質問等ございましたら、よろしくお願いいたします。
 柑本構成員、よろしくお願いします。
○柑本構成員 詳しい御説明、本当にどうもありがとうございました。
 辻本構成員が最初のほうで、対応困難な事例として、医療観察のケースですとか、犯罪を行った精神障害者の方々について言及されておりました。現在、刑事施設から釈放された人たちに対して精神保健福祉法で対応する場合には第26条により、それでできない部分については厚生労働省の事業である特別調整の制度が用いられたり、さらに、それも難しい場合には独自調整として、刑務所が頑張っていろいろ調整をされているわけです。そういう人たちは、まさに辻本構成員がおっしゃっていた精神保健に関する課題を抱える者であり、支援ニーズが満たされていない人で、しかも、精神科医療が必要な人々になると思うのですが、そういった人たちに対して精神保健福祉センターとしてどういったことをやったらいいのか、あるいはやれるのかということを辻本構成員がどのように考えておられるのか、御意見を伺えればと思います。
 どうぞよろしくお願いいたします。
○辻本構成員 滋賀県の精神医療センターには医療観察病棟があり、私はその開設準備に関わらせていただきました。精神障害の患者さんに対しては、触法であってもなかっても、患者さん自体は同じ課題を持っていらっしゃるので、手厚く支援していくというスタンスは一緒です、ただ、医療観察法が適用されると、地域における相談機関へのお金のかけが大きくはなります。あと、現行のこの法律では、入院処遇に比べて地域処遇の支援のノウハウや手厚さ、人的・財政的配分が圧倒的に少ない状況にあります。厚労省にお願いしたいのですが、医療観察法の見直し、特に地域支援のあり方に関して検討いただきたいです。
 精神障害の患者さんに対しては、触法であってもなかっても、患者さん自体は同じ課題を持っておられ、支援の基本は寄り添って困り事にサポートしていくということなります。その一部を医療がやる、ほかのところは保健福祉を中心に様々な支援機関がやるところも一緒だと思っています。だから、精神保健福祉センターも情報が流れてきたら、このような考えのもと、役割を果たしています。
 漠然として申し訳ないです。
○柑本構成員 ありがとうございます。
○田辺座長 柑本構成員、よろしゅうございますか。
○柑本構成員 はい。
○田辺座長 ほかはいかがでございましょう。
 では、柄澤構成員、よろしくお願いします。
○柄澤構成員 北海道北広島市の柄澤でございます。全国精神保健福祉相談員会の理事をしております。辻本先生、御発表ありがとうございます。
 基礎自治体である一般市町村の立場からですけれども、市町村から都道府県に期待することとして、やはり人材育成という部分を期待しております。それは市町村への支援者支援という部分での期待と、それから、困難ケースについては、できればアセスメントの段階から一緒にお願いしたいという個別支援の部分と、両方あります。市町村の人材育成を担うのが、精神保健福祉センターなのか、保健所なのか、それぞれの地域の実情に応じて違うかと思います。北海道の実情で言うと、一番顔の見える関係性をつくることが難しいのが精神保健センターかなというぐらい、精神保健センターの存在が遠いような状況にあります。
 滋賀県のほうで、市町村のバックアップといいますか、人材育成の部分でおそらくいろいろ工夫されているかと思いますので、具体的にどのような方法で市町村のバックアップをされているのか、お話をお聞きできたらと思います。
○辻本構成員 北海道は大きいからだと思います、北海道のセンターは頑張って活動されておられます。
 滋賀県ぐらいの自治体規模が一番バランスいいかなと思っています。精神保健福祉センターの業務は基本的には保健所を通して、あるいは協力して実践しているのですが、例えばひきこもりとかは、見ているケースはみんな一緒だと思うのです、ファーストコンタクトが市町村か精神保健福祉センターの違いかと。行政的な立場から言うと、春先といいますか、今、この時期、相談を受ける新規の方々をケース検討をしながら市町村・精神保健福祉センターがともに支援していくとか、新採研修を合同で行うなどの工夫はしております。様々なチャンネルで精神保健福祉の基礎のサポートや支援者支援等を行っています。
 それと、これは藤井先生のほうがお得意になってくるかと思うのでが、市区町村にも精神保健を担える事務職を育成するための研修会事業というものが始まっています。今すでに研修メニュー・プログラムも大体できているので、それを順繰りに活用していかれるとよいのでは…オンラインでも学習もできるようになっているので、やる気のある市区町村であればどんどん学んでいけるかなと思います。
 あとは、ひきこもり支援とか自殺対策とかは市町村が中心にやらなければいけなくなっています。それらの事業には「にも包括」の形で入っていけます。形づくられた研修というものは春先に、学校さんとかのニーズが出てきたら、その都度に研修会を開く。あとはケースを通じながら学んでいってもらうのが現実的ではないかと思っています。
 そんなところでよろしいでしょうか。
○田辺座長 よろしゅうございますか。
 何かございますか。
 藤井先生、どうぞ。
○藤井構成員 御発表ありがとうございます。国立精神・神経医療研究センターの藤井です。
 人員体制のところをお伺いできればと思うのですけれども、結構、人員体制の現状を見せていただいて、かなり、特には精神科医の確保が非常に難しい現状が目の当たりにして衝撃を受けているのですけれども、昨年度から全面施行になった精神保健福祉法で、市町村の役割、精神保健福祉士の相談支援の役割も拡大しているところで、精神保健福祉センターはそのバックアップの役割も担っておられるというお話もありました。そうすると、必然的にセンターの役割が大きくなっていると思うのですが、それに応じて人員体制というものは多少なりとも増えていたりとか、予算要求するに当たって法改正されたということが何かしらの人員確保の理由づけとして十分だったのかどうかという辺りのことをお伺いします。
 それと一つは、精神科医がかなり不足しているというところで、確かに若い精神科医の先生たちとお話ししても、精神保健福祉センターの存在自体を知らない精神科医も結構いる現状がふだん感じているところでして、精神科医に精神保健福祉センターの業務だったりとか存在意義だったりとか、そういうことを周知する必要があるのかなと思っていまして、医療機関では学べないような、でも、精神保健医療の実践にはかなり重要な考え方とかスキルとかをまとめるところだと思いますので、そのような精神科医にきちんと意識づけをする何かいい方法は先生の中でお考えがあればお伺いできればと思ったのですが、その2点をお願いします。
○辻本構成員 ありがとうございます。今日、このようなプレゼンの場で精神保健福祉センターの宣伝をさせていただけて、とてもうれしいです。そもそも我々の情報発信が少ないというのがよくないとは思うのですが、やはり自治体の文化があって、一度、事務職員で代替できると思われてしまったら、今後は医者を頼まないようになってしまいます。大学からの派遣でーとなると、どうしても精神保健福祉センターは背広・ネクタイといった行政特化の仕事と思われがちで、私みたいに普通の精神科の臨床をしながらも十分できるとは認識されてません。精神科臨床をやりながら自治体の施策にも関わっていけるというのは非常に実践的で有意義な仕事だという、そういったところが見えてこないという残念さがあります。
 自治体によっては臨床がなかなかできないという精神保健福祉センターもあるので、昔ながらにやっていないからダメ的な慣習もあったりするので、もっと柔軟に、地域のニーズに応じて医療と結びつくようなコアになるところが精神保健福祉センターだということを厚労省さんのほうも応援して啓発いただけると非常にありがたいです。我々は我々自身で、例えば指定医の研修のときには精神保健福祉センター枠、「にも包括」を伝えるという枠を取って、毎回統一した内容を伝えるようにして名前を売るようにしてはいます。事務職のセンター長も精神保健福祉センターをしっかりまとめられておられます。スタッフに精神科医不在で業務遂行に苦戦されているように感じます。多くの熱意あるセンター長は臨床と行政の仕事をうまく両立されておられます、そういった姿勢をちゃんと自治体として評価していっていただきたいなというふうに思います。
 全然、説明になっていなくて申し訳ないです。ありがとうございます。
○田辺座長 ほかはいかがでございましょう。
 では、上田構成員、お願いいたします。
○上田構成員 日本精神神経科診療所協会の上田でございます。今日は本当に分かりやすいお話をありがとうございました。
 その中でも、分からなかったことをお聞きしたいのですけれども、前回も上ノ山先生もお話しされた自殺未遂者対策のところで、この絵を見て私が分からなかったといいますか、知りたいところがありまして、この同意がありと同意がなしの場合の対象者の方の連絡ですが、同意がある方とない方の割合はどのようなものなのかということと、これを見ると、同意がなしの人もファクスを送信するみたいな形になっていて、この違いがよく分からなかったので、申し訳ないですが、教えていただけるでしょうか。
○辻本構成員 大量服薬などによる自殺未遂者の多くー約半数は精神科医療機関にかかっておられます、通院中の精神科医療機関に連絡して引き継ぐ場合もあります。救急告示病院が、包括的な支援が必要で、支援同意を取りたいという方に関しては、7割ぐらいは同意が取れるようになっています。未遂を繰り返す人もいるわけで、繰り返すうちに同意がとれるという場合もあります。本人が同意を嫌がっても、家族が同意してくださったら家族支援というところで関係作りが始まる場合もあります。家族支援を続けていくうちに自殺未遂者本人も登場してくるということがあります。
 これはさっきの個人情報等の話題に関係するのですが、同意がないのにーというものは、自殺未遂者のデータとして、ちゃんと行政として知っておきたいというものがあるわけで、行政データとして資料化しています。支援できなくても、こういう自殺未遂者が具体的にあったという統計資料のために情報としてもらっているという形です。
○上田構成員 分かりました。ありがとうございます。
○田辺座長 ほかはいかがでございましょう。
 では、長瀬構成員、よろしくお願いします。
○長瀬構成員 辻本先生、非常にためになるお話をありがとうございました。
 さっき藤井先生がおっしゃったことと僕は少し違う印象で、精神科医の数が少ないのに衝撃を受けたというふうにおっしゃられて、僕はあまり衝撃を受けていなくて、先生のまとめを僕は見ていたのだけれども、臨床的視点と公衆衛生的視点の相互の役割と機能を持ちと書いてくださって、すごくすばらしいなと思っていたのですけれども、こういうふうに持っている精神科医はそこまで多くいないような気がするのです。これを求めてしまうと、これはなかなか難しいかなというところが恐らくあるのです。
 もちろん、どちらも大事だと思いますので、これは先生が非常に困っておられることでしょうし、僕も精神科病院で若い医者、若い医者だけではないのですけれども、いろいろなお医者さんを指導する立場にあるので、こういった視点を持って、教育も含めたところで、先生が苦労されている人員だとか、そういったところにも少し頭に置きながら地域を支えないといけないかなというふうに思いました。
 以上です。
○辻本構成員 ありがとうございます。
 いいですか。
○田辺座長 どうぞ。
○辻本構成員 専門医・指定医になるための研修ローテの中にも精神保健福祉センターを入れるという取り組みが始まっています。公衆衛生的な視点―私は基本的には普通の精神科医なのですが、行政に入った当初、行政的・公衆衛生的視点といったものが全然分かりませんでした。いまだに分からないところもたくさんあるのですが、医療以外でも関係する機関や人はたくさんいる、ここに振ればいい・連携すればいいとか、医療だけで抱えなくて済むという発想ができていくのです。たとえば寄り添い支援に関して、医療場面で20分ぐらいの診療しかできなかったら、保健所や市町、相談機関と連携して、地域でも寄り添って欲しいと伝えたら、随分、抱え込みが減って楽になるのです。私はときどきこんなに立場・肩書を持ったら大変でしょうと言われるのですが、逆に楽になるために多分野に首を突っ込んでいるのです。いろいろなことをオーバーラップしてやれるのは、この行政に入って施策にも関係しているからこそできるという発想です。臨床の精神科医も、まずは審査会でもいいので、こういう行政で楽するということを知ってもらうとありがたいと思います。
 ありがとうございます。
○長瀬構成員 分かりました。頑張ります。
○田辺座長 ほかはいかがでございましょう。
 では、岩上構成員、お願いいたします。
○岩上構成員 辻本構成員、どうもありがとうございました。
 先生がお示しになっていますように、従業員数が20人以下の精神保健福祉センターが過半数以上だと思うのです。なおかつこれだけの業務を期待されていて、特に私はここの1番に掲げている企画立案で、きちんと県が政策をつくっていく上でのシンクタンクになるべきだとずっと言ってきているので、そういったことも求められる。非常に期待されている機関であるにもかかわらずとても大変な状況のまま続いている。以前は置かなければいけないという規定ではなく、つくることができるという規定で、それで御発表いただいた辻本構成員の滋賀県の精神保健福祉センターも、都道府県のセンターの中では多分、最後のほうにつくられたという記憶があるのですが、それから随分たちましたけれども、だとすると、やはりそれは辻本構成員がおっしゃっていたように、国として位置づけをもう少ししっかりつくっていくというのは必要だという認識でいます。
 もう一つは、そうはいっても、センター自身が都道府県の中で非常に弱い立場にあるといいますか、センター長の位置づけも相当違うのですよ。そういう状況の中で同じ機能を国からは求められているということに限界があって、だとすると、そこはやはり先ほど申し上げたように、国としてのどう応援をしていくのかというものを考えていただきたいと思っています。
 一方で、お示しいただいた内容は、先ほどの岡部さんではないですけれども、やはり特筆すべきは、辻本構成員がやってきたセンターだからというところがあって、都道府県全体を見ると、御苦労されている中で、ここまではなかなかできていないとなったときに、センター自身が都道府県やいろいろな機関、医療機関からも含めて、どう見られているのか、どういうことを期待されているけれども、できていないのかということはもう少し出していただいたほうが、どうしてもセンター長の色に、色と言ってもなんですけれども、人数が少ないので、センター長が示した方向のことは中心にはできるけれども、今回お示しいただいた全体的なことまではできていないセンターが人員配置からして非常に多いとすると、それは都道府県の中できちんと応援するというのも非常に難しくなっているというギャップがあるのではないかと思うのです。
 そうだとすると、センターとして、これだけをやりたいのだけれども、都道府県の様々な機関からどういうことを期待されているかというものをもう少しつまびらかにしていただけると、国としての応援の仕方をまた考えていただけるのではないかという感想を持ちました。
○辻本構成員 ありがとうございます。
 最後に書いてある「地域の特性に応じての多様性と均てん化」というものはまさにおっしゃるとおりのことを感じています。滋賀県がすばらしいとは全然思っていなくて、各委員会の長になっておられる所長の精神保健福祉センター依存症を非常にやっていらっしゃるところもあれば、アウトリーチをやっていらっしゃるところもあれば、それぞれのやはり特性とか、それはニーズがあるからそういうテーマの対策を実践されていると思うのです。だから、ある意味、地域に応じて何をやらなければいかぬかを意識しながら作戦を立てておられる、かつ重要な情報交換はちゃんと全国センター長会の中でしております。センター長会全員参加のメーリングリストを活用して、必ず会員全員で情報を共有するように、あるいは委員会活動を共有して、みんなが同じ方向に進んでいく意識を持つようには心がけているというところで…あとは厚労省さんに応援いただけるとありがたいと思っています。○田辺座長 それでは、北村構成員、よろしくお願いいたします。
○北村構成員 石川県立こころの病院の北村です。今までもいろいろなお話が出ているので、簡単にしたいとは思います。
 まずは、やはりアンメットニーズかグレーゾーンかよく分かりませんが、非常に保健分野の需要が増えていますので、精神保健福祉センターが市町村とか保健所を指導する役割みたいなものは増えていると思います。今、地域医療構想で一般医療の場合は入院、外来、在宅、介護など分けて考えようとしていますが、精神の場合は保健の分野が広いので、精神の地域医療構想を考えるときには入院、外来、精神保健というふうな、一般医療とは別の柱といいますか、そういうところを考えたらいいと思います。
 そうしますと、精神科病院の医師が精保センターの活動を手助けするとか、現状では療養病棟とか急性期病棟でも医師の配置基準の縛りがきつ過ぎて、病棟外で働けないのですけれども、そういうものが一つの考え方かなと思います。
 それから、もう一つは、今、最近、逆境的小児期体験、アルコール依存症などはほとんどの人が子供のときに不幸な体験を負っているとか、それから、愛着障害の子が成長すると第4の発達障害になるみたいな考え方もありまして、要するに今、困った人がいっぱい増えているから何とかしようという先に、もっと予防といいますか、その辺りの活動を精神保健福祉センターはすべきだろうと思いますけれども、現状、人手不足は分かりますが、ぜひ精神疾患の予防という観点、特に子供のほうの対応ということは今後考えていくべきではないかと思います。
 そうした中で、石川県でもそうですけれども、精神科の病院があるからそれでいいだろうみたいに県庁も思っているので、病院よりかは精保センターのほうがずっと重要な時代になりつつあると思うのですけれども、そういうことは一般の国民も全然分かっていませんから、今年は無理でしょうが、来年の「骨太の方針」ぐらいにメンタルヘルスは日本の国民の課題であるということで、もっとメンタルヘルス対策に国中を挙げて何とかしましょうというものを誰か偉い人に言っていただけるといいかなと思うのですが、そのぐらい、世の中の精神科病院で扱わなくてもいいのだけれども、地域では困っているだろうという人がいっぱいいますから、そういうところを解決しないとこの国は成り立たないのではないかと思っております。
 以上です。
○田辺座長 ありがとうございました。
 何か。
○辻本構成員 エールとして受け取らせていただきます。ありがとうございます。
 そういうものと、1つ思うのは、そこは精神科を特化していくのがいいのか、一般身体科の中に入っていくのがいいか、その辺のバランスというものは大切だと思います。
 にも包括と医療体制の整備は、精神保健福祉センターだけでは無理で、ちゃんと人に寄り添って、重層的支援といいますか、伴走的支援といいますか、それはだれでもどの機関でもやっていかなければいかぬと思います。孤独・孤立にならないような仕組みを、ぜひ。医療もやるし保健福祉もやっていってというものがメンタル対策の基本で、ネットワークの中で孤独・孤立をなくして寄り添っていければというふうに思っています。精神保健福祉センターができることはまだまだ少ないのですが、よろしくお願いいたします。
○田辺座長 ありがとうございました。ほかはいかがでございましょう。
 では、花村構成員、よろしくお願いします。
○花村構成員 辻本先生、どうもありがとうございました。日本公認心理師協会の花村でございます。
 今のお話を伺っていて、感想でしかないのですけれども、先ほどセンターが児童相談所とか発達障害者支援センターとかと合併してやっておられるところもあるというお話がありまして、それは大変ではありますが有益であるとも感じ、公的機関が一緒にあるメリットを活かせないかと思いました。医療の手前、または医療では扱いにくい問題を相談していく相談機関としての機能と、精神保健福祉センターの機能が一緒にあることのメリットは大きいと思うのです。先ほどの北村先生の御意見を伺って、予防や,医療に届かない方など、医療だけで抱え切れない問題というものが多数あり、これが現在の日本国民全体の問題なのだろうなと思います。それこそ子供のメンタルヘルスの問題だったらば、こども家庭庁や、文部科学省も含めた、省庁横断的な議論が展開されないといけないのだろうなと感じます。この会議の場にそちらの省庁の方も来ていただいて一緒にお話ししていただくような機会があったりしても良いのではと感じました。
 あとは、今、学習指導要領の改訂の議論が進んでいるので、今からでは遅いかもしれないのですが、メンタルヘルスの知識や予防教育みたいなところが現在すでに入ってはいるのだけれども、断片的でしかなく、量も不足していると思います。精神障害に対する偏見を生まないための教育として、そして、自分の心と体を守る教育というものも含めて、日本国民全体のメンタルヘルスを支えていけるようになると良いなと思いました。
 そして、精神保健福祉センターが地域の中にあることで住民がみんな安心できるということが、もっと国民の理解として広がってほしいと思います。学校の先生が子供のメンタルヘルスで頼るべきところが分からなかったら、精神保健福祉センターに行くと、適切な機関を教えてくださる、というように、いろいろな地域、機関をつなぐ役割として、期待してしまい過ぎるといけないとは思っていても、繋がりを作る行政、公的機関としての役割はものすごく重要だなと改めて思いました。どうしていけるとよりよい地域での支援ネットワークが作れるのか、理想論かもしれませんがこの会議の中で皆さんと考えていきたいと思いました。公認心理師も多機関に勤務しているのでそのメリットを活かせればと思います。大変興味深く聞かせていただきました。
 ありがとうございました。
○辻本構成員 これも厚労省さんには言いづらいところなのですけれども、こども家庭庁さんができたがゆえに余計やりにくくなったところも多分にありまし…例えばひきこもり対策にしても、先ほど北村先生がおっしゃったような初期対応のところの辺りはやはり教育委員会とか、滋賀県ではそういうものはネットワークをつくってやっているのですけれども、部署が変わって、また人が替わったら、全然、横の連携も崩れてしまうし。ひきこもり対策や自殺対策、どこが中心になるのかー予算が別々に出ていたりとかするので、やはり厚労省の中でも横の連携をうまくとっていただければと思いました。
○田辺座長 ありがとうございます。
 次へ行きたいと思います。大変お待たせいたしました。田中参考人、御報告のほうをよろしくお願いいたします。
○田中参考人 皆さん、こんにちは。九州医療センター精神神経科/合併精神センターの医師の田中と申します。本日は参考人という形でお話をさせていただく機会を設けていただきありがとうございます。
 簡単に、自己紹介をさせていただきます。私自身、もともと心理の畑におりまして、心理で修士課程を出た後に、学士編入で医学部に行って医者になったという経緯があります。医者になった後、大学病院であったり県立の精神医療センターであったりで勤務した後に、厚労省の精神・障害保健課で2年ほど勤務させていただいて、その後、現職におるという形になっております。
 先ほど精神科と公衆衛生のマインドをというような話もありましたが、私自身もどちらかというと精神科の中にいるという自覚はある中で、一方で行政も経験させていただいたというような御縁もありますので、公衆衛生の部分に関しても興味・関心はあると思っております。
 今回、このような4本立てをさせていただこうと思っています。この右下に書いておりますように、本日取り扱う内容に関しては総合病院で勤務する一精神科医としてという立場でお話をさせていただこうというふうに思いますので、所属組織を代表するものでもありませんし、また、厚労省をはじめ、ここにいらっしゃる先生方、関係者の皆様に忖度しながら話すということはしないと決めておりますので、どうぞ御了承ください。
 まず、総合病院精神科が担う役割ということに関して、お話をさせていただこうと思います。
 この際に、私自身がよく思うのが、総合病院での精神科と、あとは公的な精神科が担う役割は混同して話をされてしまって、なかなか議論が拡散してしまうというようなことを行政にいたときも感じておりましたし、現在、総合病院の精神科医として勤務している中でいろいろな議論を見ていく中でもそのようなことを感じますので、今回、この観点でまず、お話をさせていただきます。
 まず、総合病院精神科が何をしているのかという観点に関してお示ししたいのですが、総合病院精神科の機能としてというところで、左側にお示ししているものが、これはどちらかというと、精神科の機能としてという観点で捉えていただいたらよいかと思うのですが、外来・在宅、入院医療というふうに多岐にわたると思っております。その中で、総合病院がとなってくると、やはり身体合併症の文脈であったり、また、一般病床におけるコンサルテーション・リエゾンの観点であったりというようなところが出てまいります。
 それで、この右側にお示ししておりますのは、特に総合病院精神科で取り扱わなければならないだろうというふうな観点で挙げたものにはなっております。この下のところのポツでお示ししているものとしては、医療計画に関わるような部分もありますし、また、後述しますが、倫理であったり医療安全であったりにも総合病院精神科が関わっているというのが現実、実際です。
 ここからお示しする中では、有床の総合病院というふうにお話をしていくのですが、やはり有床の総合病院よりも無床の総合病院、病床がないけれども、外来もしくはリエゾン・コンサルテーション機能を持っている病院が多いというのが現実としてあります。ただ、今回、そこに関してお話をすると多分、倍以上のお時間を頂戴することになるので、今回は有床の総合病院に限らせていただきます。また、無床の総合病院の機能という観点に関しては、ぜひまた御検討いただけるとよいかと思います。
 こちらのスライドは、有床の総合病院精神科と公的病院精神科の役割という観点でイメージ図としてお示しするものです。クリアカットにできるものではなく、どこが重複しているかとか、どこが分けられるかというものはなかなか難しいので、それがゆえに混同として語られて、なかなか議論が追いつかない、または拡散するという部分もあると個人的には感じております。
 この中で全てを網羅しているとは到底思っておりませんで、例えば公的病院精神科の役割として、生活保護の受給に際しての健診とかというようなものもあったりもしますが、その中で、やはり急性期の精神病状態の方もいらっしゃって、それを生活保護課であったりとか社会福祉事務所だったりとかに、御本人・御家族の了解を得て、連絡してつないでというようなことも実際にはあったりします。
 そのような中で、例えば20年来のひきこもりの方がいらっしゃって、親がどうしても稼ぐことができなくなって、生活困窮して、生活保護を受けます。そこが精神科の入り口になるというようなことも実際には起こっていて、これは公的病院精神科の役割と申しましたが、これ自体は恐らく開業医の先生方であったりとか病院の先生方も直面している事態ではないかなというふうには思う次第です。
 そして、こちらのスライドで強調しておりますように、また先ほど来、議論にも挙がっておりますが、自殺企図関連の合併症であったり、措置入院・応急入院を要するような、いわゆる精神科救急状態、また、希死念慮であったり自殺企図であったりという部分に関しては公的な精神科が担う役割というところもありますし、合併症がどうしても重くなってくると、ここは有床の総合病院精神科が機能としては必要となってくるという場面がございます。
 そして、精神科救急医療体制整備事業における総合病院精神科というところでスライドをまとめておりますが、こちらは第6回の参考資料1から抜粋してきたものになります。身体合併症救急医療確保事業を担うことが可能な施設であったり人員配置であったりが総合病院精神科、特に有床の総合病院精神科には期待されているという部分はあろうかと思います。
 ただ、肌感覚として、2次救急の病院であったり同事業に指定されていないような総合病院精神科であったりでも実際には対応していると思っております。実際、当院に関しては指定はされていないのですけれども、自殺企図関連の合併症であったりとか、あとは精神疾患急性期と身体合併症急性期を有するような方であったりを夜間休日問わずに受け入れているというような現実があります。
 また、医療計画においては平成19年度の研究に基づいて、身体疾患と精神疾患ともに入院による治療を必要とする方が人口1万人当たり年間2.5件と推計はされているのですが、これに関しても、現在、どのような需要があるのかに関しては不詳であるというふうには思っている次第です。
 そして、こちらに強調しておりますのは、身体管理が必要な精神科の治療としてクロザピンとECT(修正型電気けいれん療法)というものを挙げております。これに関しては医療計画の中にも入っておりますので、精神科専門治療という観点では公的な精神科が担う役割でもありますし、身体管理が必要という観点においては有床の総合病院精神科が力を発揮しなければならない部分かなとも思うところです。
 この身体管理が必要な精神科専門治療に関してというところで簡単にお示ししております。クロザピンに関しては、治療抵抗性統合失調症の治療薬として大変有効な治療薬である一方で、下にお示ししているような有害事象、副作用であったり、また、各種検査の実施であったり、血液内科などとの連携が必須であったりというような治療薬でありますので、ここはやはり総合病院精神科が一定程度の役割を担う必要があると思います。
 また、実際に無顆粒球症が起こってしまうとかなり血液内科の先生にいろいろとお願いをしないといけなくなる。かつクロザピンを使えないというような状況になりますので、精神症状も激しい状態かつ身体的にも重たい状態となってきますので、ここはやはり有床の総合病院精神科が必要になる部分かなと思います。
 ECTに関しては、様々な適応がございますが、全身麻酔下での実施となりますので、全身麻酔に備えての様々な事前の検査であったりとか、あとは麻酔科医との連携だったり、また、麻酔器だったり、いろいろな設備、それに伴う人員の確保が必須ですので、これに関しても総合病院精神科が一定程度の役割を果たすべき部分かなと思うところです。
 そして、ここからが本日のどちらかというとメインになるお話になります、精神身体合併症の考え方についてです。その中で、特に総合病院精神科の有床のところでどういうものを診ているのかというところを皆様に共通理解としてお示ししたいなと思いまして、事例ベースでお話をさせていただこうと思います。複数事例提示いたしますが、全て架空の症例となります。
 精神身体合併症をどこで診るのかという概念図をお示ししたものになります。縦軸に精神症状の重症度、横軸に身体疾患の慢性期、急性期であったりとか、身体疾患の重症度の高低というところを取ったものになります。
 この中で一番右側のところに関して、この「1」と示したところは精神病床のある総合病院での入院が必要な方としているところです。2~5という形で外来と入院それぞれ織り交ぜた状態でいろいろと条件づけをお示ししているのですが、本来であれば全てどこも触れる必要がある部分かなと思いますし、どこの部分も抜け落ちてはいけない部分かなと思います。ただ、今回のお時間の都合上と、あとは今回いただいているお題というところを考えたときに、この1番の部分に絞ってお話をさせていただきます。
 ただ、後で出てきますが、特に精神疾患の軽重というところにかかわらず慢性期の状態の身体合併症に関してどのように考えていくのかというところは今までなかなか議論から落ちてしまっている部分かなと思いますので、そこは問題提起はしておきたいと思う次第です。
 今回、精神障害と身体合併症との関係性というものを時間軸で整理してお示ししようと試みています。このA)~F)のような形でお示ししていて、ここからが具体的な事例ベースでお話をしていこうと思います。
 まず、Aさん、10代の女性です。神経性やせ症、いわゆる摂食障害に伴って栄養失調であったり意識障害が出てきたというようなケースを想定しています。病歴はいろいろ書いているのですが、この3行目ぐらいからのところを御覧いただければと思います。反応のない本人をおばあさんが発見して119番通報して、かかりつけの小児科クリニックではなかなか治療が難しいという判断になって、総合病院精神科病床がある3次救急医療機関に搬送されて、意識状態は反応のある程度までは回復したけれども、各種検査の結果から体が、さすがにこのまま、家に帰すことはできない。ただ、本人は抑うつ気分もあって、希死念慮もあって、なかなか入院が必要だというところも理解ができないような状態というところで精神病床での医療保護入院になったというようなケース。
 また、Bさん、50代の男性に関しては元来、もともとアルコールの問題がある方で、アルコール性の肝硬変であったり、それに伴って肝性脳症といって、意識障害が生じるような状態になるような方です。この方も3行目ぐらいからのところで、酒量がだんだん増えてきて、週末に駅で改札を飛び越えたり、乗降客や駅員を突き飛ばしたり、失禁しながら大声を上げて、警察に保護されて、精神科病院に一旦、措置入院となり、その後、血液検査等で肝不全の所見があって、週明け月曜日に総合病院精神科へ転院で、そのまま、措置入院は継続した形で、肝不全の治療で混乱状態は軽快して、御自宅に退院するというような想定の症例です。これが精神障害に伴う身体合併症の事例として挙げたものになります。
 次にお示しするのが、精神障害を有する方が持続する身体合併症が生じるというようなケースです。Cさん、60代の女性として挙げておりますのが、精神障害に関しては統合失調症、身体合併症としては2型糖尿病であったり糖尿病に伴う合併症、特に腎症もあるような方です。この方に関しては、いろいろと糖尿病のコントロールをしないといけないのだけれども、なかなかうまくいかない。それで、経口血糖下降薬やインスリンの調整については、時に内科での入院をするのだけれども、一般病棟では落ち着かなくて2~3日で退院してしまっているというようなことが続いて、総合病院精神科開放病棟に任意入院をされて、血糖もコントロールして、この方は腎臓が悪くなって、血液透析も導入したというような想定のケースになっています。
 恐らく、この場合は一般病床でもよいのではないかという議論もあろうかと思いますが、さきに示したように、なかなか一般病棟の環境では落ち着かなくて、入院継続ができなくてという観点で、左上にお示ししているように、精神科看護の観点で治療の内容が進んでいくこと、ケアが進んでいくことであったりとか、あとは精神科の治療空間が持つ時間の流れ。なかなか、ここは私も言葉にしづらいところではあるのですけれども、やはり精神科の病床が持っている時間の流れが患者さんを癒やす部分というものも往々にしてあるのかなと思っておりますので、そういうお示しをさせていただきました。
 そして、下の症例がDさん、70代の男性です。こちらの方は統合失調症で、身体合併症として前立腺がんがあって、前立腺がんも末期になってきて、多発転移があるというような状態で、ただ、精神科病院には長期入院中の方で、幻覚妄想も根強くて一般病床での入院がなかなか難しいというところで、緩和ケアチーム介入の下に、総合病院精神科で入院してお看取りをするというようなケースを想定しています。
 この場がお金のこと、特に診療報酬のことを扱う場面ではないというのは重々承知の上ではあるのですが、例えばこういうふうに緩和ケアチームが入ってきたとなっても、精神病床の場合、緩和ケアチームに関しては加算が取れないというような現実もあったりするので、なかなか難しいところですが、やはり患者さんの本当の最後のQOLを保つという観点において、そこでそういうふうな診療報酬の算定云々で緩和ケアチームが入れないということはあってはならないと個人的には思うので、当院の場合においては、そういう場合には積極的に緩和ケアチームの介入を依頼するというふうにはしておるというところです。
 精神障害者に持続しない身体合併症が生じる事例というところで、2つお示ししています。Eさん、20代の女性です。この方は統合失調症で、身体合併症として眼球の破裂というふうに挙げさせていただきました。もともと、統合失調症に関してはかかりつけがなく、初発の状態。夜間に幻覚妄想とそれに伴う行動が激しくて、自宅で御自身の顔を殴って、眼球が破裂して、両親が救急要請するも、なかなか選定先が見つからない。これも合併症プラス精神障害というところでのあるあるかなというふうには思います。それで、ようやく総合病院の精神科病床を有する総合病院に搬送ができて、手術ができました。手術後2日間はICUで鎮静・人工呼吸器管理で、鎮静から覚めていく段階において、やはり精神科の介入があったほうがこの方に関しては特に有益だろうというところで、精神科リエゾン介入が入ります。ただ、ここも先ほどと同じなのですが、ICUだと精神科リエゾンの加算が取れないというようなところもあったりして、ここもまたしっかりと適切な場で議論いただければというふうには思う次第です。
 この方に関しては、その後、精神病床で医療保護入院となって、いろいろと治療していただいて、自宅に退院ができるというような流れを想定しています。このように、初発の場合ですと自宅退院ももちろん目指していくというふうになりますが、そうなると、いろいろな社会資源の導入というところももちろん必要になってきますし、20代ですので、いろいろな福祉との連携というところも全くなかった状態から構築していかないといけないというのも総合病院精神科でも担っていますというところはあるかなと思います。
 下の症例、Fさん、50代の男性ですが、こちらの方はうつ病で、身体合併症としては心臓外傷です。自殺企図で心臓を刺してというところで、総合病院へ救急搬送されて、術後2週間で身体的な急性期は脱したけれども、やはり身体的なリハビリ、大きな手術をしているので、リハビリが必要だという観点。また、創部の処置が必要というような観点。また、希死念慮を伴う抑うつ気分が著明であるというような観点から、なかなか一般病床での管理も難しい。ただ、単科の精神科の病院さんでも管理が難しいとなったときには、ここは総合病院精神病床で診ていくしかない部分かなというふうには思う次第です。
 こちらにお示ししたのが、持続する身体合併症を有する精神疾患をお持ちの方が持続しない身体合併症が生じる、ちょっと分かりにくいような入れ子の構造になっているのですが、具体的に申しますと、80代のGさんです。統合失調症で、また、中等度の認知症でというところで、精神科病院に入院されている方になります。身体合併症の1番目としては血液透析を行っている方で、身体合併症の2番目としてはその方が大腿骨頸部骨折、転倒して骨を折りましたというような状態です。血液透析の実施が可能なA精神科病院の閉鎖病棟入院中に、週3回の透析を受けていた。その方が転倒して、近くの整形外科のクリニックに受診したら骨が折れていますとなって、本人・家族としては手術を希望しますというところがあったので、C総合病院精神科に入院となりました。その中で腎臓内科医であったりとか整形外科医であったりとか、もちろん、手術の時には麻酔科医であったりとか、心不全もあったりするので循環器内科医とかであったり、多職種の、いろいろな科の協働を経て、リハビリもして独歩が可能となって、3か月入院した後にA精神科に戻りましたよというようなケースを示しました。
 この場合、精神科からの入院になっているので、そこまで社会資源の調整というところはあまり含まれていないのですが、これが例えば施設からの入院ですというような場合であったりとか御自宅からの入院ですとなった場合には、介護・福祉サービスであったりとか、場合によっては、ここからまた何らかの形でお金の問題が出てきて、そこは行政に御相談しなければいけないとかというようなときに関しては、やはり精神保健福祉士の方の活躍なくしてはなり得ないような症例かなというふうには思いますし、当院の場合においても手練のPSWの方が、精神保健福祉士の方がいらっしゃるので、こういう症例が来ても私たちも安心して受けることができるのですが、そうでない場合になかなか、そこも難しくはなるだろうなというふうな所感はあります。
 ここで、身体合併症の急性期と慢性期または維持期という観点で少しスライドを作成しました。身体合併症急性期という観点に関しては、精神科救急医療体制整備事業であったり、また、医療計画であったりで言及されている部分かなと思います。また、一般的に「精神身体合併症」と述べたときには想定される時期かなというふうに思う次第です。ただ、ここに関しては、慢性期身体合併症の急性増悪というところも含まれる概念かなというふうには思います。
 そして、冒頭でも申したのですが、下の身体合併症慢性期の部分に関しては、やはり精神科救急医療体制整備事業等で想定はされていない部分かと思いますし、医療計画においても言及がなされていないかなと思います。また、後述しますが、血液透析であったりとか緩和ケアであったりとか、いわゆる専門性の高い治療を必要とするような場合もこの慢性期であってもあるかなというふうには思います。また、身体合併症というふうな文脈でいくと、高血圧であったり糖尿病であったり、また、そういう生活習慣病のプライマリーケアを要するような状態というふうな部分もありますので、ここで身体合併症という一つの言葉に何を想定するかというところでまた検討点が異なるというところは問題提起としてお示ししておこうかと思います。
 そして、次のスライドでお示しするのが、精神疾患を有する患者に対する腎代替療法等に関する調査研究で、昨年度、障害者総合福祉推進事業において実施している調査事業に関してお示ししています。詳細は参考資料2として報告書を付しておりますので、御覧いただければと思います。
 私がここで強調したいところとしましては、結果のところで、まず、精神科医療機関における透析導入や維持透析の実施に関しては、主としていわゆる総合病院精神科が主戦場となるという部分があります。それで、単科精神科病院での透析実施というものは、もちろん、やっている単科精神科病院というものもあるのはあるのですが、それが均てん化されているかというと、そういうわけではないというところで、単科精神科病院での透析実施は困難と捉えたほうがよいと考えます。
 また、精神疾患を有する患者に対しての透析導入に関してはいろいろな課題があるというところ。また、透析導入のみならず、維持透析を必要とする精神疾患の患者さんの移住先であったりとか通院先の確保というところはしっかりと考える必要があるのかなというところです。
 課題と提言の中においては、まずは包括的な実態把握が求められる部分と思いますし、また、医療提供体制に関しては、地域生活を継続するという観点においてはいろいろな意味合いでの連携が必要となってくる部分と思います。
 また、意思決定支援という文脈においても、精神疾患患者の身体疾患の治療に関する意思決定の支援の在り方とに関しては、学際的に検討することが必要かと思いますし、また、患者の自己決定を支える情報提供の在り方に関しても検討が必要かと思います。これは先ほどの議論とも重複する部分も往々にしてあるかなと思う次第です。また、多職種による支援という観点においても、やはり必要だというところで、精神身体合併症に対応可能な人材の育成という観点は中長期的な課題として考える必要があるというふうには思います。
 また、国及び地方公共団体の役割に関しては、こちらに示しておるとおりなのですが、先ほど議論にもありましたけれども、いわゆる良質指針の中で、精神科と身体科の連携を支援・促進するような制度的な枠組みの構築なども考えてもよいのではないかというところであったり、また、地域医療構想であったり医療計画の中でもしっかりと議論されるべきところかなと思います。また、特に継続的に高度な医療が必要とされるような状況について、議論は深めていく必要があるというふうに思っておりまして、先ほどお示ししているようながんの症例であったりとか、透析であったりとか、また、脳卒中後の後遺症での精神症状が出ているような方というものも精神科医療機関は、これは総合病院だけではないと思うのですが、受入れをしておりますので、そういう観点に関しても考えていく必要があるのではないかなと思う次第です。
 そして、精神の問題か体の問題かというところの鑑別に関してなのですが、Hさん、30代の女性というところで挙げています。転換症の疑いというふうにしておりまして、機能性神経症状症というふうに言われたりもしますが、分かりやすく言うと、心理的なストレスから体の症状が出るというような診断名になります。ここに書いているように、立てない、歩けないというような方が精神科病院に入院して、いろいろと精査をしたところ、神経難病だと分かって、脳神経内科に転科して、一般病棟で加療されるというようなケースもあります。
 また、下のIさん、40代の男性のように、自己免疫性脳炎というもので、精神症状が出て、精神科医療機関での入院となって、いろいろ検査したところ、自己免疫性脳炎だというふうなことが分かって、いろいろな治療を精神科病棟でした上で軽快して自宅に退院するというようなこともあったりします。そのようなことも総合病院精神科の精神病床で行われています。
 また、精神の問題か体の問題かの鑑別としては、重度知的障害があるような方で、てんかんの問題があるような方になってくると、なかなか鑑別が難しくなってきて、ここに関しては、やはり総合病院精神科が果たす役割というものも一定程度あろうかなというふうには思うところです。時間の都合もありますので、割愛させていただきます。
 こちらの身体症状に伴う精神症状というところに関してですが、このLさん、50代の女性というふうに挙げております。この方はもともと、関節リウマチで長く治療されている方が、ステロイドであったりとか、いろいろな治療をしていく中で、抑うつ気分が強まってきて、自宅で自殺未遂を図るようになった。それで、食事摂取もままならなくなって、総合病院内科に受診した際に、これはさすがに危ないだろうということで、内科の先生から精神科の先生に入院の打診があって、精神科医が診察したところ、これは入院が必要だという話になって入院になった。それで、ステロイドの減量であったりとか、ここは内科の先生が常勤でいるような病院でないと難しい、特に専門家の先生がいる病院でないとなかなか難しいところがあるので、総合病院精神科が担う役割かなと思いますし、それプラス気分安定薬の投与という観点に関しては、やはり精神科が担う部分なので、これは総合病院精神科が担う仕事かなと思います。
 最後にお示しするのがMさん、30代の男性で、うつ病が精神障害としてある方で、身体合併症としてはHIVがある方です。HIVに感染して、次第に抑うつ状態を呈してきて、精神科クリニックに通院を開始したのだけれども、自傷のおそれがあるような状態となって措置入院該当で、HIVのコントロールは良好なのだけれども、なかなか単科の精神科病院でHIVの治療はなかなか難しいですという観点で、総合病院精神科の閉鎖病棟での措置入院になるというような方があります。
 ここまで有床の話というところをしてまいりましたが、リエゾン・コンサルテーションという観点においては様々な機能がありまして、こちらにお示ししているとおりではあるのですが、精神科臨床、特に精神科リエゾンチームなどが充実してくると、一般病棟で精神身体合併症を診る幅というものが広がってくるというふうには思う次第です。
 そして、ここからは駆け足で参ります。
 外来での精神身体合併症の考え方という観点に関しては、かかりつけ精神科医であったり、かかりつけ医の機能という観点は既にこの検討会での議論があるかなと思いますが、精神科クリニックであれ、精神科病院であれ、検査設備の問題であったり専門性の観点からすると、基本的には地域の医療機関で連携する必要があるというのは御多分に漏れないところかなと思います。
 それで、どの範囲の身体疾患まで精神科医がフォローするか、できるかというところは本当にそれぞれの医師ごとに異なるというのが実情かなというふうに思いますので、逆に言うと、精神科医側がちゃんと自身の則であったり範疇をちゃんと知っておいた上で、ちゃんと連携体制を構築することというものが必要かなと思います。
 ただ、その一方で、全人的な医療という観点、また「にも包括」の実現というところを考えると、心身両面における旗艦となるような医者がちゃんとその方についている状態で様々な医療が展開されるというものが必要かなというふうには思います。
 ですので、先ほど教育の話も出てまいりましたが、この観点で考えると、総合病院精神科で精神科医がしっかりと研修をすることというものは一定程度、意味があるのかもしれないなと思ったりはします。
 最後に、専門性の高い看護師の精神科領域での活躍・活用というお話をします。
 精神科病院においてとは、身体面の専門性の高い看護師さんというものが今、いろいろといらっしゃるので、その方々が活躍されることで、精神科病院で精神身体合併症を管理していける幅というものが広がるのではないかなというものが一つ。
 また、総合病院精神科において、精神科看護の観点での専門性の高い看護師さんの活躍・活用がされることで、一般病棟での診療の幅が広がる、ケアの幅が広がるという観点と、一般病棟において看護レベルで「にも包括」が構築されていく、実現されていくのではないかなというふうには考えます。
 また、下方に括弧で書いているのですが、総合病院の精神病床で精神看護を経験した方が一般病床で勤務するようになると、一般病床で精神科看護の観点が広がっていくということは実際に起こっていて、それは患者さんにとってはとてもメリットがあるのではないかなと思います。
 また、この観点でいくと、多職種という観点に関しては、やはり精神保健福祉士であったり、公認心理師であったり、作業療法士であったりというような職種をどういうふうに医療の中で活用していくのか、そこから「にも包括」にどういうふうにつなげていくのかというところは、いま一度、整理が必要な部分かな個人的には思うところです。
 最後なのですが、総合病院精神科が求められる役割というところは本当に様々だと私自身感じておりまして、その病院がどういう医療圏にあるのか。人口規模もそうですし、人口構成もそうですし、また、精神科医療機関の充実度合い、充足度合いがどうかという観点もそうですし、また「にも包括」がどれだけ成熟している地域かというところでも、総合病院精神科に求められる役割はまた異なってくるかなと思いますので、その観点は医療計画であったり、地域医療構想であったり、あとは、管轄は違うようにはなるかもしれませんが、公的な病院の役割であったりというところはしっかりと考えていく必要があるのかなというふうには思います。
 御清聴ありがとうございました。
○田辺座長 田中参考人、御報告、どうもありがとうございました。
 では、ただいまの報告に関しまして、御質問等ございましたら、よろしくお願いいたします。
 吉川構成員、お手が挙がっていますので、よろしくお願いいたします。
○吉川構成員 私のほうでよろしいですか。
○田辺座長 どうぞ。
○吉川構成員 日本精神科看護協会の吉川でございます。途中退席しないといけないので、私から意見のみ述べさせていただきたいと思います。
 田中参考人、本当にありがとうございました。改めて、我々看護職も精神・身体両面のケアができるようになることが重要だということを認識いたしました。
 それで、精神科病院での入院患者さんの高齢化に伴って、身体合併症の対応、あと、身体ケアを要する方が非常に多くなってきています。そこは看護職にとっても大きな課題になっております。現時点でも、専門性の高い看護師ということで、日本精神科看護協会で養成・認定している精神科認定看護師が病棟で身体合併症患者に対するフィジカルアセスメント、身体ケアに取り組んでいるということは調査のほうでもかなり出てきているのですが、さらに、今年度から精神科認定看護師のカリキュラム改正を行って、臨床病態生理学、臨床推論、あと、フィジカルアセスメントなどの教育内容を充実いたしました。
 ただし、精神科病院で昼夜を通して必ずしも内科医師が常駐しているわけではないといった状況もありますので、特定行為研修を受講した看護職が、内科医師がいない場面でも必要な処置などが行えるようにする必要があるのではないかと考えています。これは地域でも同じようなことが言えるのではないかと思っています。ただし、精神科病院の医師・看護職において、この特定行為研修が十分理解されていないこと、また、研修の受講、特に実習施設の確保にやはり課題がありますので、そういったところの支援が何かしら検討していただく必要があるなというふうには思っています。
 それと、田中参考人の最後におっしゃってくださった精神と身体看護の両面を経験した看護師が一般病棟で勤務することのメリットということも述べられていましたが、これは本当に私も同じようにそういったメリットが大きいと思っております。そこで精神科と総合病院とで、数か月単位でもいいので、相互に人事交流ができる仕組みづくりを行うことが必要ではないかと考えています。お互いの経験がそれぞれの看護に生かされているという報告も既にありますので、そういった人事交流制度ということもぜひ検討していただければと思います。
 私からは、意見になりましたが、以上です。
○田辺座長 ありがとうございました。
 では、長谷川構成員、よろしくお願いします。
○長谷川構成員 聞こえますでしょうか。プレゼン、本当にありがとうございます。
 私も意見なのですけれども、私自身は無床の総合病院に勤めておりますので、そこからの意見です。もちろん、有床の総合病院には全くもってかなわないのですけれども、ただ、やはりリエゾンチームでかなり精神症状が中等症以上、本当は隔離室が要るのではないかという方も、ある一定期間、治療していただいております。その後はもちろん、単科の精神科病院連携が必要になっていくのですけれども、本当に大きな意味で言えば、総合病院というものは精神科医療を広める、普及する、そういう大切な場だなというのが私の意見です。
 以上です。
○田辺座長 ありがとうございました。
 では、松本構成員、よろしくお願いいたします。
○松本構成員 ありがとうございました。今、いろいろお話をいただきまして、非常に理解が深まったところでございます。
 資料に「精神科病院における身体面の専門性の高い看護師の活躍・活用の可能性」と書いていただいていますけれども、精神科病院における、精神科看護の専門性の高い看護師の活躍というものも重要だと思っております。
 身体合併症を有する精神科患者への支援におきましては、やはり多職種や多診療科が連携して、精神疾患と身体疾患の両方の視点、また、生活支援の視点を併せ持った、いわゆる包括的な支援が必要だと思います。精神看護専門看護師は2024年12月時点で全国に454人おりますけれども、まさにこういった包括的なアセスメントや多職種・多診療科との連携調整において能力を発揮しております。また、身体合併症ケアの充実に向けても取組を進めているところでございます。
 精神看護専門看護師の教育課程としては、現在、大学院が50ほどありまして、個々の教育機関において養成を行っております。日本看護協会としては認定者を輩出する立場にございますので、引き続き、その活躍を推進してまいりたいと考えております。今回の御発表でも、精神科看護の専門性の高い看護師の活躍についてお示しいただいておりますので、ぜひこういったことを広めていただければと思っております。
 ありがとうございました。
○田辺座長 ありがとうございました。
 では、北村構成員、よろしくお願いいたします。
○北村構成員 田中先生、どうもありがとうございました。いっぱいいろいろな病気の状態が出てきましたけれども、とにかくいろいろな病態に対して類型化して、例えば透析であるとか、それから、精神障害者の妊婦さんのこととか、いろいろな事柄があるので、それは各地域の医療計画で、きちんとこういう病態のときはここの病院が中心になってやっていくとすればいいと思います。
 最近、飛び降りなどをされて自損事故で多発骨折で、骨盤骨折で、といったうつ病の方などが回復期の病棟に行っても回復期のほうで精神疾患が怖くて云々ということがありますから、そういうところに精神科の医師なりチームなりが行くようなものは個別に各地域で検討していく必要があるかと思います。
 個人的には単科の精神科病院の院長ですが、当院のような単科の精神病院は将来的になくてもいいと思っているので、県がオーケーすれば、うちの病床を県立中央病院に持っていけばいいと思っているのですけれども、県庁もそうは思わないし、向こうの病院も診療報酬の問題等々でそういうことを言わないので、やはり今、田中先生がおっしゃったような、いろいろな昔の考え方、精神医療は精神医療、一般医療は一般医療みたいな分け方では世の中は成り立たないのだということをもっと広く国民に知っていただく必要があるかなと思います。
 それから、もう一つ、単科の精神科病院の身体合併症の対応能力ですけれども、実は個人的なことで、私は自治医大を出ておりまして、昭和から平成にかけては、今、地震で大きな被害を受けた能登半島にずっといた者です。自治医大の校歌は忘れたのですけれども、1節だけ、医療の谷間に火をともすという歌詞があります。能登は医療の谷間だなと思ってやっておったのですけれども、ただ、その後、当院に来まして、当時の県立高松病院に来て、精神科病院のほうがよほど医療の谷間だと感じました。僻地の人よりもちゃんとした内科治療とかを受けていない。
 それは30年以上前の話で、今はそんなことはないのですけれども、そういうことで何を言いたいかというと、取りあえず、短期間の目標としては、単科の精神科病院に大学から内科医を派遣してくれとかと言っても無理ですから、やはり今、いろいろな層、いろいろな団体で総合診療医をつくろうとしておりますけれども、そういうときの研修で三月、精神科病院で働くとか、そういったような仕組みを何とかいろいろなところに働きかけて、総合診療医に精神科病院も診てもらうみたいな、そういうものが一番手っ取り早いかなというふうに考えております。
 以上です。意見です。
○田辺座長 ありがとうございました。
 ほかはいかがでございましょう。
 では、長瀬構成員、よろしくお願いします。
○長瀬構成員 日精協の長瀬です。
 北村先生から大変厳しい御意見をいただいて、考えないといけないなというふうに思っていますけれども、一応、日精協でも、吉川構成員から御提示いただいたように、看護師の認定職種制度をやっていまして、研修は日々やっています。なるべく身体合併症が診られるように、日々、研さんは積んでおりますが、まだまだ北村先生から御指摘いただいてしまうぐらいですので、まだまだ足りないのかなというふうには思っていますので、今後、まだやっていかなければいけないのかなというふうには思います。
 ただ今後、やはり地域によっては、総合病院が充実している地域もあれば、そうではない地域もありますので、これは今日、先ほどの障害福祉サービスと同じようにも、提供体制や医療資源の成熟度、飽和度、脆弱度というものは違いますので、その中で精神科病院もやれる役割、北村先生と僕がすごく同感したところは、医療の中で身体と精神を分けて考えないで、その対処、複合ニーズをきちんと見直していかないといけないだろうと北村先生がおっしゃっている、それは全く僕はそのとおりだと思って同感していますので、それについては今後、我々の病院団体としてきちんと襟を正して、そういう体制をつくっていかないと。どういった病棟で、どんな医療や看護体制でそういった人たちをケアできるのかというものは日々、限られた人員や財源の中で考えていかなければいけないかなというふうに思いました。
 以上でございます。 
○田辺座長 ありがとうございました。
 では、神庭構成員、よろしくお願いします。
○神庭構成員 ありがとうございました。
 先生の精神身体合併症をどこで診るのかの概念図を見て思ったのですけれども、精神疾患のありなしにかかわらずその人にとって必要で最も適切な医療が受けられるにはどうしたらいいかということを考えるべきだと思うのです。
 その上で、単科の精神科病院で受けられる疾患、治療できる疾患と、それは難しくて、身体疾患を専門とする施設で診なければならない場合とがあります。その場合さらに、精神のほうはリエゾンとか非常勤とかでカバーできる患者さんがいるだろう。最も問題になるのは、その両方が重度であるという場合で、一般病棟では難しいと僕は思います。それができるのは精神科の有床の総合病院だろうというふうに思います。
 それも有床の総合病院も、最近の話を聞いていると、精神科病棟が閉鎖される、病床がなくなりリエゾンだけになっているようです。そうなると、最も重い人を診れる病院は数が限られてきてしまう。各地域に必要な患者さんがいて、必要な場所に必要な病院があるという体制が好ましい。そのためには総合病院を拠点化するという必要もあるのではないか。そこは財政的に手厚くして、必要な精神科・身体科の医療体制を提供していく。こういうことも考えなければいけないと思うのですけれども、その点、先生はどうお考えでしょうか。
○田中参考人 神庭先生、ありがとうございます。私も全く同じように思っておりまして、例えば福岡の場合ですと比較的、4つの地域に分けて、それぞれに身体合併症に対応できる有床の総合病院精神科があるような状態になっていて、アクセスの観点であったりを含めて、比較的うまく回っているのではないかなと思うのです。
 ただ、全国的にそれを見たときに、果たしてそれが均てん化されているかというと、到底、そういうわけではないというふうに思いますし、ただ、その一方で、単科の精神科病院においても、例えば整形外科疾患であれば手術に近いことまで全て診られますというような単科の精神科もある一方で、本当に慢性期の方しか診られないのですというような単科の精神科もあるというふうには思うので、そことの本当に兼ね合いなのかなというふうには思ったりはします。
 ですので、そこはやはり都道府県が医療計画であったり地域医療構想を策定するときに、しっかりと総合病院精神科の病床がどういうふうな地域の中で位置づけにあって、どれぐらい確保しないといけないのかというところは明確にしなければいけないところかなというふうには思いますし、現実的には先生がおっしゃるような拠点化に近いような形で集約していかないと、医者の数もそうですし、病床もそうですし、なかなか成り立たないのではないかなというのが個人的な意見です。
○田辺座長 ほかはいかがでございましょう。
 では、藤井構成員、よろしくお願いします。
○藤井構成員 国立精神・神経医療研究センターの藤井です。御発表ありがとうございました。
 今回の御発表の中ではあえて言及されていなかったのかもしれないですけれども、総合病院精神科、特に有床の総合病院精神科が減少の一途をたどっているという問題があるかと思います。そこはいろいろな要因があるとは思うのですけれども、今日の御発表を伺っても、総合病院精神科が果たす役割というものは非常に多岐にわたって、一部は公的な役割も担いつつ、地域でかなりの人数を拾っているというところがあるかと思いますし、あとは人材育成というような意味合いでも、医療提供体制というところだけではなくて、将来を見据えた人材育成というところでも総合病院精神科の役割というものは非常に大きくて、これは単科の精神科病院と一般病院が連携すれば医療提供体制が何とかなるから、有床の総合病院精神科は要らないということではないということだと考えています。
 その意味では、本来の医療提供体制というものは今後、地域医療構想が始まれば、その地域医療構想や、医療計画の中で各地域で拠点をどうするかといったことであったりとか、総合病院精神科のような機能をどのぐらいのボリューム感で担ってもらうかというものは各地域で当然話し合っていくのだとは思うのですけれども、やはり一方で、国として総合病院精神科という形態の医療機関、医療提供体制にどういうことを期待して、どのような役割を担ってもらうのかということは明確に指針であったりとか、医療計画、あるいは地域医療構想の中で書いていかなくてはいけないだろうなという、これは先生も御発表の中におっしゃっていただいたのと全く同じことを考えているところです。
 その中で今日、特に言及のあった、継続的に専門的な身体疾患の医療が必要な方に対して、しかも、精神疾患のほうも精神症状が重篤な方に関して、どのように医療提供体制を確保するかということについては、医療計画の中で精神疾患の項目・領域の中だけで言及するのでは足りないのではないかというふうに考えていて、例えば5疾病であれば、がんの医療計画の中で、精神障害のある方の緩和ケアであるとか、がんの治療ですとかといったことに関しては明示的に書いていただいてもいいのかなというふうに考えています。
 これに関しては、当然、身体と精神とできるだけ分けずに考えていくという考え方とはもしかして反するのかもしれないですけれども、やはり精神疾患のある方への医療提供体制というものは別立てで考えないとなかなか体制整備ができないという部分があるかとも思います。例えばほかの精神以外の領域の中での医療計画の中で、精神障害者に対しての専門医療の提供に関して書き込んでいくみたいなことについては、これはどちらかというと厚労省にお伺いすることかもしれないですけれども、先生のお考えはいかがでしょうか。
○田中参考人 藤井先生、ありがとうございます。僕も先生のおっしゃるとおりかなというふうに思います。
 また、既にがんであったりとか、周産期であったりとか、あとは脳卒中であったり、心血管の分野において、精神の文脈は入ってはいるものの、先生のおっしゃるような、精神障害を有する方に関してというような文脈ではなかなかない部分もありますので、そこはしっかりと書いていただくことで政策が何らか動いていって、現場には何らかのお金がついてというような流れができていくのであれば、そこはぜひ進めていただければというのが現場の医者としての感覚かなというふうには思います。ありがとうございます。
○田辺座長 ありがとうございます。
 ほかはいかがでございましょう。
 では、どうぞ。辻本構成員、よろしくお願いします。
○辻本構成員 御発表ありがとうございました。
 一つは、私は言いにくいことを言うのですけれども、言いにくいのは収益の問題ですよ。やはり総合病院で精神科をやっていると、収益をどう考えていくのが病院として、その一方で、政策医療ということで、そこは公益にやらなければいかぬのか。その辺のバランスをどうしていったらいいのかということをお聞きしたい。
 その上で、合併症となると手間がかかって、時間が長くかかって、病院収益としてはなかなか厳しいと思うのです。その辺も含めてどうかというものが一つ。
 あと、今、どこの精神科の病院も患者さんが減ってきているという状況にあって、現状の有床総合精神科病院としての患者さんの内訳といいますか、どういう方々が入っていて、今後、どうなっていくのか。その辺の予測といいますか、そういうものを教えていただけますでしょうか。
○田中参考人 ありがとうございます。
 今、いただいたように、収益の部分に関しては、正直、今回は主眼ではないというところで、お話としては落としてはいるのですが、ところどころ触れたように、例えば精神病床であるから算定できない何らかのものがあったりとか、そもそものベースの入院料の問題であったりとかというところは本当に多岐にわたるところかなというふうに思っているので、ぜひそこは厚労省にお願いなのですが、その観点、ぜひ適切な場で適切な方を呼んでいただいて議論していただければというふうには思うところです。
 2点目の、病床をどういう人が使っているのかというところに関してなのですが、そこは、これも個人的な肌感覚なのですけれども、本当に病院によってばらばらというところが個人的な感触です。大学病院の病床を総合病院に入れるかどうかというところもまた議論もあるところだと思うのですが、例えば大学病院で診ている精神病床の患者さんと、市中のいわゆる一般の総合病院精神科で見ている患者さんというところでも大分違いがあるなというふうに思いますし、また、それが、人口規模が福岡ぐらいの規模なのか、もしくはそれこそ長崎のような場所で、長崎の中でも、市内なのか離島なのかによってというところで全然違うと思うのですけれども、そういうような観点もまた全然違う部分があるので、そこはそれこそ、今年度からの厚労科研の中でも検討する部分かなと思いますので、期待する部分かと思います。
○田辺座長 ありがとうございました。
 ほかはいかがでございましょう。
 では、上田構成員、よろしくお願いします。
○上田構成員 日精診の上田と申します。今日はどうもありがとうございました。
 診療所の精神科医の立場からですと、診療所に通院している患者さんの身体合併症の治療というものはそんなに入院の中といいますか、あまり大騒ぎすることはないのが一般的なので、精神科の患者さんだから身体合併症はすごく全ての人が大変というふうなイメージにならないほうがいいのではないかなというような気持ちが一つあるのと、ただ、診療所にかかっている患者さんであっても、妊娠したり出産する場合は必ず精神科医のいる病院で出産してくださいみたいなことを言われることがあって、総合病院のほうに紹介してくださいというふうに精神科病院から言われることもあったりするのも事実です。
 ただ、どんな患者さんであれ、身体的な治療として必要なものは、高度な医療が必要な場合に、やはり総合病院精神科、有床の精神科がないと非常に困るゆゆしき問題だと考えますし、無床になっているという現実も非常に問題だと思いますので、ぜひ有床の総合病院精神科に頑張っていただいて、やはり身体合併症、高度な身体的治療も受けられるようなシステムを残していただきたいというふうに思います。
 以上です。
○田辺座長 ありがとうございました。
 たしか、山口構成員、お手が挙がっておりましたが。
○山口構成員 保健所長会からの山口です。
 各論になるのですけれども、いろいろな疾患の事例を挙げていただいたのですが、地域によっては総合病院で身体疾患も診ると位置づけられている医療機関はあるのですが、それでも紹介しようとすると、「その精神症状は本当に精神疾患によるものですか」、「身体症状によるものではないですか」、「身体症状・身体疾患による精神症状かどうかを鑑別しないと受け入れません」と言われることがあります。例示されたような、肝性脳症やヘルペス脳炎による一過性精神症状のある方を、速やかに、受けてくださる総合病院はとてもありがたいと思う一方で、精神疾患に起因しない症状の方は措置の対象ではないのではないか。身体疾患に起因する精神症状なのに措置入院にしてよいのだろうかとも考えてしまいました。
 以上です。
○田辺座長 ありがとうございました。
 恐らく報告の中でも難しさに関しては触れておりますが、何かコメントはございますか。
○田中参考人 ありがとうございます。
 今、いただいたように、なかなか難しい問題が本当にいろいろある中で、ただ、個人的な思いとしては、やはり総合病院精神科がしっかりと患者さんを診て、体の問題であるのであれば体の問題なのですというところで、精神科領域の問題であるのであれば精神科領域の問題なのですというところをちゃんと鑑別するというのが総合病院精神科の本来の役割かなと個人的には思うので、ただ、その一方で、人的な資源であったりとか、病床の有無であったりとか、受け取れる範囲というところが結構限られる部分もあるというのも現実かなというふうには思うので、そこは本当に地域によってばらばらかなというのは個人的な感想にはなります。
○田辺座長 ありがとうございます。
 では、花村構成員、よろしくお願いします。
○花村構成員 日本公認心理師協会の花村です。先生、どうもありがとうございました。コメディカルの活用について、いろいろご意見を下さり、本当にありがとうございます。
 私も総合病院に勤務しております。うちは精神科の先生がいてくださって、精神科的な支援が必要な方のところにリエゾンで回っていき、公認心理師も支援に加わります。しかし、当院の患者さんで例えば婦人科の疾患が見つかり、当院では手術対応できなくて、よそにお願いしなければならなくなったときに、紹介先には精神科医がいなくて、「とても落ち着いている方だから大丈夫なはずです」と御紹介しても断られて、患者さんもつらい思いをされ、あちこちを探さなければいけないみたいなことがあります。
 精神科医が常勤勤務ではなかったり、少数で忙しい場合も、先ほどの田中先生のお話にあったように精神科勤務を経験した看護師さんや、認定や専門の看護師さんがそこにいてくださると、現場の対応力は上がると思います。また、精神科医と共に働いた経験のある公認心理師や精神保健福祉士などの、コメディカルも、患者さんとの関わるなかで、精神科医につなげる必要性を判断できると思うのです。また、精神科急性期の話ではありませんが内科の先生が診察している横で精神科を経験した看護師さんがついていて、この方はうつ状態ではないか、認知症の兆しはないか、みたいなものを拾うといった活動も有効と思います。「現場の対応力」を上げていくという意味で、総合病院精神科で学ぶことは多くあり、それは精神科で勤務するにあたっても、他の科で勤務するにあたっても必要な視点で、双方にメリットがあると思います。私も総合病院勤務の公認心理師として実感しています。普段上手く機能していると、こういうときには精神科医を呼ぶと良い、ですとか、専門看護師がこういう対応をしてくれるはず、公認心理師がこういう対応をしてくれるはず、精神保健福祉士がこういう情報を持っているはず、など現場の看護師の皆さんが学習して、アップデートして下さり、患者さんへ対応力も向上していくのです。医療スタッフの卒後教育・卒前教育の観点でも総合病院精神科での学びは必要と強く思いまして意見させていただきました。ありがとうございました。
 何か先生から御意見等があれば、お聞かせいただければと思います。
○田辺座長 どうぞ。
○田中参考人 ありがとうございます。
 先ほどの上田先生のお話にもつながるところなのですが、例えば当院の場合ですと、周産期に関して、先ほど上田先生からあったように、総合病院精神科があるところで診なさいと言われて、当院の産科に紹介されてきて、当院の産科から当科に御相談があるというような形の方がまあまあいらっしゃいます。その中で、僕であったり部長であったりがゲートキーパー的な役割を果たすようにしていて、この方であれば一般の産科で産んでいただいて大丈夫ですというようなお墨つきをつけた状態でお戻しするというようなこともあるのです。もちろん、当院で産んでいただくこともあるし、当科の病床で入院した状態で分娩に臨むということももちろんあるのですけれども、なので、それができるというのはやはり、私の後ろに病床があって、では、「何かがあったときには紹介していただいて、こちらで入院ができるので」と紹介状に書くことができるというのは大きなメリットかなというふうには思ったりはしたところです。ありがとうございます。
○田辺座長 ほかはいかがでございましょう。
 では、田村構成員、よろしくお願いします。
○田村構成員 田中先生、どうもありがとうございました。
 本当にいろいろな事例を挙げてくださったので、自分が精神科にいたときのことも思い出しながらお聞きしました。私どもは日本精神保健福祉士協会ですが、役員にも意見を聞いたところ、やはり単科の精神科病院で何かしらの合併症が出たときに受け入れていただける、つまり合併症が診られる病院は非常に少なくて、結局、医療資源として治療力が十分とはいえない精神科病院内で看取らなければいけないことが度々あった、それは入院だけではなくて外来の方でもそうなのですけれども、そういう意味で、私も含めて、無念な思いをしてきた精神保健福祉士は多数います。
 それで、今日の先生のお話で、先生が勤めていらっしゃるところが恐らく総合病院精神科としての何らかの使命感を持ってやっていらっしゃることはよく分かったのですけれども、使命感だけではできないところもあると思います。先生のご勤務先の地域はちょうど4つの区域に分けられているというお話もありましたが、ただ、働いていらっしゃる方の中で共有されている理念をについてお伺いしたいのが一つめです。
 もう一つは、今回の精神保健福祉法の改正で精神障害者の権利の擁護が目的になったわけですけれども、必要なときに必要な医療が、精神障害を理由として受けられないとか、精神科病院にいるから受けられない、というのはやはり非常に大きな権利侵害だと思うので、そこを解消していくために何かこういう施策があったらいいのではないかということを、荒唐無稽でも構わないので、ぜひおっしゃっていただけないかなと思いました。
 よろしくお願いいたします。
○田辺座長 どうぞ。
○田中参考人 ありがとうございます。その施策があれば多分、その施策をここでお示ししていると思うので、なかなか難しいというのは現実なのかなと個人的には思っています。
 ただ、その一方で、1つ目の質問につながるところではあるのですが、私自身の思いとして、やはり精神障害があるから適切な身体的な治療が受けられないということはあってはならないというふうに思っていますし、その治療を適切に施すことができるのは総合病院精神科だろうというふうには思っている部分はあるので、それをどのようにして形にしたらというものは、すみません。答えはないのですけれども、思いとしてはあります。
 そして、それ自体が、今、先生がおっしゃってくださったように、患者さん、精神障害を有しておられる方の人権の擁護という観点に強く寄与するのではないかなというふうには信じているところです。
 直接的な答えになっていなくてすみません。
○田辺座長 ほかはいかがでございましょう。よろしゅうございますか。
 では、岡田構成員、どうぞ。
○岡田構成員 家族の立場からお話をさせていただきます。
 総合病院精神科の機能について詳しくお話を伺うのは初めてなので、大変な業務を行っていらっしゃるのだなというのはすごくよく分かりましたけれども、皆さんがおっしゃっているように、精神障害があるとかないとかにかかわらず適切な医療をみんなが受けられる世の中でなければいけないというのは皆さん共通した思いだと思うのですけれども、そう考えると、理想論かもしれないですけれども、全ての総合病院に精神科があってしかるべきかなというふうに、医療を利用する側からだと単純に、素直にそういうふうに考えました。
 なかなか難しい課題はあると思いますけれども、先ほどどなたかおっしゃっていた、精神科医療とそれ以外の医療がいろいろなところで別扱いみたいな形で行われていることが、やはり私たち、精神障害がある人とその家族にとってはとても社会的なストレスになっていますので、根本的なところからきちんと考え直して、そこに向けて進めていく必要があるなというふうに思っています。
 1つ、全ての総合病院に精神科をという考え方についてどう思われるか、お聞かせいただきたいと思います。
○田辺座長 どうぞ。
○田中参考人 ありがとうございます。それがかなうにこしたことはないと僕も思っていますし、ある程度の人口当たりに、ある程度の有床の総合病院があるべきだというふうには思ってはいるところです。
 ただ、では、そのある程度が果たしてどれぐらいなのかとか、患者さん・御家族から見たときに、そのニーズを満たせるのがどれぐらいなのかというところは正直分からないというところがあるので、そこはしっかりと実態を把握していく必要があるのかと思うところです。
 あとは、なかなか総合病院精神科で働こうという精神科医が少ないという現実もあって、なぜならば、やはり単科の精神科と少し違うところとしては、院内の中でもいろいろな診療科とのやり取りであったりとか、あとは身体合併症に関してもしっかりと知識がないといけないとかというようなところもあって、なかなか総合病院精神科で働こうとする医者が少ないというような現実もあったりするので、そこに関してはまたいろいろと考えていかないといけないところかなとは思ったりしました。ありがとうございます。
○田辺座長 ありがとうございました。
 ほかはいかがでございましょう。
 では、岩上構成員、よろしくお願いします。
○岩上構成員 田中先生、どうもありがとうございました。
 観点が違うのですが、そろそろ、厚労省は入院制度についての議論を始めていただきたいと僕は思っているのですけれども、その際に、やはり論点としては身体合併の人の入院制度がこれでいいのかというものがありまして、事例で統合失調症の方がありましたけれども、その他の方で先生が、言いにくいこともあるかもしれませんけれども、身体合併があって精神科に入院されている方が、今の医療保護入院を中心にして、本当に何か違うのではないかというような認識、ほかの方法論があればいいのではないかとかということをお考えになることがあるのではないかなと思って、話せる範囲でお話しいただけませんでしょうか。
○田中参考人 ありがとうございます。大変難しい質問だなというふうに思いながらお伺いしておりました。
 確かに、今、岩上構成員がおっしゃられたように、矛盾を感じる機会というものは多々あります。特に医療保護入院制度に関して、また、措置入院に関してもそうですし、もちろん、任意入院に関してという観点に関してもなのですけれども、例えば認知機能の部分がどうしても大きな課題にはなってきたりとかする部分かなと思ったりはするのです。認知症であったり知的障害であったりとか、あとは未成年に関してもそうですけれども、そういうふうに考えたときに、結局、行き着くところはどこかなとなると、やはり同意能力であったりとか意思決定の問題であったりとかで、そこが精神科医療への入院という観点、精神科医療の中での治療という観点、また、身体の治療という観点で、それぞれに関しての同意能力であったり意思決定の問題であったりというところが錯綜するので、恐らく、そこの難しさはそれなのではないかなと個人的には思うところです。
 具体的な話ではなくてすみません。
○岩上構成員 ありがとうございました。
 そこがとても重要ではないかと思っていて、入院制度の話をして、今まで何十年もしている中では、どうしても統合失調症を中心とした治療をしっかりやらなければいけない方の話を中心にしてきていて、その中で研究班とかの中でも、認知症の方と身体合併の方と児童の方をこの制度で本当にいいのだろうかというような観点から考えてはどうかという提案が出てきているので、先生の御意見を伺いたいと思ってお聞きしたところです。ありがとうございました。
○田辺座長 ほかはいかがでございましょう。
 では、桐原構成員、お願いします。
○桐原構成員 桐原です。
 相談支援事業所、精神保健福祉センターと、今日の全部の参考人に関してなのですけれども、突出した取組というわけではないと思いたいのですが、やはり質は均等ではないなという課題を感じています。
 やはり自己流というのでしょうか。職人技みたくなってしまっているところもあって、当初はパッションとかで進んできていて、徐々に体系化されてくると思うので、ルール化して標準化された人材育成のためのコンテンツをつくるなどして均質化させていく必要があると思うのですけれども、そういう中でピアサポーターについて、特にまだまだ職人技的なすごいピアサポーターがいて、そういう人が職人技的にやっているというようなところは否めないかなと思っています。
 やはり質の均等をしていくためには研修が必要なわけです。研修自体は制度化されているのですけれども、今後のためにはブラッシュアップに向けて研究とかも行われはしたわけです。ところが、マイナーチェンジにとどまっていますので、さらなるブラッシュアップを続けていかなければ、国会の附帯決議の対応・応答にはなり得ないという懸念もあるかなというふうに思います。
 それから、医療観察法のお話が出ましたが、予算とか支援面とか、そういうソフト面だけではなく、ハード面も含めて、これはやはり、このままでいいというわけにはいかないだろうなと思います。この法律をどうしていくのかという検討のテーブルがどういう形かで始まってしかるべきではないかと思っています。
 合併症についてなのですけれども、結局、精神科とか一般科の間に壁があるわけですのでできないというふうなことが言われて、例えば精神科の人は受け入れませんみたいなことを平然と言われたりとか、精神科のあるところでないと身体合併症は受け入れませんというようなところが出てきたりとかしているわけです。
 そういう中で、せめて報酬とか仕組みだけでも一緒のものにしていこう、共通のものにしていこうという取組が必要なわけで、例えば救急ですね。入院基本料が例えば精神科の場合は10対1しかない。それで、重症度・看護必要度の判定みたいなものも存在しないから、取りあえず、救急は強制入院何割であればいいみたいな形になってしまっているわけなのですけれども、こういうものが全般的に精神科を特殊にしていっている原因になっているなと思っています。そういうものは一般科と同じような、同質のものに改めていく必要があると思います。
 質問なのですけれども、仕組みの面で特に、例えば医療保護入院の人がほかの一般科のほうに治療しなければいけないときに、一回、医療保護入院を退院してから一般科にしないと報酬上の課題があるとか、いろいろな複雑な問題があると思うのですけれども、こういったものというものは現場において本当に意味があるものなのでしょうか。教えてください。
○田辺座長 どうぞ。
○田中参考人 ありがとうございます。現場において意味があるかと言われると、なかなか、その意味がどこにあるのかというのは個人的には思うところです。
 ただ、そこの手続をしっかりしないと結局、精神保健福祉法が形骸化してしまうというふうに個人的には思うので、一般病床に移るのであれば、一回、医療保護入院は退院で、一般病床への通常の入院で、また戻ってくるのであれば、一般病床は退院で、精神病床への医療保護入院もしくは任意入院というような形を僕自身は、ちゃんとといいますか、当たり前なのですが、手続は取っているというところです。
 そこに関して、では、何らか手間を感じるかというと、そこは精神科医として、精神保健指定医として当たり前のことをしているという感覚でしかないというのが正直なところです。ただ、連続性というものを考えると、そこに関しては議論の余地があるのかなというふうには思ったりはしています。
○田辺座長 桐原構成員、よろしゅうございますか。
○桐原構成員 はい。
○田辺座長 ありがとうございます。
 ほかはいかがでございましょう。よろしゅうございますでしょうか。
 様々な御意見をいただきまして、ありがとうございました。ほかに御発言がないようでございますので、議題(1)の「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムにおける医療提供体制について」は以上としたいと存じます。
 本日ヒアリングにお越しいただきました3名の方におかれましては、非常に貴重なお話をいただきましたこと、また、人々の議論を明らかに活性化させる問題提起をいただきましたことに感謝申し上げます。
 最後に、事務局から何か連絡事項は。
 では、小阪構成員、どうぞ。
○小阪構成員 すみません。自由討議の時間があると聞いていたので、1点だけ、全体的なことで話せなかったことがあるので、今、話してもいいですか。
○田辺座長 どうぞ。
○小阪構成員 すみません。ありがとうございます。
 前回までの議論で、精神科外来診療について、患者さんの話を聞くことを精神科医が診察の中だけで行うことは、マンパワーや時間的意味合いとしても限界があることから、看護師や精神保健福祉士等がその代替的役割を持ち、それを報酬上も評価するという方向性が本検討会では導き出されているかなというふうに思います。
 ただし、これらの議論はあくまで医療提供体制の面的整備の話であって、現実路線を中心とした医療提供者側の立場からの議論に思い、ここにはまだ患者さんたちの声は反映されていないのではないかと率直に感じています。同時に、良質かつ適切な精神科医療提供体制の在り方という観点から、私たち当事者の思いはどのように酌み取られているのだろうかと少なからず心配になります。
 少し話の切り口を変えたいと思いますが、私たち、精神疾患や精神障害の特性上、寛解の方向性だけを模索するのではなくて、リカバリーという価値観をとても大事にしています。障害や病気があっても自分らしく生きていくことを私たちは成し遂げていきたいと思っていますし、地域共生社会においてはそれを応援してほしいと思います。また、可能であれば、精神科医の関与の在り方もそのようになってほしいと願っています。
 ですが、これまでの議論をお聞きしていると、看護師や精神保健福祉士等の役割分担、切り分けによって、看護師や精神保健福祉士等の方がこれまで以上に力を発揮していただくことはとてもいいことだと思いますが、同時に、精神科医にはこれまで話せていたようなことが話せなくなるのではないかと、患者の立場としては不安に思われるような方もいらっしゃるのではないでしょうか。役割分担の具体的イメージが分からないので、今後の検討次第では、信頼している精神科医と十分に話せなくなるような精神科医療提供体制の移行もあり得るのだとしたら、患者としてはとても困ります。
 私がこれまでの議論を拝聴してどんなイメージを持っているかと申しますと、精神科医はあくまで精神疾患等の治療のみに専念し、リカバリーには寄り添わない、リカバリーに寄り添うような総合的相談等は、病院やクリニックとしては看護師や精神保健福祉士等に委ねるという在り方を目指されているのかなという印象を持っており、それがとても心配です。
 ただ、精神科医の方たちが、自分たちは診療報酬や時間的制約の観点から、リカバリーに寄り添うのではなく、あくまで治療に専念するという立場であると明言されるのであれば、そうした役割分担を今後の医療提供の中で推進していくというのであれば、それはこの間、検討会を通じて一緒に考えてきた立場の私としては、とても残念ですが、致し方ないことなのかもしれないと思います。
と物分かりよく理解を示したいところですが、本当の本音では、精神科医の皆さんにも私たちのリカバリーに寄り添っていただきたいですし、そうした観点から診察を引き続き行ってほしいと思っています。
 ですから、私たち患者・当事者が安心して、「そういう多職種連携の形であれば良質かつ適切な精神科医療の提供にもつながっていきますね」と納得できるような、具体的な多職種連携のイメージを今後共有していただけるとありがたいのではないかと思います。その際には、ぜひ医療提供体制という観点や医療提供者側だけの観点だけではなく、受け手である患者・当事者の思いを酌み取っていただき、面的・量的整備だけではなく、一人一人の患者・当事者に合わせた、質を確保できるような整備の在り方、安心と希望をもたらすようなパートナーシップを組めるような検討及び議論の進め方にしていただけるとよいのではないかと思っています。
 すみません。ありがとうございます。
○田辺座長 ありがとうございました。
 何かレスポンスは。
 では、藤井構成員、どうぞ。
○藤井構成員 小阪構成員、ありがとうございます。お話を伺いながら、誤解があるのかなと感じたものですから、すみません。こんなに時間が過ぎている中で発言させていただきます。
 医師だけではなくて、多職種で外来なり在宅なりの診療に携わっていくという方向性に関しては、医師の役割を限定させるとか、そういう意味ではなくて、補助的にという意味合いが一部にはあるかもしれないですけれども、むしろ、積極的に多職種が医師と共に関与することで、その方のリカバリーに資するような医療をより提供できるようになるというものを目指しての話合いだったかなというふうに私自身は考えていました。
 というのは、医師だけが診察しても大丈夫な方ももちろんたくさんいらっしゃいますけれども、そうではなくて、医師には話がしづらいという方もいらっしゃいますし、ほかの職種から見た、その方の人となりであったりとかその方の抱えている課題であったりとか、そういう様々な視点から見た、その方の支援ニーズや思いを酌み取った上で診療に生かすということを目指すときには、医師だけでは難しいことが多いということを申し上げたかったのです。もともと、私が申し上げたことを誤解されたのであれば残念なので、そのように訂正させていただきますけれども、医師だけが診療するのでは足りない方がたくさんいらっしゃるという意味です。
 ただ、医師が本来であればもう少し時間をかけてお話を伺ったほうがいいと思われる場面はたくさんあるのですが、それに関しては、たくさんの患者さんに対応しなければいけないため、心ならずも短い時間で対応せざるを得ないことがあるのも事実ではあります。それに関しては医療提供体制を、より必要な時間をかけられるようにはどうしたらいいかということの観点も同時に考えていかなくてはいけないと思うのですけれども、多職種で関わることによって、より御本人が望むリカバリーに近づけるような包括的な支援や医療を提供できるということを目指すのが多職種連携であるというふうに考えていますし、そうでなくて、単に役割分担をするということは、むしろ、今の目指す方向性に逆行していると思います。一部の業務は役割分担はしながら、多職種が一緒に支援に取り組んでいくことを目指せるような体制をつくるという意味での多職種連携というふうに私自身は捉えていますし、恐らく、施策の方向性もそのような方向性で考えているのではないかなと思います。
 すみません。お時間をいただきましてありがとうございます。
○田辺座長 ありがとうございました。
 あとはよろしゅうございますか。
 どうぞ。
○上田構成員 大変大切な御意見をありがとうございます。
 外来精神科診療所をやっている医者としましては患者さんを支えているつもりでやっていまして、治療が3日や1週間で終わるようなものではなくて、割と数年かかる。数年、その方の人生に伴走する気持ちでやっているのは本当なことなのですけれども、ただ、毎回、点数のことを言ってしますが、そういう医療経済的な問題があるということと、限られた時間の中でいかに最善にやったらいいのかということを苦肉の策で精神科医自身が診療を行っているのは確かです。
 ただ、それが多職種連携になると、例えば自立支援医療をこう手続きしたらいいですとか、地域との連携はこうですみたいなことまで医者がお話ししていたら時間が大変なことになってしまうので、それはやはり専門の方にお任せするというのが患者さんにとってもよりよいと思いますし、そこは役割分担も悪くはないですし、医者としては治療だけ、薬だけ出しているのですというわけでは全くなくて、人生を支えているという気持ちで常日頃診ていることはぜひ御理解いただければと思います。
○田辺座長 では、さすがにお尻が危ないので、ここで終了させていただきたいと存じます。
 事務局のほうから何か連絡事項はございますでしょうか。
○新平課長補佐 本日はありがとうございました。
 次回の予定につきましては、皆様方と日程調整の上で改めて御案内させていただきますので、よろしくお願いいたします。
 以上です。
○田辺座長 それでは、本日は非常に充実した意見交換ができたと思っております。長時間お疲れさまでした。次回もどうぞよろしくお願いいたします。
 これで散会いたします。