- ホーム >
- 政策について >
- 審議会・研究会等 >
- 労働条件分科会組織再編に伴う労働関係の調整に関する部会 >
- 2025年3月25日 第1回労働政策審議会労働条件分科会「組織再編に伴う労働関係の調整に関する部会」 議事録
2025年3月25日 第1回労働政策審議会労働条件分科会「組織再編に伴う労働関係の調整に関する部会」 議事録
労働基準局労働関係法課
日時
令和7年3月25日(火) 11:00~13:00
場所
厚生労働省共用第6会議室(中央合同庁舎5号館3階)
(東京都千代田区霞が関1丁目2番2号)
(東京都千代田区霞が関1丁目2番2号)
出席者
- 公益代表委員
- 山川部会長、池田委員、石﨑委員、髙橋委員、成田委員
- 労働者代表委員
- 木村委員、小林委員、冨髙委員、浜田委員
- 使用者代表委員
- 佐久間委員、鈴木委員、鳥澤委員、松永委員
- オブザーバー
- 萬場信用制度企画室長(金融庁企画市場局総務課)
- 事務局
- 岸本労働基準局長、尾田大臣官房審議官(労働条件政策、働き方改革担当)、五百籏頭労働関係法課長、池邉労働関係法課課長補佐
議題
- (1)部会長・部会長代理の選出について
- (2)運営規程について
- (3)組織再編に伴う労働関係に関する制度等の現状について
- (4)組織再編部会の進め方について
議事
- 議事内容
○労働関係法課課長補佐 定刻となりましたので、ただいまより第1回「労働政策審議会労働条件分科会組織再編に伴う労働関係の調整に関する部会」を開催いたします。
委員の皆様におかれましては、大変御多忙の中、お集まりいただきまして誠にありがとうございます。
本日の部会は、会場での御参加とオンラインでの御参加の双方で実施いたします。
本日は、13名全員出席となっております。
労働政策審議会令第9条では、委員全体の3分の2以上の出席または公労使各側委員の3分の1以上の出席が必要とされているところ、定足数は満たしておりますことを御報告申し上げます。
部会長を選出していただくまでの間、私、労働基準局労働関係法課課長補佐の池邉が議事の進行を務めます。どうぞよろしくお願いいたします。
なお、御発言の際はマイクのスイッチをオンにしていただき、マイクを口元に近づけていただきますよう、よろしくお願いいたします。また、御発言が終わりましたらマイクのスイッチをお切りくださいますよう、よろしくお願いいたします。
まず委員の皆様の御紹介ですが、大変恐縮ながらお手元の資料1の委員名簿をもって御紹介といたします。
また、オブザーバーとして金融庁企画市場局総務課信用制度企画室の方々に御出席いただいております。
それでは、カメラ撮りはここまでといたします。
本日の議事に入ります。
最初に、本部会の「部会長・部会長代理の選出について」でございます。労働政策審議会令第7条第4項において、「部会に部会長を置き、当該部会に属する公益を代表する委員のうちから、当該部会に属する委員が選挙する」とされているところ、本部会で本審の委員でいらっしゃるのは山川委員のみですので、山川委員に部会長をお願いしたいと存じます。皆様、よろしいでしょうか。
(委員 異議なし)
○労働関係法課課長補佐 それでは、ここからは山川部会長に進行をお願いしたいと存じます。よろしくお願いいたします。
○山川部会長 山川でございます。マイクが声を拾いにくくなるかもしれないため、座ったままで失礼いたします。
部会の議案につきまして、委員の皆様の御理解と御協力を得て進行させていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
部会長代理について、労働政策審議会令7条6項に、「部会長に事故があるときは、当該部会に属する公益を代表する委員又は臨時委員のうちから部会長があらかじめ指名する者が、その職務を代理する」と規定されております。あらかじめ御相談の上、本日オンライン参加の石﨑委員に部会長代理をお願いしております。御了解いただければと思います。
石﨑委員、どうぞよろしくお願いいたします。
○石﨑部会長代理 よろしくお願いいたします。
○山川部会長 では、次の議題は「運営規程について」です。新しく設置された本部会の運営規程(案)につきまして事務局から御説明をお願いします。
○労働関係法課長 労働関係法課長の五百籏頭でございます。
それでは、資料2及び資料3について御説明をさせていただきます。
資料2について、本年1月21日に開催された労働条件分科会におきまして、企業組織の再編に伴う労働関係の調整に関する専門の事項を審議するために、分科会の下に部会を設けることが承認されたところでございます。
次に、資料3でございます。こちらは、本部会の運営規程案でございます。
内容といたしましては、第2条に、各委員は部会長の許可を得て代理者を出席させることができますが、定足数の取扱いについては欠席したものとして取り扱うという規程を置いてございます。
御説明は以上でございます。
○山川部会長 ただいまの御説明につきまして、御質問、御意見等がありましたらお願いいたします。オンライン参加の委員におかれましては、御発言の希望がある場合にはチャットで「発言希望」と書いてお知らせいただければと思います。御質問、御意見等ありますでしょうか。よろしいでしょうか。
御異議ございませんでしたら、本部会の運営規程はただいま資料3について説明がありましたように決定いたしまして、労働政策審議会関係法令とこれら運営規程に基づいて本部会を運営させていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
次の議題は、「組織再編に伴う労働関係に関する制度等の現状について」でございます。事務局から御説明をお願いします。
○労働関係法課課長補佐 改めまして、労働関係法課課長補佐の池邉でございます。こちらの議題について御説明をいたします。
資料4に基づき、組織再編に伴う労働関係に関する制度等の現状として、「事業性融資の推進等に関する法律」関係の概要及び組織再編に係るこれまでの検討状況を御説明いたします。以降、「事業性融資の推進等に関する法律」につきましては、「事業性融資推進法」と言い換えます。
それでは、資料4の1ページをまず御覧ください。「事業性融資推進法の概要」について御説明いたします。
2ページを御覧ください。
事業性融資推進法は、昨年の通常国会で成立し、令和6年6月14日に公布された法律であり、不動産等の有形資産に乏しいスタートアップ等が不動産担保や経営者保証によらず、事業の実態や将来性に着目した融資を受けやすくなるよう「企業価値担保権」を創設するものでございます。企業価値担保制度の概要については、後ほど御説明いたします。
施行日は、公布の日である令和6年6月14日から起算して2年6か月を超えない範囲内において政令で定める日とされていますが、所管省庁である金融庁によれば、令和8年春頃を予定しているとのことでございます。施行に向けた準備、検討状況等につきましては後ほど金融庁から御説明いただきます。
この法律の附帯決議におきまして、「事業譲渡又は合併を行うに当たって会社等が留意すべき事項に関する指針」については、政府において、専門的な検討の場を設け、新たな企業価値担保権の創設を踏まえて必要な見直し等を行うこと、加えて、合併・事業譲渡をはじめ企業組織の再編に伴う労働者保護に関する諸問題については、その実態把握を行うとともに、速やかに検討を進め、結論を得た後、必要に応じて立法上の措置を講ずること」とされております。こちらを受けて設置いたしましたのが本部会でございます。
3ページを御覧ください。
続いて、「組織再編に関する法整備と労働関係の調整に関する検討経緯」について御説明いたします。
4ページ、5ページを御覧ください。
詳細は割愛いたしますが、組織再編に伴う労働関係の調整に関する検討につきましては、厚生労働省においては、組織再編に関する累次の法整備の中で組織再編に伴う労働関係上の問題への対応についての立法上の措置を含む検討を求める附帯決議等を契機といたしまして、資料に赤字で下線を付している過去4回の研究会、検討会が行われております。
各研究会、検討会には資料上、AからDの符合を振っております。
Aの研究会での議論を受けて労働契約承継法・同法施行規則の制定・施行、Bの研究会での議論を受けて同法に基づく指針の策定・適用が行われました。
5ページになりますが、Cの研究会、Dの検討会での議論を受けて、平成28年に労働契約承継法施行規則及び同法に基づく指針の改正、そして事業譲渡等指針の策定・適用が行われております。
6ページを御覧ください。
続いて、「事業譲渡等指針の概要」について御説明いたします。
7ページを御覧ください。
事業譲渡等指針では、事業譲渡について労働者の承諾の実質性を担保し、労働者と使用者との間での納得性を高めるための手続として、労働者の過半数で組織する労働組合等と事前に協議するよう努めることが適当であること、事業譲渡を行う際に、譲渡会社との間で締結している労働契約を譲受会社等に承継させる場合には民法の規定により承継予定労働者から承諾を得る必要があるため、承諾に向けた事前の協議を行うことが適当であること等の留意事項を提示しております。
加えて、譲渡会社等は先ほど申し上げた労働組合との協議が行われていることをもって、労働組合による当該事業譲渡に係る適法な団体交渉の申入れを拒否することができないこと等の労働組合法上の団体交渉に関する留意事項や、承継予定労働者が労働契約の承継に同意しなかったこと等のみを理由とする解雇等は認められないこと等の解雇に関する留意事項等も提示しております。
さらに、合併に当たって留意すべき事項についても提示しております。
8ページを御覧ください。
次に、「企業価値担保制度の概要」について御説明いたします。
9ページを御覧ください。
企業価値担保制度のイメージ図になります。こちらのイメージ図は、事業性融資推進法を基に労働行政に関係する部分について厚生労働省において作成したものでございます。また、事業性融資推進法で原則とされている、事業譲渡によって担保目的財産を換価する場合を示したものとなります。この図は、左から右へ順番に見ていただきたいと思います。
まず、一番左の図を御覧ください。会社は金融機関から与信、事業の成長可能性を踏まえた融資を受ける際に会社を委託者とし、信託会社を受託者とする信託契約によって企業価担保権を設定します。企業価値担保権の担保目的につきましては、事業性融資推進法上、「会社の総財産」と規定されていますが、こちらは会社の事業全体の価値を意味すると考えられています。
企業価値担保権の設定が行われた後、会社の事業の価値を高めるため、金融機関による継続的なモニタリング・支援を内容とする伴走型支援が行われますが、それでも会社が債務不履行に陥る場合はあり得ます。
真ん中辺りの図を御覧ください。番号を振っておりますが、1会社が債務不履行に陥った場合には、2金融機関は信託会社に対し企業価値担保権実行の指図を行います。3これを受けた信託会社は裁判所に対し企業価値担保権実行手続開始の申立てを行います。
これを受け、4裁判所はまず会社が債務不履行に陥っていることや、企業価値担保権が設定されていること等を確認した上で実行手続開始決定をし、同時に管財人を選任します。
その後、5裁判所から実行手続開始決定の通知がなされますが、通知の対象には労働組合等、過半数労働組合があればその組合、過半数組合がなければ過半数代表者も含まれております。
管財人は、実行手続開始決定によって事業の経営権や担保目的財産である総財産の管理処分権を引き継ぎ、こちらの権限を基に事業を継続しながら総財産を換価するために買受人候補の中から買受人、事業譲渡先を探索いたします。
なお、管財人は選任された後、労働組合等に対する情報提供努力義務を負います。
一番右の図を御覧ください。管財人は買受人を見つけると、1裁判所に対し事業譲渡に係る許可の申請を行います。こちらを受けて2裁判所は労働組合等から意見を聴取した上で、3管財人に対し事業譲渡の許可をします。こちらを受けて4、5と進んでいきますが、管財人は買受人に対し、事業譲渡という形式で総財産を売却する。そして、買受人は管財人に対してその代金を支払うという形になっております。
管財人は、受け取った代金からまず労働者に対して実行手続開始決定前6か月間の未払賃金や、実行手続開始決定後、管財人が事業を動かした後に生じた賃金を優先的に支払った後、信託会社に対し、7不特定被担保債権留保額、8配当可能額を交付いたします。その後、信託会社は金融機関に対し、配当可能額を交付いたします。
なお、担保権者に交付された不特定被担保債権留保額は、設定者の破産手続における弁済原資となります。この原資から弁済を受ける可能性があるものとしては、実行手続の中で弁済を受けられなかった債権、労働関係で言えば、例えば実行手続開始決定の6か月よりも前の古い賃金債権が考えられます。
続きまして、金融庁の萬場室長から、事業性融資推進法施行に向けた準備、検討状況等について御説明いただきます。
○金融庁企画市場局総務課萬場信用制度企画室長 御紹介にあずかりました金融庁企画市場局総務課信用制度企画室長の萬場と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
私からは、事業性融資推進法施行に関する準備や検討状況及びガイドラインについて御説明させていただきたいと思います。
資料に入る前に表紙のところですが、事前に御説明申し上げたいこととして、まず1つ目はスケジュールでございます。先ほど池邉補佐からも御説明がありましたが、事業性融資推進法は昨年、令和6年6月に成立し、公布の日から起算して2年6か月を超えない範囲内において政令で定める日に施行することとされております。
法律に基づく企業価値担保権を利用した融資について早期に取り組みたいという声も受けており、金融庁としては来年、令和8年の春頃を目途に施行することを目指して関係する政省令等の準備を進めております。
また、本法律の成立に当たって、国会の附帯決議において企業価値担保権制度の利用に当たって留意すべき考え方をガイドラインの形で示すことが決議されております。現在、これを受けてガイドラインの検討を進めているところ、ガイドラインにつきましては金融審議会のワーキング・グループに作成いただきました報告書をベースに法制度の策定に当たっての考え方や、実際の利用に当たって留意すべき事項を記載するという予定になってございます。
今日御説明する資料につきましては、ガイドラインの策定に当たってその前提となっている金融審議会のワーキング・グループの報告書について重要と認識されるポイントを留意すべき考え方ごとに抜き出したものでございます。こちらで記載されている内容がガイドラインにも記載されているというイメージでございます。
それでは、1枚おめくりいただければと思います。
資料の2ページ目ですが、2022年9月30日の金融審議会総会において金融担当大臣より、「スタートアップや事業承継・再生企業等への円滑な資金供給を促す観点から、事業性に着目した融資実務のあり方も視野に入れつつ、事業全体を担保に金融機関から成長資金等を調達できる制度について検討を行うこと」との諮問がなされたことを受けて、金融審議会に「事業性に着目した融資実務を支える制度のあり方等に関するワーキング・グループ」が設置され、この資料に記載している日程と内容で議論が行われました。
次のページへお進みください。
3ページ目では、「担保目的財産の考え方について」、そして「労働契約等における契約上の地位について」に関して金融審議会ワーキング・グループの重要な提言をまとめてございます。
まず、企業価値担保権は企業の事業全体の価値に担保権を設定することで、資料の上の青い箱の2つ目のチェックにありますように、労働者や商取引先を適切に保護し、金融機関による事業の継続及び成長のための支援を円滑にすることを目指すものであり、事業性に着目した融資実務に適合する新たな選択肢となるものでございます。
このように、事業全体の価値に担保権が設定される結果、企業が持つノウハウ、のれん、契約上の地位等につきまして、それらが事業を構成する一部分であるという意味で、抽象的には企業価値担保権が及ぶと説明できることになります。
もっとも、このことで個別の資産に何らかの影響が発生するものではございません。企業価値担保権を設定したとしても、企業は通常の事業活動を企業価値担保権の設定前と同様に継続することになり、企業価値担保権を設定した企業の契約の相手方にも何ら影響はございません。
このことは、下の青い箱の1つ目から3つ目のチェックに記載のとおりであり、このように金融審議会ワーキング・グループでも明確化いただいたということで御安心いただければと思います。
4ページ目ですが、こちらでは「担保目的財産の換価の方法」に関して、同様に金融審議会ワーキング・グループの重要な提言をまとめております。今、申し上げましたとおり、企業価値担保権は事業全体の価値を把握する担保権のため、資料の2つ目のチェックのとおり、実行は事業を解体せず雇用を維持しつつ承継することが原則とされております。このように、事業が一体として譲渡されることで雇用も維持できると考えてございます。
また、資料の3つ目のチェックのとおり、管財人によるスポンサー選定や裁判所による事業譲渡の許可に際しては、倒産手続における事業譲渡と同様に事業譲渡の金額の多寡のみではなく、雇用の維持や取引関係の維持、その他多様な事情を考慮して最も適切な承継先を選定することが求められると考えられる、とされております。
5ページ目でございます。
こちらでは、「企業価値担保権の実行に係る労働者とのコミュニケーション」に関しまして同様にワーキング・グループの重要な提言をまとめているところです。企業価値担保権の利用に当たっては、労働者とのコミュニケーションも重要になります。
ワーキング・グループ報告書においては、資料の1つ目のチェックの➢の3つ目辺りですが、管財人が実行手続の開始決定後、遅滞なく労働組合等に対し、担保権実行手続の概要や事業承継先選定に当たっての原則等、必要な情報を提供する手続を設けることが考えられるとされており、事業性融資推進法においてはこれを受けて管財人の労働組合等に対する情報提供努力義務が定められております。
また、資料の下から2つ目のチェックですけれども、このとおり「管財人が、労働者との合意に向けて、労働組合等に対して必要な情報を提供するに際しては、労働者保護の実効性を高める観点から、事業譲渡又は合併を行うに当たって会社等が留意すべき事項に関する指針等における留意事項を参考にすることが考えられる」とされております。
最後のページになりますが、6ページ目では「企業価値担保権の設定に係る労働者とのコミュニケーション」及び事業性融資推進法と「労働関係法令との関係についての考え方の整理」についてまとめております。
資料の上の箱の2つ目のチェックのとおり、企業においては日常的な経営の中で労働者とコミュニケーションを図ることが望ましいと考えられますが、当該コミュニケーションは資金調達等を契機にされることがあってもよいと考えられます。このため、ワーキング・グループ報告書では一番下の行のところになりますが、「労働者の理解と協力を得るべく、担保権の内容を含め、企業が置かれている環境や経営課題などを併せて労働者とコミュニケーションを図ることが考えられ、労使関係者の意見も踏まえながら、そうした労働組合等への情報提供等の促進に向けて取り組むことが望まれる」との提言をいただいております。
また、事業性融資推進法と労働関係法令との関係につきましてワーキング・グループ報告書では、下の箱の1つ目のチェックの➢のところですが、「通常、担保権を設定すること又は与信を提供することのみをもって、労働組合法上の使用者に該当するとはいえないものの、担保権者や与信者が「基本的な労働条件等について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にある」場合には、労働組合法上の使用者性を有する可能性がある」ことを御指摘いただいております。
加えて2つ目のチェックになりますが、「管財人は労働組合法上の使用者の地位を承継すると解され、その権限に関し労働組合等からの団体交渉に応じる義務が認められる」との御指摘もございました。
なお、ワーキング・グループ報告書でも御指摘いただきましたとおり、実行手続における労働契約の承継においても、労働契約の承継に係る労働法制上のルール等が適用されるものと考えております。
具体的には3つ目のチェックの➢のところですが、解雇権濫用法理等の判例法理や、事業譲渡等指針における留意事項が該当するものと考えられる旨、御指摘をいただいております。
以上、御説明させていただきましたワーキング・グループの報告書を踏まえながら、ガイドラインを作成してまいりたいと考えております。
私からの説明は以上です。
○労働関係法課課長補佐 ありがとうございました。
資料の説明は以上でございます。
○山川部会長 金融庁からも御説明をいただきましてありがとうございます。
それでは、ここまでの事務局からの説明、それから金融庁からの説明につきまして御意見、御質問がありましたらよろしくお願いいたします。
オンラインでの御参加の委員におかれましては、先ほどと同様にチャット機能を用いて「発言希望」とお知らせいただければと思います。御質問、御意見等ございますか。
冨髙委員、お願いします。
○冨髙委員 ありがとうございました。
部会での議論をスタートするに当たり、労働側の基本的な考え方を申し上げたいと思います。
今回、事業性融資推進法の附帯決議との関係で、企業価値担保権に関わる事業譲渡が主なテーマになると思いますが、現在、企業の資金調達手法の多様化だけではなく、M&Aや事業買収、または事業再編なども広く行われており、国もこれらの施策に関する企業の支援強化の方向性を打ち出していると認識しております。
ただ、事業再編などに対する労働者保護の施策は十分ではないと認識しており、とりわけ事業譲渡では労働者保護に関する法的なルールが整備されていないと考えておりますし、今ほど御説明いただきました指針にとどまっているのが現状だと思います。
当然のことながら、こういった事業再編、買収等がなされたとしても、そこで働く者の雇用、労働条件などへの保護というのが置き去りにされることがあってはならないと考えており、企業への支援を強化するのであれば、同様に労働者保護のルールの強化も併せて行うべきだと考えているところです。
会社分割時の労働契約承継法に定めがある労働契約や労働協約の承継ルール、労働者からの異議申立て、労働組合との協議や情報提供義務などの手続ルールのほか、労組法上の使用者性の明確化といったものについても具体的な検討を進めるべきでありますし、事業譲渡等指針の法律への格上げも含めて検討していくことが重要だと考えているところでございます。
また、今回の企業価値担保権ですが、先ほども御説明があったように、労働契約も担保の対象になっており、ほかの担保権とは異なる特徴を持っていると考えているため、担保権設定時における労働組合との協議などの検討も重要だと考えております。
また、加えて担保権の実行場面ですと、事業譲渡が行われる場合には一体換価が原則とはなっていますが、実際、現実問題として個別の事業、または財産の一部譲渡が行われた場合には従前の事業譲渡と同様に一部の労働者が譲渡元に残るなどにより労働条件の引下げが行われるなどの懸念もございます。
これまでも事業譲渡におきましては労働契約の承継、不承継をめぐって紛争が多く生じておりますが、会社の都合によって事前の話合い等もなされないままに労働者が雇用、または賃金等を失うような事態を招くことがあってはならないと考えております。そのため、今回、企業価値担保権の創設に伴う事業譲渡等指針の一部見直しにとどまることなく、事業譲渡をはじめとする組織再編全般における労働者保護の法的ルールの整備に前向きに取り組んでいくことが重要だと考えています。意見として申し上げておきたいと思います。
以上です。
○山川部会長 御意見ありがとうございました。
ほかに御質問、御意見等はございますか。
鈴木委員お願いします。
○鈴木委員 経団連の鈴木でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
私からは、企業価値担保権について一言申し述べたいと思います。
経団連は2022年に「スタートアップ躍進ビジョン」という提言をまとめ、その中でスタートアップ企業がデットファイナンスを円滑に行えるように企業価値担保権の創設を求めました。有形資産に乏しいスタートアップ企業等が円滑に資金調達する有力な選択肢として、制度創設には大いに期待をしているところでございます。
先ほど事務局から御説明もございましたが、企業価値担保権には、労働者保護に資する内容が相当多く盛り込まれているものと理解しております。例えば、担保権を実行する際には事業を解体せずに雇用を維持しつつ承継することを原則とするということや、未払賃金の債権が優先的に取り扱えるような措置なども盛り込まれており、他の担保権にはない特別な仕組みになっていると思っております。
企業価値担保権は、事業の継続等を制度趣旨とするということや、担保目的財産が労働契約の使用者の地位を含めた総財産であるということから、こういった特別な制度設計になっていると理解しています。
一方で、企業価値担保権も他の担保権と同様、担保法制の体系の中で創設されたものであり、企業価値担保権について議論するに当たっては、担保法制または類似の制度、基本法令との整合性という観点からも考えていく必要性があると思っております。
つまり、制度特性からの検討と関連法制を俯瞰した検討という両面から議論する必要があるのではないかという趣旨でございます。
次に、担保権が実行されるということの意味合い、倒産との関係性について少し申し上げたいと思います。
先ほど事務局からも少し御紹介がありましたように、企業価値担保権が実行される状況というのは、債務不履行、つまり債務弁済が難しくなるような経営が悪化したときだ思っております。帝国データバンクの「事業存続型倒産」の実態調査を見ると、法的整理のスキームを用いて債務をカットし、事業譲渡などによって事業を存続、再生させる動きというものが最近活発化しているそうです。2014年度から2023年度の10年間で発生した負債5億円以上の倒産件数は4,611件あるそうですが、このうち1,549件、33.6%、3割強が事業譲渡等によって事業が継続されたということです。
ただし、これは裏を返すと、約7割の企業は事業譲渡等が行われることなく倒産し、事業と雇用の維持がかなわなかったということが伺われる調査結果ではないかと思っております。
先ほど冨髙委員からは、企業価値担保権にとどまらず組織再編全般について労働者保護の法的ルールを整備すべきとのご指摘がありましたが、こうした担保権実行等の実態も十分に踏まえた上で、円滑な企業再編と労働者の保護のバランスの取れた議論が進むことを期待しているところでございます。
私からは以上でございます。
○山川部会長 御意見ありがとうございます。
ほかにございますか。
浜田委員、どうぞ。
○浜田委員 ありがとうございます。
御説明ありがとうございました。私からは、金融庁資料で、金融審ワーキング・グループ報告書の記載3にある労働者とのコミュニケーションについて述べたいと思います。
事業再編時には労働者が働く場所がなくなってしまうのではないか、遠方への配転を命じられるのではないか、賃金が大幅に下げられるのではないかなど、将来に大きな不安を抱くことになります。将来に大きな不安を持ったままであっては、働く上でのモチベーションにも当然に直結することから、再編後の事業運営にも重大な影響を及ぼしかねません。
私が所属する産業別労働組合のUAゼンセンには、190万人の組合員がおり、約2,200組合ございます。この加盟組合の企業においても、様々な事業再編がこれまでも行われてきております。
事業再編が労働者にどのように知らされるかということも大きな課題になっており、多くの場合、事業再編が行われる事実だけが明らかにされ、事前に労使協議が行われない場合は先ほど申し上げたとおり自分の職場、仕事はどうなるのだろうか、労働条件はどうなるのであろうか、この職場にいて大丈夫なのだろうかという大きな不安を抱えた中で現状の仕事に継続して従事することになるわけです。
事業再編は経営が厳しい場合に行われることが多いため、私どもでは事業再編などについて4つの前提条件がクリアになっているかどうかを労使協議で確認を行っております。
1つ目は経営上、組織再編を行わなければならない理由、2つ目が組織再編を避けるために取った経営上の対策、3つ目が具体的再編案の経営上の妥当性、4つ目に事業再編を実施した場合の経営改善の見込みです。これらがクリアになって初めて具体的な労使協議が実効性をもち、労働者も事業再編を前向きに捉えることができるのではないかと思います。
その上で、対策委員会を設置するなどして様々な労働条件の確認を行うとともに、職場討議を何度も行い、労働者の不安材料を一つ一つ消化して、また再編後に労働条件が変更になった場合も労使協議が行えることの確認まで行います。承継先に労働組合がない職場だったとしても、事業再編後も変わらず今ある労働組合の活動を継続できるかどうかも大きな課題になります。
どのような事業であっても労働者の理解と協力は不可欠だと思いますが、再編時には使用者側がスポンサーや譲受会社などとの守秘義務を盾に事前の情報提供や協議を拒否するケースが散見されます。円滑な組織再編とその後の事業の維持、発展はもとより、労働者が安心して働き続けるためにも、繰り返しになりますが、実質的な労使協議は欠かせないと思います。まずは事業譲渡における労働組合等への事前の情報提供や協議がどれほど行われているのか、いないのかについて実態を把握することが必要であり、そうした実態を踏まえながら効果的かつ実質的な労使協議がなされるためにはどのような法整備が求められるのか、雇用の安定や労働者の不安の解消を図るという観点から、具体的な検討を進めていくことが重要かと思います。
私からは以上です。
○山川部会長 御意見ありがとうございました。
ほかに御質問、御意見等ございますか。
それでは、松永委員お願いします。
○松永委員 ありがとうございます。
これから議論が深められていくという段階ですが、私のほうから何点かコメントしたいと思っています。
まず、会社分割や事業譲渡、企業価値担保権の設定など、様々な目的、状況の中で行われていくのだろうと考えています。それで、企業価値を向上させるために事業を承継させ、発展させていくという目的で利用されることも多いと思いますが、一方で先ほど鈴木委員からもあったとおり、会社の財務状況が悪化しているというような厳しい状況において事業譲渡などが行われるケースも少なくないと考えています。
したがって、例えば過度なルールや画一的なルールを設けてしまうと譲受会社であるスポンサー企業のなり手が現れにくくなって、結果として労働者の雇用機会が失われてしまう可能性もあるのではないかと考えています。それで、円滑な組織再編が結果として労働者保護につながるという側面もあるということを十分踏まえた上でバランスの取れた検討、議論が必要になるかと考えています。
続きまして事業再編の手法について、合併や会社分割、事業譲渡、株式の譲渡、交換等あると思うのですが、それぞれの制度の中で趣旨や目的、あとは使われる場面など、取扱いの異なることがあると思っています。円滑な組織再編を可能にするためには、無理に要件などを合わせていくということではなくて、制度の背景にある多様性というものを確保しながら議論をしていくことが必要だと考えています。
3つ目としては、今回の中で組織再編のときの労使コミュニケーションの在り方をどうするかという部分は検討課題の一つになるかと考えています。一般論としては、労使はコミュニケーションを取るというのは重要であると認識していますし、特に会社分割や事業譲渡が行われるような場面では担保権が実行されるような苦しいときもあると思うため、とりわけ労使コミュニケーションというのは重要だと考えています。
そういう中で、例えば過半数労働組合があるような企業では双方向の協議ができる成熟した関係があると考えていますが、過半数組合がないような企業や、あとは成熟した労使関係というのはなかなか難しいという場合もあるのではないかと思っていますので、コミュニケーションの在り方を検討するに当たっては会社ごとにその実態の違いというのもあると思いますので、その辺りも十分に踏まえて検討が必要になってくるのではないかと考えています。
私のほうからは以上でございます。
○山川部会長 御意見ありがとうございました。
それでは、続きまして佐久間委員お願いします。
○佐久間委員 どうもありがとうございます。
私どもこの部会に参画させていただくに当たり、厚労省の事務局からいただきました研究会の報告等を拝見しました。例えば、企業組織再編に伴う労働関係法令上の諸問題に関する研究会報告、それから事業譲渡又は合併を行うに当たって会社等が留意すべき事項に関する指針、また先ほどの金融庁のワーキング・グループの関係や、今、案になっているガイドラインの関係も拝読させていただき、全体的に会社合併、そして会社分割、事業譲渡という方法がありながらも、その意思決定について、いつ・どこまで伝えるか、いつからどこまで反映されるかということがあると思いますが、総じて労側への説明というのは盛り込まれているのではないかと考えます。
これだけ労使のコミュニケーションを取りなさいということを言っていながら、どういうところを今回の指針において観点にするのだろうかということが少々分からなかったため、今日労側の意見、そして使用者側の意見をお伺いして、なるほどということを感じたわけでありますが、やはりこの中で労使コミュニケーションの在り方というのが相互理解には大変必要だと思っています。
それで、使用者側にとってもこういうことを進めながら企業を成長させていく、または企業価値担保という新しい設定方法によって金融関係との財政上の関係など、そういうものを盛り立てていくというか、より良くしていくための手法として有効なのだろうか、これからも活用されるのだろうか、と考えている次第です。
本部会の開催に当たって、先ほど連合さんのほうからも御説明、御意見がありましたが、労側が懸念される意見も、もっともと理解できるところだと思います。これは厚生労働省 ご担当事務局に対する御質問になるかもしれませんが、今回取りまとめをするに当たって、今まで出された報告書、これは時代によって、時期によって違うと思うのですが、今回また新たな時代ということでそれを取りまとめていながら、どこまで具体的に労働側への説明項目等として盛り込んでいくのか。
例えばコミュニケーションの在り方という面も、進め方一つというのは各社で違うと思います。それを分類しながら、また調査をしながら取りまとめていこうとしているのか。一つ一つの段階を具体的に捉えていこうとして、このように進めなさいということでやっていくのか。その辺を伺いたいと思います。
これは質問ですが、以上でございます。
○山川部会長 ありがとうございました。
御意見と御質問をいただきました。御意見に関しても事務局から何かあればと思っていましたので、その際に今の佐久間委員の御質問についても事務局からお伺いしたいと思います。
鳥澤委員は御発言希望であったかと思いますが、いかがでしょうか。
○鳥澤委員 ありがとうございます。鳥澤です。
資料の取りまとめ及び御説明をありがとうございます。意見を申し上げます。
本部会の開催のきっかけとなりました企業価値担保権につきましては、スタートアップをはじめとした中小企業の成長に資するものだと考えております。現状の融資における担保となるような有形資産に乏しいスタートアップ、中小企業において、本制度の積極的な活用が進めば、労働者や取引先を適切に保護した上で金融機関による事業の継続及び成長のための支援を円滑に行うことが可能になると考えます。
一方で、中小企業では事業承継や一部事業の継続が困難な場合、顧客のみ他社に譲渡し、廃業という選択肢が取られるケースが見受けられます。このような点に鑑み、本部会において議論が行われる事業譲渡等指針につきましては、規模の小さい事業者においても活用が進み、事業譲渡が支障なく実行できるよう、分かりやすく柔軟な設定をお願いしたいと考えます。事業譲渡の実態につきましては、中小企業では事例に乏しい部分譲渡をはじめ、部会内でのヒアリングや海外の実態把握を通じ、見識を深め、皆様と今後議論ができればと考えております。
どうぞよろしくお願いいたします。
○山川部会長 御意見ありがとうございました。
ほかに御質問、御意見等ございますか。
小林委員、どうぞ。
○小林委員 電機連合の小林です。よろしくお願いします。
私のほうからは、事業譲渡による雇用、労働条件の変更等について意見をさせていただきたいと思います。
今回の企業価値担保権の実行は事業譲渡によって行われるとされていますが、資料4の9ページの右側のような場面に至った場合、労働者の雇用も含めて何を譲渡するか否かは譲渡会社と譲受会社の間の個別契約の中で決まることになり、「会社分割・事業譲渡・合併における労働者保護のための手続に関するQ&A」を見ると、譲渡先に労働契約を承継させる場合、承継予定労働者から個別に同意を得る必要があると記載されています。
しかし、労働組合等のサポートもない中で、譲受会社への移転や承継、譲渡会社への残留、または労働条件の低下などを拒否できる労働者がどれだけいるのか、不本意ながらも同意せざるを得ない労働者が大半であるのが現実ではないかと思っています。
電機連合の加盟組合企業で事業譲渡が行われる場合は、適宜丁寧に労使で事前協議や交渉を行った上で実施されているケースが多数です。しかし、雇用を第一義に考え、譲渡後に変更となる労働条件を含め、同意している労働者が多数あるのが実態であると思われます。
そうした現状を踏まえると、企業価値担保権も含めて労働契約の承継や労働組合との協議などについて、資料4の7ページにあるような事業譲渡等指針による取組にとどまるべきではないと思っています。事業譲渡においても会社分割と同様に、労働者等への通知や異議申立てなどの労働契約承継法のルールを参考にしながら、踏み込んだ検討を進めるべきではないかと考えています。
以上でございます。
○山川部会長 御意見ありがとうございました。
ほかに御質問、御意見等はございますか。
木村委員、お願いします。
○木村委員 ありがとうございます。JAMの木村でございます。
私からも、事業譲渡における労使関係の課題について皆様と共有させていただければと思っています。
資料の4ページ、あるいは5ページにもあるように、会社分割につきましてはこの間、承継法等も含めて一定のルール化が進んできたのではないかと思っていますが、特に事業譲渡に関しては法制上の対策が不十分ではないかと懸念しています。
皆さんも御存じのとおり、会社分割や合併であれば包括承継になりますが、事業譲渡においては特定承継とされており、譲渡計画が会社間で決定された後で労働者に情報提供がなされる実態は、労働組合がない職場のように労使関係が成熟していないようなところも含めて多くあります。
また、労働組合がない職場で譲渡計画についての団体交渉を申し入れる、あるいは譲渡会社に労働組合があり、その労使で締結している労働協約等を承継してほしい旨を申入れたところで、譲渡会社、譲受会社ともに労働者側の意見をしっかりと取り合ってくれない事案が大半でございます。
先ほどもありましたように、事業譲渡等指針には、労使協議や労働者の意見を聴取するべきであると明記いただいておりますが、実際にJAMは100人未満の中小企業が7割を超える中小産別であり、中小企業では承継法や指針、あるいは事業譲渡等指針の内容についての理解が十分ではない実態もあります。また、どちらかといえば譲渡側が多いので、譲受側は自らに一方的に有利な条件や高圧的な条件を提示するケースもあります。
例えば、中小企業庁「中小M&A推進計画」の第1版には、譲渡側が証明しなければならない事項の一つに「労働組合がないこと」という項目がありました。
JAMの単組の中でも、この項目を踏まえて、いわゆるコンサル企業から、労働組合を解散しないと譲渡できないと言われた事例があります。当該労働組合は譲渡が成立しなければ企業の存続、雇用の維持が難しいと判断し、組合を解散してしまったという結果になりました。現場ではそうした問題が多く出ていることを認識いただきたいと思います。
また、もう一つの事例を紹介いたしますが、労働協約で事前協議約款、同意約款というのを持っている単組が、ある日突然、IRで事業譲渡が告知されました。そして、その基本合意書の中に労働協約や雇用は引き継がないという条件で事業譲渡の計画が当事者企業間において締結されたという事案です。
そうした現状を踏まえると、指針の補強を行っていただくよりも、やはり法律において労働者の意見聴取、または労働組合との事前協議を義務づけるべきであると考えます。また、株主資本主義からステークホルダー資本主義をめざす必要性が国際的にも大きなテーマとなっているわけですけれども、いまだに株主資本主義の考え方で労働者が二の次、三の次になっているのではないかというところもございます。
このように事業譲渡において労働法、労組法において使用者が団交拒否をしたり、そもそも譲受側がまだ使用者にはなっていないので労働組合と交渉するつもりはないという団交拒否が多く行われているというところです。
組織再編時における使用者性の課題についても重大な論点として本部会でも議論し、先ほど申し上げたように、労働者や労働組合が経営者と対等な立場で協議を行い、決定にも関与しうるような法的なルール化に向けた検討が必要です。
以上です。
○山川部会長 ありがとうございました。
ほかに御質問、御意見はございますか。
鈴木委員、どうぞ。
○鈴木委員 御指名ありがとうございます。
労働側委員のほうから、協議等について法令への格上げをすべきというような趣旨の御発言がありましたので、この点について少し発言したいと思います。
例えば事業譲渡の場合、事業会社との協議では、労働者のうち誰が承継予定者なのか、つまり、承継予定労働者の範囲が協議対象になると思います。
しかしながら、先ほど松永委員からも御発言があったかと思いますが、それぞれの企業の労使コミュニケーションの成熟度はかなり多様であり、集団的な労働条件設定に関する協議を何らか義務化しても、果たして組合がないところでワークするのか、私としては疑問があるところです。
また、承継法の7条措置が努力義務になっているということにも留意が必要ではないかと思っています。
少し観点が変わるかもしれませんが、御案内のとおり、日本では労働者の方が2人集まれば行政機関等への届出も必要なく、組合を結成して法的な保護が受けられます。したがいまして、事業譲渡等指針には書いておりませんが、平時から行政機関や大学などの教育機関が労働組合の意義など労組法の基礎的知識を周知したり、先ほど木村委員から御指摘があったようにコンサル会社の理解が不足をしているということであれば、こういったコンサル会社の関係者も含めた周知をしたりするということも重要な課題ではないかと思っています。さらに、組合がない企業の中でも、コミュニケーションの成熟度には相当程度相違があり、例えば、恒常的かつ実質的に労働条件を設定、協議をしているような労働者組織がある企業もあります。労働組合に限らず、労働者組織がある場合には、一段と高い協議の在り方を検討するということも建設的な議論につながるのではないかと思った次第でございます。
私からは以上でございます。
○山川部会長 ありがとうございます。
ほかに質問はございますか。
松永委員、お願いします。
○松永委員 ありがとうございます。
1つ事務局のほうに質問がありまして、可能な範囲で教えていただければと思うのですが、先ほどコメントが幾つかありましたけれども、事業譲渡の指針なのですが、この内容がどれくらい認知されているのかということや組織再編が実行される際に指針に沿った取組というのがどの程度行われているのかというのは事務局のほうで把握されていますか。
○山川部会長 ありがとうございました。まとめて事務局からお話を伺うときに、そこも含めてもし分かるようであれば説明をいただきたいと思います。
ほかに御質問、御意見等ございますか。
よろしいでしょうか。
それでは、非常に有益な様々な御意見をいただきましてありがとうございました。今回は最初の第1回ということで種々御意見をいただいたところですが、これらにつきまして事務局から何かあればお願いしたいと思います。
また、質問が具体的に2つございました。
佐久間委員からは、これまでの検討、企業組織再編に関する検討状況も踏まえて、今後の進め方に関わるような御質問であったかと思います。
それから、松永委員から今いただいたものが事業譲渡等指針に関する認知度、あるいは遵守状況と申しましょうか、そういうことについての把握はいかがかということでした。
それでは、事務局からお願いできるでしょうか。
○労働関係法課長 様々な御意見、それから御質問をありがとうございます。
まず、松永委員からいただきました御質問についてですが、事業譲渡等指針と組織再編周りのルールにつきましては私どものほうでリーフレットを御用意していまして、厚生労働省のホームページで掲載するほか、お問合せ等がありましたら各地の労働局などでも対応させていただいているところでございます。
他方で、再編に際して具体的に個々の事例においてどのような取組が行われているかの把握については、私どものほうで何らかの調査を現在行っているところではありません。個々に御相談等を承った際に、個別に把握しているというような状況でございます。
それから、佐久間委員からいただきました御質問なのですけれども、もしお許しいただけるならば、次の議題で今後の進め方についてまとめて御説明しようと思っています。そちらと重複するところが多々ありますので、次の議題のときに併せて御説明することでお許しいただければ幸いと考えております。
それから、たくさん御意見をいただいたことについてのコメントでございます。
まずは、多くの御意見、大変感謝をしております。ありがとうございます。本日を皮切りにこれから議論が始まってまいりますが、私ども事務局といたしましては附帯決議に基づきながら、本日も御意見をいただいた中にございましたが、実態を把握し、それもしっかり見た上で念頭に置きながら、労働者保護と、そして事業継続、この双方に配慮した望ましい形というのはどういうものであるのか、こういったことをしっかりこの場で御議論いただけるよう、事務局として準備に尽力してまいるつもりでございます。
事務局からは以上でございます。
○山川部会長 まず御質問につきまして、佐久間委員、松永委員、何かありますか。
よろしいですか。
○松永委員 松永です。御回答いただきましてありがとうございます。
まずはこの指針の周知されること、きちんと認知されるということがトラブルを軽減していくことになると思っていますので、どういう実態で行われているかというのは、なかなか難しいところはあると思うのですが、実態把握に努めてはどうかと思って御質問したという経緯です。どうもありがとうございます。
○山川部会長 ありがとうございます。
佐久間委員、次の進め方に関する議論のところでまとめてということですが、差支えございませんか。
○佐久間委員 はい、差支えありません。よろしくお願いします。
○山川部会長 ありがとうございます。
ほかに追加的に何か御質問、御意見等はございますか。よろしいでしょうか。
それでは、今、事務局からもございました「組織再編部会の進め方について」という次の議題に移りたいと思います。事務局から説明をお願いします。
○労働関係法課長 資料5の「組織再編部会の進め方」について御説明をいたします。
事業性融資推進法の施行日が令和8年春頃とされていることに加えまして、当該施行日までに企業価値担保権の創設を踏まえた見直し後の事業譲渡等指針の周知を行う必要があることを踏まえまして、今後はまず秋頃を目途に附帯決議の前段の企業価値担保権の創設を踏まえた事業譲渡等指針の必要な見直し等を行うための議論を行うことを考えています。
具体的な進め方としましては、企業価値担保権の担保目的財産の換価が原則として事業譲渡によるとされていることから、現行の事業譲渡に伴う労働関係についての実態把握を行う機会としまして、7月頃までをめどに組織再編を経験したスタートアップ企業についての調査報告や労使関係団体、有識者などからのヒアリングを行わせていただくことを考えています。
この実態把握につきましては事業譲渡にフォーカスを当てつつ、その後の議論の参考になっていくものと考えておりますので、スタートアップ企業をはじめ、そのほか様々な規模、業種の企業における事例からの示唆を得る機会にしたいと考えています。
また、附帯決議の後段の企業組織の再編に伴う労働者保護に関する諸問題につきましては、並行して実態把握を行って、これは海外を含めて行わせていただきまして、その結果を踏まえ、令和8年度以降に議論をさせていただく。このような全体の進め方を考えています。
私からは以上でございます。
○山川部会長 ありがとうございます。
それでは、ただいまの進め方に関する説明につきまして御質問、御意見等はございますか。
鈴木委員、どうぞ。
○鈴木委員 前の発言で申し上げたほうがよかったのかも分からないですけれども、この部会の議論の範囲、射程について質問でございます。
御案内のとおり、承継法の手続上、労働者等への通知と労働者からの異議申立てというのは書面で行うということになっています。ここはいろいろと議論があるのは承知をしていますが、私どもとしては電子化による紛失リスクも減る、さらに、円滑な手続にも資することから、協議の時間を確保する上でも労働者保護に資するのではないかと考えております。この通知の電子化という論点が本部会の射程になるかどうか、質問をさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。
○山川部会長 ありがとうございます。
事務局からいかがでしょうか。
○労働関係法課長 今の点につきましては、後段の議論というところは組織再編に係る労働者保護の諸問題ということで広く議論の射程を設けております。その範囲の中で手続の在り方であるとか、当該の方法が労働者保護の観点に資するものであるのかなど御議論いただく形が考えられようかと思います。
○山川部会長 鈴木委員、どうぞ。
○鈴木委員 ありがとうございます。
書面明示は労働基準法などに、幅広く関わってくる問題ですので、どのようなタイミングで、どのような場面で議論するのが望ましいのかということについては、事務局のほうで改めて御検討いただければと思います。よろしくお願いいたします。
○山川部会長 ありがとうございます。
ほかにいかがでしょうか。御質問、御意見等はございますか。
冨髙委員、お願いします。
○冨髙委員 ありがとうございます。
スケジュールについては一定理解するところでございます。先ほどの繰り返しにもなってしまいますけれども、附帯決議の趣旨というのは事業譲渡等指針の一部見直しだけを求めるものではなくて、あくまでも事業再編全般の労働者保護ルールの法制化も併せて検討すべきものだということを申し上げておきたいと思うところでございます。
実際に国会審議の中では、この企業価値担保権の創設による事業譲渡等指針の部分的な修正にとどまらず、事業譲渡をはじめ組織再編全般における労働者保護ルールの必要性に関する議論がなされていたと思っております。
海外の実態把握について、秋頃までというようなことで、令和8年度に議論というような形だったかと思います。海外の実態把握はやはり一定程度、時間は要するだろうとは思いますが、この部会において実態把握の結果を単に待つことなく、組織再編における保護ルールの法制化を見据えた検討に早々に着手すべきだと思いますし、それに必要な資料をぜひ示していただければと思っています。
先ほど使側の委員の皆さんから、過度なルール化や一律の規制に関する懸念や、指針の周知が重要であるというお話がございました。指針の周知は重要だとは思うのですけれども、先ほどの労側の委員からあった厳しい現状を重く受け止めれば、やはり指針の見直しにとどまらず、法律への格上げなども含めてしっかりと議論するべきだろうと考えておりますので、改めて意見として申し上げておきたいと思います。
以上です。
○山川部会長 ありがとうございます。
海外の実態の把握については並行してということですが、その点は先ほど御説明があったかもしれませんけれども、改めて御説明いただけますか。
○労働関係法課長 海外での実態の把握につきましては、現在事務局で具体的にどのように調査をやることができそうであるかなど、検討をしているところでございます。
ただ、国際的な状況を比較法の観点から承知をした上で御議論いただくことは大変重要なものと考えておりますので、その御議論に資する形で材料を御準備させていただきたいと考えております。
○山川部会長 資料5にあるとおり、海外の実態把握は並行して行われる想定になっていると理解しています。
冨髙委員、よろしいですか。何かございますか。
ほかに御質問、御意見等ございますか。
よろしいでしょうか。本日は第1回ということで組織再編に伴う労働関係の概要について確認していただいた上で、様々な有益な御意見をいただいたところでございます。
ここで、岸本労働基準局長から御挨拶をいただければと思います。
○労働基準局長 労働基準局長の岸本でございます。
委員の皆様方におかれましては、お忙しい中、この組織再編部会の委員をお引き受けいただきまして誠にありがとうございます。
本日、公務により冒頭遅れまして申し訳ございません。
組織再編に伴う労働関係の調整につきましては、直近では平成28年に学識経験者の皆様に加え、労使関係者の方々にもお集まりいただきました研究会、検討会を開催いたしまして、28年に報告書を取りまとめていただき、労働契約承継法の施行規則や指針の改正や事業譲渡等指針の策定につなげていただきました。
今回は事業性融資推進法の附帯決議を受けまして、改めてこの問題について御議論いただく場を設けさせていただいたところでございます。今後、忌憚のない御意見をいただき、精力的な御審議をいただけますことをお願い申し上げまして御挨拶とさせていただきます。
今後ともよろしくお願い申し上げます。
○山川部会長 ありがとうございます。
それでは、次回につきまして事務局から御連絡等ございますか。
○労働関係法課課長補佐 次回の部会の日時、場所につきましては調整中ですので、追って御連絡をいたします。
以上です。
○山川部会長 そういうことでよろしいですか。
それでは、本日の第1回の部会はこれで終了します。お忙しい中、御参集をいただきまして大変ありがとうございました。