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第1回「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」 議事録
日時
令和7年5月26日(月)15:00~16:30
場所
東京都千代田区霞が関1丁目2番2号 中央合同庁舎第5号館
厚生労働省 17階 専用第21会議室
厚生労働省 17階 専用第21会議室
議題
1.専門委員会の設置について
2.高額療養費制度について
2.高額療養費制度について
議事
- 議事内容
- ○佐藤保険課長 それでは、定刻より若干早いわけでございますけれども、皆さんおそろいでございますので、ただいまから、第1回「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」を開催いたします。
委員の皆様におかれましては、御多忙の折、御参加をいただきましてありがとうございます。
本専門委員会の委員長が決まるまでの間は、事務局が進行役を務めさせていただきます。私は厚生労働省保険局保険課長の佐藤でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
まず最初に、本専門委員会の委員の皆様について御紹介を申し上げます。失礼ながら事務局のほうから一名一名お名前を読み上げる形で御紹介を申し上げます。
まず、全国がん患者団体連合会理事長の天野様でございます。
○天野委員 天野でございます。よろしくお願いいたします。
○佐藤保険課長 日本経済団体連合会専務理事の井上様でございます。
○井上委員 井上でございます。よろしくお願いいたします。
○佐藤保険課長 日本難病・疾病団体協議会代表理事の大黒様でございます。
○大黒委員 大黒です。よろしくお願いします。
○佐藤保険課長 早稲田大学理事・法学学術院教授の菊池様でございます。
○菊池委員 菊池です。どうぞよろしくお願いいたします。
○佐藤保険課長 全国健康保険協会理事長、北川様でございます。本日は北川様は御欠席のため、代理として川又参考人に御出席をいただいております。
○川又参考人 よろしくお願いいたします。
○佐藤保険課長 日本医師会常任理事の城守様でございます。
○城守委員 城守でございます。よろしくお願いいたします。
○佐藤保険課長 健康保険組合連合会会長代理の佐野様でございます。本日は佐野様は御欠席のため、参考人として伊藤参考人に御出席をいただいております。
○伊藤参考人 伊藤でございます。よろしくお願いいたします。
○佐藤保険課長 日本病院会副会長の島様でございます。島様は本日御欠席でございます。
NPO法人高齢社会をよくする女性の会理事の袖井様でございます。
○袖井委員 袖井です。よろしくお願いします。
○佐藤保険課長 東京大学大学院法学政治学研究科教授の田辺様でございます。
○田辺委員 田辺でございます。よろしくお願いいたします。
○佐藤保険課長 国民健康保険中央会理事長の原様でございます。
○原委員 原でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
○佐藤保険課長 日本労働組合総連合会副事務局長の村上様でございます。
○村上委員 村上です。よろしくお願いします。
○佐藤保険課長 日本商工会議所企画調査部長の山内様でございます。
○山内委員 山内でございます。よろしくお願いいたします。
○佐藤保険課長 先ほど御紹介申し上げましたけれども、本日は北川委員の代理としまして川又参考人に、また、佐野委員の代理としまして伊藤参考人にお越しいただいております。
参考人の御出席について、先ほど御紹介申し上げたところでございますけれども、委員会の御承認を賜れればと存じますけれども、よろしゅうございますでしょうか。
(首肯する委員あり)
○佐藤保険課長 ありがとうございます。
続きまして、事務局のほうを御紹介申し上げます。
保険局長の鹿沼でございます。
○鹿沼保険局長 鹿沼でございます。本当に本日はどうもありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。
○佐藤保険課長 大臣官房審議官の榊原でございます。
○榊原大臣官房審議官 榊原でございます。よろしくお願い申し上げます。
○佐藤保険課長 同じく大臣官房審議官の神ノ田でございます。
○神ノ田大臣官房審議官 神ノ田です。よろしくお願いします。
○佐藤保険課長 総務課長の姫野でございます。
○姫野総務課長 姫野でございます。よろしくお願いいたします。
○佐藤保険課長 高齢者医療課長の安中でございます。
○安中高齢者医療課長 安中でございます。よろしくお願いいたします。
○佐藤保険課長 国民健康保険課長の唐木でございます。
○唐木国民健康保険課長 唐木でございます。よろしくお願いいたします。
○佐藤保険課長 調査課長の鈴木でございます。
○鈴木調査課長 鈴木でございます。よろしくお願いいたします。
○佐藤保険課長 それでは、第1回の開催に当たりまして、まずは保険局長の鹿沼から一言御挨拶を申し上げます。
○鹿沼保険局長 保険局長の鹿沼でございます。
繰り返しになりますが、先生方にはそれぞれこの委員会の委員に御就任をいただきまして本当にありがとうございます。
私のほうから経緯をあまりお話しするまでもございませんが、皆様御承知のとおりだと思いますし、また後ほど事務局からも説明させていただきますが、やはり高額薬剤の問題とか、またこの高額療養費制度、通常の医療費の倍のペースで伸びているといった中におきまして、昨年、医療保険部会でもいろいろ御議論賜りまして、最終的に政府の案として出させていただきました。その後、国会の中で様々な御議論をいただき、特に本件の検討プロセスに丁寧さを欠いたという御指摘をいただきまして、こういった点を政府として重く受け止めまして、本年8月の見直し全体について実施を見合わせるという決断をさせていただきました。そして、本日こうした形で専門委員会ということで、患者団体の皆様方にもお入りいただき、改めて丁寧に議論をさせていただければというふうに思っているところでございます。
この高額療養費制度、我々が言うまでもないのですが、本当に患者の皆様方、国民の皆様方にとって非常に大切な制度であるということは間違いないと思っております。一方で、先ほど言ったように、いろいろな高額薬剤等で増えていく中で、この制度をこれから先も持続可能なものとし、将来の方々も含めて皆さんがこの制度を使えるように、そういった形でこの制度を守っていかなければいけない、こういった点についても恐らく本日御参加の先生方は皆さん御同意をいただける点ではなかろうかと思っております。
そうは言いましても、どのような政策を取るかというところについては、それぞれの御意見があろうかと思っております。私ども事務局といたしましても、先生方が御意見をしっかりと発言していただけるような丁寧な議論をしていきたいと思いますし、それに当たりまして必要な資料等々いろいろあろうかと思いますので、そういった資料についても我々は全面的に協力し、提出させていただきたいと思っているところでございます。
本当に厳しい中でのいろいろな御議論を賜るかと思いますが、どうぞ実りある議論になればというふうに思っておりますので、よろしくお願いいたします。
○佐藤保険課長 なお、本日は、健康・生活衛生局がん・疾病対策課及び難病対策課もオンラインで参加しておりますことを併せて御報告申し上げたいと存じます。
続きまして、委員長の選任を行いたいと思います。本専門委員会の委員長につきましては、社会保障審議会医療保険部会の部会長でもございます田辺委員にお願いをしたいと存じますが、皆様、いかがでございますでしょうか。
(「異議なし」と声あり)
○佐藤保険課長 ありがとうございます。
それでは、本専門委員会の委員長を田辺委員にお願いしたいと存じます。
以降の議事運営につきましては、委員長にお願いいたします。田辺委員、委員長席への御移動を恐縮でございますけれどもよろしくお願いいたします。
(田辺委員長、委員長席へ移動)
○佐藤保険課長 それでは、よろしければ、委員長より一言御挨拶をお願いできればと存じます。
○田辺委員長 委員長を拝命いたしました田辺でございます。よろしくお願い申し上げます。
医療保険部会におきましては、何回か議論してきたことではありますけれども、拙速という御批判を受けまして、それを真摯に受け止めていきたいと思います。この検討会における議事運営に関しましては、患者団体の皆様方の意見をきちんと聴くということと、それから、データに基づいた判断を進めていくという方向の下で丁寧に議事運営を図ってまいりたいと思います。御協力のほどよろしくお願い申し上げます。
それでは、早速でありますけれども、事務局から資料の確認等をお願い申し上げます。
○佐藤保険課長 事務局でございます。
まず、会議冒頭のカメラ撮りにつきましてはここまでとさせていただきたいと存じますので、カメラの皆様は御退室のほどよろしくお願いいたします。
(カメラ退室)
○佐藤保険課長 それでは、お手元の資料の確認をさせていただきます。
本日の資料でございますけれども、資料1-1「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会設置要綱」。
資料1-2「社会保障審議会運営規則」。
資料2「高額療養費制度について」。
それから、委員提出資料ということで天野委員から御提出いただいた資料。
以上でございます。過不足等ございましたら、事務局にお申しつけいただければと存じます。
また、本日の会議でございますけれども、傍聴希望者向けにユーチューブにおきましてライブ配信を行っております。アーカイブ配信はいたしませんので、あらかじめ御了承いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。
以上でございます。
○田辺委員長 それでは、議事に入ってまいりたいと存じます。
まずは議題1、専門委員会の設置について、事務局より御説明をお願い申し上げます。
○佐藤保険課長 保険課長でございます。
お手元のタブレットの資料1-1をお開きください。高額療養費の在り方に関する専門委員会ということでございまして、1番目に設置の趣旨を書いてございます。先ほど局長の鹿沼のほうからお話し申し上げましたけれども、高額療養費については、秋までに改めて検討を行い、方針を決定するとされているところでございます。この専門委員会の設置につきましては、5月1日の医療保険部会におきまして御了承いただいたことを踏まえて、今回こういう形で専門委員会を設置させていただきたいと存じます。
2番目の構成、検討項目等については割愛をいたしまして、4番目、運営でございます。委員会の議事は、原則公開とする。ただし、委員長が、個人情報保護等の観点から特に配慮が必要と認めるときは、非公開とすることができる。
それから、(2)でございますけれども、専門委員会の検討状況については、委員長の判断に基づき、社会保障審議会医療保険部会において報告を行う。
1個飛ばしまして(4)その他必要な事項については、委員長が適宜定めるということでございます。
タブレット、資料1-2に社会保障審議会運営規則をつけております。細かい規則でございますので、詳細は説明いたしませんけれども、社会保障審議会自体、先ほどの会議の公開でございますとか、あるいは議事録の公表につきましては、この運営規則にのっとって運用されております。この専門委員会につきましても、社会保障審議会医療保険部会の下に置かれる専門委員会でございますので、これに準ずる形で運営をしていただければと考えてございます。
事務局からの説明は以上でございます。
○田辺委員長 ありがとうございました。
それでは、ただいまの説明に関しまして、御意見、御質問等ございましたら、挙手にてお願い申し上げます。
よろしゅうございますでしょうか。
それでは、特段の御質問がないようでございますので、今説明のあった形で運営をしてまいりたいと思います。
では、次の議題に移ってまいりたいと存じます。議題2、高額療養費制度についてでございます。
まずは事務局から説明をお願いいたします。では、よろしくお願いいたします。
○佐藤保険課長 保険課長でございます。
資料2「高額療養費制度について」をお開きください。内容については御存じの方もいらっしゃるかと思いますけれども、初回でもございますので、改めて御説明を申し上げたいと思っております。
タブレット右下の2ページ目でございます。最初に高額療養費制度の概要ということでございまして、上のほうのグレーの部分に●が2つございますけれども、高額療養費制度は、家計に対する医療費の自己負担が過重なものとならないように、自己負担の限度額を決めるという仕組みでございます。自己負担限度額は被保険者の所得に応じて設定されるというものでございまして、2ページ目の下半分に例を記載してございます。70歳未満で年収が約370万から大体770万円の方の場合の例でございます。こういう方は医療費の自己負担3割負担でございますので、横棒のグラフが3つございますけれども、例えば一番上、医療費が100万円かかったという場合には、原則に従いますと3割の部分、窓口負担30万円について御本人に負担をいただきまして、残りの7割の部分が保険給付で賄われることになります。ただ、年収370万円から770万円の方にとっての窓口負担の30万円というのは負担としては大変重いであろうということでございまして、自己負担に上限を設けた上で、その残りの部分については、高額療養費という形で保険財政のほうから還付をされるという仕組みを設けております。
例えば自己負担限度額というところに、一番上の棒グラフの下に矢印で引っ張ってございますけれども、自己負担限度額がこの場合には8万100円プラス医療費一定額の1%で8万7430円が最終的な自己負担となります。
これが下のほうに医療費200万円、300万円という形で記載をしてございますけれども、原理原則に従いますと、医療費が200万円であればその3割の60万円が窓口負担となる。また、医療費が300万円であればその3割の90万円が窓口負担となるというわけでございますけれども、実際の自己負担限度額は濃い青い部分でございまして、医療費が200万円の場合には9万7430円、医療費が300万円の場合には10万7430円ということで、医療費が2倍、3倍になったからといって、自己負担が2倍、3倍になるのではなく、実際には1万円ぐらい増えていく程度にとどめているという形で、セーフティーネットとして機能させているというのが高額療養費制度の概要でございます。
タブレットの右下3ページ目でございます。患者負担割合及び高額療養費の自己負担限度額の現行でございます。70歳未満、70歳以上と分かれておりますけれども、年収が370万円以上の方については、年齢にかかわらず月単位の上限額は同じ金額になっております。具体的な違いは2点ございまして、まず1つ目は、住民税非課税の方の欄でございます。70歳未満の場合には、月単位の上限額が3万5400円となっておりますけれども、70歳以上の場合には、住民税非課税の場合には2万4600円であったり、あるいは所得が一定以下の方であれば1万5000円であったりという形で、70歳以上の方については、70歳未満よりも月単位の上限額を下げているという点がまず違いの1点目でございます。
それから、2点目でございますけれども、70歳以上の方については外来特例という仕組みが設けられております。外来(個人ごと)というのが70歳以上の箱の右側にございますけれども、世帯単位だけではなく、個人単位で外来で月8,000円であったり、あるいは1万8000円であったり、そこを上限とした上で、それ以上は支払わなくていいですよという仕組みが設けられております。
続きまして、右下の4ページ目でございます。高額療養費の多数回該当という仕組みがございます。上のグレーの部分でございますけれども、同一世帯で、直近12か月に高額療養費が支給された月が3か月以上あった場合には、4回目からは自己負担限度額がさらに軽減をされるという仕組みになってございます。
例えば年収370万円から770万円の場合ということでグラフを書いてございますけれども、通常の高額療養費の仕組みでございましたら8万100円プラス1%が自己負担の限度額となってございますけれども、直近12か月で高額療養費に該当する場合が3回あった場合には、4回目からは4万4400円という形で定額の自己負担でいいですよという仕組みになってございます。これは年収によって、例えば年収770万から1160万の方であったら9万3000円であったり、年収1160万円以上の方であったら14万100円であったり、他方で年収がもう少し低い方、例えば住民税非課税、70歳未満の場合には2万4600円となっており、所得に応じて多数回該当の金額は変わっているという仕組みでございます。
続きまして、右下の5ページ目でございます。高齢者の高額療養費における外来特例についてということでございまして、これは先ほど70歳以上の高齢者のみに設けられている仕組み、特徴の一つでありますということを御紹介申し上げましたけれども、経緯というところに○が2つございます。平成14年10月に、それまで設けられていた外来の月額上限制を廃止して、定率1割負担の徹底ということを行いました。その際に、高齢者の方はどうしても外来の受診頻度が若い方に比べて高いということであったりとか、あるいは定率1割負担を導入してから間もないことを考慮して、平成14年10月にこの外来特例という仕組みが設けられました。
その後、平成29年と30年に高齢者の高額療養費の見直しを行っておりますけれども、そこにおいては一般区分、5ページ目の下のほうに現行という表がありますけれども、非課税ではない方、一般の方については自己負担限度額を引き上げるとともに、年間の上限額14.4万円というものを設定いたしました。また、さらに平成30年にということでございまして、現役並み所得者の外来特例については廃止をするということを行っております。
他方で、住民税非課税の方、低所得の方については、平成14年10月に最初に限度額8,000円ということを設定いたしましたけれども、その後の見直しは行われていないという状況でございます。
右下の6ページ目は、全世代型社会保障構築を目指す改革の道筋(改革工程)の概要でございまして、年齢ではなく、能力に応じて全世代が支え合う全世代型社会保障を構築していこうということで、一昨年末に改革工程というものを閣議決定しております。2024年に実施する取組、2028年度までに検討する取組ということで様々なメニューが並んでおります。今は2025年度でございますので、右側の2028年度までに検討する取組ということでございますけれども、いろいろなメニューが並んでおりますが、この中のメニューの多くについては、既に制度化されているものもあったり、あるいは検討に着手をしているものばかりでございます。例えば6ページ目の右側の上のほう、勤労者皆保険の実現に向けた取組ということであれば、短時間労働者への被用者保険の適用拡大、これはまさに今、法案審議をいろいろと御議論されているところでもございます。
また、その下に行って生産性の向上、効率的なサービス提供ということで、DXの推進であったり、あるいは経営情報の見える化、かかりつけ医機能、イノベーションの推進等々については、既に進んでいるところ、あるいは既に法律が施行されているものもございます。また、介護の関係についても、今、関係の審議会において議論が行われているところでございます。こういう中において、赤枠で囲ってございますけれども、経済情勢に応じた患者負担の見直しということで、高額療養費についても検討していかなければいけないということでメニューとして記載をされているところでございます。
続きまして、7ページ目でございます。高額療養費制度の見直しについてということでございまして、もともと昨年11月に全世代型社会保障構築会議がございまして、その場において高額療養費制度についても御意見をいろいろといただきました。それを踏まえて、昨年11月から医療保険部会において4回、高額療養費制度について御議論いただき、そこでの議論を踏まえた上で、年末に厚労大臣、財務大臣の予算の折衝の中において最終的な政府案を決めさせていただきました。その後、医療保険部会にも御報告を申し上げたところでございますけれども、そのときの高額療養費制度の見直し案というものでございます。もともとは上のほうのグレーにしている部分に●が3つございますけれども、高額療養費は大変大事な制度でございますので、これをしっかりと守っていかなければいけないと。他方で、健康な方を含めた全ての世代の被保険者の保険料負担の軽減を図る観点から、以下の方向で見直すということで、7ページの下半分について、見直しの案を当時報告申し上げたところでございます。
見直しの内容は大きく2つございます。1つ目は左側に書いてある自己負担上限額の見直しでございまして、マル1、マル2とございますけれども、各所得区分ごとの自己負担限度額の引上げというものでございまして、現行の所得区分をベースとした上で引上げ率を決めていくというのがマル1の部分。それから、それに加えてマル2ということで、各所得区分を細分化していこうということを当時報告したものでございます。
また、2つ目の見直し内容として右側、外来特例の見直しということでございまして、2026年8月から、現行から見直し後のように、住民税非課税で年間収入80万円以下の方については据え置きとしますけれども、それ以上の方については、それぞれ若干御負担をお願いしたいということで、このような形で見直しを行うことを御提案申し上げていた次第でございます。
ただ、右下8ページ目でございますけれども、先ほど来お話もありますが、この見直しについて総理の発言をそのまま引用しているものでございます。一番上のパラグラフ、本年分の定率改定を含め、今回の見直しについて、なお御理解をいただくには至っていないと。高額療養費が増大する中、保険料負担を抑制するとともに、この大切なセーフティーネットを次の世代にも持続可能なものとするため、制度の見直し自体は実施させていただきたいと説明をしてきたわけでありますけれどもということで、上から2つ目のパラグラフ、先ほど鹿沼のほうからもお話がございましたけれども、本件の検討プロセスに丁寧さを欠いたという御指摘をいただいていることを、やはり政府としては重く受け止めるということでございまして、下から2つ目のパラグラフでございますけれども、本年8月に予定されている定率改定を含めて、見直し全体について実施を見合わせると。その上で、本年秋までに改めて方針を検討し、決定することといたしますということで、高額療養費の在り方について改めて御議論をお願いしたいという経緯でございます。
続きまして、高額療養費を取り巻く状況ということでございまして、右下の10ページ目でございます。高額療養費制度の見直しに関する経緯ということで、これまでの歴史を簡単に事務局のほうでまとめてございます。もともとこの高額療養費制度というものができたのは昭和48年、1973年であります。最初は被扶養者について高額療養費制度というものを創設したものでございます。
その後、昭和56年、1981年に低所得の被保険者について高額療養費制度をつくり、昭和59年に低所得者以外の被保険者について高額療養費制度をつくりました。そのときに世帯合算でありますとか、多数回該当という仕組みについてもつくったものでございます。
そして、平成13年、2001年に70歳未満について上位所得者区分を新しくつくって、また、一定額を超えた場合に医療費の1%相当部分を自己負担という形で御負担をお願いする仕組みに改めております。
そして、平成14年、平成18年にそれぞれ自己負担限度額の見直しを行い、また、大体10年後、平成27年1月に70歳未満について所得区分の細分化を行った上で、自己負担限度額の見直し。また、2年後の平成29年、平成30年に70歳以上についても自己負担限度額の見直しを行ったものでございます。
一番直近の見直しについてのみ資料をつけておりますけれども、右下の11ページ目でございます。高額療養費制度の見直しについてということで、平成27年1月、これは70歳未満の見直しについてでございます。11ページ目の一番上の箱の部分、見直しの内容の一番上の部分でございますけれども、見直し前、見直し後と左、右に書いてございます。もともと平成27年1月の見直し前は区分が3つしかありませんでした。上位所得者、一般所得者、住民税非課税の3つしかなかったのですけれども、上位所得者を2つに分ける、また一般所得者についても2つに分けるということにした上で、上位所得者については、それまでの月単位の上限額から引き上げると。年収約1160万円の方であったら、もともと15万円プラス1%だったものが25万2600円プラス1%、年収770万から1160万円の方であれば16万7400円にそれぞれ引き上がるというものでございます。
他方で、一般所得者の方については、年収370万から770万の方については据え置き。他方で、年収370万円以下の方については、月単位の上限額を引き下げるということを行っております。
右下12ページ目でございます。今度は70歳以上の見直しの関係でございます。平成29年、平成30年という形で行っております。このときには70歳から74歳の医療費の自己負担割合、これは2割負担があったものですから、現役よりも若干施行を遅らせているというものでございます。こちらにつきましても、12ページ目の下半分に表がございますが、平成29年7月までから一段階目、二段階目というふうに分かれていきますけれども、現役並みの所得者、一番上の箱の部分については、現役の70歳未満の方と同じような形で年収区分を分けた上で自己負担限度額を設定していく、引き上げていくということを行っております。
また、一般区分の方につきましても、世帯単位での限度額は5万7600円と現役とそろえた上で、外来特例、外来(個人)についても限度額を引き上げるということを行っております。
続きまして、右下の13ページ目でございます。高額療養費の支給件数、支給金額の推移ということで、左側に支給件数、右側に支給金額を記載しております。直近の支給件数、2022年度は7102万件、支給金額は約3兆円弱となってございます。ただ、2022年度につきましては、後期高齢者の窓口負担割合の見直し時の配慮措置というものが含まれておりますので、その点、比較の際には御留意いただきたいと思いますけれども、全体として支給件数、支給金額ともにトレンドとしては上昇している状況でございます。
右下の14ページ目でございます。実効給付率の推移ということでございまして、実効給付率、医療保険において保険で賄われる割合が直近で85%となっております。これは制度改正によって若干上下することはありますけれども、高齢者のほうが実効給付率は高い傾向にあるので、高齢化の進展によって、トレンドとしてはやはり上昇傾向になってくるというのが14ページ目の実効給付率の推移のグラフでございます。
それから、15ページ目、健保組合における1000万円以上の高額レセプトの件数の推移というものでございます。平成22年から令和5年までの件数を並べております。平成22年は2010年でございますから、平成22年と令和5年を比較しますと、この13年間で1000万円以上の高額レセプトの件数は12倍ぐらいに膨らんでいると。平成25年ですと2013年ですので、2013年と令和5年、2023年の足元10年間の比較でいうと、高額レセプトの件数は7倍近くまで増えているという状況でございます。
右下の16ページ目でございます。こちらは健保組合における高額レセプトの上位100位について資料をまとめたものでございます。平成26年、2014年と令和5年、2023年の9年間の違いでございますけれども、上位100位平均を右に書いてございますが、まず平均の金額が1861万円から5586万円と約3倍に増えている。また、最高の金額についても3000万円から1億7800万円と6倍近く増えているということでございます。また、左側に円グラフを描いてございますけれども、疾患についても、平成26年と令和5年ではかなり違いが生じているというものでございます。
右下の17ページ目、製薬企業の研究開発費と利益率の推移でございます。御案内のとおり、1社当たりの研究開発費は年々増加をしております。左側が日本でございます。直近2023年度で大体1社当たりの研究開発費は2300億円。10年前の2013年が1390億円ですから1.7倍ぐらいになっている。アメリカにつきましては右側でございますけれども、直近2023年度で125億ドル。10年前の2013年で57億ドルですので2倍以上に膨らんでいるという状況でございます。
右下18ページ目でございます。こちらは外来の受診動向ということでございまして、上に●を2つ書いてございますけれども、外来診療を受けた方のうち、受診月数が2か月以下だった方については、被用者保険ですとか国民健康保険は3割ぐらいの方が年間の受診月数が2か月以下でございましたけれども、後期高齢者、75歳以上の場合には1割程度にとどまっているというものでございます。
また、後期高齢者医療、75歳以上の方については、外来受診者のうち約4割が毎月診療を受けていると。18ページ目の右側の受診ありの者の受診月数の一番上のグラフ、12か月は40.6%とございますけれども、こういう形で、御高齢の方については毎月診療を受けておられる方が非常に多いというものでございます。
続きまして、19ページ目、外来特例に該当する患者の割合ということでございまして、2つグラフを御用意しておりますけれども、まず上のほう、外来の月額上限、月間1.8万円あるいは8,000円に該当する患者さんの割合でございます。70歳から74歳については、低所得の方は月額上限8,000円となっておりますけれども、53.9%であったり53.8%、約半数の方が月額上限に該当する。他方で1万8000円の方、課税世帯の方については2割弱が該当するということになっております。70歳から74歳の方については自己負担割合が2割でありますので、そういうことも影響しているのかと存じます。
また、右側の75歳以上に関しましては、月額上限1万8000円、月額上限8,000円、それぞれ御覧のとおり、例えば月額上限8,000円の方については、大体3分の1ぐらいの方が該当ありとなってございます。
他方で、年間14.4万円、下のほうにグラフがありますけれども、外来の年間上限に該当する患者さんの割合は、月額上限に比べると、該当ありの患者さんの割合は低くなっているという状況でございます。
続きまして、20ページ目、医療費に占める高額療養費の割合でございます。保険制度全体の平均ということで、今から10年ぐらい前は5.6%ぐらいあったものが、直近では6.8%弱ぐらいになっているというのが20ページの資料でございます。
それから、21ページ目、高額療養費の年間該当回数別の患者割合の粗い推計でございます。これは外来特例を除いておりますので、その点は御理解いただきたいと思っておりますけれども、1回から12回まで並べております。この外側にゼロ回、高額療養費の月額上限に該当しませんよという患者さんが一番多いのですけれども、それを抜いて1回から12回の方だけを拾っております。1回とか2回、高額療養費に当たる方については、例えば70歳未満であったら2.8%、0.7%、70歳以上であったら7.5%、3.5%となっておりますけれども、回数が増えれば、割合としては小さくなってくると。他方で年間12回、毎月当たる方についても一定数いらっしゃるという点については、やはり留意が必要なのだろうなと思っております。
22ページ、23ページの資料としては、基本的な資料でございますので割愛いたします。
右下の24ページ、医療保険制度を取り巻く状況ということでございまして、グラフを4つ並べてございますけれども、左上に医療保険の加入者数。一番下の青い部分が被用者保険でございますけれども、被用者保険は増えていて、他方で国保は減っている。後期高齢者は増えているということでございます。
右側に医療費の推移をつけております。
また、24ページの左下には国民医療費と保険料収入の比較ということでございまして、保険料収入も増えていますけれども、医療費も増えているというものでございます。
24ページの右下に拠出金、これもやはり増加傾向にあるというものでございます。
右下25ページ目でございます。近年の医療保険制度改革の経過ということで、直近15年分ぐらいで、主なもののみをピックアップしております。2008年に後期高齢者医療制度を創設した上で、2010年には後期高齢者医療制度を支える各保険者の支援金について総報酬割を導入しております。その後、段階的に拡大をして、平成29年度から全面総報酬割となっております。また、2014年、平成26年には、70歳から74歳の患者負担、先ほど御紹介申し上げましたけれども、新しく70歳になる方から2割負担をお願いするという取組も進めております。1個飛ばしまして2022年、令和4年については、75歳以上の一定以上の所得がある方には2割負担をお願いするという形で御負担をお願いしているところでございます。2024年、令和6年度には、出産育児一時金に要する費用の一部を後期高齢者医療制度が支援する仕組みの導入。また、前期高齢者財政調整についても、所得を勘案して調整でありますとか、あるいは高齢者負担率の見直しということで、適宜制度改正を行いながら制度の見直し、メンテナンスを行ってきているという状況でございます。
あとは参考資料でございますので、事務局からの説明は以上とさせていただければと存じます。長時間にわたり失礼いたしました。
○田辺委員長 御説明ありがとうございました。
ただいま事務局のほうから説明がございましたけれども、高額療養費の見直しに関しましては、昨年の医療保険部会で議論を重ねたものの、医療保険部会においては、長期に療養されている患者団体様の御意見を伺う機会がなかったという点が、いわば大きな課題として指摘されたところでございます。そのような課題に対応するため、この専門委員会が立ち上がったものではありますけれども、このような経緯を踏まえますと、初回でもありますので、まずは患者団体の皆様方から御意見を伺うのが適当ではないかと考えている次第でございます。
つきましては、まず、全国がん患者団体連合会、天野委員と、日本難病・疾病団体協議会、大黒委員から御発言を賜れればと思っております。五十音順ということで進めてまいりたいと思います。
それでは、最初に、天野委員のほうから御発言をお願いいたします。よろしくお願いいたします。
○天野委員 本日は貴重な機会をいただきましてありがとうございます。お手元の資料を基に発言いたしますので、委員提出資料「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会提出資料」という資料を御参照いただきながら話を聞いていただきたいと存じます。
では、1ページめくりまして、資料2ページを御覧ください。全国がん患者団体連合会、全がん連は、現在加盟団体51団体、会員総数はおよそ2万人を有するがん患者団体の連合組織でございます。
資料3ページを御覧ください。全がん連は、昨年12月に厚生労働大臣などに対して「高額療養費制度における負担上限額引き上げの検討に関する要望書」を提出し、負担上限額引上げの軽減及び影響を緩和する方策を検討するよう求めておりました。
資料4ページを御覧ください。今年1月17日から高額療養費に関するアンケートを実施し、わずか3日間でしたが、3,623名の皆様から切実な声が多数寄せられました。
資料5ページを御覧ください。幾つか事例を紹介させていただきますが、例えば、20代のスキルス胃がんの女性患者さんです。「高額療養費制度を使っていますが、支払いは苦しいです。家族に申し訳ないです。スキルス胃がんは治らないみたいです。私はいずれ死ぬのでしょうが、子供のために少しでも長く生きたい。毎月さらに多くの医療費を支払うことはできません。死ぬことを受け入れ、子供の将来のためにお金を少しでも残すほうがいいのか追い詰められています。」という声をいただいています。
また、30代の女性のがん患者さんからは、高額療養費制度のおかげで出費は抑えられていますが、自己負担金がほかにもあることをお忘れにならないでください。これ以上医療費が高額になると、治療を諦める、命を縮める患者が増えるのは確実です。私たちを殺さないでくださいという切実な声など多数寄せられています。
また、今はがんの患者さんを紹介いたしましたが、ほかの難病であるとか様々な疾病の方々からお声をいただいていますし、医療者の方々からも様々なお声をいただいておりまして、小手先の改革に終始すれば、最悪の形で結末を迎えるのではないかといった厳しい御指摘もいただいています。こちらのアンケートの回答全文は、全がん連ホームページに公開しておりますので、委員の皆様におかれましては、ぜひお目通しをいただきたいと願っております。
資料6ページを御覧ください。1月29日からは引上げ反対の緊急署名を実施いたしまして、10日間程度で13万筆を超える反対の署名をいただきました。
資料7ページを御覧ください。このアンケートや緊急署名の行為に対して、与野党各党から相次いで公開でヒアリングをしていただきました。
資料8ページを御覧ください。衆議院厚生労働委員会でも、アンケートをはじめ高額療養費制度に関して多数の御質問をいただきまして、中でも1月31日には、石破首相から、一番苦しんでおられる方々の声を聴かずに、このような制度を決めてよいとは思いませんとの答弁をいただきました。
資料9ページを御覧ください。2月7日には厚生労働省の保険局長並びに保険課長とも面談の機会をいただきまして、患者団体からは引上げの一旦凍結を要望いたしました。
資料10ページを御覧ください。また、2月12日には福岡厚生労働大臣と面談の機会をいただき、いわゆる多数回該当については引上げを行わないとの回答をいただきました。
資料11ページを御覧ください。この間、与野党各党の元厚生労働大臣や各党党首の方々など、多くの国会議員の皆様との面談の機会をいただき、3月5日には参議院予算委員会で、私たち全がん連の轟浩美理事が参考人として意見を申し述べました。
資料12ページを御覧ください。3月7日には患者団体が石破首相と面談の機会をいただきまして、石破首相からは引上げの一旦凍結を表明いただいた次第です。
資料13ページを御覧ください。また、3月24日には私たち患者団体からの求めに応じて超党派「高額療養費と社会保障を考える議員連盟」が設立され、100名を超える与野党国会議員の皆様に参画いただいておりまして、こちらのほうでも高額療養費の在り方について御検討いただいております。
資料14ページを御覧ください。専門委員会での今後の検討に当たっては、次の3点に留意いただきたいと考えております。1点目、プロセスについては、衆議院厚生労働委員会での決議に基づき、家計に与える影響を分析、考慮するとともに、必要かつ適切な受診への影響に留意すべきです。
2点目、そもそも保険とは、大きなリスクは共助中心、小さなリスクは自助中心という性質を有するものであり、大きなリスクに備える高額療養費は、公的医療保険制度の根幹をなすものですから、医療費節減に資する他の代替手段を優先かつ十分に検討すべきです。
これら2点を十分に検討してもなお検討が必要との結論に至った場合には、高額療養費制度について次の3点を検討すべきです。
1点目、WHO(世界保健機関)では、医療費支出が支払い能力の40%を超える場合を破滅的医療支出と定義していますが、現在でも既に破滅的医療支出に近い支出となっている年収区分の患者さんがいますので、過重な負担割合とならないようにすることが必要です。
2点目、長期にわたり継続して治療を受ける患者の負担は大きく、多数回該当から外れてしまう場合にはさらに負担が重くなることから、患者負担に年間上限を設けることも含め、負担の軽減と影響を緩和する取扱いについて特段の配慮を行うことが必要です。
3点目、退職や転職などに伴う所属健康保険組合の変更により、多数回該当に関わる履歴がリセットされてしまう問題については、組合が変更となっても患者負担が増えることがないよう取扱いの検討が必要です。
これらについて、以下補足してまいります。
資料15ページを御覧ください。私も4月8日に衆議院厚生労働委員会で参考人として薬機法改正案と高額療養費について意見を述べ、4月16日に高額療養費に関して決議をいただきました。
資料16ページを御覧ください。乳がんを例にがん治療の現状を述べます。ホルモン受容体陽性でHER2陰性の進行乳がん、これは日本人で最も多い乳がんのタイプですが、標準治療は右側のベージニオ+アリミデックス併用療法ですが、この治療は乳がんが増悪するまで連日投与となります。PFS、無進行生存率が2年以上ありますので、この期間は患者さんはずっと毎日、乳がんが進行するまでこのお薬を飲み続けます。ベージニオの薬価は1か月当たり約50万円、3割負担でも約15万円となりますので、これを患者さんは毎月支払い続けることになります。
資料17ページを御覧ください。政府は高額療養費引上げの理由として、高額療養費の伸びは国民医療費の倍であることを挙げていますが、国民医療費全体で約45兆円の中で高額療養費は約2兆円です。この名目値だけを見てもあまり意味がないので、対GDP比で見ますと、国民医療費が7.85%から8.12%に伸びる中で、高額療養費は0.4%から0.51%というわずかな伸びにとどまっています。だからといってこのままでよいとは申しませんが、高額療養費のほかに優先して議論すべきところがあるのではないかと考えております。
資料18ページを御覧ください。高額療養費引上げの政府当初案ですが、年収区分の細分化と年収区分ごとの引上げという2つのポイントがありました。また、所得の低い年収区分の引上げ額は抑えられていました。
資料19ページを御覧ください。しかし、手取り所得に対する割合で見ますと、所得の低い年収区分では、現在でも既に破滅的医療支出と呼ばれる40%に近い医療費負担となっていることがお分かりいただけるかと思います。
資料20ページを御覧ください。先ほど事務局からも説明がありましたが、年収約650万の場合、政府当初案では、上限額は8万100円プラス1%から13万8600円に引上げとなり、多数回該当も引上げとなっていました。
資料21ページを御覧ください。ところが、上限額が引上げとなりますと、上限額に達することがなくなってしまい、ずっと多数回該当の引下げの対象とならない患者さんが増えてしまいます。
資料22ページを御覧ください。つまり、制度の想定としては、短期間であれば高額でも何とかと考えていたところ、しかし、長期に及ぶ場合は緩和してあげようという想定をしていた制度が、長期にわたり高額な自己負担となってしまいますので、多数回該当の在り方そのものを見直し、患者負担について年間上限を設けるなどの対応が必要と考えております。
私からは以上でございます。ありがとうございました。
○田辺委員長 どうも御発言ありがとうございました。
続きまして、日本難病・疾病団体協議会の大黒委員から御発言をお願いいたします。では、よろしくお願いいたします。
○大黒委員 よろしくお願いします。専門委員会も初めなので、自己紹介や難病のことについてまずお話しさせていただきます。
日本難病・疾病団体協議会、JPAと私たちは呼んでますけれども、全ての国民が安心できる医療と福祉の社会を目指してということで2005年に設立いたしました。個々の団体が一つになることで、より大きな力に、1人の声が国民の声に、その思いで歴史を積み重ねて、現在では加盟団体103団体となっております。
難病対策の流れを少し説明させてください。難病のイメージというのは、以前はやはり不治の病という形で、生きるか死ぬかの問題で、医学的な問題ということで捉えられてきたように思います。ところが、ある程度の原因と治療法が見つかって、完全に治すことはなかなか難しいのですけれども、生命予後が改善してきているという病気もあります。そのために、難病が慢性疾患化するということで、難病患者数の増加につながっています。そうなると私たちは生き長らえるわけですから、どのように生きるかという問題が発生してきています。つまり、医学的な問題とともに、社会的及び福祉的な問題の両方が大切ということになってきています。このように難病患者の質と量が変化してきたところで、難病対策は総合対策へ向かい、法制化してきたというような形であると考えています。
この生きるか死ぬかの問題とともに、病を抱えながら一生をどう生きるのかという問題が、難病患者に重くのしかかってきています。現状でも、難病患者は必死で皆さん生きています。医療の進歩によって生き長らえた命ですけれども、医療がなくては生きていけないということは今までと同様、同じ事実です。医療費の負担によって、医療が受けにくい状況になれば、それはまさに死活問題ということになってしまいます。医療によって予後が延ばされてきたわけですけれども、制度によって予後が短くならないように、この委員会にも、私たちは人の英知に期待しているという状況です。
皆さん、難病の制度もある程度は御存じかと思いますけれども、1つ大きな制度に指定難病という制度がございます。指定難病というのは現在348疾病が対象で、109万人程度の人口がおられます。ただ、希少疾患といえども、実際は7,000とか1万とかいう数の疾病があると言われていまして、世界で3億5000万人もおられるというデータもあります。日本でも難病患者は600万人おられるという推定値もあるということで、指定難病だけで100万人ということは、差し引いても500万人以上の方は指定難病には入っていないと、推定値ですけれども、そのような形で取られるということになります。
また、指定難病による助成というのは、全ての医療費を助成してくれるのではありません。指定難病に付随して発生する傷病に関する医療のみです。罹患期間が長くなるにつれて、指定難病に付随して発症しているのか分かりにくくなるというのが現状でして、私自身は膠原病という病気です。25年たっています。私の場合は、2016年に実際、メトトレキサート関連リンパ増殖性疾患というのですけれども、この悪性リンパ腫を発症しています。2018年には大腸と膀胱の両方に穴が空くという状況になりまして、また、2021年には左の股関節の人工関節の置換術。また、膠原病の私の病気は血管もやられますので、2022年には大動脈解離、また同じ年には心筋梗塞を起こしています。また、2024年にはステロイドの影響と思われるような白内障の手術もしましたし、2024年には親指の脱臼の治療のための靱帯再建を行っています。また、先月には右側も股関節を人工関節にするというような形で、今月の5月10日ぐらいに退院してきて、今ここにいます。このように様々な手術をしているのですけれども、この全てが、実は指定難病は受けていません。膠原病というのは全身性の疾患ですけれども、膠原病の原因ともいえますし、膠原病の原因ではないともいえるというような状況で、実は指定難病外の高額療養費を用いている難病患者、指定難病患者も多くおられます。そのことをまず分かっていただければと思います。
膠原病の中には、関節リウマチという病気があります。これは80万人と推定されていまして、この人数から難病指定外という病気です。御存じのとおり、男女比は1対4程度と女性に多い病気でして、30から50歳代の発症が最も多くあります。リウマチというと高齢の病気かというふうな形で思いがちですけれども、現役世代の方も多くおられます。関節の破壊や変形などで筋力の低下などが起こり、以前には、リウマチのせいで仕事や家事ができなくなるという影響が年約5000億円超という記事もありました。ただ、発症早期から適切に治療を行えば、多くの患者において臨床的な寛解が望まれるようになっています。逆に、治療が適切に行われなければ、関節破壊から身体機能障害が進み、寝たきり状態にもなり得るというような病気であります。
2022年には、約40%の関節リウマチの患者において、何らかの生物学的製剤を使用している状況であるというデータもあります。これらの方には高額療養費制度を使用されている方もおられると聞いています。生物学的製剤というのは確かに高額なのですけれども、患者さんをよりよい状態に保つことができれば、結果的には医療費及び社会保障費の削減につながる可能性もあるというふうに言われています。もし受療抑制によって治療が適切に行われなければ、その障害の影響はもとには戻せない状況になります。
関節リウマチというのは一例なのですけれども、疾病コストには、医療費のような直接的な費用とともに、病気によって失われることによる損失などの間接費用もあります。今回の高額療養費の見直しによる財政影響として、受療抑制効果である長瀬効果が2270億円見込まれているというふうに書かれている資料を見てびっくりいたしました。受療抑制によって医療経済的視点も大事ですけれども、患者のQOLについても確認調査をお願いしたいと思っています。
高額療養費の見直しによって受療抑制が本当に起こるのか、また、どの程度起こるのかが分からないのであれば、患者に不可逆的な危険を負わすようなことはやめたほうがよいと、私自身は人道的にも思います。
指定難病の制度と並んで大切な制度に、小児慢性特定疾病の医療費助成制度があります。これは現在、16疾患群801疾病が対象です。この制度のほうが指定難病より対象疾患が多いので、二十歳になれば医療費助成がなくなる疾患があることになります。例えば1型の糖尿病という病気です。これは私たち膠原病と同じような自己免疫疾患の一つなのですけれども、膵臓のβ細胞の破壊が原因で、インスリンが必須となります。医療費は月に5万円以上かかる方もおられると聞いています。しかし、インスリンを使用しなければ亡くなるので、受療抑制はできません。そのために、インスリンポンプなどの医療器材を使用しないことで医療費を抑えられている方もおられます。その結果、インスリンの管理が難しくなって、人工透析などの合併症が起きれば、さらに高額な医療費が必要となってしまいます。
医療費の負担を抑えようとする行為は、現段階でもどこでも行われています。結局、医療費負担を考慮して最適な医療から離れると、さらなる医療費がかかったり、障害が引き起こされたりする危険性があり得るということだと思っています。繰り返しますけれども、そのために起こった重症化や障害の発生は不可逆的に起こり、もとに戻せない可能性があります。そこまでの危険を冒して、受療抑制の可能性がある高額療養費の見直しを今行うべきかを考える必要があります。
見直しによる保険料軽減額は、先ほどの資料にもありましたように、年1,100円から5,000円程度とあります。月に100円から400円程度です。現役世代の保険料の軽減が大事なのも分かります。なぜなら難病患者も現役世代の方が多くいて、その方々の多くは保険料を負担しているからです。その保険料などの負担に上乗せして、患者には医療費がのしかかっているという状況にあります。月額数百円の保険料の減額と引換えに、患者には月額数万円の負担が増える可能性があります。私たちも国民なのに、なぜこのような制度設計になるのか、患者にも納得いくような説明が必要だと思います。
また、病を持ちながら生きるということは、生涯現役社会を目指している日本全体の課題でもあると思います。高額療養費制度を用いるときは、人生の中でも最大のピンチを迎えている可能性が高いときです。もしかすると、その月額数百円の負担が人生の最大のピンチを救ってくれる可能性もあります。
私たちは大きな分岐点に立っていると思っています。保険が何のためにあるのかも含めて、英知を集めて議論できればと思っています。生まれつき病気があっても市民は市民ですし、病気になっても市民は市民です。決して国民の皆さんに迷惑をかけているだけの存在ではないと思っています。誰もがいつ何どき病気になるか分かりませんし、そのときのセーフティーネットは社会全体の安心につながります。日本難病・疾病団体協議会(JPA)は、全ての国民が安心できる医療と福祉の社会を目指しています。ぜひ今後の議論、よろしくお願いいたします。
以上です。
○田辺委員長 ありがとうございました。
それでは、天野委員、それから大黒委員への御質問でも構いませんし、あるいは事務局への御質問でも構いませんので、この後、自由討議ということで御意見、御質問等があれば、挙手にてお願い申し上げます。初回でもありますので、できましたら各委員から御発言をいただければと存じますので、よろしくお願い申し上げます。では、どなたからでも結構でございますので、お願いいたします。
では、原委員、よろしくお願いします。
○原委員 まずは天野委員、そして大黒委員には、貴重な御意見をありがとうございました。大分理解が深まったような気がしています。
市町村国保をはじめ、地域保険の事業運営に関わる立場から、地方3団体等の関係団体とも連携をしながら、この委員会での審議に参加をさせていただきたいと思います。
高額療養費制度につきましては、私たちは保険者という立場でもございますので、約10年間見直しが行われてきていないということ、それから、その間の経済状況の変化や高額療養費の増加などを踏まえれば、どのように医療費の負担を国民全体で分かち合い、医療保険制度の持続可能性を堅持していくのかといった観点がやはり大事かなとは思っております。一方で、まさに今日のような話もございますように、医療費の患者負担が大きくなり過ぎることにより、必要な医療を受けることができなくなることを防ぐというセーフティーネットの役割がございまして、こうした役割を維持していくことは大変重要であると考えております。
私どもとしては、高額療養費の見直しに当たりましては、今申し上げたセーフティーネットとしての高額療養費の役割を維持するという観点と、医療保険制度の持続可能性を堅持するという観点のバランスをどのように確保するのかという点が大事ではないかと、これまではこのように考えてきたところでございます。
ただ、今いろいろ話を聞いておりますと、やはり多数該当という1つの仕組みで一くくりにしてしまっているところが何となく、少し一般の疾病といいますか、治る病気で高額にかかる場合と、治らないと言ったら言い過ぎかもしれませんけれども、先ほどお話がありましたように、生涯ずっとそういった病気に直面をしておられる方々の高額療養費というものを一つのくくりで議論すること自体、なかなかこれは制度化するという面では非常に難しいことではあると思いますけれども、その辺をどういうふうにこれから考えていけばいいのか。ここはやはりみんなで知恵を出し合いながら、何か工夫をしていく必要があるのかなということを個人的には今聞いて思っていた次第でございます。
それから、この制度の見直しをめぐりましては、その決定プロセスについて問題があり、改善をしていくべきであるとは当然思っておりますけれども、とりわけ国保においては、難病やがんなどの慢性疾患を有する方や低所得の方など、この制度を必要とする方の割合が高いことから、これらの方々の声を丁寧に聞きつつ、検討を進めていただく必要があると考えております。
また、国におきましては、市町村等の現場で混乱が生じないように、制度の意義、仕組みについて被保険者に対する周知広報を行うなど、丁寧かつ十分な対応をお願いしたいと思います。
今後いろいろ審議を通じまして、御質問等をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。
○田辺委員長 原委員、どうもありがとうございました。
では、袖井委員、よろしくお願いします。
○袖井委員 ありがとうございます。医療保険部会でも申し上げたのですが、十分検討しないで昨年通してしまったということを本当に反省しております。何よりも実態があまり明らかになっていない。天野委員のほうから、家計費に占める医療費の割合が4割を超えるとピンチだというお話がありましたが、そういったデータもいただいていない。見ていないですね。できましたら、家計費に占める医療費がどのぐらいか、高額な負担になっている世帯がどのぐらいあるのかとか、あるいは病を抱えながら働いていらっしゃる方、子育てをしていらっしゃる方の実態など、データを見せていただきたい。特に年齢別のデータですね。どのぐらいの年代の方が一番苦しんでいらっしゃるのか。そういう実態があまり分からないまま、結論に達してしまったことはまずかったと思うので、事務局にはそうしたデータを出していただきたいと思います。
もう一つは、医療費が高額になったことの原因は、非常に高額な薬剤が開発されたということで、それ自体は大変うれしいというか、ありがたいことではあるのですけれども、それを全部保険の中で解消できるのか。そして、非常に高くなるというのは、開発にかかる費用とか、あるいはマーケットの広さとか、そういうところで決まってしまうのですね。ですから、そういう新薬の開発に対する助成みたいなものができないのか。これは全く私は素人でよく分からないのですが、例えば基金のようなものをつくって助成する。開発にかかる費用までも全部薬価に反映してしまっていいのか。多分これからも、新しい薬は次から次へと開発されるのでしょう。そのたびに高い薬価がどんどん設定されていけば、本当に保険制度は成り立たなくなるので、その辺、何かストップできる方策はないのかということを考えます。
それから、3番目にタイミングの問題です。医療保険についてはずっと見直しを続けてきて、少子高齢化に対応して見直しが必要であることはしようがないかなという気もするのですが、本当に国民の生活が苦しい状況にあるときに、高額療養費の見直しを今やらなければならないのか、早急に結論を出さなければならないのかということは、私個人として非常に疑問で、凍結とは言わないまでも、先延ばしとか、もうちょっと家計の状況がよくなってからでもいいのではないかと。これは全く個人的な感想ですけれども、タイミングはもうちょっと考えてもいいのではないかと思っております。
以上でございます。
○田辺委員長 ありがとうございました。
では、城守委員、よろしくお願いします。
○城守委員 ありがとうございます。
本日は、初回ということでございますので、総体的なお話になろうと思いますがお許しいただければと思います。先ほどからお話が出ておりますように、高額療養費制度は医療における重要なセーフティーネットであるということは間違いないわけでございます。今回、見直しという議論が行われるに至った経緯というのは、先ほど局長が御説明された趣旨によるもので、それに基づいて医療保険部会の場で議論をさせていただいたわけでございますが、やはりほかの委員もおっしゃっておられるように、スピード感といいますか、内容が十分に精査されないままに、この制度を利用しておられる当事者の御意見が十分に反映された見直し案になっていなかったということで、今回この委員会が新たに設置をされ、そして、議論としても仕切り直しであるという理解をしてございます。
本日、天野委員、そして大黒委員から貴重なお話をいただきました。やはりこの制度の見直しによって、それぞれの患者さんの生活に対しての影響度合いというものが大きく出る人もおられるし、また、他の医療制度が抱える多くの問題とも関連する事項ということも、大黒委員からはお話をいただきました。
今回、大変難しい議論になるのだなというふうに実感をしているわけでございますが、その中において、財源として負担をどのようにするのか、そして、それに対しての給付の在り方をどうするのかという問題にどうしても入ってくるということで、これは高額療養費制度の検討委員会という形になっておりますが、扱う範囲が大変広くなる可能性もあるのかなというふうに感じております。
そういう意味から、この議論が医療保険部会のときに拙速になったということも反省をいたしまして、この制度を利用しておられる患者団体の方というのは、本日の天野委員の資料の6ページにもありますけれども、まだまだ多くの団体の方がいらっしゃるであろうと思います。その団体におられる患者さんたちは、その疾患の特性によって、対象の患者さんの年齢であるとか性別というのも当然異なってくるであろうし、個々人の生活水準というものも様々であろうと思いますので、これは事務局へのお願いになろうかと思いますが、他の関連する団体、または患者さんの御意見というものも、まだまだお聞きしなければいけないのではないかなと思った次第でございます。
医療を提供する立場の者といたしましては、医療費財源に限りがある中におきまして、医療保険制度の持続可能性というものにも配慮をすることは当然ではございますが、これは医療保険部会でも繰り返しお話をさせていただきましたが、医療にアクセスできない人が生じないような制度設計を行うということをしっかりと踏まえて、この委員会における議論に参加をさせていただきたいと思います。
私のほうからは以上です。
○田辺委員長 城守委員、ありがとうございました。
ほかはいかがでございましょう。
では、村上委員、よろしくお願いします。
○村上委員 ありがとうございます。5月1日の医療保険部会でも意見を述べましたけれども、今後の検討に当たりまして、改めて3点申し上げます。
1点目は、高額療養費の見直しを行うということであれば、見直す目的や必要性について認識を共有できるよう議論を進めていただきたいということです。
2点目は、高額療養費制度について検討する機会ですので、自己負担の上限額をどのようにするかという範囲にとどまらずに、今回もありましたけれども、今後のヒアリングにおいて、現在課題となっている点についても共有し、年齢で区切っている制度の在り方も含め、広く見直すことが必要ではないかと考えます。
3点目です。昨年秋から年末にかけての議論では、高額療養費の自己負担の上限額についても、応能負担を強める方向性が示されました。この点について、保険料を応能負担する中で、給付においても応能負担をこれ以上強めることについて、被保険者の納得を得るのは難しいという旨を発言してまいりました。繰り返しになりますが、自己負担の応能負担を強めるということは、被保険者の制度への納得性を損なうこと、高所得層だけでなく中間所得層の負担も強まること、また、高所得層としてイメージしている世帯の就労や生活実態にも目を配る必要があることなどから、問題が大きいということを改めて申し上げておきます。
以上です。
○田辺委員長 ありがとうございました。
ほかはいかがでございましょう。
では、菊池委員、よろしくお願いします。
○菊池委員 ありがとうございます。早稲田大学の菊池です。私は法学の中の社会保障法という分野の研究者ですので、その立場から御意見申し上げます。
先ほど天野委員、大黒委員から大変貴重なお話をいただきまして、私自身も勉強させていただきました。今回の高額療養費の在り方をめぐる議論で、実体論と手続論から見た場合、手続論としては、医療保険部会で実質的な議論がなされ、私は自分の発言を含め、議事録全体を見直しましたけれども、議論そのものが何か偏向していたとか、そういうふうには思ってございません。しかし、負担引上げとなる患者さんたちの意見聴取の機会がなかったのは事実であります。私自身、社会保障審議会での経験上、ノーマライゼーションの理念を重視する障害者部会、そして、実質的に高齢者が給付対象である介護保険部会では、当事者ないし当事者家族の委員が審議に参加しておられます。他方、生活困窮者支援及び生活保護部会には、当事者は関与しておりません。ただ、これ自体、課題であるという指摘はなされています。部会によって様々ではございますが、特定の論点につき強く利害を持つ関係者の方に意見聴取の機会を設けるのは本来望ましいプロセスでありまして、今回のこの委員会の設置は大変適切なことであると考えてございます。
次に、実体的な面ですけれども、私は、程度はさておき、全く現行制度の仕組みを変えないということは考えられないというふうに考えてございます。今回の議論は、全世代型社会保障構築会議の改革工程の一環であり、後期高齢者支援金に象徴される現役世代の保険料負担への配慮の必要性や、子ども・子育て加速化プランを実現するための社会保険負担軽減が必須項目となっていることからも、所得に応じた一定の引上げ自体は行わざるを得ない状況にあると考えます。高額医薬品の登場が革命的に患者さんたちの生命を救い、QOLを向上させていることは誠に喜ばしいことである一方で、先ほどもお話がございましたが、今後もこうした高額医薬品が続々と登場することが見込まれる中では、医療保険のセーフティーネット機能の維持と医療保険財政の維持のバランスを取りながら解決策を考えざるを得ないと思います。
理論的には、保険料負担の面で応能負担原則を採用している以上、給付の場面で再度応能負担原則を入れるのが妥当でないという議論はかねてから存在してきました。しかし、現物給付である療養の給付そのものは、所得水準にかかわらず平等に行われるという前提の下、財政状況との兼ね合いで自己負担が増えざるを得ない以上、負担能力に応じた負担の考え方を入れること自体は正当化されると考えます。問題はその程度ということかと思います。ただし、基礎データがどこまでそろうかは把握しておりませんが、皆様から御発言がございますように、保険料負担と応能的な自己負担額を併せた負担が所得全体に占める割合や家計に与える影響につき、可能な限り分析を行う必要性があると考えられます。
皆様御案内かと思いますが、かつて高額療養費の自己負担が政策上の争点となった際、主に低所得層の方への配慮の観点から、受診時定額負担、いわゆるワンコインを財源に、さらに自己負担額を引き下げようという議論がありました。結果的にその財源を患者から徴収するのは筋が違うのではないかといった指摘などもあって、実現を見なかったと記憶しております。その意味で、相対的に低所得層の方にとっては、現状の基準でもかなり厳しいという理解をしております。このことは私自身、血液がん患者の方への経済的支援のためのNPOによる基金活動をお手伝いしてきた経験からも実感したところです。
他方、中高所得層の方への当初示された引上げ案の引上げ幅は、確かにかなり大きく、全世代型社会保障の原則である負担能力別負担の限界に近いものと私自身受け止めておりました。医療、介護をはじめとして、保険料、一部負担などにおいて、これらの所得層の方は常に負担増のターゲットになっている現状があります。これが被保険者に対する保険料減額の要請でもある一方、患者さんは被保険者でもあり高額療養費の負担の対象でもあるわけで、二重の意味で負担の限界という課題に通じているわけです。
ただし、社会保険方式で医療保険制度を実施している以上、所得水準以外の諸要素が個別の会計に与える影響をどこまで高額療養費制度の中で勘案しなければならないかは、また別の問題です。社会保険としての定型性という要素を無視することはできず、こうした諸要素を直接勘案することは、かえって制度の根幹を崩すことになりかねません。医療保険の枠を超えた支援策、例えば医療費控除の在り方や経済的給付の可能性なども含めた選択肢も見据える必要があるかと思います。
それから、今回の高額療養費をめぐる議論は、どちらかといえば世代内での負担と給付の公平性をめぐる議論として注目されたように思われます。ただし、事務局の御説明にもございましたが、この問題には世代間の公平性をめぐる議論も含まれており、医療保険部会の議論でも、外来特例見直しに向けた一定の方向性が示されております。これは全世代型社会保障構築に向けた重要なテーマであり、この点も引き続き、今回の議論の対象とする必要があるかと思います。
最後に、高額薬剤等による長期療養が必要となる患者さんの増大は、20年前、10年前、あるいはそれよりもっと前とは、疾病構造や治療の在り方が大きく変化しつつあることを意味しています。こうした観点からは、患者さんの公平性の観点や財政基盤の持続可能性という見地から、本来であれば、既存の特例、これは外来特例という意味での特例ではありません。特例も含めた長期高額療養の在り方全体に立ち戻った包括的な検討が必要な時期に来ているという見方もできます。
あと、袖井委員からお話がございましたが、やはりこの問題は、広い意味では保険給付の範囲をどう考えるかといった議論、そして、どこまで実際に進んでいるかという課題があるのですが、治療の費用対効果の検証をどこまでどんどん進められるかといった大きな問題とも関連しているところを指摘させていただいて、少し長くなって申し訳ありませんが、私からの発言とさせていただきます。
○田辺委員長 菊池委員、どうもありがとうございました。
ほかはいかがでございましょう。
では、伊藤参考人、よろしくお願いします。
○伊藤参考人 ありがとうございます。健保連の伊藤でございます。
天野委員、それから大黒委員の御意見を賜ったところでございますが、高額療養費制度の在り方に関する検討に当たりまして、医療保険制度全体の総論的なことも含め、意見を申し上げたいと思います。
今般の高額療養費制度をめぐる一連の動きの中で、高額療養費制度の見直しというのは、非常に難しい課題であると考えております。本日、患者団体の皆様のお話を伺いまして、高額療養費制度は医療保険制度の中でも、まさに制度の根幹であるということを改めて強く感じたところでございますし、特に患者の方々から見た際には、この制度の意義は極めて高いというところも感じ取ったところでございます。
特に当事者の方々の様々な思いや状況を踏まえ、長期にわたり継続して治療が必要な方々の負担が過重なものとならないようにすべきという御意見につきましては、仰せのとおりであると改めて感じました。その一方で、医療費を支えている財源は自己負担、保険料、公費、この3つしかないということも確かなことでございます。医療費が増え続ける中でどのように整理をしていくかということも重要な課題であると思っております。
今後の専門委員会での検討に当たりましては、高額療養費制度のセーフティーネット機能、それから保険料負担者の納得感、これをいかに両立させていくのか。言い換えれば、給付を受けている側と負担している側、このバランスをどのように取っていくかということに重点を置いて検討していくべきではないかと感じているところです。
また、今後の検討に当たりましては、患者の皆さんや患者団体の御意見などを聞くことはもちろんですが、若い世代、現役世代の方々、あるいは有識者の方々など、幅広く多くの方々の意見も伺って、関係者で丁寧に議論・検討を進めていくことが必要ではないかと感じております。
以上でございます。
○田辺委員長 ありがとうございました。
ほかはいかがでございましょうか。
では、山内委員、よろしくお願いします。
○山内委員 日本商工会議所の山内でございます。
医療保険は国民生活の安心を支えるインフラであります。私ども商工会議所は全国に515商工会議所、126万会員企業があり、先週も九州で企業支援をしておりましたが、本当に経営者も従業員もこの制度改正には極めて関心を高く持っております。保険は本当にいざというときのセーフティーネットであり、大きなリスクに備えるものということで、私どもといたしましては、まずは自助を実践していくということを前提に、意識の醸成を図りながら、その上で、国民的な理解の下に、小さなリスクは制度に頼るのではなくて減らしていきながら、深刻な病気をしっかりと保険で見ていくというのがあるべき姿だと考えております。そのため、高額療養費制度につきましては、まさにセーフティーネット、我が国の国民皆保険を支える根幹でもあると考えております。
今後を展望いたしますと、やはり保険料とか公費負担につきましては、抑制は必要であると思います。したがいまして、これまでの議論にもありましたが、現役世代への配慮なども考えますと、見直し自体は必要と思います。また一方で、本日、患者団体の皆様のお話も賜りましたけれども、医療は本当に数字でははかれない大事なものでもございます。この制度を持続可能にするためには、患者の皆様への影響というものも十分踏まえた上で、多角的に検討していくことが大事だと思います。またこの見直しを進めていく際には、医療保険制度全体についての改革、改善と併せて議論をしていくことが大事だと考えてございます。例えばヘルスリテラシーの向上であったり、セルフメディケーションの促進であったり、現役の方と高齢者の方との負担と受益のバランス、公平性であったり、保険の対象範囲とか、先ほどありました費用対効果、そして提供体制をどう見直していくのか等々も含めて、議論をされていくものと思っております。
意見交換の中で様々な問題点も提起されました。合意形成していくプロセスを見せていくことも大事だと思いますので、様々な方面の方が参加されているこの専門委員会で丁寧な議論が行われていくことを期待したいと思います。また、こうした議論、正しい理解をしっかりと地域にも広めていくように努力してきたいと思っております。
以上です。
○田辺委員長 山内委員、ありがとうございました。
では、井上委員、よろしくお願いします。
○井上委員 ありがとうございます。経団連の井上でございます。
まず、プロセスとして、審議会でのヒアリングが少し不足していたのではないかということにつきましては、私どもも経団連の代表として審議会に参加しており、そこは少し反省すべき点があったのではないかと思います。ですから、この場が設けられたということは非常によろしいことだと評価をいたしますし、今後、ぜひ患者団体の皆様、ほか関係者、アカデミアの方々も含めて、幅広くヒアリングを行っていただきたいと思います。無論、社会保障制度ですから、総理の衆議院の答弁にもありましたけれども、一番困っている方のお話を聴くというのが一番重要なことだと思いますので、そこはやはり審議会あるいはこういう専門委員会においてもしっかりやっていくべきだと思います。
一方で、社会保障制度自体は、これからも人口構成の変化や、医療の高額化ということも踏まえて、不断の見直しをしていかなくてはならないと思います。現状では、現役世代の負担がかなり高額になっている点を踏まえ、それぞれの分野において、本当に何ができるのかということを知恵を出し合って進めていくしかないと思います。
したがいまして、高額療養費制度につきましても、何ができるのかという観点で、ぜひ御検討をお願いしたいと思います。また、この場は高額療養費の検討が中心となりますけれども、高額療養費以外のところも同時に検討し、様々なメニューの中で優先順位みたいなものはどうしてもつけざるを得ないと思います。そこのバランスも、この場で取るのがいいのかどうかは分かりませんけれども、全体感を持った議論を進めていただきたいと思います。
以上でございます。
○田辺委員長 ありがとうございました。
では、川又参考人、よろしくお願いいたします。
○川又参考人 ありがとうございます。協会けんぽです。
まずは、今回このような専門委員会が立ち上がって、議論がスタートしたということを歓迎したいと思います。また、先ほど御説明があったような昨年からの経緯や反省点などを踏まえて対応していくということも必要なことかと思っております。
一方で、医療保険制度の在り方については、社会経済情勢の変化を踏まえて、不断に見直しの検討を続けていくということ自体は必要だと思います。高額療養費制度についても、医療保険制度の持続可能性の確保という観点と、それから先ほど患者団体の皆様からお話のありましたようなセーフティーネットとしての機能、安心という点、そのバランスということに配慮することが必要というのは複数の委員の皆様方と共通するところでございます。
今後、この専門委員会におきまして、当事者の方々をはじめ、様々な関係者の御意見も伺いながら、議論を深めていければいいなと思っております。
以上です。
○田辺委員長 ありがとうございました。
一応、一通り皆様方からの御発言を承ったところでございますけれども、さらに意見ないしは質問を述べたいという方がおられましたら。
では、天野委員、よろしくお願いします。
○天野委員 ありがとうございます。先ほど説明させていただきましたが、追加でコメント、あと質問させていただきたいと思います。
まず、追加でコメントさせていただきたいのですが、先ほど私の説明の中でも、特に長期にわたって継続して治療を受ける患者さんの負担が過重であると。かつ、多数回該当という制度があるわけですが、これは非常にありがたい制度なのですが、多数回該当から外れると、特に長期に治療を受けている方は負担が相当過剰になってしまう現状があることを認識していただきたいということを御説明申し上げまして、多数回該当そのものについての見直しが必要ではないかということを申し上げました。
これに関連してなのですが、実は先日の衆議院厚生労働委員会でも私から申し述べたことでございますが、現在において、今申し上げたように、患者さんにとって多数回該当に該当するか該当しないのかというのは非常に大きな分岐点になっています。そうするとどのようなインセンティブが働くかというと、多数回該当に該当するために、上限額に達するようにするというインセンティブが実は現場では働いています。このことを先日申し上げたとき、本当にそんなことがあるのかという御指摘も一部いただきましたが、これは現場の医療関係者の方であるとか患者さんに聞いていただければ明らかなことですけれども、実際にそういうインセンティブはあります。
例えば、全く不要な検査をしているわけでありませんが、検査を早めて入れたりであるとか、あるいはお薬についても、より高額なお薬を使うために、要は上限額に達するために、先発薬をより優先して使うということは現場で実際起きています。なので、多数回該当について見直しをしていただきたいというのは、ひとえに患者さんの負担軽減のみならず、多数回該当に該当させるために、より検査を入れたりだとか、より高い治療を志向するというインセンティブが働かなくなって、より適切な医療が行われるようになれば、それが費用節減につながるのだということも、この場で指摘しておきたいと思います。
その上で私から質問がございますのは、先ほど来、委員の方々から、今回の高額療養費の検討は、社会保障の在り方を検討するに等しいであるとか、非常に難しい検討であり、医療制度全体の議論の中での検討が必要だというふうな御指摘が複数の委員からございました。なので、私からあえて申し上げたいのは、今日この専門委員会自体は保険局の仕切りで開催していただいていますが、必要に応じてほかの局の方にも加わっていただいて、社会保障全体の中での議論を必要に応じてぜひしていただきたいということがございます。
加えて、そうなってきますと、政府の方針としましては、秋までに結論を出すということがあったわけですが、専門委員会の開催頻度というのは事務局のほうでどの程度を想定されているのか。どの程度まで議論が広がるかによって違ってくるかもしれませんが、今日複数の委員の方から、社会保障の在り方全体の中で議論が必要だという指摘があった中で、どの程度の開催頻度の中で今後議論を進めていくのか、もし現状で事務局にお考えがあれば教えていただきたいと考えた次第です。
○田辺委員長 1点御質問がございましたけれども、事務局、御回答をよろしくお願いします。
○佐藤保険課長 保険課長でございます。
開催頻度の関係でございますけれども、現段階で例えば月に何回とか、そういうことまで決め切っているわけでございません。いずれにしましても、丁寧に検討していく、議論していくということが大事だろうと思っております。先ほど来ヒアリング、関係者の皆様、患者の方々、それ以外の例えば若い方とか、保険者とか、学者さんとかいろいろとお話がございましたけれども、そういう方々からヒアリングをしていくということを重ねていくと、それなりの回数になってくるのだろうと思うのですけれども、いずれにしましても、具体的に月何回とか、そういう形での目標といいましょうか、目安があるわけではないのですけれども、丁寧に議論を重ねていくというところに尽きた上で、座長とも相談をしながら、丁寧な議事運営に努めていきたいと考えております。
○田辺委員長 では、鹿沼局長、お願いします。
○鹿沼保険局長 何か結論ありきで議論するということではないと思っております。やはり議論の中で、まずはヒアリングという話と、あと複数の先生からもお話しいただきました丁寧な議論ということになったときに、生活実態、また、かかっている医療費がどういうふうにそれぞれの患者の生活に影響を与えるかとか、そういったようなデータ分析をもっと丁寧にやってほしいというような御意見をいただいたと思っております。
その辺りにつきましては、私ども、全部調査するというよりは、むしろいろいろなモデルケースをお出ししたい。そのときの生活の状況というのはある程度統計のデータを見ながら、また医療費については、それぞれの患者さんでいろいろなパターンがあると思っていますが、そういった患者さんについてはどのぐらい医療費がかかるのかというのは、これは多分モデル的なケースはつくれると思っています。そういったようなケースをいろいろ分析していきたいと思いますので、当面はデータのほうを私ども事務局で丁寧につくらせていただきながら、場合によっては患者の皆様方とか、医療界の皆様方とか、いろいろと御知見のある方の御意見もいただきながらデータをつくらせていただいて、議論をできる環境をさらにつくっていきたいと思っております。
あわせまして、社会保障全体、また医療保険制度全体の議論となってまいりますと、これは確かにここの会議だけではなくて、医療保険全体であれば医療保険部会だったり、社会保障全体であればほかにもいろいろなところが関係してくるものですから、ここだけで議論していくというのは、なかなか限りがあるかと思いますので、皆様方からいただいた意見については、それぞれのそういったことをつかさつかさでやっているところに御報告させていただくような形になろうかと思っております。いろいろな御意見をいただければ、それは真摯に受け止めて、私どもとして対応していきたい、このように思っております。
○田辺委員長 天野委員、よろしゅうございますか。
ほかはいかがでございましょう。
では、大黒委員、よろしくお願いします。
○大黒委員 日本難病・疾病団体協議会の大黒です。
先ほどから丁寧にということがずっと言われていますけれども、ヒアリングの回数とかだけではなくて、基本的には患者の立場からいいますと、患者の理解であるとか、納得であるとかというのがやはり大事かと思います。本当に保険の制度というのは正直難しいのですよね。やはり議論として成り立たせるためには、私たちも含めて、分かりやすい制度の分かりやすい意見交換ができるということが大事かと思います。ぜひ私たちも一緒に考えますので、理解できるというところを非常に考えていただいて、それが丁寧につながっている。丁寧であればいいというだけではないという状況があると思いますので、ぜひよろしくお願いいたします。
○田辺委員長 ありがとうございました。
ほかはいかがでございましょう。よろしゅうございますでしょうか。
それでは、時間も参りましたので、本日の議事は終了といたします。
様々な御意見をいただいたところでございますけれども、事務局のほうでは、これらを考慮して資料の作成その他、よろしくお願い申し上げます。
それでは、次回の日程等につきまして、事務局から連絡をお願いいたします。
○佐藤保険課長 次回でございますけれども、ヒアリングを実施していきたいと思っておりますが、具体的日程は調整の上、また追って御連絡を申し上げたいと思います。
以上でございます。
○田辺委員長 それでは、本日は御多忙の折に御参加いただきまして、また、貴重な発言をいただきましてありがとうございました。
それでは、閉会いたします。