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第5回労災保険制度の在り方に関する研究会 議事録
1.日時
令和7年4月4日(金) 10時00分~11時53分
2.場所
AP虎ノ門 ルームA(※一部オンライン)
(東京都港区西新橋1-6-15 NS虎ノ門ビル 11階)
(東京都港区西新橋1-6-15 NS虎ノ門ビル 11階)
3.出席委員
- 京都大学大学院人間・環境学研究科教授 小畑 史子
- 東京大学大学院法学政治学研究科教授 笠木 映里
- 明治大学法学部教授 小西 康之
- 同志社大学法学部教授 坂井 岳夫
- 法政大学経済学部教授 酒井 正
- 大阪大学大学院高等司法研究科准教授 地神 亮祐
- 名古屋大学大学院法学研究科教授 中野 妙子
- 亜細亜大学法学部教授 中益 陽子
- 大阪大学大学院高等司法研究科教授 水島 郁子
4.議題
労災保険制度の在り方について(徴収関係等)
5.議事
- 発言内容
- ○小畑座長 ただいまから「第5回労災保険制度の在り方に関する研究会」を開催いたします。委員の皆様方におかれましては、御多忙のところお集まりいただき、誠にありがとうございます。
本日の研究会につきましては、小西委員及び中野委員がオンラインで御参加です。また、事務局に人事異動があると聞いておりますので、御紹介をよろしくお願いいたします。
○労災管理課長 それでは、事務局より4月1日付けの人事異動を御紹介いたします。補償課長に着任いたしました黒部でございます。
○補償課長 黒部でございます。よろしくお願いします。
○労災管理課長 人事異動は、以上でございます。
○小畑座長 ありがとうございました。カメラ撮りにつきましては、ここまでとさせていただきます。
それでは、本日の議事に入りたいと思います。本日の議題は「労災保険制度の在り方について(徴収関係等)」です。本日の議題の1つ目、メリット制に入りたいと思います。まずは、事務局から資料の御説明をお願いいたします。
○労災管理課長補佐(企画担当) 企画班長の狩集です。御説明いたします。資料1を御覧ください。こちらは、昨年12月に開催しました第1回研究会の中で、皆様からメリット制に関して頂いた御意見を事務局で取りまとめているものです。
資料2を御覧ください。2ページです。メリット制の趣旨・目的です。メリット制については、事業主の災害実績を評価することで、保険料の割引又は割増しを行うということで、事業主間の保険料負担の公平性を確保する、また、事業主の災害防止努力の促進を図るといったことが目的です。メリット制が導入されました当初、これは昭和26年ですが、この当時は継続事業に限定されており、建設と林業については対象となっていなかったところです。しかしながら、その後、これらの産業についても災害が多発しているといった事情も踏まえ、昭和30年、40年にそれぞれ適用対象となっております。現在では、全ての業種にメリット制が適用されているところです。こうした適用の拡大に関する経緯に関しては、こちらの参考部分に記載しております。
3ページ、4ページです。こちらのメリット制が適用されている事業場で、どの程度の災害が起こった場合に、どの程度労災保険料に影響を与えるのかについて、モデルケースをお示ししているものです。実際に保険料に与える影響は、この算定期間の保険料や被災された労働者の賃金、傷病の程度により変動してまいりますので、一概に申し上げることはできませんが、3ページでは金属精錬業、こちらは比較的災害発生率が高い業種、4ページでは宿泊業、こちらは災害発生率が比較的低い業種といったことで、それぞれ想定される、よく起きる災害について仮定した上で計算を行っているものです。なお、現行の業種ごとの料率についてですが、こちらは12ページに参考として一覧化しております。
戻って、5ページを御覧ください。令和5年度にメリット制が適用された事業場は約14万7千事業場ありますが、このうち、8割が保険率の引下げの対象となっており、全体の半数近くが引下げの最大値であるマイナス40%となっております。
6ページです。メリット制が適用されている事業場ですが、こちらの事業場ベースで見てまいりますと、左側の円グラフですが、約4%の事業場をカバーしているということです。この事業場の数で見ていきますと、少なく見えるという向きもありますが、右隣の労働者に置き換えた円グラフですが、この適用事業場で働いている労働者の方で見ると、全ての労働者の約6割がカバーをされているところです。
7ページです。こちらは、令和4年度と令和5年度において、いずれもメリットを適用されていた事業場において、メリット増減率がどのように推移したかを集計したものです。結果については左下の表に記載しておりますが、変化がないものが2分の1強、上がったもの、下がったものがそれぞれ4分の1弱となっており、継続してメリットが適用されている事業場においては、メリットの増減は必ずしも固定しているわけではなく、ある程度の入れ替わりがあるというところです。
8ページから12ページにかけては、第1回研究会でお示しをした資料をもう一度再掲しているようなものですので、御参考です。詳細な説明は省略いたします。
13ページは、論点案です。論点①です。メリット制に関しましては、冒頭申し上げましたとおり、労災保険法の制定間もない時期から実施をされております。一方で、我が国の産業構造が変化し、作業関連疾患に係る労災認定も増加しているという中で、適用対象は妥当か、今日でも事業主の災害防止を促す効果があるのかといった点について御議論いただきたいと考えております。
論点②です。精神障害による労災認定の増加、あるいは就労現場において高齢者や外国人の労働者の割合が高まっているということも踏まえ、一定の脆弱性を有する労働者、災害リスクの高い労働者による事故については、メリットの算定基礎の対象外とするといったことの妥当性について御議論いただきたいと考えております。なお、資料が大部にわたりますので、説明は一旦論点①の部分で区切らせていただきたいと思います。
15ページを御覧ください。メリット制度の効果をどのように評価するかです。今回、メリットの適用事業場の被災者数の増減率に着目し、メリット制度の災害防止効果について検証を試みております。検証方法として、まず前提ですが、保険料規模の小さい事業場ですと、ささいな事故でも収支率に大きなインパクトをもたらしてしまいますので、事業主の方の災害防止努力を評価する上では、災害がある程度の頻度をもって発生することが必要になってまいります。すなわち、労働者の規模がある程度大きいことが前提となってまいりますので、今回の検証に当たっては、一定以上の労働者数が見込まれます建設業、製造業といった6つの業種を選定しております。これら6つの業種につきまして、メリットの適用、非適用にかかわらない全ての事業場と、メリット適用事業場とで、平成30年度から令和4年度までにかけての被災者数の前年度からの増減率を比較しております。これは、適用事業場における増減率が、全ての事業場の増減率よりも低いということであれば、災害防止効果が発揮されていると考えられるというものです。
16ページを御覧ください。適用事業場における増減率に関しまして、①~⑧の区分けを行っております。①~⑧ですが、こちらの労災保険の収支率が比較的高い、すなわち労災が比較的多い事業場が①~④です。⑤~⑧については、収支率が比較的低い、すなわち労災が比較的少ない事業場ということで区分けをしているものです。
17ページは、検証結果です。端的に要点を申し上げますと、メリットがプラスで適用された事業場については、全ての事業場よりも増減率がおおむね低いという結果となっており、一定の災害防止効果が働いたといったことがうかがえます。メリットがマイナスで適用されている事業場ですが、こちらは全ての事業場よりも増減率が低い場合と高い場合が同じぐらい混在しておりますので、増減率だけに着目して災害防止効果を直ちに判断することは難しいところです。
その上で、18ページを御覧ください。このマイナスでメリットが適用された事業場についてですが、過去の保険収支が良好であったということは、マイナスのメリットが適用された時点で、既に災害防止効果が発揮されているとも考えられます。また、18ページの真ん中の2つの表を御覧いただきますと、令和4年度のメリット適用事業場について、前年度であります令和3年度の被災者数が0又は5人未満の事業場の割合が、メリットが適用されています全ての事業場のそれよりも高いということになっており、そもそも災害防止効果がこれ以上出ない又は出すことが難しいという状況になったと考えられます。また、この表は令和4年度の適用事業場を例に取っておりますが、平成30年度から令和3年度までにかけても、同様の傾向が見て取れるというものです。
16ページから17ページにかけまして、検証方法について、より子細に説明しておりますが、細目的な内容になりますので、こちらでは省略いたします。
19ページを御覧ください。こちらは、先ほどの資料の5ページの再掲です。この資料を見ていただきますと、現在、労災保険率の引下げの対象となっている事業場は約8割で、全体の半数近くがマイナスの最大値の適用を受けています。これは、メリット制による災害防止効果が機能してきたことで、労災の発生が抑制されてきたということの帰結ではないかと考えられます。
20ページです。こちらも、先ほどの6ページの資料の再掲ですが、労働者規模で見てまいりますと、6割程度の労働者の方がカバーされているということになってまいります。また、保険料で考えていくときに、賃金総額といったもので見ていきますので、この青い部分は、赤い部分よりも、より大きくなってくることが考えられます。言わば、このメリット制が費用対効果に優れている仕組みということが言えるのではないかと考えております。
21ページです。メリット制の適用により、令和5年度においては割引額が引上額を約1,570億円上回っております。この差額分を見越した上で、保険率が設定されてまいります。論点①については以上です。
なお、補足ですが、委員の皆様の机上に、メリット制に関しまして様々な団体から御意見を頂いているところですので、御参考として配布させていただいています。以上でございます。
○小畑座長 ありがとうございました。それでは資料2、13ページ目の論点①メリット制の意義・効果について、意見をお伺いしたいと思います。御発言の際は、会場の委員におかれましては挙手を、オンラインから参加の委員におかれましてはチャットのメッセージから「発言希望」と入力いただくか、挙手ボタンで御連絡いただきますようお願いいたします。それでは御意見、いかがでしょうか。酒井委員、お願いいたします。
○酒井委員 論点①に関しては、実証結果がメインになるかと思いますので、始めに発言させていただきたいと思います。主に資料2の17ページがメインの検証結果なのかなと思う次第ですが、一般論として、現代の実証分析では、ある措置や政策などの対象になった主体に生じた変化が、純粋に、その措置や政策の効果によるものかを判断するために、平均的に似た条件の主体と比較することを重んじます。その意味で、今回示されたデータというのは、メリット制による保険料率の上昇が労災抑止に一定程度の効果があることを可視化できているのではないかなと思います。もちろん、そこには厳密に言えば更に精緻な統計的検定が必要ですし、そもそも、メリット制による保険料率の増減が必ずしも外生的ではない、すなわちランダムではないという意味で、経済学でいうところの内生性の問題の懸念もあり、まだツッコミどころはあるのですけれども、一定程度は可視化できているのではないかなと考えております。
1点、言及しておくと、こういったメリット制の効果に関する検証方法としては、ほかにもいろいろあるはずだと思われる方もいるかと思いますし、私自身もそのように考えて、リサーチデザインに関して事前に事務局のほうから相談を受けた際にも、ほかの方法もあるのではないかということを提案させていただきました。そして、それらの方法が可能かどうかを検討していただいたのですが、やはり、労災のデータというのはすごく特殊な面があり、データの構造上、難しいということがあり、唯一、残った検証方法がこの方法という感じです。
1つ留保を付けさせていただくとすると、ここで行われている効果検証が示しているのは、例えば、メリット制が労災かくしを誘発しているのではないかといった主張に対して何らかのエビデンスを示すものではないということです。以上が、この検証結果全体に関する私の見立てになります。
1点だけ、細かいところを述べさせていただきたいのですが、全体としてメリット制に効果があるということは分かったのですが、こういった統計データにはいろいろな側面があるかなという気がしております。それで、ちょっと1点だけ感想めいたことを述べさせていただきたいのですが、資料2の7ページ、メリット増減率の遷移ということで、前年からその次の年にかけてのメリット増減率を示された表があります。私の認識違いかもしれないのですが、先ほどの御説明だと、メリット増減率は必ずしも固定化されていないということだったのですが、例えば、前年プラス40%の事業所のうち、翌年もプラス40%である事業場は、全体の3分の2あるのです。これが、例えばプラス30%でも4割強あるというような形で、結構、メリット増減率が変わらない事業場が多い、特にプラスで適用されていても変わらない事業場が多いなという印象を持ちました。
そうすると、これらの事業所というのは、一体何をしているのだろうかという思いもあります。なかには、労災抑止がなかなかうまくできないような環境にあるとか、安全衛生に投資するお金がないといった理由も考えられるかと思いますので、長期的には、こういったメリット増減率、特にプラスで固定化されているような事業場に関する分析が必要になってくるのではないかと感じました。すみません、長くなってしまいましたが、私の発言は以上です。
○小畑座長 どうもありがとうございました。ほかは、いかがでしょうか。中益委員、お願いいたします。
○中益委員 中益です。今回、メリット制について災害防止効果があるのかどうかという論点が立てられましたが、労災保険制度は無過失責任主義を採りますので、業務災害は、使用者に過失があり、災害防止行動を取りやすいものと、使用者が無過失で、直接的な災害防止行動を取りにくいものを含むことを考える必要があるかと思っております。
このうち、過失によって発生するものは、御説明いただいたように、メリット制に一応の予防効果があるとのデータが出たことから見ても、メリット制を維持する必要があろうかと思います。というのも、保険にはモラルハザードが伴いますので、メリット制なしに、保険の仕組みを通じて業務災害に関する費用負担を分散し得ることは、業務災害発生予防に対する事業主の意識を低下させるおそれがあるからです。特に、労働契約では生命や身体の危険を労働者が専ら引き受けますので、さらに、その災害補償のコストを保険によって分散できるとなると、同業他社よりも労働者に必死に働かせたり、つまり過重労働をさせたり、あるいは安全衛生についてコストを掛けずに事業運営するのがライバル企業に差を付ける企業経営だという事業主が出現しないとは限らないように思います。
他方で、こうした直接的な業務災害防止効果を一旦置いても、やはりメリット制の効用は否定されないように思います。先ほど申しましたように、そもそも労災保険制度は無過失責任に基づいていますから、事業主が予防しようがない業務災害も含むわけです。ただ、ここで問題となるのが、労働者の生命や身体という重大な法益であることに鑑みると、個別の事業主が予防可能かどうかにかかわらず、同種事業よりも業務災害の発生が著しい事業は、そうでない事業よりも高コストで、すなわち、競争の観点からは不利な事業運営を強いられてしかるべきとも考えられます。要するに、メリット制を通じて市場原理にさらされる形で、事業の妥当性が試されるという形になっていると思われますが、これもまたメリット制の機能の1つだろうと考えます。したがって、直接的な災害防止効果にとどまらず、もう少し広い視野でメリット制の意義を考えることもできるのではないかと考えております。以上です。
○小畑座長 ありがとうございました。ほかは、いかがでしょうか。笠木委員、お願いいたします。
○笠木委員 メリット制の適用の実態や効果について資料をお示しいただきまして、ありがとうございました。全体としてメリット制にある程度の予防効果があるという御趣旨の説明だったかと思われ、酒井委員からも補足いただきまして、特に、プラスのメリット制が適用された事業場についての効果がある程度明らかに示されているというところは重要かと思いました。また、適用対象の数が、事業場の数ではごく一部なのですが、労働者数との関係では、より広い範囲をカバーしているといった御指摘も、本日、御説明いただいた中では重要な点かと思いました。
他方で、次の論点②とも関わるところで、それから、既に出てきている他の委員の御発言にもあったことを含みますが、以下の4点について留保が必要であると考えます。
まず、1点目は、現状で8割の事業場にマイナスのメリット制が適用されていて、これらの事業場については、メリット制の効果はないとは言えないということですが、必ずしも、メリット制があることによって現状が維持されているといった関係は示されていないように感じられたところです。
2点目は、本日お示しいただいたデータの内容をもう少しミクロに見ていきますと、メリット制が有し得る効果は、業種や疾病の類型、疾病の場合には疾病の類型あるいは事業場の規模によって多様とも考えられることです。事業場の規模という面では、今回の調査で、小規模な事業場が推計から除かれたとのことですが、そういったところからもまさに示されているかと思います。また、災害予防の意識や努力が効果を上げやすいケースと、そうではないケースがあって、メリット制が効果を持ちやすい業種や災害類型があるものと思われます。
3点目は、2点目と関連しますが、使用者が予防の努力をしていても避けられない労災は一定数存在すると考えられ、予防の努力にもかかわらず、結果として重要な労災が発生した事業場には大きな保険料負担が発生することとなり、こうしたメリット制の適用は、使用者から見て不公平感が強いものである上、使用者の予防の努力には影響を及ぼさないと考えられることです。
4点目、先ほどの酒井委員からの御発言のとおり、メリット制は労災かくしの誘因ともなり得るとの主張が実務家などからしばしば行われているところでありますが、こういった弊害については、データで確認することは極めて難しいと思われます。そのため、政策決定において、先ほどの事務局の御説明の中では、費用対効果の評価という観点が示されていましたが、そういった評価の中で十分に考慮されにくい懸念があるということです。このような、メリット制に伴う、データでは示されにくい事実上の負担というか、被災労働者や遺族にとってのネガティブな弊害という観点には、後のほうで議論をする使用者による不服申立てとの関係でも配慮が必要と考えますが、この点については、また後半で申し上げたいと思います。以上です。
○小畑座長 ありがとうございました。中野委員、お願いいたします。
○中野委員 第1回の研究会の際に、メリット制が適用されることによって、具体的にどの程度保険料負担が変化するのか例を示してほしいとお願いし、今回の資料2でお答えいただいたことに、まずお礼を申し上げます。
企業の規模にもよりますが、事故が発生しなかった場合には、保険料が大きく減額されるのに対し、一たび事故が発生すると、保険料が大きく増大するということが理解できました。特に死亡事故や長期の疾病は、保険料に対する影響が大きく、このことはプラスにもマイナスにも、マイナスというのは、今も話に出ておりました労災かくしなどの問題が起こり得るということですが、事業主の行動に影響を与えるだろうという印象は受けました。ただ、メリット制のプラスの効果、すなわち、事業主が労災防止に積極的に取り組むインセンティブとなるのか、また、それによって、実際にどの程度、労働災害の発生が抑制されているのかということは、今回、事務局もいろいろと工夫してデータを出してくださって、先ほど、酒井委員からも補足で説明をしていただいたところですが、やはり、評価することがなかなか難しいように思われました。
まず、適用対象に関しては、資料の2ページでは、メリット制の趣旨の1つとして、事業主間の負担の具体的公平を図ることが挙げられております。しかし、先ほど、笠木委員も御指摘されましたが、資料の6ページを見ると、事業場の数ではメリット制を適用されている事業場は4%にすぎず、労働者数で見ても過半数を僅かに上回るにすぎません。
59%の労働者がメリット制の適用下にあることを多いと評価するか、少ないと捉えるかは、これは評価の問題であろうと思われます。事業主間の負担の公平化を徹底するのであれば、メリット制の適用対象を全ての事業場に拡大するということも考えられると思いますが、現行法が一定規模以上の継続事業や有期事業に適用対象を限定しているのは、やはり、小規模の事業主はメリット制による保険料の増減の影響、特に保険料の増額時の負担に耐えられないという理由なのだろうかと推測いたします。
また、同じく資料の2ページでは、メリット制の趣旨のもう1つとして、事業主の災害防止努力の促進が挙げられています。この点については、先ほども述べたように、やはり、メリット制が実際にどの程度の災害防止効果をもたらしているのかを評価することが難しいように思われました。資料の15ページ以降でお示しいただいたデータを見ると、適用事業場の約半数は、もともとマイナス40%の保険料を適用されており、被災者がおらず、それ以上災害防止効果を出すことができないということです。このことをどう評価するかですが、過去の、これまでのメリット制には確かに災害防止の意味があったかもしれないが、企業における災害防止努力は既に頂点に達していて、今日においては、メリット制の役割は既に終了していると評価することもできるのではないか。つまり、もしメリット制をなくしたとしても、これらの現在マイナス40%の保険料を適用されている企業が、急に災害防止努力を怠って、労働災害が増加するというようなことは起こらないのではないかとも思われます。
資料2ページの参考という部分では、有期事業についてメリット制を創設した際に、継続事業についてメリット制の効用が大きかったことが背景として述べられています。当時、どのような検証がなされてこのような評価をしていたのかは分かりませんが、いわゆる事故性の災害が中心であった時代には、事業主に災害防止に取り組む経済的インセンティブを与える意義は大きかったと思われ、事業主も災害防止に取り組みやすかっただろうと思われます。しかし、この後の論点にも関わりますが、今日、問題となっている脳・心臓疾患や精神障害は、労働者側の要因も発症に関わり、事業主の努力による発生防止には限界があります。そのような職業病にメリット制を適用することには疑問もあり得るところで、本日の机上配布で頂いているように、実務側からは、いろいろと反対や懸念も示されているところです。
以上のように考えると、メリット制は今日においてはその役割を終えたものとして廃止をし、労働災害の発生防止については、保険の外の事業、社会復帰促進等事業や労働安全衛生に係る監督行政の徹底によって確保するというのも1つの考え方ではないかと思います。私からは以上です。
○小畑座長 ありがとうございました。ほかは、いかがでしょうか。坂井先生、お願いいたします。
○坂井委員 発言をさせてもらいます。今日、配布、説明していただいた資料のうち、例えば資料の5ページで紹介されているメリット制の適用事業場におけるメリット増減率の状況を見ていると、同種の事業に属する各種の事業であっても、業務災害の発生状況は多様だということが、まず理解できます。また、資料の7ページで紹介されているメリット増減率の遷移を見てみると、この発生状況のばらつきが、年度ごとの偶然の変動とは言いきれず、個々の事業に固有の事情を一定程度反映したものなのであろうということも見受けられます。
このような実情を前提とすると、業種別の労災保険率のみによって、要するに、メリット制を適用せずに業種別の労災保険率のみによって保険料を算定するという場合には、同一の業種の中で、業務災害のリスクが低い事業主から、これが高い事業主への再分配、すなわち、経済的な利益の移転が生じることになるのだろうと思います。これは先ほどの中益委員の御指摘と重なる認識かと思います。このことをどう評価するかを考えてみますと、まず、労災保険に内在する論理からは、このような再分配は正当化されないと考えられますし、また、労働政策とは別の、例えば産業政策の観点から考えてみても、現状では、このような再分配は要請されていないように思われます。
そうすると、この資料の中でも説明していただいているメリット制の2つの趣旨のうち、個々の事業主の負担の具体的公平性を図ることとの関係では、メリット制が果たす役割は、いまだ軽視するべきではないと思います。
それとの関係で、事業所数でいったら適用事業所は限られているという問題意識もここまで示されてきたところですが、事業主間の公平の観点から、メリット制が果たす役割は小さくないという立場からは、比較的、規模の小さい事業であっても、取り分け安全衛生や労災予防に関する取組を積極的にしているものについては、メリット制の恩恵を享受し得る仕組みがあってもよいという見解も出てき得るところかと思います。もちろん、余りに小規模な事業にメリット制を適用してしまうと、偶発的な要素によって、労災保険率の変動が生じてしまうという問題も理解できるのですが、例えば、事業規模に関する現行の要件を下回る事業についても、安全衛生、労災予防の取組に関する所定の要件を充足する場合、しっかりした取組をしている場合は、当該事業での労働災害の発生状況は、偶発的な事情のみによるのではなく、そういった労災予防、安全衛生の取組の成果を反映したものと位置付けて、メリット制の適用を認めるということも検討に値するのではないかと考えているところです。私からは以上です。
○小畑座長 ありがとうございました。水島委員、お願いいたします。
○水島委員 水島です。先生方の御発言と重なるところが多いですが、私からも一言述べさせていただきます。まず、この研究会でも、メリット制の検証がこれまでなされていない、あるいは効果に懐疑的な御意見がありましたけれども、今回、このように検証し、御説明を頂きありがとうございました。
メリット制の目的としては、事業主の負担の公平性あるいは事業主の災害防止の努力の推進があると御説明にもありましたが、災害防止努力という目的は一定程度達成され、そして、事業主の負担の具体的公平性も、結果として一定程度達成されているように思いました。
適用対象の合理性については、これまでの委員の御発言にもありましたように、多様な見方があると思いますけれども、私としては、小規模事業場に適用することによる個々の事業への影響の大きさを考えると、現行の適用対象には一定の合理性があり、見直しを必要とするものではないと考えます。現行の労災保険制度の中で、いかに負担の具体的公平性を図るかというところで、バランスの取れた1つの仕組みを提示できているのではないかと思います。
中益委員、笠木委員からも御発言がありましたが、メリット制が災害防止に効果があるのか、あるいは災害防止努力という目的について、疾病等の種類が変わってきたことを踏まえると、私も、非常に悩ましく思っております。資料の3、4ページに具体的事例を挙げて説明いただいていますが、例えば脳疾患を発症した場合に、入院、休業の期間が非常に長くなると給付が非常に大きなものになることがわかりました。こうした脳・心疾患事例は、メリット制を創設した当初に想定されていなかったと思いますし、コンメンタール等で説明される作業工程、機械設備あるいは作業環境の良否といったものとも直接関連するものでないように思われ、どう考えるべきかを悩んでおりました。
無過失のものも含めて市場原理を通じて事業の妥当性を図るといった御趣旨の中益委員の御発言は、なるほどと思いました。災害防止責任というと、使用者の過失が介在するものと使用者が防ぎようのないものとを分別したくなりますが、実際に業務上とされたものを見ても、使用者の過失があったかではっきりと分かれるものではありません。もちろん、明らかに使用者に過失があるものもありますが、事業場内で業務に際して生じた災害から、使用者が完全に無過失であるものを切り出すことは、労災保険法上、必要ないですし、すべきでないと考えます。
このように考えると、メリット制で、災害防止努力という目的が達成されているか、あるいは災害防止に効果があるのかといったときに、メリット制を維持するために必要かという意味で、効果を測るべきとは思いますが、メリット制における災害防止効果を追求しすぎると、議論が混乱するのではないかと思います。メリット制に一定の災害防止効果が認められればよくて、また、先ほど中野委員からもお話がありましたように、労災保険のメリット制のみで災害防止を達成できるものではありませんので、メリット制を維持するのに妥当な程度で効果があることを言えればいいのかなと思っております。以上です。
○小畑座長 ありがとうございました。ほかは、いかがでしょうか。地神委員、お願いいたします。
○地神委員 私自身は、今までの話を伺っておりまして、やはりメリット制自体は維持しつつ、一定の調整が必要だろうと思っております。維持すべきと考える理由については、一番最初に中益委員から私の考えとほぼほぼ重複する御発言がありましたので、省略をさせていただきます。
一方で、調整が必要と考える部分ですが、お示しいただいた論点に直接的にお答えするものではないかもしれないのですが触れさせていただきます。増減率40%の部分について、不断に見直しが必要なのではないかということを指摘させていただきたいと思います。理由の1つは、これまでにも議論があったように、災害発生の防止の努力というものに、ある程度、限界があるのではないかという点です。産業保健の進展や安衛法、安全衛生規則などが充実することにより、現実に労災事故や給付というものは年々減少しているところであり、事業主の努力によって災害発生を防止できる範囲が狭まっている。これは御指摘のとおりかと思います。そうした段階において、この40%というものをいつまで維持するのかという点、それは根拠も含めて検討が必要だろうと思います。
もう一点は、これも既に御指摘があった部分ですが、労災かくしの問題です。メリット制があることにより、労災かくしが現実に発生しているという指摘は無視できないところです。もっとも、労災かくしの理由は、労災保険料率のほかにも、安全衛生法上の取締りが入る、入札停止を受ける、社会的評価の低下など、多様な理由があるかと思いますので、そのことのみをもってメリット制を廃止してしまうという決定的な根拠としては弱いと思っています。
ただし、実際上、この40%という数字は気になるところで、資料の3ページなどにあるように、やはり1つの事故で数百万円という差が発生する。これに対し、死傷病報告を提出しない場合の罰金額が、いつから変わっていないのかは分からないところですが、50万円以下であると。現実的なところを見ると、労災かくしをしたほうが割に合うという、非常に問題のある形になってしまっているのは事実です。
これまでに議論されたメリット制の意義をいかしつつ弊害を除くためには、この罰則との関係と監督の問題とともに、バランスの取れた増減率の再検討が必要なのではないかと考えております。私からは以上です。
○小畑座長 ありがとうございました。ほかは、ありますか。よろしいでしょうか。小西委員、お願いいたします。
○小西委員 小西です。よろしくお願いいたします。メリット制について、災害防止の効果があるかということについてデータをお示しいただきまして、どうもありがとうございました。もう既に各委員からのお話と重なるところですが、少しだけお話させていただきたいと思います。
今回、こういうような形で調査していただいて、一定のデータに基づく検証がなされたということで、非常に勉強になったところです。併せて、このメリット制による災害防止の効果は非常に重要なポイントかと思いますので、引き続き、この点についてはデータを収集していただいて、現段階では、その限界、限定があったというお話もあったところですので、そこを更に詳細にというか、もし調べることができるのであれば、今後、引き続き調べていっていただきたいと思っております。事業規模や従業員数などをそろえて見ていくといったところも含めて、今後も引き続き調べていっていただければと思っております。
そういうことで、メリット制を政策的にどう考えていくかは、そういったデータから導かれていることと併せてですが、既にお話があったところですが、メリット制と事業主の労災補償責任との関係、あとは、労災かくしの問題も指摘されていると伺っておりますので、そういったデータからは捉えることができない、性質が異なる事柄については、引き続きしっかりとした議論が必要なのではないかと考えている次第です。私からは以上です。
○小畑座長 ありがとうございました。これで、全委員の御意見が出そろったかと思います。全体としては、複数の留保が付くけれども、災害防止努力に関して、メリット制というのは一定の効果があるという御意見の先生が多いと。しかし、それは評価するのが少し難しいのではないかという御意見も他方で出たところではあります。また、適用の対象に関しては、広げていくという可能性を考えてもよいのではないかという御意見と、このまま維持するということでよいのではないかという御意見の両方が出たとまとめていけるかなと思います。事務局においても、また整理などしていただけたらと思います。何か補足はありませんか。特にないでしょうか。ありがとうございます。それでは、こちらの論点については以上としたいと存じます。
次の論点に進みます。事務局のほうから御説明をお願いしたいと思います。
○労災管理課長補佐(企画担当) 御説明いたします。論点②の説明の前に、22ページを御覧ください。先ほど、団体からの御意見ということで、皆様にお配りしているとお伝えしたこちらの資料ですが、いわゆる「あんしん財団事件」は、労災保険法における事業主の審査請求や取消訴訟での適格性が争われた事件です。その際に、メリット制が労働者保護に与える影響といったことで存否に関わる御意見を頂いておりまして、こちらの資料をお示ししておりました。御紹介が漏れておりました。申し訳ございません。
それでは、論点②の御説明に移ります。24ページです。メリットの算定基礎の除外に係る現行の取扱いについてです。2ページでも御紹介しましたけれども、メリット制の趣旨・目的は、事業主間の公平性の確保と災害防止努力の促進です。しかしながら、ある種の疾病が特定の状況の下で発症したという場合においては、その疾病に係る保険給付をメリット収支率の算定対象に含めることで、メリット制の趣旨・目的をかえって実現できないという場合があります。労働保険徴収法などでは、算定対象からこういった給付について除外するといったことを定めております。
具体的には次のページです。特定疾病に罹患した者に係る保険給付等については、メリット制の分子に算入しないという取扱いを示しております。この「特定疾病にかかった者」とは、このページの表の左の欄に掲げております疾病に罹患された方が、この真ん中の事業に従事した場合、かつ、右の欄に記載するような就労状況にあったという場合です。この取扱いについては、24ページの参考部分の2つ目の○に記載しておりますけれども、いわゆる転々労働者の方たちが遅発性の職業疾病に罹患した場合に、そうした疾病の発生の責任について、最終事業場の事業主にのみ帰属させることは不合理であるという考えに基づき、昭和55年の法改正で導入されているものです。転々労働を常態とする業態、業種について、こうした転々労働者に発生する疾病について特定の就業状況であった場合にのみ除外対象としているもので、特定の疾病にかかった労働者を一律に算定の対象から除外しているものではないということに御留意いただければと思います。
26ページです。こちらは業務上疾病に係る業務起因性についてです。メリット収支率は、被災労働者の業務災害に対する労災保険給付を前提として算定されます。このとき、当然のことながら、保険給付については、業務と傷病との間に因果関係、すなわち業務起因性が認められるということが前提となってまいります。傷病のうち、疾病に係る業務起因性の判断につきましては、業務起因性の基本的考え方に記載しております3要件が認められることが必要です。業務起因性の判断に際しまして、業務上の有害因子、ここでは有毒な化学物質あるいは長時間労働なのですが、こういったものが認められる一方で、業務以外の要因が存在するという場合については、業務上の有害因子が相対的な有力な原因であるという場合に限って、業務起因性が認められるということになってまいります。
次のページです。こうした競合的な要因がある場合、どういった判断をしていくかということです。こちらは脳・心臓疾患の関係です。脳梗塞や心筋梗塞といった病気については、いわゆる血管病変によって生じるものです。血管病変自体は、加齢ですとか、長年の生活習慣などの様々な要因、御本人の体質といったものが絡みあった上で、長い年月の間で発症、悪化していくというもので、こうした脳疾患・心臓疾患といったものは業務災害に限らず広く一般的に見られる疾患です。しかしながら、業務による過重な負担が掛かることで、自然経過を超えてこうした血管病変等が著しく増悪するという場合に、脳疾患・心疾患が発症するといったことがあります。このため、業務が過重なものであるかといったことを判断するための基準が、労働基準局長通知によって定められておりまして、こちらがそのフローです。また、この黄色い表の下、※書きにありますように、過重な業務だったかどうかの判断は、同種労働者にとって特に過重かという観点から判断をされております。下の表の参考にありますけれども、認定率については近年3分の1程度で推移をしております。
28ページです。こちらは精神障害事案の関係です。上のグレーの四角部分、1つ目の○です。精神障害については、発病を促すストレス、これは過重な業務や生活環境の変化などですけれども、これと病気への脆さ、脆弱性と言いますけれども、鬱病や他の精神疾患の既往、あるいはアルコール依存をお持ちといったことですが、こうしたストレスと脆弱性といったものが作用し合って発病、再発に至ると言われております。こちらは「ストレス脆弱性モデル」と呼称しております。
2つ目の○ですけれども、精神障害の業務起因性の判断にあっても、労働基準局長通知による認定のメルクマールといったものが設けられております。具体的な判断フローについては、このページにあるとおりです。また、この心理的負荷の強度というのは、被災労働者と同種の労働者を基準に判断されることになっております。参考にありますとおり、精神障害についても、認定率は近年3分の1程度で推移をしています。
24ページでもお示しをしましたけれども、一定の条件の下に特定の疾病にかかった者に係る保険給付等については、メリット収支率の算定から除外する取扱いとしております。これは、疾病の発生を特定の事業主に帰属させることが適当でない、言わば災害が発生した事業場を医学的に特定することが困難であるという場合です。特定の事業主の保険料に反映させることが、かえって公平でないといった場合に限った、特殊な取扱いと言えると思っております。
現在、メリットの対象から除外しております疾病については、長期間、有害因子にばく露し発症した疾病で、転々労働者にとって、最終ばく露事業場での業務従事期間等を加味すれば、最終ばく露事業場での業務が疾病の発症に相対的に有力な発症原因とは言えないということも踏まえた上で、最終ばく露事業場のメリットの算入には入れないという取扱いとしているところです。一方で、今、御説明しました脳疾患・心臓疾患あるいは精神障害については、ある事業場での業務と発症との因果関係について判断基準が設けられているところで、業務が相対的に有力な発症要因となっているのか判断しているといったことについて、御留意いただければと思っております。
29ページを御覧ください。高齢者の労災についてです。近年、死傷病報告にあります休業4日以上の死傷者数のうち、60歳以上の労働者の占める割合は、真ん中の棒グラフですけれども、増加傾向にあります。また、その右隣、いわゆる千人率ですけれども、男女ともに最小となる25~29歳の範囲に比べますと、65~69歳の範囲は、男性で2倍、女性で約4倍と相対的に高くなっていることが見て取れます。
次のページの円グラフを御覧ください。高齢の労働者の産業別の構成比を見てまいりますと、全ての労働者と比較して大きな差異はないというところで、特定の災害発生率が高い業種に偏っているものではないといったことが見て取れます。
31ページです。こちらは外国人の労災についてです。ここで言う外国人とは、在留資格にかかわらない、国籍としての外国人です。左側の棒グラフですが、雇用者全体に占める外国人の割合は3.6%で、その隣の死傷病報告における休業4日以上の死傷者数の割合でいきますと、4.2%となっております。また、千人率で見ますと、全ての労働者よりもやや高い程度といったことが見て取れます。高齢者と比較すると、全ての労働者と比べてもそこまで大きな差異はない、やや高いといったことが見て取れるかと思っております。
32ページです。外国人労働者については、全ての労働者と比べますと、第一次産業や建設業といった比較的災害発生率が高い業種で働かれている割合が高いということが見て取れます。また、次の33ページを御覧ください。外国人労働者については、日本人労働者に比べて、若年層に偏りがあるといったことが見て取れるかと思います。
また、本論点の冒頭にも挙げたとおりですが、メリット制の趣旨・目的に立ち返りますと、メリット収支率の算定対象からある保険給付を除外するといったとき、その保険給付を算定対象とすることが事業主間の公平性の確保の支障となっているのか否か、その保険給付を算定対象から除くことで、事業主の自主的な災害防止努力を損なうことにならないかといったことを考える必要があるかと考えております。こうした観点も踏まえた上で、御議論いただければと考えております。論点②の説明は以上です。
○小畑座長 ありがとうございました。それでは、資料2の13ページにあります論点②のメリット制の算定対象につきまして御意見を伺えればと思います。いかがでしょうか。水島委員、お願いいたします。
○水島委員 24ページの特定疾病の場合の取扱いについて御説明いただき理解しました。公平性を図るために必要な、特殊な取扱いと理解しましたが、特定疾病は一度に決まったのか、あるいは、対象が追加されたのであれば、どのような場合に特定疾病に追加されたのか、お聞かせいただければと思います。これは質問です。
高齢者や外国人労働者をメリット収支率の算定対象外とすることについてです。高齢者については、確かに最近労災発生率が高くリスクが高いといえますし、年齢という客観的な基準で対象を決めることができますが、外国人は国籍としての外国人という説明でしたけれども、国籍で区別することが、そもそも適切かは疑問です。日本に長く居住して日本人と同様の生活を送っている外国人の方もいらっしゃいますので、国籍という基準設定自体に違和感がありました。外国人の方が入国して間もなく、危険な業務に従事されているケースがある、あるいは、文化や風習、言語の問題等もあって事故が発生している、そうした問題意識からこのような論点を設定されたと推測し、論点設定自体は理解します。以上です。
○小畑座長 ありがとうございます。御質問についてよろしいですか。お願いいたします。
○労災管理課長 また確認して御説明させていただきたいと思います。
○小畑座長 ありがとうございました。それでは、次に中野委員、お願いいたします。
○中野委員 論点②は、論点①について、メリット制には今日においても意義があり、維持すべきであるという結論を出すことを前提とした議論であろうかと思われます。私自身は、先ほど述べましたように、メリット制を維持すべきかについては疑問を持っておりますが、仮にそのような前提に立つならば、まず論点②の1点目については、事業主が従事させた業務との相当因果関係が認められる限り、脳・心臓疾患や精神障害についてもメリット制の適用対象から外す理由はないだろうと考えます。資料で説明されている特定疾病は、先ほども御説明がありましたように、日雇労働者など複数の事業場を転々としながら働く者が発症する疾病で、最後に就労した事業場における業務と疾病との相当因果関係を認めることが困難なものを、メリット制の算定対象から除外するものです。すなわち、複数の事業場での業務が合わさって疾病を発生させているが、特定の事業場の業務との間では相当因果関係を認めることができないという場合に、労働者に労災保険の保護を与えると同時に、一方で、特定の事業主に労働基準法上の災害補償責任が発生しているとは認められないことから、メリット制の算定対象から除外するというものだと理解しました。
これと同様の考え方は、脳・心臓疾患や精神障害についても、2020年改正で導入された複数業務要因災害が認められる場合には、既に採られていると理解しております。メリット制を維持することを前提とするのであれば、複数業務要因災害以外の場合、すなわち、特定の事業主の下での業務と脳・心臓疾患や精神障害の発症との間に相当因果関係が認められる場合には、メリット制の算定対象から除外することは正当化できないと思われます。
論点②の2点目についても、高齢者や外国人は、確かに加齢に伴う心身の能力の低下や、言語上のハードルにより、労働災害に遭うリスクが高く、脆弱性が高いグループであることは推測されます。他方で、そのような脆弱性が高い者を就労させるならば、その特性に沿った災害防止の措置を事業主は採るべきであると考えられますので、メリット制による災害防止の促進、その効果があるという立場を取るならば、これらのグループをメリット制の適用対象から除外する理由はないように思われます。
ただし、外国人の雇用は事業主の任意ですけれども、高齢者や、また、今回の資料には出ておりませんが、障害者については、雇用の促進が国の政策として進められており、企業に対して雇用や就業の機会の確保が法律で義務付けられています。
そして、障害者については、平成22年の名古屋高裁の判決で、事業主が身体障害者であることを前提として業務に従事させ、その基礎疾病が悪化して災害が発生したときには、脳・心臓疾患の業務起因性は当該労働者本人を基準として判断すべきという判断が示されています。この判決の立場に立つと、障害者にとっては、疾病の業務起因性が認められやすくなり、労災保険からの保護が厚くなる一方で、障害者の雇用に取り組む事業主は、メリット制を通じて重い保険料負担が課されるリスクを負うことになります。同様の問題は、精神障害者がその基礎疾病を悪化させて精神障害を発症したという場合にも生じ得ます。そうすると、高齢者や障害者については、雇用促進施策との一貫性を持たせるために、メリット制の適用について何らかの考慮をするということは考えられるのではないかと思いました。
あまり議論が一貫していなくて申し訳ないですけれども、以上です。
○小畑座長 ありがとうございました。続きまして、酒井委員、お願いいたします。
○酒井委員 論点②の2点目について発言させていただきます。先ほどもありましたけれども、あくまでメリット制を維持することが前提となった上での議論かと思いますが、まず、ここでデータをお示しいただきました高齢者と外国人のうち、高齢者については加齢に伴って労災リスクが高まるのは明らかと思いますが、外国人のほうは必ずしも労災リスクが高いとは限らないのではないか。特に、外国人と言いましても、様々な在留資格がありますし、それらによっても違うかと思いますので、外国人に関しては一律に議論できないと思いますので、以下の私の主張は高齢者のみに議論を絞りたいと思います。
私は法律的なことは分かっておりませんけれども、特定疾病をメリット制の算定の対象外とするという論理は、高齢者に関しては、ある面では当てはまりそうだけれども、ある面では当てはまらないのかなという印象を持って聞いておりました。高齢者のある種の労災に関して、その事業所だけに責任を負わせられるとは限らないという点では似ているところもあるのかなと思う一方で、当該事業所における業務に起因するかどうかについては、高齢者に関しては比較的明らかなのではないかと考えます。したがって、特定疾病と同じように高齢者を算定対象から外すというのは難しいというか、慎重にならなければいけないことだと考えます。高齢者に対する安全配慮はもちろん重要ですし、そのインセンティブとしてのメリット制を外してしまっていいのかと考えます。
ただ、一方で、同じ業務負荷であっても、高齢者と壮年層では、労災につながる確率が異なると考えるのも妥当かと思います。こうなると、高齢者を雇うことが、そもそも忌避される可能性がある。先ほどもありましたけれども、政府が積極的に高齢者雇用を推進しており、更には、雇用を確保すべき年齢も引き上げる傾向にあるわけです。その中で、こういった高齢者を雇うことに伴うペナルティをどう考えるか、政策的な整合性として説明が付くのかというところは思うところです。
もちろん、実際に高齢者を雇うことでメリット制による保険料率が高くなった結果として、どれほど雇い控えが生じるかは定かではない。というか、そんなに大きくないのではないかと私も思います。現下は特に人手不足という状況にありますので、どうであれ、多分、事業所は高齢者を雇う傾向が強いのではないかと思いますけれども、雇う側にとってどのようにこの制度が見えるかということです。やはり、高齢者の促進を政府がしているのに、雇うとなぜか労災保険料率が上がっていくというようなことが、事業所にとってどのように見えるかという観点は重要かと思います。
いろいろと述べてしまって申し訳ないですけれども、自身の考えを少しまとめると、やはり高齢者を算定対象から外すということは難しいのではないかと考える一方で、自然と労災リスクが高くなる高齢者を、ほかの年齢層と同じように扱って、メリット制の料率を算定してしまってよいのかという思いもあります。したがって、やや両者の折衷的な案になりますけれども、メリット制の対象から外すわけではないけれども、メリット制の料率の算定の際に、高齢者の給付については調整する、つまり幾らか割り引いて計算するということもあるのではないかと思います。高齢者の労災について、あるいは先ほど障害者等々の話も出てきましたけれども、最低限でも、これ以上メリット制を厳しくするということはあってはならないと考える次第です。以上です。
○小畑座長 ありがとうございました。中益委員、お願いいたします。
○中益委員 中益でございます。メリット制から、ある疾病や対象者を除外することは、事業主の業務防止行動から漏れることを意味すると考えますので、やはり慎重であるべきかと思います。これを前提として、疾病に関しては中野委員と同じ考えですので省略し、特に対象者の点について2点述べさせていただきます。
第1に、第1回の研究会では、被災率が高いであろう主体が、保険料率を引き上げないために、採用において避けられかねないとの点が指摘されたところですが、この点に関しましては、先ほども申しましたように、ここで問題となっているのが労働者の生命や身体という重大な法益ですから、採用行動をゆがませかねないという問題と同じレベルでは論じられないのではないかと考えます。先ほども申しましたように、メリット制がなければ、保険に伴いがちなモラルハザードを現実のものとし、災害予防行動を取らないほうがよいかのようなゆがんだインセンティブを与えるおそれがあると思われるからです。メリット制がなくても予防行動は変わらないのではないかとの御意見もあったところですが、労災かくしがあるということは、事業主の中に保険料負担、つまり、コストを意識しているものがあるということを表しているように思いますので、メリット制を変えれば事業主の行動が変わる、特にコストの掛かる予防措置を採らなくなるということは、あり得そうに思います。この弊害と、指摘されたような採用におけるゆがんだインセンティブのおそれを比較すると、やはり労働者の生命や身体に関するリスクを下げる方向で、つまり、災害防止行動に対する弊害を取り除けるように制度設計をするほうが、より重要ではないかと考えております。
また、ある応募者について、この人を採用したら業務災害が生じかねないのではないかとの懸念から採用しないということは、必ずしも不適当とは言えないと思いますが、こうした採用における判断と、ある属性をもって事業災害のリスクを感じ取り、コスト高になるだろうということから採用を避けるという採用判断とは、実際は区別するのが難しいのではないかという印象もあります。
第2に被災率が高いであろう主体を積極採用する企業が、保険料率が高くなりがちで、コスト高になりかねないという点も指摘がありましたが、確かにこれは難しい問題と思いますけれども、ここも、業務災害を予防し生命侵害傷病を避けることの重要性は看過し得ないように思います。つまり、被災率が高いであろう主体を積極採用する企業に対しては、業務災害が発生しても保険料率に影響がないというアプローチよりは、被災率が高いだろう主体が就労しても業務災害を発生させないようにするというアプローチのほうが、政策的にはより適切であるように思います。例えば、安全衛生の向上策を採る、過重労働等を避けるべく労働条件の改善を図るような制度設計にする、被災率が高いであろう主体に適した仕事を選択できるようなマッチングの問題として考えるとかで、こうした課題の解決に取り組むべきと思います。
したがって、これらの問題をメリット制の是非に持ち込むことが本当に妥当かどうかというと、個人的には若干の疑問が残るところです。以上です。
○小畑座長 ありがとうございました。ほかはいかがでしょうか。お願いいたします。
○労災管理課長 先ほど水島委員から頂いた御質問について確認できましたので御紹介します。資料の23、24ページで特定疾病の紹介をしましたが、上の3つ、非災害性腰痛、振動障害、じん肺症については、制度ができた当初からあります。その後追加されたものとして、その下の石綿が平成18年度、それから、一番下の騒音性難聴については平成24年度からということで、一斉に追加されたわけではなく順次追加されているということです。確認できましたので御説明しました。
○小畑座長 ありがとうございます。水島委員、今コメントはいいですか。
○水島委員 ありがとうございます。平成18年のアスベスト追加は何となく想像できるのですが、平成24年にどういう議論や要請があって騒音性難聴が追加されたのかが、もし分かりましたら、又の機会で結構ですので、お願いできればと思います。
○小畑座長 ありがとうございました。では、先ほど手が挙がりました笠木委員からお願いいたします。
○笠木委員 論点②については、論点①についてどう考えるかというところとも密接に結び付きますので、かなり委員の間で見解が分かれるところでもあるかと思います。私自身は、論点①で述べましたこと、つまり、メリット制の効果について、多くの留保を付して理解するべきであるように思われること、それから、メリット制が有し得る弊害といったことを踏まえますと、メリット制の算定対象を、予防の効果を上げやすいあるいは公平性の観点から、問題が小さいと思われる場面に限定していくという方向性での議論が必要ではないかと考えております。
これは、これまでのメリット制算定対象外の疾病をめぐる議論とは異なるロジック、つまり、業務起因性を特定の事業者との関係で特定できるかどうかという議論とは異なる観点からの適用対象の限定をしていくという考え方になろうかと思います。具体的には、まず、脳・心臓疾患や精神疾患については、今、説明がありましたように、発生機序が極めて複雑で、労働者側の事情も疾病の発生発展に影響を及ぼしますし、労災認定基準も日々複雑化しておりまして、労災予防のために使用者に求められる努力の具体的内容は非常に多様なものとなっております。また、認定基準においては同一労働者基準が採られてはおりますけれども、実際の認定や裁判所の判断では、先ほど中野委員からも御紹介がありましたように、各労働者の個別事情が、かなり広く考慮される傾向にあるように思われます。こういった中で、使用者が一通りの予防努力をしていても、結果として労災と認定される疾病が生じるケースも十分に想定が可能でありまして、メリット制の適用が使用者にとって不公平、あるいは予防促進という目的に必ずしも資さないと思われるケースが出てきているのではないかとも思っております。また、以下は推測にすぎませんけれども、こうした複雑な発生機序をたどる疾病の労災認定によるメリット制の適用が、この後半で論点となるメリット制に対する使用者の不服申立ての対象ともなりやすいのではないかということも想像できるところです。
次に、通常想定されている労働者に比較して、より大きな脆弱性を有すると思われる労働者についても、メリット制の算定対象から外す可能性について検討すべきと考えております。本日、御紹介いただいた中では特に高齢者が当たりまして、ほかに、既に中野委員から御指摘のあったとおり、障害を持つ労働者についても同様の検討の余地があると考えます。特に、一定の脆弱性を抱えつつも就労する労働者について、国の雇用政策によって就労が促進されている中で、業務により傷病が発生した場合には、できる限り労災保険給付が行われることが望ましい一方で、このことが、これらの労働者を雇用した使用者に結果的に重い保険料負担をもたらすということが、公平性を欠くように思われるためであります。
他方で、既に水島委員からも御指摘がありましたけれども、外国人については、外国籍であるということに結び付いた特別な脆弱性ということは考えにくいと思いますし、政策的に雇用が促進されている他の類型の労働者とは異なり、現段階では特別な取扱いは考える必要がないと考えます。
なお、一部の疾病や労働者について、メリット制の適用を除外しようという考えについては、そうした疾病や労働者について予防の努力が不要であるという考え方やモラルハザードにつながるという懸念があり、この懸念は十分に理解できますし、一定の配慮が必要であると考えます。ただ、現状でも、メリット制は、ごく一部の事業場、6割弱の労働者との関係でしか適用されておらず、あくまで一定の規模以上の事業場について、メリット制による予防の効果が得られやすい、あるいは、メリット制の適用に意味があるというような観点から、多くの政策的考慮を踏まえつつ、予防促進の1つの手段として適用されているものと考えております。そのため、メリット制の適用がないということは、使用者の予防努力が必要でないということは意味しないと説明することは十分に可能であると考えております。同時に、高齢者や障害者のような労災の危険が特に大きな労働者については、ガイドラインの策定や各種事業を通じて既に特別な対応も行われつつあり、そうした対応をより強化していくことが重要であって、そういった努力が強化されることは、メリット制の適用を外すこととは理論的には全く矛盾しないと考えます。
また、日本では過失責任については労災認定と同時に民事損害賠償の請求も可能でありまして、使用者の安全配慮義務については、近年、厳格に捉えられる傾向にあるということにも留意すべきと考えます。以上です。
○小畑座長 ありがとうございました。続きまして、坂井委員、お願いします。
○坂井委員 では、まず論点②の前段部分、疾病の特徴とメリット制の関係ですけれども、結論としては、私は、脳・心臓疾患や精神疾患を算定対象外にすべきではないという考えであります。この問題については、既にいずれも言及されている点ですけれども、2つの観点から検討の余地があるのではないかと思います。
第1に、脳・心臓疾患や精神疾患の特徴のうち、個体要因や私生活上の事情といったものがその発症に寄与しているという事情がありますけれども、これについてはメリット制の関係で重視すべきではないと考えております。というのは、個体要因や私生活上の事情の影響は、確かに脳・心臓疾患や精神疾患との関係で特に顕著に現れる問題ではありますが、本日の資料の26ページの説明にもありますように、それ以外の典型的な職業病であっても、やはり業務外の要因との競合というのはあり得るところであります。
その上で、資料26~28ページで整理されている考え方によって、業務起因性が肯定される傷病の範囲を確定して、そのような傷病について、災害補償に関する使用者の責任を基礎として、事業主の保険料負担による補償給付を行っているのだというところかと思います。このように理解すると、特に個体要因や私生活上の事情が関与しているという理由によって、脳・心臓疾患や精神疾患をメリット収支率の対象外とすべきではないという考えに至りました。
着眼点の第2としましては、業務遂行に関して高度の裁量を持つ労働者が増加してくると、その過重労働の予防に関する使用者の関与の余地が縮小してしまうという事情が他方であるかと思います。このような事情があるとすると、メリット制の趣旨との関係では、これらの疾患に関する給付額を労災保険率に反映させることは、少なくとも自主的な災害防止の努力を促進しようとするという趣旨とは整合しないという主張に結び付くと思います。また、災害補償の責任に関する理解、立場によってはという留保は付きますが、個々の事業主の負担の具体的公平性を図るために必要ではないといった主張もあり得るところかと思います。
もっとも、私としては、現状では過重労働の予防について事業主が果たし得る役割はいまだに大きいと考えておりますので、結論としては、これらの疾患をメリット制の算定対象から除外すべきではないという考え方であります。他方で、今後の中長期的な課題としましては、働き方に関する多様化の進展というものを注視しつつ、このような観点からメリット制との関係で、脳・心臓疾患、精神疾患の位置付けを検証していくということには意義があると考えているところであります。
次は、論点②の後段部分です。労働者の属性とメリット制との関係ですけれども、この課題についても、私は、高齢者・外国人をメリット収支率の算定対象外とすべきではないと考えております。ここで注目している高齢者・外国人は、いわゆるダイバーシティマネジメントの観点から活躍が期待されている人材という特徴も持っておりますので、この点に着目して状況を整理してみたいと思います。
ダイバーシティマネジメントをめぐる議論では、労働力人口の減少を受けて、これまで基幹的な労働力と位置付けられてきた労働者だけでは、各企業が必要とする人材を確保できないという状況の中で、ここで問題となっている高齢者・外国人のほか、障害者や育児・介護を担う労働者なども含めて、その属性に応じた労務管理上の特別な負担がある、すなわち金銭が掛かる、時間が掛かる、手間が掛かるということは当然の前提として、しかし、これらの人たちの活躍が必要だから、その活躍ができる環境を整備しようという問題意識があるのだろうと認識をしております。もう少し具体的に言えば、障害者に関しては合理的な配慮の提供や、家庭責任を負う労働者に関しては育児・介護への配慮といった負担を企業が負いつつも、これらの労働者の活躍を促すというのが、現在の労働市場の状況になっているのだと思います。
そうすると、労災保険における高齢者・外国人の取扱いに関しましても、これらの労働者について、メリット制を介した労災保険料の負担を軽減するという方法で雇用促進を図るのではなくて、労働災害の予防・補償に関する責任を個々の使用者にしっかりと果たしてもらいつつ、その活躍を促すというような方向が望ましいのではないかと考えております。私からは以上です。
○小畑座長 ありがとうございました。ほかに御意見はいかがでしょうか。
○地神委員 現在、特定の疾病を算定対象外にするかどうかという点について、ここでは精神障害を想定しながら議論してみたいと思います。これまでに、特に中野委員や坂井委員から、かなり理論的に、これを算定外とするべきではないという御説明があったかと思いますが、実際上のところをもう少し見てみると、精神障害に関しては、その性質上、業務起因性判断はかなり微妙で、ここは恐らく、どの委員も共有しているところかと思います。加えて認定にかけることができるコストというところにも限界があります。
そのようなことを考えると、たとえ業務上であると行政で判断したとしても、ある程度微妙なケースが給付対象に含まれてしまうことはやむを得ない、これは制度が想定済みのことではないかと考えられます。この点で、精神障害については、個別の事業主ではなく事業主全体でそのコストを引き受ける、メリット制の算定対象から外すということが、公平にかなうと私は考えております。
もう1つ、メリット制から外すことにより災害防止努力に影響があるという点に関しまして、近年、精神障害についての判断は、民事訴訟と極めて近接してきております。事業主が、たとえメリット制の対象から精神障害が外れたからと言って、この民事訴訟への影響というものを考えたときに、急に長時間労働を解禁するなど、そのような過重労働を避けるための行動をとりやめるということは、現実的には考えにくいのではないかと考えております。
また、既に申し上げましたとおり、業務起因性判断が極めて微妙であるという点ですが、実際、行政訴訟においても民事訴訟においても多くの争いが発生しているところであります。労働者に対して保険給付が行われた結果、保険料率が上昇した事業主が、保険料認定処分の段階で労災支給決定が妥当ではないとして争うケースの増加、これを想定しますと、紛争防止の観点からも算定対象外とすることを考えてもよいのではないかと思います。
後段部分ですけれども、これも、おおむねほかの先生方と重なる部分がありますが、いわゆる雇い控えの問題については、私自身は、労災保険が対象とするところではなく雇用政策の問題であって、雇用保険あるいは労災の中で扱うのであれば、せめて社会復帰促進等事業などの活用によるべきと考えます。そのほうが雇用情勢などに対応した柔軟な対応も可能かと思いますので、私はそちらに重点を置くべきだと考えております。以上です。
○小畑座長 ありがとうございました。ほかはいかがでしょうか。御意見はございませんか。酒井委員、お願いします。
○酒井委員 この論点②に直接関係ないかもしれませんけれども、次の論点がメリット制の適用の話ではなくなってしまうので、ここで述べさせてください。先ほどから、今回のメリット制に関して、ある局面では労災抑止に効果があるかもしれないけれども、そもそも、労災には、努力して抑止ができるものと、そうでないものがあるのではないかという指摘が繰り返し出てきているかと思います。それは、全く私もそのとおりだと考えております。ただ、抑止しやすい労災がある、あるいは、そうでない労災があるというのは、事業所が直面している労災リスクという観点からは、業種ごとによって多分に異なるのではないかと思います。その観点からは、やはり労災保険料率が業種ごとに適切に定められているということが前提になるという気がします。
ですので、ちょっと大きな議論で恐縮なのですけれども、今回、メリット制に絞って議論していますけれども、そのメリット制の在り方を議論するには、そもそも業種ごとの保険料率が適切か、どうあるべきかということと併せて考えるべきという観点もあるかと思いました。以上です。
○小畑座長 ありがとうございます。ほかはいかがですか。大丈夫でしょうか。
こちらの論点に関しましては、まず、先ほどの論点に関して多くの留保を付けつつ、メリット制が効果があるというような出発点、また、それを評価するのは大変難しいという出発点、どちらに立つのか。そして、その留保の内容も様々でありましたが、その留保の内容との関連でどう考えるのかということとの関係でも、多くの違ったお立場というものが表明された状況です。このように非常に複雑な状況になっておりますので、またそれを事務局で整理していただく。その中で、災害防止努力、そして公平性、この2つのキーワードというものをメリット制について前提としつつも、いわゆる雇用促進の問題、疾病の特徴の問題、紛争の防止の問題、業種ごとの労災保険料率の問題など、そういった観点を加味しつつ議論を整理していただくということでお願いしたいと思います。
ほかに、何かこれについて更にという御意見はございますか。大丈夫でしょうか。ありがとうございます。
それでは、その次の論点につきまして事務局から御説明を頂きたいと思います。資料3「労災保険給付が及ぼす徴収手続の課題について」の御説明をお願いいたします。
○労災管理課長補佐(企画担当) 御説明します。論点案を御覧ください。論点①は、メリット制の適用を受ける事業主に対して、労災保険率の算定の基礎となった労災保険給付に関する情報を提供すべきか、情報を提供する場合、労働者の個人情報保護の観点等にも配慮いたしまして、どこまでの情報について提供すべきかを御議論いただきたいと考えております。論点②は、メリット制の適用、非適用にかかわらず、労災保険給付の支給決定あるいは不支給決定の事実を事業主に通知をすることについて、どのように考えるのかということです。
論点①、3ページを御覧ください。メリット制の適用の流れを御説明します。労災保険給付の支給決定がありますと、その翌々年度以降の労災保険率が、当該事業場における給付総額に応じ、増減されることになります。事業主が通知された率と異なる率によって申告・納付を行った場合、都道府県労働局がメリット適用保険率による保険料額を職権で決定いたします認定決定を行います。左下にありますとおり、メリット制適用の基礎となった労災保険給付の支給決定については、事業主には通知がされていない状況です。事業主は、青枠内の労災保険率決定通知書において、メリット制が適用された労災保険率を認識することになっています。
4ページの右枠のとおり、労災保険率決定通知書の記載事項には、メリット料率の算定基礎となった労災保険給付情報は含まれていません。5ページの右下にありますが、認定決定の通知書における記載事項にも、メリット料率の算定基礎となった労災保険給付情報は含まれていません。
資料の6ページです。メリット制適用事業主に対する労災保険給付情報の提供案として考えられるものを、一例として掲載しております。
資料7ページは御参考です。昨年7月にありました、あんしん財団事件の最高裁判決について、そのポイントを記載しております。
8ページも御参考です。労働保険徴収法における事業主がメリット制の適用について審査請求等を行う場合の流れについて表したものです。
10ページは、支給決定や不支給決定の事実に関する事業主への通知です。下の枠内ですが、実際に労働災害が発生した、負傷・疾病の発生といったことで、被災労働者などから労災保険給付請求が行われますと、黒い吹き出しにございますが、請求書の中に事業主の証明に関する欄といったものがあります。ですので、事業主としては、この機会に被災労働者が保険給付請求を行っていることが認識できるというものです。また、その隣ですが、監督署による災害発生状況等の調査の過程で、実際に事業主に対して労基署が接触をするといった過程でも、請求がなされていることが認識できるというものです。その上で、給付に関する支給・不支給決定といったものがなされますが、これは請求人に対して通知がなされるというもので、赤い枠内にありますが、事業主に対しては、支給・不支給に関する結果といったものは通知がされず、メリットが適用されている事業主であれば、仮に支給決定がなされている場合、2年遅れで、そういった保険料率から請求が容認されたことがうかがえるというものです。
本来、労災保険法の中で見ていきますと、被災労働者に対して保険給付を行うと同時に、事業主が再発防止策を講じていくことが必要になってまいります。こうした支給決定がなされたことが認識されないという状況において、そういった再発防止策を促すことができないのではないかという問題意識の下で、この論点を設定させていただいています。説明は以上です。
○小畑座長 ありがとうございました。それでは、資料3の1ページ目の論点に沿いましてお伺いしたいと思います。事務局からは論点①と②が示されておりますが、①、②をまとめて議論したいと思います。御意見のある方からお願いいたします。いかがでしょうか。水島委員、お願いいたします。
○水島委員 労災保険は、政府が所管し事業主が保険料を納めるという形になっていますが、素朴な感想として、これは政府の説明不足ではないかと思いました。これは、論点①にも②にも共通するものです。
論点①に関しては、事業主の中には、これを不意打ち的に感じる者もいると思います。事業主が納得できないとしても、せめて理解できるような説明が、申告・納付をした後ではなく、もっと早い段階で必要と考えます。事業主が情報を得ることによる御懸念の声があることは認識していますが、私は、保険料を負担する事業主に対しては情報を提供するのが原則であると考えますし、弊害が生じるのであれば、原則を踏まえた上で弊害が生じない方法を考えるべきであると思います。
私はこのような考えですので、論点②についても、保険の仕組みからして当然、保険料を負担している事業主に対して、こうした事実を伝えるべきと考えます。御説明にありましたように、早期に労災事故防止に取り組むという重要な観点もありますので、私は、この支給決定・不支給決定の事実は、できるだけ早い段階で事業主に伝えるべきであると考えます。
○小畑座長 ありがとうございます。次にどなたかおられますか。御意見はございますか。坂井委員、お願いいたします。
○坂井委員 では、発言させてもらいます。まず、論点①についてですが、労災保険における使用者の保険料負担というのは、これまでもしばしば言及されておりますとおり、労基法における個別使用者の災害補償に関する責任を基礎としているわけです。この労基法上の災害補償責任については、少なくとも使用者が補償の対象となる損害について個別具体的に、すなわち、どの労働者について、どのような災害により、どのような損害が発生したかといった事実を把握することが前提となっているのだろうと思います。そうすると、この責任の確実な履行を担保する労災保険において、特に上記の補償責任を基礎とする使用者の保険料負担の部分に関しては、使用者は、自身の保険料負担の前提となる労災補償に関する事実について、重要な利害を持っていると言えるのではないかと思います。
確かに現在の労働者の意識からしますと、例えば自身の健康状態や診療内容を使用者に知られたくない、したがって、これに関連する例えば療養補償給付の支給決定や給付額といったものを使用者に通知をしてほしくないという気持ちは、もちろん分かるのですが、少なくとも使用者の保険料負担の基礎となる基本的な情報、すなわち、労働者、災害、傷病、給付額といったものを特定し得る情報というのは、使用者への提供が正当化されるのではないかと考えております。
このような考え方を前提に、論点②番に関してですが、個々の労働災害に関する使用者の災害補償責任を基礎として、労災保険における使用者の保険料負担が基礎付けられているということを考慮すると、やはり支給決定・不支給決定の事実についても、これを使用者に通知することに合理性が認められると考えております。特に支給決定・不支給決定とメリット制を適用した保険料額の決定との間に、先ほども御説明があったとおり、時間的な隔たりがあるということを考慮すると、支給決定(不支給決定)の時点で、その事実を事業主に通知する意味は小さくないと考えております。私からは以上です。
○小畑座長 ありがとうございました。笠木委員、お願いいたします。
○笠木委員 ①については、まず資料にも挙げていただきましたとおり、令和6年の最高裁判決は、労災保険給付支給決定についての使用者の原告適格を否定するに当たって、当該事案では直接に問題となっていない保険料認定処分をめぐる使用者の手続保障が別の形で図られるということに、明示的に言及していまして、このことには重要な意味があると考えます。ですので、メリット制の適用を受ける事業主への保険料認定処分をめぐって、十分な手続保障が担保されるということは非常に重要なことで、労働者の個人情報保護への配慮というものもあるかとは思いますが、できる限り多くの情報を提供することが求められると考えております。
これと似たような観点になりますが、②についても、まずは労災予防という本日御説明いただいた観点から、確かに支給決定の事実が事業主に情報提供されるということは、基本的に望ましいことと考えております。また、メリット制の適用を争う時点では、労災保険支給決定から翌々年度となっており、労災に当たる事故や疾病の発生からは更に時間がたってしまいますので、支給決定の時点で使用者に情報提供がされるということは、手続保障の観点からしても適切ではないかと考えております。
他方で、以下、実務の流れを十分に理解しておりませんので、若干、推測のようなことになってしまいますが、支給決定について使用者への情報提供が行われ、数年後にメリット制が適用されれば、その時点で不服申立てができるということになりますと、そのこと自体は適切であると考えられる一方で、結果として、将来のメリット制の適用を予想して、使用者が被災労働者や遺族にコンタクトを取ったり、被災労働者に協力する資料提供者や証言者などに接触を試みるというような形で、関係者にとって事実上の追加的な負担が生じる可能性があるかと思います。この点は、水島委員が御懸念とおっしゃられたことに当たるかもしれません。また、今回の論点の範囲を超えて、少し一般的な議論になってしまいますが、使用者への手続保障の充実ということは最高裁も求めている重要な要請であると考えられる一方で、それによって、今後、増加していく可能性のある不服申立てや、それに向けて使用者が様々なアクションを起こすことで、被災労働者や関係者に事実上生じ得る直接・間接の負担について、どのように考えるかということは、別の重要な問題として検討や考慮が必要であるようにも思われます。
この点については、私自身は労災認定の実務等に関与しておりませんので、正確な知見を持ちませんが、その内容としてどういった事実上の負担があり得るのかというところについて、もう少し詳しく、場合によってはヒアリングなどを行って理解をした上で議論するといったことも、検討に値するのではないかと考えております。以上です。
○小畑座長 ありがとうございました。それでは、中野委員、お願いいたします。
○中野委員 大分、皆さんの御発言とかぶるところもあるのですが、論点①に関しましては、あんしん財団事件の最高裁判決は、メリット制の適用を受ける事業主が、保険料認定処分の不服申立て又はその取消訴訟において、メリット収支率の算定の基礎となった保険給付支給決定処分の支給要件非該当性を主張できるとしておりますが、そのための前提としては、事業主が算定の根拠となった保険給付支給決定を特定できることが必要となります。そうすると、3ページの適用の流れの図で言えば、遅くとも労災保険率決定通知書の送付の時点で、事業主に対して、不服申立てをするために必要十分な、なぜ保険料率が増減したのかが分かるだけの情報が提供されなければならないと思われます。
どこまでの情報を提供すべきかについては、確かに企業の規模や災害発生状況によっては、保険給付を受領している労働者個人を簡単に特定できてしまうという問題も生じ得ますが、論点②でも出てきますように、もともと事業主は保険給付の申請時に請求書の作成や監督署による調査に協力をしており、労働者が申請をした事実自体は把握をしています。保険給付の額についても、事業主が労働者に支払う賃金を基に基本的には算定されておりますので、労働者の心理的なハードルという事実上の問題はあるかもしれませんが、資料6ページに提案されているような情報を事業主に知らせることに問題はないのではないかと考えますし、必要な情報であろうと考えます。
論点②に関しましては、支給決定がメリット保険料率へ反映されるのは2年後、翌々年度であり、支給・不支給決定の時点で事業主に対して通知がなされても、その後、実際に不服申立てをするまでに、大分タイムラグがあるわけですが、事業主にとっては、その先に起こり得る問題について覚悟ができ、資料の保存などの準備をすることもできるという点で意味があると思います。ただ、個別の請求と直接に結びつく形で事業主が結果を知ることに伴って、笠木委員が御指摘されたような事実上の問題、労働者や遺族に対してプレッシャーが掛かるといった問題が起こり得るという点には配慮が必要かと思います。それでもなお、本日資料でお示ししていただいている、労働災害の再発の防止に取り組むインセンティブを与えるという観点からも、支給・不支給の決定の結果が事業主に早い段階で知らされるということには意味があるのではないかと思います。以上です。
○小畑座長 ありがとうございました。中益委員、お願いいたします。
○中益委員 中益でございます。論点①ですが、事業主にとっての手続保障という観点から、一定の情報を開示すべきとは思いますが、業務災害の情報は、病歴、障害、犯罪の被害を受けた事実など、要配慮情報を含む可能性がありますので、慎重に扱うべきと思います。労働者にとっては、これらの情報を意図的に使用者に隠している場合が考えられ、そのような場合には、これらの情報が自動的に使用者につまびらかになる仕組みを労災保険において採りますと、労働者の労災申請に忌避行動が出かねないように思います。例えば、資料の10ページ、手続の段階で事業主に知られるようなタイミングがあるわけですが、事業主の証明欄は相当に簡便なものであるはずですし、その次の事業場の訪問や事業主への聴取等も必ずなされるわけではないと思います。たとえば、実務がどうなっているか承知しておりませんが、恐らく被災労働者が嫌がって、使用者に知られるならば請求を取り下げるといったような事情があれば、聴取等もなされないのではのではと想像しますので、そのような知られたくない災害が水面下に潜り込みかねないような手続は、やはり慎重に扱うべきかと考えております。
他方で、論点②ですが、メリット制が適用される事業であるか否かにかかわらず、やはり事業主全体に支給決定があったかどうかくらいの事実は伝えるべきかと考えております。メリット制の適用を受けない事業にも、事業の種類別に異なる保険料率の適用がありますが、この仕組みは業種別メリット制と呼ぶこともあったものです。つまり、その狙いは、個別事業のメリット制と同様に、公平と予防の観点から導入されたものです。したがって、個別事業のメリット制が適用されるか否かにかかわらず、同種事業の業務災害を抑制すべく、各事業は災害防止の努力を求められていると考えられるところです。そして、具体的にどのような予防行動を取るかについては、業務災害についての情報を知ることが、やはり出発点となると思われますので、先ほど申しましたような労働者の個人情報保護の観点からの限界はあるにせよ、災害発生の有無程度は事業主に承知していただくのがよいと考えます。以上です。
○小畑座長 ありがとうございます。ほかはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。今のところ、①と②について、使用者にとっての手続保障の重要性というのが強調されますと、①についても情報を提供すべきというお立場が強いかと思いますが、今、中益先生から出ましたように、非常に微妙な病歴であるとか障害といった情報を労働者が隠しているかもしれないと、そういった点に配慮すべきではないのかという御指摘もあったところです。②に関しては、災害防止努力というのを、いち早く始めるためにも、支給決定若しくは不支給決定というものを事業主に伝えるのが早いということは、とてもいいことであると。他方、笠木先生や中野先生の御指摘がありましたが、そういうことが、不服申立てという事業主のアクションとの関係で、被災労働者や御遺族、関係者の負担というような問題を生じかねないのではないかという点について、考えていく必要があるのではないかと。そういったことかと思います。
この観点について、何かほかに重ねての御意見はありますか。よろしいでしょうか。では、事務局でまた整理をしていただいて、これについて、まとめをお願いしたいと思います。
それでは、次回の日程等について、事務局から御説明をお願いいたします。
○労災管理課長補佐(企画担当) 次回の日程ですが、調整の上、追ってお知らせいたします。
○小畑座長 ありがとうございました。これにて、第5回労災保険制度の在り方に関する研究会を終了いたします。本日はお忙しい中、お集まりいただきまして、誠にありがとうございました。終了いたします。