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第172回先進医療技術審査部会 議事録
日時
令和7年2月13日(木)16:00~18:00
場所
日比谷国際ビルコンファレンススクエア「8D」(オンライン)
出席者
竹内座長、天野構成員、一家構成員、伊藤構成員、今井構成員、上村構成員、岡田構成員、掛江構成員、木村構成員、後藤構成員、坂井構成員、真田構成員、戸高構成員、蓮沼構成員、飛田構成員、平川構成員、平田構成員、松山座長代理、山本構成員、黒瀨構成員
- 事務局
-
- 医政局研究開発政策課長
- 医政局研究開発政策課 治験推進室長
- 医政局研究開発政策課 課長補佐
- 医政局研究開発政策課 治験推進室長補佐
- 保険局医療課 先進・再生医療迅速評価専門官
- 医薬局医薬品審査管理課 審査調整官
議題
- 総括報告書の評価について
- 試験実施計画の変更について
- 先進医療の継続の可否について
- 協力医療機関の追加について
- その他
議事
- 議事内容
○竹内座長
それでは、定刻となりました。「第172回先進医療技術審査部会」を始めさせていただきます。御多用の中、御参集いただきまして誠にありがとうございます。本日はオンラインでの開催となります。
まずはじめに、本日の構成員の出欠状況について事務局よりお願いいたします。
○医政局研究開発政策課長補佐
事務局です。本日の構成員の出欠状況ですが、後藤構成員より御欠席の連絡を頂いております。また、松山構成員が、遅れて入られると思いますので、本日は20名の構成員のうち、現在18名の構成員にお集まりいただいていることから、定足数を満たしており本会議が成立していることを申し添えます。なお、傍聴者の方の撮影はここまでとさせていただきます。御協力のほどよろしくお願い申し上げます。
続いて、配布資料及び本日の審査案件について確認させていただきます。議事次第から、座席表、開催要綱及び運営細則、構成員及び技術専門委員名簿と続きます。続いて、総括報告書の評価については資料1-1から資料2-3、試験実施計画の変更については資料3から資料5、先進医療Bの継続の可否に係る審議結果の報告については資料6、協力医療機関の追加については資料7-1から資料7-2、協力医療機関の取下げについては資料8、会議資料は以上となります。お手元の資料に乱丁、落丁等がありましたら事務局までお知らせください。
続いて、利益相反の確認です。申請医療機関との関係、対象となる企業又は競合企業について事務局から事前に確認させていただいております。今回、告示番号旧3の技術、九州大学病院からの総括報告に関して戸高構成員におかれましては自施設の申請であることから、審議の際には一時御退席いただければと存じます。また、当該技術について竹内座長、木村構成員、平川構成員からも御報告がありましたが50万円以下でしたので、当該技術の議事取りまとめ及び事前評価に加わることができます。また、告示番号旧23の技術、滋賀医科大学医学部附属病院からの総括報告に関しては該当する構成員はおりませんでした。事前の届出以外に、もし何らかの利益相反がありましたら、この場で御報告をお願いいたします。
それでは、該当なしということで承知いたしました。また、今回は資料を事前にメールでお送りしております。会議資料と区別して構成員・事務局限りの届出書類等をタブレット資料と御案内します。なお、会議資料とタブレット資料の内容は異なっておりますので、発言者は、会議資料の何ページ、若しくはタブレット資料の何ページと、あらかじめ御発言を頂けますと議事の進行上助かります。本日はオンラインでの開催となり、構成員の先生方には大変御不便をお掛けいたします。御発言いただく際には、はじめにお名前をおっしゃっていただくようにお願いいたします。また、Web会議ソフトには手挙げ機能が付いておりますので、こちらも適宜御活用ください。以上です。
それでは、以降の議事進行については竹内座長にお願いいたします。
○竹内座長
それでは、議事に入りたいと思います。総括報告書の評価について、事務局から説明をお願いいたします。
○医政局研究開発政策課長補佐
御説明いたします。資料1-1の18ページを御覧ください。先進医療Bの総括報告書に関する御評価を頂きますのは、告示番号旧3、「全身性エリテマトーデスに対する初回副腎皮質ホルモン治療におけるクロピドグレル硫酸塩、ピタバスタチンカルシウム及びトコフェロール酢酸エステル併用投与の大腿骨頭壊死発症抑制療法」です。申請医療機関は九州大学病院です。審査担当構成員は主担当が岡田構成員、副担当が上村構成員となっております。
なお、本議題の審議に際し、戸高構成員におかれましては利益相反の関係から御退席いただきたく存じます。
(戸高構成員 退室)
○医政局研究開発政策課長補佐
それでは、資料に沿って御説明いたします。難病に指定されている特発性大腿骨頭壊死症の詳細な発症機序は未だ明らかとされていないが、副腎皮質ホルモンが誘因の一つであることが明らかとされている。副腎皮質ホルモン剤治療が必要不可欠となる全身性エリテマトーデス(以下SLE)患者は他疾患と比較して、大腿骨頭壊死症の発生率が高く、初回副腎皮質ホルモン治療後25.0~44.4%もの患者に大腿骨頭壊死症が発生すると報告されている。ステロイド関連大腿骨頭壊死症の基礎疾患はSLEが最多で、全体の30%を占めると報告されており、SLE患者におけるステロイド関連大腿骨頭壊死症の発生抑制治療法開発は解決するべき喫緊の課題である。しかし、本症に対して臨床的に明確な有効性が証明された治療法は未だ世界的にも報告されていない。
近年、動物を用いた基礎実験において、ステロイド投与に続発する骨壊死に対して、クロピドグレル硫酸塩、ピタバスタチンカルシウム、トコフェロール酢酸エステルによる単独での発生抑制効果が報告されている。さらに、作用の異なる薬剤2剤を併用することによって、単剤よりも優れた骨壊死発生抑制効果が認められることが確認されている。本研究では、SLEと診断され、初回副腎皮質ホルモン治療を受ける患者において、クロピドグレル硫酸塩、ピタバスタチンカルシウム、トコフェロール酢酸エステルの3剤を併用投与し、ステロイド性大腿骨頭壊死症の発生抑制効果を検討する。以上でございます。
○竹内座長
ありがとうございました。それでは、本技術の評価につきまして主担当の岡田構成員から御説明をお願いいたします。よろしくお願いします。
○岡田構成員
では、説明させていただきます。まず、報告のほうにございます医療技術の試験結果といたしまして、有効性の評価並びに安全性の評価結果・結論ということが記載されております。私のコメントに入る前に、かい摘まんで説明させていただきますと、POC studyとして位置付けられました本研究におきまして、ヒストリカルコントロールで設定した25%未満であるところにつきまして、片側有意水準20%ということで統計学的に有意という形で証明されたというようなことが述べられております。
また、安全性に関しましては、臨床的に重要な合併症というものの発生はなく、原疾患による有害事象の発生はあったものの、投与された試験薬に伴うものと考えるものは認められなかったという状況でございました。
結論でございますが、本試験によってこの3剤が一定の予防効果があるという傾向が見られたということでございまして、更なる検証が必要だろうということで、こちらの研究者の先生方も述べられているという形でございます。
私のコメント欄ですが、片側有意、20%の有意差が認められているところに関しまして、正直、150例本来目標であったところが、評価した症例が50例に満たなかったというところですので、限定的ではあるというようには考えておりますが、9年以上にわたって、長期試験の中で貴重な症例のデータを集められたということについての臨床的な価値というのは、研究者の先生方の御苦労を思えば高いというように考えており、非常に限定的であるものの、ある程度の傾向は見られたというように考えております。
評価につきまして、BにするかEにするか非常に悩ましかったのですが、今後、検証的試験というものが何らか行われて、新たなエビデンスの構築がなされるという前提において、一応、今回について私はBという評価をさせていただきました。
続きまして安全性ですけれども、私が読ませていただいた範囲で、重篤な有害事象と判断された症例につきましては、原疾患由来の有害事象で試験薬との因果関係が証明されないというようにされている。試験薬の由来かもしれないというところについても、余り重篤な有害事象というのは発生していないというところから、ほとんど問題なしということで、BかEか迷ったのですが、既存薬ということで、今回は安全性にAを付けさせていただきました。
技術的成熟度ですが、本疾患、投与するお薬は非常に一般的なお薬でして、そんなに大きな合併症が知られる薬ではありませんが、もともとの原疾患が非常にコントロールに経験が必要な疾患というところもありまして、一応Bという形で、数多くの経験をやった上での医師の下で、実施できる技術だろうというように考えて、こちらもBとさせていただきました。
総合的なコメントといたしましては、医学的なエビデンスの積み重ねがまだまだ必要な段階ではありますが、今後、進展は期待できるというというように考えております。特に、全身性エリテマトーデス治療において、この大腿骨頭壊死の発生というのは我々整形外科の領域でも長年問題になっていて、解決されていないところでございますので、これについて解決の一端を示せたというところについては、私は臨床的な評価はしてもいいのではないかというように考えております。
あと、薬事未承認の医薬品等を伴う薬事承認申請の効率化についてというところでございますが、もちろん本試験は飽くまで探索試験ですので、これによって効いた・効かないの是非というのは問えないと思っておりますけれども、一定の有益なデータは取れていると思いますので、例えば、薬事承認申請の際の参考資料等に使っていただくということについては、可能なのではないかというように期待しているところです。私からは以上です。
○竹内座長
ありがとうございました。続きまして、副担当の上村構成員から御説明をお願いいたします。
○上村構成員
国立国際医療研究センターの上村です。どうぞよろしくお願いします。本研究結果の中身につきましては、今、事務局と岡田構成員からお話いただいたとおりでございまして、3剤の有効性を評価するPOC試験として実施されております。当初、目標症例数は150症例でしたが、症例集積が難航したというところで50症例で結果がまとめられております。症例集積が難航した最大の理由としましては、副腎皮質ホルモン治療歴のないSLE症例が少なかったとの考察がなされております。
本試験の結果、FAS症例46名のうち大腿骨頭壊死を発症したのが8名ということで、発生割合17.4%、事前に期待した19%に近い値になっており、信頼区間の上限がヒストリカルコントロールから得られた25%を下回り、片側有意水準20%の下で事前規定した統計学的有意差は得られた結果となっております。
なお、46名のうち、試験中止した症例が3名いらっしゃったのですが、大腿骨頭壊死と関連のある事象に伴う中止ではなく、本結果は「発生なし」として解析した結果になっております。併せて、中止症例を除いた解析対象集団においても結果を提示していただいておりますが、大きな違いはございませんでした。
また、閾値を設定したヒストリカルコントロール・データと、本試験集団の比較可能性という観点につきましても照会事項を出しておりますが、初回副腎皮質ホルモン投与量の基準量が、最もリスク因子として重要と御回答いただいており、それを先行研究と合わせる形で選択基準を設定したと御回答いただいております。
また、ステロイドパルス療法の投与割合につきましても、本試験でヒストリカルコントロールと比べて、より多くの症例が使っていることから、先行研究と比べるとより重症度が高い集団での試験を実施したとの回答であり、リスクが大きく相違していることはない。少なくとも本試験集団でより軽症例が集まっていることはないと理解しております。ただ、年齢等の背景因子についての比較についてはされておりません。
以上のことから、本試験より3剤併用投与の有効性に一定の期待がされ、岡田構成員からお話いただいたように、9年間という試験で非常に貴重なデータの蓄積をしていただき、臨床的な価値はあるかと思っております。
また、ヒストリカルコントロールについては、比較可能性が大きく疑われるものではないと思いますが、本試験は対象群を設定していない単群試験でして、また有意水準につきましても、片側20%と比較的大きい有意水準を設定しているPOC試験としての位置付けで実施されている試験でございますので、検証試験を実施し、よりエビデンスを蓄積していくことによって、従来の医療技術と比較した有効性を評価できるのではないかというように考えております。そういった観点で、本試験そのものから有効性に関して評価するという点では、私のほうではEと評価させていただいております。
また、安全性に関しましては、副作用という観点では余りなかったということで、今回私のほうではBと判定させていただき、また技術的成熟度についてはEと判断させていただきました。以上になります。
○竹内座長
ありがとうございました。それでは、主担当の岡田構成員より、何か追加のコメント等ございましたらお願いいたします。
○岡田構成員
今回、有効性に関して、BとするかEとするかというのは、最終的に構成員の先生方の皆さんの御意見にも合わせて考えたいなと思っております。臨床的な意義はそれなりにあると考えていますが、統計的なことで確かなことは余りまだ言えるような段階ではない。そういったレベルということでございまして、皆様にそこの点については最終的な御判断を頂ければと思っております。ですので、そこの点だけ、私と上村先生の最終的な評価を付けている場所が違うというところの差異になっておりますので、その点について皆様から御意見を頂ければと考えております。以上でございます。
○竹内座長
ありがとうございました。それでは、ただいまの御説明につきまして、皆様から御意見を頂きたいと思います。何か御質問、コメント等はございますでしょうか。有効性についてはBという判断、あるいは早期に終了しているということでEという判断、それから安全性については、問題なしのAという判断か、余り問題なしのBという判断といったようなところかと思いますが、いかがでしょうか。
天野構成員から手が挙がっています。天野先生、お願いします。
○天野構成員
ありがとうございます。一点、すみません、細かいところの確認です。質問に対して申請医療機関が回答している部分で、いわゆるステロイドパルスが14例、32.6%に施行されたというような記載があって、データの回答も申請医療機関から頂いているのですが、この部分は何かこの試験に関わる特有の問題や、安全性に関わる問題は特になかったという理解でよろしいでしょうか。
○竹内座長
上村構成員から御返答いただけますか。この点は、上村構成員がパルス症例の割合ということに言及していただいておりました。
○上村構成員
本試験の有効性の評価をする上で、このステロイドパルスを多く投与しているほうが、イベントが起こりやすいのではないかということで、先行研究の比較可能性、先行研究ではすごくステロイドパルスをしているのだけれども、今回の試験では余りしていなかったということになると、有効性の適切な評価は難しいかなと思って質問させていただいたのですが、特段そういったところはないというような回答でした。
また、安全性に関しましても、本試験の結果から因果関係のあるような、重篤な有害事象はなかったというような報告を受けております。以上になります。
○天野構成員
分かりました。ありがとうございました。
○竹内座長
ありがとうございます。ほかに御質問やコメント等はございますでしょうか。よろしいですか。
そうしますと、岡田先生、ただいまの上村先生の御評価、特に今回は目標症例数150に対して長期に組入をしたけれども、残念ながら50例で中止になったということも踏まえて、有効性に関してはEという御判断、先生の御評価、コメント等は上村先生と一致していますが、Eという判断でよろしいでしょうか。
○岡田構成員
そうですね。結論は出せないというところで、その評価が一番適切なのかなと。これはこちらの研究者の先生方も、今後の更なる検証が必要というのはお認めになっておられますので、Eという評価でよろしいかと思います。
○竹内座長
ありがとうございます。安全性につきましてはA評価なのか、B評価なのかという観点はいかがでしょうか。
○岡田構成員
私もあとでもう一度見直したら、一応、本試験薬に絡む有害事象はゼロではないので、Bのほうが適切かもしれません。
○竹内座長
分かりました。そのようなコメントを頂戴しております。構成員から何か追加の御質問やコメント等はございますでしょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございました。それでは、告示番号旧3につきましては、ただいま御審議いただいた結果を取りまとめて、先進医療会議に報告させていただきたいと思います。ありがとうございました。戸高構成員には、ここでお戻りいただくことといたします。
(戸高構成員 入室)
○竹内座長
それでは、総括報告書の評価につきまして事務局から説明をお願いいたします。
○医政局研究開発政策課長補佐
御説明します。資料2-1の28ページ、先進医療Bの総括報告書に関し御評価いただきますのは、告示番号旧23「糞便微生物叢移植」です。申請医療機関は、滋賀医科大学医学部附属病院です。審査担当構成員は、主担当が真田構成員、副担当が平川構成員となっております。
それでは、資料に沿って御説明します。Clostridioides difficile関連下痢症・腸炎は日和見感染であり、一般的に抗菌薬の投与に関連して発生する腸炎である。抗菌剤の投与によって腸内微生物叢が菌交代現象を起こし、異常増殖したClostridioides difficileの産生する毒素により発生する。CDIの治療には、原因抗菌薬の投与中止、全身状態の管理に加えて、Clostridioides difficileに感受性を有する抗菌薬の経口投与が行われるが、再燃を来し再発となる症例も存在する。これらの再発性若しくは治療抵抗性CDIに対する治療選択肢として、海外を中心に糞便微生物叢移植の有用性が報告されている。一方で、本邦ではこれまでに十分な検討がなされていない。本研究では、治療に難渋する再発性CDIに対するFMTの有効性・安全性を検討する。FMTには、ドナー便より抽出した微生物叢抽出液を用いる。以上です。
○竹内座長
ありがとうございました。それでは、本技術の評価につきまして、主担当の真田構成員から御説明をお願いいたします。
○真田構成員
真田でございます。ありがとうございます。ただいま御紹介いただきました評価ですけれども、技術の概要を簡単に申し上げますと、新鮮な糞便をドナーから採取して、その濾過液を使う。資料2-3の図です。これを見ると極めて明解という、健常人の糞便を採って、それを生理食塩水と混ぜて濾過し、Clostridioides difficile腸炎の患者さんの大腸内に散布して治療を試みる。技術的には、わりとシンプルなものという印象を受けました。
評価の所です。結果的に申し上げますと、28ページの主要評価項目には、再発性CDIに対する単回のFMTの奏効率と書いてあります。奏効率ですから、全症例に対して何例効いたかが主要評価項目になりますが、結局、目標症例数を23例と設定したところにあって、登録症例が2例にとどまってしまったところが、やはりこの試験の一番の特徴かと思います。
29ページの結論ですけれども、主要評価項目としては奏効割合50%、2例のうち1例という計算だと思いますけれども、信頼区間の下限が、ヒストリカルコントロールを超えるという結論は得られなかったところは、そのとおりだと思います。臨床的には、2症例とも有効であったと判断していると述べられているのですが、やはり、初期的に目標症例数を設定したところの10分の1しか集まらなかったということで、どの程度の評価ができるかということを考えたときに、次のページ、私からの評価としましては、まず、有効性については、やはり評価が難しい。これ、良いのか悪いのかの判断が難しいというか、できないと申し上げたほうが正しいかもしれませんが、2例の登録しかなく終了した点から、統計的、客観的な評価を加えることは不可能と言わざるを得ないという観点からEとしました。
それから、安全性についても、今回有効性と同様に、一部に本技術とは因果関係がないと思われる有害事象が報告されていますけれども、本技術に特異的に安全性につき懸念を生じるような事項は報告されなかった。一方、やはりわずか2例の実績しかなかったので、この試験から、それらが安全であるとも危険性があるとも定性的に評価することは難しいかと考えますので、有効性と同様に、評価不能の観点からその他と判断しました。
先ほどの図にもありましたように、技術的な成熟度という観点から申しますと、通常の内視鏡診療をされている先生方であれば、これは実施可能なものかなということで、私としてはAとしました。総合的なコメントについては後ほど御説明しますが、私からはこの2例しかできずに終わったというところに関して、質問事項を研究者、実施者のほうに投げかけております。
それは35ページです。これは、後に御報告いただく統計担当の平川先生も同じ御質問をされていると理解していますが、やはり2例にとどまった理由というのは何なのか。総括報告書には、簡潔にドナースクリーニングが自施設で難しかった、煩雑であったと述べられていますけれども、そこをもう少し深掘りしてくださいということ。症例集積を増加させるために、プロトコルを変更する、又は期間を延長するなどの方策を検討されたかということ。それが実現しなかった場合には、その理由を教えてくださいということ。やはり前進しなかったことに関する総括的な反省点があるとすれば、どのようなことですかということをお伺いしました。
それに対する回答になりますけれども、やはりCOVID-19が隆盛を極めた時期に、この実施時期が重なったということは、少なからず、この感染症に対する試験の実施に大きく影響していて、このグラフの下に書いてありますけれども、UMINの公開情報を検索すると、大阪市立大学でも「Clostridium difficile腸炎に対する糞便移植療法の安全性、有効性、受容性の検討」という研究を2017年から実施されていましたけれども、4例の登録で2022年に中止となった類似の研究で、同じような理由ですということを挙げておられます。それと、もう1つ、プロトコルの変更や期間の延長などを検討されましたかということに関しては、4番の研究計画の変更ですけれども、共同研究機関の1つで、ドナーの凍結便を利用した糞便移植を積極的に実施していたので、今回のようにドナーから採った新鮮便だけではなく、凍結便も利用できるような研究計画にCRBレベルでは変更できた。ただ、これを先進医療として変更する際に、先進医療技術審査部会にかかって、これは糞便の管理方法、新鮮なのか凍結なのか、そのものが投与する医薬品相当のものの管理に関わると考えられるので、そういった意味では、試験計画の変更というレベルよりも、別研究というレベルではないですかという御指摘を受けたということでした。それは、次の研究期間の延長という所にも書いてあって、そこは、もう少し踏み込んで別研究としてやり直すという検討も含め、考察をお願いしたいとの指摘を受けたと述べられています。
この先進医療技術審査部会の決定の正確性に関しては、事務局が保管していると思うのですけれど、これを事実だと受け止めて議論を進めますと、やはり今の流れが凍結便を使った当該治療に傾いているところにあって、いたずらにこの研究を引き延ばしたり増やしたりするよりも、凍結便によるものを別研究として立てるところに注力することによって、この技術自体の成熟を目指したいという思いがあって、延長や症例の増加等々は最終的にしませんでした。ただ、その下に書いてある総括的な反省点としては、もう少し早い段階で検討するということもあり得たのではないかということは、実施者の先生方からの反省点として述べられていたことになります。私からの報告は、ここまでとさせていただきます。
○竹内座長
ありがとうございました。それでは、続きまして副担当の平川構成員から御説明をお願いいたします。
○平川構成員
東京科学大学の平川です。私のコメントです。基本的には先ほど真田先生がおっしゃったことと全く同じになります。目標症例数23例に対して2例しか登録がなく、1例は奏効の基準を満たしましたけれども、もう1例は併用禁止薬を使用したので評価不能となって、統計学的な評価としては奏効割合率50%ということになりました。ただ、試験の正否という観点に立つと、目標症例数未達であることと、なおかつ2例という極めて少ない数ですので、集団レベルでこの技術が有効かどうかを判断することが難しいということで判定不能とし、Eとしました。2例しか登録されなかった理由については、先ほど御説明していただいたとおりなので、私からは割愛します。
安全性に関しましても同じになります。2例それぞれに別々の有害事象が発生していますけれども、因果関係としては否定されています。ドナー側には、有害事象はなかったという報告になります。ただ、データが不足していますので、集団レベルでの安全性に関する統計的評価は難しいということで、その他判定不能としています。技術的成熟度については、専門外ということもありますので、こちらは主担当の真田先生に委ねることにしております。以上になります。
○竹内座長
ありがとうございました。それでは、主担当の真田構成員より追加のコメント、あるいは追加の御報告等ございましたら、お願いいたします。
○真田構成員
ありがとうございます。私から追加させていただく点は、31ページの総合的コメントに記載しております。登録が2例にとどまった理由が前半に書いてありますが、後半、やはり申請者が述べるように、凍結便を新たに用いて本技術の手法を新たに実施すること、あるいは評価することに関する意義というのは、本試験が試験としてfailureに終わったということを、これを失敗だと捉えるよりは、新たに凍結便でやるならば、その意義を問う、きちんと評価し直すというところは、その意義はきちんと存在するのではないかと思うので、本医療技術において手法に関する意義を将来的に向けて評価しようとするなら、新たにそのような研究が、現在はCOVIDの影響も脱しておりますので、適切に実施されることが望ましいというコメントを残しました。ですから、この試験がfailureだったからといって、この技術自体を全て否定することではなく、むしろ、その検体を凍結便に換えて、新たに評価し直すということであれば、それを肯定的に評価の土台に載せてもいいのではないかと感じた次第です。以上です。
○竹内座長
ありがとうございました。ただいまの御説明につきまして何か御意見、コメント等はございますでしょうか。よろしいでしょうか。世界的には糞便移植に対するランダム化比較試験等の新たな治験も集積されていると存じますので、そのことも含めて研究者は新たに研究計画を練っていただくという方向性で、この2例の経験をいかしていただきたいという、真田構成員からのコメントでした。よろしいでしょうか。ありがとうございます。それでは、告示番号旧23につきましては、ただいま御審議いただきました結果を取りまとめて、先進医療会議に報告させていただきます。
続きまして、試験実施計画の変更につきまして、事務局から説明をお願いいたします。
○医政局研究開発政策課長補佐
資料3の40ページです。東京医科大学病院からの申請で、告示番号36「自己骨髄由来培養間葉系細胞移植による完全自家血管新生療法」です。適応症は閉塞性動脈硬化症です。御審議いただく主な変更内容につきまして、41ページを御覧ください。
主な変更内容としまして、1つ目に試験期間変更とあり、被験者登録期間と研究実施期間がそれぞれ5年間延長となります。2つ目に細胞加工物規格変更とあり、記載のとおり、生物活性としてのFACS解析の基準が変更となります。3つ目に実施施設追加とあり、金沢医科大学病院が追加となります。
変更申請する理由としまして、試験期間変更については、研究計画当初は登録期間3年間で50症例が登録できる見込みであったが、コロナ渦による受診控えで症例登録が遅れている。今後は協力医療機関を追加することにより、症例登録を促進し、登録期間を5年間延長することで50症例の登録を達成できる見込みであります。
細胞加工物規格変更については、当初、本試験の細胞加工物の規格の1つに挙げた細胞表面マーカーの基準値は、比較的若年健常者3名の培養骨髄間葉系細胞の細胞表面マーカー検査の結果を基にしている。本試験での対象患者は高齢で糖尿病もあり、また、足に壊疽部を有する等、全身状態も不良であったため間葉系細胞の増殖速度が遅く、その結果、細胞培養の際、ほかの造血細胞の割合が多くなってしまったことにより、本試験における同検査の規格値と当初の規格値の間に差が生じてしまったためです。以上です。
○竹内座長
ありがとうございました。本変更内容につきまして、御意見等ございますか。よろしいでしょうか。それでは、告示番号36番の変更につきましては認めることといたします。
続きまして、試験実施計画の変更につきまして、事務局から説明をお願いいたします。
○医政局研究開発政策課長補佐
資料4の43ページです。国立精神・神経医療研究センター病院からの申請で、告示番号38「反復経頭蓋磁気刺激療法」です。適応症はうつ病です。御審議いただく主な変更内容につきまして、44ページを御覧ください。
主な変更内容としまして、1つ目に、研究計画書の研究の方法及び期間、予定する研究対象者数に下線部の追記があり、「上記の検出力はランダム化下の背景因子の分布が揃っている場合に妥当な値である。背景因子を調整した解析の検出力を見つもるため、2024年12月時点の登録状況を参考に群と背景因子の登録時情報のみを用いた検出力の計算を行う。」という記載が追加となります。2つ目に、研究計画書の研究の方法及び期間、統計解析の方法、中間解析について、中間解析は実施しないとしていたところ、「ただし、登録時の背景のみを用いた検出力計算を行う。」という記載が追加となります。3つ目と4つ目が同じ内容となりますが、記載のとおり、負担軽減費が増額となります。
変更申請する理由としまして、1つ目及び2つ目については、国内の使用成績調査の結果を入手したため、これを用いて解析計画の見直しを検討しております。併せて登録された症例データから、実際の背景因子のデータを用いて群間差を求め、検出力を再計算したく、研究計画書への追記を申請したく存じます。その後、解析条件の見直しなど詳細につきましては、解析担当者を交えた打合せを行い、適切な解析計画を改めて御提示したいと存じます。
3つ目及び4つ目については、被験者の実際の負担状況に合わせ、被験者負担軽減費を前項のとおり申請したく存じます。本研究では交通手段の乏しい地域の施設が多く、長時間の移動を伴う患者様が多い傾向にあります。通院に費用が掛かるため、研究参加を諦められた患者様もいらっしゃったことも考慮し、負担軽減費の増額により、研究参加のハードルを下げることで症例獲得につなげたいと考えます。以上です。
○竹内座長
ありがとうございます。本変更内容につきまして、御意見、コメント等ございますか。この中間解析を実施して、患者背景をヒストリカルコントロールと比較するということが研究計画書に追加になったということなど、患者の負担軽減の方策が変更になったというところが主な変更点です。よろしいでしょうか。ありがとうございます。それでは、告示番号38の変更につきましては認めることといたします。
続きまして、試験実施計画の変更につきまして、事務局から説明をお願いいたします。
○医政局研究開発政策課長補佐
資料5の46ページです。順天堂大学医学部附属順天堂医院からの申請で、告示番号45「自家濃縮骨髄液局所注入療法」です。適応症は特発性大腿骨頭壊死症です。御審議いただく主な変更内容につきまして、47ページを御覧ください。
主な変更内容としまして、症例登録期間及び研究期間の延長とあり、それぞれ2年間の延長となります。
変更申請する理由としまして、本研究の実施期間は、順天堂医院呉医療センターでこれまでに診察をした対象患者数より設定しました。一方、先進医療の審査の過程で、適格基準の最適化による変更もあり、患者登録に当初の想定以上の時間を要しました。2025年1月20日時点で、予定症例数34例の38.2%に当たる13例に本技術を実施し、着実に症例登録しています。協力医療機関を3施設にまで拡大していることと、研究期間を2年間延長することで研究完遂を目指します。以上です。
○竹内座長
ありがとうございます。本変更内容につきまして、御意見、コメント等ございますか。よろしいでしょうか。ありがとうございます。それでは、告示番号45の変更につきまして、認めることといたします。
続きまして、先進医療Bの継続の可否に係る審議結果の報告について、事務局から説明をお願いいたします。
○医政局研究開発政策課長補佐
資料6の49ページです。名古屋大学医学部附属病院からの申請で、告示番号50「タミバロテン経口投与及びペムブロリズマブ静脈内投与の併用療法」です。適応症は、切除が不可能な膵臓がんです。本技術は、本申請医療機関が臨床使用実績の効率化要件に該当するため、使用実績のない状態で申請され、承認、告示されたものです。
研究の該要としまして、本臨床研究では、二次治療抵抗性膵癌患者を対象に、タミバロテン(AM80)と免疫チェックポイント阻害剤であるペムブロリズマブを併用投与したときの有効性を探索的に評価し、安全性を確認することを目的とするとあります。
次のページです。こちらの試験は2025年1月時点で3例の症例が登録されております。継続の可否の評価に必要な評価項目については、本臨床研究は、二次治療抵抗性膵癌患者を対象にAM80とペムブロリズマブを併用投与したときの有効性を探索的に評価し、安全性を確認することを目的としている。膵癌患者に対しAM80とペムブロリズマブを併用するのは初めてであるため、安全性の評価を目的とした中間解析を行うこととする。
臨床研究中核病院や国家戦略特区内における先進医療の特例の対象となる医療機関で初期3例を登録する。1コース目の評価が3例終了した時点で、2コース目開始日の評価までの臨床研究実施計画書の安全性評価項目の項のデータをまとめる。また、3例目の2コース目開始日の評価までに、対象者に生じた疾病等に該当する有害事象で、臨床研究実施計画書の有害事象等の定義の重篤な有害事象の項に該当する事項、並びに治療中止基準に該当する事項を一覧にする。安全性評価委員会で審議された結果を先進医療技術審査部会に報告し、先進医療の継続可否について評価を受ける。先進医療技術審査部会による登録初期3例の評価を完了するまで、症例登録は一時中断することとするとあります。
継続の可否に係る確認状況として、安全性評価委員会では1~3例目の経過を踏まえ、4例目以降の組入れに問題はないと考えるとのことであった。その結果を受けて、先進医療技術審査部会構成員によって御審議いただいた結果、先進医療継続可との評価を得たため、新規症例登録は再開された。以上が御報告です。
○竹内座長
ありがとうございます。何か御質問、コメント等ございますか。いわゆる「0例特例」として実施され、3例目までの安全性について御評価を頂いて、安全性評価委員会では問題なかろうという御判断であったということです。この試験を継続してよろしいかどうかということですが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、告示番号50につきましては、ただいま御報告いただいたとおり、試験を継続していただきたいと思います。
続きまして、先進医療Bの協力医療機関の追加につきまして、事務局から説明をお願いいたします。
○医政局研究開発政策課長補佐
資料7-1の52ページです。告示番号36について1施設、告示番号47について1施設の協力医療機関の追加申請がありました。資料7-2の53ページを御覧ください。事務局において先進医療を実施可能とする保険医療機関の要件、様式第9号を満たしていることを確認いたしました。協力医療機関の追加として御了承いただきたく存じます。特に御意見がなければ、手続を進めさせていただきます。以上です。
○竹内座長
よろしいでしょうか。ありがとうございます。それでは、事務局で手続を進めていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
続きまして、先進医療Bの協力医療機関の取下げにつきまして、事務局から説明をお願いいたします。
○医政局研究開発政策課長補佐
資料8の57ページです。協力医療機関の取下げとして、告示番号35で1件申請がありました。理由としましては、症例登録期間が終了し、当医療機関では登録症例がなかったため取り下げるとあります。以上について特に御意見がなければ、手続を進めさせていただきます。以上です。
○竹内座長
よろしいでしょうか。それでは、事務局では手続をお進めいただきたいと思います。
本日の議題は以上ですが、構成員の皆様、全体を通して何か御意見、コメント、御質問等ございましたら、お願いします。いかがでしょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございます。大変熱心な御討論を頂きました。次回の日程を事務局からお願いいたします。
○医政局研究開発政策課長補佐
次回は令和7年3月13日(木)の開催とさせていただきます。時間は16~18時までの予定で、詳細につきましては、別途、御連絡させていただきます。また本日の議事録については、作成次第、構成員の皆様に御確認をお願いし、その後、公開させていただきますのでよろしくお願いいたします。
○竹内座長
それでは「第172回先進医療技術審査部会」を、これにて終了させていただきます。どうも御参加ありがとうございました。