2025年5月23日 第198回労働政策審議会労働条件分科会 議事録

労働基準局労働条件政策課

日時

令和7年5月23日(金) 14:00~16:00

場所

厚生労働省専用第22~24会議室
(東京都千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎5号館18階)

出席者

公益代表委員
川田委員、神吉委員、黒田委員、原委員、水島委員、山川委員
労働者代表委員
亀田委員、櫻田委員、冨髙委員、松田委員、水野委員
使用者代表委員
鬼村委員、佐久間委員、佐藤委員、鈴木委員、田中委員、鳥澤委員、松永委員
事務局
岸本労働基準局長、尾田審議官(労働条件政策、働き方改革担当)、佐々木総務課長、澁谷労働条件政策課長、五百籏頭労働関係法課長、田上労働条件確保改善対策室長、中島労働条件政策課長補佐、下田労働条件企画専門官

議題

労働基準関係法制について

議事

議事内容

○山川分科会長 それでは、定刻になりましたので、ただいまから第198回「労働政策審議会労働条件分科会」を開催いたします。
 本日の分科会は、会場からの御参加とオンラインでの御参加の双方で開催とさせていただいております。
 本日の委員の御出欠でありますが、労働者代表の椎木盛夫委員、藤川大輔委員、古川大委員、使用者代表の兵藤美希子委員、公益代表の安藤至大委員、首藤若菜委員が御欠席と伺っております。
 カメラ撮りはここまでとさせていただきます。
 では、本日の議事に入ります。本日の議題は「労働基準関係法制について」となります。
 では、事務局から資料№1「集団的労使コミュニケーションの在り方(過半数労働組合・過半数代表者等)について」につきまして、説明をお願いいたします。
○労働条件確保改善対策室長 事務局でございます。
 資料№1を御覧ください。「集団的労使コミュニケーションの在り方について」でございます。こちらの資料でございますが、先般御報告いたしました労働基準関係法制研究会の報告書の中で、「労使コミュニケーションの在り方について」というところで示されました論点に沿いまして、まとめたものとなっております。
 まず、1ページから3ページまで現行の労働基準法における過半数代表についての規定の概要でございます。
 1ページの上から、過半数代表の役割、過半数代表者の要件、過半数代表者に対する配慮・不利益取扱いの禁止、こういったものに関しまして、現行の法律上でどう規定されているかというものでございます。法律上では、それぞれ手続の中で過半数を代表する者と書面による協定をしなければならないという規定となっておりまして、その細かい部分については省令等々で定められているというものでございます。
 2ページでございます。過半数代表者の選出や使用者の配慮に関しまして、どのような手続なのか、どのようなものが含まれ得るのかということに関しまして、通達等におきまして、お示ししたものの例を出しております。
 3ページでございます。過半数代表者の選出、使用者の配慮といったものに関しましては、これまでも労働政策審議会の中で御議論いただいてきたものでございます。平成27年の建議や平成29年の建議の中でも、過半数代表者の選出に関する課題や過半数代表者が業務を円滑にできるような配慮といったものに関しまして御指摘いただいているものを挙げたものでございます。
 4ページから、まず、労働組合に関する各種データでございます。過半数代表という制度におきましては、過半数組合があれば過半数組合が代表となり、過半数組合がない場合に過半数代表者を選出するという制度となっておりまして、まず、基本である労働組合によるコミュニケーションということでデータをお示しするものでございます。4ページは、労働組合の組織率でございます。近年、じりじり下がってきているという状況で、令和6年の労働組合の推定組織率は16.1%となっております。
 5ページは、労使関係に関する認識についての労働組合の影響でございます。図1、図2、図3と、労働組合がある会社、ない会社におきまして、それぞれ聞いたものでございます。
 まず、図1の労使関係が安定的であるかに関しましては、「安定的に維持されている」というお答えは労働組合があるところのほうが割合が高くなるという状況でございます。
 図2は、労使コミュニケーションで重視する内容、具体的にどのようなことを重視してやっているかというものでございます。経営に関する事項、賃金・労働時間等労働条件に関すること、福利厚生に関することといった、具体的な中身が入り得る可能性の高い項目につきましては、特に労働組合があるところのほうが重視しているという割合が高くなっております。
 図3は、労使コミュニケーションが良好であるかどうかというものでございます。こちらに関しましても、労働組合があるところ、ないところを比較しますと、労働組合があるところのほうが「良い」と答える割合が高くなっています。その中でも労働者に関しましては、労働組合に加入している労働者のほうが「良い」と答える率が高くなる傾向となっております。
 6ページは、労働組合の組織率に関しまして、規模別、産業別に示したものでございます。特に規模が影響しておりまして、大企業ほど労働組合がある率は高くなっております。
 7ページは、先ほど出てまいりました業務改善や労働条件等、どういった内容を重視するかというものに関しまして、より詳しく、企業規模、性別、就業形態ごとに回答をクロスしたものでございます。
 8ページは、企業内労組への加入状況でございます。企業内労組がある事業場の労働者に対しまして聞いたものでございます。「企業内に組合があるが加入していない」と答えた労働者は全体で33.8%でございます。19.9%はそもそも加入資格がないということでございますが、13.9%は、加入資格があるけれども、加入していない。その理由としては「労働組合や組合活動に興味がない」、「加入するメリットが見出せない」というものが高くなっております。
 9ページは、ここまで出てきたデータについて企業規模別等々のクロスをさらに詳しくしたものでございます。
 以上、労働組合がある事業場での労使コミュニケーションの状況でございますが、次の10ページにありますとおり、組合があるかないかということでいいますと、「組合がある」と答えた事業場は12.6%、そのうち「過半数組合がある」と答えたところは65.5%、全体の8.3%でございますので、過半数組合のある事業場以外の事業場では過半数代表者を選出して各種手続を行うということとなっております。
 11ページは、過半数代表者の選出方法について調査したものでございます。2007年と2018年の調査でございます。過半数代表者に関しましては、民主的な手続で選出してくださいとお願いしているところでございますが、選挙や信任投票といったような手続を取っているところもあれば、何らかの会の代表者が自動的になるケースや会社側が指名するといったケースも、減ってはきているものの一定数あるという状況でございます。
 12ページは、過半数代表者の選出方法に関しまして、信任手続をやっている場合、その信任の候補者をどのように定めているかと聞いたものでございます。この場合も、半数ちょっとの事業場で会社側が信任投票の候補者を決めているというものでございます。これはあくまで候補者決めでございますので、決めた候補者に対して全従業員から民主的に信任がなされれば、特に法律上問題になるものではございません。
 13ページは、過半数代表者の職位別の選出状況でございます。過半数代表者は一般の従業員の代表でございますので、一般の従業員、係長、主任、班長クラスといった職位の方から選ばれていることが最も多いものでございますが、一部、工場長、支店長クラス、部長クラスといったような高位の従業員から選ばれているケースもございます。そういったケースで職位別の選出方法を見てみますと、使用者が指名しているケースの割合が高くなっているという状況がございました。
 14ページは、過半数代表者の有無と過半数代表者を選出しなかった理由です。左側は、過半数代表者の選出状況です。当然、手続等がないケースもありますので、過半数代表者が「いない」と答えた事業場もかなりの割合あるというところで、過半数代表者を選んでいるところが半数ちょっとという結果でございます。右側は、過半数代表者を選出しなかった理由でございます。労使協定、36協定を含むものですが、そういったものに関する手続が発生しなかったからというものが多い回答となっております。
 15ページは、過半数代表者の選出の頻度でございます。左側の図にありますとおり、多くの事業場で過半数代表者が必要な手続を踏む都度選んでいるという答えでございますが、任期を決めて選出しているというところも18.9%あったところでございます。右側にありますように、大規模な事業場でその割合がより高くなっている結果となっております。
 16ページは、過半数代表者の選出開始の周知の範囲ということで、過半数代表者を選出するに当たって、従業員にこれから選出を開始するということを周知しているかというものでございます。76.5%が適用事業場に周知していますが、残りのところで「周知していない」、「一部の事業所に周知」、これは複数事業場を一括でやっているようなパターンですが、そういったところもあったというものでございます。この範囲に関しまして、企業の経営形態別や、どういった事業場でなされているかをクロスしたものを右側に掲載しております。
 17ページは、過半数代表制度の運用状況ということで、具体的にどのような手続で過半数代表者を選出しているかというものでございます。「手続きを行ったことがある」が全体では54.1%、内訳を見ますと、事業場規模が大きいところがより高くなっています。この中で行った手続として多いものは、いわゆる36協定や就業規則の意見聴取となっております。
 18ページは、過半数代表者とそれぞれの手続のときにどのような形で意見のやりとりをしているかというものでございます。左側は、やりとりの方法でございます。多くの事業場で対面でやりとりをしているというお答えでございますが、一部、書面や電子メールでやりとりをしているというような事業場もあったという結果でございます。右側は、一回の手続に当たり、どれぐらいの回数の話し合いをしているかと聞いたものでございます。ボリュームゾーンは1回もしくは2~3回のところでございますが、事業場規模の小さいところでは1回で済ませているケースが多く、事業場規模の大きいところでは2~3回話し合いをしている傾向が強いという結果となっております。
 19ページは、過半数代表者の人数でございます。過半数代表者は基本的には1名選出するということが条件となっておりますが、場合によっては複数選出するというようなケースもございます。それが左側で、事業場規模が大きいところがメインでございますが、一部の事業場で2名以上、過半数代表者を選出しているというケースがございます。その理由といたしましては、図2と図3でございます。従業員数が多く、1人では負担が大きいというのが32.7%ですが、その他、各事業場の状況に応じてそういったことをやっているというものがございます。自由記載欄にありますように、例えば営業社員と事務社員で労働時間帯が違うので、それぞれに選んでいるというケース、独立性のない事業場からも選出していたというようなケースなど、それぞれの事業場の事情に応じてこういったことをしているという結果でございます。
 20ページでございます。こちらの調査に関しましては、私ども厚生労働省に行政モニターとして登録していただいている方に聞いたものでございます。全体登録者は450人で、その方々に「過半数代表者になったことがありますか」といった質問をさせていただいたものでございます。回答いただいたのは407名の方です。「過半数代表者になったことはあるか」に関しましては、10.6%の方が「ある」とお答えになりました。過半数代表者になったことがない方のうち、過半数代表者が誰であったか知っていたかに関しては、おおよそ4分の1の方が「知っていた」、残りの方は「知らなかった」あるいは「過半数代表者がどういうものか知らなかった」という結果となっております。
 過半数代表者としてどのような職務を行っていたか、これは、なったことのある方と誰がやっていたかを知っている方に聞いたものでございます。一番多いのは、やはり36協定等々の労使協定の締結、次いで就業規則の作成・変更に伴う意見書の記載ですが、一部、労働条件の引き上げに関すること、その他社内会議への出席といったような法定以外のことをやっておられる方もいたという状況でございます。それを行うための具体的な活動というところでは、「従業員の意見を集めた」、「関係する法律や制度を調べた」が多かったところでございます。また、20.4%の方は「特に何もしなかった」というお答えもありました。
 過半数代表者として会社側と十分な協議をしたかというものでございますが、「十分な協議・意見交換等を行った」という方が17.5%、「十分ではないが一定の協議・意見交換等を行った」という方が40.9%、残り41.6%の方は「協議・意見交換等は全く行わなかった(書類に署名・押印するだけであった)」という回答となっております。
 21ページは、過半数代表者としての職務に関しまして、負担があったかどうかという質問でございます。負担が「ある」というお答えが46.0%、「ない」というお答えが40.9%でございました。負担だった点を自由記載で書いていただいたものを列挙しております。例えば意見集約に関していえば、「意見の違う従業員全員の意見を集約することが負担だった」というお答え、あるいは通常業務との兼ね合いということであれば、「通常業務に加えて、過半数代表者の職務が追加となるので時間のやりくりが負担そうだった」、こういったお答えをいただいたというものでございます。
 続いて、22ページから29ページまでに関しましては、JILPTにおきまして調べたものでございます。労働組合がない企業において具体的にどのような労使コミュニケーションを行っているのかということで、やや好事例のような形で、しっかりコミュニケーションを行っている事例について集めたものでございます。
 例えば22ページの企業であれば、安全衛生委員会の中で様々なことを議論し、また、その議論の内容等々を全従業員が確認できるようにしているという事例でございます。このほか、各企業それぞれ自社の状況に応じて様々な形で従業員とコミュニケーションを取ってやっているというような事例を29ページまで列挙しているものでございます。
 30ページは、諸外国における従業員代表に関してどのような活動保障をしているのか、身分保障をしているのかということも含めまして、規定を比較したものでございます。アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、日本ということで、従業員代表の設置に関する規定、費用負担、選出手続といったものに関してこのような規定があるというものを比較しました。
 以上、過半数代表に関する選出、運用に関する関係の資料でございます。
 31ページに関しましては、研究会報告書の中でもありました複数の事業場での一括手続に関する図表を抜き出したものでございます。原則として労働基準法の適用範囲は事業場でございますので、事業場ごとに労使協定を結ぶということでございますが、その過程における話し合い等々に関して集まってやることもできるということを示したものでございます。
 32ページから参考資料でございますが、32ページは、過半数代表制等に関して今回使わせていただきました各種調査でございます。
 33ページから35ページまでは、規定を集めたものでございます。今回の議論は、労働基準法等の労使協定等々の手続を行う際の過半数代表、過半数組合に関しての御議論となりますが、組合に関しては労働組合法の中でも様々規定がございます。特に使用者からの配慮ということであれば、いわゆる不当労働行為に関する規定との兼ね合いも見なければならないということで、関係の条文、通達、そういったようなものを参考につけております。
 36ページは、労働基準法における組合または労働者の代表が関わる手続ということで、労働基準法の中で過半数代表というものが出てくる条項がどこにあるか、それぞれ協約なのかどうなのかを含めまして、列挙しております。
 36ページは労働基準法の中のみでございますが、37ページから、労働基準法を含めて各法律で過半数代表が関与する制度がどれぐらいあるかを並べたものでございます。労働基準法のみならず労働関係法令であれば、例えば育児・介護休業法や賃金支払確保法、様々な法律の中で過半数代表というものが規定され、活用されているという状況になっておりますので、その辺りがどこまで広がっているのかを一覧できるようにしたものでございます。これが41ページまで継続しております。
 42ページから43ページにかけて、事業主に対して、労働者に対する労働条件明示等々、書面や文書等でどういったものを示しなさいとなっているか、そういう通知等を規定している法律の例を並べたものでございます。
 以上が資料のメインでございまして、44ページから48ページまでが労働基準関係法制研究会の報告書の中で労使コミュニケーションについて扱った部分の概要でございます。今回、この報告書の中で示されました論点の流れに沿って資料も用意しております。こういった論点について御議論いただければと考えているところでございます。
 参考資料№1に関しましては、これまでも配布しております実態調査結果について置かせていただいているものでございます。
 資料としては以上でございます。御議論をよろしくお願いいたします。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 ただいまの事務局の説明を踏まえまして、本日の議題であります集団的労使コミュニケーションの在り方について議論していきたいと思いますけれども、この集団的労使コミュニケーションというテーマは非常に広範な論点が含まれます。大きく分けると、労働組合による労使コミュニケーション、過半数代表者の適正選出と基盤強化、それから、若干細かいことになりますが、労使協定、労使委員会等の複数事業場での一括手続などのテーマに分けられるのではないかと思います。
 本日は、その中で比較的大きなトピックになります労働組合による労使コミュニケーション、過半数代表者の適正選出と基盤強化、この2つについて議論いたしたいと思いますが、それでいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
(委員首肯)
○山川分科会長 本日、議論の積み残しがありましたら、また、最後の複数事業場での一括手続に関するお話につきましては、後日改めて御議論いただくということでお願いいたしたいと思います。
 まず、労働組合による労使コミュニケーションについて御質問、御意見等ありましたらお願いいたします。オンライン参加の委員の皆様方におかれましては、御発言の御希望があります場合にはチャット機能を用いて御連絡をお願いいたします。御質問、御意見等ございますでしょうか。
 冨髙委員、お願いします。
○冨髙委員 ありがとうございます。御説明いただきました。
 今日は集団的労使コミュニケーションがテーマということでございますけれども、労働側としましては、その中核的担い手は労働組合であるということは改めて申し上げておきたいと思います。時代や働き方は変化していますけれども、いまだに労使の交渉力というのは厳然たる格差があると考えております。そうした中で、労働組合は、労働三権を背景として、労使対等の立場で協議・交渉を行うために労働者が自主的に団結した組織であり、集団的労使コミュニケーションの中核的な存在と考えているところでございます。
 その観点で、本日の資料を拝見しますと、4ページから11ページには組織率のデータがございますが、基本的にほとんどが過半数代表、特に過半数代表者に関わるものだと思っております。44ページ以降に添付されております労働基準関係法制研究会の報告書でも、労働組合の重要性や活性化の必要性を強調していただいているのですが、実際のところ、具体策は特に示されていないということでございます。
 労働組合の重要性は数字でも明らかになっておりまして、例えば賃上げについていえば、厚生労働省の「賃金引上げ等の実態に関する調査」の中でも労働組合がある企業のほうがない企業に比べて賃上げ率が高いというデータもございます。また、本日の資料の5ページにも、労働組合がある事業所のほうが労使関係は安定している、コミュニケーションが良好であるという割合が高く、労使関係が安定し、また、紛争の未然防止という意味でも、労働者だけではなくて企業側にもメリットがあると考えているところでございます。
 もちろん、労働組合として、組合を拡大していくというのは当然のことながら我々自らが率先してやっていくことではありますが、行政としても、例えば、今、開示いただいているような労働組合の重要性などを一層アピールするようなワークルール教育の充実や、労働組合の有無に関する情報開示の充実も含めて、労働組合の活性化につながるような政策をぜひ講じていただきたいと思っているところでございます。
 こうした労働組合の活性化に向けた方策の検討を議論する上で、まず、現状の施策の全体像を把握することも必要と考えておりますので、ここからは要望になりますが、次回以降の分科会で議論素材として、厚生労働省における労働組合の活性化等に関する現状の施策などをまとめていただいて御提示いただければと考えております。その点、要望として申し上げたいと思います。
 以上でございます。
○山川分科会長 ありがとうございます。
 御意見と御要望が1件で、最後の御要望は次回といいますか、この分科会の進め方に関わるものでありますが、この点、何か事務局から今の段階で御発言等ありますか。
○労働条件政策課長 ただいま御指摘、御提言いただきました点につきましては、資料化の準備を進めさせていただきまして、次回以降の議論が進むように準備してまいりたいと思います。
○山川分科会長 冨髙委員、よろしいでしょうか。ありがとうございます。
 ほかに御質問、御意見等ございますか。
 水野委員、どうぞ。
○水野委員 水野です。よろしくお願いいたします。
 今ほど冨髙委員からも発言がありましたように、集団的労使コミュニケーションの中核的担い手は労働組合だということを前提に、私からも労働組合の活性化策について申し上げておきたいと思います。
 資料1の44ページ、労働基準関係法制研究会報告の中でも、労働組合を一方の担い手とする労使コミュニケーションを活性化していくということが明記されておりますので、ぜひその具体化を論議させていただければと思っています。
 労働組合を通じて良好な労使関係が構築されることで日常業務における労働者の主体性を高めるとともに、労使紛争の未然防止、さらには経営危機の回避などにつながるケースも少なくないと思っております。労働組合には、会社、上長、上司にはなかなか直接言えない職場の生の声が上がってくるということが大きな強みだと思っております。昨今、ハラスメントなども含め、企業内の不祥事が経営を左右するような事案も多く見受けられておりますけれども、労働組合が生の現場の声をきちんと察知し、集団的労使関係の枠組みの中で問題の解決していくことが可能だと思っております。
 私どもの取り組みも御報告させていただければと思いますけれども、例えば情報労連の中では、通信工事の人身事故撲滅に向けた安全対策について労使で徹底したコミュニケーションを取っております。事故が起きれば、労働組合の役員が現場にヒアリングに赴きまして、事故発生の要因となった現場の作業環境の確認、あるいはこれまで同様の事故があったとすれば再発防止策がどこまで職場に浸透しているかなど、そうした現場の生の声を聞き取って労使での安全協議に生かしているところでございます。とりわけ私どもの特徴は、これを個々の労使の中だけの取組とはせずに、通信工事に関わる発注者から元請会社、現場で工事を行う協力会社までの労使が一堂に会して議論をしていくというのが特徴だと思っております。
 また、中小の加盟組合になりますけれども、コロナで売上げが激減した際に、会社側との休業補償などに関する団体交渉と並行して、労働組合としてもしっかりと会社を守っていくということで、独自に労働組合のネットワークを通じた販路の拡大などに取り組んでいただいて、経営危機を乗り越えたというような実績もございます。
 こういったように良好な労使関係が構築されることで様々な改善がなされていくのだと思っておりますから、労働組合が集団的労使コミュニケーションの観点で極めて重要な役割を果たしていると思っております。こうした労働組合が重要な役割を発揮している事例などについても行政としてもぜひ広く収集していただいて、周知・啓発に努めていただくことで労働組合の組織化や組織拡大の一層の後押しをお願いしたいと思っております。
 以上です。
○山川分科会長 御意見、御要望のほか、事例の提供、情報の提供も含めまして、ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 まず、労働組合による労使コミュニケーションということで御議論いただきました。特にございませんでしたら、2番目に移りたいと思います。「過半数代表者の適正選出と基盤強化」ということですが、この中でもさらに様々な論点に分かれるかと思います。例えばですけれども、選出段階における使用者からの情報の提供、それから選出手続への使用者の関与、さらに選出事務への使用者による配慮、選出段階に限りませんけれども、また、使用者からということにも限りませんけれども、過半数代表者の意義や役割等に関する教育や研修の機会の確保という幾つかのテーマがさらに考えられるところでございます。これらを含めて、過半数代表者の選出段階における各種論点について御質問、御意見がありましたらお願いいたします。いかがでしょうか。
 鈴木委員、お願いします。
○鈴木委員 御指名ありがとうございます。
 広く労使コミュニケーションの在り方について何点か御発言させていただければと思っております。
 まず、資料の20ページの右上でございますが、過半数代表者が誰であったか知らなかったというのが25.5%、過半数代表者がどういうものか知らなかったというのが48.6%という回答がございます。これを踏まえると選出後に労働者にフィードバックをして、過半数代表者がどなただったかを知らせることは当然あっていいと思います。また、今も選出時に、その選出の目的、例えば36協定を締結する目的ということを明示していますが、この調査結果を見ると、それだけでは過半数代表者がどういうものなのかというのは分かりづらいという課題があると感じます。現在、過半数代表者の意義・役割というのは必ずしも明らかになっていないと認識しておりますので過半数代表者が職場の代表者の声や意見を踏まえた上で合意や意見表明をするということを意義あるいは役割として明らかにするとよいと考えております。
 一方で、意見集約を行う主体というのは必ずしも過半数代表者に限られるものではないと思っています。例えば会社が社員アンケートを実施して、その結果を過半数代表者に共有する場合や、レアケースかもしれませんが、過半数組合がある会社であるものの一部事業場では組合員が過半数ではない場合に意見集約を労働組合が担っている場合もあろうかと思っています。重要なのは、過半数代表者が社員の意見を踏まえた上で合意や意見表明を行うことですので、例えば過半数代表者自らが意見を集めるということ自体を過半数代表者の役割等に位置づけるということについては、慎重に考える必要があるのではないかと考えております。
 次に、労使コミュニケーションの促進・活性化について申し上げたいと思います。労使コミュニケーションにおける労働組合の役割は大変重要だと考えているところでございまして、先ほど冨髙委員からも、賃上げ率は組合があるほうが高いというような御紹介もいただきました。私のあまり多くない経験でも、36協定の特別条項を発動する際に組合があるほうがより丁寧な手続をされていて、チェック機能が働いているケースが多い印象も持っています。そのため、先ほど冨髙委員からワークルール教育の充実についてご指摘がございましたけれども、学校教育等で労働組合の役割を理解してもらえるような周知・啓発活動を一層行っていくことが重要ではないかと考えております。また、過半数代表者はどのような役割なのか分からないという先ほどの調査もございますので、過半数代表者の知識も習得していただく機会を広げていくということも重要ではないかと思います。
 他方で、22ページ以降の事例を拝見させていただきますと、労働組合はないものの、十分協議を行っている印象を受ける企業事例も見られます。また、厚生労働省の令和元年労使コミュニケーション調査によりますと、労働組合がない企業において労使協議機関がある事業所が16.8%になっております。こうした状況を踏まえますと、労使コミュニケーションの成熟度や企業の置かれている実態は多様であると思いますので、そういったことを前提に複線的な促進・活性化策を考えることが重要ではないかと考えています。
 経団連では、過半数組合がない企業の労使における意見集約や協議を促す一助として、一定の法定要件の下、任意の仕組みとして労使協創協議制を提案しております。具体的には、有期雇用等労働者の方も含め、雇用している全ての労働者の中から民主的な手続により複数人を選出した上で、行政機関による認証を取得すること、必要な情報提供と定期的な協議を実施するということ、また、活動に必要な範囲で便宜供与を行うことなどを条件に、集団的に労働契約を締結する権限を付与してはどうかという提案でございます。今後、多様な社員が同じ職場で働き、社員の間で利益調整が求められる場面も増えてくる可能性もあろうかと思っておりますので、労使コミュニケーションの促進・活性化策の一つとして有効だと考えているところでございます。
 私からは以上でございます。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 先ほどの労使コミュニケーションの一般的役割についても含めてということで御意見をいただき、その他、過半数代表者の意義・役割の周知、それから意見集約には様々な方法があるのではないかという御意見であったかと思います。
 ちなみに、エスケープ条項というのは36協定の特別条項のことでよろしいでしょうか。
○鈴木委員 おっしゃるとおりでございます。
○山川分科会長 ありがとうございます。
 御意見をいただきましたけれども、ほかに御質問、御意見等ございますでしょうか。
 佐久間委員、どうぞ。
○佐久間委員 ありがとうございます。
 私からは、資料1の中で3点ほど、見方を質問させていただきます。まず、13ページに過半数代表者の職位別の選出状況がございます。ここで係長、主任、班長クラスとか記載されているのですが、これは「管理監督者」のほうに位置するのか、それとも混在しているのか、この辺をお伺いしたいと思います。
 それから、19ページに過半数代表の複数代表者というのがあります。こちらの選出理由というのが図3に書かれているのですが、代表を複数選んだ場合に、どちらかに権限を与えているとか、また、複数代表なので、それぞれが意見書を提出することができるとか、その辺の位置づけがどのようになっているのか。代表と副代表的な位置づけになっているのか、教えていただきたいと思います。
 あと、20ページの過半数代表者についての認識、活動の状況の右下の表ですが、「十分ではないが、一定の協議・意見交換等を行った」とあります。過半数代表について「意見交換等」という表現があるのですけれども、これは「交渉までが含まれる」と思いますが、そこまでを含んでいる意味合いの「等」なのかどうか、教えていただきたいと思います。
 ここからは感想ですが、実際の過半数代表者というのは、労基法とか労働協約、法的には交渉の主体というわけではなく、協定の締結などで相手方というか、労働側の意見を取りまとめて使用者側に伝えていくということが職務だと思います。ただし、実務上は、使用者と意見交換、また協議を行うことによって労働者と使用者の信頼を得るということが最も大切なのだろうし、必要性があることだと思います。過半数代表を選ぶについては、透明性や公正性が求められることだと思いますが、使用者にとって過半数代表者の選出について、その環境整備を担う立場にはあるのだろうと思います。例えば投票の場では、私どもの職場でも行われているのですが、グループウェアの提供、ソフトの提供とか、社員への周知を行う、スムーズな選出において適切な関与が必要ではないかとは思います。
 また、過半数代表者の役割として36協定などの法定協定の締結というのが中心でしょうけれども、内容理解のために、使用者にも業務の実態とか残業時間の状況等必要な情報というのは個人情報とか企業内部の情報に配慮しつつ周知というか、情報共有していくことは必要なのだろうと思っています。
 一方で、12ページにも出ているのですが、就業規則がない事業所(10人以下の事業所)、中小・零細企業では過半数代表者を選出していないという例も多く見られると思います。時間外労働を依頼する36協定同様、規模にかかわらず、法令に基づいた対応が必要だと考えますが、それを所管する立場としても行政として過半数代表を選んでいくという必要性の理解をまず訴えていくことが重要であり、各地の労働局は、仕事がお忙しい中で大変申し訳ないのですけれども、再度、周知や事業者に対し理解を進めていくための方策としてただ資料やパンフレットを流すということだけではなくて、直接、伝えていただくことが必要なのではないでしょうか。大企業などはしっかりした労働組合があって、そして、最近、非正規などが多くなってきているので、過半数代表というところの例もあると思います。中小企業ですと、まだ労働組合自体も少ない、本当に僅かなものですから、そこでやはり過半数代表の意義というのはこれからも高まっていくと思います。まず浸透させなければいけない、理解させなければいけないということは、法令を守っていかなければいけないという立場としても理解できるところだと思っております。
 以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 御意見のほかに御質問を3点、いただきましたが、事務局からいかがでしょうか。お願いします。
○労働条件確保改善対策室長 事務局でございます。
 いただいた資料に関する御質問でございますが、まず、13ページの過半数代表者の職位に関するものでございます。調査時点での職位に関してはこういうふうに呼ばれている方ということになりますので、名前がそうであるということでこういうクラスに分かれていくということでございます。その方々が管理監督者に当たるかというのは、最終的には労働の実態を見て判断されるということになりますので、部長クラスと書いてあるから直ちに管理監督者かというと、それは必ずしもイコールではないと思います。一般的に言うと、そのくらいの方というのは管理監督者であることが多いのではないかというようなもの、最終的には労働の実態に応じてというようなことになろうかと思います。
 続いて、19ページでの複数代表者のケースでございますが、現行制度上、複数代表というものが明確に存在しているわけではなく、複数の方を代表に選ぶというような形になっているということかと思います。過半数代表者を選んだら、その方との間で、例えば36協定であればはんこをついていただくというような作業が発生するわけですが、複数の方を正式な過半数代表者としているということであれば、両方の方の同意と手続が必要になってくるということなのかなと思います。
 例えば図の3の中に、正代表が不在の場合を考え、副代表を選出したというような答えがあるかと思いますが、正式な過半数代表者として1人の方を選出し、その上で、その方を補助するというような形で選んでいるケースもあるのかもしれません。そういったような場合の扱いに関しては、正式な方がやっているということもあるかと思います。いずれにしても、協定等を監督署に提出いただくに当たって、その事業場で選ばれた過半数代表者の方の同意をきちんと得ているということが必要になってくるということかと思います。
 20ページの「一定の協議・意見交換等」の「等」でございますが、これは選択肢をつくる際に、その他様々なことがあるものを併せて聞いたということでございまして、具体的にこの「等」が何なのかということが定まっているものではないというものでございます。答えた方によっては御指摘のような交渉までを含んだ形でお答えになった方もいらっしゃるでしょうし、そうでない方もいるというのがこの調査の限界点かというところでございます。
○山川分科会長 佐久間委員、何かございますか。
○佐久間委員 どうもありがとうございました。
 先ほどの複数代表者の選出の関係で、どちらかというと36協定などで押印する、押印はなくなってきますけれども、共同代表的な使われ方をしているのか、それとも複数代表でそれぞれが了承するのか、今は混在しているのかという気もするのですけれども、いかがでしょうか。
○山川分科会長 事務局、いかがでしょうか。その辺り、把握されていますか。
○労働条件確保改善対策室長 そこは、数が少ないということと、事業場によってまちまちな部分があると思います。現行制度でそういった制度が明確に存在していないので、我々としてもこれが正しいというようなことを言えるものでもないので、まさにそういったものを、複数代表をやる場合に今後どのようなことをお示ししていくのかということは、委員の皆様方からこうしたほうがいいのではないかというのをいただきながら検討していくところになるのかなというものでございます。
○山川分科会長 おそらく佐久間委員が御指摘のような点がまさに検討課題として出てくるということかと思います。
○労働条件確保改善対策室長 座長、すみません。音声トラブルがあったという報告がありましたので、少々お待ちください。
(オンライン接続調整)
○労働条件確保改善対策室長 申し訳ございません。ひとまず音声だけですが、つながりました。ひとまず音声のみで再開させていただければと思います。申し訳ございませんでした。
○山川分科会長 それでは、再開いたします。
 先ほど過半数代表者の適正選出と基盤強化というところで、そのうちの過半数代表者の選出段階における論点について御議論いただいているところでございます。ということで、選出段階における使用者からの情報提供あるいは配慮、それから過半数代表者の意義・役割等に関する教育・研修機会の確保、これは選出段階に限りませんけれども、まず、こちらについて、ほかに御質問、御意見がありましたらお願いいたします。恐縮ですが、オンラインでの先生方、御意見の希望がありましたら、声でお願いいたします。
 会場の冨髙委員、お願いします。
○冨髙委員 ありがとうございます。
 まず、過半数代表者については適正化が何よりも重要だと思っておりまして、それを制度的に担保するためには、労基則で定めた選出手続に関する規定を法律に格上げするべきと考えております。現在の労基則でも過半数代表者は、管理監督者でないこと、挙手などによって選出すべきであること、また、不利益取扱いの禁止などが定められておりますが、これらに加え、協定内容の事前開示や、立候補者への所信表明機会の提供、直接無記名選挙の実施など、民主的な方法による選出を義務化するということ、また、手続に瑕疵があった場合には協定が無効になる、こうしたことを法律で明確にすることが重要なのだろうと思っております。
 それから、先ほど鈴木委員のほうから幾つか発言があったことについて意見を申し上げたいと思います。まず、従業員の声を集めるのが過半数代表自らでなくてもいいのではないかということで、例えば会社側が集めたアンケートを過半数代表の方に提供するというようなことだと理解したのですが、そういう場合は、会社側のバイアスがかかったり、会社側の提供された提案と異なる考えを持っていても、それを断りにくくなったりするという懸念もあるのではないかと考えますので、慎重に考える必要があると思います。
 また、経団連が提言している労使協創協議制の件でございますけれども、選択制とした上で、集団的に労使協定を締結する権限を与える枠組みであろうと思います。これは、柔軟な働き方、言い方を変えればデロゲーションを認める権限を与えるのだと理解いたしました。過半数代表制の適正化と、いわゆるデロゲーションは全く別問題だと考えておりまして、そもそも労使協創協議制というのは、過半数組合のない職場で一定の認証を受けた、過半数代表にデロゲーションなどの権限を付与するというものだと理解しておりますが、団結権等の基盤を有していない仕組みの下で対等な労使交渉というのが本当に担保されるのか、また、労働者の意見反映が十分になされるのかについて、非常に疑問に感じているところでございます。以前も申し上げたかもしれませんが、選択制であっても、いわゆるデロゲーションを念頭に設置させることも考慮すると、使用者と労働者の間の厳然たる力関係がある中で導入が強行されるのではないかということも非常に懸念されると考えております。労働側としては、労働組合による対等な労使関係の構築を促進することが重要であると思っております。
 以上でございます。
○山川分科会長 ありがとうございます。
 ほかに御意見等ございますでしょうか。
 亀田委員、どうぞ。
○亀田委員 ありがとうございます。
 過半数代表制について2点ほど発言させていただきたいと思います。
 1点目は、過半数代表制の権能についてでございます。そもそも労基法制定当時には、労働組合の組織率は約5割にも達し、上昇傾向にあった中で、過半数代表者はあくまで例外、補完的なものとして設けられ、現在に至ったものであると認識しております。しかしながら、その後、労働組合の組織率の低下が続く一方で、資料1の36から40ページにありますように、過半数代表者が関与する労働関係法令等が大幅に増加しておりまして、今や過大な役割や責任を負うようになっております。この点からしても、改めて過半数代表が関与する制度を縮減する方向で検討していく必要があるのではないでしょうか。
 2点目につきましては、過半数代表者の選出手続についてです。現在、過半数代表者につきましては、過半数労働組合がない事業場では36協定の締結など様々な労使協定等の締結に関与しているため、その選出手続などの適正化はまさに喫緊の課題であると考えております。まずは、労基法において過半数代表制について定義規定を置いた上で、先ほど冨高委員が発言しましたように、現在の労基則の規定の厳格化を行った上で法律に格上げする必要があると考えています。
 特に選出手続につきましては、2018年の省令改正で「使用者の意向に基づき選出されたものでないこと」との文言が追加されております。しかしながら、いまだに挙手などの民主的手続を経ずに過半数代表者に選出されるケースや、信任投票における無投票の場合を信任とみなすケースなども一定数見られます。例えば資料13ページを見ますと、部長だったり、工場長、支店長クラスということで、一般的に考えると管理監督者に属するのではないかというような役職の方が過半数代表者になっている実態も見てとれるところであり、実効性について非常に疑問が大きい状況でございます。この点につきましては、少なくとも判例、裁判例などを踏まえて、選挙などを経ずに選出された者や無投票を信任とみなすといった方法は認められないことを明確に示すべきだと考えております。
 以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。
○水島委員 山川先生、公益の水島ですけれども、チャットで、使用者委員の佐藤委員、田中委員、労働者委員の櫻田委員、使用者側の鳥澤委員が発言を希望されています。その後、私も発言させていただきたいと思いますが、順に発言させていただいてよろしいでしょうか。
○山川分科会長 ありがとうございます。佐藤委員からでしょうか。
○水島委員 あと、鬼村委員、松永委員からもありますので、こちらの順番でさせていただければと思います。佐藤委員からになります。
○山川分科会長 お願いします。
○佐藤委員 ありがとうございます。使用者委員の佐藤でございます。よろしくお願いいたします。
 私からは過半数代表者の選出時の手続状況というよりは、先ほど鈴木委員から発言がございましたけれども、労使コミュニケーションの促進・活性化、特にそれを多様化していくことによっての促進・活性化について意見を述べさせていただきます。労働組合が団体交渉権、ストライキ権、不当労働行為の救済などが権利として認められた労使コミュニケーションの重要な担い手であるということは言うまでもないところでありまして、1つ目の御意見の中でもあったとおり、その活性化に向けて学校教育において労働組合の役割などを伝える取組を一層進める、そういったような政策支援は考えられてよいと思います。一方で、どなたか委員の御指摘もありましたとおり、それから資料の説明にもありましたとおり、労働組合の組織率が低下傾向にある中で、労働組合以外の代表者、一定の組織、こういったものによる労使コミュニケーションの促進・活性化策を複線型で同時に検討するということがやはり重要なのではないかと考えております。
 御説明いただいた資料1の20ページ、21ページを拝見しましても、企業実態はそれぞれということはありながらも、過半数代表者、労働組合以外の代表者ということになりますけれども、これを通じて実質的な協議が行われている実態というのが少なからずあるということは印象として読み取れますし、そういった方が恒常的に活動して、あるいは主体的に会議テーマを提案したりしながら、双方向での協議が行われているという実態が企業によっては見られると思っております。そういった芽がゼロではないということで、そこをしっかり促進・活性化していくような取組というのも検討していくべきではないかと考えております。
 例えば、資料1の22ページ以降にあるような好事例、こういったことを広く周知していくことも重要と考えますし、また、既に企業実態として恒常的かつ実質的に協議を行っているような労使に対しては、一定の要件の下、集団的な労使の契約、こういったものを締結できるようにするなど、インセンティブを与えるといったことも促進・活性化につながると考えております。やはり各社、各職場における労使コミュニケーションの成熟度というのは多様であると思いますので、その多様な労使コミュニケーションの担い手を想定して、成熟度に応じた多様な促進・活性化というところをしっかりと検討していく必要があろうかと考えております。
 私からは以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。 
 では、水島先生、分科会長代理としてチャットのほうの指名等をお願いいたします。
○水島委員 承知しました。田中委員、よろしくお願いします。
○田中委員 田中です。御指名ありがとうございます。
 私からは3点ほど発言させていただきます。
 まず、報告書にあります、過半数代表者を選出する前の段階で過半数代表者に諮る内容を開示するということが言及されている点についてです。過半数代表者は、1年に1回、36協定を締結する直前に選出されるという場合が多かろうと思われます。例えば就業規則の見直しなど、選出時点で内容が決まっていない、実務的にそういったケースも想定されるのではないかと思います。また、企業によっては労働条件について過半数代表者と協議しながら決めていくということ、そういう事情も想定される中で、いきなり会社案が出されるということが実態に合わないのではないか、そういった場合もあるのではないかと考えます。こういったことを踏まえた検討が必要ではないかと考えているというのが1点目です。
 2点目、手続の関係で、資料の21ページ、調査結果がございましたが、既に46%の方が過半数代表者としての職務、その活動について負担を感じているという結果がありました。これを踏まえると、例えば立候補する機会の付与、所信表明機会の付与など、こういったものを推奨した場合、さらに負担が大きくなって過半数代表者の成り手がますます減ってしまうのではないかということが懸念されます。そういったことも考える必要があるのではないかと思っております。
 最後、3点目です。過半数代表制を減らすべき、縮減すべきという意見も先ほどもありましたけれども、そこに関して意見を述べさせていただきます。労働基準法では原則を示しつつ、企業や労働者の実情に合わせて代替調整する仕組みが盛り込まれています。その代替調整はあくまでも法定要件の下で認められるものであり、その全体をもって最低基準であると捉えるべきと考えています。原則的なルールだけでは現場の実情に合った運用が困難になるということもありますので、過半数代表制が利用される数については縮減すべきでないと考えます。
 私からは以上です。
○水島委員 ありがとうございます。
 続きまして、労働者側、櫻田委員、お願いします。
○櫻田委員 ありがとうございます。
 私からは選出手続への使用者の関与や不利益取扱いの禁止について触れたいと思います。過半数代表者の選出が必要となりますのは、36協定の締結をはじめとして、使用者側がイニシアチブを持って検討が進む場面であると思いますので、会社側から労使協定などの提案がされる前に、労働者側が自主的・主体的に過半数代表者を選出するということは基本的に想定されていないと思います。また、労働者のほうが過半数代表者の選挙などの事務を全て担うということも現実的ではないとも思っています。したがいまして、使用者が選出手続に一定関与したり、選出後、一定の配慮をするということは妥当であると思っています。そのため、例えば選出の際には事業所内に周知したり、イントラネットなどの活用を認めるといった点は考えられるのではないかと思います。
 ただし、関与や配慮という名の下に使用者が過度に過半数代表に介入するということは避けるべきであると思っています。例えば過半数代表に選ばれた者が36協定を結ぶに当たり、職場の労働者の意見集約をする際に、会社側が意見集約の窓口となることは、まさに不適当であると思います。労働基準関係法制研究会の報告書の中でも、使用者の配慮・関与・便宜供与がどこまで許されるのかを明らかにすべきということも示されておりますけれども、本分科会の中でも具体的な状況を想定しつつ、丁寧に議論していくべきではないかと考えているところであります。
 加えて申し上げれば、特に使用者側が関与できない、便宜供与の範囲外における労働者の過半数代表者が協定締結に至るまでの一連の取組の実効性を高めるためには、不利益取扱いの禁止というのが大変重要だと思っています。しかし、現在の労基則では、資料の1ページにもありますけれども、「不利益な取扱いをしないようにしなければならない」という曖昧な表現にとどまっていると思います。この規定については、過半数代表者に関する不利益取扱いは許されないということの趣旨をより一層明確化した上で、労基法に格上げする必要があるのではないかと思っております。
 以上でございます。
○水島委員 ありがとうございます。
 続きまして、使用者側、鳥澤委員、お願いいたします。
○鳥澤委員 ありがとうございます。
 資料の11ページ、12ページに記載がございます、過半数代表者の選出方法について意見を申し上げます。まず、小規模企業においては、一般的には経営者と従業員というのは非常に距離が近いため、労使のコミュニケーションというのは比較的できていると思います。一方で、距離が近いため率直な意見を交わすことができる反面、近いがゆえに言いたいことが言えないというデメリットがあるというのもまた事実でございます。これは状況によって、また事業所によっても大きく変わりますので、業種業態も含め、様々だということがまず前提にございます。
 その上で、過半数代表の選出につきましては、特に小規模事業者においては、事業主以外、従業員全員が横並び、上下関係がないという状況が非常に多いと思っております。その場合、従業員側のほうで自発的に代表者を選ぶことができるかといえばなかなか難しく、ある一定の事業主側の関与というのは必要になってくる部分がございます。もちろん、それが会社にとってではなく、従業員にとってということが前提でございますけれども、ある程度会社の関与がなければ、選出ができないというのは事実かと思っております。佐久間委員の発言にもありましたように、まずは過半数代表制の意義、法の趣旨・精神というものを周知徹底して理解に努めるのが前提として必要なのではないかと思っております。その上で、企業によって状況が様々だということを前提にして考えると、規則等によって一律の対応を求めるだけではなく、今回のような好事例を通じて企業の特性に応じた対応や得られる効果を共有しながら、過半数代表者の適正選出、労使コミュニケーションの環境整備を促していくということが重要だと考えます。
 以上です。
○山川分科会長 水島先生、この後、私からということでよろしいでしょうか、進行についてですが。
○水島委員 お願いいたします。
○山川分科会長 大変ありがとうございました。
 それでは、鬼村委員にお願いできるでしょうか。
○鬼村委員 御指名ありがとうございます。
 私のほうからは大きく2点、意見を申し上げたいと思います。
 まず、過半数代表者の選出手続でございます。11ページに調査結果があったと思います。そもそものところですけれども、使用者が指名しているケースなどがまだ一定数あるというのは、これは古いデータであるかとは思いますが、こういう部分についてはしっかり対応していかなければいけないだろうと思います。選出方法でございますけれども、過半数代表者の成り手が、今日の議論の中でもなかなかいらっしゃらないというお話もありますので、企業実態に応じて、投票や挙手ということだけではなくて、信任であるとか話合いなども含めて、様々な方法を堅持していくべきなのではないかと思います。例えば無記名投票とか、何か一個の方法に限定するということについては慎重に考えるべきなのではないかと思いました。
 それから、続きの12ページです。信任候補者の定め方があったと思います。信任それ自体は適正に行われている限りにおいては問題ないと思いますが、会社指名にならないようには当然注意する必要があって、例えば法令遵守を徹底するために幾つかの何らかのガイドみたいなものを明確にしていくということは重要なのだろうと思います。例えば会社が労働者に対して過半数代表者の役割、あるいはメリット、意義などを伝えて候補者になってもらうように促すことや、候補者に対して信任の投票の手続を労働者側でやってもいいし、あるいは会社が行ってもこれは民主的な手続に当たるとか、逆に候補者に反対する人だけ投票してくださいみたいなやり方は民主的な手続ではないとか、こうした明確化、ガイドラインを設けていくことで適切な信任と認められる範囲をしっかり周知していくというのがいいのだろうと思っております。これが1点目です。
 2点目が過半数代表者に対しての情報提供でございます。先ほど来、皆様からいろんな御意見がありましたが、例えば36協定の締結の際などに労働時間の実態などのデータを過半数代表者の方にお伝えする、提供するということは当然望ましいと思いますけれども、ただ、そのタイミングは、締結する前、締結するに際してやり取りをしていくということが重要なのではないかと思いますので、必ずしも選出前に情報提供していくことが望ましいのかどうかというのは、選出するタイミングとか実態に即して考えていくべきことなのではないかと思います。
 それから、21ページだったかと思いますが、負担感の話があったと思います。過半数代表者の方の46%が活動に負担を感じているという数字があったと思います。36協定の締結のために職場の時間外労働、休日労働の状況を確認していくということも、結構これは中心的な役割だと思いますが、こうしたことも負担に感じているというようなコメントも見受けられますので、以上を踏まえますと、全ての企業の過半数代表者の方に対してモニタリングの機能や役割まで負わせていくということは慎重な議論が要るのであろうと思います。他方で、恒常的かつ実質的に協議が行われているような過半数代表ないし過半数代表組織というのがもしあるのであれば、ここは協議に必要な範囲で情報提供をしっかりやっていくことが望ましいということは広く周知していくことが重要なのだろうと思います。
 大きく、以上、2点申し上げました。ありがとうございます。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 では、松永委員、お願いします。
○松永委員 ありがとうございます。
 今、21ページを示していただいているので、それに関連してなのですけれども、私のほうから便宜供与について少しコメントさせていただきたいと思います。理解としては、便宜供与の趣旨は過半数代表者が主体的に活動を行う際のサポートということだと思っていますので、例えばIT環境の提供、そういうことが考えられると思います。これはあくまで主体的な活動というのが前提にあるものだと思っていますので、過半数代表者の活動を強要するようなことにならないように、主体的な活動というのを前提にして便宜供与は基本的には可能である、そういう位置づけにするのが適当なのかと思っています。
 ただ一方で、21ページの右下の「使用者側との交渉」というところで「経営者が理解を示すまで詳細な説明を求められた」、こういう場面もあるということだと思いますので、これについても過半数代表者の活動は法定のものであるということに立ち返りますと、これが業務命令に当たるかどうかという観点も含めて、取扱いの明確化をしていく必要があると思っています。
 次に、どこまでの範囲が便宜供与なのかということだと思いますが、例えば会社と意見交換、協議する時間の賃金保障というのは当然あってもいいのかなと思います。ただ、一般的に労組法で認められていないような範囲、例えば労働組合や労組法についての便宜供与とか、そういうことに関しての賃金保障というのは慎重に考えたほうがいいと思っています。あくまで労使コミュニケーションの成熟度が高くて過半数代表者が主体的に活動を行っているような企業については、積極的に便宜供与を行うというのがあってもいいのかなと思っています。
 私からは以上でございます。ありがとうございます。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 それでは、水島委員、お願いします。
○水島委員 ありがとうございます。
 厚生労働行政モニターアンケートは母数が少ないことに留意する必要はありますが、特に今お示しいただいているスライド21は現場の声を知る貴重なものと思います。アンケートを実施いただき、ありがとうございました。
 鬼村委員も御指摘されていましたが、過半数代表者としての職務が負担であるとの意見が見られます。過半数代表者の時間外の仕事が増えることや本来の業務に支障を与えることはできる限り避けるのが労使双方に望ましいと考えます。アンケート左下には、ほぼ新入社員の方が任命され、職務に集中できないことがあったとの意見もありました。新入社員を選出すること、新入社員が選出されることはもちろん許容されますが、真に適正な代表者か疑問が生じる場合もありそうで、この点は選出側の意識改善が必要であるように思います。これは感想です。
 一方、この人であれば過半数代表者として信頼できるという労働者は、多くの場合、使用者からの信頼も厚く、過半数代表の業務と本来業務により業務過多になることが予想されます。そこで業務調整を含めた使用者の配慮が必要となる場面もあると考えます。先ほどから話題に出ておりましたスライド13で職位が高い者については使用者が指名している割合が高く、こうしたケースは業務調整を考えて使用者が指名しているのではないかとも思いましたが、使用者は選出に関与できないわけですから、それではどうするかということになります。使用者の経営権に配慮する必要もありますので、難しい問題ではありますが、過半数代表者に対する業務調整を含めた使用者の配慮の必要性を意見として述べさせていただきます。
 以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 オンライン御参加の皆様の御意見を伺ってきたところですが、ほかに御質問、御意見等ございますでしょうか。
 鈴木委員、お願いします。
○鈴木委員 御指名ありがとうございます。
 労使協創協議制について補足させていただければと思っております。先ほど冨髙委員から労使協創協議制によるデロゲーションはふさわしくないという御指摘をいただきました。しかし、本日、私が申し上げたのは、デロゲーションではなくて、集団的な契約の話でございまして、強行法規に違反しない形で、先ほど少しお話があった、例えば賃金の引上げ率・額を今年はどうしようかということを労使で話し合った結果内容について集団的に契約を結ぶという観点で申し上げた次第です。
 その上で、組合と会社が結ぶ労働協約は、個別の労働契約よりも強い効果が認められています。これは冨髙委員もおっしゃったように、ストライキ権を背景にして労働組合は労使対等の立場で契約を締結することができるということ、逆に、個別の労働契約は強行法規に抵触しない範囲ならば労働者の自由意思で契約を締結することが出来、それ以外の特段の要件は課されていないことも理由になっているのではないかと思っているところでございます。
 他方で、労使協創協議制の場合、繰り返しで大変恐縮でございますけれども、行政機関による認証取得や不利益取扱いの禁止、必要な情報提供、そういうような条件を付加した上で、労働協約よりも弱い効果で集団的な労働契約を締結するというイメージでございます。これは個人的な意見なので、法学者の先生方から御指摘を受けるかもしれないという前置きをさせていただきますが、労使委員会の仕組みなどを考えますと、法律は一般的に労使間の交渉の差があるということを前提にしつつも、労使対等性があるかないかをゼロイチでは考えていなくて、段階的に労使対等性というものを考えているのではないかというふうな気もしております。
 いずれにいたしましても、特に強調したいことは、恒常的かつ自主的に協議して合意した内容を集団的な契約という形で締結しようということは自然な話だと私自身は思っておりますし、話し合って決めたということは望ましい契約と言えるのではないかと考えているところでございます。もちろん、契約の効力の優劣の議論とか、労使リバランスのための要件をどうするか、こういう議論というのは当然詰めないといけないと思っているところでございますが、本当に労働組合以外は集団的な契約を結んではいけないのかどうか、これについてはしっかりと議論させていただきたいと思っているところでございます。
 以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 ほかに御質問、御意見等は。水野委員、どうぞ。
○水野委員 御指名ありがとうございます。
 使用者による情報提供や現況について申し上げたいと思っています。過半数代表者に対する配慮については、資料1の1ページにも「事務を円滑に遂行することができるよう必要な配慮を行わなければならない」と省令で規定されているということでございまして、その一例として事務機器やシステム、事務スペースの提供ということで例示がされているところでございます。
 情報提供については、前回、労働側からも発言させていただきまして、協定内容の適否を判断するための労働時間等の情報の事前開示に加えて、過半数労働組合や過半数代表者が労働者の意見集約を行うために必要不可欠となる情報、例えば協定内容の提案の裏づけとなる名簿やデータなどについても、その提供を使用者の責務として明確に位置づける必要があると思っております。
 また、働き方が大きく変わる中で、テレワークなどが定着しているわけでございますが、かつては様々なことを、対面を基本でやっておりました。一方、フルリモートのような職場が出てきている中では、メールやチャットなどが極めて重要なコミュニケーションの手段となっているわけでございます。しかし、現場では、今でも会社側より労働組合や過半数代表者にメールアドレスなどの情報を提供してもらえない、あるいは限定的な情報提供にとどまるといったような実態も見受けられているということでございます。集団的労使関係の意義というのは、やはり個別労使関係では困難な、多様な労働者の声を調整することで、より適切な労使の判断を促すということだと思っておりますので、今ほど申し上げた会社からの情報提供に加えて、多様な労働者の声を集めるためのコミュニケーション手段の確保は大事だと思っております。
 先ほど鈴木委員からアンケートの話もございましたし、冨髙委員からは少しバイアスもかかるというお話もございましたけれども、私の過去の経験からも、会社と労働組合で同じようなアンケートを取ったところ、全く違ったような回答が出てきたという実績もございます。先ほど申し上げたとおり、労働組合には言えるけれども、会社には正直に言えないというような情報も多々あろうかと思いますから、やはりそういったことを考慮して、過半数代表者としての正しい判断ができるような意見集約の仕組みというのは重要であり、そのためのコミュニケーションの手段の確保というのも大事だと思っております。負担がかかるから意見集約しなくてもいいとするのではなくて、その負担を軽減するような仕組みをぜひ検討いただきたいと思っております。
 この点、資料1の21ページ、過半数代表者としての負担ということも様々に記載されておりまして、意見集約については労働組合であっても時間と労力を非常に要するものでございます。通常業務に上乗せして労働時間外などに職務を重ねるということになれば、相当に負担が大きくなると思っております。そうしたことを踏まえれば、負担軽減に向けては一層の使用者からの支援や配慮の充実が必要だと思っておりますし、それは必ずしも過半数代表だけではなく、過半数労組が過半数代表である場合も含めて、労組法の不当労働行為との関係性も念頭に置きながら、ぜひ議論を深めていただければと思っております。
 以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 ほかにはいかがでしょうか。
 松田委員、お願いします。
○松田委員 御指名ありがとうございます。
 私のほうからは3点ほど申し上げさせていただきたいと思っております。
 1点目につきましては、不適切な方法で選出された過半数代表者に関してでございます。連合の2024年調査でも、36協定の締結に当たり、不適切な方法で選出された過半数代表者が5割超との結果が出ています。資料1の11ページでもデータが示されておりますが、過半数代表者が不適切な方法で選出されている職場が非常に多く、制度が形骸化していると言わざるを得ないと考えております。そうした状況を早急に是正していきたいと思っております。その上で、不適切な方法で選出された過半数代表者との間で締結された労使協定等の効力については、現行制度上は必ずしも明確にはなっていないと考えております。裁判で争われれば、過半数代表者の要件を満たさない者が締結当事者である場合、当該協定は無効と判断されますが、裁判まで至るケースは極めてまれであると考えております。先ほど冨髙委員からも御発言があったとおり、選出手続に問題があった場合には当該協定は無効になることを法律で明確に定めるべきであると考えております。
 2点目として過半数代表者の教育・研修の機会の確保についてです。選ばれた過半数代表者が自らの責任と役割をしっかりと自覚した上で職務を果たせるよう環境整備を図る必要があると考えております。20ページのモニター調査結果につきましては、統計的な信頼性が高いものではないと考えますが、「過半数代表者がどういうものか知らなかった」との回答が半数に上っております。適正選出が進んでいない実態も踏まえれば、改めて過半数代表制の内容を広く労使に周知することが必要であり、過半数代表の運用、過半数代表者の役割や職務などに関する教材作成や研修機会を設けるなどしていただきたいと考えております。
 最後、3点目として過半数代表者に対する相談支援についてでございます。過半数代表者となった労働者が困ったときに相談できる環境整備も重要であると考えております。労働組合としても連合や産業別労働組合で相談を受け付けており、今後も継続的に取り組んでまいりますが、行政としても相談体制や窓口の整備充実を一層図っていただきたいと考えております。また、冒頭に冨髙委員から、労働組合の重要性の観点からワークルール教育の推進の必要性について発言がありましたが、過半数代表の適用、運用の観点からもワークルール教育の推進が必要であると考えております。よろしくお願いします。
 私からは以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 ほかに御質問、御意見等ございますか。
 冨髙委員、どうぞ。
○冨髙委員 ありがとうございます。
 幾つか使用者側の委員の方からあった御発言に対する意見を申し上げたいと思います。
 まず、佐藤委員、鈴木委員から、労働組合以外の複線型の集団的労使コミュニケーションも考えていいのではないかという発言があったと思います。団結権等の基盤を有しない組織が協議などを行うと、使用者側の言いなりになるのではないかと考えておりまして、今、実際に過半数代表者が機能していないというのはそうしたことの証明になるのではないかと思っています。
 また、田中委員から現行の過半数代表の関与する制度は縮減すべきではないとの発言があったと思います。過半数代表は、本来あくまでも法定基準の解除機能のみを持っていると考えておりまして、現在の労働条件設定機能まで踏み込んでいるというのは適切ではないと思っておりまして、やはり縮減を検討していくべきではないかと考えているところでございます。
 それから、鈴木委員から労使協創協議制の補足の御意見がありました。労働組合以外が集団的な契約を結んではいけないのか検討が必要とのご発言でございましたが、私は検討は必要ないと考えております。行政の認証を受けていれば足りるものではないですし、労働三権を保障されている労働組合だからこそ可能となっていることがあることを踏まえて議論すべきだと考えております。ですから、先ほど冒頭に申し上げたように労働組合をいかに活性化していくか、労働組合を基本とした労使コミュニケーションをしっかり充実させていくかという視点で議論すべきだと思っておりますので、その点は改めて申し上げておきたいと思います。
 以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 ほかに何かございますでしょうか。
 神吉委員、お願いします。
○神吉委員 公益委員の神吉です。
 私からは2点、申し上げます。
 1点目は、過半数代表者の適正選出という考え方、基本的に民主的に選ばれなければいけないということはある意味、当然のことで、当然のことができていないということ自体が問題であると考えております。以前から不思議だと思っているのは、過半数代表者の選出手続はあくまでも人を選ぶ手続であって、どの労使協定に関する手続をまとめるのか、労使協定にどのような内容を盛り込みたいかを使用者が明らかにする必要はあるだけで、当該候補者が過半数代表者として選ばれたらどのような労使協定が実現するのか自体は、必ずしも明らかではないのです。そうすると、先ほど水島委員から御指摘があったように、その人が信頼できる人なのかが手がかりになるのですが、その人がどういう人なのか、どのような考えを持っているかが分かるための手続的担保が今はないように思われます。そうすると、小規模企業で誰でもその人となりを知っているようなところであればともかく、大きい事業場になればなるほど、そもそも知らない人に、人を見て託すということ、デロゲーションを託すことが適切にできているのか、信任したとしても信任の根拠はどこにあるのか。どんなふうにその担保がされているのかが分かれば教えていただければと思いました。
 2点目は、今日、かなり議論されましたように、労使コミュニケーションの基本的な、第一次的な担い手が労働組合であるべきことについては全く異論ありませんし、組合の活性化、また、その重要性を広く打ち出していくという方向性にも賛成いたします。一方で、組合のない企業が非常に増えている中でコミュニケーションをどう図っていくかも同時に課題であることも御指摘のとおりです。
 今回、22ページ以下に好事例として8つの企業の労使コミュニケーションに関する事例が挙がっています。これを拝見して非常に興味深かったのと同時に、ちょっと気になるところがありました。この8つの企業のほとんどが小規模事業所で、実際に行われているコミュニケーションが社長と全従業員との対面での面談だったり、全従業員とのグループ討論、全社面談などを行っているところでした。つまり直接民主主義的な手法でコミュニケーションが図られる規模の事業場の例です。ただ、事業場の規模が大きくなればなるほど直接のコミュニケーションというのは難しいわけで、そのようなところにこそ代表や機関を設けて、そこで意見集約をしたり、すり合わせていくというステップが必要なはずで、そうでないとコミュニケーションが図れないと思うのです。そうした実際の事例はどうなのかに興味があります。労使協創協議制など教えていただきましたけれども、一方では、そうした労働三権の基盤がないところで対等決定は実現しないのではないかという懸念も示されたところでもあり、今後、複数事業場を抱えるような大きな企業で労使コミュニケーションの在り方がどのようになっているのかという例についても資料があればと思いました。今回の統計を見ると、大企業であっても半数弱は組合がない状況ですので、今後、複数代表制だったり、複数事業場での一括手続が望ましいかなどを考えていく上では、一定規模の企業を想定したコミュニケーションの在り方という資料もあればありがたいです。
 以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。
 御質問と資料の要望的なことも含まれていたかと思いますが、2つ御指摘がございました。1つ目は、質問的な色彩が強かったかもしれませんが、過半数代表者を選出するに当たって候補者の人物の信頼性のようなことをどのように確保できるかということで、御質問でもあったのですが、多分、事務局もこの点については、推測するに、答えはなかなか難しいのではないかと思いますが、何かございますか。むしろそういうことをどう図っていくかという問題提起にもなるかと思いますが、何かございますか。
○労働条件政策課長 答えになるかどうかということで言うと、まさに手続上は人を選ぶということになっていまして、先生が言われたように、選ばれた人がどのような意見を持っているかということが少なくとも法制度上担保されているわけではないというのも御指摘のとおりかと思います。そうしたことを踏まえて、選出時にそこまで義務づけるかどうかということ自体もまた御議論があろうかと思いますが、その人がどういう考えを持っているのかということを明らかにする必要があるのかないのかというようなことなども今後の先生方の御議論の中で深めていただければと思うところでございます。
○山川分科会長 ありがとうございます。
 神吉委員、そのくらいでよろしいでしょうか。ありがとうございます。
 ほかにございますか、御質問、御意見等、原委員、お願いします。
○原委員 ありがとうございます。
 資料15ページの任期制の部分なのですけれども、任期を決めて継続的に関わっていただくということによって様々な経験・知識が蓄積されますから、過半数組合が継続的な環境をつくっていくということができない場合に、過半数代表者の任期制は在り方としては一つあり得るものかなと思っております。あらかじめ選ばれるときに、例えば就業規則に関わることとか、36協定に関わること、そういった何に関わる代表かということが明確にされるということはもちろん必要ですけれども、任期制というのは一つの在り方としてあるのだろうと思う中で、ただ他方で、選ばれたらずっとその人というのも問題があるわけですね。実際、任期制の場合、どれぐらいの任期で選ばれることが多いのか、そういったデータや情報があればぜひお聞きしたいと思いまして、もしあれば、よろしくお願いします。
○山川分科会長 事務局、いかがでしょうか。たしか労働基準関係法制研究会でもちょっと議論したような気がします。
○労働条件確保改善対策室長 この調査では、そこは問うておりませんが、今後やろうとしている中では調べられるかと思いますので、まとまったら、また報告させていただければと思います。
○山川分科会長 原委員、そういうことでよろしいでしょうか。
 ほかはいかがでしょうか。
 様々な御意見ありがとうございました。
 最初に3つの柱を一応立てまして、広い意味での労使コミュニケーションの在り方の問題、選出時の問題、選出後の問題というふうに3つに分けたところですが、いずれについても2番目の直前まで行いましたお話の中でこの3つにまたがるような形で御意見をいただいたように考えております。
 とりあえず今回の分科会では、現行の過半数組合、過半数代表者ということで、それをどのように改善していくかという点がまず焦点になっていると理解しております。先ほど情報提供と配慮ないし便宜供与のお話がありまして、両方、選出後のお話もいただいたところですが、分けるとしたら、選出段階では、今、公益の先生からお話がありましたように、どういう協定を結ぶのかといったような選出に当たっての情報提供の問題と選出事務に関しての配慮のお話がまずあって、それから選出後については、情報提供というのは多分、労働時間の状況などについての情報提供ということになると思いますし、配慮、便宜供与については事務の負担の重さに対する配慮、そういう形で一応マトリックス的には分けられるのではないかと思います。それぞれ既に御意見をいただいているところですが、そうした観点から何か追加で、つまり、情報提供といっても2段階、選出時と選出後があって、配慮、便宜供与も選出時と選出後があるというふうに分けておりますが、何か補足すること、委員の皆様方、ございますでしょうか。
 鈴木委員、お願いします。
○鈴木委員 ありがとうございます。
 意見というより今後の資料の御提供のお願いについてです。資料20ページの表の右側に「V.過半数代表者として職務を行うための使用者側と協議・意見交換」というところの結果がありますが、十分な協議・意見交換を行った場合にどのようなことが行われたかということについては、労使コミュニケーションの促進・活性化を議論する上でヒントが隠されているかもしれないと思っています。真ん中の「IV.過半数代表者としての職務のために行った準備や活動」とVのクロスの統計を取れるのであれば、次回以降の会合で結構でございますけれども、お出しいただくことを御検討いただければ幸いです。
 以上でございます。
○山川分科会長 ありがとうございます。
 この点は御検討をお願いできるでしょうか。
○労働条件確保改善対策室長 調査表でのクロスが可能かどうかも含めて検討させていただければと思います。
○山川分科会長 ありがとうございます。
 こちらは、モニターアンケート調査のお話も先ほど若干ありましたけれども、数が少なくてどれだけ統計的に有意かという問題はあるかと思いますが、逆にクロスなどはできるかもしれないという感じはいたしております。
 ほかに補足的なことも含めていかがでしょうか。
 私からというのもどうかとは思いますが、先ほど神吉委員からお話がありましたように、ある程度、数のあるところでの意見集約で、もし過半数代表者が意見集約みたいなことを行うということになると、具体的にどういうことをするのかというイメージが公益委員の私としては分からないところが結構ありまして、事務局でそういうデータがあるかどうか分かりませんし、むしろ労働組合として、どういう意見集約を組合員が多数いるところではやられて、意見、要求などとして統合していくのか、そういうことももしできましたら情報提供いただければと思っております。個人的な要望でございました。
 川田委員、どうぞ。
○川田委員 ありがとうございます。
 私も意見集約というところの具体的な中身は気になっていたところがあって、一つは、誰と誰との関係の話なのかという点について、代表者を選ぶ前に関しては、意見集約というか、情報提供も含めて使用者と事業場の労働者との関係があり、代表者が選ばれた場合には使用者と代表者という関係、あと、代表者と事業場の労働者という関係、選ばれた後はおそらくその2つが中心になるのかなということで、そういう整理が必要なのかということです。それから、意見集約の中身、特に代表者が選ばれた後の事業場の労働者から代表者への意見集約については、大きく分けて、代表者が締結しようとしている、例えば協定の中身に賛成するかどうかという点の意見と、あと、例えば代表者が判断するために必要な材料について意見を聞くという2つが性質が違うものとして整理できるということを考えています。例えば36協定を結ぶときに、長時間労働をしている人はいないですかと聞くというのは後者の例だと思います。また、協定の時間数はこれでいいですかというのだったら前者とか、その辺りは、これは審議が進む中で論点が徐々に整理されていけばいいのかなと思いますが、視点としてこういうものがあるということを意見として挙げさせていただきました。
 以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 ほかはいかがでしょうか。
 それでは、予定されていた時間が来ております。本日はそれぞれのお立場から非常に貴重な、様々な御意見をいただきました。非常に活発に、しかもかみ合った意見交換がなされたのではないかと私としては感じたところでございます。いただいた御意見は非常に重要なものですので、事務局におかれましては、資料の要望等も含めて、本日の議論を踏まえて検討を進めて、次回以降の準備をお願いいたしたいと思います。
 特に委員の皆様方からオンラインも含めて何かございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、本日の議事はここまでとさせていただきたいと思います。
 次回の日程等について事務局から説明をお願いします。
○労働条件企画専門官 次回の日程につきましては、調整の上、追って御連絡させていただきます。
○山川分科会長 それでは、これをもちまして、第198回「労働条件分科会」を終了いたします。お忙しい中、皆様、大変ありがとうございました。