第6回今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会(議事録)
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議事
○山川座長 それでは、定刻になりましたので、ただいまから「第6回今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会」を開催いたします。構成員の皆様方、お忙しいところお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。本日は田中伸明構成員と勇上構成員が御欠席となります。田中伸明構成員の代理といたしまして、日本視覚障害者団体連合より情報部長・総合相談室長の吉泉様にオンラインで御出席いただいております。よろしくお願いいたします。本日の研究会は、Zoomによるオンラインでの開催と会場からの参加の両方となっております。本日、会場には、倉知構成員にお越しいただいております。
開催に当たり、事務局から説明があります。
○原田障害者雇用対策課長補佐 事務局です。本日もZoomを使ったオンライン参加を頂いておりますので、簡単ではありますが、オンラインについて操作のポイントを御説明いたします。本日、研究会の進行中は皆様のマイクをオフとさせていただきますが、御発言される際には、画面上の「手を挙げる」ボタンをクリックし、事務局や座長から発言の許可があった後に、マイクをオンにして、必ず名前を名乗ってから御発言いただきますよう、よろしくお願いいたします。Zoomの操作方法につきましては、事前にお送りしましたマニュアルを御参照ください。会議進行中にトラブルがありましたら、事前にメールでお送りしております電話番号まで御連絡いただけますよう、よろしくお願いいたします。なお、通信遮断等が生じた場合には一時休憩とさせていただくこともありますので、御容赦くださいますようお願いいたします。オンライン会議に関する説明は以上です。
○山川座長 それでは、カメラの頭撮りがありましたら、ここまでとさせていただきます。
では、議事に入ります。前回の研究会から、ヒアリング項目ごとに構成員の間で議論を開始しております。前回は、常用労働者数が100人以下の事業主への障害者雇用納付金の納付義務の適用の拡大について議論いたしました。今回は2つ目の論点、精神障害者において、雇用率制度における「重度」の区分を設けることについて議論していただければと思います。まず、はじめに、事務局から資料1について御説明をしていただきます。その後、構成員の皆様から御意見を頂きたいと考えております。それでは、事務局から説明をお願いいたします。
○西澤障害者雇用対策課長 事務局の障害者雇用対策課長の西澤です。資料1に沿って御説明させていただきます。まず、表紙の次の2ページです。こちらは、皆様に御案内のとおり、今の障害者雇用率制度のカウントを図にしたものです。見ていただくと、身体障害、知的障害については、重度の、いわゆるダブルカウント、2のカウントがあります。他方で、精神障害の区分についてはダブルカウントという区分はなく、また、時間区分で見ますと、20時間以上30時間未満のいわゆる短時間労働者については、身体障害、知的障害の方は、重度でない方は0.5カウントとなっているところですが、精神障害の方については、当分の間の措置として1というカウントになっています。ここが違っており、この辺の所をどうするかという議論です。
次のページ以降は、これまでの経緯を載せております。まず3ページです。これは平成24年の研究会、その翌年の障害者雇用分科会の意見書です。精神障害への対象拡大の議論の中においても、ダブルカウントについては意見のあったところですが、そのときから検討課題として整理をされており、引き続き研究等を行っていくということがここでは指摘されておりました。
続きまして、4ページです。引き続き過去の経緯です。こちらは、直近の令和4年の法改正をする前の障害者雇用分科会の意見書です。短時間の週20時間以上30時間未満の方の取扱いについて、1カウントとする特例を継続することが適当であるという結論が書いてあります。その下の最後の所ですが、重度については、手帳との関連性が必ずしもあるのかといった様々な意見があり、調査・研究を踏まえて引き続き検討することが適当であるということで、このときも検討課題として整理をされております。今回、この流れを受けて議論をしていくということになります。
5ページです。本研究会の中でのこれまでの議論です。ヒアリングで出された意見で、まず、重度区分についての意見です。3点ほど記載してありますが、1つは、重度区分を検討すること自体が自然なことではないかという御意見です。ただ、手帳の区分でやるのではなく、何らかの判定をしたほうがいいのではないかといった意見。また、精神障害の特徴として波があるといったところがあるので、その辺の難しさがあるのではないかといった御意見もありました。短時間については、雇用推進への恩恵があるのではないかということで、維持・恒常化されるべきという御指摘がありました。
次のページです。これまで構成員の皆様に頂いた意見をまとめたものを抜粋しております。まず、検討すべき課題であるということ。一方で、知的、身体もあるのであれば検討は必要だが、そもそも前提として重度が必要なのかどうかというのも今後の課題であるといった御指摘。また、客観的な指標があればいいのだが、やはり波があるので難しいのではないかというところがありました。短時間のカウントについては、特例措置については安易に延期されることは望ましくないのではないかという御指摘もあった一方で、精神障害の方について短時間労働のニーズが高いので、維持・恒常化したほうがよいという御意見もありました。こちらが本研究会でのこれまでの御議論です。
7ページは更に遡りまして、身体、知的の重度区分がどうしてきたかというところです。7ページは少し古いので、用語も昔の用語を引用している所もあって恐縮なのですが、当時の審議会などの答申です。まとめて言いますと、身体障害も知的障害も、これを制度化されたときから重度の方への配慮ということで、ダブルカウントをしていたということです。趣旨としては同じような趣旨で行っていました。
8ページが身体障害の範囲や運用です。基本的に、身体障害の判断は障害者手帳で行っております。重度の範囲も、上の四角にありますとおり、一定の級に該当する方を判定しておりますので、基本的に障害者手帳の級で判定をしていることになっております。
9ページは、知的障害の範囲、重度の認定です。知的障害については、児童相談所等の機関でその判定を行うということになり、自治体のほうで療育手帳を出すことになっております。療育手帳の中で重度の判定をすることもありますし、JEEDの地域センターで重度の判定を行うこともやっております。地域センターでの判定については、知能検査での知能指数等を根拠として判定を行っております。
御参考までに、10ページはJEEDでの判定の年間件数、人数です。図の中の知的障害者判定という所で、1桁、2桁の所は、療育手帳をお持ちでない方を、知的障害の判定そのものを行っているケースです。重度知的障害者判定という所は、療育手帳をお持ちの方に対して重度かどうかという判定を行っているところで、こちらは2,000~3,000人程度です。11ページは知的障害者の全体的な数です。御参考までに、療育手帳の所持者数は110万人、ハローワークにおける新規求職者は、重度以外で毎年3万2,000人ぐらいの、いわゆる新規求職がありまして、その内、重度が4,000人台という数です。
続きまして、12ページは精神障害に関する現在の運用です。精神障害者の範囲は、精神障害者保健福祉手帳の所持者であること、統合失調症、そううつ病、てんかん等、疾患にかかっているかどうかが法律上の範囲です。雇用率制度の対象になるのは精神障害者保健福祉手帳の所持者です。したがいまして、この判定は精神障害者保健福祉手帳の所持で判定をしていることになります。
13ページが精神障害者保健福祉手帳の制度の概要です。こちらもほかの手帳と同じように、精神障害者保健福祉手帳の取得については、指定都市市長に申請して交付を受けるというものでして、級としては1級から3級で、1級のほうが重いという制度になっております。ほかの手帳と少し違うところとして、交付申請をして2年が有効期限になりますので、2年ごとに更新があるということになっております。人数としては140万人強で、3つの手帳の中で最も増加が大きいところです。
14ページは、手帳を持っている方の等級別の人数です。まず、手帳所持者数の推計値です。全体を見たときに、1級、2級、3級の方がどのくらいの割合でいらっしゃるのかですが、1級が15%、2級が55.8%、3級が3割弱という分布となっております。
では、就労を希望する段階に至る方がどのくらいの割合なのかを見ますと、その下に、ハローワークでの新規求職者の申込で見た割合がございます。これで見ますと1級が2.6%ということで、かなり全体との比率で比べると差があります。2級、3級はそれぞれ5割弱で同じくらいです。1級では、なかなかハローワークの求職では難しい方が多いというところがあります。ただ、このハローワークに求職されている方の中で就職割合を見ますと、実は手帳の級で、いずれも4割前後と、あまり大きな違いはありません。
さらに、JEEDの調査研究の中で、民間企業で働いている方の割合を見ましても、やはりハローワークでの求職と同じような割合になっており、1級の方は少ないということになっております。
今、触れましたJEEDの調査研究を15ページ以降で詳しく見ております。こちらは正に、令和4年の審議会の報告を受けて行った調査研究で、手帳の級ごとに働いている方の状況を見るという調査になっております。まず、調査の対象になった方の疾患別と手帳の級別で見たのが15ページです。グラフで見ますと、薄い青が3級、赤が2級、青が1級です。ぱっと見たところ、やはり1級の方が少ないということになっております。ただ、疾患ごとに結構割合は異っており、例えば、てんかんで見ると1級の割合が13%と、ほかの疾患より比較的高くなっているといったように、疾患ごとでも級のばらつきはあるというところです。
16ページ以降が、職場での雇用管理について企業に調査をした結果です。就労の困難性を量るために雇用管理の負担感というところを事業主の方に聞き、それを比較するという調査手法を取っております。16ページに掲げている項目、採用前の実習、担当者明示などの項目は、こちらの調査の中で、1級の方の負担感が相対的に高いという結果が出ております。
17ページです。同じような調査をいろいろな項目について行ったわけですが、逆に、1級の方の負担感が相対的に低いという結果が出た項目も、17ページの上の半分にありますように、就業環境の整備、勤怠の対応など幾つかありました。さらに、その下に、級であまり大差がないという項目も、援助者の配置、定期面談、その他ありました。全体として見ると、雇用管理の対応で、手帳の級で明確な差があるということではなかったということになります。
さらに、18ページです。就業上の課題はどうかというところを同じように聞いたものです。こちらも同じように、18ページの上のほうは、1級の課題感が相対的に高いという項目です。指示に対する理解力、職務遂行の正確さといった項目がある一方で、逆に、相対的に1級の課題感が低いというところもありました。このように雇用管理や就業上の課題を確認したところ、手帳の級で明確に差があるといったデータではなく、そこになかなか差が見出せないというのが、JEEDの調査研究の全体的な結論かと思っております。
19ページ以降は、短時間の就労についてのニーズなどを把握するために、定着率のデータなどを整理しております。まず19ページです。こちらは、それぞれのページで、2022年度と2023年度の定着率で、ハローワークのデータを取っております。19ページの障害種別で見ていただきますと、これまでも議論されてきましたとおり、赤の精神障害の方の定着率が、ほかの身体・知的障害と比べると相対的に少し低いという傾向です。
20ページは、精神障害の方の中で、労働時間別にどうかというところを見たものです。こちらも2022年度と2023年度で取っております。薄い緑がいわゆるフルタイム40時間の方で、青が20時間以上30時間未満、赤が30時間以上40時間未満です。フルタイムの定着率に比べると、やや短時間の勤務のほうが定着率がよいです。例えば、2023年度の6か月の所で見ますと、フルタイムが定着率59.95%に対して、20時間以上30時間未満が73%、30時間以上40時間未満が74%で、ここでギャップがそれなりにある状況です。
同じようなデータを、その他の障害で取ったものが21、22ページです。21ページのほうは身体障害で、精神障害に比べると、例えば、2023年度の6か月の所で見ますと、フルタイムが72%、それに対して20時間以上30時間未満が79%、30時間以上40時間未満が79%と、ギャップは余り大きくないことになります。さらに、知的障害の方について見た資料が22ページです。こちらも身体障害と同じようにフルタイムと短時間との差が精神よりあるかというと、ギャップはあることはあるのですが、一部、逆転しているといった所もあり、やはり、これらの障害と比べると、精神障害の方の所について見ると、相対的に短時間での勤務に定着率がよいことが見て取れます。
23ページです。こちらは5年に1回実施している障害者雇用実態調査のデータです。こちらのデータで見ても、3障害を比較しますと、精神障害の方のいわゆるフルタイムでない短時間勤務の割合が大きいという結果になっております。24ページは、では、短時間の就労者はどういう状況かというところです。雇用される方は全体的に増えていますので人数は増えているのですが、全体の短時間の方の就労の割合を取ってみると、真ん中ぐらいにある線グラフです。2割から3割という所で、必ずしも短時間の労働者の割合が増えたり減ったりは大きくはしていません。ある意味では、一定のニーズが引き続きあるのと、逆にその短時間のカウントによって、短時間の方がすごく増えているわけでもないということが見て取れるかと思います。
25ページです。こちらは、令和6年度からこれまでの短時間労働者のカウントに加えまして、いわゆる特定短時間労働者ということで、10時間以上20時間未満の方のカウントの、知的・身体の重度、精神の方の0.5カウントが施行されまして、初めてそれを把握したのが令和6年の障害者雇用状況報告になります。特定短時間労働者がどのぐらいカウントを占めていたのかですが、右側が雇用率のカウントベースの数字で、全体として見ると、赤い所が特定短時間労働者で、1%程度です。雇用率全体のカウントで見ると多くはないのですが、やはり、精神障害の方の短時間就業のニーズがありまして、人数ベースに戻して障害者区分で見ると、精神障害の方が5%強おられるということで、やはり、この制度改正で当初想定したようなニーズがあったのかなというところです。こちらはまだ最初の年の状況ですので、令和7年以降も見ていかなければいけないと思っております。
こちらを踏まえまして、論点を26ページに整理しております。重度区分や短時間労働者の算定特例についてどう考えるかということになります。最初の上半分の所の記載は、調査研究やデータのところを整理しております。統計別の就労状況を見ますと、やはり就労に至っている割合というのは1級の方は少ないのですが、例えば、ハローワークに来ている方の就職率を見ると、そこまで大きな違いはありません。JEEDの調査研究は、これは実際に働いている方ですが、そこについて見ても、就労困難かどうかというところについていうと、等級別で大きな特徴は見られませんでした。これらのデータでは、等級で就労困難性が大きく異なるということは、明確には見て取れないという状況です。
これまでも議論がありましたが、では手帳以外でどうなのかといったところでは、今回の調査研究では手帳の級でしかデータを取っておらず、ほかの手法があるのかというと、そこは見いだせていないという状況です。知的障害のような判定ができないのかといった御指摘もありましたが、やはり、知的障害のほうは判定や検査といったところが確立している部分がありますので、同じような状況にあるかというとそうではないというのが客観的なところかと考えております。
こうしたところで、論点を下半分に書いております。ある意味、こういう前提でどういった形で重度区分を設けられるかどうか、客観的には手帳では困難性が把握できず、更にそれ以外に手段が見いだせているわけではないという状況ではあります。あと、やはり障害特性をどう考えるかというところ。今まで、身体・知的のような重度がどうかということは検討されてきたのですが、障害特性を考えて、精神障害について、異なる扱いということもあり得るかどうかということを、どう考えるかということかと思います。
最後、短時間について書いておりますが、やはり、一定のニーズがあるということと、定着率について差があったりすることを考えますと、やはり、雇用促進に資している部分も大きいのではないかということで、こちらの算定を維持することについてどう考えるか。その維持を、また暫定的な特例として維持するのか、あるいは障害特性を踏まえた恒久的な措置と考えるかどうか、その措置の性格をどう考えるかということについて論点を立てさせていただきました。
最後、27ページです。前回の研究会で田中先生から、ドイツの重度判定のところについて御質問があり、少し調べたものです。ドイツも一応複数カウントというものがあります。3カウントを最大上限としてやっておりますが、やはり日本と制度の立て付けが異なっており、個別にかなり見ているという状況です。真ん中ぐらいに、どういう所を見ているかということで、仕事の能力、職場で実際に補助具を使っているかどうか、支援者がいるかどうかといったいろいろな所を見て、あとは、その方のこれまでの経緯なども含めて判定をしているということです。これは障害種別にかかわらず、こういうルールであるようですので、かなり日本と違う仕組みで、参考になるかと言われますと、少し立て付けが違うのかなということは見て取れるところです。こちらは参考までに付けさせていただいております。長くなりましたが、説明は以上です。
○山川座長 ありがとうございました。それでは、精神障害者において雇用率制度における重度の区分を設けることに関しまして、意見交換に移りたいと思います。毎回、お願いしていますが、御発言の際は挙手をしていただいて、お名前をおっしゃってから発言をお願いいたします。御質問、御意見等はありませんか。それでは、新田構成員、お願いします。
○新田構成員 使用者側、日本経済団体連合会の新田です。音声は大丈夫でしょうか。
○山川座長 大丈夫です。お願いします。
○新田構成員 御説明ありがとうございました。先ほど事務方から御説明いただいた2つの論点について、それぞれ意見を申し上げます。まず、精神障害における重度区分についてです。御説明いただいた資料の中で、JEEDの調査研究の内容を御紹介いただきました。その中で1級の負担感について相対的に高いという項目もあれば、低いという項目もあるなど、やはり精神障害における等級の認定は非常に難しいということを改めて実感したところです。身体障害や知的障害のように、ある程度制度化された形で、等級区分が認定されているものと違って、精神障害は障害認定を受けるときの精神障害者の方の状態や、それを判断される医師の方によって判断が異なるため、等級の認定は非常に難しいのだろうと思います。そうしたことからすると、精神障害において重度区分を設けるということは、非常に難しいのではないかというのが私の意見です。
2点目、現行の短時間の特例の扱いについて、1点目の重度区分とも関連しますが、重度区分は難しいということを踏まえると、精神障害において特定短時間、あるいは短時間の当事者の方々が一定割合いて、しかも短時間の方々の定着率がフルタイムより高いというデータもあることを考慮すると、この制度は少なくとも継続、できれば常態化していくことが適切ではないかと私は考えます。私からは以上です。
○山川座長 ありがとうございました。それでは、続きまして山口構成員、お願いします。
○山口構成員 こんにちは。愛知県中小企業団体中央会の山口です。説明、ありがとうございました。精神障害における重度区分を設けることについての意見を申し上げます。説明の中にもありましたとおり、精神障害者の方の重度区分の線引きは知的や身体の方と異なり、一見して分かりづらいところがあります。また、個人においても症状に波があるなど、基準の設定と客観的な判断が非常に難しいと思います。私のA型事業所でも過去に精神障害の方を雇用したことがあるのですが、症状がよくなっても障害に関する配慮やサービスを利用し続けて本人が主張する以上、客観的な判断も難しいため、しっかりと就労してもらえず疑わしい状況のまま雇用するといった経験をしました。統計では、精神障害者の方の就職率は増加傾向と御報告いただいていますので、まずは症状と就労の可能なケース、困難なケースの事例を多く集めて、障害特性に応じた客観的な基準の設定が必要であれば設定して、その上で重度の区分を設けることを検討する必要があるのではないでしょうか。
また、現在の週所定労働時間20時間以上、30時間未満の精神障害者の短時間労働者を1人とカウントする特例措置についてですが、精神障害の方の雇用は特に個人の状況に応じた配慮が重要で、当社のような場合もあるなど、雇用する側にとってはほかの障害種別の方よりも難しさを感じる部分も多く、採用に二の足を踏む所もあります。一方で、就労を希望する精神障害の方においては、症状が落ち着いているときは十分な就労能力や意欲はあるのだろうと思いますので、事業所、就労希望の精神障害者の方、双方にとって現在の特例措置は一定の就労促進効果があるのではないかと思います。そう考えますと、当面はこの特例措置を維持することが適当ではないでしょうか。私からは以上です。
○山川座長 ありがとうございます。それでは、続きまして、清田構成員、お願いします。
○清田構成員 ありがとうございます。日本商工会議所の清田です。今のお二方と全く同じ意見となってしまいますが、発言をさせていただきます。重度判定のダブルカウントについては、受入れ側の事業主の負担感がどの程度、差があるかという点はある程度重要であると考えます。その上で、等級別で見たときの負担感について大きな差が見られないと受け止めています。また、ヒアリング等の資料において、精神障害の方は体調や症状に波があるということが多い中で、重度の線引きは難しく、区分設定は適さないという御意見があったことも踏まえますと、やはり重度区分の設定、ダブルカウントについては、重度を客観的に把握するための判断、就労困難性との関係について引き続き調査研究を行っていくことが、現時点では妥当なのではないかと考えます。
2点目の短時間勤務の1カウントの特例について、こちらも週の所定時間別の定着率を見ても明らかに差が生じていることを踏まえますと、引き続きこの措置を継続することが適当であると考えます。私からは以上です。
○山川座長 ありがとうございました。それでは、続きまして、新銀構成員、お願いします。
○新銀構成員 全国精神保健福祉会連合会の新銀です。御説明ありがとうございます。私からは2点申し上げます。1点目は重度区分を設けることについてなのですが、障害の特性や雇用現場の実態を踏まえて、この重度区分を設けるということはやはり画一的な対応であると考えます。かえって当事者の多様な状態像や回復可能性を無視した制度設計につながる懸念を持っています。精神障害者は、状態の変動性や環境への依存性が強く、重度、軽度といった静的な区分よりも、動的な区分今ここでの状態像と必要な支援の組立てによって、支援の実行性が左右されます。支援制度は支援の必要性に応じて柔軟な評価や支援設計であるべきであり、重度区分はその方向性に逆行しているのではないかと考えます。よって精神障害者における障害者雇用率制度への重度区分の導入については、強く反対します。
それと、もう1点ですが、23ページにあります精神障害者の平均勤続年数は、ほかの障害に比べて約半分という結果が出ています。これはやはり指示に対する理解力、正確さ、症状の不安定さというものが課題になっているのが要因と考えています。勤続年数が他障害に比べて少ないというのは、精神障害者の経済的不安定さを物語っています。他障害のように30時間のフルタイムを目指すということではなくて、やはり20時間から30時間でもよいといった短時間労働にメリットを作るのが望ましい。精神障害者である場合は、その20時間から30時間の1人カウントということが、やはり適当ではないかと考えています。むしろ精神障害の場合、超短時間労働というものも検討するに値するのではないかと思っています。以上です。
○山川座長 ありがとうございました。続きまして、田中構成員、お願いします。
○田中(克)構成員 今までの皆様方の御意見とほとんど一緒ですが、職場の中で精神障害者を支えている立場から、ちょっとお話させていただきたいと思います。ドイツの制度についても詳しく調べていただきまして、ありがとうございました。私もドイツの先生にちょっとお伺いしたのですが、あの基準の中で少なくとも30%の低下があるとあったので、その評価に関して何か医学的な基準などがあるのかと聞いたのですが、やはりそれはないらしくて、結構、主観的な方法で決めているのではないかなということでした。精神障害に関して、特に就労に関しての重症度区分というのは難しいと思います。お話にもありましたように、波ももちろん疾病の性質上ありますが、環境がちょっと変わっただけで、状態は随分変わってしまう。管理監督者が変わっただけでも、随分違ってしまいます。1級の精神障害者保健福祉手帳をお持ちの方も就労されていますが、臨床的に1級というと食事も含め日常生活においてほぼ常時支援が必要な状態が1級の状態であって、そういう方が就労しているということは、ある時期に1級を取られた方でも大きな波があって、就業できるまでに回復されているのだろうと思います。実際きちんと更新の度に評価をすると、随分変わるのです。つまり、精神障害者の状態は非常に変化しやすいことから、ある一定程度の安定的な就業能力を含めた重症度を判定することは、医学的にも非常に難しいと考えているところです。
あと、カウントについてですが、精神障害者の定着率が低く、その中でもフルタイム労働者の定着率が短時間労働者に比べて低いにも関わらず、短時間労働者の割合は増えてこないという現状があることを考えると、精神障害の雇用率の向上、定着率の改善のためには精神障害者の短時間労働をより積極的に支えていくというところが大事だと思いますので、これは特例措置に関しては延長というよりも、恒常化を考えてもいいのではないかと思います。
○山川座長 ありがとうございました。ほかはいかがでしょうか。倉知構成員、お願いします。
○倉知構成員 九州産業大学の倉知です。意見を述べさせていただきます。他の障害、身体障害、知的障害の所に重度の区分があり、維持されているということは、やはり精神についても重度を検討する必要があるだろうと思います。今、特例でやっていますが、これを安易に延長するというのは問題の先送りなので、そろそろ結論を出すべきではないかと考えます。では、どうするかということですが、1つが知的障害の重度判定の仕組みという話もあったと思いますが、この仕組みはIQと手指の器用さと社会生活能力を判断して重度かどうかを見るということなので、精神障害については妥当性がないと思っています。では、手帳の等級で重度かどうかを判断するかというと、先ほどの報告もあったようにハローワークの就職割合というのも手帳の等級に差がない。では、1級、2級を重度にするかとなると、精神の手帳を持っている人の7割は重度になってしまう。ハローワークに登録している方の過半数も重度になってしまう。働いている人の半分ぐらいは重度になってしまう。これもほかの障害が2割弱ですから、ちょっとこれも違うかなと思います。そうなると、別のものを考えなくてはいけないのですが、私の考えですが、短時間雇用の方が多いというのが、精神障害の特徴としてあると思います。これは恐らく身体的、精神的な疲労の問題で短時間になっているのだろうと思います。つまり、短時間雇用で働いている人というのは、そもそも精神的、身体的疲労が非常に高い。これは重度として考えられないかなと私は思っています。ですので、本人が週30時間未満の短時間雇用を希望している、そして短時間で働いている、この方を重度と認定できないかなと思っています。
もう1点、疲労以外の理由で短時間の方もいるかもしれない。では、そういう方を除かなければいけないとしたら、私は主治医の意見書の中に疲労という項目を入れて、週30時間未満の労働が適当であるなど、こういう形で主治医の意見と本人の疲労度から見る短時間雇用の希望、これの両方あるものを重度障害者と考えていいのではないか。しかも、短時間雇用というところでの重度障害という限定になりますが、そういう形で決めていいのではないかなと思っています。結果的には現状と変わらないということですが、安易に延長するのではなく、きちっと決めて短時間で本人が希望して働いている方、主治医も疲労から見て短時間が適当という方を重度精神障害者と考えて、短時間労働については重度扱いする。こういうのではどうかと思いました。私からは以上です。
○山川座長 ありがとうございました。それでは渡邊構成員、お願いします。
○渡邊構成員 筑波大学の渡邊でございます。私も本日の論点2つについて、それぞれ意見を述べさせていただきたいと思います。まず、精神障害における重度区分を設けることについてですが、精神障害においては手帳における等級と就労困難性が直結する関係性にないということについて、これまでも多くの御意見を頂いていたかと思います。また、現行の障害者雇用率制度の下では、就労困難性に基づく評価が求められているところでもあります。さらに、精神障害に関してはこれまでの御意見にもありましたが、体調や症状に波があることが多いとされていますので、適切に就労困難性を判断するには、少なくとも個別具体的に評価を行うことが必要であるように思います。残念ながら、このような判断を行う基準や体制が十分に整っているとは言えない現在の状況においては、雇用率においてダブルカウントを行う重度区分を設けることは難しいのではないかと考えております。
次に、精神障害者の方の週所定労働時間20時間以上30時間未満の雇用率算定特例についてですが、この雇用率算定特例制度は、その時間に関する職場定着率が相対的に高く、また、職場定着を進める観点から有用であるとの考えに基づいて継続されてきたものと理解しています。そして、この算定特例については精神障害の場合には短時間労働の必要性が高いこと。短時間労働ほど事業主の雇用管理の負担が重いことから、特例ではなくて恒常化されるべきとの御意見が出されているところです。ただ、直近の定着率に関する資料などを見ますと、例えば12か月越えの週30時間以上の定着率は微増している反面、週20~30時間未満の数値に関しては低下傾向であることが示されています。また、新たに導入された週10時間以上20時間未満の特定短時間特例制度との関係についても、考慮する必要があるように思われます。したがって、週20時間以上30時間未満に対する雇用率算定特例については、導入当初の定着率促進といった目的から考えますと、現状では恒常的措置と判断するには時期尚早ではないかと思われまして、今しばらくは特例のまま維持するほうが望ましいのではないかと思います。
そして、その間に定着率の動向とか、短時間労働ほど事業主の雇用管理負担が重いといった事実について認められるのかなど、雇用率上の特別な措置の必要性を根拠付けるものがあるのかどうかについての調査を進めることが望ましいと思いました。私からは以上です。
○山川座長 ありがとうございました。それでは、眞保構成員、お願いします。
○眞保構成員 法政大学の眞保です。ありがとうございます。精神疾患、精神障害は、疾病と障害の状況がプラスの方向にもマイナスの方向にも変化することが指摘されています。御本人の素因だけではなくて環境からの影響を受けて症状が変化しやすいわけです。実務上でも御本人の状況が良くなってきて、雇用を目指して主治医の下で薬の置換えや減薬をしている中で、一時的に状況が悪化したり離脱症状が生じたりすることもあります。この一時的に悪化しているときに、もし就業上の困難度を判断すれば「重度」と判定されるかもしれません。状態が変化するという特性があるにもかかわらず、一度「重度」と判定されると恒久的にダブルカウントを可能とする運用ですと、事業主の方と障害のある御本人の双方に、仮に状況が好転したとしても重度の判定を維持するインセンティブが働くことが想定されます。そうであれば、就業上の困難度や事業主の負担の程度が合理的に反映された形で雇用率制度を運用できないのではないかと考えます。したがって、重度という区分を設けることについては、運用上の制度設計などを十分検討する必要があり、現状では慎重に考えなければならないと思っています。
それから、短時間労働者の算定特例についてどのように考えるかですが、平成4年改正に当たっての重度知的障害のある方に関する議論の中で、事業主の負担は相当に大きい状況にあることからダブルカウントが導入されています。精神障害のある方の算定特例を設ける際の議論においても、短時間ほど事業主の雇用管理負担が重いという指摘があったと記憶しています。算定特例が精神障害のある方の雇用の促進に寄与している実態が今回の資料でも見受けられますので、特例を維持したほうがよいと考えますけれども、この特例を恒久化するかどうかは労働時間と事業主負担、あるいは雇用管理上の負担との関係を調査した上で議論するのはいかがかと考えています。以上です。
○山川座長 ありがとうございました。ほかに御意見等はございますか。本日、御欠席の勇上構成員から書面で御意見を頂いておりますので、御紹介いただけますか。
○西澤障害者雇用対策課長 勇上構成員からの御意見を御紹介させていただきます。事務局の障害者雇用対策課長の西澤です。読み上げます。神戸大学の勇上です。本日は学務のため研究会への出席が叶わず申し訳ありません。本日の2つの論点について意見を申し上げます。まず、雇用率制度において精神障害の方に重度区分を設けることについて、その問題意識には賛同いたしますが、依然として技術的な問題があると思います。精神障害者手帳の等級別状況による分析結果を見ますと、1級と2級、3級の間には求職活動をするかどうかというハードルを超える割合に大きな違いがあります。そのため、負担感や課題に等級間の目立った差がないという就業者データから得られた結果も、幾分、割引いて考える必要があると思います。そもそも1級は就業が極めて困難である可能性があり、ほかの障害種別の重度に相当するものとして、分析の視点に用いることは妥当ではないかもしれません。したがいまして、精神障害者の方における就労困難性の違いについては手帳の等級以外の属性や情報で捉えられないか、引き続き検討が必要だと思います。
もう1つの論点である、20時間以上30時間未満の短時間の精神障害者の雇用率算定特例については、実態として定着率が高いグループに関するものであると理解しました。私自身は、今、見直しを進めるべきという積極的な意見はございません。以上です。
○山川座長 ありがとうございました。ほかに御意見等はございますか。事務局から。
○西澤障害者雇用対策課長 説明の補足です。事前に1点、御質問を頂いていまして、20ページの精神障害の方の定着率で、これは手帳を所持している方全体のものですけれども、手帳の等級で定着率を見たものがあるのかどうか、事前に御質問を頂いていました。説明が漏れたのですが、このデータ自体は、これをクロスするときに手帳の級まで結び付けていないので、このベースでは分からないのですが、過去、2014年ぐらいにJEEDの調査研究で1級と2級のグループと3級を比較したものがございます。そのときのデータでは手帳の級で定着率に有意な差はなかったという過去のものはございます。ですから、その御質問に対しては、このデータでは分からないのですが、今、手持ちのデータで手帳の級で見ても定着率に差があるデータは把握していない状況になります。補足させていただきました。
○山川座長 それでは、既に御発言された方々も含めて言い残しや補足、その他新たな御意見でも結構ですが、何か御発言はございますか。田中構成員、お願いします。
○田中(克)構成員 先ほど、重症度の評価として疲労に着目するのがいいのではないかという御意見を頂きました。ただ、制度運用で使うには非常に不確定なところがあって、疲労自体、慢性疲労症候群などの扱いもそうですけれども、正に主観によるものであり、変動も非常にしやすい。就労に関することは意欲や情緒の安定性、対人関係の緊張関係など様々なものがあって、ある一定程度の状態を示す尺度として、疲労を中心にするというのは臨床的にも難しいと感じています。
○山川座長 ありがとうございました。ほかにございますか。倉知構成員、お願いします。
○倉知構成員 田中構成員、ありがとうございました。九州産業大学の倉知です。私もそこはすごく気になっているところで、本人が主観的に疲れてしまって30時間以上働けないというのは、すごく大事なことではないかと思っています。30時間以上働きたいけれども、30時間未満にせざるを得ない状態で働くというのは、何らかの障害のせいで重みがあるのではないかと捉えていいのではないか。ただ、もう1つ、それ以外で短時間を希望する方もいる可能性があるので、プラスして主治医の意見書で主治医の判断としても適当という形でいけば、彼らを救うことができるのではないか。こんなふうに考えたのですが、いかがでしょうか。
○田中(克)構成員 田中です。よろしいでしょうか。
○山川座長 田中構成員、何かございますか。
○田中(克)構成員 そうですね、おっしゃることはもっともだと思います。ただ、疲労感が精神障害全体の重症度を反映するかどうかには少し疑問を感じます。症状や訴えはいろいろな種類があるわけですけれども、中でも疲労は比較的広い範囲の症状概念であり、委員からもお話があったように非常に多変量で、様々な要因で変動しやすいところがありますので、精神障害の重症度尺度の評価指標にするのは難しいと感じています。
○山川座長 ありがとうございました。よろしいでしょうか。ほかに何かございますか。貴重な御意見を頂き大変ありがとうございました。特に進行役としてまとめる必要もないのですが、第1の重度の区分については、少なくとも他の障害と同じような意味での重度というのは難しいという御意見が、相対的に多かったかと思います。ただ、新たなことを引き続き何か検討するかどうかについては、そのような御指摘も複数あったと把握しています。また、現在の20~30時間の特例については、比較的、評価すると言いますか継続という方向が多かったようですが、その中で恒久化するかというご指摘と、さらに当面の措置として続けた上で何か検討する事項があるのではないかという御指摘、これは双方あったと把握しているところです。あと、個人的な感想で別に方向性ということではないのですが、重度の区分の意味はどこにあるのかというと、政策的には正にダブルカウントという効果に結び付けるところで議論されていると思います。その効果に結び付けるところの意味が、これまでの歴史的な経緯ですと負担が重いからダブルカウントということだったかと思います。精神障害についてはそれもありますけれども、さらに障害特性のような観点で短時間就労のほうが効果があると言いますか、障害者雇用促進の上での効果が上がるかどうかという、負担とは別の観点もあるような感じがします。もちろん、短時間でも負担ということはあるわけですが、負担の問題と雇用促進の効果の問題と、その2つを考慮して、また、精神障害の定着策にはどのようなものがあるかを特性に応じて検討するなど、いろいろな視点が考えられるのではないかと個人的には思ったところです。事務局から何かございますか。
○西澤障害者雇用対策課長 特に補足はございません。
○山川座長 それでは、時間はまだあるのですが、特段、皆様のほうで追加がなければ本日はこの辺りで終了とさせていただきたいと思います。本日、いただきました御意見を踏まえまして、改めて今後、具体的な議論につなげていけるように事務局で対応をお願いいたします。次回の日程について事務局から説明をお願いします。
○原田障害者雇用対策課長補佐 事務局です。次回、第7回の開催は、皆様に確保いただいている日程の中で調整し、追って御連絡させていただきます。以上です。
○山川座長 それでは、これをもちまして本日の研究会は終了いたします。皆様、お忙しい中、大変ありがとうございました。