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第32回アルコール健康障害対策関係者会議 議事録
社会・援護局障害保健福祉部企画課アルコール健康障害対策推進室
日時
令和7年3月24日(月) 16:00~18:00
場所
航空会館ビジネスフォーラム(701会議室+702会議室)
(東京都港区新橋1-18-1)
(東京都港区新橋1-18-1)
議題
- 第3期アルコール健康障害対策推進基本計画に向けた検討について
- その他
議事内容
○小野室長補佐 定刻となりましたので、ただいまより第32回「アルコール健康障害対策関係者会議」を開催いたします。
委員の皆様方におかれましては、御多忙のところお集まりいただきまして誠にありがとうございます。
本検討会はオンライン併用ですので、一部の構成員はオンラインでの参加となっております。
本日の会議は、あらかじめ傍聴を希望された方を対象に音声の配信を行っておりますので、御発言の際はマイクを近づけていただいた上でお名前を名乗って、できるだけ大きな声で発言いただき、発言時はマイクを御使用いただき、発言されない際はマイクを切るよう御協力をお願いいたします。
傍聴される方におかれましては、開催案内の際に御連絡している「傍聴される皆様へのお願い」事項の遵守をお願いいたします。
また、会場設備の関係で音声に不具合が生じる可能性がありますので、聞き取れなかった箇所については後日、議事録を公開させていただきますので、そちらで御確認をお願いいたします。
本日、社会・援護局障害保健福祉部の野村部長は国会関係の要務で16時40分頃からの出席となります。また、アルコール健康障害対策推進官の谷口室長におかれましても他の要務で17時30分までの出席となります。
続きまして、委員に改選がありましたので御報告を申し上げます。
白川教人委員が退任され、新たに志田博和委員が就任されましたので御報告申し上げます。
また、東ちづる委員が退任され、新たに長嶺乃里子委員が就任されましたので御報告申し上げます。
また、保坂昇委員が退任され、新たに林和博委員が就任されましたので御報告申し上げます。
また、堀井茂男委員が退任され、新たに平川淳一委員が就任されましたので御報告申し上げます。
白井委員、長嶺委員、林委員、平川委員におかれましてはよろしくお願いいたします。
続きまして、本日の出席状況について御報告いたします。会場での御出席が、長嶺委員、上村敬一委員、小野里委員、勝嶋委員、渋木委員、白石委員、塚本委員、稗田委員、林委員、平川委員、松下会長、山口委員となっております。
オンラインでの御出席が、石井委員、上村真也委員、江澤委員、金城委員、小松委員、志田委員、米山委員となっております。
現在、19名中19名御出席いただいておりますので、会議が成立することを御報告申し上げます。
また、本日は神奈川県立精神医療センター、コメディカル部長の青山久美参考人にお越しいただいておりますので御紹介させていただきます。
また、本日は関係省庁より、法務省、国税庁、文部科学省、警察庁、こども家庭庁、国税庁よりオブザーバーとして御参加いただいております。
以上、よろしくお願いいたします。
この後の進行は、松下会長にお願いしたいと思います。
○松下会長 それでは、本日の議題に入りたいと思います。
初めに、事務局より資料の確認をお願いいたします。
○小野室長補佐 お手元の資料の確認をさせていただきます。
資料1、上村委員提出資料「‘依存症専門医療機関’である‘普通’の精神科診療所での依存症治療の現状と課題」。
資料2、小松委員提出資料「第3期アルコール健康障害対策推進基本計画に残された課題」。
資料3、白石委員提出資料「アルコール健康障害における内科(身体科)の立ち位置」。
資料4、山口委員提出資料「鹿児島県におけるアルコール依存症対策」。
資料5、青山参考人提出資料「子育て支援を通じたアルコール使用障害からの親子の回復」。
参考資料1、アルコール健康障害対策基本法。
参考資料2、アルコール健康障害対策関係者会議令。
参考資料3、アルコール健康障害対策推進基本計画。
参考資料4、委員名簿。
不足等ございましたら、事務局までお申しつけください。
以上となります。
○松下会長 ありがとうございました。
それでは、早速議事に入りたいと思います。
議事次第1「第3期アルコール健康障害対策推進基本計画に向けた検討について」です。本日は、4名の委員と1名の参考人に御発表いただきたいと思います。お一人当たり15分でお願いしておりますので、時間に御留意してお話しいただきたいと思います。13分になりますとベルが鳴ります。あと2分ということでまとめていただければと思います。
本日は5名の先生からお話しいただきますので、2回に分けたいと思います。まずは上村委員、小松委員まで御発表いただいて、その後に質疑応答の時間を10分ほど取りたいと思います。その後、白石委員、山口委員、青山参考人の3名の方々から御発表いただいて、その後に質疑応答の時間を15分ほど取りたいと思います。
それでは、まずは上村委員より御発表をよろしくお願いいたします。
○上村(敬)委員 上村でございます。今日はどうぞよろしくお願いいたします。
スライドをお願いいたします。
私は、依存症専門医療機関という指定を受けている普通の精神科の診療所の院長をしております。その現状、私たちが診療所でどんな診療をしているのか、どんなアプローチをしているのか、これを委員の皆さん方に知っていただきたいと思って今日はこういうお話をさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
次をお願いいたします。
当院は福岡市の博多区の中央部にあります。私自身は昭和62年に医学部を卒業して精神科診療を40年近く経ちました。日本精神神経科診療所協会依存症対策プロジェクトチームの委員長ということをさせていただいております。
私自身のことを少しお話ししますと、依存症医療に関わり始めたのはこの20年くらいでありまして、それまでは総合病院精神科で通常の外来型の精神科診療のほかにコンサルテーションリエゾンや、精神科救急などに携わりました。その後、精神科病院に勤務をするようになり、長期の入院患者さんの退院支援とか地域生活支援とか、そういったものに関わっていました。依存症にはあまり縁がなかったのですけれども、開業する前に勤めていた病院が依存症の専門の精神科でありました。
私は依存症ではなく退院支援を中心に仕事をしていました。間近で依存症治療を見ているうちに、依存症の患者さんの治療や回復の様子、地域生活支援の必要性などを直接知ることができ、今まで苦手意識を持っていた依存症医療に関心を持つに至りました。
その中で、やはり病院で診る患者さんというのは進行して重症の方が多いです。身体的な健康、あるいは社会生活上の様々な損失、いろいろな不具合を持ってなかなか回復しようにも回復できない方々が多うございました。そういう患者さんを見るにつれて、もっと早い段階でどうして医療につながらないのだろう、どうして早い段階で相談しないのだろう、支援の手が届かないのだろうなど考えており、結局これらの問題に対処できる、クリニックを開くということになりました。福岡市内で開業し今年7月で10年目に入るといったところです。
私どもの診療所について説明します。一般の精神科の医療機関、精神科の診療所ということで、依存症専門とはうたっておりません。しかし、依存症もきちんと診るということで、当初から治療プログラムというのを自前でやるようにしました。そういったところが通常の診療所とは違うかなと思っております。
ただ、デイケアなどは行っておりません。当初は治療プログラムは集団でやっていたのですけれども、施設基準で集団療法が算定できない状況でしたので、通院精神療法だけ算定するという保険診療の枠内での診療であります。
火曜日金曜日は夜8時まで、土曜日も夕方6時まで診療しており、8時までの日が40人から50人くらいの患者さんを診ていまして、6時までの日でも30人を超えます。それで、毎日火曜日、水曜日、金曜日は1人ずつ、土曜日は2人の新患を診ていまして、月に20名くらいの新患を診ているというような感じです。新患の患者さんには一人60分強、再来では1人当たり10分くらいの診察時間、それが私どもの診療所の診療の実態です。
次のスライドをお願いします。
次に、当院の新患の患者さんの状況をお示しします。スライドグラフの下の緑のところに数字をつけていますが、そこがF1というCD10の分類でいうところのアルコール及び物質使用障害の患者さんに当たります。全体で20%くらいの患者さんがいらっしゃいます。そのほか、神経症の患者さんとか、あるいは上のほうのブルーのところはF6でギャンブルの患者さんで、最近はアルコールよりもギャンブルのほうが多くなっているという状況であります。
当院におけるアルコール依存症の患者さんの状況を見ていきたいと思います。
次をお願いいたします。
これは、当院の新患でアルコール依存症と診断された患者さんの数字ではあるのですけれども、当院では約4分の1、23%の方が女性でありました。年齢構成を見てみますと、全体でも30代、40代で50%、男性よりも女性の方のほうが、より若いという結果でした。
次のスライドをお願いします。
当院への受診経路等を見てみました。直近3年間だけですけれども、この3年間においては3割が女性の方、そして受診のきっかけとしては家族の勧めや自分自身の意思という自発的な受診が約50%あります。特に女性は自らの意思が高いということで、右のグラフの女性の一番右側、30%ぐらいが自らの意思で受診をされたという方です。
男性は、逆に家族から勧められてという方が多くなっています。こういった方々はお酒の飲み方が最近おかしくなっている、ちょっと量が多いと心配され、自分でも何か飲み方が変だなと自覚をしていたり、自分でも体のことが心配していたりします。家族から依存症かどうか一度診てもらったら、あるいは一度相談してみようというようなことで受診をされたという方がほとんどです。
全体では約8割の方がアルコール依存症での治療歴がありませんでしたし、また6割がアルコール関連の内科疾患などの治療歴がありません。すなわち、お酒の飲み方や飲む量に関してはいろいろと問題が出てきたけれども、身体的、精神医学的にはまだ問題がない、あるいは表面化していない患者さんが当院では多く受診をしているという状況が分かります。
次をお願いいたします。
当院におけるアルコール依存症の通院計画書と、通院の受診の流れを示しております。詳細は資料を見ていただきたいと思うのですけれども、初診での私の診察は大体60分を超えます。他所ではメディカルスタッフに予診を取ってもらうというのはよくあると思いますが、うちはそこまでの余裕がありませんので私が最初から診察を行います。患者さんの病歴、生活歴、生育歴等々を聞いて、その上で診断基準に基づいて診断を行う。そのほか、合併症としての様々な精神疾患の併存症や内科的な問題等を評価します。
その上で医師による初期介入、私が資料を用いて患者さんにアルコールの健康被害とか、あるいはアルコールの代謝時間とか、そういった問題をお伝えして、依存症としてどういうふうな経過をたどるか、あなたは今どのくらいのレベルにあるねというアセスメントをお伝えして、治療の方針としてはこういうものがあるよというような私どもの治療プログラムを提案するという形になっています。
やはり患者さんに今後の治療の流れを見せるということで、今後の治療の見通しを伝えいきなり入院という話にはならないというところが、患者さんのその後の治療の動機づけにはなるようです。
次をお願いします。
では、当院でどんなプログラムをやっているかという内容です。それぞれ通常の診察、再診での診察ですので概ね10分くらい私の診察をした上で、心理士が個別でプログラムを行います。それぞれワークシートを用いた内容で行っております。大体30分なのですけれども、30分、40分くらいの時間で行っていますが、これも先ほども言いましたように、特別何かの点数がついているわけではなく、通院精神療法にプラス予約料という形でお金をいただいています。経済的にいろいろな方々がいらっしゃいますから、予約料として高い金額は設定しておりません。
次をお願いいたします。
こういった形でアルコール依存症に対する治療を当院の外来が行っているのですけれども、このアウトカムに関して2023年に岡山で開催されましたアルコール・薬物依存関連学会で当院の金織が発表してくれたのですが、ちょっと細かくて見づらくて申し訳ないのですが、2018年のまだ集団でやっていた頃と、コロナの影響で集団でできなくなり個別でプログラムをやるようになったときとで比較をしてみました。集団で行ったA群と個別で行ったB群では年齢とか男女比とかにも大きな差はありません。AUDIT(オーディット)という点数では両方とも25点以上だし、1日の最大飲酒量、これは両方とも大体18ドリンクとか17ドリンクとかという数字が挙がっていますから、1日100グラムを超える多量飲酒者ということになります。缶ビールで言うならば、ロング缶を6本以上飲んでいるだろうということになります。
そういう方々に治療プログラムをした結果ですが、集団でやっていた当時はまだ断酒を目標とはしておりましたので、断酒ができるかどうかというのが一つの通院継続の決め手になってくるかと思うので、A群ではプログラム終了時の飲酒量というのはB群に比べて少なくなっているのですが、B群、個別でやりますと、節酒をするか、断酒をするか、本人のモチベーションを維持するために選んでいただくという介入になりますので、結果としてプログラムの導入率も高くなったし、継続率も高くなった。ただ、飲酒はまだ続いているなという結果でした。
次をお願いいたします。
ここからは私どもというより私の考えということになるのですけれども、スライドにお示しした「依存症対策の論点整理」は、以前の当会議の資料から持ってきたのです。この多くは第2期の基本計画に盛り込まれていったものなのですが、まだ残念ながら専門医療機関へのつながりにくさといった点が各方面から指摘されているところであります。また、アルコール問題の早期介入の必要性が指摘されていますが、私たちの示した結果からも分かるように、問題の少ない軽症のうちに介入することというのは飲酒行動を変えるということが可能なアプローチではあるのですけれども、それが現状では十分に生かされていないと思います。
次をお願いいたします。
そういったことで国をはじめ、アルコール依存症における治療ギャップというものを解消していき、各地で専門医療機関の整備を進めようということをしているわけですが、依存症専門医療機関の9割が精神科の病院であり、人口100万人に対して1か所以上設置されているのは38道府県に限られています。また、診療報酬上の加算に関しても集団の治療に関してつけられていて、私どもみたいに個別で介入をする、指導をするところには何ら診療報酬上の配慮はされておりません。
次は飛ばしていきましょうか。資料を見ておいてください。
「なぜ治療ギャップの解消が必要か」というと、これは皆さん方御承知のこととは思いますが、心身及び社会生活上の重症化を予防することが第一の目的であることは異論がありません。進行して重症化すると身体的問題のみならず、就労上の問題や家族への影響、酩酊下での問題行動や飲酒運転等による社会的影響など、影響は多岐にわたります。その損失も経済的のみならず、心理社会的にも大きなものがあります。逆に、早期に相談、受診、あるいは酒害指導を受ける、介入治療を受けることで重症化を予防できることは自明のことと思われます。
次をお願いします。
2019年に精神科診療所協会依存症対策プロジェクトチームで行った会員に対する意識調査です。これに関しては、次の小松委員の資料にも同等のものが挙がっておりましたけれども、地域生活に身近なところで私どもは精神科診療を行っています。依存症の専門医療機関でなくても相談を受け、治療を行い、また自助グループや家族会などにつなげることを行っています。しかし、残念ながら積極的にとは言い難いという結果でした。
ただ、専門的なプログラムを持っていないけれども、一生懸命治療継続に働きかけていたり、併存精神疾患へのアプローチや身体的問題へのアプローチをしております。
ただし、医師自身が限られた診療時間内にこうした問題にアプローチするというのは大変負担が大きく、また、対応できるスタッフを雇用、あるいは教育するにしても、そのスタッフ育成や雇用にも厳しいという現状が示されました。
ただ、そうは言っても繰り返しになりますけれども、精神科診療所は地域生活に比較的身近な存在ですし、広くメンタル不調や心身不調に対して対応できる医療資源です。
しかし、現状は依存症治療には生かされていないと思います。スライドにも示しましたように、様々な訴えで来院した患者さんに対して飲酒に関するスクリーニングなどは実施できます。しかし、それらに対して診療報酬はありません。
また、依存症の専門医療機関の多くで実施されているデイケア等は平日昼間に通院できる人に限られています。それでは、治療の必要な働いている人たちは利用できません。
また、精神科の診療所には看護師や心理技術者は比較的多く配置されています。こういう人たちが、日常的に患者さんの個別のカウンセリングや相談に乗っています。しかし、こういった個別の相談や支援はほとんどがサービスでありますし、あるいは心理カウンセリングに関しては自費といったところも少なくありません。
当院の場合は、治療プログラム実施の受診の際には予約料をいただいていますけれども、スタッフの人件費をカバーできるものではありません。
次をお願いします。
最後のスライドになります。都市型の‘普通’の精神科診療所である当院の依存症の治療の現状を報告いたしました。その上で、私の意見を述べさせていただきました。繰り返しになりますが、地域生活に身近な医療資源である精神科の診療所が依存症治療にもっと積極的に関われるよう、診療報酬を含む医療制度上の環境整備対策が強く求められると思います。
本日はどうもありがとうございました。
○松下会長 上村先生、どうもありがとうございました。
続きまして、小松委員より御発表をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○小松委員 よろしくお願いします。
「第3期アルコール健康障害対策推進基本計画に残された課題」ということで、かなりたくさんのお話をさせていただきます。
いろいろ書いてありますけれども、まず「目標」については巨大なTreatment Gapを解消する、Harm Reductionを進めていく。それから、療養と就労の両立支援ということも考えなければいけない時期ではないかというお話をしたいと思います。
それで、議論となる前提の事実確認なのですけれども、アルコールピラミッドで一番上のてっぺんを依存症専門医療機関が診ているというピラミッドがよく書かれますけれども、私は実は一部はもちろん専門医療機関が診てくださっているのですが、最重症群はかなり地域か刑務所にいると考えております。
その理由は、専門医療機関での治療ができる患者さんというのは2つ条件をクリアしていなければいけません。1つは治療契約が結べること。ですから、治療動機が乏しい人たちは地域や刑務所にとどまっています。それから、身体合併症が専門医療機関の多くが単科ですので、そういう単科の精神科病院で管理可能であること、つまり合併症が重度であるとアルコールの場合は総合病院にとどまっております。
そこで、ちょっとマインドセットを変えていただきたい。私たちはどうも“アルコール使用障害山”という攻略するルートを、ちょうど富士山で言えば御殿場ルートのようにふもとからずっと歩いていくルートに固定化していないか。それはアナロジーでいくと、従来型のルートは5%のエリートが使えるルートなんです。
それで、私が新しく提案したいルートは、富士山で言えば富士宮ルートとか吉田ルートなのですけれども、これは要するに途中まで車で、がっと登って、その後は足で歩いていくというルートなんです。治療動機の乏しい人たちでも、医療機関までは救急車が運んでくれています。ですから、救急の医療機関からの接続を考えていく必要があるのではないか。救急搬送は、ほとんど全員のア症者が受け入れます。ですから、WHOの調査でも入院患者の約30%はアルコール関連だとか、外傷患者の10~18%はアルコール関連であるとか、こういう調査が出ているわけです。
それで、実際にお示ししたように、私どもおととし、日本の総合病院精神科でどういう患者さんを診ているか。非常に複合的に重い問題を抱えている患者さん、例えば一番上を御覧ください。単身生保、もう家族と縁が切れていて、食道静脈瘤の破裂・2回目入院ということは非常に重い肝硬変で、間に合わなければ命を取られてしまうという患者さんが七十何%もいる。
それから、上から3つ目ですね。親と同居50歳代男性・腹水体動困難で入院、要するに8050問題の中にもこういう患者さんたちがいて、それは非常に多くの総合病院、精神科で経験しているということです。
そういうところで私どもが感じている困難は、1つはもちろん専門治療につなげようとしても本人が拒否的であるということなのですが、もう一つは既に総合病院に来る患者さんたちというのは、入院になるような患者さんは家族のサポートが弱いか、もう既に家族と断絶状態にある。かなり重い患者さんが来ているんですよということなんです。
そういうところで、では一般身体科の医師はどういう状況かというと、「医師の働き方改革」で御存じのように、救急病院の医師というのは多くが過労死レベルで働いていました。それで、平均在院日数は非常に短いです。当院でも11日から12日、そして400床から500床クラスの地域の基幹病院だと10日未満がほとんどです。ですから、体が安定したら即退院させろ、転院させろという圧力が半端ないわけです。それで、専門治療を動機づけてくれる助っ人、つまり常勤の精神科医やスタッフというのは本当にゼロか1だけなんです。
ですけれども、そういうふうなことがあるので『飲んで死ぬのもその患者の選択だから』という感じで、非常に強い無力感を抱いているのが総合病院の多くの身体科の医師、スタッフです。
ですけれども、スタッフというか、助っ人がいればここまでできます。これは2015年1月1日に663日フォローした私どものところのデータですが、断酒36.5%、減酒22.1%でございました。このくらいまではできるんですね。
ちなみに、うちはもちろんベッドはありませんし、ARPもやっておりません。ですから、要するに救急車で運んでこられて医療につながった患者さんたちを、そこから専門治療につなげる。これが“Best Buys”ですよというお話は2019年にさせていただきました。
とはいっても、いきなり無床の総合病院に移籍する精神科医をそんなにたくさんリクルートすることは難しいのです。それで、何かほかにいい手がないものかということで、こういうふうに救急車で運んでこられたら総合病院に入院している間に患者さんにタッチをして専門医療機関につなげよう。要するに、医者のほうから架け橋を渡そう。これがやはり決定打になるのではないかということを提案させていただきました。
そして、この間いろいろなモデル事業にさせてもいただきましたし、いろいろ働きかけをしましたら、このくらい無償の総合病院と専門医療機関との間で架け橋が架かるようになってきております。沖縄、熊本、長崎、福岡、佐賀、京都、滋賀、東京、山形ですが、滋賀は私がちょっと縁結びをさせていただきました。九州はほとんど、肥前精神医療センターの杠先生がお弟子さんたちにこういうのがいいよということで広げてくださったものです。
そういう架け橋モデルのメリットなのですけれども、まず入院していますし、しかも命を救ってくれた主治医がプッシュしてくれますので、キャンセルはまずありません。お酒も切れています。非常に話がしやすい。そして、そういうことで動機づけもしやすいわけです。それから、身体科の主治医とのディスカッションが非常にしやすいので、お互いの紹介のハードルが下がります。合併症が悪くなったときにすぐに受けて、よくなったらまたもう一回専門病院にお願いするということもできる。そういうふうなことで、沖縄ではスクリーニングをかけて65%が依存症だった。そのうちの72%が専門医療機関に行ったりとか、そういうふうになっているんです。非常にメリットはある。お互いにウィン・ウィンです。
ただ、デメリットは人件費の問題です。診療報酬上の問題ですね。
もう一つ、アルコール使用障害の医療体制というものが非常に今いびつであるということをお話しさせていただきます。
もともと相談機関があって、プライマリーの医療機関があって、そのてっぺんに今、専門医療がある。大体1対5対10とか、それくらいになるのが理想ではないか。実際、認知症ではそういうふうに整備されているんです。
ですが、アルコールではこんな感じです。プライマリーなところのデータすらないんです。こんな感じです。しかも、相談窓口は専門医療機関に比べて1対2です。これで広まるでしょうか。治療ギャップが解消できるでしょうか。
そういうふうなことを考えると、相談窓口を増やしていかなければいけない。それは、やはり先ほど言った救急告示病院です。総合病院と、あとは精神科の病院に必置されている地域医療連携室、ここでスクリーニングとか相談を診療報酬化すればいいのではないか。これは保健所や精神保健福祉センターとは違いますので、行政の仕事をただでさせないで、ここはちゃんとやってもらいましょう。
実は、MSWさんたちは非常にそれを望んでいます。それで、こういうリカバリーソーシャルワークチームというところで研修事業とかをやると、アンケートの自由記載の中には、本当はやりたいのに1日でも早く退院させろよ、余計なことに手を出すなよ、依存症の患者なんかうちの病院の範疇じゃないよ、こういう圧力にさらされているんですね。ですから、私どもの調査でもアルコールの問題がある患者さんへのスクリーニングに診療報酬がついたらもっとつかまえやすいのにな、やりやすいのになという声がこれだけあるわけです。
それから、プライマリー診療医は今までは全然そういう把握もされていない状態なんですけれども、これは先ほど上村先生のプレゼンにあったように、一般精神科医療機関ができると思います。それは先ほどもありましたけれども、受付でお断りしたいという先生や、拒否的ということで、一応は診るけれどもなどという先生方が、実は初診後にアルコールの問題が判明したらかなり診てくださっているんです。そういう人を蹴飛ばすなどという先生はなかなかいらっしゃらない。そうなのであれば、本当に全ての患者さんにSBIRTSをやって、支持的精神療法をやって、必要だったら教育入院のために専門医療機関に送る。これでいいのではないでしょうか。
そういうふうなことを考えると、本当に一歩進めるだけでも事態は大きく変わると思うのですが、そのためには数値目標が必須だと思います。やはりプライマリー診療をする仕組みをつくらないといけないし、先ほど上村先生から人口100万当たりの専門医療機関というお話がありましたが、相談のところは人口10万当たりの相談件数というのも数えていくと大分違うのではないかと思うんです。そういうふうにして底辺が広くなれば、山は高くなっていくと思うんです。
ここら辺はちょっと飛ばします。後で資料を御覧ください。
それで、そういうふうなことを考えると「こころの連携指導料」というのが非常に使えるものではないかと思っております。かかりつけ医のほうでスクリーニング、これはオーディットも含まれるということは既に私どもで確認をしました。
それから、自殺対策などに関する適切な研修、ここを変えてもらったら随分と適用が増えるのではないかと思うんです。そうすると、私どもの調査でもやはり院外にもうちょっと診療報酬がついたらいいよねと。それはどうしてかというと、「これはがんの疑いがあるから大きな病院に行きましょう」『お願いします!!』みたいに二つ返事でオーケーしてくれる場合だったら診療情報提供料2,500円でいいんです。
でも、アルコール依存症はそうじゃないので、やはり紹介して実際に受診するまで、そしてその後の治療の継続の支援にも本当に大きなエネルギーが要りますので、やはりその部分の頑張れというのが欲しい。これはまさに「こころの連携指導料」の適用拡大でできるであろうと思うんです。ここまでが治療ギャップの話です。
それで、ハームリダクションなのですが、今ハームリダクションイコール減酒というような誤解が広まっているので、もう一回おさらいをいたします。ハームリダクションというのは、必ずしも使用量が減らなくても様々な害を減らす目的で行われる公衆衛生的施策や介入のことです。これがもともとの定義ですので、そういうふうに考えると一番他人への影響が大きいアルコールであれば、365日一緒に生活している家族の支援というのはハームリダクションの最たるものでしょう。これについては既に参考人のほうからもお話があるようなので、ここで飛ばします。
あとは、飲酒運転ですね。これも、厳罰化すると、がっと減る。だけれども、その後は横ばいが続いております。つまり、厳罰化しても限界はある。それは繰り返す方たちは依存症で、しかも治療を受けていないからです。
こういう資料もあります。飲みたい気持ちが強い。前日の飲酒量を減らせない。だから飲酒運転をやっちゃった。本当にこれははっきりしているわけです。そうなのであれば、飲酒運転の後の受診義務条例というのはどんな効果があるか。これは吉本先生が研究したら、受診義務がある県というのは飲酒運転が減っているんですね。
そういうふうに考えますと、やはりアルコール治療と運転免許の制限、または停止処分を組み合わせるというのは諸外国でも最も低い飲酒運転再発率と関連する。これは20年以上前、もう30年近く前にそういうふうな物すごく厳密な研究が出たりしております。ですから、ここはもう少し工夫の余地があるのではないか。
それから、そろそろ日本でもインターロックの導入を推進する時期ではないでしょうか。2022年にWHOは飲酒運転の再犯対策としてインターロック・エフェクティブということで政策導入です。まさにハームリダクションですが、これを推奨しております。そろそろ考えましょう。
あとは家族の話ですが、ここら辺は既に参考人の方からのお話もあると思いますので、私は飛ばします。
まとめで、まず巨大なTreatment Gapの解消をするためには、私は第2期のときからお話しさせていただいていますが、精神科の無床の総合病院へ補強をすること。それから、一般の精神科医がSBIRTSなどでアルコール依存症の初療を行うこと。これはすごく大事だと思うんです。そのときに、ここの右にちょっと書いてありますけれども、適切な数値目標の設定が必須であると思っております。
それから、Harm Reductionですね。これは、実は治療格差の解消にもつながるんです。だって、家族は早期から困っているんですし、そして飲酒運転は強制力があるんですから、そういうふうに考えると家族を本人とした保険診療というものがもっと進むべきでありますし、受診の義務化とインターロックというのも車の両輪として進めていくべきではないでしょうか。
そういうふうに考えると、さらに産業保健から失職する前に関わるということが大事ではないでしょうか。少子高齢化です。働き手が少なくなると言っています。いつまでも「失職して生活保護」のままでいいのでしょうか。その前に何とかできる。それが結局、全部トリートメントギャップの解消にも関わっていくと思います。
ほかにもいろいろお話ししたいことはたくさんあるのですが、このくらいで私のプレゼンは終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。
○松下会長 どうもありがとうございました。
それでは、ただいまいただいた御発表について御意見あるいは御質問をお願いしたいと思います。発言いただく際は、会場参加の方は挙手をしていただいて、オンライン参加の方は挙手機能を使用していただき、私のほうで指名させていただきますので御発言いただくようお願いいたします。
それでは、よろしくお願いします。
では、白石委員お願いします。
○白石委員 白石でございます。よろしくお願いします。
上村先生にお伺いしたいところがあります。私は内科医の立場から、クリニックの精神科における検査、いわゆる血液検査等の一般検査などは並行して行うことは多いでしょうか、もしくはしないでしょうか。
○上村(敬)委員 ありがとうございます。
看護師が今はいなくて、採血をするとなると私がすることになりますので、私の手が空いたらやるという形で、本来ならば全例初診時にやるべきなのですけれども、多くの場合は例えば健診の結果とか、あるいは最近内科にかかっていたらその結果とかを拝見して参考にさせていただきますし、そういうものがなければ2回目以降にとにかく時間をつくって早めに採るというような形を取らせていただいております。
○白石委員 それを聞いた理由というのが、やはり診療報酬の問題もきちんとした診療をできる立場にあるので、きちんと、と言うのはすみません。いろいろな診療ができる立場にある私たちにとっては、きちんといろいろなことをやることによってその報酬を得ることで人件費を賄えるのかなと思って、それでお伺いしました。ありがとうございます。
○松下会長 ほかにはいかがでしょうか。
稗田委員、お願いします。
○稗田委員 稗田と申します。皆様、ありがとうございます。
小松委員の発表を聞きまして、医療ソーシャルワーカーのことを取り上げていただいてありがとうございます。ちょっと補足をしますけれども、ここにいらっしゃる医療に携わる方、特に医療ソーシャルワーカーの存在が病院の中であると思いますけれども、医療ソーシャルワーカーは社会福祉士という国家資格があります。精神保健福祉士だけではなくて、社会福祉士というソーシャルワーカーのもう一つの資格があって、基本はそちらの資格を持っている人がほとんどです。それで、今までは精神保健福祉士、依存症といったら精神ということになっていましたけれども、このように治療ギャップを解消するためにやはり総合病院、あるいは一般医療、救急医療、そこで医療ソーシャルワーカーも介入の手助けができるのではないかということで、実は社会福祉士のいる現場に対しても先ほど小松委員がお話をしてくださった調査などをさせていただき、そして研修もしていく中で、とても依存症に対して関心が高まっていっています。
ところが、関心が高まって依存症が、この人もそうだ、この人もそうだと分かっていく中で、残念なことはやはり医療の現場の中ではなかなかコメディカルだけではなくて医師、看護師の皆さんと連携することがすごく難しいということを回答しているのが9割もいます。
ですので、一般の医療機関の中のソーシャルワーカーの機能が今、研修で少しずつ高まっているということはデータ的にもお示しをさせていただいていますので、精神保健福祉と併せて社会福祉士の活用もぜひ皆さんに御理解をいただきたいという補足です。
以上です。
○松下会長 ありがとうございました。
そのほかはいかがでしょうか。
では、長嶺委員お願いします。
○長嶺委員 上村先生、小松先生、ありがとうございました。長嶺と申します。よろしくお願いします。
まず、小松先生の御発表の中で、飲酒運転後の受診義務条例には一定の効果があるというところで、私は家族の立場として、私の父親も飲酒運転をする一歩手前でしたし、今、私が関わっていたり、参加するミーティングの中で、最前線で困っている御家族の方たちは飲酒運転にはとても困っております。
それで、家族のほうでこっそり警察と連携して車両ナンバーなどを伝えて検挙の確認をしてもらえますかなどの案とかも出てくるのですけれども、それが家族から警察に告げ口したというふうに本人に解釈されて報復を恐れる御家族もとても多かったり、あとは自宅に警察が来たことで小さなお子さんが翌日、保育園とか学校で、僕の家に昨日警察が来たんだよと、まだ理解が乏しいお子さんがはしゃいでしまって御家族が追い込まれるという事例などを伺っております、
そこで、警察などで飲酒運転の検挙後に、専門治療を詳しく知らなかったとしても、そういったところに行くべきだというふうに警察官から一言あるだけで違うのではないかと私は今、考えておりまして、今、先生の御発表がありましたので付け加えさせていただきました。
以上です。ありがとうございます。
○松下会長 ありがとうございました。
それでは、平川委員お願いします。
○平川委員 平川と申します。
私は東京八王子で精神科の病院をやっていますが、これは白石先生がいたこともあるのですけれども、八王子では一般救急と精神科の連携というのは非常にうまくいっていて、自殺せん妄の状態とか、断酒が必要な場合は速やかに精神科病院のほうに連携するという仕組みがまだ今でも残っています。
また、東京都では身体合併症の連携事業として一般救急と精神科病院をつなぐ仕組みもありまして、これはアルコール依存症だけでなく統合失調症にしてもなかなか医療につながらないというところで、救急病院の窓口というのは精神科医療にとってとても大事な医療にコンタクトする場所ですので、そういうものが生かされて今、東京都は動いているような状況なので、一応その辺は東京の事情を御説明させていただきました。
以上です。
○松下会長 ありがとうございました。
それでは、塚田委員お願いします。
○塚本委員 塚本です。
先ほど飲酒運転の件は長嶺委員からもありましたとおり、私もそこが気になりました。それこそ2021年に千葉県の八街で飲酒運転の事故があって、法改正がありました。そして、白ナンバーの車にアルコールチェックを義務づけましょうということになっても、やはり飲酒運転をしてしまう人たちが残っています。それこそゼロになっていない。飲酒運転の数の横ばいの人たちは、依存症の疑いがとても強い人たちです。そんな中で、飲酒運転の違反者への対応に、行政や地域によってこれだけ違いがあるのはどうしてでしょう。三重県と福岡の飲酒運転違反者の対応に、効果が出ているといいます。それこそ、厚生労働省だけではなく、法務省などほかの省庁との関わりにもなってくると思います。ただ、依存症の疑いという点では厚労省の管轄であると思うので、ここは何かアクションが起こせるのではないかと感じました。
もう一つ、小松委員に質問なのですけれども、往診型架け橋が九州でこれだけうまくいったというのは、やはり小松先生がいる沖縄から近かったというところが一つの理由としてあるのでしょうか。つながりやすかったとか、そういうところがあるのであれば教えてほしいと思いました。
以上です。
○松下会長 それでは、小松委員いかがでしょうか。
○小松委員 ちょっと補足をいたしますと、実は往診型の架け橋というのは1988年に熊本の菊陽病院が福岡の千鳥橋病院に行ったのが最初です。1988年です。それで、実は千鳥橋病院というのは、今は千代診療所ということで門前診に変わっていますけれども、そこでやっているアルコール外来はいわゆる社会福祉士、メディカルソーシャルワーカーが3代続いてずっとそういうプログラム、週1回のアルコール教室とか、そういうのをやって続けております。
それとは別に、独自に杠先生がこういうふうなことをやったらいいんじゃないかということで、資料がすぐにぱっとは出ませんけれども、何番目かのところに、最初は国立福岡病院に行っていて、その後、国立佐賀病院に行っているというふうに出ているところがあります。
画面オンですね。ちょっと待ってください。
今、「往診型架け橋」というものが見えていますでしょうか。この上から4つ目が、最初の1988年です。それで、佐賀ですが、国立福岡病院に肥前精神医療センターから行っていたんですが、今はもっと近いところに行こうということで国立佐賀病院に変わっております。これは杠先生が音頭を取って始めて、そして実は長崎、それから沖縄も杠先生のお弟子さんたちが、これはやはりやるといいよねということで広げてくださっている。だから、多いんです。そういう中身でございます。
共有停止します。
○松下会長 ありがとうございました。
先ほどは、委員のお名前を間違えてすみませんでした。
ほかはいかがでしょうか。
それでは、ほぼ予定した時間にはなっておりますし、次の御発表もございますので、取りあえず一旦質疑応答はこれまでとしたいと思います。
そのほか、御意見等ございます場合はまた後日、個別に事務局まで御連絡いただければと思います。
それでは、続きまして白石委員から御発表をよろしくお願いいたします。
○白石委員 それでは、白石から発表させていただきます。
「アルコール健康障害における内科(身体科)の立ち位置」ということで、私のいつも思っているようなことになりますが、よろしくお願いします。
スライドをお願いします。
COIは特にございません。
次をお願いします。
今日お話しする内容としては、最初にアルコール健康障害は身体科中心ですが、世界の動向というか、日本の動向ですね。それから、その後の「身体科のアルコール摂取への認識」「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン2024の認知度」「消化器内科のアルコール関連臓器疾患への取り組み」「内科医のアルコール使用障害への介入と専門病院との連携」についてお話ししたいと思います。
それでは、スライドをお願いします。
まとめてみると、1番は疾患に対するスティグマをなくす世界の動き、いわゆる言葉的にもスティグマのある言葉を使わないようにしよう。後で出てまいります。
それから、2番がアルコールを物質として捉える使用障害の概念で対応する。実は、私たち内科医、身体科医は使用障害という言葉に非常に抵抗があって、なかなか受け入れていないというか、知らない人のほうが多い。まだ依存症、アルコール中毒、そんなレベルが多いというのが事実です。
それから、飲酒は生活習慣の一つとして生活習慣病の要因と考える。どの生活習慣病の要因という中に飲酒というのは入っていると思いまして、生活習慣として私たちは捉えていることのほうが強いということになります。
次をお願いします。
スティグマとは御存じのとおり偏見や差別ですけれども、特に今回は“Alcohol”ですが、まず最初に言われたのは“Fatty”でした。fatty liver diseaseのfattyはおでぶさんという意味なので、欧米ではもう使わないということになってSteatoticということになります。それから、Alcoholはアルコール依存症、中毒というイメージになってしまうので、その人はそうでないのにそういうふうに言われてしまうということで、この言葉も使わない。
それ以外にも糖尿病、それから統合失調症、先生方で専門の方もいらっしゃると思いますが、エイズなど、感染症に対してのスティグマもかなりあるので、そこに関してまた今、問題になってはいますが、今日はアルコールということでこういう言葉になってまいりました。
次に、その概念をちょっとお話ししますと、まず御存じのとおりアルコール性肝障害、Alcoholic liver diseaseといったものをアルコール関連肝疾患、Alchohol-related、もしくはassociated liver disease、略すとALDで一緒です。
それから、Fatty liver、脂肪肝は脂肪性肝疾患、Steatotic liver desease、SLDになりました。
それから、非アルコール性脂肪肝疾患、NAFLDとかNASHとか言っていましたが、Non-alcoholic fatty liver disease、言葉が2つも入っていますね。そこが代謝機能障害関連脂肪性肝疾患、覚えられませんが、Metabolic dysfunction associated steatotic liver disease、口も回りません。そういうことで、MASLDという言葉で統一されております。これは、おととしの欧米の主要な肝疾患、肝臓癌学会で、その次の年には日本肝臓学会と、それから日本消化器病学会が認定して、日本語も去年の8月に一定のものを提示しておりますので御覧いただければと思います。
特に、このMASLDに関しては脂肪性肝疾患で心血管リスクを有する脂肪性肝疾患、実はこういう方々はほとんど心筋梗塞脳血管障害などが死因になるので、それを加味したものになってきた。先ほどの生活習慣病とアルコール関係も含めたもので脂肪性肝疾患が注目されて、そういう病態として捉えようということになりました。肥満、高血圧、脂質異常症、糖尿病が合併しているということになります。
次をお願いします。
MASLDはそういうことなのですが、今はMetALDというのが書いてあります。これは代謝機能障害アルコール関連肝疾患といって、今まで宙ぶらりんになっていたアルコール性のものなのか、非アルコール性のものなのかと言われていた中間群を、それもやはり男性30~59グラム、女性は20~49グラムということになりまして、それでそういうグループを1つつくります。それも脂肪肝という意味ですが、脂肪肝の中のALDもあって、それは60グラム以上が男性ですが、女性は最近は50グラムにしようということで、40グラムからちょっと引き上げられてしまったのですが、これは賛否いろいろあります。
そういうようなことで、こんな名前になっておりますので、ぜひまたいろいろな文献等を見ていただくときにはNASH、NAFLDと書いてあるものはほとんどMASH、MASLDと同義語であると思っていただければと思います。
そういうふうにどんどん言葉が変わってきました。言葉が変わっただけではなくて、その概念、全身疾患としての脂肪肝、その中にアルコールが非常に重要なポイントを占めているということが分かってきました。
スライドをお願いします。
次に、「身体科のアルコール摂取への認識」です。
スライドをお願いします。
これは有名な図ですけれども、「酒は百薬の長ですか???」というクエスチョンに関して、ここで出ている総死亡リスクを見てみると、明らかに薬の効果はないということは総死亡からも出ています。今、日本ではまだ文化という世界で、かなり飲酒に関してはポジティブないい印象がある人もいるんですけれども、欧米のほうではアルコールは飲むだけで悪くなる。死亡率が上がるというようなイメージ、趣旨で、かなりいろいろな学会での発表などが多く出てきておりまして、政府の施策もそうなる可能性があるという状況です。
スライドをお願いします。
先ほどハームリダクションについて小松委員からありましたけれども、私もハームリダクションの言葉の使い方にいつも疑問を持っておりました。減酒に関してですけれども、減酒による死亡率の改善効果というものがあるんだということを身体科のドクターがやはりもう少し知らなければいけない。死亡というハームに関して、それを低減させるには減酒があるんだということをもう少しきちんと明確にしていく必要があるなと思います。
これは、かなり飲む方です。フランスのデータで、多量飲酒の方なのですが、その方のアルコールを半分に減らすと1万人当たりの年間死亡者数が3分の1に減ったというデータになります。もっと実は500ccの5%のビールを3本中1本減らすと数十%の死亡率が減ったとか、いろいろなデータが今出てきていますので、ぜひエビデンスがまとまったところでみんなでまとめたいと思っております。
スライドをお願いいたします。
厚生労働省の健康日本21、これはきっと内科医もみんな分かっているはずです。知らない内科医がいたらちょっとやばいのですが、生活習慣病のリスクを高める飲酒量、飲酒しているものの純アルコール摂取量が男性40グラム以上、女性20グラム以上の割合の減少を目指す。そして、未成年者の飲酒をなくす。妊娠中の飲酒をなくすということで、この間、厚労省の評価が出ていたと思います。
1番のほうに関しては評価b、変わらない。
2番の未成年者に関してはa、改善している。
妊娠中に関しては、a*で現状のままでは目標達成が危ぶまれるというような評価だったように思います。間違っていたら後で訂正してください。
そういうような評価に関しては、やはり私たち内科医にとってはまず一番上の飲酒量を減らすようにすることが、先ほど小松委員のあった高い山、富士山に登る前に低い山で決着をつけるという、そこら辺の仕事がかなりあるのだろうと思っております。
それで、次の健康日本21の基本方針を見てみますと、5番目の「栄養・食生活、身体活動・運動、休養、飲酒、喫煙及び歯・口腔の健康に関する生活習慣及び社会環境の改善」ということで、ここに飲酒が必ず入ってきます。そういうことで、分かってはいるのですけれども、そのまま同等に読み流してしまうかもしれません。
「生活習慣病」は「食習慣、運動習慣、休養、喫煙、飲酒等の生活習慣が、その発症・進行に関与する疾患群」ということで、先ほどの脂肪性肝疾患と非常に共通点がありまして、今、世界、それから日本でも内科系、消化器系に関しては特にここを注意してみんなが着目していることは事実です。
その下にある、飲酒問題があったときに生活習慣病の要因としては私たちは考えています。そこに使用障害、依存症があるということを分かっているのですけれども、なかなか身体障害を中心として見てしまう。その裏には家庭・社会・経済の問題も含んでいるんですよということ、特に経済は家族の経済、家庭の経済だけではなく日本の経済が非常にそれで揺らぐ可能性があるということがデータで出ているかと思います。
次のスライドをお願いします。
次に、「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」2024の認知度、この会議でも内容が検討されましたけれども、飲酒チェックツールですね。AUDIT、アルコール摂取量を明確にする。先ほどAUDUTの保険診療に関する問題が出ていましたが、実は毎年アルコールアディクション医学会、私もその委員で健康保険の申請をしておりますけれども、毎年落ちております。内保連はなかなか弱くて駄目です。そういうようなことですが、ただ、広い範囲で今度は健康管理に関して内科医も非常に疑わしい場合にはAUDITをやるというような条件づけで何とかできないかなということで、みんなでまた相談しております。
スライドをお願いします。
あるインターネット会社、これは下に書いてしまってありますが、私がよく見ているCare Netですけれども、そこで去年の9月にこのガイドラインの認知度を調査していました。1,025人で、全体でよく内容まで知っている、大体知っているところが一番上の棒グラフで34%くらいになります。発表されたことは知っているという人は23%、全然知らないというのが43%いました。新聞を読んでいないようです。そういうことで、医者で1,025人でこんな結果でした。
その次に、今度は科別のところで見ると、さすがに消化器内科医が100%知っているかなと思ったのですが、残念ながら、よく知っている、まあまあ知っているところまで47%という形になります。
こうやって見ていただくと、各科それぞれそれほど興味がない先生も多いということで、特に臨床研修医97人に関しては全員知っていてほしかったな、若い先生に知ってほしいなと思ったのですけれども、半分しか知らない、50%は知らないということになっていました。
スライドをお願いします。
「アルコールによる主な疾患」に関しては手元にある資料のとおりなのですが、やはり赤い字で書いた発がんという問題がかなりあります。口腔内、食道、肝臓、膵臓、大腸、胃、それからここにありますが、乳がんですね。乳腺、これらの疾患、併せて足先から頭の先までの疾患ですので、実は全科にまたがっているということをここで言いたかったのでこれをお出ししました。
その次に、東京都の都立総合病院の外来におけるアルコール依存症の疑いをCAGEで調べたデータがあります。これはアルコール・薬物医学会雑誌に載っていた以前のものですけれども、それを改編してみると、棒グラフの左側のところ、全体で一般科では男性で21%、女性で10%がCAGEで引っかかってくる。非常に高い数字です。ここで何とかならないかということが今日の一つのポイントになるかと思います。
次をお願いします。
「身体科のアルコール関連臓器疾患への取り組み」としては、日本肝臓学会ではおととしの総会でこのようにALTが30オーバーの場合には必ず検査をするか、専門医療機関に行ってくださいということになっています。これでスクリーニングをかけたい。これはいろいろな肝疾患はありますけれども、かなりアルコールが引っかかってくると思います。
スライドをお願いいたします。
「アルコール問題への精神科、身体科のアプローチの違い」は今までお話しされたとおりですけれども、私たちはやはり臓器障害を中心としてその一因としてのアルコールを考えます。精神科の先生は、最初から依存症、使用障害、そしてそこに臓器障害があるということで身体科のほうに依頼がくる。
スライドをお願いいたします。
私たちは、特にアルコール使用障害に関しては目をつぶる可能性が高いのは事実です。それはなぜかというと、今日も私は30分前まで外来をやって何とか間に合ったのですけれども、そういうようにいろいろな疾患を見ているとアルコールに関わると時間がなくなるという恐怖を感じております。本当に恐怖です。看護師さんたちに怖い顔をされないように頑張ってやってきましたけれども、そういう状態です。
それが総合診療というもう少しみんなの心を広くしていただいて臓器障害を見たときに、アルコールは身体障害に影響が非常にあって、それが使用障害だということを分かってもらう。それが先ほどのAUDITなんですけれども、AUDITはとても簡単で、今はスマホでも何でもできるということで、ぜひそういうことを広めていただきたいと思います。
スライドをお願いいたします。
これは厚生労働省の令和5年度の障害者総合福祉推進事業の中の健康診断、保健指導におけるアルコール健康障害への早期介入について「みつける」「かかわる」、そして「つなぐ」、この3つのワードを言いたかったのですが、やはりこれは大切なんだと思いました。内科、特に身体科は見つけるところで、関わってほしい。そこまでは何とかしてほしいというふうに私も思います。
次のスライドをお願いします。
次をお願いします。
私もいろいろな地域で診療してきました。川崎、代々木、それから伊勢原、八王子、また伊勢原、大磯、今はまた代々木におります。これだけ移動しましたら、アルコールに対する接し方が全部変わります。何かというと、周りに協力してくれる先生方がいるか、いないかで完全に変わりました。ここはちょっと時間がないので、そういう意味です。
次ですけれども、先ほど平川先生がおっしゃっていた八王子に私は8年間、消化器内科医でおりました。そのときに、平川先生のところ、それから駒木野病院、高月病院、綾南診療所、それから都立の精神福祉センターも一緒になってアルコール関連疾患のサポートネットワークチームをつくって、時々みんなで顔を合わせて話をするというだけでかなり変わりました。これを「いのちのサポートネットワーク」としてずっとやっておりましたが、転勤することによって平川先生がつないでくれています。
最後のところになりますが、実はコロナで私たちの病院は全床コロナと都知事に言われて、それでずっとやっていたものですから、患者さんがいなくなってしまいました。それで、今は1年ちょっと前から私は消化器内科におけるアルコール外来を始めました。その中で隔離入院もしていたのですけれども、入院施設が使えなくなってしまったので、その上のいろいろなブリーフインターベンションになります。精神科の先生のように本当に深くはいきませんけれども、できる範囲のことはやりました。
それを見ていてくれていた昭和大学医学部附属烏山病院のプロジェクトチームがいて、架け橋プロジェクト、小松先生が先ほど言っていたものですが、それを1年ほど前から続けて、約30人に対応してもらって、そのうち5人はスムーズに入院することができました。
それ以外の人は内科で対応できるくらいの内容だったので、私が継続して診ているというような状況で、内科医でもできるぞと。
ただ、いろいろなプロジェクトも、架け橋プロジェクトも、東京都内でもいいのですが、私の病院が今年度をもって閉院ということになってしまってやるところがなくなったので、今度は某女子医大の先生と組んで継続できないかどうかを今、検討中ということであります。
すみません。長くなりましたが、以上です。
○松下会長 どうもありがとうございました。
では、続きまして山口委員より御発表をよろしくお願いいたします。
○山口委員 全国保健所長会の代表として参加しております山口と申します。
本日は、私の所属である「鹿児島県におけるアルコール依存症対策」というタイトルで、県型保健所の立場から説明させていただきたいと思います。
次をお願いします。
鹿児島県の概要です。人口は160万足らず、東西長は日本一です。南北長は東京都に次いで第2位で、かなり広範で有人離島が28あります。
保健所というのは御存じかもしれませんが、中核市型、県型、そして政令指定都市型と分かれておりますが、鹿児島県には中核市型が1つ、県型が13で、鹿児島市が約60万の人口で、県型が100万です。
保健福祉業務については対人サービスが市町村の業務として位置づけられて、特に精神相談業務に関しては令和6年度から市町村の業務とされたところです。
中核市や政令指定都市は従来、市町村業務も兼ねて対人サービス、組織支援、調整まで担ってきましたが、県型は市町村の業務の後方支援つまり従事者支援・組織支援という意味合いが強くなってきております。
次をお願いします。
これは、鹿児島県の成人1人当たりのアルコール消費量を示したものですが、アルコール消費量は毎年全国平均を上回っています。その中でも焼酎が3割を占めています。
次をお願いします。
鹿児島県では昨年度、第2期アルコール健康障害対策推進計画を作成したところです。
次をお願いします。
計画の中の基本的施策として、御覧の10項目が挙がっております。
次をお願いします。
1番、「アルコール健康障害の普及・啓発」について、対象ごとに具体的な活動内容を挙げてみました。青が従事者等を対象にしたもの、赤が住民等を対象にしたもので、多くの事業は従事者研修で、依存症についての個別支援としては7番の家族支援教室というものがあります。
次をお願いします。
先ほど申し上げた家族支援教室ですが、この事業は家族相互支援事業の一つとして位置づけられておりまして、対象はアルコール依存症に限らず、どの疾患や症状を対象とするかは保健所に任されています。県型保健所の大半はおおむね従事者を対象とした年1回の研修を実施しておりまして、月1回と定期的に継続して依存症家族を対象に実施しているのは1保健所のみです。
この保健所は平成27年度から家族支援教室を継続して実施しておりますが、現在、参加者が固定しており新規参加者が少ないことが課題と挙げられています。
先ほど申し上げたように、精神保健に係る相談事業が市町村業務となっており、県型保健所は対象者との接点がとても少なくなっております。 県型保健所に、相談がありましたら、家族については県の精神保健福祉センターの教室につなぎ、当事者には専門病院を紹介するという形で、保健所そのものは相談先を案内するという役目がメインになっているところです。
次をお願いします。
基本的施策の2番、「不適切な飲酒の誘因の防止」というところですが、キャンペーンでティッシュを配るなどの広報活動が主です。
次をお願いします。
3番の「健康診断及び保健指導」という部分に関しても、やはり従事者対象の研修というものが主でして、(3)にありますように「アルコール依存症の疑いのある者と専門医療機関へつなぐ連携体制づくり」というところでは、相談拠点は精神保健福祉センター、依存症治療拠点機関や依存症専門医療機関をホームページに掲載し、相談者に案内しています。
次をお願いします。
「相談支援等」という項目につきましては、相談拠点としての精神保健センターが本人や家族の個別相談に応じ、依存症専門医による依存症相談や依存症家族教室を実施し、保健所・市町村・自助グループとの連携をしております。
次をお願いします。
精神保健福祉センターにおけるアルコール・薬物依存症家族教室というものが半年に1回、年に2コース、前期コース、後期コースとあるのですが、令和5年の実績でいいますと参加者は実数として前期が6人、後期が3人、延べ人数が前期14人、後期6人という形で、ほかの精神障害者の家族教室と比べても参加者はかなり少ない状況です。
次をお願いします。
5番の「アルコール健康障害に係る医療の充実等」については、医療機関の紹介等に加えて、産業医研修の一環としてかかりつけ医に「うつ病対応力向上研修会」でアルコール健康障害も毎年テーマと挙げていること、あとは「健康サポート薬局」の普及を勧め、薬剤師の協力も得ています。
次をお願いします。
アルコール依存症専門医療機関、リストの〇印が専門医療機関ですが、それ以外でもアルコール依存症回復プログラムを実施している医療機関があります。令和5年の依存症回復プログラム参加者実数はこの4つの専門医療機関で合わせて683名でした。
次のページをお願いします。
そのほか、専門医療機関が年1回程度アルコール市民公開講座、個別相談、依存症問題啓発フォーラム等普及活動を行っています。
次をお願いします。
次が、先ほど申し上げました「かかりつけ医うつ病対応力向上研修会」の内容です。アルコールについては毎年入っています。産業医の更新のために多くの「かかりつけ医」が参加するものです。
次をお願いします。
次が「アルコール健康障害に関連して生ずる社会問題への対応」で、先ほどの「飲酒運転をした者に対する指導等」に関しては、鹿児島県は医療機関への受診は義務になっておりません。
次をお願いします。
「社会復帰の支援」として、先ほどご説明した家族支援教室や従事者研修会があります。
次をお願いします。
そのほか「人材の確保等」「民間団体の活動に対する支援」等があります。
次をお願いします。
鹿児島の取組についてまとめますと、鹿児島県では個別支援としてのプログラム・教室を実施しているのは当事者に対しては依存症専門医療機関及び依存症治療拠点機関、家族に対しては精神保健福祉センターと保健所1か所です。
前回話題になった依存症の家族を持つ子供への支援については具体的なプログラムはありませんが、実際にお子さんの不登校、あるいは進学等をきっかけに保護者の依存症が明らかになることはしばしばあります、
依存症の保護者をもつ学生について、スクールソーシャルワーカーが中心になって、経済的にも困難と思われた中進学にこぎ着けた事例があります。進学後も、親子双方に対してかかわり続け、親子関係の修復も目指しております。保健所としては地域のそういうキーパーソンとなっている方とつながり、地域の事情や家族の歴史等を尊重しながら、行政の制度を活用して一緒に考えていきたいと思っています。
ここまで2期アルコール計画の施策について説明してまいりました。
今後の課題としては、一つ目は、アルコール健康障害対策を県の事業の中でどのように位置づけるかです。アルコール健康障害対策協議会というものを設置はしているのですが、令和5年度は書面開催、令和6年度は書面開催すら開催できませんでした。その理由は、PDCA評価をする指標がない。数値目標がなくて、説得力のある資料がつくれないというのが担当の意見でした。また、アルコール健康障害対策協議会の在り方に悩んでおりまして、これとギャンブル・薬物依存症の協議会との一体化を、協議をしているところです。
二つ目は、健康増進部門と精神保健部門といかに協働するかです。健康障害のほうは健康増進の担当者会議等でアルコール健康障害は説明項目に入っているのですが、現場の活動は生活習慣病対策が主となっています。一方、保健所の精神保健部門は重症の方、23条通報等、精神症状悪化に対応するのが主体となっています。健康障害予防や健康増進施策に関しては、市町村が健診等を担っていますので、保健所は市町村の担当者に対して研修を行い、飲酒ガイドライン等を紹介しています。
ただ協議会を設置しなさいだけでは現場は動きづらくなっているというのが現状で、3期計画では、自治体の役割、市型、県型、市町村、それぞれに役割が異なるということを見据えて明示していただきたい。このままでは自治体のアルコール対策に対する意識が、精神保健と健康増進対策の間で薄れてしまうのではないかということを危惧しているところです。
以上でございます。
〇松下会長 どうもありがとうございました。
続きまして、青山参考人より御発表をよろしくお願いいたします。
〇青山参考人 よろしくお願いいたします。
私は、「子育て支援を通じたアルコール使用障害からの親子の回復」という題材でお話しさせていただきます。
このようなお題をいただいたというか、このような貴重な機会をいただきましたが、その経緯といたしまして私がアルコールだけではないのですけれども、依存症診療科で今、神奈川県の県立精神医療センターで取りまとめをしているのと、こどものこころ専門医として児童、思春期の診療も長くこれまでやっておりまして、その両方の立場から、子供側の視点から親御さんのアルコール依存症を考えるというところからお話をさせていただければと思います。
では、次のスライドをお願いします。
まず、そもそも臨床感覚の話になるかもしれないのですけれども、アルコール使用障害を含む様々な依存症と言われる病気は、物質やら行動やらで感情に蓋をする病気であると考えております。これは自己治療仮説とかという言葉でもよく言われていますけれども、基本的につらいときに飲んで紛らわす、つらいときに薬で紛らわすというような形で、何とか自分で解決しようとしている方たちが我々の外来にいらっしゃっています。
そして、そういう病理をお持ちなので、患者さんのSOSを待っていてはお子さんに大きな影響があったときにお子さんの治療介入、あるいは支援の介入が間に合わないということをすごく感じておりまして、お子さんがいらっしゃるアルコール依存症の方たち、アルコール使用障害の方たちに子育て支援を軸とした形で何らかの支援の組み立てができないかということを考えております。
それで、イメージを共有させていただきたいので、1つ架空症例を示させていただきます。
中学生のA子さんです。小学校では、明るく元気なしっかり者と言われてきました。中学で元気がなくなり、成績が下がってしまい、自傷に気がついた養護教諭の提案で精神科を受診したというようなケースです。
それで、いろいろお話をお聞きするうちに、御家庭のことをお聞きしていると、実はお母さんが毎日、毎日、朝からお酒を飲んでいる。それで、どうしてお母さんはお酒をそんなに飲むのと聞くと、お母さんは「お酒しか楽しみがない」と話すんです。そして、お母さんが元気になるようにいつも頑張ってきました。A子さんは、小学校では明るく元気なしっかり者であるというふうな評価が学校でもあった。
しかし、お母さんは最近体調が悪そうでいつも転んでしまうし、朝はごろごろして起きられないし、そして御飯もなかなかつくれない。一生懸命私も手伝うんだけれどもということで、元気がなくなってきてしまって、勉強にも身が入らず成績が下がってきているような状況が分かりました。
さらにお母さんだけではなくて、お父さんがお母さんがお酒を飲んでいる姿を叱る、怒るということで、お父さんが怒らないように私が一生懸命お母さんのお酒の缶を隠すんです、捨てるんですというようなことをおっしゃる。こんなような御家庭ですね。このようなお子さんが時々、児童精神科にいらっしゃいます。
私が今、時々と申しましたのは、先ほど山口先生からもお話がありましたけれども、病院までたどり着くお子さんはまれでして、学校のところでとどまっておられたりとか、そもそも診療、あるいは支援の場にもたどり着かない子も多いかと思います。
次のスライドをお願いします。
「こどもにとっての親のアルコール使用障害」というのはどういうものであるかということです。言うまでもありませんけれども、親御さんがお酒を飲んで、例えばどなるとか、たたくとか、性加害というのも決してまれではないかと思うのですけれども、そういった環境にありますと、お子さんは常に不安であるとか、緊張しているとか、恐怖を感じる。しらふの親御さんの前でも、いつお酒を飲んで豹変するのではないかと不安を感じていたり、あるいはお酒の問題が幼少期、愛着形成の時期ですね。本当に就学前の年からお酒の問題が始まっていたりしますと、これは適切な身近な大人との心の絆をつくることができない。愛着形成の問題が出てきたり、あるいは暴力暴言でトラウマ関連障害があったりということのリスクになりますので、とても子供さんにとっては養育環境として重大な問題になります。
そして、育ってきてお子さんが今度は親御さんの介護をする立場になってしまいましたり、家事を担ったり、尻拭いを一生懸命したりとか、生活の不安を持ったりということで、いわゆるヤングケアラーの問題もその後、出てくるということになります。
さらに言うと、今回事例としてお出ししたのはお母さんがアルコール依存症のケースですけれども、お母さんがアルコール依存症であればお父さんが、お父さんがアルコール依存症であればお母さんが巻き込まれて夫婦げんかであるとか、例えばA子の場合であればお母さんのアルコールの問題でお父さんは頭がいっぱいになってしまって、やはりA子に目がいかなくなるということが言えるわけです。
次のページをお願いします。
そういうときに、お子さんがすぐに助けてと言って受診してくださればいいのですけれども、お子さんというのはなかなか相談をしてくださらないところがあります。これはなぜかというふうに、もう大人になった元アルコール依存症の方のお子さんたちによく聞くんです。なぜあなたは小さい頃に誰かに助けてと言えなかったんだろうかとお聞きすると、恥ずかしかったからとか、言っても「どうせ変わらない」、人に相談したら、例えばおじいちゃんおばあちゃんに相談したら、おじいちゃんおばあちゃんはお母さんのことを叱ってくれた。しかし、叱られたその場ではお母さんは、もうお酒は飲みませんとか、子育てを頑張りますと言うんだけれども、その怒られたことがつらくてまたお酒を飲んでしまうとか、結局変わらないという体験をしておられることが多かった。
それから、あなたがお酒を飲むんだったらもう子供は児童相談所に預けますというように、支援が適切な形で提示されずに罰則のように提示されていたりすると、お子さんが、私がもしお酒の問題を人に相談したら私が家族から引き離されてしまうのではないかとか、そんなことをおっしゃったりします。
あとは、お酒の問題を抱えていてもやはり親御さんというのは大切な存在であることも多くというか、ほとんどの場合は唯一の存在として大切に感じておられるので、例えば御自分の学校の先生に、実はお母さんが、お父さんがお酒を朝から飲んでいてというふうに相談したときに、何というひどいお父さんなんだとか、何というひどいお母さんなんだというふうに否定されることも、実はとても相談しにくくさせている一つの要因だったりするということもよくお聞きします。
こういう様々な理由がありますけれども、自分だけで解決しなければならないという考え方を持ってしまっているということが1つあるのと、例えばA子の場合ですと、お母さんがつらいときにはお酒で解決しようとする。人に頼らないで自分だけでお酒で解決しようとするというふうなストレス対処モデルを持っていると、お子さんから見ても自分で何とかしなければいけない、人に頼ってはいけないというふうな考え方がどうしてもしみついてしまうということがあります。
子供も、感情の抑圧ですとか不調、不適切な対処行動として、よくあるのは自傷であったり、物質の乱用であったり、アルコールであったり、そういったことまでいかなかったとしても不登校であったり、様々な心の不調の原因となる、要因となることがあります。
これを見て、A子の母親はお酒の問題があって、お酒をやめなくて何と悪いんだというふうな視点で見てしまうと、これまた問題解決には全然たどり着かない。
次のスライドをお願いします。
A子の母(30代)のほうから見てみると、A子の母自体も、その父ですね。A子にとっての祖父の暴言暴力におびえながら育ったという話をよく聞きます。それで、暴言暴力におびえて育って、こっそりおうちのお酒を飲んでみたら、すごく不安で緊張していたのが急に和らいで、そこから時々つらいと飲酒するようになって、一人暮らしを始めてから毎晩飲酒するとか、妊娠して結婚退職をして新しい家庭に入ってようやく実家から逃れられたと感じていたのに、今度は夫ですね。A子の父ですが、日頃からつらいとか、悲しいとか、苦しいとか、それは違うと思うとか、そういった意見を実家でも言えてこなかったA子の母ですので、夫に対してもやはりそれはうまく言えない。家事、育児への意見が言えないということが続き、困ったとき夫にも実家にも相談できないということで、つらさをお酒で紛らわすうちにお酒が増えたということが語られたりします。
これは、本当によくアルコール依存症の方たち、アルコール使用障害の方たちから聞かれるお話かなと思います。
次のスライドをお願いします。
「アルコール使用障害をもつ親によくみられる子育ての大変さ」ということで、主だったものを羅列しておりますけれども、まずそもそも依存症の背景に逆境体験をはじめ、養育環境が大変だった方が多いので、健全な養育環境のイメージが持てない。殴って育てられたとか、そういった方も多く、イメージがそもそも持てていないので、自分が親になったときにどうやって子育てをしていいか分からない。
それから、お酒をはじめ様々なもので気持ちに蓋をして一人でどうにしかしようとするという感覚、考えがあったり、それからアルコール使用障害の場合はそれに伴う体の問題ですね。心身の諸問題がございます。肝機能障害をはじめ、白石委員からたくさんの体の問題のお話がありましたけれども、諸問題があり、体もだるいとか、場合によっては糖尿病やら、高血圧やら、がんやらということで、体の状態も悪いですし、アルコールに伴う不眠とか、様々な問題もある。
それから、実家との関係も悪いので頼れない。
それから、子供さんの特性として育てにくいお子さんといいますか、例えば胎児アルコール症候群、妊娠中にお酒を飲んでいたことによるお子さんの発達の問題であるとか、そうでなくても様々な発達障害特性を背景に育ちにくい場合などもあるかと思います。
次のスライドをお願いします。
アルコール使用障害の方が「健全な養育環境のイメージがもてない」というのは、臨床実感でもそうなのですが、データでも示されていまして、これは当院の小林桜児副院長らの調査ですけれども、当院の依存症患者さんたちの858人のアルコール使用障害の患者さんたちの調査で、あなたが体験したことのある逆境体験をチェックしてくださいねということでチェックリストを書いていただいているのですが、15歳以下にこれらの問題ですね。心理的虐待や親の過剰な期待、厳し過ぎるしつけとか、家族の物質乱用、アルコール依存症の親御さんですとか、あとは御家族の慢性身体疾患、御自身がつまりはヤングケアラーだったという可能性ですね。親との離別体験とか、学校でも学業不振やいじめなど、家でも学校でも安心・安全に過ごせる場所が十分になかった方たちが多いというのは数字も示しているところでございます。
次のスライドをお願いします。
こういう環境に育っている方たち、逆境体験の多さが実は対人不信感ですね。人を信じることができないというのを、これもクエスチョン・アンド・アンサーで調査したもので、対人不信感が強いですとか、対人不信感が強い方はストレス対処能力が低いというふうなことが示されていまして、アルコールなどで気持ちに蓋をしている方たちというのは一人でどうにかしようとするということがあるようです。
ほかにも自己治療仮説でとか先生方もよく御存じのことかと思いますけれども、感情を認識できない、言語化できなくて他者に助けを求めて解決した経験が乏しくて、アルコールで感情に蓋をしているんだなというのは臨床実感にも一致するお話かなと思っております。
次のスライドをお願いします。
そこで、アルコール依存症の方たち、アルコール使用障害を持つ方たちというのが子育てをするときにはこのような様々な障害、障壁があるわけなので、子育て支援のところで親子双方の支援をしていく、介入していくというのが効果的ではないかと思っています。それで、子供時代の早期介入がアルコール使用障害のその後の予防因子になるというデータもございますし、それから当院のデータですけれども、アルコール使用障害の患者さんの4人に1人が未成年者と同居していたということがございます。ですから、アルコール使用障害の人を見たら4人に1人はおうちに子供がいるんだなということを考えていただくと、そこはある意味、非常に介入のしやすい場所になるのでないかと思います。
子育て支援を軸に介入して回復の連鎖をつくる。つまり、自分のことでなかなか人に相談できなくてお酒に蓋をする人も、子供が不登校になったり、子供が自傷したりとか、子供が問題を抱えると、そこを軸に支援の介入ですと、意外と受け入れてくださることも多かったりしますので、そんなことができるのではないかと考えています。
次のスライドをお願いします。
当院ではこういうシステム化されているわけではないのですけれども、外来で予約を取ったときにワーカーなどがこういう感じで動いてくれているなというのをイメージ図として出しているものですが、アルコール使用障害の方が受診相談されると、同居する御家族などと確認してくださって、家族がなければ通常の支援で、家族でも成人と同居している場合には御家族の家族教室とか家族会を御紹介するということと、あとは御家族への疾病教育を外来の初診のときにする。尻拭いはやめましょうねとか、失跡するのではなくて、こうやってああやってみたいなお話をクラフトモデルなどのような形でお話をする。
そして、妊娠中の場合ですと、特定妊婦として地域の支援が開始できるかということになってきますので、その辺の調整をしたりとか、未成年者と同居している場合には虐待があるか、ないかとか、そういったことを確認したりとか、そこでもちろん虐待があれば児相との連携になりますし、虐待レベルでなくても不適切な養育が疑われるとか、そもそも家族が孤立しているということであれば、児童相談所でなくてもこども家庭支援課とか、相談できるところと情報共有をしたりとか、そういったことができるかと思います。
それから、何もなくても私などですと外来にいらっしゃった依存症のアルコール使用障害の方には、お子さんがもしお母さん、お父さんの病気について知りたいと言ったらいつでも一緒に受診していただければ、御家族への説明という形でお伝えしますよとなどという話をしています。
これが全部うちの病院でできているわけではもちろんなくて、これを目指してやっているというところではございますけれども、なかなかこれをやるにはワーカーさんの手であるとか、医者の手であるとか、非常に多くの手が必要になっておりまして、これが十分できるような医療体制をつくるにはどうしたらいいかということが話されるのですが、どうしてもマンパワーがないということだったり、こんなものには予算がつかないとか、そういったところで、なかなか外来の患者さんへの家族支援ですとか地域支援に対するインセンティブですね。病院として動いていくために人手をつけるためのインセンティブがなかなかなくて、最近どんどん逆に人が削られていっているという状況にありまして、ここがうまく進むような社会の仕組みが欲しいと思っております。
最後のスライドをお願いします。
これは、こんな感じで考えたらいいのではないかという私のイメージ図にはなりますけれども、まず患者さん自身が小児期の困難な養育環境、虐待、親子の離別、貧困、家族の慢性疾患などがいろいろあって、アルコール使用障害を発症しているような状況にあると考えたならば、その患者さんがお子さんに対して不適切な養育ですとか、お酒の問題に伴う虐待ですとか、ヤングケアラー問題ですとかということがあって、お子さんが今度は感情に気づけない、人に頼れない、不健全な形で気持ちに蓋をするようなことがあると、左側のぐるっと回ってアルコール使用障害、あるいは様々な心の病気の連鎖が起こってくるのかなと思うのですけれども、右側の黄色いバックグラウンドのところのようにしていけば、逆に回復が連鎖するのではないかと思っています。
こども家庭支援課とか児童相談所、保育園、幼稚園、学校医療機関などが連携して有機的につながって、子育ての話題を軸にお子さんが困っていることを相談するという練習をしていただいて、親御さんのアルコール依存症からの回復にもなりましょうし、お子さんはお子さんで心の病気をその後抱えないような取組ができるのではないかと思っております。
そういうことで、私からの話はこれで終わりにさせていただきます。ありがとうございました。
〇松下会長 どうもありがとうございました。
それでは、3名の方からの説明について御意見、あるいは御質問をお願いしたいと思います。先ほどと同じように、御発言のときは会場参加の方は挙手をしていただいて、オンラインで御参加いただいている委員は挙手機能を使用して私から指名させていただきますので御発言いただくようよろしくお願いいたします。
それでは、いかがでしょうか。
オンラインの米山委員、お願いします。
〇米山委員 米山です。
白石委員、山口委員、青山参考人の皆様、お話をありがとうございました。特に青山さんのお話を聞いて非常に感銘を受けました。最後のスライドのイメージ図でしたけれども、これが実現できるといいなと感じて聞かせていただきました。
それで、お三方のお話を聞いていて、私は今、大学で教員をしておりますけれども、もともと保健師でしたので、山口先生のお話などを聞いていて、ちょっと思ったことを意見として申し上げたいと思います。
私は現在秋田県におりまして、秋田県のアルコール健康障害対策のいろいろな事業等にも関わらせていただいているのですが、秋田県の中でももちろん地域の温度差というのがあります。それで、これは秋田県に限らないのですけれども、うまくやれているところと何が違うのかといいますと、患者さんに相談があったから専門機関につなぐ。これはとても大事なことです。
でも、つないで終わりにしないということなんです。その後どうなったのかというフォローをきちんとするですとか、病院につないだだけではなくて、その後、自助グループにつながるところまで関わりを続けるとかですね。
というのは、これも皆様、御存じの方は多いと思うのですけれども、特に御本人の方たちは医療につながったから解決というわけではなくて、御家族の方も相談機関につながったからオーケーということではなくて、長い時間、つながってもしんどさを抱えていらっしゃるということがあるんですね。多くそういうことがあって、それはどこからきているかというと、先ほどの青山さんのお話にもあったように、過去の家族から、元家族からのトラウマ体験ですとか傷つき体験というものがある。
ですから、目の前にいらっしゃった方を、はい次というふうに振り分けで終わるのではなくて、3Dで見えてくるようなその人の過去の体験ですとか、言語化されていない傷つき体験がどこにあるのかとか、それから今は表現されていないかもしれないけれども、社会的ないろいろな問題ですとか、これから起こり得る問題というところまで予測しながら関わるということが非常に重要ではないかと感じました。
それで、青山さんが、こんなふうに連携できたらいいという図を出してくださったときに、一人のお子さんの背景にいろんな問題があって、それに関係機関が連携して関わるということは、つまりここでいろんな関係機関の皆様が参加してくださっているように、組織横断的に関わる問題を捉えていくということがすごく重要なのではないかと強く思いました。
以上です。ちょっとまとまりませんが、よろしくお願いいたします。
〇松下会長 ありがとうございました。
それでは、オンラインで江澤委員、金城委員、石井委員に挙手をいただいています。まず江澤委員からお願いしてよろしいでしょうか。会場はオンラインの先生の後にお願いいたしたいと思います。
では、江澤委員お願いいたします。
〇江澤委員 ありがとうございます。
白石先生に伺いたい御質問がございます。
脂肪性肝疾患の新分類をいろいろ分かりやすく説明していただき、ありがとうございます。我が国も非常に脂肪肝が多く、一般の方々も含めて脂肪肝に対する認識を非常に軽く取り扱っているような印象も持ったりしています。
そういった中で、肝の例えば血液検査で幾つか線維化マーカーがあったり、超音波のフィブロスキャンというものもあったりするのですけれども、診療を受けられた方が対象になるかと思いますが、肝の線維化に対する啓蒙とか、そういったところでアルコールの生活習慣を改善していくとか、そういう取組について先生はいかがでしょうか。御示唆いただければと思います。
〇白石委員 直接、今、学会では消化器病学会と肝臓学会ですね。この2つが中心的に、脂肪肝の以前からNASHとかNAFLDとか言っているときから線維化、肝障害、それによる身体障害、心血管系疾患へのリスクについてはこの10年ほどずっとやっていたのですけれども、ただ、その学会内でもやはり温度差がかなりありまして、肝臓疾患を診ているドクターはいいのですが、消化管を診ている先生方はあまり興味がないというような状況にあります。
ましてや内科全体でもそういうことになり、もっと言うと、やはりいろんな身体科の先生方がもっともっとそれに興味を持って、自分も関係しているんだ、自分の科も関係しているということを認知してもらわなければいけない。
そこで、日本医師会のほうとか、そういう講演会も増えていることは確かなんです。それから、インターネットも今、開いて脂肪肝とやるとかなり出てまいります。放っておくと、肝臓ではない病気で大変だよというような内容もかなり出てきているので、今そういう意味ではちょっとブーム的なところはありますけれども、自然に広がっていることは事実です。
ただ、もっともっと先生がおっしゃるとおり、広め方はまだたくさんあるだろうと思うので、今後またみんなで対応していきたいと思っております。
〇江澤委員 ありがとうございます。
我々、日本医師会でもかかりつけ医研修とか、積極的にいろいろ毎年プログラムを変えながら取り組んでおりますので、またいろいろ御指導いただければと思います。
〇白石委員 アルコールもよろしくお願いします。
〇江澤委員 もちろんです。今日の件で今、申し上げているところですけれども、例えば線維化マーカーとか、もう少し活用できる部分があるし、そういったものは共有していくことが大事だということで、そういった理解でよろしいでしょうか。
〇白石委員 本当は線維化だけではなくて、フェリチンとか、いろんな数値があります。血小板の数とか、そこら辺をもう少し明確に分かりやすく、普通の診察、診療で分かりやすいものをつくるべきだと思っております。ありがとうございます。
〇江澤委員 了解です。ありがとうございます。
フィブロスキャンなども有効に使えるということでしょうか。
〇白石委員 フィブロスキャンに関しては、持っている施設が限られているということなので、どこでもできるというほうを中心にしたほうがいいのかなと思いますが、とても意味があります。私もやっていますけれども、やはり意味があります。このエラストグラフィーも意味があります。それから、MRIのエラストグラフィーも非常に広がっておりますのでいいと思います。
〇江澤委員 どうもありがとうございます。また引き続きよろしくお願いいたします。
〇松下会長 ありがとうございました。
続けて、金城委員お願いします。
〇金城委員 大変参考になる御発表をありがとうございました。鳥取大学の金城です。
私は今日の御発表を聞かせていただいて、一般の精神科診療外来から精神科の総合病院と、身体科の診療で、アルコール健康障害に関わるときに、身体科と精神科で乖離があって、見ている視点が違うなというところが非常によく理解できてありがたかったかと思います。
白石委員の御発表の中で、40グラム、60グラム辺りの飲酒量への介入、早期介入、そして全体の飲酒量低減が結局死亡率を全体的に減らしていくということに同意するところです。
その際に、AUDITなどでスクリーニングをした後に、特に職域や住民健診の中でmスクリーニングに引っかかった人たちに受診してもらうように身体科のほうに紹介したりはするのですけれども、単発で健診の結果を持って受診していただいた後に、結局フォローが続かなくて飲酒に対する介入も1回で終わってしまい、また翌年同じように飲酒による肝機能異常で引っかかっても、繰り返していると、受診をしなくなっていくように思っています。
ですから、スクリーニングも大切なのですけれども、その後スクリーニングしたものをどうやって継続して介入を続けていくかというところで、この第3期の計画を立てるときに、例えばプログラムやパッケージという形で、例えば一般の診療所レベルでもできるような形で介入していけるようになればいいなと思ったところです。
そこで、例えばこのくらいの飲酒レベルであれば精神科ではスクリーニングは行っている、フォロー体制が整っている、プログラムがある、という中で、どの分野が特に問題飲酒レベルへの介入が弱かったり、スクリーニングが弱かったりするかを、図示化し、どこに取り組むべきなのかを確認できると、(取り組むべき対策が)分かりやすくなるのかなと思いました。
意見です。ありがとうございます。
〇松下会長 ありがとうございました。
では、続いて石井委員お願いいたします。
〇石井委員 とても興味深いというか、すばらしい発表を次々と聞かせていただいて本当にありがとうございました。
感想と意見というか、ほぼ感想になると思うのですけれども、私はこの関係者会議にアルコール依存症の本人として参加させていただいています。この会議の目的というか、趣旨の中で、SBIRTS(エスバーツ)という流れは非常にすばらしいなと思いました。しかしまだ脈々とはその流れにはなっていない。これからなのだろうと初にこの会議に参加するようになったときに感じました。
日は先ほど発表があった小松先生とか白石先生のお話の中にもあった「みつける」「かかわる」「つなぐ」といった、いろいろなところと連携していく働きというのを実際にやられているところもあって、そういったところをどのように効果的にするのかということで診療報酬の話も出ていたと思います。
私は看護師だったときに現場で透析室勤務の期間が長くありました。
析療法は糖尿病の患者さんとかもかなり数が多くて、ちょっと古い話で恐縮なのですけれども、20年くらい前かと思うのですが、閉塞性の下肢動脈硬化症で、20年前といっても平成に足壊疽とか、足を切断する方たちは非常に多かったんです。
でも、診療報酬の改定があって、早い時期から足の血流の検査とかをして血管外科のほうに紹介するとかという流れが出てきて、紹介の流れが非常に活発に動くようになったとき、現場として早い時期に下肢の血流が悪い状態を見つけて対処していくことができて、本当に驚くほど下肢の切断の方が少なくなっていった印象があります。今はあまり糖尿病がひどくなって足を切ってしまうとか、そういった方たちは少ないのではないかと思います。足の切断だけで、ご本人のみならずご家族など周囲にもすごくいろいろな弊害が出てくるわけです。
このようにアルコール依存症以外の病気でも、その病気が悪化していったときにあまりにも弊害が大きいのでいろいろな方法をして、早めにそんなにひどい状態に広がっていかないようにするという方法は今まで医療の中でたくさん使われていたのではないかと思います。
それで、アルコール依存症の弊害というのは、今日の発表の中でもたくさん子供さんとか、御家族とか、飲酒運転とか、今は医療費が膨大になってきて、国会中継とか新聞とかを大分にぎわせていますけれども、弊害の大きさを考えると、早い時点で食い止める。本当に進行性の病気なので、そういったことについて診療報酬を前向きに考えていくのはとてもいい方法だなと思います。
病院の経営者のトップの方は、やはり経営を安定させていきたい。病院が潰れないようにしていくためにも、利益、収益が入るようなことについては特に関心を持っているので、診療報酬の改定のニュースとか情報が病院に入ってくると、厚生省がどういったことに着目しているのか、早く察知してくれるんです。ですから、現場でのスタッフの意識というのはすごく上がってくるでしょうし、流れがよくなっていく為にはとても効果的な方法かと思います。
ただ、全くの素人なので、どこにどういったポイントを置いて報酬の改定を行っていったらいいのかというのは、本当に専門の方々によろしく御検討願いたいと思っております。
それと、飲酒運転で受診義務がないというのはすごいびっくりなんです。私は本人として同じ病気の方たちのお話も伺っていますけれども、これだけ飲酒運転でいろいろニュースになって大変なことになっていて厳罰化もされているのに、やはりそれでも飲んでしまうという人たちの病気の確率は、非常に高いのではないかと思います。
ですから、今日の関係者会議はほかの省庁の方も参加されていると思いますので、受診義務を全国的に広めていただくようなことも御検討願いたいと思います。
すみません。長くしゃべって時間になっていますので、また別の機会にと思います。失礼します。
〇松下会長 ありがとうございました。
それでは、現地から平川委員お願いします。
〇平川委員 手短にお話しします。
私はもう30年くらいアルコール依存症をやってきたので思うのですけれども、今回のDSM-5の使用障害というのはまだしっくりこないんです。それで、皆さんのお話の中でも、使用障害というふうにおっしゃったりとか、健康障害とおっしゃったりとか、依存症というのが非常に混じっていて、私はその場、その場で頭が混乱してしまうというのが現状で、さっきの飲酒運転をして事故を起こすような人たちは完全に依存症だと私たちは思うので、こういう人たちは道交法を改正して必ず受診を強制的にしていただく。認知症で免許を取り上げるような形くらいにきちんとされるべきだと思いますし、一方で使用障害という形でまだブレーキが不十分ながらかかる人たちについてはハームリダクション等でアプローチしていくということで、2段階にしないと非常に混乱しやすいということで、依存症にまで至る人の今、半分くらいは統合失調症とか、知的障害とか、鬱病を合併しているケースが非常に多い。発達障害も増えていますけれども、そういう方々が多くて非常に難知性の依存症が増えています。先ほどの三角形の頂点のそのまた先を見ている私たちからすると、その辺はこの会議で一緒にしてほしくないなと思いますので、言葉の使い方をよろしくお願いしたいと思います。
以上です。
〇松下会長 ありがとうございました。
まだまだ御意見はあると思うのですけれども、予定の時間を迎えております。もし何かこれだけはということがございましたら、事務局に御連絡いただければと思います。どうもありがとうございました。
最後に、事務局からお願いします。
〇小野室長補佐 本日はありがとうございました。
次回の開催日程については、決まり次第御連絡させていただきたいと思います。
〇松下会長 それでは、第32回「アルコール健康障害対策関係者会議」をこれにて閉会いたします。
本日は、御多忙のところ御参集いただきまして、どうもありがとうございました。
委員の皆様方におかれましては、御多忙のところお集まりいただきまして誠にありがとうございます。
本検討会はオンライン併用ですので、一部の構成員はオンラインでの参加となっております。
本日の会議は、あらかじめ傍聴を希望された方を対象に音声の配信を行っておりますので、御発言の際はマイクを近づけていただいた上でお名前を名乗って、できるだけ大きな声で発言いただき、発言時はマイクを御使用いただき、発言されない際はマイクを切るよう御協力をお願いいたします。
傍聴される方におかれましては、開催案内の際に御連絡している「傍聴される皆様へのお願い」事項の遵守をお願いいたします。
また、会場設備の関係で音声に不具合が生じる可能性がありますので、聞き取れなかった箇所については後日、議事録を公開させていただきますので、そちらで御確認をお願いいたします。
本日、社会・援護局障害保健福祉部の野村部長は国会関係の要務で16時40分頃からの出席となります。また、アルコール健康障害対策推進官の谷口室長におかれましても他の要務で17時30分までの出席となります。
続きまして、委員に改選がありましたので御報告を申し上げます。
白川教人委員が退任され、新たに志田博和委員が就任されましたので御報告申し上げます。
また、東ちづる委員が退任され、新たに長嶺乃里子委員が就任されましたので御報告申し上げます。
また、保坂昇委員が退任され、新たに林和博委員が就任されましたので御報告申し上げます。
また、堀井茂男委員が退任され、新たに平川淳一委員が就任されましたので御報告申し上げます。
白井委員、長嶺委員、林委員、平川委員におかれましてはよろしくお願いいたします。
続きまして、本日の出席状況について御報告いたします。会場での御出席が、長嶺委員、上村敬一委員、小野里委員、勝嶋委員、渋木委員、白石委員、塚本委員、稗田委員、林委員、平川委員、松下会長、山口委員となっております。
オンラインでの御出席が、石井委員、上村真也委員、江澤委員、金城委員、小松委員、志田委員、米山委員となっております。
現在、19名中19名御出席いただいておりますので、会議が成立することを御報告申し上げます。
また、本日は神奈川県立精神医療センター、コメディカル部長の青山久美参考人にお越しいただいておりますので御紹介させていただきます。
また、本日は関係省庁より、法務省、国税庁、文部科学省、警察庁、こども家庭庁、国税庁よりオブザーバーとして御参加いただいております。
以上、よろしくお願いいたします。
この後の進行は、松下会長にお願いしたいと思います。
○松下会長 それでは、本日の議題に入りたいと思います。
初めに、事務局より資料の確認をお願いいたします。
○小野室長補佐 お手元の資料の確認をさせていただきます。
資料1、上村委員提出資料「‘依存症専門医療機関’である‘普通’の精神科診療所での依存症治療の現状と課題」。
資料2、小松委員提出資料「第3期アルコール健康障害対策推進基本計画に残された課題」。
資料3、白石委員提出資料「アルコール健康障害における内科(身体科)の立ち位置」。
資料4、山口委員提出資料「鹿児島県におけるアルコール依存症対策」。
資料5、青山参考人提出資料「子育て支援を通じたアルコール使用障害からの親子の回復」。
参考資料1、アルコール健康障害対策基本法。
参考資料2、アルコール健康障害対策関係者会議令。
参考資料3、アルコール健康障害対策推進基本計画。
参考資料4、委員名簿。
不足等ございましたら、事務局までお申しつけください。
以上となります。
○松下会長 ありがとうございました。
それでは、早速議事に入りたいと思います。
議事次第1「第3期アルコール健康障害対策推進基本計画に向けた検討について」です。本日は、4名の委員と1名の参考人に御発表いただきたいと思います。お一人当たり15分でお願いしておりますので、時間に御留意してお話しいただきたいと思います。13分になりますとベルが鳴ります。あと2分ということでまとめていただければと思います。
本日は5名の先生からお話しいただきますので、2回に分けたいと思います。まずは上村委員、小松委員まで御発表いただいて、その後に質疑応答の時間を10分ほど取りたいと思います。その後、白石委員、山口委員、青山参考人の3名の方々から御発表いただいて、その後に質疑応答の時間を15分ほど取りたいと思います。
それでは、まずは上村委員より御発表をよろしくお願いいたします。
○上村(敬)委員 上村でございます。今日はどうぞよろしくお願いいたします。
スライドをお願いいたします。
私は、依存症専門医療機関という指定を受けている普通の精神科の診療所の院長をしております。その現状、私たちが診療所でどんな診療をしているのか、どんなアプローチをしているのか、これを委員の皆さん方に知っていただきたいと思って今日はこういうお話をさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
次をお願いいたします。
当院は福岡市の博多区の中央部にあります。私自身は昭和62年に医学部を卒業して精神科診療を40年近く経ちました。日本精神神経科診療所協会依存症対策プロジェクトチームの委員長ということをさせていただいております。
私自身のことを少しお話ししますと、依存症医療に関わり始めたのはこの20年くらいでありまして、それまでは総合病院精神科で通常の外来型の精神科診療のほかにコンサルテーションリエゾンや、精神科救急などに携わりました。その後、精神科病院に勤務をするようになり、長期の入院患者さんの退院支援とか地域生活支援とか、そういったものに関わっていました。依存症にはあまり縁がなかったのですけれども、開業する前に勤めていた病院が依存症の専門の精神科でありました。
私は依存症ではなく退院支援を中心に仕事をしていました。間近で依存症治療を見ているうちに、依存症の患者さんの治療や回復の様子、地域生活支援の必要性などを直接知ることができ、今まで苦手意識を持っていた依存症医療に関心を持つに至りました。
その中で、やはり病院で診る患者さんというのは進行して重症の方が多いです。身体的な健康、あるいは社会生活上の様々な損失、いろいろな不具合を持ってなかなか回復しようにも回復できない方々が多うございました。そういう患者さんを見るにつれて、もっと早い段階でどうして医療につながらないのだろう、どうして早い段階で相談しないのだろう、支援の手が届かないのだろうなど考えており、結局これらの問題に対処できる、クリニックを開くということになりました。福岡市内で開業し今年7月で10年目に入るといったところです。
私どもの診療所について説明します。一般の精神科の医療機関、精神科の診療所ということで、依存症専門とはうたっておりません。しかし、依存症もきちんと診るということで、当初から治療プログラムというのを自前でやるようにしました。そういったところが通常の診療所とは違うかなと思っております。
ただ、デイケアなどは行っておりません。当初は治療プログラムは集団でやっていたのですけれども、施設基準で集団療法が算定できない状況でしたので、通院精神療法だけ算定するという保険診療の枠内での診療であります。
火曜日金曜日は夜8時まで、土曜日も夕方6時まで診療しており、8時までの日が40人から50人くらいの患者さんを診ていまして、6時までの日でも30人を超えます。それで、毎日火曜日、水曜日、金曜日は1人ずつ、土曜日は2人の新患を診ていまして、月に20名くらいの新患を診ているというような感じです。新患の患者さんには一人60分強、再来では1人当たり10分くらいの診察時間、それが私どもの診療所の診療の実態です。
次のスライドをお願いします。
次に、当院の新患の患者さんの状況をお示しします。スライドグラフの下の緑のところに数字をつけていますが、そこがF1というCD10の分類でいうところのアルコール及び物質使用障害の患者さんに当たります。全体で20%くらいの患者さんがいらっしゃいます。そのほか、神経症の患者さんとか、あるいは上のほうのブルーのところはF6でギャンブルの患者さんで、最近はアルコールよりもギャンブルのほうが多くなっているという状況であります。
当院におけるアルコール依存症の患者さんの状況を見ていきたいと思います。
次をお願いいたします。
これは、当院の新患でアルコール依存症と診断された患者さんの数字ではあるのですけれども、当院では約4分の1、23%の方が女性でありました。年齢構成を見てみますと、全体でも30代、40代で50%、男性よりも女性の方のほうが、より若いという結果でした。
次のスライドをお願いします。
当院への受診経路等を見てみました。直近3年間だけですけれども、この3年間においては3割が女性の方、そして受診のきっかけとしては家族の勧めや自分自身の意思という自発的な受診が約50%あります。特に女性は自らの意思が高いということで、右のグラフの女性の一番右側、30%ぐらいが自らの意思で受診をされたという方です。
男性は、逆に家族から勧められてという方が多くなっています。こういった方々はお酒の飲み方が最近おかしくなっている、ちょっと量が多いと心配され、自分でも何か飲み方が変だなと自覚をしていたり、自分でも体のことが心配していたりします。家族から依存症かどうか一度診てもらったら、あるいは一度相談してみようというようなことで受診をされたという方がほとんどです。
全体では約8割の方がアルコール依存症での治療歴がありませんでしたし、また6割がアルコール関連の内科疾患などの治療歴がありません。すなわち、お酒の飲み方や飲む量に関してはいろいろと問題が出てきたけれども、身体的、精神医学的にはまだ問題がない、あるいは表面化していない患者さんが当院では多く受診をしているという状況が分かります。
次をお願いいたします。
当院におけるアルコール依存症の通院計画書と、通院の受診の流れを示しております。詳細は資料を見ていただきたいと思うのですけれども、初診での私の診察は大体60分を超えます。他所ではメディカルスタッフに予診を取ってもらうというのはよくあると思いますが、うちはそこまでの余裕がありませんので私が最初から診察を行います。患者さんの病歴、生活歴、生育歴等々を聞いて、その上で診断基準に基づいて診断を行う。そのほか、合併症としての様々な精神疾患の併存症や内科的な問題等を評価します。
その上で医師による初期介入、私が資料を用いて患者さんにアルコールの健康被害とか、あるいはアルコールの代謝時間とか、そういった問題をお伝えして、依存症としてどういうふうな経過をたどるか、あなたは今どのくらいのレベルにあるねというアセスメントをお伝えして、治療の方針としてはこういうものがあるよというような私どもの治療プログラムを提案するという形になっています。
やはり患者さんに今後の治療の流れを見せるということで、今後の治療の見通しを伝えいきなり入院という話にはならないというところが、患者さんのその後の治療の動機づけにはなるようです。
次をお願いします。
では、当院でどんなプログラムをやっているかという内容です。それぞれ通常の診察、再診での診察ですので概ね10分くらい私の診察をした上で、心理士が個別でプログラムを行います。それぞれワークシートを用いた内容で行っております。大体30分なのですけれども、30分、40分くらいの時間で行っていますが、これも先ほども言いましたように、特別何かの点数がついているわけではなく、通院精神療法にプラス予約料という形でお金をいただいています。経済的にいろいろな方々がいらっしゃいますから、予約料として高い金額は設定しておりません。
次をお願いいたします。
こういった形でアルコール依存症に対する治療を当院の外来が行っているのですけれども、このアウトカムに関して2023年に岡山で開催されましたアルコール・薬物依存関連学会で当院の金織が発表してくれたのですが、ちょっと細かくて見づらくて申し訳ないのですが、2018年のまだ集団でやっていた頃と、コロナの影響で集団でできなくなり個別でプログラムをやるようになったときとで比較をしてみました。集団で行ったA群と個別で行ったB群では年齢とか男女比とかにも大きな差はありません。AUDIT(オーディット)という点数では両方とも25点以上だし、1日の最大飲酒量、これは両方とも大体18ドリンクとか17ドリンクとかという数字が挙がっていますから、1日100グラムを超える多量飲酒者ということになります。缶ビールで言うならば、ロング缶を6本以上飲んでいるだろうということになります。
そういう方々に治療プログラムをした結果ですが、集団でやっていた当時はまだ断酒を目標とはしておりましたので、断酒ができるかどうかというのが一つの通院継続の決め手になってくるかと思うので、A群ではプログラム終了時の飲酒量というのはB群に比べて少なくなっているのですが、B群、個別でやりますと、節酒をするか、断酒をするか、本人のモチベーションを維持するために選んでいただくという介入になりますので、結果としてプログラムの導入率も高くなったし、継続率も高くなった。ただ、飲酒はまだ続いているなという結果でした。
次をお願いいたします。
ここからは私どもというより私の考えということになるのですけれども、スライドにお示しした「依存症対策の論点整理」は、以前の当会議の資料から持ってきたのです。この多くは第2期の基本計画に盛り込まれていったものなのですが、まだ残念ながら専門医療機関へのつながりにくさといった点が各方面から指摘されているところであります。また、アルコール問題の早期介入の必要性が指摘されていますが、私たちの示した結果からも分かるように、問題の少ない軽症のうちに介入することというのは飲酒行動を変えるということが可能なアプローチではあるのですけれども、それが現状では十分に生かされていないと思います。
次をお願いいたします。
そういったことで国をはじめ、アルコール依存症における治療ギャップというものを解消していき、各地で専門医療機関の整備を進めようということをしているわけですが、依存症専門医療機関の9割が精神科の病院であり、人口100万人に対して1か所以上設置されているのは38道府県に限られています。また、診療報酬上の加算に関しても集団の治療に関してつけられていて、私どもみたいに個別で介入をする、指導をするところには何ら診療報酬上の配慮はされておりません。
次は飛ばしていきましょうか。資料を見ておいてください。
「なぜ治療ギャップの解消が必要か」というと、これは皆さん方御承知のこととは思いますが、心身及び社会生活上の重症化を予防することが第一の目的であることは異論がありません。進行して重症化すると身体的問題のみならず、就労上の問題や家族への影響、酩酊下での問題行動や飲酒運転等による社会的影響など、影響は多岐にわたります。その損失も経済的のみならず、心理社会的にも大きなものがあります。逆に、早期に相談、受診、あるいは酒害指導を受ける、介入治療を受けることで重症化を予防できることは自明のことと思われます。
次をお願いします。
2019年に精神科診療所協会依存症対策プロジェクトチームで行った会員に対する意識調査です。これに関しては、次の小松委員の資料にも同等のものが挙がっておりましたけれども、地域生活に身近なところで私どもは精神科診療を行っています。依存症の専門医療機関でなくても相談を受け、治療を行い、また自助グループや家族会などにつなげることを行っています。しかし、残念ながら積極的にとは言い難いという結果でした。
ただ、専門的なプログラムを持っていないけれども、一生懸命治療継続に働きかけていたり、併存精神疾患へのアプローチや身体的問題へのアプローチをしております。
ただし、医師自身が限られた診療時間内にこうした問題にアプローチするというのは大変負担が大きく、また、対応できるスタッフを雇用、あるいは教育するにしても、そのスタッフ育成や雇用にも厳しいという現状が示されました。
ただ、そうは言っても繰り返しになりますけれども、精神科診療所は地域生活に比較的身近な存在ですし、広くメンタル不調や心身不調に対して対応できる医療資源です。
しかし、現状は依存症治療には生かされていないと思います。スライドにも示しましたように、様々な訴えで来院した患者さんに対して飲酒に関するスクリーニングなどは実施できます。しかし、それらに対して診療報酬はありません。
また、依存症の専門医療機関の多くで実施されているデイケア等は平日昼間に通院できる人に限られています。それでは、治療の必要な働いている人たちは利用できません。
また、精神科の診療所には看護師や心理技術者は比較的多く配置されています。こういう人たちが、日常的に患者さんの個別のカウンセリングや相談に乗っています。しかし、こういった個別の相談や支援はほとんどがサービスでありますし、あるいは心理カウンセリングに関しては自費といったところも少なくありません。
当院の場合は、治療プログラム実施の受診の際には予約料をいただいていますけれども、スタッフの人件費をカバーできるものではありません。
次をお願いします。
最後のスライドになります。都市型の‘普通’の精神科診療所である当院の依存症の治療の現状を報告いたしました。その上で、私の意見を述べさせていただきました。繰り返しになりますが、地域生活に身近な医療資源である精神科の診療所が依存症治療にもっと積極的に関われるよう、診療報酬を含む医療制度上の環境整備対策が強く求められると思います。
本日はどうもありがとうございました。
○松下会長 上村先生、どうもありがとうございました。
続きまして、小松委員より御発表をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○小松委員 よろしくお願いします。
「第3期アルコール健康障害対策推進基本計画に残された課題」ということで、かなりたくさんのお話をさせていただきます。
いろいろ書いてありますけれども、まず「目標」については巨大なTreatment Gapを解消する、Harm Reductionを進めていく。それから、療養と就労の両立支援ということも考えなければいけない時期ではないかというお話をしたいと思います。
それで、議論となる前提の事実確認なのですけれども、アルコールピラミッドで一番上のてっぺんを依存症専門医療機関が診ているというピラミッドがよく書かれますけれども、私は実は一部はもちろん専門医療機関が診てくださっているのですが、最重症群はかなり地域か刑務所にいると考えております。
その理由は、専門医療機関での治療ができる患者さんというのは2つ条件をクリアしていなければいけません。1つは治療契約が結べること。ですから、治療動機が乏しい人たちは地域や刑務所にとどまっています。それから、身体合併症が専門医療機関の多くが単科ですので、そういう単科の精神科病院で管理可能であること、つまり合併症が重度であるとアルコールの場合は総合病院にとどまっております。
そこで、ちょっとマインドセットを変えていただきたい。私たちはどうも“アルコール使用障害山”という攻略するルートを、ちょうど富士山で言えば御殿場ルートのようにふもとからずっと歩いていくルートに固定化していないか。それはアナロジーでいくと、従来型のルートは5%のエリートが使えるルートなんです。
それで、私が新しく提案したいルートは、富士山で言えば富士宮ルートとか吉田ルートなのですけれども、これは要するに途中まで車で、がっと登って、その後は足で歩いていくというルートなんです。治療動機の乏しい人たちでも、医療機関までは救急車が運んでくれています。ですから、救急の医療機関からの接続を考えていく必要があるのではないか。救急搬送は、ほとんど全員のア症者が受け入れます。ですから、WHOの調査でも入院患者の約30%はアルコール関連だとか、外傷患者の10~18%はアルコール関連であるとか、こういう調査が出ているわけです。
それで、実際にお示ししたように、私どもおととし、日本の総合病院精神科でどういう患者さんを診ているか。非常に複合的に重い問題を抱えている患者さん、例えば一番上を御覧ください。単身生保、もう家族と縁が切れていて、食道静脈瘤の破裂・2回目入院ということは非常に重い肝硬変で、間に合わなければ命を取られてしまうという患者さんが七十何%もいる。
それから、上から3つ目ですね。親と同居50歳代男性・腹水体動困難で入院、要するに8050問題の中にもこういう患者さんたちがいて、それは非常に多くの総合病院、精神科で経験しているということです。
そういうところで私どもが感じている困難は、1つはもちろん専門治療につなげようとしても本人が拒否的であるということなのですが、もう一つは既に総合病院に来る患者さんたちというのは、入院になるような患者さんは家族のサポートが弱いか、もう既に家族と断絶状態にある。かなり重い患者さんが来ているんですよということなんです。
そういうところで、では一般身体科の医師はどういう状況かというと、「医師の働き方改革」で御存じのように、救急病院の医師というのは多くが過労死レベルで働いていました。それで、平均在院日数は非常に短いです。当院でも11日から12日、そして400床から500床クラスの地域の基幹病院だと10日未満がほとんどです。ですから、体が安定したら即退院させろ、転院させろという圧力が半端ないわけです。それで、専門治療を動機づけてくれる助っ人、つまり常勤の精神科医やスタッフというのは本当にゼロか1だけなんです。
ですけれども、そういうふうなことがあるので『飲んで死ぬのもその患者の選択だから』という感じで、非常に強い無力感を抱いているのが総合病院の多くの身体科の医師、スタッフです。
ですけれども、スタッフというか、助っ人がいればここまでできます。これは2015年1月1日に663日フォローした私どものところのデータですが、断酒36.5%、減酒22.1%でございました。このくらいまではできるんですね。
ちなみに、うちはもちろんベッドはありませんし、ARPもやっておりません。ですから、要するに救急車で運んでこられて医療につながった患者さんたちを、そこから専門治療につなげる。これが“Best Buys”ですよというお話は2019年にさせていただきました。
とはいっても、いきなり無床の総合病院に移籍する精神科医をそんなにたくさんリクルートすることは難しいのです。それで、何かほかにいい手がないものかということで、こういうふうに救急車で運んでこられたら総合病院に入院している間に患者さんにタッチをして専門医療機関につなげよう。要するに、医者のほうから架け橋を渡そう。これがやはり決定打になるのではないかということを提案させていただきました。
そして、この間いろいろなモデル事業にさせてもいただきましたし、いろいろ働きかけをしましたら、このくらい無償の総合病院と専門医療機関との間で架け橋が架かるようになってきております。沖縄、熊本、長崎、福岡、佐賀、京都、滋賀、東京、山形ですが、滋賀は私がちょっと縁結びをさせていただきました。九州はほとんど、肥前精神医療センターの杠先生がお弟子さんたちにこういうのがいいよということで広げてくださったものです。
そういう架け橋モデルのメリットなのですけれども、まず入院していますし、しかも命を救ってくれた主治医がプッシュしてくれますので、キャンセルはまずありません。お酒も切れています。非常に話がしやすい。そして、そういうことで動機づけもしやすいわけです。それから、身体科の主治医とのディスカッションが非常にしやすいので、お互いの紹介のハードルが下がります。合併症が悪くなったときにすぐに受けて、よくなったらまたもう一回専門病院にお願いするということもできる。そういうふうなことで、沖縄ではスクリーニングをかけて65%が依存症だった。そのうちの72%が専門医療機関に行ったりとか、そういうふうになっているんです。非常にメリットはある。お互いにウィン・ウィンです。
ただ、デメリットは人件費の問題です。診療報酬上の問題ですね。
もう一つ、アルコール使用障害の医療体制というものが非常に今いびつであるということをお話しさせていただきます。
もともと相談機関があって、プライマリーの医療機関があって、そのてっぺんに今、専門医療がある。大体1対5対10とか、それくらいになるのが理想ではないか。実際、認知症ではそういうふうに整備されているんです。
ですが、アルコールではこんな感じです。プライマリーなところのデータすらないんです。こんな感じです。しかも、相談窓口は専門医療機関に比べて1対2です。これで広まるでしょうか。治療ギャップが解消できるでしょうか。
そういうふうなことを考えると、相談窓口を増やしていかなければいけない。それは、やはり先ほど言った救急告示病院です。総合病院と、あとは精神科の病院に必置されている地域医療連携室、ここでスクリーニングとか相談を診療報酬化すればいいのではないか。これは保健所や精神保健福祉センターとは違いますので、行政の仕事をただでさせないで、ここはちゃんとやってもらいましょう。
実は、MSWさんたちは非常にそれを望んでいます。それで、こういうリカバリーソーシャルワークチームというところで研修事業とかをやると、アンケートの自由記載の中には、本当はやりたいのに1日でも早く退院させろよ、余計なことに手を出すなよ、依存症の患者なんかうちの病院の範疇じゃないよ、こういう圧力にさらされているんですね。ですから、私どもの調査でもアルコールの問題がある患者さんへのスクリーニングに診療報酬がついたらもっとつかまえやすいのにな、やりやすいのになという声がこれだけあるわけです。
それから、プライマリー診療医は今までは全然そういう把握もされていない状態なんですけれども、これは先ほど上村先生のプレゼンにあったように、一般精神科医療機関ができると思います。それは先ほどもありましたけれども、受付でお断りしたいという先生や、拒否的ということで、一応は診るけれどもなどという先生方が、実は初診後にアルコールの問題が判明したらかなり診てくださっているんです。そういう人を蹴飛ばすなどという先生はなかなかいらっしゃらない。そうなのであれば、本当に全ての患者さんにSBIRTSをやって、支持的精神療法をやって、必要だったら教育入院のために専門医療機関に送る。これでいいのではないでしょうか。
そういうふうなことを考えると、本当に一歩進めるだけでも事態は大きく変わると思うのですが、そのためには数値目標が必須だと思います。やはりプライマリー診療をする仕組みをつくらないといけないし、先ほど上村先生から人口100万当たりの専門医療機関というお話がありましたが、相談のところは人口10万当たりの相談件数というのも数えていくと大分違うのではないかと思うんです。そういうふうにして底辺が広くなれば、山は高くなっていくと思うんです。
ここら辺はちょっと飛ばします。後で資料を御覧ください。
それで、そういうふうなことを考えると「こころの連携指導料」というのが非常に使えるものではないかと思っております。かかりつけ医のほうでスクリーニング、これはオーディットも含まれるということは既に私どもで確認をしました。
それから、自殺対策などに関する適切な研修、ここを変えてもらったら随分と適用が増えるのではないかと思うんです。そうすると、私どもの調査でもやはり院外にもうちょっと診療報酬がついたらいいよねと。それはどうしてかというと、「これはがんの疑いがあるから大きな病院に行きましょう」『お願いします!!』みたいに二つ返事でオーケーしてくれる場合だったら診療情報提供料2,500円でいいんです。
でも、アルコール依存症はそうじゃないので、やはり紹介して実際に受診するまで、そしてその後の治療の継続の支援にも本当に大きなエネルギーが要りますので、やはりその部分の頑張れというのが欲しい。これはまさに「こころの連携指導料」の適用拡大でできるであろうと思うんです。ここまでが治療ギャップの話です。
それで、ハームリダクションなのですが、今ハームリダクションイコール減酒というような誤解が広まっているので、もう一回おさらいをいたします。ハームリダクションというのは、必ずしも使用量が減らなくても様々な害を減らす目的で行われる公衆衛生的施策や介入のことです。これがもともとの定義ですので、そういうふうに考えると一番他人への影響が大きいアルコールであれば、365日一緒に生活している家族の支援というのはハームリダクションの最たるものでしょう。これについては既に参考人のほうからもお話があるようなので、ここで飛ばします。
あとは、飲酒運転ですね。これも、厳罰化すると、がっと減る。だけれども、その後は横ばいが続いております。つまり、厳罰化しても限界はある。それは繰り返す方たちは依存症で、しかも治療を受けていないからです。
こういう資料もあります。飲みたい気持ちが強い。前日の飲酒量を減らせない。だから飲酒運転をやっちゃった。本当にこれははっきりしているわけです。そうなのであれば、飲酒運転の後の受診義務条例というのはどんな効果があるか。これは吉本先生が研究したら、受診義務がある県というのは飲酒運転が減っているんですね。
そういうふうに考えますと、やはりアルコール治療と運転免許の制限、または停止処分を組み合わせるというのは諸外国でも最も低い飲酒運転再発率と関連する。これは20年以上前、もう30年近く前にそういうふうな物すごく厳密な研究が出たりしております。ですから、ここはもう少し工夫の余地があるのではないか。
それから、そろそろ日本でもインターロックの導入を推進する時期ではないでしょうか。2022年にWHOは飲酒運転の再犯対策としてインターロック・エフェクティブということで政策導入です。まさにハームリダクションですが、これを推奨しております。そろそろ考えましょう。
あとは家族の話ですが、ここら辺は既に参考人の方からのお話もあると思いますので、私は飛ばします。
まとめで、まず巨大なTreatment Gapの解消をするためには、私は第2期のときからお話しさせていただいていますが、精神科の無床の総合病院へ補強をすること。それから、一般の精神科医がSBIRTSなどでアルコール依存症の初療を行うこと。これはすごく大事だと思うんです。そのときに、ここの右にちょっと書いてありますけれども、適切な数値目標の設定が必須であると思っております。
それから、Harm Reductionですね。これは、実は治療格差の解消にもつながるんです。だって、家族は早期から困っているんですし、そして飲酒運転は強制力があるんですから、そういうふうに考えると家族を本人とした保険診療というものがもっと進むべきでありますし、受診の義務化とインターロックというのも車の両輪として進めていくべきではないでしょうか。
そういうふうに考えると、さらに産業保健から失職する前に関わるということが大事ではないでしょうか。少子高齢化です。働き手が少なくなると言っています。いつまでも「失職して生活保護」のままでいいのでしょうか。その前に何とかできる。それが結局、全部トリートメントギャップの解消にも関わっていくと思います。
ほかにもいろいろお話ししたいことはたくさんあるのですが、このくらいで私のプレゼンは終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。
○松下会長 どうもありがとうございました。
それでは、ただいまいただいた御発表について御意見あるいは御質問をお願いしたいと思います。発言いただく際は、会場参加の方は挙手をしていただいて、オンライン参加の方は挙手機能を使用していただき、私のほうで指名させていただきますので御発言いただくようお願いいたします。
それでは、よろしくお願いします。
では、白石委員お願いします。
○白石委員 白石でございます。よろしくお願いします。
上村先生にお伺いしたいところがあります。私は内科医の立場から、クリニックの精神科における検査、いわゆる血液検査等の一般検査などは並行して行うことは多いでしょうか、もしくはしないでしょうか。
○上村(敬)委員 ありがとうございます。
看護師が今はいなくて、採血をするとなると私がすることになりますので、私の手が空いたらやるという形で、本来ならば全例初診時にやるべきなのですけれども、多くの場合は例えば健診の結果とか、あるいは最近内科にかかっていたらその結果とかを拝見して参考にさせていただきますし、そういうものがなければ2回目以降にとにかく時間をつくって早めに採るというような形を取らせていただいております。
○白石委員 それを聞いた理由というのが、やはり診療報酬の問題もきちんとした診療をできる立場にあるので、きちんと、と言うのはすみません。いろいろな診療ができる立場にある私たちにとっては、きちんといろいろなことをやることによってその報酬を得ることで人件費を賄えるのかなと思って、それでお伺いしました。ありがとうございます。
○松下会長 ほかにはいかがでしょうか。
稗田委員、お願いします。
○稗田委員 稗田と申します。皆様、ありがとうございます。
小松委員の発表を聞きまして、医療ソーシャルワーカーのことを取り上げていただいてありがとうございます。ちょっと補足をしますけれども、ここにいらっしゃる医療に携わる方、特に医療ソーシャルワーカーの存在が病院の中であると思いますけれども、医療ソーシャルワーカーは社会福祉士という国家資格があります。精神保健福祉士だけではなくて、社会福祉士というソーシャルワーカーのもう一つの資格があって、基本はそちらの資格を持っている人がほとんどです。それで、今までは精神保健福祉士、依存症といったら精神ということになっていましたけれども、このように治療ギャップを解消するためにやはり総合病院、あるいは一般医療、救急医療、そこで医療ソーシャルワーカーも介入の手助けができるのではないかということで、実は社会福祉士のいる現場に対しても先ほど小松委員がお話をしてくださった調査などをさせていただき、そして研修もしていく中で、とても依存症に対して関心が高まっていっています。
ところが、関心が高まって依存症が、この人もそうだ、この人もそうだと分かっていく中で、残念なことはやはり医療の現場の中ではなかなかコメディカルだけではなくて医師、看護師の皆さんと連携することがすごく難しいということを回答しているのが9割もいます。
ですので、一般の医療機関の中のソーシャルワーカーの機能が今、研修で少しずつ高まっているということはデータ的にもお示しをさせていただいていますので、精神保健福祉と併せて社会福祉士の活用もぜひ皆さんに御理解をいただきたいという補足です。
以上です。
○松下会長 ありがとうございました。
そのほかはいかがでしょうか。
では、長嶺委員お願いします。
○長嶺委員 上村先生、小松先生、ありがとうございました。長嶺と申します。よろしくお願いします。
まず、小松先生の御発表の中で、飲酒運転後の受診義務条例には一定の効果があるというところで、私は家族の立場として、私の父親も飲酒運転をする一歩手前でしたし、今、私が関わっていたり、参加するミーティングの中で、最前線で困っている御家族の方たちは飲酒運転にはとても困っております。
それで、家族のほうでこっそり警察と連携して車両ナンバーなどを伝えて検挙の確認をしてもらえますかなどの案とかも出てくるのですけれども、それが家族から警察に告げ口したというふうに本人に解釈されて報復を恐れる御家族もとても多かったり、あとは自宅に警察が来たことで小さなお子さんが翌日、保育園とか学校で、僕の家に昨日警察が来たんだよと、まだ理解が乏しいお子さんがはしゃいでしまって御家族が追い込まれるという事例などを伺っております、
そこで、警察などで飲酒運転の検挙後に、専門治療を詳しく知らなかったとしても、そういったところに行くべきだというふうに警察官から一言あるだけで違うのではないかと私は今、考えておりまして、今、先生の御発表がありましたので付け加えさせていただきました。
以上です。ありがとうございます。
○松下会長 ありがとうございました。
それでは、平川委員お願いします。
○平川委員 平川と申します。
私は東京八王子で精神科の病院をやっていますが、これは白石先生がいたこともあるのですけれども、八王子では一般救急と精神科の連携というのは非常にうまくいっていて、自殺せん妄の状態とか、断酒が必要な場合は速やかに精神科病院のほうに連携するという仕組みがまだ今でも残っています。
また、東京都では身体合併症の連携事業として一般救急と精神科病院をつなぐ仕組みもありまして、これはアルコール依存症だけでなく統合失調症にしてもなかなか医療につながらないというところで、救急病院の窓口というのは精神科医療にとってとても大事な医療にコンタクトする場所ですので、そういうものが生かされて今、東京都は動いているような状況なので、一応その辺は東京の事情を御説明させていただきました。
以上です。
○松下会長 ありがとうございました。
それでは、塚田委員お願いします。
○塚本委員 塚本です。
先ほど飲酒運転の件は長嶺委員からもありましたとおり、私もそこが気になりました。それこそ2021年に千葉県の八街で飲酒運転の事故があって、法改正がありました。そして、白ナンバーの車にアルコールチェックを義務づけましょうということになっても、やはり飲酒運転をしてしまう人たちが残っています。それこそゼロになっていない。飲酒運転の数の横ばいの人たちは、依存症の疑いがとても強い人たちです。そんな中で、飲酒運転の違反者への対応に、行政や地域によってこれだけ違いがあるのはどうしてでしょう。三重県と福岡の飲酒運転違反者の対応に、効果が出ているといいます。それこそ、厚生労働省だけではなく、法務省などほかの省庁との関わりにもなってくると思います。ただ、依存症の疑いという点では厚労省の管轄であると思うので、ここは何かアクションが起こせるのではないかと感じました。
もう一つ、小松委員に質問なのですけれども、往診型架け橋が九州でこれだけうまくいったというのは、やはり小松先生がいる沖縄から近かったというところが一つの理由としてあるのでしょうか。つながりやすかったとか、そういうところがあるのであれば教えてほしいと思いました。
以上です。
○松下会長 それでは、小松委員いかがでしょうか。
○小松委員 ちょっと補足をいたしますと、実は往診型の架け橋というのは1988年に熊本の菊陽病院が福岡の千鳥橋病院に行ったのが最初です。1988年です。それで、実は千鳥橋病院というのは、今は千代診療所ということで門前診に変わっていますけれども、そこでやっているアルコール外来はいわゆる社会福祉士、メディカルソーシャルワーカーが3代続いてずっとそういうプログラム、週1回のアルコール教室とか、そういうのをやって続けております。
それとは別に、独自に杠先生がこういうふうなことをやったらいいんじゃないかということで、資料がすぐにぱっとは出ませんけれども、何番目かのところに、最初は国立福岡病院に行っていて、その後、国立佐賀病院に行っているというふうに出ているところがあります。
画面オンですね。ちょっと待ってください。
今、「往診型架け橋」というものが見えていますでしょうか。この上から4つ目が、最初の1988年です。それで、佐賀ですが、国立福岡病院に肥前精神医療センターから行っていたんですが、今はもっと近いところに行こうということで国立佐賀病院に変わっております。これは杠先生が音頭を取って始めて、そして実は長崎、それから沖縄も杠先生のお弟子さんたちが、これはやはりやるといいよねということで広げてくださっている。だから、多いんです。そういう中身でございます。
共有停止します。
○松下会長 ありがとうございました。
先ほどは、委員のお名前を間違えてすみませんでした。
ほかはいかがでしょうか。
それでは、ほぼ予定した時間にはなっておりますし、次の御発表もございますので、取りあえず一旦質疑応答はこれまでとしたいと思います。
そのほか、御意見等ございます場合はまた後日、個別に事務局まで御連絡いただければと思います。
それでは、続きまして白石委員から御発表をよろしくお願いいたします。
○白石委員 それでは、白石から発表させていただきます。
「アルコール健康障害における内科(身体科)の立ち位置」ということで、私のいつも思っているようなことになりますが、よろしくお願いします。
スライドをお願いします。
COIは特にございません。
次をお願いします。
今日お話しする内容としては、最初にアルコール健康障害は身体科中心ですが、世界の動向というか、日本の動向ですね。それから、その後の「身体科のアルコール摂取への認識」「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン2024の認知度」「消化器内科のアルコール関連臓器疾患への取り組み」「内科医のアルコール使用障害への介入と専門病院との連携」についてお話ししたいと思います。
それでは、スライドをお願いします。
まとめてみると、1番は疾患に対するスティグマをなくす世界の動き、いわゆる言葉的にもスティグマのある言葉を使わないようにしよう。後で出てまいります。
それから、2番がアルコールを物質として捉える使用障害の概念で対応する。実は、私たち内科医、身体科医は使用障害という言葉に非常に抵抗があって、なかなか受け入れていないというか、知らない人のほうが多い。まだ依存症、アルコール中毒、そんなレベルが多いというのが事実です。
それから、飲酒は生活習慣の一つとして生活習慣病の要因と考える。どの生活習慣病の要因という中に飲酒というのは入っていると思いまして、生活習慣として私たちは捉えていることのほうが強いということになります。
次をお願いします。
スティグマとは御存じのとおり偏見や差別ですけれども、特に今回は“Alcohol”ですが、まず最初に言われたのは“Fatty”でした。fatty liver diseaseのfattyはおでぶさんという意味なので、欧米ではもう使わないということになってSteatoticということになります。それから、Alcoholはアルコール依存症、中毒というイメージになってしまうので、その人はそうでないのにそういうふうに言われてしまうということで、この言葉も使わない。
それ以外にも糖尿病、それから統合失調症、先生方で専門の方もいらっしゃると思いますが、エイズなど、感染症に対してのスティグマもかなりあるので、そこに関してまた今、問題になってはいますが、今日はアルコールということでこういう言葉になってまいりました。
次に、その概念をちょっとお話ししますと、まず御存じのとおりアルコール性肝障害、Alcoholic liver diseaseといったものをアルコール関連肝疾患、Alchohol-related、もしくはassociated liver disease、略すとALDで一緒です。
それから、Fatty liver、脂肪肝は脂肪性肝疾患、Steatotic liver desease、SLDになりました。
それから、非アルコール性脂肪肝疾患、NAFLDとかNASHとか言っていましたが、Non-alcoholic fatty liver disease、言葉が2つも入っていますね。そこが代謝機能障害関連脂肪性肝疾患、覚えられませんが、Metabolic dysfunction associated steatotic liver disease、口も回りません。そういうことで、MASLDという言葉で統一されております。これは、おととしの欧米の主要な肝疾患、肝臓癌学会で、その次の年には日本肝臓学会と、それから日本消化器病学会が認定して、日本語も去年の8月に一定のものを提示しておりますので御覧いただければと思います。
特に、このMASLDに関しては脂肪性肝疾患で心血管リスクを有する脂肪性肝疾患、実はこういう方々はほとんど心筋梗塞脳血管障害などが死因になるので、それを加味したものになってきた。先ほどの生活習慣病とアルコール関係も含めたもので脂肪性肝疾患が注目されて、そういう病態として捉えようということになりました。肥満、高血圧、脂質異常症、糖尿病が合併しているということになります。
次をお願いします。
MASLDはそういうことなのですが、今はMetALDというのが書いてあります。これは代謝機能障害アルコール関連肝疾患といって、今まで宙ぶらりんになっていたアルコール性のものなのか、非アルコール性のものなのかと言われていた中間群を、それもやはり男性30~59グラム、女性は20~49グラムということになりまして、それでそういうグループを1つつくります。それも脂肪肝という意味ですが、脂肪肝の中のALDもあって、それは60グラム以上が男性ですが、女性は最近は50グラムにしようということで、40グラムからちょっと引き上げられてしまったのですが、これは賛否いろいろあります。
そういうようなことで、こんな名前になっておりますので、ぜひまたいろいろな文献等を見ていただくときにはNASH、NAFLDと書いてあるものはほとんどMASH、MASLDと同義語であると思っていただければと思います。
そういうふうにどんどん言葉が変わってきました。言葉が変わっただけではなくて、その概念、全身疾患としての脂肪肝、その中にアルコールが非常に重要なポイントを占めているということが分かってきました。
スライドをお願いします。
次に、「身体科のアルコール摂取への認識」です。
スライドをお願いします。
これは有名な図ですけれども、「酒は百薬の長ですか???」というクエスチョンに関して、ここで出ている総死亡リスクを見てみると、明らかに薬の効果はないということは総死亡からも出ています。今、日本ではまだ文化という世界で、かなり飲酒に関してはポジティブないい印象がある人もいるんですけれども、欧米のほうではアルコールは飲むだけで悪くなる。死亡率が上がるというようなイメージ、趣旨で、かなりいろいろな学会での発表などが多く出てきておりまして、政府の施策もそうなる可能性があるという状況です。
スライドをお願いします。
先ほどハームリダクションについて小松委員からありましたけれども、私もハームリダクションの言葉の使い方にいつも疑問を持っておりました。減酒に関してですけれども、減酒による死亡率の改善効果というものがあるんだということを身体科のドクターがやはりもう少し知らなければいけない。死亡というハームに関して、それを低減させるには減酒があるんだということをもう少しきちんと明確にしていく必要があるなと思います。
これは、かなり飲む方です。フランスのデータで、多量飲酒の方なのですが、その方のアルコールを半分に減らすと1万人当たりの年間死亡者数が3分の1に減ったというデータになります。もっと実は500ccの5%のビールを3本中1本減らすと数十%の死亡率が減ったとか、いろいろなデータが今出てきていますので、ぜひエビデンスがまとまったところでみんなでまとめたいと思っております。
スライドをお願いいたします。
厚生労働省の健康日本21、これはきっと内科医もみんな分かっているはずです。知らない内科医がいたらちょっとやばいのですが、生活習慣病のリスクを高める飲酒量、飲酒しているものの純アルコール摂取量が男性40グラム以上、女性20グラム以上の割合の減少を目指す。そして、未成年者の飲酒をなくす。妊娠中の飲酒をなくすということで、この間、厚労省の評価が出ていたと思います。
1番のほうに関しては評価b、変わらない。
2番の未成年者に関してはa、改善している。
妊娠中に関しては、a*で現状のままでは目標達成が危ぶまれるというような評価だったように思います。間違っていたら後で訂正してください。
そういうような評価に関しては、やはり私たち内科医にとってはまず一番上の飲酒量を減らすようにすることが、先ほど小松委員のあった高い山、富士山に登る前に低い山で決着をつけるという、そこら辺の仕事がかなりあるのだろうと思っております。
それで、次の健康日本21の基本方針を見てみますと、5番目の「栄養・食生活、身体活動・運動、休養、飲酒、喫煙及び歯・口腔の健康に関する生活習慣及び社会環境の改善」ということで、ここに飲酒が必ず入ってきます。そういうことで、分かってはいるのですけれども、そのまま同等に読み流してしまうかもしれません。
「生活習慣病」は「食習慣、運動習慣、休養、喫煙、飲酒等の生活習慣が、その発症・進行に関与する疾患群」ということで、先ほどの脂肪性肝疾患と非常に共通点がありまして、今、世界、それから日本でも内科系、消化器系に関しては特にここを注意してみんなが着目していることは事実です。
その下にある、飲酒問題があったときに生活習慣病の要因としては私たちは考えています。そこに使用障害、依存症があるということを分かっているのですけれども、なかなか身体障害を中心として見てしまう。その裏には家庭・社会・経済の問題も含んでいるんですよということ、特に経済は家族の経済、家庭の経済だけではなく日本の経済が非常にそれで揺らぐ可能性があるということがデータで出ているかと思います。
次のスライドをお願いします。
次に、「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」2024の認知度、この会議でも内容が検討されましたけれども、飲酒チェックツールですね。AUDIT、アルコール摂取量を明確にする。先ほどAUDUTの保険診療に関する問題が出ていましたが、実は毎年アルコールアディクション医学会、私もその委員で健康保険の申請をしておりますけれども、毎年落ちております。内保連はなかなか弱くて駄目です。そういうようなことですが、ただ、広い範囲で今度は健康管理に関して内科医も非常に疑わしい場合にはAUDITをやるというような条件づけで何とかできないかなということで、みんなでまた相談しております。
スライドをお願いします。
あるインターネット会社、これは下に書いてしまってありますが、私がよく見ているCare Netですけれども、そこで去年の9月にこのガイドラインの認知度を調査していました。1,025人で、全体でよく内容まで知っている、大体知っているところが一番上の棒グラフで34%くらいになります。発表されたことは知っているという人は23%、全然知らないというのが43%いました。新聞を読んでいないようです。そういうことで、医者で1,025人でこんな結果でした。
その次に、今度は科別のところで見ると、さすがに消化器内科医が100%知っているかなと思ったのですが、残念ながら、よく知っている、まあまあ知っているところまで47%という形になります。
こうやって見ていただくと、各科それぞれそれほど興味がない先生も多いということで、特に臨床研修医97人に関しては全員知っていてほしかったな、若い先生に知ってほしいなと思ったのですけれども、半分しか知らない、50%は知らないということになっていました。
スライドをお願いします。
「アルコールによる主な疾患」に関しては手元にある資料のとおりなのですが、やはり赤い字で書いた発がんという問題がかなりあります。口腔内、食道、肝臓、膵臓、大腸、胃、それからここにありますが、乳がんですね。乳腺、これらの疾患、併せて足先から頭の先までの疾患ですので、実は全科にまたがっているということをここで言いたかったのでこれをお出ししました。
その次に、東京都の都立総合病院の外来におけるアルコール依存症の疑いをCAGEで調べたデータがあります。これはアルコール・薬物医学会雑誌に載っていた以前のものですけれども、それを改編してみると、棒グラフの左側のところ、全体で一般科では男性で21%、女性で10%がCAGEで引っかかってくる。非常に高い数字です。ここで何とかならないかということが今日の一つのポイントになるかと思います。
次をお願いします。
「身体科のアルコール関連臓器疾患への取り組み」としては、日本肝臓学会ではおととしの総会でこのようにALTが30オーバーの場合には必ず検査をするか、専門医療機関に行ってくださいということになっています。これでスクリーニングをかけたい。これはいろいろな肝疾患はありますけれども、かなりアルコールが引っかかってくると思います。
スライドをお願いいたします。
「アルコール問題への精神科、身体科のアプローチの違い」は今までお話しされたとおりですけれども、私たちはやはり臓器障害を中心としてその一因としてのアルコールを考えます。精神科の先生は、最初から依存症、使用障害、そしてそこに臓器障害があるということで身体科のほうに依頼がくる。
スライドをお願いいたします。
私たちは、特にアルコール使用障害に関しては目をつぶる可能性が高いのは事実です。それはなぜかというと、今日も私は30分前まで外来をやって何とか間に合ったのですけれども、そういうようにいろいろな疾患を見ているとアルコールに関わると時間がなくなるという恐怖を感じております。本当に恐怖です。看護師さんたちに怖い顔をされないように頑張ってやってきましたけれども、そういう状態です。
それが総合診療というもう少しみんなの心を広くしていただいて臓器障害を見たときに、アルコールは身体障害に影響が非常にあって、それが使用障害だということを分かってもらう。それが先ほどのAUDITなんですけれども、AUDITはとても簡単で、今はスマホでも何でもできるということで、ぜひそういうことを広めていただきたいと思います。
スライドをお願いいたします。
これは厚生労働省の令和5年度の障害者総合福祉推進事業の中の健康診断、保健指導におけるアルコール健康障害への早期介入について「みつける」「かかわる」、そして「つなぐ」、この3つのワードを言いたかったのですが、やはりこれは大切なんだと思いました。内科、特に身体科は見つけるところで、関わってほしい。そこまでは何とかしてほしいというふうに私も思います。
次のスライドをお願いします。
次をお願いします。
私もいろいろな地域で診療してきました。川崎、代々木、それから伊勢原、八王子、また伊勢原、大磯、今はまた代々木におります。これだけ移動しましたら、アルコールに対する接し方が全部変わります。何かというと、周りに協力してくれる先生方がいるか、いないかで完全に変わりました。ここはちょっと時間がないので、そういう意味です。
次ですけれども、先ほど平川先生がおっしゃっていた八王子に私は8年間、消化器内科医でおりました。そのときに、平川先生のところ、それから駒木野病院、高月病院、綾南診療所、それから都立の精神福祉センターも一緒になってアルコール関連疾患のサポートネットワークチームをつくって、時々みんなで顔を合わせて話をするというだけでかなり変わりました。これを「いのちのサポートネットワーク」としてずっとやっておりましたが、転勤することによって平川先生がつないでくれています。
最後のところになりますが、実はコロナで私たちの病院は全床コロナと都知事に言われて、それでずっとやっていたものですから、患者さんがいなくなってしまいました。それで、今は1年ちょっと前から私は消化器内科におけるアルコール外来を始めました。その中で隔離入院もしていたのですけれども、入院施設が使えなくなってしまったので、その上のいろいろなブリーフインターベンションになります。精神科の先生のように本当に深くはいきませんけれども、できる範囲のことはやりました。
それを見ていてくれていた昭和大学医学部附属烏山病院のプロジェクトチームがいて、架け橋プロジェクト、小松先生が先ほど言っていたものですが、それを1年ほど前から続けて、約30人に対応してもらって、そのうち5人はスムーズに入院することができました。
それ以外の人は内科で対応できるくらいの内容だったので、私が継続して診ているというような状況で、内科医でもできるぞと。
ただ、いろいろなプロジェクトも、架け橋プロジェクトも、東京都内でもいいのですが、私の病院が今年度をもって閉院ということになってしまってやるところがなくなったので、今度は某女子医大の先生と組んで継続できないかどうかを今、検討中ということであります。
すみません。長くなりましたが、以上です。
○松下会長 どうもありがとうございました。
では、続きまして山口委員より御発表をよろしくお願いいたします。
○山口委員 全国保健所長会の代表として参加しております山口と申します。
本日は、私の所属である「鹿児島県におけるアルコール依存症対策」というタイトルで、県型保健所の立場から説明させていただきたいと思います。
次をお願いします。
鹿児島県の概要です。人口は160万足らず、東西長は日本一です。南北長は東京都に次いで第2位で、かなり広範で有人離島が28あります。
保健所というのは御存じかもしれませんが、中核市型、県型、そして政令指定都市型と分かれておりますが、鹿児島県には中核市型が1つ、県型が13で、鹿児島市が約60万の人口で、県型が100万です。
保健福祉業務については対人サービスが市町村の業務として位置づけられて、特に精神相談業務に関しては令和6年度から市町村の業務とされたところです。
中核市や政令指定都市は従来、市町村業務も兼ねて対人サービス、組織支援、調整まで担ってきましたが、県型は市町村の業務の後方支援つまり従事者支援・組織支援という意味合いが強くなってきております。
次をお願いします。
これは、鹿児島県の成人1人当たりのアルコール消費量を示したものですが、アルコール消費量は毎年全国平均を上回っています。その中でも焼酎が3割を占めています。
次をお願いします。
鹿児島県では昨年度、第2期アルコール健康障害対策推進計画を作成したところです。
次をお願いします。
計画の中の基本的施策として、御覧の10項目が挙がっております。
次をお願いします。
1番、「アルコール健康障害の普及・啓発」について、対象ごとに具体的な活動内容を挙げてみました。青が従事者等を対象にしたもの、赤が住民等を対象にしたもので、多くの事業は従事者研修で、依存症についての個別支援としては7番の家族支援教室というものがあります。
次をお願いします。
先ほど申し上げた家族支援教室ですが、この事業は家族相互支援事業の一つとして位置づけられておりまして、対象はアルコール依存症に限らず、どの疾患や症状を対象とするかは保健所に任されています。県型保健所の大半はおおむね従事者を対象とした年1回の研修を実施しておりまして、月1回と定期的に継続して依存症家族を対象に実施しているのは1保健所のみです。
この保健所は平成27年度から家族支援教室を継続して実施しておりますが、現在、参加者が固定しており新規参加者が少ないことが課題と挙げられています。
先ほど申し上げたように、精神保健に係る相談事業が市町村業務となっており、県型保健所は対象者との接点がとても少なくなっております。 県型保健所に、相談がありましたら、家族については県の精神保健福祉センターの教室につなぎ、当事者には専門病院を紹介するという形で、保健所そのものは相談先を案内するという役目がメインになっているところです。
次をお願いします。
基本的施策の2番、「不適切な飲酒の誘因の防止」というところですが、キャンペーンでティッシュを配るなどの広報活動が主です。
次をお願いします。
3番の「健康診断及び保健指導」という部分に関しても、やはり従事者対象の研修というものが主でして、(3)にありますように「アルコール依存症の疑いのある者と専門医療機関へつなぐ連携体制づくり」というところでは、相談拠点は精神保健福祉センター、依存症治療拠点機関や依存症専門医療機関をホームページに掲載し、相談者に案内しています。
次をお願いします。
「相談支援等」という項目につきましては、相談拠点としての精神保健センターが本人や家族の個別相談に応じ、依存症専門医による依存症相談や依存症家族教室を実施し、保健所・市町村・自助グループとの連携をしております。
次をお願いします。
精神保健福祉センターにおけるアルコール・薬物依存症家族教室というものが半年に1回、年に2コース、前期コース、後期コースとあるのですが、令和5年の実績でいいますと参加者は実数として前期が6人、後期が3人、延べ人数が前期14人、後期6人という形で、ほかの精神障害者の家族教室と比べても参加者はかなり少ない状況です。
次をお願いします。
5番の「アルコール健康障害に係る医療の充実等」については、医療機関の紹介等に加えて、産業医研修の一環としてかかりつけ医に「うつ病対応力向上研修会」でアルコール健康障害も毎年テーマと挙げていること、あとは「健康サポート薬局」の普及を勧め、薬剤師の協力も得ています。
次をお願いします。
アルコール依存症専門医療機関、リストの〇印が専門医療機関ですが、それ以外でもアルコール依存症回復プログラムを実施している医療機関があります。令和5年の依存症回復プログラム参加者実数はこの4つの専門医療機関で合わせて683名でした。
次のページをお願いします。
そのほか、専門医療機関が年1回程度アルコール市民公開講座、個別相談、依存症問題啓発フォーラム等普及活動を行っています。
次をお願いします。
次が、先ほど申し上げました「かかりつけ医うつ病対応力向上研修会」の内容です。アルコールについては毎年入っています。産業医の更新のために多くの「かかりつけ医」が参加するものです。
次をお願いします。
次が「アルコール健康障害に関連して生ずる社会問題への対応」で、先ほどの「飲酒運転をした者に対する指導等」に関しては、鹿児島県は医療機関への受診は義務になっておりません。
次をお願いします。
「社会復帰の支援」として、先ほどご説明した家族支援教室や従事者研修会があります。
次をお願いします。
そのほか「人材の確保等」「民間団体の活動に対する支援」等があります。
次をお願いします。
鹿児島の取組についてまとめますと、鹿児島県では個別支援としてのプログラム・教室を実施しているのは当事者に対しては依存症専門医療機関及び依存症治療拠点機関、家族に対しては精神保健福祉センターと保健所1か所です。
前回話題になった依存症の家族を持つ子供への支援については具体的なプログラムはありませんが、実際にお子さんの不登校、あるいは進学等をきっかけに保護者の依存症が明らかになることはしばしばあります、
依存症の保護者をもつ学生について、スクールソーシャルワーカーが中心になって、経済的にも困難と思われた中進学にこぎ着けた事例があります。進学後も、親子双方に対してかかわり続け、親子関係の修復も目指しております。保健所としては地域のそういうキーパーソンとなっている方とつながり、地域の事情や家族の歴史等を尊重しながら、行政の制度を活用して一緒に考えていきたいと思っています。
ここまで2期アルコール計画の施策について説明してまいりました。
今後の課題としては、一つ目は、アルコール健康障害対策を県の事業の中でどのように位置づけるかです。アルコール健康障害対策協議会というものを設置はしているのですが、令和5年度は書面開催、令和6年度は書面開催すら開催できませんでした。その理由は、PDCA評価をする指標がない。数値目標がなくて、説得力のある資料がつくれないというのが担当の意見でした。また、アルコール健康障害対策協議会の在り方に悩んでおりまして、これとギャンブル・薬物依存症の協議会との一体化を、協議をしているところです。
二つ目は、健康増進部門と精神保健部門といかに協働するかです。健康障害のほうは健康増進の担当者会議等でアルコール健康障害は説明項目に入っているのですが、現場の活動は生活習慣病対策が主となっています。一方、保健所の精神保健部門は重症の方、23条通報等、精神症状悪化に対応するのが主体となっています。健康障害予防や健康増進施策に関しては、市町村が健診等を担っていますので、保健所は市町村の担当者に対して研修を行い、飲酒ガイドライン等を紹介しています。
ただ協議会を設置しなさいだけでは現場は動きづらくなっているというのが現状で、3期計画では、自治体の役割、市型、県型、市町村、それぞれに役割が異なるということを見据えて明示していただきたい。このままでは自治体のアルコール対策に対する意識が、精神保健と健康増進対策の間で薄れてしまうのではないかということを危惧しているところです。
以上でございます。
〇松下会長 どうもありがとうございました。
続きまして、青山参考人より御発表をよろしくお願いいたします。
〇青山参考人 よろしくお願いいたします。
私は、「子育て支援を通じたアルコール使用障害からの親子の回復」という題材でお話しさせていただきます。
このようなお題をいただいたというか、このような貴重な機会をいただきましたが、その経緯といたしまして私がアルコールだけではないのですけれども、依存症診療科で今、神奈川県の県立精神医療センターで取りまとめをしているのと、こどものこころ専門医として児童、思春期の診療も長くこれまでやっておりまして、その両方の立場から、子供側の視点から親御さんのアルコール依存症を考えるというところからお話をさせていただければと思います。
では、次のスライドをお願いします。
まず、そもそも臨床感覚の話になるかもしれないのですけれども、アルコール使用障害を含む様々な依存症と言われる病気は、物質やら行動やらで感情に蓋をする病気であると考えております。これは自己治療仮説とかという言葉でもよく言われていますけれども、基本的につらいときに飲んで紛らわす、つらいときに薬で紛らわすというような形で、何とか自分で解決しようとしている方たちが我々の外来にいらっしゃっています。
そして、そういう病理をお持ちなので、患者さんのSOSを待っていてはお子さんに大きな影響があったときにお子さんの治療介入、あるいは支援の介入が間に合わないということをすごく感じておりまして、お子さんがいらっしゃるアルコール依存症の方たち、アルコール使用障害の方たちに子育て支援を軸とした形で何らかの支援の組み立てができないかということを考えております。
それで、イメージを共有させていただきたいので、1つ架空症例を示させていただきます。
中学生のA子さんです。小学校では、明るく元気なしっかり者と言われてきました。中学で元気がなくなり、成績が下がってしまい、自傷に気がついた養護教諭の提案で精神科を受診したというようなケースです。
それで、いろいろお話をお聞きするうちに、御家庭のことをお聞きしていると、実はお母さんが毎日、毎日、朝からお酒を飲んでいる。それで、どうしてお母さんはお酒をそんなに飲むのと聞くと、お母さんは「お酒しか楽しみがない」と話すんです。そして、お母さんが元気になるようにいつも頑張ってきました。A子さんは、小学校では明るく元気なしっかり者であるというふうな評価が学校でもあった。
しかし、お母さんは最近体調が悪そうでいつも転んでしまうし、朝はごろごろして起きられないし、そして御飯もなかなかつくれない。一生懸命私も手伝うんだけれどもということで、元気がなくなってきてしまって、勉強にも身が入らず成績が下がってきているような状況が分かりました。
さらにお母さんだけではなくて、お父さんがお母さんがお酒を飲んでいる姿を叱る、怒るということで、お父さんが怒らないように私が一生懸命お母さんのお酒の缶を隠すんです、捨てるんですというようなことをおっしゃる。こんなような御家庭ですね。このようなお子さんが時々、児童精神科にいらっしゃいます。
私が今、時々と申しましたのは、先ほど山口先生からもお話がありましたけれども、病院までたどり着くお子さんはまれでして、学校のところでとどまっておられたりとか、そもそも診療、あるいは支援の場にもたどり着かない子も多いかと思います。
次のスライドをお願いします。
「こどもにとっての親のアルコール使用障害」というのはどういうものであるかということです。言うまでもありませんけれども、親御さんがお酒を飲んで、例えばどなるとか、たたくとか、性加害というのも決してまれではないかと思うのですけれども、そういった環境にありますと、お子さんは常に不安であるとか、緊張しているとか、恐怖を感じる。しらふの親御さんの前でも、いつお酒を飲んで豹変するのではないかと不安を感じていたり、あるいはお酒の問題が幼少期、愛着形成の時期ですね。本当に就学前の年からお酒の問題が始まっていたりしますと、これは適切な身近な大人との心の絆をつくることができない。愛着形成の問題が出てきたり、あるいは暴力暴言でトラウマ関連障害があったりということのリスクになりますので、とても子供さんにとっては養育環境として重大な問題になります。
そして、育ってきてお子さんが今度は親御さんの介護をする立場になってしまいましたり、家事を担ったり、尻拭いを一生懸命したりとか、生活の不安を持ったりということで、いわゆるヤングケアラーの問題もその後、出てくるということになります。
さらに言うと、今回事例としてお出ししたのはお母さんがアルコール依存症のケースですけれども、お母さんがアルコール依存症であればお父さんが、お父さんがアルコール依存症であればお母さんが巻き込まれて夫婦げんかであるとか、例えばA子の場合であればお母さんのアルコールの問題でお父さんは頭がいっぱいになってしまって、やはりA子に目がいかなくなるということが言えるわけです。
次のページをお願いします。
そういうときに、お子さんがすぐに助けてと言って受診してくださればいいのですけれども、お子さんというのはなかなか相談をしてくださらないところがあります。これはなぜかというふうに、もう大人になった元アルコール依存症の方のお子さんたちによく聞くんです。なぜあなたは小さい頃に誰かに助けてと言えなかったんだろうかとお聞きすると、恥ずかしかったからとか、言っても「どうせ変わらない」、人に相談したら、例えばおじいちゃんおばあちゃんに相談したら、おじいちゃんおばあちゃんはお母さんのことを叱ってくれた。しかし、叱られたその場ではお母さんは、もうお酒は飲みませんとか、子育てを頑張りますと言うんだけれども、その怒られたことがつらくてまたお酒を飲んでしまうとか、結局変わらないという体験をしておられることが多かった。
それから、あなたがお酒を飲むんだったらもう子供は児童相談所に預けますというように、支援が適切な形で提示されずに罰則のように提示されていたりすると、お子さんが、私がもしお酒の問題を人に相談したら私が家族から引き離されてしまうのではないかとか、そんなことをおっしゃったりします。
あとは、お酒の問題を抱えていてもやはり親御さんというのは大切な存在であることも多くというか、ほとんどの場合は唯一の存在として大切に感じておられるので、例えば御自分の学校の先生に、実はお母さんが、お父さんがお酒を朝から飲んでいてというふうに相談したときに、何というひどいお父さんなんだとか、何というひどいお母さんなんだというふうに否定されることも、実はとても相談しにくくさせている一つの要因だったりするということもよくお聞きします。
こういう様々な理由がありますけれども、自分だけで解決しなければならないという考え方を持ってしまっているということが1つあるのと、例えばA子の場合ですと、お母さんがつらいときにはお酒で解決しようとする。人に頼らないで自分だけでお酒で解決しようとするというふうなストレス対処モデルを持っていると、お子さんから見ても自分で何とかしなければいけない、人に頼ってはいけないというふうな考え方がどうしてもしみついてしまうということがあります。
子供も、感情の抑圧ですとか不調、不適切な対処行動として、よくあるのは自傷であったり、物質の乱用であったり、アルコールであったり、そういったことまでいかなかったとしても不登校であったり、様々な心の不調の原因となる、要因となることがあります。
これを見て、A子の母親はお酒の問題があって、お酒をやめなくて何と悪いんだというふうな視点で見てしまうと、これまた問題解決には全然たどり着かない。
次のスライドをお願いします。
A子の母(30代)のほうから見てみると、A子の母自体も、その父ですね。A子にとっての祖父の暴言暴力におびえながら育ったという話をよく聞きます。それで、暴言暴力におびえて育って、こっそりおうちのお酒を飲んでみたら、すごく不安で緊張していたのが急に和らいで、そこから時々つらいと飲酒するようになって、一人暮らしを始めてから毎晩飲酒するとか、妊娠して結婚退職をして新しい家庭に入ってようやく実家から逃れられたと感じていたのに、今度は夫ですね。A子の父ですが、日頃からつらいとか、悲しいとか、苦しいとか、それは違うと思うとか、そういった意見を実家でも言えてこなかったA子の母ですので、夫に対してもやはりそれはうまく言えない。家事、育児への意見が言えないということが続き、困ったとき夫にも実家にも相談できないということで、つらさをお酒で紛らわすうちにお酒が増えたということが語られたりします。
これは、本当によくアルコール依存症の方たち、アルコール使用障害の方たちから聞かれるお話かなと思います。
次のスライドをお願いします。
「アルコール使用障害をもつ親によくみられる子育ての大変さ」ということで、主だったものを羅列しておりますけれども、まずそもそも依存症の背景に逆境体験をはじめ、養育環境が大変だった方が多いので、健全な養育環境のイメージが持てない。殴って育てられたとか、そういった方も多く、イメージがそもそも持てていないので、自分が親になったときにどうやって子育てをしていいか分からない。
それから、お酒をはじめ様々なもので気持ちに蓋をして一人でどうにしかしようとするという感覚、考えがあったり、それからアルコール使用障害の場合はそれに伴う体の問題ですね。心身の諸問題がございます。肝機能障害をはじめ、白石委員からたくさんの体の問題のお話がありましたけれども、諸問題があり、体もだるいとか、場合によっては糖尿病やら、高血圧やら、がんやらということで、体の状態も悪いですし、アルコールに伴う不眠とか、様々な問題もある。
それから、実家との関係も悪いので頼れない。
それから、子供さんの特性として育てにくいお子さんといいますか、例えば胎児アルコール症候群、妊娠中にお酒を飲んでいたことによるお子さんの発達の問題であるとか、そうでなくても様々な発達障害特性を背景に育ちにくい場合などもあるかと思います。
次のスライドをお願いします。
アルコール使用障害の方が「健全な養育環境のイメージがもてない」というのは、臨床実感でもそうなのですが、データでも示されていまして、これは当院の小林桜児副院長らの調査ですけれども、当院の依存症患者さんたちの858人のアルコール使用障害の患者さんたちの調査で、あなたが体験したことのある逆境体験をチェックしてくださいねということでチェックリストを書いていただいているのですが、15歳以下にこれらの問題ですね。心理的虐待や親の過剰な期待、厳し過ぎるしつけとか、家族の物質乱用、アルコール依存症の親御さんですとか、あとは御家族の慢性身体疾患、御自身がつまりはヤングケアラーだったという可能性ですね。親との離別体験とか、学校でも学業不振やいじめなど、家でも学校でも安心・安全に過ごせる場所が十分になかった方たちが多いというのは数字も示しているところでございます。
次のスライドをお願いします。
こういう環境に育っている方たち、逆境体験の多さが実は対人不信感ですね。人を信じることができないというのを、これもクエスチョン・アンド・アンサーで調査したもので、対人不信感が強いですとか、対人不信感が強い方はストレス対処能力が低いというふうなことが示されていまして、アルコールなどで気持ちに蓋をしている方たちというのは一人でどうにかしようとするということがあるようです。
ほかにも自己治療仮説でとか先生方もよく御存じのことかと思いますけれども、感情を認識できない、言語化できなくて他者に助けを求めて解決した経験が乏しくて、アルコールで感情に蓋をしているんだなというのは臨床実感にも一致するお話かなと思っております。
次のスライドをお願いします。
そこで、アルコール依存症の方たち、アルコール使用障害を持つ方たちというのが子育てをするときにはこのような様々な障害、障壁があるわけなので、子育て支援のところで親子双方の支援をしていく、介入していくというのが効果的ではないかと思っています。それで、子供時代の早期介入がアルコール使用障害のその後の予防因子になるというデータもございますし、それから当院のデータですけれども、アルコール使用障害の患者さんの4人に1人が未成年者と同居していたということがございます。ですから、アルコール使用障害の人を見たら4人に1人はおうちに子供がいるんだなということを考えていただくと、そこはある意味、非常に介入のしやすい場所になるのでないかと思います。
子育て支援を軸に介入して回復の連鎖をつくる。つまり、自分のことでなかなか人に相談できなくてお酒に蓋をする人も、子供が不登校になったり、子供が自傷したりとか、子供が問題を抱えると、そこを軸に支援の介入ですと、意外と受け入れてくださることも多かったりしますので、そんなことができるのではないかと考えています。
次のスライドをお願いします。
当院ではこういうシステム化されているわけではないのですけれども、外来で予約を取ったときにワーカーなどがこういう感じで動いてくれているなというのをイメージ図として出しているものですが、アルコール使用障害の方が受診相談されると、同居する御家族などと確認してくださって、家族がなければ通常の支援で、家族でも成人と同居している場合には御家族の家族教室とか家族会を御紹介するということと、あとは御家族への疾病教育を外来の初診のときにする。尻拭いはやめましょうねとか、失跡するのではなくて、こうやってああやってみたいなお話をクラフトモデルなどのような形でお話をする。
そして、妊娠中の場合ですと、特定妊婦として地域の支援が開始できるかということになってきますので、その辺の調整をしたりとか、未成年者と同居している場合には虐待があるか、ないかとか、そういったことを確認したりとか、そこでもちろん虐待があれば児相との連携になりますし、虐待レベルでなくても不適切な養育が疑われるとか、そもそも家族が孤立しているということであれば、児童相談所でなくてもこども家庭支援課とか、相談できるところと情報共有をしたりとか、そういったことができるかと思います。
それから、何もなくても私などですと外来にいらっしゃった依存症のアルコール使用障害の方には、お子さんがもしお母さん、お父さんの病気について知りたいと言ったらいつでも一緒に受診していただければ、御家族への説明という形でお伝えしますよとなどという話をしています。
これが全部うちの病院でできているわけではもちろんなくて、これを目指してやっているというところではございますけれども、なかなかこれをやるにはワーカーさんの手であるとか、医者の手であるとか、非常に多くの手が必要になっておりまして、これが十分できるような医療体制をつくるにはどうしたらいいかということが話されるのですが、どうしてもマンパワーがないということだったり、こんなものには予算がつかないとか、そういったところで、なかなか外来の患者さんへの家族支援ですとか地域支援に対するインセンティブですね。病院として動いていくために人手をつけるためのインセンティブがなかなかなくて、最近どんどん逆に人が削られていっているという状況にありまして、ここがうまく進むような社会の仕組みが欲しいと思っております。
最後のスライドをお願いします。
これは、こんな感じで考えたらいいのではないかという私のイメージ図にはなりますけれども、まず患者さん自身が小児期の困難な養育環境、虐待、親子の離別、貧困、家族の慢性疾患などがいろいろあって、アルコール使用障害を発症しているような状況にあると考えたならば、その患者さんがお子さんに対して不適切な養育ですとか、お酒の問題に伴う虐待ですとか、ヤングケアラー問題ですとかということがあって、お子さんが今度は感情に気づけない、人に頼れない、不健全な形で気持ちに蓋をするようなことがあると、左側のぐるっと回ってアルコール使用障害、あるいは様々な心の病気の連鎖が起こってくるのかなと思うのですけれども、右側の黄色いバックグラウンドのところのようにしていけば、逆に回復が連鎖するのではないかと思っています。
こども家庭支援課とか児童相談所、保育園、幼稚園、学校医療機関などが連携して有機的につながって、子育ての話題を軸にお子さんが困っていることを相談するという練習をしていただいて、親御さんのアルコール依存症からの回復にもなりましょうし、お子さんはお子さんで心の病気をその後抱えないような取組ができるのではないかと思っております。
そういうことで、私からの話はこれで終わりにさせていただきます。ありがとうございました。
〇松下会長 どうもありがとうございました。
それでは、3名の方からの説明について御意見、あるいは御質問をお願いしたいと思います。先ほどと同じように、御発言のときは会場参加の方は挙手をしていただいて、オンラインで御参加いただいている委員は挙手機能を使用して私から指名させていただきますので御発言いただくようよろしくお願いいたします。
それでは、いかがでしょうか。
オンラインの米山委員、お願いします。
〇米山委員 米山です。
白石委員、山口委員、青山参考人の皆様、お話をありがとうございました。特に青山さんのお話を聞いて非常に感銘を受けました。最後のスライドのイメージ図でしたけれども、これが実現できるといいなと感じて聞かせていただきました。
それで、お三方のお話を聞いていて、私は今、大学で教員をしておりますけれども、もともと保健師でしたので、山口先生のお話などを聞いていて、ちょっと思ったことを意見として申し上げたいと思います。
私は現在秋田県におりまして、秋田県のアルコール健康障害対策のいろいろな事業等にも関わらせていただいているのですが、秋田県の中でももちろん地域の温度差というのがあります。それで、これは秋田県に限らないのですけれども、うまくやれているところと何が違うのかといいますと、患者さんに相談があったから専門機関につなぐ。これはとても大事なことです。
でも、つないで終わりにしないということなんです。その後どうなったのかというフォローをきちんとするですとか、病院につないだだけではなくて、その後、自助グループにつながるところまで関わりを続けるとかですね。
というのは、これも皆様、御存じの方は多いと思うのですけれども、特に御本人の方たちは医療につながったから解決というわけではなくて、御家族の方も相談機関につながったからオーケーということではなくて、長い時間、つながってもしんどさを抱えていらっしゃるということがあるんですね。多くそういうことがあって、それはどこからきているかというと、先ほどの青山さんのお話にもあったように、過去の家族から、元家族からのトラウマ体験ですとか傷つき体験というものがある。
ですから、目の前にいらっしゃった方を、はい次というふうに振り分けで終わるのではなくて、3Dで見えてくるようなその人の過去の体験ですとか、言語化されていない傷つき体験がどこにあるのかとか、それから今は表現されていないかもしれないけれども、社会的ないろいろな問題ですとか、これから起こり得る問題というところまで予測しながら関わるということが非常に重要ではないかと感じました。
それで、青山さんが、こんなふうに連携できたらいいという図を出してくださったときに、一人のお子さんの背景にいろんな問題があって、それに関係機関が連携して関わるということは、つまりここでいろんな関係機関の皆様が参加してくださっているように、組織横断的に関わる問題を捉えていくということがすごく重要なのではないかと強く思いました。
以上です。ちょっとまとまりませんが、よろしくお願いいたします。
〇松下会長 ありがとうございました。
それでは、オンラインで江澤委員、金城委員、石井委員に挙手をいただいています。まず江澤委員からお願いしてよろしいでしょうか。会場はオンラインの先生の後にお願いいたしたいと思います。
では、江澤委員お願いいたします。
〇江澤委員 ありがとうございます。
白石先生に伺いたい御質問がございます。
脂肪性肝疾患の新分類をいろいろ分かりやすく説明していただき、ありがとうございます。我が国も非常に脂肪肝が多く、一般の方々も含めて脂肪肝に対する認識を非常に軽く取り扱っているような印象も持ったりしています。
そういった中で、肝の例えば血液検査で幾つか線維化マーカーがあったり、超音波のフィブロスキャンというものもあったりするのですけれども、診療を受けられた方が対象になるかと思いますが、肝の線維化に対する啓蒙とか、そういったところでアルコールの生活習慣を改善していくとか、そういう取組について先生はいかがでしょうか。御示唆いただければと思います。
〇白石委員 直接、今、学会では消化器病学会と肝臓学会ですね。この2つが中心的に、脂肪肝の以前からNASHとかNAFLDとか言っているときから線維化、肝障害、それによる身体障害、心血管系疾患へのリスクについてはこの10年ほどずっとやっていたのですけれども、ただ、その学会内でもやはり温度差がかなりありまして、肝臓疾患を診ているドクターはいいのですが、消化管を診ている先生方はあまり興味がないというような状況にあります。
ましてや内科全体でもそういうことになり、もっと言うと、やはりいろんな身体科の先生方がもっともっとそれに興味を持って、自分も関係しているんだ、自分の科も関係しているということを認知してもらわなければいけない。
そこで、日本医師会のほうとか、そういう講演会も増えていることは確かなんです。それから、インターネットも今、開いて脂肪肝とやるとかなり出てまいります。放っておくと、肝臓ではない病気で大変だよというような内容もかなり出てきているので、今そういう意味ではちょっとブーム的なところはありますけれども、自然に広がっていることは事実です。
ただ、もっともっと先生がおっしゃるとおり、広め方はまだたくさんあるだろうと思うので、今後またみんなで対応していきたいと思っております。
〇江澤委員 ありがとうございます。
我々、日本医師会でもかかりつけ医研修とか、積極的にいろいろ毎年プログラムを変えながら取り組んでおりますので、またいろいろ御指導いただければと思います。
〇白石委員 アルコールもよろしくお願いします。
〇江澤委員 もちろんです。今日の件で今、申し上げているところですけれども、例えば線維化マーカーとか、もう少し活用できる部分があるし、そういったものは共有していくことが大事だということで、そういった理解でよろしいでしょうか。
〇白石委員 本当は線維化だけではなくて、フェリチンとか、いろんな数値があります。血小板の数とか、そこら辺をもう少し明確に分かりやすく、普通の診察、診療で分かりやすいものをつくるべきだと思っております。ありがとうございます。
〇江澤委員 了解です。ありがとうございます。
フィブロスキャンなども有効に使えるということでしょうか。
〇白石委員 フィブロスキャンに関しては、持っている施設が限られているということなので、どこでもできるというほうを中心にしたほうがいいのかなと思いますが、とても意味があります。私もやっていますけれども、やはり意味があります。このエラストグラフィーも意味があります。それから、MRIのエラストグラフィーも非常に広がっておりますのでいいと思います。
〇江澤委員 どうもありがとうございます。また引き続きよろしくお願いいたします。
〇松下会長 ありがとうございました。
続けて、金城委員お願いします。
〇金城委員 大変参考になる御発表をありがとうございました。鳥取大学の金城です。
私は今日の御発表を聞かせていただいて、一般の精神科診療外来から精神科の総合病院と、身体科の診療で、アルコール健康障害に関わるときに、身体科と精神科で乖離があって、見ている視点が違うなというところが非常によく理解できてありがたかったかと思います。
白石委員の御発表の中で、40グラム、60グラム辺りの飲酒量への介入、早期介入、そして全体の飲酒量低減が結局死亡率を全体的に減らしていくということに同意するところです。
その際に、AUDITなどでスクリーニングをした後に、特に職域や住民健診の中でmスクリーニングに引っかかった人たちに受診してもらうように身体科のほうに紹介したりはするのですけれども、単発で健診の結果を持って受診していただいた後に、結局フォローが続かなくて飲酒に対する介入も1回で終わってしまい、また翌年同じように飲酒による肝機能異常で引っかかっても、繰り返していると、受診をしなくなっていくように思っています。
ですから、スクリーニングも大切なのですけれども、その後スクリーニングしたものをどうやって継続して介入を続けていくかというところで、この第3期の計画を立てるときに、例えばプログラムやパッケージという形で、例えば一般の診療所レベルでもできるような形で介入していけるようになればいいなと思ったところです。
そこで、例えばこのくらいの飲酒レベルであれば精神科ではスクリーニングは行っている、フォロー体制が整っている、プログラムがある、という中で、どの分野が特に問題飲酒レベルへの介入が弱かったり、スクリーニングが弱かったりするかを、図示化し、どこに取り組むべきなのかを確認できると、(取り組むべき対策が)分かりやすくなるのかなと思いました。
意見です。ありがとうございます。
〇松下会長 ありがとうございました。
では、続いて石井委員お願いいたします。
〇石井委員 とても興味深いというか、すばらしい発表を次々と聞かせていただいて本当にありがとうございました。
感想と意見というか、ほぼ感想になると思うのですけれども、私はこの関係者会議にアルコール依存症の本人として参加させていただいています。この会議の目的というか、趣旨の中で、SBIRTS(エスバーツ)という流れは非常にすばらしいなと思いました。しかしまだ脈々とはその流れにはなっていない。これからなのだろうと初にこの会議に参加するようになったときに感じました。
日は先ほど発表があった小松先生とか白石先生のお話の中にもあった「みつける」「かかわる」「つなぐ」といった、いろいろなところと連携していく働きというのを実際にやられているところもあって、そういったところをどのように効果的にするのかということで診療報酬の話も出ていたと思います。
私は看護師だったときに現場で透析室勤務の期間が長くありました。
析療法は糖尿病の患者さんとかもかなり数が多くて、ちょっと古い話で恐縮なのですけれども、20年くらい前かと思うのですが、閉塞性の下肢動脈硬化症で、20年前といっても平成に足壊疽とか、足を切断する方たちは非常に多かったんです。
でも、診療報酬の改定があって、早い時期から足の血流の検査とかをして血管外科のほうに紹介するとかという流れが出てきて、紹介の流れが非常に活発に動くようになったとき、現場として早い時期に下肢の血流が悪い状態を見つけて対処していくことができて、本当に驚くほど下肢の切断の方が少なくなっていった印象があります。今はあまり糖尿病がひどくなって足を切ってしまうとか、そういった方たちは少ないのではないかと思います。足の切断だけで、ご本人のみならずご家族など周囲にもすごくいろいろな弊害が出てくるわけです。
このようにアルコール依存症以外の病気でも、その病気が悪化していったときにあまりにも弊害が大きいのでいろいろな方法をして、早めにそんなにひどい状態に広がっていかないようにするという方法は今まで医療の中でたくさん使われていたのではないかと思います。
それで、アルコール依存症の弊害というのは、今日の発表の中でもたくさん子供さんとか、御家族とか、飲酒運転とか、今は医療費が膨大になってきて、国会中継とか新聞とかを大分にぎわせていますけれども、弊害の大きさを考えると、早い時点で食い止める。本当に進行性の病気なので、そういったことについて診療報酬を前向きに考えていくのはとてもいい方法だなと思います。
病院の経営者のトップの方は、やはり経営を安定させていきたい。病院が潰れないようにしていくためにも、利益、収益が入るようなことについては特に関心を持っているので、診療報酬の改定のニュースとか情報が病院に入ってくると、厚生省がどういったことに着目しているのか、早く察知してくれるんです。ですから、現場でのスタッフの意識というのはすごく上がってくるでしょうし、流れがよくなっていく為にはとても効果的な方法かと思います。
ただ、全くの素人なので、どこにどういったポイントを置いて報酬の改定を行っていったらいいのかというのは、本当に専門の方々によろしく御検討願いたいと思っております。
それと、飲酒運転で受診義務がないというのはすごいびっくりなんです。私は本人として同じ病気の方たちのお話も伺っていますけれども、これだけ飲酒運転でいろいろニュースになって大変なことになっていて厳罰化もされているのに、やはりそれでも飲んでしまうという人たちの病気の確率は、非常に高いのではないかと思います。
ですから、今日の関係者会議はほかの省庁の方も参加されていると思いますので、受診義務を全国的に広めていただくようなことも御検討願いたいと思います。
すみません。長くしゃべって時間になっていますので、また別の機会にと思います。失礼します。
〇松下会長 ありがとうございました。
それでは、現地から平川委員お願いします。
〇平川委員 手短にお話しします。
私はもう30年くらいアルコール依存症をやってきたので思うのですけれども、今回のDSM-5の使用障害というのはまだしっくりこないんです。それで、皆さんのお話の中でも、使用障害というふうにおっしゃったりとか、健康障害とおっしゃったりとか、依存症というのが非常に混じっていて、私はその場、その場で頭が混乱してしまうというのが現状で、さっきの飲酒運転をして事故を起こすような人たちは完全に依存症だと私たちは思うので、こういう人たちは道交法を改正して必ず受診を強制的にしていただく。認知症で免許を取り上げるような形くらいにきちんとされるべきだと思いますし、一方で使用障害という形でまだブレーキが不十分ながらかかる人たちについてはハームリダクション等でアプローチしていくということで、2段階にしないと非常に混乱しやすいということで、依存症にまで至る人の今、半分くらいは統合失調症とか、知的障害とか、鬱病を合併しているケースが非常に多い。発達障害も増えていますけれども、そういう方々が多くて非常に難知性の依存症が増えています。先ほどの三角形の頂点のそのまた先を見ている私たちからすると、その辺はこの会議で一緒にしてほしくないなと思いますので、言葉の使い方をよろしくお願いしたいと思います。
以上です。
〇松下会長 ありがとうございました。
まだまだ御意見はあると思うのですけれども、予定の時間を迎えております。もし何かこれだけはということがございましたら、事務局に御連絡いただければと思います。どうもありがとうございました。
最後に、事務局からお願いします。
〇小野室長補佐 本日はありがとうございました。
次回の開催日程については、決まり次第御連絡させていただきたいと思います。
〇松下会長 それでは、第32回「アルコール健康障害対策関係者会議」をこれにて閉会いたします。
本日は、御多忙のところ御参集いただきまして、どうもありがとうございました。