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2025年5月13日 第197回労働政策審議会労働条件分科会 議事録
労働基準局労働条件政策課
日時
令和7年5月13日(火) 15:00~17:00
場所
厚生労働省専用第22~24会議室
(東京都千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎5号館18階)
(東京都千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎5号館18階)
出席者
- 公益代表委員
- 安藤委員、川田委員、黒田委員、首藤委員、原委員、水島委員、山川委員
- 労働者代表委員
- 亀田委員、櫻田委員、椎木委員、冨髙委員、藤川委員、古川委員、松田委員、水野委員
- 使用者代表委員
- 鬼村委員、佐久間委員、鈴木委員、田中委員、鳥澤委員、兵藤委員、松永委員
- 事務局
- 岸本労働基準局長、尾田審議官(労働条件政策、働き方改革担当)、佐々木総務課長、澁谷労働条件政策課長、田上労働条件確保改善対策室長、中島労働条件政策課長補佐、下田労働条件企画専門官
議題
労働基準関係法制について
議事
- 議事内容
○労働条件企画専門官 それでは、定刻となりましたので、「労働条件分科会」を開始させていただきます。
事務局の労働基準局労働条件政策課の下田と申します。本日は、本年4月27日付の労働条件分科会の委員改選後初めての開催となりますので、冒頭は事務局において進行させていただきます。よろしくお願いいたします。
なお、本日は、会場からの御参加とオンラインでの御参加の双方で開催とさせていただいております。
まず、議事に入ります前に、分科会委員の交代につきまして御報告させていただきます。お手元の「参考資料No.1」として、労働条件分科会委員名簿を配付しております。
名簿の順番により、新しく委員に就任された方々5名につきまして御紹介させていただきます。
公益代表の委員として、立教大学経済学部教授、首藤若菜委員でございます。
成蹊大学法学部教授、原昌登委員でございます。
明治大学法学部教授、山川隆一委員でございます。
労働者代表の委員として、全日本運輸産業労働組合連合会中央書記次長、亀田幸雄委員でございます。
JAM副書記長、椎木盛夫委員でございます。
以上の方々にそれぞれ御就任いただいております。
続きまして、本日は委員改選後初めての開催となりますので、分科会長を選出する必要がございます。
分科会長は、労働政策審議会令第6条第4項に基づき、「当該分科会に属する公益を代表する本審の委員のうちから、当該分科会に属する本審の委員が選挙する」こととされております。
当分科会におきましては、本審の委員は山川委員のみが該当されます。
したがいまして、山川委員が当分科会の分科会長に就任されることとなります。それでは、以後の議事進行は、山川分科会長にお願いいたします。
○山川分科会長 労働条件分科会長を務めさせていただくことになりました山川でございます。委員の皆様方の御協力を得て、分科会の議事を進行させていただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
まず、分科会長代理の指名をさせていただきたいと思います。分科会長代理につきましては、労働政策審議会令第6条第6項によりまして、「当該分科会に属する公益を代表する本審の委員又は臨時委員のうちから分科会長があらかじめ指名する」こととされております。この規定に基づきまして、本日ウェブで御出席の水島委員に分科会長代理をお願いしたいと思います。水島委員、どうぞよろしくお願いいたします。
○水島委員 水島でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
○山川分科会長 ありがとうございます。
では、本日の委員の御出欠の状況ですが、公益代表の神吉委員、それから、使用者代表の佐藤晴子委員が御欠席と伺っております。
それでは、カメラ撮りはここまでとさせていただきます。
議事に入りたいと思います。本日の議題は「労働基準関係法制について」でございます。
では、まず事務局から、資料№1「労働時間法制の具体的課題について①」につきまして、説明をお願いします。
○労働条件確保改善対策室長 事務局でございます。
本日机上に配付しております資料、資料№1、資料№2、それから、参考資料といたしまして参考資料№2でございます。
まず、参考資料No.2でございますが、以前も御説明いたしました労働時間制度に関する実態調査結果の資料をまとめたものでございます。そして、資料№2でございますが、これまでの分科会の中で委員の皆様方からいただいていた意見をまとめたものとなっております。こちらも御参考にしていただければと思います。
資料№1が今回の本題の資料ということとなりますので、随時御説明をいたします。
まず、資料№1、今回の資料でございますが、「労働時間法制の具体的課題について①」とさせていただいております。
中身といたしましては、労働時間法制に関するものの総論、それから、個別論として上限規制の関係、労働時間の情報開示の関係、週44時間の特例措置の関係、テレワーク等の柔軟な働き方の関係、管理監督者の関係となっております。
おめくりいただきまして、まず総論の部分ですが、大きな1番として「人口構造・産業構造」でございます。
2ページでございます。「日本の人口の推移」ということで、これはもう御案内のことと思いますけれども、我が国の将来の人口の推計でございます。
さらに3ページ目でございます。産業別の就業者数ということで、労働力に着目したものでございますが、1951年から2023年までの推移でございます。戦後から、第一次産業に関しては継続的に就業者数が減少していって、それが第二次産業、第三次産業に動いていった。第二次産業に関しましては、右側の指数を見ていただけば分かるとおり、1990年代にピークを迎えまして、それ以後少し減少して、ただ、足元では横ばいぐらいとなっている。そして第三次産業は継続的に増加してきたと、このような経緯がございます。
4ページ目でございます。企業規模別の雇用者数の推移というものでございます。我が国は産業の中小企業で雇用を保っているという部分がございますが、1~29人の小規模の企業に関しましては継続的に減少を続けている、そして、そのほかの規模に関しましては増えているというような状況が足元続いております。
5ページでございます。全国と地方で見た企業規模別の従業員割合ということで、中小企業、日本の雇用を支えるものでございますけれども、特に地方におきましては84.9%が中小企業に勤められているというところでございます。
6ページ目、「現在の雇用情勢」でございます。2006年から雇用情勢をグラフにしたものでございます。リーマン・ショックで一度ボトムを打ってから、雇用情勢は継続的に改善してきたというところでございますが、2019年から20年にかけて、やや頭打ちになっていたところにコロナがあり、一旦悪化をし、そしてそれがまた徐々に戻ってきて、現在は横ばい状況というような状況になっております。
7ページ目でございます。企業の雇用人員判断D.I.でございます。2015年からプロットしたものでございますけれども、コロナの一時期、人手不足から人手過剰のほうに、製造業や宿泊・飲食サービスでは過剰のほうに振れたという一時的な動きはございましたが、継続的に見ればずっと人手不足が続いているという状況でございます。
8ページ目、地域別に見たものでございます。地域別に見ましても、足元、コロナでやや過剰のほうに振れはしたものの、ゼロを超えることはなく、引き続き人手不足が非製造業で続いているという状況でございます。
続きまして、大きな2つ目のブロックでございます。「労働時間等の状況」でございます。
10ページ目はこれまでも御覧いただいていたものかと思います。「年間総実労働時間の推移」ということで、総実労働時間、所定内労働時間は継続的に減少してきた。コロナで一旦大きく下がった後、ややリバウンドはございますが、それでもコロナ前の水準には達さず、現在、1,643時間という状況となっております。
右側、一般とパートに分けたものでございますが、一般労働者に関しましても、2,000時間を切り、1,946時間というところまで来ているというものでございます。
11ページ、企業・事業所規模別に見た労働時間の推移というものでございます。規模別に見ますと、企業規模が小さいほうが年間の総実労働時間がより大きく下がっているという状況がございます。
右側のグラフ、平均の週間の就業時間に関しても、全体で見ますと、5~29人のところが赤の線でございますが、低い。ただ、月末1週間に60時間以上就業する長時間の方ということでいきますと、全体で見ると、5~29人や1~4人のような小さいところで割合が高く出ているというような状況でございます。
12ページでございます。男女別に見た労働時間の推移でございます。男女で見ますと、女性のほうが男性より平均して労働時間が短いということになりますが、これはパートタイム労働者比率の問題も影響しております。
1週間に60時間以上就業するいわゆる長時間労働の方でございますけれども、男性も7%を割るようなところまで来たという状況でございます。
13ページ、これを産業別に見たものでございます。産業別に見ますと、運輸業、郵便業ですとか建設業といったところで平均値が高くなっているという状況でございます。
14ページが週60時間以上就業する雇用者数の推移でございます。こちら、男女計で見た全体でございますが、5%を割るところまで減少してきたという状況でございます。
15ページは、週労働時間40時間以上の雇用者のうち、週労働時間60時間以上の雇用者の割合でございます。こちらも全ての産業で下がってきておりますが、いまだ産業ごとにばらつきはあるという状況でございます。
16ページでございます。労働時間に関する実態調査から抜粋してきたものでございます。特にここでは、いわゆる適用猶予業種である建設の事業ですとか自動車運転の業務、医師といったようなところで、労働時間がどうなっているのかというのを見たものでございます。1か月当たりの平均残業時間で見ますと、全産業計と比べまして、建設の事業や自動車運転の業務では45時間超というところの割合がやや高くなっております。
また、下のグラフでございますが、1か月の時間外労働が45時間を超えた回数というところでも、1回以上の部分で建設の事業、自動車運転の業務というところがやや割合が高くなっているという状況です。
17ページ、脳・心臓疾患に係る労災請求件数でございます。労災請求件数、でこぼこしておりますが、足元、若干増えておりまして、令和5年度は1,000件を超えているという状況でございます。それに応じて支給決定件数も足元少し増えているところではございます。
ただ、死亡に関しましては、令和4年から5年、ちょっと増えておりますが、横ばい傾向程度という状況でございます。
19ページ、精神障害に係る労災請求件数、支給決定件数の推移でございます。精神障害に関しましては、請求件数はかなり増加してきているということで、足元、令和5年は3,575件、それに伴いまして支給決定件数も増加してきているという状況でございます。支給決定件数のうち自殺、未遂を含むもの、こちらにつきましては、足元、横ばい圏内で動いてきているという状況でございます。
続いて21ページでございます。労働生産性と総労働時間に関しまして各国のものをプロットしたものでございます。これを国際比較してみますと、ある程度、当然の相関ではございますけれども、1人当たりの総労働時間と時間当たりの労働生産性には負の相関性が見られます。我が国より1人当たりGDPが大きな国の多くというのは、1人当たりの総労働時間が短いという、左上側に位置する国々というような状況となっております。
22ページでございます。企業による設備投資の動向でございます。設備投資の目的といたしまして、一番多いのは設備の代替、その次は維持・補修というところでございますが、新規事業への進出ですとか情報化、それから合理化・省略化といったものを挙げる企業が、2019年と2025年を比べますと、増加しているという状況でございます。
生産性向上のための投資というものが一定進んでいる。その一例といたしまして、右下でございますが、セルフレジの設置店舗があるスーパーマーケットの運営企業というものも年々増加しておりまして、4割近くのところまで来ているという状況です。
23ページ、人材育成に関係しまして、自己啓発についての課題意識でございます。これは労働者に聞いたものでございますが、自己啓発を行う上で何が問題になるかというものでございますけれども、こちらに関しては、「仕事が忙しくて自己啓発の余裕がない」という答えが一番大きくなっているというものでございます。
24ページ、25ページ、睡眠時間の状況でございます。24ページを御覧いただきますと、国際的に比較をすれば、我が国は男女ともに睡眠時間が短いという状況となっております。
25ページでございますが、一人一人に聞いた理想の睡眠時間と実際の睡眠時間というものも乖離しておりまして、理想の睡眠時間は大体6時間以上、8時間以上という、そういった長い時間取りたいというところでございますが、実際の睡眠時間では5~6時間未満という方もかなり多くなっておりまして、かなり乖離しているという状況でございます。
大きな3つ目のブロック、26ページ以降でございますが、「労働参加の状況」でございます。
27ページから「都道府県別の労働参加率」のデータでございます。まず、全体の15歳以上の男女での労働参加率を見ますと、東京都が突出して高いという状況になっております。その他、でこぼこしているというところでございますが、東京都の高さに関しましては、高齢化率の違いというのも影響しているかなというところです。
28ページですが、ではその高齢者はどうかというところでございます。65歳以上の男女の労働参加率を見ますと、中部地方ですとか山陰地方で全国の労働参加率を上回っている地域が多いというような状況となっております。
それから29ページ、都道府県別に見た女性の15~64歳の労働参加率でございます。これを見ますと、男性と比べて都道府県間のばらつきが大きいことと、東北地方、中部、山陰、九州といったところで全国値を大きく上回る地域が多いというような傾向となっております。
30ページでございます。「女性を取り巻く雇用環境」ということで、いわゆるM字カーブ、L字カーブというものでございます。左側、M字カーブに関しましてはかなり改善してきておりまして、Mの底はほぼなくなりつつあるという状況でございますが、右側、正規雇用率に関しましては20代を頂点に下がっていくという、L字カーブはまだまだ解消していないというような状況でございます。
31ページでございます。男女別に見た短時間労働者の中での労働時間の構成というもので、左側が男性、右側が女性でございますが、右側の女性を見ていただきますと、色の濃い部分と太い斜線の部分、これが週の労働時間が1~29時間ということで、短時間労働者の中でも比較的短い層でございますが、女性でその割合がかなり高くなっているという状況でございます。
32ページでございます。こちらは国際比較したものでございます。右下のグラフでございますが、女性の労働時間に関して見ますと、週1~29時間という短時間の割合が高いというのが日本の特徴となっておりまして、こういったところで男女の違いというものが出てきているところかと考えております。
33ページでございます。続いて高齢者の就業率の推移でございますが、1985年から2024年まで、2005年にやや下がりましたけれども、その後ぐっと伸びてきているという状況でございます。
こうしたことを背景に、34ページ、労働参加の状況でございます。左のグラフでございますが、生産年齢人口と就業者ということで、黒実線が15~64歳の人口でございます。少子高齢化によりまして生産年齢人口が右肩下がりでずっと下がってきているという状況でございますが、その中でも、就業者という面で見ますと、特に2010年代から女性の就業者がぐっと伸びてきたという動きがございます。
また、真ん中のグラフでございますけれども、65歳以上の人口、そして65歳以上の男女の就業者、これがずっと伸びてきている。足元、65歳以上人口はやや伸びが鈍化している状況でございますが、それでも、65歳以上の女性の就業者は大きく増えているというような状況がございます。
こういったことから、就業者数自体は維持されてきておりまして、右側のグラフでございます。労働投入量を時間で見たものでございます。労働時間×就業者数で見たものでございます。人口の指数は右肩下がりで、それと連動して労働投入量の指数も1993年から下がってきていたのですが、2010年代後半から、それが大体横ばい圏内からやや増加といったような動きを示しております。コロナで一旦がくっと落ちておりますが、2013年から2023年を比べますと、大体横ばいぐらいには維持されてきたという状況でございます。
35ページでございます。労働力の需給推計と実績値の比較ということで、左上のグラフを見ていただきますと、2018年に行った2022年の労働力人口の推計と実績値でございます。もともと、ベースラインでの推計がオレンジの線、成長実現した場合の推計値が青の線だったのですが、それを大きく超えて実績としての労働力人口が増えてきたという状況でございます。これは、右側にあるとおり、男女ともに労働力人口としては維持されてきたという状況でございます。
36ページ、「就業者数の将来推計」でございます。ここからは将来の話ということでございまして、まだまだ、成長しなければ就業者は減っていく。ただ、成長実現して労働参加が進展するというシナリオですと、まだ引き続きしばらくは就業者数は維持できるという推計もあるというところでございます。
37ページは女性の継続就業や出産と男性の育児・家事の関係でございます。M字カーブ、L字カーブは先ほど御覧いただいたとおりでございます。
特に右上でございます。家事関連時間に関しましては、妻が夫よりは大きく長い。その背景には、夫の仕事関連時間が妻と比べると大分長いということもあるところでございます。
38ページでございます。共働き世帯の動きでございますが、御案内のとおり、共働き世帯はぐっと増えてきていて、専業主婦世帯は減っているという状況でございますが、共働き世帯の中で見ましても、右側のグラフにありますとおり、妻が週35時間以上働いているという世帯が542万世帯となっております。これは左と比較しますと、専業主婦世帯よりも多いというところまで来ているというものでございます。
以上、総論としてのデータ集でございます。
続いて39ページから各論に入って、まず「時間外・休日労働時間の上限規制」に関する資料でございます。
40ページでございます。「時間外労働の上限規制等に関する労使合意」、平成29年3月13日にやったものでございます。これは働き方改革関連法に先立つ働き方改革実現会議で実行計画を作成する際に、まず3月に経団連と連合の両会長で行われました労使合意でございます。上限規制に関してこういった形で合意がなされました。
こちらを踏まえまして、次の41ページ、働き方改革実行計画が働き方改革実現会議で決定されました。これをもとに労働基準法改正法案をしていったというような流れとなっております。この働き方改革実現会議におきましては、42ページにメンバー構成員を並べさせていただいておりますが、労使、連合、経団連、そして日商、中央会といったような関係の方々にも入っていただきつつ、有識者の方にも入っていただいてなされた会議となっております。
43ページが、結果として規定されました時間外労働の上限規制の概要でございます。こちらはもう御案内のことと思いますので、飛ばさせていただきます。
44ページでございます。これにつきまして、労働時間の規制に関して各国どうなっているかを比較したものでございます。特に欧州と比較したものでございます。1日当たりの法定労働時間の設定につきましても、各国いろいろ違うところはございます。1日というものを制定している国、していない国、週に関しても、40時間がベーシックではあるものの、48時間という設定をしているようなところもある。上限規制に関しても様々な定め方があるというようなところでございますが、日本もこれに遜色ないような上限が設定されているものと思っております。
45ページでございます。所定労働時間・残業時間に関しまして、令和5年にアンケート調査をした結果でございます。こちらは、先の労働基準関係法制研究会にも提出させていただいたものでございます。45ページで示しておりますのは、実際に所定労働時間がどれぐらいで、平均残業時間がどれぐらいで、それとは別に、自分が適切だと考える残業時間はどれぐらいですかと、この3つを労働者に聞いたものでございます。
実際の残業時間に関しましては20時間未満というところが多いのですが、5%程度、80時間を超えるような方もその当時あったというものでございます。
右側、適切と考える残業時間に関しましても、87.6%が20時間以内のところでお答えになっていた。80時間を超えるところは1%程度というような結果でございました。
46ページでございます。残業時間に関する認識ということで、減らしたいか増やしたいか、その理由を問うたものでございます。「このままでよい」という方が63.1%と多いのですが、減らしたいか増やしたいかでいうと、「減らしたい」が26.1%、「増やしたい」が10.9%でございました。
減らしたい理由としては、「自分の時間を持ちたいから」、「健康管理のため」、「残業代が負担に見合わないから」というところが多くなっております。
増やしたい理由としては、「残業代を増やしたいから」というのが7割弱と一番多くなっているというような結果でございました。
47ページです。同じく、残業時間を減らして、残業代を減らしていくということに関しまして、左側でございますが、半数以上の方が、「残業代が減ってもよいので、残業時間を減らしたい」というのがお答えでございました。
右側で、「残業時間を削減するために有効と考える措置」は何が考えられますかと労働者に聞いたものでございます。人手不足の解消ですとか、業務の簡素化・効率化、業務分担の平準化といったようなことが挙げられておりました。
48ページは、労働基準関係法制研究会の報告書の上限規制に関する部分の抜粋でございます。
続いて5つ目のブロックでございます。「企業による労働時間の情報開示」に関するものでございます。情報開示に関しまして、まず、企業外に関する情報開示につきまして、現行法でも様々な法律において法定開示というものをやっております。女性活躍推進法であったり、次世代育成支援対策推進法であったりというものでございます。50ページにそれを一覧にしたものを載せております。
51ページでございますが、各項で開示を求められている内容の詳細について、整理させていただきました。こちらの表に関しましては、労働時間関係ですとか雇用状況関係ですとか、分野ごとに分類しまして、この右側の詳細部分を書いているところに法律ごとに整理をしたというものとなっております。こちらも御覧いただきながら御議論いただければと思います。
続いて、企業の内部での労働時間情報の開示・共有といったものに関して、研究会の報告書の中で、衛生委員会とかといった社内で議論する場における開示も示されていたものでございます。
52ページは衛生委員会の概要でございます。労働者の健康障害の防止ですとか健康の保持増進に関する取組を、衛生委員会で、労使で様々議論していただいているというものでございます。
これとは別に、53ページでございます。労働時間等設定改善法の中におきまして、労働時間等設定改善委員会というものが制度として設けられております。こちら、一部労使協定と同様の効果を有するような決議ができるという委員会でございまして、各事業所である委員会と企業単位で一定のものを扱う労働時間等設定改善企業委員会というものがございます。これをどういった形でやっているのかという概要でございます。
54ページ、情報開示に関する研究会報告書の抜粋でございます。
続きまして、大きな6つ目のブロックでございます。「法定労働時間週44時間の特例措置」に関するものでございます。
56ページ、この特例措置の内容でございます。労働基準法で法定労働時間は週44時間と定めているものでございますけれども、この中で、労働基準法の別表第1の8号、10号、13号、14号、具体的にいいますと商業、映画・演劇業、保健衛生業、接客娯楽業、この業に当たるもので、かつ、常時10人未満の労働者を使用するもの、こういった事業所に関しましては週の法定労働時間を44時間とするという経過措置的なものが設けられているものでございます。
こちらに関しまして、実情どうなのかというのが57ページ以降でございます。まず、57ページでございますが、44時間の特例に当たる事業所におきまして、所定労働時間は実際にどう設定しているかというものでございます。併せて、大体7割の事業所で週40時間以内のところで所定労働時間を定めているという状況でございました。40時間超で定めているところに関しましては、その右側でございます。大体12%ぐらいというものでございます。
産業別に見ますと、40時間を超えているところでいきますと、不動産、物品賃貸業ですとか、宿泊、飲食サービス業、それから、理容業、美容業といったところで一定程度発生しているというものでございます。
58ページでございます。実際に時間外労働等することもあるかと思いますが、その残業代をどのように支払っているか、どこから支払うかというものでございます。これらの事業所は法定労働時間44時間になりますので、割増賃金の支払いも44時間を超えたところからで法律上はいいということになっております。
ただ、実際に事業所に聞いてみますと、こちら、下の結果にありますとおり、「その他(支払っていない)」という残業が発生していないところはさておき、40時間を超えたところから残業代を払っていますというのは全体の6%ぐらいで、そのほかの事業所に関しては、40時間以内の自分の事業所で定めた所定時間から割増賃金を支払っているという回答でございました。
59ページはこれまでの経過でございます。この特例でございますが、経緯的には昭和63年から始まりました週休2日制に向けた法定労働時間の短縮に端を発するものでございます。平成5年の法律改正を段階的に施行していく中で、ほとんどの業種、規模で40時間になっていったという中で、この4つにつきまして、まず平成9年の段階で、46時間で残っていた。それを平成13年施行の改正法で44時間まで下げたというところまで動いてきていて、その後、改正がなされていないというものでございます。
60ページにつきましては、これに関する報告書の概要でございます。
7個目のブロックでございます。「テレワーク等の柔軟な働き方」に関してでございます。テレワークの柔軟な働き方に関しまして、研究会の報告書では、テレワーク時に使える時間制度として、フレックスタイム制というものをまず考えてはどうかということが記載されておりました。
これに関しまして、フレックスタイム制とテレワークの関係でデータを用意したものが62ページでございます。フレックスタイム制を採用している企業の割合というものでございますけれども、ずっと横ばい圏で進んでいたのですが、平成から令和に変わる辺りで、フレックスタイム制を採用している企業の割合がぐっと増えた。また、フレックスタイム制を採用している企業の中で適用を受ける労働者の割合、これも増えて、現在、10%程度までなっているというような状況でございます。
右側でございますが、一方、テレワークはといいますと、やはりコロナを機にということで、令和元年に20.2%が令和2年に47.5%になりまして、以降、半数程度の企業がテレワークを導入しているという状況となっております。
フレックスタイム制でございますが、63ページ、概要でございます。御案内のとおり、一定期間について、あらかじめ総労働時間の範囲を定めて、その中で労働者が始業・終業を日々自分で決めていくという制度でございます。その清算期間の総枠を超えたものを時間外労働にすると、こういう制度です。
左下にイメージがありますが、一定、コアタイムのような時間を設定することもできますが、始業・終業を労働者が自由に決められるということで、右側の日々の労働時間の例にありますように、自分ででこぼこを決めて働くことができるというような制度となっております。
64ページから現行規定を書かせていただいております。64ページは法律、省令の規定でございます。
65ページから通達等で現行の解釈を進めさせていただいているものでございますけれども、解釈の中で幾つかポイントがございます。65ページ、真ん中の部分でございますが、始業、終業は両方とも委ねるということで、どちらか一方ではだめですというようなこと。それから、一番下のところですが、コアタイムをあまりに長くして、事実上選べないということでは労働者の決定に委ねたことにはなりませんという解釈。こういったものを示させていただいているものでございます。
66ページはテレワークの適切な導入のためのガイドラインを抜粋したものでございます。この中でも、フレックスタイム制を使う場合にはこのようなことに気をつけてくださいということを紹介させていただいているものでございます。
68ページでございます。報告書でも言及のありましたフレックスタイム制と通常勤務日を組み合わせる制度に関しまして聞いたものでございます。令和5年のアンケートです。これは企業に聞いたものですが、フレックスタイム制と通常勤務日を組み合わせられる制度は必要だと思いますかというものに関してでございます。「どちらでもよい、わからない」が55.7%ですが、必要であるか不要であるかで比較をしますと、「必要である」と答えた企業が多かった。
下のグラフですが、その中でも、フレックスタイム制を実際に使っているという企業では、こういった組み合わせられる制度についての需要が高かったというような結果となっております。
69ページは報告書の関連する部分の抜粋でございます。
最後、8つ目のブロック、「管理監督者」でございます。管理監督者に関しまして、71ページです。まず、裁量労働制・高度プロフェッショナル制度といったような他の制度と比較したものがございます。
71ページは、その適用要件に関して制度を並べたものでございます。実労働時間規制を外して特別規制をやっているもの、管理監督者は労働時間規制から外れるわけですが、みなしになる裁量労働制ですとか高度プロフェッショナル制度といったものと比較しますと、他の制度ではそれぞれ制度運用時に手続的な要件が定められているというものでございますが、管理監督者に関しては、手続的要件は特段ありませんでして、管理監督者の要件に当たれば管理監督者になるというような制度の仕立てとなっております。
右側の研究開発業務に関しましても、36協定を設定する際に上限が一部かからないというものでございますが、こちらに関しても手続的要件は特段ないということになっております。
72ページでございます。これらの方々に対しまして健康・福祉確保措置をどのようにやっているかを比較したものでございます。真ん中の段の80時間や100時間を超えた場合の医師による面接指導、これはいずれもあるというものではございますが、一番上の段、健康・福祉確保措置の一般的な措置、一般労働者であれば上限がかかっている、裁量労働制や高度プロフェッショナル制度であれば、法定の健康・福祉確保措置を何らか講じなければならない。研究開発業務事業者に関しても、そのようなものが、指針ではございますが、設けられているという中で、管理監督者にはこういったものがないという状況になっているという違いがございます。
73ページは高度プロフェッショナル制度における健康・福祉確保措置を例として出させていただきました。必ずしなければならない(1)から(3)の措置と、(4)として、いずれかの措置を決議で決めて実施をする選択的措置とに分かれておりますけれども、こういったものが高度プロフェッショナル制度を使うときには健康・福祉確保措置として求められるというものになります。
74ページ、管理監督者とは具体的にどういうものなのかという概要の資料でございます。こちらに関しては現行制度を説明したものでございますので、御参照いただければと思います。
続いて75ページですが、ここはちょっと変わりまして、管理監督者性とは何なのかという部分でございます。管理監督者に関しましては、様々争いございますが、管理監督者とされた方々が実際に管理監督者に当たるのかという点での判決というものが幾つかございます。ここに並べさせていただいたものはいずれも管理監督者には当てはまらないとされた裁判例でございますが、飲食店とかといったところで多いものでございますけれども、店長ですとかで、一定管理職的に働いているものの管理監督者には当たらないというような判例が出たものがございます。こちらも御参照でございます。
76ページでございます。管理職の月間残業時間数のデータでございます。こちらは、2021年にJILPTで行ったものでございます。月間残業時間数の分布の状況を見ますと、残業していませんという人の割合が多いというところでございますが、40時間以上の残業をしている方もそれなりの数、17.5%。平均でいきますと、右側にありますように、大体20時間近傍のところという結果となっております。
77ページでございます。管理職に対する健康・福祉確保措置でございます。法定では、先ほど申し上げましたように、これをやってくださいというものはないわけですが、実際に勤務先の会社で健康・福祉確保措置やっているというところもかなり多くございます。
下のグラフにある斜線の部分が実施されているというものでございますけれども、例えば健康診断であれば89.6%が実施されているというものでございますし、必要な場合には適切な部署に配置転換をするですとか、産業医による健康指導といったものも8割を超えて、かなりの企業がやっておられるというような結果となっております。
78ページが管理監督者に関する報告書の抜粋でございます。
以上、今回御用意させていただいた資料の説明でございます。これらの項目について御議論をいただければと思います。よろしくお願いいたします。
○山川分科会長 ありがとうございました。ただいまの事務局の説明も踏まえまして、総論として説明のあった様々なデータも念頭に置きながら、これ以降、各テーマについて議論を進めていければと思います。
テーマが多岐にわたっておりますので、とりあえず、御議論いただくテーマは3つに区切ってはいかがかと思います。まず1つ目は、時間外・休日労働時間の上限規制、それから労働時間の情報開示、法定労働時間週44時間の特例の措置についてで、ここまでが1つでございまして、2つ目がテレワークとフレックスタイム制の話もありましたけれども、テレワーク等の柔軟な働き方、これが2番目で、それから3番目が管理監督者、その他ということで、以上の3つに分けて御議論をいただければと思います。
それでよろしければ、まず1つ目の時間外・休日労働時間の上限規制について、それから、労働時間の情報開示について、法定労働時間週44時間の特例措置につきまして、御意見、御質問がありましたらお願いいたします。オンライン参加の委員の皆様におかれましては、御発言の希望があります場合にはこちらのチャット機能でお知らせいただきたいと思います。
それでは、まず1つ目のかたまりといいますか、テーマにつきまして、御質問、御意見等ございますでしょうか。
では、佐久間委員、お願いします。
○佐久間委員 ありがとうございます。
まず、時間外労働、休日労働の上限規制の関係ですけれども、私どもの調査では中小企業は、実際、時間外労働は10時間ちょっとであり、これは厚生労働省の調査でも同様な平均値だと思うのです。中小企業では依然として慢性的な人手不足、特にサービス業とか建設業については深刻な状況であります。規制内での運営が困難な事業所も多数存在していることは事実でございます。労働時間削減に取り組む余力が乏しいこの小規模企業では、業務の集約とか、業務を分担するというのが実際難しいのではないかと思います。特に受注型の産業では注文を受けてから自分のところで生産する企業ですから、閑繁の差というのが大きく、柔軟に対応することに欠けています。繁忙期にそういうのが出てくると制約が生じやすくて、省力化機械とかIT機械などを導入していかなくてはいけないということは分かりますし、これからも残業に依存しない体制構築を図っていくことも実際必要だとは考えますが、外注化してもコストが掛かったり、いろんな要因が出てきますので、この時間外労働の上限規制について変更する必要は、現状ないのではないかと思います。
また、適用除外というか、猶予措置の業種もあります。せっかく働き方改革を進めてきたのですから、段階的な適用を進め、例外は業種によってつくらない方向でお願いしたいと思います。
それから、情報開示の関係でございますけれども、どうしても規模が大きくなれば大きいほど、また中小企業にとっても、成長してきて、だんだん規模が大きくなってくれば、その正確な数値の収集とか更新の業務負担、それから業務を招くデータの公表への抵抗感が生じます。情報開示項目が増加してくると、採用活動とか対外評価に直結する中で、今後はこの開示を義務として捉えず、自分たちの企業をアピールする戦略的に捉えていくことが実際必要なのだろうなと思っております。そうはいいながらも、やはり法令遵守をやっているとか、その企業イメージが良いと思われる反面、公開していないと成績が悪いとか、あまり芳しくない数値も開示しなければならないということで、マイナスの面も出てくる。それではいけないといいながらも、中小企業の実態としてみると、やはり厳しい面がありますので、ここも留意をいただきたいなと思っています。
なお、44時間の特例措置の関係、これは業種によって本当に必要なところというのは多いとは思うのですけれども、働き方改革が進展する中で、この特例に依存して運営している零細な事業者というのもあると思います。統計数字や業界の労働実態を見てみると、人手が足りないところで、40時間ではどうしても回らないところの現実もあると思います。家族経営とか地域密着型企業にとっては死活問題になるところもあると思うのですけれども、将来的に段階的縮小というのも念頭に置きながら、この制度があるとか、その周知について十分な移行支援とか、そういうのが必要なのではないかなと思っています。人員確保とか設備投資に対する補助制度とか、継続的に実施していただきたいと思っております。
以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。御意見をいただきました。ほかに御意見、御質問等ございますか。
それでは、櫻田委員、どうぞ。
○櫻田委員 ありがとうございます。佐久間委員からご発言もありましたが、労働時間の情報開示と、法定労働時間週44時間の特例措置について意見を申し上げたいと思います。
まず、労働時間等の情報開示についてですが、これは労基研の報告でも提起されているところですけれども、企業が外部に情報開示するということについては、労働市場の調整機能を通じて個別企業の勤務環境を改善していくという効果も見込まれるところだと思っています。したがいまして、この資料No.1の50~51ページに掲げられております各法で開示が求められている内容については、一覧性を高めるなどの取組を進めていく必要があるのではないかと考えているところです。
とはいっても、最長労働時間規制の実効性確保に向けて労使による取組を進めるという観点からしますと、企業の内部に対する労働時間等の情報開示がより一層重要でありまして、とりわけ36協定等の締結や見直しにおいて過半数労働組合や過半数代表者が当該職場における時間外、あるいは休日労働が必要最低限となっているか否かということですとか、労働者に健康被害が生じるおそれがないか、そういったことの判断を適切に行っていくために、例えば1か月ごとの時間外労働の状況を、過半数代表への労働時間等の事前開示を義務化するなどの情報開示に関する取組も進めていくべきであると考えております。
それからもう一点、法定労働時間週44時間の特例措置のところについてですけれども、ここは、資料の57ページを見ますと、所定労働時間が週40時間以下で7割以上を占めるまでに至っているというようなところが見て取れます。また、2024年のアンケート調査で見ますと、87.2%が特例を使っていないという結果も示されております。そういった状況を踏まえますと、特例措置対象事業所についても、法定労働時間の原則を適用すべきであると思っております。
加えて、59ページにまとめていただいておりますけれども、これまで段階的に週40時間制に移行してきたほかの業種との関係ですとか、前回の改正の施行からは四半世紀が経過しているといったことを踏まえますと、週44時間の特例を廃止する妥当な時期に来ているのではないかと考えているところでございます。
私からは以上でございます。
○山川分科会長 ありがとうございました。オンラインから幾人かの意見の御希望がございます。まず、兵藤委員、お願いいたします。
○兵藤委員 兵藤でございます。御指名ありがとうございます。私からは、企業外部への情報開示について発言させていただきたいと思います。
まず、労働基準関係法制研究会の報告書では、企業の時間外・休日労働の実態について正確な情報が開示されることが望ましいこと、また、義務的な情報開示について検討することへの期待を示しております。第1回の労働基準関係法制研究会、令和6年1月23日の資料でございますが、この4に掲載されております調査結果によりますと、「ホームページなどの一般公開され得る媒体で開示」している情報といたしましては、「勤務場所」の開示が最も多くて、36.7%となっております。若者雇用促進法で開示することが努力義務となっている「労働時間」については13.0%となっているということで、労働時間外部開示が13%という結果は相当に少ない印象を持っておりますが、調査に回答した約半数が9人未満の企業であることを考慮すれば、実態を表している結果であるようにも私は感じているところです。
労働基準法は、開示義務が限定される女性活躍推進法などと異なりまして、基本的には企業規模を問わずに適用する性質の法律であること、また、労働時間数を任意で公表している企業もありますが、その多くは平均労働時間であります。当然ながら、職種や人事等級などによっても異なるわけですので、数字が一人歩きしかねないといったような企業担当者の声も聞かれるところであります。
そうしたことなどを踏まえますと、労働時間等についての外部開示の義務化については慎重に行う必要があり、むしろ、女性活躍推進法や次世代育成支援対策推進法で求められている情報開示の効果検証を行い、主体的な開示を促すような方策について検討することが適当ではないかと私は考えております。
以上でございます。
○山川分科会長 ありがとうございました。続きまして、同じくオンラインで御希望の田中委員、お願いいたします。
(オンライン中継にトラブル発生のため一時中断)
○山川分科会長 それでは、田中委員、御発言をお願いいたします。
○田中委員 御指名ありがとうございます。田中です。私からは、労働時間の上限規制に関して発言をいたします。
働き方改革関連法による時間外・休日労働時間の上限規制の効果については一定程度表れているということを私どもも感じております。ただし、15ページにもありました産業によって労働時間の実態が大きく異なっているというのが現状です。例えば私どもの属する運輸業、郵便業では、長時間労働の割合について、減少傾向にあるものの、いまだに他の産業よりも高いというところです。
当社においても、労働時間の削減に向けて様々な取組を進めております。ドライバーの採用が難しいという人手不足の中ではありますが、既存のドライバーの労働時間に偏りが出ないように、毎日確認をして、業務の割当を日々行っているというような地道な取組などを行っているというところです。
しかしながら、適正な対価、収受を伴わない附帯的な作業だったり時間指定などは効率化を妨げています。その解決には、荷主、お客様企業の協力が必要というところです。一企業での労働時間削減の取組には限界があるというのが実態だと感じています。
上限規制、大きな目的として過労死をなくすというために設けられたと認識しております。厚労省のデータによりますと、脳・心臓疾患のうち時間外労働時間が月80時間を超える事案で支給決定された割合が約7割ということで、非常に高くなっています。現在の上限規制を遵守していればかなりの労災を防げたということが裏の意味合いとしてはあるかと思います。引き続き、時間外労働の原則である年360時間月45時間となる方向で、それは努力を続けていくということは必要でありますが、今回、勤務間インターバル制度についても議論がなされます。一方で人手不足、それが事業に及ぼす影響というものもありますので、この実態にも十分配慮した議論が求められるのではないかと考えております。
こうしたことを踏まえれば、現状においては、資料48ページに記載がありました上限規制そのものの見直しの必要はなく、まずは現在の上限規制を徹底すること、そのための企業の取組への支援というものが重要だと考えます。
私からは以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。先ほど御発言御希望の松永委員、お願いいたします。
○松永委員 ありがとうございます。松永でございます。
私のほうから、総論のところでということで共有いただいたデータに関してと、あとそれに付随する話でございますけれども、21ページですかね、労働生産性と労働時間のお話がございまして、事務局の方からもコメント少しあったと思いますけれども、相関があるということではあるのですけれども、双方に労働時間という要素が入っていますので、そこは少し幅広に捉えたほうがいいのかなあとは思っています。
ただ、とはいえ、労働時間を減らしていくという取組というのは引き続き必要だと思っていますので、これはちゃんとやっていかないといけないかなと思っています。
ただ、一方で、労働時間短縮という取組だけではなかなか続いていかない、続けることもなかなか難しい面もあると思いますので、やはり効率性のところをいかに上げていくかというところ、これがやはりポイントになるのかなと思っています。
柔軟な働き方という観点で言いますと、今回、テレワーク等のお話もありましたけれども、対象者にとっては一定の評価が得られた裁量労働制の議論についても今後十分に議論の時間をいただけたらなと感じておりますので、私のほうからのコメントとさせていただきます。
以上でございます。
○山川分科会長 ありがとうございます。では、原委員からも御希望がありましたので、お願いいたします。
○原委員 原です。
私からは簡単に、資料の37ページですけれども、育児・家事・介護等と仕事時間の関係というところでありまして、この家事関連時間と仕事関連時間の表を見てみますと、家事関連時間だけ見たときの印象と、仕事と合わせて見たときの印象は全く違うかなと思うのですけれども、これを見てみますと、家事、仕事に割ける時間って大体一定というところがあると思うのですね。ですから、仕事関連時間については、労働時間について短縮の方向で進めていくということが重要かと思います。
今回の上限規制を維持するとしても、その規制の枠内で、こういった育児、家事、介護等との関係も考えても、労働時間を短くしていく取組というのを継続的に行っていくことが重要ということが、この資料から分かると感じましたので、発言させていただきました。
以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。ほかに。
では、冨髙委員、お願いします。
○冨髙委員 ありがとうございます。上限規制について意見申し上げたいと思います。
これまでも使用者側の皆さんからは、上限規制を下げることについては慎重な意見だったかと思います。労働基準関係法制研究会の報告も、上限そのものを変更するための「社会的合意」を得るためには、もう少し施行状況を注視することが必要ということで、少し消極的な姿勢でのとりまとめになっていると思っております。しかしながら、労働側としては、2017年の労使合意の精神に基づいて、しっかり上限の短縮に向けた議論をしていくべきであると思っております。
労使合意は、先ほど事務局からも説明いただきましたように、40ページのところに記載がありますが、冒頭に、「長時間労働に依存した企業文化や職場風土の抜本的な見直しを図ることで、過労死、過労自殺ゼロの実現、また多様な人材が活躍できる社会の構築に不退転の決意で取り組む」ということがうたわれているわけでございます。
ただ、現状を見てみますと、先ほども説明いただきましたけれども、資料の10ページにありますように、一般労働者の総実労働時間は、長期的には低下傾向でございますけれども、この直近の5年は横ばいですし、先ほど田中委員からもございましたけれども、産業別にはかなりばらつきがあるというのが実態だと思っております。
それから、17ページから20ページを見ますと、精神障害では労災請求件数が増加しておりますし、脳・心臓疾患については高止まりしており、2023年では増加しているということで、労使合意で目指してきた働き方改革がしっかりと定着しているのかというと、そこまでは言えないのではないかと思います。そういった状況を重く受け止めて今回の議論に臨む必要があると思っております。
加えて、直近では、上限時間を超えて働きたい人が一定いる中で、上限規制は厳し過ぎであって、働きたい人はより働けるようにするべきではないかといった意見があることは我々も聞いているところでございます。現状の上限規制は過労死認定基準を踏まえて設定されたぎりぎりの水準であるにもかかわらず、こういった発言が出るのは言語道断と思っておりますが、やはりいま一度、先ほど申し上げた労使合意の精神に基づいて、しっかりと見直しを行うべきであることを改めて申し上げておきたいと思います。
不退転の決意で臨んでいく内容について、実現できていない現状があることを踏まえると、健康確保という観点もさることながら、一歩進んで、ワークライフバランスの取れた豊かな生活の実現を目指していくという視点も含めて、働き方改革をさらに推し進めていくということ、また法制面での取組を再強化するということが重要ではないかと考えております。そういった観点で申し上げると、例えば時間外労働の上限規制を段階的、計画的に引き下げていくようなプログラムを作るなど、より前向きな姿勢をしっかりと打ち出していくということが重要であると思いますので、意見として申し上げておきたいと思います。
以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
鈴木委員、お願いします。
○鈴木委員 御指名ありがとうございます。私から2点ほどコメントを申しあげたいと思います。
まず、先ほど櫻田委員から御指摘のありました企業内部の情報開示についてです。組合がある企業では、労働条件に関して様々開示をされているところが多いのではないかという印象を持っておりますし、個人的には望ましい傾向だと思っております。ただ、同じ事業所の中でも、例えば本社機能がある事業所と研究開発部門がある事業所では、役割や機能、人材配置がかなり違うので、労働時間や休日に関する情報開示規制のあり方を一律に捉えるということが果たしていいのかどうか懸念を持っております。
もちろん、情報開示の相手方や、開示の内容によるため、なかなか一律に私も申し上げにくい内容ですので、幅広い議論が必要ではないかということをまずはコメントさせていただきます。また、この議論は新しい論点だと思うので、データがあるかどうか分からないのですが、できるだけ次回以降、事務局には有用な情報等があれば開示いただけるとありがたいと思っています。
2点目は上限規制についてです。今回の労働基準関係法制研究会では上限規制や勤務間インターバル制度、連続14日以上の勤務の制限といったような様々なテーマが取り上げられております。これまでも議論があったと思いますけれども、業種・業態によっては長時間労働につながる商慣行がまだまだ残っており、1社ないし1業界だけではなかなか対応ができないような実態もございます。そういった事情は、全体の見直しのテーマの中で、これからしっかりと議論をしていかないといけないと思います。一つのテーマを議論することも大切ですけれども、トータルの議論という視点を併せ持って議論していくということが重要ではないかと思っているところでございます。
私から以上でございます。
○山川分科会長 ありがとうございます。それでは、古川委員、お願いします。
○古川委員 ありがとうございます。私からは、上限規制に関係して、労働時間の適正把握、適用除外の関係で新たな論点という形で意見を申し上げたいと思います。
先ほど冨髙委員が指摘をいたしました、上限規制の短縮に向けた議論というのは極めて重要だと考えています。職場におきましては、やはり上限規制によって労働時間の短縮に向けた取組が進んだという声も多く上がっていますし、労使の取組をこれからさらに後押しをしていくという観点からも、一層の短縮に向けた決定に取り組んでいるということは必要だと考えています。
その上で、もう一つ重要な点として、上限規制の実効性を高めるということがあると思います。そのためには、労働時間の把握が確実に行われることが重要だと考えています。働き方改革におきましては、労働者の健康確保という観点から、労働安全衛生法に労働時間の把握の義務を置いておりますが、いまだにずさんな労働時間管理が多く、結果として割増賃金を含めた法規制の潜脱がなされているのではないかとも考えています。
連合総研の調査、2024年12月の勤労者短観によりますと、残業手当の未申告がある労働者が回答全体の約4分の1、23.4%に上っているという結果も示されております。また、労働時間把握がきちんとされていないがゆえに、団体交渉、また司法の場でも労働者側が長時間労働を立証することが難しいこともあるということも理解しています。労働時間の適正把握の実効性の向上に向けて、罰則等も含めたさらなる規制の強化を行うべきではないかと考えています。
そしてもう一点、論点として追加をしていただきたい事項がございます。それは、労働時間、休憩・休日の適用が除外されている農業、畜産、水産業従事者の問題であります。現在の農業や畜産業というのは、機械化、また6次産業化ということが進展してきていることもあって、雇用されて働いている者が増加してきているという状況にあります。地方からは、6次産業化に伴って、一つの事業所で、主たる事業が農業で、従たる事業で加工・販売などを行っている労働者には労基法が適用されない、そういった一方で、加工・販売などを別の事業所で行っていれば適用されるといったような不合理な状況が生じて問題となっているという声も伺っております。
こうした状況がある中で、いつまでも農業従事者などを労働時間規制の対象外としていくことは本当に妥当なのか、働き方の実態をしっかりと把握をし、労基法の規制を適用していく方向で具体的な検討を進める必要があるのではないかと考えています。今後の検討におきましては、これらにつきましても論点としてぜひ掲げていただければと思っております。
私からは以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。ほかにございますでしょうか。
では、亀田委員、まずお願いします。
○亀田委員 ありがとうございます。私からも労働時間の関係で何点か意見を述べさせていただきます。
まず、資料No.1の12ページ、男女別の労働時間の推移を見ますと、いまだに男性のほうが総実労働時間、長時間労働者の割合が高く、参考資料No.2の実態調査結果においても、80ページの残業時間、それから84ページの休日出勤の回数、ともに同様の結果が示されております。
その上で、先ほど冨髙委員からも2017年の労使合意について言及がありましたが、ワークライフバランスの実現とともに、女性のさらなる活躍を促進する観点からも、長時間労働の是正の必要性はますます高まってきていると考えております。OECDによる国際比較でも、諸外国と比べて、日本は男性の家事、育児、介護等の時間が圧倒的に少ない状況となっています。
そうしたこともあって、資料No.1の37ページの年齢階級別就業率では、先ほど説明もいただきましたが、女性の就業率は総じて高くなっている一方で、正規雇用比率については25~30歳をピークに低下するL字カーブの解消には至っておりません。性別にかかわらず、働くことを希望する者が安心して働き続けられる環境整備に向けては、性別役割分担意識の払拭はもとより、長時間労働の是正を強力に進めるための上限規制の一層の強化が不可欠だと考えております。単に健康を害さなければよいということではなく、豊かな生活を送ることができる社会を目指すことが真の意味での働き方改革ではないのでしょうか。
加えて、特別条項の締結について、本来は通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い、臨時的に限度時間を超えて労働させる必要がある場合に限られるわけではございますが、連合の調査結果でも、圧倒的多数の事業場において特別条項付の協定を締結している現状がございます。特別条項の締結が少なくなるよう、対策を講じていく必要があるのではないかと考えております。
以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。では、藤川委員、お願いします。
○藤川委員 御指名ありがとうございます。
私のほうから、資料48ページの労基研報告でも言及をされておりますけれども、災害時等による臨時の必要がある場合において労基法33条1項の特例が適用されている場合がございます。近年、様々な災害が非常に頻発をしており、二次災害の防止などへの使命感によって労働者への健康被害が生じることが懸念されます。そうした観点からすると、災害時等であっても、特例の適用は限定的になされるべきであり、事後の届出の場合でも適正な運用がなされているか、監督を徹底するべきだと考えております。
また、33条1項に基づく特例により、長時間労働等を行う労働者の健康確保が図られるよう、事業者に一定の健康・福祉確保措置を義務づけることなどを検討すべきではないかと考えております。
加えまして、公務員の時間外労働等について、労基法33条3項では、公務のために臨時の必要がある場合においては、時間外・休日労働をさせることができるとされております。しかし、地方自治体の現場では、臨時の必要があるとは言えない恒常的な業務についても同項を適用して時間外労働を行わせているという実態があると聞いております。こうした課題につきましても検討を行う必要があるのではないかと考えております。
それから、先ほど使側委員から裁量労働制についての言及がございましたけれども、長時間労働に依存した企業風土、組織文化を変え、障害者や高齢者を含め多様な人材が活躍できるよう上限規制の実効性をいかに高めていくかという観点で労基法の見直しを行うべきだと考えております。
繰り返しになりますが、長時間労働を助長しかねない裁量労働制につきましては、適用範囲の拡大や要件緩和などを行うべきではないということも申し述べておきたいと思います。
以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。水野委員、お願いします。
○水野委員 よろしくお願いします。次回以降の論点になるかもしれませんが、広義でいえば労働時間の課題だと思っておりますし、今ほど鈴木委員からも全体的なテーマの中で論議すべきだというような御発言がございましたので、勤務間インターバルと連続勤務日数規制について意見を申し上げたいと思ってございます。
資料No.1の25ページに就業者の睡眠時間の状況が記載されているわけですけれども、理想よりも現実の睡眠時間が2時間少ないとする就業者割合が最も多いとなってございます。労働者の健康確保を図るためには、睡眠の質を高めると同時に、十分な睡眠時間を確保することが極めて重要だと考えてございます。
睡眠不足などが労働者のパフォーマンス低下をもたらすことを示す研究がございますし、仕事の生産性にも影響を及ぼすとの研究結果も示されているところでございます。労働者の健康確保や、日々働きがいを持って働き続けられるようにするためには、必要十分な睡眠時間を含めた生活時間の確保が極めて重要だと思ってございまして、そのためにも、勤務間インターバル制度の導入を進めていく必要があり、制度の実効性を高めるためにも、いずれかの法律で規定していくことが適切かについて、具体的な検討を進めていくべきだと思ってございます。
また、1日のリズムだけではなく、1週間、あるいは1か月単位でも勤務日と休日のリズムを平準化していくということが重要だと思ってございますので、これも労働からの解放規制に関するものでもありますけれども、休日労働を含めた連続勤務日数規制を早期に導入すべきだと思ってございます。少なくとも労基研報告でも提案されております、13日を超えるような連続勤務をさせてはならないという内容につきましては重要視すべきだと思ってございます。その一方で、災害時などの場合についても、例外措置については極めて限定的なものにしていく必要があると思ってございます。
商慣行の課題等も重要であると考えますけれども、やはり商慣行を変えていくためのその後押しとなるような法改正をしていただければと思っております。
以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。ほかにございますでしょうか。
よろしいでしょうか。
ただいまは、1つ目の上限規制、情報開示、週44時間の特例についてとりあえず御議論いただいてきたところでございます。2つ目のテレワーク等の柔軟な働き方につきまして、御質問、御意見をいただければと思います。何かございますでしょうか。
それでは、松田委員、どうぞ。
○松田委員 私のほうから、テレワーク等の柔軟な働き方について発言させていただきます。
テレワークにつきましては、コロナ禍以降に定着している職場も見られてございますし、柔軟な働き方の一つとして、ワークライフバランスの実現にもつながっていると認識しております。しかしながら、テレワークにつきましては、通勤時間がないなどのメリットはございますが、やはり仕事とプライベートの区別が曖昧となり、長時間労働になりがちな実態も見られ、昨年3月には労災認定された事案も報道されていると認識してございます。適正な実労働時間管理を徹底すべきでありますし、古川委員からも発言がありましたように、働く場所にかかわらず、労働時間の適正把握義務違反の罰則化を進めるなどの対策強化を行っていくべきとも考えてございます。
また、テレワーク時には顕著でございますが、情報通信技術の発達によりまして、勤務時間外の連絡も一層容易になっていると考えておりますので、つながらない権利の法制化に向けた検討の重要性は我々としても繰り返し申し上げていきたいと考えてございます。
さらに、労基研の報告でもありますように、特にテレワーク時におきましては、フレックスタイムと通常勤務を組み合わせられる制度が提案されているという状況でございますが、この制度につきましては、通常の労働時間制度における週単位での規制、32条1項や割増賃金の取扱いへの影響も踏まえて検討していく必要があると認識しております。よろしくお願いします。
私から以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。2番目のテレワーク等の柔軟な働き方につきまして、ほかに御質問、御意見等ございますでしょうか。
では、鳥澤委員、オンラインで御発言希望がありました。お願いいたします。
○鳥澤委員 鳥澤でございます。ありがとうございます。
資料の取りまとめ及び御説明いただき、ありがとうございました。先ほどの質問と重なる部分もございますので、御了承いただきたいと思います。
2ページに記載がございましたように、人口将来統計が、今後の我が国の総人口、生産年齢人口は減少が続き、労働供給が制約される状況に大きな変化はないものと考えられます。特に地方では人手不足の深刻さが増しており、医療、福祉、物流、建設など生活を支えるサービスを提供する事業者の事業継続が困難となっているとの指摘もございます。
今後の日本の産業活力を維持していくためには、これらの労働力の需給ギャップを埋めることが喫緊の課題であり、多様な人材を含む労働力の確保、労働生産性の向上はこれまで以上に取り組んでいくことが求められます。そのために、労働者の働きやすさと働きがいを高めるような労働法制を検討することが必要と考えております。
まず、働きやすさの向上に向けては、多様な人材の様々なニーズや事情に配慮していかなければなりません。育児、介護、通院など、労働者個人の生活に寄り添った働き方の整備はもちろん、さらなる女性活躍に向けた男女間での家事負担の偏在解消も不可欠だと考えます。これらに対応するためには、多様な働き方の前提となる労働時間や場所を柔軟に選べるということが不可欠であり、現状の複雑な労働時間法制の再検討が必要と考えます。
そして、働きがいを高めるに当たっても、労働者のニーズに対応できる労働時間法制を検討することが必要です。現行の働き方改革は、労働者の健康確保、企業の生産性向上の観点からも必要な取組であるということは重々承知してございますが、より働きたい、より稼ぎたい、成長したいという労働者のニーズを抑制しているという指摘もございます。
労働者の安全確保、それを前提にして、こうした労働者のニーズに応えられるような柔軟な制度の検討が必要と考えます。現行制度において、裁量労働制やフレックス、テレワークをはじめ様々な制度の運用がされておりますが、改めて制度の考え方を整理し、中小企業においても活用できる、シンプルで分かりやすく柔軟な労働時間法制を検討していくことが必要と考えます。本分科会で引き続き議論ができればと思いますので、どうぞよろしくお願いしたいと思います。
私からは以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。あと、オンラインからもう一方、鬼村委員からお願いいたします。
○鬼村委員 御指名ありがとうございます。私のほうからも一言意見を申し上げたいと思います。61ページ以降のテレワーク及びフレックスタイムのことでございますけれども、こちらについて一言申し上げたいと思います。
冒頭、人手不足の御説明がありましたが、我々どもの製造業でも非常に深刻な状況にありまして、平生からいかに、産業であるとか、あるいは個社の魅力を多くの方に訴求をしていって、入社をして定着していただくかということを企業としてもいろいろ腐心をしているところでございます。こういうことを考える場合に、やはり労働時間というのももちろん重要な要素ではあるのですけれども、先ほど鳥澤委員からもございましたが、働きやすさとか働きがいというのも同様に非常に重要な要素であろうと思っています。
こうした働きやすさとか働きがいをいかに高めていくか、当然いろんな方法がありますし、各社各様であるわけですけれども、例えば今回お話にございましたようなフレックスタイム制というのはやはり有効な方法の一つとして活用できる余地がまだまだあるのではないかなと思います。
弊社のほうでは、いわゆるホワイトカラーのオフィスワーカーの部分はフレックスタイム制を幅広く使っているのですけれども、転じて、製造ラインに関わる労働者については、基本的には、毎日決まった時間に出社をして、当然在宅勤務もなかなか難しいので、出社をいただいて勤務をするというのが通例になります。先ほど申し上げた働きがいや働きやすさを高めていくという検討の中で、こうした働き方についても生産の仕方を何らか工夫をしていくとかで、例えば1か月のうちで、ある限られた期間や日数になるかもしれませんが、柔軟な働き方がもうちょっとできないかということを検討しています。
ただ、ここは皆さん御案内のとおり、現行制度ではフレックスタイム制を部分的に適用するということはできないので、今のところ製造ラインの労働者にフレックスタイム制を適用することは難しい状況です。ただ、今回の研究会の報告書にもございましたけれども、このフレックスタイム制と通常勤務日を組み合わせるということがもし可能になれば、我々のようなこういう製造ラインの労働者の方々にもフレックスタイム制を適用させていって、働きやすさを高めていくということはできるのではないかなと感じています。
こうした働き方は別に高齢者とか育児の方とかそういう方のみに限らず、老若男女関係なく、やはりいろんな面で私生活との両立は容易になりますので、なるべくこういう働き方のフレキシビリティは高めていきたいなと思います。これによって、製造業に多くの人が集まるような、そんなふうになればなと思っています。今回、調査結果の中でもフレックスタイム制を導入している企業の、およそ半分ぐらいは、そういう組み合わせる制度も望んでいるということでもありますので、多くの企業で実は期待されている見直しになり得るのではないかと思っております。
先般より皆様から御発言がございますけれども、労働者の方の働きやすさ、働きがいをいかに高めていくか、労働時間だけが短くなっても、こういったものが見出せなければ、冒頭御説明ございましたけれども、労働参加率だとかは引き上がっていかないと思いますし、結果、労働の質もなかなか上がらずに、生産性も高まらず、日本の競争力向上にもつながらない、こういうことになってしまうとやはり元も子もないと思いますので、健康管理だとかはきっちりやっていくのはもちろん前提ではございますけれども、この分科会の今後の議論においては、このフレックスタイム制に限らずとも、未来志向でいかに労働者の方の働きがいや働く意義、こういうものを高めていけるのかということを議論できればなと、そのように思っております。
私から以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。ほかに御質問、御意見等ございますか。
冨髙委員、どうぞ。
○冨髙委員 ありがとうございます。先ほど鳥澤委員がおっしゃった、長く働きたいというニーズを抑制しているのではないかというところについて意見を申し上げたいと思います。
我々も、労働者目線での柔軟な働き方という選択肢があることは非常に重要だと思っておりますが、一方で、長く働きたいというところについての御意見については大変違和感があると考えております。資料No.1の45ページで、適切だと考える残業時間等について触れていますが、この中を見ると、適切だと考えている1か月の残業時間は、上限規制の原則では、45時間までで見ると96.8%に達しているということで、100時間以上とするような回答というのは僅か1%にすぎないわけです。46ページでも、増やしたいという回答は、10%程度はあるのですが、それは現在残業が全くない方とか、もしくは少ない労働者も含めた回答ということですので、過労死ラインレベルである上限規制を超えて長時間労働をしたいというような労働者のニーズはないと思っております。
ニーズがある労働者に限定すればいいではないかという考えかもしれないのですけれども、そもそもそれでは仕組みが複雑になり、先ほど、お話のあったシンプルな仕組みのほうがいいということに逆行するのではないかと思います。また、長時間働く方が結果的に評価されるとか、働けるようになってくると、法定労働時間の中で効率よく生産性高く働く工夫をしているような労働者の方たちが居づらくなったり、結果的に長時間労働に引っ張られるようになるのは想像に難くないと思っております。働きがいという言葉に名を借りた規制緩和はすべきではないと思っておりますので、その点は意見として申し上げておきたいと思います。
以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。
よろしいでしょうか。
2番目のテレワーク等の柔軟な働き方についての御質問、御意見をいただいたところです。3つ目が管理監督者、その他ということになります。既に一部御意見をいただいているところもございますけれども、この管理監督者、その他につきまして、御質問、御意見がありましたらお願いいたします。いかがでしょうか。
それでは、椎木委員、お願いします。
○椎木委員 ありがとうございます。私より管理監督者の部分について意見を申し上げたいと思います。
前段の御説明にもございましたし、あと74ページに示されておりますが、労働基準法の中で管理者については、深夜割増、年休を除いて労働時間や休憩・休日に関する規定が適用除外となってございます。当事者の合意にかかわらず、法律が強制的に適用される強行法規である労基法の根幹の部分の規定が適用されないという大きな例外の事項でありますが、それにもかかわらず、その定義や対象者の範囲といったことが明確にされていないことは問題だと感じてございます。
また、71ページの資料にも示されていますが、ほかの特別規制には手続的要件や健康や福祉確保の措置が定められておりますが、この部分も管理監督者にはないという部分が課題であると考えております。
75ページに資料で数多くの裁判例を示していただいてございます。使用者が恣意的に範囲を設定・変更することによって、実態としては労働条件その他労務管理について、経営者と一体的な立場にあるとは言えない労働者まで管理監督者として取り扱い、結果として残業代を払わないなどの不適切な運用が多く見られております。「名ばかり管理職」なる言葉がすっかり社会に定着している、これはいかがなものかと考えてございます。
76ページにJILPTの調査結果が示されておりますが、管理職の月間の残業時間を見ますと、40時間以上の方の割合が17.5%と2割に近いところまでいっておりますし、平均の残業時間も20時間前後という形になってございます。管理監督者については、経営者と一体的な立場であり、相応の処遇がなされ、自らの労働時間を管理できるものとして制度趣旨に沿った定義を法律で明確にすべきであると考えております。
さらには、健康・福祉確保措置について義務化する方向での検討も必要になると考えますし、ほかの特別規制では示されていますが、手続的な要件についても検討をお願いしたいと考えてございます。
以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。ほかに御質問、御意見等ございますでしょうか。
鈴木委員、お願いします。
○鈴木委員 ありがとうございます。私からも、管理監督者について一言申し述べたいと思います。まず、管理監督者の健康確保についてです。
資料No.1の77ページに調査結果を示していただきました。各社とも、管理職に対する健康・福祉確保措置、相当程度実施されているように感じました。また、働き方改革を進める中で、どうしても管理監督者に仕事のしわが寄る傾向があるのではないかという声は現場の担当者からも聞くところでありまして、私ども経団連では、「経営労働政策特別委員会報告」という冊子で管理監督者の健康確保に十分配慮する必要があることを呼びかけてもおります。
では、管理監督者の健康が保たれているかどうかというのは気になるところでございます。本日の資料ではないのですが、2022年のJILPT、労働政策研究・研修機構の調査の中で、働き手の健康状態というのを聞かれていますので御紹介いたします。
それによりますと、勤務時間制度が管理監督者扱いという方は、53.1%が健康状態がよい、またはまあよいと回答をされています。他方で、通常の労働時間制度の方の場合には51.5%ということでございますので、両者の健康状態の回答にほぼ差はないということが言えるかと思います。
今後、この管理監督者の健康確保のあり方を検討するに当たりましては、こうした健康状態が通常労働時間制度が適用されている方と遜色がないデータもあるということも踏まえて議論していく必要があるのではないかと考えているところでございます。
もう一点、管理監督者性について申し述べたいと思います。昭和22年の通達でございますけれども、こちらの資料にも記載がありますように、部長、工場長等、労働条件の決定その他の労務管理について経営者として一体の立場にある者という解釈が示されております。この語感からすると、管理監督者性が認められる範囲はかなり狭く受け止められがちではないかなと感じます。
ただし、労務管理やマネジメントのありようというのは当然時代の変化によって変わってきております。例えば組織のフラット化ですとか、本部等への権限委譲、さらにはスタッフ管理職も少なくないという変化がございます。特に企業規模が大きくなるほど、経営トップは、監督者に企業組織の部分ごとの管理を分担してもらいながら、それを連携統合する、そういう経営が主流になっております。そのため、担当する組織部分について、経営者の分身として、経営者に代わって管理を行う立場にあるということが経営者と一体の立場であると、このように考えるべきという説も有力だと承知しておるところでございます。労務管理以外の権限を持つ管理監督者というのは実際には少なくないと思っておりますし、法的にもしっかりそうした点は位置づけるべきではないかと考える次第です。そのため、例えば、経営者として一体の立場にあるという語感に着目し過ぎたり、管理監督者が否定された裁判例が多いということだけをもって、この判断基準を厳格化したりするといったことには賛成できないという立場でございます。
また、判断基準を明確化するということは、望ましいと思うところではありますが、判断は総合的に行われることが多いと感じており、例えば法律で明確化するということについては相当程度限界があるという受け止めをしています。仮に法律に記述するということを検討するのであれば、スタッフ管理職についてもしっかりと書き込むということが大前提だと考えているところでございます。
私からは以上でございます。
○山川分科会長 ありがとうございました。ほかに御質問、御意見等はいかがでしょうか。
川田委員、お願いします。
○川田委員 ありがとうございます。2点、できるだけ簡潔に述べたいと思います。
1つは、既に他の委員からの御発言の中にもありましたが、資料No.1でいうと77ページ、あるいは78ページの労働基準関係法制研究会報告書の抜粋の中にも出てきますが、管理監督者等として適用除外になる場合にも、健康確保措置は適切に考える必要があるという点は重要な視点ではないかと思っております。割と労働基準法の中で古くからある適用除外の制度は、原則的な規制の適用が難しいとするところをまさに適用除外だけにしてしまっているとみられるところがあり、今日の労働法の視点からすると、原則的な規制は適用できないとしても、その原則的な規制とは違う何か特殊性のある働き方をしているという前提で、それに応じた健康確保の仕組みを考えるということは、労働基準法ができた当時等と比べると強まっている気がいたします。これは管理監督者だけに限った話ではないかなと思いますが、原則的な規制が適用されない場合であっても、その特例的な働き方に合った健康確保のあり方を考えるという視点はより重要になっていくのではないかということで、これが1点目です。
それから、2点目はやや細かい話にはなりますが、資料No.1の75ページに出てくる裁判例が、現状、否定例がずらっと並んでいるところについて、もし可能であれば、適用が肯定された例というのもあるので、それも加えた上で議論するほうがいいのかともちょっと考えております。そうすることである程度バランスの取れた議論に資するのではないかということと、それから肯定例というのは、管理監督者の趣旨に沿った実態があるということで肯定されている判断事例ということで、現行法のもとでの管理監督者の趣旨というのが、ある意味、イメージしやすくなるのかなということです。
一方で、この管理監督者の裁判例というのは全部下級審の裁判例なので、一つ一つの判断事例をあまり重く見過ぎるべきではないということも同時にコメントはしておきたいと思いますが、ある程度肯定例、否定例が、否定例のほうがかなり多いというのは事実ではあるので、そういう状況も踏まえて、研究論文ではないので、そんなにずらずらと並べる必要はないと思いますが、限られた中で現行法のイメージが分かりやすくなるような工夫もできるといいのかなと思います。
以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。ほかに御質問、御意見ございますでしょうか。
安藤委員、どうぞ。
○安藤委員 安藤です。よろしくお願いします。
佐久間委員がいらっしゃらないところでコメントするのも何なのですけれども、今日最初の辺りで、佐久間委員から、小規模な事業所だと時間を短縮するのがなかなか難しいといったお話がありました。私も、労働基準関係法制研究会に参加して議論をしていた中で、いろいろ検討もしましたが、小規模だと難しいという、それだけの理由だとなかなか納得しづらいのかなと正直考えております。人が足りなければ、そもそも受注する仕事である程度制限するであるとか、何らかの方法があるのではないか。特に特定の企業だけ制限されるわけでなく、一律にルールが設定されるのであれば、例えばその受ける仕事を一部制限するといったことで、ライバルに仕事を奪われるということもそれほど心配が要らないのではないかといったことが考えられるためですね。
そのため小規模な事業所について、労働時間について何らかの特別な配慮が必要だというのについては、もう少し丁寧なロジックを立てる必要があるかと感じております。例えば身の回りでも、飲食店などで、働く人が今足りないので、席を半分入れないようにして運営するであったり、工夫しているようなケースもあるわけです。今、人口が減少していて人手不足が深刻になるという中で、人手不足だから長く働かせるというのではなく、限られた労働力を効率的に活用する観点からも、働きやすい環境をつくっていくということが重要かと思っています。
もう一点、情報開示についても、私が聞き及ぶに、例えば大学生に就職活動のアドバイスをするような会社での講演などにおいて、面接などの場で、ワークライフバランスや労働時間、残業時間について質問すると内定もらえないよと、採用に差し障りがあるからそういうことは絶対に聞いてはだめだといった指導をしている会社があると聞き及んでおります。
自信がある会社は、うちの働き方はこういうものだよと、場合によっては長時間労働ではあるけれども、これだけ能力が高まるよといったことで正直に開示する会社もあるとも思われますが、働き方の実態を就職活動する側がなかなか聞きづらいというのも健全ではないと思うので、この辺り、情報開示というものは適切に進めていくことが必要かと思います。これは社内に対してだけでなく、社外に対してもそうだと考えております。
ただし、個々の企業にとって情報提供をするというのには一定のコストがかかるというのも事実なので、いかに比較しやすいという形で、求職者、又は転職を考える人がその情報にアクセスできるのかということにも配慮しつつ、しかし、企業側がその情報を、それも正しい情報をしっかり登録できるような、それを低コストでできるような支援ということも同時に考える必要があるかと思っています。
もう一点だけ、短く。冨髙委員から先ほどあったお話で、長時間労働、働くというような形で、働きたい人は働かせるべきだみたいな揺り戻しがあるといった声、私もそういう話、報道などでも耳にしております。これについても、学生などと話をしていると、「若いうちはばりばり働きたいという学生の声もあるが、でも、健康を害してはいけないよ」という話を学生にすると「そうは言うけれども、先生はいいよねと、頭がいいのだから、それで稼いでいるじゃないか、私たちの売りは、元気に時間働けることなのだ」ということを言ってくる学生もいるわけですね。
こういう、特に若いうちにスキルアップしたいという声があるというのも事実なので、どういう働き方が望ましく、もちろん健康を害するのは悪いというのは前提ですが、どういう働き方はやってはいけないのかという線引きというのは、労働者の方にとっても、なかなか多様性があって、どこで望ましい働き方を決めるのかというのはかなり難しいかなと感じております。
その観点から、先ほど冨髙委員からあったお話として、健康確保だけではなく、ワークライフバランスについても労働基準法の中で議論するべきだ、これについては、労働基準関係法制研究会の中でも、そういう議論、一部行われました。しかし健康確保は絶対的な基準がある程度、医学的な根拠をもとにつくれると思うのですが、望ましいワークライフバランスというのをどうやって決めるのだというのは、それなりに議論を伴うような話だと思いますので、この場で議論するのであれば丁寧に扱っていただきたいなと感じました。
以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。ほかに。
冨髙委員、どうぞ。
○冨髙委員 ありがとうございます。
確かにそういったことを若い方がおっしゃることはあるとは思うのですけれども、そもそも、先ほどから申し上げているように、現在の上限規制というのは過労死ラインで、それを超えるような働き方をさせてはいけないわけです。そのような中で、自分には長く働くことでしか提供できるものがないというようなことを若い方たちに思わせてしまうような社会がおかしいのではないのか、そういった考え方を我々が変革していくというメッセージを打ち出すというのが今回のこの見直しの大きなテーマでもあると思いますので、その点も含めて議論していくことができればいいのではないかと思っております。
それから、別件で、先ほど鈴木委員のほうからスタッフ管理職の件について触れていただきましたけれども、そもそも管理監督者というのは部下を管理監督する者が想定されていると思っておりますので、スタッフ管理職を法定して適用除外するということは認めてはいけないのではないかと思いますので、意見として申し上げておきたいと思います。
以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
既に予定の時間にはなっているのですが、先ほど少しタイムロスがありますので、もし差し支えなければ、少しだけ延長させていただければと思いますが、よろしいでしょうか。
では、鈴木委員、どうぞ。
○鈴木委員 ありがとうございます。冨髙委員からご指摘のあった、スタッフ管理職を法定して適用除外することは認められないのではないかという点についてです。少なくとも行政解釈でも、スタッフ管理職は認められているという点は、皆様に誤解なきようにお伝えしたいと思います。また、マネジメントのあり方というのは昭和22年に比べてかなり変わってきているということを踏まえた検討、未来志向での検討が必要であり、そのことを踏まえると、スタッフ管理職についてネガティブな発言をされることには違和感を覚えるところでございます。
それからもう一点、労働時間について、資料No.1の46ページで、「残業時間を増やしたい」という回答をした方のうち、その理由として多いのは「残業代増やしたいから」という結果になっているのですが、その項目の次の、「自分のペースで仕事をしたいから」や、「業務を通じて知識や経験・スキルを高めたいから」、「仕事の完成度や業績をより高めたいから」という回答をした方が、合計すると5割ぐらいいらっしゃいます。
こういう方を、それぞれの回答が少ないからということで、議論から外すというのは望ましくないと思います。多様な価値観、働き方を求めている方の思いもしっかりと受け止めて議論していくべきだと思っておりますので、一言申し上げたいと思います。
以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。ほかはいかがでしょうか。
首藤委員、どうぞ。
○首藤委員 ありがとうございます。
1点お願いがございまして、今回の労基法の、前回の働き方改革における改正後に、働きがいを失うような事態が起きているのではないかということが使用者側の委員から、幾人かの方から御指摘を受けましたし、経団連さんの経労委報告の中でもたしかそうした記述があったような気が記憶としてございます。多分、会社側から見て、経験的に、労働時間の規制の強化によって働きがいが失われるような事態が起きているのかなと予測をしますけれども、先ほど来、45ページ、46ページのデータなどを見る限りは、そういったことがなかなか確認されないので、ぜひ何かデータ等の根拠を示していただけると、今後の議論にとって非常に有益かなという気がしております。労働時間の抑制によって働きがいが持てないということがもしあるのであれば、その根拠を示していただくようお願い申し上げます。
今回の法改正によって短期的に働きがいの喪失が起きたとしても、例えばヨーロッパなどでは日本より労働時間規制が厳しい国はたくさんあるわけで、そういった国で働きがいをみなが持てていないのかというと、多分そういうわけではないと思いますので、それが短期的な要素であるのか、より構造的な要素として考えられているのか、その辺も併せて何か示していただけると、今後、インターバル規制等の議論に有益なのではないかと思いました。よろしくお願いします。
○山川分科会長 ありがとうございます。ほかに。
冨髙委員、お願いします。
○冨髙委員 ありがとうございます。
先ほどのスタッフ管理職のところに対する鈴木委員のご指摘はそのとおりでございますが、野放図に認めるのはよくないのではないかという意見でございます。
○山川分科会長 ありがとうございます。ほかは何かございますか。
オンラインの方々もよろしいでしょうか。
すみません。5分ほど時間を超過しております。特にほかにございませんでしたら、本日の議題の各テーマにつきまして、委員の皆様方それぞれの御立場から非常に貴重な御意見をいただきました。いずれの御意見も非常に重要なものだと思います。また、幾つか追加的な観点とか、あるいは資料等についての御要望もございました。そこで、事務局におかれましては、本日の議論も踏まえて検討を進めて、次回以降の資料の準備をいただくようにお願いいたしたいと思います。
本日の議題はここまでとさせていただきたいと思いますが、何か特にございますでしょうか。
よろしいでしょうか。
では、よろしければ、次回の日程等について事務局から説明をお願いします。
○労働条件企画専門官 次回の日程等につきましては、また調整の上、追ってお知らせさせていただきます。
○山川分科会長 それでは、これをもちまして、第197回「労働条件分科会」を終了いたします。少し時間が延びまして申し訳ありませんでした。お忙しい中、皆様、大変ありがとうございました。