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- 2025年3月27日 第104回社会保障審議会年金数理部会 議事録
2025年3月27日 第104回社会保障審議会年金数理部会 議事録
年金局総務課首席年金数理官室
日時
令和7年3月27日 14時30分~16時30分
場所
全国都市会館 第1会議室
出席者
(委員)
翁部会長、小野委員、駒村委員、佐藤委員、庄子委員、寺井委員、野呂委員、枇杷委員
議題
- (1)公的年金財政状況報告-令和5年度-について
- (2)その他
議事
- 議事内容
- ○楠田首席年金数理官 少し時間は早いのですが、皆さん、おそろいになりましたので、ただいまより第104回「社会保障審議会年金数理部会」を開催させていただきます。
審議に入ります前に、資料の確認をさせていただきます。
本日準備している資料は、議事次第、委員名簿、座席図のほか、資料は「公的年金財政状況報告-令和5(2023)年度-(案)」でございます。資料は5つの資料に分かれておりまして、資料1は、表紙、委員名簿、目次、ポイント、概要となっております。資料2は第1章、資料3は第2章、資料4は第3章、資料5は付属資料でございます。
次に、本日の委員の出欠状況について、御報告いたします。
本日は、嵩委員から御都合により欠席される旨の連絡を受けております。
御出席いただきました委員の方が3分の1を超えておりますので、会議は成立しておりますことを御報告申し上げます。
なお、駒村委員、佐藤委員につきましては、オンラインでの御参加で、駒村委員は遅れての参加になるということでございます。
それでは、以降の進行につきましては、翁部会長にお願いいたします。
○翁部会長 委員の皆様には、御多忙の折、お集まりいただきまして、ありがとうございます。
本日は、「公的年金財政状況報告-令和5年度-」について、審議を行いたいと思います。
カメラの方がいらっしゃいましたら、ここで退室をお願いいたします。
令和5年度報告書の作成に当たっては、委員の皆様に御協力をいただきまして、あらかじめ作業班において作業を行い、本日の資料である報告書案を作成いただきました。
それでは、事務局から、本年度の報告案について、説明をお願いいたします。
○楠田首席年金数理官 事務局から、説明させていただきます。
委員の皆様には、作業班で報告書案の作成に御尽力いただきまして、誠にありがとうございました。
作成いただいた令和5年度の公的年金財政状況報告の案について、事務局より、御説明させていただきます。
報告書の案は、資料1~5の5つに分かれており、かなりのボリュームとなっておりますので、本日は、資料1にありますポイントと概要を中心に御説明し、追加で概要に取り上げていない事項を紹介させていただきたいと思います。
それでは、資料1を御覧ください。
最初に表紙、次に委員名簿があり、続いて、目次が5ページほどございます。
その後に、ページ番号で1ページと2ページになりますが、こちらは令和5年度の公的年金財政状況報告のポイントとなっております。こちらのポイントは、年金数理部会としてこの報告で一番伝えたいことをまとめたものになります。中身に入りますと、まず、上の枠囲みの中にありますとおり、公的年金財政状況報告は年金数理部会が公的年金の毎年度の財政状況について各制度・各実施機関からの報告に基づいて専門的な観点から横断的に分析・評価を行った結果を取りまとめたものでございます。この報告では、実績の動向を明らかにし、財政検証との比較や財政状況の評価を行っておりますほか、共済組合等も含めた厚生年金全体での財政状況を取りまとめています。お伝えすべきポイントは2つあり、1つ目は公的年金の収支状況でございます。下の図表、令和5年度の単年度収支状況を見ていただきたいと思います。こちらは、年金数理部会が公的年金の財政状況を制度横断的に比較・分析しているものです。表側に収支項目が並んでいますが、ここでは、賦課方式を基本とする財政運営が行われていることを踏まえまして、財政収支状況を運用損益を除いた単年度収支残と運用損益に分けて分析しています。また、表頭には、厚生年金計、国民年金勘定、基礎年金勘定、公的年金制度全体とありますが、この一番左の厚生年金計は、共済組合等を含めた厚生年金全体の数値になっています。この厚生年金計については、平成27年10月に被用者年金が一元化されていますが、効率的な事務処理を行う観点から、共済組合等を実施機関として活用することになっている関係で、厚生年金の財政は厚生年金勘定と厚生年金の実施機関たる共済組合等の厚生年金保険経理に分かれて管理されておりまして、厚生年金拠出金、厚生年金交付金をやり取りすることで、財政的に一元化されています。決算についても各々に分かれて実施されておりますが、ここでは、御報告いただいた資料を基に、厚生年金勘定と国共済・地共済・私学共済の厚生年金保険経理を合わせた厚生年金全体の財政収支状況を取りまとめています。その際、単純に各実施機関の決算の数値を合計するわけではなく、厚生年金全体としての財政収支状況を捉えるために、例えば、厚生年金拠出金、厚生年金交付金といった厚生年金の実施機関の間でのやり取りについては、収入・支出の両面から除いて整理をしております。また、この厚生年金計と隣の国民年金勘定・基礎年金勘定を合わせたものが一番右の欄の公的年金制度全体の財政収支状況になります。ここでも、公的年金制度内のやり取り、図表中でいえば、マル1基礎年金交付金、マル2基礎年金拠出金になりますが、こちらは収入・支出に同じ額が計上されて相殺されることになるので、こうした公的年金の制度内でのやり取りは収入・支出の両面から除いています。このように厚生年金全体や公的年金制度全体について財政収支状況を明らかにすることもこの年金数理部会の大きな役割の一つと考えております。さて、令和5年度の公的年金制度全体の単年度収支について見ますと、図表の一番右の欄になりますが、収入面では、保険料収入が41.8兆円、国庫・公経済負担が12.1兆円となっておりまして、運用損益分を除いた単年度収支総額は54.4兆円となっています。一方、支出面を見ますと、大宗を占める給付費は54.1兆円で、支出総額は54.5兆円となっています。この結果、運用損益分を除いた単年度収支残は0.1兆円のマイナスでした。また、運用損益は時価ベースで53.6兆円のプラスとなっています。これらの結果、公的年金制度全体の時価ベースの年度末積立金は、前年度に比べて53.5兆円の増加で、304兆円となりました。
続きまして、2ページを御覧ください。ポイントの2つ目、公的年金の財政状況の評価です。ここが今回の財政状況報告における最も重要な結論であり、この報告では令和5年度までの実績と令和元年財政検証の前提や将来見通しを比較して分析を行っていますが、公的年金の財政状況の評価に当たっては、そういった比較だけではなく、長期的な財政の均衡の観点から評価をしています。評価については、水色の枠囲みの中に記載しております。各々のバックデータについては後ほど概要の御説明の中で触れさせていただきますので、ここでは評価の結果を述べさせていただきたいと思います。枠囲みの中ですが、まず、国民年金第1号被保険者数は財政検証の見通しを下回り、厚生年金被保険者数は上回る状況が続いていること、令和5年度は高い運用収益となった結果、積立金の実績が将来見通しを上回っていること、65歳の平均余命は平成29年人口推計における死亡高位の仮定値を下回っていることが確認されました。また、令和5年度は、マクロ経済スライドによる給付水準調整が行われたことにより年金財政にプラスの効果をもたらしたことに加えて、実質賃金の伸びがプラスになったことにより、平成12年改正で既裁定年金の物価スライドが導入されて以降、初めて、賃金の伸びが既裁定年金の伸びを上回ったことが確認されました。一方で、令和元年以降の合計特殊出生率は、平成29年人口推計における出生中位の仮定値を下回る水準で推移し、令和5年は出生低位の仮定値を下回っていること、また、実質賃金上昇率は令和元年財政検証におけるいずれのケースの前提も下回っていることが確認されております。これらの将来見通しからの乖離が一時的なものではなく中長期的に続いた場合には、年金財政に与える影響は大きなものとなります。例えば、合計特殊出生率が将来推計人口も出生中位の仮定値を下回って推移する傾向が今後も長期にわたって続けば、将来の年金制度の運営は大きな影響を受けます。とはいえ、年金財政の観点からは、人口要素、経済要素等、いずれも短期的な動向にとらわれることなく長期的な観点から財政状況の動向を注視すべきであると、こちらが今回の報告における公的年金の財政状況の評価となります。ポイントについては、以上になります。
次に、3ページ以降の公的年金財政状況報告の概要について、御説明いたします。
4ページ、項番でいうところの0のスライドを御覧ください。報告書の構成は、第1章、第2章、第3章、付属資料となっています。第1章では、報告書全体を理解する上で必要となる基本的な事項を中心に、公的年金の概要を説明しています。第2章では、被保険者、受給権者、財政収支、財政指標の現状と推移について、実績の確認や分析を行っています。第3章では、財政検証結果との比較ということで、実績と令和元年財政検証の将来見通しとの比較、積立金の乖離の分析、財政状況の評価をしています。この概要では、報告の第2章と第3章から重要と思われるところを抜粋して掲載しております。
次に、5ページを御覧ください。こちらからの4ページでは、報告を読む際の基本的な情報として、項番a~dの資料を掲載しています。まず、こちらは年金数理部会についてまとめたものです。図の下のほうにありますように、年金数理部会のミッションとしては、各制度において実施される財政検証についてピアレビューをするということ、右側になりますが、各制度実施機関から毎年度の決算について御報告をいただき、それらを分析・評価し、公的年金財政状況報告を取りまとめるといったことになります。今回の報告は、この公的年金財政状況報告の令和5年度版という位置づけになります。
次に、6ページ、項番bの資料を御覧ください。こちらは、年金数理部会の役割について図示したものでございます。上側に公的年金各制度・各実施機関が行っていること、下側に年金数理部会が行っていることを書いています。公的年金各制度におきましては、少なくとも5年ごとに財政検証が行われ、その間には毎年度決算が行われるわけですが、年金数理部会では、この財政検証の後で財政検証のピアレビューを実施し、その中で、財政検証の結果や手法の検証、今後の財政検証への提言を行っています。また、毎年度の決算の後には、毎年度の財政状況の分析・評価を行い、公的年金財政状況報告を取りまとめており、次の財政検証につなげていくことになります。
続いて、7ページ、項番cの資料は年金制度の体系図です。こちらは、第1章にも掲載しております。この中の国民年金第1号被保険者についての「自営業者、学生など」という例示については、その下の注1にある令和2年国民年金被保険者実態調査結果による第1号被保険者の就業等の実態と平仄が取れていないので、この点について検討が必要ではないかという御意見を第102回年金数理部会でいただきました。この点については、今回の令和5年公的年金財政状況報告の取りまとめの検討の際に、作業班の場で御議論いただきましたが、国民年金被保険者実態調査について、令和5年調査の結果がもうすぐ出るということで、その結果を踏まえて、より適切な例示、また、体系図自体についても、構成割合も含めて、実態のイメージがつきやすくなるような見せ方について、来年度の秋以降に予定しております令和6年財政検証のピアレビューに係る作業班において検討いただくこととなりました。また、厚生労働省が発信する類似の資料にも反映していくべきという御意見がありましたので、御報告いたします。
続きまして、8ページ、項番dは公的年金の資金の流れを示したものです。経過的措置等の終了した後の姿で、基礎年金交付金等は省いておりますが、大まかな資金の流れが分かるようになっております。
続いて、9ページからは報告書の抜粋を掲載していますが、まずは、被保険者の現状及び推移ということで第2章第1節より抜粋しています。
10ページ、項番1を御覧ください。こちらは公的年金の被保険者数の推移になります。近年の状況を見ると、国民年金第1号被保険者と第3号被保険者が減少して、厚生年金の被保険者が増加する傾向にございます。令和5年度も、この傾向が続いており、公的年金制度全体の被保険者数はほぼ横ばいでした。厚生年金については、全体で1.2%の増加となっていますが、このうち短時間労働者の増加率は11.7%となっています。
続きまして、11ページ、項番2は被保険者の年齢分布になります。令和5年度末の被保険者の年齢分布をグラフでお示ししていますが、一番左にあります厚生年金計では、50~54歳の割合が最も大きくなっています。こちらは、団塊ジュニア世代の方が属しているところになります。隣の厚生年金被保険者のうちの短時間労働者について見ますと、男性は緑色になりますが、60才以上の被保険者が多くなっています。また、女性は45~64歳が多くなっております。その隣の国民年金第1号被保険者で見ますと、20~24歳が最も多くなっており、ここは主に学生の方が属しているところでございます。
続きまして、12ページ、項番3からは年齢分布の変化を見ています。まずは厚生年金計について見ますが、左側が、被保険者数、人数のグラフになっており、右側が総人口比のグラフになっております。直近の令和5年度末とその5年前と10年前を比較しております。まず、厚生年金計の男性、左側のグラフの青いところになりますが、最も被保険者が多い年齢階級は、10年前は40~44歳だったのですが、その5年後には45~49歳、令和5年度末には50~54歳で、シフトしてきていることが分かると思います。こちらは、団塊ジュニア世代が移ってきているということでございます。一方で、女性を見ていただきますと、5年前に比べて、一部、15~24歳と40~44歳は少し減少していますが、全体として被保険者数が増加していることが見てとれます。こちらの被保険者数については、先ほど団塊ジュニア世代ということを申し上げましたが、元の人口の多い・少ないといった影響を受けてしまうためにこれだけで見ると状況が把握しづらいということで、右に総人口比として年齢層ごとに被保険者数の人口に対する割合を示したグラフを載せています。人口比を見ると、5年前と比べますと、若年層を除き、全体的に上昇しています。また、一番右の65~69歳の人口比を見ていただきますと、この人口比は上昇しており、65歳以上の雇用が進展している状況が分かるかと思います。
続きまして、項番4は短時間労働者について見たものです。令和4年10月施行の適用拡大により短時間労働者の被保険者数が大幅に上昇したことで、こちらのグラフもかなり上に上がっていることが分かると思います。5年前に比べても、男女とも全ての年齢階級で増加しております。
続きまして、項番5は国民年金第1号についてです。国民年金第1号被保険者は、左側の人数で見ますと、団塊ジュニア世代のシフトを除けば、男女ともに全体的に被保険者数が減少しています。右側の人口比で見ますと、5年前に比べて、男性は、20~24歳、55~64歳を除いて、低下しており、女性は、20~24歳、60~64歳を除いて、低下しています。
続いて、項番6の国民年金第3号被保険者についてです。第3号被保険者については、ほとんどが女性なので、女性を中心に見ていきますが、左側の人数で見ますと、49歳以下の被保険者数の減少が著しくなっています。右側の人口比で見ますと、年齢を問わず、全体的に比率が下がってきており、女性は、5年前と比べて、全ての年齢階級で低下していることが分かります。
続きまして、16ページ、項番7は厚生年金の標準報酬月額被保険者数の分布になります。男性を見ていただきますと、一番右の65万円の被保険者数が最も多くなっております。女性では、22万円のところにピークがある分布となっております。一方、右側の短時間労働者について見ますと、男性・女性とも11.8万円のところにピークがある分布になっています。
続きまして、17ページからは、受給権者の現状と推移になります。こちらは、第2章第2節から抜粋しております。
18ページの項番8を御覧ください。こちらは、受給権者の年金総額の推移になります。令和5年度末の年金総額は、公的年金制度全体で58.1兆円となっており、前年度末に比べて1.9%の増加となっています。年金額改定率がプラスだったこともあり、前年度に比べて、全ての制度で増加しております。
続きまして、項番9は老齢・退年相当の受給権者の年齢分布になります。こちらは、厚生年金の実施機関ごとに示しています。左上に「旧厚生年金」とありますが、これはいわゆる民間被用者の方の厚生年金のことで、事業統計ですと「厚生年金(第1号)」と呼んでいるものの数値になります。年齢分布を見ますと、国共済の女性を除き、男女ともに全ての制度で70~74歳が最も大きくなっています。
続いて、20ページ、項番10は共済組合等の職域加算部分を除いた老齢・退年相当の平均年金月額となっています。共済組合等の共済年金には職域加算部分が含まれておりますので、これらの職域加算部分を除いた厚生年金相当部分の年金額を推計して示しております。推計した結果ですが、この表の一番右を見ていただきますと、厚生年金計の平均年金月額は、男女計で15.1万円、男女別に見ますと、男性が16.9万円、女性が11.6万円となっています。
続きまして、項番11は老齢相当の受給権者の年齢階級別平均年金月額になります。枠囲みの中にありますように、旧厚生年金の平均年金月額は受給権者全体の平均加入期間が長くなっている中で減少傾向にあるのですが、その要因としては、ここで挙げた1~6の要因が考えられます。グラフでは、旧厚生年金について、直近の令和5年度末と5年前と10年前を比較しています。グラフの中に減少の要因を詳しく記載しておりますので、御覧いただければと思います。
続きまして、項番12は老齢相当の年金月額階級別受給権者数です。旧厚生年金について、基礎年金を含む額でお示ししています。グラフを見ていただきますと、男性は17~19万円、女性は9~11万円にピークがあるということでございます。
続きまして、23ページからは、財政収支の現状ということで、第2章第3節から抜粋しています。
項番13は、令和5年度の単年度収支状況でございます。こちらは、先ほど御説明しましたので、省略させていただきます。
続いて、25ページ、項番14は厚生年金の保険料収入の増減要因の分析となります。右上のところに保険料収入の推移がありますが、厚生年金計を見ますと、令和5年度では2.9%増加しています。実施機関別に見ますと、厚生年金勘定、国共済、私学共済が増加して、地共済が減少しています。要因別の寄与を見ますと、厚生年金勘定と私学共済については被保険者数の増加が保険料収入を増加させる方向に寄与しています。また、いずれの実施機関も1人当たり標準報酬額の増加が増加要因となっております。さらに、私学共済では保険料率の引上げも増加要因となっています。一方、減少した地共済では被保険者数の減少が保険料収入を減少させる方向に寄与しております。
続きまして、項番15は国民年金勘定の現年度保険料収入について増減要因を分析したものです。令和5年度の国民年金の現年度保険料は、表の一番右にありますように、2.8%の減少となっています。こちらを要因別に分解して寄与を見ますと、現年度納付率は上昇しているものの、その他、被保険者数の減少等が保険料収入を減少させる方向に寄与しております。
続いて、27ページを御覧ください。ここからは、財政収支等及び財政指標の実績と将来見通しとの比較で、第3章の第2節と第3節から抜粋しています。
まず、28ページの項番16です。こちらは、合計特殊出生率と65歳平均余命の実績と前提の比較になります。左側が合計特殊出生率のグラフで、黒い線が実績、点線が平成29年将来推計人口の仮定値となっています。こちらを見ますと、先ほどポイントでも御説明しましたが、令和5年の実績は前年よりも0.06ポイント低下していまして、将来推計人口と比較しますと、出生低位の仮定値を下回っていることが確認できるかと思います。右側は、65歳平均余命のグラフです。令和5年の実績は、前年よりも男女とも0.08年上昇したものの、令和5年については、男女ともに人口推計における死亡高位の仮定値を下回っていることが確認できます。
続いて、29ページからは経済前提について見ています。項番17は、物価上昇率の実績と前提の比較です。黒い線が実績、赤い線が成長実現ケースの前提、青い線がベースラインケースの前提となっています。令和5年の実績は前年比3.2%となっており、いずれの前提も上回っていることが分かります。
続いて、項番18は実質賃金上昇率について見たものです。実質賃金上昇率は対物価上昇率で見た賃金上昇率になりますが、令和5年度の実績については、先ほど見た物価上昇率の影響により、いずれの財政検証における前提も下回っているということになります。
続いて、項番19は実質的な運用利回りについてです。実質的な運用利回りは対名目賃金上昇率で見た運用利回りになりますが、一番下に書いてありますように、運用利回りについて実績と前提を比較する際には、公的年金では保険料や新規裁定の給付費が名目賃金上昇率を基本として増減することから、長期的な観点からは実質的な運用利回りで比較することが適当であると考えており、ここでは実質的な運用利回りについて見ています。黒い線で示されています実績を見ますと、令和5年度は、成長実現ケース、ベースラインケース、いずれの前提も上回っている状況です。なお、運用利回りは単年度の変動が大きいことから、過去5年度分を平均した5年移動平均で比較しますと、グラフの黄色の線になりますが、こちらで見てもいずれの前提も上回っているということです。
次に、32ページを御覧ください。項番20は、労働力率についてです。黒い線が令和5年の実績、点線が令和7年の推計値となっています。令和5年の実績と、令和7年の労働参加が進むケースの推計値、赤の点線を比較しますと、比較している推計値が実績よりも2年先のものだということを考慮に入れる必要はありますが、男性では15~24歳と60歳以上で、女性では15~34歳と60歳以上で、既に実績が推計値を上回っている状況になります。
続いて、項番21は被保険者数の実績と将来見通しの比較をしたものになります。こちらは、先ほどポイントで取り上げた事項になります。実績を黒の星印で、財政検証の将来見通しを棒グラフで示しておりますが、令和5年度は、左側の厚生年金計を見ますと、実績が将来見通しを上回っている状況、一方で、右側の国民年金第1号被保険者を見ますと、こちらは実績が将来見通しを下回っている状況になります。
続いて、34ページ、項番22は受給者数についてです。令和5年度には、厚生年金計では実績が将来見通しを下回っている状況、基礎年金では実績が将来見通しとほぼ同水準になります。
次に、35ページの項番23を御覧ください。ここからは、収支の主な項目について見ています。実績と財政検証結果の比較に当たりましては、将来見通しの対象範囲が決算ベースと異なる場合には、決算の実績に一部修正を加えて財政検証ベースの実績を作成しまして、それと財政検証の結果を比較しています。また、財政検証には複数のケースがございますが、ここでは、例示として、ケースI・III・Vと比較しています。保険料収入について、令和5年度については、厚生年金計は実績が将来見通しを上回っていますが、国民年金勘定では実績はケースIとケースIIIの将来見通しを若干上回っており、ケースVの将来見通しを下回っている状況です。
続いて、項番24は給付費について見たものです。給付費については、令和5年度は、厚生年金計、国民年金勘定ともに実績が将来見通しを下回っている状況となっています。なお、ここでいう国民年金勘定の給付費は、注に書いてありますように、国民年金第1号、任意加入被保険者に係る付加年金等の国民年金独自の給付に係るものとなっており、左側の厚生年金計のグラフとは金額のスケールが異なっていますので、そこは御留意いただければと思います。
続きまして、37ページ、項番25は基礎年金拠出金についてです。令和5年度は、厚生年金計では実績が将来見通しを下回っている状況、右側の国民年金勘定では実績が将来見通しとほぼ同水準になります。
続きまして、38ページ、項番26は積立金についてです。黒の星印が実績、白の丸印が時価評価による変動を平滑化した後の積立金額を示しています。まず、令和5年度末の実績を見ますと、厚生年金計、国民年金勘定のいずれも実績が将来見通しを大きく上回っています。また、平滑化後の積立金額で見ても、同様に、令和5年度は将来見通しを上回っている状況になっています。
続いて、項番27は財政指標についての比較になります。年金数理部会では財政状況の把握の一助とするために、年金扶養比率、総合費用率、積立比率など、幾つかの財政指標を作成して分析しているところです。ここでは、そのうち、年金扶養比率と積立比率を取り上げています。まず、上側の図が年金扶養比率になります。年金扶養比率は、制度の成熟度を表す指標となっており、令和5年度は、厚生年金計、基礎年金ともに実績が将来見通しを上回っている状況になります。下側の図が、積立状況を示す積立比率になります。こちらも、令和5年度は、厚生年金計、国民年金勘定ともに実績が将来見通しを上回っている状況となります。
続いて、40ページからは積立金の乖離の分析と財政状況の評価になります。
まず、41ページの項番28を御覧いただきたいのですが、こちらは積立金の乖離分析の流れを図で表したものです。概略を御説明しますと。一番左にありますように、令和5年度末において積立金の将来見通しからの乖離があります。まず、それを、左側から2つ目にありますように、乖離の発生年度ごとに分解します。次に、左から3つ目になりますが、年度ごとに分解したものをさらに名目運用利回りの乖離によるものとそれ以外のものの2つに分解します。一番右になりますが、さらにそれらについて細かく発生要因別に分解するということで、乖離の内容を細かく分けるということをしております。
次の42ページからが、この乖離分析の結果になります。項番29は、積立金の実績と将来見通しの乖離について発生年度ごとに乖離状況を見たものです。ここでは、例示として、ケースIIIで示させていただいています。グラフを見ていただきますと、一番左側に令和5年度末の将来見通しと実績の乖離を示しており、右側にそれを発生年度別に分解したものを示しています。こちらを見ていただきますと、厚生年金計、国民年金勘定、いずれも同じような感じになっておりますが、令和5年度末は実績が将来見通しを上回って乖離がプラスとなっておりますが、それを発生年度ごとに見ますと、主に令和2年度・令和3年度・令和5年度の発生要因の寄与計がプラスとなっており、これらのプラスが令和元年度に係る発生要因のマイナスの寄与計を上回ったということになります。
項番30とその次の項番31は、積立金の乖離分析の結果になります。まず、項番30は令和5年度発生分について乖離の発生要因別に見たものです。図の左側に乖離の発生要因を、右側に積立金への影響を示しています。下の注にありますように、積立金の乖離について細かく分けたものから要因別に取り出して集約するということをしておりまして、ケースIからケースVのうち、最大値と最小値を表示しています。まず、左側の図を見ていただきますと、令和5年度に生じた厚生年金計の積立金の乖離は42.37~43.69兆円となっており、一番上の名目運用利回りの乖離の寄与が大宗を占めています。また、右側の図の国民年金についても、令和5年度に生じた積立金の乖離は1.79~1.82兆円となっており、国民年金計と同様に、一番上の名目運用利回りの乖離の寄与が大宗を占めています。
続きまして、項番31を見ていただきたいのですが、先ほどは令和5年度発生分について見ましたが、こちらは令和元年度から令和5年度の発生分について通期で見たものになります。令和元年度から令和5年度までの通期で見ますと、厚生年金計の積立金の乖離は92.16~95.00兆円、国民年金勘定の乖離は3.45~3.49兆円となっています。いずれも名目運用利回りの乖離が大宗を占めているということで、この乖離の大きな要因は名目運用利回りによることが分かると思います。なお、厚生年金計では被保険者数の乖離の寄与も大きくなっております。
続いて、45ページからは厚生年金の財政状況の評価になります。項番32では、厚生年金の財政状況の評価の考え方についてまとめています。厚生年金の財政状況の評価ですが、年金数理部会では、積立金の実績と評価の基準となる積立金額の推計値をつくりまして、それとの差を考察することにより、行っています。評価の基準となる積立金額とは、財政検証の積立金の将来見通しを、実績が出ている年度については賃金上昇率と物価上昇率の実績と財政検証における前提との乖離に対応する分だけ補正し、比較できるようにしたものです。こちらについては、詳しくは報告書の本文の286ページから287ページにありますので、そちらを御参照いただければと思います。四角の中の2つ目になりますが、この考察では、前提として、公的年金財政の均衡が下のてんびん図でいう左側の財源の全体と右側の将来の年金給付の全体で図られていること、また、保険料水準が固定された上で将来の給付費が将来の保険料収入と積立金等の財源と均衡するように給付水準を自動調整する仕組みになっていることを踏まえて行っており、この分析では、積立金の乖離について、積立金及び将来の保険料収入の財源と対比する形で乖離の規模をはかるということで評価をしております。
評価の結果につきましては、次の項番33にまとめております。左側の表に分析の結果をまとめていますが、積立金の実績と評価の基準になる積立金額の推計値の差額、表でいうマル3になりますが、こちらを、マル4の財源との比較、対比で見ておりまして、+5.0~5.3%となっております。また、表の中の括弧書きで時価評価による変動を平滑化した後のものについてもお示ししていますが、こちらの場合で+3.6~3.9%となっています。この結果から、積立金の財政検証からの乖離が財源の3~5%程度に相当する規模感であることが確認されたということでございます。
最後、47ページ、項番34につきましては、先ほどポイントのところで説明しました公的年金の財政状況の評価となっております。
概要についての説明は以上ですが、このほか、本文から概要に取り上げていないもので、1点ほど、御紹介させていただきたいと思います。
資料3、182ページを御覧ください。2-3-17段落目につきましては、委員の御意見を受けて、今回新たに追加したものとなります。現年度納付率、最終納付率ともに年々上昇してきておりますが、近年、国民年金第1号被保険者数が減少傾向にある中で、国民年金第1号被保険者に占める全額免除・納付猶予者の割合の増加傾向からここ数年は横ばいの状況となっており、令和5年度においては43%となっています。その動向は将来の年金水準にも影響を及ぼすことから、全額免除・納付猶予者について、その属性、免除・猶予期間や追納状況等の実態についての分析が望まれるという提言を追加しております。
私からの説明は、以上となります。
○翁部会長 御説明をどうもありがとうございました。
それでは、報告書の案につきまして、何か御意見がありましたら、お願いいたします。
小野委員、お願いいたします。
○小野委員 御説明をありがとうございました。
私からは、ポイントについて、コメントをさせていただきます。まず、昨年の発言と同様なのですけれども、被用者年金の財政は一元化されましたが、実施機関は統合されていないために、一元化後の厚生年金全体あるいは公的年金制度全体の収支を取りまとめることが年金数理部会の重要な責務と認識しております。その点、内部の収支等を極力省いて制度全体の収支を1ページに簡潔に示したことは意義があると思っております。それとともに、当部会には、制度の財政状況を専門的な観点から分析・評価し、実績の動向とその背景を明らかにして、財政検証との比較によって財政状況を分析・評価することが求められているということです。この点を2ページの財政状況の評価で取り上げたことも妥当だったと思います。内容は繰り返しませんけれども、乖離が中長期的に続くことへの警鐘を鳴らしつつも、長期的な視点から財政状況の動向を把握すべきことをアンダーラインを付して指摘されていることもよかったのではないかと思っております。
ここから先は確認なのですけれども、今回の資料の公表の方法です。年金数理部会のサイトに昨年同様に掲載していただくことは言うまでもないと思いますけれども、例えば、厚労省のメルマガでもお知らせするとか、それ以外の広報活動があれば、教えていただきたいと思いました。
以上です。
○楠田首席年金数理官 こちらの公表方法につきましては、先ほど委員がおっしゃられましたように、ホームページに報告書自体を利活用しやすいような形で掲載させていただくことを予定しております。また、プレスリリースで、この後、記者の方にもポイントと概要をお配りすることを予定しております、そのほかでどういった効果的な広報のやり方があるかというところについては、今後、検討させていただきたいと考えております。
○小野委員 承知しました。
ありがとうございます。
○翁部会長 ありがとうございます。
それでは、佐藤委員、お願いいたします。
○佐藤委員 どうもありがとうございます。
今の小野委員の御質問、それに対する楠田様の回答にも関連するところです。私もこのまとめに関するコメントなのですけれども、これはとても重要な情報が詰まっている部分なので、国民に広く理解されるよう共有をお願いしたいということを昨年の部会でも発言させていただいているのですが、記者レクのほかに今後有効な広報手段について検討されたいということなのですが、ぜひスピードを上げて検討していただきたいと思います。理由のひとつとして、プラスの部分で運用の貢献が非常に大きかった、これは単年度だけではなく過去5年で見ても大きかったのですけれども、運用はとかく単年で見られがちで、少しでも何かあると大きなニュースになってしまう。昨年の8月がよい例だと思いますが、運用側の発信だけではなく、財政のほうからも運用の貢献があったということをきちんと発信して、国民の理解を得ておくことが、これから、不確実性が高まっている中で、長期運用に対する理解を深める助けになるのかなと。まとめの図を見ていても、運用の部分、積立金の部分はまだ割合が小さいのですけれども、財政の健全性を高めるところで非常に大きな役割を果たしておりますので、この広報・発信のところはぜひよろしくお願いいたします。
もう1点、資料の7ページ、年金制度の体系です。これも、先ほど御説明のコメントにありましたように、注書きのところだけではなく、それぞれの実態に応じた図表の分かりやすさ、字数の関係もあるかもしれないのですけれども、大分偏った形になっているかと思いますので、実態を反映したような、例えば、厚生年金基金はもう11万人しかいないので、そういった事実がきちんと認識できる、誤解が生じないような発信をお願いできればと思います。
以上です。
○翁部会長 ありがとうございます。
何かありますか。
○楠田首席年金数理官 委員がおっしゃいました国民により分かりやすい広報というところについては、スピード感を持ってということでございますので、どういった形が取れるのかということをスピード感を持って検討させていただきたいと思っております。
また、年金制度の体系につきましても、説明の中でも申し上げましたけれども、令和5年の国民年金被保険者実態調査の結果を踏まえまして、その実態がより反映されるような形で検討していきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○佐藤委員 ぜひよろしくお願いいたします。
○翁部会長 ありがとうございました。
それでは、庄子委員、いかがでしょうか。
○庄子委員 御説明をありがとうございました。
私も、まとめのところでコメントをさせていただきたいと思います。ポイントの2ページ、公的年金の財政状況の評価の記載は非常に重要だと、私も感じております。前段、1つ目の白丸では、中ほどにマクロ経済スライドによる給付水準調整が行われたことで年金財政にプラスの効果をもたらしたというプラスの面を記載している一方で、2つ目の白丸では、合計特殊出生率が出生低位の仮定値を下回っているという記載などは、非常に重要だと思っております。特に、人口動態については、運用収支とかとは異なって、変動が急激に起こるものではなくて、傾向は長期的に続くと私は理解しておりますので、この辺のところをしっかりとここのまとめのポイントで表現したところは非常に重要なのではないかと考えてございます。
以上でございます。
○翁部会長 どうもありがとうございました。
寺井委員、いかがでしょうか。
○寺井委員 御説明をありがとうございます。
声が割れて、聞き取りづらくて、申し訳ありません。
今日、このように報告書案が提示されるまでに、作業部会で非常に活発かつ冷静に様々な視点から見て議論がなされた結果であるということ、まず、誇りに思っているということを申し上げたいと思います。
今、庄子委員もおっしゃったのですけれども、財政状況の評価で、マクロ経済スライドがどういう効果を持っているのか、少子化が進行していることは多くの国民も知っているけれども、それが年金財政とどう関わるのかといったやや専門的な知識を要することをここのポイントでしっかりと書くことによって、これを見て、国民の皆さんがいたずらに年金制度の持続可能性について不安を持たない、そのために資することができたらと、切に思っております。このように事実をまずは受け止めることと、ほかの方々もおっしゃっているのですけれども、長期的な観点から財政状況の動向を見るべきだということの両方が、大事なことだと思っております。このように毎年報告書を出しつつ、年金財政が続いていけるようにしっかりと評価をしていくという私たちの役割もさらに認識しているところです。
以上です。
声が割れて、すみませんでした。
○翁部会長 どうもありがとうございました。
枇杷委員、いかがでしょうか。
○枇杷委員 ありがとうございます。
皆さんもおっしゃってらっしゃるのですけれども、情報量がどんどん増える中でポイントをどう絞って伝えていくかということに関して、作業部会も含めて、事務局も含めて、よく検討していただいて、この成果につながったのかなと認識しております。
事務局から御紹介はなかったのですけれども、冊子のボリュームもかなり厚くなっている中で、簡素化という取組にも取り組んでいただいて、読みやすさという観点も少し向上しているのかなという点も評価できるところだと思っています。
一方で、国民にとってのこの情報を正しく理解することの難しさは本当に痛感するところなのですけれども、冊子をつくって、あるいは、ウェブに載せて、「読んでください」と言うだけだと、なかなか厳しいのかなという部分も、正直、感じるところがあります。先ほどもコメントがあったと思うのですけれども、プッシュ型というのでしょうか、情報の発信をいろいろな形でやっていくことについては、さらなる工夫をぜひやっていただきたいと思います。要するに、DCの教育などでは馬を水飲み場に連れて行くみたいなことが悩みになるとよく言われているのですけれども、それほどこのテーマは難しいので、関心がない人はなかなか見に行かないし、変に関心がある人は逆に自分の都合よく読んでしまうみたいなこともあるので、その辺りをうまくやっていけるといいと思います。
以上です。
○翁部会長 どうもありがとうございました。
オンラインの駒村先生、いかがでしょうか。
○駒村委員 遅れて来まして、大変恐縮です。
事務局におかれては、大変丁寧におまとめいただきまして、ありがとうございます。さらに充実したものになったと思っております。
一方で、今までに多くの委員からも御指摘があったように、この報告書をきちんと国民の皆様にも理解していただくように周知いただくよう、工夫をしていく必要あるかと思っています。ただ、正直に言って、まだ難しい表現が残っていることは間違いないとは思います。正確性でやるとどうしても文章が少し読みづらい部分もありますけれども、今後、正確性とともに分かりやすさを改善していく必要はあるのではないかと、私も、最後まで読み直しまして、もう少し、図表、特に図などを使って分かりやすくするところはあるかと思っています。今後とも、またバージョンアップをしていただければと思っております。とにかく多くの方に見られるように広報の工夫をしていただきたいと思っております。
ありがとうございました。
○翁部会長 ありがとうございました。
それでは、部会長代理の野呂委員、お願いいたします。
○野呂部会長代理 ありがとうございます。
今の委員方の御意見ともかなりかぶるのですけれども、今回の報告に関しまして、2点ほど、事務局に、お願いといいますか、提案のようなものがあります。
その1点目は、今回の報告を機に、このマクロ経済スライドの効用のようなものをもう一段PRできないかと思っております。いろいろな委員の方も言われました、資料1の、下のページで2ページ目、ポイントの財政状況の評価のところで、ブルーの枠の中の上から5行目、「また、令和5(2023)年度は、マクロ経済スライドによる給付水準調整が」から4~5行のところです。これは、今回の報告書で初めて入った文章ですけれども、非常に大事だと思います。マクロ経済スライドを導入して、20年ぐらいたつのですかが、ようやく、本来の形といいますか、計画・企図したような形で、キャリーオーバーも含めて、適用できた。そのことによってどういう効果があったかと言うと、もちろん年金財政にプラスということもあるのですけれども、もう1つ、いわゆる現役世代の賃金の伸びが、私も含めたいわゆる年金生活者の年金額の伸びを上回ったということ、世代間の不公平、若年層の負担が大き過ぎるという今の世の中の問題指摘にも応えるような形でワークをしたということです。年金財政にプラスなだけではなくて、そういう世代間の不公平に対する声にも応えられる、一石二鳥だということをもっとPRできないかと思います。一部ではマクロ経済スライドそのものに対して結構強烈な批判もあるので、そうではないよということをPRできるいい機会ではないかと思いました。
もう1点が、年金制度は非常に巨大な制度なのですけれども、被保険者や受給者の属性分析ができるツールをあらかじめ準備できないかとつくづく感じました。先ほどの事務局の御説明の最後に、資料3の182ページの御説明がありまして、免除等の人の中身について、属性やどれぐらいの期間で免除になっているかということについて、さらなる検討が必要だと指摘いただいたわけです。実はこれはこれまでのいろいろなヒアリングの場でも何回かお願いしてきたのですけれども、なかなか難しいとの御回答をいただいております。ただ、免除に該当する人は、将来の低年金者といいますか、貧困高齢者のような人の予備軍である可能性が高く、そうした人が600万人、全額免除だけでも230万人いるということは、看過できない大きな問題ではないかと思います。しかし、いきなり免除者の中身はどうですかと言われても、この巨大な年金システムでデータをすぐに出すことは非常に難しいのではないかとも思います。なかなか回答が出てこないということもよく理解できるところであります。そこで、思いつきですけれども、何千万人や億という単位の年金制度の加入者を全数で調査することには限界があると思いますので、あらかじめ被保険者あるいは受給者の個票を何百分の1かでサンプリングをしたデータベースをつくっておいて、匿名化した上で、そのサンプリングデータベースをクロス分析するような形で属性が見られないかなと思います。医療のレセプトデータのNDBみたいな精緻なものができればいいのですけれども、そこまで精緻ではなくても、十分有為に傾向を分析できるのではないかと思いました。サンプルのデータベースをつくるということは素人の思いつきのようなものなのですけれども、今回の年金財政検証では外国人の労働者という新たな視点なども出てきまして、これもまた分析しなくてはいいけない。全数で個票を見ることはあまりに大変過ぎるので、そういう小さなサンプルがあって、まずはそこから傾向を見るということができればいいかなと思いまして、今後、検討いただけないかと思っております。
以上でございます。
○翁部会長 何かありましたら、お願いします。
○楠田首席年金数理官 御提案をありがとうございます。
いただいた御提案につきましては、どのようなことができるかというところを、関係課とも相談をしつつ、検討させていただきたいと考えております。
○翁部会長 特に追加的にはございませんか。
皆様の意見と重なりますところはもう省きまして、今回、エクセルでデータを見られるようになったことはすごくありがたくて、いろいろと研究者が外から見ていく上で、エクセルでダウンロードができて検証ができるようになるということは大変大きな一歩だと思っております。
今、野呂委員がおっしゃった外国人のところと2-3-17の全額免除・納付猶予者の割合の高さですよね。ここは、今後を考えると、非常に危惧しているところです。この方たちがどういう属性でどういう状況になっていてということを調査することはとても大事だと思っておりますので、ぜひ年金局でもこういった実態をしっかりと分析していただきたいと希望しております。
また、広報についても皆様から御意見が出ましたので、いかに分かりやすく届けていくかということについて、ぜひ御検討をお願いしたいと思っております。
私からのコメントは以上でございますが、特に、報告書の案につきまして、追加的にございませんでしょうか。よろしいですか。
それでは、委員の皆様には、いろいろと御意見をいただきまして、御議論を尽くしていただいたものと思いますが、報告書そのものの修文が必要との御意見はございませんでしたので、これをもちまして本部会の令和5年度公的年金財政状況報告とさせていただきたいと思います。よろしいでしょうか。
(委員首肯)
○翁部会長 それでは、これで本部会の報告とさせていただきたいと思います。
もし誤字や脱字等の細部の修正が必要になった場合には、私に御一任いただければと思っております。
それでは、令和5年度公的年金財政状況報告についての審議は以上で終了いたしました。
事務局から、今後の日程につきまして、お願いいたします。
○楠田首席年金数理官 今後の日程につきましては、調整して御連絡申し上げますので、どうぞよろしくお願いいたします。
○翁部会長 それでは、第104回年金数理部会はこれにて終了いたします。
どうもありがとうございました。