第5回今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会(議事録)

日時

令和7年5月9日(金)14:00~

場所

オンライン・対面による開催(中央合同庁舎第5号館 専用14会議室(12階)東京都千代田区霞が関1-2-2)

議事

○山川座長 それでは、定刻となりましたので、ただいまから「第5回今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会」を開催いたします。構成員の皆様方、お忙しいところ御参集いただきまして、大変ありがとうございます。
 本日は、倉知構成員が御欠席となっております。本日の研究会はZoomによるオンラインでの開催と、会場からの御参加の両方になっております。本日、会場には冨高構成員、田中伸明構成員においでいただいております。
 では、開催に当たりまして、事務局から説明があります。

○原田障害者雇用対策課長補佐 事事務局です。本日も、Zoomを使ったオンライン参加を頂いておりますので、簡単ではありますがオンラインについて操作方法のポイントを御説明いたします。
 本日の研究会の進行中は皆様のマイクをオフとさせていただきますが、御発言される際には画面上の「手を挙げる」ボタンをクリックし、事務局や座長から発言の許可があった後にマイクをオンにして、必ずお名前を名乗ってから御発言いただきますよう、よろしくお願いいたします。Zoomの操作方法につきましては、事前にお送りしましたマニュアルを御参照ください。会議進行中にトラブルがありましたら、事前にメールでお送りしております電話番号まで御連絡いただきますよう、お願いいたします。なお、通信遮断等が生じた場合は一時休憩とさせていただくこともありますので、御容赦いただきますよう、よろしくお願いいたします。オンライン会議に係る説明については以上です。

○山川座長 カメラの頭撮りがありましたら、ここまでとさせていただきます。では、議事に入ります。前回の研究会の中で今後の進め方につきまして、第2回、第3回のヒアリングの意見等を踏まえまして、各ヒアリングの項目について構成員の間で、議論を進めていくという方針を確認したことと存じます。今回はその方針に従いまして、まず、1つ目の論点として、常用労働者が100人以下の事業主への障害者雇用納付金の納付義務の適用範囲の拡大という論点につきまして議論を行いたいと思います。議論に当たりまして、初めに事務局から資料1が用意されておりますので、そちらの説明を頂いた上で、構成員の皆様から御意見を頂きたいと考えております。なお、資料1とは別途に第1回から第4回までの本研究会におきまして、構成員の皆様からいただいた御意見等を事務局で整理して、参考資料1として準備をしております。
 では、事務局から説明をお願いします。

○西澤障害者雇用対策課長 事務局の障害者雇用対策課長の西澤です。資料1をお願いいたします。今回テーマとして、100人以下の事業主への納付金納付義務の適用範囲の拡大ということで、資料を整理しています。まず、過去の経緯を整理した資料をいくつか載せています。
 まず、2ページは昭和51年に納付金制度を創設した際の整理、300人以下の事業主は暫定的に徴収しないというところにしていた。その後、平成20年の法改正におきまして、これを200人、100人と拡大をして、これは、そのときの労政審の意見書です。その後、令和4年、前回法律改正をしたときの、これも労政審の意見書ですが、コロナ禍の後の状況等を踏まえまして、このときは範囲の拡大をしなかったという経緯があります。
 3ページですが、こちらは平成20年に適用を拡大した際に、どのように拡大したかという資料です。まず、法律改正は平成20年だったのですが、下の矢印の図にありますとおり、段階的に200人超、100人超というように、200人超のほうは平成22年7月から、100人超のほうは27年4月と、規模に応じて一定の時間を考慮して適用拡大をしていた。その間ですが、納付金の額が当時も5万円だったのですが、4万円と一定期間暫定的に下げていました。こちらは令和2年3月までの措置となっており、前回、国際比較などで、日本の納付金制度と諸外国の納付金適用制度の比較などもしましたが、我が国の制度は、平均的な費用の差を埋めるというところでやっていますので、基本的にはそこの費用は適用される企業については全部一緒となっておりまして、この暫定措置も今は5万円に戻っている状況です。
 次の4ページです。こちらは前回出していますが、第2回、第3回のヒアリングでの意見をまとめた資料を抜粋しています。概して言いますと、中小企業の状況にも配慮しつつ、適用拡大の方向という意見が多かったと思っています。
 次のページです。こちらの参考資料1は後で御紹介しますが、第1回、第4回を中心に、構成員の皆様からの意見をまとめた資料の抜粋です。1つ目のポツで慎重な御意見も頂いてる一方で、2つ目、3つ目のポツのような、やはり配慮しながら進めていくべきという意見も頂いているという状況です。こちらが、本研究会でのこれまでの意見でして、6ページ以降は障害者雇用の対象になる企業規模の雇用状況の資料です。6ページはよく使わせていただいてる資料ですが、障害者雇用状況報告のデータを整理したものです。企業規模で100人未満のところは青い線になっていますが、特に達成割合を見ていただくと、平成17年ぐらいでは、100人未満の企業というのは一番達成割合が高かったのですが、なかなか、その達成割合というのが伸び悩んでいて、現在ですと、全企業の平均よりちょっと下回っている状況になっています。
 7ページは、更に100人未満企業のところを少しクローズアップした資料です。令和4年の審議会の報告書でも、雇用状況の進捗を見てということが触れられていましたが、実雇用率で見ますと、このコロナの後から、実雇用率としても少しずつ上がってきているというところです。右側がその達成企業の割合などですが、令和6年は雇用率が上がっていますので、令和3、4、5年、これは2.3%のときの状況ですが、達成割合は少しずつ伸びてきている。他方で、未達成のうちゼロ企業の割合というのも少しずつ減ってきており、ペースがどうかというところはありますが、コロナ禍、コロナ後の雇用は伸びてきているという状況と考えています。
 こちらは雇用の状況でして、8ページ以降は中小企業への支援の資料をまとめています。主に4点ありまして、まずハローワークへの支援、助成金、あとは相談援助事業。これは令和6年に制度化した納付金助成金による相談援助です。そして事業協同組合等算定特例と4つのパートに分けています。
 まず、9ページ以降がハローワークの支援です。9ページの資料もよく使わせていただいている資料で、ハローワークの機能を示したもので、特徴として、ハローワークは事業主の皆様に対する達成指導や行政としての助言などをしつつ、当然、障害をお持ちの求職者の方への対応ということで、両方をセットで支援をしているということになります。そのような支援の事例として10ページに事例をお示ししています。こちらは福島県と愛知県の例ですが、両方とも100人未満の企業で、もともと、いわゆるゼロ企業で、ノウハウがなかったという企業に対して、ハローワークが企業を訪問したことを契機に、仕事の切り出しというか、どのような仕事をやっていただくかなども含めてアドバイスをしたり、職場見学会などをアレンジしたりといった支援を行った結果、雇用義務の達成になっているという事例です。このような事例はいろいろありますが、そういったところの支援の中心になっている予算としては、11ページのチーム支援です。こちらはハローワークに配置しているコーディネーターが中心になって、地域の支援機関等と連携して企業の支援をしているものです。そこの実績が12ページでして、企業の数、件数としては近年5,000件弱ぐらいの企業を対象にしています。そのうち、1,400、1,300ぐらいの数がいわゆる100人以下のゼロ企業ということで、このような最初の一歩がなかなかできていない企業を中心に支援をしているという事業になります。ここまでがハローワークの支援の概要です。
 次の13ページがBの助成金です。上の表が雇用保険2事業による雇い入れ助成、いわゆる特開金やトライアルやキャリアアップの助成金です。赤文字が中小企業に対する額になっていまして、額の面では大企業より中小企業のほうを少し優遇している状況になっています。その下が納付金助成金でして、介助、ジョブコーチといった助成金ですが、こちらの上限額は赤文字のとおりでして、中小企業のほうに額を高めにしているという配慮をしている状況です。
 こちらは現行の概要になりまして、C、3つ目の相談援助事業です。こちらも納付金助成金の一部なのですが、令和6年に新しく施行しています。こちらの相談援助事業については、本研究会でもこれまで、構成員の皆様方から、実績がどうなっているかということもお問合せがありましたので、今回、最初の年度の実績を少し整理してお示しをしています。仕組みとしては、少し普通の納付金助成金と違いまして、支援を必要としている企業に対して、一定の資質や体制のある企業を労働局が認定をして、その認定を受けた企業が支援を行った場合に、一定の場合に助成金を出すということで、支援を受ける企業からすると、無料でそのような支援が受けられるという仕組みになっています。
 実績なのですが、今、その支援が助成金の対象になり得る認定事業者は全体として103社、労働局が認定をしており、そのうち、令和6年度に実際に助成金の対象になり得る支援をしたのは38社ということになります。助成金の対象になり得る支援の認定ですが、こちらの下の赤くしている所のとおり、認定をしたのが148件で、助成金支給までいったのは32件で、合わせて180件が支援している又は支援している途中であるという状況です。この仕組みはこれまで労政審障害者雇用分科会でも、やはり、支援の質が大事だという御指摘もありましたので、支援を受けた企業の方からできるだけアンケートを取るようにしています。現時点で把握しているアンケートの結果を15、16ページに載せています。基本的には各項目ごとに見ても、全体として見てもポジティブな「役に立った」という意見が多いと考えています。
 16ページに自由記載の部分を抜粋していますが、おおむねポジティブな記載が多いという状況になっています。こちらですが、実際に支援した事例というのをいくつか整理をしています。1つ目の事例が17ページで、医療機器の商社で48名、少し小さい会社の事例です。こちらは雇用義務数が1になったのですが、まだ雇用できていなかったというところで、9か月間ぐらい業務への助言や社内での説明会といったところを支援して、1名採用につながったという状況で、更に2人目の採用も考えている状況になっています。
 2つ目の事例は70名規模の福祉・介護事業の企業で、こちらも同じように雇用義務が1になり、取り組まなければいうことで、ハローワークからの紹介で利用したということです。7か月間、こちらも業務への支援などをした上で1名採用し、更に1名追加で採用するという予定になっているということで、支援を契機に取り組みが進んでいる事例だと思います。
 3つ目の事例は、従業員100名の卸売業の企業ですが、こちらも経験が余りなくてイメージができなかったため、ハローワークの紹介で利用して、見学会の設定や求人の作り方なども助言を頂いて、1名採用し、更に実習ももう1名受け入れようということで、取組が段々進んでいる事例です。比較的長期間にわたって伴走的な支援をして、企業の取組が進んでいるという事例がいくつか見られます。
 ここまでが3つ目の相談援助の資料でして、4つ目の事業協同組合等算定特例の制度が20ページになります。こちらは事業協同組合などを作って、協同の雇用促進事業をした上で、中小企業が算定を合算できるという仕組みで、前回の法律改正で特区で認めていたLLP、有限責任事業組合も使えるようにしたという仕組みになっています。20ページは制度の概要で、21ページがその実績です。LLPが可能になったことにより、近年少し増えて9組合となっています。ここまでが中小企業に対する支援や使える制度等を整理したものです。22ページは、御参考までに、中小企業を取り巻く経済の状況ということで、業況判断DIや企業規模の売上高の推移で、双方とも少しずつ、コロナ以降は回復基調にあるという状況を参考資料として載せています。
 23ページです。こちらは過去に300人から200人、100人と拡大をしてという経緯を御説明しましたが、そのとき、それらの企業の雇用の状況はどのように変化したのかというところを見て取れる資料です。特に右側の達成割合のグラフを見ていただくと、300から200に拡大する、200から100に拡大するときに、それらの対象になる企業の達成割合のペースというか傾きといったものが少し急になっている。要は過去に比べると、達成割合のスピードが上がっているというところが見て取れると思います。このような傾向、様々な政策を組み合わせてやっていますが、一定の契機になっているのではないかと見て取れる資料です。
 これらのデータや政策を踏まえまして、24ページに論点として整理しています。まず、雇用義務の対象であるが、暫定措置として納付金の義務から除外している100人以下の事業主について、義務の対象とすることについてどうかというところですが、まず1つ目の白マルのところですが、最初に見たデータのとおり、客観的データとしては達成企業の割合が半数を下回って、やや長期的には改善傾向は乏しい状況にあると考えています。そのような中で、一定の中小企業に対する支援策も拡充・強化されてきたというところで、このような状態の改善や企業間の公平性という観点から、この納付義務の対象に100人以下の企業も加えていくということについて、どう考えるかということがあると思います。その下の論点ですが、100人以下の企業といっても、いろいろな規模がありますので、仮にやるとした場合に、ある意味どこまでやるのかというところが、一応論点としてはあると考えています。
 4つ目ですが、こちらも仮にやる場合に、平成20年の改正のときは、最初のほうの資料で見ましたとおり、かなり時間をかけて、かつ暫定的ですが、額にも配慮をして経過措置を設けてますが、こういったことについてどのように考えるかというところが論点になると思います。その下に書いてありますが、どのぐらいの会社が対象になるのかというところが、下の※と、次の資料になりまして、企業数でいくと約40~100、雇用義務1なのが40人以上ですので、40人~100人未満ですと6万5,000社弱ということで、そこで働いている方は7万8,000人強ということになります。
 これは、当然、納付金の対象になるということは調整金の対象になるということになりますので、では、どれぐらいの額になるかというのを現行の達成割合、不足の状況について掛け算して足したものが右の試算です。これはあくまで機械的試算でして、先ほども見ましたとおり、これによって達成割合などが変わってくると考えられますので、調整金がもっと増えるということも想定されますし、これはあくまで機械的な試算ということで、参考としてください。
 最後の2枚の資料です。その次の26ページは、先ほどの計算の元にもなっていますが、これはどれくらい不足があるのかというところを示した資料です。赤い部分が不足の会社ですが、当然100人から40人ですので、雇用義務数が1か2ですので、圧倒的に不足が1という会社が多いということになってます。ですので、逆に言うと1名雇えば過不足なしという右の所に移るということになりまして、現状ですと超過しているところが23.9%という状況です。27ページは御参考までに納付金制度の概要を載せています。資料1はこちらまでで、参考資料1です。こちらの中身は詳細に説明はしませんが、これは第1回と第4回で主に御意見を頂いていますので、各項目について類似する意見は少しまとめさせていただいて、網羅的に載せまして、この議論の参考のために作成しているものです。こちらの資料の5ページ目に、先ほど紹介した100人以下の事業主への適用拡大についてのこれまでの御意見を載せているものです。説明は以上とさせていただきます。ありがとうございます。

○山川座長 ありがとうございました。それでは、常用労働者が100人以下の事業主への障害者雇用納付金の納付義務の適用拡大の論点に関して、意見交換に移りたいと思います。毎回お願いしておりますが、御発言の際は挙手をしていただいて、お名前をおっしゃってからの御発言をお願いいたします。御質問、御意見等ありますか。まず、山口構成員、お願いします。

○山口構成員 愛知県中小企業団体中央会の山口です。御説明ありがとうございました。納付金の100人以下事業主への適用拡大についての意見を申し上げます。前回の研究会においても申し上げておりますが、納付金制度はこれまで障害者雇用を促進することにつながり、雇用者数の増加に一定の効果があったと思います。また、一方で雇用の数は達成しても質の面では十分とは言いがたい雇用実態や、雇用ビジネスへの丸投げの状況もあると聞いております。そうした現状を踏まえて、雇用の質を高める必要性が議論に挙がっている中で、雇用率引上げと納付金の適用拡大という、いわば義務の拡大となる制度改正を立て続けに行うことは、質の面を重視した雇用促進を図るという点では懸念があります。
 また、中小企業は現在、社会保険の適用拡大、物価や最低賃金の大幅な上昇、国際的な経済社会の不透明感もあり、非常に厳しい経営環境に置かれております。こうした中小企業に雇用率引上げと納付金の納付義務を直ちに適用することは、経済的、事務的負担を更に負わせることになります。
 障害者雇用率未達成企業、特に雇用ゼロ企業は専門人材を配置できない、雇用環境の整備のための資金が不足しているなどの課題があります。こうした企業に自主的な取組を促すためには、障害者雇用相談援助事業やハローワーク、JEEDなどの法的支援機関による企業等へのきめ細かな相談、支援機能の充実も引き続きお願いし、障害者雇用のハードルを取り除き、質も含めた雇用のための経営環境整備を図るべきと考えております。また、これらの支援策の周知にも一層力を入れて取り組んでいただき、支援策の認知度が低く、活用に至らないといったケースが減るようにお願いいたします。
 さらに、資料にあります事業協同組合等算定特例制度は、中小企業組合及びその組合企業が利用できる支援策ですが、要件緩和により特例子会社又はグループ特例と同様に利用しやすい制度へと見直すなど、既存の助成制度や支援策についても活用状況や効果検証・分析を行い、中小企業が利用しやすい内容へ改善し、拡充していただきたいと思います。これらの総合的な取組によって雇用環境が整った場合に、社会、経済の状況も見ながら納付金の納付義務対象の拡大を段階的に検討していく必要があると思います。私の意見は、以上です。

○山川座長 ありがとうございました。それでは、清田構成員、お願いします。

○清田構成員 ありがとうございます。日本商工会議所の清田です。御説明等ありがとうございました。ただいまの山口構成員の御意見と重複する所が多いのですが、私からも御意見を申し上げさせていただきたいと思います。今回の議論に挙がっています100人以下の適用拡大については、慎重に御検討いただきたいと考えています。
 令和4年の障害者雇用分科会における意見書では、常用労働者100人以下の事業主における障害者雇用が進展した上で実施するのが適当とまとめられております。現状の実雇用率や達成企業割合を法定雇用率の引上げ分を加味した上で見ると、やはり進展したとは言いがたいのではないかと考えています。納付金の対象にすることで、障害者雇用に取り組む企業が増えるという御意見も確かにありますが、深刻な人手不足の中で十分な受入体制が整備できないまま無理に雇用しても、企業、障害者双方に好ましくない結果につながるのではないかと思っています。
 また、足元の経営環境下ですと、安易に障害者雇用ビジネスを利用する企業が増えることも懸念されます。雇用の質が確保された障害者が活躍できる企業の増加につながるかは、不安が残る状況かと思います。
 中小・小規模の企業においては、業務の内容も多種少量な企業が多く、業務の切り出しは大企業以上に難しい取組です。また、少ない人員ですと、自社内でサポートする人材を確保育成していくことが、業務の代替人材がいない中で非常に困難な状況になっていると聞いております。実際、ハローワークのチーム支援の実績を見たときにも、約8割は就職に結び付いていない状況を見ると、非常に厳しい状況があるのではないかと思います。
 100人以下の企業においても、支援を通じて障害者が活躍できる環境をしっかり作り、人手不足の緩和につなげている企業があることは承知しておりますが、ただ、こうした企業というのは、やはり一部にとどまっておりまして、いまだ多くの企業ではハードルが高いのではないかなと思っています。業務の切り出し、サポート体制の構築を通じた受入体制の整備、更には障害者とのマッチング、定着支援まで一貫して取り組むための支援体制の整備には、まだ時間を有するのではないかと思っています。
 現在の物価上昇や賃上げ圧力の中で、更なる経済的な負担を課して障害者雇用の取組を進めるのではなく、相談援助助成金事業などを通じた十分な支援体制によって達成企業の増加を確認した後に、改めて検討するべきではないかと思います。私からは、以上です。

○山川座長 ありがとうございました。ほかに御意見等ありますか。それでは、田中伸明構成員、お願いします。

○田中(伸)構成員 日本視覚障害者団体連合の田中です。納付義務の適用範囲の拡大については、賛成の立場で意見を述べさせていただきたいと思います。100人以下の企業に対する納付義務の適用拡大については、慎重な御意見も多数あることはよく承知しております。一方で、実雇用率の動きを見てみますと、少しずつ上がってはきておりますが、令和6年時点では1.96%で、まだ低い水準にとどまっている現状があります。そういう中で、過去の適用範囲の拡大の雇用促進効果について、資料を整えていただきましたが、やはり平成22年、平成27年いずれも雇用促進効果は認められるところがあります。
 また、今、様々な支援制度もスタートしているところです。障害者雇用相談援助事業、それから企業向けチーム支援はまだ始まったばかりです。これを現時点の数字をどう評価するかという点もありますが、私は大いに期待できる事業ではないかと思っております。
 こういった支援事業を通じて、中小企業の方が障害のある方を一人の戦力として、共に働く仲間として見ていただく、心のバリアフリーを進めるきっかけになればと考えているところです。
 それから、この納付金の徴収システムについて、非常に負担が大きくなるのではないかという点も考える必要があるかと思いますが、労働保険の労働保険事務組合など、現在の労働保険における徴収システムを活用すれば、ある程度の負担軽減は図れるのではないかと思っております。
 ただ、中小企業の皆様の経営の現状も十分に考える必要があると思います。したがって、激変緩和措置は十分に考えていく必要があるかと思っております。いつから適用範囲を拡大するのか等については、適切な時期をお示しするような専門知識を私は持ち合わせておりませんが、過去の例から見て、3年ないしは5年程度は周知期間も含めて考えてはどうかと思っております。また、額についても過去の例等もありますので、減額したものからスタートして、まずは中小企業の皆様に障害者雇用に対する理解をしていただいて、共に働ける環境を作っていければと感じております。以上です。

○山川座長 ありがとうございました。ほかに御質問、御意見等ありますか。大谷構成員、お願いします。

○大谷構成員 お世話になります。全国手をつなぐ育成会連合会の大谷です。よろしくお願いします。今の現状、なかなか生活、世界情勢もあって、中小企業におかれる立場は確かに厳しいものがあるのは理解いたします。ただ、どうしても、障害を抱える家族を持つ親として考えさせていただいたときに、やはり非常に多くの障害のある方が働く場所が増えることはとても大事なことであって、その働く場所をどうするかという問題は、これから先もどんどん広がっていってくれないと、障害のある方が増えていっている現状もありますので、なかなか難しいのかなとは思います。
 100人以下についてということで、今すぐとは言いませんが、やはり雇用情勢の問題もありますが、何とかその中から少しずつ増やしていただける。特に今、企業においては仕事も外注的なものが増えてきて、簡単な作業を外の業者さんが入ってきてするというようなことがかなり増えてはおりますが、そういう部分について、かなり障害のある方が働ける場所というのはあるのではないかなと思います。納付金の問題などいろいろありますが、これも何らかの措置をしていただいて、今すぐとは言いませんが、長期にわたって計画を立てていただいて、雇用をできる場所を作っていただきたいと考えますので、よろしくお願いしたいと思います。以上です。

○山川座長 ありがとうございます。ほかに御意見等ありますか。渡邊構成員、お願いします。

○渡邊構成員 筑波大学の渡邊です。納付金制度の制度趣旨といったものを考えますと、対象障害者の雇用に伴う事業主間の経済的負担を調整して、その雇用の促進及び継続を図るためのものと解されておりますし、更に障害者雇用といった制度が義務化されてかなりの期間が経過しておりまして、社会的にも広く認識されている状況にあるかと思います。そういったことに鑑みますと、障害者雇用が義務付けられている企業については、等しく納付金制度の対象とすることを基本とすべきではないかと考えております。
 したがって、今回の論点である100人以下の企業に関しても適用することを基本として考えて、段階的に対象範囲を広げていくといったような措置などを講じることが望ましいのではないかと思っております。私からは、以上です。

○山川座長 ありがとうございます。それでは、冨高構成員からお願いします。

○冨高構成員 ありがとうございます。日本労働組合総連合会の冨高です。100人以下企業を納付義務対象にするかどうかについて発言いたします。資料1でも触れていただきましたが、6ページに企業規模別の実雇用率の推移が記載されており、100人未満企業においても若干ではありますが、実雇用率は改善しておりますし、法定雇用率の達成企業の割合は全体平均と比べても遜色のないものだと思っています。更なる障害者雇用の促進や、企業間の公平性といった観点もある一方、この間、障害者雇用における様々な負担の大きさについて御意見もありました。そういったことを踏まえれば、中小企業への支援策の拡充強化に取り組みつつ、100人未満の企業についても納付金の納付義務対象としていくべきと考えます。
 経過措置については、皆さんと議論しながら検討していくことですが、少なくとも障害者雇用ゼロ企業を減少させるという目標と相矛盾するようなことがないよう検討していく必要があると考えています。以上です。

○山川座長 ありがとうございました。ほかは、いかがですか。勇上構成員、お願いします。

○勇上構成員 神戸大学の勇上です。私も総論としては、100人以下の事業主の方への納付金の適用範囲の拡大については、漸進的に実施する方向で検討すべきではないかなと思います。

○事務局 勇上先生、カメラのほう止まっております。一度オフにしていただいてもよろしいでしょうか。勇上先生、音声のほう届いておりますでしょうか。

○山川座長 それでは、勇上構成員、ちょっと接続の調整をこちらで事務局にお願いいたしました。では、眞保構成員、その間ということでもありませんが、まず、お願いします。

○眞保構成員 法政大学の眞保です。今回、新たな資料も御提示いただきまして、ありがとうございました。その資料の中の事例企業等を拝見しても、一度、雇用に踏み出すと雇用義務の達成はもちろんのこと、更に雇用を進めるというような動きもあり、成果は上げていると考えられるかと思います。ですので、お話にも出ておりましたが、最初の一歩を後押しする支援として、今回、資料をお示しいただきましたが、障害者雇用相談援助事業が有効に進展していることが見られます。まだ1年目ということもあり地域による差もあろうかと思います。こちらを更に進めていただきたいと思います。そして100人以下の事業主の方への納付金納付義務の適用範囲の拡大を進めていくことが基本だと考えます。
 納付金はお一人につき月額5万円、年間で60万円です。納付金として支払えば企業にとっては全くのコストになりますが、1名採用して戦力化して週20時間働いていただければ雇用率も達成できて、更に人手不足を解消することができます。わたくしのところは職員数40人程度の小さな法人ですが、フルタイムで1名、短時間で2名の方に働いていただいています。かけがえのない戦力です。例えば、時給1,200円で計算して25時間、これ、20時間ギリギリではなく余裕をみて25時間として計算させていただきますと、年間で大体145万円ぐらいになるかと思います。社会保険が適用される労働者ですので、160万円程度になります。これをどのように考えるか。資料1の23ページのデータに関連して、納付金義務の適用範囲となることをきっかけとして、これまで検討してこなかった障害者雇用にチャレンジしてみようと考える事業主もいらっしゃることが期待できます。平成20年法改正の際と同様に十分な経過措置や減額措置、あるいは従業員数による段階的な実施などを今後検討して、適用をしていく方向ではないのかなと考えております。以上です。

○山川座長 ありがとうございました。岡本構成員、お願いいたします。

○岡本構成員 日本身体障害者団体連合会の岡本と申します。今、各構成員の方からお話があったとおり、私としても100人以下の企業の障害者雇用納付金の納付義務については、適用範囲を拡大していただくというか、そういう方向で進んでいただきたいと思います。規模の小さい企業は業務の選別や切り出し、あるいはサポート体制の整備などの選択肢が少ないので、100人以上の企業とは、ちょっと難しいとは考えられますが、様々な制度等を整備していただいて実施すべきだと考えております。実施に当たっては、企業規模によって額が、今は5万円という同一の金額ですが、これはやはり諸外国でも、この前に頂いた資料を見ると、規模によって納付金が違うようなこともやっておりますから、そういったことも一律ではなくて、違うことも考えていただければと思います。私からは以上です。

○山川座長 ありがとうございました。ほかにありますか。それでは本日、欠席の倉知構成員からは書面で御意見を頂いております。それを御紹介していただけますか。

○西澤障害者雇用対策課長 承知致しました。事務局の障害者雇用対策課長の西澤です。倉知構成員から御意見を頂いておりますので、代読させていただきます。
 従業員100人以下の事業所に対する雇用納付金の適用について意見を述べます。結論から言うと、雇用義務のある事業所、現在は40人以上に適用することを提案いたします。理由は、納付金適用事業所となることで障害者雇用への意識付けが図れるからです。現状では雇用への意識付けが非常に弱いと感じております。この提案は雇用納付金を徴収することが目的ではありません。飽くまで雇用をしなければならないという意識付けを図り、その上で雇用に向けた事業所支援を展開して雇用促進を図ることです。そのためにも雇用相談援助事業や雇用支援機関による更なる支援を展開する必要があります。その結果、法定雇用率を超えて雇用した場合には、雇用調整金の支給対象となり得ます。しっかりと障害者雇用の意識付けを図り支援をしていき、多くの障害のある人の雇用を促進させていくことを期待します。
 ただ、懸念されることは、急激な制度改革に対して障害者雇用という現状が付いていかないことです。そのため、周知や障害者雇用に向けた準備期間の設定、初期段階の納付金額の減額といった対応が必要だと思います。しかし、改革の先送りという対応は避けなければなりません。今のままでは従業員100人未満事業所の障害者雇用が進まないことは明らかです。以上です。

○山川座長 ありがとうございました。今、勇上構成員。

○事務局 勇上構成員、音声は聞こえていますか。

○勇上構成員 はい、大変失礼いたしました。聞こえております。

○山川座長 よかったです。先ほどおっしゃっていただいた際は、支援策についてというところで、こちらで途切れてしまったと思いますが、初めからおっしゃっていただければと思います。

○勇上構成員 すみません。総論のところは先ほど申し上げたとおり、雇用義務の拡大については賛成です。一方、企業規模による負担の違いについては、支援策において十分に考慮すべきであり、構成員の皆様がおっしゃっているとおり、周知期間というか、助走期間というのが相当必要であろうと思います。例えば、平成20年の法改正のときに300人以下に順次適用拡大していったわけですが、ロクイチ報告を用いた私の共同研究の暫定的な分析結果では、施策実施の数年前から障害者雇用の実績が上がる傾向があり、対象企業が時間をかけて対応されたことが示唆されました。この度も、施行までの周知期間や支援が必要であろうと思います。
 もう1つは規模による負担能力への配慮です。障害者の方の雇用促進を考える場合に、法定雇用率に満たない場合の納付金と、障害者の方を雇用される場合の助成という手段があります。まず前者について、今回のような小規模の企業の場合、最初のお一人を雇うことのコストの問題が大きいと思いますので、配慮としては、納付金の軽減が議論されます。その場合、やや技術的なお話ですが、障害者雇用実態調査などを拝見すると、お支払いになっている給与にずいぶん企業規模に格差があります。一律5万円という納付金の負担が、大企業の平均給与に対する割合と、中小企業での割合は随分違いますので、そういったお支払いになっている賃金費用との関係で軽減を考える必要があるかもしれないと思います。次に、雇用する場合の助成として、例えば、最初の1人を雇うためには、トライアル雇用助成金などの既存の助成制度の拡充が求められるように思います。今日の資料でも、最初の1人を雇ったことで2人目の雇用への道が開けていったという例を御紹介いただいたと思います。このような形で、企業規模特有の難しさに配慮していくという必要があるのではないかと思いました。

○山川座長 ありがとうございました。ほかに御意見はありますか。新銀構成員、お願いいたします。

○新銀構成員 ありがとうございます。全国精神保健福祉会連合会(みんなねっと)の新銀です。障害者雇用が100人未満の企業においても促進されるということは、基本的に喜ばしいことと考えております。障害者が働く場所が増えるということは望ましいと考えているのですが、ただ、先ほども構成員の皆様がおっしゃっているように、納付義務が先行されて支援策の拡充が十分整っていくのかという懸念は大変持っております。障害者を雇用して本当に企業さんのほうが、これをしてよかったと思っていただくための施策が、やはり長期的に考えても一番必要なことだと思っておりますし、100人以下の企業において、今、想定される懸念事項、それを1つ1つ明記しながら、解決策を考えながら慎重に進めていっていただければと思っております。企業側と障害者側の双方が安心して働ける場、働いてもらえる場になっていくことが一番望ましいと思っておりますので、この点は十分に慎重に進めていっていただければと考えております。以上です。

○山川座長 ありがとうございました。ほかに御意見等はありますか。田中克俊構成員、お願いいたします。

○田中(克)構成員 北里大学の田中です。地方にお住まいの障害者のお話などを聞いていますと、周りには100人以下の小さい会社しかないということをおっしゃる方も多くて、その障害者の雇用のチャンスを上げるためには、この議論は進めなくてはならないことは間違いないと思っています。今までも十分言われていますが、段階的な適用というのが、やはり混乱を防ぐためには大事だと思いますし、ただ、おっしゃるように中小企業が難しいことが、よりこれまでも多く発生すると思いますので、段階を少しこまめに、例えば最初は数年後に80人以上とか、そういった形で細かい段階で分割していくのがいいのではないかと思いますし、納付金額を下げて3万円ぐらいでという形で、余り葛藤が生じないような形で進めたほうがいいと思います。また、障害者雇用ゼロ企業が当初は若干増える可能性もあるのですが、そのプロセスを、少し事務的な手続が煩雑になるかもしれませんが、雇用相談援助事業や、現場実習の受入れなどをしているところは、一部猶予や免除をしてあげるなどといった準備をしてあげると、抵抗なく進んでいくのではないかと思っております。以上です。

○山川座長 ありがとうございます。ほかはいかがでしょうか。あるいは先ほど、既に御意見いただいた構成員の皆様の追加等でも結構ですけれども。よろしいでしょうか。様々な御意見、有益な御意見、ありがとうございました。
 いろいろ御意見がありました。雇用義務と納付金の納付義務の違いといいますか、雇用義務はあらゆる企業にかかっているということで、その上で納付金の納付義務をどう考えるかという、2つの義務の問題があるというのが恐らく出発点になると思います。それから、これまでのご議論の状況を申しますと、現状の支援策をどう見るかという点と、これからどのようにそれを進めていくかという点について、いろいろ御意見がありました。また、前回の分科会報告でありました「雇用が進展した上で」というところについて、現状ないしこれまでの推移をどう見るかという点で、御意見が若干分かれていたような気もします。他方、積極的な立場の方からも、中小企業に配慮するということで、ほぼ皆様から、激変緩和措置を考えるべきであるという御意見であったかと思います。その場合も幾つかの御提案を頂きまして、時間的な観点からの経過措置と、それから、従業員規模の適用範囲をどう考えるかという点と、それから、納付金の金額をどう考えるかという点、激変緩和的なことでも、幾つかの手法について御指摘を頂いています。その他、先ほど申しました、今後、支援策をどう考えているかということも御意見を頂いたと考えております。
 そのほかに、追加的な御意見等はありますか。では、事務局から何かありますか。

○西澤障害者雇用対策課長 ありがとうございます。本日はいろいろな御意見を頂きましたので、また実態をよく把握できるように取り組みたいと思います。あと、先ほど、勇上先生から納付金の額のことについて御指摘がありました。基本的に費用の調査を定期的にしていまして、そういった費用を雇用率の改定の際に調査して、結果を出して、改定をしているわけですので、今の雇用率は令和9年度までですので、次の雇用率の改定を、現行の法律の規定に基づけば、令和10年度以降の雇用率を設定しないとならないことになりますので、それに向けて費用調査などはしていきたいと考えております。補足させていただきました。

○山川座長 ありがとうございました。構成員の皆様、何か追加的なこととか、特段ございますか。よろしいでしょうか。それでは、若干早めですが、本日はこの辺りで終了させていただきたいと思います。本日、様々な貴重な御意見を頂きましたので、これを踏まえて、今後、具体的な議論につなげていけるような事務局からの対応をお願いいたします。では、次回の日程について、事務局から説明をお願いします。

○原田障害者雇用対策課長補佐 事務局でございます。次回、第6回の開催は皆様に確保いただいている日程の中で調整し、追ってご連絡させていただきます。以上でございます。

○山川座長 それでは、これをもって本日の研究会は終了といたします。皆様お忙しい中、大変ありがとうございました。